(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】膨張クランプ装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B23B 31/117 20060101AFI20230125BHJP
B23B 31/40 20060101ALI20230125BHJP
B23K 20/12 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
B23B31/117 610B
B23B31/40
B23K20/12 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022530896
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(85)【翻訳文提出日】2022-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2020083747
(87)【国際公開番号】W WO2021105436
(87)【国際公開日】2021-06-03
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508025781
【氏名又は名称】シュンク・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー・シュパン-・ウント・グライフテヒニーク
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】レッツバッハ トーマス
【テーマコード(参考)】
3C032
4E167
【Fターム(参考)】
3C032BB13
3C032MM02
4E167AA02
4E167AA21
4E167BF00
4E167DB00
(57)【要約】
本発明は、本体2と、本体2に挿入されるかまたは本体2を取り囲むことによって少なくとも1つの圧力室8を形成する膨張スリーブ5とを備えている膨張クランプ装置に関する。圧力室8は、流体圧媒体によって加圧されて膨張スリーブ5を弾性変形させて、クランプ力を生じさせる。膨張スリーブ5は、圧力室8の前部軸端領域16および/または後部軸端領域17において摩擦溶接継手14によって本体2に固定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向軸を画定する本体(2)と、本体(2)に挿入されるかまたは本体(2)を取り囲むことによって少なくとも1つの圧力室(8)を形成するスリーブ(5)とを備え、クランプ効果を達成するために圧力室(8)が流体圧媒体によって加圧されるようになされている膨張クランプ装置において、
スリーブ(5)は、圧力室(8)の前部軸端領域(16)および/または後部軸端領域(17)において摩擦溶接継手(14)によって本体(2)に固定されていることを特徴とする膨張クランプ装置。
【請求項2】
摩擦溶接継手(14)の形成中に生成された溶接ビード(15)は、圧力室(8)の軸方向の中央領域(18)に対して特に半径方向に拡張され、圧力室(8)は、摩擦溶接継手(14)に隣接する前部軸端領域(16)および/または後部軸端領域(17)において溶接ビード(15)を収容することを特徴とする請求項1の膨張クランプ装置。
【請求項3】
スリーブ(5)は、本体(2)に挿入されるかまたは本体を取り囲むことによって、長手方向軸の周りに環状に延びる単一の圧力室(8)を形成し、スリーブ(5)は、その前端部(12)および/または後端部(13)が摩擦溶接継手(14)によって本体(2)に固定されていることを特徴とする請求項1または2の膨張クランプ装置。
【請求項4】
スリーブ(5)は、本体(2)に挿入されるかまたは本体(2)を取り囲むことによって、2つの軸方向に連続する圧力室(8)を形成し、特に、スリーブ(5)は、2つの圧力室(8)の間で摩擦溶接継手(14)によって本体(2)に軸方向に固定され、および/または、特に、スリーブ(5)は、後部の圧力室(8)の後部軸端領域(17)および/または前部の圧力室(8)の前部軸端領域(16)において摩擦溶接継手(14)によって本体(2)に固定されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の膨張クランプ装置。
【請求項5】
摩擦溶接継手(14)は、摺動摩擦溶接によって生成されること、および/または、摩擦溶接継手(14)は、回転摩擦溶接によって生成されること、および/または、
スリーブ(5)が熱処理され、特に、表面硬化および/または焼戻および/または窒化の熱処理をされ、および/または、
スリーブ(5)は、非合金鋼および/または低合金鋼および/または高合金鋼および/またはセラミック材料および/または表面硬化鋼、特に20MnCrS5の表面硬化鋼を含むか、またはそれらから構成されることを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載の膨張クランプ装置。
【請求項6】
スリーブ(5)は、クランプ効果を達成するために圧力室(8)が加圧されると弾性変形する膨張スリーブとして設計され、スリーブ(5)が本体(2)に挿入されてスリーブ(5)の内面がクランプ面(7)を形成しているか、または、スリーブ(5)が本体(2)を取り囲んでスリーブ(5)の外面がクランプ面(7)を形成していることを特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載の膨張クランプ装置。
【請求項7】
本体(2)の軸方向先端部が膨張スリーブ部(2a)として設計され、スリーブ(5)が膨張スリーブ部(2a)に軸方向に押し付けられ、スリーブ(5)と膨張スリーブ部(2a)との間に少なくとも1つの圧力室(8)が形成され、膨張スリーブ部(2a)の内面がクランプ面(7)を形成し、クランプ効果を達成するために圧力室(8)が流体圧媒体によって加圧されたとき、膨張スリーブ部(2a)が弾性変形することを特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載の膨張クランプ装置。
【請求項8】
クランプ面(7)は、表面コーティング、特に、酸化またはリン酸マンガン処理によってクランプ面(7)に塗布される表面コーティングを備えることを特徴とする請求項6または7の膨張クランプ装置。
【請求項9】
膨張クランプ装置は、流体圧媒体の圧力を選択的に上昇させるように設計された圧力付与手段を有し、圧力付与手段は、流体圧媒体加圧通路(23)を介して圧力室(8)に動作可能に接続されていることを特徴とする請求項1から8までのいずれかに記載の膨張クランプ装置。
