(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(54)【発明の名称】FXRアゴニストを含む処置
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20220914BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220914BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220914BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20220914BHJP
A61K 31/46 20060101ALI20220914BHJP
A61K 31/575 20060101ALI20220914BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20220914BHJP
A61P 31/06 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P43/00 111
A61P1/16
A61P1/00
A61K31/46
A61K31/575
A61K31/454
A61P31/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022503908
(86)(22)【出願日】2020-07-21
(85)【翻訳文提出日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 IB2020056834
(87)【国際公開番号】W WO2021014349
(87)【国際公開日】2021-01-28
(32)【優先日】2019-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ブリース,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ロペス,パトリシア
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA66
4C084ZA75
4C084ZC33
4C084ZC41
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC67
4C086CB15
4C086DA11
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA09
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA66
4C086ZA75
4C086ZC33
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、ファルネソイドX受容体(FXR)が介在する状態、特に肝疾患又は腸疾患、例えばNASHの処置、予防又は寛解を必要とする対象に、治療的有効量のFXRアゴニストを投与することを含む、ファルネソイドX受容体(FXR)が介在する状態、特に肝疾患又は腸疾患、例えばNASHを処置する、予防する、又は寛解させる方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファルネソイドX受容体(FXR)が介在する状態、特に肝疾患又は腸疾患の処置を必要とする対象における、ファルネソイドX受容体(FXR)が介在する状態、特に肝疾患又は腸疾患の処置のための方法であって、治療的有効量のFXRアゴニストを1日1回前記対象に投与することを含み、前記FXRアゴニストが夕刻に投与される、方法。
【請求項2】
ファルネソイドX受容体(FXR)が介在する状態、特に肝疾患又は腸疾患の予防を必要とする対象における、ファルネソイドX受容体(FXR)が介在する状態、特に肝疾患又は腸疾患の予防のための方法であって、治療的有効量のFXRアゴニストを1日1回前記対象に投与することを含み、前記FXRアゴニストが夕刻に投与される、方法。
【請求項3】
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の、処置、安定化又は、重症度若しくは進行の軽減を必要とする対象における、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の、処置、安定化又は、重症度若しくは進行の軽減のための方法であって、治療的有効量のFXRアゴニストを1日1回前記対象に投与することを含み、前記FXRアゴニストが夕刻に投与される、方法。
【請求項4】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の、処置、安定化又は、重症度若しくは進行の軽減を必要とする対象における、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の、処置、安定化又は、重症度若しくは進行の軽減のための方法であって、治療的有効量のFXRアゴニストを1日1回前記対象に投与することを含み、前記FXRアゴニストが夕刻に投与される、方法。
【請求項5】
慢性肝疾患又は障害、例えばNAFLD、NASH、肝線維症又はPBCの発症の緩徐化、抑止又は軽減を必要とする対象において、慢性肝疾患又は障害、例えばNAFLD、NASH、肝線維症又はPBCの発症を緩徐化する、抑止する又は軽減するための方法であって、治療的有効量のFXRアゴニストを1日1回前記対象に投与することを含み、前記FXRアゴニストが夕刻に投与される、方法。
【請求項6】
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)又は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である疾患を有する対象において肝硬変又は線維症を軽減するための方法であって、治療的有効量のFXRアゴニストを1日1回前記対象に投与することを含み、前記FXRアゴニストが夕刻に投与される、方法。
【請求項7】
前記方法は、活動性(NAS)スコアにより定義されるような前記対象のNAFLDの悪化がないこと、前記対象の脂肪肝、Activity and Fibrosis(SAF)活動性スコアの悪化がないこと、前記対象における肝臓脂肪の減少、対象の脂肪肝の改善、対象の風船様腫大の改善、NAFLD消散、線維症の悪化がないNAFLD消散、NAFLD悪化がない線維症の軽減、前記対象におけるALTレベル低下、前記対象におけるASTレベル低下、前記対象におけるHbA1cレベル低下、対象の肝硬変への進行がないこと、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)及び/又は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の進行の阻害又はそれらの組み合わせをさらに含む、請求項1~6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記FXRアゴニストが、トロピフェクサー、オベチコール酸、ニズフェクサー、シロフェクソール、TERN-101、EDP-305、PXL007、AGN242266及びMET409から選択される、請求項1~7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記FXRアゴニストがオベチコール酸である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
オベチコール酸が、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約40mg又は約50mgの1日用量で投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記FXRアゴニストがトロピフェクサーである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
トロピフェクサーが約90μg~約250μg、例えば約140μg~約200μgの1日用量で投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
トロピフェクサーが、約90μg/日、約140μg/日、約150μg/日、約160μg/日、約170μg/日、約180μg/日、約190μg/日、約200μg/日、約210μg/日、約220μg/日、約230μg/日、約240μg/日又は約250μg/日の用量で投与されるものである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
