(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】多層水分散性物品
(51)【国際特許分類】
C08L 101/14 20060101AFI20221215BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20221215BHJP
C08K 5/053 20060101ALI20221215BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20221215BHJP
B32B 7/02 20190101ALI20221215BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
C08L101/14
C08L101/00
C08K5/053
B65D65/40 D
B32B7/02
B32B27/00 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523458
(86)(22)【出願日】2020-10-26
(85)【翻訳文提出日】2022-06-03
(86)【国際出願番号】 US2020057288
(87)【国際公開番号】W WO2021081475
(87)【国際公開日】2021-04-29
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508122415
【氏名又は名称】モノソル リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ナイト, ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ゲッツ, リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ロマイン, ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】西見 昭雄
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3E086AB01
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(57)【要約】
水溶性ポリマーおよび蝋を含む、多層水分散性物品、必要に応じてフィルムが本明細書に開示される。約5μm~約10mmの範囲の厚さを有する水分散性基材層と、基材層上の水分散性コーティング層であって、約0.5~約250μmの範囲の厚さを有するコーティング層とを含む多層水分散性物品であって、水分散性物品は、約60gH2O/m2/日~約300gH2O/m2/日またはそれ未満の水蒸気透過率(MVTR)を有する、多層水分散性物品も本明細書に開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層水分散性物品、必要に応じてフィルムであって、水溶性ポリマーを含むポリマー層と、蝋を含む蝋層とを備え、前記蝋が、前記水溶性ポリマーの100重量部に基づいて、約5PHR~約200PHRの範囲の量で存在し、前記水分散性物品が、約60gH
2O/m
2/日~約300gH
2O/m
2/日の水蒸気透過率(MVTR)を有する、多層水分散性物品。
【請求項2】
前記蝋が、パラフィン蝋、微結晶蝋、天然石油蝋、合成石油蝋、カルナバ蝋、カンデリラ蝋、蜜蝋および前述のいずれかの任意の混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の多層水分散性物品。
【請求項3】
前記ポリマー層または蝋層が、酸化ポリエチレン、鉱油、ウッドロジン、シェラック、トリグリセリド、亜麻仁油、トウモロコシ油、キャノーラ油、麻油、ヤシ油、未修飾ポリビニルアルコール、アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリビニルピロリドン、第四級アンモニウムポリマー、ポリ酢酸ビニル、エチレンビニルアルコール、アルギネート、多糖類、タンパク質、pH調整されたタンパク質、木材パルプ、非木材パルプ、不織繊維、天然発泡体、合成発泡体および前述のいずれかの誘導体の1またはそれより多くをさらに含む、請求項1または2に記載の多層水分散性物品。
【請求項4】
前記水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリビニルピロリドン、第四級アンモニウムポリマー、セルロースエーテルまたは前述のいずれかの任意の混合物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層水分散性物品。
【請求項5】
前記水溶性ポリマーが未修飾ポリビニルアルコールを含む、請求項4に記載の多層水分散性物品。
【請求項6】
前記水溶性ポリマーが、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、スルホン酸アミノプロピル、マレイン酸、無水マレイン酸、n-ビニルピロリドン、n-ビニルカプロラクタム、および前述のいずれかの誘導体の群中の1またはそれより多くで修飾された、アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコール樹脂を含む、請求項4または5に記載の多層水分散性物品。
【請求項7】
前記アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコールが、マレイン酸モノメチルで修飾されたポリビニルアルコールを含む、請求項6に記載の多層水分散性物品。
【請求項8】
前記アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコールが少なくとも0.5mol%のアニオン性基修飾を含む、請求項6または7に記載の多層水分散性物品。
【請求項9】
前記アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコールが約1.0~約4.0mol%のアニオン性基修飾を含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の多層水分散性物品。
【請求項10】
前記アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコールが約1.0~約3.5mol%のアニオン性基修飾を含む、請求項6~9のいずれか一項に記載の多層水分散性物品。
【請求項11】
前記ポリビニルアルコールが、少なくとも88mol%の加水分解度を有する、請求項4~10のいずれか一項に記載の多層水分散性物品。
【請求項12】
前記ポリビニルアルコールが、90mol%~99mol%未満の範囲の加水分解度を有する、請求項4~11のいずれか一項に記載の多層水分散性物品。
【請求項13】
前記ポリビニルアルコールが、20℃で少なくとも約6cPの4%水溶液粘度を有する、請求項4~12のいずれか一項に記載の多層水分散性物品。
【請求項14】
前記水溶性ポリマーがセルロースエーテルを含む、請求項4~13のいずれか一項に記載の多層水分散性物品。
【請求項15】
前記セルロースエーテルがカルボキシメチルセルロースを含む、請求項14に記載の多層水分散性物品。
【請求項16】
前記物品が、第1の面と、前記第1の面の反対側に位置する第2の面とを備え、前記第1の面が前記ポリマー層を備え、前記第2の面が前記蝋層を備える、請求項1~15のいずれか一項に記載の多層水分散性物品。
【請求項17】
前記水分散性物品が、内部パウチ容積に面する内面と前記内面の反対側に位置する外面とを有する、前記内部パウチ容積を規定するパウチの形態であり、前記蝋層が、前記パウチの前記外面の少なくとも一部を形成する、請求項1~16のいずれか一項に記載の多層水分散性物品。
【請求項18】
前記水分散性物品が、内部パウチ容積に面する内面と前記内面の反対側に位置する外面とを有する、前記内部パウチ容積を規定するパウチの形態であり、前記蝋層が、前記パウチの前記内面の少なくとも一部を形成する、請求項1~16のいずれか一項に記載の多層水分散性物品。
【請求項19】
前記ポリマー層と前記蝋層の間に配置された中間領域を備え、前記中間領域は、前記水溶性ポリマーと前記蝋の混合物を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の多層水分散性物品。
【請求項20】
前記ポリマー層または前記蝋層が可塑剤をさらに含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の多層水分散性物品。
【請求項21】
前記可塑剤が、グリセロール、ジグリセロール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、最大MW400のポリエチレングリコール、ソルビトール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エタノールアミン、トリメチロールプロパン(TMP)、ポリエーテルポリオール、イソマルト、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、アドニトール、ズルシトール、ペンタエリスリトール、マンニトール、または前述のいずれかの組合せを含む、請求項20に記載の多層水分散性物品。
【請求項22】
前記ポリマー層または前記蝋層が、充填剤、界面活性剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、スリップ剤、分散剤、または前述のいずれかの組合せをさらに含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の多層水分散性物品。
【請求項23】
前記可塑剤、前記充填剤、前記界面活性剤、前記ブロッキング防止剤、前記酸化防止剤、前記スリップ剤、前記分散剤、または前記のいずれかの組合せが、前記水溶性ポリマーと混合される、請求項21または22に記載の多層水分散性物品。
【請求項24】
前記蝋が、約5重量%~約30重量%の蝋を含む蝋エマルジョンを含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の多層水分散性物品。
【請求項25】
前記蝋が、パラフィン蝋、蜜蝋、またはこれらの組合せを含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の多層水分散性物品。
【請求項26】
前記蝋が、2またはそれを超える異なる蝋の混合物を含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の多層水分散性物品。
【請求項27】
前記蝋が、前記蝋の総重量に基づいて、約10重量%~約90重量%のパラフィン蝋および約10重量%~約90重量%の蜜蝋を含む、請求項25または26に記載の多層水分散性物品。
【請求項28】
前記蝋が、約40℃~約100℃の範囲の融点を有する、請求項1~27のいずれか一項に記載の多層水分散性物品。
【請求項29】
前記物品が、約60gH
2O/m
2/日~約250gH
2O/m
2/日の範囲の水蒸気透過率(MVTR)を有する、請求項1~28のいずれか一項に記載の多層水分散性物品。
【請求項30】
前記物品が、約60gH
2O/m
2/日~約205gH
2O/m
2/日の範囲の水蒸気透過率(MVTR)を有する、請求項1~29のいずれか一項に記載の多層水分散性物品。
【請求項31】
前記物品が、約60gH
2O/m
2/日~約150gH
2O/m
2/日の範囲の水蒸気透過率(MVTR)を有する、請求項1~30のいずれか一項に記載の多層水分散性物品。
【請求項32】
前記物品が、約60gH
2O/m
2/日~約100gH
2O/m
2/日の範囲の水蒸気透過率(MVTR)を有する、請求項1~31のいずれか一項に記載の多層水分散性物品。
【請求項33】
前記水溶性ポリマーが、未修飾ポリビニルアルコール樹脂とカルボキシメチルセルロースの混合物を含み、前記蝋が、蜜蝋と、ポリソルベート80と、水とを含む蝋エマルジョンを含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の多層水分散性物品。
【請求項34】
多層水分散性物品を作製する方法であって、
一次組成物を提供するために、水溶性ポリマーと蝋エマルジョンを混合することと、
前記多層水分散性物品を提供するために前記一次組成物を注型または押出成形することと、
を含み、前記水分散性物品は、約60gH
2O/m
2/日~約300gH
2O/m
2/日の水蒸気透過率(MVTR)を有する、方法。
【請求項35】
前記水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリビニルピロリドン、四級アンモニウムポリマーおよびセルロースエーテルの群中の1またはそれより多くから選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記水溶性ポリマーが未修飾ポリビニルアルコールを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記水溶性ポリマーが、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、スルホン酸アミノプロピル、マレイン酸、無水マレイン酸、n-ビニルピロリドン、n-ビニルカプロラクタム、および前述のいずれかの誘導体の群中の1またはそれより多くで修飾された、アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコール樹脂を含む、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
前記アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコールが少なくとも0.5mol%のアニオン性基修飾を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコールが約1.0~約4.0mol%のアニオン性基修飾を含む、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
前記アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコールが約1.0~約3.5mol%のアニオン性基修飾を含む、請求項37~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記ポリビニルアルコールが、少なくとも88mol%の加水分解度を有する、請求項35~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記ポリビニルアルコールが、90mol%~99mol%未満の範囲の加水分解度を有する、請求項35~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記ポリビニルアルコールが、20℃で少なくとも約6cPの4%水溶液粘度を有する、請求項35~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記水溶性ポリマーがセルロースエーテルを含む、請求項35~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記セルロースエーテルがカルボキシメチルセルロースを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記蝋エマルジョンが、パラフィン蝋、蜜蝋、またはこれらの組合せを含む、請求項34~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記蝋エマルジョンが、前記蝋エマルジョンの総重量に基づいて、約5重量%~約30重量%の範囲の量で前記パラフィン蝋、前記蜜蝋、またはこれらの組合せを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記一次組成物を提供するために、前記水溶性ポリマーおよび前記蝋エマルジョンを、可塑剤、充填剤、界面活性剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、スリップ剤および分散剤の群中の1またはそれを超える追加成分と混合することをさらに含む、請求項34~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記可塑剤が、グリセロール、ジグリセロール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、最大MW400のポリエチレングリコール、ソルビトール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エタノールアミン、トリメチロールプロパン(TMP)、ポリエーテルポリオール、イソマルト、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、アドニトール、ズルシトール、ペンタエリスリトール、マンニトール、または前述のいずれかの組合せを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記可塑剤が、ソルビトール、キシリトール、またはこれらの組合せを含む、請求項48または49に記載の方法。
【請求項51】
前記可塑剤が、前記水溶性ポリマーの100重量部に基づいて、約10PHR~約25PHRの範囲の量で前記一次組成物中に存在する、請求項48~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記蝋エマルジョンが、前記水溶性ポリマーの100重量部に基づいて、約70PHR~約200PHRの範囲の量で前記一次組成物中に存在する、請求項34~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記蝋エマルジョンが、前記水溶性ポリマーの100重量部に基づいて、約90PHR~約120PHRの範囲の量で前記一次組成物中に存在する、請求項52に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2019年10月25日に出願された米国仮特許出願第62/926,293号の恩典を主張し、その開示全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
開示の分野
本開示は、一般に、多層水分散性物品などの水分散性物品に関する。特に、本開示は、水溶性ポリマーと蝋を含む水分散性物品に関する。より具体的には、本開示は、水溶性ポリマーを含む水分散性基材層または材料と、前記基材層または材料の表面上に配置または配列された水分散性コーティング層または材料とを有する多層水分散性物品に関する。本開示は、水分散性物品であって、前記物品は、約20gH2O/m2/日またはそれ未満、例えば10gH2O/m2/日またはそれ未満の水蒸気透過率(MVTR)を有する、水分散性物品に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
水溶性および水分散性物品は、送達されるべき組成物の分散、注入、溶解および投与を単純化するための包装として一般的に使用されている。消費者は、バケツ、シンクまたは水を保持するのに適した任意の容器などの混合容器に包装された組成物を直接添加することができる。有利には、これにより、消費者が組成物を測定する必要性を除去しながら、正確な投与が提供される。包装された組成物は、材料を注ぐまたはすくい取るなど、製品容器からの組成物の分配に伴う混乱も低減し得る。要するに、可溶性および分散性の予め測定された包装または物品は、様々な用途における消費者使用の利便性を提供する。
【0004】
現在市販されている包装を作製するために使用される水分散性物品は、刺激の強い化学物質またはその他水の存在によって影響を受ける材料、例えば吸湿性組成物または水によって活性化される組成物を含有するのに有用であろう。特に、水の存在下で活性化する成分である酵母などの材料を含有することができる単位用量パッケージまたはパウチは、酵母が意図的に活性化されるまで水分から隔てられるので、工業規模のベーキングにおいて特に有利であろう。さらに、刺激の強い化学物質を保持することができる単位用量パウチは、消費者をそのような化学物質と直接接触しないように保護するのに特に有利であろう。しかしながら、現在、これらの用途に使用される水溶性ポリマーは、その中に含有される刺激の強い化学物質に長時間さらされた後に不完全に溶解する可能性があり、またはその中に含有される成分へ環境由来の水分を透過させる可能性がある。このような問題は、パウチが、例えば、塩素化化合物などの激しい酸化性化合物、または酵母、砂糖もしくは塩などの食品成分を含有するために使用される場合に特に生じ得る。
【0005】
したがって、刺激の強い化学物質および/または水分の存在によって影響を受け得るその他の材料を保持することができるが、前記化学物質および/または材料と接触した後も水分散性を保つ水分散性物品が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
本開示の一態様は、水溶性ポリマーと蝋とを含む多層水分散性物品、必要に応じてフィルムであって、前記蝋は、前記水溶性ポリマーの100重量部に基づいて、約5PHR~約30PHRの範囲の量で存在し、前記水分散性物品は、約20gH2O/m2/日またはそれ未満の水蒸気透過率(MVTR)を有する、多層水分散性物品を提供する。
【0007】
本開示の別の態様は、多層水分散性物品を作製する方法であって、一次組成物を提供するために、水溶性ポリマーと蝋エマルジョンを混合することと、前記多層水分散性物品を提供するために前記一次組成物を注型または押出成形することと、を含み、前記水分散性物品は、約20gH2O/m2/日またはそれ未満の水蒸気透過率(MVTR)を有する、方法を提供する。
【0008】
本開示の別の態様は、多層水分散性物品を提供し、約5~約400μmの範囲の厚さを有する水分散性基材層と、基材層上の水分散性コーティング層であって、約0.5~約100μmの範囲の厚さを有するコーティング層と、を含み、多層水分散性物品は20gH2O/m2/日またはそれ未満、例えば10gH2O/m2/日またはそれ未満の水蒸気透過率(MVTR)を有する。
【0009】
本開示の別の態様は、多層水分散性物品を提供し、約0.5~約10mmの範囲の厚さを有する水分散性基材層と、基材層上の水分散性コーティング層であって、約0.5~約250μmの範囲の厚さを有するコーティング層と、を含み、多層水分散性物品は20gH2O/m2/日またはそれ未満、例えば10gH2O/m2/日またはそれ未満の水蒸気透過率(MVTR)を有する。
【0010】
本開示の別の態様は、水分散性物品を作製する方法を提供し、約0.5~約10mmの範囲の厚さを有する水分散性基材層を提供することと;約20℃~200℃の範囲の温度で、水分散性パラフィン蝋、酸化ポリエチレン、微結晶蝋、鉱油、天然石油蝋、合成石油蝋、ウッドロジン、カルナバ蝋、カンデリラ蝋、蜜蝋、シェラック、トリグリセリド、亜麻仁油、トウモロコシ油、キャノーラ油、麻油、ヤシ油、前述のいずれかの誘導体、または前述のいずれかの混合物を含む水分散性コーティングを提供すること;その上にコーティング層を有する基材層を提供するために、基材層の表面をコーティングと接触させることであって、コーティング層は約0.5~約250μmの範囲の厚さを有する、接触させることと;必要に応じて、前記コーティング層を冷却および/または乾燥させることと;それによって、多層水分散性物品を提供することとを含み、水分散性基材層および前記水分散性コーティング層は、20gH2O/m2/日またはそれ未満、例えば10gH2O/m2/日またはそれ未満の水蒸気透過率(MVTR)を有する多層水分散性物品を提供するように選択される。
【0011】
本開示の別の態様は、水分散性物品を作製する方法を提供し、約0.5~約10mmの範囲の厚さを有する水分散性基材層を提供することと;約0.5~約250μmの範囲の厚さを有するコーティング層を提供するために、水分散性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリビニルピロリドン、四級アンモニウムポリマー、ポリ酢酸ビニル、エチレンビニルアルコール、アルギネート、多糖類、前述のいずれかの誘導体、または前述のいずれかの混合物を含む水分散性コーティング層を提供することと;多層水分散性物品を提供するために、コーティング層を基材層と接触させることであって、水分散性基材層および水分散性コーティング層は、20gH2O/m2/日またはそれ未満、例えば10gH2O/m2/日またはそれ未満の水蒸気透過率(MVTR)を有する多層水分散性物品を提供するように選択される、接触させることとを含む。
【0012】
本明細書中に記載される組成物、物品および方法について、必要に応じて存在する特徴(その成分および組成範囲が含まれるが、これらに限定されない)は、本明細書中に提供される種々の態様、実施形態および実施例から選択されることが意図される。
【0013】
