(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】エチレン性不飽和と電子供与性基とを有する硬化剤を含むフルオロポリマー組成物、及びそれを用いてコーディングされた基材
(51)【国際特許分類】
C08L 27/12 20060101AFI20230111BHJP
C08F 8/14 20060101ALI20230111BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20230111BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
C08L27/12
C08F8/14
C08K5/17
C08K5/5415
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525564
(86)(22)【出願日】2020-10-27
(85)【翻訳文提出日】2022-07-01
(86)【国際出願番号】 IB2020060061
(87)【国際公開番号】W WO2021090111
(87)【国際公開日】2021-05-14
(32)【優先日】2019-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ジン,ナイヨン
(72)【発明者】
【氏名】グ,チェン
(72)【発明者】
【氏名】ヒンツァー,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】グエン,ソー キュー.
(72)【発明者】
【氏名】スコット,ピーター ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BD121
4J002BD141
4J002BD151
4J002EH076
4J002EN026
4J002EN036
4J002EN046
4J002ER026
4J002EU026
4J002EU116
4J002EU126
4J002EX076
4J002FD146
4J002GH00
4J100HA11
4J100HA62
4J100HC34
4J100HC78
4J100HE05
4J100HG31
4J100JA01
(57)【要約】
架橋フルオロポリマーの作製方法が記載される。本方法は、組成物を基材に適用することを含み、組成物は、フルオロポリマーと、フッ素化溶媒と、エチレン性不飽和基、及び電子供与性基又はその前駆体を含む1つ以上の硬化剤と、を含む。本方法は、溶媒を除去することと、フルオロポリマーを化学(例えば、紫外線「UV」)線で硬化することと、を更に含む。フッ素化溶媒に溶解されたフルオロポリマーと、エチレン性不飽和基、及び電子供与性基又はその前駆体を含む1つ以上の硬化剤と、を含む、組成物、並びに架橋フルオロポリマーを含む物品もまた記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋フルオロポリマーの作製方法であって、
i)組成物を基材に適用することであって、前記組成物は、
フッ素化溶媒、及び前記フッ素化溶媒に溶解するように全フッ素化モノマーから誘導された重合単位を十分な量含み、且つヨウ素、臭素、及び塩素から選択される硬化部位を含むフルオロポリマーと、
エチレン性不飽和基、及び電子供与性基又はその前駆体を含む1つ以上の硬化剤と、を含む、ことと、
ii)前記溶媒を除去することと、
iii)前記フルオロポリマーを化学線で硬化することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記化学線が、紫外線を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フルオロポリマーが、5、4、3、2、又は1重量%未満のVDFの重合単位を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が、有機過酸化物を有しない、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記フルオロポリマーが、少なくとも90重量%の、全フッ素化モノマーから誘導された重合単位を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記全フッ素化モノマーが、テトラフルオロエテン(TFE)及び1つ以上の不飽和ペルフルオロアルキルエーテルから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記フルオロポリマーの前記不飽和ペルフルオロアルキルエーテルが、一般式
R
f-O-(CF
2)
n-CF=CF
2
[式中、nは1又は0であり、R
fはペルフルオロアルキル基又はペルフルオロエーテル基である]を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記電子供与性基を含む硬化剤が、アミン化合物である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記アミン化合物が、第一級アミン、第二級アミン、又は第三級アミンである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記アミン化合物が、アミノオルガノシランエステル化合物又はエステル等価物である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記硬化剤が、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記硬化剤が、少なくとも1つのエチレン性不飽和基及び少なくとも1つのアルコキシシラン基を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記エチレン性不飽和基が、(メタ)アクリル又はアルケニルから選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記硬化剤が、直鎖状、分枝状であるか、又は環状基を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が、1つ以上のアミン基を有しないアルコキシシラン化合物を更に含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記フルオロポリマーが、前記フルオロポリマーの総重量に基づいて、40~60重量%のTFEの重合単位を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記フルオロポリマーが、0~5重量%の、非フッ素化又は部分フッ素化モノマーから誘導された重合単位を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物が、前記フルオロポリマー及びフッ素化溶媒の重量に基づいて、0.01~25重量%の前記フルオロポリマーを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記フッ素化溶媒が、部分フッ素化エーテルである、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記フッ素化溶媒が、式:
C
pF
2p+1-O-C
qH
2q+1
[式中、qは1~5の整数であり、pは5~11の整数である]を有する、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記C
pF
2p+1-単位が、分枝状である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記フッ素化溶媒が、1000未満のGWPを有する、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物が、第2のフルオロポリマーを更に含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記第2のフルオロポリマーが、ヨウ素、臭素、及び塩素から選択される硬化部位を有しない、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第2のフルオロポリマーが、前記フッ素化溶媒中に溶解しない、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記第2のフルオロポリマーが、結晶性フルオロポリマー粒子を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記基材が、剥離ライナー、有機基材、又は無機基材である、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
フッ素化溶媒及びフルオロポリマーを含む組成物であって、
前記フルオロポリマーは、
前記フッ素化溶媒に溶解するように全フッ素化モノマーから誘導された重合単位を十分な量含み、且つ
ヨウ素、臭素、及び塩素から選択される硬化部位を含み、
前記組成物は、エチレン性不飽和基、及び電子供与性基又はその前駆体を含む1つ以上の硬化剤を含む、組成物。
【請求項29】
前記フルオロポリマー、フッ素化溶媒、エチレン性不飽和硬化剤、及び/又は電子供与性基若しくはその前駆体を含む化合物が、請求項2~26のいずれか一項に従って更に特徴付けられる、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
架橋フルオロポリマー組成物を含む物品であって、前記フルオロポリマーの総重量に基づいて、少なくとも90重量%の、全フッ素化モノマーから誘導された重合単位を含み、前記フルオロポリマーは、エチレン性不飽和基、アルコキシシラン基、又はそれらの組み合わせで架橋され、前記架橋フルオロポリマー組成物は、電子供与性基又はその残基を含む化合物を含む、物品。
【請求項31】
前記フルオロポリマーの一部が、ヨウ素、臭素、塩素、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上の硬化部位を含む、請求項30に記載の物品。
【請求項32】
95~100%の前記架橋フルオロポリマーが、95gの溶媒当たり5gの架橋フルオロポリマーの濃度で、25℃で12時間以内に3-エトキシペルフルオロ2-メチルヘキサン溶媒中に溶解しない、請求項30又は31に記載の物品。
【請求項33】
前記物品が、前記架橋フルオロポリマー組成物のシートである、請求項30~32のいずれか一項に記載の物品。
【請求項34】
前記物品が基材を更に含み、前記架橋フルオロポリマーが前記基材の表面上に配置される、請求項30~33のいずれか一項に記載の物品。
【請求項35】
前記フルオロポリマー、フッ素化溶媒、エチレン性不飽和硬化剤、電子供与性基若しくはその前駆体を含む化合物、及び/又は基材が、請求項2~26のいずれか一項に従って更に特徴付けられる、請求項30~34のいずれか一項に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
一実施形態において、架橋フルオロポリマーの作製方法が記載される。本方法は、組成物を基材に適用することを含み、組成物は、フルオロポリマーと、フッ素化溶媒と、エチレン性不飽和基、及び電子供与性基又はその前駆体を含む1つ以上の硬化剤と、を含む。本方法は、溶媒を除去することと、フルオロポリマーを化学(例えば、紫外線「UV」)線で硬化することと、を更に含む。
【0002】
別の実施形態において、フッ素化溶媒に溶解されたフルオロポリマーと、エチレン性不飽和基、及び電子供与性基又はその前駆体を含む1つ以上の硬化剤を含む組成物が記載される。
【0003】
これらの実施形態の各々において、フルオロポリマーは、フルオロポリマーがフッ素化溶媒に溶解するように、全フッ素化モノマーから誘導された重合単位を十分な量(例えば、少なくとも90重量%)含む。フルオロポリマーは、ヨウ素、臭素、及び塩素から選択される硬化部位を更に含む。
【0004】
本明細書に記載の架橋フルオロポリマー組成物を含むシート又はコーティングされた基材などの物品も記載される。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書には、フッ素化溶媒に溶解したフルオロポリマーを含む組成物、フィルム及びコーティングされた基材などの物品、並びに架橋剤フルオロポリマーの作製方法が記載される。
【0006】
本明細書に記載のフルオロポリマーは、主に又は排他的に、2つ以上の全フッ素化コモノマーから誘導される(例えば、繰り返し)重合単位を含むコポリマーである。コポリマーは、2つ以上のモノマーの同時重合から生じるポリマー材料を指す。いくつかの実施形態において、コモノマーは、テトラフルオロエテン(tetrafluoroethene、TFE)及び1つ以上の不飽和ペルフルオロ(例えば、アルケニル、ビニル)アルキルエーテルを含む。
【0007】
いくつかの好ましい実施形態において、1つ以上の不飽和ペルフルオロアルキルエーテルは、一般式:
Rf-O-(CF2)n-CF=CF2
[式中、nは、1(アリルエーテル)又は0(ビニルエーテル)であり、Rfは、酸素原子が1個以上介在していてもよいペルフルオロアルキル残基を表す]から選択される。Rfは、10個以下の炭素原子、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個の炭素原子を含有していてもよい。好ましくは、Rfは、8個以下の、より好ましくは6個以下の炭素原子及び最も好ましくは3又は4個の炭素原子を含有する。一実施形態において、Rfは3個の炭素原子を有する。別の実施形態において、Rfは1個の炭素原子を有する。Rfは、直鎖状であっても、分枝状であってもよく、環式単位を含んでいても含んでいなくてもよい。Rfの具体例としては、以下を含むがこれらに限定されない1つ以上のエーテル官能基を有する残基が挙げられる。
-(CF2)-O-C3F7、
-(CF2)2-O-C2F5、
