(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】造血幹および前駆細胞を培養するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0789 20100101AFI20230125BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20230125BHJP
C12N 5/0786 20100101ALI20230125BHJP
C12N 5/0781 20100101ALI20230125BHJP
C12N 5/0787 20100101ALI20230125BHJP
C12M 3/00 20060101ALN20230125BHJP
C07K 14/54 20060101ALN20230125BHJP
C12N 5/074 20100101ALN20230125BHJP
【FI】
C12N5/0789
C12N5/0783
C12N5/0786
C12N5/0781
C12N5/0787
C12M3/00 Z
C07K14/54
C12N5/074
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022530742
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(85)【翻訳文提出日】2022-07-22
(86)【国際出願番号】 US2020062507
(87)【国際公開番号】W WO2021108769
(87)【国際公開日】2021-06-03
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521502171
【氏名又は名称】デヴェラ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】バイ, タオ
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラセカラン, デビカ
(72)【発明者】
【氏名】プリーブ, メアリー
(72)【発明者】
【氏名】ディレーニー, コリーン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA21
4B029BB11
4B065AA90X
4B065BB19
4B065BB32
4B065BC46
4B065BD39
4B065CA44
4H045AA10
4H045AA50
4H045CA40
4H045DA02
4H045EA20
(57)【要約】
本開示は、造血幹細胞(HSC)の亜集団を維持しつつまたは増加させつつ造血幹および前駆細胞を培養するための組成物および方法を提供する。これらの方法および組成物によって、封入された造血幹および前駆細胞を培養するための生体適合性培養微小環境を提供するための3D双性イオンヒドロゲルが説明される。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法および組成物は、HSCのまたはHSCおよびMPPの亜集団を維持しつつ封入HSPCを培養するための生体適合性培養微小環境を提供するために、アルギネート-ポリリシン3D双性イオンヒドロゲルを使用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排他的所有権または秘匿特権を請求する本発明の実施形態を以下の通り定義する。
造血幹および前駆細胞(HSPC)を培養する方法であって、
造血幹細胞(HSC;Lin
-CD34
+CD38
-CD133
+CD45RA
-CD90
+)を含む少なくとも1つのHSPC集団を用意するステップ;
前記HSPC集団をCD34
+またはCD133
+HSPCについて富化して、T細胞および赤血球が枯渇した富化HSPC集団を調製するステップ;
前記富化HSPCを、アルギネートとポリリシンとを含む双性イオンヒドロゲルに封入して、封入HSPCを形成するステップ;および
前記ヒドロゲル封入HSPCを、インターロイキン-3(IL-3)と、インターロイキン-6(IL-6)と、トロンボポエチン(TPO)と、Flt3-リガンド(Flt3-L)と、幹細胞因子(SCF)とを含む培養培地で、ヒドロゲル拡大HSPC集団を産生するのに十分な時間、培養するステップ
を含み、
前記ヒドロゲル拡大HSPC集団内のHSCのパーセンテージおよび/または数が、前記富化HSPC中のHSCのパーセンテージおよび/または数と同じであるかまたはそれより高い/多い、方法。
【請求項2】
造血幹および前駆細胞(HSPC)を培養する方法であって、
造血幹細胞(HSC;Lin
-CD34
+CD38
-CD133
+CD45RA
-CD90
+)と、2%未満のT細胞と、2%未満の赤血球とを含む、少なくとも1つのCD34
+またはCD133
+富化HSPC集団を用意するステップ;
前記富化HSPCを、アルギネートとポリリシンとを含む双性イオンヒドロゲルに封入して、ヒドロゲル封入HSPCを形成するステップ;および
前記ヒドロゲル封入HSPCを、インターロイキン-3(IL-3)と、インターロイキン-6(IL-6)と、トロンボポエチン(TPO)と、Flt3-リガンド(Flt3-L)と、幹細胞因子(SCF)とを含む培養培地で、ヒドロゲル拡大HSPC集団を産生するのに十分な時間、培養するステップ
を含み、
前記ヒドロゲル拡大HSPC集団内のHSCのパーセンテージおよび/または数が、前記富化HSPC中のHSCのパーセンテージおよび/または数と同じであるかまたはそれより高い/多い、方法。
【請求項3】
前記拡大HSPC集団内の複能性前駆細胞(MPP;Lin
-CD34
+CD38
-CD133
+CD45RA
-CD90
-)のパーセンテージが、前記富化HSPC中のMPPのパーセンテージおよび/または数と同じであるかまたはそれより高い/多い、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記富化HSPC集団が、臍帯血、胎盤血、および/または体性幹細胞に由来する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記富化HSPC集団が、PBMCの体性幹細胞(somatic stems cell)に由来する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記富化HSPC集団が、臍帯血および/または胎盤血に由来する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記富化HSPC集団が、互いにまたはレシピエントと免疫的に適合していない臍帯血および/または胎盤血の少なくとも2つの異なる供給源に由来する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記培養培地が、血清サプリメントも血清サプリメント代替品も含まない、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記培養培地が、ウシ胎仔血清も、ヒト血清アルブミンも、ヒト血小板溶解物も含まない、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記培養培地が、外来性のIL-15も、IL-7も、IL-2も、G-CSFも、GM-CSFも、LIFも、MIP-1aも含まない、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記培養培地が、アリール炭化水素受容体アンタゴニストを含まない、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記培養培地およびヒドロゲルが、フィブロネクチンおよび/またはその断片を含まない、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記培養培地およびヒドロゲルが、外来性フィーダー細胞を含まない、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記培養培地およびヒドロゲルが、Notchリガンドを含まない、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
Notchリガンドがヒドロゲルに結合している、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記富化HSPCが、体細胞にも、胚性幹細胞にも、人工多能性幹細胞にも由来しない、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ヒドロゲル拡大HSPC集団内のHSCのパーセンテージが、前記富化HSPC集団内のHSCのパーセンテージより少なくとも2倍高く、およびまたは前記ヒドロゲル拡大HSPC集団内のHSCの数が、前記富化HSPC集団内のHSCの数の少なくとも10倍である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記培養するステップの終了時の前記ヒドロゲル拡大HSPC集団内のHSCのパーセンテージが、前記培養するステップの開始時の前記封入HSPC集団内のHSCのパーセンテージより少なくとも2倍高く、および/または前記培養するステップの終了時の前記ヒドロゲル拡大HSPC集団内のHSCの数が、前記培養するステップの開始時の前記封入HSPC集団内のHSCの数の少なくとも10倍である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記培養するステップの終了時の前記ヒドロゲル拡大HSPC集団内のHSCおよび/もしくはMPPのパーセンテージが、前記培養するステップの開始時の前記封入HSPC集団内のHSCおよび/もしくはMPPSのパーセンテージより少なくとも2倍高く、ならびに/または前記培養するステップの終了時の前記ヒドロゲル拡大HSPC集団内のHSCおよび/もしくはMPPの数が、前記培養するステップの開始時の前記封入HSPC集団内のHSCおよび/もしくはMPPの数の少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍であるか、もしくはそれより多い、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記富化HSPC集団が、遺伝子改変されている、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記封入HSPC集団が、培養中に遺伝子改変される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ヒドロゲル拡大HSPC集団が、遺伝子の野生型バージョンを前記HSPCの少なくとも一部のゲノムに導入するように遺伝子改変されている、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記封入HSPC集団が、約2~約21日間培養される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記封入HSPC集団が、約7~約15日間培養される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記富化HSPCが、約25%~約95%、50%~約95%HSPCまたは約75%~約95%HSPCを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記拡大HSPC中の前記HSCの少なくとも一部が、静止状態である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記ポリリシンが、ポリ-L-リシンである、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記ヒドロゲル拡大HSPC集団が、少なくとも約5%、少なくとも約10%もしくは少なくとも約15%HSCを含むか、または少なくとも約5%、少なくとも約10%もしくは少なくとも約15%HSCおよびMPPを含み、あるいは前記ヒドロゲル拡大HSPC集団内の前記HSCまたは前記HSCおよびMPPが、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、または少なくとも40倍拡大される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記ヒドロゲル拡大HSPCを前記ヒドロゲルから放出するステップを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記拡大HSPCを、HPC、T細胞、NK細胞、マクロファージ、CD20
+B細胞、CD14
+単球、および/またはCD15
+好中球に分化させるステップをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
富化された造血幹および前駆細胞(HSPC)集団を含む組成物であって、
造血幹細胞(HSC;Lin
-CD34
+CD38
-CD133
+CD45RA
-CD90
+)と2%未満のT細胞と2%未満の赤血球とを含む少なくとも約25%または少なくとも約50%HSPCであって、
アルギネートとポリリシンとを含む双性イオンヒドロゲルに封入されているHSPC
を含む、組成物。
【請求項32】
インターロイキン-3(IL-3)と、インターロイキン-6(IL-6)と、トロンボポエチン(TPO)と、Flt3-リガンド(Flt3-L)と、幹細胞因子(SCF)とを含む培養培地をさらに含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記HSPCが、臍帯血、胎盤血、および/または体性幹細胞に由来する、請求項31および32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
前記HSPCが、PBMCに由来する、請求項31から33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
前記HSPCが、臍帯血および/または胎盤血に由来する、請求項31から34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
前記HSPCが、互いにまたはレシピエントと免疫的に適合していない臍帯血および/または胎盤血の少なくとも2つの異なる供給源に由来する、請求項31から35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
前記培養培地が、血清サプリメントも血清サプリメント代替品も含まない、請求項32から36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
前記培養培地が、ウシ胎仔血清も、ヒト血清アルブミンも、ヒト血小板溶解物も含まない、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記培養培地が、外来性のIL-15も、IL-7も、IL-2も、G-CSFも、GM-CSFも、LIFも、MIP-1aも含まない、請求項32から38のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
前記培養培地が、アリール炭化水素受容体アンタゴニストを含まない、請求項32から39のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
前記培養培地およびヒドロゲルが、フィブロネクチンおよび/またはその断片を含まない、請求項32から40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項42】
前記培養培地およびヒドロゲルが、外来性フィーダー細胞を含まない、請求項32から41のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項43】
前記培養培地およびヒドロゲルが、Notchリガンドを含まない、請求項32から42のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項44】
Notchリガンドがヒドロゲルに結合している、請求項32から42のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項45】
前記HSPCが、体細胞、胚性幹細胞、および/または人工多能性幹細胞に由来しない、請求項31から44のいずれかに記載の組成物。
【請求項46】
前記HSPCが、遺伝子改変されている、請求項31から45のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項47】
前記HSPCが、遺伝子の野生型バージョンを前記HSPCの少なくとも一部のゲノムに導入するように遺伝子改変されている、請求項31から46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項48】
前記HSPCが、約50%~約95%HSPCまたは約75%~約95%HSPCを含む、請求項31から47のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項49】
前記HSPC中の前記HSCの少なくとも一部が、静止状態である、請求項31から48のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項50】
前記ポリリシンが、ポリ-L-リシンである、請求項31から49のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項51】
前記HSPCが、少なくとも約5%、少なくとも約10%もしくは少なくとも約15%HSCを含むか、または少なくとも約5%、少なくとも約10%もしくは少なくとも約15%HSCおよびMPPを含む、請求項32から50のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年11月27日に出願した米国特許仮出願第62/941563号の利益を主張するものであり、前記仮出願の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
造血幹および前駆細胞(HSPC)は、医学において、細胞療法のためにも、T細胞、NK細胞およびマクロファージなどの他の治療用細胞型の生成のための先駆体としても、多くの使途がある。造血幹および前駆細胞、特に、CD34+HSPCの臍帯血移植は、そのような細胞の用途である。最近、造血幹および前駆細胞の拡大集団の投与は、臍帯血移植の橋渡しをする手段として、および患者の移植前の前処置に関連する感染を低減させるための手段として、研究されている。
【0003】
HSPCは、T細胞、NK細胞およびマクロファージなどの、造血系統の中の他の細胞型の供給源でもある。これらの細胞型を調製するために、HSPCは、それらを拡大させ、所望の細胞型へと分化させるために、典型的にはex vivoで培養される。HSPCのex vivo拡大は、典型的には培養プレート、フラスコ、バッグなど、またはバイオリアクターを使用して、静的または動的システムで行うことができる。そのようなシステムは、例えば、一般に懸濁物の単層を形成する組織培養プレートなどの、2次元システム(2D)で、またはHSPCがマトリックス上もしくは内で培養される3次元(3D)システムで、HSPCを培養することを含み得る。
【0004】
2Dおよび3Dシステムは、ある特定の細胞型の生成に有効であり得るが、2Dおよび3Dシステムに伴う課題の1つは、HSPCの中の亜集団である、造血幹細胞(HSC)の維持である。HSCは、他の細胞型に分化する潜在性を保持するが、典型的には静止状態である。典型的には、2Dまたは3Dシステムでの培養中にHSCのパーセンテージは経時的に低下する。HSCは、複能性前駆細胞(MPP)へ、そしてさらに、造血前駆細胞(例えば、骨髄系もしくはリンパ系前駆体)またはより拘束細胞型(系統+)に、経時的に形質転換する傾向がある。しかるが故に、これらのシステムは、細胞培養下でHSCのパーセンテージが維持または増加される、HSPCの高度に富化された集団の培養および維持には適していない。それ故、HSCのパーセンテージが維持または増加される、HSPCを培養するための組成物および方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