【請求項10】
長手方向軸を画定する本体(2)と、クランプされる部品が前面から挿入されるクランプ面(7)を有する円筒状クランプ部を画定する膨張スリーブの形態とされて少なくとも1つの閉じた圧力室(8)を形成するために本体(2)に挿入されるスリーブ(5)とを備えている膨張チャック(1)の形態とされた膨張クランプ装置を製造する方法であって、以下のa)からd)までのステップを含んでおり、
a)本体(2)の前端面に向かって開口する中心軸方向穴(4)を画定する本体(2)と、本体(2)の中心軸方向穴(4)に挿入可能な円筒状の膨張スリーブ軸(27)を有する膨張スリーブ軸形成用のワークピース(26)とを準備して、少なくとも1つの圧力室(8)を形成するための凹部が、膨張スリーブ軸(27)の外面および/または中心軸方向穴(4)を有する本体(2)の内面に形成されるようにする。
b)膨張スリーブ軸(27)を本体(2)の中心軸方向穴(4)に挿入する。
c)本体(2)とワークピース(26)とを互いに軸方向に押圧し、本体(2)および/またはワークピース(26)が長手方向軸を中心に移動しながら、特に長手方向軸を中心に回転して、ワークピース(26)が本体(2)に互いの停止面(28)において摩擦溶接継手(14)により固定されるように、本体(2)およびワークピース(26)の互いに対応する停止面(28)同士が、少なくとも1つの圧力室(8)の前部軸端領域(16)および/または少なくとも1つの圧力室(8)の後部軸端領域(17)において互いに軸方向に押圧し合って摩擦により加熱されるようにする。
d)相対移動を終了し、本体(2)およびワークピース(26)が冷えるようにする。
ここで、特に、ワークピース(26)は、相対移動の完了後、本体(2)内にさらに押し込まれることを特徴とする膨張クランプ装置の製造方法。
【請求項11】
a)~d)のステップにおいて、膨張スリーブ軸(27)は、本体(2)に挿入されて長手方向軸の周囲に環状に延びる単一の圧力室(8)を形成するとともに、摩擦溶接継手(14)によって本体(2)の前端部(12)および/または後端部(13)に固定され、および/または、
a)~d)のステップにおいて、膨張スリーブ軸(27)は、本体(2)に挿入されて軸方向の前後に位置して長手方向軸を中心に環状に延びる2つの圧力室(8)を形成するとともに、特に摩擦溶接継手(14)によって2つの圧力室(8)間で本体(2)に軸方向に固定され、特に、ステップc)では、本体(2)およびワークピース(26)のそれぞれの互いに対応する停止面(28)は、前部圧力室(8)の前部軸端領域(16)および/または後部圧力室(8)の後部軸端領域(17)に形成されるようになされることを特徴とする請求項10の膨張クランプ装置の製造方法。
【請求項12】
摩擦溶接継手(14)は、摺動摩擦溶接によって行われ、および/または、
a)~d)のステップの後、次のステップとして、e)ワークピース(26)の本体(2)の前端面から突出する部分(29)を切断する、が実行されることを特徴とする請求項10または11の膨張クランプ装置の製造方法。
【請求項13】
膨張スリーブ軸(27)が中実とされ、クランプ部(6)が特にステップe)の後に生成され、および/または、
ステップa)の膨張スリーブ軸(27)が中空とされ、膨張スリーブ軸(27)がステップb)~d)の間は内側を支持され、および/または、ステップe)後に膨張スリーブ軸(27)にクランプ部(6)が形成され、特に、膨張スリーブ軸(27)は、クランプ部(6)が形成された後に熱処理、特に、表面硬化および/または焼戻および/または窒化されていることを特徴とする請求項10から12までのいずれかに記載の膨張クランプ装置の製造方法。
【請求項14】
膨張スリーブ軸(27)は、非合金鋼および/または低合金鋼および/または高合金鋼および/またはセラミック材料および/または表面硬化鋼、特に20MnCrS5表面硬化鋼および/またはそのいずれかを含み、またはそれらから構成され、および/または、
クランプ面(7)には、特に酸化またはリン酸マンガン処理によって塗布された表面コーティングが設けられていることを特徴とする請求項10から13までのいずれかに記載の膨張クランプ装置の製造方法。
【請求項15】
長手方向軸を画定する本体(2)と、少なくとも1つの閉じた圧力室(8)を形成するために本体(2)を取り囲んでクランプされる部品を前面から押し込むことができるクランプ面(7)をその外面に画定するスリーブ(5)とを備えている膨張マンドレル(19)の形態とされた膨張クランプ装置を製造する方法であって、以下のaa)からdd)までのステップを含んでおり、
aa)前端に位置する円筒状の軸部(22)を有する本体(2)と、軸部(22)に押し込むことができる中空膨張スリーブ軸形成用のワークピース(26)とを準備して、軸部(22)外面および/またはワークピース(26)の内面に凹みを形成して、少なくとも1つの圧力室(8)を形成する。
bb)ワークピース(26)を本体(2)に対してスライドさせる。
cc)本体(2)とワークピース(26)とを互いに軸方向に押圧し、本体(2)および/またはワークピース(26)が長手方向軸を中心に移動しながら、特に長手方向軸を中心に回転して、ワークピース(26)が本体(2)に互いの停止面(28)において摩擦溶接継手(14)により固定されるように、本体(2)およびワークピース(26)の互いに対応する停止面(28)同士が、少なくとも1つの圧力室(8)の前部軸端領域(16)および/または少なくとも1つの圧力室(8)の後部軸端領域(17)において互いに軸方向に押圧し合って摩擦により加熱されるようにする。
dd)相対移動を終了し、本体(2)およびワークピース(26)が冷えるようにする。
ここで、特に、ワークピース(26)は、相対移動の完了後、本体(2)内にさらに押し込まれることを特徴とする膨張クランプ装置の製造方法。
【請求項16】
aa)~dd)のステップにおいて、ワークピース(26)は、本体(2)に押し込まれて長手方向軸の周囲に環状に延びる単一の圧力室(8)を形成するとともに、摩擦溶接継手(14)によって本体(2)の前端部(12)および/または後端部(13)に固定され、または、
aa)~dd)のステップにおいて、ワークピース(26)は、本体(2)を取り囲んで軸方向の前後に位置して長手方向軸を中心に環状に延びる2つの圧力室(8)を形成するとともに、特に摩擦溶接継手(14)によって2つの圧力室(8)間で本体(2)に軸方向に固定され、特に、ステップcc)では、本体(2)とワークピース(26)のそれぞれの互いに対応する停止面(28)は、前部の圧力室(8)の前部軸端領域(16)および/または後部の圧力室(8)の後部軸端領域(17)に形成されるようになされることを特徴とする請求項15の膨張クランプ装置の製造方法。
