(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】二相性骨プレート
(51)【国際特許分類】
A61B 17/80 20060101AFI20230125BHJP
【FI】
A61B17/80
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022531494
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(85)【翻訳文提出日】2022-07-22
(86)【国際出願番号】 CH2020050012
(87)【国際公開番号】W WO2021102591
(87)【国際公開日】2021-06-03
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591073555
【氏名又は名称】アーオー テクノロジー アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビンドルフ,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】エパリ,デバカラ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL27
4C160LL29
4C160LL33
(57)【要約】
骨プレート(1)であって、下面(2)、上面(3)、下面と上面との間で測定される最大厚さ、左側面(4)、右側面(5)、縦軸線(6)、及び、下面から上面まで延びる複数のプレート穴(7)を有し、左側面から右側面まで延びるとともに縦軸線と側面間の中央平面(16)とに平行な平面内で測定される幅を有するスロット(8)を下面(2)に更に有し、(i)スロットによって画定される中空空間が、左側面から右側面まで真っ直ぐな円筒の形態で延在し、(ii)スロットは、骨プレートがスロットの幅を広げようとする方向で縦に曲げられるときにスロットの開口を制限するアンダーカット特徴部(9)を備える、骨プレート(1)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨プレート(1)であって、下面(2)、上面(3)、下面及び上面(2,3)間で測定される最大厚さT、左側面(4)、右側面(5)、縦軸線(6)、及び、下面(2)から上面(3)まで延びる複数のプレート穴(7)を有し、左側面(4)から右側面(5)まで延びるとともに縦軸線(6)と側面(4,5)間の中央平面(16)とに平行な平面内で測定される幅Wを有するスロット(8)を下面(2)に更に有し、
(i)スロット(8)によって画定される中空空間が、左側面(4)から右側面(5)まで真っ直ぐな円筒の形態で延在し、
(ii)スロット(8)は、骨プレート(1)がスロット(8)の幅を広げようとする方向で縦に曲げられるときにスロット(8)の開口を制限するアンダーカット特徴部(9)を備える、
ことを特徴とする骨プレート(1)。
【請求項2】
縦軸線(6)と側面(4,5)間の中央平面(16)とに平行な平面内で測定されるスロット(8)の幅Wが可変であることを特徴とする、請求項1に記載の骨プレート(1)。
【請求項3】
アンダーカット特徴部(9)は、縦軸線(6)と側面(4,5)間の中央平面(16)とに平行な平面内でS字形、Z字形、又は、W字形を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の骨プレート(1)。
【請求項4】
アンダーカット特徴部(9)の寸法は、骨プレート(1)がスロット(8)の幅を広げようとする方向で縦に曲げられるときに、下面(2)の延長が最大3mm、好ましくは最大1mmに制限されるように選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の骨プレート(1)。
【請求項5】
スロット(8)は、縦軸線(6)の方向で骨プレート(1)の下面(2)において測定される0.1~1.3mmの範囲、好ましくは0.15~0.30mmの範囲の幅Wを有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の骨プレート(1)。
【請求項6】
