(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-07
(54)【発明の名称】冗長制動システム
(51)【国際特許分類】
B60T 8/96 20060101AFI20230131BHJP
【FI】
B60T8/96
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022534266
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(85)【翻訳文提出日】2022-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2019084362
(87)【国際公開番号】W WO2021115564
(87)【国際公開日】2021-06-17
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】レイン,レオ
(72)【発明者】
【氏名】ヘンダーソン,レオン
(72)【発明者】
【氏名】オスカション,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ドレント,エド
(72)【発明者】
【氏名】ニルソン,クリストッフェル
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246AA12
3D246AA13
3D246BA03
3D246BA08
3D246DA01
3D246GA01
3D246HA64A
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3D246MA17
3D246MA18
3D246MA19
(57)【要約】
大型車両の制動システム(400)であって、フロントアクスル(101)の左側の車輪(120l)の制動を制御するように配置された第1のブレーキコントローラ(WEM1)と、フロントアクスル(101)の右側の車輪(120r)の制動を制御するように配置された第2のブレーキコントローラ(WEM2)と、第1のリヤアクスル(102)の左側の車輪(140l)の制動を制御するように配置された第3のブレーキコントローラ(WEM3)と、第1のリヤアクスル(102)の右側の車輪(140r)の制動を制御するように配置された第4のブレーキコントローラ(WEM4)と、を備えている。第1及び第2のブレーキコントローラは、第1及び第2のブレーキコントローラの一方が第1及び第2のブレーキコントローラの他方の車輪の制動制御を引き受けることができるように配置されたバックアップ接続(220)によって接続され、これによって、第1及び第2のブレーキコントローラがフェイルオペレーショナルブレーキコントローラとして配置される。第3及び第4のブレーキコントローラ(WEM3,WEM4)は、故障発生に応答して、リヤアクスルの左側の車輪及び右側の車輪のそれぞれを非制動状態にするように配置され、これによって、第3及び第4のブレーキコントローラがフェイルサイレントブレーキコントローラとして配置される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型車両(100)の制動システム(400)であって、
フロントアクスル(101)の左側の車輪(120l)の制動を制御するように配置された第1のブレーキコントローラ(WEM1)と、
フロントアクスル(101)の右側の車輪(120r)の制動を制御するように配置された第2のブレーキコントローラ(WEM2)と、
第1のリヤアクスル(102)の左側の車輪(140l)の制動を制御するように配置された第3のブレーキコントローラ(WEM3)と、
第1のリアアクスル(102)の右側の車輪(140r)の制動を制御するように配置された第4のブレーキコントローラ(WEM4)と、
を備え、
前記第1及び第2のブレーキコントローラは、当該第1及び第2のブレーキコントローラの一方が前記第1及び第2のブレーキコントローラの他方の車輪の制動制御を引き受けることができるように配置されたバックアップ接続(220)を介して接続され、これによって、前記第1及び第2のブレーキコントローラがフェイルオペレーショナルブレーキコントローラとして配置され、
前記第3及び第4のブレーキコントローラ(WEM3,WEM4)は、故障発生に応答して、リヤアクスルの左右の車輪のそれぞれを非制動状態にするように配置され、これによって、前記第3及び第4のブレーキコントローラがフェイルサイレントブレーキコントローラとして配置された、
制動システム(400)。
【請求項2】
第2のリヤアクスル(103)の左側の車輪(160l)の制動を制御するように配置された第5のブレーキコントローラ(WEM5)と、
第2のリヤアクスル(103)の右側の車輪(160r)の制動を制御するように配置された第6のブレーキコントローラ(WEM6)と、
を更に備え、
前記第5及び第6のブレーキコントローラ(WEM5,WEM6)は、故障発生に応答して、第2のリヤアクスルの左右の車輪(160l,160r)のそれぞれを非制動状態にするように配置され、これによって、前記第5及び第6のブレーキコントローラがフェイルサイレントブレーキコントローラとして配置された、
請求項1に記載の制動システム(400)。
【請求項3】
少なくとも第1のデータバス(420)及び当該第1のデータバスとは異なる第2のデータバス(430)を介して、前記制動システム(400)を制御するように配置された制御ユニット(110)を備え、
前記第1のデータバス(420)が、少なくとも前記第1のブレーキコントローラ(WEM1)及び前記第4のブレーキコントローラ(WEM4)を制御するように配置され、
前記第2のデータバス(430)が、少なくとも前記第2のブレーキコントローラ(WEM2)及び前記第3のブレーキコントローラ(WEM3)を制御するように配置された、
請求項1又は2に記載の制動システム(400)。
【請求項4】
フェイルサイレントブレーキコントローラとして配置された、リヤアクスル(102,103)の車輪の故障しているブレーキコントローラ(WEM3,WEM4,WEM5,WEM6)は、制動能力の欠如を示すメッセージを車両の制御ユニット(110)に送信するように構成された、
請求項1~3のいずれか1つに記載の制動システム(400)。
【請求項5】
フェイルサイレントブレーキコントローラとして配置された、前記リヤアクスルの車輪の故障しているブレーキコントローラ(WEM3,WEM4,WEM5,WEM6)は、故障発生から前記ブレーキコントローラの再起動まで、ゼロ制動能力モードにロックするように構成された、
請求項4に記載の制動システム(400)。
【請求項6】
