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特表2022-542640沿岸異形構造の3D印刷コンクリート、加工プロセス及び応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-06
(54)【発明の名称】沿岸異形構造の3D印刷コンクリート、加工プロセス及び応用
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/30 20060101AFI20220929BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20220929BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20220929BHJP
   C04B 18/10 20060101ALI20220929BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20220929BHJP
   C04B 14/48 20060101ALI20220929BHJP
   C04B 14/36 20060101ALI20220929BHJP
   C04B 16/06 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B28B1/30
C04B28/02
C04B18/08 Z
C04B18/10 Z
C04B24/26 B
C04B14/48
C04B14/36
C04B16/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021572501
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(85)【翻訳文提出日】2021-12-06
(86)【国際出願番号】 CN2020105896
(87)【国際公開番号】W WO2022007063
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】202010664748.7
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519380222
【氏名又は名称】青島理工大学
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO UNIVERSITY OF TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】羅 健林
(72)【発明者】
【氏名】張 紀剛
(72)【発明者】
【氏名】李 秋義
(72)【発明者】
【氏名】高 嵩
(72)【発明者】
【氏名】侯 東帥
(72)【発明者】
【氏名】滕 飛
【テーマコード(参考)】
4G052
4G112
【Fターム(参考)】
4G052DA01
4G052DB12
4G052DC06
4G112PA19
4G112PA24
4G112PA27
4G112PB29
(57)【要約】
本発明は、具体的には、沿岸異形構造の3D印刷コンクリート、加工プロセス及び応用に関する。従来の沿岸異形構造の3D印刷コンクリートは、通常の海洋防食技術が3D印刷の沿岸異形構造に適用されると、防食効果が好ましくなく、また、通常の3D印刷材料の層間界面の結合とチキソトロピー性が低いという欠点がある。本発明は、沿岸異形構造の3D印刷コンクリートを提供し、原料は、複合セメント、再生砂、フライアッシュ、ポリビニルアルコール、酸化グラフェン、鋼繊維、有機繊維、減水剤、凝固調整剤、鉱物混合材及び水を含む。該3D印刷コンクリートは、優れた凝集保水性、及び隣接する薄層界面の結合性を有し、GOとPVA電解液との結合によりマイクロコンデンサーを形成することにより、コンクリート薄層内の腐食性バッテリーの形成を回避し、優れた海洋耐久性を有し、沿岸異形構造工事に適用されると、優れた将来の応用可能性を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
沿岸異形構造の3D印刷コンクリートであって、
複合セメント1重量部、再生砂1-2重量部、フライアッシュ0.05-0.2重量部、ポリビニルアルコール0.005-0.05重量部、酸化グラフェン0.0002-0.002重量部、鋼繊維0.01-0.05重量部、有機繊維0.005-0.02重量部、減水剤0.005-0.01重量部、凝固調整剤0.005-0.01重量部、鉱物混合材0-0.05重量部及び水0.3-0.5重量部からなり、前記PVAは、酸化剤及び触媒をさらに有する、ことを特徴とする沿岸異形構造の3D印刷コンクリート。
【請求項2】
前記複合セメントは、高ベライトスルホアルミネートセメント、ポルトランドセメント、セッコウを1:(0.65-1.25):(0-0.15)の重量部比で混合して得られる、ことを特徴とする請求項1に記載の沿岸異形構造の3D印刷コンクリート。
【請求項3】
前記再生砂は、粗砂、中砂、細砂及び超細砂を含み、前記中砂率は27%-33%であり、
好適には、前記粗砂は、細かさ係数が3.7-3.1、平均粒径が0.5mm以上の粗砂であり、
好適には、前記中砂は、細かさ係数が3.0-2.3、平均粒径が0.5mm-0.35mmの中砂であり、
好適には、前記細砂は、細かさ係数が2.2-1.6、平均粒径が0.35mm-0.25mmの細砂であり、
好適には、前記超細砂は、細かさ係数が1.5-0.7、平均粒径が0.25mm以下の超細砂であり、
好適には、前記粗砂と、中砂と、細砂と、超細砂との質量比は、1:(1.1-2.0):(1-1.5):(1-1.5)である、ことを特徴とする請求項1に記載の沿岸異形構造の3D印刷コンクリート。
【請求項4】
前記FAは、GB/T 1596-2017仕様に規定された強熱減量≦5%のI級FAであり、
又は、前記PVAは、平均重合度が500~600、アルコール分解度が88%のPVA水溶液であり、
又は、前記PVA酸化剤、PVA触媒はそれぞれ、過ヨウ素酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム又は塩素酸カリウム、濃塩酸、希硫酸、希硝酸又はホウ素酸のうちの1つであり、
又は、前記GOは、単層率≧90%、酸素含有量35~45%のGO粉末又は濃度0.05~10mg/mLの水分散液である、ことを特徴とする請求項1に記載の沿岸異形構造の3D印刷コンクリート。