【請求項17】
摩擦溶接継手(14)は、摺動摩擦溶接により形成され、および/または、
aa)~dd)のステップの後、次のステップとして、ee)ワークピース(26)の本体(2)の前端面から突出する部分(29)を切断する、が実行され、および/または、
特に、ステップee)の後に、本体に固定されたワークピース(26)の外周面の少なくとも一部が機械加工され、特に、摩擦溶接継手(14)の形成中に生成される溶接ビード(15)が除去され、および/または、クランプ面(7)が生成され、および/または、
クランプ面(7)を有するワークピース(26)が熱処理され、特に、表面硬化および/または焼戻および/または窒化され、および/または、
非合金鋼および/または低合金鋼および/または高合金鋼および/またはセラミック材料および/または表面硬化鋼、特に、20MnCrS5表面硬化鋼および/またはそのいずれかを含むワークピース(26)が使用され、および/または、
クランプ面(7)には、特に酸化またはリン酸マンガン処理によって塗布された表面コーティングが設けられていることを特徴とする請求項15または16の膨張クランプ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向軸を画定する本体と、本体に挿入されるかまたは本体を取り囲むことによって少なくとも1つの圧力室を形成するスリーブとを備える膨張クランプ装置に関するものであり、圧力室は、クランプ効果を達成するために流体圧媒体によって加圧されるようになされている。さらに、本発明は、本体と、本体に挿入されて閉じた圧力室を形成するスリーブとを備える膨張クランプ装置の製造方法に関する。さらに、本発明は、本体と、本体を取り囲んで閉じた圧力室を形成するスリーブとを備える膨張クランプ装置の製造方法に関する。
【0002】
膨張クランプ装置は、様々な実施形態で知られており、主に、ドリル軸またはフライス軸のような工具軸を対応する工作機械の主軸に固定するために使用される。膨張クランプ装置としては、弾性変形可能なスリーブが本体を取り囲んで圧力室に圧力を加えると半径方向外側に膨張して工具軸をクランプする膨張マンドレルと、弾性変形可能なスリーブが本体に挿入されて圧力室に圧力を加えると半径方向内側に変形して工具軸をクランプする膨張チャックとの2つのタイプが知られている。
【背景技術】
【0003】
欧州特許出願EP2347842A2は、本体と弾性変形可能なスリーブとがろう付け継手によって互いに固定されている上述のタイプの膨張クランプ装置を記載しており、その膨張クランプ装置は、低合金熱処理鋼製の本体および/またはスリーブと、熱処理鋼の硬化温度以上の溶融温度を有するろう付け材料とを備えている。
【0004】
ここで、本体と膨張スリーブとの間のろう付継手は、ろう付材料を溶融して、スリーブと本体とをこれらの間で接合するために、スリーブを本体上に配置して、そのアセンブリを所望の接合領域に設けられた溝に収容された所望のろう付材料と共に高温炉内で加熱する高温ろう付プロセスによって製造される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既知の従来技術の膨張クランプ装置は、その実用性が証明されているが、圧縮応力下でろう付け接合部に亀裂が生じ、膨張クランプ装置が破損することがあるという問題がある。また、膨張クランプ装置の製造をさらに単純化し、その単純な製造を可能にするという課題の解決が絶えず求められている。
【0006】
本発明の目的は、上記課題に基づいて、簡単な方法で製造することができる代替の膨張クランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上述したタイプの膨張クランプ装置において、圧力室の前部軸端領域および/または圧力室の後部軸端領域において、スリーブが摩擦溶接により本体に固定されていることによって課題が解決される。
【0008】
したがって、本発明は、摩擦溶接継手によってスリーブ(弾性変形可能な膨張スリーブ)を本体に接続するという考えに基づいている。摩擦溶接継手の1つの利点は、その強度であり、継手の強度を本体および膨張スリーブの材料の強度よりも高くすることができる。
【0009】
また、摩擦溶接継手は、本体と膨張スリーブとの間の間隙に材料を導入する必要がないため、比較的少ない労力で製造することができる。さらに、本体と膨張スリーブとの間を摩擦溶接継手とすることによって、継手をろう付け継手よりもはるかに簡単にすることができる。さらに、ろう付け継手ではなく摩擦溶接継手を介することで、より多くの材料の組合せを接合することができる。さらにまた、本体とスリーブを摩擦溶接継手で接合する場合、ろう付け継手に比べて本体およびスリーブへの熱の負荷が少なくて済み、高強度、高硬度の鋼材を使用することによって温度に関連した材料の損傷を防止することが可能である。
【0010】
好ましくは、摩擦溶接継手に隣接するその前部軸端領域および/または後部軸端領域において、圧力室は、摩擦溶接継手の形成中に生成された溶接ビード、特に、圧力室の軸方向の中央領域に対して半径方向に拡大された溶接ビードを収容するものとされる。
【0011】
本体とスリーブとが互いに軸方向に押圧されて摩擦溶接継手を形成し、本体とスリーブとの相対回転中に発生する摩擦によって加熱されると、本体およびスリーブの加熱されて塑性変形した材料の一部が半径方向に変位する。圧力室が摩擦溶接継手に隣接する領域で広がるという事実は、この領域で溶接ビードが形成されることを許容する。
【0012】
好ましい実施形態によれば、スリーブは、本体に挿入されるかまたは本体を取り囲むことによって、長手方向軸の周りに環状に延びる単一の圧力室を形成し、摩擦溶接継手によって本体の前端部および/または後端部に固定される。これにより、スリーブのほぼ全長にわたって延在し、摩擦溶接継手によってその少なくとも一方の端部が仕切られてシールされた圧力室が1つだけ設けられる。他方の端部では、圧力室は、シール手段、例えばOリングによってシールされてもよい。有利には、圧力室は、摩擦溶接継手によってその両端部で仕切ることができ、それによって、圧力室の特に信頼できるシールが達成される。
【0013】
さらなる実施形態によれば、スリーブは、2つの軸方向に連続する圧力室を形成するために、本体に挿入されるかまたは本体を取り囲むことが提供される。2つの軸方向に連続した圧力室により、クランプされる部品に対するクランプ能力が改善され、クランプされるべき部品のより正確な軸方向整列が可能になる。
【0014】