スロット(8)は、骨プレート(1)の上部で「T」又は「L」の形状で構成され、「T」又は「L」の垂直脚の自由端部がスロット(8)のアンダーカット特徴部(9)へと延び、「T」の2つの水平脚又は「L」の水平脚は、骨プレート(1)の縦軸線(6)の方向で延び、好ましくは湾曲されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の骨プレート(1)。
【請求項7】
骨プレート(1)の下面(2)におけるスロット(8)の壁は、スロット(8)の閉鎖時に平行になるように互いに対して角度付けられることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の骨プレート(1)。
【請求項8】
スロット(9)の寸法は、下面(2)で測定される幅Wが0に等しくなるように、骨プレート(1)の下面(2)におけるスロット(6)の完全な閉鎖時に下面(2)の長さが最大1mm、好ましくは最大0.3mm短くされるべく選択されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の骨プレート(1)。
【請求項9】
スロット(8)は、プレート(1)が少なくとも1.0°、好ましくは少なくとも1.5°の量まで縦に曲がることができるようにすることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の骨プレート(1)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の骨プレート(1)を製造する方法であって、スロット(8)がワイヤ浸食又はウォータージェット切断プロセスを使用して形成されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、請求項1の前文に係る骨プレート及び、請求項10の前文に係る骨プレートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二相性の剛性挙動を示す骨プレートは、二次的な骨治癒を促進する。これらの骨プレートは、低い機能的負荷で必要な断片間動作を許容し(可撓性相)、より高い大きさの機能的負荷 でスロットが閉じるときに前記動作を最大に制限する(剛性相)。したがって、これらの骨プレートは、機能的負荷の大きさとは殆ど無関係な制御された動作を骨折に対して与える。それにより、(i)機械的に悪い状態によって引き起こされる治癒合併症を回避することができ、(ii)骨癒合までの平均時間を短縮することができる。
【0003】
0.5mm(0.2~1mm)の断片間動作は、異なる骨折サイズ(1、2及び6mmが骨折の大部分をカバーする)で良好な治癒転帰をもたらすことが分かった。最適化されたスロット幅を有する既知の骨プレートは、骨折の過剰刺激を回避し、それにより、肥大性の癒合遅延及び癒合不能などの治癒合併症をもたらし得る。
【0004】
2.関連技術の説明
二相性骨プレートは、国際公開第2017/024416号から知られている。骨プレートの引張力及び外反曲げに対する抵抗を与えるために、この既知の骨プレートは、骨プレートの下面から上面に向かって延在するとともに、骨プレートの下面へ向かう視野において「W」の形態に沿って骨プレートを横切って延在する下側セクションを有するスロットを備える。このW字形状は、骨プレートの縦軸線に沿って骨プレートの剛性セクションのうちの一方から突出して拡大された自由端部を有する鼻部と、他方の剛性セクションの凹面状に形成された隣り合う端部とによって形成され、凹面は鼻部のための包囲部を形成し、それにより、包囲部に対する鼻部の動きが骨プレートの縦軸線に沿う両方向で制限される。更に、スロットの中央セクションは、スロットの上側セクションに向かって増大する幅を有し、スロットの上側セクションは、骨プレートの縦軸線の方向に延びる2つの湾曲脚を有する。スロットの下側セクションは略円筒形状を有し、略円筒形状は、骨プレートの下面上にW字形の基部を有するとともに、垂直に延びる、すなわち、骨プレートの下面に対して直交して延びる周面を有する。対照的に、スロットの中央セクション及び上側セクションはそれぞれ、骨プレートの側面上にそれらの基部を有する略円筒形の形状を有し、一方、それらの周面は、横方向に延びる、すなわち、骨プレートの2つの側面間で縦軸線に対して直交して延びる骨プレートの横軸線と平行に延びる。スロットの中央セクション及び上側セクションの円筒の中心軸線がスロットの下側セクションの円筒の中心軸線に対して直交して延びるという事実に起因して、下側セクション並びに中央セクション及び上側セクションは、スロットの複雑で高価な製造をもたらす別個のその後の作業プロセスで製造されなければならない。
