(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】抗体結合TSLP及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20221109BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221109BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20221109BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20221109BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20221109BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221109BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20221109BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20221109BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20221109BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20221109BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20221109BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20221109BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221109BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20221109BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/24
A61P11/06
A61P1/04
A61P37/08
A61P17/00
A61P17/06
A61K39/395 N
C12P21/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506382
(86)(22)【出願日】2020-09-03
(85)【翻訳文提出日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 CN2020113289
(87)【国際公開番号】W WO2021043221
(87)【国際公開日】2021-03-11
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522040148
【氏名又は名称】ビオシオン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ミンジウ
(72)【発明者】
【氏名】タン、ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、キャシー シャオヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ジェンピン
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ、シャオファン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】シュ、ホンジアン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA88X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA14
4C085BB36
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
4C085GG08
4H045AA11
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
ヒトTSLPに特異的に結合する単離モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分が開示される。本抗体をコードする核酸分子、発現ベクター、宿主細胞及び抗体を発現するための方法も提供される。本開示はさらに、二重特異性分子、免疫抱合体、CAR-免疫細胞、腫瘍溶解性ウイルス及び本抗体を含む医薬組成物、並びに本開示の抗TSLP抗体を用いた治療方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)に結合する単離モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分であって、
(i)VH CDR1領域、VH CDR2領域及びVH CDR3領域を含む重鎖可変領域であって、前記VH CDR1領域、前記VH CDR2領域及び前記VH CDR3領域が、(1)配列番号1、2及び3のアミノ酸配列をそれぞれ含み、(2)配列番号37、38、及び39のアミノ酸配列をそれぞれ含み、又は(3)配列番号47、48、及び49のそれぞれのアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域、及び/又は
(ii)VL CDR1領域、VL CDR2領域及びVL CDR3領域を含む軽鎖可変領域であって、前記VL CDR1領域、前記VL CDR2領域及び前記VL CDR3領域が、(1)配列番号4、5及び6のアミノ酸配列をそれぞれ含み、(2)配列番号40、41及び42のアミノ酸配列をそれぞれ含み、又は(3)配列番号50、51及び52のアミノ酸配列をそれぞれ含む、軽鎖可変領域
を含む、単離モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分。
【請求項2】
前記重鎖可変領域が、配列番号7、8、9(X1=R、X2=V、X3=R;X1=R、X2=V、X3=V;X1=R、X2=A、X3=R;X1=K、X2=A、X3=R;X1=K、X2=A、X3=V)、43又は53に対する少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分。
【請求項3】
前記軽鎖可変領域が、配列番号10、11(X1=S、X2=V;X1=A、X2=I;X1=S、X2=I)、44又は54に対する少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の単離モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分。
【請求項4】
前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域が、(1)配列番号7及び10のそれぞれ;(2)配列番号8及び11(X1=S、X2=V)のそれぞれ;(3)配列番号9(X1=R、X2=V、X3=R)及び11(X1=S、X2=V)のそれぞれ;(4)配列番号9(X1=R、X2=V、X3=V)及び11(X1=S、X2=V)のそれぞれ;(5)配列番号9(X1=R、X2=A、X3=R)及び11(X1=S、X2=V)のそれぞれ;(6)配列番号9(X1=K、X2=A、X3=R)及び11(X1=S、X2=V)のそれぞれ;(7)配列番号9(X1=K、X2=A、X3=V)及び11(X1=S、X2=V)のそれぞれ;(8)配列番号8及び11(X1=A、X2=I)のそれぞれ;(9)配列番号9(X1=R、X2=V、X3=R)及び11(X1=A、X2=I)のそれぞれ;(10)配列番号9(X1=R、X2=V、X3=V)及び11(X1=A、X2=I)のそれぞれ;(11)配列番号9(X1=R、X2=A、X3=R)及び11(X1=A、X2=I)のそれぞれ;(12)配列番号9(X1=K、X2=A、X3=R)及び11(X1=A、X2=I)のそれぞれ;(13)配列番号9(X1=K、X2=A、X3=V)及び11(X1=A、X2=I)のそれぞれ;(14)配列番号8及び11(X1=S、X2=I)のそれぞれ;(15)配列番号9(X1=R、X2=V、X3=R)及び11(X1=S、X2=I)のそれぞれ;(16)配列番号9(X1=R、X2=V、X3=V)及び11(X1=S、X2=I)のそれぞれ;(17)配列番号9(X1=R、X2=A、X3=R)及び11(X1=S、X2=I)のそれぞれ;(18)配列番号9(X1=K、X2=A、X3=R)及び11(X1=S、X2=I)のそれぞれ;(19)配列番号9(X1=K、X2=A、X3=V)及び11(X1=S、X2=I)のそれぞれ;(20)配列番号43及び44のそれぞれ;又は(21)配列番号53及び54のそれぞれに対する少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の単離モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分。
【請求項5】
前記重鎖可変領域に連結された、配列番号12、13又は57のアミノ酸配列を有する重鎖定常領域、及び前記軽鎖可変領域に連結された配列番号14のアミノ酸配列を有する軽鎖定常領域を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の単離モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分。
【請求項6】
(i)ヒトTSLPに結合し;(ii)サルTSLPに結合し;及び/又は(iii)ヒトTSLP-ヒトTSLPR/IL7R相互作用をブロックする、請求項1~5のいずれか一項に記載の単離モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分。
【請求項7】
マウス、キメラ又はヒト化抗体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の単離モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分。
【請求項8】
IgG1、IgG2又はIgG4アイソタイプである、請求項1~6のいずれか一項に記載の単離モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の単離モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分をコードするポリヌクレオチド。
【請求項10】
請求項9に記載のポリヌクレオチドを含有するベクター。
【請求項11】
請求項9に記載のポリヌクレオチドと一体化されるゲノムを有するか又は請求項10に記載のベクターを含有する宿主細胞。
【請求項12】
治療有効量の、請求項1~8のいずれか一項に記載の単離モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項に記載の単離モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分を含む、TSLP過剰発現に関連する疾患を治療するための医薬組成物。
【請求項14】
前記疾患が、喘息、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎又は乾癬である、請求項13に記載の使用するための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願及び援用
本出願は、2019年9月4日に出願された米国仮特許出願第62/895,984号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
上記の出願、及びその中に又はその審査手続中に引用される全ての文献(「出願引用文献」)及び本明細書に引用又は参照される全ての文献(本明細書に引用される全ての文献、特許、公開特許出願を含むがこれらに限定されない)(「本明細書に引用される文献」)、及び本明細書に引用される文献に引用又は参照される全ての文献は、本明細書又は参照により本明細書に援用されるあらゆる文献に記載されるあらゆる製品についてのあらゆる製造業者の説明書、記載、製品仕様書、及び製品シートと一緒に、参照により本明細書に援用され、本発明の実施に用いられ得る。より詳細には、全ての参照される文献は、各個々の文献が、具体的に及び個別に、参照により援用されることが示されるのと同程度に、参照により援用される。本開示に記載されるあらゆるGenbank配列は、本開示の最先の有効出願日のものであるGenbank配列とともに、参照により援用される。
【0003】
本開示は、一般に、高い親和性及び機能性でヒトTSLPに特異的に結合する、単離モノクローナル抗体、特に、マウス、キメラ又はヒト化モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分に関する。抗体又はその抗原結合部分をコードする核酸分子、発現ベクター、宿主細胞及び抗体又はその抗原結合部分を発現するための方法も提供される。本開示はさらに、免疫抱合体、二重特異性分子、キメラ抗原受容体、腫瘍溶解性ウイルス、及び抗体又はその抗原結合部分を含む医薬組成物、並びに本開示の抗TSLP抗体又はその抗原結合部分を用いた診断及び治療方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)は、上皮由来サイトカインである。それは、IL-7に密接に関連しており、IL-7受容体α鎖及びTSLP受容体鎖のヘテロ二量体であるTSLPRに結合する。TSLP mRNAが、胸腺、肺、皮膚、腸及びへんとう腺における上皮細胞、並びに間質細胞及び肥満細胞によって主に発現される一方、TSLPR mRNAは、樹状細胞(DC)、T細胞、B細胞、肥満細胞、NK細胞及び単球を含む多くの免疫細胞型、並びに心臓、骨格筋、腎臓及び肝臓のような組織において見られる(Rui He et al.,(2010)Annals of the New Youk Academy of Sciences 1183:13-24;Quentmeier H et al.,(2001)Leukemia 15(8):1286-1292;Rimoldi M et al.,(2005)Nature immunology 6(5):507-514)。
【0005】
TSLPによって引き起こされるシグナル伝達経路は、広く研究されている。TSLPは、免疫応答の誘導期中にTヘルパー(Th)2細胞分化及びTh2サイトカイン産生を駆動するようにDC分極を誘導し、また、T細胞増殖を直接促進し、Th2サイトカイン分泌を増大する。したがって、TSLPは、Th2駆動炎症の主調節因子であると考えられ、TSLPの上方制御は、アトピー性皮膚炎、及び喘息などのTh2関連疾患の発症に関連付けられる(Rui He et al.,(2010)上記を参照;Ito T et al.,(2005)The Journal of Experimental Medicine 202(9):1213-1223;He R et al.,(2008)Proc Natl Acad Sci USA 105(33):11875-11880)。一方、TSLPは、消化管及び胸腺におけるいくつかの免疫恒常性維持機能を媒介する。例えば、TSLPは、株に依存して細菌刺激時に消化管上皮細胞株において上方制御され、それにより、Treg細胞分化を促進するように、形質転換成長因子-βと相乗作用する。TSLPはまた、CD103+ DCを寛容原性表現型へと調整するために、初代ヒト腸上皮細胞によって産生される(Katerina Tsilingiri et al.,(2017)Cellular and Molecular Gastroenterology and Hepatology 3(2):174-182;Zeuthen LH et al.,(2008)Immunology 123:197-208;Iliev ID et al.,(2009)Gut 58:1481-1489)。
【0006】
免疫系におけるTSLPの2つの役割は、長いアイソフォーム、及び長い方のアイソフォームの最後の63アミノ酸残基から構成される短いアイソフォームという2つのアイソフォームの発見をもたらす。これら2つは、異なるプロモーター領域によって制御され、状況、組織及び刺激に応じて発現される(Harada M et al.,(2011)Amrican Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology 44:787-793)。免疫原性の高い微生物株に応答して、ヒト腸上皮細胞において、長いアイソフォームの発現が上方制御された一方、短いアイソフォームの発現は下方制御されたが、逆の発現パターンが、片利共生大腸菌(E.coli)株の接種後に観察された。さらに、健康なバリア表面におけるTSLP発現は、短いアイソフォームに限られ、長いTSLPは、たばこ曝露後に口腔粘膜病変において上方制御されたにすぎない(Katerina Tsilingiri et al.,(2017)上記を参照)。アイソフォームの発現パターンはまた、いくつかのTSLP関連疾患において調査されている。例えば、長いTSLPの過剰発現が、喘息、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎及び乾癬において観察され、長いTSLPの低下した発現が、セリアック病において見られた。また、短いTSLPの発現が、クローン病、セリアック病及びアトピー性皮膚炎において下方制御された(Katerina Tsilingiri et al.,(2017)上記を参照;Fornasa G et al.,(2015)J Allergy Clin Immunol 136:413-422)。