トロピフェクサーが約140μgの1日用量で投与されるものである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記投与が、前記FXRアゴニストの投与に付随する効力を向上させる、請求項1~14の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記投与が、前記FXRアゴニストの投与に付随する副作用、例えばそう痒のリスクを軽減する、請求項1~14の何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記投与が、前記FXRアゴニストの投与に付随する副作用、例えば脂質異常のリスクを軽減する、請求項1~14の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記投与が脂肪性肝炎の消散を含む、請求項1~14の何れか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記投与が肝線維症の改善を含む、請求項1~14の何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記投与が脂肪性肝炎の消散及び肝線維症の改善を含む、請求項1~14の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファルネソイドX受容体(FXR)が介在する状態、特に肝疾患又は腸疾患の処置、予防又は寛解を必要とする対象に治療的有効量のFXRアゴニストを投与することを含む、ファルネソイドX受容体(FXR)が介在する状態、特に肝疾患又は腸疾患を処置する、予防する又は寛解させる方法に関する。さらに、本発明は、線維症又は硬化性疾患又は障害、例えば肝疾患又は障害を処置又は予防するための、ファルネソイドX受容体アゴニスト(FXRアゴニスト)、例えばトロピフェクサーなどの使用を対象とする。
【背景技術】
【0002】
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は、欧米諸国においては慢性肝疾患の最多の原因である。NAFLDの主要なステージは、1-単純な脂肪肝(脂肪肝);2-非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、炎症及び細胞損傷が付随する脂肪蓄積があるNAFLDのより重篤な形態;3-肝臓に持続性の炎症があり、その結果、肝臓細胞及び血管周囲に線維性の瘢痕組織が生じている、線維症;及び4-傷害が永久的であり、肝不全及び肝臓癌(肝細胞癌)につながり得る、肝硬変である。
【0003】
肝臓移植は、肝不全を伴う進行した肝硬変に対する唯一の処置である。NAFLDの世界中の有病率の推定値は、一般集団において6.3%~33%の範囲であり、中央値は20%である。NASHの推定有病率はそれより低く、3~5%の範囲である(Younossi et al.,Hepatology,Vol.64,No.1,2016)。NASHは世界的な問題であり、この数十年間にわたり有病率が上昇している。この10年間で、米国において、NASHに対する肝臓移植の適応は稀なものから第2の適応へと上昇している。2020年までには移植の主要な原因になると予想される。NASHは、メタボリックシンドローム及び2型糖尿病と大きく関連している。さらに、心血管系死亡率は、NASH患者の重要な死因である。
【0004】
NASHの発生はいくつかの機序:肝臓における脂肪蓄積(脂肪肝)、肝臓の炎症、肝細胞風船様腫大及び線維症を含む。治験中にNAFLDの変化を測定するためのツールとしてNAFLD活動性スコア(NAS)が開発された。脂肪肝(0~3)、小葉の炎症(0~3)及び風船様腫大(0~2)に対するスコアの非加重合計としてスコアを計算する。
【0005】
NASH患者において試験した場合、オベチコール酸(OCA)、胆汁酸模倣物は、有効性、特にNASの顕著な改善を示し、即ち脂肪肝に対して強い影響があり、小葉の炎症及び風船様腫大に対してさらなる効果がある。しかし、OCAの長期投与には、そう痒並びに脂質異常、即ち低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール上昇が付随したので、安全性の懸念が生じる(REGENERATE(NCT02548351),A Phase 3 International,Randomized,Placebo-Controlled Study Evaluating Obeticholic Acid Treatment for NASH,EASL 2019 April 10-14 Viennaからの結果を参照)。そう痒は、OCAで処置した患者において最もよくある有害作用である。FXRアゴニストOCAによる処置と関連して報告されるこの副作用によって、用量調整及び/又は投与中断が必要となり得る。そう痒はまた、殆どの患者において、即ち胆汁酸捕捉剤、抗ヒスタミン剤の使用、用量減少又は対症治療によっても管理され得る。さらに、有害な心血管系事象のリスクを回避するために、OCAで処置されるNASH患者の長期治療に対してスタチンの同時投与が求められ得る。
【0006】
FXRアゴニスト、トロピフェクサー(Tully et al.,J Med Chem 2017;60:9960-9973)は現在、線維症がある非アルコール性脂肪性肝炎患者において試験されている(NCT02855164試験参照)。本化合物は、国際公開第2012/087519号パンフレット(実施例1、125頁の表の化合物1~IB)で最初に開示され、LJN452という名称で知られている。
【0007】
現在、NASHに対して承認されている治療はない。従って、受容可能な安定性及び/又は忍容性プロファイルを示しながら、これらの複雑な状態の様々な側面に対処し得る、線維化/硬化性疾患又は障害、例えば肝疾患又は障害、例えばNASHに対する処置を提供することが必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、ファルネソイドX受容体(FXR)が介在する状態、特に肝疾患又は腸疾患、例えばNASHの処置、予防又は寛解を必要とする対象に治療的有効量のFXRアゴニストを投与することを含む、ファルネソイドX受容体(FXR)が介在する状態、特に肝疾患又は腸疾患、例えばNASHを処置する、予防する又は寛解させる方法に関し、前記対象へのFXRアゴニストの投与は夕刻に行われている。
【0009】
本発明は、FXRが介在する状態、特に肝疾患又は腸疾患、例えばNASHの処置、予防又は寛解を必要とする対象に、治療的有効量の式
【化1】
のFXRアゴニスト、即ち、そのINNトロピフェクサーとしても知られる、遊離形態の2-[(1R,3r,5S)-3-({5-シクロプロピル-3-[2-(トリフルオロメトキシ)フェニル]-1,2-オキサゾール-4-イル}メトキシ)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル]-4-フルオロ-1,3-ベンゾチアゾール-6-カルボン酸)又は薬学的に許容可能なその塩若しくはそのアミノ酸抱合体を投与することを含む、FXRが介在する状態、特に肝疾患又は腸疾患、例えばNASHを、処置する、予防する又は寛解させる方法に関し、前記対象へのFXRアゴニストの投与は夕刻に行われている。
【0010】
本発明は、投与が夕刻に行われる、少なくとも1つのFXRアゴニスト、例えばトロピフェクサーなどを含有する新しい治療レジメンを提供する。本発明による治療レジメンは、従来の治療レジメンを使用しているときに認められるそう痒及び/又は脂質異常(例えばLDLコレステロール上昇)などの副作用発生を低く抑えながら、高い治療有効性の利益をもたらす。これらの治療レジメンは、対象に対して好都合な1日1回投与をさらにもたらし、従って患者コンプライアンスを支援する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、FXRアゴニストLJP305(Tully et al.,J Med Chem 2017;60:9960-9973に記載の化合物)で処置されたカニクイザルにおける2週間試験の試験計画を提供する。
【
図2】
図2は、FXRアゴニストLJP305で処置されたカニクイザルにおける2週間試験の様々な群における7α-ヒドロキシ-4-コレステン-3-オン(C4)測定を示す。
【
図3】
図3は、FXRアゴニストLJP305で処置されたカニクイザルにおける2週間試験の様々な群におけるコール酸(CA)測定を示す。
【
図4】
図4は、FXRアゴニストLJP305で処置されたカニクイザルにおける2週間試験の様々な群におけるケノデオキシコール酸(CDCA)のレベルを示す。
【
図5】
図5は、FXRアゴニストOCA及びシロフェクソールで処理したインビトロヒト肝細胞のLDL取り込みが減少することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
夕刻、例えば就寝時間の少し前又は就寝時に、FXRアゴニストを必要とする対象にFXRアゴニストを投与することは、治療有効性及び安全性(そう痒及び/又は脂質異常の軽減など)に対して有益であることが分かった。
【0013】
