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特表2022-542663SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤を含む治療
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-06
(54)【発明の名称】SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤を含む治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20220929BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220929BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220929BHJP
   A61K 31/382 20060101ALI20220929BHJP
   A61K 31/351 20060101ALI20220929BHJP
   A61K 31/7004 20060101ALI20220929BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P1/16
A61P37/06
A61K31/382
A61K31/351
A61K31/7004
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504235
(86)(22)【出願日】2020-07-21
(85)【翻訳文提出日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 IB2020056838
(87)【国際公開番号】W WO2021014351
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】62/877,464
(32)【優先日】2019-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/901,418
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100227008
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 沙央里
(72)【発明者】
【氏名】ブリーズ,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ロペス,パトリシア
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA75
4C084ZC33
4C084ZC41
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA07
4C086BA15
4C086BB02
4C086BB03
4C086EA01
4C086GA02
4C086GA04
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA75
4C086ZC33
(57)【要約】
本発明は、肝疾患、例えばNASHを治療する、予防する、又は改善するための方法であって、治療有効量のSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤をそれを必要としている対象に投与することを含む方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝疾患の治療をそれを必要としている対象において行うための方法であって、治療有効量のSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤を前記対象に1日1回投与することを含み、前記SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤は、夜に投与される、方法。
【請求項2】
肝疾患の予防をそれを必要としている対象において行うための方法であって、治療有効量のSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤を前記対象に1日1回投与することを含み、前記SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤は、夜に投与される、方法。
【請求項3】
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の治療、安定化、又はその重症度若しくは進行の緩和を、それを必要としている対象において行うための方法であって、治療有効量のSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤を前記対象に1日1回投与することを含み、前記SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤は、夜に投与される、方法。
【請求項4】
腸疾患の治療、安定化、又はその重症度若しくは進行の緩和を、それを必要としている対象において行うための方法であって、治療有効量のSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤を前記対象に1日1回投与することを含み、前記SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤は、夜に投与される、方法。
【請求項5】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療、安定化、又はその重症度若しくは進行の緩和を、それを必要としている対象において行うための方法であって、治療有効量のSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤を前記対象に1日1回投与することを含み、前記SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤は、夜に投与される、方法。
【請求項6】
慢性肝疾患又は障害、例えばNAFLD、NASH、肝線維症、又はPBCの発症の遅延、阻止、又は低下をそれを必要としている対象において行うための方法であって、治療有効量のSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤を前記対象に1日1回投与することを含み、前記SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤は、夜に投与される、方法。
【請求項7】
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)又は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である疾患を有する対象において肝硬変又は線維化を低下させるための方法であって、治療有効量のSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤を前記対象に1日1回投与することを含み、前記SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤は、夜に投与される、方法。
【請求項8】
