(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-27
(54)【発明の名称】送達ガイドワイヤおよび治療用装置
(51)【国際特許分類】
A61F 2/966 20130101AFI20230120BHJP
【FI】
A61F2/966
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022530678
(86)(22)【出願日】2020-08-31
(85)【翻訳文提出日】2022-07-06
(86)【国際出願番号】 CN2020112448
(87)【国際公開番号】W WO2021103720
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】201911183832.0
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516346171
【氏名又は名称】マイクロポート・ニューロテック(シャンハイ)・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロン,ピン
(72)【発明者】
【氏名】ティェン,ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ハウ,ジュアン
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA56
4C267BB12
4C267BB31
4C267BB63
4C267CC10
4C267CC12
4C267DD08
4C267GG03
4C267GG05
4C267GG07
4C267GG23
4C267GG34
4C267GG37
(57)【要約】
送達ガイドワイヤ(10、100)および治療用装置を開示する。治療用装置は送達ガイドワイヤ(10、100)、医療用インプラント、および送達カテーテル(20)を備える。送達ガイドワイヤ(10、100)は、コアシャフト(110)、およびコアシャフト(110)に配置される連動部材(120)を備える。連動部材(120)には凹部が形成されている。医療用インプラントは送達カテーテル(20)により圧縮され、送達ガイドワイヤ(10、100)に外嵌される。医療用インプラントは、医療用インプラントと送達ガイドワイヤ(10、100)との接触面積を拡大するように少なくとも部分的に凹部に嵌入され、それにより医療用インプラントの送達ガイドワイヤ(10、100)との同期運動を容易にし、送達の困難性を軽減させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用インプラントを送達するための送達ガイドワイヤであって、
前記送達ガイドワイヤは、コアシャフトと前記コアシャフトに設けられる連動部材とを備え、
前記連動部材には窪みが画定されている、送達ガイドワイヤ。
【請求項2】
前記連動部材は、本体と前記本体の外表面に形成される凹部とを備え、
前記凹部は前記窪みを形成する、請求項1に記載の送達ガイドワイヤ。
【請求項3】
前記凹部は、圧縮状態の前記医療用インプラントの少なくとも一部とフィットする構造を有する、請求項2に記載の送達ガイドワイヤ。
【請求項4】
前記凹部は、圧縮状態の前記医療用インプラントの内表面に対して鏡像化されている、請求項3に記載の送達ガイドワイヤ。
【請求項5】
前記凹部は0.0008インチから0.004インチの範囲の幅を有し、および/または、前記凹部は0.0002インチから0.004インチの範囲の深さを有する、請求項3に記載の送達ガイドワイヤ。
【請求項6】
前記凹部は、1つの凹状要素または複数の凹状要素を備え、前記複数の凹状要素は、互い交差し、連続し、又は互いに間隔をあけて前記本体の前記外表面に配置されている、請求項2に記載の送達ガイドワイヤ。
【請求項7】
前記凹部は、前記本体の前記外表面に1つまたは複数の螺旋状の溝を形成するように、前記本体の軸周りに螺旋状に延びている、請求項2に記載の送達ガイドワイヤ。
【請求項8】
前記連動部材は、巻線を前記コアシャフトの軸周りに螺旋状に巻くことにより形成される1つまたは複数の螺旋構造であり、隣接する前記巻線同士は前記窪みを形成するように間隔をあけて配置されている、請求項1に記載の送達ガイドワイヤ。
【請求項9】
前記巻線は、ポリマーワイヤ、または外表面がポリマーコーティングで被覆された金属ワイヤである、請求項8に記載の送達ガイドワイヤ。
【請求項10】
前記金属ワイヤは放射線不透過性を有し、および/または前記金属ワイヤは白金-タングステン合金ワイヤもしくは白金-イリジウム合金ワイヤである、請求項9に記載の送達ガイドワイヤ。
【請求項11】
前記連動部材は内側部材と外側部材とを備え、
前記内側部材は金属材料で作られ、前記コアシャフトに固定的に外嵌され、
前記外側部材は高分子材料で作られ、前記内側部材に固定的に外嵌されている、請求項1に記載の送達ガイドワイヤ。
【請求項12】
前記内側部材は、前記外側部材により部分的にまたは全体的に充填される内部空間を画定し、前記外側部材の少なくとも一部が前記内部空間を通過して前記コアシャフトと接続されている、請求項11に記載の送達ガイドワイヤ。
【請求項13】
前記内側部材は、前記内部空間を形成する凹部が設けられた外表面を有する、請求項11に記載の送達ガイドワイヤ。
【請求項14】
前記内側部材は、前記コアシャフトの軸に沿って配置される複数のコイルを備え、隣接する前記コイル同士の間に前記内部空間が形成されている、請求項11に記載の送達ガイドワイヤ。
【請求項15】
前記内側部材は、ワイヤで編まれたメッシュ状の管状構造であり、前記メッシュ状の管状構造の開口部が前記内部空間を形成する、請求項11に記載の送達ガイドワイヤ。
【請求項16】
前記ワイヤは0.001インチ以下の直径を有し、および/または、前記内側部材はインチごとに15から50個の編み目を含む、請求項15に記載の送達ガイドワイヤ。
【請求項17】
前記内側部材は、少なくとも1つの管状要素を備え、前記外側部材により部分的にまたは全体的に包まれている、請求項11に記載の送達ガイドワイヤ。
【請求項18】
前記内側部材は、ワイヤを前記コアシャフトの軸周りに螺旋状に巻くことにより形成される螺旋構造であり、隣接する前記ワイヤ同士の間に前記内部空間が形成されている、請求項11に記載の送達ガイドワイヤ。
【請求項19】
前記ワイヤは0.001インチ以下の直径を有し、および/または、前記ワイヤにより形成される前記螺旋構造は0.001から0.007インチのピッチを有する、請求項18に記載の送達ガイドワイヤ。
【請求項20】
前記内側部材は、白金、金、タングステン、白金-金合金、白金-タングステン合金、白金-イリジウム合金および白金-ニッケル合金から選択される1つまたは複数の放射線不透過性を有する金属材料で作られている、請求項11から19のいずれか一項に記載の送達ガイドワイヤ。