7α-ヒドロキシ-4-コレステン-3-オン(C4)は、コレステロール7-アルファ-モノオキシゲナーゼ又はチトクロムP450 7A1(Cyp7A1)により直接産生される中間胆汁酸前駆体である。C4は血漿中で2つのピークがあり、1つは1pm前後であり、他方は9pm前後である(Galman et al.,Gastroenterology 2005;129:1445-1453)。これらのピークは、胆汁酸が消化に必要とされる、1日のうちより大きな食事のタイミングに対応する。これは、C4を産生するCyp7A1並びに産生に対する対抗機序であるFXRが、ヒトにおいて同じ日周リズムに従っていることを意味する。夕刻(例えば6pm頃~12pm頃、好ましくは8pm頃~11pm頃、好ましくは9pm前後)のFXRアゴニストの投与によって、転写因子FXRの活性が減少しているときにFXRアゴニストが系を刺激することが可能になるはずであり、故に、通常はFXR活性が最低である夜間にFXRアゴニストの効果をより延長することが可能になる。このような投与スケジュールはFXRアゴニストの有効性を向上させるはずである。
【0014】
主要な一次胆汁酸であるケノデオキシコール酸(CDCA)は、主に胆汁酸誘発性のそう痒の原因となる(Alemi et al.,The Journal of Clinical Investigation 2013;123:1513-1530)。FXRアゴニスト誘発性のそう痒は、Cyp7a1の阻害が持続されることにより引き起こされることが分かっているが、Cyp7a1の阻害は、C4/胆汁酸産生の遮断を引き起こし、Cyp27a1の活性化を介した代替的胆汁酸経路が活性化されるようになり、これが起痒性のCDCA胆汁酸の産生につながる。Cyp7A1の酵素活性が最低であるときにFXRアゴニストを投与することにより、Cyp7A1のFXR介在性阻害の効果及び結果として生じる代替胆汁酸経路の活性化が最小限に抑えられるはずである。
【0015】
さらに、FXRアゴニスト処置は、末梢LDLの上昇を含む脂質異常と関連付けられている(Neuschwander-Tetri et al.,The Lancet 2015;385:956-965)。FXRアゴニストによる胆汁酸経路の低減は、肝細胞の細胞質内でのコレステロール上昇につながり得る。肝細胞でのコレステロール上昇は、細胞表面上のLDL受容体減少の対抗機序と関連付けられている(Goldstein et al.,Circulation.1987 Sep;76(3):504-7)。肝細胞表面上でのこのようなLDL受容体減少の結果、最終的に、循環LDLが増加するが;これは臨床で認められる表現型である。発明者らは、インビトロで、インビトロヒト肝細胞を使用して、FXRアゴニストが用量依存的に肝細胞によるLDL取り込みを減少させることを実証した(
図5)。これらのデータは、Cyp7A1及び胆汁酸経路の遮断が末梢でのLDL増加につながることを示す。循環LDLの増加を軽減するため、循環LDLに対するFXRアゴニストの影響を低下させるためにそれを必要とする対象に夕刻(例えば約6pm~約12pm、好ましくは8pm頃~11pm頃、好ましくは9pm前後)にFXRアゴニストを投与することが提案される。
【0016】
様々な(列挙される)本発明の実施形態が本明細書中に記載される。本開示のさらなる実施形態を提供するために、各実施形態で特定される特性が他の特定される特性と組み合わせられ得ることが認められる。
【0017】
実施形態(a)
1a:治療的有効用量で1日1回投与され、夕刻に投与される、ファルネソイドX受容体(FXR)が介在する状態、特に肝疾患又は腸疾患の処置での使用のための、FXRアゴニスト。
2a:治療的有効用量で1日1回投与され、夕刻に投与される、ファルネソイドX受容体(FXR)が介在する状態、特に肝疾患又は腸疾患の予防での使用のための、FXRアゴニスト。
3a.治療的有効用量で1日1回投与され、夕刻に投与される、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、例えばNASHの、処置、安定化又は、重症度若しくは進行の軽減を必要とする対象における、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、例えばNASHの、処置、安定化又は、重症度若しくは進行の軽減での使用のための、FXRアゴニスト。
4a.治療的有効用量で1日1回投与され、夕刻に投与される、腸疾患の、処置、安定化又は、重症度若しくは進行の軽減を必要とする対象における、腸疾患の、処置、安定化又は、重症度若しくは進行の軽減での使用のための、FXRアゴニスト。
5a.治療的有効用量で1日1回投与され、夕刻に投与される、慢性肝疾患又は障害、例えばNAFLD、NASH、肝線維症又はPBCの発症の緩徐化、抑止又は軽減を必要とする対象において、慢性肝疾患又は障害、例えばNAFLD、NASH、肝線維症又はPBCの発症を緩徐にする、抑止する又は軽減することでの使用のための、FXRアゴニスト。
6a.トロピフェクサー、オベチコール酸、ニズフェクサー(nidufexor)、シロフェクソール、TERN-101、EDP-305、PXL007、AGN242266及びMET409から選択される、実施形態1a~実施形態5aの何れかに記載の使用のための、FXRアゴニスト。
7a.治療的有効用量で1日1回投与され、夕刻に投与される、FXRが介在する状態;特に肝疾患又は腸疾患の処置又は予防での使用のための、例えば遊離形態であるトロピフェクサー又はその塩若しくはそのアミノ酸抱合体。
8a.1日1回夕刻に約90μg~約250μg、例えば約140μg~約200μgの用量で投与されるものである、FXRが介在する状態;特に肝疾患又は腸疾患の処置又は予防での使用のための、例えば遊離形態であるトロピフェクサー又はその塩若しくはそのアミノ酸抱合体。
9a.治療的有効用量で1日1回投与され、夕刻に投与される、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝線維症又はPBCの処置又は予防での使用のための、例えば遊離形態であるトロピフェクサー又はその塩若しくはそのアミノ酸抱合体。
10a.1日1回約90μg~約250μg又は約140μg~約200μgの用量で投与され、夕刻に投与されるものである、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)又は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の処置又は予防での使用のための、例えば遊離形態であるトロピフェクサー又はその塩若しくはそのアミノ酸抱合体。
11a.約140μgの1日用量で投与されるものである、実施形態7a~10aの何れかに記載の使用のためのトロピフェクサー。
12a.前記夕刻の投与が、FXRアゴニストの投与に付随する効力を向上させる、実施形態1a~11aの何れか1つに記載の使用のためのFXRアゴニスト。
13a.前記夕刻の投与が、FXRアゴニストの投与に付随する副作用、例えばそう痒のリスクを軽減する、実施形態1a~12aの何れか1つに記載の使用のためのFXRアゴニスト。
14a.前記夕刻の投与が、FXRアゴニストの投与に付随する副作用、例えば脂質異常のリスクを軽減する、実施形態1a~11aの何れか1つに記載の使用のためのFXRアゴニスト。
15a.前記投与が脂肪性肝炎の消散を含む、実施形態1a~14aの何れか1つに記載の使用のためのFXRアゴニスト。
16a.前記投与が肝線維症の改善を含む、実施形態1a~14aの何れか1つに記載の使用のためのFXRアゴニスト。
17a.前記投与が脂肪性肝炎の消散及び肝線維症の改善を含む、実施形態1a~14aの何れか1つに記載の使用のためのFXRアゴニスト。
【0018】
実施形態(b):
1b.ファルネソイドX受容体(FXR)が介在する状態、特に肝疾患又は腸疾患の処置を必要とする対象における、ファルネソイドX受容体(FXR)が介在する状態、特に肝疾患又は腸疾患の処置のための方法であって、治療的有効量のFXRアゴニストを1日1回前記対象に投与することを含み、FXRアゴニストが夕刻に投与される、方法。
2b.ファルネソイドX受容体(FXR)が介在する状態、特に肝疾患又は腸疾患の予防を必要とする対象における、ファルネソイドX受容体(FXR)が介在する状態、特に肝疾患又は腸疾患の予防のための方法であって、治療的有効量のFXRアゴニストを1日1回前記対象に投与することを含み、FXRアゴニストが夕刻に投与される、方法。
3b.非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の、処置、安定化又は、重症度若しくは進行の軽減を必要とする対象における、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の、処置、安定化又は、重症度若しくは進行の軽減のための方法であって、治療的有効量のFXRアゴニストを1日1回前記対象に投与することを含み、FXRアゴニストが夕刻に投与される、方法。
