(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-16
(54)【発明の名称】液体の光学特性評価の方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20220909BHJP
G01N 21/59 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
G01N21/27 Z
G01N21/59 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547910
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(85)【翻訳文提出日】2021-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2019079256
(87)【国際公開番号】W WO2020084141
(87)【国際公開日】2020-04-30
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521176787
【氏名又は名称】コペンハーゲン・ナノシステムズ・アンパルツセルスケープ
【氏名又は名称原語表記】COPENHAGEN NANOSYSTEMS APS
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】ホイルン-ニールセン,エミル
(72)【発明者】
【氏名】リュシェア,クリストーファ ジェイムス
(72)【発明者】
【氏名】セレンセン,トマス チュルブル
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB04
2G059EE01
2G059EE12
2G059JJ01
2G059JJ05
2G059KK01
2G059MM01
(57)【要約】
光学特性評価システムを用いる液体特性評価の方法を開示する。光学特性評価システムは、光源と光検出器を有する光学素子を備える。光学素子は、光源と光検出器との間において伸びる光路を形成する。光検出器は、可変波長において光量を分解することができる。また、このシステムは、液体容器と、第1容器面に取り付けられる、又は第1容器面と一体的に形成されると共に、内部に対向する第1光結晶とを備える。この方法は、第1容器面と第2容器面の少なくとも一部、すなわち液体を含む内部と第1光結晶が光路を妨げて、且つ内部が第1光結晶より前に光路を妨げる第1伝達スペクトルを記録するステップと、第1容器面と第2容器面の少なくとも一部、すなわち液体を含む内部と第1光結晶が光路を妨げて、且つ第1光結晶が内部より前に光路を妨げる第2伝達スペクトルを記録するステップとを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学特性評価システムを用いる液体特性評価の方法であって、
前記光学特性評価システムは、光源と光検出器を有して、且つ前記光源と前記光検出器との間において伸びる光路を形成する光学素子を備えており、
前記光検出器は、可変波長において光量を分解することができて、
前記光学特性評価システムは、第1容器面と第2容器面を有する液体容器を備えており、
前記第1容器面と前記第2容器面は、前記液体容器の内部の少なくとも一部を形成しており、
前記第1容器面と前記第2容器面の少なくとも一部は、透過していると共に平行であり、
前記光学特性評価システムは、前記第1容器面に取り付けられる、又は前記第1容器面と一体的に形成されると共に、前記内部に対向する第1光結晶を備えており、
前記第1光結晶は、第1平面において形成される第1変調周期を有する第1格子部分を備えており、
前記方法は、
前記第1容器面と前記第2容器面の少なくとも一部、すなわち液体を含む前記内部と前記第1光結晶が前記光路を妨げて、且つ前記内部が前記第1光結晶より前に前記光路を妨げる第1伝達スペクトルを記録するステップと、
前記第1容器面と前記第2容器面の少なくとも一部、すなわち液体を含む前記内部と前記第1光結晶が前記光路を妨げて、且つ前記第1光結晶が前記内部より前に前記光路を妨げる第2伝達スペクトルを記録するステップとを備えることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記方法は、前記第1伝達スペクトルと前記第2伝達スペクトルを分析することにより、前記液体のいずれかの粒子からの散乱の定量的測定値を導くステップを備えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記第1伝達スペクトルと前記第2伝達スペクトルを比較して分析することを含んで、前記液体内の粒子の平均サイズを導くステップを備えることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、前記第1伝達スペクトルと前記第2伝達スペクトルを比較して分析することを含んで、前記液体内の粒子のサイズ分布を導くステップを備えることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
第2光結晶は、前記第1容器面に取り付けられる、又は前記第1容器面と一体的に形成されて、前記内部に対向しており、
前記第2光結晶は、第2平面を形成して、第2変調周期を有する第2格子部分を備えており、
前記第1伝達スペクトルと前記第2伝達スペクトルは、前記光路における前記第2光結晶の少なくとも一部により記録されることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第1光結晶は、前記第2光結晶と隣接することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1変調周期は、第1共振波長帯を生じて、
前記第2変調周期は、第2共振波長帯を生じて、
前記第1共振波長帯と前記第2共振波長帯は、オーバーラップしないことを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1光結晶と前記第2光結晶の両方が、前記第1伝達スペクトルと前記第2伝達スペクトルのそれぞれを記録する間、同時に前記光路にあることを特徴とする、請求項5から請求項7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記光学素子は、少なくとも第1の方向と第2の方向において、前記液体容器を保持するように構成されている容器レセプタクルを備えており、
前記方法は、
前記第1の方向において、前記液体容器を前記容器レセプタクルに配置して、前記第1伝達スペクトルを記録するように、前記液体容器を前記第1の方向に向けるステップと、
試料容器内の前記液体容器の方向を前記第2の方向に変化させて、前記第2伝達スペクトルを記録するように、前記液体容器を前記第2の方向に向けるステップとを備えることを特徴とする、請求項1から請求項8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記光学素子は、少なくとも第1光路と第2光路とを与えるように構成されており、
前記第1伝達スペクトルは、前記第1光路に沿って与えられる光により記録されて、
前記内部と前記第1光結晶は、前記第1光路を妨げて、
前記内部は、前記第1光結晶より前に前記第1光路を妨げて、
前記第2伝達スペクトルは、前記第2光路に沿って与えられる光により記録されて、
前記内部と前記第1光結晶は、前記第2光路を妨げて、
前記第1光結晶は、前記内部より前に前記第2光路を妨げて、
前記液体容器の方向は、前記第1伝達スペクトルを記録するステップと前記第2伝達スペクトルを記録するステップとの間において、変わらないことを特徴とする、請求項1から請求項8のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記第1光結晶が前記光路にない第3伝達スペクトルを記録するステップを備える、請求項1から請求項10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記液体容器はまた、前記内部の少なくとも一部を形成する第3容器面と第4容器面を備えており、
前記第3容器面と前記第4容器面の少なくとも一部は、透過していると共に平行であり、
前記第3伝達スペクトルは、前記第3容器面と前記第4容器面の少なくとも一部により記録されて、
前記内部は、前記光路を妨げることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記光学素子は、少なくとも第3光路を与えるように構成されており、
前記第3伝達スペクトルは、前記第3光路に沿って与えられる光により記録されて、
