(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】ベータ-ラパコンを有効成分として含む胆汁うっ滞性肝疾患予防又は治療用薬学組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/352 20060101AFI20230111BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230111BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230111BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230111BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20230111BHJP
【FI】
A61K31/352 ZNA
A61P1/16
A61P29/00
A61P43/00 105
A23L33/105
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520836
(86)(22)【出願日】2021-10-06
(85)【翻訳文提出日】2022-04-04
(86)【国際出願番号】 KR2021013732
(87)【国際公開番号】W WO2022075756
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】10-2020-0130028
(32)【優先日】2020-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520470084
【氏名又は名称】株式会社 キュロム・バイオサイエンス
【氏名又は名称原語表記】CUROME BIOSCIENCES CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ジュ ソク
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ガン シク
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ジョン ス
(72)【発明者】
【氏名】ムン、ソン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジョン フン
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ス ビン
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
【Fターム(参考)】
4B018MD61
4B018ME07
4B018ME14
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA75
4C086ZB11
4C086ZB21
(57)【要約】
ベータ-ラパコン(β-lapachone)を有効成分として含む胆汁うっ滞性肝疾患予防又は治療用薬学組成物に関し、胆汁うっ滞性肝疾患の効果的な予防及び治療剤が提供可能である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベータ-ラパコン(β-lapachone)又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む
ことを特徴とする胆汁うっ滞性肝疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項2】
前記胆汁うっ滞性肝疾患は、原発性胆汁性肝硬変症(Primary Biliary Cirrhosis,PBC)、原発性硬化性胆管炎(Primary Sclerosing Cholangitis,PSC)、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(Progressive Familial Intrahepatic Cholestasis,PFIC)、良性再発性肝内胆汁うっ滞(Benign Reccurrent Intrahepatic Cholestasis)、妊娠性肝内胆汁うっ滞(Intrahepatic Cholestasis of Pregnancy,ICP)、ウイルス性肝炎による胆汁うっ滞、アルコール性肝炎による胆汁うっ滞、薬物誘発性胆汁うっ滞、経静脈栄養療法(Parenteral nutrition)時の胆汁うっ滞、悪性腫瘍性胆汁うっ滞、肝移植後胆汁うっ滞、感染性胆汁うっ滞及びアラージル症候群(Alagille syndrome,AS)からなる群から選ばれる1つ以上である
請求項1に記載の胆汁うっ滞性肝疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項3】
前記組成物は、胆管細胞の線維化抑制及び炎症抑制をする
請求項1に記載の胆汁うっ滞性肝疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項4】
前記組成物は、血中のAST、ALT、ALP及びビリルビンからなる群から選ばれる1つ以上の血液指標の数値を改善する
請求項1に記載の胆汁うっ滞性肝疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項5】
前記線維化抑制は、Col1α1(Collagen Type I Alpha 1)、Col4α1(Collagen Type IV Alpha 1)、α-SMA(Alpha-Smooth Muscle Actin)、フィブロネクチン、TGF-β1(Transforming growth factor beta 1)、Col1α2(Collagen Type I Alpha 2)及びTGF-β2(Transforming growth factor beta 2)から選ばれる少なくとも1つの線維化因子を抑制する
請求項3に記載の胆汁うっ滞性肝疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項6】
前記炎症抑制は、IL-1β(Interleukin-1beta)、IL-6(Interleukin-6)、IL-18(Interleukin-18)、INF-γ((Interferon-γ)、TNF-α(Tumor necrosis factor-α)、TNF-β(Tumor necrosis factor-β)、MCP-1(Monocyte Chemoattractant Protein-1)から選ばれる少なくとも1つの炎症性サイトカイン因子を抑制する
請求項3に記載の胆汁うっ滞性肝疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項7】
