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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(54)【発明の名称】TCR遺伝子の単離方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20220914BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20220914BHJP
   C40B 40/08 20060101ALI20220914BHJP
   C40B 40/10 20060101ALI20220914BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20220914BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20220914BHJP
   C12N 5/0781 20100101ALI20220914BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20220914BHJP
   C12N 5/0784 20100101ALI20220914BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220914BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20220914BHJP
   C40B 50/06 20060101ALI20220914BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220914BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220914BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220914BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20220914BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220914BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220914BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220914BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220914BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220914BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220914BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20220914BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20220914BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20220914BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20220914BHJP
   C07K 14/57 20060101ALN20220914BHJP
   C07K 14/55 20060101ALN20220914BHJP
   C07K 14/525 20060101ALN20220914BHJP
   C07K 14/53 20060101ALN20220914BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20220914BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALN20220914BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20220914BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K14/725 ZNA
C40B40/08
C40B40/10
C12Q1/6869 Z
C12N5/0783
C12N5/0781
C12N15/62 Z
C12N5/0784
C12N5/10
C12N15/10 100Z
C40B50/06
A61P35/00
A61K35/17 Z
A61P43/00 121
A61P37/00
A61P37/06
A61P31/00
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K47/68
A61K48/00
G01N33/53 Y
C12P21/02 C
C12Q1/02
C12Q1/686 Z
C07K16/28
C07K14/57
C07K14/55
C07K14/525
C07K14/53
C07K19/00
C12Q1/6876 Z
C12N15/09 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502277
(86)(22)【出願日】2020-07-13
(85)【翻訳文提出日】2022-03-08
(86)【国際出願番号】 US2020041824
(87)【国際公開番号】W WO2021011482
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】62/874,125
(32)【優先日】2019-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/975,924
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/024,341
(32)【優先日】2020-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/034,157
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/039,346
(32)【優先日】2020-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522014792
【氏名又は名称】ネオジン セラピューティクス ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140501
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 栄一郎
(72)【発明者】
【氏名】アントニウス ニコラス マリア シューマッハ
(72)【発明者】
【氏名】カーステン リンネマン
(72)【発明者】
【氏名】トマス クイルマン
(72)【発明者】
【氏名】ギャビン エム. ベンドル
(72)【発明者】
【氏名】ジュール エフ.シー. ガディオット
(72)【発明者】
【氏名】イェルン ダブリュ.ジェイ. ファン ヘイスト
(72)【発明者】
【氏名】ラクエル ゴメス‐エーラント
(72)【発明者】
【氏名】デボラ ソフィー シュリッケマ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA12
4B063QA13
4B063QA19
4B063QA20
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR55
4B063QR62
4B063QR73
4B063QR77
4B063QS25
4B063QS34
4B064AE63
4B064AG20
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BD50
4B065CA24
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC03
4C076CC27
4C076CC31
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA13
4C084NA05
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB011
4C084ZB081
4C084ZB261
4C084ZB311
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB12
4C085BB50
4C085CC03
4C085CC31
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087CA04
4C087CA05
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZB01
4C087ZB08
4C087ZB26
4C087ZB31
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA61
4H045CA40
4H045DA04
4H045DA12
4H045DA18
4H045DA22
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、T細胞受容体(TCR)のレパトアを回収する方法を提供する。いくつかの態様において、TCRレパトアは、非生存性試料から回収される。いくつかの態様では、TCRaβ対のライブラリーが作製される。いくつかの態様において、開示される方法は、癌の免疫療法または診断の目的で使用される。本明細書に記載されるいくつかの態様は、核酸のコンビナトリアルライブラリーに由来するT細胞受容体α(TCRα)鎖およびTCRβ鎖をコードするヌクレオチド配列を同定する方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多様なT細胞集団からT細胞受容体(TCR)のレパトアを回収するための方法であって、前記方法が、
対象の試料に含まれるTCRαおよびTCRβのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を決定すること、
前記レパトア全体から、TCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列のサブセットを1つ以上選択すること、
TCRαβ対のライブラリーを形成する選択したTCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列のコンビナトリアルペアリングによって、TCRレパトアを作製すること、ならびに、
作製した前記TCRレパトアから、所望の特徴を有するTCRαとβの対を少なくとも1つ同定すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記レパトア全体に由来するTCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列の前記1つ以上のサブセットが、
前記T細胞集団中での頻度に基づいて、
第二のT細胞集団との比較における相対的な濃縮度に基づいて、
所与のTCR鎖と比較して、DNAおよびRNAのコピー数が異なることに基づいて、
前記TCR鎖の生物学的特性であって、ここで前記特性が、(予測される)抗原特異性、(予測される)HLA拘束性、抗原親和性、共受容体依存性、または親T細胞系列(例えば、CD4もしくはCD8T細胞)またはTCR配列モチーフのうちの少なくとも1つから選択される、前記TCR鎖の生物学的特性に基づいて、
遺伝子発現の空間的パターンであって、ここで前記空間的な遺伝子の発現パターンが、組織内の起源領域または他の遺伝子の共発現パターンのうちの少なくとも1つに由来する、前記遺伝子発現の空間的パターンに基づいて、
例えば複数の腫瘍病変において出現しているなど、複数の試料において同様の頻度で共出現または出現していることに基づいて、
前記TCRレパトアの特定の部分を別々に回収するための複数の群への選択に基づいて、
異なる態様で定義したような複数の基準の組み合わせに基づいて、
のうちの少なくとも1つの基準に基づいて選択される、請求項1の方法。
【請求項3】
前記T細胞集団中での頻度に基づく選択が、TCRα鎖およびTCRβ鎖についての個別の順位またはTCRα鎖とTCRβ鎖を組み合わせた場合の順位を作成するために使用される、TCR配列の前記頻度のデータに基づくものである、請求項2の方法。
【請求項4】
TCRレパトアの回収に関して望まれる深度で定義され、頻度に基づいてTCRα鎖およびTCRβ鎖のコレクションを選択するために用いられる頻度閾値を決定することをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
TCRαおよびTCRβの配列を決定することが、
多重PCR、
標的濃縮によるTCR配列の回収、
5'RACEとPCRによるTCR配列の回収、
空間的配列決定によるTCR配列の回収、
RNA配列よるTCR配列の回収、および
固有の分子識別子(UMI)の利用、
のうちの少なくとも1つによって達成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
回収されたTCR鎖の配列が、完全なTCR鎖配列を組み立てるためのヌクレオチド配列アライメントに基づいて少なくとも1つのTCR-Vセグメントファミリーおよび少なくとも1つのTCR-Jセグメントファミリーを選択するのに十分な5'および3'のヌクレオチド配列情報とともに、CDR3ヌクレオチド配列と定義される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
TCRαβ対のライブラリーを作製する選択されたTCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列のコンビナトリアルペアリングによってTCRレパトアを作製する方法であって、
TCR鎖配列を使用して、TCRα鎖およびTCRβ鎖のDNAまたはRNA断片の別々のライブラリーを合成し、その後、正確に1つずつのTCRα鎖とβ鎖が連結した1つのDNAまたはRNA断片に連結すること;
TCRα鎖およびTCRβ鎖の組み合わせを、正確に1つずつのTCRα鎖とβ鎖が連結したDNA断片またはRNA断片を直接合成することによって生成すること;
TCRα鎖およびTCRβ鎖の組み合わせを、細胞が少なくとも1つのTCRα鎖と1つのTCRβ鎖を発現するように、TCRα遺伝子およびTCRβ遺伝子の別々のコレクションで細胞プールを修飾することによって、細胞内で作製すること;および/または、
TCRα鎖およびTCRβ鎖の組み合わせを一本鎖TCR構築物に連結すること、ここで、この一本鎖TCR構築物にはTCRαおよびTCRβ両方の可変鎖断片が融合されていて、かつ、(i)膜貫通ドメインのみ、または(ii)CD3εもしくはCD3ζシグナルドメインを単独でまたはCD28シグナルドメインとの組み合わせを含むがこれに限らない付加的な細胞内シグナル伝達ドメインと融合されている、
のうちの少なくとも1つによって、達成される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記作製されたTCRレパトアから所望の特徴を有するTCRαβ対を少なくとも1つ同定する方法であって、
生成されたTCRαβ対の前記ライブラリーで修飾されたレポーター細胞のプールを少なくとも1つの目的の抗原を提示する抗原提示細胞によって刺激し、TCR単離用の少なくとも1つの活性化マーカーに基づいて抗原反応性のレポーター細胞またはT細胞を単離すること;
生成されたTCRαβ対の前記ライブラリーで修飾されたレポーター細胞のプールを細胞増殖を追跡するのに適した蛍光色素で標識し、少なくとも1つの目的の抗原を発現する抗原提示細胞によって刺激し、TCR単離用の増殖性に基づいて抗原反応性のレポーター細胞を単離すること;
生成されたTCRαβ対の前記ライブラリーで修飾されたレポーター細胞のプールを少なくとも2つの試料に分け、試料を少なくとも1つの目的の抗原を発現しているかまたは発現していない抗原提示細胞によって刺激し、刺激後、両方のレポーター細胞集団を一定期間インキュベートし、次いで、両方のレポーター細胞集団をTCR分離によって分析し、両方の試料から得られたTCRαβ対を比較することで、少なくとも1つの抗原に暴露された前記試料においてより豊富に含まれているTCR遺伝子を特定すること;
生成されたTCRαβ対の前記ライブラリーで修飾されたレポーター細胞のプールを少なくとも1つの目的の抗原を提示する抗原提示細胞によって刺激し、TCRの誘発を示す少なくとも1つのレポーター遺伝子、例えばNFAT-GFPまたはNFAT-YFPに基づいて、抗原反応性レポーター細胞を単離すること;
生成されたTCRαβ対の前記ライブラリーで修飾されたレポーター細胞のプールを少なくとも1つの目的の抗原を提示する抗原提示細胞によって刺激し、抗原反応性レポーター細胞を、TCRのシグナル伝達に際して獲得される抗生物質耐性を含むがこれには限定されない選択的生存に基づく抗原特異的レポーター細胞の選択に基づいて、例えばNFAT-ピューロマイシン導入遺伝子の使用によって、TCR単離用に単離すること;
生成されたTCRαβ対の前記ライブラリーで修飾されたレポーター細胞のプールを目的の抗原を担持する1つ以上のMHC複合体に曝露し、TCR単離用に、MHC複合体に結合したレポーター細胞またはT細胞を単離すること;
生成されたTCRαβ対の前記ライブラリーで修飾されたレポーター細胞のプールを少なくとも1つの目的の抗原を発現する抗原提示細胞によって刺激し、その後、単一細胞の使用に基づくドロップレットPCRまたは微少流体的手法を使用して目的のTCRαβ対を同定し、TCR単離と少なくとも1つの活性化マーカーの転写レベルでの検出とを組み合わせ、それにより、TCRαβの転写物が活性化マーカーのレベルの上昇と共発現する前記T細胞のプールに含まれる単一のレポーター細胞を検出すること;
のうちの少なくとも1つによって達成される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記対象の試料が非生存性出発材料を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記同定したTCRレパトアの特定の部分が回収される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
抗原特異的TCR配列が回収される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
クラスIおよび/またはクラスII拘束性TCR配列が回収される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、
新生抗原特異的TCR配列、
ウイルス特異的TCR配列、
共有腫瘍抗原特異的TCR配列、
自己抗原特異的TCR配列、
の少なくとも1つが回収される、方法。
【請求項14】
前記新生抗原特異的TCR配列を発現するT細胞を癌治療として投与するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が診断のための方法である、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記診断が、感染症または自己免疫疾患の病的部位からTCRレパトアを回収することである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記方法が、BCR/抗体レパトアの回収のための方法である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記TCRαおよびβのヌクレオチド配列を含む核酸を対象から単離することをさらに含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記活性化マーカーが、CD25、CD69、CD62L、CD137、IFN-γ、IL-2、TNF-α、GM-CSF、OX40からなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項20】
DNAおよびRNAの単離が、異なる細胞型の混合物であるT細胞集団または組織試料(血液または腫瘍組織など)の一部に由来する、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記対象の試料が体液から単離された細胞を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記細胞が腫瘍特異的T細胞または腫瘍浸潤リンパ球である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記体液が、血液、尿、血清、漿液、血漿、リンパ液、脳脊髄液、唾液、喀痰、粘膜分泌物、膣液、腹水、胸水、心嚢液、腹膜液、および腹腔液からなる群より選択される、請求項20~21に記載の方法。
【請求項24】
前記TCRαβ鎖配列を使用して、癌、免疫学的障害、自己免疫疾患、または感染症に罹患している対象を治療することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記作製したTCRレパトアから、所望の特徴を有するTCRαとβの対を少なくとも1つ同定する方法であって、
少なくとも1つの活性化マーカーに基づく同定または選択;
抗原に応答した増殖に基づく同定または選択;
非刺激細胞と比較して抗原刺激細胞においてより豊富に含まれているTCR遺伝子を同定することに基づく同定または選択;
TCRの誘発によるレポーター遺伝子の活性化に基づく同定または選択;
TCRのシグナル伝達に際して獲得される抗生物質耐性を含むがこれに限定されない、選択的生存に基づく同定または選択;
1つ以上のMHC複合体への結合に基づく同定または選択;
単一細胞の使用に基づくドロップレットPCRまたは微少流体技術を用いた同定または選択;あるいは
これらの任意の組み合わせ;
のうちの少なくとも1つによって達成される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
TCR単離が、抗原反応性T細胞のTCRαβ遺伝子配列を決定するためにDNA配列決定もしくはRNA配列決定によって分析されるTCRαβ特異的PCR産物を生成するために、バルクの抗原反応性T細胞からDNAもしくはRNAを単離すること;または、分析した単一のT細胞において発現する前記TCRαβ遺伝子の配列を分析するための単一細胞の使用に基づくドロップレットPCRもしくは微少流体技術、によって達成される、請求項8に記載の方法。
【請求項27】
前記レポーター細胞がT細胞である、請求項8に記載の方法。
【請求項28】
単一細胞の使用に基づくドロップレットPCRまたは微少流体技術を用いた同定または選択が、活性化関連遺伝子の共発現を決定することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
複数のT細胞ライブラリーを作製する方法であって、前記方法が、請求項1の方法に従ってT細胞受容体(TCR)のレパトアを回収すること;前記TCRレパトアの特定の部分を別々に回収するために、前記レパトア全体からTCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列を複数の群に選択すること;を含み、ここで複数のT細胞ライブラリーが、より複雑度が小さい、または前記TCRレパトアの特定の部分を回収するものとして作製される、方法。
【請求項30】
TCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列の選択が頻度範囲に基づく、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
核酸のコンビナトリアルライブラリーからヌクレオチド配列を同定する方法であって、
複数のバリアント核酸を含むライブラリーを提供すること、前記複数のバリアント核酸はそれぞれ少なくとも600bpの連続部分を含み、ここで前記連続部分は、2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列の組合せを含み、ここで前記2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列のうちの第一のバリアントヌクレオチド部分配列は前記連続部分の第一の末端を規定し、前記2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列のうちの第二のバリアントヌクレオチド部分配列は前記第一の末端とは反対側にある前記連続部分の第二の末端を規定し;
前記複数のバリアント核酸のメンバーによってコードされる1つ以上のポリペプチドを発現するように構成された細胞の集団に、前記ライブラリーを導入すること;
前記2つ以上のバリアント核酸部分配列の前記組み合わせに依存する少なくとも1つの機能的特性に基づいて、前記細胞集団の亜集団を選択すること、ここで前記亜集団は複数の細胞を含み;
前記亜集団から前記複数のバリアント核酸のサブセットを単離すること;
前記サブセットの個別のメンバーの前記連続部分のヌクレオチド配列を決定すること;ならびに、
前記ヌクレオチド配列に基づいて、前記2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列の組み合わせを少なくとも1つ同定すること;
を含む、方法。
【請求項32】
前記1つ以上のポリペプチドが、
T細胞受容体α(TCRα)鎖およびTCRβ鎖;
キメラ抗原受容体(CAR);
スイッチレセプター;または
抗体もしくはその抗原結合断片の1本以上の鎖、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記第一のバリアントヌクレオチド部分配列がTCRαバリアントアミノ酸配列をコードし、前記第二のバリアントヌクレオチド部分配列がTCRβバリアントアミノ酸配列をコードする、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列が、TCRV領域;TCR相補性決定領域3(CDR3);TCR-Jセグメント;およびTCR定常領域;のうちの1つ以上をコードしている、請求項31~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列がそれぞれ、CARの抗原結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、または1つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインをコードしている、請求項31または32に記載の方法。
【請求項36】
前記連続部分が600bp~15,000bpの長さである、請求項31~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
提供することが、前記ライブラリーを生成することを含む、請求項31~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記ライブラリーを生成する方法であって、
前記1つ以上のポリペプチドの2以上のバリアントアミノ酸配列のセットをコードする、2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列のセットを同定すること、ここで、前記少なくとも1つの機能的特性は、前記2つ以上のバリアントアミノ酸配列のセットのそれぞれに由来するバリアントアミノ酸配列の組み合わせに依存し;および
前記2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列のセットのそれぞれに由来するバリアントヌクレオチド部分配列を組み合わせることで前記連続部分を組み立て、それによって前記複数のバリアント核酸の前記メンバーを生成すること、
を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記ライブラリーに含まれる前記複数のバリアント核酸の連続部分間の編集距離が最大化される、請求項31~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記ライブラリーが、前記2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列の少なくとも100の異なる組み合わせを含む、請求項31~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
導入することが、ウイルス導入、トランスポゾン媒介性遺伝子送達、またはヌクレアーゼ媒介性部位特異的統合を介して前記ライブラリーを導入することを含む、請求項31~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
導入することが、5以下の感染多重度(MOI)で前記細胞の集団をウイルス導入することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記ライブラリーに含まれる前記2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列の異なる組み合わせの数に基づいて、前記細胞の集団の大きさを調整することを含む、請求項31~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記細胞の集団が不死化T細胞または初代T細胞を含む、請求項31~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記不死化T細胞または初代T細胞がヒトT細胞である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記複数のバリアント核酸の少なくとも1つを発現する前記細胞の集団に含まれる細胞を選択またはスクリーニングするためにマーカーを使用することをさらに含む、請求項31~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記マーカーが、細胞毒耐性マーカーおよび/または細胞表面マーカーである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記細胞集団の細胞が、遺伝的に修飾されている、請求項31~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記集団の細胞が、前記少なくとも1つの機能的特性を前記細胞に付与する内因性ポリペプチドを含まない、請求項31~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記細胞が、CD4、CD8およびCD28のうちの1つ以上の発現を排除または低減させるように遺伝的に修飾される、請求項1~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記細胞が、CD4および/またはCD8と共に再構成され、クラスIおよび/またはクラスII拘束性TCR配列のスクリーニングに利用される、請求項48または49に記載の方法。
【請求項52】
前記細胞がT細胞である、請求項50または51に記載の方法。
【請求項53】
選択することが、検出可能なマーカーの発現に基づいて前記亜集団を選択することを含み、ここで前記発現が、前記1つ以上のポリペプチドの前記少なくとも1つの機能的特性に依存する、請求項31~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記検出可能なマーカーが、細胞表面マーカー、サイトカインマーカー、細胞増殖マーカー、転写レポーター、シグナル伝達レポーター、および/または細胞毒性レポーターを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
請求項54に記載の方法であって、ここで、
前記細胞表面マーカーが、CD25、CD69、CD62L、CD137、OX40のうちの1つ以上を含み;
前記サイトカインマーカーが、IFN-γ、IL-2、TNF-α、IL-8、GM-CSFのうちの1つ以上を含み;
前記転写レポーターが、NF-κB、NFAT、AP-1のうちの1つ以上を含み;
前記シグナル伝達レポーターが、ZAP70、ERK1/2のうちの1つ以上を含み;および
前記細胞毒性レポーターが、CD107A、CD107Bのうちの1つ以上を含む、
方法。
【請求項56】
選択することが、前記細胞の集団を、
第二の集団;
前記1つ以上のポリペプチドのリガンド;
前記1つ以上のポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニスト;および
小分子;
のうちの1つ以上と接触させることを含み、
ここで前記接触によって誘発される前記亜集団の変化が、前記1つ以上のポリペプチドの前記少なくとも1つの機能的特性に依存する、
請求項31~55のいずれか1つに記載の方法。
【請求項57】
選択することがさらに、
前記変化の有無および/または前記変化の大きさを検出すること;ならびに
前記検出に基づいて、前記亜集団を選択すること、
を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記細胞の第二の集団が抗原提示細胞を含む、請求項56または57に記載の方法。
【請求項59】
前記抗原提示細胞が、B細胞および/または樹状細胞を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記細胞の第二の集団が、初代細胞または不死化細胞を含む、請求項56~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記ライブラリーのバリアントヌクレオチド配列が、前記バリアントヌクレオチド部分配列によってコードされるアミノ酸を含むバリアントポリペプチドを発現する細胞に由来し、前記細胞が対象から得られ、および前記細胞の第二の集団が前記対象から得られる、請求項56~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
選択することが、閾値を超えるまたは下回る前記少なくとも1つの機能的特性の測定に基づいて、前記細胞の集団の第一の亜集団を選択することを含む、請求項31~61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記閾値が、前記細胞の集団の未選択の亜集団における前記機能的特性の測定に基づいて決定される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
選択することが、第二の閾値を超えるまたは下回る前記少なくとも1つの機能的特性の第二の測定値に基づいて前記細胞の集団の第二の亜集団を選択することをさらに含み、ここで、前記第一および第二の亜集団が重複していない、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記少なくとも1つの組み合せを特定することが、前記第一および第二の亜集団の間で前記少なくとも1つの組み合せの存在量を比較することを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記少なくとも1つの組み合せを同定することが、細胞の対照集団と比較して、前記亜集団における前記少なくとも1つの組み合せの濃縮度を測定することを含む、請求項31~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記細胞の集団が、前記細胞の対照集団を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記細胞の亜集団と対照集団が重複しておらず、ここで重複していないとは、両集団中の前記細胞が異なる活性化状態にあるが、同じバリアント核酸を担持することができることを表す、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記細胞の対照集団が、前記少なくとも1つの機能的特性とは異なる第二の機能的特性に基づいて選択される、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
前記亜集団が複数の細胞を含む、請求項31~69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
前記単離することが、前記少なくとも1つの機能的特性に基づいて、前記亜集団の単一クローンを単離することを含まない、請求項31~70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記亜集団が少なくとも1,000の細胞を含む、請求項31~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
決定することが、前記連続部分の少なくとも600bpの配列決定リードを生成することによって、前記個別のメンバーについて配列決定することを含む、請求項31~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記配列決定リードが600bp~15,000bpの長さである、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
決定することが、前記個別のメンバーの少なくとも前記連続部分を増幅することを含む、請求項31~74のいずれか1つに記載の方法。
【請求項76】
増幅することが、不変ヌクレオチド部分配列にハイブリダイズする増幅プライマーを使用することを含み、ここで前記複数のバリアント核酸はそれぞれ、前記不変ヌクレオチド部分配列を含み、およびここで、前記不変ヌクレオチド部分配列は、前記1つ以上のポリペプチドの不変アミノ酸配列をコードしている、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記1つ以上のポリペプチドが、TCRα鎖およびTCRβ鎖を含み、ここで前記不変アミノ酸配列がTCRα定常領域を含む、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記1つ以上のポリペプチドが、TCRα鎖およびTCRβ鎖を含み、ここで前記不変アミノ酸配列がTCRβ定常領域を含む、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
前記単離することが、前記亜集団由来のゲノムDNAのCRISPR/Cas9媒介性標的断片化を使用することを含む、請求項31~78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記決定することが、前記個別のメンバーを増幅する前または前記個別のメンバーを増幅することなく、前記連続部分の前記ヌクレオチド配列のそれぞれについて、少なくとも10の平均カバー数を得ることを含む、請求項31~78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
前記決定することが、前記連続部分の前記ヌクレオチド配列のそれぞれについて、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500または少なくとも1,000の平均カバー数を得ることを含む、請求項31~80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
核酸のコンビナトリアルライブラリーからT細胞受容体α(TCRα)鎖およびTCRβ鎖をコードするヌクレオチド配列を同定する方法であって、
複数のバリアント核酸を含むライブラリーを提供すること、前記複数のバリアント核酸はそれぞれ少なくとも600bpの連続部分を含み、
ここで前記連続部分は、TCRαのバリアントアミノ酸配列をコードしていて、かつ、前記連続部分の第一の末端を規定する第一のバリアントヌクレオチド部分配列と
TCRβのバリアントアミノ酸配列をコードしていて、かつ、前記第一の末端とは反対側にある前記連続部分の第二の末端を規定する第二のバリアントヌクレオチド部分配列
の組み合わせを含み;
前記複数のバリアント核酸のメンバーによってコードされるTCRα鎖およびTCRβ鎖を発現するように構成された不死化T細胞の集団に、前記ライブラリーを導入すること;
前記不死化T細胞と抗原を発現している不死化B細胞との接触に応答して閾値を超えるT細胞活性化マーカーの発現に基づいて、前記不死化T細胞の集団の亜集団を選択すること、ここで前記亜集団は複数のT細胞を含み;
前記亜集団から前記複数のバリアント核酸のサブセットを単離すること;
前記サブセットの個々のメンバーの前記連続部分のヌクレオチド配列を決定すること;および、
前記サブセットの前記ヌクレオチド配列に含まれる前記少なくとも1つの組み合わせの対照との比較における濃縮度に基づいて、前記第一と第二のバリアントヌクレオチド部分配列の組み合わせを少なくとも1つ同定すること、
を含む、方法。
【請求項83】
請求項82に記載の方法であって、
前記不死化T細胞と前記不死化B細胞との接触に応答して第二の閾値を下回る前記T細胞活性化マーカーの前記発現に基づいて、前記不死化T細胞の集団の第二の亜集団を選択すること、ここで前記第二の亜集団は第二の複数のT細胞を含み、前記亜集団と第二の亜集団は重複しておらず;
前記第二の亜集団から前記複数のバリアント核酸の第二のサブセットを単離すること;および、
前記第二のサブセットの個別のメンバーの前記連続部分の第二のヌクレオチド配列を決定すること、
ここで、前記少なくとも1つの組み合わせは、前記第二のサブセットの前記第二のヌクレオチド配列における前記少なくとも1つの組み合わせと比較して、前記サブセット中の前記少なくとも1つの組み合わせの濃縮度に基づいて同定される、
をさらに含む、方法。
【請求項84】
核酸のコンビナトリアルライブラリーからキメラ抗原受容体(CAR)ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、および/または細胞内シグナル伝達ドメインをコードするヌクレオチド配列を同定する方法であって、
複数のバリアント核酸を含むライブラリーを提供すること、前記複数のバリアント核酸はそれぞれ少なくとも600bpの連続部分を含み、ここで前記連続部分は、
CARヒンジドメインをコードしている第一のバリアントヌクレオチド部分配列、
CAR膜貫通ドメインをコードしている第二のバリアントヌクレオチド部分配列、および
CAR細胞内シグナル伝達ドメインをコードしている第三のバリアントヌクレオチド部分配列のうちの2つ以上の組み合わせを含み、
ここで前記第一、第二または第三のバリアントヌクレオチド部分配列のうちの1つは、前記連続部分の第一の末端を規定し、ここで前記第一、第二または第三のバリアントヌクレオチド部分配列の別の1つは、前記第一の末端の反対側にある前記連続部分の第二の末端を規定し;
前記複数のバリアント核酸のメンバーによってコードされるCARを発現するように構成された細胞の集団に、前記ライブラリーを導入すること、ここで前記細胞の集団は、不死化T細胞または初代ヒトT細胞の集団を含み;
前記細胞と前記CARの抗原結合ドメインに特異的な抗原を発現している抗原提示細胞とを接触させることに応答して閾値を超える細胞増殖に基づいて、前記細胞の集団の亜集団を選択すること、ここで前記亜集団は複数の細胞を含み;
前記亜集団から前記複数のバリアント核酸のサブセットを単離すること;
前記サブセットの個々のメンバーの前記連続部分のヌクレオチド配列を決定すること;および、
前記サブセットの前記ヌクレオチド配列に含まれる前記少なくとも1つの組み合わせの対照との比較における濃縮度に基づいて、前記第一、第二、および第三のバリアントヌクレオチド部分配列の組み合わせを少なくとも1つ同定すること、
を含む、方法。
【請求項85】
1つより多いCAR細胞内シグナル伝達ドメインが存在する、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
少なくとも2つのCAR細胞内シグナル伝達ドメインが存在する、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記少なくとも2つのCAR細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3ε、CD3ζITAM1、CD3ζITAM12、CD3ζITAM123;CD3δ、CD3εおよびCD3γの任意のITAMを有するCD3ζ;CD8α、CD28、ICOS、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、CD27、ならびにCD2のうちの少なくとも2つである、請求項84に記載の方法。
【請求項88】
請求項84に記載の方法であって、
前記細胞と前記抗原提示細胞との接触に応答して第二の閾値レベルを下回る細胞増殖に基づいて、前記細胞の集団の第二の亜集団を選択すること、ここで前記第二の亜集団は第二の複数の細胞を含み、ここで前記亜集団と第二の亜集団は重複しておらず;
前記第二の亜集団から前記複数のバリアント核酸の第二のサブセットを単離すること;
前記第二のサブセットの個別のメンバーの前記連続部分の第二のヌクレオチド配列を決定すること、および
ここで前記少なくとも1つの組み合わせは、前記第二のサブセットの前記第二のヌクレオチド配列における前記少なくとも1つの組み合わせと比較した、前記サブセット中の前記少なくとも1つの組み合わせの濃縮度に基づいて同定される、
を含む、方法。
【請求項89】
核酸のコンビナトリアルライブラリーからヌクレオチド配列を同定する方法であって、
複数のバリアント核酸を含むコンビナトリアルライブラリを提供すること、前記複数のバリアント核酸はそれぞれ少なくとも600bpの連続部分を含み;
前記複数のバリアント核酸のメンバーによってコードされる1つ以上の複数のポリペプチドを発現するように構成された細胞の集団に、前記ライブラリーを導入すること;
前記少なくとも600bpの連続部分に依存する少なくとも1つの機能的特性に基づいて前記細胞の集団の亜集団を選択すること、ここで前記亜集団は複数の細胞を含み;
前記亜集団から前記複数のバリアント核酸のサブセットを単離すること;
前記サブセットの個別のメンバーの前記連続部分のヌクレオチド配列を決定すること;および
前記ヌクレオチド配列に基づいて、前記少なくとも600bpの連続部分を同定するこ と、
を含む、方法。
【請求項90】
前記少なくとも600bpの連続部分が600塩基対全体に分布している、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
核酸のライブラリーから抗原特異的T細胞受容体α(TCRα)鎖およびTCRβ鎖の対をコードするヌクレオチド配列を同定する方法であって、
複数のバリアント核酸のメンバーによってコードされるTCRα鎖およびTCRβ鎖を発現可能な細胞集団に、核酸ライブラリーを導入すること;
抗体への応答に対する閾値レベルを上回るマーカーの発現に基づいて、前記細胞集団の亜集団を選択すること、ここで前記亜集団は複数の細胞を含み;
前記亜集団から前記複数のバリアント核酸のサブセットを単離すること;
前記バリアント核酸のヌクレオチド配列を決定すること;および、
前記サブセットに含まれる前記ヌクレオチド配列の対照との比較における濃縮度に基づいて、少なくとも1つのバリアントヌクレオチド配列を同定すること、
を含む、方法。
【請求項92】
TCRα鎖およびTCRβ鎖をコードしている前記複数のバリアント核酸を含んでいる前記ライブラリーを提供することをさらに含む、請求項91または90に記載の方法。
【請求項93】
試料からT細胞受容体α(TCRα)鎖およびTCRβ鎖をコードするヌクレオチド配列を同定する方法であって、
試料に含まれるTCRα鎖およびTCRβ鎖の配列を決定すること;
TCRαβ対のライブラリーを作製するために、TCRα鎖配列とTCRβ鎖配列を選択し、コンビナトリアルペアリングを行うこと;
前記TCRαβ対のライブラリーをレポーター細胞のプールに導入すること;
前記TCRαβ対のライブラリーで修飾された前記レポーター細胞を、少なくとも1つの目的の抗原を提示する抗原提示細胞で刺激すること;
前記少なくとも1つの目的の抗原に特異的なTCRαβ対を決定すること;および、
前記TCRαβ対を細胞に導入し、前記TCRαβ対を含む細胞を選択すること、
を含む、方法。
【請求項94】
自己免疫疾患の診断または治療のために、抗原特異的TCR配列を発現しているT細胞を投与するステップをさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項95】
前記T細胞が、自己由来であってもまたは同種異系であってもよい、請求項14に記載の方法。
【請求項96】
前記活性化マーカーがCD69であり、2つの細胞集団が単離され、一方の細胞集団はCD69を高発現し、他方の細胞集団はCD69を低発現している、請求項8に記載の方法。
【請求項97】
請求項1~30および95、96のいずれか1項に記載の方法に従って回収された前記T細胞受容体のレパトアを含む、ヌクレオチドライブラリー。
【請求項98】
請求項1~96のいずれか1項に記載の方法に従って同定されたヌクレオチド配列を含む、ヌクレオチド構築物。
【請求項99】
請求項98に記載のヌクレオチド構築物を含む、細胞。
【請求項100】
核酸のライブラリーから抗原特異的T細胞受容体α(TCRα)鎖およびTCRβ鎖の対をコードするヌクレオチド配列を同定する方法であって、前記方法が、
TCRα鎖およびTCRβ鎖を発現可能な細胞集団に前記核酸ライブラリーを導入して、細胞のライブラリーを作製すること;
抗原に応答して第一の閾値を超えるマーカーの発現に基づいて、前記細胞のライブラリーの第一の集団を選択すること;および、
前記ライブラリーの前記第一の集団からバリアント核酸の第一の集団を単離すること、
を含む、方法。
【請求項101】
前記方法がさらに、
前記バリアント核酸の第一の集団の少なくとも1つのヌクレオチド配列または核酸の同一性を同定すること;および、
前記サブセットに含まれる前記ヌクレオチド配列の対照との比較における濃縮度に基づいて、少なくとも1つのバリアントヌクレオチド配列を同定すること、
を含む、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記閾値レベルが、
d)マーカーの発現に基づく前記細胞の全プールの割合の回収;または
e)前記細胞の全プールからの最小限の数の細胞の回収;または
f)抗原に反応して発現する少なくとも1つのマーカーへの磁気プローブの結合に基づく、磁石によって保持される細胞の回収、
のうちの少なくとも1つに基づく、請求項100または101に記載の方法。
【請求項103】
前記対照が、第二の閾値未満の第二の細胞集団である、請求項66~69、82、84、91、または101に記載の方法。
【請求項104】
前記対照が、
細胞の参照集団、
前記細胞の集団に導入された核酸のコンビナトリアルライブラリー、
前記第一の集団と同じ細胞の集団から第二の閾値未満の発現マーカーに基づいて選別された細胞の集団、
前記関連するTCRライブラリーを発現するレポーターT細胞といかなる外因性抗原も提示しないB細胞等の抗原提示細胞との共培養から得られた少なくとも1つの細胞の集団、
のうちの1つ以上である、請求項66~69、82、84、91、または101に記載の方法。
【請求項105】
前記対照(もしくは下位)試料が、前記上位試料と同じ細胞集団から選別されるが、活性化マーカーの発現が低く;または前記下位試料が、前記関連するTCRライブラリーを発現するレポーターT細胞、および外因性抗原を発現するように操作されていないB細胞の共培養から得られたものである、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記細胞の集団に抗原を添加することをさらに含む、請求項100~105のいずれか1項に記載の方法。
【請求項107】
第一の集団および/または前記対照の前記単離することが、a)磁気ビーズ濃縮、b)フローサイトメトリーソーティング、またはc)両方のうちの少なくとも1つによって達成される、請求項100~106のいずれか1つに記載の方法。
【請求項108】
核酸のライブラリーから抗原特異的T細胞受容体α(TCRα)鎖とTCRβ鎖の対をコードするヌクレオチド配列を同定する方法であって、前記方法が、
TCRα鎖およびTCRβ鎖を発現可能な細胞集団に前記核酸ライブラリーを導入して細胞のライブラリーを作製すること;および、
前記サブセットに含まれる前記ヌクレオチド配列の対照との比較における濃縮度に基づいて、バリアント核酸の前記第一の集団の少なくとも1つのヌクレオチド配列または核酸の同一性を同定すること、
を含む、方法。
【請求項109】
前記少なくとも1つの核酸が、細胞の第一の集団から単離される、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記細胞の第一の集団が、抗原に応答して第一の閾値レベルを超えるマーカーの発現に基づいて選択される、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
核酸のライブラリーからヌクレオチド配列を同定する方法であって、
前記核酸のライブラリーを細胞の集団に導入して細胞ライブラリーを作製すること;
前記細胞ライブラリーを細胞の第一の集団と接触させること;
磁気ビーズ濃縮により、少なくとも1つのマーカーの発現に基づいて、前記細胞ライブラリーの亜集団を選択すること;および、
前記亜集団に含まれる前記ヌクレオチド配列が対照との比較において有意に濃縮されていることまたは枯渇していることに基づいて、少なくとも1つのヌクレオチド配列を決定すること、
を含む、方法。
【請求項112】
前記細胞の亜集団の少なくとも一部が、前記核酸のライブラリのメンバーによってコードされる1つ以上のポリペプチドを発現するように構成される、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
マーカーの発現が、前記ライブラリーから導入された核酸に連動し、連動が、前記導入された核酸がマーカーの発現を変化させることを表す、請求項111に記載の方法。
【請求項114】
選択することが、閾値レベルを上回るのマーカー発現に基づく、請求項111に記載の方法。
【請求項115】
選択することが、閾値を上回る少なくとも2つのマーカーの発現に基づく、請求項111に記載の方法。
【請求項116】
抗原を同定または刺激または提供することが、
a)多数の抗原を選択すること;
b)それぞれの抗原が正確に2つの抗原プールに存在する抗原プールを作製すること;
c)前記それぞれの抗原プールに対する少なくとも1つのT細胞受容体を発現するレポーター細胞の反応性を評価すること;および、
d)正確に2つの抗原プールに対する反応性を評価することによって、前記少なくとも1つのT細胞受容体が前記選択された抗原のいずれかに対して反応性を有するか否かを決定すること、
のうちの1つ以上を含む、請求項8、82、91、93または100のいずれか1つに記載の方法。
【請求項117】
正確に2つの抗原プールに対する反応性が、ペアワイズ濃縮度分析によって検出される、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
前記ライブラリーがTCRライブラリーである、請求項111に記載の方法。
【請求項119】
活性化マーカーを用いる、請求項111に記載の方法。
【請求項120】
反応性を評価するために上位下位比較を採用する、請求項111に記載の方法。
【請求項121】
反応性の評価に上位下位比較を採用する、請求項1~120のいずれか1項に記載の反応性の評価を伴うまたは反応性の評価をさらに含む、方法。
【請求項122】
ライブラリーを伴う請求項1~121のいずれか1項に記載の方法であって、前記ライブラリー中の前記複数のバリアント核酸の前記ヌクレオチド配列が、
前記宿主細胞にとって好ましいコドン使用を導入すること、
mRNA構造の安定性を最適化すること、
反復配列を回避すること、
長い同種重合体を回避すること、および
所与のバリアント核酸配列内の局所的なGC含有量に大きな相違が生じることを回避すること、
のうちの少なくとも1つに基づいて最適化される、方法。
【請求項123】
前記抗原が抗原提示細胞を介して提示される、請求項91に記載の方法。
【請求項124】
前記ライブラリーがコンビナトリアルライブラリーである、請求項91に記載の方法。
【請求項125】
前記抗原が細胞によって提供される、請求項1~124のいずれか1項に記載の方法。
【請求項126】
前記過程が、高度な抗原多様性および/または複雑性を伴う、請求項1~125のいずれか1項に記載の方法。
【請求項127】
ライブラリーを伴う請求項1~126のいずれか1項に記載の方法であって、前記ライブラリーがコンビナトリアルライブラリーである、方法。
【請求項128】
前記コンビナトリアルライブラリーがTCRライブラリーである、請求項127に記載の方法。
【請求項129】
細胞のコレクションであって、前記コレクションが、
少なくとも2つのT細胞のセットであって、ここで少なくとも2つのT細胞はそれぞれ少なくとも1つのTCRαおよびTCRβの対を発現するように構成されており、ここで前記TCRαおよび前記TCRβのそれぞれは対象に由来し、ここで前記T細胞は内因性TCRを発現せず、およびここで前記セットは1つ以上のT細胞活性化マーカーを活性化するために構成されている、少なくとも2つのT細胞のセット;ならびに、
少なくとも2つのB細胞のセットであって、ここで前記少なくとも2つのB細胞はそれぞれ少なくとも1つの外因性新生抗原(または抗原)を発現するように構成されており、その結果、少なくとも2つの外因性新生抗原(または抗原)が産生可能になり、およびここで前記少なくとも2つの外因性新生抗原(または抗原)は、前記対象内におけるものと同じである、少なくとも2つのB細胞のセット、
を含む、コレクション。
【請求項130】
前記少なくとも2つのB細胞のセットが、前記外因性新生抗原(または抗原)を産生する少なくとも第一のB細胞;および前記第二の外因性新生抗原(または抗原)を産生する少なくとも第二のB細胞、を含む、請求項129に記載の組成物。
【請求項131】
TCR発現細胞のライブラリーであって、前記TCR発現細胞のライブラリーが少なくとも3つのT細胞のセットを含み、
ここで前記T細胞のうちの少なくとも2つは、少なくとも2つのTCRαおよびTCRβの対(少なくとも2つのTCR対)を発現するように構成されており、
ここで前記少なくとも2つのTCR対は対象に由来し、
ここで前記少なくとも3つのT細胞は内因性TCRを発現せず、
ここで前記少なくとも3つのT細胞は、B細胞によって提示された抗原(または新生抗原)への結合に際して、1つ以上のT細胞活性化マーカーを活性化するために構成されており、
ここでTCR細胞の数に反映される各TCR対のゲノムコピー量が、前記試料に含まれる全てのTCRのリードを示すものであり、および
ここで前記TCRのうちの少なくとも1つが、前記ライブラリーを含む組成物全体に均等に分布していない、
ライブラリー。
【請求項132】
少なくとも1つのT細胞の分布が、B細胞によって提示される抗原に結合することによって変化する、請求項131に記載のTCR発現細胞のライブラリー。
【請求項133】
前記少なくとも2つのTCR対が、前記TCR発現細胞のライブラリー中にほぼ均等に存在する、請求項131に記載のTCR発現細胞のライブラリー。
【請求項134】
対象を治療する方法であって、前記方法が、
腫瘍を有する対象を特定すること;
少なくとも2つのT細胞のセットを提供すること、ここで、前記少なくとも2つのT細胞はそれぞれ、少なくとも1つの異なるTCRαとTCRβの対を発現するように構成されており、前記TCRαおよび前記TCRβはそれぞれ前記対象に由来し;
少なくとも2つのB細胞のセットを提供すること、ここで、前記B細胞のセットは少なくとも2つの外因性新生抗原を発現するように構成されており、前記少なくとも2つの外因性新生抗原は、前記対象内で見出されるものと同じであり;
前記少なくとも2つのT細胞のセットと前記少なくとも2つのB細胞のセットを組み合わせ、前記少なくとも2つの外因性新生抗原を介した前記少なくとも2つのT細胞の活性化に基づいて、少なくとも2つのTCR対の組み合わせを選択すること;および
前記少なくとも2つのTCR対の組み合わせを前記対象に投与し、それによって前記腫瘍を治療すること、
を含む、方法。
【請求項135】
治療することにより前記腫瘍の大きさが縮小する、請求項134に記載の方法。
【請求項136】
対象を治療する方法であって、前記方法が、
腫瘍を有する対象を特定すること;
少なくとも2つのT細胞のセットを提供すること、ここで、前記少なくとも2つのT細胞はそれぞれ、少なくとも1つの異なるTCRαとTCRβの対を発現するように構成されており、前記TCRαおよび前記TCRβはそれぞれ前記対象に由来し;
少なくとも2つの抗原提示細胞のセットを提供すること、ここで、前記抗原提示細胞のセットは前記対象に由来するものであり、少なくとも2つの外因性新生抗原を発現するように構成されており、前記少なくとも2つの外因性新生抗原は、前記対象内で見出される新生抗原と同じであり;
前記少なくとも2つのT細胞のセットと前記少なくとも2つの抗原提示細胞のセットを組み合わせ、前記少なくとも2つの外因性新生抗原を介した前記少なくとも2つのT細胞の活性化に基づいて、少なくとも2つのTCR対の組み合わせを選択すること;および、
前記少なくとも2つのTCR対の組み合わせを前記対象に投与し、それによって前記腫瘍を治療すること、
を含む、方法。
【請求項137】
対象の腫瘍中に存在する第一の抗原(または新生抗原)に結合する第一のTCR対;および前記対象の腫瘍中に存在する第二の抗原(または新生抗原)に結合する第二のTCR対を含む、医薬組成物。
【請求項138】
前記第一のTCR対がMHCクラスI拘束性であり、前記第二のTCR対がMHCクラスII拘束性である、請求項137に記載の医薬組成物。
【請求項139】
第一の抗原に結合し、かつ、MHCクラスI拘束性である第一のTCR対と、第二の抗原に結合し、かつ、MHCクラスII拘束性である第二のTCR対を含む、医薬組成物。
【請求項140】
第三のTCR対をさらに含む、請求項137~139のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項141】
前記第一のTCR対が腫瘍由来の新生抗原に結合し、前記第二のTCR対が前記腫瘍由来の新生抗原に結合し、前記第一および第二のTCR対が両方とも前記腫瘍の宿主に存在する、請求項137~140のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項142】
細胞のコレクションであって、前記コレクションが、
少なくとも2つのT細胞のセットであって、ここで、それぞれが少なくとも1つのTCRαおよびTCRβの対を発現するように構成されており、ここで前記対は対象に由来し、ここで前記T細胞は内因性TCRを発現せず、およびここで前記セットは1つ以上のT細胞活性化マーカーを活性化するために構成されている、少なくとも2つのT細胞のセット;ならびに、
少なくとも2つの抗原提示細胞(APC)細胞のセットであって、ここで、前記少なくとも2つのAPCはそれぞれ少なくとも1つの外因性新生抗原(または抗原)を発現するように構成されており、その結果、少なくとも2つの外因性新生抗原(または抗原)が産生可能になり、およびここで前記少なくとも2つの外因性新生抗原(または抗原)が前記対象内におけるものと同じである、少なくとも2つの抗原提示細胞(APC)細胞のセット、
を含む、コレクション。
【請求項143】
前記TCR対および/または前記TCR対を発現しているT細胞が、抗原(新生抗原など)への結合によって選択または同定され、ここで前記抗原が、B細胞または抗原提示細胞によって発現される、請求項1~142のいずれか1項に記載の方法。
【請求項144】
前記抗原または新生抗原が、対象における腫瘍に由来し、前記TCR対のTCRαおよびTCRβもそれぞれ前記対象由来である、請求項1~143のいずれか1項に記載の方法。
【請求項145】
少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、50、100、500、1,000、10,000、100,000、または100万のTCR対(またはこれらの対を含む細胞)が存在し、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、50、100、500、1,000、10,000、100,000、または100万の抗原が存在する、請求項1~144のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
【0002】
本出願は、2019年7月15日に出願の米国仮特許出願第62/874125号、2020年2月13日に出願の米国仮特許出願第62/975924号、2020年5月13日に出願の米国仮特許出願第63/024341号、2020年6月3日に出願の米国仮特許出願第63/034157号、および2020年6月15日に出願の米国仮特許出願第63/039346号の優先権を主張し、これらの全体は参照することにより本明細書に組み込まれる。
配列表の参照
【0003】
本出願は、電子形式の配列表とともに出願される。配列表は、2020年7月13日に作成され、サイズが21,765バイトの「NTBV001WOSEQLIST.txt」と題するファイルとして提供される。電子形式の配列表に含まれる情報は、その全体が参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0004】
本技術は基本的に、T細胞受容体(TCR)遺伝子の配列を単離し、TCRのレパトアを回収することに関する。また、組成物および治療法も提供する。
【背景技術】
【0005】
TCRαとβの対を検出するためには、これまで、PCRに基づく技術とTCRバルク鎖配列決定が用いられてきた(コバヤシ(Kobayashi)ら、ネイチャー・メディシン(Nat Med)2013;リンネマン(Linnemann)ら、ネイチャー・メディシン、2013;トラン(Tran)ら、サイエンス(Science)、2015;トランら、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(N Engl J Med.)、2016;ツジ(Tsuji)ら、癌免疫学研究(Cancer Immunol Res)、2018)。
【発明の概要】
【0006】
本明細書ではいくつかの態様において、核酸のコンビナトリアルライブラリーから、T細胞受容体α(TCRα)鎖とTCRβ鎖をコードしているヌクレオチド配列を同定する方法を説明する。この方法は、(I)TCRα鎖およびTCRβ鎖をコードしている複数のバリアント核酸を含んでいるライブラリーを提供すること、(II)複数のバリアント核酸のメンバーによってコードされているTCRα鎖およびTCRβ鎖を発現可能な細胞集団に、ライブラリーを導入すること、(III)抗体への応答に対する閾値レベルを上回るマーカーの発現に基づいて、細胞集団の亜集団を選択すること、ここで亜集団は複数の細胞を含み、(IV)亜集団から複数のバリアント核酸のサブセットを単離すること、(V)バリアント核酸のヌクレオチド配列を決定すること、ならびに(VI)サブセットに含まれるヌクレオチド配列の、対照との比較における濃縮度に基づいて、少なくとも1つのバリアントヌクレオチド配列を同定すること、を含む。
【0007】
他のいくつかの態様は、多様なT細胞集団からT細胞受容体(TCR)のレパトアを回収する方法に関し、この方法は、I)対象の試料に含まれるTCRαおよびTCRβのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を決定すること、II)レパトア全体から、TCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列のサブセットを1つ以上選択すること、III)TCRαβ対のライブラリーを形成する選択したTCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列のコンビナトリアルペアリングによって、TCRレパトアを作製すること、ならびに、IV)作製したTCRレパトアから、所望の特徴を有するTCRαとβの対を少なくとも1つ同定すること、を含む。
【0008】
いくつかの態様において、TCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列の1つ以上のサブセットは、レパトア全体から、a)T細胞集団中での頻度に基づいて、b)第二のT細胞集団との比較における相対的な濃縮度に基づいて、c)所与のTCR鎖と比較して、DNAおよびRNAのコピー数が異なることに基づいて、d)TCR鎖の生物学的特性であって、ここでこの特性が、(予測される)抗原特異性、配列モチーフ、(予測される)HLA拘束性、親和性、共受容体依存性、または親T細胞系列(例えば、CD4もしくはCD8T細胞)のうちの少なくとも1つから選択される、TCR鎖の生物学的特性に基づいて、e)遺伝子発現の空間的パターンであって、ここで空間的な遺伝子の発現パターンが、組織での起源領域または他の遺伝子の共発現パターンの少なくとも1つに由来する、遺伝子発現の空間的パターンに基づいて、f)例えば複数の腫瘍病変において出現しているなど、複数の試料において同様の頻度で共出現または出現していることに基づいて、g)TCRレパトアの特定の部分を別々に回収するための、複数の群への選択に基づいて、h)異なる態様で定義したような複数の基準の組み合わせに基づいて、のうちの少なくとも1つの基準に基づいて選択される。いくつかの態様において、T細胞集団中での頻度に基づく選択は、TCRα鎖およびTCRβ鎖についての個別の順位またはTCRα鎖とTCRβ鎖を組み合わせた場合の順位を作成するために使用されるTCR配列の頻度のデータに基づくものである。いくつかの態様において、この方法はさらに、TCRレパトアの回収に関して望まれる深度で定義され、頻度に基づいてTCRαおよびβ鎖のコレクションを選択するために用いられる頻度閾値を決定することを含む。いくつかの態様において、TCRαおよびTCRβの配列を決定することは、a)多重PCR、b)標的濃縮によるTCR配列の回収、c)5'RACEとPCRによるTCR配列の回収、d)空間的配列決定によるTCR配列の回収、またはe)RNA配列のデータによるTCR配列の回収、のうちの少なくとも1つによって、達成される。いくつかの態様において、回収されたTCR鎖の配列は、完全なTCR鎖配列を組み立てるためのヌクレオチド配列アライメントに基づいて少なくとも1つのTCR-Vセグメントファミリーおよび少なくとも1つのTCR-Jセグメントファミリーを選択するのに十分な5'および3'のヌクレオチド配列情報とともに、CDR3ヌクレオチド配列と定義される。いくつかの態様において、ヌクレオチド配列アライメントは、65%配列同一性、70%配列同一性、75%配列同一性、80%配列同一性、85%配列同一性、90%配列同一性、95%配列同一性、96%配列同一性、97%配列同一性、98%配列同一性、99%配列同一性、100%配列同一性、およびその間の任意の数または範囲に基づくものである。いくつかの態様において、最適な配列アライメントは、当業者に公知のリードマッピングアルゴリズムに従って、測定距離を最小化することに基づくものである。いくつかの態様においては、最良のアライメントが求められる。
【0009】
いくつかの態様において、ステップIIIは、i)TCR鎖の配列を使用して、TCRα鎖DNA断片およびTCRβ鎖DNA断片のライブラリーをそれぞれ別々に合成し、その後、1つのDNA断片またはRNA断片に連結すること(必要に応じて、ここで正確に1つずつのTCRα鎖とβ鎖が連結される)、ii)正確に1つずつのTCRα鎖とβ鎖が連結したDNA断片またはRNA断片を直接合成することによって、TCRα鎖とTCRβ鎖の組み合わせを生成すること、または、iii)細胞が1つのTCRα鎖と1つのTCRβ鎖を発現するように、DNAベクターまたはRNAベクターの形でコードされたTCRα遺伝子およびTCRβ遺伝子の別々のコレクションで細胞プールを修飾することによって、TCRα鎖とTCRβ鎖の組み合わせを細胞内で作製すること、(iv)TCRα鎖とTCRβ鎖の組み合わせを、両TCR鎖断片とCD3ζもしくはCD3εシグナルドメインを単独でまたはCD28シグナルドメインとの組み合わせで含む一本鎖TCR構築物に連結すること、のうちの少なくとも1つによって達成される。いくつかの態様では、正確に1つずつのTCRα鎖とβ鎖が連結したDNA断片またはRNA断片を直接合成することにより、インシリコでランダムペアリングを実施し、得られたすべての組み合わせを1つのDNA断片として合成する必要性が排除される。いくつかの態様において、ステップIVは、i)生成されたTCRαβ対のライブラリーで修飾されたレポーター細胞またはT細胞のプールを、少なくとも1つの目的の抗原を提示する抗原提示細胞によって刺激し、TCR単離用の少なくとも1つの活性化マーカーに基づいて、抗原反応性のレポーター細胞またはT細胞を単離すること;ii)生成されたTCRαβ対のライブラリーで修飾されたレポーター細胞またはT細胞のプールを細胞増殖を追跡するのに適した蛍光色素で標識し、少なくとも1つの目的の抗原を発現する抗原提示細胞によって刺激し、TCR単離用の増殖性に基づいて抗原反応性のレポーター細胞またはT細胞を単離すること;iii)生成されたTCRαβ対のライブラリーで修飾されたレポーター細胞またはT細胞のプールを少なくとも2つの試料に分け;試料をそれぞれ、少なくとも1つの目的の抗原を発現しているかまたは発現していない抗原提示細胞によって刺激し;刺激後、レポーター細胞またはT細胞集団の両方を一定期間インキュベートし、次いで、レポーター細胞またはT細胞集団の両方をTCR単離によって分析し;両方の試料から得られたTCRαβ対を比較することで、少なくとも1つの抗原に暴露された試料においてより豊富に含まれているTCR遺伝子を特定すること;iv)生成されたTCRαβ対のライブラリーで修飾されたレポーター細胞またはT細胞のプールを、少なくとも1つの目的の抗原を提示する抗原提示細胞によって刺激し、TCRの誘発を示す少なくとも1つのレポーター遺伝子、例えばNFAT-GFPまたはNFAT-YFPに基づいて、抗原反応レポーター細胞またはT細胞を単離すること;v)生成されたTCRαβ対のライブラリーで修飾されたレポーター細胞またはT細胞のプールを、少なくとも1つの目的の抗原を提示する抗原提示細胞によって刺激し、抗原反応性レポーター細胞またはT細胞を、TCRのシグナル伝達に際して獲得される抗生物質耐性に基づく抗原特異的レポーター細胞またはT細胞の選択に基づいて、例えばNFAT-ピューロマイシン導入遺伝子を使用することによって、TCR単離用に単離すること;vi)生成されたTCRαβ対のライブラリーで修飾されたレポーター細胞またはT細胞のプールを、目的の抗原を担持する1つ以上のMHC複合体に曝露し;TCR単離用に、MHC複合体に結合したレポーター細胞またはT細胞を単離すること;vii)生成されたTCRαβ対のライブラリーで修飾されたレポーター細胞またはT細胞のプールを、少なくとも1つの目的の抗原を発現する抗原提示細胞によって刺激し;その後、単一細胞の使用に基づくドロップレットPCRまたは微少流体的手法を使用して目的のTCRαβ対を同定し、TCR単離と少なくとも1つの活性化マーカーの転写レベルでの検出とを組み合わせ;それにより、TCRαβの転写物が活性化マーカーのレベルの上昇と共発現するレポーター細胞またはT細胞のプールに含まれる単一のレポーター細胞またはT細胞を検出すること、のうちの少なくとも1つによって達成される。いくつかの態様において、ステップi~viにおけるTCR単離は、(i)バルクの抗原反応性レポーター細胞もしくはT細胞からDNAもしくはRNAを単離してTCRαβ特異的PCR産物を生成し、これをDNA配列決定によって分析して、抗原反応性レポーター細胞もしくはT細胞のTCRαβ遺伝子配列を決定すること、または(ii)単一細胞の使用に基づくドロップレットPCRもしくは微少流体的手法によって、分析した単一のT細胞において発現するTCRαβ遺伝子配列を分析すること、によって達成することが可能である。いくつかの態様において、レポーター細胞はT細胞である。いくつかの態様において、レポーター細胞は、TCRの会合を監視する。いくつかの態様において、レポーター細胞のプールは、TCRα/βヌルの可能性がある。
【0010】
いくつかの態様において、対象の試料は、非生存性出発材料を含む。いくつかの態様では、回収されたTCRレパトアの定義された部分が回収される。いくつかの態様において、定義されたまたは選択的な回収は、a)T細胞集団中での頻度に基づいて、b)第二のT細胞集団との比較における相対的な濃縮度に基づいて、c)所与のTCR鎖と比較してDNAおよびRNAのコピー数が異なることに基づいて、d)TCR鎖の生物学的特性であって、ここで特性が、(予測される)抗原特異性、(予測される)HLA拘束性、親和性、共受容体依存性、親T細胞系列(例えば、CD4もしくはCD8T細胞)、またはTCR配列モチーフのうちの少なくとも1つから選択される、TCR鎖の生物学的特性に基づいて、e)遺伝子発現の空間的パターンであって、ここで遺伝子発現の空間的パターンが組織内の起源領域または他の遺伝子の共発現パターンのうちの少なくとも1つに由来する、遺伝子発現の空間的パターンに基づいて、f)例えば複数の腫瘍病変において出現しているなど、複数の試料において同様の頻度で共出現または出現していることに基づいて、g)TCRレパトアの特定の部分を別々に回収するための複数の群への選択に基づいて、異なる態様で定義したような複数の基準の組み合わせに基づいて、などを含むがこれらには限定されない基準に基づいて、検出されたTCR鎖の一部分のみまたは全体を選択することによって実施される。いくつかの態様において、TCR配列の選択的な回収とは、特定のV遺伝子セグメントを含むTCR配列の回収を指す。
【0011】
いくつかの態様では、抗原特異的TCR配列が回収される。いくつかの態様では、治療用TCR配列が回収される。いくつかの態様では、腫瘍反応性TCR配列が回収される。いくつかの態様では、新生抗原特異的TCR配列が回収される。いくつかの態様において、本明細書に記載される方法はさらに、新生抗原特異的TCR配列を発現しているT細胞を癌治療として投与する工程を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載される方法は、診断のためのものである。いくつかの態様において、診断は、感染症または自己免疫疾患の病的部位からTCRレパトアを回収することである。いくつかの態様において、本明細書に記載される方法は、BCR/抗体レパトアを回収するためのものである。いくつかの態様において、本明細書に記載の方法はさらに、TCRαおよびβのヌクレオチド配列を含む核酸を対象から単離することを含む。いくつかの態様において、活性化マーカーは、CD4またはCD8T細胞活性化マーカーである。任意のCD4またはCD8T細胞活性化マーカーを使用することができる。本明細書に記載の方法のいくつかの態様において、活性化マーカーは、CD69、CD137、IFN-γ、IL-2、TNF-α、GM-CSFからなる群より選択される。いくつかの態様では、本明細書に記載の方法において、DNAおよびRNAは、異なる細胞型の混合物または組織試料の一部(血液または腫瘍組織等)であるT細胞集団から単離される。いくつかの態様において、対象の試料は、体液から単離された細胞を含む。いくつかの態様において、細胞は、腫瘍特異的T細胞である。いくつかの態様において、体液は、血液、尿、血清、漿液、血漿、リンパ液、脳脊髄液、唾液、喀痰、粘膜分泌物、膣液、腹水、胸水、心嚢液、腹膜液、および腹腔液からなる群より選択される。いくつかの態様において、本明細書に記載の方法はさらに、TCRαβ鎖配列を使用して、癌、免疫学的障害、自己免疫疾患、または感染症に罹患している対象を治療することを含む。いくつかの態様において、本明細書に記載の方法のステップIVは、(i)少なくとも1つの活性化マーカーに基づく同定または選択;(ii)抗原に応答した増殖に基づく同定または選択;(iii)非刺激細胞と比較して抗原刺激細胞においてより豊富に含まれているTCR遺伝子を同定することに基づく同定または選択;(iv)TCRの誘発によるレポーター遺伝子の活性化に基づく同定または選択;(v)TCRのシグナル伝達に際して獲得される抗生物質耐性を含むがこれに限定されない、選択的生存に基づく同定または選択;(vi)1つ以上のMHC複合体への結合に基づく同定または選択;(vii)単一細胞の使用に基づくドロップレットPCRまたは微少流体技術を用いた同定または選択;あるいはこれらの任意の組み合わせ;のうちの少なくとも1つによって達成される。いくつかの態様において、ステップ(vii)は、活性化関連遺伝子の共発現を決定することをさらに含む。
【0012】
本明細書では、いくつかの態様において、複数のT細胞ライブラリーを作製する方法を開示し、この方法は、(a)本明細書に記載の方法に従ってT細胞受容体(TCR)のレパトアを回収すること;(b)TCRレパトアの特定の部分を別々に回収するために、全レパトアからTCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列を複数の群に選択すること;を含み、ここで複数のT細胞ライブラリーは、より複雑度が小さい、またはTCRレパトアの特定の部分を回収するものとして作製される。いくつかの態様において、TCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列は、頻度範囲に基づいて選択される。
【0013】