前記第3容器面と前記第4容器面は、前記第3光路を妨げることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の光学特性評価に関する。液体は、特性評価のための浮遊粒子を含んでもよい。
【背景技術】
【0002】
例えば飲料水の純度の特性評価において、濁度を測定することは、一般的に、分析の重要な部分を形成する。FTUのユニット内で測定される濁度は、一般的に、直角に散乱した入射光を測定することにより得られる。一方、この測定は、一般的に、液体を含む粒子の濁度の精密な測定をもたらさない。これは、特に、ナノ-ogマイクロメートルサイズの粒子の場合である。
【0003】
多くの場合、液体内に浮遊している粒子に関して液体を特性評価することが好ましい。これは、例えば、飲料水の品質、ミルク内のたんぱく質、塗料の性質などを特定することに適している。多くの特性評価の方法がある一方、液体内に浮遊している粒子のサイズ分布を得るための主要な方法は、動的光散乱(DLS)である。DLSは、相対的に小さな粒子と液体内に浮遊しているポリマーのサイズ分布を得るための従来の最も正確な方法の1つを提供する。一方、DLS装置は、相対的に高価であり、主要な適用性を制限するように複雑である。また、DLS分析方法は、多くの場合、使用者が、分析される液体試料の屈折率を入力することを要求する。多くの場合、これは正確に知られていないと共に、屈折率の推定を要求する。この推定は、得られるサイズ分布における誤差をもたらし得る。また、DLS装置は、液体試料が、相対的に広いサイズ分布を有する様々なサイズの粒子を含む場合、相対的に不正確な推定をもたらす。
【0004】
液体内に浮遊している粒子に関して液体を特性評価する別の方法は、粒子サイズ分光測光法である。この方法は、分光測光法において記録される吸収スペクトルの分析に依存する。この場合、観測された吸収スペクトルは、液体内に浮遊している粒子のサイズ分布と関連し得る。一方、この機器の製造者によれば、著しい不正確さが、ナノメートルサイズの相対的に小さな粒子に対して予想される。これは、小さな粒子の端部において、粒子がレイリー散乱を受けるためである。スペクトル形状は、粒子サイズに応じない。また、スペクトルは、すべて自己類似しているように見える。結果として、粒子サイズスペクトルは、粒子サイズと粒子濃度の両方を独立して定めることができない。また、大きな粒子の端部において、スペクトルは、すべて正確に平坦であり、且つ自己類似しているように見える。さらに、サイズは決められない。基本的に、粒子は、すべての波長にわたって検出器に影を生じる。
【0005】
様々な光学特性評価の方法がある一方、最適化の必要性が残っている。
【発明の概要】
【0006】
第1の態様において、本発明の実施形態は、光学特性評価システムを用いる液体特性評価の方法を提供する。
この光学特性評価システムは、
前記光学特性評価システムは、光源と光検出器を有して、且つ前記光源と前記光検出器との間において伸びる光路を形成する光学素子を備えており、
前記光検出器は、可変波長において光量を分解することができて、
前記光学特性評価システムは、第1容器面と第2容器面を有する液体容器を備えており、
前記第1容器面と前記第2容器面は、前記液体容器の内部の少なくとも一部を形成しており、
前記第1容器面と前記第2容器面の少なくとも一部は、透過していると共に平行であり、
前記光学特性評価システムは、前記第1容器面に取り付けられる、又は前記第1容器面と一体的に形成されると共に、前記内部に対向する第1光結晶を備えており、
前記第1光結晶は、第1平面において形成される第1変調周期を有する第1格子部分を備えており、
前記方法は、
前記第1容器面と前記第2容器面の少なくとも一部、すなわち液体を含む前記内部と前記第1光結晶が前記光路を妨げて、且つ前記内部が前記第1光結晶より前に前記光路を妨げる第1伝達スペクトルを記録するステップと、
前記第1容器面と前記第2容器面の少なくとも一部、すなわち液体を含む前記内部と前記第1光結晶が前記光路を妨げて、且つ前記第1光結晶が前記内部より前に前記光路を妨げる第2伝達スペクトルを記録するステップとを備えることを特徴とする。
【0007】
請求項1において定められているような第1伝達スペクトルと第2伝達スペクトルを記録するため、従来にない情報の豊富さは、光学特性評価の方法から導かれる。この光学特性評価の方法は、相対的に小さな実際の取り組みにより行われ得る。
【0008】
第1変調周期を有する光結晶は、第1共振波長帯を生じる。第1共振波長帯は、光結晶が波長に応じて光を反射する方法を示す。一般的に、光結晶は、入射光のエネルギーが光結晶の共振モードのエネルギーに対応するとき、光を反射する。この反射は、光結晶を通過する光の伝達スペクトルにおいて観測され得る。この場合、共振の特徴は観測され得る。この共振の特徴において、光路における入射光の波長は光結晶の特性波長に対応する。伝達スペクトルが、このスペクトルのようにプロットされる場合、すなわち波長に応じてセンサに達する光をプロットするとき、この特徴は共振の谷のようにみえる。一方、データが吸収スペクトル又は減衰スペクトルのようにプロットされるとき、所定の波長で反射される光に対応する共振の特徴は、共振ピークの形で現れる。したがって、共振モードは、等しく、伝達スペクトルにおいて直接、又は吸収スペクトル若しくは減衰スペクトルにおいて観察され得る。
【0009】
それぞれの共振モードのエネルギーは、光結晶の形状と材料特性に応じる。したがって、光結晶は、光学特性評価システムに対して好ましいエネルギーで、例えば可視スペクトルとUVスペクトルで共振モードを示すように調整され得る。この光結晶により、光学特性評価システムは、例えばガラスから形成される液体容器と共に用いることに適している。また、共振モードの少なくとも一部のエネルギーは、入射光の入射角度に応じる。これらの共振モードは、以下において、共振角度モードと呼称される。また、これらの共振角度モードに対して、光が光結晶に当たる角度は、光を反射するときの波長に悪影響を及ぼす。共振角度モードと関連している共振ピークを分析することにより、入射光の入射角度に関する情報が導かれ得る。したがって、この分析により、光が光結晶に当たる前に通過するときのいずれかの屈折率を導くことができる。
【0010】
第1伝達スペクトルを記録するとき、光は、光結晶に当たる前に第2容器面と液体容器の内部を通過する。したがって、光は、光結晶に達する前に第2容器面と内部のいずれかの液体及び粒子との両方により散乱し得る。この集合的散乱は、共振角度モードと関連している第1伝達スペクトルにおける共振ピークの分析から導かれる。
【0011】
第2伝達スペクトルを記録するとき、光は、光結晶に当たる前に内部と第2容器面を通過しない。したがって、第2伝達スペクトルにおける共振角度モードと関連している共振ピークの分析により、内部の液体と粒子からの寄与なしで、散乱のための測定値を導くことができる。
【0012】
特に、第1容器面と第2容器面が平行であり、光結晶の有無に関してだけ異なる実施形態において、光結晶における光の入射角度において、容器の内部の液体と粒子の影響を分離することができる。
【0013】
結果として、本発明の実施形態により、第1伝達スペクトルと第2伝達スペクトルを収集して分析することによって、液体容器の内部の液体と粒子により生じる散乱の測定値を導くことができる。
【0014】
一般的に、平面波が完全な球形、粒子、又は生体細胞に当たるとき、光の一部は吸収されて、また別の光の一部は散乱される。これらの推移は、様々な粒子サイズのための散乱理論により計算され得る。(ローレンツ-ミーの方法、ローレンツ-ミー-デバイの方法、又はミー散乱として知られている)マクスウェル方程式に対するミーの方法は、均一な球形により電磁平面波の散乱を説明する。この方法は、球状の複数の部分的な波形の無限級数の形をとる。非吸収、部分的吸収、又は完全導電性球により、光散乱を計算することが用いられ得る。
【0015】
定義に関して、遮光効率(散乱又は吸収)は、粒子の幾何学的断面領域に対する遮光(散乱又は吸収)断面の比率である。散乱異方性は、単一の散乱事象の後において保たれる順方向の量の測定値であり、散乱位相関数の平均の余弦に関して定められる一方、粒子に関する遮光効率は散乱効率と吸収効率の合計として定められる。分光光度計により測定される減衰は、遮光効率と、光路の長さ、濃度、及び10を底とするオイラー数の対数の数学定数とを掛けることにより計算され得る。
【0016】
液体容器は、2組の対向するキュベット壁部を形成するキュベットであってもよい。対向する壁部の1組は、第1容器面と第2容器面を備える。キュベットは、正方形の設置面積を形成し得る。2組の対向する壁部の端部は、底壁の端部と共に、正方形の設置面積の外周を形成する。このキュベットは、特に、例えば市販の分光光度計と共に用いるために適切であってもよい。
【0017】
