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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-06
(54)【発明の名称】野球の球種選択通信システム
(51)【国際特許分類】
   A63B 71/06 20060101AFI20230130BHJP
   H04R 1/00 20060101ALI20230130BHJP
   H04R 1/10 20060101ALI20230130BHJP
【FI】
A63B71/06 T
H04R1/00 317
H04R1/10 101Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022530665
(86)(22)【出願日】2020-11-17
(85)【翻訳文提出日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 US2020060893
(87)【国際公開番号】W WO2021113073
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】62/974,517
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522204692
【氏名又は名称】ジョン アンドリュー ハンキンス
(71)【出願人】
【識別番号】522204706
【氏名又は名称】クレイグ アンソニー フィリセッティ
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン アンドリュー ハンキンス
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ アンソニー フィリセッティ
【テーマコード(参考)】
5D005
5D017
【Fターム(参考)】
5D005BA01
5D017AB11
(57)【要約】
【課題】捕手と投手とが球種選択について安全な方法で連絡することのできる通信システムに関する。
【解決手段】本実施の形態に係る野球の球種選択通信システムは、n個の異なる球種の中から1つの球種を選択する球種選択作動部と、選択された球種に対応する球種選択信号を無線発信する無線発信部とを含む、球種選択発信部と、球種選択信号と、選択された球種選択信号に対応する球種を可聴可能に示すように構成された受信部とを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
n個の異なる球種の中から1つの球種を選択する球種選択作動部と、選択された球種に対応する球種選択信号を無線発信する無線発信部とを含む、球種選択発信部と、
前記球種選択信号と、選択された球種選択信号に対応する球種を可聴可能に示すように構成された受信部とを備える、野球の球種選択通信システム。
【請求項2】
選択された球種に対応する暗号化信号を生成する信号発生部と、
前記信号発生部と接続し、前記暗号化信号に対応する球種選択を示す暗号化無線信号を送信するように構成された無線発信部と、を含む発信部と、
受信した前記暗号化無線信号を解読し、受信した前記暗号化信号に基づいて選択された球種に対応する記憶された音声ファイルを選択し、前記音声ファイルから音声信号を生成する無線受信部と、
前記音声信号を人間が知覚可能な信号に変換する少なくとも1つの骨伝導体と、を備える、野球の球種選択通信システム。
【請求項3】
前記無線発信部は、スペクトラム拡散信号として前記暗号化無線信号を発信する、スペクトラム拡散無線発信機である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記スペクトラム拡散信号は、周波数ホッピングスペクトラム拡散(FHSS)の発信プロトコルを使用して発信される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記スペクトラム拡散信号は、直接スペクトラム拡散(DSSS)の発信プロトコルを使用して発信される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記発信部は、ユーザが選択した球種によって作動し、複数の人間が操作可能な要素を含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項7】