【請求項21】
前記内側部材は前記コアシャフトに溶接または接着され、および/または、前記外側部材は前記内側部材を包み、前記コアシャフトに接続するように延びている、請求項11から19のいずれか一項に記載の送達ガイドワイヤ。
【請求項22】
前記外側部材は、ブロックポリエーテルアミド樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、シリコーン、ナイロンおよびアクリルポリマーのうちの1つまたは複数の材料で作られている、請求項11から19のいずれか一項に記載の送達ガイドワイヤ。
【請求項23】
前記外側部材は、ホットプレスおよび/またはディッピングにより前記内側部材に形成されている、または前記内側部材は前記外側部材に接着されている、請求項11から19のいずれか一項に記載の送達ガイドワイヤ。
【請求項24】
前記凹部は、前記外側部材の外表面に形成されている、および/または前記凹部は、圧縮状態の前記医療用インプラントの構造の少なくとも一部とフィットする構造を有する、請求項23に記載の送達ガイドワイヤ。
【請求項25】
前記凹部は、1つの凹状要素または複数の複数の凹状要素を備え、前記複数の凹状要素は、互い交差し、連続し、又は互いに間隔をあけて前記本体の外表面に配置されている、請求項24に記載の送達ガイドワイヤ。
【請求項26】
少なくとも2つの前記連動部材が、前記コアシャフトに設けられるとともに、前記コアシャフトの軸に沿って間隔をあけて配置されている、請求項1から19のいずれか一項に記載の送達ガイドワイヤ。
【請求項27】
隣接する前記連動部材同士は、0.5mmから150mmの範囲の間隔をあけて配置されている、請求項26に記載の送達ガイドワイヤ。
【請求項28】
隣接する前記連動部材同士は、0.5mmから5mmの範囲の間隔をあけて配置されている、請求項27に記載の送達ガイドワイヤ。
【請求項29】
1つまたは複数の前記連動部材が前記コアシャフトに設けられ、前記連動部材のそれぞれは、0.01から0.03インチの外径および0.5から8mmの長さを有する、請求項1から19のいずれか一項に記載の送達ガイドワイヤ。
【請求項30】
前記連動部材のそれぞれの長さは、0.5mmから4mmの範囲内である、請求項29に記載の送達ガイドワイヤ。
【請求項31】
第1放射線不透過性部材と第2放射線不透過性部材とをさらに備え、
前記第1放射線不透過性部材は前記コアシャフトの遠位端に配置され、前記第2放射線不透過性部材は前記コアシャフトに配置され、
前記連動部材は、前記第1放射線不透過性部材と前記第2放射線不透過性部材との間に位置している、請求項1から19のいずれか一項に記載の送達ガイドワイヤ。
【請求項32】
送達カテーテルと、医療用インプラントと、請求項1から29のいずれか一項に記載の送達ガイドワイヤとを備え、
前記送達カテーテルはその軸方向に貫通して延びる管腔を画定し、前記管腔は前記医療用インプラントが前記管腔の壁に押圧されて圧縮状態になるように前記医療用インプラントを収容し、圧縮状態の前記医療用インプラントは前記連動部材に外嵌され且つ少なくとも部分的に前記窪みに嵌入されている、治療用装置。
【請求項33】
前記管腔は、0.017インチから0.029インチの範囲の径方向寸法を有する、請求項32に記載の治療用装置。
【請求項34】
前記医療用インプラントは自己拡張型ステントである、請求項32に記載の治療用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器の技術分野に関し、より具体的には、送達ガイドワイヤおよび治療用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの頭蓋内動脈瘤は大脳動脈壁の異常な膨らみとして可視化され、くも膜下出血の一番の原因となっている。脳血管疾患の中でも、脳血栓症および高血圧性脳出血に次ぐ発生率である頭蓋内動脈瘤は、極めてリスクが高く危険である。
【0003】
現在、頭蓋内動脈瘤の治療には基本的に3つの選択肢がある。(1)外科的クリッピング術では、動脈瘤の基部を金属のクリップで挟むことによって動脈瘤への脳血液循環を遮断し、親動脈の通常の血液供給を回復させるだけでなく、その破裂および結果として生じる出血を防ぐ。(2)動脈瘤内塞栓術では、塞栓形成のために動脈瘤内に塞栓物質を留置する。これにより最終的に破裂および結果として生じる出血につながるおそれのある、動脈瘤のさらなる膨張を防ぐことができる。(3)血管内ステント留置術では、動脈瘤への血流を減少させるために動脈の中にステントを埋め込み、動脈瘤内で血流の停滞および血栓形成を引き起こす。これにより動脈瘤の閉鎖を容易にし、破裂の危険性を低下させる。動脈瘤は一般的に重要な血管、神経および脳組織が多く存在するウィリス動脈輪の周辺で発生するため、動脈瘤の外科的クリッピング術は手術をする医師にとって非常に困難であり、患者の死亡リスクの比率は50%にまで達することがわかっている。大型動脈瘤や巨大動脈瘤などの複雑な動脈瘤の場合、単純に動脈瘤内塞栓術に頼ることは、頻繁な再発が確認されているために問題である。これらの理由により、頭蓋内動脈瘤の治療には、近年、血管内ステント留置術が最も一般的に選択されている。
【0004】
頭蓋内動脈瘤の血管内ステント留置術用の既存の治療用装置を
図1に示す。治療用装置は送達ガイドワイヤ10および送達カテーテル20を含む。送達カテーテル20は、カテーテルの軸方向に貫通して延びる管腔を画定し、管腔には、送達ガイドワイヤ10、ステント30、および送達カテーテル20の間の締り嵌めによって送達ガイドワイヤ10に配置されるように、送達されるステント30が収容される。これにより、術者が送達カテーテル20内で送達ガイドワイヤ10を前進させると、送達ガイドワイヤ10とステント30の間で発生した第1摩擦力が、ステント30を送達ガイドワイヤ10に同期して所定部位に到達するまで移動させる。このプロセスにおいて、ステント30と送達カテーテル20の内壁との間に第1摩擦力の反対の第2摩擦力が生じ、ステント30が送達ガイドワイヤ10と共に移動することに抵抗する。血管内のステントは、血液の流れを誘導することによって頭蓋内動脈瘤に対する治療効果を提供するため、高い金属被覆率を有することが望ましく、また、頭蓋内の血管は一般的に細く蛇行しているため、望ましい適合性のある非常に小さくて細い送達装置を使用して送達する必要がある。つまり、より大きいサイズの送達装置はステントによりぴったりとフィットし、送達中に生じる第2摩擦力が大きくなりすぎて、ステントを容易に前進させることができなくなる。
【0005】