また、液体容器は、流路の一部を形成する、又は備えてもよい。特性評価される液体は、光路を遮る流路を流れる。液体の流量は、第1伝達スペクトルと第2伝達スペクトルを記録する間、0になるように制御され得る。これにより、液体内の粒子成分の変化を特性評価することができる。この変化は、例えば、液体内の粒子の化学反応、液体内の粒子の減衰、又は液体に対する粒子の流れにより起こり得る。これらの推移は、連続した時点、及び「流量伝播」の連続した量において、連続的な複数の組の第1伝達スペクトルと第2伝達スペクトルを記録するステップを追加することにより分析され得る。流量伝播は、光路を遮る第1面と第2面を通過して伝播する液体の流れを示す。
【0018】
光源は、例えば可視スペクトル、好ましくはUVスペクトルにおいて、相対的に平坦なスペクトルを好ましくは有するガスランプのようないかなる種類の広域スペクトル光源であってもよい。この場合、光源は、好ましくは、入射光の強度及び波長の両方を測定できる。また、光源は、相対的に小さい一方、可視光のスペクトルを有する光源の一種であってもよい。好ましい実施形態において、光センサは、第1面に対して85~95度、好ましくは80~100度の入射光を有する光に対して、光結晶のいずれかの部分を通過する光を検出できる。したがって、光センサは、好ましくは、光路の中心に対して垂直な平面において、光結晶より大きな範囲を有する。また、光路は、上記平面において、より小さな範囲を有する場合、光センサに達する前に光学レンズにより集められ得る。したがって、光センサは、好ましくは、上記平面における2つの方向の拡がりを有する光センサである。
【0019】
好ましくは、第1光結晶は、オーバーラップする第1レイヤと第2レイヤを備える。第1レイヤは、第1変調周期と第1屈折率を有する。また、第2レイヤは、第1変調周期と第2屈折率を有する。第1屈折率は、第2屈折率より大きい。好ましくは、第1レイヤは内部に対向する。また、第2レイヤは第1容器面に対向する。
【0020】
本発明の一部の実施形態において、前記方法は、前記第1伝達スペクトルと前記第2伝達スペクトルを分析することにより、前記液体のいずれかの粒子からの散乱の定量的測定値を導くステップを備える。
【0021】
第1伝達スペクトルと第2伝達スペクトルは、光結晶における入射光の角度分布に応じて変化する特性と共に、共振の特徴を備える。上述の請求項1に関する記載のように、第2伝達スペクトルは、内部と液体の前に光路を遮る光結晶により記録されている。したがって、光結晶における入射光の角度分布は、液体内の粒子により生じるいずれかの散乱に応じない。したがって、所定の光源に対する共振の特徴の固有特性の一種、第1容器面と第2容器面、及び光結晶と内部の液体は、第2伝達スペクトルから導かれる。
【0022】
一方、第1スペクトルは、光結晶に達する前に内部の液体を通過する光と共に記録されている。したがって、光が、例えば光結晶に達する前に液体内の粒子により散乱されるとき、入射光の角度分布は、第1伝達スペクトルの記録と異なる。したがって、第1伝達スペクトルと第2伝達スペクトルのそれぞれにおける共振の特徴の特性の比較分析により、液体内の粒子による散乱からの寄与は分離され得る。粒子から分離される散乱の寄与は、例えば飲料水の濁度の測定値を得るような多くの適用において、重要な特性である。
【0023】
本発明の一部の実施形態において、前記方法は、前記第1伝達スペクトルと前記第2伝達スペクトルを比較して分析することを含んで、前記液体内の粒子の平均サイズを導くステップを備える。
【0024】
特に、液体内の粒子の平均サイズは、粒子がナノメートルレンジの大きさを有する、又は実質的に高度な光学特性評価システムを要求し得るとき、液体内の粒子を特性評価するための既知の光学的方法により得ることが難しい。この難しさは、第1スペクトルと第2スペクトルの比較分析を提供することにより、本発明の実施形態によって克服される。平均サイズは、第1伝達スペクトルと第2伝達スペクトルにおける共振モードの分割の比較分析から導かれる。少なくとも1つの共振モードが、光結晶における入射光の角度分布により分かれる。分かれた詳細を観察することにより、液体内の粒子の平均サイズの測定値を導くことができる。特に、液体内の粒子の平均サイズは、例えば、分割共振モードから生じる第1伝達スペクトルにおける分割共振の特徴の最大又は最小の位置を、第2伝達スペクトルにおいて対応する分割共振の特徴の最大又は最小の位置と比較することから導かれ得る。この比較から、粒子の平均サイズは、例えばミー理論又はレイリー散乱理論を用いることにより導かれる。特に、レイリー散乱理論は、相対的に小さな粒子の平均サイズを導くことに有用である。これに関して、レイリー散乱理論を用いる粒子の正確な平均サイズ決定に対して必要な入力が、一般的に、液体内の粒子を特性評価するための既知の光学的方法と共に利用できない、及び/又は著しく高度且つ高価な光学特性評価システムを用いることを要求する、及び/又は決められたサイズ分布の不正確さをもたらす例えば液体の屈折率のようなパラメータの推定を要求することに留意することが有用である。
【0025】
本発明の一部の実施形態において、前記方法は、前記第1伝達スペクトルと前記第2伝達スペクトルを比較して分析することを含んで、前記液体内の粒子のサイズ分布を導くステップを備える。
【0026】
液体内の粒子のサイズ分布は、第1伝達スペクトルと第2伝達スペクトルにおける共振モードの分割の比較分析から導かれる。少なくとも1つの共振モードが、光結晶における入射光の角度分布により分かれる。第1伝達スペクトルと第2伝達スペクトルにおいて分かれた詳細を分析することにより、液体内の粒子のサイズ分布を導くことができる。特に、液体内の粒子のサイズ分布は、例えば、分割共振モードから生じる第1伝達スペクトルにおける分割共振の特徴の幅又は半値全幅(FWHM)を、第2伝達スペクトルにおいて対応する分割共振の特徴の幅又はFWHMと比較することから導かれ得る。この比較から、液体内の粒子のサイズ分布は、例えばミー理論又はレイリー散乱理論を用いることにより導かれる。特に、レイリー散乱理論は、相対的に小さな粒子のサイズ分布を導くことに有用である。これに関して、レイリー散乱理論を用いる粒子の正確なサイズ分布決定に対して必要な入力が、一般的に、液体内の粒子を特性評価するための既知の光学的方法と共に利用できない、及び/又は著しく高度且つ高価な光学特性評価システムを用いることを要求する、及び/又は決められたサイズ分布の不正確さをもたらす例えば液体の屈折率のようなパラメータの推定を要求することに留意することが有用である。
【0027】
本発明の一部の実施形態において、第2光結晶は、前記第1容器面に取り付けられる、又は前記第1容器面と一体的に形成されて、前記内部に対向しており、
前記第2光結晶は、第2平面を形成して、第2変調周期を有する第2格子部分を備えており、
前記第1伝達スペクトルと前記第2伝達スペクトルは、前記光路における前記第2光結晶の少なくとも一部により記録される。
【0028】
第3変調周期を有する第2光結晶は、第2の組の共振モードを定める。共振モードのエネルギーは、第2光結晶の大きさと材料に応じて調整され得る。これにより、第1伝達スペクトルと第2伝達スペクトルにおいて、第1共振波長帯における共振の特徴と異なる波長に第2共振波長帯を生じる。したがって、第1伝達スペクトルと第2伝達スペクトルにおける第2の組の共振の特徴により、第1光結晶から生じる波長の範囲と比べて異なる波長の範囲でみられる共振モードの分割の比較分析ができる。これにより、光が、異なる波長の範囲で粒子から散乱されることを分析できる。散乱に応じる波長は、ミー理論とレイリー散乱理論に対する直接入力であり、例えば液体内の粒子の平均サイズとサイズ分布の正確な決定をもたらし得る。
【0029】
好ましくは、第2光結晶は、オーバーラップする第3レイヤと第4レイヤを備える。第3レイヤは、第2変調周期と第3屈折率を有する。また、第4レイヤは、第2変調周期と第4屈折率を有する。第3屈折率は、第4屈折率より大きい。好ましくは、第3レイヤは内部に対向する。また、第4レイヤは第1容器面に対向する。
【0030】
本発明の一部の実施形態において、前記第1光結晶は、前記第2光結晶と隣接する。
これは、第1光結晶と第2光結晶による遮断に対して光路を変化させるための必要性を最小化する、又は軽減する。
【0031】
本発明の一部の実施形態において、前記第1変調周期は、第1共振波長帯を生じて、
前記第2変調周期は、第2共振波長帯を生じて、
前記第1共振波長帯と前記第2共振波長帯は、オーバーラップしない。
これにより、特定の共振の特徴が属する第1共振帯と第2共振帯の解読の可能性を強める。
【0032】
好ましくは、前記第1光結晶と前記第2光結晶の両方が、データ取得速度を増加させるため、前記第1伝達スペクトルと前記第2伝達スペクトルのそれぞれを記録する間、同時に前記光路にある。
【0033】
