(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-26
(54)【発明の名称】格納システムおよびその施工方法
(51)【国際特許分類】
F17C 3/04 20060101AFI20221019BHJP
B65D 90/02 20190101ALI20221019BHJP
【FI】
F17C3/04 A
B65D90/02 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022509612
(86)(22)【出願日】2020-08-14
(85)【翻訳文提出日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 KR2020010880
(87)【国際公開番号】W WO2021029739
(87)【国際公開日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】10-2019-0099702
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522057906
【氏名又は名称】イ,サン・ボク
【氏名又は名称原語表記】LEE, SANG BOK
【住所又は居所原語表記】106‐305, SAMSUNG‐RO 150, GANGNAM‐GU, SEOUL 34129, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】イ,サン・ボク
【テーマコード(参考)】
3E170
3E172
【Fターム(参考)】
3E170AA01
3E170AA09
3E170AB29
3E170DA01
3E170DA09
3E170JA10
3E170NA01
3E170NA04
3E170NA05
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB04
3E172AB05
3E172BA06
3E172BD02
3E172CA10
3E172DA03
3E172DA12
3E172DA13
3E172DA16
3E172DA20
3E172DA26
3E172DA90
(57)【要約】
格納システム(containment system)とその施工方法が開示される。格納システムは液化ガス貯蔵のための内部空間を有するタンクと、タンクの外壁の少なくとも一部に非接着状態で固定されたバッファ層と、バッファ層の外面を覆いスプレー方式で形成された発泡断熱層を含む。バッファ層は発泡断熱層より薄くて柔軟であり、発泡断熱層の弾性係数より小さい弾性係数を有する材料で形成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガス貯蔵のための内部空間を有するタンク;
前記タンクの外壁の少なくとも一部に非接着状態で固定されたバッファ層;および
前記バッファ層の外面を覆い、スプレー方式で形成された発泡断熱層;
を含み、
前記バッファ層は前記発泡断熱層より薄くて柔軟であり、前記発泡断熱層の弾性係数より小さい弾性係数を有する材料で形成された、格納システム。
【請求項2】
前記バッファ層は断熱層を含み、
前記断熱層はソフト発泡ウレタンフォーム、ソフト発泡ポリスチレン、メラミンフォーム、およびポリエチレンフォームからなる群より選ばれた少なくとも一つを含む、請求項1に記載の格納システム。
【請求項3】
前記断熱層の内面と外面は金属薄板で覆われ、
前記断熱層と前記金属薄板が断熱部を構成する、請求項2に記載の格納システム。
【請求項4】
前記バッファ層は前記断熱部の外面を覆う第1クラックバリアを含み、
前記第1クラックバリアはガラスクロス(glass cloth)とガラスメッシュ(glass mesh)のいずれか一つを含む、請求項3に記載の格納システム。
【請求項5】
前記バッファ層はシート状に製作され、固定具によって前記タンクの外壁の少なくとも一部に物理的に固定される、請求項1に記載の格納システム。
【請求項6】
前記固定具は、
前記タンクの外壁に固定されて前記バッファ層を貫通するスタッドボルト;
前記バッファ層の上で前記スタッドボルトに締結された固定ワッシャ;および
前記固定ワッシャの上で前記スタッドボルトに締結された固定ナットを含む、請求項5に記載の格納システム。
【請求項7】
前記固定具は、
前記タンクの外壁に固定されて前記バッファ層を貫通するスダッドピン;および
前記バッファ層の上で前記スダッドピンに締結された固定ワッシャを含み、
前記スダッドピンは前記バッファ層と前記固定ワッシャを貫通する垂直部と、前記垂直部から折り曲げられて前記固定ワッシャの上面に密着した水平部を含む、請求項5に記載の格納システム。
【請求項8】
前記発泡断熱層の外面を覆う可撓性保護層をさらに含み、