4b.腸疾患の、処置、安定化又は、重症度若しくは進行の軽減を必要とする対象における、腸疾患の、処置、安定化又は、重症度若しくは進行の軽減のための方法であって、治療的有効量のFXRアゴニストを1日1回前記対象に投与することを含み、FXRアゴニストが夕刻に投与される、方法。
5b.非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の、処置、安定化又は、重症度若しくは進行の軽減を必要とする対象における、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の、処置、安定化又は、重症度若しくは進行の軽減のための方法であって、治療的有効量のFXRアゴニストを1日1回前記対象に投与することを含み、FXRアゴニストが夕刻に投与される、方法。
6b.慢性肝疾患又は障害、例えばNAFLD、NASH、肝線維症又はPBCの発症の緩徐化、抑止又は軽減を必要とする対象において、慢性肝疾患又は障害、例えばNAFLD、NASH、肝線維症又はPBCの発症を緩徐にする、抑止する又は軽減するための方法であって、治療的有効量のFXRアゴニストを1日1回前記対象に投与することを含み、FXRアゴニストが夕刻に投与される、方法。
7b.非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)又は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である疾患を有する対象において、肝硬変又は線維症を軽減するための方法であって、治療的有効量のFXRアゴニストを1日1回前記対象に投与することを含み、FXRアゴニストが夕刻に投与される、方法。
8b.活動性(NAS)スコアにより定義されるような対象のNAFLDの悪化がないこと、対象の脂肪肝、Activity and Fibrosis(SAF)活動性スコアの悪化がないこと、前記対象における肝臓脂肪の減少、対象の脂肪肝の改善、対象の風船様腫大の改善、NAFLD消散、線維症の悪化がないNAFLD消散、NAFLD悪化がない線維症の軽減、前記対象におけるALTレベル低下、前記対象におけるASTレベル低下、前記対象におけるHbA1cレベル低下、対象の肝硬変への進行がないこと、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)及び/又は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の進行抑制又はそれらの組み合わせをさらに含む、実施形態1b~7bの何れか1つに記載の方法。
9b.FXRアゴニストが、トロピフェクサー、オベチコール酸、ニズフェクサー、シロフェクソール、TERN-101、EDP-305、PXL007、AGN242266及びMET409から選択される、実施形態1b~8bの何れか1つに記載の方法。
10b.FXRアゴニストがオベチコール酸である、実施形態9bに記載の方法。
11b.オベチコール酸が、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約40mg又は約50mgの1日用量で投与される、実施形態10bに記載の方法。
12b.FXRアゴニストがトロピフェクサーである、実施形態9bに記載の方法。
13b.トロピフェクサーが、約90μg~約250μg、例えば約140μg~約200μgの1日用量で投与される、実施形態12bに記載の方法。
14b.トロピフェクサーが、約90μg/日、約140μg/日、約150μg/日、約160μg/日、約170μg/日、約180μg/日、約190μg/日、約200μg/日、約210μg/日、約220μg/日、約230μg/日、約240μg/日又は約250μg/日の用量で投与される、実施形態12bに記載の方法。
15b.トロピフェクサーが約140μgの1日用量で投与されるものである、実施形態12bに記載の方法。
16b.前記夕刻の投与が、FXRアゴニストの投与に付随する効力を向上させる、実施形態1b~15bの何れか1つに記載の方法。
17b.前記夕刻の投与が、FXRアゴニストの投与に付随する副作用、例えばそう痒のリスクを軽減する、実施形態1b~16bの何れか1つに記載の方法。
18b.前記夕刻の投与が、FXRアゴニストの投与に付随する副作用、例えば脂質異常のリスクを軽減する、実施形態1b~16bの何れか1つに記載の方法。
19b.前記投与が脂肪性肝炎、例えばNASH、の消散を含む、実施形態1b~15bの何れか1つに記載の方法。
20b.前記投与が肝線維症の改善を含む、実施形態1b~15bの何れか1つに記載の方法
21b.前記投与が、脂肪性肝炎、例えばNASHの消散、及び肝線維症の改善を含む、実施形態1b~15bの何れか1つに記載の方法。
【0019】
実施形態(c):
1c.ファルネソイドX受容体(FXR)が介在する状態、特に肝疾患又は腸疾患の処置を必要とする対象における、ファルネソイドX受容体(FXR)が介在する状態、特に肝疾患又は腸疾患の処置での使用のための、FXRアゴニスト又は薬学的に許容可能なその塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤と、を含む医薬組成物であって、治療的有効量の少なくとも1つのFXRアゴニストを含み、夕刻に1日1回投与されるものである、医薬組成物。
2c.実施形態1a~17aの何れかに記載の使用のための、FXRアゴニストと、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【0020】
実施形態(d):
1d.ファルネソイドX受容体(FXR)が介在する状態、特に肝疾患又は腸疾患の処置のための薬剤の製造のための、実施形態1a~17aの何れか1つで定義されるとおりのFXRアゴニスト又は薬学的に許容可能なその塩の使用。
2d.ファルネソイドX受容体(FXR)が介在する状態を処置又は予防するための薬剤の製造におけるトロピフェクサーの使用であって、トロピフェクサーが約90μg~約250μg、約140μg~約200μgの1日用量で1日1回投与されるものであり、トロピフェクサーが夕刻に投与される、使用。
3d.前記FXRが介在する状態が、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、胆石症又は肝線維症である、実施形態2dに記載のトロピフェクサーの使用。
4d.FXRが介在する状態がNASHである、実施形態3dに記載のトロピフェクサーの使用。
【0021】
実施形態(e):
1e.ファルネソイドX受容体(FXR)が介在する状態、特に肝疾患又は腸疾患の処置のための薬剤の製造のための、実施形態1a~17aの何れか1つに記載のFXRアゴニスト又は薬学的に許容可能なその塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤と、を含む医薬組成物の使用。
【0022】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を処置又は予防するための、上で挙げられる実施形態の何れか1つに記載の、FXRアゴニスト又は、方法、医薬組成物又は使用であって、NASHが線維症レベルF2~F3の軽症~中等症であるもの。
【0023】
上で挙げられる実施形態の何れか1つに記載の、FXRアゴニスト、方法、医薬組成物又は使用であって、NASHが肝生検に基づき確認され(生検で確定診断されたNASHとも呼ばれる)、NASHが線維症レベルF2~F3の軽症~中等症であるもの。
【0024】
上で挙げられる実施形態の何れか1つに記載の、FXRアゴニスト又は方法、上で挙げられる実施形態の何れか1つに記載の医薬組成物又は使用であって、NASHの存在が、次のものにより実証されているもの:
i)NASHと合致する診断があり、線維症レベルF1、F2、F3又はF4であり、別の慢性肝疾患の診断がない、上の実施形態の何れか1つに記載のFXRアゴニストでの処置前2年以内に得られた肝臓生検に基づくNASHの組織学的エビデンス又は
ii)NASHの表現型診断又は
iii)非侵襲的、疾患特異的なバイオマーカー。
【0025】
トロピフェクサーは、約90μg~約250μg、例えば約140μg~約200μgの用量(例えば1日用量)で投与される。オベチコール酸は、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約40mg又は約50mgの1日用量で投与される。
【0026】
