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特表2023-503324安全な追加ブレーキ機能を実行するためのブレーキシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-27
(54)【発明の名称】安全な追加ブレーキ機能を実行するためのブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/94 20060101AFI20230120BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20230120BHJP
   B60T 8/00 20060101ALI20230120BHJP
   B60T 17/22 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
B60T8/94
B60T7/12 B
B60T8/00 Z
B60T17/22 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022530157
(86)(22)【出願日】2020-11-23
(85)【翻訳文提出日】2022-06-28
(86)【国際出願番号】 IB2020061021
(87)【国際公開番号】W WO2021105844
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】102019000022086
(32)【優先日】2019-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516351289
【氏名又は名称】フェヴレ・トランスポール・イタリア・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】FAIVELEY TRANSPORT ITALIA S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ティオーネ, ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】ピッチオーネ, パオロ ピエトロ
【テーマコード(参考)】
3D049
3D246
【Fターム(参考)】
3D049AA04
3D049BB02
3D049BB15
3D049CC06
3D049HH20
3D049HH47
3D049HH48
3D049HH51
3D049PP02
3D049QQ04
3D049RR01
3D049RR03
3D049RR04
3D246AA17
3D246BA03
3D246DA01
3D246FA03
3D246GA01
3D246HA44A
3D246HA86A
3D246HA97A
3D246JA12
3D246JB41
3D246JB47
3D246KA15
3D246KA19
3D246LA32Z
3D246MA19
(57)【要約】
第1の安全インテグリティーレベルに従い構成された非常ブレーキ制御ユニット(503)と、第1の安全インテグリティーレベルよりも低い第2の安全インテグリティーレベルに従い構成された常用ブレーキ制御ユニット(508)と、を含む、少なくとも1つのボギー台車または鉄道車両のためのブレーキシステム(500)の様々な実施形態が詳述される。ブレーキシステム(500)は、非常ブレーキ制御ユニット(503)と同じ安全インテグリティーレベルで、少なくとも1つの追加ブレーキ機能(550)を実行する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の安全インテグリティーレベルに従い構成された非常ブレーキ制御ユニット(503)と、前記第1の安全インテグリティーレベルよりも低い第2の安全インテグリティーレベルに従い構成された常用ブレーキ制御ユニット(508)と、を含む、少なくとも1つのボギー台車または鉄道車両のためのブレーキシステム(500)であって、
前記非常ブレーキ制御ユニット(503)は、
制御信号およびフィードバック信号の第1グループ(505)を用いて、空気圧供給圧力(502)が供給されるよう設けられた電空非常ブレーキユニット(501)を制御し、前記電空非常ブレーキユニット(501)を介して、圧力値が、ブレーキが掛けられるべき前記ボギー台車または前記鉄道車両の重量を示す少なくとも1つの重量信号(504)に応じた関数となっている非常ブレーキ圧力(506)を生成し、
前記非常ブレーキ制御ユニット(503)により受信され、さらに、追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている少なくとも1つの入力信号(520)に応じて、前記追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている少なくとも1つの追加圧力値(551)を判別し、
通信手段(518)を用いて、前記追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている前記少なくとも1つの追加圧力値(551)を前記常用ブレーキ制御ユニット(508)に送信するよう、設けられており、
前記常用ブレーキ制御ユニット(508)は、
常用ブレーキ要求信号(510)および前記少なくとも1つの重量信号(504)に応じて、少なくとも1つの常用ブレーキ圧力値を判別し、
制御信号およびフィードバック信号の第2グループ(509)を用いて、少なくとも前記非常ブレーキ圧力(506)を受け取るよう設けられている電空常用ブレーキユニット(507)を制御し、前記電空常用ブレーキユニット(507)の少なくとも1つの出力(511、...、514)に、前記追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている前記少なくとも1つの追加圧力値(551)、および、前記常用ブレーキ制御ユニット(508)により判別された前記少なくとも1つの常用ブレーキ圧力値のうち、圧力値がより大きい方を提供するよう、設けられており、
前記非常ブレーキ制御ユニット(503)は、さらに、
前記電空常用ブレーキユニット(507)の前記少なくとも1つの出力(511、...、514)における圧力値を示す、少なくとも1つのフィードバック信号(519)を受信し、
前記少なくとも1つのフィードバック信号(519)を用いて、前記電空常用ブレーキユニット(507)の前記少なくとも1つの出力(511、...、514)における前記圧力値をモニタリングし、
前記追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている前記追加圧力値(551)が、前記電空常用ブレーキユニット(507)の前記少なくとも1つの出力(511、...、514)において予想されるが、前記電空常用ブレーキユニット(507)の少なくとも1つの出力(511、...、514)における前記圧力値が、前記非常ブレーキ制御ユニット(503)により判別され、前記追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている前記少なくとも1つの追加圧力値(551)よりも、少なくとも所定の許容値の分だけ低い場合に、前記電空常用ブレーキユニット(507)の前記少なくとも1つの出力(511、...、514)における前記非常ブレーキ圧力(506)の圧力値に対応する圧力値に強制的にするよう、設けられており、
これにより、前記ブレーキシステム(500)は、前記非常ブレーキ制御ユニット(503)と同じ安全インテグリティーレベルで少なくとも1つの前記追加ブレーキ機能(550)を実現することを特徴とするブレーキシステム(500)。
【請求項2】
第1の安全インテグリティーレベルに従い構成された非常ブレーキ制御ユニット(503)と、前記第1の安全インテグリティーレベルよりも低い第2の安全インテグリティーレベルに従い構成された常用ブレーキ制御ユニット(508)と、を含む、少なくとも1つのボギー台車または鉄道車両のためのブレーキシステム(500)であって、
前記非常ブレーキ制御ユニット(503)は、
制御信号およびフィードバック信号の第1グループ(505)を用いて、空気圧供給圧力(502)が供給されるよう設けられた電空非常ブレーキユニット(501)を制御し、前記電空非常ブレーキユニット(501)を介して、圧力値が、ブレーキが掛けられるべき前記ボギー台車または前記鉄道車両の重量を示す少なくとも1つの重量信号(504)に応じた関数となっている非常ブレーキ圧力(506)を生成し、
前記非常ブレーキ制御ユニット(503)により受信され、さらに、追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている少なくとも1つの入力信号(520)に応じて、前記追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている少なくとも1つの第1の追加圧力値(551)を判別するよう、設けられており、
前記常用ブレーキ制御ユニット(508)は、
常用ブレーキ要求信号(510)および前記少なくとも1つの重量信号(504)に応じて、少なくとも1つの常用ブレーキ圧力値を判別し、
前記常用ブレーキ制御ユニット(508)により受信され、さらに、前記追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている少なくとも1つの入力信号(520´)に応じて、前記追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている少なくとも1つの第2の追加圧力値(551´)を判別し、
制御信号およびフィードバック信号の第2グループ(509)を用いて、少なくとも前記非常ブレーキ圧力(506)を受け取るよう設けられている電空常用ブレーキユニット(507)を制御し、前記電空常用ブレーキユニット(507)の少なくとも1つの出力(511、...、514)に、前記常用ブレーキ制御ユニット(508)により判別され、前記追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている前記少なくとも1つの第2の追加圧力値(551´)、および、前記常用ブレーキ制御ユニット(508)により判別された前記少なくとも1つの常用ブレーキ圧力値のうち、圧力値がより大きい方を提供するよう、設けられており、
前記非常ブレーキ制御ユニット(503)は、さらに、
前記電空常用ブレーキユニット(507)の前記少なくとも1つの出力(511、...、514)における圧力値を示す少なくとも1つのフィードバック信号(519)を受信し、
前記少なくとも1つのフィードバック信号(519)を用いて、前記電空常用ブレーキユニット(507)の前記少なくとも1つの出力(511、...、514)における前記圧力値をモニタリングし、
前記常用ブレーキ制御ユニット(508)により判別された前記少なくとも1つの第2の追加圧力値(551´)が、前記電空常用ブレーキユニット(507)の前記少なくとも1つの出力(511、...、514)において予想されるが、前記電空常用ブレーキユニット(507)の前記少なくとも1つの出力(511、...、514)における前記圧力値が、前記非常ブレーキ制御ユニット(503)により判別され、前記追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている前記少なくとも1つの第1の追加圧力値(551)より、少なくとも所定の許容値の分だけ低い場合に、前記電空常用ブレーキユニット(507)の前記少なくとも1つの出力(511、...、514)における前記非常ブレーキ圧力(506)の圧力値に対応する圧力値に強制的にするよう、設けられており、
これにより、前記ブレーキシステム(500)は、前記非常ブレーキ制御ユニット(503)と同じ安全インテグリティーレベルで少なくとも1つの前記追加ブレーキ機能(550)を実現することを特徴とするブレーキシステム(500)。
【請求項3】
前記非常ブレーキ制御ユニット(503)は、制御信号(517)を用いて遮断装置(516)を制御するよう、設けられており、
前記非常ブレーキ制御ユニット(503)は、前記非常ブレーキ圧力(506)の前記圧力値に対応する前記圧力値を、前記電空常用ブレーキユニット(507)の前記少なくとも1つの出力(511、...、514)に強制しなければならない場合に、前記遮断装置(516)を開き、前記常用ブレーキ制御ユニット(508)と前記電空常用ブレーキユニット(507)との間において前記制御信号およびフィードバック信号の第2グループ(509)の接続を許可しないよう、設けられており、
前記電空常用ブレーキユニット(507)は、前記制御信号およびフィードバック信号の第2グループ(509)が、前記常用ブレーキ制御ユニット(508)と前記電空常用ブレーキユニット(507)との間において接続されていない場合に、前記非常ブレーキ圧力(506)の前記圧力値を、前記少なくとも1つの出力(511、...、514)に伝達するよう、設けられている請求項1または2に記載のブレーキシステム(500)。