本概要は、下記の詳細な説明にさらに記載される概念の選択を単純化された形で紹介するために提供される。本概要は、請求項記載の主題の重要な特徴を特定することを意図したものではなく、請求項記載の主題の範囲を決定する補助として使用されることを意図したものでもない。
【0006】
本開示は、HSCの亜集団を維持しつつまたは増加させつつ造血幹および前駆細胞(HSPC)を培養するための組成物および方法を提供する。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法および組成物は、HSCのまたはHSCおよびMPPの亜集団を維持しつつ封入HSPCを培養するための生体適合性培養微小環境を提供するために、アルギネート-ポリリシン3D双性イオンヒドロゲルを使用する。有利なことに、封入も、解重合/修復プロセスも、細胞生存率を有意に低下させなかった。さらに、高いHSPC生存率をHSPCの封入および培養中に維持することができ、したがって、75%より高い生存率が培養ステップ全体にわたって維持される。この結果は、本明細書に記載のアルギネート-ポリリシン3Dヒドロゲル内に封入されたHSPCを培養する方法を、HSPCの培養および維持にならびにHSPCの細胞集団内のHSCおよびMPPの維持および/または拡大に使用することができることを示す。
【0007】
一部の実施形態では、造血幹および前駆細胞(HSPC)を培養するための方法であって、造血幹細胞(hematopoietic stems cell)(HSC;Lin-CD34+CD38-CD133+CD45RA-CD90+)を含む少なくとも1つのHSPC集団を用意するステップ;HSPC集団をCD34+またはCD133+HSPCについて富化して、T細胞および赤血球が枯渇した富化HSPC集団を調製するステップ;富化HSPCを、アルギネートとポリリシンとを含むヒドロゲルに封入して、封入HSPCを形成するステップ;および封入HSPCを、インターロイキン-3(IL-3)と、インターロイキン-6(IL-6)と、トロンボポエチン(TPO)と、Flt3-リガンド(Flt3-L)と、幹細胞因子(SCF)とを含む培養培地で、拡大されたHSPC集団を産生するのに十分な時間、培養するステップを含み、拡大されたHSPC集団内のHSCのパーセンテージが、富化HSPC集団内のHSCのパーセンテージと同じであるかまたはそれより高い、方法が提供される。
【0008】
一部の実施形態では、造血幹および前駆細胞(HSPC)を培養するための方法であって、造血幹細胞(HSC;Lin-CD34+CD38-CD133+CD45RA-CD90+)と、2%未満のT細胞と、2%未満の赤血球とを含む、少なくとも1つのCD34+またはCD133+富化HSPC集団を用意するステップ;富化HSPCを、アルギネートとポリリシンとを含む双性イオンヒドロゲルに封入して、封入HSPCを形成するステップ;封入HSPCを、インターロイキン-3(IL-3)と、インターロイキン-6(IL-6)と、トロンボポエチン(TPO)と、Flt3-リガンド(Flt3-L)と、幹細胞因子(SCF)とを含む培養培地で、拡大されたHSPC集団を産生するのに十分な時間、培養するステップを含み、ヒドロゲル拡大HSPC集団内のHSCのパーセンテージが、富化HSPC中のHSCのパーセンテージと同じであるかまたはそれより高い、方法が提供される。
【0009】
一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPC集団内の複能性前駆細胞(MPP;Lin-CD34+CD38-CD133+CD45RA-CD90-)のパーセンテージは、富化HSPC中のMPPのパーセンテージと同じであるか、またはそれより高い。
【0010】
一部の実施形態では、富化HSPC集団は、臍帯血、胎盤血、または体性幹細胞に由来する。一部の実施形態では、富化HSPC集団は、末梢血単核細胞(PBMC)の体性幹細胞に由来する。一部の実施形態では、富化HSPC集団は、臍帯血または胎盤血に由来する。一部の実施形態では、富化HSPC集団は、互いにまたはレシピエントと免疫的に適合していない臍帯血および/または胎盤血の少なくとも2つの異なる供給源に由来する。一部の実施形態では、富化HSPCは、体細胞にも、胚性幹細胞にも、人工多能性幹細胞にも由来しない。
【0011】
一部の実施形態では、培養培地は、血清サプリメントも血清サプリメント代替品も含まない。一部の実施形態では、培養培地は、ウシ胎仔血清、ヒト血清アルブミン、および/またはヒト血小板溶解物を含まない。一部の実施形態では、培養培地は、外来性のインターロイキン15(IL-15)も、インターロイキン7(IL-7)も、インターロイキン2(IL-2)も、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)も、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)も、白血病抑制因子(LIF)も、マクロファージ炎症性タンパク質-1アルファ(MIP-1a)も含まない。一部の実施形態では、培養培地は、アリール炭化水素受容体アンタゴニストを含まない。一部の実施形態では、培養培地およびヒドロゲルは、フィブロネクチンおよび/またはその断片を含まない。一部の実施形態では、培養培地およびヒドロゲルは、外来性フィーダー細胞を含まない。一部の実施形態では、培養培地およびヒドロゲルは、Notchリガンドを含まない。一部の実施形態では、Notchリガンドがヒドロゲルに結合している。一部の実施形態では、ポリリシンは、ポリ-L-リシンである。
【0012】
一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPC集団内のHSCのパーセンテージは、富化HSPC集団内のHSCのパーセンテージより少なくとも2倍高い。一部の実施形態では、培養ステップの終了時のヒドロゲル拡大HSPC集団内のHSCのパーセンテージは、培養ステップの開始時の封入HSPC集団内のHSCのパーセンテージより少なくとも2倍高い。一部の実施形態では、培養ステップの終了時のヒドロゲル拡大HSPC集団内のHSCおよびMPPのパーセンテージは、培養ステップの開始時の封入HSPC集団内のHSCおよびMPPSのパーセンテージより少なくとも2倍高い。
【0013】
一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPC集団内のHSCの数は、封入された富化HSPC集団内のHSCの数より少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍多いか、またはそれよりも多い。一部の実施形態では、培養ステップの終了時のヒドロゲル拡大集団内のHSCの数は、培養ステップの開始時の封入HSPC集団内のHSCの数より少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍多いか、またはそれよりも多い。一部の実施形態では、培養ステップの終了時のヒドロゲル拡大HSPC集団内のHSCおよびMPPの数は、培養ステップの開始時の封入HSPC集団内のHSCおよびMPPのパーセンテージより少なくとも10倍多い。
【0014】
一部の実施形態では、富化HSPC集団は、遺伝子改変されている。一部の実施形態では、封入HSPC集団は、培養中に遺伝子改変される。一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPC集団は、遺伝子の野生型バージョンをHSPCの少なくとも一部のゲノムに導入するように遺伝子改変されている。一部の実施形態では、封入HSPC集団は、約2~約21日間培養される。一部の実施形態では、封入HSPC集団は、約7~約15日間培養される。
【0015】
一部の実施形態では、富化HSPCは、約25%~約95%、50%~約95%HSPCまたは約75%~約95%HSPCを含む。一部の実施形態では、拡大HSC(expanded HSC)中のHSCの少なくとも一部は静止状態である。一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPC集団は、少なくとも約5%、少なくとも約10%もしくは少なくとも約15%HSCを含むか、または少なくとも約5%、少なくとも約10%もしくは少なくとも約15%HSCおよびMPPを含む。一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPCは、ヒドロゲルから放出される。
【0016】
一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPCは、造血前駆細胞(骨髄系もしくはリンパ系;HPC)、T細胞、NK細胞、CD20+B細胞、CD14+単球、CD15+好中球、および/またはマクロファージに分化する。
【0017】
一部の実施形態では、富化された造血幹および前駆細胞(HSPC)集団の組成物であって、アルギネートとポリリシンとを含む双性イオンヒドロゲルに封入されている、造血幹細胞(HSC;Lin-CD34+CD38-CD133+CD45RA-CD90+)と2%未満のT細胞と2%未満の赤血球とを含む少なくとも約25%または少なくとも約50%HSPCを含む、組成物が提供される。組成物は、インターロイキン-3(IL-3)と、インターロイキン-6(IL-6)と、トロンボポエチン(TPO)と、Flt3-リガンド(Flt3-L)と、幹細胞因子(SCF)とを含む培養培地をさらに含む。一部の実施形態では、HSPCは、臍帯血、胎盤血または体性幹細胞に由来する。一部の実施形態では、HSPCは、PBMCの中の体性幹細胞からのものである。一部の実施形態では、HSPCは、臍帯血または胎盤血に由来する。一部の実施形態では、HSPCは、互いにまたはレシピエントと免疫的に適合していない臍帯血および/または胎盤血の少なくとも2つの異なる供給源に由来する。一部の実施形態では、HSPCは、体細胞にも、胚性幹細胞にも、人工多能性幹細胞にも由来しない。
【0018】
一部の実施形態では、培養培地は、血清サプリメントも血清サプリメント代替品も含まない。一部の実施形態では、培養培地は、ウシ胎仔血清も、ヒト血清アルブミンも、ヒト血小板溶解物も含まない。一部の実施形態では、培養培地は、外来性のIL-15も、IL-7も、IL-2も、G-CSFも、GM-CSFも、LIFも、MIP-1aも含まない。一部の実施形態では、培養培地は、アリール炭化水素受容体アンタゴニストを含まない。一部の実施形態では、培養培地およびヒドロゲルは、フィブロネクチンおよび/またはその断片を含まない。一部の実施形態では、培養培地およびヒドロゲルは、外来性フィーダー細胞を含まない。一部の実施形態では、培養培地およびヒドロゲルは、Notchリガンドを含まない。一部の実施形態では、Notchリガンドがヒドロゲルに結合している。
【0019】
一部の実施形態では、HSPCは、遺伝子改変されている。一部の実施形態では、HSPCは、遺伝子の野生型バージョンをHSPCの少なくとも一部のゲノムに導入するように遺伝子改変されている。
【0020】
一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPCは、約25%~約95%HSPC、約50%~約95%HSPCまたは約75%~約95%HSPCを含む。一部の実施形態では、HSPC中のHSCの少なくとも一部は静止状態である。
【0021】
一部の実施形態では、ポリリシンは、ポリ-L-リシンである。
【0022】
一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPC集団は、少なくとも約5%、少なくとも約10%もしくは少なくとも約15%HSCを含むか、または少なくとも約5%、少なくとも約10%もしくは少なくとも約15%HSCおよびMPPを含む。
【0023】
一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPC集団は、富化HSPC集団内のHSCの数の少なくとも10倍の数のHSCを含む。
【0024】
本発明の上述の態様および付随する利点の多くは、下記の詳細な説明を参照し、その際、添付の図面と併せて考慮することによって、より良く理解されるようになるので、より容易に正しく評価されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、3D ALG培養、静置フラスコおよびローラーボトルでの3D ALG+PLL培養、ならびに2D+Notchリガンド培養という、4つの異なる培養システムにおける14日間のTNC(全有核細胞;黒色の棒)、CD34
+細胞(白色の棒)ならびにHSCおよびMPP(Lin
-CD34
+CD38
-CD45RA
-CD133
+CD90
+/-細胞;灰色の棒)の拡大を描示する。
【0026】
【
図2】
図2は、培養前(0日目(D0)および未培養)に収集した細胞試料、ならびに14日間、2D+Notch培養、3D ALGおよび3D ALG+PLL 静置フラスコおよび3D ALG+PLL ローラーボトルの形式で培養した、細胞試料中の細胞のコロニー形成効率を描示する。BFU-E:バースト形成単位-赤芽球コロニー;CFU-G/M/GM:コロニー形成単位(顆粒球、単球);CFU-GEMM:コロニー形成単位(顆粒球、赤血球、単球、巨核球)。
【0027】
【
図3】
図3は、成人動員末梢血由来CD34
+細胞から、2つの異なる培養システム(静置フラスコ内での3D ALG+PLL培養、および2D+Notchリガンド)および2つの異なる培地処方(StemSpan Serum Free Expansion Medium II (SFEMII)、Stem Cell Technologies;およびStemPro HSC Expansion Medium Prototype、Thermo Fisher Scientific)で14日間拡大した、TNC(全有核細胞;黒色の棒)、CD34
+細胞 (白色の棒)、およびHSC/MPP(Lin
-CD34
+CD38
-CD45RA
-CD133
+CD90
+/-細胞;灰色の棒)の拡大を描示する。
【0028】
【
図4】
図4は、成人動員末梢血由来CD34
+細胞から、SFEM II培地またはStemPro培地中での2D Notch培養で、およびSFEM II培地またはStemPro培地中での3D ALG+PLL培養で14日間拡大した、CD34
+細胞のコロニー形性効率を描示する。BFU-E:バースト形成単位-赤芽球コロニー;CFU-G/M/GM:コロニー形成単位(顆粒球、単球);CFU-GEMM:コロニー形成単位(顆粒球、赤血球、単球、巨核球)。
【発明を実施するための形態】
【0029】
詳細な説明
本開示は、拡大HSPC集団内のHSCのパーセンテージを維持するまたは上昇させるようにHSPC集団を培養するための組成物および方法を提供する。拡大HSPC集団は、一般に、赤血球、T細胞および他の非HSPC細胞を枯渇させたHSPC(例えば、CD34+および/またはCD133+細胞)を単離して富化HSPC(富化HSPC集団とも呼ばれる)を形成し、次いで、アルギネートとポリリシンとを含む双性イオンヒドロゲル中でHSPCを拡大させて、ヒドロゲル拡大HSPC(拡大HSPC集団とも呼ばれる)を形成することによって、調製される。一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPCは、有意なパーセンテージのHSCを含む。一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPCは、有意なパーセンテージのHSCおよびMPPを含む。(本明細書で使用される場合、複能性前駆体(MPPS)は、Lin-CD34+CD38-CD133+CD45RA-CD90-であり、HSCは、Lin-CD34+CD38-CD133+CD45RA-CD90+である)。一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPCは、全HSPCのパーセンテージとして、富化HSPC中のHSCのパーセンテージと同じであるかまたはそれより高い、HSCの亜集団を含む。一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPCは、全HSPCのパーセンテージとして、富化HSPC中のHSCおよびMPPのパーセンテージと同じであるかまたはそれより高い、HSCおよびMPPの亜集団を含む。
【0030】
ヒドロゲル拡大HSPC集団は、臍帯血移植において、免疫療法において、遺伝子療法において、および/またはHSPCに由来する他の細胞型の調製において使用することができる。
【0031】
HSPCは、単一の供給源(例えば、単一のヒトドナー)からのものであることもあり、または複数の供給源、例えば、少なくとも2名もしくは少なくとも4名の異なるドナーからのものであることもある。一部の実施形態では、HSPCは、臍帯血および/または胎盤血からのものである。一部の実施形態では、HSPCは、出生後のヒトからの体性幹細胞である。一部の実施形態では、HSPCは、成人体性幹細胞からのものである。一部の実施形態では、HSPCは、CD34+HSPCである。一部の実施形態では、HSPCは、CD133+HSPCである。
【0032】
一部の実施形態では、富化HSPCは、約50%から約95%までのHSPC、約50%から約90%までのHSPC、約60%から約90%までのHSPC、約70%から約95%までのHSPC、約70%から約90%までのHSPC、約80%から約90%までのHSPC、または約80%から約95%までのHSPCを含む。
【0033】
一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPCは、約70%から約95%までのHSPC、約75%から約95%までのHSPC、約80%から約95%までのHSPC、約70%から約90%までのHSPC、約75%から約90%までのHSPC、または約80%から約90%までのHSPCを含む。
【0034】
一部の実施形態では、HSPC集団内のHSCのパーセンテージは、培養ステップ中に上昇し、その結果、ヒドロゲル拡大HSPC集団は、富化HSPCと比較して高いパーセンテージのHSCを含む。典型的には、HSCは、富化HSPC集団の5%未満を構成する。本明細書の一部の実施形態では、HSCのパーセンテージは、富化HSPC中のHSCの元々のパーセンテージ(100%;この場合、富化HSPC集団内の100%HSCは、富化HSPC集団の5%にほぼ等しいまたはそれ未満の%を構成する)と比べて1.5倍(150%)、2倍(200%)、2.5倍(250%)、またはそれより大きく上昇する。
【0035】
一部の実施形態では、封入された富化HSPC集団内のHSCの数は、培養ステップ中に増加し、その結果、ヒドロゲル拡大HSPC集団は、封入された富化HSPCと比較して多い数のHSCを含む。本明細書の一部の実施形態では、HSCの数は、封入された富化HSPC集団内のHSCの元々の数と比べて少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、またはそれより大きく増加する。
【0036】
一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPC集団は、富化HSPCと比較して高い比率の静止細胞を含む。特定の実施形態では、静止細胞は、可逆的に細胞周期のG0期にある細胞である。すなわち、静止細胞は、G0期にあるが細胞周期に再び入ることができる細胞である。対照的に、細胞は、細胞周期のG0期に不可逆的に、例えば、老化または分化によって、入ることができる。本開示のヒドロゲル拡大HSPC集団は、有意な割合の、老化したまたは分化したHSPCを含まない。
【0037】
