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特表2022-5465033ピッチパターンの炉心およびドラム吸収体を有する堅牢な核推進核分裂炉
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】3ピッチパターンの炉心およびドラム吸収体を有する堅牢な核推進核分裂炉
(51)【国際特許分類】
   G21C 1/00 20060101AFI20221027BHJP
   G21C 1/06 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
G21C1/00 230
G21C1/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513688
(86)(22)【出願日】2020-08-25
(85)【翻訳文提出日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 US2020047722
(87)【国際公開番号】W WO2021071599
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】62/893,263
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/999,244
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521440998
【氏名又は名称】ビーダブリューエックスティ・アドバンスト・テクノロジーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BWXT Advanced Technologies LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】グラムリック,クレイグ ディ
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,ベンジャミン ディ
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル,ウィリアム イー,ザ セカンド
(57)【要約】
核推進核分裂炉構造物は、燃料要素構造体を含む活性炉心領域と、回転可能な中性子吸収構造体(ドラム吸収体など)を有する反射器と、燃料要素構造体の外面を反射器に共形に嵌合する炉心支持枠とを有する。燃料要素構造体は、3ピッチ設計で最近傍燃料要素構造体に当接して配置される。冷却剤チャネルを画定するクラッド体は、上部炉心プレートおよび下部炉心プレートに挿入されて接合され、格納構造体の第1の部分である連続構造体を形成する。核推進核分裂炉構造物は、宇宙推進などの推進用途のために、核熱推進エンジンに組み込むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核推進核分裂炉構造物であって、
複数の燃料要素構造体を含み、核推進原子炉の長手方向軸を画定する軸方向中心線を有する活性炉心領域と、
前記活性炉心領域の径方向外側の炉心支持枠と、
前記炉心改質器の径方向外側にあり、前記活性炉心領域に向かって配向された径方向内面を有する反射器と、
前記反射器の容積内に配置された複数の中性子吸収構造体と、
上部炉心プレートと、
下部炉心プレートと、を備え、
各燃料要素構造体は、冷却剤チャネルを画定する内面を有するクラッド体と、前記クラッド体の径方向外側の燃料組成物体と、前記燃料組成物体の径方向外側の減速体組成物体と、を含み、
第1の燃料要素構造体の減速体組成物体の外面は、複数の最近傍燃料要素構造体の減速体組成物体の外面に当接し、
前記炉心支持枠は、第2の表面の径方向内側に第1の表面を有し、前記第1の表面は、前記活性炉心領域の径方向外面に共形であり、前記第2の表面は、前記反射器の前記径方向内面に共形であり、
前記複数の中性子吸収構造体の各々は、第1の位置と第2の位置との間で移動可能な中性子吸収体本体を含み、前記第1の位置は前記第2の位置よりも前記活性炉心領域に径方向に近く、
各燃料要素構造体の前記クラッド体は、前記燃料組成物体の第1の軸方向端部を越えて軸方向に延在する第1の部分と、前記燃料組成物体の第2の軸方向端部を越えて軸方向に延在する第2の部分とを含み、
前記各燃料要素構造体の前記第1の部分は、前記上部炉心プレートに接合され、各燃料要素構造体の前記第2の部分は、前記下部炉心プレートに接合される、核推進核分裂炉構造物。
【請求項2】
前記燃料組成体は環状円筒の形状を有し、前記燃料要素構造体は多角形の断面を有する、請求項1に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項3】
前記燃料要素構造体の側面は、隣接する燃料要素構造体の側面と直接接触しており、前記活性炉心領域における前記複数の燃料要素構造体の配置は並進対称性を有する、請求項2に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項4】
前記燃料組成体の燃料組成物は、濃縮化20%未満の酸化ウラン、10重量%のモリブデン(U-10Mo)を含むウラン、窒化ウラン(UN)、またはそれらのサーメットを含む、請求項3に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項5】
核推進核分裂炉構造物であって、
複数の燃料要素構造体を含み、核推進原子炉の長手方向軸を画定する軸方向中心線を有する活性炉心領域と、
前記活性炉心領域の径方向外側の炉心支持枠と、
前記炉心改質器の径方向外側にあり、前記活性炉心領域に向かって配向された径方向内面を有する反射器と、
前記反射器の容積内に配置された複数の中性子吸収構造体と、を備え、
各燃料要素構造体は、冷却剤チャネルを画定する内面を有するクラッド体と、前記クラッド体の径方向外側の燃料組成物体と、前記燃料組成物体の径方向外側の減速体組成物体と、を含み、
第1の燃料要素構造体の減速体組成物体の外面は、複数の最近傍燃料要素構造体の減速体組成物体の外面に当接し、
前記炉心支持枠は、第2の表面の径方向内側に第1の表面を有し、前記第1の表面は、前記活性炉心領域の径方向外面に共形であり、前記第2の表面は、前記反射器の前記径方向内面に共形であり、
前記複数の中性子吸収構造体の各々は、第1の位置と第2の位置との間で移動可能な中性子吸収体本体を含み、前記第1の位置は前記第2の位置よりも前記活性炉心領域に径方向に近い、核推進核分裂炉構造物。
【請求項6】
上部炉心プレートと、
下部炉心プレートと、をさらに備え、
各燃料要素構造体の前記クラッド体は、前記燃料組成物体の第1の軸方向端部を越えて軸方向に延在する第1の部分と、前記燃料組成物体の第2の軸方向端部を越えて軸方向に延在する第2の部分とを含み、
前記各燃料要素構造体の前記第1の部分は、前記上部炉心プレートに接合され、前記各燃料要素構造体の前記第2の部分は、前記下部炉心プレートに接合される、
請求項5に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項7】
前記燃料組成体は、環状円筒の形状を有する請求項5または6に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項8】
前記燃料要素構造体は多角形の断面を有する、請求項5または6に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項9】
前記燃料要素構造体は、正多角形状の断面を有する、請求項8に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項10】
前記正多角形状は六角形である、請求項8に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項11】
前記燃料要素構造体の側面は、隣接する燃料要素構造体の側面と直接接触している、請求項5または6に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項12】