前記胆汁うっ滞性肝疾患は、炎症性腸疾患を伴う
請求項1に記載の胆汁うっ滞性肝疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項8】
前記炎症性腸疾患は、クローン病又は潰瘍性大腸炎である
請求項7に記載の胆汁うっ滞性肝疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項9】
前記組成物は、腸組織の線維化抑制及び炎症性サイトカイン抑制をする
請求項7に記載の胆汁うっ滞性肝疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項10】
ベータ-ラパコン(β-lapachone)又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む
ことを特徴とする胆汁うっ滞性肝疾患予防又は改善用健康機能食品。
【請求項11】
前記胆汁うっ滞性肝疾患は、炎症性腸疾患を伴う
請求項10に記載の胆汁うっ滞性肝疾患予防又は改善用健康機能食品。
【請求項12】
前記炎症性腸疾患は、クローン病又は潰瘍性大腸炎である
請求項11に記載の胆汁うっ滞性肝疾患予防又は改善用健康機能食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベータ-ラパコン(β-lapachone)を有効成分として含む胆汁うっ滞性肝疾患予防又は治療用薬学組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
胆汁うっ滞性肝疾患(Cholestatic Liver Disease)は、胆汁の形成又は流れの障害に起因する肝疾患である。胆汁うっ滞とは、肝で作られて胆道と腸を通じて循環する胆汁の循環障害による生化学的、生理的、臨床的変化を総称するものである。
【0003】
胆汁うっ滞性肝疾患の代表症状である原発性胆汁性肝硬変症又は原発性胆汁うっ滞性肝硬変症(Primary Biliary Cirrhosis,PBC)は、疾患初期に発病した小葉内管(intralobular duct)と共に肝の小胆管の遅い進行性破壊を特徴とする、肝の自己免疫疾患である。このような管が損傷すると、胆汁は肝に蓄積され(胆汁うっ滞症)、時間が経つにつれて組織を損傷させ、これは、傷痕、線維症及び肝硬変を変を引き起こすことがある。
【0004】
胆汁は、体内の老廃物を排泄する機能の他にも、胆汁酸(塩)を腸に伝達して脂肪とビタミンの吸収を助ける重要な役割を担い、肝細胞で作られて微細胆管(bile canaliculus)を通じて胆道に分泌され、続いて、十二指腸を経て腸肝(enterohepatic)循環をする。このような胆汁分泌過程に障害が起きると胆汁うっ滞が発生し、胆汁酸、ビリルビンなどのような胆汁成分が肝細胞及び血液内に溜まるか、腸に伝達されるべき胆汁が減少しながら、黄疸、掻痒症、灰色便、脂肪性下痢(steatorrhea)、ビタミン吸収障害が現れ、悪化すると、肝不全につながることがあり、肝移植が必要な場合もある。
【0005】
原発性硬化性胆管炎(Primary Sclerosing Cholangitis;以下、PSC)は、一般に、胆汁が胆嚢から排出されるようにする胆管の炎症と線維化が特徴であり、肝及び胆嚢の長期進行性疾患(long-term progressive disease)である。PSCの症状は初期に現れないこともあり、皮膚と目の黄変、かゆみ症及び腹痛のような肝疾患の徴候及び症状を経験することもある。
【0006】
PSCで発生する胆管損傷は、胆道系(biliary tree)の管を狭め、腸への胆汁の流れを妨害することによって、結局、肝硬変及び肝不全につながることがある。PSCは、肝癌、胆嚢癌、結腸直膓癌、胆管癌などの様々な癌発生の危険を増加させる。PSCの根本原因は知られていないが、遺伝的感受性、免疫系機能障害及び腸内細菌叢の異常構成が重要な働きをすることがある。これは、PSC患者が高い割合で炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease;以下、IBD)、最も高い割合で潰瘍性大腸炎を患っているという点でIBD患者と最も連関性が高い。IBD患者の約3~7.5%がPSCを患っており、PSC患者の80%はいずれかの形態のIBDを患っている。
【0007】
一般に、30代又は40代の若い人々に主に発生するものと知られているPSCは、現在まで効果的な治療法はなく、最も確実な治療法は肝移植であるが、移植後にも再発する恐れがある。米国食品医薬局(U.S.Food and Drug Administration,FDA)によってPSCを標的とする承認された治療剤はまだない。一部の専門家たちは、PSC患者において増加した肝酵素数値を下げ、他の胆汁うっ滞性肝疾患において効果の立証されたUDCA(Ursodeoxycholic acid)を推奨している。しかしながら、UDCAによるPSC症状好転及び患者生存率を向上させる効果はまだ明確にされていない。米国肝疾患研究協会(American Association for the Study of Liver Diseases)及び米国胃腸病学大学(American College of Gastroenterology)の指針は、PSCの治療のためにUDCA使用を勧告しないが、ヨーロッパ肝研究協会(European Association for the Study of the Liver)は、中間容量(13~15mg/kg)のUDCA使用を推奨している。したがって、現在までは肝移植(Liver transplantation)がPSCの立証された唯一の治療法であるが、全ての患者が肝移植を受けることができるわけではないので、PSCに効果的な治療剤の開発が至急な実情である。
【0008】
PSC患者の80%が持っているIBDは、潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis;以下、UC)とクローン病(Crohn’s Disease;以下、CD)に代表される、原因の分からない胃腸管の慢性再発性炎症疾患である。疾病が進行しがら悪化と好転の状態が反復され、結局には狭窄や穿孔のような深刻な合併症が発生する。過去は、西欧に比べてアジア国家の発病率が相対的に低いと報告されたが、IBDの有病率は世界的に増加の趨勢であり、西欧に比べてアジア国家での増加率がより高い。IBDは他の慢性疾患と違い若い年齢層における発病危険が高い点から、社会的及び経済的な観点で非常に慎重に管理される必要がある。
【0009】