【請求項5】
前記減水剤は、ポリカルボン酸類高性能減水剤、早強型ポリカルボン酸類減水剤、ナフタレンスルホン酸ナトリウム高性能減水剤又はメラミン樹脂類高性能減水剤の1つまたは複数種の組み合わせであり、
又は、前記凝固調整剤は、無水硫酸ナトリウム、トリエタノールアミン、ナノC-S-H結晶核のうちの1つである、ことを特徴とする請求項1に記載の沿岸異形構造の3D印刷コンクリート。
【請求項6】
前記鋼繊維は、切断型鋼繊維、剪断型鋼繊維、ミリング型鋼繊維、溶融引抜型鋼繊維の1つまたは複数種の組み合わせであり、
又は、前記有機繊維は、チョップポリビニルアルコール繊維、ポリプロピレン繊維、高密度ポリエチレン繊維の1つまたは複数種の組み合わせである、ことを特徴とする請求項1に記載の沿岸異形構造の3D印刷コンクリート。
【請求項7】
前記鉱物混合材は、再生微粉、微粉砕スラグ、フライアッシュ、ポゾラン又はシリコン粉の1つまたは複数種の組み合わせであり、
又は、前記水は、蒸留水、脱イオン水、水道水又は電解水のうちの1つを含むがこれらに限定されない、ことを特徴とする請求項1に記載の沿岸異形構造の3D印刷コンクリート。
【請求項8】
前記加工プロセスは、請求項1~7のいずれかに記載の3D印刷コンクリート原料を用いて3D印刷技術により前記コンクリートドライブレンド材を印刷成形する、ことを特徴とする沿岸異形構造の3D印刷コンクリートの加工プロセス。
【請求項9】
前記コンクリートドライブレンド材の製造プロセスの具体的なステップは、
PVAとGOと酸化剤とを原位置重合インターカレート法によりGO-PVAプレポリマー液に調製するステップと、FAと、減水剤と、触媒と、前記GO-PVAHプレポリマー液とを均一に混合し、FAの外にGO-PVAHプレポリマー液をコーティングし、GO-PVAH@FAを形成するステップと、GO-PVAH@FAを減水剤と凝固調整剤を含む溶液に分散させ、GO-PVAH@FA懸濁液を形成するステップと、複合セメントと、再生砂と、鋼繊維と、有機繊維と、鉱物混合材とをサイロ内で機械的に均一混合し、ナノ再生コンクリートドライブレンド材を形成するステップとを含み、
好適には、前記GO-PVAH@FA懸濁液とナノ再生コンクリートドライブレンド材とを3Dプリントヘッド内において高速混合し、3D機械アームの印刷仕様を設定し、異なる層厚のナノ再生コンクリート薄層を1層ずつ印刷し、それにより、沿岸異形構造を取得する、ことを特徴とする請求項8に記載の沿岸異形構造の3D印刷コンクリートの加工プロセス。
【請求項10】
好適には、前記沿岸異形構造は、マンホールの蓋、雨水格子、地下パイプ、卵型水槽、地下鉄パイプ、ハニカムビーム、積層ビーム/スラブなどを含むがこれらに限定されない、
請求項1~7のいずれかに記載の沿岸異形構造の3D印刷コンクリートの沿岸異形構造の製造における応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沿岸構造の3D印刷の技術分野に属し、具体的に、沿岸異形構造の3D印刷コンクリート、前記沿岸異形構造の3D印刷コンクリートの加工プロセス及び沿岸異形構造の製造における応用に関する。
【背景技術】
【0002】
開示されるこの背景技術部分の情報は、本発明の全体的な背景の理解を高めることのみを目的としており、この情報が当業者に知られている先行技術を構成するという承認または何らかの形式の提案とは必ずしも見なされない。
【0003】
現在、建築のデジタル化、産業化、知能化の産業アップグレード状況では、構造型組立建築用の異なる仕様の耐震壁、積層床スラブ、積層ビーム、積層柱、プレハブ階段、一体型トイレ、ガベージシュートなどの様々なコンクリートプレハブ部材の迅速な製造が必要とされている。また、建設廃棄物の再資源化利用は、都市の生態学的保護と省エネルギー及び排出削減の圧力を効果的に軽減する。近年、急速に発展している、ロボットの3D印刷に基づくデジタル化建造方法は、様々なコンクリート異形部材の建造精度を正確に制御し、美しい形状の様々な曲面部材を製造することができ、また、金型を予め製造する必要がなく、製造過程において、大量の材料を処理する必要がなく、複雑な鍛造プロセスを経ることなく、最終的に生産上において構造の最適化、材料の節約及びエネルギーの節約を実現し、組立建築の産業化、知能化、資源節約化を効果的に実現し、将来の応用可能性が非常に広い。
【0004】
同時に、鉄筋コンクリート構造は、橋やトンネル、風力エネルギー原子力発電所、石油掘削プラットフォーム、港湾、埠頭などの沿岸構造の工学分野で広く使用されている。同様に、3D印刷技術に基づいて、マンホールの蓋、雨水格子、地下パイプ、卵型水槽、地下鉄パイプ、ハニカムビーム、積層ビーム/スラブなどの沿岸異形構造を高速製造でき、幅広い注目を集めている。
【0005】
3D印刷コンクリートは、一般的に、鉄筋骨格が添加されていないが、3D印刷コンクリートの早期強度が高く、靭性変形に優れる要求を実現するために、高強度、高弾性のチョップド鋼繊維がドーピングされていることは無視できない。しかし、複雑なコンクリート部材の3D印刷が成功するかどうかは、対応するコンクリートスラリーが持った、凝結速度が速く、保水凝集性が高く、可塑性が高く、層間界面の結合とチキソトロピー性に優れるなどの特徴に依存する。また、沿岸異形構造用コンクリートは、多孔質かつ多相の非均質材料であり、海水及び酸素ガスがコンクリート内の細孔に沿って鋼繊維の表面に到着し、腐食性の自由電子を生成する。これらの電子が鋼繊維を介してカソード領域に輸送され、溶液中のマイナスイオンが細孔溶液を介してアノード領域に輸送され、大量の腐食性のマイクロバッテリーが形成されやすく、さらに速く故障してしまう。
【0006】
しかし、沿岸組立構造用の3D印刷コンクリート材料を開発する際、発明者は以下の問題があることを発見した。
【0007】
(1)沿岸異形構造は、曲面が複雑で、ほとんど薄肉構造であるが、3D印刷コンクリートは、1層ずつ印刷されるものであり、ランダムに分散した鋼繊維を海洋腐食から保護するに十分なコンクリート保護層の厚さを有することは困難である。また、表面に防食層をコーティングすることや、カソード保護を追加することなどの通常の海洋防食技術は、印刷界面層が存在し続ける沿岸異形構造には使用できないか、効果が低い。
【0008】
