IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ピアッジオ エ チ.ソシエタ ペル アチオニの特許一覧

<>
  • 特表-傾斜式三輪車両 図1
  • 特表-傾斜式三輪車両 図2
  • 特表-傾斜式三輪車両 図3
  • 特表-傾斜式三輪車両 図4
  • 特表-傾斜式三輪車両 図5
  • 特表-傾斜式三輪車両 図6
  • 特表-傾斜式三輪車両 図7
  • 特表-傾斜式三輪車両 図8
  • 特表-傾斜式三輪車両 図9
  • 特表-傾斜式三輪車両 図10
  • 特表-傾斜式三輪車両 図11
  • 特表-傾斜式三輪車両 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(54)【発明の名称】傾斜式三輪車両
(51)【国際特許分類】
   B62K 5/05 20130101AFI20230113BHJP
   B62K 5/10 20130101ALI20230113BHJP
【FI】
B62K5/05
B62K5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528053
(86)(22)【出願日】2020-11-11
(85)【翻訳文提出日】2022-07-13
(86)【国際出願番号】 IB2020060607
(87)【国際公開番号】W WO2021094940
(87)【国際公開日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】102019000021255
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515217546
【氏名又は名称】ピアッジオ エ チ.ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【弁理士】
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】ラッファエッリ,アンドレーア
【テーマコード(参考)】
3D011
【Fターム(参考)】
3D011AA02
3D011AD01
3D011AD03
(57)【要約】
二つの前側操舵輪と、運転者がその上に立って車両を運転する二つのフットボード(41.1、41.2)を備えた三輪車両(1)に関する。フットボードは、前側クロス部材(27)と後側クロス部材(33)とを有し、その間に二つのロッカーアーム(31.1,31.2)が延びている傾斜式四節リンクに支持されている。前側操舵輪はロッカーアームによって支持され、操舵軸線(S.1,S.2)を中心に回転する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
・フレーム(3)と、
・前記フレーム(3)によって支持される少なくとも一つの後側駆動輪(5)と、
・左ロッカーアーム(31.1)、右ロッカーアーム(31.2)、車両(1)の左右方向(L-R)に延び、フレーム(3)に中心でヒンジ結合され、かつ、左端部が左ロッカーアーム(31.1)に直接ヒンジ結合され、右端部が右ロッカーアーム(31.2)に直接ヒンジ結合された単一の前側クロス部材(27)、及びフレーム(3)に中心でヒンジ結合された後側クロス部材(33)を備えた傾斜式四節リンクと、
・左操舵軸線(S.1)を中心に回転するように左ロッカーアーム(31.1)によって支持された左前側操舵輪(7.1)と、
・右操舵軸線(S.2)を中心に回転するように右ロッカーアーム(31.2)によって支持された右前側操舵輪(7.2)と、
・フレーム(3)に堅固に連結された操舵管(13)に回転可能に収容され、ハンドルバー(17)に連結され、かつ、操舵リンク(21)を介して、左前側操舵輪(7.1)及び右前側操舵輪(7.2)に連結された操舵柱(15)と、
・後側クロス部材(33)及び左ロッカーアーム(31.1)によって支持された左フットボード(41.1)と、
・後側クロス部材(33)及び右ロッカーアーム(31.2)によって支持された右フットボード(41.2)と
を備えていることを特徴とする車両。
【請求項2】
左フットボード(41.1)が、前側クロス部材(27)と後側クロス部材(33)との間の中間位置に配置され、
右フットボード(41.2)が、前側クロス部材(27)と後側クロス部材(33)との間の中間位置に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項3】