-(CF2)r3-O-CF3、
-(CF2-O)-C3F7、
-(CF2-O)2-C2F5、
-(CF2-O)3-CF3、
-(CF2CF2-O)-C3F7、
-(CF2CF2-O)2-C2F5、
-(CF2CF2-O)3-CF3
【0008】
Rfの他の具体例としては、エーテル官能基を含有しない残基が挙げられ、-C4F9、-C3F7、-C2F5、-CF3[式中、C4及びC3残基は、分枝状であっても、直鎖状であってもよいが、好ましくは直鎖状である]が挙げられるが、これらに限定されない。
【0009】
好適なペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)及びペルフルオロアルキルアリルエーテル(PAAE)の具体例としては、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、ペルフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)、ペルフルオロ(n-プロピルビニル)エーテル(PPVE-1)、ペルフルオロ-2-プロポキシプロピルビニルエーテル(PPVE-2)、ペルフルオロ-3-メトキシ-n-プロピルビニルエーテル、ペルフルオロ-2-メトキシ-エチルビニルエーテル、CF
2=CF-O-CF
2-O-C
2F
5、CF
2=CF-O-CF
2-O-C
3F
7、
【化1】
及びそれらのアリルエーテル同族体が挙げられるが、これらに限定されない。アリルエーテルの具体例としては、CF
2=CF-CF
2-O-CF
3、CF
2=CF-CF
2-O-C
3F
7、CF
2=CF-CF
2-O-(CF
3)
3-O-CF
3が挙げられる。
【0010】
更なる例としては、欧州特許出願第1,997,795(B1)号に記載のビニルエーテルが挙げられるが、これに限定されない。
【0011】
上記のような全フッ素化エーテルは、例えば、Anles Ltd.(St.Petersburg,Russia)及び他の企業から市販されているか、あるいは米国特許第4,349,650号(Krespan)若しくは欧州特許第1,997,795号に記載の方法に従って、又は当業者に知られているその改変によって調製することができる。
【0012】
いくつかの実施形態において、1つ以上の不飽和ペルフルオロアルキルエーテルは、2,2-ビストリフルオロメチル-4,5-ジフルオロ-1,3ジオキソールなどの不飽和環状ペルフルオロアルキルエーテルを含む。他の実施形態において、フルオロポリマーは、2,2-ビストリフルオロメチル-4,5-ジフルオロ-1,3ジオキソールなどの不飽和環状ペルフルオロアルキルエーテルを実質的に含まない。実質的に含まないとは、量がゼロである、又は十分に低いことを意味し、そのようなフルオロポリマー特性はほぼ同じである。
【0013】
いくつかの好ましい実施形態において、フルオロポリマーは、テトラフルオロエテン(TFE)と、上記の不飽和ペルフルオロアルキルエーテルのうちの1種以上と、を含む全フッ素化コモノマーから主に又は排他的に誘導される。本明細書で使用するとき、「主に」は、本フルオロポリマーの総重量に基づいて、少なくとも90重量%のフルオロポリマーの重合単位が、テトラフルオロエテン(TFE)及び1つ以上の不飽和ペルフルオロアルキルエーテルなどのそのような全フッ素化コモノマーから誘導されることを意味する。いくつかの実施形態において、フルオロポリマーは、本フルオロポリマーの総重量に基づいて、少なくとも91、92、93、94、95、96、又は97重量%、又はそれ以上のそのような全フッ素化コモノマーを含む。フルオロポリマーは、少なくとも40、45、又は50重量%のTFEから誘導される重合単位を含有し得る。いくつかの実施形態において、TFEから誘導される重合単位の最大量は、60重量%以下である。
【0014】
フルオロポリマーは、典型的には、フルオロポリマーの総重合モノマー単位に基づいて、少なくとも10、15、20、25、30、45、又は50重量%の量で、不飽和ペルフルオロアルキルエーテル(PAVE)(例えば、PMVE、PAAE、又はそれらの組み合わせ)のうちの1つ以上から誘導される重合単位を含む。いくつかの実施形態において、フルオロポリマーは、フルオロポリマーの総重合モノマー単位に基づいて、50、45、40、又は35重量%以下の不飽和ペルフルオロアルキルエーテル(PMVE、PAAE、又はそれらの組み合わせ)のうちの1つ以上から誘導される重合単位を含む。TFEから誘導される単位と上記の全フッ素化アルキルエーテルから誘導される単位のモル比は、例えば、1:1~5:1であり得る。いくつかの実施形態において、モル比は1.5:1~3:1の範囲である。
【0015】
フルオロポリマーは熱可塑性であってもよいが、好ましい実施形態において、フルオロポリマーは非晶質である。本明細書で使用するとき、非晶質フルオロポリマーは、本質的に結晶化度を含まない、又は窒素流及び10℃/分の加熱速度下で、DIN EN ISO 11357-3:2013-04に従って示差走査熱量計によって決定されるような有意な融点(ピーク最大値)を有しない材料である。典型的には、非晶質フルオロポリマーは、26℃未満、20℃未満、又は0℃未満、例えば、-40℃~20℃、又は-50℃~15℃、又は-55℃~10℃のガラス転移温度(Tg)を有する。フルオロポリマーは、典型的には、約2~約150、例えば、10~100、又は20~70のムーニー粘度(121℃でML1+10)を有し得る。環状全フッ素化アルキルエーテル単位を含有する非晶質ポリマーについて、ガラス転移温度は、典型的には、少なくとも70℃、80℃、又は90℃であり、220℃、250℃、270℃、又は290℃までの範囲であり得る。MFI(297℃/5kg)は、0.1~1000g/10分である。
【0016】
他の実施形態において、フルオロポリマーは、150℃又は100℃未満の融点(melt point)を有し得る。
【0017】
フルオロポリマーは、好ましくは、1つ以上の硬化部位を含有する硬化性フルオロポリマーである。硬化部位は、硬化剤又は硬化系の存在下で反応してポリマーを架橋する官能基である。硬化部位は、典型的には、硬化部位又はその前駆体を既に含有する官能性コモノマーである、硬化部位モノマーを共重合させることによって導入される。架橋の1つの指標は、乾燥及び硬化したコーティング組成物がコーティングのフッ素化溶媒に可溶ではなかったことである。
【0018】
硬化部位は、硬化部位モノマー、すなわち、以下に記載されるような官能性モノマー、官能性連鎖移動剤、及び出発分子(starter molecule)を使用することによって、ポリマー中に導入することができる。フルオロエラストマーは、2つ以上のクラスの硬化剤に反応性である硬化部位を含有し得る。
【0019】
硬化性フルオロエラストマーはまた、ペンダント基として主鎖中に硬化部位を含有し得る、又は末端位置で硬化部位を含有し得る。フルオロポリマー主鎖内の硬化部位は、好適な硬化部位モノマーを使用することによって導入することができる。硬化部位モノマーは、硬化部位として作用することができる1つ以上の官能基、又は硬化部位に変換可能な前駆体を含有するモノマーである。
【0020】
いくつかの実施形態において、硬化部位は、ヨウ素原子又は臭素原子を含む。
【0021】
ヨウ素含有硬化部位末端基は、重合においてヨウ素含有連鎖移動剤を使用することによって導入することができる。ヨウ素含有連鎖移動剤については、以下でより詳細に説明する。ヨウ素末端基を導入するために、以下に記載されるようなハロゲン化レドックス系を使用することができる。
【0022】
ヨウ素硬化部位に加えて、他の硬化部位、例えばBr含有硬化部位又は1つ以上のニトリル基を含有する硬化部位もまた存在してもよい。Br含有硬化部位は、Br含有硬化部位モノマーによって導入され得る。
【0023】
硬化部位コモノマーの例としては、例えば以下:
(a)例えば以下の式を有するものを含む、ブロモ-又はヨード-(ペル)フルオロアルキル-(ペル)フルオロビニルエーテル:
ZRf-O-CX=CX2
[式中、各Xは同じであっても異なっていてもよく、H又はFを表し、ZはBr又はIであり、Rfは、任意に塩素原子及び/又はエーテル酸素原子を含有する、C1~C12(ペル)フルオロアルキレンである]を有するものが挙げられる。好適な例としては、ZCF2-O-CF=CF2、ZCF2CF2-O-CF=CF2、ZCF2CF2CF2-O-CF=CF2、CF3CFZCF2-O-CF=CF2、又はZCF2CF2-O-CF2CF2CF2-O-CF=CF2[式中、ZはBr又はIを表す]、
(b)以下の式を有するものなどの、ブロモ-又はヨードペルフルオロオレフィン:
Z’-(Rf)r-CX=CX2
[式中、各Xは、独立してH又はFを表し、Z’はBr又はIであり、Rfは、任意に塩素原子を含有する、C1~C12ペルフルオロアルキレンであり、rは、0又は1である]を有するもの、並びに、
(c)臭化ビニル、ヨウ化ビニル、4-ブロモ-1-ブテン、及び4-ヨード-1-ブテンなどの、非フッ素化ブロモ及びヨード-オレフィンが挙げられる。
【0024】
具体例としては、XがHである(b)による化合物、例えばXがHであり、RfがC1~C3ペルフルオロアルキレンである化合物が挙げられるが、これらに限定されない。特定の例としては、ブロモ-若しくはヨード-トリフルオロエテン、4-ブロモ-ペルフルオロブテン-1、4-ヨード-ペルフルオロブテン-1、又はブロモ-若しくはヨード-フルオロオレフィン、例えば1-ヨード,2,2-ジフルオロエテン、1-ブロモ-2,2-ジフルオロエテン、4-ヨード-3,3,4,4,-テトラフルオロブテン-1、及び4-ブロモ-3,3,4,4-テトラフルオロブテン-1、6-ヨード-3,3,4,4,5,5,6,6-オクタフルオロヘキセン-1が挙げられる。
【0025】
いくつかの実施形態において、硬化部位は、塩素原子を含む。そのような硬化部位モノマーは、一般式:CX1X2=CY1Y2[式中、X1、X2は、独立してH及びFであり、Y1は、H、F、又はClであり、Y2は、Cl、少なくとも1つのCl置換基を有するフルオロアルキル基(RF)、少なくとも1つのCl置換基を有するフルオロエーテル基(ORF)、又は-CF2-ORFである]のものを含む。フルオロアルキル基(RF)は、典型的には、部分又は完全フッ素化C1~C5アルキル基である。塩素原子を有する硬化部位モノマーの例としては、CF2=CFCl、CF2=CF-CF2Cl、CF2=CF-O-(CF2)n-Cl[n=1~4]、CH2=CHCl、CH2=CCl2が挙げられる。
【0026】
典型的には、フルオロポリマー中のヨウ素若しくは臭素若しくは塩素又はそれらの組み合わせの量は、フルオロポリマーの総重量に対して、0.001~5重量%、好ましくは0.01~2.5重量%、又は0.1~1重量%又は0.2~0.6重量%である。一実施形態において、硬化性フルオロポリマーは、本フルオロポリマーの総重量に基づいて、0.001~5重量%、好ましくは、0.01~2.5重量%、又は0.1~1重量%、より好ましくは、0.2~0.6重量%のヨウ素を含有する。
【0027】
組成物は、任意に、ハロゲン硬化部位を有しない第2のフルオロポリマーを更に含み得る。ハロゲン硬化部位を有しないフルオロポリマーの量は、典型的には、全てのフルオロポリマーの50、45、40、35、30、25、20、15、10、又は5重量%未満である。したがって、組成物は、適切な架橋が達成されるように、ハロゲン硬化部位を有する十分な量のフルオロポリマーを有する。
【0028】
一実施形態において、組成物は、テトラフルオロエテン(TFE)及び2,2-ビストリフルオロメチル-4,5-ジフルオロ-1,3ジオキソールなどの1つ以上の不飽和環状ペルフルオロアルキルエーテルを含む2つ以上の全フッ素化コモノマーから主に又は排他的に誘導される第2のフルオロポリマーを更に含む。そのようなフルオロポリマーは、「TEFLON(商標)AF」、「CYTOP(商標)」、及び「HYFLON(商標)」として市販されている。
【0029】
いくつかの実施形態において、第2のフルオロポリマーは、ニトリル含有硬化部位を含有する。異なる硬化部位を有するフルオロポリマーの組み合わせが利用される場合、組成物は、異なる硬化系に反応性である異なる硬化部位を含有する二重硬化として特徴付けられ得る。
【0030】
ニトリル含有硬化部位を有するフルオロポリマーは、米国特許第6,720,360号などに記載されていることが既知である。
【0031】
ニトリル含有硬化部位は、他の硬化系、限定されるものではないが例えば、ビスフェノール硬化系、過酸化物硬化系、トリアジン硬化系、及び特にアミン硬化系に対して反応性であってもよい。ニトリル含有硬化部位モノマーの例は、以下の式:
CF2=CF-CF2-O-Rf-CN、
CF2=CFO(CF2)rCN;
CF2=CFO[CF2CF(CF3)O]p(CF2)vOCF(CF3)CN;
CF2=CF[OCF2CF(CF3)]kO(CF2)uCN、
[式中、rは、2~12の整数を表し、pは、0~4の整数を表し、kは、1又は2を表し、vは、0~6の整数を表し、uは、1~6の整数を表し、Rfは、ペルフルオロアルキレン又は二価ペルフルオロエーテル基である]に対応する。ニトリル含有フッ素化モノマーの具体例としては、ペルフルオロ(8-シアノ-5-メチル-3,6-ジオキサ-1-オクテン)、CF2=CFO(CF2)5CN、及びCF2=CFO(CF2)3OCF(CF3)CNが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
いくつかの実施形態において、ニトリル含有硬化部位コモノマーの量は、本フルオロポリマーの総重量に基づいて、典型的には、少なくとも0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、又は5重量%であり、典型的には、10重量%以下である。ニトリル硬化部位のための好適な硬化剤は、当該技術分野において既知であり、アミジン、アミドキシム、及び参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2008/094758(A1)号に記載されている他のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