【0007】
TSLPは、上述される疾患とのその関連性のため、臨床標的として浮上している。短いTSLPの発現の回復が、難治性セリアック病を治療するために提案された(Biancheri P et al.,(2015)Gut 65:1670-1680)。ヒトモノクローナル抗体テゼペルマブが、喘息及びアトピー性皮膚炎の治療のために設計され、プラセボと比較して第II相試験において年間喘息増悪率を低下させることが証明された(Jonathan Corren et al.,(2017)The New England Journal of Medicine 377(10):936-946)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
改善された臨床転帰を有し、もたらし得る、短いアイソフォームとの最小限の相互作用で、長いTSLPのみに特異的な抗体を含む、より良好な薬学的特性を有するさらなる抗体が、より一層、望まれ、求められている。
【0009】
本出願におけるあらゆる文献の引用又は特定は、このような文献が本開示の先行技術として利用可能であることを認めるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、TSLP(例えば、ヒトTSLP、及びサルTSLP)に結合し、テゼペルマブなどの先行技術の抗TSLP抗体と比較して、より高くないとしても同等の、TSLPへの結合親和性及びTSLP-TSLPR/IL7R相互作用に対する遮断活性を有する、単離モノクローナル抗体、例えば、マウス、ヒト、キメラ又はヒト化モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分を提供する。
【0011】
本開示の抗体又はその抗原結合部分は、TSLPタンパク質の検出、並びに喘息、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎及び乾癬などのTSLP関連疾患の治療及び予防を含む様々な用途に使用され得る。
【0012】
したがって、一態様において、本開示は、VH-CDR1領域、VH-CDR2領域及びVH-CDR3領域を含み得る重鎖可変領域を有する、TSLPに結合する単離モノクローナル抗体(例えば、マウス、キメラ若しくはヒト化抗体)、又はその抗原結合部分に関し、ここで、VH-CDR1領域、VH-CDR2領域及びCDR3領域は、(1)配列番号1、2及び3のそれぞれ;(2)配列番号37、38、及び39のそれぞれ;又は(3)配列番号47、48、及び49のそれぞれに記載されるアミノ酸配列を含み得る。
【0013】
本開示の単離モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号7、8、9(X1=R、X2=V、X3=R;X1=R、X2=V、X3=V;X1=R、X2=A、X3=R;X1=K、X2=A、X3=R;又はX1=K、X2=A、X3=V)、43又は53に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み得、ここで、抗体又はその抗原結合部分は、TSLPに結合する。配列番号7のアミノ酸配列は、配列番号17又は18のヌクレオチド配列によってコードされ得、配列番号9(X1=R、X2=V、X3=R)、43及び53に記載されるアミノ酸配列は、配列番号19、45及び55のそれぞれのヌクレオチド配列によってコードされ得る。
【0014】
TSLPに結合する、本開示の単離モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分は、VL-CDR1領域、VL-CDR2領域及びVL-CDR3領域を含む軽鎖可変領域を含み得、ここで、VL-CDR1領域、VL-CDR2領域、及びVL-CDR3領域は、(1)配列番号4、5及び6のそれぞれ;(2)配列番号40、41及び42のそれぞれ;又は(3)配列番号50、51及び52のそれぞれに記載されるアミノ酸配列を含み得る。
【0015】
本開示の単離モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号10、11(X1=S、X2=V;X1=A、X2=I;又はX1=S、X2=I)、44又は54に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み得、ここで、抗体又はその抗原結合部分は、TSLPに結合する。配列番号10のアミノ酸配列は、配列番号20又は21のヌクレオチド配列によってコードされ得、配列番号11(X1=A、X2=I)、44及び54に記載されるアミノ酸配列は、配列番号22、46及び56のそれぞれのヌクレオチド配列によってコードされ得る。
【0016】
本開示の単離モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分において、VH-CDR1、VH-CDR2、VH-CDR3、VL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3は、(1)配列番号1、2、3、4、5及び6のそれぞれ;(2)配列番号37、38、39、40、41及び42のそれぞれ;又は(3)配列番号47、48、49、50、51及び52のそれぞれに記載されるアミノ酸配列を含み得、ここで、抗体又はその抗原結合部分は、TSLPに結合する。
【0017】
本開示の単離モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分は、(1)配列番号7及び10のそれぞれ;(2)配列番号8及び11(X1=S、X2=V)のそれぞれ;(3)配列番号9(X1=R、X2=V、X3=R)及び11(X1=S、X2=V)のそれぞれ;(4)配列番号9(X1=R、X2=V、X3=V)及び11(X1=S、X2=V)のそれぞれ;(5)配列番号9(X1=R、X2=A、X3=R)及び11(X1=S、X2=V)のそれぞれ;(6)配列番号9(X1=K、X2=A、X3=R)及び11(X1=S、X2=V)のそれぞれ;(7)配列番号9(X1=K、X2=A、X3=V)及び11(X1=S、X2=V)のそれぞれ;(8)配列番号8及び11(X1=A、X2=I)のそれぞれ;(9)配列番号9(X1=R、X2=V、X3=R)及び11(X1=A、X2=I)のそれぞれ;(10)配列番号9(X1=R、X2=V、X3=V)及び11(X1=A、X2=I)のそれぞれ;(11)配列番号9(X1=R、X2=A、X3=R)及び11(X1=A、X2=I)のそれぞれ;(12)配列番号9(X1=K、X2=A、X3=R)及び11(X1=A、X2=I)のそれぞれ;(13)配列番号9(X1=K、X2=A、X3=V)及び11(X1=A、X2=I)のそれぞれ;(14)配列番号8及び11(X1=S、X2=I)のそれぞれ;(15)配列番号9(X1=R、X2=V、X3=R)及び11(X1=S、X2=I)のそれぞれ;(16)配列番号9(X1=R、X2=V、X3=V)及び11(X1=S、X2=I)のそれぞれ;(17)配列番号9(X1=R、X2=A、X3=R)及び11(X1=S、X2=I)のそれぞれ;(18)配列番号9(X1=K、X2=A、X3=R)及び11(X1=S、X2=I)のそれぞれ;(19)配列番号9(X1=K、X2=A、X3=V)及び11(X1=S、X2=I)のそれぞれ;(20)配列番号43及び44のそれぞれ;又は(21)配列番号53及び54のそれぞれに記載されるアミノ酸配列を含み得る、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み得、ここで、抗体又はその抗原結合部分は、TSLPに結合する。
【0018】
本開示の単離モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分は、重鎖及び軽鎖を含み得、ここで、重鎖は、重鎖可変領域及び重鎖定常領域を含み得、軽鎖は、軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域を含み得る。重鎖定常領域は、配列番号12若しくは57に記載されるアミノ酸配列を有するヒトIgG1定常領域、又は配列番号13に記載されるアミノ酸配列を有するヒトIgG4定常領域、或いはそのフラグメントを含み得る。軽鎖定常領域は、配列番号14に記載されるアミノ酸配列を有するヒトκ定常領域、又はそのフラグメントを含み得る。重鎖定常領域はまた、配列番号15のアミノ酸配列を有するマウスIgG1定常領域であり得、軽鎖定常領域は、配列番号16のアミノ酸配列を有するマウスκ定常領域であり得る。配列番号12~16、及び57のアミノ酸配列は、配列番号23~27、及び58のそれぞれのヌクレオチド配列によってコードされ得る。
【0019】
本開示の抗体は、ジスルフィド結合によって連結される2つの重鎖及び2つの軽鎖を含むか又はそれからなり得、ここで、各重鎖は、上述される重鎖定常領域、重鎖可変領域又はCDR配列を含み、各軽鎖は、上述される軽鎖定常領域、軽鎖可変領域又はCDR配列を含み、ここで、重鎖可変領域のC末端は、重鎖定常領域のN末端に連結され、軽鎖可変領域のC末端は、軽鎖定常領域のN末端に連結される。本開示の抗体は、例えば、IgG1、IgG2又はIgG4アイソタイプの完全長抗体であり得る。他の実施形態における本開示の抗体は、一本鎖可変フラグメント(scFv)抗体、又はFab若しくはF(ab')2フラグメントなどの抗体フラグメントであり得る。
【0020】
本開示の抗体、又はその抗原結合部分は、テゼペルマブなどの先行技術の抗TSLP抗体と比較して、同等か又はより高い、TSLPへの結合親和性及びTSLP-TSLPR/IL7R相互作用に対する遮断活性を有する。
【0021】
本開示はまた、本抗体、又はその抗原結合部分と異なる結合特異性を有する第2の機能的部分(functional moiety)(例えば、第2の抗体)に連結された、本開示の抗体、又はその抗原結合部分を含む二重特異性分子を提供する。二重特異性分子は、TSLP及びIgEなどの別の疾患特異的タンパク質に結合し得る。本開示はまた、細胞毒素、細胞毒性薬などの治療剤に連結された、本発明の抗体又はその抗原結合部分を含む免疫抱合体を提供する。別の態様において、本発明の抗体又はその抗原結合部分は、キメラ抗原受容体(CAR)の一部になり得、本開示はまた、CARを含む、免疫細胞、例えば、T細胞又はNK細胞に関する。本発明の抗体又はその抗原結合部分はまた、腫瘍溶解性ウイルスによってコードされるか又は腫瘍溶解性ウイルスとともに使用され得る。
【0022】
本発明の抗体、若しくはその抗原結合部分、又は免疫抱合体、二重特異性分子、CAR-免疫細胞、又は腫瘍溶解性ウイルスと、薬学的に許容される担体とを含む組成物も提供される。
【0023】
本開示の抗体、又はその抗原結合部分をコードする核酸分子、並びにこのような核酸を含む発現ベクター及びこのような発現ベクターを含むか又は抗体若しくはその抗原結合部分をコードするポリヌクレオチドと一体化されたそのゲノムを有する宿主細胞も、本開示によって包含される。発現ベクターを含む宿主細胞を用いて、抗TSLP抗体又はその抗原結合部分を調製するための方法であって、(i)宿主細胞において抗体又はその抗原結合部分を発現する工程及び(ii)宿主細胞又はその細胞培養物から抗体又はその抗原結合部分を単離する工程を含む方法も提供される。
【0024】
さらに別の態様において、本開示は、対象における喘息、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎又は乾癬を治療する方法であって、治療有効量の、本開示の抗体、又はその抗原結合部分を対象に投与することを含む方法を提供する。ある実施形態において、本方法は、本開示の組成物、二重特異性分子、免疫抱合体、CAR-免疫細胞、又は抗体をコードする若しくは抗体を担持する腫瘍溶解性ウイルス、或いは対象においてそれらを発現することが可能な核酸分子を投与することを含む。二重特異性分子は、喘息治療において、TSLP及びIgE、IL4、IL13又はIL-5などの別の疾患特異的タンパク質に結合し得る。ある実施形態において、抗IgE抗体、抗IL4抗体、抗IL4R抗体、抗IL13抗体、抗IL13R抗体、抗IL-5抗体、抗IL5R抗体、及び/又は抗TSLPR抗体などの少なくとも1つのさらなる抗体が、本開示の抗体、又はその抗原結合部分とともに投与され得る。ある実施形態において、抗喘息薬、抗潰瘍性大腸炎薬、抗アトピー性皮膚炎薬、又は抗乾癬薬などの少なくとも1つのさらなる薬剤が、本開示の抗体、又はその抗原結合部分とともに投与され得る。
【0025】
本開示の他の特徴及び利点は、限定であると解釈されるべきではない以下の詳細な説明及び実施例から明らかになるであろう。本出願を通して引用される全ての参照文献、GenBankエントリ、特許及び公開特許出願の内容は、参照により本明細書に明示的に援用される。
【0026】
したがって、本発明の目的は、任意の既に公知の製品、その製品の作製方法、又はその製品の使用方法を本発明に包含することではなく、したがって、本出願人は、その権利を留保し、任意の既に公知の製品、プロセス、又は方法の放棄を本明細書に開示する。本発明は、USPTOの書面による記載及び実施可能要件(米国特許法第112条、第1段落)又はEPO(欧州特許条約(EPC)83条)を満たさない任意の製品、プロセス、又はその製品の作製方法又はその製品の使用方法を本発明の範囲内に包含することを意図しないことがさらに留意され、したがって、本出願人は、その権利を留保し、任意の既に記載された製品、その製品の作製方法、又はその製品の使用方法の放棄を本明細書に開示する。本発明の実施において、53条(c)EPC及び規則28(b)及び(c)EPCに準拠していることが有利であり得る。本出願の系統又は任意の他の系統又は任意の第三者の任意の先行出願における出願人の任意の登録特許の主題である任意の実施形態を明確に放棄する全ての権利が、明確に留保される。本明細書に記載されるいずれも、保証として解釈されるべきではない。
【0027】
本開示、特に、特許請求の範囲及び/又は段落において、「含む(comprises)」、「含まれる(comprised)」、「含む(comprising)」などの用語が、米国特許法による意味を有し得;例えば、それらは、「含む(includes)」、「含まれる(included)」、「含む(including)」などを意味し得ること;及び「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「から本質的になる(consists essentially of)」などの用語が、米国特許法による意味を有し、例えば、それらは、明示されていない要素を許容するが、先行技術において見出されるか又は本発明の基本的又は新規な特徴に影響を与える要素を除外することが留意される。
【0028】
例として示されるが、本発明を記載される特定の実施形態のみに限定することは意図されていない、以下の詳細な説明が、添付の図面と併せて最もよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1A】捕捉ELISAにおける、ヒトTSLPに対するマウス抗体1C5F12E9(A)、D1C2H1H1及びD1D8H9F7(B)の結合能を示す。
【
図1B】捕捉ELISAにおける、ヒトTSLPに対するマウス抗体1C5F12E9(A)、D1C2H1H1及びD1D8H9F7(B)の結合能を示す。
【
図2A】間接ELISAにおける、カニクイザルTSLPに対するマウス抗体1C5F12E9(A)、D1C2H1H1及びD1D8H9F7(B)の結合能を示す。
【
図2B】間接ELISAにおける、カニクイザルTSLPに対するマウス抗体1C5F12E9(A)、D1C2H1H1及びD1D8H9F7(B)の結合能を示す。
【
図3A】競合ELISAにおける、TSLPR/IL7RへのヒトTSLPの結合に対するマウス抗体1C5F12E9(A)、D1C2H1H1及びD1D8H9F7(B)の遮断能力を示す。
【
図3B】競合ELISAにおける、TSLPR/IL7RへのヒトTSLPの結合に対するマウス抗体1C5F12E9(A)、D1C2H1H1及びD1D8H9F7(B)の遮断能力を示す。
【
図4A】競合ELISAにおける、ヒトTSLPへのベンチマークテゼペルマブ結合をブロックするマウス抗体1C5F12E9(A)、D1C2H1H1及びD1D8H9F7(B)の能力を示す。
【
図4B】競合ELISAにおける、ヒトTSLPへのベンチマークテゼペルマブ結合をブロックするマウス抗体1C5F12E9(A)、D1C2H1H1及びD1D8H9F7(B)の能力を示す。
【
図5A】細胞ベースのリガンドブロッキングFACSアッセイにおける、ヒトTSLPR及びIL7Rを発現する操作されたBAF3細胞へのヒトTSLPの結合に対するマウス抗体1C5F12E9(A)、D1C2H1H1及びD1D8H9F7(B)の遮断能力を示す。
【
図5B】細胞ベースのリガンドブロッキングFACSアッセイにおける、ヒトTSLPR及びIL7Rを発現する操作されたBAF3細胞へのヒトTSLPの結合に対するマウス抗体1C5F12E9(A)、D1C2H1H1及びD1D8H9F7(B)の遮断能力を示す。
【
図6A】細胞ベースの機能アッセイにおける、BAF3細胞生存及び増殖に対する1C5F12E9(A)、D1C2H1H1及びD1D8H9F7(B)の阻害効果を示す。
【
図6B】細胞ベースの機能アッセイにおける、BAF3細胞生存及び増殖に対する1C5F12E9(A)、D1C2H1H1及びD1D8H9F7(B)の阻害効果を示す。
【
図7】捕捉ELISAにおける、ヒトTSLPに対するキメラ1C5F12E9抗体の結合能を示す。
【
図8】細胞ベースのブロッキングFACSアッセイにおける、ヒトTSLPR及びIL7Rを発現する操作されたBAF3細胞へのヒトTSLPの結合に対するキメラ1C5F12E9抗体の遮断能力を示す。
【
図9】細胞ベースの機能アッセイにおける、BAF3細胞生存及び増殖に対するキメラ1C5F12E9抗体の阻害効果を示す。
