(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(54)【発明の名称】pH応答性組成物、製剤、及び腫瘍画像化の方法
(51)【国際特許分類】
C08F 293/00 20060101AFI20230119BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20230119BHJP
C08F 20/34 20060101ALI20230119BHJP
C08F 283/06 20060101ALI20230119BHJP
C08K 5/1545 20060101ALI20230119BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20230119BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20230119BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20230119BHJP
C08L 53/00 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
C08F293/00
A61K49/00
C08F20/34
C08F283/06
C08K5/1545
G01N33/483 C
A61B10/00 T
A61B10/00 E
G01N21/64 F
C08L53/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528615
(86)(22)【出願日】2020-11-17
(85)【翻訳文提出日】2022-07-14
(86)【国際出願番号】 US2020060910
(87)【国際公開番号】W WO2021101905
(87)【国際公開日】2021-05-27
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522176078
【氏名又は名称】オンコナノ・メディスン・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,ティアン
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤラクシュミ,ヤリア
(72)【発明者】
【氏名】ホール,キース・エイ
(72)【発明者】
【氏名】マダジュースキ,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】カプラン,ハルギータ
【テーマコード(参考)】
2G043
2G045
4C085
4J002
4J026
4J100
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043BA16
2G043CA07
2G043EA01
2G043EA03
2G043KA02
2G043LA03
2G045AA26
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2G045GC15
4C085HH11
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4J026DB24
4J026EA09
4J100AL08P
4J100AL08Q
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4J100BA31P
4J100BA32P
4J100BA34Q
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4J100BA56Q
4J100BC65Q
4J100CA01
4J100CA04
4J100CA05
4J100FA03
4J100JA53
(57)【要約】
原発性及び転移性腫瘍組織の検出に対して有用な製剤、方法、及びpH応答性組成物が本明細書に記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II):
【化1】
(式中、
X
1はハロゲン、-OH、又は-(O)OHであり、
nは90~140であり、
xは50~200であり、
yは0~3であり、
zは0~3である)
の構造、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、若しくは同位体バリアントを有するブロックコポリマー。
【請求項2】
X
1がハロゲンである、請求項1に記載のブロックコポリマー。
【請求項3】
X
1が-Brである、請求項1又は2に記載のブロックコポリマー。
【請求項4】
nが100~120である、請求項1~3のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項5】
nが113である、請求項1~4のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項6】
xが60~150である、請求項1~5のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項7】
yが0.5~1.5である、請求項1~6のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項8】
yが0である、請求項1~6のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項9】
zが1.5~2.5である、請求項1~7のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項10】
zが0である、請求項1~8のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の1種以上のブロックコポリマーを含む、組成物又はミセル。
【請求項12】
請求項11に記載のミセルを含むpH応答性組成物であって、ミセルがpH遷移点及び発光スペクトルを有する、pH応答性組成物。
【請求項13】
pH遷移点が4.8~5.5の間である、請求項12に記載のpH応答性組成物。
【請求項14】
pH遷移点が約4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、又は5.5である、請求項12に記載のpH応答性組成物。
【請求項15】
発光スペクトルが700~900nmの間である、請求項12~14のいずれか一項に記載のpH応答性組成物。
【請求項16】
1pH単位未満のpH遷移域(ΔpH
10~90%)を有する、請求項12~15のいずれか一項に記載のpH応答性組成物。
【請求項17】
pH遷移域が0.25pH単位未満である、請求項16に記載のpH応答性組成物。
【請求項18】
pH遷移域が0.15pH単位未満である、請求項16に記載のpH応答性組成物。
【請求項19】
25より大きい蛍光活性化比を有する、請求項12~18のいずれか一項に記載のpH応答性組成物。
【請求項20】
50より大きい蛍光活性化比を有する、請求項12~18のいずれか一項に記載のpH応答性組成物。
【請求項21】
請求項1~10のいずれか一項に記載の1種以上のブロックコポリマーを含む造影剤。
【請求項22】
ポリ(エチレンオキシド)-b-ポリ(ジブチルアミノエチルメタクリレート-r-アミノエチルメチルアクリレート塩酸塩)コポリマーインドシアニングリーン及び酢酸コンジュゲートを含む、請求項21に記載の造影剤。
【請求項23】
ミセルを含む医薬組成物であって、ミセルが、
1)式(II):
【化2】
(式中、
X
1はハロゲン、-OH、又は-C(O)OHであり、
nは90~140であり、
xは50~200であり、
yは0~3であり、
zは0~3である)
の構造を有する1種以上のブロックコポリマー、又は薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは水和物、及び
2)安定化剤
を含む、医薬組成物。
【請求項24】
安定化剤が凍結防止剤である、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
安定化剤が糖、糖誘導体、界面活性剤、又は塩である、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項26】
安定化剤が糖誘導体である、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
安定化剤が、単糖、二糖、三糖、水溶性多糖、若しくは糖アルコール、ポリオール、又はこれらの組合せである、請求項25又は請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
安定化剤が、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトース、マンニトール、ソルビトール、リボース、デキストリン、シクロデキストリン、マルトデキストリン、ラフィノース、若しくはキシロース、又はこれらの組合せである、請求項23~27のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
安定化剤がトレハロースである、請求項23~28のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
約0.5%~約25%w/v、約1%~約20%w/v、約5%~約15%w/v、約6%~約13%w/v、約7%~約12%w/v、又は約8%~約11%w/vの安定化剤を含む、請求項23~29のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
約5%w/v、約6%w/v、約7%w/v、約8%w/v、約9%w/v、約10%w/v、約11%w/v、約12%w/v、約13%w/v、約14%w/v、又は約15%w/vの安定化剤を含む、請求項23~29のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
液体担体をさらに含む、請求項23~31のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項33】
液体担体が滅菌水、生理食塩水、2分の1生理食塩水、5%ブドウ糖水溶液(D5W)、乳酸リンゲル液、又はこれらの組合せである、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項34】
液体担体が滅菌水である、請求項32又は請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
約1.0mg/mL~約5.0mg/mLの式(II)のブロックコポリマーを含む、請求項23~34のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項36】
約1mg/mL、約1.5mg/mL、約2mg/mL、約2.5mg/mL、約3mg/mL、約3.5mg/mL、約4mg/mL、約4.5mg/mL、又は約5mg/mLの式(II)のブロックコポリマーを含む、請求項23~34のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項37】
約0.1mg/kg~約3mg/kg、約0.1~約1.2mg/kg、又は約0.5~約7mg/kgの式(II)のブロックコポリマーを含む、請求項23~34のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項38】
約1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、又は約7mg/kgの式(II)のブロックコポリマーを含む、請求項23~34のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項39】
約0.1mg/kg、0.3mg/kg、0.5mg/kg、0.8mg/kg、1mg/kg、1.2mg/kg、1.4mg/kg、1.6mg/kg、1.8mg/kg、2mg/kg、2.5mg/kg、又は3mg/kgの式(II)のブロックコポリマーを含む、請求項23~34のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項40】
1)式(II):
【化3】
(式中、
X
1は-Brであり、
nは90~140であり、
xは60~150であり、
yは0~3であり、
zは0~3である)
の構造を有する、少なくとも約3mg/mLのブロックコポリマー又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは水和物、及び
2)水中約10w/v%のトレハロース
を含む、医薬組成物。
【請求項41】
経口、筋肉内、皮下、腫瘍内、又は静脈内投与用に製剤化されている、請求項1~10及び23~40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項42】
静脈内投与用に製剤化されている、請求項1~10及び23~40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項43】
細胞内又は細胞外環境のpHを画像化する方法であって、
a)細胞内又は細胞外環境を、請求項1~10のいずれか一項に記載のブロックコポリマー又は請求項23~41のいずれか一項に記載の医薬組成物と接触させるステップ、及び
b)前記細胞内又は細胞外環境からの1種以上の光シグナルを検出するステップであって、検出された光シグナルは、式(II)の1種以上のブロックコポリマーを含むミセルがそのpH遷移点に到達し、分離したことを示す、ステップ
を含む、方法。
【請求項44】
細胞外環境が血管内又は血管外である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
細胞内又は細胞外環境のpHの画像化が転移性疾患の画像化を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
細胞内又は細胞外環境のpHの画像化が腫瘍環境のpHの画像化を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
腫瘍環境のpHの画像化がリンパ節又は複数のリンパ節の画像化を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
リンパ節又は複数のリンパ節の画像化が、腫瘍の外科的摘除又は腫瘍転移のステージングの情報を提供する、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
腫瘍環境のpHの画像化が、腫瘍サイズの決定を可能にする、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
腫瘍環境のpHの画像化が、腫瘍の縁の決定を可能にする、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
腫瘍環境のpHの画像化が、手術中の腫瘍のより正確な除去を可能にする、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
腫瘍環境のpHの画像化が、衛星腫瘍、多病巣性腫瘍、又は潜在性腫瘍の決定を可能にする、請求項46に記載の方法。
【請求項53】
腫瘍環境のpHの画像化が、残留する転移性疾患の検出を可能にする、請求項46に記載の方法。
【請求項54】
リンパ節又は節の画像化が、手術中のリンパ節又は複数のリンパ節のより正確な除去を可能にする、請求項46に記載の方法。
【請求項55】
手術前に、必要とする患者に医薬組成物を投与するステップを含む、請求項43~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
手術が腫瘍摘除である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
腫瘍環境のpHの画像化が患者管理の情報を提供する、請求項46に記載の方法。
【請求項58】
腫瘍の摘除を必要とする患者において腫瘍を摘除する方法であって、
a)請求項1~10のいずれか一項に記載のブロックコポリマー又は請求項23~41のいずれか一項に記載の医薬組成物の有効用量が投与された患者から得た腫瘍又はその試料から、1種以上の光シグナルを検出するステップであって、検出した光シグナルが腫瘍の存在を示す、ステップ、及び
b)手術を介して前記腫瘍を摘除するステップ
を含む、方法。
【請求項59】
1種以上の光シグナルが蛍光シグナルである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
腫瘍が少なくとも90%摘除される、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
腫瘍が少なくとも95%摘除される、請求項58に記載の方法。
【請求項62】
腫瘍が少なくとも99%摘除される、請求項58に記載の方法。
【請求項63】
腫瘍が固形腫瘍である、請求項58~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
腫瘍が非固形腫瘍である、請求項58~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
固形又は非固形腫瘍ががん由来である、請求項63又は請求項64に記載の方法。
【請求項66】
がんが、乳がん、頭頸部扁平上皮癌(NHSCC)、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、尿道がん、食道がん、脳がん、膵臓がん、皮膚がん、黒色腫、肉腫、胸膜転移、腎臓がん、リンパ節がん、子宮頸がん、又は直腸結腸がんである、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
がんが、乳がん、頭頸部扁平上皮癌(NHSCC)、食道がん、卵巣がん、前立腺がん、又は直腸結腸がんである、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
医薬組成物が注射又は点滴として投与される、請求項58~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
医薬組成物が単回用量又は複数回用量として投与される、請求項58~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
医薬組成物が、手術の、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも4時間、少なくとも6時間、少なくとも8時間、少なくとも10時間、少なくとも12時間、少なくとも14時間、少なくとも16時間、少なくとも18時間、少なくとも20時間、少なくとも24時間、少なくとも28時間、少なくとも32時間、少なくとも80時間、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも7日、少なくとも1週間、又は少なくとも2週間前に投与される、請求項58~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
医薬組成物が、手術の、約1時間~約32時間、約2時間~約32時間、16時間~約32時間、約20時間~約28時間、約1時間~約5時間、又は約3時間~約9時間前に投与される、請求項58~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
がんを治療する方法であって、
a)請求項1~10のいずれか一項に記載のブロックコポリマー又は請求項23~41のいずれか一項に記載の医薬組成物の有効用量が投与された、がんの治療を必要とするがん患者において、1種以上の光シグナルを検出するステップであって、検出された光シグナルががん性腫瘍の存在を示す、ステップ、及び
b)前記がん性腫瘍を除去し、これによって前記がんを治療するステップ。
を含む、方法。
【請求項73】
がん患者の体腔を画像化するステップ、又はがん性腫瘍若しくはそのスライス若しくは試料(例えば新鮮な又はホルマリン固定)を画像化するステップをさらに含み、任意選択的に、患者からの除去後、バックテーブルでの蛍光誘導画像化によってなされる、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
がん性腫瘍を検出する方法であって、
a)請求項1~10のいずれか一項に記載のブロックコポリマー又は請求項23~41のいずれか一項に記載の医薬組成物の有効用量が投与された、がん性腫瘍の検出を必要とするがん患者において、1種以上の光シグナルを検出するステップであって、検出した光シグナルが前記がん性腫瘍の存在を示す、ステップ
を含む、方法。
【請求項75】
少なくとも5年間、がんの再発を最小限に抑える方法であって、
a)請求項1~10のいずれか一項に記載のブロックコポリマー又は請求項23~41のいずれか一項に記載の医薬組成物の有効用量が投与された、がんの再発を最小限に抑える必要のあるがん患者において、1種以上の光シグナルを検出するステップであって、検出した光シグナルががん性腫瘍の存在を示し、前記腫瘍の存在が前記がんの再発を示す、ステップ、及び
b)前記1種以上の光シグナルが検出された場合、前記がんを治療治療して、前記再発を最小限に抑えるステップ
を含む方法。
【請求項76】
腫瘍を摘除することをさらに含む、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
がんが、乳がん、頭頸部扁平上皮癌(NHSCC)、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、尿道がん、食道がん、脳がん、膵臓がん、皮膚がん、黒色腫、肉腫、胸膜転移、腎臓がん、リンパ節がん、子宮頸がん、又は直腸結腸がんである、請求項72~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
がんが、乳がん、頭頸部扁平上皮癌(NHSCC)、食道がん、卵巣がん、前立腺がん、又は直腸結腸がんである、請求項72~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
医薬組成物が、患者の画像化の、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも4時間、少なくとも6時間、少なくとも8時間、少なくとも10時間、少なくとも12時間、少なくとも14時間、少なくとも16時間、少なくとも18時間、少なくとも20時間、少なくとも24時間、少なくとも28時間、少なくとも32時間、少なくとも80時間、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも1週間、又は少なくとも2週間前に投与される、請求項72~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
医薬組成物が、患者の画像化の、約1時間~約32時間、約2時間~約32時間、16時間~約32時間、約20時間~約28時間、約1時間~約5時間、又は約3時間~約9時間前に投与される、請求項72~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
医薬組成物が注射又は点滴として投与される、請求項72~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
医薬組成物が単回用量又は複数回用量として投与される、請求項72~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
術中カメラ、近赤外線カメラ、又は内視鏡カメラを含む、がん患者の画像化をさらに含む、請求項72~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