他の実施形態において、組成物は、ニトリル含有硬化部位を有するフルオロポリマーを実質的に含まない。
【0034】
他の実施形態において、ハロゲン化連鎖移動剤を利用して、末端硬化部位を提供することができる。連鎖移動剤は、成長するポリマー鎖と反応し、連鎖成長を停止させることができる化合物である。フルオロエラストマーの製造に関して報告されている連鎖移動剤の例としては、式RI
xを有するものが挙げられ、式中、Rは、1~12個の炭素原子を有する、x価のフルオロアルキル又はフルオロアルキレン基であり、これは、1個以上のエーテル酸素が介在していてもよく、また、塩素原子及び/又は臭素原子を含有してもよい。RはRfであってもよく、Rfは、エーテル酸素により1回以上介在されていていてもよいx価の(ペル)フルオロアルキル又は(ペル)フルオロアルキレン基であってもよい。例としては、1個以上のカテナリー(catenary)エーテル酸素を含有していてもよい、α-ωジヨードアルカン、α-ωジヨードフルオロアルカン、及びα-ωジヨードペルフルオロアルカンが挙げられる。「α-ω」は、ヨウ素原子が、分子の末端位置にあることを表す。このような化合物は、一般式X-R-Yによって表すことができ、X及びYはIであり、Rは上記のとおりである。具体例としては、ジヨードメタン、α-ω(又は1,4-)ジヨードブタン、α-ω(又は1,3-)ジヨードプロパン、α-ω(又は1,5-)ジヨードペンタン、α-ω(又は1,6-)ジヨードヘキサン、及び1,2-ジヨードペルフルオロエタンが挙げられる。他の例としては、以下の式:
【化2】
[式中、Xは、F、H、及びClから独立して選択され、R
f及びR’
fは、F及び1~3個の炭素を有する一価ペルフルオロアルカンから独立して選択され、Rは、F、又は1~3個の炭素を含む部分フッ素化若しくは全フッ素化アルカンであり、R’’
fは、1~5個の炭素を有する二価フルオロアルキレン又は1~8個の炭素及び少なくとも1つのエーテル結合を有する二価フッ素化アルキレンエーテルであり、kは0又は1であり、n、m、及びpは、0~5の整数から独立して選択され、n+mは少なくとも1であり、p+qは少なくとも1である]のフッ素化ジヨードエーテル化合物が挙げられる。
【0035】
フルオロポリマーは、少なくとも1種の改質モノマーから誘導される単位を含有してもよく、又は含有しなくてもよい。改質モノマーは、ポリマー構造中に分岐部位を導入することができる。典型的には、改質モノマーは、ビスオレフィン、ビスオレフィンエーテル又はポリエーテルである。ビスオレフィン及びビスオレフィン(ポリ)エーテルは、全フッ素化されていてもよく、部分フッ素化されていてもよく、又は非フッ素化であってもよい。好ましくは、これらは、全フッ素化されている。好適な全フッ素化ビスオレフィンエーテルとしては、以下の一般式で表されるものが挙げられる。
CF2=CF-(CF2)n-O-(Rf)-O-(CF2)m-CF=CF2
[式中、n及びmは、互いに独立して1又は0のいずれかであり、Rfは、1個以上の酸素原子が介在していてもよい、最大30個の炭素原子を含む、全フッ素化された、直鎖状又は分枝状、環状又は非環状の、脂肪族又は芳香族の炭化水素残基を表す]。特定の好適な全フッ素化ビスオレフィンエーテルは、以下の式で表されるジ-ビニルエーテルである。
CF2=CF-O-(CF2)n-O-CF=CF2
[式中、nは1~10、好ましくは、2~6の整数であり、例えば、nは、1、2、3、4、5、6、又は7であり得る]。より好ましくは、nは、例えば1、3、5、又は7などの奇数を表す。
【0036】
更なる具体例としては、以下の一般式に従うビスオレフィンエーテルが挙げられる。
CF2=CF-(CF2)n-O-(CF2)p-O-(CF2)m-CF=CF2
[式中、n及びmは、独立して1又は0のいずれかであり、pは1~10又は2~6の整数である]。例えば、nは、1、2、3、4、5、6、又は7、好ましくは、1、3、5、又は7を表すように選択され得る。
【0037】
更なる好適な全フッ素化ビスオレフィンエーテルは、以下の式で表すことができる。
【化3】
[式中、R
af及びR
bfは、1~10個の炭素原子、特に、2~6個の炭素原子の、異なる直鎖状又は分枝状ペルフルオロアルキレン基であり、これは、1個以上の酸素原子が介在していても介在していなくてもよい]。R
af及び/又はR
bfはまた、全フッ素化フェニル又は置換フェニル基であってもよく、nは、1~10の整数であり、mは、0~10の整数であり、好ましくは、mは0である。更に、p及びqは、独立して1又は0である。
【0038】
別の実施形態において、全フッ素化ビスオレフィンエーテルは、直前に記載された式によって表すことができる[式中、m、n、及びpはゼロであり、qは1~4である]。
【0039】
改質モノマーは、当該技術分野において既知の方法で調製することができ、また、例えば、Anles Ltd.(St.Petersburg,Russia)から市販されている。
【0040】
好ましくは、改質剤は使用されないか、又は少量だけ使用される。典型的な量としては、本フルオロポリマーの総重量に基づいて、0~5重量%、又は0~1.4重量%が挙げられる。改質剤は、例えば、フルオロポリマーの総重量に基づいて約0.1重量%~約1.2重量%又は約0.3重量%~約0.8重量%の量で存在し得る。改質剤の組み合わせもまた使用することができる。
【0041】
フルオロポリマーは、部分フッ素化又は非フッ素化コモノマー及びこれらの組み合わせを含有してもよいが、好ましくはない。典型的な部分フッ素化コモノマーとしては、1,1-ジフルオロエテン(フッ化ビニリデン、VDF)及びフッ化ビニル(VF)又はトリフルオロクロロエテン又はトリクロロフルオロエテンが挙げられるが、これらに限定されない。非フッ素化コモノマーの例としては、エテン及びプロペンが挙げられるが、これらに限定されない。これらのコモノマーから誘導される単位の量は、本フルオロポリマーの総重量に基づいて、0~8重量%を含む。いくつかの実施形態において、そのようなコモノマーの濃度は、本フルオロポリマーの総重量に基づいて、7、6、5、4、3、2、又は1%以下である。
【0042】
好ましい実施形態において、硬化性フルオロポリマーは、全フッ素化コモノマーから(排他的に)誘導される繰り返し単位だけを含むが、硬化部位モノマー、及び必要であれば改質モノマーから誘導される単位を含有し得るペルフルオロエラストマーである。硬化部位モノマー及び改質モノマーは、部分フッ素化されていてもよく、非フッ素化であってもよく、又は全フッ素化されていてもよく、好ましくは、全フッ素化されている。ペルフルオロエラストマーは、69~73、74、又は75重量%のフッ素(ペルフルオロエラストマーの総量に基づいて)を含有し得る。フッ素含有量は、コモノマー及びそれらの量を適宜選択することによって達成することができる。
【0043】
そのような高度にフッ素化された非晶質フルオロポリマーは、典型的には、水素含有有機液体において、室温及び標準圧力で、少なくとも1重量%の程度までしか溶解しない(例えば、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone、「MEK」)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、「THF」)、酢酸エチル、又はN-メチルピロリドン(N-methyl pyrrolidinone、「NMP」)のいずれにも溶解しない)。
【0044】
フルオロポリマーは、バルク、懸濁、溶液、又は水性乳化重合などの当該技術分野において既知の方法によって調製することができる。例えば、重合プロセスは、モノマー単独の、又は有機溶媒若しくは水中の溶液、エマルション若しくは分散体としての、フリーラジカル重合によって実施することができる。シード重合は、使用されてもよく、使用されなくてもよい。使用可能な硬化性フルオロエラストマーとしては、市販のフルオロエラストマー、特に、ペルフルオロエラストマーも挙げられる。
【0045】
フルオロポリマーは、単峰性又は二峰性又は多峰性の分子量分布(weight distribution)を有し得る。フルオロポリマーは、コアシェル構造を有していても、有していなくてもよい。コアシェルポリマーとは、重合の終わりに近づくと、典型的にはコモノマーの少なくとも50モル%が消費された後に、コモノマーの組成、又はコモノマーの比、又は反応速度を変更して、異なる組成のシェルを形成させるポリマーのことである。
【0046】
本明細書に記載のフルオロポリマー組成物は、1つ以上のエチレン性不飽和硬化剤を含有する。エチレン性不飽和硬化剤は、典型的には、本フルオロポリマーの総重量に基づいて、少なくとも1、1.5、又は2重量%の量で存在する。より少ない量の架橋を有する組成物について、エチレン性不飽和硬化剤は、少なくとも0.005、0.1、0.2、0.3、0.5重量%などのより少ない量で存在し得る。エチレン性不飽和硬化剤の最大量は、典型的には、本フルオロポリマーの総重量に基づいて、10、9、8、7、6、又は5重量%以下である。
【0047】
硬化剤のエチレン性不飽和基は、典型的には、(メタ)アクリレートRCH=CHCOO-及び(メタ)アクリルアミドRCH=CHCONH-[式中、Rは、水素又はメチルである]を含む(メタ)アクリル、ビニルを含むアルケニル(CH2=CH-)、又はアルキニルである。
【0048】
有用なマルチ(メタ)アクリレート硬化剤としては、次のものが挙げられる。
(a)ジ(メタ)アクリル含有モノマー、例えば、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノアクリレートモノメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、アルコキシル化脂肪族ジアクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートなど、
(b)トリ(メタ)アクリル含有モノマー、例えば、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリアクリレート(例えば、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート)、プロポキシル化トリアクリレート(例えば、プロポキシル化グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート)、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートなど、
(c)より多官能性の(メタ)アクリル含有モノマー、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及びカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなど。
【0049】
いくつかの実施形態において、エチレン性不飽和硬化剤は、少なくとも2つ又は3つのエチレン性不飽和基を含む。エチレン性不飽和基の最大数は、典型的には、3、4、5、又は6である。本実施形態において、エチレン性不飽和基は、好ましくは、アルケニル基である。したがって、いくつかの実施形態における組成物、組成物は、(メタ)アクリレート基を実質的に含まない。
【0050】
エチレン性不飽和硬化剤は、直鎖状、分枝状であり得る、又は環状基を含み得る。エチレン性不飽和硬化剤は、脂肪族又は芳香族であり得る。有用なエチレン性不飽和硬化剤の例としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、トリ(メチルアリル)イソシアヌレート、トリス(ジアリルアミン)-s-トリアジン、トリアリル-ホスファイト、(N,N’)-ジアリルアクリルアミド、ヘキサアリルホスホラミド、(N,N,N,N)-テトラアルキルテトラフタルアミド、(N,N,N’,N-テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、ジアリル-フタレート、及びトリ(5-ノルボルネン-2-メチレン)シアヌレートが挙げられる。いくつかの実施形態において、エチレン性不飽和硬化剤は、トリアリルイソシアヌレート(triallyl isocyanurate、TAIC)の場合など、複素環式である。
【0051】
いくつかの実施形態において、エチレン性不飽和硬化剤は、シラン又はシロキサンなどのシリコーン含有部分を含む。硬化剤がシリコーン含有部分を含む場合、硬化剤はまた、基材へのフルオロポリマーの接着を促進することができる。
【0052】
シリコーン含有部分を含む好適なエチレン性不飽和硬化剤としては、例えば、ジアリルジメチルシラン及び1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンが挙げられる。
【0053】
いくつかの実施形態において、エチレン性不飽和硬化剤は、少なくとも1つのエチレン性不飽和基及び少なくとも1つのアルコキシシラン基を含む。好適な硬化剤としては、例えば、(メタ)アクリロイルアルコキシシラン、例えば、3-(メタクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-(メタクリルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、3-(アクリロイルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルメトキシシラン、及び3-(アクリルオキシプロピル)ジメチルメトキシシランが挙げられる。いくつかの実施形態において、(メタ)アクリロイアルコキシシランの量は、高度に架橋されたフルオロポリマーを達成するために、少なくとも2、3、4、又は5重量%である。