【請求項4】
前記電空常用ブレーキユニット(507)は、前記空気圧供給圧力(502)を、さらに受け取るよう設けられており、
前記非常ブレーキ制御ユニット(503)が、前記非常ブレーキ圧力(506)の前記圧力値に対応する前記圧力値を、前記電空常用ブレーキユニット(507)の前記少なくとも1つの出力(511、...、514)に伝達しなければならない場合、前記空気圧供給圧力(502)の圧力値は、前記電空常用ブレーキユニット(507)の内部の前記非常ブレーキ圧力(506)の値に制限され、その後、前記空気圧供給圧力(502)の前記圧力値は、前記電空常用ブレーキユニット(507)の前記少なくとも1つの出力(511、...、514)に伝達される請求項1ないし3のいずれかに記載のブレーキシステム(500)。
【請求項5】
前記非常ブレーキ制御ユニット(503)が、前記非常ブレーキ圧力(506)の前記圧力値に対応する前記圧力値を、前記電空常用ブレーキユニット(507)の前記少なくとも1つの出力(511、...、514)に伝達しなければならない場合に、前記非常ブレーキ圧力(506)は、前記電空常用ブレーキユニット(507)の前記少なくとも1つの出力(511、...、514)に伝達される請求項1ないし3のいずれかに記載のブレーキシステム(500)。
【請求項6】
前記非常ブレーキ制御ユニット(503)は、
非常ブレーキ要求を示す非常ブレーキ要求信号(515)を受信し、
前記非常ブレーキ要求信号(515)が、非常ブレーキの必要性を示す場合に、前記非常ブレーキ圧力(506)の前記圧力値に対応する前記圧力値を前記電空常用ブレーキユニット(507)の前記少なくとも1つの出力(511、...、514)に強制するよう、設けられている請求項1ないし5のいずれかに記載のブレーキシステム(500)。
【請求項7】
第1の安全インテグリティーレベルに従い構成された非常ブレーキ制御ユニット(503)と、前記第1の安全インテグリティーレベルよりも低い第2の安全インテグリティーレベルに従い構成された常用ブレーキ制御ユニット(508)と、を含む、少なくとも1つのボギー台車または鉄道車両のためのブレーキシステム(500)であって、
前記非常ブレーキ制御ユニット(503)は、
制御信号およびフィードバック信号の第1グループ(505)を用いて、空気圧供給圧力(502)が供給されるよう設けられた電空非常ブレーキユニット(501)を制御し、前記電空非常ブレーキユニット(501)を介して、圧力値が、ブレーキが掛けられるべき前記ボギー台車または前記鉄道車両の重量を示す、少なくとも1つの重量信号(504)に依存する非常ブレーキ圧力(506)を生成し、
前記非常ブレーキ制御ユニット(503)により受信され、さらに、追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている少なくとも1つの入力信号(520)に応じて、前記追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている少なくとも1つの第1の追加圧力値(551)を判別するよう、設けられており、
前記常用ブレーキ制御ユニット(508)は、
常用ブレーキ要求信号(510)および前記少なくとも1つの重量信号(504)に応じて、少なくとも1つの常用ブレーキ圧力値を判別し、
前記常用ブレーキ制御ユニット(508)により受信され、さらに、前記追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている少なくとも1つの入力信号(520´)に応じて、前記追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている少なくとも1つの第2の追加圧力値(551´)を判別し、
制御信号およびフィードバック信号の第2グループ(509)を用いて、少なくとも前記空気圧供給圧力(502)を受け取るよう設けられた電空常用ブレーキユニット(507)を制御し、前記電空常用ブレーキユニット(507)の少なくとも1つの出力(511、...、514)に、前記常用ブレーキ制御ユニット(508)により判別され、前記追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている前記少なくとも1つの第2の追加圧力値(551´)、および、前記常用ブレーキ制御ユニット(508)により判別された前記少なくとも1つの常用ブレーキ圧力値のうち、より圧力値が大きい方を提供するよう、設けられており、
前記少なくとも1つのボギー台車または鉄道車両のための前記ブレーキシステム(500)は、少なくとも1つの圧力出力(611、...、614)を備える電空選択ユニット(601)を含んでおり、
前記電空選択ユニット(601)は、
少なくとも前記非常ブレーキ圧力(506)、前記電空常用ブレーキユニット(507)の前記少なくとも1つの出力(511、...、514)における少なくとも1つの圧力、および、前記非常ブレーキ制御ユニット(503)から送信される制御信号(617)を受け取り、
前記非常ブレーキ制御ユニット(503)から送信される前記制御信号(617)に応じて、前記少なくとも1つの圧力出力(611、...、614)に、前記非常ブレーキ圧力(506)、または、前記電空常用ブレーキユニット(507)の前記少なくとも1つの出力(511、...、514)における前記少なくとも1つの圧力を伝達するよう、設けられており、
前記非常ブレーキ制御ユニット(503)は、さらに、
前記電空選択ユニット(601)の前記少なくとも1つの圧力出力(611、..、614)における圧力値を示す少なくとも1つのフィードバック信号(519)を受け取り、
前記少なくとも1つのフィードバック信号(519)を用いて、前記電空選択ユニット(601)の前記少なくとも1つの圧力出力(611、...、614)における前記圧力値をモニタリングし、
前記常用ブレーキ制御ユニット(508)により判別された、前記追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている前記少なくとも1つの第2の追加圧力値(551´)が、前記電空選択ユニット(601)の前記少なくとも1つの圧力出力(611、...、614)において予想されるが、前記電空選択ユニット(601)の前記少なくとも1つの圧力出力(611、...、614)における前記圧力値が、前記非常ブレーキ制御ユニット(503)により判別され、前記追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている前記少なくとも1つの第1の追加圧力値(551)より、少なくとも所定の許容値の分だけ低い場合、前記制御信号(617)を介して、前記電空選択ユニット(601)を制御し、前記非常ブレーキ圧力(506)の前記圧力値を前記電空選択ユニット(601)の前記少なくとも1つの圧力出力(611、...、614)へ伝達することをアクティブ化するよう、設けられており、
これにより、前記ブレーキシステム(500)は、前記非常ブレーキ制御ユニット(503)と同じ安全インテグリティーレベルで少なくとも1つの前記追加ブレーキ機能(550)を実現することを特徴とするブレーキシステム(500)。
【請求項8】
第1の安全インテグリティーレベルに従い構成された非常ブレーキ制御ユニット(503)と、前記第1の安全インテグリティーレベルよりも低い第2の安全インテグリティーレベルに従い構成された常用ブレーキ制御ユニット(508)と、を含む、少なくとも1つのボギー台車または鉄道車両のためのブレーキシステム(500)であって、
前記非常ブレーキ制御ユニット(503)は、
制御信号およびフィードバック信号の第1グループ(505)を用いて、空気圧供給圧力(502)が供給されるよう設けられた電空非常ブレーキユニット(501)を制御し、前記電空非常ブレーキユニット(501)を介して、圧力値が、ブレーキが掛けられるべき前記ボギー台車または前記鉄道車両の重量を示す、少なくとも1つの重量信号(504)に応じた関数となっている非常ブレーキ圧力(506)を生成し、前記電空非常ブレーキユニット(501)は、
前記非常ブレーキ制御ユニット(503)により受信され、さらに、追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている少なくとも1つの入力信号(520)に応じて、前記追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている少なくとも1つの追加圧力値(551)を判別し、
通信手段(518)を用いて、前記追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている前記少なくとも1つの追加圧力値(551)を前記常用ブレーキ制御ユニット(508)に送信するよう、設けられており、
前記常用ブレーキ制御ユニット(508)は、
常用ブレーキ要求信号(510)および前記少なくとも1つの重量信号(504)に応じて、少なくとも1つの常用ブレーキ圧力値を判別し、
制御信号およびフィードバック信号の第2グループ(509)を用いて、少なくとも前記空気圧供給圧力(502)を受け取るよう設けられた電空常用ブレーキユニット(507)を制御し、前記電空常用ブレーキユニット(507)の少なくとも1つの出力(511、...、514)に、前記非常ブレーキ制御ユニット(503)により判別され、前記追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている前記少なくとも1つの追加圧力値(551)、および、前記常用ブレーキ制御ユニット(508)により判別された前記少なくとも1つの常用ブレーキ圧力値のうち、圧力値がより大きい方を提供するよう、設けられており、
前記少なくとも1つのボギー台車または鉄道車両のための前記ブレーキシステム(500)は、少なくとも1つの圧力出力(611、...、614)を備える電空選択ユニット(601)を含んでおり、
前記電空選択ユニット(601)は、
少なくとも前記非常ブレーキ圧力(506)、前記電空常用ブレーキユニット(507)の前記少なくとも1つの出力(511、...、514)における少なくとも1つの圧力、および、前記非常ブレーキ制御ユニット(503)から送信される制御信号(617)を受信し、
前記非常ブレーキ制御ユニット(503)から送信される前記制御信号(617)に応じて、前記電空選択ユニット(601)の前記少なくとも1つの圧力出力(611、...、614)に前記非常ブレーキ圧力(506)、または、前記電空常用ブレーキユニット(507)の前記少なくとも1つの出力(511、...、514)における前記少なくとも1つの圧力を伝達するよう、設けられており、
前記非常ブレーキ制御ユニット(503)は、さらに、
前記電空選択ユニット(601)の前記少なくとも1つの圧力出力(611、..、614)における圧力値を示す少なくとも1つのフィードバック信号(519)を受信し、
前記少なくとも1つのフィードバック信号(519)を用いて、前記電空選択ユニット(601)の前記少なくとも1つの圧力出力(611、...、614)における前記圧力値をモニタリングし、
前記追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている前記少なくとも1つの追加圧力値(551)が、前記電空選択ユニット(601)の前記少なくとも1つの圧力出力(611、...、614)において予想されるが、前記電空選択ユニット(601)の前記少なくとも1つの圧力出力(611、...、614)における前記圧力値が、前記非常ブレーキ制御ユニット(503)により判別され、前記追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている前記少なくとも1つの追加圧力値(551)より、少なくとも所定の許容値の分だけ低い場合、前記制御信号(617)を介して、前記電空選択ユニット(601)を制御し、前記非常ブレーキ圧力(506)の前記圧力値を前記電空選択ユニット(601)の前記少なくとも1つの圧力出力(611、...、614)へ伝達することをアクティブ化するよう、設けられており、
これにより、前記ブレーキシステム(500)は、前記非常ブレーキ制御ユニット(503)と同じ安全インテグリティーレベルで前記少なくとも1つの追加ブレーキ機能(550)を実現することを特徴とするブレーキシステム(500)。
【請求項9】
前記非常ブレーキ制御ユニット(503)は、
非常ブレーキ要求を示す非常ブレーキ要求信号(515)を受信し、
前記非常ブレーキ要求信号(515)が、非常ブレーキの必要性を示す場合に、前記少なくとも1つの圧力出力(611、...、614)に前記非常ブレーキ圧力(506)を伝達することをアクティブ化させるよう、前記制御信号(617)を介して前記電空選択ユニット(601)を制御するよう、設けられている請求項7または8に記載のブレーキシステム(500)。