一方、ベータ-ラパコン(β-Lapachone;以下、BL)は、キノン系化合物であり、ラパチョ(Lapacho)の木から得、医療の目的に長く用いられてきた。BLは、細胞内のNQO1(NAD(P)H:quinone oxidoreductase)酵素によってNADHから2個の電子を受けてNAD+への転換を促進することが、試験管内(In-vitro)及び生体内(In-vivo)の両方から確認され、特に、NQO1-欠損(knock-out)細胞研究から検証された。しかしながら、現在までBLをNAD+
-促進剤として胆汁うっ滞性肝疾患に適用する研究はなされていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ベータ-ラパコン(β-Lapachone)を有効成分として含む胆汁うっ滞性肝疾患予防又は治療用薬学組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、ベータ-ラパコン(β-Lapachone)を有効成分として含む胆汁うっ滞性肝疾患及び炎症性腸疾患の予防又は治療用薬学組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ベータ-ラパコン(β-Lapachone)又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む胆汁うっ滞性肝疾患予防又は治療用薬学組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、下記化学式1で表示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む胆汁うっ滞性肝疾患予防又は治療用薬学組成物を提供する。
【0014】
【0015】
前記胆汁うっ滞性肝疾患は、原発性胆汁性肝硬変症(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(Progressive Familial Intrahepatic Cholestasis,PFIC)、良性再発性肝内胆汁うっ滞(Benign Reccurrent Intrahepatic Cholestasis)、妊娠性肝内胆汁うっ滞(Intrahepatic Cholestasis of Pregnancy,ICP)、ウイルス性肝炎による胆汁うっ滞、アルコール性肝炎による胆汁うっ滞、薬物誘発性胆汁うっ滞、経静脈栄養療法(Parenteral nutrition)時の胆汁うっ滞、悪性腫瘍性胆汁うっ滞、肝移植後胆汁うっ滞、感染性胆汁うっ滞及びアラージル症候群(Alagille syndrome,AS)からなる群から選ばれる1つ以上でよく、より好ましくは、原発性硬化性胆管炎(PSC)、原発性胆汁性肝硬変症(PBC)又は進行性家族性肝内胆汁うっ滞(Benign Reccurrent Intrahepatic Cholestasis)、アラージル症候群の予防又は治療用薬学組成物を提供する。
【0016】
前記ベータ-ラパコン(BL)は、薬学的に許容可能な塩の形態で使用されてよく、塩としては、薬学的に許容可能な遊離酸(free acid)によって形成された酸付加塩、塩基を使用した薬学的に許容可能な金属塩を使用してもよいが、これに制限されるものではない。例えば、遊離酸としては、無機酸と有機酸を使用することができる。無機酸としては、塩酸、ブローム酸、硫酸、リン酸などを使用することができ、有機酸としてはクエン酸、酢酸、乳酸、マレイン酸、グルコン酸、メタンスルホン酸、コハク酸、4-トルエンスルホン酸、グルタミン酸、又はアスパラギン酸などを使用することができる。
【0017】
本発明の胆汁うっ滞性肝疾患予防又は治療用薬学組成物は、特に、胆管細胞の線維化及び炎症性サイトカインを抑制することを特徴とする。
【0018】
また、前記組成物は、血中のAST、ALT、ALP及びビリルビンからなる群から選ばれる1つ以上の数値を改善することを特徴とする。
【0019】
本発明の胆汁うっ滞性肝疾患予防又は治療用薬学組成物は、線維化抑制及び炎症抑制を特徴とし、前記線維化抑制は、Col1α1(Collagen Type I Alpha 1)、Col4α1(Collagen Type IV Alpha 1)、α-SMA(Alpha-Smooth Muscle Actin)、フィブロネクチン、TGF-β1(Transforming growth factor beta 1)、Col1α2(Collagen Type I Alpha 2)及びTGF-β2(Transforming growth factor beta 2)から選ばれる少なくとも1つの線維化因子を抑制することを特徴とする。
【0020】
前記炎症抑制は、IL-1β(Interleukin-1beta)、IL-6(Interleukin-6)、IL-18(Interleukin-18)、INF-γ(Interferon-γ)、TNF-α(Tumor necrosis factor-α)、TNF-β(Tumor necrosis factor-β)、MCP-1(Monocyte Chemoattractant Protein-1)から選ばれる少なくとも1つの炎症性サイトカイン因子を抑制することを特徴とする。
【0021】
また、前記胆汁うっ滞性肝疾患予防又は治療用薬学組成物は、炎症性腸疾患(IBD)を伴う胆汁うっ滞性肝疾患においてより優れた効果を有することを特徴とし、炎症性腸疾患(IBD)は、クローン病(CD)又は潰瘍性大腸炎(UC)であってよい。
【0022】
本発明の組成物は、ウルソデオキシコール酸(Ursodeoxycholic acid,UDCA)又はオベチコール酸(Obeticholic acid;以下、OCA)をさらに含む組成物が、それぞれの単独投与に比べて、胆汁うっ滞性肝疾患においてより優れた効果を有することを特徴とする。
【0023】
前記ベータ-ラパコンは、薬学組成物全重量に対して、好ましくは0.001~50重量%、より好ましくは0.001~40重量%、最も好ましくは0.001~30重量%で添加されてよい。
【0024】
