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特表2022-543295優れた撥水特性及び撥油特性を同時に有する高分子被膜剤、及びそれを含む化粧持続性に優れた化粧料組成物
<図1>
  • 特表-優れた撥水特性及び撥油特性を同時に有する高分子被膜剤、及びそれを含む化粧持続性に優れた化粧料組成物 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-11
(54)【発明の名称】優れた撥水特性及び撥油特性を同時に有する高分子被膜剤、及びそれを含む化粧持続性に優れた化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20221003BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221003BHJP
   A61K 8/91 20060101ALI20221003BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20221003BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20221003BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20221003BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
A61K8/81
A61Q19/00
A61K8/91
A61Q1/00
A61Q1/04
A61Q1/02
A61Q17/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507520
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(85)【翻訳文提出日】2022-02-04
(86)【国際出願番号】 KR2020003353
(87)【国際公開番号】W WO2021025254
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】10-2019-0094859
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ド-ヒュク・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン-ヒ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ウ-ソン・シム
(72)【発明者】
【氏名】ジュン-ア・キム
(72)【発明者】
【氏名】ソン-ア・ジョン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB442
4C083AC022
4C083AC112
4C083AC332
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD172
4C083CC02
4C083CC05
4C083CC11
4C083CC12
4C083CC13
4C083CC19
4C083DD23
4C083DD32
4C083DD33
4C083EE05
(57)【要約】
本発明は、撥水特性及び撥油特性が同時に優れる高分子被膜剤、及びそれを含む化粧持続性に優れた化粧料組成物に関する。本発明の高分子被膜剤及びそれを含む化粧料組成物は、化粧持続性を高め、長時間が経過した後も修正化粧の回数が減るかまたは修正化粧の必要がない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性構造及び芳香族構造を共に含む、化粧品製剤の持続性を改善させる高分子被膜剤。
【請求項2】
前記高分子被膜剤は、撥水特性及び撥油特性を同時に有する、請求項1に記載の高分子被膜剤。
【請求項3】
前記高分子被膜剤は、親水性構造及び芳香族構造を一つの単量体内に同時に含む重合性単量体の重合単位を含む、請求項1または2に記載の高分子被膜剤。
【請求項4】
前記親水性構造は、ヒドロキシ、アミン、フォスフェート、スルホネート、スルフェート及びカルボキシからなる群より選択される一つ以上の構造を含む、請求項1から3のうちいずれか一項に記載の高分子被膜剤。
【請求項5】
前記芳香族構造は、ベンジル、フェニル、ナフチル、フェナントレン、アントラセン及びピレンからなる群より選択される一つ以上の構造を含む、請求項1から4のうちいずれか一項に記載の高分子被膜剤。
【請求項6】