前記人間が操作可能な要素は、複数のボタンである、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記発信部は、手首に装着される装置である、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記発信部は、タブレットデバイスである、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記受信部は、野球帽のスウェットバンド内に実質的に収まっている、請求項2に記載のシステム。
【請求項11】
前記受信部は、1つの前記骨伝導体を有しており、
前記受信部は、前記野球帽の一方の側部のみにおいて、前記スウェットバンド内に収まるように寸法決めされている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記受信部は、複数の前記骨伝導体を有しており、
前記受信部は、前記野球帽の後頭部周りにおいて、両側部に亘って延在するように設けられることで、前記スウェットバンド内に収まるように寸法決めされている、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記受信部は、前記スウェットバンド内に収まる略半円形の基板(substrate)と、前記受信部の電子部品が前記基板に取り付けられた電子回路基板とを有し、
前記複数の骨伝導体は、前記基板に取り付けられ、前記受信部の前記電子部品に結合される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記受信部の電子部品は、
バッテリと、前記バッテリに結合されたマイクロコントローラと、前記マイクロコントローラに結合された受信ユニットと、前記マイクロコントローラに結合されたメモリとを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記受信部は、前記受信ユニットに結合され、基板の周囲に沿って延在するアンテナを含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
選択された球種に対応する暗号化信号を生成する信号発生部と、
前記信号発生部と接続し、前記暗号化信号に対応する選択された球種を示す暗号化無線信号を発信するように構成された無線発信部と、を有する発信部と、
受信した前記暗号化無線信号を解読し、前記受信した暗号化信号に基づいて選択された球種に対応して記憶された音声ファイルを選択し、前記記憶された音声ファイルから音声信号を生成する、無線受信部を有する帽子と、
前記音声信号を人間が知覚可能な信号に変換する、少なくとも1つの骨伝導体と、を備える、野球帽を着用する者に対する球種選択通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、野球において、サイン盗みを防止する安全な方法で、球種選択について投手と連絡することのできる通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
野球の試合において、投手は様々な種類の投球を行う。様々な種類の投球は、たとえば、比較的真っ直ぐに投げられるファストボールを含む。ファストボールは、名前に示唆されるように、投手の投球レパートリの中で最も速く投げられる球種である。カーブボールは一般に、高いサイドスピン率かつ低速で投げられる。このため、カーブボールは、より曲がった軌道を描きながら打者に接近する。スライダは、ファストボールとカーブボールとの間にある球種であり、カーブボールよりも速く、ファストボールよりも遅い。スライダは、野球ボールの端部に向かってより鋭く落ちるように投げられる。チェンジアップは、最も遅い球種である。球種はこれらの他、ナックルボール、フォークボール、スプリットなどがある。投手は、これら異なる球種の全てを投げることはできないが、これらの球種のうち、いくつかを組み合わせたサブセットを投げることができる。
【0003】
メジャーリーグの投手が投げた野球ボールを打つのは、どんなイベントでも非常に難しい。しかし、メジャーリーグの打者は、球種がファストボールであるか、カーブボールであるか、スライダであるかを知っていれば、野球ボールを打ち易くなる。打者は、野球ボールの球速を効率よく計算したり、軌道を予想することで、接近してくる野球ボールと自分のバットとが合うように、自分のスイングを調節する。一方、捕手は、どの球種がくるのか知っておくことが重要である。メジャーリーグのピッチでは、捕手が予想と異なる球種の野球ボールをキャッチすることは非常に困難であるためである。言い換えれば、仮に捕手がカーブボールを予想して、予想していなかったファストボールを投手が投げた場合、ファストボールの速度に捕手が驚いて、野球ボールを見逃したり、けがをしたりすることがある。