前記発泡断熱層と前記可撓性保護層は継ぎ目がない単一構造をなす、請求項1から7のいずれか一項に記載の格納システム。
【請求項9】
前記発泡断熱層の内部に第2クラックバリアが位置し、
前記第2クラックバリアはガラスクロス、ガラスメッシュ、金属マトリックス(metal matrix)の少なくともいずれか一つを含む、請求項8に記載の格納システム。
【請求項10】
液化ガス貯蔵のためのタンクを提供する段階;
前記タンクの外壁の少なくとも一部に固定具を用いてバッファ層を固定させる段階;
前記バッファ層の外面にスプレー方式で発泡断熱層を形成する段階;
を含み、
前記バッファ層は前記発泡断熱層より薄くて柔軟であり、前記発泡断熱層の弾性係数より小さい弾性係数を有する材料で形成される、格納システムの施工方法。
【請求項11】
前記バッファ層は長いシートが丸く巻かれたロール形態で製作されて前記タンクの外壁に移送され、前記ロールから前記シートが広げられて前記タンクの外壁に順次配置され、
前記タンクの外壁に配置された前記バッファ層は二重のシートが重なったオーバーラップ領域を含む、請求項10に記載の格納システムの施工方法。
【請求項12】
前記バッファ層は前記固定具によって前記タンクの少なくとも一部に物理的に固定され、
前記物理的に固定されたバッファ層の中央の前記固定具と重ならない部分は前記タンクの外壁と非接着状態を保持する、請求項11に記載の格納システムの施工方法。
【請求項13】
前記固定具は前記タンクの外壁に固定されたスタッドボルトを含み、
前記バッファ層が前記タンクの外壁に配置される時前記スタッドボルトが前記バッファ層を貫通し、
前記スタッドボルトに固定ワッシャと固定ナットが順次締結される、請求項12に記載の格納システムの施工方法。
【請求項14】
前記固定具は前記タンクの外壁に固定されたスダッドピンを含み、
前記バッファ層が前記タンクの外壁に配置される時前記スダッドピンが前記バッファ層を貫通し、
前記スダッドピンに固定ワッシャが締結され、
前記スダッドピンが折り曲げられて前記スダッドピンの一部が前記固定ワッシャの上面に密着する、請求項12に記載の格納システムの施工方法。
【請求項15】
前記バッファ層は前記タンクと対向する断熱部と、前記断熱部の外面を覆う第1クラックバリアを含み、
前記断熱部は、ソフト発泡ウレタンフォーム、ソフト発泡ポリスチレン、メラミンフォーム、およびポリエチレンフォームからなる群より選ばれた少なくとも一つを含む断熱層と、前記断熱層の内面と外面を覆う金属薄板を含み、
前記第1クラックバリアはガラスクロスとガラスメッシュのいずれか一つを含む、請求項11に記載の格納システムの施工方法。
【請求項16】
前記発泡断熱層を形成する段階は、
前記バッファ層の上にスプレー方式で第1発泡断熱層を形成し、前記第1発泡断熱層の上にガラスクロス、ガラスメッシュ、金属マトリックス(metal matrix)の少なくともいずれか一つを含む第2クラックバリアを配置し、前記第2クラックバリアの上にスプレー方式で第2発泡断熱層を形成する過程を含む、請求項11に記載の格納システムの施工方法。
【請求項17】
前記発泡断熱層を形成する段階の後、前記発泡断熱層の上にスプレー方式で可撓性保護層を形成する段階をさらに含む、請求項10から16のいずれか一項に記載の格納システムの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は格納システムに関し、より詳細には液化ガスを貯蔵して運ぶ格納システムおよびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガス(LNG,Liquefied Natural Gas)、液化石油ガス(LPG,Liquefied Petroleum Gas)のような極低温液化ガスはタンク、船舶、パイプのような多様な格納システム(containment system)により貯蔵および運搬される。格納システムは船舶、バージ船、浮遊式プラットフォーム、または陸上などに設置されることができる。
【0003】
格納システムは大きく独立型(independent type)とメンブレン型(membrane type)に区分される。独立型はアルミニウム、ステンレス鋼、鋼合金などで製作された堅固な構造のタンクと、タンクの外壁に付着した断熱材で構成される。断熱材は断熱パネルで構成されるか、スプレー方式で形成された断熱層で構成されることができる。
【0004】
断熱パネルはポリウレタンフォームや発泡ポリスチレンなどで製作されることができ、スタッドボルトのような固定具(fastener)によりタンク外壁に固定される。断熱層はポリウレタンを含み得、タンクの外壁にスプレーガンでポリオール(polyol)とイソシアネート(isocyanate)を混合噴射する方法で製作されることができる。
【0005】