本発明の一部の実施形態において、前記光学素子は、少なくとも第1の方向と第2の方向において、前記液体容器を保持するように構成されている容器レセプタクルを備えており、
前記方法は、
前記第1の方向において、前記液体容器を前記容器レセプタクルに配置して、前記第1伝達スペクトルを記録するように、前記液体容器を前記第1の方向に向けるステップと、
試料容器内の前記液体容器の方向を前記第2の方向に変化させて、前記第2伝達スペクトルを記録するように、前記液体容器を前記第2の方向に向けるステップとを備える。
【0034】
これにより、上述の方法が、例えば価格を上げ得る自動化技術を必要とすることなく、分光光度計の光路に対して4つの異なる角度で液体容器を受容するように構成されている容器レセプタクルを有する標準的な分光光度計のような相対的に単純な技術手段により行われ得る。
【0035】
本発明の実施形態は、この実施形態により、光路に対する液体の方向の内の不正確な方向から生じ得る誤りを訂正できるように、第1光結晶と第2光結晶により行われる組み合わせで特に有用であってもよい。
【0036】
不正確な第1の方向及び/又は第2の方向は、波長から独立して、第1伝達スペクトルと第2伝達スペクトルにおける共振の特徴に悪影響を及ぼす。したがって、この場合、第1共振波長帯と第2共振波長帯の共振の特徴は、同様に悪影響を受ける。液体内の粒子は、波長に応じて、第1伝達スペクトルと第2伝達スペクトルにおける共振の特徴に悪影響を及ぼし得る。したがって、液体内の粒子は、第1共振波長帯と第2共振波長帯の共振の特徴において、それぞれ異なる影響を有する。したがって、この差の定量的分析により、不正確な第1の方向及び/又は第2の方向から生じる第1伝達スペクトルと第2伝達スペクトルとの間の差に対する寄与を分離できる。
【0037】
一部の実施形態において、前記光学素子は、少なくとも第1光路と第2光路とを与えるように構成されており、
前記第1伝達スペクトルは、前記第1光路に沿って与えられる光により記録されて、
前記内部と前記第1光結晶は、前記第1光路を妨げて、
前記内部は、前記第1光結晶より前に前記第1光路を妨げて、
前記第2伝達スペクトルは、前記第2光路に沿って与えられる光により記録されて、
前記内部と前記第1光結晶は、前記第2光路を妨げて、
前記第1光結晶は、前記内部より前に前記第2光路を妨げて、
前記液体容器の方向は、前記第1伝達スペクトルを記録するステップと前記第2伝達スペクトルを記録するステップとの間において、変わらない。
【0038】
これにより、第1伝達スペクトルと第2伝達スペクトルを記録する間、液体容器の方向を変える必要なく、相対的に速いデータ取得ができる。第1光路と第2光路は、半透明ミラーを適切に用いることにより、単一の光源と単一の光検出器を有する、好ましくは透明性に応じる光検出器を有することをもたらされる。
【0039】
一部の実施形態において、上述の方法は、前記第1光結晶が前記光路にない第3伝達スペクトルを記録するステップを備える。
【0040】
第3伝達スペクトルは、第1伝達スペクトルと第2伝達スペクトルから有利に差し引かれる一種のバックグラウンドスペクトルを構成する。これにより、第1光結晶及び/又は第2光結晶との相互作用から生じる第1伝達スペクトルと第2伝達スペクトルにおける特徴を分離できる。
【0041】
本発明の一部の実施形態において、前記液体容器はまた、前記内部の少なくとも一部を形成する第3容器面と第4容器面を備えており、
前記第3容器面と前記第4容器面の少なくとも一部は、透過していると共に平行であり、
前記第3伝達スペクトルは、前記第3容器面と前記第4容器面の少なくとも一部により記録されて、
前記内部は、前記光路を妨げる。
これにより、第3伝達スペクトルが、光路に対する液体容器を単純に回転させた後、記録され得るため、上述の方法は、実施が特に単純である。
【0042】
本発明の一部の実施形態において、前記光学素子は、少なくとも第3光路を与えるように構成されており、
前記第3伝達スペクトルは、前記第3光路に沿って与えられる光により記録されて、
前記第3容器面と前記第4容器面は、前記第3光路を妨げる。
これにより、高度の自動化、及び液体容器の方向を変える必要なく、第3伝達スペクトルを得ることができる。
【0043】
第2の態様において、実施形態は、第1の態様に記載の方法を用いることにより、生物学的物質を備える試料の特性評価の方法を提供する。
【0044】
第2の態様の一部の実施形態において、生物学的物質は生体細胞を備える。
【0045】
第2の態様の一部の実施形態において、生体細胞は、酵母細胞及び/又は大腸菌のような細菌性細胞である。
【0046】
第2の態様の一部の実施形態において、生体細胞は、特性評価の間、活動している。
【0047】
第2の態様の一部の実施形態において、第1の態様に記載の方法は、細胞の生体試料に定量的散乱分析をできるように用いられる。
【0048】
第2の態様の一部の実施形態において、特性評価は、少なくとも細胞濃度を決めることを備える。
【0049】
第2の態様の一部の実施形態において、特性評価は、少なくとも平均細胞サイズを決めることを備える。
【0050】
第2の態様の一部の実施形態において、特性評価は、少なくとも細胞サイズ分布を決めることを備える。
【0051】
第2の態様の一部の実施形態において、生物学的物質は、少なくとも第1の種類の細胞と第2の種類の細胞を備える。特性評価は、第2の種類の細胞に対する第1の種類の細胞の濃度、第1及び/又は第2の種類の細胞の平均サイズ、第1及び/又は第2の種類の細胞のサイズ分布、第1及び/又は第2の種類の細胞の濃度の少なくとも1つを決めることを備える。
【図面の簡単な説明】
【0052】
本発明の実施形態は、添付図面を参照して説明される。
【
図1】
図1は、実施形態の方法において用いるための液体容器を示す。
【
図2】
図2は、実施形態の方法において用いるための液体容器を示す。
【
図3】
図3は、実施形態の方法において用いるための液体容器を示す。
【
図4】
図4は、実施形態の方法において用いるための光結晶を示す。
【
図5】
図5は、実施形態の方法において用いるための光結晶を示す。
【
図6】
図6は、実施形態の方法に従って記録される伝達スペクトルのグラフを示す。
【
図7】
図7は、実施形態の方法に従って記録される伝達スペクトルのグラフを示す。
【
図8】
図8は、実施形態の方法に従って記録される伝達スペクトルのグラフを示す。
【
図9】
図9は、実施形態の方法に従って記録される伝達スペクトルのグラフを示す。
【
図10】
図10は、実施形態の方法に従って記録される伝達スペクトルのグラフを示す。
【
図11】
図11は、実施形態の方法に従って記録される伝達スペクトルのグラフを示す。
【
図12】
図12は、実施形態の方法に従って記録される伝達スペクトルのグラフを示す。
【
図13】
図13は、実施形態の方法に従って得られる実験データのグラフを示す。
【
図14】
図14は、実施形態の方法に従って得られる実験データのグラフを示す。
【
図15】
図15は、実施形態の方法に従って得られる実験データのグラフを示す。
【
図16】
図16は、実施形態の方法に従って得られる実験データのグラフを示す。
【
図17】
図17は、実施形態の方法に従って得られる実験データのグラフを示す。
【
図18】
図18は、実施形態の方法に従って得られる実験データのグラフを示す。
【
図19】
図19は、実施形態の方法に従って得られる実験データのグラフを示す。
【
図20】
図20は、実施形態の方法に従って得られる実験データのグラフを示す。
【
図21】
図21は、実施形態の方法に従って得られる実験データのグラフを示す。
【
図22】
図22は、実施形態の方法に従って得られる実験データのグラフを示す。
【
図23】
図23は、実施形態の方法に従って得られる実験データのグラフを示す。
【
図24】
図24は、実施形態の方法に従って得られる実験データのグラフを示す。
【
図25】
図25は、実施形態の方法に従って得られる実験データのグラフを示す。
【
図26】
図26は、実施形態の方法に従って得られる実験データのグラフを示す。
【
図27】
図27は、実施形態の方法に従って得られる実験データのグラフを示す。
【
図28】
図28は、実施形態の方法に従って得られる実験データのグラフを示す。
【
図29】
図29は、実施形態の方法に従って得られる実験データのグラフを示す。
【
図30】
図30は、実施形態の方法に従って得られる実験データのグラフを示す。
【
図35】
図35は、実施形態の方法に従って得られる実験データのグラフを示す。
【
図36】
図36は、実施形態の方法に従って得られる実験データのグラフを示す。
【
図37】
図37は、実施形態の方法に従って得られる実験データのグラフを示す。
【
図38】
図38は、実施形態の方法に従って得られる実験データのグラフを示す。