(2)通常の3D印刷コンクリート材料を使用して沿岸異形構造を印刷する場合、良好なレオロジー、保水凝集性、機械的靭性及び体積安定性を有するとともに、十分な層間界面の結合とチキソトロピー性を有することは困難である。
【0009】
(3)通常の3D印刷コンクリート材料を使用して沿岸異形構造を印刷する場合、建築又は産業固体廃棄物を同時に再資源化利用し、都市の生態学的保護と省エネルギー及び排出削減の圧力を効果的に軽減し、環境保護効果を実現することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記背景技術に記載の問題に対して、本発明は、最適化された沿岸異形構造の3D印刷コンクリートを提供することを目的とし、印刷して得られた沿岸異形構造は、良好な海洋防食効果及び層間界面の結合とチキソトロピー性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記技術的効果に基づき、本発明は、以下の技術的解決手段を提供する。
【0012】
本発明の第1態様では、沿岸異形構造の3D印刷コンクリートが提供され、前記沿岸異形構造の3D印刷コンクリートは、複合セメント1重量部、再生砂1-2重量部、フライアッシュ(FA)0.05-0.2重量部、ポリビニルアルコール(PVA)0.005-0.05重量部、酸化グラフェン(GO)0.0002-0.002重量部、鋼繊維0.01-0.05重量部、有機繊維0.005-0.02重量部、減水剤0.005-0.01重量部、凝固調整剤0.005-0.01重量部、鉱物混合材0-0.05重量部及び水0.3-0.5重量部からなり、前記PVAは、酸化剤及び触媒をさらに有する。
【0013】
上記原料及び配合比率で製造された沿岸異形構造の3D印刷コンクリートは、従来の機械アーム及び構造モデルのパラメータ印刷ニーズに合わせ、印刷して異なる仕様の沿岸異形コンクリート構造を印刷できる。また、印刷して得られた沿岸異形構造は、優れた海洋耐久性を有する。
【0014】
本発明は、絶えず試みることによって、上記3D印刷コンクリートの原料及び配合比率を取得することができ、多くのヒドロキシ基、エポキシ基及びカルボキシル基などの官能基を含むGO、及び多くのヒドロキシ基を含むPVAによって、3D印刷コンクリートが優れた凝集保水性を有するとともに、隣接する3D印刷コンクリート薄層が優れた界面の結合性を有することができる。GO-PVAH@FAを含むことによって、3D印刷コンクリートスラリーが剪断薄化効果を有し、スラリーの優れたチキソトロピー性と可塑性を実現する。また、親水基を含むGOがPVA電解液と安定して結合することで、大量のGO-PVAHマイクロコンデンサーを形成し、これらのマイクロコンデンサーがFA媒質を介して3D印刷コンクリート薄層におけるGO-PVAHマイクロコンデンサーに均一に分散し、3D印刷コンクリート薄層の細孔溶液電解質を大量貯蔵し、海水を媒質として移動したイオンを捕捉し、3D印刷コンクリート薄層鋼繊維における腐食性バッテリーの形成を回避し、鋼繊維の電気化学的腐食を効果的に防止でき、塩化物イオンの浸透と海水の腐食に対する沿岸異形構造全体の耐性をさらに大幅に向上させる。
【0015】
上記効果に基づき、本発明の第2態様では、第1態様に記載の3D印刷コンクリート原料を用いて3D印刷技術により前記コンクリートドライブレンド材を印刷成形することを含む、沿岸異形構造の3D印刷コンクリートの加工プロセスが提供される。
【0016】
本発明の第3態様では、第1態様に記載の沿岸異形構造の3D印刷コンクリートの、沿岸異形構造の製造における応用が提供される。
【発明の効果】
【0017】
以上の1つ又は複数の技術的解決手段の有益な効果は、以下のとおりである。
【0018】
(1)本発明の沿岸異形構造の3D印刷コンクリート及び加工プロセスを採用することにより、沿岸異形構造を高速で製造できるとともに、海洋耐久性を効果的に保証できる。本発明は、安定して分散したGO-PVAHをFA媒質の表面の外に革新的にコーティングすることにより、後続のナノ再生コンクリート系に長期かつ均一に分布させることを実現し、再生コンクリートにGOをそのままトーピングする場合、再生コンクリートの流動性を大幅に低減させる問題を効果的に解決でき、対応するナノ再生コンクリートスラリーに、優れた粘ちょう度及びチキソトロピー性をもたらす。また、親水基を含むGOをPVAプレポリマーと組み合わせて、再生コンクリートに均一に分散させることにより、ナノ再生コンクリートの抗単離性と経時的レオロジーを効果的に向上させる。第2には、再生骨材の内部養生及びFAのボール潤滑効果は、対応する再生コンクリートの保水機能に寄与する。第3には、凝固調整剤などの凝固調整効果及び複合セメントの高速凝結特徴は、ナノ再生コンクリートの印刷性及び各層の構築性をさらに保証する。
【0019】
3D印刷コンクリート硬化体の機械的靭性及び耐久性の実現メカニズムは、以下の通りである。第1には、GO表面は、多くのヒドロキシ基、エポキシ基及びカルボキシル基などの親水基を含み、GOとセメントモルタル系との相溶を容易にし、また、GOは、ナノ結結晶核とテンプレート効果を十分に発揮し、対応する再生コンクリート硬化体の微細形態を改善できる。第2には、GO-PVAHハイドロゲル及び再生骨材は、ナノ再生コンクリートの成形中に、内部養生成分としてよく機能でき、この後、水分がゆっくりと放出することにより、セメントが高速で水化するときに生じた熱収縮応力を効果的に相殺でき、体積安定性を実現する。第3には、ドーピングされたチョップド鋼繊維による靭性向上、及び有機繊維によるブリッジング効果は、ナノ再生コンクリートの機械的靭性、耐亀裂性、及び耐にじみ性をさらに保証する。
【0020】
(2)本発明の沿岸異形構造の3D印刷コンクリートは、第1には、多くのヒドロキシ基、エポキシ基及びカルボキシル基などの官能基を含むGO、及び多くのヒドロキシを含むPVAによって、3D印刷コンクリートが優れた凝集保水性を有するとともに、隣接する3D印刷コンクリート薄層が優れた界面の結合性を有することができる。第2には、GO-PVAH@FAによって、3D印刷コンクリートスラリーが剪断薄化効果を有し、スラリーの優れたチキソトロピー性と可塑性を実現する。第3には、親水基を含むGOがPVA電解液と安定して結合することで、大量のGO-PVAHマイクロコンデンサーを形成し、これらのマイクロコンデンサーがFA媒質を介して3D印刷コンクリート薄層におけるGO-PVAHマイクロコンデンサーに均一に分散し、3D印刷コンクリート薄層の細孔溶液電解質を大量貯蔵し、海水を媒質として移動したイオンを捕捉し、3D印刷コンクリート薄層鋼繊維における腐食性バッテリーの形成を回避し、鋼繊維の電気化学的腐食を効果的に防止でき、塩化物イオンの浸透と海水の腐食に対する沿岸異形構造全体の耐性をさらに大幅に向上させる。