【0005】
国際公開第2017/024416号に係るプレートの窓サイズは、プレートの下面におけるスロット特徴部の幅Wによってのみ決定される。したがって、(先の発明で開示されたように)下側プレート表面に位置されるアンダーカット特徴部によってスロットの閉鎖だけでなく開放も制限することは直感的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、二相骨プレート、及び、引張力及び外反曲げに対する二相性骨プレートの抵抗を低減することなく、単一の製造ステップで骨プレートの製造を可能にする二相骨プレートの製造方法を提供することである。本発明の更なる目的は、異なるプレート部品を組み立てる必要なく(0.3mm未満の)小さいスロット幅を製造する可能性である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、請求項1の特徴を備える骨プレート及び、請求項10の特徴を備える骨プレートの製造方法によりもたらされる問題を解決する。
【0009】
本発明に係る骨プレートの利点は、本質的に、
-標準的なワイヤ浸食又はウォータージェット切断プロセスを使用して、単一のワークピースから単一の製造ステップで直線状のスロットを形成できる、
という点において見ることができる。それにより、製造時間、複雑さ、ひいては製造コストが低減され、及び、
-非生理学的負荷条件下での骨プレートの壊滅的な破損(外反曲げ)を防止することができる。
【0010】
更に、アンダーカット特徴部(開放リミッタ)を下側プレート表面から離れて異なる位置及び向きにシフトさせるという本発明の着想は、以下の更なる予想外の利点をもたらす。
・ワイヤ浸食などの確立された堅牢な製造プロセスを伴う、単一の製造ステップにおけるアンダーカット特徴部を含むスロットの形成可能性。
・0.3mm未満の所望のスロット幅を有するアンダーカット特徴部を含むスロットの形成可能性。他の製造プロセス、例えばシンク浸食は、そのような狭いスロットを生成することができない。異なる部品からの別の組み立てを回避することができる。
・スロット閉鎖時の下側プレート表面における接触領域は、骨プレートの全幅にわたって平坦な表面になり、それにより、均一で分散した接触を可能にし、粒子摩耗の発生を制限する。非直線状であるが湾曲したスロット(例えば、オメガ)は、骨プレートの一定でない屈曲線に起因して均一なスロット閉鎖を可能にしない。
【0011】
本発明に係る骨プレートは、標準的な骨プレートと比較して、強度[破壊に対する2倍を超える極限荷重(偏心軸線方向圧縮)]及び疲労性能(破壊に対する4倍を超えるサイクル)のかなりの増大を示す。これにより、臨床インプラント破壊のリスクが大幅に低減される。
【0012】
本発明の更なる有利な実施形態は、以下のように述べることができる。
【0013】
特別な実施形態において、縦軸線と側面間の中央平面とに平行な平面内で測定されるスロットの幅Wは可変である。この構成は、スロット幅が上面に向かって、例えば応力分布特徴を成すべくT字形で著しく広がることができるという利点を可能にする。
【0014】
他の実施形態において、アンダーカット特徴部は、縦軸線と側面間の中央平面とに平行な平面内でS字形、Z字形又はW字形を有する。アンダーカット特徴部のS字形、Z字形又はW字形に起因して、骨プレートのねじれに対する抵抗を更に与える2つの隣り合う突起が形成される。
【0015】
更なる実施形態において、アンダーカット特徴部の寸法は、骨プレートがスロットの幅を広げようとする方向で縦に曲げられるときに、下面の延長が最大3mm、好ましくは最大1mmに制限されるように選択される。
【0016】
更なる実施形態において、スロットは、縦軸線の方向で骨プレートの下面において測定される0.1~1.3mmの範囲、好ましくは0.15~0.30mmの範囲の幅Wを有する。
【0017】
