(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-05
(54)【発明の名称】作動シリンダ
(51)【国際特許分類】
F15B 15/14 20060101AFI20221223BHJP
【FI】
F15B15/14 370
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526396
(86)(22)【出願日】2020-11-06
(85)【翻訳文提出日】2022-06-27
(86)【国際出願番号】 DE2020000270
(87)【国際公開番号】W WO2021089072
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】202019004568.6
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522178522
【氏名又は名称】ビューラハ エンジニアリング インターナショナル ベー.フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビューター、ヨーゼフ
【テーマコード(参考)】
3H081
【Fターム(参考)】
3H081AA02
3H081AA03
3H081BB02
3H081CC20
3H081CC23
3H081DD25
(57)【要約】
本発明は、シリンダ・チューブと、第1のクロージャ部品と、第2のクロージャ部品と、ピストン・ユニットとを備える作動シリンダであって、シリンダ・チューブは、第1のシリンダ・チューブ端及び第2のシリンダ・チューブ端を有し、第1のクロージャ部品は、第1のシリンダ・チューブ端に配置され、第2のクロージャ部品は、第2のシリンダ・チューブ端に配置され、シリンダ・チューブ及びクロージャ部品は、シリンダ内部を形成し、ピストン・ユニットは、シリンダ内部に少なくとも1つの作動スペースを形成し、ピストン・ユニットは、第1のクロージャ部品を摺動可能に通り、第1のクロージャ部品が、第1の周囲レーザ・リング溶接によってシリンダ・チューブに一体的に結合され、第2のクロージャ部品が、第2の周囲レーザ・リング溶接によってシリンダ・チューブに一体的に結合され、レーザ・リング溶接がそれぞれ、流体密シーリング面を形成することを特徴とする、作動シリンダに関する。少なくとも一方のクロージャ部品が、シリンダ・チューブが係合する、軸方向に開口した周囲凹状受容輪郭を有し、この受容輪郭が、シリンダ・チューブと半径方向に重なり、リング溶接傾斜角度アルファが、110度~160度である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動シリンダ(1)であって、
シリンダ・チューブ(2)と、第1のクロージャ部品(3)と、第2のクロージャ部品(4)と、ピストン・ユニット(5)とを備え、
前記シリンダ・チューブ(2)は、第1のシリンダ・チューブ端(6)及び第2のシリンダ・チューブ端(7)を有し、
前記第1のクロージャ部品(3)は、前記第1のシリンダ・チューブ端(6)に配置され、
前記第2のクロージャ部品(4)は、前記第2のシリンダ・チューブ端(7)に配置され、
前記シリンダ・チューブ(2)及び前記クロージャ部品(3、4)は、シリンダ内部(8)を形成し、
前記ピストン・ユニット(5)は、前記シリンダ内部(8)に少なくとも1つの作動チャンバを形成し、
前記ピストン・ユニット(5)は、前記第1のクロージャ部品(3)を摺動可能に通り、
前記第1のクロージャ部品(3)が、第1の周方向レーザ・リング溶接シーム(9)によってポジティブ・ロック式に前記シリンダ・チューブ(2)に接合され、前記第2のクロージャ部品(4)が、第2の周方向レーザ・リング溶接シーム(10)によってポジティブ・ロック式に前記シリンダ・チューブ(2)に接合され、
前記レーザ・リング溶接シーム(9、10)がそれぞれ、流体密シーリング面(10)を形成すること、及び
少なくとも一方のクロージャ部品(3、4)が、前記シリンダ・チューブが係合する、軸方向に開口した周方向凹状受容輪郭を有し、前記受容輪郭が、前記シリンダ・チューブと半径方向に重なること、及び、リング溶接シーム傾斜角度アルファが、110度~160度であることを特徴とする、作動シリンダ(1)。
【請求項2】
前記作動シリンダ(1)が、複動式及び差動作動シリンダとして設計され、
前記第1のクロージャ部品(3)が、案内クロージャ部品として設計され、前記第2のクロージャ部品(4)が、基底クロージャ部品として設計され、
前記第1のシリンダ・チューブ端(6)が、案内側シリンダ・チューブ端であり、前記第2のシリンダ・チューブ端(7)が、基底側シリンダ・チューブ端であり、
前記ピストン・ユニット(5)が、ピストン(5a)及びピストン・ロッド(5b)を含み、
前記ピストン(5a)が、前記シリンダ内部(8)に配置され、前記シリンダ内部(8)を、第1のピストン・ロッド作動チャンバとして設計される第1の作動チャンバ(8a)と、第2のピストン・ロッド作動チャンバとして設計される第2の作動チャンバ(8b)とに分離し、前記ピストン・ロッド(5b)が、前記案内クロージャ部品(3)を摺動可能に通ることを特徴とする、請求項1に記載の作動シリンダ(1)。
【請求項3】
前記作動シリンダ(1)が、複動式及び同期シリンダとして設計され、
前記第1のクロージャ部品(3)が、案内クロージャ部品として設計され、前記第2のクロージャ部品(4)が、さらなる案内クロージャ部品として設計され、
