(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-25
(54)【発明の名称】改善されたたばこ風味付き乾燥粉末製剤
(51)【国際特許分類】
A24B 15/16 20200101AFI20230118BHJP
A24B 15/24 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
A24B15/16
A24B15/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022524989
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(85)【翻訳文提出日】2022-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2020080924
(87)【国際公開番号】W WO2021094160
(87)【国際公開日】2021-05-20
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】フローラック ディオニシウス
(72)【発明者】
【氏名】ラナスペーゼ セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】スパダーロ ファビアナ
【テーマコード(参考)】
4B043
【Fターム(参考)】
4B043BB10
4B043BB16
4B043BC24
4B043BC27
4B043BC32
(57)【要約】
基材およびたばこ風味剤組成物を含む複数の粒子を含むたばこ風味付き乾燥粉末製剤が提供されており、たばこ風味付き乾燥粉末製剤中の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の第一の重量比は、0.25よりも大きい。さらに、こうしたたばこ風味付き粉末製剤を作製する方法が提供されている。方法は、たばこ出発材料を調製する工程と、たばこ出発材料を摂氏100度~摂氏160度の抽出温度で少なくとも90分間加熱する工程と、加熱する工程中に、たばこ出発材料から放出される揮発性化合物を収集する工程と、収集された揮発性化合物を含む液体たばこ風味剤組成物を形成する工程と、基材と液体たばこ風味剤組成物とを組み合わせて、たばこ風味付き粒子を形成する工程とを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材およびたばこ風味剤組成物を含む複数の粒子を含むたばこ風味付き乾燥粉末製剤であって、前記たばこ風味付き乾燥粉末製剤中の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の第一の重量比が、0.25よりも大きい、たばこ風味付き乾燥粉末製剤。
【請求項2】
前記たばこ風味付き乾燥粉末製剤中の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の前記第一の重量比が、0.5よりも大きい、請求項1に記載のたばこ風味付き粉末製剤。
【請求項3】
(β-イオノン+β-ダマセノン)対(4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン+(R,S)-N-ニトロソアナタビン+(R,S)-N-ニトロソアナバシン+N-ニトロソノルニコチン+((2-フランメタノール)/600))の重量比が、1.5よりも大きい、請求項1または2に記載のたばこ風味付き粉末製剤。
【請求項4】
フラネオール、2,3-ジエチル-5-メチルピラジン、酢酸、バニリン、2-エチル-3,5-ジメチルピラジン、2-メチルブタン酸、3-メチルブタン酸、3-メチル-2,4-ノナンジオン、2-メトキシフェノール、2-フェニルエタノール、オイゲノール、およびソトロンのうちの一つ以上をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のたばこ風味付き粉末製剤。
【請求項5】
たばこ風味付き粉末製剤を作製する方法であって、前記方法が、
たばこ出発材料を調製する工程と、
前記たばこ出発材料を摂氏100度~摂氏160度の抽出温度で少なくとも90分間加熱する工程と、
前記加熱する工程中に、前記たばこ出発材料から放出される揮発性化合物を収集する工程と、
前記収集された揮発性化合物を含む液体たばこ風味剤組成物を形成する工程と、
基材と前記液体たばこ風味剤組成物とを組み合わせて、たばこ風味付き粒子を形成する工程と、を含む、方法。
【請求項6】
前記たばこ出発材料が、摂氏120度~摂氏140度の抽出温度で加熱される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記たばこ出発材料が、前記抽出温度で少なくとも120分間加熱される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記抽出温度が、前記たばこ風味剤組成物中の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の重量比が少なくとも約0.25となるように選択される、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記抽出温度が、前記たばこ風味剤組成物中の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン+(R,S)-N-ニトロソアナタビン+(R,S)-N-ニトロソアナバシン+N-ニトロソノルニコチン+((2-フランメタノール)/600))の重量比が少なくとも約1.5となるように選択される、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抽出温度が、前記たばこ風味剤組成物中の(フラネオール+(2,3-ジエチル-5-メチルピラジン)*100))対(ニコチン)の重量比が少なくとも約5×10
-4となるように選択される、請求項5~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記基材が、ガム、デンプン、加水分解デンプン、化学修飾デンプン、カルボキシメチルセルロース、単糖、二糖のうちの一つ以上を含む、請求項5~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記加熱する工程中に前記たばこ出発材料から放出される前記揮発性化合物を収集する前記工程が、前記揮発性化合物を冷却によって凝縮させることを含む、請求項5~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記基材と前記液体たばこ風味剤組成物とを組み合わせて、たばこ風味付き粒子を形成する前記工程が、
前記基材と前記液体たばこ風味剤組成物の混合物を形成することと、
前記混合物を凍結させることと、
前記凍結混合物を乾燥することと、
前記乾燥混合物を粉砕して、前記たばこ風味付き粒子を形成することと、を含む、
または、前記基材と前記液体たばこ風味剤組成物とを組み合わせて、たばこ風味付き粒子を形成する工程が、
前記基材と前記液体たばこ風味剤組成物の混合物を形成することと、
前記混合物を噴霧乾燥して、前記たばこ風味付き粒子を形成することと、を含む、請求項5~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
粉末系であって、
請求項1~4のいずれか一項に記載の、少なくとも約20マイクロメートルの粒子サイズを有する、第一の複数の粒子と、
約10マイクロメートル以下の粒子サイズを有し、ニコチンを含む、第二の複数の粒子と、を含む、粉末系。
【請求項15】
粉末系であって、
少なくとも約20マイクロメートルの粒子サイズを有する第一の複数のたばこ風味付き粒子と、約20マイクロメートル未満の粒子サイズを有する第二の複数の粒子と、を含み、前記第一の複数のたばこ風味付き中の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の重量比が、0.25よりも大きい、粉末系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、風味粒子がニコチン粒子よりも大きいものなどの、ニコチンを含む粒子、および風味を含有する粒子の両方を含む、粉末系の構成成分としての使用を見出し得る、吸入のためのたばこ風味付き乾燥粉末製剤に関する。さらに、本発明は、たばこ風味付き粉末粒子の作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乾燥粉末吸入器(DPI)は既知であり、医薬品を含む乾燥粉末をエアロゾルの形態で、吸入によって患者の気道に送達することによって、呼吸器疾患を治療するために使用される。典型的には、DPIは、使用前に穿孔されるカプセルまたはブリスターに含有される粒子の形態で薬剤を送達する呼吸作動式装置である。薬剤は粉末形態で処理、秤量、および充填されるため、湿潤製剤と比較して、分解、分離、および微生物汚染の危険が最小限である。
【0003】
肺の中に送達するためには、1~5マイクロメートルの範囲内の粒子が好ましい。医薬品乾燥粉末において、医薬品有効成分(API)は、より大きい担体粒子(ラクトースなど)の表面上に凝集している場合がある。担体としてラクトースを含有する医薬品乾燥粉末は20~100マイクロメートルの範囲内とすることができる。DPIは複雑な機構で動作して、こうした凝集が分散、粉砕、または脱凝集されることを確実にし、その後、APIを肺の中へと吸い込むことができるようになる。
【0004】
DPIは患者の吸入力に依存して吸入装置からの粉末を混入し、その後、粉末を粉砕して、肺に入ることができるほどに小さい粒子にする。正しい用量および粉末の完全な脱凝集を確実にするために、十分に高い吸入量が要求される。通常は大量のAPIが担体の表面に付着したまま残り、粉末の不完全な脱凝集によって上部気道に沈着される。既存のDPIの吸入量は通常、20~100リットル/分(L/min)の範囲内である。従って、既存のDPIは、喫煙物品に関連する吸入量とは異なる方法で乾燥粉末をユーザーに送達することにのみ適している。
【0005】
それ故に、既存のDPIは一般的に、従来的な喫煙方法と一致する方法で乾燥粉末粒子を肺に送達するのには適切ではない。例えば、DPIは多くの場合、一回の呼吸で乾燥粉末用量の全部を提供しようとする。対照的に、従来的な喫煙方法は多くの快適な吸煙を伴う。
【0006】
この問題に対処する解決策は、例えば、WO2019/003118で提案されており、これには、従来的な喫煙方法の吸入または気流量の範囲内の吸入または気流量で粒子を肺に提供するように適合された容器またはカプセル、粉末系、および吸入器物品が記載されている。消費者は、各々の「吸煙」が、WO2019/003118に記載の吸入器物品のカプセル空洞内に収容される容器またはカプセルの中に含有される乾燥粉末の均一な部分量を送達する、複数の吸入または「吸煙」を行ってもよい。吸入器物品は、従来的な紙巻たばこと類似した形態を有してもよく、従来的な喫煙の決まったやり方を模倣してもよく、また、好みの、または楽しみのニコチン送達の形態を提供し得る。一部の実施形態では、吸入器物品は、第一の複数の粒子および第二の複数の粒子を含む粉末系を送達するように適合される。第一の複数の粒子は、第二の複数の粒子よりも大きな粒子サイズを有する。第一の複数の粒子は、ニコチンを含まずに、風味成分を含んでもよく、好ましくは、自由流動性である。第二の複数の粒子はニコチンを含み、自由流動性であることが好ましい。
【0007】
プロセスは、実質的に球状で、流動性があって機械的に安定した、狭い粒度の分布を有する事実上無塵の芳香性および臭気性粒状材料の調製に関するUS6056949から既知である。US6056949によれば、任意の従来的な風味剤または付臭剤は、フルーツ(柑橘類など)、イチゴ、たばこ、花、木材、スパイス、およびアンバーを含む、こうした乾燥粉末の製造に使用され得る。US6056949のプロセスによる得られた粉末粒子は、0.2ミリメートル~1ミリメートルのサイズを有するものとして記載される。
【0008】
EP3393451は、ニコチンを含む粒子および風味を含有する粒子を含む粉末系であって、風味粒子がニコチン粒子より大きい、粉末系を開示する。系内の風味粒子の大部分は、約20マイクロメートル以上、好ましくは、約50マイクロメートル以上の粒子サイズを有する。さらに、系内の風味粒子は、好ましくは、約150マイクロメートル以下の粒子サイズを有する。
【0009】
EP3478264は、糖およびアミノ酸を含むニコチン粉末を開示する。EP3478265は、噴霧乾燥および粉砕によって得られたニコチン粉末を開示する。
【0010】
望ましくないたばこ由来化合物の含有量が最小化される、喫煙物品に一般的に関連する吸入量を提供するように適合された吸入器装置で特に使用される、新規なたばこ風味付き乾燥粉末を提供することが望ましい。同時に、高レベルの望ましいたばこ関連風味種を有する、こうした改善されたたばこ風味付き乾燥粉末を提供することが望ましい。
【0011】
従来的な喫煙方法に関連する吸入器装置において、またはこうした吸入器装置の一つで使用するための粉末系の製造において容易に使用できる、こうした改善されたたばこ風味付き乾燥粉末を提供することが望ましい。
【0012】