必要とする患者がヒト患者である、請求項58~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
必要とする患者が、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ウサギ、又はブタの患者である、請求項58~84のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、その全体を参照により本明細書に組み込む、2019年11月18日に出願した米国仮出願第62/937,141号の利益を主張する。
【0002】
連邦政府資金による研究に関する記述
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)によりCA217528の下で授与された政府の支援を用いて作られた。政府は本発明においてある特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
がんと診断された新規がん症例はおよそ170万件と予想され、2019年には、およそ61万人のアメリカ人ががんで死亡すると予想されている。有効な造影剤が原発性及び転移性腫瘍組織の検出に必要とされる。
【0004】
すべてのステージの固形がんに対する治療ガイドラインは、原発性腫瘍、並びにリスクのある又は関与するリンパ節の外科的除去を顕著に含む。これら腫瘍の種類の間には生物学的及び解剖学的な差異があるにもかかわらず、術後の縁の状態は、局所的腫瘍制御の最も重要な予後因子の1つであり、したがって疾患の再発又は腫瘍転移が生じる機会である。
【0005】
固形腫瘍の外科的切除は、腫瘍学的有効性と、正常組織の摘除、よって機能的病的状態の最小化との間のバランス並びに美容術である。これはまた、診断用及び治療上の目的のために、多くの場合、原発性がんの除去と同時に実施されるリンパ節切除にも当てはまる。リンパ節転移の存在又は不在は、消化管がん、乳がん、及び多くの他の固形がんに対して生存の最も重要な決定因子である。ステージング用に使用される健康診断又は画像化様式は、拡大した又は異常な節を成功裏に検出し、外科治療プランの助けとなるが、高いパーセンテージの患者については、リンパ節転移は現行の方法で検出するには小さすぎるレベルで存在し、これがステージングの過小診断をもたらしている。潜在性リンパ節転移は一般的であるため、選択的局部的結節解離及び組織学的検査は、特に局所的に進行している場合、多くの固形がんに対する標準治療である。これは、治療に関係した病的状態が生じる有意な可能性と共に過剰な治療をもたらす。
【0006】
光学的画像化戦略は、細胞画像化、自然の自己蛍光及びラマン散乱に基づき、術中に組織を画像化するように急速に適合されている。光学的画像化は手術中のリアルタイムフィードバックに対する可能性を提供し、手術野の幅広い視野を提供する様々なカメラシステムが容易に入手可能である。発がん遺伝子型及び組織学的表現型の多様性により、手術中に遭遇する複雑性を克服する1つの戦略は、がんの至る所に存在する代謝脆弱性を標的とすることである。がん細胞がグルコースを優先的に取り込み、これを乳酸に変換するワールブルグ効果として公知の好気性解糖は、すべての固形がんに生じ、このような標的の1つに相当する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ある場合には、本明細書で提示された組成物は、固形がんに対する共通のバイオマーカーとしてpHを利用し、その場合、細胞により取り込まれた後、がん組織と正常組織との間の遍在的なpHの差異が高感度で特異的な蛍光応答を提供し、よって、腫瘍組織、腫瘍の縁、並びにリンパ節及び腹膜転移を含む転移性腫瘍の検出を可能にする。
【0008】
ある場合には、本明細書に記載される化合物は、原発性及び転移性腫瘍組織(リンパ節を含む)の検出に有用な造影剤である。手術中のリアルタイム蛍光画像化は、陰性の縁及び完全な腫瘍摘除を達成することをゴールとして、外科医が腫瘍組織対正常組織の線引きをすること、並びに転移性リンパ節を検出することを援助する。手術結果の改善から得られる臨床上の利益として、例えば、腫瘍再発及び再手術率の減少、不必要な手術の回避、機能の保存、美容術、及び患者治療プランの情報提供が挙げられる。
【0009】
ある特定の実施形態では、式(II):
【0010】
【化1】
(式中、n=90~140であり、xは50~200であり、yは0~3であり、zは0~3であり、X
1はハロゲン、-OH、又は-C(O)OHである)
のブロックコポリマー、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは水和物が本明細書で提供される。
【0011】
一部の実施形態では、X1はハロゲンである。一部の実施形態では、X1は-Brである。一部の実施形態では、nは100~120である。一部の実施形態では、nは113である。一部の実施形態では、xは60~150である。一部の実施形態では、yは0.5~1.5である。一部の実施形態では、yは0である。一部の実施形態では、zは1.5~2.5である。一部の実施形態では、zは0である。
【0012】
ある特定の実施形態では、式(II)の1種以上のブロックコポリマー、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは水和物を含むミセルが本明細書に提供される。
【0013】
ある特定の実施形態では、pH遷移点及び発光スペクトルを含むpH応答性組成物が本明細書に提供される。一部の実施形態では、pH遷移点は4.8~5.5の間である。一部の実施形態では、pH遷移点は約4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、又は5.5である。一部の実施形態では、発光スペクトルは700~900nmの間である。一部の実施形態では、組成物は1pH単位未満のpH遷移域(ΔpH10-90%)を有する。一部の実施形態では、pH遷移域は0.25pH単位未満である。一部の実施形態では、pH遷移域は0.15pH単位未満である。一部の実施形態では、組成物は25より大きい蛍光活性化比を有する。一部の実施形態では、組成物は50より大きい蛍光活性化比を有する。
【0014】
ある特定の実施形態では、式(II)の構造を有する1種以上のブロックコポリマー、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは水和物を含む造影剤が本明細書に提供される。一部の実施形態では、造影剤はポリ(エチレンオキシド)-b-ポリ(ジブチルアミノエチルメタクリレート-r-アミノエチルメチルアクリレート塩酸塩)コポリマーインドシアニングリーン及び酢酸コンジュゲートを含む。
【0015】
ある特定の実施形態では、ミセルを含む医薬組成物であって、ミセルが、1)式(II):
【0016】
【化2】
(式中、nは90~140であり、xは50~200であり、yは0~3であり、zは0~3であり、X
1はハロゲン、-OH、又は-C(O)OHである)
の構造を有する1種以上のブロックコポリマー、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは水和物、及び2)安定化剤を含む、医薬組成物が本明細書に提供される。
【0017】
一部の実施形態では、安定化剤は凍結防止剤である。一部の実施形態では、安定化剤は糖、糖誘導体、界面活性剤又は塩である。一部の実施形態では、安定化剤は単糖、二糖、三糖、水溶性多糖、若しくは糖アルコール、又はこれらの組合せである。一部の実施形態では、安定化剤はフルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトース、マンニトール、ソルビトール、リボース、デキストリン、シクロデキストリン、マルトデキストリン、ラフィノース、若しくはキシロース、又はこれらの組合せである。一部の実施形態では、安定化剤はトレハロースである。
【0018】
一部の実施形態では、医薬組成物は、約0.5%~約25%w/v、約1%~約20%w/v、約5%~約15%w/v、約6%~約13%w/v、約7%~約12%w/v、又は約8%~約11%w/vの安定化剤を含む。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、約5%w/v、約6%w/v、約7%w/v、約8%w/v、約9%w/v、約10%w/v、約11%w/v、約12%w/v、約13%w/v、約14%w/v、又は約15%w/vの安定化剤を含む。
【0019】
一部の実施形態では、医薬組成物は液体又は水性担体をさらに含む。一部の実施形態では、液体担体は、滅菌水、生理食塩水、D5W、又は乳酸リンゲル液から選択される。
【0020】
一部の実施形態では、医薬組成物は、約1.0mg/mL~約5.0mg/mLの式(II)のブロックコポリマーを含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約0.1mg/kg~約3mg/kg又は約0.1~約1.2mg/kgの式(II)のブロックコポリマーを含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、又は約7mg/kgの式(II)のブロックコポリマーを含む。一部の実施形態では、組成物は、約0.1mg/kg、0.3mg/kg、0.5mg/kg、0.8mg/kg、1mg/kg、1.2mg/kg、1.4mg/kg、1.6mg/kg、1.8mg/kg、2mg/kg、2.5mg/kg、又は3mg/kgの式(II)のブロックコポリマーを含む。
【0021】
別の態様では、約3mg/mLの式(II):
【0022】
【化3】
(式中、nは90~140であり、xは60~150であり、yは0~3であり、zは0~3であり、X
1はBrである)
の構造を有するブロックコポリマー、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは水和物、及び水中約10%w/vトレハロースを含む医薬組成物が本明細書に提供される。一部の実施形態では、医薬組成物は、経口、筋肉内、皮下、腫瘍内、又は静脈内投与用に製剤化される。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、静脈内(I.V.)投与用に製剤化される。
【0023】
別の態様では、細胞内又は細胞外環境のpHを画像化する方法であって、(a)本開示の医薬組成物を環境と接触させるステップ、及び(b)環境から1種以上の光シグナルを検出するステップであって、検出した光シグナルは、ミセルがそのpH遷移点に到達し、分離したことを示す、ステップを含む方法が本明細書に提供される。一部の実施形態では、光シグナルは蛍光シグナルである。一部の実施形態では、細胞内環境は画像化され、細胞は、pH応答性組成物の取り込みを引き起こすのに適切な条件下で、pH応答性組成物と接触させられる。一部の実施形態では、細胞内環境は細胞の一部である。一部の実施形態では、細胞外環境は腫瘍又は血管系細胞の環境である。一部の実施形態では、細胞外環境は血管内又は血管外である。一部の実施形態では、腫瘍は固形腫瘍である。一部の実施形態では、腫瘍はがん性のものであり、がんは、乳房、結腸直腸、膀胱、食道、頭頸部(HNSSC)、肺、脳、前立腺、卵巣、又は皮膚(黒色腫及び肉腫を含む)のがんである。
【0024】
別の態様では、患者において腫瘍を摘除する方法であって、(a)本明細書に記載される医薬組成物の有効用量が投与された患者から得た腫瘍又はその試料から、1種以上の光シグナルを検出するステップであって、検出した光シグナルが腫瘍の存在を示す、ステップ、及び(b)手術を介して前記腫瘍を摘除するステップを含む方法が本明細書に提供される。一部の実施形態では、光シグナルは腫瘍の縁を示す。一部の実施形態では、腫瘍は少なくとも90%、95%、又は99%摘除される。一部の実施形態では、がんは、乳がん、頭頸部扁平上皮癌(NHSCC)、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、尿道がん、食道がん、脳がん、膵臓がん、皮膚がん、黒色腫、肉腫、胸膜転移、腎臓がん、リンパ節がん、子宮頸がん、又は直腸結腸がんである。一部の実施形態では、がんは、乳がん、頭頸部扁平上皮癌(NHSCC)、食道がん、直腸結腸がん、卵巣がん、又は前立腺がんである。
【0025】
一部の実施形態では、本明細書で開示されている医薬組成物は手術前に投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は腫瘍又はリンパ節を画像化する前に投与される。一部の実施形態では、本明細書で開示されている医薬組成物は臨床成績についての患者管理前に投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、手術の、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも4時間、少なくとも6時間、少なくとも8時間、少なくとも10時間、少なくとも12時間、少なくとも14時間、少なくとも16時間、少なくとも18時間、少なくとも20時間、少なくとも24時間、少なくとも28時間、少なくとも32時間、少なくとも80時間、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも1週間、又は少なくとも2週間前に投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、手術の、約1時間~約32時間、約2時間~約32時間、16時間~約32時間、約20時間~約28時間、約1時間~約5時間、又は約3時間~約9時間前に投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は注射又は点滴として投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は単回用量又は複数回用量として投与される。
【0026】
別の態様では、がんを治療する方法であって、(a)本明細書に記載される医薬組成物の有効用量が投与されたそれを必要とするがん患者において、1種以上の光シグナルを検出するステップであって、検出した光シグナルががん性腫瘍の存在を示す、ステップを含む方法が本明細書に提供される。一部の実施形態では、本方法はがん患者の体腔を画像化するステップ、又はがん性腫瘍若しくはそのスライス若しくは試料(例えば、新鮮又はホルマリン固定された)を画像化するステップをさらに含み、任意選択的にこれは、患者からの除去後、バックテーブルの蛍光誘導画像化によってなされる。
【0027】
別の態様では、少なくとも5年間がんの再発を最小限に抑える方法であって、(a)本明細書で開示されている医薬組成物の有効用量が投与されたそれを必要とするがん患者において、1種以上の光シグナルを検出するステップであって、検出した光シグナルががん性腫瘍の存在を示し、腫瘍の存在ががんの再発を示す、ステップ、及び(b)1種以上の光シグナルが検出された場合、がんを治療して、再発を最小限に抑えるステップを含む方法が本明細書に提供される。一部の実施形態では、本方法は腫瘍を摘除することをさらに含む。一部の実施形態では、がんは、乳がん、頭頸部扁平上皮癌(NHSCC)、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、尿道がん、食道がん、直腸結腸がん、脳がん、又は皮膚がんである。一部の実施形態では、がんは、乳がん、頭頸部扁平上皮癌(NHSCC)、食道がん、胸膜転移、腎臓がん、リンパ節がん、子宮頸がん、膵臓がん、又は直腸結腸がんである。一部の実施形態では、医薬組成物は患者を画像化する少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも4時間、少なくとも6時間、少なくとも8時間、少なくとも10時間、少なくとも12時間、少なくとも14時間、少なくとも16時間、少なくとも18時間、少なくとも20時間、少なくとも24時間、少なくとも28時間、少なくとも32時間、少なくとも80時間、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも1週間、又は少なくとも2週間前に投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、患者を画像化する約1時間~約32時間、約2時間~約32時間、16時間~約32時間、約20時間~約28時間、約1時間~約5時間、又は約3時間~約9時間前に投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は注射又は点滴として投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は単回用量又は複数回用量として投与される。一部の実施形態では、がん患者の画像化をさらに含む本方法は、術中カメラ又は内視鏡カメラを含む。一部の実施形態では、必要とする患者はヒト患者である。一部の実施形態では、必要とする患者はイヌ、ネコ、雌ウシ、ウマ、ブタ、又はウサギの患者である。
【0028】
本明細書に記載されるブロックコポリマー、方法及び組成物の他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかとなる。しかし、詳細な説明及び具体例は、特定の実施形態を示すものであり、これらは例示のみとして付与されており、本発明の開示の趣旨及び範囲内で様々な変更及び修正がこの詳細な説明から当業者に明らかとなることを理解されたい。
【0029】
参照による組込み
それぞれ個々の刊行物、特許、又は特許出願を参照により組み込むことが具体的及び個々に示されているかのように、本明細書に記述されているすべての刊行物、特許、及び特許出願を参照により本明細書に組み込む。
【0030】
本開示の様々な態様は、添付の特許請求の範囲において特殊性と共に記載される。本開示の原理が利用されている例示的実施形態を記載している以下の詳細な説明及び以下の添付の図を参照すれば、本開示の特徴及び利点のより良い理解が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1A】0.1、0.3、0.5、0.8、又は1.2mg/kgの化合物1を含む医薬組成物の単回静脈内投与後の第1a相の平均血漿濃度対時間を示す。平均血漿濃度(LOG)対時間を示す。
【
図1B】0.1、0.3、0.5、0.8、又は1.2mg/kgの化合物1を含む医薬組成物の単回静脈内投与後の第1a相の平均血漿濃度対時間を示す。直線的平均血漿濃度対時間を示す。
【
図2】化合物1に対する、10分(C
10m)での医薬組成物の平均血漿濃度及び用量との間の相関関係を開示する。
【
図3】化合物1に対する、平均AUC
0~24hr及び用量との間の相関関係を開示する。
【
図4A】1.2mg/kgの化合物1を含む医薬組成物の単回静脈内投与後の第1b相の対象(患者)の血漿濃度対時間を示す。患者の血漿濃度(Log)対時間に対する平均血漿濃度の用量を示す。
【
図4B】1.2mg/kgの化合物1を含む医薬組成物の単回静脈内投与後の第1b相の対象(患者)の血漿濃度対時間を示す。患者の血漿濃度(直線)対時間を示す。
【
図5A】0.1、0.3、0.5、0.8、又は1.2mg/kgの化合物1を含む医薬組成物の単回静脈内投与後の第1a相及び第1b相の平均血漿濃度対時間を示す。用量ごとの、第1a相及び第1b相の平均血漿濃度(Log)対時間を示す。
【
図5B】0.1、0.3、0.5、0.8、又は1.2mg/kgの化合物1を含む医薬組成物の単回静脈内投与後の第1a相及び第1b相の平均血漿濃度対時間を示す。用量ごとの、第1a相及び第1b相の平均血漿濃度(直線)対時間を示す。
【
図6】第1a相及び第1b相の10分の時点での化合物1の(±SD)平均血漿濃度対用量を示す。
【
図7】第1a相及び第1b相の平均(±SD)AUC
0~24hr対用量を示す。
【
図8A】腫瘍の種類による化合物1の平均血漿濃度を示す。腫瘍の種類による第1a相(1.2mg/kg)及び第1b相の平均血漿濃度(Log)対時間を示す。
【
図8B】腫瘍の種類による化合物1の平均血漿濃度を示す。腫瘍の種類による第1a相(1.2mg/kg)及び第1b相の平均血漿濃度(直線)対時間を示す。
【
図8C】腫瘍の種類による化合物1の平均血漿濃度を示す。乳がんにおける第1a相(1.2mg/kg)及び第1b相の患者の血漿濃度(Log)対時間を示す。
【
図8D】腫瘍の種類による化合物1の平均血漿濃度を示す。直腸結腸がん腫瘍における第1a相(1.2mg/kg)及び第1b相の患者の血漿濃度(Log)対時間を示す。
【
図8E】腫瘍の種類による化合物1の平均血漿濃度を示す。食道がん腫瘍における第1a相(1.2mg/kg)及び第1b相の患者の血漿濃度(Log)対時間を示す。
【
図8F】腫瘍の種類による化合物1の平均血漿濃度を示す。頭頸部(HNSCC)腫瘍における第1a相(1.2mg/kg)及び第1b相の個々の血漿濃度(Log)対時間を示す。
【
図8G】腫瘍の種類による化合物1の平均血漿濃度を示す。乳がん腫瘍における第1a相(1.2mg/kg)及び第1b相の患者の血漿濃度(直線)対時間を示す。
【
図8H】腫瘍の種類による化合物1の平均血漿濃度を示す。直腸結腸がん腫瘍における第1a相(1.2mg/kg)及び第1b相の患者の血漿濃度(直線)対時間を示す。
【
図8I】腫瘍の種類による化合物1の平均血漿濃度を示す。食道がん腫瘍における第1a相(1.2mg/kg)及び第1b相の患者の血漿濃度(直線)対時間を示す。
【
図8J】腫瘍の種類による化合物1の平均血漿濃度を示す。HNSCC腫瘍における第1a相(1.2mg/kg)及び第1b相の患者の血漿濃度(直線)対時間を示す。
【
図9A】0.5mg/kgの化合物1を投薬した3人の患者からの、NOVADAQ SPY Eliteカメラを使用して画像化した術中画像を示す。左列は白色光画像を示し、右列は蛍光画像を示す。
【
図9B】1.2mg/kgの化合物1を投薬した3人の患者からの、NOVADAQ SPY Eliteカメラを使用して画像化した術中画像を示す。左列は白色光画像を示し、右列は蛍光画像を示す。
【
図10A】LI-COR Pearlカメラを使用して、0.5mg/kgの化合物1を投薬した3人の患者の術後試料を撮った画像を示す。
【
図10B】LI-COR Pearlカメラを使用して、1.2mg/kgの化合物1を投薬した3人の患者の術後試料を撮った画像を示す。
【
図11A】コントラスト対ノイズ(CNR)の蛍光強度コントラスト比を示す。
【
図11B】腫瘍対バックグランド(TBR)の蛍光強度コントラスト比を示す。
【
図12A】試料(ホルマリン固定(FF)又は新鮮)の組織像を確認した腫瘍及び正常組織の術後平均蛍光強度対用量を示す。
【
図12B】試料(ホルマリン固定(FF)又は新鮮)の組織像を確認した腫瘍及び正常組織の術後平均蛍光強度対初期血漿濃度を示す。
【
図13A】5つの用量レベルでの15人のすべての患者に対して病理学者が選択したブレッドローフスライス(ホルマリン固定(FF)又は新鮮)の、組織像を確認した腫瘍領域及び正常領域から得た術後平均蛍光強度を使用して計算したCNR蛍光比を示す。
【
図13B】5つの用量レベルでの15人のすべての患者に対して病理学者が選択したブレッドローフスライス(ホルマリン固定(FF)又は新鮮)の、組織像を確認した腫瘍領域及び正常領域から得た術後平均蛍光強度を使用して計算したTBR蛍光比を示す。
【
図14】試験設計を示す。化合物1の静脈内投与を手術の24時間(±8時間)前に実施した。10日間の安全性評価(試験室、PK、ECG)がその後続き、有害事象を17日目までモニターした(a)。手術中、術中画像を手術腔の切開前及び切除後に得た(b)。切除の直後、試料は陽性の手術の縁の存在に対して画像化した(c)。すべての標準的な病理検査プロセシングフェーズの間に、蛍光画像を得て(d、e)、H/Eスライスを標準的組織病理検査スライスと相関させた(f~h)。ECG 心電図、H/E ヘマトキシリンエオシン、SOC 標準治療。
【