前記薬学的組成物は、それぞれ、通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、液剤、エアゾールなどの経口型剤形、外用剤、坐剤及び滅菌注射溶液の形態で剤形化して使用されてよい。前記薬学的組成物に含まれてよい担体、賦形剤及び希釈剤には、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油を挙げることができる。製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤、甘味剤、酸味剤などの希釈剤又は賦形剤を使用して調合する。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、本発明のベータ-ラパコンに少なくとも1つの賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース又はラクトース、ゼラチンなどを混ぜて調合する。また、単純な賦形剤の他に、ステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤も使用される。経口のための液状製剤には、懸濁剤、耐溶液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、通常使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィンの他に様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤、酸味剤などが含まれてよい。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使用されてよい。坐剤の基剤には、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)-61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用されてよい。
【0025】
本発明の薬学的組成物の投与量は、治療する対象の年齢、性別、体重と、治療する特定疾患又は病理状態、疾患又は病理状態の深刻度、投与経路及び処方者の判断によって異なるであろう。このような因子に基づく投与量の決定は、当業者のレベル内にあり、一般に、投与量は0.01mg/kg/日~約500mg/kg/日の範囲である。好ましい投与量は、0.1mg/kg/日~200mg/kg/日であり、より好ましい投与量は、1mg/kg/日~200mg/kg/日である。投与は、1日に1回投与してもよく、数回に分けて投与してもよい。前記投与量は、いかなる面においても本発明の範囲を限定するものではない。
【0026】
本発明の薬学的組成物は、ネズミ、家畜、ヒトなどの哺乳動物に様々な経路で投与されてよい。投与のあらゆる方式は予想され得るが、例えば、経口、直腸又は静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜又は脳血管内注射及び皮膚塗布によって投与されてよい。本発明のベータ-ラパコンを含む薬学的組成物は、毒性及び副作用がほとんどないので、予防目的で長期間服用時にも安心して使用できる薬剤である。
【0027】
また、本発明は、ベータ-ラパコン(β-lapachone)を有効成分として含む胆汁うっ滞性肝疾患予防又は改善用健康機能食品を提供する。
【0028】
本発明は、ベータ-ラパコン(β-lapachone)を有効成分として含む、炎症性腸疾患を伴う胆汁うっ滞性肝疾患の予防又は症状改善用健康機能食品を提供する。前記炎症性腸疾患は、クローン病又は潰瘍性大腸炎であってよい。
【0029】
前記ベータ-ラパコン(β-lapachone)を有効成分として含む胆汁うっ滞性肝疾患予防又は症状改善用健康機能食品は、ウルソデオキシコール酸(Ursodeoxycholic acid,UDCA)又はオベチコール酸(Obeticholic acid,OCA)をさらに含むことができる。
【0030】
前記健康機能食品は、ベータ-ラパコン(BL)を含む組成物が食品全重量に対して、好ましくは0.001~50重量%、より好ましくは0.001~30重量%、最も好ましくは0.001~10重量%で添加されてよい。
【0031】
前記健康機能食品は、人体に有用な機能性を有する原料又は成分を使用して錠剤、カプセル剤、粉末、丸剤又は液剤などの形態で製造及び加工した食品をいう。ここで、機能性とは、人体の構造及び機能に対して栄養素を調節するか、或いは生理学的作用などのような保健用途に有用な効果を得ることを意味する。本発明の健康機能食品は、当業界に通常用いられる方法によって製造可能であり、前記製造時には、当業界で通常添加する原料及び成分を添加して製造することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、ベータ-ラパコンを有効成分として含む胆汁うっ滞性肝疾患予防又は治療用薬学組成物に関し、胆汁うっ滞性肝疾患の効果的な予防及び治療剤として用いることができる。
【0033】
また、ベータ-ラパコンを有効成分として含む胆汁うっ滞性肝疾患予防又は治療用薬学組成物は、線維化抑制及び炎症抑制の効果があることを確認したので、胆汁うっ滞性肝疾患の効果的な予防及び治療剤として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】DDC-誘導胆汁うっ滞性肝疾患動物モデルにおいてベータ-ラパコン(BL)を適用又は非適用した後の肝門脈(PV)周辺組織を示す写真である。
【
図2】DDC-誘導胆汁うっ滞性肝疾患動物モデルの肝門脈周辺コラーゲン組織に及ぼすベータ-ラパコン(BL)効果を示すものである。A.シリウスレッド(Sirius Red)及びマッソントリクローム(Masson’s trichrome)染色した肝門脈周辺組織の写真、B.シリウスレッド及びマッソントリクロームで染色した組織のイメージを定量化したグラフである。
【
図3】DDC-誘導胆汁うっ滞性肝疾患マウス(n=6)の線維化関連遺伝子発現に及ぼすベータ-ラパコン(BL)の効果を示すものである。
【
図4】DDC-誘導胆汁うっ滞性肝疾患マウス(n=6)の血液指標(ALT、AST、ALP、ビリルビン)に及ぼすベータ-ラパコン(BL)の効果を示すものである。
【
図5】DDC-誘導胆汁うっ滞性肝疾患マウス(n=6)の線維化関連遺伝子発現に及ぼすベータ-ラパコン(BL)の効果を示すものである。
【
図6】DDC-誘導胆汁うっ滞性肝疾患マウス(n=6)の炎症関連遺伝子発現に及ぼすベータ-ラパコン(BL)の効果を示すものである。
【
図7】DDC-誘導胆汁うっ滞性肝疾患動物モデルにおいて血液指標(総ビリルビン,ALP)に及ぼすベータ-ラパコン(BL)の効果を示すものである。
【
図8】Poly I:C-誘導胆汁うっ滞性肝疾患動物モデルにおいて血液指標AST、ALT及びALPに及ぼすベータ-ラパコン(BL)の効果を示すものである。
【
図9】DSS-誘導炎症性腸疾患マウスで炎症性腸疾患マウスの生存率に及ぼすベータ-ラパコン(BL)の効果を示すものである。
【
図10】DSS-誘導炎症性腸疾患マウス(n=10)の体重変化(A)及び大腸炎の臨床点数(colitis score)(B)にベータ-ラパコンが及ぼす効果を示すグラフである。
【
図11】DSS-誘導炎症性腸疾患マウスの腸の長さの比較写真(A)及びそれを示すグラフ(B)である。
【
図12】DSS-誘導炎症性腸疾患マウスの腸組織の炎症性サイトカインに及ぼすベータ-ラパコン(BL)の効果を示すグラフである。
【
図13】LX-2肝星状(Hepatic stellate)細胞モデルにおいて線維化関連mRNA発現に及ぼすベータ-ラパコン(BL)の効果を示すグラフである。
【