前記方法は、活動性(NAS)スコアによって定義される対象のNAFLDの悪化がないこと、対象の脂肪変性、活動性、及び線維化(SAF)活動性スコアの悪化がないこと、前記対象における肝臓の脂肪の低下、対象の脂肪変性における好転、対象の風船化における好転、NAFLD回復、線維化の悪化を伴わないNAFLD回復、NAFLD悪化を伴わない線維化の低下、前記対象におけるALTレベルの低下、前記対象におけるASTレベルの低下、前記対象におけるHbA1cレベルの低下、対象が肝硬変に進行しないこと、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)及び/若しくは非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の進行阻害、又はその任意の組み合わせをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤は、リコグリフロジン、ダパグリフロジン、カナグリフロジン、エンパグリフロジン、イプラグリフロジン、エルツグリフロジン、ミザグリフロジン、及びソタグリフロジンから選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤は、リコグリフロジンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
リコグリフロジンは、約30mg~約150mgの、好ましくは約30mgの1日量で投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記夜の投与は、前記SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤の投与と関連する有効性を改善する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記夜の投与は、前記SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤の投与と関連する副作用、例えば下痢の危険性を低下させる、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記投与は、脂肪性肝炎、例えばNASHの回復を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記投与は、肝線維症における好転を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記投与は、脂肪性肝炎、例えばNASHの回復及び肝線維症における好転を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝疾患若しくは障害又は腸疾患の治療のための、特に非アルコール性脂肪性肝炎(「NASH」)の治療のための、リコグリフロジン、その薬学的に許容される塩、及びそのプロドラッグの、医薬品としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、西欧諸国における慢性肝疾患の最も一般的な原因となっている。NAFLDの主なステージは、1-単純脂肪肝(脂肪変性);2-非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、炎症及び細胞傷害が伴う脂肪蓄積を有するNAFLDのより深刻な形態;3-線維化、肝臓において持続性の炎症があり、肝細胞及び血管のまわりに線維性瘢痕組織の発生をもたらす;並びに4-肝硬変;この損傷は、永久的であり、肝不全及び肝癌(肝細胞癌)をもたらすことがある。
【0003】
肝移植は、肝不全と共に進行肝硬変のための唯一の治療である。NAFLDの世界的な罹患率の推定値は、6.3%~33%の範囲にあり、一般集団における中央値は20%である。NASHの推定罹患率は、より低く、3~5%の範囲にある(Younossi et al.,Hepatology,Vol.64,No.1,2016)。NASHは、世界的な問題であり、ここ数十年間で罹患率が増えている。ここ十年間で、NASHは、米国において、肝移植のまれな適応症から第2の適応症にまで浮上した。2024年までに移植の主な原因となることが予想される。NASHは、メタボリック症候群及び2型真性糖尿病と非常に関連している。さらに、心血管死亡は、NASH患者において重大な死因となっている。
【0004】
NASHの発症には、いくつかのメカニズムを伴う:肝臓における脂肪の蓄積(脂肪変性)、肝臓の炎症、肝細胞風船化、及び線維化。NAFLD活動性スコア(NAS)は、治療の試みの間のNAFLDにおける変化を測定するためのツールとして開発された。スコアは、脂肪変性(0~3)、小葉炎症(0~3)、及び風船化(0~2)について、重みづけをしないスコアの合計として計算される。
【0005】
肥満症は、高血圧症、脂質異常症、2型糖尿病(T2DM)、及び何より非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を含む多くの深刻な併存症の原因として寄与し、それらを悪化させる主な世界的健康問題になった。肥満症と脂肪肝に関係する肝傷害との間の関係性を裏づけるものとして、肥満手術、食事制限、又は運動を通しての体重減少は、組織学的NASHにおける好転に至る。これは、NASH患者において肥満症を標的にすることが、肝疾患進行を制限する又は逆転させる可能性があることを示唆する。体重を減らすための新規なメカニズムは、ナトリウムグルコース共輸送体1及び2(SGLT)の阻害を介してのものであり、腸におけるグルコース吸収及び腎臓における再吸収の阻害をもたらす。
【0006】
リコグリフロジン(LIK066としても知られている)は、(2S,3R,4R,5S,6R)-2-(3-((2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン-6-イル)メチル)-4-エチルフェニル)-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリオールであり、以下の化学構造を有する。
【化1】
【0007】
リコグリフロジンは、腸におけるグルコースの吸収及び腎臓における再吸収を減少させる、ナトリウムグルコース共輸送体(SGLT)1及び2の強力な阻害剤である。リコグリフロジンは、安全で忍容性があることがわかっており、好都合な薬物動態プロファイルを有し、健康な対象及びT2DMを有する患者の両方において、たった2週間で3%に達するプラセボ調整後の体重減少をもたらした。150mgの1日量のリコグリフロジンは、12週間の治療後に肥満患者において有意な体重減少をもたらす(約6%)。さらに、1日1回150mgのリコグリフロジンによる12週間の治療は、血糖正常及び血糖異常(dysglycemic)対象において、全般的に安全で、忍容性良好であり、用量制限毒性として下痢が観察された。
【0008】
現在、NASHについて承認されている療法はない。そのため、線維性/硬変疾患又は障害、例えば肝疾患又は障害、例えばNASHのための、許容される安全性及び/又は忍容性プロファイルを実証すると共に、これらの複雑な状態の様々な側面に対処することができる治療を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、肝疾患、例えばNASHを治療する、予防する、又は改善するための方法であって、治療有効量のSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤をそれを必要としている対象に投与することを含み、前記対象へのSGLT阻害剤の投与は、夜に行われる、方法に関する。
【0010】