本明細書では、いくつかの態様において、複数のT細胞ライブラリーを作製する方法を説明し、この方法は、(a)本明細書に記載の方法に従ってT細胞受容体(TCR)のレパトアを回収すること;(b)TCRレパトアの特定の部分を別々に回収するために、全レパトアからTCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列を複数の群に選択すること;を含み、ここで複数のT細胞ライブラリーは、より複雑度が小さい、またはTCRレパトアの特定の部分を回収するものとして作製される。
【0014】
いくつかの態様において、TCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列は、頻度範囲に基づいて選択される。
【0015】
本明細書では、記載のいくつかの態様において、多様なT細胞集団からT細胞受容体(TCR)のレパトアを回収するための方法を説明し、この方法は、I)対象の試料に含まれるTCRαおよびTCRβのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を決定すること、II)レパトア全体から、TCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列のサブセットを1つ以上選択すること、III)TCRαβ対のライブラリーを形成する選択したTCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列のコンビナトリアルペアリングによって、TCRレパトアを作製すること、ならびに、IV)作製したTCRレパトアから、所望の特徴を有するTCRαとβの対を少なくとも1つ同定すること、を含む。
【0016】
いくつかの態様では、核酸のコンビナトリアルライブラリーからヌクレオチド配列を同定する方法が提供される。この方法は、複数のバリアント核酸を含むコンビナトリアルライブラリーを提供することを含み、複数のバリアント核酸はそれぞれ、少なくとも600bpの連続部分を含む。方法はさらに、複数のバリアント核酸のメンバーによってコードされる1つ以上のポリペプチドを発現するように構成された細胞の集団に、ライブラリーを導入することを含む。方法はさらに、少なくとも600bpの連続部分に依存する少なくとも1つの機能的特性に基づいて細胞集団の亜集団を選択することを含み、ここで亜集団は、複数の細胞を含む。方法はさらに、亜集団から複数のバリアント核酸のサブセットを単離することを含む。方法はさらに、サブセットの個々のメンバーの連続部分のヌクレオチド配列を決定することを含む。方法はさらに、ヌクレオチド配列に基づいて、少なくとも600bpの連続部分を同定することを含む。いくつかの態様において、この方法は、少なくとも600bpの連続部分が600塩基対全体に分布しているものでもあり得る。
【0017】
いくつかの態様において、方法は、以下に説明するステップ(1)~(7)の1つ以上を含む場合がある。ステップ(1)試料を取得する。試料は、感染症、自己免疫疾患、または癌を患っている患者に由来する組織、血液、または体液であってよい。試料は生存細胞であっても非生存細胞であってもよい。ステップ(2)試料に含まれるTCRα鎖およびTCRβ鎖の配列を決定する。ステップ(3)TCRαβ対のライブラリーを作製するために、TCRα鎖配列とTCRβ鎖配列を選択し、コンビナトリアルペアリングを行う。ステップ(4)TCRαβ対のライブラリーをレポーター細胞のプール、例えばジャーカットレポーターT細胞のプールに導入する。ステップ(5)TCRαβ対のライブラリーで修飾されたレポーター細胞を、少なくとも1つの目的の抗原を提示する抗原提示細胞で刺激する。少なくとも1つの目的の抗原は、自己由来であっても同種異系であってもよい。ステップ(6)少なくとも1つの目的の抗原に特異的なTCRαβ対を決定する。ステップ(7)TCRαβ対を細胞に導入し、TCRαβ対を含む細胞を選択する。いくつかの態様において、方法は、前述したステップ(1)~(7)のうちの1つ以上を含み得る。いずれのステップも、適宜、本明細書で提供される他の態様によって省略、反復、または置換することができる。また、その他の介在するステップを追加することも可能である。
【0018】
いくつかの態様は、前述した態様のいずれか1つに従って回収されるT細胞受容体のレパトアを含むヌクレオチドライブラリーに関する。いくつかの態様において、ヌクレオチド構築物は、前述した態様のいずれか1つに従って同定されるヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、細胞は、本明細書に記載のヌクレオチド構築物を含む。
【0019】
いくつかの態様では、多様なT細胞集団からT細胞受容体(TCR)のレパトアを回収する方法が提供される。この方法は、対象の試料に含まれるTCRαおよびTCRβのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を決定すること;TCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列の1つ以上のサブセットを全レパトアから選択すること;TCRαβ鎖のライブラリーを形成する選択したTCRα鎖配列とTCRβ鎖配列のコンビナトリアルペアリングによって、TCRレパトアを作製すること;所望の特徴を有する少なくとも1つのTCRαβ対を、作製したTCRレパトアから同定すること、を含む。いくつかの態様では、複数のT細胞ライブラリーを作製する方法が提供される。この方法は、前述の方法に従ってT細胞受容体(TCR)のレパトアを回収すること;TCRレパトアの特定の部分を別々に回収するために、全レパトアからTCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列を複数の群に選択すること、を含み、ここで複数のT細胞ライブラリーは、より複雑度が小さい、またはTCRレパトアの特定の部分を回収するものとして作製される。
【0020】
いくつかの態様では、核酸のコンビナトリアルライブラリーからヌクレオチド配列を同定する方法が提供される。この方法は、複数のバリアント核酸を含むコンビナトリアルライブラリーを提供することを含み、複数のバリアント核酸はそれぞれ少なくとも600bpの連続部分を含み、ここで、連続部分は2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列を含み、ここで、2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列のうちの第一のバリアントヌクレオチド部分配列は、連続部分の第一の末端を規定し、2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列のうちの第二のバリアントヌクレオチド部分配列は、第一の末端とは反対側にある、連続部分の第二の末端を規定し;複数のバリアント核酸のメンバーによってコードされる1つ以上のポリペプチドを発現するように構成された細胞の集団に、ライブラリーを導入すること;2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列の組み合わせに依存する少なくとも1つの機能的特性に基づいて細胞集団の亜集団を選択すること、ここで亜集団は複数の細胞を含み;亜集団から複数のバリアント核酸のサブセットを単離すること;サブセットの個々のメンバーの連続部分のヌクレオチド配列を決定すること;および、ヌクレオチド配列に基づいて、2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列の組み合わせを少なくとも1つ同定すること;を含む。
【0021】
いくつかの態様では、核酸のコンビナトリアルライブラリーからT細胞受容体α(TCRα)鎖およびTCRβ鎖をコードするヌクレオチド配列を同定する方法が提供される。この方法は、複数のバリアント核酸を含むライブラリーを提供することを含み、複数のバリアント核酸はそれぞれ、少なくとも600bpの連続部分を含み;ここで連続部分は、TCRαのバリアントアミノ酸配列をコードしていて、かつ、連続部分の第一の末端を規定する第一のバリアントヌクレオチド部分配列とTCRβのバリアントアミノ酸配列をコードしていて、かつ、第一の末端とは反対側にある連続部分の第二の末端を規定する第二のバリアントヌクレオチド部分配列の組み合わせを含む。方法はさらに、複数のバリアント核酸のメンバーによってコードされるTCRα鎖およびTCRβ鎖を発現するように構成された不死化T細胞の集団に、ライブラリーを導入することを含む場合がある。方法はさらに、不死化T細胞と抗原を発現している不死化B細胞との接触に応答して閾値を超えるT細胞活性化マーカーの発現に基づいて、不死化T細胞の集団の亜集団を選択することを含む場合があり、ここで亜集団は複数のT細胞を含む。方法はさらに、亜集団から複数のバリアント核酸のサブセットを単離することを含む場合がある。方法はさらに、サブセットの個々のメンバーの連続部分のヌクレオチド配列を決定すること;および、サブセットのヌクレオチド配列に含まれる少なくとも1つの組み合わせの対照との比較における濃縮度に基づいて、第一と第二のバリアントヌクレオチド部分配列の組み合わせを少なくとも1つ同定することを含む場合がある。
【0022】
いくつかの態様では、核酸のコンビナトリアルライブラリーからキメラ抗原受容体(CAR)ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、および/または細胞内シグナル伝達ドメインをコードするヌクレオチド配列を同定する方法が提供される。この方法は、複数のバリアント核酸を含むライブラリーを提供することを含む場合があり、複数のバリアント核酸はそれぞれ、少なくとも600bpの連続部分を含み、ここで、連続部分は、CARヒンジドメインをコードしている第一のバリアントヌクレオチド部分配列、CAR膜貫通ドメインをコードしている第二のバリアントヌクレオチド部分配列、およびCAR細胞内シグナル伝達ドメインをコードしている第三のバリアントヌクレオチド部分配列のうちの2つ以上の組み合わせを含む。第一、第二または第三のバリアントヌクレオチド部分配列のうちの1つは連続部分の第一の末端を規定し、およびここで、第一、第二または第三のバリアントヌクレオチド部分配列の別の1つは、第一の末端の反対側にある連続部分の第二の末端を規定する。方法はさらに、複数のバリアント核酸のメンバーによってコードされるCARを発現するように構成された細胞の集団に、ライブラリーを導入することを含む場合がある。細胞の集団は、不死化T細胞または初代ヒトT細胞の集団を含む。本方法はさらに、細胞とCARの抗原結合ドメインに特異的な抗原を発現している抗原提示細胞とを接触させることに応答して閾値を超える細胞増殖に基づいて、細胞の集団の亜集団を選択することを含む場合があり、ここで亜集団は複数の細胞を含む。方法はさらに、亜集団から複数のバリアント核酸のサブセットを単離することを含む場合がある。方法はさらに、サブセットの個々のメンバーの連続部分のヌクレオチド配列を決定すること;および、サブセットのヌクレオチド配列に含まれる少なくとも1つの組み合わせの対照との比較における濃縮度に基づいて、第一、第二、および第三のバリアントヌクレオチド部分配列の組み合わせを少なくとも1つ同定することを含む場合がある。
【0023】
いくつかの態様では、核酸のコンビナトリアルライブラリーからヌクレオチド配列を同定する方法が提供される。この方法は、複数のバリアント核酸を含むコンビナトリアルライブラリーを提供すること、複数のバリアント核酸はそれぞれ、少なくとも600bpの連続部分を含み;複数のバリアント核酸のメンバーによってコードされる1つ以上のポリペプチドを発現するように構成された細胞の集団に、ライブラリーを導入すること;少なくとも600bpの連続部分に依存する少なくとも1つの機能的特性に基づいて細胞集団の亜集団を選択すること、ここで亜集団は複数の細胞を含み;亜集団から複数のバリアント核酸のサブセットを単離すること;サブセットの個々のメンバーの連続部分のヌクレオチド配列を決定すること;および、ヌクレオチド配列に基づいて、少なくとも600bpの連続部分を同定すること、を含む場合がある。
【0024】
いくつかの態様では、核酸のライブラリーから抗原特異的T細胞受容体α(TCRα)鎖とTCRβ鎖の対をコードするヌクレオチド配列を同定する方法が提供される。この方法は、複数のバリアント核酸のメンバーによってコードされるTCRα鎖およびTCRβ鎖を発現可能な細胞集団にライブラリーを導入すること、抗原に応答して閾値を超えるマーカーの発現に基づいて、細胞集団の亜集団を選択することを含み、ここで亜集団は複数の細胞を含む。方法はさらに、亜集団から複数のバリアント核酸のサブセットを単離することを含む場合がある。方法はさらに、バリアント核酸のヌクレオチド配列を決定すること、および、サブセットに含まれるヌクレオチド配列の対照との比較における濃縮度に基づいて少なくとも1つのバリアント核酸配列を同定すること、を含む場合がある。
【0025】
いくつかの態様では、試料からT細胞受容体α(TCRα)鎖およびTCRβ鎖をコードするヌクレオチド配列を同定する方法が提供される。この方法は、試料に含まれるTCRα鎖およびTCRβ鎖の配列を決定すること;TCRαβ対のライブラリーを作製するために、TCRα鎖配列とTCRβ鎖配列を選択し、コンビナトリアルペアリングを行うこと;ライブラリーをレポーター細胞のプールに導入すること;TCRαβ対のライブラリーで修飾されたレポーター細胞を、少なくとも1つの目的の抗原を提示する抗原提示細胞で刺激すること(ここで抗原は、TCRα鎖およびTCRβ鎖が由来するのと同じ宿主由来であり得る);少なくとも1つの目的の抗原に特異的なTCRαβ対を決定すること;および、TCRαβ対を細胞に導入し、TCRαβ対を含む細胞を選択すること;を含む場合がある。
【0026】
いくつかの態様では、前述した方法のいずれか1つに従って回収されたT細胞受容体のレパトアを含むヌクレオチドライブラリーが提供される。
【0027】
いくつかの態様では、本明細書の方法のいずれか1つに従って同定されたヌクレオチド配列を含むヌクレオチド構築物が提供される。
【0028】
いくつかの態様では、本明細書で提供される任意のヌクレオチド配列に従うヌクレオチド構築物を含む細胞が提供される。
【0029】
いくつかの態様では、核酸のライブラリーから抗原特異的T細胞受容体α(TCRα)鎖とTCRβ鎖の対をコードするヌクレオチド配列を同定する方法が提供される。この方法は、TCRα鎖およびTCRβ鎖を発現可能な細胞集団に核酸ライブラリーを導入して細胞のライブラリーを作製すること;抗原に応答して第一の閾値を超えるマーカーの発現に基づいて、細胞のライブラリーの第一の集団を選択すること;および、ライブラリーの第一の集団からバリアント核酸の第一の集団を単離すること、を含む場合がある。いくつかの態様では、抗原は1つ以上であってもよく、また、抗原、TCRα鎖配列およびTCRβ鎖の配列の全てが単一の対象で見出されるものであってもよい。
【0030】
いくつかの態様では、核酸のライブラリーからT細胞受容体α(TCRα)鎖とTCRβ鎖をコードするヌクレオチド配列を同定する方法が提供される。この方法は、TCRα鎖およびTCRβ鎖を発現可能な細胞集団に核酸ライブラリーを導入して細胞のライブラリーを作製すること;および、サブセットに含まれるヌクレオチド配列の対照との比較における濃縮度に基づいて、バリアント核酸の第一の集団の少なくとも1つのヌクレオチド配列または核酸の同一性を同定すること、を含む場合がある。
【0031】
いくつかの態様では、核酸のライブラリーからヌクレオチド配列を同定する方法が提供される。この方法は、核酸のライブラリーを細胞の集団に導入して細胞ライブラリーを作製すること;細胞ライブラリーを細胞の第一の集団と接触させること;磁気ビーズ濃縮により、少なくとも1つのマーカーの発現に基づいて、細胞ライブラリーの亜集団を選択すること;および、亜集団に含まれるヌクレオチド配列が対照との比較において有意に濃縮されていることまたは枯渇していることに基づいて、少なくとも1つのヌクレオチド配列を決定すること、を含む場合がある。
【0032】
いくつかの態様では、細胞のコレクションが提供される。このコレクションは、少なくとも2つのT細胞のセットであって、ここで少なくとも2つのT細胞はそれぞれ少なくとも1つのTCRαおよびTCRβの対を発現するように構成されており、ここでTCRαおよびTCRβのそれぞれは対象に由来し、ここでT細胞は内因性TCRを発現せず、およびここでセットは1つ以上のT細胞活性化マーカーを活性化するために構成されている、少なくとも2つのT細胞のセットと;少なくとも2つのB細胞のセットであって、ここで少なくとも2つのB細胞はそれぞれ少なくとも1つの外因性新生抗原(または抗原)を発現するように構成されており、その結果、少なくとも2つの外因性新生抗原(または抗原)が産生可能になり、およびここで少なくとも2つの外因性新生抗原(または抗原)は、対象内におけるものと同じである、少なくとも2つのB細胞のセット、を含む。
【0033】
いくつかの態様では、TCR発現細胞のライブラリーが提供される。TCR発現細胞のライブラリーは、少なくとも3つのT細胞のセットであって、ここでT細胞のうちの少なくとも2つは、少なくとも2つのTCRαとTCRβの対(少なくとも2つのTCR対)を発現するように構成されており、ここで少なくとも2つのTCR対は一人の対象に由来し、ここで少なくとも3つのT細胞は内因性TCRを発現せず、ここで少なくとも3つのT細胞は、B細胞によって提示された抗原(または新生抗原)への結合に際して、1つ以上のT細胞活性化マーカーを活性化するために構成されており、ここでTCR細胞の数に反映される各TCR対のゲノムコピー量から、試料に含まれる全てのTCRのリードを得られ、およびここでTCRのうちの少なくとも1つが、ライブラリーを含む組成物全体に均等に分布していない、少なくとも3つのT細胞のセットを含む。
【0034】
いくつかの態様では、対象を治療する方法が提供される。この方法は、腫瘍を有する対象を特定すること;少なくとも2つのT細胞のセットを提供すること、少なくとも2つのT細胞はそれぞれ、少なくとも1つの異なるTCRαとTCRβの対を発現するように構成されており、ここでそれぞれのTCRαおよびTCRβは対象に由来し、少なくとも2つのB細胞のセットを提供すること、ここでB細胞のセットは少なくとも2つの外因性新生抗原を発現するように構成されており、ここで少なくとも2つの外因性新生抗原は、対象内で見出されるものと同じであり;少なくとも2つのT細胞のセットと少なくとも2つのB細胞のセットを組み合わせ、少なくとも2つの外因性新生抗原を介した少なくとも2つのT細胞の活性化に基づいて、少なくとも2つのTCR対の組み合わせを選択すること;および少なくとも2つのTCR対の組み合わせを対象に投与し、それによって腫瘍を治療すること、を含む。
【0035】
いくつかの態様では、対象を治療する方法が提供される。この方法は、腫瘍を有する対象を特定すること;少なくとも2つのT細胞のセットを提供すること、少なくとも2つのT細胞はそれぞれ、少なくとも1つの異なるTCRαとTCRβの対を発現するように構成されており、ここでそれぞれのTCRαおよびTCRβは対象に由来し;少なくとも2つの抗原提示細胞のセットを提供すること、ここで抗原提示細胞のセットは対象に由来するものであって、少なくとも2つの外因性新生抗原を発現するように構成されており、ここで少なくとも2つの外因性新生抗原は、対象内で見出される新生抗原と同じであり;少なくとも2つのT細胞のセットと少なくとも2つの抗原提示細胞のセットを組み合わせ、少なくとも2つの外因性新生抗原を介した少なくとも2つのT細胞の活性化に基づいて、少なくとも2つのTCR対の組み合わせを選択すること;および少なくとも2つのTCR対の組み合わせを対象に投与し、それによって腫瘍を治療すること、を含む。
【0036】
いくつかの態様では、医薬組成物が提供される。組成物は、対象の腫瘍中に存在する第一の抗原(または新生抗原)に結合する第一のTCR対と、対象の腫瘍中に存在する第二の抗原(または新生抗原)に結合する第二のTCR対とを含む可能性がある。
【0037】
いくつかの態様では、医薬組成物が提供される。組成物は、第一の抗原に結合し、かつ、MHCクラスI拘束性である第一のTCR対と、第二の抗原に結合し、かつ、MHCクラスII拘束性である第二のTCR対とを含む可能性がある。
【0038】
いくつかの態様では、細胞のコレクションが提供される。このコレクションは、少なくとも2つのT細胞のセットであって、ここで、少なくとも2つのT細胞はそれぞれ少なくとも1つのTCRαおよびTCRβの対を発現するように構成されており、ここで対は対象に由来し、ここでT細胞は内因性TCRを発現せず、およびここでセットは1つ以上のT細胞活性化マーカーを活性化するために構成されている、少なくとも2つのT細胞のセットと;少なくとも2つの抗原提示細胞(APC)細胞のセットであって、ここで、少なくとも2つのAPCはそれぞれ少なくとも1つの外因性新生抗原(または抗原)を発現するように構成されており、その結果、少なくとも2つの外因性新生抗原(または抗原)が産生可能になり、およびここで少なくとも2つの外因性新生抗原(または抗原)は、対象内におけるものと同じである、少なくとも2つの抗原提示細胞(APC)細胞のセット、を含む場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】ライブラリー生成用にTCRレパトアを回収する方法の概略を示す。
図2】癌治療での活用に向けて、TCRレパトアを回収し、抗原特異的TCRα配列およびTCRβ配列を同定する方法の概略を示す。
図3】TCR発現カセットの例示的な設計を示す。
図4】コンビナトリアルTCRライブラリーのスクリーニングに関するいくつかの態様を示す。
図5】本明細書で開示する、癌患者の治療に関する適用過程の例を示す。
図6】TCRβ-P2A-TCRα-T2A-ピューロマイシン耐性カセットの模式図を示す。
図7】TCR発現カセットを組み立てるための計画例を示す。
図8】本開示の態様に従うスクリーニング方法の模式図を示す。
図9】本開示の態様に従うスクリーニング方法のフローチャートを示す。
図10A図10A~10Jでは、新生抗原特異的TCR配列を同定するための、非生存腫瘍標本からのTCRレパトアの回収を図示する。図10Aは、スクリーニングプロセスのいくつかの態様の模式図である。
図10B】TCRクローン型の数を示すグラフである。
図10C】10,000個のTCRαとβの組み合わせそれぞれの確率密度を示すグラフである。
図10D】ブラストサイジン選択前後の細胞集団を示すプロットである。
図10E】図中に示す種々のマーカーを使用した一連のFACSの結果である。
図10F】様々なPCR産物を示すゲルである。
図10G】B細胞によるTMG発現の存在下(x軸)および非存在下(y軸)におけるスクリーニングの平均Rlog変換リードカウントを示す一連のプロットであり、10B~10Fに記載のpt1腫瘍試料、ならびに同一の方法で処理した3つの追加のMMRp-CRC試料(pt2、pt3およびpt4)について示している。新生抗原反応性のTCRリード化合物は、円で囲んだより大きな黒点として示した。
図10H】ステップ10Hを示すプロットである。
図10I】陽性対照(PMA/イオノマイシンによる処理)と比較した場合に、CD69陽性として測定される活性化を示すグラフである。対照(PARVA-P70R)、ならびにAKAP8L-R191Wペプチドによる活性化を示している。
図10J】陽性対照(PMA/イオノマイシンによる処理)と比較した場合に、CD69陽性として測定される活性化を示すグラフである。対照(ETS1-R70W)、ならびにTP53-R282Wペプチドによる活性化を示している。
図10K】陽性対照(PMA/イオノマイシンによる処理)と比較した場合に、CD69陽性として測定される活性化を示すグラフである。対照のB細胞(TMGを発現していない)、ならびにMG91(HSPA9-p.K654RfsX42)またはTMG3を発現しているB細胞による活性化を示している。
図10L】陽性対照(PMA/イオノマイシンによる処理)と比較した場合に、CD69陽性として測定される活性化を示すグラフである。対照のB細胞(TMGを発現していない)、ならびにMG132(ITPR3-p.L2379M)またはTMG4を発現するB細胞による活性化を示している。
図11A】TCRのクローン型の数を示す棒グラフである。
図11B】TCR発現プラスミドの模式図である。
図11C】各患者ライブラリーにおける10,000個のTCRαとβの組み合わせそれぞれの確率密度を示すグラフである。
図11D】各TCRあたりのリード量の範囲、平均カバー数、および中央値±alog単位の範囲内にあるTCRの割合を示す。
図12A】TCRのクローン型の数を示す棒グラフである。
図12B】2つの患者ライブラリーにおける10,000個のTCRαとβの組み合わせそれぞれの確率密度を示すグラフである。
図12C】10,000個のTCRαとβの組み合わせそれぞれのカバー数を示す表である。
図13A】未知の抗原特異性を有する24のTCRのうち、既知の抗原特異性を有する6つのTCRの希釈倍率を示す表である。
図13B】選択後のTCR陽性ジャーカットレポーター細胞の頻度を示すFACSの結果である。
図13C】CD69活性化マーカーに基づく上位および下位T細胞集団の選別戦略を示すFACSプロットである。
図13D】様々なPCR産物を示すゲルである。
図13E】既知の抗原特異性を有するTCRと未知の抗原特異性を有するTCRの、濃縮度と頻度を比較したグラフである。
図14A】特徴が分かっているTCR鎖を添加した50×50および100×100の設計のフローチャートである。
図14B】CD69活性化マーカーに基づく上位および下位T細胞集団の選別戦略を示す複数のFACSプロットである。
図14C】様々なPCR産物を示すゲルである。
図14D】上位試料対下位試料におけるTCR表現の倍率変化を、これらの試料における平均的な発現と比較して示すプロットである。
図14E】最も濃縮されたTCR配列の順位と、そのようなTCRの基準平均、Log(2)倍率変化および補正後のp値を示す表である。
図14F】抗原非存在下でのTCR反応性と抗原存在下でのTCR反応性とを比較するプロットである。
図14G】スクリーニングにおいて濃縮される抗原特異的TCRおよび特異性不明のTCRの確率を示すグラフである。
図15A】TCRカセットのコンビナトリアルアセンブリーを示す模式図である。
図15B】TCRライブラリーにおけるTCRα鎖、TCRβ鎖およびTCRαβの組み合わせの確率密度を示す一連のグラフである。
図15C】より複雑なTCRライブラリーを作製するための別の計画を示すグラフである。
図15D】より複雑なTCRライブラリーを作製するための別の計画を示すグラフである。
図15E】100×100のライブラリーを4つ合成し、これらを1:1:1:1の等モル比で混合することによって作製した2つの200×200TCRライブラリー中に存在するTCRの組み合わせの確率密度を描写するグラフである。
図15F】200×200ライブラリーのスクリーニング手法を用いて行った、pt2に含まれるTCRの同定について示す図である。
図15G】100×100スクリーニングで同定されたpt2由来TCRの、100×100および200×200ライブラリースクリーニングの両方における統計的挙動を示す表である。
図16A】CD69陽性細胞の割合と、APCを刺激するために使用したCMVペプチドの量との関係を示すグラフである。
図16B】CD69陽性細胞割合と、細胞播種密度との関係を示す棒グラフである。
図16C】CD69陽性細胞割合と、エフェクター対標的比および培養容器との関係を示す棒グラフである。
図16D】CD69陽性細胞割合と、播種したエフェクター細胞の数および使用された抗原性ペプチドの量との関係を示す一連の棒グラフである。
図16E】様々なTCRに対する濃縮度の度合いを示す棒グラフである。
図17A】CDK4およびCMVを導入したジャーカットTCR KO細胞によるペプチド滴定アッセイ。ジャーカットTCR KO細胞に、CDK4-8もしくはCDK4-17 TCR、またはCMV-1もしくはCMV-2 TCRレトロウイルスのいずれかを形質導入した。導入したTCRは、マウス定常領域とヒト可変領域から構成される。次に、mTCRβ陽性CD8陽性の集団を選別した。上段は選別細胞、下段は選別後の細胞を示す。
図17B】種々の濃度の同族ペプチド(CDK4)を負荷したJY細胞と20時間、共培養した後に(E:T比は1:1)、CD69の上方制御によって評価したTCR導入または非導入ジャーカット細胞の活性化。EC50値はグラフ中に記載している。PMA/イオノマイシンによる刺激を陽性対照として用いた。また、JY細胞を添加しなかったものと、最高濃度(1mg/ml)の無関係なペプチドを加えたJY細胞との共培養を陰性対照として用いた(各グラフの右側に示す)。アッセイは3つ組で行った(CDK4変異ペプチドを導入しなかったジャーカット細胞については2つ組で行った)。データは平均±標準偏差を示す(エラーバーはペプチド滴定曲線にのみ示した)。nは1であり、NTは非導入を示す。
図17C】種々の濃度の同族ペプチド(CMV)を負荷したJY細胞と20時間、共培養した後に(E:T比は1:1)、CD69の上方制御によって評価したTCR導入または非導入ジャーカット細胞の活性化。EC50値はグラフ中に記載している。PMA/イオノマイシンによる刺激を陽性対照として用いた。また、JY細胞を添加しなかったものと、最高濃度(1mg/ml)の無関係なペプチドを加えたJY細胞との共培養を陰性対照として用いた(各グラフの右側に示す)。アッセイは3つ組で行った(CDK4変異ペプチドを導入しなかったジャーカット細胞については2つ組で行った)。データは平均±標準偏差を示す(エラーバーはペプチド滴定曲線にのみ示した)。nは1であり、NTは非導入を示す。
図18A】異なる導入効率でCMV-1を導入したジャーカットTCR KO細胞のブラストサイジン選択。ジャーカットTCR KO細胞に、様々な量のCMV-1-ブラストサイジンレトロウイルス上清を形質導入し、様々な導入効率の導入細胞を得た。
図18B】非導入およびTCR導入ジャーカット細胞を、CD8およびmTCRβで染色した。CMV-1導入効率の異なるジャーカットTCR KO細胞を0.25×10細胞/mlの濃度で播種し、種々の濃度のブラストサイジンで選抜した。4日後、ブラストサイジンを除去するか(「4日目にブラストサイジンを除去」と示す)、あるいは新しいブラストサイジンをそれぞれの濃度で添加する(「4日目に新しいブラストサイジンを添加」と示す)ことにより、細胞を0.25×10細胞/mlの密度で再び播種した。ブラストサイジン選択開始後6日目または7日目それぞれにおける全生細胞およびmTCRβ陽性CD8陽性細胞の増殖倍率。nは1であり、NTは非導入を示す。
図18C】非導入およびTCR導入ジャーカット細胞を、CD8およびmTCRβで染色した。CMV-1導入効率の異なるジャーカットTCR KO細胞を0.25×10細胞/mlの濃度で播種し、種々の濃度のブラストサイジンで選抜した。4日後、ブラストサイジンを除去するか(「4日目にブラストサイジンを除去」と示す)、あるいは新しいブラストサイジンをそれぞれの濃度で添加する(「4日目に新しいブラストサイジンを添加」と示す)ことにより、細胞を0.25×10細胞/mlの密度で再び播種した。それぞれ、ブラストサイジン選抜開始後6日または7日目のmTCRβ陽性CD8陽性細胞の割合。nは1であり、NTは非導入を示す。
図18D】非導入およびTCR導入ジャーカット細胞を、CD8およびmTCRβで染色した。CMV-1導入効率の異なるジャーカットTCR KO細胞を0.25×10細胞/mlの濃度で播種し、種々の濃度のブラストサイジンで選抜した。4日後、ブラストサイジンを除去するか(「4日目にブラストサイジンを除去」と示す)、あるいは新しいブラストサイジンをそれぞれの濃度で添加する(「4日目に新しいブラストサイジンを添加」と示す)ことにより、細胞を0.25×10細胞/mlの密度で再び播種した。ブラストサイジン選択開始後6日目または7日目それぞれにおける全生細胞およびmTCRβ陽性CD8陽性細胞の増殖倍率。nは1であり、NTは非導入を示す。
図18E】非導入およびTCR導入ジャーカット細胞を、CD8およびmTCRβで染色した。CMV-1導入効率の異なるジャーカットTCR KO細胞を0.25×10細胞/mlの濃度で播種し、種々の濃度のブラストサイジンで選抜した。4日後、ブラストサイジンを除去するか(「4日目にブラストサイジンを除去」と示す)、あるいは新しいブラストサイジンをそれぞれの濃度で添加する(「4日目に新しいブラストサイジンを添加」と示す)ことにより、細胞を0.25×10細胞/mlの密度で再び播種した。それぞれ、ブラストサイジン選抜開始後6日または7日目のmTCRβ陽性CD8陽性細胞の割合。nは1であり、NTは非導入を示す。
図19A】ジャーカット細胞とAPCの共培養の拡張。(左図)各実験におけるエフェクタージャーカット細胞のCD8とmTCRβの発現。ジャーカット細胞に16のTCRから構成されるTCRライブラリーを形質導入した。16のうちの4つは、TMG2.1に含まれる抗原に特異的なものとした。(右図)TMG2.1を発現しているEBV LCLと20時間、共培養を行った(E:T比は1:1、細胞密度は2.5×10細胞/mlとした)。陰性対照として非導入EBV LCLを使用した。全生細胞とCD69陽性エフェクター細胞の割合とプロットした。どの条件を1100rpmで1分間遠心沈殿したかを(短時間の遠心)緑色の文字で示している。使用した細胞の総数は以下の通りとした:0.5×10細胞(96ウェル)、≦2×10細胞(15/50mlのファルコンチューブそれぞれに、1.3/2×10細胞)、170×10細胞(GMPバッグ)。データは平均±標準偏差を示している。n=1。96ウェルには丸底96ウェルプレートを、GMPバッグはMACS GMP細胞分化バッグ(Cell Differentiation Bag)500を使用した。は、少ない生細胞に由来するデータである。
図19B】ジャーカット細胞とAPCの共培養の拡張。(左図)各実験におけるエフェクタージャーカット細胞のCD8とmTCRβの発現。ジャーカット細胞にCDK4-17 TCRを形質導入した。二重陰性の集団は、それらのCD20発現が低いことによってゲートアウトが不可能な、標的細胞である。(右図)TMG2.1を発現しているEBV LCLと20時間、共培養を行った(E:T比は1:1、細胞密度は2.5×10細胞/mlとした)。陰性対照として非導入EBV LCLを使用した。全生細胞とCD69陽性エフェクター細胞の割合とプロットした。どの条件を1100rpmで1分間遠心沈殿したかを(短時間の遠心)緑色の文字で示している。使用した細胞の総数は以下の通りとした:0.5×10細胞(96ウェル)、≦2×10細胞(15/50mlのファルコンチューブそれぞれに、1.3/2×10細胞)、170×10細胞(GMPバッグ)。データは平均±標準偏差を示している。n=1。96ウェルには丸底96ウェルプレートを、GMPバッグはMACS GMP細胞分化バッグ500を使用した。は、少ない生細胞に由来するデータである。
図19C】ジャーカット細胞とAPCの共培養の拡張。(左図)各実験におけるエフェクタージャーカット細胞のCD8とmTCRβの発現。ジャーカット細胞にCDK4-17 TCRを形質導入した。二重陰性の集団は、それらのCD20発現が低いことによってゲートアウトが不可能な、標的細胞である。(右図)TMG2.1を発現しているEBV LCLと20時間、共培養を行った(E:T比は1:1、細胞密度は2.5×10細胞/mlとした)。陰性対照として非導入EBV LCLを使用した。全生細胞とCD69陽性エフェクター細胞の割合とプロットした。どの条件を1100rpmで1分間遠心沈殿したかを(短時間の遠心)緑色の文字で示している。使用した細胞の総数は以下の通りとした:0.5×10細胞(96ウェル)、≦2×10細胞(15/50mlのファルコンチューブそれぞれに、1.3/2×10細胞)、170×10細胞(GMPバッグ)。96ウェルの共培養は三つ組で行った。データは平均±標準偏差を示している。n=1。96ウェルには丸底96ウェルプレートを、GMPバッグはMACS GMP細胞分化バッグ500を使用した。は、少ない生細胞に由来するデータである。
図19D】ジャーカット細胞とAPCの共培養の拡張。(左図)各実験におけるエフェクタージャーカット細胞のCD8とmTCRβの発現。ジャーカット細胞にCDK4-17 TCRを形質導入した。(右図)TMG2.1を発現しているEBV LCLと20時間、共培養を行った(E:T比は1:1、細胞密度は2.5×10細胞/mlとした)。陰性対照として非導入EBV LCLを使用した。全生細胞とCD69陽性エフェクター細胞の割合とプロットした。どの条件を1100rpmで1分間遠心沈殿したかを(短時間の遠心)緑色の文字で示している。使用した細胞の総数は以下の通りとした:0.5×10細胞(96ウェル)、≦2×10細胞(15/50mlのファルコンチューブそれぞれに、1.3/2×10細胞)、170×10細胞(GMPバッグ)。(19d)96ウェルの共培養は二つ組で行った。データは平均±標準偏差を示している。n=1。96ウェルには丸底96ウェルプレートを、GMPバッグはMACS GMP細胞分化バッグ500を使用した。は、少ない生細胞に由来するデータである。
図20A】T細胞活性化マーカーであるCD69、CD25、CD62Lの経時的分析。CDK4-8またはCMV-1 TCRを導入したジャーカットTCR KO細胞(mTCRβ陽性CD8陽性細胞が80%超)を、TMG2.1を発現しているEBV LCLの存在下(CDK4-8:丸、CMV-1:三角)、または非存在下(CDK4-8:四角、CMV-1:逆三角)で、16、20、24、28、32時間、E:T比1:1で培養した。その後、エフェクター細胞におけるCD69、CD25、CD62Lの発現をマルチカラーフローサイトメトリーで分析した。TMG2.1を発現しているEBV LCLと共培養した非導入ジャーカットTCR KO細胞を陰性対照として用いた(菱形)。代表として示したそれぞれのドットプロットは、CDK4-8導入ジャーカット細胞とTMG2.1を発現しているEBV LCLとを20時間の共培養した結果である。エフェクター細胞におけるCD69の上方制御を示す。共培養は三つ組で行った(平均±標準偏差を示す)。n=1、NTは非導入を表す。
図20B】T細胞活性化マーカーであるCD69、CD25、CD62Lの経時的分析。CDK4-8またはCMV-1 TCRを導入したジャーカットTCR KO細胞(mTCRβ陽性CD8陽性細胞が80%超)を、TMG2.1を発現しているEBV LCLの存在下(CDK4-8:丸、CMV-1:三角)、または非存在下(CDK4-8:四角、CMV-1:逆三角)で、16、20、24、28、32時間、E:T比1:1で培養した。その後、エフェクター細胞におけるCD69、CD25、CD62Lの発現をマルチカラーフローサイトメトリーで分析した。TMG2.1を発現しているEBV LCLと共培養した非導入ジャーカットTCR KO細胞を陰性対照として用いた(菱形)。代表として示したそれぞれのドットプロットは、CDK4-8導入ジャーカット細胞とTMG2.1を発現しているEBV LCLとを20時間の共培養した結果である。エフェクター細胞におけるCD25の上方制御を示す。共培養は三つ組で行った(平均±標準偏差を示す)。n=1、NTは非導入を表す。
図20C】T細胞活性化マーカーであるCD69、CD25、CD62Lの経時的分析。CDK4-8またはCMV-1 TCRを導入したジャーカットTCR KO細胞(mTCRβ陽性CD8陽性細胞が80%超)を、TMG2.1を発現しているEBV LCLの存在下(CDK4-8:丸、CMV-1:三角)、または非存在下(CDK4-8:四角、CMV-1:逆三角)で、16、20、24、28、32時間、E:T比1:1で培養した。その後、エフェクター細胞におけるCD69、CD25、CD62Lの発現をマルチカラーフローサイトメトリーで分析した。TMG2.1を発現しているEBV LCLと共培養した非導入ジャーカットTCR KO細胞を陰性対照として用いた(菱形)。代表として示したそれぞれのドットプロットは、CDK4-8導入ジャーカット細胞とTMG2.1を発現しているEBV LCLとを20時間の共培養した結果である。CD69とCD25との共発現分析。共培養は三つ組で行った(平均±標準偏差を示す)。n=1、NTは非導入を表す。
図20D】T細胞活性化マーカーであるCD69、CD25、CD62Lの経時的分析。CDK4-8またはCMV-1 TCRを導入したジャーカットTCR KO細胞(mTCRβ陽性CD8陽性細胞が80%超)を、TMG2.1を発現しているEBV LCLの存在下(CDK4-8:丸、CMV-1:三角)、または非存在下(CDK4-8:四角、CMV-1:逆三角)で、16、20、24、28、32時間、E:T比1:1で培養した。その後、エフェクター細胞におけるCD69、CD25、CD62Lの発現をマルチカラーフローサイトメトリーで分析した。TMG2.1を発現しているEBV LCLと共培養した非導入ジャーカットTCR KO細胞を陰性対照として用いた(菱形)。代表として示したそれぞれのドットプロットは、CDK4-8導入ジャーカット細胞とTMG2.1を発現しているEBV LCLとを20時間の共培養した結果である。エフェクター細胞におけるCD62Lの下方制御を示す。共培養は三つ組で行った(平均±標準偏差を示す)。n=1、NTは非導入を表す。
図20E】T細胞活性化マーカーであるCD69、CD25、CD62Lの経時的分析。CDK4-8またはCMV-1 TCRを導入したジャーカットTCR KO細胞(mTCRβ陽性CD8陽性細胞が80%超)を、TMG2.1を発現しているEBV LCLの存在下(CDK4-8:丸、CMV-1:三角)、または非存在下(CDK4-8:四角、CMV-1:逆三角)で、16、20、24、28、32時間、E:T比1:1で培養した。その後、エフェクター細胞におけるCD69、CD25、CD62Lの発現をマルチカラーフローサイトメトリーで分析した。TMG2.1を発現しているEBV LCLと共培養した非導入ジャーカットTCR KO細胞を陰性対照として用いた(菱形)。代表として示したそれぞれのドットプロットは、CDK4-8導入ジャーカット細胞とTMG2.1を発現しているEBV LCLとを20時間の共培養した結果である。CD69とCD62Lとの共発現分析。共培養は三つ組で行った(平均±標準偏差を示す)。n=1、NTは非導入を表す。
図21A】ジャーカットTCR KO細胞における、ピューロマイシン耐性遺伝子を持つ、NFATに基づくレポーターレンチウイルスベクターの有効性の評価。ピューロマイシン耐性カセットを有する4つのNFATに基づくレポーターレンチウイルスプラスミドの模式図である。
図21B】ジャーカットTCR KO細胞における、ピューロマイシン耐性遺伝子を持つ、NFATに基づくレポーターレンチウイルスベクターの有効性の評価。形質移入試薬としてPEIを使用することにより、4つのベクターをHEK293T細胞に形質移入した。形質移入効率の指標として、追加のプラスミド(pmaxGFP)を共に導入した。ドットプロットは、形質移入後3日目の形質移入しなかったHEK293T細胞と形質移入したHEK293T細胞における、GFPの発現を示す。n=1、NTは非導入を表す。
図21C】ジャーカットTCR KO細胞における、ピューロマイシン耐性遺伝子を持つ、NFATに基づくレポーターレンチウイルスベクターの有効性の評価。レンチウイルス上清をポリブレンと組み合わせて使用し、ジャーカット TCR KO細胞に導入した。ジャーカット細胞をPMA/イオノマイシンで24時間刺激し、その後、1μg/mlのピューロマイシンで3日間選択した。ドットプロットは、非導入および導入されたジャーカットTCR KO細胞での、生細胞(DAPI陰性)およびCD69陽性の割合を示す。n=1、NTは非導入を表す。
図21D】ジャーカットTCR KO細胞における、ピューロマイシン耐性遺伝子を持つ、NFATに基づくレポーターレンチウイルスベクターの有効性の評価。導入後、ピューロマイシンで選択した細胞を、2回目の24時間PMA/イオマイシン刺激に供するために20日間増殖させ、その後、様々な濃度のピューロマイシンを用いて、4日間のピューロマイシン選択を行った。生細胞(DAPI陰性)とCD69陽性細胞の割合をプロットする。NT細胞は、図21CのNT細胞とは異なることに注意されたい。n=1、NTは非導入を表す。
図22A】ジャーカットTCR KO細胞における、EGFPーNFATに基づくレポーターレンチウイルスベクターの有効性の評価。EGFP遺伝子を有する4つのNFATに基づくレポーターレンチウイルスプラスミドの模式図である。
図22B】ジャーカットTCR KO細胞における、EGFPーNFATに基づくレポーターレンチウイルスベクターの有効性の評価。形質移入試薬としてPEIまたはフュージーン(FuGENE)を用いて、4つのNFATベクターをHEK293T細胞に形質移入した。形質移入後3日目のHEK293T細胞における、GFP陽性の割合を示す。n=1、MFIは平均蛍光強度、EGFPは高感度緑色蛍光タンパク質、NTは非導入を示す。
図22C】ジャーカットTCR KO細胞における、EGFPーNFATに基づくレポーターレンチウイルスベクターの有効性の評価。導入試薬としてポリブレンを用いて、PEI形質移入からのレンチウイルス上清をジャーカットTCR KO細胞に導入した。NFATを導入したジャーカットTCR KO細胞をPMA/イオノマイシンで24時間刺激し、24時間ごとにGFPの発現(GFP陽性細胞の割合およびMFIとして示す)を3日間測定した。ジャーカット細胞の活性化は、CD69の上方制御によって評価した。n=1、MFIは平均蛍光強度、EGFPは高感度緑色蛍光タンパク質、NTは非導入を示す。
図23】初代T細胞における、EGFP-NFATに基づくレポーターレンチウイルスベクターの有効性の評価。初代T細胞に、図23で使用したNFAT4×レンチウイルスベクター、または異なる最小プロモーター(minP)を含むNFAT4xレンチウイルスベクター(NFAT4x新)のいずれかを導入した。NFATを導入した初代T細胞をPMA/イオノマイシンで24時間刺激し、24時間ごとにGFPの発現(GFP陽性細胞の割合およびMFIとして示す)を3日間測定した。ジャーカット細胞の活性化は、CD69の発現により評価した。n=2、生物学的に独立した反復実験(平均±標準偏差として示す)。P≦0.05、**P≦0.01、ns:有意差なし(二元配置分散分析に続くシダックスの多重比較検定)。MFIは平均蛍光強度を、NTは非導入を示す。
図24A】ジャーカットTCR KO細胞における、NFATに基づくレポータープラスミドの非ウイルス性送達。2つのNFATプラスミドの模式図である。NFAT0×はNFAT結合部位を含まないもので、minP単体のバックグラウンドシグナルを評価するために使用した。
図24B】ジャーカットTCR KO細胞における、NFATに基づくレポータープラスミドの非ウイルス性送達。NFAT0×およびNFAT4xを、CDK4-17導入ジャーカットTCR KO細胞(mTCRβ陽性CD8陽性細胞の割合がおよそ90%)にエレクトロポレーションによって導入した。プラスミドDNAの存在下または非存在下で、エレクトロポレーションしなかった、またはエレクトロポレーションしたジャーカット細胞の生存率を、エレクトロポレーション後20時間目、2日目および6日目に評価した。n=1。minPは最小プロモーターを、EGFPは高感度緑色蛍光タンパク質を示す。
図24C】ジャーカットTCR KO細胞における、NFATに基づくレポータープラスミドの非ウイルス性送達。NFAT0xおよびNFAT4xを、CDK4-17導入ジャーカットTCR KO細胞(mTCRβ陽性CD8陽性細胞の割合がおよそ90%)にエレクトロポレーションによって導入した。NFATを形質移入したジャーカット細胞における、E2クリムゾンおよびGFPの一重陽性および二重陽性集団の割合の経時的分析。抗生物質による選択としては、6日目から開始する、7日間の0.5μg/mlのピューロマイシン選択を行った。選択開始後4日目に、新しいピューロマイシンと交換した。n=1。minPは最小プロモーターを、EGFPは高感度緑色蛍光タンパク質を示す。
図24D】ジャーカットTCR KO細胞における、NFATに基づくレポータープラスミドの非ウイルス性送達。NFAT0xおよびNFAT4xを、CDK4-17導入ジャーカットTCR KO細胞(mTCRβ陽性CD8陽性細胞の割合がおよそ90%)にエレクトロポレーションによって導入した。ピューロマイシン選択7日後の、細胞生存率(DAPI陰性細胞)および、GFPとE2クリムゾン発現のドットプロット。n=1。minPは最小プロモーターを、EGFPは高感度緑色蛍光タンパク質を示す。
図25A】非導入ジャーカットTCR KO細胞のブラストサイジン選択。非形質転換ジャーカットTCR KO細胞を0.25×10細胞/mlの濃度で播種し、異なる濃度のブラストサイジンで6日間選択した。4日後、ブラストサイジンを除去するか(「4日目にブラストサイジンを除去」と示す)、あるいは新しいブラストサイジンをそれぞれの濃度で添加する(「4日目に新しいブラストサイジンを添加」と示す)ことにより、細胞を0.25×10細胞/mlの密度で再び播種した。ブラストサイジン選択後の全生細胞の増殖倍率。n=1。NTは非導入を示す。
図25B】非導入ジャーカットTCR KO細胞のブラストサイジン選択。非形質転換ジャーカットTCR KO細胞を0.25×10細胞/mlの濃度で播種し、異なる濃度のブラストサイジンで6日間選択した。4日後、ブラストサイジンを除去するか(「4日目にブラストサイジンを除去」と示す)、あるいは新しいブラストサイジンをそれぞれの濃度で添加する(「4日目に新しいブラストサイジンを添加」と示す)ことにより、細胞を0.25×10細胞/mlの密度で再び播種した。4μg/mlのブラストサイジンの存在下または非存在下で培養した非導入細胞のFSC-A/SSC-AおよびCD8/mTCRβ発現を示すフローサイトメトリーのプロットである。n=1。NTは非導入を示す。
図26A】異なる導入効率でCMV-1を導入し、4μg/mlのブラストサイジンで選択した、CMV-1導入ジャーカットTCR KO細胞のmTCRβのMFI。導入効率の異なるCMV-1TCRレトロウイルス導入ジャーカットTCR KO細胞を0.25×10細胞/mlの密度で播種し、4μg/mlブラストサイジンで選択した。4日後、ブラストサイジンを除去するか(以下、4日目にブラスチジンを除去)、あるいは新たに4μg/mlのブラストサイジンを添加する(以下、4日目に新たにブラスチジンを添加)ことにより、0.25×10細胞/mlの密度で細胞を再度播種した。6日間または7日間、ブラストサイジンで選択したmTCRβ陽性CD8陽性細胞のmTCRβのMFIを示す。n=1。MFIは平均蛍光強度を示す。
図26B】異なる導入効率でCMV-1を導入し、4μg/mlのブラストサイジンで選択した、CMV-1導入ジャーカットTCR KO細胞のmTCRβのMFI。導入効率の異なるCMV-1TCRレトロウイルス導入ジャーカットTCR KO細胞を0.25×10細胞/mlの密度で播種し、4μg/mlブラストサイジンで選択した。4日後、ブラストサイジンを除去するか(以下、4日目にブラスチジンを除去)、あるいは新たに4μg/mlのブラストサイジンを添加する(以下、4日目に新たにブラスチジンを添加)ことにより、0.25×10細胞/mlの密度で細胞を再度播種した。ブラストサイジン選択開始後7日目のCD8およびmTCRβ染色を示す代表的なドットプロット。n=1。MFIは平均蛍光強度を示す。
図27】2種類の抗ヒトCD69モノクローナル抗体、クローンFN50とクローンCH/4を用いたT細胞の活性化の測定。実験の設定については、図19Bの説明に記載した。細胞を、CD69クローンFN50(APC)およびCD69クローンCH/4(PE)に関して同時に染色した。n=1。96ウェルには丸底96ウェルプレートを使用した。は、少ない生細胞に由来するデータである。
図28】新生抗原特異的TCR単離プラットフォームのいくつかの態様を示す。
図29】TCRのカバー数を維持しながら、多数の細胞のより効率的な処理を可能にすることによる、TCR単離プラットフォームの向上。
図30】ブラストサイジンの効率と毒性を試験する方法。
図31】TCRプラットフォーム分離プラットフォームの様々な態様を示す。このプラットフォームは、すべてのステップ、または枠で囲ったステップのそれぞれ(例えば、1、および/または2、および/または3、および/または4)、または直線状に配置し、番号を付けたステップ(例えば、1~7)のうちのいずれか1つ以上を含む可能性がある。
図32】配列番号1では、TCRβ-P2A-TCRα-T2A-ピューロマイシン耐性発現カセットとして発現されるTCR遺伝子のアミノ酸配列を、配列番号4では、TCRβ-P2A-TCRα-T2A-ブラストサイジン耐性発現カセットとして発現されるTCR遺伝子のアミノ酸配列を示す。
図33】配列番号2は、CD8α-P2A-CD8β導入遺伝子のアミノ酸配列である。
図34】配列番号3は、HLA-A*02:01-IRES-フュージョンレッド(FusionRed)のヌクレオチド配列の例を示している。
図35A】スクリーニング設計の概略を示す。5つの特徴の分かっているTCRと、卵巣癌(OVC)または大腸癌(CRC)試料に由来する95の特徴の分かっていないTCRを使用して、100×100設計のコンビナトリアルTCRライブラリーを作製した。
図35B】は、CD69マーカーを使用し、FACSによって、T細胞活性化に関して細胞を選別した結果を示している。
図35C】得られたPCR産物のサイズが約1.5kbであることを示す。PCRは、選別したTCR導入ジャーカットT細胞からTCRb-P2A-TCRαカセットの一部を増幅するために、サイクル数を制限して行った。
図35D図35CのスクリーニングデータのTCR濃縮度分析について示している。
図35E】5つの特徴の分かっている抗原反応性TCRの特徴を示す。
図36A】スクリーニング設計の概略を示す。5つの特徴の分かっているTCRと、卵巣癌(OVC)または大腸癌(CRC)試料に由来する95の特徴の分かっていないTCRを使用して、100×100設計のコンビナトリアルTCRライブラリーを作製した。
図36B】スクリーニングにおける選別戦略を示している。
図36C】TCR発現カセットの回収について示す。
図36D図36CのスクリーニングデータのTCR濃縮度分析について示している。
図36E図36Dにおいて最も有意に濃縮された上位7つのTCRの特徴を示している。
図37A】は、6×6のコンビナトリアルTMGエンコーディングの設計の模式図を示す。
図37B】pt2-TCRライブラリーのスクリーニングの反復実験の数の関数として、TCRα×βすべての組み合わせの順位について分析した結果を示す図である。
図37C】CRC-TCRライブラリースクリーニングを2回または3回反復して行った結果に基づく統計分析を表にまとめた。
図37D】ペアワイズTCR濃縮度分析に使用したpt4試料に関する表である。
図37E】ペアワイズTCR濃縮度分析の結果を示す。
図38】スクリーニングデータと検証データの間における、TCRの活性化とTCRのバックグラウンドの活性化の相関を示す図である。
図39】TCR表現の指標を示す。このグラフは、5つの特徴の分かっているTCRをそれらの同族抗原で刺激すると、上位試料(最も明るい灰色)で濃縮されることを示している。TMGを発現するB細胞との共培養に由来する下位試料は、より低いrlog値を示す。
図40】配列番号1、すなわち、TCRb-P2ATCRα-T2A-ピューロマイシン耐性発現カセットとして発現されるTCR遺伝子の模式図である。
図41】配列番号2、すなわち、CD8α-P2A-CD8β導入遺伝子の模式図である。
図42】配列番号3、すなわち、K562-HLA-A*02:01-IRESフュージョンレッドの模式図である。
図43】配列番号4、すなわち、TCRb-P2A-TCRα-T2Aブラストサイジン耐性発現カセットとして発現されるTCR遺伝子の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
様々の態様の詳細な説明
【0041】
本開示は、多様なT細胞集団からT細胞受容体(TCR)のレパトアを回収するための方法および組成物を提供する。方法のいくつかの態様では、ヒト組織標本を含む非生存材料から、抗原特異的TCRを同定および単離することを提供する。いくつかの態様は、図31の一部または全部に従うものである。いくつかの態様において、方法は、図31および本明細書で概略を示すステップ(1)~(7)の1つ以上を含む場合がある。例えば方法は、(1)試料を取得すること、を含む場合がある。試料は、感染症、自己免疫疾患、または癌を患っている患者に由来する組織、血液、または体液であってよい。試料は生存細胞であっても非生存細胞であってもよい。ステップ(2)試料に含まれるTCRα鎖およびTCRβ鎖の配列を決定する。ステップ(3)TCRαβ対のライブラリーを作製するために、TCRα鎖配列とTCRβ鎖配列を選択し、コンビナトリアルペアリングを行う。ステップ(4)TCRαβ対のライブラリーをレポーター細胞のプール、例えばジャーカットレポーターT細胞のプールに導入する。ステップ(5)TCRαβ対のライブラリーで修飾されたレポーター細胞を、少なくとも1つの目的の抗原を提示する抗原提示細胞で刺激する。少なくとも1つの目的の抗原は、自己由来であっても同種異系であってもよい。ステップ(6)少なくとも1つの目的の抗原に特異的なTCRαβ対を決定する。ステップ(7)TCRαβ対を細胞に導入し、TCRαβ対を含む細胞を選択する。いくつかの態様において、方法は、前述したステップ(1)~(7)のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの態様では、いずれのステップも、適宜、本明細書で提供される他の態様によって省略、反復、または置換することができる。また、その他の介在するステップを追加することも可能である。
【0042】
いくつかの態様では、本明細書に記載のいずれの方法に関しても、TCR対および/またはTCR対を発現しているT細胞は、抗原(新生抗原など)への結合によって選択または同定され、ここで抗原は、B細胞または抗原提示細胞によって発現される。いくつかの態様では、本明細書に記載のいずれの方法に関しても、抗原または新生抗原は対象の腫瘍に由来し、TCR対のTCRαおよびTCRβもそれぞれ、この対象に由来する。いくつかの態様では、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、50、100、500、1000、10000、100000、または100万のTCR対(またはこれらの対を含む細胞)が存在し、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、50、100、500、1000、10000、100000、または100万の抗原が存在する。
【0043】
いくつかの態様において、前述した方法で用いられる、および/または前述した方法から得られる組成物はいずれも、ライブラリーおよび/またはキットおよび/または組成物としての、および/または医療用途および/またはスクリーニング系においてのそれらの適用が想定される。いくつかの態様において、組成物は、本明細書に提供される方法のいずれかによって選択または生成されたTCRα鎖およびβ鎖の対合であり得る。いくつかの態様において、組成物は、本明細書で提供される任意の方法に伴われる成分または、本明細書で提供される任意の方法に由来するの製品のいずれであってもよい。
【0044】
様々な細胞組成物、ライブラリー、細胞およびタンパク質関連治療薬も提供される。いくつかの態様において、共培養は、細胞の集団に、少なくとも第一および第二の型の細胞を含む。いくつかの態様において、共培養に含まれる第一および第二の型の細胞は、接触して表現型の変化を誘導する可能性がある。いくつかの態様において、共培養は、培養容器内で維持される。いくつかの態様において、共培養は、培養バッグ内で維持される。いくつかの態様において、第一および第二の型の細胞は、2つ以上の異なる細胞型の集団である。いくつかの態様において、細胞の集団は、正確に2つの異なる細胞型の集団である。いくつかの態様において、本明細書で提供される任意の方法に由来する細胞のコレクションまたは中間産物または結果として生じる細胞集団のいずれかは、特定の組成物、ライブラリー、治療薬等として想定される。いくつかの態様において、共培養は、T細胞とB細胞を含む。
【0045】
いくつかの態様において、共培養に含まれる第一の型の細胞は、T細胞である。いくつかの態様において、第一の型は、ヒトT細胞を含む。いくつかの態様において、第一の型は、ジャーカットT細胞を含む。いくつかの態様において、第一の型は、ヒトCD8αおよびCD8βを発現するように操作され、内因性TCR発現を欠くジャーカットT細胞を含む。いくつかの態様において、第一の型は、1つ以上のバリアント核酸分子を発現するジャーカットT細胞を含む。いくつかの態様において、第一の型は、1つ以上のバリアントTCRを発現するジャーカットT細胞を含む。いくつかの態様において、ジャーカットT細胞は、低密度での前培養に起因して、CD69を含むがこれに限定されない活性化マーカーを低いバックグラウンドレベルで発現する。
【0046】
いくつかの態様において、共培養に含まれる第二の型の細胞は、抗原を提示可能な細胞を含む。いくつかの態様において、他の型の細胞は、抗原を提示することができるヒト細胞を含む。いくつかの態様において、他の型の細胞は、ヒト腫瘍細胞を含む。いくつかの態様において、他の型の細胞は、ヒトB細胞を含む。いくつかの態様において、他の型の細胞は、ヒト自己B細胞を含む。いくつかの態様において、他の型の細胞は、ヒト自己不死化B細胞を含む。いくつかの態様において、B細胞集団は、外来抗原を発現するように操作される。いくつかの態様において、B細胞集団は、複数の外因性抗原を発現するように操作される。いくつかの態様において、B細胞集団は、複数の外因性新生抗原を発現するように操作される。いくつかの態様において、B細胞集団は、複数の外来性新生抗原を複数のミニ遺伝子の形式で発現するように操作される。いくつかの態様において、B細胞集団は、複数の外因性新生抗原を単一のTMGの形式で発現するように操作される。いくつかの態様において、B細胞集団は、複数の外因性新生抗原を複数のTMGの形式で発現するように操作される。いくつかの態様において、B細胞集団中の個々の細胞は、単一の外来性ミニ遺伝子またはTMGのみを発現する。いくつかの態様において、B細胞集団中の個々の細胞は、複数の外来性ミニ遺伝子またはTMGを発現することができる。
【0047】
いくつかの態様では、組成物が提供される。組成物は、i)活性化され、その活性化が1つ以上のT細胞活性化マーカーによって測定される、T細胞の第一の集団;およびii)参照集団として、同じTCRライブラリーを発現しているかまたは同じTCRライブラリーのプラスミドプールに含まれる、T細胞の別の選択物の第二の集団を含み、ここで、1つ以上のTCRが、T細胞の第二の集団と比較して、T細胞の第一の集団で濃縮されている。
【0048】
いくつかの態様では、細胞のコレクションが提供され、このコレクションは、少なくとも1つのTCRαとTCRβの対を発現するように構成されたT細胞のセットであって、ここで対は対象に由来し、ここでT細胞は内因性TCRを発現せず、ここでT細胞のセットが1つ以上のT細胞活性化マーカーを活性化するために構成されている、T細胞のセットと;B細胞のセットであって、ここでB細胞のセットは少なくとも1つの外因性新生抗原を発現するように構成されており、ここで少なくとも1つの外因性新生抗原は対象の腫瘍に由来する、B細胞のセットを含む。
【0049】
いくつかの態様では、コレクション中に少なくとも2つのTCR対と少なくとも2つの外来性新生抗原が存在する。いくつかの態様では、組成物中に少なくとも、2、3、4、5、6、7、8、9、10、50、100、500、1000、10000、100000、または100万のTCR対(またはその対を含む細胞)が存在する。いくつかの態様では、コレクション中に少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、50、100、500、1000、10000、100000、または100万個の抗原(またはこれらの抗原を発現するB細胞)が存在する。いくつかの態様では、組成物中に少なくとも、2、3、4、5、6、7、8、9、10、50、100、500、1000、10000、100000、または100万のTCR対(またはこれらの対を含む細胞)が存在し、コレクション中には少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、50、100、500、1000、10000、100000、または100万の抗原が存在している。いくつかの態様では、それぞれの対の配列またはその一部は異なる。いくつかの態様では、それぞれのTCR対は異なる。
【0050】
いくつかの態様において、共培養中で2つ以上の細胞集団が存在する比率は、1000:1~1:1000の範囲内である。
【0051】
いくつかの態様において、共培養中で2つ以上の細胞集団が存在する比率は、接触誘導性表現型を誘導できるように設定される。
【0052】
いくつかの態様では、共培養中でB細胞集団とT細胞集団が存在する比率によって、T細胞の活性化が可能になる。
【0053】
いくつかの態様では、共培養中でB細胞集団とT細胞集団が存在する比率によって、特異的TCRを発現するT細胞サブセットのT細胞の活性化が可能になる。いくつかの態様では、共培養中で2つ以上の細胞集団が存在する比率は、1000:1~1:1000の範囲内である。いくつかの態様において、比率は、TCR細胞の活性化を導くのに十分である
【0054】
いくつかの態様において、共培養または組成物は、a)ヒトCD8a、CD8bおよびTCRバリアントライブラリーを発現するように操作され、内因性TCRの発現を欠くジャーカットT細胞;ならびに、b)不死化された自己ヒトB細胞であって、自己ヒトB細胞が単一のミニ遺伝子またはTMGの形式で複数の抗原を発現する自己ヒトB細胞、を含む。いくつかの態様において、共培養は、培養容器または培養バッグ内で維持され、B細胞集団およびT細胞集団は、T細胞の活性化を可能にする比率で存在する。抗原特異的T細胞の活性化は、TCRライブラリー中の特定のTCRを介してのみ媒介される。
【0055】
いくつかの態様において、T細胞(TCR対を発現する)対B細胞(新生抗原を提供する)の数および/または比率は、少なくとも2対2、例えば、少なくとも10対10、少なくとも1000(TCR対)対10(新生抗原)、少なくとも10,000(TCR対)対10(新生抗原)、少なくとも10,000(TCR対)対100(新生抗原)、少なくとも10,000(TCR対)対1000(新生抗原)、少なくとも100,000(TCR対)対10、100、1000、もしくは10,000(抗原)、少なくとも50対50、少なくとも100対100、少なくとも1,000,000(TCR)対10,000(抗原)、前記比率の任意の二つの数の間に定義される任意の範囲など、である。いくつかの態様では、単一のTCR対および/または抗原が各細胞(TまたはB細胞)中に存在し、前述した各数値が細胞数をも表す可能性がある。
【0056】
いくつかの態様において、組成物は、B細胞およびT細胞の共培養を含み、ここで、T細胞によって発現される少なくとも2つの異なるTCR対と、B細胞によって発現される少なくとも2つの異なる抗原が存在する。
【0057】
いくつかの態様では、T細胞には非常の多くのTCRが存在し、B細胞には非常の多くの抗原が存在する。いくつかの態様において、組成物は、少なくとも1つのTCRおよび1つの抗原(または少なくとも2つ以上のTCRおよび/または2つ以上の抗原)を介したT細胞の活性化を誘導できるように構成される。いくつかの態様では、組成物中に低バックグラウンドレベルのCD69が存在する。いくつかの態様において、組成物は、自己のAPC(または自己の不死化B細胞)を含む。いくつかの態様において、T細胞は、TCRライブラリーを発現するように操作されている(および/または内因性TCRの発現を欠いている)。いくつかの態様において、T細胞は、天然のTCRの発現を欠いているが、外因性TCR対を介してTCRの活性化が可能になるように構成される。
【0058】
いくつかの態様では、細胞のコレクションが提供される。このコレクションは、少なくとも2つのT細胞のセットを含む。いくつかの態様において、それぞれは、少なくとも1つのTCRαとTCRβの対を発現するように構成される。いくつかの態様において、TCRαおよびTCRβはそれぞれ対象に由来し、T細胞は内因性TCRを発現せず、セットは1つ以上のT細胞活性化マーカーを活性化するように構成されている。コレクションはさらに、少なくとも2つのB細胞のセットを含む。少なくとも2つのB細胞はそれぞれ、少なくとも1つの外因性新生抗原(または抗原)を発現するように構成されており、その結果、少なくとも2つの外因性新生抗原(または抗原)が産生可能になり、および少なくとも2つの外因性新生抗原(または抗原)は、対象内におけるものと同じである。
【0059】
いくつかの態様において、細胞組成物中に、少なくとも2つのB細胞のセットは、外因性新生抗原(または抗原)を産生する少なくとも第一のB細胞と、第二の外因性新生抗原(または抗原)を産生する少なくとも第二のB細胞を含む。
【0060】
いくつかの態様では、TCR発現細胞のライブラリーが提供される。TCR発現細胞のライブラリーは、少なくとも3つのT細胞のセットであって、ここでT細胞のうちの少なくとも2つは、少なくとも2つのTCRαとTCRβの対(少なくとも2つのTCR対)を発現するように構成されており、ここで少なくとも2つのTCR対は一人の対象に由来し、ここで少なくとも3つのT細胞は内因性TCRを発現せず、ここで少なくとも3つのT細胞は、B細胞によって提示された抗原(または新生抗原)への結合に際して、1つ以上のT細胞活性化マーカーを活性化するために構成されており、ここでTCR細胞の数に反映される各TCR対のゲノムコピー量から、試料に含まれる全てのTCRのリードを得られ、およびここでTCRのうちの少なくとも1つが、ライブラリーを含む組成物全体に均等に分布していない、少なくとも3つのT細胞のセットを含む。
【0061】
いくつかの態様において、少なくとも1つのT細胞の分布は、B細胞によって提示される抗原に結合することによって変化する。いくつかの態様において、少なくとも2つのTCR対は、ライブラリー中にほぼ均等に存在する。
【0062】
いくつかの態様では、細胞のコレクションが提供される。このコレクションは、少なくとも2つのT細胞のセットを含み、ここでそれぞれは、少なくとも1つのTCRαとTCRβの対を発現するように構成されており、ここで対は対象に由来し、ここでT細胞は内因性TCRを発現せず、およびここでセットは1つ以上のT細胞活性化マーカーを活性化するために構成されている。コレクションはさらに、少なくとも2つの抗原提示細胞(APC)細胞のセットを含む場合があり、ここで少なくとも2つのAPCはそれぞれ少なくとも1つの外因性新生抗原(または抗原)を発現するように構成されており、その結果、少なくとも2つの外因性新生抗原(または抗原)が産生可能になり、およびここで少なくとも2つの外因性新生抗原(または抗原)は、対象内におけるものと同じである。
【0063】
いくつかの態様において、セットまたはキットは、T細胞の第一の集団とT細胞の第二の集団を含む。いくつかの態様において、T細胞の第一の集団は、測定可能な特定の表現型を共有するT細胞から構成される。いくつかの態様において、T細胞の第一の集団は、T細胞活性化の表現型を共有するT細胞を含む。いくつかの態様において、T細胞の第一の集団は、選択されたT細胞の集団であってよい。
【0064】
いくつかの態様において、T細胞の第一の集団は、1つ以上のマーカーの特定の発現レベルを共有するT細胞を含む。いくつかの態様において、T細胞の第一の集団は、1つ以上のT細胞活性化マーカーの発現を共有するT細胞を含む。
【0065】
いくつかの態様において、T細胞は、バリアント核酸分子のライブラリーを発現する。いくつかの態様において、T細胞は、TCRライブラリーを発現する。
【0066】
いくつかの態様において、T細胞の第二の集団は、参照集団とすることができる。参照集団は、選択されたT細胞の第一の集団によって発現されるのと同じTCRライブラリーを発現する、選択されたまたは選択されないT細胞の集団であってよい。いくつかの態様において、参照は、T細胞の第一の集団によって発現されるのと同じTCRライブラリーのプラスミドプールである。
【0067】
いくつかの態様において、各TCRの量は、試料に含まれる全てのTCRのリードを得ることが可能であるような量であり、ここで、組成物全体に均等に分布していないTCR対が少なくとも1つ存在する。いくつかの態様において、TCR細胞の数に反映される各TCR対のゲノムコピー量は、試料に含まれる全てのTCRのリードを得られるような量である。いくつかの態様において、TCRのうちの少なくとも1つは、ライブラリーを含む組成物全体にわたって均等に発現していない。いくつかの態様において、TCRの大部分は、選択されたT細胞の集団と参照との間でほぼ均等に表現されている。いくつかの態様では、TCRライブラリー中に存在する全TCRの90%を超えるものが、T細胞の第一の集団とT細胞の第二の集団(例えば、参照集団)の両方において表現される。いくつかの態様では、TCRライブラリーに存在する全TCRの99%を超えるものが、T細胞の第一の集団とT細胞の第二の集団の両方において表現される。
【0068】
いくつかの態様において、1つ以上のTCRは、第二の集団と比較して、第一の集団で濃縮される。いくつかの態様において、1つ以上のTCRは、第二の集団と比較して、第一の集団において統計的に有意に濃縮される。
【0069】
いくつかの態様において、組成物は、スクリーニング方法から、例えば上位下位比較から得られた、上位1、2、3、4、5、6、7、8、9、または少なくとも10%のTCR(もしくはこれらのTCRを発現している細胞)を含む。
【0070】
いくつかの態様において、全TCRの99%を超えるものが、T細胞の(選択された)第一の集団の中に存在する。いくつかの態様において、TCRの大部分は、T細胞の組成物中で、T細胞の第一の集団と第二の集団(例えば、この状況では参照)の間でほぼ均等に分布している。
【0071】
いくつかの態様では、所望の特徴を有する少なくとも1つのTCRαβ対が同定され、単離され、および/または提供される。いくつかの態様において、所望の特徴を有する少なくとも1つのTCRαβ対は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)に由来する。いくつかの態様において、所望の特徴を有する少なくとも1つのTCRαβ対は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)に由来し、同一の対象における癌治療のために使用される。いくつかの態様において、所望の特徴を有する少なくとも1つのTCRαβ対は、末梢血に由来する。いくつかの態様において、所望の特徴は、抗原に対する特異性である。いくつかの態様において、所望の特徴は、新生抗原を認識することである。いくつかの態様において、所望の特徴は、ウイルス抗原を認識することである。いくつかの態様において、所望の特徴は、腫瘍細胞によって発現される共有抗原を認識することである。いくつかの態様において、所望の特徴は、MHCクラスIまたはMHCクラスIIへの拘束性である。いくつかの態様において、所望の特徴は、抗原に対する結合活性である。いくつかの態様において、所望の特徴は、抗原に対する反応性の欠如である。いくつかの態様では、複数の特徴を有することが望まれる。いくつかの態様において、そのTCR対は、これらの特徴のうちのいずれか1つ以上に関して構成される。
【0072】
いくつかの態様において、所望の特徴を有する少なくとも1つのTCRαβ対は、治療のために使用されるか、および/または準備されるか、および/または条件付けられる。いくつかの態様において、少なくとも1つのTCRαβ対は、治療のために使用されるか、および/または準備されるか、および/または条件付けられる。いくつかの態様において、少なくとも1つのTCRαβ対は、癌治療のために使用されるか、または使用のために構成される。いくつかの態様において、少なくとも1つのTCRαβ対は、感染症の治療のために使用されるか、および/または準備されるか、および/または条件付けられる。いくつかの態様において、少なくとも1つのTCRαβ対は、自己免疫疾患の治療のために使用されるか、および/または準備されるか、および/または条件付けられる。いくつかの態様において、少なくとも1つのTCRαβ対は、治療用の組換えタンパク質を設計するために使用されるか、および/または準備されるか、および/または条件付けられる。いくつかの態様において、組換えタンパク質は、治療のために投与される。
【0073】
いくつかの態様では、少なくとも1つのTCRαβ対が、治療用にT細胞を操作するために使用される。いくつかの態様では、少なくとも2つのTCRαβ対が、治療用にT細胞を操作するために使用される。いくつかの態様では、2つを超えるTCRαβ対が、治療用にT細胞を操作するために使用される。いくつかの態様では、5つのTCRαβ対が、治療用にT細胞を操作するために使用される。いくつかの態様では、10のTCRαβ対が、治療用にT細胞を操作するために使用される。いくつかの態様では、20のTCRαβ対が、治療用にT細胞を操作するために使用される。いくつかの態様では、操作されたT細胞が治療のために投与される。いくつかの態様において、TCRαβ対は、ウイルスを用いてT細胞に導入される。いくつかの態様において、ウイルスはレンチウイルスである。いくつかの態様において、ウイルスはレトロウイルスである。いくつかの態様において、ウイルスはアデノウイルスである。いくつかの態様において、ウイルスは、TCRのT細胞ゲノムへの組み込みを媒介する。
【0074】
いくつかの態様において、ウイルスは、TCRの一過性の発現をもたらす。いくつかの態様において、ウイルスは、相同指向性修復(HDR)によるT細胞内のゲノム二重鎖切断の修復鋳型としてTCRのDNAを担持する。
【0075】
いくつかの態様において、TCRαβ対は、非ウイルス性遺伝子送達法を用いてT細胞に導入される。いくつかの態様において、非ウイルス性遺伝子送達法は、エレクトロポレーションに基づくものである。いくつかの態様において、非ウイルス性遺伝子送達法は、T細胞に成分を送達するためにT細胞の細胞膜に一時的な穿孔を形成することができる他の方法に基づいている。いくつかの態様において、非ウイルス性遺伝子送達法は、トランスポザーゼを含む。いくつかの態様において、非ウイルス性遺伝子送達法は、ヌクレアーゼを含む。
【0076】
いくつかの態様において、ヌクレアーゼは、CRISPR/Cas9複合体である。
【0077】
いくつかの態様において、操作されたT細胞は、TCRで修飾され、そして、その表現型および反応性を制御するために、さらに遺伝学的に修飾される。
【0078】
いくつかの態様では、異なる抗原に対する特異性を有する異なるTCRαβ対を発現する操作されたT細胞が、投与用の細胞組成物として組み合わされる。いくつかの態様では、組み合わせることによって複数の抗原を標的とすることが可能となり、そのため、単剤療法よりも効果的であり得る。いくつかの態様では、組み合わせることによってMHCクラスIおよびMHCクラスII拘束性T細胞を両方一緒に標的とすることが可能であり、そのため、固形癌の治療に相乗効果を発揮する可能性がある。いくつかの態様では、組み合わせることによって切断型および分岐型腫瘍変異を一緒に標的とすることが可能である。いくつかの態様において、組み合わせることは、操作されたT細胞集団それぞれを等しい比率で利用することに基づいている。いくつかの態様において、組み合わせることは、操作されたT細胞集団それぞれを異なる細胞数で利用することに基づいている。
【0079】
いくつかの態様において、組成物は、1つ以上のTCR遺伝子の使用に基づく操作されたT細胞の産物を含んでいる。いくつかの態様において、操作されたT細胞は、それを受け入れる患者の自己由来である;TIL由来である;少なくとも1つのクラスITCRと1つのクラスIITCRの使用を採用する;ならびに等比を採用する、のうちの少なくとも1つを含む。
【0080】
本明細書で提供される態様のいくつかは、TCRα鎖とTCRβ鎖の天然の組み合わせを回収する必要性を回避し、また、非生存細胞材料および非生存組織試料に適用することが可能である。コンビナトリアルTCRαβライブラリーを生成することによって、本開示のいくつかの態様は、保存されたまたは保管された試料から抗原特異的TCRαβ対を同定することを可能にする。例えば、本開示の態様は、非生存T細胞の細胞膜の完全性の喪失に起因する、異なるT細胞由来のTCRαとTCRβのmRNA転写物の混合に関連する問題を解決することが可能である。そのような混合物では、本来のTCRαβ対に関する情報が失われている。本明細書で提供される方法のいくつかの態様は、回収されたTCRライブラリーが高頻度のTCR配列に対して偏ることによって引き起こされる、これまでに報告されているTCRライブラリースクリーニング技術の感度の低さを解決する。本明細書で提供される方法のいくつかの態様は、その後の応用に、回収されたTCR鎖の完全なレパトアを含める必要性を排除し、それによって、例えば、所望の特性を有するTCR鎖にTCRの発見を集中させることを可能になる。ドロップレットPCRや微少流体装置などの単一細胞に基づく手法とは異なり、本明細書に開示するT細胞から特定のTCRαβ対を回収する方法は、拡張性の制限となる特定の器具や生きた細胞材料を必要としない。事前に天然のTCRαβ対を回収することができない、T細胞集団からTCRαおよびTCRβ配列のコレクションを回収するバルクPCR法とは異なり、本明細書に開示の方法は、目的のTCRαβ対を回収するために、同定したTCRレパトアの定義した部分を回収するための設計を用いる。
【0081】