図14】大食細胞(macrophage)株であるRaw264.7細胞モデルにおいて炎症性サイトカインタンパク質IL-1β及びTNF-α発現に及ぼすベータ-ラパコンの効果を示すグラフである。
【
図15】末梢血液単核細胞(Peripheral blood mononuclear cell,PBMC)において炎症性サイトカインIL-1β及びIL-18タンパク質の発現に及ぼすベータ-ラパコン(BL)の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下において、特に説明がない限り、ベータ-ラパコンは、ベータ-ラパコンその自体、その薬学的に許容可能な塩のいずれをも含む概念で使用するものとする。
【0036】
肝胆汁うっ滞の原因は、各種の薬物副作用、感染、腫瘍、胆管腫瘍、嚢胞、胆管結石、狭窄、胆管に対する物理的圧力など、非常に様々であり、原因による胆汁うっ滞性肝疾患として原発性胆汁性肝硬変症(Primary Biliary Cirrhosis,PBC)、原発性硬化性胆管炎(Primary Sclerosing Cholangitis,PSC)、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(Progressive Familial Intrahepatic Cholestasis,PFIC)、良性再発性肝内胆汁うっ滞(Benign Reccurrent Intrahepatic Cholestasis)、妊娠性肝内胆汁うっ滞(Intrahepatic Cholestasis of Pregnancy,ICP)、ウイルス性肝炎による胆汁うっ滞、アルコール性肝炎による胆汁うっ滞、薬物誘発性胆汁うっ滞、経静脈栄養療法(Parenteral nutrition)時の胆汁うっ滞、悪性腫瘍性胆汁うっ滞、肝移植後胆汁うっ滞、感染性胆汁うっ滞及びアラージル症候群(Alagille syndrome,AS)が含まれる。
【0037】
以下、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。ただし、本発明は、ここで説明される実施例に限定されず、別の形態で具体化されてもよい。むしろ、ここで紹介される内容が徹底且つ完全になり、当業者に本発明の思想を十分に伝達するために提供するものである。
【0038】
<実施例1.胆汁うっ滞性肝疾患マウス動物モデルの構築>
【0039】
DDC(3,5-diethoxycarbonyl-1,4-dihydrocollidine)は、ヘム(heme)を生成するためにプロトポルフィリン(protoporphyrin)IXにFeを挿入するフェロケラーゼ(ferrochelatase)の活性を抑制することによって肝内プロトポルフィリンの蓄積を誘導し、胆汁を通じてのみ肝外に排出可能な疎水性プロトポルフィリンの特性による胆管内蓄積及び結晶化によって胆管内外に炎症及び線維化を誘発する。この機序によって肝組織内胆汁うっ滞及び炎症と線維化を誘導するので、DDC食餌誘導動物モデルは最も多用される齧歯類胆汁うっ滞性肝疾患動物モデルの一つである。
【0040】
DDCで誘導された胆汁うっ滞性肝疾患マウス動物モデルは、8週齢(8-week-old)C57BL/6雄マウス(Samtako,Korea)を使用し、Elisa Poseなどの方法によって準備した。簡略にいうと、0.1%(w/w)のDDCが補充された標準齧歯類食餌を7又は14日間与えて胆汁うっ滞性肝疾患を誘導した。12時間の明暗周期を維持し、水は自由に摂取可能にした。標準齧歯類食餌は、中間小麦、小麦、とうもろこし及びとうもろこしグルテン粉、大豆油(タンパク質の14%)を含めた。全ての動物関連手続は、韓国生命工学研究院(Korea Research Institute of Bioscience and Biotechnology(KRIBB)、KRIBB-AEC-20165)動物保護機関と使用委員会によって検討及び承認された。
【0041】
<実施例2.胆汁うっ滞性肝疾患マウス動物モデルの病変に対するべータ-ラパコンの予防効果>
【0042】
2.1 胆汁うっ滞性肝疾患マウス動物モデルの組織学(histology)分析
【0043】
DDCの長期間供給は、管内ポルフィリンプラグ(porphyrin plug)を生成して胆道上皮を損傷させることによって管閉鎖を誘導する。胆管における胆汁の毒性蓄積は、胆管細胞の活性化と管反応増殖(ductular reaction proliferation)につながり、シリウスレッド染色とマッソントリクローム染色に陽性を示す。
【0044】
胆汁うっ滞性肝疾患動物モデルの組織染色は、H&E染色(組織基本染色)、シリウスレッド染色(コラーゲン染色)及びマッソントリクローム染色(コラーゲン、細胞質、筋線維など)によって測定し、組織染色は、熟練した研究者によって測定された。
【0045】
14日間マウスに0.1%DDCを含む飼料の食餌後に、肝門脈周辺の炎症、線維化、付着分子を組織染色し、その結果を
図1に示した。
【0046】
ベータ-ラパコン(β-Lapachone,BL)の胆汁うっ滞性肝疾患に対する予防効果を確認するために、DDC処理3日前に0mg/kg(DDC-vehicle)、40mg/kg(DDC-BL40)及び80mg/kg(DDC-BL80)でマウスに飼料食餌(総17日)し、3日からDDC(総14日)と共に飼料食餌した。DDC処理14日後にマウスを犠牲させてマウスの肝門脈(portal vein,PV)及び胆管(bile duct)を含むように肝を摘出し、H&Eで周辺の病変を確認して
図1に示した。
【0047】
図1に見られるように、対照群としてDDC処理群(DDC-vehicle)は、正常群(SD,standard diet)に比べて、マウスの肝門脈(portal vein,PV)及び胆管において病変(矢印で表示)を増加させている。また、ベータ-ラパコン(BL)を処理したDDC誘導胆汁うっ滞性肝疾患マウス(DDC-BL40、DDC-BL80)は、ビークル(vehicle)を処理した対照群(DDC-vehicle)に比べて、肝門脈(portal vein,PV)及び胆管(bile duct)周辺の病変(矢印で表示)が顕著に減少していることを確認した。また、40mg/kg(BL40)よりは80mg/kg(BL80)でベータ-ラパコン(BL)を処理した群において病変減少が顕著であることが見られ、ベータ-ラパコン(BL)が濃度依存的にDDC処理された肝門脈及び胆管の病変を減少させることを確認した。
【0048】
このような結果から、ベータ-ラパコン処理が胆汁うっ滞性肝疾患発生環境において肝門脈及び胆管病変の減少などの予防効果があることを確認した。
【0049】
2.2 胆汁うっ滞性肝疾患マウス動物モデルにおけるコラーゲン量に対するベータ-ラパコンの効果
【0050】
前記実施例2.1で摘出した肝を、シリウスレッド、マッソントリクローム染色によって組織、細胞周辺の結合組織を確認し、