【0054】
好適なアルケニルアルコキシシランとしては、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリ-t-ブトキシシラン、ビニルトリス-イソブトキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、及びアリルトリエトキシシランが挙げられる。
【0055】
いくつかの実施形態において、エチレン性不飽和硬化剤は、一般式:
X1-L1-SiRm(OR1)3-m
[式中、X1は、(メタ)アクリル又はビニルなどのエチレン性不飽和基であり、
L1は、1~12個の炭素原子を有する有機の二価結合基であり、
Rは、独立して、C1~C4アルキルであり、最も典型的には、メチル又はエチルであり、
R1は、独立して、H又はC1~C4アルキルであり、最も典型的には、メチル又はエチルであり、
mは、0~2の範囲である]を有し得る。
【0056】
典型的な実施形態において、L1はアルキレン基である。いくつかの実施形態において、L1は、1、2、又は3個の炭素原子を有するアルキレン基である。他の実施形態において、L1は、フェニル又は(例えば、C1~C4)アルキルフェニルなどの芳香族基を含む、又はそれらからなる。
【0057】
組成物は、直前に記載されたような単一のエチレン性不飽和硬化剤又はエチレン性不飽和硬化剤の組み合わせを含み得る。
【0058】
本明細書に記載の組成物は、電子供与性基又はその前駆体を更に含む。電子供与性基は、アミノアルケン又はビニルアニリンの場合などの同じ化合物上に存在してもよく、又は電子供与性基は、別個の化合物として存在してもよい。
【0059】
フルオロポリマー及び/又は硬化剤は、発色団、すなわち、特定の頻度で光を吸収する原子又は基を含む。いくつかの実施形態において、フルオロポリマー及び/又は硬化剤は、独立して、十分な吸光度を有していなくてもよいが、互いに組み合わせて十分な吸光度を有する。
【0060】
いくつかの実施形態において、フルオロポリマー、硬化剤、又はそれらの組み合わせは、190nm~400nmの範囲の波長で、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、又は1.0の吸光度を有する。いくつかの実施形態において、そのような吸光度は、少なくとも200nm、210nm、220nm、230nm、又は240nmの波長でのものである。いくつかの実施形態において、そのような吸光度は、350、340、330、320、310nm、又は290nm以下の波長でのものである。他の実施形態において、フルオロポリマー、硬化剤、又はそれらの組み合わせは、150nm~200nmの範囲の波長で、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、又は1.0の吸光度を有する。
【0061】
理論に拘束されることを意図するものではないが、好適な波長及び強度の化学(例えば、UV)線に曝露されると、フルオロポリマーの硬化部位のハロゲン原子が励起され、イオン化されることが推測される。イオン化ハロゲン原子は、前者のハロゲン原子の代わりにプロトン化硬化部位をレンダリングする電子供与性基と反応する。そのようなプロトン化硬化部位は、硬化剤のエチレン性不飽和基と共有結合する。
【0062】
他の電子供与性基を利用することができるが、電子供与性基を含む化合物は、典型的には、アミン又はその前駆体である。好適なアミンとしては、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。アミンは、脂肪族であっても芳香族であってもよい。
【0063】
例示的なアミン化合物としては、ジアミノヘキサン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-ジアミノブタン(TMDAB);N,N-ジメチルアニリン;トリエチレンテトラミン;及びジエチレントリアミンが挙げられる。いくつかの実施形態において、アミン基は、少なくとも3、4、5、又は6個の(例えば、炭素)原子を有するアルキレン基によって離間される。典型的には、(例えば、炭素)原子の数は、12個以下である。アミン化合物が不十分な鎖長を有する場合、それは、効果の低い電子供与性基であり得る。化合物が電子供与体又はその前駆体であるという条件で、アルキレン基は、任意に、シロキサンなどの置換基を含み得る。
【0064】
いくつかの実施形態において、電子供与体化合物は、化合物が最初にフルオロポリマーと組み合わされる場合、電子供与体ではないことを意味する電子供与体前駆体として特徴付けられ得る。しかしながら、前駆体化合物は、硬化前又は硬化中に(例えば、アミン)電子供与体を形成するために分解又は別様に反応する。
【0065】
電子供与体前駆体としては、複素環式第二級アミンなどの窒素含有求核化合物;グアニジン;40℃~330℃の温度でin situで分解してグアニジンを生成する化合物;40℃~330℃の温度でin situで分解して第一級アミン又は第二級アミンを生成する化合物;式R1-NH-R2[式中、R1は、H-、C1~C10脂肪族炭化水素基、又はα位に水素原子を有するアリール基であり、R2は、C1~C10脂肪族炭化水素基、α位に水素原子を有するアリール基、-CONHR3、-NHCO2R3、又は-OH’であり、R3は、C1~C10脂肪族炭化水素基である]の求核化合物;及び式HN=CR4NR5R6[式中、R4、R5、R6は、独立して、H-、アルキル又はアリール基であり、R4、R5及びReのうちの少なくとも1つはH-ではない]の置換アミジンが挙げられる。
【0066】
本明細書で使用するとき、「複素環式第二級アミン」は、環内に含有される少なくとも1つの第二級アミン窒素を有する芳香族又は脂肪族環状化合物を指す。このような化合物としては、例えば、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、3-ピロリン、及びピロリジンが挙げられる。
【0067】
グアニジンは、グアニジン由来の化合物、すなわち、ジフェニルグアニジン、ジフェニルグアニジンアセテート、アミノブチルグアニジン、ビグアニジン、イソペンチルグアニジン、ジ-σ-トリルグアニジン、o-トリルビグアニド、及びトリフェニルグアニジンなどであるがこれらに限定されない、-NHCNHNH-基を含有する化合物である。
【0068】
40℃~330℃の温度でin situで分解して、第一級又は第二級アミンのいずれかを生成する他の化合物としては、二置換又は多置換尿素(例えば、1,3-ジメチル尿素);N-アルキル又は-ジアルキルカルバメート(例えば、N-(tert-ブチルオキシカルボニル)プロピルアミン);二置換又は多置換チオ尿素(例えば、1,3-ジメチル-チオ尿素);アルデヒド-アミン縮合生成物(例えば、1,3,5-トリメチルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン);N,N’-ジアルキルフタルアミド誘導体(例えば、N,N’-ジメチルフタルアミド);及びアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
直前に記載されたように熱活性化電子供与体前駆体化合物が利用される場合、組成物は、典型的には、硬化前及び/又は硬化中に加熱される。
【0070】
別の種類のアミン電子供与体としては、下記式
【化4】
及び
【化5】
のビス(アミノフェノール)及びビス(アミノチオフェノール)、並びに下記式
【化6】
のテトラアミンが挙げられ、式中、Aは、SO
2、O、CO、炭素原子1~6個のアルキル、炭素原子1~10個のペルフルオロアルキル、又は2つの芳香環を連結する炭素-炭素結合である。上記の式中のアミノ基及びヒドロキシル基は、A基に対してメタ位及びパラ位に互換的に存在する。
【0071】
いくつかの実施形態において、アミン電子供与体化合物は、アジリジン化合物である。いくつかの実施形態において、アジリジン化合物は、少なくとも2つのアジリジン基を含む。アジリジン化合物は、3、4、5、6、又は6超個のアジリジン基を含み得る。アジリジン化合物は、以下の構造:
【化7】
[式中、Rは、Yの原子価を有するコア部分であり、
Lは、結合、二価原子、又は二価結合基であり、
R
1、R
2、R
3、及びR
4は、独立して、水素又はC
1~C
4アルキル(例えば、メチル)であり、
Yは、典型的には、2、3、又はそれ以上である]によって表すことができる。
【0072】
いくつかの実施形態において、Rは、-SO2-である。いくつかの実施形態において、R-Lは、マルチ(メタ)アクリレート化合物の残基である。いくつかの実施形態において、Lは、1つ以上の(例えば、隣接又はペンダント)酸素原子で任意に置換されたC1~C4アルキレンであり、それによって、エーテル又はエステル結合を形成する。典型的な実施形態において、R1はメチルであり、R2、R3、及びR4は水素である。
【0073】
代表的なアジリジン化合物としては、トリメチロールプロパントリ-[β-(N-アジリジニル)-プロピオネート、2,2-ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3-(1-アジリジン)プロピオネート];1-(アジリジン-2-イル)-2-オキサブタ-3-エン;及び4-(アジリジン-2-イル)-ブタ-1-エン;及び5-(アジリジン-2-イル)-ペンテ-1-エンが挙げられる。
【0074】
いくつかの実施形態において、ポリアジリジン化合物は、米国特許第3,235,544号(Christena)に記載されるように、ジビニルスルホンをアルキレン(例えば、エチレン)イミンと反応させることによって調製することができる。代表的な化合物は、ジ(2-プロピレンイミノエチル)スルホンであり、以下のように示される。
【化8】
【0075】
上記のポリアジリジン化合物は、化合物がコーティング組成物に添加される時点で少なくとも2つのアジリジン基を含む。他の実施形態において、ポリアジリジン化合物は、化合物が組成物に添加される時点で2つのアジリジン基を含まず、更に、in-situでポリアジリジンを形成する。例えば、単一のアジリジン基及び単一(メタ)アクリレート基を含む化合物は、(メタ)アクリレート基の反応によって二量体を形成又はオリゴマー化し、それによって、ポリアジリジン(polyazirdine)(すなわち、ジアジリジン)化合物を形成することができる。
【0076】
いくつかの実施形態において、組成物は、少なくとも1つの(例えば、第一級、第二級、第三級)アミン基及び少なくとも1つのオルガノシラン(例えば、アルコキシシラン)基を含む電子供与体化合物を含む。そのような化合物は、本明細書に記載のフルオロエラストマーを独立して架橋する結合を改善し、それによって、第2のフルオロポリマー架橋機構を提供することができる。アミノ置換オルガノシランと組み合わせてエチレン性不飽和硬化剤を使用することにより、より低濃度の硬化剤及び電子供与体化合物を利用して、高度に架橋されたフルオロポリマーを提供することができる。
【0077】
いくつかの実施形態において、アミンは、ケイ素原子上に少なくとも1つ、好ましくは2つ又は3つのエステル基又はエステル等価物基を有するアミノ置換オルガノシランエステル又はエステル等価物として特徴付けられ得る。エステル等価物は当業者に周知であり、例えば、R’’OHによって熱的に及び/又は触媒作用で置換可能な、シランアミド(RNR’Si)、シランアルカノエート(RC(O)OSi)、Si-O-Si、SiN(R)-Si、SiSR及びRCONR’Si化合物などの化合物が含まれる。R及びR’は独立に選択され、水素、アルキル、アリールアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、並びにアルコキシアルキル、アミノアルキル、及びアルキルアミノアルキルなどの置換類似体を挙げることができる。R’’は、Hではない場合を除いて、R及びR’と同一でもよい。これらエステル等価物はまた、エチレングリコール、エタノールアミン、エチレンジアミン(例えば、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン)、及びこれらのアミドから誘導されるもののように、環式化合物であってもよい。
【0078】
別のエステル等価物のこのような環式化合物の例として、以下がある。
【化9】
【0079】
この環式化合物の例では、R’は、上記の文により定義づけられるが、アリールではない場合がある。3-アミノプロピルアルコキシシランは、加熱により環化することが周知であり、これらRNHSi化合物は本発明で有用であろう。好ましくは、アミノ置換オルガノシランエステル又はエステル等価物は、メトキシなどのエステル基を有し、これは容易にメタノールとして揮発される。アミノ置換オルガノシランは、少なくとも1つのエステル等価物を有さなくてはならず、例えば、トリアルコキシシランであってよい。
【0080】
例えば、アミノ置換オルガノシランは、式
(Z2N-L-SiX’X’’X’’’)[式中、
Zは、水素、アルキル、又は置換アリール若しくはアルキル、例えばアミノ置換アルキルであり、Lは、二価の直鎖C1~12アルキレンでもよく、又はC3~8シクロアルキレン、3~8員環のヘテロシクロアルキレン、C2~12アルケニレン、C4~8シクロアルケニレン、3~8員環ヘテロシクロアルケニレン、又はヘテロアリーレン単位を含んでもよく、X’、X’’及びX’’’のそれぞれは、C1~18アルキル、ハロゲン、C1~8アルコキシ、C1~8アルキルカルボニルオキシ、又はアミノ基であるが、但しX’、X’’、及びX’’’のうちの少なくとも1つは不安定基である]を有してもよい。更に、X’、X’’及びX’’’のうちの任意の2つ又は全ては、共有結合を介して連結されてもよい。アミノ基はアルキルアミノ基であってよい。
【0081】