【
図39】
図39は、実施形態の方法に従って得られる実験データのグラフを示す。
【
図40】
図40は、実施形態の方法に従って得られる実験データのグラフを示す。
【
図41】
図41は、実施形態の方法に従って得られる実験データのグラフを示す。
【
図42】
図42は、実施形態の方法に従って得られる実験データのグラフを示す。
【
図43】
図43は、実施形態の方法に従って得られる実験データのグラフを示す。
【
図44】
図44は、実施形態の方法に従って得られる実験データのグラフを示す。
【
図45】
図45は、実施形態の方法に従って得られる実験データのグラフを示す。
【
図46】
図46は、実施形態の方法に従って得られる実験データのグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1は、液体容器1の内部7の部分を形成する第1容器面3と第2容器面5を備える液体容器1を示す。第1容器面3と第2容器面5は、透明且つ平行な部分9,11を備えて、壁12の部分を共に形成する。第1容器面3は光結晶13を備える。第1容器面3と第2容器面5は、例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA)のようなポリマーから、又は例えばガラスのような他の透明且つ実質的に硬い材料から形成され得る。液体容器1は、光源と光検出器を備える光学素子(図示せず)と共に用いるためのものである。光は、例えば可視スペクトル、好ましくはUVスペクトルにおいて、相対的に平坦なスペクトルを好ましくは有する例えばガスランプのような一種の広域スペクトル光源であってもよい。この場合、光源は、好ましくは、入射光の強度及び波長の両方を測定できる。光センサは、第1面に対して85~95度、好ましくは80~100度の入射光を有する光に対して、光結晶13のいずれかの部分を通過する光を検出できる。
【0054】
光結晶13は、透明部分9上の第1容器面3に取り付けられている。光結晶13は、第1容器面3と共に一体的に同様に良好に形成され得る。
図4と
図5において、光結晶の詳細を明確に示しており、周期長19により形成される第1変調周期を有する第1格子部分17を示す。第1格子部分17は、第1面において伸びて、オーバーラップする第1レイヤ23と第2レイヤ25を備える。第1レイヤ23が第1屈折率を有して、第2レイヤ25が第2屈折率を有する一方、2つのレイヤ23,25は、両方とも、第1変調周期を有する。第1屈折率は、第2屈折率よりも大きい。第1レイヤ23は、内部7に対向する。第2レイヤ25は、第1容器面3に対向する。
【0055】
ある実施形態において、液体容器1は、2組の対向するキュベット壁部を形成するキュベットであってもよい。対向する壁部の1組は、第1容器面3と第2容器面5を備える。キュベットは、正方形の設置面積を形成し得る。2組の対向する壁部の端部は、破線27により示す底壁の端部と共に、正方形の設置面積の外周を形成する。このキュベットは、特に、例えば市販の分光光度計と共に用いるために適切であってもよい。この場合、
図1~3のそれぞれの破線29は、プラグ(図示せず)により密封され得る開口部を示す。
【0056】
ある実施形態において、液体容器1は流路の一部を形成する。特性評価される液体は、光路を遮る流路を流れる。
図2と
図3において、矢印33により、光路と光の方向を示す。流路は、
図1~3において示す平面に対して垂直である。液体の流量は、第1伝達スペクトルと第2伝達スペクトルを記録する間、0になるように制御され得る。これにより、液体内の粒子成分の変化を特性評価することができる。この変化は、例えば、液体内の粒子の化学反応、液体内の粒子の減衰、又は液体に対する粒子の流れにより起こり得る。これらの推移は、連続した時点、及び「流量伝播」の連続した量において、連続的な複数の組の第1伝達スペクトルと第2伝達スペクトルを記録するステップを追加することにより分析され得る。流量伝播は、光路を遮る第1面3と第2面5を通過して伝播する液体の流れを示す。
【0057】
図2は、第1面3と第2面5の方向を示す。内部7と光結晶13に関連する光路と光の方向は、矢印33により示す。したがって、
図2は、第1容器面3と第2容器面5の一部、すなわち液体を含む内部7と光結晶13が光路を妨げて、且つ内部7が光結晶13より前に光路を妨げる第1伝達スペクトルを記録する場面を示す。
【0058】
図3において、矢印33により示す光路における光の方向は、
図2における光の方向と対向する。したがって、
図3は、第1容器面3と第2容器面5の少なくとも一部、すなわち液体を含む内部7と光結晶13が光路を妨げて、且つ光結晶13が内部7より前に光路を妨げる第2伝達スペクトルを記録する場面を示す。
【0059】
また、第3伝達スペクトルは記録され得る。光路が光結晶により妨げられる。液体容器1が、2組の対向するキュベット壁部を形成するキュベットである場合、対向する壁部の1組は、第1容器面3と第2容器面5を備え、対向する壁部の他の組は、光結晶を備えない。第3スペクトルは、第1伝達スペクトル又は第2伝達スペクトルを記録する間、互いの方向に関して90度ごとに、キュベットに対して光路を回転させる、又は光路に対してキュベットを回転させることにより記録され得る。第3伝達スペクトルにより、吸収スペクトル若しくは減衰スペクトルを記録することができる。減衰スペクトルは、吸収、散乱、及び発光による損失を示す。
【0060】
図6は、空気37、純水39、水40により64回希釈されたミルク、水41により32回希釈されたミルク、水43により16回希釈されたミルク、水45により8回希釈されたミルク、水47により4回希釈されたミルク、水49により2回希釈されたミルク、及び純粋なミルク50に対して記録される吸収スペクトル又は減衰スペクトルのグラフ35を示す。
図6から分かるように、スペクトルは、導かれるいずれかのサイズ推定の誤差の相対的に大きなマージンをもたらす相対的に小さな波長依存性を示す。
図6の吸収スペクトル又は減衰スペクトルは、記録される第3伝達スペクトルから生じる。第3伝達スペクトルは、第1伝達スペクトルと第2伝達スペクトルにおける吸収からいずれかの寄与を取り除くため、対応する第1伝達スペクトルと第2伝達スペクトルから有利に差し引かれる。
【0061】
図7のグラフは、液体容器1の内部7の純水により記録される第1伝達スペクトル51と第2伝達スペクトル53のグラフを示す。
【0062】
図8~12のグラフは、(
図8における)32回希釈されたミルク、(
図9における)16回希釈されたミルク、(
図10における)8回希釈されたミルク、(
図11における)4回希釈されたミルク、
図12における2回希釈されたミルクにより記録される第1伝達スペクトル51と第2伝達スペクトル53のグラフを示す。
【0063】
グラフから明らかなように、光結晶13は、第1共振波長帯を生じる。
図7における第1伝達スペクトル51と第2伝達スペクトル53のグラフから明らかなように、純水は波長帯を大きく変えない。これは、水が純粋であり、光を大きく散乱させないためである。
【0064】
図8~12における第1伝達スペクトル51と第2伝達スペクトル53のそれぞれのグラフは、観測できる共振の特徴を示す。光路における入射光の波長は、光結晶13の特性波長に対応する。共振角度モードのエネルギーは、光結晶13に当たる光の入射角度に従って分かれる。
図7~12において、この分割は、それぞれ観測できて、第1伝達スペクトル51における三角形55a,55b、及び第2伝達スペクトル53における点57a,57bにより示す極値に印付けられている。第1伝達スペクトル51のグラフにおけるそれぞれの極値55a,55bの位置、及び第2伝達スペクトル53のグラフにおけるそれぞれの極値57a,57bの位置を比較分析することにより、水又は希釈されたミルク内の粒子の平均サイズとサイズ分布は、上述及び以下に詳細に記載のように、ミー理論とレイリー散乱理論を用いることにより導かれる。また、水又は希釈されたミルク内の粒子により生じる散乱の量の定量的測定値が導かれる。
【0065】
図13は、
図8~12に示すような様々な希釈度のミルクにおいて記録される第1伝達スペクトル51と第2伝達スペクトル53から計算されるいわゆる類似度指数のグラフを示す。
図13において、相対濃度0は純水に対応する一方、相対濃度1は原液、すなわち純粋なミルクの濃度に対応する。
【0066】
第1伝達スペクトル51と第2伝達スペクトル53の類似度は、類似度指数のグラフにおいて、第1伝達スペクトル51と第2伝達スペクトル53がオーバーラップする比率を見つけることにより定量化される。これは、絶対値の変化よりも記録された値の変化の定量化ができるため、それぞれのスペクトルの第1の導関数に基づいて行われる。この計算は、一般的に、以下のようになり、いずれかの特定の実施形態において用いるために制限されない。