前記ピストン・ユニット(5)が、ピストン(5a)及びピストン・ロッド(5b)を含み、
前記ピストン(5a)が、前記シリンダ内部(8)に配置され、前記シリンダ内部(8)を、ピストン・ロッド作動チャンバとして設計される第1の作動チャンバ(8a)と、第2のピストン・ロッド作動チャンバとして設計される第2の作動チャンバ(8b)とに分離し、前記ピストン・ロッド(5b)が、前記案内クロージャ部品及び前記さらなる案内クロージャ部品を摺動可能に通ることを特徴とする、請求項1に記載の作動シリンダ(1)。
【請求項4】
前記作動シリンダ(1)が、単動式及びプランジャ・シリンダとして設計され、
前記第1のクロージャ部品(3)が、案内クロージャ部品として設計され、前記第2のクロージャ部品(4)が、基底クロージャ部品として設計され、
前記第1のシリンダ・チューブ端(6)が、案内側シリンダ・チューブ端であり、前記第2のシリンダ・チューブ端(7)が、基底側シリンダ・チューブ端であり、
前記ピストン・ユニット(5)が、プランジャ・ピストンによって形成され、
前記プランジャが、前記シリンダ内部(8)に配置され、前記シリンダ内部(8)に作動チャンバを形成し、前記プランジャが、前記案内クロージャ部品(3)を摺動可能に通ることを特徴とする、請求項1に記載の作動シリンダ(1)。
【請求項5】
第1の周方向シーリング・リング(21)が、前記シリンダ内部(8)において、前記第1のクロージャ部品(3)と、前記シリンダ・チューブ(2)の、その第1のシリンダ・チューブ端(6)におけるシリンダ・チューブ内壁との間に、前記第1のレーザ・リング溶接シーム(9)から或る軸方向距離のところに配置され、前記シーリング・リングが、前記第1の周方向シーリング・リング(21)と前記第1のレーザ・リング溶接シーム(9)との間に配置される第1の圧力分離された環状部分(22)を形成すること、及び/又は、第2の周方向シーリング・リングが、前記シリンダ内部(8)において、前記第2のクロージャ部品(4)と、前記シリンダ・チューブ(2)の、その第2のシリンダ・チューブ端(7)におけるシリンダ・チューブ内壁との間に、前記第2のレーザ・リング溶接シーム(10)から或る軸方向距離のところに配置され、前記第2の周方向シーリング・リングが、前記第2の周方向シーリング・リングと前記第2のレーザ・リング溶接シーム(10)との間に配置される第2の圧力分離された環状部分を形成することを特徴とする、請求項1から4までの一項に記載の作動シリンダ(1)。
【請求項6】
前記レーザ・リング溶接シームがそれぞれ、リング溶接シーム深さ(11)を有し、前記リング溶接シーム深さ(11)が、シリンダ・チューブ肉厚(12)に対して1.1~2.5の比を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の作動シリンダ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増大した耐荷重能力を有する溶接される作動シリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、油圧作動シリンダ及び空気圧作動シリンダが種々の異なる変形例で記載されている。
【0003】
ほとんど全ての実施例において、これら作動シリンダは、シリンダ・チューブ及びクロージャ部品を備える。
【0004】
かかる作動シリンダを製造するために、クロージャ部品は、現行の技術水準による種々の異なるやり方でシリンダ・チューブに連結される。
【0005】
一般的に、ポジティブ・ロック連結は、クロージャ部品をシリンダ・チューブにねじ固定することによってもたらされる。したがって、このように製造された作動シリンダは、ねじシリンダとしても知られる。
【0006】
従来技術によれば、先にMAG溶接によって基底クロージャ部品をシリンダ・チューブに結合し、次いで、案内クロージャ部品のみをねじ固定することも知られている。
【0007】
ねじシリンダと、一方のクロージャ部品のみがねじ結合であり、他方のクロージャ部品がMAG溶接であるシリンダとは、現行の技術水準に従って高品質で提供され、最高級且つ信頼性の高い製品であることが証明されている。
【0008】
クロージャ部品及びシリンダ・チューブのねじ山が通常、機械加工プロセスによって形成されるため、特にシリンダ・チューブについて、ねじ山が減算的に製造されるように、材料の厚さすなわちチューブ肉厚の取り代を設けなくてはならないが、その理由は、ねじ山が必然的にシリンダ・チューブを弱化させるためである。このことは、作動中の力、特に流体の作動圧力によって引き起こされる力を吸収するためにチューブ肉厚がかなり過剰に寸法決めされることを意味する。これにより、材料消費が増すという不都合点がもたらされる。
【0009】
さらに、ねじ山を形成する機械加工プロセスは、高精度を必要とし、したがって、製造が非常に厳しい。
気密性を確保するために、シリンダ・チューブと各クロージャ部品との間に追加的な措置としてシールを定期的に挿入せねばならない。
【0010】
別の不都合点は、ねじ結合が緩むことを防止するために、追加的な手段が提供されねばならないことである。作動圧力を変えることの結果として、ねじ山にかかる、その耐用年数を制限する動的荷重があることもまた、不都合点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、特に高品質を有するとともに、材料節減的で、単純な、したがって、費用効果の高いやり方で製造されることができる作動シリンダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