同様に、特に既存の装置および技術を使用して効率的に実施できる、こうした改善されたたばこ風味付き乾燥粉末の製造のための方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0013】
本開示は、複数の粒子を含むたばこ風味付き乾燥粉末製剤に関する。粒子は、基材およびたばこ風味剤組成物を含み得る。たばこ風味付き乾燥粉末製剤中の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の第一の重量比は、0.25よりも大きくてもよい。
【0014】
さらに、本開示は、たばこ風味付き粉末製剤を作製する方法に関する。方法は、たばこ出発材料を調製する工程を含み得る。方法は、たばこ出発材料を摂氏100度~摂氏160度の抽出温度で少なくとも90分間加熱する工程を含み得る。方法は、加熱する工程中に、たばこ出発材料から放出される揮発性化合物を収集する工程をさらに含み得る。方法は、収集された揮発性化合物を含む液体たばこ風味剤組成物を形成する工程を含み得る。方法は、基材と液体たばこ風味剤組成物を組み合わせて、たばこ風味付き粒子を形成する工程を含み得る。
【0015】
さらに、本開示は、第一の複数の粒子および第二の複数の粒子を含む粉末系に関する。第一の複数の粒子は、少なくとも約20マイクロメートルの粒子サイズを有し得る。第二の複数の粒子は、約10マイクロメートル以下の粒子サイズを有し得る。第一の複数の粒子は、基材およびたばこ風味剤組成物を含み得る。たばこ風味剤組成物中の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の第一の重量比は、0.25よりも大きくてもよい。第二の複数の粒子はニコチンを含み得る。さらに、第二の複数の粒子は、糖およびアミノ酸を含み得る。
【0016】
さらに、本開示は、第一の複数のたばこ風味付き粒子を含む粉末系に関する。たばこ風味付き粒子は、少なくとも約20マイクロメートルの粒子サイズを有してもよい。粉末系は、第二の複数の粒子を含み得る。第二の複数の粒子は、約20マイクロメートル未満の粒子サイズを有し得る。第一の複数のたばこ風味付き粒子中の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の第一の重量比は、0.25よりも大きくてもよい。
【0017】
本発明によれば、基材およびたばこ風味剤組成物を含む複数の粒子を含む、たばこ風味付き乾燥粉末製剤が提供されている。たばこ風味付き乾燥粉末製剤中の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の第一の重量比は、0.25よりも大きい。
【0018】
本発明によれば、たばこ風味付き粉末製剤を作製する方法も提供されている。方法は、たばこ出発材料を調製する第一の工程を含む。方法は、たばこ出発材料を摂氏100度~摂氏160度の抽出温度で少なくとも90分間加熱する第二の工程を含む。方法は、加熱する工程中に、たばこ出発材料から放出される揮発性化合物を収集する第三の工程を含む。方法は、収集された揮発性化合物を含む液体たばこ風味剤組成物を形成する第四の工程を含む。方法は、基材と液体たばこ風味剤組成物とを組み合わせて、たばこ風味付き粒子を形成する第五の工程を含む。
【0019】
本発明によれば、第一の複数の粒子および第二の複数の粒子を含む粉末系がさらに提供されている。第一の複数の粒子は、少なくとも約20マイクロメートルの粒子サイズを有する。第二の複数の粒子は、約10マイクロメートル以下の粒子サイズを有する。第一の複数の粒子は、基材およびたばこ風味剤組成物を含む。たばこ風味剤組成物中の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の第一の重量比は、0.25よりも大きい。第二の複数の粒子は、ニコチンを含む。
【0020】
本発明によれば、少なくとも約20マイクロメートルの粒子サイズを有する第一の複数のたばこ風味付き粒子と、約20マイクロメートル未満の粒子サイズを有する第二の複数の粒子とを含み、第一の複数のたばこ風味付き粒子中の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の第一の重量比は、0.25よりも大きい、粉末系も提供されている。
【0021】
本発明のたばこ風味付き乾燥粉末製剤末製剤、または本発明のたばこ風味付き乾燥粉末製剤を作製する方法、または本発明の粉末システムに関連して以下に記載される任意の特徴は、任意の他の粉末製剤、方法、および粉末系に等しく適用可能であることが理解されよう。
【0022】
本発明に関連して本明細書で使用される「乾燥粉末製剤」という用語は、吸入器内に、または吸入器を介して容易に分散することができ、粒子の一部分が口腔または上気道の組織、例えば、咽頭または喉全般に届くように吸入を介して対象に投与されることができる、特定の粒子サイズ分布を有する微細に分散された固体粒子を含有する製剤を意味する。その空気動力学的粒子径によって画定される粒子のサイズに応じて、乾燥粉末製剤の粒子はさらに、肺投与に適し得る。
【0023】
本明細書に記載の通り、粒子のサイズは、粒子の空気動力学的粒子径を意味することが好ましい。粒子の空気動力学的粒子径は、問題の粒子と同じ速度で静止空気中に沈降する、1グラム/立方センチメートルの密度を有する球の粒子径として定義される。
【0024】
特に、粉末系とは一般的に、空気動力学的粒子径分布の単一の数値記述子として最も広く採用されている指標の一つである、空気動力学的中央粒子径(MMAD)のことを言及する。MMADは、粒子サンプルに対して統計的に導出された数値であり、一例として、5マイクロメートルのMMADは、総サンプル質量の50パーセントが、5マイクロメートル未満の空気動力学的粒子径を有する粒子中に存在すること、および総サンプル質量の残りの50パーセントが、5マイクロメートルよりも大きい空気動力学的粒子径を有する粒子中に存在することを意味する。本発明の文脈において、粉末系を記述するとき、「粒子サイズ」という用語は、好ましくは、粉末系のMMADを指す。
【0025】
粉末系のMMADは、好ましくは、カスケードインパクターで測定される。カスケードインパクターは、エアロゾル粒子の空気動力学的サイズ分類を決定するための空中浮遊粒子のサンプリングおよび分離に広く使用されている装置である。実際には、カスケードインパクターは、粒子サイズ、密度および速度の関数である粒子慣性に基づいて、入ってくるサンプルを個別の分画に分離する。カスケードインパクターは、典型的には、一連のステージを含み、その各々は、特定のノズル配設および収集面を有するプレートを含む。ステージ数が増えるにつれノズルサイズと総ノズル面積の両方が減少するため、サンプルを含んだ空気は装置内を進むにつれて速度が速くなる。各ステージで、十分な慣性力を有する粒子は、主流の空気の流れから外れて捕集面に衝突する。したがって、任意の所与の流量において、各ステージは、カットオフ径、収集される粒子のサイズを画定する形態に関連付けられる。ステージ数が増えると、速度が増大してステージカットオフ径が減少する。したがって、所与のステージに関連付けられたカットオフ径は、試験に使用される気流量の関数である。使用中の性能を反映するため、ネブライザーは15L/分で定期的に試験され、乾燥粉末吸入器は最大100L/分の流量で試験され得る。
【0026】
本発明の文脈において、粉末系のMMADは、次世代インパクター(NGI)170(Copley Scientific AGから入手可能)を用いて測定されることが好ましい。NGIは、七つのステージとマイクロオリフィスコレクター(MOC)を有する高性能で高精度な粒子分類カスケードインパクターである。NGIの特徴および動作原理は、例えば、Marple et al.,Journal of AerosolMedicine-Volume 16,Number 3(2003)に記載されている。測定は、摂氏20±3度、および35±5パーセントの相対湿度で実施されることがより好ましい。
【0027】
乾燥粉末製剤は、典型的には、約15重量パーセント以下の水分、好ましくは、約10重量パーセント以下の水分、なおより好ましくは、約6重量パーセント以下の水分を含有する。乾燥粉末製剤は、約5重量パーセント以下の水分、または約3重量パーセント以下の水分、または約1重量パーセント以下の水分を含有することが最も好ましい。
【0028】
一部の実施形態では、乾燥粉末製剤は、約1重量パーセント~約15重量パーセントの水分、好ましくは、約3重量パーセント~約15重量パーセントの水分、なおより好ましくは、約5重量パーセント~約15重量パーセントの水分を含有し得る。他の実施形態では、乾燥粉末製剤は、約1重量パーセント~約10重量パーセントの水分、好ましくは、約3重量パーセント~約10重量パーセントの水分、なおより好ましくは、約5重量パーセント~約10重量パーセントの水分を含有し得る。さらなる実施形態では、乾燥粉末製剤は、約1重量パーセントの水分~約10重量パーセントの水分、好ましくは、約3重量パーセントの水分~約10重量パーセントの水分、なおより好ましくは、約5重量パーセントの水分~約10重量パーセントの水分を含有し得る。
【0029】
一部の特に好ましい実施形態では、乾燥粉末製剤は、約1重量パーセントの水分~約6重量パーセントの水分、または約3重量パーセントの水分~約6重量パーセントの水分、または約5重量パーセントの水分~約6重量パーセントの水分を含有し得る。
【0030】
粒子は、マイクロサイズまたはナノサイズであってもよい。粒子は、狭い粒子サイズ分布を有してもよい。
【0031】
本発明による製剤の粒子に関連して本明細書で使用される「マイクロサイズ」という用語は、広義には、約1マイクロメートル~約10マイクロメートルの平均粒子サイズを有する粒子を指す。粒子サイズは、粒子が実質的に球状である粒子の直径を指し得る。粒子は、非球状であってもよく、粒子サイズは、球状粒子に対する粒子の等価直径を指し得る。
【0032】
本発明による製剤の粒子に関連して本明細書で使用される「ナノサイズ」という用語は、広義には、約1000ナノメートル未満、特に約50ナノメートル~約1000ナノメートルの平均粒子サイズを有する粒子を指す。
【0033】
本発明の文脈において、「狭い粒子サイズ分布」という用語は、本発明による製剤の粒子のスパン値が約2未満であることを示すために使用される。スパン値は、Span=(〔90パーセントの累積サイズの粒子直径〕-〔10パーセントの累積サイズの粒子直径〕)/〔50パーセントの累積サイズの粒子直径〕として、または(D90~D10)/D50として算術的に定義される。
【0034】
上記に簡潔に記載したように、既存の乾燥粉末製剤とは対照的に、本発明によるたばこ風味付き乾燥粉末製剤は、基材およびたばこ風味剤組成物を含む複数の粒子を含み、たばこ風味付き乾燥粉末製剤中の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の第一の重量比は、0.25よりも大きい。
【0035】
したがって、本発明は、有利なことに、たばこ風味関連化合物の含有量を最大化すると同時に、フランおよびTSNAなどの望ましくない天然たばこ由来化合物の含有量を低減し得る、たばこ風味付き乾燥粉末製剤を提供する。さらに、発明者らは、本発明によるたばこ風味付き乾燥粉末製剤は、合成化合物を含む人工ブレンドから得られる粉末製剤と比較して、より天然たばこに風味が近いことを見出した。
【0036】
さらに、以下で詳細に説明する好ましい実施形態では、有利なことに、口腔のえぐみを低減し、たばこ風味付き乾燥粉末製剤中のニコチンレベルを制御することが可能である。
【0037】
簡潔に上述したように、たばこ風味付き乾燥粉末製剤は、たばこ出発材料を調製する第一の工程を含む方法によって得ることができる。たばこ出発材料は、天然たばこ材料であることが好ましい。
【0038】
本発明に関連して本明細書で使用される「天然たばこ材料」という用語は、葉、中肋、茎および葉柄を含むがこれらに限定されない、ニコチアナ属の任意の植物メンバーの任意の部分を説明する。特に、天然たばこ材料は、フルキュアたばこ材料、バーレー種たばこ材料、オリエント葉たばこ材料、メリーランド種たばこ材料、ダークたばこ材料、ダークファイヤードたばこ材料、ルスティカ種たばこ材料、ならびに他の稀なたばこまたは特殊たばこ由来の材料、またはこれらのブレンドを含んでもよい。以下でより詳細に説明する通り、たばこ材料は、そのままのもの(例えば、そのままのたばこの葉)、細断したもの、切断したもの、粉に挽いたもの、または熟成したものであってもよい。一部の実施形態では、たばこ材料は、そのままのもの、切断したもの、粉に挽いたもの、および熟成したもののうちの一つ以上の組み合わせであってもよい。
【0039】
本発明の方法に関連して本明細書で使用される「液体たばこ風味剤組成物」という用語は、たばこ出発材料に対して実施される抽出プロセスの直接的産物を表す。それ故に、たばこ抽出物は典型的に、たばこ抽出処理条件および技法を使用して、天然たばこ材料から分離された、天然たばこ材料から除去された、または天然たばこ材料に由来する天然構成成分の混合物を含む。したがって、一つのそのようなプロセスにおいて、抽出されたたばこ成分は、天然たばこ材料から除去され、抽出されていないたばこ成分から分離される。
【0040】
液体たばこ風味剤組成物として使用可能な液体たばこ抽出物を製造するための幾つかの方法は既知である。一例として、国際公開第2017/144705号は、たばこ材料が摂氏50~250度の温度に加熱され、かつ加熱されたたばこ材料から放出された揮発性種が収集されて、eベイピング装置で使用する液体製剤(eリキッドとも呼ばれる)を製造する方法を開示している。