一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPC集団は、富化HSPCと比較して高い比率の、休止、非周期状態(G0期)の細胞を含む。休止、非周期細胞は、例えば、細胞増殖に関連するタンパク質に特異的な抗体、例えば抗Ki-67抗体などを用いて同定することができ、細胞が休止(非周期)細胞であるのか細胞分裂中であるのかを区別することができる染色剤、例えば、Hoechst 33342などを用いて同定することもできる。Ki-67は、細胞増殖に関連する核タンパク質である。休止、非周期細胞(G0期)には、Ki-67発現が殆どまたは全くない。Hoechst 33342染色剤は、非休止細胞(例えば、G2-S/M)の細胞の存在量がG0またはG1の細胞と比較して多い状態にある核酸に結合する。
【0038】
一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPC集団は、富化HSPCと比較して高い比率の、HSC(Lin-CD34+CD38-CD133+CD45RA-CD90+)である、休止、非周期状態(G0期)の細胞を含む。一部の実施形態では、ヒドロゲルで拡大された封入HSPC集団は、培養開始時の、富化され、封入されたHSPCと比較して高い比率の、HSC(Lin-CD34+CD38-CD133+CD45RA-CD90+)である、休止、非周期状態(G0期)の細胞を含む。
【0039】
一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPC集団は、2%未満のCD3+細胞を含有する。一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPC集団は、1%未満のCD3+細胞を含有する。一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPC集団は、2%未満のCD19+細胞を含有する。一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPC集団は、1%未満のCD19+細胞を含有する。一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPC集団は、20%未満のCD34-細胞を含有する。一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPC集団は、15%未満のCD34-細胞を含有する。一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPC集団は、10%未満のCD34-細胞を含有する。一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPC集団は、20%未満のCD133-細胞を含有する。一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPC集団は、15%未満のCD133-細胞を含有する。一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPC集団は、10%未満のCD133-細胞を含有する。
HSPCの調製および培養
【0040】
ヒドロゲル拡大HSPCは、富化HSPC(HSPCの富化集団または富化HSPC集団とも呼ばれる)から培養された造血幹および前駆細胞を含む。HSPCは、典型的に、1つまたは複数のヒト供給源に由来する。一部の実施形態では、HSPCは、CD34+HSPCについて富化される。一部の実施形態では、富化HSPCは、単一のヒト臍帯血源または胎盤血源からのCD34+造血幹および前駆細胞である。一部の実施形態では、富化HSPCは、複数のヒト臍帯血源および/または胎盤血源からのCD34+造血幹および前駆細胞である。HSPCは、HSPCが、プールされる前に互いにまたはレシピエントとHLAが適合していないため、単一のHLA型を含むこともあり、または複数のHLA型を含むこともある。一部の実施形態では、富化HSPCは、単一のヒトPBMC源からの体性幹細胞からのCD34+造血幹および前駆細胞である。一部の実施形態では、富化HSPCは、複数のヒトPBMC源からの体性幹細胞からのCD34+造血幹および前駆細胞である。一部の実施形態では、富化HSPCは、T細胞が枯渇したものである。本明細書で使用される場合、T細胞が枯渇したとは、2%未満のCD3+細胞、または1%未満のCD3+細胞、または0.5%未満のCD3+細胞、または0.1%未満のCD3+細胞を指す。
【0041】
一部の実施形態では、HSPCは、CD133+HSPCについて富化される。一部の実施形態では、富化HSPCは、単一のヒト臍帯血源または胎盤血源からのCD133+造血幹および前駆細胞である。一部の実施形態では、富化HSPCは、複数のヒト臍帯血源および/または胎盤血源からのCD133+造血幹および前駆細胞である。HSPCは、HSPCが、プールされる前に互いにまたはレシピエントとHLAが適合していないため、単一のHLA型を含むこともあり、または複数のHLA型を含むこともある。一部の実施形態では、富化HSPCは、単一のヒトPBMC源からの体性幹細胞からのCD133+造血幹および前駆細胞である。一部の実施形態では、富化HSPCは、複数のヒトPBMC源からの体性幹細胞からのCD133+造血幹および前駆細胞である。一部の実施形態では、富化HSPCは、T細胞が枯渇したものである。本明細書で使用される場合、T細胞が枯渇したとは、2%未満のCD3+細胞、または1%未満のCD3+細胞、または0.5%未満のCD3+細胞、または0.1%未満のCD3+細胞を指す。
【0042】
一部の実施形態では、富化HSPCに由来するヒドロゲル拡大HSPCは、典型的に、1つまたは複数のヒト供給源に由来する。一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPCは、拡大CD34+HSPCである。一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPCは、単一のヒト臍帯血源または胎盤血源からのCD34+造血幹および前駆細胞である。一部の実施形態では、結果として得られるヒドロゲル拡大HSPCは、複数のヒト臍帯血源および/または胎盤血源からのCD34+造血幹および前駆細胞である。一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPCは、HSPCが、プールされる前に互いにまたはレシピエントとHLAが適合していないため、単一のHLA型を含むこともあり、または複数のHLA型を含むこともある。一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPCは、単一の体性幹細胞源(例えば、PBMC)からのCD34+造血幹および前駆細胞である。一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPCは、複数のヒト体性幹細胞源(例えば、PBMC)からのCD34+造血幹および前駆細胞である。一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPCは、T細胞が枯渇したものである。本明細書で使用される場合、T細胞が枯渇したとは、2%未満のCD3+細胞、または1%未満のCD3+細胞、または0.5%未満のCD3+細胞、または0.1%未満のCD3+細胞を指す。
【0043】
一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPCは、拡大CD133+HSPCである。一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPCは、単一のヒト臍帯血源および/または胎盤血源からのCD133+造血幹および前駆細胞である。一部の実施形態では、結果として得られるヒドロゲル拡大HSPCは、複数のヒト臍帯血源および/または胎盤血源からのCD133+造血幹および前駆細胞である。一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPCは、HSPCが、プールされる前に互いにまたはレシピエントとHLAが適合していないため、単一のHLA型を含むこともあり、または複数のHLA型を含むこともある。一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPCは、単一の体性幹細胞源(例えば、PBMC)からのCD133+造血幹および前駆細胞である。一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPCは、複数のヒト体性幹細胞源(例えば、PBMC)からのCD133+造血幹および前駆細胞である。一部の実施形態では、ヒドロゲル拡大HSPCは、T細胞が枯渇したものである。本明細書で使用される場合、T細胞が枯渇したとは、2%未満のCD3+細胞、または1%未満のCD3+細胞、または0.5%未満のCD3+細胞、または0.1%未満のCD3+細胞を指す。
臍帯血および/または胎盤血に由来するHSPC
【0044】
富化HSPCは、典型的に、CD34+造血幹および前駆細胞またはCD133+造血幹および前駆細胞であり、1つまたは複数のヒト供給源に由来する。一部の実施形態では、富化HSPCは、単一のヒト臍帯血源または胎盤血源からのCD34+造血幹および前駆細胞である。一部の実施形態では、富化HSPCは、複数のヒト臍帯血源および/または胎盤血源からのCD34+造血幹および前駆細胞である。富化HSPCは、HSPCが、プールされる前に互いにまたはレシピエントとHLAが適合していないため、単一のHLA型を含むこともあり、または複数のHLA型を含むこともある。一部の実施形態では、富化HSPCは、単一のヒト臍帯血源または胎盤血源からのCD133+造血幹および前駆細胞である。一部の実施形態では、富化HSPCは、複数のヒト臍帯血源および/または胎盤血源からのCD133+造血幹および前駆細胞である。富化HSPCは、HSPCが、プールされる前に互いにまたはレシピエントとHLAが適合していないため、単一のHLA型を含むこともあり、または複数のHLA型を含むこともある。一部の実施形態では、富化HSPCは、T細胞が枯渇したものである。本明細書で使用される場合、T細胞が枯渇したとは、2%未満のCD3+細胞、または1%未満のCD3+細胞、または0.5%未満のCD3+細胞、または0.1%未満のCD3+細胞を指す。
【0045】
一部の実施形態では、造血幹および前駆細胞は、臍帯血および/または胎盤血(ヒト臍帯血および/またはヒト胎盤血)に由来する。そのような血液は、当技術分野において公知の方法によって得ることができる。例えば、ヒトの分娩時の臍帯血および胎盤血の収集の論考については米国特許第5,004,681号および同第7,147,626号ならびに米国特許出願公開第2013/0095079号(両方ともそれら全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。臍帯血および/またはヒト胎盤血の収集は、典型的に、無菌条件下で行われる。収集し次第、臍帯血または胎盤血は、抗凝固剤、例えば、CPD(クエン酸-リン酸-デキストロース)、ACD(酸性クエン酸-デキストロース)、アルセバー溶液(Alsever et al., N. Y. St. J. Med. 41:126, 1941)、De Gowin溶液(De Gowin, et al., J. Am. Med. Ass. 114:850, 1940)、Edglugate-Mg(Smith, et al., J. Thorac. Cardiovasc. Surg. 38:573, 1959)、Rous-Turner溶液(Rous and Turner, J. Exp. Med. 23:219, 1916)、他のグルコース混合物、ヘパリン、ビスクマ酢酸エチルなどと、混合され得る。一般には、Hurn, 1968, Storage of Blood, Academic Press, New York, pp. 26-160を参照されたい。一実施形態では、ACDが使用され得る。
【0046】
臍帯血は、好ましくは、臍帯からの直接ドレナージにより、ならびに/または娩出された胎盤からのその根元でのおよび拡張した静脈での針穿刺吸引により、得ることができる。好ましくは、収集されるヒト臍帯血および/または胎盤血には、汚染(例えば、細菌またはウイルス)、特に、ウイルス汚染がない。
【0047】
臍帯血の収集の前に、母体の既往歴を判定して、臍帯血がもたらし得るリスク、例えば、遺伝的疾患または感染性疾患の伝染、例えば、がん、がん(例えば、白血病)、免疫障害、神経障害、肝炎またはAIDSを同定することができる。収集された臍帯血は、細胞生存率、HLA型判定、ABO/Rh型判定、CD34+細胞計数、CD133+細胞計数、および/または全有核細胞計数のうちの1つまたは複数のための検査を受けたものであり得る。
【0048】
臍帯血および/または胎盤血は、分娩時にヒトドナーから収集された後、その血液が処理されて富化HSPCが生成される。一部の実施形態では、HSPCは、好ましくはCD34+細胞または主にCD34+HSPCである。一部の実施形態では、HSPCは、好ましくはCD133+細胞または主にCD133+HSPCである。HSPCは、典型的に、T細胞および赤血球が枯渇したものであり、その結果、富化HSPCとなる。本明細書で使用される場合、T細胞が枯渇したとは、約2%未満のCD3+細胞、約1%未満のCD3+細胞、または0.5%未満のCD3+細胞、または0.1%未満のCD3+細胞を指す。したがって、富化は、細胞集団内のHSPCのパーセンテージを(富化手順前の集団のパーセンテージと比べて)上昇させるプロセスを指す。精製、例えば、CD34+選択またはCD133+選択は、T細胞および赤血球の富化および枯渇の一例である。
【0049】
富化のための処理の前の、収集された臍帯血および/または胎盤血は、新鮮なものであることもあり、または事前に凍結保存されたものであることもある。細胞分離/選択のための当技術分野において公知の任意の適する技法を使用して、HSPCの富化を実行することができる。細胞表面マーカーの差次的発現に依存する方法を使用することができる。例えば、CD34を発現する細胞を、CD34を発現しない細胞と分離するために、細胞表面マーカーCD34を発現する細胞を、CD34に対するモノクローナル抗体を使用して正に選択することができる。同様に、CD133を発現する細胞を、CD133を発現しない細胞と分離するために、細胞表面マーカーCD133を発現する細胞を、CD133に対するモノクローナル抗体を使用して正に選択することができる。さらに、用いられる分離技法によって、好ましくは、選択される細胞の生存率が最大化される。用いられる特定の技法は、分離の効率、その方法の細胞傷害性、遂行の容易さおよび速度、ならびに精巧な装置および/または高度な技術的スキルの必要性に依存する。
【0050】
分離のための手順は、例えば、限定ではなく、抗体がコーティングされた磁気ビーズを使用する、磁気分離、親和性クロマトグラフィー、および固体マトリックス、例えばプレート、ビーズなど、に結合された抗体を用いる「パニング」、または他の便利な技法を含み得る。正確な分離/選択をもたらす技法は、様々な洗練度、例えば、複数のカラーチャネル、小角および鈍角光散乱検出チャネル、インピーダンスチャネルなどを有することができる、蛍光活性化細胞選別装置を含む。
【0051】
選択プロセスにおいて使用される細胞表面分子に対する抗体を、選ばれた選択プロセスに適応する多数の異なる材料とコンジュゲートすることができる。例えば、特定の細胞型の容易な分離を可能にするために、直接分離を可能にする磁気ビーズ;例えば固体支持体に結合された、アビジン、ストレプトアビジン、またはビオチンに特異的な抗体を用いて除去することができる、ビオチン;例えば蛍光活性化細胞選別装置と共に使用することができる、蛍光色素;などに、抗体をコンジュゲートすることができる。残存細胞の生存率に対して過度に有害でない任意の細胞分離技法を用いることができる。
【0052】
好ましい実施形態では、新鮮な臍帯血ユニットまたは凍結され解凍された臍帯血ユニットは、酸化鉄および特異的モノクローナル抗体に結合されたデキストランで構成されているナノサイズの超常磁性粒子を用いる磁気細胞分離装置、例えば、CliniMACS(登録商標)Cell Separation System(Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、Germany)と共に、磁気粒子に直接または間接的にコンジュゲートされた抗CD34抗体を使用して、CD34+HSPCについて富化するように処理される。CliniMACS(登録商標)Cell Separatorは、単回使用の使い捨てチューブセットが取り付けられた、閉鎖型無菌システムである。単一ユニットの収集された臍帯血および/または胎盤血をCD34+HSPCについて富化するように処理するために使い捨てチューブセットを使用し、その後、廃棄することができる。
【0053】
好ましい実施形態では、新鮮な臍帯血ユニットまたは凍結され解凍された臍帯血ユニットは、酸化鉄および特異的モノクローナル抗体に結合されたデキストランで構成されているナノサイズの超常磁性粒子を用いる磁気細胞分離装置、例えば、CliniMACS(登録商標)Cell Separation System(Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、Germany)と共に、磁気粒子に直接または間接的にコンジュゲートされた抗CD133抗体を使用して、CD133+HSPCについて富化するように処理される。CliniMACS(登録商標)Cell Separatorは、単回使用の使い捨てチューブセットが取り付けられた、閉鎖型無菌システムである。単一ユニットの収集された臍帯血および/または胎盤血をCD133+HSPCについて富化するように処理するために使い捨てチューブセットを使用し、その後、廃棄することができる。
【0054】
ある実施形態では、単一の臍帯血および/または胎盤血ユニットが、富化HSPCを調製するために使用される。他の実施形態では、2もしくはそれより多くのまたは4もしくはそれより多くの臍帯血および/または胎盤血ユニットを、HSPCについて富化する前にプールすることができる。別の実施形態では、HSPCの個々の集団をHSPCについて富化した後にプールすることができる。特定の実施形態では、プールされる臍帯血および/もしくは胎盤血ユニットまたはHSPCの集団の数は、2、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35もしくは40であるか、または前述の数の少なくともいずれかである。一部の実施形態では、プールは、2~8、4~8、2~10、4~10、4~20、または4~25の、および20または25以下の、臍帯血および/もしくは胎盤血ユニット、またはHSPC集団を含有する。プーリングは、典型的には、レシピエントへの投与の前に凍結および保管することができる細胞産物中のHSPCの数を増加させるために行われる。
【0055】
臍帯血または造血幹もしくは幹および前駆細胞集団を、HSPCのHLA型に関してまたはそれと関係なくプールすることができる。一部の実施形態では、プール内の細胞は、人種にも民族性にも関係なく組み合わせられる。一部の実施形態では、プール内の細胞は、同じ人種、例えば、アフリカ系アメリカ人、白人、アジア人、ヒスパニック系、ネイティブアメリカン、オーストラリア先住民系、イヌイット族、太平洋諸島の住民、の個体の臍帯血および/もしくは胎盤血に由来し、または同じ民族性、例えば、アイルランド人、イタリア人、インド人、日本人、中国人、ロシア人など、の個体の臍帯血および/もしくは胎盤血に由来する。
【0056】
典型的には、HSPCについて富化する前に、臍帯血または胎盤血の赤血球および白血球が分離される。一部の実施形態では、赤血球の枯渇は、赤血球の白血球からの分離を指す。赤血球と白血球の分離を行ってしまえば、赤血球画分を廃棄し、白血球画分を、例えば、上で説明したような磁気細胞分離装置で処理してCD34+HSPCまたはCD133+HSPCについて富化することができる。白血球画分と赤血球画分の分離は、例えば、限定ではなく、アフェレーシス、遠心分離技法などを含む、当技術分野において公知の任意方法によって、行うことができる。使用することができる他の分離方法としては、市販の製品FICOLL(商標)またはFICOLL-PAQUE(商標)またはPERCOLL(商標)(GE Healthcare、Piscataway、New Jersey)の使用が挙げられる。FICOLL-PAQUE(商標)は、通常はコニカルチューブの底に配置され、上に全血が積層される。遠心分離された後、コニカルチューブの中に、上から下へ次の層が見えることになる:血漿および他の構成要素、単核細胞(白血球)を含有するバフィーコートと呼ばれる単核細胞の層、FICOLL-PAQUE(商標)、そしてペレット形態で存在するはずである赤血球および顆粒球。この分離技法は、単核細胞の容易な採取を可能にする。別の方法としては、赤血球の除去のためのヘタスターチ(ヒドロキシ-エチルデンプン)媒介沈降が挙げられ、これは、臍帯血に使用することができ、骨髄(BM)源に使用することもできる。