【0004】
したがって、野球は初期の頃から、捕手は投手とコミュニケーションをとり、投手が投げる球種を選択してきた。捕手は、通常、手指を使用して、投球する球種を示すよう合図(サイン)を送っている。それらの指は通常、捕手がしゃがんだ状態にあるとき、捕手の脚の間で下向きに示される。このときの脚は、敵チームが投球の合図を見えないようにする役割がある。球種を示すサインは、たとえばファストボールの場合には1本の指、カーブボールの場合には2本の指などとすることができる。
【0005】
投手は、捕手の指で示されたハンドサインを見て、どの球種を投げるのかを知ることができる。しかし残念なことに、二塁ベース上に立っている敵選手もまたハンドサインを見ることができる。二塁ベース上に位置する走者がハンドサインを解読することができた場合、走者はどの球種が来るかを示す視覚的な合図を打者に送ることができる。このような事態が起こらないようにするために、捕手は、一連の球種について暗号(code)化されたハンドサインを送る。
【0006】
捕手は、敵選手にサイン盗みされることを防止するため、暗号のようなサインを使用する。しかし、視覚的なサインは、誰もが見ることができ、ハンドサインを解読することができてしまう。二塁ベースに位置する選手がハンドサインの解読を試みることは、長い間行われてきた。しかし、近年では、より高度な手段を利用した球種確認方法があるという噂がある。たとえば、ビデオを使用したサイン盗み疑惑がある。これは、ビデオを介してチーム仲間が捕手のハンドサインを見ることで、聴覚的なまたは他の手段を用いた合図を打者に提供するものである。具体的には、カーブボールでなくファストボールであることを示すホイッスルを吹くというような、推測される球種を暗に示す手法である。
【0007】
野球は伝統を重んじるスポーツであり、ビデオ及びカメラの使用、並びに相手チームの球種選択を示すベンチとのコミュニケーションは、不正行為の一形態と考えられる。さらに、野球の試合時間が長くなるにつれて(平均試合時間は長年にわたり著しく増加しており、ファンの関心を脅かしている)、サインの解読を防止または隠すため、球種別にある複数のハンドサインの使い分けに一試合あたり数十分も割かれている。これにより、試合時間はかなり追加されることになる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、捕手が選択した球種を、相手チームに知られないようにしながら投手に伝達することを可能にする、安全な通信システムを提供することである。
【0009】
本発明のその他の目的は、n種の異なる球種の中から選択された球種を発信可能な作動部を含む球種選択発信部と、球種選択作動部により選択された球種を無線発信する無線発信部と、球種選択発信部から受信した、選択された球種の信号を聴覚的に伝えるよう構成された受信部とを備える、球種選択通信システムを提供することである。
【0010】
上記した要望はまた、選択された球種に従って暗号化された信号を生成する暗号化信号発生部を有する無線送信機から、無線で選択された球種を発信するシステムと、受信した暗号化信号を解読し、受信した暗号化信号に基づいて音声ファイルを選択し、受信した暗号化信号に従って選択された球種に基づいて聴覚信号を生成する受信部とを有し、聴覚信号が骨伝導体によって変換される、本発明の他の実施形態によっても満たされることができる。
【0011】
本発明における通信システムは、球種を伝達する従来の方法に関する多くの課題を克服することができる。本発明は視覚的なサインを使用しないため、捕手のハンドサインを見るためのビデオを使用しても、敵チームはサイン盗みをすることができなくなる。また、フィールド上で何も起こらない試合におけるダウンタイムが起こらなくなる。ダウンタイムは、捕手が複数のサインを使用して、潜在的なサイン盗みの発生を防止することで生じる。さらなる利点は、詳細な説明において説明されるように実現される。
【0012】
主発明の他の構成は、当業者であれば、後述する詳細な説明および図面の開示によって、他の実施形態も含めて容易に理解することができるだろう。本開示から理解されるように、主発明は他の異なる構成とすることが可能である。異なる構成のうちいくつかは、すべて主発明の範囲から逸脱するものではなく、様々な点について変更することが可能である。したがって、開示される詳細な説明および図面は、本質的に例示的なものとみなされるべきであり、限定的なものとみなされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】従来の方法における、指を使用した球種サインを提供する捕手の一部分を示す概略図である。