断熱層はタンクの外壁に固定具を設ける必要はなく、タンク外壁に対する接着性が非常に優れる。反面、厚い絶縁が必要な場合タンクが小さいほど、角柱形のように角を有する形状であるほど、断熱層に亀裂と剥離が発生する危険性が高まる。これはタンクに液化ガス貯蔵時タンクと外気の温度差によって断熱層を横切る200℃程度の温度勾配と、タンクと断熱層の熱膨張係数差に起因する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一側面はスプレー方式の断熱層を備えた格納システムにおいて、断熱層の亀裂と剥離の発生を抑制できる格納システムおよびその施工方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態による格納システムは、液化ガス貯蔵のための内部空間を有するタンクと、タンクの外壁の少なくとも一部に非接着状態で固定されたバッファ層と、バッファ層の外面を覆いスプレー方式で形成された発泡断熱層を含む。バッファ層は発泡断熱層より薄くて柔軟であり、発泡断熱層の弾性係数より小さい弾性係数を有する材料で形成される。
【0008】
バッファ層は断熱層を含み得る。断熱層はソフト発泡ウレタンフォーム、ソフト発泡ポリスチレン、メラミンフォーム、およびポリエチレンフォームからなる群より選ばれた少なくとも一つを含み得る。
【0009】
断熱層の内面と外面は金属薄板で覆われ得、断熱層と金属薄板が断熱部を構成し得る。バッファ層は断熱部の外面を覆う第1クラックバリアを含み得る。第1クラックバリアはガラスクロス(glass cloth)とガラスメッシュ(glass mesh)のいずれか一つを含み得る。
【0010】
バッファ層はシート状に製作され得、固定具によってタンクの外壁の少なくとも一部に物理的に固定され得る。固定具は、タンクの外壁に固定されてバッファ層を貫通するスタッドボルトと、バッファ層の上でスタッドボルトに締結された固定ワッシャと、固定ワッシャの上でスタッドボルトに締結された固定ナットを含み得る。
【0011】
他方では、固定具は、タンクの外壁に固定されてバッファ層を貫通するスダッドピンと、バッファ層の上でスダッドピンに締結された固定ワッシャを含み得る。スダッドピンはバッファ層と固定ワッシャを貫通する垂直部と、垂直部から折り曲げられて固定ワッシャの上面に密着した水平部を含み得る。
【0012】
格納システムは発泡断熱層の外面を覆う可撓性保護層をさらに含み得る。発泡断熱層と可撓性保護層は継ぎ目がない単一構造をなし得る。発泡断熱層の内部に第2クラックバリアが位置し得る。第2クラックバリアはガラスクロス、ガラスメッシュ、金属マトリックス(metal matrix)の少なくともいずれか一つを含み得る。
【0013】
本発明の一実施形態による格納システムの施工方法は、液化ガス貯蔵のためのタンクを提供する段階と、タンクの外壁の少なくとも一部に固定具を用いてバッファ層を固定させる段階と、バッファ層の外面にスプレー方式で発泡断熱層を形成する段階を含む。バッファ層は発泡断熱層より薄くて柔軟であり、発泡断熱層の弾性係数より小さい弾性係数を有する材料で形成される。
【0014】
バッファ層は長いシートが丸く巻かれたロール形態で製作されてタンクの外壁に移送され得、ロールからシートが広げられてタンクの外壁に順次配置され得る。タンクの外壁に配置されたバッファ層は二重のシートが重なったオーバーラップ領域を含み得る。
【0015】
バッファ層は固定具によってタンクの少なくとも一部に物理的に固定され得、物理的に固定されたバッファ層の中央の固定具と重ならない部分はタンクの外壁と非接着状態を保持し得る。
【0016】
固定具はタンクの外壁に固定されたスタッドボルトを含み得る。バッファ層がタンクの外壁に配置される時スタッドボルトがバッファ層を貫通し得、スタッドボルトに固定ワッシャと固定ナットが順次締結され得る。
【0017】
他方では、固定具はタンクの外壁に固定されたスダッドピンを含み得る。バッファ層がタンクの外壁に配置される時スダッドピンがバッファ層を貫通し得、スダッドピンに固定ワッシャが締結され得、スダッドピンが折り曲げられてスダッドピンの一部が固定ワッシャの上面に密着し得る。
【0018】
バッファ層はタンクと対向する断熱部と、断熱部の外面を覆う第1クラックバリアを含み得る。断熱部は、ソフト発泡ウレタンフォーム、ソフト発泡ポリスチレン、メラミンフォーム、およびポリエチレンフォームからなる群より選ばれた少なくとも一つを含む断熱層と、断熱層の内面と外面を覆う金属薄板を含み得る。第1クラックバリアはガラスクロスとガラスメッシュのいずれか一つを含み得る。発泡断熱層を形成する段階は、バッファ層の上にスプレー方式で第1発泡断熱層を形成し、第1発泡断熱層上にガラスクロスとガラスメッシュのいずれか一つを含む第2クラックバリアを配置し、第2クラックバリアの上にスプレー方式で第2発泡断熱層を形成する過程を含み得る。
【0019】