【0041】
たばこ材料が最大数週間または数カ月間、抽出液中に懸濁液の状態で保持される、浸軟法も周知である。得られたスラリーはその後濾過され、こうして収集された液相は、気化可能な液体製剤を製造するために使用され得る。そのような方法の一つ、いわゆる「冷浸法」では、一般的に抽出条件(例えば、温度および圧力)を制御する方式は存在しない。例えば、米国特許第2012/192880号に記載される浸軟法のバリアントでは、スラリーは、摂氏100度以上まで加熱される。
【0042】
スラリーの濾過時に収集された液相は、浸軟プロセスの一次生成物に相当し、高度に希釈され、無極性たばこ風味種の含有量が少ない傾向がある。さらに、液相は通常、ニコチンをほとんどまたは全く含まない。したがって、浸軟法によって得られた液体抽出物は、一般に、気化可能な液体製剤で使用する前に、ニコチン塩およびグリセリンなどの追加の成分を補充する必要がある。
【0043】
たばこ材料を、数時間または数日間にもわたり水中で実質的に煮沸して蒸気相を形成し、蒸気相の凝縮によって得られた蒸留物を容器内に連続的に収集する、代替プロセスが既知である。経時的に、高比率の無極性化合物を含有する油性ワックス状の層が蒸留物の表面上に蓄積する。
【0044】
一方で、ワックス状の層が蓄積し、ニコチンおよび他の水溶性化合物を含有する水性部分は、ボイラーにリサイクルされる。抽出収率を高めるために、無極性共溶媒を、任意選択的に水性部分とともにボイラーに供給してもよい。一方で、ワックス状の相が収集され、最終的にこのような水蒸気蒸留プロセスの一つの一次生成物を形成する。こうした生成物は、しばしば「たばこ精油」と呼称され、脂肪酸、ネオフィタジエンなどのたばこ中に存在する無極性化合物の割合が高い。一つのこのような方法によって得られたたばこの精油は、典型的にはニコチンを含有しない。また、たばこ材料を揮発性無極性溶媒の使用を伴う抽出プロセスにかけることも知られている。好適な溶媒の例としては、環状または非環状の短いアルカン、およびジクロロメタンのような塩素化溶媒が挙げられる。こうしたプロセスの一つでは、真空下で制御された加熱によって、過剰な溶媒は蒸発させることができる。典型的には、これは、抽出溶媒よりも高い沸点を有するエタノールの存在下で行われ、その結果、微量の抽出溶媒であっても検出され得る。
【0045】
このような溶媒支援抽出プロセスの一つの一次生成物は、しばしば「タバコアブソリュート」と呼ばれ、微量のエタノールを含有してもよい。これはワックス状の生成物であり、特定の溶媒で抽出できるほとんどの無極性化合物の高濃度混合物を含有し、一般的に比較的高濃度で存在するニコチンを含む。
【0046】
代替的な抽出プロセスは、超臨界二酸化炭素などの超臨界条件下で、たばこ材料を溶媒と接触させることを伴う。そのようなプロセスの一つは、米国特許第2013/160777号に開示されており、超臨界流体と接触した供給材料内の揮発性物質が超臨界相に分離され得るという原理に依存する。任意の可溶性材料の溶解後、溶解した物質を含有する超臨界流体を除去することができ、供給物質の溶解成分を超臨界流体から分離することができる。超臨界抽出プロセスの一次生成物は、より低い温度および圧力で実行される溶媒支援抽出プロセスの「タバコアブソリュート」と実質的に類似しており、残留溶媒を含有せず、典型的には、高レベルのワックス状の無極性化合物を有し、一般的に比較的高濃度で存在するニコチンを含む。
【0047】
しかしながら、当技術分野で既知の方法によって得られる全てのたばこ抽出物は、フラネオールなどの加熱式たばこの風味と関連する化合物のレベルが、あったとしても非常に低い傾向にある。
【0048】
本発明によれば、液体たばこ風味剤組成物を作製するための抽出工程は、特定の加熱条件下でたばこ出発材料を加熱し、発生した揮発性化合物を収集することを含む。天然たばこ材料を加熱するこうした工程は、不活性気体の流れの中、または不活性気体と水もしくは蒸気との組み合わせの流れの中で、天然たばこ材料を加熱することを含んでもよい。代替として、天然たばこ材料を加熱する工程は、真空下で天然たばこ材料を加熱することを含んでもよい。
【0049】
したがって、液体たばこ風味剤組成物は、たばこ出発材料に由来し、抽出プロセス中に抽出または形成された天然たばこ成分の混合物から成り、典型的には、たばこ出発材料以外の一つ以上の材料、例えば抽出プロセス中に使用される非水性抽出溶媒などと組み合わせられる。
【0050】
以下でより詳細に説明するように、出発たばこ材料から放出された揮発性化合物は、凝縮技術を使用して収集されてもよく、揮発性化合物は、ガス流中の揮発性化合物を飽和させることによってガス流から除去される。一例として、揮発性化合物を含有する不活性ガス流は、水冷または空冷のいずれかであり得る、従来的なシェルアンドチューブ凝縮器に向けられてもよい。抽出は、典型的には、以下により詳細に記載されるように、摂氏100度~摂氏160度の抽出温度で実施されるため、ガス流を周囲空気と接触させることによって揮発性化合物を含有するガス流の温度のわずかに低下させるだけでも揮発性化合物の凝縮を引き起こすのに十分であり得る。
【0051】
本発明に関して本明細書で使用される場合、「エアロゾル形成体」という用語は、使用において、エアロゾルの形成を容易にし、好ましくは実質的にエアロゾル発生物品またはデバイスの使用温度にて熱分解に対して抵抗性である化合物または化合物の混合物を指す。好適なエアロゾル形成体の例には、多価アルコール(プロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、グリセリンなど)、多価アルコールのエステル(グリセロールモノアセテート、ジアセテートまたはトリアセテートなど)、およびモノカルボン酸、ジカルボン酸またはポリカルボン酸の脂肪族エステル(ドデカン二酸ジメチル、テトラデカン二酸ジメチルなど)が挙げられる。
【0052】
本発明の方法は、望ましい化合物と望ましくない化合物とのバランスが大幅に改善された、改善された液体たばこ風味剤組成物を有利に提供する、特定の範囲内の抽出温度を具体的に定義された加熱時間と組み合わせて使用する。特に、本発明の方法の抽出条件は、たばこ出発材料にとって望ましい化合物と望ましくない化合物との比率が最大化された液体たばこ風味剤組成物を提供する。例えば、定義された通りの抽出温度および時間の特定の組み合わせの使用は、フラン、カルボニル、フェノール、およびTSNAなどの望ましくない化合物の濃度を最小化することを可能にする。
【0053】
本発明の方法は、抽出後にこうした化合物を追加する必要なく、所望のレベルのたばこ風味化合物を有する液体たばこ風味剤組成物を作製することを可能にする。
【0054】
特に、上述のものなどの既存の抽出プロセスとは対照的に、本発明による方法において、加熱されたたばこの風味に関連する化合物(例えば、フラネオールなど)の含有量が著しくより高い液体たばこ風味剤組成物が提供されることを発明者らは見出した。これらの化合物は、浸軟プロセスによって得られた液体たばこ風味剤組成物に実質的に存在しないか、または微量に存在し、典型的にはニコチンをほとんどまたは全く含まない。これらの化合物はまた、超臨界条件下を含む、溶媒を使用して得られた液体たばこ風味剤組成物中に、一般的に存在しないか、または微量に存在する。同様に、蒸留プロセスによって得られたたばこ精油もまた、典型的には、加熱式たばこの風味と関連するこのような化合物の含有量が、もしあったとしても非常に低い。本発明の方法によると、抽出工程によって得られる液体たばこ風味剤組成物は、基材と組み合わされて、望ましい化合物と望ましくない化合物とのバランスが有利なことに大幅に改善されたたばこ風味付き粒子を形成する。
【0055】
上で論じたように、本発明による方法において得られて使用される液体たばこ風味剤組成物は、既存の抽出プロセスによって得られるたばこ抽出物または液体たばこ風味剤組成物に対して、有意な組成差を示す。このように、それらは、基材と組み合わせられて、現在入手可能なたばこ風味付き粒子と比較して、別個の組成物および風味特性を有するたばこ風味付き粒子を形成することができる。特に、本発明による方法において得られて使用される液体たばこ風味剤組成物は、既存の液体たばこ風味剤組成物から作製されるたばこ風味付き粒子に対して、従来的な紙巻たばこによって、または加熱非燃焼式装置内のたばこの加熱に伴い発生したエアロゾルにより厳密に似ている加熱されたたばこの味覚を提供するたばこ風味付き粒子を提供するために使用されてもよい。
【0056】
本発明のたばこ風味付き乾燥粉末製剤を作製する方法は、バーレー種たばこ、火力乾燥たばこ、およびオリエント葉たばこを含む、すべての種類およびグレードのたばこに効果的に使用することができる。本方法の抽出工程は、たばこの種類の様々なブレンドに一貫した液体たばこ風味剤組成物を提供するために、容易に調整することができる。本方法はさらに、様々な形態のたばこ出発材料に適している。
【0057】
多くの場合、たばこ出発材料は、重要な前処理工程を必要とせずに加熱することができる。したがって、本方法は効率的に実施することができる。本方法は、本発明の本方法の工程を実施するために容易に改変され得る既存の装置および技術を使用して有利に実施することができる。
【0058】
本発明によるたばこ風味付き乾燥粉末製剤中、(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の重量比は、0.25よりも大きい。これは、基材と、0.25より大きい(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の重量比を有するたばこ風味剤組成物とを組み合わせることによって達成され得る。こうした比は、望ましい風味剤化合物β-イオノンおよびβ-ダマセノンの量が高い場合、またはフェノールの量が低い場合には高くなる。
【0059】
(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の重量比は、0.5よりも大きいことが好ましい。(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の重量比は、1よりも大きいことがより好ましい。(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の重量比は、1.5よりも大きいことがなおより好ましい。(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の重量比は、2よりも大きいことが最も好ましい。
【0060】
本発明によるたばこ風味付き乾燥粉末製剤中、(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の重量比は、好ましくは、約10以下である。(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の重量比は、5以下であることがより好ましい。
【0061】
一部の実施形態では、(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の重量比は、約0.25~約10、より好ましくは、約0.5~約10、なおより好ましくは、約1~約10、特に好ましくは、約1.5~約10、最も好ましくは、約2~約10である。他の実施形態では、(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の重量比は、約0.25~約5であり、より好ましくは、約0.5~約5であり、なおより好ましくは、約1~約5であり、特に好ましくは、約1.5~約5であり、最も好ましくは、約2~約5である。
【0062】
上述の範囲内の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の重量比を有する粒子は、基材と、(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の重量比が上述の範囲内にあるたばこ風味剤組成物とを組み合わせることによって得られ得る。
【0063】
本発明によるたばこ風味付き乾燥粉末製剤中、(β-イオノン+β-ダマセノン)対(4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン+(R,S)-N-ニトロソアナタビン+(R,S)-N-ニトロソアナバシン+N-ニトロソノルニコチン+((2-フランメタノール)/600))の重量比は、0.2よりも大きくてもよい。(β-イオノン+β-ダマセノン)対(4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン+(R,S)-N-ニトロソアナタビン+(R,S)-N-ニトロソアナバシン+N-ニトロソノルニコチン+((2-フランメタノール)/600))の重量比は、少なくとも約0.5であることが好ましい。上記の比は、望ましい風味剤化合物β-イオノンおよびβ-ダマセノンの量が高い場合、またはTSNAおよび2-フランメタノールの量が低い場合には高くなる。
【0064】
本発明によるたばこ風味付き乾燥粉末製剤中、(β-イオノン+β-ダマセノン)対(4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン+(R,S)-N-ニトロソアナタビン+(R,S)-N-ニトロソアナバシン+N-ニトロソノルニコチン+((2-フランメタノール)/600))の重量比は、1よりも大きいことがより好ましい。