さらなる態様および利点は、以下の詳細な説明の検討から当業者には明らかであろう。物品、パウチ、およびそれらの作製方法は、様々な形態での実施形態が可能であるが、以下の説明は、本開示が例示的であり、本発明を本明細書に記載の特定の実施形態に限定することは意図されないことを理解した上で、特定の実施形態を含む。
【0014】
本開示の理解をさらに容易にするために、1つの図面が本明細書に添付されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、水溶性ポリマーを含むポリマー層10と、蝋を含む蝋層20と、前記水溶性ポリマーと前記蝋の混合物を含む中間領域30とを含む本開示の物品の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
複数の実施形態において、本開示は、水溶性ポリマーと蝋とを含む多層水分散性物品を提供する。複数の実施形態において、本開示は、ポリマー層(例えば、水溶性ポリマーを含む)と蝋層(例えば、蝋を含む)とを含む多層水分散性物品を提供する。本明細書に記載されているように、物品は多層水分散性物品である。本明細書で使用される「多層水分散性物品」という用語は、別個の自己支持性基材層をコーティング層でコーティングして多層物品を提供することを含むプロセスによって調製された物品を指すことができる。このプロセスにもかかわらず、このようにして調製された物品は、分離した(discrete)またはその他別個の(distinct)層を有していなくてもよい、すなわち、コーティング層は、基材層の表面にもつれ合い、融合し、絡み合い、一体化され、またはその他結び付けられ、基材層自体と共に物品の水蒸気透過率に寄与することができる相互作用性のバリアを基材層上に提供することができることを当業者は理解すべきである。これに代えてまたはこれに加えて、「多層水分散性物品」という用語は、単一の組成物中で成分(例えば、基材および/またはコーティング層を構成する成分)を一緒に混合し、その後、前記単一の組成物から物品を注型、押出成形またはその他形成(例えば、成形)することを含む過程によって調製された物品を指すことができる。この過程によって形成された物品は、いくつかの構成要素が物品を通って物品の表面に移動して、物品の表面上に多層の「擬似コーティング」を付与する「ブルーミング効果(blooming effect)」を受けることができる。有利には、本開示の物品、例えば水分散性フィルムは、コーティング材料を含まない水分散性フィルムと比較して、成形性および密封特性(例えば、パウチの形成および密封)、ならびに引張特性を含むがこれらに限定されない、実質的に維持または改善された機能的特性を示すことができる。さらに有利には、物品のMVTRは、長期間(例えば、貯蔵寿命)維持することができるが、使用時に容易に分散することができる。
【0017】
適切な物品の例には、フィルム、容器、およびフィルムから作られた物体(例えば、単位用量パウチ、包装)、ならびに瓶、クラムシェル、箱などの射出成形可能な物体が含まれ得るが、これらに限定されない。
基材層およびコーティング層を含む多層水分散性物品
【0018】
本開示の一態様は、フィルムまたは瓶などの多層水分散性物品であって、約5~約400μmの範囲の厚さを有する水分散性基材層と、基材層上の水分散性コーティング層とを含み、コーティング層は約0.5~約100μmの範囲の厚さを有し、前記水分散性物品は、約20gH2O/m2/日またはそれ未満、例えば10gH2O/m2/日またはそれ未満の水蒸気透過率(MVTR)を有する、多層水分散性物品を提供する。
【0019】
基材層およびコーティング層は、それぞれが水分散性または水溶性であり、かつ、基材層およびコーティング層から形成される多層物品が水分散性または水溶性であれば、特に限定されない。本明細書で使用される場合、「水溶性」とは、本明細書に記載されている溶解および崩壊試験MSTM205に従って、300秒後に、ビーカー溶液中に視認可能な粒子または未溶解断片の物品および/もしくは層が存在しないことを意味する。すなわち、水溶性物品は、300秒後にスライドマウント内に約0%残存する、本明細書に記載されるパーセント残留を有する。本明細書で使用される場合、「水分散性」とは、本明細書に記載の溶解および崩壊試験MSTM205に従って、300秒後に、ビーカー溶液中に物品および/または層のいくつかの視認可能な粒子または未溶解断片が存在し得ることを意味する。すなわち、水分散性物品は、300秒後にスライドマウント内に約25%またはそれ未満残存する、本明細書に記載されるパーセント残留を有する。
基材層
【0020】
複数の実施形態において、基材層は、水分散性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリビニルピロリドン、第四級アンモニウムポリマー、アルギネート、多糖類、タンパク質、pH調整されたタンパク質、木材パルプ、非木材パルプ、不織繊維、天然発泡体、合成発泡体、前述のいずれかの誘導体、または前述のいずれかの混合物を含む。
【0021】
複数の実施形態において、基材層は、ポリビニルアルコール(PVOH)を含む。ポリビニルアルコールは、通常加水分解または鹸化と呼ばれるポリ酢酸ビニルのアルコール分解によって一般に調製される合成樹脂である。実質的に全ての酢酸基がアルコール基に変換された完全に加水分解されたPVOHは、約140°F(約60℃)を超える温度で熱水中にのみ溶解する強度に水素結合された高結晶性ポリマーである。ポリ酢酸ビニルの加水分解後に十分な数の酢酸基を残存させる場合、すなわちPVOHポリマーが部分的に加水分解される場合、ポリマーは、より弱く水素結合され、より結晶性が低く、約50°F(約10℃)未満の温度で、一般に冷水中に可溶性である。このように、部分的に加水分解されたポリマーは、PVOHコポリマーであるビニルアルコール-酢酸ビニルコポリマーであるが、一般にホモポリマーPVOHまたは未修飾PVOHと呼ばれる。
【0022】
複数の実施形態において、基材層は、非修飾ポリビニルアルコールを含む。複数の実施形態において、基材層は、アニオン性基で修飾されたPVOHを含む。アニオン性基で修飾されたPVOHは、ポリビニルアルコールとアニオン性基との共重合体であり得る。基材層中に存在するPVOH樹脂は、1またはそれを超えるPVOHポリマーを含むことができ、または単一のPVOHポリマーからなり、もしくは単一のPVOHポリマーから本質的になることができる。
【0023】
基材層がアニオン性基で修飾されたポリビニルアルコールを含む場合、PVOHは、酢酸ビニル、マレイン酸、マレイン酸モノアルキル、マレイン酸ジアルキル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、無水マレイン酸、フマル酸、フマル酸モノアルキル、フマル酸ジアルキル、フマル酸モノメチル、フマル酸ジメチル、イタコン酸、イタコン酸モノメチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸無水物、カルボン酸、スルホン酸アミノプロピル、n-ビニルピロリドン、n-ビニル-カプロラクタム、上記のいずれかのアルカリ金属塩、上記のいずれかのエステル、上記のいずれかの誘導体、または上記のいずれかの組み合わせから選択されるアニオン性基で修飾することができる。必要に応じて、ポリビニルアルコールは、マレイン酸、マレイン酸モノアルキル、マレイン酸ジアルキル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、無水マレイン酸、前述のいずれかのアルカリ金属塩、前述のいずれかのエステル、および前述のいずれかの組み合わせの1またはそれより多くから選択されるアニオン性基で修飾することができる。さらに必要に応じて、ポリビニルアルコールは、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、無水マレイン酸、上記のいずれかのアルカリ金属塩、上記のいずれかのエステル、および上記のいずれかの組み合わせからなるアニオン性基で修飾することができる。
【0024】
基材層がアニオン性基で修飾されたPVOHを含む場合、修飾の程度は特に限定されない。複数の実施形態において、1またはそれを超えるアニオン性基は、約0.5mol%~約10mol%、約1mol%~約9mol%、約1.5mol%~約8mol%、約2mol%~約6mol%、約3mol%~約5mol%、または約1mol%~約4mol%、例えば、種々の実施形態において、少なくとも約0.5、約1.0、約1.5、約2.0、約2.5、約3.0、約3.5もしくは約4.0mol%および/または多くとも約3.0、約4.0、約4.5、約5.0、約6.0、約8.0もしくは約10mol%の範囲の量でPVOH中に存在する。複数の実施形態において、アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコールは、少なくとも約0.5mol%の修飾を含む。複数の実施形態において、アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコールは、約1.0mol%~約4.0mol%の修飾を含む。複数の実施形態において、アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコールは、約1.0mol%~約3.5mol%の修飾を含む。
【0025】
複数の実施形態において、PVOH樹脂の量は、基材層中に存在する場合、基材層の重量に基づいて、少なくとも約50重量%、約55重量%、約60重量%、約65重量%、約70重量%、約75重量%、約80重量%、約85重量%もしくは約90重量%および/または多くとも約60重量%、約70重量%、約80重量%、約90重量%、約95重量%または約99重量%の範囲であり得る。
【0026】
複数の実施形態において、基材層の総PVOH樹脂含有量は、未修飾PVOHまたはアニオン性基で修飾されたPVOHのいずれかとして存在する場合、少なくとも約80mol%、約84mol%、約85mol%、約88mol%または約90mol%および多くとも約99.7mol%、約99mol%、約98mol%、約96mol%または約80mol%、例えば、約80mol%~約99.7mol%、約84mol%~約90mol%、約85mol%~約88mol%、約86.5mol%~約88mol%、約88mol%~約90mol%、約94mol%~約98mol%、約85mol%~約99.7mol%、約87mol%~約98mol%、約89mol%~約97mol%、または約90mol%~約96mol%の範囲の、例えば約88mol%、約90mol%、約92mol%、約94mol%または約96mol%の加水分解度(D.H.またはDH)を有することができる。本明細書で使用される場合、加水分解度は、ビニルアルコール単位に変換された酢酸ビニル単位のモル百分率として表される。複数の実施形態において、PVOHは、少なくとも88mol%の加水分解度を有する。複数の実施形態において、PVOHは、少なくとも90mol%の加水分解度を有する。複数の実施形態において、PVOHは、99mol%未満の加水分解度を有する。
【0027】
PVOHポリマーの粘度(μ)は、BS EN ISO 15023-2:2006 Annex E Brookfield Test methodに記載されているように、ULアダプタを備えたBrookfield LV型粘度計を使用して、新しく作られた溶液を測定することによって決定される。4%ポリビニルアルコール水溶液の20℃における粘度を記載することが国際的な慣例である。本明細書においてセンチポアズ(cP)で指定された全ての粘度は、特に明記しない限り、20℃での4%ポリビニルアルコール水溶液の粘度を指すと理解されるべきである。同様に、ポリマーが特定の粘度を有する(または有さない)と記載されている場合、特に明記しない限り、指定された粘度は、対応する分子量分布を本質的に有するポリマーの平均粘度であることを意図する。さらに、樹脂が1またはそれを超えるPVOHポリマーのブレンドを含み、樹脂/ブレンドが特定の粘度を有する(または有さない)と記載されている場合、特に明記しない限り、指定された粘度は、対応する重量平均分子量分布を本質的に有する樹脂/混合物の重量平均粘度であることを意図する。
【0028】
基材層がPVOHを含む実施形態において、PVOHは、少なくとも約5cP、約6cP、約8cP、約10cP、約12cP、約13cP、約13.5cP、約14cP、約15cP、約16cP、約17cP、約18cP、約19cPまたは約20cP、多くとも約30cP、約28cP、約27cP、約26cP、約24cP、約22cP、約20cP、約19cP、約18cPまたは約17.5cP、例えば、約10cP~約30cP、または約13cP~約27cP、または約13.5cP~約20cP、または約18cP~約22cP、または約14cP~約19cP、または約16cP~約18cP、または約17cP~約16cPの範囲の、例えば23cP、または20cP、または16.5cPの粘度平均を有することができる。PVOHの粘度がPVOHの重量平均分子量
【数1】
と相関することは当技術分野で周知であり、しばしば粘度は
【数2】
の代用として使用される。
【0029】
基材層中で使用することができる他の水分散性ポリマーには、PVOHホモポリマー(または未修飾PVOH)と呼ばれることもあるビニルアルコール-酢酸ビニルコポリマー、ポリ酢酸ビニル、エチレンビニルアルコール、ポリアクリラート、ポリ(メタ)アクリラート、水分散性アクリラートコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアルキレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸およびその塩、ポリメタクリル酸、ポリカルボン酸およびその塩、ポリアミノ酸、ポリアミド、ゼラチン、四級アンモニウムポリマー、ポリメタクリラート、および前述のいずれかの組み合わせが含まれ得るが、これらに限定されない。このような水分散性ポリマーは、PVOHであろうとまたはPVOH以外であろうと、様々な供給源から市販されている。
【0030】
基材層は、グアーガム、アラビアガム、キサンタンガム、カラギーナン、デンプン、セルロース、セルロースエーテル(カルボキシメチルセルロースなど)、セルロースエステル、セルロースアミド、グリコーゲン、キチンを含むがこれらに限定されない多糖類などの水分散性天然ポリマー、化工デンプン、エトキシル化デンプンおよびヒドロキシプロピル化デンプンを含むがこれらに限定されない水分散性ポリマー誘導体、前述のもののコポリマーおよび前述のいずれかの組み合わせを含むことができる。
【0031】
基材層はタンパク質を含むことができる。複数の実施形態において、基材層はpH調整されたタンパク質を含む。適切なタンパク質の例には、大豆、ホエイ、カゼイン、カゼイナートおよびプララン(pullalan)が含まれるが、これらに限定されない。これらのタンパク質のそれぞれは、pH調整されてもよくまたはされなくてもよく、本開示による基材層になお適切であり得る。
【0032】
基材層は、木材パルプおよび非木材パルプから部分的に作製された水分散性紙を含むことができる。複数の実施形態において、基材層は木材パルプを含む。木材パルプの供給源の適切な例としては、針葉樹および広葉樹からの木材が挙げられるが、これらに限定されない。複数の実施形態において、基材層は、非木材パルプを含む。非木材パルプの供給源の適切な例には、麻、リンター、ケナフ、バガスおよびマニラ麻が含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
基材層が木材パルプまたは非木材パルプを含む実施形態において、基材層は、可塑剤、天然ポリマー、水分散性ポリマー、結合剤、界面活性剤および/またはアルカリ金属化合物などの追加の補助剤をさらに含むことができる。
【0034】
水分散性紙の組成物の例は、当技術分野で周知であり、例えば、米国特許第9,388,532号、米国特許第5,935,384号、米国特許第7,758,724号、米国特許出願公開第2005/0092451号、欧州特許第0 372 388 B1号、欧州特許出願公開第0 609 808 A1号、および米国特許第3,034,922号に教示されており、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
複数の実施形態において、基材層は、カルボキシメチルセルロースおよびマレイン酸モノメチルで修飾されたポリビニルアルコールを含む。いくつかの実施形態において、基材層は修飾されていないポリビニルアルコールを含む。
【0036】
基材層は、1またはそれを超える可塑剤をさらに含むことができる。可塑剤は、材料(通常は樹脂またはエラストマー)に添加される液体、固体または半固体であり、その材料をより柔らかくし、(ポリマーのガラス転移温度および結晶性を低下させることによって)より柔軟にし、加工しやすくする。あるいは、ポリマーは、ポリマーまたはモノマーを化学的に修飾することによって、内部可塑化することができる。これに加えてまたはこれに代えて、ポリマーは、適切な可塑剤の添加によって外部可塑化することができる。水は、PVOHおよびその他のポリマー(水溶性ポリマーを含むがこれに限定されない)のための非常に効率的な可塑剤として認識されているが、ポリマーフィルムは、低いおよび高い相対湿度を含む様々な周囲条件に対して少なくともある程度の耐性(堅牢性)を有する必要があるので、水の揮発性により、水の有用性は限定される。
【0037】
適切な水でない可塑剤には、グリセロール、ジグリセロール、ソルビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、最大400MWのポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン(TMP)、ポリエーテルポリオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール(例えば、MP Diol(登録商標))、エタノールアミン、イソマルト、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、アドニトール、ズルシトール、ペンタエリスリトール、マンニトール、および前述のものの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
存在する場合、基材層中に存在する水でない可塑剤の総量は、基材層の重量に基づいて、最大約50重量%の範囲、例えば基材層の重量に基づいて、約5%~約50%、約10重量%~約45重量%、約20重量%~約45重量%、約15重量%~約35重量%、または約20重量%~約30重量%、例えば約25重量%であり得る。可塑剤の総量は、樹脂100部当たりの部、例えばポリビニルアルコール樹脂100部当たりの部で表すこともできる。したがって、可塑剤の総量は、約2PHR~約30PHR、約5PHR~約25PHR、約2PHR~約11PHR、約5PHR~約10PHR、約15PHR~約20PHR、約16PHR~約18PHR、約21PHR~約27PHR、約23PHR~約25PHRの範囲内、または約25PHR未満、約20PHR未満、約17.5PHR未満、約12PHR未満、約10PHR未満、約8PHR未満、約7.5PHR未満、または少なくとも2PHR、少なくとも5PHR、少なくとも6.5PHR、少なくとも10PHR、または少なくとも15PHRであり得る。
【0039】
本明細書に記載されている実施例の可塑剤レベルと一致する可塑剤レベルは、本明細書に記載されている様々な他の成分を有する基材層配合物に対する代表的なレベルとして、ならびに範囲に対する様々な上限および下限の両方として特に想定される。可塑剤の具体的な量は、基材層の所望の柔軟性および基材層の変換特性を含む本明細書に記載の要因に基づいて、特定の実施形態において選択することができる。低い可塑剤レベルでは、基材層は脆くなり、加工が困難になり、または破損しやすくなり得る。高い可塑剤レベルでは、基材層は、所望の用途のために加工するには柔らかすぎる、弱すぎるまたは困難すぎることがあり得る。
【0040】
基材層は、界面活性剤、分散剤、潤滑剤、離型剤、スリップ剤、充填剤、増量剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、粘着防止剤、泡立ち防止剤(消泡剤)、ナノ粒子、例えば層状ケイ酸塩型ナノクレイ(例えば、ナトリウムモンモリロナイト)、漂白剤(例えば、メタ重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウムなど)、忌避剤、例えば苦味剤(例えば、安息香酸デナトニウム、デナトニウムサッカライドおよびデナトニウムクロリドなどのデナトニウム塩;オクタアセチルスクロース;キニーネ;ケルセチンおよびナリンゲン(naringen)などのフラボノイド;ならびにクァシンおよびブルシンなどのクアシノイド)および辛味剤(例えば、カプサイシン、ピペリン、イソチオシアン酸アリルおよびレシンフェラトキシン(resinferatoxin))、ならびにその他の機能性成分などの、但しこれらに限定されないその他の助剤および加工剤を、それらの意図する目的に適した量で含有することができる。複数の実施形態において、基材層は、充填剤、界面活性剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、スリップ剤、分散剤、またはこれらの組み合わせを含み得る。
【0041】
水溶性フィルムに使用するための界面活性剤を基材層中に使用することができ、そのような界面活性剤は当技術分野で周知である。必要に応じて、注型または押出の際に樹脂溶液の分散を助けるために界面活性剤が含まれる。本開示の基材層に適した界面活性剤には、スルホコハク酸ジアルキル、グリセロールおよびプロピレングリコールのラクチル化脂肪酸エステル、脂肪酸の乳酸エステル、アルキル硫酸ナトリウム、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、アルキルポリエチレングリコールエーテル、レシチン、グリセロールおよびプロピレングリコールのアセチル化脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸のアセチル化エステル、ミリスチルジメチルアミンオキシド、トリメチルタロウアルキルアンモニウムクロリド、第四級アンモニウム化合物、これらの塩、および前述のいずれかの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。界面活性剤が少なすぎると、孔を有する基材層が得られることがあり、一方、界面活性剤が多すぎると、基材層の表面上に存在する過剰な界面活性剤により、油っぽいまたは油状の感触を有する基材層が得られることがある。したがって、界面活性剤は、例えば、約2PHR未満、例えば約1PHR未満、または約0.5PHR未満の量で基材層中に含まれ得る。
【0042】
使用が想定される二次成分の1つの種類は消泡剤である。消泡剤は、発泡気泡の合体を助けることができる。本開示による基材層中で使用するのに適した消泡剤としては、疎水性シリカ、例えば、二酸化ケイ素、シロキサン、シリコーンエーテルまたは微粒子サイズのヒュームドシリカ、ならびにFoam Blast(登録商標)327、Foam Blast(登録商標)UVD、Foam Blast(登録商標)163、Foam Blast(登録商標)269、Foam Blast(登録商標)338、Foam Blast(登録商標)290、Foam Blast(登録商標)332、Foam Blast(登録商標)349、Foam Blast(登録商標)550およびFoam Blast(登録商標)339などの、Emerald Performance Materialsから入手可能なFoam Blast(登録商標)消泡剤を含む商標登録された非鉱油消泡剤が挙げられるが、これらに限定されない。複数の実施形態において、消泡剤は、0.5PHRまたはそれ未満、例えば、0.05PHR、0.04PHR、0.03PHR、0.02PHRまたは0.01PHRの量で使用することができる。
【0043】
適切な充填剤/増量剤/ブロッキング防止剤/粘着防止剤としては、デンプン、化工デンプン、架橋ポリビニルピロリドン、架橋セルロース、微結晶セルロース、シリカ、金属酸化物、炭酸カルシウム、タルク、雲母、ステアリン酸およびその金属塩、例えばステアリン酸マグネシウムが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい材料は、デンプン、化工デンプンおよびシリカである。一つの種類の実施形態において、基材層中の充填剤/増量剤/ブロッキング防止剤/粘着防止剤の量は、例えば、約1重量%~約6重量%、または約1重量%%~約4重量%、または約2重量%~約4重量%、または約1PHR~約6PHR、または約1PHR~約4PHR、または約2PHR~約4PHRの範囲であり得る。
【0044】
ブロッキング防止剤、例えばSiO2および/またはステアリン酸は、少なくとも0.1PHR、または少なくとも0.5PHR、または少なくとも1PHR、または約0.1~5.0PHR、もしくは約0.1~約3.0PHR、もしくは約0.4~1.0PHR、もしくは約0.5~約0.9PHR、もしくは約0.5~約2PHR、もしくは約0.5~約1.5PHR、もしくは0.1~1.2PHR、もしくは0.1~2.7PHRの範囲内、例えば0.5PHR、0.6PHR、0.7PHR、0.8PHR、または0.9PHRの量で基材層中に存在することができる。