送達カテーテル20内での容易な前進を可能にするために、既存の送達ガイドワイヤ10は一般的に滑らかな外表面を有し、送達ガイドワイヤ10とステント30との間の第1摩擦力を増加させるために、比較的高い摩擦係数を持った連動部材が送達ガイドワイヤ10に設けられる場合がある。しかしながら、連動部材の存在が送達ガイドワイヤ10上のステントの外径をより大きくすることにつながり、ステントと送達カテーテル20の内壁との間の第2摩擦力が増加する。さらに、治療用装置全体の外径が結果として大きくなる可能性があり、遠位の罹患血管の治療での使用に適さなくなる。その上、このような連動部材の数がより多くなる、あるいは全長がより長くなることは、送達ガイドワイヤ10の遠位部における適合性の低下につながるおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ステント送達の容易性を高めることができる送達ガイドワイヤおよび治療用装置を提供することを目的とする。
【0007】
この目的を追求するために、本発明は、医療用インプラントを送達するために使用する送達ガイドワイヤを提供する。前記送達ガイドワイヤは、コアシャフトと前記コアシャフトに設けられる連動部材とを備え、前記連動部材には窪みが画定されている。
【0008】
任意選択で、前記連動部材は、本体と前記本体の外表面に形成される凹部とを備え、前記凹部は前記窪みを形成してもよい。
【0009】
任意選択で、前記凹部は、圧縮状態の前記医療用インプラントの少なくとも一部とフィットする構造を有してもよい。
【0010】
任意選択で、前記凹部は、圧縮状態の前記医療用インプラントの内表面に対して鏡像化されてもよい。
【0011】
任意選択で、前記凹部は0.0008インチから0.004インチの範囲の幅を有し、および/または、前記凹部は0.0002インチから0.004インチの範囲の深さを有してもよい。
【0012】
任意選択で、前記凹部は、1つの凹状要素または複数の凹状要素を備え、前記複数の凹状要素は、互い交差し、連続し、又は互いに間隔をあけて前記本体の前記外表面に配置されてもよい。
【0013】
任意選択で、前記凹部は、前記本体の前記外表面に1つ又は複数の螺旋状の溝を形成するように、前記本体の軸周りに螺旋状に延びてもよい。
【0014】
任意選択で、前記連動部材は、巻線を前記コアシャフトの軸周りに螺旋状に巻くことにより形成される1つ又は複数の螺旋構造であり、隣接する前記巻線同士は前記窪みを形成するように間隔をあけて配置されてもよい。
【0015】
任意選択で、前記巻線は、ポリマーワイヤ、または外表面がポリマーコーティングで被覆された金属ワイヤであってもよい。
【0016】
任意選択で、前記金属ワイヤは放射線不透過性を有し、および/または前記金属ワイヤは白金-タングステン合金ワイヤもしくは白金-イリジウム合金ワイヤであってもよい。
【0017】
任意選択で、前記連動部材は内側部材と外側部材とを備え、前記内側部材は金属材料で作られ、前記コアシャフトに固定的に外嵌され、前記外側部材は高分子材料で作られ、前記内側部材に固定的に外嵌されてもよい。
【0018】
任意選択で、前記内側部材は、前記外側部材により部分的にまたは全体的に充填される内部空間を画定し、前記外側部材の少なくとも一部が前記内部空間を通過して前記コアシャフトと接続されてもよい。
【0019】
任意選択で、前記内側部材は、前記内部空間を形成する凹部が設けられた外表面を有してもよい。
【0020】
任意選択で、前記内側部材は、前記コアシャフトの軸に沿って配置される複数のコイルを備え、隣接する前記コイル同士の間に前記内部空間が形成されてもよい。
【0021】
任意選択で、前記内側部材は、ワイヤで編まれたメッシュ状の管状構造であり、前記メッシュ状の管状構造の開口部が前記内部空間を形成してもよい。
【0022】
任意選択で、前記ワイヤは0.001インチ以下の直径を有し、および/または、前記内側部材はインチごとに15から50個の編み目を含んでもよい。
【0023】
任意選択で、前記内側部材は、少なくとも1つの管状要素を備え、前記外側部材により部分的にまたは全体的に包まれてもよい。
【0024】
任意選択で、前記内側部材は、ワイヤを前記コアシャフトの軸周りに螺旋状に巻くことにより形成される螺旋構造であり、隣接する前記ワイヤ同士の間に前記内部空間が形成されてもよい。
【0025】
任意選択で、前記ワイヤは0.001インチ以下の直径を有し、および/または、前記ワイヤにより形成される前記螺旋構造は0.001から0.007インチのピッチを有してもよい。
【0026】
任意選択で、前記内側部材は、白金、金、タングステン、白金-金合金、白金-タングステン合金、白金-イリジウム合金および白金-ニッケル合金から選択される1つまたは複数の放射線不透過性を有する金属材料で作られてもよい。
【0027】
任意選択で、前記内側部材は前記コアシャフトに溶接または接着され、および/または、前記外側部材は前記内側部材を包み、前記コアシャフトに接続するように延びてもよい。
【0028】
任意選択で、前記外側部材は、ブロックポリエーテルアミド樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、シリコーン、ナイロンおよびアクリルポリマーのうちの1つまたは複数の材料で作られてもよい。
【0029】
任意選択で、前記外側部材は、ホットプレスおよび/またはディッピングにより前記内側部材に形成されている、または前記内側部材は前記外側部材に接着されてもよい。
【0030】
任意選択で、少なくとも2つの前記連動部材が、前記コアシャフトに設けられるとともに、前記コアシャフトの軸に沿って間隔をあけて配置されてもよい。
【0031】
任意選択で、隣接する前記連動部材同士は、0.5mmから150mmの範囲の間隔をあけて配置されてもよい。
【0032】
任意選択で、隣接する前記連動部材同士は、0.5mmから5mmの範囲の間隔をあけて配置されてもよい。
【0033】
任意選択で、1つ又は複数の前記連動部材が前記コアシャフトに設けられ、前記連動部材のそれぞれは、0.01から0.03インチの外径および0.5から8mmの長さを有してもよい。
【0034】
任意選択で、前記連動部材のそれぞれの長さは、0.5mmから4mmの範囲内であってもよい。
【0035】
任意選択で、第1放射線不透過性部材と第2放射線不透過性部材とをさらに備え、前記第1放射線不透過性部材は前記コアシャフトの遠位端に配置され、前記第2放射線不透過性部材は前記コアシャフトに配置され、前記連動部材は、前記第1放射線不透過性部材と前記第2放射線不透過性部材との間に位置してもよい。
【0036】
上記目的を追求するために、本発明はまた、送達カテーテルと、医療用インプラントと、上記に定義される送達ガイドワイヤとを備える治療用装置を提供する。前記送達カテーテルはその軸方向に貫通して延びる管腔を画定し、前記管腔は前記医療用インプラントが前記管腔の壁に押圧されて圧縮状態になるように前記医療用インプラントを収容し、圧縮状態の前記医療用インプラントは前記連動部材に外嵌され且つ少なくとも部分的に前記窪みに嵌入されている。