リヤアクスルの車輪のブレーキコントローラ(WEM3,WEM4,WEM5,WEM6)のそれぞれは、故障したときに前記車両の制御ユニット(110)にメッセージの送信を可能にするように配置されたバックアップ電気エネルギー源を備えた、
請求項4又は5に記載の制動システム(400)。
【請求項7】
フロントアクスル(101)の車輪のブレーキコントローラ(WEM1,WEM2)のそれぞれは、第1の車輪速センサ(WS1a,WS1b)及び第2の車輪速センサ(WS2a,WS2b)のそれぞれに接続され、これによって、前記フロントアクスルにおける車輪速センサの冗長性を提供する、
請求項1~6のいずれか1つに記載の制動システム(400)。
【請求項8】
前記フロントアクスル(101)の車輪(120l,120r)に関連付けられた車輪速センサ(WS1a,WS2a)は、前記フロントアクスルの反対側の車輪(120l,120r)に関連付けられたブレーキコントローラ(WEM1,WEM2)に接続されるように配置された(440,450)、
請求項1~7のいずれか1つに記載の制動システム(400)。
【請求項9】
前記車両は、第1及び第2のリヤアクスル(102,103)の車輪を備え、
前記第1のリヤアクスル(102)の車輪(140l,140r)に関連付けられた車輪速センサ(WS3,WS4)が、前記第1のリヤアクスル(102)の車輪と同じ側にある、前記第2のリヤアクスル(103)の車輪(160l,160r)に関連付けられたブレーキコントローラ(WEM5,WEM6)に接続されるように配置された(460l、470r、460l、470r)、
請求項1~8のいずれか1つに記載の制動システム(400)。
【請求項10】
リヤアクスルの車輪のブレーキコントローラは、第1のリヤアクスル(102)の車輪速センサ及び第2のリヤアクスル(103)の車輪速センサのそれぞれから出力された車輪速を比較することによって、車輪のリフトオフを検知するように配置された、
請求項9に記載の制動システム(400)。
【請求項11】
前記車両(100)は、一組のトレーラの車輪(180)に支持されたトレーラユニット(102)を備え、
前記一組の車輪(180)の中の少なくとも1つの車輪は、フェイルサイレントモードに配置されたブレーキコントローラを備えた、
請求項1~10のいずれか1つに記載の制動システム(400)。
【請求項12】
前記制御ユニット(110)は、ブレーキコントローラの故障発生に応答して、制動力を再割り当てするように配置された、
請求項1~11のいずれか1つに記載の制動システム(400)。
【請求項13】
前記制御ユニット(110)は、ブレーキコントローラの故障発生に応答して、車両安定性を再評価するように配置された、
請求項1~12のいずれか1つに記載の制動システム(400)。
【請求項14】
大型車両(100)の制動システム(400,500)であって、
フロントアクスル(101)の左側の車輪(120l)の制動を制御するように配置された第1のブレーキコントローラ(WEM1)と、
フロントアクスル(101)の右側の車輪(120r)の制動を制御するように配置された第2のブレーキコントローラ(WEM2)と、
第1のリヤアクスル(102)の左側の車輪(140l)の制動を制御するように配置された第3のブレーキコントローラ(WEM3’)と、
第2のリヤアクスル(103)の左側の車輪(160l)の制動を制御するように配置された第5のブレーキコントローラ(WEM5’)と、
を備え、
前記第1及び第2のブレーキコントローラは、当該第1及び第2のブレーキコントローラの一方が前記第1及び第2のブレーキコントローラの他方の車輪の制動制御を引き受けることができるように配置されたバックアップ接続(220)によって接続され、これによって、前記第1及び第2のブレーキコントローラがフェイルオペレーショナルブレーキコントローラとして配置され、
前記第3及び第5のブレーキコントローラは、当該第3及び第5のブレーキコントローラの一方が前記第3及び第5のブレーキコントローラの他方の車輪の制動制御を引き受けることができるように配置されたバックアップ接続(220’)によって接続され、これによって、前記第3及び第5のブレーキコントローラがフェイルオペレーショナルブレーキコントローラとして配置された、
制動システム(400,500)。
【請求項15】
大型車両(100)の制動システム(400,520)であって、
フロントアクスル(101)の左側の車輪(120l)の制動を制御するように配置された第1のブレーキコントローラ(WEM1)と、
フロントアクスル(101)の右側の車輪(120r)の制動を制御するように配置された第2のブレーキコントローラ(WEM2)と、
第1のリヤアクスル(102)の左側の車輪(140l)の制動を制御するように配置された第3のブレーキコントローラ(WEM3”)と、
第1のリヤアクスル(102)の右側の車輪(140r)の制動を制御するように配置された第4のブレーキコントローラ(WEM4”)と、
を備え、
前記第1及び第2のブレーキコントローラは、当該第1及び第2のブレーキコントローラの一方が前記第1及び第2のブレーキコントローラの他方の車輪の制動制御を引き受けることができるように配置されたバックアップ接続(220)によって接続され、これによって、前記第1及び第2のブレーキコントローラがフェイルオペレーショナルブレーキコントローラとして配置され、
前記第3及び第4のブレーキコントローラは、当該第3及び第4のブレーキコントローラの一方が前記第3及び第4のブレーキコントローラの他方の車輪の制動制御を引き受けることができるように配置されたバックアップ接続(220”)によって接続され、これによって、前記第3及び第4のブレーキコントローラがフェイルオペレーショナルブレーキコントローラとして配置された、
制動システム(400,520)。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1つに記載の制動システム(400)を備えた車両(100)。
【請求項17】
大型車両(100)を制動させる方法であって、
フロントアクスル(101)の左側の車輪(120l)の制動を制御するように配置された第1のブレーキコントローラ(WEM1)、及びフロントアクスル(101)の右側の車輪(120r)の制動を制御するように配置された第2のブレーキコントローラ(WEM2)を備え、前記第1及び第2のブレーキコントローラは、当該第1及び第2のブレーキコントローラの一方が前記第1及び第2のブレーキコントローラの他方の車輪の制動制御を引き受けることができるように配置されたバックアップ接続(220)によって接続された、制動システムを構成するステップ(S1)と、