【請求項10】
前記追加ブレーキ機能(550)は、抑速ブレーキ機能であり、
前記追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている少なくとも1つの入力信号(520、520´)は、
前記ボギー台車または前記鉄道車両の少なくとも1つの車軸の速度を示す、または、前記ボギー台車または前記鉄道車両の走行速度を直接示す、少なくとも1つの速度信号(200)と、
現在存在している牽引トルクを示す、少なくとも1つの利用可能な牽引トルク信号(201)と、を含んでいる請求項1ないし9のいずれかに記載のブレーキシステム(500)。
【請求項11】
前記追加ブレーキ機能(550)は、ディストリビューターエミュレーション機能であり、
前記追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている少なくとも1つの入力信号(520、520´)は、前記ボギー台車または前記鉄道車両のメインブレーキパイプ圧力(202)を示す信号を含んでいる請求項1ないし10のいずれかに記載のブレーキシステム(500)。
【請求項12】
前記追加ブレーキ機能(550)は、変調された非常ブレーキ機能、または、高い安全レベルの常用ブレーキ機能であり、
前記追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている少なくとも1つの入力信号(520、520´)は、前記常用ブレーキ要求信号(510)を含んでいる請求項1ないし11のいずれかに記載のブレーキシステム(500)。
【請求項13】
前記非常ブレーキ制御ユニット(503)は、前記非常ブレーキ制御ユニット(503)により受信され、さらに、前記追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている前記少なくとも1つの入力信号(520)に関し、離散化された値によりインデックス付けされた、単一次元または多次元のマトリックスから選択することによって、前記追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている前記少なくとも1つの第1の追加圧力値(551)を判別するよう設けられており、および/または、
前記常用ブレーキ制御ユニット(508)は、前記常用ブレーキ制御ユニット(508)により受信され、さらに、前記追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている少なくとも1つの入力信号(520´)に関し、離散化された値でインデックス付けされた、単一次元または多次元のマトリックスから選択することによって、前記追加ブレーキ機能(550)に関連付けられている少なくとも1つの第2の追加圧力値(551´)を判別するよう設けられており、
前記マトリックスは、事前に判別されており、その後、前記ブレーキシステム(500)の不揮発性メモリーにロードされる請求項1ないし12のいずれかに記載のブレーキシステム(500)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、鉄道ブレーキシステムの分野に関し、より具体的には、安全な追加ブレーキ機能(additional safe braking functions)の実行を可能とする、ボギー台車(bogie)または鉄道車両のためのブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
最新の鉄道ブレーキシステムは、空気圧構造(pneumatic architecture)、特に、非常ブレーキに使用される空気圧部分(pneumatic portion)を簡素化するために、高度なエレクトロニックソリューション(electronic solutions)を用いている。その結果、製品の総コストの全体的な低減、軽量化、性能の向上、および操作安全性の向上をもたらしている。
【0003】
図1は、新世代の電空システム(electro-pneumatic system)100の既知の構造を示している。
【0004】
電空非常ブレーキユニット(electro-pneumatic emergency braking unit)101には、空気圧供給圧力(pneumatic supply pressure)102が供給される。
【0005】
電空非常ブレーキユニット101は、複数の制御信号およびフィードバック信号(control and feedback signals)105を用いて、非常ブレーキ制御ユニット(emergency braking control unit)103によって、クローズドチェーン制御アルゴリズム(closed-chain control algorithms)を介して制御される。この非常ブレーキ制御ユニット103は、電子制御ユニット(electronic control unit)である。
【0006】
非常ブレーキ制御ユニット103は、電空システム(ブレーキシステム)100によりブレーキが掛けられるべき重量値(weight value)を示す1つ以上の重量信号(weight signals)104を、非常ブレーキ制御ユニット103の入力において受信する。1つ以上の重量信号104は、鉄道車両の複数のサスペンションシステム(suspension systems)により生成される圧力を測定するよう適合された複数の圧力変換器(pressure transducers)により生成されてもよい。代替的に、1つ以上の重量信号104は、鉄道車両の本体からボギー台車(bogie)への距離を測定するのに適した線形位置変換器、または、角度位置変換器(linear or angular position transducers)により生成されてもよい。さらに、鉄道車両の本体からボギー台車への距離が、鉄道車両本体の重量に応じて変化することは明らかである。
【0007】
非常ブレーキ制御ユニット103は、電空非常ブレーキユニット101を制御して、非常ブレーキ圧力(emergency braking pressure)106を生成する。この非常ブレーキ圧力106は、鉄道車両の設計パラメーター(design parameters)に応じた関数となっている。例えば、非常ブレーキ圧力106は、これに限られるものではないが、車輪とレールとの間に予測される最大粘着値(maximum adhesion value)、および、重量信号104から導出される、ブレーキが掛けられるべき重量値等の鉄道車両の設計パラメーターに応じた関数となっている。
【0008】
非常ブレーキ圧力106は、電空常用ブレーキユニット107へ供給される。さらに、非常ブレーキ圧力106は、電空常用ブレーキユニット107が、1つ以上の出力111、...、114を、順に生成することを可能とする。図には4つの出力が示されているが、この出力の数は、他の実施例において異なっていてもよい。
【0009】
当業者に既知の実施形態において、非常ブレーキ圧力106は、空気圧供給圧力102と同時に、電空常用ブレーキユニット107へ、供給されてもよい。
【0010】
前述の両方の場合において、非常ブレーキ圧力106の現在値(current value)は、常に、電空常用ブレーキユニット107の1つ以上の出力111、...、114において、1つ以上の常用ブレーキ圧力が到達し得る最大の現在値に相当する。
【0011】
以下、前述の両方の場合の実例を示す。
【0012】
電空常用ブレーキユニット107は、複数の制御信号およびフィードバック信号109を用いて、常用ブレーキ制御ユニット108により、クローズドチェーン制御アルゴリズムを介して制御される。常用ブレーキ制御ユニット108は、追加電子制御ユニット(additional electronic control unit)である。
【0013】
常用ブレーキ制御ユニット108は、常用ブレーキを実行する必要性を示す常用ブレーキ要求信号110を受信する。常用ブレーキ要求信号110は、圧力値要求(pressure value request)、ブレーキ力要求(braking force request)、または、減速要求(deceleration request)の形式で示される。さらに、常用ブレーキ制御ユニット108は、電空システム(ブレーキシステム)100によりブレーキが掛けられるべき重量値を示す1つ以上の重量信号104を、常用ブレーキ制御ユニット108の入力において受信する。
【0014】
常用ブレーキ制御ユニット108は、電空常用ブレーキユニット107を制御して、1つ以上の常用ブレーキ圧力を、電空常用ブレーキユニット107の1つ以上の出力111、...、114へ伝達する(propagate)。1つ以上の出力111、...、114における、1つ以上の常用ブレーキ圧力は、少なくとも、常用ブレーキ要求信号110、および、重量信号104から導出されたブレーキが掛けられるべき重量値に応じた関数となっている。電空常用ブレーキユニット107の1つ以上の出力111、...、114における、1つ以上の常用ブレーキ圧力は、鉄道車両の1つ以上の車軸にブレーキを掛けるために使用される。
【0015】
電空常用ブレーキユニット107は、非常ブレーキ圧力106の圧力値に対応する、電空常用ブレーキの最大の圧力値を生成するよう構成されている。
【0016】
さらに、電空常用ブレーキユニット107は、制御信号(制御信号およびフィードバック信号)109が存在しない場合に、非常ブレーキ圧力106の現在値(current emergency braking pressure value)を、電空常用ブレーキユニット107の出力111、...、114に伝えるよう構成されている。
【0017】
非常ブレーキ要求信号115は、非常ブレーキを実行する必要性を示しており、遮断装置(interruption device)116に対して作用(act)する。この遮断装置116は、例えば、これらに限定されるものではないが、マルチエクスチェンジリレー(multi-exchange relay)、または多数の半導体スイッチ(semiconductor switches)を用いて得られる。非常ブレーキ要求信号115からの非常ブレーキ要求が存在しない場合に、遮断装置116は、閉接点(closed contact)構成を維持するよう構成されている。そして、非常ブレーキ要求信号115からの非常ブレーキの実行要求の指示が存在する場合には、遮断装置116は、開接点(open contact)構成を維持するよう構成されている。
【0018】
このようにして、非常ブレーキ要求信号115による非常ブレーキの実行要求の指示が存在しない場合、電空常用ブレーキユニット107は、常用ブレーキ制御ユニット108の制御下で、電空常用ブレーキユニット107の1つ以上の出力111、...、114における、1つ以上の常用ブレーキ圧力を生成する。
【0019】
電空常用ブレーキユニット107の1つ以上の出力111、...、114における1つ以上の常用ブレーキ圧力の値は、非常ブレーキ圧力106の現在値の上限値である。非常ブレーキ要求信号115から非常ブレーキの実行要求の指示が存在する場合に、電空常用ブレーキユニット107は、電空常用ブレーキユニット107の1つ以上の出力111、...、114に、非常ブレーキ圧力106の値を伝達する。
【0020】
既知のブレーキシステム100の第1の例は、図2に示された欧州特許第3148853号において開示されている。
【0021】
図2のEPDAユニットは、電空非常ブレーキユニット101に対応している。図2の重量制御ユニット(Weighting Control Unit)は、非常ブレーキ制御ユニット103に対応している。
【0022】
図2の複数のEPCAユニットは、それぞれ電空常用ブレーキユニット107に対応している。また、ブレーキシリンダーBC1、...、BCNに対する複数のEPCAユニットの出力は、電空常用ブレーキユニット107の1つ以上の出力111、...、114の圧力に、それぞれ対応している。
【0023】
図2の複数のブレーキ制御ユニットは、図1の常用ブレーキ制御ユニット108に、それぞれ対応している。図2のリレーバルブ(relay valve)4への出力圧力は、図1の非常ブレーキ圧力106に対応している。図2のMBP圧力は、図1の空気圧供給圧力102に対応している。図2のリレーバルブ4の出力における圧力は、ソレノイドバルブグループ(solenoid valve group)に電力を供給する。ソレノイドバルブグループは、複数のソレノイドバルブ(solenoid valves)10、12、20からなり、リレーバルブRVを駆動するために使用される。この構造(architecture)に関して、ブレーキシステム100の非常ブレーキ圧力106に対応する、ブレーキシリンダーBC1、...、BCnにおける圧力値が、図2のリレーバルブ4の出力における圧力値を、どのようにして決して超えないようになっているかは、本分野における当業者にとって明らかである。