本明細書に開示の方法は、治療および診断の目的で、および/または組成物、および/または医薬品に使用することができる。組換えTCR遺伝子は、例えば、癌免疫療法などの免疫療法用に、所望の特異性を有するT細胞を産生するために使用することができる。癌免疫療法に適用する場合、遺伝子導入によって抗原特異的T細胞を生成するためのTCR遺伝子を選択することによって、所望の特異性を有するT細胞を産生することができる。いくつかの態様において、この手法は、TCRαβ対をコードする遺伝子の導入により、T細胞間で抗原特異性を転移させることができるという観察に基づいている。目的のTCR遺伝子は、γ-レトロウイルスまたはレンチウイルスベクター、トランスポゾンに基づく遺伝子導入プラットフォーム、mRNA導入(例えば、エレクトロポレーションまたはナノ粒子による導入)、またはCRISPR/Cas9を含むゲノム工学ツールを利用して、ヒトT細胞のゲノムに導入することができる。後者は、新規TCR鎖を内在性TCR遺伝子座に部位特異的に組み込むことにより、内在性TCR鎖の同時ノックアウトを可能にする。
【0082】
いくつかの態様において、結果的に選択された分子の対は、本明細書に記載の任意の障害に関して、対象の治療および/または対象のための医薬に使用される。
【0083】
いくつかの態様では、対象を治療する方法が提供される。この方法は、腫瘍を有する対象を特定すること;少なくとも2つのT細胞のセットを提供すること、少なくとも2つのT細胞はそれぞれ、少なくとも1つの異なるTCRαとTCRβの対を発現するように構成されており、ここでTCRαおよびTCRβはそれぞれ対象に由来し;少なくとも2つのB細胞のセットを提供すること、ここで、B細胞のセットは少なくとも2つの外因性新生抗原を発現するように構成されており、ここで少なくとも2つの外因性新生抗原は、対象内で見出されるものと同じであり;少なくとも2つのT細胞のセットと少なくとも2つのB細胞のセットを組み合わせて、少なくとも2つの外因性新生抗原を介した少なくとも2つのT細胞の活性化に基づいて、少なくとも2つのTCR対の組み合わせを選択すること;および少なくとも2つのTCR対の組み合わせを対象に投与し、それによって腫瘍を治療すること、を含む。いくつかの態様では、本明細書で提供される任意の比率のT細胞とB細胞を、この過程で使用することができる。いくつかの態様では、治療することにより、腫瘍の大きさが縮小する。いくつかの態様では、治療は、少なくとも1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、99または100%(前述した値のうちの任意の2つの間で定義される任意の範囲を含む)、腫瘍の大きさを縮小する。
【0084】
いくつかの態様では、対象を治療する方法が提供される。この方法は、腫瘍を有する対象を特定すること;少なくとも2つのT細胞のセットを提供すること、少なくとも2つのT細胞はそれぞれ、少なくとも1つの異なるTCRαとTCRβの対を発現するように構成されており、ここでそれぞれのTCRαおよびTCRβは対象に由来し;少なくとも2つの抗原提示細胞のセットを提供すること、ここで、抗原提示細胞のセットは対象に由来するものであり、少なくとも2つの外因性新生抗原を発現するように構成されており、ここで少なくとも2つの外因性新生抗原は、対象内で見出される新生抗原と同じであり;少なくとも2つのT細胞のセットと少なくとも2つの抗原提示細胞のセットを組み合わせて、少なくとも2つの外因性新生抗原を介した少なくとも2つのT細胞の活性化に基づいて、少なくとも2つのTCR対の組み合わせを選択すること;および少なくとも2つのTCR対の組み合わせを対象に投与し、それによって腫瘍を治療すること、を含む。いくつかの態様では、2つ以上のTCR対が存在し、例えば、2、3、4、5、6、7、またはそれ以上のTCR対を使用することができる。いくつかの態様において、TCR対は、細胞療法を介して投与される。いくつかの態様において、対は、他の対と異なる配列を有する。
【0085】
いくつかの態様では、任意の方法によって本明細書で提供される選択したTCR対または対の組み合わせを、本明細書で提供する治療方法において使用することができる。
【0086】
いくつかの態様では、医薬組成物が提供される。いくつかの態様において、医薬組成物は、対象の腫瘍中に存在する第一の抗原(または新生抗原)に結合する第一のTCR対;および対象の腫瘍中に存在する第二の抗原(または新生抗原)に結合する第二のTCR対とを含む。いくつかの態様では、2つ以上のTCR対が存在し、例えば、2、3、4、5、6、7、またはそれ以上のTCRの対を使用することができる。いくつかの態様において、TCR対は、細胞療法を介して投与される。いくつかの態様において、対は、他の対と異なる配列を有する。いくつかの態様において、第一のTCR対はMHCクラスI拘束性であり、第二のTCR対はMHCクラスII拘束性である。
【0087】
いくつかの態様では、医薬組成物が提供される。組成物は、第一の抗原に結合し、かつ、MHCクラスI拘束性である第一のTCR対と、第二の抗原に結合し、かつ、MHCクラスII拘束性である第二のTCR対とを含む可能性がある。
【0088】
いくつかの態様において、組成物はさらに、第三の対を含む場合がある。
【0089】
いくつかの態様では、第一のTCR対は腫瘍由来の新生抗原に結合し、第二のTCR対は腫瘍由来の新生抗原に結合し、第一および第二のTCR対は両方とも腫瘍の宿主に存在する。
【0090】
癌治療用の組換えTCR遺伝子は、さまざまな供給源から得ることができる。第一に、血液や腫瘍組織などの患者の生存標本から腫瘍抗原に対する特異性を有するT細胞を検出し、単離することが可能である。当該技術分野において記載のある技術には、MHC多量体結合T細胞の単離、ならびに抗原刺激後に特定の表現型マーカーを発現するかまたは特定のサイトカインを分泌するT細胞のフローサイトメトリーまたは磁気ビーズ選択による単離が含まれる。その後、単離した抗原特異的T細胞を用いて、単一の細胞を使用するPCRに基づく技術、TCRバルク鎖配列決定、または微少流体学に基づくPCR技術により、発現したTCR遺伝子の配列を決定することができる。第二に、アロCTLシステムまたは動物モデル(例えば、HLAトランスジェニックおよび/またはヒトTCRトランスジェニックマウスモデル)が、腫瘍抗原特異的T細胞/TCRの別の供給源となる。第三に、治療用TCR遺伝子を、ファージ、酵母、またはT細胞提示系によって組換えTCRライブラリーとして発現されたインビトロ変異型TCR鎖から選択することができる。
【0091】
癌治療用のT細胞(またはTCR)は、所望される治療基準に基づいて選択することができる。第一に、癌治療に用いられるTCR遺伝子は、理想的には、生体組織では発現が低いか、または発現していない腫瘍特異的抗原を認識することが望まれる。第二に、TCRはその抗原を高感度で認識することが望まれ、例えば、少量の抗原によって、TCR修飾型T細胞の腫瘍細胞に対するエフェクター機能、例えば細胞溶解活性が引き起こされることが望ましい。第三に、TCRは生体組織で発現している他の抗原に対して交差反応性を持たないことが望まれる。
【0092】
TCR遺伝子導入により、細胞系列特異的抗原(例えばMART-1)、過剰発現抗原(例えばWT-1)、癌/精巣(C/T)抗原(例えばNY-ESO-1、MAGE-A4、MAGE-A10)、ウイルス抗原(例えばHPVE6、E7)、変異タンパク質(新抗原)などの様々な腫瘍抗体を標的とすることができる。注目すべきは、新生抗原特異的TCR配列は、癌の治療に特に適している可能性があることである。例えば、新生抗原特異的T細胞は、免疫チェックポイント阻害療法と養子T細胞療法の両治療後において、進行した転移性癌の退縮と相関がある。腫瘍で見られるゲノム変異の大部分はパッセンジャー変異であり、腫瘍のごく一部にしか認められないため、またMHC拘束性のため、T細胞が認識できる腫瘍新生抗原のレパトアは患者個人によって大きく異なる。したがって、TCR遺伝子導入を利用して治療のための新生抗原特異的T細胞を生成するには、多くの場合、患者や腫瘍ごとに一つ以上の新しい新生抗原特異的TCR配列が必要となる。TCR遺伝子導入に使用されるTCRの安全要件を考えると、商業的に拡張可能な手法は、理想的には、患者から直接得られた新抗原特異的TCRであれば安全であると想定できるため、自己組織に依存する。さらに、TCRを分離するために患者の生存細胞を取り扱う必要性を回避するため、例えば、保管しておいた腫瘍試料などの非生存組織を使用することが、商業的に拡張可能な過程を達成するために好ましい。本明細書に開示された方法は、関連する新生抗原特異的TCRを患者ごとに高感度で同定するという重大な必要性に対処するものである。さらに、本明細書に記載の方法で開示される新生抗原特異的TCR遺伝子の導入は、例えば、免疫チェックポイント阻害などの他の治療の恩恵を受けられらない患者に利益をもたらす可能性がある。
【0093】
いくつかの態様では、核酸のコンビナトリアルライブラリーからT細胞受容体α(TCRα)鎖およびTCRβ鎖をコードするヌクレオチド配列を同定する方法が提供される。この方法は、a)複数のバリアント核酸を含むライブラリーを提供することを含み、複数のバリアント核酸はそれぞれ少なくとも600bpの連続部分を含み、ここで連続部分は、1)TCRαのバリアントアミノ酸配列をコードしていて、かつ、連続部分の第一の末端を規定する第一のバリアントヌクレオチド部分配列、および2)TCRβのバリアントアミノ酸配列をコードしていて、かつ、第一の末端とは反対側にある連続部分の第二の末端を規定する第二のバリアントヌクレオチド部分配列の組み合わせ、を含む。この方法はさらに、複数のバリアント核酸のメンバーによってコードされるTCRα鎖およびTCRβ鎖を発現するように構成された不死化T細胞の集団にライブラリーを導入すること、および不死化T細胞と抗原を発現している不死化B細胞との接触に応答して閾値を超えるT細胞活性化マーカーの発現に基づいて、不死化T細胞の集団の亜集団を選択すること、ここで亜集団は複数のT細胞を含み、および/または亜集団から複数のバリアント核酸のサブセットを単離すること、および/またはサブセットの個々のメンバーの連続部分のヌクレオチド配列を決定すること、および/または、サブセットのヌクレオチド配列に含まれる少なくとも1つの組み合わせの対照との比較における濃縮度に基づいて、第一と第二のバリアントヌクレオチド部分配列の組み合わせを少なくとも1つ同定すること、を含む。
【0094】
いくつかの態様では、核酸のコンビナトリアルライブラリーからキメラ抗原受容体(CAR)ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、および/または細胞内シグナル伝達ドメインをコードするヌクレオチド配列を同定する方法が提供される。この方法は、複数のバリアント核酸を含むライブラリーを提供することを含み、複数のバリアント核酸はそれぞれ、少なくとも600bpの連続部分を含み、ここで連続部分は、(1)CARヒンジドメインをコードしている第一のバリアントヌクレオチド部分配列;(2)CAR膜貫通ドメインをコードしている第二のバリアントヌクレオチド部分配列;および(3)CAR細胞内シグナル伝達ドメインをコードしている第三のバリアントヌクレオチド部分配列の組み合わせ、を2つ以上含む。第一、第二または第三のバリアントヌクレオチド部分配列のうちの1つは、連続部分の第一の末端を規定し、第一、第二または第三のバリアントヌクレオチド部分配列の別の1つは、第一の末端の反対側にある連続部分の第二の末端を規定する。この方法はさらに、複数のバリアント核酸のメンバーによってコードされるCARを発現するように構成された細胞の集団にライブラリーを導入することを含み、ここで細胞の集団は、不死化T細胞または初代ヒトT細胞の集団を含む。この方法はさらに、細胞とCARの抗原結合ドメインに特異的な抗原を発現している抗原提示細胞とを接触させることに応答して閾値を超える細胞増殖に基づいて、細胞の集団の亜集団を選択することを含む場合があり、ここで亜集団は複数の細胞を含む。方法はさらに、亜集団から複数のバリアント核酸のサブセットを単離し、および/またはサブセットの個々のメンバーの連続部分のヌクレオチド配列を決定すること;サブセットのヌクレオチド配列に含まれる少なくとも1つの組み合わせの対照との比較における濃縮度に基づいて、第一、第二、および第三のバリアントヌクレオチド部分配列の組み合わせを少なくとも1つ同定すること、を含む場合がある。
定義
【0095】
本明細書全体を通じて「含む」という用語、または「含まれる」もしくは「含んでいる」などの変形は、言及している要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群を含むことを意味し、他の要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群を除外しないものと理解される。
【0096】
以下の用語および方法の説明は、本開示をより良く説明するため、および当業者が本開示を実施する際の指針とするために提供される。単数形の「1つ」、「1種」、および「この」は、文脈から明らかにそうでないと判断されない限り、1つまたは2つ以上を指す。例えば、「核酸分子を含んでいる」という用語は、単一のまたは複数の核酸分子を含むもので、「少なくとも1つの核酸分子を含んでいる」という句と同等であるとみなされる。「または」という用語は、文脈からそうではないことが明らかでない限り、記載された代替要素の単一の要素または2つ以上の要素の組合せを指す。本明細書で使用する場合、「含む」は「包含する」を意味する。したがって、「AまたはBを含んでいる」とは、追加の要素を排除することなく、「A、B、またはAおよびBを包含する」ことを意味する。特段の指定のない限り、本定義が他に存在し得る定義と異なる可能性がある場合には、本明細書で提供される定義が優先される。
【0097】
特段の記載のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で言及される全てのヒト遺伝子解析機構(HUGO Gene Nomenclature Committee(HGNC)の識別子(ID)は、その全体が参照により組み込まれる。本開示の実施または試験には、本明細書に記載の方法および材料と類似または同等のものを使用することができるが、好適な方法および材料を以下に記載する。材料、方法、及び実施例は、例示に過ぎず、限定することを意図していない。
【0098】
「T細胞受容体」または「TCR」とは、T細胞すなわちTリンパ球の表面に存在し、主要組織適合性複合体(MHC)分子にペプチドとして結合した抗原を認識する分子を意味する。MHC分子には、クラスI、クラスII、クラスIIIがあり、クラスIとクラスIIのMHC分子はいずれも、免疫反応に重要な役割を担っている。MHCクラスIの分子は、すべての有核細胞や血小板に、要するに赤血球以外のすべての細胞で発現している。MHCクラスI分子は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)とも呼ばれるキラーT細胞にエピトープを提示する。MHCクラスIIは、あらゆる種類の細胞で条件付きで発現させることができるが、通常は「専門」の抗原提示細胞(APC)、すなわちマクロファージ、B細胞、そして特に樹状細胞(DC)にのみ発現する。APCは抗原タンパク質を取り込み、抗原プロセッシングを行い、その分子画分(エピトープと呼ばれる画分)を取り出し、そしてこれをMHCクラスII分子と結合させてAPCの表面に表示する(抗原提示)。細胞表面では、エピトープはT細胞受容体(TCR)のような免疫学的構造によって認識され得る。いくつかの態様において、TCRは、2つのポリペプチド鎖、TCRαおよびTCRβ(それぞれ、TRAおよびTRBによってコードされる)を含む。いくつかの態様において、TCRは、TCRγおよびTCRδ鎖(それぞれ、TRGおよびTRDによってコードされる)を含む。いくつかの態様において、TCRは、細胞外可変領域および細胞外定常領域を含む。いくつかの態様において、TCRα鎖およびTCRβ鎖の可変領域は、CDR1、CDR2、およびCDR3と呼ばれる3つの超可変相補性決定領域(CDR)を含む。いくつかの態様では、CDR3が主な抗原認識領域である。いくつかの態様において、TCRα鎖遺伝子はVおよびJを含み、TCRβ鎖遺伝子はV、DおよびJ遺伝子セグメントを含み、TCRの多様性に寄与している。
【0099】
本明細書で使用する場合、「TCRレパトア」という用語は、試料またはライブラリーに含まれるTCR鎖のコレクションを指す。コレクションは、少なくとも2つ以上の異なるTCR鎖バリアントを含み得る。いくつかの態様において、「TCRレパトア」は、試料またはライブラリーに含まれる全てのTCR鎖のコレクションを指す。いくつかの態様において、「TCRレパトア」は、試料またはライブラリーに含まれるTCR鎖のサブセットまたは選択物のコレクションを指す。いくつかの態様において、「TCRレパトア」は、試料またはライブラリーに含まれるTCRαβ対のコレクションを指す。いくつかの態様において、「TCRレパトア」は、試料またはライブラリーに含まれるTCRαβ対のサブセットまたは選択物のコレクションを指す。
【0100】
TCR鎖のサブセットまたは選択物は、例えば、TCR鎖の頻度に基づくものであってもよい。いくつかの態様において、「TCR鎖の頻度」は、全TCR鎖のアミノ酸配列(の一部)をコードする全核酸のうち、特定のTCR鎖のアミノ酸配列(の一部)をコードする核酸分子(RNAおよび/またはDNA)の絶対数を指す。いくつかの態様において、特定のTCR鎖のアミノ酸配列(の一部)をコードする核酸分子の絶対数は、「固有の分子識別子(Unique Molecular Identifier)」(UMI)を用いた固有の分子の数に基づいて決定してもよい(例えば、キビオジャ(Kivioja)ら、ネイチャー・メソッズ(Nat Meth)、2011およびイスラム(Islam)ら、ネイチャー・メソッズ、2013に記載された原理として)。いくつかの態様では、TCR鎖の頻度をパーセンテージで表してもよい。全TCR鎖の総数は、TCRα鎖をコードする核酸分子のみ、TCRβ鎖のみ、またはTCRα鎖とTCRβ鎖の両方を含んでいてもよい。いくつかの態様において、頻度は、試料に含まれる鎖間において、あるTCR鎖が、0.001%、0.01%、0.1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、またはその間の任意の数もしくは範囲と同等以上、同等、これより多い、または未満の頻度であるとして表現される。TCR鎖アミノ酸配列(の一部)をコードする核酸分子の絶対数または対応するパーセンテージを用いて、TCR鎖の順位を得ることができる。いくつかの態様において、頻度は、あるTCR鎖が、試料に含まれている鎖の中で、上位1000、上位900、上位800、上位700、上位600、上位500、上位450、上位400、上位350、上位300、上位250、上位200、上位150、上位140、上位130、上位120、上位110、上位100、上位90、上位80、上位70、上位60、上位50、上位40、上位30、上位20、上位10、上位5、またはその間の任意の数もしくは範囲にあるとして表現される。いくつかの態様において、「TCR鎖の頻度」は、その試料に含まれる全TCR鎖に対する、あるTCR鎖の頻度を指す。いくつかの態様において、「TCR鎖の頻度」は、試料に含まれる全TCR鎖またはTCR鎖のサブセットによりも、あるTCR鎖の頻度が少ないことを指す。
【0101】
本明細書で使用する場合、「頻度閾値」という用語は、TCR鎖のサブセットまたは選択物に含まれる所与のTCR鎖が、試料中で出現する最小の頻度を指す。いくつかの態様において、頻度閾値は、試料に含まれるTCR鎖の順位が、上位1000、上位900、上位800、上位700、上位600、上位500、上位450、上位400、上位350、上位300、上位250、上位200、上位150、上位140、上位130、上位120、上位110、上位100、上位90、上位80、上位70、上位60、上位50、上位40、上位30、上位20、上位10、上位5、またはその間の任意の数もしくは範囲であることを含む。いくつかの態様において、頻度閾値は、試料に含まれる鎖が、0.001%以上、0.01%以上、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、またはその間の任意の数もしくは範囲のすべてのTCR鎖を含むものとして表現される。いくつかの態様において、「頻度閾値」は、試料に含まれる全TCR鎖に対する閾値を指す。いくつかの態様において、「頻度閾値」は、試料に含まれる全TCR鎖またはTCR鎖のサブセットによりも、あるTCR鎖の閾値が小さいことを指す。
【0102】
本明細書において、「相対的な濃縮度」という用語は、ある試料におけるTCR鎖の量または頻度が、他の試料と比較して多いことを意味する。比較できる試料には、例えば、腫瘍試料と血液、異なる腫瘍試料、腫瘍試料と非腫瘍試料、異なる領域に由来する同じ腫瘍の試料、腫瘍の中心部に由来する試料と辺縁部または境界領域に由来する試料、異なる活性または分化状態を有するT細胞由来の試料、その他がある。
【0103】
本明細書で使用する場合、「スイッチレセプター」は、当業者が通常使用するのと同じ意味で用いられ、スイッチレセプターは、通常、T細胞の抑制またはアポトーシスを伴って、細胞外シグナルをT細胞活性化シグナルに変換するために使用される分子を含むが、これらには限定されない。これは、抑制性またはアポトーシス誘導性リガンド(例えば、これらには限定されないが、TGFBR2、FASまたはTIGIT)と結合する細胞外ドメイン(ECD)を、T細胞活性化受容体(CD3ε、CD28、IL2RB等)に由来する細胞内シグナル伝達ドメイン(ISD)と融合させることによって達成することができる。当業者は、T細胞活性化リガンドと結合するECDをT細胞阻害性受容体(例えば、PD-1またはCTLA-4)に由来するISDと組み合わせることによって、T細胞機能を阻害するように融合受容体分子を設計することもできることを理解するであろう。いくつかの態様において、スイッチレセプターは、1つ、2つ、またはさらに多くのシグナル伝達ドメインと融合させたECDを含んでいてもよいが、これらに限定されるものではない。いくつかの態様において、スイッチレセプター分子は、ECDおよびISDに加えて複数の異なる膜貫通ドメイン(TM)、または、ECDとTMおよび/もしくはTMとISDを含むがこれに限定されない異なるドメイン間を繋ぐリンカーまたはスペーサー配列を含むがこれに限定されない、任意の他の新規成分を含むレセプターを含むが、これらに限定されるものではない。
【0104】
本明細書で使用する場合、「一本鎖TCR」は、当業者が通常使用するのと同じ意味で用いられる。この用語はさらに、TCRαとTCRβの可変鎖断片をリンカーで共有結合することを含むが、これには限定されない。一本鎖TCRは、TCRαとTCRβの可変鎖断片をTCRβ定常ドメインに融合させたリンカーで共有結合し、TCRα定常ドメインとトランスで共発現させることを含むが、これには限定されない。いくつかの態様において、一本鎖TCRは、TCRαとTCRβの可変鎖断片をTCRα定常ドメインに融合させたリンカーで共有結合し、TCRβ定常ドメインとトランスで共発現させることを含むが、これには限定されない。一本鎖TCRのいくつかの態様は、TCRαとTCRβの可変鎖断片をリンカーで共有結合し、CD3εまたはCD3ζシグナル伝達ドメインに単独でまたはCD28シグナル伝達ドメインと組み合わせて融合させたものを含むが、これに限定されない。
【0105】
本明細書で使用する場合、「遺伝子発現の空間的パターン」という用語は、特定の領域または空間における遺伝子の発現を指す。いくつかの態様において、「遺伝子発現の空間的パターン」は、腫瘍などの組織内での、すなわち、腫瘍内における遺伝子の発現を指す。いくつかの態様において、「遺伝子発現の空間的パターン」は、1つ以上の表現型マーカーの発現または発現の欠如によって特徴付けられる領域または空間において、遺伝子発現が濃縮されていることを指す。いくつかの態様において、表現型マーカーは、1つ以上の表面マーカーまたはその断片、1つ以上のタンパク質またはその断片、マイクロRNA、siRNA、または他の任意のRNAなどの1つ以上のRNAを含むがこれらには限定されない、表現型と関連する任意のマーカーであってよい。他の態様において、「遺伝子発現の空間的パターン」は、少なくとも1つの他の遺伝子の発現または発現の欠如と組み合わせた、1つの遺伝子の発現または発現の欠如を指す。
【0106】
本明細書で使用する場合、「共発現パターン」という用語は、同一細胞内または同一組織試料内における1つ以上の遺伝子の発現を含む。いくつかの態様において、「共発現パターン」という用語は、同一細胞内または同一組織試料内における1つ以上の遺伝子の発現の欠如を指す。
【0107】
「癌」という用語は、分化能の消失を伴う特徴的な退形成、速い増殖速度、周辺組織への浸潤、および転移能を示す悪性新生物を意味する。「癌」という用語は、対象における細胞の制御不能な増殖を特徴とする疾患を含むものとする。いくつかの態様において、「癌」および「腫瘍」という用語は、同じ意味で用いられる。いくつかの態様において、「腫瘍」という用語は、良性すなわち非悪性の増殖を指す。
【0108】
「ライブラリー」という用語は、TCR鎖のコレクションを意味する。いくつかの態様において、ライブラリーは、組み合わさってTCRαβの対を形成するTCR鎖のコレクションを含む。いくつかの態様において、ライブラリーは、組み合わさってTCRαβの対を形成するTCR鎖のサブセットまたは選択物のコレクションを含む。
【0109】
本明細書で使用する場合、「新生抗原」という用語は、腫瘍特異的なゲノム変異に由来する抗原を指す。例えば、新生抗原は、非同義一塩基変異に起因して腫瘍試料中で変異タンパク質が発現した結果、または変異によってフレームシフトが誘発されたことで別の読み取り枠が発現した結果、生じる場合がある。したがって、新生抗原は病的状態に関連し得る。いくつかの態様において、「変異タンパク質」は、標準的なアミノ酸配列の同じ位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸を少なくとも1つ含むタンパク質を指す。いくつかの態様において、変異タンパク質は、標準的なアミノ酸配列への挿入、欠失、置換、読み取り枠シフトに起因するアミノ酸の包含、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0110】
「治療」という用語は、当該技術分野における通常の意味を包含し、障害の少なくとも1つの形態または他の症状の緩和、または疾患重症度の軽減などを含む。治療は、完全な治癒をもたらす、または疾患のすべての症状または発現を根絶する必要はなく、実行可能な治療を構成する。関連分野で認識されているように、治療薬として使用される組成物は、所与の病状の重症度を軽減させることができるが、有用とみなされるために疾患のすべての発現を消失させる必要はない。疾患の影響を軽減すること(例えば、その症状の数または重症度を軽減することによって、または別の治療の有効性を高めることによって、または別の有益な効果をもたらすことによって)、または対象に疾患が発生するまたは疾患が悪化する可能性を低減することで十分である。
【0111】
「抗体」は、少なくとも免疫グロブリン可変領域の軽鎖または重鎖のいずれかを含むポリペプチドであり、抗原のエピトープを特異的に認識して結合するものを指す。いくつかの態様において、抗体は、重鎖および軽鎖からなり、それぞれの鎖は、可変重(V)領域および可変軽(V)領域と呼ばれる可変領域を有する。V領域およびV領域は、共に、抗体によって認識される抗原に結合する役割を果たす。抗体という用語は、インタクトな免疫グロブリン、ならびにそのバリアントおよび部分、例えばFab'断片、F(ab)'2断片、およびインタクトな免疫グロブリンに由来する他の任意の分子を含む。
【0112】
本明細書で使用する場合、「B細胞受容体(BCR)/抗体レパトア」という句は、試料中のBCRまたは抗体鎖のコレクションを指す。いくつかの態様において、「BCR/抗体レパトア」は、試料中のすべてのBCRまたは抗体鎖のコレクションを指す。いくつかの態様において、「BCR/抗体レパトア」は、試料中のBCRまたは抗体鎖のサブセットまたは選択物のコレクションを指す。
【0113】
本明細書で使用する場合、「新鮮凍結」または「瞬間凍結」という用語は、組織または細胞試料を採取後、時間をおかずに凍結することを意味する。いくつかの態様において、組織または細胞試料は、凍結前に保存されない。「新鮮凍結」または「瞬間凍結」という用語は、同じ意味で用いられる。
【0114】
本明細書で使用する場合、「TCR単離」という用語は、TCRα鎖とTCRβ鎖のどの特定の組み合わせが所望の機能を媒介するかという評価を包含する。「TCR単離」という用語は、一本鎖TCR分子の単離を意味する場合もある。TCR単離の方法は、所望の機能とTCRカセットの設計によって異なる場合がある。
【0115】
「活性化マーカー」という用語は、当業者に理解される用語の全範囲を包含し、さらに、外部刺激に応答して細胞内で差次的に制御される1つまたは複数の遺伝子を意味する。活性化マーカーとして機能する遺伝子は、細胞ゲノムの天然部分であっても、または当業者に知られている遺伝子工学ツール(例えば、ウイルス遺伝子送達)により導入されてもよい。注目すべきは、差次的制御は、RNAレベルとして検出される遺伝子発現の増加または減少を説明し得る。特定の例において、転写産物レベルのそのような変化は、タンパク質レベルで検出可能な変化をもたらす場合がある。非限定的な例として、T細胞受容体の誘発と相関するT細胞の活性化マーカーには、CD69、CD137、IFN-γ、IL-2、TNF-α、GM-CSF、OX40、ならびにNFAT-GFPまたはNFAT-ピューロマイシン耐性遺伝子などの人工レポーター遺伝子が含まれる得る。
【0116】
本明細書で使用する場合、「TCRライブラリー」という用語は、TCRをコードしているプラスミドまたはそれらのプラスミドを含んでいる細胞のポリクローナルなコレクションを指す。コレクションは、少なくとも2つ以上の異なるTCR鎖バリアントを含む場合がある。「TCRライブラリー」は、TCRをコードしているプラスミドのサブセットまたは選択物のコレクションを含む場合がある。「TCRライブラリー」は、TCRをコードしているプラスミドのコレクションから発現させることができる、全TCRのコレクションを指す場合がある。いくつかの態様において、「TCRライブラリー」は、TCRをコードしているプラスミドのコレクションから発現させることができるTCRのサブセットまたは選択物のコレクションを指す。いくつかの態様において、「TCRライブラリー」は、TCRをコードしているプラスミドのポリクローナルなコレクションに含まれるTCRαβ対のコレクションを指す。いくつかの態様において、「TCRライブラリー」は、TCRをコードしているプラスミドのポリクローナルなコレクションに含まれるTCRαβ対のサブセットまたは選択物のコレクションを指す。
様々な態様の一般的な説明
【0117】
本明細書に記載のいくつかの態様は、核酸のコンビナトリアルライブラリーから、T細胞受容体α(TCRα)鎖とTCRβ鎖をコードしているヌクレオチド配列を同定する方法に関する。いくつかの態様において、この方法は、(I)TCRα鎖およびTCRβ鎖をコードしている複数のバリアント核酸を含んでいるライブラリーを提供すること、(II)複数のバリアント核酸のメンバーによってコードされているTCRα鎖およびTCRβ鎖を発現可能な細胞集団に、ライブラリーを導入すること、(III)抗体への応答に対する閾値レベルを上回るマーカーの発現に基づいて、細胞集団の亜集団を選択すること、ここで亜集団は複数の細胞を含み、(IV)亜集団から複数のバリアント核酸のサブセットを単離すること、(V)バリアント核酸のヌクレオチド配列を決定すること、ならびに(VI)サブセットに含まれるヌクレオチド配列の、対照との比較における濃縮度に基づいて、少なくとも1つのバリアントヌクレオチド配列を同定すること、を含む。いくつかの態様において、濃縮度は、適切な分析用ソフトウェアを用いた統計的な濃縮度に基づく場合がある。いくつかの態様において、濃縮度の有意性を同定するために、R DESeq2パッケージを使用を使用することができる。いくつかの態様では、有意性に関するp値の閾値は、0.2、0.1、0.05、0.01、0.001、0.0001、0、またはこれらいずれかの値の間の任意の値として定義することができる。
【0118】
いくつかの態様では、多様なT細胞集団からT細胞受容体(TCR)のレパトアを回収するための方法を説明する。この方法は、(I)対象の試料に含まれるTCRαおよびTCRβのヌクレオチド配列を決定すること、(II)このレパトア全体から、少なくとも1つの基準に基づいて、TCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列のサブセットを1つ以上選択すること、(III)TCRαβ対のライブラリーを形成する選択したTCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列のコンビナトリアルペアリングによって、TCRレパトアを作製すること、ならびに、IV)この作製したTCRレパトアから、所望の特徴を有するTCRαとβの対を少なくとも1つ同定すること、を含む場合がある。図1~3に、この方法の様々な態様を示す。
【0119】
いくつかの態様において、TCR鎖の選択は、本明細書でさらに説明するように、最初は頻度閾値に基づいて行われるであろう。いくつかの態様において、選択は、1つ以上の基準に基づいて行われるであろう。選択に関する1つ以上の基準を、例えば、分析された腫瘍の型に基づいて選んでもよい。いくつかの態様において、TCR鎖の選択は、スクリーニング効率の閾値に基づく。いくつかの態様において、選択基準は、どの程度の数のコンビナトリアルTCRαβ鎖を効率的にスクリーニングすることができるかに基づいて選択される。例えば、1×10のTCRαβ対を効率的にスクリーニングできる場合、最大1000のTCRα鎖および1000個のTCRβ鎖が選択され得る。いくつかの態様では、例えば、T細胞のかなりの割合が2つのインフレームTCRα再構成を担持するという事実を補償するために、異なる数のTCRα鎖とTCRβ鎖を選択してもよい。いくつかの態様では、TCRαとTCRβの比を、例えば100万:1~1:100万とすることができる。いくつかの態様では、比を、例えば、100,000:1、10,000:1、1,000:1、100:1、10:1、1:1、1:10、1:100、1:1000、1:10,000、1:100,000を含む、これらの範囲の間にある任意の比とすることができる。
【0120】
いくつかの態様では、本明細書に記載の方法によって生成されたライブラリーにおいて同定されたTCR鎖配列は、単離したTCR鎖配列を提供した患者の治療または診断に有用である。いくつかの態様では、本明細書に記載の方法によって生成されたライブラリーにおいて同定されたTCR鎖配列は、単離したTCR鎖配列を提供した患者以外の患者の治療または診断に有用である。例えば、ある患者から単離されたTCR鎖配列は、別の患者が共有する腫瘍抗原を認識する可能性がある。
【0121】
いくつかの態様では、本明細書に記載の方法によって大量のライブラリーが生成される。いくつかの態様では、大量のライブラリーをスクリーニングすることにより、TCRの特徴の予測が可能になり、それによって、例えば、TCR鎖の特異的な選択が可能になる。
【0122】
いくつかの態様において、TCRライブラリーは、i)コンビナトリアルTCRライブラリー;ii)このようなライブラリーを発現している細胞;および/またはiii)TCRアンプリコンの配列決定用ライブラリーを含む場合がある。
【0123】
いくつかの態様において、TCRライブラリーは、コンビナトリアル様式で正確に1つのTCRα鎖と1つのTCRβ鎖を発現するプラスミドの、ポリクローナルなコレクションである。ライブラリーの性質は、所与のα鎖が所与のβ鎖と対になっている頻度が、そのβ鎖の全体的な発現量に比例するようなものである。逆に、所与のβ鎖が所与のα鎖と対になっている頻度は、そのα鎖の全体的な発現量に比例する(このことから、ライブラリー内の個々の鎖の頻度を制御できることがわかる)。個々の組み合わせの頻度が中央値の頻度±1log2単位の範囲内にある割合は、25%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、86%、97%、98%、99%、100%、または任意の前記2つの値の間である。
【0124】
いくつかの態様において、ライブラリーは、関連する核酸配列を発現している細胞を伴う場合がある。発現は、安定的または一時的な手法を含んでいてもよく、DNA/RNA(またはその誘導体)によって付与されてもよい。そのようなライブラリーを発現しているポリクローナルプールに含まれる細胞の数は、プール中に存在するTCRバリアントの数に、20、30、40、50、75、100、125、150、200、250、300、400、500、750、1,000、5,000、10,000、100,000、1,000,000を乗じた数であってよい。
【0125】
いくつかの態様において、TCRアンプリコンの配列決定用ライブラリーは、所与の試料に含まれるTCRの頻度を表すDNA分子のコレクションである。アンプリコンは所与の細胞で発現するα鎖およびβ鎖の両方に関する情報を含み、また、V領域とJ領域の両方の同一性、ならびにα鎖とβ鎖の両方のCDR3配列を同定するためには、600以上の連続した一連のヌクレオチド配列が必要である。
【0126】
いくつかの態様において、ライブラリーは、約1.5kbのバリアントライブラリーである。
【0127】
本明細書に記載の方法で使用される多様なT細胞集団は、任意の系統のT細胞またはそれらの混合物を含み得る。いくつかの態様において、多様なT細胞集団は、CD4またはCD8T細胞を含む。いくつかの態様において、多様なT細胞集団は、ナイーブT細胞を含む。いくつかの態様において、多様なT細胞集団は、エフェクターT細胞を含む。任意のタイプのエフェクターT細胞は、Th、Th、Th17および細胞障害性Tリンパ球(CTL)を含む、多様なT細胞集団中に見出され得る。いくつかの態様において、多様なT細胞集団は、制御性T細胞(Treg)を含む。いくつかの態様において、多様なT細胞集団は、記憶T細胞を含む。任意の記憶サブタイプは、中心記憶T細胞(TCM細胞)、エフェクター記憶T細胞(TEM細胞およびTEMRA細胞)、組織常在記憶T細胞(TRM)、記憶幹細胞T細胞(TSCM)ならびに仮想記憶T細胞を含む、多様なT細胞集団中に見出され得る。いくつかの態様において、仮想記憶T細胞は、CD4陽性T細胞を含む。いくつかの態様において、仮想記憶T細胞は、CD8陽性T細胞を含む。いくつかの態様において、多様なT細胞集団は、制御性T細胞を含む。いくつかの態様において、多様なT細胞集団は、機能不全T細胞を含む。機能不全T細胞は、(1)抑制性受容体が高レベルであること、(2)ケモカインCXCL13を分泌しながらも、古典的なエフェクター機能(例えばIFN-γ、IL-2およびTNF-α)を喪失していること、および(3)高レベルのグランザイムBなどの細胞障害と関連する転写プロファイルが高レベルで発現していること、によって特徴づけられる。いくつかの態様において、多様なT細胞集団は、αβT細胞を含む。いくつかの態様において、多様なT細胞集団は、γδT細胞を含む。多様なT細胞集団は、ナチュラルキラーT細胞(NKT)および粘膜関連不変性T細胞(MAIT)を含む場合がある。T細胞集団は、異なる細胞型の混合物の一部または組織試料の一部、例えば、血液もしくは腫瘍組織等であり得る。多様なT細胞集団は、異なる系列のT細胞の混合物またはT細胞と非T細胞の混合物を含み得る。
【0128】
いくつかの態様において、TCRαおよびβのヌクレオチド配列は、対象の試料内で決定される。TCRαおよびβのヌクレオチド配列は、試料から得られたDNAまたはRNAを利用して決定することができる。いくつかの態様において、TCRαおよびβのヌクレオチド配列を決定することは、多重PCRを含む。いくつかの態様において、TCRαおよびβのヌクレオチド配列を決定することは、標的濃縮によるTCR配列の回収を含む。例えば、標的濃縮に関して、TCR遺伝子の捕捉を利用することができる(リンネマンら、ネイチャー・メソッズ、2013)。いくつかの態様において、TCR配列の回収は、5'RACEおよびPCRによる回収を利用することを含む。いくつかの態様において、TCR配列の回収は、空間的配列決定を利用することを含む。
【0129】
いくつかの態様において、DNAまたはRNAは、生存細胞から単離される。いくつかの態様において、DNAまたはRNAは、保存された細胞または保存された組織試料から単離される。保存された細胞および保存された組織試料は、生存細胞であっても、または非生存細胞であってもよい。保存された組織試料は、生存細胞もしくは非生存細胞を含んでいても、または生存細胞と非生存細胞両方の組み合わせを含んでいてもよい。DNAまたはRNAは、瞬間凍結した細胞または組織、および固定またはホルマリン固定/パラフィン包埋(FFPE)試料など、任意の保存方法によって保存された試料または標本から単離することができる。細胞および組織試料の保存方法ならびにDNAおよびRNAの単離方法は、当業者に公知である。いくつかの態様において、試料は、腫瘍試料である。いくつかの態様において、腫瘍試料は、FFPE試料である。いくつかの態様において、腫瘍試料は、瞬間凍結試料である。いくつかの態様において、T細胞集団は、異なる細胞型の混合物の一部または組織試料の一部、例えば血液、尿、流入領域リンパ節もしくは腫瘍組織等である。いくつかの態様において、試料は、非生存性腫瘍標本である。いくつかの態様において、非生存性腫瘍標本は、瞬間凍結試料またはFFPE試料である。
【0130】
いくつかの態様において、TCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列の1つ以上のサブセットは、レパトア全体から、a)T細胞集団中での頻度に基づいて、b)第二のT細胞集団との比較における相対的な濃縮度に基づいて、c)TCR鎖の生物学的特性であって、ここでこの特性が、(予測される)抗原特異性、(予測される)HLA拘束性、親和性、共受容体依存性、または親T細胞系列(例えば、CD4もしくはCD8T細胞)のうちの少なくとも1つから選択される、TCR鎖の生物学的特性に基づいて、d)遺伝子発現の空間的パターンであって、ここで空間的な遺伝子の発現パターンが、組織での起源領域または他の遺伝子の発現パターン、例えば共発現など、の少なくとも1つに由来する、遺伝子発現の空間的パターンに基づいて、e)例えば複数の腫瘍病変において出現しているなど、複数の試料において同様の頻度で共出現または出現していることに基づいて、f)このTCRレパトアの特定の部分を別々に回収するための、複数の群への選択に基づいて、g)異なる態様で定義したような複数の基準の組み合わせに基づいて、のうちの少なくとも1つの基準に基づいて選択される。
【0131】
いくつかの態様において、選択基準を、包含する代わりに除外するために(例えば、前段落の選択肢bまたはcにおいて)用いることができる。このことは、本明細書で提供されるいずれの態様にも適用することができる。したがって、対象に投与もしくは供給しないために、またはTCRコレクションへのその包含を除外するために、基準を適用することができる。
【0132】
いくつかの態様において、TCRα鎖およびTCRβ鎖の配列は、所与のTCR鎖と比較してDNAおよびRNAのコピー数が異なることに基づいて、全レパトアから選択される。例えば、RNA由来のコピー数とゲノムコピー数の比は、所与のTCR鎖のゲノムDNAおよびRNAを定量化することに基づいて求めることができる。いくつかの態様では、RNAのコピー数がゲノムDNAのコピー数よりはるかに多く、1より大きい比となるTCR鎖が選択される。いくつかの態様では、試料に含まれる他の全てのTCRに対して任意の所与のTCRに関して得られた比を順位付け、選択することができる。例えば、比がより小さいために順位がより低くなっているTCRと比較して、比がより大きいために順位がより高くなっているTCRを選択することで、RNAのコピー数がより多いTCR鎖を選択することができる。いくつかの態様では、比がより大きいために順位がより高くなっているTCRと比較して、比がより小さいために順位がより低くなっているTCRを選択することで、RNAのコピー数がより少ないTCR鎖を選択することができる。順位を、RNA由来のコピー数とゲノムコピー数との間の比に関する任意の数値に調整することができる。
【0133】
いくつかの態様では、TCRαおよびTCRβの鎖はそれぞれ最大1000までの範囲で、任意の数のTCRα鎖と任意の数のTCRβ鎖が選択される。いくつかの態様では、それぞれ1000を超えるTCRα鎖とTCRβ鎖が選択される。いくつかの態様では、TCRα鎖およびTCRβ鎖の数は、約1×10のTCRαβ対を生じるように選択される。いくつかの態様では、TCRα鎖およびTCRβ鎖の数は、1×10を超えるTCRαβ対を生じるように選択される。
【0134】
いくつかの態様において、TCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列の1つ以上のサブセットは、全レパトアから、T細胞集団中での頻度に基づいて選択される。いくつかの態様では、TCR配列の頻度に関するデータを用いて、TCRα鎖およびTCRβ鎖に関する別の順位が作成される。例えば、異なるTCR鎖のアミノ酸配列(の一部)をコードする核酸分子の絶対数を、多重PCR、標的濃縮または5'RACEとPCRを用いて、T細胞を含有する試料について決定してもよい。いくつかの態様では、本明細書に記載の方法においてDNAが使用される。いくつかの態様では、本明細書に記載の方法においてRNAが使用される。得られたTCR鎖配列のコレクションは、TCRα鎖配列のコレクションとTCRβ鎖配列のコレクションとに分けられる。TCRセグメントがアミノ酸配列レベルで読み取り枠から外れて結合している、および/または停止コドンが導入されている、および/またはフレームシフト変異が存在する、および/または欠陥のあるスプライシング部位が存在する、任意の非生産的TCR鎖配列はコレクションから除去される。いくつかの態様では、特定のTCR鎖のアミノ酸配列(の一部)をコードする核酸分子の絶対数を、「固有の分子識別子」(UMI)を用いた固有の分子の数に基づいて決定し、降順に並び替えてTCRα鎖およびTCRβ鎖を順位づける。いくつかの態様では、各コレクションを、特定のTCR鎖をコードしている核酸分子の絶対数(あるいは、TCRα鎖またはTCRb鎖それぞれの総数に対する割合)のいずれかを用いて降順に並び替え、TCRα鎖およびTCRβ鎖の順位を決定する。
【0135】
本明細書で提供されるいずれの態様においても、RNAを回収または作製し、DNA配列決定を行う代わりにRNAの配列を分析することができる。
【0136】
いくつかの態様では、TCR配列の頻度に関するデータを用いて、TCRα鎖およびTCRβ鎖に関する複合順位が作成される。例えば、異なるTCR鎖アミノ酸配列(の一部)をコードする核酸分子の絶対数を、多重PCR、標的濃縮または5'RACEとPCRを用いて、T細胞を含有する試料について決定してもよい。いくつかの態様にでは、本明細書に記載の方法においてDNAが使用される。いくつかの態様では、本明細書に記載の方法においてRNAが使用される。TCRセグメントがアミノ酸配列レベルで読み取り枠から外れて結合している、および/または停止コドンが導入されている、および/またはフレームシフト変異が存在する、および/または欠陥のあるスプライシング部位が存在する、任意の非生産的TCR鎖配列は、コレクションから除去される。残りのTCR鎖の配列を、特定のTCR鎖をコードする核酸分子の絶対数(必要に応じて固有の分子識別子(UMI)を用いて決定される)、またはTCR鎖の全セット中での割合のいずれかを用いて降順に並び替え、TCR鎖の順位を決定する。
【0137】
いくつかの態様において、頻度閾値は、TCRレパトアの回収に関して望まれる深度で定義される。例えば、異なるTCR鎖アミノ酸配列(の一部)をコードする核酸分子の絶対数を、多重PCR、標的濃縮または5'RACEとPCRを用いて、および必要に応じて、固有の分子識別子(UMI)を用いて、T細胞を含有する試料について決定してもよい。本明細書に記載の方法においてDNAが使用される。いくつかの態様では、本明細書に記載の方法においてRNAが使用される。得られたTCR鎖配列のコレクションは、TCRα鎖配列のコレクションとTCRβ鎖配列のコレクションとに分けられる。TCRセグメントがアミノ酸配列レベルで読み取り枠から外れて結合している、および/または停止コドンが導入されている、および/またはフレームシフト変異が存在する、および/または欠陥のあるスプライシング部位が存在する、任意の非生産的TCR鎖配列は、コレクションから除去される。各コレクションを、特定のTCR鎖をコードしている核酸分子の絶対数(あるいは、TCRα鎖またはTCRb鎖それぞれの総数に対する割合)のいずれかを用いて降順に並び替え、TCRα鎖およびTCRβ鎖の順位を決定する。試料中で最も頻度のが高い10のTCRを回収することを意図している場合、最も頻度の高い上位10のTCRα鎖およびTCRβ鎖のみを選択してもよい。対照的に、試料に含まれるTCRレパトアの大部分を回収することが望まれる場合、最も頻度の高い上位10を超えるTCRα鎖およびTCRβ鎖を選択してもよい。頻度閾値を低くすると、選択したTCR鎖のプールや得られたTCRライブラリーに、より大きな深度だけでなく、高い多様性をもたらす可能性がある。重要なことに、本開示の態様の1つに記載したように、TCRα鎖またはTCRβ鎖を、複合順位からもまた選択してもよい。
【0138】
いくつかの態様では、より低い頻度閾値を用いて、頻度に基づいてTCRα鎖およびTCRβ鎖を選択する。いくつかの態様では、等しい数のTCRα鎖とTCRβ鎖を選択する必要はない。例えば、異なるTCR鎖アミノ酸配列(の一部)をコードする核酸分子の絶対数を、多重PCR、標的濃縮または5'RACEとPCRを用いて、および必要に応じて、固有の分子識別子(UMI)を用いて、T細胞を含有する試料について決定してもよい。本明細書に記載の方法においてDNAが使用される。いくつかの態様では、本明細書に記載の方法においてRNAが使用される。得られたTCR鎖配列のコレクションは、TCRα鎖配列のコレクションとTCRβ鎖配列のコレクションとに分けられる。TCRセグメントがアミノ酸配列レベルで読み取り枠から外れて結合している、および/または停止コドンが導入されている、および/またはフレームシフト変異が存在する、および/または欠陥のあるスプライシング部位が存在する、任意の非生産的TCR鎖配列は、コレクションから除去される。各コレクションを、特定のTCR鎖をコードしている核酸分子の絶対数(あるいは、TCRα鎖またはTCRb鎖それぞれの総数に対する割合)のいずれかを用いて降順に並び替え、TCRα鎖およびTCRβ鎖の順位を決定する。その結果得られる順位は、等しい数のTCRα鎖とTCRβ鎖を選択することを妨げる、異なる数のTCRα鎖またはTCRβ鎖を含み得る。あるいは、例えば細胞内の両方のTCRα遺伝子座が生産的に再構成される傾向があるため、一方のカテゴリーから、他方よりも、多くのTCR鎖を選択することが望まれる場合もある。さらに、特定の頻度(絶対数もしくは割合で表される)を超えるかまたはそれ未満の全てのTCR鎖を選択した場合、これによって、それぞれ異なる数のTCRα鎖とTCRβ鎖が選択される可能性がある。重要なことに、先の態様の1つに記載したように、TCRα鎖またはTCRβ鎖を、複合順位からもまた選択してもよい。
【0139】
いくつかの態様では、定量的頻度データに基づいて、最も豊富な上位100のTCRα鎖およびTCRβ鎖が選択される。いくつかの態様では、定量的頻度データに基づいて、最も豊富な上位100を超えるTCRα鎖およびTCRβ鎖が選択される。いくつかの態様では、頻度データに基づいて、最も豊富な上位100、上位200、上位300、上位400、上位500、上位600、上位700、上位800、上位900、上位1000、またはその間の任意の数もしくは範囲のTCRα鎖およびTCRβ鎖が選択される。いくつかの態様では、頻度データに基づいて、最も豊富な上位1000を超えるTCRα鎖およびTCRβ鎖が選択される。いくつかの態様では、頻度データに基づいて、上位5%、上位10%、上位20%、上位30%、上位40%、上位50%、上位60%、上位70%、上位80%、上位90%、上位100%、またはその間の任意の数もしくは範囲のTCRα鎖およびTCRβ鎖が選択される。いくつかの態様では、選択された鎖は、TCRαβ対のコレクションを構成するための基本単位として機能する。
【0140】
いくつかの態様において、TCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列の1つ以上のサブセットは、全レパトアから、第二のT細胞集団との比較における相対的な濃縮度に基づいて選択される。いくつかの態様では、別の試料と比較した場合に、所与の試料において最も高倍率の濃縮度の上位100のTCRα鎖およびTCRβ鎖が選択される。いくつかの態様では、相対的な濃縮度に基づいて、最も豊富な上位100のTCRα鎖およびTCRβ鎖が選択される。いくつかの態様では、最も高倍率の濃縮度とは別の試料との比較である。いくつかの態様では、相対的な濃縮度に基づいて、最も豊富な上位100を超えるTCRα鎖およびTCRβ鎖が選択される。いくつかの態様では、相対的な濃縮度に基づいて、最も豊富な上位100、上位200、上位300、上位400、上位500、上位600、上位700、上位800、上位900、上位1000、またはその間の任意の数もしくは範囲のTCRα鎖およびTCRβ鎖が選択される。いくつかの態様では、相対的な濃縮度に基づいて、最も豊富な上位1000を超えるTCRα鎖およびTCRβ鎖が選択される。いくつかの態様では、相対的な濃縮度に基づいて、上位5%、上位10%、上位20%、上位30%、上位40%、上位50%、上位60%、上位70%、上位80%、上位90%、上位100%、またはその間の任意の数もしくは範囲のTCRα鎖およびTCRβ鎖が選択される。いくつかの態様では、腫瘍病変からのTCR鎖は、血液における対応する頻度との比較における相対的な濃縮度に基づいて、選択される。いくつかの態様では、腫瘍病変からのTCR鎖は、第二の腫瘍病変との比較における相対的な濃縮度に基づいて、選択される。いくつかの態様では、複数の試料におけるTCRの定量を並行して実施する。例えば、複数の腫瘍病変、同一個体由来の対応させた腫瘍病変と血液試料、またはより大きな腫瘍病変の異なる箇所から採取した複数の切片を並行して分析することができる。同一個体に由来する複数の試料または対応させた試料を分析することで、TCR鎖の生物学的関連性を決定することができる。例えば、血液と比較して腫瘍において濃縮された頻度を有してるかまたは複数の腫瘍病巣において出現するTCR鎖は、末梢血にも高い頻度で出現しているかまたは単一の腫瘍病巣に出現するTCR鎖と比較して、腫瘍抗原の認識と関連する可能性が高いと考えられる。いくつかの態様では、TCR鎖は、腫瘍周囲の正常組織を含み得る腫瘍辺縁部または腫の境界領域と比較した場合の、腫瘍中心部におけるTCR鎖の頻度に基づいて選択される。開示したいずれかの態様では、相対頻度の差は、相対頻度の倍率差に基づく順位を作成するために使用することができる。相対頻度の倍率差は、10-6~10の間の任意の数であってよい。いくつかの態様では、比較した少なくとも2つの試料のうちの1つにのみ見出されるTCR鎖は、TCRライブラリー生成のために優先的に選択または除外することができる。いくつかの態様では、順位が上位100のTCRα鎖およびTCRβ鎖が、TCRライブラリーの生成に使用される。いくつかの態様では、順位が上位100を超えるTCRα鎖およびTCRβ鎖が、TCRライブラリーの生成に使用される。いくつかの態様では、新生抗原特異的である可能性が高いTCR鎖を標的選択するために、異なる試料に含まれるTCR鎖レパトアを比較する。いくつかの態様では、TCR鎖配列を相対的な濃縮度に基づいて順序付け、次いで、例えば前述のように、頻度に基づく順位に従って選択する。TCR鎖を選択するためには、基準をどのような順序で使用しても、基準をどのように組み合わせて使用してもよい。
【0141】
本明細書で提供されるいずれかの態様では、複数の測定基準を使用することもできる。すなわち、2つ以上の側面の組み合わせによる順位付け、例えば頻度による順位付けと腫瘍濃縮度による順位付けなど、を行うことができる。いくつかの態様において、TCRは、腫瘍における高い頻度と腫瘍における濃縮度の両方を有する。
【0142】
いくつかの態様において、TCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列の1つ以上のサブセットは、全レパトアから、TCR鎖の生物学的特性または配列の特徴に基づいて選択される。いくつかの態様において、TCR鎖の生物学的特性または配列の特徴は、(予測される)抗原特異性、(予測される)HLA拘束性、親和性、共受容体依存性、または親T細胞系列(例えば、CD4もしくはCD8T細胞)のうちの少なくとも1つから選択される。いくつかの態様において、生物学的特性に関する情報は、インシリコでのアルゴリズムに基づく予測によって得られる。
【0143】
いくつかの態様では、試料中のTCRクラスターを同定するためにアルゴリズムが使用される。TCRクラスターに関する情報は、例えば、その後のTCRライブラリー生成のためのTCR鎖の標的選択に使用することができる。いくつかの態様では、TCRクラスターに関する情報は、定義された特性を有するクラスターを選択するために使用される。いくつかの態様では、TCRクラスターに関する情報は、クラスターと公開されているTCRデータベースを比較するために使用される。いくつかの態様では、TCRクラスターに関する情報は、無関係なTCR特異性を有する可能性の高いクラスターまたはTCR鎖を除去するために使用される。いくつかの態様では、クラスターは、クラスターと公開されているTCRデータベースとの比較に基づいて除去される。無関係である可能性が高いTCR特異性の例としては、例えば、インフルエンザ、CMV、EBV、および他のウイルスならびに細菌の感染性物質に由来するウイルスエピトープの認識などがある。生成されたTCR鎖のセットであって、無関係なTCR鎖が除去されているTCR鎖のセットは、その後、TCRライブラリー生成のために使用することができる。いくつかの態様では、TCRクラスターに関する情報は、関連するアミノ酸配列を有するTCR鎖のクラスターを優先的に含めるために使用される。
【0144】
いくつかの態様では、TCRの特性は、TCR鎖のアミノ酸配列に基づいて同定される。いくつかの態様では、TCRの特性は、TCRαβ複合体の構造的特徴に基づいて同定される。特性の例としては、例えば、HLA拘束性、抗原特異性、共受容体依存性、親T細胞系列、TCRのクラスター間で共有される特性、その他が挙げられる。
【0145】
いくつかの態様では、TCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列の1つ以上のサブセットは、全レパトアから、空間的な情報に基づいて選択される。いくつかの態様では、TCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列の1つ以上のサブセットは、全レパトアから、遺伝子またはタンパク質発現の空間的パターンに基づいて選択され、ここで、遺伝子またはタンパク質発現の空間的パターンは、組織内の起源領域または他の遺伝子もしくはタンパク質の共発現パターン(疑いを避けるために共発現がない可能性も含む)の少なくとも1つに由来する。いくつかの態様において、TCR鎖は、腫瘍内局在性に基づいて選択される。いくつかの態様において、TCR鎖は、特定の表現型マーカーの過剰発現(または発現の欠如)を示している空間における濃縮度に基づいて選択される。表現型マーカーは、1つ以上の表面マーカーもしくはその断片、1つ以上のタンパク質もしくはその断片、マイクロRNA、siRNA、または他の任意のRNAなどの1つ以上のRNAを含むがこれらには限定されない、表現型と関連する任意のマーカーであってよい。
【0146】
いくつかの態様では、空間的配列決定法は、TCR鎖をふるい分けるために使用される。空間的配列決定により、TCRの配列情報を含むトランスクリプトーム情報または遺伝情報を、組織内での細胞の位置とともに細胞から回収することができる。例えば、隣接する細胞のセットを回収し、それらの組織内での起源領域を示すラベルを付けることで、トランスクリプトーム情報や遺伝情報を空間的な次元と関連づける。組織内の同じまたは近傍の空間的位置から回収された細胞は、空間的クラスターを形成する。特定の空間的クラスターに由来するTCR鎖を、特定の情報に基づいて優先的に選択してもよい。使用できる情報には、例えば、解剖学的情報が含まれる。例えば、腫瘍中心部または三次リンパ節構造に局在する細胞のクラスターは、腫瘍辺縁部に局在するクラスターよりも強い関心をもたれる場合がある。使用できる情報には、例えば、トランスクリプトーム情報および/またはタンパク質の発現情報が含まれる。例えば、PD-1およびCD39の発現が高い空間的クラスターは、そのようなマーカーの発現が低いクラスターよりも、新生抗原特異的なTCR鎖が濃縮されている可能性が高い。したがって、PD-1およびCD39の発現が高いクラスターを、TCR鎖をふるい分けるために選択することができる。いくつかの態様において、クラスターは、例えば、腫瘍辺縁部と比較した場合の、腫瘍中心部における過剰発現に基づいて選択される。選択のための例示的なパラメーターを表1に示す。
【0147】
【表1】
【0148】
選択されたTCR鎖のセットは、TCRライブラリーの生成に使用することができる。いくつかの態様では、RNAまたはDNAの空間分解配列決定が用いられる。いくつかの態様では、バルクTCR鎖集団は、例えば、T細胞の表現型に関連する付加的な転写物とともに回収される。T細胞の表現型に関連する転写物の例としては、CTLA-4、PD-1、CD103、CD39、FoxP3、IFN-γ、IL-2、CXCL13等が挙げられる。いくつかの態様では、解剖学的局在性や、複数の空間的クラスターから回収されたT細胞特異的トランスクリプトームが、目的のクラスターを同定するために使用される。
【0149】
いくつかの態様では、TCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列の1つ以上のサブセットは、全レパトアから、複数の試料において同様の頻度で共出現または出現していることに基づいて選択される。いくつかの態様では、TCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列の1つ以上のサブセットは、全レパトアから、複数の腫瘍病変において出現していることに基づいて選択される。いくつかの態様において、複数の腫瘍病変に由来するTCR鎖の頻度情報は、目的のTCR鎖をふるい分けるために使用される。いくつかの態様では、目的のTCR鎖をふるい分けるために使用される特定の情報は、1つの腫瘍病変のみに発現しているTCR鎖を除外することを含む。いくつかの態様では、目的のTCR鎖をふるい分けるために使用される特定の情報は、試験された全腫瘍病変において発現しているTCR鎖を選択的に含めることを含む。
【0150】
いくつかの態様では、TCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列の1つ以上のサブセットは、全レパトアから、TCRレパトアの特定の部分を別々に回収するための、複数の群への選択に基づいて選択される。いくつかの態様では、定義された閾値を超える頻度を有する全てのTCRα鎖配列とTCRβ鎖配列は、まとめて1つの群に選択される。例えば、TCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列全体に対してある割合を構成する、例えば、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.05%もしくは0.01%以上、またはこの範囲間の任意の他の数を構成する全てのTCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列を、1つの群に選択してもよい。同様の原理で、例えば、順位が10以上(上位10)、100以上(上位100)、1000以上(上位1000)または10000以上(上位10000)の全てのTCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列を、1つの群に選択してもよい。いくつかの態様では、定義された閾値を下回るまたは定義された2つの閾値の間にある全てのTCRα鎖配列とTCRβ鎖配列が、1つの群に選択される。例えば、1%未満または1%と0.1%の間にある全てのTCRα鎖配列とTCRβ鎖配列を、1つの群に選択することができる。同様の原理で、例えば、順位が10以下または順位が10から100の間にある全てのTCRα鎖配列とTCRβ鎖配列を、1つの群に選択してもよい。いくつかの態様では、定義された閾値を超える頻度を有する全てのTCRα鎖配列とTCRβ鎖配列がまとめて1つの群に選択され、定義された閾値を下回る全てのTCRα鎖配列とTCRβ鎖配列が別の群に選択される。例えば、1%以上の全てのTCRα鎖配列とTCRβ鎖配列を1つの群に選択し、1%未満の全てのTCRα鎖配列とTCRβ鎖配列を第二の群に選択する。同様の原理で、例えば、順位10以上の全てのTCRα鎖配列とTCRβ鎖配列を1つの群に選択し、順位10未満の全てのTCRα鎖配列とTCRβ鎖配列を第二の群に選択する。
【0151】
いくつかの態様では、実質的に複雑なTCRライブラリーを作製することなく、大量のTCRがスクリーニングされる。一例として、複数のサブライブラリーを生成することができる。いくつかの態様において、TCRライブラリーの複雑度は、含まれる全てのTCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列のランダムな対合から生じる複雑度よりも小さい。いくつかの態様では、生成されたTCRライブラリーは、生じる可能性のあるTCRαとTCRβの組み合わせを全ては含まない。いくつかの態様において、TCR鎖のセットは、TCRα鎖配列とTCRβ鎖配列をランダムに対合させることによって得られるであろうよりも複雑度が低いライブラリーを1つ以上作製するために、個々のプールに分離される。いくつかの態様において、TCR鎖は、順位閾値に基づいてプールされる。いくつかの態様において、一定の順位内にある全てのTCRは、TCRライブラリー生成用のプールを形成する。例えば、上位50の順位のTCRα鎖およびTCRβ鎖をプール1に含めることができ、上位25から75までの順位のTCRα鎖およびTCRβ鎖をプール2に含めることができる、などである。さらなる例として、上位50から100までの順位のTCRα鎖およびTCRβ鎖を、プール2に含めることができる、などである。TCRα鎖とTCRβ鎖に関して別の閾値を使うことを含む、任意の順位基準を使用することができる。いくつかの態様において、順位は頻度に基づくものである。いくつかの態様において、順位付けは、参照試料と比較した場合の、相対的な濃縮度に基づくものである。いくつかの態様において、TCR鎖は、空間情報に基づいてプールされる。例えば、所与の空間的クラスターに由来する全てのTCRα鎖とTCRβ鎖は、特定のプールを形成する場合がある。いくつかの態様において、TCR鎖は、TCRの特徴に基づいてプールされる。任意のTCRの特徴を使用して、TCRをプールすることができる。例えば、定義された配列の特徴または予測される特性を有する全てのTCRは、特定のプールを形成する場合がある。予測される特性の例としては、例えば、共受容体依存性、起源となるT細胞系列、HLA拘束性、特異性等が挙げられる。
【0152】
いくつかの態様において、TCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列の1つ以上のサブセットは、全レパトアから、異なる態様で定義されるような複数の基準の組み合わせに基づいて選択される。
【0153】
いくつかの態様において、TCRレパトアは、選択したTCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列のコンビナトリアルペアリングによって作製される。いくつかの態様において、コンビナトリアルペアリングは、選択した全てのTCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列のランダムペアリングを含む。TCRαβ鎖のライブラリーは、選択したTCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列のコンビナトリアルペアリングによって作製することができる。いくつかの態様では、選択したTCR鎖配列は、TCRα鎖およびTCRβ鎖のDNAまたはRNA断片のライブラリーを合成するために使用される。当業者に知られているクローニング戦略(例えば、ギブソン分子集合体およびゴールデンゲート集合体を含むが、これらに限定されない)を用いて、TCRα鎖およびTCRβ鎖のDNAまたはRNA断片を正確に1つずつ連結させることによって、人工TCR遺伝子を作製することができる。いくつかの態様において、TCRα鎖およびTCRβ鎖の組み合わせは、正確に1つずつのTCRα鎖とβ鎖が連結したDNA断片またはRNA断片を直接合成することによって生成される。いくつかの態様において、TCRα鎖およびTCRβ鎖の組み合わせは、細胞がおよそ1つのTCRα鎖と1つのTCRβ鎖を発現するように、TCRα遺伝子およびTCRβ遺伝子の別々のコレクションで細胞プールを修飾することによって、細胞内で作製される。
【0154】
いくつかの態様において、TCRαβ対のライブラリーを作製する選択されたTCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列のコンビナトリアルペアリングによってTCRレパトアを作製することは、a)TCR鎖配列を使用して、TCRα鎖およびTCRβ鎖のDNAまたはRNA断片の別々のライブラリーを合成し、その後、正確に1つずつのTCRα鎖とβ鎖が連結した1つのDNAまたはRNA断片に連結すること、b)TCRα鎖およびTCRβ鎖の組み合わせを、正確に1つずつのTCRα鎖とβ鎖が連結したDNA断片またはRNA断片を直接合成することによって生成すること、c)TCRα鎖およびTCRβ鎖の組み合わせを、細胞が少なくとも1つのTCRα鎖と1つのTCRβ鎖を発現するように、TCRα遺伝子およびTCRβ遺伝子の別々のコレクションで細胞プールを修飾することによって、細胞内で作製すること、および/またはd)TCRα鎖およびTCRβ鎖の組み合わせを一本鎖TCR構築物に連結すること、ここで、この一本鎖TCR構築物にはTCRαおよびTCRβ両方の可変鎖断片が融合されていて、かつ、(i)膜貫通ドメインのみ、または(ii)CD3ζもしくはCD3εシグナルドメインを単独でまたはCD28シグナルドメインとの組み合わせを含むがこれに限らない付加的な細胞内シグナル伝達ドメインと融合されている、のうちの少なくとも1つによって、達成される。
【0155】
本明細書のいずれの態様についても、いくつかの態様では、クラスIおよび/またはクラスII拘束性TCR配列が回収される。
【0156】
本明細書で提供されるいずれの態様についても、いくつかの態様では、新生抗原特異的TCR配列、ウイルス特異的TCR配列、共有腫瘍抗原特異的TCR配列、および/または自己抗原特異的TCR配列のうちの少なくとも1つが回収される。
【0157】
いくつかの態様において、活性化マーカーは、CD25、CD69、CD62L、CD137、IFN-γ、IL-2、TNF-α、GM-CSF、OX40からなる群より選択することができる。
【0158】
いくつかの態様において、TCRレパトアは、試料に含まれる全てのTCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列を表す。いくつかの態様において、TCRレパトアは、試料から回収された全てのTCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列を表す。いくつかの態様において、TCRレパトアは、試料中に存在するTCR配列の全レパトアから、TCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列のサブセットとして選択される。いくつかの態様において、TCRレパトアは、試料から回収されたTCR配列全レパトアから、TCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列のサブセットとして選択される。
【0159】
いくつかの態様において、方法は、作製されたTCRレパトアから少なくとも1つのTCRαβ対を同定することを含む。いくつかの態様において、TCRαβ対は、新たに生成される組合せを表す。いくつかの態様において、TCRαβ対は、新たに生成されない組合せを表す。いくつかの態様において、レポーター細胞またはT細胞のプールは、生成されたTCRαβ対のライブラリーで修飾される。いくつかの態様において、修飾されたレポーター細胞またはT細胞のプールは、少なくとも1つの目的の抗原を負荷された抗原提示細胞によって刺激され得る。レポーター細胞またはT細胞に対する任意の刺激アッセイを使用することができる。レポーター細胞またはT細胞に対する刺激アッセイは、当業者に知られている。いくつかの態様において、抗原反応性レポーター細胞またはT細胞は、少なくとも1つの活性化マーカーに基づいて単離される。例えば、任意のCD4またはCD8T細胞活性化マーカーを使用することができる。いくつかの態様では、任意のCDマーカーを使用することができる。いくつかの態様では、活性化マーカーとして、例えば、CD69、CD137、IFN-γ、IL-2、TNF-α、GM-CSFなどのマーカーを挙げることができる。いくつかの態様において、抗原反応性レポーター細胞またはT細胞は、増殖性に基づいて単離される。いくつかの態様において、抗原反応性レポーター細胞またはT細胞は、レポーター細胞またはT細胞の活性化に依存した耐性遺伝子の発現によって獲得される抗生物質選抜への耐性に基づいて単離される。例えば、当業者に知られている、磁気ビーズ濃縮またはフローサイトメトリーを含むがこれらに限定されない、任意のレポーター細胞またはT細胞の単離方法を使用することができる。いくつかの態様では、レポーター細胞またはT細胞の単離が必要とされない場合がある。例えば、レポーター細胞もしくはT細胞の増殖性、または抗生物質による選択を利用した場合、選択の必要性が排除され得る。いくつかの態様において、RNAは、バルク抗原反応性レポーター細胞またはT細胞から得られる。バルク抗原反応性レポーター細胞またはT細胞から得られたRNAは、TCRαβ特異的cDNAを生成するために使用することができる。いくつかの態様において、TCRαβ特異的cDNAは、抗原反応性レポーター細胞またはT細胞のTCRαβ遺伝子の配列を決定するために、DNA配列決定によって分析される。いくつかの態様において、DNAは、抗原反応性レポーター細胞またはT細胞のTCRαβ遺伝子の配列を決定するためにDNA配列決定によって分析されるTCRα/β特異的PCR産物を生成するために、バルク抗原反応性レポーター細胞またはT細胞から得られる。いくつかの態様では、定義されたTCRαβ対を、RNAまたはDNAから生成された特異的PCR産物の配列決定によって検出することができる分子核酸に基づく識別子(「バーコード」)と関連付けてもよい。
【0160】
いくつかの態様において、TCRαβ対は、単一細胞の使用に基づく手法を用いて決定される。単一細胞の使用に基づく手法には、例えば、ドロップレットPCRが含まれる。単一細胞の使用に基づく手法を用いて、抗原反応性T細胞のTCRαβ遺伝子の配列を分析することができる。いくつかの態様において、抗原反応性T細胞は、1つ以上の活性化マーカーによって同定される。例えば、CD4またはCD8T細胞活性化マーカーを含む、任意のCDマーカーを使用することができる。いくつかの態様において、活性化マーカーは、例えば、CD69、CD137、IFN-γ、IL-2、TNF-α、GM-CSFを含む。いくつかの態様において、抗原反応性T細胞は、その転写プロファイルによって同定される。
【0161】
いくつかの態様において、TCRαβ対は、バルクT細胞に挿入されたTCRαβ遺伝子のゲノムPCRによって決定される。いくつかの態様において、生成されたPCR産物は、DNA配列決定分析に供される。
【0162】
いくつかの態様において、TCRが導入されたレポーター細胞またはT細胞の活性化は、レポーター遺伝子を用いて同定される。レポーター遺伝子は、TCRの誘発を示すことができる。レポーター遺伝子の例としては、例えば、NFAT-GFPまたはNFAT-YFPが挙げられる。いくつかの態様において、抗原反応性レポーター細胞またはT細胞は、T細胞の活性化に依存した耐性遺伝子の発現によって獲得される抗生物質選抜への耐性に基づいて単離される。レポーター遺伝子の例としては、例えば、NFAT-ピューロマイシン耐性またはNFAT-ハイグロマイシンが挙げられる。いくつかの態様では、レポーター遺伝子の組み合わせが使用される。
【0163】
いくつかの態様において、抗原反応性細胞は、目的の抗原を担持するMHC複合体への結合によって同定される。
【0164】
前記いずれの態様においても、少なくとも1つのTCRαβ対が、作製されたTCRレパトアから同定される。所望されるTCRαβ対の特徴としては、抗原特異性、TCR親和性、TCR共受容体依存性、HLA拘束性、TCR交差反応性、TCR抗腫瘍反応性、またはそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0165】
前記いずれの態様においても、回収されたTCR鎖配列は、完全なTCR鎖配列を組み立てるためのヌクレオチド配列アライメントに基づいて少なくとも1つのTCR-Vセグメントファミリーおよび少なくとも1つのTCR-Jセグメントファミリーを選択するのに十分な5'および3'のヌクレオチド配列情報とともに、CDR3ヌクレオチド配列と定義される。いくつかの態様において、J遺伝子は、2桁または4桁の解像度で同定される。いくつかの態様において、ヌクレオチド配列アライメントは、65%配列同一性、70%配列同一性、75%配列同一性、80%配列同一性、85%配列同一性、90%配列同一性、95%配列同一性、96%配列同一性、97%配列同一性、98%配列同一性、99%配列同一性、100%配列同一性、およびその間の任意の数または範囲に基づくものである。いくつかの態様では、作製されたTCRライブラリーから所望の特徴を有するTCRα鎖およびβ鎖を同定するのに十分な配列情報が得られる。
【0166】
いくつかの態様において、回収されたTCR鎖は、CDR3のヌクレオチド配列によって定義される。いくつかの態様において、回収されたTCR鎖は、CDR3のアミノ酸配列によって定義される。
【0167】
いくつかの態様において、回収されたTCR鎖は、少なくとも1つのTCR-Vおよび1つのTCR-Jセグメントファミリーを選択するのに十分な5'および3'のヌクレオチド配列情報によって定義される。いくつかの態様において、回収されたTCR鎖は、少なくとも1つのTCR-Vおよび1つのTCR-Jセグメントファミリーを選択するのに十分なアミノ酸配列情報によって定義される。いくつかの態様において、回収されたTCR鎖は、作製したTCRライブラリーに含まれるTCRαβ対を明確に同定するのに十分なヌクレオチドまたはアミノ酸配列情報として定義される。いくつかの態様において、回収されたTCR鎖は、作製したTCRライブラリーに含まれるTCRαβ対を明確に同定する、ヌクレオチドに基づくバーコードなどの、固有の分子識別子として定義される。
【0168】
いくつかの態様において、TCR鎖配列は、ヌクレオチド配列のアライメントに基づいて定義される。いくつかの態様において、TCR鎖配列は、アミノ酸配列のアライメントに基づいて定義される。ヌクレオチドまたはアミノ酸配列のアライメントを用いて、完全なTCR鎖配列を組み立てることができる。
【0169】
いくつかの態様では、前述したような、非生存性の出発材料を含む対象由来の試料を使用することができる。非生存性の出発材料としては、例えば、非生存細胞または非生存組織試料が挙げられる。非生存性の出発材料は、当該技術分野において知られている任意の方法によって保存することができる。
【0170】
前述のいずれかの態様では、同定したTCRレパトアの定義された部分を回収することができる。いくつかの態様において、同定したTCRレパトアの定義された部分は、完全なTCRレパトアではなく、TCRレパトアの選択された部分を回収することを含む。選択されたTCRレパトアは、T細胞集団中での定義された頻度、第二のT細胞集団との比較における相対的な濃縮度、TCR鎖の生物学的特性、遺伝子発現の空間的パターン、複数の試料において同様の頻度で出現または共出現していること、TCR鎖の複数の群またはプールへの選択、またはそれらの任意の組み合わせなど、前述した基準のいずれかにより定義することができる。いくつかの態様において、選択されたTCRレパトアは、所与の抗原特異性によって定義される。いくつかの態様において、抗原特異性は、新生抗原に対する特異性を含む。いくつかの態様において、抗原特異性は、予想される抗原特異性を含む。
【0171】
いくつかの態様では、抗原特異的TCR配列が回収される。いくつかの態様では、新生抗原特異的TCR配列が回収される。例えば、新生抗原は、腫瘍において見られ、抗原特異的T細胞によって認識される変異したタンパク質であり得る。したがって、腫瘍指向性の抗原特異的T細胞は、腫瘍またはその腫瘍抗原に特異的なTCR配列と共に存在し得る。
【0172】
前述のいずれかの態様では、抗原特異的TCR配列を発現しているT細胞を、感染症または自己免疫疾患の診断または治療に使用することができる。
【0173】