第1のリヤアクスル(102)の左側の車輪(140l)の制動を制御するように配置された第3のブレーキコントローラ(WEM3)、及び第1のリヤアクスル(102)の右側の車輪(140r)の制動を制御するように配置された第4のブレーキコントローラ(WEM4)であって、前記第3及び第4のブレーキコントローラ(WEM3,WEM4)が、故障発生に応答して、リヤアクスルの左右の車輪のそれぞれを非制動状態にするように配置された、前記第3及び第4のブレーキコントローラ(WEM3,WEM4)を構成するステップ(S2)と、
前記第1又は第2のブレーキコントローラの故障発生に応答して、前記バックアップ接続(220)を介して、他のブレーキコントローラによって前記故障したブレーキコントローラに対応する車輪の制動制御を引き受けるステップ(S3)と、
前記第3又は第4のブレーキコントローラの故障発生に応答して、前記対応する後輪を非制動状態のままにするステップ(S4)と、
を含んだ方法。
【請求項18】
プログラムがコンピュータ又は制御ユニット(110)の処理回路(1010)で実行されたときに、請求項17のステップを実行するためのプログラムコード手段を含んだコンピュータプログラム(1120)。
【請求項19】
プログラム製品がコンピュータ又は制御ユニット(110)の処理回路(1010)で実行されたときに、請求項17のステップを実行するためのプログラムコード手段を含んだコンピュータプログラム(1120)を保持するコンピュータ可読媒体(1110)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、大型車両の制動システムの冗長性に関する。本開示は、特に、自律車両用に構成された車両に関する。本発明は、トラックや建設機械などの大型車両に適用することができる。セミトレーラ車両やトラックなどの貨物輸送車両に関して本発明を主に説明するが、本発明は、この特定のタイプの車両に限らず、乗用車などの他のタイプの車両にも使用することができる。
【背景技術】
【0002】
大型車両の制動システムは、車両を安全に動作させるキーである。制動システムは、必要に応じて車速を制限するだけでなく、車両安定性を維持する重要な役割を果たす。従って、制動システムが故障している大型車両は重大なリスクを伴う。このリスクを最小にすることが望まれる。
【0003】
故障している制動システムにより車両が制動能力を失ったり不安定になったりしないことを保証するため、制動システムに冗長性を付加することができる。冗長性は、制御システムと、例えば、ディスクブレーキ又はドラムブレーキのアクチュエータと、の両方に付加することができる。
【0004】
車両の制動システムに冗長性を実現させるために、並列又は直列に配置された2つ以上の独立制御される完全な制動システムを含む、制動システムレイアウトが一般的に使用されている。従って、一方のシステムが故障すると、バックアップシステムを利用して車両のブレーキを制御して動作させることができる。しかしながら、このタイプの冗長性は、車両全体のコストを押し上げ、かつ車両の組立を複雑にする。
【0005】
米国特許出願公開第2017/0210361号明細書は、冗長性を備えた大型車両のブレーキコントローラレイアウトを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、大型車両の制動システムを継続して更に改良する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の目的は、改良された制動システムを提供することである。この目的は、大型車両の制動システムによって、少なくとも部分的に得られる。制動システムは、フロントアクスルの左側の車輪の制動を制御するように配置された第1のブレーキコントローラと、フロントアクスルの右側の車輪の制動を制御するように配置された第2のブレーキコントローラと、を備えている。第1及び第2のブレーキコントローラは、第1及び第2のブレーキコントローラの一方が第1及び第2のブレーキコントローラの他方の車輪の制動制御を引き受けることができるように配置されたバックアップ接続によって接続され、これによって、第1及び第2のブレーキコントローラがフェイルオペレーショナルブレーキコントローラとして配置されている。制動システムは、第1のリヤアクスルの左側の車輪の制動を制御するように配置された第3のブレーキコントローラと、第1のリヤアクスルの右側の車輪の制動を制御するように配置された第4のブレーキコントローラと、を更に備えている。第3及び第4のブレーキコントローラは、ブレーキコントローラの故障発生に応答して、リヤアクスルの左右の車輪のそれぞれを非制動状態にするように配置され、これによって、第3及び第4のブレーキコントローラがフェイルサイレントブレーキコントローラとして配置されている。
【0008】
このように、フロントアクスルの車輪は、車輪ごとに配置されたブレーキコントローラが1つしかなくても、制動制御の冗長性を持って配置され、これは利点となる。フロントアクスルの車輪がフェイルオペレーショナルであり、これは、ブレーキコントローラの一方が故障しているにもかかわらず、両方の車輪を制動させることができることを意味し、これはさらなる利点となる。リヤアクスルの車輪のブレーキコントローラがフェイルサイレントであり、これは、ブレーキコントローラの故障が車両の動作を妨げないことを意味する。少なくとも部分的には、タイヤの垂直力が制動中にフロントアクスルの車輪に向かって伝達されるので、車両全体の安全性はリヤアクスルのブレーキコントローラの故障によって過度に影響を受けないことが分かっている。本開示の制動システムは、十分な車両制動の冗長性を提供して、車両安全性を保障すると同時に、費用効果の高いソリューションと組み立ての容易さを可能にする。
【0009】
開示された制動システムの他の態様は、車両のリヤアクスル(複数の場合もある)にもフェイルオペレーショナルブレーキコントローラ装置を備えている。これらのリヤアクスルのフェイルオペレーショナルブレーキコントローラは、左右の車輪のブレーキコントローラがバックアップ接続によって接続された共通の車両のアクスル、又は車両の片側にあるリヤアクスルの第1及び第2のブレーキコントローラが、ブレーキコントローラが故障した場合に、それぞれのブレーキコントローラが他のブレーキコントローラの車輪の制御を引き受けることができるバックアップ接続によって接続される、共通の車両の片側にあるフェイルオペレーショナル部品に配置することができる。
【0010】
いくつかの態様によれば、制動システムは、第2のリヤアクスルの左側の車輪の制動を制御するように配置された第5のブレーキコントローラと、第2のリヤアクスルの右側の車輪の制動を制御するように配置された第6のブレーキコントローラと、を更に備えている。第5及び第6のブレーキコントローラは、故障発生に応答して、第2のリヤアクスルの左右の車輪のそれぞれを非制動状態にするように配置され、これによって、第5及び第6のブレーキコントローラは、フェイルサイレントブレーキコントローラとして配置される。従って、第5及び第6のブレーキコントローラは、フェイルサイレントであって、第3及び第4のブレーキコントローラに関連して上述したのと同じ利点に関連付けられている。