好ましくは、スリーブは、摩擦溶接継手によって圧力室間で本体に軸方向に固定される。これにより、2つの圧力室は、摩擦溶接継手によって互いにシールされる。前部圧力室の前端および後部圧力室の後端は、例えばOリングまたはろう付け継手からなるシール手段によってシールすることができる。
【0015】
さらに、スリーブは、摩擦溶接継手によって、後部圧力室の後部軸端領域および/または前部圧力室の前部軸端領域で本体に固定することができる。この場合、スリーブは、摩擦溶接継手によってその軸端部の両方で本体に実質的に固定することができ、一方、2つの圧力室間の領域は、例えばOリングからなるシール手段によってシールすることができる。このようにして、摩擦溶接継手によって区切られた膨張スリーブの軸端領域は、特に信頼性の高い方法でシールされる。
【0016】
原則として、一実施形態では、前部圧力室および後部圧力室を有する2つの軸方向に連続した圧力室に対して、各圧力室の一端と圧力室間とをそれぞれ摩擦溶接継手によって互いにシールし、スリーブを軸方向に連続した3つの摩擦溶接継手によって本体に固定することも可能である。
【0017】
さらに、スリーブは、2つよりも多い圧力室を形成するように本体に挿入されるかまたは本体を囲むようにしてもよい。
【0018】
好ましい態様では、各摩擦溶接継手は摺動摩擦溶接(sliding friction welding)および/または回転摩擦溶接(rotation welding)によって作られる。その結果、本体とスリーブとの間の少なくとも1つの接続は、特に簡単な方法で製造することができる。2つの構成要素は、通常、摩擦溶接によって端部間で互いに溶接されるが、摺動摩擦溶接は、円筒形と他の円筒形との2つの構成要素が、円筒形構成要素の半径方向外周面と他の円筒形構成要素の対応する半径方向内周面間で互いに接合される摩擦溶接プロセスを意味すると理解される。この場合、摩擦力を加えることができるように、互いに対応する円周面を円錐状に形成することができる。
【0019】
好ましくは、少なくとも、スリーブは、熱処理、特に表面硬化および/または焼戻および/または窒化される。これにより、スリーブの表面、特にその内面を硬化させることができる。特に好ましくは、本体およびそれに接続されたスリーブを窒化し、特にガス窒化し、摩擦溶接継手を介して固定した後に窒化プロセスを行うための装置を設けることができる。好ましい態様では、窒化プロセスは、500~600℃、特に550℃の温度で6~10時間、特に7~9時間の間行われる。このプロセスによって、基本構造は強化され、適切な腐食保護を有する650~750 HV1(ビッカース硬さ)の高い表面硬度が達成される。
【0020】
好ましい実施形態によれば、スリーブは、非合金鋼および/または低合金鋼および/または高合金鋼および/または表面硬化鋼、特に20MnCrS5表面硬化鋼および/またはセラミック材料を有するか、またはそれらから構成される。20MnCrS5表面硬化鋼は、安価で、ほとんど労力をかけずに加工できる。その結果、スリーブを機械加工するために使用される工具の摩耗を容易に管理することができる。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、スリーブは、クランプ効果を達成するために圧力室が加圧されると弾性変形する膨張スリーブとして設計される。この場合、弾性変形可能なスリーブを本体に挿入することができ、スリーブの内面がクランプ面を形成する。この場合、膨張クランプ装置は、膨張チャックとして設計され、クランプ面は、工具を受け取って摩擦的に固定することができる。表面コーティングは、クランプ面を腐食および/または摩耗から保護し、その結果、長寿命となる。
【0022】
他の実施形態によれば、スリーブは本体を取り囲み、スリーブの外面がクランプ面を形成する。この場合、膨張クランプ装置は、部品、特に工具を内部から半径方向にクランプすることができる膨張マンドレルとして設計される。
【0023】
本発明のさらなる実施形態では、本体の軸方向先端部が膨張スリーブ部として設計され、スリーブは膨張スリーブ部に対して軸方向に押し付けられ、少なくとも1つの圧力室は、スリーブと膨張スリーブ部との間に形成され、膨張スリーブ部の内面がクランプ面を形成し、膨張スリーブ部は、圧力室が流体圧媒体によって作用されたときに弾性的に変形し、クランプ効果を達成する。ここでも、膨張クランプ装置は、膨張スリーブ部が本体の一体部分である膨張チャックとして設計される。
【0024】
好ましくは、クランプ面には、特に酸化またはリン酸マンガン処理によって塗布することができる表面コーティングが設けられる。これにより、クランプ面の耐食性および耐摩耗性を改善することができる。好ましくは、耐食性を増大させるために、クランプ面を青色化または酸化して、準黒青色表面とすることができる。次いで、このようにして製造された膨張チャックを仕上げ加工することができ、この場合、材料除去のために硬さが失われ、その硬度は、実施された試験によれば、約550~650HV1である。あるいは、クランプ面は、リン酸マンガン処理によって被覆することができる。これは純粋に化学的なプロセスである。
【0025】
好適には、膨張クランプ装置は、流体圧媒体の圧力を選択的に増加させるように設計された圧力付与手段を有することができ、圧力付与手段は、流体圧媒体供給通路を介して圧力室に作動可能に接続される。したがって、圧力室内の流体圧媒体は、スリーブが半径方向内方または外方に変形するように簡単な方法で加圧することができ、したがって、工具軸を多大な努力なしにクランプすることができる。
【0026】
さらに、本発明の目的は、膨張クランプ装置の製造方法を開示することである。
【0027】
このタスクは、長手方向軸を画定する本体と、本体に挿入されて少なくとも1つの閉じた圧力室を形成するとともに、クランプされるべき部品を膨張チャックの前面から挿入することができるクランプ面を備えた円筒状クランプ部を画定する弾性膨張スリーブの形態のスリーブとを備える膨張チャックの形態の膨張クランプ装置を製造する方法によって解決され、その製造方法は以下のステップを含んでいる。
a)本体の前端面に向かって開口する中心軸方向穴を画定する本体と、本体の中心軸方向穴に挿入可能な円筒状の膨張スリーブ軸を有する膨張スリーブ軸形成用のワークピースとを準備して、少なくとも1つの圧力室を形成するための凹部が膨張スリーブ軸の外面および/または中心軸方向穴を有する本体の内面に形成されるようにする。
b)膨張スリーブ軸を本体の中心軸方向穴に挿入する。