更なる実施形態において、スロットは、骨プレートの上部で「T」又は「L」の形状で構成され、「T」又は「L」の垂直脚の自由端部がスロットのアンダーカット特徴部へと延び、「T」の2つの水平脚又は「L」の水平脚は、骨プレートの縦軸線の方向で延び、好ましくは湾曲される。
【0018】
更なる他の実施形態において、骨プレートの下面におけるスロットの壁は、スロットの閉鎖時に平行になるように互いに対して角度付けられる。スロットは、元々平行な壁の傾斜をもたらし、したがって閉鎖時にスロットの線接触をもたらす骨プレートの屈曲によって変形する。これも、先と同様に、目立った金属摩耗を接触領域にもたらし得る。傾斜を補償するための角度付けられたスロットの形成は、接触面積を増大させ、したがって摩耗を低減する。
【0019】
他の実施形態において、スロットの寸法は、下面で測定される幅Wが0に等しくなるように、骨プレートの下面におけるスロットの完全な閉鎖時に、下面の長さが最大1mm、好ましくは最大0.3mm短くされるべく選択される。
【0020】
他の実施形態において、スロットは、プレートが少なくとも1.0°、好ましくは少なくとも1.5°の量まで縦に曲がることができるようにする。
【0021】
更なる実施形態では、骨プレートが2つ以上のスロットを備える。
【0022】
他の実施形態において、骨プレートは、好ましくは締結具を受けるのに適したねじ穴の形態で、骨治癒センサを取り付けるための手段を更に備える。
【0023】
他の実施形態において、骨プレートは、骨プレートの下面で測定されるスロットの幅Wが0よりも大きいときにスロットを伴わない従来の骨プレートと比較して可撓性セクションの曲げ剛性が75%減少されるとともに、偏心軸線方向圧縮下で骨プレートの下面で測定されるスロットの幅Wが0に等しいときに、スロットを伴わない従来の骨プレートと比較して、可撓性セクションの曲げ剛性が75%増大されるように構成される。スロットを伴わない従来の骨プレートと比較して約75%の曲げ剛性の前述の増大は、負荷モードに大きく依存し、著しく高くなることができる。
【0024】
他の実施形態において、スロットの寸法は、骨プレートが、最大で20°の量まで、好ましくは最大で10°の量まで、縦にスロット付きでないプレートの固有の曲げ性に加えて、曲がることができるようにされるように選択される。
【0025】
他の実施形態において、縦軸線の方向で骨プレートの下面において測定されるスロットの幅Wは、0.25mmよりも大きく、好ましくは0.20mmよりも大きい。
【0026】
更に他の実施形態において、縦軸線の方向で骨プレートの下面において測定されるスロットの幅Wは、0.30mm未満、好ましくは0.25mm未満である。
【0027】
更なる実施形態では、骨プレートは6mm~13mmの範囲の最大厚さを有する。
【0028】
更なる実施形態において、骨プレートは、好ましくは大腿骨上で使用するために、10mm~12mmの範囲の厚さを有する。
【0029】
更なる実施形態において、骨プレートは、好ましくは上腕骨又は脛骨上で使用するために、4mm~9mmの範囲の厚さを有する。
【0030】
他の実施形態において、骨プレートは、スロットの位置で縦軸線に対して垂直に下面において測定される、14mm~22mmの範囲、好ましくは17mm~21mmの範囲の幅を有する。
【0031】
他の実施形態において、骨プレートの下面から10mm~30mmのオフセットで骨プレートの縦軸線と略平行に作用する、50~400Nの範囲、好ましくは100~300Nの範囲の力は、幅Wが0に等しくなるように、骨プレートの下面でスロットを閉じるのに十分である。
【0032】
更なる実施形態において、スロットは、骨プレートの縦断面に見られる湾曲形状を有し、湾曲形状は、下面から上面に向かって拡大する。
【0033】
好ましくは、プレート厚さTは、スロットから骨プレートの両端部に向かって徐々に減少する。
【0034】
更なる実施形態において、複数のプレート穴のうちの少なくとも1つは、所定の角度で角度安定係止ねじを受けるように構成される。
【0035】
更なる実施形態において、複数のプレート穴のうちの少なくとも1つは、可変角度係止ねじを受けるように構成される。
【0036】
他の実施形態において、プレート穴は、異なる直径の骨ねじを受けるために異なるサイズを有する。