前記活性炉心領域における前記複数の燃料要素構造体の配置は並進対称性を有する、請求項5または6に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項13】
構造内の繰り返し要素間の距離が一定である、請求項12に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項14】
前記燃料組成体の燃料組成物は、濃縮化20%未満の酸化ウラン、10重量%のモリブデン(U-10Mo)を含むウラン、窒化ウラン(UN)、およびまたはそれらのサーメットを含む、請求項5または6に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項15】
前記中性子吸収体は、前記活性炉心領域の反応性を制御するために、前記第1の位置と前記第2の位置との間で移動可能である、請求項5または6に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項16】
各クラッド体は連続押出チューブである、請求項5または6に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項17】
前記クラッド体は、モリブデン、タングステン、レニウム、タンタル、ハフニウム、および炭化物を含むそれらの合金を含む組成物を有する、請求項5または6に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項18】
前記クラッド体の前記第1の部分は、前記減速体組成物体の第1の軸方向端部を越えて軸方向に延在し、前記クラッド体の前記第2の部分は、前記減速体組成物体の第2の軸方向端部を越えて軸方向に延在する、請求項5または6に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項19】
各燃料要素構造体の前記上部炉心プレートの一部、前記下部炉心プレートの一部、および前記クラッド体は、前記核推進原子炉の格納構造体の一部を形成する、請求項5または6に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項20】
前記燃料組成物体は環状円筒の形状を有し、前記減速体組成物体は、中央開口部を有する多角形スリーブであり、前記中央開口部の内径は、前記燃料組成物体が配置される空間を画定する、請求項5または6に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項21】
前記複数の中性子吸収体がそれぞれ前記第1の位置にあるとき、前記複数の中性子吸収体の各々は、前記活性炉心領域の前記軸方向中心線から径方向に等距離にある、請求項5または6に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項22】
前記中性子吸収体は、ベリリウム、酸化ベリリウム、グラファイト、またはこれらの組合せを含む組成を有する、請求項5または6に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項23】
前記複数の中性子吸収構造体の各々は、チューブ内に収容された円筒ドラムを含み、前記中性子吸収体本体は、前記円筒ドラムの第1の部分を占め、前記円筒ドラムの第2の部分は二次反射器であり、前記円筒ドラムの前記第1の部分は、前記円筒ドラムの外面の一部を含む前記円筒ドラムの容積である、請求項5または6に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項24】
前記円筒ドラムの前記外面の前記一部は、前記円筒ドラムの円周の120度の円弧に対応する、請求項23に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項25】
前記チューブはステンレス鋼である、請求項23に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項26】
前記円筒ドラムは、前記チューブの内径面に対して回転可能である、請求項23に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項27】
前記円筒ドラムを回転させるためにドラムシャフトによって前記円筒ドラムに動作可能に取り付けられたモータをさらに含む、請求項23に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項28】
前記反射器の組成は、ベリリウム、酸化ベリリウムまたはグラファイトを含む、請求項5または6に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項29】
前記反射器の組成は、ベリリウム、酸化ベリリウムまたはグラファイトを含み、前記二次反射器の組成は、ベリリウム、酸化ベリリウムまたはグラファイトを含む、請求項23に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項30】
前記二次反射器の前記組成は、前記反射器の前記組成と同じである、請求項29に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項31】
前記冷却剤は推進ガスであり、前記核推進原子炉は、上部原子炉プレートおよび下部原子炉プレートをさらに備え、各原子炉プレートは、前記推進ガスを通すための複数の孔を含む、請求項5または6に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項32】
外殻をさらに備え、
前記活性炉心領域、前記炉心支持枠、前記上部炉心プレート、前記下部炉心プレート、前記反射器、および前記複数の中性子吸収構造体は原子炉構造物を形成し、
前記原子炉構造物は前記外殻の内部容積内に収容される、請求項6に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項33】
前記冷却剤は推進ガスであり、前記核推進原子炉は、上部原子炉プレートおよび下部原子炉プレートをさらに備え、各原子炉プレートは、前記推進ガスを通すための複数の孔を含む、請求項32に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項34】
前記原子炉構造は、前記外殻の内面に取り付けられた、または前記外殻の前記内面の一部によって形成されたレッジによって支持される、請求項32に記載の核推進核分裂炉構造物。
【請求項35】
核熱推進エンジンであって、
請求項32に記載の核推進核分裂炉構造物と、
遮蔽体と、
推進ガスを極低温貯蔵するための貯蔵部と、
ターボ機械と、
ノズルと、を備え、
前記上部炉心プレートは前記外殻の第1の端部に向かって配向され、前記下部炉心プレートは前記外殻の第2の端部に向かって配向され、
遮蔽体、ターボ機械、および前記貯蔵部は、前記貯蔵部から前記核推進原子炉までの流路を提供するように前記外殻の前記第1の端部に動作可能に取り付けられ、
前記ノズルは、前記核推進原子炉から出る過熱された推進ガスのための流路を提供するように前記外殻の前記第2の端部に動作可能に取り付けられる、核熱推進エンジン。
【請求項36】
核推進核分裂炉構造物の製造方法であって、
複数のクラッド体の各々の第1の部分を下部炉心プレートに接合するステップであって、各クラッド体は冷却剤チャネルを画定する内面を有し、前記下部炉心プレートは、前記下部炉心プレートの第1の側面から前記下部炉心プレートの第2の側面まで延在する複数の開口部を含み、各クラッド体の前記第1の部分は、前記下部炉心プレートの前記複数の開口部のうちの異なる1つ内に延在する、ステップと、
複数の燃料組成物体の各々を前記複数のクラッド体のうちの異なる1つの外面の上で摺動させるステップであって、各燃料組成物体は環状円筒の形状を有し、前記燃料組成物体の前記環状円筒の内面は、前記クラッド体の前記外側表面に向かって配向されている、ステップと、