【0045】
ブロッキング防止剤に適した中央粒径は、約3または約4ミクロン~約11ミクロン、または約4~約8ミクロン、または約5~約6ミクロン、例えば5、6、7、8、9、10または11ミクロンの範囲の中央径を含む。適切なSiO2は、水性系での使用のために設計された未処理の合成非晶質シリカである。
【0046】
複数の実施形態において、基材層は食用であり得る。例えば、基材層は、食用成分から本質的になることができ、または専ら食用成分からなることができる。このような基材層中に含めるための成分は、米国食品医薬品局によって「一般に安全と認められている」(GRAS)と指定されている成分、および/または欧州連合において許容され得る割り当てられたE番号を有する成分、および/またはGRASもしくはE番号としてまだ指定されていないが適切な試験を経ており、基材層中での使用に対して提案されている量でヒトによる消費に関して安全であることが実証されている成分であり得る。複数の実施形態において、基材層は、食品、例えばヒトが消費する食品、または動物が消費する食品であり得、またはこれらを含み得る。
【0047】
複数の実施形態において、基材層は、注型または押出成形によって形成することができる。このような実施形態においては、基材層を注型し、押し出し、またはその他の方法で形成するために使用される溶液は、約5,000cP~約30,000cP、約10,000cP~約25,000cP、または約15,000cP~約20,000cP、例えば、約5,000cP、約6,000cP、約10,000cP、約12,000cP、約13,000cP、約13,500cP、約14,000cP、約15,000cP、約16,000cP、約17,000cP、約18,000cP、約19,000cP、約20,000cP、約23,000cP、約25,000cP、約27,000cP、または約30,000cPの範囲の粘度を有することができる。
【0048】
基材層の厚みは、特に限定されない。さらに、多層水分散性物品を作製する方法に応じて、本明細書で提供されるように、複数の実施形態において、基材層およびコーティング層は、コーティング層と基材層の個々の厚さを容易に識別することができるように、多層物品中の分離したそれぞれの層であるわけではない。しかしながら、コーティング層が基材層の表面に塗布される実施形態では、基材層の厚さを決定することが可能であり得る。これらの実施形態において、例えば、基材層は、約5μm~約25,000μm(25mm)、約10μm~約20,000μm(20mm)、約100μm~約15,000μm(15mm)、約250μm~約10,000μm(10mm)、約500μm~約5,000μm(約5mm)または約750μm~約1,000μm(1mm)の範囲の厚さ、例えば、約5、約10、約15、約25、約50、約75、約100、約150、約200、約250、約300、約350、約400、約450、約500、約550、約600、約650、約700、約750、約800、約850、約900、約950、約1000、約2000、約3000、約4000、約5000、約6000、約7000、約8000、約9000、約10,000、約15,000、約20,000または約25,000μmを有することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、基材層は、約5μm~400μm、約10μm~約350μm、約15μm~約340μm、約50μm~約300μm、約75μm~約275μm、約90μm~約250μm、約100μm~約225μm、約115μm~約200μm、約125μm~約175μm、または約140μm~約152μmの範囲、例えば、約5、約10、約12、約15、約20、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90、約95、約100、約105、約110、約115、約120、約125、約130、約135、約140、約145、約150、約152、約160、約165、約170、約175、約180、約185、約190、約195、約200、約205、約210、約215、約220、約225、約230、約235、約240、約245、約250、約255、約260、約265、約270、約275、約280、約285、約290、約295、約300、約305、約310、約315、約320、約325、約330、約335、約340、約345、約350、約355、約356、約375または約400μmの厚さを有する。
【0050】
例えば、複数の実施形態において、基材層は、約5~約356μmの範囲の厚さを有する水分散性紙を含む。いくつかの実施形態において、基材層は、約12~約152μmの範囲の厚さを有する水溶性または水分散性フィルムを含む。
【0051】
物品がフィルムである実施形態では、基材層は、例えば約5μm~約152μm、約10μm~約150μm、約15μm~約140μm、約50μm~約125μm、約75μm~約115μm、または約90μm~約100μm、例えば約5、約10、約15、約20、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90、約95、約100、約110、約115、約120、約125、約130、約135、約140、約145、約150、または約152μmの範囲の厚さを有することができる。
【0052】
物品が射出成形可能な物体など、例えば、瓶、箱、クラムシェルなどのような開いた内部容積を有する容器である実施形態において、基材層は、約500μm(0.5mm)~約10,000(10mm)、約700μm(0.7mm)~約9,000μm(9mm)、約1,000μm(1mm)~約7,500μm(7.5mm)、約2,000μm(2mm)~約6,000μm(6mm)、または約3000μm(3mm)~約5,000μm(5mm)、例えば、約500、約600、約700、約750、約800、約850、約900、約1000、約1250、約1500、約1750、約2000、約2500、約3000、約3500、約4000、約4500、約5000、約5500、約6000、約6500、約7000、約7500、約8000、約8500、約9000、約9500または約10,000μmの範囲の厚さを有することができる。
コーティング層
【0053】
本開示に係る水分散性物品は、コーティング層を備える。コーティング層は、基材層とは異なる組成を有し、物品に対する追加のバリアとしての機能を果たすことができる。一般に、コーティング層は、物品の水分散性に悪影響を及ぼすことなく、水分に対する基材層および/または物品の耐性を改善することができる。すなわち、コーティング層は、使用前に、例えば湿気の多い環境で貯蔵されたときに、空気中の水分または水蒸気から水分散性物品の内容物をさらに保護するためのバリアとして作動することができる。
【0054】
コーティング層の組成は特に限定されない。複数の実施形態において、コーティング層は、水分散性パラフィン蝋、酸化ポリエチレン、微結晶蝋、鉱油、天然石油蝋、合成石油蝋、ウッドロジン、カルナバ蝋、カンデリラ蝋、蜜蝋、シェラック、トリグリセリド、亜麻仁油、トウモロコシ油、キャノーラ油、麻油、ヤシ油、未修飾ポリビニルアルコール、アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリビニルピロリドン、第四級アンモニウムポリマー、ポリ酢酸ビニル、エチレンビニルアルコール、アルギネート、多糖類、前述のいずれかの誘導体、または前述のいずれかの混合物を含む。
【0055】
複数の実施形態において、コーティング層は、2またはそれを超える異なる蝋の混合物を含む。例えば、コーティング層は、パラフィン蝋、微結晶蝋、天然石油蝋、合成石油蝋、カルナバ蝋、カンデリラ蝋および/または蜜蝋を含むがこれらに限定されない2またはそれを超える蝋の混合物を含むことができる。
【0056】
2つの蝋の混合物がコーティング層中に含まれる場合、第1の蝋は、蝋混合物の約5重量%~約95重量%、約10重量%~約90重量%、約30重量%~約70重量%、または40重量%~約60重量%を構成することができ、例えば、第1の蝋は、蝋混合物の約5、約10、約15、約20、約25、約30、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90または約95重量%を構成することができる。同様に、第2の蝋は、蝋混合物の約5重量%~約95重量%、約10重量%~約90重量%、約30重量%~約70重量%、または40重量%~約60重量%を構成することができ、例えば、第2の蝋は、蝋混合物の約5、約10、約15、約20、約25、約30、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90または約95重量%を構成することができる。コーティング層が蝋混合物からなる、または蝋混合物から本質的になる実施形態において、第1の蝋および第2の蝋の前述の量は、コーティング層の総重量に基づく。
【0057】
コーティング層は、2より多くの蝋、例えば3つ、4つ、5つ、または6つの異なる蝋の混合物を含むことができる。各蝋は、本開示によるコーティング層を与えるのに適した任意の量で存在することができる。
【0058】
いくつかの実施形態において、コーティング層は、パラフィン蝋からなり、またはパラフィン蝋から本質的になることができる。複数の実施形態において、コーティング層は、蜜蝋からなることができ、または蜜蝋から本質的になることができる。複数の実施形態において、コーティング層は、約5重量%~約95重量%のパラフィン蝋と、約5重量%~約95重量%の蜜蝋とを含む。例えば、コーティング層中の蜜蝋対パラフィン蝋の比は、約0:100~約100:0、約5:95~約95:5、約10:90~約90:10、約25:75~約75:25、約40:60~約60:40、または約50:50の範囲であり得る。
【0059】
コーティング層は、界面活性剤、分散剤、潤滑剤、離型剤、スリップ剤、充填剤、増量剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、粘着防止剤、泡立ち防止剤(消泡剤)、ナノ粒子、例えば層状ケイ酸塩型ナノクレイ(例えば、ナトリウムモンモリロナイト)、漂白剤(例えば、メタ重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウムなど)、忌避剤、例えば苦味剤(例えば、安息香酸デナトニウム、デナトニウムサッカライドおよびデナトニウムクロリドなどのデナトニウム塩;オクタアセチルスクロース;キニーネ;ケルセチンおよびナリンゲン(naringen)などのフラボノイド;ならびにクァシンおよびブルシンなどのクアシノイド)および辛味剤(例えば、カプサイシン、ピペリン、イソチオシアン酸アリルおよびレシンフェラトキシン(resinferatoxin))、ならびにその他の機能性成分などの、但しこれらに限定されないその他の助剤および加工剤を、それらの意図する目的に適した量で含有することができる。複数の実施形態において、コーティング層は、充填剤、界面活性剤、ブロッキング防止剤、脱色剤、酸化防止剤、分散剤、スリップ剤、またはこれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0060】
水溶性フィルムに使用するための界面活性剤をコーティング層中に使用することができ、そのような界面活性剤は当技術分野で周知である。必要に応じて、注型または押出の際に樹脂溶液の分散を助けるために界面活性剤が含まれる。本開示のコーティング層に適した界面活性剤には、スルホコハク酸ジアルキル、グリセロールおよびプロピレングリコールのラクチル化脂肪酸エステル、脂肪酸の乳酸エステル、アルキル硫酸ナトリウム、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、アルキルポリエチレングリコールエーテル、レシチン、グリセロールおよびプロピレングリコールのアセチル化脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸のアセチル化エステル、ミリスチルジメチルアミンオキシド、トリメチルタロウアルキルアンモニウムクロリド、第四級アンモニウム化合物、これらの塩、および前述のいずれかの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。界面活性剤が少なすぎると、孔を有するコーティング層が得られることがあり、一方、界面活性剤が多すぎると、基材層の表面上に存在する過剰な界面活性剤により、油っぽいまたは油状の感触を有するコーティング層が得られることがある。したがって、界面活性剤は、例えば、約2PHR未満、例えば約1PHR未満、または約0.5PHR未満の量でコーティング層中に含まれ得る。
【0061】
使用が想定される二次成分の1つの種類は消泡剤である。消泡剤は、発泡気泡の合体を助けることができる。本開示によるコーティング層中で使用するのに適した消泡剤としては、疎水性シリカ、例えば、二酸化ケイ素、シロキサン、シリコーンエーテルまたは微粒子サイズのヒュームドシリカ、ならびにFoam Blast(登録商標)327、Foam Blast(登録商標)UVD、Foam Blast(登録商標)163、Foam Blast(登録商標)269、Foam Blast(登録商標)338、Foam Blast(登録商標)290、Foam Blast(登録商標)332、Foam Blast(登録商標)349、Foam Blast(登録商標)550およびFoam Blast(登録商標)339などの、Emerald Performance Materialsから入手可能なFoam Blast(登録商標)消泡剤を含む商標登録された非鉱油消泡剤が挙げられるが、これらに限定されない。複数の実施形態において、消泡剤は、0.5PHRまたはそれ未満、例えば、0.05PHR、0.04PHR、0.03PHR、0.02PHRまたは0.01PHRの量で使用することができる。
【0062】
適切な充填剤/増量剤/ブロッキング防止剤/粘着防止剤としては、デンプン、化工デンプン、架橋ポリビニルピロリドン、架橋セルロース、微結晶セルロース、シリカ、diatomaceous earth, 金属酸化物、炭酸カルシウム、タルク、雲母、ステアリン酸およびその金属塩、例えばステアリン酸マグネシウムが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい材料は、デンプン、化工デンプンおよびシリカである。一つの種類の実施形態において、基材層中の充填剤/増量剤/ブロッキング防止剤/粘着防止剤の量は、例えば、約1重量%~約6重量%、または約1重量%%~約4重量%、または約2重量%~約4重量%、または約1PHR~約6PHR、または約1PHR~約4PHR、または約2PHR~約4PHRの範囲であり得る。
【0063】
ブロッキング防止剤、例えばSiO2および/またはステアリン酸は、少なくとも0.1PHR、または少なくとも0.5PHR、または少なくとも1PHR、または約0.1~5.0PHR、もしくは約0.1~約3.0PHR、もしくは約0.4~1.0PHR、もしくは約0.5~約0.9PHR、もしくは約0.5~約2PHR、もしくは約0.5~約1.5PHR、もしくは0.1~1.2PHR、もしくは0.1~2.7PHRの範囲内、例えば0.5PHR、0.6PHR、0.7PHR、0.8PHR、または0.9PHRの量でコーティング層中に存在することができる。
【0064】
ブロッキング防止剤に適した中央粒径は、約3または約4ミクロン~約11ミクロン、または約4~約8ミクロン、または約5~約6ミクロン、例えば5、6、7、8、9、10または11ミクロンの範囲の中央径を含む。適切なSiO2は、水性系での使用のために設計された未処理の合成非晶質シリカである。
【0065】
複数の実施形態において、コーティング層は食用であり得る。例えば、コーティング層は、食用成分から本質的になることができ、または専ら食用成分からなることができる。このようなコーティング層中に含めるための成分は、米国食品医薬品局によって「一般に安全と認められている」(GRAS)と指定されている成分、および/または欧州連合において許容され得る割り当てられたE番号を有する成分、および/またはGRASもしくはE番号としてまだ指定されていないが適切な試験を経ており、コーティング層中での使用に対して提案されている量でヒトによる消費に関して安全であることが実証されている成分であり得る。複数の実施形態において、基材層は、食品、例えばヒトが消費する食品、または動物が消費する食品であり得、またはこれらを含み得る。
【0066】
コーティング層は、その融点によっても特徴付けることができる。複数の実施形態において、コーティング層は、約40℃~約100℃、約50℃~約90℃、または約65℃~約85℃、例えば、約40℃、約50℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃または約100℃の範囲の融点を有する。
【0067】
複数の実施形態において、コーティング層は可塑剤を含まない。あるいは、複数の実施形態において、コーティング層は可塑剤を含むことができる。コーティング層中に含まれる場合、可塑剤は、例えば、水、グリセロール、ジグリセロール、ソルビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、最大400MWのポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン(TMP)、ポリエーテルポリオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール(例えば、MP Diol(登録商標))、エタノールアミン、イソマルト、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、アドニトール、ズルシトール、ペンタエリスリトール、マンニトール、および前述の組み合わせを含むことができる。
【0068】
基材層およびコーティング層がそれぞれ可塑剤を含む実施形態においては、基材層の可塑剤は、コーティング層の可塑剤と同じであってもよく、または異なっていてもよい。いくつかの種類の物品では、可塑剤がコーティング層の重量に基づいて、例えば約40重量%を超える量でコーティング層中に含まれる場合、可塑剤が流れ出して、基材層中に移行することがあり得、これはコーティング層のバリア特性およびその後の水分散性物品に影響を及ぼし得る。したがって、コーティング層および基材層の各々が可塑剤を含む実施形態において、コーティング層は、コーティング層の総重量に基づいて、約40重量%またはそれ未満、例えば約1重量%~約40重量%、約5重量%~約35重量%、約10重量%~約30重量%、または約15重量%~約25重量%、例えば約5、約6、約7、約8、約9、約10、約12、約15、約17、約20、約23、約25、約27、約30、約32、約35、約37、または約40重量%の量で可塑剤を必要に応じて含む。いくつかの実施形態では、1つもしくは複数の層および/または物品の崩壊および分散性を助けるために、例えば、約25重量%~約40重量%の範囲の量で可塑剤をコーティング層および/または基材層中に含めることが有利であり得る。他の実施形態では、可塑剤の移動ならびに1つもしくは複数の層および/または物品のその後の崩壊および分散性を遅らせるために、例えば約1重量%~約25重量%の範囲の量で可塑剤をコーティングおよび/または基材層中に含めることが有利であり得る。
【0069】
コーティング層が、剥離および/または亀裂を生じることなく、基材層およびその後の物品に対して水分への適切なバリアを与えることができる厚さを有する限り、コーティング層の厚さは、特に限定されない。多層水分散性物品を作製する具体的な方法(ならびに基剤およびコーティング層のそれぞれの組成)に応じて、本明細書で提供されるように、複数の実施形態において、基材層およびコーティング層は、コーティング層と基材層の個々の厚さを容易に識別することができるように、必ずしも多層物品中の分離したそれぞれの層であるわけではない。コーティング層が自己支持性の層ではなく、基材層の表面に塗布されるいくつかの実施形態では、コーティング層の厚さは、基材層の厚さに対して無視することが可能であり得る。しかしながら、コーティング層が基材層の表面に塗布され、厚さを識別することができる実施形態では、コーティング層は、約0.5μm~約250μm、約1μm~約200μm、約10μm~約150μm、約50~約100、または約1μm~約76μm、約5μm~約51μm、または約10μm~約25μmの範囲の、例えば、約0.5、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約51、約52、約53、約54、約55、約60、約70、約71、約72、約73、約74、約75、約76、約80、約85、約90、約95、約100、約110、約120、約130、約140、約150、約160、約170、約180、約190、約200、約210、約220、約230、約240または約250μmの厚さを有することができる。
【0070】
複数の実施形態において、基材層は、未修飾ポリビニルアルコール樹脂を含み、コーティング層は、蜜蝋および乳化剤を含む。複数の実施形態において、基材層は、アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコールを含み、コーティング層は、蜜蝋および乳化剤を含む。複数の実施形態において、基材層は、未修飾ポリビニルアルコール樹脂を含み、コーティング層は、蜜蝋およびポリソルベート80を含む。複数の実施形態において、基材層は、アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコールを含み、コーティング層は、蜜蝋およびポリソルベート80を含む。
水溶性ポリマーと蝋を含む多層水分散性物品
【0071】
本開示は、水溶性ポリマーを含む水溶性ポリマー層と、蝋を含む蝋層とを備える、フィルムなどの多層水分散性物品をさらに提供する。
【0072】
水溶性ポリマーは、物品の基材層について本明細書に記載されているもののいずれでもあり得る。例えば、複数の実施形態において、水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリビニルピロリドン、第四級アンモニウムポリマー、セルロースエーテル、および上記のいずれかの任意の混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。複数の実施形態において、水溶性ポリマーは、未修飾ポリビニルアルコールを含む。複数の実施形態において、水溶性ポリマーは、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、スルホン酸アミノプロピル、マレイン酸、無水マレイン酸、n-ビニルピロリドン、n-ビニルカプロラクタム、上記のいずれかの誘導体または上記のいずれかの組合せで修飾された、アニオン性基で修飾された樹脂を含む。例えば、複数の実施形態において、水溶性ポリマーは、未修飾ポリビニルアルコールとアニオン性基で修飾されたポリビニルアルコールとの混合物を含む。複数の実施形態において、アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコールは、マレイン酸モノメチルで修飾されたポリビニルアルコールを含む。複数の実施形態において、水溶性ポリマーは、セルロースエーテルを含む。理論に束縛されることを意図するものではないが、セルロースエーテルは、フィルム/物品形成成分としてのみならず、多層水分散性物品内の蝋に対する安定化剤および/または溶解助剤としても有用であり得ると考えられる。複数の実施形態において、水溶性ポリマーは、カルボキシメチルセルロースを含む。複数の実施形態において、水溶性ポリマーは、未修飾ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコールと、カルボキシメチルセルロースなどのセルロースエーテルとを含む。
【0073】
ポリビニルアルコールの粘度、修飾の量、加水分解度およびその他の特性は、基材層中で用いられるポリビニルアルコールについて上述したとおりであり得る。例えば、複数の実施形態において、アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコールは、少なくとも約0.5mol%のアニオン性基修飾、例えば、約1.0mol%~約4.0mol%のアニオン性基修飾、または約1.0mol%~約3.5mol%のアニオン性基修飾を含む。複数の実施形態において、ポリビニルアルコール(例えば、未修飾および/またはアニオン性基で修飾されたポリビニルアルコール)は、少なくとも88mol%、例えば、約90mol%~99mol%未満の範囲の加水分解度を有する。複数の実施形態において、ポリビニルアルコールは、20℃で、少なくとも約6cP、例えば、約6cP、8cP、10cP、12cPまたは15cPの、4%水溶液粘度を有する。
【0074】