左フットボード(41.1)が、左ロッカーアーム(31.1)に堅固に連結され、
右フットボード(41.2)が、右ロッカーアーム(31.2)に堅固に連結されている
ことを特徴とする請求項2に記載の車両。
【請求項4】
左フットボード(41.1)及び右フットボード(41.2)が、後側クロス部材(33)に堅固に連結され、特に、左フットボード(41.1)及び右フットボード(41.2)が車両(1)の前後方向(F-B)において後側クロス部材(33)の後方に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項5】
運転者の左脚を支持する左棒状支持部材(32.1)が左フットボード(41.1)に堅固に連結され、
運転者の右脚を支持する右棒状支持部材(32.2)が右フットボード(41.2)に堅固に連結され、
左棒状支持部材及び右棒状支持部材が、各々左フットボード及び右フットボードより高い高さに配置され、
左棒状支持部材(32.1)が、左フットボード(41.1)より、車両(1)の中央面(M-M)の近くに配置され、
右棒状支持部材(32.2)が、右フットボード(41.2)より、車両(1)の中央面(M-M)の近くに配置されている
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の車両。
【請求項6】
前側クロス部材(27)が、左前側操舵輪(7.1)及び右前側操舵輪(7.2)間の中間位置に位置決めされ、かつ、左前側操舵輪(7.1)及び右前側操舵輪(7.2)の直径より小さい高さに配置された軸線を中心としてフレーム(3)にヒンジ結合されている
ことを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の車両。
【請求項7】
操舵柱(15)を、左前側操舵輪(7.1)及び右前側操舵輪(7.2)に連結するリンクが、車両の進行方向前方に対して、操舵柱(15)の回転軸線(S)の後方に配置される操舵棒状部材(21)を有する
ことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の車両。
【請求項8】
電気モータ(9)を備えている
ことを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の車両。
【請求項9】
前記電気モータ(9)が、後側駆動輪(5)と同軸である
ことを特徴とする請求項8に記載の車両。
【請求項10】
左前側操舵輪(7.1)が、左ロッカーアーム(31.1)に堅固に連結された左筒状要素(25.1)に回転可能に収容された左支持部材(23.1)によって、左操舵軸線(S.1)を中心に回転可能に支持され、
右前側操舵輪(7.2)が、右ロッカーアーム(31.2)に堅固に連結された右筒状要素(25.2)に回転可能に収容された右支持部材(23.2)によって、右操舵軸線(S.2)を中心に回転可能に支持されている
ことを特徴とする請求項1~9の何れか一項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、特に、都市交通に有用な自動車に関する。具体的には、本明細書に開示される実施形態は、二つの前側操舵輪を有する電動スクータに関する。
【背景技術】
【0002】
実用的で軽量な輸送手段、特に都市部での使用に対するニーズの高まりにより、軽量で扱いやすい様々なタイプの車両が開発されている。近年、特に電動モータを搭載した二輪又は三輪の電動スクータが開発されている。三輪スクータは、特に取り回しが良い車両である。また、電動モータの使用により、環境負荷の観点からも有利な乗り物になっている。
【0003】
国際公開WO2018/216727には、後側駆動輪と二つの前側操舵輪とを有する三輪電動スクータが開示されている。運転の快適性を高めるために、国際公開WO2018/216727に開示されているスクータは、傾斜車両として構成されており、即ち、例えばカーブにおいて、車両の垂直中央面に対して右及び左に傾けることができるように構成されている。この目的のために、二つの前側操舵輪は、四節リンクによって車両のフレームに接続されている。前記四節リンクは、車両のフレーム、より正確には、その前側部分に中心がヒンジ止めされた、第一前側クロス部材及び第二前側クロス部材を備えている。前記二つのクロス部材は、四節リンクの連結ロッドを形成している。二つのクロス部材は、一方が他方の上に配置され、車両の右左方向に延びている。二つのクロス部材は、それぞれ右左二つの直立部材によって互いに接続されている。二つの直立部材は、四節リンクの二つのロッカーアームを形成している。直立部材は、各操舵軸が直立部材と並行になるように二つの前側操舵輪を支持する。走行中、例えばカーブ等で、車両を傾けることができる。この傾き(ロール)運動は、車両の中央平面にあり、地面と後輪の間の接点を通過する水平軸を中心に車両を傾けることを可能にする運動であり、四節リンクの変形によって得られる。