本発明は、SGLT1及び/又は2阻害剤を含有する医薬組成物についての新たな治療法を提供する。本発明による治療法は、従来の治療法を使用する時に観察される下痢などの副作用の発生率を低くすると共に、高い治療上の有効性といった利益を与える。これらの治療法は、便利な1日1回の投薬を対象にさらに提供し、従って、患者の服薬遵守をサポートする。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の様々な(列挙される)実施形態について、本明細書において説明する。各実施形態において特定される特徴は、本開示のさらなる実施形態を提供するために、他の特定の特徴と組み合わせられてもよいことが認識されるであろう。
【0012】
実施形態(a)
1a:肝疾患、例えばNASHの治療において使用するためのSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤であって、SGLT阻害剤は、治療有効用量で1日1回投与される及びSGLT阻害剤は、夜に投与される、SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤。
【0013】
2a:肝疾患、例えばNASHの予防において使用するためのSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤であって、SGLT阻害剤は、治療有効用量で1日1回投与される及びSGLT阻害剤は、夜に投与される、SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤。
【0014】
3a.非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、例えばNASHの治療、安定化、又はその重症度若しくは進行の緩和において、それを必要としている対象において使用するためのSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤であって、SGLT阻害剤は、治療有効用量で1日1回投与される及びSGLT阻害剤は、夜に投与される、SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤。
【0015】
4a.腸疾患の治療、安定化、又はその重症度若しくは進行の緩和において、それを必要としている対象において使用するためのSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤であって、SGLT阻害剤は、治療有効用量で1日1回投与される及びSGLT阻害剤は、夜に投与される、SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤。
【0016】
5a.慢性肝疾患又は障害、例えばNAFLD、NASH、肝線維症、又はPBCの発症を遅延させる、阻止する、又は低下させる際に、それを必要としている対象において使用するためのSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤であって、SGLT阻害剤は、治療有効用量で1日1回投与される及びSGLT阻害剤は、夜に投与される、SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤。
【0017】
6a.SGLT阻害剤は、リコグリフロジン、ダパグリフロジン、カナグリフロジン、エンパグリフロジン、イプラグリフロジン、エルツグリフロジン、ミザグリフロジン(mizagliflozin)、及びソタグリフロジンから選択される、実施形態1a~5aのいずれか1つによるSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤。
【0018】
7a.SGLT阻害剤は、リコグリフロジンである、実施形態6aによるSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤。
【0019】
8a.リコグリフロジンは、約30mgの又は約150mgの量で1日1回投与される、実施形態7aによるリコグリフロジン。
【0020】
9a.肝疾患、例えばNASHの治療又は予防において使用するための、例えば遊離形態をしたリコグリフロジン又はその塩であって、リコグリフロジンは、治療有効用量で1日1回投与される及びリコグリフロジンは、夜に投与される、例えば遊離形態をしたリコグリフロジン又はその塩。
【0021】
10a.非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝線維症、又はPBCの治療又は予防において使用するための、例えば遊離形態をしたリコグリフロジン又はその塩であって、リコグリフロジンは、治療有効用量で1日1回投与される及びリコグリフロジンは、夜に投与される、例えば遊離形態をしたリコグリフロジン又はその塩。
【0022】
11a.非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の又は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療又は予防において使用するための、例えば遊離形態をしたリコグリフロジン又はその塩又はそのアミノ酸複合体であって、リコグリフロジンは、約20mg~約200mgの又は約30mg~約150mgの用量で1日1回投与されることになっている及びリコグリフロジンは、夜に投与される、例えば遊離形態をしたリコグリフロジン又はその塩又はそのアミノ酸複合体。
【0023】
12a.リコグリフロジンは、約30mgの1日量で投与されることになっている、実施形態7a~11aのいずれかによる使用のためのリコグリフロジン。
【0024】
13a.前記夜の投与は、SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤の投与と関連する有効性を改善する、実施形態1a~12aのいずれか1つによる使用のためのSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤。
【0025】
14a.前記夜の投与は、SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤の投与と関連する副作用、例えば下痢の危険性を低下させる、実施形態1a~13aのいずれか1つによる使用のためのSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤。
【0026】
15a.前記投与は、脂肪性肝炎の回復を含む、実施形態1a~14aのいずれか1つによる使用のためのSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤。
【0027】
16a.前記投与は、肝線維症における好転を含む、実施形態1a~14aのいずれか1つによる使用のためのSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤。
【0028】
17a.前記投与は、脂肪性肝炎の回復及び肝線維症における好転を含む、実施形態1a~14aのいずれか1つによる使用のためのSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤。
【0029】
実施形態(b):
1b.肝疾患の治療をそれを必要としている対象において行うための方法であって、治療有効量のSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤を前記対象に1日1回投与することを含み、SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤は、夜に投与される、方法。