図15-1】異なる腫瘍組織スライスの蛍光画像を示す。舌の頭頸部扁平上皮細胞がん(a~f);乳がん(g~l);食道がん(m~r);直腸結腸がん(s~x)。腫瘍はH/Eスライスにおいて黒の実線で線引きされている(c、i、o、u)。腫瘍の種類ごとの腫瘍組織及び非腫瘍組織スライスの平均蛍光強度(MFI)が示されている(y)。ドットは1.2mg/kgコホートからの単一組織スライス(対象1人当たり約3枚の薄片)のMFIを表す。HNSCC、7人の対象、P<0.0001;BC、5人の対象、P=0.0001;EC、3人の対象、P=0.0010;及びウィルコックステスト、両側性。CRC、3人の対象。入手可能なデータ点が3つのみであったため、統計は実施されなかった。
【
図15-2】異なる腫瘍組織スライスの蛍光画像を示す。舌の頭頸部扁平上皮細胞がん(a~f);乳がん(g~l);食道がん(m~r);直腸結腸がん(s~x)。腫瘍はH/Eスライスにおいて黒の実線で線引きされている(c、i、o、u)。腫瘍の種類ごとの腫瘍組織及び非腫瘍組織スライスの平均蛍光強度(MFI)が示されている(y)。ドットは1.2mg/kgコホートからの単一組織スライス(対象1人当たり約3枚の薄片)のMFIを表す。HNSCC、7人の対象、P<0.0001;BC、5人の対象、P=0.0001;EC、3人の対象、P=0.0010;及びウィルコックステスト、両側性。CRC、3人の対象。入手可能なデータ点が3つのみであったため、統計は実施されなかった。
【
図15-3】異なる腫瘍組織スライスの蛍光画像を示す。舌の頭頸部扁平上皮細胞がん(a~f);乳がん(g~l);食道がん(m~r);直腸結腸がん(s~x)。腫瘍はH/Eスライスにおいて黒の実線で線引きされている(c、i、o、u)。腫瘍の種類ごとの腫瘍組織及び非腫瘍組織スライスの平均蛍光強度(MFI)が示されている(y)。ドットは1.2mg/kgコホートからの単一組織スライス(対象1人当たり約3枚の薄片)のMFIを表す。HNSCC、7人の対象、P<0.0001;BC、5人の対象、P=0.0001;EC、3人の対象、P=0.0010;及びウィルコックステスト、両側性。CRC、3人の対象。入手可能なデータ点が3つのみであったため、統計は実施されなかった。
【
図16】異なる腫瘍の種類における術後組織試料を用いた化合物1の蛍光結果を示す。画像は、陰性手術の縁を有する対象からの舌の頭頸部扁平上皮癌の代表的な例を示している。腫瘍内の蛍光のインビボ及びエクスビボでの可視化(a、c、g、i)を示し、手術腔内、又は外科的摘除箇所には蛍光シグナルは存在しない(b、h、d、j)。組織スライス上の蛍光シグナルと、腫瘍陰性の手術の縁6.4mmを有する組織像(e、k、f)との相関関係を示す。腫瘍陽性の手術の縁を有する乳がん手術(すなわち腫瘍摘出手術)の代表的な例(l、m、n、o)を示す。蛍光はインビボと、切除直後の両方の腹部の手術の縁で検出され(r、s、t、u)、これは組織スライス上の蛍光局在化(p、v)及び最終組織病理検査(q)に対応している。腫瘍は、H/Eスライス上に黒の実線として線引きされている(f、q)。H/E ヘマトキシリンエオシン、SOC 標準治療。
【
図17-1】HNSCC及びBCに対する臨床関連画像を示す。(a~c)は術中に検出された腹膜転移(PM)を示す。(d~f)は、下顎の頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)摘除後に、手術腔内で検出された追加の腫瘍病変を示す。(g~i)は唾液腺組織からの偽陽性蛍光病変を示す。(j~o)は、原発性腫瘍病変の追加の衛星転移が2人のBC対象において検出され、最終組織病理学的検査において確認されたことを示す。(p~r)は、手術前及び手術中には検出されなかったトリプルネガティブ乳がんを示す、BC対象からの新鮮な組織スライスに追加の原発性腫瘍病変が検出されたことを示す。(c、f、l、o、r)は、腫瘍がH/Eスライドにおいて黒の実線として線引きされていることを示す。(i)は、偽陽性が生存腫瘍組織を含有しなかったことを示す。
【
図17-2】HNSCC及びBCに対する臨床関連画像を示す。(a~c)は術中に検出された腹膜転移(PM)を示す。(d~f)は、下顎の頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)摘除後に、手術腔内で検出された追加の腫瘍病変を示す。(g~i)は唾液腺組織からの偽陽性蛍光病変を示す。(j~o)は、原発性腫瘍病変の追加の衛星転移が2人のBC対象において検出され、最終組織病理学的検査において確認されたことを示す。(p~r)は、手術前及び手術中には検出されなかったトリプルネガティブ乳がんを示す、BC対象からの新鮮な組織スライスに追加の原発性腫瘍病変が検出されたことを示す。(c、f、l、o、r)は、腫瘍がH/Eスライドにおいて黒の実線として線引きされていることを示す。(i)は、偽陽性が生存腫瘍組織を含有しなかったことを示す。
【
図18A】化合物1の腫瘍特異的な活性化を確認するための蛍光顕微鏡法について記載している。切除直後に新たに凍結したHNSCC試料の組織切片上に化合物1をスプレーした後、エクスビボで実施した蛍光顕微鏡法を示す。DAPIを核染色用に(a)及び蛍光可視化用(b)に化合物1に塗布した。腫瘍と間質組織との間の蛍光のシャープな線引きが観察され(c)、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した対応する組織病理学的組織切片(d)と相関した。
【
図18B】化合物1の腫瘍特異的な活性化を確認するための蛍光顕微鏡法について記載している。ヒト血漿における化合物1のpH依存性活性化を示す。増加する量の化合物1をヒト血漿に加えても、いかなる蛍光の増加は示さなかった。プロトンを血漿に供給するために、HClを用いて試験を繰り返した場合、増加する量のインタクトな化合物1を加えると蛍光が増加した。これはアシドーシスが化合物1を活性化させ、よって蛍光を用量依存性方式で活性化させることを示唆している。RFU:相対蛍光単位。
【
図19A】蛍光手術の縁の評価を最終組織病理学結果と相関させる。蛍光誘導手術中の手術の縁の術中評価は、バックテーブルでの手術腔の術中蛍光画像化又は切除した試料の蛍光画像化のいずれかにより行うことができる。最終組織病理学は、乳がん対象(a)及び頭頸部扁平上皮癌対象(b)の蛍光画像と相関する。
【
図19B】蛍光手術の縁の評価を最終組織病理学結果と相関させる。蛍光誘導手術中の手術の縁の術中評価は、バックテーブルでの手術腔の術中蛍光画像化又は切除した試料の蛍光画像化のいずれかにより行うことができる。最終組織病理学は、乳がん対象(a)及び頭頸部扁平上皮癌対象(b)の蛍光画像と相関する。
【
図20A】腫瘍組織と非腫瘍組織との間での用量非依存的平均蛍光強度の分離について記載している。1kg当たり0.1mgのコホートから得た腫瘍及び非腫瘍組織の平均蛍光強度(MFI)、P=0.0005、Wilcoxon試験、両側性。ドットは単一組織スライスのMFIを表す。
【
図20B】腫瘍組織と非腫瘍組織との間での用量非依存的平均蛍光強度の分離について記載している。1kg当たり0.3mgのコホートから得た腫瘍及び非腫瘍組織の平均蛍光強度(MFI)、P=0.0078、Wilcoxon試験、両側性。ドットは単一組織スライスのMFIを表す。
【
図20C】腫瘍組織と非腫瘍組織との間での用量非依存的平均蛍光強度の分離について記載している。1kg当たり0.5mgのコホートから得た腫瘍及び非腫瘍組織の平均蛍光強度(MFI)、P=0.0020、Wilcoxon試験、両側性。ドットは単一組織スライスのMFIを表す。
【
図20D】腫瘍組織と非腫瘍組織との間での用量非依存的平均蛍光強度の分離について記載している。1kg当たり0.8mgのコホートから得た腫瘍及び非腫瘍組織の平均蛍光強度(MFI)、P=0.0078、Wilcoxon試験、両側性。ドットは単一組織スライスのMFIを表す。
【
図20E】腫瘍組織と非腫瘍組織との間での用量非依存的平均蛍光強度の分離について記載している。1kg当たり1.2mgのコホートから得た腫瘍及び非腫瘍組織の平均蛍光強度(MFI)、P<0.0001、Wilcoxon試験、両側性。ドットは単一組織スライスのMFIを表す。
【
図20F】レシーバーオペレーター特徴曲線は、1kg当たり1.2mgの用量コホートから得た腫瘍及び正常組織のMFI計算値に基づく、P<0.0001;曲線下面積0.9875、n=59、ウィルソン/ブラウン方法を使用した信頼区間95%。ROCレシーバーオペレーター曲線、AUC曲線下面積。**P≦0.01;***P≦0.001;****P≦0.0001。
【
図21】化合物1の蛍光を使用したインビボ画像化を示す。化合物1蛍光を使用した、インビボ画像化データの代表的な例である。中心部の壊死性潰瘍を有する大きな舌癌を、化合物1を使用してインビボで視覚化した(a)。右下顎/口腔底に位置するがんを、化合物1を使用してインビボで視覚化した(b)。中心部に壊死性潰瘍を有する大きな舌癌を、化合物1を使用して視覚化した(c)。大規模な腹膜転移を有する結腸直腸癌を、化合物1を使用してインビボで視覚化した(d)。
【
図22】乳がん及びHNSCC腫瘍の、化合物1の投薬から3~9時間及び1~5時間後の蛍光画像化を示す。画像はSPY Elite及びVisionSenseカメラを用いて示されている。
【
図23】最新版ソフトウエア及びハードウエアを用いたDa Vinci Fireflyカメラを使用して、薄い前立腺カプセル剤を介して前立腺がんにおいて化合物1が術中に蛍光を発したことを実証している。病理検査を介して確認した陰性の縁と一致して、手術による創傷床にはいかなる蛍光も検出されなかった。
【
図24】VisionSenseカメラを使用して、卵巣がん(子宮膣部で再発)における化合物1蛍光を実証している。3mg/kgの化合物1の投薬から6±3時間後、切除前のインビボ画像化を実施した。
【
図25】病理検査で確認した腫瘍領域に対応するブレッドローフスライド(BLS)組織試料上の化合物1の蛍光を示す。
【
図26】3~5時間の投薬スケジュールタイミングを用いて、SPY Eliteカメラを使用して、すべての可視BC及びHNSCC腫瘍において化合物1の蛍光が検証されたことを示す。
【
図27】イヌの患者から摘除した肥満細胞腫瘍を示す。化合物1の投与後、イヌ患者から摘除した肥満細胞腫瘍の代表的な白色光(左)及び蛍光画像(右)である。
【
図28A】軟部組織肉腫からの代表的な画像を示す。肥満細胞腫瘍の白色光画像は(A)において明らかである。
【
図28B】軟部組織肉腫からの代表的な画像を示す。切除前に特注の上記NIRカメラを使用して、術中簡単に観察することもできる(B)。
【
図28C】軟部組織肉腫からの代表的な画像を示す。組織の縁と共に摘除した腫瘍の白色光写真が示されている(C)。
【
図28D】軟部組織肉腫からの代表的な画像を示す。LI-COR Pearlで画像化した摘除した腫瘍の対応する蛍光画像は、白色光画像と重ねると、蛍光が白色光解剖学的構造と共局在化していることを示す(D)。摘除した組織の悪性腫瘍を組織病理検査により確認した。
【
図29A】骨肉腫を有するイヌ患者からの代表的な画像を示す。切断した脚の病変の白色光写真を示す;緑色及び黒色の点線は正常組織及びがん組織の場所の断面をそれぞれ示す。
【
図29B】骨肉腫を有するイヌ患者からの代表的な画像を示す。Hamamatsu PDE NIRカメラを使用して撮ったNIR腫瘍画像を示す。
【
図29C】骨肉腫を有するイヌ患者からの代表的な画像を示す。(A)に記載されるように、正常組織(左、小さな方)及びがん組織(右、大きな方)の断面の白色光写真を示す。
【
図29D】骨肉腫を有するイヌ患者からの代表的な画像を示す。(C)に示されている、同じ正常組織(非蛍光)及びがん組織(蛍光組織)の断面のNIR画像を示す。
【
図30】軟部組織肉腫を有するイヌ患者からの代表的な画像を示す。縁を有する、切除した軟部組織肉腫の白色光画像が左側の図に示されており、腫瘍組織の蛍光画像(白色光と重ねた)が右側の図に示されている。組織病理検査で、摘除した組織の悪性腫瘍が確認された。
【
図31】原発性軟組織耳介肉腫を有するイヌ患者からの画像を示す。軟組織耳介肉腫の白色光画像が上段左及び下段左パネルに示されている。Hamamatsu PDEを使用して、切断術後に撮った耳のNIR画像は、皮膚を介して蛍光を発する腫瘍を示す(下段中央のパネル)。耳はまた、コア針生検(それぞれ下段右及び挿入画像)を実施した後、LI-CORシステムを使用して画像化し、残存する蛍光を示している。パンチ生検の組織病理学分析は組織の悪性腫瘍を確認した。
【
図32】原発性軟部組織肉腫及び末端腫瘍に罹患したリンパ節を有するイヌ患者からの画像を示す。上段左パネルの白色光画像は原発性軟部組織肉腫を示す。この塊の外科的除去の間、膝窩リンパ節は拡大していることが認められ(上段右端パネル)、これを除去し、LI-CORを使用して画像化した(真ん中のパネル)。蛍光画像は切断されたリンパ節が罹患していることを示し、これは組織病理検査により実証された。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書に提供されている一部の実施形態は、ミセルベースの、蛍光造影剤について記載している。一部の実施形態では、ミセルは、2-アミノエチルメタクリレート塩酸塩モノマー上のNHS化学反応を介してインドシアニングリーン(ICG)に共有結合によりコンジュゲートしている、ポリエチレングリコール(PEG)及びジブチルアミノ(dibuthylamino)置換ポリメタクリル酸メチル(PMMA)のジブロックコポリマーを含む。一部の実施形態では、PEGは、安定したミセルのシェル又は表面を含む。一部の実施形態では、ミセルのサイズは<100nmである。
【0033】
I.化合物
一部の実施形態では、式(II):
【0034】
【化4】
(式中、
X
1はハロゲン、-OH、又は-C(O)OHであり、
nは90~140であり、
xは50~200であり、
yは0~3であり、
zは0~3である)
の構造を有するブロックコポリマー、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは水和物が本明細書に提供されている。
【0035】
一部の実施形態では、式(II)のブロックコポリマーは化合物である。一部の実施形態では、式(II)のブロックコポリマーはジブロックコポリマーである。一部の実施形態では、式(II)のブロックコポリマーは、親水性ポリマーセグメント及び疎水性ポリマーセグメントを含むブロックコポリマーである。
【0036】
親水性ポリマーセグメントはポリ(エチレンオキシド)(PEO)を含む。一部の実施形態では、親水性ポリマーセグメントは約2kDa~約10kDaのサイズである。一部の実施形態では、親水性ポリマーセグメントは約2kDa~約5kDaのサイズである。一部の実施形態では、親水性ポリマーセグメントは約3kDa~約8kDaのサイズである。一部の実施形態では、親水性ポリマーセグメントは約4kDa~約6kDaのサイズである。一部の実施形態では、親水性ポリマーセグメントは約5kDaのサイズである。
【0037】
一部の実施形態では、ブロックコポリマーは疎水性ポリマーセグメントを含む。一部の実施形態では、疎水性ポリマーセグメントは第三級アミンを含む。一部の実施形態では、疎水性ポリマーセグメントは、
【0038】
【化5】
(式中、xは全部で約50~200である)
を含む。一部の実施形態では、xは約60~150である。一部の実施形態では、xは約60~約150の間の整数である。一部の実施形態では、親水性セグメントはジブチルアミンを含む。
【0039】
一部の実施形態では、n回繰り返すポリエチレンオキシド繰返し単位が存在する。一部の実施形態では、nは90~140である。一部の実施形態では、nは95~130である。一部の実施形態では、nは100~120である。一部の実施形態では、nは100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、又は120である。一部の実施形態では、nは114である。一部の実施形態では、nは113である。
【0040】
一部の実施形態では、yは0~3である。一部の実施形態では、yは0.5~2.5である。一部の実施形態では、yは1.5~2.5である。一部の実施形態では、yは0.5~1.5である。一部の実施形態では、yは0.5、1、1.5、2、2.5、又は3である。一部の実施形態では、yは1、2、又は3である。一部の実施形態では、yは0.5である。一部の実施形態では、yは1.5である。一部の実施形態では、yは0である。
【0041】
一部の実施形態では、zは0~3である。一部の実施形態では、zは1.5~2.5である。一部の実施形態では、zは1、1.5、2、2.5、又は3である。一部の実施形態では、zは1、2、又は3である。一部の実施形態では、zは1.5である。一部の実施形態では、zは0である。
【0042】
一部の実施形態では、コポリマーブロック単位(x、y、及びz)は、任意の並び又は立体配置で生じ得る。一部の実施形態では、x、y、及びzは、式(II)に記載されるように逐次的に生じる。
【0043】
ある特定の実施形態では、ブロックコポリマーはアミンを介してコンジュゲートした蛍光色素を含む。一部の実施形態では、蛍光色素はpH非感受性染料である。一部の実施形態では、蛍光色素はシアニン染料又はその誘導体である。一部の実施形態では、蛍光色素はインドシアニングリーン(ICG)である。インドシアニングリーン(ICG)は医学的診断法に使用されている。
【0044】
一部の実施形態では、ブロックコポリマーは蛍光色素又はその誘導体にコンジュゲートしていない。一部の実施形態では、ブロックコポリマーはインドシアニングリーン(ICG)にコンジュゲートしていない。
【0045】
一部の実施形態では、式(II)のブロックコポリマーは、ポリ(エチレンオキシド)-b-ポリ(ジブチルアミノエチルメタクリレート-r-アミノエチルメチルアクリレート塩酸塩)コポリマーインドシアニングリーン及び酢酸コンジュゲートである。一部の実施形態では、式(II)のブロックコポリマーは、PEO90~140-b-P(DBA60~150-r-ICG0~3-r-AMA0~3)、(化合物1)である。
【0046】
一部の実施形態では、X1は末端基である。一部の実施形態では、末端封止基は原子移動ラジカル重合(ATRP)反応の生成物である。一部の実施形態では、X1はハロゲンである。一部の実施形態では、X1はBrである。一部の実施形態では、X1は-OHである。一部の実施形態では、X1は酸である。一部の実施形態では、X1は-C(O)OHである。一部の実施形態では、X1はHである。
【0047】
「r」という用語は、異なるブロックコポリマー単位/セグメント(例えば、x、y、及びzで表される)の間の接続を表す。一部の実施形態では、各rは独立して、単位/セグメントの炭素原子、又はアルキル基-(CH2)n-(式中、nは1~10である)を結合している結合である。一部の実施形態では、コポリマーブロックセグメント/単位(例えば、x、y、及びzで表される)は、任意の順序、並び、又は立体配置で生じ得る。一部の実施形態では、コポリマーブロック単位は、式(II)に記載されるように逐次的に生じる。
【0048】
一部の実施形態では、式(II)のブロックコポリマーは、式(II-a):
【0049】
【化6】
の構造、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは水和物を有する。
【0050】
一部の実施形態では、式(II)のブロックコポリマーは、ミセル又はナノ粒子の形態である。ミセルのサイズは通常ナノメートル規模である(すなわち、直径約1nm~1μmの間)。一部の実施形態では、ミセルは約10~約200nmのサイズを有する。一部の実施形態では、ミセルは約20~約100nmのサイズを有する。一部の実施形態では、ミセルは約30~約50nmのサイズを有する。一部の実施形態では、ミセルは直径約1μm未満を有する。一部の実施形態では、ミセルは直径約100nm未満を有する。一部の実施形態では、ミセルは直径約50nm未満を有する。
【0051】
別の態様では、式(II)の1種以上のブロックコポリマーを含むpH応答性組成物が本明細書に提供されている。
【0052】
一部の実施形態では、pH応答性組成物はpH遷移点及び発光スペクトルを有する。一部の実施形態では、pH遷移点は、4~8の間又は6~7.5の間である。一部の実施形態では、pH遷移点は4.8~5.5の間である。一部の実施形態では、pH遷移点は約4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、又は5.5である。一部の実施形態では、pH遷移点は4.8である。一部の実施形態では、pH遷移点は4.9である。一部の実施形態では、pH遷移点は5.0である。一部の実施形態では、pH遷移点は5.1である。一部の実施形態では、pH遷移点は5.2である。一部の実施形態では、pH遷移点は5.3である。一部の実施形態では、pH遷移点は5.4である。一部の実施形態では、pH遷移点は5.5である。
【0053】
一部の実施形態では、pH応答性の組成物は700~900nm間の発光スペクトルを有する。一部の実施形態では、pH応答性組成物は750~800nmの間の発光スペクトルを有する。一部の実施形態では、pH応答性組成物は750~850nmの間の発光スペクトルを有する。
【0054】
一部の実施形態では、pH応答性組成物はpH遷移域(ΔpH10~90%)を有する。一部の実施形態では、pH応答性組成物は1pH単位未満のpH遷移域を有する。一部の実施形態では、pH応答性組成物は0.25pH単位未満のpH遷移域を有する。一部の実施形態では、pH応答性組成物は0.15pH単位未満のpH遷移域を有する。
【0055】
一部の実施形態では、組成物は蛍光活性化比を有する。蛍光活性化比とは、pH<pHt(製剤のpH転移)を有する緩衝液中製剤から得た正規化された蛍光強度の、pH>pHtを有する緩衝液中製剤から得た正規化された蛍光強度に対する比と定義される。一部の実施形態では、蛍光活性化比は25より大きい。一部の実施形態では、蛍光活性化比は50より大きい。
【0056】
II.医薬組成物
本明細書で開示されている医薬組成物は、ブロックコポリマー及び蛍光色素インドシアニングリーンを含む1種以上のpH応答性ミセル及び/又はナノ粒子を含む。ブロックコポリマーは、親水性ポリマーセグメント及び疎水性ポリマーセグメントを含み、疎水性ポリマーセグメントはpH感度を付与するイオン化できるアミン基を含む。このpH感度を利用して、画像化に対する診断ツールとして適切な医薬組成物を提供する(例えば、腫瘍摘除及びステージングを援助する)。
【0057】
一態様では、ミセルを含む医薬組成物が本明細書に提供され、ミセルは、
1)式(II):
【0058】
【化7】
(式中、
X
1はハロゲン、-OH、又は-C(O)OHであり、
nは90~140であり、
xは50~200であり、
yは0~3であり、
zは0~3である)
の構造を有する1種以上のブロックコポリマー、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは水和物、及び
2)安定化剤を含む。
【0059】
一部の実施形態では、医薬組成物はミセルを含み、ミセルは、式(II)の構造を有する1種以上のブロックコポリマー、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは水和物を含む。一部の実施形態では、式(II)のブロックコポリマー、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは水和物は、ミセルベースの蛍光造影剤である。一部の実施形態では、式(II)のブロックコポリマーは、ポリ(エチレンオキシド)-b-ポリ(ジブチルアミノエチルメタクリレート-r-アミノエチルメチルアクリレート塩酸塩)コポリマーインドシアニングリーン及び酢酸コンジュゲートである。一部の実施形態では、式(II)のブロックコポリマーは、PEO90-140-b-P(DBA60-150-r-ICG0-3-r-AMA0-3)、(化合物1)である。一部の実施形態では、ブロックコポリマーは、ミセル又はナノ粒子を形成することが可能なコポリマーである。