前述のいずれかの態様では、新生抗原特異的TCR配列を発現しているT細胞を、癌治療として投与することができる。例えば、新生抗原特異的T細胞を、新生抗原を発現する腫瘍を標的とするために使用することができる。いくつかの態様において、新生抗原特異的T細胞は、新生抗原特異的TCR鎖をT細胞に導入することによって生成される。いくつかの態様において、新生抗原特異的TCR配列を発現しているT細胞は、自己由来であってもまたは同種異系であってもよい。
【0174】
前述のいずれかの態様では、方法を、診断に用いることができる。例えば、ある組織抗原に対する抗原特異的TCRの存在は、自己免疫疾患の指標となり得る。別の例として、特定の病原体に対する抗原特異的TCRの存在は、感染症の指標となり得る。
【0175】
いくつかの態様において、診断は、感染症の病的部位からTCRレパトアを回収することである。いくつかの態様において、診断は、自己免疫の部位からTCRレパトアを回収することである。例えば、感染部位または自己免疫部位の細胞または組織は、特定のT細胞によって認識される特定の抗原を発現している場合がある。感染部位または自己免疫部位で特定の抗原を検出できるT細胞のTCR配列を決定することにより、感染部位や自己免疫部位に関連するかまたは特異的なTCRレパトアを回収することができる。自己免疫を媒介する自己抗原または病原体に対するTCR配列を同定するために、選択したTCRα鎖およびTCRβ鎖から生成したTCRαβのコンビナトリアルライブラリーを、選択した自己抗原または病原体由来の抗原のセットに対する反応性に関して試験することができる。
【0176】
前述した態様のいずれかにおいて、方法は、BCR/抗体レパトアの回収に使用することができる。例えば、BCR受容体を発現するB細胞または特定の抗原に特異的な抗体を産生するB細胞を回収することができる。このように、回収したB細胞のBCR/抗体レパトアは、前述した任意の方法を適用して、免疫グロブリン重鎖および軽鎖を回収し、選択し、そしてコンビナトリアルペアリングして抗体レパトアを作製することにより、決定することが可能である。作製された抗体レパトアから目的の特性を持つ抗体を選択することができる。
【0177】
前述した態様のいずれかにおいて、方法は、TCRαおよびβの核酸配列を含む患者の試料から核酸を単離することを含む場合がある。核酸は、DNAまたはRNAであってよい。核酸は、血液、皮膚、肝臓、骨髄、生検材料などを含むがこれらに限定されない、対象の任意の組織または細胞から単離することができる。いくつかの態様において、対象はヒトである。いくつかの態様において、対象は哺乳類である。いくつかの態様において、対象は、動物である。
【0178】
本明細書に記載の任意の態様において、対象由来の試料は、体液から単離された細胞を含んでいてもよい。いくつかの態様において、細胞は、腫瘍特異的T細胞または腫瘍浸潤リンパ球である。いくつかの態様において、体液は、血液、尿、血清、漿液、血漿、リンパ液、脳脊髄液、唾液、喀痰、粘膜分泌物、膣液、腹水、胸水、心嚢液、腹膜液、および腹腔液からなる群より選択される。
【0179】
いくつかの態様において、TCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列の1つ以上のサブセットは、レパトア全体から、T細胞集団中での頻度に基づいて;第二のT細胞集団との比較における相対的な濃縮度に基づいて;所与のTCR鎖と比較してDNAおよびRNAのコピー数が異なることに基づいて;TCR鎖の生物学的特性であって、ここでこの特性が、(予測される)抗原特異性、(予測される)HLA拘束性、親和性、共受容体依存性、または親T細胞系列(例えば、CD4もしくはCD8T細胞)またはTCR配列モチーフのうちの少なくとも1つから選択される、TCR鎖の生物学的特性に基づいて;遺伝子発現の空間的パターンであって、ここで空間的な遺伝子の発現パターンが、組織での起源領域または他の遺伝子の共発現パターンの少なくとも1つに由来する、遺伝子発現の空間的パターンに基づいて;例えば複数の腫瘍病変において出現しているなど、複数の試料において同様の頻度で共出現または出現していることに基づいて;このTCRレパトアの特定の部分を別々に回収するための、複数の群への選択に基づいて;異なる態様で定義したような複数の基準の組み合わせに基づいて、のうちの少なくとも1つの基準に基づいて選択される。
【0180】
いくつかの態様において、TCRαおよびTCRβの配列の決定は、多重PCR;標的濃縮によるTCR配列の回収;5'RACEとPCRによるTCR配列の回収;空間的配列決定によるTCR配列の回収;RNA配列によるTCR配列の回収;および固有の分子識別子(UMI)の使用、のうちの少なくとも1つによって達成される。
【0181】
いくつかの態様において、ステップIIIは、TCR鎖の配列を使用してTCRα鎖およびTCRβ鎖のDNA断片またはRNA断片のライブラリーを合成し、これを1つのDNA断片またはRNA断片に連結すること(必要に応じて、ここで正確に1つずつのTCRα鎖とβ鎖が連結される);正確に1つずつのTCRα鎖とβ鎖が連結したDNA断片またはRNA断片を直接合成することによって、TCRα鎖およびTCRβ鎖の組み合わせを生成すること;または、細胞が1つのTCRα鎖と1つのTCRβ鎖を発現するように、TCRα遺伝子およびTCRβ遺伝子の別々のコレクションで細胞プールを修飾することによって、TCRα鎖およびTCRβ鎖の組み合わせを細胞内で作製すること;TCRα鎖およびTCRβ鎖の組み合わせを、両TCR鎖断片とCD3ζもしくはCD3εシグナルドメインを単独でまたはCD28シグナルドメインとの組み合わせで含む一本鎖TCR構築物として連結すること、のうちの少なくとも1つによって達成される。
【0182】
いくつかの態様において、ステップIVは、生成されたTCRαβ対のライブラリーで修飾されたレポーター細胞のプールを少なくとも1つの目的の抗原を提示する抗原提示細胞によって刺激し、TCR単離用の少なくとも1つの活性化マーカーに基づいて抗原反応性のレポーター細胞またはT細胞を単離すること;生成されたTCRαβ対のライブラリーで修飾されたレポーター細胞のプールを細胞増殖を追跡するのに適した蛍光色素で標識し、少なくとも1つの目的の抗原を発現する抗原提示細胞によって刺激し、TCR単離用の増殖性に基づいて抗原反応性のレポーター細胞を単離すること;生成されたTCRαβ対のライブラリーで修飾されたレポーター細胞のプールを少なくとも2つの試料に分け、試料を少なくとも1つの目的の抗原を発現しているかまたは発現していない抗原提示細胞によって刺激し、刺激後、両方のレポーター細胞集団を一定期間インキュベートし、次いで、両方のレポーター細胞集団をTCR分離によって分析し、両方の試料から得られたTCRαβ対を比較することで、少なくとも1つの抗原に暴露された試料においてより豊富に含まれているTCR遺伝子を特定すること;生成されたTCRαβ対のライブラリーで修飾されたレポーター細胞のプールを少なくとも1つの目的の抗原を提示する抗原提示細胞によって刺激し、TCRの誘発を示す少なくとも1つのレポーター遺伝子、例えばNFAT-GFPまたはNFAT-YFPに基づいて抗原反応レポーター細胞を単離すること;生成されたTCRαβ対のライブラリーで修飾されたレポーター細胞のプールを少なくとも1つの目的の抗原を提示する抗原提示細胞によって刺激し、抗原反応性レポーター細胞を、TCRのシグナル伝達に際して獲得される抗生物質耐性を含むがこれには限定されない選択的生存に基づく抗原特異的レポーター細胞の選択に基づいて、例えばNFAT-ピューロマイシン導入遺伝子の使用によって、TCR単離用に単離すること;生成されたTCRαβ対のライブラリーで修飾されたレポーター細胞のプールを目的の抗原を担持する1つ以上のMHC複合体に曝露し、TCR単離用に、MHC複合体に結合したレポーター細胞またはT細胞を単離すること;生成されたTCRαβ対のライブラリーで修飾されたレポーター細胞のプールを少なくとも1つの目的の抗原を発現する抗原提示細胞によって刺激し、その後、単一細胞の使用に基づくドロップレットPCRまたは微少流体的手法を使用して目的のTCRαβ対を同定し、TCR単離と少なくとも1つの活性化マーカーの転写レベルでの検出とを組み合わせ、それにより、TCRαβの転写物が活性化マーカーのレベルの上昇と共発現するT細胞のプールに含まれる単一のレポーター細胞を検出すること、のうちの少なくとも1つによって達成される。
【0183】
いくつかの態様において、活性化マーカーは、CD4またはCD8T細胞活性化マーカー、CD69、CD137、IFN-γ、IL-2、TNF-α、GM-CSF、OX40からなる群より選択される。
【0184】
いくつかの態様において、活性化マーカーはCD69であり、CD69を高発現している細胞集団とCD69を低発現している他の細胞集団の2つの細胞集団が、さらなる分析のために単離される。
【0185】
いくつかの態様において、ステップIVは、少なくとも1つの活性化マーカーに基づく同定または選択;抗原に応答した増殖に基づく同定または選択;非刺激細胞と比較して、抗原刺激細胞においてより豊富に含まれるTCR遺伝子の同定に基づく同定または選択;TCRの誘発によるレポーター遺伝子の活性化に基づく同定または選択;TCRシグナル伝達に際した抗生物質耐性の獲得を含むがこれに限定されない、選択的な生存に基づく同定または選択;1つ以上のMHC複合体への結合に基づく同定または選択;単一細胞の使用に基づくドロップレットPCRまたは微少流体技術を用いた同定または選択;またはそれらの任意の組み合わせ、のうちの少なくとも1つによって達成される。
【0186】
いくつかの態様において、レポーター細胞はT細胞である。
【0187】
いくつかの態様において、単一細胞の使用に基づくドロップレットPCRもしくは微少流体技術、またはそれらの任意の組み合わせを用いた同定または選択は、活性化関連遺伝子の共発現を決定することをさらに含む。
【0188】
本明細書で記載されるいくつかの態様において、複数のT細胞ライブラリーを作製する方法は、(a)本明細書に記載の方法に従ってT細胞受容体(TCR)のレパトアを回収すること;(b)TCRレパトアの特定の部分を別々に回収するために、全レパトアからTCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列を複数の群に選択すること;を含み、ここで複数のT細胞ライブラリーは、より複雑度が小さい、またはTCRレパトアの特定の部分を回収するものとして作製される。
【0189】
いくつかの態様において、TCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列の選択は、頻度範囲に基づく。
【0190】
いくつかの態様において、細胞は、ゲーティングに基づいて選択されるかまたは選別される。いくつかの態様において、細胞は、試料に含まれる生きている単細胞のうち、最上位0.1%、0.5%、1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99.9%、またはその間の任意の数または範囲に基づいて選別される。いくつかの態様において、細胞は、試料に含まれる生きている単細胞のうち、最下位0.1%、0.5%、1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99.9%、またはその間の任意の数または範囲に基づいて選別される。
【0191】
いくつかの態様において、核酸のライブラリーは、細胞の集団に導入される。いくつかの態様において、細胞の集団は、2倍体である。いくつかの態様において、細胞の集団は、任意の倍数性を有する。いくつかの態様において、細胞の第一の集団は、ライブラリー細胞の集団から選択される。いくつかの態様では、細胞の第一の集団における核酸配列の濃縮度および/または枯渇度が、目的の核酸配列を同定するために測定される。いくつかの態様において、第一の集団における核酸配列の濃縮度および/または枯渇度は、集団と参照とを比較することによって測定される。いくつかの態様において、参照は、細胞の第二の集団または核酸配列のライブラリーであってもよい。いくつかの態様において、細胞の第一の集団における核酸配列の濃縮度および/または枯渇度は、2つ以上の参照と比較することによって測定される。
【0192】
いくつかの態様において、第一および/または第二の集団は、フローサイトメトリーソーティングに基づいて単離される。いくつかの態様において、フローサイトメトリーソーティングは、表現型の変化を検出することに基づいて実施される。いくつかの態様において、表現型の変化は、ライブラリー細胞の集団を別の細胞の集団と接触させることによって誘導される。
【0193】
いくつかの態様において、表現型の変化は、蛍光標識されたプローブが細胞に結合することによって検出される。いくつかの態様において、フローサイトメトリーソーティングは、閾値に基づいて実施される。いくつかの態様において、閾値は、フローサイトメトリーソーティングによって全細胞の画分から最も高い蛍光シグナルを有する細胞の割合を回収する意図に基づくものである。いくつかの態様では、蛍光シグナルに基づいて、上位0.1%、0.5%、1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99.9%の細胞が分離される。いくつかの態様において、閾値は、フローサイトメトリーソーティングによって全細胞の画分から低い蛍光シグナルを有する細胞の割合を回収する意図に基づくものである。いくつかの態様では、蛍光シグナルに基づいて、下位0.1%、0.5%、1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99.9%の細胞が単離される。いくつかの態様では、複数の閾値を使用して、試料を第一の集団と第二の集団に分離する。
【0194】
いくつかの態様において、閾値は、蛍光に基づくフローサイトメトリーによって細胞の全プールから最小限の数の細胞を回収する意図に基づくものである。例えば、10×10e6の細胞から少なくとも1×10e6の細胞を回収したい場合、蛍光シグナルに基づいて細胞の上位10%または下位10%が単離される。
【0195】
いくつかの態様において、閾値は、第二の細胞集団の蛍光シグナル強度に基づくものである。いくつかの態様において、閾値は、参照集団よりも高い蛍光シグナル強度に基づくものである。いくつかの態様において、閾値は、参照集団よりも低い蛍光シグナル強度に基づくものである。いくつかの態様において、参照集団における蛍光シグナル強度は、二次マーカー発現している集団のサブセットに基づくものである。
【0196】
いくつかの態様において、第一および/または第二の集団は、磁気ビーズ濃縮に基づいて単離される。いくつかの態様において、磁気ビーズ濃縮は、表現型の変化に基づいて実施される。いくつかの態様において、表現型の変化は、ライブラリー細胞の集団と別の細胞の集団とを接触させることによって誘導される。
【0197】
いくつかの態様において、ライブラリー細胞の集団を別の細胞の集団(「他の細胞集団」と呼ぶこともできる)と接触させることは、表現型を変えるように遺伝的に操作された別の細胞の集団と接触させることである。いくつかの態様において、他の細胞集団は、遺伝子操作された細胞のポリクローナルプールである。いくつかの態様において、他の細胞集団は、バリアント分子を発現するように遺伝子操作されたものである。いくつかの態様において、他の細胞集団は、1つ以上の抗原を発現するように遺伝子操作されたものである。いくつかの態様において、他の細胞集団は、ミニ遺伝子の形式で1つ以上の抗原を発現するように遺伝子操作されたものである。いくつかの態様において、他の細胞集団は、縦列ミニ遺伝子の形式で1つまたは複数の抗原を発現するように遺伝子操作されたものである。
【0198】
いくつかの態様において、他の細胞集団は、抗原を提示することができる細胞(抗原提示細胞、APC)である。いくつかの態様において、他の細胞集団は、樹状細胞である。いくつかの態様において、他の細胞集団は、単球である。いくつかの態様において、他の細胞集団は、MHCクラスIおよび/またはクラスII対立遺伝子で操作された細胞である。いくつかの態様において、他の細胞集団は、B細胞であってよい。いくつかの態様において、他の細胞集団は、自己細胞であってよい。いくつかの態様において、他の細胞集団は、自己のB細胞であってよい。いくつかの態様において、他の細胞集団は、不死化自己B細胞であってよい。いくつかの態様において、他の細胞集団は、EBV感染によって不死化された自己B細胞であってよい。
【0199】
いくつかの態様において、ライブラリー細胞の集団と他の細胞集団とを接触させることは、いずれかの細胞集団に属し、細胞で発現する因子間の特定の相互作用を引き起こすことである。いくつかの態様において、因子間の相互作用は、受容体-リガンド相互作用である。いくつかの態様において、受容体-リガンド相互作用における受容体は、T細胞受容体(TCR)である。いくつかの態様において、受容体-リガンド相互作用におけるリガンドは、主要組織適合性複合体(MHC)上に提示される抗原である。いくつかの態様において、ライブラリー細胞の集団と他の細胞集団との間の受容体-リガンド相互作用は、検出可能な表現型の変化を誘発する。
【0200】
いくつかの態様において、ライブラリー細胞の集団において発現されるバリアントのコレクションは、それぞれが単一のTCRα鎖と単一のTCRβ鎖の組み合わせを発現しているプラスミドのライブラリーである。いくつかの態様において、TCRライブラリーは、TCRα鎖とTCRβ鎖のコレクションをコンビナトリアルに接合することによって構築される。いくつかの態様では、TCRαとTCRβの全ての組み合わせがTCRライブラリー中に存在し得る。いくつかの態様において、より複雑度の低い複数のライブラリーが、より複雑度の高いライブラリーを作製するために使用される。いくつかの態様において、組み合わせたより複雑度の高いライブラリーの複雑度は、組み合わせたより複雑度の高いライブラリー中に存在するTCRαとTCRβの全ての組み合わせを有するライブラリーよりも小さい。いくつかの態様において、対合情報または対合尤度に関する情報が、より複雑度の低い複数のライブラリーの設計において使用され、TCRライブラリーにおいてこれらのTCRα-TCRβ対が提示される機会を最大化する。いくつかの態様において、より複雑度の低いライブラリーは、1つ以上のTCRα鎖と1つ以上のTCRβ鎖の全ての組み合わせを含むことができる。いくつかの態様において、TCRライブラリーは、最初にTCRα鎖およびTCRβ鎖の両方をコードする単一ヌクレオチド分子について複数のバリアントを生成し、その後、TCRα鎖およびTCRβ鎖の両方をコードする分子の、2つ以上の異なるバリアントを混合することによって構築される。
【0201】
いくつかの態様において、表現型の変化は、プローブが細胞に結合することによって検出される。いくつかの態様では、細胞を、プローブを結合させる前にいかなる固定剤で処理する必要もない。いくつかの態様では、プローブによって、磁気ビーズを細胞に結合させることが可能になる。いくつかの態様では、磁気ビーズ濃縮によって、ライブラリーの細胞の集団から細胞の第一の集団および/または第二の集団を分離することが可能になる。いくつかの態様において、細胞の第一の集団または第二の集団は、磁石によって保持された細胞である。いくつかの態様において、細胞の第一の集団または第二の集団は、磁石によって保持されない細胞である。いくつかの態様では、複数のプローブの結合が、連続した磁気ビーズ濃縮によって第一の集団および/または第二の集団を単離するために使用される。いくつかの態様において、プローブは、CD62Lに結合する。いくつかの態様において、プローブは、CD69に結合する。いくつかの態様において、少なくとも1つのヌクレオチド配列は、細胞の第一の集団において統計的に有意に濃縮されているか、または枯渇している。いくつかの態様において、統計的に有意な濃縮度または枯渇度は、参照に対して決定される。いくつかの態様において、少なくとも1つのヌクレオチド配列が、第二の細胞の集団との比較において、第一の細胞の集団では統計的に濃縮される。いくつかの態様において、フローサイトメトリーソーティングおよび磁気ビーズ濃縮が組み合わされる。
【0202】
いくつかの態様では、核酸のライブラリーからヌクレオチド配列を同定する方法が提供される。この方法は、細胞の集団にライブラリーを導入すること;細胞のライブラリーを第二の細胞集団と接触させること;磁気ビーズ濃縮により、少なくとも1つのマーカーの発現に基づいて細胞のライブラリーの第一の集団を選択すること;選択した第一の集団に含まれるヌクレオチド配列の、対照との比較における統計的に有意な濃縮度または枯渇度に基づいて、少なくとも1つのヌクレオチド配列を同定すること、を含む。いくつかの態様において、濃縮されているかまたは枯渇している実体は、核酸のライブラリーに含まれるヌクレオチド配列である。いくつかの態様において、細胞の第一の集団の少なくとも一部は、核酸のライブラリーのメンバーによってコードされる1つ以上のポリペプチドを発現するように構成される。いくつかの態様において、マーカーの発現は、ライブラリーから導入された核酸に連動する。いくつかの態様において、「連動」は、導入された核酸がマーカーの発現を変化させることを表す。
【0203】
いくつかの態様では、核酸のライブラリーからヌクレオチド配列を同定する方法が提供される。この方法は、核酸のライブラリーを細胞の集団に導入して細胞のライブラリーを作製すること;細胞のライブラリーを細胞の第一の集団と接触させること;磁気ビーズ濃縮により、少なくとも1つのマーカーの発現に基づいて細胞のライブラリーの亜集団を選択すること;および、亜集団に含まれるヌクレオチド配列の、対照との比較における統計的に有意な濃縮度または枯渇度に基づいて、少なくとも1つのヌクレオチド配列を同定すること、を含む。いくつかの態様において、細胞の亜集団の少なくとも一部は、核酸のライブラリーのメンバーによってコードされる1つ以上のポリペプチドを発現するように構成される。
【0204】
いくつかの態様において、選択は、第一の閾値レベルを超えるマーカーの発現に基づくものである。いくつかの態様において、マーカーは磁気ビーズ濃縮に適しており、これは、マーカーが細胞外発現することにより、磁気ビーズによって標識可能であること(例えば、細胞外から到達可能であること)を意味し得るが、これに限定されない。いくつかの態様において、ヌクレオチド配列は、発現されるポリペプチドをコードする。
【0205】
いくつかの態様において、細胞の集団に導入された核酸のライブラリーは、バリアント分子の発現をもたらす。いくつかの態様において、そのようなバリアント分子は、T細胞受容体の配列である。いくつかの態様において、そのようなバリアント分子は、スイッチレセプターである。いくつかの態様において、そのようなバリアント分子は、CAR分子である。
【0206】
いくつかの態様では、核酸の(必要に応じて)コンビナトリアルライブラリーからT細胞受容体α(TCRα)鎖およびTCRβ鎖をコードするヌクレオチド配列を同定する方法が提供される。この方法は、核酸ライブラリーをTCRα鎖およびTCRβ鎖を発現できる細胞の集団に導入して細胞のライブラリーを作製すること;ならびに、サブセットに含まれるヌクレオチド配列の対照との比較における濃縮度に基づいて、バリアント核酸の第一の集団の少なくとも1つのヌクレオチド配列または核酸の同一性を決定すること、を含む。いくつかの態様において、少なくとも1つの核酸は、細胞の第一の集団から単離される。いくつかの態様において、細胞の第一の集団は、抗原に応答して第一の閾値レベルを超えるマーカーの発現に基づいて選択される。
【0207】
いくつかの態様では、本明細書で提供される方法のいずれかはさらに、感染症または自己免疫疾患の診断または治療のために、抗原特異的TCR配列を発現しているT細胞を投与するステップを含む。
【0208】
いくつかの態様では、本明細書で提供される方法または組成物のいずれについても、T細胞は、自己由来であってもまたは同種異系であってもよい。
【0209】
いくつかの態様では、本明細書で提供される方法または組成物のいずれについても、活性化マーカーはCD69である。
【0210】
いくつかの態様では、本明細書で提供される方法または組成物のいずれについても、CD69を高発現している1つの細胞集団とCD69を低発現している他の細胞集団の2つの細胞集団が単離される。
【0211】
いくつかの態様では、本明細書で提供される方法または組成物のいずれについても、本明細書で提供される方法のいずれか1つに従って回収されたT細胞受容体のレパトアを含むヌクレオチドライブラリーが提供される。
【0212】
いくつかの態様では、本明細書で提供される方法または組成物のいずれについても、本明細書に提供される方法のいずれかに従って同定されたヌクレオチド配列を含むヌクレオチド構築物が提供される。
【0213】
いくつかの態様では、本明細書で提供される方法または組成物のいずれについても、前述のヌクレオチド構築物を含む細胞が提供される。
【0214】
いくつかの態様では、試料からT細胞受容体α(TCRα)鎖およびTCRβ鎖をコードするヌクレオチド配列を同定する方法が提供される。この方法は、a)試料に含まれるTCRα鎖およびTCRβ鎖の配列を決定すること、b)TCRαβ対のライブラリーを作製するために、TCRα鎖配列とTCRβ鎖配列を選択し、コンビナトリアルペアリングを行うこと、c)TCRαβ対のライブラリーをレポーター細胞のプールに導入すること、d)TCRαβ対のライブラリーで修飾されたレポーター細胞を、少なくとも1つの目的の抗原を提示する抗原提示細胞で刺激すること(いくつかの態様において、このことは、本明細書に記載の正確に2つのプールを使う過程によって行うことができる)、e)少なくとも1つの目的の抗原に特異的なTCRαβ対を決定すること、およびf)TCRαβ対を細胞に導入し、TCRαβ対を含む細胞を選択すること、を含む。
【0215】
いくつかの態様では、核酸のコンビナトリアルライブラリーから、T細胞受容体α(TCRα)鎖とTCRβ鎖の対をコードするヌクレオチド配列を同定する方法が提供される。この方法は、a)複数のバリアント核酸のメンバーによってコードされているTCRα鎖およびTCRβ鎖を発現可能な細胞集団に、ライブラリーを導入すること、b)抗原(必要に応じて抗原提示細胞であってもよい)への反応に対する閾値レベルを上回るマーカーの発現に基づいて、細胞集団の亜集団を選択すること、ここでこの亜集団は複数の細胞を含み、c)亜集団から複数のバリアント核酸のサブセットを単離すること、d)バリアント核酸のヌクレオチド配列を決定すること、ならびにe)サブセットに含まれるヌクレオチド配列の、対照との比較における濃縮度に基づいて、少なくとも1つのバリアントヌクレオチド配列を同定すること、を含む。いくつかの態様において、方法はさらに、TCRα鎖およびTCRβ鎖をコードする複数のバリアント核酸を含むライブラリーを提供することを含む。
【0216】
いくつかの態様において、選別される細胞の割合は、対照培養物と新生抗原発現細胞を含む培養物においてマーカーを発現しているT細胞の割合の比較に基づく。細胞の選別には、任意のマーカーを使用することができる。いくつかの態様において、細胞を選別するためのマーカーは、例えば、CD4、CD8およびCD69を含む。
【0217】
さらなる態様を図35A~35Eに示す。これらの図は、遺伝子合成によって生成されたTCRライブラリーからの抗原特異的TCRの回収を示すものである。これらの態様は、E:T比を上昇させることによって、TCRライブラリースクリーニングプラットフォームの感度を上げるという考えを示している。これらの項目については、後述する実施例の一部においても具体的に示す。
【0218】
本明細書で「ステップ」に使用される番号は、単に、その特定のセクションで議論されている態様を示し、文字は過程そのもののステップを示す。したがって、例えば、「ステップ35」は35と題された態様を示し、「a」はその態様のステップ「a」を示す。「ステップ」という用語は過程の一部を示し、あるステップを別のステップを開始する前に完了することは必ずしも必要とされない。
【0219】
ステップ35A)スクリーニング設計の概略。卵巣癌(OVC)または大腸癌(CRC)試料に由来する5つの特性が明らかになっているTCRと95の特徴が分かっていないTCRを用いて、100×100設計のコンビナトリアルTCRライブラリーを作製した。ライブラリーはツイストバイオサイエンス(Twist Bioscience)社により、ヒトのV、CDR3、Jセグメントを使用して組み立てられたが、定常(C)領域はマウス由来であった。このライブラリーを、ジャーカットレポーターT細胞のレトロウイルス導入に使用した。ポリクローナルレポーターT細胞を、TMG形式で同族抗原を提示するように操作された抗原提示細胞(APC)と共培養した。この例では、TMGを発現するEBV LCL細胞、および特異的抗原を提示するように操作されていないEBV LCLを共培養に用いた。
【0220】
ステップ35B)スクリーニングのための選別戦略。35Aで概説したように作製した100×100設計のTCRライブラリーを発現するジャーカットレポーターT細胞を、35Aで述べたAPCと1:1、1:2および1:3の割合で21時間共培養した。共培養の後、B細胞でのCD20の発現に基づく磁気ビーズ選択を用いて、APCを枯渇させた。B細胞枯渇後、CD69マーカーを使用したFACSにより、T細胞活性化について細胞を選別した。いくつかの態様では、ライブラリーは任意の方法によって選別することができる。選別戦略は、(左から右へ向かって)リンパ球を選択する連続したゲーティング、一重の細胞を選択するゲーティング、CD20陽性細胞を除外するゲーティング、ならびにCD69高発現細胞およびCD69低発現のそれぞれを補足する2つの選別ゲート(「上位」および「下位」)を含む。結果を図35Bのグラフに示す。
【0221】
ステップ35C)TCR発現カセットの回収。いくつかの態様では、様々な技術のいずれかによって、関連するTCR発現カセットを回収することができる。いくつかの態様では、図35Bからの上位および下位試料のTCR発現カセットは、10Cに記載のPCR戦略を用いて回収することができ、その後、バーコーディングPCRを行う。プラスミドTCRライブラリーに関する対照PCRも含めた。2回目のPCRを行った後のPCR産物を、アジレント・テープステーション(Agilent TapeStation)を使用して分析した。結果を図35Cに示す。
【0222】
ステップ35D)スクリーニングデータのTCR濃縮度分析。いくつかの態様では、ステップ35CからのPCR産物プールを、任意の数の方法で分析することができる。例えば、35CからのPCR産物プールをライブラリー調製に使用し、ナノポア技術を使用して配列決定した。TCRα鎖およびβ鎖の同一性を回復させ、DESeq2Rパッケージを使用して差次的に表されるTCRの組み合わせを同定した。B細胞によるTMG発現の存在下(x軸)および非存在下(y軸)でのスクリーニングに関する平均Rlog変換リードカウントを、エフェクター対標的(E:T)比が1:1、1:2、1:3の場合について表す。5つの特徴が分かっている抗原反応性TCRは、図35Dにおいて、より大きな灰色のドットとして示している。
【0223】
ステップ35E)5つの特徴が分かっている抗原反応性TCRの特性。35Dのデータから最も差次的に表現されたTCRα×β鎖の組み合わせの順位、およびそれに付随するp値を、DESeq2Rパッケージを使用して同定した。差次的表現分析は当業者に知られており、濃縮TCRが、抗原が提示されなかった「上位」および「下位」試料の両方との比較において、抗原が提示された「上位」試料では濃縮されていて、「下位」試料では枯渇していると定義される線形モデルに基づいて行われる。その特性を図35Eに示す。
【0224】
さらなる態様を図36に示す。この図は、遺伝子合成によって生成されたTCRライブラリーからの抗原特異的TCRの回収を示すものである。これらの態様は、TCRライブラリースクリーニングのために細胞を分離する方法として、流体に基づく選別の代わりにビーズに基づく選別を使用するという考えを示している。ビーズに基づく細胞選別の利点は、FACSに基づく細胞選別よりも拡張性が高いことである。
【0225】
ステップ36A)スクリーニング設計の概略。卵巣癌(OVC)または大腸癌(CRC)試料に由来する5つの特徴が分かっているTCRと95の特徴が分かっていないTCRを用いて、100×100設計のコンビナトリアルTCRライブラリーを作製した。ライブラリーはツイストバイオサイエンス社により、ヒトのV、CDR3、Jセグメントを使用して組み立てられたが、定常(C)領域はマウス由来であった。このライブラリーを、ジャーカットレポーターT細胞のレトロウイルス導入に使用した。ポリクローナルレポーターT細胞を、TMG形式で特異的抗原を提示するように操作された抗原提示細胞(APC)と共培養した。
【0226】
ステップ36B)スクリーニングのための選別戦略。36Aで概説したように作製した100×100設計のTCRライブラリーを発現するジャーカットレポーターT細胞を、36Aで述べたAPCと1:1、1:2および1:3の割合で21時間共培養した。共培養の後、ミルテニー(Miltenyi)のオート(Auto)MACSを使って、連続的な細胞分離を行った。まず、死細胞を死細胞除去キットを用いて除去した。B細胞でのCD20の発現に基づく磁気ビーズ選択を用いて、APCを、生細胞とともに枯渇させた。B細胞除去後、CD20陰性細胞を、非活性化ジャーカット細胞に発現するマーカーであるCD62Lの発現を用いて分離した。次いで、CD62L陰性とCD62L陽性を別々に抗CD69ビオチン標識抗体で染色し、その後、抗ビオチンミクロビーズで細胞を分離した。TCRカセットを回収するために使用した最終画分は、「上位」画分に相当するCD20陰性、CD62L陰性、CD69陽性細胞と、「下位」画分に相当するCD20陰性、CD62L陽性、CD69陰性細胞であった。細胞分離過程の概略を図36Bに示す。
【0227】
ステップ36C)TCR発現カセットの回収。いくつかの態様では、様々な技術のいずれかによって、関連するTCR発現カセットを回収することができる。いくつかの態様では、図36Bからの上位および下位試料のTCR発現カセットを、10Cに記載のPCR戦略を用いて回収し、次いでバーコーディングPCRを実施した。プラスミドTCRライブラリーに関する対照PCRも含めた。2回目のPCRを行った後PCR産物を、アジレント・テープステーションを使用して分析した。結果を図36Cに示す。
【0228】
ステップ36D)スクリーニングデータのTCR濃縮度分析。いくつかの態様では、ステップ36CからのPCR産物プールを、任意の数の方法で分析することができる。例えば、36CからのPCR産物プールをライブラリー調製に使用し、ナノポア技術を使用して配列決定した。TCRα鎖およびβ鎖の同一性を、ライブラリー中に存在する鎖に対するアライメントによって回復させ、DESeq2Rパッケージを使用して差次的に表されるTCRの組み合わせを同定した。B細胞によるTMG発現の存在下(x軸)と非存在下(y軸)のスクリーニングに関する平均Rlog変換リードカウントを、全てのTCRについて灰色で表し、5つの特徴が分かっている抗原反応性TCRを黒点で表す。
【0229】
ステップ36E)最も有意に濃縮された上位7つのTCRの特徴。36Dのデータから、DESeq2Rパッケージを使用して、差次的に表現されたTCRα×β鎖の組み合わせを同定した。差次的表現分析は当業者に知られており、濃縮TCRが、TMGが発現していない「上位」および「下位」試料の両方との比較において、TMGが発現した「上位」試料では濃縮されていて、「下位」試料では枯渇していると定義される線形モデルに基づいて行われる。上位7つの最も有意なα鎖およびβ鎖のヒット、ならびにそれらの名称、それらのlog2変換後の倍率変化、および差分表現の有意性を図36Eの表に示す。
【0230】
さらなる態様を図37に示す。この図は、大腸癌(CRC)患者2および4(pt2およびpt4)から新生抗原反応性TCRを同定するために行った、さらなる遺伝子スクリーニングの分析を示すものである。これらの態様は、コンビナトリアル縦列ミニ遺伝子(TMG)エンコーディングを使用して、多数のミニ遺伝子に対してTCRライブラリーを効率的にスクリーニングするという考えを示している。
【0231】
ステップ37A)6×6コンビナトリアルTMGエンコーディング設計の概略。TCRライブラリーを、36のTMGを発現しているAPCに対してスクリーニングする必要がある場合、それぞれが6つのTMGの特有な組み合わせを発現するAPCのプールを作製することができる。例えば、プールC1は、TMG1、TMG2、TMG3、TMG4、TMG5およびTMG6を発現するAPCで構成される。プールR1は、TMG1、TMG7、TMG13、TMG19、TMG25およびTMG31を発現するAPCから構成される。APCの各プールに対して別々のTCRライブラリースクリーニングを行うことができる。スクリーニング手法においてTCRによって認識された2つのプールの組み合わせから、認識されたTMGを、両方のプールで表現されるTMGとして決定することができる。
【0232】
pt2-TCRライブラリースクリーニングの反復実験の数の関数としての、TCRα×βの全組み合わせの順位分析。図10Gのpt2TCRライブラリースクリーニングのデータを、3回の反復実験のすべて、または3回の反復実験のうちの2回を使用して分析した。両条件について差次的に発現したTCR組合せを、DESeq2Rパッケージを使用して同定した。濃縮度の有意性の順位は、DESeq2を使用して計算されたワルド統計量に基づくものであり、最高値のワルド統計量に最高順位(1位)を割り当てた。2回の反復実験または3回の反復実験を使用した分析に基づく順位を、それぞれ、y軸とx軸に表す。図10Gで同定された新生抗原反応性TCRリード化合物を、より大きな黒い点として示す。
【0233】
ステップ37C)CRC-TCRライブラリースクリーニングの2回または3回の反復実験に基づく統計分析の要約表。図37Bの分析を、図10Gで実施されたすべての患者TCRライブラリーのスクリーニングに適用した。図37Bで同定された全ての新生抗原反応性TCRリード化合物について、下位試料に対する上位試料におけるTCRの濃縮度の統計的有意性をそのボンフェローニ補正p値とともに表に示している。このp値は、スクリーニングの3回の反復実験に基づく分析、または3回のうちのいずれか2回のスクリーニングの反復実験の組み合わせについて表すものである。最後の列のレ点は、スクリーニング解析に2回または3回分のスクリーニングの反復実験が含まれているかどうかに関係なく、また3回のうち2回のスクリーニングの反復実験のいかなる組み合わせが選択されたとしても、上位に順位づけられる同じTCRリード化合物が選ばれたであろうことを表している。一例を図37Bに示す。この図は、さらなる検証のために選択されたpt4に由来する、上位に順位づけられた7つの新生抗原反応性TCR(図10Gを参照のこと)が、2回の反復実験のみを用いた分析に基づいて上位に順位づけられた7つのTCRと同じであることを示している。
【0234】
ステップ37D)ペアワイズTCR濃縮度分析に使用したpt4試料の表。6つの試料(それぞれが上位と下位両方の試料によって表される)を、ペアワイズTCR濃縮度分析に使用した。試料は、TCRライブラリー発現レポーターT細胞と、TMG1、TMG2、TMG3またはTMG4を個別に発現するB細胞株との共培養(試料1~4)、ならびにこれらのB細胞株のプールを1:1:1:1の比率で混合した共培養(試料5)を含むものとした。試料6については、外来性抗原を発現するように操作されていないB細胞との共培養を行った。
【0235】
ステップ37E)ペアワイズTCR濃縮度分析の結果。図19Dの試料に含まれる全ての分析可能な対を、DESeq2を使用して、上位試料の下位試料との比較におけるTCRの濃縮度について分析した。差次的表現分析は当業者に知られており、濃縮TCRが、TMGが発現していない「上位」および「下位」試料の両方との比較において、TMGが発現した「上位」試料では濃縮されていて、「下位」試料では枯渇していると定義される線形モデルに基づいて行われる。ボンフェローニで補正したp値を昇順に並べ、プロットした。薄灰色の点はα43.β16TCRの分析によるp値を、濃灰色の点はα9.β14TCRを含む分析によるp値を表している。上位の外れ値は、図10Gで同定されたのと同じTCRであった。TCRα9.β14の反応性は、TMG4から発現された抗原に起因している可能性がある。なぜなら、TMG4は試料4と5の間で共有されているためである。TCRα43.β16の反応性は、TMG3に起因する可能性がある。なぜなら、TMG3は試料3と5の間で共有されているためである。
【0236】
さらなる態様を図38に示す。この図は、大腸癌(CRC)患者2からの新生抗原反応性TCRを同定するために行った、さらなる遺伝子スクリーニングの分析を示すものである。これらの態様はプラットフォームの感度を示し、また、TCR感度などのTCRの特徴は遺伝子スクリーニングデータから決定され得るという概念を支持するものである。
【0237】
ステップ38A)スクリーニングデータと検証データとの間における、TCRの活性化およびTCRのバックグラウンド活性の相関。遺伝子スクリーニング手法においてTCR反応性が異なる16のCRC-pt2-TCRを、図10Gのデータに基づいて同定した。まず、DESeq2Rパッケージを使用してRlog変換後のリードカウントを計算し、上位試料のRlog値から下位試料のRlog値を減算し、B細胞によるTMG発現の存在下(x軸)および非存在下(y軸)で行った共培養について表した(図38)。これらのTCRをレポーターT細胞内で発現させ、独立した検証実験において、関連するTMG(TMG2)を発現するEBV-B細胞と共培養した。T細胞の活性化は、FACS分析によってCD69マーカーを使用して測定した。検証データとTCRライブラリースクリーニングのデータを比較するために、スクリーニングにおけるTCRの活性化倍率を、TMG2を発現するEBV-B細胞との共培養から得られた上位試料と下位試料のRlog値の差として定義した(y軸;中央の図)。検証実験における活性化の倍率は、TMG2発現EBV-B細胞との共培養後の非組換えEBV-B細胞との共培養後に対する、CD69陽性細胞の比率と定義する(x軸;中央の図)。スクリーニングのバックグラウンドは、非組換えEBV-B細胞との共培養から得られた上位および下位試料に含まれる所与のTCRの濃縮度と定義する(y軸、右図)。検証実験のバックグラウンドは、非組換えEBV-B細胞との共培養後のCD69陽性細胞の割合として定義する(x軸;右図)。
【0238】
いくつかの態様では、TCRαβライブラリーからの抗原反応性TCRの回収は、抗原に対する反応性に基づく1つ以上の亜集団の単離を通して行うことができる。いくつかの態様において、この手法は、i)TCRαβライブラリーのTCRの発現を可能にするために、レポーターT細胞の遺伝子を操作するステップ;ii)これらの細胞と、少なくとも1つの抗原を発現する抗原提示細胞との共培養を実施するステップ;iii)T細胞活性化マーカーに基づいて、細胞を、a)1つ以上のT細胞活性化マーカーを発現する「上位」集団、およびb)1つ以上のT細胞活性化マーカーの発現を欠く(もしくは発現が低い)「下位」集団、に分離するステップ;iv)ゲノムDNAのPCRと続くディープシークエンシングを用いて、上位試料および下位試料からTCRを同定するステップ;ならびに、v)下位試料との比較において、上位試料で濃縮されている少なくとも1つの抗原反応性TCRを同定するステップ、のうちの1つ以上を伴う。T細胞活性化のマーカーの発現は、活性化T細胞を区別するマーカー(例えば、CD69)の相対的に高い発現であっても、または非活性化T細胞を区別するマーカー(例えば、CD62L)の相対的に低いレベルの発現であってもよい。
【0239】
いくつかの態様において、上位は、上位1、5、10、20、30、40、または50%、下位は、下位1、5、10、20、30、40、または50%であり、上位および下位について示した値のうちの任意の2つの間にある範囲の任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、任意の態様において、上位/下位手法(上位集団と下位集団の両方を採用する)が本明細書で提供される。
【0240】
いくつかの態様では、核酸のライブラリーから抗原特異的T細胞受容体α(TCRα)鎖およびTCRβ鎖の対をコードするヌクレオチド配列を同定する方法が提供される。この方法は、a)TCRα鎖およびTCRβ鎖を発現可能な細胞集団に核酸ライブラリーを導入して細胞のライブラリーを作製すること;b)抗原に応答して第一の閾値を超えるマーカーの発現に基づいて、細胞のライブラリーの第一の集団を選択すること;および、c)ライブラリーの第一の集団からバリアント核酸の第一の集団を単離すること、を含む。いくつかの態様において、方法はさらに、a)バリアント核酸の第一の集団の少なくとも1つのヌクレオチド配列または核酸の同一性を同定すること;およびb)サブセットに含まれるヌクレオチド配列の対照との比較における濃縮度に基づいて、少なくとも1つのバリアントヌクレオチド配列を同定すること、を含む。いくつかの態様において、閾値レベルは、a)マーカーの発現に基づく細胞の全プールの割合の回収;またはb)細胞の全プールからの最小限の数の細胞の回収;またはc)抗原に応答して発現する少なくとも1つのマーカーへの磁気プローブの結合に基づく、磁石によって保持される細胞の回収、のうちの少なくとも1つに基づく。
【0241】
いくつかの態様において、対照は、第二の閾値未満の第二の細胞集団である。いくつかの態様において、対照は、細胞の参照集団、細胞の集団に導入された核酸のコンビナトリアルライブラリー、第一の集団と同じ細胞の集団から第二の閾値未満の発現マーカーに基づいて選別された細胞の集団、および/または関連するTCRライブラリーを発現するレポーターT細胞と外因性抗原を発現するように操作されていないB細胞との共培養から得られた少なくとも1つの細胞の集団、のうちの1つ以上である。いくつかの態様において、下位(もしくは対照)試料は、上位試料と同じ細胞集団から選別されるが、活性化マーカーの発現が低く、または下位試料は、関連するTCRライブラリーを発現するレポーターT細胞、および外因性抗原を発現するように操作されていないB細胞の共培養から得られたものである。いくつかの態様において、上位画分と下位画分との間に重複はない。いくつかの態様において、方法はさらに、細胞の集団に抗原を添加することを含む。いくつかの態様において、第一の集団および/または対照の単離は、a)磁気ビーズ濃縮、b)フローサイトメトリーソーティング、またはc)その両方、のうちの少なくとも1つによって達成される。いくつかの態様において、対照は、細胞の参照集団、細胞の集団に導入された核酸のコンビナトリアルライブラリー、第一の集団と同じ細胞の集団から第二の閾値未満の発現マーカーに基づいて選別された細胞の集団、または関連するTCRライブラリーを発現するレポーターT細胞といかなる外因性抗原も提示しないB細胞等の抗原提示細胞との共培養から得られた少なくとも1つの細胞の集団、のうちの1つ以上である。
【0242】
いくつかの態様では、抗原刺激に際して抗原反応性TCRが活性化マーカー陽性となり、それによって、そのようなTCRが下位集団と比較して上位集団に濃縮されるように上位/下位手法が設定される。上位/下位手法は、実施例24に記載したように、様々な添付図によって説明される。
【0243】
いくつかの態様において、下位試料(または対照)は、任意の参照細胞集団であっても、またはTCRプラスミドの参照ライブラリーであってもよい。下位試料は、上位試料と同じ細胞集団から選別されるが、活性化マーカー発現が低いものであってもよい。下位試料は、関連するTCRライブラリーを発現するレポーターT細胞と外因性抗原を発現するように操作されていないB細胞との共培養から得ることができる。下位試料は、レポーターT細胞(ここから上位試料を選別した)を作製するために使用されたTCRプラスミドライブラリーであってもよい。いくつかの態様において、上位試料および下位試料におけるTCRの発現は表現を、差次的TCR表現分析を行なっている最中に、他の任意の追加試料におけるTCRの表現と比較することもできる。いくつかの態様では、そのような追加試料は、プラスミドTCRライブラリーであってもよい。いくつかの態様では、そのような追加試料は、関連するTRCライブラリを発現するレポーターT細胞と外因性抗原を発現するように操作されていないB細胞との共培養に由来するものであってもよい。
【0244】
いくつかの態様において、方法は、多様なT細胞集団からT細胞受容体(TCR)のレパトアを回収するものである。この方法は、対象の試料に含まれる対合したTCRα鎖とTCRβ鎖のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を決定すること;全レパトアからTCRαβ対配列を選択すること;選択したTCRαβ対のライブラリーを作製することによって、TCRレパトアを作製すること;および、作製したTCRライブラリーから所望の特徴を有する少なくとも1つのTCRαβ対を特定すること、を含む場合がある。
【0245】
いくつかの態様において、TCRαβ対は、TCR配列モチーフを含む場合がある。
【0246】
いくつかの態様において、本明細書で提供されるのは、TCRαβ対のライブラリーである。いくつかの態様において、これらのライブラリーは、本明細書で提供される任意の方法によって作製することができる。いくつかの態様において、ライブラリーは、非生存性であった試料に由来する。
【0247】
いくつかの態様において、本明細書で提供されるのは、TCRαβ対のライブラリーがレポーター細胞のプールに導入されている細胞集団および/またはライブラリーである。したがって、いくつかの態様では、選択され、コンビナトリアルに対合したTCRα鎖とTCRβ鎖の配列(TCRαβ対のライブラリー)を含むレポーター細胞のプールが提供される。
【0248】
いくつかの態様において、ライブラリーは、刺激されたライブラリーの場合がある。いくつかの態様において、ライブラリーは、TCRαβ対のライブラリーで修飾されたレポーター細胞を含んでいてもよく、少なくとも1つの目的の抗原を提示する抗原提示細胞をさらに含んでいてもよい。いくつかの態様において、少なくとも1つの目的の抗原は、自己由来であっても同種異系であってもよい。
【0249】
いくつかの態様において、本明細書で提供されるのは、試料に由来する1つ以上のTCRαβ対または非生存性試料の特徴を伴うライブラリーである。
スクリーニングに関するさらなる態様
【0250】
本開示のさらなる態様が開示される。本態様はいずれも、本明細書で提供される他の態様のいずれかと組み合わせることができる。本明細書で提供するのは、高処理の核酸配列決定を介して、遺伝子の機能獲得型/機能喪失型スクリーニング(「遺伝子バリアントライブラリーのスクリーニング」とも呼ばれる)によりバリアント配列のライブラリーから目的の配列を特定する方法(本明細書では「スクリーニング方法」とも呼ばれる)である。このスクリーニング方法は、バリアント塩基配列のライブラリーをスクリーニングするために使用することができ、この方法では、少なくとも600bpのバリアント塩基配列を同定することによってのみ、個々の核酸配列を明確に区別することができる。
【0251】
いくつかの態様では、任意の適切な方法において、関連するプールされた抗原を同定する方法を採用することができる。例えば、いくつかの態様において、同定または刺激することは、a)多数の抗原を選択すること;b)それぞれの抗原が正確に2つの抗原プールに存在する抗原プールを作製すること;c)それぞれの抗原プールに対する少なくとも1つのT細胞受容体を発現するレポーター細胞の反応性を評価すること;および、d)正確に2つの抗原プールに対する反応性を評価することによって、少なくとも1つのT細胞受容体が選択された抗原のいずれかに対して反応性を有するか否かを決定すること、を含む。いくつかの態様において、正確に2つの抗原プールに対する反応性は、ペアワイズ濃縮度分析によって検出される。いくつかの態様において、ライブラリーは、TCRライブラリーである。いくつかの態様においては、活性化マーカーを用いる。いくつかの態様においては、反応性を評価するために(本明細書に記載されるような)上位下位比較を採用する。いくつかの態様において、他の手法では、単一プールに対する反応性を使用して、特有の反応パターンを作成することができるが、この過程では、ペアワイズ分析を用いて、反復実験を特異的に分析することによってシグナル強度を増強させることができる。
【0252】
本開示のスクリーニング方法は、高処理の方法であってもよい。ポリクローナル遺伝子ライブラリーのスクリーニングは、個別のクローンの生成および解析を必要とするのではなく、1回の実験で多数(例えば、数万)のタンパク質バリアントのスクリーニングを可能にすることができる。さらに、バリアント遺伝子ライブラリーの生成は、個別のバリアント遺伝子を合成することと比較して、より安価で時間を短縮できる可能性がある。スクリーニング方法のいくつかの態様は、バリアントの機能的選択を可能にし、また、タンパク質バリアントは、1つ以上の機能的特性に基づいて選択され得る。本開示のスクリーニング方法は、高感度なスクリーニング方法とすることができる。目的のバリアントは機能的表現型に基づいて選択されるが、目的のバリアントの配列同一性は、稀なバリアントでさえ高感度で検出できるDNA配列決定法に基づいて同定される。いくつかの態様において、本明細書で提供される態様の感度は、1:1000、1:10,000、1:100,000、1:1,000,000またはさらに低いレベルを含む所望のレベルで区別することを可能にし得る。いくつかの態様では、(i)十分な数の細胞が分析されること、および(ii)十分な配列リードを生成できること、を条件として、より高い感度が可能となる。いくつかの態様おいて、考慮すべき要因は、逆多重化である。しかし、このことは、例えば、i)多重化しないこと、またはii)より多くのリードを捨てるという犠牲を払って(例えば、より多く配列決定して)、バーコード閾値を高くすることによって、対処することができる。
【0253】
スクリーニング方法のいくつかの態様は、タンパク質バリアントに関する高処理系での遺伝子バリアントライブラリースクリーニングを実行するための方法であり、ここでバリアント間の識別は、200を超える長さのアミノ酸およびポリクローナル集団分析に基づく。いくつかの態様における本スクリーニング方法は、一部のNGSシーケンスリード、例えばオックスフォードナノポア(Oxford Nanopore)プラットフォームによって生成されたものなど、における高いエラー率を克服するスクリーニングのプロトコールおよびバイオインフォマティクスの過程を含む。
【0254】
本開示のスクリーニング方法は、サイズに依存せず、また、配列内での位置の多様性の制限なしに、任意の適したバリアントタンパク質を同定することを含む場合がある。いくつかの態様において、方法は、別個のTCRα鎖およびTCRβ鎖の対合が未知であるか曖昧である大規模なTCRコレクションから目的のT細胞受容体(TCR)配列を選択することを含み、また、TCRαおよびTCRβの可変領域をコードするバリアント遺伝子カセットの全配列を決定することを含む。いくつかの態様において、本発明のスクリーニング方法は、TCRによって媒介されるレポーター細胞の機能的応答(例えば、CD69の上方制御)に基づいて、高処理での(例えば、クローンの生成を回避することによる)TCRライブラリーのスクリーニングを可能にする。
【0255】
いくつかの態様において、方法は、例えば、いくつかの異なるシグナル伝達ドメインのプールから選択された最大3つの異なるシグナルドメインのコンビナトリアルアセンブリーによって分子設計が大きく異なったCARバリアントの大規模コレクションから、特性が強化されたキメラ抗原受容体(CAR)配列を同定することを含む。いくつかの態様では、このスクリーニング方法によって、CAR分子全体にわたって変異多様性を有するスクリーニングバリアントを用いた、網羅的なCAR強化が可能となる。
【0256】
本明細書で提供される態様のいずれについても、必要に応じて、1つより多いCAR細胞内シグナル伝達ドメインが存在し得る。いくつかの態様では、少なくとも2つのCAR細胞内シグナル伝達ドメインが存在する。いくつかの態様では、少なくとも2つのCAR細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ε、CD3ζ、ITAM1、CD3ζITAM12、CD3ζITAM123;CD3δ、CD3εおよびCD3γの任意のITAMを有するCD3ζ;CD8α、CD28、ICOS、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、CD27、ならびにCD2のうちの少なくとも2つである。
【0257】
いくつかの態様において、本開示のスクリーニング方法は、単細胞クローンを誘導することなく、ポリクローナルなレポーター細胞集団を分析することを含む。いくつかの態様において、スクリーニング方法は、単細胞クローンを生成することなく、(例えば、100倍のカバー数で)目的の組み合わせを同定するために、10,000を超えるバリアントを含むライブラリーをスクリーニングすることに使用することができる。
【0258】
いくつかの態様において、カバー数の量は、スクリーニングの主な焦点(濃縮したスクリーニング(カバー数がより少ない)または枯渇したスクリーニング(カバー数がより多い))、ライブラリー内の個々のバリアントの表現の広がり、選択過程における細胞の損失等を含む多くの要因に依存する。一般的には、100~2000の、または例えば、100~400倍に濃縮したスクリーニングなど、50~10,000の範囲を使用することができる。
【0259】
いくつかの態様において、本開示のスクリーニング方法は、分子リード化合物の同定に関する遺伝子スクリーニングの方法論および完全なタンパク質全体に多様な変異を有するより大きなタンパク質の強化を提供する。他の利用可能な方法と比較して、この方法は、いくつかの態様において、分子リード化合物の同定において高い処理量(費用および期間の削減)と高い感度を提供することができる。
【0260】
一般論として、スクリーニング方法は、(1)その全ヌクレオチド配列の少なくとも600bpを決定することによって明確に識別できる(または識別のみできる)少なくとも2つのバリアントヌクレオチド配列を含むバリアントヌクレオチド配列のライブラリーを生成すること;(2)バリアントヌクレオチド配列のライブラリーをレポーター細胞に導入すること;(3)少なくとも1つの機能的特性に基づいてレポーター細胞を選択すること;(4)選択したレポーター細胞からバリアントヌクレオチド配列を単離すること;(5)単離したバリアントヌクレオチド配列の全ヌクレオチド配列の少なくとも600bpを決定すること;および(6)少なくとも1つの目的のバリアントヌクレオチド配列を選択すること、を含む可能性がある。
【0261】
本明細書で提供される(600bpの範囲または同等の長さのアミノ酸への参照を提供する)態様のいずれかについては、ライブラリー配列の変異は、合計600bpを超える範囲に存在する場合がある。いくつかの態様において、ライブラリーは、1500bpより長いアンプリコンを含むか、それらからなるか、本質的にそれらからなるか、またはそれらを包含するであろう。いくつかの態様において、ライブラリーは、1500bpより長くなるであろうアンプリコンの少なくとも30、40、50、60、70、80、90、95、98、99、または100%を含む、もしくはそれらからなる、または本質的にそれらからなるであろう。
【0262】
図8では、本開示のスクリーニング方法のいくつかの態様が提供される。方法は、複数のバリアント核酸(ここでは812a、812b、812cとして示す)を含むコンビナトリアルライブラリー811を提供すること810を含み得る。ライブラリーに含まれるバリアント核酸はそれぞれ、長さが少なくとも600bpの連続部分814を含み得る。
【0263】
生体高分子(例えば、核酸またはポリペプチド)に関連して本明細書で使用される「連続」は、介在配列を含まない生体高分子の個々の構成要素(例えば、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の配列(例えば、介在ヌクレオチドもしく介在ヌクレオチド配列を含まないヌクレオチドの配列、介在アミノ酸もしくは介在アミノ酸配列を含まないアミノ酸の配列)を指す。連続部分814は、2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列を含む場合がある。
【0264】
本明細書で使用する場合、「バリアントヌクレオチド部分配列」は、核酸および/またはその核酸によってコードされるポリペプチドの機能活性の単位を規定する、ヌクレオチド配列のファミリーのいずれか1つを含む場合がある。いくつかの態様において、バリアントヌクレオチド部分配列は、核酸および/または核酸によってコードされるポリペプチドの個別の機能活性(例えば、結合親和性、特異性)を付与する、および/またはそれに寄与する場合がある。いくつかの例において、ヌクレオチド配列のファミリーは、核酸中でのバリアントヌクレオチド部分配列の位置;共通配列との配列類似性を有すること;および/または可変領域と不変領域(ここで不変領域は、ヌクレオチド配列の同じファミリーの他のメンバーによって共有される)を有すること、を理由に、個別の機能活性を付与する、および/またはそれに寄与する。いくつかの態様において、TCRライブラリーは、TCRα鎖、またはその1つ以上の機能的ドメイン(例えば、TCRαV領域、TCRα相補性決定領域3(CDR3)、TCRαJセグメント、TCRα定常領域)に相当するバリアントヌクレオチド部分配列を有するバリアント核酸、およびTCRβ鎖、またはその機能的ドメイン(例えば、TCRβV領域、TCRβ相補性決定領域3(CDR3)、TCRβJセグメント、TCRβ定常領域)に相当するバリアントヌクレオチド部分配列を有するバリアント核酸を含む。いくつかの態様において、CARライブラリーは、1つ以上のCAR機能的ドメイン(例えば、抗原結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、および2~3のシグナル伝達モジュールを含み得る細胞内シグナル伝達ドメイン)に相当するバリアントヌクレオチド部分配列を有するバリアント核酸を含む。
【0265】
さらに図8を参照すると、ライブラリーの核酸812aは、ライブラリー中に存在する可能性のある複数の変種(816a、816b)のうちの1つであるバリアントヌクレオチド部分配列816aを含んでいてもよい。核酸812aはまた、異なる位置に、存在する可能性のある複数の変種(818a、818b)のうちの1つである別のバリアントヌクレオチド部分配列818aを含んでいてもよい。ライブラリーに含まれる別の核酸812bは、第一の組み合わせである816a/818aとは異なる組み合わせの816a/818bバリアントヌクレオチド部分配列を含んでいてもよい。さらに第三の核酸812cは、第一の組み合わせである816a/818a、または第二の組み合わせである816a/818bとは異なる組み合わせの816b/818bバリアントヌクレオチド部分配列を含んでもよい。さらに、連続する部分の一方の末端(例えば、5'または3'末端)は、バリアントヌクレオチド部分配列の1つによって規定されていてもよく、連続する部分の他方の末端(例えば、それぞれ、3'または5'末端)は、バリアントヌクレオチド部分配列の別の1つによって規定されていてもよい。
【0266】
また、連続部分は、式5'-A-X-B-3'で表すことができ、ここで、AおよびBはバリアントヌクレオチド部分配列の異なるファミリーを表し、Xは存在しなくてもよく(この場合、連続部分は5'-A-B-3')、存在する場合には、任意の長さのヌクレオチド配列であってよい。いくつかの態様において、Aは、バリアントヌクレオチド部分配列のファミリーの任意のメンバーであってよい(例えば、A1、A2、A3など)。いくつかの態様において、Bは、バリアントヌクレオチド部分配列のファミリーの任意のメンバーであってよい(例えば、B1、B2、B3など)。いくつかの態様において、Xは、バリアントヌクレオチド部分配列の1つ以上のファミリー(例えば、C、D、など)のメンバーを含み得る。
【0267】
スクリーニング方法はさらに、複数のバリアント核酸のメンバー826a、826bによってコードされる1つ以上の遺伝子産物(例えば、ポリペプチド)824a、824bを発現可能な細胞822の集団に、ライブラリー820を導入することを含む場合がある。
【0268】
スクリーニング方法は、少なくとも1つの機能的特性832、例えば、発現されたポリペプチドのリガンドへの結合に基づいて、細胞の集団の亜集団830を選択することを含む場合があり、ここで機能的特性は、細胞に導入された核酸メンバー826a、826bにおけるバリアントヌクレオチド部分配列の組合せに依存する。細胞の亜集団は複数の細胞を含み得る。いくつかの態様において、細胞の亜集団は、複数のバリアント核酸の複数の異なるメンバーを含む場合があり、ここで異なるメンバー同士は、バリアントヌクレオチド部分配列の異なる組み合わせを有することによって互いに異なっている。
【0269】
いくつかの態様において、スクリーニング方法は、例えば、細胞からゲノムDNAを抽出することによって、細胞の亜集団から複数のバリアント核酸のサブセット842を単離すること840を含む場合がある。
【0270】
いくつかの態様において、スクリーニング方法はさらに、複数のバリアント核酸のサブセットの個々のメンバーの連続部分のヌクレオチド配列850を、例えば、サブセット842に含まれるバリアント核酸の少なくとも連続部分を高処理配列決定することによって、決定することを含む場合がある。
【0271】
いくつかの態様において、方法はさらに、亜集団の細胞中に存在したバリアントヌクレオチド部分配列816a/818aの組み合わせ860を同定することを含む場合がある。いくつかの態様において、同定することは、細胞の亜集団において見出された2つ以上の組み合わせのうちのバリアントヌクレオチド部分配列の組み合わせが、予め定められた閾値と比較して、または細胞の対照亜集団におけるその特定の組み合わせの存在量と比較して、濃縮されているか否かを分析することを含む。いくつかの態様において、濃縮された組み合わせは、細胞の亜集団が選択された根拠となる機能的特性を細胞に付与するものとして同定される。
【0272】
図9では、本発明のスクリーニング方法のいくつかの態様を提供する。方法900は、複数のバリアント核酸を含むコンビナトリアルライブラリーを提供すること910を含む場合があり、複数のバリアント核酸はそれぞれ、少なくとも600bpの連続部分を有し、ここで、連続部分は2つ以上のバリアント核酸部分配列の組み合わせを含み、ここで、2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列のうちの第一のバリアントヌクレオチド部分配列は連続部分の第一の末端を規定し、2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列のうちの第二のバリアントヌクレオチド部分配列は、第一の末端とは反対側にある連続部分の第二の末端を規定する。コンビナトリアルライブラリーは、複数のバリアント核酸のメンバーによってコードされる1つ以上のポリペプチドを発現するように構成された細胞の集団に導入すること920ができる。次いで、方法は、2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列の組み合わせに依存する少なくとも1つの機能的特性に基づいて細胞集団の亜集団を選択すること930を含む場合があり、ここで、亜集団は複数の細胞を含む。方法は、亜集団から複数のバリアント核酸のサブセット(例えば、1つまたは複数の)を単離すること940、サブセットの個々のメンバーの連続部分のヌクレオチド配列を決定すること950を含む場合がある。次いで、決定されたヌクレオチド配列に基づいて、2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列の組み合わせを1つ以上同定すること960ができる。
【0273】
いくつかの態様において、各スクリーニングには、「参照」試料と「上位」試料が存在する。「上位」試料は、CD69の発現が最も高い、選別された細胞を含み、「参照」試料は、CD69の発現が低い、選別された細胞を含む。いくつかの態様において、試料は、CD25、CD62L、CD137、IFN-γ、IL-2、TNF-α、GM-CSF、合成プロモーターレポーターマーカーまたは増殖マーカーを含むがこれらには限定されない任意の他の活性化マーカーに基づいて分離され得る。このことに関しては、複雑度Yを有するライブラリーに含まれるそれぞれのバリアントについて、最低100~200倍のカバー数でバリアントを単離することができる。この場合、1試料あたりの合計が、100~200×Yバリアント/細胞を上回る場合がある。
【0274】
ある核酸のバリアントヌクレオチド配列が、他の核酸中の相当するバリアントヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列をコードするとき、ある核酸は、コンビナトリアルライブラリーに含まれる他の核酸と「異なる」または「別個である」と考えることができる。いくつかの態様において、ある核酸は、それらが同じアミノ酸配列をコードしていても、それらのヌクレオチド配列の違いに基づいて、コンビナトリアルライブラリーに含まれる別の核酸と「異なる」または「別個である」と考えてよい。
【0275】
コンビナトリアルライブラリーは、任意の適した数の異なる(または「バリアント」な)核酸を含む場合がある。いくつかの態様において、コンビナトリアルライブラリーは、約100またはそれ以上の、例えば、約200以上、約300以上、約400以上、約500以上、約600以上、約700以上、約800以上、約900以上、約1000以上、約2000以上、約3000以上、約4000以上、約5000以上、約7,500以上、約10,000以上、約20,000以上、約50,000以上、約1×10以上、約2×10以上、約5×10以上、約1×10以上、約1×10以上、約1×10以上、約1×10以上、約1×1010以上の、約1×1011以上を含む、異なる核酸、または前述した値のうちの任意の2つの値で定義される範囲内の数の異なる核酸を含む。いくつかの態様において、コンビナトリアルライブラリーは、約100~約200、約200~約500、約500~約1,000、約1,000~約5,000、約5,000~約1×10、約1×10~約2×10、約2x10~約5×10、約5×10~約1×10、約1×10~約1×10、約1×10~約1×10、約1×10~約1×10、約1×10~約1×10、約1×10~約1×1010、約1×1010~約1×1011、またはそれ以上の異なる核酸を含む。いくつかの態様において、ライブラリーは、少なくとも100の、例えば、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1,000、少なくとも2,000、少なくとも3,000、少なくとも4,000、少なくとも5,000、少なくとも7,500、少なくとも10,000、少なくとも20,000、少なくとも50,000、少なくとも1×10、少なくとも2×10、少なくとも5×10、少なくとも1×10、少なくとも1×10、少なくとも1×10、少なくとも1×10、少なくとも1×1010の、少なくとも1×1011を含む、2つのバリアントヌクレオチド部分配列の異なる組み合わせを含む。
【0276】
いくつかの態様において、1つ以上のポリペプチド(いくつかの態様では、コンビナトリアルライブラリーのバリアント核酸によってコードされる)は、T細胞受容体α(TCRα)鎖およびTCRβ鎖;キメラ抗原受容体(CAR);スイッチレセプター;または抗体もしくはその抗原結合断片の1本以上の鎖、を含む。いくつかの態様では、第一のバリアントヌクレオチド部分配列は、TCRαバリアントアミノ酸配列をコードし、第二のバリアントヌクレオチド部分配列は、TCRβバリアントアミノ酸配列をコードしている。いくつかの態様では、2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列は、TCR-V領域;TCR相補性決定領域3(CDR3);TCR-Jセグメント;およびTCR定常領域、のうちの1つ以上をコードしている。いくつかの態様において、2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列はそれぞれ、CARの抗原結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、または1つ以上の細胞内シグナリングドメインをコードしている。
【0277】
いくつかの態様では、ライブラリーに含まれる複数のバリアント核酸の連続部分間の編集距離が最大化される。いくつかの態様では、コンビナトリアルライブラリーの任意の2つのバリアント核酸間の編集距離は、例えば、コドン使用を制御することによって、最大化される。いくつかの態様において、このことは、コドン最適化を含み得る。いくつかの態様において、ライブラリーを伴う本明細書で提供される方法のいずれかは、宿主細胞にとって好ましいコドン使用を導入すること、mRNA構造の安定性を最適化すること、反復配列を回避すること、長い同種重合体を回避すること、および所与のバリアント核酸配列内の局所的なGC含有量に大きな相違が生じることを回避すること、のうちの少なくとも1つに基づいて、ライブラリー(例えば、複数のバリアント核酸のライブラリー)中のヌクレオチド配列が最適化されることを含み得る。
【0278】
いくつかの態様において、ライブラリーに含まれる複数のバリアント核酸のヌクレオチド配列は、1)細胞集団の細胞が遺伝子改変される、本明細書に提供される任意の方法、または2)細胞がCD4および/またはCD8と共に再構成され、クラスIおよび/またはクラスII拘束性TCR配列をスクリーニングするために利用される、本明細書に提供される任意の方法、の少なくとも1つに基づいて最適化される。
【0279】
いくつかの態様において、使用される細胞はT細胞である。
【0280】
いくつかの態様において、細胞の亜集団と対照集団は重複していない。いくつかの態様において、重複していないことは、両集団中の細胞が異なる活性化状態にあるが、同じバリアント核酸を担持することができることを表す。
【0281】
いくつかの態様において、1つ以上のポリペプチドは、TCRα鎖およびTCRβ鎖を含み、ここで、不変アミノ酸配列はTCRβの定常領域を含む。
【0282】
いくつかの態様において、決定することは、連続部分のヌクレオチド配列のそれぞれについて、少なくとも25、少なくとも50、100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500または少なくとも1,000の平均カバー数を得ることを含む。
【0283】
いくつかの態様において、反応性の評価を伴う、または反応性の評価をさらに含むことができる任意の方法は、反応性を評価するために上位下位比較を使用する場合がある。
【0284】
いくつかの態様において、ライブラリーを伴う本明細書で提供される方法のいずれかは、宿主細胞にとって好ましいコドン使用を導入すること、mRNA構造の安定性を最適化すること、反復配列を回避すること、長い同種重合体を回避すること、および所与のバリアント核酸配列内の局所的なGC含有量に大きな相違が生じることを回避すること、のうちの少なくとも1つに基づいて、ライブラリー(例えば、複数のバリアント核酸のライブラリー)中のヌクレオチド配列が最適化されることを含み得る。
【0285】
いくつかの態様において、抗原は、抗原提示細胞を介して提示される。
【0286】
いくつかの態様において、ライブラリーは、コンビナトリアルライブラリーである。
【0287】
いくつかの態様において、抗原は、細胞によって提供される。
【0288】
いくつかの態様において、過程は、高度な抗原多様性および/または複雑性を伴う。
【0289】
ライブラリーを伴ういくつかの態様では、ライブラリーはコンビナトリアルライブラリーである。いくつかの態様において、コンビナトリアルライブラリーは、TCRライブラリーである。
【0290】
連続部分は、少なくとも600bpの任意の適した長さを有するものであってよい。いくつかの態様において、連続部分の長さは、機能的特性に基づいて細胞の亜集団を選択した後に連続部分の配列決定に使用される配列決定プラットフォームのリード長(例えば、正確なリード長)に依存する。いくつかの態様において、連続部分は、少なくとも600bpの長さ、例えば、少なくとも700bp、少なくとも800bp、少なくとも900bp、少なくとも1,000bp、少なくとも1,100bp、少なくとも1,200bp、少なくとも1,300bp、少なくとも1,400bp、少なくとも1,500bp、少なくとも1,750bp、少なくとも2,000bp、少なくとも2,500bp、少なくとも3,000bp、少なくとも4,000bp、少なくとも5,000bp、少なくとも6,000bp、少なくとも7,000bp、少なくとも8,000bp、少なくとも9,000bp、少なくとも10,000bp、少なくとも11,000bp、少なくとも12,000bp、少なくとも13,000bp、少なくとも14,000bp、もしくは少なくとも15,000bp、または前記値のうちの任意の2つで定義される範囲内の長さを有する。いくつかの態様において、連続部分は、約600bp~約15000bp、例えば、約800bp~約12000bp、約1000bp~約10000bp、約1000bp~約8000bp、約1000bp~約6000bp、約1000bp~約5000bp、約1000bp~約4000bpを含む長さを有する。
【0291】
コンビナトリアルライブラリーに含まれるバリアント核酸は、任意の適した数のバリアントヌクレオチド配列を有し得る。いくつかの態様では、コンビナトリアルライブラリーに含まれるすべての核酸が、同じ数のバリアントヌクレオチド配列を有する。いくつかの態様では、コンビナトリアルライブラリーに含まれるバリアント核酸は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20またはそれ以上のバリアントヌクレオチド配列を有し、そのそれぞれは、バリアント核酸の連続部分を組み立てるためにコンビナトリアル様式で組み立てることができるバリアントを有し得る。
【0292】
コンビナトリアルライブラリーは、それぞれのバリアントヌクレオチド配列について任意の適した数のバリアントを含み得る。いくつかの態様において、コンビナトリアルライブラリーに含まれるバリアントヌクレオチド配列に関するバリアントの数は、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、12以上、14以上、16以上、18以上、20以上、25以上、30以上、35以上、40以上、45以上、50以上、75以上、100以上、125以上、150以上、175以上、200以上、250以上、300以上、350以上、400以上、450以上、500以上、600以上、700以上、800以上、900以上、1,000以上、1,500以上、2,500以上、3,000以上、4,000以上、5,000以上、7,500以上、10,000以上、またはこれら2つの値で定義される範囲のバリアントの数である。いくつかの態様において、コンビナトリアルライブラリーに含まれるバリアントヌクレオチド配列に関するのバリアントの数は、2~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~100、100~200、200~500、500~1,000、1,000~2,000、2,000~5,000、または5,000~10,000の間である。いくつかの態様において、ライブラリー中の個別のバリアントの分布頻度は、それらのバリアントの80%を超えるものが、頻度中央値÷8から始まり頻度中央値×8で終わる範囲内の頻度を有するようなものである。
【0293】
いくつかの態様では、本明細書で提供されるスクリーニングおよび/またはライブラリーに関連する方法のいずれかに関して、TCR対および/またはTCR対を発現するT細胞は、抗原(新生抗原など)への結合によって選択または識別され、ここで、抗原はB細胞または抗原提示細胞によって発現される。
【0294】
いくつかの態様では、本明細書で提供されるスクリーニングおよび/またはライブラリーに関連する方法のいずれかに関して、抗原または新生抗原は対象の腫瘍に由来し、TCR対のTCRαおよびTCRβもそれぞれ対象に由来する(つまり、一人の対象が、抗原配列と両TCRαおよびTCRβ配列の全てを有する)。
【0295】
いくつかの態様では、本明細書で提供されるスクリーニングおよび/またはライブラリーに関連する方法のいずれかに関して、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、50、100、500、1000、10000、100000、または100万のTCR対(もしくはこれらの対を含む細胞)が存在し、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、50、100、500、1000、10000、100000、または100万の抗原が存在する。
【0296】
いくつかの態様では、本明細書で提供されるスクリーニングおよび/またはライブラリーに関連する方法のいずれかに関して、a)TCR対および/またはTCR対を発現するT細胞は、抗原(新生抗原など)への結合によって選択または識別され、ここで、抗原はB細胞または抗原提示細胞によって発現され、b)抗原または新生抗原は対象の腫瘍に由来し、TCR対のTCRαおよびTCRβもそれぞれ対象に由来し(つまり、一人の対象が、抗原配列と両TCRαおよびTCRβ配列の全てを有し)、c)少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、50、100、500、1000、10000、100000、または100万のTCR対(もしくはこれらの対を含む細胞)、および少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、50、100、500、1000、10000、100000、または100万の抗原が存在する。
【0297】