図2】本実施の形態における発信部を示す図である。
図3】本実施の形態における受信部を示す斜視図である。
図4】本実施の形態における受信部を備える野球帽を示す図であり、(A)は右側面図を示し、(B)は正面図を示す。
図5】本実施の形態における発信部を示すブロック図である。
図6】本実施の形態における受信部を示すブロック図である。
図7】本実施の形態におけるメモリ内に格納された音声ファイルを示す概略図である。
図8】本発明の他の実施形態における帽子の受信部を示す図であり、(A)は受信部の仮想平面視断面図を示し、(B)は、他の実施形態における、受信部を備える帽子の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に述べる詳細な説明は、主発明の多様な構成を意図する説明であり、主発明を実施することのできる唯一の構成を表すことを意図するものでない。本明細書に添付した図面は、本明細書に組み込まれ、詳細な説明の一部を構成する。詳細な説明は、主発明に関する完全な理解を提供する目的で、具体的な説明を含むことができる。しかしながら主発明は、本明細書に記載された具体的な説明に限定されず、1つ以上の実施形態を使用して実施されてもよいことは、当業者には明らかであろう。1つ以上の実施例では、主発明の概念を曖昧にすることを回避するために、周知の構造および部品についてブロック図形式で示される。
【0015】
図1は、従来技術における球種選択サインを提供する捕手10の一部分を示す図である。図1に示すように、捕手10はしゃがんだ状態にあり、捕手10の正面は、投手と面している。捕手10は、1つ以上の指12(本実施の形態では1本の指)を延ばして、捕手10が望む球種を示す。例えば、「1本の指」は、球種がファストボールであることを意味している。しかし、この方法の問題点は、二塁ベース上の走者が、このハンドサインを視認可能であるだけでなく、捕手10を投手と同じように視認できる者、すなわち双眼鏡やカメラ等を持つ者であれば誰でも、投手のように捕手を視認できることにある。たとえば、テレビの視聴者やスタジアム内の何千人もの観客は、捕手のハンドサインを視認することができ、球種サインを盗むことができる。
【0016】
図2では、本実施の形態における発信部20の構成が示されている。発信部20は、捕手10の身体上の任意の場所に、またはグローブなどの捕手が身に着ける装備品上の任意の場所に設けることができる。たとえば、図2では捕手10のグローブ装着側の腕に取り付けられている。後述するように、発信部20は、捕手10に提供されることに限定されない。たとえば、監督、投手コーチ等にも提供することができる。
【0017】
図2に示す発信部20は、捕手10が球種を選択発信するために作動可能な複数のボタン22を有する。複数のボタン22は、各々についてラベリングすることができ、たとえばファストボール、カーブボール等の球種を付与することができる。図2において、ボタン22は単にA、B、C、Dとラベリングされているのみである。このため捕手を混乱させることなく、容易に異なる球種を再割り当てすることができる。本実施の形態では、4つのボタンが図示されているが、発信部20上に設けることができるボタン22の数は、この個数に限定されない。
【0018】
コーチが使用する発信部のような、特定の実施形態においては、発信部20はディスプレイ29をさらに含むことができる。ディスプレイ29は、たとえば選択した投手、セッティング、球種名などの情報を表示することができる。
【0019】
捕手10のグローブ装着側の前腕が捕手自身の胸と面している間、捕手10のグローブ非装着側の手指24は、発信部20のボタン22のうち1つを押下することができる。これにより、捕手10がどのボタン22を押下したのか、換言すれば、どの球種を選択したのかについて、捕手10以外の者が見ることを防止できる。捕手10が特定のボタン22を押下すると、球種選択を示す暗号化信号が発信される。詳細については後述する。
【0020】
図3は、本実施の形態の受信部30を示す。特定の実施形態によれば、受信部30は、可聴信号を生成する骨伝導体32を有している。骨伝導体32は、発信部30からの暗号化信号を可聴信号へ変換可能に構成されている。受信部に関するさらなる詳細については後述する。
【0021】
図4(A)および4(B)は、図3に示された受信部30が野球帽34の任意の位置に設置された例を示す。受信部30の位置は、野球帽34の縁に広がるスウェットバンド36内にあってもよい。一部の実施形態では、受信部30が実質的にスウェットバンド36内に収まるような大きさにされ、例えばクリップ(図示せず)によって、スウェットバンド36内の所定の位置に保持される。
【0022】