【0021】
本発明のナノ再生コンクリートでは、GO-PVAHは、FA表面において合成され、外添剤の水溶液媒質により、GO-PVAH@FAをナノ再生コンクリートに加える時間を効果的に遅らせ、複合セメントと、アルカリ度を低減させるFAなどの混合材とを組み合わせて使用することにより、GOが強アルカリ性環境で脱酸素化してしまうボトルネック問題を革新的に回避する。FA媒質表面の外にコーティングされたGO-PVAH、再生骨材の自部養生及びFAのボール潤滑効果により、ナノ再生コンクリートスラリーのチキソトロピー性、経時的レオロジー及び可塑性機能を実現する。GOナノテンプレート、有機繊維によるブリッジング効果、及び複合セメントの速硬・早強効果を用い、ナノ再生コンクリートの連続的な早強機能、耐亀裂機能及び耐にじみ機能を包括的に実現する。GO-PVAHと再生骨材の内部養生、複合セメントの微小膨張及びFA低減効果により、ナノ再生コンクリートの界面体積の安定化効果を実現する。GO-PVAHマイクロコンデンサーのエネルギー貯蔵効果を発揮し、3D印刷沿岸構造における鋼繊維の腐食性マイクロバッテリーの形成を回避し、鉄筋の腐食自己免疫効果を実現し、沿岸異形構造の3D印刷コンクリートの印刷・建造性、及び硬化体の早強効果、耐亀裂耐・にじみ効果及び腐食自己免疫効果を革新的に実現するとともに、固形廃棄物の再資源化利用を拡大する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の一部を構成する明細書の図面は、本発明のさらなる理解を提供するために使用される。本発明の例示的な実施形態及び説明は、本発明を説明するために使用され、本発明の不適切な制限を構成しない。
【0023】
図1】は、実施例3に記載のGO-PVA重合インターカレート及びGO-PVAH@FAコーティングプロセスの模式図である。
【0024】
1-FA粒子、2-GO-PVAハイドロゲル層、21-GOシート層、22-PVA重合体、23-ハイドロゲル。当業者がよく理解するために、GO-PVAインターカレート構造は、GOシート層とPVA鎖型重合体で形成されるインターカレート構造を概略的に示し、FAのSEM微細形態は、FA球形中空状構造及びサイズ仕様を概略的に示す。
【0025】
図2】は、実施例3に記載の沿岸異形構造の3D印刷コンクリート及び加工プロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
なお、以下の詳細な説明はすべて例示的なものであり、本発明のさらなる説明を提供することを意図している。特に明記しない限り、本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0027】
ただし、ここで使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、本発明による例示的な実施形態を限定することを意図するものではないことに留意されたい。ここで使用される場合、文脈が明確に別段の指示をしない限り、単数形は複数形も含むことを意図している。さらに、「含む」及び/または「備える」という用語が本明細書で使用される場合、機能、ステップ、操作、デバイス、コンポーネント、及び/またはそれらの組み合わせがあることを示す。
【0028】
従来技術の上記の欠点に対して、本発明は、3D印刷コンクリート、加工プロセス及び沿岸異形構造の高速製造におけるその応用を提供する。GO-PVAHをFA表面で合成し、外添剤の水溶液媒質により、GO-PVAH@FAをナノ再生コンクリートに加える時間を効果的に遅らせ、低アルカリ度の複合セメントと、アルカリ度を低減させるFAなどの混合材とを組み合わせて使用することにより、GOが強アルカリ性環境で脱酸素化してしまうボトルネック問題を革新的に回避する。FA媒質表面の外にコーティングされたGO-PVAH、再生骨材の自部養生及びFAのボール潤滑効果により、ナノ再生コンクリートスラリーのチキソトロピー性、経時的レオロジー及び保水機能を実現する。GOナノテンプレート、有機繊維によるブリッジング効果、及び複合セメントの速硬・早強効果を用い、ナノ再生コンクリートの連続的な早強機能、耐亀裂機能及び耐にじみ機能を包括的に実現する。GO-PVAHと再生骨材の内部養生、複合セメントの微小膨張及びFA低減効果により、ナノ再生コンクリートの界面体積の安定化効果を実現する。GO-PVAHマイクロコンデンサーのエネルギー貯蔵効果を発揮し、3D印刷沿岸構造における鋼繊維の腐食性マイクロバッテリーの形成を回避し、鉄筋の腐食自己免疫効果を実現し、沿岸異形構造の3D印刷用ナノ再生コンクリートの印刷・建造性、及び硬化体の早強効果、安定した体積、耐亀裂及び腐食自己免疫効果を革新的に実現するとともに、固形廃棄物の再資源化利用を拡大し、最後に沿岸異形構造の高速製造分野で非常に大きい経済的および環境的利益を有する。
【0029】
本発明の第1態様では、沿岸異形構造の3D印刷コンクリートが提供され、前記沿岸異形構造の3D印刷コンクリートは、複合セメント1重量部、再生砂1-2重量部、フライアッシュ(FA)0.05-0.2重量部、ポリビニルアルコール(PVA)0.005-0.05重量部、酸化グラフェン(GO)0.0002-0.002重量部、鋼繊維0.01-0.05重量部、有機繊維0.005-0.02重量部、減水剤0.005-0.01重量部、凝固調整剤0.005-0.01重量部、鉱物混合材0-0.05重量部及び水0.3-0.5重量部からなり、前記PVAは、酸化剤及び触媒をさらに有する。
【0030】
好適には、前記複合セメントは、高ベライトスルホアルミネートセメント(HBSC)と、ポルトランドセメントと、セッコウとを1:(0.65-1.25):(0-0.15)の重量部比で混合して得られる。
【0031】
該処方で得られた複合セメントは、速硬・早強の特徴を有し、FAのボール潤滑特徴を組み合わせて、対応するナノ再生コンクリートの印刷可能・構築可能機能を実現するのに寄与する。
【0032】
好適には、前記再生砂は、粗砂、中砂、細砂及び超細砂を含み、その中で、前記中砂率は、27%-33%である。
【0033】
さらに好適には、前記粗砂は、細かさ係数が3.7-3.1、平均粒径が0.5mm以上の粗砂である。