【0024】
電空システム(ブレーキシステム)100の第2の例は、図3に示されている欧州特許第2830918号において開示されている。
【0025】
図3に示されている一点鎖線のボックス401は、図1に示されている電空非常ブレーキユニット101に対応している。また、図3に示されている一点鎖線のボックス402は、図1に示されている電空常用ブレーキユニット107に対応している。さらに、図3に示されている空気圧信号403は、図1に示されている非常ブレーキ圧力106に対応している。
【0026】
本特許出願では、以下の欧州規格(European regulation)を参照する。
・EN50126「鉄道用途。信頼性、可用性、保守性、安全性(RAMS)の仕様とデモンストレーション(Railway applications. The specification and demonstration of reliability, availability, maintainability and safety (RAMS))」
・EN50128「鉄道用途。通信、信号伝達、処理システム。鉄道制御および保護システム用ソフトウェア(Railway applications. Communications, signalling and processing systems. Software for railway control and protection systems)」
・EN50129「鉄道用途。通信、信号伝達、処理システム。信号伝達用の安全関連電子システム(Railway applications. Communication, signalling and processing systems. Safety related electronic systems for signalling)」
【0027】
特に、EN50126規格は、安全性解析の結果に基づいて、本発明に係るシステムを構成する複数のサブシステムに、安全インテグリティーレベル(safety integrity level)SIL0/1/2/3/4を割り当てるための方法を規定している(SIL4は、安全レベルが最も高いことを示している)。そして、EN50128規格およびEN50129規格は、安全性解析の結果に基づき割り当てられたSILレベルに従って、ソフトウェアおよびハードウェアコンポーネントにそれぞれ適用されるべき設計基準を規定している。
【0028】
鉄道分野の当業者に知られているファクターは、以下の通りである。
・欧州規格EN50126に従って実行される鉄道車両のための非常ブレーキ機能に関する安全性の計算は、非常ブレーキ機能に安全インテグリティーレベルSIL≧3を体系的に割り当て、その結果、それらを実施するサブシステムに安全インテグリティーレベルSIL≧3を割り当てること。
・欧州規格EN50126に従って実行される鉄道車両のための常用ブレーキ機能に関する安全性の計算は、通常、サービスブレーキ機能に安全インテグリティーレベルSIL≦2を割り当て、その結果、通常、それらを実施するサブシステムに安全インテグリティーレベルSIL≦2を割り当てること。
・EN50128およびEN50129に関するSIL≧3レベルに従った、典型的には、1つ以上のマイクロプロセッサー、1つ以上のFPGAに基づく、または、マイクロプロセッサーとFPGAとの混合構造を用いた制御ユニットの開発においては、SIL≦2レベルに従った、同様の機能が得られる設計と比較した場合に、設計コスト、検証コスト、および認証コストが、必然的に、およそ1桁大きくなるということ。
【0029】
上述の最後の点に関連して、SIL≧3の安全レベルに従って開発されるべき機能を、極めて限定的で簡素なものに維持することには価値があることは明らかである。
【0030】
したがって、従来技術において、非常ブレーキ圧力106の発生を制御するために使用される非常ブレーキ制御ユニット103は、常用ブレーキ制御ユニット108の開発に必要とされるSIL安全レベルよりも高いSIL安全レベルに従って開発されなければならないことが知られている。一般に、非常ブレーキ制御ユニット103は、EN50128およびEN50129に従い、SIL≧3となるように開発されている。一方、常用ブレーキ制御ユニット108は、EN50128およびEN50129に従い、SIL≦2となるように開発されている。
【0031】
旅客列車用鉄道システムの安全性に対する関心は、高まり続けている。この安全性に対する関心の高まりにより、近年、ブレーキシステムに関連するいくつかの追加機能のSIL安全インテグリティーレベルが再検討されており、このブレーキシステムに関連する追加機能は、現在、SIL≦2の安全インテグリティーレベルに従って開発されている。
【0032】
第1の機能は、当業者に抑速ブレーキ(Holding Brake)として知られている。この機能は、列車の速度が所定の値を下回る場合に、ブレーキシステムによりブレーキ力を自動的に加えることで構成されている。この列車の速度の所定の値とは、典型的には、時速1km~3kmの範囲の速度である。
【0033】
例えば、乗客が乗り降りするプラットフォームにおいて、鉄道車両が停車しようとしている際に、この速度のレベルに到達する。
【0034】
抑速ブレーキ機能の目的は、乗客が乗り降りしている間に、レールの傾斜(inclination of the rail)により、動く可能性のある2方向(two possible directions)のいずれかに車両が動かないようにすることである。
【0035】
車両の通常運転モードでは、抑速ブレーキが少なくとも全期間にわたって維持適用され、鉄道車両の扉は開いたままである。
【0036】
適切な安全信号が、鉄道車両の扉が閉じたことを示すとき、および、牽引システム(traction system)からの信号が、車両を進行方向に移動させるのに十分な牽引トルクが牽引モーターによって加えられたことを示すときに限り、抑速ブレーキは、ブレーキシステムから自動的に解除される(removed)。
【0037】
この最後の措置(measure)は、上り坂において、抑速ブレーキを解除する間に、列車が進行方向と反対方向に動いてしまう事を防ぐために必要である。このため、抑速ブレーキ機能は、アンチロールバック機能(anti-rollback function)として知られている場合もある。
【0038】
現在、抑速ブレーキ機能は、SIL≦2の安全インテグリティーレベルに従って、常用ブレーキ制御ユニット108により自動的に管理される。
【0039】
前述の抑速ブレーキ機能を実行することができるようにするために、常用ブレーキ制御ユニット108は、1つ以上の速度信号200を受信する。この速度信号200は、例えば、これに限定されないが、速度センサー、または、図示されていない鉄道車両の基準速度信号(signal reference speed)を生成する他のモジュールから送信される。鉄道車両速度情報(rail vehicle speed information)を用いて、常用ブレーキ制御ユニット108は、抑速ブレーキ機能がアクティブ化されるべき瞬間を判別する。さらに、常用ブレーキ制御ユニット108は、牽引システムによって生成された1つ以上の牽引トルク信号201を受信する。このような1つ以上の牽引トルク信号201は、牽引トルクが、上述のロールバックとして定義された状況を防止するのに十分であるか否かを示す。さらに、常用ブレーキ制御ユニット108は、ドアの開閉状況を示す1つ以上のドアステータス信号(door status signals)202を車両ドア管理システム(vehicle door management system)から受信してもよい。
【0040】
1つ以上の牽引トルク信号201、および、1つ以上のドアステータス信号202を観察することによって、常用ブレーキ制御ユニット108は、抑速ブレーキ機能が非アクティブ化される(deactivated)瞬間を判別する。
【0041】
常用ブレーキ制御ユニット108は、電空常用ブレーキユニット107を駆動することによって抑速ブレーキ機能を実行し、電空常用ブレーキユニット107の1つ以上の出力111、...、114において抑速ブレーキ圧力を得る。
【0042】
多くの場合、この抑速ブレーキ圧力は、ブレーキシステム100によってブレーキが掛けられるべき重量を示す1つ以上の重量信号104に応じた関数となっており、常用ブレーキ制御ユニット108により決定される。
【0043】
抑速ブレーキ機能の機能解析および動作解析は、どのようにして常用ブレーキ制御ユニット108において誤動作(malfunction)が起こり得るかを示している。典型的に、ソフトウェアによって引き起こされる可能性があるエラーは、例えば、乗客が鉄道車両に乗り降りしている最中に抑速ブレーキが解除されてしまうというエラーである。特に、プラットフォームと列車の乗降平面(boarding/alighting plane)との間に空間がある場合、乗客は、その空間の中に足をうっかり入れてしまう可能性がある。前述の状況を考慮すると、鉄道車両が斜面上にある場合、そのような鉄道車両は、乗客の身体に深刻な外傷を与える原因となり得る、不適当な動作(undue movement)をとってしまう可能性がある。
【0044】
一部の鉄道会社のオペレーターは、自動の抑速ブレーキ機能の存在の有無にかかわらず、乗客の乗降段階中には、各停車時に抑速ブレーキを体系的にアクティブ化させることを機関士に要求することが当業者に知られている。機関士は、乗客の乗降段階中に、鉄道車両が不適当な動作をとることが無いように、手動で確実に抑速ブレーキをアクティブ化させる。
【0045】
その他のケースにおいて、抑速ブレーキ機能の誤動作の発生により、乗客が乗降している間に鉄道車両が不適当な動作をとってしまった場合に、非常ブレーキを掛けるという処置(precaution of applying the emergency brake)は、機関士の注意(attention)にのみ委ねられる。
【0046】
前述の考えによれば、SIL≧3のレベルに従った抑速ブレーキ機能の開発が、乗客に深刻な外傷を与える潜在的なリスクを軽減する(mitigate)ために適切であり、各停車時に機関士が体系的に介入することを回避するのに適切であるという意見が導かれるであろう。
【0047】
第2の機能は、「ディストリビューターエミュレーション(Distributor Emulation)」として知られている。この機能は、ソフトウェア機能を介してディストリビューターバルブ(distributor valve)の機能的な挙動をエミュレートする。ディストリビューターバルブは、SIL≦2の安全レベルに制限されている開発が要求される常用ブレーキ機能、および、SIL≧3の安全レベルの開発が要求される非常ブレーキ機能の双方の機能を実行することが知られている。
【0048】
現在、「ディストリビューターエミュレーション」機能は、常用ブレーキ制御ユニット108により、SIL≦2の安全レベルにのみ従って実行される。
【0049】
「ディストリビューターエミュレーション」機能を実行するために、常用ブレーキ制御ユニット108は、メインブレーキパイプの圧力を示す圧力信号202を受信する。圧力信号202は、典型的に、図に示されていない圧力変換器(pressure transducer)によって生成され、空気圧によりメインブレーキパイプに接続される。
【0050】
ディストリビューターエミュレーション機能は、国際公開公報WO2018189693において開示されており、SIL≧3のレベルで全面的に開発された構造に従う「ディストリビューターエミュレーション」機能の実現が可能であることが開示されている。
【0051】
ERTMS/ETCS等の信号システム、自動運転システムATO(自動列車運転(Automatic Train Operation))、または、複数の列車のバーチャルカップリング(Virtual Coupling of several trains)として定義されているシステムにより変調(modulated)され得るブレーキにより構成される安全性の高い追加ブレーキ機能が、当業者により想定される。
【0052】
現在、線形変調されるブレーキは、常用ブレーキに代表される。常用ブレーキの現在の安全レベルは、SIL2であることが想定されており、安全レベルSIL2は、前述の自動運転システムの要件にとって不十分である。同時に、非常ブレーキ機能は、SIL4に分類されているにもかかわらず、2値のオン/オフ方式で動作しており、これは、前述の自動運転システムの機能的な要件にとって不適切である。
【0053】
前述の自動運転システムは、現在の常用ブレーキの安全レベルよりも高い安全レベルで、線形的にブレーキシステムを制御する必要があることが当業者に知られている。これは、常用ブレーキの安全性レベルをSIL4まで引き上げるか、または、非常ブレーキを変調させる必要があることを意味している。
【0054】