【0030】
2b.肝疾患の予防をそれを必要としている対象において行うための方法であって、治療有効量のSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤を前記対象に1日1回投与することを含み、SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤は、夜に投与される、方法。
【0031】
3b.非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の治療、安定化、又はその重症度若しくは進行の緩和を、それを必要としている対象において行うための方法であって、治療有効量のSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤を前記対象に1日1回投与することを含み、SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤は、夜に投与される、方法。
【0032】
4b.腸疾患の治療、安定化、又はその重症度若しくは進行の緩和を、それを必要としている対象において行うための方法であって、治療有効量のSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤を前記対象に1日1回投与することを含み、SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤は、夜に投与される、方法。
【0033】
5b.非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療、安定化、又はその重症度若しくは進行の緩和を、それを必要としている対象において行うための方法であって、治療有効量のSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤を前記対象に1日1回投与することを含み、SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤は、夜に投与される、方法。
【0034】
6b.慢性肝疾患又は障害、例えばNAFLD、NASH、肝線維症、又はPBCの発症の遅延、阻止、又は低下をそれを必要としている対象において行うための方法であって、治療有効量のSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤を前記対象に1日1回投与することを含み、SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤は、夜に投与される、方法。
【0035】
7b.非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)又は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である疾患を有する対象において肝硬変又は線維化を低下させるための方法であって、治療有効量のSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤を前記対象に1日1回投与することを含み、SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤は、夜に投与される、方法。
【0036】
8b.前記方法は、活動性(NAS)スコアによって定義される対象のNAFLDの悪化がないこと、対象の脂肪変性、活動性、及び線維化(SAF)活動性スコアの悪化がないこと、前記対象における肝臓の脂肪の低下、対象の脂肪変性における好転、対象の風船化における好転、NAFLD回復、線維化の悪化を伴わないNAFLD回復、NAFLD悪化を伴わない線維化の低下、前記対象におけるALTレベルの低下、前記対象におけるASTレベルの低下、前記対象におけるHbA1cレベルの低下、対象が肝硬変に進行しないこと、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)及び/若しくは非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の進行阻害、又はその任意の組み合わせをさらに含む、実施形態1b~7bのいずれか1つによる方法。
【0037】
9b.SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤は、リコグリフロジン、ダパグリフロジン、カナグリフロジン、エンパグリフロジン、イプラグリフロジン、エルツグリフロジン、ミザグリフロジン、及びソタグリフロジンから選択される、実施形態1b~8bのいずれか1つによる方法。
【0038】
10b.SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤は、リコグリフロジンである、実施形態9bによる方法。
【0039】
11b.リコグリフロジンは、約30mg~約150mgの、好ましくは約30mgの1日量で投与される、実施形態10bによる方法。
【0040】
12b.前記夜の投与は、SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤の投与と関連する有効性を改善する、実施形態1b~11bのいずれか1つによる方法。
【0041】
13b.前記夜の投与は、SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤の投与と関連する副作用、例えば下痢の危険性を低下させる、実施形態1b~12bのいずれか1つによる方法。
【0042】
14b.前記投与は、脂肪性肝炎、例えばNASHの回復を含む、実施形態1b~13bのいずれか1つによる方法。
【0043】
15b.前記投与は、肝線維症における好転を含む、実施形態1b~13bのいずれか1つによる方法。
【0044】
16b.前記投与は、脂肪性肝炎、例えばNASHの回復及び肝線維症における好転を含む、実施形態1b~13bのいずれか1つによる方法。
【0045】
肝疾患又は障害、例えば、NAFLD、NASH、肝脂肪変性、肝線維症、肝硬変、PBCからなる群から選択される肝疾患又は障害の予防又は治療のための医薬の製造のための、リコグリフロジン(又はその薬学的に許容される塩、溶媒和化合物、プロドラッグ、及び/若しくはエステル)の使用が、提供される。
【0046】
約20~約200mgの量でリコグリフロジンを含有する医薬組成物もまた、提供される。好ましくは、約30mg~約150mgの量で、例えば約30mgの量で。
【0047】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を治療する又は予防するための、上記に掲げられる実施形態のいずれか1つによるSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤であって、NASHは、軽度~中等度であり、線維化レベルがF2~F3である、SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤もまた、提供される。
【0048】
上記に掲げられる実施形態のいずれか1つによるSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤であって、NASHは、肝生検に基づいて確認され(生検診断されたNASHとも呼ばれる)、NASHは、軽度~中等度であり、線維化レベルがF2~F3である、SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤。