それぞれの組の第1伝達スペクトルと第2伝達スペクトルに対して、1次導関数が計算される。
それぞれの組の第1伝達スペクトルと第2伝達スペクトルに対して、計算された1次導関数が第1の導関数曲線と第2の導関数曲線として示される。
所定の波長間隔に対して、第1の導関数曲線と第2の導関数曲線の両方がオーバーラップする領域、すなわち間隔のそれぞれの波長の値に対する最も小さな導関数曲線の領域の合計が計算される。
所定の波長間隔に対して、第1の導関数曲線と第2の導関数曲線の少なくとも一方の共有領域、すなわち間隔のそれぞれの波長の値に対する最も大きな導関数曲線の領域の合計が計算される。
オーバーラップする領域は、所定の波長の間隔の共有領域により分割される。また、所定の波長の間隔に対して、1と0との間の結果の数字を示す。
【0067】
このように、第1伝達スペクトル51と第2伝達スペクトル53を比較することにより、どれほどスペクトルが互いに異なるかが定量化される。また、重要なこととして、液体の散乱の量が定量化される。
【0068】
類似度指数は、600~675nmと675~800nmのスペクトルの2つの間隔60,62に対して示す。この間隔は、異なる共振モードがある波長間隔を示す。モードは、入射光の入射角度の分布に応じて異なるように分かれる。共振モードの間の差を観察することにより、入射光の角度分布を決めることができる。また、このことから、光の前方散乱と細胞濃度を決める。この方法は、減衰から分離される(吸収として呼称される)濃度を決め得る。
【0069】
図15,18,25,28において、実験的に決まる第1伝達スペクトル51と第2伝達スペクトル53から対応して計算された類似度指数のグラフ60,62を示す。
【0070】
図15において、類似度指数のグラフ60,62は、100nmのポリスチレンビード参考試料において記録される第1伝達スペクトル51と第2伝達スペクトル53から計算されている。
【0071】
図18において、類似度指数のグラフ60,62は、600nmのポリスチレンビード参考試料において記録される第1伝達スペクトル51と第2伝達スペクトル53から計算されている。
【0072】
図25において、類似度指数のグラフ60,62は、水中に分散している大腸菌細菌性細胞を有する液体試料において記録される第1伝達スペクトル51と第2伝達スペクトル53から計算されている。
図25の指数のグラフ60,62は、
図21~24に示す第1伝達スペクトル51と第2伝達スペクトル53から計算されている。細胞の濃度は、
図21における純粋な原液の濃度から変わる。また、同じ溶液は、
図22において水により2倍に希釈されて、
図23において水により4倍に希釈されて、
図24において8倍に希釈されている。さらに、同じ大腸菌細菌性細胞は、
図21~24のすべてに記録される伝達スペクトルにおいて、測定される。本発明の方法により、細胞の生体試料に定量的散乱分析と濃度分析を行うことができる。
【0073】
図28において、指数のグラフ60,62は、酵母細胞を有する液体試料において記録されている第1伝達スペクトル51と第2伝達スペクトル53から計算されている。
【0074】
図13,15,18,25,28における類似度指数のグラフ60,62から明らかなように、類似度は、一般的に、相対濃度が増加するにつれて、減少する。これは、より大きな濃度がモードの分割、及び液体内の光の前方散乱を一般的に増加させる方法を示す。適切な機械校正と定量的データ分析のツールを用いることにより、大腸菌細菌性細胞と酵母細胞により実証される粒子の濃度は計算され得る。
【0075】
図25,28は、600~675nmの間隔60に対して計算される類似度要素と675~800nmの間隔62に対して計算される類似度要素との間の差として計算される「差」のグラフ64をさらに備える。これは、サイズ分布及び/又は平均粒子サイズの計算において用いられ得る定量的測定値を与える。
【0076】
図14,16,19,26,29は、すべて、勾配比スペクトルである。いずれかの所定の組の第1伝達スペクトル51と第2伝達スペクトル53に対して、勾配比は、第1伝達スペクトル51の極値55aの間の第1の勾配と、第2伝達スペクトルの極値57aの間の第2の勾配との間の比率として計算される。これは、それぞれの相対濃度に対して繰り替えされる。
【0077】
第1伝達スペクトル51の極値55aの間の第1の勾配と、第2伝達スペクトル53の極値57aの間の第2の勾配とは、共振モード分割の測定の定量的方法である。勾配比は、第1伝達スペクトル51と第2伝達スペクトル53との間の共振モード分割における差を示す。粒子の平均サイズ、及び一部の場合のサイズ分布は、第1伝達スペクトル51と第2伝達スペクトル53における共振モードの分割の比較分析から定量化され得る。
【0078】
図14,16,19,26,29のグラフから明らかなように、勾配比は、一般的に、相対濃度と共に減少する。これは、濃度が増加するにつれて、共振モードが次第に分割することを示す。次第に分割する共振モードは、粒子のより大きな平均サイズ、又はより大きなサイズ分布を示す。
【0079】
これは、より大きな前方散乱をもたらす粒子のより大きな平均サイズ、又はより大きなサイズ分布、及び共振モードにおける分割をもたらす光結晶13における入射光33のより大きな入射角度分布からもたらされる。
【0080】
図14,19,29の勾配比、及び
図15,18,28の類似度指数は、十分に大きな相対濃度に対する一部の定値に向けて飽和するようにみえる。これは、光路33内の光が光学センサの外側障壁を越えて散乱されることを示し得る。例えば
図8,12の第1伝達スペクトル51と第2伝達スペクトル53を比較するとき、この検出器の境界を越えて散乱される光の効果がみられる。第1伝達スペクトル51の極値55a,55bの値は、
図12の相対定期に大きな濃度に対する第2伝達スペクトル53の極値57a,57bの値よりも小さい。この効果は、
図8の相対的に小さな濃度に対する第1伝達スペクトル51と第2伝達スペクトル53に対してかなり小さい。
【0081】
一方、
図18における600nmのポリスチレン粒子の類似度指数に対する値の飽和は、
図15における100nmのポリスチレン粒子の類似度指数よりも小さい。これは、第1伝達スペクトル51と第2伝達スペクトル53の分析に基づいて、粒子サイズの差を定量的に示す。
【0082】
また、類似度指数と勾配比のそれぞれの曲線は、定量的データをもたらす。この定量的データは、比較分析されて、粒子濃度、及び/又は粒子サイズ分布、及び/又は平均粒子サイズの導出をもたらし得る。
【0083】
図17は、純水39、1.5625%(64倍)の体積59となるように水により希釈される100nmのポリスチレンビードの原液、3.125%(32倍)の体積61となるように水により希釈される100nmのポリスチレンビードの原液、6.25%(16倍)の体積63となるように水により希釈される100nmのポリスチレンビードの原液、12.5%(8倍)の体積65となるように水により希釈される100nmのポリスチレンビードの原液、25%(4倍)の体積67となるように水により希釈される100nmのポリスチレンビードの原液、50%(2倍)の体積69となるように水により希釈される100nmのポリスチレンビードの原液、及び51%(1倍)の体積71となるように水により希釈される100nmのポリスチレンビードの原液に対して記録される第3伝達スペクトルから導かれて、記録される減衰スペクトルのグラフを示す。
【0084】
図17は、入射光の波長に比べて相対的に小さな粒子半径による減衰における波長依存性を示す。
【0085】
図20において、対応する減衰スペクトルは、600nmのポリスチレンビードに対して示す。波長依存性は、存在するにも関わらず、600nmのポリスチレンビードに対してあまり重要ではない。
【0086】
大腸菌細菌性細胞と酵母細胞において記録される第3伝達スペクトルから導かれる
図27,30における減衰スペクトルから明らかなように、それぞれ、小さな特性の特徴が、粒子の濃度が変化するにつれて、減衰スペクトルにおいて生じる。一方、第3伝達スペクトルが行うにつれて記録される減衰スペクトルにより、第1スペクトルと第2スペクトルをそれぞれ比較することによって、散乱の特徴から吸収の特徴を分離できる。
【0087】
一般的に、平面波が完全な球形、粒子、又は生体細胞に当たるとき、光の一部は吸収されて、また別の光の一部は散乱される。これらの推移は、様々な粒子サイズのための散乱理論により計算され得る。(ローレンツ-ミーの方法、ローレンツ-ミー-デバイの方法、又はミー散乱として知られている)マクスウェル方程式に対するミーの方法は、均一な球形により電磁平面波の散乱を説明する。この方法は、球状の複数の部分的な波形の無限級数の形をとる。非吸収、部分的吸収、又は完全導電性球により、光散乱を計算することが用いられ得る。
【0088】
