(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-31
(54)【発明の名称】非屈折性特徴を有する眼用レンズ設計
(51)【国際特許分類】
G02C 7/06 20060101AFI20230124BHJP
G02C 13/00 20060101ALI20230124BHJP
G02C 7/04 20060101ALI20230124BHJP
G02C 7/02 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
G02C7/06
G02C13/00
G02C7/04
G02C7/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532625
(86)(22)【出願日】2020-11-30
(85)【翻訳文提出日】2022-07-28
(86)【国際出願番号】 AU2020051296
(87)【国際公開番号】W WO2021108843
(87)【国際公開日】2021-06-10
(32)【優先日】2019-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(32)【優先日】2019-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522118517
【氏名又は名称】エヌサルミック ホールディング ピーティーワイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NTHALMIC HOLDING PTY LTD
【住所又は居所原語表記】Suite 3.02, Level 3, Lakes Business Park, 2A Lord Street Botany, Sydney, New South Wales 2019 (AU)
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】バカラジュ,ラヴィ チャンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ファルク,ダリン
(72)【発明者】
【氏名】エアマン,クラウス
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BC00
2H006BD00
2H006BD01
2H006DA00
(57)【要約】
本開示は、装着者における近視の矯正のための単焦点眼用レンズの使用に関し、単焦点眼用レンズデバイスは、個人の近視を矯正するための基本処方を伴って構成され、さらに意図的に非屈折性特徴を伴って構成され、非屈折性特徴は、装着者に対する網膜神経節細胞活性の増加を容易にし、そのことは装着者の近視の進行速度を減速、改善、制御、抑制、または低減するための光学停止信号として働いてもよい。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼に対する眼用レンズであって、前記眼用レンズは、前面と、背面と、光学的中心と、前記光学的中心の周りの光学的ゾーンとを含み、前記光学的ゾーンは、前記眼に対する基本処方と、複数の非屈折性特徴とを含み、前記基本処方は、球面収差補正、非点収差補正、または球面収差および非点収差補正を含む、レンズ。
【請求項2】
前記複数の非屈折性特徴は、複数の開口を形成する複数の実質的に不透明な境界を含み、前記複数の開口の各々は実質的に透明な領域を境界線で囲み、前記実質的に透明な領域の各々は、前記眼に対する前記基本処方を含む、請求項1に記載のレンズ。
【請求項3】
複数の開口を形成する前記複数の実質的に不透明な境界のうち少なくとも1つの形状は、円形、楕円形、長円形、三角形、矩形、正方形、五角形、または六角形、または八角形、または任意の他の正多角形、または非正多角形、またはランダム形状であり、前記複数の開口のうち少なくとも1つの前記境界線で囲まれた透明な領域の表面積は、0.25平方ミリメートル~7.5平方ミリメートルである、請求項2に記載のレンズ。
【請求項4】
前記複数の開口は、円形、六角形、放射状、らせん状、規則的、不規則的、またはランダム配置で構成される、請求項3に記載のレンズ。
【請求項5】
前記実質的に不透明な境界の幅は、前記実質的に不透明な境界が実質的に非回折性のままであるように、光の可視スペクトルの平均波長(すなわち555nm)の少なくとも3倍である、請求項1~4のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項6】
前記複数の開口のいずれかの前記実質的に不透明な境界の幅は5μm~250μmである、請求項5に記載のレンズ。
【請求項7】
前記複数の非屈折性特徴は、実質的に明確な境界のない少なくとも1つのパターンを形成し、前記パターンは、スポークホイールパターン、らせんパターン、渦巻きパターン、格子パターン、メンフィスパターン、点状パターン、規則的パターン、不規則的パターン、モアレ縞パターン、干渉パターン、点を有するランダムパターン、直線を有するランダムパターン、非円形の点を有するランダムパターン、曲線を有するランダムパターン、円弧を有するランダムパターン、ジグザグ線を有するランダムパターンを含み、複数の前記パターンの各パターンは、点、線、または筋を含む実質的に不透明な特徴によって形成される、請求項1に記載のレンズ。
【請求項8】
前記実質的に不透明な特徴の幅は、少なくとも5μmかつ250μm以下である、請求項7に記載のレンズ。
【請求項9】
前記複数の非屈折性特徴は、光学ゾーン内において中心合わせまたは偏心されている、請求項1~8のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項10】
前記複数の非屈折性特徴の総表面積は、前記光学ゾーンの総表面積の2.5パーセント~15パーセントを占める、請求項1~9のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項11】
前記レンズはコンタクトレンズであり、前記複数の非屈折性特徴は、前記光学ゾーンの中心5mm以内となるように構成され、前記光学ゾーンの前記中心6mmの外側の領域では、実質的に前記非屈折性特徴を欠いている、請求項1~10のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項12】
前記レンズは眼鏡レンズであり、前記複数の非屈折性特徴は、前記光学ゾーンの中心20mm以内となるように構成され、前記光学ゾーンの前記中心35mmの外側の領域では、実質的に前記非屈折性特徴を欠いている、請求項1~10のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項13】
前記複数の非屈折性特徴は、前記前面、前記背面、または前記レンズの材料内のうちの少なくとも1つの場所に適用される、請求項1~12のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項14】
前記実質的に不透明な境界または特徴は、前記実質的に不透明な境界または特徴に入射する光の少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、または少なくとも99パーセントを吸収するように構成される、請求項1~13のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項15】
前記光学ゾーンを通る光の全透過率は、前記非屈折性特徴を欠き、前記基本処方を有する同様の単焦点レンズの前記光学ゾーンを通る光の全透過率の85パーセント~99パーセントである、請求項1~14のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項16】
前記複数の非屈折性特徴は、少なくとも一部において電子的に調整可能であり、前記入射光が直線偏光、または円偏光、または楕円偏光であるときに、少なくとも一部において活性化される、請求項1~15のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項17】
前記非屈折性特徴は、材料特性が、420~760nmの範囲内の特定の可視波長に対して分光的な感受性を有するように構成される、請求項1~16のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項18】
前記レンズは、前記非屈折性特徴を欠く単焦点レンズによって得られるものと実質的に同様の視覚性能を装着者に提供することが可能である、請求項1~17のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項19】
前記基本処方に実質的に一致する距離屈折異常を伴って構成されたモデル眼で試験したときに、前記非屈折性特徴を欠く単焦点コンタクトレンズによって得られるものと実質的に等価な、3mm~6mmの範囲内の少なくとも1つの瞳孔および420nm~760nmの範囲内の少なくとも1つの波長に対するオン軸およびオフ軸広視野変調伝達関数を提供し、前記オフ軸広視野は、前記モデル眼の視野の少なくとも5度を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項20】
前記基本処方に実質的に一致する距離屈折異常を伴って構成されたモデル眼で試験したときに、前記眼の前記距離屈折異常の実質的な矯正を提供して、前記モデル眼の網膜の広視野にわたって広がる人工的エッジ、または空間的な光コントラストプロファイルをもたらす、請求項1~19のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項21】
前記基本処方に実質的に一致する距離屈折異常を伴って構成されたモデル眼で、前記コンタクトレンズの眼上の動きか、前記装着者の眼球運動か、またはそれらの組み合わせのうちの1つを模倣するためのさまざまな偏心位置において試験したときに、前記モデル眼の前記網膜の広視野にわたって広がる前記人工的エッジ、または空間的な光コントラストプロファイルの時間的変動を提供する、請求項1~20のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項22】
前記モデル眼は模式的モデル眼、物理的モデル眼、またはベンチトップモデル眼である、請求項19~21のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項23】
前記基本処方に実質的に一致する距離屈折異常を伴って構成されたベンチトップモデル眼または物理的モデル眼で試験したときに、前記モデル眼の前記距離屈折異常の実質的な矯正をもたらし、電荷結合素子または相補金属酸化物センサを有するカメラを含む前記ベンチトップモデル眼または物理的モデル眼の前記網膜は、前記レンズで矯正された前記モデル眼を通して投影された視覚シーンの画像を捕らえるように構成される、請求項1~22のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項24】
前記モデル眼の前記網膜によって捕らえられた前記画像は、本明細書に開示される(a)バンドパス電流をもたらす画像の入力ストリームの時空間的フィルタリング、(b)可変フィードバックゲートシャント伝導性を用いる瞬時非線形コントラストゲイン制御、および(c)神経節細胞活性を示すスパイク列をもたらす雑音積分および発火細胞モデルの離散集合、の3つの画像処理ステップのうちの少なくとも1つを含む前記仮想網膜シミュレータのための入力ストリームとして働く、請求項19~23のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項25】
前記複数の非屈折性領域は、前記非屈折性特徴を欠く単焦点コンタクトレンズによって得られるものと比較して、前記網膜神経節細胞活性の増加を提供するように構成される、請求項1~24のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項26】
ある特定の時間フレームにわたり積分された平均網膜スパイク率として測定された前記網膜神経節細胞活性は、前記非屈折性特徴を欠く単焦点レンズの前記網膜神経節細胞活性の少なくとも1.5倍であり、前記網膜神経節細胞活性は、オン経路、オフ経路、または両方について計算される、請求項25に記載のレンズ。
【請求項27】
前記平均網膜スパイク率が積分される前記特定の時間フレームは、少なくとも2秒、少なくとも3秒、または少なくとも5秒であり得る、請求項26に記載のレンズ。
【請求項28】
平均網膜スパイク率として測定された前記網膜神経節細胞活性またはニューロン応答の非定常性は、オン中心/オフ周囲網膜野、またはオン周囲/オフ中心網膜野、またはその両方において観測される、請求項27に記載のレンズ。
【請求項29】
時間の関数として平均網膜スパイク率に関して測定された、前記モデル眼の前記網膜における前記網膜神経節細胞活性全体、またはニューロン応答における非定常性を記述する関数は、前記網膜神経節細胞活性全体における時間的変動を示す、非線形、または正弦波、または非単調のパターンに従う、請求項28に記載のレンズ。
【請求項30】
前記複数の非屈折性特徴は、前記眼の軸長または距離屈折異常における変化によって測定された近視の進行の減速、遅延、または防止のうちの少なくとも1つを提供する、請求項1~29のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項31】
前記レンズは、少なくとも一部において、前記眼の前記屈折異常に対する中心窩視矯正を提供し、前記非屈折性特徴は、少なくとも一部において、近視の進行速度を低下させるための、時間変動する停止信号および/または空間的に変動する停止信号を提供する、請求項1~30のいずれか1項に記載のレンズ。
【請求項32】
近視の進行の減速、遅延、または防止のうちの少なくとも1つの効果は、レンズ装着の少なくとも12、24、36、48、または60ヵ月間にわたり維持される、請求項31に記載のレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
この特許出願は、「複数ゾーン眼用レンズ(A multi-zone ophthalmic lens)」と題された2019年12月1日に出願されたオーストラリア仮出願連続番号第2019/904536号、および「近視のための眼用レンズ(An Ophthalmic lens for myopia)」と題された2019年12月1日に出願されたもう1つのオーストラリア仮出願連続番号第2019/904537号に対する優先権を主張し、それらの両方は、参照によってその全体が本明細書に取り入れられる。
【0002】
技術分野
本開示は眼用レンズに関し、特に近視などの眼球長に関連する障害を経験する眼に使用するためのコンタクトレンズおよび眼鏡レンズに関する。
【背景技術】
【0003】
人間の網膜は、視細胞層、外網状層、および内網状層の3つの主な層を有する。錐体および桿体は、入射する光を電気信号に変換することによって、人間の眼の網膜内において光に応答する視細胞である。変換された電気信号は視細胞から双極細胞を通り、さらに網膜神経節細胞および視神経へと伝達され、視覚情報を網膜細胞から脳へと運び、世界の視覚的認知を可能にする。視細胞は段階的な膜電位に応答して、その分極状態のレベルに比例した神経伝達物質のグルタミン酸を放出する。たとえば光刺激がない場合、視細胞は脱分極し、そのベースライン状態と比較してより多くのグルタミン酸を放出する。光が存在する場合、視細胞は、視細胞におけるオプシンが壊れることによって起こる過分極を行い、そのベースライン状態と比較してより少ないグルタミン酸を放出させる。網膜内の双極細胞には、オン中心型双極細胞とオフ中心型双極細胞との2つのタイプがあり、それらは、視細胞信号を水平細胞の横方向に接続された層によって計算された時空間平均と比較することにより、入射する光から正および負の時空間コントラストを別々に符号化する。
【0004】
水平細胞は伝導性ギャップ結合によって相互接続され、かつ複雑なトライアドシナプスにおいて双極細胞および視細胞に接続される。オン中心型およびオフ中心型双極細胞はグルタミン酸に対して異なる応答を有し、それらの応答は、これらの双極細胞の各々に位置するグルタミン酸受容体のタイプおよび数に基づく。
【0005】
オフ中心型双極細胞は、グルタミン酸に対して興奮性であるイオンチャネル型受容体を有する。これらのオフ中心型双極細胞はグルタミン酸に応答して脱分極し、視細胞の信号の符号を保存する。光が存在するとき、オフ中心型双極細胞は、視細胞からより少ないグルタミン酸を受け取り、それは過分極を引き起こし、下流の対応する神経節細胞に対してより少ないグルタミン酸が放出される。光がないとき、オフ中心型双極細胞は、視細胞からより多くのグルタミン酸を受け取り、それは脱分極を引き起こし、下流の対応する神経節細胞に対してより多くのグルタミン酸が放出される。
【0006】
オン中心型双極細胞は、グルタミン酸に対して抑制性であるメタボトロピック受容体を有する。これらのオン中心型双極細胞はグルタミン酸に応答して過分極し、視細胞の信号の符号を反転させる。光が存在するとき、オン中心型双極細胞は、視細胞からより少ないグルタミン酸を受け取り、それは脱分極を引き起こし、下流の対応する神経節細胞に対してより多くのグルタミン酸が放出される。光がないとき、オン中心型双極細胞は、視細胞からより多くのグルタミン酸を受け取り、それは過分極を引き起こし、下流の対応する神経節細胞に対してより少ないグルタミン酸が放出される。オン中心型またはオフ中心型双極細胞が下流の対応する神経節細胞に放出するグルタミン酸が多くなるほど、神経節細胞の活動発火電位が大きくなる。オン中心型双極細胞とオフ中心型双極細胞との光に対する反対の応答は、明暗状態に対する応答差の鍵である。加えて、オン中心型双極細胞とオフ中心型双極細胞との脱分極信号活性は、対応する受容野の周囲の視細胞を接続する水平細胞によって増幅されたり抑制されたりすることがある。
【0007】
水平細胞は、視細胞から興奮性の入力を受け取り、周囲の近隣に接続されている視細胞に抑制性のフィードバックを送り返す。受容野は、網膜内の下流の双極細胞および神経節細胞に入力を送る視細胞の群である。
【0008】
網膜の受容野は、小さい円形の中心野と、周囲野と呼ばれる中心野の周りのより広い円形野とを有する同心円形のゾーンを用いて説明できる。受容野は2つのカテゴリ、すなわちオフ中心オン周囲型受容野と、オン中心オフ周囲型受容野とに分類される。双極細胞の違いに基づき、オン中心型受容野とオフ中心型受容野とは光に対する応答が異なる。
【0009】
人間の眼は、出生時には、眼球の長さが眼の総屈折力に対して短すぎる遠視である。人が幼年期から成人期にかけて年齢を重ねるにつれて、眼の屈折状態が安定するまで眼球は成長し続ける。眼の光学系と眼球長とを一致させて恒常性を維持するために、眼球の成長はフィードバック機構によって制御され、かつ主に視覚経験によって調節されるものと理解されている。このプロセスは正視化と呼ばれる。正視化プロセスを導く信号は、網膜が受け取る光エネルギーの変調によって開始される。網膜の画像特性は、眼球の成長を開始または停止、加速または減速させるために信号を変調させる生物学的プロセスによって監視される。このプロセスにより、光学系と眼球の長さとが調整され、正視が達成または維持される。この正視化プロセスから外れることが、近視などの屈折障害をもたらす。網膜活性の低下により眼球の成長が促進され、逆に網膜活性の増加により眼球の成長が抑制されるという仮説が立てられている。
【0010】
近視の有病率は、世界の多くの地域、特に東アジアにおいて、憂慮すべき速度で増加している。近視の個人においては、眼球の軸長が眼球の全体的な屈折力と不一致であり、遠方の対象が網膜の前で焦点を結ばれることになる。
【0011】
単純な一対の負単焦点レンズは近視を矯正することができる。こうしたデバイスは、眼球長に関連する屈折異常を光学的に矯正できるが、近視の進行における眼球の過度の成長の根本的な原因に対処することはない。高度の近視における過剰な眼球長は、白内障、緑内障、近視性黄斑症、および網膜剥離などの、視力を脅かす重大な状態と関連する。したがって、こうした個人のための、根本的な屈折異常を矯正するだけでなく、眼球が過度に長くなることまたは近視の進行も防止する特定の光学デバイスがなおも必要とされている。
【0012】
定義
本明細書において用いられる用語は、以下において他様に定義されない限り、当業者によって一般的に用いられるものである。
【0013】
「近視眼」という用語は、すでに近視になっているか、近視になる前の段階であるか、近視になるリスクがあるか、乱視を伴うかまたは伴わない近視に向かって進行する屈折状態を有すると診断された眼を意味する。
【0014】
「進行する近視眼」という用語は、屈折異常の変化が少なくとも-0.25D/年であるか、または軸長の変化が少なくとも0.1mm/年であることのいずれかによって測定された、進行中と診断された確定した近視を有する眼を意味する。
【0015】
「近視になるリスクのある眼」という用語は、その時点では正視または低遠視である可能性があるが、遺伝的要因(例、両親とも近視)および/または年齢(例、若いときは低遠視)および/または環境的要因(例、屋外で過ごす時間)および/または行動的要因(例、近くの作業を行って過ごす時間)に基づいて、近視になるリスクが増加していると識別された眼を意味する。
【0016】
「光学停止信号」または「停止信号」という用語は、眼球の成長および/または眼球の屈折状態の減速、逆転、停止、遅延、抑制、または制御を容易にするかもしれない光学信号または方向手がかりを意味する。
【0017】
「空間的および時間的に変動する(varying)光学停止信号」または「空間的および時間的に変動する(variant)光学停止信号」という用語は、時間によって変化し、かつ眼の網膜にわたって空間的に変化する、網膜において提供される光学停止信号を意味する。
【0018】
「コンタクトレンズ」という用語は、眼の光学性能に影響を与えるために装着者の角膜に適合させるのに好適な、完成したコンタクトレンズを意味する。
【0019】
「眼鏡レンズ」という用語は、完成または半完成したブランクレンズを意味してもよい。「標準的な単焦点眼鏡レンズ」または「商業的に入手可能な単焦点眼鏡」または「標準的な眼鏡」という用語は、眼の根本的な屈折異常を矯正するために用いる基本処方を有する眼鏡レンズを意味し、屈折異常は、乱視を伴うかまたは伴わない近視であってもよい。
【0020】
「光学的ゾーン(optical zone)」または「光学ゾーン(optic zone)」という用語は、所定の光学効果を有する眼用レンズ(例、コンタクトレンズまたは眼鏡レンズ)の領域を意味する。光学的ゾーンは、前光学ゾーンおよび後光学ゾーンの一方または両方を含む。前光学ゾーンおよび後光学ゾーンは、それぞれ所定の光学効果に寄与する、コンタクトレンズの前方および後方の表面範囲を意味する。
【0021】
「光学的中心(optical centre)」または「光学中心(optic centre)」という用語は、眼の光学的ゾーンの幾何学的中心を意味する。幾何学的(geometrical)および幾何学的(geometric)という用語は、本質的に同じである。
【0022】
「光軸」という用語は、光学的中心を通り眼用レンズの端縁を含む平面に対して実質的に垂直な線を意味する。
【0023】
「単焦点光学的ゾーン」または「実質的単焦点光学系」または「実質的単焦点プロファイル」または「球面状光学的ゾーン」という用語または句は、光学的ゾーンが実質的な量の一次球面収差を有さない均一な屈折力分布を有することを意味する。単焦点光学的ゾーンはさらに、距離屈折異常を矯正するための非点収差成分を含むように分類されてもよい。
【0024】
「モデル眼」という用語は、模式的、光線追跡、または物理的モデル眼を意味してもよい。
【0025】
本明細書で使用する「ディオプター(Diopter)」、「ディオプター(Dioptre)」、または「D」という用語は、レンズまたは光学系の光軸に沿った焦点距離の逆数をメートル単位で定義した、視度の単位尺度である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0026】
先行技術および一般的に関心のある主題に関する詳細な議論は、本開示の背景として、開示された実施形態の文脈を説明するため、およびさらに先行技術に対する本開示によって予期される進歩を区別するために提供されるものである。ここに提示されたいかなる資料も、本開示において示されるさまざまな実施形態および/または請求項の優先権について、言及された資料が以前に開示されているか、公知であるか、または共通の一般知識の一部であることを認めるものとして受け取られるべきではない。
【0027】
簡潔に要約すると、近視性屈折異常を管理するために使用される屈折または位相変更特徴を有するすべての先行技術の光学設計は、当該分野でしばしば考慮される多焦点様の設計特徴の使用により主に引き起こされる、著しい視覚的妥協を伴うものである。その例は、米国特許第6045578号、第7025460号、第7506983号、第7401922号、第7803153号、第8690319号、第8931897号、第8950860号、第8998408号に記載されている。
【0028】
一般的なイメージングシステムのための焦点深度を改善するために振幅を変化させる特徴を有する、光学分野における解決策の目録が提案されている。その例は、ミノ(Mino)およびオカノ(Okano)によって書かれたアプライド・オプティクス(Applied Optics)1971の「影付きの開口の使用によるデフォーカス光学系のOTFの改善(Improvement in the OTF of a defocused optical system through the use of shaded apertures)」と題する論文;カスタネダ(Castaneda)らによるアプライド・オプティクス(Applied Optics)1989の「準最適なリアルおよびポジティブ透過率アポダイザによる任意の高い焦点深度(Arbitrary high focal depth with a quasi-optimum real and positive transmittance apodizer)」と題する論文;カスタネダおよびベリエル-バルドス(Berriel-Valdos)によるアプライド・オプティクス(Applied Optics)1990にて出版された「任意の高い焦点深度に対するゾーンプレート(Zone plate for arbitrary high focal depth)」と題する論文;ならびに米国特許第5965330(A)号、第8570655(B2)号、および第8192022号に記載されている。
【0029】
振幅を変化させる解決策の欠点は、臨界周波数におけるエネルギー伝達の減少、位相変換の解決策と比べて解像度が低くなること、および低い光スループットを含む。
【0030】
これに対して、本開示は、複数の非屈折性特徴によって意図的に構成された単焦点眼用レンズ設計の使用に向けられており、本明細書に記載されるとおり、この複数の非屈折性特徴は、網膜神経節細胞活性の増加を提供すること、および先行技術の1つ以上の欠点を克服することを目的とする。
【0031】
特定の開示された実施形態は、近視の進行速度を遅らせるための停止信号を使用するコンタクトレンズまたは眼鏡レンズを通じて入射する光を改変することに向けられている。より具体的には、本開示は、装着者の近視の矯正のための単焦点コンタクトレンズおよび眼鏡レンズの使用に関し、単焦点眼用レンズデバイスは、個人の近視を矯正するための基本処方を伴って構成され、さらに意図的に非屈折性特徴を伴って構成され、非屈折性特徴は、装着者に対する網膜神経節細胞活性の増加を容易にし、それは装着者の近視の進行速度を抑制、低下、または制御するための光学停止信号として働いてもよい。いくつかの実施形態において、光学停止信号は、時空的変動を有するように構成されてもよい。
【0032】
特定の開示された実施形態は、人間の眼に入る入射光の特性を変更するためのコンタクトレンズおよび/または眼鏡レンズを含む。特定の開示された実施形態は、たとえば近視などの屈折異常を、矯正、管理、および治療するためのコンタクトレンズおよび/または眼鏡レンズの構成に向けられる。いくつかの実施形態は、近視性屈折異常を矯正すること、および同時にさらなる眼球の成長または近視の進行を妨げる光学停止信号を提供することの両方を目的とする。
【0033】
特定の実施形態は、個人の眼球の成長を遅らせるために網膜神経節細胞活性の能動的な上昇を提供するために、眼用レンズを通じて入射光を改変することができる装置、デバイス、および/または方法に関する。これは、中心および/または周辺網膜に課される人工的エッジパターン、または人工的な光コントラストプロファイルの導入を目的とした、単焦点眼用レンズとともに用いられる特定の非屈折性特徴の構成によって達成されてもよい。網膜に課される人工的エッジパターン、または人工的な光コントラストプロファイルは、網膜にわたるオン中心およびオフ中心網膜野にわたる空間コントラストプロファイルを提供する。人工的に誘導されたエッジは、網膜のスパイク活性または神経節細胞の発火活性の増加を提供し、これは網膜活性全体の代替的な尺度である。本開示は、網膜神経節細胞活性の増加によって、進行中の近視眼に光学停止信号が提供されるのではないかと仮定している。
【0034】
本開示のいくつかの他の実施形態において、コンタクトレンズの非屈折性特徴は、網膜に課される人工的エッジパターンまたは人工的な空間光コントラストプロファイルが、さらに網膜神経節細胞活性全体の時間的変動を提供するように構成されるように構成される。
【0035】
本開示の特定の実施形態は、本明細書に開示されるとおり、コンタクトレンズおよび眼鏡レンズの両方の単焦点眼用レンズとともに使用される、非屈折性特徴の構造的特性の1つ以上の変形を含む。たとえば、非屈折性特徴の構造的特性は、以下のうちの1つ以上を含む。眼用レンズ上の、非屈折性特徴の不透明度、それらのサイズ、幅、および形状、それらの適用方法、それらの適用位置、それらの分布、それらの配置パターンおよび広がる範囲。
【0036】