前述したように、例えば、これに限定されるものではないが、SIL≧3の安全レベルに従った「抑速ブレーキ」機能、「ディストリビューターエミュレーション」機能、または「信号システムによる変調ブレーキ」機能等の複雑な機能の完全な実施は、開発、認証、および維持に対する実質的なコストの源となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0055】
したがって、本発明の目的は、少なくとも1つのボギー台車または鉄道車両用のブレーキシステムであって、ブレーキシステムの任意の追加ブレーキ機能の、安全インテグリティーレベルの向上を可能とするブレーキシステムを提案することである。例えば、これに限られるものではないが、SIL≦2レベルからSIL≧3レベルまで向上させることを可能にし、ブレーキシステムの既存のユニットを利用することによって、システムの複雑化、システムの全面的な開発、認証コストおよびメンテナンスコストを抑制することが可能なブレーキシステムを提案することである。
【0056】
本発明の1つの態様によれば、上記目的および他の目的並びに利点は、それぞれの独立請求項において規定される特徴を有する、ボギー台車または鉄道車両のためのブレーキシステムにより達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に規定されており、その内容は、本明細書の重要な部分として理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
次に、以下の添付図面を参照して、本発明に係る非常ブレーキおよび常用ブレーキのための電子制御システムの、いくつかの好ましい実施形態の機能的特徴および構造的特徴を詳述する。
図1図1は、既知の新世代の電空ブレーキシステムの構造を示している。
図2図2は、欧州特許第3148853号の既知のブレーキシステム100の第1の例を示している。
図3図3は、欧州特許第2830918号の既知のブレーキシステム100の第2の例を示している。
図4図4は、本発明に係るブレーキシステムの第1実施形態を示している。
図5図5は、本発明に係るブレーキシステムの第2実施形態を示している。
図6図6は、本発明に係るブレーキシステムの第3実施形態を示している。
図7図7は、本発明に係るブレーキシステムの第4実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明の複数の実施形態を詳述する前に、本発明は、その適用において、以下、明細書中で述べられ、または図に示される構造の詳細および部品の構成に限定されないということが明らかにされるべきである。本発明は他の実施形態をとることができ、本発明を、実際には様々な方法で、実施または構築し得る。また、表現および専門用語は、説明を目的とするものであって、限定として解釈されるものではないことも理解されるべきである。「備える(include)」、「含む(comprise)」、またはそれらのバリエーションは、以下に記述される要素やそれらの均等物、並びに、それらの追加要素およびその均等物を含むことを意味する。
【0059】
図4は、本発明に係るブレーキシステム500の第1実施形態を示している。
【0060】
少なくとも1つのボギー台車または鉄道車両のためのブレーキシステム500は、第1の安全インテグリティーレベルSILに従い構成された非常ブレーキ制御ユニット503と、第1の安全インテグリティーレベルSILより低い第2の安全インテグリティーレベルSILに従い構成された常用ブレーキ制御ユニット508と、を含む。
【0061】
非常ブレーキ制御ユニット503は、制御信号およびフィードバック信号の第1グループ505を用いて、電空非常ブレーキユニット501を制御し、電空非常ブレーキユニット501を介して、非常ブレーキ圧力506を生成するよう設けられている。非常ブレーキ圧力506の圧力値は、ブレーキが掛けられるべきボギー台車または鉄道車両の重量を示す少なくとも1つの重量信号504に応じた関数となっている。
【0062】
図4に示されているように、電空非常ブレーキユニット501は、空気圧供給圧力502(pneumatic supply pressure)が供給されるよう設けられている。
【0063】
また、非常ブレーキ制御ユニット503は、さらに、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの追加圧力値551を判別するよう設けられている。追加圧力値551は、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの入力信号520に応じて判別される。少なくとも1つの入力信号520は、非常ブレーキ制御ユニット503により受信される。
【0064】
値を「判別する(determining)」という文言は、この値を計算する動作、または、あるテーブルもしくはデータベースから、この値を取得することのいずれかとして理解されてもよい。
【0065】
非常ブレーキ制御ユニット503は、さらに、通信手段518によって、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの追加圧力値551を、常用ブレーキ制御ユニット508に送信するよう設けられている。
【0066】
例えば、これに限られるものではないが、通信手段518は、シリアル通信ネットワーク(serial communication network)であってもよい。
【0067】
常用ブレーキ制御ユニット508は、常用ブレーキ要求信号510、および、少なくとも1つの重量信号504に応じて、少なくとも1つの常用ブレーキ圧力値を判別するよう設けられている。この常用ブレーキ要求信号510は、常用ブレーキ要求を示している。
【0068】
常用ブレーキ制御ユニット508は、さらに、制御信号およびフィードバック信号の第2グループ509を用いて、電空常用ブレーキユニット507を制御し、電空常用ブレーキユニット507の少なくとも1つの出力511、...、514に、圧力値を供給するよう設けられている。この提供される圧力値は、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの追加圧力値551、および、常用ブレーキ制御ユニット508により判別される少なくとも1つの常用ブレーキ圧力値のうち、より大きな圧力値である。
【0069】
複数の図において例として示されている、電空常用ブレーキユニット507の出力511、...、514の数は4つであるが、この出力の数は、他の例においては異なる可能性がある。
【0070】
図4に示されているように、電空常用ブレーキユニット507は、少なくとも非常ブレーキ圧力506を受け取るよう設けられている。
【0071】
次に、非常ブレーキ制御ユニット503の説明に戻る。非常ブレーキ制御ユニット503は、さらに、電空常用ブレーキユニット507の少なくとも1つの出力511、...、514における圧力値を示す少なくとも1つのフィードバック信号519を受信するよう設けられている。
【0072】
さらに、電空常用ブレーキユニット507の少なくとも1つの出力511、...、514において、追加ブレーキ機能550に関連付けられている追加圧力値551が予測される(換言すれば、追加ブレーキ機能550に関連付けられている追加圧力値551が、存在する必要がある)が、電空常用ブレーキユニット507の少なくとも1つの出力511、...、514における圧力値が、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの追加圧力値551よりも、少なくとも1つの所定の許容値(predetermined tolerance value)の分低くなる際に、非常ブレーキ制御ユニット503は、少なくとも1つのフィードバック信号519を用いて、電空常用ブレーキユニット507の少なくとも1つの出力511、...、514における圧力値をモニタリングするよう設けられている。そして、非常ブレーキ制御ユニット503は、非常ブレーキ圧力506の圧力値に対応する圧力値を、電空常用ブレーキユニット507の少なくとも1つの出力511、...、514に強制する(force)よう設けられている。追加のブレーキ機能550に関連する少なくとも1つの追加の圧力値551は、非常ブレーキ制御ユニット503により判別される。
【0073】
このように、ブレーキシステム500は、いずれにしても、非常ブレーキ制御ユニット503と同じ安全インテグリティーレベルで、少なくとも1つの追加ブレーキ機能550を、その後実行する。
【0074】
次に、図5を参照する。図5には、本発明に係るブレーキシステム500の第2実施形態が示されている。
【0075】
この場合も、少なくとも1つのボギー台車または鉄道車両のためのブレーキシステム500は、第1の安全インテグリティーレベルSILに従い構成された非常ブレーキ制御ユニット503と、第1の安全インテグリティーレベルSILより低い、第2の安全インテグリティーレベルSILに従い構成された常用ブレーキ制御ユニット508と、を含んでいる。
【0076】
また、この第2実施形態においても、非常ブレーキ制御ユニット503は、制御信号およびフィードバック信号の第1グループ505を用いて、電空非常ブレーキユニット501を制御するよう設けられている。非常ブレーキ制御ユニット503は、電空非常ブレーキユニット501を制御し、その電空非常ブレーキユニット501を介して、非常ブレーキ圧力506を発生させるよう設けられている。非常ブレーキ圧力506の圧力値は、ブレーキが掛けられるべきボギー台車または鉄道車両の重量を示す少なくとも1つの重量信号504に応じた関数となっている。図5に示されているように、電空非常ブレーキユニット501は、空気圧供給圧力502が供給されるよう設けられている。
【0077】
非常ブレーキ制御ユニット503は、さらに、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも第1の追加圧力値551を判別するよう設けられている。第1の追加圧力値551は、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの入力信号520に応じて判別される。この少なくとも1つの入力信号520は、非常ブレーキ制御ユニット503によって受信される。
【0078】
常用ブレーキ制御ユニット508は、常用ブレーキ要求信号510、および、少なくとも1つの重量信号504に応じて、少なくとも1つの常用ブレーキ圧力値を判別するよう設けられている。そして、常用ブレーキ制御ユニット508は、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの入力信号520´に応じて、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの第2の追加圧力値551´を判別するよう設けられている。この少なくとも1つの入力信号520´は、常用ブレーキ制御ユニット508によって受信される。
【0079】
常用ブレーキ制御ユニット508は、さらに、制御信号およびフィードバック信号の第2グループ509を用いて、電空常用ブレーキユニット507を制御し、電空常用ブレーキユニット507の少なくとも1つの出力511、...、514に、圧力値を供給するよう設けられている。この供給される圧力値は、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの第2の追加圧力値551´、および、常用ブレーキ制御ユニット508により判別される少なくとも1つの常用ブレーキ圧力値のうち、より大きい方の圧力値である。図5に示されているように、電空常用ブレーキユニット507は、少なくとも非常ブレーキ圧力506を受け取るよう設けられている。
【0080】
次に、非常ブレーキ制御ユニット503の説明に戻る。この第2実施形態において、非常ブレーキ制御ユニット503は、さらに、電空常用ブレーキユニット507の少なくとも1つの出力511、...、514における圧力値を示す、少なくとも1つのフィードバック信号519を受信するよう設けられている。
【0081】
さらに、常用ブレーキ制御ユニット508により判別される少なくとも1つの追加圧力値551´が、電空常用ブレーキユニット507の少なくとも1つの出力511、...、514において予測されるが、電空常用ブレーキユニット507の少なくとも1つの出力511、...、514における圧力値が、非常ブレーキ制御ユニット503により判別され、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの第1の追加圧力値551よりも、少なくとも1つの所定の許容値の分低い場合に、非常ブレーキ制御ユニット503は、少なくとも1つのフィードバック信号519を用いて、電空常用ブレーキユニット507の少なくとも1つの出力511、...、514における圧力値をモニタリングし、さらに、電空常用ブレーキユニット507の少なくとも1つの出力511、...、514における非常ブレーキ圧力506の圧力値に対応する圧力値に強制するよう設けられている。