蝋は、パラフィン蝋、微結晶蝋、天然石油蝋、合成石油蝋、カルナバ蝋、カンデリラ蝋、蜜蝋および前述のいずれかの任意の混合物を含むことができる。複数の実施形態において、蝋は、2またはそれを超える異なる蝋の混合物を含む。複数の実施形態において、蝋は、パラフィン蝋、蜜蝋またはこれらの組合せを含む。蝋混合物中の蝋の相対量は、コーティング層中の蝋について上述した通りであり得る。例えば、複数の実施形態において、蝋は、蝋の総重量に基づいて、約10重量%~約90重量%のパラフィン蝋および約10重量%~約90重量%の蜜蝋を含むことができる。複数の実施形態において、蝋は、パラフィン蝋、蜜蝋またはこれらの組合せからなり得る。複数の実施形態において、蝋は、蝋エマルジョンを含む。蝋エマルジョンは、エマルジョンの総重量に基づいて、約5重量%~約30重量%の蝋を含むことができる。すなわち、蝋が2つの蝋の蝋混合物を含み、蝋混合物が蝋エマルジョンの形態である実施形態において、2つの異なる蝋の各々は、蝋混合物中の蝋の約10重量%~約90重量%の範囲の量で存在することができ、蝋混合物は、蝋エマルジョンの約5重量%~約30重量%の量で存在することができる(すなわち、各蝋は、蝋エマルジョンの約0.5重量%~約27重量%の範囲の量で存在することができる)。
【0075】
複数の実施形態において、蝋は、少なくとも約5PHRおよび/または最大約200PHRの量で含まれる。いくつかの実施形態において、蝋は、少なくとも約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、26、26、27、28、29、30、50、75、100、115、150、170、171、172、175もしくは180、および/または最大約200、195、190、185、180、175、174、172、170、165、160、150、116、100、75、50、45、40、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7もしくは6PHRの量で物品中に含まれ得る。例えば、複数の実施形態において、蝋は、約5PHR~約200PHR、約5PHR~約190PHR、約5PHR~約175PHR、約5PHR~約115PHR、約115PHR~約172PHR、約5PHR~約100PHR、約5PHR~約30PHR、5PHR~約29PHR、約5PHR~約28PHR、約5PHR~約25PHR、約5PHR~約22PHR、約5PHR~約20PHR、約5PHR~約18PHR、約5PHR~約15PHR、約5PHR~約12PHR、約5PHR~約10PHR、約5PHR~約7PHR、6PHR~約30PHR、6PHR~約29PHR、約6PHR~約28PHR、約6PHR~約25PHR、約6PHR~約22PHR、約6PHR~約20PHR、約6PHR~約18PHR、約6PHR~約15PHR、約6PHR~約12PHR、約6PHR~約10PHR、約6PHR~約7PHR、約7PHR~約30PHR、約7PHR~約28PHR、約7PHR~約25PHR、約7PHR~約22PHR、約7PHR~約20PHR、約7PHR~約18PHR、約7PHR~約15PHR、約7PHR~約12PHR、約7PHR~約10PHR、約7PHR~約8PHR、約10PHR~約30PHR、約10PHR~約29PHR、約10PHR~約28PHR、約10PHR~約25PHR、約10PHR~約22PHR、約10PHR~約20PHR、約10PHR~約18PHR、約10PHR~約15PHR、約10PHR~約12PHR、約12PHR~約30PHR、約12PHR~約28PHR、約12PHR~約25PHR、約12PHR~約22PHR、約12PHR~約20PHR、約12PHR~約18PHR、約12PHR~約16PHR、約12PHR~約14PHR、約12PHR~約13PHR、約15PHR~約30PHR、約15PHR~約28PHR、約15PHR~約25PHR、約15PHR~約22PHR、約15PHR~約20PHR、約15PHR~約18PHR、約15PHR~約16PHR、約18PHR~約30PHR、約18PHR~約28PHR、約18PHR~約25PHR、約18PHR~約22PHR、約18PHR~約20PHR、約20PHR~約30PHR、約20PHR~約28PHR、約20PHR~約25PHR、約20PHR~約22PHR、約22PHR~約30PHR、約22PHR~約28PHR、約22PHR~約25PHR、約22PHR~約24PHR、約25PHR~約30PHR、約25PHR~約28PHR、約25PHR~約27PHR、約28PHR~約30PHRまたは約29PHR~約30PHRの範囲の量で存在する。理論に拘束されることを意図するものではないが、物品中の蝋の量は、物品のMVTRに著しい影響を及ぼすと考えられる。これに代えてまたはこれに加えて、物品中の蝋の量は、重量ベースで記述することができる。複数の実施形態において、蝋は、物品の総重量に基づいて、少なくとも約5、10、15、20、15、30もしくは40重量%、および/または最大約50、45、40、35、30、25、20もしくは10重量%の量で存在する。例えば、蝋は、フィルムの総重量に基づいて、約5重量%~約50重量%、約10重量%~約45重量%、約15重量%~約40重量%、約20重量%~約35重量%、または約25重量%~約30重量%の範囲の量で存在することができる。
【0076】
蝋は、上記のコーティング層について記載した融点を有することができる。例えば、蝋は、約40℃~約100℃、約50℃~約90℃、約60℃~約80℃、または約65℃~約75℃の範囲の融点を有することができる。
【0077】
複数の実施形態において、物品は、第1の面と、第1の面の反対側に位置する第2の面とを含むことができ、第1の面はポリマー層を備え、第2の面は蝋層を備える。複数の実施形態において、蝋は、水分散性物品の外面の少なくとも一部を形成することができる。複数の実施形態において、蝋は、水分散性物品の内面の少なくとも一部を形成することができる。例えば、物品が、組成物を収容するための内部パウチ容積を規定するパウチの形態のフィルムであって、フィルムの内面は内部パウチ容積に面し、フィルムの外面は内面の反対側に位置するフィルムであるいくつかの実施形態において、蝋は、パウチの外面の少なくとも一部および/またはパウチの内面(すなわち、パウチ内に収容された組成物と接触する表面)の少なくとも一部を形成することができる。複数の実施形態において、蝋は、物品の内面および外面のそれぞれの少なくとも一部を形成することができる。
【0078】
複数の実施形態において、水溶性ポリマーと蝋を含む物品は、水溶性ポリマーと蝋の混合物を含む組成物から調製された自己支持性物品を含む多層水分散性物品であり得、物品の形成中に、蝋の一部が組成物を通って物品の表面に移動し、それにより、蝋の少なくとも一部と水溶性ポリマーが物品の反対側に位置する面を形成する物品を提供する。
図1に示されているように、物品は、水溶性ポリマーを含むポリマー層10と、蝋を含む蝋層20と、ポリマー層と蝋層の間に配置された中間領域30とを備えることができ、中間領域は水溶性ポリマーと蝋の混合物を含む。理論に拘束されることを意図するものではないが、蝋は、水溶性ポリマーの中または上に分散され得る別個の相として存在すると考えられる。蝋の一部が組成物を通って物品の表面にブルーミング/移動する(例えば、相分離する)と、蝋は物品上に連続的または不連続的な「擬似」コーティングを形成することができる。すなわち、物品は、表面の少なくとも一部が蝋であり、表面の少なくとも一部が水溶性ポリマーである表面を有することができる(例えば、蝋は不連続な相を形成し、物品の表面は蝋を含まない露出された領域を有することができる)。いくつかの事例では、物品の表面全体が蝋を含むように、蝋は、表面に連続的な「擬似」コーティングを形成することができる。一般に、蝋は、物品の1またはそれを超える外面(例えば、フィルムの片面または両面)に相分離することができる。蝋相が物品の2つまたはそれを超える外面に分離する実施形態においては、各表面における蝋の量は、同一であることができ(例えば、相分離した蝋の総重量に基づいて、フィルムの各表面における約50重量%の蝋)、または異なることができる(例えば、1つの表面での実質的なまたは優先的な相分離)。物品が2つの外面を有する実施形態においては、蝋とポリマーが反対側に位置する面を形成するように、蝋は実質的に1つの表面に相分離することができる。本明細書で使用される場合には、各表面についての蝋に関連するピーク(例えば、2850~2950cm
-1の範囲のCH
2非対称および対称振動)の減衰全反射(ATR-FTIR)信号強度の比較に基づいて、前記表面における蝋の量が相分離する蝋の約半分超を占める場合に、蝋相は「実質的に1つの表面」に分離する。したがって、物品は、各表面上に蝋相を含むことができ、なお、ポリマー相面と蝋相面を備える反対側に位置する面を有すると考えることができる。
【0079】
複数の実施形態において、水溶性ポリマーと蝋とを含む物品は、水溶性ポリマーを含む基材層と、蝋を含むコーティング層とを含む多層水分散性物品である。基材およびコーティング層を有するこの物品の実施形態は、上で詳述されている。
【0080】
物品は、補助剤または追加の成分をさらに含むことができる。複数の実施形態において、ポリマー層および/または蝋層は、酸化ポリエチレン、鉱油、ウッドロジン、シェラック、トリグリセリド、亜麻仁油、トウモロコシ油、キャノーラ油、麻油、ヤシ油、未修飾ポリビニルアルコール、アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリビニルピロリドン、第四級アンモニウムポリマー、ポリ酢酸ビニル、エチレンビニルアルコール、アルギネート、多糖類、タンパク質、pH調整されたタンパク質、木材パルプ、非木材パルプ、不織繊維、天然発泡体、合成発泡体、前述のいずれかの誘導体、またはこれらの混合物の1またはそれより多くをさらに含む。複数の実施形態において、物品は、鉱油、トリグリセリド、亜麻仁油、トウモロコシ油、キャノーラ油、麻油、ヤシ油、前述のいずれかの誘導体、またはこれらの混合物の1またはそれより多くをさらに含む。
【0081】
複数の実施形態において、ポリマー層および/または蝋層は、可塑剤、充填剤、界面活性剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、スリップ剤、分散剤、または前述のいずれかの組合せをさらに含む。可塑剤、充填剤、界面活性剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、スリップ剤、分散剤、またはこれらの組合せのそれぞれは、基材層およびコーティング層を有する水分散性物品について上述したとおりであり得る。例えば、複数の実施形態において、ポリマー層および/または蝋層は、グリセロール、ジグリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、最大MW400のポリエチレングリコール、ソルビトール、2-メチル-1,3-プロパンジオール(MPD)、エタノールアミン、トリメチロールプロパン(TMP)、ポリエーテルポリオール、イソマルト、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、アドニトール、ズルシトール、ペンタエリスリトール、マンニトール、または前述のいずれかの組合せなどの可塑剤をさらに含む。複数の実施形態において、ポリマー層および/または蝋層は、キシリトール、ソルビトール、またはこれらの組合せを含む。複数の実施形態において、ポリマー層は可塑剤を含み、可塑剤はグリセロール、ソルビトール、キシリトール、またはこれらの組合せを含む。
【0082】
複数の実施形態において、可塑剤、充填剤、界面活性剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、スリップ剤、分散剤、またはこれらの組合せは、水溶性ポリマーと混合することができる。
【0083】
複数の実施形態において、水溶性ポリマーは、未修飾ポリビニルアルコール樹脂とカルボキシメチルセルロースの混合物を含み、蝋は、蜜蝋とポリソルベート80とを含む蝋エマルジョンを含む。複数の実施形態において、物品は、未修飾ポリビニルアルコール樹脂、カルボキシメチルセルロース、蜜蝋を含む蝋エマルジョン、ポリソルベート80、およびグリセロール、ソルビトール、キシリトール、またはこれらの組合せを含む可塑剤混合物を含む水分散性フィルムを備える。
多層水分散性物品の作製方法
【0084】
本開示は、多層水分散性物品の製造にも関する。
方法A
【0085】
物品およびその用途に応じて、物品は、例えば、押出、ブロー押出、熱成形、射出成形、ディップ成形、ストレッチ成形、ブロー成形、溶媒流延などの任意の公知の方法を使用して形成することができる。
【0086】
物品が水分散性フィルムである実施形態において、基材層は、溶媒流延、ブロー成形、押出またはブロー押出を通じて形成することができる。例えばPVOHを含むことができる基材層の溶媒流延のための方法は、当技術分野で周知である。例えば、PVOH層のフィルム形成法では、ポリビニルアルコール樹脂および二次添加剤を溶媒、典型的には水に溶解し、表面上に計量供給し、実質的に乾燥(または強制乾燥)させてキャストフィルムを形成し、次いで得られたキャストフィルムを鋳肌から取り外す。この方法はバッチ式で実施することができ、連続法でさらに効率的に実施される。
【0087】
ポリビニルアルコールの連続フィルムの形成では、移動する鋳造表面、例えば連続的に移動する金属ドラムまたはベルト上に溶液の溶液を計量し、液体から溶媒を実質的に除去し、それによって自己支持性キャストフィルムが形成され、次いで得られたキャストフィルムを鋳肌から剥離することが従来の方法である。
【0088】
コーティング層を形成する方法は、溶融混合を含むことができる。溶融混合のための方法は、当技術分野で周知である。例えば、コーティング層が2またはそれを超える蝋を含む場合、蝋が溶融し、混合されて一体となる温度は、各蝋の融点よりも高くなければならないが、蝋の褐変点(browning point)よりも低くなければならない。これに代えてまたはこれに加えて、コーティング層が水分散性パラフィン蝋、酸化ポリエチレン、微結晶蝋、鉱油、天然石油蝋、合成石油蝋、ウッドロジン、カルナバ蝋、カンデリラ蝋、蜜蝋、シェラック、トリグリセリド、亜麻仁油、トウモロコシ油、キャノーラ油、麻油、ヤシ油、前述のいずれかの誘導体、または前述のいずれかの混合物を含む場合、コーティング層が混合される温度は、周囲室温~約200℃の範囲内とすることができる。例えば、コーティング層は、約20℃~約200℃、約25℃~約175℃、約30℃~約150℃、約25℃~約125℃、40℃~約100℃、約50℃~約90℃、または約65℃~約85℃、例えば約20℃、約25℃、約30℃、約35℃、約40℃、約50℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃、約100℃、約115℃、約120℃、約125℃、約130℃、約140℃、約150℃、約160℃、約170℃、約180℃、約190℃または約200℃の範囲の温度で混合され得る。
【0089】
複数の実施形態において、コーティング層は、上述のように、溶液およびキャストとして調製することができる。
【0090】
複数の実施形態において、多層水分散性物品は、例えば、当技術分野で公知の方法に従って基材層を溶媒流延または押出成形し、次いで溶融混合されたコーティング層を基材層の1またはそれより多くの表面に接触または塗布し、必要に応じてその後乾燥させることによって形成することができる。コーティング層は、例えば、当技術分野で周知であるように、メイヤーロッドなどの巻線ロッドを使用して塗布することができる。代替法としては、例えば、スプレーコーティング、浸漬コーティング、スピンコーティングおよびフローコーティングが挙げられる。
【0091】
複数の実施形態において、多層水分散性物品は、例えば、当技術分野における公知の方法に従って基材層を溶媒流延または押出成形し、次いで、ダイを通してコーティング層を加工し、コーティング層を基材層の表面に塗布し、必要に応じてその後乾燥させることによって形成することができる。コーティング層は、1つにはその組成に応じて、溶融混合されまたは溶液とすることができる。
【0092】
複数の実施形態において、多層水分散性物品は、例えば、溶媒流延および乾燥によって、基材層およびコーティング層を別々に調製し、続いて、乾燥された基材層を乾燥されたコーティング層に積層して水分散性物品を提供することによって形成することができる。
【0093】
コーティング層は、本開示による多層物品を調製するのに適した任意の重量で基材層に塗布することができる。例えば、コーティング層は、約5g/m2~約100g/m2、約10g/m2~約90g/m2、約20g/m2~約80g/m2、約30g/m2~約70g/m2または約40g/m2~約60g/m2の範囲、例えば約8、約10、約13、約15、約17、約20、約22、約25、約28、約30、約32、約35、約38、約40、約42、約45、約47、約50、約52、約55、約57、約60、約62、約65、約67、約70、約72、約75、約77、約80、約85、約90、約95または約100g/m2のコーティング重量を有することができる。
【0094】
複数の実施形態において、少なくとも2つの層、すなわち、基材層とコーティング層を有する多層水分散性物品を提供するために、コーティング層は基材層の一方の表面に塗布される。複数の実施形態において、3つの層(すなわち、2つの反対側に位置するコーティング層の間の基材層)を有する水分散性物品を提供するために、基材層は基材層の両面にコーティングされる。複数の実施形態において、多層物品を提供するために、同一のまたは異なる組成を有する複数のコーティング層を基材層のいずれかの面に塗布することができる。
【0095】
複数の実施形態において、多層水分散性物品を提供するために、基材層は、例えば、パケット、パウチ、瓶または箱に形成され、その後、例えば、浸漬コーティング、スピンコーティング、フローコーティングなどによってコーティング層でコーティングされることができる。複数の実施形態において、コーティングされた多層水分散性物品を提供するために、多層水分散性物品(基材層および第1のコーティング層を含む)は、例えば、パケット、パウチ、瓶または箱に形成され、続いて、例えば、浸漬コーティング、スピンコーティング、フローコーティングなどによって、第1のコーティング層と同一のまたは異なる組成を有する第2のコーティング層でコーティングされることができる。複数の実施形態において、コーティング層が物品の内面を形成し、物品が、例えば浸漬コーティングによってその後にコーティングされたときに、物品がコーティング層-基材層-コーティング層構成を備えるように、多層水分散性物品が調製される。複数の実施形態において、コーティング層が物品の外面を形成し、物品が、例えば浸漬コーティングによってその後にコーティングされたときに、物品が基材層-コーティング層-コーティング層構成を備えるように、多層水分散性物品が調製される。コーティング層の数およびコーティング層が塗布される基材層の特定の面は、特に限定されない。
方法B
【0096】
本開示の多層水分散性物品は、一次組成物を提供するために、水溶性ポリマーと蝋エマルジョンを混合すること、および前記多層水分散性物品を提供するために前記一次組成物を注型または押出成形することによっても調製することができ、前記水分散性物品は、約20gH2O/m2/日またはそれ未満の水蒸気透過率(MVTR)を有する。一次組成物は、エマルジョンの形態であり得る。物品が一次組成物の押出成形から形成される場合、一次組成物は意図的に水を含まない。すなわち、一次組成物は、各成分中に存在する残留水を含み得るが、追加の水は意図的に添加されない。理論に拘束されることを意図するものではないが、エマルジョンとして一次組成物を調製することは、蝋および水溶性相を維持するのに役立つと考えられる。
【0097】
水溶性ポリマーは、本明細書に記載されるように選択することができる。例えば、複数の実施形態において、水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリビニルピロリドン、第四級アンモニウムポリマー、セルロースエーテル、および上記のいずれかの任意の混合物からなる群から選択される。複数の実施形態において、水溶性ポリマーは、未修飾ポリビニルアルコールを含む。複数の実施形態において、水溶性ポリマーは、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、スルホン酸アミノプロピル、マレイン酸、無水マレイン酸、n-ビニルピロリドン、n-ビニルカプロラクタム、上記のいずれかの誘導体または上記のいずれかの組合せで修飾された、アニオン性基で修飾された樹脂を含む。例えば、複数の実施形態において、水溶性ポリマーは、未修飾ポリビニルアルコールとアニオン性基で修飾されたポリビニルアルコールとの混合物を含む。複数の実施形態において、アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコールは、マレイン酸モノメチルで修飾されたポリビニルアルコールを含む。複数の実施形態において、水溶性ポリマーは、セルロースエーテルを含む。例えば、いくつかの実施形態において、水溶性ポリマーは、カルボキシメチルセルロースを含む。複数の実施形態において、水溶性ポリマーは、未修飾ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコールと、カルボキシメチルセルロースなどのセルロースエーテルとを含む。
【0098】
ポリビニルアルコールの粘度、修飾の量、加水分解度およびその他の特性は、本明細書に記載されているとおりであり得る。例えば、複数の実施形態において、アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコールは、少なくとも約0.5mol%の修飾、例えば、約1.0mol%~約4.0mol%の修飾、または約1.0mol%~約3.5mol%の修飾を含む。複数の実施形態において、ポリビニルアルコール(例えば、未修飾および/またはアニオン性基で修飾されたポリビニルアルコール)は、少なくとも88mol%、例えば、約90mol%~99mol%未満の範囲の加水分解度を有する。複数の実施形態において、ポリビニルアルコールは、20℃で、少なくとも約6cP、例えば、約6cP、8cP、10cP、12cPまたは15cPの、4%水溶液粘度を有する。
【0099】
本明細書において記載されるように、本方法は、水溶性ポリマーを蝋エマルジョンと混合することを含む。蝋エマルジョンは、パラフィン蝋、微結晶蝋、天然石油蝋、合成石油蝋、カルナバ蝋、カンデリラ蝋、蜜蝋および前述のいずれかの任意の混合物を含むことができる。複数の実施形態において、蝋エマルジョンは、2またはそれを超える異なる蝋の混合物を含む。複数の実施形態において、蝋エマルジョンは、パラフィン蝋、蜜蝋またはこれらの組合せを含む。複数の実施形態において、蝋エマルジョンは、蝋エマルジョンの総重量に基づいて、約5重量%~約30重量%、例えば、約10重量%~約25重量%、約10重量%~約15重量%、約15重量%~約30重量%、約20重量%~約30重量%、または約15重量%~約20重量%の範囲の量で、パラフィン蝋、蜜蝋またはこれらの組合せを含む。複数の実施形態において、蝋エマルジョンの蝋は、パラフィン蝋、蜜蝋またはこれらの組み合わせからなる。複数の実施形態において、蝋エマルジョンは、パラフィン蝋、蜜蝋またはこれらの組合せ、乳化剤および担体溶媒からなる。複数の実施形態において、担体溶媒は、水を含む。
【0100】
複数の実施形態において、乳化剤は、グリセロールの脂肪酸エステルまたはソルビトールの脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤であり得る。適切な乳化剤の例としては、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、モノステアリン酸グリセロール、モノラウリン酸グリセロール、またはこれらの任意の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。複数の実施形態において、乳化剤は、ポリソルベート80を含む。
【0101】
蝋エマルジョンは、水溶性ポリマーの100重量部に基づいて、少なくとも約70、80、90、95、98もしくは100PHRおよび/または最大約150、140、130、120、110、100、95もしくは90PHRの範囲の量で混合物中に存在することができる。複数の実施形態において、蝋エマルジョンは、一次組成物中に、約70PHR~約200PHR、約70PHR~約150PHR、約90PHR~約120PHR、または約95PHR~約115PHRの範囲の量で存在する。
【0102】