【0034】
さらに好適には、前記中砂は、細かさ係数が3.0-2.3、平均粒径が0.5mm-0.35mmの中砂である。
【0035】
さらに好適には、前記細砂は、細かさ係数が2.2-1.6、平均粒径が0.35mm-0.25mmの細砂である。
【0036】
さらに好適には、前記超細砂は、細かさ係数が1.5-0.7、平均粒径が0.25mm以下の超細砂である。
【0037】
さらに好適には、前記粗砂と、中砂と、細砂と、超細砂との質量比は1:(1.1-2.0):(1-1.5):(1-1.5)であり、該配合比率での成分を混合した後、良好な粒度曲線を有することができる。
【0038】
本発明では、再生砂の具体的な種類は特に限定されない。いくつかの実施例では、前記再生砂は、解体された建設廃棄物または産業スラッジを破砕して粒子成形した後に得られた、JC/T2548-2019仕様を満たす再生砂である。再生砂を用いることで、ナノ再生コンクリートスラリーの自己養生効果を効果的に高めるとともに、固形廃棄物の再資源化利用を拡大する。
【0039】
好適には、前記FAは、GB/T 1596-2017仕様で規定された強熱減量≦5%のI級FAであり、好ましいボール潤滑効果が得られる。
【0040】
好適には、前記PVAは、平均重合度が500~600、アルコール分解度が88%のPVA水溶液であり、GOをPVA水溶液に分散させ、安定したGO-PVAプレポリマー液を形成する。
【0041】
好適には、前記PVA酸化剤、PVA触媒のそれぞれは、中国特許CN103450489又はCN105885064Aに記載されている過ヨウ素酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム又は塩素酸カリウム、濃塩酸、希硫酸、希硝酸又はホウ素酸のうちの1つであり、原位置重合インターカレートプロセスにより、GOシート層構造にPVAプレポリマーをインターカレートする。
【0042】
好適には、前記GOは、単層率≧90%、酸素含有量35~45%のGO粉末又は濃度0.05~10mg/mLの水分散液であり、GO水分散液を用いる場合、濃度比で水分散液中のGO質量を計算し、対応する水分散液中の水を前記3D印刷コンクリートで使用される水の総量に含めて計算する。
【0043】
本発明では、減水剤の具体的な種類は特に限定されるものではなく、市販されている製品は、すべて、本発明の沿岸異形構造を製造する前記使用要求を満たすことができる。いくつかの特定の実施形態では、前記減水剤は、ポリカルボン酸類高性能減水剤、早強型ポリカルボン酸類減水剤、ナフタレンスルホン酸ナトリウム高性能減水剤又はメラミン樹脂類高性能減水剤の1つ又は複数の最適化な組み合わせである。
【0044】
好適には、前記凝固調整剤は、無水硫酸ナトリウム、トリエタノールアミン、ナノC-S-H結晶核のうちの1つである。本発明に係る沿岸異形3D印刷コンクリートは、凝固調整剤などの外添剤によってコンクリートの高速凝結を容易にし、ナノ再生コンクリートの高速凝結機能を効果的に確実にする。
【0045】
本発明は、鋼繊維を採用し、具体的な供給源は特に限定されない。前記鋼繊維材料は、一般的には、鋼加工産業の生産廃棄物を使用する。購入の利便性及びコスト節約の考慮のために、本発明のいくつかの実施の形態では、前記鋼繊維は、切断型鋼繊維、剪断型鋼繊維、ミリング型鋼繊維、溶融引抜型鋼繊維の1つまたは複数種の組み合わせである。
【0046】
本発明では、前記有機繊維の具体的な供給源も特に限定されない。いくつかの実施の形態では、前記有機繊維は、チョップポリビニルアルコール繊維、ポリプロピレン繊維、高密度ポリエチレン繊維の1つまたは複数種の組み合わせである。
【0047】
好適には、前記鉱物混合材は、再生微粉、微粉砕スラグ、フライアッシュ、ポゾラン又はシリコン粉の1つまたは複数種の組み合わせである。本発明では、上記再生微粉などの原料の供給源も特に限定されない。
【0048】
好適には、前記水は、蒸留水、脱イオン水、水道水又は電解水の1つを含むがこれらに限定されない。建設状況に応じて技術者が選択することができる。
【0049】
本発明の第2態様では、第1態様に記載の3D印刷コンクリート原料を用いて3D印刷技術により前記コンクリートドライブレンド材を印刷成形することを含む、沿岸異形構造の3D印刷コンクリートの加工プロセスが提供される。
【0050】
好適には、前記コンクリートドライブレンド材の製造プロセスの具体的なステップは、PVAとGOと酸化剤とを原位置重合インターカレート法によりGO-PVAプレポリマー液に調製するステップと、FAと、減水剤と、触媒と、前記GO-PVAHプレポリマー液とを均一に混合し、FAの外にGO-PVAHプレポリマー液をコーティングし、GO-PVAH@FAを形成するステップと、GO-PVAH@FAを減水剤と凝固調整剤を含む溶液に分散させ、GO-PVAH@FA懸濁液を形成するステップと、
複合セメントと、再生砂と、鋼繊維と、有機繊維と、鉱物混合材とをサイロ内で機械的に均一混合し、ナノ再生コンクリートドライブレンド材を形成するステップとを含む。
【0051】
さらに好適には、前記GO-PVAH@FA懸濁液と前記ナノ再生コンクリートドライブレンド材とを3Dプリントヘッド内で高速混合し、3D機械アームの印刷仕様(速度、流量及び層厚)を設定し、異なる層厚のナノ再生コンクリート薄層を1層ずつ印刷し、それにより、沿岸異形構造を得る。
【0052】
本発明に係る沿岸異形構造の3D印刷コンクリートの加工プロセスについては、効果が高いいくつかの実施形態では、前記加工プロセスの具体的な操作は、以下のとおりである。
【0053】
S1:前記PVAを温水に溶解してPVA水溶液を調製し、前記PVA酸化剤の存在下で、前記GO粉末又は水分散液をPVA水溶液に混合し、原位置重合インターカレートプロセスを用い、GOシート層構造にPVAプレポリマーをインターカレートし、GO-PVAプレポリマー液を得る。
【0054】
S2:前記FA、一部の前記減水剤、前記PVA触媒をGO-PVAプレポリマー液に加え、さらにサーモソニックプロセスを用い、前記FA粒子の表面の外にGO-PVAハイドロゲル(GO-PVAH)をコーティングし、GO-PVAH@FAを得て密封する。
【0055】
S3:上記GO-PVAH@FAを残りの前記減水剤、前記凝固調整剤で形成される外添剤の水溶液に加え、高速で均一に撹拌し、GO-PVAH@FA懸濁液を得、同時に、前記複合セメントと、前記再生砂と、前記鋼繊維と、前記有機繊維と、前記鉱物混合材とをサイロ内で機械的に均一混合し、ナノ再生コンクリートドライブレンド材を形成する。