【
図10】捕捉ELISAにおける、ヒトTSLPに対するヒト化抗体hu1C5F12E9-V8及びhu1C5F12E9-V14の結合能を示す。
【
図11】間接ELISAにおける、カニクイザルTSLPに対するヒト化抗体hu1C5F12E9-V8及びhu1C5F12E9-V14の結合能を示す。
【
図12】競合ELISAにおける、TSLPR/IL7RへのヒトTSLPの結合に対するヒト化抗体hu1C5F12E9-V8及びhu1C5F12E9-V14の遮断能力を示す。
【
図13】競合ELISAにおける、ヒトTSLPへのベンチマークテゼペルマブ結合をブロックするヒト化抗体hu1C5F12E9-V8及びhu1C5F12E9-V14の能力を示す。
【
図14】細胞ベースのリガンドブロッキングFACSアッセイにおける、ヒトTSLPR及びIL7Rを発現する操作されたBAF3細胞へのヒトTSLPの結合に対するヒト化抗体hu1C5F12E9-V8及びhu1C5F12E9-V14の遮断能力を示す。
【
図15A】細胞ベースの機能アッセイにおける、BAF3細胞生存及び増殖に対するヒト化抗体hu1C5F12E9-V8(A)及びhu1C5F12E9-V14(B)の阻害効果を示す。
【
図15B】細胞ベースの機能アッセイにおける、BAF3細胞生存及び増殖に対するヒト化抗体hu1C5F12E9-V8(A)及びhu1C5F12E9-V14(B)の阻害効果を示す。
【
図16】捕捉ELISA試験における、ヒトTSLPに対するヒト化抗体hu1C5F12E9-V8(IgG1)、hu1C5F12E9-V8(IgG4)、hu1C5F12E9-V14(IgG1)及びhu1C5F12E9-V14(IgG4)の結合能を示す。
【
図17】競合ELISAにおける、ヒトTSLP-TSLPR/IL7R結合に対するヒト化抗体hu1C5F12E9-V8(IgG1)、hu1C5F12E9-V8(IgG4)、hu1C5F12E9-V14(IgG1)及びhu1C5F12E9-V14(IgG4)の遮断能力を示す。
【
図18】競合ELISAにおける、ベンチマーク-ヒトTSLP結合をブロックするヒト化抗体hu1C5F12E9-V8(IgG1)、hu1C5F12E9-V8(IgG4)、hu1C5F12E9-V14(IgG1)及びhu1C5F12E9-V14(IgG4)の能力を示す。
【
図19】細胞ベースのリガンドブロッキングFACSアッセイにおける、ヒトTSLPR及びIL7Rを発現する操作されたBAF3細胞へのヒトTSLPの結合に対するヒト化抗体hu1C5F12E9-V8(IgG1)、hu1C5F12E9-V8(IgG4)、hu1C5F12E9-V14(IgG1)及びhu1C5F12E9-V14(IgG4)の遮断能力を示す。
【
図20A】細胞ベースの機能アッセイにおける、BAF3細胞生存及び増殖に対するヒト化抗体hu1C5F12E9-V8(IgG1)及びhu1C5F12E9-V8(IgG4)(A)、及びhu1C5F12E9-V14(IgG1)及びhu1C5F12E9-V14(IgG4)(B)の阻害効果を示す。
【
図20B】細胞ベースの機能アッセイにおける、BAF3細胞生存及び増殖に対するヒト化抗体hu1C5F12E9-V8(IgG1)及びhu1C5F12E9-V8(IgG4)(A)、及びhu1C5F12E9-V14(IgG1)及びhu1C5F12E9-V14(IgG4)(B)の阻害効果を示す。
【
図21A】細胞ベースのレポーターアッセイにおける、操作されたHEK293T細胞とのヒトTSLPの相互作用に対するヒト化抗体hu1C5F12E9-V8(IgG1)及びhu1C5F12E9-V8(IgG4)(A)、及びhu1C5F12E9-V14(IgG1)及びhu1C5F12E9-V14(IgG4)(B)の遮断能力を示す。
【
図21B】細胞ベースのレポーターアッセイにおける、操作されたHEK293T細胞とのヒトTSLPの相互作用に対するヒト化抗体hu1C5F12E9-V8(IgG1)及びhu1C5F12E9-V8(IgG4)(A)、及びhu1C5F12E9-V14(IgG1)及びhu1C5F12E9-V14(IgG4)(B)の遮断能力を示す。
【
図22】hu1C5F12E9-V8(IgG1)、hu1C5F12E9-V8(IgG4)、hu1C5F12E9-V14(IgG1)、hu1C5F12E9-V14(IgG4)抗体のプロテインサーマルシフト(protein thermal shift)アッセイの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本開示がより容易に理解され得ることを確実にするために、いくつかの用語がまず定義される。さらなる定義は、詳細な説明を通して記載される。
【0031】
「TSLP」という用語は、胸腺間質性リンパ球新生因子を指す。「TSLP」という用語は、変異体、アイソフォーム、ホモログ、オルソログ及びパラログを含む。例えば、ヒトTSLPタンパク質に特異的な抗体は、ある場合において、サルなどの、ヒト以外の種に由来するTSLPタンパク質と交差反応し得る。他の実施形態において、ヒトTSLPタンパク質に特異的な抗体は、ヒトTSLPタンパク質に完全に特異的であり得、他の種に対する又は他のタイプの交差反応性を示さないことがあり、又は全ての他の種ではなく特定の他の種に由来するTSLPと交差反応し得る。
【0032】
「ヒトTSLP」という用語は、NP_149024.1のGenbank受託番号を有するヒトTSLPのアミノ酸配列などの、ヒトに由来するアミノ酸配列を有するTSLPタンパク質を指す。「サル又はアカゲザルTSLP」及び「マウスTSLP」という用語はそれぞれ、サル及びマウスTSLP配列を指し、例えば、それぞれGenbank受託番号NP_001100503.1及びNP_067342.1を有するアミノ酸配列を有するものである。
【0033】
本明細書において言及される「抗体」という用語は、全抗体及びその任意の抗原結合フラグメント(すなわち、「抗原結合部分」)又は一本鎖を含む。全抗体は、ジスルフィド結合によって相互連結される2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてVHと略記される)及び重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略記される)及び軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLから構成される。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存されている領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに分類され得る。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へと以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置された3つのCDR及び4つのFRから構成される。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1の成分(C1q)を含む宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0034】
本明細書において使用される際の、抗体の「抗原結合部分」(又は単に「抗体部分」)という用語は、抗原(例えば、TSLPタンパク質)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上のフラグメントを指す。抗体の抗原結合機能が、完全長抗体のフラグメントによって行われ得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合フラグメントの例は、(i)Fabフラグメント、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価フラグメント;(ii)F(ab')2フラグメント、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント;(iii)VH及びCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一のアームのVL及びVHドメインからなるFvフラグメント、(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546);(vi)単離された相補性決定領域(CDR);並びに(viii)ナノボディ、単一可変ドメイン及び2つの定常ドメインを含有する重鎖可変領域を含む。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、VL及びVHは、別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、それらをVL及びVH領域が対合して一価分子を形成する単一のタンパク質鎖(一本鎖Fv(scFv)として知られている;例えば、Bird et al.,(1988)Science 242:423-426;及びHuston et al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883を参照されたい)として作製可能にする合成リンカーによる、組換え方法を用いて結合され得る。このような一本鎖抗体はまた、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されることが意図される。これらの抗体フラグメントは、当業者に公知の従来の技術を用いて得られ、これらのフラグメントは、インタクトな抗体と同じように有用性についてスクリーニングされる。
【0035】
本明細書において使用される際の「単離抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すことが意図される(例えば、TSLPタンパク質に特異的に結合する単離抗体は、TSLPタンパク質以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、ヒトTSLPタンパク質に特異的に結合する単離抗体は、他の種に由来するTSLPタンパク質などの他の抗原に対する交差反応性を有し得る。さらに、単離抗体は、他の細胞材料及び/又は化学物質を実質的に含まなくてもよい。本明細書において使用される際の「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一分子組成物の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性及び親和性を示す。
【0036】
本明細書において使用される際の「マウス抗体」という用語は、フレームワーク及びCDR領域の両方がマウス生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことが意図される。さらに、抗体が定常領域を含む場合、定常領域はまた、マウス生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する。本開示のマウス抗体は、マウス生殖細胞系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでランダム若しくは部位特異的変異誘発又はインビボで体細胞変異によって導入される変異)を含み得る。しかしながら、本明細書において使用される際の「マウス抗体」という用語は、別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列がマウスフレームワーク配列にグラフトされている抗体を含むことは意図されていない。
【0037】
「キメラ抗体」という用語は、非ヒト源に由来する遺伝物質を、ヒトに由来する遺伝物質と組み合わせることによって作製される抗体を指す。又はより一般に、キメラ抗体は、特定の種に由来する遺伝物質を、別の種に由来する遺伝物質とともに有する抗体である。
【0038】
本明細書において使用される際の「ヒト化抗体」という用語は、タンパク質配列が、ヒトにおいて天然に産生される抗体形態との類似性を増大するように修飾された、非ヒト種に由来する抗体を指す。
【0039】
「アイソタイプ」という用語は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgM又はIgG1)を指す。
【0040】
「抗原を認識する抗体」及び「抗原に特異的な抗体」という語句は、本明細書において、「抗原に特異的に結合する抗体」という用語と同義的に使用される。
【0041】
本明細書において使用される際、「ヒトTSLPに特異的に結合する」抗体は、ヒトTSLPタンパク質(場合により、1つ以上の非ヒトに由来するTSLPタンパク質)に結合するが、非TSLPタンパク質に実質的に結合しない抗体を指すことが意図される。好ましくは、抗体は、「高い親和性」、すなわち、5.0×10-8M以下、より好ましくは、1.0×10-8M以下、より好ましくは、7.0×10-9M以下のKDでヒトTSLPタンパク質に結合する。
【0042】
本明細書において使用される際の、タンパク質又は細胞に「実質的に結合しない」という用語は、タンパク質又は細胞に結合しないか又は高い親和性で結合しない、すなわち、1.0×10-6M以上、より好ましくは、1.0×10-5M以上、より好ましくは、1.0×10-4M以上、より好ましくは、1.0×10-3M以上、さらにより好ましくは、1.0×10-2M以上のKDでタンパク質又は細胞に結合することを意味する。
【0043】
IgG抗体に対する「高い親和性」という用語は、標的抗原に対して1.0×10-6M以下、より好ましくは、5.0×10-8M以下、さらにより好ましくは、1.0×10-8M以下、さらにより好ましくは、7.0×10-9M以下、さらにより好ましくは、1.0×10-9M以下のKDを有する抗体を指す。しかしながら、「高い親和性」結合は、他の抗体アイソタイプに対して変化し得る。例えば、IgMアイソタイプに対する「高い親和性」結合は、10-6M以下、より好ましくは、10-7M以下、さらにより好ましくは、10-8M以下のKDを有する抗体を指す。
【0044】
本明細書において使用される際の「Kassoc」又は「Ka」という用語が、特定の抗体-抗原相互作用の結合速度を指すことが意図される一方、本明細書において使用される際の「Kdis」又は「Kd」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指すことが意図される。本明細書において使用される際の「KD」という用語は、解離定数を指すことが意図され、これは、Kd対Kaの比率(すなわち、Kd/Ka)から得られ、モル濃度(M)として表される。抗体についてのKD値は、当該技術分野において十分に確立された方法を用いて決定され得る。抗体のKDを決定するための好ましい方法は、表面プラズモン共鳴を用いる、好ましくは、Biacore(商標)システムなどのバイオセンサーシステムを用いることによる。
【0045】
最大半量の有効濃度としても知られている「EC50」という用語は、特定の曝露時間の後の、ベースラインと最大値との間の中間の応答を誘導する抗体の濃度を指す。
【0046】
半数阻害濃度としても知られている「IC50」という用語は、抗体の非存在と比べて50%だけ特定の生物学的又は生化学的機能を阻害する抗体の濃度を指す。
【0047】
「対象」という用語は、任意のヒト又は非ヒト動物を含む。「非ヒト動物」という用語は、全ての脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ニワトリ、両生類、及びは虫類などの、哺乳動物及び非哺乳動物を含むが、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ及びウマなどの哺乳動物が好ましい。
【0048】
「治療有効量」という用語は、疾患若しくは病態(癌など)に関連する症状を予防若しくは改善し、及び/又は疾患若しくは病態の重症度を低下させるのに十分な、本開示の抗体の量を意味する。治療有効量は、治療される病態に関して理解され、実際の有効量は、当業者によって容易に理解される。
【0049】
本開示の様々な態様が、以下のサブセクションにさらに詳細に記載される。
【0050】
ヒトTSLPに対する増加した結合親和性及びTSLP-TSLPR/IL7R相互作用に対するより良好な遮断容量を有する抗TSLP抗体
本開示の例示的な抗体、又はその抗原結合部分は、テゼペルマブなどの既に記載される抗TSLP抗体と比較して、より良好でないとしても同等の、結合親和性を有するヒト又はカニクイザルTSLPに特異的に結合する。本開示の例示的な抗体、又はその抗原結合部分はまた、ヒトTSLP-TSLPR/IL7R相互作用をブロックし得、その遮断活性は、先行技術の抗TSLP抗体より良好である。
【0051】
本開示の好ましい抗体は、ヒト化モノクローナル抗体である。それに加えて又はその代わりに、抗体は、例えば、キメラモノクローナル抗体であり得る。
【0052】
モノクローナル抗TSLP抗体
本開示の抗体又はその抗原結合部分は、以下に及び以下の実施例に記載されるように構造的に及び化学的に特徴付けられ得る。抗体の重鎖/軽鎖可変領域のアミノ酸配列ID番号が、以下の表1に要約され、いくつかの抗体は、同じVH又はVLを共有する。抗体についての重鎖定常領域は、例えば、配列番号12若しくは57に記載されるアミノ酸配列を有するヒトIgG1重鎖定常領域、又は例えば、配列番号13に記載されるアミノ酸配列を有するヒトIgG4重鎖定常領域であり得、抗体についての軽鎖定常領域は、例えば、配列番号14に記載されるアミノ酸配列を有するヒトκ定常領域であり得る。これらの抗体は、マウスIgG1又はIgG2重鎖定常領域、及び/又はマウスκ定常領域も含有し得る。抗体は、ジスルフィド結合によって連結される2つの重鎖及び2つの軽鎖からなり得、重鎖可変領域のC末端は、重鎖定常領域のN末端に連結され、軽鎖可変領域のC末端は、軽鎖定常領域のN末端に連結される。