課題は、請求項1に記載された特徴部によって解決される。好ましいさらなる実施例は、従属請求項による。
【0013】
本発明によれば、作動シリンダの基本構成部材は、シリンダ・チューブ、第1のクロージャ部品及び第2のクロージャ部品、並びにピストン・ユニットである。第1のクロージャ部品及び第2のクロージャ部品は以下、まとめてクロージャ部品とも称される。
【0014】
本発明による作動シリンダは、種々の異なる設計で提供されることができる。特に、作動シリンダは、差動作動シリンダ、プランジャ・シリンダ、同期シリンダ、伸縮シリンダ、牽引シリンダ或いはまた空気圧作動シリンダであるものとすることができる。作動シリンダは、同期シリンダとして設計される場合、以下、ステアリング・シリンダとも称される。本発明の意味における作動シリンダはさらに、特に貯蔵シリンダ、ガス・スプリング・シリンダ及び油圧ショック・アブソーバであるものと理解される。
特に、本発明による作動シリンダは、複動式又は単動式作動シリンダとして設計されることができる。例えば、差動作動シリンダは、2つの作動チャンバを備えた複動式油圧作動シリンダであり、2つの作動チャンバにおけるピストン標的面は種々の異なるサイズを有する。したがって、種々の異なる大きさの力が、2つの作動方向に同じ作動圧力でピストンに作用する。差動作動シリンダとは対照的に、同期シリンダのピストン・ロッドは、両側に配置された案内クロージャ部品によって案内され、そのため、ピストンの有効面は同じサイズを有し、したがって、同じ大きさの力が、双方の作動方向に同じ作動圧力で作用し、そのため、同期シリンダは、特にステアリング・シリンダとして用いられる。これに対し、プランジャ・シリンダは、単動式作動シリンダであり、このシリンダでは、圧力媒体が固体としてピストンを変位させ、したがって、ピストンを外側へ移動させる。同じことが伸縮シリンダに当てはまり、このシリンダでは、複数のシリンダ・チューブが互いに挿入され、したがって、特に長い作動移動が可能となる。
【0015】
本発明によれば、第1のクロージャ部品は、第1のシリンダ・チューブ端に配置される。好ましくは、第1のクロージャ部品は、案内クロージャ部品である。案内クロージャ部品は、ピストン・ユニットを摺動及び密封式に受け入れるクロージャ部品であるものと理解される。例えば、差動作動シリンダでは、ピストン・ユニットは、ピストン及びピストン・ロッドから成ることができ、ピストン・ロッドは、案内クロージャ部品によって受け入れられる。プランジャ・シリンダでは、ピストン・ユニットは、案内クロージャ部品によって受け入れられる、プランジャ・ピストンとも称される容積形成ピストンとして設計される。
第1のクロージャ部品は、接触面を有するように設計され、この接触面は、第1のシリンダ・チューブ端に取り付けられると、第1のシリンダ・チューブ端の対応するさらなる接触面に当接する。これら接触面は好ましくは、第1のクロージャ部品及びシリンダ・チューブを完全に囲む。これにより、第1のシリンダ・チューブ端における第1のクロージャ部品が当接する連続した環状面がもたらされる。環状面は、傾斜しており、そのため、幾何学的観点から円錐台側面である。簡潔のため、幾何学的設計に関係なく、この面は以下、単に環状面と称される。
【0016】
本発明によれば、第2のクロージャ部品は、第2のシリンダ・チューブ端に配置される。第1のクロージャ部品と第1のシリンダ・チューブ端との関係に関する記載内容が、第2のクロージャ部品と第2のシリンダ・チューブ端との関係に同様に当てはまる。接触面に関して、第2のクロージャ部品は、第1のクロージャ部品と類似に設計される。好ましくは、第2のクロージャ部品は、基底クロージャ部品であり、その場合、ピストン・ユニットのピストンと軸方向に対向するとともに本発明による作動シリンダの少なくとも一方の作動チャンバを軸方向に画定する。
【0017】
本発明による作動シリンダはさらに、ピストン・ユニットを備える。作動シリンダのタイプに応じて、ピストン・ユニットは、ピストン及びピストン・ロッドから成ることができ、これには、例えば、差動作動シリンダ又は同期シリンダが当てはまり、或いは、ピストンのみから成ることができ、これには、例えば、プランジャ・シリンダが当てはまり、或いは、他の設計を有することができる。ピストン・ユニットが、ピストン及びピストン・ロッドを含む場合、ピストン及びピストン・ロッドは、互いに対して固定位置関係を有する。好ましくは、ピストン及びピストン・ロッドは、互いにしっかりと結合される。そのような設計では、ピストン及びピストン・ロッドは好ましくは、溶接によって材料結合式に結合される。ピストン及びピストン・ロッドはまた、取り外し可能に結合されるものとすることができる。しかしながら、特別な場合、ピストン・ユニットが単品ユニットとして設計され、したがって、ピストン及びピストン・ロッドが単一の構成部材の部分であることも可能である。
【0018】
組み立てられた状態において、シリンダ・チューブ及びクロージャ部品は、本発明によるシリンダ内部を形成する。シリンダ・チューブ及びクロージャ部品がともに連結されると、それらの内側面部分がシリンダ内部を画定する。また、シリンダ内部は、各レーザ・リング溶接シームに及ぶ。
【0019】