蝋エマルジョンおよび/または一次組成物は、例えば可塑剤、充填剤、界面活性剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、スリップ剤、分散剤、またはこれらの任意の混合物などの追加の成分を含むことができる。これらの追加の成分の各々は、上記のように選択して含めることができる。例えば、複数の実施形態において、可塑剤は、グリセロール、ジグリセロール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、最大MW400のポリエチレングリコール、ソルビトール、2-メチル-1,3-プロパンジオール(MPD)、エタノールアミン、トリメチロールプロパン(TMP)、ポリエーテルポリオール、イソマルト、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、アドニトール、ズルシトール、ペンタエリスリトール、マンニトール、または前述のいずれかの組合せを含む。複数の実施形態において、可塑剤は、ソルビトール、キシリトール、またはこれらの組合せを含む。複数の実施形態において、前記方法は、一次組成物を提供するために、水溶性ポリマーおよび蝋エマルジョンを、可塑剤、充填剤、界面活性剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、スリップ剤および分散剤の群中の1またはそれを超える追加成分と混合することをさらに含む。
【0103】
一次組成物は、補助剤または追加の成分をさらに含むことができる。複数の実施形態において、一次組成物は、酸化ポリエチレン、鉱油、ウッドロジン、シェラック、トリグリセリド、亜麻仁油、トウモロコシ油、キャノーラ油、麻油、ヤシ油、未修飾ポリビニルアルコール、アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリビニルピロリドン、第四級アンモニウムポリマー、ポリ酢酸ビニル、エチレンビニルアルコール、アルギネート、多糖類、タンパク質、pH調整されたタンパク質、木材パルプ、非木材パルプ、不織繊維、天然発泡体、合成発泡体、前述のいずれかの誘導体、またはこれらの混合物の1またはそれより多くをさらに含む。
【0104】
複数の実施形態において、一次組成物は、可塑剤、充填剤、界面活性剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、スリップ剤、分散剤、または前述のいずれかの組合せをさらに含む。可塑剤、充填剤、界面活性剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、スリップ剤、分散剤、またはこれらの組合せのそれぞれは、基材層およびコーティング層を有する水分散性物品について上述したとおりであり得る。例えば、複数の実施形態において、一次組成物は、グリセロール、ジグリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、最大MW400のポリエチレングリコール、ソルビトール、2-メチル-1,3-プロパンジオール(MPD)、エタノールアミン、トリメチロールプロパン(TMP)、ポリエーテルポリオール、イソマルト、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、アドニトール、ズルシトール、ペンタエリスリトール、マンニトール、または前述のいずれかの組合せなどの可塑剤をさらに含む。複数の実施形態において、一次組成物は、キシリトール、ソルビトール、またはこれらの組合せを含む。複数の実施形態において、可塑剤は、水溶性ポリマーの100重量部に基づいて、約10PHR~約25PHRの範囲の量で一次組成物中に存在し得る。
【0105】
前記方法は、水溶性ポリマーと蝋エマルジョンを混合することを含む。水溶性ポリマーと蝋エマルジョンが混合される温度は、約15℃~約100℃、約20℃~約90℃、約20℃~約85℃、または約25℃~約70℃、例えば約15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100℃の範囲であり得る。水溶性ポリマーと蝋エマルジョンが混合される温度は、上記のように、蝋の溶融温度および/または褐変温度に部分的に依存する。さらに、温度は蝋の凝固点にも依存し得る。混合温度が低すぎると、蝋が凍結することがあり、蝋を沈殿させまたはエマルジョンの「崩壊(crash out)」を引き起こす。
【0106】
前記方法は、多層水分散性物品を提供するために、一次組成物を注型または押出成形することをさらに含む。複数の実施形態において、多層水分散性物品は、例えば、当技術分野において公知の方法に従って一次組成物を溶媒流延することによって形成することができる。注型に加えて、複数の実施形態において、物品は、押出成形によって一次組成物から形成することができる。本明細書で使用される場合、「押出」という用語は、押出およびブロー押出を含む。押出およびブロー押出の方法は、当技術分野において公知である。注型または押出成形をすると、理論に束縛されることを意図するものではないが、蝋エマルジョンからの蝋は、物品(例えば、フィルムなど)全体にわたって蝋を物品の表面に移動させる「ブルーミング効果」を受けると考えられる。したがって、表面に「ブルーミングされた(bloomed)」蝋は、物品の内面および/または外面の少なくとも一部に存在することができ、それによって物品上に連続的または不連続的な「擬似」コーティングを形成する。重要なことに、蝋のブルーミングは物品全体にわたって必ずしも均一ではないため、(水溶性ポリマーによって部分的に形成される)「コーティング」および/または「基材」の厚さを判別することはできない。
【0107】
注型および押出に加えて、複数の実施形態において、物品は、当技術分野において公知であるように、ブロー成形によって一次組成物から形成することができる。
パケット/パウチ
【0108】
本開示による物品は、組成物を含有するのに有用であり得る。含有される組成物は、粉末、ゲル、ペースト、微小粉末状固体(mulls)、液体、固体、錠剤またはこれらの任意の組み合わせ(例えば、液体中に懸濁された固体)などの任意の形態をとることができる。物品は、改善された湿潤取り扱い(wet handling)および低い水蒸気透過性が所望される任意の用途にも有用である。
【0109】
多層水分散性物品が水分散性フィルムである実施形態においては、フィルムはパウチまたはパケットを形成することができる。望ましくは、水分散性フィルムは、パウチの少なくとも1つの側壁を、必要に応じてパウチ全体を形成する。したがって、いくつかの実施形態において、多層水分散性物品は、内部パウチ容積を規定するパウチの形態の水分散性フィルムである。
【0110】
多層水分散性物品は、同一の基材層および/もしくはコーティング層組成物から構成されたまたは異なる基材層および/もしくはコーティング層組成物の物品と組み合わせて構成された2またはそれを超える区画を有するパケットとすることもできる。さらなる物品は、例えば、当技術分野で知られているように、同一のまたは異なるポリマー性材料の注型、ブロー成形、押出またはブロー押出によって得ることができる。1つの類型の実施形態では、さらなる物品としての使用に適したポリマー、コポリマーまたはこれらの誘導体は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキシド、ポリアクリル酸、セルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、セルロースアミド、ポリ酢酸ビニル、ポリカルボン酸および塩、ポリアミノ酸またはペプチド、ポリアミド、ポリアクリルアミド、マレイン酸/アクリル酸のコポリマー、デンプンおよびゼラチンを含む多糖類、キサンタンなどの天然ゴム、ならびにカラギーナンから選択される。例えば、ポリマーは、ポリアクリラートおよび水溶性アクリラートコポリマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マルトデキストリン、ポリメタクリラートおよびこれらの組み合わせから選択することができ、またはポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールコポリマーおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)およびこれらの組み合わせから選択することができる。1つの想定されるクラスの実施形態は、パケット材料中のポリマーのレベルによって特徴付けられ、例えばPVOHコポリマーは少なくとも60%である。
【0111】
本開示の物品は、少なくとも1つの密閉された区画を含むことができる。したがって、物品は、単一の区画または複数の区画を備え得る。物品が水分散性フィルムである複数の実施形態において、物品は、例えば、境界面において封止された、本開示による水分散性多層フィルムの2つの層から形成することができ、またはそれ自体の上に折り畳まれて封止された単一の多層フィルムによって形成することができる。フィルムの一方または両方が、本明細書に記載の水分散性フィルムを含むことができる。したがって、封止されたフィルムは、水性環境中に放出するための任意の所望の組成物を含有する内部パウチ容器容積を有する物品を区画する。組成物は、特に限定されず、例えば、以下に記載される様々な組成物のいずれをも含む。複数の区画を含む複数の実施形態において、各区画は、同一のおよび/または異なる組成物を含有し得る。次に、組成物は、液体、固体、圧縮固体(錠剤)およびこれらの組み合わせ(例えば、液体中に懸濁された固体)を含むがこれらに限定されない任意の適切な形態をとることができる。複数の実施形態において、物品は、それぞれが異なる第1、第2および第3の組成物を含有する第1、第2および第3の区画を備える。
【0112】
多区画物品の区画は、同一のまたは異なるサイズおよび/または容積であり得る。本発明の多区画パウチの区画は、任意の適切な様式で分離または結合することができる。複数の実施形態において、第2および/または第3および/または後続の区画は、第1の区画上に重ね合わされる。区画は、一続きにまとめてもよく、各区画は、ミシン目線によって個別に分離可能である。したがって、各区画は、エンドユーザによって連なりの残りの部分から個別に引き剥がされ得る。
【0113】
複数の実施形態において、本開示の物品は、1またはそれを超える異なるフィルムを含むことができる。例えば、単一区画の実施形態では、パケットは、それ自体の上に折り畳まれて端部で封止された1つの壁から、または、端部で一緒に封止された2つの壁から作られ得る。複数の区画の複数の実施形態において、パケットは、任意の所定のパケット区画が単一のフィルムまたは異なる組成を有する複数のフィルムから作製された壁を備え得るように、1またはそれを超えるフィルムから作製され得る。
【0114】
物品は、任意の適切な機器および方法を使用して作製され得る。例えば、単一区画パウチは、当技術分野で一般的に知られている垂直型充填、水平型充填または回転式ドラム充填技術を使用して作製され得る。このような方法は、連続的または断続的のいずれであってもよい。物品は、その展性を増大させるために、例えば、湿らせおよび/または加熱され得る。この方法は、物品を適切な型の中に引き込みまたは押し込むために、減圧、オス型プラグの補助または強制空気(forced air)の使用も伴い得る。物品を型の中に引き込む減圧または強制空気は、物品が表面の水平部分上に存在する時に、約0.2~約5秒間、または約0.3~約3秒間、または約0.5~約1.5秒間適用することができる。この減圧または強制空気は、例えば、10mbar~1000mbarの範囲、または100mbar~600mbarの範囲の圧力を与えるものとすることができる。
【0115】
物品をその中で作製することができる型は、パウチの必要とされる寸法に応じて、任意の形状、長さ、幅および深さを有することができる。型は、所望であれば、サイズおよび形状が互いに異なることも可能である。例えば、最終物品の体積は、約5ml~約300ml、または約10~300ml、または約20~約300mlであり得る、それに応じて型のサイズが調整される。本開示の物品は、単位用量を提供するのに適した任意のサイズであり得る。単位用量物品のサイズは、最終用途に依存する。例えば、水泳用プールなどのバルク水用途の物品は、約25mlを超え、約500ml未満の、例えば250mlの内部容積を有し得る。例えば、温泉または温水浴槽などのバルク水用途のための物品は、25mlを超え、約200ml未満の、例えば100mlの内部容積を有し得る。例えば、酵母を含有するなどのベーキング用途のための物品は、25mlを超え、約100ml未満の、例えば50mlの内部容積を有し得る。複数の実施形態において、物品は、少なくとも約25ml、もしくは少なくとも約50ml、もしくは少なくとも約100ml、もしくは少なくとも約150ml、もしくは少なくとも約200ml、もしくは少なくとも約250ml、もしくは少なくとも約300ml、および/または最大約500ml、最大約400ml、最大約300ml、最大約200mlもしくは最大約100mlの内部容積を有し得る。複数の実施形態において、物品の内容物は、緩やかな粉末または圧縮された錠剤の形態の粉末であり得る。緩やかな粉末または圧縮された錠剤は、少なくとも約25g、または少なくとも約100g、または少なくとも約150g、または少なくとも約200g、または少なくとも約250g、または少なくとも約300g、または少なくとも約400g、または少なくとも約500g、または少なくとも約550g、または少なくとも約600g、例えば約100g~約600g、または約250g~約550g、または約500g~約600g、または約25g~約300gの範囲の量で提供され得る。本開示の物品は、少なくとも約12.5cm(約5インチ)、少なくとも約15.25cm(約6インチ)、少なくとも約18cm(約7インチ)、または少なくとも約23cm(約9インチ)の長さを有し得る。複数の実施形態において、本開示の物品は、少なくとも約7.5cm(約3インチ)、少なくとも約10cm(約4インチ)、または少なくとも約12.5cm(約5インチ)の幅を有し得る。複数の実施形態において、物品は、約12.5cm~約15.25cm(約5~約6インチ)の長さおよび約7.5cm~約10cm(約3~約4インチ)の幅を有し得る。
【0116】
複数の実施形態において、単一の区画または複数の密閉された区画は、組成物を含有する。複数の区画は、それぞれ同一のまたは異なる組成物を含有し得る。組成物は、液体、固体またはこれらの組み合わせから選択される。
【0117】
複数の実施形態において、多層水分散性物品は、より大きな物品内に配置することができ、より大きな物品は、本明細書に記載の物品と同一のまたは異なる組成物を有することができる。例えば、ベーキング用途では、第1の多層水分散性物品は、その密封された区画内に酵母を含む組成物を含有することができ、物品は、例えば小麦粉を含む組成物を含有するより大きな第2の多層水分散性の封止された物品内に配置することができる。
多層水分散性フィルムの垂直型充填封止
【0118】
水分散性物品がフィルムである実施形態では、水分散性フィルムを封止された物品へと形成することができる。複数の実施形態において、封止された物品は、パウチなどの、縦型の、充填され、封止された物品である。縦型充填封止(VFFS(vertical form,fill and sela))法は、従来の自動化された方法である。VFFSは、縦向きの供給管の周りにフィルムの単一片を巻き付ける組立機などの装置を含む。機械は、フィルムの対向する端部をともに熱融着またはその他の方法で固定して、サイドシールを作製し、フィルムの中空管を形成する。続いて、機械は、ボトムシールを熱融着し、またはその他の方法でボトムシールを作製し、それにより、トップシールが後にその場所に形成される開放した上部を有する容器部分を画定する。機械は、開放した上端部を通して指定された量の流動可能な製品を容器部分中に導入する。容器が所望の量の製品を含んだ時点で、機械は、例えばトップシールを作製するために、フィルムを別の熱融着装置へ前進させる。最後に、機械は、トップシールのすぐ上でフィルムを切断して充填された包装を提供するカッターまでフィルムを前進させる。
【0119】
動作の間、組立機は、フィルムをロールから前進させて包装を形成する。したがって、フィルムは、機械を通って容易に前進することができなければならず、機械部品に付着してはならず、または加工中に破損するほど脆くてはならない。
【0120】
封止された物品における基材層およびコーティング層の方向は、特に限定されず、物品の最終用途に依存し得る。例えば、複数の実施形態において、基材層はパウチの外面を形成し、コーティング層はパウチの内面を形成する。複数の実施形態において、基材層はパウチの内面を形成し、コーティング層はパウチの外面を形成する。基材層の両面がコーティング層と接触している実施形態では、コーティング層はパウチの内面および外面を形成することができる。
多層水分散性フィルムの成形、封止および熱成形
【0121】
多層水分散性物品がフィルムである複数の実施形態では、フィルムは熱成形可能であり得る。熱成形可能なフィルムは、熱および力を加えることによって成形することができるフィルムである。基材層中に比較的高いレベル(例えば、約20重量%~約45重量%)の可塑剤を有する水分散性フィルムは、このような過程に特に適していると考えられるものに属するが、基材層中に比較的低レベル(例えば、約5重量%~最大約20重量%)の可塑剤を有する水分散性フィルムは、温度、機械速度、滞留時間などの熱成形条件を制御することによって熱成形することができる。
【0122】
フィルムの熱成形は、フィルムを加熱し、(例えば型中で)フィルムを成形し、次いでフィルムを冷却させると直ちにフィルムはその形状、例えば型の形状を保持する過程である。熱は、任意の適切な手段を使用して加えられ得る。例えば、フィルムを表面上に供給する前にまたは表面に供給した時点で、フィルムを加熱体の下または熱風に通すことによってフィルムは直接加熱され得る。あるいは、例えば表面を加熱することによって、またはフィルム上に高温の物品を当てることによって、フィルムは間接的に加熱され得る。複数の実施形態において、フィルムは、赤外光を用いて加熱される。フィルムは、約50~約260℃、約50~約200℃、約60~約150℃、約70~約120℃、または約60~約90℃の範囲の温度に加熱することができる。理論に束縛されることを意図するものではないが、加熱の持続時間は、基材および/またはコーティング層の褐変を防止するために、加熱温度に反比例すべきであると考えられる。熱成形は、以下の方法の任意の1つまたはそれより多くによって実施することができる:熱軟化されたフィルムの金型上への手動でのドレーピング、または軟化されたフィルムの金型への圧力誘起性成形(例えば、減圧成形)、または正確に知られた温度を有する押出直後のシートの成形およびトリミングステーション中への自動高速間欠送り(indexing)、またはフィルムの自動配置、プラグおよび/または空気圧式延伸および加圧成形。
【0123】
あるいは、フィルムは、任意の適切な手段によって、例えば、フィルムを表面上に供給する前にもしくは表面に供給した時点で、湿潤剤(水、フィルム組成物の溶液、フィルム組成物用の可塑剤、または前述の任意の組み合わせを含む)をフィルム上に噴霧することによって直接、または表面を湿潤させることによって、もしくはフィルム上に湿潤した物品を当てることによって間接的に湿潤させることができる。
【0124】
フィルムが加熱されおよび/または湿潤された時点で、フィルムは、好ましくは減圧を使用して、適切な金型中に引き込まれ得る。成形されたフィルムの充填は、任意の適切な手段を利用することによって達成することができる。複数の実施形態において、最も好ましい方法は、製品の形態および必要とされる充填速度に依存する。複数の実施形態において、成形されたフィルムは、インライン充填技術によって充填される。次いで、充填された開放パケットは、任意の適切な方法によって、第2のフィルムを使用して閉じられて、パウチを形成する。これは、水平位置および連続的な一定の動きの間に達成され得る。閉鎖は、第2のフィルム、好ましくは水分散性フィルムを、開放パケットの上方および上に連続的に供給し、次いで、典型的には金型間、したがってパケット間の領域において、好ましくは第1および第2のフィルムをともに封止することによって達成され得る。
【0125】
パケットおよび/またはその個々の区画を封止する任意の適切な方法が利用され得る。このような手段の非限定的な例には、熱融着、溶剤接着、溶剤または湿式シーリングおよびそこらの組み合わせが含まれる。典型的には、封止を形成されるべき領域のみが熱または溶剤で処理される。熱または溶剤は、任意の方法によって、典型的には閉鎖する材料上に、典型的には封止を形成すべき領域上にのみ適用することができる。複数の実施形態において、コーティング層は、封止を形成するために使用される材料の表面には適用されない。すなわち、複数の実施形態において、封止が基材層の2つの表面の間に形成されるように、封止のために利用可能なコーティングされていない基材層が存在し得る。例えば、コーティング層が物品の内面を形成する場合、コーティング層は、基材層の外縁および/または封止を形成するために使用される基材層の任意の表面に適用されなくてもよい。いくつかの実施形態では、コーティング層は、基材層全体に適用され、封止を形成するために使用することができる。溶剤または湿式シーリングまたは接着が使用される場合、熱も加えられることが好ましい場合があり得る。封止が形成される温度は、約240°F(約116℃)~約400°F(約204℃)、例えば約240(約116℃)、約250(約121℃)、約260(約127℃)、約270(約132℃)、約280(約138℃)、約290(約143℃)、約300(約149℃)、約310(約154℃)、約320(約160℃)、約330(約166℃)、約340(約171℃)、約350(約177℃)、約360(約182℃)、約370(約188℃)、約380(約193℃)、約390(約199℃)または約400°F(約204℃)の範囲であり得る。好ましい湿式または溶剤シーリング/接着方法は、例えば金型間の領域または閉鎖する材料上に溶剤を噴霧または印刷することによって、溶剤を選択的に適用し、次いでこれらの領域上に圧力を加えて封止を形成することを含む。例えば、上述のようなシーリングロールおよびベルト(必要に応じて熱も与える)を使用することができる。
【0126】
複数の実施形態において、封止された物品は、本明細書に記載されている剥離強度測定試験によって測定された場合、少なくとも10Nの剥離強度を有することができる。
【0127】
次いで、形成されたパウチは、切断装置によって切断され得る。切断は、任意の公知の方法を用いて達成することができる。切断は、連続的に、好ましくは一定速度で、好ましくは水平位置にある間に行われることも好ましい場合があり得る。切断装置は、例えば、鋭利な物品、または熱い物品またはレーザーとすることができ、後者の場合には、熱い物品またはレーザーはフィルム/封止領域を「焼き切る」。
【0128】
多区画パウチの異なる区画は、並んだスタイルで一緒に作製されてもよく、得られた結合されたパウチは、切断によって分離されてもよく、または分離されなくてもよい。あるいは、区画は別々に作製することができる。
【0129】
複数の実施形態において、パウチは、a)(上述のように)第1の区画を形成する工程と;b)工程(a)で形成された閉鎖された区画内または前記閉鎖された区画のすべてに凹部を形成して、前記第1の区画の上に重ねられた第2の成形された区画を作る工程と;c)第3のフィルムによって前記第2の区画を充填および閉鎖する工程と;d)前記第1、第2および第3のフィルムを封止する工程と;e)前記フィルムを切断して多区画パウチを生成する工程と;を含む、方法に従って作製され得る。工程(b)で形成された凹部は、工程(a)で準備された区画に減圧を適用することによって達成され得る。
【0130】
複数の実施形態において、第2および/または第3の区画は、別個の工程で作製され、次いで、欧州特許出願第08101442.5号または米国特許出願公開第2013/240388 A1号または国際公開第2009/152031号に記載されているように第1の区画と組み合わせることができる。
【0131】
複数の実施形態において、パウチは、a)必要に応じて熱および/または減圧を使用して、第1の成形機上で第1のフィルムを使用して、第1の区画を形成する工程と;b)前記第1の区画に第1の組成物を充填する工程と;c)第2の成形機上で、必要に応じて熱および減圧を使用して第2のフィルムを変形させて、第2のおよび必要に応じて第3の成形された区画を作製する工程と;d)第2のおよび必要に応じて第3の区画を充填する工程と;e)第3のフィルムを使用して第2の区画および必要に応じて第3の区画を封止する工程と;f)封止された第2のおよび必要に応じて第3の区画を前記第1の区画上に配置する工程と;g)前記第1、第2、および必要に応じて第3の区画を封止する工程と;h)前記フィルムを切断して多区画パウチを生成する工程と;を含む、方法に従って作製され得る。
【0132】
第1および第2の成形機は、上記の方法を実行するためのそれらの適合性に基づいて選択され得る。複数の実施形態において、第1の成形機は、好ましくは水平成形機であり、第2の成形機は、好ましくは回転ドラム成形機であり、好ましくは第1の成形機の上方に配置される。
【0133】
適切な供給ステーションを使用することによって、多数の異なるもしくは識別可能な組成物および/または異なるもしくは識別可能な液体、ゲルもしくはペースト組成物を組み込んだ多区画パウチを製造することが可能であり得ることを理解すべきである。
【0134】
複数の実施形態において、フィルムおよび/またはパウチは、活性剤、潤滑剤、忌避剤またはこれらの混合物などの適切な材料を噴霧または散布される。複数の実施形態において、フィルムおよび/またはパウチは、例えば、インクおよび/または活性剤をその上に印刷される。