【0004】
車両の運転とその傾斜運動の制御のために、二つの支持フットボードが設けられている。運転者は、二つのフットボードの上に立ち、ハンドルバーを握って車両を運転する。フットボードは、二つの直立部材に堅固に接続されており、従って、傾動運動の間、車両のフレームに対して一定の角度を維持する。フットボードを車両のフレームに対して支持するために、車両のフレームの後方部分に中心がヒンジ結合され、後側駆動輪に近く、かつ、フットボードがヒンジ結合される左右二つの側方端部を有する傾斜後側バーが設けられている。
【0005】
このようにして得られた構造は、複雑でコストが高く、扱いやすくするために、部品点数、重量及びコストを低減することが好ましいとされるこの種の車両では欠点となる。さらに、従来技術の三輪傾斜スクータは、例えば、小径の車輪を使用する必要がある一連の構造上の制限を有する。これらは、快適な運転と車両の安定性を促進しない。
【0006】
英国特許GB1561253には、電動式三輪車両が示されている。この車両は、フレームと、一つの後側駆動輪と、二つの操舵される前側駆動輪とを備えている。前輪駆動輪は、傾斜式四節リンクによって支持され、前記四節リンクは、第一前側クロス部材と、第一の前側クロス部材の下に配置された第二前側クロス部材とを有する。第一前側クロス部材及び第二前側クロス部材は、フレームに中心でヒンジ結合され、左ロッカーアーム及び右ロッカーアームによって互いに連結されている。二つのロッカーアームは、各々、第一前側クロス部材及び第二前側クロス部材の対応する二つの端部に、二つの端部ヒンジで拘束されている。さらに、二つのフットボードが、第一前側クロス部材の下方に位置する第二前側クロス部材に堅固に連結されており、これらのフットボードは、順に、後側駆動輪の近傍でフレームに中心がヒンジ連結された後側クロス部材に、その後側でヒンジ結合されている。
【0007】
中国実用新案CN205769836Uは、フレーム、後側駆動輪、及び二つの前側操舵駆動輪を備えた、電動三輪車両を開示している。前輪操舵駆動輪は、傾斜式四節リンクによって支持され、前記四節リンクは、第一前側クロス部材、第二前側クロス部材、及び第一前側クロス部材と第二前側クロス部材とを連結する二つのロッカーアームを備えている。第一前側クロス部材は、第二前側クロス部材よりも上方に位置している。二つの前側操舵駆動輪は、傾動四節リンクの二つのロッカーアームによって支持されている。下方に配置された第二前側クロス部材は、前後方向に延びる二本の縦ビームとともに矩形のフレームを形成する。各ビームは、その前端が第二前側クロス部材に堅固に接続され、さらにその後端が後側クロスビームに堅固に接続されている。後側クロスビームは、その中央部が、後側駆動輪の近傍で車両のフレームにヒンジ結合されている。後側クロスビーム、縦ビーム及び第二前側クロス部材は、実質的に剛性の高い矩形フレームを形成している。足を支持するフットボードは、縦ビームに堅固に連結されている。
【0008】
上述した従来技術の車両は、複雑な構成であるため、多数の部品を必要とし、その結果、面倒で、重く、高価である。
【0009】
従って、従来技術の車両の欠点の一つ以上を完全に又は部分的に克服するために、三輪傾斜式車両、特にスクータタイプ、即ち立って運転されるように設計された三輪傾斜式車両を改良する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0010】
本明細書には、特定のフットボード上に立ったまま運転されるように適合された、特にスクータタイプの傾斜式三輪車両が開示されており、その構造は、上述の先行技術の車両のものよりも単純であり、コストがかからない。この車両はフレームを備え、フレームに一つの後側駆動輪と二つの前側操舵輪が支持されている。さらに、二つのフットボードがフレームに拘束され、運転者が立ったまま車両を運転することができる。前記車両は、傾斜式四節リンクを備えている。前記傾斜式四節リンクは、左ロッカーアーム、右ロッカーアーム、車両の左右方向に延び、フレームに中心でヒンジ結合され、かつ、左端部が左ロッカーアームにヒンジ結合され、右端部が右ロッカーアームにヒンジ結合された単一の前側クロス部材、及びフレームに中心でヒンジ結合された後側クロス部材を備えている。