【0049】
上記に掲げられる実施形態のいずれか1つによるSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤であって、NASHの存在は、以下によって実証される、SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤:
i)上記実施形態のいずれか1つによるFXRアゴニストによる治療前の2年以内に得られた肝生検に基づくNASHの組織学的証拠と共に、NASH、線維化レベルF1、F2、F3、若しくはF4と一致する診断がなされ、他の慢性肝疾患の診断はなされていない又は
ii)NASHの表現型診断、又は
iii)非侵襲性の疾患特異的なバイオマーカー。
【0050】
本発明によれば、リコグリフロジン(上に定義される)は、約20mg~約200mg、例えば約30mg、例えば約40mg、例えば約50mg、例えば約60mg、例えば約70mg、例えば約80mg、例えば約90mg、例えば約100mg、例えば約120mg、例えば約150mgの用量で投与される。そのような用量は、リコグリフロジンの1日の経口投与についてのものであってもよい。
【0051】
本発明によれば、リコグリフロジン(上に定義される)は、約30mgの用量で、1日1回、例えば夜に投与される。
【0052】
いくつかの態様において、医薬の組み合わせは、本明細書において定義されるように、肝疾患又は障害、例えば慢性肝疾患又は障害、例えば、胆汁うっ滞、肝内胆汁うっ滞、エストロゲン誘発性胆汁うっ滞、薬剤誘発性胆汁うっ滞、妊娠性胆汁うっ滞、非経口栄養関連性胆汁うっ滞、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、進行性家族性胆汁うっ滞(PFIC)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、薬剤誘発性胆管傷害、胆石、肝硬変症、アルコール誘発性肝硬変、嚢胞性線維症関連性肝疾患(CFLD)、胆管閉塞、胆石症、肝線維症、腎線維症、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、糖尿病性腎症、大腸炎、新生児黄疸、核黄疸の予防、静脈閉塞性疾患、門脈圧亢進症、メタボリック症候群、高コレステロール血症、腸内細菌過増殖、勃起障害、上記の疾患のいずれかによって又は感染性肝炎によって引き起こされる肝臓の進行性線維症、例えばNAFLD、NASH、肝臓の線維化、肝脂肪変性、又はPBCからなる群から選択される疾患又は障害の治療のために提供される。
【0053】
定義
本明細書を解釈するために、以下の定義が適用され、適切な場合はいつでも、単数形で使用される用語はまた、複数形も含み、逆もまた同じとする。
【0054】
本明細書において使用されるように、文脈によって示されない限り、数値xに関する用語「約」は、+/-10%を意味する。
【0055】
本明細書において使用されるように、「SGLT阻害剤」は、SGLTを阻害することが可能である任意の作用物質、例えば個々のSGLT1阻害剤及びSGLT2阻害剤並びに二重SGLT1/2阻害剤を指す。本明細書において使用されるSGLT阻害剤は、例えば、リコグリフロジン、ダパグリフロジン、カナグリフロジン、エンパグリフロジン、イプラグリフロジン、エルツグリフロジン、ミザグリフロジン、ソタグリフロジンを指す。
【0056】
ソタグリフロジンは、LX4211としても知られている(2S,3R,4R,5S,6R)-2-[4-クロロ-3-[(4-エトキシフェニル)メチル]フェニル]-6-メチルスルファニルオキサン-3,4,5-トリオールである。
【0057】
本明細書において使用されるように、用語「塩」は、本発明の化合物の酸付加塩又は塩基付加塩を指す。「塩」は、特に「医薬品として許容される塩」を含み、両方とも、本明細書において区別なく使用することができる。
【0058】
本明細書において使用されるように、用語「薬学的に許容される」は、活性成分の生物学的活性の効力に実質的に干渉しない無毒の物質を意味する。
【0059】
本明細書において使用されるように、用語「プロドラッグ」は、インビボにおいて、本発明の化合物に変換される化合物を指す。プロドラッグは、活性である又は不活性である。プロドラッグは、加水分解、代謝、及びその他同種のものなどのインビボにおける生理学的な作用を通して、対象へのプロドラッグの投与後に本発明の化合物に化学的に修飾される。プロドラッグを作製し、使用することに伴う適合性及び技術は、当業者らによってよく知られている。適したプロドラッグは、薬学的に許容されるエステル誘導体であることが多い。
【0060】
本明細書において使用されるように、用語「対象」は、関心のある状態(すなわち疾患又は障害)にかかっており、治療から利益を得るであろう哺乳類生物、好ましくは人間、例えば患者を指す。
【0061】
本明細書において使用されるように、対象は、そのような対象がそのような治療から生物学的に、医学的に、又は生活の質において利益を得る場合、治療「を必要としている」。
【0062】
本明細書において使用されるように、任意の疾患又は障害を「治療する」、「治療すること」、又はその「治療」という用語は、一実施形態において、疾患又は障害を改善する(すなわち、疾患又はその臨床症状若しくは病理学的特徴の少なくとも1つの発症を遅延させる又は阻止する又は低下させる)ことを指す。別の実施形態において、「治療する」、「治療すること」、又は「治療」は、対象によって識別可能でなくてもよいものを含め、疾患の少なくとも1つの身体的パラメーター又は病理学的特徴を軽減する又は改善することを指す。さらに別の実施形態において、「治療する」、「治療すること」、又は「治療」は、身体的に(例えば、少なくとも1つの識別可能な若しくは識別可能でない症状の安定化)、生理学的に(例えば、身体的パラメーターの安定化)、又はその両方で、疾患又は障害を調節することを指す。さらに別の実施形態において、「治療する」、「治療すること」、又は「治療」は、疾患若しくは障害の又はその関連する少なくとも1つの症状若しくは病理学的特徴の発病又は発症又は進行を予防すること又は遅らせることを指す。さらに別の実施形態において、「治療する」、「治療すること」、又は「治療」は、例えば肝硬変症などの、より進行したステージ若しくはより深刻な状態への疾患の進行を予防すること若しくは遅らせること;又は肝移植の必要を予防すること若しくは遅らせることを指す。
【0063】
本明細書において使用されるように、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)という用語は、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非硬変性NASH、及び肝硬変を有するNASHを指してもよい。
【0064】
例えば、NASH「を治療すること」は、NASHと関連する症状又は病理学的特徴;例えば肝脂肪変性、肝細胞の風船化、肝臓炎症、及び線維化の少なくとも1つを改善する、軽減する、又は調節することを指してもよい;例えば、NASHと関連する症状又は病理学的特徴、例えば肝脂肪変性、肝細胞の風船化、肝臓炎症、及び線維化の少なくとも1つの進行を遅延させる、低下させる、又は停止させることを指してもよい。それはまた、肝硬変症又は肝移植の必要を予防すること又は遅らせること、例えば、進行を遅延させること、止めること、又は疾患進行を逆転させ、臨床転帰を好転させること(すなわち、肝硬変への進行及び283の肝硬変合併症を予防すること、肝移植の必要を低下させること、並びに生存状況を好転させること)を指してもよい。