【0053】
表1中の重鎖可変領域CDR及び軽鎖可変領域CDRは、Kabat番号付けシステムによって定義されている。しかしながら、当該技術分野において周知であるように、CDR領域はまた、重鎖/軽鎖可変領域配列に基づいて、Chothia、IMGT、AbM、又はContact番号付けシステム/方法などの他のシステムによって決定され得る。
【0054】
ヒトTSLPに結合する他の抗TSLP抗体のVH及びVL配列(又はCDR配列)は、本開示の抗TSLP抗体のVH及びVL配列(又はCDR配列)と「混合及び適合させる」ことができる。好ましくは、VH及びVL鎖(又はこのような鎖内のCDR)が、混合及び適合される場合、特定のVH/VL対合からのVH配列が、構造的に類似のVH配列で置き換えられる。同様に、好ましくは、特定のVH/VL対合からのVL配列が、構造的に類似のVL配列で置き換えられる。
【0055】
したがって、一実施形態において、本開示の抗体、又はその抗原結合部分は、
(a)表1中で上に列挙されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;及び
(b)表1中で上に列挙されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、又は別の抗TSLP抗体のVLを含み、ここで、抗体は、ヒトTSLPに特異的に結合する。
【0056】
【0057】
別の実施形態において、本開示の抗体、又はその抗原結合部分は、
(a)表1中で上に列挙される重鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3領域;及び
(b)表1中で上に列挙される軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3領域又は別の抗TSLP抗体のCDRを含み、ここで、抗体は、ヒトTSLPに特異的に結合する。
【0058】
さらに別の実施形態において、抗体、又はその抗原結合部分は、ヒトTSLPに結合する他の抗体のCDR、例えば、重鎖可変領域からのCDR1及び/又はCDR3と組み合わされた抗TSLP抗体の重鎖可変CDR2領域、並びに/或いは異なる抗TSLP抗体の軽鎖可変領域からのCDR1、CDR2、及び/又はCDR3を含む。
【0059】
さらに、CDR1及び/又はCDR2ドメインから独立して、CDR3ドメインは、単独で、同種抗原に対する抗体の結合特異性を決定することができること、及び複数の抗体が、予想通りに、共通のCDR3配列に基づいて、同じ結合特異性を有して生成され得ることが当該技術分野において周知である。例えば、Klimka et al.,British J.of Cancer 83(2):252-260(2000);Beiboer et al.,J.Mol.Biol.296:833-849(2000);Rader et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95:8910-8915(1998);Barbas et al.,J.Am.Chem.Soc.116:2161-2162(1994);Barbas et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:2529-2533(1995);Ditzel et al.,J.Immunol.157:739-749(1996);Berezov et al.,BIAjournal 8:Scientific Review 8(2001);Igarashi et al.,J.Biochem(Tokyo)117:452-7(1995);Bourgeois et al.,J.Virol 72:807-10(1998);Levi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:4374-8(1993);Polymenis and Stoller,J.Immunol.152:5218-5329(1994)及びXu and Davis,Immunity 13:37-45(2000)を参照されたい。また、米国特許第6,951,646号明細書;同第6,914,128号明細書;同第6,090,382号明細書;同第6,818,216号明細書;同第6,156,313号明細書;同第6,827,925号明細書;同第5,833,943号明細書;同第5,762,905号明細書及び同第5,760,185号明細書を参照されたい。これらの参照文献はそれぞれ、全体が参照により本明細書に援用される。
【0060】
したがって、別の実施形態において、本開示の抗体は、抗TSLP抗体の重鎖可変領域のCDR2、並びに抗TSLP抗体の重鎖及び/若しくは軽鎖可変領域の少なくともCDR3、又は別の抗TSLP抗体の重鎖及び/若しくは軽鎖可変領域のCDR3を含み、ここで、抗体は、ヒトTSLPに特異的に結合することが可能である。これらの抗体は、好ましくは、(a)TSLPとの結合について競合し;(b)機能的特性を保持し;(c)同じエピトープに結合し;及び/又は(d)本開示の抗TSLP抗体と同様の結合親和性を有する。さらに別の実施形態において、抗体は、抗TSLP抗体の軽鎖可変領域のCDR2、又は別の抗TSLP抗体の軽鎖可変領域のCDR2をさらに含み得、ここで、抗体は、ヒトTSLPに特異的に結合することが可能である。別の実施形態において、本開示の抗体は、抗TSLP抗体の重鎖及び/若しくは軽鎖可変領域のCDR1、又は別の抗TSLP抗体の重鎖及び/若しくは軽鎖可変領域のCDR1をさらに含み得、ここで、抗体は、ヒトTSLPに特異的に結合することが可能である。
【0061】
保存的修飾
別の実施形態において、本開示の抗体は、1つ以上の保存的修飾だけ、本開示の抗TSLP抗体のものと異なるCDR1、CDR2及びCDR3配列の重鎖及び/又は軽鎖可変領域配列を含む。特定の保存的配列修飾が、抗原結合を除去せずに作製され得ることが、当該技術分野において理解される。例えば、Brummell et al.,(1993)Biochem 32:1180-8;de Wildt et al.,(1997)Prot.Eng.10:835-41;Komissarov et al.,(1997)J.Biol.Chem.272:26864-26870;Hall et al.,(1992)J.Immunol.149:1605-12;Kelley and O'Connell(1993)Biochem.32:6862-35;Adib-Conquy et al.,(1998)Int.Immunol.10:341-6及びBeers et al.,(2000)Clin.Can.Res.6:2835-43を参照されたい。
【0062】
したがって、一実施形態において、抗体は、CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む重鎖可変領域及び/又はCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含み、ここで:
(a)重鎖可変領域CDR1配列は、上記の表1に列挙される配列、及び/又はその保存的修飾を含み;及び/又は
(b)重鎖可変領域CDR2配列は、上記の表1に列挙される配列、及び/又はその保存的修飾を含み;及び/又は
(c)重鎖可変領域CDR3配列は、上記の表1に列挙される配列、及び/又はその保存的修飾を含み;及び/又は
(d)軽鎖可変領域CDR1、及び/又はCDR2、及び/又はCDR3配列は、上記の表1に列挙される配列;及び/又はその保存的修飾を含み;
(e)抗体は、ヒトTSLPに特異的に結合する。
【0063】
本開示の抗体は、ヒトTSLPへの高い親和性の結合などの、上述される以下の機能的特性の1つ以上を有する。
【0064】
様々な実施形態において、抗体は、例えば、マウス、ヒト、ヒト化又はキメラ抗体であり得る。
【0065】
本明細書において使用される際、「保存的配列修飾」という用語は、アミノ酸配列を含む抗体の結合特性に実質的に影響を与えないか又は変化させないアミノ酸修飾を指すことが意図される。このような保存的修飾は、アミノ酸置換、付加及び欠失を含む。修飾は、部位特異的変異誘発及びPCR媒介変異誘発などの、当該技術分野において公知の標準的な技術によって、本開示の抗体に導入され得る。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が、同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されたものである。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野において定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β-分枝側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。したがって、本開示の抗体のCDR領域内の1つ以上のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーの他のアミノ酸残基で置換され得、改変された抗体が、本明細書に記載される機能アッセイを用いて、保持された機能(すなわち、上記の機能)について試験され得る。
【0066】
操作及び修飾された抗体
本開示の抗体は、修飾された抗体を操作するように、出発材料として本開示の抗TSLP抗体のVH/VL配列の1つ以上を有する抗体を用いて調製され得る。抗体は、1つ又は両方の可変領域(すなわち、VH及び/又はVL)内、例えば、1つ以上のCDR領域内及び/又は1つ以上のフレームワーク領域内の1つ以上の残基を修飾することによって操作され得る。それに加えて又はその代わりに、抗体は、例えば抗体のエフェクター機能を改変するために、定常領域内の残基を修飾することによって操作され得る。
【0067】
特定の実施形態において、CDRグラフト法は、抗体の可変領域を操作するのに使用され得る。抗体は、主に、6つの重鎖及び軽鎖相補性決定領域(CDR)に位置するアミノ酸残基を介して、標的抗原と相互作用する。この理由のため、CDR内のアミノ酸配列は、CDRの外部の配列より個々の抗体間でより異なっている。CDR配列が、ほとんどの抗体-抗原相互作用に関与するため、異なる特性を有する異なる抗体からのフレームワーク配列にグラフトされた特定の天然抗体からのCDR配列を含む発現ベクターを構築することによって、特定の天然抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることが可能である(例えば、Riechmann et al.,(1998)Nature 332:323-327;Jones et al.,(1986)Nature 321:522-525;Queen et al.,(1989)Proc.Natl.Acad.を参照されたい。U.S.A.86:10029-10033;米国特許第5,225,539号明細書;同第5,530,101号明細書;同第5,585,089号明細書;同第5,693,762号明細書及び同第6,180,370号明細書も参照されたい)。
【0068】
したがって、本開示の別の実施形態は、上述される、本開示の配列を含むCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む重鎖可変領域、及び/又は上述される、本開示の配列を含むCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含む、単離モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分に関する。これらの抗体が、本開示のモノクローナル抗体のVH及びVL CDR配列を含む一方、それらは、異なるフレームワーク配列を含み得る。
【0069】
このようなフレームワーク配列は、生殖細胞系列抗体遺伝子配列を含む公開DNAデータベース又は刊行されている参照文献から得られる。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系列DNA配列は、「VBase」ヒト生殖細胞系列の配列データベース(www.mrc-cpe.cam.ac.uk/vbaseで、インターネットで利用可能)、並びにKabat et al.,(1991)(上記に引用される);Tomlinson et al.,(1992)J.Mol.Biol.227:776-798;及びCox et al.,(1994)Eur.J.Immunol.24:827-836(これらのそれぞれの内容が、参照により本明細書に明示的に援用される)において見出され得る。別の例として、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系列DNA配列は、Genbankデータベースにおいて見出され得る。例えば、HCo7 HuMAbマウスにおいて見出される以下の重鎖生殖細胞系列配列は、添付のGenbank受託番号1-69(NG--0010109、NT--024637及びBC070333)、3-33(NG--0010109及びNT--024637)並びに3-7(NG--0010109&NT--024637)において利用可能である。別の例として、HCo12 HuMAb マウスにおいて見出される以下の重鎖生殖細胞系列配列は、添付のGenbank受託番号1-69(NG--0010109、NT--024637及びBC070333)、5-51(NG--0010109及びNT--024637)、4-34(NG--0010109及びNT--024637)、3-30.3(CAJ556644)並びに3-23(AJ406678)において利用可能である。
【0070】
抗体タンパク質配列は、当業者に周知の、Gapped BLAST(Altschul et al.,(1997)、上記を参照)と呼ばれる配列類似性検索法の1つを用いて、コンパイルされたタンパク質配列データベースに対して比較される。
【0071】
本開示の抗体において使用するための好ましいフレームワーク配列は、本開示の抗体によって使用されるフレームワーク配列と構造的に類似のものである。VH CDR1、CDR2、及びCDR3配列は、フレームワーク配列が由来する生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子において見出されるものと同一の配列を有するフレームワーク領域にグラフトされ得、又はCDR配列は、生殖細胞系列配列と比較して1つ以上の変異を含むフレームワーク領域にグラフトされ得る。例えば、ある場合において、抗体の抗原結合能力を維持又は強化するために、フレームワーク領域内の残基を変異させることが有益であることが分かっている(例えば、米国特許第5,530,101号明細書;同第5,585,089号明細書;同第5,693,762号明細書及び同第6,180,370号明細書を参照されたい)。
【0072】
別のタイプの可変領域修飾は、VH及び/又はVL CDR1、CDR2及び/又はCDR3領域内のアミノ酸残基を変異させることであり、それによって、対象とする抗体の1つ以上の結合特性(例えば、親和性)を改善する。部位特異的変異誘発又はPCR媒介変異誘発は、変異を導入するために行われ得、抗体結合に対する効果、又は対象とする他の機能的特性が、当該技術分野において公知のインビトロ又はインビボアッセイにおいて評価され得る。好ましくは、保存的修飾(当該技術分野において公知であるように)が導入される。変異は、アミノ酸置換、付加又は欠失であり得るが、好ましくは、置換である。さらに、典型的に、CDR領域内の1、2、3、4又は5つ以下の残基が改変される。
【0073】
したがって、別の実施形態において、本開示は、(a)本開示の配列、又は1、2、3、4若しくは5つのアミノ酸置換、欠失若しくは付加を有するアミノ酸配列を含むVH CDR1領域;(b)本開示の配列、又は1、2、3、4若しくは5つのアミノ酸置換、欠失若しくは付加を有するアミノ酸配列を含むVH CDR2領域;(c)本開示の配列、又は1、2、3、4若しくは5つのアミノ酸置換、欠失若しくは付加を有するアミノ酸配列を含むVH CDR3領域;(d)本開示の配列、又は1、2、3、4若しくは5つのアミノ酸置換、欠失若しくは付加を有するアミノ酸配列を含むVL CDR1領域;(e)本開示の配列、又は1、2、3、4若しくは5つのアミノ酸置換、欠失若しくは付加を有するアミノ酸配列を含むVL CDR2領域;及び(f)本開示の配列、又は1、2、3、4若しくは5つのアミノ酸置換、欠失若しくは付加を有するアミノ酸配列を含むVL CDR3領域を含む重鎖可変領域を含む、単離された抗TSLPモノクローナル抗体、又はその抗原結合部分を提供する。
【0074】
本開示の操作された抗体は、修飾が、例えば、抗体の特性を改善するために、VH及び/又はVL内のフレームワーク残基に行われたものを含む。典型的に、このようなフレームワーク修飾は、抗体の免疫原性を低下させるために行われる。例えば、一手法は、1つ以上のフレームワーク残基を対応する生殖細胞系列配列へと「復帰変異(backmutate)」させることである。より詳細には、体細胞変異を起こした抗体は、抗体が由来する生殖細胞系列配列と異なるフレームワーク残基を含み得る。このような残基は、抗体フレームワーク配列を、抗体が由来する生殖細胞系列配列と比較することによって同定され得る。
【0075】
別のタイプのフレームワーク修飾は、T細胞エピトープを除去し、それによって、抗体の潜在的な免疫原性を低下させるために、フレームワーク領域内、或いは1つ以上のCDR領域内の1つ以上の残基を変異させることを含む。この手法は、「脱免疫化」とも呼ばれ、米国特許出願公開第20030153043号明細書にさらに詳細に記載されている。
【0076】