【0057】
必要に応じて、CD34+またはCD133+細胞選択の前に、臍帯血または胎盤ユニットのアリコートを、全有核細胞計数値および/またはCD34+もしくはCD133+細胞含有量についてチェックすることができる。特定の実施形態では、CD34+細胞選択の後、CD34+細胞画分とCD34-細胞画分の両方が回収される。必要に応じて、最初のHLA型判別および将来のキメリズム研究のために、未処理血液製剤またはCD34-細胞画分の試料からDNAを抽出することができる。同様に、特定の実施形態では、CD133+細胞選択の後、CD133+細胞画分とCD133-細胞画分の両方が回収される。必要に応じて、最初のHLA型判別および将来のキメリズム研究のために、未処理血液製剤またはCD133-細胞画分の試料からDNAを抽出することができる。
体性幹細胞からのHSPC
【0058】
一部の実施形態では、HSPCは、出生後のヒト(単数または複数)に由来する。一部の実施形態では、富化HSPCは、CD34+造血幹および前駆細胞またはCD133+造血幹および前駆細胞であり、1つまたは複数のヒト供給源に由来する。一部の実施形態では、富化HSPCは、単一のヒト体性幹細胞源からのCD34+造血幹および前駆細胞である。一部の実施形態では、富化HSPCは、複数のヒト体性幹細胞源からのCD34+造血幹および前駆細胞である。富化HSPCは、HSPCが、プールされる前に互いにHLAが適合していないため、単一のHLA型を含むこともあり、または複数のHLA型を含むこともある。一部の実施形態では、富化HSPCは、単一のヒト体性幹細胞源からのCD133+造血幹および前駆細胞である。一部の実施形態では、富化HSPCは、複数のヒト体性幹細胞源からのCD133+造血幹および前駆細胞である。富化HSPCは、HSPCが、プールされる前に互いにまたはレシピエントとHLAが適合していないため、単一のHLA型を含むこともあり、または複数のHLA型を含むこともある。一部の実施形態では、富化HSPCは、T細胞が枯渇したものである。本明細書で使用される場合、T細胞が枯渇したとは、2%未満のCD3+細胞、または1%未満のCD3+細胞、または0.5%未満のCD3+細胞、または0.1%未満のCD3+細胞を指す。
【0059】
一部の実施形態では、HSPCは、出生後(例えば、成人または子供)のPBMCから収集された体性幹細胞からのものである。PBMCは、対象から、任意の好適な方法を使用して、例えば、モービライザーを使用する対象の幹細胞の末梢血への動員、骨髄の吸引、および/またはアフェレーシス、例えば白血球アフェレーシスによって、得ることができる。
【0060】
一部の実施形態では、PBMCは、対象から、モービライザーを使用する幹細胞の末梢血への動員、続いての白血球アフェレーシスの後に得られる。本明細書で使用される場合、「モービライザー」は、成長因子もしくはコロニー刺激因子またはその活性断片もしくは模倣物、核酸、炭水化物、抗体、あるいはBMから末梢血への幹細胞の遊走を増進するように作用する任意の他の作用物質などの、任意の物質を、それが小有機分子であるか、合成もしくは天然由来であるか、ポリペプチドであるかを問わず、指す。そのような「モービライザー」は、末梢血中の幹細胞(例えば、造血幹細胞または造血幹および前駆細胞)の数を増加させることができ、したがって、幹細胞源のより容易な入手を可能にする。対象における採取されることになる入手可能な幹細胞の数を増加させることに適した任意のモービライザーを用いることができる。ある実施形態では、モービライザーは、サイトカイン、例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)である。適するモービライザーの市販の例は、NEUPOGEN(商標)(フィルグラスチム)である。本開示における使用に適するモービライザーの別の例は、STEMGEN(商標)として市販されている組換えメチオニルヒト幹細胞因子である。本開示における使用に適するモービライザーのさらに別の例は、プレリキサフォルであり、これは、CXCR4ケモカイン受容体の阻害剤であり、その同族リガンドである間質細胞由来因子-1a(SCF-1アルファ)の結合を遮断するものであり、GenzymeからMOZOBIL(商標)として市販されている。一部の実施形態では、PBMCは、対象から15cc/kg体重を標的収集目標としたBM回収後に単離されるか、または毎日G-CSF(フィルグラスチム;16mg/kg BID;1~6日目)およびプレリキサフォル(240mg/kg/日;4~6日目)を皮下投与してCD34+細胞を動員し、続いて白血球アフェレーシスを行った対象から単離される。
【0061】
一部の実施形態では、HSPCは、富化HSPCを調製するために、CD34+細胞の富化、例えば、本明細書に記載のまたは当業者に公知の方法による富化によって、PBMCから単離される。一部の実施形態では、CD34細胞は、Adairら(Haematologica 103(11):1806-1814, 2018;この開示は参照により本明細書に組み込まれる)により記載されたような系統枯渇によって富化される。
富化HSPC
【0062】
上で説明したような富化HSPCを、その後、拡大の前に、例えば、適切な細胞培養培地での懸濁、または凍結保存により、保管および/または輸送のために処理することができる。好ましい実施形態では、細胞培養培地または凍結保存用培地は、HSPCの生存率の維持に適している。例えば、細胞培養培地は、例えば、StemSpan(商標)SFEM、StemSpan(商標)SFEM II、StemSpan(商標)-ACF、Stemline I、Stemline II、StemMACS(商標)、X-VIVO 10、STEMium(登録商標)、StemPro-34 SFM、StemPro HSC培地(Prototype;Life Technologies)、PRIME-XV(登録商標)、最小必須培地(MEM)、イーグル最小必須培地(EMEM)、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、ハム栄養混合物(ハムF-10、およびハムF-12)、Roswell Park Institute培地(RPMI)、イスコフ改変ダルベッコ培地および(IMDM)、またはこれらの組合せなどの、無血清、無血清成分(例えば、ヒト血清アルブミン、またはヒト血小板溶解物)、無サイトカインの造血幹細胞または幹および前駆細胞培養培地であり得る。成長因子が細胞培養培地に添加される。例えば、一部の実施形態では、成長因子は、次の濃度で添加される:約50~300ng/mlの幹細胞因子(SCF)、約50~300ng/mlのFlt3-リガンド(Flt3-L)、約50~100ng/mlのトロンボポエチン(TPO)、約50~100ng/mlのインターロイキン-6(IL-6)、および約10~50ng/mlのインターロイキン-3(IL-3)。さらに特定の実施形態では、細胞培養培地は、300ng/mlの幹細胞因子、300ng/mlのFlt3-リガンド、100ng/mlのトロンボポエチン、100ng/mlのインターロイキン-6および10ng/mlのインターロイキン-3;または50ng/mlの幹細胞因子、50ng/mlのFlt3-リガンド、50ng/mlのトロンボポエチン、50ng/mlのインターロイキン-6および10ng/mlのインターロイキン-3を含有する。別の好ましい実施形態では、細胞培養培地は、10ng/mlの組換えヒトインターロイキン-3(rhIL-3)、50ng/mlの組換えヒトインターロイキン-6(rhIL-6)、50ng/mlの組換えヒトトロンボポエチン(rhTPO)、50ng/mlの組換えヒトFlt3-リガンド(rhFlt3-L)、および50ng/mlの(50 ng/ml and)組換えヒト幹細胞因子(rhSCF)が補充された無血清、造血幹細胞または幹および前駆細胞培養培地(例えば、STEMSPAN(商標)Serum Free Expansion MediumまたはSTEMSPAN(商標)Serum Free Expansion Medium II(StemCell Technologies、Vancouver、British Columbia))を含むか、または代替的にそれらからなる。別の好ましい実施形態では、細胞培養培地は、組換えヒトrhSCF、rhFlt3-L、rhTPO、rhIL-6(各々50ng/mlの最終濃度で)およびrhIL-3(10ng/mlの最終濃度で)が補充された、無血清造血幹細胞または幹および前駆細胞培養培地(例えば、StemSpan Serum Free Expansion Medium II(SFEM II、StemCell Technologies、Vancouver、British Columbia))からなる。凍結保存用培地は、下記のもののいずれかを含む任意の適する培地であり得る。
【0063】
特定の実施形態では、HSPCは、赤血球が枯渇したものであり、赤血球枯渇画分中のCD34+および/またはCD133+細胞の数が決定される。一部の実施形態では、赤血球の枯渇は、赤血球の白血球からの分離、または赤血球のCD34+および/もしくはCD133+細胞からの分離を指す。好ましくは、350万より多くのCD34+細胞を含有する臍帯血および/または胎盤血ユニットが上記の富化方法に付される。
【0064】
HSPCが上記の富化方法または当技術分野において公知の他の方法に従って(例えば、分娩時にヒトからまたは分娩後にヒトから収集されたヒト臍帯血および/またはヒト胎盤血から)単離された後、富化HSPCは、ヒドロゲルに封入される。
【0065】
富化HSPCは、典型的には、HSPCの単個細胞の懸濁液であり、その後、アルギネート-ポリリシンヒドロゲル内に封入される。ポリリシンは、典型的にはポリ-L-リシンである。封入HSPCは、ヒドロゲルの微小環境内で実質的に分化することなく拡大することができる。一部の実施形態では、封入HSPCは、ヒドロゲルの微小環境内で実質的に分化することなく拡大することができ、したがって、HSCのパーセンテージは、ヒドロゲル拡大HSPCにおいて出発富化HSPCと比べて維持または増加される。アルギネートによる封入は、HSCが前駆体(例えば、系統拘束前駆体および/または最終分化細胞型、例えば、CD3+T細胞、CD56+NK細胞、マクロファージ、CD20+B細胞、CD14+単球、CD15+好中球など)に有意に分化することなくHSPCを維持および拡大するのに有用な、スケーラブルで可逆的な培養環境を提供する。
【0066】
一部の実施形態では、アルギネート-ポリリシンヒドロゲルは、二価カチオンをさらに含む。適する二価カチオンとしては、Ca2
+またはBa2
+が挙げられる。
【0067】
一部の実施形態では、アルギネート濃度は、封入中は約1%(w/v)~約3%(w/v)である。一部の実施形態では、アルギネート濃度は、封入中は約1%(w/v)~約5%(w/v)である。一部の実施形態では、アルギネート濃度は、封入中は約2%(w/v)である。
【0068】
一部の実施形態では、ポリリシン濃度は、封入中は約0.01%(w/v)~約10%(w/v)である。一部の実施形態では、ポリリシン濃度は、封入中は約0.1%(w/v)である。一部の実施形態では、ポリリシンは、ポリ-L-リシンであり、濃度は、封入中は約0.01%(w/v)~約10%(w/v)である。一部の実施形態では、ポリリシンは、ポリ-L-リシンであり、濃度は、封入中は約0.1%(w/v)である。
【0069】
一部の実施形態では、HSPCは、約1×104細胞/ml~約1×107細胞/mlの細胞播種密度で封入される。一部の実施形態では、HSPCは、約1×105細胞/ml~約1×107細胞/mlの細胞播種密度で封入される。一部の実施形態では、HSPCは、約1×106細胞/ml~約1×107細胞/mlの細胞播種密度で封入される。一部の実施形態では、HSPCは、約5×106細胞/mlの細胞播種密度で封入される。一部の実施形態では、HSPCは、約1×106細胞/ml~約1×107細胞/mlの細胞播種密度で封入される。一部の実施形態では、HSPCは、約5×106細胞/mlの細胞播種密度で封入される。
【0070】
富化HSPCの封入は、任意の適する技法を使用して行うことができる。例えば、同軸エレクトロスプレー法、遠心コーティング、フローバイブレーションノズル、油-水エマルジョン、エアドリッピングノズル、パンコーティング、イオノトロピックゲル化、コアセルベーション相分離、界面架橋または重合、噴霧乾燥、およびこれらの組み合わせなどの技法も、使用することができる。
【0071】
アルギネートは、典型的には、医薬品等の製造管理および品質管理に関する基準(GMP)条件内および/またはGMP条件下で生成されるアルギネートであり、分子量は、1kDa~2000kDaから選択され得る。C-5エピマー-L-グルロン酸塩(G)/b-D-マンヌロン酸塩(M)比は、0.1~10から選択され得る。アルギネート溶液の作業粘度は、1mPa*s~500mPa*sから選択され得る。アルギネートは、好ましくは、低エンドトキシン、例えば、(EU/g)<100を有する。
【0072】
アルギネートは、主として、ゲル化剤、例えば、正荷電ポリマー、または二価イオン、例えばMg2
+、Ca2
+、Sr2
+、Ba2
+、またはこれらの組合せなどによって、物理的に架橋される。
【0073】
正荷電ポリマーは、ポリリシン、ポリ-L-リシン、ポリ-D-リシン、ポリヒスチジン、ポリオルニチン、カチオン性キトサン、カチオン性ゼラチン、カチオン性デキストラン、カチオン性セルロース、カチオン性シクロデキストリン、ポリブレン、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(アミドアミン)、およびポリ(アミノ-co-エステル)、ポリ(2-N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート)から選択することができるが、これらに限定されない。正荷電ポリマーは、典型的には、ポリリシン、ポリ-L-リシン、ポリ-D-リシン、またはこれらの混合物である。
【0074】
アルギネートおよびゲル化剤(複数可)に適する溶液としては、食塩水(例えば、PBS、DPBS、HEPES、HBSS、EBSS、クエン酸食塩水など)、細胞培養培地(例えば、StemSpan(商標)SFEM、StemSpan(商標)SFEM II、StemSpan(商標)-ACF、STEMLINE(商標)I、STEMLINE(商標)II、StemMACS(商標)、X-VIVO(商標)10、STEMium(登録商標)、STEMPRO(商標)-34 SFM、STEMPRO(商標)HSC培地(Prototype;Life Technologies)、PRIME-XV(登録商標)、最小必須培地(MEM)、イーグル最小必須培地(EMEM)、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、ハム栄養混合物(ハムF-10、およびハムF-12)、Roswell Park Institute培地(RPMI)、イスコフ改変ダルベッコ培地および(IMDM))、またはこれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。
【0075】
ヒドロゲル封入細胞の形成は、幾つかの方法により行うことができる。これらの方法は、アルギネート/細胞水滴とCaCl2含有浴の両方の形成を含む。マイクロカプセル技術は、例えば、米国特許第8,435,787号に記載されている。別の方法は、油相中のアルギネート/細胞水滴とCaCl2含有水滴の両方の形成を含む。2タイプの液滴が互いに融合すると、細胞を含有する架橋したヒドロゲルビーズが形成される(例えば、H. Shintaku, et al., Microsystems Technology 13:951, 2007を参照されたい)。この方法は、下記でさらに十分に説明される。
【0076】
典型的なプロセスには、液滴形成、およびヒドロゲルを形成するための液滴の合体という2つのステージがある。液滴形成のために、水性相をマイクロチャネル内の油に導入することによって、細胞を含有するアルギン酸ナトリウム溶液の液滴が、マイクロチャネルの上流に位置するノズルから形成される。アルギネートの液滴は、連続液相の流れに続いて、主チャネル内を下流に流れる。次に、アルギネートの液滴は、下流に位置する第2のノズルから形成される塩化カルシウム溶液の液滴と融合する。
【0077】
直径が300μmより小さいビーズ(例えば、約10μm~約300μmの範囲内のビーズ)を有するヒドロゲルを生成するために、チャネルの深さは、好ましくは約50μmであり、好ましい直径は、それぞれ、ノズルについては50μm、および主チャネルについては200μmである。
【0078】
アルギン酸ナトリウム溶液は、好ましくは、約1%~約3%(w/v)または約1.5% w/vの濃度で用いられ、細胞がこのアルギネートに105細胞/mlの濃度で分散される。塩化カルシウムは、好ましくは0.1Mの濃度で供給される。ヒマワリ油などの植物油を油相として使用することができる。
【0079】
第2のプロトコールは、Workman, et al., Macromolecular Rapid Communications 29:165, 2008によって記載されている。この方法では、遮蔽された接合部が、アルギネートマイクロスフェアを生成するために用いられる。CaCO3および細胞と混合された水性アルギン酸ナトリウムが中央チャネルに導入される。酢酸と混合されたヒマワリ油が最も外側のチャネルに供給される。ヒマワリ油は、アルギネート溶液が酸性化した油流と接触するのを防止するシールドとして作用するように中間チャネルに供給される。これらのチャネル間を2つの油が層流方式で流れ、保護ヒマワリ油へのH+の拡散を最小限に抑える。接合部での液滴形成後、H+は、アルギネート液滴内に拡散し、かくてCa2
+をCaCO3から遊離させ、これに起因してアルギネートのゲル化が生じる。接合部前のチャネルは、好ましくは約500μm2の断面積を有し、接合部後のチャネルは、好ましくは約1000μm2の断面積を有する。
【0080】
封入を、噴射封入技法を使用して行うこともできる。多くのそのような技法が当技術分野において公知であり、バイオエレクトロスプレー噴射、空気力学的支援によるバイオ噴射、および圧力支援による細胞噴射が好ましい。エレクトロスプレー法は、バイオエレクトロスプレー法または電気流体力学的噴射としても公知であり、スプレーノズルまたは針と接地電極の間の電位差に依拠して規定サイズの液滴を生じさせる。
【0081】
培地は、外部電界を生じさせる電極よりも高い電位に保持されている導電針に通され、その針から出た培地は、その外部電界に通される。針は中空であり、0.2mm~2mmの間の内径、および平坦なエッジ幾何形状または面取りをしたエッジ幾何形状のどちらかを有する。針はまた同軸であり、したがって、異なる流体を同じ針から同時に噴霧することができる。液滴の形成は、針と電極の間の電位差(電圧の差)、培地の流速、ならびにその相対的な特徴、例えば、粘度、表面張力、導電率および比誘電率によって決まる。電圧および間隔は、電場が両方の変数に依存するので、関連している。通常は、封入は、およそ5~10kVの電圧を用いて1または2cm間隔で行われる。ジェットが安定している場合、ほぼ単一分布の液滴サイズを得ることができる。この技術を使用して、生細胞を封入することができる(例えば、Jayasinghe et al., Small 2:216-219, 2006;およびJayasinghe et al., Biotechnol. J. 1:86-94, 2006を参照されたい)。初期の研究は、液滴サイズの分散が広い不安定なジェットをもたらしたが、これは、同軸噴射針を使用して安定した噴射を生じさせ(Jayasinghe et al., Lab Chip 6:1086-1090, 2006)、マイクロ封入材料を外側のジェットで噴霧し、生体材料を内側のジェットで噴霧することよって改善された。