【0065】
好ましい実施形態では、(β-イオノン+β-ダマセノン)対(4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン+(R,S)-N-ニトロソアナタビン+(R,S)-N-ニトロソアナバシン+N-ニトロソノルニコチン+((2-フランメタノール)/600))の重量比は、1.5よりも大きい。
【0066】
一例として、(β-イオノン+β-ダマセノン)対(4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン+(R,S)-N-ニトロソアナタビン+(R,S)-N-ニトロソアナバシン+N-ニトロソノルニコチン+((2-フランメタノール)/600))の重量比は、約1~約10、または約1.5~約6であり得る。特に好ましい実施形態では、(β-イオノン+β-ダマセノン)対(4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン+(R,S)-N-ニトロソアナタビン+(R,S)-N-ニトロソアナバシン+N-ニトロソノルニコチン+((2-フランメタノール)/600))の重量比は、約2~約4である。
【0067】
上記の範囲内の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン+(R、S)-N-ニトロソアナタビン+(R,S)-N-ニトロソアナバシン+N-ニトロソノルニコチン+((2-フランメタノール)/600))の重量比を有する粒子は、基材と、(β-イオノン+β-ダマセノン)の(4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン+(R、S)-N-ニトロソアナタビン+(R,S)-N-ニトロソアナバシン+N-ニトロソノルニコチン+((2-フランメタノール)/600))の重量比が上述の範囲内にあるたばこ風味剤組成物とを組み合わせることによって得られ得る。
【0068】
本発明によるたばこ風味付き乾燥粉末製剤の粒子は、その多くが風味剤である、天然たばこに直接由来する他の望ましい化合物をさらに含み得る。一例として、たばこ風味付き乾燥粉末製剤は、フラネオール、2,3-ジエチル-5-メチルピラジン、酢酸、バニリン、2-エチル-3,5-ジメチルピラジン、2-メチルブタン酸、3-メチルブタン酸、3-メチル-2,4-ノナンジオン、2-メトキシフェノール、2-フェニルエタノール、オイゲノール、およびソトロンのうちの一つ以上を含み得る。
【0069】
本発明による乾燥たばこ風味付き粉末製剤の粒子は、β-イオノンを含む。乾燥たばこ風味付き粉末製剤は、乾燥たばこ風味付き粉末製剤1グラム当たり少なくとも0.100マイクログラムのβ-イオノン、好ましくは、乾燥たばこ風味付き粉末製剤1グラム当たり少なくとも0.200マイクログラムのβ-イオノン、より好ましくは、乾燥たばこ風味付き粉末製剤1グラム当たり少なくとも0.300マイクログラムのβ-イオノン、最も好ましくは、乾燥たばこ風味付き粉末製剤1グラム当たり少なくとも0.400マイクログラムのβ-イオノンを含み得る。好ましい実施形態では、乾燥たばこ風味付き粉末製剤は、乾燥たばこ風味付き粉末製剤1グラム当たり少なくとも0.500マイクログラムのβ-イオノン、より好ましくは、乾燥たばこ風味付き粉末製剤1グラム当たり少なくとも0.600マイクログラムのβ-イオノン、なおより好ましくは、たばこ風味剤組成物1グラム当たり少なくとも0.700マイクログラムのβ-イオノン、最も好ましくは、乾燥たばこ風味付き粉末製剤1グラム当たり少なくとも0.800マイクログラムのβ-イオノンを含む。特に好ましい実施形態では、乾燥たばこ風味付き粉末製剤は、乾燥たばこ風味付き粉末製剤1グラム当たり少なくとも0.9マイクログラムのβ-イオノン、好ましくは、乾燥たばこ風味付き粉末製剤1グラム当たり少なくとも1.00マイクログラムのβ-イオノン、より好ましくは、乾燥たばこ風味付き粉末製剤1グラム当たり少なくとも1.10マイクログラムのβ-イオノン、なおより好ましくは、乾燥たばこ風味付き粉末製剤1グラム当たり少なくとも1.20マイクログラムのβ-イオノン、最も好ましくは、乾燥たばこ風味付き粉末製剤1グラム当たり少なくとも1.30マイクログラムのβ-イオノンを含む。
【0070】
本発明によるたばこ風味付き乾燥粉末製剤中の(β-イオノン)対(フェノール)の重量比は、少なくとも約0.150、例えば少なくとも約0.200、好ましくは、少なくとも約0.400、より好ましくは、少なくとも約0.600、最も好ましくは、少なくとも約0.800、例えば少なくとも約1.200であり得る。
【0071】
上述の範囲内の(β-イオノン)対(フェノール)の重量比を有する粒子は、基材と、(β-イオノン)対(フェノール)の重量比が上述の範囲内にあるたばこ風味剤組成物とを組み合わせることによって得られ得る。
【0072】
本発明によるたばこ風味付き乾燥粉末製剤中の(β-イオノン)対(4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン+(R,S)-N-ニトロソアナタビン+(R,S)-N-ニトロソアナバシン+N-ニトロソノルニコチン+((2-フランメタノール)/600))の重量比は、少なくとも約0.300、例えば、少なくとも約0.500、好ましくは、少なくとも約0.750、より好ましくは、少なくとも約1.00、最も好ましくは、少なくとも約1.20、例えば、少なくとも約1.80であり得る。
【0073】
上記の範囲内の(β-イオノン)対(4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン+(R、S)-N-ニトロソアナタビン+(R,S)-N-ニトロソアナバシン+N-ニトロソノルニコチン+((2-フランメタノール)/600))の重量比を有する粒子は、基材と、(β-イオノン)対(4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン+(R、S)-N-ニトロソアナタビン+(R,S)-N-ニトロソアナバシン+N-ニトロソノルニコチン+((2-フランメタノール)/600)の重量比が上述の範囲内にあるたばこ風味剤組成物とを組み合わせることによって得られ得る。
【0074】
たばこ風味付き乾燥粉末製剤の粒子は、β-ダマセノンを含む。たばこ風味付き乾燥粉末製剤は、たばこ風味付き乾燥粉末製剤1グラム当たり少なくとも0.100マイクログラムのβ-ダマセノン、好ましくは、たばこ風味付き乾燥粉末製剤1グラム当たり少なくとも0.350マイクログラムのβ-ダマセノン、より好ましくは、たばこ風味付き乾燥粉末製剤1グラム当たり少なくとも0.600マイクログラムのβ-ダマセノン、最も好ましくは、たばこ風味付き乾燥粉末製剤1グラム当たり少なくとも0.850マイクログラムのβ-ダマセノンを含み得る。好ましい実施形態では、たばこ風味付き乾燥粉末製剤は、たばこ風味付き乾燥粉末製剤1グラム当たり少なくとも1.10マイクログラムのβ-ダマセノン、より好ましくは、たばこ風味付き乾燥粉末製剤1グラム当たり少なくとも1.35マイクログラムのβ-ダマセノン、なおより好ましくは、たばこ風味付き乾燥粉末製剤1グラム当たり少なくとも1.60マイクログラムのβ-ダマセノン、最も好ましくは、たばこ風味付き乾燥粉末製剤1グラム当たり少なくとも1.85マイクログラムのβ-ダマセノンを含む。特に好ましい実施形態では、たばこ風味付き乾燥粉末製剤は、たばこ風味付き乾燥粉末製剤1グラム当たり少なくとも2.10マイクログラムのβ-ダマセノン、好ましくは、たばこ風味付き乾燥粉末製剤1グラム当たり少なくとも2.35マイクログラムのβ-ダマセノン、より好ましくは、たばこ風味付き乾燥粉末製剤1グラム当たり少なくとも2.60マイクログラムのβ-ダマセノン、なおより好ましくは、たばこ風味付き乾燥粉末製剤1グラム当たり少なくとも2.75マイクログラムのβ-ダマセノン、最も好ましくは、たばこ風味付き乾燥粉末製剤1グラム当たり少なくとも2.90マイクログラムのβ-ダマセノンを含む。
【0075】
一部の実施形態では、基材と組み合わされて本発明によるたばこ風味付き乾燥粉末製剤の粒子を形成するためのたばこ風味剤組成物は、非水性溶媒を含み得る。これは、例えば、非水性溶媒が、たばこ出発材料の加熱に伴い放出される揮発性化合物を収集するための抽出工程中に使用された場合であり得る。非水性溶媒は、エアロゾル形成体であってもよい。したがって、本発明によるたばこ風味付き粉末製剤は、非水性溶媒、好ましくは、エアロゾル形成体である非水性溶媒を含んでもよい。
【0076】
これらの実施形態では、非水性溶媒は、グリセリン、プロピレングリコール、トリアセチン、および1,3-プロパンジオールのうちの一つ以上であってもよい。
【0077】
好ましい実施形態では、たばこ風味付き乾燥粉末製剤は、5重量パーセント未満の非水性溶媒を含む。たばこ風味付き乾燥粉末製剤は、3重量パーセント未満の非水性溶媒を含むことがより好ましい。たばこ風味付き乾燥粉末製剤は、1重量パーセント未満の非水性溶媒を含むことがなおより好ましい。一部の特に好ましい実施形態では、たばこ風味付き乾燥粉末製剤は、実質的に非水性溶媒を含有しない。
【0078】
一部の実施形態では、たばこ風味付き乾燥粉末製剤は、一つ以上の水溶性有機酸をさらに含み得る。本発明に関連して本明細書で使用される場合、「水溶性有機酸」という用語は、摂氏20度で約500mg/ml以上の水溶解度を有する有機酸を表す。
【0079】
理論に拘束されることを望むものではないが、ある程度の量の水溶性有機酸が、出発たばこ材料から抽出され、風味粉末粒子を形成するために基材と組み合わされる風味組成物に終わる場合があることが理解される。
【0080】
一部の実施形態では、水溶性有機酸は、酢酸である。
【0081】
典型的には、本発明によるたばこ風味付き乾燥粉末製剤の粒子は、たばこ風味付き乾燥粉末製剤の重量に基づいて、少なくとも約0.001重量パーセントのニコチンを含んでもよい。
【0082】
本発明によるたばこ風味付き乾燥粉末製剤の粒子は、好ましくは、たばこ風味付き乾燥粉末製剤の重量に基づいて、約5重量パーセント以下のニコチンを含む。本発明によるたばこ風味付き乾燥粉末製剤の粒子は、好ましくは、たばこ風味付き乾燥粉末製剤の重量に基づいて、約3重量パーセント以下のニコチンを含むことがより好ましい。
【0083】
好ましい実施形態では、本発明によるたばこ風味付き乾燥粉末製剤の粒子は、たばこ風味付き乾燥粉末製剤の重量に基づいて、約3重量パーセント以下のニコチン、より好ましくは、たばこ風味付き乾燥粉末製剤の重量に基づいて、約2.5重量パーセント以下のニコチン、なおより好ましくは、たばこ風味付き乾燥粉末製剤の重量に基づいて、約2重量パーセント以下のニコチンを含む。
【0084】
特に好ましい実施形態では、本発明によるたばこ風味付き乾燥粉末製剤の粒子は、たばこ風味付き乾燥粉末製剤の重量に基づいて、約1.5重量パーセント以下のニコチン、より好ましくは、たばこ風味付き乾燥粉末製剤の重量に基づいて、約1重量パーセント以下のニコチン、なおより好ましくは、たばこ風味付き乾燥粉末製剤の重量に基づいて、約0.5重量パーセント以下のニコチンを含む。
【0085】
一部の実施形態では、本発明によるたばこ風味付き乾燥粉末製剤の粒子は、たばこ風味付き乾燥粉末製剤の重量に基づいて、少なくとも約0.01重量パーセントのニコチン、またはたばこ風味付き乾燥粉末製剤の重量に基づいて、少なくとも約0.02重量パーセントのニコチン、またはたばこ風味付き乾燥粉末製剤の重量に基づいて、少なくとも約0.05重量パーセントのニコチンを含む。一例として、本発明によるたばこ風味付き乾燥粉末製剤の粒子は、たばこ風味付き乾燥粉末製剤の重量に基づいて、少なくとも約0.06重量パーセント、または0.07重量パーセント、または0.08重量パーセント、または0.09重量パーセント、または0.1重量パーセントのニコチンを含む。
【0086】
一部の実施形態では、液体たばこ風味剤組成物は、例えば、液体たばこ風味剤組成物からニコチンもしくは他のアルカロイドまたはその両方を選択的に除去(脱ニコチン化)するための液体-液体抽出プロセスによるなど、追加の抽出工程に供されてもよい。これは有利なことに、本発明によるたばこ風味付き乾燥粉末製剤の粒子中のニコチンレベルの制御を可能にし、その結果、たばこ風味付き乾燥粉末製剤の粒子は、たばこ風味付き乾燥粉末製剤の重量に基づいて、約1重量パーセント未満のニコチンを含む。液体たばこ抽出物の脱ニコチンを達成するためのプロセスおよび条件は、当業者に既知である。
【0087】
他の実施形態では、たばこ出発材料は、一次脱ニコチンプロセスに供されてもよい。たばこの脱ニコチンは公知のプロセスであり、US200855AおよびUS3110315Aに記載されている。
【0088】
さらなる実施形態において、たばこ出発材料は、低ニコチン含量を有するものであってもよい。低ニコチンたばこ出発材料の例は、US2017/0166913、US2017/0145432、およびAU2015/202209に記載されている。たばこ風味付き乾燥粉末製剤中の(フラネオール+(2,3-ジエチル-5-メチルピラジン)*100))対(ニコチン)の重量比は、少なくとも約5x10-4であることが好ましい。たばこ風味付き乾燥粉末製剤中の(フラネオール+(2,3-ジエチル-5-メチルピラジン)*100))対(ニコチン)の重量比は、少なくとも約8x10-4であることがより好ましい。たばこ風味付き乾燥粉末製剤中の(フラネオール+(2,3-ジエチル-5-メチルピラジン)*100))対(ニコチン)の重量比は、少なくとも約1x10-3であることがなおより好ましい。