【0065】
さらに、NASH「を治療すること」は、進行を遅延させること、止めること、又は疾患進行を逆転させ、臨床転帰を好転させること、すなわち、肝硬変への進行を予防すること及び脂肪性肝炎の回復及びNASH治験ネットワーク(CRN)組織学的スコアでの肝線維症の悪化がないことを指してもよい。
【0066】
NASHの治療は、以下を含む:
-「脂肪性肝炎の回復」は、脂肪性肝疾患又は孤立性(isolated)若しくは単純脂肪変性が消失し、脂肪性肝炎がない並びに炎症について0~1、風船化について0、及び脂肪変性について任意の値のNASスコア;肝硬変合併症、肝移植の必要の低下、並びに生存状況の好転として定義される;
-或いは1ステージ以上の肝線維症における好転(NASH CRN組織学的スコア)及び脂肪性肝炎の悪化がない(例えば、風船化、炎症、又は脂肪変性についてNASHにおける増加がないとして定義される);
-或いは脂肪性肝炎の回復及び線維化における好転の両方(上記に定義される通り)。
【0067】
ヒトにおけるNAFLD又はNASHを「治療すること」又はその「治療」は、以下の1つ以上を含む:
a)NAFLD又はNASHを発症する危険性を低下させること、すなわち、NAFLD又はNASHの臨床症状を、NAFLD又はNASHの素因があるかもしれない対象において発症させないこと;
b)NAFLD又はNASHを阻害すること、すなわち、NALFD又はNASH又はその臨床症状の発症を阻止すること又は低下させること;及び
c)NAFLD又はNASHを和らげること、すなわち、NAFLD若しくはNASHの後退、逆転、若しくは改善を引き起こすこと又はその臨床症状の数、頻度、期間、若しくは重症度を低下させること。
【0068】
本明細書において使用されるように、疾患又は障害に関連する用語「予防する」、「予防すること」、又は「予防」は、対象が、ある状態(例えば、特定の疾患又は障害又はその臨床症状)を発症するという確率の減少をもたらす、その状態を発症する危険性がある対象の予防的治療を指す。
【0069】
本明細書において使用されるように、用語「治療有効量」は、所定の効果を達成するのに十分である、化合物の量を指す。従って、肝疾患又は障害の治療又は予防のために使用される治療有効量は、上に定義されるように、そのような疾患又は障害の治療又は予防に十分な量である。
【0070】
「治療レジメン」によって、病気の治療のパターン、例えば、疾患又は障害の治療の間に使用される投薬のパターンを意味する。
【0071】
本明細書において使用されるように、用語「肝疾患又は障害」は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、薬剤誘発性胆管傷害、胆石、肝硬変症、アルコール誘発性肝硬変、嚢胞性線維症関連性肝疾患(CFLD)、胆管閉塞、胆石症、及び肝線維症のうちの1つ、複数、又はすべてを包含する。
【0072】
本明細書において使用されるように、NAFLDという用語は、疾患の様々なステージ:肝脂肪変性、NASH、線維化、及び肝硬変を包含してもよい。
【0073】
本明細書において使用されるように、用語「NASH」は、脂肪変性、肝細胞の風船化、及び小葉炎症を包含してもよい。
【0074】
本明細書において使用されるように、用語「qd」は、1回1日の投与を意味する。
【0075】
用語「用量」は、一度に投与される薬剤の特定の量を指す。本明細書において使用されるように、用量は、治療効果を誘起する薬剤の量である。用量は、例えば、製品パッケージ上に又は製品情報リーフレット中に明記されるであろう。
【0076】
投与のモード
本発明の医薬組成物は、その意図される投与ルートと適合性となるように製剤することができる(例えば、経口組成物は、一般に、不活性希釈剤又は食用のキャリアを含む)。投与ルートの他の非限定的な例は、非経口(例えば静脈内)、皮内、皮下、経口(例えば吸入)、経皮(局所)、経粘膜、及び直腸内投与を含む。各意図されるルートと適合性の医薬組成物は、当技術分野においてよく知られている。
【0077】
投与の時期
SGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤は、上記に掲げられる実施形態において本明細書において定義されるように、夜に投与される。
【0078】
一実施形態において、用語「夜の投与」は、午後6時頃~午後12時頃の任意の時間、例えば午後8時頃~午後11時頃、好ましくは午後9時前後の投与として、概して定義される。夜の投与は、夕食前、夕食と一緒、又は夕食後であってもよい。好ましくは、夜の投与は、夕食と一緒である。
【0079】
一実施形態において、用語「夜の投与」は、就寝時刻の直前又は就寝時刻の投与を指す。一実施形態において、用語「夜の投与」は、就寝時刻の直前の投与を指す。一実施形態において、用語「夜の投与」は、就寝時刻の投与を指す。本明細書において他に指定のない限り、用語「就寝時刻」は、人が24時間という一定の期間の間に主たる睡眠をとるために床につく時間についての通常の意味を有する。就寝時刻直前の投与は、本明細書において定義されるSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤が、人の通常の休息又は睡眠(典型的に4~10時間)時間前の約30分~約2時間以内に投与されることを意味する。
【0080】
疾患
上に定義されるように、線維性又は硬変疾患又は障害は、例えば本明細書において定義される肝疾患若しくは障害又は腎線維症とすることができる。
【0081】
上に定義されるように、肝疾患又は障害は、胆汁うっ滞、肝内胆汁うっ滞、エストロゲン誘発性胆汁うっ滞、薬剤誘発性胆汁うっ滞、妊娠性胆汁うっ滞、非経口栄養関連性胆汁うっ滞、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、進行性家族性胆汁うっ滞(PFIC)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、薬剤誘発性胆管傷害、胆石、肝硬変症、アルコール誘発性肝硬変、嚢胞性線維症関連性肝疾患(CFLD)、胆管閉塞、胆石症、肝線維症、腎線維症、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、糖尿病性腎症、大腸炎、新生児黄疸、核黄疸の予防、静脈閉塞性疾患、門脈圧亢進症、メタボリック症候群、高コレステロール血症、腸内細菌過増殖、勃起障害、上記の疾患のいずれかによって又は感染性肝炎によって引き起こされる肝臓の進行性線維症とすることができる。肝疾患又は障害はまた、肝移植を指すこともできる。
【0082】
上に定義されるように、腸疾患は、特発性炎症性腸疾患、例えばクローン病又は潰瘍性大腸炎とすることができる。
【0083】
本発明の一実施形態において、医薬の組み合わせ(本明細書において定義されるとおり)は、線維性疾患又は障害、例えば肝疾患又は障害、例えば慢性肝疾患、例えば、PBC、NAFLD、NASH、薬剤誘発性胆管傷害、胆石、肝硬変症、アルコール誘発性肝硬変、嚢胞性線維症関連性肝疾患(CFLD)、胆管閉塞、胆石症、肝線維症からなる群から選択される肝疾患又は障害の治療又は予防のためのものである。本発明の一実施形態において、医薬の組み合わせ(本明細書において定義されるとおり)は、線維化、例えば腎線維症又は肝線維症の治療又は予防のためのものである。
【0084】