さらに、本発明による作動シリンダにおいて、ピストン・ユニットは、少なくとも1つの作動チャンバをシリンダ内部に形成する。このチャンバは、シリンダ・チューブと、クロージャ部品と、ピストン・ユニットとによって画定される。ピストン・ユニットは、ピストン・ユニットが軸方向に変位されることができるように配置され、シリンダ・チューブの長手方向主軸とピストン・ユニットの軸方向の移動方向とが一致する。この設計では、ピストン・ユニットは好ましくは、少なくとも部分が、第1のクロージャ部品を摺動及び密封式に通る。圧力媒体接続部が作動チャンバに割り当てられ、この圧力媒体接続部を介して、圧力媒体が作動チャンバに入ることができるか又は作動チャンバから導かれることができ、したがって、作動チャンバは加圧されることができる。圧力媒体は、油圧媒体又は空気圧媒体であるものとすることができる。
【0020】
本発明による作動シリンダが例えば、差動作動シリンダとして設計される場合、さらに以下のことが当てはまる。
ピストン・ユニットのピストンは、シリンダ内部に配置され、シリンダ内部を、以下、短縮してピストン・クラウン・チャンバとも略される、ピストン・クラウン作動チャンバと、ピストン・ロッド作動チャンバとに分離する。ピストン・クラウン・チャンバは、ピストンと、ここでは基底クロージャ部品として設計される第2のクロージャ部品との間に位置付けられる。ピストン・ロッド作動チャンバは、ピストン・ロッド側に、ピストンと、ここでは案内クロージャ部品として設計される第1のクロージャ部品との間に位置付けられる。したがって、少なくとも一方の作動チャンバは、ピストン・ロッド作動チャンバである。さらに、ピストン・クラウン作動チャンバは、さらなる作動チャンバを形成する。
ピストンは、ピストンの長手方向主軸及びシリンダ・チューブが互いに重なるようにシリンダ内部において軸方向に変位及び配置されることができる。
圧力媒体接続部は、作動圧力がピストン・クラウン作動チャンバ及びピストン・ロッド作動チャンバに印加されることができるようにシリンダに設けられる。
ピストンはさらに、種々のガイド、シーリング又はピストン・リングを有することができる。作動シリンダのためのピストンの種々の実施例は、現行の技術水準からそれ自体既知である。
【0021】
本発明によれば、ピストン・ロッドは、ここでは案内クロージャ部品として設計される第1のクロージャ部品を摺動可能に通る。
ピストン・ロッドは、案内クロージャ部品内に摺動可能に支持され、案内クロージャ部品は、以下、流体とも称される圧力媒体が漏れることを案内クロージャ部品が防ぐように設計される。これは例えば、適切なリング・シールによって達成される。
【0022】
本発明による作動シリンダは特に、クロージャ部品が双方とも、すなわち、例えば、差動作動シリンダの場合では案内クロージャ部品及び基底クロージャ部品が双方とも、シリンダ・チューブに溶接されることを特徴とする。
【0023】
この場合、第1のクロージャ部品は、第1の周方向レーザ・リング溶接シームによってシリンダ・チューブに接合され、第2のクロージャ部品は、第2の周方向レーザ・リング溶接シームによってシリンダ・チューブに接合される。
以下、互いに結合される構成部材は、まとめて結合相手とも称される。
2つのクロージャ部品は、レーザ溶接によってシリンダ・チューブに接合される。レーザ・リング溶接シームは、溶加材を加えることなく生成される融接接合部である。
【0024】
好都合には、レーザ溶接は、非常に狭いテーパ状の溶接シームを形成する。略V字状のレーザ溶接シームの側方側面によって形成される鋭角は好ましくは、15度未満、特に好ましい設計では10度未満である。
【0025】
2つのレーザ・リング溶接シームはそれぞれ、流体密シーリング面を形成する。これは、圧力媒体がシリンダ・チューブと第1のクロージャ部品との間の結合点を通ることを第1のレーザ・リング溶接シームが防ぐとともに、シリンダ・チューブと第2のクロージャ部品との間に圧力媒体が通ることを第2のリング溶接シームが防ぐことを意味し、これは全て、シーリング・リングのような追加的なシーリング手段の必要性がない。
【0026】
シリンダ・チューブ及びクロージャ部品並びに好ましくはピストン・ユニットもそれぞれ、金属合金、特に好ましくは鋼合金から作製される。しかしながら、個々の構成部材の材料組成は若干異なり得る。
好ましくは、シリンダの金属合金の構成部材の質量比率は、クロージャ部品の質量比率と10重量パーセント未満だけ異なる。したがって、クロージャ部品及びシリンダ・チューブは、同様の物理的特性を有しており、特に十分にともに溶接されることができる。
好ましくは用いられる鋼合金は、0.5重量パーセント未満の炭素含量を有する。合金成分であるバナジウム、クロム及びマンガンは好ましくは、0.01重量パーセント~2重量パーセントの比率で、別個に又は併せて含まれる。
【0027】
作動シリンダはさらに、少なくとも一方のクロージャ部品が、シリンダ・チューブが係合する、軸方向に開口した周方向凹状受容輪郭を有し、この受容輪郭が、シリンダ・チューブと半径方向に重なり、リング溶接シーム傾斜角度アルファが、110度~160度であることを特徴とする。90度を超えるこの傾斜は以下、負傾斜した、とも称される。
【0028】
対応するクロージャ部品において、軸方向に開口した周方向凹状受容輪郭は、半径方向側壁を有する環状溝によって提供される。半径方向に配置された外側側壁は傾斜しており、円錐形状を有する。したがって、凹状受容輪郭は、半径方向の重なり部を形成する。半径方向に配置された内側側壁は好ましくは傾斜しておらず、好ましくは円筒形状を有する。そのため、受容輪郭の横断面は好ましくは、凹状楔に対応する。シリンダ・チューブは、対応するシリンダ・チューブ端において、受容輪郭に対応するとともに受容輪郭に対して斜めの環状面を有するように形成され、その角度は、受容輪郭の半径方向外側側壁の傾斜角度に対応する。したがって、シリンダ・チューブ端の壁の横断面は好ましくは、受容輪郭に合う楔に対応する。