図2Aに示した。
【0051】
図2Aに見られるように、シリウスレッド及びマッソントリクローム染色の結果、DDCによって結合組織の形成が増加し、このような線維化の進行をベータ-ラパコン処理によって抑制することを確認した。
図2Bは、
図2Aの染色部分をデジタルイメージで定量化したものである。
【0052】
前記結果から、ベータ-ラパコンの処理が、胆汁うっ滞性肝疾患発生環境において結合組織の増加による線維化などを予防する効果があることが分かった。
【0053】
統計処理は、全実施例を通じて独立した実験(平均(means)±標準誤差(SEM))から得た結果を、両側スチューデントのt検定(two-tailed Student’s t-test)を用いて分析した。差(differences)は、p<0.05において有意であると見なした。生存率(survival)比較実験を行うとき、ログランク(logrank)(Mantel-Cox)テストを用いてカプランマイヤー(Kaplan-Meier)生存分析、すなわち、累積限界推定法(product-limit method)によって結果をグラフ化して分析した(Prism,version 5.0,GraphPad Software)。
【0054】
2.3 胆汁うっ滞性肝疾患マウス動物モデルにおいてベータ-ラパコンの線維化関連遺伝子(mRNA)転写レベルに及ぼす影響の確認
【0055】
胆汁うっ滞性肝疾患マウスモデルは、DDCによって胆管が損傷しながら線維化が誘導され、これにより、線維化発達に重要な因子であるCol1α1(Collagen Type I Alpha 1)、Col4α1(Collagen Type IV Alpha 1)、α-SMA(Alpha-Smooth Muscle Actin)、フィブロネクチン、TGF-β1(Transforming growth factor beta 1)、Col1α2(Collagen Type I Alpha 2)及びTGF-β2(Transforming growth factor beta 2)の転写レベル増加などを確認した。
【0056】
前記実施例2.1の胆汁うっ滞性肝疾患マウス動物モデルから得た肝組織において前記因子の発現を、実時間重合酵素連鎖反応(real-time polymerase chain reaction)法で次の手順によって行った。肝サンプルの総RNAをTri-RNA試薬(Favrogen BIOTECHCORP,Nong-Ke Rd,Taiwan)を用いてFavrogenから提示した手順にに従って抽出し、PrimeScript(登録商標) RT reagent Kit with gDNA Eraser(TAKARA Korea Biomedical Inc,Seoul,08506,Korea)を用いてcDNAで逆転写した。定量的PCRは、TB Green(登録商標) Premix Ex Taq(登録商標) II(Tli RNaseH Plus)、ROX plus(TAKARA Korea Biomedical Inc,Seoul,08506,Korea)及びQuantStudio 5 Real-Time PCR Instrument(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA,USA)を用いて行った。使用したプライマー配列は、下表1の通りである。
【0057】
【0058】
ベータ-ラパコンを同時に処理したDDC誘導胆汁うっ滞性肝疾患マウスは、胆汁うっ滞性肝疾患の進行に関連した線維化関連遺伝子Col1α1(Collagen Type I Alpha 1)、Col4α1(Collagen Type IV Alpha 1)、α-SMA(Alpha-Smooth Muscle Actin)、フィブロネクチン、TGF-β1(Transforming growth factor beta 1)及びTGF-β2(Transforming growth factor beta 2)の転写レベルを確認し、ビークルを処理したマウスを対照群として発現量を比較し、
図3に示した。
図3A~
図3Fに見られるように、前記肝門脈病変及び線維化の減少結果と一致するように、ビークル(vehicle)を処理したDDC誘導胆汁うっ滞性肝疾患対照群マウス(DDC-vehicle)に比べて、ベータ-ラパコン(BL)を処理したDDC誘導胆汁うっ滞性肝疾患マウス(DDC-BL40、DDC-BL80)においてCol1α1、Col4α1、α-SMA、フィブロネクチン及びTGF-β1の転写レベルが有意に減少することを確認した。DDC誘導胆汁うっ滞性肝疾患マウスにおけるこのような結果は、前記肝門脈病変及び線維化の減少が、線維化関連遺伝子発現レベルでなされ、胆汁うっ滞性肝疾患が誘発されている間に起きる病理学的変化は、ベータ-ラパコン(BL)前処理によって抑制されていることが見られる。
【0059】
<実施例3.胆汁うっ滞性肝疾患マウス動物モデルにおいてベータ-ラパコンの影響確認>
【0060】
ベータ-ラパコン(BL)の胆汁うっ滞性肝疾患発病過程に及ぼす影響を確認するために、1%DDCとベータ-ラパコンをマウスに同時投与し、動物モデルの特性を確認した。
【0061】
3.1 血液指標(ALT、AST、ALP、ビリルビン)に及ぼす影響確認
【0062】
8週齢(8-week-old)C57BL/6雄マウス(Samtako,Korea)を各群に分け(=6)、正常群(vehicle)、対照群(DDC)、DDC+ベータ-ラパコン20mg/kg、DDC+ベータ-ラパコン40mg/kg、DDC+ベータ-ラパコン80mg/kg、DDC+ベータ-ラパコン100mg/kg、及び陽性対照群DDC+ウルソデオキシコール酸100mg/kg、及びDDC+オベチコール酸30mg/kgでマウスに飼料食餌(総7日)した。処理7日後にマウスを犠牲させて心臓から採血し、血液指標であるアラニンアミノトランスフェラーゼ(Alanine aminotransferase,ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aspartate aminotransferase,AST)、アルカラインホスファターゼ(Alkaline Phosphatase,ALP)、ビリルビン(billirubin)数値を分析し、それを
図4に示した。
【0063】
図4に見られるように、DDC処理は、血中のALT、AST、ALP、ビリルビン数値を大きく増加させ、ベータ-ラパコン(BL)は、DDC処理によって増加するALT、AST、ALP、ビリルビンのそれぞれを濃度依存的に抑制させており、比較物質であるウルソデオキシコール酸(UDCA)及びオベチコール酸(OCA)と比較して優れた効果を示している。
【0064】
3.2 線維化関連遺伝子転写レベルに及ぼす影響確認