格納システムの施工方法は、発泡断熱層を形成する段階の後、発泡断熱層上にスプレー方式で可撓性保護層を形成する段階をさらに含み得る。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一実施形態による格納システムは、はやくて簡便な施工が可能であり、施工コストが低いため経済性が高い。また、機械的固定を最小化して多様な形状のタンクへの適用可能であり、発泡断熱層の亀裂と剥離を効果的に抑制でき、極端な温度変化に耐えることができるため運用上の自由度が高い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態による格納システムの部分拡大断面図である。
【
図2】
図1に示す格納システムのバッファ層の拡大断面図である。
【
図3】屈曲部に該当する格納システムの部分拡大断面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態による格納システムの部分拡大断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態による格納システムの部分拡大断面図である。
【
図6】本発明の第3実施形態による格納システムのバッファ層と固定具の部分拡大断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態による格納システムの施工方法を示すフローチャートである。
【
図8】
図7に示す第1段階と第2段階を説明するために示すタンクの概略図である。
【
図9】
図7に示す第1段階と第2段階を説明するために示すタンクの概略図である。
【
図10】
図7に示す第2段階を説明するためのバッファ層と固定具の拡大断面図である。
【
図11】
図7に示す第2段階を説明するためのバッファ層と固定具の拡大断面図である。
【
図12】
図7に示す第4段階の後の格納システムを示す概略図である。
【発明を実施のための形態】
【0022】
以下、添付する図面を参照して本発明の実施形態について本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。本発明は様々な異なる形態で実現でき、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0023】
図面で本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、明細書全体にわたって同一または類似の構成要素に対しては同じ参照符号を付けた。
【0024】
また、図面に示す各構成の大きさおよび厚さは説明の便宜上任意に示したので、本発明は必ずしも示されたところに限定されない。
【0025】
明細書全体で、ある部分が他の部分と「連結」されているという時、これは「直接的に連結」されている場合のみならず、他の部材を間に置いて「間接的に連結」された場合も含む。また、ある部分がある構成要素を「含む」いう時、これは特に反対の意味を示す記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0026】
図1は本発明の第1実施形態による格納システムの部分拡大断面図であり、
図2は
図1に示す格納システムのバッファ層の拡大断面図である。
【0027】
図1と
図2を参照すると、第1実施形態の格納システム100は液化ガスを貯蔵するタンク10と、タンク10の外壁に非接着状態で固定されたバッファ層20と、バッファ層20の外面を覆う発泡断熱層30を含む。
【0028】
タンク10は球形(spherical type)、円筒形(cylindrical type)、角柱形(prismatic type)など多様な形状からなり、アルミニウム、ステンレス鋼、鋼合金などの金属で製作されることができる。液化ガスはタンク10の密閉された内部空間に貯蔵される。
【0029】
バッファ層20はタンク10と対向する断熱部21と、断熱部21の外面を覆うクラックバリア22を含む。断熱部21は断熱層211と、断熱層211の両面を覆う金属薄板212を含み得る。
【0030】
断熱層211はソフト発泡ウレタンフォーム、ソフト発泡ポリスチレン、メラミンフォーム、ポリエチレンフォームのうち少なくとも一つを含み得、金属薄板212はアルミニウム箔板であり得、より好ましくはアルミニウム箔板にファイバーグラスが接着された薄板(ALGC,Aluminium & Glass-Cloth)であり得る。クラックバリア22はガラスクロス(glass cloth)とガラスメッシュ(glass mesh)の少なくとも一つを含み得る。
【0031】
バッファ層20はシート(sheet)形態であらかじめ製作され、タンク10の外壁で接着剤のような接着手段なしで固定具40により物理的に固定される。固定具40はスタッドボルト41と少なくとも一つの固定ワッシャ42および固定ナット43の組み合わせで構成されることができる。