受信部30は、典型的には野球帽34の側部、後部、または頭頂部などに配置することができる。受信部30が取り付けられる位置は、音声再生の観点および安全性の観点から定められる。音声ファイルを再生するために骨伝導技術を使用することの利点は、典型的には音量が非常に大きくなっても、骨伝導体および受信部を装着した者のみが、骨伝導体によって生成された(または変換された)音声を聞くことができることにある。したがって、受信部30を装着した選手以外の者は、音声ファイルおよび受信部30から提供された情報を聞くことができる可能性は、ほとんどあるいは全くない。
【0023】
図5は、本実施の形態における発信部20の一例を示すブロック図である。発信部20は、再充電可能なバッテリ26を有している。バッテリ26は、発信部20の各構成要素を作動させるための電源として機能する。バッテリ26は、マイクロUSBポートなどのUSBポート28を介して、またはワイヤレス充電器を介して再充電することができる充電池である。あるいは、バッテリ26は、再充電不可能なバッテリを交換することにより使用する一次電池である。
【0024】
発信部20は、外部から作動可能な電源スイッチ21を介して電源が入力される。電源スイッチ21は、スライドスイッチ式であってもよいし、プッシュボタン式であってもよい。マイクロコントローラ(マイコン)23は、通常、バッテリ26と、発信ユニット25と、メモリ27と、入力ボタン22とに接続している。また、マイコン23は、プログラミングおよび対外通信を可能にするためにUSBポート28に接続される。
【0025】
発信部20は、電源スイッチ21を介して電源入力される。発信部20の作動中、捕手10(または監督あるいは投手コーチ)は、複数の入力ボタン22のうち1つを押下する。これにより、マイコン23は押下された入力ボタン22を判別し、入力ボタン22に対応する球種を認識する。マイコン23は、内部メモリまたは外部メモリ27のいずれかを使用して、暗号化信号を生成する。暗号化信号は、「1」、「2」、「3」などの単純な信号で表すことができる。暗号化信号は、長い文字列である必要はない。受信部30は、受信した数値暗号を用いて、暗号と対応する音声ファイルを正確に参照する。暗号化信号は、マイコン23から発信ユニット25に伝達される。発信ユニット25は、無線発信機であり、そのアンテナを用いて暗号化信号を発信する。
【0026】
図6は、本実施の形態における受信部30の一例を示すブロック図である。受信部30は、再充電可能なバッテリ32を有しているが、他のタイプのバッテリを使用することもできる。受信部30のバッテリ32は、発信部20のバッテリ26と同様に、マイクロUSBポートのようなUSBポートを介して再充電することができる。
【0027】
また、USBポートは、マイコン38をプログラムしたり、メモリ42内に音声ファイルを記憶させるための配線として使用することができる。一実施形態において、受信部30は、LEDディスプレイのような表示部48を備える。表示部48は、使用者との視覚的な関係を可能にし、受信部30にプログラミングを入力するとき、または使用する音声ファイルのサブセットを選択するときなどに使用される。
【0028】
図7を参照して、たとえば、音声ファイル80a~80dのサブセットは投手スミスに対応し、音声ファイル80e~80hのサブセットは投手ジョーンズに対応して使用される。これらの異なるサブセットは、複数の管理ボタン46から選択することができる。
【0029】
無線信号受信ユニット40は、通常、マイコン38に制御されている。受信ユニット40は、発信部20からの暗号化信号を受信する。受信ユニット40は、多様な形態のアンテナ41を含むよう考慮することができる。アンテナ41は、たとえば従来から他分野で一般的に使用されているような、チップアンテナを用いることができる。他の実施形態では、図8Aに示すように、アンテナ41は、長尺状アンテナであってもよく、受信部30の本体に沿うように延在してもよい。動作中、マイコン38は、受信した暗号化信号を解読して、骨伝導体32または他の音声再生器に、選択された球種に対応する特定の音声ファイルを再生させる。
【0030】
例示的な実施形態では、受信部30は、メモリ42に記憶された複数の音声ファイル80a~80nを有する。これらの音声ファイル80a~80nは、受信した暗号化信号に応じて受信部30より再生される。受信部30のメモリ42に記憶された音声ファイル表の概略図を図7に示す。動作中、受信部30は、暗号化された球種選択信号を受信する。この信号は、捕手10によって押下された発信部20の「1」ボタン22に対応しており、「1」のように暗号化された球種選択信号である。この特定の信号は、「ファストボール」を意味することができる。受信部30が暗号化信号を受信すると、受信部30のマイコン38は信号を解読する。マイコン38は、「1」信号であると判別し、「1」信号に対応する音声ファイルを再生する。本実施例において、「1」に対応する音声ファイル80aは「ファストボール」に対応している。したがって、受信部30は「ファストボール」という語を骨伝導体32を介して可聴的に再生する。