【0037】
好ましくは、骨プレートは、チタン又はチタン合金、好ましくはステンレス鋼から形成される。
【0038】
好ましくは、骨プレートは、骨折の治療のために使用される。
【0039】
更なる実施形態において、スロットは、弾性生体適合性膜によって完全に又は部分的に覆われ、膜は、好ましくはマイクロ及びナノ金属摩耗粒子に対して不透過性である。これにより、断続的なスロット閉鎖接触によって発生する潜在的な摩耗粒子を、膜内に閉じ込めることができるという利点を達成することができる。
【0040】
更なる実施形態において、骨プレートは、特定の解剖学的領域の統計的に導出された形状に予め輪郭付けられる。
【0041】
本発明の更なる態様によれば、本発明に係る骨プレートの製造方法が提供され、スロットはワイヤ浸食又はウォータージェット切断プロセスを使用して形成される。
【0042】
好ましくは、スロットは、浸食又は切断器具で骨プレートを側面のうちの一方へと貫通するとともに、反対側の側面に向けて器具を真っ直ぐに誘導し、それにより貫通スロットを形成することによって生成される。
【0043】
以下では、以下の添付の図面を参照して、本発明の特別な実施形態を一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明に係る骨プレートの一実施形態の斜視図を示す。
【
図7】本発明に係る骨プレートの他の実施形態の中央部の側面図を示す。
【
図8】本発明に係る骨プレートの更に他の実施形態の中央部の側面図を示す。
【
図9】本発明に係る骨プレートの更なる実施形態の中央部の側面図を示す。
【
図10】本発明に係る骨プレートの更なる実施形態の中央部の側面図を示す。
【
図11】本発明に係る骨プレートの更なる実施形態の中央部の側面図を示す。
【
図12】本発明に係る骨プレートの更なる実施形態の中央部の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1~
図6は、本発明に係る骨プレート1の典型的な実施形態を示し、骨プレート1は、下面2、上面3、下面及び上面2,3間で測定される最大厚さT、左側面4、右側面5、縦軸線6、及び、下面2から上面3まで延びる複数のプレート穴7を含む。更に、骨プレート1は、左側面4から右側面5まで延びるスロット8を下面2に備える。スロット8は、縦軸線6と側面4,5間の中央平面16とに平行な平面内で測定される0.15mmの幅Wを有する。スロット8によって画定される中空空間は、直線状の円筒(右円筒とも呼ばれる)の形態を成して左側面4から右側面5まで延在し、スロット8は、骨プレート1がスロット8の幅を広げようとする方向で縦に曲げられるときにスロット8の開口を制限するアンダーカット特徴部9を備える。
【0046】
典型的であるが限定的ではなく、スロット8のアンダーカット特徴部9は、縦軸線6と側面4、5とに平行な平面内でS字形状を有し、それにより、S字形状の2つの弓形部によって、2つの相補的な突起13a、13b(
図5)が形成される。スロット8のアンダーカット特徴部9は、骨プレート1の下部、すなわち、骨プレート1の下面2により近い骨プレート1の一部分に位置される。
【0047】
S字形状は、「S」の1つの弓形部がスロット8の垂直セクションへと延在するように縦軸線6の方向で直立する「S」として構成され、スロット8は、骨プレート1の下面2から骨プレート1の上面3に向かって延在するとともに、縦軸線6と側面4、5間の中央平面16とに平行な平面内で骨プレート1の下面2において測定される幅Wを有する。S字形スロット8によって形成される相補的な突起13a、13bは、無負荷の骨プレート1の場合、骨プレート1の下面2で測定されるスロット8の幅Wよりも小さい又は僅かに大きくてもよいスロット8の幅だけ互いに離間され、それにより、2つの突起13a、13bは、引張力が骨プレート1の下面2に生じることに伴って骨プレート1をこの方向への更なる曲げに抗して及び骨プレート1の縦軸線6の周りのねじれに抗してロックするように、骨プレート1が曲げられるときに、左側面4から右側面5まで互いに係合する。
【0048】