【0032】
例えば、スタッドボルト41は溶接などの方法でタンク10の外壁に固定され、バッファ層20を貫通する。第1固定ワッシャ421はバッファ層20の上でスタッドボルト41に締結され、第1固定ワッシャ421の上に第2固定ワッシャ422と固定ナット43が順にスタッドボルト41に締結される。固定ナット43の締結力によって第1固定ワッシャ421がバッファ層20を強く押してバッファ層20をタンク10に堅固に固定させる。
【0033】
第1固定ワッシャ421はウレタンゴムと合板およびプラスチックのいずれか一つで製作でき、バッファ層20と十分な接触面積を確保するように比較的大きい直径で形成できる。第2固定ワッシャ422は金属で製作でき、第1固定ワッシャ421より小さい大きさで形成される。第2固定ワッシャ422は強度補強用として、第1固定ワッシャ421の破れのような破損の恐れがある時選択的に使用できる。
【0034】
固定具40はタンク10の外壁に相互間距離をおいて複数で備えられる。便宜上
図1では一つの固定具40を示す。バッファ層20は固定具40が押す物理的な力によって位置固定がなされ、タンク10の外壁の少なくとも一部に非接着状態で堅固に固定される。この時「非接着」とは化学的な接着手段が排除されたことを意味する。
【0035】
一方、本発明の実施形態によれば、バッファ層20がタンク10の外壁全体に非接着状態で固定されるが、タンク10の外壁の一部にのみ非接着状態で固定され、残りの一部には接着状態で固定されることもできる。すなわち、本発明の実施形態はバッファ層20がタンク10の外壁全体に非接着状態で固定された場合だけでなく、バッファ層20がタンク10の外壁の一部に非接着状態で固定された場合も含む。
【0036】
発泡断熱層30はスプレー方式で形成され、別途の接着手段なしでバッファ層20の外面に固定される。発泡断熱層30はポリウレタンを含み得、固定具40とバッファ層20の外面にスプレーガン(spray gun)でポリオール(polyol)とイソシアネート(isocyanate)を混合噴射する方法で製作されることができる。
【0037】
ポリオールとイソシアネートは各自のコンテナに入れておいてからホースを通じてスプレーガンでポンピングされて混合され、これらの混合物がバッファ層20の外面に噴射される。噴射された混合物はバッファ層20の外面にくっついて膨張を始めるが、膨張過程で混合物は固い多孔性構造に変形されて保温性が強化されたセルラーフォーム(cellular foam)を生成してバッファ層20の外面に永久的に固定される。
【0038】
前述したように、クラックバリア22はガラスクロスとガラスメッシュのいずれか一つを含むので、微細な孔が形成された織物組織またはメッシュ構造を有する。したがって、発泡断熱層30はクラックバリア22の微細孔または隙間を浸透して断熱部21の金属薄板212と接触でき、バッファ層20に非常に堅固に付着できる。
【0039】
発泡断熱層30は可撓性保護層50で覆われる。可撓性保護層50は半可撓性(semi-flexible)コート層または半可撓性マスチック(mastic)またはこれを強化した強化コート層またはメタル素材のjacketingで構成できる。
【0040】
可撓性保護層50は適切な道具および装備を用いて発泡断熱層30の外面にコーティング材組成物をスプレー噴射後硬化したり、マスチック組成物を塗布後硬化する方式で形成できる。コーティング材組成物はポリウレタン基盤の組成物であり得る。または、可撓性保護層50の他の形態として、メタル素材を発泡断熱層30の外面に設置(jacketing)して形成することができる。
【0041】
格納システム100でタンク10を除いたバッファ層20と発泡断熱層30および可撓性保護層50が極低温断熱構造60を構成する。発泡断熱層30は体積面で極低温断熱構造60の大部分を占める。すなわち、バッファ層20と可撓性保護層50は発泡断熱層30と比較する時きわめて小さい厚さを有する。
【0042】
発泡断熱層30と可撓性保護層50それぞれは継ぎ目のない(seamless)単一構造からなる。シームレス構造物の発泡断熱層30と可撓性保護層50は格納システム100の表面をなめらかにし、格納システム100の気密性を向上させる。また、可撓性保護層50は格納システム100表面の堅固性を高める。
【0043】
前述した格納システム100で、タンク10と発泡断熱層30の間に位置するバッファ層20は発泡断熱層30より薄くて柔軟で(flexible)あり、発泡断熱層30より小さい弾性係数(elastic modulus)を有する材料で形成される。また、バッファ層20は固定具40によりタンク10の外壁に非接着状態で固定されるので、バッファ層20の中央の複数の固定具40と重ならない部分(便宜上「非固定部位」という)はタンク10の外壁に対する拘束力が作用しない。
【0044】