【0089】
たばこ風味付き乾燥粉末製剤中の(フラネオール+(2,3-ジエチル-5-メチルピラジン)*100))対(ニコチン)の重量比は、約9x10-3以下であることが好ましい。たばこ風味付き乾燥粉末製剤中の(フラネオール+(2,3-ジエチル-5-メチルピラジン)*100))対(ニコチン)の重量比は、約5x10-3以下であることがより好ましい。
【0090】
一部の実施形態では、たばこ風味付き乾燥粉末製剤中の(フラネオール+(2,3-ジエチル-5-メチルピラジン)*100))対(ニコチン)の重量比は、約5×10-4~約9×10-3である。たばこ風味付き乾燥粉末製剤中の(フラネオール+(2,3-ジエチル-5-メチルピラジン)*100))対(ニコチン)の重量比は、約8×10-4~約9×10-3であることがより好ましい。たばこ風味付き乾燥粉末製剤中の(フラネオール+(2,3-ジエチル-5-メチルピラジン)*100))対(ニコチン)の重量比は、約1x10-3~約9x10-3であることがなおより好ましい。
【0091】
他の実施形態では、たばこ風味付き乾燥粉末製剤中の(フラネオール+(2,3-ジエチル-5-メチルピラジン)*100))対(ニコチン)の重量比は、約5x10-4~約5x10-3である。たばこ風味付き乾燥粉末製剤中の(フラネオール+(2,3-ジエチル-5-メチルピラジン)*100))対(ニコチン)の重量比は、約8x10-4~約5x10-3であることがより好ましい。たばこ風味付き乾燥粉末製剤中の(フラネオール+(2,3-ジエチル-5-メチルピラジン)*100))対(ニコチン)の重量比は、約1x10-3~約5x10-3であることがなおより好ましい。上述の範囲内の(フラネオール+(2,3-ジエチル-5-メチルピラジン)*100))対(ニコチン)の重量比を有する粒子は、基材と、フラネオール+(2,3-ジエチル-5-メチルピラジン)*100))対(ニコチン)の重量比が上述の範囲内にあるたばこ風味剤組成物とを組み合わせることによって得られ得る。
【0092】
上述の乾燥たばこ風味付き粉末製剤は、たばこ出発材料を調製する第一の工程を含む方法によって作製されてもよい。たばこ出発材料は、天然たばこ材料であることが好ましい。
【0093】
以下で詳細に説明するように、抽出温度および時間の組み合わせを制御することによって、液体たばこ風味剤組成物の組成物は、乾燥たばこ風味付き粉末製剤の所望の特徴に応じて調整することができる。特に、乾燥たばこ風味付き粉末製剤内の特定のたばこ化合物の比率は、本方法の抽出工程から得られた液体たばこ風味剤組成物内の望ましいたばこ化合物と望ましくないたばこ化合物との比を最大化するために、抽出パラメータの選択を通して、ある程度調整されることができる。
【0094】
方法は、たばこ出発材料を摂氏100度~摂氏160度の抽出温度で少なくとも90分間加熱する第二の工程を含む。この範囲を下回ると、不十分なレベルの特定の風味化合物がたばこ出発材料から放出され、これによって結果として得られた液体たばこ抽出物は所望の風味特性を欠く。一方で、たばこ出発材料がこの定義された範囲を超える温度に加熱される場合、許容できないほど高いレベルの特定の望ましくないたばこ化合物が放出される可能性がある。一般に、天然たばこ材料の加熱に伴い、天然たばこ材料中に存在する任意の水分も、蒸気の形態の揮発性種とともに放出される。
【0095】
抽出温度は少なくとも摂氏約110度であることが好ましく、少なくとも摂氏約115度であることがより好ましく、少なくとも摂氏約120度であることがより好ましく、少なくとも摂氏約125度であることがより好ましい。
【0096】
好ましくは、抽出温度は、摂氏約150以下、より好ましくは、摂氏約145度以下、より好ましくは、摂氏約140度以下、最も好ましくは、摂氏約135度以下である。
【0097】
例えば、抽出温度は、摂氏約110度~摂氏150度、または摂氏約120度~摂氏約140度、または摂氏約125度~摂氏約135度、または摂氏約130度であってもよい。摂氏約130度の抽出温度は、液体たばこ風味剤組成物中の望ましい化合物と望ましくない化合物との特に最適化された比を提供することが見出された。
【0098】
抽出温度は、摂氏約110度~摂氏130度、または摂氏約115度~摂氏約125度、または摂氏約120度であり得る。
【0099】
抽出温度は、摂氏約125度~約155度、より好ましくは摂氏約135度~摂氏約145度、または摂氏約140度であり得る。
【0100】
たばこ出発材料は、少なくとも約30分間、または少なくとも60分間、または少なくとも約90分間、より好ましくは少なくとも約120分間、抽出温度で加熱される。この抽出時間は、所望のたばこ風味化合物が効率的に抽出されて、基材と組み合わされて所望の風味特性を有する乾燥たばこ風味付き粉末製剤を作製できる液体たばこ風味剤組成物を提供するのに十分に長い。
【0101】
たばこ出発材料は、抽出温度にて、好ましくは約270分以下、より好ましくは約180分以下の間加熱される。
【0102】
例えば、たばこ出発材料は、約90分~約270分、または約120分~約180分の間加熱されてもよい。
【0103】
上記に示した加熱時間は、たばこ出発材料が抽出温度にて加熱される時間の持続時間に対応し、たばこ出発材料の温度を抽出温度まで上昇させるのにかかる時間を含まない。
【0104】
抽出温度および加熱時間は、たばこの種類、たばこ出発材料の他の可能性のある成分、液体たばこ抽出物の所望の組成などの要因に応じて、上記に定義された範囲内で選択され得る。任意選択的に、抽出温度および加熱時間は、乾燥たばこ風味付き粉末製剤中の望ましいレベルのニコチンに応じて、上記に定義される範囲内で選択され得る。
【0105】
特定のたばこ化合物の場合、抽出プロセス中の抽出温度を有する化合物の放出レベルの変動は、任意の所与のたばこ出発材料について容易に決定することができる。
【0106】
一例として、たばこ材料から放出されるβ-ダマセノンおよびβ-イオノンなどの望ましいたばこ風味化合物の所望の濃度が、ある特定のピーク抽出温度までの抽出温度の上昇とともに増加し、その後これらの濃度が減少し始めることが見いだされた。そのような風味化合物のピーク抽出温度は、本発明の抽出方法で望ましい風味化合物のレベルを効果的に最適化することができるように、典型的には、摂氏100度~摂氏160度の範囲内である。
【0107】
望ましくないたばこ化合物のレベルは、閾値温度までの抽出温度の上昇とともにゆっくりと増加し、それを超えると急速な増加が観察されることが見出された。これは、例えばフェノール化合物、TSNA、およびピラジンの濃度に当てはまり、またブライトたばこの場合において、フランおよびホルムアルデヒドの濃度に当てはまる。多くの場合、閾値温度は、摂氏100度~摂氏160度の範囲内であり、したがって、望ましくない化合物のレベルは、本発明の製造方法における抽出条件を調整することによって効果的に制御され得る。
【0108】
一部の実施形態では、抽出温度は、たばこ風味剤組成物中の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の重量比が少なくとも約0.25のとなるように選択される。
【0109】
抽出温度、または抽出時間、または抽出温度および抽出時間の両方は、液体たばこ風味剤組成物中の少なくとも約0.5、なおより好ましくは、少なくとも1、最も好ましくは、少なくとも約1.5の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の重量比を提供するように選択されることが好ましい。抽出温度、または抽出時間、または抽出温度および抽出時間の両方は、液体たばこ風味剤組成物中の少なくとも約2の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の重量比を提供するように、最も好ましくは、(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の重量比が約2~約10または約2~約5になるように選択されることがより好ましい。
【0110】
β-ダマセノンおよびβ-イオノンは、たばこの風味と関連する望ましい化合物である。たばこ材料から放出されたβ-ダマセノンおよびβ-イオノンの量は、抽出温度が特定のピーク抽出温度まで上昇するにつれて増加し、その後はレベルが減少し始めることも見出されている。こうした風味化合物のピーク抽出温度は、乾燥粉末製剤中の望ましい風味化合物のレベルを製造中に効果的に調整および制御することができるように、典型的には、摂氏100度~摂氏160度の範囲内である。
【0111】
一部の実施形態では、抽出温度、または抽出時間、または抽出温度および抽出時間の両方は、たばこ風味剤組成物中の少なくとも約1.5の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン+(R,S)-N-ニトロソアナタビン+(R,S)-N-ニトロソアナバシン+N-ニトロソノルニコチン+((2-フランメタノール)/600))の重量比を提供するように選択される。この比は、望ましい風味剤化合物β-イオノンおよびβ-ダマセノンの量が高い場合、またはTSNAおよび2-フランメタノールの量が低い場合には高くなる。
【0112】
たばこ風味剤組成物中の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン+(R,S)-N-ニトロソアナタビン+(R,S)-N-ニトロソアナバシン+N-ニトロソノルニコチン+((2-フランメタノール)/600))の重量比は、少なくとも約0.2、例えば少なくとも約0.5であり得る。
【0113】
一部の実施形態では、たばこ風味剤組成物中の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン+(R,S)-N-ニトロソアナタビン+(R,S)-N-ニトロソアナバシン+N-ニトロソノルニコチン+((2-フランメタノール)/600))の重量比は、少なくとも約1である。たばこ風味剤組成物中の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン+(R,S)-N-ニトロソアナタビン+(R,S)-N-ニトロソアナバシン+N-ニトロソノルニコチン+((2-フランメタノール)/600))の重量比は、少なくとも約1.5であることが好ましい。たばこ風味剤組成物中の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン+(R,S)-N-ニトロソアナタビン+(R,S)-N-ニトロソアナバシン+N-ニトロソノルニコチン+((2-フランメタノール)/600))の重量比は、少なくとも約2であることがより好ましい。たばこ風味剤組成物中の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン+(R,S)-N-ニトロソアナタビン+(R,S)-N-ニトロソアナバシン+N-ニトロソノルニコチン+((2-フランメタノール)/600))の重量比は、少なくとも約2.5であることがなおより好ましい。
【0114】
たばこ風味剤組成物中の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン+(R,S)-N-ニトロソアナタビン+(R,S)-N-ニトロソアナバシン+N-ニトロソノルニコチン+((2-フランメタノール)/600))の重量比は、約10以下であることが好ましい。たばこ風味剤組成物中の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン+(R,S)-N-ニトロソアナタビン+(R,S)-N-ニトロソアナバシン+N-ニトロソノルニコチン+((2-フランメタノール)/600))の重量比は、約6以下であることがより好ましい。たばこ風味剤組成物中の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン+(R,S)-N-ニトロソアナタビン+(R,S)-N-ニトロソアナバシン+N-ニトロソノルニコチン+((2-フランメタノール)/600))の重量比は、約4以下であることがなおより好ましい。
【0115】
好ましい実施形態では、たばこ風味剤組成物中の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン+(R,S)-N-ニトロソアナタビン+(R,S)-N-ニトロソアナバシン+N-ニトロソノルニコチン+((2-フランメタノール)/600))の重量比は、約1.5~約10、より好ましくは、約2~約10、なおより好ましくは、約2.5~約10である。他の実施形態では、たばこ風味剤組成物中の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン+(R,S)-N-ニトロソアナタビン+(R,S)-N-ニトロソアナバシン+N-ニトロソノルニコチン+((2-フランメタノール)/600))の重量比は、約1.5~約6、より好ましくは、約2~約6、なおより好ましくは、約2.5~約6である。さらなる実施形態では、たばこ風味剤組成物中の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン+(R,S)-N-ニトロソアナタビン+(R,S)-N-ニトロソアナバシン+N-ニトロソノルニコチン+((2-フランメタノール)/600))の重量比は、約1.5~約4、より好ましくは、約2~約4、なおより好ましくは、約2.5~約4である。