c)本体とワークピースとを互いに軸方向に押圧し、本体および/またはワークピースが長手方向軸を中心に移動しながら、特に長手方向軸を中心に回転して、ワークピースが本体に互いの停止面において摩擦溶接継手により固定されるように、本体およびワークピースの互いに対応する停止面同士が、少なくとも1つの圧力室の前部軸端領域および/または少なくとも1つの圧力室の後部軸端領域において互いに軸方向に押圧し合って摩擦により加熱されるようにする。
d)相対移動を終了し、本体およびワークピースが冷えるようにする。
【0028】
このプロセスでは、本体とワークピースとは、まず、互いに軸方向に整列され、その目的のために、本体とワークピースとは、摩擦溶接機内で確実に固定される。ワークピースは、本体とワークピースとが、少なくとも2つの相互に相関する、特に円周方向の停止面に接触するまで、軸方向の送り運動によって本体に押し込まれる。挿入中または挿入後、本体とスリーブは互いに相対的に回転される。
【0029】
本体とワークピースとが互いに相対的に回転するように設定されている間、ワークピースと本体とは、相関する停止面において、特に軸力によって互いに押圧される。このようにして発生した摺動摩擦は、停止面で本体およびワークピースの材料を加熱し、本体およびワークピースに熱を導入する。ワークピースを材料結合で本体に固定するために、本体およびワークピースの相対回転が減速され、ワークピースおよび本体は、本体および/またはワークピースが変形して溶接ビードを形成し、材料結合が生成されるように、随意的に互いにさらに押し付けられる。
【0030】
ワークピースと本体とが摩擦溶接プロセス全体の間に摩擦溶接機内で固定されるという事実は、膨張スリーブと本体との正確な軸方向整合を確実にする。冷却潤滑剤または防食油の残留物は、一般に摩擦溶接継手の品質に影響を及ぼさないので、ワークピースおよび本体は、指定されたプロセスによって膨張クランプ装置に変換される前に、いかなる洗浄プロセスも受ける必要がない。
【0031】
このプロセスによって、スリーブは、ほとんど努力せずに摩擦溶接によって本体に固定され、結果として得られる圧力室は、確実にシールされる。溶接プロセスは完全に自動化され、生産ラインに統合される。摩擦溶接継手は、その単純な設計のために、従来技術から知られている他の形態の接続、例えばろう付け継手よりも変化が少ない高い強度を有する。
【0032】
好ましくは、ワークピースは、相対運動が終了した後、本体内にさらに押し込むことができる。このようにして、耐久性のある摩擦溶接継手を達成することができ、その溶接ビードは圧力室の隣接する軸端領域に完全に収容することができる。
【0033】
好ましい実施形態によれば、ステップa)~d)において、ワークピースの膨張スリーブ軸を本体に挿入して、長手方向軸の周りに環状に延びる単一の圧力室を形成することができ、膨張スリーブ軸を摩擦溶接継手によって本体の前端および/または後端部に固定することができる。このプロセスでは、膨張スリーブ軸は、摩擦溶接継手によってその端部の少なくとも1つが境界でシールされた単一の環状の周方向圧力室を有するものとして生成される。他端部では、圧力室は、例えばOリングによってシールすることができる。好ましい態様では、圧力室は、それぞれの場合において摩擦溶接継手によってその2つの端部で境界を定めてシールすることができ、それによって、圧力室の特に信頼性の高いシールを達成することができる。
【0034】
さらなる好ましい実施形態によれば、ステップa)~d)において、膨張スリーブ軸を本体に挿入して、軸方向の前後に配置されて長手方向軸の周りに環状に延びる2つの圧力室を形成し、摩擦溶接継手によって本体に固定することができる。このようにすると、2つの圧力室が他方の後方に軸方向に位置するために、クランプされる部品に対するクランプ能力の改善およびより正確な軸方向整合を可能にする膨張チャックを生成することができる。
【0035】
好ましくは、ステップc)において、本体およびワークピースのそれぞれの互いに対応する停止面が、前部圧力室の前部軸端領域および/または後部圧力室の後部軸端領域に形成される。特に好ましくは、それぞれの互いに対応する停止面は、前部圧力室の前部軸端領域および後部圧力室の後部軸端領域に形成することができ、その結果、ワークピースは、材料結合により本体に固定することができる。前部圧力室の前部軸端領域および後部圧力室の後部軸端領域は、摩擦溶接継手を介して区切られ、シールされるため、この軸端領域またはこれらの軸端領域は、特に確実にシールされる。2つの圧力室の間の領域は、シール手段、例えばOリングによってシールすることができる。
【0036】
あるいは、ステップc)では、本体およびワークピースの2つの対応する停止面が2つの圧力室の間に軸方向に形成され、膨張スリーブ軸は、これらの位置で材料結合を用いて本体に固定される。
【0037】
好ましくは、各摩擦溶接継手は、摺動摩擦溶接によって作ることができ、それによって、本体と膨張スリーブ軸との間の少なくとも1つの摩擦溶接継手は、特に簡単な方法で作ることができる。
【0038】
有利には、ステップa)~d)の後、ワークピースの本体の前端面から突出する部分が切断される(ステップe))。したがって、ワークピースの余分な部分が切断された後、1つの弾性膨張スリーブのみが残り、これが本体に挿入されて閉じた圧力室を形成する。
【0039】
好ましい実施形態によれば、中実の膨張スリーブ軸が設けられ、ステップe)の後、膨張スリーブ軸にレセプタクル(クランプ部を形成する凹所)が形成される。したがって、中実材料からなる所定の膨張スリーブ軸には、レセプタクル、特に円筒断面を有するレセプタクルを設けることができる。ワークピースの余分な部分を予め切断することによって、製造されるレセプタクルの深さは、圧力室の長さのみに制限される。中実の膨張スリーブ軸を使用することにより、ステップb)からd)までの間、高い軸力であっても良好な力伝達が保証される。
【0040】
あるいは、膨張スリーブ軸は中空設計であってもよく、膨張スリーブ軸は、ステップb)~d)の間、内側で支持され、クランプ部は、ステップe)の後、膨張スリーブ軸として形成されたスリーブに設けられる。中空の膨張スリーブ軸は、ステップb)~d)の間、摩擦溶接の間に加えられる力の結果としての変形や他の損傷からそれを保護することができるように支持される。必要に応じて、ステップe)に続いて、中空の膨張スリーブ軸内にレセプタクルを生成および/または膨張させることができる。
【0041】
好ましい態様では、既存の取り付け部材を有するワークピースは、熱処理することができ、特に表面硬化および/または焼き入れおよび焼戻および/または窒化することができる。これにより、表面硬度と耐食性を向上させることができる。
【0042】