【0082】
空気力学的支援による噴射は、圧力勾配に依拠する。圧力がチャンバ内で周囲雰囲気に対して加えられ、それによって、引き込み効果が生じてジェットが生成される。生細胞をこのようにして封入することができる(Arumuganathar et al., Biomed. Mat. 2:158-168, 2007)。
【0083】
圧力支援による噴射は、同軸針を用い、この同軸針では、1つのオリフィスが培地を噴射するために使用され、もう1つのオリフィスが、印加される圧力の導管としての役割を果たす。空気力学的支援による噴射とは異なり、加圧チャンバはない。
【0084】
噴射技術の一般的な概説については、Jayasinghe, Regen. Med. 3:49-61, 2008、ならびに米国特許第6,649,384号、米国特許出願公開第2006/0051329号および米国特許第4,353,888号を参照されたい。(全て、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる)。複数のノズルを使用することにより、噴射技術の規模を拡大することができる。
【0085】
一部の実施形態では、封入に向けてHSPCを準備するために、典型的に個々の細胞であるHSPCは、PBSなどの適する水性緩衝液で洗浄され、沈殿され、封入用ポリマーを含む緩衝液に再懸濁される。封入材料は、任意の適する形態のアルギネート、好ましくはGMPアルギネート、およびポリリシン、好ましくはポリ-L-リシンであり得る。アルギネートは、容易に固化して所望の特性を有するマトリックスであって、生理的pHで水または食塩水に不溶性であるマトリックスを形成することができる。所望の特性としては、栄養透過性が挙げられる。典型的に、結果として得られるヒドロゲルは、電荷平衡状態にある。本明細書で使用される場合、「電荷平衡」ヒドロゲルは、ヒドロゲルカプセルが形成されるとアルギネートおよびポリリシンが平衡に達する、アルギネートおよびポリリシンから形成されているヒドロゲルを指す。
【0086】
一部の実施形態では、アルギネートは、好ましくは、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンを欠いているPBS緩衝液中にあり、このことによって、封入用ヒドロゲルの時期尚早の固化が防止される。典型的には、緩衝液は、MOPS、PBSまたは本明細書に記載の細胞培養培地などの適する緩衝液中に1~5重量%のアルギネートを含む。
【0087】
ヒドロゲルのためのゲル化剤は、次の3つの方法のうちの1つで導入することができる:(1)二次液滴集団を生成し、導入して細胞カプセルと融合させる方法;(2)細胞液滴を、確立された重合剤を含有する水相ストリームへ油相に沿って抽出する方法;(3)ゲル化剤を油相に直接溶解する方法;または(4)細胞およびアルギネートをゲル化剤の溶液に導入する方法。
【0088】
ゲル化溶液、例えば、好ましくはCa2
+、Sr2
+またはBa2
+イオンは、アルギネートを固化させるために使用される。CaCl2、またはそれぞれのSrもしくはBa化合物は、10mM~1Mの間の濃度で水に溶解される。Ca、SrおよびBaの組合せをわずか1mM程度の1つの塩と共に使用して、最適なヒドロゲル特性を得ることができる。ゲル化溶液は、典型的には、ポリ-L-リシンなどのポリリシンを、例えば0.015~0.1%(w/v)の濃度で含む。この溶液は、好ましくは、エレクトロスプレーユニットの電極に配置される収集容器内に保持される。アルギネート溶液に懸濁しているHSPCは、噴霧機を通過し、その結果、液滴が固化またはゲル化溶液を保持する容器に収集される。封入細胞を噴霧後に容器の底から取り出すことができる。
封入HSPCの培養
【0089】
封入HSPCは、HSPC、例えば、CD34+HSPCまたはCD133+HSPCを維持および/または拡大するために培養培地で培養される(一部の実施形態では、まとめて拡大と呼ばれる)。HSPCは、培養培地において、HSPC生存率および/またはHSPC増殖を維持する(例えば、HSPCが成長して分裂する(増殖する)ように有糸分裂を促進する)条件下で培養される。一部の実施形態では、封入HSPCの培養中に、最終分化細胞型へのHSCの最小限の分化が起こる(すなわち、結果として得られる細胞の5%未満、4%未満、3%未満、または2%未満)。一部の実施形態では、封入HSPCの培養中に、拘束前駆体(例えば、骨髄系およびリンパ系)のパーセンテージは、富化HSPCの場合とほぼ同じままである(例えば、5%未満の変化、10%未満の変化)。一部の実施形態では、封入HSPCの培養中に、最終分化細胞型へのHSCおよびMPPの最小限の分化が起こる(すなわち、結果として得られる細胞の5%未満、4%未満、3%未満、または2%未満)。一部の実施形態では、封入HSPCの培養中に、拘束前駆体(例えば、骨髄系およびリンパ系)のパーセンテージは、富化HSPCとほぼ同じままである(例えば、5%未満の変化、10%未満の変化)。
【0090】
一般的な培養および拡大技法としては、米国特許第7,399,633号、米国特許出願公開第2013/0095079号、Delaney et al., Nature Med. 16(2):232-236, 2010に記載されているもの(全て、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる)、ならびに下記で説明されるものが挙げられるが、それらに限定されない。これらの技法を本明細書に記載の方法および組成物による使用に適応させることができる。
【0091】
本明細書で使用される場合、「フィーダー細胞層」、「フィーダー層」、または「フィーダー細胞」は、第2の種類の細胞を維持することおよび分化させることまたは増殖させることができる環境を提供するために第2の種類の細胞(例えば、HSPC)と共培養される、ある種類の外来性細胞を指す。理論により拘束されるものではないが、フィーダー細胞は、例えば、第2の種類の細胞にペプチド、ポリペプチド、電気シグナル、有機分子、核酸分子、成長因子、他の因子(例えば、サイトカイン)、および代謝栄養素を提供することができる。
【0092】
一部の実施形態では、HSPCは、無血清である培養培地であって、成長因子の存在下で造血幹および前駆細胞の生存率を維持するのに適している培養培地において培養され、細胞成長条件(例えば、有糸分裂を促進する)に曝露され、その結果、HSPCは、増殖してHSPCの拡大集団(拡大HSPC集団、拡大HSPC、または代替的に、ヒドロゲル拡大HSPC集団またはヒドロゲル拡大HSPC)を生成し、HSPC集団内のHSCの生存率を維持する。
【0093】
例示的な実施形態では、造血幹および前駆細胞の維持および/または拡大に適している培養培地は、本明細書に記載されるような、成長因子を伴う、非動物由来BSA、組換えヒトインスリン、ヒトトランスフェリン、2-メルカプトエタノールおよび他のサプリメントを含有するイスコフMDMなどの、無血清の培養培地である。他の実施形態では、造血幹細胞培養培地は、STEMSPAN(商標)Serum Free Expansion Medium(StemCell Technologies、Vancouver、British Columbia)、またはSTEMSPAN(商標)Serum Free Expansion Medium II(StemCell Technologies、Vancouver、British Columbia)である。
【0094】
一部の実施形態では、HSPCは、Notchリガンド(すなわち、Notchアゴニストとも呼ばれる、分化の阻害に有効なNotch機能のアゴニスト)の非存在下で培養される。一部の実施形態では、HSPCは、Notchリガンドならびにフィブロネクチンおよび/またはその断片の非存在下で培養される。一部の実施形態では、HSPCは、Notchリガンド、フィブロネクチンおよび/またはその断片、ならびにアリール炭化水素アンタゴニスト(例えば、SR1)、ならびにピリミド-インドール誘導体、例えばUM729およびUM171の非存在下で培養される。一部の実施形態では、HSPCは、Notchリガンド、典型的には官能化形態のアルギネートおよび/またはポリリシンに結合されたNotchリガンド、の存在下で培養される。いずれの実施形態においても、さらなる拘束細胞型へのHSPCの分化は、培養中には最小限に抑えられる。一部の実施形態では、複能性前駆体、骨髄系およびリンパ系前駆体、ならびにより拘束細胞型へのHSCの分化は、培養中には最小限に抑えられる。一部の実施形態では、HSCのパーセンテージは、培養中に同じままであるかまたは上昇する。一部の実施形態では、骨髄系およびリンパ系前駆体、ならびにより拘束細胞型へのHSCの分化は、培養中には最小限に抑えられる。一部の実施形態では、骨髄系およびリンパ系前駆体、ならびにより拘束細胞型へのHSCおよびMPPの分化は、培養中には最小限に抑えられる。一部の実施形態では、HSCおよびMPPのパーセンテージは、培養中に同じままであるかまたは上昇する。
【0095】
一部の実施形態では、HSPCは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、もしくは25日間、またはそれより長く培養され、あるいは好ましくは、HSPCは、少なくとも10日、約2~約10日、約2~約21日、約7~約15日、約7~約14日、または約13~約15日間、培養される。一部の実施形態では、HSPCは、約14日、約13日または約15日間、培養される。典型的には、封入HSPCは、ヒドロゲルカプセル内の細胞密度を最大化するのに十分な期間にわたって培養されるが、ヒドロゲルカプセルが破裂するほど長い期間にわたって培養されない。HSPCの最も一般的なex vivo細胞培養条件下で、これは、典型的に約14日であるが、さほど典型的でない培地または細胞培養条件が使用された場合、この期間は、短縮または延長され得る。
【0096】
封入HSPCを培養するための例示的な培養条件としては、次のヒト成長因子が補充された無血清の培養培地での7~14日または7~15日間の細胞培養が挙げられる:幹細胞因子、Flt3-リガンド、トロンボポエチン、インターロイキン-6およびインターロイキン-3。好ましくは、前述の成長因子は、次の濃度で存在する:50~300ng/mlの幹細胞因子、50~300ng/mlのFlt3-リガンド、50~100ng/mlのトロンボポエチン、50~100ng/mlのインターロイキン-6、および10~50ng/mlのインターロイキン-3。さらに特定の実施形態では、300ng/mlの幹細胞因子、300ng/mlのFlt3-リガンド、100ng/mlのトロンボポエチン、100ng/mlのインターロイキン-6および10ng/mlのインターロイキン-3、または50ng/mlの幹細胞因子、50ng/mlのFlt3-リガンド、50ng/mlのトロンボポエチン、50ng/mlのインターロイキン-6および10ng/mlのインターロイキン-3が、使用される。別の好ましい実施形態では、培養培地(例えば、STEMSPAN(商標)Serum Free Expansion Medium(StemCell Technologies、Vancouver、British Columbia))は、10ng/mlの組換えヒトインターロイキン-3(rhIL-3)、50ng/mlの組換えヒトインターロイキン-6(rhIL-6)、50ng/mlの組換えヒトトロンボポエチン(rhTPO)、50ng/mlの組換えヒトFlt3-リガンド(rhFlt3-L)、および50ng/mlの組換えヒト幹細胞因子(rhSCF)を含有するか、またはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、培養培地(例えば、StemSpan Serum Free Expansion Medium II(SFEM II、StemCell Technologies、Vancouver、British Columbia))は、組換えヒトrhSCF、rhFlt3-L、rhTPO、rhIL-6(各々50ng/mlの最終濃度で)およびrhIL-3(10ng/mlの最終濃度で)を含有するか、またはそれらからなる。
【0097】
一部の実施形態では、Notchリガンドは、培養システムに含まれている。一部の実施形態では、Notchリガンドは、ヒドロゲル(例えば、アルギネート-ポリリシンヒドロゲル)に結合している。一部の実施形態では、Notchリガンドは、DXI(Delta1ext-IgG)であり、培養は、本明細書に記載の通りに行われ、Delta1ext-IgG(DXI)がヒドロゲルに結合している。一部の実施形態では、Notchリガンドが使用され、アルギネート-ポリリシンヒドロゲルに結合しており、この場合、Notchリガンドは、Notch 1および/またはNotch 2受容体特異的抗体であり(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、公開された米国特許出願公開第2017/0107493号を参照されたい)、培養は、本明細書に記載の通りに行われる:Notch 1および/またはNotch 2受容体特異的抗体は、ヒドロゲルに結合している。好ましくは、培養培地(例えば、STEMSPAN(商標)Serum Free Expansion MediumまたはSTEMSPAN Serum Free Expansion Medium II(StemCell Technologies、Vancouver、British Columbia))には、10ng/mlの組換えヒトインターロイキン-3(rhIL-3)、50ng/mlの組換えヒトインターロイキン-6(rhIL-6)、50ng/mlの組合せヒトトロンボポエチン(rhTPO)、50ng/mlの組換えヒトFlt3-リガンド(rhFlt3-L)、および50ng/mlの組換えヒト幹細胞因子(rhSCF)が補充される。
【0098】
一部の実施形態では、培養培地は、rhIL-3、rhIL-6、rhTPO、rhFlt3-LおよびrhSCF以外の成長因子を含まない。
【0099】
一部の実施形態では、培養培地は、次の添加される成長因子またはサイトカインを含有しない:IL-7、GM-CSF、G-CSF、LIF、MIP-1a、IL-2またはIL-15。一部の実施形態では、培養培地は、米国特許第9,175,266号または米国特許出願公開第2018/0237749号(それら全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているものなどの、アリール炭化水素受容体アンタゴニストを含有しない。
【0100】
造血幹および前駆細胞の培養後、細胞および生存HSPC(例えば、CD34+HSPCまたはCD133+HSPC)の総数を決定することができる。例えば、培養中の14日目に、試料を全生存有核細胞計数値の決定のために採取することができる。加えて、CD34+細胞および/またはCD133+細胞の総数を、マルチパラメータフローサイトメトリーにより決定することができ、したがって、試料中のCD34+細胞および/またはCD133+細胞のパーセンテージを決定することができる。
【0101】
生存率は、当技術分野において公知の任意の方法により、例えば、トリパンブルー排除または7-AAD排除により、決定することができる。生存HSPCのパーセンテージは、フローサイトメトリー、および生存細胞により排除される染色剤の使用によって、評価することができる。生存HSPCのパーセンテージは、アリコートのHSPC(TNC;生存HSPCと非生存HSPCの両方)の総数で割った、試料中のアリコート中の7-AAD(または他の適切な染色剤)を排除するHSPC+細胞の数に等しい。
【0102】
造血幹および前駆細胞の培養後、拡大HSPC中のHSCのパーセンテージを決定することができる。例えば、培養中の14日目に、CD34+細胞がHSPCであり、HSCがCD34+CD38-CD45RA-CD133+CD90+である、試料を、例えばマルチパラメータフローサイトメトリーにより、全HSPCのパーセンテージとしてHSCを判定するために採取することができる。同様に、培養中の14日目に、CD133+細胞がHSPCであり、HSCがCD34+CD38-CD45RA-CD133+CD90+である、試料を、例えばマルチパラメータフローサイトメトリーにより、全HSPCのパーセンテージとしてHSCを判定するために採取することができる。一部の実施形態では、拡大HSPC中のHSCおよびMPPのパーセンテージを決定することができる。例えば、培養中の14日目に、CD34+細胞がHSPCであり、HSCがCD34+CD38-CD45RA-CD133+CD90+であり、MPPがCD34+CD38-CD45RA-CD133+CD90-である、試料を、例えばマルチパラメータフローサイトメトリーにより、全HSPCのパーセンテージとしてHSCおよびMPPを判定するために採取することができる。同様に、培養中の14日目に、CD133+細胞がHSPCであり、HSCがCD34+CD38-CD45RA-CD133+CD90+であり、MPPがCD34+CD38-CD45RA-CD133+CD90-である、試料を、例えばマルチパラメータフローサイトメトリーにより、全HSPCのパーセンテージとしてHSCおよびMPPを判定するために採取することができる。
Notchリガンド
【0103】
NotchアゴニストまたはNotchリガンドとも呼ばれる、Notch機能のアゴニストは、Notch経路機能の活性化を促進する、すなわち、引き起こすまたは増加させる、作用物質である。本明細書で使用される場合、「Notch機能」は、Notchの細胞内ドメインの核移行、RBP-JκまたはそのDrosophilaのホモログであるSuppressor of Hairlessの核移行;Enhancer of Split複合体のbHLH遺伝子、例えばMastermindの活性化;HES-1遺伝子またはKBF2(CBF1とも呼ばれる)遺伝子の活性化;Drosophila神経芽細胞分離の阻害;およびNotchのDelta、Jagged/Serrate、Fringe、DeltexもしくはRBP-Jκ/Suppressor of Hairlessまたはこれらのホモログもしくはアナログへの結合を含むがそれらに限定されない、Notchシグナル伝達(signaling)(シグナル伝達(signal transduction))経路により媒介される機能を意味する。Notchシグナル伝達経路、および活性化によるその効果についてはKopan et al., Cell 137:216-233, 2009による総説を参照されたい。またJarriault et al., Mol. Cell. Biol. 18:7423-7431, 1998も参照されたい。
【0104】
例示的なNotchアゴニストは、Notchの細胞外ドメインに結合し、Notchシグナル伝達を活性化する、細胞外結合リガンドDeltaおよびSerrate、またはNotchの細胞外ドメインに結合し、Notchシグナル伝達を活性化する、DeltaもしくはSerrateの断片である。ヒトをはじめとする幾つかの種から単離されたDeltaおよびSerrateの核酸およびアミノ酸配列は、当技術分野において公知であり、国際特許公開番号WO93/12141、WO96/27610、WO97/01571、およびGray et al., Am. J. Path. 154:785-794, 1999において開示されている。
【0105】