【0011】
いくつかの態様によれば、制動システムは、少なくとも第1のデータバス及び第1のデータバスとは異なる第2のデータバスを介して、制動システムを制御するように配置された制御ユニットを備えている。第1のデータバスは、少なくとも第1のブレーキコントローラ及び第4のブレーキコントローラを制御するように配置され、第2のデータバスは、少なくとも第2のブレーキコントローラ及び第3のブレーキコントローラを制御するように配置されている。従って、一方のデータバスが故障した場合、車両の両側の制動能力は、フロントアクスル及びリヤアクスルの少なくとも一方で維持され、これによって、車両が、例えば、緊急停止などの緊急操作を実行することができる。車両の制御ユニットは、正常に機能するブレーキコントローラの間で制動力を割り当てて車両安定性を維持することができる。
【0012】
いくつかの態様によれば、フェイルサイレントブレーキコントローラとして配置されたリヤアクスルの故障しているブレーキコントローラは、制動能力の欠如を示すメッセージを車両の制御ユニットに送信するように構成されている。このようにして、車両の制御ユニットは、車両の制動能力が低下した情報を受信して、それに応じて動作することができる。例えば、シナリオによっては、故障したブレーキコントローラの制動能力の欠如に応じて制動力の割り当てが行われた緊急操作を開始することができる。
【0013】
いくつかの態様によれば、フェイルサイレントブレーキコントローラとして配置されたリヤアクスルの故障しているブレーキコントローラは、故障発生からブレーキコントローラの再起動まで、ゼロ制動能力モードにロックされるように構成されている。これによって、システムの堅牢性と車両全体の安全性が向上する。コントローラ自体が停止すると、ポーリングなどに応答してゼロ能力メッセージにアクティブに応答できない可能性がある。データバスは、故障したブレーキコントローラの能力値をロックするように構成され、コントローラが再起動するまでこれをアンロックする可能性がなくてもよい。
【0014】
いくつかの態様によれば、制動システムは、故障が発生した場合、車両の制御ユニットにメッセージを送信できるように配置されたそれぞれのバックアップ電気エネルギー源を備えている。従って、ブレーキコントローラがその主電源を失った場合でも、バックアップ電気エネルギー源を使用して、故障状態メッセージを送信することができる。バックアップ電気エネルギー源は、例えば、容易に組み込んで必要に応じて交換できる充電式電池であってもよい。
【0015】
いくつかの態様によれば、それぞれのフロントアクスルの車輪のブレーキコントローラは、第1の車輪速センサ及び第2の車輪速センサにそれぞれに接続され、これによって、フロントアクスルにおける車輪速センサの冗長性を提供する。これによって、少なくとも1つのフロントアクスルの車輪速センサがシステム全体の動作に影響を与えることがなく故障できるため、システムの堅牢性が向上する。
【0016】
いくつかの態様によれば、フロントアクスルの車輪に関連付けられた車輪速センサは、フロントアクスルの反対側の車輪に関連付けられたブレーキコントローラに接続されるように配置されている。この横方向の接続は、バックアップ接続が有効である場合に特に有用となる可能性があるレベルの冗長性を提供する。これは、両方の車輪を制御しているマスターブレーキコントローラが両方の車輪の車輪速にアクセスできるためである。また、車両の制御ユニットは、両方の車輪からの車輪速を使用して、制動力割り当てなどを決定することができる。
【0017】
いくつかの態様によれば、車両は、第1及び第2のリヤアクスルの車輪を備えている。第1のリヤアクスルの車輪に関連付けられた車輪速度センサは、第1のリヤアクスルの車輪と同じ側にある、第2のリヤアクスルの車輪に関連付けられたブレーキコントローラに接続されるように配置されている。このようにして、リヤアクスルの車輪速センサが故障しても、車両の同じ側にある両方のブレーキコントローラは、正常な車両側に関連付けられた車輪速データに依然としてアクセスできる。
【0018】
いくつかの態様によれば、車両は、トレーラの一組の車輪に支持されたトレーラユニットを備えている。一組の車輪の中の少なくとも1つの車輪は、フェイルサイレントモードに配置されたブレーキコントローラを備えている。従って、上述した利点は、セミトレーラタイプの車両にも当てはまる。
【0019】
いくつかの態様によれば、リヤアクスルの車輪のブレーキコントローラは、第1のリヤアクスルの車輪速センサ及び第2のリヤアクスルの車輪速センサのそれぞれから出力された車輪速を比較することによって、車輪のリフトオフを検知するように配置されている。車両の片側の後輪からの車輪速を比較することによって、車両のリフトオフを検知することができる。この検知は、例えば、車輪速差に基づくことができる。
【0020】
いくつかの態様によれば、制御ユニットは、ブレーキコントローラの故障発生に応答して、制動力を再割り当てするように配置されている。従って、車両の制動は、ブレーキコントローラの故障によって過度に影響を受ける必要はない。これは、他のブレーキコントローラが、故障したコントローラが最初に担当した制動の一部を引き受けることができるためである。
【0021】
いくつかの態様によれば、制御ユニットは、ブレーキコントローラの故障発生に応答して、車両安定性を再評価するように配置されている。これは、車両安定性を向上させることができることを意味し、これは利点となる。
【0022】
上述した利点に関連する制御ユニット、コンピュータプログラム、コンピュータ可読媒体、コンピュータプログラム製品及び車両も本明細書に開示されている。
【0023】
一般的に、特許請求の範囲で使用されるすべての用語は、本明細書で別段の定めがない限り、技術分野におけるそれらの通常の意味に従って解釈されるべきである。「a/an/要素、装置、構成要素、手段、ステップなど」へのすべての言及は、特に明記されていない限り、要素、装置、構成要素、手段、ステップなどの少なくとも1つの実例を指すものと公然と解釈されるべきものである。本明細書に開示される任意の方法のステップは、明記されていない限り、開示された正確な順序で実行される必要はない。本発明のさらなる特徴及び利点は、添付の特許請求の範囲及び以下の説明を検討すれば明らかになるであろう。当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく、本発明の異なる特徴を組み合わせて、以下に記載のもの以外の実施形態を生み出せることを認識するであろう。
【0024】