【0060】
一部の実施形態では、医薬組成物は、約1mg/mL~約5mg/mLの式(II)のブロックコポリマー、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは水和物を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約1mg/mL、約1.5mg/mL、約2mg/mL、約2.5mg/mL、約3mg/mL、約3.5mg/mL、約4mg/mL、約4.5mg/mL、又は約5mg/mLの式(II)のブロックコポリマーを含む。
【0061】
一部の実施形態では、医薬組成物は、約3.0mg/mLの式(II)のブロックコポリマー、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは水和物を含む。
【0062】
一部の実施形態では、医薬組成物は、約0.1mg/kg~約8mg/kgの式(II)のブロックコポリマー、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは水和物を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約0.5mg/kg~約7mg/kgの式(II)のブロックコポリマー、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは水和物を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約0.1mg/kg~約3mg/kgの式(II)のブロックコポリマー、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは水和物を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約0.1~約1.2mg/kgの式(II)のブロックコポリマー、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは水和物を含む。
【0063】
一部の実施形態では、医薬組成物は、は、約0.5mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、又は7mg/kgの式(II)のブロックコポリマー、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは水和物を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約0.1mg/kg、0.3mg/kg、0.5mg/kg、0.8mg/kg、1mg/kg、1.2mg/kg、1.4mg/kg、1.6mg/kg、1.8mg/kg、2mg/kg、2.5mg/kg、又は3mg/kgの式(II)のブロックコポリマー、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは水和物を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約0.1mg/kg、0.3mg/kg、0.5mg/kg、0.8mg/kg、1mg/kg、又は1.2mg/kgの式(II)のブロックコポリマー、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは水和物を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は約0.1mg/kgの式(II)のブロックコポリマーを含む。一部の実施形態では、医薬組成物は約0.3mg/kgの式(II)のブロックコポリマーを含む。一部の実施形態では、医薬組成物は約0.5mg/kgの式(II)のブロックコポリマーを含む。一部の実施形態では、医薬組成物は約0.8mg/kgの式(II)のブロックコポリマーを含む。一部の実施形態では、医薬組成物は約1mg/kgの式(II)のブロックコポリマーを含む。一部の実施形態では、医薬組成物は約1.2mg/kgの式(II)のブロックコポリマーを含む。一部の実施形態では、医薬組成物は約1.4mg/kgの式(II)のブロックコポリマーを含む。一部の実施形態では、医薬組成物は約1.6mg/kgの式(II)のブロックコポリマーを含む。一部の実施形態では、医薬組成物は約1.8mg/kgの式(II)のブロックコポリマーを含む。一部の実施形態では、医薬組成物は約2mg/kgの式(II)のブロックコポリマーを含む。一部の実施形態では、医薬組成物は約2.5mg/kgの式(II)のブロックコポリマーを含む。一部の実施形態では、医薬組成物は約3mg/kgの式(II)のブロックコポリマーを含む。一部の実施形態では、医薬組成物は約3.5mg/kgの式(II)のブロックコポリマーを含む。一部の実施形態では、医薬組成物は約4mg/kgの式(II)のブロックコポリマーを含む。一部の実施形態では、医薬組成物は約5mg/kgの式(II)のブロックコポリマーを含む。一部の実施形態では、医薬組成物は約6mg/kgの式(II)のブロックコポリマーを含む。一部の実施形態では、医薬組成物は約7mg/kgの式(II)のブロックコポリマーを含む。
【0064】
本明細書で開示されている医薬組成物の一部の実施形態では、式(II)のブロックコポリマー、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは水和物は実質的に純粋である。本明細書で開示されている医薬組成物の一部の実施形態では、式(II)のブロックコポリマー、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは水和物は不純物を実質的に含まない。本明細書で開示されている医薬組成物の一部の実施形態では、不純物を実質的に含まないとは、約10%、約5%、約3%、約1%、約0.5%、約0.1%、又は約0.05%未満の不純物含有量と定義される。本明細書で開示されている医薬組成物の一部の実施形態では、不純物を実質的に含まないとは、約1%未満の不純物含有量と定義される。本明細書で開示されている医薬組成物の一部の実施形態では、不純物を実質的に含まないとは、約0.5%未満の不純物含有量と定義される。本明細書で開示されている医薬組成物の一部の実施形態では、不純物を実質的に含まないとは、約0.1%未満の不純物含有量と定義される。
【0065】
本明細書で開示されている医薬組成物の一部の実施形態では、式(II)のブロックコポリマー、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは水和物、は少なくとも約90%、約95%、約98%、又は約99%純粋である。
【0066】
本明細書で開示されている医薬組成物の一部の実施形態では、式(II)のブロックコポリマー、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは水和物は、少なくとも約99.1%、約99.2%、約99.3%、約99.4%、約99.5%、約99.6%、約99.7%、約99.8%、約99.9%、又は約100%純粋である。
【0067】
「安定化剤」という用語は、生物活性のある材料に加えた場合、材料が安定化剤の不在下で貯蔵された場合と比較して、時間の経過による材料の生物学的活性の損失を防止又は遅延させる薬剤を意味することが意図される。これら添加剤の一部は、周辺温度で本質的に脱水した形態で貯蔵された場合、生物活性のある材料の貯蔵寿命を、数カ月又はそれよりも長く延長させることが判明した。さらに、凍結防止添加剤及び薬剤の変化形は、賦形剤として使用することによって、生物学的材料が乾燥又は凍結された場合、生物学的活性を助け、これを保存する。保護的物質は、水溶性糖類、例えば、単糖、二糖、三糖、水溶性多糖、糖アルコール、ポリオール、又はこれらの混合物である。単糖、二糖及び三糖の例として、これらに限定されないが、グルコース、マンノース、グリセルアルデヒド、キシロース、リキソース、タロース、ソルボース、リブロース、キシルロース、ガラクトース、フルクトース、スクロース、トレハロース、ラクトース、マルトース、及びラフィノースが挙げられる。中でも水溶性多糖として、ある特定の水溶性デンプン及びセルロースが挙げられる。糖アルコールの例はグリセロールである。安定化剤として機能する他の物質として、例えば、アミノ酸、例えば、アルギニン、及びタンパク質、例えば、アルブミンが挙げられる。
【0068】
一部の実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は凍結保護剤又は安定化剤である。一部の実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は安定化剤である。一部の実施形態では、安定化剤は糖、糖誘導体、界面活性剤、及び塩である。
【0069】
一部の実施形態では、安定化剤は、単糖、二糖、三糖、水溶性多糖、糖アルコール、若しくはポリオール、又はこれらの組合せである。一部の実施形態では、安定化剤は、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトース、マンニトール、ソルビトール、リボース、デキストリン、シクロデキストリン、マルトデキストリン、ラフィノース、若しくはキシロース、又はこれらの組合せである。一部の実施形態では、安定化剤はトレハロースである。一部の実施形態では、安定化剤はトレハロース二水和物(dihydride)である。
【0070】
一部の実施形態では、医薬組成物は、約0.5%w/v~約25%w/v、約1%~約20%w/v、約5%~約15%w/v、約6%~約13%w/v、約7%~約12%w/v、又は約8%~約11%w/vの安定化剤を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約7%~約12%w/vの安定化剤を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約8%~約11%w/vの安定化剤を含む。
【0071】
一部の実施形態では、医薬組成物は、約5%w/v、約6%w/v、約7%w/v、約8%w/v、約9%w/v、約10%w/v、約11%w/v、約12%w/v、約13%w/v、約14%w/v、又は約15%w/vの安定化剤を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約9%w/vの安定化剤を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約10%w/vの安定化剤を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約11%w/vの安定化剤を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約12%w/vの安定化剤を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約13%w/vの安定化剤を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約14%w/vの安定化剤を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約15%w/vの安定化剤を含む。
【0072】
一部の実施形態では、医薬組成物は液体担体をさらに含む。一部の実施形態では、液体担体は水溶液である。一部の実施形態では、液体担体は、滅菌水、注射用滅菌水(SWFI)、生理食塩水、2分の1生理食塩水、ブドウ糖(例えば、水性ブドウ糖;例えば、5%ブドウ糖水溶液、D5W)、若しくは乳酸リンゲル液(RL)又はこれらの中での組合せ(例えば、50%ブドウ糖と50%生理食塩水)から選択される。一部の実施形態では、液体担体は滅菌水から選択される。
【0073】
一部の実施形態では、医薬組成物は、式(II)の構造:
【0074】
【化8】
(式中、
X
1はBrであり、
nは90~140であり、
xは60~150であり、
yは0~3であり、
zは0~3である)
を有する、少なくとも約3mg/mLのブロックコポリマー又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは水和物、及び
水中約10%w/vトレハロースを含む。
【0075】
本開示の医薬組成物は、意図した方法又は投与経路と適合するよう製剤化することができる。例示的な投与経路は本明細書に記載される。
【0076】
一部の実施形態では、本明細書で開示されている医薬組成物は、経口、静脈内(I.V.)、筋肉内、皮下、腫瘍内、又は皮内投与による投薬又は投与用の形態である。一部の実施形態では、医薬組成物は、経口、筋肉内、皮下、又は静脈内投与用に製剤化される。一部の実施形態では、医薬組成物は腫瘍内投与用に製剤化される。一部の実施形態では、医薬組成物は静脈内投与用に製剤化される。一部の実施形態では、医薬組成物は、静脈内(I.V.)投与用の水溶液又は懸濁液として製剤化される。一部の実施形態では、医薬組成物は単回用量として投与するために製剤化される。一部の実施形態では、医薬組成物は、複数回用量として投与するために製剤化される。一部の実施形態では、本明細書で開示されている医薬組成物は、I.Vによるボーラスとして投与するために製剤化される。
【0077】
形態がI.V.剤形である医薬組成物の一部の実施形態では、pHは約3.5~約8.5である。一部の実施形態では、I.V.用量のpHは、約3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、又は8.5である。
【0078】
水性懸濁剤は、活性物質をその製造に対して適切な賦形剤と混合して含有する。このような賦形剤は、懸濁化剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシ-プロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル-ピロリドン、トラガカントガム及びアラビアガム;分散剤又は湿潤剤、例えば、天然由来のホスファチド(例えば、レシチン)、又は酸化アルキレンの脂肪酸との縮合物(例えば、ポリオキシ-エチレンステアリン酸塩)、又は酸化エチレンの長鎖脂肪族アルコールとの縮合物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、又は酸化エチレンの脂肪酸及びヘキシトール由来の部分エステルとの縮合物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート)、又は酸化エチレンの脂肪酸及びヘキシトール無水物由来の部分エステルとの縮合物(例えば、ポリエチレンモノオレイン酸ソルビタン)であることができる。水性懸濁剤はまた1種以上の保存剤を含有することもできる。
【0079】
油性懸濁液は、活性成分を植物油、例えば、落花生油、オリーブ油、ゴマ油又はヤシ油、又は鉱油、例えば、流動パラフィン中に懸濁化することにより製剤化することができる。油性懸濁液は、増粘剤、例えば蜜ろう、固形パラフィン又はセチルアルコールを含有することができる。甘味剤、例えば、上に記載されるもの、及び香味剤を加えて、口当たりの良い経口調製物を得ることができる。
【0080】
水の添加による水性懸濁剤の調製に対して適切な分散性粉末及び顆粒は、分散剤又は湿潤剤、及び任意選択的に1種以上の懸濁化剤及び/又は保存剤と混合して、活性成分を提供する。適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤は本明細書で例示されている。
【0081】
本発明の医薬組成物はまた水中油型乳剤の形態であってもよい。油相は、植物油、例えば、オリーブ油又は落花生油、若しくは鉱油、例えば、流動パラフィン、又はこれらの混合物であってよい。適切な乳化剤は、自然発生のガム、例えば、アラビアゴム又はトラガカントガム;自然発生ホスファチド、例えば、ダイズマメ、レシチン、及び脂肪酸由来のエステル又は部分エステル;ヘキシトール無水物、例えば、モノオレイン酸ソルビタン;及び部分エステルの酸化エチレンとの縮合物、例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンであってよい。
【0082】
医薬組成物は通常、式(II)のブロックコポリマー又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは水和物、及び1種以上の薬学的に及び生理学的に許容される製剤薬剤の治療有効量を含む。適切な薬学的に許容される又は生理学的に許容される希釈剤、担体又は賦形剤として、これらに限定されないが、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸及び硫酸水素ナトリウム)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、メチルパラベン、エチル又はn-プロピル、p-ヒドロキシベンゾエート)、乳化剤、懸濁化剤、分散剤、溶媒、充填剤、増量剤、界面活性剤、緩衝液、ビヒクル、希釈剤、及び/又はアジュバントが挙げられる。例えば、適切なビヒクルは、生理的食塩水溶液又はクエン酸塩-緩衝生理食塩水であり、おそらく非経口投与用の医薬組成物中に一般的に存在する他の材料が補充されていてもよい。血清アルブミンと混合した中性緩衝化生理食塩水又は生理食塩水はさらに例示的なビヒクルである。当業者であれば、医薬組成物及び剤形において使用することができる様々な緩衝液が本明細書で想定されることを容易に認識している。典型的な緩衝液として、これらに限定されないが、薬学的に許容される弱酸、弱塩基、又はこれらの混合物が挙げられる。例として、緩衝液の構成成分は、水溶性材料、例えば、リン酸、酒石酸、乳酸、コハク酸、クエン酸、酢酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、及びこれらの塩であることができる。許容される緩衝剤として、例えば、トリス緩衝液;N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)(HEPES);2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES);2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸ナトリウム塩(MES);3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS);及びN-トリス[ヒドロキシメチル]メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)が挙げられる。
【0083】
医薬組成物が製剤化された後、これを、滅菌バイアル中に、溶液、懸濁剤、ゲル剤、乳剤、固形、又は脱水した又は凍結乾燥した粉末として貯蔵することができる。このような製剤は、すぐに使える形態、使用前に再構成が必要な凍結乾燥形態、使用前に希釈が必要な液体形態、又は他の許容される形態で貯蔵することができる。一部の実施形態では、医薬組成物は、単回使用の容器(例えば、単回使用のバイアル、アンプル、シリンジ、又は自動注射器に入れて提供されるが、その一方で、他の実施形態では複数回使用容器(例えば、複数回使用バイアル)が提供される。
【0084】
製剤はまた、急速な分解又は身体からの排除から組成物を保護する担体、例えば、リポソーム、ヒドロゲル、プロドラッグ及びマイクロカプセル化送達システムを含む、制御放出性製剤を含むことができる。例えば、時間遅延材料例えば、モノステアリン酸グリセリル又はステアリン酸グリセリルを単独で、又はワックスと組み合わせて利用することもできる。式(II)のブロックコポリマー、又は薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはその水和物を送達するために、任意の薬物送達装置を使用することができ、この薬物送達装置には、インプラント(例えば、埋め込み型ポンプ)及びカテーテルシステム、低速注射ポンプ及びデバイスが含まれ、これらすべては当業者には周知である。
【0085】
医薬組成物は、滅菌の注射用水性又は油性懸濁液の形態であってもよい。この懸濁液は、本明細書中に記述されているような適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を使用して、公知の技術により製剤化することができる。滅菌注射用調製物はまた、無毒性非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の注射可能な滅菌溶液又は懸濁液、例えば、1,3-ブタンジオール中溶液であってもよい。利用することができる、許容される希釈剤、溶媒及び分散媒として、水、リンゲル液、等張性塩化ナトリウム溶液、Cremophor(登録商標)EL(BASF、Parippany、NJ)又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、注射用滅菌水(SWFI)、D5W、及び適切なこれらの混合物が挙げられる。加えて、滅菌の不揮発性油が溶媒又は懸濁媒として慣例的に利用されている;この目的のために、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む、任意の無刺激性不揮発性油を利用することができる。さらに、脂肪酸、例えば、オレイン酸は、注射用調製物における使用が見出されている。特定の注射用製剤の長期にわたる吸収は、吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム又はゼラチン)を含めることにより達成することができる。
【0086】
III.使用の方法
一部の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物はpH応答性組成物に使用される。一部の実施形態では、pH応答性組成物は、細胞内又は細胞外pH(例えば、がん性腫瘍の酸性pH)の変化に関与する生理学的及び/又は病理過程を画像化するために使用される。一部の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物ミセルは、原発性及び転移性腫瘍組織(腹膜転移及びリンパ節を含む)の検出に対して有用であり、腫瘍の再発及び再手術率の減少をもたらす。一部の実施形態では、pH感受性造影剤は、バックグランドの蛍光応答比に対する高い腫瘍コントラスト(CNR及びTBR)により、周辺正常組織から腫瘍を検出することができる。
【0087】
がん細胞がグルコースを優先的に取り込み、これを乳酸又は他の酸に変換するワールブルグ効果として公知の好気性解糖は、すべての固形がんに生じる。乳酸又は他の酸はモノカルボキシレートトランスポーター又は他のトランスポーターにより細胞外空間に優先的に蓄積される。結果として生じる細胞外空間の酸性化は、さらなる腫瘍侵入及び転移のために細胞外マトリクスのリモデリングを促進する。
【0088】
手術中のリアルタイム蛍光画像化は、陰性の縁及び完全な腫瘍摘除を達成するという目的で及びステージングを援助するために、外科医が例えば罹患したリンパ節から腫瘍対正常組織又は転移性疾患を検出する又は線引きするのを助ける。これら改善された手術結果は、有意な臨床上の利益、例えば、腫瘍再発及び再手術率の減少、不必要な手術の回避、機能の保存及び美容術へと繋がる。
【0089】
がん手術の別の主要目的は、治療の決定のための病理学的ステージングを補助することである。潜在性リンパ節転移により、リンパ節状態は、がんステージングの主要な構成要素である。手術中の単純な節のサンプリングは節の転移を過小評価するため、選択的、包括的、局部的な結節解離は頭頸部がんに対する標準治療(SOC)となっている。直腸結腸がんに関して、例えば、25%までの「リンパ節転移陰性の」患者がぶり返し及び転移により死亡しており、これは、残留する潜在性疾患の存在及びリンパ節転移が、特にステージII結腸直腸患者に対して予後値を増大させていることを示す。これらの患者に対して節転移を正確に検出することにより、ステージを上げること及びアジュバント治療の強化、疾患に対する療法のより良いマッチングをもたらすことができる。