前記親水性構造及び芳香族構造を一つの単量体内に同時に含む重合性単量体は、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルメタアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)エチルアクリレート、2-(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)エチルメタアクリレート、2-ヒドロキシプロピル-2-(アクリロイルオキシ)エチルフタレート、2-ヒドロキシプロピル-2-(メタアクリロイルオキシ)エチルフタレート、3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニルエチルアクリレート、及び3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニルエチルメタアクリレートからなる群より選択される一つ以上である、請求項1から5のうちいずれか一項に記載の高分子被膜剤。
【請求項7】
前記高分子被膜剤は、機械的強度を発揮する重合性単量体の重合単位をさらに含み、
前記機械的強度を発揮する重合性単量体は、単一重合体のガラス転移温度が30℃~120℃である、請求項1から6のうちいずれか一項に記載の高分子被膜剤。
【請求項8】
前記高分子被膜剤は、柔軟性を発揮する重合性単量体の重合単位をさらに含み、
前記柔軟性を発揮する重合性単量体は、単一重合体のガラス転移温度が-120℃~0℃である、請求項1から7のうちいずれか一項に記載の高分子被膜剤。
【請求項9】
前記高分子被膜剤は、
(i)親水性構造及び芳香族構造を同時に含む重合性単量体の重合単位5~40重量%と、
(ii)機械的強度を発揮する重合性単量体の重合単位20~50重量%と、
(iii)柔軟性を発揮する重合性単量体の重合単位10~45重量%と、を含む、請求項1から8のうちいずれか一項に記載の高分子被膜剤。
【請求項10】
請求項1から9のうちいずれか一項に記載の高分子被膜剤を含む、化粧品製剤の持続性改善用化粧料組成物。
【請求項11】
請求項1から9のうちいずれか一項に記載の高分子被膜剤を含む化粧品。
【請求項12】
請求項1から9のうちいずれか一項に記載の高分子被膜剤を使用して化粧品製剤の持続性を改善する方法。
【請求項13】
請求項1から9のうちいずれか一項に記載の高分子被膜剤の化粧品製剤の持続性改善のための用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年8月5日付け出願の韓国特許出願第10-2019-0094859号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、高分子被膜剤及びそれを含む化粧持続性に優れた化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、色調化粧料は、粉体、オイル及び水の三つの成分を主な成分にして構成される。前記色調化粧料は、その構成比や剤形または使用目的によって、フェイスパウダー、コンパクト、パウダーファンデーション、ツーウェイパクト、メイクアップベース、リキッドファンデーション及びクリームファンデーションなどのベースメイクアップ(base makeup)と、アイシャドウ、パウダーブラッシュ、リップスティック、アイライナー及びマスカラなどのポイントメイクアップ(point makeup)とに分けられる。
【0004】
これら製品は肌に塗布されて約8時間~12時間付着されている。その間に肌から分泌される汗や皮脂、外部の水分などによって化粧が崩れて携帯電話、コップ、衣類などに付いたり、食事の際に化粧が落ちることがあるため、化粧を塗り直すか又は落として再度化粧する修正化粧を行う。そこで、修正化粧の回数を減らすかまたは修正化粧の必要がない、化粧持続性の高い化粧品または化粧法が選択されている趨勢である。
【0005】
化粧持続性を確保するため、特許文献1には、シリコーンやフッ素系表面処理剤でコーティングした粉体を使用することで、粉体が汗や皮脂に濡れず、過剰に分泌された汗や皮脂によるテカリを減らす方法が提案されている。しかし、シリコーン系表面処理剤でコーティングされた粉体は、皮脂に濡れて化粧持続性が維持されず、フッ素系表面処理剤でコーティングされた粉体は、粉体同士または粉体と肌との間の付着性が弱く、分泌された皮脂上に化粧膜自体が浮いて固まる現象が発生するため、使用感及び剤形性が低下する問題がある。
【0006】
他にも、吸油性に優れた粉体を配合して分泌される過剰の皮脂を吸油する方法などが提案されているが、このような粉体は化粧料の製造時に添加される水やオイルを吸収するため、実際化粧するときは既に吸油機能をかなり喪失した状態になる。特に、白粉類製品では、配合量が多くなると、結合剤として使われるオイルを過度に吸油して成形し難くなるため、配合量を増やすことが困難である。
【0007】
さらに他の方法としては、金属酸化物を用いて金属酸化物の金属イオンと皮脂の構成成分であってテカリの主な原因である脂肪酸とが反応し、金属塩として固化して化粧持続性を高める方法などがある。
【0008】
しかし、上記のような方法は、化粧膜の変化を減少させて化粧持続性を高める根本的な解決方案を提示することはできなかった。
【0009】