【0056】
S4:異なる仕様、サイズ、材料パラメータの沿岸異形構造モデルを決定し、3D機械アームの印刷仕様要求(速度、流量及び層厚)を決定し、当分野でよく知られている方法を使用してGO-PVAH@FA懸濁液をナノ再生コンクリートドライブレンド材と3Dプリントヘッドで高速混合し、異なる層厚のナノ再生コンクリート薄層を1層ずつ印刷し、最終的に、沿岸異形構造を高速で製造する。
【0057】
ステップS1では、自動滴定法、回転粘度計、UV-Vis分光光度法、及び微細形態学法を組み合わせて、GO-PVAプレポリマー液中のPVAインターカレート効率及びGO分散効果を分析できる。
【0058】
ステップS2では、それぞれ凍結乾燥法、UV-Vis分光光度法、TG-DSC同時熱分析法、及び微細形態学法を組み合わせて、GO-PVAHの平衡膨潤率、透明度、構造架橋度、微細分布形態及び緊密度を測定でき、エタノール排水法、TG-DSC同時熱分析法、剥離強度法及び膜厚計法を組み合わせて、それぞれGO-PVAH@FAの全体密度、含水量及び有機物含有量、界面剥離抵抗及びコーティング層の厚さを測定する。
【0059】
ステップS4では、当業者に周知の3D印刷用ナノ再生コンクリートの通常の製造方法を使用して、ナノ再生コンクリートを製造し、ナノ再生コンクリートレオメーター(粘度係数、剪断応力、チキソトロピーループ、チキソトロピー面積)、全自動コンクリート凝結時間及びちょう度の測定装置(凝結時間、ちょう度、経時的レオロジー)などにより、対応する減水剤、凝固調整剤の種類及び混合量を選択する。当業者に周知のナノ再生コンクリートの規模化印刷性及び海洋耐久性(凍結融解耐性、塩化物イオン腐食耐性、硫酸塩腐食耐性)テスト方法と組み合わせることにより、該ナノ再生コンクリートの各性能を特徴付けることができる。当業者に周知の鋼繊維を含むナノ再生コンクリートの電気化学的性能の特徴付け方法と組み合わせることにより、鋼繊維の腐食電位、分極抵抗、腐食電流密度、電気化学インピーダンススペクトルなどの電気化学パラメータを特徴付けることができる。本分野でよく知られている方法を用い、3D機械アームの印刷仕様要求(速度、流量及び層厚)に基づき、異なる層厚のナノ再生コンクリート薄層の層間結合引張力及び層間剪断力などの性能パラメータを特徴付ける。当業者に周知の超音波エコーやレーダー波非破壊検出などの方法によって、異なる層数のナノ再生コンクリートの建設品質と凍結融解サイクル、イオン侵食、硫酸塩腐食作用下の層間結合力の劣化状況を評価できる。
【0060】
本発明の第3態様では、第1態様に記載の沿岸異形構造の3D印刷コンクリートの、沿岸異形構造の製造における応用が提供される。
【0061】
好適には、前記沿岸異形構造は、マンホールの蓋、雨水格子、地下パイプ、卵型水槽、地下鉄パイプ、ハニカムビーム、積層ビーム/スラブなどを含むがこれらに限定されない。
【0062】
当業者が本発明の技術的解決手段をより明確に理解できるようにするために、本発明の技術的解決手段を特定の実施形態と併せて以下に詳細に説明する。以下の実施例に記載の原材料はすべて市販製品である
【0063】
実施例1
本実施例では、沿岸異形構造の3D印刷コンクリートが提供され、前記沿岸異形構造の3D印刷コンクリートは、複合セメント、再生砂、フライアッシュ(FA)、ポリビニルアルコール(PVA)、酸化グラフェン(GO)、鋼繊維、有機繊維、減水剤、凝固調整剤、鉱物混合材及び水を含み、上記各成分の質量比は1:1:0.05:0.005:0.0002:0.01:0.005:(0.005-0.01):0.005:0.01:0.3であった。
【0064】
複合セメントは、高ベライトスルホアルミネートセメント(HBSC)、ポルトランドセメント、セッコウを含み、各成分の質量比は1:0.65:0.1であり、複合セメントの速硬・早強特徴及びFAのボール潤滑特徴は、対応するナノ再生コンクリートの印刷可能・構築可能な機能の実現に寄与した。
【0065】
前記再生砂の中粗砂と、中砂と、細砂と、超細砂との質量比は1:1.1:1:1であった。
【0066】
前記FAは、GB/T 1596-2017仕様に規定された強熱減量≦5%のI級FAであった。
【0067】
前記PVAは、平均重合度が500~600、アルコール分解度が88%のPVA水溶液であり、前記GOをPVA水溶液に分散させ、安定したGO-PVAプレポリマー液を形成した。
【0068】
前記PVA酸化剤、PVA触媒は、それぞれ過ヨウ素酸ナトリウム、濃塩酸であった。
【0069】
前記GOは、単層率≧90%、酸素含有量が40%のGO粉末であった。
【0070】
前記減水剤は、ポリカルボン酸類高性能減水剤であった。
【0071】
前記凝固調整剤は、無水硫酸ナトリウムであった。
【0072】
前記鋼繊維は、切断型鋼繊維であった。
【0073】
前記有機繊維は、高密度ポリエチレン繊維であった。
【0074】
前記鉱物混合材は、再生微粉と微粉砕スラグとを質量比1:1で混合したものであった。
【0075】
前記水は、水道水であった。
【0076】
実施例2
本実施例では、沿岸異形構造の3D印刷コンクリートが提供され、前記沿岸異形構造の3D印刷コンクリートは、複合セメント、再生砂、フライアッシュ(FA)、ポリビニルアルコール(PVA)、酸化グラフェン(GO)、鋼繊維、有機繊維、減水剤、凝固調整剤、鉱物混合材及び水を含み、上記各成分の質量比は1:2:0.2:0.05:0.002:0.05:0.02:0.01:0.01:0.05:0.5であった。
【0077】
複合セメントは、高ベライトスルホアルミネートセメント(HBSC)、ポルトランドセメント、及びセッコウを含み、各成分の質量比は1:1.25:0.15であった。
【0078】
前記再生砂中の粗砂と、中砂と、細砂と、超細砂との質量比は1:2.0:1.5:1.5であった。
【0079】
前記FAは、GB/T 1596-2017仕様に規定された強熱減量≦5%のI級FAであった。
【0080】
前記PVAは、平均重合度が500~600、アルコール分解度が88%のPVA水溶液であり、前記GOをPVA水溶液に分散させ、安定したGO-PVAプレポリマー液を形成した。
【0081】
前記PVA酸化剤、PVA触媒はそれぞれ、過マンガン酸カリウム、希硫酸であった。
【0082】
前記GOは、単層率≧90%、酸素含有量が35%のGO粉末であった。