【0090】
よって、腫瘍の縁、潜在性腫瘍、及び腫瘍陽性リンパ節及び他の転移性疾患の術中可視化を選択的に及び正確に改善することができる技術は、固形腫瘍を有する患者に対する外科的摘除の完全性、補助療法選択の妥当性、病理学的ステージング及び腫瘍学的結果を潜在的に改善する。
【0091】
本明細書に提供されている一部の実施形態は、生理学的pH(7.35~7.45)でミセルを形成するブロックコポリマーについて記載している。一部の実施形態では、本明細書に記載されるブロックコポリマーはICG染料にコンジュゲートしている。一部の実施形態では、ミセルは2×107ダルトンより大きい分子量を有する。一部の実施形態では、ミセルは約2.7×107ダルトンまでの分子量を有する。一部の実施形態では、ICG染料は、蛍光クエンチをもたらす生理学的pH(7.35~7.45)(例えば、血液循環中)で、ミセルコア内で隔離されている。一部の実施形態では、ミセルが酸性環境(例えば、腫瘍組織)に遭遇した場合、ミセルは平均分子量約3.7×104ダルトンを有する個々の化合物へと分離し、ICG染料からの蛍光シグナルの活性化を可能にし、酸性環境(例えば腫瘍組織)に特異的に蛍光を発生させる。一部の実施形態では、ミセルは、pH遷移点未満のpH(例えば腫瘍微小環境の酸性状態)で分離する。
【0092】
一部の実施形態では、蛍光応答は、予め定義した低いpHでの、疎水性駆動型ミセル自己組織化(非蛍光のオフ状態)と、これらミセルの共同解離(蛍光ON状態)との間で生じるシャープな相転移により非常に強い。
【0093】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるミセルは、pH遷移点及び発光スペクトルを有する。一部の実施形態では、pH遷移点は4~8の間又は6~7.5の間である。他の実施形態では、pH遷移点は4.8~5.5の間である。ある特定の実施形態では、pH遷移点は約4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、又は5.5である。一部の実施形態では、発光スペクトルは700~900nmの間である。一部の実施形態では、発光スペクトルは750~850nmの間である。
【0094】
ある場合には、本明細書に記載されるpH感受性ミセル組成物は狭いpH遷移域を有する。一部の実施形態では、本明細書に記載されるミセルは1pH単位未満のpH遷移域(ΔpH10~90%)を有する。様々な実施形態では、ミセルは、約0.9pH単位未満、約0.8pH単位未満、約0.7pH単位未満、約0.6pH単位未満、約0.5pH単位未満、約0.4pH単位未満、約0.3pH単位未満、約0.2pH単位未満、約0.1pH単位未満のpH遷移域を有する。一部の実施形態では、ミセルは約0.5pH単位未満のpH遷移域を有する。一部の実施形態では、pH遷移域は0.25pH単位未満である。一部の実施形態では、pH遷移域は0.15pH単位未満である。
【0095】
一部の実施形態では、pH感受性組成物は蛍光活性化比を有する。一部の実施形態では、蛍光活性化比は25より大きい。一部の実施形態では、蛍光活性化比は50より大きい。
【0096】
一部の実施形態では、細胞内環境が画像化される場合、細胞は、ミセルの取り込みを引き起こすのに適切な条件下でミセルと接触させる。一部の実施形態では、細胞内環境は細胞の一部である。一部の実施形態では、細胞の一部はリソソーム又はエンドソームである。一部の実施形態では、細胞外環境は腫瘍又は血管系細胞の環境である。一部の実施形態では、細胞外環境は血管内又は血管外である。一部の実施形態では、細胞内又は細胞外環境のpHの画像化は転移性疾患の画像化を含む。一部の実施形態では、転移性疾患はがんである。一部の実施形態では、腫瘍は固形がん由来のものである。一部の実施形態では、腫瘍は非固形がん由来のものである。一部の実施形態では、腫瘍環境のpHの画像化はリンパ節又は節の画像化を含む。一部の実施形態では、腫瘍環境のpHの画像化は、手術中、腫瘍サイズ又は腫瘍の縁を決定することを可能にする。
【0097】
別の態様では、細胞間又は細胞外環境のpHを画像化する方法であり、本方法は
(a)細胞内又は細胞外環境を、本明細書で開示されているブロックコポリマー又は医薬組成物と接触させるステップ、及び
(b)細胞内又は細胞外環境からの1種以上の光シグナルを検出するステップであって、検出した光シグナルは、式(II)の1種以上のブロックコポリマーを含むミセルがそのpH遷移点に到達し、分離したことを示す、ステップ
を含む。
【0098】
一部の実施形態では、光シグナルは蛍光シグナルである。
【0099】
一部の実施形態では、細胞外環境は腫瘍又は血管系細胞である。一部の実施形態では、細胞外環境は血管内又は血管外である。
【0100】
一部の実施形態では、細胞内又は細胞外環境のpHは、腫瘍環境のpHの画像化を含む。一部の実施形態では、腫瘍環境のpHの画像化はリンパ節又は節の画像化を含む。歩哨リンパ節は、がんを流出する最初のリンパ節又は節の群であり、腫瘍からの転移性がん細胞が到達する最初の器官である。一部の実施形態では、リンパ節又は節のpHの画像化はリンパ節の外科的摘除の情報を提供する。一部の実施形態では,リンパ節又は節のpHの画像化は、がん転移のステージングの情報を提供する。一部の実施形態では、リンパ節又は節のpHの画像化は患者管理を可能にする。
【0101】
一部の実施形態では、腫瘍環境のpHの画像化は、腫瘍サイズ又は腫瘍の縁の決定を可能にする。一部の実施形態では、腫瘍環境のpHの画像化は腫瘍ステージングを可能にする。一部の実施形態では、腫瘍環境のpHの画像化は患者結果の対応を可能にする。一部の実施形態では、腫瘍環境のpHの画像化は、手術中の腫瘍のより正確な除去を可能にする。一部の実施形態では、腫瘍環境のpHの画像化は、残留する転移性疾患の検出を可能にする。一部の実施形態では、腫瘍環境のpHの画像化は、衛星、多病巣性、又は潜在性腫瘍の決定の情報を提供する。
【0102】
一部の実施形態では、腫瘍環境のpHの画像化は、潜在性疾患の検出の情報を提供する。
【0103】
一部の実施形態では、医薬組成物は、腫瘍の画像化前にそれを必要とする患者に投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、手術前、ステージングのための腫瘍の画像化前に、それを必要とする患者に投与される。
【0104】
一部の実施形態では、医薬組成物は、手術前に、それを必要とする患者に投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、手術後に、それを必要とする患者に投与される。一部の実施形態では、手術は腫瘍摘除である。
【0105】
別の態様では、それを必要とする患者において腫瘍を摘除する方法であって、本方法は、
(a)本明細書で開示されているブロックコポリマー又は医薬組成物の有効用量が投与された患者から得た腫瘍又はその試料から、1種以上の光シグナルを検出するステップであって、検出した光シグナルが腫瘍の存在を示す、ステップであって、及び
(b)手術介して腫瘍を摘除するステップ
を含む。
【0106】
一部の実施形態では、光シグナルは腫瘍の縁を示す。
【0107】
一部の実施形態では、光シグナルは蛍光シグナルである。
【0108】
一部の実施形態では、腫瘍は少なくとも90%摘除される。
【0109】
一部の実施形態では、腫瘍は少なくとも95%摘除される。
【0110】
一部の実施形態では、腫瘍は少なくとも99%摘除される。
【0111】
一部の実施形態では、腫瘍は、きれいな縁と共に摘除される。一部の実施形態では、きれいな縁は蛍光を発しない組織である。一部の実施形態では、蛍光を発しない組織は非がん組織である。一部の実施形態では、摘除後の腫瘍又はリンパ節の除去後の創傷床内の蛍光の欠如は腫瘍の除去を示す。
【0112】
一部の実施形態では、腫瘍は固形腫瘍である。一部の実施形態では、腫瘍はpan腫瘍である。一部の実施形態では、固形腫瘍はがん由来のものである。一部の実施形態では、がんは乳がん、頭頸部扁平上皮癌(NHSCC)、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、尿道がん、食道がん、直腸結腸がん、脳がん、又は皮膚がん(黒色腫及び肉腫を含む)である。一部の実施形態では、がんは乳がん、頭頸部扁平上皮癌(NHSCC)、食道がん、又は直腸結腸がんである。一部の実施形態では、がんは乳がんである。一部の実施形態では、がんは頭頸部扁平上皮癌(NHSCC)である。一部の実施形態では、がんは卵巣がんである。一部の実施形態では、がんは前立腺がんである。一部の実施形態では、がんは食道がんである。一部の実施形態では、がんは直腸結腸がんである。一部の実施形態では、がんは脳がんである。一部の実施形態では、がんはMohs手術で治療可能な皮膚がんである。
【0113】
別の態様では、がんを治療する方法であって、本方法は、
(a)本明細書で開示されているブロックコポリマー又は医薬組成物の有効用量が投与された、がんの治療を必要とするがん患者において、1種以上の光シグナルを検出するステップであって、検出した光シグナルががん性腫瘍の存在を示す、ステップ、及び
(b)がん性腫瘍を除去し、これによってがんを治療するステップ
を含む。
【0114】
一部の実施形態では、本方法は、がん患者の体腔を画像化するステップ、又はがん性腫瘍若しくはそのスライス若しくは試料(例えば、新鮮な又はホルマリン固定)を画像化するステップをさらに含み、任意選択的にこれは、患者からの除去後、バックテーブルでの蛍光誘導画像化によってなされる。一部の実施形態では、がんを治療する方法は、きれいな境界線を確実にするため、除去後のがん性腫瘍を画像化することをさらに含む。一部の実施形態では、きれいな境界線は、創傷床内に腫瘍がないことにより示される。一部の実施形態では、試料内又は創傷床内にいかなる蛍光も検出されなかった場合、きれいな境界線が示される。一部の実施形態では、きれいな境界線は、がん性腫瘍全体が除去されたことを示す。一部の実施形態では、きれいな境界線はすべてのがんが除去されたことを示す。
【0115】
別の態様では、少なくとも5年間がんの再発を最小限に抑える方法であって、本方法は、
(a)本明細書で開示されているブロックコポリマー又は医薬組成物の有効用量が投与されたそれを必要とするがん患者において、1種以上の光シグナルを検出するステップであって、検出した光シグナルががん性腫瘍の存在を示す、ステップ、及び
(b)1種以上の光シグナルが検出された場合、がんを治療して再発を最小限に抑えるステップ
を含む。
【0116】
別の態様では、がん性腫瘍を検出する方法であって、本方法は、
(a)本明細書で開示されているブロックコポリマー又は医薬組成物の有効用量が投与された、がんの治療を必要とするがん患者において、1種以上の光シグナルを検出するステップであって、腫瘍の存在ががんの再発を示す、ステップ、及び
(b)がんの再発を治療するステップ
を含む。
【0117】
一部の実施形態では、腫瘍はがん由来のものである。一部の実施形態では、がんは、乳がん、頭頸部扁平上皮癌(NHSCC)、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、尿道がん、食道がん、直腸結腸がん、脳、皮膚(黒色腫及び肉腫を含む)である。一部の実施形態では、がんは乳がん、頭頸部扁平上皮癌(NHSCC)、食道がん、又は直腸結腸がんである。一部の実施形態では、がんは卵巣がんである。一部の実施形態では、がんは前立腺がんである。
【0118】
一部の実施形態では、本方法は、術中カメラ又は内視鏡カメラを用いて腫瘍を画像化することをさらに含む。一部の実施形態では、術中カメラは近赤外線(NIR)カメラである。本明細書で開示されている方法の一部の実施形態では、術中カメラ又は内視鏡カメラは、インドシアニングリーンと適合性のあるカメラである。
【0119】
投薬
一部の実施形態では、医薬組成物はそれを必要とする患者に投与される。一部の実施形態では、それを必要とする患者は哺乳動物である。一部の実施形態では、それを必要とする患者はヒトである。一部の実施形態では、哺乳動物はヒトではない。一部の実施形態では、哺乳動物はイヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ウサギ、又はウマである。一部の実施形態では、哺乳動物はイヌ又はネコである。一部の実施形態では、哺乳動物はネコである。一部の実施形態では、哺乳動物はウマである。一部の実施形態では、哺乳動物は雌ウシである。一部の実施形態では、哺乳動物はブタである。一部の実施形態では、哺乳動物はウサギである。一部の実施形態では、哺乳動物はイヌである。
【0120】
本開示の式(II)のブロックコポリマー又はその水和物、溶媒和物、互変異性体、若しくは薬学的に許容される塩は、対象への投与に対して適切な組成物の形態であってよい。一般的に、このような組成物は、式(II)のブロックコポリマー又はその水和物、溶媒和物、互変異性体、若しくは薬学的に許容される塩及び1種以上の薬学的に許容される又は生理学的に許容される希釈剤、担体又は賦形剤を含む「医薬組成物」である。ある特定の実施形態では、式(II)のブロックコポリマー又はその水和物、溶媒和物、互変異性体、若しくは薬学的に許容される塩は、治療上許容される量で存在する。医薬組成物は本発明の方法で使用することができる。よって、例えば、医薬組成物は、本明細書に記載される治療的及び予防的方法及び使用を実行するために、エクスビボ又はインビボで対象に投与することができる。
【0121】
一部の実施形態では、医薬組成物は、手術の約1~2週間前に投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は手術の約2週間前に投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は手術の約1週間前に投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は手術の約16時間~約80時間前に投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は手術の約24時間~約32時間前に投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は手術の約16時間~約32時間前に投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は手術の約1時間~約5時間前に投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は手術の約3時間~約9時間前に投与される。
【0122】
一部の実施形態では、医薬組成物は、手術の、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも10時間、少なくとも12時間、少なくとも14時間、少なくとも16時間、少なくとも18時間、少なくとも20時間、少なくとも24時間、少なくとも28時間、少なくとも32時間、少なくとも80時間、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも1週間、又は少なくとも2間前に投与される。
【0123】
一部の実施形態では、医薬組成物は、腫瘍の画像化の約1~2週間前に投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は腫瘍の画像化の約2週間前に投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は腫瘍の画像化の約1週間前に投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は腫瘍の画像化の約16時間~約80時間前に投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は腫瘍の画像化の約24時間~約32時間前に投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は腫瘍の画像化の約16時間~約32時間前に投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は腫瘍の画像化の約3時間~約9時間前に投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は腫瘍の画像化の約1時間~約5時間前に投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は腫瘍の画像化の約1時間~約32時間、約2時間~約32時間、16時間~約32時間、又は約20時間~約28時間前に投与される。
【0124】
一部の実施形態では、医薬組成物は、腫瘍の画像化の、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも10時間、少なくとも12時間、少なくとも14時間、少なくとも16時間、少なくとも18時間、少なくとも20時間、少なくとも24時間、少なくとも28時間、少なくとも32時間、少なくとも80時間、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも1週間、又は少なくとも2週間前に投与される。
【0125】
一部の実施形態では、本明細書に記載される式(II)のブロックコポリマー又はその水和物、溶媒和物、互変異性体、若しくは薬学的に許容される塩医薬組成物は、式(II)のブロックコポリマーに対する最大耐用量(MTD)で提供される。他の実施形態では、投与される式(II)のブロックコポリマー又はその水和物、溶媒和物、互変異性体、若しくは薬学的に許容される塩医薬組成物の量は、最大耐用量(MTD)の約10%~約90%、MTDの約25%~約75%、又はMTDの約50%である。一部の他の実施形態では、投与される式(II)のブロックコポリマー又はその水和物、溶媒和物、互変異性体、若しくは薬学的に許容される塩医薬組成物の量は、式(II)のブロックコポリマーに対するMTDの約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又はより高い、又はこの中から導くことができる任意の範囲である。
【0126】
定義
特に述べられていない限り、本出願において使用されている以下の用語は、以下に付与された定義を有する。「含む(including)」並びに他の形態、例えば「含む(include)」「含む(includes)」及び「含まれる(included)」という用語の使用は限定的ではない。本明細書で使用されているセクション表題は整理目的に過ぎず、記載される主題を限定すると解釈されるものではない。
【0127】
「薬学的に許容される」は、本明細書で使用される場合、ブロックコポリマーの生物学的活性又は特性を無効にしない、比較的に非毒性の材料、例えば、担体又は希釈剤を指す、すなわち、この材料は、これが含有されている組成物の構成成分のいずれとも有害な方式で、有害な生物学的作用又は相互作用を引き起こすことなく個体に投与される。
【0128】
「薬学的に許容される塩」という用語は、適切なアニオンと組み合わせたカチオン形態の治療活性剤、又は代替の実施形態では、適切なカチオンと組み合わせたアニオン形態の治療活性剤からなる治療活性剤の形態を指す。Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection and Use.International Union of Pure and Applied Chemistry、Wiley-VCH、2002年、S.M.Berge、L.D.Bighley、D.C.Monkhouse、J.Pharm.Sci.、1977年、66巻、1~19頁、P.H.Stahl及びC.G.Wermuth編、Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection and Use,Weinheim/Zuich:Wiley-VCH/VHCA、2002年。薬学的塩は通常、非イオン性種よりも胃液及び腸液中で溶解性が高く、速やかに溶解するので、固体剤形に有用である。さらに、これらの溶解度は多くの場合pHの関数であるため、消化管のある部分又は別の部分での選択的溶解が可能であり、この能力は遅延放出及び持続放出挙動の1局面として操作することができる。また塩形成分子は中性形態と平衡状態であることができるので、生体膜を介した通路を調整することができる。
【0129】
一部の実施形態では、薬学的に許容される塩は、式(II)のブロックコポリマーを酸と反応させることにより得られる。一部の実施形態では、式(A)のブロックコポリマー(すなわち遊離塩基形態)は塩基性であり、有機酸又は無機酸と反応する。無機酸として、これらに限定されないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、及びメタリン酸が挙げられる。有機酸として、これらに限定されないが、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸;2,2-ジクロロ酢酸;2-ヒドロキシエタンスルホン酸;2-オキソグルタル酸;4-アセトアミド安息香酸;4-アミノサリチル酸;酢酸;アジピン酸;アスコルビン酸(L);アスパラギン酸(L);ベンゼンスルホン酸;安息香酸;樟脳酸(+);カンファー-10-スルホン酸(+);カプリン酸(デカン酸);カプロン酸(ヘキサン酸);カプリル酸(オクタン酸);炭酸;ケイヒ酸;クエン酸;シクラミン酸;ドデシル硫酸;エタン-1,2-二スルホン酸;エタンスルホン酸;ギ酸;フマル酸;ガラクタル酸;ゲンチシン酸;グルコヘプトン酸(D);グルコン酸(D);グルクロン酸(D);グルタミン酸;グルタル酸;グリセロリン酸;グリコール酸;馬尿酸;イソ酪酸;乳酸(DL);ラクトビオン酸;ラウリン酸;マレイン酸;リンゴ酸(-L);マロン酸;マンデル酸(DL);メタンスルホン酸;ナフタレン-1,5-二スルホン酸;ナフタレン-2-スルホン酸;ニコチン酸;オレイン酸;シュウ酸;パルミチン酸;パモ酸;リン酸;プロピオン酸(proprionic acid);ピログルタミン酸(-L);サリチル酸;セバシン酸酸性;ステアリン酸;コハク酸;硫酸;酒石酸(+L);チオシアン酸;トルエンスルホン酸(p);及びウンデシレン酸が挙げられる。
【0130】
一部の実施形態では、式(II)のブロックコポリマーは、塩化物塩、硫酸塩、臭化物塩、メシル酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩として調製される。
【0131】
一部の実施形態では、薬学的に許容される塩は、式(II)のブロックコポリマーを塩基と反応させることにより得られる。一部の実施形態では、式(II)のブロックコポリマーは酸性であり、塩基と反応する。このような状況で、式(II)のブロックコポリマーの酸性プロトンは、金属イオン、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、又はアルミニウムイオンで置き換えられる。ある場合には、本明細書に記載されるブロックコポリマーは、有機塩基、例えば、これらに限定されないが、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、メグルミン、N-メチルグルカミン、ジシクロヘキシルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミンに配位する。他の事例では、本明細書に記載されるブロックコポリマーは、アミノ酸、例えば、これらに限定されないが、アルギニン、リシンなどと共に塩を形成する。酸性プロトンを含むブロックコポリマーと塩を形成するために使用される,許容される無機塩基として、これらに限定されないが、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどが挙げられる。一部の実施形態では、本明細書に提供されているブロックコポリマーは、ナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、メラミン塩、N-メチルグルカミン塩又はアンモニウム塩として調製される。