換言すれば、バッファ層20の非固定部位は接着剤なしで単にタンク10の外壁を覆っているので、タンク10の外壁と非固定部位の間に所定の隙間(Gap)が存在し、タンク10の外壁と非固定部位の間には相互拘束力が作用しない。
【0045】
極低温断熱構造60はタンク10の外壁全体に位置する。この時、タンク10外壁は平坦部と屈曲部を含み得る。
図3は屈曲部に該当する格納システム100の部分拡大断面図である。
図1の格納システム100は平坦部を示している。
図1と
図3を参照すると、平坦部と屈曲部すべてにおいて固定具40は相互間距離をおいて複数設けられ、同じ構成の極低温断熱構造60が平坦部と屈曲部すべてに位置する。
【0046】
タンク10に液化ガスが貯蔵される前、発泡断熱層30の内面と外面は同じ温度を維持する。例えば外気が20℃である場合、発泡断熱層30の内面と外面はいずれも20℃の温度を維持できる。発泡断熱層30には温度勾配が存在しない。
【0047】
タンク10に液化ガス、例えば液化天然ガス(LNG)が流入するとタンク10の外壁と接するバッファ層20およびバッファ層20と接する発泡断熱層30の内面は概ね-163℃に冷却される反面、発泡断熱層30の外面は依然として20℃を維持する。発泡断熱層30には概ね183℃に至る温度勾配が存在し、タンク10と発泡断熱層30の熱膨張係数の差によってバッファ層20と発泡断熱層30に応力が発生する。
【0048】
この時、応力は発泡断熱層30の内面と接するバッファ層20に集中するが、バッファ層20は発泡断熱層30より薄くて柔軟であり、弾性係数が低い材料的特性によって容易に変形される。バッファ層20の変形は発泡断熱層30の変形率を吸収して発泡断熱層30の応力を低減させる作用をする。
【0049】
また、外気の温度が45℃に上昇すると発泡断熱層30を横切る温度勾配は概ね208℃に上昇する。この場合、発泡断熱層30の応力がさらに大きくなることにより変形率も大きくなるが、バッファ層20が前述した場合(外気が20℃の場合)よりさらに多く変形されて発泡断熱層30の変形率を吸収して発泡断熱層30の応力を低減させる。
【0050】
前述した二つの場合すべてにおいて、バッファ層20はタンク10外壁に非接着状態で固定されているので、発泡断熱層30はタンク10と動きが連携されない。すなわち、液化ガスによってタンク10と発泡断熱層30が冷却されるとき、タンク10と発泡断熱層30は熱膨張係数差によって収縮率に差が発生するが、バッファ層20とタンク10の外壁の間に存在する隙間がタンク10と発泡断熱層30の直接的な相互作用を遮断する。
【0051】
例えば、バッファ層20が省略され、発泡断熱層30がタンク10外壁に直接スプレー方式で形成された場合を仮定すると、発泡断熱層30はタンク10と動きが連携される。
具体的には、タンク10と発泡断熱層30が冷却される時、発泡断熱層30の収縮率はタンク10の収縮率と異なるが発泡断熱層30の内面はタンク10の収縮率に従うべきである。これによって温度勾配が大きくなるほど発泡断熱層30の応力が高くなり、発泡断熱層30に亀裂と剥離が発生する危険性が大きくなる。
【0052】
しかし、本実施形態の格納システム100ではバッファ層20の固定構造によってタンク10と発泡断熱層30の動きが直接連携しないので、タンク10の収縮-膨張による発泡断熱層30の亀裂と剥離を効果的に抑制できる。
【0053】
図4と
図5は本発明の第2実施形態による格納システムの部分拡大断面図である。
図4はタンク外壁の平坦部に該当し、
図5はタンク外壁の屈曲部に該当する。
【0054】
図4と
図5を参照すると、第2実施形態の格納システム200で発泡断熱層30の内部に第2クラックバリア33が位置する。バッファ層20に含まれたクラックバリア22を便宜上「第1クラックバリア」という。発泡断熱層30は第1クラックバリア22と第2クラックバリア33の間に位置する第1発泡断熱層31と、第2クラックバリア33と可撓性保護層50の間に位置する第2発泡断熱層32で構成されることができる。
【0055】
第1発泡断熱層31は第1クラックバリア22の上にスプレー方式で形成され、第1発泡断熱層31の上に第2クラックバリア33が位置し得る。第2発泡断熱層32は第2クラックバリア33の上にスプレー方式で形成される。
【0056】
第2クラックバリア33は発泡断熱層30より薄くて柔軟であり、発泡断熱層30の弾性係数より小さい弾性係数を有する材料で形成される。例えば、第2クラックバリア33はガラスクロス、ガラスメッシュ、金属マトリックス(metal matrix)の少なくともいずれか一つを含み得、第1クラックバリア22と同じ素材で形成されることができる。したがって、タンク10に液化ガスが貯蔵されて発泡断熱層30に応力が発生する時、第2クラックバリア33が材料特性によって容易に変形されて発泡断熱層30の変形率を吸収して発泡断熱層30の応力を低減させる。第2クラックバリア33は一つ以上の個数で構成されることができる。