定義に関して、遮光効率(散乱又は吸収)は、粒子の幾何学的断面領域に対する遮光(散乱又は吸収)断面の比率である。散乱異方性は、単一の散乱事象の後において保たれる順方向の量の測定値であり、散乱位相関数の平均の余弦に関して定められる一方、粒子に関する遮光効率は散乱効率と吸収効率の合計として定められる。分光光度計により測定される減衰は、遮光効率と、光路の長さ、濃度、及び10を底とするオイラー数の対数の数学定数とを掛けることにより計算され得る。
【0089】
図31~34において、シミュレーションスペクトルが与えられている。
図31~34において、シミュレーションスペクトルを生じるために用いられる実装は、Wiscombes MIEV0コードにより与えられる手順に続いて、Pythonライブラリ「Miepython」である。このシミュレーションフレームワークは、所定の直径の球状粒子の遮光効率、散乱効率、後方散乱非対称性、及び散乱非対称性を計算するために用いられる。シミュレーションスペクトルは、水中のポリスチレンビード用である。光学定数は、出願番号46,3811-3820(2007)の「21.5℃の高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)蒸留水」から得られる。
【0090】
ポリスチレン粒子は、設備の校正を含んで、散乱を含む過程を理解して、且つ数値化するために参照システムに用いられる。したがって、
図31~34に示す結果の基礎となる計算は、N.Sultanova,S.Kasarova,I.NikolovによるActa Physica Polonica A 116,585-587(2009)の「光学ポリマーの分散特性」から得られた表形式光学特性により、ポリスチレン粒子に対して行われる。
【0091】
図31において、10nm~1000nmの範囲の様々な粒子の直径に対する570nm~850nmの間隔の波長に応じて、単一粒子の散乱効率に対するシミュレーション結果を示す。10~1000nmの間のすべての粒子の直径に対して、散乱効率が、可視スペクトル内のより小さな波長に比べて入射光のより大きな長さの波長に対して減少することが分かる。一方、10nm~1000nmの異なる直径に対する結果として得られるスペクトルを比べることにより、粒子の直径が10nmから1000nmまで増加するとき、粒子の可視範囲における散乱効率は約8桁増加することが分かる。これは、粒子サイズと粒子における入射光の散乱との間のより大きな相互関係を示す。
【0092】
図32において、10nm~1000nmの範囲の様々な粒子の直径に対する570nm~850nmの間隔の波長に応じて、単一粒子の吸収効率に対するシミュレーション結果を示す。10~1000nmの間のすべての粒子の直径に対して、吸収効率が、可視スペクトル内のより小さな波長に比べて入射光のより大きな長さの波長に対して減少することが分かる。10nm~1000nmの直径に対する結果として得られるスペクトルを比べることにより、粒子の吸収効率は約3桁未満増加することが分かる。これは、粒子サイズと粒子の光吸収との間の相互関係よりも大きい粒子サイズと粒子の光散乱との間の相互関係を示す。
【0093】
図33において、10nm~1000nmの範囲の様々な粒子の直径に対する570nm~850nmの間隔の波長に応じて、遮光効率の合計の散乱比率に対するシミュレーション結果を示す。
図33において、10~1000nmの間の直径のすべての粒子に対して、遮光効率の合計に対する散乱効率の比率が、570nm~850nmの範囲内のより小さな波長に比べて入射光のより大きな長さの波長に対して減少することが分かる。
図33において、約10nmの直径の小さな粒子に対して、散乱効率が遮光効率の合計の0%に近いことが分かる。これは、約100%の粒子によって悪影響を受ける入射光が吸収されることを示す。
図33において、約100nmの直径の小さな粒子に対して、散乱効率が遮光効率の合計の20%に近いことが分かる。これは、約20%の粒子によって悪影響を受ける入射光が散乱して、約80%の粒子によって悪影響を受ける入射光が吸収されることを示す。
図33において、約600nmの直径の粒子に対して、散乱効率が遮光効率の合計の80%に近いことが分かる。これは、80%に近い粒子によって悪影響を受ける入射光が散乱して、約20%の粒子によって悪影響を受ける入射光が吸収されることを示す。
図33において、1000nmの直径の大きな粒子に対して、散乱効率が遮光効率の合計の80%を上回ることが分かる。これは、80%を上回る粒子によって悪影響を受ける入射光が散乱して、20%未満の粒子によって悪影響を受ける入射光が吸収されることを示す。
図33に示すシミュレーション結果は、粒子又は生体細胞を含む同じ試料の散乱特性と吸収特性の両方を数値化することによって、粒子サイズに関する情報、及び可能であればサイズ分布に関する情報が導かれ得ることを示す。
【0094】
図34において、10nm~1000nmの範囲の様々な粒子の直径に対する570nm~850nmの間隔の波長に応じて、散乱異方性に対するシミュレーション結果を示す。
図34において、10~1000nmの間の直径のすべての粒子に対して、散乱異方性が、570nm~850nmの範囲内のより小さな波長に比べて入射光のより大きな長さの波長に対して減少することが分かる。
図34において、約10nmの直径の小さな粒子に対して、散乱異方性が0%に近いことが分かる。これは、約100%の粒子によって悪影響を受ける入射光が、すべての方向に均一に散乱されること、すなわちレイリー散乱として知られている過程を示す。
図34において、約100nmの直径の小さな粒子に対して、散乱異方性が約10%であることが分かる。
図34において、約600nmの直径の粒子に対して、散乱異方性が80%を上回ることが分かる。
図34において、1000nmの直径の大きな粒子に対して、散乱効率が90%を上回ることが分かる。これは、90%を上回る悪影響を受けた入射光が、単一の散乱の後、前方に向かい続けることを示す。
図33及び
図34に示すシミュレーション結果は、粒子又は生体細胞を含む同じ試料の散乱特性と吸収特性の両方を測定することによって、サイズに関する情報、及び可能であればサイズ分布に関する情報が導かれ得ることを示す。
【0095】
図36は、
図21~24において示すと共に、大腸菌細菌性細胞の相対濃度に応じて示す第1伝達スペクトル51と第2伝達スペクトル53のそれぞれから計算されるピーク幅のグラフである。それぞれのスペクトルに対して、第1スペクトル51のピーク幅66は、
図35における例示的な第1スペクトル51の線68により示す波長の差として計算される。また、第2スペクトル53のピーク幅70は、
図35における例示的な第2スペクトル53の線72により示す波長の差として計算される。
図36から明らかなように、ピーク幅66は濃度に応じて第1スペクトル51に対して変化する一方、ピーク幅70は濃度に応じて第2スペクトル53の定値に近くなる。これは、第1伝達スペクトル51と第2伝達スペクトル53の比較分析から導かれる濃度依存性の別の実施例を提供する。
【0096】
材料を通る伝達放射力の減衰は、吸収の合計、すなわち存在する場合、散乱と発光による損失として定められ得る。以下のように、試料物質又は試料物質の成分があまり発光性でないことを仮定する。
【0097】
UV-Vis分光光度計は、減衰を測定するために用いられ得る。この機器を用いるため、溶液は、小さなキュベットに配置されて、容器に入れられる。機器は、コンピュータを通して制御される。また、機器は、「ブランク」であるとき、減衰スペクトルとして知られている波長に対して示す減衰を自動的に表示する。
【0098】
純粋な吸収性試料の場合、減衰は吸収と等しくなる。また、溶液のスペクトルは、溶液内の被検物質の濃度を決めるために有用であり、例えば該当する場合、一部の濃度に対してランベルト・ベールの法則を用いる。
【0099】
純粋な散乱性試料の場合、(この場合、光学的密度と呼称される)減衰は、散乱による損失を測定する。溶液のスペクトルは、濃度を決めるために有用であり、濃度範囲内で有効な標準的な曲線に基づく。濃度を計算することに加えて、入射波長と同じ桁数の粒子サイズに対して、スペクトルは曲率又は特徴を示し得る。この曲率又は特徴により、平均粒子サイズ、又は一部の場合、粒子分布の定量化を決めることができる。一方、入射波長に関して小さい又は大きな粒子の直径に対して、減衰スペクトルにおけるサイズに応じる曲率又は特徴の欠如により、濃度とサイズ分布の両方に適合することが難しい。Agilent 7010と他の粒子サイズの分光測光法機器は、可視範囲よりも大きな波長の範囲、例えば190nm~1100nmの波長を用いることによって、濃度とサイズ分布の両方を補う。専用機器であっても、両方のパラメータは、よくても、大きな不確実性により決められる。
【0100】