【0082】
また、この第2実施形態において、ブレーキシステム500は、いずれにしても、結果として、非常ブレーキ制御ユニット503と同じ安全インテグリティーレベルで少なくとも1つの追加ブレーキ機能550を実行する。
【0083】
好ましくは、前述の第1実施形態および第2実施形態の双方に関して、非常ブレーキ制御ユニット503は、制御信号517を用いて、遮断装置(interruption device)516を制御するよう設けられてもよい。
【0084】
この場合、非常ブレーキ制御ユニット503が、非常ブレーキ圧力506の圧力値に対応する圧力値を、電空常用ブレーキユニット507の少なくとも1つの出力511、...、514に強制しなければならない際に、常用ブレーキ制御ユニット508と電空常用ブレーキユニット507との間の、制御信号およびフィードバック信号の第2グループ509の接続を許可しないように、遮断装置516を開くよう設けられてもよい。したがって、制御信号およびフィードバック信号の第2グループ509が、常用ブレーキ制御ユニット508と電空常用ブレーキユニット507との間において接続されていない場合に、電空常用ブレーキユニット507は、非常ブレーキ圧力506の圧力値を、電空常用ブレーキユニット507の少なくとも1つの出力511、...、514に伝達させるよう設けられてもよい。
【0085】
好ましくは、非常ブレーキ制御ユニット503は、さらに、非常ブレーキ要求を示す非常ブレーキ要求信号515を受信するよう設けられてもよい。非常ブレーキ要求信号515が非常ブレーキ要求を示すとき、少なくとも1つのフィードバック信号519と電空常用ブレーキユニット507の少なくとも1つの出力511、...、514における圧力値との間の比較の結果にかかわらず、非常ブレーキ制御ユニット503は、制御信号517を用いて遮断装置516を開くことができる。換言すれば、非常ブレーキの必要性が示された場合、非常ブレーキ制御ユニット503は、非常ブレーキ圧力506が、電空常用ブレーキユニット507の少なくとも1つの出力511、...、514に確実に伝達されるようにする。
【0086】
好ましくは、前述の第1実施形態および第2実施形態の双方に関して、非常ブレーキ制御ユニット503が、非常ブレーキ圧力506の圧力値に対応する圧力値を、電空常用ブレーキユニット507の少なくとも1つの出力511、...、514に強制しなければならない場合、非常ブレーキ圧力506は、電空常用ブレーキユニット507の少なくとも1つの出力511、...、514に直接伝達されてもよい。また、図5および図6に示されているように、電空常用ブレーキユニット507は、さらに、空気圧供給圧力502を受け取るよう設けられてもよい。この場合、非常ブレーキ制御ユニット503が非常ブレーキ圧力506の圧力値に対応する圧力値を、電空常用ブレーキユニット507の少なくとも1つの出力511、...、514に強制しなければならない際に、空気圧供給圧力502の圧力値は、電空常用ブレーキユニット507の内部の非常ブレーキ圧力506の値に制限される。非常ブレーキ圧力506の値に制限された空気圧供給圧力502の圧力値は、続いて、電空常用ブレーキユニット507の少なくとも1つの出力511、...、514に伝達される。
【0087】
次に、図6を参照する。図6には、本発明によるブレーキシステム500の第3実施形態が示されている。
【0088】
この第3実施形態においても先の実施形態と同様に、少なくとも1つのボギー台車また鉄道車両のためのブレーキシステム500は、第1の安全インテグリティーレベルSILに従い構成された非常ブレーキ制御ユニット503と、第1の安全インテグリティーレベルSILより低い第2の安全インテグリティーレベルSILに従い構成された常用ブレーキ制御ユニット508と、を含んでいる。
【0089】
第3の実施形態において、非常ブレーキ制御ユニット503は、制御信号およびフィードバック信号の第1グループ505を用いて、電空非常ブレーキユニット501を制御し、電空非常ブレーキユニット501を介して、非常ブレーキ圧力506を生成するよう設けられている。この非常ブレーキ圧力506の圧力値は、ブレーキが掛けられるべきボギー台車または鉄道車両の重量を示す少なくとも1つの重量信号504に応じた関数となっている。電空非常ブレーキユニット501は、空気圧供給圧力502が供給されるよう設けられている。
【0090】
非常ブレーキ制御ユニット503は、さらに、非常ブレーキ制御ユニット503により受信され、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの入力信号520に応じて、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの第1の追加圧力値551を判別するよう設けられている。
【0091】
常用ブレーキ制御ユニット508は、常用ブレーキ要求信号510、および、少なくとも1つの重量信号504に応じて、少なくとも1つの常用ブレーキ圧力値を判別するよう設けられている。
【0092】
常用ブレーキ制御ユニット508は、常用ブレーキ制御ユニット508によって受信され、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの入力信号520´に応じて、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも第2の追加圧力値551´を判別するよう設けられている。
【0093】
さらに、常用ブレーキ制御ユニット508は、制御信号およびフィードバック信号の第2グループ509を用いて、電空常用ブレーキユニット507を制御し、電空常用ブレーキユニット507の少なくとも1つの出力511、...、514に圧力値を提供する。この提供される圧力値は、常用ブレーキ制御ユニット508により判別され、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの第2の追加圧力値551´、および、常用ブレーキ制御ユニット508により判別された少なくとも1つの常用ブレーキ圧力値のうち、より大きい方の圧力値である。図6に見られるように、電空常用ブレーキユニット507は、少なくとも空気圧供給圧力502を受け取るよう設けられている。
【0094】
第3実施形態において、少なくとも1つのボギー台車または鉄道車両のためのブレーキシステム500は、さらに、少なくとも1つの圧力出力611、...、614を備える電空選択ユニット(electro-pneumatic selection unit)601を含んでいる。
【0095】
電空選択ユニット601は、少なくとも非常ブレーキ圧力506、電空常用ブレーキユニット507の少なくとも1つの出力511、...、514における少なくとも1つの圧力、および、非常ブレーキ制御ユニット503からの制御信号617を受信するよう設けられている。
【0096】
電空選択ユニット601は、さらに、非常ブレーキ制御ユニット503からの制御信号617に応じて、非常ブレーキ圧力506、または、電空常用ブレーキユニット507の少なくとも1つの出力511、...、514における少なくとも1つの圧力を、電空選択ユニット601の少なくとも1つの圧力出力611、...、614に伝達するよう設けられている。
【0097】
非常ブレーキ制御ユニット503は、さらに、電空選択ユニット601の少なくとも1つの圧力出力611、...、614における圧力値を示す少なくとも1つのフィードバック信号519を受信し、さらに、少なくとも1つのフィードバック信号519を用いて、電空選択ユニット601の少なくとも1つの圧力出力611、...、614における圧力値をモニタリングするよう設けられている。
【0098】
さらに、常用ブレーキ制御ユニット508により判別された少なくとも1つの第2の追加圧力値551´が、電空選択ユニット601の少なくとも1つの圧力出力611、...、614において予測されるが、電空選択ユニット601の少なくとも1つの圧力出力611、...、614における圧力値が、非常ブレーキ制御ユニット503によって判別され、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの第1の追加圧力値551に対して、少なくとも1つの所定の許容値の分低い場合に、非常ブレーキ制御ユニット503は、制御信号617を介して電空選択ユニット601を制御し、電空選択ユニット601の少なくとも1つの圧力出力611、...、614への非常ブレーキ圧力506の伝達(propagation)をアクティブ化するよう設けられている。
【0099】
したがって、第3の実施形態においても、ブレーキシステム500は、いずれにせよ、非常ブレーキ制御ユニット503と同じ安全インテグリティーレベルで、少なくとも1つの追加ブレーキ機能550を実行する。
【0100】
続いて、図7を参照する。図7には、本発明によるブレーキシステム500の第4実施形態が示されている。
【0101】
第4実施形態においても、少なくとも1つのボギー台車または鉄道車両のためのブレーキシステム500は、第1の安全インテグリティーレベルに従い構成された非常ブレーキ制御ユニット503と、第1の安全インテグリティーレベルよりも低い第2の安全インテグリティーレベルに従い構成された常用ブレーキ制御ユニット508と、を含んでいる。
【0102】
非常ブレーキ制御ユニット503は、制御信号およびフィードバック信号の第1グループ505を用いて、電空非常ブレーキユニット501を制御し、電空非常ブレーキユニット501を介して、非常ブレーキ圧力506を生成するよう設けられている。非常ブレーキ圧力506の圧力値は、ブレーキが掛けられるべきボギー台車または鉄道車両の重量を示す少なくとも1つの重量信号504に応じた関数となっている。電空非常ブレーキユニット501は、空気圧供給圧力502が供給されるよう設けられている。
【0103】
非常ブレーキ制御ユニット503は、非常ブレーキ制御ユニット503により受信され、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの入力信号520に応じて、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの追加圧力値551を判別するよう、さらに設けられている。
【0104】
さらに、非常ブレーキ制御ユニット503は、通信手段518を介して、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの追加圧力値551を、常用ブレーキ制御ユニット508に送信するよう設けられている。
【0105】
常用ブレーキ制御ユニット508は、常用ブレーキ要求信号510、および、少なくとも1つの重量信号504に応じて、少なくとも1つの常用ブレーキ圧力値を判別するよう設けられている。さらに、常用ブレーキ制御ユニット508は、制御信号およびフィードバック信号の第2グループ509を用いて、電空常用ブレーキユニット507を制御し、非常ブレーキ制御ユニット503により判別され、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの追加圧力値551、および、常用ブレーキ制御ユニット508によって判別された少なくとも1つの常用ブレーキ圧力値のうち、圧力値がより大きい方を電空常用ブレーキユニット507の少なくとも1つの出力511、...、514に提供するよう設けられている。また、電空常用ブレーキユニット507は、少なくとも空気圧供給圧力502を受け取るよう設けられている。
【0106】
前述の第3実施形態と同様に、第4実施形態において、少なくとも1つのボギー台車または鉄道車両のためのブレーキシステム500は、少なくとも1つの圧力出力611、...、614を備える電空選択ユニット601を含んでいる。また、前述の第3実施形態と同様に、電空選択ユニット601は、少なくとも非常ブレーキ圧力506、電空常用ブレーキユニット507の少なくとも1つの出力511、...、514における少なくとも1つの圧力、および、非常ブレーキ制御ユニット503から送信される制御信号617を受信するよう設けられている。さらに、電空選択ユニット601は、非常ブレーキ制御ユニット503から送信される制御信号617に従い、非常ブレーキ圧力506、または、電空常用ブレーキユニット507の少なくとも1つの出力511、...、514における少なくとも1つの圧力を、電空選択ユニット601の少なくとも1つの圧力出力611、...、614に伝達するよう設けられている。
【0107】