有利には、膨張スリーブ軸は、非合金鋼および/または低合金鋼および/または高合金鋼および/または表面硬化鋼、特に20MnCrS5表面硬化鋼および/またはセラミック材料を含むことができる。20MnCrS5表面硬化鋼は比較的安価であり、この目的のために使用される切削工具に対して、ほぼ労力無しで管理可能な摩耗状態で機械加工することができる。
【0043】
好ましくは、クランプ面に表面コーティングを施すことができ、特に表面コーティングは酸化またはリン酸マンガン処理によって施すことができる。これにより、クランプ面の耐食性、耐摩耗性および摩擦値を改善することができる。
【0044】
本発明は、また、長手方向軸を画定する本体と、少なくとも1つの閉じた圧力室を形成するために本体を取り囲んでクランプされる部品を前面から押し込むことができるクランプ面をその外面に画定するスリーブとを備えている膨張マンドレルの形態とされた膨張クランプ装置を製造する方法によって解決され、その製造方法は、以下のステップを含む。
【0045】
aa)前端に位置する円筒状の軸部(22)を有する本体(2)と、軸部(22)に押し込むことができる中空膨張スリーブ軸形成用のワークピース(26)とを準備して、軸部(22)外面および/またはワークピース(26)の内面に凹みを形成して、少なくとも1つの圧力室(8)を形成する。
bb)ワークピース(26)を本体(2)に対してスライドさせる。
cc)本体(2)とワークピース(26)とを互いに軸方向に押圧し、本体(2)および/またはワークピース(26)が長手方向軸を中心に移動しながら、特に長手方向軸を中心に回転して、ワークピース(26)が本体(2)に互いの停止面(28)において摩擦溶接継手(14)により固定されるように、本体(2)およびワークピース(26)の互いに対応する停止面(28)同士が、少なくとも1つの圧力室(8)の前部軸端領域(16)および/または少なくとも1つの圧力室(8)の後部軸端領域(17)において互いに軸方向に押圧し合って摩擦により加熱されるようにする。
dd)相対移動を終了し、本体(2)およびワークピース(26)が冷えるようにする。ここで、特に、ワークピース(26)は、相対移動の完了後、本体(2)内にさらに押し込まれる。
【0046】
このプロセスでは、本体とワークピースとは、まず、互いに軸方向に整列され、その目的のために、本体とワークピースとは、摩擦溶接機内で確実に固定される。ここで、ワークピースは、軸方向送り運動である摺動によって本体に押し付けられる。特に、ワークピースは、本体とワークピースとが少なくとも2つの互いに相関する、特に円周方向の停止面に接触するまで、本体に対して押し付けることができる。摺動中または摺動後、本体とワークピースとは互いに相対的に回転する。
【0047】
本体とワークピースとが互いに相対的に回転するように設定されている間、ワークピースと本体とは、相関する停止面において、特に軸力によって互いに押圧される。発生した摩擦の結果、本体およびワークピースの材料が停止面で加熱され、熱が本体およびワークピースに導入される。ワークピースを材料結合で本体に固定するために、本体および/またはワークピースは、溶接ビードを形成して材料結合が生成されるように互いに押し付けられた状態で、その相対回転が停止される。
【0048】
ワークピースおよび本体が摩擦溶接プロセス全体の間に固定されるという事実は、膨張スリーブと本体との正確な軸方向整合を確実にする。冷却潤滑剤または防食油の残留物は、一般に摩擦溶接継手の品質に影響を及ぼさないので、ワークピースおよび本体は、指定されたプロセスによって膨張クランプ装置に変換される前に、いかなる洗浄プロセスも受ける必要がない。
【0049】
このプロセスによって、スリーブは、ほとんど努力せずに摩擦溶接によって本体に固定され、結果として得られる圧力室は、確実にシールされる。溶接プロセスは完全に自動化され、生産ラインに統合される。摩擦溶接継手は、その単純な設計のために、他の従来技術の継手形態、例えばろう付け継手よりも変化が少ない高い強度を有する。
【0050】
好ましくは、ワークピースは、相対運動が終了した後、本体に対してさらに押し付けられる。このようにして、耐久性のある摩擦溶接継手を達成することができ、その溶接ビードは圧力室の隣接する軸端領域に完全に収容することができる。
【0051】
好ましい実施形態によれば、ワークピースは、摩擦溶接継手によって、その前端部および/または後端部において、ステップaa)~dd)で本体に固定され、その結果、ワークピースは、本体を取り囲み、長手方向軸の周りに環状に延びる単一の圧力室を形成する。このプロセスでは、膨張スリーブのほぼ全長にわたって延在する1つの環状の周方向圧力室のみを有するマンドレルが生成され、摩擦溶接継手によってその端部の少なくとも1つが境界でシールされる。他方の端部では、圧力室は、Oリングのようなシール手段によってシールされてもよい。好ましい態様では、圧力室は、各場合において摩擦溶接継手によってその2つの端部で境界とされてシールされ、したがって、圧力室に対して特に信頼性の高いシールを提供することができる。
【0052】
あるいは、ステップaa)~dd)において、ワークピースは、摩擦溶接継手によって本体に固定され、ワークピースは、本体を取り囲んで、軸方向の前後に配置され、長手方向軸の周りに環状に延びる2つの圧力室を形成する。これにより、2つの圧力室が軸方向の前後に配置された膨張マンドレルを生成することが可能となり、これにより、クランプされる部品に対するクランプ能力の改善と、クランプされる部品のより正確な軸方向整合とが可能となる。
【0053】
好ましい態様では、ワークピースは、材料結合を用いて、圧力室間で本体の軸部に軸方向に固定される。さらに好ましくは、ステップcc)において、本体およびワークピースのそれぞれの互いに対応する停止面を前部圧力室の前部軸端領域および/または後部圧力室の後部軸端領域上に形成することができる。特に好ましくは、それぞれの互いに対応する停止面は、前部圧力室の前部軸端領域および後部圧力室の後部軸端領域に形成することができ、その結果、ワークピースは、これらの部分で実質的に結合された態様で本体に固定される。摩擦溶接継手を介して前部圧力室の前端領域および後部圧力室の後端領域で、特に信頼性の高い方法で境界を形成してシールすることができる。2つの圧力室の間の領域は、シール手段、例えばOリングによってシールすることができる。
【0054】
あるいは、ステップcc)では、本体およびワークピースの互いに対応する2つの停止面が2つの圧力室の間の領域に形成され、本体とワークピースとが材料結合によって互いに固定される。ワークピースは、圧力室間の軸方向に配置された単一摩擦溶接継手によって本体に固定される。2つの圧力室間の領域は、摩擦溶接継手によって特に信頼できる方法でシールされ、一方、前部圧力室の前端および後部圧力室の後端は、例えばOリングのようなシール手段によってシールされ得る。