無視できない量の散乱性媒体と吸収性媒体の両方が試料内に混合されている場合、分光光度計又は同等の光学機器により測定される試料の減衰は、散乱の寄与と吸収の寄与の合計(及び散乱の寄与と吸収の寄与の合計から導かれる任意の2次高濃度現象)に達する。この場合、吸収計算モデル又は散乱計算モデルのいずれかに基づく従来の方法は完全に機能しなくなる。減衰スペクトルにおいて利用できる情報は、吸収による損失と散乱による損失との間において、適切に識別できない。したがって、濃度と粒子サイズは決められない。光の入射波長と比べられる大きな粒子の場合、減衰スペクトルが実質的に平坦であり、測定された吸収減衰値が吸収と散乱の両方からの損失に基づくため、粒子サイズが生体細胞を含む散乱成分として知られていたとしても、濃度は決められない。
【0101】
これに関して発明の有用性を示すため、
図37~46は、異なる量のブリリアントブルーの着色剤と散乱性酵母細胞を混合することにより行われる実験からデータを示す。ブリリアントブルーの着色剤は、628nmにおける吸収と共に、ほぼ独占的に吸収する。酵母細胞は、可視範囲内の波長よりも著しく大きい光散乱である。
【0102】
図37~46に示すデータは、1つのキュベットの内側に固定されている光結晶と共に、正方形の透明なキュベット内の液体試料の減衰を測定して、本発明の実施形態に記載の第1伝達スペクトル、第2伝達スペクトル、及び第3伝達スペクトルを得るための3つの構造のキュベットを回転させることにより、分光光度計UV-1800において記録されている。したがって、3つの持続的に異なるスペクトルは、以下の課題の試料に対して記録されている。
1. 「_Light2」と付けられている記録試料スペクトル。入射光は、光学検出器により最終的に収集されるように、光学フィルタと試料(第2伝達スペクトル53)を通過する。
2. 「_Light1」と付けられている記録試料スペクトル。入射光は、光学検出器により最終的に収集されるように、光学フィルタと試料(第1伝達スペクトル51)を通過する。
3. 「_Light0」と付けられている記録試料スペクトル。入射光は、光学検出器により最終的に収集されるように、試料(第3伝達スペクトル54)を通過する。この記録試料スペクトルは、従来の透明なキュベットを用いて測定されるスペクトルと等しい。
【0103】
「スペクトルデータセット」としてのこれらの実験的条件の下で、スペクトルデータの収集を参照する。
【0104】
図37において、水中に浮遊している酵母細胞において記録されるスペクトルデータセットに対して、1を単位とする透過率における550nm~800nmの入射波長に対する減衰スペクトルを示す。「_Light0」のスペクトルは、約0.75の実質的に平坦なスペクトルを明らかに示す。「_Light2」と「_Light1」のスペクトル形状を比較することにより、酵母細胞が入射光を大きく散乱することを示す差を見ることができる。
【0105】
図38において、水中に浮遊している酵母細胞とブリリアントブルーの溶液との1:1の混合物において記録されるスペクトルデータセットに対して、1を単位とする透過率における550nm~800nmの入射波長に対する減衰スペクトルを示す。「_Light0」のスペクトルは、減衰の広い背景において、約628nmの大きな吸収を明らかに示す。「_Light2」と「_Light1」のスペクトル形状を比較することにより、入射光の散乱を示す一方、
図37よりも非常に小さな範囲の差を見ることができる。
【0106】
図39において、水中に浮遊している酵母細胞とブリリアントブルーの溶液との1:3の混合物において記録されるスペクトルデータセットに対して、1を単位とする透過率における550nm~800nmの入射波長に対する減衰スペクトルを示す。最大で約0.8を有する「_Light0」のスペクトルは、
図38に示すよりも小さい減衰の広い背景において、約628nmの吸収を明らかに示す。「_Light2」と「_Light1」のスペクトル形状を比較することにより、入射光の散乱を示す一方、
図37よりも非常に小さな範囲の差を見ることができる。
【0107】
図40において、水中に浮遊している酵母細胞とブリリアントブルーの溶液との1:5の混合物において記録されるスペクトルデータセットに対して、1を単位とする透過率における550nm~800nmの入射波長に対する減衰スペクトルを示す。最大で約0.8を有する「_Light0」のスペクトルは、
図38と
図39に示すよりも小さい減衰の広い背景において、約628nmの吸収を明らかに示す。「_Light2」と「_Light1」のスペクトル形状を比較することにより、入射光の散乱を示す一方、
図37~39よりも非常に小さな範囲の差を見ることができる。
【0108】
図41において、ブリリアントブルーの溶液において記録されるスペクトルデータセットに対して、1を単位とする透過率における550nm~800nmの入射波長に対する減衰スペクトルを示す。最大で約0.85を有する「_Light0」のスペクトルは、
図38と
図39に示すよりも小さい減衰の広い背景において、約628nmの吸収を明らかに示す。「_Light2」と「_Light1」のスペクトル形状を比較することにより、入射光の散乱を示す一方、
図37~40よりも小さな範囲の差を見ることができる。これは、ブリリアントブルーの着色剤が僅かに光を散乱することを示す。
【0109】
図42において、水中に浮遊している酵母細胞において記録されるスペクトルデータセットに対して、1を単位とする透過率における550nm~800nmの入射波長と共に、「_Light0」を除いた「_Light2」と「_Light1」に対する減衰スペクトルを示す。「_Light0」のスペクトルを除いて、「_Light2」と「_Light1」のスペクトルを比較することにより、試料散乱が定量化され得る。
【0110】
図43において、水中に浮遊している酵母細胞とブリリアントブルーの溶液との1:1の混合物において記録されるスペクトルデータセットに対して、1を単位とする透過率における550nm~800nmの入射波長と共に、「_Light0」を除いた「_Light2」と「_Light1」に対する減衰スペクトルを示す。「_Light0」のスペクトルを除いて、「_Light2」と「_Light1」のスペクトルを比較することにより、試料に存在するブリリアントブルーの着色剤からの吸収による影響を受けることなく、試料散乱が定量化され得る。
【0111】
図44において、水中に浮遊している酵母細胞とブリリアントブルーの溶液との1:3の混合物において記録されるスペクトルデータセットに対して、1を単位とする透過率における550nm~800nmの入射波長と共に、「_Light0」を除いた「_Light2」と「_Light1」に対する減衰スペクトルを示す。「_Light0」のスペクトルを除いた後、「_Light2」と「_Light1」のスペクトルを比較することにより、試料に存在するブリリアントブルーの着色剤からの吸収による影響を受けることなく、試料散乱が定量化され得る。
【0112】
図45において、水中に浮遊している酵母細胞とブリリアントブルーの溶液との1:5の混合物において記録されるスペクトルデータセットに対して、1を単位とする透過率における550nm~800nmの入射波長と共に、「_Light0」を除いた「_Light2」と「_Light1」に対する減衰スペクトルを示す。「_Light0」のスペクトルを除いた後、「_Light2」と「_Light1」のスペクトルを比較することにより、試料に存在するブリリアントブルーの着色剤からの吸収による影響を受けることなく、試料散乱が定量化され得る。
【0113】
図46において、ブリリアントブルーの溶液において記録されるスペクトルデータセットに対して、1を単位とする透過率における550nm~800nmの入射波長と共に、「_Light0」を除いた「_Light2」と「_Light1」に対する減衰スペクトルを示す。「_Light0」のスペクトルを除いた後、「_Light2」と「_Light1」のスペクトルを比較することにより、試料に存在するブリリアントブルーの着色剤からの吸収による影響を受けることなく、試料散乱が定量化され得る。散乱におけるスペクトル情報は、ブリリアントブルーの着色剤からの大きな吸収による影響を受けない。
【0114】
したがって、
図37~46は、例えばキュベット方式と従来の分光光度計において、本発明を用いることにより、散乱による損失と吸収による損失との間において区別できるスペクトル情報が得られることを示す。適切なデータ処理により、吸収と散乱の光学モデルは、広い範囲の試料に対して、従来の分光光度計において数値化できない濃度とサイズの両方を決めることをもたらすように組み合わされ得る。
【0115】
図37~46におけるデータはまた、この方法が、溶液内の異なる種類の粒子、例えば溶液内の異なる種類の細胞を区別するために用いられ得ることを示す。
【国際調査報告】