Lは、二価の芳香族であってもよく、又は1つ以上の二価の芳香族基若しくはヘテロ原子基が介在してよい。芳香族基は複素環式芳香族を含んでよい。ヘテロ原子は、好ましくは、窒素、硫黄又は酸素である。Lは、C1~4アルキル、C2~4アルケニル、C2~4アルキニル、C1~4アルコキシ、アミノ、C3~6シクロアルキル、3~6員環のヘテロシクロアルキル、単環式アリール、5~6員環のヘテロアリール、C1~4アルキルカルボニルオキシ、C1~4アルキルオキシカルボニル、C1~4アルキルカルボニル、ホルミル、C1~4アルキルカルボニルアミノ、又はC1~4アミノカルボニルで任意に置換される。Lは、更に、-O-、-S-、-N(Rc)-、-N(Rc)-C(O)-、-N(Rc)-C(O)-O-、-O-C(O)-N(Rc)-、-N(Rc)-C(O)-N(Rd)-、-O-C(O)-、-C(O)-O-、又は-O-C(O)-O-が任意に介在している。Rc及びRdのそれぞれは、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシアルキル、アミノアルキル(第一級、第二級、又は第三級)、又はハロアルキルである。
【0082】
アミノ置換オルガノシランの例としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(SILQUEST A-1110)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(SILQUEST A-1100)、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピ)n-メチルアミン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(SILQUEST A-1120)、SILQUEST A-1130、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(SILQUEST A-2120)、ビス-(γ-トリエトキシシリルプロピル)アミン(SILQUEST A-1170)、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリブトキシシラン、6-(アミノヘキシルアミノプロピル)トリメトキシシラン、4-アミノブチルトリメトキシシラン、4-アミノブチルトリエトキシシラン、p-(2-アミノエチル)フェニルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、DYNASYLAN1146などのオリゴマーアミノシラン、3-(N-メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン、及び以下の環式化合物が挙げられる。
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【0083】
ビス-シリル尿素[RO)3Si(CH2)NR]2C=Oは、アミノ置換オルガノシランエステル又はエステル等価物の別の例である。
【0084】
いくつかの実施形態において、硬化剤は、潜在的官能性を有するアミノ基を含み得る。そのような硬化剤の一例は、以下のようなブロックされたアミン基である:
R3-N=C(R1)(R2)
[式中、R1及びR2は、独立して、1~6個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状アルキル基から選択される]。典型的な実施形態において、R1は、メチルであり、R2は、少なくとも2、3、4、5、又は6個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状アルキル基である。R3は、典型的には、有機基(例えば、500、450、400、350、300、又は250g/モル未満の分子量を有する)である。
【0085】
ブロックされたアミンは、コーティングされている基材の表面に吸着された水によって、又は湿度から提供される水分によって活性化され得る。脱ブロッキングは分単位で始まり、概ね、数時間(例えば、2時間)以内に完了する。脱ブロッキング中、-N=C(R1)(R2)基は、-NH2に変換され、その後、フルオロポリマーの(例えば、ニトリル硬化部位)と反応し得る。
【0086】
いくつかの実施形態において、硬化剤は、ブロックされたアミン基及びアルコキシシラン基を含む。そのようなブロックされたアミン硬化剤は、次の一般式:
(R4O)3-Si-(CH2)m-N=C(R1)(R2)
[式中、R1及びR2は、前述のように、独立して、1~6個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状アルキル基から選択される。
【0087】
R1は、独立して、1~6個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状アルキル基から選択され、mは、1~4の整数であり、各R4は、独立して、C1又はC2アルキル基である]によって特徴付けられ得る。
【0088】
ブロックされたアミン基及びアルコキシシラン基を含む1つの例示的な硬化剤は、以下のように示されるN-(1,3-ジメチルブチリデン)アミノプロピル-トリエトキシシランである。
【化14】
【0089】
そのような硬化剤は、Gelestから、及び3Mから「3M(商標)Dynamer(商標)Rubber Curative RC5125」として入手可能である。ブロックされたアミンは、電子供与体前駆体の追加の例である。
【0090】
いくつかの実施形態において、アミン硬化剤は、アジリジン基及びアルコキシシラン基を含む。そのような化合物は、参照により本明細書に組み込まれる、例えば、米国特許第3,243,429号から既知である。アジリジンアルコキシシラン化合物は、一般構造:
【化15】
[式中、R”は、水素又はC
1~C
4アルキル(例えば、メチル)であり、
Xは、結合、二価原子、又は二価結合基であり、
nは、0、1、又は2であり、
mが、1、2、又は3であり、
合計又はn+mは、3である]を有し得る。
【0091】
1つの代表的な化合物は、3-(2-メチルアジリジニル)エチルカルボキシルプロピルトリエトキシシランである。
【0092】
様々な他の好適なアジリジン架橋剤は、参照により本明細書に組み込まれる、2014年5月22日に公開された国際公開第2014/075246号、及び「NEW GENERATION OF MULTIFUNCTIONAL CROSSLINKERS」(https://www.pstc.org/files/public/Milker00.pdf参照)に記載されていることが既知である。
【0093】
組成物は、単一の(例えば、アミン)電子供与体化合物を含む、又はアミン電子供与体化合物の組み合わせが存在し得る。
【0094】
(例えば、アミン)電子供与体化合物の量は、典型的には、少なくとも0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、又は0.5重量%の固形分(すなわち、コーティング組成物の溶媒を除く)である。いくつかの実施形態では、(例えば、アミン)電子供与体化合物の量は、5、4.5、4、3.5、又は3重量%以下の固形分である。
【0095】
いくつかの実施形態において、フルオロポリマー組成物は、アミン官能基を有しないアルコキシシラン化合物を更に含む。いくつかの実施形態において、そのようなアルコキシシランは、化学式:
R2Si(OR1)m
[式中、R1は、前述のように、独立して、アルキルであり、
R2は、独立して、水素、アルキル、アリール、アルカリル、又はOR1であり、
mは、1~3の範囲であり、前述のように、典型的には2又は3である]を有する「非官能性」として特徴付けられ得る。
【0096】
式R2Si(OR1)mの好適なアルコキシシランは、テトラ-、トリ-、又はジアルコキシシラン、及びそれらの任意の組み合わせ又は混合物を含むが、これらに限定されない。代表的なアルコキシシランとしては、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、及びジメチルジエトキシシランが挙げられる。
【0097】
好ましくは、アルコキシシランのアルキル基は、1~6個、より好ましくは、1~4個の炭素原子を含む。本明細書で使用するのに好ましいアルコキシシランは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、及びそれらの任意の混合物からなる群から選択される。本明細書で使用するのに好ましいアルコキシシランは、テトラエトキシシラン(tetraethoxysilane、TEOS)を含む。コーティング組成物の作製方法で利用される有機官能基を有しないアルコキシシランは、Mitsuibishi Chemical Companyから商品名「MS-51」で入手可能な部分的に加水分解されたテトラメトキシシラン(tetramethoxysilane、TMOS)の場合など、部分的に加水分解され得る。
【0098】
存在する場合、(アミン/電子供与体)官能基を有しないアルコキシシラン化合物(例えば、TESO)の量は、典型的には、少なくとも0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、又は0.5重量%の固形分(すなわち、コーティング組成物の溶媒を除く)である。いくつかの実施形態では、官能基を有しないアルコキシシラン化合物の量は、5、4.5、4、3.5、又は3重量%以下の固形分である。
【0099】
典型的な実施形態において、本明細書に記載の組成物は、有機過酸化物の非存在下で、アミンなどの電子供与体化合物と組み合わせたエチレン性不飽和化合物を含む硬化系を含む。有機過酸化物は電子受容体であり、したがって、イオン化ハロゲン原子と競合し、それによって、フルオロポリマーの架橋を低減する。いくつかの実施形態において、組成物はまた、架橋を低減する他の電子受容体を実質的に含まない。
【0100】
フルオロポリマー(コーティング溶液)組成物は、少なくとも1種の溶媒を含む。溶媒は、フルオロポリマーを溶解させることができる。溶媒は、典型的には、コーティング溶液組成物の総重量に基づいて、少なくとも約25重量%の量で存在する。いくつかの実施形態において、溶媒は、コーティング溶液組成物の総重量に基づいて、少なくとも30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95%、又はそれ以上の量で存在する。
【0101】
フルオロポリマー(コーティング溶液)組成物は、典型的には、総コーティング溶液組成物の重量に基づいて、少なくとも0.01、0.02、0.03、0.03、0.04、0.04、0.05、0.06、0.7、0.8、0.9、又は1重量%のフルオロポリマーを含む。いくつかの実施形態において、フルオロポリマーコーティング溶液組成物は、少なくとも2、3、4、又は5重量%のフルオロポリマーを含む。いくつかの実施形態において、フルオロポリマーコーティング溶液組成物は、少なくとも6、7、8、9、又は10重量%のフルオロポリマーを含む。フルオロポリマーコーティング溶液組成物は、典型的には、総コーティング溶液組成物の重量に基づいて、50、45、40、35、30、25、又は20重量%以下のフルオロポリマーを含む。
【0102】
溶媒及びフルオロポリマーの最適な量は、最終用途によって決まり得、様々であり得る。例えば、薄いコーティングを提供するためには、溶媒中の非常に希薄なフルオロポリマー溶液、例えば、0.01重量%~5重量%の量のフルオロポリマーが望ましいことがある。また、スプレーコーティングによる用途には、高粘度の溶液よりも低粘度の組成物が好ましいことがある。溶液中のフルオロポリマーの濃度は、粘度に影響を及ぼし、適宜調整され得る。本開示の利点は、高濃度のフルオロポリマーを含むにもかかわらずなお低粘度の透明な液体組成物をもたらす溶液もまた調製できることである。
【0103】
いくつかの実施形態において、フルオロポリマーコーティング溶液組成物は、液体であり得る。液体は、例えば、室温(20℃+/-2℃)で2,000mPas未満の粘度を有し得る。他の実施形態において、フルオロポリマーコーティング溶液組成物は、ペーストである。ペーストは、例えば、室温(20℃+/2℃)で2,000~100,000mPasの粘度を有し得る。
【0104】
溶媒は周囲条件で液体であり、典型的には50℃を超える沸点を有する。好ましくは、溶媒は、容易に除去することができるように、200℃未満の沸点を有する。いくつかの実施形態において、溶媒は、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100℃未満の沸点を有する。
【0105】
溶媒は、部分フッ素化又は全フッ素化されている。様々な部分フッ素化又は全フッ素化溶媒は、ペルフルオロカーボン(perfluorocarbon、PFC)、ヒドロクロロフルオロカーボン(hydrochlorofluorocarbon、HCFC)、ペルフルオロポリエーテル(perfluoropolyether、PFPE)、及びヒドロフルオロカーボン(hydrofluorocarbon、HFC)、並びにフッ素化ケトン及びフッ素化アルキルアミンを含むことが既知である。
【0106】
いくつかの実施形態において、溶媒は、1000、900、800、700、600、500、400、300、200、又は100未満の地球温暖化係数(GWP、100年ITH)を有する。GWPは、典型的には、0超であり、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、又は80であり得る。
【0107】
本明細書で使用する場合、GWPは、化合物の構造に基づく化合物の地球温暖化係数の相対的尺度である。化合物のGWPは、1990年に気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change、IPCC)によって規定され、後続の報告において改訂されているが、特定の積分期間(integration time horizon、ITH)にわたる、1キログラムのCO