好ましい実施形態では、Notchアゴニストは、mycエピトープタグに融合したタンパク質の細胞外ドメインからなるDeltaもしくはSerrateタンパク質の活性断片(それぞれ、Deltaext-mycもしくはSerrateext-myc)、またはIgGのFc部分に融合したタンパク質の細胞外ドメインからなるDeltaもしくはSerrateタンパク質の活性断片(それぞれ、Deltaext-IgGもしくはSerrateext-IgG)である。Notchアゴニストとしては、Notchタンパク質ならびにこれらのアナログおよび誘導体(断片を含む);Notch経路の他のエレメントであるタンパク質ならびにこれらのアナログおよび誘導体(断片を含む);それらに対する抗体ならびにそれらの結合領域を含有するそのような抗体の断片または他の誘導体;それらのタンパク質および誘導体またはアナログをコードする核酸;ならびにNotch経路活性を促進するようにNotchタンパク質とまたはNotch経路内の他のタンパク質と結合するかまたは別様に相互作用する、タンパク質ならびにこれらの誘導体およびアナログが挙げられるが、それらに限定されない。そのようなアゴニストとしては、細胞内ドメインを含むNotchタンパク質およびこれらの誘導体;前述のものをコードするNotch核酸;ならびにNotchリガンドのNotch相互作用ドメイン(例えば、DeltaまたはSerrateの細胞外ドメイン)を含むタンパク質が挙げられるが、それらに限定されない。他のアゴニストとしては、RBPJκ/Suppressor of HairlessまたはDeltexが挙げられるが、これらに限定されない。Fringeを、例えばDeltaタンパク質と併用して、Notch活性化を増強することができる。これらのタンパク質、それらの断片および誘導体を、組換え発現させて単離することができ、または化学的に合成することができる。
【0106】
Notchのアゴニストはまた、Notchシグナル伝達経路のメンバーに結合する、ペプチド模倣物またはペプチドアナログまたは有機分子であり得る。そのようなアゴニストは、当技術分野において公知のものから選択される結合アッセイ、例えば、Rebay et al., Cell 67:687-699, 1991および国際特許公開番号WO92/19734(両方とも、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている細胞凝集アッセイによって、同定することができる。
【0107】
Notchアゴニストは、Notchタンパク質へのまたはNotchの断片への結合を媒介するNotch相互作用遺伝子によりコードされたタンパク質の断片であって、アゴニストタンパク質への結合に関与するNotchの領域、例えば、Notchの上皮成長因子様リピート11および12、を含有するNotchの断片から少なくともなる、タンパク質である。Notch相互作用遺伝子は、本明細書で使用される場合、遺伝子Notch、Delta、Serrate、RBPJκ、Suppressor of Hairless、およびDeltex、ならびに配列相同性または遺伝子相互作用に基づいて同定され得る、Delta/SerrateファミリーまたはDeltexファミリーの他のメンバー、より一般的には、分子相互作用(例えば、in vitroでの結合、または遺伝子相互作用(例えば、Drosophilaにおいて、表現型として示されるような)により同定される遺伝子の「Notchカスケード」または「Notch群」のメンバーを意味するものとする。Notchへの結合に関与する領域を含有するNotch結合タンパク質の例示的な断片は、米国特許第5,648,464号、同第5,849,869号および同第5,856,441号(全て、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。Artavanis-Tsakonasらの米国特許第5,780,300号(参照により本明細書に組み込まれる)には、Notchアゴニストが、Notchの活性化またはNotchシグナル伝達経路のメンバーの活性化に必要とされる成熟またはプロセシングステップを媒介する細胞プロセスを促進または活性化する試薬、例えば、Notchプロセシングに必要とされるフューリン様転換酵素;Notchの上流でもしくはNotchに平行してNotch経路の活性化に必要とされると考えられているメタロプロテアーゼ-ディスインテグリン(ADAM)である、Kuzbanian(Schlondorff and Blobel, J. Cell Sci. 112:3603-3617, 1999);または、より一般的には、細胞輸送およびプロセシングタンパク質、例えば、細胞コンパートメント間の移動に必要とされるGTPaseのrabファミリー(Rab GTPaseに関する概説については、Olkkonen and Stenmark, Int. Rev. Cytol. 176:1-85, 1997を参照されたい)を含むことが記載されている。アゴニストは、上記プロセスのうちの1つの活性を増加させる任意の分子、例えば、フューリン、Kuzbanianもしくはrabタンパク質をコードする核酸、またはその断片もしくは誘導体もしくはドミナントアクティブ変異体、あるいは上記タンパク質に結合し、その機能を活性化する、ペプチド模倣物またはペプチドアナログまたは有機分子であり得る。
【0108】
米国特許第5,780,300号には、Notch経路を活性化するために使用され得るクラスのNotchアゴニスト分子(およびそれらの同定方法)、例えば、NotchアンキリンリピートとRBP-Jκの解離を誘発することによって細胞質から核へのRBP-Jκの移行を促進する分子が、さらに開示されている。
【0109】
一部の実施形態では、DXIが使用される。NotchアゴニストDXIは、米国特許第7,399,633号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているような、IgGのFc部分に融合したタンパク質の細胞外ドメインからなるDelta1の固定化断片(Delta1ext-IgGもしくはDXI)、または米国特許第10,208,286号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているような、固定化Notch-1もしくはNotch-2特異的抗体である。好ましくは、Delta1ext-IgGは、細胞培養皿の表面に固定化される。
ヒドロゲルからの拡大HSPCの放出
【0110】
培養HSPCを、キレート剤の存在下で解重合され得るヒドロゲル(例えば、アルギネート/ポリリシンヒドロゲルまたはアルギネートヒドロゲル)から、放出することができる。例えば、クエン酸ナトリウムまたはEDTAなどのキレート剤を使用して、ヒドロゲルの解重合を誘導することができる。
遺伝子操作されたHSPC
【0111】
HSPCを、培養ステップ前、中または後にタンパク質、核酸または炭水化物などの目的の分子(単数または複数)を発現するように、遺伝子操作することができる。HSPCを、タンパク質、核酸または炭水化物などの目的の分子(単数または複数)の発現を低減または消失させるように、遺伝子操作することができる。HSPCを、培養ステップ前、中または後に遺伝子操作することができる。
【0112】
一部の実施形態では、HSPCは、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチド(まとめてタンパク質と呼ばれる)などの、目的のタンパク質を発現するように遺伝子操作される。一部の実施形態では、HSPCは、遺伝子の通常(例えば、野生型)バージョンを発現するように遺伝子操作される。一部の実施形態では、HSPCは、内在性遺伝子の変更バージョン(例えば、変異タンパク質をコードする遺伝子)を発現するように遺伝子操作される。
【0113】
一部の実施形態では、HSPCは、異種タンパク質を発現するように遺伝子操作される。本明細書で使用される場合、異種タンパク質は、HSPCによって通常は発現されないタンパク質である。本明細書で使用される場合、異種タンパク質は、HSPCに由来する細胞によって通常は発現されないタンパク質である。一部の実施形態では、異種タンパク質は、抗体認識受容体である。
【0114】
HSPC集団を培養前または中または後に遺伝子改変することができる。一部の実施形態では、HSPCは、培養中に遺伝子操作される。一部の実施形態では、HSPCは、培養後に遺伝子操作される。一部の実施形態では、HSPCは、培養前に遺伝子操作される。一部の実施形態では、HSPCは、富化中または後に遺伝子操作される。一部の実施形態では、HSPCは、富化後に遺伝子改変される。
【0115】
一例として、遺伝される状態に対する治療利益を提供するために遺伝子改変を選択することができる。一部の実施形態では、状態は、グレーブス病、関節リウマチ(RA)、悪性貧血、多発性硬化症(MS)、炎症性腸疾患(IBD)、全身性エリテマトーデス(SLE)、アデノシンデアミナーゼ欠損症(ADA-SCID)もしくは重症複合免疫不全症(SCID)、ウィスコット・アルドリッチ症候群(WAS)、慢性肉芽腫症(CGD)、ファンコニ貧血(FA)、バッテン病、副腎白質ジストロフィー(ALD)もしくは異染性白質ジストロフィー(MLD)、筋ジストロフィー(MD)、肺胞タンパク症(pulmonary aveolar proteinosis)(PAP)、ピルビン酸キナーゼ欠損症、シュワッハマン(Shwachmann)-ダイアモンド-ブラックファン貧血、先天性角化異常症、嚢胞性線維症(CF)、パーキンソン病、アルツハイマー病、または筋萎縮性側索硬化症(ルー・ゲーリック病)であり得る。一部の実施形態では、状態に依存して、遺伝子改変は、タンパク質をコードする治療遺伝子および/または機能が妨げられている遺伝子の導入であり得る。例示的な治療遺伝子および遺伝子産物としては、可溶性CD40;CTLA;Fas L;CD4、CD5、CD7、CD52などに対する抗体;IL-1、IL-2、IL-6に対する抗体;IL-4;IL-10;IL-12;IL-13;IL-1Rアルファ、sIL-1RI、sIL-1RII;sTNFR-I;sTNFR-II;TNFに対する抗体;p53、PTPN22、およびDRB1*1501/DQB1*0602;グロビンファミリー遺伝子;WAS;phox;FANCファミリー遺伝子;ジストロフィン;ピルビン酸キナーゼ;CLN3;ABCD1;アリールスルファターゼA;SFTPB;SFTPC;NLX2.1;ABCA3;GATA1;リボソームタンパク質遺伝子;TERT;TERC;DKC1;TINF2;CFTR;LRRK2;PARK2;PARK7;PINK1;SNCA;PSEN1;PSEN2;APP;SOD1;TDP43;FUS;ユビキリン2;ならびに/またはC9ORF72が、挙げられる。
【0116】
別の例として、遺伝子改変は、赤血球および凝固(clotting)に関連する疾患に対する治療的に有効な応答を提供するために選択された治療遺伝子の導入であり得る。一部の実施形態では、疾患は、サラセミア、または鎌状赤血球症/形質のような、ヘモグロビン異常症である。治療遺伝子は、例えば、ヘモグロビンの産生を誘導するもしくは増加させる遺伝子;ベータ-グロビンもしくはアルファ-グロビンの産生を誘導するもしくは増加させる遺伝子;または体内の細胞への酸素の利用可能性を増加させる遺伝子であり得る。治療遺伝子は、例えば、HBBまたはCYB5R3であり得る。例示的な有効な処置は、例えば、血液細胞計数値を増加させることができ、血液細胞の機能を改善することができ、または患者の細胞の酸素化を増加させることができる。別の特定の実施形態では、疾患は、血友病である。治療遺伝子は、例えば、凝固/凝固因子VIIIもしくは凝固/凝固因子IXの産生を増加させ、凝固因子VIIIもしくは凝固因子IXの通常バージョンの産生を生じさせる遺伝子、凝固/凝固因子VIIIもしくは凝固/凝固因子IXに対する抗体の産生を低減させる遺伝子、または血餅の適切な形成を生じさせる遺伝子であり得る。例示的な治療遺伝子としては、F8およびF9が挙げられる。例示的な有効な処置は、例えば、凝固/凝固因子VIIIおよびIXの産生を増加もしくは誘導することができ、凝固/凝固因子VIIIおよびIXの機能を改善することができ、または対象における凝固時間を短縮することができる。
【0117】
別の例として、遺伝子改変は、リソソーム蓄積障害に対する治療的に有効な応答を提供するための治療遺伝子の導入であり得る。特定の実施形態では、リソソーム蓄積障害は、ムコ多糖症(MPS)I型;MPS II型またはハンター症候群;MPS IIIまたはサンフィリポ症候群;MPS IVまたはモルキオ症候群;MPS V;MPS VIまたはマロトー・ラミー症候群;MPS VIIまたはスライ症候群;アルファ-マンノシドーシス;ベータ-マンノシドーシス;GSDI、フォン・ギールケ病またはテイ・サックスとしても公知の、糖原病I型;ポンペ病;ゴーシェ病;ファブリー病である。治療遺伝子は、例えば、酵素をコードする、またはその産生を誘導する、またはリソソームにおいてムコ多糖の分解を別様に引き起こす、遺伝子であり得る。例示的な治療用遺伝子としては、IDUAまたはイズロニダーゼ、IDS、GNS、HGSNAT、SGSH、NAGLU、GUSB、GALNS、GLB1、ARSB、およびHYAL1が挙げられる。リソソーム蓄積障害のための例示的な有効な遺伝子治療は、例えば、リソソーム内の様々な物質の分解に関与する酵素をコードすること、またはそのような酵素の産生を誘導することができ;頭部(巨頭症(Macrosephaly)を除く)、肝臓、脾臓、舌または声帯をはじめとする様々な器官の腫脹を軽減すること、消失させること、予防することまたは遅延させることができ;脳内の流体を低減させることができ;心臓弁の異常を軽減することができ;気道の狭窄を予防することまたは拡張させること、ならびに感染症および睡眠時無呼吸のような関連する上気道の状態を予防することができ;ニューロンの破壊および/または随伴症状を軽減すること、消失させること、予防することまたは遅延させることができる。
【0118】
別の例として、遺伝子改変は、過剰増殖性疾患に対する治療的に有効な応答を提供するための治療遺伝子の導入であり得る。特定の実施形態では、過剰増殖性疾患はがんである。治療遺伝子は、例えば、腫瘍抑制遺伝子、アポトーシスを誘導する遺伝子、酵素をコードする遺伝子、抗体をコードする遺伝子、またはホルモンをコードする遺伝子であり得る。例示的な治療遺伝子および遺伝子産物としては、101F6、123F2(RASSF1)、53BP2、abl、ABLI、ADP、aFGF、APC、ApoAI、ApoAIV、ApoE、ATM、BAI-1、BDNF、Beta*(BLU)、bFGF、BLC1、BLC6、BRCA1、BRCA2、CBFA1、CBL、C-CAM、CFTR、CNTF、COX-1、CSFIR、CTS-1、シトシンデアミナーゼ、DBCCR-1、DCC、Dp、DPC-4、E1A、E2F、EBRB2、erb、ERBA、ERBB、ETS1、ETS2、ETV6、Fab、FCC、FGF、FGR、FHIT、fms、FOX、FUS 1、FUS1、FYN、G-CSF、GDAIF、Gene 21(NPRL2)、Gene 26(CACNA2D2)、GM-CSF、GMF、gsp、HCR、HIC-1、HRAS、hst、IGF、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11 IL-12、ING1、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、IRF-1、JUN、KRAS、LCK、LUCA-1(HYAL1)、LUCA-2(HYAL2)、LYN、MADH4、MADR2、MCC、mda7、MDM2、MEN-I、MEN-II、MLL、MMAC1、MYB、MYC、MYCL1、MYCN、neu、NF-1、NF-2、NGF、NOEY1、NOEY2、NRAS、NT3、NT5、OVCA1、p16、p21、p27、p53、p57、p73、p300、PGS、PIM1、PL6、PML、PTEN、raf、Rap1A、ras、Rb、RB1、RET、rks-3、ScFv、scFV ras、SEM A3、SRC、TALI、TCL3、TFPI、トロンボスポンジン、チミジンキナーゼ、TNF、TP53、trk、T-VEC、VEGF、VHL、WT1、WT-1、YES、およびzac1が挙げられる。例示的な有効な遺伝子治療は、腫瘍を抑制することもしくは消失させることができ、がん細胞の数の減少をもたらすことができ、腫瘍サイズを低減させることができ、腫瘍成長を緩徐化することもしくは消失させることができ、または腫瘍によって引き起こされる症状を軽減することなどができる。
【0119】
別の例として、遺伝子改変は、感染性疾患に対する治療的に有効な応答を提供するために選択される治療遺伝子の導入であり得る。特定の実施形態では、感染性疾患は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)である。治療遺伝子は、例えば、免疫細胞をHIV感染に対して耐性にする遺伝子、または免疫再構築によって免疫細胞がウイルスを有効に中和できるようにする遺伝子、免疫細胞により発現されるタンパク質をコードする遺伝子の多形、患者において発現されない感染と闘うのに有利な遺伝子、感染性因子、受容体もしくは共受容体をコードする遺伝子;受容体または共受容体のリガンドをコードする遺伝子;ある特定の転写因子の作用を遮断するためのリボザイム、アンチセンスRNA、低分子干渉RNA(siRNA)またはデコイRNAをコードする遺伝子を含む、ウイルス複製に不可欠なウイルスおよび細胞遺伝子;ドミナントネガティブウイルスタンパク質、細胞内抗体、イントラカインおよび自殺遺伝子をコードする遺伝子であり得る。例示的な治療遺伝子および遺伝子産物としては、アルファ2ベータ1;アルファvベータ3;アルファvベータ5;アルファvベータ6;BOB/GPR15;Bonzo/STRL-33/TYMSTR;CCR2;CCR3;CCR5;CCR8;CD4;CD46;CD55;CXCR4;アミノペプチダーゼ-N;HHV-7;ICAM;ICAM-1;PRR2/HveB;HveA;アルファ-ジストログリカン;LDLR/アルファ2MR/LRP;PVR;PRR1/HveC;およびラミニン受容体が挙げられる。HIVの処置のための治療有効量は、例えば、HIVに対する対象の免疫を高めることができ、AIDSもしくはHIVに随伴する症状を改善することができ、またはHIVに対する対象の自然もしくは適応免疫応答を誘導することができる。HIVに対する免疫応答は、抗体産生を含むことができ、AIDSの予防をもたらすことができ、ならびに/または対象のAIDSもしくはHIV感染の症状を改善することができ、またはHIVの感染力および/もしくは毒性を減少もしくは消失させるこができる。
【0120】
一部の実施形態では、HSPCを、目的の抗原に結合する異種抗原認識受容体を発現するように遺伝子操作することができる。ある特定の実施形態では、抗原認識受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)である。ある特定の実施形態では、抗原認識受容体は、T細胞受容体(TCR)である。抗原認識受容体は、腫瘍抗原または病原体抗原に結合することができる。
【0121】
一部の実施形態では、抗原認識受容体は、腫瘍抗原、例えば、炭酸脱水酵素IX(CA1X)、癌胎児性抗原(CEA)、CD8、CD7、CD10、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CLL1、CD34、CD38、CD41、CD44、CD49c、CD49f、CD56、CD66c、CD73、CD74、CD104、CD133、CD138、CD123、CD142、CD44V6、サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞の抗原(例えば、細胞表面抗原)、皮膚リンパ球関連抗原(CLA;P-セレクチン糖タンパク質リガンド-1(PSGL-1)の特殊なグリコフォーム)、上皮糖タンパク質-2(EGP-2)、上皮糖タンパク質-40(EGP-40)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、受容体チロシン-プロテインキナーゼerb-B 2、3、4(erb-B2、3、4)、葉酸結合タンパク質(FBP)、胎児型アセチルコリン受容体(AChR)、葉酸受容体-アルファ、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2(IL-13R-アルファ2)、カッパ-軽鎖、キナーゼ挿入ドメイン受容体(KDR)、Lewis Y(LeY)、L1細胞接着分子(L1CAM)、黒色腫抗原ファミリーA、1(MAGE-A1)、ムチン16(MUC16)、ムチン1(MUC1)、メソテリン(MSLN)、ERBB2、MAGEA3、p53、MART1、GP100、プロテイナーゼ3(PR1)、チロシナーゼ、サバイビン、hTERT、EphA2、NKG2Dリガンド、がん-精巣抗原NY-ES0-1、癌胎児抗原(h5T4)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、ROR1、テトラスパニン8(TSPAN8)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG-72)、血管内皮成長因子R2(VEGF-R2)、ウィルムス腫瘍タンパク質(WT-1)、サイトカイン受容体様因子2(CRLF2)、BCMA、GPC3、NKCS1、EGF1R、EGFR-VIII、またはERBBに結合する。