図1~6に示される実施形態において、スロット8は、骨プレート1の上部、すなわち、骨プレート1の上面3により近い骨プレート1の部分において「T」の形状を伴って構成される。これにより、「T」の垂直脚の自由端部はスロットのS字形部分へと延び、「T」の2つの水平脚は、湾曲されて骨プレート1の縦軸線6の方向に延びる。
【0049】
スロット8に起因して、骨プレート1の屈曲剛性(曲げ剛性とも呼ばれる)は、スロット8の領域で著しく低下され、それにより、骨プレート1は、3つの縦セクション、すなわち、スロット8の領域の可撓性セクション10と、2つの剛性セクション11a、11bとに分割され、各剛性セクションは、骨プレート1の一方の側端部まで延在する。プレート穴7は、プレート穴7を貫通して延びて骨片に固定される骨締結具が骨プレート1の剛性セクション11a、11bに配置されるように、剛性セクション11a、11bに位置される。したがって、患者の体重に起因して又は患者により及ぼされる力に起因して骨プレート1に作用する負荷は、骨プレート1の剛性セクション11a、11bに加えられる。可撓性セクション10において、骨プレート1は、上側によって、すなわち、スロット6の「T」字形の水平脚と骨プレート1の上面3とによって垂直に制限される梁形状架橋部12として形成される。
【0050】
骨プレート1の剛性セクション11a、11bと比較して架橋部12の曲げ剛性が低下しているため、骨プレート1は最初に可撓性セクション10で曲がる。このようにして加えられる曲げ負荷の下で、圧縮力及び引張力が縦軸線6の方向で発現し、これらの力が骨プレート1に応力をもたらす。加えられた曲げ荷重によってもたらされる曲げモーメントの影響がスロット8を閉じる傾向がある場合、最大圧縮応力はスロット6の上側に見られ、一方、最大引張応力は上面3に見られる。
【0051】
スロット8の上側14は、「T」の2つの水平脚に沿って延びる。架橋部12の撓みは、曲げモーメントによって架橋部12にもたらされる応力よりも架橋部12の長さに大きく依存するため、骨プレート1の可撓性セクション10の形態は、骨プレート1の下面2でスロット8を閉じるのに必要な所望の撓みに関して、及び架橋部12に生じる最大応力に関して最適化されることができる。更に、「T」の2つの水平脚の湾曲形態に起因して、スロット8の上側14と骨プレート1の上面3との間で測定される架橋部12の高さは、架橋部12の長さに沿って、架橋部12の縦中間面の最小高さから、骨プレート1の架橋部12から剛性セクション11a、11bへの移行部における最大高さまで変化する。縦軸線6に沿う特定の位置における架橋部12の曲げ剛性は、この位置における架橋部12の高さに依存し、それにより、架橋部12は、架橋部12の応力分布を最適化するように曲げ剛性の変化を特に適合させることができる可変曲げ剛性を伴って構成されることができる。
【0052】
或いは、スロット8のT字形と比較して同様の効果を、骨プレート1の上部、すなわち、骨プレート1の上面3により近い骨プレート1の部分で「L」の形状を有するスロット8の形態によって達成することができる。これにより、「L」の垂直脚の自由端部がスロット8のS字形部へと延び、「L」の水平脚は、直線状であるとともに、骨プレート1の縦軸線6の方向に延びる(
図7)。
【0053】
オイラー・ベルヌーイ曲げ理論によれば、架橋部12の中立軸の曲率は、曲げモーメントに比例するとともに、曲げ剛性(屈曲剛性)に反比例し、曲げ剛性は積E*Iとして定義され、ここで、Eは弾性率又はヤング率とも呼ばれ、Iは架橋部12の断面の断面二次モーメントである。
【0054】
スロット8の狭窄及び閉鎖に関しては、架橋部12の撓みのみが関連するが、骨プレート1の剛性セクション11a、11bの最終的な曲げ変形は無視することができる。
【0055】
骨プレート1の可撓性相から剛性相への移行は、スロット8が骨プレート1の下面2で閉じるときに起こり、したがって、前述したように、曲げモーメント、架橋部12の曲げ剛性、及び、骨プレート1の縦軸線6の方向で測定される架橋部12の長さの関数である架橋部の撓みに依存する。
【0056】
典型的であるが限定的ではなく、
図1~6に示される、本発明に係る骨プレート1の実施形態は、大腿骨遠位端、上腕骨近位端又は遠位/近位脛骨などの骨幹端骨折への適用のために構成される。骨プレート1の1つの剛性セクション11bはスプーン形状であり、また、スロット8は、スプーン形状の剛性セクション11bの近くに配置される。更に、スプーン形状の剛性セクション11bのプレート穴7は、骨プレート1上の末端に配置される拡大部に配置され、一方、他方の剛性セクション11aのプレート穴7は、骨プレート1の縦軸線4に沿って配置されて互いに均等に離間される(