【0037】
任意選択で、前記管腔は、0.017インチから0.029インチの範囲の径方向寸法を有してもよい。
【0038】
任意選択で、前記医療用インプラントは自己拡張型ステントであってもよい。
【0039】
本発明の送達ガイドワイヤおよび治療用装置は、従来技術に対して以下の利点を有する。
治療用装置は送達ガイドワイヤ、医療用インプラントおよび送達カテーテルを含み、送達ガイドワイヤは、コアシャフトとコアシャフトに設けられる連動部材とを備え、連動部材には窪みが画定されている。送達ガイドワイヤを利用して医療用インプラントを送達し、送達カテーテルは医療用インプラントが送達カテーテルの壁に押圧されて圧縮状態になるように医療用インプラントを収容し、圧縮状態の医療用インプラントは連動部材に外嵌され且つ少なくとも部分的に窪みに嵌入されている。このようにすることで、ステントと連動部材との接触面積を増加させ、医療用インプラントと送達ガイドワイヤとの間の摩擦をより大きくすると同時に、医療用インプラントの送達カテーテルに接触する部分をより整った滑らかな状態にし、それにより医療用インプラントと送達カテーテルとの間の摩擦を低減し、医療用インプラントの送達をより容易にする。さらに、送達カテーテルに圧縮された医療用インプラントの外径が縮小され、ひいては送達カテーテルの外径を縮小することが可能になる。つまり、治療用装置はより遠位の標的病変部位に到達することができるため、より広い適用範囲を有することができる。さらに、治療用装置の全体の適合性を向上し、蛇行した血管の通過が可能になり、結果として手術の成功率を高めることができる。
【0040】
また、実施形態によっては、連動部材は、内側部材と外側部材とを備え、内側部材は金属材料で作られ、コアシャフトに固定的に外嵌され、外側部材は高分子材料で作られ、内側部材に固定的に外嵌されている。内側部材はコアシャフトに固定(たとえば溶接)され、これらは両方とも金属材料でできているため、互いにずれることなく強固に取り付けられている。さらに、高分子材料製の外側部材を内側部材に固定して取り付けることは、特別な構造設計により遂行される。たとえば、内側部材には、外側部材により全体的にまたは部分的に充填された内部空間が画定されていてもよい。このようにして、内側と外側部材との互いにかみ合うような嵌合が実現できる。他の例として、外側部材、内側部材およびコアシャフトが互いにしっかりと取り付けられるように、外側部材がコアシャフトに延び、コアシャフトに接続しながら内側部材を包んでもよい。外側部材との接触面積が比較的大きい内側部材を介してコアシャフトに外側部材を配置することで、取り付け強度を高めることが可能になる。従来の接続に比べると、本発明のこれらの設計はすべて、連動部材全体をコアシャフトに頑丈に取り付けることを可能にし、ステント送達中における連動部材のゆるみ、しわ寄り、またはズレを回避する。その結果、医療用インプラント送達中における送達ガイドワイヤの信頼性の向上が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】既存の治療用装置の構造を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る送達ガイドワイヤの構造を示す概略図であって、窪みが示されていない図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る送達ガイドワイヤの構造を示す概略図であって、窪みが示されている図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るステントの構造を示す概略図である。
【
図5】
図3の送達ガイドワイヤの変形例を概略的に示している。
【
図6】
図3の送達ガイドワイヤの別の変形例を概略的に示している。
【
図7】
図6の送達ガイドワイヤのA部分の拡大概略図である。
【
図8】
図3の送達ガイドワイヤのさらに別の変形例を概略的に示している。
【
図9】
図8の送達ガイドワイヤのB部分の拡大概略図である。
【
図10】
図3の送達ガイドワイヤのさらなる変形例を概略的に示している。
【
図11】本発明の別の実施形態に係る送達ガイドワイヤの構造を示す概略図である。
【
図12】本発明のさらに別の実施形態に係る送達ガイドワイヤの構造を示す概略図である。
【
図13】本発明のまたさらに別の実施形態に係る送達ガイドワイヤの構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の対象物、利点および特徴は、以下の添付図面と併せて行われる本発明のより詳細な説明からさらに明らかになるであろう。なお、図面は、本開示の実施形態をより便利にかつより明確に説明するのに役立つ目的のみのためであり、必ずしも正確な縮尺で描かれていない非常に単純化された形態で提供されている。
【0043】
本明細書中で使用される場合、単数形「1」、「1つ」、および「該」は複数の対象を含み、「複数」という用語は、文脈において他を明示していない限り、2以上を意味する。本明細書中で使用される場合、「または」という用語は、文脈において他を明示していない限り、「および/または」の意味で広く用いられる。「取り付け」、「結合」および「接続という用語は、広い意味で解釈されるべきである。たとえば、接続は、永続的な、取り外し可能な、もしくは一体的な接続、または機械的もしくは電気的な接続、または1以上の介在媒体との直接的もしくは間接的な接続、または2つの構成要素間の内部通信もしくは相互作用であってもよい。当業者であれば、文脈によって本明細書中における上記の用語の特定の意味を理解することができる。添付の図面全体を通して、同一の参照符号は同一の要素を示す。
【0044】
本明細書中で使用される場合、「近位」および「遠位」という用語は、装置を操作している者から見た、医療機器の構成要素間またはその作用間の相対的な配向、相対的な位置および方向を説明するために用いられる。限定することを望むものではないが、「近位端は通常、術者により近い端部を指し、「遠位端」は通常、医療機器の通常の操作時に患者に最初に入る端部を指す。
【0045】
本実施形態は、患者の体内の所定部位に医療用インプラントを送達するために使用される送達ガイドワイヤを提供する。医療用インプラントは、たとえば自己拡張型(または自己拡張可能な)ステントである。自己拡張型ステントは、具体的には、編組ステントまたはカットステントであってもよい。他の実施形態では、いかなる意味においても本発明を限定することなく、医療用インプラントは代わりに医療用塞栓コイルや血管閉塞器具等であってもよい。以下では説明を容易にするために、一例として、医療用インプラントは自己拡張型ステントとして実装されているものとして説明されている。簡潔さのために、自己拡張型ステントを以下「ステント」と呼ぶ。