フレームワーク若しくはCDR領域内で行われる修飾に加えて、又はその代わりに、本開示の抗体は、典型的に、血清半減期、補体結合、Fc受容体結合、及び/又は抗原依存的細胞毒性などの、抗体の1つ以上の機能的特性を改変するために、Fc領域内に修飾を含むように操作され得る。さらに、本開示の抗体は、同様に抗体の1つ以上の機能的特性を改変するために化学修飾され得るか(例えば、1つ以上の化学部分が、抗体に結合され得る)又はそのグリコシル化を改変するために修飾され得る。
【0077】
一実施形態において、CH1-ヒンジ領域は、ヒンジ領域におけるシステイン残基の数が変化される、例えば、増加又は減少されるように修飾される。この手法は、米国特許第5,677,425号明細書にさらに記載されている。CH1-ヒンジ領域におけるシステイン残基の数は、例えば、軽鎖及び重鎖の組み立てを容易にするために、又は抗体の安定性を増大若しくは低下させるために変化される。
【0078】
別の実施形態において、抗体のFcヒンジ領域は、抗体の生体半減期を減少させるように変異される。より詳細には、1つ以上のアミノ酸変異は、抗体が、天然Fc-ヒンジ領域SpA結合と比べて損なわれたブドウ球菌(Staphylococcal)プロテインA(SpA)結合を有するように、Fc-ヒンジフラグメントのCH2-CH3ドメイン境界領域に導入される。この手法は、米国特許第6,165,745号明細書にさらに詳細に記載されている。
【0079】
さらに別の実施形態において、抗体のグリコシル化は、修飾される。例えば、非グリコシル化抗体が作製され得る(すなわち、抗体は、グリコシル化を欠いている)。グリコシル化は、例えば、抗原に対する抗体の親和性を増大するために改変され得る。このような炭水化物修飾は、例えば、抗体配列内のグリコシル化の1つ以上の部位を改変することによって達成され得る。例えば、1つ以上のアミノ酸置換は、1つ以上の可変領域フレームワークグリコシル化部位をなくし、それによって、その部位におけるグリコシル化をなくすように行われ得る。このような非グリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を増大し得る。例えば、米国特許第5,714,350号明細書及び同第6,350,861号明細書を参照されたい。
【0080】
それに加えて又はその代わりに、改変されたタイプのグリコシル化を有する抗体、例えば、減少した量のフコシル残基を有する低フコシル化抗体又は増加したバイセクティングGlcNac構造を有する抗体が作製され得る。このような改変されたグリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を増大することが実証されている。このような炭水化物修飾は、例えば、改変されたグリコシル化機構を有する宿主細胞において抗体を発現することによって達成され得る。改変されたグリコシル化機構を有する細胞は、当該技術分野において記載されており、本開示の組換え抗体を発現する宿主細胞として使用され、それによって、改変されたグリコシル化を有する抗体を産生することができる。例えば、細胞株Ms704、Ms705、及びMs709は、フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8(α(1,6)-フコシルトランスフェラーゼ)を欠いており、Ms704、Ms705、及びMs709細胞株において発現される抗体が、それらの炭水化物においてフコースを欠くようになっている。Ms704、Ms705、及びMs709 FUT8-/-細胞株を、2つの置換ベクターを用いて、CHO/DG44細胞におけるFUT8遺伝子の標的化破壊によって生成した(米国特許出願公開第20040110704号明細書及びYamane-Ohnuki et al.,(2004)Biotechnol Bioeng 87:614-22を参照されたい)。別の例として、欧州特許第1,176,195号明細書には、このような細胞株において発現される抗体が、α-1,6結合関連酵素を減少させるか又は除去することによって低フコシル化を示すように、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子が機能的に破壊された細胞株が記載されている。また、欧州特許第1,176,195号明細書には、抗体のFc領域に結合するか又は酵素活性を有さない、フコースのN-アセチルグルコサミンへの付加に対して低い酵素活性を有する細胞株、例えばラット骨髄腫細胞株YB2/0(ATCC CRL 1662)が記載されている。PCT公報国際公開第03/035835号パンフレットには、フコースをAsn(297)連結炭水化物に結合する能力を低下させ、その宿主細胞において発現される抗体の低フコシル化ももたらす変異CHO細胞株であるLec13細胞が記載されている(Shields et al.,(2002)J.Biol.Chem.277:26733-26740も参照)。修飾されたグリコシル化プロファイルを有する抗体はまた、PCT公報国際公開第06/089231号パンフレットに記載されるように、ニワトリ卵において産生され得る。或いは、修飾されたグリコシル化プロファイルを有する抗体は、アオウキクサ属(Lemna)などの植物細胞において産生され得る。植物系における抗体の産生のための方法は、2006年8月11日に出願されたAlston&Bird LLP代理人整理番号040989/314911号に対応する米国特許出願に開示されている。PCT公報国際公開第99/54342号パンフレットには、操作された細胞株において発現される抗体が、抗体の増加したADCC活性をもたらすバイセクティングGlcNac構造を示すように、糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、β(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するように操作された細胞株が記載されている(Umana et al.,(1999)Nat.Biotech.17:176-180も参照)。或いは、抗体のフコース残基は、フコシダーゼ酵素を用いて切断され得;例えば、フコシダーゼα-L-フコシダーゼは、抗体からフコシル残基を除去する(Tarentino et al.,(1975)Biochem.14:5516-23)。
【0081】
本開示によって想定される本明細書の抗体の別の修飾は、ペグ化である。抗体は、例えば、抗体の生体(例えば、血清)半減期を増加させるために、ペグ化され得る。抗体をペグ化するために、抗体、又はそのフラグメントは、典型的に、1つ以上のPEG基が抗体又は抗体フラグメントに結合される条件下で、PEGの反応性エステル又はアルデヒド誘導体などのポリエチレングリコール(PEG)と反応される。好ましくは、ペグ化は、反応性PEG分子(又は類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応又はアルキル化反応によって行われる。本明細書において使用される際、「ポリエチレングリコール」という用語は、モノ(C1~C10)アルコキシ-又はアリールオキシ-ポリエチレングリコール又はポリエチレングリコール-マレイミドなどの他のタンパク質を誘導体化するのに使用されているPEGの形態のいずれかを包含することが意図される。特定の実施形態において、ペグ化される抗体は、非グリコシル化抗体である。タンパク質をペグ化するための方法は、当該技術分野において公知であり、本開示の抗体に適用され得る。例えば、欧州特許第154 316号明細書及び欧州特許第0 401 384号明細書を参照されたい。
【0082】
抗体の物理的特性
本開示の抗体は、その異なるクラスを検出及び/又は区別するために、それらの様々な物理的特性によって特徴付けられ得る。
【0083】
例えば、抗体は、軽鎖又は重鎖可変領域のいずれかにおける1つ以上のグリコシル化部位を含み得る。このようなグリコシル化部位は、抗体の増加した免疫原性又は改変された抗原結合による抗体のpKの改変をもたらし得る(Marshall et al(1972)Annu Rev Biochem 41:673-702;Gala and Morrison(2004)J Immunol 172:5489-94;Wallick et al(1988)J Exp Med 168:1099-109;Spiro(2002)Glycobiology 12:43R-56R;Parekh et al(1985)Nature 316:452-7;Mimura et al.,(2000)Mol Immunol 37:697-706)。グリコシル化は、N-X-S/T配列を含むモチーフにおいて起こることが知られている。ある場合には、可変領域グリコシル化を含まない抗TSLP抗体を有することが好ましい。これは、可変領域にグリコシル化モチーフを含まない抗体を選択することによって、又はグリコシル化領域内の残基を変異させることによって、達成され得る。
【0084】
好ましい実施形態において、抗体は、アスパラギン異性部位を含まない。アスパラギンの脱アミド化は、N-G又はD-G配列において起こり得、結合をポリペプチド鎖に導入し、その安定性を低下させる(イソアスパラギン酸効果)イソアスパラギン酸残基の生成をもたらし得る。
【0085】
各抗体は、一般に6~9.5のpH範囲内の特有の等電点(pI)を有する。IgG1抗体のpIは、典型的に、7~9.5のpH範囲内であり、IgG4抗体のpIは、典型的に、6~8のpH範囲内である。正常範囲外のpIを有する抗体が、インビボ条件下でいくらかのアンフォールディング及び不安定性を有し得ると推測されている。したがって、正常範囲内のpI値を有する抗TSLP抗体を有することが好ましい。これは、正常範囲内のpIを有する抗体を選択することによって、又は荷電表面残基を変異させることによって達成され得る。
【0086】
本開示の抗体をコードする核酸分子
別の態様において、本開示は、本開示の抗体の重鎖及び/又は軽鎖可変領域、又はCDRをコードする核酸分子を提供する。核酸は、全細胞で、細胞溶解物で、又は部分的に精製された若しくは実質的に純粋な形態で存在し得る。核酸は、標準的な技術によって、他の細胞成分又は他の汚染物質、例えば、他の細胞核酸又はタンパク質から精製されたとき、「単離された」又は「実質的に純粋にされた」。本開示の核酸は、例えば、DNA又はRNAであり得、イントロン配列を含んでいても又は含まなくてもよい。好ましい実施形態において、核酸は、cDNA分子である。
【0087】
本開示の核酸は、標準的な分子生物学技術を用いて得ることができる。ハイブリドーマ(例えば、以下にさらに記載されるヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスから調製されたハイブリドーマ)によって発現される抗体について、ハイブリドーマによって作製される抗体の軽鎖及び重鎖をコードするcDNAは、標準的なPCR増幅又はcDNAクローニング技術によって得られる。免疫グロブリン遺伝子ライブラリーから(例えば、ファージディスプレイ技術を用いて)得られる抗体について、このような抗体をコードする核酸が、遺伝子ライブラリーから回収され得る。
【0088】
本開示の好ましい核酸分子は、TSLPモノクローナル抗体のVH及びVL配列又はCDRをコードするものを含む。VH及びVLセグメントをコードするDNAフラグメントが得られたら、これらのDNAフラグメントは、例えば、可変領域遺伝子を完全長抗体鎖遺伝子、Fabフラグメント遺伝子又はscFv遺伝子に変換するために、標準的な組換えDNA技術によってさらに操作され得る。これらの操作において、VL-又はVHをコードするDNAフラグメントは、抗体定常領域又はフレキシブルリンカーなどの別のタンパク質をコードする別のDNAフラグメントに作動可能に連結される。この文脈において使用される際の「作動可能に連結される」という用語は、2つのDNAフラグメントによってコードされるアミノ酸配列がフレーム内に留まるように、2つのDNAフラグメントが結合されることを意味することが意図される。
【0089】
VH領域をコードする単離されたDNAは、VHをコードするDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2及びCH3)をコードする別のDNA分子に作動可能に連結することによって、完全長重鎖遺伝子に変換され得る。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、当該技術分野において公知であり、これらの領域を含むDNAフラグメントは、標準的なPCR増幅によって得られる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgD定常領域であり得るが、最も好ましくは、IgG1又はIgG4定常領域である。Fabフラグメント重鎖遺伝子について、VHをコードするDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に作動可能に連結され得る。
【0090】
VL領域をコードする単離されたDNAは、VLをコードするDNAを、軽鎖定常領域、CLをコードする別のDNA分子に作動可能に連結することによって、完全長軽鎖遺伝子(並びにFab軽鎖遺伝子)に変換され得る。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は、当該技術分野において公知であり、これらの領域を含むDNAフラグメントは、標準的なPCR増幅によって得られる。好ましい実施形態において、軽鎖定常領域は、κ又はλ定常領域であり得る。
【0091】
scFv遺伝子を生成するために、VH及びVL配列が、フレキシブルリンカーによって結合されたVL及びVH領域を有する連続一本鎖タンパク質として発現され得るように、VH-及びVLをコードするDNAフラグメントは、フレキシブルリンカーをコードする、例えば、アミノ酸配列(Gly4-Ser)3をコードする別のフラグメントに作動可能に連結される(例えば、Bird et al.,(1988)Science 242:423-426;Huston et al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883;McCafferty et al.,(1990)Nature 348:552-554を参照されたい)。
【0092】
本開示のモノクローナル抗体の産生
本開示のモノクローナル抗体(mAb)は、Kohler and Milstein(1975)Nature 256:495の周知の体細胞ハイブリダイゼーション(ハイブリドーマ)技術を用いて産生され得る。モノクローナル抗体を産生するための他の実施形態は、Bリンパ球のウイルス又は発癌性形質転換及びファージディスプレイ技術を含む。キメラ又はヒト化抗体も、当該技術分野において周知である。例えば、米国特許第4,816,567号明細書;同第5,225,539号明細書;同第5,530,101号明細書;同第5,585,089号明細書;同第5,693,762号明細書及び同第6,180,370号明細書(これらの内容は、全体が参照により本明細書に具体的に援用される)を参照されたい。
【0093】
本開示のモノクローナル抗体を産生するトランスフェクトーマの生成
本開示の抗体はまた、例えば、当該技術分野において周知であるような、組換えDNA技術及び遺伝子トランスフェクション方法の組合せを用いて、宿主細胞トランスフェクトーマ中で産生され得る(例えば、Morrison,S.(1985)Science 229:1202)。一実施形態において、標準的な分子生物学技術によって得られる部分的又は完全長軽鎖及び重鎖をコードするDNAは、遺伝子が転写及び翻訳調節配列に作動可能に連結されるように、1つ以上の発現ベクターに挿入される。これに関して、「作動可能に連結される」という用語は、ベクター内の転写及び翻訳調節配列が、抗体遺伝子の転写及び翻訳を調節する意図された機能を果たすように、抗体遺伝子が、ベクターにライゲートされることを意味することが意図される。
【0094】
「調節配列」という用語は、抗体遺伝子の転写又は翻訳を制御するプロモーター、エンハンサー及び他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが意図される。このような調節配列は、例えば、Goeddel(Gene Expression Technology.Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990))に記載されている。哺乳動物宿主細胞発現のための好ましい調節配列は、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を指向するウイルス要素、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルスに由来するプロモーター及び/又はエンハンサー、例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP)及びポリオーマを含む。或いは、ユビキチンプロモーター又はβ-グロビンプロモーターなどの非ウイルス調節配列が使用され得る。さらにまた、調節要素は、SV40初期プロモーター及びヒトT細胞白血病ウイルス1型の長い末端反復配列からの配列を含む、SRαプロモーター系などの異なる源に由来する配列から構成される(Takebe et al.,(1988)Mol.Cell.Biol.8:466-472)。発現ベクター及び発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合するように選択される。
【0095】