第4の実施形態において、少なくとも1つの追加圧力値551が、電空選択ユニット601の少なくとも1つの圧力出力611、...、614において予測されるが、電空選択ユニット601の少なくとも1つの圧力出力611、...、614における圧力値が、非常ブレーキ制御ユニット503によって判別され、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの追加圧力値551よりも、少なくとも1つの所定の許容値の分低い場合に、非常ブレーキ制御ユニット503は、さらに、電空選択ユニット601の少なくとも1つの圧力出力611、...、614における圧力値を示す、少なくとも1つのフィードバック信号519を受信し、さらに、少なくとも1つのフィードバック信号519を用いて、電空選択ユニット601の少なくとも1つの圧力出力611、...、614における圧力値をモニタリングするよう設けられている。そして、非常ブレーキ制御ユニット503は、制御信号617を介して電空選択ユニット601を制御し、電空選択ユニット601の少なくとも1つの圧力出力611、...、614への非常ブレーキ圧力506の圧力値の伝達をアクティブ化するよう設けられている。
【0108】
この場合も、ブレーキシステム500は、非常ブレーキ制御ユニット503と同じ安全インテグリティーレベルで、少なくとも1つの追加ブレーキ機能550を実行する。
【0109】
電空選択ユニット601は、例えば、単純な電空多方弁(pneumatic multi-way valve)として構成されてもよい。または、電空選択ユニット601は、非常ブレーキ圧力506、および、電空常用ブレーキユニット507の少なくとも1つの出力511、...、514における少なくとも1つの圧力が、空気圧供給圧力502が供給される空気圧増幅デバイス(pneumatic amplification device)のための駆動圧力を含むよう選択される、より複雑なデバイスであってもよい。
【0110】
好ましくは、非常ブレーキ制御ユニット503は、さらに、非常ブレーキ要求を示す非常ブレーキ要求信号515を受信するよう設けられてもよい。非常ブレーキ要求信号515が、非常ブレーキ要求の存在を示す場合に、非常ブレーキ制御ユニット503は、制御信号617を介して、電空選択ユニット601の少なくとも1つの圧力出力611、...、614への非常ブレーキ圧力506の伝達をアクティブ化させることができる。換言すれば、非常ブレーキの必要性が示される場合、非常ブレーキ制御ユニット503は、電空選択ユニット601の少なくとも1つの圧力出力611、...、614に、非常ブレーキ圧力506を、確実に伝達する。
【0111】
好ましくは、前述の任意の実施形態に関して、追加ブレーキ機能550は、抑速ブレーキ機能であってもよい。そして、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの入力信号520、520´は、非常ブレーキ制御ユニット503のみ、または、非常ブレーキ制御ユニット503および常用ブレーキ制御ユニット508の双方により受信される。この少なくとも1つの入力信号520、520´は、少なくとも1つの速度信号200と、少なくとも1つの利用可能な牽引トルク信号201と、を含んでもよい。少なくとも1つの速度信号200は、ボギー台車または鉄道車両の少なくとも1つの車軸の速度を示すか、または、ボギー台車または鉄道車両の走行速度を直接示す。少なくとも1つの利用可能な牽引トルク信号201は、現在存在している牽引トルクを示す。非常ブレーキ制御ユニット503のみ、または、非常ブレーキ制御ユニット503および常用ブレーキ制御ユニット508の双方により受信され、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの入力信号520、520´は、さらに、ドアの開閉状態を示す車両ドア管理システムからの1つ以上のドアステータス信号202を含んでいてもよい。
【0112】
好ましくは、前述の任意の実施形態に関して、追加ブレーキ機能550は、ディストリビューターエミュレーション機能であってもよい。非常ブレーキ制御ユニット503のみ、または、非常ブレーキ制御ユニット503および常用ブレーキ制御ユニット508の双方により受信され、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの入力信号520、520´は、ボギー台車または鉄道車両のメインブレーキパイプ圧力202を示す信号に対応していてもよい。
【0113】
さらなる態様において、非常ブレーキ制御ユニット503は、非常ブレーキ制御ユニット503に受信され、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの入力信号520に関し、離散化された値(discretized values)でインデックス付けされた単一次元または多次元マトリックス(matrix)から選択することによって、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの第1の追加圧力値551を判別するよう設けられてもよい。代替的にまたは追加的に、常用ブレーキ制御ユニット508は、常用ブレーキ制御ユニット508によって受信され、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの入力信号520´に関し、離散化された値でインデックス付けされた単一次元または多次元マトリックスから選択することによって、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの第2の追加圧力値551´を判別するよう設けられてもよい。
【0114】
このマトリックスは、事前に判別された後に、ブレーキシステム500の不揮発性メモリーにロードされてもよい。
【0115】
ここで、前述した第1実施形態を参照して、1つの実施例について詳述する。この実施例において、安全レベルが上げられるべき追加ブレーキ機能550は、抑速ブレーキ機能である。
【0116】
非常ブレーキ制御ユニット503によって受信され、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの入力信号520は、1つ以上の速度信号と、牽引信号と、を含む。1つ以上の速度信号は、例えば、これらに限られないが、速度センサー、または、列車もしくは鉄道車両の基準速度信号を生成する他のモジュールから送信される。1つ以上の牽引信号は、牽引コンピューター(traction computers)によって生成される。また、1つ以上の牽引信号は、規定のロールバック状況(rollback situation)を防止するために、牽引トルクが、十分か否かを示すよう設けられている。さらに、非常ブレーキ制御ユニット503により受信され、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの入力信号520は、ドアの開閉状態を示す車両ドア管理システムからの1つ以上の信号を含んでいてもよい。
【0117】
通信手段518は、例えば、これに限定されないが、シリアル通信ネットワーク(serial communication network)である。通信手段518は、非常ブレーキ制御ユニット503が、常用ブレーキ制御ユニット508と通信することを可能にする。
【0118】
抑速ブレーキ機能に関して、前述の第1実施形態を考慮すると、非常ブレーキ制御ユニット503は、前述の非常ブレーキ圧力506の生成に関する動作を実行することに加えて、電空常用ブレーキユニット507の出力511、...、514に対して、ブレーキシステム500が抑速ブレーキ圧力を加えるべき値に、列車速度が達したか否かを判別するために、1つ以上の速度信号を観察する。非常ブレーキ制御ユニット503が、ブレーキシステム500により抑速ブレーキ圧力値(追加圧力値)551を加えるべき値に、列車の速度が到達したと判別した場合、非常ブレーキ制御ユニット503は、加えられるべき抑速ブレーキ圧力値551を、例えば、これに限られないが、ブレーキが掛けられるべき重量値(重量信号504)に応じて判別する。そして、非常ブレーキ制御ユニット503は、通信手段518を介して、常用ブレーキ制御ユニット508に命令を送信し、電空常用ブレーキユニット507の出力511、...、514に抑速ブレーキ圧力値551を加える。
【0119】
非常ブレーキ制御ユニット503は、その後、1つ以上のフィードバック信号519を介して、電空常用ブレーキユニット507の1つ以上の出力511、...、514における圧力値が、非常ブレーキ制御ユニット503により、事前に判別された抑速ブレーキ圧力値551と所定の許容値の範囲内において一致することを確認する。少なくとも1つのフィードバック信号519の、表示された圧力値(read pressure value)が、事前に判別された抑速ブレーキ圧力値551と、所定の許容値の範囲内において一致しない場合、非常ブレーキ制御ユニット503は、制御信号517を用いて遮断装置516の接点を開くように命令する。このようにして、電空常用ブレーキユニット507は、非常ブレーキ圧力506の値を、電空常用ブレーキユニット507の少なくとも1つの出力511、...、514に伝達させる。
【0120】
一方、抑速ブレーキが成功した場合、1つ以上の牽引信号がロールバックの影響を受けることを回避するのに充分な牽引トルクの存在を示す際、より厳密にいえば、1つ以上の牽引信号が、車両/列車の全ての扉が閉じていることを示す際に、非常ブレーキ制御ユニット503は、通信手段518によって、通常の常用ブレーキ管理(normal service braking management)を元の状態に戻すための命令を常用ブレーキ制御ユニット508に送信する。
【0121】
さらなる実施例において、抑速ブレーキ機能に関し、前述の第2実施形態を参照する。前述の第2実施形態において、非常ブレーキ制御ユニット503により受信され、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの入力信号520について述べられた内容は、このさらなる実施例に対しても有効である。しかしながら、このさらなる実施例においては、1つ以上の速度信号、および、1つ以上の牽引信号は、常用ブレーキ制御ユニット508により受信され、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの入力信号520´である。さらに、常用ブレーキ制御ユニット508によって受信され、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの入力信号520´は、ドアの開閉状態を示す、車両ドア管理システムからの1つ以上の信号を含んでいてもよい。
【0122】
この第2の実施例においては、非常ブレーキ制御ユニット503が、前述の非常ブレーキ圧力506を生成することに関連する動作を実行することに加えて、1つ以上の速度信号を観察し、ブレーキシステム500が抑速ブレーキ圧力値551を加えるべき値に、列車の速度が達したか否かを判別する。非常ブレーキ制御ユニット503が、ブレーキシステム500が抑速ブレーキ圧力値551を加えるべき値に、列車または鉄道車両の速度が達したことを判別した場合、非常ブレーキ制御ユニット503は、例えば、これに限定されないが、ブレーキが掛けられるべき重量値(重量信号504)に応じて、適用されるべき抑速ブレーキ圧力値551を判別する。
【0123】
同時に、常用ブレーキ制御ユニット508は、電空常用ブレーキユニット507の出力511、...、514における常用ブレーキ圧力の生成に関連する動作を実行することに加えて、1つ以上の速度信号を観察し、ブレーキシステム500が抑速ブレーキ圧力値551を加えるべき値に、列車または鉄道車両の速度が到達したか否かを判別する。常用ブレーキ制御ユニット508が、ブレーキシステム500が抑速ブレーキ圧力値551を加えるべき値に、列車または鉄道車両の速度が到達したと判別した場合、常用ブレーキ制御ユニット508は、加えられるべき抑速ブレーキ圧力値551を、例えば、これに限られないが、ブレーキが掛けられるべき重量値(重量信号504)に応じて判別する。そして、常用ブレーキ制御ユニット508は、常用ブレーキ制御ユニット508により判別された抑速ブレーキ圧力値に対応する圧力を、電空常用ブレーキユニット507の出力511、...、514において生成するよう電空常用ブレーキユニット507を制御する。
【0124】
非常ブレーキ制御ユニット503は、続いて、1つ以上のフィードバック信号519を介して、電空常用ブレーキユニット507の1つ以上の出力511、...、514における常用ブレーキの圧力値が、非常ブレーキ制御ユニット503により事前に判別された抑速ブレーキ圧力値551と、所定の許容値の範囲内において一致することを確認する。1つ以上のフィードバック信号519により読み出された圧力値が、非常ブレーキ制御ユニット503により事前に判別された抑速ブレーキ圧力値551と、所定の許容値の範囲内において一致しない場合、非常ブレーキ制御ユニット503は、制御信号517を用いて遮断装置516の接点を開くよう命令する。このようにして、電空常用ブレーキユニット507は、非常ブレーキ圧力506の値を電空常用ブレーキユニット507の出力511、...、514に伝達する。
【0125】