コンビナトリアルライブラリーは、任意の好適な生体分子(例えば、タンパク質、核酸、核タンパク質など)のライブラリーであってもよい。いくつかの態様において、好適な生体分子は、配列(例えば、タンパク質および/または核酸配列)が、少なくとも600ヌクレオチドに相当する配列単位(例えば、アミノ酸またはヌクレオチド)の連続する部分にわたって変化させることが可能なものである。好適なコンビナトリアルライブラリーは、TCR、CAR、抗体、RNAガイドヌクレアーゼなどに関するコンビナトリアルライブラリーを含むが、これらに限定されるものではない。
【0298】
いくつかの態様において、コンビナトリアルライブラリーは、多様なT細胞集団に由来するT細胞受容体(TCR)のレパトアを含む。いくつかの態様において、コンビナトリアルライブラリーの複数の核酸は、1つ以上のTCRα機能的ドメイン(例えば、TCRαV領域、TCRα相補性決定領域3(CDR3)、TCRαJセグメント、TCRα定常領域)、および1つ以上のTCRβ機能的ドメイン(例えば、TCRβV領域、TCRβ相補性決定領域3(CDR3)、TCRβJセグメント、TCRβ定常領域)をコードするバリアントヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、コンビナトリアルライブラリーTCRの核酸の連続部分は、600bp~2,000bpの間の長さ、例えば、800bp~1,900bp、1,000bp~1,900bp、1,200bp~1,900bp、1,400bp~1,900bp、1,500bp~約1,900bp、1,600bp~1,900bp、1,700bp~1,900bpの間の長さ、または約1,800bpの長さである。
【0299】
いくつかの態様において、コンビナトリアルライブラリーの複数の核酸は、1つ以上のキメラ抗原受容体(CAR)機能的ドメイン(例えば、抗原結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、および2~3のシグナル伝達モジュールを含み得る細胞内シグナル伝達ドメイン)をコードするバリアントヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、コンビナトリアルライブラリーCARの核酸の連続部分は、600bp~2,000bpの間の長さ、例えば、800bp~1,900bp、1,000bp~1,800bp、1,200bp~1,800bp、1,400bp~1,700bpの間の長さ、または約1,500bpの長さである。
【0300】
いくつかの態様において、コンビナトリアルライブラリーは、抗体の重鎖および軽鎖配列のレパトアを含む。いくつかの態様において、コンビナトリアルライブラリーの複数の核酸は、1つ以上の抗体重鎖の機能的ドメイン(例えば、重鎖可変領域(1つ以上のCDR、フレームワーク領域を含む)、および/または重鎖定常領域(1つ以上のCH1、CH2、CH3およびヒンジ領域を含む)をコードするバリアントヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、コンビナトリアルライブラリーの複数の核酸は、1つ以上の抗体軽鎖の機能的ドメイン(例えば、軽鎖可変領域(1つ以上のCDR、フレームワーク領域を含む))、および/または軽鎖定常領域をコードするバリアントヌクレオチド配列を含む。
【0301】
いくつかの態様において、コンビナトリアルライブラリーの核酸は、バリアント核酸を含む好適なベクターを含む。いくつかの態様において、コンビナトリアルライブラリーの核酸は、好適な制御配列および/または非翻訳配列を含む。好適な非翻訳配列には、プロモーター、シグナルペプチド、スプライシング部位、停止コドン、およびポリ(A)シグナル配列が含まれるが、これらには限定されない。いくつかの態様において、核酸は、選択マーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子、蛍光分子、または細胞表面マーカー)を含む。
【0302】
いくつかの態様において、スクリーニング方法は、コンビナトリアルライブラリーを生成することを含む。コンビナトリアルライブラリーは、任意の好適な選択肢を用いて作製することができる。いくつかの態様において、コンビナトリアルライブラリーを生成することは、1つ以上のポリペプチドの2つ以上のバリアントアミノ酸配列のセットをコードする、2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列のセットを同定すること、ここで、少なくとも1つの機能的特性は、2つ以上のバリアントアミノ酸配列のセットのそれぞれに由来するバリアントアミノ酸配列の組み合わせに依存し;および2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列のセットのそれぞれに由来するバリアントヌクレオチド部分配列を組み合わせることで連続部分を組み立て、それによって複数のバリアント核酸のメンバーを生成すること、を含む。
【0303】
いくつかの態様において、コンビナトリアルライブラリーを生成することは、レポーター細胞によって発現されることになるポリペプチドのバリアントアミノ酸配列をコードするバリアントヌクレオチド部分配列の複数のバリアントを同定することを含む。ポリペプチドが2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列を含む場合、連続部分は、バリアントヌクレオチド部分配列のそれぞれに由来するバリアントを組み合わせることによって組み立てることができる。いくつかの態様において、コンビナトリアルライブラリーを生成することは、ライブラリーの核酸をインシリコで、例えば、コドン使用の制御を通じて編集距離を最大化するように、設計することを含む。任意の好適なアルゴリズムを、編集距離を最大化するために使用してもよい。コンビナトリアルライブラリーを、任意の好適な選択肢を使用して、例えば、インシリコで生成された設計に基づいて、合成してもよい。いくつかの態様において、コンビナトリアルライブラリーは、多様なT細胞集団に由来するTCRのレパトアを含む。
【0304】
コンビナトリアルライブラリーを細胞に導入するための任意の好適な選択肢を使用してもよい。好適な選択肢としては、ウイルス導入、トランスポゾン媒介性遺伝子送達、形質転換、エレクトロポレーション、ヌクレアーゼ媒介性部位特異的統合(例えば、CRISPR/Cas9、TALEN)などが挙げられるが、これらには限定されない。いくつかの態様において、コンビナトリアルライブラリーを細胞に導入することは、ウイルス導入、トランスポゾン媒介性遺伝子導入、またはヌクレアーゼ媒介性部位特異的統合を含む。
【0305】
コンビナトリアルライブラリーを、ライブラリーの核酸によってコードされるポリペプチドを発現するように構成された任意の好適な細胞、例えば、レポーター細胞に導入してもよい。好適な細胞としては、哺乳類細胞、昆虫細胞、酵母、および細菌が挙げられるが、これらには限定されない。いくつかの態様において、好適な担体としては、ウイルス、酵母、細菌、およびファージが挙げられる。本開示では、簡略化のために全体を通して「細胞」という用語を使用するが、本明細書における「細胞」のこのような開示はすべて、様々な形態のT細胞(不死化T細胞など)、酵母および細菌だけでなく、ウイルスやファージを含む任意の担体と共に、より一般的に使用できることが、本明細書においては想定される。したがって、本明細書で使用される「細胞」(コンビナトリアルライブラリーが導入され得る細胞への言及を含む)周辺の開示は、真核細胞、原核細胞、およびウイルスとファージも担体として使用できる選択肢を示すために、含めることができる。細胞は、細胞株であっても、不死化細胞であっても、または初代細胞であってもよい。いくつかの態様において、細胞は、ヒト細胞であるか、またはヒト細胞から誘導されたものである。いくつかの態様において、細胞の集団は、不死化T細胞または初代T細胞を含む。いくつかの態様において、不死化T細胞または初代T細胞は、ヒトT細胞である。いくつかの態様において、コンビナトリアルライブラリーは、不死化T細胞または初代T細胞に(例えば、ウイルス導入により)導入される。いくつかの態様において、細胞は、目的のバリアントヌクレオチド部分配列の組合せを同定するために細胞が選択されることになる機能的特性を全くまたはほとんど示さない。いくつかの態様において、細胞は、ライブラリーの核酸によってコードされるポリペプチドによって媒介され、かつバリアントヌクレオチド部分配列の組み合わせに依存する機能的特性を全くまたはほとんど示さない。いくつかの態様において、細胞集団の細胞は、操作、例えば遺伝的に改変される。いくつかの態様において、細胞は、細胞による機能的特性の内因性のまたはバックグラウンドの発現を低減または排除するように操作、例えば遺伝的に改変される。いくつかの態様において、細胞は、コンビナトリアルライブラリーを導入したときに機能的特性を示す細胞の能力を増強するように操作、例えば遺伝的に改変される。いくつかの態様において、細胞は、培養中の集団の成長および/または維持を促進するように操作、例えば遺伝的に改変されている。いくつかの態様において、集団の細胞は、少なくとも1つの機能的特性を細胞に付与する内因性ポリペプチドを含まない。いくつかの態様において、細胞は、CD4、CD8およびCD28のうちの1つ以上の発現を導入または増強または排除または低減するように、遺伝的に改変される。いくつかの態様において、遺伝的に改変された細胞は、T細胞である。
【0306】
いくつかの態様において、コンビナトリアルライブラリーが導入された細胞の集団のそれぞれの細胞は、複数の核酸のうち平均して1つの核酸を含む。いくつかの態様において、細胞の集団には、10以下の感染多重度(MOI)で、例えば、7以下、5以下、3以下、2以下、1以下を含む感染多重度(MOI)でコンビナトリアルライブラリーが導入される。いくつかの態様において、導入することは、5以下の感染多重度(MOI)で細胞の集団をウイルス導入することを含んでいる。いくつかの態様では、細胞の集団のそれぞれの細胞に正確に1つまたは2つの核酸を導入するために、ヌクレアーゼ媒介性部位特異的統合(例えば、CRISPR/Cas9、TALEN)が使用される。
【0307】
コンビナトリアルライブラリーが導入される細胞の集団の大きさには、任意の適した数の細胞が含まれ得る。いくつかの態様では、細胞の数は、ライブラリーの大きさ、ライブラリーにおけるバリアント核酸の相対的な表現、集団におけるそれぞれのバリアント核酸の所望されるレベルの表現(「カバー数」とも称される)、実施するスクリーンニングの種類(例えば、「濃縮」スクリーンニング(濃縮されたバリアントを同定することが主な目的)または「枯渇」スクリーニング(枯渇したバリアントを同定することが主な目的)のいずれが実行されるか)、ライブラリーに含まれる個々のバリアントの表現およびエラー率、ならびに細胞損失に関連する少なくとも1つの機能的特性に基づいて全細胞集団の亜集団を選択するために必要な過程のステップ、の1つ以上に依存する。そのような過程のステップの例としては、正常に形質導入された細胞に関する選択、および/または発現されるポリペプチドによって媒介される機能的特性に関するフローサイトメトリーによる選択が含まれるが、これらには限定されない。いくつかの態様において、スクリーニング方法は、ライブラリーに含まれる2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列の異なる組み合わせの数に基づいて、細胞の集団の大きさを調整することを含む。
【0308】
いくつかの態様において、スクリーニング方法は、核酸に含まれる選択マーカーに基づいて、ライブラリーの核酸を受け取ったことによって正常に改変された細胞を同定することを含む。いくつかの態様において、スクリーニング方法は、複数のバリアント核酸の少なくとも1つを発現する細胞の集団に含まれる細胞を選択またはスクリーニングするためにマーカーを使用することを含む。いくつかの態様において、マーカーは、細胞毒耐性マーカーおよび/または細胞表面マーカーである。正常に改変された細胞を、使用される選択可能なマーカーに応じて、任意の好適な方法を用いて選択することができる。いくつかの態様において、細胞は、抗生物質耐性、例えば、これらに限定されるものではないが、ピューロマイシンまたはブラストサイジンに対する耐性に基づいて選択される。いくつかの態様において、細胞は、検出可能なマーカーの発現、例えば、これらに限定されるものではないが、フローサイトメトリーによる選別に使用できる細胞表面マーカーまたは蛍光分子による発現に基づいて選択される。いくつかの態様において、細胞は、例えば、磁気ビーズの使用に基づく濃縮に適した細胞表面マーカーに基づいて選択される。
【0309】
細胞の集団の亜集団を選択することは、バリアント核酸によってコードされるポリペプチドの任意の適した機能的特性に基づくものであってもよい。適した機能的特性としては、リガンド結合(例えば、抗原結合)、刺激に応答したシグナル伝達(例えば、抗原結合に対する応答)が挙げられるが、これらには限定されない。シグナル伝達としては、リン酸化、転位、シグナル伝達ドメインの相互作用、または転写の変化を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。バリアントヌクレオチド部分配列の組み合わせに依存する機能的特性に基づいて細胞の集団の亜集団を選択することは、任意の好適な選択肢を用いて実施することができる。いくつかの態様において、好適な機能的出力は、これらは限定されないが、マーカーの発現、または刺激に応答した細胞増殖を使用して測定される。
【0310】
いくつかの態様において、選択することは、検出可能なマーカーの発現に基づいて亜集団を選択することを含み、ここで発現は、1つ以上のポリペプチドの少なくとも1つの機能的特性に依存する。いくつかの態様において、検出可能なマーカーは、細胞表面マーカー、サイトカインマーカー、細胞増殖マーカー、転写レポーター、シグナル伝達レポーター、および/または細胞毒性レポーターを含む。いくつかの態様において、細胞表面マーカーは、CD69、CD62L、CD137のうちの1つ以上を含み;サイトカインマーカーは、IFN-γ、IL-2、TNF-α、GM-CSFのうちの1つ以上を含み;転写レポーターは、NF-κB、NFAT、AP-1のうちの1つ以上を含み;シグナル伝達レポーターは、ZAP70、ERK1/2のうちの1つ以上を含み;および細胞毒性レポーターは、CD107A、CD107B、グランザイムBのうちの1つ以上を含む。
【0311】
いくつかの態様において、細胞の集団の亜集団を選択することは、機能的特性を示す(例えば、機能的アッセイにおいて陽性に応答する)細胞を選択することを含む。いくつかの態様において、細胞の集団の亜集団を選択することは、機能的特性を示さない(例えば、機能的アッセイにおいて陰性に応答する)細胞を選択することを含む。いくつかの態様において、スクリーニング方法は、機能的特性を示す細胞の集団の亜集団を選択すること、および機能的特性を示さない細胞の集団の別の亜集団を選択することを含む。いくつかの態様において、細胞の集団の亜集団を選択することは、亜集団それぞれの細胞によって示される機能的特性のレベルまたは程度の階層化に基づいて、複数の細胞の亜集団を選択することを含む。
【0312】
いくつかの態様において、亜集団を選択することは、細胞の集団を、第二の集団;1つ以上のポリペプチドのリガンド;1つ以上のポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニスト;および小分子、のうちの1つ以上と接触させることを含み、ここで接触によって誘発される亜集団の変化は、1つ以上のポリペプチドの少なくとも1つの機能的特性に依存する。いくつかの態様において、亜集団を選択することは、変化の有無および/または変化の大きさを検出すること;ならびに検出に基づいて亜集団を選択することを含む。いくつかの態様において、細胞の第二の集団は、抗原提示細胞を含む。いくつかの態様において、抗原提示細胞は、B細胞および/または樹状細胞を含む。いくつかの態様において、細胞の第二の集団は、初代細胞または不死化細胞を含む。いくつかの態様において、ライブラリーのバリアントヌクレオチド部分配列は、バリアントヌクレオチド部分配列によってコードされるアミノ酸を含むバリアントポリペプチドを発現する細胞に由来し、ここで細胞は対象に由来し、ここで細胞の第二の集団もこの対象に由来する。
【0313】
いくつかの態様において、選択することは、閾値を超えるまたは下回る少なくとも1つの機能的特性の測定に基づいて、細胞の集団の第一の亜集団を選択することを含む。いくつかの態様において、閾値は、細胞の集団の未選択の亜集団における機能的特性の測定に基づいて決定される。いくつかの態様において、選択することはさらに、第二の閾値を超えるまたは下回る少なくとも1つの機能的特性の第二の測定値に基づいて細胞の集団の第二の亜集団を選択することを含み、ここで、第一および第二の亜集団は重複していない。いくつかの態様において、少なくとも1つの組み合せを特定することは、第一および第二の亜集団の間で少なくとも1つの組み合せの存在量を比較することを含む。
【0314】
いくつかの態様において、コンビナトリアルライブラリーがTCRαとTCRβのバリアントを含むTCRライブラリーである場合、細胞の亜集団は、1つ以上のマーカーの発現の変化によって、抗原提示に応答する細胞の能力に基づいて選択される。好適なマーカーとしては、CD69、CD62L、CD137、IFN-γ、IL-2、TNF-αおよびGM-CSFが挙げられるが、これらには限定されない。いくつかの態様において、マーカーは、これらに限定されるものではないが、NF-κB、NFAT、およびAP-1を含む、プロモーター活性レポーターである。
【0315】
いくつかの態様において、抗原は、B細胞(例えば、不死化B細胞)および樹状細胞を含むがこれらには限定されない抗原提示細胞によって提示される。いくつかの態様において、抗原の同一性は分かっていない。いくつかの態様において、抗原は新生抗原である。
【0316】
いくつかの態様において、コンビナトリアルライブラリーがCAR機能的ドメインのバリアントを含むCARライブラリーである場合、細胞の亜集団は、細胞増殖の変化および/またはマーカー発現の変化によって、抗原提示に応答する細胞の能力に基づいて選択される。好適なマーカーとしては、CD69、CD62L、CD137、IFN-γ、IL-2、TNF-αおよびGM-CSFが挙げられるが、これらには限定されない。いくつかの態様において、マーカーは、ZAP70およびERK1/2リン酸化を含むがこれらに限定されない、シグナル伝達レポーターである。いくつかの態様において、マーカーは、これらに限定されるものではないが、CD107AおよびCD107Bなどの細胞傷害性レポーターである。いくつかの態様において、マーカーは、これらに限定されるものではないが、NF-κB、NFAT、およびAP-1などのプロモーター活性レポーターである。
【0317】
いくつかの態様において、亜集団は、複数の細胞を含む。いくつかの態様において、単離することは、少なくとも1つの機能的性質に基づいて、亜集団の単一クローンを単離することを含まない。いくつかの態様において、亜集団は、少なくとも1,000の細胞を含む(例えば、100のバリアントについて10倍のカバー数)。
【0318】
いくつかの態様では、バリアントヌクレオチド部分配列の組み合わせに依存する機能的特性に基づいて選択される亜集団は、約1,000以上の細胞を含み、例えば約2,000以上の細胞、約3,000以上の細胞、約4,000以上の細胞、約5,000以上の細胞、約7,500以上の細胞、約10,000以上の細胞、約20,000以上の細胞、約50,000以上の細胞、約1×10以上の細胞、約2×10以上の細胞、約5×10以上の細胞、約1×10以上の細胞、約1×10以上の細胞、約1×10以上の細胞、約1×10以上の細胞、約1×1010以上の細胞、約1×1011以上の細胞、約1×1012以上の細胞を含む、または前述した値のうちの任意の2つにより定義される範囲内の細胞数、を含む。いくつかの態様において、バリアントヌクレオチド部分配列の組み合わせに依存する機能的特性に基づいて選択される亜集団は、約1,000~約1×1012の細胞を含み、例えば、約2,000~約1×1012の細胞、約3,000~約1×1010の細胞、約5,000~約1×10の細胞、約1×10~約1×10の細胞を含む、細胞を含む。
【0319】
いくつかの態様において、TCR対の機能は、抗原への結合である。
【0320】
いくつかの態様において、亜集団は、初期集団の画分であり、本来の集団の、例えば10-14、10-13、10-12、10-11、10-10、10-9、10-8、0.0000001、0.000001、0.0001、0.001、0.01、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、4,050、60、70、80または90(前述した値の任意の二つの間に定義される範囲を含む)%未満である。
【0321】
いくつかの態様において、バリアントヌクレオチド部分配列の組み合わせに依存する機能的特性に基づいて選択される亜集団の大きさは、ライブラリーに含まれるバリアント核酸が亜集団中で適切に表現されるような、十分な大きさである。いくつかの態様において、亜集団は、約10倍以上のカバー数を提供するサイズを有し、例えば、約20倍以上、約30倍以上、約40倍以上、約50倍以上、約60倍以上、約70倍以上、約80倍以上、約90倍以上、約100倍以上、約120倍以上、約140倍以上、約160倍以上、約180倍以上、約200倍以上、約250倍以上、約300倍以上、約400倍以上、約500倍以上、約1000倍以上を含む、またはライブラリーに含まれるバリアント核酸の総数の、前述した値のうちの任意の2つによって定義される範囲内の倍率のカバー数を有する。いくつかの態様において、亜集団は、ライブラリーに含まれるバリアント核酸の総数の約10~約1,000倍のカバー数を提供するサイズを有し、例えば、約30~約750倍、約40~約500倍、約50~約500倍、約50~約400倍、約60~約300倍、約70~約250倍、約80~約200倍含む、カバー数を提供するサイズを有する。
【0322】
亜集団からバリアント核酸を単離することは、任意の適した手法を用いて行うことができる。いくつかの態様において、バリアント核酸を単離することは、任意の好適な方法を用いて亜集団からゲノムDNAを抽出することを含む。いくつかの態様において、バリアント核酸を単離することは、亜集団からバルクゲノムDNAを抽出することを含む。いくつかの態様において、バリアント核酸を単離することは、亜集団から個別のクローンを単離することも、個別のクローンからゲノムDNAを単離することも含まない。いくつかの態様において、バリアント核酸を単離することは、亜集団から個別のクローンを単離することも、個別のクローンを拡大することも、それによって拡大されたクローン集団からゲノムDNAを単離することも含まない。いくつかの態様において、バリアント核酸を単離することは、亜集団から個別のクローンを単離することもまたは拡大することもなく、亜集団からバルクゲノムDNAを抽出することを含む。いくつかの態様において、バリアント核酸を単離することは、任意の好適な方法を用いて亜集団からRNAを抽出することを含む。いくつかの態様において、バリアント核酸を単離することは、亜集団からバルクRNAを抽出することを含む。いくつかの態様において、バリアント核酸を単離することは、亜集団からmRNAを抽出することを含む。いくつかの態様において、バリアント核酸を単離することは、亜集団から個別のクローンを単離することも、個別のクローンからRNAを単離することも含まない。いくつかの態様において、バリアント核酸を単離することは、単細胞PCR法による単細胞の分析を含まない。いくつかの態様において、バリアント核酸を単離することは、亜集団から個別のクローンを単離することも、個別のクローンを拡大することも、それによって拡大されたクローン集団からRNAを単離することも含まない。いくつかの態様において、バリアント核酸を単離することは、亜集団から個別のクローンを単離することもまたは拡大することもなく、亜集団からRNAを抽出することを含む。用語「RNA」は、属に関する用語であり、例えば、天然版のおよび人工版のRNAを含む。本明細書では、しばしば「DNA」に関する選択肢を概説するが、そのような選択肢および態様のすべては、代わりにRNAに対して使用できることが理解されよう。
【0323】
いくつかの態様において、亜集団から抽出されたゲノムDNAの量は、ライブラリーのバリアント核酸に含まれるバリアントそれぞれについて適切なカバー数を提供するのに十分な量である。いくつかの態様において、亜集団から抽出されたゲノムDNAの量は、約10倍以上のカバー数を提供するのに十分であり、例えば、約20倍以上、約30倍以上、約40倍以上、約50倍以上、約60倍以上、約70倍以上、約80倍以上、約90倍以上、約100倍以上、約120倍以上、約140倍以上、約160倍以上、約180倍以上、約200倍以上、約200倍以上約250倍以上、約300倍以上、約400倍以上、約500倍以上、約1,000倍以上を含む、またはライブラリーに含まれるバリアント核酸の総数の、前述した値のうちの任意の2つによって定義される範囲内の倍率のカバー数を有する。いくつかの態様において、亜集団から抽出されたゲノムDNAの量は、ライブラリー中のバリアント核酸の総数の約10~約1,000倍のカバー数を提供するのに十分な量を有し、例えば、約20~約1,000倍、約30~約750倍、約40~約500倍、約50~約500倍、約50~400倍、約60~300倍、約70~約250倍、約80~約200倍を含む、カバー数を提供するのに十分な量である。いくつかの態様において、決定することは、個別のメンバーを増幅する前にまたは個別のメンバーを増幅することなく、連続部分のヌクレオチド配列のそれぞれについて、少なくとも10の平均カバー数を得ることを含む。
【0324】
いくつかの態様において、亜集団からバリアント核酸を単離することは、抽出したバリアント核酸を増幅することを含む。バリアント核酸の任意の適した部分を増幅してもよい。いくつかの態様では、実質的に、バリアント核酸の連続部分のみが増幅される。いくつかの態様では、ポリペプチドの全体をコードしているバリアント核酸の部分が増幅される。いくつかの態様において、増幅産物(すなわちアンプリコン)の大きさは、少なくとも600bpであり、例えば、少なくとも700bp、少なくとも800bp、少なくとも900bp、少なくとも1,000bp、少なくとも1,100bp、少なくとも1,200bp、少なくとも1,300bp、少なくとも1,400bp、少なくとも1,500bp、少なくとも1,750bp、少なくとも2,000bp、少なくとも2,500bp、少なくとも3,000bp、少なくとも4,000bp、少なくとも5,000bp、少なくとも6,000bp、少なくとも7,000bp、少なくとも8,000bp、少なくとも9,000bp、少なくとも10,000bp、少なくとも11,000bp、少なくとも12,000bp、少なくとも13,000bp、少なくとも14,000bp、または少なくとも15,000bp、あるいは前述した値のうちの任意の2つによって定義される範囲内の長さである。いくつかの態様において、増幅産物(すなわちアンプリコン)の大きさは、約600bp~約15,000bpであり、例えば、800bpから約12,000bp、約1,000bpから約10,000bp、約1,000bpから約8,000bp、約1,000bpから約6,000bp、約1,000bpから約5,000bp、約1,000bpから約4,000bp、約1,000bpから約3,000bp、約1,000bpから約2,000bpを含む、大きさである。
【0325】
いくつかの態様において、決定することは、複数の核酸の個別のメンバーの少なくとも連続部分を増幅することを含む。いくつかの態様において、増幅することは、不変ヌクレオチド部分配列にハイブリダイズする増幅プライマーを使用することを含み、ここで複数のバリアント核酸はそれぞれ、不変ヌクレオチド部分配列を含み、ここで不変ヌクレオチド部分配列は、1つ以上のポリペプチドの不変アミノ酸配列をコードしている。いくつかの態様において、増幅することは、不変ヌクレオチド配列の外側のヌクレオチド部分配列にハイブリダイズする増幅プライマーを使用することを含み、ここで不変ヌクレオチド配列の外側のヌクレオチド部分配列には、遺伝子ベクターの非翻訳領域のヌクレオチド配列が含まれるが、これに限定されるものではない。いくつかの態様において、1つ以上のポリペプチドは、TCRα鎖およびTCRβ鎖を含み、不変アミノ酸配列は、TCRα定常領域を含む。
【0326】
いくつかの態様において、増幅することは、増幅されたアンプリコンのライブラリーに含まれるコンビナトリアルライブラリーのバリアント核酸のバリアントそれぞれについて十分なカバー数を提供するように実施される。いくつかの態様において、単離されたバリアント核酸は、約1,000倍以上のカバー数を提供するように増幅され、例えば、約2,000倍以上、約3,000倍以上、約4,000倍以上、約5,000倍以上、約6,000倍以上、約7,000倍以上、約8,000倍以上、約9,000倍以上、約10,000倍以上、約12,000倍以上、約14,000倍以上、約16,000倍以上、約18,000倍以上、約20,000倍以上、約25,000倍以上、約30,000倍以上、約40,000倍以上、約50,000倍以上、約100,000以上を含む、または結果として得られるアンプリコンライブラリーに含まれるコンビナトリアルライブラリーのバリアント核酸の総数の、前述した値のうちの任意の2つによって定義される範囲内のカバー数を提供するように増幅される。いくつかの態様において、単離されたバリアント核酸は、結果として得られるアンプリコンライブラリー中のコンビナトリアルライブラリーのバリアントの総数の約1,000~約100,000倍のカバー数を提供するように増幅され、例えば、約2,000~約100,000倍、約3,000~約75,000倍、約4,000~約50,000倍、約5,000~約50,000倍、約5,000~約40,000倍、約6,000~約30,000倍、約7,000~約25,000倍、約8,000~約20,000を含む、カバー数を提供するように増幅される。いくつかの態様において、決定することは、連続部分のヌクレオチド配列のそれぞれについて、少なくとも1,000の平均カバー数を得ることを含む。
【0327】
いくつかの態様において、増幅することは、結果として得られるアンプリコンライブラリーにおける増幅バイアスを低減する様式で行われる。いくつかの態様において、増幅バイアスは、増幅のサイクル数を減少させることによって低減される。いくつかの態様において、増幅バイアスは、増幅のサイクル数を減少させるのに十分に大きな細胞の亜集団を有することによって低減される。いくつかの態様では、増幅バイアスに起因する配列決定データの偏りを低減するために、固有の分子識別子(UMI)が使用される。
【0328】
いくつかの態様において、亜集団からバリアント核酸を単離することは、単離したバリアント核酸を増幅することを含まない。
【0329】
いくつかの態様において、亜集団からバリアント核酸を単離することは、CRISPRの使用に基づく選択的ライブラリー製剤を使用することを含む。CRISPRの使用に基づく選択的ライブラリー製剤に関する任意の好適な選択肢を使用することができる。いくつかの態様において、単離することは、亜集団由来のゲノムDNAのCRISPR/Cas9媒介性標的断片化を使用することを含む。いくつかの態様において、亜集団からバリアント核酸を単離することは、亜集団から抽出されたゲノムDNAを脱リン酸化すること、目的の配列(例えば、バリアント核酸の連続部分)に隣接した位置にCRISPR/CAS9媒介性二本鎖切断を導入すること、および二本鎖切断部位にアダプター(例えば、配列決定アダプター)を連結すること、を含む。次いで、アダプターを連結した配列を、任意の好適な手法を用いて配列決定することができる。いくつかの態様において、サブセットの個別のメンバーの連続部分のヌクレオチド配列を決定することは、サブセットの個別のメンバーそれぞれをバーコーディングすることを含む。
【0330】
サブセットの個別のメンバーの連続部分のヌクレオチド配列を決定することは、任意の好適な選択肢を使用して行うことができる。いくつかの態様において、連続部分のヌクレオチド配列を決定することは、連続部分を配列決定することを含む。任意の好適な配列決定プラットフォームを使用することができる。好適な配列決定プラットフォームとしては、サンガー配列決定、パイロシークエンシング、単一分子配列決定、イオン半導体配列決定、合成による配列決定、コンビナトリアルプローブアンカー合成配列決定、連結による配列決定、一分子リアルタイム(SMRT)配列決定および/またはナノポアシーケンシングなどが挙げられるが、これらには限定されない。いくつかの態様において、連続部分のヌクレオチド配列を決定することは、配列決定リードを長くすることが可能な配列決定プラットフォームを使用することを含む。いくつかの態様において、決定することは、連続部分の少なくとも600bpの配列決定リードを生成することによって、個別のメンバーについて配列決定することを含む。いくつかの態様において、配列決定リードは、600bp~15,000bpの長さである。いくつかの態様において、連続部分のヌクレオチド配列を決定することは、連続部分のうちの、少なくとも600bpの配列決定リードを生成または取得することを伴い、例えば、少なくとも700bp、少なくとも800bp、少なくとも900bp、少なくとも1,000bp、少なくとも1,100bp、少なくとも1,200bp、少なくとも1,300bp、少なくとも1,400bp、少なくとも1,500bp、少なくとも1,750bp、少なくとも2,000bp、少なくとも2,500bp、少なくとも3,000bp、少なくとも4,000bp、少なくとも5,000bp、少なくとも6,000bp、少なくとも7,000bp、少なくとも8,000bp、少なくとも9,000bp、少なくとも10,000bp、少なくとも11,000bp、少なくとも12,000bp、少なくとも13,000bp、少なくとも14,000bp、もしくは少なくとも15,000bp、または前述した値のうちの任意の2つによって定義される範囲内の配列決定リード長の、配列決定リードを生成または取得することを伴う。いくつかの態様において、配列決定リードは、連続部分のうちの、約600bpから約1,000bp、約1,000bpから約2,000bp、約2,000bpから約3,000bp、約3,000bpから約4,000bp、約4,000bpから約5,000bp、約5,000bpから約7,000bp、約7,000bpから約10,000bp、および/または約10,000bpから約15,000bpである。
【0331】
ヌクレオチド配列に基づいて2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列の少なくとも1つの組み合わせを同定することは、任意の好適な選択肢を使用して行うことができる。いくつかの態様では、機能的特性に基づいて選択された亜集団において、その組み合わせが濃縮されている、または枯渇していることを決定することによって、目的の組み合わせを同定する。組合せの相対的存在量は、亜集団から決定されたヌクレオチド配列の組合せの存在量と、存在量の参照レベルとの任意の適した比較に基づくものであってよい。存在量の適した参照レベルとしては、機能的特性の欠如、異なるレベルの応答、もしくは異なるタイプの応答に基づいて選択された細胞の別の亜集団における組み合わせの存在量;または選択されていない亜集団における組み合わせの存在量が挙げられるが、これらには限定されない。いくつかの態様において、目的の組み合わせは、負に選択された亜集団と比較して、正に選択された亜集団においてその組み合わせが濃縮されている、または枯渇していることを決定することによって同定される。いくつかの態様において、目的の組み合わせは、コンビナトリアルライブラリー中での組み合わせの存在量と比較して、機能的特性に基づいて選択された亜集団においてその組み合わせが濃縮されている、または枯渇していることを決定することによって同定される。
【0332】
いくつかの態様において、少なくとも1つの組み合せを同定することは、細胞の対照集団と比較して、亜集団における少なくとも1つの組み合せの濃縮度を測定することを含む。いくつかの態様において、細胞の集団は、細胞の対照集団を含み、ここで細胞の亜集団および対照集団は、重複していない。いくつかの態様において、細胞の対照集団は、少なくとも1つの機能的特性とは異なる第二の機能的特性に基づいて選択される。
【0333】
いくつかの態様において、スクリーニング方法は、複数のバリアント核酸を含むライブラリーを提供すること、複数のバリアント核酸はそれぞれ少なくとも600bpの連続部分を含み、ここで連続部分は、TCRαのバリアントアミノ酸配列をコードしていて、かつ、連続部分の第一の末端を規定する第一のバリアントヌクレオチド部分配列とTCRβのバリアントアミノ酸配列をコードしていて、かつ、第一の末端とは反対側にある連続部分の第二の末端を規定する第二のバリアントヌクレオチド部分配列の組み合わせを含み;複数のバリアント核酸のメンバーによってコードされるTCRα鎖およびTCRβ鎖を発現するように構成された不死化T細胞の集団に、ライブラリーを導入すること;不死化T細胞と抗原を発現している不死化B細胞との接触に応答して閾値を超えるT細胞活性化マーカーの発現に基づいて、不死化T細胞の集団の亜集団を選択すること、ここで亜集団は複数のT細胞を含み;亜集団から複数のバリアント核酸のサブセットを単離すること;サブセットの個々のメンバーの連続部分のヌクレオチド配列を決定すること;および、サブセットのヌクレオチド配列に含まれる少なくとも1つの組み合わせの対照との比較における濃縮度に基づいて、第一と第二のバリアントヌクレオチド部分配列の組み合わせを少なくとも1つ同定すること、を含む。いくつかの態様において、方法はさらに、不死化T細胞と不死化B細胞との接触に応答して第二の閾値を下回るT細胞活性化マーカーの発現に基づいて、不死化T細胞の集団の第二の亜集団を選択すること、ここで第二の亜集団は第二の複数のT細胞を含み、ここで亜集団と第二の亜集団は重複しておらず;第二の亜集団から複数のバリアント核酸の第二のサブセットを単離すること;および、第二のサブセットの個別のメンバーの連続部分の第二のヌクレオチド配列を決定すること、ここで、少なくとも1つの組み合わせは、第二のサブセットの第二のヌクレオチド配列における少なくとも1つの組み合わせと比較した、サブセット中の少なくとも1つの組み合わせの濃縮度に基づいて同定される;を含む。
【0334】
いくつかの態様において、スクリーニング方法は、複数のバリアント核酸を含むライブラリーを提供すること、複数のバリアント核酸はそれぞれ、少なくとも600bpの連続部分を含み、ここで連続部分は、CARヒンジドメインをコードしている第一のバリアントヌクレオチド部分配列、CAR膜貫通ドメインをコードしている第二のバリアントヌクレオチド部分配列、およびCAR細胞内シグナル伝達ドメインをコードしている第三のバリアントヌクレオチド部分配列のうちの2つ以上の組み合わせを含み、ここで、第一、第二または第三のバリアントヌクレオチド部分配列のうちの1つは、連続部分の第一の末端を規定し、ここで、第一、第二または第三のバリアントヌクレオチド部分配列の別の1つは、第一の末端の反対側にある連続部分の第二の末端を規定し;複数のバリアント核酸のメンバーによってコードされるCARを発現するように構成された細胞の集団に、ライブラリーを導入すること、ここで細胞の集団は、不死化T細胞または初代ヒトT細胞の集団を含み;細胞とCARの抗原結合ドメインに特異的な抗原を発現している抗原提示細胞とを接触させることに応答して閾値を超える細胞増殖に基づいて、細胞の集団の亜集団を選択すること、ここで亜集団は複数の細胞を含み;亜集団から複数のバリアント核酸のサブセットを単離すること;サブセットの個々のメンバーの連続部分のヌクレオチド配列を決定すること;および、サブセットのヌクレオチド配列に含まれる少なくとも1つの組み合わせの対照との比較における濃縮度に基づいて、第一、第二、および第三のバリアントヌクレオチド部分配列の組み合わせを少なくとも1つ同定すること、を含む。いくつかの態様において、方法はさらに、細胞と抗原提示細胞とを接触させることに応答して第二の閾値レベルを下回る細胞増殖に基づいて、細胞の集団の第二の亜集団を選択すること、ここで第二の亜集団は第二の複数の細胞を含み、ここで亜集団と第二の亜集団は重複しておらず;第二の亜集団から前記複数のバリアント核酸の第二のサブセットを単離すること;第二のサブセットの個別のメンバーの連続部分の第二のヌクレオチド配列を決定すること、ここで少なくとも1つの組み合わせは、第二のサブセットの第二のヌクレオチド配列における少なくとも1つの組み合わせと比較して、サブセット中の少なくとも1つの組み合わせの濃縮度に基づいて同定される、を含む。
【0335】
本開示内では、様々な態様が、2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列の組み合わせを含む連続部分を伴うものとして説明されることが多い。さらに、これらの態様はしばしば、第一のバリアントヌクレオチド部分配列および第二のバリアントヌクレオチド、ならびに2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列の組み合わせに依存する少なくとも1つの機能的特性に基づいて細胞集団の亜集団を選択することを伴う。しかしながら、2つ以上のバリアントヌクレオチドを伴うそのような全ての態様について明示的に考慮される代替態様は、単一の機能的配列(すなわち、単一のバリアントヌクレオチド)を伴うものである。そのような態様において、600bpの配列は、例えば、単一の機能を有する単一のタンパク質をコードし得る、単一の核酸配列にわたる配列に関するものとなるであろう。したがって、「2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列」を伴う本明細書に開示される全ての態様に関しては、改めて、配列自体が600bp以上の「バリアントヌクレオチド部分配列」のみが存在する状況に方法を適用することも想定される。例えば、いくつかの態様では、核酸のコンビナトリアルライブラリーからヌクレオチド配列を同定する方法が提供される。この方法は、複数のバリアント核酸を含むコンビナトリアルライブラリーを提供することを含み、複数のバリアント核酸はそれぞれ、少なくとも600bpの連続部分を含む。方法はさらに、複数のバリアント核酸のメンバーによってコードされる1つ以上のポリペプチドを発現するように構成された細胞の集団に、ライブラリーを導入することをさらに含む。方法はさらに、少なくとも600bpの連続部分に依存する少なくとも1つの機能的特性に基づいて細胞の集団の亜集団を選択することを含み、ここで亜集団は複数の細胞を含む。方法はさらに、亜集団から複数のバリアント核酸のサブセットを単離することを含む。方法はさらに、サブセットの個別のメンバーの連続部分のヌクレオチド配列を決定することを含む。方法はさらに、ヌクレオチド配列に基づいて、少なくとも600bpの連続部分を同定することを含む。いくつかの態様において、方法は、少なくとも600bpの連続部分が600塩基対全体に分布しているものでもあり得る。
【0336】
本発明のスクリーニング方法のさらなる態様が提供される。いくつかの態様において、本開示のスクリーニング方法は、任意のタンパク質バリアントであって、そこで(a)タンパク質配列が、200アミノ酸以上の連続した領域で変化させることが意図されている;(b)タンパク質バリアントを、選択圧に暴露することができるレポーター細胞(酵母および細菌を含む)または別の機能的担体(例えば、ウイルス、ファージ)において発現させることができる;および(c)目的のタンパク質バリアントを発現するレポーター細胞を、選択圧後の少なくとも1つの機能的特性(例えば、抗原結合、抗原に応答した遺伝子発現など)に基づいて選択することが可能な、任意のタンパク質バリアントのスクリーニングに使用することができる。
その全塩基配列のうちの少なくとも600bpを決定することによってのみ明確に識別することができる少なくとも2つのバリアント塩基配列を含むバリアント塩基配列のライブラリーの生成
【0337】
いくつかの態様において、バリアントヌクレオチド配列のライブラリーは、任意の好適なインシリコにおける設計およびタンパク質工学的手法によって生成される。それぞれのバリアントを、細胞内でバリアントヌクレオチド配列の発現をもたらす遺伝子ベクターにコード化することができる。実施されるそのスクリーニングに応じて、バリアントヌクレオチド配列は、適切なプロモーター、シグナルペプチド、スプライス供与部位/受容部位、停止コドンおよびポリ(A)シグナル配列と組み合わせることができる。発現構築物には、選択マーカー、例えば、抗生物質耐性遺伝子、蛍光分子、または細胞表面マーカーを含めてもよい。
【0338】
いくつかの態様では、バリアントを高い確度で同定する能力を高めるために、インシリコアルゴリズムを利用してコドン使用頻度を制御し、それによって任意の2つのバリアント間の編集距離(所与のヌクレオチド配列をライブラリーに含まれる任意の他のバリアントヌクレオチド配列に変換させるのに関わる、ヌクレオチドの変化の数であってよい)を最大化し、バリアントヌクレオチド配列を区別する能力を高めることができる。バリアント配列ライブラリーは、DNA合成などが挙げられるがこれには限定されない任意の好適な選択肢によって生成することができる。
【0339】
いくつかの態様における本開示のスクリーニング方法は、200を超えるアミノ酸を決定することによってのみバリアントを確度をもって同定することができる、任意の好適なタンパク質のスクリーニングに使用することができる。例としては、TCR、CAR、抗体、RNA指向性ヌクレアーゼ、合成スイッチレセプター、および指向性タンパク質進化が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0340】
いくつかの態様において、ライブラリーは、TCRαおよびTCRβのバリアントを含むTCRライブラリーである。TCRライブラリーは、任意の所与のTCRα鎖およびTCRβ鎖が、複数の相補的二量体化パートナーと共に発現するか、または二量体化パートナーが分かっていないかのいずれかである、任意の好適なライブラリーであってよい。どちらの場合においても、TCRバリアントは、TCRαとTCRβの両方の可変配列を配列決定することによってのみ、明確に同定することができる。
【0341】
いくつかの態様において、ライブラリーは、CARバリアントを含むCARライブラリーである。CARライブラリーは、任意の所与のCARバリアントを確度をもって同定するために200を超えるアミノ酸を配列決定する必要がある、任意の好適なライブラリーであってよい。例としては、高度に多様な抗原結合ドメインを有する任意のCARライブラリー、またはCARタンパク質ドメインの一部もしくは全部を使用する任意の他のコンビナトリアル構築物、例えば、ヒンジドメイン、膜貫通ドメインおよび2つのシグナル伝達ドメインのバリアントが組み合わさって、500以上のバリアントを含むライブラリーを作製するライブラリーが挙げられる。
【0342】
いくつかの態様において、ライブラリーは、抗体バリアントを含む抗体ライブラリーである。バリアントヌクレオチド配列は、重鎖および軽鎖の両方の配列を配列決定することによってのみ明確に同定することができる1つの発現構築物において追合している抗体重鎖および軽鎖をコードする核酸を含む場合がある。いくつかの態様では、抗体バリアントのライブラリーを、レポーター細胞(または別の機能的媒介物)に導入し、少なくとも1つの機能的特性(抗原結合など)に基づいて選択することができる。
バリアントヌクレオチド配列ライブラリーのレポーター細胞への導入
【0343】
バリアントヌクレオチド配列のライブラリーを、任意の好適な手法によって、レポーター細胞に導入することができる。いくつかの態様では、レトロウイルスまたはレンチウイルス遺伝子送達が、ライブラリーをレポーター細胞に(または、本明細書で述べるような任意の担体に)導入するために使用される。任意の好適な手法を使用して、ライブラリーをレポーター細胞に導入してもよい。レポーター細胞は、任意の好適な細胞(または担体)であってもよい。いくつかの態様において、レポーター細胞は、(1)導入されたバリアントヌクレオチド配列に依存し、外部の選択圧に応答して、測定可能な機能獲得または機能喪失を示すその能力;(2)選択圧への応答を測定するために使用するマーカー分子のバックグラウンド発現が最小限であること;および(3)培養物中でのレポーター細胞の増殖および細胞生存率、などのいくつかの基準に基づいて選択することができる。好適なレポーター細胞としては、これらに限定されるものではないが、スクリーニングのための、例えば、免疫受容体(TCR/CAR)ライブラリーのスクリーニングのための、不死化ジャーカットT細胞または初代ヒトT細胞が挙げられる。他の担体選択肢も本明細書に記載される。
【0344】
いくつかの態様において、それぞれのレポーター細胞は、平均して1つのバリアントヌクレオチド配列のみが形質導入され、したがって、ウイルス導入は、低いMOIで行われる。いくつかの態様では、ポリクローナルレポーター細胞プールにおける各バリアントヌクレオチド配列の表現レベル(以下:カバー数)を維持するために、形質導入されるレポーター細胞の数は、ライブラリーバリアントの数に直接関係する。
【0345】
いくつかの態様では、ライブラリーで修飾した後、例えば抗生物質耐性(例えばピューロマイシンまたはブラストサイジン)に基づいて、正常に修飾されたレポーター細胞を選択することができる。このような選択では、低MOIで導入した後の集団から非導入細胞を排除することにより、全体の細胞数を減少させることができる。いくつかの態様において、選択の強度は、バリアント配列ライブラリーの多様性に依存する。いくつかの態様において、ライブラリーは、集団でのライブラリーカバー数を維持するためにライブラリーがより高度な多様性を有しているより大きなレポーター細胞の集団に、導入される。いくつかの態様では、選択後に特定のレベルのカバー数を維持するために、十分な数のポリクローナルレポーター細胞が使用される。
【0346】
いくつかの態様において、ライブラリーは、トランスポゾン媒介性遺伝子送達によってレポーター細胞に導入することができる。いくつかの態様において、ライブラリーは、DNAヌクレアーゼ媒介性部位特異的統合(例えば、CRISPR/Cas9およびTALENを使用する)によってレポーター細胞に導入することができる。
【0347】
いくつかの態様では、修飾されたレポーター細胞による細胞表面マーカーに関するビーズの使用に基づく濃縮に基づいて、修飾されたレポーター細胞を選択することができる。いくつかの態様において、修飾されたレポーター細胞は、細胞表面マーカーまたは蛍光分子に対するフローサイトメトリーソーティングによって選択することができる。
【0348】
いくつかの態様において、レポーター細胞は、(1)外部の選択圧に応答して機能獲得または機能喪失を示す能力を強化するため、(2)選択圧への応答を測定するために用いられるマーカー分子のバックグラウンド発現を低減するため、および/または(3)細胞培養においてレポーター細胞集団を維持する能力を高めるために、遺伝的に修飾される。
少なくとも1つの機能的特性に基づくレポーター細胞の選択
【0349】
いくつかの態様では、発現されたタンパク質バリアントに依存するレポーター細胞による機能獲得または機能喪失を測定するために、レポーター細胞のポリクローナル集団に対して選択的圧が加えられる。例えば、レポーター細胞を、抗原を発現する細胞で刺激することができる。その後、刺激に応答して、レポーター細胞を好適なマーカーに基づいて単離することができる。例えば、レポーター細胞のフローサイトメトリーソーティングを実施するために、TCR導入ジャーカット細胞における抗原発現細胞に応答したCD69の上方制御を利用することができる。応答する集団と応答しない集団の両方を十分なカバー数で単離し、別々に分析することができる。それにより、正の集団における濃縮度と負の集団における枯渇度を決定することによって、所与のバリアントヌクレオチド配列の相対的な濃縮倍率を測定することができる。
【0350】
いくつかの態様において、レポーター細胞に対する選択的圧は、受容体アゴニストまたはアンタゴニストによる刺激;小分子への曝露;2つ以上の同時刺激への曝露、のうちの1つ以上の様式で適用される。いくつかの態様において、レポーター細胞は、タンパク質マーカーの上方制御または下方制御に基づいて単離され、例えば、マーカー陽性および陰性レポーター細胞のフローサイトメトリーソーティングまたはビーズの使用に基づく選別に使用される。いくつかの態様において、レポーター細胞は、レポーター細胞の選択的な生存または細胞死をもたらす薬物耐性/感受性に基づいて単離される。いくつかの態様において、レポーター細胞は、複数のマーカー分子に基づいて単離される。
【0351】
いくつかの態様では、正および負に応答するレポーター細胞の両方を単離する代わりに、1つの集団のみが単離される。所与のバリアントヌクレオチド配列の濃縮倍率は、選択圧に暴露されなかったポリクローナルレポーター細胞との比較によって確立することができる。
【0352】
リポーター細胞を選択する前述した手法のいずれか1つまたはそれらの組み合わせを使用することができる。
選択したレポーター細胞からのバリアントヌクレオチド配列の単離
【0353】
いくつかの態様では、単離したポリクローナルレポーター細胞集団をバルクレベルで分析するために、任意の好適な手法を用いてゲノムDNA(gDNA)を単離する。その後、バリアントヌクレオチド配列を、PCRによって増幅する。このような増幅は、完全なバリアントヌクレオチド配列について実施することも、またはバリアントが変異多様性を示す領域のみについて実施することもできる。PCRアンプリコンは、十分なリード長および総数の配列決定リードを提供できるプラットフォーム、例えば、これらには限定されないが、オックスフォードナノポアテクノロジーなどでNGS分析用に調製することができる。いくつかの態様において、PCRのプロトコールは、任意の好適な選択肢(例えば、固有の分子識別子(UMI)の使用および最小限のPCRサイクル数)を使用して、定義されたバリアントヌクレオチド配列に対する任意の偏った増幅を避けるように改良することができる。
【0354】
いくつかの態様では、バリアントヌクレオチド配列の偏った増幅を防ぐ手段として、選択されたレポーター細胞からgDNAを単離し、CRISPRの使用に基づく選択的ライブラリーの調製に供する。ゲノムDNAを脱リン酸化し、CRISPR/Cas9媒介性二本鎖切断を目的の配列に隣接する配列に導入することができる。二本鎖切断に直接隣接するヌクレオチドは、この処理後もリン酸化されたままの場合があり、それによって、続くライブラリー調製ステップでリン酸化依存的なアダプターの連結が可能になる。プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の方向と使用するプロトスペーサー配列に応じて、好適な配列決定に関する選択肢(例えば、オックスフォードナノポアテクノロジー)を使用して、挿入物を特異的に配列決定することができる。
単離したバリアントヌクレオチド配列の全ヌクレオチド配列のうちの少なくとも600bpを決定する
【0355】
いくつかの態様において、PCRアンプリコンは、好適なNGSプラットフォームを利用して配列決定される。アンプリコンの配列決定には、遺伝子バリアントライブラリーの特性に応じて、任意の好適な配列決定プラットフォームを使用することができる。好適な配列決定プラットフォームとしては、オックスフォードナノポアテクノロジーが挙げられるが、これに限定されるものではない。
少なくとも1つの目的のバリアントヌクレオチド配列の選択
【0356】
いくつかの態様において、目的のバリアントヌクレオチド配列、例えば、TCRおよびCARは、両方の細胞集団におけるバリアントのリードカウントによって決定されるように、正に選択された(マーカー分子陽性)レポーター細胞集団におけるバリアントの濃縮度および負に選択された(マーカー分子陰性)レポーター細胞集団におけるバリアントの枯渇度を決定することによって、相対的な濃縮度に基づいて選択される。いくつかの態様において、目的のバリアントヌクレオチド配列は、相対的な濃縮度;異なる選択圧下、例えば異なる抗原投与量下、で生じる相対的な濃縮度;異なるマーカー分子に基づいて単離した複数の細胞集団における相対的な濃縮度;マーカー分子の組み合わせに基づいて単離した細胞集団における相対的な濃縮度;異なる型のレポーター細胞から構成される複数の細胞集団において生じる相対的な濃縮度;バリアントヌクレオチド配列、例えばTCRやCARの、本来の遺伝子バリアントライブラリーとの比較における、単離したレポーター細胞の集団中での濃縮度、の1つ以上に基づいて選択される。
【0357】
いくつかの態様では、以下に記載するアレンジメントまたはその下位区分はいずれも、本明細書で提供される態様の一部を構成してもよく、またはそれらと組み合わせてもよい。アレンジメントには、以下のように1~145の番号が付けられる。
1.多様なT細胞集団からT細胞受容体(TCR)のレパトアを回収するための方法であって、該方法が、
対象の試料に含まれるTCRαおよびTCRβのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を決定すること、
該レパトア全体から、TCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列のサブセットを1つ以上選択すること、
TCRαβ対のライブラリーを形成する選択したTCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列のコンビナトリアルペアリングによって、TCRレパトアを作製すること、ならびに、
作製した該TCRレパトアから、所望の特徴を有するTCRαとβの対を少なくとも1つ同定すること
を含む、方法。
2.該レパトア全体に由来するTCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列の該1つ以上のサブセットが、
該T細胞集団中での頻度に基づいて、
第二のT細胞集団との比較における相対的な濃縮度に基づいて、
所与のTCR鎖と比較して、DNAおよびRNAのコピー数が異なることに基づいて、
該TCR鎖の生物学的特性であって、ここで該特性が、(予測される)抗原特異性、(予測される)HLA拘束性、抗原親和性、共受容体依存性、または親T細胞系列(例えば、CD4もしくはCD8T細胞)またはTCR配列モチーフのうちの少なくとも1つから選択される、該TCR鎖の生物学的特性に基づいて、
遺伝子発現の空間的パターンであって、ここで該空間的な遺伝子の発現パターンが、組織内の起源領域または他の遺伝子の共発現パターンのうちの少なくとも1つに由来する、該遺伝子発現の空間的パターンに基づいて、
例えば複数の腫瘍病変において出現しているなど、複数の試料において同様の頻度で共出現または出現していることに基づいて、
該TCRレパトアの特定の部分を別々に回収するための複数の群への選択に基づいて、
異なる態様で定義したような複数の基準の組み合わせに基づいて、
のうちの少なくとも1つの基準に基づいて選択される、アレンジメント1の方法。
3.該T細胞集団中での頻度に基づく選択が、TCRα鎖およびTCRβ鎖についての個別の順位またはTCRα鎖とTCRβ鎖を組み合わせた場合の順位を作成するために使用される、TCR配列の該頻度のデータに基づくものである、アレンジメント2の方法。
4.TCRレパトアの回収に関して望まれる深度で定義され、頻度に基づいてTCRα鎖およびTCRβ鎖のコレクションを選択するために用いられる頻度閾値を決定することをさらに含む、アレンジメント1~3のいずれか1つに記載の方法。
5.TCRαおよびTCRβの配列を決定することが、
多重PCR、
標的濃縮によるTCR配列の回収、
5'RACEとPCRによるTCR配列の回収、
空間的配列決定によるTCR配列の回収、
RNA配列よるTCR配列の回収、および
固有の分子識別子(UMI)の利用、
のうちの少なくとも1つによって達成される、アレンジメント1~4のいずれか1つに記載の方法。
6.回収されたTCR鎖の配列が、完全なTCR鎖配列を組み立てるためのヌクレオチド配列アライメントに基づいて少なくとも1つのTCR-Vセグメントファミリーおよび少なくとも1つのTCR-Jセグメントファミリーを選択するのに十分な5'および3'のヌクレオチド配列情報とともに、CDR3ヌクレオチド配列と定義される、アレンジメント1~5のいずれか1つに記載の方法。
7.TCRαβ対のライブラリーを作製する選択されたTCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列のコンビナトリアルペアリングによってTCRレパトアを作製する方法であって、
TCR鎖配列を使用して、TCRα鎖およびTCRβ鎖のDNAまたはRNA断片の別々のライブラリーを合成し、その後、正確に1つずつのTCRα鎖とβ鎖が連結した1つのDNAまたはRNA断片に連結すること;
TCRα鎖およびTCRβ鎖の組み合わせを、正確に1つずつのTCRα鎖とβ鎖が連結したDNA断片またはRNA断片を直接合成することによって生成すること;
TCRα鎖およびTCRβ鎖の組み合わせを、細胞が少なくとも1つのTCRα鎖と1つのTCRβ鎖を発現するように、TCRα遺伝子およびTCRβ遺伝子の別々のコレクションで細胞プールを修飾することによって、細胞内で作製すること;および/または、
TCRα鎖およびTCRβ鎖の組み合わせを一本鎖TCR構築物に連結すること、ここで、この一本鎖TCR構築物にはTCRαおよびTCRβ両方の可変鎖断片が融合されていて、かつ、(i)膜貫通ドメインのみ、または(ii)CD3εもしくはCD3ζシグナルドメインを単独でまたはCD28シグナルドメインとの組み合わせを含むがこれに限らない付加的な細胞内シグナル伝達ドメインと融合されている、
のうちの少なくとも1つによって、達成される、アレンジメント1~6のいずれか1つに記載の方法。
8.該作製されたTCRレパトアから所望の特徴を有するTCRαβ対を少なくとも1つ同定する方法であって、
生成されたTCRαβ対の該ライブラリーで修飾されたレポーター細胞のプールを少なくとも1つの目的の抗原を提示する抗原提示細胞によって刺激し、TCR単離用の少なくとも1つの活性化マーカーに基づいて抗原反応性のレポーター細胞またはT細胞を単離すること;
生成されたTCRαβ対の該ライブラリーで修飾されたレポーター細胞のプールを細胞増殖を追跡するのに適した蛍光色素で標識し、少なくとも1つの目的の抗原を発現する抗原提示細胞によって刺激し、TCR単離用の増殖性に基づいて抗原反応性のレポーター細胞を単離すること;
生成されたTCRαβ対の該ライブラリーで修飾されたレポーター細胞のプールを少なくとも2つの試料に分け、試料を少なくとも1つの目的の抗原を発現しているかまたは発現していない抗原提示細胞によって刺激し、刺激後、両方のレポーター細胞集団を一定期間インキュベートし、次いで、両方のレポーター細胞集団をTCR分離によって分析し、両方の試料から得られたTCRαβ対を比較することで、少なくとも1つの抗原に暴露された該試料においてより豊富に含まれているTCR遺伝子を特定すること;
生成されたTCRαβ対の該ライブラリーで修飾されたレポーター細胞のプールを少なくとも1つの目的の抗原を提示する抗原提示細胞によって刺激し、TCRの誘発を示す少なくとも1つのレポーター遺伝子、例えばNFAT-GFPまたはNFAT-YFPに基づいて、抗原反応性レポーター細胞を単離すること;
生成されたTCRαβ対の該ライブラリーで修飾されたレポーター細胞のプールを少なくとも1つの目的の抗原を提示する抗原提示細胞によって刺激し、抗原反応性レポーター細胞を、TCRのシグナル伝達に際して獲得される抗生物質耐性を含むがこれには限定されない選択的生存に基づく抗原特異的レポーター細胞の選択に基づいて、例えばNFAT-ピューロマイシン導入遺伝子の使用によって、TCR単離用に単離すること;
生成されたTCRαβ対の該ライブラリーで修飾されたレポーター細胞のプールを目的の抗原を担持する1つ以上のMHC複合体に曝露し、TCR単離用に、MHC複合体に結合したレポーター細胞またはT細胞を単離すること;
生成されたTCRαβ対の該ライブラリーで修飾されたレポーター細胞のプールを少なくとも1つの目的の抗原を発現する抗原提示細胞によって刺激し、その後、単一細胞の使用に基づくドロップレットPCRまたは微少流体的手法を使用して目的のTCRαβ対を同定し、TCR単離と少なくとも1つの活性化マーカーの転写レベルでの検出とを組み合わせ、それにより、TCRαβの転写物が活性化マーカーのレベルの上昇と共発現する該T細胞のプールに含まれる単一のレポーター細胞を検出すること;
のうちの少なくとも1つによって達成される、アレンジメント1~7のいずれか1つに記載の方法。
9.該対象の試料が非生存性出発材料を含む、アレンジメント1~8のいずれか1つに記載の方法。
10.該同定したTCRレパトアの特定の部分が回収される、アレンジメント1~9のいずれか1つに記載の方法。
11.抗原特異的TCR配列が回収される、アレンジメント1~10のいずれか1つに記載の方法。
12.クラスIおよび/またはクラスII拘束性TCR配列が回収される、アレンジメント1~11のいずれか1つに記載の方法。
13.アレンジメント1~12のいずれか1つに記載の方法であって、ここで、
新生抗原特異的TCR配列、
ウイルス特異的TCR配列、
共有腫瘍抗原特異的TCR配列、
自己抗原特異的TCR配列、
の少なくとも1つが回収される、方法。
14.該新生抗原特異的TCR配列を発現するT細胞を癌治療として投与するステップをさらに含む、アレンジメント12に記載の方法。
15.該方法が診断のための方法である、アレンジメント1~13のいずれか1つに記載の方法。
16.該診断が、感染症または自己免疫疾患の病的部位からTCRレパトアを回収することである、アレンジメント15に記載の方法。
17.該方法が、BCR/抗体レパトアの回収のための方法である、アレンジメント1~15のいずれか1つに記載の方法。
18.該TCRαおよびβのヌクレオチド配列を含む核酸を対象から単離することをさらに含む、アレンジメント1~16のいずれか1つに記載の方法。
19.該活性化マーカーが、CD25、CD69、CD62L、CD137、IFN-γ、IL-2、TNF-α、GM-CSF、OX40からなる群より選択される、アレンジメント8に記載の方法。
20.DNAおよびRNAの単離が、異なる細胞型の混合物であるT細胞集団または組織試料(血液または腫瘍組織など)の一部に由来する、アレンジメント1~18のいずれか1つに記載の方法。
21.該対象の試料が体液から単離された細胞を含む、アレンジメント1~19のいずれか1つに記載の方法。
22.該細胞が腫瘍特異的T細胞または腫瘍浸潤リンパ球である、アレンジメント20に記載の方法。
23.該体液が、血液、尿、血清、漿液、血漿、リンパ液、脳脊髄液、唾液、喀痰、粘膜分泌物、膣液、腹水、胸水、心嚢液、腹膜液、および腹腔液からなる群より選択される、アレンジメント20~21に記載の方法。
24.該TCRαβ鎖配列を使用して、癌、免疫学的障害、自己免疫疾患、または感染症に罹患している対象を治療することをさらに含む、アレンジメント1に記載の方法。
25.該作製したTCRレパトアから、所望の特徴を有するTCRαとβの対を少なくとも1つ同定する方法であって、
少なくとも1つの活性化マーカーに基づく同定または選択;
抗原に応答した増殖に基づく同定または選択;
非刺激細胞と比較して抗原刺激細胞においてより豊富に含まれているTCR遺伝子を同定することに基づく同定または選択;
TCRの誘発によるレポーター遺伝子の活性化に基づく同定または選択;
TCRのシグナル伝達に際して獲得される抗生物質耐性を含むがこれに限定されない、選択的生存に基づく同定または選択;
1つ以上のMHC複合体への結合に基づく同定または選択;
単一細胞の使用に基づくドロップレットPCRまたは微少流体技術を用いた同定または選択;あるいは
これらの任意の組み合わせ;
のうちの少なくとも1つによって達成される、アレンジメント1~7のいずれか1つに記載の方法。
26.TCR単離が、抗原反応性T細胞のTCRαβ遺伝子配列を決定するためにDNA配列決定もしくはRNA配列決定によって分析されるTCRαβ特異的PCR産物を生成するために、バルクの抗原反応性T細胞からDNAもしくはRNAを単離すること;または、分析した単一のT細胞において発現する該TCRαβ遺伝子の配列を分析するための単一細胞の使用に基づくドロップレットPCRもしくは微少流体技術、によって達成される、アレンジメント8に記載の方法。
27.該レポーター細胞がT細胞である、アレンジメント8に記載の方法。
28.単一細胞の使用に基づくドロップレットPCRまたは微少流体技術を用いた同定または選択が、活性化関連遺伝子の共発現を決定することをさらに含む、アレンジメント24に記載の方法。
29.複数のT細胞ライブラリーを作製する方法であって、該方法が、アレンジメント1の方法に従ってT細胞受容体(TCR)のレパトアを回収すること;該TCRレパトアの特定の部分を別々に回収するために、該レパトア全体からTCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列を複数の群に選択すること;を含み、ここで複数のT細胞ライブラリーが、より複雑度が小さい、または該TCRレパトアの特定の部分を回収するものとして作製される、方法。
30.TCRα鎖配列およびTCRβ鎖配列の選択が頻度範囲に基づく、アレンジメント29に記載の方法。
31.核酸のコンビナトリアルライブラリーからヌクレオチド配列を同定する方法であって、
複数のバリアント核酸を含むライブラリーを提供すること、該複数のバリアント核酸はそれぞれ少なくとも600bpの連続部分を含み、ここで該連続部分は、2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列の組合せを含み、ここで該2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列のうちの第一のバリアントヌクレオチド部分配列は該連続部分の第一の末端を規定し、該2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列のうちの第二のバリアントヌクレオチド部分配列は該第一の末端とは反対側にある該連続部分の第二の末端を規定し;
該複数のバリアント核酸のメンバーによってコードされる1つ以上のポリペプチドを発現するように構成された細胞の集団に、該ライブラリーを導入すること;
該2つ以上のバリアント核酸部分配列の該組み合わせに依存する少なくとも1つの機能的特性に基づいて、該細胞集団の亜集団を選択すること、ここで該亜集団は複数の細胞を含み;
該亜集団から該複数のバリアント核酸のサブセットを単離すること;
該サブセットの個別のメンバーの該連続部分のヌクレオチド配列を決定すること;ならびに、
該ヌクレオチド配列に基づいて、該2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列の組み合わせを少なくとも1つ同定すること;
を含む、方法。
32.該1つ以上のポリペプチドが、
T細胞受容体α(TCRα)鎖およびTCRβ鎖;
キメラ抗原受容体(CAR);
スイッチレセプター;または
抗体もしくはその抗原結合断片の1本以上の鎖、
を含む、アレンジメント1に記載の方法。
33.該第一のバリアントヌクレオチド部分配列がTCRαバリアントアミノ酸配列をコードし、該第二のバリアントヌクレオチド部分配列がTCRβバリアントアミノ酸配列をコードする、アレンジメント31または32に記載の方法。
34.該2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列が、TCRV領域;TCR相補性決定領域3(CDR3);TCR-Jセグメント;およびTCR定常領域;のうちの1つ以上をコードしている、アレンジメント31~33のいずれか1つに記載の方法。
35.該2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列がそれぞれ、CARの抗原結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、または1つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインをコードしている、アレンジメント31または32に記載の方法。
36.該連続部分が600bp~15,000bpの長さである、アレンジメント31~35のいずれか1つに記載の方法。
37.提供することが、該ライブラリーを生成することを含む、アレンジメント31~36のいずれか1つに記載の方法。
38.該ライブラリーを生成する方法であって、
該1つ以上のポリペプチドの2以上のバリアントアミノ酸配列のセットをコードする、2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列のセットを同定すること、ここで、該少なくとも1つの機能的特性は、該2つ以上のバリアントアミノ酸配列のセットのそれぞれに由来するバリアントアミノ酸配列の組み合わせに依存し;および
該2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列のセットのそれぞれに由来するバリアントヌクレオチド部分配列を組み合わせることで該連続部分を組み立て、それによって該複数のバリアント核酸の該メンバーを生成すること、
を含む、アレンジメント37に記載の方法。
39.該ライブラリーに含まれる該複数のバリアント核酸の連続部分間の編集距離が最大化される、アレンジメント31~38のいずれか1つに記載の方法。
40.該ライブラリーが、該2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列の少なくとも100の異なる組み合わせを含む、アレンジメント31~39のいずれか1つに記載の方法。
41.導入することが、ウイルス導入、トランスポゾン媒介性遺伝子送達、またはヌクレアーゼ媒介性部位特異的統合を介して該ライブラリーを導入することを含む、アレンジメント31~40のいずれか1つに記載の方法。
42.導入することが、5以下の感染多重度(MOI)で該細胞の集団をウイルス導入することを含む、アレンジメント41に記載の方法。
43.該ライブラリーに含まれる該2つ以上のバリアントヌクレオチド部分配列の異なる組み合わせの数に基づいて、該細胞の集団の大きさを調整することを含む、アレンジメント31~42のいずれか1つに記載の方法。
44.該細胞の集団が不死化T細胞または初代T細胞を含む、アレンジメント31~43のいずれか1つに記載の方法。
45.該不死化T細胞または初代T細胞がヒトT細胞である、アレンジメント44に記載の方法。
46.該複数のバリアント核酸の少なくとも1つを発現する該細胞の集団に含まれる細胞を選択またはスクリーニングするためにマーカーを使用することをさらに含む、アレンジメント31~45のいずれか1つに記載の方法。
47.該マーカーが、細胞毒耐性マーカーおよび/または細胞表面マーカーである、アレンジメント46に記載の方法。
48.該細胞集団の細胞が、遺伝的に修飾されている、アレンジメント31~47のいずれか1つに記載の方法。
49.該集団の細胞が、該少なくとも1つの機能的特性を該細胞に付与する内因性ポリペプチドを含まない、アレンジメント31~47のいずれか1つに記載の方法。
50.該細胞が、CD4、CD8およびCD28のうちの1つ以上の発現を排除または低減させるように遺伝的に修飾される、アレンジメント1~49のいずれか1つに記載の方法。
51.該細胞が、CD4および/またはCD8と共に再構成され、クラスIおよび/またはクラスII拘束性TCR配列のスクリーニングに利用される、アレンジメント48または49に記載の方法。
52.該細胞がT細胞である、アレンジメント50または51に記載の方法。
53.選択することが、検出可能なマーカーの発現に基づいて該亜集団を選択することを含み、ここで該発現が、該1つ以上のポリペプチドの該少なくとも1つの機能的特性に依存する、アレンジメント31~52のいずれか1つに記載の方法。
54.該検出可能なマーカーが、細胞表面マーカー、サイトカインマーカー、細胞増殖マーカー、転写レポーター、シグナル伝達レポーター、および/または細胞毒性レポーターを含む、アレンジメント53に記載の方法。
55.アレンジメント54に記載の方法であって、ここで、
該細胞表面マーカーが、CD25、CD69、CD62L、CD137、OX40のうちの1つ以上を含み;
該サイトカインマーカーが、IFN-γ、IL-2、TNF-α、IL-8、GM-CSFのうちの1つ以上を含み;
該転写レポーターが、NF-κB、NFAT、AP-1のうちの1つ以上を含み;
該シグナル伝達レポーターが、ZAP70、ERK1/2のうちの1つ以上を含み;および
該細胞毒性レポーターが、CD107A、CD107Bのうちの1つ以上を含む、
方法。
56.選択することが、該細胞の集団を、
第二の集団;
該1つ以上のポリペプチドのリガンド;
該1つ以上のポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニスト;および
小分子;
のうちの1つ以上と接触させることを含み、
ここで該接触によって誘発される該亜集団の変化が、該1つ以上のポリペプチドの該少なくとも1つの機能的特性に依存する、
アレンジメント31~55のいずれか1つに記載の方法。
57.選択することがさらに、
該変化の有無および/または該変化の大きさを検出すること;ならびに
該検出に基づいて、該亜集団を選択すること、
を含む、アレンジメント56に記載の方法。
58.該細胞の第二の集団が抗原提示細胞を含む、アレンジメント56または57に記載の方法。
59.該抗原提示細胞が、B細胞および/または樹状細胞を含む、アレンジメント58に記載の方法。
60.該細胞の第二の集団が、初代細胞または不死化細胞を含む、アレンジメント56~59のいずれか1つに記載の方法。
61.該ライブラリーのバリアントヌクレオチド配列が、該バリアントヌクレオチド部分配列によってコードされるアミノ酸を含むバリアントポリペプチドを発現する細胞に由来し、該細胞が対象から得られ、および該細胞の第二の集団が該対象から得られる、アレンジメント56~60のいずれか1つに記載の方法。
62.選択することが、閾値を超えるまたは下回る該少なくとも1つの機能的特性の測定に基づいて、該細胞の集団の第一の亜集団を選択することを含む、アレンジメント31~61のいずれか1つに記載の方法。
63.該閾値が、該細胞の集団の未選択の亜集団における該機能的特性の測定に基づいて決定される、アレンジメント62に記載の方法。
64.選択することが、第二の閾値を超えるまたは下回る該少なくとも1つの機能的特性の第二の測定値に基づいて該細胞の集団の第二の亜集団を選択することをさらに含み、ここで、該第一および第二の亜集団が重複していない、アレンジメント62に記載の方法。
65.該少なくとも1つの組み合せを特定することが、該第一および第二の亜集団の間で該少なくとも1つの組み合せの存在量を比較することを含む、アレンジメント64に記載の方法。
66.該少なくとも1つの組み合せを同定することが、細胞の対照集団と比較して、該亜集団における該少なくとも1つの組み合せの濃縮度を測定することを含む、アレンジメント31~64のいずれか1つに記載の方法。
67.該細胞の集団が、該細胞の対照集団を含む、アレンジメント66に記載の方法。
68.該細胞の亜集団と対照集団が重複しておらず、ここで重複していないとは、両集団中の該細胞が異なる活性化状態にあるが、同じバリアント核酸を担持することができることを表す、アレンジメント67に記載の方法。
69.該細胞の対照集団が、該少なくとも1つの機能的特性とは異なる第二の機能的特性に基づいて選択される、アレンジメント66に記載の方法。
70.該亜集団が複数の細胞を含む、アレンジメント31~69のいずれか1つに記載の方法。
71.該単離することが、該少なくとも1つの機能的特性に基づいて、該亜集団の単一クローンを単離することを含まない、アレンジメント31~70のいずれか1つに記載の方法。
72.該亜集団が少なくとも1,000の細胞を含む、アレンジメント31~71のいずれか1つに記載の方法。
73.決定することが、該連続部分の少なくとも600bpの配列決定リードを生成することによって、該個別のメンバーについて配列決定することを含む、アレンジメント31~72のいずれか1つに記載の方法。
74.該配列決定リードが600bp~15,000bpの長さである、アレンジメント73に記載の方法。
75.決定することが、該個別のメンバーの少なくとも該連続部分を増幅することを含む、アレンジメント31~74のいずれか1つに記載の方法。
76.増幅することが、不変ヌクレオチド部分配列にハイブリダイズする増幅プライマーを使用することを含み、ここで該複数のバリアント核酸はそれぞれ、該不変ヌクレオチド部分配列を含み、およびここで、該不変ヌクレオチド部分配列は、該1つ以上のポリペプチドの不変アミノ酸配列をコードしている、アレンジメント75に記載の方法。
77.該1つ以上のポリペプチドが、TCRα鎖およびTCRβ鎖を含み、ここで該不変アミノ酸配列がTCRα定常領域を含む、アレンジメント76に記載の方法。
78.該1つ以上のポリペプチドが、TCRα鎖およびTCRβ鎖を含み、ここで該不変アミノ酸配列がTCRβ定常領域を含む、アレンジメント76に記載の方法。
79.該単離することが、該亜集団由来のゲノムDNAのCRISPR/Cas9媒介性標的断片化を使用することを含む、アレンジメント31~78のいずれか1つに記載の方法。
80.該決定することが、該個別のメンバーを増幅する前または該個別のメンバーを増幅することなく、該連続部分の該ヌクレオチド配列のそれぞれについて、少なくとも10の平均カバー数を得ることを含む、アレンジメント31~78のいずれか1つに記載の方法。