前記減速体本体の各々を複数の燃料組成物体のうちの異なる1つの外面の上で摺動させるステップであって、断面において、各減速体本体は、正多角形形状を有する周囲と、内側開口部とを有し、前記減速体本体の前記内側開口部の表面は、前記燃料組成物体の前記環状円筒の外面に向かって配向されている、ステップと、
前記クラッド体の第2の部分を上部炉心プレートに接合するステップであって、前記上部炉心プレートは、前記上部炉心プレートの第1の側面から前記上部炉心プレートの第2の側面まで延在する複数の開口部を含み、前記クラッド体の前記冷却剤チャネルは、前記上部炉心プレートの前記複数の開口部のうちの1つの中に延在する、ステップと、を含み、
前記組み立てられたクラッド体と、前記クラッド体の径方向外側の燃料組成物体と、前記燃料組成物体の径方向外側の減速体組成物体とは燃料要素構造体を画定し、
各燃料要素構造体において、前記クラッド体は、前記燃料組成物体の第1の軸方向端部を越えて軸方向に延在する第1の部分と、前記燃料組成物体の第2の軸方向端部を越えて軸方向に延在する第2の部分とを含み、
第1の燃料要素構造体の減速体本体の外面は、複数の最近傍燃料要素構造体の減速体本体の外面に当接し、
各燃料要素構造体の前記上部炉心プレートの一部、前記下部炉心プレートの一部、および前記クラッド体は、前記核推進原子炉の格納構造体の第1の部分を形成する、核推進核分裂炉構造物の製造方法。
【請求項37】
前記複数のクラッド体を形成するステップは、前記クラッド体をシームレスチューブ状に押し出すステップを含む、請求項36に記載の核推進核分裂炉構造物の製造方法。
【請求項38】
前記クラッド体の各々の前記第1の部分を前記下部炉心プレートに接合するステップは溶接を含む、請求項36に記載の核推進核分裂炉構造物の製造方法。
【請求項39】
前記複数の燃料組成体を形成するステップは、燃料圧縮技術または積層造形技術を含む、請求項36に記載の核推進核分裂炉構造物の製造方法。
【請求項40】
前記燃料組成体を前記クラッドに固定するステップをさらに含む、請求項36に記載の核推進核分裂炉構造物の製造方法。
【請求項41】
前記燃料組成体を前記クラッドに固定するステップは、圧入または熱間等方加圧を含む、請求項40に記載の核推進核分裂炉構造物の製造方法。
【請求項42】
前記クラッド体の各々の前記第2の部分を前記上部炉心プレートに接合するステップは溶接を含む、請求項36に記載の核推進核分裂炉構造物の製造方法。
【請求項43】
組み立てられた燃料要素構造体の外面の周りに反射器を配置するステップと、前記反射器の内面を前記組み立てられた燃料要素構造体の外面に炉心支持枠によって嵌合するステップとをさらに含む、請求項36に記載の核推進核分裂炉構造物の製造方法。
【請求項44】
前記反射器の前記内面は、前記核推進原子炉の格納構造体の第2の部分を形成する、請求項43に記載の核推進核分裂炉構造物の製造方法。
【請求項45】
前記複数のクラッド体を形成するステップと、
前記複数の燃料組成物体を形成するステップと、
前記複数の減速体本体を形成するステップと、のうちの1つまたは複数をさらに含む、
請求項36に記載の核推進核分裂炉構造物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、特に推進のための、核分裂炉および核分裂炉に関連する構造に関する。そのような核推進核分裂炉は、宇宙および海洋環境などの様々な非地上用途に応用されている。
【背景技術】
【0002】
以下の説明では、特定の構造および/または方法を参照する。しかしながら、以下の参考文献は、これらの構造および/または方法が先行技術を構成することの承認として解釈されるべきではない。出願人は、そのような構造および/または方法が本発明に対する先行技術として認められないことを実証する権利を明確に留保する。
【0003】
宇宙などの非地上用途のための様々な推進システムが開発されてきた。これらには、化学ベースの推進システム、イオンベースの推進システム、および核ベースの推進システムが含まれる。これらの推進システムの各々は、特定のミッションに合わせて調整された性能を提供するために推力と比推力とをバランスさせる。例えば、化学ベースの推進システムは、高い推力(例えば、10推進ポンド(4.45×10N)より大きい)を有するが、中程度の比推力(例えば、450秒以下)を有し、ペイロードを地球軌道に配置するなどの重いリフト動作に効率的に適用される。イオンベースの推進システムは、低い推力(例えば、10推進ポンド(44.5N)未満)を有するが、高い比推力(例えば、1,000~9,000秒)を有し、星間移動などの長期間の宇宙移動に効率的に適用される。原子力ベースの推進システムは、中程度の推力(例えば、推力5,000~75,000推進ポンド(22,250~333,750N))および中程度の比推力(例えば、600~1,000秒)を組み合わせ、近距離の宇宙移動に効率的に適用される。原子力ベースの推進システムは、現在、NASAの火星設計リファレンスミッションアーキテクチャ5.0有人探査の推進オプションとして評価されている。
【0004】
以前の核ベースの推進システムは依然として複雑である。例えば、ロケットビークル用途向け核エンジン(NERVA)およびローバー計画の両方が、核熱ロケット設計を開発してきた。核熱推進原子炉およびエンジン10の典型的な設計を図1に示す。図示の核熱推進原子炉およびエンジン10は、4つの主な特徴部、すなわち、反射器24内に収容された原子炉22を有する外殻20と、ターボポンプ32および他の配管および支持機器34を含むターボ機械30と、ターボ機械30を外殻20から分離する遮蔽体40と、ノズル52およびノズルスカート54を含むノズル部50とを含む。
【0005】
しかしながら、これらの従来の核ベースの推進システムは、複雑な減速体および流れ技術を利用すること、設計および関連する材料の限界を押し上げる最小限の設計マージンで動作することを含む欠点を依然として有する。したがって、特に宇宙などの非地上用途のための核推進原子炉の堅牢で簡単な設計が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記を考慮すると、製造を容易にするための、単純化された炉心パターンを有する堅牢なシングルパス推進剤流の核ベースの推進システムを有することが有利であろう。さらに、製造時の溶接点の数が低減された単純化された設計は、性能劣化のリスクを低減するのに有利である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般に、本開示は、核ベースの推進システムにおけるエンジンとしての使用に適した核分裂炉構造物に関する。例示的な実施形態では、核分裂炉構造物は、反応性制御のために、3ピッチ設計で配置された六角形断面を有する燃料要素および回転可能なドラム中性子吸収体を利用する。核分裂炉構造物は、核熱推進原子炉およびエンジンの外殻内に収容される。推進ガスは、核分裂炉構造物の冷却剤として使用される。核分裂炉構造物内で過熱された推進ガスは、ノズルを通って出て、推力および衝撃を生成する。
【0008】
本明細書で開示される実施形態は、複数の燃料要素構造体を含み、核推進原子炉の長手方向軸を画定する軸方向中心線を有する活性炉心領域と、活性炉心領域の径方向外側の炉心支持枠と、炉心改質器の径方向外側にあり、活性炉心領域に向かって配向された径方向内面を有する反射器と、反射器の容積内に配置された複数の中性子吸収構造体とを備える核推進核分裂炉構造物を含む。各燃料要素構造体は、冷却剤チャネルを画定する内面を有するクラッド体と、クラッド体の径方向外側の燃料組成物体と、燃料組成物体の径方向外側の減速体組成物体とを含む。さらに、第1の燃料要素構造体の減速体組成物体の外面は、複数の最近傍燃料要素構造体の減速体組成物体の外面に当接する。炉心支持枠は、第2の表面の径方向内側に第1の表面を有し、第1の表面は、活性炉心領域の径方向外面に共形であり、第2の表面は、反射器の径方向内面に共形である。複数の中性子吸収構造体の各々は、第1の位置と第2の位置との間で移動可能な中性子吸収体本体を含み、第1の位置は第2の位置よりも活性炉心領域に径方向に近い。
【0009】