【0029】
レーザ・リング溶接シームは、記載された、受容輪郭の傾斜した環状面と、シリンダ・チューブとの間に配置される。レーザ・リング溶接シームの傾斜角度は、2つの傾斜した環状面の傾斜角度に対応する。
【0030】
本発明による溶接される作動シリンダは、従来技術の作動シリンダに比して数多くのかなりの利点を有する。
【0031】
第1の著しい利点は、特にシリンダ・チューブが、所定の長さに切削することを除いて機械加工をほとんど又は全く必要としないということである。特に、ねじ山が切削される必要がないか、又は溝が旋削される必要がない。シリンダ・チューブの機械加工は好都合には、傾斜した前側部環状面の形成に限定される。
【0032】
これは、他の場合では機械加工のために必要な時間量、加工機械、工具費及びエネルギーが節減されることができるという直接的な利点を有する。
【0033】
さらに、シリンダ・チューブが、ねじ込まれる差動作動シリンダの約半分のチューブ肉厚しか有する必要がないため、劇的な材料節減、したがって、原材料資源の保存という利点がある。
例えば、チューブ肉厚において、切削されるねじ山についての材料除去を埋め合わせするために取り代が、省かれることができる。
【0034】
シリンダ・チューブ、好ましくはピストン・ロッドも機械加工することを省くことによって、品質もまた著しく高まる。機械加工に起因する力入力が省かれることの結果、軸同心度がもはや損なわれない。むしろ、シリンダ・チューブについての出発物の軸方向同心度、該当の場合には、ピストン・ロッドの軸方向同心度も、完全に維持される。したがって、本発明による作動シリンダは、より高い精度を有する。したがって、軸方向のピストン・ロッド移動もまた、従来技術において既知である、エンドストップにおいてピストン・ロッドが座屈するという問題なく、行われることができる。同時に、これにより、案内クロージャ部品におけるシリンダ・ガイドの摩耗が低減する。シリンダ・チューブ、該当の場合にはピストン・ロッドを機械加工することを省くことによって、ノッチ効果に起因する荷重能力の低下もまた回避される。
【0035】
本発明によるリング溶接シーム傾斜角度と相互作用する凹状受容輪郭により、3つの好都合な効果が同じ手段によって同時に達成されることが見い出された。第1に、シリンダ・チューブの半径方向の重なり部は、圧力媒体の作動圧力によって引き起こされる座屈力のポジティブ・ロック吸収をもたらす。半径方向に作用する座屈力のポジティブ・ロック吸収は、レーザ・リング溶接シームを解放し、そのため、レーザ・リング溶接シームにおける材料結合力伝達が実質的にもっぱら、軸方向力に利用可能である。第2に、傾斜に起因して、シリンダ・チューブ肉厚を超え、したがって、より高い力伝達を可能にする、リング溶接シーム深さが、追加的な措置を用いることなく達成される。第3に、シリンダ・チューブ及び対応するクロージャ部品が軸方向の送り運動時にそれら自体自動的にセンタリングするため、組み立ての利点が同時に達成される。
【0036】
別の利点は、シリンダ・チューブとクロージャ部品との間の結合点における差動作動シリンダの絶対的な気密性である。この点に関して、他の場合では現行の技術水準によれば必要とされるシールを用いることなく気密性が達成されることができることがさらに好都合である。老朽化する傾向があるこれら構成部材の考えられ得る省略により、費用節減だけでなく、品質の向上及び耐用年数の増加ももたらされる。さらに、老朽化シールに起因する汚染が排除される。
【0037】
さらなる利点は、動作安全性の向上である。荷重変更時のシリンダ・チューブとクロージャ部品との間の軸方向の遊びと、ねじ山に当てはまる場合の緩みとが排除される。さらに、好都合には、他の場合では必要な固定要素を省くことによる節減が達成される。最後に、取り外し可能な結合部が必要とする、他の場合では必要な、実際の固定要素の固定もまた、省かれる。従来技術によれば、かかる固定は例えば、固定要素を接着することによって得られる。接着を省くことにより、さらに重要な利点がもたらされる。第1に、非常に高価なねじロック接着剤についての費用が排除される。第2に、ねじロック接着剤に対するその接着を確実にするために表面をクリーニングする必要がなく、現行の技術水準によれば、このクリーニングには多くの場合、健康に有害な洗浄化学物質が必要とされる。これにより、健康保護及び環境保護を保証する特別な措置の必要性が排除される。第3に、ねじロック接着剤によって固定された場合であっても、取り外し可能な結合部が衝撃荷重下で緩むリスクを被る可能性があるという問題が克服される。
【0038】
動作安全性の向上の別の態様は、耐取り扱い性の向上である。シリンダ内部における非破壊干渉が排除される。不慣れな人員が差動作動シリンダを不適切に開くこと又は不適切に組み立て直すことに関連する考えられ得る損傷原因が排除される。
【0039】
レーザ溶接プロセスはもっぱら、レーザ・リング溶接シームの領域内における材料の非常に局所的に限定された加熱をもたらす。
したがって、他の溶接プロセスによって損傷を受けるであろう、特にシールのような感熱性材料を有する構成部材が依然として、計画された溶接シームに数ミリメートルの距離で溶接されることができる。
また、他の場合では生じるであろう、現行の技術水準によれば多大な労力で取り除かねばならない、特に溶接シーム付近における、シリンダ・チューブ及びクロージャ部品の内側面部分におけるスケール形成が、回避される。