2放出による温暖化に対する、1キログラムの化合物放出による温暖化として計算される。
【数1】
式中、Fは化合物の単位質量当たりの放射強制力(その化合物のIR吸光度による大気中の放射線束の変化)であり、C
0は初期時点における化合物の大気濃度であり、τは化合物の大気寿命であり、tは時間であり、xは対象の化合物である。
【0108】
いくつかの実施形態において、溶媒は、部分フッ素化エーテル又は部分フッ素化ポリエーテルを含む。部分フッ素化エーテル又はポリエーテルは、直鎖状、環状、又は分枝状であってもよい。好ましくは、分枝状である。好ましくは、部分フッ素化エーテル又はポリエーテルは、非フッ素化アルキル基及び全フッ素化アルキル基を含み、より好ましくは、全フッ素化アルキル基は分枝状である。
【0109】
一実施形態において、部分フッ素化エーテル又はポリエーテル溶媒は、式:
Rf-O-R
[式中、Rfは、全フッ素化又は部分フッ素化アルキル又は(ポリ)エーテル基であり、Rは、非フッ素化又は部分フッ素化アルキル基である]に相当する。典型的には、Rfは、1~12個の炭素原子を有し得る。Rfは、第一級、第二級、又は第三級フッ素化又は全フッ素化アルキル残基であってもよい。これは、Rfが第一級アルキル残基である場合、エーテル原子に連結した炭素原子は2個のフッ素原子を含有し、フッ素化又は全フッ素化アルキル鎖の別の炭素原子に結合していることを意味する。その場合、RfはRf
1-CF2-に相当し、このポリエーテルは、一般式:Rf
1-CF2-O-Rで表すことができる。
【0110】
Rfが第二級アルキル残基である場合、エーテル原子に連結した炭素原子はまた、1個のフッ素原子、並びに部分及び/又は全フッ素化アルキル鎖の2個の炭素原子にも連結しており、Rfは(Rf
2Rf
3)CF-に相当する。このポリエーテルは、(Rf
2Rf
3)CF-O-Rに相当するであろう。
【0111】
Rfが第三級アルキル残基である場合、エーテル原子に連結した炭素原子はまた、部分及び/又は全フッ素化アルキル鎖の3個の炭素原子にも連結しており、Rfは(Rf
4Rf
5Rf
6)-C-に相当する。このポリエーテルは、(Rf
4Rf
5Rf
6)-C-ORに相当する。Rf
1、Rf
2、Rf
3、Rf
4、Rf
5、Rf
6は、Rfの定義に対応し、エーテル酸素が1個以上介在していてもよい全フッ素化又は部分フッ素化アルキル基である。これらは、直鎖状又は分枝状又は環状であってもよい。また、ポリエーテルの組み合わせを使用してもよく、第一級、第二級及び/又は第三級アルキル残基の組み合わせもまた使用してもよい。
【0112】
部分フッ素化アルキル基を含む溶媒の例としては、C3F7OCHFCF3(CAS番号3330-15-2)が挙げられる。
【0113】
Rfが全フッ素化(ポリ)エーテルを含む溶媒の例は、C3F7OCF(CF3)CF2OCHFCF3(CAS番号3330-14-1)である。
【0114】
いくつかの実施形態において、部分フッ素化エーテル溶媒は、式:
CpF2p+1-O-CqH2q+1
[式中、qは、1~5の整数、例えば、1、2、3、4、又は5であり、pは、5~11の整数、例えば、5、6、7、8、9、10、又は11である]に相当する。好ましくは、CpF2p+1は分枝状である。好ましくは、CpF2p+1は分枝状であり、qは1、2又は3である。
【0115】
代表的な溶媒としては、例えば、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-4-(トリフルオロメチル)ペンタン及び3-エトキシ-1,1,1,2,3,4,4,5,5,6,6,6-ドデカフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ヘキサンが挙げられる。このような溶媒は、例えば、3M Company(St.Paul,MN)からNOVECという商品名で市販されている。
【0116】
フッ素化(例えば、エーテル及びポリエーテル)溶媒は、単独で、又はフルオロケミカル溶媒若しくは非フルオロケミカル溶媒であり得る他の溶媒と組み合わせて使用してもよい。非フルオロケミカル溶媒をフッ素化溶媒と組み合わせると、非フルオロケミカル溶媒の濃度は、典型的には、溶媒の総量に対して、30、25、20、15、10、又は5重量%未満である。代表的な非フルオロケミカル溶媒としては、アセトン、MEK、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、及びNMPなどのケトン;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、及びメチルテトラヒドロフルフリルエーテルなどのエーテル;酢酸メチル、酢酸エチル、及び酢酸ブチルなどのエステル;デルタ-バレロラクトン及びガンマ-バレロラクトンなどの環状エステルが挙げられる。
【0117】
いくつかの実施形態において、組成物は、結晶性フルオロポリマー粒子を更に含む。
【0118】
一実施形態において、そのようなコーティング組成物は、結晶性フルオロポリマー粒子を含有するラテックスを、非晶質フルオロポリマー粒子を含有するラテックスとブレンドすることによって調製される。フルオロポリマー粒子は、典型的には、小さい平均粒径、例えば400nm未満を有するが、特に適用されたコーティングが硬化後に擦られる場合にはより大きくなり得る。例えば、フルオロポリマー粒径範囲は、約50~約1000nm、又は約50~約400nm、又は約50~約200nmであり得る。
【0119】
ラテックスは、1~2分間ボルテックス混合するなどの任意の好適な様式によって組み合わせることができる。本方法は、ラテックス粒子の混合物を凝固させることを更に含む。凝固は、例えば、ブレンドラテックスを冷却(例えば、凍結)することによって、又は好適な塩(例えば、塩化マグネシウム)を添加することによって実行され得る。冷却は、半導体製造及び塩の導入が望ましくない場合がある他の用途で使用されるコーティングにとって特に望ましい。本方法は、任意に、非晶質フルオロポリマー粒子及び結晶性フルオロポリマー粒子の凝固混合物を洗浄することを更に含む。洗浄ステップは、混合物から乳化剤又は他の界面活性剤を実質的に除去し得、実質的にアグロメレートしていない乾燥粒子の十分に混合されたブレンドを得るのを助けることができる。いくつかの実施形態において、得られる乾燥粒子混合物の界面活性剤レベルは、例えば、0.1重量%未満、0.05重量%未満、又は0.01重量%未満であり得る。本方法は、凝固ラテックス混合物を乾燥させることを更に含む。凝固ラテックス混合物は、空気乾燥又はオーブン乾燥などの任意の好適な手段によって乾燥させることができる。一実施形態において、凝固ラテックス混合物は、100℃で1~2時間乾燥させることができる。
【0120】
乾燥した凝固ラテックス混合物を、非晶質フルオロポリマー粒子を溶解するのに好適な溶媒中に溶解させて、非晶質フルオロポリマーの溶液中に結晶性フルオロポリマー粒子の均質な分散体を含有する安定なコーティング組成物を形成することができる。
【0121】
コーティング溶液を利用して、コーティング組成物の層を基材の表面に適用し、コーティング組成物を乾燥させる(すなわち、蒸発によってフッ素化溶媒を除去する)ことによって、基材上にコーティングを提供することができる。
【0122】
いくつかの実施形態において、本方法は、乾燥層を擦り(例えば、バフ研磨、研磨)、それによって、結晶性サブミクロンフルオロポリマー粒子を含有する非晶質フルオロポリマーバインダー層を形成することを更に含む。
【0123】
コーティング表面におけるサブミクロン結晶性フルオロポリマー粒子は、非晶質フルオロポリマーからなる下地コーティング上に配置された薄い連続的又はほぼ連続的なフルオロポリマー表面層を形成する。好ましい実施形態において、薄い結晶性フルオロポリマー層は、下地コーティング上に比較的均一に塗抹され、フルオロポリマー粒子が単にフィブリル化を受けた場合(例えば、配向又は他の延伸によって)より薄く、より均一であるように見える。
【0124】
表面の平均粗さ(Ra)は、平均平面から測定された表面高さ偏差の絶対値の算術平均である。いくつかの実施形態において、Raは、擦る前に少なくとも40又は50nm、最大100nmの範囲である。いくつかの実施形態において、擦った後の表面は、少なくとも10、20、30、40、50、又は60%滑らかである。いくつかの実施形態において、Raは、擦った後は35、30、25、又は20nm未満である。
【0125】
コーティング形成時又はその後にコーティングされた物品が使用されるとき、又は使用されそうなときに、様々な擦り技術を用いることができる。チーズクロス、又は他の適切な織布、不織布、若しくはニット布を使用して、コーティングを数回単に拭き取る又はバフ研磨することは、多くの場合、所望の薄層を形成するのに十分である。当業者は、多くの他の擦り技術が用いられ得ることを理解するであろう。擦りはまた、硬化したコーティングのヘイズを低減することができる。
【0126】
異なる結晶性フルオロポリマー粒子の混合物を含む様々な結晶性フルオロポリマー粒子が用いられ得る。結晶性フルオロポリマー粒子は、典型的には、高い結晶化度、したがって、窒素流及び10℃/分の加熱速度下で、DIN EN ISO 11357-3:2013-04に従って示差走査熱量計によって決定されるような有意な融点(ピーク最大値)を有する。
【0127】
例えば、結晶性フルオロポリマー粒子は、少なくとも100、110、120、又は130℃のTmを有するフルオロポリマーの粒子を含み得る。いくつかの実施形態において、結晶性フルオロポリマー粒子は、350、340、330、320、310、又は300℃以下のTmを有するフルオロポリマーの粒子を含み得る。
【0128】
結晶性フルオロポリマー粒子は、典型的には、約50重量パーセントを超えるフッ素含有量を有する。また、フルオロポリマー粒子は、約50~約76重量パーセント、約60~約76重量パーセント、又は約65~約76重量パーセントのフッ素含有量を有するフルオロポリマーの粒子を含み得る。
【0129】
代表的な結晶性フルオロポリマーとしては、例えば、3M(商標)Dyneon(商標)PTFE分散体TF5032Z、TF5033Z、TF5035Z、TF5050Z、TF5135GZ、及びTF5070GZ;並びに3M(商標)Dyneon(商標)Fluorothermoplastic Dispersions PFA6900GZ、PFA6910GZ、FEP6300GZ、及びTHV340Zなどの全フッ素化フルオロポリマーが挙げられる。
【0130】
他の好適なフルオロポリマー粒子は、Asahi Glass、Solvay Solexis、及びDaikin Industriesなどの供給業者から入手可能であり、当業者に周知である。
【0131】
市販の水性分散体は、通常、最大5~10重量%の濃度で非イオン性及び/又はイオン性界面活性剤を含有する。これらの界面活性剤は、凝固ブレンドを洗浄することによって実質的に除去される。1、0.05、又は0.01重量%未満の残留界面活性剤濃度が存在し得る。非イオン性/イオン性界面活性剤の含有量がそれほど高くないため、「重合したままの」水性フルオロポリマーラテックスを使用する方がより便利な場合がよくある。
【0132】
前述のように、結晶性フルオロポリマーは、DSCによって決定され得る融点を有する。結晶化度は、フルオロポリマーの重合モノマーの選択及び濃度に依存する。例えば、PTFEホモポリマー(100%TFE単位を含有する)は、340℃を超える融点(Tm)を有する。不飽和(ペル)フルオロアルキルエーテルなどのコモノマーの添加は、Tmを低減する。例えば、フルオロポリマーが、約3~5重量%のそのようなコモノマーの重合単位を含有する場合、Tmは、約310℃である。更に別の例として、フルオロポリマーが、約15~20重量%のHFPの重合単位を含有する場合、Tmは、約260~270℃である。更に別の例として、フルオロポリマーが、30重量%の(ペル)フルオロアルキルエーテル(例えば、PMVE)又は結晶化度を低減する他のコモノマーの重合単位を含有する場合、フルオロポリマーは、DSCを介して検出可能な融点をもはや有さず、したがって、非晶質であるものとして特徴付けられる。
【0133】
いくつかの実施形態において、結晶性フルオロポリマー粒子は、少なくとも40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は約100重量%のTFEの重合単位を含有する。更に、結晶性フルオロポリマー粒子は、典型的には、非晶質フルオロポリマーよりも低い濃度の不飽和(ペル)フルオロアルキルエーテル(例えば、PMVE)を含む。典型的な実施形態において、結晶性フルオロポリマー粒子は、30、25、20、15、10、又は5重量%未満の(ペル)フルオロアルキルエーテル(例えば、PMVE)の重合単位を含有する。
【0134】
いくつかの実施形態において、結晶性フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン(「TFE」)、ヘキサフルオロプロピレン(「HFP」)、及びビニリデンフルオライド(「VDF」、「VF2」)として既知の構成モノマーから形成されたコポリマーである。これらの構成成分のモノマー構造を以下に示す。
TFE:CF2=CF2 (1)
VDF:CH2=CF2 (2)
HFP:CF2=CF-CF3 (3)
【0135】
いくつかの実施形態において、結晶性フルオロポリマーは、様々なモル量で、少なくとも2つの構成モノマー(HFP及びVDF)、及びいくつかの実施形態において、3つの全ての構成モノマーからなる。
【0136】