【0122】
HSPCを任意の適する技法によって遺伝子改変することができる。遺伝子改変HSPCを調製する方法は、一般に、HSPCにポリヌクレオチド(複数可)を導入するステップを含む。所望の分子をコードするポリヌクレオチド(複数可)を、培養前、中または後にHSPCに導入することができる。所望のポリヌクレオチド含有遺伝子を、トランスフェクション、電気穿孔、マイクロインジェクション、リポフェクション、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション、遺伝子配列を含有するウイルスまたはバクテリオファージベクター(例えば、レンチウイルスなどのレトロウイルス)による感染、細胞融合、染色体媒介遺伝子移入、微小核細胞融合法、スフェロプラスト融合、CRISPRまたは他の稀切断エンドヌクレアーゼ(例えば、TALE-ヌクレアーゼもしくはCas9エンドヌクレアーゼ)の使用、ジンクフィンガー技術などを含む、当技術分野において公知の任意の方法によって、HSPCに導入することができる。細胞への外来遺伝子の導入のための非常に多くの技法が公知であり(例えば、Loeffler and Behr, Meth. Enzymol. 217:599-618, 1993; Cohen et al., Meth. Enzymol. 217:618-644, 1993; Cline, Pharmac. Ther. 29:69-92, 1985(全て、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)、レシピエント細胞の必須生理的機能が破壊されないことを条件に、そのような技法を使用することができる。技法は、遺伝子が、必要に応じて細胞により発現され、好ましくは、遺伝性であり、その細胞の子孫により発現可能であるような、細胞への遺伝子の安定した移入をもたらすはずである。一部の実施形態では、移入の方法は、選択可能なマーカーまたはタグ配列の細胞への移入を含む。その場合、細胞は選択下に置かれて、移入された遺伝子を取り込んで発現している細胞が単離される。好ましい実施形態では、ポリヌクレオチド(複数可)または遺伝子は、細胞において安定的に発現されることを考慮してレンチウイルスベクターに含められる。
HSPCの凍結保存
【0123】
HSPC集団を凍結保存することができる。典型的には、HSPCは、封入からの除去後に放出される。用語「凍結された/凍結する(こと)」および「凍結保存された/凍結保存する(こと)」は、本願では同義で使用される。凍結保存は、細胞を生存可能な形態で保存する、当技術分野において公知の任意の方法であり得る。細胞の凍結は、通常は破壊的である。冷却すると、細胞内の水が凍結する。その結果、細胞膜に対する浸透圧効果、細胞脱水、溶質濃縮、および氷晶形成によって傷害が生じる。氷は細胞の外側に形成するので、利用可能な水が溶液から除去され、細胞から抜き取られ、それに起因して浸透圧脱水および溶質濃度の上昇が生じ、最終的に細胞を破壊する。論考については、Mazur, Cryobiology 14:251-272, 1977を参照されたい。
【0124】
これらの有害作用は、(a)凍結防止剤の使用、(b)凍結速度の制御、および(c)分解反応を最小限に抑えることができる十分低い温度での保管によって、回避することができる。
【0125】
使用することができる凍結防止剤としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)(Lovelock and Bishop, Nature 183:1394-1395, 1959; Ashwood-Smith, Nature 190:1204-1205. 1961)、グリセロール、ポリビニル/ピロリジン(Rinfret, Ann. N.Y. Acad. Sci. 85:576, 1960)、ポリエチレングリコール(Sloviter and Ravdin, Nature 196:548, 1962)、アルブミン、デキストラン、スクロース、エチレングリコール、i-エリトリトール、D-リビトール、D-マンニトール(Rowe et al., Fed. Proc. 21:157, 1962)、D-ソルビトール、i-イノシトール、D-ラクトース、塩化コリン(Bender et al., J. Appl. Physiol. 15:520, 1960)、アミノ酸(Phan The Tran and Bender, Exp. Cell Res. 20:651, 1960)、メタノール、アセトアミド、グリセロールモノアセテート(Lovelock, Biochem. J. 56:265, 1954)、無機塩(Phan The Tran and Bender, Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 104:388, 1960;Phan The Tran and Bender, in Radiobiology, Proceedings of the Third Australian Conference on Radiobiology, Ilbery ed., Butterworth, London, p. 59, 1961)、およびCryoStor(商標)CS5またはCS10(BioLife Solutions Inc.、Bothell、WA)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、DMSOが使用され、この液体は、低濃度で細胞に対して非毒性である。一部の実施形態では、血漿(例えば、20~25%の濃度まで)の添加は、DMSOの保護効果を増大させることができる。一部の実施形態では、ヒト血清アルブミン(例えば、2~10%の濃度まで)の添加は、DMSOの保護効果を増大させることができる。DMSOの添加後は、細胞を凍結するまで0℃で保持するべきである。約1%のDMSO濃度は、4℃より上の温度では毒性であるからである。
【0126】
別の例は、20%DMSOおよび8%ヒト血清アルブミン(HSA)、または他の適する細胞凍結培地を含有するPBSの使用を含む。その際、これは、DMSOおよびHSAの最終濃度がそれぞれ10%および4%になるように、培地で1:1希釈される。次いで、細胞は、毎分1°の速度で-80℃へと凍結され、液体窒素保管タンクの蒸気相内で保管される。
【0127】
制御された緩徐な冷却速度が重要であり得る。異なる凍結防止剤(Rapatz et al., Cryobiology 5(1):18-25, 1968)および異なる細胞型は、異なる最適冷却速度を有する(例えば、骨髄幹細胞の生存に対するおよびそれらの移植可能性に対する冷却速度の影響については、Rowe and Rinfret, Blood 20:636, 1962; Rowe, Cryobiology 3(1):12-18, 1966;Lewis, et al., Transfusion 7(1):17-32, 1967;およびMazur, Science 168:939-949, 1970を参照されたい)。水が氷に変わる融解相の熱を最小限に抑えるべきである。冷却手順は、例えば、プログラム可能な凍結デバイスまたはメタノール浴手順の使用により、行うことができる。
【0128】
プログラム可能な凍結装置は、最適な冷却速度の決定を可能にし、標準的な再現性のある冷却を容易にする。プログラム可能な速度制御されたフリーザー、例えば、CryomedまたはPlanarは、凍結レジメンを所望の冷却速度曲線に合わせることを可能にする。例えば、10%DMSOおよび20%血漿中の骨髄細胞について、最適な速度は、0℃から-80℃まで1°~3℃/分である。好ましい実施形態では、この冷却速度を使用することができる。細胞を保持する容器は、極低温度で安定していなければならず、凍結および解凍の両方の有効な制御のための迅速な熱伝達が可能ならしめなければならない。密封プラスチックバイアル(例えば、Nunc、Wheaton(商標)Cryule(商標)アンプル)またはガラスアンプルを複数の少量(1~2ml)またはより大量(例えば、5~30ml)のために使用することができ、その一方で、より大きい体積(20~200ml)を、冷却中のより良好な熱伝達のために金属プレートの間に保持されたポリオレフィンバッグまたはエチレン酢酸ビニルフリーザーバッグ(例えば、OriGen)の中で凍結させることができる。例として、骨髄細胞のバッグは、-80℃のフリーザー内にそれらを置くことによって偶然にもおおよそ3℃/分の冷却速度がもたらされることにより、首尾よく凍結された。
【0129】
代替実施形態では、メタノール浴で冷却する方法を使用することができる。メタノール浴法は、大規模な複数の小さいアイテムの通例の凍結保存によく適している。この方法は、凍結速度の手動制御を必要とせず、速度をモニターするためのレコーダーも必要としない。好ましい実施形態では、DMSO処理細胞は、氷上で予冷され、冷却されたメタノールが入っているトレーに移され、次にそのトレーが-80℃の機械式冷蔵庫(例えば、HarrisまたはRevco)内に置かれる。メタノール浴および試料の熱電対測定は、1°~3℃/分の望ましい冷却速度を示す。少なくとも2時間後、検体は、-80℃の温度に達しており、それらを永久保管のために液体窒素(-196℃)に直接入れることができる。
【0130】
完全な凍結の後、HSPC集団を長期冷凍保管容器に迅速に移すことができる。好ましい実施形態では、試料を液体窒素(-196℃)またはその蒸気(-165℃)内で極低温保管することができる。別の好ましい実施形態では、試料を液体窒素蒸気相(例えば、-130℃)内で冷凍保管することができる。そのような保管は、熱漏れおよび窒素喪失が絶対最小限に抑えられるように、極低真空かつ内部超断熱性である大型の魔法瓶容器に似ている高効率液体窒素冷蔵庫を使用できることによって、大いに助長される。
【0131】
適するラッキングシステムが市販されており、それらを個々の検体のカタログ作成、保管および取出しに使用することができる。
【0132】
生存細胞の他の凍結保存方法またはそれらの改良版を利用することができ、使用が想定される(例えば、コールドメタルミラー技法;Livesey and Linner, Nature 327:255, 1987;Linner et al., J. Histochem. Cytochem. 34(9):1123-1135, 1986;またSenkanらによる米国特許第4,199,022号、Schwartzによる米国特許第3,753,357号、Fahyによる米国特許第4,559,298号も参照されたい)。
【0133】
凍結保存細胞または凍結細胞は、好ましくは迅速に(例えば、37°~41℃で維持された水浴内で)解凍され、解凍し次第、冷却される。特定の実施形態では、凍結細胞が入っているバイアルをその首まで温水浴に浸漬することができ、穏やかな回転によって、細胞懸濁液は、それが解凍して温水から内部の氷の塊への熱伝達が増加するので、確実に混合されることになる。氷が完全に融解し次第、直ちにバイアルを氷中に置くことができる。
【0134】
ある実施形態では、凍結保存HSPC集団は解凍され、またはその一部分を、それを必要とするヒト患者に注入することができ、もしくは他の細胞型を生成するために使用することができる。解凍された細胞の処理に関する幾つかの手順が利用可能であり、望ましいとみなされる場合にはそのような手順を用いることができる。
【0135】
解凍の際の細胞の凝集を防止するために細胞を処理することが望ましいこともある。凝集を防止するために、凍結前および/または後のDNaseの添加(Spitzer et al., Cancer 45:3075-3085, 1980)、低分子量デキストランおよびクエン酸塩、ヒドロキシエチルデンプン(Stiff et al., Cryobiology 20:17-24, 1983)などを含むがこれらに限定されない、様々な手順を使用することができる。
【0136】
凍結防止剤は、ヒトにおいて毒性である場合、凍結HSPC集団の治療上の使用の前に除去すべきである。凍結保存剤としてDMSOを用いる実施形態では、細胞の損失を回避するためにこのステップを割愛することが好ましい。しかし、凍結防止剤の除去が所望される場合、除去は、好ましくは、解凍の際に遂行される。
【0137】
凍結防止剤を除去する1つの方法は、わずかな濃度への希釈による方法である。この希釈は、培地の添加、続いて、必要に応じて、細胞をペレット化するための1または複数の遠心分離サイクル、上清の除去、および細胞の再懸濁によって遂行することができる。例えば、解凍された細胞中の細胞内DMSOを、回収された細胞に悪影響を及ぼさないレベル(1%未満)に低下させることができる。この低下は、DMSO除去中に生じる、潜在的に損傷を与える浸透圧勾配を最小限に抑えるために好ましくは緩徐に行われる。
【0138】
凍結防止剤の除去後、細胞計数(例えば、血球計の使用による)および生存率試験(例えば、トリパンブルー排除による;Kuchler, in Biochemical Methods in Cell Culture and Virology, Dowden, Hutchinson & Ross, Stroudsburg, Pa., pp. 18-19, 1977;Methods in Medical Research, Eisen et al., eds., Vol. 10, Year Book Medical Publishers, Inc., Chicago, pp. 39-47, 1964)を行って、細胞生存を確認することができる。抗原(例えば、CD56)陽性の生存細胞のパーセンテージは、細胞のアリコート内の7-AAD(または生存細胞により排除される他の適する色素)を排除する抗原陽性細胞の数を計算し、細胞のアリコート内の有核細胞(TNC)(生存細胞と非生存細胞の両方)の総数で割ることによって決定することができる。次いで、抗原陽性の生存細胞の数を、抗原陽性の生存細胞のパーセンテージにTNCを掛けることによって決定することができる。
【0139】
凍結保存前および/または解凍後に、有核細胞の総数、または特定の実施形態では、CD34+および/もしくはCD133+細胞の総数を、決定することができる。例えば、全有核細胞計数は、血球計の使用およびトリパンブルー色素の排除によって行うことができる。細胞充実度が高い検体は、手作業での計数に適切な濃度範囲に希釈することができる。産物の最終細胞計数値は、任意の希釈倍率について補正される。総有核細胞計数値=(mL当たりの生存有核細胞)×(mlでの産物の体積)。試料中のCD34+陽性細胞の数は、例えば、蛍光色素とコンジュゲートした抗CD34モノクローナル抗体を使用するフローサイトメトリーの使用により、決定することができる。同様に、試料中のCD133+陽性細胞の数は、例えば、蛍光色素とコンジュゲートした抗CD133モノクローナル抗体を使用するフローサイトメトリーの使用により、決定することができる。
【実施例】
【0140】
(実施例1)
封入HSPC集団の生成
以下の実施例は、封入HSPC集団の調製を説明する。
【0141】
必要とした機器:BuchiエンカプスレータB-395 Pro。
必要とした材料:
【0142】
a.アルギン酸Na溶液。1~おおよそ3%(w/v)アルギン酸Na(Novamatrix)滅菌濾過溶液、室温でpH7.0~7.4。アルギン酸Naを細胞と混合し、細胞を封入しているアルギン酸Caビーズを形成した。
【0143】
b1.アルギネート/ポリリシン(ALG/PLL)ヒドロゲルのための硬化(ゲル化)溶液:10mM MOPS(モルホリノプロパンスルホン酸(Morpholinopropanesulfomic acid)、Fisher);100mM CaCl2(二水和物、Sigma)、0.01%~おおよそ0.1%ポリ-L-リシン(PLL、Sigma)、室温でpH7.4。
【0144】
b2.アルギネート(ALG)ヒドロゲルのための硬化(ゲル化)溶液:10mM MOPS;100mM CaCl2(二水和物、Sigma);室温でpH7.4。
【0145】
c.1%~おおよそ3%アルギン酸Na溶液。118mLのMOPS緩衝液中の2mLの1.8%アルギン酸Na溶液。ゲル化溶液がアルギン酸Naと反応して、Ca/PLL-アルギネートダブルネットワークビーズを形成する。
【0146】
d.Ca-可溶化溶液。50mMクエン酸ナトリウム(Sigma);0.45%(w/v)NaClまたは50mM EDTA(Invitrogen)NaCl;10mM MOPS 室温でpH7.4。この溶液は、ビーズ内のアルギン酸Ca網目構造を可溶化して非平衡アルギネートを放出する。
【0147】
e.MOPS(洗浄)緩衝液:10mM MOPS 0.85%(w/v)NaCl(Fisher)。pHを室温で7.4に調整。(MOPS洗浄ステップは、必要に応じたものであり、各生成ステップ後にカプセルを洗浄して未反応成分を除去するために使用する。この緩衝液は、生理条件を維持するのにも役立つ)。
【0148】
f.必要体積:以下の体積を、ヒト細胞を104~107細胞/mLの濃度で含有する12mLのアルギネート-PLLマイクロカプセルを生成する際に必要とした。注記:全ての非滅菌溶液は、カプセル生成中に密閉反応容器に送達されることになる場合、滅菌状態を維持するために0.2μm液体フィルター膜に通した(濾過した)。
【0149】
1. 12mLの1.8%滅菌アルギネート溶液。
2. 250mLの硬化溶液(非滅菌)
3. 1000mLのMOPS洗浄緩衝液(非滅菌)
4. 200mLの可溶化溶液(非滅菌)
【0150】
g.富化CD34+HSPCは、プールされた臍帯血ユニットから、米国特許出願公開第2013/0095079号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように調製した。一般に、少なくとも2または4臍帯血ユニットからCD34+細胞を、CD34+細胞について富化前または後のどちらかでプールした。
例示的なステップ:
【0151】
アルギネート-ポリ-L-リシン(ALG/PLL)ヒドロゲルの調製を下に記載する。ポリリシンを有さないアルギネートヒドロゲルは、上記のb1の代わりに硬化溶液b2を使用して、下記のように調製することができる。
【0152】
1. 下に記載するような、750μmノズルが適所に付いており、70%アルコールを有するスプレーが付いている容器(container)(例えば、2Lガラス容器(vessel))を用意した。
【0153】
2. 全ての溶液および実験器具を準備した。
【0154】
3. 200mLの硬化溶液(b1)を、耐圧瓶を使用してオートクレーブ処理済みの反応容器にポンプで送り込んだ。硬化溶液を、反応容器に入れる前に、オートクレーブ処理済みの液体フィルターにポンプで送って通すことによって滅菌した。
【0155】
4. 反応容器を層状空気流キャビネット下に置いた。
【0156】
5. 1×104~1×107細胞/mLの濃度の細胞の培養物を層流キャビネット下で調製した。細胞を遠心分離し、上清をデカントし、ペレットを2mLの滅菌MOPS洗浄緩衝液に再懸濁させた。滅菌25mLピペットを使用して、10mLの1.8%アルギン酸ナトリウム溶液を再懸濁細胞に添加した。溶液を、25mlピペットに2回、再吸引することによって混合した。再懸濁および混合中に気泡が全くまたは殆ど導入されなかったことを確認した。滅菌20mlシリンジを、オートクレーブ処理済み長さ15cmシリコーン管(内径3mm)に取り付けた。この管を使用して細胞をシリンジに輸送し、その後、管を取り外した。シリンジに細胞-アルギネート懸濁液を充填し、シリンジを反応容器の上のビーズ生成ユニットに取り付けた。反応容器をエンカプスレータ制御ユニットに固定し、それをベンチの上に(層流キャビネット内ではなく)置いた。
【0157】