【0046】
図2および
図3を参照すると、送達ガイドワイヤ100はコアシャフト110およびコアシャフト110に配置される連動部材120を含み、連動部材120には窪みが画定されている。
【0047】
送達されている間、ステントが連動部材120を半径方向に圧迫し、少なくともステントが部分的に窪みに嵌入されるように、ステントは送達カテーテルの管腔内に圧縮される(この構成では、ステントは収縮状態になる)とともに、連動部材120にぴったりと配置されている。これにより、ステントと連動部材120との接触面積が大幅に増加する。術者が送達カテーテル内で送達ガイドワイヤ100を押して軸方向に前進させると、ステントと連動部材120との間の第1摩擦力も大幅に増加することができ、送達ガイドワイヤ100と同期したステントの動きを容易にすることができる。ステントが編組により製造される場合、太さの異なるフィラメントで編まれている。同様に、ステントが切削により製造される場合、太さの異なるストラットで構成されている。これらの場合、送達カテーテルによって圧縮されると、ステントの比較的太いフィラメントまたはストラットは窪みの中に嵌入されることで、送達カテーテルと接触するステント表面(すなわち、ステントの外表面)は、より整って滑らかになり、ステントと送達カテーテルの内壁との間の第2摩擦力を低減し、押されたステントの前進に対する抵抗を低減することができる。
【0048】
既存の送達ガイドワイヤと同様に、本実施形態の送達ガイドワイヤ100は第1放射線不透過性部材130および第2放射線不透過性部材140をさらに含む。コアシャフト110は第1遠位端および対向する第1近位端を有する。第1放射線不透過性部材130は第1遠位端に配置される放射線不透過性のコイルであってもよく、第2放射線不透過性部材140は、コアシャフト110に配置されている。連動部材120は、ステントが第1放射線不透過性部材130と第2放射線不透過性部材140との間に位置ように、第1放射線不透過性部材130と第2放射線不透過性部材140との間に配置されていてもよい。
【0049】
実施形態によっては、連動部材120は、シリコーン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)エラストマー、ポリイミド、熱可塑性エラストマー(Pebax)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの高分子材料で形成されていてもよい。他の実施形態では、連動部材120は、ステンレス鋼、ニッケル-チタン合金、白金-タングステン合金などの金属材料で形成されていてもよい。
【0050】
複数(たとえば1個、2個、3個、4個、5個、6個またはさらに多く)の上記連動部材120がコアシャフト110に配置されていてもよく、このような連動部材120の数は送達されるステントの長さ(すなわち、軸方向寸法)によって決められてもよい。概して、各連動部材120が固定長を有する場合、ステントが長いほど送達中の抵抗が大きくなり、送達ガイドワイヤ100とステントとの間により大きな第1摩擦力を提供して送達ガイドワイヤ100に同期したステントの動きを確実にするために、より多くの連動部材120が必要となる。本実施形態では、各連動部材120の外径は0.01インチから0.03インチの間であり、長さは0.5mmから8mmの間、好ましくは0.5mmから4mmの間である。2つ以上の連動部材120がコアシャフト110に配置される場合は、コアシャフト110の軸に沿って互いに間隔をあけてもよい。任意選択で、隣接する連動部材120同士は、0.5mmから150mmの間、好ましくは0.5mmから5mmの間の間隔をあけてもよい。
【0051】
コアシャフト110上のこれらの連動部材120の個数ならびに大きさを適切に設計することによって大きな第1摩擦力を得ることは、単にそれら自体の摩擦係数を増加させることと比較すると、より容易である。さらに、コアシャフト110に比較的長い連続的な連動部材を1つ設けることと比較すると、コアシャフト110に少なくとも2つの比較的短い連動部材120を、間隔をあけて設けることで、連動部材の全長が縮小でき、ステントの回収可能性をより高めることが実現できる(すなわち、連動部材の全長が短いほど、ステントの回収可能性が高まる)。これに加えて、複数の比較的短い連動部材120を、間隔をあけて設けることにより、送達ガイドワイヤ100の適合性を向上させることができ、送達ガイドワイヤ100はより簡単に蛇行した血管を通過することができる。また、複数のより短い連動部材120が含まれている場合、これらの連動部材120は比較的硬質の材料(摩擦係数が低い)で作ることが可能であり、これにより公差制御の容易性が高まり、製造の複雑さを低減させることができる。ステントの回収可能性は、当業者に一般に知られているように、以下によって算出できることが理解されるであろう。ステント回収可能性=(ステント全長-ステント近位端から連動部材遠位端までの距離)/ステント全長×100%。
【0052】
以下、連動部材120の構造について添付図面を参照しながら説明する。以下の実施形態に記載の連動部材120の特定の構造は、単に本発明の任意選択の実装例であり、いかなる意味においても本発明を限定する意図はないことが理解されるべきである。
【0053】
図2から
図4を参照すると、一実施形態において、連動部材120は本体121を含み、本体121は中空チューブであって、コアシャフト110に外嵌されている。本体121の外表面には、凹部122、すなわち前述の窪みが形成されている。本実施形態において、「凹部」は、実際の必要に応じて、細長い溝および円形、正方形、または不規則な凹形の空洞(すなわち、穴)を含むいかなる形であってもよいことが理解されるべきである。
【0054】
たとえば、
図3を引き続き参照すると、凹部122の構造は少なくとも部分的に、圧縮状態のステントの構造とフィットしている。特に、形状および位置に関してフィットされている。さらに、凹部122の大きさはステントのストラットまたはフィラメントの大きさに対応していてもよい。たとえば、凹部122の幅は、フィラメントまたはストラットの幅よりも大きいか、等しいか、あるいはわずかに小さく、凹部122の深さ(その最下部から本体121の外表面の上端までの距離)は、フィラメントまたはストラットの径方向寸法よりも大きいか、等しいか、あるいは小さい。ステントの大きさに応じて、凹部122の幅は0.0008インチから0.004インチの範囲であってもよく、凹部122の深さは0.0002インチから0.004インチの範囲であってもよい。凹部122の幅は、ステントのフィラメントまたはストラットの幅に対応するように設計されていることが理解されるであろう。たとえば、フィラメントが円周方向に延びる場合、フィラメントの幅はステントの軸に沿って測定されたフィラメントの大きさを指す。凹部122の幅は、ステントの軸に沿って測定された凹部122の大きさを指す。