【0040】
別の利点は、溶接される接合部の結合相手における熱応力の低減であるが、その理由は、レーザ溶接の場合では、単位長さ当たりの比較的少量のエネルギー入力(溶接シームの長さに関連するエネルギー量)が供給されればよいからである。
さらに、レーザ・リング溶接シームの輪郭、溶接シーム深さ及び角度が、製造されるべき作動シリンダに対するレーザ・ビームの移動、単位長さ当たりのエネルギー入力及び角度によって大部分が決定されることができることが好都合である。したがって、輪郭及び角度は具体的には、結合相手に対してレーザの位置を変えることによって調整されることができる。
【0041】
本発明による作動シリンダの第1の特に好ましい実施例において、作動シリンダは、複動式作動シリンダとして提供され、差動作動シリンダとして設計される。
この実施例において、第1のクロージャ部品は、案内クロージャ部品として設計され、第2のクロージャ部品は、基底クロージャ部品として設計される。そのため、ここでは、第1のシリンダ・チューブ端は、案内側シリンダ・チューブ端と称され、第2のシリンダ・チューブ端は、基底側シリンダ・チューブ端と称される。したがって、第1のレーザ・リング溶接シームは、案内クロージャ部品と案内側シリンダ・チューブ端との間に配置され、第2のレーザ・リング溶接シームは、基底クロージャ部品と基底側シリンダ・チューブ端との間に配置される。
【0042】
差動作動シリンダでは、ピストン・ユニットは、ピストン及びピストン・ロッドを含む。このように設計されたピストン・ユニットの構造に関して、作動シリンダの記載の上記内容を参照する。
【0043】
ピストン・ユニットのピストンは、シリンダ内部に配置され、したがって、シリンダ内部を、以下、ピストン・クラウン・チャンバとも略される、ピストン・クラウン作動チャンバと、ピストン・ロッド・チャンバと略される、ピストン・ロッド作動チャンバとに分離する。ピストン・クラウン・チャンバ内におけるピストンの有効面積は、ピストンのピストン・クラウン側がピストンのピストン・ロッド・チャンバ側よりも大きい。したがって、圧力媒体の同じ圧力では、ピストン・ロッド側よりも大きな力がピストン・クラウン側のピストンに作用する。ピストンに作用する力は、ピストン・ロッドによってシリンダ内部から外側へ伝達され、このため、ピストン・ロッドは、案内クロージャ部品を摺動可能に通る。
【0044】
本発明による作動シリンダの第2の特に好ましい実施例において、作動シリンダは同様に、複動式作動シリンダとして提供されるが、この実施例では、作動シリンダは同期シリンダとして設計される。
【0045】
この好都合なさらなる展開による同期シリンダでは、差動作動シリンダに当てはまるように、第1のクロージャ部品は、案内クロージャ部品として設計される。さらに、特別な特徴部として、第2のクロージャ部品もまた、さらなる案内クロージャ部品として設計される。案内クロージャ部品及びさらなる案内クロージャ部品は以下、まとめて案内クロージャ部品とも称される。したがって、第1のレーザ・リング溶接シームは、案内クロージャ部品と第1のシリンダ・チューブ端との間に配置され、第2のレーザ・リング溶接シームは、さらなる案内クロージャ部品と第2のシリンダ・チューブ端との間に配置される。
【0046】
この設計において、ピストン・ユニットは同様に、ピストン及びピストン・ロッドを含む。ピストンは、シリンダ内部に配置され、シリンダ内部を第1のピストン・ロッド作動チャンバと第2のピストン・ロッド作動チャンバとに分離する。このため、ピストン・ロッドは、ピストンにわたって両側が軸方向に突出し、ここでは双方とも案内クロージャ部品として提供されるクロージャ部品を通って両側がピストン内部から案内される。したがって、ピストン・ロッドは、双方の案内クロージャ部品を摺動可能に通る。
【0047】
ピストン・ロッド作動チャンバは双方とも、同じ横断面を有し、したがって、ピストンは、両側で圧力媒体について同じサイズの有効面を有する。ピストンに作用する力と、ピストンによって行われる作動ストロークの長さとは、圧力及び体積の観点から同じである、圧力媒体の或る特定の圧力流が、第1のピストン・ロッド作動チャンバに作用するのか、又は第2のピストン・ロッド作動チャンバに作用するのかにかかわらず、各場合に同じである。双方の作動方向におけるこの同一の挙動に起因して、同期シリンダは多くの場合、ステアリング・シリンダとしても用いられ、そのため、ステアリング・シリンダとも称される。
【0048】
別のさらなる展開によれば、作動シリンダは、プランジャ・シリンダとして設計される。これは、単動式作動シリンダである。
【0049】
このさらなる展開によれば、第1のクロージャ部品は、案内クロージャ部品として設計され、第2のクロージャ部品は、基底クロージャ部品として設計される。第1のシリンダ・チューブ端は、案内側シリンダ・チューブ端であり、第2のシリンダ・チューブ端は、基底側シリンダ・チューブ端である。したがって、差動作動シリンダに当てはまるように、第1のレーザ・リング溶接シームは、案内クロージャ部品と案内側シリンダ・チューブ端との間に配置され、したがって、第2のレーザ・リング溶接シームは、基底クロージャ部品と基底側シリンダ・チューブ端との間に配置される。
【0050】
プランジャ・シリンダのピストン・ユニットは、プランジャ・ピストンによって形成される。プランジャが、シリンダ内部に配置される。作動チャンバは1つだけシリンダ内部に形成される。プランジャ・ピストンは、案内クロージャ部品を摺動可能に通る。圧力媒体の圧力流が作動チャンバに加えられると、プランジャは、圧力流の導入量に対応して軸方向に変位され、外側への移動を行う。内側への移動は、反対方向に外側から作用する力によって引き起こされる。