【0116】
好ましくは、抽出温度、または抽出時間、または抽出温度および抽出時間の両方は、たばこ風味剤組成物中の少なくとも約5x10-4の(フラネオール+(2,3-ジエチル-5-メチルピラジン)*100))対(ニコチン)の重量比を提供するように選択される。より好ましくは、抽出温度、または抽出時間、または抽出温度および抽出時間の両方は、たばこ風味剤組成物中の少なくとも約8x10-4、なおより好ましくは、少なくとも1x10-3の(フラネオール+(2,3-ジエチル-5-メチルピラジン)*100))対(ニコチン)の重量比を提供するように選択される。抽出温度、または抽出時間、または抽出温度および抽出時間の両方は、たばこ風味剤組成物中の約9x10-3以下、より好ましくは、5x10-3以下の(フラネオール+(2,3-ジエチル-5-メチルピラジン)*100))対(ニコチン)の重量比を提供するように選択されることが好ましい。一部の好ましい実施形態では、抽出温度、または抽出時間、または抽出温度と抽出時間の両方は、たばこ風味剤組成物中の約8x10-4~約9x10-3、または約8x10-4~約5x10-3、または約1x10-3~約9x10-3、または約1x10-3~約5x10-3の(フラネオール+(2,3-ジエチル-5-メチルピラジン)*100))対(ニコチン)の重量比を提供するように選択される。
【0117】
加熱する工程は、不活性雰囲気中で実施されることが好ましい。窒素などの不活性ガスの流れは、加熱する工程中にたばこ出発材料を通過することが好ましい。代替として、不活性ガスを水または蒸気と組み合わせて使用してもよい。揮発性たばこ化合物は、不活性ガスが揮発性成分の担体として作用するように、加熱する工程中に不活性ガスの流れ、または不活性ガスおよび水または蒸気の流れに放出される。
【0118】
不活性気体の流れは、天然たばこ材料の水分含有量の蒸発によって発生した蒸気、および抽出設備からの揮発性種(特にニコチン、または風味関連化合物、またはその両方を含む)を運ぶのに役立つ。
【0119】
さらに、抽出設備内の軽い過圧下での不活性気体(窒素など)の流れの使用は、抽出設備内の酸素の存在を防止するという利点がある。これはまた、天然たばこ材料を真空下で加熱することによって達成可能である。こうした利点は、加熱する工程中に天然たばこ材料の任意の燃焼のリスクを(たとえ部分的な燃焼であっても)防止するという点で望ましい。天然たばこ材料の制御されていない燃焼は、製造環境内の主要な安全上のリスクを呈することになるため、明らかに望ましくないことになる。しかしながら、発明者らは、天然たばこ材料の限定的かつ部分的な燃焼でさえ、本方法によって得ることができるたばこ抽出物の品質の低下につながる場合がある(これは望ましくないであろう)ことを見いだした。
【0120】
理論に束縛されることを望むものではないが、天然たばこ材料の燃焼を防止することによって、あらゆる望ましくない燃焼副産物の形成も防止されることが理解される。さらに、天然たばこ材料の燃焼を助長することになる条件が防止されると、天然たばこ材料は、たばこ含有基体(例えば、均質化したたばこ材料)が典型的に「加熱非燃焼式」物品中で加熱される条件を、ある程度模倣する条件下で効果的に加熱される。結果として、消費者が加熱式たばこで連想する味を担う風味付与揮発性種の選択的な抽出が有利なことに好まれる。
【0121】
したがって、不活性雰囲気中で加熱する工程を実行することによって、抽出効率、製品品質、および製造安全性が有利に強化される。
【0122】
不活性気体流量は、抽出チャンバーの規模および幾何学的形状に基づいて最適化されてもよい。不活性気体の比較的に高い流量は有利なことに、たばこ出発材料からの抽出の効率をさらに改善する場合がある。
【0123】
抽出中のたばこへの水または蒸気の添加は、抽出された構成成分の収率を増加させることが見出された。しかしながら、水または蒸気を過剰に添加すると、たばこ材料のべたつきなどの加工困難につながり得る。
【0124】
任意選択的に、加熱する工程は、真空下で実施され得る。
【0125】
たばこ出発材料の加熱を実施するための好適な加熱方法は、当業者に既知であり、限定されるものではないが、乾留、水蒸気蒸留、真空蒸留、フラッシュ蒸留、および薄膜水蒸気蒸留を含む。
【0126】
液体たばこ風味剤組成物は、単一のタイプの天然たばこからなるたばこ出発材料から調製され得る。あるいは、たばこ出発材料は、二種以上の天然たばこのブレンドを含んでもよい。異なるたばこタイプの比は、液体たばこ風味剤組成物から製造されるたばこ風味付き乾燥粉末製剤の所望の風味特性に応じて適合され得る。例えば、比較的高レベルのニコチンを提供することが所望される場合、バーレー種たばこの割合は増加し得る。
【0127】
二つ以上の異なる種類のたばこの組み合わせから液体たばこ風味剤組成物を作製することが所望される場合、たばこの種類は、摂氏100度~摂氏160度の定義された範囲内で異なる抽出温度で別々に加熱されてもよく、またはたばこの種類の混合物は、その範囲内で単一の抽出温度で一緒に加熱されてもよい。
【0128】
たばこ出発材料は、粉末、葉のスクラップもしくは断片、または無傷の葉などの固体のたばこ材料であってもよい。別の方法として、たばこ出発材料は、ドウ、ゲル、スラリー、または懸濁液などの液体たばこ材料であってもよい。
【0129】
たばこ出発材料は、たばこ葉、たばこ茎、再構成たばこ、キャストたばこ、押出成形たばこ、またはたばこ由来ペレットを含むがこれらに限定されない、任意の適切なたばこ材料に由来してもよい。
【0130】
たばこ出発材料を調製する工程において、たばこは、たばこ出発材料内のたばこ粒子のサイズを減少させるために粉砕または切断されることが好ましい。これは有利なことに、たばこ出発材料の加熱の均質性、および抽出の効率を改善する場合がある。
【0131】
たばこ出発材料は、たばこ出発材料の含水量を減少させるために、加熱する工程の前に随意に乾燥してもよい。たばこ出発材料の乾燥は、任意の適切な化学的または物理的乾燥プロセスによって実行されてもよい。あるいは、たばこ出発材料の含水量を増加させるために、加熱する工程の前にたばこ出発材料に水を添加してもよい。
【0132】
本発明の特定の実施形態では、たばこ出発材料を調製する工程は、たばこ出発材料をエアロゾル形成体で含浸させる工程を含み得る。たばこ出発材料のこの含浸が加熱する工程の前に実施される場合、有利には、加熱時にたばこ出発材料から放出される特定の望ましいたばこ化合物の量を増加させることができる。例えば、グリセリンによるたばこ出発材料の含浸は、たばこ出発材料から抽出されるニコチンの量を有利に増加させることが見出されている。別の実施例では、ポリエチレングリコールと植物グリセリン(vegetal glycerin)、またはトリアセチンの混合物などの極性エアロゾル形成体を用いたたばこ出発材料の含浸は、有利なことにたばこ出発材料から抽出される風味化合物の量を増加することが見出されている。
【0133】
随意に、たばこ出発材料は、加熱する工程の前に酵素的に消化されてもよい。これは、たばこ出発材料からの特定の風味化合物の収率の著しい増加を提供することが分かっている。
【0134】
たばこ出発材料は、組成物、例えば、アルカロイドの還元糖の含有量を決定するために、加熱する工程の前に随意に分析されてもよい。組成物に関するこの情報は、適切な抽出温度を選択するために有用に使用され得る。
【0135】
天然たばこ材料を調製する工程において、たばこは、たばこのpHを変化させるように適合されたいかなる処理にも供されないことが好ましい。特に、天然たばこ材料を調製する工程において、たばこは、たばこのpHを著しく増加させるために適合されたいかなる処理にも供されない。例えば、天然たばこ材料は、アルカリまたはアルカリ土類金属の塩を含有する水溶液とは接触されない。有利なことに、たばこ材料をより少ししか修正されていない状態に維持することは、消費者によって認識される場合がある、より真正な、またはより自然な風味プロファイルを提供する場合があることが分かっている。さらに、抽出プロセスの一部としてたばこ材料を加熱する前に、アルカリ処理などのたばこのpHを増加させるよう適合された処理に天然たばこ材料を供することが、液体たばこ抽出物中の所望の加熱されたたばこ風味化合物の濃度の低下につながることを発明者らは見いだした。一例として、天然たばこ材料をアルカリ処理に供しないことは、相当するアルカリ処理天然たばこ材料と比較して、液体たばこ抽出物中の(β-イオノン+β-ダマセノン)と(フェノール)との重量比の著しい増加との関連付けを生じさせることが分かっている。
【0136】
たばこ出発材料の加熱中、たばこ出発材料から放出される揮発性化合物は、任意の適切な技術を使用して収集される。上述のように、たばこ出発材料が不活性気体の流れの中で加熱される場合、揮発性化合物は、不活性気体の流れから収集される。異なる収集方法は、当業者に周知であろう。収集工程を考慮すると、不活性気体の流れ、または不活性気体と水または蒸気を含む流れの中で天然たばこ材料を加熱することは、揮発性化合物を含有する不活性気体の流れが、非水性抽出液体溶媒などの抽出溶媒を含有する容器の中に、より容易に向けられ得るという追加的な利点を有する。
【0137】
揮発性化合物を収集する工程は、揮発性化合物が凝縮され、かつ凝縮物が収集される凝縮技術を使用して行われることが好ましい。
【0138】
一部の実施形態では、得られた凝縮物は、液体エアロゾル形成体、好ましくはプロピレングリコール(PG)に添加される。
【0139】
液体エアロゾル形成体の添加、特にPGの添加は有利なことに、凝縮された揮発性化合物が二つの相に分離する、またはエマルションを形成する(一部のたばこ成分はそうなる傾向がある)のを防止する場合がある。理論に束縛されることを望むものではないが、水性抽出物(すなわち、液体の天然由来のたばこ抽出物の水性画分)中のたばこ成分の溶解度は、主にその極性、その濃度、および水性抽出物のpHに依存し、これはたばこのタイプによって変化する場合があることを発明者らは観察した。結果として、エアロゾル形成体の量が不十分である場合、液体たばこ風味剤組成物の表面に油性層が形成される傾向がある。こうした油性材料は、抽出プロセスを実施するために使用される装置上の異なる場所で凝集し得る。PGなどの液体エアロゾル形成体の添加は、こうした層の形成の防止に役立ち、かつ液体たばこ風味剤組成物の均質化に有利に働く。
【0140】
さらに、液体エアロゾル形成体は、その極性および揮発性とは無関係に、風味関連化合物を捕捉するのに有利に役立つ。凝縮・収集工程のためのエアロゾル形成体としてのPGの使用は、水溶液の水分活性を低減することによってPGが抗菌活性を発揮するというさらなる利点を有する。したがって、液体たばこ風味剤組成物中のPGの含有量を調整することによって、組成物が実質的に微生物活性を全く受けないことを確実にすることも可能である。
【0141】
凝縮技術は、ガス流内の揮発性化合物を飽和させることによって、揮発性化合物をガス流から除去する技術である。凝縮、冷却、および低温システムは通常、揮発性有機化合物のみを含有するガス流で使用される。飽和(露点温度)は、揮発性化合物の分圧がその蒸気圧と等しいときに生じる。飽和が達成されると、システム圧力を一定温度で上昇させる(圧縮凝縮として知られる)か、または一定温度で温度を下げる(冷却凝縮として知られる)かのいずれかによって、凝縮による分離が生じる。
【0142】
本発明による方法において、揮発性化合物を収集する工程は、冷却凝縮技術を使用して実施されることが好ましい。これはいずれも、揮発性化合物を含有するガス流と冷却液体との直接的な接触によって達成され得る。別の方法として、これは、揮発性化合物を含有するガス流と冷却媒体との間の熱交換器を介した間接的な接触によって達成されてもよい。直接的な接触用途では、液体窒素などの低温ガスがガス流内に注入されてもよい。直接冷却凝縮は追加の分離ステージを必要とする場合があるため、間接冷却凝縮が好ましい場合がある。
【0143】
一例として、本発明による方法では、揮発性化合物の凝縮は、例えば、冷却カラム内の任意の好適な装置を使用して実施されてもよい。
【0144】
しかしながら、抽出プロセスは通常、摂氏約130度~摂氏約160度の温度で実施されるため、抽出された揮発性化合物の凝縮を引き起こすには、室温でのガス流と空気の温和な冷却で概して十分である。
【0145】
代替的な実施形態では、揮発性化合物を収集する工程は、揮発性化合物を液体溶媒中に閉じ込める吸収技術を使用し得る。例えば、揮発性化合物を含有する不活性ガス流は、液体溶媒の容器内に向けられてもよい。液体溶媒は、トリアセチン、グリセリン、ポリエチレングリコール、またはそれらの組み合わせなどのエアロゾル形成体であり得る。好ましくは、液体溶媒は、揮発性化合物の液体溶媒への移動を最適化するため、摂氏0度未満の温度で保持される。
【0146】
さらなる代替として、揮発性化合物を収集する工程は、揮発性化合物が、活性炭などの固体吸着材料の表面上に吸着される吸着技術を使用して実施され得る。次いで、吸着された化合物を液体溶媒中に移動させ得る。
【0147】
本発明の方法では、次の工程は、収集された揮発性化合物から液体たばこ風味剤組成物を形成することである。この工程の性質は、収集方法に依存する場合がある。「収集された揮発性化合物」は、液体溶媒または担体中のたばこ由来の揮発性化合物の溶液の形態であり得る。
【0148】