【0132】
薬学的に許容される塩についての言及は溶媒添加形態を含むと理解されるべきである。一部の実施形態では、溶媒和物は化学量論的又は非化学量論的量の溶媒を含有し、薬学的に許容される溶媒、例えば、水、エタノールなどとの結晶化プロセス中に形成される。溶媒が水の場合水和物が形成され、又は溶媒がアルコールの場合アルコレートが形成される。本明細書に記載される化合物の溶媒和物は、本明細書に記載されるプロセスの間に便利に調製され、又は形成される。加えて、本明細書に提供されている化合物は、非溶媒和形態並びに溶媒和形態で任意選択的に存在する。
【0133】
本明細書に記載される方法及び製剤は、式(II)の構造を有するブロックコポリマーのN-オキシド(それが適当であれば)、又は薬学的に許容される塩並びに同じ種類の活性を有するこれら化合物の活性代謝物の使用を含む。
【0134】
別の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、同位体で(例えば、放射性同位体で)又はこれらに限定されないが、発色団又は蛍光部分、生物発光性標識、又は化学発光性標識の使用を含む別の他の手段で別の他の手段で標識される。
【0135】
本明細書に記載される化合物は、1個以上の原子が、普通自然界に見られる原子量又は質量数とは異なる原子量又は質量数を有する原子により置き換えられているという事実を除いて、本明細書で提示された様々な式及び構造において列挙されたものと同一である同位体標識された化合物を含む。本発明の化合物に組み込むことができる同位体の例として、水素、炭素、窒素、酸素、硫黄、フッ素塩素、ヨウ素、リンの同位体、例えば、例えば、2H、3H、13C、14C、15N、18O、17O、35S、18F、36Cl、123I、124I、125I、131I、32P及び33Pが挙げられる。一態様では、本明細書に記載される同位体標識された化合物、例えば放射性同位体、例えば、3H及び14Cが組み込まれたものは、薬物及び/又は基質組織分布アッセイにおいて有用である。一態様では、同位体、例えば重水素による置換は、より大きな代謝安定性から結果として生じるある特定の治療上の利点、例えば、インビボ半減期の増加又は必要用量の減少をもたらす。
【0136】
本明細書で使用される場合、「pH応答性システム」、「pH応答性組成物」、「ミセル」、「pHn応答性ミセル」、「pH感受性ミセル」、「pH活性化可能なミセル」及びpH活性化可能ミセル(pHAM)のナノ粒子」は、pHに応じて(例えば、ある特定のpHの上又は下で)分離する1種以上の化合物を含むミセルを示すために、本明細書で交換可能なように使用される。非限定的例として、ある特定のpHにおいて式(II)のブロックコポリマーは実質的にミセルの形態である。pHが変化するにつれて(例えば、低減する)、ミセルは分離を開始し、pHがさらに変化すると(例えば、さらに低減する)、式(II)のブロックコポリマーは実質的に分離した(非ミセル)形態で存在する。
【0137】
本明細書で使用される場合、「pH転移範囲」とは、ミセルが分離する範囲にわたるpHを示している。
【0138】
本明細書で使用される場合、「pH転移値」(pH)は、2分の1のミセルが分離されるpHを示す。
【0139】
「ナノプローブ」は、画像化標識部分を含むpH感受性ミセルが本明細書で使用されている。一部の実施形態では、標識部分は蛍光色素である。一部の実施形態では、蛍光色素はインドシアニングリーン染料である。
【0140】
「投与する」「投与すること」、「投与」などの用語は、本明細書で使用される場合、化合物又は組成物を生物学的作用の所望の部位に送達することを可能にするために使用することができる方法を指す。これらの方法として、これらに限定されないが経口経路、十二指腸内経路、非経口注射(静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、血管内、腫瘍内、又は点滴)、局所的及び直腸投与が挙げられる。当業者は、本明細書に記載される化合物及び方法と共に利用することができる投与技術に精通している。一部の実施形態では、本明細書に記載される化合物及び組成物は経口的に投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載される組成物は静脈内に投与される。
【0141】
「共投与」などの用語は、本明細書で使用される場合、選択された治療剤の単一の患者への投与を包含することが意図され、薬剤が同じ若しくは異なる投与経路で、又は同じ若しくは異なる時間に投与される治療レジメンを含むことが意図される。
【0142】
「有効量」又は「治療有効量」という用語は、本明細書で使用される場合、投与される薬剤又は化合物の十分な量を指し、この量は、治療を受けている疾患又は状態の1種以上の症状をある程度和らげる。結果は、疾患の徴候、症状、若しくは原因の減少及び/若しくは軽減、又は任意の他の生体系の所望の改変を含む。例えば、治療のための使用に対する「有効量」は、疾患症状の臨床的に有意な低減を得るのに必要とされる、本明細書で開示されている化合物を含む組成物の量である。任意の個々の事例における適当な「有効量」は、技術、例えば、用量漸増試験を使用して任意選択的に決定される。
【0143】
「増強する」又は「増強すること」という用語は、本明細書で使用される場合、所望の作用を、潜在能力又は期間のいずれかにおいて増加させる又は長引かせることを意味する。よって、治療剤の作用を増強することに関して、「増強する」という用語は、系に対する他の治療剤の作用を、潜在能力又は期間のいずれかにおいて増加させる又は長引かせる能力を指す。「増強する有効量」とは、本明細書で使用される場合、所望の系における別の治療剤の作用を増強するのに十分な量を指す。
【0144】
「対象」又は「患者」という用語は哺乳動物を包含する。哺乳動物の例として、これらに限定されないが、哺乳動物のクラスのいずれのメンバー:ヒト、ヒト以外の霊長類例えば、チンパンジー、及び他の類人猿及びサル種;飼育動物、例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ;家畜例えば、ウサギ、イヌ、及びネコ;げっ歯類を含む試験動物、例えば、ラット、マウス及びモルモットなどが挙げられる。一態様では、哺乳動物はヒトである。
【0145】
「治療する」、「治療すること」又は「治療」という用語は、本明細書で使用される場合、疾患若しくは状態の少なくとも1種の症状を軽減する、弱める若しくは回復させること、追加の症状を予防すること、疾患若しくは状態を阻害する、例えば、疾患若しくは状態の発生を止めること、疾患若しくは状態を緩和すること、疾患又は状態の退縮を引き起こすこと、疾患若しくは状態により引き起こされた状態を緩和すること、又は疾患若しくは状態の症状を予防的に及び/若しくは治療的に停止することを含む。
【0146】
特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、本開示は代替のみ及び「及び/又は」を指すという定義を支持するが、代替のみを指すこと又は代替が相互に排他的であると明示的に示されていない限り、「及び/又は」を意味するように使用される。本出願全体を通して、「約」という用語は、値を決定するために利用されているデバイス又は方法に対する誤差の標準偏差を含む値、例えば、述べられている範囲に対して列挙された値に対して、述べられている数の約±10%、又は下限より10%下及び上限より10%上を示すために使用される。長年にわたる特許法律に従い、「a」及び「an」という単語は、例えば、特許請求の範囲又は明細書の中で「含む」という単語と併せて使用された場合、具体的に指摘されてない限り、1つ以上を表す。
【実施例】
【0147】
実施例1.ブロックコポリマーの合成
本明細書に記載される式(II)のブロックコポリマーは、標準的合成技術を使用して、又は当技術分野で公知の方法を使用して合成される。
【0148】
特に指摘されていない限り、質量分析、NMR、HPLC、タンパク質化学反応、生化学、組換えDNA技法及び薬理の従来の方法が利用される。ブロックコポリマーは、標準的有機化学技術、例えば、March’s Advanced Organic Chemistry、第6版、John Wiley and Sons,Inc.に記載されているものなどを使用して調製される。
【0149】
本明細書で使用されている一部の略語は以下の通りである:
DCIS 非浸潤性乳管癌
DCM:ジクロロメタン
DMAP:4-ジメチルアミノピリジン
DMF:ジメチルホルムアミド
DMF-DMA:N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール
EDCI:1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
EtOAc:酢酸エチル
EtOH:エタノール
ICG-OSu:インドシアニングリーンスクシンアミドエステル
MeOH:メタノール
PMDETA:N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン
TEA:トリエチルアミン
AUC 曲線下面積
AUCall 時間=0から最終時間点までのAUC(濃度=0を含む)
AUClast 時間=報告可能な濃度を有する0から最終時間点までのAUC
AUC0~24hr 時間0~24時間までのAUC
BC 乳がん
BLS ブレッドローフスライド
BQL 定量限界未満
C10m 10分における血漿濃度
Cmax 最大血漿濃度
CNR コントラスト対ノイズ比
CRC 直腸結腸がん
EC 食道がん
FFPE又はFF ホルマリン固定パラフィン包埋又はホルマリン固定
GMP 医薬品の製造管理及び品質管理の基準GLP 優良試験所規範
GPC ゲル浸透クロマトグラフィー
HNSCC 頭頸部扁平上皮癌
Hr 時間
ISR 実試料の測定値における再現性評価
IV 静脈内
kg キログラム
LLOQ アッセイ定量化の下限
MFI 平均蛍光強度
mg ミリグラム
mL ミリリットル
μg マイクログラム
NC 計算されていない
NR 報告されていない
OC 卵巣がん
PK 薬物動態
PPV 陽性適中率
PrC 前立腺がん
ROI 関心領域
r2adj 試料サイズに対する調節済み決定係数
SEC サイズ排除クロマトグラフィー
SOC 標準治療
SOP 標準的手術手順
TBR 腫瘍とバックグランドの比
T1/2 半減期
Tmax 最大濃度の時間
【0150】
5ステップのプロセスを使用して式(II)のブロックコポリマーを合成した。ステップ1~4を制御された製造環境で実施した。中間体8(ポリジブチルアミン、PDBA)を、3(PEG-Br、マクロ開始剤)、7((ジブチルアミノ)メタクリル酸エチル、DBA-MA)、及び4(アミノエチルメチルアクリレート塩酸塩、AMA-MA)の原子移動ラジカル重合(ATRP、ステップ4)により合成した。最終ステップは、8(PDBAのジブロックコポリマー骨格)を9(ICG蛍光体(ICG-OSu))に共有結合させることによる化合物1の調製を含んだ。ステップ5では、使用されるすべての原料、溶媒及び試薬は、GMP製材料として供給された中間体9(ICG-OSu)を除いて、国民医薬品集(National Formulary(NF))又は米国薬局方(United States Pharmacopeia(USP))のいずれかにより検証されたものである。予防策として、化合物1は-80℃±15℃で貯蔵し、光から保護した。
【0151】
スキーム1及び2は、プロセスフローチャート、これに続いて製造プロセスの詳細な説明を提供する。
【0152】
【0153】
ステップ1
合成:ジクロロメタン(CH2Cl2)中のポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(PEG-OH)1a、トリメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)を氷浴内で冷却した。次いで、フラスコを氷浴内に維持しながら、ジクロロメタン中α-ブロモイソブチリルブロミド1bをフラスコに滴下添加した。反応混合物を室温(RT)に温め、16時間撹拌した。
【0154】
精製:次いで、反応混合物を撹拌下で、10倍過剰の容量のジエチルエーテルを含有するビーカーにゆっくりと加えて、粗生成物3を沈殿させた。次いで粗生成物を濾過し、真空オーブン内で乾燥させた。乾燥させた、粗生成物3をエタノールから5回再結晶化し、真空オーブン内で乾燥させて、精製された3(PEG-Brマクロ開始剤)を得た。典型的な収率は40%~70%であり、純度>93%である(高速液体クロマトグラフィー[HPLC]領域%)。
【0155】
ステップ2:
再結晶化:粗生成物2-アミノエチルメタクリレート塩酸塩(AMA-MAモノマー)、2-プロパノール4a及び酢酸エチルを合わせ、固体が溶解するまで70℃に加熱した。溶液を、セライトを含有する予熱したブフナー漏斗を介して濾過した。濾過した溶液を室温まで冷却させ、次いで2~8℃にさらに冷却して、8~16時間の期間にわたり結晶化した。生成した結晶性固体を室温まで温め、次いで濾過し、冷たい酢酸エチルで3回洗浄した。単離した結晶性生成物を真空下で乾燥させて、精製された4を得、これをステップ4で使用するために-80℃で貯蔵した。典型的な収率は40%~70%であり、純度は使用試験における溶解度で示され、さらに102~24℃の範囲のシャープな融点(≦3℃)で示される。
【0156】
ステップ3:
合成:2-(ジブチルアミノ)エタノール(DBA-EtOH、5)、トリメチルアミン、塩化銅(I)(CuCl)及びジクロロメタンをフラスコ内で合わせ、氷浴内で冷却した。次いで、塩化メタクリロイル6をフラスコに滴下添加し、その間フラスコを氷浴内で維持した。反応混合物を室温に加温させ、16時間撹拌した。次いで、反応混合物を氷浴内で冷却し、濾過した。濾液を分液漏斗に移し、有機相を炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)の飽和水溶液で2回洗浄し、これに続いてDI水で1回洗浄した。次いで、有機相を無水硫酸ナトリウム(Na2SO4)で乾燥させ、濾過し、回転式エバポレーターを使用して、溶媒を真空中で除去して、モノマー生成物7を液体として生成した。
【0157】
精製:追加のCuClを安定剤として加え、生成物を真空蒸留により精製した。透明から黄色がかった蒸留物7(DBA-MA)を琥珀色のバイアルに移し、ステップ4で使用するために-80℃で貯蔵した。典型的な収率は30%~60%であり、純度>93%である(HPLC領域%)。
【0158】
【0159】
ステップ4:
合成:中間体3をフラスコに加え、フラスコを穏やかに加熱することによって、ジメチルホルムアミド(DMF)と2-プロパノールの混合物に溶解した。フラスコの内容物を室温まで冷却させておき、4及び7(それぞれAMA-MAモノマー及びDBA-MAモノマー)を溶液に加え、これに続いてN,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)を加えた。反応混合物を撹拌し、次いで窒素下で冷凍-ポンプ-解凍サイクルに4回供して、空気(酸素)を除去した。さらに凍結しながら、反応混合物を銅(I)ブロミド(CuBr)で処理し、真空及び窒素によるフラッシュサイクルに3回供して、封じ込められた空気が確実に除去されるようにし、次いで反応物を油浴内で40℃に温めた。反応混合物をさらに16時間反応させた。反応完了時、混合物をテトラヒドロフランで希釈し、酸化アルミニウム(Al2O3)の床を介して濾過した。回転蒸発を使用して、溶媒を濾液から除去し、真空下で乾燥させた。
【0160】
精製:乾燥させた粗生成物をメタノールで溶解し、メタノールを有する10k MWCO Pellicon(登録商標)2 Mini Filterカセットを介して、接線流濾過により精製した。次いで、回転蒸発を使用して溶媒を除去した。精製した中間体8(PEO113-b-(DBA80~150-r-AMA1~3)、PDBA)を真空下で乾燥させ、ステップ5で使用するために-80℃で貯蔵した。典型的な収率は60%~90%であり、純度は>93%(HPLC領域%)である。ある場合には、生成物はコンジュゲートポリマーと非コンジュゲートポリマーの混合物である。
【0161】
ステップ5:
合成:超音波処理槽による助けを用いて、中間体8(PDBA)をメタノール(MeOH)に溶解した。次いで、メタノール溶液を9(ICG-OSu)に加えた。光から保護しながら、反応物を室温で16時間撹拌した。反応の終わりに、6倍過剰の無水酢酸を反応混合物に加え、1~1.5時間混合させて、粗生成物化合物1を生成した。
【0162】
精製:メタノールを有する10k Pellicon(登録商標)2 Mini Ultrafiltrationモジュールを介して、接線流濾過により粗生成物を精製した。濾過した溶液の溶媒を真空中で除去して、化合物1を生成し、これを光から保護し、-80℃で貯蔵した。典型的な収率は>70%であり、純度はNLT95%(SEC)である。
【0163】
分析:屈折率(RI)検出及び2つのAgilent PLgel Mixed-D 300×7.5mmカラムを用いた、特注のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法を介して、相対的モル質量分布の分析を行う。試料クロマトグラムを、580~1,074,000g/モルのポリスチレン標準物質から構築された校正曲線と比較して、モル質量分布を計算した。
【0164】
実施例2.化合物1の貯蔵
注入用の化合物1の現在の提示は、-80℃で貯蔵した3mg/mLの緑色の水溶液である。バイアルを室温に解凍してから、フェーズ1に対して15mg/分及びフェーズ2に対して30mg/分の静脈内投与を行う。
【0165】
実施例3.化合物1の安定性
化合物1、3.0mg/mL注入は、-80℃で、24カ月まで(現時点での貯蔵期間)の長期貯蔵条件において安定していることを安定性データは示している。アッセイ又は関連物質及び不純物のレベルにおいて、又は貯蔵条件で試験した他の特質のいずれにおいても有意な変化は観察されなかった。最新の安定性結果が表1及び表2に提供されている。
【0166】
【0167】
【0168】
実施例4.ヒトに対するPK作用
第1相試験の目的
第1相は、外科的切除を必要とする固形がんを有する患者における、化合物1の安全性、PKプロファイル、及び画像化の実現可能性を評価するための単独の治験責任医師、非無作為抽出、非盲検、シングルアーム、横断研究である。この試験の主要目的は、腫瘍及び固形がんの転移性リンパ節を検出するための術中光学的造影剤としての化合物1の安全性、PK、及び実現可能性を調べることであった。試験は、ICG適合カメラ及び画像化デバイスを使用して、及びエクスビボ試料を用いて、投薬後24(±8)時間の時点で術中に得た蛍光の十分なTBR及びCNRに対する化合物1の最適な用量範囲を調べることを意図した。
【0169】
第1相には固形がん(HNSCC、乳がん、食道がん、又は直腸結腸がん)を有する30人の患者を登録し、患者らはそれぞれの腫瘍の種類の診断を生検により確認しており、腫瘍の外科的摘除を受ける予定である。試験設計は、用量段階的増大部分(第1a相;N=18最大)に対する標準的3+3設計、これに続く用量増大部分(第1b相;N=15)を含んだ。すべての患者は単回I.V.用量の化合物1の投与を受け、これに続いて化合物1の点滴からおよそ24時間後、所定の手術を受けた。
【0170】
第1a相は、それぞれ患者3人からなる5つのコホートで実施した用量認定試験であった。評価した用量レベルはこの順序で0.3、0.5、0.8、0.1、及び1.2mg/kgであった。コホート間の用量の漸増は、その前のコホートの最後の患者が10日目の安全性評価を完了した後で行った。安全性、PK、及び画像化実現可能性を試験の第1a相及び第1b相の両方の部分で評価した。患者の安全性は、試験中及び投薬後10日まで評価する。
【0171】
手術中、NIRカメラを使用して、化合物1蛍光の術中画像を、原発性腫瘍及び転移性リンパ節並びに正常な非がん組織を含む周辺組織から得た。これは摘除した試料のインビボ及び/又はエクスビボ画像化であってよい。外科医が安全と考えた場合、他の方法では臨床的に腫瘍とは疑われないような、化合物1蛍光を有する領域から最大10個までの試験関連生検を採取した。複数のNIRカメラを使用して、化合物1で腫瘍を画像化する実現可能性を評価した。
【0172】
臨床的がんケアに使用されている標準的病理検査の慣習に従い組織像に対して腫瘍試料を処理した。臨床的意思決定に必要な、選択された組織学的特徴である縁に対する診断が提供された。蛍光画像を腫瘍及びリンパ節試料及び試験に関連した生検から収集した。縁の幅及び陽性の縁の数を書き留め、縁内の蛍光の場所と相関させた。これから、化合物1の蛍光と組織病理検査との間の相関関係を計算した。
【0173】
傾向及び人口統計データ
すべての患者は、化合物1の単回用量を受け、試験を完了した。すべての患者が画像化、PK、及び安全性分析に含まれた。
【0174】
所定の手術が施される4種の異なる腫瘍の種類(HNSCC、n=13;BC、n=11患者;CRC、n=3;EC、n=3)を有する30人の患者は、患者の計画された手術の24(±8)時間前において、単回用量のONM-100を受けた(表3)。
【0175】
第1a相では、34~80才の間の年齢、及び17.4~37.1kg/m2の間のボディマス指数を有する合計3人の男性及び12人の女性患者が試験に参加した。すべての患者は白人(白色人種)であり、ヒスパニック又はラテン民族の患者はいなかった。合計8人の患者がHNSCCの診断を受け、7人の患者がBCの診断を受けていた。
【0176】
第1b相では、45~85才の間の年齢及び18.9~39.4kg/m2の間のボディマス指数を有する合計5人の男性及び10人の女性患者が試験に参加した。すべての患者は白人(白色人種)であり、ヒスパニック又はラテン民族の患者はいなかった。合計5人の患者がHNSCCの診断を受け、4人の患者がBCの診断を受け、3人の患者がCRCの診断を受け、3人の患者がECの診断を受けていた。第1b相の平均年齢(68才)は第1a相(58才)より高かった。
【0177】
【0178】
薬物動態学的結果
試験デザイン:単一化合物1のIV用量が1~5分間のIV点滴として、第1a相では1コホート当たり3人の患者からなる5つのコホート(0.1、0.3、0.5、0.8、及び1.2mg/kg)の患者に、第1b相では15人の患者に1.2mg/kgの用量が投与された。腫瘍の種類を含む患者の人口統計情報が第1a相に対しては表4及び5に、第1b相に対しては表5に提示されている。Intertek Pharmaceutical Services(San Diego、CA)は、バリデーションされた直接蛍光リーダーアッセイを使用して.化合物1の血漿濃度を決定した。Pacific BioDevelopment(Davis、CA)はPK分析を実施した。
【0179】
試料収集:点滴前及び点滴後10分及び0.5、1、3、8、24、48、72、及び240時間の時点で血液試料を収集した。
【0180】
【0181】
【0182】
分析:血漿濃度対時間プロファイルを各患者に対して生成した。Phoenix WinNonlin(バージョン8.0)を使用して、薬物動態学的パラメーターを予測した。SOPに従い、BQLとして報告された濃度を0に設定した。ただし、対象#ON1102に対する0.5時間の試料は例外であり、この場合LLOQ/2(5μg/mLの値をパラメーター計算に使用)に設定し、24及び48時間の試料も同様である。
【0183】
予測パラメーターはCmax、Tmax、T1/2、AUClast、AUCall及びAUC0~24hrであった。曲線の末期においてデータ点が3つ未満であった場合、プログラムはT1/2(NC)を計算しなかった。末端勾配評価を決定するための係数は0.8、T1/2未満であり、報告されなかった(NR)。無限大に外挿されたAUCは設定したいかなるデータに対しても報告されていない。これは全ての場合において、外挿されたAUC(%)は20%を超え、よって、AUCinf予測値は信頼できるものではないからである。10分間での濃度、すなわち1回目の測定ポイント(C10m)もまた各患者に対して報告された。