本発明の一実施形態によれば、肝疾患又は障害は、NAFLD、例えばNAFLDの任意のステージ、例えば脂肪変性、NASH、線維化、及び肝硬変のいずれかを指す。
【0085】
本発明の一実施形態において、脂肪性肝炎の悪化を伴わない肝線維症の好転のための、上記に掲げられる実施形態において本明細書において定義される本発明のSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤が、提供される。
【0086】
本発明の別の実施形態において、悪化を伴わない脂肪性肝炎の完全な回復、例えば肝線維症の好転を得るための、上記に掲げられる実施形態において本明細書において定義される本発明のSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤が、提供される。
【0087】
本発明の別の実施形態において、脂肪性肝炎及び肝線維症を予防する又は治療するための、上記に掲げられる実施形態において本明細書において定義される本発明のSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤が、提供される。
【0088】
本発明のさらに別の実施形態において、NASスコアの特徴の少なくとも1つ、すなわち、肝脂肪変性、肝臓炎症、及び肝細胞の風船化のうちの1つ;例えば、NASスコアの少なくとも2つの特徴、例えば肝脂肪変性及び肝臓炎症又は肝脂肪変性及び肝細胞の風船化又は肝細胞の風船化及び肝臓炎症を低下させるための、上記に掲げられる実施形態において本明細書において定義される本発明のSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤が、提供される。
【0089】
本発明のさらなる実施形態において、NASスコアの少なくとも1つ又は2つの特徴及び肝線維症を低下させるための、例えば、肝臓炎症及び肝線維症又は肝脂肪変性及び肝線維症又は肝細胞の風船化及び肝線維症を低下させるための、上記に掲げられる実施形態において本明細書において定義されるSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤が、提供される。
【0090】
本発明のさらなる実施形態において、ステージ3線維化~ステージ1線維化、例えばステージ3及び/又はステージ2及び/又はステージ1線維化を治療する又は予防するための、本明細書において定義されるSGLT阻害剤、例えばSGLT1/2阻害剤が、提供される。
【0091】
対象
本発明によれば、本発明の医薬の組み合わせを受けている対象は、線維性疾患又は障害、例えば上に定義される肝疾患又は障害に冒され得る又はその危険性があり得る。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態において、対象は、肥満である又は過体重である。
【0093】
本発明の他の実施形態において、対象は、糖尿病の対象であってもよい、例えば2型糖尿病を有していてもよい。対象は、高血圧及び/又は高血中コレステロールレベルを有していてもよい。
【0094】
用法用量
使用される化合物、標的とされる疾患又は障害、及びそのような疾患又は障害のステージによって、用法用量、すなわち、投与される用量及び/又は頻度は、変動してもよい。投薬頻度は、以下によるであろう;とりわけ、治療法のフェーズ。リコグリフロジンの投薬の頻度は、1日に1回であってもよい。
【0095】
本発明の一実施形態において、投与は、少なくとも1週間、少なくとも1ヵ月、少なくとも6週間、少なくとも3ヵ月、少なくとも6ヵ月、少なくとも1年、実行される。例えば、本発明は、患者に生涯にわたって投与される。リコグリフロジンの投与の頻度及び/又は用量は、投与の全期間の間に変動してもよい。
【0096】
本発明によれば、リコグリフロジン(上に定義されるとおり)は、例えば約20mg、例えば約30mg、例えば約50mg、例えば約60mg、例えば約80mg、例えば約90mg、例えば約100mg、例えば約120mg、例えば約150mgの用量で投与される。そのような用量は、経口投与リコグリフロジンについてのものであってもよい。そのような用量は、リコグリフロジンの1日の経口投与についてのものであってもよい。
【0097】
いくつかの態様において、リコグリフロジンは、約30mgの用量で投与される。そのような用量は、1日の経口投与リコグリフロジンについてのものであってもよい。
【実施例
【0098】
実施例1:NASH CRN組織学的スコアに従う、NASH及び線維化(ステージ2又は3)を有する対象における有効性、安全性、及び忍容性についての臨床試験。
主要目的:NASH及びステージ2又は3の線維化を有する対象において治療の48週間後に組織学的好転によって評価されるリコグリフロジンの有効性を実証すること。
【0099】
副次的目的:
-治療の48週間後にNASHの悪化のない、少なくとも1ステージの線維化における好転
-治療の48週間後に線維化の悪化のないNASHの回復
-少なくとも1ステージの線維化における好転
-治療の48週間後にNASHの悪化のない、少なくとも2ステージの線維化における好転
-治療の48週間後にベースラインからの体重の低下
-治療の48週間後に肝脂肪量における変化
-治験治療並びにNASHにおける肝臓炎症のマーカー(ALT及びAST)の関係を決定すること
-治験治療及び胆汁うっ滞のマーカーであるGGTの関係を決定すること
【0100】
試験は、1)スクリーニング期間、2)1日目のランダム化から開始して、48週目までの治療期間、及び3)試験治療の最後の用量の後の4週間の追跡調査期間からなる。スクリーニング期間は、同意書に署名した時から開始し、最長8週間継続し、その間に、すべての組み入れ/除外基準について判定し、すべてのベースライン評価を実行した。試験薬の最初の用量からの試験期間を、52週間とする。参加の合計期間は、最長60週間であってもよい。
【0101】
この試験に組み入れるのに適格である対象は、以下の基準のすべてを満たさなければならない:
-あらゆる評価を実行する前に、書面による同意が得られなければならない。
-18歳以上の男性及び女性の対象(スクリーニング来院時)
-スクリーニング期間に以下によって実証されるNASHの存在:ランダム化前の6ヵ月以内に得られる肝生検について、NAFLD活動性スコア(NAS)及びNASH CRN基準を使用して、中央の読影者の判定によって確認される、線維化ステージ2又は3を有するNASH。
-治験責任医師と十分に意思疎通し、試験の要求について理解し、遵守することができる
【0102】
治療の予定期間は、48週間とする。対象は、許容されない忍容性、疾患進行のために、及び/又は治験責任医師若しくは対象の判断で、早期に治療を中止してもよい。
【0103】
肥満患者におけるフェーズ2用量範囲設定試験において、リコグリフロジンは、下痢の発生率における用量依存的な増加と関連した(24週間の2.5、10、50、及び150mg QD後の18.4%、15.8%、55.3%、68.8%対プラセボの19.2%;CLIK066B2201)。30mg QDの用量は、およそ70%の最大観測有効性を達成することが予想される(有効性についての下流マーカーとして体重減少を使用する;CLIK066B2201)。リコグリフロジンは、現在、NASHにおいて30mg及び150mg QD単独療法としてテスト中である(CLIK066X2204)。150mg QD治療群についての中間解析は、他の有効性評価項目の中でも、ALT及び肝臓の脂肪の有望な低下を示したが、消化管事象(主として下痢)の発生率が有意であったことを示した。下痢などの腸におけるSGLT1阻害のGI副作用の危険性を最小限にするために、リコグリフロジンは、夜に投与されるであろう。