【0031】
メモリ42に記憶された音声ファイル80a~80nに基づいて解凍された暗号化信号を再生することは、スポーツで使用される他の通信システムよりも多くの重要な利点を有する。たとえば、アメリカンフットボールのヘルメットに使用されるような無線受信機は、試合中の選手を呼び戻すために、任意の者がマイクに音声を入力し、入力された音声をクォーターバックへ直接発信する方式を用いている。この方式は野球では非現実的である。なぜなら、捕手は打者に球種を知られてはいけないため、球種名を声に出すことができないからである。
【0032】
これに対し、本開示によれば、捕手は1つのボタンを単純に押下することで、投手に選択した球種を伝えることができる。さらに、本実施の形態によれば、捕手が選択した球種を暗号化して発信するため、無線音声通信を介するよりも、セキュリティの確保を容易に行うことができる。
【0033】
通信セキュリティは、スポーツチームにとって大きな関心事項である。いくつかの実施形態では、無線通信プロトコルは、システム上の全ての面において安全な通信を提供する。無線通信プロトコルは、無線雑音の可能性および相手チームの機器または改ざんや不正から保護される。各チームは、暗号化および識別性の観点から、チームのシステム全体で共有される独自の固有キーを使用する。
【0034】
発信部20および受信部30は、無線通信プロトコルを介して通信する。無線通信プロトコルは、アドレス指定およびブロードキャスト通信、配信確認、データ完全性チェック、標準アルゴリズム(RC4、AESなど)またはその修正版のうち1つを使用したデータ暗号化、ホッピング符号、周波数ホッピングスペクトラム拡散(HFSS)、無線チャネル占有監視、バックアップ通信チャネル、または当業者に周知の他の技術、のうちの1つを含むことができるが、これらに限定されない。
【0035】
受信部30に音声ファイルが記憶されることで、本実施の形態における通信システムは多くの利点を有することができする。周知のとおり、野球は国際的なスポーツであり、米国のメジャーリーグ選手は、様々な国からやって来て、様々な言語を話す。そのため選手たちは、ピッチャ―マウンド上で話し合いを行う際に翻訳機を使用している。
【0036】
しかしながら、本発明における音声ファイルを使用すれば、音声ファイルを多様な言語に変換することができる。たとえば、受信部30に記憶された日本人投手の音声ファイルは日本語であり、スペイン人捕手がファストボールに対して「1」を押すと、受信部30は、単語「fastball」を日本語で記憶した音声ファイル「1」を再生する。このように、スペイン人投手はスペイン語の音声ファイルを有することができ、英語を話す選手であれば英語の音声ファイルを、各々有することができる。
【0037】
受信部30の装着は、投手に限定されない。捕手10は、投手に伝達された球種を確認するために、ヘルメット内に同様の受信部30が取り付けられていることが望ましい。さもないと、捕手10は、ファストボールの「1」を、カーブボールの「2」だと思い込んで押下したことに気が付くことができない。このように、捕手10が受信部30をヘルメットに搭載していないと、可聴フィードバックを取得できず、捕手が野球ボールを受け損ねたり、負傷してしまう危険性がある。さらに、場内にいる他の守備の選手にも、彼らの野球帽に受信部30を搭載することができる。伝統的に、野手は、投げられようとしている球種を知ることにより、打者が打ったボールがくる可能性がある場所を予想し易くし、守備位置をわずかに移動する。
【0038】
同様に、発信部20は、捕手10が装着することに限定されない。また、本発明は、監督や投手コーチなど、ベンチ内の人々が投手を呼び出すために使用することもできる。これは、経験不足の投手が登板している場合、または不慣れな打者が打席におり、監督が特定の球種を希望する場合に、特に有用である。監督または投手コーチが押下するボタンは、捕手10が使用するものと同じまたは異なる音声ファイルを再生することができる。たとえば、捕手10は、受信部30内の4つの異なる投球音声ファイル80に対応する、4つのボタンのうちの1つを押下することができる。
【0039】