抗体軽鎖遺伝子及び抗体重鎖遺伝子は、同じ又は別個の発現ベクターに挿入され得る。好ましい実施形態において、可変領域は、VHセグメントが、ベクター内のCHセグメントに作動可能に連結され、VLセグメントが、ベクター内のCLセグメントに作動可能に連結されるように、所望のアイソタイプの重鎖定常及び軽鎖定常領域を既にコードする発現ベクターに可変領域を挿入することによって、任意の抗体アイソタイプの完全長抗体遺伝子を生成するために使用される。それに加えて又はその代わりに、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードし得る。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドが、抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結されるように、ベクターにクローニングされ得る。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド又は異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質に由来するシグナルペプチド)であり得る。
【0096】
抗体鎖遺伝子及び調節配列に加えて、本開示の組換え発現ベクターは、さらなる配列、例えば、宿主細胞においてベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)及び選択可能マーカー遺伝子を有し得る。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216号明細書;同第4,634,665号明細書及び同第5,179,017号明細書を参照されたい)。例えば、典型的に、選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞において、G418、ハイグロマイシン又はメトトレキサートなどの薬剤に対する耐性を与える。好ましい選択可能マーカー遺伝子は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅とともにdhfr-宿主細胞における使用のため)及びneo遺伝子(G418選択のため)を含む。
【0097】
軽鎖及び重鎖の発現のため、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターは、標準的な技術によって宿主細胞にトランスフェクトされる。「トランスフェクション」という用語の様々な形態が、外来性DNAを原核生物又は真核生物宿主細胞に導入するために一般的に使用される多種多様な技術、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクションなどを包含することが意図される。原核生物又は真核生物宿主細胞のいずれにおいても本開示の抗体を発現させることが理論上可能であるが、真核細胞、特に哺乳動物細胞が、原核細胞より、適切に折り畳まれた免疫学的に活性な抗体を組み立て、分泌する可能性が高いため、このような真核細胞、最も好ましくは哺乳動物宿主細胞における抗体の発現が最も好ましい。
【0098】
本開示の組換え抗体を発現させるための好ましい哺乳動物宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えば、R.J.Kaufman and P.A.Sharp(1982)J.Mol.Biol.159:601-621に記載されているような、DHFR選択可能マーカーとともに使用される、Urlaub and Chasin,(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216-4220に記載されている、dhfr-CHO細胞を含む)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞及びSP2細胞を含む。特に、NSO骨髄腫細胞との使用について、別の好ましい発現系は、国際公開第87/04462号パンフレット、国際公開第89/01036号パンフレット及び欧州特許第338,841号明細書に開示されるGS遺伝子発現系である。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが、哺乳動物宿主細胞に導入されるとき、抗体は、宿主細胞における抗体の発現又は、より好ましくは、宿主細胞が増殖される培養培地中への抗体の分泌を可能にするのに十分な期間にわたって、宿主細胞を培養することによって産生される。抗体は、標準的なタンパク質精製方法を用いて、培養培地から回収され得る。
【0099】
免疫抱合体
本開示の抗体は、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)などの免疫抱合体を形成するために、治療剤にコンジュゲートされ得る。好適な治療剤としては、細胞毒素、アルキル化剤、DNA副溝結合剤、DNA挿入剤、DNA架橋剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、核外輸送阻害剤、プロテアソーム阻害剤、トポイソメラーゼI又はII阻害剤、熱ショックタンパク質阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗生物質、及び抗有糸分裂剤が挙げられる。ADCにおいて、抗体及び治療剤は、好ましくは、ペプチジル、ジスルフィド、又はヒドラゾンリンカーなどの切断可能なリンカーを介してコンジュゲートされる。より好ましくは、リンカーは、Val-Cit、Ala-Val、Val-Ala-Val、Lys-Lys、Pro-Val-Gly-Val-Val、Ala-Asn-Val、Val-Leu-Lys、Ala-Ala-Asn、Cit-Cit、Val-Lys、Lys、Cit、Ser、又はGluなどのペプチジルリンカーである。ADCは、米国特許第7,087,600号明細書;同第6,989,452号明細書;及び同第7,129,261号明細書;PCT公報国際公開第02/096910号パンフレット;国際公開第07/038,658号パンフレット;国際公開第07/051,081号パンフレット;国際公開第07/059,404号パンフレット;国際公開第08/083,312号パンフレット;及び国際公開第08/103,693号パンフレット;米国特許出願公開第20060024317号明細書;同第20060004081号明細書;及び同第20060247295号明細書(これらの開示内容は、参照により本明細書に援用される)に記載されているように調製され得る。
【0100】
二重特異性分子
別の態様において、本開示は、少なくとも2つの異なる結合部位又は標的分子に結合する二重特異性分子を生成するために、少なくとも1つの他の機能分子、例えば、別のペプチド又はタンパク質(例えば、受容体に対する別の抗体又はリガンド)に連結された本開示の1つ以上の抗体を含む二重特異性分子を特徴とする。したがって、本明細書において使用される際、「二重特異性分子」は、3つ以上の特異性を有する分子を含む。
【0101】
一実施形態において、二重特異性分子は、抗Fc結合特異性及び抗TSLP結合特異性に加えて、第3の特異性を有する。第3の特異性は、喘息治療については、IgE、IL4、IL4R、IL13、IL13R、IL-5、IL5R又はTSLPR/IL7Rに対するものであり得る。
【0102】
二重特異性分子は、多くの異なるフォーマット及びサイズであり得る。サイズスペクトルの一方の側では、二重特異性分子は、同一の特異性の2つの結合アームを有する代わりに、それぞれ異なる特異性を有する2つの結合アームを有することを除いて、従来の抗体フォーマットを保持している。他方の側では、ペプチド鎖によって連結される2つの一本鎖抗体フラグメント(scFv's)、いわゆるBs(scFv)2構築物からなる二重特異性分子である。中間サイズの二重特異性分子は、ペプチジルリンカーによって連結される2つの異なるF(ab)フラグメントを含む。これらの及び他のフォーマットの二重特異性分子は、遺伝子組換え、体細胞ハイブリダイゼーション、又は化学的方法によって調製され得る。例えば、Kufer et al(上記に引用される);Cao and Suresh,Bioconjugate Chemistry,9(6),635-644(1998);及びvan Spriel et al.,Immunology Today,21(8),391-397(2000)、並びにそれらの中に引用される参照文献を参照されたい。
【0103】
抗体をコードする又は抗体を担持する腫瘍溶解性ウイルス
腫瘍溶解性ウイルスは、優先的に、癌細胞を感染させ、死滅させる。本開示の抗体は、腫瘍溶解性ウイルスとともに使用され得る。或いは、本発明の抗体をコードする腫瘍溶解性ウイルスは、ヒトの身体に導入され得る。
【0104】
キメラ抗原受容体
抗TSLP scFvを含むキメラ抗原受容体(CAR)も、本明細書において提供され、この抗TSLP scFvは、本明細書に記載されるCDR及び重鎖/軽鎖可変領域を含む。
【0105】
抗TSLP CARは、(a)抗TSLP scFvを含む細胞外抗原結合ドメイン;(b)膜貫通ドメイン;及び(c)細胞内シグナル伝達ドメインを含み得る。
【0106】
CARは、新生受容体を小胞体に指向する、細胞外抗原結合ドメインのN末端におけるシグナルペプチド、及び受容体を結合のためにより多く利用できるようにする、細胞外抗原結合ドメインのN末端におけるヒンジペプチドを含有し得る。CARは、好ましくは、細胞内シグナル伝達ドメインにおいて、主要な細胞内シグナル伝達ドメイン及び1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。主に使用される、最も有効な主要な細胞内シグナル伝達ドメインは、ITAMを含むCD3-ζ細胞質ドメインであり、そのリン酸化が、T細胞活性化をもたらす。共刺激シグナル伝達ドメインは、CD28、CD137及びOX40などの共刺激タンパク質に由来し得る。
【0107】
CARは、T細胞増殖、持続性、及び抗腫瘍活性を促進する因子、例えば、サイトカイン、及び共刺激リガンドをさらに追加し得る。
【0108】
本明細書において提供されるCARを含む操作された免疫エフェクター細胞も提供される。ある実施形態において、免疫エフェクター細胞は、T細胞、NK細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、造血幹細胞、多能性幹細胞、又は胚性幹細胞である。ある実施形態において、免疫エフェクター細胞は、T細胞である。
【0109】
医薬組成物
別の態様において、本開示は、薬学的に許容される担体とともに製剤化される、本開示の1つ以上の抗体(又はその抗原結合部分、二重特異性体、免疫抱合体、CAR-免疫細胞、抗体をコードする若しくは抗体を担持する腫瘍溶解性ウイルス、又は抗体をコードする核酸分子)を含む医薬組成物を提供する。抗体(又はその抗原結合部分、若しくは二重特異性体)は、組成物が、2つ以上の抗体(又はその抗原結合部分、若しくは二重特異性体)を含むとき、別々に投与され得る。組成物は、1つ以上のさらなる薬学的に有効な成分、例えば、別の抗体又は薬剤、例えば、抗喘息薬、抗潰瘍性大腸炎薬、抗アトピー性皮膚炎薬、又は抗乾癬薬を任意に含有し得る。
【0110】
医薬組成物は、あらゆる賦形剤を含み得る。使用され得る賦形剤は、担体、表面活性剤、増粘剤又は乳化剤、固体結合剤、分散若しくは懸濁補助剤、可溶化剤、着色剤、香味剤、コーティング、崩壊剤、滑沢剤、甘味料、防腐剤、等張剤、及びそれらの組合せを含む。好適な賦形剤の選択及び使用が、Gennaro,ed.,Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Ed.(Lippincott Williams&Wilkins 2003)(その開示内容は、参照により本明細書に援用される)に教示されている。
【0111】
好ましくは、医薬組成物は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄又は表皮投与(例えば、注射又は注入による)に好適である。投与経路に応じて、有効成分は、酸の作用及びそれを不活性にし得る他の天然条件からそれを保護するための材料でコーティングされ得る。本明細書において使用される際の「非経口投与」という語句は、経腸及び局所投与以外の、通常注射による投与方法を意味し、限定はされないが、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、硬膜外並びに胸骨内注射及び注入を含む。或いは、本開示の抗体は、経口(non-parenteral)経路によって、例えば、局所、表皮又は粘膜投与経路、例えば、鼻腔内、経口、経膣、直腸、舌下又は局所的に投与され得る。
【0112】
医薬組成物は、滅菌水溶液又は分散体の形態であり得る。それらはまた、マイクロエマルジョン、リポソーム、又は他の高い薬物濃度に好適な規則的な構造で製剤化され得る。
【0113】
単一剤形を製造するために担体材料と組み合わされ得る有効成分の量は、治療される対象及び特定の投与方法に応じて変化し、一般に、治療効果を生じる組成物の量である。一般に、100%のうち、この量は、薬学的に許容される担体と組み合わせて、約0.01%~約99%の有効成分、好ましくは、約0.1%~約70%、最も好ましくは、約1%~約30%の有効成分の範囲である。
【0114】
投与レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供するために調整される。例えば、単回ボーラスが投与されてもよく、経時的に数回の分割投与で投与されてもよく、又は用量は、治療状況の緊急性により示されるとき比例的に減少若しくは増加され得る。投与の容易性及び投与量の均一性のため、非経口組成物を投与単位形態で製剤化することが特に有利である。本明細書において使用される際の投与単位形態は、治療される対象に対する単位投与量として適した物理的に分離した単位を指し;各単位は、必要な医薬担体とともに、所望の治療効果を生じるように計算された所定の量の有効成分を含有する。或いは、抗体は、あまり頻繁でない投与が必要とされる場合、徐放性製剤として投与され得る。
【0115】
組成物の投与のため、投与量は、例えば、約0.0001~100mg/kg宿主体重の範囲であり得る。治療計画は、例えば、週1回の投与を含み得る。
【0116】
本開示の抗TSLP抗体、又はその抗原結合部分、又は二重特異性体、CAR-免疫細胞、腫瘍溶解性ウイルス、免疫抱合体の「治療有効投与量」は、好ましくは、疾患の症状の重症度の低下、疾患の無症状期間の頻度及び持続時間の増加、又は疾患の苦痛に起因する障害若しくは身体障害の予防をもたらす。例えば、腫瘍を有する対象の治療について、「治療有効投与量」は、好ましくは、非治療対象と比べて、少なくとも約20%、より好ましくは、少なくとも約40%、さらにより好ましくは、少なくとも約60%、さらにより好ましくは、少なくとも約80%だけ腫瘍増殖を阻害する。治療有効量の治療用抗体は、腫瘍サイズを減少させるか、又は典型的にヒトであるか又は別の哺乳動物であり得る対象において症状を改善することができる。
【0117】
医薬組成物は、インプラント、経皮パッチ、及びマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤であり得る。生分解性、生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸が使用され得る。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照されたい。
【0118】
治療用組成物は、医療デバイス、例えば、(1)無針皮下注射デバイス(例えば、米国特許第5,399,163号明細書;同第5,383,851号明細書;同第5,312,335号明細書;同第5,064,413号明細書;同第4,941,880号明細書;同第4,790,824号明細書;及び同第4,596,556号明細書);(2)微小注入ポンプ(米国特許第4,487,603号明細書);(3)経皮デバイス(米国特許第4,486,194号明細書);(4)注入装置(米国特許第4,447,233号明細書及び同第4,447,224号明細書);並びに(5)浸透デバイス(米国特許第4,439,196号明細書及び同第4,475,196号明細書)(これらの開示内容は、参照により本明細書に援用される)によって投与され得る。
【0119】
特定の実施形態において、本開示のモノクローナル抗体は、インビボで適切な分布を確実にするため製剤化され得る。例えば、本開示の治療用抗体が、血液脳関門を通過することを確実にするために、それらは、リポソーム中で製剤化され得、これらは、特定の細胞又は器官への選択的輸送を促進するための標的分子をさらに含み得る。例えば米国特許第4,522,811号明細書;同第5,374,548号明細書;同第5,416,016号明細書;及び同第5,399,331号明細書;V.V.Ranade(1989)J.Clin.Pharmacol.29:685;Umezawa et al.,(1988)Biochem.Biophys.Res.Commun.153:1038;Bloeman et al.,(1995)FEBS Lett.357:140;M.Owais et al.,(1995)Antimicrob.Agents Chemother.39:180;Briscoe et al.,(1995)Am.J.Physiol.1233:134;Schreier et al.,(1994)J.Biol.Chem.269:9090;Keinanen and Laukkanen(1994)FEBS Lett.346:123;及びKillion and Fidler(1994)Immunomethods 4:273を参照されたい。
【0120】
本開示の使用及び方法
本開示の抗体又はその抗原結合部分、又は二重特異性分子、免疫抱合体、CAR-免疫細胞、抗体をコードする若しくは抗体を担持する腫瘍溶解性ウイルス、又は抗体をコードする核酸分子を含む組成物は、例えば、喘息、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎又は乾癬の治療を含む、多くのインビトロ及びインビボでの有用性を有する。抗体は、例えば、インビボで、これらの疾患を軽減するために、ヒト対象に投与され得る。