一方、抑速ブレーキが成功した場合、1つ以上の牽引信号がロールバックの影響を回避するのに十分な牽引トルクの存在、かつ/または、車両/列車の全ての扉が閉じられていることを示した際に、常用ブレーキ制御ユニット508は、常用ブレーキの管理を元の状態に戻し、非常ブレーキ制御ユニット503は、抑速ブレーキのモニタリング手順が正常に終了されたものとみなす。
【0126】
前述の抑速ブレーキ機能に関連する2つの実施例において、常用ブレーキ制御ユニット508に関して、非常ブレーキ制御ユニット503によって実行される制御、モニタリング、および、実行可能な代替動作(possible replacement action)は、抑速ブレーキ機能の実行に関連して、常用ブレーキ制御ユニット508で任意の故障・不具合が発生した際にも、抑速ブレーキ機能により要求されるブレーキ圧力以上のブレーキ圧力が、常に、および、どのような場合でも、非常ブレーキ制御ユニット503に割り当てられた安全レベルと等しい安全レベルに従い、電空常用ブレーキユニット507の出力511、...、514に加えられることを保証する。このようにして、抑速ブレーキ機能の安全レベルは、非常ブレーキ制御ユニット503に割り当てられたレベルと同等の安全レベルにまで引き上げられる。
【0127】
ここで、前述した第2実施形態を参照して、1つの実施例を詳述する。ここで、安全レベルを上げるべき追加ブレーキ機能550は、ディストリビューターバルブエミュレーション機能(distributor valve emulation function)である。
【0128】
ディストリビューターバルブは、メインブレーキパイプの圧力に応じて、以下のような2つの機能を実行することが当業者に知られている。
・メインブレーキパイプの圧力値が公称値5bar(500kPa)と公称値3.5bar(350kPa)の間の範囲内に収まっている場合、常用ブレーキとして定義されうる機能領域内で動作することが意図されている。
・メインブレーキパイプの圧力値が、公称値3.5bar(350kPa)を下回る場合、非常ブレーキとして定義され得る機能領域内で動作することが意図されている。
【0129】
これらの仮定に基づくと、常用ブレーキ制御ユニット508は、常用ブレーキ要求信号510および重量信号504に応じて、電空常用ブレーキユニット507の出力511、...、514で常用ブレーキ圧力の生成に関連する動作を実行することに加えて、以下のように動作する。
【0130】
常用ブレーキ制御ユニット508によって受信され、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの入力信号520´は、メインブレーキパイプ内における圧力を示すメインブレーキパイプ圧力信号(main brake pipe pressure signal)を含んでいてもよい。このメインブレーキパイプ圧力信号は、メインブレーキパイプに空気圧で接続された圧力センサー(図示されていない)により生成される。常用ブレーキ制御ユニット508は、このメインブレーキパイプ圧力信号を継続的に観測する。
【0131】
常用ブレーキ制御ユニット508は、常用ブレーキ制御ユニット508により判別され、さらに重量信号504を考慮に入れたディストリビューターブレーキ圧力551、および、常用ブレーキ要求信号510および重量信号504に応じて常用ブレーキ制御ユニット508により判別された常用ブレーキ圧力のうち、より大きい方を電空常用ブレーキユニット507の出力511、...、514に伝達するよう構成されていてもよい。
【0132】
非常ブレーキ制御ユニット503によって受信され、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの入力信号520は、メインブレーキパイプにおける圧力を示すメインブレーキパイプ圧力信号を含んでいてもよい。非常ブレーキ制御ユニット503は、前述の非常ブレーキ圧力506の発生に関連する動作を実行することに加えて、メインブレーキパイプにおける圧力を示すメインブレーキパイプ圧力信号を継続的に観察する。このメインブレーキパイプ圧力信号は、このメインブレーキパイプに空気圧で接続された圧力センサー(図示されていない)により生成される。必要に応じて、非常ブレーキ制御ユニット503、および、常用ブレーキ制御ユニット508によって受信されるメインブレーキパイプ内における圧力を示すメインブレーキパイプ圧力信号は一致してもよく、双方が同じセンサーにより生成されてもよい。
【0133】
非常ブレーキ制御ユニット503が、メインブレーキパイプ圧力信号が、非常ブレーキ要求を示す値、すなわち、公称値3.5bar(350kPa)未満の圧力値をとったことを判別した場合に、非常ブレーキ制御ユニット503は、電空常用ブレーキユニット507の出力511、...、514において、常用ブレーキ制御ユニット508により生成された圧力が、所定の許容値の範囲内において、電空常用ブレーキユニット507により判別された非常ブレーキ圧力506の値に対応することを確認する。
【0134】
1つ以上のフィードバック信号519により読み出された圧力値が、判別されたディストリビューターブレーキ圧力551の値以上である場合、所定の許容値の範囲を超えない限り、非常ブレーキ制御ユニット503は、いかなる動作も行わない。
【0135】
1つ以上のフィードバック信号519により読み出された圧力値が、所定の許容値の範囲内において、判別されたディストリビューターブレーキ圧力551の値よりも低い場合、非常ブレーキ制御ユニット503は、制御信号517を用いて、遮断装置516の接点を開くよう命令する。このようにして、電空常用ブレーキユニット507は、非常ブレーキ圧力506の値を電空常用ブレーキユニット507の出力511、...、514に伝達する。
【0136】
次に、常用ブレーキ機能の安全レベルを引き上げる方法についての1つの実施例を示す。この機能は、変調された非常ブレーキを構成するものとみなしてもよい。
【0137】
常用ブレーキ要求信号510は、さらに、非常ブレーキ制御ユニット503に供給される。実際に、非常ブレーキ制御ユニット503に供給される常用ブレーキ要求信号510は、非常ブレーキ制御ユニット503により受信され、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの入力信号520に相当する。
【0138】
非常ブレーキ制御ユニット503は、前述の非常ブレーキ圧力506の発生に関連する動作を実行することに加えて、受信した常用ブレーキ要求信号を継続的に観測し、さらに、受信した常用ブレーキ要求信号および重量信号504に応じて、「安全な」常用ブレーキ値を継続的に判別する。
【0139】
前述した第1実施形態において、非常ブレーキ制御ユニット503は、通信手段518を介して、電空常用ブレーキユニット507の出力511、...、514に「安全な」常用ブレーキ圧力値を加えるよう、常用ブレーキ制御ユニット508に命令を送信する。
【0140】
その後、1つ以上のフィードバック信号519を介して、1つ以上の出力511、...、514における圧力値が、事前に判別された「安全な」常用ブレーキ圧力値と所定の許容値の範囲内において一致することを確認する。1つ以上のフィードバック信号519により読み出された圧力値が、事前に判別された「安全な」常用ブレーキ圧力値と所定の許容値の範囲内において一致しない場合、非常ブレーキ制御ユニット503は、制御信号517を用いて、遮断装置516の接点を開くよう命令する。このようにして、電空常用ブレーキユニット507は、前述の方法に従い、非常ブレーキ圧力506の値を、電空常用ブレーキユニット507の出力511、...、514に伝達する。
【0141】
一方、電空常用ブレーキユニット507の1つ以上の出力511、...、514における圧力値を示す、1つ以上のフィードバック信号519を介して読み出された圧力値が、事前に判別された「安全な」常用ブレーキ圧力値と所定の許容値の範囲内において一致することを示す場合、非常ブレーキ制御ユニット503は、いかなる動作も行わない。
【0142】
前述した第2実施形態において、常用ブレーキ制御ユニット508は、通常、常用ブレーキ要求信号510および重量信号504に応じて、電空常用ブレーキユニット507の出力511、...、514における常用ブレーキ圧力の生成に関連する動作を実行する。
【0143】
常用ブレーキ制御ユニット508に供給される常用ブレーキ要求信号510は、常用ブレーキ制御ユニット508により受信され、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの入力信号520´に相当する。
【0144】
同時に、非常ブレーキ制御ユニット503は、常用ブレーキ要求および重量信号504に応じて、「安全な」常用ブレーキに関連する圧力値を判別する。
【0145】
続いて、非常ブレーキ制御ユニット503は、1つ以上のフィードバック信号519を介して、電空常用ブレーキユニット507の1つ以上の出力511、...、514における圧力値が非常ブレーキ制御ユニット503によって判別された「安全な」常用ブレーキ圧力値と、所定の許容値の範囲内において一致することを確認する。
【0146】
1つ以上のフィードバック信号519により読み出された圧力値が、非常ブレーキ制御ユニット503により事前に判別された「安全な」常用ブレーキ圧力値と、所定の許容値の範囲内において一致しない場合、非常ブレーキ制御ユニット503は、制御信号517を用いて遮断装置516の接点を開くよう命令する。このようにして、電空常用ブレーキユニット507は、非常ブレーキ圧力506の値を、電空常用ブレーキユニット507の出力511、...、514に伝達する。
【0147】
一方、フィードバック信号519を介して読み出された圧力値が、非常ブレーキ制御ユニット503によって判別される「安全な」常用ブレーキ値と、所定の許容値の範囲内で一致する場合、非常ブレーキ制御ユニット503は、いかなる動作も行わない。
【0148】
本発明によれば、有利には、非常ブレーキ制御ユニット503は、電空常用ブレーキユニット507の複雑な閉ループ圧力の確認(closed-loop pressure check)、および、関連する診断アルゴリズム(diagnostic algorithm)を実行して、安全レベルが向上されるべき追加機能に関連する圧力を生成する必要がない。本発明において、これらの機能は、電空常用ブレーキユニット507のクローズドチェーン制御(closed-chain control)および関連する診断アルゴリズムを実行するよう既に設けられている最先端技術に従い、常用ブレーキ制御ユニット508に委ねられている。有利には、非常ブレーキ制御ユニット503は、安全レベルが向上されるべき追加ブレーキ機能に関して、電空常用ブレーキユニット507の少なくとも1つの出力511、...、514における単純計算、および、その後の圧力のモニタリング機能に制限されている。したがって、本発明に係るブレーキシステム500は、開発コストを増加させることなく、非常ブレーキ制御ユニット503の安全レベルまで、追加ブレーキ機能の安全レベルを向上させることができる。
【0149】
本発明のために提案された前述の実施形態は、本発明の単なる非限定的な例に過ぎないということに留意すべきである。当業者は、本明細書に記載された原理から逸脱せず、本発明の範囲に包含される異なる実施形態において、本発明を容易に実施することができる。
【0150】
これは、特に、非常ブレーキ制御ユニット503によって受信され、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの入力信号520と、常用ブレーキ制御ユニット508によって受信され、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの入力信号520´とが同じ情報を伝達する、2つの別個の信号とすることも可能であり、または、非常ブレーキ制御ユニット503によって受信され、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの入力信号520と、常用ブレーキ制御ユニット508により受信され、追加ブレーキ機能550に関連付けられている少なくとも1つの入力信号520´とが非常ブレーキ制御ユニット503および常用ブレーキ制御ユニット508の両方に送信されるために複製される(duplicated)、元々単一の信号とすることも可能であることを意味している。
【0151】
本発明に係る、少なくとも1つのボギー台車または鉄道車両のためのブレーキシステムの、様々な態様および実施形態を詳述した。各実施形態は、任意の他の実施形態と組み合わせることができることが理解される。さらに、本発明は、詳述された実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって規定される範囲内で変更されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】