【0057】
バッファ層20とともに第2クラックバリア33を備えた第2実施形態の格納システム200は発泡断熱層30の亀裂と剥離の発生をより効果的に抑制できる。したがって、発泡断熱層30を横切る温度勾配が非常に大きい場合、より効果的に発泡断熱層30の応力を低減させることができる。第2実施形態の格納システム200は第2クラックバリア33が追加されたことを除いては前述した第1実施形態と同一または類似の構成からなり、重複する説明は省略する。
【0058】
図6は本発明の第3実施形態による格納システムのバッファ層と固定具の部分拡大断面図である。
【0059】
図6を参照すると、第3実施形態の格納システムで固定具401はスダッドピン45と固定ワッシャ46を含み得る。スダッドピン45はバッファ層20と固定ワッシャ46を貫通する垂直部451と、垂直部451から折り曲げられて固定ワッシャ46の上面に密着した水平部452で構成されることができる。水平部452は垂直部451から直角に折れ、水平部452の端部はと尖った形状であり得る。
【0060】
スダッドピン45は棒形状であり得、この状態でバッファ層20を貫通する。固定ワッシャ46はバッファ層20の上でスダッドピン45に締結される。固定ワッシャ46は第1実施形態の第1固定ワッシャ421と同じ材質と形状からなる。バッファ層20と固定ワッシャ46がスダッドピン45に結合された後、スダッドピン45の上の部分が直角に折れて水平部452になり、水平部452が固定ワッシャ46とバッファ層20を強く押してバッファ層20をタンク10に堅固に固定させる。
【0061】
このようにスダッドピン45の水平部452は第1実施形態の固定ナット43として機能する。前述した固定具401は固定ナットを省略して部品数を減らし、全体構成を簡素化できる。第3実施形態の格納システムは固定具401の構成を除いては前述した第1実施形態および第2実施形態のいずれか一つの実施形態と同一または類似の構成からなる。
【0062】
図7は本発明の一実施形態による格納システムの施工方法を示すフローチャートである。
【0063】
図7を参照すると、一実施形態による格納システムの施工方法は、液化ガス貯蔵のためのタンクを提供する第1段階(S10)と、複数の固定具を用いてタンク外壁にバッファ層を固定する第2段階(S20)と、バッファ層の外面にスプレー方式で発泡断熱層を形成する第3段階(S30)を含む。第3段階(S30)の後、発泡断熱層の上に可撓性保護層を形成する第4段階(S40)が行われる。
【0064】
図8と
図9は
図7に示す第1段階と第2段階を説明するために示すタンクの概略図である。
【0065】
図8と
図9を参照すると、第1段階(S10)でタンク10は球形、角柱形、円筒形のいずれか一つの形状であり得、アルミニウム、ステンレス鋼、鋼合金などで製作されることができる。タンク10は液化ガスの流入と排出のための管路構造物11を備える。管路構造物11はタンク10の外側に突出した構造物であり得る。
【0066】
図8ではタンク10が角柱形の場合を例に挙げて示し、
図9ではタンク10が円筒形で、かつ二つのサポート12の上に設けられた場合を例に挙げて示す。タンク10の形状と支持構造は示す例示に限定されない。
【0067】
第2段階(S20)でタンク10の外壁に複数のスタッドボルト41が相互間距離をおいて設けられる。他方では、スタッドボルト41の代わりにタンク10の外壁に複数のスダッドピン45が相互間距離をおいて設けられ得る。スタッドボルト41とスダッドピン45はタンク10のような金属で製作でき、溶接などの方法でタンク10の外壁に付着する。
【0068】
図10と
図11は
図7に示す第2段階を説明するためのバッファ層と固定具の拡大断面図である。
図10は第1実施形態の固定具40を示し、
図11は第3実施形態の固定具401を示す。
【0069】
図8ないし
図11を参照すると、管路構造物11を除いたタンク10の外壁全体にバッファ層20が配置され、この過程でスタッドボルト41またはスダッドピン45がバッファ層20を貫通する。すなわち、バッファ層20にはスタッドボルト41またはスダッドピン45に該当する貫通孔が形成され、バッファ層20はスタッドボルト41またはスダッドピン45により臨時の位置固定がなされる。
【0070】
バッファ層20は一定の幅を有する長いシート状であり得、タンク10の外壁に施工される前、ロール(roll)形態で丸く巻かれた形態で製作されることができる。ロール形態で製作されたバッファ層20は工場から現場に移送された後ロールからシートが広げられてタンク10外壁に順次配置されることができる。
【0071】
この時、ロールから広げられたバッファ層20は先に配置された隣り合うバッファ層20と一部重なる。したがって、タンク10の外壁でバッファ層20は二重のシートが重なったオーバーラップ(overlap)領域21(