【0065】
前記実施例3.1の胆汁うっ滞性肝疾患マウス動物モデルを犠牲させて肝組織を摘出した後、前記実施例2.3の方法と類似の方法で線維化関連遺伝子mRNAレベルを測定した。
【0066】
胆汁うっ滞性肝疾患マウスモデルは、DDCによって胆管が損傷しながら線維化が誘導され、これにより、線維化発達に重要な因子であるCol1α1(Collagen Type I Alpha 1)、TGF-β1(Transforming growth factor beta 1)及びCol1α2(Collagen Type I Alpha 2)の転写レベルを確認し、その結果を
図5に示した。
【0067】
図5に見られるように、DDCは、線維化に関連した遺伝子Col1α1、TGF-β1及びCol1α2の転写レベルを大きく増加させており、ベータ-ラパコン(BL)は、Col1α1、TGF-β1及びCol1α2のそれぞれの転写レベルを濃度依存的に抑制している。
【0068】
3.3 炎症関連遺伝子転写レベルに及ぼす影響確認
【0069】
胆汁うっ滞性肝疾患は、門脈内の炎症と肝内胆管損傷が慢性に進行して胆汁うっ滞と肝線維化を発生させる。前記実施例3.1と同じ方法で得た胆汁うっ滞性肝疾患マウス動物モデルの肝組織の炎症性サイトカイン遺伝子mRNAレベルを測定し、
図6に示した。遺伝子発現分析のために使用したプライマー配列は、下表2の通りである。
【0070】
【0071】
図6に見られるように、DDCは、炎症関連遺伝子であるTNFα及びIL-1βの転写レベルを大きく増加させており、ベータ-ラパコン(BL)は、TNFα及びIL-1βのそれぞれの転写レベルを抑制している。
【0072】
<実施例4.胆汁うっ滞性肝疾患誘導されたマウス動物モデルにおいてベータ-ラパコンの治療効果確認>
【0073】
胆汁うっ滞性肝疾患誘導されたマウス動物モデルにおいてベータ-ラパコンの治療効果を確認した。8週齢(8-week-old)C57BL/6雄マウス(Samtako,Korea)を各群に分け(=6)、対照群以外の各群に0.1%のDDCを含む飼料食餌を3日間行った。その後、4日間に正常群、DDC対照群(vehicle)、DDC+ベータ-ラパコン20mg/kg、DDC+ベータ-ラパコン40mg/kg、DDC+ベータ-ラパコン80mg/kg及び陽性対照群DDC+オベチコール酸30mg/kgでマウスに飼料食餌(総7日)した。7日食餌後にマウスを犠牲させて心臓から採血し、血液指標であるビリルビン及びALP数値を分析し、それを
図7に示した。
【0074】
図7に見られるように、DDC処理は、血中ビリルビン及びALP数値を大きく増加させており、ベータ-ラパコンは、DDC処理によって増加したビリルビン及びALPのそれぞれを濃度依存的に抑制させている。また、比較物質であるウルソデオキシコール酸(UDCA)及びオベチコール酸(OCA)と比較して優れた効果を示している。
【0075】
<実施例5.原発性胆汁性肝疾患(PBC)誘導マウス動物モデルにおいてべータ-ラパコンの治療効果確認>
【0076】
胆汁うっ滞性肝疾患のうち、原発性胆汁性肝硬変症(PBC)は、ウイルスRNA模倣体及びToll様受容体であるポリイノシン-ポリシチジル酸(polyinosinic-polycytidylic acid,Poly I:C)を用いて類似状態に誘導することができる。
【0077】
8週齢(8-week-old)C57BL/6雄マウス(Samtako,Korea)を各群に分け(=6)、正常群以外の各実験群にPoly I:Cを5mg/kgで1週間に2回ずつ8週間腹腔に投与した。その後、対照群(vehicle)、ベータ-ラパコン40mg/kg、ベータ-ラパコン80mg/kg及び陽性対照群ウルソデオキシコール酸100mg/kg及びオベチコール酸30mg/kgでマウスに8週間飼料食餌した。処理実験16週目に実験を終了し、マウスを犠牲させて心臓から採血し、血液指標であるAST、ALT及びALP数値を分析し、それを
図8に示した。
【0078】
図8に見られるように、Poly I:Cによって血中のAST、ALT及びALP数値が増加しており、ベータ-ラパコン(BL)は、Poly I:Cによって増加したAST、ALT及びALPのそれぞれを抑制させている。対照群のうち、UDCAは、DDCによって増加したAST、ALT及びALPを抑制させているが、ベータ-ラパコン(BL)は、比較物質であるウルソデオキシコール酸(UDCA)及びオベチコール酸(OCA)と比較して優れた効果を示している。
【0079】
<実施例6.炎症性腸疾患誘導マウス動物モデルにおいてべータ-ラパコンの効果確認>
【0080】
胆汁うっ滞性肝疾患患者の約80%が炎症性腸疾患(IBD)を患っているので、本発明者らは炎症性腸疾患マウス動物モデルにおいてベータ-ラパコン(BL)の効果を確認した。
【0081】
6.1 生存率、体重、大腸炎の臨床点数(colitis score)に及ぼす効果
【0082】
DSS(dextran sodium sulfate)で誘導された急性大腸炎マウスモデルは、8週齢(8-week-old)C57BL/6雌マウス(Samtako,Korea)を用いて構築した。
【0083】
8週齢(8-week-old)C57BL/6雌マウス(Samtako,Korea)を各群に分け(=10)、各実験群に、3%(w/w)のDSSが飲水に補充された標準齧歯類食餌を初期5日間に給餌して急性大腸炎を誘導しながら、対照群(Vehicle)、ベータ-ラパコン40mg/kg及びベータ-ラパコン80mg/kgを経口で14日間投与した。
【0084】
全ての動物関連手続は、ハンヤング大学校動物保護機関と使用委員会で検討し、承認された。時間による生存率は
図9に示し、各実験群マウスの体重(body weight)変化率を測定して
図10Aに示し、直腸(rectum)当たりの糞便潜在出血(occult blood)、総出血損失と大便の濃度を毎日測定した。各実験群の大腸炎臨床点数(colitis score)は、処理群について知っていない2名の熟練した研究者により、動物体重減少の度合、血便及び便の緩さなどを測定し、表3のように点数に変換してその和を計算し、
図10Bに示した。
【0085】
【0086】
図9に見られるように、DSSによって誘導されたIBDマウスは、実験14日目に70%が斃死しており、ベータ-ラパコン40mg/kg実験群は50%、そしてベータ-ラパコン80mg/kg実験群は20%のみが斃死している。そして、
図10Aに見られるように、DSSによって誘導されたIBDマウスは、体重が減少して実験開始8日目に基準75%まで減少した。ベータ-ラパコン(BL)を処理した群では、DSSによる体重減少が抑制されており、特に、ベータ-ラパコン80mg/kg実験群は、初期体重の90%まで回復した。また、