本明細書に開示される実施形態はまた、本明細書に開示される核推進核分裂炉構造物と外殻とを備える核熱推進エンジンを含み、活性炉心領域、炉心支持枠、上部炉心プレート、下部炉心プレート、反射器、および複数の中性子吸収構造体は原子炉構造物を形成し、原子炉構造物は外殻の内部容積内に収容される。核熱推進エンジンを形成する際に、遮蔽体、推進ガスを極低温貯蔵するための貯蔵部、ターボ機械、およびノズルが原子炉構造物に動作可能に取り付けられ、上部炉心プレートが外殻の第1の端部に向かって配向され、下部炉心プレートが外殻の第2の端部に向かって配向されるように、外殻の内部容積内に収容される。遮蔽体、ターボ機械、および貯蔵部は、貯蔵部から核推進原子炉までの流路を提供するように外殻の第1の端部に動作可能に取り付けられ、ノズルは、核推進原子炉を出る過熱された推進ガスのための流路を提供するように外殻の第2の端部に動作可能に取り付けられる。
【0010】
本明細書に開示される実施形態はまた、核分裂炉構造物の製造方法を含む。本方法は、複数のクラッド体の各々の第1の部分を下部炉心プレートに接合するステップを含み、各クラッド体は冷却剤チャネルを画定する内面を有し、下部炉心プレートは、下部炉心プレートの第1の側面から下部炉心プレートの第2の側面まで延在する複数の開口部を含み、各クラッド体の第1の部分は、下部炉心プレートの複数の開口部のうちの異なる1つの中に延在する。次いで、複数の燃料組成物体の各々は、摺動などによって複数のクラッド体のうちの異なる1つの外側表面上に配置され、各燃料組成物体は環状円筒の形状を有し、燃料組成物体の環状円筒の内面は、クラッド体の外側表面に向けられている。次いで、減速体本体の各々は、摺動などによって複数の燃料組成物体のうちの異なる1つの外面の上に配置され、ここで、断面において、各減速体本体は、正多角形形状を有する周囲および内側開口部を有し、減速体本体の内側開口部の表面は、燃料組成物体の環状円筒の外面に向けられている。次に、クラッド体の第2の部分が上部炉心プレートに接合され、上部炉心プレートは、上部炉心プレートの第1の側面から上部炉心プレートの第2の側面まで延在する複数の開口部を含み、クラッド体の冷却剤チャネルは、上部炉心プレートの複数の開口部のうちの1つの中に延在する。組み立てられたクラッド体と、クラッド体の径方向外側の燃料組成物体と、燃料組成物体の径方向外側の減速体組成物体とは燃料要素構造体を画定し、各燃料要素構造体において、クラッド体は、燃料組成物体の第1の軸方向端部を越えて軸方向に延在する第1の部分と、燃料組成物体の第2の軸方向端部を越えて軸方向に延在する第2の部分とを含む。また、第1の燃料要素構造体の減速体本体の外面は、複数の最近傍燃料要素構造体の減速体本体の外面に当接し、上部炉心プレートの一部、下部炉心プレートの一部、および各燃料要素構造体のクラッド体は、核推進原子炉の格納構造体の第1の部分を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
前述の概要、ならびに実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読めばよりよく理解することができる。図示の実施形態は、図示の正確な配置および手段に限定されないことを理解されたい。
【0012】
図1】核熱推進原子炉およびエンジンの典型的な設計における特徴部の構造および配置を示す。
【0013】
図2】核推進核分裂炉構造物の一実施形態を概略的に示す。
【0014】
図3】活性炉心領域と反射器との間の結合を示す、核推進核分裂炉構造物の一部の部分上面図である。
【0015】
図4A】反射器内の中性子吸収構造体および関連する特徴部の実施形態を示す。
図4B】反射器内の中性子吸収構造体および関連する特徴部の実施形態を示す。
図4C】反射器内の中性子吸収構造体および関連する特徴部の実施形態を示す。
【0016】
図5】上部炉心プレートの一例を含む核推進核分裂炉構造物の上部断面を概略的に示す。
【0017】
図6A】例示的な燃料要素構造体の構成要素を、組み立てられていない概略斜視図で示す。
図6B】例示的な燃料要素構造体の構成要素を、組み立てられていない概略斜視図で示す。
図6C】例示的な燃料要素構造体の構成要素を、組み立てられていない概略斜視図で示す。
図6D】例示的な燃料要素構造体の構成要素を、組み立てられた断面図で示す。
【0018】
図7】複数の組み立てられた燃料要素構造体の一端を示す、活性炉心領域の上面の一部の概略斜視図である。
【0019】
図8】反射器の一実施形態の概略断面図である。
【0020】
図9】外殻を有する核推進核分裂炉構造物の一実施形態を概略的に示す。
【0021】
図10A】外殻の一実施形態を示す。
図10B】原子炉構造と外殻との間の界面の一実施形態を示す、図10Aの部分P1の拡大図である。
【0022】
図11】核推進核分裂炉構造物の製造方法の一実施形態における基礎ステップを示す流れ図である。
【0023】
見やすさのために、いくつかの例では、図中の名称付きの特徴部の一部のみに参照番号が付されている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図2は、核推進核分裂炉構造物の一実施形態を概略的に示す。核推進核分裂炉構造物100は、活性炉心領域110と、炉心支持枠130と、反射器150と、複数の中性子吸収構造体160とを含む。
【0025】
活性炉心領域110は、複数の燃料要素構造体112を含み、核推進核分裂炉構造物100の長手方向軸114を画定する軸方向中心線を有する。各燃料要素構造体112は、冷却剤チャネルを画定する内面118を有するクラッド体116と、クラッド体116の径方向外側の燃料組成物体120と、燃料組成物体120の径方向外側の減速体組成物体122とを含む。複数の燃料要素構造体112が活性炉心領域110内に配置されると、第1の燃料要素構造体112の減速体組成物体122の外面124は、複数の最近傍燃料要素構造体112の減速体組成物体122の外面124に当接する。これは、第1の燃料要素構造体112aおよび複数の最近傍燃料要素構造体112b~112gについて図2に示されている。例えば、例示的な実施形態では、燃料要素構造体の側面は、隣接する燃料要素構造体の側面と直接接触している。活性炉心領域110の周囲にある燃料要素構造体112の減速体組成物体122の外面124の集合体は、活性炉心領域110の径方向外面126を画定する。
【0026】
炉心支持枠130は、活性炉心領域110の径方向外側にあり、反射器150は、炉心支持枠130の径方向外側にある。炉心支持枠130の第1の表面132は、炉心支持枠130の第2の表面134の径方向内側にある。炉心支持枠130の第1の表面132は、活性炉心領域110の径方向外面126に共形であり、炉心支持枠130の第2の表面134は、反射器150の径方向内面152に共形である。反射器150の径方向内面152は、活性炉心領域110に向けられており、炉心支持枠130は、活性炉心領域110の径方向外面126の形状を反射器150の径方向内面152の形状に嵌合させるように機能する。
【0027】
複数の中性子吸収構造体160は、反射器150の容積内に配置される。中性子吸収構造体160は、回転などによって、第1の位置と第2の位置との間で移動可能な中性子吸収体本体162を含み、第1の位置は第2の位置よりも活性炉心領域に径方向に近い。例示的な実施形態では、第1の位置は、活性炉心領域に径方向に最も近く、第2の位置は、活性炉心領域から径方向に最も遠い。図2に示す実施形態では、中性子吸収体本体162は、径方向に最も近い第1の位置に示されている。説明のために、第2の径方向遠位位置は、仮想線を使用して示されている(162’として示されている第2の位置を参照)。中性子吸収体本体162は、活性炉心領域110の反応性を制御するために、第1の位置と第2の位置との間で移動可能である。図示の例では、中性子吸収体本体162は、中性子吸収構造体160の軸164の周りの回転(R)によって、径方向により近い第1の位置(図2の中性子吸収体本体162について示されている位置に対応する)から第2の位置162’まで回転可能である。しかしながら、中性子吸収体本体162を移動させることができる様々な位置が活性炉心領域110の反応性の制御を提供する限り、他の径方向位置および/または移動方向を実施することができる。いくつかの実施形態では、複数の中性子吸収体本体162がそれぞれ径方向により近い第1の位置にあるとき、複数の中性子吸収体本体162の各々は、活性炉心領域110の軸方向中心線から径方向に等距離にある。