揮発性化合物が凝縮によって収集される場合、液体たばこ風味剤組成物を形成する工程は、エアロゾル形成体などの液体溶媒に凝縮物を添加することを含んでもよい。
【0149】
別の方法として、揮発性化合物が液体溶媒中の吸着によって収集される場合、液体たばこ風味剤組成物を形成する工程は、溶液を濃縮するために、液体溶媒中の揮発性化合物の溶液を乾燥することを含むことが好ましい。これは、例えば、風味化合物の所望の濃度に到達するために実施され得る。乾燥は、乾燥(desiccation)、分子ふるい、凍結乾燥、相分離、蒸留、膜透過、水の制御された結晶化および濾過、逆吸湿性、超遠心分離、液体クロマトグラフィー、逆浸透または化学乾燥を含むがこれらに限定されない、任意の好適な手段を使用して実施され得る。
【0150】
好ましい実施形態では、液体溶媒中の揮発性化合物の溶液は、乾燥によって濃縮される。
【0151】
任意選択的に、液体たばこ風味剤組成物を形成する工程は、濾過工程を含む。
【0152】
任意選択的に、液体たばこ風味剤組成物を形成する工程は、異なるたばこ出発材料に由来する抽出物が組み合わされるブレンドする工程を含む。
【0153】
任意選択的に、液体たばこ風味剤組成物を形成する工程は、揮発性化合物の溶液に、有機酸などの一つ以上の添加剤を添加することを含む。しかしながら、多くの場合、液体たばこ風味剤組成物は、添加剤を含まずに使用することに適している。
【0154】
本発明による方法では、たばこ風味剤組成物は、基材と組み合わされて、複数の乾燥たばこ風味付き製剤の粒子を形成する。
【0155】
基材は、アラビアガム、グアー種子ミール、ローカストビーンミール、カタヤ(khataya)、ガッティ、トラガカンス、キサンタンなどのガム、デンプン、マルトデキストリンおよびトウモロコシシロップ固体またはグルコースシロップなどの加水分解デンプン、化学修飾デンプン、カルボキシメチルセルロース、単糖、二糖または多糖などの糖のうちの一つ以上を含み得る。適切な糖の例には、ラクトース、ショ糖、ラフィノース、トレハロース、果糖、右旋糖、グルコース、麦芽糖、マンニトール、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。特に好ましい糖は、トレハロースまたはマンニトールを含む。
【0156】
たばこ抽出物の酸化に対する改善された安定性を与えるために、単糖、およびスクロース、ラクトース、およびグルコース、またはソルビトールなどの糖アルコールを、化学修飾デンプンまたはアラビアゴムとのブレンドに使用することができる。加水分解デンプンは、親油性揮発性物質のわずかな保持力を有するが、親水性揮発性物質の担体として非常に良好に適合している。乳化デンプンは、親油性特性が良好であり、噴霧乾燥中の乳化特性および優れた揮発性保持を提供するが、酸化に対するたばこ抽出物風味剤の保護は不良である。アラビアゴムは、優れたカプセル化材料であり、非常に良好な乳化剤であり、製造されたたばこ風味付き粉末の乾燥プロセス中に揮発性物質の良好な保持を提供する。特に好ましいのは、マルトデキストリンおよびシクロマルトデキストリンなどの良好なカプセル化特性を有する基材である。
【0157】
一実施形態では、基材とたばこ風味剤組成物とを組み合わせてたばこ風味付き粒子を形成する工程は、基材と液体たばこ風味剤組成物の混合物を形成する第一の工程、混合物を凍結する第二の工程、凍結混合物を乾燥する第三の工程、および乾燥混合物を粉砕してたばこ風味付き粒子を形成する第四の工程を含む。
【0158】
別の実施形態では、基材とたばこ風味剤組成物とを組み合わせてたばこ風味付き粒子を形成する工程は、基材と液体たばこ風味剤組成物との混合物を形成し、混合物を噴霧乾燥してたばこ風味付き粒子を形成する工程を含む。
【0159】
上述の乾燥たばこ風味付き粉末製剤の粒子は、さらなる複数の粒子を含む粉末系での使用を見出し得る。一部の実施形態では、本発明による粉末系は、上述のように、または上述の方法またはその両方によって得られた第一の複数の粒子を備えてもよく、ニコチンを含む第二の複数の粒子と組み合わせた少なくとも約20マイクロメートルの粒子サイズを有し、約10マイクロメートル以下の粒子サイズを有する。
【0160】
理論に拘束されることを望むものではないが、より大きなたばこ風味担持粒子は、消費者の口における堆積に適合され、一方で、より小さなニコチン含有粒子は、吸入時に消費者の肺に到達するように適合される。
【0161】
好ましい実施形態では、第二の複数の粒子の粒子は、ニコチン、糖、またはアミノ酸、またはその両方を含む。第二の複数の粒子の粒子は、ニコチン、糖、およびアミノ酸を含むことが好ましい。本発明に関連して本明細書で使用される「アミノ酸」という用語は、無修飾または修飾された単一のアミノ酸部分を意味し、無修飾が好ましい。
【0162】
別の実施形態では、本発明による粉末系は、少なくとも約20マイクロメートルの粒子サイズを有する第一の複数のたばこ風味付き粒子と、約20マイクロメートル未満の粒子サイズを有する第二の複数の粒子とを含み、第一の複数のたばこ風味付き粒子中の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の第一の重量比は0.25よりも大きい。
【0163】
第一の複数のたばこ風味付き粒子中の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の重量比は、0.5よりも大きいことが好ましい。
【0164】
第一の複数のたばこ風味付き粒子中の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン+(R,S)-N-ニトロソアナタビン+(R,S)-N-ニトロソアナバシン+N-ニトロソノルニコチン+((2-フランメタノール)/600))の重量比は、1.5よりも大きいことが好ましい。
【0165】
さらに、第一の複数のたばこ風味付き粒子は、フラネオール、2,3-ジエチル-5-メチルピラジン、酢酸、バニリン、2-エチル-3,5-ジメチルピラジン、2-メチルブタン酸、3-メチルブタン酸、3-メチル-2,4-ノナンジオン、2-メトキシフェノール、2-フェニルエタノール、オイゲノール、およびソトロンのうちの一つ以上を含み得る。
【0166】
本発明による粉末系は、少なくとも約5重量パーセントの第一の粒子を含み得る。粉末系は、少なくとも約10重量パーセントの第一の粒子を含むことが好ましい。粉末系は、少なくとも約15重量パーセントの第一の粒子を含むことがより好ましい。
【0167】
粉末系は、約50重量パーセント以下の第一の粒子を含み得る。粉末系は、約45重量パーセント以下の第一の粒子を含むことが好ましい。粉末系は、約25重量パーセント以下の第一の粒子を含むことがより好ましい。
【0168】
一部の実施形態では、粉末系は、約5重量パーセント~約50重量パーセントの第一の粒子、より好ましくは、約10重量パーセント~約50重量パーセント、なおより好ましくは、約15重量パーセント~約50重量パーセントの第一の粒子を含む。他の実施形態では、粉末系は、約5重量パーセント~約45重量パーセントの第一の粒子、より好ましくは、約10重量パーセント~約45重量パーセント、なおより好ましくは、約15重量パーセント~約45重量パーセントの第一の粒子を含む。さらなる実施形態において、粉末系は、約5重量パーセント~約25重量パーセントの第一の粒子、より好ましくは、約10重量パーセント~約25重量パーセント、なおより好ましくは、約15重量パーセント~約25重量パーセントの第一の粒子を含む。
【0169】
粉末系は、少なくとも約50重量パーセントの第二の粒子を含み得る。粉末系は、少なくとも約65重量パーセントの第二の粒子を含むことが好ましい。粉末系は、少なくとも約75重量パーセントの第二の粒子を含むことがより好ましい。
【0170】
粉末系は、約95重量パーセント以下の第二の粒子を含み得る。粉末系は、約90重量パーセント以下の第二の粒子を含むことが好ましい。粉末系は、約85重量パーセント以下の第二の粒子を含むことがより好ましい。
【0171】
一部の実施形態では、粉末系は、約50重量パーセント~約95重量パーセントの第二の粒子、より好ましくは、約65重量パーセント~約95重量パーセント、なおより好ましくは、約75重量パーセント~約95重量パーセントの第二の粒子を含む。他の実施形態では、粉末系は、約50重量パーセント~約90重量パーセントの第二の粒子、より好ましくは、約65重量パーセント~約90重量パーセント、なおより好ましくは、約75重量パーセント~約90重量パーセントの第二の粒子を含む。さらなる実施形態では、粉末系は、約50重量パーセント~約85重量パーセントの第二の粒子、より好ましくは、約65重量パーセント~約85重量パーセント、なおより好ましくは、約75重量パーセント~約85重量パーセントの第二の粒子を含む。
【0172】
本発明による粉末系では、第二の複数の粒子と第一の複数の粒子の重量比は、少なくとも約1:1、好ましくは、少なくとも2:1、より好ましくは、約3:1であり得る。
【0173】
本発明による粉末系では、第二の複数の粒子と第一の複数の粒子の重量比は、約10:1以下、好ましくは、8:1以下、より好ましくは、6:1以下、なおより好ましくは、5:1以下であり得る。
【0174】
一部の実施形態では、第二の複数の粒子と第一の複数の粒子の重量比は、好ましくは、約1:1~約8:1、より好ましくは、約2:1~約8:1、なおより好ましくは、約3:1~約8:1である。別の実施形態では、第二の複数の粒子と第一の複数の粒子の重量比は、好ましくは、約1:1~約6:1、より好ましくは、約2:1~約6:1、なおより好ましくは、約3:1~約6:1である。さらなる実施形態では、第二の複数の粒子と第一の複数の粒子の重量比は、好ましくは、約1:1~約5:1、より好ましくは、約2:1~約5:1、なおより好ましくは、約3:1~約5:1である。一例として、第二の複数の粒子と第一の複数の粒子の重量比は、約4:1であり得る。
【0175】
第一の複数の粒子および第二の複数の粒子は、粉末系の総重量の少なくとも約90重量パーセント、または少なくとも約95重量パーセント、または少なくとも約99重量パーセント、または100重量パーセントを形成することが好ましい。
【0176】
第一の複数の粒子は、少なくとも約20マイクロメートル、好ましくは、少なくとも約50マイクロメートル、より好ましくは、少なくとも約75マイクロメートル、なおより好ましくは、少なくとも約100マイクロメートルの粒子サイズを有し得る。第一の複数の粒子は、好ましくは、約200マイクロメートル以下の粒子サイズを有する。第一の複数の粒子は、約150マイクロメートル以下の粒子サイズを有することがより好ましい。
【0177】
第一の複数の粒子は、好ましくは、約20マイクロメートル~約200マイクロメートル、より好ましくは、約50マイクロメートル~約200マイクロメートル、なおより好ましくは、約75マイクロメートル~約200マイクロメートルの粒子サイズを有する。他の実施形態では、第一の複数の粒子は、約20マイクロメートル~約150マイクロメートル、より好ましくは、約50マイクロメートル~約150マイクロメートル、なおより好ましくは、約75マイクロメートル~約150マイクロメートルの粒子サイズを有する。
【0178】
第二の複数の粒子は、約10マイクロメートル以下、好ましくは、約5マイクロメートル以下、より好ましくは、約3マイクロメートル以下の粒子サイズを有し得る。
【0179】
簡潔に上述したように、第二の複数の粒子の粒子は、好ましくは、ニコチン、糖、およびアミノ酸を含む。アミノ酸は、粒子の接着力を低減し、形成中またはその後の取り扱い中の粒子の凝集を軽減または阻止する。第二の複数の粒子は、自由流動性材料を形成し得るとともに、処理中、搬送中および貯蔵中に安定した相対粒子サイズ分布を有し得る。
【0180】
有用なアミノ酸は、ロイシン、アラニン、バリン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、またはその組み合わせを含みうる。好ましい一つのアミノ酸は、ロイシンまたはロイシン異性体(L-ロイシンなど)である。好ましいペプチドの例としては、トリロイシンが挙げられる。
【0181】
粒子は糖を含みうる。糖は、単純な糖、単糖類、二糖類、および多糖類を意味する。限定されないが、適切な糖の例は、ラクトース、ショ糖、ラフィノース、トレハロース、果糖、右旋糖、グルコース、麦芽糖、マンニトール、またはその組み合わせである。好ましい糖は、トレハロースまたはマンニトールを含む。
【0182】
第二の複数の粒子は、約30重量パーセント以下のニコチンを含有し得る。第二の複数の粒子は、約10重量パーセント以下のニコチンを含有することが好ましい。第二の複数の粒子は、約7重量パーセント以下のニコチンを含有することがより好ましい。第二の複数の粒子は、約6重量パーセント以下のニコチンを含有することがなおより好ましい。
【0183】
第二の複数の粒子は、少なくとも約1重量パーセントのニコチンを含有することが好ましい。第二の複数の粒子は、少なくとも約2重量パーセントのニコチンを含有することがより好ましい。第二の複数の粒子は、少なくとも約3重量パーセントのニコチンを含有することがなおより好ましい。第二の複数の粒子は、少なくとも約4重量パーセントのニコチンを含有することが最も好ましい。
【0184】