図6)。これらの手段により、骨プレート1は、特定の解剖学的領域の統計的に導出された形状に予め輪郭付けられる。
【0057】
典型的には、これに限られないが、骨プレート1はステンレス鋼から形成される。別の実施形態において、骨プレート1は、チタン又はチタン合金から形成されてもよい。骨プレート1は、スロット8を有する領域からプレート1の両端部に向かって徐々に減少するプレート厚さTを有する。上腕骨又は脛骨に対する骨プレート1の具体的な適用のために、スロット8の領域における厚さTは、典型的には約8mmになるが、これに限定されない。更に、骨プレート1は、典型的であるが限定的ではなく、スロット8の位置で縦軸線6に対して垂直に下面2で測定される約17mmの幅を有する。或いは、大腿骨上で使用するために、骨プレート1は、典型的であるが限定的ではない約12mmのプレート厚さTをスロット8の領域で有してもよい。
【0058】
骨プレート1は、二次的な骨治癒を促進するために、すなわち、低い機能的負荷で必要な断片間動作を許容する(可撓性相)とともにスロットがより高い大きさの機能的負荷で閉じるときにこの動作を最大に制限する(剛性相)ために、二相性の剛性挙動を有する。可撓性セクション10の曲げ剛性は、骨プレート1の下面2で測定されるスロット8の幅Wが0よりも大きいときにスロットを有さない従来の骨プレートと比較して75%低下され(可撓性相)、偏心軸線方向圧縮において骨プレート1の下面2で測定されたるスロット8の幅Wが0に等しいときにスロットを有しない従来の骨プレートと比較して75%増大される(剛性相)。
【0059】
プレート穴7は、可変角度孔として構成されることができる。或いは、プレート穴7のうちの1つ以上は、所定の角度で角度安定係止ねじを受けるように構成されることができる。この目的のために、1つ以上のプレート穴7は、円錐形とすることができ、又は、円錐形の雌ねじを備えることができる。骨プレート1は、骨治癒センサを取り付けるための手段を与えるように締結具を受けるのに適した、寸法下のねじ穴15を更に備える。他の別の実施形態において、プレート穴7は、異なる直径の骨ねじを受けるために異なるサイズを有してもよい。
【0060】
典型的であるが限定ではなく、スロット8は、縦軸線6の方向で骨プレート1の下面2において測定される約0.3mmの幅Wを有する。スロット8の幅Wは、骨プレート1が縦方向に同様のスロット付きでないプレートの固有の曲げ性に加えて最大で約10°まで曲がることができるようにするとともに、下面2で測定される幅Wが0に等しくなるように。骨プレート1の下面2でスロット8を完全に閉鎖したときに下面2の長さを最大で約1mm短くすることを可能にするべく選択される。それにより、骨プレート1の下面2から約20mmのオフセットで骨プレート1の縦軸線6と略平行に作用する約200Nの力は、幅Wが0に等しくなるように骨プレート1の下面2でスロット8を閉じるのに十分である。アンダーカット特徴部9の領域におけるスロット寸法は、スロット8の幅を広げようとする方向で骨プレート1が縦に曲げられるときに下面2の延長が典型的であるが限定ではなく最大2mmに制限されるような寸法である。
【0061】
図9~
図12は、側面4、5間の中央平面16と平行な平面内で見たスロット8の異なる形態においてのみ
図1~
図6の実施形態とは異なる、本発明に係る骨プレート1の別の実施形態を示す。それにより、
図10は、S字形ではなく、縦軸線6と側面4、5間の中央平面16とに平行な平面内でZ字形のアンダーカット特徴部9を示し、また、
図9は、縦軸線6と側面4、5間の中央平面16とに平行な平面内でW字形のアンダーカット特徴部9を示す。このW字形のアンダーカット特徴部9は、縦軸線6に沿って骨プレート1の剛性セクション11a(
図3)のうちの1つから突出するとともに拡大された自由端部を有する鼻部17を形成する骨プレート1の他方の剛性セクション11b(