【0121】
別の態様において、本開示は、本開示の抗TSLP抗体、若しくはその抗原結合部分、又は二重特異性体、免疫抱合体、CAR-免疫細胞、抗体をコードする若しくは抗体を担持する腫瘍溶解性ウイルスが、対象における喘息、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎又は乾癬を軽減するのに有効な1つ以上のさらなる抗体と共投与される組合せ治療の方法を提供する。一実施形態において、本開示は、対象における喘息を治療するための方法であって、抗TSLP抗体(又はその抗原結合部分、特異的抗体、免疫抱合体、CAR-免疫細胞、抗体をコードする若しくは抗体を担持する腫瘍溶解性ウイルス、又は抗体をコードする核酸分子)及び1つ以上のさらなる抗体、例えば、抗TSLPR抗体、抗IL4抗体、抗IL4R抗体、抗IL13抗体、抗IL13R抗体、抗IL-5抗体、抗IL5R抗体、及び/又は抗IgE抗体を対象に投与することを含む方法を提供する。特定の実施形態において、対象はヒトである。
【0122】
TSLPシグナル伝達遮断はまた、喘息治療などの標準的な疾患治療とさらに組み合わされ得る。例えば、TSLPシグナル伝達遮断は、喘息治療について上述される抗体の投与、及びアレルゲンへの曝露の減少又は回避と組み合わされ得る。
【0123】
本明細書において説明される治療剤の組合せは、薬学的に許容される担体中の単一の組成物と同時に、又は薬学的に許容される担体中の各薬剤を含む別個の組成物として同時に投与され得る。別の実施形態において、治療剤の組合せは、連続して投与され得る。
【0124】
さらに、組合せ治療の2つ以上の用量が、連続して投与される場合、連続投与の順序は、投与の各時点で逆になり得るか又は同じ順序に保持され得、連続投与は、同時投与と組み合わされ得、又はそれらの任意の組合せである。
【0125】
本開示は、以下の実施例によってさらに例示され、これは、さらなる限定として解釈されるべきではない。本出願を通して引用される全ての図及び全ての参照文献、Genbank配列、特許及び公開特許出願の内容は、参照により本明細書に明示的に援用される。
【実施例】
【0126】
実施例1 ハイブリドーマ技術を用いたマウス抗TSLPモノクローナル抗体の生成
免疫化
マウスを、E Harlow,D.Lane,Antibody:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1998に記載されている方法にしたがって免疫化した。C末端にヒトIgG1 Fcタグを有する組換えヒトTSLPタンパク質(Biosion Inc.、Uniprot No.Q969D9のアミノ酸残基21~159)を、免疫原として使用した。ヒトTSLP-hisタンパク質(Biosion Inc.、Cat#P100273)を、抗血清力価を決定するため、及び抗原特異的抗体を分泌するハイブリドーマをスクリーニングするために使用した。免疫化投与量は、一次及び追加免疫の両方のために25μgのヒトTSLP-Fcタンパク質/マウス/注射を含んでいた。免疫応答を増加させるために、完全フロイントアジュバント及び不完全フロイントアジュバント(Sigma,St.Louis,Mo.,USA)を、一次及び追加免疫のためにそれぞれ使用した。簡潔には、まず、ボルテックスを用いてバイアル中でアジュバントを穏やかに混合することによって、アジュバント-抗原混合物を調製した。所望の量のアジュバントを、加圧滅菌された1.5mLの微小遠心分離管に移した。抗原を、0.25~0.34mg/mlの範囲の濃度を有するPBS又は生理食塩水中で調製した。次に、計算された量の抗原を、アジュバントとともに微小遠心分離管に加え、得られた混合物を、2分間にわたって穏やかにボルテックスすることによって混合して、油中水型エマルジョンを生成した。次に、アジュバント-抗原エマルジョンを、動物に注射するための適切なシリンジに吸い込ませた。合計で25μgの抗原を、150~200μlの体積で注射した。各動物を免疫化し、次に、抗血清力価に応じて3~4回追加接種した。良好な力価を有する動物に、融合前に腹腔内注射によって最終追加接種を与えた。
【0127】
ハイブリドーマ融合及びスクリーニング
マウス骨髄腫細胞株(SP2/0-Ag14、ATCC#CRL-1581)の細胞を培養して、融合直前に対数期段階に到達させた。免疫化マウスに由来する脾臓細胞を、Kohler G,and Milstein C,"Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity",Nature,256:495-497(1975)に記載される方法にしたがって、滅菌的に調製し、骨髄腫細胞と融合させた。続いて、融合された「ハイブリッド細胞」を、DMEM/20%のFCS/HAT培地中の96ウェルプレート中に分配した。生存しているハイブリドーマコロニーが、融合の7~10日後に顕微鏡で観察された。2週間後、各ウェルからの上清を、組換えヒトTSLP-hisタンパク質を用いて捕捉ELISAに供した。高特異性TSLP結合活性を示した抗体を産生する陽性ハイブリドーマクローンを、細胞株のクローン性を確実にするために限られた希釈によってサブクローニングし、次に、生成されたモノクローナル抗体を精製した。簡潔に述べると、プロテインAセファロースカラム(bestchrom(Shanghai)Biosciences製、Cat#AA0273)を、5~10カラム体積中でPBS緩衝液を用いて洗浄した。細胞上清を、カラムに通過させ、次に、タンパク質の吸光度がベースラインに達するまで、カラムを、PBS緩衝液を用いて洗浄した。カラムを、溶出緩衝液(0.1Mのグリシン-HCl、pH2.7)で溶離し、直ちに中和緩衝液(1MのTris-HCl、pH9.0)を含む1.5ml管に収集した。免疫グロブリンを含有する画分を、プールし、4℃で一晩、PBS中で透析した。続いて、精製されたモノクローナル抗体のインビトロ機能活性を、以下のように特性決定した。
【0128】
実施例2 BIACORE表面プラズモン共鳴を用いた例示的なマウス抗TSLPモノクローナル抗体の親和性決定
実施例1で生成された、精製抗TSLPマウスモノクローナル抗体(mAb)を、Biacore T200システム(GE healthcare,Pittsburgh,PA,USA)によって、結合親和性及び結合速度について特性決定した。
【0129】
簡潔に述べると、10μg/mLの濃度でCH3COONa緩衝液(Biocoreによって提供される)中のBiosionの社内で合成された組換えヒトTSLP-his(配列番号28)又はカニクイザルTSLP-hisタンパク質(配列番号29)を、Biacore(GE healthcare,Pittsburgh,PA,USA)によって提供される標準的なアミンカップリングキットを用いて、第一級アミンを介して、CM5チップ(GE healthcare #BR100530製のカルボキシメチルデキストラン被覆チップ)に共有結合した。バイオセンサー表面上の未反応部分を、エタノールアミンでブロックした。次に、連続希釈された精製抗TSLP抗体(100nMから出発して、HBS-EP+緩衝液中の2倍連続希釈)及びベンチマークとしてのテゼペルマブ(TSLP-BMとも呼ばれる、配列番号35及び36に記載される重鎖及び軽鎖アミノ酸を用いて社内で調製される、100nMから出発して、HBS-EP+緩衝液中の2倍連続希釈)をそれぞれ、50μL/分の流量でチップ上に流した。抗原-抗体結合速度を、4分間にわたって追跡し、解離速度を、13分間にわたって追跡した。結合及び解離曲線を、BIAcore評価ソフトウェアを用いて1:1Langmuir結合モデルに適合させ、KD、Ka及びKd値を決定し、以下の表2に示した。
【0130】
【0131】
全ての試験された抗TSLP抗体は、ヒトTSLPに特異的に結合し、ほとんどはベンチマークより高い結合親和性を有する。抗体D1C2H1H1はまた、サルTSLPに対する結合親和性を示した。
【0132】
実施例3 例示的なマウス抗TSLPモノクローナル抗体の結合能
全てのマウス抗TSLP抗体の結合活性を、捕捉ELISA及び間接ELISAによって決定した。
【0133】
捕捉ELISAについて、96ウェルマイクロプレートを、PBS中の100μlの2μg/mlのAffiniPureヤギ抗マウスIgG Fcγフラグメント特異的な抗体(Jackson Immuno Research、Cat#115-005-008)で被覆し、4℃で一晩インキュベートした。プレートを、洗浄緩衝液(PBS+0.05%のTween-20、PBST)で4回洗浄し、次に、37℃で2時間にわたって200μl/ウェルのブロッキングバッファー(PBST中5% w/vの無脂肪乳)でブロックした。プレートを再度洗浄し、37℃で40分間にわたって、100μlの、本開示の連続希釈された抗TSLP抗体、テゼペルマブ又はhIgG(Hualan Biological Engineering Inc.)、66.7nMから出発してPBST中2.5%の無脂肪乳中の5倍連続希釈とともにインキュベートし、次に、再度4回洗浄した。捕捉抗体を含有するプレートを、37℃で40分間にわたって、100μlのビオチン標識ヒトTSLP-hisタンパク質(配列番号28、社内で調製された、PBST中2.5%の無脂肪乳中0.23nM)とともにインキュベートし、4回洗浄し、37℃で40分間にわたって、ストレプトアビジンコンジュゲートHRP(PBST中1:10000希釈、Jackson Immuno Research、Cat#016-030-084、100μl/ウェル)とともにインキュベートした。最後の洗浄の後、プレートを、100μl/ウェルTMB(Innoreagents)とともにインキュベートした。反応を、50μl/ウェルの1MのH
2SO
4で、室温で15分後に停止させ、各ウェルの吸光度を、TMBについて450nm及び基準波長として630nmの二波長モードを用いて、マイクロプレートリーダーで読み取った。OD(450~630)値を、抗体濃度に対してプロットした。データを、Graphpad Prismソフトウェアを用いて分析し、EC
50値を報告した。いくつかの抗体の結果を、
図1A~1Bに示した。
【0134】
間接ELISAについて、96ウェルマイクロプレートを、4℃で一晩、炭酸塩/重炭酸塩緩衝液(pH9.6)中の100μlの2μg/mlのカニクイザルTSLP-hisタンパク質(配列番号29、社内で調製された)で被覆した。ELISAプレートを、洗浄緩衝液(PBS+0.05%のTween-20、PBST)で4回洗浄し、次に、37℃で2時間にわたって200μl/ウェルのブロッキングバッファー(PBST中5% w/vの無脂肪乳)でブロックした。プレートを再度洗浄し、37℃で40分間にわたって、100μlの、本開示の連続希釈された抗TSLP抗体、テゼペルマブ又はhIgG(66.7nMから出発してPBST中2.5%の無脂肪乳中の5倍連続希釈)とともにインキュベートした。ELISAプレートを、再度4回洗浄し、37℃で40分間にわたってPeroxidase AffiniPure F(ab')
2フラグメントヤギ抗マウスIgG、Fcγフラグメント特異的な抗体(PBST緩衝液中1:5000希釈、Jackson Immunoresearch、Cat#115-036-071、100μl/ウェル)とともにインキュベートした。最後の洗浄の後、プレートを、100μl/ウェルのTMB(Innoreagents)とともにインキュベートした。反応を、50μl/ウェルの1MのH
2SO
4で、室温で15分後に停止させ、各ウェルの吸光度を、TMBについて450nm及び基準波長として630nmの二波長モードを用いて、マイクロプレートリーダーで読み取った。OD(450~630)値を、抗体濃度に対してプロットした。データを、Graphpad Prismソフトウェアを用いて分析し、EC
50値を報告した。いくつかの抗体の結果を、
図2A~2Bに示した。
【0135】
データは、本開示のほとんどの抗体が、ヒト及びサルTSLPに特異的に結合したことを示した。1C5F12E9、D1D8H9F7及びD1C2H1H1のEmax(最大結合)及びEC
50は、
図1A~1Bに示されるように、ベンチマークのものと類似しており、ここで、D1D8H9F7は、より低いEC
50を有し、これは、それがより効率的にヒトTSLPに結合したことを示唆している。1C5F12Eが、ベンチマークと比較してサルTSLP結合アッセイにおけるより高いEmaxを示したことが、
図2A~2Bから分かる。
【0136】
実施例4 抗TSLP抗体における機能アッセイ
4.1 リガンドブロッキングELISA
TSLP-TSLPR/IL7R結合をブロックする全ての抗TSLP抗体の能力を、競合ELISAアッセイを用いて測定した。簡潔に述べると、PBS中1μg/mLで、100μlのヒトTSLPR-Fcタンパク質(配列番号30、社内で調製された)、及びPBS中1μg/mLで、100μlのヒトIL7Ra-Fcタンパク質(配列番号31、社内で調製された)を、4℃で一晩、96ウェルマイクロプレート上で被覆した。翌日、プレートを、洗浄緩衝液(PBS+0.05%のTween-20、PBST)で洗浄し、37℃で2時間にわたってPBST中5% w/vの無脂肪乳でブロックした。次に、プレートを、洗浄緩衝液を用いて再度洗浄した。
【0137】
抗TSLP抗体又は対照を、3倍連続希釈で、66.7nMから出発してビオチン標識ヒトTSLP-Fc(配列番号32、社内で調製された、PBST中2.5%の無脂肪乳中0.29nM)で希釈し、室温で40分間インキュベートした。次に、100μlの抗体/TSLP-Fc混合物を、TSLPR/IL7R被覆プレートに加えた。40分間にわたる37℃でのインキュベーションの後、プレートを、洗浄緩衝液を用いて4回洗浄した。次に、ストレプトアビジンコンジュゲートHRPを加え、37℃で40分間にわたってインキュベートして、TSLPR/IL7Rに結合されたビオチン標識ヒトTSLP-Fcを検出した。プレートを、洗浄緩衝液を用いて再度洗浄した。最後に、TMBを加え、反応を、1MのH
2SO
4を用いて停止させた。各ウェルの吸光度を、TMBについて450nm及び基準波長として630nmでの二波長モードを用いて、マイクロプレートリーダーで読み取り、次に、OD(450~630)値を、抗体濃度に対してプロットした。データを、Graphpad Prismソフトウェアを用いて分析し、IC
50値を報告した。いくつかの抗体の結果を、
図3A~3Bに示した。
【0138】
4.2 ベンチマークブロッキングELISA
ベンチマーク(テゼペルマブ)-ヒトTSLP結合をブロックする抗TSLP抗体の能力を、競合ELISAアッセイを用いて測定した。簡潔に述べると、PBS中の2μg/mLのテゼペルマブを、96ウェルマイクロプレート上で、100μl/ウェルで被覆し、4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートを、洗浄緩衝液(PBS+0.05%のTween-20、PBST)で洗浄し、37℃で2時間にわたってPBST中5% w/vの無脂肪乳でブロックした。
【0139】
一方、抗TSLP抗体又は対照を、4倍連続希釈で、40nMから出発してビオチン標識ヒトTSLP-Fc(配列番号32、PBST中2.5%の無脂肪乳中0.047nM)で希釈し、室温で40分間インキュベートした。次に、100μlの抗体/TSLP-Fc-ビオチン混合物を、ベンチマークで被覆したプレートに加えた。40分間にわたる37℃でのインキュベーションの後、プレートを、洗浄緩衝液を用いて4回洗浄した。次に、ストレプトアビジンコンジュゲートHRPを加え、プレートを、37℃で40分間インキュベートして、ベンチマークに結合されたビオチン標識ヒトTSLP-Fcを検出した。プレートを、洗浄緩衝液を用いて最後に洗浄した。TMBを加え、反応を、1MのH
2SO
4を用いて停止させた。各ウェルの吸光度を、TMBについて450nm及び基準波長として630nmでの二波長モードを用いて、マイクロプレートリーダーで読み取り、OD(450~630)値を、抗体濃度に対してプロットした。データを、Graphpad Prismソフトウェアを用いて分析し、IC
50値を報告した。いくつかの抗体の結果を、
図4A~4Bに示した。
【0140】
4.3 細胞ベースのリガンドブロッキングFACS
細胞表面TSLPR/IL7RへのTSLP-Fcタンパク質の結合をブロックする抗TSLP抗体の活性を、細胞表面ヒトTSLPR(uniprot No.Q9HC73.1のアミノ酸残基1~371、配列番号33)及びヒトIL7R(uniprot No.P16871.1のアミノ酸残基1~459、配列番号34)を発現する細胞株BAF3-3E6を用いて、フローサイトメトリー(FACS)アッセイにおいて評価した。BAF3細胞(iCell Bioscience Inc.、Cat#MIMCL-021)を、EcoRIとXbal部位との間にTSLPRコード配列が挿入されたpCMV-T-Pプラスミド及びHindIIIとXbal部位との間にIL7Rコード配列が挿入されたpCMV3-SPプラスミドでトランスフェクトすることによって、リポフェクタミン(lipofectamine)3000トランスフェクション試薬(Thermo Fisher)の説明書にしたがって、BAF3-3E6細胞株を調製した。
【0141】
簡潔に述べると、本開示の抗TSLP抗体、ベンチマーク又は陰性対照hIgG(静脈注射用のヒト免疫グロブリン(pH4)、Hualan Biological Engineering Inc.)を、30nMから出発して2倍連続希釈で、ヒトTSLP-Fc溶液(配列番号32、社内で調製された、FACS緩衝液中0.38nM)で希釈し、室温で40分間インキュベートした。BAF3-3E6細胞を、細胞培養フラスコから収集し、2回洗浄し、2% v/vのウシ胎仔血清(FACS緩衝液)を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で再懸濁させた。96ウェルプレート中で、ウェル当たり1×10