非屈折性特徴の多数の構造的特性の企図される変動は、本明細書に開示されるとおり、近視の進行を遅らせるための眼用レンズの実施形態の有効性を維持しながら、所望の眼上の機能的な視覚性能を提供する。本開示の特定の実施形態は、眼の解像度能力を損なうことなく、網膜神経節細胞活性における所望のレベルの増加および/または所望のレベルの時間的分散を提供するための、以下の特徴、すなわち不透明度、サイズ、形状、複数性、パターン、場所、および適用方法を含むがこれらに限定されない、非屈折性特徴の最適化を含む。たとえば、本開示のいくつかの実施形態において、非屈折性特徴の1つ以上の特性は、眼の屈折異常を矯正するための基本処方を有する、その他の部分は単焦点の眼用レンズ上に構成され、この実施形態の眼用レンズは、近視の発達および/または進行に関連すると考えられる環境およびまたは行動の典型的なシーンを含み得るいくつかの一般的な視覚シーンを提示してモデル眼で試験したときに、非屈折性特徴を有さない単焦点眼用レンズの網膜神経節細胞活性の少なくとも約1.25倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.75倍、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、または少なくとも3倍の網膜神経節細胞活性の増加を提供し、ここで網膜神経節細胞活性は、受容野内のオン型細胞、オフ型細胞、またはオン型細胞およびオフ型細胞の両方を含んでもよい。いくつかの例では、網膜神経節細胞活性は、局所領域内であっても、複数の局所領域であっても、または所望の網膜野にわたって平均化されていてもよい。いくつかの他の実施形態では、モデルで試験された眼用レンズはさらに、網膜神経節細胞活性の時間的変動を提供する。いくつかの例では、網膜神経節細胞活性は、網膜スパイク列解析によって測定されてもよく、一方、いくつかの他の例では、それは時間の関数としての平均網膜スパイク率によって測定されてもよい。本開示の特定の他の実施形態では、実施形態の眼用レンズは、モデル眼で試験したときに、網膜神経節細胞活性に対する増加した時間的変動、または揺らぎもしくは振動を提供し、ここで網膜神経節細胞活性の時間的変動は、以下のうちの1つ以上として表されてもよい。網膜神経節細胞活性における非単調な揺らぎ、準正弦波的変動、正弦波的変動、周期的変動、非周期的変動、非周期的準矩形的変動、矩形的変動、方形波的変動、またはランダムな変動。
【0037】
いくつかの例において、網膜神経節細胞活性を引き出すために特定のタイプの視覚的刺激が用いられてもよく、その視覚的刺激はたとえばホワイトノイズ電気的刺激、視覚的刺激における正弦波変動、チェッカーボードパターン、フルフィールドフラッシュ刺激、セミフィールドフラッシュ刺激、フルフィールドガウシアンノイズ、セミフィールドガウシアンノイズ、局所的フラッシュ刺激、局所的ガウシアンノイズなどである。いくつかの例において、刺激への神経応答の粗い特徴付けのみが望ましくてもよい。一方、他の例では、刺激への神経応答のより細かい特徴付けが望ましくてもよい。この開示で用いられる刺激は、本開示の作用を示すための単なる代表的な手段と考えられ、その選択は、本開示および/または請求項の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0038】
本開示のいくつかの実施形態において、眼用レンズにおける非屈折性特徴の不透明度は、その特徴が非屈折性特徴に入射する光の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%すべてを吸収するように構成されてもよい。本開示のいくつかの他の実施形態において、眼用レンズにおける非屈折性特徴の不透明度は、その特徴が非屈折性特徴に入射する光の80%~90%、または80%~95%、または80%~99%を吸収するように構成されてもよい。
【0039】
本開示のいくつかの実施形態において、任意の非屈折性特徴の個々の要素のいずれか1つ以上の幅は、その特徴が可視スペクトル内の光の平均波長(すなわち555nm)の少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、または少なくとも10倍であるように構成されてもよい。
【0040】
本開示のいくつかの他の実施形態において、任意の非屈折性特徴の任意の個々の要素の幅は、その特徴が可視スペクトル内の光の平均波長(すなわち555nm)の3~5倍、または4~7倍、または5~9倍、または3~10倍であるように構成されてもよい。非屈折性特徴の任意の個々の要素の幅が可視スペクトル内の光の平均波長よりも実質的に大きくなるようにするという選択における下限は、本明細書に開示される非屈折性特徴のエッジに関する不当な回折効果を避けるという望ましい結果によって支持されている。
【0041】
いくつかの実施形態において、眼用レンズにおける非屈折性特徴のいずれか1つ以上の個々の要素の幅は、その特徴が50μm以下、または75μm以下、または100μm以下、または150μm以下、または200μm以下、または250μm以下、または300μm以下であるように構成されてもよい。非屈折性特徴の任意の個々の要素の幅/サイズの選択における上限は、最小のエネルギー損失を可能にする、眼に入る適切な量の光を維持することによって、本明細書に開示された企図される実施形態を装着する眼の解像度能力が実質的に変化しないようにするという望ましい結果によって支持されている。いくつかの実施形態において、非屈折性特徴の任意の個々の要素の幅/サイズの選択の上限は、コンタクトレンズおよび眼鏡レンズの実施形態の間で、後者における頂点距離を考慮して、異なっていてもよい。
【0042】
本開示のいくつかの他の実施形態において、非屈折性特徴は、近視の程度および進行速度に基づいて、進行速度の減少の有効性が、装着者によって許容され得る視覚性能における所望の妥協の程度と釣り合い得るようにカスタマイズされてもよい。
【0043】
本開示の特定の実施形態において、眼用レンズ上に構成され得る非屈折性特徴のいずれか1つ以上の個々の要素の形状は、その特徴が円形、六角形、八角形、正多角形、非正多角形、線、三角形、点状、円弧状、または本明細書で開示される任意のその他のランダム形状であるように構成されてもよい。
【0044】
いくつかの他の実施形態において、複数の開口、セグメント、領域、またはゾーンの企図される設計特徴は、円形、非円形、半円形、環状、楕円形、矩形、八角形、六角形、または正方形の形状であってもよい。
【0045】
本開示の特定の実施形態において、単焦点コンタクトレンズにおける非屈折性特徴の個々の要素の配置は、すべての非屈折性特徴の及ぶ範囲が、単焦点コンタクトレンズの光学ゾーンの2mm中心直径内、または2.5mm中心直径内、または3mm中心直径内、または3.5mm中心直径内、または4mm中心直径内、または4.5mm中心直径内、または5mm中心直径内、または6mm中心直径内となるように構成されてもよい。
【0046】
本開示の特定の実施形態において、単焦点眼鏡レンズにおける非屈折性特徴の個々の要素の配置は、すべての非屈折性特徴の及ぶ範囲が、単焦点眼鏡レンズの光学ゾーンの20mm中心直径内、または25mm中心直径内、または30mm中心直径内、または35mm中心直径内、または40mm中心直径内、または45mm中心直径内、または50mm中心直径内、または60mm中心直径内となるように構成されてもよい。
【0047】
本開示のいくつかの他の例において、非屈折性特徴は、単焦点眼用レンズの光学的ゾーンの中心の30%、35%、40%、45%、50%、55%、または60%の範囲内で実現されてもよい。
【0048】
本開示のいくつかの他の例において、非屈折性特徴は、単焦点眼用レンズの光学的ゾーンの周辺の10%、15%、20%、25%、30%、35%、または40%の範囲内で実現されてもよい。単焦点眼用レンズの中心または周辺部分に対する言及は、眼用レンズの光学的中心からなされたものである。
【0049】
本開示のいくつかの他の例において、非屈折性特徴は、以下の場所の1つ以上において実現されてもよい。眼用レンズの前面、眼用レンズの背面、眼用レンズの材料の母材内。いくつかの実施形態において、非屈折性特徴の実現の方法は、コスメティックレンズの通常の開発に用いられるパッド印刷またはレーザ印刷のアプローチによって達成されてもよい。
【0050】
本開示のいくつかの実施形態において、実現される非屈折性特徴は、その他の部分は実質的に単焦点の眼用レンズの本質的に上にある複数の開口、複数のゾーン、複数の領域、複数のセグメントの形態で配置されてもよく、本明細書に開示されるとおり、その非屈折性特徴は網膜神経節細胞活性の増加を促進して、進行性の近視性屈折異常を抑制、低減、または制御するための光学停止信号として働いてもよい。
【0051】
他の実施形態において、非屈折性特徴は、眼用レンズの母材中に構成される均質媒体または異質媒体によって実現されてもよい。いくつかの他の実施形態において、その実現は、母材の表面上または中の媒体のフォトエッチングまたはその他のフォトグラフィックプロセスを含んでもよい。
【0052】
本開示は、入射する光の透過特性を変化させて、装着者の網膜において明確な光コントラストプロファイル(すなわち人工的エッジ)を作成する眼用レンズに関する。眼の透過特性の変化は、複数の相対的により低い透過率の線または筋を使用するか、または代替的に、複数の開口、ゾーン、セグメント、領域、または本明細書において予期されるその他のパターンとして配置される非屈折性特徴を使用することによって達成される。低透過率の線もしくは筋または特徴は、眼用レンズの1つ以上の場所、すなわちレンズの前面か、レンズの背面に構成されてもよいし、眼用レンズの母材に埋め込まれてもよい。低透過率の線、筋、または特徴は、不透明、半透明、反射性、分光感受性、偏光感受性、または吸収性となるように構成されてもよい。偏光感受性材料を実現するために、4分の1波長位相差板を有するかまたは有さない直線偏光フィルタのさまざまな組み合わせを考慮してもよい。いくつかの他の実施形態において、所望の偏光感受性特性は、たとえば複屈折材料、コーティング、またはそれらの組み合わせなどの特定のレンズ材料を用いて構成されてもよい。
【0053】
低透過率特徴の寸法仕様、たとえば非屈折性特徴の幅などは、眼に入る光の量を増加させ、視覚的アーティファクトを最小限にする一方で、装着者の眼の所望の屈折矯正のために眼用レンズを適切に構成し、かつ装着者の眼に対する適切な停止信号を維持または提供するように、レンズ設計において所望のとおりに調整され得る。
【0054】
現在の開示は、近視の進行を遅らせるための非屈折性特徴の使用を提案する。非屈折性特徴の使用は、正のデフォーカス、正の球面収差、または任意のその他の変形、たとえば二焦点、多焦点、または拡張焦点深度の光学特徴などのいずれの位相変更アプローチも使用しない実施形態を容易にする。
【0055】
現在の開示は、眼用レンズを通じて見ている間に取り込まれた網膜の画像に人工的エッジまたは光コントラストプロファイルを導入し、さらなる眼球の成長を抑制し得る網膜神経節細胞活性の増加を提供することによって、近視の進行を遅らせる方法を提案する。
【0056】
いくつかの実施形態において、眼用レンズはコンタクトレンズを意味してもよいが、さらに他の実施形態では、眼用レンズは眼鏡レンズを意味してもよい。眼鏡レンズを企図する本開示のいくつかの実施形態において、非屈折性特徴を取り入れることは、眼鏡レンズの美容上の外観を劣らせることがあり、それは装着者にとって望ましくないおそれがある。レンズの付加的な材料特性は、劣った美容上の問題を緩和するために企図されてもよい。たとえばいくつかの実施形態において、実現される非屈折性特徴は、以下の付加的な材料特性、すなわち入射光の偏光状態に対する完全な非感受性、部分的感受性、または十分な感受性の1つ以上を有するように構成されてもよい。本開示のいくつかの他の眼鏡レンズの実施形態において、実現される非屈折性特徴は、電気的に調整可能となるように構成されてもよい。いくつかの実施形態において、眼上のコンタクトレンズの過度の運動を要求することなく網膜神経節細胞活性における付加的な時間的変動を提供するために、偏光コンタクトレンズの対および偏光眼鏡レンズの対の組み合わせが企図されてもよい。
【0057】
現在の開示の特定の実施形態は、たとえばモアレパターン、曲線パターン、メンフィスパターン、矩形格子パターン、六角形パターン、らせんパターン、渦巻きパターン、放射状パターン、線のアレイ、ジグザグまたはランダムパターンなどに配置された非屈折性特徴により意図的に設計されたコンタクトレンズを含み、この非屈折性特徴は、網膜の画像内に光コントラストプロファイル、すなわち人工的エッジを導入するために光学ゾーン内に構成される。本開示の1つの実施形態において、企図されるモアレパターンまたはモアレ縞は、透明な間隙を有する不透明な規則的パターンが、横方向に分離された別の同様のパターンの上に重ねられたときに、大規模な干渉パターンを生成することによって達成されてもよい。別の実施形態において、モアレパターンは、コンタクトレンズの両面に、予め定められたオフセットおよび向きで規則的パターンを印刷することによって達成されてもよい。代替的に、他の実施形態においては、結果として得られるモアレパターンがコンタクトレンズの一方の表面に印刷または構成されてもよい。
【0058】
本開示の特定の実施形態は、近視の進行を抑制、防止、および/または制御することを目的とした、単焦点コンタクトレンズの光学ゾーン内に非屈折性特徴を取り入れる、ヒドロゲル材料またはシリコンヒドロゲル材料でできた組み合わせ単焦点コンタクトレンズ設計に向けられる。
【0059】
本開示のいくつかの眼用レンズの実施形態は、たとえばコンタクトレンズなどの眼用レンズの眼上の動きか、本開示のコンタクトレンズを装着中の瞼の自然な瞬き動作か、または本明細書に開示される企図された眼鏡レンズの実施形態を装着中の眼球運動のいずれかによって容易となる、停止信号の時空間的変動を提供する。人工的エッジプロファイルまたは光コントラストプロファイルの提示の時空間的変動は、近視の進行速度における経時的な効力の飽和を最小化することを可能にする。本開示において提示される実施形態は、距離および視野角の範囲にわたって等価または適切な視覚性能の単焦点を装着者に提供しながら、近視の進行速度を抑制または減少させるという治療的利益を提供する、向上した眼用レンズの継続的な必要性に向けられている。
【0060】
本開示の特定の他の実施形態は、経時的な治療的利益の有効性を維持することを目的とする。本開示の実施形態のさまざまな態様は、装着者のこうした要求に対処するものである。本開示の実施形態は、近視の進行を遅らせること、減速させること、または防止することのうちの少なくとも1つのためのコンタクトレンズに向けられている。コンタクトレンズは前面と、背面と、光学ゾーンと、光学的中心とを含み、光学的中心の周囲の光学的ゾーンは、複数の微細な線、または複数の条線、または複数の筋を伴って構成され、その他の部分は実質的に少なくとも一部において適切な中心窩視矯正を提供するための単焦点処方を伴って構成され、さらに企図される設計特徴は、少なくとも一部において網膜神経節細胞活性の増加を提供することによって、近視の進行速度を減少させるための停止信号を提供するように構成される。
【0061】
いくつかの実施形態によると、コンタクトレンズは、実質的に単焦点の光学ゾーン内のたとえば複数の線、または筋、または開口、またはパターンなどの複数の非屈折性設計特徴を伴って構成され、その非屈折性設計特徴は、本明細書で開示された企図されたコンタクトレンズを装着中のコンタクトレンズの眼上の動き、瞼の自然な瞬き動作、または眼球運動のいずれかによって容易にされる、時空間信号の網膜符号化の能動的な上昇を提供する。したがって、近視の進行速度に対する経時的な効力の飽和を最小化できる。
【0062】
いくつかの実施形態によると、眼鏡レンズは、実質的に単焦点の光学ゾーン内のたとえば複数の線、または筋、または開口、またはパターンなどの複数の非屈折性設計特徴を伴って構成され、その非屈折性設計特徴は、本明細書で開示された企図された眼鏡レンズを装着中の眼球運動によって容易にされる、時空間信号の網膜符号化の能動的な上昇を提供する。本開示で提示される実施形態は、装着者が日常生活の一部として行い得る活動の範囲に対して装着者に妥当かつ適切な視覚性能を提供しながら、近視の進行を抑制し得る眼用レンズの向上した光学設計に対する継続的な要求に向けられている。本開示の実施形態のさまざまな態様は、装着者のこうした要求に対処するものである。本開示の例示的な方法は、標準的な検眼屈折技術に基づいて個人の眼の屈折状態を測定することと、眼の屈折測定に少なくとも部分的に基づいて眼の基本処方を特定することと、根本的な屈折異常を矯正するために要求される基本処方に実質的に一致するように本開示の単焦点レンズの屈折力を選択することと、さらに本開示において企図された非屈折性特徴のサイズ、パターン、および配置を、個人の網膜における神経節細胞活性の望ましい増加が個人によって経験され得る視力障害の任意の限界知覚と釣り合うように選択することとを含む。本開示の1つ以上の実施形態において、非屈折性特徴は実質的に不透明であり、単焦点眼用レンズの指定された領域内に配置されることによって、これらの非屈折性特徴は本明細書で開示されるオン中心およびオフ中心網膜経路における網膜神経節細胞活性の増加を提供する。本開示のいくつかの方法において、非屈折性特徴の選択は、装着者が眼用デバイスを装着しながら行い得る活動に依存してもよく、たとえば、コンピュータまたはテーブルまたは電話に対する読み取りおよび行動を行う装着者には、治療的利益の有効性と視覚性能との間のバランスが望ましいレベルで維持されるように、遠距離視覚作業に従事する装着者とは異なるパターンが処方されてもよい。いくつかの他の方法では、非屈折性特徴の選択は、進行性近視の発達または経験に対する根本的な危険因子に依存してもよい。
【0063】
概要で考察された実施形態を含むいくつかの他の実施形態が、本開示の説明、図面、および特許請求の範囲に示されている。理解できるとおり、本開示の企図する実施形態のすべての単一の組み合わせを含めることは実際的に不可能であり、眼用レンズとともに非屈折性特徴を使用することを通じて網膜神経節細胞活性を増加させるという基本概念を少なくとも部分的に企図する任意の組み合わせまたは任意の変形は、本発明の範囲内にあるとみなされる。本開示のこの概要部分は、本明細書に開示された実施形態に限定されることを意図していない。さらに、1つの実施形態の任意の限定は、任意の他の実施形態の任意の他の限定と組み合わされて、本開示の追加の実施形態を構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】特定の実施形態に従う、オン中心/オフ周囲型およびオフ中心/オン周囲型の網膜受容野の作用を示す図である。
【
図2】特定の実施形態に従う、オン中心/オフ周囲網膜受容野が異なる刺激またはエッジプロファイル条件を受けたときの作用を示す図である。
【
図3】本開示のいくつかの実施形態の作用を説明するために使用される仮想網膜プラットフォームの概要を示す流れ図である。仮想網膜プラットフォームは、網膜の3層構造、すなわち外網状層、コントラストゲイン制御、および神経節細胞層に依拠しており、これらの網膜関連ツールは、本明細書に記載されるとおり、視覚シーンを活動電位の列に符号化することを助けたものである。
【
図4】本開示のいくつかの実施形態の作用を説明するために使用される仮想網膜プラットフォームの機能を示すために集められた網膜受容体への網膜入力画像の基本的なサンプルを示す図である。
【
図5】本明細書に開示される基本的な網膜構成の1つについて、網膜受容面におけるサンプルニューロン位置と平均網膜スパイク率とに対するスパイク列(すなわちラスタープロット)を示す図である。網膜神経節細胞は、白背景上の黒点と黒背景上の白点との間の空間的に均一なフリッカーに対して応答する。
【
図6】本明細書に開示される別の網膜構成について、網膜受容面におけるサンプルニューロン位置と平均網膜スパイク率とに対するスパイク列(すなわちラスタープロット)を示す図である。網膜神経節細胞は、白背景上の黒点と黒背景上の白点との間の空間的に均一なフリッカーに対して応答する。
【
図7】本明細書に開示されたとおりの、縮尺通りではない、複数の円形開口として配置された非屈折性特徴を有する例示的なコンタクトレンズの実施形態の正面図および断面図である。
【
図8】本明細書に開示されたとおりの、縮尺通りではない、複数の六角形開口として配置された非屈折性特徴を有する別の例示的なコンタクトレンズの実施形態の正面図および断面図である。
【
図9】本明細書に開示されたとおりの、縮尺通りではない、非屈折性特徴としての筋を有するさらに別の例示的なコンタクトレンズの実施形態の正面図および断面図である。
【
図10】本明細書に開示されたとおりの、縮尺通りではない、非屈折性特徴としての格子線を有するさらに別の例示的なコンタクトレンズの実施形態の正面図および断面図である。
【
図11】本明細書に開示されたとおりの、縮尺通りではない、3つの追加の例示的なコンタクトレンズの実施形態(すなわちモアレパターン、曲線パターン、メンフィスパターン)の正面図である。この図面においては、コンタクトレンズの光学ゾーン部分のみが示される。
【
図12】先行技術の単焦点コンタクトレンズで矯正した-3Dの近視モデル眼に、可視波長(たとえば、555nm)およびバージェンス0Dの入射光を入射したときの、オン中心/オフ周囲およびオフ中心/オン周囲網膜回路によって記録された理論上の網膜神経節細胞活性の模式図である。
【
図13】本明細書に開示されるコンタクトレンズの実施形態の1つで矯正した-3Dの近視モデル眼に、可視波長(たとえば、555nm)およびバージェンス0Dの入射光を入射したときの、オン中心/オフ周囲およびオフ中心/オン周囲網膜回路によって記録された理論上の神経節細胞活性の模式図である。
【
図14】非線形投影ルーチンを用いて広角模式眼の網膜に投影された広視野視覚シーン(近い視距離で保持された携帯電話の画像)のソース画像ファイルを表す図であり、仮想網膜は、円形パターンに配置されたニューロン束によってモデル化される。
【
図15】非線形投影ルーチンを用いて広角模式眼の網膜に投影された広視野視覚シーン(中距離で保持された携帯電話の画像)のソース画像ファイルを表す図であり、仮想網膜は、円形パターンに配置されたニューロン束によってモデル化される。
【
図16】非線形投影ルーチンを用いて広角模式眼の網膜に投影された広視野視覚シーン(レナ(Lenna)標準画像)のソース画像ファイルを表す図であり、仮想網膜は、円形パターンに配置されたニューロン束によってモデル化される。
【
図17】本明細書に開示されたとおりの、縮尺通りではない、六角形配置の複数の円形形状開口としての非屈折性特徴を有する例示的なコンタクトレンズの実施形態の正面図および断面図である。
【
図18】本明細書に開示されたとおりの、実施例1に説明される対照レンズC1に対する仮想網膜モデルのオン細胞およびオフ細胞経路から得られた出力スパイク列を示す図である。オン細胞およびオフ細胞から得られたスパイク列(すなわちラスタープロット)は、上下のサブグラフとして表される。グラフのY軸は離散的なニューロン束を表し、X軸はミリ秒での時間を表す。グラフの暗い部分はスパイクを表し、白い部分はスパイクがないことを表す。
【
図19】本明細書における実施例1に説明されるとおりの、対照コンタクトレンズC1について得られた、仮想網膜モデルのオン細胞(上)およびオフ細胞(下)経路からの、時間の関数としての平均スパイク率を示す図である。
【
図20】本明細書に開示されたとおりの、実施例1に説明されたコンタクトレンズの実施形態D1についての、仮想網膜モデルのオン細胞およびオフ細胞経路から得られた出力スパイク列を示す図である。オン細胞およびオフ細胞から得られたスパイク列は、上下のサブグラフとして表される。グラフのY軸はニューロン束を表し、X軸はミリ秒での時間を表す。グラフの暗い部分はスパイクを表し、白い部分はスパイクがないことを表す。
【
図21】本明細書における実施例1に説明されるとおりの、コンタクトレンズの実施形態D1について得られた、仮想網膜モデルのオン細胞(上)およびオフ細胞(下)経路からの、時間の関数としての平均スパイク率を示す図である。
【
図22】本明細書における実施例1に説明されるとおりの、4mmの瞳孔径において評価した、対照コンタクトレンズC1とコンタクトレンズの実施形態D1とのオン軸変調伝達関数を示す図である。
【
図23】本明細書における実施例1に説明されるとおりの、7.5度の画角および4mmの瞳孔径において評価した、対照コンタクトレンズC1とコンタクトレンズの実施形態D1とのオフ軸変調伝達関数を示す図である。
【
図24】本明細書に開示されたとおりの、縮尺通りではない、六角形配置パターンの点状の非屈折性特徴を有する例示的なコンタクトレンズの実施形態の正面図および断面図である。
【
図25】本明細書に開示されたとおりの、実施例2に説明された対照レンズC2についての、仮想網膜モデルのオン細胞およびオフ細胞経路から得られた出力スパイク列を示す図である。オン細胞およびオフ細胞から得られたスパイク列は、上下のサブグラフとして表される。グラフのY軸は離散的なニューロン束を表し、X軸はミリ秒での時間を表す。グラフの暗い部分はスパイクを表し、白い部分はスパイクがないことを表す。
【
図26】本明細書における実施例2に説明されるとおりの、対照コンタクトレンズC2について得られた、仮想網膜モデルのオン細胞(上)およびオフ細胞(下)経路からの、時間の関数としての平均スパイク率を示す図である。
【
図27】本明細書に開示されたとおりの、実施例2に説明されたコンタクトレンズの実施形態D2についての、仮想網膜モデルのオン細胞およびオフ細胞経路から得られた出力スパイク列を示す図である。オン細胞およびオフ細胞から得られたスパイク列は、上下のサブグラフとして表される。グラフのY軸はニューロン束を表し、X軸はミリ秒での時間を表す。グラフの暗い部分はスパイクを表し、白い部分はスパイクがないことを表す。
【
図28】本明細書における実施例2に説明されるとおりの、コンタクトレンズの実施形態D2について得られた、仮想網膜モデルのオン細胞(上)およびオフ細胞(下)経路からの、時間の関数としての平均スパイク率を示す図である。
【
図29】本明細書における実施例2に説明されるとおりの、4mmの瞳孔径において評価した、対照コンタクトレンズC2とコンタクトレンズの実施形態D2とのオン軸変調伝達関数を示す図である。
【
図30】本明細書における実施例2に説明されるとおりの、7.5度の画角および4mmの瞳孔径において評価した、対照コンタクトレンズC2とコンタクトレンズの実施形態D2とのオフ軸変調伝達関数を示す図である。
【
図31】本明細書に開示されたとおりの、縮尺通りではない、ランダム配置の非屈折性特徴としての筋を有する例示的なコンタクトレンズの実施形態の正面図および断面図である。
【
図32】本明細書に開示されたとおりの、実施例3に説明された対照レンズC3についての、仮想網膜モデルのオン細胞およびオフ細胞経路から得られた出力スパイク列を示す図である。オン細胞およびオフ細胞から得られたスパイク列は、上下のサブグラフとして表される。グラフのY軸は離散的なニューロン束を表し、X軸はミリ秒での時間を表す。グラフの暗い部分はスパイクを表し、白い部分はスパイクがないことを表す。
【
図33】本明細書における実施例3に説明されるとおりの、対照コンタクトレンズC3について得られた、仮想網膜モデルのオン細胞(上)およびオフ細胞(下)経路からの、時間の関数としての平均スパイク率を示す図である。
【
図34】本明細書に開示されたとおりの、実施例3に説明された対照レンズD3についての、仮想網膜モデルのオン細胞およびオフ細胞経路から得られた出力スパイク列を示す図である。オン細胞およびオフ細胞から得られたスパイク列は、上下のサブグラフとして表される。グラフのY軸は離散的なニューロン束を表し、X軸はミリ秒での時間を表す。グラフの暗い部分はスパイクを表し、白い部分はスパイクがないことを表す。
【
図35】本明細書における実施例3に説明されるとおりの、コンタクトレンズの実施形態D3について得られた、仮想網膜モデルのオン細胞(上)およびオフ細胞(下)経路からの、時間の関数としての平均スパイク率を示す図である。
【
図36】本明細書における実施例3に説明されるとおりの、6mmの瞳孔径において評価した、対照コンタクトレンズC3とコンタクトレンズの実施形態D3とのオン軸変調伝達関数を示す図である。
【
図37】本明細書における実施例3に説明されるとおりの、2.5度の画角および6mmの瞳孔径において評価した、対照コンタクトレンズC3とコンタクトレンズの実施形態D3とのオフ軸変調伝達関数を示す図である。
【
図38】本明細書に開示されたとおりの、縮尺通りではない、非屈折性特徴としての格子線を有する例示的なコンタクトレンズの実施形態の正面図および断面図である。
【
図39】本明細書に開示されたとおりの、実施例4に説明された対照レンズC4についての、仮想網膜モデルのオン細胞およびオフ細胞経路から得られた出力スパイク列を示す図である。オン細胞およびオフ細胞から得られたスパイク列は、上下のサブグラフとして表される。グラフのY軸は離散的なニューロン束を表し、X軸はミリ秒での時間を表す。グラフの暗い部分はスパイクを表し、白い部分はスパイクがないことを表す。
【
図40】本明細書における実施例4に説明されるとおりの、対照コンタクトレンズC4について得られた、仮想網膜モデルのオン細胞(上)およびオフ細胞(下)経路からの、時間の関数としての平均スパイク率を示す図である。
【
図41】本明細書に開示されたとおりの、実施例4に説明されたコンタクトレンズの実施形態D4についての、仮想網膜モデルのオン細胞およびオフ細胞経路から得られた出力スパイク列を示す図である。オン細胞およびオフ細胞から得られたスパイク列は、上下のサブグラフとして表される。グラフのY軸は離散的なニューロン束を表し、X軸はミリ秒での時間を表す。グラフの暗い部分はスパイクを表し、白い部分はスパイクがないことを表す。
【
図42】本明細書における実施例4に説明されるとおりの、コンタクトレンズの実施形態D4について得られた、仮想網膜モデルのオン細胞(上)およびオフ細胞(下)経路からの、時間の関数としての平均スパイク率を示す図である。
【
図43】本明細書における実施例4に説明されるとおりの、6mmの瞳孔径において評価した、対照コンタクトレンズC4とコンタクトレンズの実施形態D4とのオン軸変調伝達関数を示す図である。
【
図44】本明細書における実施例4に説明されるとおりの、7.5度の画角および6mmの瞳孔径において評価した、対照コンタクトレンズC4とコンタクトレンズの実施形態D4とのオフ軸変調伝達関数を示す図である。
【
図45】本明細書に開示されたとおりの、縮尺通りではない、放射状またはスポーク状配置の非屈折性特徴としての線または筋を有する例示的なコンタクトレンズの実施形態の正面図および断面図である。
【
図46】本明細書に開示されたとおりの、実施例5に説明された対照レンズC5についての、仮想網膜モデルのオン細胞およびオフ細胞経路から得られた出力スパイク列を示す図である。オン細胞およびオフ細胞から得られたスパイク列は、上下のサブグラフとして表される。グラフのY軸は離散的なニューロン束を表し、X軸はミリ秒での時間を表す。グラフの暗い部分はスパイクを表し、白い部分はスパイクがないことを表す。