添付の図面を参照して、以下、例として挙げられる本発明の実施形態についてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1A】いくつかの例示的な大型車両を概略的に示している。
【
図1B】いくつかの例示的な大型車両を概略的に示している。
【
図1C】いくつかの例示的な大型車両を概略的に示している。
【
図2】例示的な相互接続されたフロントアクスルのブレーキコントローラを示している。
【
図3】例示的な相互接続されたフロントアクスルのブレーキコントローラを示している。
【
図4】例示的なトラクタの制動装置のレイアウトを示している。
【
図5A】例示的な相互接続されたリヤアクスルのブレーキコントローラを示している。
【
図5B】例示的な相互接続されたリヤアクスルのブレーキコントローラを示している。
【
図6】例示的なトレーラの制動装置のレイアウトを示している。
【
図7】例示的なブレーキコントローラ装置を概略的に示している。
【
図8】例示的なブレーキコントローラ装置を概略的に示している。
【
図11】例示的なコンピュータプログラム製品を示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ここで、本発明の特定の態様を示す添付の図面を参照して、以下、本発明をより十分に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書に記載の実施形態及び態様に限定されると解釈するべきではない。むしろ、これらの実施形態は例として提供されるものであり、本開示が徹底かつ完全であり、本発明の範囲を当業者に十分伝える。同様の符号は、説明全体で同様な要素を指している。
【0027】
本発明は、本明細書に記載及び図示の実施形態に限定されないことを理解されたい。むしろ、当業者であれば、添付の特許請求の範囲内で、多くの変更及び修正がなし得ることを認識するであろう。
【0028】
図1A~1Cは、貨物輸送用のいくつかの例示的な車両100を示している。
図1Aは、車輪120,140及び160に支持されたトラックを示している。これらの車輪の一部は駆動輪である。
図1Bは、トラクタユニット101がトレーラユニット102を牽引するセミトレーラ車両を示している。トレーラユニット102の前部は、第5の車輪接続103によって支持される一方、トレーラユニット102の後部は、一組のトレーラの車輪180に支持されている。
図1Cは、トレーラユニット102を牽引するように配置されたドーリーユニット104を持つトラックを示している。そして、トレーラユニットの前部は、一組のドーリーの車輪190に支持される一方、トレーラユニットの後部は、一組のトレーラの車輪180に支持されている。
【0029】
それぞれの車両100は、制御ユニット110を備えている。この制御ユニットは、車両全体に分散されたいくつかのサブユニットを潜在的に備えることができるか、又は単一の物理ユニットとすることができる。制御ユニットは、車両の動作を制御する。制御ユニット110は、例えば、制動力を車輪間に割り当てて、車両安定性を維持することができる。それぞれの車輪のブレーキコントローラは、制御ユニットがブレーキコントローラと通信できるように制御ユニット110に通信可能に接続され、これによって、車両の制動を制御することができる。
【0030】
上述したような車両の組み合わせは、一般的に知られており、本明細書ではより詳細に説明しない。本明細書に開示される技術は、
図1A~1Cに示される組み合わせだけでなく、広範囲の異なる車両の組み合わせに適用可能である。さらに、本明細書に開示される技術は、例えば、電動車両又はハイブリッド電気車両にも適用可能であることを理解されたい。
【0031】
それぞれの車輪は、車輪ブレーキ130,150,160に関連付けられている(トレーラユニットの車輪ブレーキは
図1A~1Cに示されていない)。この車輪ブレーキは、例えば、空気圧作動式のディスクブレーキ又はドラムブレーキとしてもよいが、本開示のいくつかの態様は、車両の減速中に電力を生成する回生ブレーキ、並びに電気機械式ブレーキ(EMB)などの電気作動式のディスクブレーキ又はドラムブレーキであってもよい。
【0032】
車輪ブレーキは、ブレーキコントローラによって制御される。本明細書では、ブレーキコントローラ、ブレーキモジュレータ及びホイールエンドモジュールという用語は、ほとんど同じ意味で使用される。それらはすべて、車両100などの車両の少なくとも1つの車輪に加えられる制動力を制御するデバイスとして解釈されるべきである。サービスブレーキシステムは、駐車中に車両を固定位置に保持するように構成されたパーキングブレーキシステムとは対照的に、走行中に車両を制動するシステムである。
【0033】
ブレーキシステムに関して、単一の電気的故障が発生した場合、制動能力(最大減速能力)の損失がないか又はその損失が制限されて、車両安定性の損失がないか又はその損失が制限されることが望ましい。最も知られているサービスブレーキシステムは、2つのサービスブレーキシステムを並列に取り付けている場合にのみこの要求を満たすことができ、その結果、部品、配管及びエアフィッティングが二重になる。
【0034】
しかしながら、最近のサービスブレーキの開発では、その代わりに、車両の各車輪に個別のブレーキコントローラを含んだ装置を備えている。通常動作では、各ブレーキコントローラは、制動力、車輪スリップの調整、車輪ロックの防止、及びコントローラのそれぞれの車輪の診断の実行を担当している。しかしながら、これに加えて、それぞれのコントローラの制御出力を他のブレーキコントローラの1つの「バックアップ」ポートに接続することもできる。このようにして、コントローラは、故障しているコントローラのバックアップポートへの接続を動作させることによって、故障しているコントローラの機能を引き受けることができる。バックアップポートへの接続は、1つ以上の制御バルブによって係合可能な空気圧接続であってもよい。そして、故障したコントローラは、バックアップポートとブレーキアクチュエータとの間のアクセスを開通することのみを必要とし、これによって、外部のコントローラが故障しているコントローラのアクチュエータによって車輪ブレーキを制御することができる。いくつかの態様によれば、コントローラのデフォルト状態は、バックアップポートとブレーキアクチュエータとの間のアクセスを含む状態である。従って、何らかの理由によりブレーキコントローラの電力供給が停止したり故障したりした場合、バックアップポートとブレーキコントローラとの間のアクセスが自動的に開通される。
【0035】
図2は、このような構成を概略的に示している。左側のホイールエンドモジュール(WEM)201lは、制御接続231lを介して、フロントアクスルの左側の車輪120lの制動を制御するように配置されている。制御接続は、例えば、ディスクブレーキなどを作動させるための空気圧接続であってもよい。右側のWEM201rは、同様な制御接続213rを介して、フロントアクスルの右側の車輪120rの制動を制御するように配置されている。