【0055】
凹部122は、本体121の外表面に連続的な溝として形成されてもよいし、互い違いに、連続して、または互いに間隔をあけて配置されている複数の凹状要素を含んでいてもよい。
【0056】
図4は複数のフィラメント310で編まれたステント300の例を示す。ステント300に対応して、凹部122は、圧縮状態の前記医療用インプラントの内表面に対して鏡像化されるように、互いに交差する複数の凹状要素を含んでいてもよい(
図3に示されるように)。つまり、凹部122は、圧縮状態のステントのフィラメント310の大きさおよび配置と同じ大きさおよび配置になっている。ステント300が送達ガイドワイヤ100に外嵌されるとき、各フィラメント310が少なくとも部分的に窪みに嵌入されてもよい。
【0057】
本実施形態では、凹部122はさまざまな方法で形成されてもよい。本体121は高分子材料で形成されてもよく、その形成は、成形されてまだ固化していないときに、本体121にその軸を中心として螺旋状または交差状にワイヤを巻き付けることで、ワイヤが本体121の表面に密着し、かつ本体121を径方向に圧迫することを含んでもよい。この作用により、本体121の外表面のワイヤが接する部位が本体121の軸に向けて内方へ変形され、結果として凹部122が形成され得る。その後、ワイヤは除去される。ワイヤは金属ワイヤ、ポリマーワイヤ、または他のワイヤであってもよい。なお、本実施形態では、ワイヤの直径は送達ガイドワイヤ100に外嵌されるステント300のフィラメントの直径と同一である。他の実施形態では、ワイヤの直径はステントのフィラメントの直径よりもわずかに大きいか、あるいは小さくてもよい。代替的に、凹部122は本体121が固化した後に形成されてもよい。たとえば、本体121を加熱し、軟化させた後にワイヤで模様をつけて凹部122を形成してもよい。代替的に、凹部122は固化した本体121の外表面に彫り込まれてもよい。
【0058】
本体121が金属製の場合、凹部122は本体121の外表面に彫り込まれて(たとえば、レーザー彫刻されて)もよい。
【0059】
ステントがカットステントの場合、ステントと相補的である凹部122が、彫刻により本体121の表面に形成されてもよい。
【0060】
図5から
図10を参照すると、実施形態によっては、連動部材120は内側部材124および外側部材125を含む。内側部材124は金属材料で作られ、コアシャフト110に固定的に外嵌され、一方で外側部材125は高分子材料で作られ、内側部材124に固定的に外嵌されている。
【0061】
内側部材124は金属材料で形成され、接着、溶接、またはその他の方法でコアシャフト110に固定されてもよい。これによって、内側部材124とコアシャフト110の連結強度が高いので、コアシャフト110上での内側部材124のズレを阻止することができる。外側部材125は内側部材124によってコアシャフト110に接続される。このようにして、外側部材125のコアシャフト110との接続面積の増加を実現し、結果として外側部材125とコアシャフト110との付着力を強化するので、ステント送達中の外側部材125のゆるみ、しわ寄り、またはズレの可能性を低減することができる。本明細書中で使用される場合、「外嵌」という言葉は、内側部材124がコアシャフト110とは別個であり、製造された後にコアシャフト110に取り付けられること、あるいは、内側部材124およびコアシャフト110が一体的に製造され、内側部材124がコアシャフト110の外表面から外側に延びていることのどちらかを意味することは理解されるであろう。
【0062】
さらに、外側部材125と内側部材124との接続面積を増加させるために、内部空間126が内側部材124に形成され、外側部材125により全体的にまたは部分的に充填されていてもよい。
【0063】
本発明の実施形態において、内側部材124は複数の形のうちいずれの形をとってもよく、いくつかの好適なものが以下で添付図面を参照しながら説明される。後述されるさまざまな形の内側部材124は、単に本発明の任意選択的な実装例であり、いかなる意味においても本発明を限定するものと解釈されるべきではないことが理解されるべきである。
【0064】
図5に示されるように、一実施形態において、内側部材124は、コアシャフト110の軸に沿って並べて配置され、コアシャフト110に外嵌された複数のコイルで構成されてもよい。本実施形態では、コイルは円形または楕円形の断面を有する金属ワイヤで形成されていてもよい。従って、隣接するコイル同士が互いに接触すると、準V字状の凹部、すなわち内部空間126がそれらの間に形成され得る。他の実施形態では、コイルの断面形状によって、凹部は代替的にU字のような溝、あるいは立方体、直方体、または半球状のピットであってもよい。外側部材125はコイルの外表面に形成されてもよく、その形成はホットプレスおよび/またはディッピング、型成形および成形加工、および冷却を含んでもよい。ホットプレス法は、内側部材124にポリマーチューブを配置すること、および、ポリマーチューブに熱収縮チューブを配置することを含んでもよい。その後、熱収縮チューブは加熱され、モールドで成形され、溶融したポリマーチューブの材料が内側部材124の内部空間126に浸透するようにしてもよい。高分子材料が冷えて硬化した後に、熱収縮チューブは除去されてもよい。外側部材125の材料の例として、ブロックポリエーテルアミド(Pebax)樹脂または熱可塑性ポリウレタン(TPU)エラストマーのような熱可塑性エラストマー、シリコーン、ナイロン、アクリルポリマーまたは他の高分子材料、あるいはこれらの組み合わせのいずれを含んでもよい。内部空間126に高分子材料を充填することで、外側部材125と内側部材124との接触面積を拡大し、より強固に取り付けることが可能になる。高分子材料は、硬化する前に、隣接するコイル同士の間からコアシャフト110の表面に浸透してもよく、また/及び、内側部材124の両端からコアシャフト110の表面まで延伸してもよい。このようにすることで、外側部材125と、内側部材124と、コアシャフト110とをよりしっかりと粘着し、外側部材125のしわ寄り、ゆるみ、またはズレの可能性を更に低減することができる。代替的な実施形態では、外側部材125は最初に形成され、その後、接着剤などにより内側部材124に取り付けられてもよい。
【0065】
実施形態によっては、複数のコイルが、隣接するコイル同士の間に内部空間が形成されるように、コアシャフトに間隔をあけて配置されてもよい。この場合、外側部材、内側部材およびコアシャフトのいずれの組み合わせも互いに接着されていてもよい。