【0083】
前記減水剤は、早強型ポリカルボン酸類減水剤であった。
【0084】
前記凝固調整剤は、トリエタノールアミンであった。
【0085】
前記鋼繊維は、剪断型鋼繊維とミリング型鋼繊維とを質量比0.5:1で混合したものであった。
【0086】
前記有機繊維は、ポリプロピレン繊維であった。
【0087】
前記鉱物混合材は、フライアッシュであった。
【0088】
前記水は、脱イオン水であった。
【0089】
実施例3
本実施例では、沿岸異形構造の3D印刷コンクリートの加工プロセスが提供され、具体的に、ステップS1~S3を含んだ。
【0090】
S1:前記0.25kgのPVAを5Lの温度70℃の温水に溶解し、濃度が5%、平均重合度が500~600、アルコール分解度が88%のPVA水溶液を調製し、0.02kgの過ヨウ素酸ナトリウム(PVA酸化剤)を含む条件下で、0.025kgのGO粉末を上記PVA水溶液に混合し、原位置重合インターカレートプロセスを用い、GOシート層構造にPVAプレポリマーをインターカレートし、GO-PVAプレポリマー液を得た。
【0091】
S2:1.0kgのFA、0.1kgのポリカルボン酸類高性能減水剤、0.01kgの濃塩酸(PVA触媒)を上記GO-PVAプレポリマー液に加え、さらにオイルバスによるサーモソニック分散プロセス(油温100℃、周波数10kHz、パワー50W、超音波時間30min)を用い、前記FA粒子表面の外にGO-PVAハイドロゲル(GO-PVAH)をコーティングし、GO-PVAH@FAを得て密封した。
【0092】
S3:残りの0.15kgのPCA-I型ポリカルボン酸類高性能減水剤(江蘇蘇博特新材料股分有限公司から購入)、0.3kgの無水硫酸ナトリウム(市販)で形成される外添剤の水溶液に上記GO-PVAH@FAを加え、高速かつ均一に撹拌し、GO-PVAH@FA懸濁液を得、同時に、20kgの複合セメント(10kgの525型HBSC、9.5kgのP.O-52.5型ポルトランドセメント及び0.5kgのセッコウからなる)、40kgのII類花崗岩再生砂(青島当地のC40から由来し、28年材齢のコンクリート構造から解体された建設廃棄物を破砕して粒子成形して製造され、平均見かけ密度が2860kg/mである)(8kgの粗砂、12kgの中砂、10kgの細砂及び10kgの超細砂からなる)、0.5kgの微粉砕スラグ粉(見かけ密度が2930kg/mの本鋼の高炉の大きい鉱渣から由来し、ボールミリングして得られる)に、1.0kg/mの剪断形鋼繊維(長さが3-15mm、直径が0.12-0.25mm、引っ張り強度≧2850MPa、莱蕪市金恒通工程材料有限公司産)、0.5kg/mのポリビニルアルコール繊維(線密度1.9g/cm、乾燥破断強度≧11.5MPa、乾燥引張破断伸度≧4.0-9.0%、初期弾性率≧280MPa、長さ6mm、相当直径≦14μm、山東菖源新材料科技有限公司産)を加え、HC-3DPRT型コンクリート(モルタル)の3D印刷システム(建研華測(杭州)科技有限公司産)のサイロ内で機械的に均一混合し、対応するナノ再生コンクリートドライブレンド材を形成した。
S4:上記GO-PVAH@FA懸濁液、及び水セメント比0.45で計算された残りの蒸留水を対応する3D印刷用ナノ再生コンクリートドライブレンド材に加え、HC-3DPRT型コンクリート(モルタル)の3D印刷システムのサイロ内で機械的に均一混合し、3D印刷用のナノ再生コンクリートスラリーを製造した。
【0093】
コンクリート(モルタル)の3D印刷システムのプリントヘッド仕様(ノズルの等価直径2.5cm)を決定し、平面印刷速度が5cm/s、縦方向の向上速度が1.5cm/s、層厚が2cmであり、雨水格子構造体のパラメータ(300mm×450mm×60mm)と組み合わせて、上記製造されたナノ再生コンクリート混合材を沿岸雨水格子構造体に1層ずつ印刷し、高速製造、層間結合及び海洋耐久性を体系的に評価した。
【0094】
ステップS1では、GO-PVAプレポリマー液中のPVAインターカレート効率及びGO分散効果を図1に示した。ステップS2では、GO-PVAH@FAの膨潤率、コーティング層の厚さはそれぞれ、30%、65μmであり、ステップS4では、雨水格子構造体用の3D印刷用ナノ再生コンクリートの高速製造、層間結合及び海洋耐久性を表1に示した。
【0095】
図1は、前記GO-PVA重合インターカレート及びGO-PVAH@FAコーティング構造の模式図を示し、GO-PVAハイドロゲル層は、FA粒子の表面にコーティングされ、PVA重合体には、GOシート層構造が効果的にインターカレートされ、マイクロコンデンサーの正負電気二重層が形成され、ナノ再生コンクリートの海洋防食性能が効果的に高まった。
【0096】
実施例4
本実施例の3D印刷用ナノ再生コンクリートの製造プロセスの具体的なステップは、以下のとおりであった。
【0097】
S1:前記0.5kgのPVAを5Lの温度80℃の温水に溶解し、濃度が10%、平均重合度が500~600、アルコール分解度が88%のPVA水溶液を調製し、0.015kgの過マンガン酸カリウム(PVA酸化剤)を含む条件下で、10mg/mLの2LのGO水分散液を上記PVA水溶液に混合し、原位置重合インターカレートプロセスを用い、GOシート層構造にPVAプレポリマーをインターカレートし、GO-PVAプレポリマー液を得た。
【0098】
S2:1.5kgのFA、0.2kgのSBT(登録商標)-510型早強型ポリカルボン酸類減水剤(江蘇蘇博特新材料股分有限公司から購入)、0.01kgの希硫酸(PVA触媒)を上記GO-PVAプレポリマー液に加え、さらにオイルバスによるサーモソニック分散プロセス(油温120℃、周波数20kHz、パワー50W、超音波時間45min)を採用し、前記FA粒子表面の外にGO-PVAハイドロゲル(GO-PVAH)をコーティングし、GO-PVAH@FAを得て密封した。
【0099】