【0011】
より具体的には、前側クロス部材の左端部は、左ロッカーアームに直接ヒンジ結合されており、特に、前側クロス部材の左端部と左ロッカーアームとを互いに連結する第一左ヒンジを備えている。さらに、前側クロス部材の右端部は、右ロッカーアームに直接ヒンジ結合されており、特に、前側クロス部材の右端部と右ロッカーアームとを互いに連結する第一右ヒンジを備えている。
【0012】
ロッカーアームは、例えば、互いに直接接続され、左ロッカーアームを後側クロス部材の左端部に直接接続し、かつ、右ロッカーアームを後側クロス部材の右端部に直接接続する第二左ヒンジ及び第二右ヒンジによって、後側クロス部材に直接接続される。
【0013】
有利には、傾斜式四節リンクの構成要素(即ち、左ロッカーアーム、右ロッカーアーム、前側クロス部材及び後側クロス部材)を互いに接続するヒンジは、相互に実質的に並行なヒンジ軸線を有する。
【0014】
左前側操舵輪及び右前側操舵輪は、各々、傾斜四節リンクを構成する左ロッカーアーム及び右ロッカーアームによって支持され、かつ、各操舵軸線を中心に各々回転するように適合されている。さらに、車両は、後側クロス部材及び左ロッカーアームによって支持される左フットボードと、後側クロス部材及び右ロッカーアームによって支持される右フットボードとを備えている。二つのフットボードは、運転者がフットボードの上に立ったまま運転することを可能にする支持部材を形成している。
【0015】
従来技術の車両とは逆に、傾斜式四節リンクは、四節リンクの第一連結ロッドを形成する単一の前側クロス部材を有する。四節リンクの第二連結ロッドは、ロッカーアームと共に、運転者の脚を支持する二つのフットボードを支持する後側クロス部材によって形成されている。
【0016】
従って、傾斜式四節リンクは、車両の下部に配置される。
【0017】
傾斜式四節リンクは、従来技術の車両のように垂直方向ではなく、前後方向に延びている。四節リンクは、(車両のフレームの前側部分にヒンジ結合された前側クロス部材の他に)クロス部材を連結ロッドとして使用し、前記クロス部材は、フットボードの傾斜式後側支持部材を形成し、さらに、ハンドルバー及び操舵柱の後方で、かつ、後側駆動輪の近傍において、車両の下部領域でフレームにヒンジ結合されている。
【0018】
その結果、従来の車両に比べて構造が大幅に簡素化され、軽量で扱いやすくなり、低コストとなる。
【0019】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において、「右」及び「左」は、車両上の運転位置にいる運転者に対して、車両の右側及び左側を意味する。
【0020】
可能な実施形態では、左フットボード及び右フットボードは、前側クロス部材と後側クロス部材との間の中間位置に配置される。例えば、左フットボードは、左ロッカーアームに堅固に固定され、右フットボードは、右ロッカーアームに堅固に固定され得る。
【0021】
別の実施形態では、左フットボード及び右フットボードは、後側クロス部材に堅固に接続され得る。例えば、左フットボード及び右フットボードは、車両の前後方向に関して、後側クロス部材の後方に配置することができる。
【0022】
実施可能な有利な実施形態では、運転者の左脚を支持する左棒状支持部材が左フットボードに堅固に接続され、運転者の右脚を支持する右棒状支持部材が右フットボードに堅固に接続されている。棒状支持部材は、運転者のふくらはぎ部分の支持部を形成するような大きさにされ得る。例えば、左棒状支持部材及び右棒状支持部材は、各左フットボード及び右フットボードよりも高い位置に配置され得、かつ、各フットボードよりも車両の中央面に近い位置、即ち、車両の前後方向に延びる対称的な垂直面に近い位置に配置され得る。
【0023】
実際には、四節リンクの二つのクロス部材、即ち四節リンクの連結ロッドを形成する構成要素は、車両の低い領域に配置される。実施可能な実施形態では、前側クロス部材は、二つの前側操舵輪の間の中間位置に、前側操舵輪の直径よりも小さい車両の支持面からの距離で配置され得る。実質的に、傾斜式四節リンクの前側クロス部材は、上述の従来技術の車両で生じるような前側操舵輪よりも高いレベルにではなく、二つの前側操舵輪の間の区切られた容積の内側に配置され得る。従って、前側クロス部材は、左前側操舵輪の直径及び右前側操舵輪の直径よりも小さい高さに配置された軸線を中心に、車両のフレームにヒンジ結合され得る。