【0028】
図3は、核推進核分裂炉構造物の一部の部分上面図である。図3では、活性炉心領域110の一部が示されており、炉心支持枠130、反射器150、および中性子吸収構造体160内の中性子吸収体本体162の一部も示されている。図2に関連して既に示され説明された特徴部のいくつかは、図3にも示されている。
【0029】
例えば、図3は、各々がクラッド体116と、冷却剤チャネル128と、燃料組成物体120と、減速体組成物体122とを有する複数の燃料要素構造体112(複数の最近傍燃料要素構造体と共に配置される)を示す。複数の燃料要素構造体112は、並進対称性を集合的に有する。並進対称性の一例は、図3に示す3ピッチ設計である。3ピッチ設計では、燃料要素構造体112間に並進対称性があり、それによって、一方の燃料要素構造体112上の特徴部が他の燃料要素構造体112上で一定の距離(または一定のピッチ)で繰り返される。例えば、最近傍同士を比較しているか、次の最近傍同士を比較しているかに基づいて、繰り返し構造はピッチの倍数であり得る。例示的な適切なピッチは、材料の選択および性能に応じて、3cm~10cm、あるいは3cm~6cm、またはさらに代替的には4cmである。図3は、3ピッチ設計の一例を示す。冷却剤チャネル128の中心軸は、最近傍燃料要素構造体112の冷却剤チャネル128の中心軸の各々から距離P1にあり、次の最近傍から距離P2(P2=2×P1)にある。複数の燃料要素構造体112の各々は、多角形の断面を有する。図示の例では、複数の燃料要素構造体112の各々は、六角形の断面形状を有する。他の規則的な多角形断面も実施することができる。しかしながら、他の形状は、例えば八角形と正方形との組合せなど、1つの活性炉心領域設計において複数の形状を必要とし得る。
【0030】
また、例えば、図3は、活性炉心領域110の径方向外面126に対して共形である炉心支持枠130の第1の表面132を示す。同様に、図3は、反射器150の径方向内面152に共形である炉心支持枠130の第2の表面134を示し、炉心支持枠130の第2の表面134は、反射器150の径方向内面152に共形である。
【0031】
図3に示す追加の構造体は、中性子吸収構造体160の中性子吸収体本体162である。図4A図4Cはまた、反射器150内の中性子吸収構造体160および関連する特徴部の実施形態を示す。本明細書で述べるように、中性子吸収構造体160は、反射器150の容積内に配置され、この容積は、反射器150の径方向内面152、径方向外面154、ならびに上面156および底面158(図示せず)によって画定される。図3および図4A図4Cに示すように、中性子吸収構造体160は、チューブ168内に収容された円筒ドラム166を含む。中性子吸収体本体162は、円筒ドラム166の第1の部分を占める。円筒ドラム166のこの第1部分は、円筒ドラム166の外面の一部(例えば、円筒ドラムの円周の120度の円弧など)を含む円筒ドラム166の容積である。チューブ168および円筒ドラム166が、反射器吸収体ハウジングの内径面に対して回転(R)するなど、ユニットとして移動すると、円筒ドラム166、中性子吸収体本体162、およびチューブ168は、反射器吸収体ハウジングの内面に沿って摺動する。モータ(図3および図4A図4Cには図示せず)をドラムシャフトによってチューブ168に動作可能に取り付けて、中性子吸収構造体160を回転させることができる。図4Bおよび図4Cは、中性子吸収体本体162の第1の位置が第2の位置よりも活性炉心領域に径方向に近い例を示しており(第1の位置にある中性子吸収体本体162を示す図4Cと、第2の位置にある中性子吸収体本体162を示す図4Bとを比較されたい)、この場合、図4Cの第1の位置は活性炉心領域110に径方向に最も近く、図4Bの第2の位置は活性炉心領域110から径方向に最も遠い。
【0032】
中性子吸収体本体162が占める部分以外の円筒ドラム166、すなわち円筒ドラムの第2の部分は、二次反射器として機能する。いくつかの実施形態では、二次反射器は、反射器150が反射器150の径方向断面(その径方向断面が中性子吸収構造体160を含むか否かにかかわらず)にわたって実質的に均一な中性子特性を有するように、反射器150と同じ材料で製造することができる。特定の実施形態では、反射器150および円筒ドラム166は、ベリリウム、酸化ベリリウム、およびグラファイトなどの適切な中性子熱化材料、ならびにそのような材料の組合せで形成される。しかしながら、他の実施形態では、二次反射器および反射器150は異なる材料で作られる。中性子吸収体本体162に適した材料としては、BC、酸化ユーロピウム(III)および酸化ジスプロシウム(III)が挙げられる。チューブ168に適した材料は、ほとんどの形態の鋼、モリブデン、タングステン、および他のエキゾチック合金の組合せを含む。しかし、中性子吸収体本体162の中性子吸収機能を実質的に妨げない限り、他の材料を使用してもよい。特定の実施形態では、チューブ168はステンレス鋼チューブである。
【0033】
核推進核分裂炉構造物100の例示的な実施形態の他の特徴部は、上部炉心プレートおよび下部炉心プレートを含む。図5は、上部炉心プレート200の一例を含む核推進核分裂炉構造物100の上部断面を概略的に示す。上部炉心プレート200は、第1の側面202および第2の側面204と、複数の開口部206とを有する。開口部206は、上部炉心プレート200の第1の側面202から第2の側面204まで延在する。各燃料要素構造体112(各燃料要素構造体112の減速体本体122の外面124は、図5において破線で示されている)は、第1の端部210などの各クラッド体116の第1の部分が複数の開口部206のうちの異なる1つ内に延在し、上部炉心プレート200に接合されるように、1つの開口部206に関連付けられる。例えば、クラッド体116の第1の端部210は、開口部206内に(長さに対して)少なくとも部分的に延在することができる。あるいは、クラッド体116の第1の端部210は、上部炉心プレート200の厚さ(T)と同一の距離だけ開口部206内に延在する。第1の端部210を開口部206内に延在させた後、各クラッド体116の第1の部分は、抵抗溶接、全貫通溶接を含む溶接などの任意の適切な手段によって、またはJ-B溶接(登録商標)などの適切なエポキシ系によって上部炉心プレート200に接合される。図5に見られるように、クラッド体116の内面118によって画定された冷却剤チャネル128は、上部炉心プレート200の複数の開口部206のうちの1つに同心円状に嵌合する。
【0034】
図5には示されていないが、下部炉心プレートは、上部炉心プレート200に対応する特徴部を有し、第1の側面および第2の側面と、下部炉心プレート250の第1の側面から第2の側面に延在する複数の開口部とを含む。下部炉心プレート250は、上部炉心プレート200が燃料要素構造体112の第1の端部に取り付けられるのと同様の方法で、燃料要素構造体112の第2の端部に取り付けられる。すなわち、クラッド体116の第2の端部は、下部炉心プレート250の複数の開口部のうちの異なる1つ内に延在している。例えば、クラッド体116の第2の端部は、下部炉心プレートの開口部内に(長さに対して)少なくとも部分的に延在することができる。あるいは、クラッド体116の第2の端部は、下部炉心プレート250の厚さと同一の距離だけ下部炉心プレート250の開口部内に延在する。クラッド体116の第2の端部を下部炉心プレート250の開口部内に延在させた後、各クラッド体116の第2の部分は、抵抗溶接および全貫通溶接を含む溶接などの任意の適切な手段によって、またはJ-B溶接(登録商標)などの適切なエポキシ系によって下部炉心プレート250に接合される。また、上部炉心プレート200と同様に、クラッド体116の内面118によって画定された冷却剤チャネル128は、下部炉心プレート250の複数の開口部のうちの1つに嵌合する。
【0035】