いくつかの態様では、本明細書中で定められるようなFXRアゴニストは、FXRが介在する疾患又は障害、例えば肝疾患又は障害、例えば慢性肝疾患又は障害、例えば胆汁うっ滞、肝内胆汁うっ滞、エストロゲン誘発性胆汁うっ滞、薬物誘発性胆汁うっ滞、妊娠時胆汁うっ滞、非経口栄養法関連胆汁うっ滞、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、進行性家族性胆汁うっ滞(PFIC)、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、薬物誘発性胆管損傷、胆石、肝硬変、アルコール誘発性肝硬変、嚢胞性線維症関連肝疾患(CFLD)、胆管閉塞、胆石症、肝線維症、腎線維症、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、糖尿病性腎症、大腸炎、新生児黄疸、核黄疸予防、静脈閉塞性疾患、門脈高血圧、メタボリックシンドローム、高コレステロール血症、腸細菌過剰繁殖、勃起機能不全、上記疾患の何れかによるか又は感染性肝炎により引き起こされる肝臓の進行性線維症、例えばNAFLD、NASH、肝線維症、脂肪肝又はPBCからなる群から選択される疾患又は障害の処置のために提供される。
【0027】
また別の態様では、薬学的な単位剤形組成物は、夕刻又は就寝時間の少し前又は就寝時に1日1回の経口投与に適切な約90μg、約140μg、約150μg、約160μg、約170μg、約180μg、約190μg、約200μg、約210μg、約220μg、約230μg、約240μg又は約250μgのトロピフェクサーを含む。このような単位剤形組成物は、液体、錠剤、カプセルから選択される形態であり得る。またこれらの単位剤形組成物は、慢性肝疾患、例えば非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、薬物誘発性胆管損傷、胆石、肝硬変、アルコール誘発性肝硬変、嚢胞性線維症、胆管閉塞、胆石症、肝線維症の処置での使用のため、例えば非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の処置での使用のため、例えば表現型的な非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の処置での使用のためである。
【0028】
また別の態様では、本明細書中で定義されるようなFXRアゴニストは、慢性肝疾患又は障害の、より進行したステージ又はそのより重篤な状態への進行を予防するか又は遅延させるために、例えばNAFLD、NASH、肝線維症及びPBCからなる群から選択される慢性肝疾患又は障害の進行を予防するか又は遅延させるために、提供される。
【0029】
定義
この明細書を解釈する目的のために、次の定義が適用され、適切な場合は常に、単数形で使用される用語は複数形も含み、逆も成り立つ。
【0030】
本明細書中で使用される場合、数値xに関する「約」という用語は、文脈から別段示されない限り、+/-10%を意味する。
【0031】
本明細書中で使用される場合、「FXRアゴニスト」は、胆汁酸受容体(BAR)又はNR1H4(核内受容体サブファミリー1、グループH、メンバー4)受容体と呼ばれ得るファルネソイドX受容体(FXR)に結合し、それを活性化可能なあらゆる薬剤を指す。FXRアゴニストは、FXRのアゴニスト又は部分的アゴニストとして作用し得る。この薬剤は、例えば低分子、抗体又はタンパク質、好ましくは低分子であり得る。FXRアゴニストの活性は、いくつかの異なる方法により、例えばPellicciari,et al.Journal of Medicinal Chemistry,2002 vol.15,No.45:3569-72に記載のように蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)無細胞アッセイを使用してインビトロアッセイで測定され得る。
【0032】
FXRアゴニストは、本明細書中で使用される場合、例えば国際公開第2016/096116号パンフレット、国際公開第2016/127924号パンフレット、国際公開第2017/218337号パンフレット、国際公開第2018/024224号パンフレット、国際公開2018/075207号パンフレット、国際公開第2018/133730号パンフレット、国際公開第2018/190643号パンフレット、国際公開第2018/214959号パンフレット、国際公開第2016/096115号パンフレット、国際公開第2017/118294号パンフレット、国際公開第2017/218397号パンフレット、国際公開第2018/059314号パンフレット、国際公開第2018/085148号パンフレット、国際公開第2019/007418号パンフレット、中国特許第109053751号明細書、中国特許第104513213号明細書、国際公開第2017/128896号パンフレット、国際公開第2017/189652号パンフレット、国際公開第2017/189663号パンフレット、国際公開第2017/189651号パンフレット、国際公開第2017/201150号パンフレット、国際公開第2017/201152号パンフレット、国際公開第2017/201155号パンフレット、国際公開第2018/067704号パンフレット、国際公開第2018/081285号パンフレット、国際公開第2018/039384号パンフレット、国際公開第2015/138986号パンフレット、国際公開第2017/078928号パンフレット、国際公開第2016/081918号パンフレット、国際公開第2016/103037号パンフレット、国際公開第2017/143134号パンフレットで開示される化合物を指す。
【0033】
FXRアゴニストは、好ましくはトロピフェクサー、ニズフェクサー、オベチコール酸(6α-エチル-ケノデオキシコール酸)、シロフェクソール(GS-9674、Px-102)、
【化2】
から選択される。
【0034】
本明細書中で使用される場合、「塩」という用語は、本発明の化合物の酸付加又は塩基付加塩を指す。「塩」は、特に「薬学的に許容可能な塩」を含み、両者は本明細書中で交換可能に使用され得る。
【0035】
本明細書中で使用される場合、「薬学的に許容可能な」という用語は、有効成分の生物学的活性の有効性を実質的に妨害しない無毒性物質を意味する。
【0036】
本明細書中で使用される場合、「プロドラッグ」という用語は、インビボで本発明の化合物に変換される化合物を指す。プロドラッグは活性又は不活性である。これは、対象へのプロドラッグ投与後、加水分解、代謝など、インビボでの生理学的作用を通じて、本発明の化合物になるように化学的に修飾されている。プロドラッグの作製及び使用に関与する適合性及び技術は当業者にとって周知である。適切なプロドラッグは薬学的に許容可能なエステル誘導体であることが多い。
【0037】
本明細書中で使用される場合、「対象」という用語は、関心のある状態(即ち疾患又は障害)に罹患している、処置から利益を得る、哺乳類生物、好ましくはヒト、例えば患者、を指す。
【0038】
本明細書中で使用される場合、対象は、このような対象が生物学的に、医学的に又はクオリティーオブライフにおいてこのような処置から利益を得る場合、処置「を必要とする」。
【0039】
本明細書中で使用される場合、何らかの疾患又は障害を、「処置する」、「処置すること」又は何らかの疾患又は障害の「処置」という用語は、一実施形態において、疾患又は障害を寛解させる(即ち疾患又はその臨床症状又は病態特性の少なくとも1つの発症を緩徐化するか又は抑止するか又は軽減する)ことを指す。別の実施形態では、「処置する」、「処置すること」又は「処置」は、例えば対象により識別可能になり得ないものを含め、少なくとも1つの物理学的パラメーター又は疾患の病態特性を緩和するか又は寛解させることを指す。また別の実施形態では、「処置する」、「処置すること」又は「処置」は、身体的に(例えば少なくとも1つの識別可能又は識別不可能な症状の安定化)、生理学的に(例えば物理学的パラメーターの安定化)の何れかのように又は両方のように、疾患又は障害を調整することを指す。また別の実施形態では、「処置する」、「処置すること」又は「処置」は、疾患又は障害の、又はそれに付随する少なくとも1つの症状若しくは病態特性の、開始又は発症又は進行を防ぐか又は遅延させることを指す。また別の実施形態では、「処置する」、「処置すること」又は「処置」は、より進んだステージ又はより重篤な状態、例えば肝硬変など、への疾患の進行を防ぐか又は遅延させること;又は肝臓移植の必要性を防ぐか又は遅延させることを指す。
【0040】
本明細書中で使用される場合、「非アルコール性脂肪肝疾患」(NAFLD)という用語は、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非硬化性NASH及び肝硬変を伴うNASHを指し得る。
【0041】
例えば、NASHを「処置すること」は、NASHに関連する症状又は病理学的特性の少なくとも1つ;例えば脂肪肝、肝細胞風船様腫大、肝臓の炎症及び線維症の、寛解、緩和又は調整を指し得;例えばNASHに関連する症状又は病理学的特性の少なくとも1つ、例えば脂肪肝、肝細胞風船様腫大、肝臓の炎症及び線維症の、進行緩徐化、軽減又は阻止を指し得る。これは、肝硬変又は肝臓移植の必要性を防ぐか又は遅延させることも指し得、例えば疾患の進行の緩徐化、疾患進行の停止又は逆転及び臨床転帰の改善(即ち肝硬変及び283肝硬変合併症への進行の予防、肝臓移植の必要性の低下及び生存率の改善)である。
【0042】