【0055】
通常、摩擦溶接継手は、摺動摩擦溶接によって製造することができる。このようにして、本体と膨張スリーブとの間の少なくとも1つの接続は、特に簡単な方法で製造することができる。
【0056】
好ましくは、ステップaa)~dd)の後、本体の前端面を越えて突出するワークピースの部分が切断される(ステップee))。したがって、ワークピースの余分な部分が切断された後、本体を取り囲んで1つの閉じた圧力室を形成するスリーブのみが残る。
【0057】
有利には、ステップee)の後、本体に固定されたスリーブの外面の少なくとも一部は、特に摩擦溶接継手を作製する際に、および/またはクランプ面を作製することによって生成された溶接ビードを除去する機械加工が行われる。前もって、ステップee)でワークピースの余分な部分を切断することによって、スリーブの横断面のみが機械加工されるが、ワークピース全体の横断面は機械加工されない。これにより、クランプ面の作成が容易になる。
【0058】
好ましい実施形態によれば、クランプ面を有するワークピースは、熱処理することができ、特に、表面硬化および/または焼戻および/または窒化することができる。これは、その表面硬度および耐腐食性、特にクランプ面の表面硬度および耐腐食性を改善することができる。
【0059】
好ましくは、ワークピースは、非合金鋼および/または低合金鋼および/または高合金鋼および/またはセラミック材料および/または表面硬化鋼、特に20MnCrS5硬化鋼を含むか、またはそれらから構成することができる。これは安価であり、この目的のために使用される切削工具対して、ほぼ労力無しで管理可能な摩耗状態で機械加工することができる。例えば、本体の前端面を越えて突出するワークピースの部分を切断することができ、これにより、切削工具の労力をほとんど伴わない管理可能な摩耗状態でクランプ面を生成することができることを意味する。
【0060】
より簡便には、クランプ面に表面コーティングを設けることができる。特に好ましい態様では、表面コーティングは、酸化またはリン酸マンガン処理によって施すことができる。これにより、クランプ面の耐食性、耐摩耗性を向上させ、摩擦値を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】本発明による膨張クランプ装置の一実施形態の縦断面図である。
【
図2】
図1の本体とスリーブとの間に形成された圧力室の一方の軸端領域の縦断面図である。
【
図3】
図1の圧力室の他方の軸端領域の縦断面図である。
【
図4】
図1の膨張クランプ装置の異なる位置における縦断面図である。
【
図5】本発明による膨張クランプ装置の他の実施形態の縦断面図である。
【
図6】
図1の膨張クランプ装置を製造するための本体の縦断面図である。
【
図7】
図1の膨張クランプ装置を製造するためのワークピースの縦断面図である。
【
図9】
図6の本体とその中心軸方向穴に挿入された
図7のワークピースとの縦断面図である。
【
図10】本発明による膨張クランプ装置のさらに他の実施形態の縦断面図である。
【
図12】
図10の膨張クランプ装置のスリーブの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
本発明のさらなる実施形態に関して、添付の図面を参照して、以下にいくつかの実施形態を説明する。
【0064】
図1は、本発明による膨張チャック(1)の一実施形態を示す。膨張チャック(1)は、中空テーパシャフト工具ホルダ(HSK)として設計されており、20MnCrS5表面硬化鋼からなる本体(2)を備えており、この本体(2)は、工作機械の回転駆動主軸に工具軸をクランプするために、左端領域に周知の構成としてのテーパシャンク部(3)を有する。中心軸方向穴(4)が本体(2)の反対側の先端領域に設けられ、そこにスリーブ(5)が挿入される。スリーブ(5)はレセプタクル(クランプ部を形成する凹所)(6)を形成し、そこにドリルやフライスなどの工具の軸を挿入することができ、スリーブ(5)の内面はクランプ面(7)を形成する。
【0065】
スリーブ(5)と本体(2)との間には圧力室(8)が形成されており、これはレセプタクル(6)を取り囲み、レセプタクル(6)と同軸に整列されている。圧力室(8)は、その軸方向の長さがクランプ面(7)の長さにほぼ対応しており、スリーブ(5)の外面および本体(2)の中心軸方向穴(4)の内面にあるリング状の凹部(9)によって形成されている。
【0066】
圧力室(8)は、スリーブ(5)の比較的薄い内壁(10)によってレセプタクル(6)との境界が形成され、本体(2)の壁によって半径方向外側との境界が形成され、本体(2)の壁厚は、スリーブ(5)の内壁(10)の壁厚の数倍である。圧力室(8)は、油のような流体圧媒体で満たされ、流体圧媒体供給通路(11)を介して圧力付与手段に作動可能に接続され、その結果、流体圧媒体の圧力の増加が圧力付与手段を介して選択的に達成される。
図4に見られるように、圧力室(8)は、本体(2)に形成された流体圧媒体供給通路(11)を介して流体圧媒体源と連通しており、工具をクランプするために圧力室(8)を加圧することができる。流体圧媒体源は、それ自体周知の方法で、本体(2)内に形成されたシリンダチャンバによって形成することができ、このシリンダチャンバは、ピストン様アクチュエータによって端部で閉じられ、ピストン様アクチュエータをシリンダチャンバ内にねじ込んで圧力を増加させるか、またはねじ戻して圧力を減少させることができる。流体圧は、流体圧媒体供給通路(11)を介して圧力室(8)に伝達され、レセプタクル(クランプ部)(6)に挿入された工具軸を力適合的に包囲するまで、内壁(10)を弾性的に半径方向内方に膨張させる。
【0067】
図2および
図3において、スリーブ(5)は、それぞれの場合において摩擦溶接継手(14)によって、その前部軸端部(12)および後部軸端部(13)において本体(2)に固定されていることが分かる。それぞれの摩擦溶接継手(14)の形成中に生成される溶接ビード(15)を収容するために、圧力室(8)は、その前部軸端領域(16)およびその後部軸端領域(17)において、圧力室(8)の軸方向の中央領域(18)に対して半径方向に広がっている。
【0068】
図5は、本発明による膨張マンドレル(19)の形態の膨張クランプ装置を示す。膨張マンドレル(19)は、内側から部品をクランプすることを意図しており、左側に示す端部領域(20)で加工機械の主軸にクランプされ得る本体(2)を有する。右側に示す端部領域(21)では、本体(2)は、半径方向外側にスリーブ(5)を担持する軸部(22)を有しており、スリーブ(5)は、2つの摩擦溶接接続部(14)によって本体(2)に固定されている。