81.該決定することが、該連続部分の該ヌクレオチド配列のそれぞれについて、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500または少なくとも1,000の平均カバー数を得ることを含む、アレンジメント31~80のいずれか1つに記載の方法。
82.核酸のコンビナトリアルライブラリーからT細胞受容体α(TCRα)鎖およびTCRβ鎖をコードするヌクレオチド配列を同定する方法であって、
複数のバリアント核酸を含むライブラリーを提供すること、該複数のバリアント核酸はそれぞれ少なくとも600bpの連続部分を含み、
ここで該連続部分は、TCRαのバリアントアミノ酸配列をコードしていて、かつ、該連続部分の第一の末端を規定する第一のバリアントヌクレオチド部分配列と
TCRβのバリアントアミノ酸配列をコードしていて、かつ、該第一の末端とは反対側にある該連続部分の第二の末端を規定する第二のバリアントヌクレオチド部分配列
の組み合わせを含み;
該複数のバリアント核酸のメンバーによってコードされるTCRα鎖およびTCRβ鎖を発現するように構成された不死化T細胞の集団に、該ライブラリーを導入すること;
該不死化T細胞と抗原を発現している不死化B細胞との接触に応答して閾値を超えるT細胞活性化マーカーの発現に基づいて、該不死化T細胞の集団の亜集団を選択すること、ここで該亜集団は複数のT細胞を含み;
該亜集団から該複数のバリアント核酸のサブセットを単離すること;
該サブセットの個々のメンバーの該連続部分のヌクレオチド配列を決定すること;および、
該サブセットの該ヌクレオチド配列に含まれる該少なくとも1つの組み合わせの対照との比較における濃縮度に基づいて、該第一と第二のバリアントヌクレオチド部分配列の組み合わせを少なくとも1つ同定すること、
を含む、方法。
83.アレンジメント82に記載の方法であって、
該不死化T細胞と該不死化B細胞との接触に応答して第二の閾値を下回る該T細胞活性化マーカーの該発現に基づいて、該不死化T細胞の集団の第二の亜集団を選択すること、ここで該第二の亜集団は第二の複数のT細胞を含み、該亜集団と第二の亜集団は重複しておらず;
該第二の亜集団から該複数のバリアント核酸の第二のサブセットを単離すること;および、
該第二のサブセットの個別のメンバーの該連続部分の第二のヌクレオチド配列を決定すること、
ここで、該少なくとも1つの組み合わせは、該第二のサブセットの該第二のヌクレオチド配列における該少なくとも1つの組み合わせと比較して、該サブセット中の該少なくとも1つの組み合わせの濃縮度に基づいて同定される、
をさらに含む、方法。
84.核酸のコンビナトリアルライブラリーからキメラ抗原受容体(CAR)ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、および/または細胞内シグナル伝達ドメインをコードするヌクレオチド配列を同定する方法であって、
複数のバリアント核酸を含むライブラリーを提供すること、該複数のバリアント核酸はそれぞれ少なくとも600bpの連続部分を含み、ここで該連続部分は、
CARヒンジドメインをコードしている第一のバリアントヌクレオチド部分配列、
CAR膜貫通ドメインをコードしている第二のバリアントヌクレオチド部分配列、および
CAR細胞内シグナル伝達ドメインをコードしている第三のバリアントヌクレオチド部分配列のうちの2つ以上の組み合わせを含み、
ここで該第一、第二または第三のバリアントヌクレオチド部分配列のうちの1つは、該連続部分の第一の末端を規定し、ここで該第一、第二または第三のバリアントヌクレオチド部分配列の別の1つは、該第一の末端の反対側にある該連続部分の第二の末端を規定し;
該複数のバリアント核酸のメンバーによってコードされるCARを発現するように構成された細胞の集団に、該ライブラリーを導入すること、ここで該細胞の集団は、不死化T細胞または初代ヒトT細胞の集団を含み;
該細胞と該CARの抗原結合ドメインに特異的な抗原を発現している抗原提示細胞とを接触させることに応答して閾値を超える細胞増殖に基づいて、該細胞の集団の亜集団を選択すること、ここで該亜集団は複数の細胞を含み;
該亜集団から該複数のバリアント核酸のサブセットを単離すること;
該サブセットの個々のメンバーの該連続部分のヌクレオチド配列を決定すること;および、
該サブセットの該ヌクレオチド配列に含まれる該少なくとも1つの組み合わせの対照との比較における濃縮度に基づいて、該第一、第二、および第三のバリアントヌクレオチド部分配列の組み合わせを少なくとも1つ同定すること、
を含む、方法。
85.1つより多いCAR細胞内シグナル伝達ドメインが存在する、アレンジメント84に記載の方法。
86.少なくとも2つのCAR細胞内シグナル伝達ドメインが存在する、アレンジメント85に記載の方法。
87.該少なくとも2つのCAR細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3ε、CD3ζITAM1、CD3ζITAM12、CD3ζITAM123;CD3δ、CD3εおよびCD3γの任意のITAMを有するCD3ζ;CD8α、CD28、ICOS、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、CD27、ならびにCD2のうちの少なくとも2つである、アレンジメント84に記載の方法。
88.アレンジメント84に記載の方法であって、
該細胞と該抗原提示細胞との接触に応答して第二の閾値レベルを下回る細胞増殖に基づいて、該細胞の集団の第二の亜集団を選択すること、ここで該第二の亜集団は第二の複数の細胞を含み、ここで該亜集団と第二の亜集団は重複しておらず;
該第二の亜集団から該複数のバリアント核酸の第二のサブセットを単離すること;
該第二のサブセットの個別のメンバーの該連続部分の第二のヌクレオチド配列を決定すること、および
ここで該少なくとも1つの組み合わせは、該第二のサブセットの該第二のヌクレオチド配列における該少なくとも1つの組み合わせと比較した、該サブセット中の該少なくとも1つの組み合わせの濃縮度に基づいて同定される、
を含む、方法。
89.核酸のコンビナトリアルライブラリーからヌクレオチド配列を同定する方法であって、
複数のバリアント核酸を含むコンビナトリアルライブラリを提供すること、該複数のバリアント核酸はそれぞれ少なくとも600bpの連続部分を含み;
該複数のバリアント核酸のメンバーによってコードされる1つ以上の複数のポリペプチドを発現するように構成された細胞の集団に、該ライブラリーを導入すること;
該少なくとも600bpの連続部分に依存する少なくとも1つの機能的特性に基づいて該細胞の集団の亜集団を選択すること、ここで該亜集団は複数の細胞を含み;
該亜集団から該複数のバリアント核酸のサブセットを単離すること;
該サブセットの個別のメンバーの該連続部分のヌクレオチド配列を決定すること;および
該ヌクレオチド配列に基づいて、該少なくとも600bpの連続部分を同定すること、
を含む、方法。
90.該少なくとも600bpの連続部分が600塩基対全体に分布している、アレンジメント89に記載の方法。
91.核酸のライブラリーから抗原特異的T細胞受容体α(TCRα)鎖およびTCRβ鎖の対をコードするヌクレオチド配列を同定する方法であって、
複数のバリアント核酸のメンバーによってコードされるTCRα鎖およびTCRβ鎖を発現可能な細胞集団に、核酸ライブラリーを導入すること;
抗体への応答に対する閾値レベルを上回るマーカーの発現に基づいて、該細胞集団の亜集団を選択すること、ここで該亜集団は複数の細胞を含み;
該亜集団から該複数のバリアント核酸のサブセットを単離すること;
該バリアント核酸のヌクレオチド配列を決定すること;および、
該サブセットに含まれる該ヌクレオチド配列の対照との比較における濃縮度に基づいて、少なくとも1つのバリアントヌクレオチド配列を同定すること、
を含む、方法。
92.TCRα鎖およびTCRβ鎖をコードしている該複数のバリアント核酸を含んでいる該ライブラリーを提供することをさらに含む、アレンジメント90に記載の方法。
93.試料からT細胞受容体α(TCRα)鎖およびTCRβ鎖をコードするヌクレオチド配列を同定する方法であって、
試料に含まれるTCRα鎖およびTCRβ鎖の配列を決定すること;
TCRαβ対のライブラリーを作製するために、TCRα鎖配列とTCRβ鎖配列を選択し、コンビナトリアルペアリングを行うこと;
該TCRαβ対のライブラリーをレポーター細胞のプールに導入すること;
該TCRαβ対のライブラリーで修飾された該レポーター細胞を、少なくとも1つの目的の抗原を提示する抗原提示細胞で刺激すること;
該少なくとも1つの目的の抗原に特異的なTCRαβ対を決定すること;および、
該TCRαβ対を細胞に導入し、該TCRαβ対を含む細胞を選択すること、
を含む、方法。
94.自己免疫疾患の診断または治療のために、抗原特異的TCR配列を発現しているT細胞を投与するステップをさらに含む、アレンジメント14記載の方法。
95.該T細胞が、自己由来であってもまたは同種異系であってもよい、アレンジメント14に記載の方法。
96.該活性化マーカーがCD69であり、2つの細胞集団が単離され、一方の細胞集団はCD69を高発現し、他方の細胞集団はCD69を低発現している、アレンジメント8に記載の方法。
97.アレンジメント1~30および95、96のいずれか1つに記載の方法に従って回収された該T細胞受容体のレパトアを含む、ヌクレオチドライブラリー。
98.アレンジメント1~96のいずれか1つに記載の方法に従って同定されたヌクレオチド配列を含む、ヌクレオチド構築物。
99.アレンジメント98に記載のヌクレオチド構築物を含む、細胞。
100.核酸のライブラリーから抗原特異的T細胞受容体α(TCRα)鎖およびTCRβ鎖の対をコードするヌクレオチド配列を同定する方法であって、該方法が、
TCRα鎖およびTCRβ鎖を発現可能な細胞集団に該核酸ライブラリーを導入して、細胞のライブラリーを作製すること;
抗原に応答して第一の閾値を超えるマーカーの発現に基づいて、該細胞のライブラリーの第一の集団を選択すること;および、
該ライブラリーの該第一の集団からバリアント核酸の第一の集団を単離すること、
を含む、方法。
101.該方法がさらに、
該バリアント核酸の第一の集団の少なくとも1つのヌクレオチド配列または核酸の同一性を同定すること;および、
該サブセットに含まれる該ヌクレオチド配列の対照との比較における濃縮度に基づいて、少なくとも1つのバリアントヌクレオチド配列を同定すること、
を含む、アレンジメント100に記載の方法。
102.該閾値レベルが、
a)マーカーの発現に基づく該細胞の全プールの割合の回収;または
b)該細胞の全プールからの最小限の数の細胞の回収;または
c)抗原に反応して発現する少なくとも1つのマーカーへの磁気プローブの結合に基づく、磁石によって保持される細胞の回収、
のうちの少なくとも1つに基づく、アレンジメント100または101に記載の方法。
103.該対照が、第二の閾値未満の第二の細胞集団である、アレンジメント66~69、82、84、91、または101に記載の方法。
104.該対照が、
細胞の参照集団、
該細胞の集団に導入された核酸のコンビナトリアルライブラリー、
該第一の集団と同じ細胞の集団から第二の閾値未満の発現マーカーに基づいて選別された細胞の集団、
該関連するTCRライブラリーを発現するレポーターT細胞といかなる外因性抗原も提示しないB細胞等の抗原提示細胞との共培養から得られた少なくとも1つの細胞の集団、
のうちの1つ以上である、アレンジメント66~69、82、84、91、または101に記載の方法。
105.該対照(もしくは下位)試料が、該上位試料と同じ細胞集団から選別されるが、活性化マーカーの発現が低く;または該下位試料が、該関連するTCRライブラリーを発現するレポーターT細胞、および外因性抗原を発現するように操作されていないB細胞の共培養から得られたものである、アレンジメント104に記載の方法。
106.該細胞の集団に抗原を添加することをさらに含む、アレンジメント100~105のいずれか1つに記載の方法。
107.第一の集団および/または該対照の該単離することが、a)磁気ビーズ濃縮、b)フローサイトメトリーソーティング、またはc)両方のうちの少なくとも1つによって達成される、アレンジメント100~106のいずれか1つに記載の方法。
108.核酸のライブラリーから抗原特異的T細胞受容体α(TCRα)鎖とTCRβ鎖の対をコードするヌクレオチド配列を同定する方法であって、該方法が、
TCRα鎖およびTCRβ鎖を発現可能な細胞集団に該核酸ライブラリーを導入して細胞のライブラリーを作製すること;および、
該サブセットに含まれる該ヌクレオチド配列の対照との比較における濃縮度に基づいて、バリアント核酸の該第一の集団の少なくとも1つのヌクレオチド配列または核酸の同一性を同定すること、
を含む、方法。
109.該少なくとも1つの核酸が、細胞の第一の集団から単離される、アレンジメント108に記載の方法。
110.該細胞の第一の集団が、抗原に応答して第一の閾値レベルを超えるマーカーの発現に基づいて選択される、アレンジメント109に記載の方法。
111.核酸のライブラリーからヌクレオチド配列を同定する方法であって、
該核酸のライブラリーを細胞の集団に導入して細胞ライブラリーを作製すること;
該細胞ライブラリーを細胞の第一の集団と接触させること;
磁気ビーズ濃縮により、少なくとも1つのマーカーの発現に基づいて、該細胞ライブラリーの亜集団を選択すること;および、
該亜集団に含まれる該ヌクレオチド配列が対照との比較において有意に濃縮されていることまたは枯渇していることに基づいて、少なくとも1つのヌクレオチド配列を決定すること、
を含む、方法。
112.該細胞の亜集団の少なくとも一部が、該核酸のライブラリのメンバーによってコードされる1つ以上のポリペプチドを発現するように構成される、アレンジメント111に記載の方法。
113.マーカーの発現が、該ライブラリーから導入された核酸に連動し、連動が、該導入された核酸がマーカーの発現を変化させることを表す、アレンジメント111に記載の方法。
114.選択することが、閾値レベルを上回るのマーカー発現に基づく、アレンジメント111に記載の方法。
115.選択することが、閾値を上回る少なくとも2つのマーカーの発現に基づく、アレンジメント111に記載の方法。
116.抗原を同定または刺激または提供することが、
a)多数の抗原を選択すること;
b)それぞれの抗原が正確に2つの抗原プールに存在する抗原プールを作製すること;
c)該それぞれの抗原プールに対する少なくとも1つのT細胞受容体を発現するレポーター細胞の反応性を評価すること;および、
d)正確に2つの抗原プールに対する反応性を評価することによって、該少なくとも1つのT細胞受容体が該選択された抗原のいずれかに対して反応性を有するか否かを決定すること、
のうちの1つ以上を含む、アレンジメント8、82、91、93または100のいずれか1つに記載の方法。
117.正確に2つの抗原プールに対する反応性が、ペアワイズ濃縮度分析によって検出される、アレンジメント116に記載の方法。
118.該ライブラリーがTCRライブラリーである、アレンジメント111に記載の方法。
119.活性化マーカーを用いる、アレンジメント111に記載の方法。
120.反応性を評価するために上位下位比較を採用する、アレンジメント111に記載の方法。
121.反応性の評価に上位下位比較を採用する、アレンジメント1~120のいずれか1つに記載の反応性の評価を伴うまたは反応性の評価をさらに含む、方法。
122.ライブラリーを伴うアレンジメント1~121のいずれか1つに記載の方法であって、該ライブラリー中の該複数のバリアント核酸の該ヌクレオチド配列が、
該宿主細胞にとって好ましいコドン使用を導入すること、
mRNA構造の安定性を最適化すること、
反復配列を回避すること、
長い同種重合体を回避すること、および
所与のバリアント核酸配列内の局所的なGC含有量に大きな相違が生じることを回避すること、
のうちの少なくとも1つに基づいて最適化される、方法。
123.該抗原が抗原提示細胞を介して提示される、アレンジメント91に記載の方法。
124.該ライブラリーがコンビナトリアルライブラリーである、アレンジメント91に記載の方法。
125.該抗原が細胞によって提供される、アレンジメント1~124のいずれか1つに記載の方法。
126.該過程が、高度な抗原多様性および/または複雑性を伴う、アレンジメント1~125のいずれか1つに記載の方法。
127.ライブラリーを伴うアレンジメント1~126のいずれか1つに記載の方法であって、該ライブラリーがコンビナトリアルライブラリーである、方法。
128.該コンビナトリアルライブラリーがTCRライブラリーである、アレンジメント127に記載の方法。
129.細胞のコレクションであって、該コレクションが、
少なくとも2つのT細胞のセットであって、ここで少なくとも2つのT細胞はそれぞれ少なくとも1つのTCRαおよびTCRβの対を発現するように構成されており、ここで該TCRαおよび該TCRβのそれぞれは対象に由来し、ここで該T細胞は内因性TCRを発現せず、およびここで該セットは1つ以上のT細胞活性化マーカーを活性化するために構成されている、少なくとも2つのT細胞のセット;ならびに、
少なくとも2つのB細胞のセットであって、ここで該少なくとも2つのB細胞はそれぞれ少なくとも1つの外因性新生抗原(または抗原)を発現するように構成されており、その結果、少なくとも2つの外因性新生抗原(または抗原)が産生可能になり、およびここで該少なくとも2つの外因性新生抗原(または抗原)は、該対象内におけるものと同じである、少なくとも2つのB細胞のセット、
を含む、コレクション。
130.該少なくとも2つのB細胞のセットが、該外因性新生抗原(または抗原)を産生する少なくとも第一のB細胞;および該第二の外因性新生抗原(または抗原)を産生する少なくとも第二のB細胞、を含む、アレンジメント129に記載の組成物。
131.TCR発現細胞のライブラリーであって、該TCR発現細胞のライブラリーが少なくとも3つのT細胞のセットを含み、
ここで該T細胞のうちの少なくとも2つは、少なくとも2つのTCRαおよびTCRβの対(少なくとも2つのTCR対)を発現するように構成されており、
ここで該少なくとも2つのTCR対は対象に由来し、
ここで該少なくとも3つのT細胞は内因性TCRを発現せず、
ここで該少なくとも3つのT細胞は、B細胞によって提示された抗原(または新生抗原)への結合に際して、1つ以上のT細胞活性化マーカーを活性化するために構成されており、
ここでTCR細胞の数に反映される各TCR対のゲノムコピー量が、該試料に含まれる全てのTCRのリードを示すものであり、および
ここで該TCRのうちの少なくとも1つが、該ライブラリーを含む組成物全体に均等に分布していない、
ライブラリー。
132.少なくとも1つのT細胞の分布が、B細胞によって提示される抗原に結合することによって変化する、アレンジメント131に記載のTCR発現細胞のライブラリー。
133.該少なくとも2つのTCR対が、該TCR発現細胞のライブラリー中にほぼ均等に存在する、アレンジメント131に記載のTCR発現細胞のライブラリー。
134.対象を治療する方法であって、該方法が、
腫瘍を有する対象を特定すること;
少なくとも2つのT細胞のセットを提供すること、ここで、該少なくとも2つのT細胞はそれぞれ、少なくとも1つの異なるTCRαとTCRβの対を発現するように構成されており、該TCRαおよび該TCRβはそれぞれ該対象に由来し;
少なくとも2つのB細胞のセットを提供すること、ここで、該B細胞のセットは少なくとも2つの外因性新生抗原を発現するように構成されており、該少なくとも2つの外因性新生抗原は、該対象内で見出されるものと同じであり;
該少なくとも2つのT細胞のセットと該少なくとも2つのB細胞のセットを組み合わせ、該少なくとも2つの外因性新生抗原を介した該少なくとも2つのT細胞の活性化に基づいて、少なくとも2つのTCR対の組み合わせを選択すること;および
該少なくとも2つのTCR対の組み合わせを該対象に投与し、それによって該腫瘍を治療すること、
を含む、方法。
135.治療することにより該腫瘍の大きさが縮小する、アレンジメント134に記載の方法。
136.対象を治療する方法であって、該方法が、
腫瘍を有する対象を特定すること;
少なくとも2つのT細胞のセットを提供すること、ここで、該少なくとも2つのT細胞はそれぞれ、少なくとも1つの異なるTCRαとTCRβの対を発現するように構成されており、該TCRαおよび該TCRβはそれぞれ該対象に由来し;
少なくとも2つの抗原提示細胞のセットを提供すること、ここで、該抗原提示細胞のセットは該対象に由来するものであり、少なくとも2つの外因性新生抗原を発現するように構成されており、該少なくとも2つの外因性新生抗原は、該対象内で見出される新生抗原と同じであり;
該少なくとも2つのT細胞のセットと該少なくとも2つの抗原提示細胞のセットを組み合わせ、該少なくとも2つの外因性新生抗原を介した該少なくとも2つのT細胞の活性化に基づいて、少なくとも2つのTCR対の組み合わせを選択すること;および、
該少なくとも2つのTCR対の組み合わせを該対象に投与し、それによって該腫瘍を治療すること、
を含む、方法。
137.対象の腫瘍中に存在する第一の抗原(または新生抗原)に結合する第一のTCR対;および該対象の腫瘍中に存在する第二の抗原(または新生抗原)に結合する第二のTCR対を含む、医薬組成物。
138.該第一のTCR対がMHCクラスI拘束性であり、該第二のTCR対がMHCクラスII拘束性である、アレンジメント137に記載の医薬組成物。
139.第一の抗原に結合し、かつ、MHCクラスI拘束性である第一のTCR対と、第二の抗原に結合し、かつ、MHCクラスII拘束性である第二のTCR対を含む、医薬組成物。
140.第三のTCR対をさらに含む、アレンジメント137~139のいずれか1つに記載の医薬組成物。
141.該第一のTCR対が腫瘍由来の新生抗原に結合し、該第二のTCR対が該腫瘍由来の新生抗原に結合し、該第一および第二のTCR対が両方とも該腫瘍の宿主に存在する、アレンジメント137~140のいずれか1つに記載の医薬組成物。
142.細胞のコレクションであって、該コレクションが、
少なくとも2つのT細胞のセットであって、ここで、それぞれが少なくとも1つのTCRαおよびTCRβの対を発現するように構成されており、ここで該対は対象に由来し、ここで該T細胞は内因性TCRを発現せず、およびここで該セットは1つ以上のT細胞活性化マーカーを活性化するために構成されている、少なくとも2つのT細胞のセット;ならびに、
少なくとも2つの抗原提示細胞(APC)細胞のセットであって、ここで、該少なくとも2つのAPCはそれぞれ少なくとも1つの外因性新生抗原(または抗原)を発現するように構成されており、その結果、少なくとも2つの外因性新生抗原(または抗原)が産生可能になり、およびここで該少なくとも2つの外因性新生抗原(または抗原)が該対象内におけるものと同じである、少なくとも2つの抗原提示細胞(APC)細胞のセット、
を含む、コレクション。
143.該TCR対および/または該TCR対を発現しているT細胞が、抗原(新生抗原など)への結合によって選択または同定され、ここで該抗原が、B細胞または抗原提示細胞によって発現される、アレンジメント1~142のいずれか1つに記載の方法。
144.該抗原または新生抗原が、対象における腫瘍に由来し、該TCR対のTCRαおよびTCRβもそれぞれ該対象由来である、アレンジメント1~143のいずれか1つに記載の方法。
145.少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、50、100、500、1,000、10,000、100,000、または100万のTCR対(またはこれらの対を含む細胞)が存在し、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、50、100、500、1,000、10,000、100,000、または100万の抗原が存在する、アレンジメント1~144のいずれか1つに記載の方法。
さらなる態様
【0358】
様々な方法の種々の態様を、図10A~10Jに示す。いくつかの態様において、図10A~10Jのパネルでは、他の腫瘍の例として、ミスマッチ修復遺伝子欠損のない大腸癌(MMRp-CRC)から新生抗原反応性TCRを単離する方法、およびそれが可能であることを示す。これらの腫瘍は一般に遺伝子変異数が低い。遺伝子変異数が、抗PD1/PD-L1チェックポイント阻害療法などの免疫腫瘍学的治療に対する反応性との相関が高いことを示唆する十分な証拠が存在する。実際、免疫チェックポイント阻害薬で治療されたMMRp-CRCコホートでは、奏効率が低いことが観察されている。
【0359】
免疫チェックポイント阻害療法と同様に、T細胞療法は、免疫系によって腫瘍細胞が認識されることによって引き起こされる。MMRp-CRCでは遺伝子変異数が少ないことから、腫瘍新生抗原に対するT細胞の反応性が低いことが予想される。予期せぬことに、スクリーニングされた4つのMMRp-CRC患者試料すべてについて腫瘍新抗原を認識するTCRが発見され、それによって、この患者群(そうでなければ治療選択肢が限られる)に対してTCRT細胞療法が使用できるようになった(以下に概要を示し、また、下記実施例13でも実証する)。
【0360】
いくつかの態様において、方法は、以下の過程10A~10J(および当該態様のいくつかの添付図)に概要を示すステップのうちの1つ以上を含む場合がある。ステップはいずれも、必要に応じて、本明細書で提供される他の態様によって繰り返すことも、または置換することもできる。また、別の介在するステップを追加することも可能である。
【0361】
ステップ10A)スクリーニング過程の模式図。いくつかの態様では、ミスマッチ修復遺伝子欠損のない大腸癌(例えば、MMRp-CRC)患者試料は、一般的な方法で非生存性腫瘍生検から遺伝子情報を得ることから始めて、TCR同定プラットフォームに供される。腫瘍浸潤リンパ球(TIL)からバルクTCRシーケンス情報を取得し、これを使用して、α鎖およびβ鎖発現カセットをコンビナトリアルに対合させたライブラリーを構築した。これらをジャーカットレポーターT細胞で発現させ、縦列ミニ遺伝子(TMG)の形式でミニ遺伝子として腫瘍新生抗原を発現する自己B細胞に対するスクリーニングを行った。活性化したレポーターT細胞を回収し、そのTCRを単離することにより、新生抗原反応性TCRを同定することができる。
【0362】
ステップ10B)ヒトMMRp-CRC試料に含まれる浸潤リンパ球のバルクTCR配列決定。いくつかの態様では、10Aからの生成物を、TCRのバルク配列決定に供することができる。いくつかの態様において、ヒトMMRp-CRC腫瘍試料のpt1は、ミラボラトリー(Milaboratory)によるバルクTCR配列決定に供された。アライメントしてTCRを同定した後、クローン型を、それらのCDR3アミノ酸配列ならびにそれらのVおよびJの同一性に基づいてまとめた。特有のクローン型の数を、α鎖とβ鎖の両方について表す。結果を、図10Bのグラフに示す。
【0363】
ステップ10C)TCRライブラリーの品質管理。いくつかの態様では、必要に応じた品質管理の確認を採用することができる。いくつかの態様では、10Aの腫瘍試料から、最も多く存在する100のα鎖およびβ鎖を選択し、コンビナトリアルライブラリーの作製に使用した。ライブラリーは、ヒトV、CDR3およびJセグメントを使用してツイストバイオサイエンスによって組み立てられ、一方、定常(C)領域はマウス由来であった。可変TCRα鎖およびβ鎖ドメインに隣接したプライマー対を使用して両鎖を増幅し、ナノポアシーケンスを用いて両鎖の同一性を明らかにした。10,000のα×βの組み合わせそれぞれの表現を示す。結果を図10Cのグラフに示し、確率密度をY軸に表している。
【0364】
ステップ10D)ジャーカットレポーターT細胞におけるライブラリーの発現。いくつかの態様では、前述したライブラリーを、ジャーカットなどのレポーターT細胞で発現させることができる。10Cからのライブラリーを、ウイルス産生のためにフェニックス(Phoenix)細胞に形質移入し、得られたウイルス上清を、CD8陽性TCR陰性KOジャーカットレポーターT細胞のレトロウイルス形質導入に使用した。ブラストサイジンを用いて細胞を選択し、マウスTCRβ定常領域に対する抗体を用いてTCR発現の陽性度を試験した。結果を図10Dのグラフに示す。
【0365】
ステップ10E)スクリーニングのための選別戦略。いくつかの態様にでは、ライブラリーを、任意の方法によって選別することができる。10DのジャーカットレポーターT細胞を、複数の縦列ミニ遺伝子(TMG)の形式でpt1のムタノームを発現するB細胞と1:1の割合で21時間共培養した。次いで、細胞を、CD69マーカーを用いたFACSにより、T細胞活性化に関して選別した。選別戦略には、(左から)リンパ球を選択するための連続したゲーティング、一重の細胞を選択するためのゲーティング、CD20陽性/陰性細胞を除外するためのゲーティング、およびCD69を高発現する細胞と低発現する細胞のそれぞれを補足する二つの選別ゲート(「上位」「下位」)を含めた。結果を図10Eのグラフに示す。
【0366】
ステップ10F)TCR発現カセットの回収。いくつかの態様では、様々な技術のいずれかによって、関連するTCR発現カセットを回収することができる。いくつかの態様では、10Eからの上位および下位試料(3回の反復実験、およびTMGを発現しないB細胞とのジャーカットレポーターT細胞との共培養に関する3回の対照スクリーニングを含む)のTCR発現カセットを、10Cに記載のPCR戦略を使用して回収し、続いてバーコーディングPCRを実施した。プラスミドTCRライブラリーに対する対照PCRも含めた。PCR産物は、アジレント・テープステーション(左)を用いて分析した。PCR産物を1:1の割合でプールし、テープステーションで分析した(右)。結果を図10Fに示す。
【0367】
ステップ10G)スクリーニング分析。いくつかの態様では、ステップFからのPCR産物プールを、任意の数の方法で分析することができる。例えば、10FからのPCR産物プールを使用してライブラリーを調製し、配列決定した。TCRα鎖およびβ鎖の同一性を回復し、DESeq2Rパッケージを使用して、差次的に発現したTCRの組み合わせを同定した。B細胞によるTMG発現の存在下(x軸)および非存在下(y軸)でのスクリーニングの平均Rlog変換リードカウントを、10B~10Fに記載のpt1腫瘍試料、ならびに同一の方法で処理した3つの追加のMMRp-CRC試料(pt2、pt3およびpt4)について表す。新生抗原反応性のTCRリード化合物は、図10Gにおいて円で囲んだより大きな黒点として示した。
【0368】
ステップ10H)関連するTMGのデコンボリューション。いくつかの態様では、関連するTMGを、任意の数の方法でデコンボリューションすることができる。例えば、10Gにおいて同定された新生抗原反応性TCRを、単一のTMG構築物を発現するB細胞を用いて再度スクリーニングした(1回のみの実験)。一例として、pt1試料の逆多重化スクリーニングを表す。pt1のTCRリード化合物は、pt1-TMG1を認識し、pt1-TMG2を認識しない。結果を図10Hのプロットに示す。
【0369】
ステップ10I)pt1-TCRリード化合物抗原の同定。TCRリード化合物の抗原(例えば、pt1)は、任意の数の方法で同定することができる。例えば、pt1-TCRリード化合物によって認識される新生抗原を、pt1-TMG1として表される単一ミニ遺伝子のペプチドをB細胞を負荷することによって同定した。陽性対照としてはpt1-TMG1を発現するB細胞を使用した。APCを、10Gで同定したpt1新生抗原反応性TCRリード化合物を発現するジャーカットレポーターT細胞と共培養した。陽性対照(PMA/イオノマイシンによる処理)と比較したCD69の陽性度として活性化を測定した。対照(PARVA-P70R)、ならびにAKAP8L-R191Wペプチドによる活性化を図10Iに示す。
【0370】
ステップ10J)pt3-TCRリード化合物抗原の同定。TCRリード化合物の抗原(例えば、pt3)は、任意の数の方法で同定することができる。例えば、pt3-TCRリード化合物によって認識される新生抗原を、pt3-TMG1として表される単一ミニ遺伝子のペプチドをB細胞を負荷することによって同定した。陽性対照としてはpt3-TMG1を発現するB細胞を使用した。APCを、10Gで同定したpt3新生抗原反応性TCRリード化合物を発現するジャーカットレポーターT細胞と共培養した。陽性対照(PMA/イオノマイシンによる処理)と比較したCD69の陽性度として活性化を測定した。対照(ETS1-R70W)、ならびにTP53-R282Wペプチドによる活性化を図10Jに示す。
【0371】
ステップ10K)第一のpt4-TCRリード化合物抗原の同定。第一のTCRリード化合物の抗原(例えば、pt4)は、任意の数の方法で同定することができる。例えば、第一のpt4-TCRリードによって認識される新生抗原を、B細胞中でのミニ遺伝子(HSPA9-p.K654RfsX42をコードするMG91)の発現によって同定した。陽性対照としては、pt4-TMG3を発現するB細胞を使用した。APCを、10Gで同定した第一のpt4新生抗原反応性TCRリード化合物を発現するジャーカットレポーターT細胞と共培養した。陽性対照(PMA/イオノマイシンによる処理)と比較したCD69の陽性度として活性化を測定した。対照(MGまたはTMGを発現しないB細胞)、およびMG91/TMG3試料による活性化を図10Kに示す。
【0372】
ステップ10L)第二のpt4-TCRリード化合物抗原の同定。第二のTCRリード化合物の抗原(例えば、pt4)は、任意の数の方法で同定することができる。例えば、第二のpt4-TCRリードによって認識される新生抗原を、B細胞中でのミニ遺伝子(ITPR3-p.L2379MをコードするMG132)の発現によって同定した。陽性対照としては、pt4-TMG4を発現するB細胞を使用した。APCを、10Gで同定した第二のpt4新生抗原反応性TCRリード化合物を発現するジャーカットレポーターT細胞と共培養した。陽性対照(PMA/イオノマイシンによる処理)と比較したCD69の陽性度として活性化を測定した。対照(MGまたはTMGを発現しないB細胞)、およびMG132/TMG4試料による活性化を図10Lに示す。
【0373】
さらなる態様のいくつかを図12A~12Cに示す。TCRαβライブラリー生成用の、メラノーマからのTCRレパトアの回収。図12Aは、ヒトメラノーマ試料に含まれる浸潤リンパ球のバルクTCR配列決定を示す図である。2つのヒト腫瘍試料(pt5およびpt6)を、ミラボラトリー(モスクワ、ロシア)によるバルクTCR配列決定に供した。アライメントしてTCRを同定した後、クローン型を、それらのCDR3アミノ酸配列ならびにそれらのVおよびJの同一性に基づいてまとめた。各腫瘍試料の特有のクローン型の数を、α鎖とβ鎖の両方について表す。図12Bでは、100×100ライブラリーの品質管理について示す。A由来の各試料から、最も多く存在する100のα鎖およびβ鎖を選択し、コンビナトリアルライブラリーの作製に使用した。BのTCRβおよびTCRα領域を、ツイストバイオサイエンスによって実施されたコンビナトリアルクローニング手法で合成し、図11Bに表すレトロウイルス構築物に挿入した。可変TCRα鎖およびβ鎖ドメインに隣接したプライマー対を使用して両鎖を増幅し、ナノポアシーケンスを用いて両鎖の同一性を明らかにした。全ての患者ライブラリーについて、10,000のα×βの組み合わせそれぞれの表現を示す。図12Cでは、患者ライブラリーにおけるTCR表現の特徴を提供する。12Bの患者ライブラリーそれぞれについて、TCRあたりのリード量の範囲、平均カバー数、および中央値±alog単位の範囲内にあるTCRの割合を表す。
【0374】
さらなる態様のいくつかを、図13A~13Eに(いくつかの態様にかかるステップとして)提供する。図13(A~E)は、プラスミドの人工的な混合によって生成されたTCRライブラリーからの抗原特異的TCRの回収を示す図である。ステップ13A)TCRプラスミドの人工的な混合によるライブラリー生成。プラスミドの人工的な混合によりTCRライブラリーを生成した。それぞれが特徴の分かっている単一のTCRを発現する6個のプラスミドを、それぞれが特徴の分かっていない単一の卵巣癌(OVC)TCRを発現する11個のプラスミドと、それぞれが特徴の分かっていない単一の大腸癌(CRC)TCRを発現する13個のプラスミドとのプールに混合した。特徴が分かっているTCRのうち、CMV1およびCDK4-8TCRプラスミドは1:100,00モル比でこのプールに混合し、CMV2、CDK4-17、GCN1L1およびNY-ESO 1G4 TCRプラスミドは1:100,000モル比でこのプールに混合した。その頻度を図13Aに示す。ステップ13B)ジャーカットレポーターT細胞におけるライブラリーの発現。いくつかの態様では、ステップ13AからのTCRの混合物を、ジャーカットなどのレポーターT細胞で発現させることができる。ステップ13AからのTCRプラスミドのプールを、ウイルス産生のためにフェニックス細胞に形質移入し、得られたウイルス上清を、TCR陰性KOジャーカットレポーターT細胞のレトロウイルス形質導入に使用した。細胞をピューロマイシンを用いて選択し、マウスTCRβ定常領域に対する抗体を用いてTCR発現の陽性度を試験した。結果を図13Bのグラフに示す。ステップ13C)では、スクリーニングのための選別戦略を提供する。いくつかの態様では、ライブラリーを、任意の方法によって選別することができる。ステップ13BからのジャーカットレポーターT細胞を複数の縦列ミニ遺伝子(TMG)の形式で特徴の分かっているTCRに対する同族抗原のそれぞれを発現するB細胞と1:1の割合で21時間共培養した。次いで、細胞を、CD69マーカーを用いたFACSにより、T細胞活性化に関して選別した。選別戦略には、(左から)リンパ球を選択するための連続したゲーティング、一重の細胞を選択するためのゲーティング、CD20陽性/陰性細胞を除外するためのゲーティング、およびCD69を高発現する細胞と低発現する細胞のそれぞれを補足する二つの選別ゲート(「上位」「下位」)を含めた。結果を図13Cのグラフに示す。
【0375】
ステップ13D)では、TCR発現カセットに関する情報を提供する。いくつかの態様では、様々な技術のいずれかによって、関連するTCR発現カセットを回収することができる。いくつかの態様では、ステップ13Cからの上位および下位試料(TMGを発現するB細胞を用いたスクリーニングの反復実験のうちの1回と外来抗原を発現しないB細胞を用いたスクリーニングの反復実験のうちの1回)のTCR発現カセットを、10Cに記載のPCR戦略を使用して回収し、続いてバーコーディングPCRを実施した。プラスミドTCRライブラリーに対する対照PCRも含めた。2回目のPCR後のPCR産物を、アジレント・テープステーションを使用して分析した。結果を図13Dに示す。
【0376】
ステップ13E)では、スクリーニングデータの分析を提供する。いくつかの態様では、ステップ13DからのPCR産物プールを、任意の数の方法で分析することができる。例えば、13DからのPCR産物プールを使用してライブラリーを調製し、ナノポア技術を使用して配列決定した。TCRα鎖およびβ鎖の同一性を回復し、DESeq2Rパッケージを使用して、差次的に発現したTCRα鎖およびβ鎖の組み合わせを同定した。x軸に測定されたTCRの頻度を、y軸には上位試料と下位試料との間における正規化リードカウントのlog2変換後の倍率変化を表す。図13Eでは、特徴の分かっている(抗原特異的)TCRを灰色で、特徴の分かっていない(関連のない)TCRを黒色で示した。
【0377】
さらなる態様を図14で示し、これは、遺伝子合成によって生成されたTCRライブラリーからの抗原特異的TCRの回収を示す図である。ステップ14A(図14A)では、スクリーン設計の概略を提供する。卵巣癌(OVC)または大腸癌(CRC)試料に由来する5つの特性が分かっているTCRと、45または95の特徴の分かっていないTCRを用いて、50×50および100×100設計のコンビナトリアルTCRライブラリーをそれぞれ作製した。ライブラリーはツイストバイオサイエンス社により、ヒトのV、CDR3、Jセグメントを使用して組み立てられたが、定常I領域はマウス由来であった。このライブラリーを、ジャーカットレポーターT細胞のレトロウイルス導入に使用した。ポリクローナルレポーターT細胞を、様々な様式で抗原を提示するように操作された抗原提示細胞(APC)と共培養した。APCには、ペプチドを負荷したJY細胞、それぞれが異なるミニ遺伝子を発現するEBV LCL細胞株の混合物、TMGを発現するEBV LCL細胞、および特定の抗原を提示するように操作されていないEBV LCLを含めた。
【0378】
ステップ14Bでは、スクリーニングのための選別戦略を提供する。14A)で概説したように作製した50×50設計のTCRライブラリーを発現するジャーカットレポーターT細胞を、14A)で述べたAPCと、1:1の割合で21時間共培養した。次いで細胞を、CD69マーカーを用いたFACSにより、T細胞活性化に関して選別した。いくつかの態様では、ライブラリーを、任意の方法によって選別することができる。選別戦略には、(左から右に向かって)リンパ球を選択するための連続したゲーティング、一重の細胞を選択するためのゲーティング、CD20陽性/陰性細胞を除外するためのゲーティング、およびCD69を高発現する細胞と低発現する細胞のそれぞれを補足する二つの選別ゲート(「上位」「下位」)を含めた。結果を図14Bのグラフに示す。
【0379】
ステップ14C(図14C)では、TCR発現カセットの回収を示す。いくつかの態様では、様々な技術のいずれかによって、関連するTCR発現カセットを回収することができる。いくつかの態様では、図14Bからの上位および下位試料のTCR発現カセットを、10Cに記載のPCR戦略を使用して回収し、続いてバーコーディングPCRを実施した。プラスミドTCRライブラリーに対する対照PCRも含めた。2回目のPCR後のPCR産物を、アジレント・テープステーションを使用して分析した。結果を図14Cに示す。
【0380】
ステップ14D)では、50×50のスクリーンデータの分析を提供する。いくつかの態様では、ステップ14CからのPCR産物プールを、任意の数の方法で分析することができる。例えば、14CからのPCR産物プールを使用してライブラリーを調製し、ナノポア技術を使用して配列決定した。TCRα鎖およびβ鎖の同一性を回復し、すべてのTCRについて、上位試料と下位試料との間におけるTCR表現の倍率変化(y軸)を、TCRの平均発現(x軸)に対する関数として表す。
【0381】
ステップ14E)は、最も有意に濃縮された上位10のTCRの特徴を示す。14Dのデータから、DESeq2Rパッケージを使用して、差次的に表現されたTCRα×β鎖の組み合わせを同定した。差次的表現分析は当業者に知られており、濃縮TCRが、抗原が提示されていない「上位」および「下位」試料の両方との比較において、抗原が提示されている「上位」試料では濃縮されていて、抗原が再提示されている「下位」試料では枯渇していると定義する線形モデルに基づいている。上位10の最も有意なα鎖およびβ鎖のヒット、ならびにそれらの名称、それらのlog2変換後の倍率変化、および差分表現の有意性を図14Eに表わした。
【0382】
ステップ14F)は、100×100のスクリーンデータの分析を示す。100×100ライブラリーを、14A~14Eで説明した50×50ライブラリーのスクリーニングと同様にスクリーニングした。TCRα鎖およびβ鎖を同定した後、DESeq2Rパッケージを使用して、差次的に発現したTCRの組み合わせを同定した。差次的表現分析は当業者に知られている。B細胞によるTMG発現の存在下(x軸)および非存在下(y軸)における100×100ライブラリースクリーニングの平均Rlog変換リードカウントを、図14Fに表す。5つの添加した特徴の分かっているTCRを、円で囲んだより大きな黒点として示す。
【0383】
ステップ14Gでは、特徴の分かっているTCRの順位付けを示す。100×100ライブラリーで表現されるTCRのすべての組み合わせに関する濃縮度の有意性の順位を示しており、統計分析は、14Eで説明したように行った。DESeq2Rパッケージを使用してワルド統計量を計算し、y軸にワルド統計量を降順にプロットした(確率尺度)。添加した特徴の分かっているTCRを灰色の陰影で示す。挿入図は、統計的に有意に濃縮された上位20のTCRの拡大図を示す。
【0384】
図15A~15Dは、遺伝子合成を用いたTCRレパトアの作製に関するいくつかの態様を示す図である。ステップ15A)(図15A)では、TCRライブラリーの模式図を提供する。ライブラリーを作製するための足場として、TCRβ鎖とTCRα鎖の両方、ならびにピューロマイシン選択マーカーを含むレトロウイルス構築物を使用した。TCRαまたはβ鎖いずれかの可変領域(V-CDR3-J)を、それぞれ、100のオリゴヌクレオチドのプールとして合成した。その後、α鎖とβ鎖のプールをコンビナトリアルクローニング反応に使用し、総複雑度10,000のライブラリーを得た。TCR鎖の合成とコンビナトリアルクローニングは、いずれもツイストバイオサイエンス(サンフランシスコ、米国)により行われた。この構築物を用いたレトロウイルス導入は、最終的に1つの転写物の発現をもたらし、その結果、2A部位でのペプチド切断により、TCRβ鎖およびα鎖ならびにピューロマイシン耐性マーカーが翻訳されることになる。
【0385】
ステップ15B)では、100のα鎖と100のβ鎖のコンビナトリアルTCRライブラリーの品質管理を提供する。可変TCRα鎖およびβ鎖ドメインに隣接したプライマー対を使用して両鎖を増幅し、ナノポアシーケンスを使用して両鎖の同一性を明らかにした。100のα鎖(左図)、100本のβ鎖(中央図)、または10,000のα×βの組み合わせそれぞれの表現を表す。
【0386】
ステップ15C)では、より複雑度の低い複数のライブラリーからの、より複雑度の高いライブラリーの作製を示す。この模式図では、より複雑度の低い複数のライブラリーから、より複雑なライブラリーを作製する考えを示している。いくつかの態様において、より複雑度の低いライブラリーは、重複して存在する可能性があるα鎖およびβ鎖のいかなる組み合わせも含まない。いくつかの他の態様では、より複雑度の低いライブラリーは、重複して存在する可能性があるα鎖およびβ鎖の組み合わせを含む。この例では、等モル比で4つの100×100ライブラリーを混合することによって、200のα鎖と200のβ鎖のコンビナトリアルライブラリー(200×200ライブラリー)が作製される。この例では、4つのサブライブラリーは、i)TCRα1~100番およびTCRβ1~100番、ii)TCRα101~200番およびTCRβ1~100番、iii)TCRα1~100番およびTCRβ101~200番、ならびにiv)TCRα101~200番およびTCRβ101~200番のコンビナトリアルライブラリーとして生成される。いくつかの態様において、ライブラリーの複雑度は、50×50~2000×2000の間で変化し得る。
【0387】
ステップ15D)(図15Dで示すように)対合情報または対合尤度に基づく設計によるTCRライブラリーの削減。この模式図では、ライブラリー中に存在する抗原特異的TCR鎖対の数に影響を与えることなく、または数への効果を制限して、TCRライブラリーの複雑度を低減する考えを図示する。一例として、100×100ライブラリーの10,000の複雑度は、10×10設計のコンビナトリアルサブライブラリーを10個、等モル比で混合することにより低減することができる。このことによって、TCRライブラリーの複雑度は十分の一に低減する。実験的に同定されたTCRαβ対、または他の方法で既知のTCRαβ対に関する全てのα鎖およびβ鎖、または対合する可能性が高い全てのα鎖およびβ鎖が、単一のコンビナトリアルサブライブラリー中で表されるように、TCRα鎖とβ鎖の対合に関する情報、またはα鎖とβ鎖の対合尤度情報をこのライブラリーの設計に含めることが可能である。いくつかの態様では、この原理を、複雑度がより高いまたはより低い複合ライブラリーに適用することができる。いくつかの態様では、コンビナトリアルサブライブラリーの複雑度は、より高くてもまたはより低くてもよい。いくつかの態様では、コンビナトリアルサブライブラリーは、重複するTCR鎖の組合せを含む可能性がある。いくつかの態様において、複合ライブラリーは、100(10×10)~90,000(300×300)の範囲を有することができる。いくつかの態様では、サブライブラリーの大きさは、1(1×1)~100(50×50)の範囲とすることができる。
【0388】
さらなる態様を図16A~16Eに示し、この図では、TCRレパトアからのTCRαβ対の同定に使用される共培養条件を提供する。
【0389】
図16Aでは、活性化ジャーカット細胞の選択マーカーとしてCD69を使用した場合の結果を図示する。hCD8を発現するジャーカット細胞に、21%の導入効率でCMV#1-TCRを形質導入した。JY細胞を、様々な量のCMVpp65ペプチド(示したように0~10ug/mlの範囲)または1μg/mlのMART-1無関係ペプチド(IRR)を用い、37℃で1時間パルスした。1時間後、細胞を洗浄し、1×10の細胞を、丸底96ウェルプレート中で、1ウェル当たり1×10の形質転換ジャーカット細胞と37℃で20時間共培養した。細胞を回収し、抗ヒトCD69(クローン:FN50)で染色し、FACSで分析した。
【0390】
図16Bでは、播種密度に応じたCD69のバックグラウンド発現を示す。hCD8とCMV#1-TCRを発現するジャーカット細胞を異なる密度(0.25×10/ml,0.5×10/ml,1×10/ml)で2日間培養した。細胞を採取し、抗ヒトCD69(クローン:FN50)で染色し、FACSで分析した。
【0391】
図16Cでは、異なる培養容器および様々なエフェクター対標的比で共培養した活性化ジャーカット細胞におけるCD69の発現を示す。hCD8とTCRライブラリー(4つの特徴の分かっている抗原特異的TCRのαおよびβ鎖からなる4×4コンビナトリアルライブラリー)を発現するジャーカット細胞を、培養面積0.32CM当たりエフェクター細胞が2.5×10になるように維持しながら、同族ミニ遺伝子を発現する標的B細胞(TMG2.1)と共培養した。細胞を丸底96ウェルプレート中で、エフェクターと標的細胞の比率を1:1または1:2にして培養した。あるいは、T25培養フラスコ中で、この表面積に使用する総細胞量の1/3または1/2の細胞を、エフェクターと標的細胞の比率を1:1に保ちながら培養した。さらに、T75培養フラスコ中で、エフェクターと標的細胞の比率を1:2および3:1にして細胞を培養した。20時間培養した後、細胞を回収し、抗ヒトCD69(クローン:FN50)で染色し、FACSで分析した。
【0392】
図16Dでは、様々な共培養密度におけるCD69の発現を示す。hCD8およびCDK4-17またはCDK4-8TCRを発現するジャーカット細胞を、丸底96ウェルプレート中で、示した量のCDK423-32(24L)ペプチドでパルスしたJY細胞と、または無関係なMART-126-35(27L)ペプチドでパルスしたJY細胞と、1:1の比率で共培養した。エフェクター細胞の播種密度は、1ウェルあたり125×10、250×10または500×10のいずれかとした。20時間後、細胞を回収し、抗ヒトCD69(クローン:FN50)で染色し、FACSで分析した。
【0393】
図16Eは、反応性TCRを同定するための遺伝子スクリーニングにおけるT細胞活性化のマーカーとしてのCD69の使用を示す図である。特異性不明のTCRを等しい比率で発現するジャーカットhCD8陽性細胞のプールを、CDK4-17、CDK4-8、CMV#1、CMV#2またはGCN1L1のいずれかのTCRを示した頻度で発現するジャーカットhCD8陽性細胞と混合した。この混合細胞を、すべての同族ミニ遺伝子を発現する標的B細胞と共培養した。20時間後に細胞を回収し、抗ヒトCD69(クローン:FN50)で染色して、それぞれがCD69を高レベルでまたは低レベルで発現する「上位」集団と「下位」集団に選別した。これらの試料はそれぞれ、選別した細胞全体の約10%を含んでいた。これらの細胞からゲノムDNAを回収し、TCRβ可変ドメインをPCRで増幅した。試料をイルミナシーケンスに供し、得られたリードを参照TCRβ配列上にマッピングした。濃縮倍率は、上位試料と下位試料におけるリードの正規化された数として計算される。
【0394】
さらなる態様を図17図27に示す。
【0395】
図17および図27では、抗原活性化T細胞を検出するためのCD69の使用について説明する。CD69の発現パターンに関する知識によって、T細胞受容体(TCR)ライブラリーのスクリーニングにおける活性化T細胞の検出および選択が可能になる。
【0396】
図18図25aおよび25bならびに図26では、TCR遺伝子を形質導入したジャーカットレポーターT細胞を選択するためのブラストサイジンの使用と、それによるTCRライブラリー導入後のレポーターT細胞の効率的な選択の提供を説明する。
【0397】
図19では、TCRライブラリーのスクリーニング過程において、TCRライブラリーを形質導入した多数のレポーターT細胞の刺激を可能にする、細胞培養バッグ中でのジャーカットレポーターT細胞の刺激について説明する。多数の細胞を使用し、十分なカバー数を維持することによって、TCRライブラリースクリーニングの感度を高めることができる。
【0398】
図20では、異なるTCRを導入したジャーカットレポーターT細胞におけるCD69、CD25およびCD62Lの発現の経時的分析を説明する。発現マーカーの経時的な発現を理解することで、抗原活性化T細胞を特異的に検出するための単一(または複数)の活性化マーカーの選択、および例えば磁気ビーズ濃縮による2段階の選択手法の実行が可能になる。
【0399】
図21から図24では、NFATレポーター遺伝子カセットの設計、送達の型およびそのゲノム挿入部位が、レポーター遺伝子の機能および抗原非依存性バックグラウンド発現のレベルを制御するという理解を提供する、抗原活性化T細胞の検出に関する異なるNFATレポータ系の使用について説明する。このデータは、異なるウイルス送達ベクター、クローナルなレポーターT細胞集団、異なるレポーターT細胞または異なるレポーター系が、より適したレポーター機能をもたらす可能性があることを示す。
【0400】
いくつかの態様において、方法は、以下に説明するステップ(1)~(7)(および図31を参照)を含む場合がある。ステップ(1)試料を取得する。試料は、感染症、自己免疫疾患、または癌を患っている患者に由来する組織、血液、または体液であってよい。試料は生存細胞であっても非生存細胞であってもよい。ステップ(2)試料に含まれるTCRα鎖およびTCRβ鎖の配列を決定する。ステップ(3)TCRαβ対のライブラリーを作製するために、TCRα鎖配列とTCRβ鎖配列を選択し、コンビナトリアルペアリングを行う。ステップ(4)TCRαβ対のライブラリーをレポーター細胞のプール、例えばジャーカットレポーターT細胞のプールに導入する。ステップ(5)TCRαβ対のライブラリーで修飾されたレポーター細胞を、少なくとも1つの目的の抗原を提示する抗原提示細胞で刺激する。少なくとも1つの目的の抗原は、自己由来であっても同種異系であってもよい。ステップ(6)少なくとも1つの目的の抗原に特異的なTCRαβ対を決定する。ステップ(7)TCRαβ対を細胞に導入し、TCRαβ対を含む細胞を選択する。
【0401】
いくつかの態様において、方法は、前述したステップ(1)~(7)のうちの1つ以上を含み得る。いずれのステップも、適宜、本明細書で提供される他の態様によって省略、反復、または置換することができる。また、その他の介在するステップを追加することも可能である。例えば、いくつかの態様は、ステップ(2)および(3)を含む。他の態様は、ステップ(5)および(6)を含む。さらに他の態様は、ステップ(7)を含む。いくつかの態様はステップ(1)~(7)を含み、さらに、TCRαβ対を含有する細胞を治療のために患者に投与することを含む。いくつかの態様において、抗原提示細胞は、新生抗原ライブラリーをB細胞に導入することによって得ることができる。新生抗原ライブラリーは、自己であってもまたは同種異系であってもよい。いくつかの態様は、TCR鎖サブセットを選択することによってTCRレパトアを作製することに関する。いくつかの態様は、新生抗原ライブラリーに由来する任意の新生抗原を含むB細胞に関する。いくつかの態様は、濃縮度/枯渇度に基づく遺伝子スクリーニングへの適用に関する。いくつかの態様は、大きなサイズのアンプリコンを用いて遺伝子スクリーニングを行うことに関する。いくつかの態様は、TCR改変T細胞を検出するための方法に関する。いくつかの態様は、前述した態様のいずれか1つ以上を組み合わせたものである。
【0402】
いくつかの態様は、前述した態様のいずれか1つに従って回収されたT細胞受容体のレパトアを構成するヌクレオチドライブラリーに関する。
【0403】
いくつかの態様では、前述した態様のいずれか1つに従って同定されたヌクレオチド配列を含むヌクレオチド構築物を提供する。いくつかの態様において、細胞は、本明細書に記載のヌクレオチド構築物を含む。
【0404】
いくつかの態様は、図28に従うものである。いくつかの態様では、新生抗原特異的TCRの同定は、拡張可能かつ低侵襲である遺伝子スクリーニング手法を適用することによって達成される。少量の非生存性の保管腫瘍組織が、TILの代わりに腫瘍内TCR配列の供給源として使用される。次に、レトロウイルス遺伝子導入により、同定された腫瘍内TCRのライブラリーをジャーカットレポーターT細胞株と呼ばれる不死化Tリンパ球細胞株に導入する。TCRライブラリーを発現するジャーカット細胞(エフェクター細胞、略してE)を濃縮し、その後、ムタノームを発現する患者由来APC(標的細胞、略してT)に対する反応性についてスクリーニングする。フローサイトメトリーソーティングの後、ジャーカット細胞を、細胞増殖および下流のシグナル伝達に関与する32初期T細胞活性化マーカーCD69(一例として)の発現に基づいて選択する。いくつかの態様において、試料は、CD25、CD62L、CD137、IFN-γ、IL-2、TNF-α、GM-CSF、合成プロモーターレポーターマーカーまたは増殖マーカーを含むがこれらに限定されない、任意の他の活性化マーカーに基づいて分離することができる。最終段階として、新生抗原特異的TCRを次世代シークエンシングによって同定する。現在のTCR単離プラットフォームでは、10,000のTCRのライブラリーをスクリーニングすることができる。このようなライブラリーから新生抗原特異的TCRを高感度で同定し、その他の処理工程でTCRが失われないようにするためには、TCRのカバー数を維持するために、スクリーニング工程で固有のTCRをそれぞれ複数回表現させなければならない。したがって、多数のTCR導入ジャーカット細胞およびAPCをスクリーニングする必要がある33
【0405】
レトロウイルスTCRライブラリーをジャーカットTCR KO細胞に導入した後、毒性を引き起こすこともTCRのカバー数を喪失することもなく正常にTCR導入されたジャーカット細胞を濃縮するためには(mTCRβ陽性CD8陽性細胞が80%超)、効率的でハイスループットの選択手順が有用である。いくつかの態様では、丸底96ウェルプレートを、APC-ジャーカット共培養のために使用することができる。いくつかの態様では、GMPバッグをAPC-ジャーカット共培養のために使用することができる。いくつかの態様において、共培養は、閉鎖系で実施することができる。いくつかの態様では、168×10のジャーカット細胞とAPCを含む共培養を、GMPバッグ内に設置することができる。いくつかの態様では、16、20、24、48または32時間、共培養することができる。いくつかの態様では、読み出しは、CD69、CD25、またはCD62Lに関するものであってよい。いくつかの態様では、読み出しは、CD69とCD25の組み合わせとすることができる。いくつかの態様では、読み出しは、CD69とCD62Lの組み合わせとすることができる。いくつかの態様は、CD69との組み合わせでCD25陽性CD62Lジャーカット細胞を選択することに関する。いくつかの態様では、GMPバッグを用いることができる。
【0406】
抗生物質による選択は、TCRを導入したジャーカットT細胞を濃縮するための魅力的な戦略である。いくつかの態様では、ブラストサイジン選択を使用することができる。いくつかの態様は、図30に従うものである。いくつかの態様では、選択の4日目に、細胞は、それぞれの濃度のブラステイシジンを含む培地または含まない培地のいずれかに、その開始時の密度で再度播種される。いくつかの態様では、ブラストサイジンの濃度は4μg/mlである。いくつかの態様は、開始時の細胞密度を0.25×10細胞/ml、ブラストサイジンの濃度を4μg/mlとし、4日後に抗生物質を除去する7日間の選択である。いくつかの態様では、0.5e6/mlの細胞で播種し、6μg/mLのブラストサイジンを加え、4日後に、ブラストサイジンを加えずに0.5e6/mlで細胞を再度播種することが可能である。
【0407】
いくつかの態様において、レポーター系は、AP-1であっても、またはNFkBシグナル伝達経路であってもよい。
【0408】
いくつかの態様は、図29に従うものである。いくつかの態様において、目標の1つは、ライブラリー内のTCRの数を増やして、10,000を超えるTCRの高感度スクリーニングを可能にすることである。これは、TCRカバー数を維持しながら多数の細胞のより効率的な処理を可能にするために、様々な処理ステップを最適化することによって、TCR発見プラットフォームの拡張性を高める必要性を強調するものである。いくつかの態様では、4つの既知の、HLA-A02:01拘束性TCRであるCDK4-TCRのクローン8および17(略してCDK4-8および17)ならびにCMV-TCRクローン1および2(略してCMV-1および2)を使用した。2つのCDK4-TCRは、変異したサイクリン依存性キナーゼ4(CDK4R24C)ペプチドに特異的である。この変異由来の新生抗原エピトープは、複数のメラノーマ患者で同定されている34。さらに、2つのCMV-TCRは、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)の構成要素であるpp6535によってコードされるペプチドを標的としている。CDK4とCMVエピトープの両方について、潜在的に異なる親和性を持つ2つの異なるTCRクローンを研究において使用した。これにより、同族ペプチドに対するTCRの親和性がスクリーニング過程に果たす役割を評価することができる。
さらなる態様-実施例19の結果
【0409】
TCR遺伝子治療は、癌抗原に対して所望の特異性を持つTCRを発現するように、自己T細胞を操作することを伴う。癌抗原の1つに非同義体細胞変異由来の新生抗原があり、これは悪性細胞のみに発現しているため、TCR遺伝子治療の魅力的な標的である。しかし、ほとんどの新生抗原は所与の患者の腫瘍に特有であり、それらを標的とするためには個別化された手法が必要である。この課題を克服するために、腫瘍生検から単離した患者のTCR遺伝子のライブラリーから、そのようなTCRを同定する遺伝子スクリーニング的手法を組み込むことによって、完全に個別化された新生抗原特異的TCR遺伝子治療が提供される。現在のTCR単離プラットフォームでは10,000のTCRをスクリーニングすることが可能であり、この方法は、スクリーニング感度を最大化するために、TCRライブラリーを導入したレポータージャーカットT細胞と新生抗原発現抗原提示細胞(APC)を大量に処理することを伴う。しかし、多数の細胞を扱うことは、プラットフォームの拡張性に影響を与える可能性がある。そこで、本研究では、多数の細胞を処理するための複数の方法を検討することで、感度を維持したままスクリーニングプラットフォームの拡張性を高めることを目的とした。最初に、ブラストサイジン選択により、TCRを発現するジャーカット細胞が効率的かつ最小限の毒性で濃縮できることを示した。次に、ジャーカット細胞-APC共培養を、確立されている96ウェルプレートの形式から、より高処理のMACS GMP細胞分化バッグ装置に拡張すると、ジャーカット細胞の活性化が同等になった。さらに、現在スクリーニング過程において用いられているフローサイトメトリーソーティングを、より拡張性の高いビーズを用いた選別に置き換えるために、様々な方法を検討した。そこで、CD69に加えて、さらに2つのT細胞活性化マーカーであるCD25とCD62Lの発現プロファイルを検討したところ、これらがCD69と組み合わせた2段階のビーズを用いた濃縮に適した候補となる可能性があることが判明した。さらに、抗生物質耐性カセットやビーズに基づく選別に好適な細胞表面マーカーなどのレポーター遺伝子を利用することにより、フローサイトメトリーソーティングの使用を回避することができる、NFAT(family of nuclear factor of activated T cells)に基づくレポーター系を評価した。しかしながら、NFATレポーター系は高レベルのバックグラウンドシグナルを示した。
【0410】
腫瘍の微小環境では、細胞傷害性Tリンパ球(CD8陽性T細胞)は、主に腫瘍の退縮に関与している。T細胞は、α鎖とβ鎖からなるヘテロ二量体の、特有なT細胞受容体(TCR)を発現する。α鎖とβ鎖はそれぞれ、定常領域と可変領域から構成される。可変領域は、抗原提示細胞(APC)によって、その主要組織適合性複合体(MHC)上に提示された同族ペプチドに対する、所与のT細胞の特異性と親和性に寄与するものである。MHC分子は、ヒトではヒト白血球抗原(HLA)とも呼ばれる2,3。CD8/CD4およびCD28はT細胞共受容体の一例であり、これらは、TCR-HLA複合体を安定化させ、CD3ζとともに、タンパク質であるチロシンのリン酸化および細胞質カルシウムの放出を伴う下流のシグナル伝達を引き起こす。この下流のシグナル伝達は、転写因子であるNFAT(family of nuclear factor of activated T cells)、AP-1、NF-κBの核内移動を誘導し、T細胞の活性化に特異的な遺伝子の転写を誘導する4,5。活性化されたCD8陽性T細胞は、インターロイキン2(IL-2)、IFN-γ、TNF-αなどの様々な炎症性サイトカインを産生することにより、ウイルス性抗原、細菌性抗原、癌抗原などを発現する標的細胞を殺すことができる。分泌されたIL-2は、T細胞上のIL-2受容体に結合し、より多くのIL-2の産生を促し、T細胞の増殖を促進するという正のフィードバックループをもたらす5,6
【0411】
現在までに、癌免疫療法が進行した腫瘍を治療する最も有効な方法の一つであることが示されている。多くの免疫療法的手法は、細胞傷害性T細胞の殺傷能力を利用している7,8。その一例が、腫瘍の微小環境下でCD8陽性T細胞の細胞傷害性活性を抑制する、免疫チェックポイント分子CTLA-4およびPD-1の阻害である9,10。チェックポイント阻害は、非同義変異が多く見られる癌11、例えばメラノーマ12,13や非小細胞肺癌(NSCLC)14,15などで最も有効な、拡張性のある一般的な投与型の治療法である。さらに、インビトロで増殖させ、IL-2を添加した自己腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の養子細胞移植は、メラノーマ16,17や子宮頸癌18,19で治癒の可能性を示している。しかし、腫瘍抗原特異的TILは末端分化型T細胞であることが多く、インビトロでの増殖過程において、短期間で消失する可能性がある7,20
【0412】
前述した免疫療法はいずれも、腫瘍の退縮に関与する腫瘍抗原反応性TCRを同定するものではない。それらのTCRを検出することは、腫瘍抗原に対するTCRを持つT細胞を遺伝子工学的に作製するのに有用である。このような治療法はTCR遺伝子治療と呼ばれ、所望の抗原特異性を持つ「適合」T細胞を大量に生成できるため、他の免疫療法的な戦略よりも有利である21。腫瘍抗原には、非自己抗原と自己抗原がある7,21。自己抗原はこれまで、癌ワクチン試験の主な対象であったが、おそらく自己抗原に対する中枢性免疫寛容が原因で、これらの試験では効果が認められなかった22。しかしながら、異常に発現した自己抗原を標的としたTCR遺伝子治療試験の中には、臨床的な有効性を示すものがあった。例えば、滑膜細胞肉腫やメラノーマの患者では、癌の生殖系列であるNY-ESO-1エピトープを標的とすることで、治癒の可能性が示されている23。しかしながら、腫瘍に関連した自己抗原を標的とすることは、しばしば重篤なオン・ターゲット毒性を引き起こすため24,25、非自己抗原を標的とする免疫療法の必要性が指摘されている。そのような型の一つとして、突然変異由来の新生抗原がある7,8,21
【0413】
新生抗原は非同義の体細胞突然変異から生じ、その結果、健康な組織には存在しない新規ポリペプチドが生成される。このことによって、新生抗原が免疫療法の標的として有用であり、健康な組織には全く存在しないため、オン・ターゲット毒性を防ぐことができると考えられる。さらに、新生抗原特異的T細胞の発見は、親和性の高い自己抗原反応性T細胞に対する中枢性免疫寛容に影響されることもない。新生抗原の多くは、悪性細胞の生存にいかなる利点をも与えないパッセンジャー遺伝子の変異から発生する。これらの変異は通常、各患者に固有のものであるため、新生抗原を標的とした治療には、ゲノム解読の手法を伴う個別化治療が必要である8,26
【0414】
近年開発された全エクソーム解析(WES)とRNA配列決定により、新生抗原反応性T細胞がTILに存在し、腫瘍の退縮を媒介している可能性が明らかになってきた27,28。例えば、高い特異性と感度を持つペプチド-MHC(pMHC)多量体と組み合わせたWES29により、メラノーマ患者のTIL材料からの新生抗原特異的T細胞の同定に至った13,30。この方法は拡張性が高いにもかかわらず、HLA対立遺伝子のカバー数の限界に依存し、pMHCの結合を予測するアルゴリズムが必要とする。これらの制限によって、一部の新抗原反応性TCRが見落とされる可能性がある。pMHC多量体の限界を回避するために、質量分析を用いてMHC結合新生抗原を同定する研究がなされている。この手法とWESおよび、参照としてトランスクリプトーム配列決定を組み合わせることで、マウス腫瘍細胞株における新生抗原の発見につながった31。しかし、この方法は処理量が少なく、偽陰性になることも多い。前述の方法を使うことで、複数の新生抗原特異的TCRを同時に同定できる可能性があるにもかかわらず、そのようなTCRを発見するための、より拡張性が高く、感度の高いプラットフォームが今なお必要とされている。
【0415】
新生抗原特異的TCRの同定は、拡張性が高く、低侵襲な遺伝子スクリーニング手法を適用することにより達成される。少量の非生存性の保管腫瘍組織が、TILの代わりに腫瘍内TCR配列の供給源として使用される。次に、レトロウイルス遺伝子導入により、同定された腫瘍内TCRのライブラリーをジャーカットレポーターT細胞株と呼ばれる不死化Tリンパ球細胞株に導入する。TCRライブラリーを発現するジャーカット細胞(エフェクター細胞、略してE)を濃縮し、その後、ムタノームを発現する患者由来APC(標的細胞、略してT)に対する反応性についてスクリーニングする。フローサイトメトリーソーティングの後、ジャーカット細胞を、細胞増殖および下流のシグナル伝達に関与する32初期T細胞活性化マーカーCD69の発現に基づいて選択する。最終段階として、新生抗原特異的TCRを次世代シークエンシングによって同定する。いくつかの態様では、現在のTCR単離プラットフォームでは、10,000のTCRのライブラリーをスクリーニングすることができる。前述した手法に沿って、実施例19では、この手法を支持するさらなる結果および証拠を提供する。
【0416】
TCRの選択は、多数の方法によって達成することができる。バリアントの濃縮は、DESeq2Rパッケージを含むがこれらには限定されない好適な分析ツールを用いて決定することができる。バリアントの濃縮は、レポーターT細胞とTMGを発現するB細胞とを接触させた上位と下位の対と、レポーターT細胞とTMGを発現するように操作されていないB細胞とを接触させた上位と下位の対とを対比させることを含んでもよい。バリアントの濃縮は、DESeq2ワルド検定統計量に基づいて、TCRの組み合わせを降順に順位付けすることを含んでもよい。バリアントの濃縮は、より高い順位のTCRの組み合わせについて、ボンフェローニ補正p値に基づいて統計的有意性を決定することを含んでもよい。少なくとも1つのTCRの組み合わせの選択は、補正されたp値および他の統計的指標に基づくものであってよい。本実施例の手順は、TCR反応性の感度を高めるために、単一の反復実験において実行してもよいし、二回の反復実験で、三回の反復実験でまたは三回以上の反復実験において実行してもよい。反復実験の回数は、TMGを発現するAPCとの共培養に由来する試料の場合と、TMGを発現するように操作されていないAPCとの共培養に由来する試料の場合で変化させてもよい。これらの選択肢はいずれも、本明細書で提供される任意の方法と組み合わせることができる。
【0417】
本開示の態様は、以下の実施例においてさらに説明されるが、これらは説明のためにのみ提供されるものであり、請求する発明の主題をいかなる形でも制限することを意図していない。
【実施例
【0418】
実施例1
【0419】
本実施例では、新生抗原特異的TCR配列を同定するために、非生存性腫瘍標本からTCRレパトアを回収することを説明する。
【0420】
新鮮凍結腫瘍標本または固定標本、ホルマリン固定/パラフィン包埋(FFPE)腫瘍標本からDNAまたはRNAを単離し、これらを使用して、TCRα鎖およびβ鎖のバルク配列決定を実施する。特定のTCR鎖(の一部)のアミノ酸配列をコードする核酸分子の絶対数を、「固有の分子識別子」(UMI)を用いて固有の分子の数に基づいて決定する。あるいは、TCRα鎖およびβ鎖の配列決定にUMIを含めず、TCR鎖の頻度をUMI数ではなく、次世代シーケンサーのリード数に基づいて測定する。例えば腫瘍内TCR鎖の存在量などの基準を適用することで、同定したTCR配列の全セットからTCRα鎖およびβ鎖の定義されたセットを選択する。その後、選択したTCRα鎖およびβ鎖のDNAまたはRNA断片を、それぞれ、DNAまたはRNA合成によって生成する。RNA断片は標準的な技術でcDNAに変換することができる。選択したすべてのTCRα鎖およびβ鎖を、コンビナトリアルペアリングによって、TCRαβ遺伝子をコードする単一の発現構築物とすることで、腫瘍内TCRαβ対の元のレパトアの定義された部分を再現する。単一の発現構築物は、単一のTCRα鎖およびβ鎖の所与の組み合わせを発現させるために使用することができる。あるいは、TCRα鎖およびβ鎖は、別々の発現構築物から発現させることができる。ウイルスベクターを含む、任意の好適な発現ベクターを使用することができる。安定した発現のためには、レトロウイルスベクターもしくはレンチウイルスベクターまたは粒子類を使用する。結果として生じたTCRαβ遺伝子のライブラリーを、レポーターT細胞のプールで発現させる。ライブラリー発現T細胞を新生抗原刺激によって活性化し、T細胞活性化マーカーに基づいて新生抗原特異的T細胞を濃縮する。その後、抗原刺激を行わなかった試料と比較した、抗原刺激を行った試料での濃縮度によって、発現した新生抗原特異的TCRαβ遺伝子を同定する。同定したTCR遺伝子またはTCR遺伝子のセットを、癌治療のための新生抗原特異的T細胞の操作に利用する。
実施例2
【0421】
本実施例では、TCRαβライブラリーを生成するために、TCRレパトアを回収することを説明する。
【0422】
新鮮凍結標本、固定標本、ホルマリン固定/パラフィン包埋標本(FFPE)からDNAまたはRNAを単離し、これらを使用して、TCRα鎖およびβ鎖のバルク配列決定を実施する。特定のTCR鎖(の一部)のアミノ酸配列をコードする核酸分子の絶対数を、「固有の分子識別子」(UMI)を用いて固有の分子の数に基づいて決定する。例えば、TCR鎖の存在量などの基準を適用することで、同定したTCR配列の全セットからTCRα鎖およびβ鎖の定義されたセットを選択する。その後、選択したTCRα鎖およびβ鎖のDNAまたはRNA断片を、それぞれ、DNAまたはRNA合成によって生成する。RNA断片は標準的な技術でcDNAに変換することができる。選択したすべてのTCRα鎖およびβ鎖を、コンビナトリアルペアリングによってTCRαβ遺伝子とすることで、TCRαβ対の元のレパトアの定義された部分を再現する。対合したTCRα鎖とβ鎖は、選択したTCRレパトアを含むTCRαβライブラリーを表す。
実施例3
【0423】
本実施例では、回収したTCRレパトアのライブラリーを利用した免疫療法による癌患者の治療について説明する。
【0424】
TCRレパトアを回収し、実施例1および2に概説した方法でTCRαβライブラリーを作製する。TCRαβ遺伝子のライブラリーを、レポーターT細胞のプールで発現させる。新生抗原特異的T細胞を抗原刺激により活性化し、T細胞活性化に基づいて単離する。その後、発現した新生抗原特異的TCRαβ遺伝子を同定する。同定したTCR遺伝子またはTCR遺伝子のセットを利用して、TCR遺伝子をT細胞内で発現させることにより、癌治療のための新生抗原特異的T細胞を操作する。操作した新生抗原特異的T細胞を、癌を治療するための免疫療法として、癌患者に注入する。癌患者は、その患者のTCRαβレパトアが配列決定された患者であっても、同じ新生抗原を保有または発現する癌を有する患者であってもよい。治療に使用される細胞は、自己由来であっても同種異系であってもよい。
実施例4
【0425】
本実施例では、感染症または自己免疫疾患の部位からTCRレパトアを回収することを説明する。
【0426】
感染部位または自己免疫部位から得られた新鮮凍結標本、固定標本、ホルマリン固定/パラフィン包埋標本(FFPE)からDNAまたはRNAを単離し、これらを使用して、TCRα鎖およびβ鎖のバルク配列決定を実施する。例えば、TCR鎖の存在量などの基準を適用することで、同定したTCR配列の全セットからTCRα鎖およびβ鎖の定義されたセットを選択する。その後、選択したTCRα鎖およびβ鎖のDNAまたはRNA断片を、それぞれ、DNAまたはRNA合成によって生成する。RNA断片は標準的な技術でcDNAに変換することができる。選択したすべてのTCRα鎖およびβ鎖を、TCRαβ遺伝子にコンビナトリアルペアリングすることで、TCRαβ対の元のレパトアの定義された部分を再現する。感染や自己免疫の部位で特定の抗原を検出できるT細胞のTCR配列を決定することにより、感染部位や自己免疫部位に関連した、あるいはそれらの部位に特異的なTCRレパトアを回収することができる。
【0427】
結果として生じたTCRαβ遺伝子のライブラリーを、レポーターT細胞のプールで発現させる。抗原特異的T細胞を抗原刺激により活性化し、T細胞活性化に基づいて単離する。その後、発現した抗原特異的なTCRαβ遺伝子を同定する。同定したTCR遺伝子またはTCR遺伝子のセットを、感染症または自己免疫疾患の診断または治療に利用する。
実施例5
【0428】
本実施例では、TCRプラスミドを人工的に混合して生成したTCRライブラリーから、抗原特異的TCRを回収することを説明する。
【0429】
TCR発現カセットを、TCRβ-P2A-TCRα-T2A-ピューロマイシン耐性の形式で生成する(図6にTCRβ-P2A-TCRα-T2A-ピューロマイシン耐性カセットの模式図を示す;このような形式で発現したTCRの例として、配列番号1、図32図40を提供する)。複数のTCRライブラリーを、1つの新生抗原特異的TCRと種々の非関連TCRを様々な比率で混合することによって生成する。結果として生じたTCRライブラリーは、1つのHLA-A02:01拘束性の新生抗原特異的TCRを1:10、1:100、1:1,000、1:10,000の頻度で含む。新生抗原特異的TCRを1:10の頻度で含むTCRライブラリーを作製するために、レトロウイルス発現ベクター中で新生抗原特異的TCRをコードする1つのプラスミドコピーを、それぞれ特異性が異なるTCRをコードする9つの他のレトロウイルスベクターそれぞれに対する1つのプラスミドコピーと混合する。したがって、レトロウイルス発現ベクター中で新生抗原特異的TCRをコードする1つのプラスミドコピーを、それぞれが特異性の異なる別のTCRをコードしている9つの他のレトロウイルスベクターのそれぞれについて、1、11、111および1,111プラスミドコピーと混合して、それぞれ1:10、1:100、1:1,000および1:10,000の頻度で新生抗原特異的TCRを含むTCRライブラリーを得る。
【0430】
いくつかの態様では、配列番号1をコードする任意の1つ以上の核酸を用いることができる。いくつかの態様では、5つの特徴が分かっているTCRを、1:16、1:100、1:2500、および1:10,000の頻度で混合することによって、前述したものを変化させることが可能である。最後に、混合には、9つの他のTCRプラスミドではなく、24の他のTCRプラスミドを使用することができる。
【0431】
それぞれのTCRライブラリーを、当業者に知られている方法により、フェニックス-広宿主性(Phoenix-Ampho)(ATCC CRL-3213)などの広宿主性ウイルス産生細胞に別々に形質移入する。結果として生じたレトロウイルスビリオンを使用して、ジャーカットレポーターT細胞株を形質転換する。ジャーカットレポーターT細胞株は、内因性TCR発現を欠くもので(例えば、メザドラ(Mezzadra)ら、ネイチャー(Nature)、2017に記載)、当業者に知られている方法でCD8α-P2A-CD8β導入遺伝子(配列番号2)を形質導入すると、ヒトCD8αおよびCD8βを発現するように修飾する。ジャーカットレポーターT細胞を、TCR導入ジャーカットT細胞の頻度を全T細胞の25~30%に制限するために、個別のTCRライブラリーを低いMOIで形質転換する。TCRβ-P2A-TCRα-T2A-ピューロマイシン耐性導入遺伝子を発現するように修飾したジャーカットT細胞を、形質導入後に細胞培養にピューロマイシンを添加して正に選択する。遺伝子組換え細胞の抗生物質選択は、当業者に既知である。
【0432】
いくつかの態様では、配列番号2(図33)をコードする任意の1つ以上の核酸を用いることができる。図41では、配列番号2、すなわち、CD8α-P2A-CD8β導入遺伝子を示す。
【0433】