多層水分散性物品の含有物
【0135】
(例えば、パウチ、パケット、瓶などの形態の)本物品は、様々な組成物、例えば水処理組成物を含有し得る。多区画パウチは、各別個の区画中に同一のまたは異なる組成物を含有し得る。組成物は、多層水分散性物品の内面に近接している。組成物は、物品の表面から約10cm未満、または約5cm未満、または約1cm未満、または約1mm未満、または約0.1mm未満であり得る。典型的には、組成物は、物品の表面に隣接しており、または物品の表面と接触している。物品は、組成物をその中に含むパウチ、瓶または区画の形態であり得る。
【0136】
複数の実施形態において、本開示による多層水分散性フィルムは、例えばVFFSによって封止されたパウチへと形成され、組成物を封入する。複数の実施形態において、多層水分散性物品は瓶であり、瓶は組成物を封入する。複数の実施形態において、組成物は液体組成物である。複数の実施形態において、液体組成物は、高い含水量、すなわち、組成物の総重量に基づいて約10重量%を超える含水量を有する。複数の実施形態において、組成物は、乾燥した組成物である。複数の実施形態において、組成物は、塩素化または臭素化された組成物である。複数の実施形態において、組成物は、水処理剤である。このような薬剤は、例えば、米国特許出願公開第2014/0110301号および米国特許第8,728,593号に記載されているような強烈な酸化性化学物質を含むことができる。例えば、薬剤は、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウムおよび次亜塩素酸リチウムなどの次亜塩素酸塩;ジクロロイソシアヌル酸(「ジクロル」またはジクロロ-s-トリアジントリオン、1,3-ジクロロ-1,3,5-トリアジナン-2,4,6トリオンとも呼ばれる)およびトリクロロイソシアヌル酸(TCCA、「トリクロル」または1,3,5-トリクロロ-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオンとも呼ばれる)またはトリクロロイソシアヌラート(TC)などの塩素化されたイソシアヌラート;クロラートおよびパークロラートを挙げることができる。薬剤の塩および水和物も想定される。例えば、ジクロロイソシアヌル酸は、とりわけ、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム二水和物として提供され得る。とりわけ、臭素化されたイソシアヌラート、ブロマート、パーブロマート、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン(DBDMH)、2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)、ジブロモシアノ酢酸アミド、1-ブロモ-3-クロロ-5,5-ジメチルヒダントイン(BCDMH)および2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオールなどの臭素含有剤も単位用量包装用途での使用に適し得る。組成物中に含めることができる他の適切な薬剤としては、パーボラート、パーアイオダート、パーサルファート、パーマンガナート、クロマート、ジクロマート、ニトラート、亜硝酸塩化合物、過酸化物、ケトンペルオキシド、ペルオキシ酸無機酸およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0137】
複数の実施形態において、組成物は、トリクロロシアヌル酸(TCCA)、ジクロロイソシアヌル酸、トリクロロイソシアヌラート(TC)、重硫酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸リチウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、シアヌル酸、1-ブロモ-3-クロロ-5,5-ジメチルヒダントイン(BCDMH)、2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)、ジブロモシアノ酢酸アミド、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、過ホウ酸ナトリウム、ペルオキシモノ硫酸カリウム、ホウ砂、モノ過硫酸カリウム、クエン酸、酒石酸、ポリ酢酸、エチレンジアミン四酢酸、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、グルタルアルデヒド、グリオキサール、硫酸ナトリウム、トリポリホスファート(tripolypohosphate)、ピロリン酸四ナトリウム、多価金属塩または前述のものの組み合わせを含む。
【0138】
別の態様では、組成物は食用であり得る。例えば、組成物は、食用成分から本質的になることができ、または食用成分のみからなることができる。このような組成物中に含めるための成分は、米国食品医薬品局によって「一般に安全と認められている」(GRAS)と指定されている成分、および/または欧州連合において許容され得る割り当てられたE番号を有する成分、および/またはGRASもしくはE番号としてまだ指定されていないが適切な試験を経ており、組成物中での使用に対して提案されている量でヒトによる消費に関して安全であることが実証されている成分であり得る。複数の実施形態において、組成物は、食品、例えば、ヒトが消費するための食品、または動物が消費するための食品である。複数の実施形態において、組成物は、吸湿性であり、水分、例えば湿気にさらされると組成を活性化または変化させる食品である。複数の実施形態において、組成物としては、酵母、糖、塩、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、香味助剤、クエン酸、酒石酸、ポリ酢酸、桂皮アルデヒド、オート麦、ふすま(bran)、乾燥果実、チーズ、クラッカー、ビスケット、または前述のものの組み合わせが挙げられる。
【0139】
一実施形態において、組成物には、液体軽質および液体重質液体洗剤組成物、粉末洗剤組成物、手洗いおよび/または機械洗い用の食器用洗剤などの洗剤組成物;硬質表面洗浄組成物、柔軟剤(fabric enhancer)、洗濯のために一般的に使用される洗剤ゲル、漂白剤および洗濯添加剤、シェービングクリーム、スキンケア、ヘアケア組成物(シャンプーおよびコンディショナー)およびボディウォッシュが含まれ得る。このような洗剤組成物は、界面活性剤、漂白剤、酵素、香料、染料または着色剤、溶剤およびこれらの組み合わせを含み得る。
【0140】
実施形態の一類型において、組成物は、非家庭用ケア組成物であり得る。例えば、非家庭用ケア組成物は、以下のような用途のいずれかに適用可能な洗浄および洗剤組成物を含むが、布地用および家庭用ケア組成物は除外される、農業用組成物、航空用組成物、食品および栄養組成物、工業用組成物、家畜用組成物、海洋組成物、医療用組成物、商業用組成物、軍事用および準軍事用組成物、オフィス用組成物、ならびに娯楽用および公園用組成物、ペット用組成物、水処理組成物から選択することができる。
【0141】
実施形態の一類型において、組成物は、農薬、例えば1またはそれを超える、殺虫剤、殺真菌剤、除草剤、駆除剤、殺ダニ剤、忌避剤、誘引剤、枯れ葉剤(defoliament)、植物成長調節剤、肥料、殺菌剤、微量栄養素および微量元素を含むことができる。適切な農薬および二次的薬剤は、米国特許第6,204,223号および同第4,681,228号ならびに欧州特許第0989803 A1号に記載されている。例えば、適切な除草剤としては、パラコート塩(例えば、二塩化パラコートまたはパラコートビス(メチル硫酸)、ジクワット塩(例えば、二臭化ジクワットまたはジクワットアルギネート)、およびグリホサートまたはその塩もしくはエステル(グリホサートイソプロピルアンモニウム、グリホサートセスキナトリウムまたはスルホサートとも称されるグリホサートトリメシウムなど)が挙げられる。作物保護化学物質の混合できない対は、例えば米国特許第5,558,228号に記載されているように、別個のチャンバ中で使用することができる。使用することができる作物保護化学物質の混合できない対としては、例えば、ベンスルフロンメチルとモリネート;2,4-Dとチフェンスルフロンメチル;2,4-Dと2-[[[[N-4-メトキシ-6-メチル-1,3,5-トリアジン-2-イル-N-メチルアミノ]カルボニル]アミノ]-スルホニル]安息香酸メチル;2,4-Dとメトスルフロンメチル;マンネブまたはマンコゼブとベノミル;グリホサートとメトスルフロンメチル;トラロメトリンと任意の有機リン酸エステル、例えばモノクロトホスまたはジメトエート;ブロモキシニルとN-[[4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)-アミノ]カルボニル]-3-(エチルスルホニル)-2-ピリジン-スルホンアミド;ブロモキシニルと2-[[[[(4-メチル-6-メトキシ)-1,3,5-トリアジン-2-イル)アミノ]カルボニル]アミノ]スルホニル]-安息香酸メチル;ブロモキシニルと2-[[[[N-(4-メトキシ-6-メチル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-N-メチルアミノ]カルボニル]アミノ]-スルホニル]安息香酸メチルが挙げられる。別の関連する類型の実施形態において、組成物は、必要に応じて土壌と一緒に、さらに必要に応じて、例えば米国特許第8,333,033号に記載されている類型の実施形態を含む、腐葉土、砂、ピートモス、水ゼリークリスタルおよび肥料から選択される1またはそれを超える追加の成分と一緒に、1またはそれを超える種子を含むことができる。
【0142】
微粒子、例えば、例えば米国再発行特許第29059号Eに記載されているような羽毛、例えば、米国特許出願公開第2004/0144682号および同第2006/0173430号に記載されているような高吸収性ポリマー;例えば、米国特許第3,580,390号および米国特許出願公開第2011/0054111号に記載されているような顔料および染色剤;例えば、米国特許第8,163,104号に記載されているようなろう付け用フラックス(例えば、フルオロアルミン酸アルカリ金属塩、フルオロケイ酸アルカリ金属塩およびフルオロ亜鉛酸アルカリ金属塩);米国特許出願公開第2007/0003719号に記載されている食品(例えば、コーヒー粉末または乾燥スープ);例えば、米国特許第4,466,431号に記載されているような創傷被覆材など、様々な他の種類の組成物が、本明細書に記載されているパケットでの使用に関して想定される。
【0143】
パウチ内容物のpHは特に限定されず、多層水分散性物品は、当技術分野で公知であり、使用されている水溶性単位用量包装には本来適していないpHを有する成分を含むことができる。例えば、物品の内容物は、約3~約10、約3~約5.5、約8~約10、約4~約9、約5~約8、または6~約7の範囲、例えば、約3、約3.5、約4、約4.5、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、約9.5または約10のpHを有することができる。
【0144】
本開示の一実施形態におけるように、本開示のPVOHフィルムが、刺激の強い化学物質を含む包装配合物における使用を意図されている場合、包装配合物は、好ましくは、カリフォルニア州プロポジション65(California Proposition 65)およびニューヨーク州保健局(New York State Department of Health)が含まれるが、これらに限定されない関連する規制機関によって確立された基準および/または法定のもしくは規制上の規定を満たすように設計される。したがって、本開示のPVOHフィルム中に含有される任意の副生成物夾雑物質の量は、十分にこのような基準内にある。例えば、PVOHフィルム夾雑物質は、1,4-ジオキサンを含むことができる。本明細書で使用される場合、「1,4-ジオキサン」および「ジオキサン」という用語は互換的に使用される。ジオキサンは、エチレンオキシド基を含む合成可塑剤および/または界面活性剤(例えば、オリゴマーポリオール、ポリエチレングリコール、ポリソルベート、およびラウリルアルコールエトキシレートなどのヒドロキシエチル化された加工油)などのある種のフィルム成分中に夾雑物質として存在し得る。理論に拘束されることを意図するものではないが、エチレンオキシド含有界面活性剤または可塑剤が調製されるときに、エチレンオキシドモノマーが重合され、その間にいくらかのジオキサンが副生成物として作られ得ると考えられる。その後、ジオキサンは、界面活性剤および可塑剤から精製することが困難であり、その中に微量の不純物として残存し得る。したがって、水溶性フィルム中に存在するジオキサンの量は、エチレンオキシド含有界面活性剤および可塑剤の量を制限することによって制限することができる。いくつかの実施形態において、水溶性フィルムにおいて使用される界面活性剤は、1phr未満、0.8phr未満、または0.5phr未満のエチレンオキシド含有界面活性剤を含むことができる。いくつかの実施形態において、水溶性フィルムにおいて使用される可塑剤は、20phr未満、10phr未満、5phr未満、または1phr未満のエチレンオキシド含有可塑剤を含むことができる。複数の実施形態において、本明細書に開示される水溶性フィルムは、10ppm未満のジオキサンを含むことができる。複数の実施形態において、本明細書に開示される水溶性フィルムは、5ppm未満のジオキサンを含むことができる。複数の実施形態において、本明細書に開示の水溶性フィルムは、約0.0001ppm~約10ppmのジオキサン、または約0.0001ppm~約8ppm、または約0.0001ppm~約5ppm、または約0.0001ppm~約4ppm、または約0.0001ppm~約2ppm、または約0.0001ppm~約1ppm、または約0.001ppm~約2ppm、または約0.01ppm~約1ppmを含むことができる。
水蒸気透過率(MVTR)試験
【0145】
本開示による多層水分散性物品は、物品またはその層を通じて透過した水分の量によって特徴付けることができる。1つまたは複数の層を通じた水分の透過は、水蒸気透過率(MVTR)によって測定し、記述することができる。MVTRは、バリアの単位面積当たりの透過された水の1日の質量(g H2O/m2/日)として測定される。
【0146】
MVTRは、基材層、コーティング層および多層水分散性物品のそれぞれについて求めることができる。
【0147】
MVTRは、ASTM F-1249を使用して測定される。試験の前に、サンプルを23℃および35%RHで少なくとも8時間および48時間またはそれ未満、例えば約24時間馴化させる。測定は、コーティング層を水源に曝しながら、約38℃および50%RHで行う。
【0148】
複数の実施形態において、多層水分散性物品は、約300gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約275gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約250gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約225gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約200gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約175gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約150gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約125gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約100gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約90gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約80gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約70gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約60gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約20gH2O/m2/日もしくはそれ未満、または約10gH2O/m2/日もしくはそれ未満、例えば、約300gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約250gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約205gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約100gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約75gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約60gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約50gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約40gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約30gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約22gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約18gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約16gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約15gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約14gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約12gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約10gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約8gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約7gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約5gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約3gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約2.5gH2O/m2/日もしくはそれ未満、約1gH2O/m2/日もしくはそれ未満、または約0.5gH2O/m2/日もしくはそれ未満のMVTRを有することができる。複数の実施形態において、水分散性物品は、約0.05gH2O/m2/日~約60gH2O/m2/日、約0.05gH2O/m2/日~約25gH2O/m2/日、約0.05gH2O/m2/日~約22gH2O/m2/日、約0.05gH2O/m2/日~約20gH2O/m2/日、約0.05gH2O/m2/日~約18gH2O/m2/日、約0.10gH2O/m2/日~約16gH2O/m2/日、約0.15gH2O/m2/日~約14gH2O/m2/日、約0.50gH2O/m2/日~約12gH2O/m2/日、約0.75gH2O/m2/日~約10gH2O/m2/日、約10gH2O/m2/日~約20gH2O/m2/日、約12gH2O/m2/日~約18gH2O/m2/日、約14gH2O/m2/日~約16gH2O/m2/日、約0.05gH2O/m2/日~約10gH2O/m2/日、約1gH2O/m2/日~約8gH2O/m2/日、約2gH2O/m2/日~約6gH2O/m2/日、または約3gH2O/m2/日~約5gH2O/m2/日の範囲の、例えば約0.05、約0.1、約0.5、約1、約1.5、約2、約2.5、約3、約3.5、約4、約4.5、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、約9.5、約10、約10.5、約11、約11.5、約12、約12.5、約13、約13.5、約14、約14.5、約15、約15.5、約16、約16.5、約17、約17.5、約18、約18.5、約19、約19.5、約20、約22、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55または約60gH2O/m2/日のMVTRを有することができる。物品内に含有される組成物が、例えば激しい酸化性化学物質を含有する水処理剤である実施形態では、水分散性物品のMVTRは、例えば、約4gH2O/m2/日~約20gH2O/m2/日、約4gH2O/m2/日~約18gH2O/m2/日、約4gH2O/m2/日~約15gH2O/m2/日、約4gH2O/m2/日~約12gH2O/m2/日、約4gH2O/m2/日~約10gH2O/m2/日、約5gH2O/m2/日~約9gH2O/m2/日または6gH2O/m2/日~約8gH2O/m2/日の範囲、例えば、約4、約4.5、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、約9.5、約10、約10.5、約11、約11.5、約12、約12.5、約13、約13.5、約14、約14.5、約15、約15.5、約16、約16.5、約17、約17.5、約18、約18.5、約19、約19.5または約20gH2O/m2/日であり得る。物品内に含有される組成物が水感受性である、すなわち、組成物が吸湿性であるまたは水によって活性化される複数の実施形態では、水分散性物品のMVTRは、例えば、約0.05gH2O/m2/日~約10gH2O/m2/日、約0.1gH2O/m2/日~約8gH2O/m2/日、約0.15gH2O/m2/日~約6gH2O/m2/日、約0.05gH2O/m2/日~約5gH2O/m2/日、約0.5gH2O/m2/日~約4gH2O/m2/日または1gH2O/m2/日~約3gH2O/m2/日の範囲、例えば約0.05、約0.1、約0.5、約1、約1.5、約2、約2.5、約3、約3.5、約4、約4.5、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、約9.5または約10gH2O/m2/日であり得る。複数の実施形態において、水分散性物品のMVTRは、例えば、約60gH2O/m2/日~約300gH2O/m2/日、約60gH2O/m2/日~約250gH2O/m2/日、約70gH2O/m2/日~約205gH2O/m2/日、約75gH2O/m2/日~約200gH2O/m2/日、約100gH2O/m2/日~約200gH2O/m2/日、約125gH2O/m2/日~約175gH2O/m2/日、または約140gH2O/m2/日~約150gH2O/m2/日の範囲であることができる。有利には、約60gH2O/m2/日~約300gH2O/m2/日の範囲のMVTRを有する物品は、必要に応じて水分が物品に入ることおよび/または物品から漏出することを可能にすることができる膜通気性を付与することができる。このような物品の1つの適切な例は、記載されたフィルムから調製されたパウチであり、パウチは、その中に包装された乾燥剤(例えば、シリカゲル)を含有する。水分が包装に浸透するにつれて、水分がフィルムを通して、乾燥剤を含有するパウチ中に引き込まれ、それによって例えば包装された商品の貯蔵寿命を増大させるように、水の影響を受けやすいことがあり得る他の商品の包装内にパウチを含めることができる。
【0149】
一般に、MVTRは、包装された組成物の水および/または水分に対する耐性に応じて調整することができる。例えば、包装された組成物が長い貯蔵寿命を有する食品である場合、最大約300gH2O/m2/日のMVTRが適切であり得る。同様に、包装された組成物が短い貯蔵寿命を有する食品である場合、約60gH2O/m2/日未満のMVTRが適切であり得る。
【0150】
別個の層として与えられる場合、またはフィルムが水溶性ポリマーと蝋の混合物から調製される場合、水溶性ポリマー、フィルムまたは基材層のMVTRは、単独で、約10gH2O/m2/日~約350gH2O/m2/日、約50gH2O/m2/日~約300gH2O/m2/日、約100gH2O/m2/日~約200gH2O/m2/日または約125gH2O/m2/日~約175gH2O/m2/日の範囲内、例えば、約10、約20、約30、約40、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約90、約100、約125、約150、約175、約200、約225、約250、約275、約300、約315、約325または約350gH2O/m2/日であり得る。理論に拘束されることを意図するものではないが、MVTRは、このような層の厚さとともに変化し得ると考えられる。すなわち、ポリマー/基材層の厚さが増加するにつれて、MVTRは減少し得、ポリマー/基材層の厚さが減少するにつれて、MVTRは増加し得る。