図3)の隣り合う端部は、包囲部18に対する鼻部17の動きが骨プレート1の縦軸線6に沿う両方向で制限されるように鼻部17を受ける包囲部18を形成するべく凹状に形成される骨プレート1の非変形状態において、スロット8は、下面2で測定される幅Wを伴って鼻部17と包囲部18との間で延在する包囲部18は、側面4、5間の中央平面16と直交する視野において180°を超えて鼻部17を取り囲み、それにより、架橋部12の曲げは、引張力及び外反曲げに対する抵抗を与えるべく、両方向で、すなわち、最大引張力が上面3に生じる第1の方向及び最大圧縮力が上面3に生じる第2の方向で制限される。アンダーカット特徴部のS字形、Z字形又はW字形に起因して、骨プレートのねじれに対する抵抗を更に与える2つの隣り合う突起が形成される。
図11は、骨プレート1の上部、すなわち、骨プレート1の上面3により近い骨プレート1の部分に「T」の形状を有する
図1~
図6のスロット8と同様に構成されるが、「S」の1つの弓形部が延入するとともに、骨プレート1の下面2から上面3に向かって延びるスロット8の垂直セクションが「T」の2つの水平脚間の中央に位置されるようにスロット8のS字形部分へと「T」の垂直脚の自由端部が延びる、スロット8を示す。更なる別の実施形態が
図12に示され、この実施形態は、骨プレート1の下面2におけるスロット8の壁がスロット8の閉鎖時に平行になるように角度αだけ互いに対して角度付けられる点においてのみ
図11の実施形態とは異なる。これにより、負荷が骨プレート1に加えられる際のスロット8の閉鎖時にスロット8の壁間の接触面積が増大され、それにより、接触領域における金属摩耗が減少される。
【0062】
前述したように、スロット8の幅は、応力分布特徴部を形成するために、例えばT字形状で骨プレート1の上面3に向かって著しく広がることができる。
図8に示される骨プレート1の別の実施形態において、縦軸線6と側面4、5間の中央平面16とに平行な平面内で測定されるスロット8の幅Wは、T字形スロット8の水平脚に沿って著しく拡大される。これにより、骨プレート1の可撓性セクション10は、スロット8の上側14から延在する区画室19を備える。区画室19は、骨プレート1の下面2においてスロット8を介して開放している。区画室19は、好ましくは歪み、変位、荷重又は圧力あるいは温度を測定するための、1つ以上のセンサ(図示せず)を収容するのに適している。これに代えて、又は加えて、区画室19は、1つ以上のアクチュエータを収容し、インプラントの機械的特性を変更し、又は、制御放出のために薬物を貯蔵し、或いは、カルス成長のための空間を提供するのに適している。
【0063】
更なる別の実施形態において、スロット8は、弾性生体適合性膜によって完全に又は部分的に覆われ、膜は、断続的なスロット閉鎖接触によって生成される潜在的な摩耗粒子を膜に閉じ込めることができるように、マイクロ及びナノ金属摩耗粒子に対して不透過性である。或いは、スロット8は、「デッドスペース」を減少させて摩耗粒子を結合するためにより柔らかい材料で充填されてもよい。
【0064】
本発明に係る骨プレート1の製造方法によれば、スロット8は、浸食又はウォータージェット切断器具を用いて側面4,5のうちの一方へと骨プレート1を貫通するとともに反対側の側面に向けて器具を真っ直ぐに誘導し、それにより貫通スロット8を形成することによってスロット8を生成するべくワイヤ浸食又はウォータージェット切断プロセスを使用して形成される。
【0065】
本発明をその特定の実施形態と併せて説明してきたが、多くの代替案、修正、及び、変形が当業者には明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲に入る全てのそのような代替案、修正、及び、変形を包含することが意図される。
【0066】
明確にするために別個の実施形態との関連で記載される本発明の特定の特徴が、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことも分かる。逆に、簡潔にするために単一の実施形態との関連で記載される本発明の様々な特徴は、別個に又は任意の適切な部分的組み合わせで又は本発明の任意の他の記載された実施形態で適切であるように提供されてもよい。様々な実施形態との関連で記載される特定の特徴は、実施形態がそれらの要素を伴うことなく動作不能でない限り、それらの実施形態の本質的な特徴と見なされるべきではない。
【国際調査報告】