【0051】
好都合なさらなる展開によれば、作動シリンダは、第1の周方向シーリング・リングが、シリンダ内部において、第1のクロージャ部品と、シリンダ・チューブの、その第1のシリンダ・チューブ端におけるシリンダ・チューブ内壁との間に、第1のレーザ・リング溶接シームから或る軸方向距離のところに配置され、上記第1の周方向シーリング・リングが、第1の圧力分離された環状部分を形成し、この環状部分が、第1の周方向シーリング・リングと第1のレーザ・リング溶接シームとの間に配置されること、及び/又は、第2の周方向シーリング・リングが、シリンダ内部において、第2のクロージャ部品と、シリンダ・チューブの、その第2のシリンダ・チューブ端におけるシリンダ・チューブ内壁との間に、第2のレーザ・リング溶接シームから或る軸方向距離のところに配置され、上記第2の周方向シーリング・リングが、第2の圧力分離された環状部分を形成し、この環状部分が、第2の周方向シーリング・リングと第2のレーザ・リング溶接シームとの間に配置されることを特徴とする。
【0052】
そのことは、このさらなる展開によれば、周方向シーリング・リングが、少なくとも一方のレーザ・リング溶接シームの上流に組み入れられることを意味する。好ましくは、周方向シーリング・リングは、双方のレーザ・リング溶接シームの上流に配置される。以下、周方向シーリング・リングは、Oリングとも称される。
【0053】
シリンダ内部において、Oリングは、各レーザ・リング溶接シームの前における環状部分をシリンダ内部の残りの部分から圧密式に分離する。驚くことに、レーザ・リング溶接シームの形成によって、単位長さ当たりのエネルギー入力は、感熱性Oリングがレーザ・リング溶接シームのすぐ近くであっても損傷を受けないほど低く設定されることができることが見い出された。すぐ近くとは、レーザ・リング溶接シームとOリングとの間の、シリンダ・チューブ内径よりも小さい、特に好ましい設計ではシリンダ・チューブ肉厚の多くとも4倍の軸方向距離であるものと理解される。
【0054】
Oリングは、圧力媒体の作動圧力からの環状部分の分離を生じさせる。したがって、シリンダ・チューブの、レーザ・リング溶接シームのすぐ前且つレーザ・リング溶接シームにおける軸方向部分は、内側から圧力媒体の作動圧力を受けず、したがって、座屈荷重を受けない。このように、他の場合では生じるであろう、レーザ・リング溶接シームにかかる半径方向荷重が、非常に単純な手段によって好都合なやり方で同時に回避される。
代わりに、軸方向荷重のみがかけられる。軸方向荷重は、各クロージャ部品の基部領域に作用する圧力媒体の作動圧力に基づいている。したがって、好都合には、レーザ・リング溶接シームにかかる多軸方向荷重、したがって、多軸方向材料応力が回避される。
【0055】
同時に、上流Oリングが、少なくとも一方の作動チャンバ、又は、両側にOリングを備えた作動シリンダのタイプに応じて、双方の作動チャンバを、汚染から保護する。レーザ溶接中に生じるいかなる排出物、又は、レーザ溶接シームの領域において結合相手から分離する可能性がある粒子が、作動チャンバに入る前にOリングによって各環状部分内に保持される。
【0056】
別の好都合なさらなる展開によれば、レーザ・リング溶接シームは、シリンダ・チューブ肉厚に対して1.1~2.5の比を有するレーザ・リング溶接シーム深さを有する。
【0057】
レーザ・リング溶接がシリンダ・チューブ壁を垂直に通らない場合、レーザ・リング溶接シーム深さは、シリンダ・チューブ壁の厚さを上回る。
したがって、溶接シームにおける力伝達がより大きな面積にわたって分布され、それゆえ、最適化されるため、クロージャ部品間の結合は、特に好都合なより高い安定性を有する。
この結果、シリンダ・チューブのチューブ肉厚が特別な用途のためにさらに低減されることができるというさらなる利点がもたらされる。
【0058】
さらに、この好都合なさらなる展開によれば、シリンダ・チューブ厚さよりも深くクロージャ部品内にレーザ・リング溶接シームを導入することによって、レーザ・リング溶接シーム深さを、シリンダ・チューブ肉厚をもはや上回るものにさせることも可能である。この結果、より深い溶接シーム・ルートがもたらされる。好ましくは、レーザ・リング溶接深さは、シリンダ・チューブ厚さの少なくとも1.2倍である。驚くことに、このように引き起こされる、クロージャ部品における構造変化は、リング溶接シームの耐荷重能力を増大させることが見い出された。
【0059】
概して、レーザ・リング溶接シームの形成の種々の好都合なさらなる展開は、特定のシリンダ・タイプに限定されない。さらに、レーザ・リング溶接シームの種々の異なる設計が、1つの及び同じ作動シリンダについて組み合わせられることもできる。
【0060】
本発明は、例示的な実施例として添付の図面によってより詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図2】凹状受容輪郭を示すための、
図1の拡大詳細部の図である。
【
図4】横断面及びリング溶接シーム角度ベータを示すための、レーザ溶接シームの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図1は、作動シリンダが同期作動シリンダとして設計される実施例を示す。同期作動シリンダにおいて、双方のクロージャ部品3、4、すなわち、第1のクロージャ部品3及び第2のクロージャ部品4は、案内クロージャ部品として設計される。ピストン5aは、双方のクロージャ部品3、4によって案内されるピストン・ロッド5bの軸方向中心領域内に配置される。ピストン5a及びピストン・ロッド5bはともにピストン5を形成する。