【0151】
複数の実施形態において、コーティング層/蝋は、分離した層として提供され、コーティング層/蝋は単独で、基材層のMVTRよりも少なくとも約0.05gH2O/m2/日低いMVTRを有し得る。例えば、コーティング層/蝋は単独で、基材層のMVTRよりも少なくとも約0.05、約0.06、約0.07、約0.08、約0.09、約0.1、約0.25、約0.5、約0.75、約1.0、約1.5、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19または約20gH2O/m2/日低いMVTRを有することができる。
【0152】
分離した層として与えられる場合、コーティング層/蝋のMVTRは、単独で、約20gH2O/m2/日まで、または約10gH2O/m2/日までの範囲であり得、例えば、コーティング層のMVTRは、0、約0.05、約0.1、約0.25、約0.5、約0.75、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、または約20gH2O/m2/日であり得る。理論に拘束されることを意図するものではないが、MVTRは、コーティング層/蝋の厚さとともに変化し得ると考えられる。すなわち、コーティング層/蝋の厚さが増加するにつれて、MVTRは減少し得、コーティング層/蝋の厚さが減少するにつれて、MVTRは増加し得る。
【0153】
理論に拘束されることを意図するものではないが、多層水分散性物品のMVTRは、基材およびコーティング層の両方の組成ならびに基材およびコーティング層のMVTR値、および/または基材およびコーティング層を調製するのに使用される材料に依存すると考えられる。すなわち、水分散性多層物品のMVTRは、コーティング層、すなわち最も低い理論的MVTRを有する層のMVTRと必ずしも等しいわけではない。重要なことに、塗布されたときに、コーティング層は、基材層と接触する分離したまたはその他別個の層を与えるとは考えられない。代わりに、コーティング層は、基材層の表面ともつれ合い、融合し、絡み合い、一体化され、またはその他結び付けられることができ、基材層自体と共に物品の水蒸気透過率に寄与することができる相互作用バリアを基材層上に与える。したがって、得られた多層物品のMVTRは、基材層およびコーティング層の両方のMVTR、ならびに前記層を形成するために使用される材料および組成物にも依存すると考えられる。
透明度/黄色度
【0154】
水分散性多層物品は、その透明度および/または黄色度によって特徴付けることができる。特に、物品は、38℃、80%RH環境中で8週間馴化した後のその透明度および/または黄色度によって特徴付けることができる。物品の透明度および/または黄色度は、当技術分野で周知のように、F12光源および10°Standard Observerを使用して、反射成分を含まない(SPEX)測定を行うことにより、L*a*b*カラースケールを使用してb*値絶対値によって決定される。
【0155】
複数の実施形態において、水分散性多層物品は、38℃、80% RH環境で8週間馴化した後、5またはそれ未満のb*値絶対値を有する。例えば、水分散性多層物品は、例えば、0、約0.1、約0.25、約0.5、約0.75、約1.0、約1.25、約1.5、約1.75、約2.0、約2.5、約2.75、約3、約3.25、約3.5、約3.75、約4.0、約4.25、約4.5、約4.75または約5.0のb*値絶対値を有することができる。複数の実施形態において、b*値絶対値は、38℃、80%RH環境中で8週間馴化した後、約3.75を超えない。複数の実施形態において、b*値絶対値は、38℃、80%RH環境中で8週間馴化した後、約2.5を超えない。
【0156】
b*値絶対値は、ASTM E313-15「Standard Practice for Calculating Yellowness and Whiteness Indices from Instrumentally Measured Color Coordinates」に記載されている方法などの方法を使用することによって、従来の黄色度指数(YI)値に変換することができる。
摩擦係数(COF)試験
【0157】
摩擦係数法は、互いに擦られる2つの材料片の摩擦を試験し、一方の片を他方の片に対して移動させるのに必要な力が測定される。スレッドを動かし始める力(静的摩擦)およびスレッドを動かし続ける力(動的摩擦)はいずれも、ASTM D1894「Friction Testing of Plastic Film and Sheeting」を使用してロードセルによって測定される。COFは、基材層のみ、コーティング層のみ、または基材層とコーティング層の両方を含む物品について測定することができる。
【0158】
本明細書に記載されている試験は、フィルムなどの本開示による物品のコーティング層表面のCOFを測定するために使用するためのものである。この方法は、Instron(登録商標)Coefficient of Friction Testing Fixture Model 2810-005または同等物(この代表的な図が
図2で示される)、およびInstron(登録商標)Testing Machine Model #5543または同等物を使用する。
【0159】
試験装置は、その上にフィルムサンプル14が固定された摩擦スレッド12を載置する摩擦フィクスチャ10を含む。スレッド12は、摩擦フィクスチャ10に固定された滑車22と係合するプルコード20を介して上側グリップ18に結合されている。下方継手24は、試験フィクスチャをInstron(登録商標)試験機(図示せず)に固定する。
【0160】
Instron(登録商標)方法Blue Hillプログラムによれば、「システム:最大値を得るために、指定されたチャネルに対して開始値から終了値までデータを検索する;最大値のパーセンテージだけ上昇および下降する第1のデータ点を決定し、この点を第1のピークとして割り当てる;以下の式を使用して静的摩擦係数を決定する:静的摩擦=第1のピーク/スレッド重量;第1のピークから終了値までの領域の平均荷重を計算するために以下の式を使用する:平均荷重=エネルギー/伸長の変化;動的摩擦係数を決定するために、以下の式を使用する:動的摩擦=平均荷重/スレッド重量」
【0161】
試験片は、試験領域を形成するために、スレッド用に(5インチ×5インチの正方形(12.7cm×12.7cmの正方形)および表面用に5インチ×8インチの長方形(12.7cm×20.3cm)の寸法を有するサンプルからなるものとする。フィルムの厚さは静的COFに影響を与えないと考えられるが、フィルムは3.0±0.1ミル(すなわち76.2±2.5μm)の厚さを有することができる。サンプルは、例えば、カミソリ刃および適切な寸法のテンプレートを使用して切断することができる。適用可能な場合、サンプルは、キャストフィルムの縦方向に平行な長手で切断されるべきである。同じく適用可能な場合、スレッドが引っ張られている方向がフィルムサンプルの縦方向と平行になるように、試験においては、5インチ×5インチサンプルの方向に留意し、適切に配置すべきである。
【0162】
試験片は、試験前に8時間またはそれを超える時間、75°F±5°Fおよび相対湿度35%±5%に馴化させるべきであり、試験は同一の温度および相対湿度条件で行われる。
【0163】
COF装置の設置手順
1. Instron(登録商標)Coefficient of Friction Testing Fixture Model 2810-005上の下あごからUリンクピンを取り外して、取り除く。
2. 上あごからUリンクピンを取り外して、取り除く。
3. Instron(登録商標)Testing Machine Model #5543のベースアダプタ上に摩擦フィクスチャ下方継手を配置する。
4. Uリンクピンで下方継手を取り付ける。
5. プルコードの一端のループを上方Uリンクピンの上に滑り込ませ、ロッククリップを取り替える。
6. Testing Machine Model#5543を較正する
7. プルコードの他端のループを摩擦スレッドフック上に滑り込ませる。
8. 滑車が自由に回転できることを確認する
9. プルコードに弛みがなく、滑車の周りの溝の中に配置されるまで、スレッドを移動させる。
10. スレッドを滑車の中に走行させることなく試験の全長50mmに沿って摩擦スレッドを引っ張るのに十分な移動空間が存在するように、Instron(登録商標)Coefficient of Friction Testing Fixture Model 2810-005の可動クロスヘッド(上方ヘッド(heard))を位置決めする。
11. クロスヘッドが動いている間、コードをピンと張った状態に保つ。
12. Instron#5543制御パネル上のJOG制御を使用して、摩擦スレッドの遠端が摩擦フィクスチャの背面(運動の軸に対して垂直であり、滑車から最も遠い平面)を超えないように伸長限度を設定する。GLボタンを押して走行限度を設定する。これにより、試験中に摩擦スレッドが滑車と衝突することが防止され、関心対象のサンプルの摩擦係数が適切に測定されることが保証される。
13. これで、試験フィクスチャは、試験の準備が整った。
【0164】
検体の配置手順
1. アルミニウム摩擦フィクスチャの上に、表面サンプルを適切な方向で配置する。
2. アルミニウム表面の端部の上に表面サンプルをきつく引っ張り、摩擦フィクスチャの底部側にサンプルをテープで留める。
3. 表面上でのスレッドの結合を避けるために、継手から最も遠い摩擦フィクスチャの端部に沿ってテープを貼り付けることが重要である。
4. 材料がピンと張っているが伸張していないことを確認する。
5. 5×5インチのサンプルで摩擦スレッドを包む
6. スレッドの上に最先端の重なりをテープで貼り付け、表面サンプル上に結合する過剰な材料が存在しないようにする。
7. 摩擦スレッド上のサンプルの他方の縁部をテープで固定して、測定されている接触面上でサンプルがピンと張るようにする。
8. スレッド上の対象表面と摩擦フィクスチャ上の対象表面との間にテープが入らないようにする。
9. 摩擦面上および摩擦スレッド上のサンプルは、しわまたは膨らみがなくピンと張った状態でなければならない;しわまたは膨らみは、COFを測定する際に誤差の原因となる。
10. スレッドを検査して、試験されている表面に触れている異物が存在しないことを確認する。
11. 2つの検体の間に不自然な結合が生じるのを防ぐために、スレッドをプルコードに取り付け、摩擦テーブル上にスレッドを極めてそっと静かに置き、直ちに試験を開始する。
12. 完全に伸長したときに、スレッドが摩擦フィクスチャ上に置かれたサンプルの上に完全に位置し、テープに接触したり、または摩擦フィクスチャの端部から突出しないようにする。
【0165】
COF試験の実施
1. 要求される向き(例えば、コーティング層側または基材層側)ごとに3つまたはそれを超える検体を試験する。
2. フィルムのコーティング層側の向きは、アルミニウム試験表面上に配置されたフィルムサンプルであるべきであり、試験をするための基材層側は、スレッドの周りに巻き付けられた材料を含むべきである。
3. フィルム検体を取り扱う際には、粉末が存在しない防湿手袋を必ず着用すること;粉末または水分が、試験の精度を損ない得る。
4. 例えばテンプレートを使用して、上記のようにサンプルを切断する。
5. 第1の検体に包まれた摩擦スレッドを、滑車から最も遠い摩擦フィクスチャの末端に配置する。
6. プルコードがピンと張った状態で引っ張られていることを確認する。
7. 試験画面から「COF.im ptf」と題する摩擦係数試験を開く。
8. 画面上の開始ボタンをクリックすると試験が開始される。
9. 検体の試験実行が完了したら、OKをクリックし、摩擦スレッドを開始位置に戻し、摩擦スレッドおよびフィクスチャ上のフィルム検体を交換する。試験を繰り返す。
【0166】
物品は、4.0もしくはそれ未満、または2.0もしくはそれ未満、または1.5もしくはそれ未満、または1.25もしくはそれ未満、または1.0もしくはそれ未満の範囲の、例えば1.0、0.9、0.8、0.7、0.6またはそれ未満の静的COFを特徴とすることができる。別の態様において、静的COFは、4.0未満、または約2.4未満、または2未満、または1未満であり得る。
【0167】
一態様において、物品は、0.45未満の静的COF、40~60MPaの範囲の引張強度および1000~2100g/ミルまたは1150~2100g/ミルの範囲の引裂強度を有することを特徴とすることができる。
剥離強度測定
【0168】
記載されたように、本開示に係る多層水分散性物品は、フィルムとすることができる。多層フィルムは、熱融着性であり得る。本明細書で使用される場合、「熱融着性」という用語は、少なくとも10Nの剥離強度を有する多層フィルムを特徴とする。少なくとも10Nの剥離強度は、フィルム不良、すなわち、融着されたフィルムの剥離ではなく、フィルムの破損または引き裂きを示す。
【0169】
剥離強度測定値は、ASTM D 1876(T-Peel試験)およびASTM D 903-98を組み込んだMSTM-133を使用して収集した。
【0170】
剥離強度の測定のために、6枚の4インチ×5インチのフィルムシートを切断することによって試験片を調製する。マット面を上向きにした1枚のシートの上に、2つのマット面が接するように別のシートを重ねる。これにより、マット-マット配向が得られる。フィルム(2枚のシートを含む)をTS-12 Heat Sealerのあごの中に挿入し、適切な熱融着温度で融着する。特定のフィルムに対して適切な熱融着温度を決定するために、複数のサンプルを切断し、Heat Sealerに対してある温度範囲にわたって分析する。5°F~10°F(2.8℃~5.6℃)の増分で温度を上昇させながらサンプルを分析する。質の高い融着を生成する温度に達するまで融着を繰り返す。質の高い融着は、手で力を加えても2つのシートが容易に剥がれることがなく、シートが融着部位で気泡を生じたり、または焼けたりしないことを特徴とすることができる。質の高い融着が生成されたら、マットからマット、グロスからグロス、およびマットからグロスなどのすべての向きに対して検体を調製する。
【0171】
剥離試験に関しては、ゴムグリップの間に0.25インチ(0.39cm)の間隔が存在し、4つのゴムグリップはすべて平坦で正方形である。3つ(またはそれを超える)の幅1インチ(2.54cm)のサンプルを縦方向(MD)に切断する。検体をグリップの位置に合わせて、グリップと平行になるように、および試験機のあご内で検体がきつく引っ張られすぎないように注意を払いながら、各サンプルの融着されていないフラップを試験機のグリップ中に配置する。荷重のバランスを取り、機器製造業者の指示に従って試験を開始する。試験の最後に、層を引き裂くまたは分離するのに必要とされる引張力(N)を剥離強度として記録する。同様に、引張強度に関しては、3つ(またはそれを超える)の幅1インチ(2.54cm)の単一シートサンプルを引張試験機の中に置き、分析してフィルムピーク強度(N)を決定する。
引張強度試験および伸度試験(ASTM D 882)
【0172】
さらに、本開示に係る水分散性物品がフィルムの形態である場合、フィルムは、以下のように分析される引張強度試験による引張強度および伸度試験による破断点伸びを特徴づけられ、またはこれらに関して試験することができる。この手順は、ASTM D 882(「Standard Test Method for Tensile Properties of Thin Plastic Sheeting」)または同等物による引張強度の決定および破断点伸びの決定を含む。フィルムデータの収集のために、INSTRON(登録商標)引張試験装置(Model 5544 Tensile Testerまたは同等物)が使用される。寸法の安定性および再現性を確保するために信頼性の高い切断工具でそれぞれ切断された最低3つの試験片が、各測定について縦方向(MD)(適用可能な場合)に試験される。試験は、23±2.0℃および35±5%の相対湿度の標準的な実験室雰囲気中で行う。引張強度または破断点伸びの測定のために、3.0±0.15ミル(すなわち76.2±3.8μm)の厚さを有する単一のフィルムシートの1インチ幅(2.54cm)のサンプルを調製する。次いで、38℃、80% RHで8週間、試料を馴化させる。次いで、サンプルをINSTRON(登録商標)引張試験機に移して、35%相対湿度環境での曝露を最小限に抑えながら試験を進める。製造業者の指示に従って、引張試験機を準備し、500Nロードセルを搭載し、較正する。正しいグリップおよび面(faces)を取り付ける(ゴムで被覆された幅25mmのモデル番号2702-032の面を有するINSTRON(登録商標)グリップまたは同等品)。引張試験機中にサンプルを載置し、破断点伸び(すなわち、ヤング率が適用される場合)および引張強度(すなわち、フィルムを破断するのに必要とされる応力)を決定するために分析する。
【0173】
本開示に係るフィルムの適切な挙動は、引張強度試験によって測定される少なくとも約20MPaの引張強度値(縦方向(MD)での)を特徴とする。様々な実施形態において、フィルムは、少なくとも20MPaおよび/または最大約100MPa(例えば、約20、約40、約60、約80または約100MPa)の引張強度値を有する。
【0174】
本開示に係るフィルムの適切な挙動は、INSTRON(登録商標)試験機によって測定される少なくとも約50%の破断点伸び値(縦方向での)を特徴とする。様々な実施形態において、フィルムは、少なくとも50%および/または最大約700%(例えば、約50%、約100%、約200%、約225%、約250%、約300%、約400%、約425%、約450%、約475%、約500%、約600%または約700%)の破断点伸び値を有する。
化学的安定性試験
【0175】
水分散性物品の化学物質に対する混合可能性は、化学物質への曝露後における物品の分散性を評価することによって決定することができる。多層水分散性物品を所望の厚さに調製し、任意の適切な方法、例えば、上述のように、垂直型、充填および封止、射出成形、充填および封止、または熱成形および封止によって、物品と接触する化学的組成物を含むパウチを形成する。
【0176】
化学的組成物を含有する物品は、周囲条件下(23℃および35%RH)、38℃および10%相対湿度(RH)、または38℃、80%RHで保存される。条件は、単位用量物品の実際の保存条件を模倣するように選択することができる。14日間(2週間)、28日間(4週間)、42日間(6週間)および56日間(8週間)、サンプルを保存する。
【0177】
所望の保存時間が経過した後、以下に記載されるMSTM 205を使用して崩壊および溶解時間を測定することによって、化学的組成物に対する物品の安定性を決定する。
溶解および崩壊試験(改変MSTM 205)
【0178】
物品は、当技術分野で公知の方法である改変されたMonoSol Test Method 205(MSTM 205)に従って、溶解時間および崩壊時間によって特徴付けられることができ、または溶解時間および崩壊時間に関して試験することができる。例えば、米国特許第7,022,656号を参照。
【0179】
装置および材料:
1. 500mLビーカー
2. マグネチックスターラー(Labline Model No.1250または同等品)
3. マグネチックスターラーバー(5cm)
4. 温度計(0~100℃±1℃)
5. テンプレート、ステンレス鋼(3.8cm×3.2cm)
6. タイマー(0~300秒、秒単位で正確)
7. ポラロイド(登録商標)35mmスライドマウント(または同等品)
8. MonoSol 35mmスライドマウントホルダー(または同等品)
9. 蒸留水
【0180】
試験されるべき各物品について、ステンレス鋼テンプレートを使用して、物品サンプルから3つの試験片を切断する(すなわち、3.8cm×3.2cmの検体)。フィルムウェブから切断される場合、検体は、ウェブの横方向に沿って均等に間隔が空いたウェブの領域から切断されるべきである。次いで、以下の手順を用いて各試験片を分析する。
1. 各検体を別個の35mmスライドマウントに固定する。
2. ビーカーに500mLの蒸留水を充填する。温度計で水温を測定し、必要であれば、水を加熱または冷却して温度を20℃(68°F)に維持する。
3. 水中の高さに印をつける。マグネチックスターラーをホルダーの基台部に置く。ビーカーをマグネチックスターラーの上に置き、マグネチックスターラーバーをビーカーに加え、スターラーを作動し、水柱の高さの約1/5の渦が発生するまで撹拌速度を調整する。渦の深さに印をつける。
4. スライドマウントの長端が水面と平行になるように、35mmスライドマウントホルダーのワニ口クランプに35mmスライドマウントを固定する。ホルダーの深さ調節装置は、下ろされたときにクランプの端部が水面下0.6cmになるように設定されるべきである。スライドマウントの短辺の一方はビーカーの側面に隣接し、短辺の他方は、物品表面が水の流れに対して垂直になるようにスターラーバーの中心の真上に配置されるべきである。
5. 1つの動作で、固定されたスライドおよびクランプを水の中に下ろし、タイマーを始動させる。崩壊は、物品がばらばらになったときに起こる。300秒後、溶解していない物品断片について溶液をモニターし続けながら、スライドを水から持ち上げる。すべての物品断片がもはや見えなくなり、溶液が透明になったときに、溶解が起こる。フィルムがスライドから完全に溶解していない場合、スライド中に無傷で残っているフィルムのおよそのパーセント(%)表面積:0~25%、25~50%、50~75%または75~100%に注目されたい。これはパーセント残留(%)と呼ばれる。
【0181】
結果には、以下のものが含まれるべきである:完全なサンプルの特定;個々のおよび平均の崩壊および溶解時間;ならびにサンプルが試験された水温。
【0182】
物品の崩壊時間(I)および物品の溶解時間(S)は、それぞれ式1および式2で以下に示されている指数関数アルゴリズムを使用して、標準または基準物品の厚さに対して補正することができる。
I補正=I測定×(基準厚さ/測定厚さ)1.93 [1]
S補正=S測定x(基準厚さ/測定厚さ)1.83 [2]
【0183】
本開示の具体的に企図される実施形態は、以下の付番された段落で本明細書において記載される。これらの実施形態は、本質的に例示的であることを意図しており、限定的であることを意図していない。
【0184】
多層水分散性物品、必要に応じてフィルムであって、水溶性ポリマーを含むポリマー層と、蝋を含む蝋層とを備え、前記蝋が、前記水溶性ポリマーの100重量部に基づいて、約5PHR~約200PHRの範囲の量で存在し、前記水分散性物品が、約60gH2O/m2/日~約300gH2O/m2/日の水蒸気透過率(MVTR)を有する、多層水分散性物品。
【0185】
前記蝋が、パラフィン蝋、微結晶蝋、天然石油蝋、合成石油蝋、カルナバ蝋、カンデリラ蝋、蜜蝋および前述のいずれかの任意の混合物からなる群から選択される、段落0184に記載の多層水分散性物品。
【0186】
前記ポリマー層または蝋層が、酸化ポリエチレン、鉱油、ウッドロジン、シェラック、トリグリセリド、亜麻仁油、トウモロコシ油、キャノーラ油、麻油、ヤシ油、未修飾ポリビニルアルコール、アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリビニルピロリドン、第四級アンモニウムポリマー、ポリ酢酸ビニル、エチレンビニルアルコール、アルギネート、多糖類、タンパク質、pH調整されたタンパク質、木材パルプ、非木材パルプ、不織繊維、天然発泡体、合成発泡体および前述のいずれかの誘導体の1またはそれより多くをさらに含む、段落0184または0185に記載の多層水分散性物品。
【0187】
前記水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリビニルピロリドン、第四級アンモニウムポリマー、セルロースエーテルまたは前述のいずれかの任意の混合物を含む、段落0184~0186のいずれか一つに記載の多層水分散性物品。
【0188】
前記水溶性ポリマーが未修飾ポリビニルアルコールを含む、段落0187に記載の多層水分散性物品。
【0189】
前記水溶性ポリマーが、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、スルホン酸アミノプロピル、マレイン酸、無水マレイン酸、n-ビニルピロリドン、n-ビニルカプロラクタム、および前述のいずれかの誘導体の群中の1またはそれより多くで修飾された、アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコール樹脂を含む、段落0187または0188に記載の多層水分散性物品。
【0190】
前記アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコールが、マレイン酸モノメチルで修飾されたポリビニルアルコールを含む、段落0189に記載の多層水分散性物品。
【0191】