【0184】
投薬から最後の時間点までの血漿濃度対時間曲線下領域は、測定可能な濃度(AUClast)と共に、線形台形法により予測した。最後の3つ以上の時間点を使用して、排出速度定数(λz)を予測し、これを使用して、ゼロから無限大(AUCINF)までの末期半減期(T1/2)及びAUCを以下の方程式から予測した:
T1/2=ln(2)/λz
AUCINF=AUC0~t+Ct/λz
(式中、Ctは最後の測定可能な濃度である)。
【0185】
第1a相
第1a相に対する患者の人口統計データは表4に提示されている。個々の血漿濃度は表6に示されている。個々の薬物動態学的パラメーター予測値、及びグループの簡易統計は表6に提示されている。平均血漿濃度(log及び直線)対時間のプロットは
図1A~1Bに提示されている。
【0186】
化合物1は、0.1mg/kgの用量に従ったいかなる対象試料においても測定可能ではなかった。
【0187】
曝露は用量に関連した。C
max、AUC
last、AUC
all及びAUC
0~24hrは、用量がより高いほど高かった。投薬から10分後の濃度及びAUC
0~24hrが用量と対比されて
図2及び
図3にそれぞれプロットされている。プロットは、パラメーター対用量データに対して実施された直線回帰の結果を示す。すべての血漿値がBQLとして報告された、0.1mg/kg用量グループからのデータはこれらのプロットから除外されている。試験は、用量比例性に対する統計分析を実施するために強化されなかった。しかし、直線回帰は曝露と用量との間の強い相関関係を示している。
【0188】
平均C10値は、0.3、0.5、0.8、及び1.2mg/kg用量でそれぞれ12.0、17.3、19.8及び31.7μg/mLであった。平均AUC0~24hrは197、289、383,及び495μg-時間/mLであった。平均末期半減期値は0.8及び1.2mg/kg用量グループのみ定量化可能であり、それぞれ79.0及び36.5時間であった。
【0189】
【0190】
第1b相
第1b相に対する患者の人口統計データは表7に提示されている。患者に対する個々の血漿濃度は表8に示されている。個々の薬物動態学的パラメーター予測値、及びグループ簡易統計は表9に提示されている。個々の血漿濃度(log及び直線)対時間のプロットは
図4A~4Bに提示されている。
【0191】
平均C10mは33.2μg/mLであり、平均AUC0~24hrは638μg-時間/mLであった。平均末期半減期は46.4時間であった。
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
第1a相及び第1b相を合わせたデータ
平均血漿濃度を、第1a相及び第1b相を合わせたすべての患者に対して、用量グループにより時間と対比させてプロットし、これが
図5A(logプロット)及び
図5B(直線プロット)において提示されている。第1a相及び第1b相のすべての患者に対する10分間(C
10m)における平均濃度及びAUC
0~24hr対用量のプロットが
図6及び
図7においてプロットされている。データは、曝露は用量に比例するという第1a相データに基づきなされた所見を支持している。
【0196】
1.2mg/kgで治療した第1a相及び第1b相のすべての患者に対して、腫瘍の種類により整理した個々の患者の薬物動態学的パラメーター及び簡易統計が表10に提示されている。予測された薬物動態学的パラメーターの中で、腫瘍の種類に基づく明らかな差異はなかった。C10m値は31.2~35.5μg/mLの範囲であり、AUC0~24hr値は585~677μg-時間/mLの範囲であった。
【0197】
各腫瘍の種類に対する平均血漿濃度対時間のプロットが
図8A(logプロット)及び
図8B(直線プロット)に示されている。これらのプロットは、試験した腫瘍の種類の中で化合物1薬物動態における明らかな差異はないことを例示している。各種類の腫瘍に対する個々の血漿濃度対時間プロットが
図8C~8F(logプロット)及び
図8G~8J(直線プロット)に提示されている。
【0198】
【0199】
試験は用量比例性のための統計分析を実施するために強化されなかったが、C10は、0.3~1.2mg/kgにおいて用量比例であるように見え(
図6)、AUC
0~hrは1.2mg/kgに用量比例しているように見える(
図7)。
【0200】
実施例5.蛍光画像取得及び画像処理
NOVADAQ SPY Elite又はSurgVision Explorer Airのいずれかを使用して、「切開外科手術」の術中画像及びビデオを得た。腫瘍に対するカメラの距離は、マニュアルの指示に従い、Explorer Airに対しておよそ20cmであり、NOVADAQ SPYに対して30cmであった。NOVADAQ SPYカメラは蛍光ビデオのみを生成することができ、この蛍光ビデオを後処理中に画像に変換することができた。このカメラに対する生データ取得のための設定は固定されていた。Explorer Airについては、両方のシステムから得た画像間での直接の比較を可能にするために、各患者に対して同じ設定(曝露時間及びゲイン)を使用しようとする試みがなされた、しかし、手術中の可視蛍光の量に応じて、ある場合にはカメラシステムの飽和により、調節が必要とされた。一部の患者において、切開外科手術が実施されなかった場合には、Olympus NIR 腹腔鏡及びDa Vinci Firefly カメラシステムが使用された。システムは製造業者マニュアルに従い使用した。
【0201】
最初に、腫瘍及び周辺領域の切除前蛍光画像及び/又は動画が作製された。外科的切除後、創傷床の画像を得た。蛍光領域が創傷床内に目視可能な場合には、可能であれば、生検を採取し、手術室のバックテーブル上ですべての側面に対して切除した試料を画像化した。適用可能であれば、インサイチュ及びバックテーブル上で可能な場合、リンパ節を画像化し、その後リンパ節切開の創傷床を再度画像化した。
【0202】
指定された画像化試験スタッフが蛍光画像化を実施した。標準的手術に対するあらゆる先入観を回避するために切除前画像は外科医には伏せられていたが、外科医は外科手術を実施しながら、白色光画像に対する第2のモニターを見ることができた。外科医は創傷床及びバックテーブルでの画像化による補助を受けた。画像化手順の間、蛍光画像化手順それ自体との起こり得る相互作用を防止するため、手術室内の周辺光のスイッチは切られた。
【0203】
Fiji(ImageJ、バージョン2.0.0)を使用して画像を処理した。画像は、1ピクセル当たりの最大及び最小蛍光強度に基づき、患者ごとに拡大縮小した。
【0204】
術中のバックテーブルでの画像取得及び術後画像取得
組織処理のすべてのフェーズの間、試料は、造影剤の起こり得る光退色を防止するためできるだけ暗所で貯蔵した。
【0205】
切除直後、試料全体は、指定された術中カメラシステム並びにLI-COR PEARL(登録商標)Trilogyシステムの両方を、試料の外科的切除後最大60分以内に使用して、6つのすべての摘除面(例えば、前面、背面、側面、中央、尾側及び頭側)を画像化した(術中バックテーブルでの画像化)。両方のデバイスを合わせた画像化の時間は最大5分であった。試料には青色インク及び黒色インクで摘除面に印を付けた。インク2色という使用制限は病理学者による組織処理のためのSOCに影響を与えなかったが、第3のインクの色が必要とされた場合、目的とする追加の病理学的摘除の縁を定義するために緑色のインクを使用した。
【0206】
術後の組織スライス画像化のタイミングは、異なる腫瘍の種類の試料処理のためのSOCにおける差異を受け入れるように適合されている。簡単に説明すると、BC試料は手術当日に新鮮なまま薄片化し、次いでホルマリン固定し、他の腫瘍の種類は、手術から1~3日後の全摘除試料のホルマリン固定後に薄片化した。一般的に、手術標本は±0.5cmの厚さの組織スライスに連続的に薄片化する。方向づけの目的のため、薄片化中及び直後に白色光写真を作製した。薄片化後、各組織スライスの両側の蛍光画像化を光遮断環境内で実施した(LI-COR PEARL(登録商標)Trilogyシステム)。したがって、BCスライスは切除からおよそ120分後に画像化し、他の腫瘍の種類は、切除及びホルマリン固定後、後日薄片化し、画像化した。
【0207】
各BLSは、4%パラホルムアルデヒド/リン酸緩衝生理食塩水中で終夜ホルマリン固定が施された。次いで、病理学者は、SOCに従いさらなる分析のために、及び組織病理学的相関関係のため腫瘍組織を線引きするためのヘマトキシリン及びエオシン(H/E)染色用の4μmスライスの調製のために、BLSの部分を巨視的にサンプリングした(FFPE包埋)。追加のFFPEブロックは、病理学者の従来の巨視的目視検査によるSOC検査に加えて、BLSの蛍光画像化に基づき包埋することができた。最終の組織病理検査結果を、目的の組織スライスの記録された蛍光画像と相互相関するために、標準化したワークフローを実行した。7~14日後、Odyssey Flatbed Scanner(LI-COR Bioscience)を使用して、FFPEブロックをスキャンした。
【0208】
実施例6.組織学的相関関係
SOC病理学的手順を実施した後(第1a相に対しておよそ7~10日間及び第1b相に対して7~14日間)、H/Eスライスを、それぞれの腫瘍の種類に対して専門の有資格病理学者と共に再調査し、議論した。
【0209】
実施例7.術後の蛍光測定
Adobe Illustrator及びFiji(ImageJ)を使用して、H/Eスライスと蛍光画像(すなわち、ブレッドローフスライス又はBLS)との間の相関関係を作成した。。組織病理学的結果に基づき、腫瘍及びバックグランドを含有する関心領域(ROI)を正確に及び手作業で描いた後、各患者に対して、別個のBLSの各LI-COR PEARL画像に対してCNRを計算した。腫瘍を含有するすべての利用可能なBLSに基づき中央値CNRを計算した。Fiji(ImageJ)を使用して、以下に対して蛍光測定を実施した。
・平均蛍光強度(MFI;1ピクセル当たりの蛍光強度)
・コントラスト(腫瘍組織のMFI)
・ノイズ腫瘍を含有しない組織のMFI(例えば、健康な筋肉、線維症、脂肪)
・ノイズの標準偏差
・CNR(コントラスト対ノイズ比):
CNR=(蛍光(腫瘍)-蛍光(正常組織))/標準偏差蛍光(正常組織)・TBR(腫瘍対バックグランド蛍光比):
TBR=蛍光(腫瘍)/蛍光(正常組織)
【0210】
術中蛍光測定
腫瘍領域の目視可能な白色光と対応する蛍光画像との間の巨視的な相関関係を作成した。巨視的な腫瘍を含有するROI及びバックグランドを含有するROIを描いた後、腫瘍領域とバックグランド領域の両方のMFIを計算した。上記に記載される計算の後、蛍光比(CNR、TBR)を患者ごとに計算した(患者一人当たり測定3回)。
【0211】
実施例8.統計的方法
固形腫瘍及びリンパ節転移の術中画像化に対する化合物1の実現可能性評価は、化合物1蛍光の蛍光シグナルCNR、感度、及び局在化パターンの定量化を含んだ。さらに、十分なCNRに対応する安全な用量の範囲は、術中のインビボ及びエクスビボ蛍光シグナル(NOVADAQ画像化システム)を、エクスビボ検査(例えば、組織学的検査、NIRフラットベッドスキャニング)と一緒に合わせた評価により計算した。
【0212】
実施例9.患者の人口統計データ及び試料特徴
化合物1を用いた腫瘍非依存的画像化の実現可能性を評価するため、4種の異なる腫瘍の種類(HNSCC、BC、EC、又はCRC)を有する15人の追加の患者に、第1a相から選択された最適な用量の化合物1(1.2mg/kg)を第1b相において投薬した。第1b相の患者はHNSCC(n=5)、BC(n=4)、EC(n=3)、及びCRC(n=3)を有した。試料の特徴は表11に提示されている。
【0213】
【0214】
実施例10.蛍光画像化結果
第1a相
第1相試験の完了した第1a相用量-段階的増大部分に対する蛍光画像化結果は、15人すべての患者;コホート1(0.3mg/kg)、コホート2(0.5mg/kg)、コホート3(0.8mg/kg)、コホート4(0.1mg/kg)、及びコホート5(1.2mg/kg)のそれぞれ3人の患者、並びに第1b相、1.2mg.kgの15人を超える患者に対して利用可能である。
【0215】
蛍光画像
コホート2(0.5mg/kg)及びコホート5(1.2mg/kg)で投薬した3人の患者からの術中(
図9A)及び術後(
図9B)の画像が提示されている。コホート2では、患者ON1104及びON1106はHNSCCを有しており、患者ON1105は乳がん患者を有した。コホート5では、患者ON1113及びON1114はHNSCCを有しており、患者ON1115は乳がん患者であった。
【0216】
術中画像化とは、手術の時間内に実施されるインビボ画像化と試料全体のバックテーブル画像化との組合せと定義される。術中に化合物1を用いて腫瘍を画像化する実現可能性は、0.1~1.2mg/kgの間の化合物1の投与を受けた、HNSCCを有する患者8人すべてにおいて明確に実証された。7人のBC患者の腫瘍のうち2つが化合物1で視覚化された。残りの5つのBC腫瘍は深部にあり、正常組織に取り囲まれ、化合物1の蛍光画像化により術中に目視可能ではなかった。これはNIR画像化での組織浸透が限定されているため、驚くことではない。重要なことに、これら5つのBC腫瘍のいずれも陽性の縁を有さなかった。これらの結果は、化合物1を用いたHNSCC及びBCにおける術中画像化に対する実現可能性を明確に実証している。
【0217】
術後の組織試料画像化は、すべての15人の患者の腫瘍試料における化合物1画像化実現可能性を明確に示している。化合物1のこれらの画像は、明るい蛍光領域と暗色の領域との間でシャープな境界を示す(
図10A、15、及び16)。壊死性である腫瘍のコアは蛍光を示さない。すべての患者に対して、蛍光領域は、関心領域に印を付けたH/E画像と対応した。高い腫瘍対バックグランド蛍光比(CNR、TBR)が、組織病理学的相関関係に基づき、腫瘍又は正常と特定された領域から見られる。それぞれ試験した用量レベルにおいて、第1a相のすべての15人の患者に対して類似の画像が得られた。
【0218】
第1a相の平均蛍光強度-原発性腫瘍
術中画像化
第1a相において、すべての(8人のうち8人)HNSCC患者の腫瘍及び7人のBC患者腫瘍のうちの2つ(巨視的な腫瘍がインビボで目視可能な患者)が、化合物1蛍光をインビボで示した(用量範囲0.1~1.2mg/kg)。これらの患者すべてにおいて、腫瘍組織からのMFIは周辺の正常組織からのMFIより上だった。
【0219】
術中の蛍光強度は、それぞれの手術環境の独特な提示により患者又は用量レベルの間で標準化及び比較ができない。複数の変数、例えば、カメラ角度、カメラと組織の距離、腫瘍場所、及び他の組織又は脂肪による被覆が蛍光シグナルの絶対値に影響を与える。したがって、腫瘍及び非腫瘍組織からのインビボ蛍光の比を各患者に対して計算した。CNRに対して
図11Aにおいて及びTBRに対して
図11Bにおいて示されている通り、術中TBR及びCNR値はすべての患者に対して高かった。これは、個々の手術に対して、腫瘍組織と正常組織との間の蛍光強度の明白な境界を示すもので、外科的切除中の腫瘍のリアルタイムでの可視化において外科医を潜在的に援助することができる主要因子である。これらの比は変数であり、用量と共にいかなる系統的な増加も、低減も示さなかった。
【0220】
術後の画像化
化合物1の蛍光を、腫瘍組織及び正常組織の組織病理学的な発見と相関させる目的のため、標準的病理検査の各ステップで調製した術後試料(BLS試料)から化合物1の蛍光画像を取り込んだ。画像化及び蛍光定量化を標定する能力を有する試験用カメラ、LI COR PEARLを使用して、複数の試料にわたり蛍光強度を比較した。
【0221】
図12Aは、5つの用量レベルで投薬した15人の患者すべてに対して、標準的病理検査で選択された複数のBLSに対する、組織像で確認した腫瘍及び正常組織領域のMFIを示す(BC患者からは新鮮な試料及びNHSCC患者からはホルマリン固定(FF)試料)。腫瘍MFIは用量と共に増加した。正常組織のMFIも用量と共に増加した。10分の時点で各患者の血漿濃度に対してプロットした場合(
図12B)、組織像からのMFIは、腫瘍及び正常組織の試料が、各患者(n=15)に対して明白な境界(重複なし)を示すことを確認した。これは、外科医がバックグランド組織から腫瘍を線引きするのを援助する、リアルタイム画像で誘導される手術に対して重要な主要因子である。用量と同様に、MFIは初期の血漿濃度の増加と共に増加した。これらの数字はまた、ホルマリン固定組織(FF)対新鮮組織又はHNSCC対BC組織の間での蛍光シグナルにおける系統的な傾向が存在しないことを示している。
【0222】
術中画像化と同様に、組織像により確認した腫瘍及び正常な領域からの術後蛍光を使用して計算したTBR(
図13A)及びCNR(
図13B)は高い可変性を示し、用量に対して比較的一定のままである。
【0223】
第1a相の要約
SOC BC又はHNSCCがん手術を受ける15人の患者において、手術の24+8時間前に投与される化合物1の単回静脈内投与後、オープンフィールド及びクローズドフィールドNIRカメラを使用して、術中及び術後の蛍光画像化を実施した。0.1~1.2mg/kgの用量の間で5つの異なる用量レベルを評価した。これらのデータは、すべてのHNSCC及びBC患者において、化合物1で腫瘍を画像化する実現可能性を実証している。化合物1画像化は、ICGを検出する複数のNIRカメラを用いて可能であった。各患者に対して腫瘍組織と正常組織との間でMFIは十分に画定された。腫瘍組織と正常組織との両方に対してMFIは、評価した用量範囲でわずかに増加した。蛍光比(CNR及びTBR)は可変であるが高く、腫瘍組織と正常組織との蛍光の間にシャープな境界をさらに例示する。CNR及びTBRは用量と共にいかなる系統的な増加又は低減も示さず、BC及びHNSCC腫瘍に対して非常に類似していた。
【0224】
試験の第1b相部分では、化合物1の安全性、PK、及び画像化実現可能性のさらなる評価のために、第1相試験の第1a相部分から最も高い用量(1.2mg/kg)を選択した。試験の第1b相部分では、4つの腫瘍の種類(BC、HNSCC、CRC、及びEC)を有する15人の追加の患者が、投薬後24±8時間の手術/画像化時間において化合物1(1.2mg/kg)の投与を受けた。
【0225】
試験の第1b相部分に対する化合物1の1.2mg/kg用量レベルの選択は、第1a相部分からの以下の結果に基づく。第1a相試験では、安全性プロファイルは試験したすべての用量レベルにおいて同等であり、より高い用量において、いかなる特定の安全性の懸念又は傾向をも上昇させることはなかった。化合物1の血漿曝露は用量と比例して増加した。平均蛍光強度は化合物1の血漿曝露と共に増加した。CNR及びTBR値は可変であったが、高いままであり(2~5の範囲)、インビボ腫瘍と術後の試料蛍光の両方について用量と共に低減することはなかった。これらのデータは、より高い蛍光強度と共にできるだけ高い用量/曝露を使用して、追加の腫瘍の種類及び内視鏡カメラ、並びに他の潜在的に困難なシナリオ、例えば、正常組織で覆われた腫瘍、解剖学的難題を有する腫瘍場所、非浸潤性乳管癌、多病巣性腫瘍、及び小さなリンパ節転移などを用いて、画像化実現可能性を評価することを支持している。
【0226】
試験の第1b相部分において、化合物1の安全性、PK、及び画像化実現可能性を評価するために、第1相試験の第1a相部分からの最も高い用量(1.2mg/kg)を選択した。試験の第1b相部分では、4つの腫瘍の種類(BC、HNSCC、CRC、及びEC)を有する15人追加の患者が、投薬後24±8時間の手術/画像化の時点において化合物1(1.2mg/kg)の投与を受けた。
【0227】
蛍光画像
化合物1は、10人/15人の患者の腫瘍において術中蛍光が発し、これには5人のHNSCCのうちの5人、4人のBCのうちの3人、3人のCRCのうちの2人が含まれていた。1人の深部直腸腫瘍及び1人の深部BC腫瘍は術中に視覚化することができなかったが、これは限定された浸透深さによるもので、NIR画像化に対して驚くことではない。3人の腔内EC腫瘍は管腔外画像化で検出されなかった(1人のEC患者は病理学的完全奏効を有した)。第1a相と同様に、化合物1の蛍光は、第1b相のすべての陽性の縁BC及びHNSCC患者を検出した。腔内又は深部腫瘍のいずれも最終病理検査で陽性の縁を有さなかった。第1a相と同様に、術後に化合物1は、すべての患者及び腫瘍の種類からの組織スライスで蛍光を発した(生存腫瘍を有する3人のEC患者のうちの2人を含む)。術後の画像は、明るい蛍光領域と青色/暗色領域との間にシャープな境界を明確に示す。
【0228】
第1b相は、BC及びHNSCCにおける画像化実現可能性を確認し(第1a相と同様)、腫瘍組織と正常組織との間に類似のシャープな境界を有する他の固形腫瘍において画像化実現可能性を実証している。
【0229】
第1a相及び第1b相の平均蛍光強度-原発性腫瘍
術中画像化
以下の分析では、第1a相及び第1b相において1.2mg/kgを投薬したすべての患者からのデータを合わせた。HNSCC(n=7)、BC(n=5)、EC(n=3)、及びCRC(n=3)を有する合計18人の患者が第1a相及び第1b相において1.2mg/kgの化合物1の投与を受けた。
【0230】
術中のMFI、CNR及びTBRは、術中画像化が可能な患者の腫瘍に対して計算した(18人のうち11人の患者の腫瘍、表15を参照されたい)。術中のCNR及びTBR値はすべての患者に対して高く、これは個々の手術に対して腫瘍組織と正常組織との間の蛍光強度の明白な境界を示している。これは、外科的切除中、外科医が、腫瘍をバックグランドからリアルタイムで線引きするのを潜在的に援助することができた重要な主要因子である。これらのCNR及びTBRの結果はまた、第1b相結果が第1a相結果の確証であることを示している。
【0231】
第1b相結果の要約
第1b相からのデータは、化合物1が、1.2mg/kgの用量で十分に許容され、BC、HNSCC、CRC、腹膜転移、及びおそらくEC(術後画像化により示されている通り)において術中と術後の両方で蛍光の腫瘍可視化を可能にし、固形の全腫瘍の画像化のための化合物1の腫瘍非依存的作用機序を支持していることを明確に示す。
・化合物1(NOVADAQ及びOlympus及びPEARL)並びに管腔外CRC(NOVADAQ)を使用して2人の患者において腹膜転移を視覚化した。
・BCを有する患者において非浸潤性乳管癌(DCIS)は、インビボとバックテーブルの両方において、化合物1により検出することができ、これは術中ガイダンス及び意思決定に対して良い方向であることを示している。
・BCを有する患者において小葉癌(及び上皮内小葉癌)が化合物1で検出された。
・化合物1を使用した切除直後の試料に対する縁の評価は可能なようにみえる(試料全体とBLSの両方に対して)。
【0232】
化合物1を使用した術中画像化ECの値は、最小侵襲性カメラシステムの感度の欠如により術中にいかなる画像も収集することができなかったという事実により評価することができなかった。しかし、EC組織スライスは、LI-COR Pearlカメラによる化合物1の画像化で視覚化された。画像化に対して化合物1投薬/スケジュールを最適化すること、並びにカメラ技術における改善により、この制限を克服することができる。
【0233】
第1相試験の第1b相部分は、ICGを検出するように設計されている複数のNIRカメラを用いた化合物1の画像化実現可能性をさらに確認した。
【0234】
化合物1を用いた術中の蛍光の画像化は、SurgVision Open AirとNOVADAQ SPY Elite蛍光カメラの両方に対して、1.2mg/kgの用量で臨床的に可能である。
【0235】
Olympus Fluorescent Laparoscope及びfirefly camera付きDaVinci Robotを使用した、化合物1による腫瘍の術中可視化は、両方のカメラの感度がSurgVision及びNOVADAQ SPYと比較して低いことから困難であった。より高い用量が最適な画像化性能に対して必要とされ得る。