またNASHを「処置すること」は、NASH治験ネットワーク(CRN)組織学的スコアにおける、疾患の進行の緩徐化、疾患進行の停止又は逆転及び臨床転帰の改善、即ち、肝硬変への進行の予防及び脂肪性肝炎の消散及び肝線維症の非悪化も指し得る。
【0043】
NASHの処置は次のものを含む:
-「脂肪性肝炎の消散」は、脂肪肝疾患がないこと又は脂肪性肝炎を伴わない孤立性若しくは単純脂肪肝及び、NASスコアが炎症に対して0~1、風船様腫大に対して0及び脂肪肝に対して何れかの値であること;肝硬変合併症、肝臓移植の必要性低下及び生存率改善として定義される;
-又は1ステージ(NASH CRN組織学的スコア)以上の肝線維症の改善及び脂肪性肝炎の悪化なし(例えば風船様腫大、炎症又は脂肪肝についてNASの上昇なしとして定義される);
-又は脂肪性肝炎の消散及び線維症の改善の両方(上で定義されるとおり)。
【0044】
ヒトでのNAFLD又はNASHを「処置すること」又はNAFLD又はNASHの「処置」は、次のうち1つ以上を含む:
a)NAFLD又はNASHの発症リスクを低下させること、即ちNAFLD又はNASHに罹患し易い傾向があり得る対象においてNAFLD又はNASHの臨床症状を発症させないこと、
b)NAFLD又はNASHを阻害すること、即ちNALFD若しくはNASH又はその臨床症状の発症を抑止するか又は低減させること;及び
c)NAFLD又はNASHを緩和すること、即ちNAFLD若しくはNASHの退行、逆転又は寛解を引き起こすか又はその臨床症状の数、頻度、持続時間又は重症度を低下させること。
【0045】
本明細書中で使用される場合、疾患又は障害を「予防する」、「予防すること」又は疾患又は障害の「予防」という用語は、状態(例えば具体的な疾患若しくは障害又はその臨床症状)を発症するリスクがある対象の予防的処置を指し、結果として対象がその状態を発症する可能性を低下させる。
【0046】
本明細書中で使用される場合、「治療的有効量」という用語は、規定された効果を達成するために十分である化合物の量を指す。従って本明細書中の上で定義されるような肝疾患又は障害の処置又は予防のために使用される治療的有効量は、このような疾患又は障害の処置又は予防に十分な量である。
【0047】
「治療レジメン」は、疾病の処置のパターン、例えば疾患又は障害の処置中に使用される投与のパターンを意味する。
【0048】
本明細書中で使用される場合、「肝疾患又は障害」という用語は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、薬物誘発性胆管損傷、胆石、肝硬変、アルコール誘発性肝硬変、嚢胞性線維症関連肝疾患(CFLD)、胆管閉塞、胆石症及び肝線維症のうち1つ、複数又は全てを包含する。
【0049】
本明細書中で使用される場合、NAFLDという用語は、疾患:脂肪肝、NASH、線維症及び肝硬変の様々なステージを包含し得る。
【0050】
本明細書中で使用される場合、NASHという用語は、脂肪肝、肝細胞風船様腫大及び小葉の炎症を包含し得る。
【0051】
本明細書中で定義される場合、「組み合わせ」は、1つの単位剤形(例えばカプセル、錠剤又はサシェ)中での固定された組み合わせ、自由な(即ち非固定の)組み合わせ又は組み合わせ投与のための部品キットの何れかを指し、FXRアゴニスト、例えばトロピフェクサーなど、及び1つ以上のさらなる治療剤が、同時に又はある時間間隔内に個別に独立して投与され得、特にこれらの時間間隔は、その組み合わせパートナーが、協調的な、例えば相乗的な効果を示すことを可能にする。
【0052】
「同時投与」又は「組み合わせ投与」などの用語は、本明細書中で利用される場合、それを必要とする単一対象(例えば対象)へのさらなる治療剤の投与を包含することを意味し、さらなる治療剤は、FXRアゴニスト、及びさらなる治療剤が同じ投与経路で及び/又は同じ時間に必ずしも投与されない治療レジメンを含むものとする。本発明の組み合わせの構成成分のそれぞれは、同時に又は連続的に及びあらゆる順序で投与され得る。同時投与は、同時、連続、重複、間欠、連続的投与及びそれらの組み合わせを含む。
【0053】
「医薬の組み合わせ」という用語は、本明細書中で使用される場合、複数の有効成分の組み合わせ(例えば混合)の結果生じる医薬組成物を意味し、有効成分の固定された組み合わせ及び自由な組み合わせの両方を含む。
【0054】
「固定された組み合わせ」という用語は、有効成分が同時に単一の存在物又は投与の形態で対象に投与されることを意味する。
【0055】
「自由な組み合わせ」という用語は、本明細書中で定義されるとおりの有効成分が、同時に、同じときに又は連続的に、特定の時間の制限なく、及びあらゆる順序で、個別の存在物として対象に投与されることを意味し、このような投与は、対象の身体において化合物の治療的有効レベルを提供する。
【0056】
「同時投与」とは、本明細書中で定義されるとおりの有効成分が同じ日に投与されることを意味する。この有効成分は、同じ時間に(固定された又は自由な組み合わせの場合)又は1回に1つ(自由な組み合わせの場合)投与され得る。
【0057】
本発明によれば、「連続投与」は、連続同時投与の2日以上の期間中に本明細書中で定義されるとおりの有効成分のうち一方のみが何れかの日に投与されることを意味し得る。
【0058】
「重複投与」は、連続同時投与の2日以上の期間中に、同時投与が少なくとも1日あり、本明細書中で定義されるとおりの有効成分の一方のみが投与される日が少なくとも1日あることを意味する。
【0059】
「連続的投与」は、同時投与の期間において、非投薬日が全くないことを意味する。連続的投与は、上記のように同時、連続又は重複であり得る。
【0060】
本明細書中で使用される場合、「qd」という用語は、1日1回投与を意味する。
【0061】
「用量」という用語は、1回に投与される薬物の指定量を指す。本明細書中で使用される場合、用量は、治療効果を誘発する薬物の量である。用量は、例えば製品パッケージ上又は製品情報リーフレット中で公表され得る。例えば、トロピフェクサーに関し、「用量」という用語は、トロピフェクサーと関連して使用される場合、遊離形態のトロピフェクサーの量である。トロピフェクサーは、塩又はアミノ酸抱合体の形態で存在し得るので、従って個々の塩形成物(例えば個々の酸)又はアミノ酸の量が添加されなければならない。
【0062】
投与方式
本発明の医薬組成物は、その意図される投与経路と適合するように処方され得る(例えば経口組成物は一般に不活性希釈剤又は食用担体を含む)。投与経路の他の非限定例としては、非経口(例えば静脈内)、皮内、皮下、経口(例えば吸入)、経皮(局所)、経粘膜及び直腸投与が挙げられる。意図する各経路と適合する医薬組成物は当技術分野で周知である。
【0063】
投与のタイミング
本明細書において上で列挙される実施形態で定義されるような本発明のFXRアゴニストは、夕刻に投与される。
【0064】
一実施形態では、「夕刻の投与」という用語は一般に、6pm頃~12pm頃、例えば8pm頃~11pm頃、好ましくは9pm前後の何れかの時間での投与として定義される。夕刻の投与は、夕食前、夕食と一緒又は夕食後であり得る。
【0065】
一実施形態では、「夕刻の投与」という用語は、就寝時間の少し前又は就寝時の投与を指す。一実施形態では、「夕刻の投与」という用語は、就寝時間の少し前での投与を指す。一実施形態では、「夕刻の投与」という用語は、就寝時の投与を指す。本明細書中で別段指定されない限り、「就寝時間」という用語は、24時間中の主要睡眠時間帯にわたり人間が就寝する時間の通常の意味を有する。就寝時間の少し前の投与とは、本明細書中で定義されるとおりのFXRアゴニストが人間の通常の休息又は睡眠(一般的には4~10時間)時間帯の前の約1~2時間以内に投与されることを意味する。
【0066】
疾患
本明細書において上で定義されるように、線維化又は硬化性疾患又は障害は、肝疾患又は障害、例えば本明細書中で定義されるようなもの、又は腎線維症であり得る。
【0067】
本明細書において上で定義されるように、肝疾患又は障害は、胆汁うっ滞、肝内胆汁うっ滞、エストロゲン誘発性胆汁うっ滞、薬物誘発性胆汁うっ滞、妊娠時胆汁うっ滞、非経口栄養法関連の胆汁うっ滞、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、進行性家族性胆汁うっ滞(PFIC)、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、薬物誘発性胆管損傷、胆石、肝硬変、アルコール誘発性肝硬変、嚢胞性線維症関連肝疾患(CFLD)、胆管閉塞、胆石症、肝線維症、腎線維症、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、糖尿病性腎症、大腸炎、新生児黄疸、核黄疸の予防、静脈閉塞性疾患、門脈高血圧、メタボリックシンドローム、高コレステロール血症、腸細菌過剰繁殖、勃起機能不全、上記疾患の何れかによるか又は感染性肝炎により引き起こされる肝臓の進行性線維症であり得る。肝疾患又は障害は肝臓移植も指し得る。