Tmは、TFE、HFP、及びVDFの量に依存する。例えば、約45重量%のTFEの重合単位、約18重量%のHFPの重合単位、及び約37重量%のVDFの重合単位を含むフルオロポリマーは、約120℃のTmを有する。更に別の例として、約76重量%のTFEの重合単位、約11重量%のHFPの重合単位、及び約13重量%のVDFの重合単位を含むフルオロポリマーは、約240℃のTmを有する。HFP/VDFの重合単位を増加させることにより、TFEの重合単位を低減しながら、フルオロポリマーは非晶質になる。結晶性及び非晶質フルオロポリマーの概要は、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry(第7版,2013 Wiley-VCH Verlag.10.1002/14356007.a11 393 pub 2)章:Fluoropolymers,Organicに記載される。
【0137】
結晶性フルオロポリマー粒子及び非晶質フルオロポリマー粒子は、様々な比率で組み合わされ得る。例えば、コーティング組成物は、固形分の総重量パーセント(すなわち、溶媒を除く)に基づいて、約5~約95重量パーセントの結晶性フルオロポリマー粒子及び約95~約5重量パーセントの非晶質フルオロポリマーを含有する。いくつかの実施形態において、コーティング組成物は、約10~約75重量パーセントの結晶性フルオロポリマー粒子及び約90~約25重量の非晶質フルオロポリマーを含有する。
【0138】
いくつかの実施形態において、コーティング組成物は、約10~約50重量パーセントの結晶性フルオロポリマー粒子及び約90~約50重量パーセントの非晶質フルオロポリマーを含有する。いくつかの実施形態において、コーティング組成物は、約10~約30重量パーセントの結晶性フルオロポリマー粒子及び約90~約70重量パーセントの非晶質フルオロポリマーを含有する。
【0139】
硬化性フルオロエラストマーを含有する組成物は、当該技術分野において既知の添加剤を更に含有してもよい。例としては、酸受容体が挙げられる。かかる酸受容体は、無機酸受容体、又は無機酸受容体及び有機酸受容体のブレンドであることができる。無機受容体の例としては、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、第二リン酸鉛、酸化亜鉛、炭酸バリウム、水酸化ストロンチウム、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイトなどが挙げられる。有機受容体としては、エポキシ、ステアリン酸ナトリウム、及びシュウ酸マグネシウムが挙げられる。特に好適な酸受容体としては、酸化マグネシウム及び酸化亜鉛が挙げられる。酸受容体のブレンドも同様に使用することができる。酸受容体の量は、概して、使用される酸受容体の性質に依存する。典型的には、使用される酸受容体の量は、フッ素化ポリマー100部当たり0.5~5部である。
【0140】
フルオロポリマー組成物は、安定剤、界面活性剤、紫外線(「UV」)吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、フィラー、及び加工助剤などの、フルオロポリマーの加工及びコンパウンド化において典型的に利用される更なる添加剤を含有してもよいが、但し、意図される使用条件で十分な安定性を有することを条件とする。添加剤の特定の例としては、カーボンブラック、グラファイト、ススなどの炭素粒子が挙げられる。更なる添加剤としては、顔料、例えば酸化鉄、二酸化チタンが挙げられるが、これらに限定されない。他の添加剤としては、粘土、二酸化ケイ素、硫酸バリウム、シリカ、ガラス繊維、又は当該技術分野で既知の及び使用されている他の添加剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0141】
フルオロポリマー組成物は、ポリマー、少なくとも1つのエチレン性不飽和硬化剤を含む硬化剤、電子供与性基を有する少なくとも1つの化合物、任意による添加剤、及びフッ素化溶媒を混合することによって調製され得る。いくつかの実施形態において、フルオロポリマーは、最初にフッ素化溶媒に溶解され、硬化剤及び電子供与体化合物を含む他の添加剤がその後添加される。
【0142】
フッ素化溶媒を含む本明細書に記載のコーティング組成物は、「安定」であり、コーティング組成物が密封容器内で室温で少なくとも24時間保存されたときに均質なままであることを意味する。いくつかの実施形態において、コーティング組成物は、1週間以上安定である。「均質」とは、新たに振盪し、100mLのガラス容器に入れ、室温で少なくとも4時間静置したときに、可視的に分離された沈殿物又は可視的な分離層を示さないコーティング組成物を指す。
【0143】
いくつかの実施形態において、フルオロポリマーは、最初に他の固体成分と、特に本明細書に記載の電子供与体(例えば、アミン)化合物及びエチレン性不飽和硬化剤と組み合わされる。フルオロポリマー及びアミン化合物は、従来のゴム加工設備において組み合わせることができ、固体混合物、すなわち、当該技術分野において「コンパウンド」とも呼ばれる追加の成分を含有する固体ポリマーを提供することができる。典型的な設備は、ゴム用ロール機、バンバリーミキサなどの密閉式ミキサ、及び混合押出成形機が挙げられる。混合中に、構成成分及び添加剤を、得られるフッ素化ポリマー「コンパウンド」又はポリマーシート全体にわたって均一に分散させる。次いで、コンパウンドを、好ましくは、例えばより小さい小片に切り出すことによって微粉砕し、その後溶媒中に溶解させる。
【0144】
本明細書に記載のフルオロポリマーコーティング溶液組成物は、基材をコーティングするのに好適である。フルオロポリマーコーティング溶液組成物は、溶媒及びフルオロポリマーの含有量並びに任意による添加剤の有無に応じて、様々な粘度を有するように配合され得る。フルオロポリマーコーティング溶液組成物は、典型的には、フルオロポリマーの溶液を含有するか又はその溶液であり、液体又はペーストの形態であり得る。とはいうものの、組成物は、分散又は懸濁した材料を含有することがあるが、これらの材料は、好ましくは、添加剤であり、本明細書に記載されている種類のフルオロポリマーではない。好ましくは、組成物は液体であり、より好ましくは、本明細書に記載の溶媒中に溶解した本明細書に記載の1種以上のフルオロポリマーを含有する溶液である。
【0145】
本明細書に記載のフルオロポリマー組成物は、基材をコーティングするのに好適であり、(溶媒含有量によって)粘度を調整して、スプレーコーティング又は印刷(これらに限定されないが例えば、インク印刷、3D印刷、スクリーン印刷)、塗装、含浸、ローラーコーティング、バーコーティング、ディップコーティング、及び溶媒キャスティングが挙げられるがこれらに限定されない、様々なコーティング方法によって適用可能にすることができる。
【0146】
コーティングされた基材及び物品は、フルオロポリマー組成物を基材に適用し、溶媒を除去することによって調製することができる。硬化は、溶媒を除去すると、溶媒を除去する間に、又は溶媒を除去した後に起こり得る。溶媒は、例えば、蒸発、乾燥のために、又は溶媒を気化させることによって、減少又は完全に除去され得る。溶媒の除去後、組成物は「乾燥」として特徴付けられ得る。
【0147】
本明細書に記載の架橋フルオロポリマーの作製方法は、フルオロポリマーを(例えば、UV又は電子線)化学線照射で硬化させることを含む。フルオロポリマー組成物、基材、又はその両方は、硬化放射線に対して透過性である。いくつかの実施形態において、UV硬化と熱(例えば、ポスト)硬化との組み合わせが利用される。硬化は、硬化フルオロエラストマーを形成するのに有効な温度でかつ有効な時間行われる。条件の最適化は、フルオロエラストマーをその機械的特性及び物理的特性に関して検査することによって試験することができる。硬化は、加圧下で又は加圧なしでオーブン内で実施され得る。硬化プロセスを確実に完全に終了させるために、高温及び又は高圧で後硬化サイクルを適用してもよい。硬化条件は、使用される硬化系によって決まる。
【0148】
いくつかの実施形態において、組成物は、UV硬化によって硬化される。本明細書に記載の組成物のフルオロポリマーは、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)に結合したビニリデンフルオライド(VDF)(すなわち、CH2=CF2)又はVDFの重合単位をほとんど又は全く含まない。VDFの重合単位は、米国特許出願公開第2006/0147723号に記載されるように、脱フッ化水素化(すなわち、HF脱離反応)を受けることができる。反応は、フルオロポリマーに含有されるHFP基に結合した重合VDF基の数によって制限される。次いで、脱フッ化水素化の結果として生成された二重結合は、アミノアルコキシシランと(マイケル付加を介して)反応し、それによって、フッ素化ペンダントアルコキシシラン基をフルオロポリマー主鎖上にグラフト化することができる。UV光で照射されると、そのようなペンデント基は、多官能性(メタ)アクリレート化合物とフリーラジカル共重合することができる。
【0149】
しかしながら、本明細書に記載の組成物のフルオロポリマーが、HFP基に結合したVDF(すなわち、CH2=CF2)の重合単位をほとんど又は全く含まないため、フルオロポリマーは、直前に記載された反応スキームの影響を受けない。以下の実施例によって明らかなように、アミン化合物単独は、フリーラジカル光開始剤の非存在下でUV硬化を開始することができる。フリーラジカル光開始剤を含めることは、典型的には、フルオロポリマーの架橋を増加させない。この結果は、フルオロポリマーがフリーラジカル機構を介して架橋されないことを示唆している。
【0150】
従来のフリーラジカル開始剤は必要ではないが、組成物は、任意に光開始剤を更に含み得る。他の実施形態において、組成物は、そのようなフリーラジカル光開始剤を含むフリーラジカル開始剤を実質的に含まない。
【0151】
いくつかの実施形態において、UV線は、少なくとも190nm、200nm、210nm、220nm、230nm、又は240nmの波長で十分な強度を有し得る。いくつかの実施形態において、UV線は、350nm、340nm、330nm、320nm、310nm、又は290nm以下の波長で十分な強度を有し得る。いくつかの実施形態において、(例えば、UV)化学線は、(例えば、アミン)電子供与体の存在下で、波長誘導単一電子移動反応がC-I結合間で起こり得るように、270~290nmの範囲の波長で十分な強度を有する。いくつかの実施形態において、UV線は、(例えば、アミン)電子供与体の存在下で、波長誘導単一電子移動反応がC-Cl結合又はC-Br結合間で起こり得るように、240nm未満(150~200nm)の範囲の波長で十分な強度を有する。
【0152】
UV光源は、様々な種類とすることができる。ブラックライトなどの低強度光源により、概して、0.1又は0.5mW/cm2(ミリワット/平方センチメートル)から、10mW/cm2の範囲の強度が得られる(米国国立標準技術研究所(United States National Institute of Standards and Technology)により承認された、例えば、UVIMAP UM 365 L-S線量計(Electronic Instrumentation&Technology,Inc.,Sterling,VA製)により測定)。高光度光源は、概ね、10、15又は20mW/cm2超の強度を、最大450mW/cm2以上の範囲の強度をもたらす。いくつかの実施形態において、高強度光源は、最大500、600、700、800、900又は1000mW/cm2の強度をもたらす。エチレン性不飽和モノマーを重合するためのUV光は、発光ダイオード(LED)、蛍光ブラックライト、キセノン-アークランプ並びに中及び低圧水銀ランプ(殺菌ランプを含む)のようなアークランプ、マイクロ波駆動ランプ、レーザー、又はそれらの組み合わせなどの様々な光源によって提供することができる。組成物はまた、FusionUVSystemsInc.から入手可能なより高い強度光源で重合することもできる。紫外線又は青色光を発するランプが典型的に好ましい。重合及び硬化のためのUV曝露時間は、使用される光源の強度に応じて変化し得る。例えば、低強度光源を用いた完全硬化は、約30~300秒の範囲の曝露時間で達成することができるが、高強度光源による完全硬化は、約5~20秒の範囲のより短い曝露時間で達成することができる。高強度光源による部分硬化は、典型的には、約2秒~約5又は10秒の範囲の曝露時間で達成することができる。いくつかの実施形態において、後硬化は、170℃~250℃の温度で0.1~24時間にわたって実施することができる。
【0153】
いくつかの実施形態において、フルオロポリマーの後硬化は、任意に、より低い温度で実施され得る。より低い温度での後硬化は、感熱性基材をコーティングするのに適している。いくつかの実施形態において、後硬化は、100、110、120、130、135、又は140℃から最大170℃までの範囲の温度で5~10分間から24時間行われる。いくつかの実施形態において、温度は、169、168、167、166、165、164、163、162、161、又は160℃以下である。いくつかの実施形態において、温度は、135、130、125、又は120℃以下である。好ましい実施形態において、硬化後、フルオロポリマーは、少なくとも80、85、90、95、又は100重量%超を、95重量%のフッ素化溶媒中に5グラムのフルオロポリマーの重量比で、フッ素化溶媒(例えば、3-エトキシペルフルオロ2-メチルヘキサン)中に(25℃で、12時間以内で)溶解できないように、十分に架橋される。
【0154】
組成物は、基材の含浸、基材上への印刷(例えば、スクリーン印刷)、又は基材のコーティング、例えば、これらに限定はされないがスプレーコーティング、塗装ディップコーティング、ローラーコーティング、バーコーティング、溶媒キャスティング、ペーストコーティングなど、に使用することができる。基材は、有機、無機、又はそれらの組み合わせであってもよい。好適な基材は、任意の固体表面を含むことができ、とりわけ、ガラス、プラスチック(例えば、ポリカーボネート)、複合材料、金属(ステンレス鋼、アルミニウム、炭素鋼)、合金、木材、紙から選択される基材を含み得る。コーティングは、組成物が顔料、例えば、二酸化チタン又はグラファイト若しくはススのような黒色フィラーを含有する場合は着色されていてもよく、又は顔料又は黒色フィラーが存在しない場合は無色であってもよい。