【
図47】本明細書における実施例5に説明されるとおりの、対照コンタクトレンズC5について得られた、仮想網膜モデルのオン細胞(上)およびオフ細胞(下)経路からの、時間の関数としての平均スパイク率を示す図である。
【
図48】本明細書に開示されたとおりの、実施例5に説明されたコンタクトレンズの実施形態D5についての、仮想網膜モデルのオン細胞およびオフ細胞経路から得られた出力スパイク列を示す図である。オン細胞およびオフ細胞から得られたスパイク列は、上下のサブグラフとして表される。グラフのY軸は離散的なニューロン束を表し、X軸はミリ秒での時間を表す。グラフの暗い部分はスパイクを表し、白い部分はスパイクがないことを表す。
【
図49】本明細書における実施例5に説明されるとおりの、コンタクトレンズの実施形態D5について得られた、仮想網膜モデルのオン細胞(上)およびオフ細胞(下)経路からの、時間の関数としての平均スパイク率を示す図である。
【
図50】本明細書における実施例5に説明されるとおりの、5mmの瞳孔径において評価した、対照コンタクトレンズC5とコンタクトレンズの実施形態D5とのオン軸変調伝達関数を示す図である。
【
図51】本明細書における実施例5に説明されるとおりの、7.5度の画角および5mmの瞳孔径において評価した、対照コンタクトレンズC5とコンタクトレンズの実施形態D5とのオフ軸変調伝達関数を示す図である。
【
図52】本明細書に開示されたとおりの、縮尺通りではない、ランダム配置の点状の非屈折性特徴を有する例示的なコンタクトレンズの実施形態の正面図および断面図である。
【
図53】本明細書に開示されたとおりの、実施例6に説明された対照レンズC6についての、仮想網膜モデルのオン細胞およびオフ細胞経路から得られた出力スパイク列を示す図である。オン細胞およびオフ細胞から得られたスパイク列は、上下のサブグラフとして表される。グラフのY軸は離散的なニューロン束を表し、X軸はミリ秒での時間を表す。グラフの暗い部分はスパイクを表し、白い部分はスパイクがないことを表す。
【
図54】本明細書における実施例6に説明されるとおりの、対照コンタクトレンズC6について得られた、仮想網膜モデルのオン細胞(上)およびオフ細胞(下)経路からの、時間の関数としての平均スパイク率を示す図である。
【
図55】本明細書に開示されたとおりの、実施例6に説明されたコンタクトレンズの実施形態D6についての、仮想網膜モデルのオン細胞およびオフ細胞経路から得られた出力スパイク列を示す図である。オン細胞およびオフ細胞から得られたスパイク列は、上下のサブグラフとして表される。グラフのY軸は離散的なニューロン束を表し、X軸はミリ秒での時間を表す。グラフの暗い部分はスパイクを表し、白い部分はスパイクがないことを表す。
【
図56】本明細書における実施例6に説明されるとおりの、コンタクトレンズの実施形態D6について得られた、仮想網膜モデルのオン細胞(上)およびオフ細胞(下)経路からの、時間の関数としての平均スパイク率を示す図である。
【
図57】本明細書における実施例6に説明されるとおりの、4mmの瞳孔径において評価した、対照コンタクトレンズC6とコンタクトレンズの実施形態D6とのオン軸変調伝達関数を示す図である。
【
図58】本明細書における実施例6に説明されるとおりの、7.5度の画角および4mmの瞳孔径において評価した、対照コンタクトレンズC6とコンタクトレンズの実施形態D6とのオフ軸変調伝達関数を示す図である。
【
図59】本明細書に開示されたとおりの、縮尺通りではない、らせん配置の点状の非屈折性特徴を有する例示的なコンタクトレンズの実施形態の正面図および断面図である。
【
図60】本明細書に開示されたとおりの、実施例7に説明された対照レンズC7についての、仮想網膜モデルのオン細胞およびオフ細胞経路から得られた出力スパイク列を示す図である。オン細胞およびオフ細胞から得られたスパイク列は、上下のサブグラフとして表される。グラフのY軸は離散的なニューロン束を表し、X軸はミリ秒での時間を表す。グラフの暗い部分はスパイクを表し、白い部分はスパイクがないことを表す。
【
図61】本明細書における実施例7に説明されるとおりの、対照コンタクトレンズC7について得られた、仮想網膜モデルのオン細胞(上)およびオフ細胞(下)経路からの、時間の関数としての平均スパイク率を示す図である。
【
図62】本明細書に開示されたとおりの、実施例7に説明されたコンタクトレンズの実施形態D7についての、仮想網膜モデルのオン細胞およびオフ細胞経路から得られた出力スパイク列を示す図である。オン細胞およびオフ細胞から得られたスパイク列は、上下のサブグラフとして表される。グラフのY軸は離散的なニューロン束を表し、X軸はミリ秒での時間を表す。グラフの暗い部分はスパイクを表し、白い部分はスパイクがないことを表す。
【
図63】本明細書における実施例7に説明されるとおりの、コンタクトレンズの実施形態D7について得られた、仮想網膜モデルのオン細胞(上)およびオフ細胞(下)経路からの、時間の関数としての平均スパイク率を示す図である。
【
図64】本明細書における実施例7に説明されるとおりの、6mmの瞳孔径において評価した、対照コンタクトレンズC7とコンタクトレンズの実施形態D7とのオン軸変調伝達関数を示す図である。
【
図65】本明細書における実施例7に説明されるとおりの、7.5度の画角および6mmの瞳孔径において評価した、対照コンタクトレンズC7とコンタクトレンズの実施形態D7とのオフ軸変調伝達関数を示す図である。
【
図66】縮尺通りではない、本明細書に開示された格子状パターンとして配置された非屈折性特徴を有する例示的な眼鏡レンズの実施形態と、先行技術の眼鏡レンズとの正面図である。
【
図67】先行技術の単焦点コンタクトレンズで矯正した-3Dの近視モデル眼に、可視波長(たとえば、555nm)およびバージェンス0Dの入射光を入射したときの、オン中心/オフ周囲およびオフ中心/オン周囲網膜回路によって記録された理論上の網膜神経節細胞活性の模式図である。
【
図68】本明細書に開示されるコンタクトレンズの実施形態の1つで矯正した-3Dの近視モデル眼に、可視波長(たとえば、555nm)およびバージェンス0Dの入射光を入射したときの、オン中心/オフ周囲およびオフ中心/オン周囲網膜回路によって記録された理論上の神経節細胞活性の模式図である。
【
図69】本明細書に開示されたとおりの、縮尺通りではない、6つの放射アームを有する渦巻き配置の点状の非屈折性特徴を有する例示的な眼鏡レンズの実施形態の正面図である。
【
図70】本明細書に開示されたとおりの、実施例8に説明された対照眼鏡レンズC8についての、仮想網膜モデルのオン細胞およびオフ細胞経路から得られた出力スパイク列を示す図である。オン細胞およびオフ細胞から得られたスパイク列は、上下のサブグラフとして表される。グラフのY軸は離散的なニューロン束を表し、X軸はミリ秒での時間を表す。グラフの暗い部分はスパイクを表し、白い部分はスパイクがないことを表す。
【
図71】本明細書における実施例8に説明されるとおりの、対照眼鏡レンズC8について得られた、仮想網膜モデルのオン細胞(上)およびオフ細胞(下)経路からの、時間の関数としての平均スパイク率を示す図である。
【
図72】本明細書に開示されたとおりの、実施例8に説明された、眼鏡レンズの実施形態D8についての、仮想網膜モデルのオン細胞およびオフ細胞経路から得られた出力スパイク列を示す図である。オン細胞およびオフ細胞から得られたスパイク列は、上下のサブグラフとして表される。グラフのY軸は離散的なニューロン束を表し、X軸はミリ秒での時間を表す。グラフの暗い部分はスパイクを表し、白い部分はスパイクがないことを表す。
【
図73】本明細書における実施例8に説明されるとおりの、眼鏡レンズの実施形態D8について得られた、仮想網膜モデルのオン細胞(上)およびオフ細胞(下)経路からの、時間の関数としての平均スパイク率を示す図である。
【
図74】本明細書における実施例8に説明されるとおりの、6mmの瞳孔径において評価した、対照眼鏡レンズC8と眼鏡レンズの実施形態D8とのオン軸変調伝達関数を示す図である。
【
図75】本明細書における実施例8に説明されるとおりの、10度の画角および6mmの瞳孔径において評価した、対照眼鏡レンズC8と眼鏡レンズの実施形態D8とのオフ軸変調伝達関数を示す図である。
【
図76】本明細書に開示されたとおりの、縮尺通りではない、格子配置の線状または筋状の非屈折性特徴を有する例示的な眼鏡レンズの実施形態の正面図である。
【
図77】本明細書に開示されたとおりの、実施例9に説明された対照眼鏡レンズC9についての、仮想網膜モデルのオン細胞およびオフ細胞経路から得られた出力スパイク列を示す図である。オン細胞およびオフ細胞から得られたスパイク列は、上下のサブグラフとして表される。グラフのY軸は離散的なニューロン束を表し、X軸はミリ秒での時間を表す。グラフの暗い部分はスパイクを表し、白い部分はスパイクがないことを表す。
【
図78】本明細書における実施例9に説明されるとおりの、対照眼鏡レンズC9について得られた、仮想網膜モデルのオン細胞(上)およびオフ細胞(下)経路からの、時間の関数としての平均スパイク率を示す図である。
【
図79】本明細書に開示されたとおりの、実施例9に説明された、眼鏡レンズの実施形態D8についての、仮想網膜モデルのオン細胞およびオフ細胞経路から得られた出力スパイク列を示す図である。オン細胞およびオフ細胞から得られたスパイク列は、上下のサブグラフとして表される。グラフのY軸は離散的なニューロン束を表し、X軸はミリ秒での時間を表す。グラフの暗い部分はスパイクを表し、白い部分はスパイクがないことを表す。
【
図80】本明細書における実施例9に説明されるとおりの、眼鏡レンズの実施形態D9について得られた、仮想網膜モデルのオン細胞(上)およびオフ細胞(下)経路からの、時間の関数としての平均スパイク率を示す図である。
【
図81】本明細書における実施例9に説明されるとおりの、5mmの瞳孔径において評価した、対照眼鏡レンズC9と眼鏡レンズの実施形態D9とのオン軸変調伝達関数を示す図である。
【
図82】本明細書における実施例9に説明されるとおりの、10度の画角および5mmの瞳孔径において評価した、対照眼鏡レンズC9と眼鏡レンズの実施形態D9とのオフ軸変調伝達関数を示す図である。
【
図83】本明細書に開示されたとおりの、縮尺通りではない、ランダム配置の線状または筋状の非屈折性特徴を有する例示的な眼鏡レンズの実施形態の正面図である。
【
図84】本明細書に開示されたとおりの、実施例10に説明された対照レンズC10についての、仮想網膜モデルのオン細胞およびオフ細胞経路から得られた出力スパイク列を示す図である。オン細胞およびオフ細胞から得られたスパイク列は、上下のサブグラフとして表される。グラフのY軸は離散的なニューロン束を表し、X軸はミリ秒での時間を表す。グラフの暗い部分はスパイクを表し、白い部分はスパイクがないことを表す。
【
図85】本明細書における実施例10に説明されるとおりの、対照眼鏡レンズC10について得られた、仮想網膜モデルのオン細胞(上)およびオフ細胞(下)経路からの、時間の関数としての平均スパイク率を示す図である。
【
図86】本明細書に開示されたとおりの、実施例10に説明された、眼鏡レンズの実施形態D10についての、仮想網膜モデルのオン細胞およびオフ細胞経路から得られた出力スパイク列を示す図である。オン細胞およびオフ細胞から得られたスパイク列は、上下のサブグラフとして表される。グラフのY軸はニューロン束を表し、X軸はミリ秒での時間を表す。グラフの暗い部分はスパイクを表し、白い部分はスパイクがないことを表す。
【
図87】本明細書における実施例10に説明されるとおりの、眼鏡レンズの実施形態D10について得られた、仮想網膜モデルのオン細胞(上)およびオフ細胞(下)経路からの、時間の関数としての平均スパイク率を示す図である。
【
図88】本明細書における実施例10に説明されるとおりの、4mmの瞳孔径において評価した、対照眼鏡レンズC10と眼鏡レンズの実施形態D10とのオン軸変調伝達関数を示す図である。
【
図89】本明細書における実施例10に説明されるとおりの、10度の画角および4mmの瞳孔径において評価した、対照眼鏡レンズC10と眼鏡レンズの実施形態D10とのオフ軸変調伝達関数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
近視の進行速度を遅らせるために利用可能な光学的解決策は、網膜画像特性の何らかの形態の光学的操作、たとえば同時デフォーカス、正の球面収差、光学ゾーンの中心および/または周囲における正の屈折力、または焦点深度を拡張するためのより高次の収差を利用するレンズなどを含む。
【0066】
こうした光学設計の弱点の1つは、それらが視覚の質に妥協するということである。レンズ装着の適合性がこうしたレンズの効力に与える影響を考慮すると、視覚性能の顕著な低下は、低い適合性を促し、したがってより低い効力をもたらす可能性がある。
【0067】
したがって必要とされるのは、眼用レンズ内の屈折力の操作に関連する視覚障害を引き起こさない、近視の矯正および進行の遅延のための設計である。現在の開示は、停止信号として光学的デフォーカスを使用しない、近視の進行を遅延させるための代替的な非屈折法を提案する。本開示の実施形態は、エッジまたは光コントラストプロファイルを網膜画像に人工的に導入することによって近視の進行を遅らせるための代替的な方法を提案する。いくつかの実施形態は、現在の開示のレンズを通じて網膜に投影される画像に、光コントラストプロファイルの時空間的変動をさらに導入し、それによって全体的な網膜活性を高め、その結果、さらなる眼球の成長が抑制され得る。本開示の1つ以上の実施形態は、網膜に入射する光プロファイルの空間的および/または時間的変化に対して優先的応答を生成する網膜神経節細胞の中心-周囲アーキテクチャに依拠する。
【0068】
このセクションにおいて、本開示は、1つ以上のコンタクトレンズまたは1つ以上の眼鏡の実施形態を参照して詳細に説明され、いくつかの予期される実施形態は添付の図面によって例示および支持される。いくつかのコンタクトレンズおよび眼鏡レンズの実施形態は、説明のために提供されるものであり、本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0069】
以下の説明は、本開示の共通の特性および特徴を共有し得るいくつかのコンタクトレンズおよび眼鏡レンズの実施形態に関連して提供される。1つの実施形態の1つ以上の特徴は、追加の実施形態を構成し得る任意の他の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わされてもよいことが理解されるべきである。本明細書に開示された機能的および構造的情報は、いかなる意味でも限定的に解釈されるべきものではなく、単に、開示された実施形態およびそれらの実施形態の変形をさまざまなやり方で使用することを当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。詳細な説明のセクションで使用されるサブタイトルおよび関連する主題の見出しは、読者の参照を容易にするためにのみ含まれており、決して本開示全体を通じて説明される主題または本開示の請求項を限定するために使用されるべきではない。サブタイトルおよび関連する主題の見出しは、請求項の範囲または請求項の限定を解釈する際に使用されるべきではない。
【0070】
近視または進行性の近視の発達のリスクを有する個人を特定するために使用可能であると報告されてきたいくつかの技術は、以下の要因、すなわち遺伝、民族、生活様式、環境、過度の近くの作業などのうちの1つ以上に関する問い合わせを含む。本開示の特定の実施形態は、近視または進行性の近視の発達のリスクを有すると特定された人に向けられる。現在までに、眼球の成長速度を制御するため、または近視の進行を遅らせるための多数の光学設計が提案されてきた。これらの設計のいくつかは、基本処方に関連するある程度の相対的な正の屈折力を使用することを特徴とする。こうした光学原理に基づく設計は、視覚の質の顕著な低下を招く。レンズ装着の適合性が効力に及ぼす影響を考えると、視覚性能の顕著な低下は、適合性の低下を促し、その結果としてより不十分な効力がもたらされる可能性がある。
【0071】
本開示の実施形態は、網膜神経節細胞活性を増加させることによって、近視の進行速度を抑制または減速させるのに役立つように設計された、その他の部分は単焦点の眼用レンズの光学ゾーン内に意図的に構成された非屈折性特徴の効果を利用する光学設計に関するものである。
【0072】
人間の視覚系は、オンおよびオフ網膜チャネルまたは経路に組織化されている。網膜神経節細胞は、オン中心/オフ周囲双極細胞またはその反対に組織化される円形受容野を有し、その作用は
図1および
図2に簡潔に説明されている。
【0073】
複雑な網膜神経節細胞回路は、視覚入力シーンの入射光に含まれる時空間情報を、視神経繊維を形成する網膜神経節細胞の軸索によって視覚野に伝達されるスパイク列および活性パターンに変換することを助ける。
【0074】
網膜神経節細胞の2つのグループである大細胞および小細胞は、網膜で捕らえられた入射光信号に対する異なるタイプの応答を助ける。大細胞および小細胞によって伝達される情報は、互いに並行かつ独立している。
【0075】
大細胞性経路または過渡経路は、入射光信号の時間的特徴、たとえば入力シーン内の動き、変化、および開始などを捕らえる一方で、小細胞性経路または持続経路は、入射光信号の空間的特徴、たとえば入力シーン内のパターンおよび形状などを捕らえる。
【0076】
大細胞性経路は、大きな受容野、短い遅延を有し、高速伝導性軸索を使用して過渡的なやり方で応答する。他方で小細胞性経路は、より小さい受容野、長い遅延を有し、低速伝導性軸索を使用して持続的なやり方で応答する。大細胞性経路によって捕らえられた相対的な変化の事象と、小細胞性経路によって捕らえられたグレーレベルの持続的な画像フレームとは、視覚シーンの2つの高度に直交する表現である。
【0077】
眼球成長の調節が全体的ではなく局所的に調整されるとすると、大細胞性経路は、少なくとも一部の個人について、眼球成長の調節または眼球成長の恒常性の調節に関与している可能性がある。言い換えると、局所的な相対的変化に関する情報を含有する大細胞性の網膜神経節細胞は、転写可能な視覚シーン内の動的または時間的なコントラストを、成長オン信号または成長オフ信号に符号化する能力を提供する。
【0078】
視覚シーンの時空間コントラストの増加は、網膜神経節細胞活性にスパイクまたは短期間の増加を導入する可能性があり、網膜神経節細胞活性が大きくなるほど、眼に対する成長抑制信号が高くなる。網膜受容野回路の構造により、以下の2つの条件は網膜神経節細胞を興奮させない。(a)明確なエッジのない、均質に照明された網膜シーン(すなわち視覚シーンに空間的コントラストがないこと)、または(b)あまりにも長時間シーンの変化がないこと(すなわち時間的コントラストがないこと)。網膜神経節細胞の興奮が低いほど発火活性が低下し、それは網膜活性が全体的に低下することを示し、網膜の不活性が大きいほど成長抑制信号が低下し、結果的にさらなる眼球成長がもたらされる。オン受容野活性およびオフ受容野活性の時間積分における相対的な差が、さらなる眼球成長を決定する。
【0079】
本開示は、不活性な網膜が眼球成長を引き起こし、活性な網膜が成長を抑制するか、または停止信号を引き起こすことを前提とする。本開示はさらに、先行技術の標準的な単焦点コンタクトレンズもしくは眼鏡レンズ、および/または空間的に均一な視覚画像が、網膜をベースライン状態(すなわち、網膜神経節細胞のベースラインまたは定常的発火パターン)のままにすることによって、さらに近視をもたらすさらなる眼球成長を促進する、均質で実質的にエッジのない視覚画像に寄与することを予期している。
【0080】
図1は、本開示の1つ以上の実施形態を説明するために用いられる、オン中心オフ周囲型およびオフ中心オン周囲型の網膜受容野の作用を示す。
【0081】
図1の第1列および第3列は、理論上の刺激提示の以下の4つの場合を強調したものである。(a)網膜受容野全体に光がない(101および111);(b)網膜受容野の中心領域に光がないが、周囲は完全に点灯している(102および112);(c)網膜受容野の周囲領域に光がないが、中心領域は完全に点灯している(103および113);ならびに(d)網膜受容野の中心および周囲領域の両方が完全に点灯している(104および114)。第2列および第4列は、
図1(a)~1(d)に開示されたさまざまな対応する刺激条件に対する経時的な発火活動電位を示す。
【0082】
たとえば、オン中心オフ周囲網膜受容野(すなわち
図1の最初の2列)を考えるとき、光刺激がない場合(101)、網膜神経節細胞はベースライン率で発火する(106)。光がオフ周囲領域のみに落射し(102)、オン中心領域には落射しない場合、ベースライン発火は刺激期間の間抑制される(107)。
【0083】
光スポットがオン中心ゾーンに一致するとき(103)、網膜神経節細胞の発火率は最大である(108)。光の円が拡大し、オン中心野とオフ周囲野との両方をカバーする(104)と、発火パターンはその最大から減少し、基本発火率に近づく(109)。
【0084】
オフ中心オン周囲受容野(すなわち
図1の最後の2列)を考えるとき、光刺激がない場合(111)、網膜神経節細胞はベースライン率で発火する(116)。
【0085】
光がオン周囲領域のみに落射し(112)、オフ中心領域には落射しない場合、網膜神経節細胞の発火率は最大である(117)。光スポットがオフ中心ゾーンに一致するとき(113)、ベースライン発火は刺激期間の間抑制される(118)。光の円が拡大し、オフ中心野とオン周囲野との両方をカバーする(114)と、発火パターンはその最大から減少し、ベースライン発火率に近づく(119)。当業者に認識され得るとおり、
図1の例示は理論上の最良ケースのシナリオであり、ベンチトップの実験室での実験以外の現実生活のシナリオでは再現が困難なことがある。
【0086】
図2は、異なる刺激条件を受けたときの、オン中心オフ周囲網膜受容野の発火パターンの別のグラフ図である。
図2の上半分は、受容野が遭遇し得るエッジ(206)検出シナリオのいくつかを示す、次の5つの異なる光刺激条件を示す。(i)受容野全体がエッジの暗部にある場合(201);(ii)周囲部の一部がエッジの明側にあり、中心部およびオフ周囲ゾーンの残りの部分がまだエッジの暗部にある場合(202);(iii)オフ周囲領域およびオン中心領域の一部がエッジの明側にあり、オン中心領域およびオフ周囲領域の大部分がエッジの暗パッチにある場合(203);(iv)オン中心領域のすべてがエッジの明側にあり、オフ周囲領域のいくらかがエッジの暗側にある場合(204);および最後に(v)受容野全体がエッジの明側にある場合(205)。
【0087】
図2の下半分は、受容野が経時的に遭遇する可能性のある5つの異なるエッジ検出シナリオ(201~205)に対する神経節細胞の発火活動電位を示している。たとえば、受容野全体がエッジの暗部にある場合(201)、神経節細胞の発火率は、
図2の二重の黒実線で示された基本率である。オフ周囲領域の一部がエッジの明側にあり、オン中心がまだエッジの暗側にある場合(202)、神経節細胞の発火率は基本率よりも低く抑制される。オフ周囲領域とオン中心領域との一部がエッジの明側に向かって移動するとき(203)、発火率は基本率に戻る。中心領域全体がエッジの明側にあり、周囲部のいくらかが暗側にあるとき(204)、発火率はピークに達する。
【0088】
最後に、受容野全体がエッジの明側にある場合(205)、発火率は基本率に接近するように低下するが、基本率よりわずかに高い範囲にある。受容野の周囲は、視細胞によって放出されるグルタミン酸の量にも影響を与える。周囲野が暗いとき、この領域にある視細胞は、脱分極してより多くのグルタミン酸を放出することとなる。
【0089】
光がオン中心領域に落射する一方でオフ周囲の少なくともある部分が相対的な暗闇を経験する場合、周囲野にある視細胞に接続された水平細胞は、グルタミン酸に応答して脱分極し、自身の抑制性神経伝達物質を放出して、中心視細胞がグルタミン酸の放出をより少なくするように中心視細胞をさらに抑制する。この状況は、網膜神経節細胞の発火活動電位の最高の応答を生じる。周囲部に光があるときには全く逆のことが起こる。視細胞は周囲部において過分極するため、より少ないグルタミン酸を放出する。
【0090】
周囲野の視細胞に接続された水平細胞は、応答において過分極し、自身の抑制性神経伝達物質をより少なく放出し、それによって生じる抑制性応答が少なくなるため、中心視細胞は抑制されずにさらに多くのグルタミン酸を放出し得るようになる。これは、オフ中心神経節受容野における最高の応答を生じる状況である。
【0091】
仮想網膜モデル
当業者に認識され得るとおり、
図2の例示は、多様なオンチャネルおよびオフチャネル網膜野の作用モデルの理論上のシナリオであり、それらは個々の眼によって経験される典型的な現実生活シナリオを反映しないことがある。さまざまな現実生活のテストケースに対する適切性を示すために、仮想網膜シミュレーションプラットフォームを使用して、さまざまな実施形態の作用を示している。使用した仮想網膜プラットフォームの動作原理および技術フレームワークを本明細書において説明する。
【0092】
仮想網膜プラットフォームは、入力として時間的シーケンスを含む網膜画像のセットを使用し、それらを網膜の全体的活性を表すスパイク列または動作電位のセットの出力に変換するように構成される。本質的に、入来する視覚シーンに対する空間的および/または時間的変化に対する優先的な応答を提供する神経節細胞の中心-周囲アーキテクチャのエッジ検出能力が本明細書において用いられた。広視野網膜画像のエミュレーションを微調整して現実生活シナリオを模倣するために、仮想網膜プラットフォームのフレームワーク内のいくつかの変数を調整することができる。
【0093】
以下の科学論文に記載された網膜回路および神経生理学に関するいくつかの情報が、本明細書において開示される発明を実行するために必要である。ここで、ワン(Wang)、アレマン(Aleman)、およびシェーファー(Schaeffel)によって書かれ、2019年6月にインベスティゲーティブ・オフサルモロジー・アンド・ビジョン・サイエンス(Investigative Ophthalmology and Vision Science)誌にて出版された「近視の発達を抑制するための人工的な動的オン刺激またはオフ刺激の有効性の調査(Probing the potency of Artificial Dynamic On- or Off- stimuli to inhibit myopia development)」と題する科学雑誌論文は、その全体が本明細書において参照される。ウォーラー(Wohrer)およびコーンプロブスト(Kornprobst)によって書かれ、2009年にジャーナル・オブ・コンピューテーショナル・ニューロサイエンス(Journal of Computational Neuroscience)にて出版された「仮想網膜:コントラストゲイン制御を有する生物学的網膜モデルおよびシミュレータ(Virtual Retina:A biological retina model and simulator,with contrast gain control)」と題する別の論文は、その全体が本明細書において参照される。加えて、著者セサック(Cessac)、コーンプロブスト、クラリア(Kraria)、ナサー(Nasser)、パンプローナ(Pamplona)、ポーテリ(Portelli)、およびビエブル(Vieville)によって書かれ、2017年にフロンティアズ・オブ・ニューロインフォマティクス(Frontiers of Neuroinformatics)誌にて出版された「網膜の解析およびシミュレーションのための新たなプラットフォーム(A New Platform for Retinal Analysis and Simulation)」と題する別の科学論文も、その全体が本明細書において参照される。
【0094】
理想的には、仮想網膜プラットフォームのためのソース入力網膜画像は、個人が本明細書で開示される企図される実施形態の1つを装着したときに得られる、個々の人間の網膜に形成される画像に近い表現であるべきである。実際の網膜画像にはアクセスできないので、予期される画像の作用は、開示された実施形態に適合した模式的モデル眼を用いて模倣でき、または代替的に、本明細書において開示される実施形態に適合した物理的モデル眼を用いて画像を得ることができる。
【0095】
現在の開示は、屈折異常症の模式的モデル眼の範囲が本明細書で開示される実施形態の範囲に適合されるときに、さまざまな対象の仮想網膜画像を得るために、高度の光線追跡および模式的モデル化を広く利用する。他の実施形態に対して、開示された実施形態の作用を示すために、物理的またはベンチトップモデル眼の使用を含む代替的なアプローチを検討してもよい。仮想網膜処理の確立されたモデルは、本開示のさまざまな眼用レンズ実施形態の作用を説明するために用いられた。
図3は、本明細書で開示されるさまざまな実施形態の内部作用を説明するためのプラットフォームとして使用された仮想網膜モデルの全体的な構造の流れ図を表す。このモデルは、「仮想網膜:コントラストゲイン制御を有する生物学的網膜モデルおよびシミュレータ(Virtual Retina:A biological retina model and simulator,with contrast gain control)」と題する査読論文として発表されたウォーラーおよびコーンプロブストの研究を適合させたものである。
【0096】
提案された仮想網膜モデルの3層アーキテクチャ(
図3)は、視覚シーンにおいて存在する入来信号を漸進的に伝達して変換する、逐次的連続的な時空間マップを容易にする。入来する網膜信号は、L(x,y,t)の光度プロファイルを有し、ここで輝度は、ある時点(t)における網膜の空間的に分離された点または画素(x,y)ごとに定義される。本開示の実施形態を説明するために用いられるすべてのシミュレーションについて、入力視覚シーンがデジタル化されて、8ビットのグレーレベルを表す0~255の間の強度を有した。しかし、10ビット、または12ビット、または16ビットのグレーレベルを表す0~1023、または0~4095、または0~65535の間の強度を有する入力画像の使用も、本開示の他の実施形態の有用性を示すために用いられてもよい。仮想網膜細胞の後続の層は、本明細書において説明される数式のセットによって駆動される空間的連続体としてモデル化される。
【0097】