本明細書の全体にわたって多数の文献が参照され、その引用が示されている。引用された文献の開示内容は、その全体が本明細書に参照として援用されることで、本発明が属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公平7-119168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の問題点を解決するための手段として、撥水特性及び撥油特性を同時に有することを特徴とする高分子被膜剤を提供することを目的とする。
【0012】
本発明は、汗または皮脂、外部の水分などによって化粧が移り付くか又は落ちることなく、化粧持続性に優れた化粧料組成物及び化粧品を提供することを他の目的とする。
【0013】
本発明の他の目的及び利点は、下記の発明の詳細な説明、特許請求の範囲及び図面によってより明確になる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様は、親水性構造及び芳香族構造を共に含むことを特徴とする、化粧品製剤の持続性を改善する高分子被膜剤を提供することである。
【0015】
水分散被膜剤の場合、撥油特性は維持されるが、撥水特性の発現に制限があるため、多方面での使用が制限される。油分散被膜剤には炭化水素系、シリコーン及びシリコーンアクリル系共重合体があるが、オイルに対する撥油性が十分ではないため化粧持続性が低い。また、多様なシリコーン系被膜形成剤を複合化して品質の改善を試みるが、製造過程が複雑であり、撥水/撥油特性を同時に具現するには十分ではない。
【0016】
本発明の目的は、撥水/撥油特性を同時に有するように親水性構造及び芳香性構造を導入して化粧持続性を改善した高分子被膜素材を製造することである。
【0017】
前記撥水/撥油特性に優れた高分子被膜剤の場合、高分子構造内に親水性構造と芳香族構造が含まれているため、水分、汗のような親水特性と人工皮脂、食用油などのような親油特性に対して反撥性を呈している。詳しくは、親水性構造は撥油特性を呈し、芳香族構造は撥水特性及び一部の撥油特性を呈する。
【0018】
親水性構造は、ヒドロキシ、アミン、フォスフェート、スルホネート、スルフェート及びカルボキシなどのイオン性または非イオン性の電子対構造からなる群より選択される一つ以上の構造を含む構造であり、例えば-NH、-OH、-SOH、-POH、-COOHなどを含むが、これらに制限されることはない。その例として、親水性構造を含む2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのアクリル系、アクリルアミド系及びアセトアミド系、ビニル系及びアリール系単量体として酢酸ビニル、ビニルピロリドン、アリールエーテルなどが挙げられる。
【0019】
芳香族構造は、電子対4n+2則を満たす形態を含む構造であり、例えばベンジル、フェニル、ナフチル、フェナントレン、アントラセン及びピレン(pyrene)からなる群より選択される一つ以上の構造を含むが、これらに制限されることはない。その例としては、芳香族構造を含むアクリル系、アクリルアミド系、アセトアミド系、ビニル系及びアリール系単量体としてベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0020】
また、本発明の高分子被膜剤は、親水性構造と芳香族構造とを一つの単量体内に同時に含む重合性単量体の重合単位を含むものであってもよい。
【0021】
前記構造を同時に含む重合性単量体は、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルメタアクリレート(HPPMA)、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)エチルアクリレート、2-(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)エチルメタアクリレート、2-ヒドロキシプロピル-2-(アクリロイルオキシ)エチルフタレート、2-ヒドロキシプロピル-2-(メタアクリロイルオキシ)エチルフタレート、3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニルエチルアクリレート及び3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニルエチルメタアクリレートからなる群より選択される一つ以上であり得るが、これらに制限されることはない。
【0022】
本発明の高分子被膜剤は、被膜剤の塗布時に機械的強度を発揮できる堅い部位をさらに含んでもよい。そのため、高分子構造内の単一重合体のガラス転移温度が30℃~120℃、望ましくは40℃~100℃である単量体を使用し得る。その例として、t-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、メチルまたはエチル(メタ)アクリレートなどから選択される一つ以上が挙げられるが、これらに制限されることはない。
【0023】
また、被膜剤の柔軟な性質を発揮できるように、高分子構造内の単一重合体のガラス転移温度が-120℃~0℃、望ましくは-100℃~-30℃である単量体をさらに使用してもよい。その例として、アルキルシロキシ構造を有するシリケート系(メタ)アクリレート、アルキルアクリル系またはアルキルアクリルアミド系構造を有するエチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどから選択される一つ以上が挙げられるが、これらに制限されることはない。