図9参照)を有することができる。ロール形態のバッファ層20は移送と保管が容易で、タンク10の形状に関係なく短時間で配置できる便利さがある。
【0072】
一方、バッファ層20の他の形態として、長いシート状でない一定の規格のシート状に製作されることができる。例えば、バッファ層20はタンク10の外壁に施工される前、一定の横と縦の規格を有する四角形シート状に製作されることができる。このような場合、四角形シート状のバッファ層20を互いに並んで隣接させたり、縁を互いに重複させてバッファ層20をタンク10外壁に配置することができる。
【0073】
スタッドボルト41の場合、バッファ層20の上に第1および第2固定ワッシャ421,422と固定ナット43がスタッドボルト41に順に締結されてバッファ層20を堅固に固定させる。スダッドピン45の場合、バッファ層20の上に固定ワッシャ46がスダッドピン45に締結され、固定ワッシャ46の上でスダッドピン45が直角に折れて固定ワッシャ46を押してバッファ層20を堅固に固定させる。
【0074】
バッファ層20はタンク10と対向する断熱部21と、断熱部21の外面を覆うクラックバリア22を含み、複数の固定具40,401によりタンク10外壁に位置固定がなされる。バッファ層20の中央の固定具40,401と重ならない部位(非固定部位)ではタンク10外壁との間に所定の隙間が存在する。
【0075】
一方、本発明の実施形態によれば、バッファ層20がタンク10の外壁全体に固定具40,401により非接着状態で固定されるが、タンク10の外壁の一部にのみ非接着状態で固定され、残りの一部には接着状態で固定されることもできる。すなわち、本発明の実施形態はバッファ層20をタンク10の外壁全体に固定具40,401により非接着状態で固定する方法だけでなく、バッファ層20をタンク10の外壁の一部に非接着状態で固定する方法も含む。
【0076】
図1と
図7を参照すると、第3段階(S30)でバッファ層20の外面にスプレー方式で発泡断熱層30が形成される。発泡断熱層30はポリウレタンを含み得、バッファ層20の外面にスプレーガンでポリオールとイソシアネートを混合噴射する方法で形成できる。噴射された混合物はバッファ層20の外面にくっついて膨張し、膨張過程で多孔性構造に変わって硬化して発泡断熱層30を構成する。
【0077】
他方では、
図4と
図7を参照すると、第3段階(S30)で発泡断熱層30は第1発泡断熱層31と第2発泡断熱層32に分けて形成でき、第1発泡断熱層31と第2発泡断熱層32の間に第2クラックバリア33が位置し得る。
【0078】
具体的には、バッファ層20の外面にスプレー方式で第1発泡断熱層31が形成され、ガラスクロスとガラスメッシュのいずれか一つで構成された第2クラックバリア33が第1発泡断熱層31の上に配置されることができる。次に第2クラックバリア33の上にスプレー方式で第2発泡断熱層32が形成されることができる。
【0079】
第2クラックバリア33は前述したバッファ層20と同様に長いシートが丸く巻かれたロール形態で製作でき、シートが広げられて第1発泡断熱層31の上に配置されることができる。第2クラックバリア33は発泡断熱層30に応力発生時容易に変形されて発泡断熱層30の変形率を吸収して発泡断熱層30の応力を低減させる。
【0080】
図1と
図4および
図7を参照すると、第4段階(S40)で発泡断熱層30の上に可撓性保護層50が形成される。可撓性保護層50はポリウレタン基盤のコーティング材組成物をスプレー噴射後硬化したり、マスチック組成物を塗布後硬化する方式で形成されることができる。
【0081】
図12は
図7に示す第4段階の後格納システムを示す概略図である。
【0082】
図12を参照すると、格納システム100で極低温断熱構造60はタンク10形状に関係なくはやくて簡便な施工が可能であり、極端な温度変化に耐えるので運用上の自由度が高い。また、発泡断熱層30と可撓性保護層50は継ぎ目がない単一構造であるから格納システム100の表面をなめらかにし、格納システム100表面の気密性と堅固性を向上させる。
【0083】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく特許請求の範囲と発明の詳細な説明および添付する図面の範囲内で多様に変形して実施でき、これもまた本発明の範囲に属することは当然である。
【符号の説明】
【0084】
100,200 格納システム
10 タンク
20 バッファ層
21 断熱部
22 クラックバリア(第1クラックバリア)
30 発泡断熱層
31 第1発泡断熱層
32 第2発泡断熱層
33 第2クラックバリア
40,401 固定具
41 スタッドボルト
42,46 固定ワッシャ
43 固定ナット
45 スダッドピン
50 可撓性保護層
60 極低温断熱構造
【国際調査報告】