【0036】
2つのWEMは、バックアップ接続220によってリンクされており、それぞれのWEMが他の車輪の制動の制御を引き受けることができる。従って、一方のWEMに故障が発生すると、他のWEMが引き継いで車両の制動能力を維持し、制動制御の冗長性を効果的に提供する。
【0037】
それぞれのWEM210l,210rは、それぞれの車輪に制動力を発生させるための手段211l,211rを備えている。(
図2に示す)デフォルトモードでは、両方のWEM210l,210rが完全に機能して意図した通りに動作する場合、バックアップポート214l,214rは、スイッチ212l,212rによってそれぞれの車輪のブレーキから切り離される。これらの「スイッチ」は、例えば、バックアップ接続220が空気圧接続である場合、空気圧バルブとすることができる。WEM210l,210rのいずれかが故障すると、そのスイッチ212l,212rを切り替えることで、他のWEMがバックアップ接続220を介して制御を引き受けることができる。コントローラが制動を制御しているアクティブモードから、コントローラが他のコントローラに制御を渡すスレーブモードへのモードの切り替えは、例えば、電力の喪失などによって自動的に起動することができる。
【0038】
従って、フロントアクスルのWEM210l,210rの一方が故障すると、制動制御のために他のWEM(いまだ機能している)を使用することができる。スイッチ212l,212rは、WEMが故障したときに自動的に動作するか、又は制御ユニット110から遠隔操作されてもよい。スイッチが空気圧バルブである場合、このバルブは、例えば、デフォルトで開弁しているか、及び/又は制御ユニット110から遠隔的に制御可能であってもよい。即ち、ブレーキコントローラが停止すると、(自分自身又は外部の制御信号のいずれかによって)バルブが自動的に開弁して、他のブレーキコントローラによる制御を可能にする。
【0039】
制御ユニット110は、ポーリング機能及び/又はウォッチドッグ機能を実装して、故障したWEMを検知することができる。ウォッチドッグ機能は、監視対象のモジュールによって継続的にリセットされる必要があるタイマーである。タイマーがタイムアップすると、モジュールがこれをリセットしていないこと、即ち、モジュールが完全に機能しておらず停止している可能性があることを意味する。ポーリング機能は、それぞれのWEMからのステータスメッセージを定期的に要求する制御ユニット110を含むことができる。故障したWEMは、故障発生を示すステータスで応答してもよい。完全に停止したWEMは全く応答せず、その応答の欠如から、制御ユニット110は、WEMが故障したと推測し、その故障発生に応答して適切なアクションをとることができる。
【0040】
図3は、フロントアクスルの左側のブレーキコントローラ210lが故障した場合のシナリオ300を概略的に示している。例えば、左側の車輪120lのブレーキコントローラ210lが電気的な故障をこうむっている場合、そのバックアップポート214lに加えられる空気圧を通過させる状態に自動的に故障し、これによって、バックアップ接続220が制御接続213lに接続される。従って、両方の車輪120l,120rは、
図3に示されるように、右側のブレーキコントローラ210rによって制御され、故障したブレーキコントローラ210lはスレーブとして機能し、システム200の全体をフェイルオペレーショナルにする。
【0041】
フロントアクスルの2つのWEM211l,211rは、一緒にフェイルオペレーショナルシステムを構成し、これは、車両がフロントアクスルの車輪の制動能力を失うことなく、1つのコントローラが故障できることを意味している。
【0042】
図4は、本教示による制動システム400のレイアウトを示している。フロントアクスルの2つの車輪120l,120r、及びリヤアクスルの4つの車輪140l,160l,140r,160rがある。本制動システムの原理は、被牽引車両ユニット、ドーリーなどを含む、任意数のリヤアクスルに適用できることを認識されたい。トレーラユニットの制動システムは、
図6に関連して以下説明する。
【0043】
それぞれの車輪には、
図4において1から6の番号が付された対応するWEMがある。それぞれの車輪には、
図4において1から6の番号が付された少なくとも1つの関連する車輪速センサ(WS)もあり、冗長的なセンサは「a」及び「b」で示されている。車輪速センサ、及び車両制御のためのそれらの使用は既知であり、本明細書ではより詳細に説明しない。
【0044】
車両運動管理モジュール(VMM)又は制御ユニット110は、車両の制動機能の少なくとも一部を制御する。上述したように、VMMは、車両100の減速のための制動システムだけでなく、車両100を動作させるときに車両安定性を制御するために使用することができる。VMM110は、コントローラエリアネットワーク(CAN)又はデュアルチャネリングを持つイーサネットによって接続されている。第1の通信バス420は、WEM1、WEM4及びWEM6に接続される一方、第2の通信バス430は、WEM2、WEM3及びWEM5に接続されている。これは、1つのバスが故障した場合、車両の両側の少なくとも一部の制動能力を維持する効果がある。換言すると、
図4に示す制動システム400は、制御ユニット110、又は少なくとも第1のデータバス420及び第2のデータバス430を介して制動システム400を制御するように配置された車両運動管理ユニット(VMM)を備えている。ここで、第2のデータバスは、第1のデータバスとは異なるように配置されている。第1のデータバス420は、少なくとも第1のブレーキコントローラWEM1及び第4のブレーキコントローラWEM4を制御するように配置され、第2のデータバス430は、少なくとも第2のブレーキコントローラWEM2及び第3のブレーキコントローラWEM3を制御するように配置されている。従って、WEMは別のバスに接続されることで、通信バス420,430のいずれかが故障しても、車両の左右両側の制動能力が利用可能であることを保証する。いくつかの他の態様によれば、それぞれのバスは、冗長的な方法でそれぞれのブレーキコントローラに接続されている。このようにして、バックアップバスを代わりに使用することができるため、通信バスは車両の動作に影響を与えることなく故障することができる。
【0045】
他のいくつかの態様によれば、それぞれのWEMは、2つ以上の冗長的な通信チャネルによって制御ユニット110又はVMMに接続、即ち、VMMとそれぞれのWEMとの間の通信が冗長性によって保護されている。
【0046】