【0024】
四節リンクの前側クロス部材が一つだけであるため、現在公知の同種の車両に使用されている車輪よりも大径の車輪を使用することが可能になる。これにより、走行安定性、車両の安全性、快適性が向上する。
【0025】
四節リンクの第二連結ロッドを形成する第二クロス部材は、前側クロス部材よりも後方かつ下方に位置し得る。車両のフレームに対するその枢軸は、フレームの最も低い領域に位置させることができる。
【0026】
操舵柱を前側操舵輪に連結するリンクは、車両の進行方向前方に対して、操舵柱の回転軸線の後方に位置する操舵棒状部材を備え得る。
【0027】
本発明による車両の更なる有利な特徴は、以下に説明され、添付の特許請求の範囲に定義される。
本発明は、本発明の非限定的な例示的実施形態を示す説明及び添付図面に従うことによって、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第一実施形態における車両の概略側面図である。
図2図1のII-II線視平面図である。
図3図1のIII-III線視正面図である。
図4図1図3の車両の斜視図である。
図5図1図3の車両の図4とは異なる角度から見た斜視図である。
図6】左側の車輪を取り除いた図1図5の車両の斜視図である。
図7】左側の車輪を取り除いた図1図5の車両の図6とは異なる角度から見た斜視図である。
図8】第二実施形態の車両の概略側面図である。
図9図8のIX-IX線視平面図である。
図10図8のX-X線視正面図である。
図11図8図10の車両の斜視図である。
図12図8図10の車両の図11とは異なる角度から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
スクータの形態の傾斜式三輪車両の第一実施形態を図1図7に示す。
【0030】
図1,2及び3において、矢印F-Bは車両の前後方向を示しており、Fは車両の通常の進行方向前方を示している。矢印L-Rは、中央面M-Mに対する車両の左右方向を示している。矢印U-Dは、車両の通常姿勢に対する車両の上下方向を示している。
【0031】
車両は、全体が符号1で示されており、前側部分(前端部)3Aと後側部分(後端部)3Bとを有するフレーム3を備えている。フレーム3の後方領域には後側駆動輪5が支持されており、前端部3Aには二つの前側操舵輪、より正確には左前側操舵輪7.1及び右前操舵輪7.2が設けられている。本明細書では、車両1の左右に対称的に存在する構成要素には、同じ符号の後に、中央面M-Mの左側の構成要素には「.1」を、中央面の右側の構成要素には「.2」を付けて示す。
【0032】
車両1は、電動であり得る。内燃機関の使用を排除するものではないが、有利な実施形態では、車両1は、図面に模式的に示すように、電気モータを有している。符号9は電気モータを示し、符号11はバッテリパックを示している。電気モータ9は、図面に示すように、後側駆動輪5と同軸に配置され得るが、電気モータから後側駆動輪の軸までの伝動装置を有する他の構成も可能である。さらなる変形例では、車両1はモータを有さず、例えば、運転者によって押されて進むキックスクータとして使用されるものであり得る。
【0033】
ハンドルバー17と一体の操舵柱15が回転可能に挿入される操舵管13が、フレーム3の前側部分に固定されている。なお、符号S-Sは、操舵柱15の回転軸線を示している。運転者は、以下に明らかにされるように、車両に立っている状態の運転者を支持するための要素も形成するハンドルバー17によって、前側操舵輪7.1及び7.2の操舵動作を制御する。
【0034】
前側操舵輪7.1及び7.2は、操舵棒状部材21を介して操舵柱15に連結されている。操舵棒状部材21の対向する左右両端は、左前輪操舵輪7.1の操舵軸S.1及び右前輪操舵輪7.2の操舵軸S.2の各々を中心に回転可能である支持体23.1,23.2にヒンジ結合されている。符号B-Bは、前側操舵輪7.1及び7.2の回転軸線を示している。これらの軸線は、図1図2及び図3に示すように、車両1が垂直姿勢で、ロール角がゼロ(車両が地面に対して90°)であり、かつ、操舵角がゼロの時、互いに一致する。
【0035】