前記アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコールが少なくとも0.5mol%のアニオン性基修飾を含む、段落0189または0190に記載の多層水分散性物品。
【0192】
前記アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコールが約1.0~約4.0mol%のアニオン性基修飾を含む、段落0189~0191のいずれか一つに記載の多層水分散性物品。
【0193】
前記アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコールが約1.0~約3.5mol%のアニオン性基修飾を含む、段落0189~0192のいずれか一つに記載の多層水分散性物品。
【0194】
前記ポリビニルアルコールが、少なくとも88mol%の加水分解度を有する、段落0187~0193のいずれか一つに記載の多層水分散性物品。
【0195】
前記ポリビニルアルコールが、90mol%~99mol%未満の範囲の加水分解度を有する、段落0187~0194のいずれか一つに記載の多層水分散性物品。
【0196】
前記ポリビニルアルコールが、20℃で少なくとも約6cPの4%水溶液粘度を有する、段落0187~0195のいずれか一つに記載の多層水分散性物品。
【0197】
前記水溶性ポリマーがセルロースエーテルを含む、段落0187~0196のいずれか一つに記載の多層水分散性物品。
【0198】
前記セルロースエーテルがカルボキシメチルセルロースを含む、段落0197に記載の多層水分散性物品。
【0199】
前記物品が、第1の面と、前記第1の面の反対側に位置する第2の面とを備え、前記第1の面が前記ポリマー層を備え、前記第2の面が前記蝋層を備える、段落0184~0198のいずれか一つに記載の多層水分散性物品。
【0200】
前記水分散性物品が、内部パウチ容積に面する内面と前記内面の反対側に位置する外面とを有する、前記内部パウチ容積を規定するパウチの形態であり、前記蝋層が、前記パウチの前記外面の少なくとも一部を形成する、段落0184~0199のいずれか一つに記載の多層水分散性物品。
【0201】
前記水分散性物品が、内部パウチ容積に面する内面と前記内面の反対側に位置する外面とを有する、前記内部パウチ容積を規定するパウチの形態であり、前記蝋層が、前記パウチの前記内面の少なくとも一部を形成する、段落0184~0200のいずれか一つに記載の多層水分散性物品。
【0202】
前記ポリマー層と前記蝋層の間に配置された中間領域を備え、前記中間領域は、前記水溶性ポリマーと前記蝋の混合物を含む、段落0184~0201のいずれか一つに記載の多層水分散性物品。
【0203】
前記ポリマー層または前記蝋層が可塑剤をさらに含む、段落0184~0202のいずれか一つに記載の多層水分散性物品。
【0204】
前記可塑剤が、グリセロール、ジグリセロール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、最大MW400のポリエチレングリコール、ソルビトール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エタノールアミン、トリメチロールプロパン(TMP)、ポリエーテルポリオール、イソマルト、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、アドニトール、ズルシトール、ペンタエリスリトール、マンニトール、または前述のいずれかの組合せを含む、段落0203に記載の多層水分散性物品。
【0205】
前記ポリマー層または前記蝋層が、充填剤、界面活性剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、スリップ剤、分散剤、または前述のいずれかの組合せをさらに含む、段落0184~0204のいずれか一つに記載の多層水分散性物品。
【0206】
前記可塑剤、前記充填剤、前記界面活性剤、前記ブロッキング防止剤、前記酸化防止剤、前記スリップ剤、前記分散剤、または前記のいずれかの組合せが、前記水溶性ポリマーと混合される、段落0204または0205に記載の多層水分散性物品。
【0207】
前記蝋が、約5重量%~約30重量%の蝋を含む蝋エマルジョンを含む、段落0184~0206のいずれか一つに記載の多層水分散性物品。
【0208】
前記蝋が、パラフィン蝋、蜜蝋、またはこれらの組合せを含む、段落0184~0207のいずれか一つに記載の多層水分散性物品。
【0209】
前記蝋が、2またはそれを超える異なる蝋の混合物を含む、段落0184~0208のいずれか一つに記載の多層水分散性物品。
【0210】
前記蝋が、前記蝋の総重量に基づいて、約10重量%~約90重量%のパラフィン蝋および約10重量%~約90重量%の蜜蝋を含む、段落0208または0209に記載の多層水分散性物品。
【0211】
前記蝋が、約40℃~約100℃の範囲の融点を有する、段落0184~0210のいずれか一つに記載の多層水分散性物品。
【0212】
前記物品が、約60gH2O/m2/日~約250gH2O/m2/日の範囲の水蒸気透過率(MVTR)を有する、段落0184~0211のいずれか一つに記載の多層水分散性物品。
【0213】
前記物品が、約60gH2O/m2/日~約205gH2O/m2/日の範囲の水蒸気透過率(MVTR)を有する、段落0184~0212のいずれか一つに記載の多層水分散性物品。
【0214】
前記物品が、約60gH2O/m2/日~約150gH2O/m2/日の範囲の水蒸気透過率(MVTR)を有する、段落0184~0213のいずれか一つに記載の多層水分散性物品。
【0215】
前記物品が、約60gH2O/m2/日~約100gH2O/m2/日の範囲の水蒸気透過率(MVTR)を有する、段落0184~0214のいずれか一つに記載の多層水分散性物品。
【0216】
前記水溶性ポリマーが、未修飾ポリビニルアルコール樹脂とカルボキシメチルセルロースの混合物を含み、前記蝋が、蜜蝋と、ポリソルベート80と、水とを含む蝋エマルジョンを含む、段落0184~0215のいずれか一つに記載の多層水分散性物品。
【0217】
多層水分散性物品を作製する方法であって、
一次組成物を提供するために、水溶性ポリマーと蝋エマルジョンを混合することと、
前記多層水分散性物品を提供するために前記一次組成物を注型または押出成形することと、
を含み、前記水分散性物品は、約60gH2O/m2/日~約300gH2O/m2/日の水蒸気透過率(MVTR)を有する、方法。
【0218】
前記水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリビニルピロリドン、四級アンモニウムポリマーおよびセルロースエーテルの群中の1またはそれより多くから選択される、段落0217に記載の方法。
【0219】
前記水溶性ポリマーが未修飾ポリビニルアルコールを含む、段落0218に記載の方法。
【0220】
前記水溶性ポリマーが、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、スルホン酸アミノプロピル、マレイン酸、無水マレイン酸、n-ビニルピロリドン、n-ビニルカプロラクタム、および前述のいずれかの誘導体の群中の1またはそれより多くで修飾された、アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコール樹脂を含む、段落0218または0219に記載の方法。
【0221】
前記アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコールが少なくとも0.5mol%のアニオン性基修飾を含む、段落0220に記載の方法。
【0222】
前記アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコールが約1.0~約4.0mol%のアニオン性基修飾を含む、段落0220または0221に記載の方法。
【0223】
前記アニオン性基で修飾されたポリビニルアルコールが約1.0~約3.5mol%のアニオン性基修飾を含む、段落0220~0222のいずれか一つに記載の方法。
【0224】
前記ポリビニルアルコールが、少なくとも88mol%の加水分解度を有する、段落0218~0223のいずれか一つに記載の方法。
【0225】
前記ポリビニルアルコールが、90mol%~99mol%未満の範囲の加水分解度を有する、段落0218~0224のいずれか一つに記載の方法。
【0226】
前記ポリビニルアルコールが、20℃で少なくとも約6cPの4%水溶液粘度を有する、段落0218~0225のいずれか一つに記載の方法。
【0227】
前記水溶性ポリマーがセルロースエーテルを含む、段落0218~0226のいずれか一つに記載の方法。
【0228】
前記セルロースエーテルがカルボキシメチルセルロースを含む、段落0227に記載の方法。
【0229】
前記蝋エマルジョンが、パラフィン蝋、蜜蝋、またはこれらの組合せを含む、段落0217~0228のいずれか一つに記載の方法。
【0230】
前記蝋エマルジョンが、前記蝋エマルジョンの総重量に基づいて、約5重量%~約30重量%の範囲の量で前記パラフィン蝋、前記蜜蝋、またはこれらの組合せを含む、段落0229に記載の方法。
【0231】
前記一次組成物を提供するために、前記水溶性ポリマーおよび前記蝋エマルジョンを、可塑剤、充填剤、界面活性剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、スリップ剤および分散剤の群中の1またはそれを超える追加成分と混合することをさらに含む、段落0217~0230のいずれか一つに記載の方法。
【0232】
前記可塑剤が、グリセロール、ジグリセロール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、最大MW400のポリエチレングリコール、ソルビトール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エタノールアミン、トリメチロールプロパン(TMP)、ポリエーテルポリオール、イソマルト、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、アドニトール、ズルシトール、ペンタエリスリトール、マンニトール、または前述のいずれかの組合せを含む、段落0231に記載の方法。
【0233】
前記可塑剤が、ソルビトール、キシリトール、またはこれらの組合せを含む、段落0231または0232に記載の方法。
【0234】
前記可塑剤が、前記水溶性ポリマーの100重量部に基づいて、約10PHR~約25PHRの範囲の量で前記一次組成物中に存在する、段落0231~0233のいずれか一つに記載の方法。
【0235】
前記蝋エマルジョンが、前記水溶性ポリマーの100重量部に基づいて、約70PHR~約200PHRの範囲の量で前記一次組成物中に存在する、段落0217~0234のいずれか一つに記載の方法。
【0236】
前記蝋エマルジョンが、前記水溶性ポリマーの100重量部に基づいて、約90PHR~約120PHRの範囲の量で前記一次組成物中に存在する、段落0235に記載の方法。
【0237】
本開示による多層水分散性物品は、単に多層水分散性物品を例示することを意図しており、決してその範囲を限定することを意図していない以下の実施例に照らしてよりよく理解することができる。
【実施例】
【0238】
実施例1:基材層およびコーティング層からの多層水分散性物品の形成および特性評価
(A)PVOH/マレイン酸モノメチル(MMM)コポリマー、または(B)PVOHホモポリマーを含む水分散性基材層を、溶液流延および乾燥を通じて調製した。PVOHホモポリマーをベースとする基材層は、約50PHR(層の約30重量%)の総量での可塑剤としてのグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトールおよびキシリトールと、セルロースと、ならびに他の様々な添加剤をさらに含んだ。PVOH/MMMコポリマーをベースとする基材層は、約7.5PHR(層の約6.6重量%)の総量での可塑剤としてのグリセリン、ソルビトールおよびジグリセロールと、デンプンと、ならびに他の様々な添加剤とをさらに含んだ。基材層は、表1および表2に示されている厚さを有した。
【0239】
表1および表2に示されている表記の厚さおよび重量で、基材層を様々なコーティング層でコーティングした。コーティング層の組成物は、100重量%のパラフィン蝋エマルジョン(AQUACER 494)、100重量%の蜜蝋エマルジョン(BEE’S MILK)、50重量%のパラフィン蝋と50重量%の蜜蝋エマルジョンの混合物、ならびに約1.7mol%の修飾、約26cPの4重量%水溶液粘度および約90%のDHを有する100重量%のマレイン酸モノメチルポリビニルアルコールを含んだ。AQUACER 494は、約50%のパラフィン蝋および約2%のステアラートおよびエトキシル化ソルビタンモノステアラートを含有するパラフィン蝋エマルジョンであり、残りは水である。BEE’S MILKは、約10~15%の蜜蝋、10~15%のゴマ油、および9%またはそれ未満の水添レシチン、ソルビタンステアラート、カプリロールグリコール、フェノキシエタノールおよびヘキシレングリコールを含有する蜜蝋エマルジョン(55重量%固形分)であり、残りは水である。コーティング層を溶融し、表2に示すように、メイヤーロッドを使用して基材層に塗布した。メイヤーロッドが示されていない場合、コーティング層は、溶媒流延および乾燥によって個別に調製され、続いて、例えば積層によってコーティング層を基材層に押し付けることによって基材層に塗布された。
【0240】
表1~4中のすべての値は、透過値を除いて、3つのサンプルの平均として表されている。透過値は単一の測定の結果である。
【表1】
【表2】
【0241】
次いで、本明細書に記載の方法を使用して、MVTR、パーセント残留、(上記のMSTM 205によって与えられたとおりの)23℃での崩壊および溶解、剥離強度および摩擦係数(COF、物品のコーティング側に対して測定)について物品を試験した。これらの試験の結果を下記表3および表4に示す。
【表3】
【0242】
表3に示すように、物品1、9および12はそれぞれ、10gH2O/m2/日未満のMVTR値、約30秒未満の崩壊時間および約120秒未満の溶解時間を有していた。物品5および物品8は、120秒超の溶解時間以外はこれらの基準を同様に満たした。むしろ、物品5および8は、水中に300秒浸漬された後に、それぞれ平均25%および98%の残留を示した。非常に優れたMVTRを有する物品4は、それぞれ210秒および少なくとも300秒の崩壊時間および溶解時間を有した。物品14および物品15は、優れた崩壊時間および溶解時間を示したが、それぞれ16.4および34.6H2O/m2/日で、10gH2O/m2/日をわずかに上回るMVTRを有していた。有利には、コーティング層を有する全ての試験物品は、その上にコーティングを有さない対応する基材層と比較してMVTRの減少を示した。物品6および物品13は、それぞれ約27および16gH2O/m2/日のMVTRを有するが、非常に優れた崩壊時間および溶解時間を示した。
【0243】
理論に束縛されることを意図するものではないが、#5マイヤーロッドを用いて塗布されたコーティング層(すなわち、物品4を除く、物品1、2、9、10および12)は、より薄いコーティング層をもたらし、一般に、得られた多層水分散性物品は、#30メイヤーロッド(すなわち、物品5、6、8、13、14および16)を用いて塗布されたものよりも破損しやすい。したがって、平均すると、#5メイヤーロッドを用いて塗布されたコーティング層は、22.7秒の平均崩壊時間および176.7秒の平均溶解時間を有する#30ロッドを用いて塗布されたコーティング層よりも改善された水分散性(すなわち、13.8秒の平均崩壊時間)および水溶性(すなわち、53.1秒の平均溶解時間)を一般に示した。
【0244】
さらに、これらのデータによって示されるように、基材層Bはホモポリマーであり、より多量の可塑剤を含むので、この基材層は一般に水中でより迅速に崩壊する。
【表4】
【0245】
表4のデータは、それぞれが100重量%の蜜蝋のコーティング層を有する物品2、10および14を除く全ての試験物品が本開示による剥離強度を有することを一般的に実証している。表4にさらに示されているように、その上にコーティング層を有する物品11および15は、コーティングされていない基材層Bの剥離強度(すなわち、27.5N)より高い剥離強度を有していた。同様に、コーティングされていない基材層と同等の封止強度を有する物品2を除くすべてが、コーティングされていない基材層A(すなわち、5.7N)より高い剥離強度を有していた。
実施例2:実施例1の物品の剥離強度データ
【0246】
異なる封止温度での剥離強度を詳細に調べた。以下の表5および表6に示されているように、試験した各基材層に対する様々なコーティング層の剥離強度(N)を異なる封止温度で評価した。表5および表6に提示されているデータは、3つの測定された値の平均であり、封止が剥離(P)または引き裂き(T)という結果になったかどうかを示す。
【表5】
【表6】
【0247】
表5および表6は、本開示による物品の熱融着が、試験された温度範囲内において、温度が上昇するにつれて改善されることを一般的に示している。#30メイヤーロッドを使用して100重量%のパラフィン蝋でコーティングされた物品は、他の試験されたコーティングと比較して優れた熱融着を示した。
【0248】
驚くべきことにおよび有利なことに、表6に示されるように、コーティング層は、コーティングされていないPVOH/MMM基材層を有する物品と比較して、PVOH/MMM基材層を有する物品の封止性を改善する傾向があった。すなわち、フィルム破壊(すなわち、引き裂き)という結果になった物品の剥離強度は、コーティングされたPVOH/MMM基材層を有する物品に関して、コーティングされていないPVOH/MMM基材層を有する物品より高い傾向があった。例えば、50:50の蜜蝋:パラフィン蝋混合物でコーティングされた場合、それぞれ#5および#30メイヤーロッドでコーティングが塗布されると、物品は最大約16.0Nおよび18.9Nの範囲の封止強度を有した。さらに、パラフィン蝋コーティングでコーティングされた場合、封止強度は最大約16.6Nの範囲であった。25.4μmまたは50.8μmの厚さを有するPVOHコーティング層を有する物品は、それぞれ最大約42.7Nおよび66.0Nの封止強度を示した。対照的に、コーティングされていない基材層は、わずか11.5Nの引き裂きの結果をもたらす最大の封止強度を有した。特に、コーティングされたPVOH-ホモポリマー基材層の封止強度がコーティングされていないPVOH-ホモポリマー基材層の封止強度より低くはないとしても、概ね同等であったことを考慮すれば、コーティングされたPVOH/MMM基材層の封止強度のこのような増加は予想されなかったであろう。
実施例3:フィルムMVTRの評価
【0249】
蝋を含む様々なフィルムのMVTRを評価した。以下の表7に従ってフィルムを調製した。実施例1に記載されるように、BEE’S MILK蜜蝋エマルジョン(55重量%固形分)を蝋として使用し、ポリソルベート80を界面活性剤として使用した。フィルムは、一般に、成分を一緒に混合し、その後、得られた溶液をフィルムに注型することによって調製した。具体的には、液状成分を合わせた後、ポリビニルアルコール樹脂を合わせた。混合物を沸騰させ、65℃で一晩(>8時間)保持し、ドクターブレードまたはスロットダイを使用して、乳化された混合物からフィルムをケースに入れた。本明細書中に記載される方法を使用して各フィルムのMVTRを得、下記の表7に報告する。
【表7】
【0250】
表7に示されているように、フィルム組成物に蝋を添加することによって(フィルム20対フィルム21)、MVTRは205gH2O/m2/日(フィルム21)から60gH2O/m2/日(フィルム20)に減少した。可塑剤の量を減らすことは、MVTRに対して有益な影響を与えるが(フィルム20対フィルム18)、伸張性がより低いフィルムをもたらすことがさらに観察された。理論に拘束されることを意図するものではないが、蝋の存在下で可塑剤を低減した際のMVTRの低下は、可塑剤の種類および物理的状態とは無関係に同じように起こると考えられた。例えば、グリセロール、ソルビトールおよび/またはキシリトールの可塑剤パッケージが、本明細書に記載されている他の適切な可塑剤を含むように変更された場合であっても、その可塑剤が室温で液体であるかまたは固体であるかを問わずに、この傾向は継続すると予想される。さらに、グリセロールの非存在下では、蝋の量が減少するにつれて、得られたフィルムのMVTRが減少することが観察された(フィルム17~19を比較)。しかしながら、グリセロールの存在下では、蝋の量が増加するにつれて、得られたフィルムのMVTRは減少した(フィルム20と21を比較)。理論に拘束されることを意図するものではないが、蝋は、フィルムの可塑化特性に寄与することができ、ひいてはフィルムのMVTRを増加させることができると考えられる。
実施例4:フィルムのジオキサン含有量の評価
【0251】
GLI Procedure GC-100Hを使用して、Galbraith Laboratoriesによって、ジオキサン含有量(ppm)について以下の表9中のすべてのフィルムを試験した。以下に示されているように、全てのフィルムは、有利に低いジオキサン含有量(例えば、5ppm未満のジオキサン)を示した。
【0252】
フィルムAは、PVOH樹脂の混合物、具体的には、それぞれ60:40の比率のポリビニルアルコールホモポリマーと4mol%のマレイン酸モノメチル修飾PVOHとを含んだ。フィルムは、約3.5重量%のエトキシル化またはポリオール型化学を含む、可塑剤および界面活性剤および加工助剤を約28重量%でさらに含んだ。有利に、フィルムAは、5ppm未満のジオキサンを有した。
【0253】
フィルムBは、PVOH樹脂の混合物、具体的には、それぞれ60:40の比率のポリビニルアルコールホモポリマーと4mol%のマレイン酸モノメチル修飾PVOHとを含んだ。フィルムは、約3.5重量%のエトキシル化またはポリオール型化学を含む、可塑剤、界面活性剤および加工助剤を約28重量%でさらに含んだ。有利に、フィルムBは4ppm未満のジオキサンを有した。
【0254】
フィルムCは、PVOH樹脂の混合物、具体的には、それぞれ70:30の比率のポリビニルアルコールホモポリマーと4mol%のマレイン酸モノメチル修飾PVOHとを含んだ。フィルムは、約3.3重量%のエトキシル化またはポリオール型化学を含む、可塑剤、界面活性剤および加工助剤を約28重量%でさらに含んだ。有利に、フィルムCは3ppm未満のジオキサンを有した。
【0255】
フィルムDは、5mol%のアクリル酸メチル修飾PVOH樹脂を約63重量%で含んだ。フィルムは、可塑剤、界面活性剤および加工助剤を約35重量%でさらに含んだ。有利に、フィルムDは4ppm未満のジオキサンを有した。
【0256】
フィルムEは、5mol%のアクリル酸メチル修飾PVOH樹脂を約63重量%で含んだ。フィルムは、可塑剤、界面活性剤および加工助剤を約35重量%でさらに含んだ。有利に、フィルムEは2ppm未満のジオキサンを有した。
【0257】
フィルムFは、100PHRの1.7mol%マレイン酸モノメチル修飾PVOH樹脂を含んだ。フィルムは、可塑剤、界面活性剤および加工助剤を約13.3PHRでさらに含んだ。有利に、フィルムFは3ppm未満のジオキサンを有した。
【0258】
フィルムGは、100PHRの1.7mol%マレイン酸モノメチル修飾PVOH樹脂を含んだ。フィルムは、可塑剤、界面活性剤および加工助剤を約13.3PHRでさらに含んだ。有利に、フィルムGは4ppm未満のジオキサンを有した。
【0259】
フィルムHは、100PHRの1.7mol%マレイン酸モノメチル修飾PVOH樹脂および14.67PHRのK-120ポリビニルピロリドン樹脂を含んだ。フィルムは、可塑剤、界面活性剤および加工助剤を約16PHRでさらに含んだ。有利に、フィルムHは5ppm未満のジオキサンを有した。
【0260】
フィルムIは、アクリル酸メチル修飾PVOH樹脂を約63重量%で含んだ。フィルムは、可塑剤、界面活性剤および加工助剤を約23.6重量%でさらに含んだ。有利に、フィルムIは5ppm未満のジオキサンを有した。
【0261】
フィルムJは、PVOH樹脂、4mol%のメタクリル酸メチル修飾PVOH樹脂を約76.5重量%で含んだ。フィルムは、可塑剤、界面活性剤および加工助剤を約35重量%でさらに含んだ。有利に、フィルムJは5ppm未満のジオキサンを有した。
【0262】
フィルムKは、100PHRの1.7mol%マレイン酸モノメチル修飾PVOH樹脂を含んだ。フィルムは、可塑剤、界面活性剤および加工助剤を約29.4PHRでさらに含んだ。有利に、フィルムKは3ppm未満のジオキサンを有した。
【表9】
【0263】
上記の説明は、理解を明確にするためにのみ提供されており、本発明の範囲内での修正は当業者にとって明らかであり得るので、上記の説明から不必要な限定が理解されるべきではない。
【0264】
本明細書で引用される全ての特許、刊行物および参考文献は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。本開示と組み込まれた特許、刊行物および参考文献との間に矛盾が存在する場合、本開示が優先されるべきである。
【国際調査報告】