図3のチャートに示されるとおり、仮想網膜モデルの第1の段階は、視細胞および水平細胞を含む外網状層における入力信号の処理を含む。第1の段階において、本明細書において参照されるウォーラーおよびコーンプロブストの教示に基づく単純な時空間線形フィルタを用いて、入力シーケンスL(x,y,t)を視細胞中心応答C(x,y,t)および水平周囲細胞の応答S(x,y,t)に分解する。さらに、応答C(x,y,t)およびS(x,y,t)を外網状層フィルタにおいて使用してバンドパス興奮電流I
OPL(x,y,t)を定義し、次いでモデルの第2の段階において、そのバンドパス興奮電流が双極細胞に与えられる。瞬時非線形コントラストゲイン制御が、可変フィードバックゲートシャントコンダクタンスg
A(x,y,t)を用いる双極層V
BP(x,y,t)に適用されて、興奮電流I
GANG(x,y,t)をもたらす。第3の段階において、雑音積分および発火細胞モデルを支配する等式の離散集合が、I
GANG(x,y,t)を、網膜神経節細胞活性を測定するために用いられるスパイク列へと変換することを助ける。スパイクは、1対1接続を用いるか、または代替的に、受け取った興奮電流のシナプスプーリングを用いてモデル化できる。
【0098】
網膜の層で発生する信号変換を近似するために、複数の線形フィルタがモデルの異なる段階で使用される。現実世界への適合性を維持しながら、計算の複雑さを単純化して、大きな計算の非効率性を最小化するために、本開示の実施形態の作用を説明するためのモデルにおいていくつかの仮定がなされる。
【0099】
本開示は、実施形態の作用を説明するための仮想網膜モデルに限定されず、設計または検証のための開示されたモデルおよび代替的モデルに対する修正形の使用は、本発明の範囲内であるとみなされる。外網状層において発生する仮想網膜モデルの第1の段階において、視細胞C(x,y,t)および水平細胞S(x,y,t)から双極細胞が受け取った、もたらされる電流IOPL(x,y,t)は以下のとおりに得られる。
【0100】
【0101】
式1において、C(x,y,t)は、視細胞に関連する中心信号を表し、S(x,y,t)は、水平細胞に関連する周囲信号を表す。光伝達プロセスは、指数関数的時間ローパスカーネルEτSを有する部分的過渡的線形カーネルカスケード、および部分的過渡的フィルタTωU,τUによって変調されたガンマ指数関数カスケードEηC,τCとしてモデル化される。
【0102】
式2における記号Cは中心信号に対するカーネル演算を表し、Uはアンダーシュートを表し、式3におけるSは周囲信号に対するカーネル演算を表す。式2における関数GσCは、視細胞間のギャップ接合の空間的ボケを包含する。
【0103】
式3における関数GσCは、水平細胞間の結合ギャップ接合の空間的ボケを包含する。式2および3における記号
【0104】
【0105】
は時間的畳み込みを示し、一方、記号
【0106】
【0107】
は空間的畳み込みを示す。記号は以後、この開示において、時間的畳み込みおよび空間的畳み込みを示すために用いられる。定数λOPLは、中心-周囲フィルタの全体ゲインであり、一方wOPLは、中心信号および周囲信号の相対的な重みである。
【0108】
仮想網膜モデルの第2の段階におけるコントラストゲイン制御演算は、網膜の電気的信号伝達特性に対する視覚入力シーンの局所コントラストの影響を記述し、それは本質的に非線形かつ動的である。双極細胞のレベルでの非線形フィードバックループに基づくコントラストゲイン制御は、以下のとおり記述できる。
【0109】
【0110】
式4、5、および6において、gAは、静的関数QVBPを用いて活性化することができる双極細胞の膜における可変リークを表す。リークは、VBPの開法(evolution)に対するgAの分割的効果によって、このレベルでの電流積分のゲインを決定する。このモデルにおいて、gAは、時間的スケールτAおよび空間的広がりσAとともに双極細胞によって考慮される値に動的に依存する。
【0111】
仮想網膜モデルの第3の段階は、双極細胞の活性から網膜神経節細胞のスパイク列を生成することを含む。双極信号VBPは整流され、追加の時空間的整形を受けて、式7および8に記述される神経節細胞に対する興奮電流IGANG(x,y,t)を生成する。
【0112】
【0113】
ウォーラーおよびコーンプロブストによって提案されたモデルは、双極細胞から中心-周囲神経節細胞電流への遷移における信号整形をモデル化するために経験式を用いた。これらのモデルは、本明細書において開示される1つ以上の実施形態の作用を実証するために適合された。
【0114】
そのモデルは、式7および8に記述される代替の生物学的に妥当なモデルから期待される応答の関数的再現における多様性を可能にする、いくつかの変数の使用を提案する。パラメータεは2つの入力値-1および+1を取り、ここで負の値はオフ神経節細胞活性を表し、正の値はオン神経節細胞活性の表現を可能にする。
【0115】
双極層信号は静的非線形関数N(V)を用いて整流され、ここでパラメータλGおよび
【0116】
【0117】
は減少した電流の次元を有し、一方、
【0118】
【0119】
は神経節細胞の線形閾値である。いくつかの追加のモデルが、マスモウディ(Masmoudi)、アントニーニ(Antonini)、およびコーンプロブストによって、シグナル・プロセシング:イメージ・コミュニケーション(signal processing:Image Communication)誌の28巻(2013)にて出版された「眼を通じた画像のストリーミング:ディザースケーラブル画像コーダとして見た網膜(Streaming an image through the eye:the retina seen as a dithered scalable image coder)」と題する論文で提案され、この論文はその全体が本明細書に組み込まれる。IGANG(x,y,t)から雑音リーク-積分-発火ニューロン(nLIF:noisy leaky-integrate-and-fire neurons)のアレイが、出力スパイクのセットを生成する。実際の網膜では、電気信号の付加的な複雑な変換が起こり、それは双極細胞、無軸索細胞、および神経節細胞の間のシナプス相互作用の場である内網状層のシナプス構造によって促進される。
【0120】
本開示の実施形態の効果を実証するためのモデル化の目的のために、いくつかの例では、計算効率の代わりに無軸索細胞および双極細胞の間の複雑なシナプス関係は無視される。
【0121】
いくつかの他の例では、本明細書に開示されるとおり、水平細胞と双極細胞との間、無軸索細胞と双極細胞との間の相互作用の複雑さのうちの1つ以上が考慮される。本開示の企図された眼用レンズの実施形態の作用を記述するために、外網状層および内網状層の相互作用のさまざまな他の妥当な組み合わせを含むようにモデルをさらに拡張することは、本発明の範囲内とみなされる。
【0122】
連続信号IGANG(x,y,t)をスパイク列の離散集合に変換することは、以下に記述されるとおりの標準的なnLIFモデルを用いて細胞の出力から得られる。
【0123】
【0124】
標準的なnLIFモデルは、閾値に達したときにスパイクとなり、すなわち(Vn)(t)=1であり、不応期には(Vn)(t)=0となる。ここで(ηυ)(t)は、実際の神経節細胞における変動性を再現するためにスパイク発生プロセスに加えることができる雑音ソースである。
【0125】
網膜神経節細胞層のスパイクを模倣するため、仮想網膜が、相対的な生物学的妥当性および適応できる程度の複雑性を提供する以下のパラメータを用いるモデルにおいて定義された。
図4の以下の例は、本明細書において説明される特定の具体的な網膜パラメータによって構成された、本開示の段落[0091]~[0124]に説明された仮想網膜モデルの有効性を確立するものである。
【0126】
この例において、各々が512×512画素の次元を有する一連の50画像フレームが、仮想網膜モデルのための入力ソースとして働くための画像モンタージュとして構成された。映像入力ストリームの奇数フレームは暗背景上の中心円形明領域(401)からなる一方、偶数フレームは白背景上の中心円形暗領域(402)で構成された。
【0127】
この例において、各フレームが50ミリ秒間提示されるように構成されて、仮想網膜モデルに対する2.5秒の実時間刺激提示が構成された。映像入力ストリームの奇数および偶数フレームの両方について、中心円形領域の直径は、0.5°の中心窩の視角に等価である約50画素となるように構成された。入力ストリームにおける各画素のビット深度は、0~255(すなわち8ビット)の範囲にデジタル化された。映像入力ストリームの視角は、各フレームがモデル網膜の中心窩領域上の約5°×5°に対するように構成された。
【0128】
2つのシミュレーションテスト条件を用いて、入力画像ストリームが仮想網膜上に提示されたときの網膜神経節細胞活性を計算した。シミュレーションは2つの異なる細胞極性であるオン細胞モードおよびオフ細胞モードにおいて実行された。網膜活性は、仮想網膜モデルの神経節細胞層から生じるスパイク活性によって測定された。各テスト条件に対するスパイク活性は、各束に対する平均ニューロンスパイク列、および時間の関数としての平均スパイク率を表す刺激前後ヒストグラム表現として表された。
【0129】
第1のテスト条件は、映像入力ストリームの中心が円形ニューロン束の中心と一致するように位置する1つのニューロン束(403)を含んだ。第2のテスト条件は7つの円形ニューロン束(404)を含み、これらは1つの束が映像入力ストリームの中心にあり、残りの6つの束は円周直径がモデル網膜の中心窩領域上の約2.5°×2.5°に対するような円周上に配置された、六角形パターンに位置していた。
【0130】
加えて、仮想網膜プラットフォームに対する作用を示すために、この例において、外網状層は、約1.5°(すなわち式2のσC)に対する中心領域と、約4.75°(すなわち式3のσS)に対する周囲領域とを有するように構成された。外網状層の中心および周囲の時間的スケールは約1ミリ秒に設定され、これは式2および3の変数τCおよびτSをそれぞれ表す。本明細書における式1に記述されるとおりの、積分中心-周囲信号を支配する変数は、w0PL=1およびλ0PL=10となるように選択された。
【0131】
図4のこの例において検討された入力画像刺激特性の単純さが与えられたことによって、スパイク列およびスパイク率解析を計算するときに、コントラストゲイン制御機構に対するオプションと無軸索細胞の横方向の接続性とが消された。ウォーラーおよびコーンプロブストから双極細胞および神経節細胞シナプスの静的非線形性係数が適合され、ここで双極線形閾値が0に設定され、一方で線形閾値は80にて一定に保持され、双極増幅値は100にて保持された。
【0132】
ニューロンモデルに対する値もウォーラーおよびコーンプロブストから適合され、ここでは
図4、5、および6において説明される例に対して0.75のリーク、20のニューロン雑音、150の膜容量、および2.4の発火閾値が考慮された。シナプス後プーリング変数シグマは無視された。
【0133】
本開示の1つ以上の眼用レンズの実施形態の作用を示すため、双極細胞および神経節細胞シナプスの静的非線形性係数は、
図4の例に用いられるものとは異なっていてもよい。たとえば、いくつかの実施形態において、双極線形閾値は少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、または少なくとも15であってもよい。
【0134】
本開示の1つ以上の眼用レンズの実施形態の作用を示すため、線形閾値は、少なくとも30、少なくとも60、少なくとも90、または少なくとも120の一定値であってもよい。本開示の1つ以上の眼用レンズの実施形態の作用を示すため、双極増幅値は少なくとも50、少なくとも75、少なくとも125、または少なくとも150であってもよい。
【0135】
本開示の1つ以上の眼用レンズの実施形態の作用を示すため、ニューロンモデルのリークは、少なくとも0.25、少なくとも0.5、少なくとも1、または少なくとも1.25の値に設定されてもよい。本開示の1つ以上の眼用レンズの実施形態の作用を示すため、ニューロン雑音は、少なくとも10、少なくとも25、または少なくとも50に設定されてもよい。
【0136】
本開示の1つ以上の眼用レンズの実施形態の作用を示すため、ニューロンの発火閾値は、少なくとも1.2、少なくとも2.4、または少なくとも3.6に設定されてもよい。
【0137】
本開示のコンタクトレンズおよび眼鏡レンズの実施形態についての作用を説明するために用いられるさまざまな他の実施形態例において、本明細書において説明されるとおり、式1~9に記載されるとおり、異なる程度の複雑さによってさまざまな構成が企図されてもよい。実施例1~7のコンタクトレンズの実施形態の各々のシミュレーションに用いられる具体的な構成設定が以下のセクションにおいて説明される。
【0138】
開示された実施形態の非屈折性特徴
オンチャネルおよびオフチャネルへの網膜経路の配置のため、時間領域においては、網膜ニューロンは、主に視覚シーン内で急速に増加する輝度(オン細胞)または減少する輝度(オフ細胞)に対して応答する。空間領域において、網膜受容野は、中心オンおよび周囲オフ領域またはその逆の円形パターンに配置される。こうした網膜細胞の配置は、網膜回路の最適化された使用を可能にして、適切な空間および/または時間分解能を維持しながら所望の視覚処理を達成する。
【0139】
網膜面において捕らえられた視覚シーン内の空間的および/または時間的変動の決定的な不足は、網膜神経節細胞の不十分な興奮をもたらし、不十分な網膜活性、または不活性網膜、または不十分な活性の網膜は、眼球の成長を引き起こすと仮定される。本開示の特定の実施形態は、近視の発達または進行性近視のリスクがある人に向けられている。本開示の1つ以上の実施形態は、網膜全体にわたる明確なエッジ、時間的に変動する明確なエッジ、または空間光コントラストプロファイルか、または時間的に変動する空間光コントラストプロファイルの決定的な欠如が、自身のベースライン状態に近い網膜神経節細胞活性、言い換えれば実質的に不活性な網膜に寄与するのではないかという仮説に依拠する。
【0140】
すべての受容野の出力が積分され、視覚環境に対する相対的なオン入力強度およびオフ入力強度が反映される。オン受容野およびオフ受容野活性の時間的積分における相対的な差は、さらなる眼球の成長を決定すると仮定される。本開示は、不活性の網膜が眼球の成長を引き起こし、活性の網膜がその成長を抑制するか、または停止信号を引き起こすものと仮定する。
【0141】
本開示はさらに、先行技術の標準的な単焦点眼用レンズおよび/または空間的に均質な視覚画像が、網膜をベースライン状態(すなわち網膜神経節細胞のベースラインまたは一定の発火パターン)のままとし、よってより進んだ近視につながるさらなる眼球の成長を促進する、均質で実質的に空間的にエッジのない視覚画像に寄与することを予期する。
【0142】
以下の利点の1つ以上が、開示された光学デバイスおよび/または本明細書で開示される眼用レンズ設計の方法の1つ以上において見いだされる。眼用レンズまたは方法は、複数の非屈折性特徴を用いて、眼用レンズの上に企図された設計特徴を構成することによって、生成される網膜画像にエッジまたは強化された光空間コントラストプロファイルまたは強化された時間コントラストプロファイルを人工的に導入することによる網膜活性の増加に基づいて、眼球の成長速度を遅らせるか、または眼球の成長速度を停止させるか、または装着者の眼の屈折異常の状態の増加を停止させるための停止信号を提供する。
【0143】
コンタクトレンズの眼上の動きは、進行性近視の管理の有効性を増加させるための空間的および時間的に変動する停止信号を提供することによって、治療効果の強さをさらに増大させることができる。
【0144】
特定の他の実施形態は、デフォーカス、非点収差、または正の球面収差の光学操作のみに基づかないコンタクトレンズデバイスまたは方法に向けられており、これらはすべて装着者に対する潜在的な視覚性能劣化を受ける可能性がある。以下の例示的実施形態は、眼球の成長および近視の進行に対するオンおよびオフ視覚経路の選択的効果を利用できる眼用レンズを通る入射光を改変する方法に向けられる。
【0145】
以下の例示的実施形態は、視覚画像に非均質性を人工的に導入し、矯正された眼の網膜面における光コントラストプロファイル(すなわち人工的エッジ)を作成するかまたは増加させることによって、網膜上のオン経路の刺激による網膜神経節活性の増加を提供する眼用レンズを通る入射光を改変する方法に向けられる。これは、眼用レンズのその他の部分は単焦点の光学的ゾーン内の複数の開口、ゾーン、セグメント、または領域の実質的に不透明な境界を使用することによって達成されてもよい。
【0146】
要約すると、その他の部分は単焦点のコンタクトレンズまたは眼鏡レンズの光学的ゾーン内の企図された複数の開口、非屈折性領域、または非屈折性ゾーンを使用することによって、光がコンタクトレンズまたは眼鏡レンズを通過するときに、人工的に導入された空間的エッジプロファイルによって励起されるオンおよび/またはオフ経路を刺激することによって、網膜神経節細胞活性の増加を提供してもよい。
【0147】
さらに、単焦点コンタクトレンズまたは眼鏡レンズ内の興奮性ゾーン、非屈折性領域、または複数の開口のこの使用によって、本明細書に開示されるコンタクトレンズおよび眼鏡レンズの実施形態を使用して、眼球運動および/または瞼の瞬き動作によって補充される時間的コントラストの変動を提供してもよい。
【0148】
模式的な眼およびシミュレーション網膜画像
本明細書に開示される1つ以上の例示的実施形態の広視野シミュレーション網膜画像および広視野光学性能を計算するために、高度な模式的モデル眼が用いられてもよい。
【0149】
本開示の実施形態に対する作用をシミュレーションするために用いられる仮想網膜プラットフォームへの入力として働く網膜画像を得るために用いられる、模式的モデル眼の一般的な処方が以下の表1に提供される。表1に記載されるパラメータは、必ずしも本開示の実施形態により得られる説明された効果を示すものではない。これは本明細書で説明される仮想網膜プラットフォームによって実行される網膜処理の模倣を容易にするための、網膜画像を得る多くの方法のうちの1つであると考えられるべきである。たとえば、他の例示的実施形態においては、表1に記載されるモデル眼の代わりに、文献の他のモデル眼が用いられてもよい。用いられる模式的モデル眼の一般的なパラメータは、表1において示された処方に基づくものである。この例において、表1の一般的な処方は、非調整状態で構成された、任意の乱視を伴わない1Dの近視(Rx:-1D)を伴う距離屈折異常を有する模式的モデル眼を提供し、このモデル眼の距離処方は、6mmの瞳孔径および589nmの主波長で定義されたものである。
【0150】
【0151】
本明細書に開示されるさまざまな他の実施形態例において、本明細書に記載される他の眼用レンズの実施形態の性能を評価するために、さまざまな修正が考慮されてもよい。さらに、模式的モデル眼の個々のパラメータ、たとえば前角膜、後角膜、角膜厚、前水晶体、後水晶体、レンズ厚、眼球媒質の屈折率、網膜曲率、またはそれらの組み合わせなどは、乱視を伴うかまたは伴わないさまざまなレベルの近視において、ならびに緩和状態および調節状態のさまざまな近視眼のモデル化に対して、本開示の作用を示すために変更されてもよい。
【0152】
本開示のさまざまな実施形態を適合したときの模式的モデル眼を用いて広視野シミュレーション網膜画像を得るために、本明細書に開示されるとおり、視覚シーンから広角模式眼への非線形投影を考慮して、ソース画像ファイルを所望の視野にわたる点拡がり関数のアレイで畳み込んだ。1つ以上の実施形態で用いられる3つのソース画像ファイルが
図14、
図15、および
図16に示される。
図14の左部分に示される第1のソース画像は、白背景スクリーンに対する携帯電話のスクリーンディスプレイのソース画像ファイルであり、この携帯電話のスクリーンディスプレイはいくつかの判読可能な文字で構成され、ソースシーンの視角は50cmの視距離で15度の視野を捕らえるように構成された。
【0153】
図14は、非線形投影ルーチンを用いて広角模式眼の網膜に投影された広視野視覚シーン(1401)のソース画像ファイルを表しており、仮想網膜は、円形パターン(1402)に配置されたニューロン束によってモデル化される。白背景に対する携帯電話の広視野視覚シーン(1401)および仮想網膜(1402)を表すフレームは両方とも、さまざまな実施形態において網膜野の約5°、15°または20°に対するものである。
図15の左部分に示された第2のソース画像は、白背景スクリーンに対する別の携帯電話スクリーンディスプレイのソース画像ファイルであり、この携帯電話スクリーンディスプレイはいくつかの判読可能な文字で構成され、ソースシーンの視角は1メートルの視距離で15°の視野を捕らえるように構成された。
【0154】
図15は、非線形投影ルーチンを用いて広角模式眼の網膜に投影された広視野視覚シーン(1501)のソース画像ファイルを表しており、仮想網膜は、円形パターン(1502)に配置されたニューロン束によってモデル化される。白背景に対する携帯電話の広視野視覚シーン(1501)および仮想網膜(1502)を表すフレームは両方とも、さまざまな実施形態において網膜野の約5°、15°、または20°に対するものである。
図16の左部分に示された第3のソース画像ファイルは、8ビットのグレースケールのレナ画像のソース画像ファイルであり、レナ画像は、6メートルの視距離で5度または15度または20度の視野のいずれかに対する2つの変形に構成されることが可能であった。
【0155】
図16は、非線形投影ルーチンを用いて広角模式眼の網膜に投影された広視野視覚シーン(1601)のソース画像ファイルを表しており、仮想網膜は、円形パターン(1602)に配置されたニューロン束によってモデル化される。8ビットグレースケールで提示される標準レナテスト画像の広視野視覚シーン(1601)および仮想網膜(1602)を表すフレームは両方とも、さまざまな実施形態において網膜野の約5°、15°、または20°に対するものである。
【0156】
点拡がり関数のアレイは、改変された画像ファイルのすべての画素に対して補間される。各画素において、効果的な点拡がり関数が、改変されたソース画像ファイルで畳み込まれた。
【0157】
所望の視野における点拡がり関数を計算するために、本開示においてホイヘンスの原理が適用され、その理由は、計算効率の増加のためにしばしば使用されるフーリエ推定によって、比較的小さい非屈折性特徴のモデル化効果が妥協されることがあるためである。
【0158】
所望の視野にわたる点拡がり関数のアレイの計算は、回折および収差の効果を含む。結果として得られるシミュレーションされた網膜画像は、検出された歪みレベルを考慮して縮小および拡大される。シミュレーションされた網膜画像の明るさは、本明細書で開示される畳み込み演算のために考慮された入力ソース画像と同じピークの明るさを有するように中間出力画像を正規化することによって決定される。
【0159】
本開示のさまざまな実施形態において、仮想網膜画像のシミュレーションのために必要なさまざまなパラメータの設定は、個人によって経験され得るさまざま現実生活のシナリオを捕らえるために変更された。
【0160】
特定の実施形態において、網膜画像シミュレーションの精度が入力ソース画像の解像度によって制限されるため、エイリアシング効果によってしばしば明らかとなる出力画像の見かけ上の画素離散化を避けるために、512×512画素の入力画像解像度を少なくとも維持するよう十分な配慮がなされ、さらに必要であれば、比較的長い計算時間を犠牲にしてこうした影響を最小限にするために、入力ソースのオーバーサンプリングを考慮した。
【0161】
コンタクトレンズの実施形態
図7は、縮尺通りではない、例示的なコンタクトレンズの実施形態の正面図および断面図を示す。例示的なコンタクトレンズの実施形態の正面図はさらに、光学ゾーン(701)、レンズ直径(702)、および企図される設計の複数の非屈折性特徴(703)を示す。
【0162】
この例示的な例において、レンズ直径は約14mmであり、光学ゾーンは単焦点屈折力を実質的に伴って設計され、かつ約8mmの直径であり、非屈折性特徴は光学ゾーン内の複数の円形開口の境界の形態で配置され、かつ各々が約1mmの直径である。複数の円形開口の形態で配置されるこれらの非屈折性特徴(703)の境界は、完全に不透明から実質的に不透明の間であるように構成されてもよい。たとえば、この例において複数の円形開口の境界である非屈折性特徴の透過特性は、非屈折性特徴または境界に入射する光の>95%が吸収されるか、または透過されないように構成されてもよい。
【0163】
図7において企図される、複数の円形開口すなわち非屈折性特徴の境界の幅は、約50μm(704)である。この特徴を示し、かつその視認性を改善するために、その境界は、本明細書で開示されるコンタクトレンズのサイズに対して拡大されている。複数の開口内の透明な範囲を含む、企図される非屈折性特徴のない光学ゾーンの残りの部分は、装着者の基本処方と一致する単焦点設計を含む。
【0164】
図8は、縮尺通りではない、別の例示的なコンタクトレンズの実施形態の正面図および断面図を示す。例示的なコンタクトレンズの実施形態の正面図はさらに、光学ゾーン(801)、レンズ直径(802)、および企図される設計の複数の結合した六角形状の非屈折性特徴(803)を示す。この例示的な例において、レンズ直径は約14.2mmであり、実質的に単焦点屈折力で設計された光学ゾーンは約9mmの直径であり、光学ゾーン内の複数の六角形開口の境界の形態で配置された非屈折性特徴は、各々約1mmの最大直径である。
【0165】
複数の六角形開口の形態で配置されたこれらの非屈折性特徴(803)の境界は、完全に不透明から半透明の間であるように構成されてもよい。たとえば、透過特性は、非屈折性特徴または境界に入射する光の>90%が吸収されるか、または透過されないように構成されてもよい。
【0166】
図8において企図される、複数の六角形開口すなわち非屈折性特徴の境界の幅は、約25μm(804)である。この特徴を示し、かつその視認性を改善するために、その幅は、本明細書で説明されるコンタクトレンズのサイズに対して拡大されている。複数の開口内の透明な範囲を含む、企図される非屈折性特徴のない光学ゾーンの残りの部分は、装着者の基本処方と一致する単焦点設計を含む。
【0167】
さらに別のコンタクトレンズの実施形態において、複数の非屈折性特徴は、複数の円形、半円形、楕円形、または六角形、または任意のその他の多角形形状の開口の境界として配置されてもよく、複数とは少なくとも2、3、5、7、9、12、または15の非屈折性特徴を含む。
【0168】
いくつかの他のコンタクトレンズの実施形態において、複数の多角形形状の開口の境界の形態で配置された非屈折性設計特徴の数は、4~7、または3~9、または2~12、または3~15であってもよい。いくつかの実施形態において、複数の開口の境界の形態で配置された非屈折性設計特徴は分離され得るが、他の実施形態では、それらは接合または結合されてもよい。
【0169】
さらに別のコンタクトレンズの実施形態において、複数の開口、または複数の領域、または複数のゾーン、または複数のセグメントの境界として構成される非屈折性特徴は、コンタクトレンズの光学ゾーンの中心の1、2、3、4、5、または6mm以内に配置されてもよい。さらに別のコンタクトレンズの実施形態において、複数の開口、または複数の領域、または複数のゾーン、または複数のセグメントの境界として構成される非屈折性特徴は、本明細書に開示されるとおり、コンタクトレンズの光学ゾーンの中心の1mm~3mm、または中心の2mm~4mm、または中心の3mm~5mm、または中心の2mm~6mmの間に配置されてもよい。
【0170】
特定のコンタクトレンズの実施形態において、コンタクトレンズの光学ゾーン内の企図される非屈折性設計特徴の、完全に不透明か、実質的に不透明か、または半透明である境界の幅は、少なくとも5μm、10μm、20μm、30μm、40μm、または50μmの幅であってもよい。特定のコンタクトレンズの実施形態において、コンタクトレンズの光学ゾーン内の企図される設計特徴の不透明な境界の幅は、5~15μm、15~25μm、または10~50μmの間の幅であってもよい。
【0171】
いくつかの他の実施形態において、コンタクトレンズの光学ゾーン内の企図される設計特徴の境界は不透明であってもよく、さらにいくつかの他の実施形態において、企図される設計特徴の境界は半透明であってもよい。いくつかの実施形態において、境界または設計特徴の幅は、複数の開口にわたり一定でなくてもよい。複数の開口の形状も、本開示の1つの実施形態内で異なっていてもよい。
【0172】
図9は、縮尺通りではない、別の例示的なコンタクトレンズの実施形態の正面図および断面図を示す。例示的なコンタクトレンズの実施形態の正面図はさらに、光学ゾーン(901)、レンズ直径(902)、および企図される設計の複数の非屈折性特徴(903)を示す。
【0173】
この例示的な例において、レンズ直径は約14.5mmであり、実質的に単焦点屈折力で設計された光学ゾーンは約8mmの直径であり、線セグメントまたは筋として構成された非屈折性特徴は約2mmの長さである。これらの非屈折性特徴(903)は実質的に不透明であってもよく、非屈折性特徴に入射する光の95%が透過されないか、または吸収される。
【0174】
図9において企図される非屈折性特徴の幅(904)は約25μm~50μmであり、図面においては、本明細書に説明されたコンタクトレンズのサイズに対してその特徴を示すためにのみその幅が拡大されている。好ましい実施形態において、非屈折性特徴の最大の幅は、解像度特性に対する保証のない結果的影響を避けるために、100μm、150μm、または200μm以下とされる。複数の開口内の透明な範囲を含む、企図される非屈折性特徴のない光学ゾーンの残りの部分は、装着者の基本処方と一致する単焦点設計を含む。
【0175】
図10は、縮尺通りではない、別の例示的なコンタクトレンズの実施形態の正面図および断面図を示す。例示的なコンタクトレンズの実施形態の正面図はさらに、光学ゾーン(1001)、レンズ直径(1002)、および非屈折性特徴(1003)を示す。
【0176】
この例において、レンズ直径は約14mmの直径であり、単焦点屈折力およびで実質的に設計された光学ゾーンは約8mmの直径である。この実施形態の企図される設計特徴は、コンタクトレンズの中心に位置し、約3mmの高さおよび幅にわたる格子パターンである。これらの格子線(1003)の境界は、完全に不透明または実質的に不透明に構成されてもよい。
図10において企図される非屈折性特徴の幅(1004)は、約50μm~100μmであり、図面においては、本明細書に説明されたコンタクトレンズのサイズに対してその特徴を示すためにのみその幅が拡大されている。
【0177】
図10の実施形態は、他の変形としても構成されてもよく、たとえば光学ゾーン内の企図される非屈折性設計特徴が、少なくとも5μm、10μm、20μm、30μm、40μm、または50μmの幅であってもよい。