【0104】
この試験についての用量は、患者の忍容性及び安全性を維持すると共に、個々の単独療法と比較して、組み合わせ療法により有効性の増加が達成されるといった予想に基づいて、選択された。
【0105】
対象(n=70)は、ベースライン来院時にリコグリフロジン療法アーム:リコグリフロジン30mg、1日1回に割り当てられる。対象は、夜に服用しないでクリニックで朝に摂取するベースライン及び4週目を除いて、毎日、夜、食後、ほぼ同じ時刻に、薬を摂取しなければならない。
【0106】
有効性評価は、以下の推奨される順序で完了しなければならない:
-MRI。
-肝機能検査:ALT、AST、GGT、全アルカリホスファターゼ(並びに試験参加の間に、全アルカリホスファターゼ>ULNである場合、アイソザイム及びGGT又は全アルカリホスファターゼ>ULNである場合、5’ヌクレオチダーゼ)、全ビリルビン、並びにアルブミンについて評価する。
-SOMAscanを使用するタンパク質測定。
-肝線維症のマーカー:もともとFibrotest(登録商標)/Fibrosure(登録商標)と呼ばれた。以下について評価する:α2-マクログロブリン、アポリポタンパク質A1、全ビリルビン、ハプトグロビン、GGT、及びALT。
-NAFLD線維化スコア:以下の式は、NAFLD線維化スコアの計算のために利用される:-1.675+0.037×年齢(年)+0.094×BMI(kg/m2)+1.13×IFG(空腹時高血糖)/糖尿病(有=1、無=0)+0.99×AST/ALT比-0.013×血小板(×109/l)-0.66×アルブミン(g/dl)。
-空腹時のインスリン及びグルコース:血液サンプルを、空腹時のインスリン及びグルコースの評価のために収集する。
-肝生検:対象は、ランダム化前の6ヵ月以内の肝生検について実証される、NASH及び肝線維症ステージ2又は3の組織学的証拠を有していなければならない(NASH治験ネットワーク(CRN)ステージ分類基準)。
【0107】
加えて、トランジェントエラストグラフィー(Transient Elastography)(FibroScan(登録商標))を、スクリーニング/ベースライン時並びに12、24、及び48週目に行うことができる。
【0108】
標準の安全性パラメーター及び測定値を、プロトコールにおいて詳述される定義及びプロセスに従って、有害事象及び重篤有害事象を含め、収集する。
【0109】
実施例2:非アルコール性脂肪性肝疾患を有する患者におけるSGLT1/2阻害剤、リコグリフロジンの安全性、忍容性、及び有効性:プラセボ対照ランダム化フェーズ2a試験の中間解析。
ランダム化二重盲検プラセボ対照フェーズ2a試験を、組織学的に確認されたNASHを有する又はNASHを示唆する生化学的表現型を有する患者において、リコグリフロジンの安全性、忍容性、及び有効性について判定するために行った。
【0110】
方法:組織学的に確認されたNASH(F1~F3)又は表現型NASH(非アジア人においてBMI≧27kg/m又はアジア人において≧23kg/m、ALT≧50(男性)又は≧35(女性)、及び2型糖尿病(T2DM))を有する患者に、150mg、30mgの経口リコグリフロジン、又はプラセボを、12週間、2:2:1の比で、毎日与えた(NCT03205150)。主要評価項目は、治療の12週間後のALTレベルに対する効果とする。副次評価項目は、とりわけ、体重、肝脂肪量、及びASTにおける好転を含む。試験規模は、110人で、このうち77人が完了し(プラセボ(n=18);リコグリフロジン30mg(n=25)及びリコグリフロジン150mg(n=34))、中間解析に含める。
【0111】
結果:治療の12週間後、それぞれ、150mg及び30mgで、ALTのベースラインレベルからの27%(17.2U/L、p=0.036)及び19%(11.1U/L、p=NS)のプラセボ調整後の低下があった。それぞれ、150mg及び30mgの用量で、ASTにおいて30%(p=0.004)及び23%(p=0.043)並びにGGTにおいて32%(p=0.001)及び26%(p=0.014)の低下があった。両方の用量で体重(約4%、p=0.0001)及びHbA1c(絶対的な変化:150mg、0.96%(p=0.0001);30mg、0.81%(p=0.001))におけるプラセボ調整後の低下が見られた。肝脂肪量における相対的な低下は、それぞれ、150mg及び30mgで、22%(p=0.01)及び10%(p=NS)であり、少なくとも30%の相対的な低下を有する患者の割合は、66.7%(150mg)、39.5%(30mg)、及び25%(プラセボ)であった。肝臓の脂肪における絶対的な低下は、150mgで4.45%(p=0.01)及び30mgで2.71%(p=NS)であり、患者の63.3%(150mg)、43.5%(30mg)、及び18.8%(プラセボ)は、少なくとも5%の絶対的な低下を達成した。最も一般的な有害事象(AE)である下痢は、プラセボ及び30mg群において同様の数の患者によって報告された(38.9%対40%)が、150mg用量では、より高かった(76.5%)。ほとんどの下痢事象(97.4%)は、軽度であった。
【0112】
本試験は、リコグリフロジンが、安全で、忍容可能であり、治療の12週間後にNASHと関連する複数の生化学的評価項目を好転させることを示した。本試験は、上記に示されるように、プラセボと比較して少なくとも25%のALTにおける統計的に有意な低下といったその主要評価項目を達成した(それぞれ、150mg及び30mgで、プラセボに対して27%及び19%のALTにおける相対的減少平均値並びに両方の用量でプラセボに対してAST及びGGTにおける統計的に有意な低下)。
【0113】
実施例3:肥満疾患を有する患者におけるリコグリフロジン治療による体重の用量依存的な低下
この試験は、肥満疾患を有する126人の日本の患者においてリコグリフロジン(2.5、10、25、及び50mg qd)の効果を判定するための、ランダム化二重盲式プラセボ対照用量設定試験とした。主要目的は、12週間での、プラセボと比べた体重低下におけるリコグリフロジン治療の用量反応関係について調べることとした。副次的目的は、12週間の治療を通してのレスポンダー率、合併症に関するパラメーターにおける変化、内臓及び皮下脂肪面積、並びに安全性についての評価を含んだ。
【0114】
結果:12週目の、ベースラインからの、体重の、プラセボを差し引いた変化率は、それぞれ、リコグリフロジン2.5、10、25、及び50mg qd用量群において、-1.99、-3.00、-3.54、及び-3.91%であった。合計で、≧50%の患者は、プラセボに対して(7.1%;すべてp≦0.002)、リコグリフロジン10、25、及び50mg qd用量群において、体重における≧3%の低下を達成した。リコグリフロジンによる治療は、安全で、ケトアシドーシスも新たな安全性シグナルもなかった。リコグリフロジン治療によるSGLT1/2の二重阻害は、肥満疾患を有する日本の患者において、体重における用量依存的な低下を誘発した。12週間のリコグリフロジン(2.5、10、25、及び50mg qd)の投与は、この試験において安全で、忍容性良好であった。
【0115】
本明細書において記載される実施例及び実施形態は、例示を目的としただけのものであり、それを考慮した様々な修飾又は変更は、当業者らに示唆され、本出願の精神及び領域並びに添付される請求項の範囲内に含まれることが理解される。本明細書において引用される刊行物、特許、及び特許出願はすべて、あらゆる目的のために、参照によってこれによって援用される。
【国際調査報告】