【0236】
実施例11.リンパ節の画像化
リンパ節解離後、担当病理学者によりリンパ節が同定され、存在する場合収集された。収集後、PEARL画像化を使用して、さらなる処理前に単一のリンパ節を画像化した。ImageJ(FiJi)を使用して画像を処理した。蛍光画像は、蛍光が存在するかどうかについて、組織像を見ていない2人の別個の研究者により再調査された。蛍光画像を見ていない病理学者は、H/E染色に基づき、腫瘍侵入についてリンパ節が陽性であるかどうか又は単離した腫瘍細胞に対して評価した。
【0237】
患者ごとの結果が表12に提示されている。4つの腫瘍の種類全域にわたり、リンパ節切除を受けた患者から得た403個の利用可能なリンパ節のうち、64個が病理検査により確認された腫瘍を含有し(35個が単一の患者からのもの)、このうち30個のリンパ節において化合物1が蛍光を発した。化合物1は、339個の病理検査で陰性のリンパ節のうちの293個で正確に蛍光を発しなかった。
【0238】
【0239】
全体的な性能特徴は表13に提示されている。
化合物1の全体的感度=(真の陽性)/(真の陽性+偽陰性)=30/(30+34)=0.47。
化合物1の全体的特異性=(真の陰性)/(偽陽性+真の陰性)=293/(46+293)=0.86。
【0240】
【0241】
転移性リンパ節の術中の正確な検出は極めて必要とされているが、未だに満たされておらず、技術的に困難である。画像化時間≧24時間において、原発性腫瘍蛍光がリンパ節に流出することによりリンパ節内に恐らく非特異的な蛍光が存在すると仮定される。感度の低さは、原発性腫瘍と比較してリンパ節のサイズが小さい(すなわち、絶対的蛍光が少ない)ことにより、転移性リンパ節内の化合物1が比較的少量であることに起因し得る。よって、より早い画像化時間でのより高い用量により、原発性腫瘍及び転移性リンパ節の化合物1の蛍光画像化に対して改善された診断性能を提供することができる。
【0242】
実施例12.化合物1の蛍光画像化-臨床的有用性
化合物1を用いた蛍光画像化は生存腫瘍を有するすべての患者(30人のうち29人の患者)及び評価した4つのすべての腫瘍の種類(HNSCC、BC、CRC、又はEC)に対して可能であった、
図15及び16。術中に(手術の1時間以内、インビボとバックテーブル画像化の組合せ)、13人すべてのHNSCC腫瘍、11人のうち5人の表在するBC腫瘍、及び3人のうち2人のCRC腫瘍を化合物1の蛍光で視覚化することができた。11人のうち6人の深在するBC腫瘍、3人のうち2人の腔内EC(3人のうち1人のECが病理学的完全奏効を有することが確認された)及び3人のうち1人のCRC(離れた直腸腫瘍)腫瘍は視覚化することができなかった。これらの設定の一部において術中蛍光が存在しないことは恐らく、腫瘍が正常組織で覆われている場合、NIR浸透深さに限界がある、現在のロボット及び内視鏡カメラの感度が低い、ある特定の解剖学的位置に到達するための最適な用量/スケジュール及び物理的難題によるものである。特筆すべきは、これら腔内又は深部腫瘍のうちで最終組織病理検査において縁が陽性だったものはないことである。
【0243】
術後、腫瘍の種類又は用量に関係なくすべての腫瘍は標準的な、蛍光の、術後ワークフロー分析により蛍光性があり、その一方で健康な組織試料で蛍光性があったものはない。
【0244】
図11A~11B、及び定量的蛍光データは、腫瘍蛍光がバックグランド蛍光からうまく画定されていることを明確に示す。複数の患者にわたって評価した4つの腫瘍の種類に対して、腫瘍を正常組織からのシャープな線引きにより視覚化することを助ける化合物1のこの能力は、固形がんにおける化合物1の画像誘導手術に対する腫瘍非依存的画像化実現可能性を確証する。
【0245】
腫瘍陽性の縁の蛍光検出
合計24人の患者(HNSCC:13;BC:11)の中で、9人の患者(HNSCC:6;BC:3)が、SOC手術中に検出されなかった、組織学的に確認された腫瘍陽性手術の縁を有した。蛍光誘導された縁の評価を患者ごとに実施した。化合物1の画像化は、これら手術の縁を患者のすべてで視覚化し、100%の感度を生じた。すべての蛍光陰性手術の縁は、最終組織病理学的評価に相関した(偽陰性なし)。15人のうち5人の偽陽性が存在し(67%特異性)、このうち蛍光が検出された組織は、組織病理学的評価により腫瘍であることは確認されなかった。14人のうち5人(36%)の患者が腫瘍に対して陰性である蛍光組織を有した(PPV:64%)。
【0246】
腫瘍の種類により、陽性の縁患者を検出するための化合物1の感度及び特異性はBCに対してそれぞれ100%及び75%であり、HNSCCに対して100%及び57%であった。組織学的の縁状態が入手可能であり、陰性であった、3人のうちの2人のEC患者及び3人のうちの1人のCRC患者において、化合物1蛍光は陰性であった。これら初期データは腫瘍非依存的診断性能を示唆し、化合物1の画像化を使用した手術中の腫瘍陽性の縁の正確な検出に対する実現可能性を実証している。
【0247】
表14は、すべての4腫瘍の種類について、個々の患者に対する縁の状態に対する病理検査対蛍光相関関係を要約している。
【0248】
【0249】
偽陽性蛍光の縁
3人のHNSCC患者(ON1108、ON1114、ON1121)及び2人のBC患者(ON1123、及びON1151)において、偽陽性蛍光の縁を検出し、これらは最終組織病理検査で腫瘍を含有しなかった。HNSCC患者では、偽陽性蛍光は1人の患者において神経組織、別の患者において唾液腺、及び第3の患者の試料の縁の上の蛍光スポットに対応した。2人のBC患者では、偽陽性蛍光の縁は、胸筋筋肉の主要筋膜、及びDCIS組織に対応し、これは陰性の縁と組織学的に分類された。
【0250】
化合物1蛍光は、術中に乳房切断術患者の皮膚において、並びに乳房切断術患者のエクスビボ試料に明確に検出された。乳房切断術患者において、化合物1蛍光は乳頭に観察された。
【0251】
実施例13.潜在性疾患の化合物1検出
化合物1蛍光は、SOC術前又は手術中又は術後病理検査では見落としていたであろう5つの追加の潜在性病変(HNSCCを有する1人の患者及びBCを有する4人の患者)を検出した。蛍光と組織病理検査の両方で陽性の手術の縁を有するHNSCCを有する1人の患者(ON1113)において、標準治療による手術では見落としていたであろう衛星転移を、化合物1蛍光画像誘導手術による創傷床に検出した。
【0252】
1人のBC患者(ON1151)は、創傷床とバックテーブルでの試料の縁の蛍光の両方が偽陽性結果と分類され(すなわち、外科腫瘍学会及び米国放射線治療学会ガイドライン(Society of Surgical Oncology and the American Society for Radiation Oncology guidelines)で定義されているような組織病理検査陰性の縁)、蛍光は小管壁内にがん細胞を有する実体であるDCISに対応し、これは、国際ガイドラインによると追加の手術が必要とされることもあり、この病変を検出することの臨床的有用性を強調するものである。
【0253】
他の3人のBC患者では、組織病理検査プロセシング中の蛍光画像化は、見落としていたであろう追加のがんを検出した。これらのうち、患者ON1101及びON1128は、化合物1により検出された組織スライス内にBCの追加の衛星転移があった。患者ON1115では、化合物1は第2の原発性腫瘍病変(トリプルネガティブBC)を検出し、これは術前ワークアップ及び手術中に見落としたものであった。
【0254】
CRCを有する3人の患者のうち、外科医は、手術中及びSOC手順により、1人の患者(ON1130)に対して予期せぬ腹膜転移を検出した。第2のCRC患者は、腹膜転移の術前の臨床上の疑いをすでに提示していた(ON1120)。両方の患者において、腹膜転移は、蛍光の腫瘍陽性病変であり(
図17)、最終組織病理検査で悪性と確認された。
【0255】
同様の高い感度及び特異性で、腫瘍の種類全域にわたり、腫瘍陽性の縁及び潜在性疾患を検出する能力は、化合物1画像誘導手術が、手術患者及び術後患者管理に対する臨床的意思決定を援助する重大な可能性を強調する。
【0256】
化合物1の診断性能
この第1相試験では、術中及び術後画像化データを化合物1の診断性能の初期の分析に使用した。性能パラメーター、例えば、MFI、CNR、及びTBRをインビボ及び組織スライスにおいて計算して、腫瘍組織をバックグランドから線引きする化合物1の能力を特徴付けた。隣接する正常組織から腫瘍組織を検出する感度及び特異性を組織試料蛍光を使用して評価し、ROC曲線として提示した。病理検査で確認した腫瘍陽性の縁の検出における化合物1蛍光の感度、特異性、及びPPVを患者レベルで得た。
【0257】
表15は、インビボでの画像化が可能である、又は蛍光定量化を可能にする組織スライスが入手可能であるすべての腫瘍の種類及び患者に対するインビボ及びエクスビボのCNR及びTBR値を要約している。これらの比は可変であるが高く、腫瘍組織のMFIがバックグランド組織のものよりも常に高く、蛍光誘導手術に対して重要な因子であることを示している。CNR及びTBR値は、用量又は腫瘍の種類によるいかなる系統的変動も示さなかった。
【0258】
術中インビボのCNR及びTBR
1.2mg/kgにおけるインビボのCNR及びTBR値は、インビボでの画像化が可能であったすべての患者に対して(18人のうちの11人の患者:HNSCCでは7人のうちの7人;BCでは5人のうちの3人;ECでは3人のうちの0人の;及びCRCでは3人のうちの1人)、すべての腫瘍の種類の全域にわたり高かった。信頼できる評価が可能な表面に直接曝露された粘膜の腫瘍(HNSCC)のみを使用すると、1.2mg/kgでは、中央値CNRは5.6、四分位数範囲17.6であり、中央値TBRは2.6、四分位数範囲1.4であった。これらの高いCNR及びTBR比は、各患者の手術に対してバックグランド組織からの腫瘍組織のシャープな線引き、すなわち正確な画像誘導手術に対する主要な必要条件を意味する。
【0259】
手術の縁の検出における術中診断性能
化合物1は、腫瘍陽性の手術縁を有する患者の検出において偽陰性なしで100%の感度を示した。手術の縁を有する患者を検出するための化合物1の特異性及びPPVはそれぞれ67%及び64%であった。腫瘍の種類ごとでは、手術の縁を有する患者を検出するための化合物1の感度及び特異性は、BCに対してそれぞれ100%及び75%であり、HNSCCに対して100%及び57%であった。組織学的に縁の状態が入手可能であり陰性であった、3人のうち2人のEC患者及び3人のうち1人のCRC患者において、化合物1蛍光は陰性であった。これら初期データは、腫瘍非依存的診断性能を示し、化合物1画像化を使用した手術中の腫瘍陽性の縁の正確な検出に対する実現可能性を実証している。
【0260】
【0261】
術後のMFI、CNR、TBR、及びROC曲線
術中蛍光強度は、各手術環境の独特な提示により、患者又は用量レベル間で標準化及び比較することができない。複数の変数、例えば、カメラ角度、カメラと組織の距離、腫瘍場所、及び他の組織又は脂肪による被覆が蛍光シグナルの絶対値に影響を与える。患者及び用量を横断したMFIの直接比較を可能にするため、蛍光に対する標準的術後ワークフローを使用して、患者の組織スライスをLI-COR Pearl、標準化クローズドフィールドカメラで画像化した。組織病理学的に証明された生存腫瘍組織を有するすべての患者において、腫瘍組織は、正常組織と比較して、用量及び腫瘍の種類に関係なく、組織スライス上のシャープな形態学的線引きと共により高い蛍光シグナル強度を示した。MFIは、試験した用量範囲において用量と共にわずかに増加したが、CNR及びTBRは可変であり、依然として高く、用量又は腫瘍の種類によっていかなる系統的変動を示さなかった。これら組織スライス上の測定レベルにおいて実施したROC曲線分析は、0.9726の曲線下面積、P<0.0001を示し、優れた性能を示した。これらのデータは、化合物1の高感度な及び特定の及び腫瘍非依存的性能特徴を支持している。
【0262】
術中の発見をさらに検証するためのエクスビボワークフロー分析は、組織病理学的に証明された生存腫瘍組織を有するすべての対象の腫瘍組織は、正常組織と比較して、腫瘍の種類及び用量コホートに関係なく、組織スライス中のシャープな形態学的な線引きと共により高い蛍光シグナル強度を示したことを示した(
図16、パネルy)。腫瘍の平均蛍光強度(MFI)は用量と共に増加した(
図20、パネルa)。すべてのコホートにおいて、腫瘍MFIは非腫瘍組織のもよりかなり高かった。すべての組織スライスの中央値腫瘍対バックグラウンド比(TBR)(n=97、26人の対象から)は、4.5であり、四分位数範囲(IQR)3.1であった。第1b相試験による腫瘍検出及び感度に対する最適な用量は1.2mg/kg(TBR4.5、IQR3.0)であり、用量グループの腫瘍組織のMFIは、入手可能な組織スライスのそれぞれの正常組織と比較してかなり高かった。これら組織スライスの受信者動作特性(ROC)曲線分析は、0.9875のAUCを示した(
図20、パネルg)。
【0263】
実施例14.画像誘導がん手術に対する腫瘍アシドーシスに対するナノスケール巨大分子の協同作用応答
この人類初の蛍光画像誘導手術試験において、有力なインビボ及びエクスビボデータは、腫瘍アシドーシスから生成した低いpHを、HNSCC、BC、EC、及びCRCを含む様々な固形腫瘍を有する患者においてがんに対する腫瘍非依存的バイオマーカーとして利用することができることを示している。PH感受性蛍光造影剤である化合物1は、腫瘍アシドーシスにより特異的及び耐久的に活性化され、腫瘍を正常組織からシャープに線引きし、いくつかの事例では、SOCから得られない潜在性がんについての情報を提供した:HNSCCを有する患者におけるすべての陽性の縁(9人のうち9人)、DCIS、及び衛星がんの術中の検出並びに病理検査試料における3つの追加の衛星病巣及び2次原発のエクスビボでの検出。
【0264】
画像化のための腫瘍pHの成功的臨床利用は、異なる患者及び腫瘍間での代謝及び表現型のばらつきを克服する化合物1の設計により可能である。化合物1蛍光画像化を使用してすべての組織学的に証明された腫瘍陽性手術の縁(9件のうち9件)を検出することが可能であった。最も重要なことに、いかなる所与の患者に対しても腫瘍とバックグランド蛍光との間に重複はなかった。バックグランド活性化の抑制並びにpH応答性ユニマーの協力行動による閾値の酸性pHにおける完全及び不可逆的な消光が記載される。この協同作用は、個々のユニマーの試験では予測されておらず、ミセルとして相互作用している複数の別個のポリマーから現れた現象であり、観察された臨床効果を起こしている。
【0265】
結論
腫瘍の場所について外科医は通常すでに大規模な情報を有するため、がんの位置の正確な、はっきりとした線引きが臨床的成功に必要とされる。手術結果を改善するための光学的画像化出力の能力は、術前画像化及び術中検査から外科医が持っていない情報を送達することが前提となる。SOCにより提供されない化合物1からの追加の情報は臨床的ケアにかなり影響を与える可能性がある。
【0266】
この人類で初めての第1相試験では:
・化合物1蛍光画像化は評価したすべての4腫瘍の種類(HNSCC、BC、CRC、又はEC)で可能であり、その作用機序により予想される通り、化合物1を用いた腫瘍非依存的画像化に対する実現可能性を実証した。
・化合物1蛍光は、組織像で確認した腫瘍対正常組織の間のシャープな境界を、リアルタイム画像誘導手術に対する重大な因子である、高いCNR及びTBR値と共に示した。
・化合物1画像化は、切除1時間以内に、インビボ創傷床の画像化を、切除した試料のバックテーブルでの画像化と合わせて使用して、9種すべてにおいて腫瘍陽性の縁を有する患者を検出した。インビボの創傷床画像化は、所定の手術で見落とされており、標準的病理検査で確認された他の2つの潜在性腫瘍を検出し、臨床的意思決定及び患者管理における化合物1画像誘導手術の有意な値に対する可能性を実証した。
・化合物1蛍光は、試験で使用した複数のNIRカメラ(NOVADAQ SPY Elite、SurgVision Explorer Air、及びLI-COR Pearl Imagingシステム)で検出可能であった。
【0267】
したがって、化合物1、すなわち静脈内に投与される、pH活性化可能な、NIR蛍光造影剤は、固形腫瘍(HNSCC、BC、CRC、及びEC)の正常組織からの明白な線引きを伴う、インビボとバックテーブルでの蛍光可視化の両方を可能にする。結果は、他の方法では見落としていたであろう、すべての腫瘍陽性手術の縁及び潜在性疾患を、複数の患者において検出する化合物1の能力を実証し、すべての調査された腫瘍の種類で腫瘍の腫瘍非依存的蛍光可視化を示している。これらのデータは手術後の期間中、治療計画及び患者管理の臨床的意思決定における化合物1の有意な可能性を強調している。
【0268】
実施例15.初期第2相試験による、複数のNIRカメラシステムから及び複数の治験部位からの、投薬から3~6時間後の乳房、HNSCC、前立腺、及び卵巣腫瘍の評価
第2相臨床研究の間、化合物1のI.V.注射から3~6時間後、腫瘍を画像化する能力が、乳がん、HNSCC、前立腺がん、及び卵巣がんを有する患者に対して実証された(
図22~26)。試験はまた、異なるNIRカメラから、及び複数の部位から収集したデータを利用した。すべての患者は、単回I.V.用量の化合物1の投与を受け、これに続いて化合物1の点滴からおよそ3~6時間後、所定の手術を受けた。手術の6±3時間前化合物1(2mg/kg)を投薬した乳がん患者(101-001;UPenn;VisionSense NIRカメラ)及び手術の6±3時間前化合物1(3mg/kg)を投薬したHNSCCがん患者(102-007;UTSW;NOVADAQ SPY Elite NIRカメラ)からの、切除前及び切除後の術中及びバックテーブルでの腫瘍の可視化が
図22に示されている。いずれの場合も、切除前又は切除後の腫瘍/試料の白色光画像は、観察された蛍光と白色光画像との重ね合わせと並置され、腫瘍の存在を示している。腫瘍切除の6±3時間前に化合物1(3mg/kg)を投薬した2人の患者(102-008及び102-009;UTSW;Da Vinci Firefly NIRカメラ、最新版ソフトウエア/ハードウエア付)からの前立腺がんの術中/インビボ画像化及び腫瘍切除後の創傷床の画像化が
図23に示されている。いずれの場合も、切除前の腫瘍/試料及び手術創傷床の白色光画像化は、観察された蛍光の画像と並置されている。データは、摘除前腫瘍からの蛍光及び摘除後の手術創傷床内の蛍光の不在を示している。化合物1(3mg/kg、6±3時間)を投薬した卵巣がんを有する患者(101-005)からの腫瘍を、
図24に示されている通り切除前にインビボで画像化した。白色光画像は、観察された蛍光と白色光画像の重ね合わせと並置されており、腫瘍の存在を示している。
図22~26からのデータは、投薬から3~6時間後、化合物1が腫瘍を画像化する能力及びする複数の種類のNIRカメラ並びに異なる臨床的部位の使用を実証している。
【0269】
実施例16.固形新生物を有するイヌにおける腫瘍選択的造影剤の評価
材料及び方法:試験に対する評価及び動員後、イヌ患者には、(A)可能な種類の病変を同定するための手術前分析を行い、(B)化合物1トレーサー0.5~2.0mg/kgを手術の18~78時間前に投与した。術中、(C)腫瘍除去の前及び後(又は肢の切断後)、Hamamatsu PDE又は特注NIRカメラを使用して、手術中の画像化を実施した。摘除組織を(D)LI-COR Pearl Imagingステーションで画像化し、腫瘍の正常組織に対する比を適宜計算した。次いで、摘除組織を(E)組織病理検証のために保存した。安全性は、有害作用という点から、健康診断、臨床試験及び点滴から退院までの有害事象の記録を介して別々に評価した。
【0270】
結果:試験のために集められた避妊手術又は不妊手術を受けたイヌ患者からのデータの要約を以下に示す(表16)。年齢4~2才、体重20.9~9.5kgの範囲の異なる種類及び腫瘍の範囲を有する、合計7匹のイヌからの結果が提示されており、これは2種以上の腫瘍が存在する事例を含んだ。これまで試験した用量は0.5~2.0mg/kgの範囲であった。ほとんど全ての事例において、一部の手術前試験、例えば、放射線撮影、骨生検、又は微細な針吸引及び細胞学を実施し、これが表の脚注に記されている。上記に記載される手順の通り、化合物1を動物に投与し(「用量」)及び24又は72時間後(「時間」)、腫瘍を除去する手術を開始した。摘除組織は病変の確認のため獣医学の病理学者に送られ、これは表において解剖学的位置と共に記述されている。急性有害作用も慢性有害作用も、注射の時間から動物の退院及び経過観察の予約時(縫合糸除去のため)までモニターされ、指摘された。
【0271】
【0272】
表16に記載される試験からの結果は、以下を実証した:(i)化合物1の注射からリハビリテーション、手術後までの任意のステージにおいて、イヌのいずれに対しても有害作用は観察されなかった、(ii)手術前生検及び組織病理検査からのデータの組合せに基づき、罹患組織が広範囲の腫瘍にわたり観察されたが、これら罹患組織に対して予想された場所に蛍光シグナルが観察された、並びに(iii)ある事例では、原発性腫瘍の除去のための手術中、潜在性疾患が同定された。
【0273】
イヌ患者に対する結果は、白色光並びにLI-COR Pearl imagingステーションを使用したNIR蛍光画像と共に
図27~32に示されている。
図27は肥満細胞腫瘍摘除を示している。左側の白色光画像は、摘除組織を示し、腫瘍組織はまた垂直切除を実施することにより曝露された。疑わしいがん組織は図の右側のNIR蛍光画像において明確に明らかであり、各図の右側の摘除した末端組織(矢印)と区別されている。
図28は、イヌ患者から肢の切断により摘除し、白色光で画像化した骨肉腫を示す。Hamamatsu PDE及びLI-COR Pearlを使用してエクスビボ画像化を実施した。
図32は、イヌ患者のリンパ節の末端軟部組織肉腫内の潜在性疾患の検出を示す。左中足骨領域に位置する原発性軟部組織肉腫のイヌ患者からの外科的除去の間、リンパ節は蛍光性があることが観察され、摘除され、手術中に白色光で画像化し、次いでHamamatsu PDE NIRカメラをインビボで使用し、LI-COR Pearl NIR Imagingステーションをエクスビボで使用して画像化した。
【0274】
結論:骨肉腫、軟部組織肉腫、肥満細胞腫瘍、卵胞の嚢胞及び他の罹患した組織を有する合計7匹のイヌをイヌ患者試験で評価した。これまで得た結果は以下を実証した:(i)化合物1の注射から退院まですべてのイヌに対して有害作用なし、(ii)化合物1により導かれたがんの組織の位置と、健康診断、試験したすべての悪性腫瘍に対する手術前生検、及び切除後の組織病理検査からのデータとの相関関係;並びに(iii)試験での1匹のイヌ患者における潜在性疾患の同定(転移性膝窩リンパ節)。さらに、蛍光画像化は、3台のカメラを用いて可能であり、これらのすべてがICGを検出し、これは画像化はICG蛍光の検出が可能ないずれのカメラでも実施することができることを示唆するものである。これらの結果はこれらの発がん性遺伝子型が実質的に異なる広範囲な腫瘍全域での化合物1の安全性及びその有効性を支持し、用量レジメンにより、ヒト治験に臨床的に関連する。
【0275】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に示されて、記載されるが、このような実施形態は単なる例示として提供されていることは当業者には明らかである。本発明から逸脱することなく、多くの変化形、変更、及び置換がここで当業者に生じる。本明細書に記載される本発明の実施形態に対する様々な代替形態が、本発明を実施するのに利用され得ることを理解されたい。以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義し、これら特許請求の範囲及びこれらの同等物の範囲内の方法及び構造は、本発明の範囲により網羅されることが意図されている。
【国際調査報告】