図10の実施形態は、他の変形としても構成されてもよく、たとえば光学ゾーン内の企図される非屈折性設計特徴が、5~15μm、15~25μm、または10~50μmの間の幅であってもよい。
図10の実施形態の好ましい変形において、非屈折性特徴の最大幅、すなわち格子パターンを形成する線の幅は、眼の解像度特性に対する保証のない結果的影響を避けるために、150μm、200μm、または250μm以下とされる。
【0178】
他の実施形態において、企図される非屈折性設計特徴は、光学ゾーンの周辺に位置して(in the located)配置されてもよい。さらに別のコンタクトレンズの実施形態において、格子パターンを形成する微細な線または筋の数は、少なくとも5、9、15、または25であってもよい。いくつかの他のコンタクトレンズの実施形態において、格子パターンを形成する設計特徴、線、または筋の数は、5~9、または9~15、または9~15、または5~25の間であってもよい。1つの別の実施形態において、ただ1つの長い実質的に連続する曲線またはジグザグ線が、少なくとも3mm、6mm、9mm、または12mmの長さで光学的ゾーンを通ることが企図されてもよい。
【0179】
さらに別のコンタクトレンズの実施形態において、1つ以上の条線が対称的またはランダムな態様で配置されてもよく、それらは光軸に中心があってもよいし、偏心されていてもよい。加えて、条線は直線または曲線からなっていてもよく、それらの線は、互いに接触もしくは交差してもよいし、すべてが分離して配置されてもよいし、それらの組み合わせであってもよい。条線の幅および長さは変動してもよい。左眼および右眼に装着されるレンズに異なるパターンが適用されてもよい。
【0180】
さらに別のコンタクトレンズの実施形態において、コンタクトレンズの光学ゾーン内の企図される設計特徴(すなわち、複数の条線またはモアレパターン)は、互いに離れていてもよい。さらに別の実施形態において、企図される複数の非屈折性特徴は、互いに隣接するか、または組み合わされるように構成されてもよい。
【0181】
上瞼および下瞼の複合動作によって促進される自然な瞬きによって、コンタクトレンズは、装着者の瞳孔に対して自由に動いてもよい。このことによって、時間的に変動する刺激がもたらされてもよく、それによって視覚画像に人工的に導入される非均質性をさらに高めて、近視の装着者における進行速度を減少させてもよい。
【0182】
図11は、縮尺通りではない、3つの追加の例示的なコンタクトレンズの実施形態の正面図を示す。例示的なコンタクトレンズの実施形態の正面図は、光学ゾーン(1101)および3つの企図される非屈折性設計特徴(1103a、1103b、および1103c)のズームインした図のみを示す。この例において、非屈折性設計特徴(1103a)は、コンタクトレンズの実施形態の中心から離れて構成された、企図されるモアレパターンの代表的な例である。
【0183】
非屈折性設計特徴(1103b)は、光学ゾーンにわたる、企図される曲線パターンの別の表現を示し、これはらせんパターンと見なされる。非屈折性設計特徴(1103c)は、コンタクトレンズの光学的中心を中心とするメンフィスパターンを示す。光学ゾーンは実質的に単焦点屈折力で設計され、約8mmの直径である。設計特徴の幅は5~100μmの範囲であり、図面における実質的に不透明な特徴は、本明細書で説明されるコンタクトレンズのサイズに対して特徴を示すために強調されている。
【0184】
さらに別のコンタクトレンズの実施形態において、設計された特徴(すなわち複数の非屈折性の条線またはモアレパターン)は、コンタクトレンズの光学ゾーンの中心の1、2、3、4、5、または6mm以内に含まれてもよい。さらに別のコンタクトレンズの実施形態において、設計特徴(すなわち複数の非屈折性の条線またはモアレパターン)は、コンタクトレンズの光学ゾーンの中心の1mm~3mm、または中心の2mm~4mm、または中心の3mm~5mm、または中心の2mm~6mmの間に含まれてもよい。さらに別のコンタクトレンズの実施形態において、コンタクトレンズの光学ゾーン内の企図される設計特徴(すなわち複数の条線またはモアレパターン)は、互いに分離されてもよい。さらに別の実施形態において、企図される複数の非屈折性特徴は、互いに隣接するか、または組み合わされるように構成されてもよい。特定のコンタクトレンズの実施形態において、コンタクトレンズの光学ゾーン内の企図される設計特徴(すなわち複数の条線またはモアレパターン)の幅は、少なくとも5μm、10μm、20μm、30μm、40μm、または50μmの幅であってもよい。
【0185】
特定のコンタクトレンズの実施形態において、コンタクトレンズの光学ゾーン内の企図される設計特徴の幅は、5~15μm、15~25μm、または10~50μmの間の幅であってもよい。いくつかの他の実施形態において、コンタクトレンズの光学ゾーン内の企図される設計特徴の境界は不透明であってもよく、さらにいくつかの他の実施形態において、企図される設計特徴の境界は半透明であってもよい。いくつかの実施形態において、設計特徴の幅は、複数の非屈折性特徴にわたり一定でなくてもよい。
【0186】
図12は、先行技術の標準的な単焦点レンズ(1202)で矯正した2Dの近視モデル眼(1200)に入る、広角視野(1201)からのたとえば555nmなどの可視波長およびバージェンス0Dの入射光を示す模式図を示す。
【0187】
オン中心/オフ周囲およびオフ中心/オン周囲回路(1203)によって記録された網膜神経節細胞活性は、先行技術の標準的な単焦点レンズ(1202)が、自然な瞬き動作か、または習慣的な眼球運動か、またはそれらの組み合わせによって眼の前面上を動くときに、最小の網膜活性または基本率の網膜活性を実証するかまたは示す。オン受容野およびオフ受容野活性の時間積分における相対的な差が、さらなる眼球の成長を決定する。
【0188】
本開示は、不活性網膜が眼球の成長を引き起こし、活性網膜がその成長を減少させるか、または停止信号を引き起こすものと仮定する。本開示はさらに、先行技術の標準的な単焦点コンタクトレンズまたは眼鏡レンズおよび/あるいは空間的に均質な視覚画像が、網膜をベースライン状態(すなわち網膜神経節細胞のベースラインまたは一定の発火パターン)のままとし、よってより進んだ近視につながるさらなる眼球の成長を促進する、均質で実質的にエッジのない視覚画像に寄与することを予期する。
【0189】
図13は、本明細書に開示される例示的実施形態(1302)の1つで矯正した2Dの近視モデル眼(1300)に入る、広角視野(1301)からのたとえば555nmなどの可視波長およびバージェンス0Dの入射する光の束を示す模式図を示す。オン中心/オフ周囲およびオフ中心/オン周囲回路(1303)によって記録された網膜神経節細胞活性は、例示的実施形態(1302)が、自然な瞬き動作か、または習慣的な眼球運動か、またはそれらの組み合わせによって眼の前面上を動くときに、ベースライン状態に比較して網膜の活性が増加することを実証するかまたは示す。
【0190】
図12および
図13では、単純なモデル眼が例示の目的のために選択された。しかし、他の実施形態において、リウ-ブレナン(Liou-Brennan)、エスクデロ-ナバロ(Escudero-Navarro)、およびその他のものなどの模式的な光線追跡モデル眼が代わりに用いられてもよい。本明細書で提供される実施例では、2D近視モデル眼を用いて本発明を開示したが、同じ開示を近視の他の度数、すなわち-1D、-3D、-5D、または-6Dへと拡張できる。さらに、乱視を伴うさまざまな度数の近視を有する眼へと拡張できることが理解される。実施形態において、555nmという特定の波長について言及したが、420nm~760nmの間の他の可視波長にも拡張できることが理解される。
【0191】
さまざまな例示的なコンタクトレンズの実施形態(D1~D7)のモデル化は、単焦点光学プロファイルとともに用いられる企図される非屈折性特徴が、本明細書に開示された仮想網膜プラットフォームを用いて得られた平均網膜スパイク率の増加によって測定された、網膜神経節細胞活性の増加を提供することを示す。
【0192】
他の実施形態において、網膜神経節細胞活性のさまざまな他の代理尺度、たとえば、選択されたニューロン束のスパイク列解析の検査などが考慮されてもよい。
【0193】
本発明に従うコンタクトレンズの実施形態の作用を示すために、本明細書に記載されるとおり、各テストケース(すなわち実施例1~7)に対して2つの異なるタイプのコンタクトレンズを用いて高度な光学的モデル化の実験が行われた。第1のタイプは、標準的治療を模倣する屈折異常の矯正を提供するための、模式的モデル眼の基本処方に一致した単焦点対照コンタクトレンズ(C1~C7)を含んだ。第2のタイプは、本質的に同じ単焦点の標準的治療の対照コンタクトレンズ(C1~C7)であって、さらに本発明に従って設計された追加の非屈折性特徴を伴って構成された、さまざまな例示的なコンタクトレンズの実施形態(D1~D7)を含んだ。
【0194】
本発明の作用を示すために、対照(C1~C7)および例示的実施形態のコンタクトレンズ(D1~D7)は、実施例1~7のそれぞれに説明される改変された模式的モデル眼に1つずつ装着され、試験/評価された。これらの実施例1~7の作用を示す目的のために、コンタクトレンズの光学ゾーン(8mm)のみをモデル化した。他の例においては、周辺ゾーンおよびエッジを含むコンタクトレンズ全体が望ましいものとしてモデル化されてもよい。
【0195】
コンタクトレンズの前面の表面透過特性を改変して、実施例1~7の特徴を設計した。透過率は100%のうちの割合として計算され、100%とは、あたかも吸収、反射、または口径食損失がないかのようにすべての光が透過することを意味する。本開示の特定の実施形態において、表面透過率は、光線がその表面を透過する強度の相対的な任意の割合として定義される。本開示のいくつかの他の実施形態において、強度の相対的な任意の割合は、波長依存性となるように構成されてもよい。本開示の特定の他の実施形態において、強度の任意の割合は、偏光感受性となるように構成されてもよい。
【0196】
シミュレーションされた網膜神経節細胞活性を評価するため、コンタクトレンズは、鉛直方向の瞬きによる眼上のレンズの動きおよび/または水平方向の衝動性眼球運動で引き起こされ得る相対的なレンズの動きを模倣するさまざまな偏心位置で、前角膜表面上でスライドされた)。前角膜表面の中心に対するコンタクトレンズの動きは、水平方向および鉛直方向の両方において+/-1mmの間に含まれていた。コンタクトレンズの眼上の動きを模倣するため、モデル化装置においては分散関数および傾き関数の両方が用いられた。
【0197】
偏心レンズの位置の各々において、広視野の網膜画像シミュレーションが行われた。こうしてシミュレーションされた48の網膜画像が、網膜神経節細胞活性をもたらすための仮想網膜プラットフォームに対する入力ストリームを構成した。この例において、48の画像フレームの各々は、仮想網膜モデルに対する2.4秒の実時間刺激提示を構成する50ミリ秒となるように構成された。入力ストリームの各フレームは、512×512画素にわたって構成され、各フレームは、仮想網膜プラットフォームの網膜の約5°×5°(中心窩)または15°×15°(黄斑)の領域を包含する円形ニューロン領域の直径全体をカバーするように構成された。入力ストリームにおける各画素のビット深度は、0~255(すなわち8ビット)の範囲にデジタル化された。本開示のコンタクトレンズの実施形態の作用を示すために用いられる、式1~9に記載された具体的な網膜の設定および構成は、以下のセクションにおいて考察される。
【0198】
実施例1~7のすべてにおいて、外網状層は、約1.5°(すなわち式2のσC)に対する中心領域と、約4.75°(すなわち式3のσS)に対する周囲領域とを有するように構成された。外網状層の中心および周囲の時間的スケールは約1ミリ秒に設定され、これは式2および3の変数τCおよびτSによってそれぞれ表された。本明細書における式1に記述されるとおりの、積分中心-周囲信号を支配する変数は、w0PL=1およびλ0PL=10となるように選択された。双極細胞および神経節細胞シナプスの静的非線形係数は、実施例1~7のすべてにわたって固定された。双極線形閾値は0に設定され、線形閾値は定数80に保たれ、双極増幅値は100に保たれた。
【0199】
ニューロンモデルに対する値は、実施例1~7のすべてにわたって維持され、ここでは0.75のリーク、20のニューロン雑音、150の膜容量、および2.4の発火閾値が、実施例1~7のシミュレーションのために用いられた。シナプス後プーリング変数シグマは無視された。コントラストゲイン制御機構、外網状層の補充ハイパスフィルタの実用性、および無軸索細胞の横接続の実用性に対するオプションは、実施例1~7にわたり可変に保たれた。使用される具体的な設定のさらなる詳細が本明細書において開示される。
【実施例1】
【0200】
対照(C1)および例示的実施形態(D1)設計
この実施例において、表1の模式的モデル眼の以下のパラメータが、2D調整状態において1D近視眼(すなわち-1Dの基本処方Rx)を構成するために変更された。(1)前水晶体曲率半径(R=8.22mm)、および(2)前水晶体円錐定数(Q=-2.314)。モデルは、眼から約50cm離れた近くの対象に焦点が合うように構成された。改変された近視模式モデル眼が、対照(C1)および例示的実施形態(D1)コンタクトレンズで1つずつ矯正された。対照コンタクトレンズC1は、前面半径(R=7.936mm、Q=-0.221)、中心厚さ(0.135mm)、背面半径(R=7.75mm、Q=-0.25)、および屈折率1.42を用いてモデル化された。対照コンタクトレンズC1には、この本開示において企図される任意の非屈折性特徴がない/欠けている。
【0201】
例示的実施形態(D1)コンタクトレンズは、対照(C1)と同じ光学設計を有する単焦点コンタクトレンズであり、さらに
図17に開示された追加の非屈折性特徴を伴って構成されたものである。
【0202】
図17は、縮尺通りではない、例示的なコンタクトレンズの実施形態D1の正面図および断面図を示す。例示的なコンタクトレンズの実施形態の正面図はさらに、光学ゾーン(1701)、レンズ直径(1702)、および企図された設計(D1)の結合された円形形状の非屈折性特徴を含む複数の非屈折性特徴(1703)を示す。円形開口の総数は7である。複数の開口を含む非屈折性特徴の全体の寸法は、約3.75mmの直径である。各開口の寸法は、約1.25mmの直径である。各開口の境界の幅は約100μm(1704)である。
【0203】
非屈折性特徴は、識別および視認性のために、コンタクトレンズの他の特徴に対して拡大されている。例示的実施形態D1の非屈折性特徴のない光学ゾーン(1701)の残りの部分は、眼の基本処方に一致する、基本的な単焦点処方パラメータで構成される。
【0204】
この例示的な実施例D1において、レンズ直径は約14.2mmであり、実質的に単焦点屈折力で設計された光学ゾーンは約8mmの直径であり、光学ゾーン内の複数の円形開口の形態で配置された非屈折性特徴は、各々が約1mmの直径である。段落[0196]~[0198]に開示されたステップに従い、実施例1の模式的モデル眼に対照C1および実施形態D1のコンタクトレンズ設計を1つずつ装着したときにシミュレーションされた網膜画像を計算して解析した。
【0205】
この実施例1において、仮想網膜プラットフォームの追加の変数が、以下の設定により考慮された。式1、5、および6に記述されたコントラストゲイン制御機構のオプションは、以下の入力パラメータ値で用いられた。(i)正規化された輝度単位当り150Hzの外網状増幅λOPL値、(ii)5Hzの双極不活性リーク
【0206】
【0207】
(iii)100Hzのフィードバック増幅λA、(iv)2.5°の空間的スケールσA、および(v)0.01ミリ秒の時間的スケールτA。ニューロン束(1402)の配置は、15°×15°の視野にわたって広がる円形配置であった。
【0208】
仮想網膜の疎横接続性モードは、10%の正の重みおよび0.01の重み分散を有する10のシナプス前ニューロンで用いられた。さらに、式2および3に記述された外網状層の補充ハイパスフィルタオプションは用いられなかった。シナプス後プーリングのオプションは消された。
【0209】
本明細書において考察されるとおり、仮想網膜プラットフォームを用いた実施例1の対照(C1)コンタクトレンズ設計の、計算されたシミュレーション網膜画像の後処理は、オン極性およびオフ極性の両方を有する細胞について、時間の関数としてのスパイク列(
図18)および時間の関数としての平均スパイク率を強調する刺激前後ヒストグラム(
図19)をもたらす。
図18および
図19の上下のサブグラフは、それぞれオン細胞およびオフ細胞についてのデータを表す。
【0210】
本明細書において考察されるとおり、仮想網膜プラットフォームを用いた実施例1の実施形態(D1)コンタクトレンズ設計の、計算されたシミュレーション網膜画像の後処理は、オン極性およびオフ極性の両方を有する細胞について、時間の関数としてのスパイク列(
図20)および時間の関数としての平均スパイク率を強調する刺激前後ヒストグラム(
図21)をもたらす。
図20および
図21の上下のサブグラフは、それぞれオン細胞およびオフ細胞についてのデータを表す。
【0211】
対照(C1)コンタクトレンズによるニューロン活性は、
図18のスパイク列として示されるとおり、オンおよびオフの両方のタイプの極性を有する細胞について、時間により不変であるか、または時間の関数として単調である。
【0212】
他方で、実施形態(D1)コンタクトレンズによるニューロン活性は、
図20のスパイク列として示されるとおり、オンおよびオフの両方のタイプの極性を有する細胞について、時間により変動するか、または時間の関数として非単調である。
【0213】
実施例1において、対照(C1)コンタクトレンズによるニューロン活性は、
図19の平均スパイク率として示されるとおり、信号の安定化を示す最初の100ミリ秒に続く単調プロファイルに従う。この観測されたパターンは、オンおよびオフの両方のタイプの極性を有する細胞について類似である。実施例1において、最初の100ミリ秒の安定化期間に続く、対照(C1)コンタクトレンズによる平均スパイク率は、本明細書に開示されるとおり、オン型細胞については、オフ型細胞によって得られるものに対して約4分の1(1/4)の大きさである(
図19)。他方で、実施形態(D1)コンタクトレンズによるニューロン活性は、
図21の平均スパイク率として示されるとおり、時間により変動するか、または時間の関数として非単調である。
【0214】
この実施例1において、実施形態(D1)コンタクトレンズにより得られたオン型細胞に対する平均スパイク率は、全般的に対照(C1)コンタクトレンズによりオン型細胞について得られた平均スパイク率の少なくとも3~4倍である。この実施例において、実施形態(D1)コンタクトレンズにより得られた、時間の関数としての平均スパイク率は、
図21に記載されるとおり、オン型およびオフ型細胞の両方について、準正弦波パターンに従う。
【0215】
実施形態のレンズにより得られたスパイク応答における非定常性および非線形性は、網膜画像における人工的エッジもしくは光コントラストプロファイルか、または人工的エッジの時間的変動に起因する。
【0216】
この実施例1において、光学性能のオン軸およびオフ軸評価は、4mmの瞳孔解析直径での明所視条件における明るさの人間の視覚の平均分光感受性を記述する光度関数を用いて、470nm~650nmにわたる多色モードにおいてモデル化された。
【0217】
本明細書において
図22および
図23に記載されるとおり、広視野光学性能は、4mmの瞳孔径における空間的周波数の関数としての変調伝達関数を用いて測定されるとき、対照(C1)および例示的実施形態(D1)コンタクトレンズの間で著しく類似し、すなわち、黒の実線および黒の破線によって表される曲線の下の面積の変動が5%未満であった。実施例1におけるオフ軸性能に対して、性能の評価のために考慮された視野は15°であり、これは中心から±7.5°である。
【実施例2】
【0218】
対照(C2)および例示的実施形態(D2)設計
この実施例において、表1の模式的モデル眼の以下のパラメータが、2D調整状態において1DC乱視を伴う2D近視眼(すなわち-2D/-1DCの基本処方Rx)を表すために変更された。(i)X軸に沿った前角膜半径(Rx=7.829mm)、(ii)X軸に沿った前角膜円錐定数(Qx=-0.604)、(iii)17.339mmの硝子体眼房深さ、(iv)前水晶体半径(R=8.22mm)、および(v)前水晶体円錐定数(Q=-2.314)。モデルは、眼から約50cm離れた近くの対象に焦点が合うように構成された。改変された近視模式モデル眼が、対照(C2)および例示的実施形態(D2)コンタクトレンズで1つずつ矯正された。
【0219】
対照(C2)コンタクトレンズは、以下のパラメータを用いてモデル化された単焦点トーリックを表す。前面(R=8.226mm、Q=-0.392)、中心厚さ(0.135mm)、トーリック背面(Ry=7.75mm、Qy=-0.25;Rx=7.829mm、Qx=-0.604)、および屈折率1.38。対照コンタクトレンズC2には、この本開示において企図される任意の非屈折性特徴がない/欠けている。
【0220】
例示的実施形態コンタクトレンズ(D2)は、対照C2と同じ光学設計を有する単焦点トーリックであり、さらに
図24に開示された追加の非屈折性特徴を伴って構成されたものである。
【0221】
例示的実施形態の実施例D2の非屈折性特徴は、六角形配置に配置された複数の点を含む点パターン(2403)を含む。このランダムパターン(2403)は、コンタクトレンズ(2402)の光学的中心の周りの光学的ゾーン(2401)内に位置する。点の総数は7である。点パターンの総寸法は、約3.5mmの直径である。点パターンにおける各点の寸法は、約125μmの直径である(2404)。
【0222】
非屈折性特徴は、識別および視認性のために、コンタクトレンズの他の特徴に対して拡大されている。例示的実施形態D2の非屈折性特徴のない光学ゾーン(2401)の残りの部分は、眼の基本処方に一致する、基本的な単焦点処方パラメータで構成される。
【0223】
段落[0196]~[0198]に開示されたステップに従い、実施例2の模式的モデル眼に対照C2および実施形態D2のコンタクトレンズ設計を1つずつ装着したときにシミュレーションされた網膜画像を計算して解析した。
【0224】
この実施例2において、仮想網膜プラットフォームの追加の変数が、以下の設定により考慮された。式1、5、および6に記述されたコントラストゲイン制御機構のオプションは、以下の入力パラメータ値で用いられた。(i)正規化された輝度単位当り150Hzの外網状増幅λOPL値、(ii)5Hzの双極不活性リーク
【0225】
【0226】
(iii)100Hzのフィードバック増幅λA、(iv)2.5°の空間的スケールσA、および(v)0.01ミリ秒の時間的スケールτA。ニューロン束(1402)の配置は、15°×15°の視野に広がる円形配置であった。
【0227】
仮想網膜の疎横接続性モードは、10%の正の重みおよび0.01の重み分散を有する10のシナプス前ニューロンで用いられた。さらに、式2および3に記述された外網状層の補充ハイパスフィルタオプションが、以下のパラメータ値で用いられた。0.2ミリ秒の時間的スケールおよび0.5°の空間的スケール。シナプス後プーリングのオプションは消された。
【0228】
本明細書において考察されるとおり、仮想網膜プラットフォームを用いた実施例2の対照(C2)コンタクトレンズ設計の、計算されたシミュレーション網膜画像の後処理は、オン極性およびオフ極性の両方を有する細胞について、時間の関数としてのスパイク列(
図25)および時間の関数としての平均スパイク率を強調する刺激前後ヒストグラム(
図26)をもたらす。
図25および
図26の上下のサブグラフは、それぞれオン細胞およびオフ細胞についてのデータを表す。
【0229】
本明細書において考察されるとおり、仮想網膜プラットフォームを用いた実施例2の実施形態(D2)コンタクトレンズ設計の、計算されたシミュレーション網膜画像の後処理は、オン極性およびオフ極性の両方を有する細胞について、時間の関数としてのスパイク列(
図27)および時間の関数としての平均スパイク率を強調する刺激前後ヒストグラム(
図28)をもたらす。
図27および
図28の上下のサブグラフは、それぞれオン細胞およびオフ細胞についてのデータを表す。
【0230】
対照(C2)コンタクトレンズによるニューロン活性は、
図25のスパイク列として示されるとおり、オンおよびオフの両方のタイプの極性を有する細胞について、時間により不変であるか、または時間の関数として単調である。他方で、実施形態(D1)コンタクトレンズによるニューロン活性は、
図26のスパイク列として示されるとおり、時間により変動するか、または時間の関数として非単調である。
【0231】
実施例2において、対照(C2)コンタクトレンズによるニューロン活性は、
図26の平均スパイク率として示されるとおり、信号の安定化を示す最初の150ミリ秒のデータを除いた線形プロファイルに従う。この観測されたパターンは、オンおよびオフの両方のタイプの極性を有する細胞について類似である。
【0232】
実施例2において、最初の150ミリ秒の安定化期間に続く平均スパイク率は、本明細書に開示されるとおり、オン型細胞については、オフ型細胞によって得られるものに対して約3分の1(1/3)から1/4の大きさである。
【0233】
他方で、実施形態(D1)コンタクトレンズによるニューロン活性は、
図28の平均スパイク率として示されるとおり、時間により変動するか、または時間の関数として非単調である。しかし、実施例2の実施形態D2で得られた時間の関数としてのスパイク率内の変動は、実施例1の実施形態D1で得られた結果と比較したときに、振幅および周波数の両方においてより低くなる。
【0234】
この実施例2において、実施形態(D2)コンタクトレンズにより得られたオン型細胞に対する平均スパイク率は、全般的に対照(D2)コンタクトレンズによりオン型細胞について得られた平均スパイク率の少なくとも1.5倍である。この実施例において、実施形態(D2)コンタクトレンズにより得られた、時間の関数としての平均スパイク率は、
図28に記載されるとおり、オン型およびオフ型細胞の両方について、時間変動パターンに従う。実施形態のレンズにより得られたスパイク応答における非定常性および非線形性は、網膜画像における人工的エッジもしくは光コントラストプロファイルか、または人工的エッジの時間的変動に起因する。
【0235】
この実施例2において、光学性能のオン軸およびオフ軸評価は、単色モード(589nm)および4mmの瞳孔解析直径においてモデル化された。本明細書において
図29および
図30に記載されるとおり、広視野光学性能は、4mmの瞳孔径における空間的周波数の関数としての変調伝達関数を用いて測定されるとき、対照(C2)および例示的実施形態(D2)コンタクトレンズの間で仮想的に区別できない。実施例2におけるオフ軸性能に対して、性能の評価のために考慮された視野は15°であり、これは中心から±7.5°である。
【実施例3】
【0236】
対照C3および例示的実施形態設計D3
この実施例3において、表1の模式的モデル眼の以下のパラメータが、非調整状態において3D近視眼(すなわち-3Dの基本処方Rx)を表すために変更された。(i)17.65mmの硝子体眼房深さ、および(ii)13.5mmの網膜曲率半径。
【0237】
モデルは、眼からおよそ光学的無限遠にある遠くの対象に焦点が合うように構成された。改変された近視模式モデル眼が、対照(C3)および例示的実施形態(D3)コンタクトレンズで1つずつ矯正された。対照(C3)コンタクトレンズは、以下のパラメータを用いてモデル化された単焦点レンズを表す。前面(R=8.262mm、Q=-0.137)、中心厚さ(0.135mm)、背面(R=7.75mm、Q=-0.25)、および屈折率1.42。対照コンタクトレンズC3には、この本開示において企図される任意の非屈折性特徴がない/欠けている。
【0238】
第2のレンズD3は、対照C3と同じパラメータを有する単焦点コンタクトレンズでもある例示的実施形態を表し、さらに
図31に開示される非屈折性特徴を伴って構成されたものである。
【0239】
例示的実施形態の実施例D3(
図31)の非屈折性特徴は、複数のバーを含む、バーまたは太線のランダムパターン(3103)を含む。このランダムパターンはコンタクトレンズ(3102)の光学ゾーン(3101)の光学的中心の周りの光学内に位置する。バーの総数は7である。格子パターンの総寸法は、約4mmの直径である。ランダムバーパターンにおける各バーの寸法は、約50μm×1.25mmの間である(3104)。
【0240】
非屈折性特徴は、識別および視認性のために、コンタクトレンズの他の特徴に対して拡大されている。例示的実施形態D3の非屈折性特徴のない光学ゾーン(3101)の残りの部分は、眼の基本処方に一致する、基本的な単焦点処方パラメータで構成される。
【0241】
段落[0196]~[0198]に開示されたステップに従い、実施例3の模式的モデル眼に対照C3および実施形態D3のコンタクトレンズ設計を1つずつ装着したときにシミュレーションされた網膜画像を計算して解析した。
【0242】
この実施例3において、仮想網膜プラットフォームの追加の変数が、以下の設定により考慮された。式1、5、および6に記述されたコントラストゲイン制御機構のオプションは、以下の入力パラメータ値で用いられた。(i)正規化された輝度単位当り150Hzの外網状増幅λOPL値、(ii)5Hzの双極不活性リーク
【0243】
【0244】
(iii)100Hzのフィードバック増幅λA、(iv)2.5°の空間的スケールσA、および(v)0.01ミリ秒の時間的スケールτA。ニューロン束(1602)の配置は、5°×5°の視野に広がる円形配置であった。仮想網膜の疎横接続性モードは用いられなかった。さらに、式2および3に記述された外網状層の補充ハイパスフィルタオプションが、以下のパラメータ値で用いられた。0.2ミリ秒の時間的スケールおよび0.5°の空間的スケール。シナプス後プーリングのオプションは消された。
【0245】
本明細書において考察されるとおり、仮想網膜プラットフォームを用いた実施例3の対照(C3)コンタクトレンズ設計の、計算されたシミュレーション網膜画像の後処理は、オン極性およびオフ極性の両方を有する細胞について、時間の関数としてのスパイク列(
図32)および時間の関数としての平均スパイク率を強調する刺激前後ヒストグラム(
図33)をもたらす。
図32および