【0066】
図6および
図7を参照すると、本発明の別の実施形態において、内側部材124は、ワイヤをコアシャフト110にその軸に沿って螺旋状に巻き付けることで形成される螺旋構造である。前の実施形態と同様に、この螺旋状の内側部材124の隣接する巻きは、互いに接触していてもよいし、間隔をあけて離れていてもよい。本実施形態では、コアシャフト110に上述の連動部材120が1つまたは複数設けられていてもよい。
【0067】
任意選択で、本実施形態では、内側部材124を形成するワイヤは、ポリマーワイヤまたは金属ワイヤでもよい。後者の場合、結果として生じる螺旋構造は柔軟性があり、容易に曲げることができ、送達ガイドワイヤ100を全体として望ましく適合させることができる。
【0068】
任意選択で、本実施形態では、内側部材124を形成するワイヤの直径は0.001インチ以下でもよく、そのワイヤで形成される内側部材124の螺旋構造は0.001から0.007インチのピッチを有してもよい。実施形態によっては、ピッチは0.004から0.007インチでもよい。ピッチが大きいほど、接着剤等が内側部材124およびコアシャフト110の間に到達することが容易になり、送達ガイドワイヤの適合性を損なうことなく、内側部材124または外側部材125をコアシャフト110により強固に取り付ける。
【0069】
図8および
図9を参照すると、本発明のさらなる実施形態では、内側部材124はワイヤで編まれたメッシュ状の管状構造である。この場合、メッシュ状の管状構造の開口部は内部空間126を提供する。
【0070】
本実施形態では、コアシャフト110に上述の連動部材120が1つまたは複数設けられていてもよい。各連動部材120の内側部材124は、適用可能な細さのワイヤで編まれていてもよい。たとえば、ワイヤは0.001インチ以下の直径(または断面の幅)を有してもよい。さらに、ワイヤは、内側部材124の1インチごとの編み目がごく少数になるように、好ましくは15から50個になるように編まれていてもよい。このようにして、連動部材120は、送達ガイドワイヤ100の適合性を損なうことなくコアシャフト110に堅固に取り付けられ得る。
【0071】
図10は本発明のさらなる実施形態の模式図である。
図10に示されるように、それぞれ金属チューブとして実装された1つまたは複数の上述した内側部材124が、コアシャフト110に溶接されていてもよい。なお、本実施形態では、各金属チューブは整っていて滑らかな表面を有する管状部材でもよい。各金属チューブの長さは、送達ガイドワイヤ100の適合性に悪影響を及さないように、0.3から2mmであってもよい。このような金属チューブが少なくとも2つ設けられる場合、外側部材125は、すべての金属チューブならびに金属チューブの間のコアシャフト110の露出した表面部分(内部空間126を作り出す)を全体的に包み、コアシャフト110にさらに延びるように設計されてもよい。代替的に、各金属チューブ、すなわち各内側部材124は、別個の外側部材125で包まれていてもよい(
図9参照)。言い換えれば、個々の内側部材124はそれぞれ外側部材125で包まれていてもよい。さらに、各外側部材125は、金属チューブの間のコアシャフト110の部分(内部空間126を提供する)を包んでもよい。外側部材125で内側部材124を包むことは、ディッピングまたはホットプレスにより遂行されてもよい。
【0072】
代替的な実施形態では、各金属チューブは、たとえばレーザエッチングにより形成されたピット、スロット、または貫通孔を有してもよい。これにより内部空間126をさらに拡大でき、よりいっそう大きな接触面積と、外側部材125および内側部材124の接続強度の向上とをもたらすことができる。
【0073】
上述の実施形態では、内側部材124は、放射線画像上で不可視または可視の金属で形成されてもよい。放射線画像上で不可視の金属の例は、これに限定されるものではないが、ステンレス鋼を含み得る。放射線画像上で可視の金属の例は、これに限定されるものではないが、白金-タングステン合金または白金-イリジウム合金を含み得る。好ましくは、内側部材124は、放射線撮影で連動部材120が見えるように、放射線画像上で可視の(言い換えれば、放射線不透過性の)金属で形成される。より詳細には、内側部材は白金、金、タングステン、白金-金合金、白金-タングステン合金、白金-イリジウム合金、および白金-ニッケル合金から選択される1つまたは複数の放射線不透過性を有する材料で形成されてもよい。たとえば、内側部材は、白金-タングステン合金および白金-イリジウム合金のどちらか、または両方から形成されてもよい(後者の場合、たとえば、内側部材は、白金-タングステン合金のワイヤおよび白金-イリジウム合金のワイヤの両方で編まれたメッシュ状の管状構造でもよい)。有利には、これにより、術者は送達中のステントが回収可能かどうかを正確に判断することができる。具体的には、ステントは、送達ガイドワイヤに外嵌され、送達カテーテルの中に圧縮されている。送達カテーテルは、第1近位端および第1近位端に対向する第1遠位端を有し、第1遠位端に放射線不透過性を有するリング(図示省略)が設けられている。送達中に、放射線画像で見て連動部材120が放射線不透過性のリングとフィットすると、術者は、ステントをさらに遠位に前進させるとステントは回収不可能であるということを知ることができる。従って、連動部材120が放射線撮影で可視であることは、放射線撮影装置を用いての正確な配置を可能にし、術者の作業を大きく容易にする。
【0074】
図5から
図10で示される実施形態では、各連動部材120において、金属製の内側部材124がコアシャフト110に固定的に外嵌され、高分子材料製の外側部材125が内側部材124に固定的に外嵌されている。このようにして、外側部材125のコアシャフト110への取り付けは、内側部材124により間接的に強化され、ステント送達中の連動部材120のゆるみ、しわ寄り、またはズレの可能性を最小化し、医療用インプラントを送達するために使用中の送達ガイドワイヤ100の安全性および信頼性を高める。さらに、連動部材120の外側部材125の外表面の凹部122を介し、圧縮状態の医療用インプラントの構造の少なくとも一部を凹部122に嵌入することで、ステントと連動部材120との接触面積を拡大し、医療用インプラントと送達ガイドワイヤ100との間の摩擦をより大きくすると同時に、医療用インプラントの送達カテーテルに接触する部分をより整った滑らかな状態にし、それにより医療用インプラントと送達カテーテルとの間の摩擦を低減し、医療用インプラントの送達をより容易にする。
【0075】
実施形態によっては、