図示するように、部分的には、図5において、上述したように、各燃料要素構造体112の上部炉心プレート200の少なくとも一部分、下部炉心プレート250の少なくとも一部分、およびクラッド体116は、核推進核分裂炉構造物100の格納構造体の第1の部分(すなわち、核分裂生成物分離の推進剤)を形成する。
【0036】
図6A図6Dは、例示的な燃料要素構造の構成要素を、組み立てられていない概略斜視図(図6A図6C)および組み立てられた断面図(図6D)で示す。図6Aは、クラッド体116の一実施形態を示す。クラッド体116は、外面260と、冷却剤チャネルを画定する内面118とを有する実質的にチューブの形状である。チューブが円筒チューブである場合、外面260は外径面であり、内面118は内径面である。いくつかの実施形態では、クラッド体116は、活性炉心領域110の高さにわたる連続押出チューブである。クラッド体116を押出チューブとして具現化することにより、クラッド体116におけるシーミングおよび溶接継手の必要性が低減または排除され、動作中の構成要素の故障のリスクが低減され、製造の複雑さが低減される。
【0037】
図6Bは、燃料組成物体120の一実施形態を示す。燃料組成物体120は、外面270および内面272を有するチューブを備えた環状円筒の形状を実質的に有する。内面272は、クラッド体116が嵌合する空間を画定する。例えば、クラッド体116が円筒チューブである場合、内面272はクラッド体116の外径面を補完する大きさである。組成物体120とクラッド体116とは、例えば、燃料組成物体120の内面272によって画定される空間にクラッド体116を摺動させ、熱間等方加圧(HIP)操作において2つの構成要素を圧入または接合することによって接合することができる。
【0038】
図6Cは、減速体組成物体122の一実施形態を示す。減速体組成物体122は、中央開口部280および平坦な外面124を有する実質的に多角形スリーブの形状である。図示の実施形態では、減速体組成物体122は、環状六角形であるが、減速体組成物体122は、他の多角形および正多角形を含む他の形状をとることができる。減速体組成物体122の環状六角形は、外面124と、内面282を有する中央開口部280とを含む。内面282は、燃料組成物体120(またはクラッド体116と接合された燃料組成物体120)が嵌合する空間を画定する。組成物体120とクラッド体116とは、例えば、燃料組成物体120(またはクラッド体116と接合された燃料組成物体120)を、減速体組成物体122の内面282によって画定される空間に摺動させることによって組み立てることができる。減速体組成物体122と燃料組成物体120の外面との間に密接な取り付けは必要とされないが、2つの構成要素は、例えば、圧入または熱間等方加圧によって任意選択的に接合することができる。
【0039】
図6Dは、組み立てられた燃料要素構造体112の一実施形態の断面図であり、チューブ状クラッド体116、環状円筒状燃料組成物体120、および多角形スリーブの形態の減速体組成物体122の組み立てられた燃料要素構造体112内の相対位置を示す。
【0040】
図7は、複数の組み立てられた燃料要素構造体の一端を示す、活性炉心領域の上面の一部の概略斜視図である。図7の図では、組み立てられた燃料要素構造体112は、燃料要素構造体112の減速体組成物体122の外面124が複数の最近傍燃料要素構造体112の減速体組成物体122の外面124に当接する状態で活性炉心領域110に組み立てられ、本質的に連続した減速体本体をもたらす。いくつかの実施形態では、複数の燃料要素112を単一の構成要素として一緒に、すなわち、1つの燃料要素112よりも大きい活性炉心部として製造することができる。減速体組成物体122および燃料組成物体120の軸方向端面は、(互いに対して)同じ平面内に(または実質的にそのように)あり、活性炉心領域110の実質的に平坦な上面190を形成する。各燃料要素構造体112において、クラッド体116の一部220は、減速体組成物体122の軸方向端部および燃料組成物体120の両方を越えて軸方向に延在する。図7は、上部炉心プレート200が接合される組み立てられた燃料要素構造体112の端部に対応する。
【0041】
図7から、組み立てられた燃料要素構造体112の反対側の端部は、減速体組成物体122の軸方向端部および燃料組成物体120の両方を越えて軸方向に延在し、下部炉心プレート250が接合される組み立てられた燃料要素構造体112の端部に対応するクラッド体116の突出部分を有する同様の実質的に平坦な表面を有することを理解することができる。
【0042】
図8は、反射器の一実施形態の概略断面図である。反射器150は、活性炉心領域110を取り囲み、活性炉心領域110の外面126の形状(例えば、燃料要素構造体112の六角形の表面124によって形成される)を均一な内側環状反射器面152で橋渡しする炉心支持枠130と嵌合する。中性子吸収構造体160は、反射器150の容積内に含まれる。図8の実施形態では、中性子吸収体本体162は、核推進核分裂炉構造物100のシャットダウン構成に対応する位置で、ドラム状円筒形中性子吸収構造体160が内側に向けられて示されている。ドラム状円筒形中性子吸収構造体160は、中性子吸収体本体162が、分裂ホットスポットを平滑化するように活性炉心領域110の軸方向中心線から径方向に等距離に配置され得るように構成される。
【0043】
反射器150は、活性炉心領域110に戻る「反射された」中性子を熱化して臨界性を高め、中性子の「漏れ」を低減するように機能し、これは核分裂反応を生成する機会がないため、核推進核分裂炉構造物の臨界可能性を低下させる。第二に、反射器は、反応性制御のための主要なシステムである中性子吸収構造体160を収容する。図8において、中性子吸収構造体160の実施形態は、回転可能な制御ドラムの形態である。反応性を制御するために回転可能な制御ドラムの形態で十分なサイズの中性子吸収構造体160を収容するために、反射器を過度に薄くする(内面152と外面154との間の幅(W))ことはできない。例示的な実施形態では、ベリリウムベースの反射器の幅(W)は15cm~30cmである。幅は、反射器の材料および核推進核分裂炉構造物の非地上用途のための重量要件に基づいて変化する可能性があり、より低い中性子反射特性を有する材料は、より厚い反射器、すなわち、広い幅(W)を必要とする。
【0044】
核推進核分裂炉構造物は、外殻をさらに備えることができる。図9は、外殻300を有する核推進核分裂炉構造物100の実施形態を概略的に示す。活性炉心領域110、炉心支持枠130、上部炉心プレート200、下部炉心プレート250、反射器130、および複数の中性子吸収構造体160を含む原子炉構造物は、外殻300の内部容積302内に収容される。上部原子炉プレート304は、上部炉心プレート200の第1の側面202の上方(または外側)に配置され、推進ガスを通すための複数の孔306を含む。複数の孔は、複数の孔306を通って推進ガスが通過した後、推進ガスが冷却剤チャネル128を通過し、核推進核分裂炉構造物100の冷却剤として機能するように、活性炉心領域110内の冷却剤チャネル128と流体連通している。同様に、下部原子炉プレート310は、下部炉心プレート250の下方(または外側)に配置され、冷却剤チャネル128を出る推進ガスを通すための複数の孔306を含む。
【0045】
また、図9には、円筒ドラム166を回転させるためにドラムシャフト322によって中性子吸収構造体160の円筒ドラム166に動作可能に取り付けられたモータ320が示されている。図示の実施形態では、モータ320は外殻300の外部にあり、ドラムシャフト322は、例えば外殻300のポートまたは他の開口部324によって外殻300を貫通する。
【0046】