図33の上下のサブグラフは、それぞれオン細胞およびオフ細胞についてのデータを表す。本明細書において考察されるとおり、仮想網膜プラットフォームを用いた実施例3の実施形態(D3)コンタクトレンズ設計の、計算されたシミュレーション網膜画像の後処理は、オン極性およびオフ極性の両方を有する細胞について、時間の関数としてのスパイク列(
図34)および時間の関数としての平均スパイク率を強調する刺激前後ヒストグラム(
図35)をもたらす。
図34および
図35の上下のサブグラフは、それぞれオン細胞およびオフ細胞についてのデータを表す。
【0246】
対照(C3)コンタクトレンズによるニューロン活性は、
図32のスパイク列として示されるとおり、オンおよびオフの両方のタイプの極性を有する細胞について、相対的に時間により不変であるか、または時間の関数として最小の変動もしくは揺らぎを伴う。他方で、実施形態(D1)コンタクトレンズによるニューロン活性は、
図34のスパイク列として示されるとおり、相対的に時間により変動するか、または時間の関数としてより大きい変動もしくは揺らぎを伴う。
【0247】
実施例3において、対照(C3)コンタクトレンズによるニューロン活性は、
図33の平均スパイク率として示されるとおり、信号の安定化を示す最初の100ミリ秒に続く相対的に単調なプロファイルに従う。この観測されたパターンは、オンおよびオフの両方のタイプの極性を有する細胞について類似である。実施例3において、対照(C3)コンタクトレンズによる平均スパイク率は、本明細書に開示されるとおり、最初の100ミリ秒の安定化期間を除くと、オン型細胞については、オフ型細胞によって得られるものに対して約4倍の大きさである。
【0248】
他方で、実施形態(D3)コンタクトレンズによるニューロン活性は、
図34の平均スパイク率として示されるとおり、時間により変動するか、または時間の関数として非単調である。この実施例3において、実施形態D3で得られた時間の関数としての累加平均スパイク率は、オン型およびオフ型細胞の両方について、実施例3の対照C3で得られた結果と比較してより低くなる。
【0249】
実施形態のレンズにより得られたスパイク応答における非定常性および非線形性は、網膜画像における人工的エッジもしくは光コントラストプロファイルか、または人工的エッジの時間的変動に起因する。
【0250】
この実施例において、実施形態(D2)のコンタクトレンズにより得られた、
図28に記載される時間の関数としての平均スパイク率は、オン型およびオフ型細胞の両方について、時間変動パターンに従う。この実施例3における対照(C3)コンタクトレンズは、
図33に示されるとおり、オン型およびオフ型平均スパイク率の両方において、いくらかの時間変動を示しているが、実施形態(D3)のコンタクトレンズで得られた平均スパイク率内で観測される時間的変動は、対照(C3)コンタクトレンズよりもずっと大きい。
【0251】
この実施例3において、光学性能のオン軸およびオフ軸評価は、6mmの瞳孔解析直径での明所視条件における明るさの人間の視覚の平均分光感受性を記述する光度関数を用いて、470nm~650nmにわたる多色モードにおいてモデル化された。
【0252】
この実施例において、網膜の偏心の関数としての視細胞密度は、単純さのために一定に保たれたが、視細胞密度における変化を含む網膜モデルの他の変動が予期されてもよい。
【0253】
本明細書において
図36および
図37に記載されるとおり、広視野光学性能は、6mmの瞳孔径における空間的周波数の関数としての変調伝達関数を用いて測定されるとき、対照(C3)および例示的実施形態(D3)コンタクトレンズの間で仮想的に区別できない。実施例3におけるオフ軸性能に対して、性能の評価のために考慮された視野は5°であり、これは中心から±2.5°である。
【実施例4】
【0254】
対照C4および例示的実施形態設計D4
この実施例4において、表1の模式的モデル眼の以下のパラメータが、非調整状態において3D近視眼(すなわち-3Dの基本処方Rx)を表すために変更された。(i)17.65mmの硝子体眼房深さ、および(ii)13.5mmの網膜曲率半径。モデルは、眼からおよそ光学的無限遠にある対象に焦点が合うように構成された。
【0255】
改変された近視模式モデル眼が、対照(C4)および例示的実施形態(D4)コンタクトレンズで1つずつ矯正された。対照(C4)コンタクトレンズは、以下のパラメータを用いてモデル化された単焦点レンズを表す。前面(R=8.262mm、Q=-0.137)、中心厚さ(0.135mm)、背面(R=7.75mm、Q=-0.25)、および屈折率1.42。対照コンタクトレンズC4には、この本開示において企図される任意の非屈折性特徴がない/欠けている。
【0256】
第2のレンズD4は、対照C4と同じパラメータを有する単焦点コンタクトレンズでもある例示的実施形態を表し、さらに
図38に開示される非屈折性特徴を伴って構成されたものである。
【0257】
例示的実施形態の実施例D4の非屈折性特徴は、複数の線または筋の特徴を含む格子パターン(3803)を含む。この格子パターン(3803)はコンタクトレンズ(3802)の光学ゾーン(3801)の光学的中心の周りの光学内に位置する。線状または筋状の特徴の総数は6であり、水平方向に3つ、鉛直方向に3つである。格子パターンの総寸法は、約3mmの直径である。格子パターンにおける各々の線または筋の寸法は、約75μm×1mmの間である(3804)。非屈折性特徴は、識別および視認性のために、コンタクトレンズの他の特徴に対して拡大されている。例示的実施形態D4の非屈折性特徴のない光学ゾーン(3801)の残りの部分は、眼の基本処方に一致する、基本的な単焦点処方パラメータで構成される。
【0258】
段落[0196]~[0198]に開示されたステップに従い、実施例4の模式的モデル眼に対照C4および実施形態D4のコンタクトレンズ設計を装着したときにシミュレーションされた網膜画像を計算して解析した。
【0259】
この実施例4において、仮想網膜プラットフォームの追加の変数が、以下の設定により考慮された。式1、5、および6に記述されたコントラストゲイン制御機構のオプションは消された。ニューロン束(1602)の配置は、15°×15°の視野に広がる円形配置であった。仮想網膜の疎横接続性モードは用いられなかった。
【0260】
さらに、式2および3に記述された外網状層の補充ハイパスフィルタオプションは消された。シナプス後プーリングのオプションも消された。
【0261】
本明細書において考察されるとおり、仮想網膜プラットフォームを用いた実施例4の対照(C4)コンタクトレンズ設計の、計算されたシミュレーション網膜画像の後処理は、オン極性およびオフ極性の両方を有する細胞について、時間の関数としてのスパイク列(
図39)および時間の関数としての平均スパイク率を強調する刺激前後ヒストグラム(
図40)をもたらす。
図39および
図40の上下のサブグラフは、それぞれオン細胞およびオフ細胞についてのデータを表す。
【0262】
本明細書において考察されるとおり、仮想網膜プラットフォームを用いた実施例4の実施形態(D4)コンタクトレンズ設計の、計算されたシミュレーション網膜画像の後処理は、オン極性およびオフ極性の両方を有する細胞について、時間の関数としてのスパイク列(
図41)および時間の関数としての平均スパイク率を強調する刺激前後ヒストグラム(
図42)をもたらす。
図41および
図42の上下のサブグラフは、それぞれオン細胞およびオフ細胞についてのデータを表す。
【0263】
対照(C4)コンタクトレンズによるニューロン活性は、
図39のスパイク列として示されるとおり、オンおよびオフの両方のタイプの極性を有する細胞について、相対的に時間により不変であるか、または時間の関数として最小の変動もしくは揺らぎを伴う。他方で、実施形態(D1)コンタクトレンズによるニューロン活性は、
図41のスパイク列として示されるとおり、相対的に時間により変動するか、または時間の関数としてより大きい変動もしくは揺らぎを伴う。
【0264】
実施例4において、対照(C4)コンタクトレンズによるニューロン活性は、
図40の平均スパイク率として示されるとおり、信号の安定化を示す最初の100ミリ秒に続く相対的に単調なプロファイルに従う。この観測されたパターンは、オンおよびオフの両方のタイプの極性を有する細胞について類似である。
【0265】
実施例4において、対照(C4)コンタクトレンズによる平均スパイク率は、本明細書に開示されるとおり、最初の100ミリ秒の安定化期間を除くと、オン型細胞については、オフ型細胞によって得られるものに対して約2倍の大きさである。
【0266】
他方で、実施形態(D4)コンタクトレンズによるニューロン活性は、
図41の平均スパイク率として示されるとおり、時間の関数として時間変動する。
【0267】
この実施例において、実施形態(D4)のコンタクトレンズにより得られた、
図42に記載される時間の関数としての平均スパイク率は、オン型およびオフ型細胞の両方について、時間変動に従う。実施形態(D4)のコンタクトレンズで得られた平均スパイク率内で観測された時間的変動の振幅または大きさは、本開示の他の実施形態のコンタクトレンズよりも小さい。
【0268】
この実施例4において、光学性能のオン軸およびオフ軸評価は、単色モード(589nm)および4mmの瞳孔解析直径においてモデル化された。本明細書において
図43および
図44に記載されるとおり、広視野光学性能は、6mmの瞳孔径における空間的周波数の関数としての変調伝達関数を用いて測定されるとき、対照(C4)および例示的実施形態(D4)コンタクトレンズの間で仮想的に区別できない。実施例4におけるオフ軸性能に対して、性能の評価のために考慮された視野は15°であり、これは±7.5°であった。
【実施例5】
【0269】
対照C5および例示的実施形態設計D5
この実施例5において、表1の模式的モデル眼の以下のパラメータが、1D調整状態において3D近視眼(Rx:-3D)を表すために変更された。(i)17.65mmの硝子体眼房深さ、(ii)13.5mmの網膜曲率半径、ならびに(iii)前水晶体半径(R=9.081mm)および円錐定数(Q=-4.123)。
【0270】
モデルは、眼から約1メートルにある近くの対象に焦点が合うように構成された。改変された近視模式モデル眼が、対照(C5)および例示的実施形態(D5)コンタクトレンズで1つずつ矯正された。
【0271】
対照(C5)コンタクトレンズは、以下のパラメータを用いてモデル化された単焦点レンズを表す。前面(R=8.262mm、Q=-0.137)、中心厚さ(0.135mm)、背面(R=7.75mm、Q=-0.25)、および屈折率1.42。対照コンタクトレンズC5には、この本開示において企図される任意の非屈折性特徴がない/欠けている。
【0272】
第2のレンズD5は、対照C5と同じパラメータを有する単焦点コンタクトレンズでもある例示的実施形態を表し、さらに
図45に開示される非屈折性特徴を伴って構成されたものである。
【0273】
例示的実施形態の実施例D5(
図45)の非屈折性特徴は、複数の線の特徴を含むスポークパターン(4503)を含む。このスポークパターン(4503)はコンタクトレンズ(4502)の光学的ゾーン(4501)内に位置する。スポーク特徴の総数は8である。スポークパターンの総寸法は、約4mmの直径である。スポークパターンにおける各々の線の寸法は、約100μm×1mmの間である(4504)。
【0274】
非屈折性特徴は、識別および視認性のために、コンタクトレンズの他の特徴に対して拡大されている。例示的実施形態D5の非屈折性特徴のない光学ゾーン(4501)の残りの部分は、眼の基本処方に一致する、基本的な単焦点処方パラメータで構成される。
【0275】
段落[0196]~[0198]に開示されたステップに従い、実施例5の模式的モデル眼に対照C5および実施形態D5のコンタクトレンズ設計を装着したときにシミュレーションされた網膜画像を計算して解析した。
【0276】
この実施例5において、仮想網膜プラットフォームの追加の変数が、以下の設定により考慮された。式1、5、および6に記述されたコントラストゲイン制御機構のオプションは、以下の入力パラメータ値で用いられた。(i)正規化された輝度単位当り150Hzの外網状層増幅λOPL値、(ii)5Hzの双極不活性リーク
【0277】
【0278】
(iii)100Hzのフィードバック増幅λA、(iv)2.5°の空間的スケールσA、および(v)0.01ミリ秒の時間的スケールτA。ニューロン束(1602)の配置は、5°×5°の視野に広がる円形配置であった。仮想網膜の疎横接続性モードは用いられなかった。さらに、式2および3に記述された外網状層の補充ハイパスフィルタオプションは消された。シナプス後プーリングのオプションも消された。
【0279】
本明細書において考察されるとおり、仮想網膜プラットフォームを用いた実施例5の対照(C5)コンタクトレンズ設計の、計算されたシミュレーション網膜画像の後処理は、オン極性およびオフ極性の両方を有する細胞について、時間の関数としてのスパイク列(
図46)および時間の関数としての平均スパイク率を強調する刺激前後ヒストグラム(
図47)をもたらす。
図46および
図47の上下のサブグラフは、それぞれオン細胞およびオフ細胞についてのデータを表す。本明細書において考察されるとおり、仮想網膜プラットフォームを用いた実施例5の実施形態(D5)コンタクトレンズ設計の、計算されたシミュレーション網膜画像の後処理は、オン極性およびオフ極性の両方を有する細胞について、時間の関数としてのスパイク列(
図48)および時間の関数としての平均スパイク率を強調する刺激前後ヒストグラム(
図49)をもたらす。
図48および
図49の上下のサブグラフは、それぞれオン細胞およびオフ細胞についてのデータを表す。対照(C5)コンタクトレンズによるニューロン活性は、
図46のスパイク列として示されるとおり、オンおよびオフの両方のタイプの極性を有する細胞について、相対的に時間により不変であるか、または時間の関数として最小の変動もしくは揺らぎを伴う。他方で、実施形態(D5)コンタクトレンズによるニューロン活性は、
図48のスパイク列として示されるとおり、相対的に時間により変動し、時間の関数として単調に減少または増加する。
【0280】
実施例5において、対照(C5)コンタクトレンズによるニューロン活性は、
図47の平均スパイク率として示されるとおり、信号の安定化を示す最初の100ミリ秒に続く相対的に単調なプロファイルに従う。この観測されたパターンは、オンおよびオフの両方のタイプの極性を有する細胞について類似である。実施例5において、対照(C5)コンタクトレンズによる平均スパイク率は、本明細書に開示されるとおり、最初の100ミリ秒の安定化期間を除くと、オン型細胞については、オフ型細胞によって得られるものに対して約3倍の大きさである。
【0281】
他方で、実施形態(D5)コンタクトレンズによるニューロン活性は、
図49の平均スパイク率として示されるとおり、時間の関数として時間により変動する。この実施例において、実施形態(D5)のコンタクトレンズにより得られた、
図49に記載される時間の関数としての平均スパイク率は、オン型およびオフ型細胞の両方について、時間変動に従う。実施形態のレンズにより得られたスパイク応答における非定常性および非線形性は、網膜画像における人工的エッジもしくは光コントラストプロファイルか、または人工的エッジの時間的変動に起因する。
【0282】
この実施例5において、光学性能のオン軸およびオフ軸評価は、5mmの瞳孔解析直径での明所視条件における明るさの人間の視覚の平均分光感受性を記述する光度関数を用いて、多色モードにおいてモデル化された。
【0283】
本明細書において
図50および
図51に記載されるとおり、広視野光学性能は、5mmの瞳孔径における空間的周波数の関数としての変調伝達関数を用いて測定されるとき、対照(C5)および例示的実施形態(D5)コンタクトレンズの間で著しく類似し、すなわち、黒の実線および黒の破線によって表される曲線の下の面積の変動が5%未満であった。実施例5におけるオフ軸性能に対して、性能の評価のために考慮された視野は15°であり、これは±7.5°であった。
【実施例6】
【0284】
対照C6および例示的実施形態設計D6
この実施例6において、表1の模式的モデル眼の以下のパラメータが、2D調整状態において4D近視眼(すなわち、-4Dの基本処方Rx)を表すために変更された。(i)18.04mmの硝子体眼房深さ、(ii)13.5mmの網膜曲率半径、ならびに(iii)前水晶体半径(R=7.794mm)および円錐定数(Q=-3.959)パラメータ。
【0285】
モデルは、眼から約50cmの近くの対象に焦点が合うように構成された。改変された近視模式モデル眼が、対照(C6)および例示的実施形態(D6)コンタクトレンズで1つずつ矯正された。対照(C6)コンタクトレンズは、以下のパラメータを用いてモデル化された単焦点レンズを表す。前面(R=8.41mm、Q=-0.112)、中心厚さ(0.135mm)、背面(R=7.75mm、Q=-0.25)、および屈折率1.42。対照コンタクトレンズC6には、この本開示において企図される任意の非屈折性特徴がない/欠けている。
【0286】
第2のレンズD6は、対照C6と同じパラメータを有する単焦点コンタクトレンズでもある例示的実施形態を表し、さらに
図45に開示される非屈折性特徴を伴って構成されたものである。
【0287】
例示的実施形態の実施例D6の非屈折性特徴は、水平方向にわずかに伸長された複数の楕円形の点状の特徴を含むランダムパターン(5203)を含む。このランダムパターンは、例示的実施形態のコンタクトレンズ(5202)の光学的中心の周りの光学的ゾーン(5201)内に位置する。(5202)における楕円形点状特徴の総数は18である。ランダムパターンの総寸法は、約3mmの直径である。各々の楕円形点状特徴の寸法は、約125μm×200μmの間である(5204)。
【0288】
非屈折性特徴は、識別および視認性のために、コンタクトレンズの他の特徴に対して拡大されている。例示的実施形態D8の非屈折性特徴のない光学ゾーン(5201)の残りの部分は、眼の基本処方に一致する、基本的な単焦点処方パラメータで構成される。
【0289】
段落[0196]~[0198]に開示されたステップに従い、実施例6の模式的モデル眼に対照C6および実施形態D6のコンタクトレンズ設計を装着したときにシミュレーションされた網膜画像を計算して解析した。この実施例6において、仮想網膜プラットフォームの追加の変数が、以下の設定により考慮された。式1、5、および6に記述された、コントラストゲイン制御機構のオプションが消された。ニューロン束(1602)の配置は、15°×15°の視野に広がる円形配置であった。
【0290】
仮想網膜の疎横接続性モードは、10%の正の重みおよび0.01の重み分散を有する10のシナプス前ニューロンで用いられた。式2および3に記述された外網状層の補充ハイパスフィルタオプションは消された。シナプス後プーリングのオプションも消された。
【0291】
本明細書において考察されるとおり、仮想網膜プラットフォームを用いた実施例6の対照(C6)コンタクトレンズ設計の、計算されたシミュレーション網膜画像の後処理は、オン極性およびオフ極性の両方を有する細胞について、時間の関数としてのスパイク列(
図53)および時間の関数としての平均スパイク率を強調する刺激前後ヒストグラム(
図54)をもたらす。
図53および
図54の上下のサブグラフは、それぞれオン細胞およびオフ細胞についてのデータを表す。
【0292】
本明細書において考察されるとおり、仮想網膜プラットフォームを用いた実施例6の実施形態(D6)コンタクトレンズ設計の、計算されたシミュレーション網膜画像の後処理は、オン極性およびオフ極性の両方を有する細胞について、時間の関数としてのスパイク列(
図55)および時間の関数としての平均スパイク率を強調する刺激前後ヒストグラム(
図56)をもたらす。
図55および
図56の上下のサブグラフは、それぞれオン細胞およびオフ細胞についてのデータを表す。
【0293】
対照(C6)コンタクトレンズによるニューロン活性は、
図53のスパイク列として示されるとおり、オンおよびオフの両方のタイプの極性を有する細胞について、相対的に時間により不変であるか、または時間の関数として最小の変動もしくは揺らぎを伴う。他方で、実施形態(D6)コンタクトレンズによるニューロン活性は、
図55のスパイク列として示されるとおり、相対的に時間により変動し、時間の関数として単調に減少または増加する。実施形態のレンズにより得られたスパイク応答における非定常性および非線形性は、網膜画像における人工的エッジもしくは光コントラストプロファイルか、または人工的エッジの時間的変動に起因する。
【0294】
実施例6において、対照(C6)コンタクトレンズによるニューロン活性は、
図54の平均スパイク率として示されるとおり、信号の安定化を示す最初の100ミリ秒に続く相対的に単調なプロファイルに従う。この観測されたパターンは、オンおよびオフの両方のタイプの極性を有する細胞について類似である。実施例6において、対照(C6)コンタクトレンズによる平均スパイク率は、本明細書に開示されるとおり、最初の100ミリ秒の安定化期間を除くと、オン型細胞については、オフ型細胞によって得られるものに対して約3倍の大きさである。
【0295】
他方で、実施形態(D6)コンタクトレンズによるニューロン活性は、
図56の平均スパイク率として示されるとおり、時間の関数として時間により変動する。この実施例において、
図56に記載される、実施形態(D6)コンタクトレンズで得られた時間の関数としての平均スパイク率は、オン型およびオフ型細胞の両方について、時間変動パターンに従う。
【0296】
この実施例6において、光学性能のオン軸およびオフ軸評価は、単色モード(589nm)および4mmの瞳孔解析直径においてモデル化された。
【0297】
本明細書において
図57および
図58に記載されるとおり、広視野光学性能は、4mmの瞳孔径における空間的周波数の関数としての変調伝達関数を用いて測定されるとき、対照(C6)および例示的実施形態(D6)コンタクトレンズの間で、黒の実線および黒の破線によって表されるとおり仮想的に区別不可能であった。実施例6におけるオフ軸性能に対して、性能の評価のために考慮された視野は15°であり、これは±7.5°であった。
【実施例7】
【0298】
対照C7および例示的実施形態設計D7
この実施例7において、表1の模式的モデル眼の以下のパラメータが、非調整状態において4D近視眼(すなわち、-4Dの基本処方Rx)を表すために変更された。(i)18.04mmの眼の硝子体眼房深さ、および(ii)13.5mmの網膜曲率半径。モデルは、眼から光学的無限遠にある遠い対象に焦点が合うように構成された。改変された近視模式モデル眼が、対照(C7)および例示的実施形態(D7)コンタクトレンズで1つずつ矯正された。対照(C7)コンタクトレンズは、以下のパラメータを用いてモデル化された単焦点レンズを表す。前面(R=8.41mm、Q=-0.112)、中心厚さ(0.135mm)、背面(R=7.75mm、Q=-0.25)、および屈折率1.42。対照コンタクトレンズC7には、この本開示において企図される任意の非屈折性特徴がない/欠けている。第2のレンズD7は、対照C7と同じパラメータを有する単焦点コンタクトレンズでもある例示的実施形態を表し、さらに
図59に開示される非屈折性特徴を伴って構成されたものである。
【0299】
例示的実施形態の実施例D7の非屈折性特徴は、複数の点状特徴を含むらせんパターン(5903)を含む。らせんパターンはコンタクトレンズ(5902)の光学的ゾーン(5901)内に位置する。各アームにおける点状特徴の総数は49である。らせんパターンの総寸法は、約6mmの直径である。各々の点状特徴の幅は、約125μmの間である(5904)。非屈折性特徴は、識別および視認性のために、コンタクトレンズの他の特徴に対して拡大されている。例示的実施形態D7の非屈折性特徴のない光学ゾーン(5901)の残りの部分は、眼の基本処方に一致する、基本的な単焦点処方パラメータで構成される。
【0300】
段落[0196]~[0198]に開示されたステップに従い、実施例7の模式的モデル眼に対照C7および実施形態D7のコンタクトレンズ設計を装着したときにシミュレーションされた網膜画像を計算して解析した。
【0301】
この実施例7において、仮想網膜プラットフォームの追加の変数が、以下の設定により考慮された。式1、5、および6に記述されたコントラストゲイン制御機構のオプションは、以下の入力パラメータ値で用いられた。(i)正規化された輝度単位当り150Hzの外網状層増幅λOPL値、(ii)5Hzの双極不活性リーク
【0302】
【0303】
(iii)100Hzのフィードバック増幅λ
A、(iv)2.5°の空間的スケールσA、および(v)0.01ミリ秒の時間的スケールτA。ニューロン束(1602)の配置は、5°×5°の視野に広がる円形配置であった。仮想網膜の疎横接続性モードは消された。式2および3に記述された外網状層の補充ハイパスフィルタオプションは消された。シナプス後プーリングのオプションも消された。本明細書において考察されるとおり、仮想網膜プラットフォームを用いた実施例7の対照(C7)コンタクトレンズ設計の、計算されたシミュレーション網膜画像の後処理は、オン極性およびオフ極性の両方を有する細胞について、時間の関数としてのスパイク列(
図60)および時間の関数としての平均スパイク率を強調する刺激前後ヒストグラム(
図61)をもたらす。
図60および
図61の上下のサブグラフは、それぞれオン細胞およびオフ細胞についてのデータを表す。本明細書において考察されるとおり、仮想網膜プラットフォームを用いた実施例7の実施形態(D7)コンタクトレンズ設計の、計算されたシミュレーション網膜画像の後処理は、オン極性およびオフ極性の両方を有する細胞について、時間の関数としてのスパイク列(
図62)および時間の関数としての平均スパイク率を強調する刺激前後ヒストグラム(
図63をもたらす。
図62および
図63の上下のサブグラフは、それぞれオン細胞およびオフ細胞についてのデータを表す。
【0304】
対照(C7)コンタクトレンズによるニューロン活性は、
図60のスパイク列として示されるとおり、オンおよびオフの両方のタイプの極性を有する細胞について、相対的に時間により不変であるか、または時間の関数として最小の変動もしくは揺らぎを伴う。他方で、実施形態(D7)コンタクトレンズによるニューロン活性は、
図62のスパイク列として示されるとおり、相対的に時間により変動し、時間の関数として変動する周期性を伴って揺らいでいる。
【0305】
実施例7において、対照(C7)コンタクトレンズによるニューロン活性は、
図61の平均スパイク率として示されるとおり、信号の安定化を示す最初の100ミリ秒に続く相対的に単調なプロファイルに従う。この観測されたパターンは、オンおよびオフの両方のタイプの極性を有する細胞について類似である。
【0306】
他方で、実施形態(D6)コンタクトレンズによるニューロン活性は、
図62の平均スパイク率として示されるとおり、時間の関数として変動する。この実施例において、
図63に記載される、実施形態(D7)コンタクトレンズで得られた時間の関数としての平均スパイク率は、オン型およびオフ型細胞の両方について、時間変動パターンに従う。
【0307】
この実施例7において、光学性能のオン軸およびオフ軸評価は、単色モード(589nm)および6mmの瞳孔解析直径においてモデル化された。本明細書において
図64および
図65に記載されるとおり、広視野光学性能は、6mmの瞳孔径における空間的周波数の関数としての変調伝達関数を用いて測定されるとき、対照(C7)および例示的実施形態(D7)コンタクトレンズの間で、黒の実線および黒の破線によって表されるとおり仮想的に区別不可能である。
【0308】
実施例7におけるオフ軸性能に対して、性能の評価のために考慮された視野は15°であり、これは±7.5°であった。本明細書に記載されたシミュレーション技術は、本明細書に開示された企図される非屈折性特徴を有する単焦点コンタクトレンズが、標準的治療の単焦点コンタクトレンズと比較して網膜神経節細胞活性の増加を提供することを示すための多くの方法のうちの1つである。
【0309】
眼鏡レンズの実施形態
単焦点光学プロファイルとともに用いられる非屈折性特徴が、装着者の眼における性能を模倣する仮想網膜プラットフォームによる平均網膜神経節細胞スパイク率の増加の代理の尺度によって測定されたときに、網膜神経節細胞活性の増加を提供することを示すために、さまざまな眼鏡レンズの実施形態がモデル化される。
【0310】
図66は、縮尺通りではない、先行技術の眼鏡レンズ(6601)と、例示的な眼鏡レンズ(6602)の実施形態との正面図を示す。眼鏡レンズの寸法は、約40mm×50mmである。両方の場合において、眼鏡レンズ範囲全体が自身の光学ゾーンを構成する。眼鏡レンズの実施形態(6602)は、4つの水平な線もしくは筋と、4つの鉛直な線もしくは筋とを含む格子パターンを含む非屈折性特徴(6603)を伴って構成される。光学ゾーンは、眼の基本処方と一致する単焦点屈折力を有する光学中心(6605)の周りに実質的に設計される。眼鏡レンズ実施形態の中心に位置する格子パターンは、約25mmの高さおよび幅にわたる。これらの格子線(6603)の境界は、完全に不透明または実質的に不透明に構成される。非屈折性特徴(6604)の幅は、約50μm~100μmの間であり、図面において、その幅は本明細書に開示されるコンタクトレンズのサイズに対して特徴を示すためにのみ拡大されている。加えて
図66の実施形態は、他の変形で構成されてもよく、たとえば光学ゾーン内の企図される非屈折性設計特徴の幅は、少なくとも125μm、150μm、175μm、200μm、または250μmの幅であってもよい。加えて
図66の実施形態は、他の変形で構成されてもよく、たとえば企図される非屈折性設計特徴は、ランダムパターン、複数の円形、楕円形、三角形、矩形、六角形、正多角形、または非正多角形を含んでもよく、ここで複数の開口を規定する境界の幅は、50~125μm、150~250μm、または100~300μmの間の幅であってもよい。
図66の実施形態の好ましい変形において、非屈折性特徴の最大幅、すなわち格子パターンまたは任意のその他のパターンを形成する線の幅は、装着者の眼の解像度特性に対する保証のない結果的影響を避けるために、150μm、200μm、または250μm以下とされる。他の実施形態において、企図される非屈折性設計特徴は、眼鏡設計の光学ゾーンの周辺に位置して(in the located)配置されてもよい。さらに別の眼鏡レンズの実施形態において、格子パターンを形成する微細な線または筋の数は、少なくとも5、9、15、または25であってもよい。いくつかの他の眼鏡レンズの実施形態において、格子パターンを形成する設計特徴、線、または筋の数は、5~9、または9~15、または9~15、または5~25の間であってもよい。1つの別の実施形態において、ただ1つの長い実質的に連続する曲線またはジグザグ線が、少なくとも3mm、6mm、9mm、または12mmの長さで光学的ゾーンを通ることが企図されてもよい。