S3:残りの0.1kgのSBT(登録商標)-510型早強型ポリカルボン酸類減水剤、0.25kgのクエン酸で形成される外添剤の水溶液に上記GO-PVAH@FAを加え、高速かつ均一に撹拌し、GO-PVAH@FA懸濁液を得、同時に、25kgの複合セメント(12kgの525型HBSC、12kgのP.O 52.5ポルトランドセメント及び1kgのセッコウからなる)、35kgのII類再生砂(見かけ密度が3160kg/mの本鋼のスラグ尾鉱砂から由来し、化学組成CaO=35~38%、Fe=20~24%、SiO=18~21%、Al=5~8%、MgO=5~7%)(8kgの粗砂、12kgの中砂、8kgの細砂及び7kgの超細砂からなる)、1kgのフライアッシュ(I級、青島四方発電所産)に、0.8kg/mのミリング型鋼繊維(長さ10-60mm、直径0.2-0.6mm、引っ張り強度≧850MPa、莱蕪市金恒通工程材料有限公司産)、0.6kg/mのポリプロピレン繊維(線密度0.91g/cm、引っ張り強度≧450MPa、限界伸び率≧10%、弾性率≧3500MPa、長さ12mm、相当直径≦100μm、山東菖源新材料科技有限公司産)を加え、機械的に混合して、対応するナノ再生コンクリートドライブレンド材を形成した。
【0100】
S4:上記GO-PVAH@FA懸濁液、及び水セメント比0.42で計算された残りの脱イオン水を対応する3D印刷用ナノ再生コンクリートドライブレンド材に加え、HC-3DPRT型コンクリート(モルタル)の3D印刷システムのサイロ内で機械的に均一混合し、3D印刷用のナノ再生コンクリートスラリーを製造した。
【0101】
コンクリート(モルタル)の3D印刷システムのプリントヘッド仕様(ノズルの等価直径3cm)を決定し、平面印刷速度が6cm/s、縦方向の向上速度が2cm/s、層厚が3cmであり、沿岸マンホールの蓋の構造パラメータ(Φ600mm×50mm)と組み合わせて、上記製造されたナノ再生コンクリート混合材を用いて沿岸マンホールの蓋構造を1層ずつ印刷し、高速製造、層間結合及び海洋耐久性を体系的に評価した。
【0102】
ステップS2では、GO-PVAH@FAの膨潤率、コーティング層の厚さはそれぞれ、40%、50μmであった。ステップS4では、円形マンホールの蓋構造用の該3D印刷用ナノ再生コンクリートの高速製造、層間結合及び海洋耐久性も表1に示した。
【0103】
実施例5
本実施例の3D印刷用ナノ再生コンクリートの製造プロセスの具体的なステップは、以下のとおりであった。
【0104】
S1:前記0.3kgのPVAを5Lの温度65℃の温水に溶解し、濃度が6%、平均重合度が500~600、アルコール分解度が88%のPVA水溶液を調製し、0.02kgの塩素酸カリウム(PVA酸化剤)を含む条件下で、濃度が4mg/mLの5LのGO水分散液を上記PVA水溶液に混合し、原位置重合インターカレートプロセスを用い、GOシート層構造にPVAプレポリマーをインターカレートし、GO-PVAプレポリマー液を得た。
【0105】
S2:1.2kgのFA、0.15kgのSBTJM-9型ポリカルボン酸類とメラミン樹脂類の複合高性能減水剤(江蘇蘇博特新材料股分有限公司から購入)、0.01kgホウ素酸(PVA触媒)を上記GO-PVAプレポリマー液に加え、さらにオイルバスによるサーモソニック分散プロセス(油温100℃、周波数20kHz、パワー50W、超音波時間60min)を用い、前記FA粒子表面の外にGO-PVAハイドロゲル(GO-PVAH)をコーティングし、膨潤率、コーティング層の厚さがそれぞれ、50%、100μmのGO-PVAH@FAを得て密封した。
【0106】
S3:残りの0.15kgのSBTJM-9型ポリカルボン酸類とメラミン樹脂類の複合高性能減水剤、0.3kgの酒石酸で形成される外添剤の水溶液に上記GO-PVAH@FAを加え、高速かつ均一に撹拌し、GO-PVAH@FA懸濁液を得、同時に、25kgの複合セメント(12kgの625型HBSC、12kgのP.I 42.5ポルトランドセメント及び1kgセッコウからなる)、40kgの金尾鉱のII類再生砂(見かけ密度が2670kg/m、SiO、Alを主とする莱州鉱業有限公司の金尾鉱を破砕して、粒子成形して得られる)(10kgの粗砂、10kgの中砂、10kgの細砂及び10kgの超細砂からなる)、1kgのポゾラン(100メッシュ、市販品)に、1.0kg/mの溶融引抜型形鋼繊維(長さ13mm、直径0.3mm、引っ張り強度≧850MPa、弾性率≧210GPa、保定市シン火鋼繊維製造有限公司産)、0.5kg/mの高密度ポリエチレン繊維(密度0.97g/cm、引っ張り強度=2.8-4N/tex、弾性率=91-140N/tex、伸び率=3.5-3.7%、東莞市索維特特殊線帯有限公司産)を加え、HC-3DPRT型コンクリート(モルタル)の3D印刷システム(建研華測(杭州)科技有限公司産)のサイロ内で機械的に均一混合し、対応するナノ再生コンクリートドライブレンド材を形成した。
【0107】
S4:上記GO-PVAH@FA懸濁液、及び水セメント比0.35で計算された残りの電解水を対応する3D印刷用ナノ再生コンクリートドライブレンド材に加え、HC-3DPRT型工業級コンクリート(モルタル)の3D印刷システムのサイロ内で機械的に均一混合し、3D印刷用のナノ再生コンクリートスラリーを製造した。
【0108】
工業級コンクリート(モルタル)の3D印刷システムのプリントヘッド仕様(ノズルの等価直径5cm)を決定し、平面印刷速度が4cm/s、縦方向の向上速度が1.2cm/s、層厚が1cmであり、卵形水槽構造のパラメータ(1500mm×450mm×300mm)と組み合わせて、上記製造されたナノ再生コンクリート混合材を卵形水槽構造に1層ずつ印刷し、高速製造、層間結合及び海洋耐久性を体系的に評価した。
【0109】
ステップS2では、GO-PVAH@FAの膨潤率、コーティング層の厚さはそれぞれ、40%、50μmであった。ステップS4では、卵形水槽構造用の該3D印刷用ナノ再生コンクリートの高速製造、層間結合及び海洋耐久性を表1に示した。
【0110】
実施例6
本実施例の製造方法は、実施例3と同様であり、相違点は、S3ステップでは、20kgの複合セメントが10kgの525型HBSC、及び10kgのP.O 52.5ポルトランドセメントの2つの部分からなり、セッコウを含まず、対応する鉱物混合材の混合量が0kgであることであった。
【0111】
ステップS2では、GO-PVAH@FAの膨潤率、コーティング層の厚さはそれぞれ、30%、65μmであった。ステップS4では、該3D印刷用ナノ再生コンクリートの関連性能を表1に示した。

【0112】
表1 実施例3-6での3D印刷用ナノ再生コンクリートの性能テストの比較結果
【0113】
上記の説明は、本発明の好ましい実施形態にすぎず、本発明を限定するために使用されるものではない。当業者にとって、本発明は、様々な修正及び変更を有することができる。本発明の精神及び原理の範囲内で行われた修正、同等置換や改良などは、本発明の保護範囲に含まれるべきである。
図1
図2
【国際調査報告】