【0024】
本発明において、被膜剤の高分子構造のうち親水性構造、芳香性構造、またはこれら両方を含む構造は、全体構造の5重量%~40%重量%で含まれ得る。5重量%未満の量で含まれると、撥水性、撥油性、またはこれら両方を同時に発揮できず化粧持続性を得られ難く、40%以上であれば、高分子被膜素材の安定性が低下する短所がある。
【0025】
前記機械的強度を発揮する単量体の場合、高分子重量の20~50%以下の重量比で含まれ得、前記柔軟性を発揮する単量体の場合、高分子重量の10~45%以下の重量比で含まれ得る。
【0026】
本発明の被膜剤の高分子は、上述した重合性単量体を油相系で重合させて製造できるが、被膜剤を合成する油相系の場合、炭化水素系無極性またはシリコーン系揮発性オイルを使用することが望ましい。炭化水素系無極性オイルの場合、炭素原子数が8~16個、望ましくは炭素原子数が10~16個であるものであって、ドデカン、イソドデカン、イソパラフィンなどが挙げられる。シリコーン系揮発性オイルは、主にシロキサン(-RSi-O-)構造であり、RはC1~C3の形態であって一つまたはそれ以上の線状構造または環状構造でなり得る。例えば、シクロブタシロキサン(D4)、シクロペンタシロキサン(D5)、シクロヘキサシロキサン(D6)、メチルトリメチコンなどを使用し得るが、これらに制限されることはない。
【0027】
本発明の他の態様は、本発明の高分子被膜剤を含む化粧品製剤の持続性改善用化粧料組成物を提供することである。本発明による化粧料組成物は、上述したような本発明の高分子被膜剤の他に、組成物の効果を低減させない範囲内で香料、色素、防腐剤、殺菌剤、パール剤などをさらに含み得る。
【0028】
本発明のさらに他の態様は、本発明の高分子被膜剤を含む化粧品を提供することである。前記化粧品は、パウダー、フェイスパウダー、圧縮パウダー、コンパクト、ファンデーション、パウダーファンデーション、ツーウェイパクト、メイクアップベース、リキッドファンデーション、クリームファンデーション、プライマー、ブーマー、トーンアップクリーム、コンシーラー、BBクリーム、CCクリーム、ティンティドモイスチュアライザ、アイシャドウ、パウダーブラッシュ、ハイライター、シェーディング、ブラッシャー、アイメイクアップ製品(アイブロウ、アイライナー、アイシャドウ及びマスカラなど)、リップメイクアップ製品(ルージュ、リップスティック、リップグロス、リップティント及びリップバームなど)、サンスクリーンクリームを含むが、これらに制限されることはない。
【発明の効果】
【0029】
本発明の高分子被膜剤及びそれを含む化粧料組成物は、撥水特性及び撥油特性を同時に備えるため、汗または皮脂、外部の水分などによって化粧が崩れるか又は移り付くことがない。このように本発明の高分子被膜剤及びそれを含む化粧料組成物は、化粧の持続性を高め、長時間が経過しても修正化粧の回数が減るかまたは修正化粧の必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】製造例1及び製造例3の食事前後の色持続性に対するイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳しく説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲を制限するものではないということは、本発明が属する技術分野で通常の知識を持つ者にとって自明であろう。
【実施例
【0032】
I.撥水/撥油性油分散高分子被膜剤の合成
比較例1
冷却機、窒素注入機、温度計、撹拌機が取り付けられた反応機に、炭化水素系オイルであるイソドデカン200g、t-ブチルアクリレート55g、イソボルニルアクリレート5g、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタアクリレート40gを入れて均一に混合した後、75℃まで徐々に昇温させた。その後、開始剤である2,2’-アゾビスイソブチルニトリル1gをゆっくり投入し、12時間以上反応させて油分散高分子被膜剤を合成した。合成物を200メッシュからなるウレタンメッシュで1次濾過して不純物を除去した。最終的に、t-ブチルアクリレート/イソボルニルアクリレート/トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタアクリレート=55/5/40重量比の共重合体を安定した相で収得した。
【0033】
実施例1