図示実施形態では、前側操舵輪7.1及び7.2の支持部材23.1及び23.2は、それぞれ操舵軸線S.1及びS.2と一致する軸線を有する管状要素25.1及び25.2に回転可能に収容されている。管状要素25.1及び25.2は、ほぼ水平で、かつ、中央面M-M上にある軸線C-Cを中心に回転できるように、フレーム3に対してヒンジ27Aでヒンジ結合された前側クロス部材27にヒンジ結合されている。符号28.1及び28.2は、前側クロス部材27の両端部を管状要素25.1及び25.2に接続するためのヒンジをそれぞれ示している。ヒンジ28.1及び28.2の軸線は、前側クロス部材27をフレーム3に回転可能に接続するヒンジ27Aの軸線と実質的に平行である。車両の中立姿勢、即ち垂直姿勢(ロール角ゼロ)で車輪が操舵されていない状態では、ヒンジ28.1及び28.2並びにヒンジ27Aの軸線は、車両の中央面M-Mと平行である。ヒンジ27Aの軸線は、前記中央面上にある。
【0036】
クロス部材27は、二つの前側操舵輪7.1及び7.2の間に配置されるような高さに配置されている。言い換えれば、前側操舵輪7.1及び7.2の直径は、車両1が載っている地面からのクロス部材27の距離よりも大きくすることが可能である。これにより、従来技術の車両で使用されている車輪よりも大きなサイズの車輪を使用することが可能になり、車両1をより扱いやすく、より安定させることができる。
【0037】
管状要素25.1及び25.2は、前側クロス部材27が連結ロッドの一つを形成する四節リンクの二つのロッカーアーム、即ち、左ロッカーアーム31.1及び右ロッカーアーム31.2の一部分である。各ロッカーアーム31.1及び31.2は、前記ヒンジ28.1及び28.2によって、単一の前側クロス部材27に直接ヒンジ結合されている。さらに、各ロッカーアーム31.1及び31.2は、四節リンクの第二連結ロッドを形成する後側クロス部材33にヒンジ結合されている。従って、ロッカーアーム31.1及び31.2は、四節リンクの直立部材を表している。その結果、四節リンクは、単一の前側クロス部材27、後側クロス部材33、並びにロッカーアーム28.1及び28.2である直立部材によって画定される。より詳細には、左ロッカーアーム31.1は、ヒンジ35.1を介して後側クロス部材33の左端部にヒンジ結合され、右ロッカーアーム31.2は、ヒンジ35.2を介して後側クロス部材33の右端部にヒンジ結合されている。後側クロス部材33は、(特に図4及び図6に示すように)ヒンジ33Aを介してフレーム3に中央でヒンジ結合されている。ヒンジ35.1、35.2及び33Aは、互いに並行な軸線を有し、これらの軸線は、ヒンジ28.1、28.2及び27Aの軸線とも並行である。
【0038】
四節リンクは、連結ロッド、即ち、クロス部材27及び33、並びにロッカーアーム31.1及び31.2によって形成され、車両1の傾斜式四節リンクを形成している。図面から分かるように、四節リンクのヒンジ28.1、28.2、35.1及び35.2は同一平面上にあるのではなく、車両の前後方向F-Bにおいて互いに離間した二つの平面上に存在する。さらに、ヒンジ28.1及び28.2は、ヒンジ35.1及び35.2よりも前方かつ高い位置に配置されている。
【0039】
詳細な構造の態様において、四節リンクのヒンジ28.1、28.2、35.1及び35.2はすべて、例えば軸線S1及びS2と各ヒンジ軸線28.1及び28.2との間で測定した所定の角度だけ傾いており、当該角度は四節リンクのすべての傾斜ヒンジについて同じである。従って、四節リンクのヒンジ28.1、28.2、35.1及び35.2は、すべて互いに平行である。この構成により、四節リンクの機能性が維持され、また、(高い位置にある)前側クロス部材と(低い位置にある)後側クロス部材との間のレベル、即ち、高さの差として測定される四節リンクの高さの全体寸法を制限することができる。このようにして、四節リンクは、低減された高さ、即ち、実質的に同一平面のような高さを有することになる。
【0040】
図1図7に示された実施形態では、二つのフットボード41.1及び41.2が二つのロッカーアーム31.1及び31.2に堅固に連結されている。前記フットボードは、ハンドルバー17に掴まって立った状態で車両1を運転する運転者の左足及び右足をそれぞれ支持するように構成されている。従って、本発明では、フットボード41.1及び41.2は、四節リンクの直立部材、即ちロッカーアーム31.1及び31.2と関連付けられている。これに対して、従来技術による解決策では、フットボードは、クロス部材の一つ、特に下側クロス部材と関連付けられている。この場合、車両が傾いた時、フットボードは地面と平行のままであり、即ち、傾く動きに追従しない。異なる点として、本発明では、フットボードは、各ロッカーアームと一体的に、即ち、各ロッカーアームに固定されているので、車両が傾斜すると、フットボードは、後述もするように、ロール角度に対応する角度に従って傾斜する。