【0311】
さらに別の眼鏡レンズの実施形態において、1つ以上の条線が対称的またはランダムな態様で配置されてもよく、それらは光軸と同心に位置してもよいし、光学的中心に対して偏心されていてもよい。加えて、条線は直線または曲線からなっていてもよく、それらの線は、互いに接触もしくは交差してもよいし、すべてが分離して構成されてもよいし、それらの組み合わせであってもよい。条線の幅および長さは変動してもよい。左眼および右眼に装着されるレンズに異なるパターンが適用されてもよい。
【0312】
さらに別の眼鏡レンズの実施形態において、眼鏡レンズ内の企図される設計特徴(すなわち、複数の条線またはモアレパターン)は、互いに離れていてもよい。さらに別の実施形態において、企図される複数の非屈折性特徴は、互いに隣接するか、または組み合わされるように構成されてもよい。
【0313】
眼鏡装着者の自然な衝動性の眼球運動は、時間的に変動する刺激をもたらすことがあり、それによって視覚画像に人工的に導入される不均質性がさらに高められてもよく、そのことは次に、装着者にとっての治療的利益、たとえば装着者の近視の進行速度のより大幅な低下などの有効性を高めてもよい。
図67は、先行技術の標準的な単焦点レンズ(6702)で矯正した2Dの近視モデル眼(6700)に入る、広角視野(6701)からのたとえば555nmなどの可視波長およびバージェンス0Dの入射光を示す模式図を示す。オン中心/オフ周囲およびオフ中心/オン周囲回路(6703)によって、網膜神経節細胞活性が記録された。先行技術の標準的な単焦点レンズ(6702)を伴う網膜神経節細胞活性は、シミュレーションされた習慣的な衝動性の眼球運動によって促進された網膜面において捕らえられ、最小の網膜活性か、または基本率の網膜活性か、または網膜活性の最小の時間的変動を示す。オン受容野およびオフ受容野活性の時間積分における相対的な差が、さらなる眼球の成長を決定する。
【0314】
本開示は、不活性網膜が眼球の成長を引き起こし、活性網膜がその成長を減少させるか、または停止信号を引き起こすものと仮定する。本開示はさらに、先行技術の標準的な単焦点または眼鏡レンズおよび/あるいは空間的に均質な視覚画像が、網膜をベースライン状態(すなわち網膜神経節細胞のベースラインまたは一定の発火パターン)のままとし、よってより進んだ近視につながるさらなる眼球の成長を促進する、均質で実質的にエッジのない視覚画像に寄与することを予期する。
【0315】
図68は、眼鏡の実施形態(6802)で矯正した2Dの近視モデル眼(6800)に入る、広角視野(6801)からのたとえば555nmなどの可視波長およびバージェンス0Dの入射光を示す模式図を示す。標準的な眼鏡の実施形態(6802)を伴うオン中心/オフ周囲およびオフ中心/オン周囲回路(6803)によって記録された網膜神経節細胞活性は、シミュレーションされた習慣的な衝動性の眼球運動によって促進された網膜面において捕らえられ、ベースライン状態に比較して網膜の活性が増加することを実証するかまたは示す。
【0316】
図67および
図68では、単純なモデル眼が例示の目的のために選択された。しかし、他の実施形態において、リウ-ブレナン、エスクデロ-ナバロ、およびその他のものなどの模式的な光線追跡モデル眼が代わりに用いられてもよい。本明細書で提供される実施例では、2D近視モデル眼を用いて本開示を開示したが、同じ開示を近視の他の度数、すなわち-1D、-3D、-5D、または-6Dへと拡張できる。さらに、乱視を伴うさまざまな度数の近視を有する眼へと拡張できることが理解される。実施形態において、555nmという特定の波長について言及したが、420nm~760nmの間の他の可視波長にも拡張できることが理解される。
【0317】
さまざまな例示的な眼鏡レンズの実施形態(D8~D10)のモデル化は、単焦点設計とともに用いられる企図される非屈折性特徴が、本明細書に開示された仮想網膜プラットフォームを用いて得られた平均網膜スパイク率の増加によって測定された、網膜神経節細胞活性の増加を提供することを示す。他の実施形態において、網膜神経節細胞活性のさまざまな他の代理尺度、たとえば、選択されたニューロン束のスパイク列解析の検査などが考慮されてもよい。
【0318】
本開示に従う眼鏡レンズの実施形態の作用を示すために、本明細書に記載されるとおり、各テストケース(すなわち実施例8~10)に対して2つの異なるタイプの眼鏡を用いて高度な光学的モデル化実験が行われた。
【0319】
第1のタイプは、標準的治療を模倣する屈折異常の矯正を提供するための、模式的モデル眼の基本処方に一致した単焦点眼鏡レンズ(C8~C10)を含んだ。
【0320】
第2のタイプは、本質的に同じ単焦点の標準的治療の対照眼鏡レンズ(C8~C10)であって、さらに本発明に従って設計された追加の非屈折性特徴を伴って構成された、さまざまな例示的な眼鏡レンズの実施形態(D8~D10)を含んだ。本発明の作用を示すために、対照(C8~C10)および例示的実施形態の眼鏡レンズ(D8~D10)は、実施例8~10のそれぞれに説明される改変された模式的モデル眼に1つずつ装着され、試験/評価された。眼鏡レンズの前面の表面透過特性を改変して、実施例8~10の特徴を設計した。透過率は100%のうちの割合として計算され、100%とは、あたかも吸収、反射、または口径食損失がないかのようにすべての光が透過することを意味する。本開示の特定の実施形態において、表面透過率は、光線がその表面を透過する強度の相対的な任意の割合として定義される。本開示のいくつかの他の実施形態において、強度の相対的な任意の割合は、波長依存性となるように構成されてもよい。本開示の特定の他の実施形態において、強度の任意の割合は、偏光感受性となるように構成されてもよい。シミュレーションされた網膜神経節細胞活性を評価するため、眼鏡レンズは、衝動性眼球運動を模倣するさまざまな分散位置で、モデル眼の光軸に関して水平方向に偏心された。モデル眼の光学的中心に対する眼鏡レンズの動きは、水平方向における±5mmの間に含まれた。偏心した眼鏡位置の各々において広視野網膜画像シミュレーションが実行された。こうしてシミュレーションした101の網膜画像が、網膜神経節細胞活性をもたらすための仮想網膜プラットフォームのための入力ストリームを構成した。この例において、101の画像フレームの各々は、仮想網膜モデルに対する5.05秒の実時間刺激提示を構成する50ミリ秒となるように構成された。入力ストリームの各フレームは、512×512画素にわたって構成され、各フレームは、仮想網膜プラットフォームの網膜の約15°×15°(黄斑)、または20°×20°(黄斑近傍)の領域を包含する円形ニューロン領域の直径全体をカバーするように構成された。入力ストリームにおける各画素のビット深度は、0~255(すなわち8ビット)の範囲にデジタル化された。本開示のコンタクトレンズの実施形態の作用を示すために用いられる、式1~9に記載された具体的な網膜の設定および構成は、以下のセクションにおいて考察される。
【0321】
実施例8~10のすべてにおいて、外網状層は、約1.5°(すなわち式2のσC)に対する中心領域と、約4.75°(すなわち式3のσS)に対する周囲領域とを有するように構成された。外網状層の中心および周囲の時間的スケールは約1ミリ秒に設定され、これは式2および3の変数τCおよびτSによってそれぞれ表された。本明細書における式1に記述されるとおりの、積分中心-周囲信号を支配する変数は、w0PL=1およびλ0PL=10となるように選択された。双極細胞および神経節細胞シナプスの静的非線形係数は、実施例8~10のすべてにわたって固定された。双極線形閾値は0に設定され、線形閾値は定数80に保たれ、双極増幅値は100に保たれた。ニューロンモデルに対する値は、実施例8~10のすべてにわたって維持され、ここでは0.75のリーク、20のニューロン雑音、150の膜容量、および2.4の発火閾値が、実施例8~10のシミュレーションのために用いられた。シナプス後プーリング変数シグマは無視された。コントラストゲイン制御機構、外網状層の補充ハイパスフィルタの実用性、および無軸索細胞の横接続の実用性に対するオプションは、実施例8~10にわたり可変に保たれた。使用される具体的な設定のさらなる詳細が本明細書において開示される。
【0322】
本明細書に記載される各々の例示的実施形態に対して、次の2つのタイプの眼鏡レンズを用いて、高度な光学モデル化実験が行われた。(1)標準的治療をシミュレーションする、屈折異常の矯正を提供するための模式的モデル眼の基本処方に一致した単焦点眼鏡レンズ、(2)標準的治療の単焦点眼鏡レンズと比較して網膜神経節細胞活性の増加を提供するために、本発明に従って設計された追加の非屈折性特徴を有する、上記と同じ標準的な単焦点眼鏡レンズ。
【0323】
特定の眼鏡レンズの実施形態において、眼鏡レンズの光学ゾーン内の企図される設計特徴(すなわち開口)の、不透明または半透明または吸収性の境界は、少なくとも15μm、25μm、35μm、50μm、75μm、100μm、150μm、200μm、または250μmの幅であってもよい。
【0324】
特定の眼鏡レンズの実施形態において、眼鏡レンズの光学ゾーン内の企図される設計特徴(すなわち開口)の、不透明または半透明または吸収性の境界は、矯正された眼の解像度能力の潜在的な劣化を避けるため、および/または、すべての視条件において適切な量の光の透過を維持して、たとえば装着者が経験し得る薄暗い光、周囲光、および高レベル光の条件にわたる通常の瞳孔の2~7mmの変化に対して調整するために、300μm、325μm、350μm、375μm、または400μm以下の幅となるように構成されてもよい。
【0325】
眼鏡レンズの美容的外観のため、半透明または吸収性の/着色された境界は、設計特徴として不透明な境界よりも好ましいことがある。特定の眼鏡レンズの実施形態において、眼鏡レンズ上の企図される設計特徴の半透明な境界は、15~30μm、25~50μm、または30~75μm、または15~100μmの間の幅であってもよい。いくつかの実施形態において、設計特徴の幅は、複数の開口にわたり一定でなくてもよい。
【0326】
さらに別の眼鏡の実施形態において、光学ゾーン内の企図された複数の開口は、装着者がたとえば本を読むこと、書くこと、ビデオゲームで遊ぶこと、携帯電話の使用、タブレットの使用、またはコンピュータの使用など、特定の近くを見る作業をする場合のみに用いられてもよい。
【0327】
眼鏡レンズにおける企図された設計特徴の実現に関して、特定の実施形態において、複数の境界は、偏光選択性を有し得る材料を使用して導入されてもよい。こうした偏光感受性材料の使用は、装着者に対する美容性を高めつつ、なおも停止信号を提供するための望ましいエッジ効果をさらに提供してもよい。偏光感受性材料で構成された複数の開口を使用するときは、選択的なテストケースが考慮されてもよい(液晶ディスプレイ(LCD:liquid crystal display)、発光ダイオードディスプレイの使用)。
【実施例8】
【0328】
対照(C8)および例示的実施形態(D8)設計
この実施例8において、表1の模式的モデル眼の以下のパラメータが、非調整状態において3D近視眼(すなわち-3Dの基本処方Rx)を表すために変更された。(i)17.63mmの硝子体眼房深さ、および(ii)13.5mmの網膜曲率半径。
【0329】
モデルは、眼から光学的無限遠にある遠い対象に焦点が合うように構成された。改変された近視模式モデル眼が、対照(C8)および例示的実施形態(D8)眼鏡レンズで1つずつ矯正された。対照(C8)眼鏡レンズは、以下のパラメータを用いてモデル化された単焦点レンズを表す。前面(R=2000mm)、中心厚さ(1.5mm)、背面(R=144.2mm)、および全ブランク径50mmを有する屈折率1.5。対照眼鏡レンズC8には、この本開示において企図される任意の非屈折性特徴がない/欠けている。第2のレンズD8は、対照C8と同じパラメータを有する単焦点眼鏡レンズでもある例示的実施形態を表し、さらに
図69に開示される非屈折性特徴を伴って構成されたものである。例示的実施形態の実施例D8(6900)の非屈折性特徴は、6つのアーム(6902)を有する渦巻きパターンを含み、各々のアームは複数の点状の特徴をさらに含む。渦巻きパターンは眼鏡レンズ(6901)の光学的中心の周りに位置する。各アーム(6902)における点状特徴の総数は約10である。渦巻きパターンの総寸法は、約5mmの直径である。点状特徴の幅は、約75μmの間である(6904)。例示的実施形態D8の残りの部分(6905)は、眼の基本処方に一致する、単焦点パラメータで構成される。例示的実施形態の実施例D8の非屈折性特徴は、非屈折性特徴に入射する光の少なくとも90%を吸収するように構成される。段落[0320]~[0322]に開示されたステップに従い、実施例8の模式的モデル眼に対照C8および実施形態D8の眼鏡設計を装着したときにシミュレーションされた網膜画像を計算して解析した。
【0330】
この実施例8において、仮想網膜プラットフォームの追加の変数が、以下の設定により考慮された。式1、5、および6に記述されたコントラストゲイン制御機構のオプションは、以下の入力パラメータ値で用いられた。(i)正規化された輝度単位当り150Hzの外網状層増幅λOPL値、(ii)5Hzの双極不活性リーク
【0331】
【0332】
(iii)100Hzのフィードバック増幅λA、(iv)2.5°の空間的スケールσA、および(v)0.01ミリ秒の時間的スケールτA。ニューロン束(1602)の配置は、15°×15°の視野に広がる円形配置であった。
【0333】
仮想網膜の疎横接続性モードは、10%の正の重みおよび0.01の重み分散を有する10のシナプス前ニューロンで用いられた。さらに、式2および3に記述された外網状層の補充ハイパスフィルタオプションは、以下のパラメータ値で用いられた。0.2ミリ秒の時間的スケールおよび0.5°の空間的スケール。シナプス後プーリングのオプションも消された。本明細書において考察されるとおり、仮想網膜プラットフォームを用いた実施例8の対照(C8)眼鏡設計の、計算されたシミュレーション網膜画像の後処理は、オン極性およびオフ極性の両方を有する細胞について、時間の関数としてのスパイク列(
図70)および時間の関数としての平均スパイク率を強調する刺激前後ヒストグラム(
図71)をもたらす。
図70および
図71の上下のサブグラフは、それぞれオン細胞およびオフ細胞についてのデータを表す。
【0334】
本明細書において考察されるとおり、仮想網膜プラットフォームを用いた実施例8の実施形態(D8)眼鏡設計の、計算されたシミュレーション網膜画像の後処理は、オン極性およびオフ極性の両方を有する細胞について、時間の関数としてのスパイク列(
図72)および時間の関数としての平均スパイク率を強調する刺激前後ヒストグラム(
図73)をもたらす。
図72および
図73の上下のサブグラフは、それぞれオン細胞およびオフ細胞についてのデータを表す。
【0335】
対照(C8)眼鏡レンズによるニューロン活性は、
図70のスパイク列として示されるとおり、相対的に時間により不変であるか、または時間の関数として最小の変動を伴うか、もしくは変動を伴わないか、もしくは揺らぎを伴わない。この観測は、オン型およびオフ型の両方のタイプの極性を有する細胞について同様であった。他方で、実施形態(D8)眼鏡レンズによるニューロン活性は、
図72のスパイク列として示されるとおり、相対的に時間により変動し、時間による揺らぎを示す。時間の関数として観測された揺らぎは、観測された揺らぎの小さな振幅を伴って非周期的である。実施形態のレンズにより得られたスパイク応答における非定常性および非線形性は、網膜画像における人工的エッジもしくは光コントラストプロファイルか、または人工的エッジの時間的変動に起因する。
【0336】
実施例8において、対照(C8)眼鏡レンズによるニューロン活性は、
図71の平均スパイク率として示されるとおり、信号の安定化を示す最初の100ミリ秒に続く相対的に単調なプロファイルに従う。この観測されたパターンは、オンおよびオフの両方のタイプの極性を有する細胞について類似である。
【0337】
他方で、実施形態(D8)眼鏡レンズによるニューロン活性は、
図73の平均スパイク率として示されるとおり、オン型およびオフ型細胞の両方について、時間変動パターンに従う。この実施例8において、光学性能のオン軸およびオフ軸評価は、6mmの瞳孔解析直径での明所視条件における明るさの人間の視覚の平均分光感受性を記述する光度関数を用いて、470nm~650nmの波長にわたる多色モードにおいてモデル化された。
【0338】
本明細書において
図74および
図75に記載されるとおり、広視野光学性能は、6mmの瞳孔径における空間的周波数の関数としての変調伝達関数を用いて測定されるとき、対照(C8)および例示的実施形態(D8)眼鏡レンズの間で、黒の実線および黒の破線によって表されるとおり仮想的に区別不可能である。実施例8におけるオフ軸性能に対して、性能の評価のために考慮された視野は20°であり、これは中心から±10°である。
【実施例9】
【0339】
対照(C9)および例示的実施形態(D9)設計
この実施例9において、表1の模式的モデル眼の以下のパラメータが、1Dの調整状態において1D近視眼(すなわち、-3Dの基本処方Rx)を表すために変更された。(i)16.92mmの眼の硝子体眼房深さ、(ii)12mmの網膜曲率半径、ならびに(iii)前水晶体半径(R=9.34mm)および円錐定数(Q=-3.2)パラメータ。
【0340】
モデルは、眼から1メートル離れた遠い対象に焦点が合うように構成された。改変された近視模式モデル眼が、対照(C9)および例示的実施形態(D9)眼鏡レンズで1つずつ矯正された。対照(C8)眼鏡レンズは、以下のパラメータを用いてモデル化された単焦点レンズを表す。前面(R=2000mm)、中心厚さ(1.5mm)、背面(R=379.1mm)、および全ブランク径50mmを有する屈折率1.5。対照眼鏡レンズC9には、この本開示において企図される任意の非屈折性特徴がない/欠けている。
【0341】
第2のレンズD9は、対照C9と同じパラメータを有する単焦点眼鏡レンズでもある例示的実施形態を表し、さらに
図76に開示された非屈折性特徴を伴って構成されたものである。
【0342】
例示的実施形態の実施例D9の非屈折性特徴は正方形格子パターン(7602)を含み、この格子パターン(7602)はさらに、眼鏡レンズ(7601)の光学的中心の周りに位置する複数の正方形開口を含む。パターン(7602)内に設計された開口の総数は約16である。正方形格子の総寸法は約3×3mmである。正方形開口を形成する線または境界の幅は、約50μmの間である(7604)。例示的実施形態D9の残りの部分(7605)は、眼の基本処方に一致する単焦点パラメータで構成される。例示的実施形態D9の非屈折性特徴は、非屈折性特徴に入射する光の少なくとも85%を吸収するように構成される。
【0343】
段落[0320]~[0322]に開示されたステップに従い、実施例9の模式的モデル眼に対照C9および実施形態D9の眼鏡設計を装着したときにシミュレーションされた網膜画像を計算して解析した。この実施例9において、仮想網膜プラットフォームの追加の変数が、以下の設定により考慮された。式1、5、および6に記述された、コントラストゲイン制御機構のオプション。ニューロン束(1602)の配置は、20°×20°の視野に広がる円形配置であった。
【0344】
仮想網膜の疎横接続性モードは、10%の正の重みおよび0.01の重み分散を有する10のシナプス前ニューロンで用いられた。式2および3に記述された外網状層の補充ハイパスフィルタオプションは消された。シナプス後プーリングのオプションも消された。
【0345】
本明細書において考察されるとおり、仮想網膜プラットフォームを用いた実施例9の対照(C9)眼鏡設計の、計算されたシミュレーション網膜画像の後処理は、オン型およびオフ型極性の両方を有する細胞について、時間の関数としてのスパイク列(
図77)および時間の関数としての平均スパイク率を強調する刺激前後ヒストグラム(
図78)をもたらす。
図77および
図78の上下のサブグラフは、それぞれオン細胞およびオフ細胞についてのデータを表す。
【0346】
本明細書において考察されるとおり、仮想網膜プラットフォームを用いた実施例9の実施形態(D9)眼鏡設計の、計算されたシミュレーション網膜画像の後処理は、オン型およびオフ型極性の両方を有する細胞について、時間の関数としてのスパイク列(
図79)および時間の関数としての平均スパイク率を強調する刺激前後ヒストグラム(
図80)をもたらす。
図79および
図80の上下のサブグラフは、それぞれオン型細胞およびオフ型細胞についてのデータを表す。
【0347】
対照(C9)眼鏡レンズによるニューロン活性は、
図77のスパイク列として示されるとおり、オンおよびオフの両方のタイプの極性を有する細胞について、相対的に時間により不変であるか、または時間の関数として最小の変動もしくは揺らぎを伴う。他方で、実施形態(D9)眼鏡レンズによるニューロン活性は、
図79のスパイク列として示されるとおり、相対的に時間により変動し、時間の関数として変動する周期性を伴って揺らいでいる。実施例9において、対照(C9)眼鏡レンズによるニューロン活性は、
図78の平均スパイク率として示されるとおり、信号の安定化を示す最初の50ミリ秒に続く相対的に単調なプロファイルに従う。この観測されたパターンは、オン型およびオフ型の両方のタイプの極性を有する細胞について類似である。オフ型細胞応答は、確かに時間の関数としての平均スパイク率のいくらかの変動性を示したが、その変化の大きさは小さい大きさであった。他方で、実施形態(D9)眼鏡レンズによるニューロン活性は、
図80に記載される実施形態(D9)眼鏡レンズによって得られた時間の関数としての平均スパイク率として示されるとおり、オン型およびオフ型細胞の両方について、時間変動パターンに従う。対照(C9)眼鏡レンズによるニューロン活性は、
図77のスパイク列として示されるとおり、両方のタイプの極性について、相対的に時間により不変である。実施形態のレンズにより得られたスパイク応答における非定常性および非線形性は、網膜画像における人工的エッジもしくは光コントラストプロファイルか、または人工的エッジの時間的変動に起因する。
【0348】
離散的なニューロン束の応答から分かるとおり、活性な離散的オフ型ニューロン束の数は、対応する活性な離散的オン型ニューロン束の数より3~4倍少なくなる。他方で、実施形態(D9)眼鏡レンズによるニューロン活性は、
図79のスパイク列として示されるとおり、両方のタイプの極性について相対的に時間により変動する。さらに、活性なオフ型離散的ニューロン束の総数は、活性なオン型離散的ニューロン束の数に匹敵した。
【0349】
この実施例9において、光学性能のオン軸およびオフ軸評価は、単色モード(589nm)および5mmの瞳孔解析直径においてモデル化された。本明細書において
図81および
図82に記載されるとおり、広視野光学性能は、5mmの瞳孔径における空間的周波数の関数としての変調伝達関数を用いて測定されるとき、対照(C9)および例示的実施形態(D9)眼鏡レンズの間で仮想的に区別できない。実施例9におけるオフ軸性能に対して、性能の評価のために考慮された視野は20°であり、これは中心から±10°である。
【実施例10】
【0350】
対照(C10)および例示的実施形態(D10)設計
この実施例10において、表1の模式的モデル眼の以下のパラメータが、2Dの調整状態において4D近視眼(すなわち-4Dの基本処方Rx)を表すために変更された。(i)18mmの眼の硝子体眼房深さ、(ii)12mmの網膜曲率半径、ならびに(iii)前水晶体半径(R=7.934mm)および円錐定数(Q=-1.962)パラメータ。
【0351】
モデルは、眼から50cm離れた遠い対象に焦点が合うように構成された。改変された近視模式モデル眼が、対照(C10)および例示的実施形態(D10)眼鏡レンズで1つずつ矯正された。対照(C10)眼鏡レンズは、以下のパラメータを用いてモデル化された単焦点レンズを表す。前面(R=2000mm)、中心厚さ(1.5mm)、背面(R=102.26mm)、および全ブランク径50mmを有する屈折率1.5。対照眼鏡レンズC10には、この本開示において企図される任意の非屈折性特徴がない/欠けている。
【0352】
第2のレンズD10は、対照C10と同じパラメータを有する単焦点眼鏡レンズでもある例示的実施形態を表し、さらに
図83に開示される非屈折性特徴を伴って構成されたものである。例示的実施形態の実施例D10の非屈折性特徴は、眼鏡レンズ(8301)の光学的中心の周りに位置する、一連の線または筋をさらに含むランダムパターン(8302)として構成された非屈折性特徴を含む。パターン(8302)内の設計された線または筋の総数は約16である。線または筋の長さ(8306)は、約0.75mm~1.25mmである。
【0353】
線または筋の幅(8304)は、約25μm~75μmである。例示的実施形態D10の残りの部分(8305)は、眼の基本処方に一致する、単焦点パラメータで構成される。例示的実施形態D10の非屈折性特徴は、非屈折性特徴に入射する光の少なくとも80%を吸収するように構成される。
【0354】
段落[0320]~[0322]に開示されたステップに従い、実施例10の模式的モデル眼に対照C10および実施形態D10の眼鏡設計を1つずつ装着したときにシミュレーションされた網膜画像を計算して解析した。この実施例10において、仮想網膜プラットフォームの追加の変数が、以下の設定により考慮された。式1、5、および6に記述された、コントラストゲイン制御機構のオプション。ニューロン束(1602)の配置は、20°×20°の視野に広がる円形配置であった。仮想網膜の疎横接続性モードは消された。式2および3に記述された外網状層の補充ハイパスフィルタオプションは消された。シナプス後プーリングのオプションも消された。本明細書において考察されるとおり、仮想網膜プラットフォームを用いた実施例10の対照(C10)眼鏡設計の、計算されたシミュレーション網膜画像の後処理は、オン型およびオフ型極性の両方を有する細胞について、時間の関数としてのスパイク列(
図84)および時間の関数としての平均スパイク率を強調する刺激前後ヒストグラム(
図85)をもたらす。
図84および
図85の上下のサブグラフは、それぞれオン型細胞およびオフ型細胞についてのデータを表す。本明細書において考察されるとおり、仮想網膜プラットフォームを用いた実施例10の実施形態(D10)眼鏡設計の、計算されたシミュレーション網膜画像の後処理は、オン型およびオフ型極性の両方を有する細胞について、時間の関数としてのスパイク列(
図86)および時間の関数としての平均スパイク率を強調する刺激前後ヒストグラム(
図87)をもたらす。
【0355】
図86および
図87の上下のサブグラフは、それぞれオン型およびオフ型細胞についてのデータを表す。対照(C10)眼鏡レンズによるニューロン活性は、
図84のスパイク列として示されるとおり、両方のタイプの極性、すなわちオン型(
図84の上部サブグラフ)およびオフ型細胞(
図84の下部サブグラフ)について、相対的に時間により不変である。サブグラフのY軸は、離散的ニューロン束の応答を表す。
【0356】
見られるとおり、活性な離散的オフ型ニューロン束の数は、対応する活性な離散的オン型ニューロン束の数より3~4倍少なくなる。他方で、実施形態(D10)眼鏡レンズによるニューロン活性は、
図86のスパイク列として示されるとおり、両方のタイプの極性、すなわちオン型(
図86の上部サブグラフ)およびオフ型(
図86の下部サブグラフ)について相対的に時間により変動する。しかし、実施形態(D10)の眼鏡レンズ実施例による、活性なオフ型離散的ニューロン束の総数は、活性なオン型離散的ニューロン束の数に匹敵した。
【0357】
実施例10において、対照(C10)眼鏡レンズによるニューロン活性は、
図85の平均スパイク率として示されるとおり、オン型細胞については、信号の安定化を示す最初の50ミリ秒に続いて相対的に単調なプロファイルに従う(
図85の上部グラフ)。一方、オフ型細胞は、時間の関数としての平均スパイク率において小さい変動を示したが、これらの変動の大きさは小さかった。
【0358】
対照的に異なることに、実施形態(D10)眼鏡レンズによる離散的ニューロン活性は、
図87の平均スパイク率として示されるとおり、時間の関数として可変である。時間変動パターンは、オン型およびオフ型細胞の両方において観測されるが、オフ型細胞の大きさの方が大きい。2000~3000ミリ秒時点でオフ型細胞において観測されるパターン(
図87の下部グラフ)では、平均スパイク率は準正弦波パターンに従う。オフ型細胞応答のさまざまな他の時点において、準正弦波パターンの振幅は減少する。オン型細胞応答も時間の関数としての平均スパイク率の変動を示すが、その変動の大きさはより少ない。
【0359】
実施形態のレンズにより得られたスパイク応答における非定常性および非線形性は、網膜画像における人工的エッジもしくは光コントラストプロファイルか、または人工的エッジの時間的変動に起因する。実施例10において、光学性能のオン軸およびオフ軸評価は、4mmの瞳孔解析直径での明所視条件における明るさの人間の視覚の平均分光感受性を記述する光度関数を用いて、470nm~650nmの波長にわたる多色モードにおいてモデル化された。
【0360】
本明細書において
図88および
図89に記載されるとおり、広視野光学性能は、4mmの瞳孔径における空間的周波数の関数としての変調伝達関数を用いて測定されるとき、対照(C10)および例示的実施形態(D10)眼鏡レンズの間で、黒の実線および黒の破線で表されるとおり、実質的に類似する。実施例10におけるオフ軸性能に対して、性能の評価のために考慮された視野は20°であり、これは中心から±10°である。
【0361】
例示的な請求項の組A
眼に対するコンタクトレンズであって、このコンタクトレンズは前面と、背面と、眼の距離屈折異常に対する実質的な矯正を提供する基本処方および複数の非屈折性特徴を含む光学ゾーンと、光学ゾーンを囲む周辺ゾーンとを含む、コンタクトレンズ。
【0362】
組Aの上記請求項例のコンタクトレンズであって、眼に対する基本処方は、以下の少なくとも1つ:球面収差補正、非点収差補正、または球面および非点収差補正を含む、コンタクトレンズ。
【0363】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、複数の非屈折性特徴は、以下の少なくとも1つ:複数の開口を形成する複数の実質的に不透明な境界であって、各開口は実質的に透明な領域を境界線で囲む、実質的に不透明な境界か、または実質的に明確な境界のない1つ以上のパターンを形成する複数の実質的に不透明な特徴を含む、コンタクトレンズ。