さらなるいくつかの態様によれば、それぞれのWEMは、少なくとも2つの別個の電源及び/又は空気圧源によって動作し、これは、WEMが、その動作に影響を与えることなく、電源の故障及び/又は空気圧源の供給停止を経験できることを意味する。従って、本明細書に開示される制動システムは、冗長的な電力経路を備え、少なくともいくつかのブレーキコントローラに冗長的な電力供給を行うことができる。他の形態の冗長的な電力供給及び空気圧供給は、
図7及び
図8に関連して以下でより詳細に説明する。
【0047】
フロントアクスルのWEM210l、210rは、フェイルオペレーショナルであるように配置されている。本明細書では、「フェイルオペレーショナル」は、他のコントローラがバックアップ接続220を介して引き継ぐため、車両が重要な制動能力を失うことなく故障できることを意味する。また、フロントアクスルの車輪の制動能力が実質的に維持されるため、車両安定性に重大な影響を与えることはおそらくない。フロントアクスルの故障したWEMは、スイッチ212l,212r(
図4では図示せず)を開状態に設定して、フロントアクスルで依然として機能しているWEMが他の車輪も制御する。
【0048】
フロントアクスルのそれぞれの車輪120l,120rには、関連する車輪速センサWS1a,WS2aがある。車輪速センサからのデータを使用して、周知の方法で制動を制御することができる。フロントアクスルには、任意の冗長的な車輪速センサWS1b、WS2bが設けられている。これらは、車輪速センサの一方が故障したときに使用することができる。冗長的な車輪速センサの代替又は補完として、車両の片側にある1つ以上の車輪速センサ間の交差接続440,450を車両の反対側にあるブレーキコントローラに接続することができる。公差接続を使用して、ブレーキコントローラが故障した車輪の車輪速を検出することができる。このようにして、依然として機能しているブレーキコントローラは、両方の車輪から車輪速データを取得することができ、これによって制動制御を簡略化することができる。
【0049】
図4におけるリヤアクスルのWEM、即ち、WEM3,WEM4,WEM5,WEM6は、いくつかの例によれば、フェイルサイレントとして配置されている。本明細書では、「フェイルサイレント」とは、一方のコントローラが、バックアップコントローラが介入することなく故障し、対応する車輪の制動能力を維持できることを意味する。そして、故障したコントローラの車輪は、実質的に非制動状態のフリーランニングの車輪になる。フェイルサイレントブレーキコントローラとして配置されたリヤアクスル102,103の車輪の故障しているブレーキコントローラWEM3,WEM4,WEM5,WEM6は、いくつかの態様によれば、制動能力の欠如を示すメッセージを車両の制御ユニット110に送信するように構成してもよい。そして、フェイルサイレントブレーキコントローラとして配置されたリヤアクスルの車輪の故障しているブレーキコントローラWEM3,WEM4,WEM5,WEM6は、ブレーキコントローラが再起動されるまで、オプションとしてゼロ制動能力モードにロックすることができる。これは、車両が停止して再起動するまで、故障したブレーキコントローラがシステムによって使用できないことを意味する。ブレーキコントローラが完全に停止して応答しなくなることがある。そして、通信バス、例えば、CANバスは、ブレーキコントローラが故障を経験して、例えば、制御ユニット110にブレーキ能力を伝えることができない場合、ゼロ能力メッセージを提供するように構成することができる。
【0050】
リヤアクスルのそれぞれの車輪のブレーキコントローラWEM3,WEM4,WEM5,WEM6は、故障が発生したときに車両の制御ユニット110にメッセージを送信できるように配置された、それぞれのバックアップ電気エネルギー源、例えば、バッテリー、冗長的な電力媒体などを更に備えている。これによって、制御ユニット110がリヤアクスルの故障したブレーキコントローラに関する情報を受信する可能性を高める。もちろん、フロントアクスルの2つのブレーキコントローラが、制御ユニット110に故障発生などに関する警告メッセージを送信するように配置されていてもよい。
【0051】
従って、要約すると、
図4は、大型車両100の制動システム400を示している。制動システムは、フロントアクスル101の左側の車輪120lの制動を制御するように配置された第1のブレーキコントローラWEM1と、フロントアクスル101の右側の車輪120rの制動を制御するように配置された第2のブレーキコントローラWEM2と、を備えている。第1及び第2のブレーキコントローラは、
図2及び3に関連して上述したバックアップ接続220によって接続されている。バックアップ接続は、第1又は第2のブレーキコントローラが第1及び第2のブレーキコントローラの他方の車輪の制動制御を引き受けることができるように配置され、これによって、第1及び第2のブレーキコントローラがフェイルオペレーショナルブレーキコントローラとして配置される。従って、左側のブレーキコントローラWEM1が故障すると、右側のブレーキコントローラWEM2がバックアップ接続220を介して引き継ぐことができ、その逆もまた同様である。制動システム400は、第1のリヤアクスル102の左側の車輪140lの制動を制御するように配置された第3のブレーキコントローラWEM3と、第1のリヤアクスル102の右側の車輪140rの制動を制御するように配置された第4のブレーキコントローラWEM4と、を更に備えている。第3及び第4のブレーキコントローラは、故障発生に応答して、リヤアクスルの左右の車輪のそれぞれを非制動状態にするように配置、即ち、第3及び第4のブレーキコントローラがフェイルサイレントブレーキコントローラとして配置されている。
【0052】
図4にも示されているように、制動システムはまた、オプションとして、第2のリヤアクスル103の左側の車輪160lの制動を制御するように配置された第5のブレーキコントローラWEM5と、第2のリヤアクスル103の右側の車輪160rの制動を制御するように配置された第6のブレーキコントローラWEM6と、を備えている。第5及び第6のブレーキコントローラは、故障発生に応答して、第2のリヤアクスルの左右の車輪160l,160rのそれぞれを非作動状態にするように配置、即ち、第5及び第6のブレーキコントローラがフェイルサイレントブレーキコントローラとしても配置されている。
【0053】
いくつかの態様によれば、WEMのソフトウェアには、制動能力がゼロであり、かつ故障が検知された最新メッセージを送信するのに十分な電気的なバックアップストレージがある。これは、最新の既知能力がゼロトルクとして残っている。ここで、VMM110は、6つの利用可能なWEMのうちの5つを再割り当てして、縦方向の制動を実現することができる。利用可能な5つのWEMは、ホイールエンドのデュアルWEMを含んだ完全な冗長性なしで、ヨー制御を管理する機会をVMMに提供する。