【0041】
有利には、図1図7の実施形態に示すように、ロッカーアーム31.1及び31.2は、各々符号32.1及び32.2で示される形状の棒状部材を有している。平面図において、二つの定形棒状部材32.1及び32.2は、フットボード41.1及び41.2よりも車両の中央平面M-Mに近い(図2参照)。側面図(図1)において、二つの定形棒状部材32.1及び32.2は、フットボード41.1及び41.2より高い位置にある。定形棒状部材32.1及び32.2は、運転者の脚を支えるための棒状部材を形成している。より詳細には、フットボード41.1及び41.2上に立つ運転者は、その左右のふくらはぎを、定形棒状部材32.1及び32.2上に載せることができる。
【0042】
実用的な実施形態では、各定形棒状部材32.1及び32.2は、逆さU字状の形状であり、各管状要素25.1及び25.2に堅固に接続され、かつ、各後側ヒンジ35.1及び35.2によって後側クロス部材33に接続されている。各定形棒状部材32.1及び32.2に堅固に接続された別の定形棒状部材34.1及び34.2が、各プラットフォーム41.1及び41.2の固定要素を形成している。
【0043】
上述した車両は、中央面M-Mに含まれ、かつ、車輪5、7.1及び7.2を介して車両1が載っている地面のレベルに位置する軸線を中心に左右の傾き動作を可能にする。図3では、傾き動作は二重矢印Rで示されており、ARは図3の平面に直交するロール軸線を示している。使用中に、運転者が、フットボード41.1及び41.2上、及び、少なくとも部分的に、棒状部材32.1及び32.2上で体重を移動させることによって、運転中に車両が傾き動作をし得る。
【0044】
例えば左へのカーブを走行する場合、運転者は体重をカーブの内側に移動させ、即ち左フットボード41.1に多くの体重をかけ、右ふくらはぎを介して体重の一部を右側棒状部材32.2にかけることになる。これにより、車両は、カーブの内側に向かって傾く動作、即ち、この場合、ロール軸ARを中心として左側に傾き動作を行うことになる。逆に、カーブを右回りに走行する場合、運転者は右フットボード41.2に多くの体重をかけ、かつ、左ふくらはぎを介して左棒状部材32.1に体重の一部をかけることになる。これにより、車両はロール軸ARを中心に右側に傾くことになる。
【0045】
前記傾き動作は、前側クロス部材27及び後側クロス部材33、即ちコネクティングロッド、並びにロッカーアーム31.1及び31.2によって形成される四節リンクの変形によって可能になる。従来技術の車両に設けられているような、二つのクロス部材が前端にヒンジ結合された前側四節リンクを必要としない。
【0046】
図1図7に示した上記実施形態では、運転者の足を支持するフットボード41.1及び41.2は、それぞれロッカーアーム31.1及び31.2に堅固に連結されており、従って、その動作に追従する。それにもかかわらず、このようなことは必要ない。図8図12は、運転者の足を支持するフットボードを別の方法で取り付けた実施形態を示している。
【0047】
図8図12において、同じ符号は、図1図7を参照して既に説明した部材又はこれと同等の部材を示している。これらの部材については再度説明しないものとする。図1図7の実施形態と図8図12の実施形態との間の主な相違点は、後者の実施形態では、符号41.1及び41.2で示されるフットボードが、後側クロス部材33に堅固に固定されていることにある。ハンドルバー17に対してフットボード41.1及び41.2の正しい位置を採ることを可能にするために、ロッカーアーム31.1及び31.2は前後方向(F-B)に短くされている。この場合、脚はロッカーアーム31.1及び31.2の後方に位置するので、運転者の脚を支持する棒状部材は設けられていない。
【0048】
その結果、車両1がロール軸ARを中心とする傾き動作を行う際に、フットボード41.1及び41.2はほぼ水平な姿勢を維持する一方で、図1図7の実施形態ではフットボード41.1及び41.2の傾きが車両1の動作に追従するので、水平に対してロール角と同じ角度で傾くことになる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】