【0364】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、各々の実質的に透明な領域は、眼に対する基本処方を含む、コンタクトレンズ。
【0365】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、複数の開口のうち少なくとも1つの形状は、円形、楕円形、長円形、三角形、矩形、正方形、五角形、または六角形、または八角形、または任意の他の正多角形、または非正多角形、またはランダム形状である、コンタクトレンズ。
【0366】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、複数の開口は、円形、六角形、放射状、らせん状、規則的、不規則的、またはランダム配置で構成される、コンタクトレンズ。
【0367】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、複数の開口のうち少なくとも1つの境界線で囲まれた透明な領域の表面積は、0.25平方ミリメートル~2.5平方ミリメートル、または0.5平方ミリメートル~5平方ミリメートル、または0.75平方ミリメートル~7.5平方ミリメートル、または0.25平方ミリメートル~7.5平方ミリメートルである、コンタクトレンズ。
【0368】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、複数の開口のいずれかの実質的に不透明な境界の幅は、実質的に不透明な境界が実質的に非回折性のままであるように、光の可視スペクトルの平均波長(すなわち555nm)の少なくとも3倍、少なくとも4倍、または少なくとも6倍、または少なくとも8倍、または少なくとも10倍である、コンタクトレンズ。
【0369】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、複数の開口のいずれかの実質的に不透明な境界の幅は、5μm~75μm、または25μm~150μm、または50μm~250μmである、コンタクトレンズ。
【0370】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、複数の開口における開口の総数は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、または少なくとも7の開口である、コンタクトレンズ。
【0371】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、実質的に明確な境界のない複数のパターンは、少なくともスポークホイールパターン、らせんパターン、渦巻きパターン、格子パターン、メンフィスパターン、点状パターン、規則的パターン、不規則的パターン、モアレ縞パターン、干渉パターン、点を有するランダムパターン、直線を有するランダムパターン、非円形の点を有するランダムパターン、曲線を有するランダムパターン、円弧を有するランダムパターン、ジグザグ線を有するランダムパターンを含み、複数のパターンの各々のパターンは、点、線、または筋を含む実質的に不透明な特徴によって形成される、コンタクトレンズ。
【0372】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、実質的に明確な境界のない複数のパターンは、光学ゾーン内において中心合わせまたは偏心されている、コンタクトレンズ。
【0373】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、複数の非屈折性特徴の総表面積は、光学ゾーンの総表面積の2.5パーセント~10パーセント、または5パーセント~15パーセント、または7.5パーセント~20パーセントを占める、コンタクトレンズ。
【0374】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、複数の非屈折性特徴は、光学ゾーンの中心3mm、または中心4mm、または中心5mm、または中心6mm以内となるように構成される、コンタクトレンズ。
【0375】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、光学ゾーンの中心6.5mmの外側、または中心7mmの外側、または中心7.5mmの外側の領域には、実質的に非屈折性特徴を欠く、コンタクトレンズ。
【0376】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、複数の非屈折性特徴は、前面、または背面、または前面と背面との両方に適用される、コンタクトレンズ。
【0377】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、複数の非屈折性特徴は、コンタクトレンズの母材内に適用される、コンタクトレンズ。
【0378】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、光学ゾーンを通る光の全透過率は、非屈折性特徴を欠く同様の単焦点レンズの光学ゾーンを通る光の全透過率の85パーセント~90パーセント、または90パーセント~95パーセント、または92.5パーセント~97.5パーセント、または85パーセント~99パーセントである、コンタクトレンズ。
【0379】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、複数の非屈折性特徴は、少なくとも一部において、入射光の偏光に対して感受性を有するように構成される、コンタクトレンズ。
【0380】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、複数の非屈折性特徴は、入射光が直線偏光、または円偏光、または楕円偏光であるときに、少なくとも一部において活性化されて不透明になる、コンタクトレンズ。
【0381】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、複数の非屈折性特徴は、入射光がLCDもしくはLEDもしくはOLEDモニタスクリーン、TVスクリーン、タブレットスクリーン、またはモバイルスクリーン、または同様の電子デバイスのスクリーンから到来するときに、少なくとも一部において活性化されて不透明になる、コンタクトレンズ。
【0382】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、複数の非屈折性特徴は、少なくとも一部において、電子的に調整可能となるように構成される、コンタクトレンズ。
【0383】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、非屈折性特徴は、材料特性が、420~760nmの範囲内の特定の可視波長に対して分光的な感受性を有するように構成される、コンタクトレンズ。
【0384】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、レンズは、非屈折性特徴を欠く単焦点レンズによって得られるものと実質的に同様の適切な視覚性能を装着者に提供することができる、コンタクトレンズ。
【0385】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、非屈折性特徴は、材料特性が、420~760nmの特定の可視波長に対して分光的な感受性を有するように構成される、コンタクトレンズ。
【0386】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、基本処方に実質的に一致する距離屈折異常を伴って構成されたモデル眼で試験したときに、非屈折性特徴を欠く単焦点コンタクトレンズによって得られるものと実質的に等価な、3mm~6mmの範囲内の少なくとも1つの瞳孔および420nm~760nmの範囲内の少なくとも1つの波長に対するオン軸変調伝達関数を提供する、コンタクトレンズ。
【0387】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、基本処方に実質的に一致する距離屈折異常を伴って構成されたモデル眼で試験したときに、非屈折性特徴を欠く単焦点コンタクトレンズによって得られるものと実質的に等価な、3mm~6mmの範囲内の少なくとも1つの瞳孔および420nm~760nmの範囲内の少なくとも1つの波長に対するオフ軸広視野変調伝達関数を提供する、コンタクトレンズ。
【0388】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、網膜の広視野は、視野の少なくとも5°、または10°、または15°、または20°、または25°、または30°を含む、コンタクトレンズ。
【0389】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、基本処方に実質的に一致する距離屈折異常を伴って構成されたモデル眼で試験したときに、眼の距離屈折異常の実質的な矯正を提供して、モデル眼の網膜の広視野にわたって広がる人工的エッジ、または空間的な光コントラストプロファイルをもたらす、コンタクトレンズ。
【0390】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、基本処方に実質的に一致する距離屈折異常を伴って構成されたモデル眼で、コンタクトレンズの眼上の動きか、装着者の眼球運動か、またはそれらの組み合わせのうちの1つを模倣するためのさまざまな偏心位置において試験したときに、モデル眼の網膜の広視野にわたって広がる人工的エッジ、または空間的な光コントラストプロファイルの時間的変動を提供する、コンタクトレンズ。
【0391】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、モデル眼は模式的、物理的、またはベンチトップモデル眼である、コンタクトレンズ。
【0392】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、基本処方に実質的に一致する距離屈折異常を伴って構成されたベンチトップまたは物理的モデル眼で試験したときに、モデル眼の距離屈折異常の実質的な矯正をもたらす、コンタクトレンズ。
【0393】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、電荷結合素子または相補金属酸化物センサを有するカメラを含むベンチトップまたは物理的モデル眼の網膜は、コンタクトレンズで矯正されたモデル眼を通して投影された視覚シーンの画像を捕らえるように構成される、コンタクトレンズ。
【0394】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、モデル眼の網膜によって捕らえられた画像は、本明細書に開示される(a)バンドパス電流をもたらす画像の入力ストリームの時空間的フィルタリング、(b)可変フィードバックゲートシャント伝導性を用いる瞬時非線形コントラストゲイン制御、および(c)神経節細胞活性を示すスパイク列をもたらす雑音積分および発火細胞モデルの離散集合、の3つの画像処理ステップのうちの少なくとも1つを含む仮想網膜シミュレータのための入力ストリームとして働く、コンタクトレンズ。
【0395】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、複数の非屈折性領域は、非屈折性特徴を欠く単焦点コンタクトレンズによって得られるものと比較して、網膜神経節細胞活性の増加を提供するように構成される、コンタクトレンズ。
【0396】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、ある特定の時間フレームにわたり積分された平均網膜スパイク率として測定された網膜神経節細胞活性は、非屈折性特徴を欠く単焦点コンタクトレンズの網膜神経節細胞活性の少なくとも1.25倍、1.5倍、1.75倍、2倍、2.25倍、2.5倍、2.75倍、3倍である、コンタクトレンズ。
【0397】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、平均網膜スパイク率が積分される特定の時間フレームは、少なくとも1秒、または少なくとも3秒、または少なくとも10秒、または少なくとも30秒、または少なくとも60秒、または少なくとも120秒、または少なくとも180秒であってもよい、コンタクトレンズ。
【0398】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、平均網膜スパイク率として測定された、網膜神経節細胞活性またはニューロン応答の非定常性は、オン中心/オフ周囲網膜野、またはオン周囲/オフ中心網膜野、またはその両方において観測される、コンタクトレンズ。
【0399】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、時間の関数として平均網膜スパイク率に関して測定された、モデル眼の網膜における網膜神経節細胞活性全体、またはニューロン応答における非定常性を記述する関数は、網膜神経節細胞活性全体における時間的変動を示す、非線形、または非周期的、または正弦波、または準正弦波、矩形波、準矩形波、正方形波、準正方形波、または非単調のパターンに従う、コンタクトレンズ。
【0400】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、複数の非屈折性領域は、眼の軸長または距離屈折異常における変化によって測定された近視の進行の減速、遅延、または防止のうちの少なくとも1つを提供する、コンタクトレンズ。
【0401】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、コンタクトレンズは、少なくとも一部において、眼の屈折異常に対する適切な中心窩視矯正を提供し、非屈折性特徴は、少なくとも一部において、近視の進行速度を低下させるための、時間変動する停止信号および/または空間的に変動する停止信号を提供する、コンタクトレンズ。
【0402】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、近視の進行の減速、遅延、または防止のうちの少なくとも1つの効果は、レンズ装着の少なくとも12、24、36、48、または60ヵ月間にわたり維持される、コンタクトレンズ。
【0403】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、周辺領域には、複数の実質的に不透明な特徴が欠けている、コンタクトレンズ。
【0404】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、非屈折性特徴は、パッド印刷、レーザエッチング、フォトエッチング、またはレーザ印刷を用いて適用される、コンタクトレンズ。
【0405】
組Aの上記請求項例のうち1つ以上のコンタクトレンズであって、組Bの請求項例の眼鏡レンズの1つ以上と組み合わされて、追加の実施形態を構成する、コンタクトレンズ。
【0406】
例示的な請求項の組B
眼に対する眼鏡レンズであって、この眼鏡レンズは前凸面と、背凹面と、眼の距離屈折異常に対する実質的な矯正を提供するための基本処方が周りに構成される光学的中心とを含み、複数の非屈折性特徴をさらに含む、眼鏡レンズ。
【0407】
組Bの上記請求項例の眼鏡レンズであって、眼に対する基本処方は、以下の少なくとも1つ:球面収差補正、非点収差補正、または球面および非点収差補正を含む、眼鏡レンズ。
【0408】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、複数の非屈折性特徴は、以下の少なくとも1つ:複数の開口を形成する複数の実質的に不透明な境界であって、各開口は実質的に透明な領域を境界線で囲む、実質的に不透明な境界か、または実質的に明確な境界のない1つ以上のパターンを形成する複数の実質的に不透明な特徴を含む、眼鏡レンズ。
【0409】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、各々の実質的に透明な領域は、眼に対する基本処方を含む、眼鏡レンズ。
【0410】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、複数の開口のうち少なくとも1つの形状は、円形、楕円形、長円形、三角形、矩形、正方形、五角形、または六角形、または八角形、または任意の他の正多角形、または非正多角形、またはランダム形状である、眼鏡レンズ。
【0411】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、複数の開口のうち少なくとも1つの境界線で囲まれた透明な領域の表面積は、0.25平方ミリメートル~2.5平方ミリメートル、または0.5平方ミリメートル~5平方ミリメートル、または0.75平方ミリメートル~7.5平方ミリメートル、または0.25平方ミリメートル~7.5平方ミリメートルである、眼鏡レンズ。
【0412】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、複数の開口のいずれかの実質的に不透明な境界の幅は、実質的に不透明な境界が実質的に非回折性のままであるように、光の可視スペクトルの平均波長(すなわち555nm)の少なくとも3倍、少なくとも4倍、または少なくとも6倍、または少なくとも8倍、または少なくとも10倍である、眼鏡レンズ。
【0413】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、複数の開口のいずれかの実質的に不透明な境界の幅は、5μm~75μm、または25μm~150μm、または50μm~250μmである、眼鏡レンズ。
【0414】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、複数の開口における開口の総数は、少なくとも6、少なくとも9、少なくとも12、少なくとも18、少なくとも24、または少なくとも30の開口である、眼鏡レンズ。
【0415】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、複数の開口は、円形、六角形、放射状、らせん状、規則的、不規則的、またはランダム配置で構成される、眼鏡レンズ。
【0416】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、実質的に明確な境界のない複数のパターンは、少なくともスポークホイールパターン、らせんパターン、渦巻きパターン、格子パターン、メンフィスパターン、点状パターン、規則的パターン、不規則的パターン、モアレ縞パターン、干渉パターン、点を有するランダムパターン、直線を有するランダムパターン、曲線を有するランダムパターン、円弧を有するランダムパターン、ジグザグ線を有するランダムパターンを含み、複数のパターンの各々のパターンは、点、線、または筋を含む実質的に不透明な特徴によって形成される、眼鏡レンズ。
【0417】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、実質的に明確な境界のない複数のパターンは、眼鏡レンズ内で中心合わせまたは偏心されている、眼鏡レンズ。
【0418】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、複数の非屈折性特徴の総表面積は、眼鏡レンズの総表面積の5パーセント~15パーセント、または7.5パーセント~20パーセント、または12.5パーセント~25パーセントを占める、眼鏡レンズ。
【0419】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、複数の非屈折性特徴は、眼鏡レンズの中心10mm、または中心15mm、または中心20mm、または中心30mm以内となるように構成される、眼鏡レンズ。
【0420】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、眼鏡レンズの中心30mmの外側、または中心35mmの外側、または中心40mmの外側の領域には、実質的に非屈折性特徴を欠く、眼鏡レンズ。
【0421】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、複数の非屈折性特徴は、前面、または背面、または前面と背面との両方に適用される、眼鏡レンズ。
【0422】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、複数の非屈折性特徴は、コンタクトレンズの母材内に適用される、眼鏡レンズ。
【0423】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、実質的に不透明な境界または特徴は、実質的に不透明な境界または特徴に入射する光の少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、または少なくとも99パーセントを吸収するように構成される、眼鏡レンズ。
【0424】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、光学ゾーンを通る光の全透過率は、非屈折性特徴を欠く同様の単焦点レンズの光学ゾーンを通る光の全透過率の85パーセント~90パーセント、または90パーセント~95パーセント、または92.5パーセント~97.5パーセント、または85パーセント~99パーセントである、眼鏡レンズ。
【0425】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、複数の非屈折性特徴は、少なくとも一部において、入射光の偏光に対して感受性を有するように構成される、眼鏡レンズ。
【0426】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、複数の非屈折性特徴は、入射光が直線偏光、円偏光、または楕円偏光であるときに、少なくとも一部において活性化されて不透明になる、眼鏡レンズ。
【0427】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、複数の非屈折性特徴は、入射光がLCDもしくはLEDもしくはOLEDモニタスクリーン、TVスクリーン、タブレットスクリーン、またはモバイルスクリーン、または同様の電子デバイスのスクリーンから到来するときに、少なくとも一部において活性化されて不透明になる、眼鏡レンズ。
【0428】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、複数の非屈折性特徴は、少なくとも一部において、電子的に調整可能となるように構成される、眼鏡レンズ。
【0429】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、非屈折性特徴は、材料特性が、420~760nmの範囲内の特定の可視波長に対して分光的な感受性を有するように構成される、眼鏡レンズ。
【0430】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、レンズは、非屈折性特徴を欠く単焦点レンズによって得られるものと実質的に同様の適切な視覚性能を装着者に提供することができる、眼鏡レンズ。
【0431】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、基本処方に実質的に一致する距離屈折異常を伴って構成されたモデル眼で試験したときに、非屈折性特徴を欠く単焦点眼鏡レンズによって得られるものと実質的に等価な、3mm~6mmの範囲内の少なくとも1つの瞳孔および420nm~760nmの範囲内の少なくとも1つの波長に対するオン軸変調伝達関数を提供する、眼鏡レンズ。
【0432】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、基本処方に実質的に一致する距離屈折異常を伴って構成されたモデル眼で試験したときに、非屈折性特徴を欠く単焦点眼鏡レンズによって得られるものと実質的に等価な、3mm~6mmの範囲内の少なくとも1つの瞳孔および420nm~760nmの範囲内の少なくとも1つの波長に対するオフ軸広視野変調伝達関数を提供する、眼鏡レンズ。
【0433】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、網膜の広視野は、視野の少なくとも5°、または10°、または15°、または20°、または25°、または30°を含む、眼鏡レンズ。
【0434】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、基本処方に実質的に一致する距離屈折異常を伴って構成されたモデル眼で試験したときに、眼の距離屈折異常の実質的な矯正を提供して、モデル眼の網膜の広視野にわたって広がる人工的エッジ、または空間的な光コントラストプロファイルをもたらす、眼鏡レンズ。
【0435】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、基本処方に実質的に一致する距離屈折異常を伴って構成されたモデル眼で、装着者の眼球運動を模倣するためのさまざまな偏心位置において試験したときに、モデル眼の網膜の広視野にわたって広がる人工的エッジまたは空間的な光コントラストプロファイルの時間的変動を提供する、眼鏡レンズ。
【0436】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、モデル眼は模式的、物理的、またはベンチトップモデル眼である、眼鏡レンズ。
【0437】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、基本処方に実質的に一致する距離屈折異常を伴って構成されたベンチトップまたは物理的モデル眼で試験したときに、モデル眼の距離屈折異常の実質的な矯正をもたらす、眼鏡レンズ。
【0438】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、電荷結合素子または相補金属酸化物センサを有するカメラを含むベンチトップまたは物理的モデル眼の網膜は、眼鏡レンズで矯正されたモデル眼を通して投影された視覚シーンの画像を捕らえるように構成される、眼鏡レンズ。
【0439】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、モデル眼の網膜によって捕らえられた画像は、本明細書に開示される(a)バンドパス電流をもたらす画像の入力ストリームの時空間的フィルタリング、(b)可変フィードバックゲートシャント伝導性を用いる瞬時非線形コントラストゲイン制御、および(c)神経節細胞活性を示すスパイク列をもたらす雑音積分および発火細胞モデルの離散集合、の3つの画像処理ステップのうちの少なくとも1つを含む仮想網膜シミュレータのための入力ストリームとして働く、眼鏡レンズ。
【0440】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、複数の非屈折性領域は、非屈折性特徴を欠く単焦点眼鏡レンズによって得られるものと比較して、網膜神経節細胞活性の増加を提供するように構成される、眼鏡レンズ。
【0441】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、ある特定の時間フレームにわたり積分された平均網膜スパイク率として測定された網膜神経節細胞活性は、非屈折性特徴を欠く単焦点眼鏡レンズの網膜神経節細胞活性の少なくとも1.25倍、1.5倍、1.75倍、2倍、2.25倍、2.5倍、2.75倍、3倍である、眼鏡レンズ。
【0442】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、平均網膜スパイク率が積分される特定の時間フレームは、少なくとも1秒、または少なくとも3秒、または少なくとも10秒、または少なくとも30秒、または少なくとも60秒、または少なくとも120秒、または少なくとも180秒であってもよい、眼鏡レンズ。
【0443】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、平均網膜スパイク率として測定された、網膜神経節細胞活性またはニューロン応答の非定常性は、オン中心/オフ周囲網膜野、またはオン周囲/オフ中心網膜野、またはその両方において観測される、眼鏡レンズ。
【0444】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、時間の関数として平均網膜スパイク率に関して測定された、モデル眼の網膜における網膜神経節細胞活性全体、またはニューロン応答における非定常性を記述する関数は、網膜神経節細胞活性全体における時間的変動を示す、非線形、または非周期的、または正弦波、または準正弦波、矩形波、準矩形波、正方形波、準正方形波、または非単調のパターンに従う、眼鏡レンズ。
【0445】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、複数の非屈折性領域は、眼の軸長または距離屈折異常の変化によって測定された近視の進行の減速、遅延、または防止のうちの少なくとも1つを提供する、眼鏡レンズ。
【0446】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、眼鏡レンズは、少なくとも一部において、眼の屈折異常に対する適切な中心窩視矯正を提供し、非屈折性特徴は、少なくとも一部において、近視の進行速度を低下させるための、時間変動する停止信号および/または空間的に変動する停止信号を提供する、眼鏡レンズ。
【0447】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、近視の進行の減速、遅延、または防止のうちの少なくとも1つの効果は、レンズ装着の少なくとも12、24、36、48、または60ヵ月間にわたり維持される、眼鏡レンズ。
【0448】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、周辺領域には、複数の実質的に不透明な特徴が欠けている、眼鏡レンズ。
【0449】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、非屈折性特徴は、パッド印刷、レーザエッチング、フォトエッチング、またはレーザ印刷を用いて適用される、眼鏡レンズ。
【0450】
組Bの上記請求項例のうち1つ以上の眼鏡レンズであって、組Aの請求項例のコンタクトレンズの1つ以上と組み合わされて、追加の実施形態を構成する、眼鏡レンズ。
【国際調査報告】