6. バイパスカップをノズルの真下に配置して、アルギネートがゲル化溶液に望ましくなく入ることを一切防止した。
【0158】
7. マグネチックスターラーのスイッチを入れた。
【0159】
8. ビーズ形成を、次のパラメーターを用いて開始した:ノズルサイズ:750μm;攪拌速度:30%;振動数:300Hz、電圧1000V;およびシリンジポンプ速度35mL/分。アルギネート液滴の安定した液滴鎖が確立されたら、バイパスカップをノズルの下から除去し、液滴を攪拌された硬化溶液に入らせた。(注記:全てのアルギネート溶液がシリンジを通してポンプで送られる直前に、バイパスカップをもう1度ノズルの下に配置した)。
【0160】
9. 液滴を硬化溶液浴中で10分間放置して硬化させてCa/PLL-アルギネートおよびCa/ALGビーズを形成し、次いで、ゲル化溶液を排液した。注記:ビーズ、およびその後、カプセルには、凝集を防止するために少量の液体で常に覆っておくべきであり、そうしなければ、ビーズおよびカプセルの再懸濁は困難であり得、膜が損傷する可能性がある。
【0161】
10. 200mLのMOPS緩衝液をポンプで送り込み、1分間攪拌し、次いで緩衝液を流出させた。洗浄ステップをもう1度繰り返した。
【0162】
11. 150mLのCa-可溶化溶液をポンプで送り込み、おおよそ10分攪拌してアルギネート/Ca2
+網目構造を溶解した。適切な溶解時間は、アルギネートの分子量および純度、ならびに解重合溶液に対する封入細胞の感受性に依存した。(可溶化プロセスは、単独でのALG群には必要とされない)。
【0163】
12. 解重合溶液を流出させた。
【0164】
13. 150mLのMOPS洗浄緩衝液をポンプで送り込み、カプセルを再懸濁させ、ビーズ収集フラスコに移した。
【0165】
14. 洗浄緩衝液を培養培地で置き換えた。
【0166】
15. カプセルをフラスコまたはバイオリアクターに無菌で移して細胞を拡大させた。
(実施例2)
封入HSPC集団の生成
【0167】
以下の実施例は、封入HSPC集団の調製を記載する。
【0168】
必要とした機器:BuchiエンカプスレータB-395 Pro。
必要とした材料:
【0169】
a.アルギネート(ALG)ゲル化溶液:1.5%アルギネート-UP LVGを、50ng/mLのSCF、TPO、Flt3-L、IL-6および10ng/mLのIL-3を補充したSFEM II培地中で調製し、0.2μmボトルトップフィルターを使用して濾過した。30mLの体積をこの実験のために調製し、使用時まで4~8℃で保管した。
【0170】
b.塩化カルシウム硬化溶液:2.5%CaCl2溶液を、Milli Q水を使用して調製し、0.2μmボトルトップフィルターを使用して濾過した。500mLの体積を調製し、使用時まで室温で保管した。
【0171】
c.塩化カルシウム+ポリ-L-リシン硬化溶液:2.5%CaCl2および0.01%ポリ-L-リシン溶液を、Milli Q水を使用して調製し、0.2μmボトルトップフィルターを使用して濾過した。500mlの体積を調製し、使用時まで4~8℃で保管した。
【0172】
d.150mMのNaCl溶液:0.85gのNaClをMilli Q水に溶解し、0.2μmボトルトップフィルターを使用して濾過した。1Lの体積を調製し、使用時まで室温で保管した。
【0173】
e.50mMのEDTA溶液:100mLの0.5M EDTA溶液および0.43gのNaClを、Milli Q水を使用して希釈して1Lの最終体積にした。この溶液を、0.2μmボトルトップフィルターを使用して濾過し、使用時まで4~8℃で保管した。
【0174】
f.溶解溶液:100mLの0.5M EDTAおよび0.85gのNaClを、50ng/mLのSCF、TPO、Flt3-L、IL-6および10ng/mLのIL-3を補充したSFEM II培地を使用して希釈して1Lの最終体積にした。この溶液を、0.2μmボトルトップフィルターを使用して濾過し、使用時まで4~8℃で保管した。
【0175】
g.富化CD34+HSPCは、プールされた臍帯血ユニットから、米国特許出願公開第2013/0095079号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように調製した。一般に、少なくとも2または4臍帯血ユニットからCD34+細胞を、CD34+細胞について富化前または後のどちらかでプールした。
例示的なステップ:
【0176】
プールされた臍帯血ユニットから富化したCD34+HSPCを、50ng/mlのrhSCF、rhTPO、rhFlt3-L、rhIL-6および10ng/mLのrhIL-3を補充したSFEM II培地に再懸濁させ、37℃、5%CO2および周囲O2に設定したインキュベーターにおいて一晩培養した。
【0177】
封入に備えて、一晩培養した細胞を採取し、次いで1.5%アルギネートゲル化溶液に5×10
5細胞/mLの密度で再懸濁させた。BUCHIエンカプスレータに750μmノズルを装着し、下記の設定を使用して始動した。
【表8-1】
【表8-2】
【0178】
200mLの塩化カルシウム硬化溶液または塩化カルシウム+ポリ-L-リシン硬化溶液のどちらかを、エンカプスレータの下の捕捉容器に添加した。これらの溶液は、それぞれALGと架橋して、ALGまたはALG+PLLマイクロカプセルそれぞれの中に細胞を封入する。アルギネート溶液中の細胞懸濁液をシリンジ内に引き込み、ビーズ生成ユニットに入れた。シリンジポンプを起動し、硬化溶液が入っている容器に10分にわたってビーズを収集した。次いで、硬化溶液を容器から、排液弁を解放することによって排液し、封入細胞のカプセルは中に残した。次いで、ALGマイクロカプセルを0.85%NaCl溶液で5分間洗浄し、その一方でALG+PLLマイクロカプセルを150mLのEDTA溶液で洗浄してCaCl2/PLL網目構造を溶解した。洗浄溶液を吸引した後、カプセルを数分間、滅菌ボトルの200mLのPBS溶液に移した。これの後、PBS溶液を吸引し、カプセルを培養のために拡大培地に再懸濁させた。
(実施例3)
封入HSPCの培養
【0179】
培養培地は、各々50ng/mLの組換えヒトSCF(Miltenyi Biotec)、rhFlt3-リガンド(Miltenyi Biotec)、rhTPO(Miltenyi Biotec)、およびrhIL-6(Miltenyi Biotec)、ならびに10ng/mlのrhIL-3(Miltenyi Biotec)を補充した、StemSpan Serum Free Expansion Medium II(SFEM II;StemCell Technologies)からなった。
【0180】
ALGマイクロカプセルまたはALG+PLLマイクロカプセルのどちらかに封入された細胞を、Tフラスコなどの静的培養容器内、または回転を2rpmに設定したローラーボトル(動的培養)内のどちらかの培養培地において培養した。14日間、培養を維持し、培養継続期間中に少なくとも1回は完全培地交換を行った。
【0181】
培養時間経過後、マイクロカプセルを適切な滅菌遠心分離管に移し、沈降させた。次いで、培養培地を吸引し、残留カプセルをPBS溶液で洗浄した。次いで、カプセルを溶解溶液に再懸濁させ、10分間、ローテータにかけて細胞をマイクロカプセルから放出した。次いで、細胞混合物を70μmセルストレーナーで濾過してアルギネートカプセルの残屑を除去した。次いで、溶出物(elute)中の細胞を遠心分離し、所望の培地または緩衝液に再懸濁させた。
(実施例4)
2D培養システムと3D培養システムの比較
【0182】
臍帯血HSPCの拡大について、5つの成長因子(SCF、Flt3-L、TPO、IL-3およびIL-6)を補充したSFEMII培地での14日の培養中に、2D培養システム(NotchリガンドDXIを使用する)で有意な拡大が観察された。比較して、CD34
+細胞およびHSCの拡大が、単独でのアルギネート(ALG)、静置形式の(組織培養処理Tフラスコ(例えば、Corning細胞培養フラスコT-25およびT-75細胞培養フラスコ)での)ALG/PLL、および500mLローラーボトル(CELLTREAT)でのALG/PLLという、3D培養の3つのバージョンで観察された。
図1に示すように、この観察は、全有核細胞(TNC)、CD34
+集団ならびにHSCおよびMPP集団(Lin
-CD34
+CD38
-CD45RA
-CD133
+CD90
+/-細胞)に当てはまった。
【0183】
表1に示すように、CD34+集団の有意な喪失が2D培養システム(Notchリガンド、DXIを使用する)で観察された。(2D培養システムは、一般に、米国特許出願公開第2013/0095079号に記載されているように行った。その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。対照的に、3D培養システム(実施例2で説明した通り)は、CD34+集団を有意に保存した。加えて、3Dアルギネート-ポリ-L-リシンマトリックス(3D ALG+PLL)培養でのHSPCの培養は、ポリ-L-リシンを伴わないアルギネートマトリックス(3D ALG)より有意に大きいCD34+集団を示した。より重要なこととして、3D ALG+PLL培養システムからの細胞は、未培養のHSPCに匹敵するかまたはそれより高い、HSPC集団のはるかに高い頻度を示した。
【0184】
3D ALG+PLLシステムはまた、14日後にHSPCの系統分化を最小限に抑えていた。下記の表1に示すように、2D Notchプラットフォームで培養した場合、培養細胞による系統マーカーの有意な発現が、培養14日後に観察された。対照的に、3D培養プラットフォーム(3D ALG+PLL)は、14日目に最小限に抑えられた系統分化を示した。
【0185】
表1:培養前(0日目(D0)および未培養)に収集した細胞試料、ならびに14日間、次の形式:2D+Notch培養;3D ALGおよび3D ALG+PLL 静置フラスコ;ならびに3D ALG+PLL ローラーボトルで培養した細胞試料における、全CD34
+細胞、CD34
+前駆体、およびHSC/MPP、およびCD34
-系統
+細胞の頻度。
【表1】
【0186】
CFCアッセイは、3D ALG+PLL培養からの採取細胞のコロニー形成機能の保持を確実にした。
図2に示すように、3D ALG+PLL培養から採取した細胞は、良好かつ未培養細胞に匹敵する機能を示した。
【0187】
各群からの細胞のin vivo生着能力も調査した。各群からの異なる数の細胞を放射線照射NSGマウスに注入した:1.モック:細胞0個;2.未培養:マウス1匹当たりTNC 100,000個;3.2D Notch(DXI):マウス1匹当たりTNC 100,000、500,000および7,300,000個;4.3D ALG単独:マウス1匹当たりTNC 100,000個;5.3D ALG/PLL 静置:マウス1匹当たりTNC 100,000個;6.3D ALG/PLL ローラーボトル:マウス1匹当たりTNC 100,000個。骨髄および末梢血試料を4、8、12、16、22および23週目に分析して、レシピエントマウスにおける生着および造血再構成についての潜在性を判定した。
【0188】
骨髄の分析について、表2に提示するように、最高の全ヒト生着が4週目に未培養群で観察された。同時に、および同数の注入細胞を用いて、3D ALG+PLL群もまた高い全ヒト生着(%ヒトCD45+(hCD45+))を示した。対照的に、同数の注入細胞を用いて、3D ALG単独群および2D Notch群は、4週目に、よりいっそう限られた全生着を示した。注入細胞数の増加に伴ってより高度な全生着が2D Notch群から観察された。全ての陽性生着群(ヒトキメリズム>0.1%)において、より深い分析は、再増殖細胞の大多数が骨髄系表現型(CD33+)を有すること、およびHSC集団を見出すことができることを示した。
【0189】
表2:最初の移植から4週間後のマウス骨髄におけるヒト生着(%hCD45)、ヒト骨髄系集団(CD45
+CD33
+)およびヒトHSPCの亜集団(HSC/MPP:Lin
-CD34
+CD38
-CD45RA
-CD133
+CD90
+/-;前駆体:Lin
-CD34
+CD38
+/Lin
-CD34
+CD38
-CD45RA
+)のレベルを示す。各群についての個々のマウスからのデータを平均する:N=マウス5匹/群。
【表2-1】
【表2-2】
【0190】
末梢血分析について、4、8、12、16および22週目に、4週目での骨髄分析と同様の観察結果が認められた。表3に示すように、ヒトキメリズムのより高い部分が未培養および3D ALG+PLL群で観察された。ヒト細胞間で、異なる系統が末梢血において検出された。12および22週目に、表4および5にそれぞれ示すように、3D ALG+PLL群ならびに未培養細胞は、最高のヒト細胞キメリズムを示した。4週目とは異なり、12週目に有意なB細胞集団(CD20+細胞)が観察された。
【0191】
表3:最初の移植から4週間後のマウス血液におけるヒト生着(%hCD45)およびヒト系統亜集団のレベルを示す。各群についての個々のマウスからのデータを平均した:N=マウス5匹/群。
【表3】
【0192】
表4:最初の移植から12週間後のマウス血液におけるヒト生着(%hCD45)およびヒト系統亜集団のレベルを示す。各群についての個々のマウスからのデータを平均した:N=マウス5匹/群。
【表4】
【0193】
全ての群からの未培養および拡大細胞の長期生着を22週目に評価した。表5に示すように、3D ALG+PLL 静置およびローラーボトル培養細胞は、22週目に未培養CD34+細胞に匹敵するレベルの長期および多系統生着を実証した。最高用量で注入した2D Notch拡大細胞もまた、より低レベルでだが長期の多系統生着を実証した。CD3+T細胞発生が22週目までに有意に増加され、その結果、移植片対宿主病(GVHD)に起因して、最高生着レベル(未培養細胞、3D ALG+PLL 静置およびローラーボトルならびに最高用量の2D Notch拡大細胞)群内の一部のマウスを失った。長期生着は、残りの群(3D ALGおよびより低用量の2D Notch拡大細胞)では観察されなかった。
【0194】
表5:最初の移植から22週間後のマウス血液におけるヒト生着(%hCD45)およびヒト系統亜集団のレベルを示す。各群についての個々のマウスからのデータを平均した:未培養細胞(N=マウス4匹)、3D ALG+PLL ローラーボトル(N=マウス3匹)を除いて、全ての群についてN=マウス5匹。
【表5】
【0195】
マウスを23週目に屠殺し、骨髄試料を用いて最終免疫表現型判定分析を行った。表6に提示するように、22週目に末梢血における生着を示した群のみが、骨髄においても生着を示した。23週目に最高全ヒト生着が、ヒトキメリズム59%である3D ALG+PLL 静置群において観察された。未処置CD34+細胞を注入したマウスも高レベルの生着(46%hCD45+)を示し、これに、3D ALG+PLL(ローラーボトル;39%hCD45+)、2D Notch(33%hCD45+)、および3D ALG(3.7%hCD45+)で14日間拡大した細胞を注入したマウスが続いた。上記の群の全てにおいて、HSPCを示すCD34+細胞の明確に異なる集団が検出された。
【0196】
表6:最初の移植後23週のマウス骨髄におけるヒト生着(%hCD45)、ならびにヒトHSPC(CD34
+)ならびに拘束T細胞、B細胞、NK細胞、単球および好中球(系統
+)の亜集団のレベルを示す。各群についての個々のマウスからのデータを平均する:未培養細胞(N=マウス4匹)、3D ALG+PLL ローラーボトル(N=マウス3匹)を除いて、全ての群についてN=マウス5匹。
【表6】
【0197】
この評価では、3D ALG+PLL培養は、14日間のex vivo培養後に臍帯血由来のCD34+HSPCの若干の拡大を支援し、系統拘束細胞への分化を阻害したが、未培養富化CD34+HSPCに匹敵するレベルでのNSGマウスにおけるin vitroコロニー形成およびin vivo長期生着からも明らかなように、拡大HSPCは、それらの機能的能力を保持した。
(実施例5)
成人末梢血HSPCを拡大するための3D ALG+PLL培養システムの使用
【0198】
成人HSPCを、健康なドナーから、G-CSF(フィルグラスチム(filgastrim);16μg/kg BID;1~6日目)および/またはプレリキサフォル(240μg/kg/日;4~6日目)の毎日の投与により彼らの末梢血にCD34+HSPCをまず動員することによって調製した。循環CD34+血液細胞計数値を毎日分析し、CD34+血液細胞計数値が>5細胞/μlであった場合には大容量白血球アフェレーシスを行った。最初の血小板洗浄後、白血球アフェレーシス産物を、標準的な技法(CliniMACS CD34+陽性選択を含む)を使用するCD34+HSPC細胞単離に付した。
【0199】
富化された成人CD34+HSPCを、上記の実施例4に記載したような3D ALG+PLL培養システムと2D Notch培養システムの両方を使用して拡大した。加えて、両方のプラットフォームでの成人HSPCの培養を、平行してCTS(商標)StemPro(商標)HSC拡大培地(StemPro)でも評価した。
【0200】
図3に示すように、富化された成人CD34
+HSPCの14日間の培養後、全有核細胞(TNC)、CD34
+細胞およびHSC/MPP(Lin
-CD34
+CD38
-CD45RA
-CD133
+CD90
+/-細胞)の有意な拡大が、2D培養システム(NotchリガンドDXIを使用する)において観察された。この培養プラットフォームは、表7に示すように培養HSPCの系統
+細胞への最終分化も支持した。
【0201】
比較して、TNCおよびCD34
+細胞の拡大は、より低レベルでだが3D ALG+PLLシステムでも観察された(
図3)。上記の実施例4と同様に、3D ALG+PLLシステムは、培養HSPCの系統
+細胞への最終分化の阻害も実証した(表7)。3D ALG+PLLシステムにおけるHSC/MPP細胞集団の拡大は、SFEM II培地でのみ達成され、StemPro培養培地では達成されなかった。注目すべきことに、SFEM II培養培地は、2D Notch培養システムと3D ALG+PLL培養システムの両方においてHSC/MPP細胞集団の拡大を支援する点でStemPro培養培地より優れていた(
図3)。表7に示すように、系統
+細胞への最終分化の阻害は、この14日ex vivo培養中にSFEM II培地でのみ維持された。
【0202】
4つ全ての培養システムでの培養後の細胞の機能的能力を、実施例4に記載したようなin vitroコロニー形成アッセイによって評価した。3D ALG+PLL培養システムにおいてSFEM II培養培地で培養した細胞のみが、複能性HSPC表現型を示す、3つ全てのコロニー形態(BFU-E、CFU-G/M/GMおよびCFU-GEMM)を形成する潜在性を保持することができた。残りの培養システムは、拘束前駆体表現型を示す、CFU-G/M/GM形態への偏りのあるコロニー形態を示した(
図4)。
【0203】
表7.培養前(D0)に収集した細胞試料、ならびに14日間、次の形式:SFEM II培地での2D+Notch培養;StemPro培地での2D+Notch培養;SFEM II培地での3D ALG+PLL培養;およびStemPro培地での3D ALG+PLL培養で培養した細胞試料における、全CD34
+細胞、複能性HSC/MPP、リンパ系および骨髄系前駆体ならびにCD34
-系統
+細胞の頻度。
【表7】
【0204】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態により範囲が限定されることにならない。実際、本明細書に記載のものに加えて本発明の様々な修飾形態が、上述の説明および添付の図から当業者に明らかになる。そのような修飾形態は、添付の特許請求の範囲に記載の範囲に入るように意図されている。
【0205】
特許、特許出願公開および科学文献をはじめとする様々な刊行物を本明細書に引用しており、これらの刊行物の開示は、あらゆる目的でそれら全体が参照により組み込まれる。
【0206】
例示的な実施形態を例証し、説明してきたが、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなくそれらに様々な変更を加えることができることは理解される。
【国際調査報告】