監督または投手コーチは、投手の受信部30内の追加音声ファイル(例えば、音声ファイル5~9)に対応する、4つ以上の追加ボタンを有することができる。音声ファイル80は、球種名に加えて、「投球を送るときに前肩を入れておく」などの、投手への可聴指令またはリマインダを再生することに利用することもできる。仮に、メジャーリーグの規則がこのようなシステムの使用を禁止する場合、システムは、この機能の使用禁止のために容易にロックすることができる。これにより、受信部30には、記憶された球種情報しか再生することができなくなる。さらに、ボタンは、投手にピッチアウトを投げるよう伝えたり、捕手へ投球しないで一塁ベースへ投げるよう伝えることができる。
【0040】
受信部30は、図7に概略的に示すように、多数の音声ファイル80a~80nを有する。各音声ファイル80は、音声ファイル80を聴く者に対応する言語で記録することができる。たとえば、韓国人投手が使用する受信部30は、韓国語で記録された音声ファイルを含む。日本人投手の場合は、日本語で記録される。その他の言語についても同様である。また、提供される音声ファイル80は、一部が1言語しか対応しておらず、その他が多言語に対応していることとしてもよいのは勿論である。
【0041】
音声ファイル80a~80nのセットは、個々の投手に対応した異なる投球レパートリを記録することもできる。例えば、投手ジョーンズはファストボール、カーブボール、スライダ、及びチェンジアップを投げることができる。投手スミスは、ファストボール、ナックルボール、スプリット、及びチェンジアップを投げることができる。投手ジョーンズが装着した受信部30に記憶された音声ファイルは、たとえば、捕手10が発信部20上の「2」ボタン22を押下した際に、発信部20から発信された「2」の球種選択信号に対応する音声ファイル「カーブボール」を記憶している。しかしながら、投手スミスが登板する際に同じ「2」ボタン22が押下されると、「2」の球種選択信号に対応する音声ファイルは、たとえば記憶された「ナックルボール」を再生することになる。したがって、本実施の形態の発信部20は、異なる投手に対して同じものを使用でき、同じ暗号化信号を用いることができる。
【0042】
これは、暗号化信号は、単に受信部30内のどの音声ファイルが再生されるかを示す機能を有していることによるものである。このように本発明は、異なる音声が録音されたファイルを用いることで、発信部20から受信部30へ同じ音声信号を発するにも関わらず、多様な指示内容を提供することができる。音声録音は、コンピュータ(図示せず)または他の手段を介して容易に行うことができる。録音された音声は、受信部30内の音声ファイル(音声スロット)に記憶される。受信部30は、発信部20から発信される多様な球種選択信号に対応する音声ファイルを選択する。受信部30は、コンピュータに接続することができる。特定のフォルダ内の録音された音声ファイルは、受信部30内の別のファイルまたはフォルダに単にドラッグして移動させることができる。
【0043】
いくつかの実施形態における受信部30は、再生ボタン44(図6)を有している。再生ボタン44は、競技に集中する投手が、音声ファイル80a~80nのうち選択された球種の再確認を希望する場合に特に有利である。
【0044】
また、選手の快適さの観点から、特定の実施形態における受信部30は、音量調節をすることもできる。
【0045】
捕手10が、発信部20上のどのボタンが各投手に対応する音声ファイルであるのかを記憶する必要がないようにするために、発信部20の各ボタンにはオーバーレイ(図示せず)を設けることができる。オーバーレイは、各投手のレパートリに対応する球種を各々のボタン22にラベリングしたものである。したがって、オーバーレイには、投手の受信部30に記憶された音声ファイルに対応したラベリングが付与されている。
【0046】
図8(A)および図8(B)は、それぞれ、帽子に取り付けられた本発明の別の実施形態における受信部30を示す、平面視断面図および斜視図である。図8(A)の受信部30は、基板(substrate)として機能するように設計される。一方の耳の上から、後頭部を経由して、他方の耳の上まで延びるように形成される。すなわち、受信部30は、野球帽の後頭部の縁部と同様に、略半円形または略半楕円形の形状で延在するバンド50として形成されることが分かる。
【0047】
特定の実施形態におけるバンド50は、人肌を殆ど刺激しない、肌に安全なゴムから作製される。バンド50は、図8(B)に示すように、野球帽のバンド内に収まるような大きさおよび形状であり、着用者の頭蓋骨に穏やかに適合し、快適かつ確実にフィットすることができる。同時に、バンド50は、着用者に音声信号の良好な伝達を提供するために、複数の骨伝導体32が着用者の頭蓋骨上に適切に配置されることを保証する。複数の骨伝導体32は、着用者が知覚する音声の音量を大きくすることができる。