外殻300の実施形態は、ステンレス鋼などの材料のシートから形成され、追加の構造的支持を提供するためのリブまたは他の補強構造を含むことができる。図10Aに見られるように、外殻300は、単一の連続した構成要素とすることができる。しかしながら、他の実施形態では、外殻300は次いで、締結具と共に組み立てられる複数の構成要素とすることができる。外殻300の内側レッジ330は、反射器130および活性炉心領域110を支持する。内側レッジ330は、外殻300の内面に取り付けることができ、または外殻300の内面の一部によって形成することができる。図10B図10Aの部分P1の拡大図である)は、原子炉構造と外殻300との間の例示的な界面を示す。活性炉心領域110の下部炉心プレート250は、内側レッジ330の下部炉心プレートレッジ部分332上に載置され、機械的界面を形成する。
【0047】
動作中およびノズルのスロートがマッハ1に達する前に、流入する流れは、収束ノズル部内の増加する圧力に打ち勝たなければならない。これは、活性炉心領域110の下、例えば原子炉構造の下の外殻300内の空間に亀裂が存在する場合、潜在的な逆流状態を引き起こす可能性がある。したがって、下部炉心プレートレッジ部分332と下部炉心プレート250との間の機械的界面の封止は、反射器130および活性炉心領域110への漏れを防止するために、始動中に可能な限り安定しているべきである。動作時の定常状態条件(すなわち、ノズルスロートマッハ1の場合)および衝撃が分岐部を出た後)において、分岐ノズル部を通る流れの加速は流れを「引っ張り」、負の動圧差に起因して下部炉心プレートレッジ部分332と下部炉心プレート250との間に封止を形成させる。
【0048】
本開示はまた、外殻300内に核推進核分裂炉構造物110を含む核熱推進エンジンに関する。核熱推進エンジンは、例えば、図1に関連して図示および説明したものと一致して、遮蔽体、ターボ機械、および外殻300に取り付けられるかまたはそれによって支持されるノズル部をさらに含む。例示的な実施形態では、活性炉心領域110は、内側レッジ330の下部炉心プレートレッジ部分332上に載置され、反射器130は、ボルトまたはピンなどの締結具によって内側レッジ330の反射器レッジ部分334に取り付けられ、ドラムシャフト322は、モータ320(例えばモータ支持プレートを介して外殻に固定される)を中性子吸収構造体160に動作可能に取り付け、外殻300の上部の開口部324を通過する。ノズル部は、外殻300の底部にボルト締めされ、遮蔽体およびターボ機械は、外殻300の上部に固定される。推進ガスを極低温貯蔵するための貯蔵部は、遮蔽体およびターボ機械と共に、貯蔵部から核推進原子炉への流路を提供するように動作可能に接続され、ノズル部は、核推進原子炉を出る過熱された推進ガスの流路を提供するように動作可能に接続される。
【0049】
核推進核分裂炉構造物(ならびに核推進核分裂炉構造物を含む核熱推進エンジン)は、適切な手段を使用して製造することができる。一般に、核推進核分裂炉構造物は、クラッド体を下部炉心プレートに接合するステップと、径方向内側特徴部の上の所定の位置に燃料組成物体および減速体本体を摺動させるステップであって、例えば、燃料要素構造体を形成するために、燃料組成物体をクラッド体の上に、および組み立てられた燃料組成物体-クラッド体の上に減速体本体を摺動させるステップと、燃料組成物体および減速体本体を越えて軸方向に延在する各クラッド体の一部に上部炉心プレートを接合するステップとを含む方法によって製造される。続いて、反射器が、組み立てられた燃料要素構造体の外面の周りに配置され、反射器の内面が、組み立てられた燃料要素構造体の外面に炉心支持枠によって嵌合される。
【0050】
図11は、核推進核分裂炉構造物の製造方法の一実施形態における基礎ステップを示す流れ図である。方法400は、複数のクラッド体の各々の第1の部分を下部炉心プレートに接合するステップ410を含む。各クラッド体116は、冷却剤チャネル128を画定する内面118を有し、下部炉心プレート250は、下部炉心プレートの第1の側面から下部炉心プレートの第2の側面まで延在する複数の開口部を含む。クラッド体116を下部炉心プレート250に接合する際、各クラッド体116の第1の部分は、下部炉心プレート250の複数の開口部のうちの異なる1つ内に延在している。クラッド体116を下部炉心プレート250に接合する際、第1の部分と下部炉心プレートとの界面全体を例えば溶接等により共に接合して、クラッド体116および下部炉心プレート250を含む連続金属体を形成することが好ましい。
【0051】
方法400はまた、複数の燃料組成物体の各々を複数のクラッド体のうちの異なる1つの外面の上で摺動させるステップ420を含む。各燃料組成物体120は、環状円筒の形状を有する。燃料組成物体120がクラッド体116の外面260の上に配置されると、燃料組成物体120の環状円筒の内面272は、クラッド体116の外面260に向かって配向される。クラッド体116の第1の部分が下部炉心プレート250の開口部内に延在しているため、燃料組成物体120は下部炉心プレート250によってクラッド体116の端部と同じ軸方向位置まで延在することが阻止される。したがって、クラッド体116の第1の部分は、燃料組成物体120の第1の軸方向端部を越えて軸方向に延在する。同様に、上部炉心プレート200の開口部206に接合するためのクラッド体116の一部を提供するために、クラッド体116の第2の部分は、燃料組成物体120の第2の軸方向端部を越えて軸方向に延在する。燃料組成物体120をクラッド体116の外面260の上に配置した後、燃料組成物体120およびクラッド体116は、例えば、圧入または熱間等方加圧(HIP)によって互いに固定またはそうでなければ接合することができる。
【0052】
方法400はまた、減速体本体の各々を複数の燃料組成物体のうちの異なる1つの外面の上で摺動させるステップ430を含む。各減速体本体122は、断面において、正多角形(特定の実施形態では、六角形)を有する周囲と、内側開口部280とを有する。減速体本体122が燃料組成物体120の外面270の上に配置されると、減速体本体122の内側開口部280の表面282は、燃料組成物体120の環状円筒の外面270に向かって配向される。減速体組成物体122と燃料組成物体120の外面270との間に密接な取り付けは必要とされないが、2つの構成要素は、例えば、圧入または熱間等方加圧によって任意選択的に接合することができる。
【0053】
方法400はまた、クラッド体の第2の部分を上部炉心プレートに接合するステップ440を含む。上部炉心プレート200は、上部炉心プレート200の第1の側面202から上部炉心プレート200の第2の側面204まで延在する複数の開口部206を含む。クラッド体116の第2の部分(燃料組成物体120の軸方向端部を越えて軸方向に延在する)は、開口部206に挿入され、上部炉心プレート200に接合される。クラッド体116を上部炉心プレート200に接合する際、第2の部分と上部炉心プレートとの界面全体を例えば溶接等により共に接合して、クラッド体116および上部炉心プレート200を含む連続金属体を形成することが好ましい。各燃料要素構造体のクラッド体116を上部炉心プレート200および下部炉心プレート250に接合することにより、上部炉心プレートの一部が、核推進核分裂炉構造物100の格納構造体の第1の部分を形成することに留意されたい。また、クラッド体116の内面118が、それぞれ下部炉心プレートおよび上部炉心プレートの開口部に挿入された第1の部分および第2の部分を有する冷却剤チャネル128を画定するので、クラッド体116の冷却剤チャネル128は、同様に下部炉心プレートおよび上部炉心プレートの開口部に延在する。
【0054】
組み立てられてクラッド体116と、クラッド体116の径方向外側の燃料組成物体120と、燃料組成物体120の径方向外側の減速体組成物体122とを含む各燃料要素構造体112は、第1の燃料要素構造体の減速体本体122の外面124が複数の最近傍燃料要素構造体の減速体本体122の外面124に例えば3ピッチの関係で当接するように、活性炉心領域110内に配置される。
【0055】
燃料要素構造体112を活性炉心領域110に組み立てた後、反射器150は、組み立てられた燃料要素構造体112の外面126の周りに配置される。炉心支持枠130は、反射器150の内面152が組み立てられた燃料要素構造体112の外面126に嵌合するのを助ける。炉心支持枠130はまた上部炉心プレート200および下部炉心プレート250と嵌合するため、反射器150は、核推進核分裂炉構造物100の格納構造の第2の部分を形成する。