【0063】
第1のシリンダ・チューブ端6は、負傾斜した第1のレーザ溶接シーム9によって第1のクロージャ部品3に結合され、第2のシリンダ・チューブ端は、負傾斜した第2のレーザ溶接シーム10によって第2のクロージャ部品4に結合される。
【0064】
2つのクロージャ部品3、4はそれぞれ、凹状受容輪郭19を有し、各シリンダ・チューブ端6、7の斜めに形成された環状面が、この凹状受容輪郭に挿入されるとともにそこでレーザ溶接プロセスによって溶接される。
【0065】
図2は、
図1の実施例をより詳細に示す。
ここでは、第2のシリンダ・チューブ端7は、楔形状の凹状受容輪郭19に既に挿入されており、第2の周方向レーザ・リング溶接シーム10によって第2のクロージャ部品4に溶接されている。
リング溶接シーム中心軸13と長手方向主軸14とが、リング溶接傾斜角度アルファを含む。
本発明によれば、リング溶接シーム角度アルファは、110度~160度の角度を有し、この実施例では約120度の角度を有する。
【0066】
図3は、
図1による結合相手を概略分解図で示す。
図3は、接合前の、第1のシリンダ・チューブ端6と、楔形状の凹状受容輪郭19を有する第1のクロージャ部品3とを示す。凹状受容輪郭19は、第1のシリンダ・チューブ端6を受容するとともにこの第1のシリンダ・チューブ端との共通の接触面を形成するように設計され、その後、この接触面上に、第1のレーザ・リング溶接シーム9が配置される。
図3は、凹状受容輪郭19がシリンダ・チューブ2の方向において軸方向に開口していることを示す。したがって、内側からシリンダ・チューブ2に半径方向に作用する座屈力が、半径方向の重なり部20によってポジティブ・ロック式に吸収される。この重なり部は、凹状受容輪郭19の半径方向外側部分である。
【0067】
図4は、拡大されたレーザ溶接シームを示す。ここに示された、第1のシリンダ・チューブ端2と第1のクロージャ部品3との間の第1のレーザ・リング溶接シーム9は、本発明による例示的なレーザ溶接シームを示す。
この第1のレーザ・リング溶接シーム9は、リング溶接シーム深さ11及びリング溶接シーム中心軸13を有する。この実施例において、リング溶接シーム深さ11は、シリンダ・チューブ肉厚12を上回る。
レーザ溶接シームは、僅かな円錐度を有する。2つの接線がレーザ溶接シームの縁輪郭に描かれると、これら接線は交わり、リング溶接シーム角度ベータを形成する。リング溶接シーム角度ベータは好ましくは、15度以下であり、特に好ましい設計では、10度以下である。リング溶接シーム中心軸13は同時に、リング溶接シーム角度ベータの二等分線でもあり、長手方向主軸14とともに、リング溶接シーム傾斜角度アルファを含む。さらに、リング溶接シーム中心軸13は、第1のシリンダ・チューブ端6と第1のクロージャ部品3との接触面に沿って延びる。この実施例において、リング溶接シーム傾斜角度アルファは、120度である。
【0068】
図4は、周方向シーリング・リング17(Oリング)が第1のレーザ・リング溶接シーム9の前に位置付けられている実施例を示し、この周方向シーリング・リングは、第1のレーザ・リング溶接シーム9の前の領域を圧力媒体から圧密式に分離する。この領域は、圧力分離された環状部分18である。軸方向に見ると、圧力分離された環状部分18は、シーリング・リング17(Oリング)と第1のレーザ・リング溶接シーム9との間に位置付けられる。この環状部分18において、半径方向力は、シリンダ・チューブの第1のシリンダ・チューブ端6においてシリンダ・チューブに内側から作用しない。したがって、第1のレーザ・リング溶接シーム9はもっぱら、軸方向引張応力を受ける。その結果、シリンダ・チューブ2は、この領域において座屈力が加わらず、第1のレーザ・リング溶接シーム9は解放される。この実施例において、シーリング・リング17(Oリング)は、弾性ポリマーから作製される。レーザ溶接時の熱入力は、シーリング・リング21(Oリング)が第1のレーザ・リング溶接シーム9のすぐ近くにあるにもかかわらず、このシーリング・リングの損傷を回避するほど十分に低いままである。また、本発明によるレーザ・リング溶接シーム9、10の幅狭の設計により、半径方向の重なり部20の領域における材料は、対応するクロージャ部品が半径方向の重なり部20において少ない材料厚さしか有する必要がないように浅い深さまでしか熱応力をかけられることがないことが、
図3と併せて
図4から明らかである。
【符号の説明】
【0069】
1 作動シリンダ
2 シリンダ・チューブ
3 第1のクロージャ部品
4 第2のクロージャ部品
5 ピストン・ユニット
5a ピストン
5b ピストン・ロッド
6 第1のシリンダ・チューブ端
7 第2のシリンダ・チューブ端
8 シリンダ内部
8a 第1の作動チャンバ
8b 第2の作動チャンバ
9 第1の周方向レーザ溶接シーム
10 第2の周方向レーザ溶接シーム
11 リング溶接シーム深さ
12 シリンダ・チューブ肉厚
13 リング溶接シーム中心軸
14 長手方向主軸
15 シール
20 ガイド
21 周方向シーリング・リング
22 圧力分離された環状部分
23 凹状受容輪郭
24 半径方向の重なり部
α リング溶接シーム傾斜角度アルファ
β リング溶接シーム角度ベータ
【国際調査報告】