【0068】
本明細書において上で定義されるように、腸疾患は、特発性炎症性腸疾患、例えばクローン病又は潰瘍性大腸炎であり得る。
【0069】
本発明の一実施形態では、医薬組成物(本明細書中で定義されるとおり)は、線維化疾患又は障害、例えば肝疾患又は障害、例えば慢性肝疾患、例えばPBC、NAFLD、NASH、薬物誘発性胆管損傷、胆石、肝硬変、アルコール誘発性肝硬変、嚢胞性線維症関連肝疾患(CFLD)、胆管閉塞、胆石症、肝線維症からなる群から選択される肝疾患又は障害の処置又は予防のためである。本発明の一実施形態では、医薬の組み合わせ(本明細書中で定義されるとおり)は、線維症、例えば腎線維症又は肝線維症の処置又は予防のためである。
【0070】
本発明の一実施形態によれば、肝疾患又は障害は、NAFLD、例えばNAFLDの何れかのステージ、例えば脂肪肝の何れか、NASH、線維症及び肝硬変を指す。
【0071】
本発明の一実施形態では、脂肪性肝炎を悪化させることなく肝線維症を改善するための、本明細書において上で列挙される実施形態で定義されるとおりの本発明のFXRアゴニストが提供される。
【0072】
本発明の別の実施形態では、悪化なく完全な脂肪性肝炎の消散を得る、例えば肝線維症を改善するための、本明細書において上で列挙される実施形態で定義されるとおりの本発明のFXRアゴニストが提供される。
【0073】
本発明の別の実施形態では、脂肪性肝炎及び肝線維症を予防又は処置するための、本明細書において上で列挙される実施形態で定義されるとおりの本発明のFXRアゴニストが提供される。
【0074】
本発明のまた別の実施形態では、NASスコアの特性のうち少なくとも1つ、即ち脂肪肝、肝臓の炎症及び肝細胞風船様腫大のうち1つ;例えばNASスコアの少なくとも2つの特性、例えば脂肪肝及び肝臓炎症又は脂肪肝及び肝細胞風船様腫大又は肝細胞風船様腫大及び肝臓炎症、の軽減のための、本明細書において上で列挙される実施形態で定義されるとおりの本発明のFXRアゴニストが提供される。
【0075】
本発明のさらなる実施形態では、NASスコアの少なくとも1つ又は2つの特性及び肝線維症を軽減するための、例えば肝臓炎症及び肝線維症又は脂肪肝及び肝線維症又は肝細胞風船様腫大及び肝線維症を軽減するための、本明細書において上で列挙される実施形態で定義されるとおりのFXRアゴニストが提供される。
【0076】
本発明のまたさらなる実施形態では、ステージ3の線維症~ステージ1の線維症、例えばステージ3及び/又はステージ2及び/又はステージ1の線維症を処置又は予防するための、本明細書中で定義されるとおりのFXRアゴニストが提供される。
【0077】
本発明のまたさらなる実施形態では、腸疾患、例えば特発性炎症性腸疾患、例えばクローン病又は潰瘍性大腸炎を処置又は予防するための、本明細書において上で列挙される実施形態で定義されるとおりのFXRアゴニストが提供される。
【0078】
対象
本発明によれば、本発明のFXRアゴニストを投与される対象は、線維化疾患又は障害、例えば肝疾患又は障害、例えば本明細書において上で定義されるようなものに罹患しているか又はそのリスクがある者であり得る。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態では、対象は肥満又は過体重である。
【0080】
本発明の他の実施形態では、対象は、糖尿病の対象であり得、例えば2型糖尿病を有し得る。対象は、高血圧及び/又は高血中コレステロールレベルを有し得る。
【0081】
投与レジメン
使用される化合物に依存して、標的とされる疾患又は障害及びこのような疾患又は障害のステージ、投与レジメン、即ち、投与される用量及び/又は頻度は変動し得る。投与頻度は、とりわけ治療レジメンの相に依存する。
【0082】
本発明によれば、トロピフェクサー(本明細書において上で定義されるとおり)は、約90μg~約250μg、例えば約140μg~約200μg、例えば約140μgの用量で投与される。このような用量は経口投与に対するものであり得る。好ましくは、トロピフェクサー(本明細書において上で定義されるとおり)は、約90μg又は約140μgの用量で投与される。
【0083】
いくつかの態様では、トロピフェクサー(本明細書において上で定義されるとおり)は、約90μg、約100μg、約110μg、約120μg、約140μg又は約200μgの用量で投与される。このような用量は特にトロピフェクサーの経口投与に適している。
【0084】
いくつかの実施形態では、本明細書中で定義されるとおりのトロピフェクサーは、経口送達される約120μg、経口送達される約140μg又は経口送達される約200μgの用量で投与される。
【0085】
いくつかの実施形態では、本明細書中で定義されるとおりのトロピフェクサーは、約90μgの1日用量で投与されるものである。
【0086】
いくつかの実施形態では、本明細書中で定義されるとおりのトロピフェクサーは、約120μgの1日用量で投与されるものである。
【0087】
いくつかの実施形態では、本明細書中で定義されるとおりのトロピフェクサーは、約140μgの1日用量で投与されるものである。
【0088】
いくつかの実施形態では、本明細書中で定義されるとおりのトロピフェクサーは、約200μgの1日用量で投与されるものである。
【0089】
いくつかの実施形態では、本明細書中で定義されるとおりのトロピフェクサーは、約250μgの1日用量で投与されるものである。
【0090】
オベチコール酸は、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約40mg又は約50mgの1日用量で投与されるべきである。いくつかの実施形態では、本明細書中で定義されるとおりのオベチコール酸は、約25mgの1日用量で投与されるべきである。
【実施例】
【0091】
実施例1:FXRアゴニストで処置したカニクイザルにおける2週間の試験
図1で示され、表1に記載のように、FXRアゴニスト(LJP305)で処置したカニクイザルでの2週間試験で、総胆汁酸産生及び異なる胆汁酸の主要なサブセットの比率を測定した。
【0092】
【0093】
総胆汁酸は減少したものの(
図2)、CAとCDCA胆汁酸との比率は時間経過とともに変化し、CAが激しく低下したが(
図3)、CDCA胆汁酸が同時に上昇した(
図4)。
【0094】
このようなCyp7A1の阻害及び代替経路の結果的な活性化を回避するための最も有効な方法は、FXRが介在するCyp1A1阻害の影響を最小に抑えるために、Cyp7A1の酵素活性が最低であるときにFXRアゴニストを投与することである。この酵素の活性は、ヒトでは夜間に最低となるので、夕刻のFXRアゴニストの投与(6pm頃~12pm頃、例えば8pm頃~11pm頃、好ましくは9pm前後)は、身体が自然に酵素産生/活性を低下させる時間と一致するはずであり、結果的にこのような阻害の影響を最小化するはずであり、それ故、結果として起痒性の胆汁酸(CDCA)を生成させる代替経路刺激の機会が減少する。
【0095】
実施例2:FXRアゴニストで処理したインビトロヒト肝細胞
FXRアゴニスト処置は、ヒトにおいて、末梢LDL上昇を含む脂質異常と関連付けられている。肝細胞におけるコレステロール上昇は、細胞表面上でのLDL受容体減少の対抗機序と関連付けられている。肝細胞表面上でのこのようなLDL受容体減少の結果、最終的に循環LDLが上昇し;この表現型は臨床で認められる。
【0096】
図5は、インビトロで、インビトロヒト肝細胞を使用して、オベチコール酸(OCA)及びシロフェクソール(GS-9674)などのFXRアゴニストが、用量依存的に肝細胞によるLDL取り込みを減少させることを示す。これらのデータから、Cyp7A1及び胆汁酸経路の遮断がLDLの末梢での増加につながることが示される。末梢LDLの増加を緩和するために、発明者らは、対象を夕刻(6pm頃~12pm頃、例えば8pm頃~11pm頃、好ましくは9pm前後)に処置することによって、LDLに対する薬物の影響が軽減されるという仮説を立てる。1日のこのような時間においてCYP7A1レベルは最低であり、故にFRXアゴニストが阻害すべき基質を殆ど持たないので、コレステロール排出の阻害がその最小値となる。さらに、夜間に、肝細胞は、身体が空腹状態であるが、HMGCOaレダクターゼを介したコレステロールの肝内産生についてはより大きいので、食物摂取から来るコレステロール(LDL及び他)にはあまり依存せず;この酵素の活性は夜間に最大となる。実際にヒトでは、Cyp7A1活性が1pm及び9pmでピークになる一方で、肝細胞での細胞内コレステロールレベルは夜間(深夜~4AM)に最大となる。
【0097】
高い有効性及び/又は良好な安全性(例えばそう痒及び/又は脂質異常のリスクが低いこと)のために、夕刻でのFXRアゴニストの投与が示唆される。
【0098】
実施例3:NASH CRN組織学的スコアに従う、NASH及び線維症(ステージ2又は3)の対象における有効性、安全性及び忍容性に対する臨床試験