図11を参照すると、本体121に形成される凹部122は、本体121の外表面に本体121の軸を中心として螺旋状に延びる連続的な螺旋状の溝であってもよい。これらの実施形態では、凹部122は、ワイヤを使用したパターニングにより形成されることが好ましい。
【0076】
代替的に、
図12を参照すると、凹部122は本体121に間隔をあけて配置される少なくとも2つの凹状要素を含んでもよく、その形状は円形、正方形、ひし形、または他の形状であってもよい(すなわち、これらの凹状要素はピットである)。さらに、2つより多くの凹状要素が含まれる場合、必要に応じて本体121の外表面全体に散在していてもよい。本実施形態では、凹部122は彫り込まれるか、あるいは他の方法で形成されてもよい。
【0077】
図4に示すステント300の例を続けると、フィラメント310が交差する編み目311は、ステント300のその他の部分よりも径方向に厚くなる。このステント300が送達ガイドワイヤ100に外嵌される場合、編み目311は部分的に凹状要素に嵌入される。代替的な実施形態では、ステントが特定のポイントで径方向により厚くなり、ステントが送達ガイドワイヤに外嵌されると、その径方向に厚くなるポイントは部分的にまたは全体的に凹状要素に嵌入される。このようにして、ステント300が送達ガイドワイヤ100に外嵌され、送達カテーテルの管腔に挿入されると、ステント300のフィラメントまたはストラットと本体121との接触面積が増加し、ステント300と連動部材120との間の第1摩擦力がより大きくなる。さらに、ステント300はより均一な外観を有し、ステント300が送達カテーテルと接触する表面(すなわち、ステント300の外表面)はより整って滑らかであり、ステントと送達カテーテルとの内壁の間の第2摩擦力がより小さくなり、ステント送達中の抵抗が低減する。
【0078】
図13に示されるように、本発明の別の実施形態では、連動部材120はコアシャフト110に巻き付けられた巻線で構成されてもよい。巻線は、コアシャフト110の軸周りに螺旋状に複数回巻き付けられることにより形成される螺旋構造であり、隣接する巻線同士の間にギャップ123が形成される。この場合、ギャップ123は窪みを構成する。
【0079】
本実施形態では、巻線の巻き数およびピッチは必要に応じて変えてもよい。たとえば、送達ガイドワイヤ100により送達されるステントが比較的大きいPPIを有する場合(編組ステントでは、PPIは編組ステントの単位長さ当たりの編み目の個数である。ここでは、長さはステントの軸方向の寸法を指す)、ステントと連動部材120との接触面積を大きくするために、コアシャフト110の巻線の巻き数は大きくなり、ピッチはより小さくなってもよい。
【0080】
任意選択で、巻線は、好ましくは比較的高い表面摩擦係数を有するポリマーワイヤであってもよい。適切な巻線は、実際の必要に応じて選択されてもよい。
【0081】
任意選択で、巻線は金属ワイヤおよび金属ワイヤの外表面のポリマーコーティングで構成されてもよい。好ましくは、金属ワイヤは、白金-タングステン合金ワイヤまたは白金-イリジウム合金ワイヤなどの放射線不透過性の金属ワイヤであってもよい。この場合、連動部材120はそれ自体が放射線画像上で可視であり、ステント送達中、術者がステントの具体的な位置、および部分的に放出されたステントを送達カテーテルに回収することが可能かどうかを容易に判別できるようにする。具体的には、ステントが前進され送達される送達カテーテルは、第2遠位端および対向する第2近位端を有し、第2遠位端には第3放射線不透過性部材が配置されている。この場合、ステント送達中に、放射線画像で見て連動部材120が第3放射線不透過性部材とフィットすると、術者は、ステントがもはや回収不可能であると知ることができる。
【0082】
図11から
図12に示される実施形態では、
図5から
図9のいずれかに関して示され、説明されているように、連動部材120は内側部材124および外側部材125を含んでもよく、その構造および材料は上記実施形態と同一であってもよいため、本明細書中でさらに詳細に説明する必要がないことは理解されるであろう。
【0083】
本発明の実施形態はまた、上記で定義される送達カテーテル、医療用インプラントおよび送達ガイドワイヤを含む治療用装置を提供する。送達カテーテルは、それを通って軸方向に延びる管腔を画定し、管腔は、医療用インプラントが管腔の壁に押圧されて圧縮されるように医療用インプラントを収容する。圧縮された医療用インプラントは、連動部材120にぴったりと外嵌され、連動部材120との間の第1摩擦力を増加させ、且つ医療用インプラントは少なくとも部分的に窪みに嵌入されている。ここでは、医療用インプラントは、たとえば自己拡張型ステント、特に、編組ステントまたはカットステントである。
【0084】
連動部材120を医療用インプラントによりよく適合させ、治療用装置の組み立てを簡素化するために、本発明の実施形態に係る送達ガイドワイヤ100は、好ましくは医療用インプラントのために特別に作られていることが留意されるべきである。言い換えると、送達ガイドワイヤ100が製造される前に、それにより送達される医療用インプラントが提供され、医療用インプラントの構造に従って連動部材120および窪みの形が決定され、最後に送達ガイドワイヤ100の製造が行われる。
【0085】
また、送達カテーテルの管腔の径方向寸法は、実際の必要に応じて変えてもよく、好ましくは0.017インチから0.029インチの範囲内である。より好ましくは、管腔の径方向寸法は0.027インチ以下、または0.021インチ以下である。送達ガイドワイヤにおいて窪みを有する連動部材が採用されるため、圧縮状態における医療用インプラントの外径を縮小でき、本発明における治療用装置の送達カテーテルの管腔の径方向寸法を縮小し、ひいては送達カテーテルの外径を縮小できる。より細い送達カテーテルは、より遠位の血管またはより小さい病変に到達することができ、治療用装置の適用範囲の拡大および全体の適合性の向上をもたらす。さらに、より簡単に蛇行した血管を通過して標的病変部位にうまく到達することができ、手術の成功率を高める。
【0086】
以上、本発明を開示してきたが、いかなる意味においても上記の開示に限定されない。当業者は、その精神および範囲から逸脱することなく、本発明に様々な変更および改良を行うことができる。従って、そのような変更および改良のいずれかおよびすべては、添付の特許請求の範囲およびその等価物によって定義される本発明の範囲内にあることも意図されている。
【符号の説明】
【0087】
10、100:送達ガイドワイヤ
110:コアシャフト
120:連動部材
121:本体
122:凹部
123:ギャップ
124:内側部材
125:外側部材
126:内部空間
130:第1放射線不透過性部材
140:第2放射線不透過性部材
20:送達カテーテル
30、300:ステント
310:フィラメント
311:編み目
【国際調査報告】