【0056】
核推進核分裂炉構造物100の他の特徴部および構造は、方法の一部として製造することができ、または方法で使用するために供給することができることに留意されたい。したがって、方法400は、任意選択的に、複数のクラッド体116を形成するステップ、複数の燃料組成物体120を形成するステップ、複数の減速体本体122を形成するステップのいずれかのうちの1つまたは複数を含むことができる。複数のクラッド体116を形成するステップは、押出などの金属加工技術を含む任意の適切な技術によって行われる。複数の燃料組成物体120を形成するステップは、燃料圧縮技術または付加製造技術を含む任意の適切な技術によって行うことができる。複数の減速体本体122を形成するステップは、粉末圧縮または積層造形技術を含む任意の適切な技術によって行うことができる。
【0057】
いくつかの製造方法または製造方法のステップでは、核推進核分裂炉構造物100の特徴部および構造(またはその一部)は、例えば積層造形プロセスを使用して、一体型の一元構造として製造される。本明細書で使用される場合、積層造形プロセスは、層ごとに材料を追加することによって3D物体を構築する任意の技術を含む。適切な積層造形プロセスの例は、モリブデン含有金属合金、ジルカロイ-4もしくはハステロイXなどの金属合金の3D印刷、またはウラニウムもしくは酸化ベリリウムなどのセラミックの3D印刷を利用して、クラッドまたは燃料などの上述の構造的特徴物を形成する。他の実施形態では、核推進核分裂炉構造物100の一部として使用される核分裂性核燃料組成物および/または熱伝達剤および/または減速体材料および/または毒物は、供給原料内に複数の金属およびセラミックを有する適切なマルチ材料積層造形プロセスが使用される場合、一体型構造内に含めることができる。溶融金属が積層造形プロセスに含まれていない場合、積層造形プロセスを一時停止することができ、ある容積の溶融金属が(液体または固体形態のいずれかで)燃料キャビティに配置され、積層造形プロセスは閉じたチャンバの構造を完成させるために継続される。供給原料内に複数の金属を有する適切な多材料積層造形プロセスが使用される場合に使用することができる他の合金には、鋼合金、ジルコニウム合金、およびモリブデン-タングステン合金(クラッド用および/または格納構造用)、ベリリウム合金(反射器用)、およびステンレス鋼(格納構造用)が含まれる。積層製造プロセスによって製造されない場合でも、上記の材料は、本明細書に開示される様々な特徴部および構造の製造に使用することができる。
【0058】
さらに、開示された原子炉および炉心は複雑な機械的形状を有するが、元素金属または金属合金の3D印刷などの積層造形技術を使用して層ごとに一体的かつ反復的に製造することにより、本明細書に開示された構造および特徴部をより容易に製造することができる。
【0059】
一体型および一元構造を製造するための積層造形技術は、(a)予測的および因果的分析、(b)機械視覚と組み合わせた現場監視および構造の層ごとの製造中の加速処理、(c)機械学習構成要素と組み合わせた自動分析、および(d)完成時の構造のデジタル表現の仮想検査の追加のステップを含むことができる。さらに、積層造形技術は、複雑な幾何学的形状を作成することができ、現場センサ、機械視覚画像、および人工知能と結合されると、構成要素が層ごとの付加的ベース(多くの場合、これらの層は50ミクロンのスケールである)で構築されるときの製造品質の調整を可能にし、そのような原子炉および構造の製造の予測的品質保証を提供する。
【0060】
本明細書で使用される場合、クラッドは、冷却剤と核燃料との間に位置する特徴部を含む燃料の層である。クラッドは、放射性核分裂片が燃料から冷却剤に逃げてそれを汚染するのを防ぐ安全障壁として機能する。クラッドのいくつかの設計上の制約には、中性子吸収、放射抵抗、および温度挙動が含まれる。クラッドは、典型的には、熱中性子の吸収断面積が小さい耐食性材料で作られる。例示的な材料にはジルカロイまたは鋼が含まれるが、原子炉の条件に適している場合には、金属およびセラミックベース(Be、C、Mg、Zr、O、Si)、ならびにモリブデン、タングステン、レニウム、タンタル、ハフニウム、および炭化物を含むそれらの合金を含む組成物などの他の材料を使用してもよい。いくつかの実施形態では、クラッド材料は、より高い中性子吸収断面積を有する同位体の還元によって反応性を高めるために同位体濃縮することができ、例えば、モリブデン濃縮化Mo-92は、元素モリブデンよりも少ない寄生中性子吸収断面積を有する。開示された核推進核分裂炉構造物の実施形態では、上部および下部炉心プレートはクラッド材料で作られ、好ましくはクラッド体と同じ組成を有する。
【0061】
核分裂性核燃料組成物は、5%超20%未満のU235アッセイを有する高アッセイ低濃縮ウラン(HALEU)であり得るか、または20%以上のU235のウランを有する高濃縮ウラン(HEU)であり得る。開示された燃料要素構造体に適用可能な適切な核分裂性核燃料組成物は、濃縮化20%未満の酸化ウラン(UO)、10重量%のモリブデン(U-10Mo)を含むウラン、窒化ウラン(UN)、および他の安定な核分裂性燃料化合物を含む。可燃性毒物も含まれ得る。典型的には、核分裂性核燃料組成物は、WまたはMoを含むUOおよびWまたはMoを含むUNなどのセラミック金属(サーメット)の形態である。いくつかの実施形態では、溶融金属もサーメットの「金属」部分として機能することができる。
【0062】
使用される場合、動作温度で溶融する塩または金属などの熱伝達剤を燃料要素構造体に含めて、燃料組成物体とクラッド体との間の熱結合を改善することができる。さらに、熱伝達剤は、熱結合を促進するために、(最初から存在するか、または原子炉の動作中に発生するかにかかわらず)燃料要素構造体内の亀裂または他の欠陥を占有することができる。開示された核推進核分裂炉構造物に含まれ、熱伝達接触を提供するために燃料要素構造体に含まれるのに適した溶融金属は、ナトリウム(Na)、ナトリウム-カリウム(NaK)、カリウム(K)、鉄(Fe)、銅(Cu)、銀(Ag)、鉛(Pb)、およびビスマス(Bi)、またはそれらの合金組成物を含む。
【0063】
開示された核推進核分裂炉構造物および核熱推進エンジンには、様々な支持補助機器を組み込むことができると考えられる。例えば、減速体(水素化ジルコニウム(ZrH)、ベリリウム(Be)、酸化ベリリウム(BeO)、水、グラファイト等)、発射安全のための制御棒(イリジウム制御棒など)、および科学機器(温度センサまたは放射線検出器など)のうちの少なくとも1つを、核推進核分裂炉構造物に組み込むことができる。
【0064】
開示された構成は、燃料要素であろうと核分裂性核燃料組成物自体であろうと、核分裂性核燃料組成物を含む発熱源がクラッドによって囲まれている任意の構成に関する。ガス冷却式核熱推進原子炉(NTP原子炉)に関連して本明細書で一般的に説明されているが、本明細書で開示される構造および方法は、他の核分裂炉システムにも適用可能であり得る。
【0065】
本明細書で開示される核推進核分裂炉構造物は、非地上電力用途、宇宙電力、宇宙推進、および潜水艦を含む海上用途を含むがこれらに限定されない適切な用途に使用することができる。
【0066】
特定の実施形態を参照してきたが、それらの精神および範囲から逸脱することなく、他の実施形態および変形形態が当業者によって考案され得ることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、すべてのそのような実施形態および均等な変形を含むと解釈されることを意図している。
【符号の説明】
【0067】
100 核推進核分裂炉構造物
110 活性炉心領域
112 燃料要素構造体
116 クラッド体
120 燃料組成物体
122 減速体組成物体
128 冷却体チャネル
130 炉心支持枠
150 反射器
160 中性子吸収構造体
200 上部炉心プレート
250 上部炉心プレート
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
図10A-10B】
図11
【国際調査報告】