図10Bに見られるように、DSSによって誘導されたIBDマウスの大腸炎の臨床点数(colitis score)は、ベータ-ラパコン(BL)の処理濃度に依存的に減少していることを確認した。
【0087】
6.2 腸の長さの回復及び炎症抑制に及ぼす効果
【0088】
前記実施例6.1と同じ方法によって実験群をDSSダイコン処理群(Control)、DSS処理群、DSS+ベータ-ラパコン80mg/kg処理群に分けてそれぞれ処理した。実験終了後にマウスを犠牲させて腸を摘出し、ノギス(vernier caliper)を用いて正確な腸の長さを測定し、
図11A及び
図11Bに示した。また、腸組織内の炎症性サイトカイン因子であるインターロイキン-1β(Interleukin-1 beta,IL-1β)、インターロイキン-6(Interleukin-6,IL-6)、インターロイキン-18(Interleukin-18,IL-18)、インターフェロン-γ(Interferon,INF-γ)、腫瘍壊死因子-α(Tumor necrosis factor-α,TNF-α)、腫瘍壊死因子-β(Tumor necrosis factor-β,TNF-β)、及び単核球化学誘因物質タンパク質-1(Monocyte Chemoattractant Protein-1,MCP-1)の遺伝子mRNAレベルを、通常の実験手順によって実時間重合酵素連鎖反応(real-time polymerase chain reaction)法で分析し、
図12に示した。
【0089】
図11A及び
図11Bに見られるように、DSSによってマウスの腸の長さは有意に短くなっており、ベータ-ラパコン(BL)処理によって回復したことを確認した。
【0090】
炎症抑制は、炎症性サイトカイン抑制及び/又はサイトカイン遺伝子発現抑制を含むことができる。これと関連して、
図12に見られるように、DSSによってマウスの腸組織内炎症因子であるIL-1β、IL-6、IL-18、INF-γ、TNF-α、TNF-β及びMCP-1のmRNAレベルが大きく増加しており、DSSによって増加した前記各炎症性サイトカインはベータ-ラパコン(BL)処理によっていずれも有意に減少した。
【0091】
<実施例7.細胞レベルにおいてべータ-ラパコンの抗線維化効果確認>
【0092】
7.1 LX-2肝星状(Hepatic stellate)細胞株モデルにおいてフィブロネクチン及びα-SMA活性に対するベータ-ラパコンの効果
【0093】
胆汁うっ滞性肝疾患は、胆管の炎症及び線維化が肝硬変を誘発する点に着眼し、Takaaki Higashiら(2017)の方法を引用し、肝星状(Hepatic stellate)LX-2細胞株モデルを用いて実験した。LX-2細胞株は、10%FBS、2mMグルタミン、100Uペニシリン、0.1mg/mlストレプトマイシンが含まれたDMEM培地で継代培養した。LX-2細胞株を6ウェルプレートに16×104cells/well密度で投入し、TGF-β11ng/ml、TGF-β11ng/ml+ベータ-ラパコン0.5μM又はTGF-β11ng/ml+ベータ-ラパコン1μMを含有しているDMEMで24時間培養した。その後、得られた細胞の線維化関連遺伝子フィブロネクチン及びα-SMAのタンパク質発現レベルをタンパク質免疫ブロット(Immunotblot)法で当業界に知られた通常の方法によって行った。
【0094】
図13に見られるように、対照群であるLX-2細胞株にTGF-β1を処理する場合に、対照群に比べて、線維化関連フィブロネクチン及びα平滑筋アクチン(α-Smooth Muscle Actin,α-SMA)のタンパク質発現レベルが増加したが、ベータ-ラパコンを投与した場合に、TGF-β1によって増加したフィブロネクチン及びα-SMAは、ベータ-ラパコン濃度に依存的にそのレベルが減少した。
【0095】
7.2 大食細胞(marcrophage)株Raw264.7細胞モデルにおいて炎症性サイトカインタンパク質発現に及ぼすベータ-ラパコンの効果
【0096】
大食細胞株であるRaw264.7(ATCC TIB-71、米国バージニア州マナサス)を、10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシンが補充されたDMEM培地で継代培養した。
【0097】
炎症誘導のために、RAW264.7細胞を、2%FBSが含まれたDMEMに懸濁させた後、12ウェルプレートに4×10
5cells/mlの細胞数になるように接種した後、37℃、5%CO
2インキュベーターで24時間培養した。新しい培地に交換しながら、適正な濃度の該当の物質、LPS(100ng/ml)、及びベータ-ラパコンを0.2、0.5、1、2μMとなるように処理して24時間培養した後、ATP(2.5mM)を処理して30分さらに培養し、上清液を取った。Raw264.7大食細胞のサイトカイン(IL-1β、TNF-α)放出は、それぞれのInvitrogen社の無細胞上清液-ELISAセット(Invitrogen,Billerica,MA,USA)を用いて、メーカーの指針に従って定量し、
図14に示した。
【0098】
図14に見られるように、Raw264.7細胞株にLPS及びATPを処理する場合に、対照群に比べて、炎症性関連タンパク質であるIL-1β及びTNF-αの発現が増加したが、ベータ-ラパコン(BL)を投与した場合に、LPS及びATPによって増加したIL-1β及びTNF-αタンパクが、ベータ-ラパコン濃度依存的にその発現量が減少することを確認した。
【0099】
7.3 末梢血液単核細胞(Peripheral blood mononuclear cell,PMBC)において炎症性サイトカイン1L-1β及びIL-18サイトカイン分泌に及ぼすベータ-ラパコンの効果
【0100】
胆汁うっ滞性肝疾患の発病機序に炎症性サイトカインが仲介する点に着眼し、Boyumら(1968)の方法を変形して末梢血液単核細胞モデルを利用した。健康な8週齢(8-week-old)C57BL/6雄マウス(Samtako,Korea)から分離された末梢血液単核細胞を、10%FBS、2mMグルタミン、100Uペニシリン、0.1mg/mlストレプトマイシンが含まれているRPMI-1640培地で1次培養して保持させた。安定した末梢血液単核細胞(PBMC)に、LPSを200ng/mL、ATP及びベータ-ラパコンを0、0.5、1、2μMとなるように培地に処理し、4時間後にIL-1β及びIL-18の発現レベルを確認し、その結果を
図15に示した。
【0101】
図15に見られるように、末梢血液単核細胞にLPS及びATPを処理する場合に、対照群に比べて、炎症性関連タンパク質であるIL-1β及びIL-18の発現レベルが増加したが、ベータ-ラパコン(BL)を投与した場合に、LPS及びATPによって増加したIL-1β及びIL-18のレベルがベータ-ラパコン(BL)濃度依存的にその発現量が減少することを確認した。
【国際調査報告】