【0069】
本体(2)およびスリーブ(5)は、
図5に異なるハッチングで示されている。
図1~
図4に示す膨張チャック(1)とは対照的に、スリーブ(5)は、本体(2)を取り囲んで圧力室(8)を形成し、スリーブ(5)の外面が、クランプされる部品を押すことができるクランプ面(7)を形成する。
【0070】
圧力室(8)は、本体(2)の中央に形成されて流体圧媒体供給通路(11)を介して本体(2)を軸方向に通過する流体圧媒体加圧通路(23)と連通している。流体圧媒体加圧通路(23)は、図示しないクランプねじによって閉じられるねじ穴(24)(25)をその端部領域に有している。部品をクランプするために、クランプねじが本体(2)のねじ穴(24)(25)の1つにねじ込まれ、これにより、流体圧媒体加圧通路(23)、流体圧媒体供給通路(11)および圧力室(8)内の流体圧が増大し、スリーブ(5)は、押し込まれた部品に強制嵌合するために、外側に弾性変形する。
【0071】
図6~
図9は、膨張チャック(1)として設計された
図1~
図4に示す膨張チャック装置の製造方法を示す。この製造プロセスでは、
図6に示すような本体(2)と、
図7および
図8に示すようなワークピース(26)とが使用される。本体(2)は、その前端面に向かって開口する中心軸方向穴(4)を有する。ワークピース(26)は、基本的な中実円筒形状を有し、固体材料で固く作られている。さらに、ワークピース(26)には、本体(2)の中心軸方向穴(4)に挿入可能な膨張スリーブ軸(27)が設けられており、膨張スリーブ軸(27)の外周面および/または中心軸方向穴(4)を画定する本体(2)の内面には、圧力室(8)を形成するリング状凹部(9)の形態の凹部が形成されている。
【0072】
図9は、ワークピース(26)の膨張スリーブ軸(27)が挿入された本体(2)を示す。膨張チャック(1)として設計された膨張クランプ装置を製造するプロセスでは、膨張スリーブ軸(27)は、圧力室(8)の前後軸端領域(16)(17)において、膨張スリーブ軸(27)および本体(2)の互いに相関する停止面(28)の対同士が接触するまで本体(2)に挿入される。
【0073】
その後、本体(2)とワークピース(26)とは、相対回転させられることで、互いに相関する停止面(28)の対同士で互いに押し付けられる。これは、摩擦を生じさせ、これは、停止面(28)の領域にある本体(2)およびワークピース(26)の材料を加熱する。ワークピース(26)と本体(2)とを接合するために、相対回転が停止され、本体(2)とワークピース(26)とが変形することで溶接ビード(15)を形成する。この後、ワークピース(26)は、本体(2)内にさらに押し込まれる。
【0074】
ワークピース(26)が2つの摩擦溶接継手(14)を介して本体(2)に固定された後、本体(2)の前端面から突出するワークピース(26)の部分(29)が切断され、スリーブ(5)の部分だけが残る。続いて、レセプタクル(クランプ部を形成する円筒状の断面を有する凹所)(6)を、例えばドリル加工によって、ワークピース(26)内に製造することができる。
【0075】
本発明は、好ましい実施形態によってさらに説明され、詳細に説明されてきたが、本発明は、開示された実施形態の例によって限定されず、本発明の保護範囲から逸脱することなく、当業者によって、それから他の変形を導出することができる。
【0076】
図10~12は、本発明によるさらなる膨張チャックを示す。第1実施形態の膨張チャック(1)と同様に、膨張チャックは、中空テーパシャフト工具ホルダHSKとして設計され、本体(2)を備え、本体(2)は、工作機械にクランプするための左端領域にテーパシャンク部(3)を有する。レセプタクル(クランプ部を形成する凹所)(6)は、本体(2)の反対側の前端領域に設けられ、そこにドリルまたはフライスのような工具の軸を挿入することができる。本体(2)の軸方向先端は、弾性変形可能な膨張スリーブ(2a)として設計されている。スリーブ(5)は、膨張スリーブ部(2a)に対して軸方向に押し付けられ、スリーブ(5)とレセプタクル(6)を取り囲んで同軸に整列された膨張スリーブ部(2a)との間に圧力室(8)が形成される。軸方向長さがクランプ面(7)の長さにほぼ対応する圧力室(8)は、膨張スリーブ部(2a)の外面およびスリーブ(5)の内面に設けられたリング状凹部(9)によって形成される。
【0077】
圧力室(8)は、膨張スリーブ部(2a)の比較的薄い壁によってレセプタクル(6)との境界が形成され、スリーブ(5)の壁によって半径方向外側との境界が形成され、スリーブ(5)の壁厚は膨張スリーブ部(2a)の壁厚の数倍である。第1の実施形態と同様に、圧力室(8)は、流体圧媒体で加圧することができ、膨張スリーブ部(2a)を内側に弾性的に変形させて、レセプタクル(6)に挿入された部品をクランプすることができる。
【0078】
この実施形態では、本体(2)およびスリーブ(5)は、前後軸端部に摩擦溶接継手(14)によって接合される。膨張スリーブ部(2a)が突出するようになされている本体(2)の後端面は、スリーブ(5)の前端面に当接し、スリーブ(5)の内方に突出するカラーが膨張スリーブ部(2a)の前端面に当接する。軸方向接触面の領域では、部品は摩擦溶接継手(14)によって互いに固定される。それぞれの摩擦溶接継手(14)の形成中に生成される溶接ビード(15)を収容するために、圧力室(8)は、圧力室(8)の軸方向の中央領域(18)に対して半径方向に、その前方軸端領域(16)およびその後方軸端領域(17)で拡大される。また、本体(2)の前端面には、そこから突出する膨張スリーブ部(2a)の周囲に環状溝(30)が形成されている。
【符号の説明】
【0079】
(1):膨張クランプ装置
(2):本体
(2a):膨張スリーブ部
(3):テーパシャンク部
(4):中心軸方向穴
(5):スリーブ
(6):レセプタクル(クランプ部)
(7):クランプ面
(8):圧力室
(9):リング状凹部
(10):スリーブの内壁
(11):流体圧媒体供給通路
(12):前端部
(13):後端部
(14):摩擦溶接継手
(15):溶接ビード
(16):前部軸端領域
(17):後部軸端領域
(18):軸方向の中央領域
(19):マンドレル
(20):左側の端部領域
(21):右側の端部領域
(22):本体の軸部
(23):流体圧媒体加圧通路
(24):後ねじ穴
(25):前ねじ穴
(26):ワークピース
(27):膨張スリーブ軸
(28):停止面
(29):突出する部分
(30):環状溝
【国際調査報告】