5個の細胞を、4℃で40分間にわたって100μl/ウェルの抗体/TSLP-Fc-ビオチン混合物とともにインキュベートした。細胞を、FACS緩衝液で2回洗浄し、次に加え、暗所で、4℃で40分間にわたって、100μl/ウェルのR-フィコエリトリンストレプトアビジン(FACS緩衝液中1:1000希釈、Jackson Immunoresearch、Cat#016-110-084)とともにインキュベートした。細胞を2回洗浄し、FACS緩衝液中で再懸濁させた。蛍光を、Becton Dickinson FACS Canto II-HTS機器を用いて測定した。データを、Graphpad Prismソフトウェアを用いて分析し、IC
50値を報告した。いくつかの抗体の結果を、
図5A~5Bに示した。
【0142】
4.4 細胞ベースの機能アッセイ
BAF3細胞増殖及び生存は、通常、IL-3に依存している。しかしながら、これらの細胞が、ヒトTSLPR及びヒトIL7Rを発現するように操作され、細胞培養培地に、TSLPが補充されるとき、それらは、IL-3なしで生存可能である。
【0143】
抗TSLP抗体を、細胞ベースの機能アッセイを用いることによって、TSLPR(配列番号33)/IL7R(配列番号34)を発現するBAF3-3E6細胞の増殖を阻害するそれらの生物活性についてさらに試験した。簡潔に述べると、10%のFBS(Gibco、Cat#10099-141)が補充された100μLのRPMI1640培地(Gibco、Cat#A10491-01)中で、対数期段階における8×l0
3個のBAF3-3E6細胞を、96ウェルプレート上で平板培養した。次に、50μLのヒトTSLP-hisタンパク質(配列番号28、社内で調製された、RPMI-1640中6.4ng/mLのpM)を、50μLの抗TSLP抗体又は対照(40μg/mLから出発する、培養培地中5倍連続希釈)と混合し、混合物を、室温で30分間インキュベートした。次に、抗体/TSLP-his混合物(100μL)を、BAF3-3E6細胞プレートに加え、37℃で72時間にわたってCO
2培養器中でインキュベートした。その後、細胞プレートを、37℃で10分間にわたって、Cell Titer-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay Kit(Promega、Cat#G7572、50μl/ウェル)とともにインキュベートした。化学発光を、Tecan Infinite(登録商標)200 Pro機器を用いて測定した。データを、Graphpad Prismソフトウェアを用いて分析し、IC
50値を報告した。いくつかの抗体の結果を、
図6A~6Bに示した。
【0144】
データは、全ての抗TSLP抗体が、ヒトTSLPR/IL7RへのヒトTSLP結合をブロックすることが可能であり、ブロッキング活性が、ベンチマークのものと同等であるか又はそれよりやや良好であったことを示した。
図3A~3Bに示されるように、競合ELISAにおいて、D1C2H1H1及び1C5F12E9のIC
50値は、ベンチマークのものより低く、これは、それらがTSLPR/IL7RへのTSLP結合をより効率的に阻害したことを示す。細胞ベースのリガンドブロッキングアッセイにおいて、
図5A~5Bに示されるように、抗体D1D8H9F7は、TSLP-TSLPR/IL7R結合における部分的ブロッキングを示した一方、抗体D1C2H1H1及び1C5F12E9は、ベンチマークと比較して同様のIC
50でTSLP-TSLPR/IL7R結合を完全に阻害した。
【0145】
図4A~4Bは、抗TSLP抗体D1D8H9F7が、ヒトTSLPへのベンチマーク結合をブロックすることができないことを示し、これは、それがベンチマークと比較して異なるエピトープに結合し得ることを示す。ベンチマーク-TSLP結合をブロックすることが可能であった残りの抗TSLP抗体は、ベンチマーク(テゼペルマブ)が結合したのと同じか又は同様のエピトープに結合し得る。
【0146】
さらに、3つの代表的な抗体のブロッキング曲線を示す
図6A~6Bに見られるように、全ての抗TSLP抗体は、TSLP-TSLPR/IL7R相互作用をブロックすることができ、低い抗体濃度で、TSLP経路遮断及びBAF3-3E6細胞死を引き起こした一方、ベンチマークは、高い抗体レベルでTSLP-TSLPR/IL7R相互作用をブロックした。
【0147】
実施例5 例示的なキメラ抗体の生成及び特性決定
上で試験される全ての抗体の重鎖及び軽鎖可変領域を、シーケンシングした。意外にも、同じ細胞融合ライブラリーでスクリーニングしたD1D8H9F7及びD1C2H1H1以外の抗体が、同じ重鎖可変領域及び軽鎖可変領域配列を有することが分かった。本発明者らは、次に、同じ細胞融合ライブラリーを再スクリーニングし、良好な特性を示す、選別された抗体が、同じ重鎖/軽鎖可変領域を有することが分かった。理論に拘束されるのとを望むものではないが、本発明者らは、このような重鎖/軽鎖可変領域を有するmAbが、優勢なものであったと考える。抗体1C5F12E9を、さらなる特性決定のための代表例として選別した。
【0148】
抗TSLPマウスmAb 1C5F12E9の重鎖及び軽鎖可変領域をそれぞれ、ヒトIgG1重鎖定常領域(配列番号12)及びヒトκ軽鎖定常領域(配列番号14)に、インフレームでクローニングし、ここで、可変領域のC末端は、対応する定常領域のN末端に連結された。ヒトIgG1重鎖定常領域に連結された重鎖可変領域をコードするヌクレオチドをそれぞれ含むベクター、及びヒトκ軽鎖定常領域に連結された軽鎖可変領域をコードするヌクレオチドをそれぞれ含むベクターを、1mg/mLのPEIで、1.1:1の軽鎖対重鎖構築物の比率で、50mlの293F懸濁細胞培養物中で一過性にトランスフェクトした。細胞上清を、振とうフラスコ中で6日後に収集し、沈降させて、細胞をペレット化し、次に、キメラ抗体を、細胞上清から精製した。上記の実施例及び後述される実施例におけるプロトコルにしたがって、捕捉ELISA、Octet親和性試験、細胞ベースのリガンドブロッキングFACS試験及び細胞ベースの機能アッセイにおいて、精製キメラ抗体を確認した。
【0149】
ヒトTSLPに対する精製キメラ1C5F12E9抗体の結合親和性を、Octetによって評価した。簡潔に述べると、APSバイオセンサ(ForteBio製)を、1時間にわたってPBSで予め浸漬し、次に、180秒間にわたってPBSを含むウェル中で浸漬した。次に、センサーを、760秒間にわたって泳動用緩衝液中5μg/mLで、ヒトTSLP-hisタンパク質(配列番号28、社内で調製された)を含むウェル中で浸漬し、次に、600秒間にわたってPBSを含むウェル中で浸漬した。その後、センサーを、600秒間にわたってHBS-EP+緩衝液(Biacoreによって提供される)を含むウェル中で浸漬した。最後に、センサーを、連続希釈されたマウス又はキメラ1C5F12E9抗TSLP抗体(16.67nMから出発して、HBS-EP+緩衝液中の2倍希釈)を含むウェル中で浸漬した。抗原-抗体結合速度を、2分間にわたって追跡し、解離速度を、3分間にわたって追跡した。結合及び解離曲線を、ForteBio Data Analysis 8.1評価ソフトウェアを用いて、1:1Langmuir結合モデルに適合させた。Ka、Kd及びKD値を決定し、以下の表3に要約した。キメラ1C5F12E9抗体の結合親和性は、マウス抗体及びベンチマークのものと同様であった。
【0150】
他の3つのアッセイの結果を、
図7~9に示した。キメラ1C5F12E9抗体は、マウス1C5F12E9抗体と同様のTSLP結合能、TSLP-TSLPR/IL7R相互作用に対する遮断活性及びBAF3-3E6細胞生存に対する阻害効果を示したが、ベンチマークより良好であった。
【0151】
【0152】
実施例6 抗TSLPマウスモノクローナル抗体のヒト化
マウス抗TSLP 1C5F12E9抗体を、ヒト化した。マウス抗体のヒト化を、以下に詳細に記載される十分に確立されたCDRグラフト方法を用いて行った。
【0153】
マウス1C5F12E9抗体のヒト化のための受容体フレームワークを選択するために、抗体の軽鎖及び重鎖可変領域配列を、ヒト免疫グロブリン遺伝子データベースに対してブラストした。マウス抗体との最も高い相同性を有するヒト生殖細胞系列を、ヒト化のための受容体フレームワークとして選択した。マウス抗体重鎖/軽鎖可変領域CDRを、選択されたフレームワークに挿入し、フレームワーク中の残基を、より多い候補重鎖/軽鎖可変領域を得るようにさらに変異させた。合計で18の例示的なヒト化1C5F12E9抗体、すなわち、hu1C5F12E9-V1~hu1C5F12E9-V18が得られ、その重鎖/軽鎖可変領域配列を表1に示した。
【0154】
ヒト化1C5F12E9重鎖可変領域並びにヒトIgG4重鎖((配列番号13)及びヒト化1C5F12E9軽鎖可変領域及びヒトκ軽鎖定常領域(配列番号14)をコードするヌクレオチド配列を含むベクターを、1mg/mlのPEIで、60%対40%の軽鎖対重鎖構築物の比率で、50mlの293F懸濁細胞培養物中で一過性にトランスフェクトした。ヒト化抗体を含有する細胞上清を、振とうフラスコ中で6日後に収集し、沈降させて、細胞をペレット化し、次に、18の抗体を、細胞上清から精製した。
【0155】
実施例7 例示的なヒト化抗TSLPモノクローナル抗体の特性決定
ヒトTSLPに対する例示的な精製ヒト化1C5F12E9抗体の結合親和性及び結合速度を、実施例2におけるプロトコルにしたがって、Biacore T200システム(GE healthcare,Pittsburgh,PA,USA)によって評価した。
【0156】
【0157】
Ka、Kd及びKD値を決定し、上記の表4に要約した。
【0158】
Biacoreによって測定されるKdの下限は、1.00E-05であり、1.00E-05未満のKdは、対応するセンサーグラム(sensorgram)から概算され得る。結果は、全てのヒト化1C5F12E9抗体が、テゼペルマブより高い、ヒトTSLPに対する結合親和性を有していたことを示した。
【0159】
実施例8 ヒト化抗TSLP抗体huC5F12E9-V8及びhuC5F12E9-V14の特性決定
ヒト化抗体hu1C5F12E9-V8及びhuC5F12E9-V14を、さらなる特性決定のために選択した。特に、それらを、実施例2~4に記載されるプロトコルにしたがって、Biacore、捕捉ELISA、間接ELISA、競合ELISA、細胞ベースのリガンドブロッキングFACS及び機能アッセイによって、ヒト及びカニクイザルTSLPに対する結合親和性/結合能及び他の機能について試験し、結果を、以下の表5並びに
図10~14、及び15A~15Bに示した。
【0160】
データは、hu1C5F12E9-V8及びhu1C5F12E9-V14が、親マウス及びキメラ抗体と同等のインビトロ活性を示したことを示した。
【0161】
ヒト化抗体hu1C5F12E9-V8及びhu1C5F12E9-V14が、ベンチマークと比較して、より高い、ヒトTSLPに対する結合親和性/結合活性、及びカニクイザルTSLPに対する同等の結合親和性/結合能を示したことが、表5、
図10及び
図11から分かる。
【0162】
図12及び14は、ヒト化抗体hu1C5F12E9-V8及びhu1C5F12E9-V14が、ヒトTSLPR/IL7RへのヒトTSLP結合をブロックすることが可能であったことを示した。
【0163】
図15A~15Bは、ヒト化抗体hu1C5F12E9-V8及びhu1C5F12E9-V14が、TSLP-TSLPR/IL7R相互作用をブロックすることができ、低い抗体濃度で、TSLP経路遮断及びBAF3-3E6細胞の死亡を引き起こすことを示した一方、ベンチマークは、高い抗体レベルで、このような能力を示した。
【0164】
【0165】
その後、ヒトIgG1重鎖定常領域(配列番号12)及びヒトκ定常領域(配列番号14)を有するヒト化抗体hu1C5F12E9-V8及びhu1C5F12E9-V14を、実施例2~4に記載されるプロトコル及び後述されるものにしたがって、Biacore、捕捉ELISA、競合ELISA、細胞ベースのリガンドブロッキングFACS、細胞ベースの機能アッセイ、細胞ベースのレポーターアッセイ及びプロテインサーマルシフトアッセイによって、ヒト及びカニクイザルTSLPに対する結合親和性/結合能及び他の機能について、ヒトIgG4重鎖定常領域(配列番号13)及びヒトκ定常領域(配列番号14)を有するhu1C5F12E9-V8及びhu1C5F12E9-V14と比較した。結果を、
図16~19、20A~20B、21A~21B及び22に示した。
【0166】
4つの抗TSLPヒト化抗体の熱安定性を決定するために、プロテインサーマルシフトアッセイを用いて、GloMelt(商標)Thermal Shift Protein Stability Kit(Biotium、Cat#33022-T)を用いて、Tm(溶融温度)を決定した。簡潔に述べると、GloMelt(商標)色素を解凍し、室温に到達させた。色素を含むバイアルをボルテックスし、遠心分離した。次に、10倍色素を、5μLの200倍色素を95μLのPBSに加えることによって調製した。2μLの10倍色素及び10μgのヒト化抗体を加え、PBSを、20μLの総反応体積になるまで加えた。色素及び抗体を含む管を、短時間にわたって回転させ、表6中のパラメータを有する融解曲線プログラムを用いて設定されたリアルタイムPCRサーモサイクラー(Roche、LightCycler 480 II)に入れた。
【0167】
【0168】
細胞ベースのレポーターアッセイにおいて、細胞表面ヒトTSLPR(配列番号33)及びヒトIL7R(配列番号34)を発現したレポーター細胞株HEK293T-TSLPR/IL7R/STAT5-Lucを使用した。HEK293T細胞(ATCC(登録商標)CRL-11268)を、EcoRIとXbal部位との間にTSLPRコード配列が挿入されたpCMV-T-Pプラスミド、HindIIIとXbal部位との間にIL7Rコード配列が挿入されたpCMV3-SPプラスミド及びpGL4.52[luc2P/STAT5RE/Hygro](Promega)でトランスフェクトすることによって、リポフェクタミン(lipofectamine)3000トランスフェクション試薬(Thermo Fisher)の説明書にしたがって、HEK293T-TSLPR/IL7R/STAT5-Luc細胞を、社内で調製した。
【0169】
簡潔に述べると、HEK293T-TSLPR/IL7R/STAT5-Luc細胞を、細胞培養フラスコから収集した。次に、10%のFBS(Gibco、Cat#10099-141)が補充された100μLのDMEM培地(Gibco、Cat#10566-016)中の5×104個の細胞を、96ウェル細胞培養プレート(Corning、Cat#30218026)上で平板培養した。一方、50μLのヒトTSLP-his(配列番号28、10%のFBSが補充されたDMEM培地中の160ng/mL)を、50μLの連続希釈された抗TSLP抗体hu1C5F12E9-V8(IgG1)、hu1C5F12E9-V8(IgG4)、hu1C5F12E9-V14(IgG1)、hu1C5F12E9-V14(IgG4)、及びテゼペルマブ(200μg/mLから出発して、10%のFBSが補充されたDMEM培地中の5倍希釈)とそれぞれ混合し、次に、室温で30分間インキュベートした。次に、抗TSLP抗体/TSLP-his混合物を、プレートに、100μl/ウェルで加え、プレートを、37℃で16~18時間にわたってCO2培養器中でインキュベートした。上清を、100μl/ウェル廃棄し、次に、ルシフェラーゼ検出試薬(50μL/ウェル、Promega、Cat#E6120)を加えた。10分後、プレートを、Tecan infinite 200Proプレートリーダーによる分析に供した。発光シグナルのデータを、Graphpad prismソフトウェアを用いて分析し、IC50値を報告した。
【0170】
図16、17、19、20A~20B、及び21A~21Bに示されるように、hu1C5F12E9-V8(IgG1)、hu1C5F12E9-V8(IgG4)、hu1C5F12E9-V14(IgG1)及びhu1C5F12E9-V14(IgG4)は、テゼペルマブと比較して、同等か又はやや良好なインビトロ活性を示した。特に、
図20A~20B及び
図21A~21B中のデータは、ヒト化抗体が、ベンチマークと比較してはるかに低い抗体濃度で、TSLP-TSLPR/IL7R相互作用をブロックすることができ、TSLP経路遮断及びBAF3-3E6細胞の死亡を引き起こすことを示した。
【0171】
図22に示されるように、hu1C5F12E9-V8(IgG1)、hu1C5F12E9-V8(IgG4)、hu1C5F12E9-V14(IgG1)及びhu1C5F12E9-V14(IgG4)の溶融温度(T1及びT2)はそれぞれ、(69.5℃、80℃)、(66.5℃、76℃)、(69.5℃、80℃)、(66.5℃、76℃)であった。
【0172】
本開示は、1つ以上の実施形態とともに上述されているが、本開示が、それらの実施形態に限定されないことが理解されるべきであり、説明は、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内に含まれ得る際、全ての代替例、修飾、及び均等物を包含することが意図される。本明細書に引用される全ての参照文献は、全体が参照によりさらに援用される。
【0173】
本出願中の配列が、以下に要約される。
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
このように、本開示の好ましい実施形態を詳細に説明してきたが、上記の段落によって定義される本開示は、その多くの明らかな変形が、本開示の趣旨又は範囲から逸脱せずに可能であるため、上記の説明に記載される特定の詳細に限定されないことが理解されるべきである。
【国際調査報告】