比較例1と同様に、冷却機、窒素注入機、温度計、撹拌機が取り付けられた反応機に、炭化水素系オイルであるイソドデカン200g、t-ブチルアクリレート55g、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタアクリレート40g、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート5gを添加して均一に混合し、75℃まで徐々に昇温させた。その後、開始剤である2,2’-アゾビスイソブチルニトリル1gをゆっくり入れて共重合体を合成した。12時間以上反応させ、最終的にt-ブチルアクリレート/トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタアクリレート/2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート=55/40/5重量比の共重合体を安定した相で収得した。
【0034】
実施例2
実施例1と同様に、冷却機、窒素注入機、温度計、撹拌機が取り付けられた反応機に、炭化水素系オイルであるイソドデカン200g、t-ブチルアクリレート45g、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタアクリレート30g、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート10gを添加して均一に混合し、75℃まで徐々に昇温させた。その後、開始剤である2,2’-アゾビスイソブチルニトリル0.85gを入れて共重合体を合成し、6時間の反応中に2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート15gと開始剤である2,2’-アゾビスイソブチルニトリル0.15gをさらに投入して12時間以上反応させ、最終的にt-ブチルアクリレート/トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタアクリレート/2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート=45/30/25重量比の共重合体を安定した相で収得した。
【0035】
実施例3
実施例2と同じ合成条件で、イソドデカン200g、t-ブチルアクリレート30g、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタアクリレート30g、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート20gを添加して均一に混合し、75℃まで徐々に昇温させた。その後、開始剤である2,2’-アゾビスイソブチルニトリル0.8gを入れて共重合体を合成し、6時間の反応中に2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート20gと開始剤である2,2’-アゾビスイソブチルニトリル0.2gをさらに投入して12時間以上反応させ、最終的にt-ブチルアクリレート/トリメチルシロキシシリルプロピルメタアクリレート/2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート=30/30/40重量比の共重合体を収得した。
【0036】
実施例4
実施例2と同じ合成条件で、イソドデカン200g、t-ブチルアクリレート55g、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタアクリレート40g、2-ヒドロキシエチルアクリレート2.5g、フェニルアクリレート2.5gを添加して均一に混合し、75℃まで徐々に昇温させた。その後、開始剤である2,2’-アゾビスイソブチルニトリル1gをゆっくり入れて共重合体を合成した。12時間以上反応させ、最終的にt-ブチルアクリレート/トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタアクリレート/2-ヒドロキシエチルアクリレート/フェニルアクリレート=55/40/2.5/2.5重量比の共重合体を安定した相で収得した。
【0037】
実施例5
実施例2と同じ合成条件で、イソドデカン200g、t-ブチルアクリレート45g、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタアクリレート30g、2-ヒドロキシエチルアクリレート5g、フェニルアクリレート5gを添加して均一に混合し、75℃まで徐々に昇温させた。その後、開始剤である2,2’-アゾビスイソブチルニトリル0.85gを入れて共重合体を合成し、6時間の反応中に2-ヒドロキシエチルアクリレート7.5g、フェニルアクリレート7.5g、開始剤である2,2’-アゾビスイソブチルニトリル0.15gをさらに投入して12時間以上反応させ、最終的にt-ブチルアクリレート/トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタアクリレート/2-ヒドロキシエチルアクリレート/フェニルアクリレート=45/30/12.5/12.5重量比の共重合体を収得した。
【0038】
【表1】
【0039】
II.被膜剤の撥水/撥油特性及びベタツキの分析
表1に示した組成の撥水/撥油性油分散高分子被膜剤6種を被膜形態で製造し、その物性を評価した。
【0040】
1.製造方法
1)スライドガラス上に被膜剤4種を2mLずつ分取して落とした。