【0155】
コーティング前に基材の表面を前処理するために、接着剤(bonding agent)及びプライマーを使用してもよい。例えば、金属表面へのコーティングの接着は、接着剤又はプライマーを適用することによって改善させることができる。例としては、市販のプライマー又は接着剤、例えば、CHEMLOKという商品名で市販されているものが挙げられる。本明細書に記載の組成物のコーティングを含有する物品としては、含浸された布地、例えば保護服が挙げられるが、これらに限定されない。布地は織布又は不織布を含み得る。他の物品としては、腐食性環境に曝される物品、例えば、化学処理において使用されるシール及びシール部品並びにバルブ、例えば、これらに限定はされないが化学反応器、型、例えばエッチング用の化学処理設備の部品若しくはライニング、又は特に腐食性物質若しくは炭化水素燃料若しくは溶媒;燃焼機関、電極、燃料輸送、酸及び塩基用容器並びに酸及び塩基用輸送システム、電気セル、燃料セル、電解セル用のバルブ、ポンプ及び管類並びにエッチングにおいて又はそのために使用される物品が挙げられる。
【0156】
本明細書に記載のコーティング組成物の利点は、コーティング組成物が厚い又は薄いコーティング又はフルオロポリマーシートの調製に使用可能であることである。いくつかの実施形態において、乾燥及び硬化したフルオロポリマーは、0.1ミクロン~1又は2ミルの厚さを有する。いくつかの実施形態において、乾燥及び硬化したフルオロポリマーの厚さは、少なくとも0.2、0.3、0.4、0.5、又は0.6ミクロンである。いくつかの実施形態において、乾燥及び硬化したフルオロポリマーの厚さは、少なくとも1、2、3、4、5、又は6ミクロンである。
【0157】
典型的な実施形態において、乾燥及び硬化した(すなわち、架橋)組成物は、低誘電率(Dk)、典型的には、2.75、2.70、2.65、2.60、2.55、2.50、2.45、2.40、2.35、2.30、2.25、2.20、2.15、2.20、2.15未満を有する。いくつかの実施形態において、誘電率は、少なくとも2.02、2.03、2.04、2.05である。乾燥及び硬化した(すなわち、架橋)組成物は、低誘電損失、典型的には、0.01、0.009、0.008、0.007、0.006、0.005、0.004、0.003、0.002、0.001、0.0009、0.0008、0.0007、0.0006、0.0005、0.0004、0.0003未満を有する。いくつかの実施形態において、誘電損失は、少なくとも0.00022、0.00023、0.00024、0.00025である。
【0158】
乾燥及び硬化したコーティングは、実施例に記載の熱湯試験によると、2、及び好ましくは3又は4を示すコーティングによる証拠として、様々な基材(例えば、ガラス、ポリカーボネート)への良好な接着性を示し得る。好ましい実施形態において、乾燥及び硬化したコーティングは、参照により本明細書に組み込まれる、国際出願PCT/US2019/036460号に記載の摩耗試験によると、2、及び好ましくは、3又は4を示すコーティングによる証拠として耐久性がある。いくつかの実施形態において、熱湯試験に供された後の摩耗試験によると、コーティングは耐久性がある。
【0159】
いくつかの実施形態において、乾燥及び硬化したコーティングは、以前に引用された国際出願PCT/US2019/036460号に記載の黒油性マーカー耐性試験、すなわち、マーカー流体ビーズに従って、良好な疎水性及び疎油性の特性を有し、ペーパータオル又は布で簡単に取り除くことができる。
【0160】
いくつかの実施形態において、乾燥及び硬化したコーティングは、接触角測定によって決定されるように(実施例に記載の試験方法に従って決定されるように)、良好な疎水性及び疎油性を有する。いくつかの実施形態において、水との前進及び/又は後退接触角は、少なくとも100、105、110、115、120、125、又は130度であり得る。いくつかの実施形態において、ヘキサデカンとの前進及び/又は後退接触角は、少なくとも60、65、70、又は75度であり得る。いくつかの実施形態において、コーティングは、(以前に引用された国際出願PCT/US2019/036460号に記載の試験方法に従って決定されるように)熱湯試験に供された後、又は熱湯試験及び摩耗試験に供された後に、そのような接触角を示す。
【0161】
いくつかの実施形態において、以前に引用された国際出願PCT/US2019/036460号に記載の酸/塩基腐食試験に従って、乾燥及び硬化したコーティングは、良好な腐食耐性を示す(すなわち、腐食しない)。
【0162】
本明細書で使用するとき、「部分フッ素化アルキル」という用語は、炭素鎖に結合した全てではないがいくつかの水素がフッ素で置換されているアルキル基を意味する。例えば、F2HC-基又はFH2C-基は、部分フッ素化メチル基である。残りの水素原子が他の原子、例えば塩素、ヨウ素及び/又は臭素などの他のハロゲン原子で部分的又は完全に置換されているアルキル基もまた、少なくとも1つの水素がフッ素で置換されている限り、「部分フッ素化アルキル」という用語に包含される。例えば、式F2ClC-又はFHClC-の残基もまた、部分フッ素化アルキル残基である。
【0163】
「部分フッ素化エーテル」は、少なくとも1つの部分フッ素化基を含有するエーテル、又は1つ以上の全フッ素化基及び少なくとも1つの非フッ素化基若しくは少なくとも1つの部分フッ素化基を含有するエーテルである。例えば、F2HC-O-CH3、F3C-O-CH3、F2HC-O-CFH2、及びF2HC-O-CF3が、部分フッ素化エーテルの例である。残りの水素原子が他の原子、例えば塩素、ヨウ素及び/又は臭素などの他のハロゲン原子で部分的又は完全に置換されているエーテル基もまた、少なくとも1つの水素がフッ素で置換されている限り、「部分フッ素化アルキル」という用語に包含される。例えば、式F2ClC-O-CF3又はFHClC-O-CF3のエーテルもまた、部分フッ素化エーテルである。
【0164】
本明細書では、「全フッ素化(perfluorinated)アルキル」又は「ペルフルオロ(perfluoro)アルキル」という用語を使用して、そのアルキル鎖に結合した全ての水素原子がフッ素原子で置換されているアルキル基を表す。例えば、F3C-は、ペルフルオロメチル基を表す。
【0165】
「全フッ素化エーテル」は、全ての水素原子がフッ素原子で置換されているエーテルである。全フッ素化エーテルの例は、F3C-O-CF3である。
【0166】
以下の実施例は、記載されている特定の実施例及び実施形態に本開示を限定することを意図せずに、本開示を更に説明するために提供するものである。
【実施例】
【0167】
別段の記載がない限り、又は文脈から容易に明らかでない限り、実施例及び本明細書のその他の箇所における全ての部、百分率、比などは、重量によるものである。
【表1】
【0168】
フッ素化エーテルジエンの調製
米国特許第5384374号に記載されるように、1500の平均分子量及び1.8の平均ヒドロキシル官能性を有するフッ素化エーテルジオール(HO-CH2-CF2-O-(CF2CF2)CF2-CH2-OH(0.16mol))を、ナトリウムメトキシド(0.34mol)と反応させ、その後、臭化アリル(40g、0.36mol)と、60℃で冷却管を有する250mLの3口フラスコ内で一晩反応させた。反応後、反応混合物を水で洗浄し、淡黄色の液体をrotavaporの前にCaCl2上で乾燥させて、臭化アリルの残留物を全て除去した。
【0169】
基本手順-多官能性アルケン/アミノシランエステル光架橋剤を有するペルフルオロエラストマーPFEコーティング溶液の調製:
ペルフルオロエラストマーPFE40、60、又は90溶液を、PFE40、60、90ガムを別々に小片に切断し、それらをHFE溶媒(HFE-7300又はHFE-7500)に添加して、HFE溶液中に10重量%のPFE(10gのPFE及び90gのHFE)を作製することによって調製した。容器をPTFEテープ及びパラフィンフィルムで密封した。溶液を一晩(約12時間)激しい振盪に供して、完全に均質にした。
【0170】
全てのアミノシラン、開始剤をHFE中に溶解又は分散させて、1重量%又は5重量%の溶液又は懸濁液を形成した(例えば、0.5gのTAICを9.5gのHFEに添加して、バイアル瓶中に5重量%の懸濁液を形成した)。PFE溶液に、アミン(例えば、アミノシラン)、アルケン、及び任意に光開始剤を添加した。例えば、試料(5%TAIC、1%APES、2%TMOS)を、0.3157gのTAIC懸濁液(HFE中5重量%)、0.0606gのAPES懸濁液(HFE中5重量%)、及び0.1224gのTMOS溶液(7500中5重量%)を3gのPFE40溶液(PFE40中10重量%)に添加することによって調製した。多くのシランは、HFE中の溶液ではなく、懸濁液を形成する。そのような懸濁液を、1000rpmで10秒間ボルテックスシェーカーを使用して均質化して、十分に分散したスラリーを形成した後、PFE-HFE溶液に添加した。また、式の百分率(例えば、5%、3%、1%)は、PFEの固形分に基づく質量分率であった(例えば、PFE40+5%APES+2%1173は次を意味する:PFE40/APESの固形分=95:5及びPFE40/1173の固形分=98:2)。
【0171】
基本手順-フッ素化アルケン/アミノシランエステル光架橋剤を有するペルフルオロエラストマーPFEコーティング溶液の調製:
上記と同様の方法で、ペルフルオロエラストマーPFE40、60、又は90溶液を、PFE40、60、90ガムを別々に小片に切断し、それらをHFE溶媒に入れて、ガラスジャー内にHFE中のPFEの10重量%溶液を得ることによって調製した。ガラスジャーをテフロンテープ及びパラフィンフィルムで密封した。完全に均質になるまで溶液を一晩(約12時間)激しい振盪に供した。ほとんどのアルケンをHFE中に溶解又は分散させて、1重量%又は5重量%の溶液又は懸濁液を形成した。アルケンとHFE溶液との間に急速な相分離がある場合、及びアルケン試料が室温で固体であり、HFE7500中に完全に分散しない場合、代わりにアルケンをメタノール又はメトキシプロパノール中に溶解した。これらのアルケンとしては、4,4’-ビス((1,2,2-トリフルオロビニル)オキシ)-1,1’-ビフェニル(メタノール中に溶解)、クロロ-1,2-フェニレンジアクリレート(メタノール中に溶解)、ペルクロロ-1,2-フェニレンジアクリレート(メトキシプロパノール中に溶解)、2,4,6-トリブロモベンゼン-1,3,5-トリイルトリアクリレート(メトキシプロパノール中に溶解))が挙げられる。アルケンに加えて、全てのシラン及び光開始剤をHFE中に溶解又は分散させて、1重量%又は5重量%の溶液又は懸濁液を形成した。PFEに、アルケン又は多官能性アルケン、及び表に示されるように、シラン及び開始剤を含む他の化学物質を添加した。
【0172】
表2.硬化したフルオロポリマーの架橋収率
架橋収率研究では、3gの溶液をPETフィルム上に堆積させることによって試料を調製した。コーティングされたフィルムを周囲温度で2時間及び50℃で20分間乾燥した。試料を完全に乾燥した後、PETフィルム試料を木製又はステンレス鋼のボードに置き、単一の500ワットのHバルブ又は500ワットのDバルブUVランプ下で、(表に示されるように)毎分30フィートの速度で5~10回の実行で硬化した。UV硬化後、多くの試料もまた、(表に示されるように)オーブン内で120℃で5分間熱硬化した。同じ試料のいくつかもまた、UV硬化なしで熱硬化条件に供した。
【0173】
UV硬化した試料(厚さ1~2ミル)をPETフィルムから剥離し、秤量し、次いで、バイアル瓶内でHFEで溶解した。硬化したPFE試料/HFE溶媒の質量比は、5/95であった。バイアル瓶を一晩(約12時間)激しい振盪に供した後、以下の表に記載されるように、任意の観察を記録した。HFE溶液中の沈殿した試料(すなわち、架橋PFE)を収集し、乾燥し、秤量した。場合によっては、ゲル(すなわち、架橋PFEがより少ない)を収集し、乾燥し、秤量した。
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【0174】
PFE40でコーティングされた分散した結晶性フルオロポリマー粒子の調製:
ペルフルオロエラストマーラテックスPFE-1を、表11に記載の重量比で、それぞれ、結晶性フルオロポリマーラテックスPFA、PTFEと、又はTHVと混合した。溶液を、1~2分間ボルテックス混合した。その後、十分に混合された溶液を-20℃の温度で4時間凍結し、次いで、取り出して、温水で解凍した。解凍後、沈殿物を濾過し、脱イオン(DI)水で洗浄した。得られた固形分を、100℃のオーブン内で1~2時間乾燥した。乾燥した凝固固形分をHFEと混合して、HFE中の10重量%の溶液を形成した。TAIC及びAPSもまた、表11に示されるように、HFE組成物に添加した。各組成物をシェーカー内に3~4時間置いて、安定して十分に分散した均質組成物を得た。
【0175】
3gの溶液をPETフィルム上に堆積させることによって試料を調製した。コーティングされたフィルムを周囲温度で2時間及び50℃で20分間乾燥した。試料を完全に乾燥した後、PETフィルム試料を木製又はステンレス鋼のボードに置き、単一の500ワットのHバルブ下で、(表に示されるように)毎分30フィートの速度で5~10回の実行で硬化した。UV硬化後、いくつかの試料もまた、(表11に示されるように)オーブン内で120℃で5分間熱硬化した。
【0176】
UV硬化した試料(厚さ1~2ミル)をPETフィルムから剥離し、秤量し、次いで、バイアル瓶内でHFEで溶解した。硬化したPFE試料/HFE溶媒の質量比は、5/95であった。バイアル瓶を一晩(約12時間)激しい振盪に供した後、以下の表に記載されるように、任意の観察を記録した。HFE溶液中の沈殿した試料(すなわち、架橋PFE)を収集し、乾燥し、秤量した。
【表11】
【国際調査報告】