一部の実施形態では、第二の複数の粒子は、約1重量パーセントのニコチン~約10重量パーセントのニコチン、好ましくは、約2重量パーセントのニコチン~約10重量パーセントのニコチン、より好ましくは、約3重量パーセントのニコチン~約10重量パーセントのニコチン、なおより好ましくは、約4重量パーセントのニコチン~約10重量パーセントのニコチンを含む。
【0185】
他の実施形態では、第二の複数の粒子は、約1重量パーセントのニコチン~約30重量パーセントのニコチン、好ましくは、約2重量パーセントのニコチン~約25重量パーセントのニコチン、より好ましくは、約3重量パーセントのニコチン~約20重量パーセントのニコチン、なおより好ましくは、約4重量パーセントのニコチン~約15重量パーセントのニコチンを含む。
【0186】
他の実施形態では、第二の複数の粒子は、約1重量パーセントのニコチン~約7重量パーセントのニコチン、好ましくは、約2重量パーセントのニコチン~約7重量パーセントのニコチン、より好ましくは、約3重量パーセントのニコチン~約7重量パーセントのニコチン、なおより好ましくは、約4重量パーセントのニコチン~約7重量パーセントのニコチンを含む。
【0187】
さらなる実施形態において、第二の複数の粒子は、約1重量パーセントのニコチン~約6重量パーセントのニコチン、好ましくは、約2重量パーセントのニコチン~約6重量パーセントのニコチン、より好ましくは、約3重量パーセントのニコチン~約6重量パーセントのニコチン、なおより好ましくは、約4重量パーセントのニコチン~約6重量パーセントのニコチンを含む。
【0188】
ニコチン粒子中のニコチンは、医薬品として許容可能な遊離塩基ニコチン、またはニコチン塩もしくはニコチン塩水和物であり得る。有用なニコチン塩またはニコチン塩水和物には例えば、ピルビン酸ニコチン、クエン酸ニコチン、アスパラギン酸ニコチン、乳酸ニコチン、重酒石酸ニコチン、サリチル酸ニコチン、フマル酸ニコチン、モノ-ピルビン酸ニコチン、グルタミン酸ニコチン、またはニコチン塩酸塩が挙げられる。ニコチンと結合して塩または塩水和物を形成する化合物は、その予想される薬理学的効果に基づいて選択され得る。
【0189】
ニコチン含有量は、ニコチンの形態にかかわらずニコチンの総量に基づいて計算される。例えば、第二の複数の粒子は、8.4重量パーセントの乳酸ニコチンなどのニコチン塩を含み得るが、それ故に、第二の複数の粒子中のニコチン含有量は、5重量パーセントである。
【0190】
粉末系が本発明による粉末系であるかどうかを評価するための方法は、当業者に利用可能である。こうした方法の一つは、粉末系が、少なくとも約20マイクロメートルの粒子サイズを有する第一の複数の粒子を、約10マイクロメートル以下の粒子サイズなどの約20マイクロメートル未満の粒子サイズを有する第二の複数の粒子との組み合わせで含むかどうかかを評価する第一の工程を含む。一例として、こうした第一の工程は、粉末系が二モードまたは多モードであるサイズ分布を有するか、および20マイクロメートル以上の粒子サイズを有する粒子集団が存在するかを確認するために、レーザー回折またはレーザー散乱を使用することを伴い得る。
【0191】
さらに、こうした方法の一つは、少なくとも約20マイクロメートルのサイズを有する複数の粒子を、より小さな粒子から分離する第二の工程を含む。こうした第二の工程の一つは、例えば、少なくとも約20マイクロメートルの粒子サイズを有する粒子をグループ化できるように、粒子をそのサイズに基づいて分離するために、インパクターまたはふるいを使用することを伴い得る。
【0192】
さらに、こうした方法の一つは、少なくとも約20マイクロメートルの粒子サイズを有する粒子を分析して、第一の複数の粒子中の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の重量比が0.25よりも大きいことを確かめる第三の工程を含む。
【0193】
本発明の一実施形態を、例証としてのみではあるが、ここでさらに説明する。
【実施例】
【0194】
実施例1
たばこ出発材料は、フルキュアブライトたばこ材料から調製される。たばこ材料は、2.5ミリメートル×2.5ミリメートルの寸法を有するたばこ断片を形成するように切断され、たばこ断片は、圧縮することなく、抽出チャンバーの中に装填される。たばこ出発材料は、抽出チャンバー内で3時間にわたり、摂氏130度の温度に加熱される。加熱中に、窒素の流れが、約40リットル/分の流量で抽出チャンバーを通過する。
【0195】
加熱する工程中にたばこ出発材料から放出された揮発性化合物は、摂氏マイナス10度にて、かつ750rpmの撹拌でプロピレングリコールから形成された液体溶媒への吸収によって収集される。
【0196】
こうして、液体たばこ風味剤組成物を、摂氏130度の温度で3時間の抽出プロセスから直接得る。液体たばこ風味剤組成物は、フェノール、4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン、(R,S)-N-ニトロソアナタビン、(R,S)-N-ニトロソアナバシン、N-ニトロソノルニコチン、および2-フランメタノールなどの望ましくない化合物に対し、β-ダマセノンおよびβ-イオノンなどの最適化されたレベルの望ましい風味化合物を提供する。液体たばこ風味剤組成物は、さらに、フラネオールおよび2,3-ジエチル-5-メチルピラジン対ニコチンなどのあるレベルの望ましい風味化合物を提供する。
【0197】
収集された揮発性化合物を有するプロピレングリコールの溶液を、乾燥プロセスで濃縮して、液体たばこ抽出物の水分レベルを約15パーセントに低減する。
【0198】
実施例2
この実施例は、二つの液体たばこ風味剤組成物を提供し、その両方は、摂氏130度の温度で3時間の抽出プロセスから直接得られる。
【0199】
実施例2a
実施例2aは、火力乾燥ブライト種たばこ材料に由来する液体たばこ風味剤組成物に関する。実施例2aの濃縮液体たばこ風味剤組成物の含有量は、以下の通りである。
・ ニコチン:0.53% w/w
・ プロピレングリコール:91.8% w/w
・ 水:6.3% w/w
・ バランス(以下の表1に詳述される風味剤を含む):1.57% w/w
【0200】
実施例2b
実施例2bは、バーレー種たばこ材料に由来する液体たばこ風味剤組成物に関する。実施例2bの濃縮液体たばこ風味剤組成物の含有量は、以下の通りである。
・ ニコチン:1.82% w/w
・ プロピレングリコール:89.6% w/w
・ 水:5.7% w/w
・ バランス(以下の表1に詳述される風味剤を含む):2.88% w/w
【表1】
【0201】
本発明による実施例2aおよび2bの液体たばこ風味組成物は、フェノール、4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン、(R,S)-N-ニトロソアナタビン、(R,S)-N-ニトロソアナバシン、N-ニトロソノルニコチン、および2-フランメタノールなどの許容可能に低レベルの望ましくない化合物を含有する。
【0202】
実施例3
この実施例は、本発明による三つの液体たばこ風味剤組成物を提供し、その各々は、摂氏130度の温度で3時間の抽出プロセスから直接得られた液体たばこ風味剤組成物である。
【0203】
実施例3a
実施例3aは、オリエント葉ブライト種たばこ材料に由来する液体たばこ風味剤組成物に関する。実施例3aの液体たばこ風味剤組成物の含有量は以下の通りである。
・ ニコチン:0.4% w/w
・ プロピレングリコール:84% w/w
・ 酢酸:1.0% w/w
・ 水:12.5% w/w
・ バランス(風味剤を含む):2.1% w/w
【0204】
実施例3b
実施例3bは、火力乾燥ブライト種たばこ材料に由来する液体たばこ風味剤組成物に関する。実施例3bの液体たばこ風味剤組成物の含有量は以下の通りである。
・ ニコチン:1.2% w/w
・ プロピレングリコール:84% w/w
・ 酢酸:1.0% w/w
・ 水:12.5% w/w
・ バランス(風味剤を含む):1.3% w/w
【0205】
実施例3c
実施例3cは、バーレー種たばこ材料に由来する液体たばこ風味剤組成物に関する。実施例3cの液体たばこ風味剤組成物の含有量は以下の通りである。
・ ニコチン:2.6% w/w
・ プロピレングリコール:84% w/w
・ 酢酸:0.5% w/w
・ 水:12.5% w/w
・ バランス(風味剤を含む):0.4% w/w
【0206】
実施例3の液体たばこ風味剤組成物は、フェノール、4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン、(R,S)-N-ニトロソアナタビン、(R,S)-N-ニトロソアナバシン、N-ニトロソノルニコチン、および2-フランメタノールなどの望ましくない化合物に対し、β-ダマセノンおよびβ-イオノンなどの最適化されたレベルの望ましい風味化合物を提供する。液体たばこ風味剤組成物は、さらに、フラネオールおよび2,3-ジエチル-5-メチルピラジン対ニコチンなどのあるレベルの望ましい風味化合物を提供する。
【0207】
実施例4
実施例1の液体たばこ風味剤組成物を乾燥プロセスで濃縮し、液体たばこ抽出物の水分レベルを約15パーセントに低減した。
【0208】
結果として得られる濃縮液体たばこ抽出物にグリセリンを添加して、液体たばこ風味剤組成物が最終的に、液体たばこ風味剤組成物の重量に基づいて、20重量パーセントのグリセリンおよび80重量パーセントの液体たばこ抽出物を含有するようにした。
【0209】
実施例5
実施例1~4の液体たばこ風味剤組成物を、マルトデキストリンからなる基材と組み合わせる。液体たばこ風味組成物対基材の重量比は、30:70である。
【0210】
より詳細には、7グラムのマルトデキストリンをビーカーの各々に秤量した後、実施例1~4の液体たばこ風味剤組成物の各々3グラムをそれぞれのビーカーに秤量する。
【0211】
二つの成分を攪拌して、均質な軟塊様の混合物を得る。軟塊様の混合物を、ペトリ皿上に広げ、アルミ箔で覆い、少なくとも2時間、冷凍庫に保管する。その後、凍結した軟塊様の混合物を凍結乾燥チャンバー(凍結乾燥機)に導入し、軟塊様の混合物を脱水する。これは、二工程プロセスで行われる。一次乾燥の第一の工程で、軟塊様の混合物を約12時間乾燥させて、氷を昇華させる。二次乾燥の第二のセットでは、軟塊様の混合物をさらに2時間乾燥させて、凍結されていない水分子を除去する。
【0212】
乾燥プロセスを開始する前に、軟塊様の混合物から水を除去するのに有利になるように、ペトリ皿上部のアルミ箔を穿孔する。
【0213】
脱水された軟塊様の混合物をその後アルミナモルタルに移して粉砕して、たばこ風味付き粒子を形成する。こうして、約50マイクロメートル~約60マイクロメートルの粒子サイズ分布平均を有する、たばこ風味付き乾燥粉末製剤を得る。
【0214】
実施例6
実施例6は、実施例5の粒子と類似したたばこ風味付き乾燥粉末製剤の粒子を提供する。実施例5の粒子とは対照的に、実施例6の粒子中の液体たばこ風味組成物対基材の重量比は、50:50(実施例6a)および20:80(実施例6b)である。
【0215】
実施例7
実施例7は、実施例5の粒子と類似したたばこ風味付き乾燥粉末製剤の粒子を提供する。実施例5の粒子とは対照的に、実施例7の抽出物は、プロピレングリコールまたは他の溶媒を添加することなく、凝縮によって作製された。したがって、液体たばこ風味組成物内の風味化合物の濃度は著しく高く、このことに照らして、実施例7の粒子中の液体たばこ風味組成物対基材の重量比は、10:90(実施例7a)および15:85(実施例7b)である。
【0216】
実施例8
三つのたばこ出発材料を、それぞれ、火力乾燥ブライト種たばこ材料(2A)、バーレー種たばこ材料(2B)、およびオリエント葉たばこ材料(2C)から調製する。
【0217】
三つのたばこ材料のうちの各一つは、2.5ミリメートル×2.5ミリメートルの寸法を有するたばこ断片を形成するように切断され、たばこ断片は、圧縮することなく、抽出チャンバーの中に装填される。
【0218】
たばこ出発材料のうちの各一つは、抽出チャンバー内で120分間にわたり、摂氏130度の温度に加熱される。加熱中に、窒素の流れが、2リットル/分の流量で抽出チャンバーを通過する。
【0219】
加熱する工程中に各たばこ出発材料から放出された揮発性化合物は、摂氏0度にてポリプロピレングリコールから形成された液体溶媒への吸収によって収集される。
【0220】
液体たばこ抽出物は、こうした抽出プロセスから直接得られる。次いで、三つのたばこ出発材料のうちの各一つから得られた各液体抽出物は、真空下(50mbar)で、摂氏55度にて、12パーセント±2パーセントの水分含有量に到達するまで濃縮される。
【表2】
【0221】
本発明2A、2B、および2Cによる三つの液体抽出物のすべてにおいて、(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の重量比は一貫してかつ著しく2.0を上回る。さらに、本発明2A、2B、および2Cによる三つの液体抽出物すべてにおいて、(フラネオール+(2,3-ジエチル-5-メチルピラジン)*100))対(ニコチン)の重量比は一貫してかつ著しく1×10-3を上回る。さらに、本発明2A、2B、および2Cによる三つの液体抽出物すべてにおいて、(β-イオノン+β-ダマセノン)対(4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン+(R,S)-N-ニトロソアナタビン+(R,S)-N-ニトロソアナバシン+N-ニトロソノルニコチン+((2-フランメタノール)/600))の重量比は、一貫してかつ著しく3を上回る。
【国際調査報告】