2)ドクターブレードコーターを用いて50μmの厚さでコーティングした。
3)70℃のコンベクションオーブンで12時間以上乾燥した。
4)乾燥したサンプルを6時間以上常温に放置した。
【0041】
2.評価方法
1)接触角測定機を用いて水と人工皮脂に対する接触角を測定した。
2)水としては蒸留水、人工皮脂としてはトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、ホホバオイル、ステアリン酸の混合液を使用した。
3)ベタツキは、テクスチャーアナライザを用いてボールタック(ball tack)を測定した。
4)100gの接触力で5秒間接触させた後、引き離すときにかかる張力を測定してベタツキを測定した。
【0042】
測定した水、人工皮脂及び食用油に対する初期接触角/ベタツキの結果を下記表2に示した。
【0043】
【表2】
【0044】
実験の結果、親水性部分及び疎水性部分を同時に含む単量体を添加した実施例1~3ではベタツキが少ないが、疎水性部分と親水性部分とがそれぞれ異なる単量体に存在する場合、ベタツキの面で不利であることが確認された。
【0045】
III.油分酸性リップルージュの製造
表3に示す組成の製造例及び比較例を用いて油分酸性リップルージュ剤形を製造し、その品質を評価した。
【0046】
1.製造方法
1)成分1~3を50℃で加熱しながら分散させた。
2)1)に成分7を入れて均一に分散させた後、成分4~6を50℃で加熱しながら分散させた。
3)常温に冷却した後、油分酸性リップルージュを製造した。
【0047】
【表3】
【0048】
2.リップルージュ油分酸性剤形の評価方法
【0049】
製造された油分酸性リップルージュ剤形に対し、専門評価パネル15名(20~35歳)によってユーザ評価を行った。
【0050】
油分酸性リップルージュ剤形の塗り性(唇上に塗布するとき、滑らかに塗られる程度)、化粧効果、6時間塗布後、食事による化粧移り、化粧崩れ、及び唇上に化粧が残っている程度をもって色持続性を下記の基準で5段階評価し、その平均を求めた。
【0051】
表3において、平均点4以上を◎、平均点3以上4未満を○、平均点2以上3未満を△、平均点2未満を×と判定した。
【0052】
撥水/撥油性高分子被膜剤を含む製造例2~4の場合、これを含まない製造例1と比べて、総合的に化粧持続性に優れることが確認された。また、均一且つ安定した相で得られた撥水/撥油性高分子被膜剤を含む製造例3の化粧持続性が特に優れた。
【0053】
IV.W/Oリキッドファンデーションの製造
表4に示す組成の製造例及び比較例を用いてW/Oリキッドファンデーション剤形を製造し、その品質を評価した。
【0054】
1.製造方法
1)成分1、4を均一に分散させた後、50℃で加熱しながら成分6、2、3を順次に添加した。
2)1)に成分8を入れて均一に分散させた後、成分5、7を50℃で加熱しながら分散させた。
3)常温に冷却した後、W/Oリキッドファンデーションを製造した。
【0055】
【表4】
【0056】
2.W/Oリキッドファンデーションの評価方法
製造されたW/Oリキッドファンデーション剤形に対し、専門評価パネル15名(20~35歳)によってユーザ評価を行った。
【0057】
製造したファンデーションの化粧効果(塗り性、ベタツキなど)、及び6時間塗布後、服、携帯電話などに移り付く程度をもって化粧持続性を下記の基準で5段階評価し、その平均を求めた。
【0058】
表4において、平均点4以上を◎、平均点3以上4未満を○、平均点2以上3未満を△、平均点2未満を×と判定した。
【0059】
撥水/撥油性高分子被膜剤を含む製造例2~4の場合、これを含まない製造例1と比べて、総合的に化粧持続性に優れることが確認された。また、均一且つ安定した相で得られた撥水/撥油性高分子被膜剤を含む製造例3の化粧持続性が特に優れた。
【0060】
V.O/Wサンスクリーンクリームの製造
表5に示す組成の製造例及び比較例を用いてO/Wサンスクリーンクリームを製造し、その品質を評価した。
【0061】
1.製造方法
1)成分1、4を均一に分散させた後、50℃で加熱しながら成分6、2、3を順次に添加した。
2)1)に成分8を入れて均一に分散させた後、成分5、7を50℃で加熱しながら分散させた。
3)常温に冷却した後、W/Oサンスクリーンクリームを製造した。
【0062】
【表5】
【0063】
2.O/Wサンスクリーンクリームの評価方法
製造されたO/Wサンスクリーンクリーム剤形をスライドガラスに塗布した後、初期UV遮断効果と、水道水で1回洗った後のUV遮断効果とを比較評価し、UV遮断維持効果を評価した。
【0064】
表5において、40%以上のUV遮断維持を○、40%未満20%以上のUV遮断維持を△、20%未満のUV遮断維持を×と判定した。
【0065】
撥水/撥油性高分子被膜剤を含む製造例2~4の場合、これを含まない製造例1と比べて、総合的にUV遮断効果維持に優れることが確認された。また、均一且つ安定した相で得られた撥水/撥油性高分子被膜剤を含む製造例3のUV遮断効果維持が特に優れた。
図1
【国際調査報告】