【0048】
バンド50は、受信部30の電子回路基板31を有する基板(substrate)として機能する。電子回路基板31は、受信部30を構成する電子部品の少なくとも一部、例えばマイコン38、受信ユニット40およびメモリ42を有している。バンド50は、野球帽の後頭部周りを、両側部にかけて延びるように構成される。
【0049】
本実施の形態では、先に説明したように、より長い長尺状アンテナ41を使用することができる。アンテナ41は、バンド50の長さの大部分に亘って延在することができ、受信範囲を広げることができる。多くの要因に対応するために、発信部20と受信部30との間の送受信範囲は、150フィートを十分に超えることとしてもよい。安全性を考慮することもまた、スポーツ用具における要因の一つである。いくつかの実施形態では、帽子の着用者に対する安全性をさらに高める保護部材を有していてもよい。
【0050】
受信部30は、競技中に野球ボールがバンド50に当たった場合に、エネルギーを消散させることによる保護機能を提供すべきである。つまり、受信部30は、選手が頭部に受ける衝撃をさらに和らげるために、追加の保護部材52を設けることができる。例えば、シリコンゴム層52を、バンド50の内表面53及び/又は外表面55に設けることができる。この場合、骨伝導体32を頭部に直接接触させるために、シリコンゴム層52には切欠き(図示せず)を設けることとしてもよい。
【0051】
したがって、本実施の形態における通信システムは、ビデオ、双眼鏡、および他の方法を介して(捕手のハンドサインを)傍受され、解読されてしまうような視覚信号を使用することなく、球種選択を投手へ伝えることのできる、安全な通信システムを提供する。これは、野球の試合進行を促進する効果がある。試合は、捕手が一連のサインをとるのを待つよりも、試合自体に集中できるようになる。また、ボタンを単純に押すだけで、投手、捕手、および任意の野手は、その選手の母国語で、即座に球種の伝達を受け取ることができる。
【0052】
「例示的」という語は、本明細書では「例または例示的に説明する」ことを意味するために使用され、本明細書で「例示的」または「例」として説明される任意の実施形態は必ずしも、他の実施形態よりも好ましいまたは有利であると解釈されるべきではない。さらに、「含む」、「有する」などの用語が記載または特許請求の範囲で使用される限り、そのような用語は、「備える」という用語が特許請求の範囲で遷移語として使用される場合に解釈されるときに、「備える」という用語と同様に包括的であることが意図される。
【0053】
当業者に知られている、または後に知られるようになる、本開示全体にわたって説明される様々な態様の要素に対するすべての構造的および機能的均等物は、参照によって本明細書に明示的に組み込まれ、特許請求の範囲によって包含されることが意図される。さらに、本明細書に開示されたものは、そのような開示が特許請求の範囲に明示的に記載されているかどうかにかかわらず、公衆に専念することを意図するものではない。
【0054】
クレーム要素は35 U.S.C§112、第6段落の規定に基づいて解釈されるべきではない。ただし、要素が「手段」という語句を使用して明示的に列挙されている場合、または方法クレームの場合、構成要素が「のためのステップ」という語句を使用して列挙されている場合は、この限りではない。
【0055】
前述の説明は、当業者が本明細書で説明される様々な態様を実施することを可能にするために提供される。これらの態様に対する様々な修正は、当業者にとって容易であることは明らかであり、本明細書で定義される一般的な原理は、他の態様に適用されることができる。したがって、特許請求の範囲は、本明細書に示される態様に限定されることを意図するものではなく、特許請求の範囲の言語と一致する完全な範囲を与えられることを意図する。
【0056】
単数形の要素への言及は、特に「1つおよび1つのみ」と述べられない限り、「1つまたは複数」を意味することを妨げるものではない。特に明記しない限り、用語「いくつかの」は1つ以上であることを指す。男性(例えば、彼)の代名詞には、女性および中性の性別(例えば、彼女および対応する代名詞)が含まれ、その逆も同様である。項目名および副項目名は、もしあれば、便宜上のみ使用され、主題の開示を限定しない。
図1
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図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】