当業者であればさらに、本明細書に記載の方法は、例えばFACSによるTCR導入細胞の選別や磁気ビーズの使用に基づく選別など、ピューロマイシンを使用しない選別を含み得ることを理解する。したがって、TCRカセットは、ピューロマイシン選択遺伝子を欠いていてもよい。
【0434】
TCRを導入したジャーカットT細胞を、組換えHLA-A02:01-IRES-フュージョンレッド導入遺伝子を発現する抗原負荷K562細胞(K562-HLA-A02:01-IRES-フュージョンレッド;配列番号3;図34図42)で刺激する。導入遺伝子を発現するK562細胞の生成については記載があり(例えば、ヒラノ(Hirano)ら、臨床癌研究(Clin Canc Res)、2006;バトラー(Butler)ら、インターナショナル・イムノロジー(Int Immunol)、2010;バトラーら、臨床癌研究、2007;ローレンス(Lorenz)ら、ヒト遺伝子治療(Hum Gene Ther)、2017)、当業者に知られている。ペプチド負荷K562-HLA-A2細胞は、37℃で90分間、目的のペプチドでパルスし、その後洗浄することによって得られる。当業者であれば、本明細書に記載のペプチド提示HLA-A02:01陽性K562細胞株を、他のHLA-A02:01陽性抗原提示細胞で置換してもよいことを理解する。あるいは、変異形態(HLA-A0201導入K562細胞におけるTMGの発現)を使用することができる。
【0435】
各TCRライブラリーには、以下の刺激条件をそれぞれ使用する。
1.4eのTCR導入ジャーカットT細胞を、1μgの新生抗原ペプチドを負荷した4eのK562-HLA-A2で刺激する。
2.4eのTCR導入ジャーカットT細胞を、1μgの新生抗原ペプチドを負荷した8eのK562-HLA-A2で刺激する。
【0436】
その後、共培養物を採取し、CD4、CD8、CD69の蛍光標識抗体で染色する。BDバイオサイエンス(Biosciences)ARIAフュージョン(Fusion)フローサイトメトリーソーターを用いて、以下の集団をそれぞれの刺激条件に関して選別する。
1.生細胞、単細胞、CD4陽性、CD8陽性、高CD69(高CD69は、CD69蛍光シグナルに基づく、生細胞、単細胞、CD4陽性、CD8陽性細胞のうちの上位5~50%を含む)。
2.生細胞、単細胞、CD4陽性、CD8陽性、低CD69(低CD69は、CD69蛍光シグナルに基づく、生細胞、単細胞、CD4陽性、CD8陽性細胞のうちの下位5~50%を含む)。
【0437】
あるいは、各TCRライブラリーに、以下の刺激条件をそれぞれ用いることができる。
1.4eのTCR導入ジャーカットT細胞を、1μgの新生抗原ペプチドを負荷した4eのK562-HLA-A2で刺激する。
2.4eのTCR導入ジャーカットT細胞を、1μgの新生抗原ペプチドを負荷した8eのK562-HLA-A2で刺激する。
3.4eのTCR導入ジャーカットT細胞を、1μgの無関係な対照ペプチドを負荷した4eのK562-HLA-A2で刺激する。
4.4eのTCR導入ジャーカットT細胞を、1μgの無関係な対照ペプチドを負荷した8eのK562-HLA-A2で刺激する。
【0438】
その後、共培養物を採取し、CD4、CD8、CD69の蛍光標識抗体で染色する。BDバイオサイエンスARIAフュージョンフローサイトメトリーソーターを用いて、それぞれの試料について、生細胞、単細胞、CD4陽性、CD8陽性、CD69陽性細胞を選別する。
【0439】
選別したTCR導入ジャーカットT細胞からゲノムDNAを単離し、これをPCRの鋳型として使用し、TCRβ-P2A-TCRαカセットの一部を増幅する。得られたPCR産物の大きさは約1.5kbで、オックスフォードナノポアミニオン(MinIon)シーケンサーで配列決定し、選別したT細胞集団(低CD69および高CD69またはCD69陽性)に含まれる新生抗原特異的TCR配列の相対的な存在量を比較することができる。
【0440】
いくつかの態様では、オックスフォードナノポアミニオンシーケンサーは、他の配列決定機器に置き換えてもよく、または他の配列決定戦略を用いることもできる。
実施例6
【0441】
本実施例では、遺伝子合成により生成したTCRライブラリーから、抗原特異的TCRを回収することを説明する。
【0442】
遺伝子合成により、HLA-A02:01拘束性の新生抗原特異的TCRを2つ含む複数のTCRライブラリーを生成する。そのために、新生抗原特異的TCRに由来する2つのTCRα鎖断片と2つのTCRβ鎖断片、および特異性が異なるTCRに由来する98のTCRα鎖断片と98のTCRβ鎖断片を合成する。あるいは、5+95のTCRを用いることも可能である。その後、得られた断片を使用して、TCRβ-P2A-TCRα形式のTCR発現カセットを含むTCRライブラリーを生成する。ライブラリー生成のために、選択した全てのTCRαおよびTCRβ断片を混合し、TCRβ-P2A-TCRαカセットをコードする連続した核酸分子に接合する。重要なことに、1つのTCRカセットにつき、TCRβ断片とTCRα断片を1つだけ結合させることができる。異なる数のTCRαとTCRβ断片を選択して混合することにより、異なる複雑度を持つTCRライブラリーを作製することができる。
1.新生抗原特異的TCRに由来する2つのTCRα鎖断片と2つのTCRβ鎖断片によって、複雑度4(4種類のTCRαβ対)のTCRライブラリーが作製される。
2.新生抗原特異的TCRに由来する2つのTCRα鎖断片と2つのTCRβ鎖断片、および特異性が異なるTCR由来に由来する8つのTCRα鎖断片と8つのTCRβ鎖断片によって、複雑度100(100種類のTCRαβ対)のTCRライブラリーが作製される。
3.新生抗原特異的TCRに由来する2つのTCRα鎖断片と2つのTCRβ鎖断片、および特異性が異なるTCRに由来する48のTCRα鎖断片と48のTCRβ鎖断片によって、複雑度2500(2500種類のTCRαβ対)のTCRライブラリーが作製される。
4.新生抗原特異的TCRに由来する2つのTCRα鎖断片と2つのTCRβ鎖断片、および特異性が異なるTCR由来する98のTCRα鎖断片と98のTCRβ鎖断片によって、複雑度10,000(10,000種類のTCRαβ対)のTCRライブラリーがが作製される。
【0443】
あるいは、選択肢として、TCRα鎖断片とTCRb鎖断片に関する設計を、4+0、5+5、5+45および5+95とすることができる。
【0444】
結果として生じたTCRライブラリーは、TCR発現カセットを、TCRβ-P2A-TCRα-T2A-ピューロマイシン耐性の形式で(配列番号1、図40)含むことになる。
【0445】
それぞれのTCRライブラリーを、当業者に知られている方法により、フェニックス-広宿主性(ATCC CRL-3213)などの広宿主性ウイルス産生細胞に別々に形質移入する。結果として生じたレトロウイルスビリオンを使用して、ジャーカットレポーターT細胞株を形質転換する。ジャーカットレポーターT細胞株は、内因性TCR発現を欠くもので(例えばメザドラら、ネイチャー、2017に記載)、当業者に知られている方法でCD8α-P2A-CD8β導入遺伝子(配列番号2)を形質導入すると、ヒトCD8αおよびCD8βを発現するように修飾する。ジャーカットレポーターT細胞を、TCR導入ジャーカットT細胞の頻度を全T細胞の25~30%に制限するために、個別のTCRライブラリーを低いMOIで形質転換する。TCRβ-P2A-TCRα-T2A-ピューロマイシン耐性導入遺伝子を発現するように修飾したジャーカットT細胞を、形質導入後に細胞培養にピューロマイシンを添加して正に選択する。遺伝子組換え細胞の抗生物質選択は、当業者に既知である。
【0446】
当業者であればさらに、本明細書に記載の方法は、例えばFACSによるTCR導入細胞の選別や磁気ビーズの使用に基づく選別など、ピューロマイシンを使用しない選別を含み得ることを理解する。したがって、TCRカセットは、ピューロマイシン選択遺伝子を欠いていてもよい。
【0447】
TCRを導入したジャーカットT細胞を、組換えHLA-A02:01-IRES-フュージョンレッド導入遺伝子を発現する抗原負荷K562細胞(K562-HLA-A02:01-IRES-フュージョンレッド;配列番号3)で6時間刺激する。導入遺伝子を発現するK562細胞の生成については記載があり(例えば、ヒラノら、臨床癌研究、2006;バトラーら、インターナショナル・イムノロジー、2010;バトラーら、臨床癌研究、2007;ローレンスら、ヒト遺伝子治療、2017)、当業者に知られている。ペプチド負荷K562-HLA-A2細胞は、37℃で90分間、目的のペプチドでパルスし、その後洗浄することによって得られる。当業者であれば、本明細書に記載のペプチド提示HLA-A02:01陽性K562細胞株を、他のHLA-A02:01陽性抗原提示細胞で置換してもよいことを理解するであろう。
【0448】
以下の刺激条件を使用する。
1.4eのTCR導入ジャーカットT細胞を、1μgの新生抗原ペプチドを負荷した4eのK562-HLA-A2で刺激する。
2.4eのTCR導入ジャーカットT細胞を、1μgの新生抗原ペプチドを負荷した8eのK562-HLA-A2で刺激する。
【0449】
その後、共培養物を採取し、CD4、CD8、CD69の蛍光標識抗体で染色する。BDバイオサイエンスARIAフュージョンフローサイトメトリーソーターを用いて、以下の集団をそれぞれの刺激条件に関して選別する。
1.生細胞、単細胞、CD4陽性、CD8陽性、高CD69(高CD69は、CD69蛍光シグナルに基づく、生細胞、単細胞、CD4陽性、CD8陽性細胞のうちの上位5~60%を含む)。
2.生細胞、単細胞、CD4陽性、CD8陽性、低CD69(低CD69は、CD69蛍光シグナルに基づく、生細胞、単細胞、CD4陽性、CD8陽性細胞のうちの下位5~50%を含む)。
【0450】
あるいは、各TCRライブラリーに、以下の刺激条件をそれぞれ用いることができる。
1.4eのTCR導入ジャーカットT細胞を、1ugの新生抗原ペプチドを負荷した4eのK562-HLA-A2で刺激する。
2.4eのTCR導入ジャーカットT細胞を、1μgの新生抗原ペプチドを負荷した8eのK562-HLA-A2で刺激する。
3.4eのTCR導入ジャーカットT細胞を、1μgの無関係な対照ペプチドを負荷した4eのK562-HLA-A2で刺激する。
4.4eのTCR導入ジャーカットT細胞を、1μgの無関係な対照ペプチドを負荷した8eのK562-HLA-A2で刺激する。
【0451】
その後、共培養物を採取し、CD4、CD8、CD69の蛍光標識抗体で染色する。BDバイオサイエンスARIAフュージョンフローサイトメトリーソーターを用いて、それぞれの試料について、生細胞、単細胞、CD4陽性、CD8陽性、CD69陽性細胞を選別する。
【0452】
選別したTCR導入ジャーカットT細胞からゲノムDNAを単離し、これをPCRの鋳型として使用し、TCRβ-P2A-TCRαカセットの一部を増幅する。得られたPCR産物の大きさは約1.5kbで、オックスフォードナノポアミニオンシーケンサーで配列決定し、選別したT細胞集団(低CD69および高CD69またはCD69陽性)に含まれる新生抗原特異的TCR配列の相対的な存在量を比較することができる。
【0453】
いくつかの態様では、オックスフォードナノポアミニオンシーケンサーは、他の配列決定機器に置き換えてもよく、または他の配列決定戦略を用いてもよい。
実施例7
【0454】
本実施例では、新鮮凍結メラノーマ病巣から生成したTCRライブラリーから、新生抗原特異的TCRを回収することを説明する。
【0455】
新鮮な凍結メラノーマ標本からDNAとRNAを単離し、2つの目的のために使用する。
【0456】
第一に、DNAおよび/またはRNAを単離し、これらを使用して、TCRα鎖およびβ鎖のバルク配列決定を実施する。特定のTCR鎖(の一部)のアミノ酸配列をコードする核酸分子の絶対数を、「固有の分子識別子」(UMI)を用いて固有の分子の数に基づいて決定する。別の方法として、リード数を使用することもできる。得られたTCR鎖配列のコレクションを、TCRα鎖配列のコレクションとTCRβ鎖配列のコレクションとに分ける。TCRセグメントがアミノ酸配列レベルで読み取り枠から外れて結合している、および/または停止コドンが導入されている、および/またはフレームシフト変異が存在する、および/または欠陥のあるスプライシング部位が存在する、任意の非生産的TCR鎖配列を、コレクションから除去する。各コレクションを、特定のTCR鎖をコードしている核酸分子の絶対数(あるいは、TCRα鎖またはTCRb鎖それぞれの総数に対する割合)のいずれかを用いて降順に並び替え、TCRα鎖およびTCRβ鎖の順位を決定する。最も多く存在する上位100のTCRα鎖およびTCRβ鎖を選択し、DNA合成によって断片として生成する。ライブラリー生成のために、選択した全てのTCRαおよびTCRβ断片を混合し、TCRβ-P2A-TCRαカセットをコードする連続した核酸分子に接合する。重要なことに、1つのTCRカセットにつき、TCRβ断片とTCRα断片を1つだけ結合させることができる。結果とした生じるTCRライブラリーは、約10,000のTCR発現カセットを、TCRβ-P2A-TCRα-ピューロマイシン耐性の形式で(配列番号1)含むことになる。
【0457】
第二に、腫瘍由来の組織および健常組織のDNAとRNAを使用して、全エクソーム解析(WES)によって腫瘍特異的変異のセットを決定し、RNA配列決定を利用して発現している変異遺伝子のセットを確立する。複数の腫瘍由来変異ペプチドを縦列の配置でコードする縦列ミニ遺伝子(TMG)構築物を生成することができる。TMG構築物を使用して、転写mRNAをインビトロで生成する(例えば、ステバノフ(Stevanovi)ら、サイエンス、2017)。あるいは、TMG発現構築物を、B細胞(APC)のウイルス産生/形質導入に使用することができる。
【0458】
これと並行して、メラノーマ患者由来の適合する自己血液を用いて、不死化B細胞を作製する。EBVを用いたヒトB細胞の不死化は、当業者に知られている(例えば、トラギアイ(Traggiai)ら、分子生物学の手法(Methods Mol Biol)、2012)。不死化された自己B細胞を、TMG-mRNAを用いたB細胞のエレクトロポレーションによって抗原を発現するB細胞を生成するために用いる。抗原提示細胞(APC)のエレクトロポレーションについてはこれまでにも記載があり、当業者に知られている。当業者であれば、他の方法もまた、自己のB細胞を不死化し、そのような自己の不死化B細胞によって抗原発現を誘導することを可能にすることを理解する。例えば、ペプチドによるパルス化、TMGをコードするDNAプラスミドによる形質移入またはTMGをコードするウイルス粒子による形質導入が挙げられる。
【0459】
TCRライブラリーを、当業者に知られている方法により、フェニックス-広宿主性(ATCC CRL-3213)などの広宿主性ウイルス産生細胞に形質移入する。結果として生じたレトロウイルスビリオンを使用して、ジャーカットレポーターT細胞株を形質転換する。ジャーカットレポーターT細胞株は、内因性TCR発現を欠くもので(例えば、メザドラら、ネイチャー、2017に記載)、当業者に知られている方法でCD8α-P2A-CD8β導入遺伝子(配列番号2)を形質導入すると、ヒトCD8αおよびCD8βを発現するように修飾する。ジャーカットレポーターT細胞を、TCR導入ジャーカットT細胞の頻度を全T細胞の25~30%に制限するために、TCRライブラリーを低いMOIで形質転換する。TCRβ-P2A-TCRα-T2A-ピューロマイシン耐性導入遺伝子を発現するように修飾したジャーカットT細胞を、形質導入後に細胞培養にピューロマイシンを添加して正に選択する。遺伝子組換え細胞の抗生物質選択は、当業者に既知である。当業者であればさらに、本明細書に記載の方法は、例えばFACSによるTCR導入細胞の選別や磁気ビーズの使用に基づく選別など、ピューロマイシンを使用しない選別を含み得ることを理解する。したがって、TCRカセットは、ピューロマイシン選択遺伝子を欠いていてもよい。
【0460】
TCRを導入したジャーカットT細胞を、以下の条件で、抗原を負荷したB細胞によって6時間刺激する。
1.4eのTCR導入ジャーカットT細胞を、4e抗原負荷自己B細胞で刺激する。
2.4eのTCR導入ジャーカットT細胞を、4eの自己B細胞で刺激する。
【0461】
その後、共培養物を採取し、CD4、CD8、CD69の蛍光標識抗体で染色する。BDバイオサイエンスARIAフュージョンフローサイトメトリーソーターを用いて、以下の集団をそれぞれの刺激条件に関して選別する。
1.生細胞、単細胞、CD4陽性、CD8陽性、高CD69(高CD69は、CD69蛍光シグナルに基づく、生存細胞、単一細胞、CD4陽性、CD8陽性細胞のうちの上位5~50%を含む)。
2.生細胞、単細胞、CD4陽性、CD8陽性、低CD69(低CD69は、CD69蛍光シグナルに基づく、生存細胞、単一細胞、CD4陽性、CD8陽性細胞のうちの下位5~50%を含む)。
【0462】
あるいは、各TCRライブラリーに、以下の刺激条件をそれぞれ用いることができる。
1.4eのTCR導入ジャーカットT細胞を、1μgの新生抗原ペプチドを負荷した4eのK562-HLA-A2で刺激する。
2.4eのTCR導入ジャーカットT細胞を、1μgの新生抗原ペプチドを負荷した8eのK562-HLA-A2で刺激する。
3.4eのTCR導入ジャーカットT細胞を、1μgの無関係な対照ペプチドを負荷した4eのK562-HLA-A2で刺激する。
4.4eのTCR導入ジャーカットT細胞を、1μgの無関係な対照ペプチドを負荷した8eのK562-HLA-A2で刺激する。
【0463】
その後、共培養物を採取し、CD4、CD8、CD69の蛍光標識抗体で染色する。BDバイオサイエンスARIAフュージョンフローサイトメトリーソーターを用いて、それぞれの試料について、各サンプルについて、生細胞、単細胞、CD4陽性、CD8陽性、CD69陽性細胞を選別する。
【0464】
選別したTCR導入ジャーカットT細胞からゲノムDNAを単離し、これをPCRの鋳型として使用し、TCRβ-P2A-TCRαカセットの一部を増幅する。得られたPCR産物の大きさは約1.5kbで、オックスフォードナノポアミニオンシーケンサーで配列決定し、選別したT細胞集団(低CD69および高CD69またはCD69陽性)に含まれる新生抗原特異的TCR配列の相対的な存在量を比較することができる。
【0465】
いくつかの態様では、オックスフォードナノポアミニオンシーケンサーは、いくつかの他の配列決定機器に置き換えてもよく、または他の配列決定戦略を用いてもよい。
実施例8
【0466】
本実施例では、遺伝子合成を用いたTCRレパトアの作製について説明する。
【0467】
TCRは、図3に示すような設計のカセットとして発現させることができる。このようなTCRカセットを大量に合成するために、各TCR鎖の超可変部を断片として、例えばCDR3-Jセグメントなどとして、合成する。その他の構成要素は「市販の」構成単位とすることができる。目的のTCR鎖をすべて再現するために、可変/固有の断片を合成し、「市販の」構成単位と混合する。その原理を図7に図示する。その後、すべての構成要素を混合し、組み立てることによって、図3に図示するようなTCRカセットが作製される。この組み立ては、特定の配列の突出によって制御される。つまり、特定のCDR3-Jセグメントは、異なる断片間の配列の重なりによって、特定のVセグメントにのみ融合し、すべてのTCRカセットは最終的にTCRβ-P2A-TCRαの形式になる。すべてのTCRαはすべてのTCRβ断片と対合する可能性がある。最後に、全てのTCRβ-P2A-TCRαカセットを発現ベクターにクローニングする。状況によっては、V-CDR3-J(α鎖とβ鎖の両方)を可変部分として、Cβ-P2Aを市販の構成単位として使用してもよい。
【0468】
あるいは、TCRβ-P2A-TCRαの任意のおよび全ての可能な組み合わせを、遺伝子合成によって完全に生成する。このようにして、すべてのTCRα断片とTCRβ断片をコンビナトリアルに対合させることが可能である。
【0469】
さらに別の方法としては、前述したように、コンビナトリアル合成または遺伝子合成によってTCRα断片およびTCRβ断片を生成する方法がある。しかしながら、TCRβ-P2A-TCRαカセットを生成する代わりに、得られたTCRα鎖とTCRβ鎖のコレクションを別々の発現ベクターにクローニングする。すべてのT細胞が平均して1つのTCRαと1つのTCRβを発現するように細胞をベクターコレクションで修飾することで、前述したコンビナトリアルペアリングに類似したものとなる。
【0470】
別の方法として、TCRαおよびTCRβのみを使用する代わりに、CD3εもしくはCD3ζシグナルドメインを単独でまたはCD28シグナルドメインとの組み合わせで融合させた一本鎖TCR構築物などの、修飾したTCRを用いることができる。
実施例9
【0471】
本実施例では、TCRレパトアからTCRαβ対を同定することを説明する。
【0472】
生成したTCRαβ対のライブラリーで修飾したT細胞のプールを、少なくとも1つの目的の抗原を提示する抗原提示細胞で刺激し、TCR単離用の少なくとも1つの活性化マーカーに基づいて、抗原反応性T細胞を単離する。あるいは、T細胞のプールを、細胞増殖を追跡するのに適した蛍光色素で標識し、少なくとも1つの目的の抗原を発現する抗原提示細胞によって刺激し、TCR単離用の増殖に基づいて、抗原反応性T細胞を単離する。活性化T細胞の精製は、抗体標識し、それに続いて、フローサイトメトリーソーティング、磁気ビーズに基づく選択、または他の任意の抗体結合に基づく選択方法に基づいて単離することによって、達成することができる。
【0473】
さらに別の方法では、生成したTCRαβ対のライブラリーで修飾したT細胞のプールを、少なくとも2つの試料に分割する。試料を、少なくとも1つの目的の抗原を発現しているかまたは発現していない抗原提示細胞によって刺激する。刺激後、両方のT細胞集団を一定期間インキュベートし、次いで、両方のT細胞集団をTCR分離によって分析する。両方の試料から得られたTCRαβ対を比較することで、少なくとも1つの抗原に曝露された試料においてより豊富に含まれているTCR遺伝子を同定する。増殖は、CFSEやセルトレースバイオレット(Cell Tracer Violet)などの蛍光色素の希釈の検出に基づいて、検出することができる。増殖している細胞を、フローサイトメトリーによって、希釈された蛍光シグナルに基づいて選別する。
【0474】
さらなる方法では、生成したTCRαβ対のライブラリーで修飾されたT細胞のプールを、少なくとも1つの目的の抗原を提示する抗原提示細胞によって刺激し、TCRの誘発を示す少なくとも1つのレポーター遺伝子、例えばNFAT-GFPまたはNFAT-YFPに基づいて、抗原反応性T細胞を単離する。
【0475】
さらに別の方法では、生成したTCRαβ対のライブラリーで修飾したT細胞のプールを、少なくとも1つの目的の抗原を提示する抗原提示細胞によって刺激し、そして抗原反応性T細胞を、TCRのシグナル伝達に際して獲得される抗生物質耐性に基づく抗原特異的T細胞の選択を使用して、例えばNFAT-ピューロマイシン導入遺伝子の使用によって、TCR単離用に単離する。あるいは、修飾したT細胞のプールを、目的の抗原を担持する1つ以上のMHC複合体に曝露する。TCR単離用に、MHC複合体に結合したT細胞を単離する。MHC複合体との結合に基づく単離は、フローサイトメトリーソーティングまたは磁気ビーズ濃縮によって実施することができる。
【0476】
前述したいずれの方法においても、TCR単離は、(i)バルクの抗原反応性T細胞からDNAまたはRNAを分離してTCRαβ特異的PCR産物を生成し、これをDNA配列決定またはRNA配列決定によって分析して、抗原反応性T細胞のTCRαβ遺伝子配列を決定すること、または(ii)単一細胞の使用に基づくドロップレットPCRもしくは微少流体的手法によって、分析した単一のT細胞において発現するTCRαβ遺伝子配列を分析すること、によって達成することができる。このようにして、TCRαβの転写物が活性化マーカーのレベルの上昇と共発現するT細胞のプールに含まれる単一のT細胞を検出する。
【0477】
さらなる方法では、生成したTCRαβ対のライブラリーで修飾したT細胞のプールを、少なくとも1つの目的の抗原を発現する抗原提示細胞によって刺激する。その後、単一細胞の使用に基づくドロップレットPCRまたは微少流体的手法を使用して目的のTCRαβ対を同定し、TCR単離と少なくとも1つの活性化マーカーの転写レベルでの検出とを組み合わせる。それにより、TCRαβの転写物が1つ以上の活性化マーカーのレベルの上昇と共発現するT細胞のプールに含まれる単一のT細胞を検出する。
実施例10
【0478】
本実施例では、バリアントTCRαおよびTCRβポリペプチドをコードする核酸配列のコンビナトリアルライブラリーから、機能的なTCRα/TCRβの組み合わせを同定するスクリーニング方法について説明する。
【0479】
非生存性腫瘍から新生抗原特異的TCRを同定するために、腫瘍由来のTCRα鎖およびTCRβ鎖のコンビナトリアルアセンブリーによってTCRライブラリーを生成する過程を開発した。これらのTCR鎖を、腫瘍組織から単離したDNAまたはRNAのTCRバルク鎖配列決定により同定する。TCRαβ対を約1.5kbの導入遺伝子としてコードし、レポーター細胞に導入する。抗原を発現する細胞で刺激することによって、抗原反応性TCRαβの組み合わせを発現するレポーター細胞を、遺伝子変異ライブラリーのスクリーニングで選択することができる。コンビナトリアルアセンブリーを考慮すると、各TCRバリアントは、TCRαとTCRβの両方の可変配列を決定することによってのみ、明確に同定することができる。したがって、遺伝子スクリーニング中に単離されたレポーター細胞にコードされた導入遺伝子を、約1.5kbのPCRアンプリコンとして回収し、オックスフォードナノポアシーケンスにより全長を決定し、バイオインフォマティクス分析パイプラインによって分析する。
【0480】
この過程により、癌治療への適用可能性に関してさらに評価できるTCRリード化合物を同定することができる。
1.バリアントヌクレオチド配列ライブラリーの生成
【0481】
本明細書に記載の1つ以上の例で説明したように、TCRα鎖とTCRβ鎖を選択して、コンビナトリアルペアリングを行い、それによってTCRバリアントの全セットを生成する。コンビナトリアルペアリングのため、所与のTCRバリアントは、TCRαとTCRβの可変配列を決定することによってのみ、明確に同定することができる。これには約1.5kbのPCRアンプリコンの配列決定を含めてもよい。
2.バリアントヌクレオチド配列ライブラリーのレポーター細胞への導入
【0482】
ステップ1で説明したコンビナトリアルTCRライブラリーを、ウイルス産生細胞であるフェニックス-広宿主性細胞に形質移入し、ライブラリー中に存在する全てのTCRバリアントをコードするレトロウイルスを産生する。続いて、このウイルスを用いて、内在性TCRの発現を欠くジャーカットT細胞を形質転換する。TCRライブラリーにはブラストサイジン選択マーカーがコードされており、TCRのプールを発現する形質転換されたレポーターT細胞を抗生物質で選択できるようになっている。
3.少なくとも1つの機能的特性に基づくレポーター細胞の選択
【0483】
様々なTCRを発現するレポーターT細胞のポリクローナル混合物を低密度で播種し、その後、新生抗原の候補を発現する不死化B細胞と共培養する。レポーターT細胞の量は、すべてのTCRバリアントが少なくとも100の平均カバー数で表現されるような量である。その後、共培養物を採取し、T細胞活性化マーカーCD69の高発現または低発現のいずれかに基づくFACS選別に供する。これらそれぞれの「上位」および「下位」集団を採取し、さらに分析する。その他の活性化マーカーをFACS選別に使用してもよく、その場合は、CD62L、CD137、IFN-γ、IL-2、TNF-αおよびGM-CSFを、CD69と置き換えるか、またはCD69と組み合わるかのいずれかによって、活性化レポーターT細胞を選択することができる。それに加えて、活性化した細胞を選択するために、様々なプロモーター活性レポーターを使用してもよい。
4.選択したレポーター細胞からのバリアントヌクレオチド配列の単離
【0484】
ゲノムDNAを単離し、TCRをコードするレトロウイルス挿入物のPCR増幅に供した。PCRプライマーはレトロウイルスベクターとTCRα鎖の定常領域にあり、その結果、約1500塩基のアンプリコンが得られる。すべてのTCRバリアントを少なくとも100の平均カバー数で表現するのに十分な量のゲノムDNAを使用する。特定のTCRバリアントが偏って増幅されることを防ぐために、増幅は最小限に抑えられるが、ライブラリー中で表現される各TCRについて少なくとも10000の平均カバー数を得る必要がある。ゲノムDNAからのTCR増幅を、上位および下位試料の両方について実施する。
5.単離したバリアントヌクレオチド配列の全ヌクレオチド配列のうちの、少なくとも600bpの決定
【0485】
増幅されたTCR配列をさらに、オックスフォードナノポアシーケンス用に処理する。最初のPCR反応では、テール付きプライマーを使用する。これらのプライマーには、迅速な接着化学で修飾されるバーコード付きのより外側のプライマーを用いた2回目のPCR用の新しい結合部位が含まれる。上位試料と下位試料のPCRには、それぞれ異なるバーコードを使用する。すべてのPCRステップにおいて、特定のTCRバリアントが偏って増幅されることを防ぐために、増幅は最小限に抑えられる。しかしながら、すべてのTCRバリアントを少なくとも10000の平均カバー数で表現するのに十分なPCR産物を使用する。
【0486】
あるいは前述した方法の代わりに、増幅したTCR配列を、オックスフォードナノポアシーケンス用にさらに処理する。最初のPCR反応では、TCRカセットをテールの付いていないプライマーで増幅する。次の回のPCRでは、テール付きプライマーを使用する。これらのプライマーには、迅速な接着化学で修飾されるバーコード付きのより外側のプライマーを用いた3回目のPCR用の新しい結合部位が含まれる。上位試料と下位試料のPCRには、異なるバーコードを使用する。すべてのPCRステップにおいて、特定のTCRバリアントが偏って増幅されることを防ぐために、増幅は最小限に抑えられる。しかしながら、すべてのTCRバリアントを少なくとも10000の平均カバー数で表現するのに十分なPCR産物を使用する。当業者であれば、別のPCR増幅戦略を用いてもよいことを理解するであろう。
【0487】
上位試料および下位試料由来のバーコード付きPCR産物を等モル比でプールし、最終段階でこのプールに高速1Dシークエンスアダプターを連結して、配列決定に適したライブラリー調製物を得る。このライブラリーをオックスフォードナノポアR9.4.1フローセルに負荷し、ライブラリー中でコードされる全てのTCRについて、少なくとも100リードの平均カバー数に至るまで配列決定を行う。
【0488】
バイオインフォマティクス分析には、オックスフォードナノポアグッピーツールキット(guppy toolkit)を使用する。グッピー・ベースコーラー(guppy_basecaller)を使用して、生データからシーケンスリードを取得する。グッピー・バーコーダー(guppy_barcoder)を使用して、試料を逆多重化する。あるいは、グリッドイオン(GridIon)に基づく配列決定では、ミンノウ(MinKnow)ソフトウェアパッケージを使用して、逆多重化したシーケンスリードを取得する。配列リードを、グッピー・アライナー(guppy_aligner)を用いて個々のα鎖およびβ鎖の配列から構成される参照とアライメントし、得られたビーエイエム(bam)形式のアライメントファイルから各リードのα鎖およびβ鎖の同一性を抽出する。最終ステップで、各TCRの出現頻度を計算し、さらなる分析に使用する。
6.少なくとも1つの目的のバリアントヌクレオチド配列の選択
【0489】
目的のバリアントヌクレオチド配列を同定するために、両細胞集団におけるバリアントのリードカウントによって決定される、正に選択される(マーカー分子陽性)レポーター細胞集団におけるバリアントの濃縮度と、負に選択される(マーカー分子陰性)レポーター細胞集団におけるバリアントの枯渇度を決定することにより、相対的な濃縮度に基づいてTCRを選択する。
実施例11
【0490】
本実施例では、バリアントCARタンパク質ドメインをコードする核酸配列のコンビナトリアルライブラリーから、機能的CARバリアントを同定するためのスクリーニング方法について説明する。
【0491】
最適な機能的特性を持つCARの設計を明らかにするために、CAR分子のドメインをコンビナトリアルな様式で組み立てることができる。CAR分子は、(i)抗原結合ドメイン、(ii)ヒンジドメイン、(iii)膜貫通ドメイン、および(iv)細胞内シグナル伝達ドメイン(通常2~3のシグナル伝達モジュールで構成される)を含み、約1.5kbの合成分子を形成する。CARバリアントのライブラリーをレポーター細胞に導入し、抗原発現細胞で刺激することで、所望の活性化表現型を示すCARバリアントを発現するレポーター細胞を、遺伝子スクリーニングで選択することができる。複数の分子ドメインのコンビナトリアルアセンブリーであることを考慮すると、それぞれのバリアントは、すべての可変分子部分の配列を決定することによってのみ、明確に同定することができる。したがって、遺伝子スクリーニング中に単離されたレポーター細胞にコードされた導入遺伝子を、約1.5kbのPCRアンプリコンとして回収し、オックスフォードナノポアシーケンスにより全長を決定し、そして、カスタマイズしたバイオインフォマティクス分析パイプラインによって分析する。
【0492】
この過程により、癌などの治療薬としての可能性に関してさらに評価することができるCARリード化合物を同定することができる。
1.バリアントヌクレオチド配列ライブラリーの生成
【0493】
CARバリアントのライブラリーを、複数のCARタンパク質ドメインのコンビナトリアルアセンブリーによって生成する。2つのヒンジドメイン、12の膜貫通ドメイン、および13のシグナル伝達ドメイン(各バリアントに3つのシグナル伝達ドメインが組み込まれる)により、50,000を超えるタンパク質バリアントを含むライブラリーが生成される。CARの変異体を明確に同定するためには、1.3kbのPCRアンプリコンの塩基配列を決定することができる。
2.バリアントヌクレオチド配列ライブラリーのレポーター細胞への導入
【0494】
ステップ1で説明したCARバリアントのライブラリーを、ウイルス産生細胞であるフェニックス-広宿主性細胞または293T細胞にそれぞれ形質移入し、ライブラリー中に存在する全てのCARバリアントをコードするレトロウイルスまたはレンチウイルスを産生する。続いて、このウイルスを用いて、不死化ジャーカットT細胞またはインビトロで活性化させた初代ヒトT細胞を形質転換する。CARバリアントライブラリーには、細胞表面マーカーおよび/または抗生物質選択マーカーが共にコードされており、これによりCARバリアントのプールを発現する形質転換されたレポーターT細胞を選択することができる。
3.少なくとも1つの機能的特性に基づくレポーター細胞の選択
【0495】
CARバリアントのライブラリーを発現するレポーターT細胞のポリクローナルな混合物を細胞増殖色素で標識し、低密度で播種し、そして、CAR抗原結合ドメインの同族リガンドを発現する抗原提示細胞と共培養する。使用するレポーターT細胞の量は、すべてのCARバリアントが少なくとも100の平均カバー数で表現されるような量である。その後、共培養体を採取し、少なくとも1回分裂したT細胞または分裂していないT細胞に基づくフローサイトメトリーソーティングに供する。これらそれぞれの「上位」および「下位」集団を採取し、さらに分析する。他の活性化マーカーを、例えば、CD69、CD137、IFN-γ、IL-2、TNF-αおよびGM-CSFなどを単独でまたは組み合わせて、応答性T細胞と非応答性T細胞のフローサイトメトリーによる選別に使用してもよい。さらに、応答性T細胞と非応答性T細胞を選別するために、種々の転写因子活性レポーター(NF-κB、NFAT、AP-1)、シグナル伝達レポーター(ZAP70、ERK1/2リン酸化)または細胞毒性レポーター(CD107A発現)などを使用してもよい。
4.選択したレポーター細胞からのバリアントヌクレオチド配列の単離
【0496】
選択したCARバリアントを発現するレポーターT細胞からゲノムDNAを単離し、CARをコードするレトロウイルスまたはレンチウイルス挿入物のPCR増幅に供する。PCRプライマーはCARインサートの不変領域に結合し、その結果、大きさが平均して約1300塩基のアンプリコンが得られる。
【0497】
あるいは、同様の固有の分子識別子(UMI)に基づく手法を用いてもよい。すべてのCARバリアントを少なくとも100の平均カバー数で表現するのに十分なゲノムDNAを使用する。特定のCARバリアントが偏って増幅されることを防ぐために、PCRサイクルの回数は最小限に抑えられるが、ライブラリー中で表現される各CARについて少なくとも10000の平均カバー数を得る必要がある。ゲノムDNAからのCARバリアントの増幅を、反応性レポーターT細胞と非反応性レポーターT細胞の両方について実施する(上位試料と下位試料)。
5.単離したバリアントヌクレオチド配列の全ヌクレオチド配列のうちの、少なくとも600bpの決定
【0498】
増幅されたCAR配列をさらに、オックスフォードナノポアシーケンス用に処理する。最初のPCR反応では、テール付きプライマーを使用する。これらのプライマーには、迅速な接着化学で修飾されるバーコード付きのより外側のプライマーを用いた2回目のPCR用の新しい結合部位が含まれる。上位試料と下位試料のPCRには、それぞれ異なるバーコードを使用する。すべてのPCRステップにおいて、特定のCARバリアントが偏って増幅されることを防ぐために、増幅は最小限に抑えられる。しかしながら、すべてのCARバリアントを少なくとも10000の平均カバー数で表現するのに十分なPCR産物を使用する。
【0499】
上位試料および下位試料由来のバーコード付きPCR産物を等モル比でプールし、最終段階でこのプールに高速1Dシークエンスアダプターを連結して、配列決定に適したライブラリー調製物を得る。このライブラリーをオックスフォードナノポアR9.4.1フローセルに負荷し、ライブラリー中でコードされる全てのCARについて、少なくとも100リードの平均カバー数に至るまで配列決定を行う。
【0500】
バイオインフォマティクス分析には、オックスフォードナノポアグッピーツールキットを使用する。グッピー・ベースコーラーを使用して、生データからシーケンスリードを取得する。グッピー・バーコーダーを使用して、試料を逆多重化する。配列リードを、グッピー・アライナーを用いて個々のCARバリアントの配列から構成される参照とアライメントし、得られたビーエイエム(bam)形式のアライメントファイルから各リードに関するCARバリアントの同一性を抽出する。最終ステップで各TCRの出現頻度を計算し、さらなる分析に使用する。PCRによる増幅バイアスを回避するための選択肢として、UMIに基づくCARバリアントの計数を用いてもよい。
6.少なくとも1つの目的のバリアントヌクレオチド配列の選択
【0501】
目的のバリアントヌクレオチド配列を同定するために、両細胞集団におけるバリアントのリードカウントによって決定される、正に選択される(マーカー分子陽性)レポーター細胞集団におけるバリアントの濃縮度と、負に選択される(マーカー分子陰性)レポーター細胞集団におけるバリアントの枯渇度を決定することにより、相対的な濃縮度に基づいてCARを選択する。
実施例12
【0502】
本実施例では、実施例10および11で説明した本発明のスクリーニング方法によってスクリーニングされる細胞の数の算出について説明する。
【0503】
100の組み合わせを含むコンビナトリアルライブラリーの場合、陽性反応の選択に基づいて10,000の細胞を回収し、陰性反応細胞を10,000回収することで、100倍のカバー数を達成することができる。したがって、選択前の細胞集団は20,000を超える集団とすることができる。
【0504】
1000の組み合わせを含むコンビナトリアルライブラリーの場合、陽性反応の選択に基づいて100,000の細胞を回収し、陰性反応細胞を100,000回収することで、100倍のカバー数を達成することができる。したがって、選択前の細胞集団は200,000超える集団とすることができる。
【0505】
1×10の組み合わせを含むコンビナトリアルライブラリーの場合、陽性反応の選択に基づいて1×1011の細胞を回収し、陰性反応細胞を1×1011回収することで、100倍のカバー数を達成することができる。したがって、選択前の細胞集団は2×1011を超える集団とすることができる。
実施例13
【0506】
本実施例では、ミスマッチ修復遺伝子欠損のない大腸癌(MMRp-CRC)腫瘍からの新生抗原特異的T細胞受容体配列の回収を説明する(図10A)。
【0507】
新鮮凍結した4つのMMRp-CRC腫瘍標本からDNAとRNAを単離し、以下の2つの用途に使用した。
【0508】
第一に、DNAおよび/またはRNAを使用して、TCRα鎖およびβ鎖のバルク配列決定を実施した(ミラボラトリー:モスクワ/ロシア)。得られたTCR鎖配列のコレクションをTCRα鎖配列のコレクションとTCRβ鎖配列のコレクションとに分け、1試料当たりおよそ10,000~30,000のTCRα鎖とTCRβ鎖のコレクションを得た(図10Bおよび11A)。
【0509】
図10Bおよび図11Aでは、ヒト腫瘍試料における浸潤リンパ球のバルクTCR配列決定を図示する。4つのヒトMMRp-CRC腫瘍試料を、ミラボラトリーによるバルクTCR配列決定に供した。アライメントしてTCRを同定した後、クローン型を、それらのCDR3アミノ酸配列ならびにそれらのVおよびJの同一性に基づいてまとめた。特有のクローン型の数を、各腫瘍試料のα鎖とβ鎖の両方について表す。
【0510】
TCRセグメント(TCR遺伝子要素としても知られる)がアミノ酸配列レベルで読み取り枠から外れて結合している、および/または停止コドンが導入されている、および/またはフレームシフト変異が存在する、および/または欠陥のあるスプライシング部位が存在する、任意の非生産的TCR鎖配列を、コレクションから除去した。各コレクションを、特定のTCR鎖をコードしている核酸分子のリード数または固有の分子識別子(UMI)の数のいずれか(あるいは、全TCRα鎖またはTCRb鎖それぞれに対する割合)を用いて降順に並び替え、TCRα鎖およびTCRβ鎖の順位を決定した。
【0511】
最も多く存在する上位100のTCRα鎖およびTCRβ鎖を選択し、TCRライブラリーを生成した(ツイストバイオサイエンス;サンフランシスコ/米国により実施)。簡単に説明すると、選択したTCRα鎖およびTCRβ鎖を、DNA合成によって断片として生成した。ライブラリー生成のために、選択した全てのTCRαおよびTCRβ断片を、TCRβ-P2A-TCRαカセットをコードする連続した核酸分子にコンビナトリアルに接合した(図11BにTCR発現プラスミドの模式図を示す)。TCRβ鎖とTCRα鎖の両方、ならびにブラストサイジン選択マーカーを含むレトロウイルス構築物を、ライブラリー作製のための足場として使用することができる。この構築物を用いたレトロウイルス導入により、最終的に1つの転写産物が発現し、2A部位でのペプチド切断により、TCRβ鎖、α鎖、およびブラストサイジン耐性マーカーが翻訳されることになる。TCRβ-P2A-TCRα-T2A-ブラストサイジン耐性(図11B)(配列番号4)(図43)の形式で、1つのカセットにつき1つのTCRβ断片とTCRα断片を結合させることができる。得られたTCRライブラリーは、基本的に、非常に狭い頻度範囲において脱落なしに10,000のTCRバリアントを含むものとなった(図10C図11Cおよび11D)。100×100ライブラリーの品質管理。11Aからの各試料について、最も多く存在する100のα鎖およびβ鎖を選択し、コンビナトリアルライブラリーの作製に使用した。11BのTCRβおよびTCRα領域を合成し、ツイストバイオサイエンスによって実行されたコンビナトリアルクローニング手法で11Bのベクターに挿入した。可変TCRα鎖およびβ鎖ドメインに隣接したプライマー対を使用して両鎖を増幅し、ナノポアシーケンスを用いて両鎖の同一性を明らかにした。
【0512】
10,000のα×βの組み合わせそれぞれの表現が、すべての患者ライブラリーで表された(図11D)。患者ライブラリーのTCR表現の特徴。11Cの患者ライブラリーそれぞれについて、TCRあたりのリード量の範囲、平均カバー数、および中央値±alog単位の範囲内にあるTCRの割合を表す。第二に、腫瘍由来の組織および健常組織のDNAとRNAを使用して、全エクソーム解析(WES)によって腫瘍特異的変異のセットを決定し、RNA配列決定を利用して発現している変異遺伝子のセットを確立した。腫瘍特異的な変異を同定し、選択するためのパイプラインは、選択肢を提供するものとなり得る。WESおよびRNA配列決定に基づいてそのような変異を同定する方法は、これまでにも記載があり、当業者に知られている。その後、複数の腫瘍由来の変異ペプチドを縦列配置でコードする縦列ミニ遺伝子(TMG)構築物を生成した。TMG構築物は、連鎖状で、LAMP-1シグナル伝達ドメインと膜貫通ドメイン(例えば、グロス(Gros)ら、ネイチャー・メディシン、2016に記載、ただしpt4を除く)、および2A要素を介してLAMP-1細胞質ドメインに融合したピューロマイシン耐性マーカーを含む25merのポリペプチドミニ遺伝子として、個々の12の腫瘍変異をコードする。Pt4については、LAMP-1シグナル伝達ドメインと膜貫通ドメインを含まないが、ピューロマイシン耐性マーカーを含む、異なる連鎖状のミニ遺伝子である33または34をコードする縦列ミニ遺伝子設計を用いる。並行して、MMRp-CRC患者由来の適合する自己血液を用いて、不死化B細胞を作製した。EBVを用いたヒトB細胞の不死化は、当業者に知られている(例えば、例えば、トラギアイら、分子生物学の手法、2012)。不死化した自己B細胞を使用し、TMGをコードするウイルス粒子によるレトロウイルス導入によって、抗原発現B細胞を作製した。TMG以外の遺伝子を用いたヒト初代B細胞のレトロウイルス導入の手順については、文献に記載されており(例えば、クワッケンボス(Kwakkenbos)ら、ネイチャー・メディシン、2010)、当業者に知られている。TMG導入B細胞は、ピューロマイシン耐性に基づいて選択することができる。ピューロマイシン選択のための過程は当業者に知られている。TCRライブラリーを、フュージーン形質移入試薬および当業者に知られているプロトコールにより、フェニックス-広宿主性ウイルス産生細胞(ATCC CRL-3213)に形質移入した。結果として生じたレトロウイルスビリオンを使用して、ジャーカットレポーターT細胞株を形質転換した。ジャーカットレポーターT細胞株は内因性TCR発現を欠くもので(そのような遺伝子ノックアウトの生成は、例えば、メザドラら、ネイチャー、2017に記載されている)、当業者に知られている方法でCD8α-P2A-CD8β導入遺伝子(配列番号2)を形質導入すると、ヒトCD8αおよびCD8βを発現するように修飾する。ジャーカットレポーターT細胞にTCRライブラリーを導入した結果、全ての生存しているT細胞のうち、10~60%がTCRで修飾された(図10D)。TCRライブラリーにマウスTCR定常ドメイン配列を使用したことで、マウスTCRβの定常ドメインに特異的な抗体を用いたフローサイトメトリーによって、TCR修飾ジャーカットT細胞を検出できるようになった。細胞培養にブラストサイジンを添加することで、TCRβ-P2A-TCRα-T2A-ブラストサイジン耐性導入遺伝子を発現するように改変したジャーカットT細胞が高い純度で正に選択された(図10D)。遺伝子組換え細胞の抗生物質選択は、当業者に知られている。
【0513】
次に、TCRを導入したジャーカットT細胞を、TMGを導入したB細胞と共培養することにより刺激した。共培養の3日前にジャーカットレポーターT細胞を低密度(1mlあたり0.1×10細胞)で播種した。種々のTMGを発現するB細胞は、すべて等しい比率(1:1)で混合した。90×10のプールしておいたB細胞(またはTMGを発現しない対照B細胞)を、全量72mlの培地中で90×10のジャーカットレポーターT細胞と混合した(1:1の比率)。この混合物を200μl(1ウェル当たり0.5×10)ずつ、TC処理した丸底96ウェルプレートのおよそ360のウェルに分注した。プレートを1000rpmで1分間遠心分離し、37℃で20~22時間インキュベートした。
【0514】
その後、共培養物を採取し、CD20とCD69の蛍光標識抗体で染色した。次に、4%ホルムアルデヒドを含む固定用緩衝液を使用して細胞を固定した。BDバイオサイエンスARIAフュージョンフローサイトメトリーソーターを用いて、各刺激条件について以下の集団を選別した(図10E)。
【0515】
リンパ球、単細胞、CD20陰性、高CD69(高CD69は、単細胞、CD20陰性細胞のうち、CD69蛍光シグナルに基づいて選ばれる上位10~15%を含む)。
【0516】
リンパ球、単細胞、CD20陰性、低CD69(低CD69は、単細胞、CD20陰性細胞のうち、CD69蛍光シグナルが低い方から10~15%を含む)。
【0517】
選別したTCR導入ジャーカットT細胞からゲノムDNAを単離し、これをサイクル数を制限した複数回のPCRの鋳型として使用し、当業者に知られているPCR法を用いてTCRβ-P2A-TCRαカセットの一部を増幅した。得られたPCR産物の大きさは約1.5kb(図10F)で、オックスフォードナノポアミニオンまたはグリッドイオン配列決定装置を用いて配列決定した。ここまでのスクリーニング手順全体を、最小カバー数を100倍として、TMG発現下について3回、TMG非発現下について3回、同様の反復試験を実施する。TCRα鎖およびβ鎖の同一性を回復し、DESeq2Rパッケージを使用して差次的に表されるTCRの組み合わせを同定する。B細胞におけるTMG発現の有無による平均Rlog変換リードカウントを、新生抗原反応性TCRリード化合物を図示するために使用することができる。新生抗原反応性のTCRリード化合物を、円で囲んだより大きな黒点として示す(図10G)。
【0518】
TCRリード化合物によって認識されるTMGをデコンボリューションするために、単一のTMG構築物を発現するB細胞(TMG発現B細胞の混合物ではなく)を用いて、TCRライブラリーを1回のみの反復実験でスクリーニングした(図10H)。その後、TCRリード化合物によって認識される新生抗原そのものを決定するために、TMGにコードされている単一の25merペプチドを負荷したB細胞を使用した(図10Iおよび10J)。TCRリード化合物によって認識される新生抗原そのものを、TMGにコードされる単一ミニ遺伝子を発現するB細胞を用いて決定した(図10Kおよび10L)。
【0519】
まとめると、この実施例は、説明したプラットフォームによって、新鮮な凍結腫瘍材料から新生抗原特異的TCRを首尾よく同定できることを示している。
実施例14
【0520】
本実施例では、患者特異的TCRαβライブラリーを生成するために、メラノーマ腫瘍試料からTCR配列を回収することを説明する(図12A~12C)。
【0521】
新鮮凍結した2つのメラノーマ腫瘍標本からDNAとRNAを単離し、以下の2つの用途に使用した。
【0522】
第一に、DNAおよび/またはRNAを使用して、腫瘍試料における浸潤リンパ球のTCRα鎖およびβ鎖のバルク配列決定を実施した(ミラボラトリー、モスクワ、ロシア)。得られたTCR鎖配列のコレクションをTCRα鎖配列のコレクションとTCRβ鎖配列のコレクションとに分け、1試料当たりおよそ5,000~10,000のTCRα鎖とTCRβ鎖のコレクションを得た(図12A)。2つのヒトメラノーマ腫瘍試料を、ミラボラトリーによるバルクTCR配列決定に供した。アライメントしてTCRを同定した後、クローン型を、それらのCDR3アミノ酸配列ならびにそれらのVおよびJの同一性に基づいてまとめた。特有のクローン型の数を、各腫瘍試料のα鎖とβ鎖の両方について表す。
【0523】
TCRセグメント(TCR遺伝子要素としても知られる)がアミノ酸配列レベルで読み取り枠から外れて結合している、および/または停止コドンが導入されている、および/またはフレームシフト変異が存在する、および/または欠陥のあるスプライシング部位が存在する、任意の非生産的TCR鎖配列を、コレクションから除去した。各コレクションを、特定のTCR鎖をコードしている核酸分子のリード数または固有の分子識別子(UMI)の数のいずれか(あるいは、全TCRα鎖またはTCRβ鎖それぞれに対する割合)を用いて降順に並び替え、TCRα鎖およびTCRβ鎖の順位を決定した。最も多く存在する上位100のTCRα鎖およびTCRβ鎖を選択し、TCRライブラリーを生成する(ツイストバイオサイエンス、サンフランシスコ、米国により実施)。簡単に説明すると、選択したTCRα鎖およびTCRβ鎖を、DNA合成によって断片として生成する。ライブラリー生成のために、選択した全てのTCRαおよびTCRβ断片を、TCRβ-P2A-TCRαカセットをコードする連続した核酸分子にコンビナトリアルに接合した(図11BにTCR発現プラスミドの模式図を示す)。TCRβ鎖とTCRα鎖の両方、ならびにブラストサイジン選択マーカーを含むレトロウイルス構築物を、ライブラリー作製のための足場として使用することができる。この構築物を用いたレトロウイルス導入により、最終的に1つの転写産物が発現し、2A部位でのペプチド切断により、TCRβ鎖、α鎖、およびブラストサイジン耐性マーカーが翻訳されることになる。TCRβ-P2A-TCRα-T2A-ブラストサイジン耐性(図11B)(配列番号4)の形式で、1つのカセットにつき1つのTCRβ断片とTCRα断片を結合させることができる。得られるTCRライブラリーは、基本的に、非常に狭い頻度範囲において脱落なしに10,000のTCRバリアントを含むものとなるだろう(図12B)。100×100ライブラリーの品質管理。12Aからの各試料について、最も多く存在する100のα鎖およびβ鎖を選択し、コンビナトリアルライブラリーの作製に使用することができる。12AのTCRβおよびTCRα領域を合成し、ツイストバイオサイエンスによって実行されるコンビナトリアルクローニング手法で11Bのベクターに挿入することができる。可変TCRα鎖およびβ鎖ドメインに隣接したプライマー対を使用して両鎖を増幅することができ、ナノポアシーケンスを用いて両鎖の同一性を明らかにした。10,000のα×βの組み合わせそれぞれの表現を、すべての患者ライブラリーについて表す。12C)患者ライブラリーのTCR表現の特徴。12Bの患者ライブラリーそれぞれについて、TCRあたりのリード量の範囲、平均カバー数、および中央値±alog単位の範囲内にあるTCRの割合を表す。
【0524】
まとめると、この実施例は、バルクTCR配列決定に基づいてコンビナトリアルTCRライブラリーを合成し、クローニングすることが可能であることを示している。
実施例15
【0525】
本実施例では、TCRプラスミドを混合して生成したTCRライブラリーから、抗原特異的TCRを回収することを説明する。
【0526】
それぞれが単一の特徴の分かっているTCRをコードする6のプラスミドと、それぞれが単一の特徴の分かっていないTCRをコードする24のプラスミドを混合して、TCRライブラリーを生成した(図13A)。TCR発現プラスミドの設計を図15Aに図示する。このTCRライブラリーを、フュージーン形質移入試薬および当業者に知られているプロトコールにより、フェニックス-広宿主性ウイルス産生細胞(ATCC CRL-3213)に形質移入した。結果として生じたレトロウイルスビリオンを使用して、ジャーカットレポーターT細胞株を形質転換した。ジャーカットレポーターT細胞株は内因性TCR発現を欠くもので(そのような遺伝子ノックアウトの生成は、例えば、メザドラら、ネイチャー、2017に記載されている)、当業者に知られている方法でCD8α-P2A-CD8β導入遺伝子(配列番号2)を形質導入すると、ヒトCD8αおよびCD8βを発現するように修飾する。ジャーカットレポーターT細胞にTCRライブラリーを導入した結果、全ての生存しているT細胞のうち、80%がTCRで修飾された。TCRライブラリーにマウスTCR定常ドメイン配列を使用することで(図15A)、マウスTCRβの定常ドメインに特異的な抗体を用いたフローサイトメトリーによって、TCR修飾ジャーカットT細胞を検出できるようになる。細胞培養にピューロマイシンを添加することで、TCRβ-P2A-TCRα-T2A-ピューロマイシン耐性導入遺伝子を発現するように改変したジャーカットT細胞が高い純度で正に選択された(図13B)。遺伝子組換え細胞の抗生物質選択は、当業者に知られている。
【0527】
次に、TCRを導入したジャーカットT細胞を、TMGを導入したB細胞と共培養することにより刺激した。共培養の3日前にジャーカットレポーターT細胞を低密度(1mlあたり0.1×10細胞)で播種した。90×10のTMGを発現するプールしておいたB細胞(またはTMGを発現しない対照B細胞)を、全量72mlの培地中で90×10のジャーカットレポーターT細胞と混合した(1:1の比率)。この混合物を200μl(1ウェル当たり0.5×10個)ずつ、TC処理した丸底96ウェルプレートのおよそ360のウェルに分注した。プレートを1000rpmで1分間遠心分離し、37℃で20~22時間インキュベートした。
【0528】
その後、共培養物を採取し、CD20とCD69の蛍光標識抗体で染色した。次に、4%ホルムアルデヒドを含む固定用緩衝液を使用して細胞を固定した。BDバイオサイエンスARIAフュージョンフローサイトメトリーソーターを用いて、各刺激条件について以下の集団を選別した(図13C)。
1.リンパ球、単細胞、CD20陰性、高CD69(高CD69は、単細胞、CD20陰性細胞のうち、CD69蛍光シグナルに基づいて選ばれる上位10~15%を含む)。
2.リンパ球、単細胞、CD20陰性、低CD69(低CD69は、単細胞、CD20陰性細胞のうち、CD69蛍光シグナルが低い方から10~15%を含む)。
【0529】
選別したTCR導入ジャーカットT細胞からゲノムDNAを単離し、これをサイクル数を制限した複数回のPCRの鋳型として使用し、当業者に知られているPCR法を用いてTCRβ-P2A-TCRαカセットの一部を増幅した。得られたPCR産物の大きさは約1.5kb(図13D)で、当業者に公知の技術を使用してオックスフォードナノポアミニオンまたはグリッドイオン配列決定装置を用いて配列決定することができる。TCRの同一性を、当業者に知られているアライメント技術を用いて回復し、それぞれTCRについて、上位試料対下位試料における正規化リードカウントのlog2変換した倍率濃縮を、log10変換したTCRの頻度の関数として表す(図13E;TMG発現存在下での1回の反復実験;TMG発現の非存在下における1回の反復実験)。
【0530】
まとめると、この実施例は、TCRプラスミドの混合物から、抗原反応性TCRを単離することができることを示している。
実施例16
【0531】
本実施例では、遺伝子合成によって生成したTCRライブラリーから、抗原特異的TCRを回収することを説明する。
【0532】
抗原反応性の特徴が明らかになっている5つTCRと特徴の分かっていない45または95のTCR(それぞれ50×50および100×100ライブラリ用;図14A)を選択してTCRライブラリーを生成した(ツイストバイオサイエンス、サンフランシスコ、米国で実施)。簡単に説明すると、これらのTCRに由来するTCRα鎖およびTCRβ鎖を、DNA合成によって断片として生成した。ライブラリー生成のために、選択した全てのTCRαおよびTCRβ断片を、TCRβ-P2A-TCRαカセット(配列番号1)をコードする連続した核酸分子にコンビナトリアルに接合した。ライブラリー作製のための足場として、TCRβ鎖とTCRα鎖の両方、ならびにピューロマイシン選択マーカーを含むレトロウイルス構築物を使用した。この構築物を用いたレトロウイルス導入により、最終的に1つの転写産物が発現し、2A部位でのペプチド切断により、TCRβ鎖、α鎖、およびピューロマイシン耐性マーカーが翻訳されることになる。TCRβ-P2A-TCRα-T2A-ピューロマイシン(配列番号1)の形式で、1つのカセットにつき1つのTCRβ断片とTCRα断片を結合させた。50または100のTCRそれぞれのTCRβ領域とTCRα領域を、ツイストバイオサイエンスによって実行されたコンビナトリアルクローニング手法で合成し、このベクターに挿入した。
【0533】
50×50のライブラリーを、フュージーン形質移入試薬および当業者に知られているプロトコールにより、フェニックス-広宿主性ウイルス産生細胞(ATCC CRL-3213)に形質移入した。結果として生じたレトロウイルスビリオンを使用して、ジャーカットレポーターT細胞株を形質転換した。ジャーカットレポーターT細胞株を、当業者に知られている方法でCD8α-P2A-CD8β導入遺伝子(配列番号2)を導入すると、ヒトCD8αおよびCD8βを発現するように修飾する。ジャーカットレポーターT細胞にTCRライブラリーを導入した結果、全ての生存しているT細胞のうち、15%がTCRで修飾された(形質導入4日後、つまりピューロマイシン選択後、の染色に基づく。アッセイ当日の純度は60%を上回った)。TCRライブラリー(配列番号1)にマウスTCR定常ドメイン配列を使用したことで、マウスTCRβの定常ドメインに特異的な抗体を用いたフローサイトメトリーによって、TCR修飾ジャーカットT細胞を検出できるようになる。細胞培養にブラストサイジンを添加することで、TCRβ-P2A-TCRα-T2A-ピューロマイシン耐性導入遺伝子を発現するように改変したジャーカットT細胞を高い純度で正に選択した。遺伝子組換え細胞の抗生物質選択は、当業者に知られている。
【0534】
次に、TCRを導入したジャーカットT細胞を、様々な様式で抗原を提示するように操作されたAPCで刺激した。APCには、ペプチドを負荷したJY細胞、それぞれが異なるミニ遺伝子を発現するEBV LCL細胞株の混合物、TMGを発現するEBV LCL細胞、および特定の抗原を発現するように操作されていないEBV LCLを含めた。共培養の3日前にジャーカットレポーターT細胞を低密度(1mlあたり0.1×10細胞)で播種した。APCとジャーカットレポーターT細胞を1:1の比率で、1ml当たり2.5×10の細胞密度で混合した。この混合物を200μl(1ウェル当たり0.5×10個)ずつ、TC処理した丸底96ウェルプレートのおよそ40のウェルに分注した。プレートを1000rpmで1分間遠心分離し、37℃で20~22時間インキュベートした。
【0535】
その後、共培養物を採取し、CD8、CD20とCD69の蛍光標識抗体で染色した。BDバイオサイエンスARIAフュージョンフローサイトメトリーソーターを用いて、各刺激条件について以下の集団を選別した(図14B)。
1.リンパ球、単細胞、生細胞、CD20陰性、CD8陽性、高CD69(高CD69は、単細胞、生細胞、CD20陰性、CD8陽性細胞のうち、CD69蛍光シグナルに基づいて選ばれる上位10~15%を含む)。
2.リンパ球、単細胞、生細胞、CD20陰性、CD8陽性、低CD69(低CD69は、単細胞、生細胞、CD20陰性、CD8陽性細胞のうち、CD69蛍光シグナルが低い方から10~15%を含む)。
【0536】
選別したTCR導入ジャーカットT細胞からゲノムDNAを単離し、これをサイクル数を制限した複数回のPCRの鋳型として使用し、当業者に知られているPCR法を用いてTCRβ-P2A-TCRαカセットの一部を増幅した。得られたPCR産物の大きさは約1.5kb(図14C)で、当業者に公知の技術を使用してオックスフォードナノポアミニオン配列決定装置を用いて配列決定した。TCRの同一性を、当業者に知られているアライメント技術を用いて回復し、各TCRについて、上位試料対下位試料における正規化リードカウントの濃縮倍率(y軸)を、平均TCR表現量(x軸)の関数として表した(図14D)。14D;外因性抗原存在下における各条件の1回の反復実験;外因性抗原非発現下での1回の反復実験。DESeq2Rパッケージを使用し、抗原が提示されていない「上位」および「下位」試料の両方との比較において、濃縮TCRが、抗原が提示されている「上位」試料では濃縮されていて、抗原が再提示されている「下位」試料では枯渇していると定義する線形モデルによって説明されるように、「下位」試料との比較において「上位」試料で濃縮されているTCRの組み合わせを同定した。TCRα鎖とβ鎖の同一性、および主要な統計的指標を表す(図14E)。
【0537】
100×100ライブラリーのスクリーニングを、ジャーカットレポーターT細胞が内因性TCR発現を欠くように、かつ、外因性のヒトCD8αおよびCD8βを発現するように操作したことを除いて、50×50のスクリーニングと同様の方法で実施した。50×50ライブラリーのスクリーニングとは対照的に、TMGを発現するB細胞との条件で3回、TMGを発現するように操作されていないB細胞との条件で1回、スクリーニングを反復して行った。ジャーカットレポーターT細胞にTCRライブラリーを導入した結果、全ての生存しているT細胞のうち、14%がTCR修飾T細胞となった。DESeq2Rパッケージを使用してRlog変換リードカウントを計算し、下位試料の全ての反復実験に関する各TCRの平均Rlog値を、上位試料の全複製にわたる各TCRの平均Rlog値から引き、B細胞によるTMG発現の存在下(x軸)および非存在下(y軸)における共培養について表した(図14F)。添加した5つの特徴の分かっているTCRを、円で囲んだより大きな黒点として示す。並べ替えられた確率尺度のプロットの指標として、ワルド統計量を用いた(図14G)。
【0538】
まとめると、この実施例は、50×50および100×100設計のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることで、抗原反応性TCRを同定できることを示している。
実施例17
【0539】
本実施例では、遺伝子合成を用いたTCRレパトアの作製について説明する。
【0540】
抗原反応性の特徴が明らかになっている5つTCRと特徴の分かっていない95のTCRを選択してTCRライブラリーを生成する(ツイストバイオサイエンス、サンフランシスコ、米国で実施)。簡単に説明すると、選択したTCRα鎖およびTCRβ鎖を、DNA合成によって断片として生成する。ライブラリーを生成するために、選択した全てのTCRαおよびTCRβ断片を、TCRβ-P2A-TCRαカセットをコードする連続した核酸分子にコンビナトリアルに接合する(配列番号1;ライブラリー作製のための足場として、TCRβ鎖とTCRα鎖の両方、ならびにピューロマイシン選択マーカーを含むレトロウイルス構築物を使用することができる。この構築物を用いたレトロウイルス導入によって最終的に1つの転写産物が発現し、2A部位でのペプチド切断により、TCRβ鎖、α鎖、およびピューロマイシン耐性マーカーが翻訳されることになる)。1つのカセットにつき1つのTCRβ断片とTCRα断片を、TCRβ-P2A-TCRα-T2A-ピューロマイシンの形式で結合させることができる(配列番号1;図15A)。可変TCRα鎖およびβ鎖ドメインに隣接したプライマー対を使用して両鎖を増幅することが可能であり、ナノポアシーケンスを用いて両鎖の同一性を明らかにしたTCR鎖の同定は、当業者に知られている。100×100ライブラリーについて、10,000のα×βの組み合わせそれぞれの表現を示す。得られたTCRライブラリーは、非常に狭い頻度範囲において脱落なしに10,000のTCRバリアントを含んでいた(図15B)。
【0541】
コンビナトリアルライブラリーを構成する別の方法が想定され、この方法では、複合ライブラリー中に存在することが求められる全てのTCRの組み合わせを、個別にではなく集合的に表現する、重複したまたは重複していない複数のコンビナトリアルサブライブラリーから、より複雑なライブラリーを作製することができる(図15C)。あるいは、生じる可能性がある全てのα鎖とβ鎖の組み合わせの全てを複合ライブラリー中に表現させないような形で、より小さいコンビナトリアルサブライブラリーからより大きなライブラリーを構成することによって、ライブラリーの複雑度を低減することができる。当業者は、対合情報または対合尤度を用いて、対合した鎖や対を形成する可能性が高い鎖の全てが、コンビナトリアルサブライブラリーのうちのいずれか1つに含まれるように、コンビナトリアルサブライブラリーを設計することができる(図15D)。
【0542】
図15Eでは、4つの100×100ライブラリーを合成し、これらを1:1:1:1の比率で混合して作製した2つの200×200TCRライブラリー中に存在するTCRの組み合わせの同定についてを図示している。生じる可能性のあるTCRの組み合わせそれぞれの出現(x軸)を、その密度(y軸)として表す。中央値±1log2単位の範囲に入るTCRの組み合わせの数は、それぞれ、92%と88%である。図15C)に示した、4つの100×100ライブラリーを1:1:1:1の比率で混合することによって200×200ライブラリーを作製するという考えを、2つの患者ライブラリーについて試験する(図15E)。このことは、より複雑度の低い複数のコンビナトリアルTCRライブラリーを混合することによって、より複雑度の高いコンビナトリアルTCRライブラリーを作製できることを示している。
【0543】
図15Fは、200×200ライブラリーのスクリーニングにおける新生抗原の非存在下および存在下でのpt-2TCR反応性を表す。200×200ライブラリーを、図10A~10HのバルクTCR配列決定データを用いて測定した、最も頻繁に発現する193本のTCRα鎖およびTCRβ鎖をコンビナトリアルに接合することによって作製する。さらに、7つの既に特徴が明らかになっているTCRα鎖とTCRβ鎖を含める。200×200ライブラリーは、gDNA単離後のカバー数が57~133の範囲であること、TMGが発現している条件で2回の反復実験を、TMGを含まない条件で2回の反復実験を行ったことを除いて、10A~10Hに記載の100×100ライブラリーのスクリーニングと同様にスクリーニングする。また、FACS選別の前に、抗CD20または抗Ly6Gマイクロビーズを用いてB細胞を枯渇させる点も異なる。TCRα鎖およびβ鎖を同定した後、DESeq2Rパッケージを使用して、差次的に発現したTCRの組み合わせを同定する。差次的表現分析は当業者に知られている。B細胞によるTMG発現の存在下(x軸)および非存在下(y軸)における200×200ライブラリースクリーニングの平均Rlog変換リードカウントを、図15Fに表す。6つの添加した特徴の分かっているTCRを、より大きな濃い灰色の点として示す。1つの特徴の分かっているTCRは、pt2-EBV LCLでは発現しないHLAアレルに限定されているため、表れていない。100×100ライブラリーのスクリーニングによって、10A~10Hで同定したTCRを、より大きな薄い灰色の点で示す。i)200×200ライブラリーのスクリーニングで同定されたが、ii)100×100ライブラリーでは表現されなかったその他のTCRリード化合物は、より大きな、中間程度の陰影をつけた灰色の点として表した。
【0544】
このことは、ライブラリーに添加された6つのTCRが、200×200のスクリーニング手法で同定されることを示している。さらに、100×100ライブラリーでは表現されなかった新規TCRリード化合物が、200×200ライブラリーのスクリーニングで同定できることを示している。このように、飽和ライブラリースクリーニングでは、100×100のTCRライブラリーを用いたスクリーニングよりも、200×200、あるいはより複雑なTCRライブラリーから、より多くの新生抗原反応性TCRが同定できる可能性がある。
【0545】
図15Gは、6つの特徴の分かっているTCRと、100×100ライブラリスクリーンを用いて10A~10Hで同定されたTCRの、100×100と200×200ライブラリースクリーニング両方における統計的な指標を表している。DESeq2の基準平均指標で測定した、10A~10Hにおいて100×100ライブラリーのスクリーニングで同定されたTCRの表現量は、200×200のスクリーニングでは100×100のスクリーニングに比べ6分の1以下に少なくなっている。このことは、これらのTCRを同定できなかったことの説明になると考えられ、また、TCRライブラリーにおいてTCRバリアントを均等に表現させることの重要性を強調するものである。
【0546】
まとめると、この実施例は、複数のコンビナトリアルサブライブラリーを組み合わせるという考えに基づいて、遺伝子合成を用いてどのようにTCRライブラリーを作製できるかについてと、ライブラリーの複雑度をどのようにして低減させることができるかについてを示している。
実施例18
【0547】
本実施例では、TCRレパトアからTCRαβ対を同定するための共培養条件の最適化について説明する。
【0548】
この実施例では、共培養条件を調整し、これを使用して、高度に希釈された抗原反応性TCRのTCRレパトアから、TCRαβ対を同定した。CD69の、スクリーニング目的におけるT細胞活性化マーカーとしての適合性を試験するために、hCD8およびCMV#1-TCRを発現するジャーカットT細胞を、様々な量のCMVペプチドを負荷したJY細胞と共培養した。APCのペプチド負荷は、当業者に知られている。FACSで測定したCD69陽性率は、抗原ペプチドの濃度に依存して増加する(図16A)。
【0549】
播種密度がジャーカットT細胞のCD69染色のバックグラウンドに影響を与えるかどうかを調べるために、細胞を様々な密度で播種した。低密度で播種すると、FACSによって測定されるCD69のバックグラウンドでの発現が低減する(図16B)。最適な共培養プレートが何であるかを試験するために、TCRを発現するジャーカットレポーターT細胞を、T75もしくはT25フラスコまたは丸底96ウェルプレート中で、関連抗原を発現するB細胞と共培養した。ジャーカットT細胞の活性化は、丸底96ウェルプレートで共培養した場合に最も顕著である(図16C)。T細胞の活性化に対する共培養密度の影響を調べるために、TCRを発現するジャーカットT細胞を様々な密度で共培養した。ジャーカットT細胞の活性化は、共培養中に250,000または125,000のエフェクター細胞を播種したときに最も効率的である(図16D)。図16A~16Dで決定した共培養条件を遺伝子スクリーニングの設定で試験するために、5つの特徴の分かっているTCRのうちの1つまたは24の特徴が明らかになっていない(非関連)TCRのうちの1つをそれぞれ発現するジャーカットT細胞株を混合することによって、ジャーカットレポーターT細胞のポリクローナルプールを作製した。特徴の分かっているTCRを発現する細胞が1:10,000~1:1,000,000の間の頻度で存在するように混合した。共培養の3日前に細胞を低密度(100,000細胞/ml)で播種し、共培養は、丸底96ウェルプレートに25万細胞の播種密度で行った。
【0550】
20時間後、共培養物を採取し、CD20とCD69の蛍光標識抗体で染色した。次に、4%ホルムアルデヒドを含む固定用緩衝液を使用して細胞を固定した。BDバイオサイエンスARIAフュージョンフローサイトメトリーソーターを用いて、各刺激条件について以下の集団を選別した。
1.リンパ球、単細胞、CD20陰性、高CD69(高CD69は、単細胞、CD20陰性細胞のうち、CD69蛍光シグナルに基づいて選ばれる上位10~15%を含む)。
2.リンパ球、単細胞、CD20陰性、低CD69(低CD69は、単細胞、CD20陰性細胞のうち、CD69蛍光シグナルが低い方から10~15%を含む)。
【0551】
選別したTCR導入ジャーカットT細胞からゲノムDNAを単離し、これをサイクル数を制限した複数回のPCRの鋳型として使用し、当業者に知られているPCR法を用いてTCRbカセットを増幅した。得られたPCR産物の大きさは約1.5kbで、当業者に知られている技術を使用し、イルミナ(Illumina)配列決定装置を用いて配列決定することができる。TCRの同一性を、当業者に知られているアライメント技術を用いて回復し、それぞれTCRについて、上位試料対下位試料における正規化リードカウントの倍率濃縮を表す(図16E)。
【0552】
まとめると、この実施例は、記載した共培養条件を用いた遺伝子スクリーニングにより、1:1,000,000以上の頻度を有する抗原反応性TCRを同定できることを示している。
実施例19
【0553】
このようなライブラリーから新生抗原特異的TCRを高感度で同定し、その他の処理工程でTCRが失われないようにするためには、TCRのカバー数を維持するために、スクリーニング工程で固有のTCRをそれぞれ複数回表現させなければならない。したがって、多数のTCR導入ジャーカット細胞およびAPCをスクリーニングする必要がある33。さらに、10,000を超えるTCRを高感度にスクリーニングできるように、ライブラリーのTCR数を増やすことも目標の一つである。このことは、TCRカバー数を維持しながら多数の細胞のより効率的な処理を可能にするために、様々な処理ステップを最適化することによって、TCR発見プラットフォームの拡張性を高める必要性を強調するものである。したがって、本研究の目的は、TCR単離プラットフォームの感度を維持しながら拡張性を高めるために、これらの処理ステップの多くをさらに最適化することであった。
【0554】
これらの研究では、4つの既知の、HLA-A02:01拘束性TCRであるCDK4-TCRのクローン8および17(略してCDK4-8および17)ならびにCMV-TCRのクローン1および2(略してCMV-1および2)を使用した。この2つのCDK4TCRは、変異したサイクリン依存性キナーゼ4(CDK4R24C)ペプチドに特異的である。この変異由来の新生抗原エピトープは、複数のメラノーマ患者で同定されている34。さらに、2つのCMVTCRは、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)の構成要素であるpp6535によってコードされるペプチドを標的としている。CDK4とCMVエピトープの両方について、潜在的に異なる親和性を持つ2つの異なるTCRクローンを研究において使用した。これにより、同族ペプチドに対するTCRの親和性がスクリーニング過程に果たす役割を評価することができる。
【0555】
大量の細胞を処理する最初のステップとして、レトロウイルス導入後のTCR発現ジャーカット細胞を濃縮する方法としてのブラストサイジン選択を評価した。その結果、ブラストサイジン選択によって、形質導入されたジャーカット細胞を効率的に濃縮することができ、毒性も最小限に抑えられることが確認された。さらに、共培養の形式を96ウェル(96W)丸底プレートからGMPバッグに拡張することにより、エフェクター細胞の活性化を同等に維持しながら、少なくとも170×10のエフェクターと標的細胞のハイスループットな処理が可能であることがわかった。
【0556】
次に、TCRライブラリーのスクリーニング過程におけるフローサイトメトリーを使った選別のステップをビーズの使用に基づく選別ステップに置き換えるために、様々な方法を検討した。CD69に加えて、T細胞活性化マーカーであるCD25とCD62Lを長期的な共培養アッセイで評価した。CD25はIL-2受容体α鎖として機能し、活性化後のT細胞に発現することが知られている32。一方、CD62LはナイーブT細胞に発現し、T細胞の活性化により下方制御され、エフェクターT細胞が血流に再還流することを可能にする36。CD25とCD62Lは有望な発現プロファイルを示したため、CD69と組み合わせた2ステップのビーズに基づく選択の候補である。
【0557】
最後に、NFATを用いたレポーター系の有効性を評価した。T細胞の抗原特異的応答を研究するために、複数のヒトNFAT結合部位に続いて最小プロモーターとレポーター遺伝子を含むベクターが確立されてきた37-40。最小プロモーターはいかなるNFAT結合部位をも含まず、その唯一の目的は、NFAT結合部位に転写因子が結合するとレポーター遺伝子の転写を開始させることである。これらの構築物を導入したジャーカット細胞は、T細胞が活性化している時にのみ、レポーター遺伝子を発現する。ビーズによる選別に好適な細胞表面マーカーや抗生物質耐性遺伝子をレポーター遺伝子として導入することで、フローサイトメトリーによる選別ステップを回避することも可能である。しかしながら、結果から、このレポーター系を使用すると、バックグラウンドが高くなるため、スクリーニングプラットフォームに組み込むことは困難であることが示された。
結果
【0558】
ペプチド滴定アッセイにより、CDK4-TCRのクローン8と17、CMV-TCRのクローン1と2の間の親和性には差がない、もしくは差があってもごく僅かであることが示唆された。
【0559】
研究に使用する前に、4つのモデルTCR(CDK4-TCRのクローン8と17、CMV-TCRのクローン1と2)のそれらの同族ペプチドに対する親和性を明らかにした。このことは、共培養アッセイでペプチド滴定を行うことで達成した。
【0560】
4つのTCRを、レトロウイルス遺伝子導入によりジャーカットTCRノックアウト(KO)CD8陽性細胞株に導入した。導入したジャーカットTCR KO細胞のうち、35~45%がmTCRβ陽性CD8陽性であり、CD8陰性集団も示された(図17a、上段)。共培養アッセイを行っている間に導入効率が補正されることを避けるために、TCR導入ジャーカット細胞を選別して、およそ90%のmTCRβ陽性CD8陽性細胞の集団を得た(図17a、下段)。
【0561】
CD69を読み出し情報として用い、CDK4-8および17を導入したジャーカットTCR KO細胞と、段階的に濃度を変えたCDK4変異ペプチドを負荷したHLA-A02:01発現JY細胞を20時間共培養すると、CDK4-17TCRはCDK4-8TCRよりもその同族ペプチドに対してわずかに高い親和性を持つことが明らかになった(図17b、CDK4-8のEC50:43ng/ml,CDK4-17のEC50:23ng/ml)。CMV-TCRの場合、これらのTCRを発現するジャーカットTCR KO細胞を、段階的に濃度を変えたCMVpp65ペプチドを負荷したHLA-A02:01発現JY細胞と共培養すると、CMV-1および2TCRはCMVpp65ペプチドに対して同等の親和性を示した(図17c、CMV-1のEC50:2.2ng/m,CMV-2のEC50:1.2ng/ml)。