主目標:NASH及びステージ2又は3の線維症の対象における処置48週間後の組織学的改善により評価した場合のトロピフェクサーの有効性を実証すること。
【0099】
副次的目標:
-処置48週間後の、NASHの悪化がない、線維症における少なくとも1ステージの改善
-処置48週間後の、線維症の悪化がないNASHの消散
-少なくとも1ステージの線維症の改善
-処置48週間後の、NASHの悪化がない、少なくとも2ステージの線維症の改善
-処置48週間後の、ベースラインからの体重減少
-処置48週間後の肝臓脂肪含量の変化
-調査的治療及びNASHでの肝臓炎症のマーカー(ALT及びAST)の関係を決定すること
-調査的治療及び胆汁うっ滞のマーカーであるGGTの関係を決定すること。
【0100】
この試験は、1)スクリーニング期間、2)第1日のランダム化から始まり、第48週まで続く処置期間及び3)試験処置の最後の投与後4週間のフォローアップ期間からなる。スクリーニング期間は、インフォームドコンセントの署名時から始まり、全ての組み入れ/排除基準が評価され、全てのベースライン評価が行われている場合、最長8週間続く。試験薬の最初の投与からの試験持続期間は52週間である。総参加期間は最長60週間であり得る。
【0101】
この試験での組み入れに適格な対象は、次の基準に合致しなければならない:
-何らかの評価を行う前に書面のインフォームドコンセントを得なければならない。
-18歳以上の男女対象(スクリーニング来院時)
-スクリーニング期間中の、次のものにより示されるようなNASHの存在:ランダム化前6カ月以内に得られる肝生検の、NAFLD活動性スコア(NAS)及びNASH CRN基準を使用して中央判定者の評価により確認される線維症ステージ2又は3のNASH
-治験担当医師と十分に意思疎通し、この試験の要件を理解し、これに従うことが可能であること。
【0102】
計画された処置期間は48週間である。対象は、受容不可能な忍容性、疾患進行のために、及び/又は担当医師又は対象の判断で、処置が早期に中断され得る。
【0103】
トロピフェクサー単剤療法アーム:1日1回トロピフェクサー140μgに対して、ベースライン来院時に対象(n=70)を割り振る。対象は、夕刻の投与の代わりにクリニックで朝に用量が摂取されるベースライン及び第4週を除いて、食後、夕刻に、及び各日ほぼ同じ時刻に薬物を摂取すべきである。
【0104】
有効性評価は、次の推奨順序で完了すべきである:
-MRI。
-肝機能検査:ALT、AST、GGT、総アルカリホスファターゼ(及び総アルカリホスファターゼが>ULNである場合はアイソザイム及び試験参加中にGGT又は総アルカリホスファターゼの何れかが>ULNである場合は5’ヌクレオチダーゼ)、総ビリルビン及びアルブミンを評価する。
-SOMAscanを使用したタンパク質測定。
-肝線維症のマーカー:元来呼ばれるFibrotest(登録商標)/Fibrosure(登録商標)。次のものを評価する:α2-マクログロブリン、アポリポタンパク質A1、総ビリルビン、ハプトグロビン、GGT及びALT。
-NAFLD線維症スコア:NAFLD線維症スコアの計算のために次の式を利用する:-1.675+0.037x年齢(歳)+0.094xBMI(kg/m2)+1.13xIFG(空腹時グルコース上昇)/糖尿病(はい=1、いいえ=0)+0.99xAST/ALT比-0.013x血小板(x109/l)-0.66xアルブミン(g/dl)。
-空腹時インスリン及びグルコース:空腹時インスリン及びグルコース評価のために血液試料を回収する。
-肝生検:対象は、ランダム化前6カ月以内の肝生検で実証されるNASH及び肝線維症ステージ2又は3(NASH治験ネットワーク(CRN)ステージ判定基準)の組織学的エビデンスがなければならない。
【0105】
さらに、スクリーニング/ベースライン時及び第12、24及び48週にトランジェントエラストグラフィー(FibroScan(登録商標))を行い得る。
【0106】
プロトコールで詳述される定義及び工程に従い、有害事象及び重篤有害事象を含め、標準的な安全性パラメーター及び測定値を回収する。
【0107】
実施例4:治療12週間後の線維化NASH患者での、肝臓脂肪及び血清アラニンアミノトランスフェラーゼの低下におけるトロピフェクサーの役割(FLIGHT-FXRパートC中間結果)
NASH患者における試験CLJN452A2202のパートA及びBは、12週間にわたり1日10~90μgの範囲の用量のトロピフェクサーを調べた。トロピフェクサーは、標的会合(FGF19)及び生物学的活性(GGT)に対する明らかな用量反応性を示した。プラセボと比較して、全てのトロピフェクサー用量(10、30、60及び90μg)にわたってALT及び肝臓脂肪画分が減少した。この試験から、トロピフェクサーが一般に、安全性シグナルなく1日最大90μgまで十分に忍容性であることが示された。最初の2パート(A及びB、試験CLJN452A2202)からの結果は、バイオマーカーに基づくトロピフェクサー60及び90μgの抗炎症及び抗脂肪肝(anti-steatotic)の有効性及び第12週での好ましい安全性を示した。
【0108】
FLIGHT-FXR(NCT02855164)は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)患者における、トロピフェクサー(LJN452)のいくつかの用量の安全性、忍容性及び有効性を評価するための、第2相ランダム化二重盲検、プラセボ対照3-パート、適応的デザイン試験である。
【0109】
方法:パートCにおいて、生検により証明されたNASH及び線維症ステージ2~3を有する患者において48週間にわたりバイオマーカー及び組織学に対するトロピフェクサーのより高用量の効果を評価する。全てにおいて、1日1回プラセボ(N=51)、トロピフェクサー140μg(N=50)又はトロピフェクサー200μg(N=51)を投与するために152名の患者(64%女性)をランダム化した。第12週で評価される予め指定されたエンドポイントには、総括的安全性及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、肝臓脂肪画分(HFF)、ガンマグルタミルトランスフェラーゼ(GGT)及び体重の変化が含まれた。
【0110】
結果:予め指定されたエンドポイントは、200μgの用量のトロピフェクサーについて合致した。有効性の結果を表2で与える。
【0111】
【0112】
プラセボ、トロピフェクサー140μg及びトロピフェクサー200μg群においてそれぞれ患者の20%、32%及び64%で、≧30%の相対的HFF低下(欠損値に対するインピュテーションなし)が達成された。重篤有害事象の頻度は低く、全ての群にわたって同等であった。そう痒がある患者の中で、両トロピフェクサー群で>60%及びプラセボ群で全員が、重症度が軽度(グレード1)の事象を経験した。そう痒による処置中断率は低かった(トロピフェクサー140μg:n=1[2%];トロピフェクサー200μg:n=3[6%];プラセボ:0%)。低密度リポタンパク質-コレステロール(LDL-C)の用量関連上昇が見られた。処置中断又は用量減少につながった脂質変化はなかった。
【0113】
パートCのこの予め指定された中間分析において、より高い用量のトロピフェクサーによって、処置12週間後、良好な安全性及び忍容性で、ALT、HFF及び体重のロバストで用量依存的な低下が起こった。他のFXRアゴニストと同様に、これらのより高い用量には、軽度そう痒及びLDL-Cの僅かな用量関連上昇が付随した。
【0114】
実施例5:NASHの対象に朝又は夕方に投与されるトロピフェクサーの安全性及び忍容性を判定するための、ランダム化、治験担当医師及び対象盲検、多施設、並行群試験
この試験の目標は、処置2週間/4週間後の、空腹循環LDL-Cレベル、HDL-Cに対するAM又はPMに投与されるトロピフェクサーの効果を決定することである。
【0115】
この試験は、最長14日間のスクリーニング期間、最長21日間のベースライン期間、4週間の処置期間と、その後の処置期間終了後およそ30日間の試験完了評価からなる。この試験集団は、ALT及びBMI上昇、2型糖尿病(T2D)診断又は現在抗糖尿病薬を服用していること及びMRI-PDFFによる肝臓脂肪含量≧5%に基づく、NASHのスクリーニング又は表現型診断前2年以内の肝生検におけるNASHの何れかの組織学的エビデンスがある男女成人過体重又は肥満対象から構成される。この試験は、夕刻のトロピフェクサー投与が、脂質及びそう痒に対する効果に関して両方とも、朝での投与を上回る長所を有し得るか否かを調べる。
【0116】
本明細書中に記載の実施例及び実施形態が単なる例示目的であり、それに照らした様々な修飾又は変化が当業者に対して示され、これらは本願及び添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内に含まれるものとすることが理解される。本明細書中で引用される全ての刊行物、特許及び特許出願は、全ての目的に対して参照により本明細書によって組み込まれる。
【国際調査報告】