【0562】
したがって、このデータは、CDK4-8と17はCDK4変異ペプチドに対して同等の親和性を持ち、CMV-1と2はCMVpp65ペプチドに対して同等の親和性を持つ(あるいは親和性には最小限の差しかない)ことを示唆している。しかし、これらの異なるTCRクローンは、スクリーニング過程に対するTCRの親和性の影響を研究するためのツールとしては、その価値は限定的である。そこで、CDK4-TCRのうちの1つとCMV-TCRのうちの1つを、TCRのライブラリーを用いた試験を進める前に、研究に標準的に含めることにした。
【0563】
TCRの導入効率が異なるジャーカット細胞は、ブラストサイジンで効率的に選択される。
【0564】
レトロウイルスTCRライブラリーをジャーカットTCR KO細胞に導入した後、毒性を引き起こすこともTCRのカバー数を喪失することもなく正常にTCR導入されたジャーカット細胞を濃縮するためには(mTCRβ陽性CD8陽性細胞が80%超にするためには)、効率的でハイスループットの選択手順が有用である。抗生物質選択は、TCR導入ジャーカットT細胞を濃縮するための魅力的な戦略であるため、これについて評価した。
【0565】
この目的で、まずCDK4-17TCRを用いてブラストサイジン選択を評価した。TCRライブラリーの導入効率は様々であるため(mTCRβ陽性CD8陽性細胞は、通常10~56%の範囲)、CDK4-17導入効率の異なるジャーカットTCR KO細胞(mTCRβ陽性CD8陽性細胞が10%と30%)を使用して、ブラストサイジン選択を評価した。細胞を1ml当たり0.25×10細胞の密度で播種し、6μg/mlのブラストサイジンで7日間選択すると、より低濃度の抗生物質(2および4μg/ml)や開始時の密度をより高く(0.5および1×10細胞/ml)した場合と比較して、増殖倍率が最も高くなった。さらに、前述の選択条件により、mTCRβ陽性CD8陽性細胞はおよそ90%となった(データは示していない)。
【0566】
CDK4-17に最適なブラストサイジン選択条件が他のTCRにも適用できるかどうかを検証するために、CMV-TCRの一つであるCMV-1について調べた。さらに、より早い時点でブラステイシジンを除去することで、選択が継続され、増殖倍率が改善されるかどうかについても評価した。そのために、選択4日目に、細胞をそれぞれの濃度のブラストサイジンを含む培地または含まない培地に、開始時と同じ密度で再度、播種した(それぞれ「4日目にブラストサイジンを除去」「4日目に新しいブラストサイジンを添加」と示す)。
【0567】
異なる導入効率を達成するために、異なる容量のレトロウイルス上清によってジャーカットTCR KO細胞を形質転換した(mTCRβ陽性CD8陽性細胞が6、20、60%、図18a)。
【0568】
TCRを導入した細胞を0.25×10細胞/mlの濃度で播種し、異なる濃度のブラストサイジン(0、4、5、6μg/ml)で選択した。4日目にブラストサイジンを除去した細胞と除去していない細胞の間に、選択から6日後の増殖倍率の点で顕著な差はなかった。CDK4-17TCRのデータとは逆に、より低濃度のブラストサイジン(4および5μg/ml)で導入効率の異なるジャーカット細胞を選択すると、6μg/mlのブラストサイジンで選択した細胞よりも、増殖倍率がわずかに高いようであった(図18b、図25aに非導入細胞の増殖倍率を示す)。増殖倍率におけるこれらの差異にもかかわらず、ブラストサイジン濃度を変化させることで、一貫してmTCRβ陽性CD8陽性細胞の選択効率は80~90%となった(図18c、図25bは、4μg/ml条件におけるNT細胞の割合が、非常に少数の生存細胞が存在し、その一部がmTCRβ陽性CD8陽性ゲートに出現していることに起因していることを示している)。最後に、4日目にブラストサイジンを除去しても、増殖倍率および選択効率に影響を与えなかった(図18b,c)。4μg/mlの抗生物質を用いることで、増殖倍率が高くなり、80~90%のmTCRβ陽性CD8陽性細胞が得られたため、このデータに基づいて、4μg/mlのブラストサイジンで選択したジャーカット細胞のみを用いた7日目での測定を継続した。さらに、試験した3つの濃度の結果から、4μg/mlブラストサイジンを使用することで毒性が最も低くなると判断した。
【0569】
選択から7日後時点の生存細胞総数およびmTCRβ陽性CD8陽性細胞の両方に関して、4日目にブラストサイジンを除去したTCR導入ジャーカット細胞は、4日目にブラストサイジンを添加した細胞よりもわずかに高い増殖倍率を示した(図18d)。しかしながら、4日目にブラストサイジンを除去しても、試験した全ての条件において90%超のmTCRβ陽性CD8陽性細胞をもたらす選択効率に影響はなかった(図18e)。
【0570】
注目すべきは、4日目にブラストサイジンを除去するか添加するかによって、CD8とmTCRβの二重陽性ジャーカット細胞のmTCRβのMFIに違いが観察されたことである。ブラストサイジンを添加した細胞は、4日目にブラストサイジンを除去した細胞よりも高いMFIを示した。この差は、選択後6日目よりも7日目の方がより顕著であった(図26)。
【0571】
結論として、CMV-1導入効率の異なるジャーカットTCR KO細胞は、3種類の異なる濃度のブラストサイジン(4、5、6μg/ml)で効率的に選択された。増殖倍率の点では、試験した3種類の抗生物質濃度間における差はわずかではあったが、低濃度のブラストサイジンの毒性が低いようであった。さらに、より早い時点でブラストサイジンを除去することで選択を継続することができ、7日間の選択期間中ずっと抗生物質に細胞を暴露するよりも増殖倍率がわずかに良くなることが示された。
【0572】
CD69活性化マーカーの発現は、GMPバッグを用いたジャーカット細胞とAPCの共培養と丸底96ウェルプレートを用いた共培養とで同等になる。
【0573】
また、スクリーニングプラットフォームの拡張性を高めるためには、確立されている丸底96ウェルプレートを用いた共培養の形式を最適化し、TCRのカバー数を維持しながら、多数のエフェクター細胞と標的細胞をより効率的に処理できるように設定する必要がある。これまでの研究から、96ウェルプレートのウェルよりも大きな表面積を持つ平底の細胞培養容器で共培養を行うと、ジャーカット細胞におけるCD69の発現が低減することが示されている。さらに、このような共培養においてE:T比や開始時の細胞密度を変化させても、エフェクター細胞でCD69発現の増強は引き起こされなかった(データは示していない)。このデータは、丸底96ウェルプレートのような丸底の培養容器を用いると、エフェクターと標的がより効率的に接触することを示唆している。そこで、エフェクターと標的の接触が強化され、1つの培養容器中で多量の細胞数を処理できる、より大規模な共培養系を特定することにした。
【0574】
異なる共培養系を比較する目的で、明確にCD69陽性の集団および陰性の集団を得るために、40~50%がTCR陽性であるCD8陽性ジャーカット細胞をエフェクター細胞として使用した(図19a、19b、19cおよび19dの左側)。標的細胞としてはHLA-A02:01を発現するEBV不死化B細胞(EBV LCL)を利用して、TCR発現ジャーカット細胞によって認識される抗原を発現するように操作した(EBV LCL-TMG2.1)。
【0575】
まず、15mlおよび50mlのファルコンチューブをラックに設置して共培養を行い、エフェクターと標的の接触強化について検討した。ファルコンチューブは細胞培養処理されていないため、少量の細胞(2×10以下の細胞、96ウェルプレートのウェルと15/50mlファルコンチューブの直径の違いから拡大した)を用いて、20時間共培養後の細胞生存率とエフェクター細胞の活性化を評価した。生存細胞およびCD69陽性細胞の割合は、96ウェルプレートでの共培養とファルコンチューブでの共培養の間で同等であった(図19a)。しかし、細胞数を38×10まで増加させると、細胞生存率は急激に低下した(図19a)。
【0576】
注目すべきは、CD69の上方制御がジャーカット細胞活性化の唯一の指標であったため、抗ヒトCD69抗体(クローンFN50)がCD69発現を正確に表しているかどうかが検証されたことである。異なるエピトープを認識する2つの抗ヒトCD69抗体(クローンCH/4)を用いた共染色により、2つの異なる抗体クローン間の染色のレベルが同等であることが明らかになった(図27)。
【0577】
次に、ファルコンチューブを用いた共培養での細胞損失が、大気と接する培地の表面積が小さく、効率的なガス交換ができないことに起因するかどうかを検討した。これを評価する目的で、ファルコンチューブを遠心沈殿し、38×10の細胞が入ったチューブから14mlの培地を取り、全容量を1mlとした。しかしながら、38×10の細胞を含むファルコンチューブでの共培養では、細胞生存率の急激な低下が観察された(図19b)。加えて、250mlチューブを用いた共培養をさらにテストした。これらの容器は直径が広く、より効率的なガス交換が起こる可能性があるからである(適切な遠心分離ローターが利用できなかったため、遠心沈殿は行わなかった)。250mlチューブを用いた共培養では、96ウェルプレートでも共培養と同様にCD69が上方制御されたが、細胞死は増加した(図19b)。
【0578】
多数の細胞を(ファルコン)チューブに入れて共培養を行うことは、細胞死が増加するため、実行が不可能であると結論付けられた。この細胞生存率への影響は、ガス交換が非効率になったことと、多数の細胞を(ファルコン)チューブに入れたことに起因する可能性がある。そこで、多数の細胞を収容でき、バッグの表面積全体を使ったガス交換を起こすことが可能な培養容器である、MACS GMP細胞分化バッグ500(略してGMPバッグ)を用いて、細胞生存率およびエフェクターと標的の接触を評価した。
【0579】
現行のTCRライブラリーのスクリーニングプラットフォームでは、10,000のTCRをスクリーニングすることが可能であり、TCRのカバー数を維持するためには、170×10のエフェクター細胞と標的細胞との共培養が必要とされる。そこで、GMPバッグを使用し、170×10のジャーカット細胞とAPCとの共培養を設定した。
【0580】
あるいは、スクリーニングプラットフォームには80×10^6のエフェクター細胞と80×10^6の標的細胞を含めることができるので、値を160×10^6とすることが可能である。また、少なくとも80×10^6個の細胞を保持する必要があるが、多チャンネルの使用によって細胞の10%程度を喪失する可能性があるため、それを補う意味で、共培養を90×10^6の細胞を含めて設定することができる。
【0581】
エフェクターと標的の接触を強化し、効率的なガス交換を可能にするため、GMPバッグを丸いザルに水平に設置した(図19c)。20時間共培養した後、GMPバッグでの共培養と96ウェルプレートでの共培養の間では、同等の細胞生存率とCD69の上方制御が観察された。しかし、CD69のMFIは、GMPバッグの条件でわずかに低下した(図19c)。そこで、GMPバッグを遠心沈殿すれば、CD69MFIが上昇するかどうかを評価した。GMPバッグの遠心沈殿を可能にするために、バッグを遠心分離機のローターに垂直に置き、細胞を乱すことなくザルに移した。遠心沈殿しないGMPバッグも、直立させた状態で置いた。CD69陽性ジャーカット細胞の割合およびMFIは、GMPバッグでの共培養と96ウェルプレートでの共培養の間で同等であった。また、20時間共培養する前にエフェクター細胞と標的細胞を遠心沈殿させたかどうかによっては、CD69の発現に大きな違いは認められなかった(図19d)。しかしながら、GMPバッグで20時間共培養すると、細胞生存率が低下した。驚くべきことに、細胞の損失量は、GMPバッグごとに異なっていた(図19d)。
【0582】
以上のことから、GMPバッグでの共培養は、すでに確立されている96ウェルプレートを用いた共培養フォーマットと同様に、エフェクター細胞の活性化をもたらすことが示唆された。しかしながら、図19dに示した細胞死の増加の原因を調べるためには、さらなる研究、例えば、バッグの置き方の違いなどに関する研究が必要である。
【0583】
CD25とCD62Lは、CD69と組み合わせた2段階のビーズを用いた選択に適した発現プロファイルを示す。
【0584】
これまで、20時間の共培養とフローサイトメトリーソーティングに続くTCRライブラリースクリーニングのプラットフォームでは、活性化ジャーカット細胞を選択するための活性化マーカーとして、CD69が使用されてきた。より拡張可能なビーズの使用に基づく選択手法を評価するために、CD69に加えて、2つの補足的なT細胞活性化マーカーであるCD25とCD62Lの発現プロファイルを調査した。この目的で、同族抗原を発現する標的細胞と共培養した後、TCRを導入したジャーカット細胞におけるCD69、CD25、CD62Lの発現を経時的に分析した。
【0585】
ジャーカット細胞におけるCD69の上方制御は、共培養を開始してから16~32時間後も安定して維持されているようであった(図20a)。これと比較して、CD25陽性およびCD69陽性CD25陽性エフェクター細胞の発現プロファイルは、共培養開始後24時間目の時点でわずかな上方制御を示した(図20b、20c)。さらに、CD62Lの下方制御は、共培養開始後16~20時間目の間でわずかに強まり、32時間目まで安定したままであることが観察された。しかしながら、共培養開始後の分析した様々な時点において、未刺激のTCR導入ジャーカット細胞および非導入ジャーカット細胞のうちの20~40%がCD62L陰性であることから、CD62Lを活性化マーカーとして使用するとバックグラウンドシグナルが高くなった(図20d)。CD69とCD62Lの共発現分析により、CD62Lの発現を非特異的に下方制御するエフェクター細胞は、CD69を上方制御しないことが判明した。さらに、共培養の開始から16~32時間後には、CD69の発現は上方制御されるがCD62Lの発現を欠く活性化ジャーカット細胞の集団が観察された(図20e)。
【0586】
CD25とCD62Lは、その発現がCD69の上方制御と相関することから、この予備的な経時的分析において有望な発現プロファイルを示し、これらをCD69と組み合わせて2段階のビーズに基づく選択過程に使用できる可能性が示唆された。
【0587】
レンチウイルスNFATレポーター系は、ジャーカットT細胞および初代T細胞において高いバックグラウンドシグナルを示す。
【0588】
TCRライブラリーのスクリーニング過程において、反応性TCRを選択するために内因性の細胞表面活性化マーカーを使用する代わりに、ジャーカット細胞においてNFATに基づくレポーター系を構築する方法が考えられる。このレポーター系を構築することにより、活性化ジャーカット細胞を抗生物質で選択することができ、フローサイトメトリーソーティングを回避できる可能性がある。あるいは、抗生物質耐性カセットを、ビーズの使用に基づく濃縮に好適な任意の細胞表面マーカーに置き換えることができる。
【0589】
4種類のレンチウイルスNFATに基づくレポーターベクターを設計した。自己不活性化(SIN)レンチウイルスプラスミドは、切断されて活性のない5'LTRプロモーターを含むため、ゲノムに組み込むと、ピューロマイシン耐性レポーター遺伝子の転写は、NFAT転写因子がNFAT結合部位に結合することにのみ依存することとなる41。3つの構築物は、2つ、4つ、または6つの同一のNFAT結合部位を含み、その後に最小IL2プロモーターが続くものである。4つ目のベクターは、少なくとも3つの異なるNFAT結合部位から構成される、完全なIL2プロモーターを含むものである(図21a)。最も感度の高いレポーターを決定するために、異なるNFATを使用したレポータープラスミドを試験した。
【0590】
NFATに基づくレンチウイルスベクターを、pmaxGFPプラスミドと共にHEK293T細胞に導入した。導入効率の指標として、形質移入後3日目のウイルス産生細胞における一過性のGFP発現を用いた。HEK293T細胞は100%GFP陽性であり、レンチウイルスの導入が成功したことが示唆された(図21b)。次に、レンチウイルス上清を使ってジャーカットTCR KO細胞の形質転換を行い、その後、細胞を非生理的なPMA/イオノマイシン刺激に24時間暴露して、レポーター系の有効性を評価した。NFATの活性化は、刺激後72時間で最大となることが分かっている38。そこで、PMA/イオノマイシン刺激の後、3日間のピューロマイシン選択を行った。しかしながら、生存率は、NFAT導入ジャーカット細胞で急激に低下し、ピューロマイシンに曝露した導入細胞と非導入細胞の間で同等となった(図21c、上段)。活性化された細胞の99%超がCD69陽性であり、刺激が効率的であったことを示唆した(図21c、下段)。
【0591】
NFATを導入したピューロマイシン選択細胞を20日間増殖させ、2回目の刺激と選択を行った。この実験における非導入ジャーカット細胞は、図21cの非導入細胞とは異なることに留意されたい。PMA/イオノマイシン刺激に続いて、様々な濃度のピューロマイシンで4日間選択した結果、細胞生存率の点で、刺激したNFAT導入細胞と刺激していないNFAT導入細胞との間に大きな差はなかった(図21d)。驚くべきことに、CD69の発現は、非導入細胞よりも導入細胞で低かった(図21d)。この説明の1つとして、NFAT導入ジャーカット細胞が、1回目の非生理的PMA/イオノマイシン刺激から完全には回復していなかったことが考えられる。
【0592】
まとめると、このデータは、T細胞刺激後にピューロマイシン耐性NFAT導入ジャーカット細胞が濃縮されないことを示している。pmaxGFPプラスミドの形質移入が効率的であったとしても、レンチウイルス構築物の形質移入と導入がうまくいかなかったかもしれない(図21b)。他に可能な説明としては、抗生物質の選択が最適ではないことや、漏れのあるレポーター系であることが考えられる。前述した考えの一部に対処するために、以降の実験は、EGFPレポーター遺伝子を含むNFATレポーター構築物を用いて行った(図22a)。あるいは、レポーター遺伝子を、ビーズに基づく選択/抗生物質耐性遺伝子に好適な任意の細胞表面マーカーとすることができる。
【0593】
レンチウイルスの形質移入効率は、EGFP NFATプラスミドを用いることで、HEK293T細胞におけるCMV誘導性GFP発現の読み出しによって直接評価することができる。このことから、PEIがフュージーンよりも効率的なレンチウイルス形質移入試薬であることが明らかになった(図22b)。レポーター系の有効性を調べるために、NFATを導入したジャーカットTCR KO細胞(PEI形質移入試薬を使用)をPMA/イオノマイシンで24時間刺激し、24時間ごとに3日間、GFP発現を読み出した。NFATに基づくベクターのいずれについても、GFP陽性細胞の割合およびMFIに関して、刺激したジャーカット細胞と刺激していないジャーカット細胞の間に顕著な差は観察されなかった(図22c)。また、活性化に伴うCD69の上方制御から、PMA/イオノマイシンの刺激が有効であることが明らかとなった(図22c)。全体として、このデータは、レンチウイルスNFATレポーター系がジャーカット細胞において非常に高いバックグラウンドシグナルを有することを示唆している。
【0594】
次に、NFATを導入した初代T細胞においても、同様のバックグラウンドシグナルが観察されるかどうかを評価した。この目的のために、2つのNFATに基づくレンチウイルスベクターである、NFAT4xとNFAT4x新を使用した。NFAT4xとは対照的に、NFAT4x新は最小IL2プロモーターではなく、minPと呼ばれる、より複雑でないプロモーターを含んでいる。MinPについてはこれまでに、ヤッツらによる記載がある38。2人の健常提供者由来の初代T細胞を、NFATレンチウイルス上清で形質転換し、その後PMA/イオノマイシンで24時間刺激した。GFPの発現を24時間ごとに3日間測定した。ジャーカット細胞を用いたデータとは逆に、GFP陽性細胞の割合とMFIは、刺激条件において、非刺激条件よりもわずかに高いことが観察されたが、これらの違いはそれほど有意ではなかった(図23)。さらに、異なる最小プロモーターを有するNFAT4x構築物を使用しても、形質導入されたT細胞におけるより特異的なGFPの発現は生じなかった。CD69はPMA/イオノマイシン刺激により上方制御されなかったが、刺激したNFAT導入細胞と刺激しなかったNFAT導入細胞との間におけるGFP発現の観点からの変動は、刺激が効果的であったことを示唆している(図23)。
【0595】
総合すると、これらのデータは、NFATに基づくレポーターベクターをレンチウイルスで送達すると、ジャーカット細胞と初代細胞の両方で高いバックグラウンドシグナルが生じることを示している。
【0596】
NFATレポーター構築物を、非ウイルス性送達によってジャーカット細胞に導入しても、高いバックグラウンドシグナルが生じる。
【0597】
次に、2つの異なる構築物であるNFAT0xとNFAT4xを設計して、ジャーカット細胞における非ウイルス性NFATレポーター送達系の有効性を検討した(図24a)。NFAT0xはNFAT結合部位を全く含まないため、最小プロモーターのバックグラウンドシグナルを評価するための対照として機能する。プラスミドは両方とも、EGFPレポーター遺伝子、および構成的に発現されるE2クリムゾンおよびピューロマイシン耐性遺伝子を含む。2つのNFATプラスミドを使ってジャーカット細胞をエレクトロポレーションすることにより、構築物は無作為に線形化され、ゲノムの任意の場所に統合されることになる。そのため、形質移入効率は低いと予想された。しかしながら、ゲノムにプラスミドが安定的に組み込まれたジャーカット細胞は、ピューロマイシン選択を行うことで濃縮されることとなる。選択されたジャーカット細胞を刺激することにより、NFATバックグラウンドシグナルをさらに評価する予定である。
【0598】
NFAT構築物を形質移入したCDK4-17発現ジャーカットTCR KO細胞は、時間の経過に伴う細胞生存率の大幅な低下を示さなかった(図24b)。驚くべきことに、エレクトロポレーション後2日目に、GFP陽性、およびGFP陽性E2クリムゾン陽性細胞の増加が観察され、これはNFAT0xを形質移入したジャーカット細胞でより顕著であった。形質移入から6日後にこれら2つの細胞集団が減少したことは、二重陽性およびGFP単陽性の発現が一過性であったことを示唆している(図24c)。形質移入6日後から、7日間のピューロマイシン選択を開始した。選択を行っている間に、E2クリムゾンおよびGFPの一重陽性および二重陽性のジャーカット細胞の割合が増加した(図24c)。ピューロマイシン処理から7日後、生存している非エレクトロポレーションジャーカット細胞はなかったため、選択が完了したものと考えた(図24d)。しかしながら、GFP陽性、およびGFP陽性E2クリムゾン陽性細胞の割合は、NFAT導入ジャーカット細胞のE2クリムゾン発現と同等であった。このことは、NFATレポータープラスミドの非ウイルス性送達もまた、高いバックグラウンドシグナルをもたらすことを示唆している。
実施例19に関する考察
【0599】
新生抗原特異的TCRの同定に焦点を当てた、癌治療のための完全個別化TCR遺伝子治療は、非常に有用である。この手法は遺伝子スクリーニングに依存するため、多数のTCR発現ジャーカット細胞とAPCを処理する必要がある。多くの患者を治療できるようにするためには、スクリーニングの感度に影響を与えることなく、エフェクター細胞や標的細胞を効率的に処理できるスクリーニングプラットフォームが必要である。ここでは、新生抗原反応性TCR単離プラットフォームの拡張性を高めるために行われた研究について説明する。
TCRを導入したジャーカットTCR KO細胞のブラストサイジン選択。
【0600】
レトロウイルスを使ってTCRライブラリーをジャーカットTCR KO細胞に遺伝子導入した後、毒性を引き起こすこともTCRのカバー数を喪失することもなく、TCRを発現するジャーカット細胞を濃縮するためには、効率的な選択方法が有用である。この目的のためには、抗生物質であるブラストサイジンによって、CMV-1およびCDK4-17 TCRを導入したジャーカットTCR KO細胞が効率的に選択されることが実証された(図18、およびデータは示していない)。試験した種々のブラスチシジン濃度間やブラスチシジン選択方法間での差は大きくなかったが、CMV-1導入細胞を、開始時の密度を0.25×10細胞/ml、ブラスチシジンの濃度を4μg/mlとし、培養4日後にブラストサイジンを培地から除去して7日間選択すると、mTCRβ陽性CD8陽性ジャーカット細胞が90%を超えるまでに濃縮され、さらに、増殖倍率も最も高かった(図18)。
【0601】
しかしながらこの選択手法では、10,000TCRのライブラリーを導入した場合には、mTCRβ陽性CD8陽性ジャーカット細胞はおよそ70%だった。加えて、mTCRβ陽性CD8陽性細胞の割合は、共培養アッセイの前にジャーカット細胞を増殖させるとさらに減少した(データは示していない)。したがって、患者由来TCRのライブラリーを導入したジャーカット細胞の濃縮には、標準的に、ブラストサイジンの濃度を6μg/mlとし、4日目に新しいブラストサイジンを添加する選択を適用し、70%を超えるmTCRβ陽性CD8陽性ジャーカット細胞集団を達成した(データは示していない)。さらに、必要な培養フラスコの数を減らすために、開始時の細胞密度を0.5×10細胞/mlとした。
【0602】
ブラストサイジン選択の研究は2つの既知のTCRを用いて実施したが、患者スクリーニングでは10,000の特徴が明らかになっていないTCRを導入した。したがって、TCRライブラリーを発現するジャーカット細胞の抗生物質選択には、単一のTCRを発現する細胞の濃縮よりも粗い処理が必要になる可能性がある。同様の観察は、TCRライブラリーを発現するジャーカット細胞をピューロマイシンで14日間選択したスピンドラー(Spindler)らの研究でも認められている。CD3陽性TCRαβ陽性細胞は、選択後、およそ10%~およそ50%まで濃縮された42
【0603】
4日目にブラストサイジンを添加すると、mTCRβのMFIの低下を伴うTCR発現細胞の喪失が起こるのか、あるいは観察されたMFIの差が、より長い抗生物質処理に起因するジャーカット細胞の表現型の変化の結果に過ぎないのかについては、まだ検討が必要である(図26)。さらに、導入効率が低いことが(mTCRβ陽性CD8陽性が10%未満)、TCRのカバー数の低減を引き起こすかどうかを試験することは有用であろう。これらの疑問には、異なるTCRのライブラリーをジャーカット細胞に導入し、ブラストサイジンで濃縮した細胞のTCRを配列決定することによって、対処することができる。
【0604】
結論として、TCR導入ジャーカット細胞を濃縮するために最も適していて、かつ、効率的な選択方法を見つける過程から、既知のTCRを用いた研究が有用であることが示された。しかしながら、この実験から得られた知見はさらに検証されるべきであり、未知のTCRのライブラリーをスクリーニングする際には、さらなる調整が必要となる可能性がある。
GMPバッグを使用した、ジャーカット細胞とAPCの共培養。
【0605】
スクリーニングプラットフォームの拡張性をさらに高めるためには、ジャーカット細胞とAPCの共培養形式を、確立されている96ウェル丸底形式から拡張することを伴う。
【0606】
我々は、本研究が、96ウェルプレートでの共培養と同様のCD69発現をもたらした、GMPバッグでの新しい共培養形式の有効性を調べた最初の研究であると理解している(図19c、図19d)。GMPバッグは、96ウェルプレートの丸底ウェルを模倣する方法で折り畳むことができるため、エフェクター-標的間の接触を強化することができる。さらにGMPバッグでは、細胞の喪失を防止するための、その表面積全体にわたる効率的なガス交換が可能になる。しかし図19dに見られるように、GMPバッグでの共培養では、96ウェルプレートでの共培養と比較して細胞死が増加した。この細胞生存率の低下は、短時間の遠心沈殿処理のために、GMPバッグの置き方を変える必要があったことに起因していると考えられる。細胞はGMPバッグの底に集められたが、ここは培養容器の中で唯一、効率的なガス交換ができない部分である可能性がある。図19cでは、GMPバッグの遠心沈殿を行わず、細胞はバッグの側面に集められた。このことが、細胞生存率が影響を受けなかった原因である可能性があることに留意されたい。図19hで見られる細胞死の原因をさらに調べるためにはGMPバッグを使用した共培養を繰り返すことが有用であるが、これらの観察は、インキュベーター内に柔軟なGMPバッグを配置する一貫した方法を確立する必要性を強調するものである。例えば、CO透過性を維持しつつ適切な形状を有する骨組みのようなものを設計することができるだろう。
【0607】
ジャーカット細胞-APC共培養にGMPバッグを使用することのその他の利点として、同様の細胞密度を維持したまま、より多くの細胞を加えることができることが挙げられる。このことによって、10,000を超えるTCRをスクリーニングできる可能性がある。さらに、GMPバッグは閉鎖系であるため、相互汚染が起こる可能性が大幅に低減されるだろう。
【0608】
注目すべきは、T細胞活性化マーカーであるCD69の発現のみに基づく、異なる共培養系の有効性を評価したことである。この実験設定では、GMPバッグでの共培養がTCRのカバー数に及ぼすであろう影響は考慮していない。それを研究するためには、TCRライブラリーを発現するジャーカット細胞とAPCとの共培養を、GMPバッグと96ウェルプレートで並行して実施することができる。その後、確立されたCD69に基づくフローサイトメトリーによって活性化ジャーカット細胞を選別し、次世代シーケンサーによって特定のTCRの濃縮度を比較する。
【0609】
さらなる実験により、共培養をGMPバッグを使用して実施することがTCR単離過程に及ぼす影響を評価する予定である。しかしながら、予備的なデータから、少なくとも10,000のTCRを含むライブラリーのスクリーニングにおいて、エフェクター細胞と標的細胞を効率的に処理する有望な共培養系が示されている。
フローサイトメトリーを用いた選別のビーズの使用に基づく選択への置き換え
【0610】
現在、いくつかのTCRスクリーニングプラットフォームは、新生抗原特異的TCRを同定するために、共培養した後、CD69を発現するジャーカットT細胞をフローサイトメトリーによって選別することを伴う。しかしながら、活性化ジャーカット細胞をビーズを用いて選択することで、TCRスクリーニングプラットフォームの拡張性が向上する可能性がある。そこで、活性化ジャーカット集団と非活性化ジャーカット集団を明確に分離できるビーズを用いた選択のための、追加のまたは代替の活性化マーカーを評価することにした。
【0611】
さらに2つのT細胞活性化マーカー、CD25およびCD62Lを用いて共培養の経時的分析を実施すると、CD25発現の不均一性が、活性化ジャーカット細胞におけるCD69発現の不均一性よりも大きいことが明らかになった(図20a、20b)。さらに、CD62Lの下方制御は、一部の非導入細胞や非刺激TCR導入エフェクター細胞もCD62Lに対しては陰性であったことから、活性化ジャーカット細胞に対してにのみ特異的なものではなかった(図20d)。したがって、これら2つの活性化マーカーは、ビーズに基づく選択手法において、それだけで使用する単一なマーカーとしては有力な候補にならない。しかしながら、CD25とCD62Lは、CD62L陽性またはCD25陽性エフェクター細胞それぞれを枯渇または濃縮させ、続いてCD69陽性選択によって活性化細胞を捕獲することを伴う、連続したビーズに基づく選択過程では使用することができる。注目すべきは、CD25陽性集団およびCD69陽性CD25陽性集団が24時間後にわずかに増加していることである。しかしながら、CD25が後期活性化マーカーであることが示されていることを考慮すれば43、これは驚くべきことではない。このことはまた、これら2つの活性化マーカーを有するエフェクター細胞の分析には、より遅い時間帯が最も理想的であることを示唆している。CD62Lの排出は、T細胞活性化後4時間程度でピークに達すると報告されており、したがって早期活性化マーカーであるといえる44,45。ある研究では、4時間でピークに達した後、CD62Lは動的な発現プロファイルをとることが示されている44。しかしながらここでは、共培養の20時間後にも、CD69非常に安定して上方制御されているのと同様に、CD62Lは非常に安定して下方制御されていることが観察された(図20a、20d)。このことから、ジャーカット細胞を活性化させた16~32時間後にCD69とCD62Lとの共発現分析を行うことが有用であると考えられる(図20e)。それでもやはり、TCR導入ジャーカットTCR KO細胞を、同族ペプチドを発現していないEBV LCLと共培養することによって、この経時的分析を繰り返して行う必要がある。それによって、3つの活性化マーカーのバックグラウンドシグナルをより正確に推測することができるだろう。
【0612】
最後に、活性化ジャーカット細胞の抗生物質選択またはビーズに基づく濃縮を可能にするレンチウイルスNFATレポーター系の有効性を検討した。しかし、NFATベクターをレンチウイルスを用いて送達すると、ジャーカット細胞および初代細胞の両方で、高いバックグラウンドシグナルが見られた(図22および図24)。このレポーター系を採用した研究は、ほとんどがバックグランドシグナルが最小限のクローン集団に依存している37,38。ピューロマイシン耐性レポーター遺伝子を持つNFAT導入ジャーカット細胞を、抗生物質選択に2度暴露した(図21)。しかしながら、最初の抗生物質処理後に部分的にクローナルな集団が得られたと仮定したにもかかわらず、2回目の選択後でも、刺激したジャーカット細胞と刺激していないジャーカット細胞の間に顕著な差はなかった。別の説明として、2回目のピューロマイシン選択に先立つ最適ではない非生理的なPMA/イオノマイシン刺激の影響が考えられ、それによってCD69陽性のNFAT導入ジャーカット細胞が30%未満となった可能性がある(図21d)。さらに、刺激したジャーカット細胞と刺激していないEGFP NFAT導入ジャーカット細胞との間には顕著な差はなかった(図22)。したがって、GFP発現に違いが見られないため、クローンを選択することは不可能であろう。この結果は、別の最小プロモーターminPでも同程度のバックグラウンドが見られることが明らかになったことから、レポーター系の漏出性が最小IL2プロモーターに起因するものではないことを示唆している(図23)。したがって、この漏出性がレンチウイルス送達系の特性である可能性があると結論付けた。
【0613】
SIN NFATレトロウイルスベクターは、抗原特異的T細胞応答を研究するためにうまく活用され、その設定に用いられてきた37,38,40。NFATプラスミドを非ウイルス性送達しても、レポーターEGFP遺伝子の発現は非刺激ジャーカット細胞で上昇し、高いバックグラウンドシグナルを示した(図24)。しかしながら、NFATを導入したジャーカット細胞の漏出性をさらに評価するためには、T細胞の活性化が必要である。さらに、E2クリムゾン一重陽性集団を、フローサイトメトリーを用いた選別に供し、その後、T細胞刺激アッセイにおけるこの集団の有効性およびGFP漏出性を評価することができる。これらの転写因子は異なるシグナル伝達経路を利用しており、バックグラウンドシグナルに異なる影響を与える可能性があるため38、AP-1およびNF-κBレポーター系の感度について研究することが今後の課題である。例えば、NF-κBレポーター系は、ジャーカット細胞におけるキメラ抗原受容体のライブラリーのスクリーニングにうまく応用されている40
【0614】
本研究は、新生抗原特異的TCR単離プラットフォームの拡張性を高めることを目的としたものである。レポータージャーカットT細胞とAPCをより効率的に処理することで、最終的にはより多くの癌患者の治療が可能になるため、これらの実験は有用である。まず、レトロウイルスでTCRを導入したジャーカットTCR KO細胞のブラストサイジン選択が、最も効率的で毒性の少ないエフェクター細胞の濃縮手順として同定された。さらに、ジャーカット細胞とAPCの共培養を96ウェル形式からより拡張性の高いGMPバッグの設定に拡張したところ、ジャーカット細胞の活性化が同程度になった。最後に、TCR探索プラットフォームにおいて、新生抗原特反応性TCR発現ジャーカット細胞をフローサイトメトリーソーティングからより拡張性の高いなビーズに基づく選択に置き換えるための基盤を構築した。
材料および方法-実施例19
細胞株
【0615】
ヒトジャーカット細胞株(クローンE6-1、TIB-152)はATCCから購入し、ヒトEBV不死化HLA-A2陽性B細胞株(JYと称する)は、ECACCから購入した。ジャーカットとJYの両細胞株を、10%の熱不活性化牛胎児血清(FBS、ギブコ)、100U/mlのペニシリン(ギブコ)および100mg/mlのストレプトマイシン(ギブコ)を加えたRPMI-1640培地、HEPES(ギブコ)にて培養した。ヒト胚性腎臓293T(HEK293T、CRL-3216)およびフェニックス-広宿主性(Phoenix-Ampho)細胞株はATCCから購入し、10%のFBS、100U/mlのペニシリン(ギブコ)、100mg/mlのストレプトマイシンを添加したDMEM培地(ギブコ)で培養した。すべての細胞株を、37℃、5%COで維持した。
ヒト健常者提供者からのT細胞およびB細胞の単離
【0616】
健常なヒト提供者の軟膜を、十分な説明と同意に基づいて、サンクイン血液供給支援団体(Sanquin Blood Supply、オランダ)から入手した。フィコールパクプラス(Ficoll PaquePlus、シグマアルドリッチ)を用いて、軟膜から末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。
【0617】
モジョソートヒトパンB細胞単離キット(MojoSort Human Pan B Cell Isolation Kit、バイオレジェンド(BioLegend))を用いてHLA-A2陽性B細胞を負の選択によって単離し、その後、ヒトガンマヘルペスウイルス4(HHV-4,ATCC VR-1492)でEBV不死化させた。EBV不死化B細胞(EBV LCL)を、20%のFBS、100U/mlのペニシリン(ギブコ)および100mg/mlのストレプトマイシン(ギブコ)を加えたRPMI-1640培地、HEPES(ギブコ)で培養した。
【0618】
T細胞は単離した後、CD3/CD28ダイナビーズ(Dynabeads、ライフテクノロジーズヨーロッパ(LifeTechnologies Europe))を用いて活性化し、10%のヒト血清(シグマアルドリッチ)、100U/mlのペニシリン(ギブコ)、100μg/mlのストレプトマイシン(ギブコ)およびサイトカイン(5ng/mlヒトIL-15および100IU/mlヒトIL-2、ペプロテック(Peprotech))を加えたRPMI-1640培地で培養した。すべての初代細胞を、37℃、5%COで維持した。
フローサイトメトリーおよび選別
【0619】
PBS(ギブコ)に2%FBSを添加して、FACS緩衝液を調製した。フローサイトメトリー分析を実施するために、細胞を、4℃、暗所で20分間染色し、FACS緩衝液で1回洗浄した。ライブ/デッド固定可能近赤外線分光用(LIVE/DEAD Fixable Near-IR、(ライフテクノロジーズヨーロッパ、1:1000希釈)またはDAPI(シグマアルドリッチ、1:1000希釈)を、染色による細胞の生死の判別に使用した。サイトフィックス(Cytofix、BDバイオサイエンス)を用い、ウイルス産生細胞を4℃で30分間固定し、測定前にPBSで1回洗浄した。試料をBD LSRフォルテッサ(Fortessa)で測定し、フロージョー(FlowJo)v10.6.1ソフトウェアで分析した。
【0620】
選別用の回収チューブとしては、FBSで被膜されたものを使用した。15mlのチューブ中で、20×10細胞当たり0.5mlの抗体溶液を用いて染色した。染色は4℃、暗所で20分間行い、その後、10mlのFACS緩衝液で細胞を洗浄した。次に、FACS緩衝液で細胞濃度を15~20×10細胞/mlに調整し、35μmの細胞濾過器に通した。選別を行う直前に、細胞の生死を判別する染色液としてDAPI(シグマアルドリッチ、1:1000希釈)を添加した。試料をFACSアライアフュージョンで選別した。
【0621】
フローサイトメトリーおよび選別用の抗体をFACS緩衝液で希釈した。以下の抗体および希釈倍率を使用した:抗ヒトCD8APC(クローンSK1、BDバイオサイエンス、1:300希釈)、抗ヒトCD8APC-R700(クローンRPA-T8、BDバイオサイエンス,1:600希釈)、抗マウスTCRβ PE(クローンH57-597、BDバイオサイエンス、1:150希釈)、抗ヒトCD69 PE/APC/BV510(クローンFN50、BDバイオサイエンス、1:100、1:200および1:300希釈のそれぞれ)、CD69 PE(クローンCH/4、サーモフィッシャーサイエンティフィック、1:100希釈)、抗ヒトCD20 FITC(クローン2H7、BDバイオサイエンス、1:25希釈)、抗ヒトCD20 PE/Cy7(クローンL27、BDバイオサイエンス、1:200倍希釈)、抗ヒトCD25 BV711(クローン2A3、BDバイオサイエンス、1:200希釈)、抗ヒトCD62L APC(クローンDREG-56、BDバイオサイエンス、1:25希釈)、および抗ヒトCD3PerCPCy5.5(クローンSK7、BDバイオサイエンス、1:25希釈)。注:CD69の読み出しには、特に断りのない限り、抗ヒトCD69クローンFN50抗体を使用した。
レトロウイルスを使用した形質移入および形質導入
【0622】
レトロウイルスを用いた形質移入を実施するために、およそ1.8×10のフェニックス-広宿主性細胞を10cmの培養皿に播種し、その24時間後、形質移入試薬としてフュージーン6(プロメガ)を用いて10μgのpMP71-TCRプラスミドで形質移入を行った。形質移入に使用したTCRは、ジャーカット細胞株の内在性TCRとの二量体化を防ぐために、マウス定常領域とヒト可変領域から構成されている。従って、マウスTCRβ(mTCRβ)領域に対する単一の抗体で染色することにより、それぞれのTCRの導入効率を測定することができる。形質移入の48時間後にウイルス上清を回収し、0.45μmフィルターに通した。レトロウイルス導入を行うために、TC処理されていない24ウェルプレートを0.5ml/ウェルのレトロネクチン(RN、タカラ)で被膜を施し、4℃で一晩または室温で2時間インキュベートした。プレートを、1ウェル当たり0.5mlのブロッキング鑑賞液(5%FBS添加PBS)で30分間、室温でブロッキングし、PBSで1回洗浄した。0.5mlの培地に入れた2×10のジャーカット細胞を、RN被膜24ウェルプレートに播種し、0.5mlのウイルス上清と混合した。プレートを880×gで90分間遠心沈殿した(加速3、減速0)。3~4日後にフローサイトメトリーによって導入効率を測定した。
レンチウイルスを使用した形質移入および形質導入
【0623】
レンチウイルスを用いた形質移入を実施するために、およそ3×10のHEK293T細胞を10cmの培養皿に播種し、その24時間後、第三世代パッケージング構築物(pRSV-RevおよびpCgpVパッケージングベクター、pCMV-VSV-Gエンベロープベクター、セルバイオラボ)と形質移入試薬であるポリエチレンイミン(PEI、1mg/ml、ポリサイエンス)またはリポフェクタミン(Lipofectamine)3000(サーモフィッシャーサイエンティフィック)を用いて、10μgのpSMPUW-NFAT-IL-2に基づくレポーター構築物で形質移入を行った。いくつかのレンチウイルス形質移入については、形質移入効率の尺度としてpmaxGFP(SE細胞株4DヌクレオファクターXキットL(SE Cell Line 4D NucleofectorX Kit L)、ロンザ)を共に移入した。形質移入の48時間後と72時間後にウイルス上清を回収し、0.45μmフィルターに通した。初代T細胞を単離し、形質導入の48時間前に、CD3/CD28ダイナビーズを用いてIL-2とIL-15を加えた培地中で活性化した(「ヒト健常者提供者からのT細胞およびB細胞の単離」の項を参照のこと)。初代T細胞へのレンチウイルスの導入は、「レンチウイルスを使用した形質移入および形質導入」の項で説明したように、RN被膜プレートを遠心することによる導入で実施した(24ウェルプレートの1ウェルあたり2.5×10の初代T細胞を使用)。ジャーカット細胞へのレンチウイルスの導入を実施するために、2×10の細胞をポリブレン(シグマアルドリッチ)を含む1mlのウイルス上清に再懸濁した。この細胞を24ウェルプレートに播種し、3~4日後にフローサイトメトリーにより導入効率を測定した。形質導入された初代T細胞には、3~4日ごとにサイトカインを含む新鮮な培地を添加した。
ジャーカットTCRノックアウト(KO)CD8陽性細胞株の生成
【0624】
ジャーカットE6-1細胞株にpMP71-CD8α-P2A-CD8βをレトロウイルスで形質導入し、CD8を発現させた。さらに、シェパーらの研究46に記載されているように、TCRα鎖およびβ鎖をノックアウトすることによって、内因性TCRの発現を除去した。CD8を高発現している単一細胞のクローンを選別し、増殖させた。
ジャーカット細胞のエレクトロポレーション
【0625】
pMKRQ-NFATプラスミドの非ウイルス性送達によるジャーカット細胞への導入は(図24)、ロンザのジャーカットクローンE6.1 ATCC用アマクサ4Dヌクレオファクタープロトコール(Amaxa 4D Nucleofaector Protocol)(カタログ番号V4XC-1024)に従って達成した。
共培養アッセイ
【0626】
CDK4変異体(ALDPHSGHFV)ペプチドおよびCMVpp65(NLVPMVATV)ペプチドはペプスキャン(Pepscan)から購入した。37℃、5%COで1時間インキュベートした後、1ml当たり1×10細胞の密度で、JY細胞にペプチドを負荷した。その後、JY細胞を培地で2回洗浄した。EBV LCLに、25merのポリペプチド鎖をコードするレトロウイルスベクターを形質導入した。これらのポリペプチドは、目的のエピトープ(例えば、CDK4変異体およびCMVpp65ペプチド)を含み、縦列ミニ遺伝子(TMG)2.1と称される。同族ペプチドを含まない、または無関係なペプチドを負荷したJY細胞、および非導入EBV LCLを陰性対照として使用した。
【0627】
共培養の24時間前に、エフェクター細胞と標的細胞を低密度(0.25/0.5×10細胞/ml)で播種した。特に断りのない限り、共培養は96W丸底プレートに200,000のエフェクター細胞と標的細胞を入れて(総量200μl、E:T比1:1)、20時間行った。20時間のインキュベーションの前にプレートを1100rpmで1分間、遠心沈殿した。標的細胞をゲートアウトするために、抗ヒトCD20抗体をパネルに含めた。
【0628】
図19c、19dで使用したMACS GMP細胞分化バッグ500は、ミルテニーバイオテックから購入した。
試薬
【0629】
追加の試薬として以下のものを使用した。ホルボール12-ミリスタート13-アセタート(50ng/ml、PMA,シグマアルドリッチ)、イオノマイシンカルシウム(1mM、シグマアルドリッチ)、ピューロマイシン二塩酸塩(ギブコ)、ブラストサイジンS塩酸塩(ギブコ)。
増殖倍率
【0630】
図18の増殖倍率の値を毒性の指標として用い、選択後の総細胞数を選択開始時の総細胞数で割ることにより算出した。得られた値を、4日目の再度播種について補正した。
統計的分析
【0631】
EC50値の算出と統計分析はグラフパッドプリズム(GraphPad Prism)8を用いて行った。図23では、二元配置分散分析に続いてシダックの多重比較検定を行い、P値が0.05以下の場合を統計的に有意とした(P≦0.05、**P≦0.01)。
【0632】
参考文献
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実施例20
【0633】
本実施例では、異なるエフェクター対標的(E:T)比を用いて、TCRライブラリーから抗原特異的TCRを回収することを説明する。
【0634】
抗原反応性の特徴が明らかになっている5つTCRと特徴の分かっていない95のTCR(100×100ライブラリー用;図35A)を選択してTCRライブラリーを生成した(ツイストバイオサイエンス、サンフランシスコ、米国で実施)。簡単に説明すると、これらのTCRに由来するTCRα鎖およびTCRβ鎖を、DNA合成によって断片として生成した。ライブラリー生成のために、選択した全てのTCRαおよびTCRβ断片を、TCRβ-P2A-TCRαカセット(配列番号1)をコードする連続した核酸分子にコンビナトリアルに接合した。ライブラリー作製のための足場として、TCRβ鎖とTCRα鎖の両方、ならびにピューロマイシン選択マーカーを含むレトロウイルス構築物を使用することができる。この構築物を用いたレトロウイルス導入により、最終的に1つの転写産物が発現し、2A部位でのペプチド切断により、TCRβ鎖、α鎖、およびピューロマイシン耐性マーカーが翻訳されることになる。TCRβ-P2A-TCRα-T2A-ピューロマイシン(配列番号1)の形式で、1つのカセットにつき1つのTCRβ断片とTCRα断片を結合させることができる。100のTCRそれぞれのTCRβ領域とTCRα領域を、ツイストバイオサイエンスによって実行されたコンビナトリアルクローニング手法で合成し、このベクターに挿入した。
【0635】
100×100のライブラリーを、フュージーン形質移入試薬および当業者に知られているプロトコールにより、フェニックス-広宿主性ウイルス産生細胞(ATCC CRL-3213)に形質移入した。結果として生じたレトロウイルスビリオンを使用して、ジャーカットレポーターT細胞株を形質転換した。ジャーカットレポーターT細胞株は内因性TCR発現を欠くもので(そのような遺伝子ノックアウトの生成は、例えば、メザドラら、ネイチャー、2017に記載されている)、当業者に知られている方法でCD8α-P2A-CD8β導入遺伝子(配列番号2)を形質導入すると、ヒトCD8αおよびCD8βを発現するように修飾する。ジャーカットレポーターT細胞にTCRライブラリーを導入した結果、全ての生存しているTCR修飾T細胞のうち、25%がTCRで修飾された(形質導入4日後、つまりピューロマイシン選択後、の染色に基づく結果。アッセイ当日の純度は80%超であった)。TCRライブラリー(配列番号1)にマウスTCR定常ドメイン配列を使用することで、マウスTCRβの定常ドメインに特異的な抗体を用いたフローサイトメトリーによって、TCR修飾ジャーカットT細胞を検出できるようになる。細胞培養にピューロマイシンを添加することで、TCRβ-P2A-TCRα-T2A-ピューロマイシン耐性導入遺伝子を発現するように修飾したジャーカットT細胞が高い純度で正に選択された。遺伝子組換え細胞の抗生物質選択は、当業者に知られている。
【0636】
次に、TCRを導入したジャーカットT細胞を、抗原を提示するように操作されたAPCで刺激した。TMGを発現するEBV LCL細胞に、特定の抗原を発現するように操作されていないEBV LCLを10%ずつ添加した。共培養の3日前にジャーカットレポーターT細胞を低密度(1mlあたり0.1×10細胞)で播種した。APCとジャーカットレポーターT細胞を1:1、1:2、1:3の比率で、1ml当たり2.5×10の細胞密度で混合した。各E:T比について、TMG発現条件で1回の反復実験を、TMGが発現していない条件で1回の陰性対照反復実験を実施した。この混合物を200μl(1ウェル当たり0.5×10細胞)ずつ、TC処理した丸底96ウェルプレートのおよそ360、540または720のウェルに分注した。プレートを1000rpmで1分間遠心し、37℃で20~22時間インキュベートした。
【0637】
その後、共培養物を採取し、ミルテニーの抗CD20マイクロビーズで細胞を標識し、磁石上に置いたLSカラムに移した。磁気ビーズ選択では、CD20陽性細胞はカラムに保持されるがCD20陰性細胞はカラムを通過するため、陰性画分を回収した。その後、これらのCD20陰性細胞を、CD20とCD69の蛍光標識抗体で染色した。次に、4%ホルムアルデヒドを含む固定用緩衝液を用いて、細胞を固定した。BDバイオサイエンスARIAフュージョンフローサイトメトリーソーターを用いて、各刺激条件について以下の集団を選別した(図35B)。
1.リンパ球、単細胞、生細胞、CD20陰性、CD8陽性、高CD69(高CD69は、単細胞、CD20陰性細胞のうち、CD69蛍光シグナルに基づいて選ばれる上位10~15%を含む)。
2.リンパ球、単細胞、生細胞、CD20陰性、CD8陽性、低CD69(低CD69は、単細胞、CD20陰性細胞のうち、CD69蛍光シグナルが低い方から10~15%を含む)。
【0638】
選別したTCR導入ジャーカットT細胞からゲノムDNAを単離し、これをサイクル数を制限した複数回のPCRの鋳型として使用し、当業者に知られているPCR法を用いてTCRβ-P2A-TCRαカセットの一部を増幅した。得られたPCR産物の大きさは約1.5kb(図35C)で、当業者に公知の技術を使用してオックスフォードナノポアミニオンまたはグリッドイオン配列決定装置を用いて配列決定することが可能である。TCRの同一性を、当業者に知られているアライメント技術を用いて回復し、差次的に発現するTCRの組み合わせを、DESeq2Rパッケージを使用して同定する。Rlog変換リードカウントをDESeq2Rパッケージを使用して計算し、下位試料のRlog値を上位試料のRlog値から減算し、B細胞によるTMG発現の存在下(x軸)および非存在下(y軸)で実施した共培養について表した(図35D)。5つの特徴の分かっているTCRを、より大きな濃い灰色の点として示す。5つの特徴の分かっているTCRのTCRの同一性、および主要な統計的指標を表す(図35E)。
【0639】
まとめると、この実施例は、エフェクター細胞に対する標的細胞の比率を上げることで、TCRライブラリーのスクリーニングプラットフォームの感度が向上することを示している。
実施例21
【0640】
本実施例では、ビーズを用いた細胞選別戦略を用いて、遺伝子合成により作製したTCRライブラリーから抗原特異的TCRを回収することを説明する。
【0641】
抗原反応性の特徴が明らかになっている5つTCRと特徴の分かっていない95のTCR(100×100ライブラリ用;図36A)を選択してTCRライブラリーを生成した(ツイストバイオサイエンス、サンフランシスコ、米国で実施)。簡単に説明すると、これらのTCRに由来するTCRα鎖およびTCRβ鎖を、DNA合成によって断片として生成した。ライブラリー生成のために、選択した全てのTCRαおよびTCRβ断片を、TCRβ-P2A-TCRαカセット(配列番号1)をコードする連続した核酸分子にコンビナトリアルに接合した。ライブラリー作製のための足場として、TCRβ鎖とTCRα鎖の両方、ならびにピューロマイシン選択マーカーを含むレトロウイルス構築物を使用することができる。この構築物を用いたレトロウイルス導入により、最終的に1つの転写産物が発現し、2A部位でのペプチド切断により、TCRβ鎖、α鎖、およびピューロマイシン耐性マーカーが翻訳されることになる。TCRβ-P2A-TCRα-T2A-ピューロマイシン(配列番号1)の形式で、1つのカセットにつき1つのTCRβ断片とTCRα断片を結合させることができる。100のTCRそれぞれのTCRβ領域とTCRα領域を、ツイストバイオサイエンスによって実行されたコンビナトリアルクローニング手法で合成し、このベクターに挿入した。
【0642】
100×100のライブラリーを、フュージーン形質移入試薬および当業者に知られているプロトコールにより、フェニックス-広宿主性ウイルス産生細胞(ATCC CRL-3213)に形質移入した。結果として生じたレトロウイルスビリオンを使用して、ジャーカットレポーターT細胞株を形質転換した。ジャーカットレポーターT細胞株は内因性TCR発現を欠くもので(そのような遺伝子ノックアウトの生成は、例えば、メザドラら、ネイチャー、2017に記載されている)、当業者に知られている方法でCD8α-P2A-CD8β導入遺伝子(配列番号2)を形質導入すると、ヒトCD8αおよびCD8βを発現するように修飾する。ジャーカットレポーターT細胞にTCRライブラリーを導入した結果、全ての生存しているTCR修飾T細胞のうち、25%がTCRで修飾された(形質導入4日後、つまりピューロマイシン選択後の染色に基づく結果。アッセイ当日の純度は80%超であった)。TCRライブラリー(配列番号1)にマウスTCR定常ドメイン配列を使用することで、マウスTCRβの定常ドメインに特異的な抗体を用いたフローサイトメトリーによって、TCR修飾ジャーカットT細胞を検出できるようになる。細胞培養にピューロマイシンを添加することで、TCRβ-P2A-TCRα-T2A-ピューロマイシン耐性導入遺伝子を発現するように改変したジャーカットT細胞が高い純度で正に選択された。遺伝子組換え細胞の抗生物質選択は、当業者に知られている。
【0643】
次に、TCRを導入したジャーカットT細胞を、腫瘍由来抗原を提示するように操作された、または操作されていないAPCで刺激した(それぞれにつき1回のみの反復実験とした)。共培養の3日前にジャーカットレポーターT細胞を低密度(1mlあたり0.1×10細胞)で播種した。APCとジャーカットレポーターT細胞を1:1の比率で、1ml当たり2.5×10の細胞密度で混合した。この混合物を200μl(1ウェル当たり0.5×10細胞)ずつ、TC処理した丸底96ウェルプレートのおよそ360のウェルに分注した。プレートを1000rpmで1分間遠心し、37℃で20~22時間インキュベートした。
【0644】
その後、共培養物を採取し、死細胞除去キットを用いて死細胞を除去した。生細胞を多段階単離戦略に基づいて単離し(図36B)、抗CD20マイクロビーズで標識し、オートMACS(ミルテニー、ベルギッシュグラートバハ、ドイツ)上に移した。磁気ビーズ選択では、CD20陽性細胞はカラムに保持されるがCD20陰性細胞はカラムを通過するため、陰性画分を回収した。その後、これらのCD20陰性細胞をCD62Lマイクロビーズで標識し、オートMACSを用いて非活性化ジャーカット細胞と活性化ジャーカット細胞とを分離した。この分離後、陰性画分(CD62L陰性細胞)と陽性画分(CD62L陰性細胞)の両方をCD69ビオチン抗体で標識し、抗ビオチンマイクロビーズを用いてCD69陰性およびCD69陽性画分を分離した。以下の集団をさらなる解析のために回収した(図36B)。
1.CD20陰性、CD62L陽性、CD69陰性(「下位」画分、つまり非活性化ジャーカットT細胞)。
2.CD20陰性、CD62L陰性、CD69陽性(「上位」画分、つまり活性化されたジャーカットT細胞)。
【0645】
ビーズを用いて選別したTCR導入ジャーカットT細胞からゲノムDNAを単離し、これをサイクル数を制限した複数回のPCRの鋳型として使用し、当業者に知られているPCR法を用いてTCRβ-P2A-TCRαカセットの一部を増幅した。得られたPCR産物の大きさは約1.5kb(図36C)で、当業者に公知の技術を使用してオックスフォードナノポアミニオンまたはグリッドイオン配列決定装置を用いて配列決定することが可能である。TCRの同一性を、当業者に知られているアライメント技術を用いて回復し、差次的に発現するTCRの組み合わせを、DESeq2Rパッケージを使用して同定する。各TCRのRlog変換リードカウントをDESeq2Rパッケージを使用して計算し、下位試料のRlog値を上位試料のRlog値から引き、B細胞によるTMG発現の存在下(x軸)および非存在下(y軸)で実施した共培養について表した(図36D)。上位試料において最も差次的に表現された上位7つのTCRのTCRα鎖およびβ鎖の同一性、ならびに主要な統計的指標を表す(図36E)。
【0646】
まとめると、この実施例は、ビーズを用いた選別によって活性化細胞と非活性化細胞がうまく分離され、この技術を、遺伝子スクリーニング手法を用いたTCRライブラリーからの抗原特異的TCRを同定する方法として、FACSに基づく細胞分離の代替方法として使用できることを示している。
実施例22
【0647】
本実施例では、コンビナトリアルTMGエンコーディングを、ペアワイズTCR濃縮度分析を用いて解決できることを説明する。この実施例では、コンビナトリアルTMGエンコーディングを使用してTMGを発現するAPCのプールを混合することの可能性についてと、TCRライブラリー由来のTCRによって認識される抗原を発現しているTMGの解明についてを示す。
【0648】
コンビナトリアルTMGエンコーディングを用いることで、スクリーニングの回数を増やすことなく、したがって、TCRライブラリースクリーニングのデータに由来するTCRリード化合物によって認識されるTMGを同定できる可能性を維持したまま、多数のTMGを効率的にスクリーニングすることができる。コンビナトリアルTMGエンコーディングは、TMGを発現しているAPCのプールを作製すること、および、それぞれのTMGがプール中で正確に1つの組み合わせとして表現されるという原則に基づいている。プール中の組み合わせは各TMGについて固有であるため、TCRライブラリーのスクリーニングに含まれるTCRによって認識されるTMGを同定することが可能になる。TCRライブラリーのスクリーニングに由来する所与のTCRリード化合物によって認識される抗原をコードしているTMGを、ペアワイズTCR濃縮度分析によって同定することが可能である。ペアワイズTCR濃縮度分析は、単一のプールをそれぞれ別々に分析するのではなく、プールの対を特異的に分析することによってシグナル強度を高める役割を果たす。
【0649】
コンビナトリアルTMG設計の一例を図37Aに示す。36のTMGが12のプール(C1~6およびR1~6)で発現し、プールはそれぞれ6つのTMGを発現している。TMGを発現するAPCのプールは、ポリクローナルなAPCの操作(例えば、ポリクローナルなウイルスを生産してAPCに導入すること、もしくはモノクローナルなウイルスを生産してウイルスを混合してプールとし、そしてポリクローナルにAPCに導入すること)、またはそれぞれが単一のTMGを発現する操作したAPC細胞株を混合することによって、作製することができる。一例として、ペアワイズTCR濃縮度分析により、APCプールC1およびR1の両方が所与のTCRを活性化できることが示された場合、そのTCRはTMG1によって発現される抗原を認識していることになる。これは、TMG1が両方のプールで表される唯一のTMGであるためである。図37Aに示すコンビナトリアルTMGエンコーディングは、1つのTMGが正確に2つのプールに存在することに基づいているが、各TMGが正確に3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上のプールに存在する、同様のコンビナトリアルTMGエンコーディングを設計することができる。各TMGが正確に3つのプールに存在する場合、所与のTCRによって認識される3つのプールを特定することで、認識されるTMGを推定することができる。認識されるTMGは、3つのプール全てに共有されるTMGである。
【0650】
図10Gでは、TCRライブラリー発現レポーターT細胞をTMGを発現するように操作していないAPCと共培養した3回の対照スクリーニング、およびそれぞれが単一のTMGを発現するAPC細胞株のプールとの共培養に基づく3回のスクリーニングを含む、3回の反復実験を用いて行ったスクリーニングの結果を示している。各TMGが正確に2つのプール中で表現される、前述のコンビナトリアルTMGエンコーディングは、2回の反復実験に基づくスクリーニング手法で十分なTCRの同定感度を伴う。DESeq2Rパッケージを使用して、図10Gのデータから差次的に表現されたTCRαおよびβ鎖の組み合わせを統計分析した。図37Bおよび37Cに示すように、CRC患者のスクリーニング(図10G)で同定されたTCRリード化合物の順位または有意性のいずれかが類似しているか否かを、3回の反復実験のうちの2回の結果に基づいて試験した。図37Bに示すように、pt2について7つのTCRリード化合物を選ぶ場合、3回の反復実験のうちの2回の任意の組み合わせの複合分析に基づいて、同じTCRが選ばれていた可能性がある。類似の方法では、図10Gで同定されたTCRリード化合物のいずれについても、統計分析に3回の反復実験のうちの2回を用いることで同じ(セットの)TCRが選ばれたであろう(図37C;「順位」の列)。さらに、4つのCRC患者TCRライブラリーのスクリーニングで同定されたTCRリード化合物のいずれについても、3回の反復実験のうちの2回の結果に基づく統計分析において、補正後のp値は同様である(図37C)。このことは、3回の反復実験を伴うスクリーニングと同様の感度でTCRを同定するためには、2回の反復実験で十分であることを示している。これにより、それぞれのTMGがTMGプール中で正確に2回表現されるコンビナトリアルTMG設計を用いて、認識されるTMGを同定することが可能になる。
【0651】
コンビナトリアルTMGエンコーディング設計に由来するTMGの認識を解決するためのペアワイズTCR濃縮度分析の感度を試験するために、6つのpt4試料(それぞれが上位試料と下位試料からなる)を分析用に選択した(図37D)。6試料中で生じる可能性のある15全てのペアワイズの組み合わせについて、DESeq2を使用して、下位試料に対する上位試料でのTCRの差次的発現を分析した。分析には相互作用モデルを使用し、プールの対の、下位試料との比較における、上位試料でのTCRの濃縮度を、その他全てのプールの下位試料に対する上位試料でのTCRの濃縮度と対比した。すべての補正後p値を、最も低いp値から最も高いp値まで順位付け、図37Eに表す。2つの補正後p値が他から突出していた。これらは、試料4と5のペアワイズTCR濃縮度分析におけるTCRα9.β14、および試料3と5のペアワイズTCR濃縮度分析におけるTCRα43.β16を表している。これらの結果は、試料4と5で表現されるTMG4、および試料3と5で表現されるTMG3が、それぞれのTCRで認識される抗原をコードしていることを示している。
【0652】
まとめると、この実施例は、それぞれが複数のTMGを発現しているAPCのプールを用いて、多数のミニ遺伝子に対するTCRライブラリースクリーニングを行うことができること、そしてこのコンビナトリアルTMGエンコーディング手法により、抗原反応性TCRと認識抗原を発現しているTMGの両方を同定できることを示している。
実施例23
【0653】
本実施例では、TCRの特性を遺伝子スクリーニングのデータから導き出すことができることについて説明する。この実施例は、TCRライブラリースクリーニング手法が、TCRの特性を導き出すのに十分な感度を有することを実証するものである。このことを目的として、TCRの誘発された活性化とバックグラウンドの活性化に関して、TCR同定プラットフォームに由来する機能的遺伝子スクリーニングのデータを、独立した検証実験と比較する。
【0654】
図10Gで同定された16個のCRC pt2 TCRを、認識されるTMG(TMG2)に対する反応性について評価した。遺伝子スクリーニング手法において観察された活性化と検証実験で観察された活性化の間には良好な相関が観察される(図38、中央の図)。また、遺伝子スクリーニング手法において観察されたバックグラウンドの活性化と、検証実験で観察されたバックグラウンドの活性化との間にも良い相関が観察された(図38;右図)。
【0655】
これらのデータは、TCRライブラリーのスクリーニング手法を用いてTCRを同定した後に独立した実験で決定することができるTCRの特性は、機能的遺伝子スクリーニングのデータを使ってスクリーニング段階で決定することが可能であることを示している。例えば、図38に例示したように、相対的なTCRの感度や抗原非存在下でのTCRの活性化は、TCRライブラリーのスクリーニングにおいて決定することができる。相対的なTCRの感度は、癌患者の治療用にT細胞産物を操作するための最適なTCRを決定するのに重要であると考えられる。抗原非存在下におけるTCRの活性化については、そのようなTCRを発現する操作されたT細胞は非癌細胞上に提示された抗原を認識する恐れがあるため、負の選択基準を含めることが検討され得る。
【0656】
スクリーニング段階の後に実施する必要のあるTCR特性評価アッセイの回数を減らすために、TCRライブラリーのスクリーニング段階において追加のスクリーニングを含めることもできる。それらの例としては、これらに限定されるものではないが、i)TCRライブラリーのスクリーニング段階において、野生型TMGを発現するAPCをTCRの変異特異性を決定するための対照として用いたスクリーニング;ii)クラスIまたはクラスII提示に必須の要素(B2MまたはCIITA/CD74)を欠失し、かつ、TMGを発現するように操作されたAPCを、TCRのクラスIおよび/またはクラスII拘束性を決定するための対照として用いたスクリーニング;iii)異なる強度のプロモーターからTMGを発現するAPCを、TCRの感受性を決定するために用いたスクリーニング;が挙げられる。
【0657】
まとめると、この実施例は、TCRライブラリースクリーニングによってTCRの特性を決定できることを示している。それにより、TCRライブラリースクリーニング段階の後に実施する必要のある、TCRの特性を決定するための実験の回数を減らすことができるため、スクリーニングからTCRの特性決定までにかかる総所要時間を短縮できるという利点がある。
実施例24:
レポーターT細胞の亜集団の単離を介した、TCRαβライブラリーからの抗原反応性TCRの回収(上位下位手法)
【0658】
本実施例では、抗原への応答に基づいて1つ以上の亜集団を単離することを介して、TCRαβライブラリーから抗原反応性TCRを回収することを説明する。簡単に説明すると、この手法は、i)レポーターT細胞を、TCRαβライブラリーに含まれるTCRの発現が可能になるように、操作するステップ;ii)これらの細胞と少なくとも1つの抗原を発現する抗原提示細胞との共培養を実施するステップ;iii)T細胞活性化マーカーに基づいて、細胞を、a)1つ以上のT細胞活性化マーカーを発現している「上位」集団と、b)1つ以上のT細胞活性化マーカーの発現を欠く(または発現が低い)「下位」集団とに分離するステップ;iv)ゲノムDNAのPCRとそれに続くディープシークエンシングを用いて、上位試料と下位試料からTCRを同定するステップ;および、v)下位試料と比較して、上位試料で濃縮されている少なくとも1つの抗原反応性TCRを同定するステップ、を伴う。T細胞活性化マーカーの発現は、活性化T細胞を識別するマーカー(CD69)の相対的に高い発現であっても、または非活性化T細胞を識別するマーカー(CD62L)の相対的に低いレベルの発現であってもよい。
【0659】
上位下位手法は、抗原刺激により抗原反応性TCRは活性化マーカー陽性となるため、そのようなTCRは、下位集団と比較すると、上位集団において濃縮されるだろうという原理に基づいている。上位下位手法を、以下に述べるように、様々な添付図によって説明する。
【0660】
別の態様では、下位試料は、任意の参照細胞集団であっても、またはTCRプラスミドの参照ライブラリーであってもよい。下位試料は、上位試料と同じ細胞集団から選別されるが、活性化マーカー発現が低いものであってもよい。下位試料は、関連するTCRライブラリーを発現するレポーターT細胞と外因性抗原を発現するように操作されていないB細胞との共培養から得ることができる。下位試料は、レポーターT細胞(ここから上位試料を選別した)を作製するために使用されたTCRプラスミドライブラリーであってもよい。いくつかの態様において、上位試料および下位試料におけるTCRの表現は、差次的TCR表現分析を行なっている最中に、他の任意の追加試料におけるTCRの表現と比較することもできる。いくつかの態様において、そのような追加試料は、プラスミドTCRライブラリーであってもよい。他の態様において、そのような追加試料は、関連するTRCライブラリーを発現するレポーターT細胞と外因性抗原を発現するように操作されていないB細胞との共培養に由来するものであってもよい。
【0661】
図39のrlog値は、TCR表現の指標を表している。このグラフは、5つの特徴の分かっているTCRをそれらの同族抗原で刺激すると、他のいずれの試料と比較しても、上位試料(最も明るい灰色の陰影)で濃縮されることを示すものである。TMGを発現するB細胞との共培養から得られた下位試料は、外因性抗原を発現するように操作されていないB細胞との共培養から得られた上位または下位試料よりも低いrlog値を示している。これらの結果に基づいて、当業者は、上位下位手法を用いた抗原反応性TCRの同定は、i)上位試料と同じ細胞集団に由来するが活性化マーカーの発現が低い下位試料(下位+TMG)を用いた場合の方が、ii)外因性抗原を発現するように操作されていないB細胞との共培養から得られた下位試料を用いた場合よりも、高感度となることを理解するだろう。これは、上位+TMGと下位+TMGの間の差が、上位+TMGと上位/下位-TMGとの間の差より大きいため、前者の比較を用いればTCR反応性を高感度に検出することができるためである。下位試料(すなわち、参照TCR表現)は、関連するプラスミドTCRライブラリー(図39の黒点)に由来するものであってよく、これは、外来抗原を発現するように操作されていないB細胞との共培養に由来する上位または下位試料におけるTCR表現と相関している。
【0662】
本実施例の別の観点を図39に示し、ここでは、図14F、Gの100×100コンビナトリアルライブラリーの遺伝子スクリーニングに関するさらなる分析について示している。この実施例では、上位下位手法を示し、ここで下位試料に含まれる細胞は、上位試料が含まれる細胞集団から理想的に選別されるが、活性化マーカーは陰性である。図39では、図14F、GのデータをDESeq2Rパッケージを使用してRlog変換し、5つの特徴の分かっているTCRのそれぞれについて表わしている。それぞれの点は、独立した実験の結果を示しており、また、試料の種類によって色分けされている。上位試料が、CD69が最も高く発現していた上位10%の細胞を表している一方、下位試料は、その同じ細胞集団から選別された細胞ではあるが、CD69の発現が低かった細胞を表している。図16Eでは、それぞれが、同一性は分かっているが特異性が分かっていない異なるTCRを発現している24のT細胞株から作製したジャーカットhCD8陽性細胞のプールに、上位下位手法を適用した。これらの細胞株を1:1の割合で混合し、また、CDK4-17、CDK4-8、CMV#1、CMV#2、GCN1L1のいずれかのTCRを発現するジャーカットhCD8陽性細胞も1:10,000から1:1,000,000の範囲の種々の頻度で混合した。これら5つのTCRの同族抗原を発現するB細胞と共培養した後、細胞をCD69(T細胞活性化マーカー)で染色した。FACSを用いて、CD69を最も高く発現している上位10%のT細胞を上位試料に選別し、CD69を低レベルで発現しているほぼ同量のT細胞を下位試料としてFACSで選別した。両試料のTCR含量を、ゲノムDNAを用いたPCRと、それに続くイルミナプラットフォームを用いた次世代シークエンスで分析した。上位試料と下位試料でのTCRの相対的な存在量を算出し、この方法により、5つの特徴の分かっているTCRすべてが濃縮されていることが観察された。
【0663】
図13A~Eでは、6つの抗原特異的TCRを発現するプラスミドを、同一性は分かっているが特異性が分かっていないプラスミドのプールに1:10,000~100,000の頻度で混合して、TCRライブラリーを作製した。このプラスミドプールを用いてレトロウイルスを作製し、ジャーカットhCD8陽性TCR KO細胞に感染させた。このレポーターT細胞のポリクローナルなプールと、抗原特異的TCRの同族抗原を発現するB細胞とで共培養を行った。FACSを用いて、CD69最も高く発現する上位10%のT細胞を上位試料に選別し、CD69を低レベルで発現しているほぼ同量のT細胞を下位試料としてFACSで選別した(図13C)。両試料のTCR含量を、ゲノムDNAのPCRによって分析し(図13D)、次いでイルミナプラットフォームを用いた次世代シークエンスを行った。上位試料と下位試料でのTCRの相対的な存在量を算出し、この方法により、5つの特徴の分かっているTCRすべてが濃縮されていることが観察された(図13E)。
【0664】
図10A~Jでは、大腸癌(CRC)標本のバルクTCR配列決定を用いて得られた最も多く存在するTCRα鎖とTCRβ鎖から、コンビナトリアルTCRライブラリーを作製した。このライブラリーをジャーカットhCD8陽性TCR KO細胞(図10D)にレトロウイルス導入し、その細胞と腫瘍特異的新生抗原を発現するEBV-B細胞との共培養を行った。FACSを用いて、CD69最も高く発現する上位10%のT細胞を上位試料に選別し、CD69を低レベルで発現しているほぼ同量のT細胞を下位試料としてFACSで選別した(図10E)。全試料のTCR含量を、ゲノムDNAのPCRによって分析し(図10F)、次いでオックスフォードナノポアテクノロジーで次世代シークエンスを行った。上位試料と下位試料におけるTCRの相対的な存在量を算出した。さらに3つのCRC標本についてこの方法を用いたところ、合計11の新生抗原反応性TCRの候補が同定された(図10G)。これらのうちの4つについては、独立した共培養実験においてさらに検証を行なった(図10H-K)。
【0665】
図36A~Eでは、上位および下位の試料を、オートMACS(ミルテニー、ベルギッシュグラートバハ、ドイツ)を用いたビーズに基づく選別によって分離している。卵巣癌(OVC)または大腸癌(CRC)の試料に由来する、5つの特徴の分かっているTCRと95の特徴の分かっていないTCRを使用して、100×100設計のコンビナトリアルTCRライブラリーを作製し、これをレポーターT細胞で発現させた。5つの特徴の分かっているTCRの同族抗原を発現するB細胞と共培養した後、CD20マイクロビーズを用いてB細胞を枯渇させた。その後、CD62LマーカーとCD69マーカーを用いた連続したビーズに基づく選別によって、上位および下位試料を回収した。CD62Lは非活性化T細胞に発現するマーカーであり、CD69は活性化T細胞に発現するマーカーである。CD62Lマイクロビーズとは結合しないが、CD69マイクロビーズとは結合する細胞を上位試料として、CD62Lマイクロビーズと結合するが、CD69マイクロビーズとは結合しない細胞を下位試料として分離した。両試料のTCR含量を、ゲノムDNAのPCRによって分析し(図36C)、次いでオックスフォードナノポアテクノロジーを用いた次世代シークエンスおよびスクリーニング分析を行った(図36D、E)。5つの特徴の分かっているTCRは、下位試料と比較して、上位試料で最も有意に濃縮された7つのTCRに含まれていた。この結果は、ビーズに基づく選別が、TCRライブラリースクリーニング手法において上位試料と下位試料を分離するための代替戦略として使用できることを示している。
【0666】
この実施例は、抗原反応性TCRの機能的遺伝子スクリーニングを可能にするために、複数のTCRを発現するレポーターT細胞に上位下位手法を広く適用できることを示している。上位下位手法は、複数のTCRを発現するポリクローナルなレポーターT細胞を作製する様式とは独立して適用することが可能である。このことは、様々な方法、例えば、i)それぞれが定義されたTCRを1つだけ発現するレポーターT細胞株を混合すること、ii)定義されたTCRをコードするプラスミドを混合し、ポリクローナルなウイルスを産生し、レポーターT細胞に形質導入すること、および、iii)TCRライブラリーを用いてポリクローナルなウイルスを産生し、レポーターT細胞に形質導入すること、によって得られたTCR発現レポーターT細胞からの抗原反応性TCRの同定によって裏付けられている。
【0667】
さらに、本実施例は、上位下位手法が、i)様々なT細胞活性化マーカー(CD69単独で、またはCD62L/CD69と併用して)による染色、ii)様々な細胞選別技術(FACSによる選別、ビーズに基づく選別)を用いた分離、iii)様々な次世代シークエンス技術を用いた分析(イルミナ、オックスフォードナノポアテクノロジー)などの、様々な細胞分離技術やTCR同定技術に応用可能なことを示している。
【0668】
いくつかの態様では、前述した実施例で説明した手法(上位下位手法)を、TCRライブラリーを作製するための任意の方法に適用することができる。そのような方法としては、これらには限定されないが、i)図15で説明したライブラリーを設計するための様々な方法;ii)単一細胞内で発現するTCRα鎖およびTCRβ鎖の両方の配列を同定するTCR配列決定技術(対合したTCRの配列決定)に基づくライブラリーの設計;iii)TCRαおよびTCRβ配列の細胞内連結とその後のクローニングに基づくライブラリーの設計、が挙げられる。上位下位手法は、CD69、CD62L、CD137、CD25、IFN-γ、IL-2、TNF-α、GM-CSFを含むがこれらには限定されない、任意のT細胞活性化マーカー、またはT細胞活性化マーカーの組み合わせによる細胞分離に基づくものであってもよい。上位下位手法を、セルトレース(CellTrace)染色を含むがこれらには限定されない、任意の増殖マーカーに適用してもよい。上位下位手法を、CD69(プロモーター)-EGFRtレポーターおよびCD69(プロモーター)-LNGFRレポーターを含むがこれらには限定されない、任意のT細胞活性化レポーターに基づく細胞分離に適用してもよい。上位下位手法を、FACSを利用した選別、微少流体技術に基づく細胞選別、ビーズの使用に基づく細胞選別を含むがこれらには限定されない、任意の細胞分離技術に適用してもよい。上位下位手法は、イルミナ、オックスフォードナノポアまたはパシフィックバイオサイエンステクノロジーを用いた配列決定を含むがこれらに限定されない、任意の次世代シークエンシング技術を用いて分析することができる。
図1
図2
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図38
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【国際調査報告】