図4の例では、リヤアクスルの1つのWEMが故障した後では、縦方向の総制動力は5/6である。実際のところ、急制動中のピッチングによる制動能力の損失はさらに小さくなる。要するに、リヤアクスルの車輪の垂直力が減少して、フロントアクスルの車輪へと移動される。同様に、4×2の場合、縦方向の総制動力は3/4になる。リヤアクスルの故障したコントローラのゼロ能力は、いくつかの態様によれば、故障したWEMで完全停止が行われた後に、故障したWEMが実際に再び動作できるかを確認するために、システムの完全な再起動及びリブートの前に取り除くことはできない。
【0054】
いくつかの態様によれば、フロントアクスル101のそれぞれの車輪のブレーキコントローラWEM1,WEM2は、第1の車輪速センサWS1a、WS1bのそれぞれ、及び第2の車輪速センサWS2a,WS2bのそれぞれに接続され、これによって、フロントアクスルにおける車輪速センサの冗長性が提供される。フロントアクスル101の車輪速センサはまた、オプションとして、交差リンク、即ち、フロントアクスル101の車輪120l,120rに関連付けられた車輪速センサWS1a,Ws2aが、フロントアクスルの反対側にある車輪120l,120rに関連付けられたブレーキコントローラWEM1,WEM2に接続されるように配置されていてもよい(440,450)。
【0055】
いくつかの態様によれば、リヤアクスルの車輪の車輪速センサは、二重化されていない。リヤアクスルの二重化された車輪速センサの代わりに、
図4において接続460l,460r,470l,470rで示されているように、片側のWEMは冗長化のために車輪速センサを共有している。このようにして、リヤアクスルの車輪の車輪速センサが故障した場合でも、少なくとも急制動をすることができる。
【0056】
従って、オプションとして、車両は、第1のリヤアクスル102の車輪及び第2のリヤアクスル103の車輪を備えている。第1のリヤアクスル102の車輪140l,140rに関連付けられた車輪速センサWS3,WS4は、第1のリヤアクスル102と同じ側にある、第2のリヤアクスル103の車輪160l,160rに関連付けられたブレーキコントローラWEM5,WEM6に接続されるように配置されている(460l,470r,460l,470r)。
【0057】
異なるリヤアクスルの車輪速センサをブレーキコントローラに接続する利点は、ブレーキコントローラが異なる車輪速を比較し、これによって、例えば、車輪のリフトオフ状態などを検知できることである。この検知は、制御ユニット110に伝達することができる。
【0058】
図5Aは、リヤアクスルのWEMが
図4のようなフェイルサイレントモードではなくフェイルオペレーショナルモードで配置されている、別の例示的なブレーキコントローラ500のレイアウトを示している。これは、リヤアクスルの1つのWEMが、車両の同じ側にあるリヤアクスルの他のWEMの制御を引き受けることができることを意味する。第1のリヤアクスルの左側の車輪140lの制動は、WEM3’によって制御される一方、第2のリヤアクスルの左側の車輪160lの制動は、WEM5’によって制御される。それぞれのWEMは、そのそれぞれの車輪に制動力を発生させるための手段511f、511rを備えている。両方のWEMが完全に機能して意図した通りに動作するデフォルトモードでは、バックアップポート514f、514rは、スイッチ512f、512rによってそれぞれの車輪ブレーキから切り離されている。これらの「スイッチ」は、例えば、バックアップ接続220’が空気圧接続の場合、空気圧バルブとすることができる。WEMが故障すると、WEMがそれぞれのスイッチ512f,512rを切り替え、これによって、他のWEMが制御接続220’を介して制御を引き受けることができる。コントローラが制動を制御しているアクティブモードから、コントローラが他のコントローラに制御を渡すスレーブモードへのモードの切り替えは、例えば、電力の消失などによって自動的に起動される。
【0059】
図4のフロントアクスルのブレーキコントローラ装置は、
図5Aに示されるリヤアクスルのブレーキコントローラ装置500と一緒に使用することができる。
図5Aの2つのWEMは、機能的には
図2及び3に例示されたWEMに対応している。
【0060】
従って、
図5Aは、大型車両100の制動システム500のリヤアクスル部分を示している。制動システムは、フロントアクスル101の左側の車輪120lの制動を制御するように配置された第1のブレーキコントローラWEM1と、フロントアクスル101の右側の車輪120rの制動を制御するように配置された第2のブレーキコントローラWEM2と、を備えている。第1及び第2のブレーキコントローラは、第1及び第2のブレーキコントローラの一方が第1及び第2のブレーキコントローラの他方の車輪の制動制御を引き受けることができるように配置されたバックアップ接続220によって接続され、これによって、第1及び第2のブレーキコントローラがフェイルオペレーショナルブレーキコントローラとして配置される。制動システム500は、第1のリヤアクスル102の左側の車輪140lの制動を制御するように配置された第3のブレーキコントローラWEM3’と、第2のリヤアクスル103の左側の車輪160lの制動を制御するように配置された第5のブレーキコントローラWEM5’と、を更に備えている。第3及び第5のブレーキコントローラは、第3及び第5のブレーキコントローラの一方が第3及び第5のブレーキコントローラの他方の車輪の制動制御を引き受けることができるように配置されたバックアップ接続220’によって接続され、これによって、第3及び第5のブレーキコントローラがフェイルオペレーショナルブレーキコントローラとして配置される。
【0061】
図5Bは、リヤアクスルのWEMが
図4のようなフェイルサイレントモードではなくフェイルオペレーショナルモードで配置されている、ブレーキコントローラ520のレイアウトを示している。これは、リヤアクスルの一方のWEMが、同じリヤアクスルにある他のリヤアクスルのWEMの制御を引き受けることができることを意味する。フロントアクスルのブレーキコント―ローラ装置は、
図5Bに示すリヤアクスルのブレーキコントローラ装置520と一緒に使用することができる。
図5Bに示す2つのWEMは、機能的には
図2及び3に例示されたWEMに対応している。
【0062】
フロントアクスルの不均一な制動を回避することがより重要である場合があるが、リヤアクスルの両方の車輪の制動を維持して、例えば、減速度を最大とすることが望ましい場合も依然としてある。
【0063】
従って、
図5Bは、大型車両100の制動システム520のリヤアクスル部分を示している。制動システムは、フロントアクスル101の左側の車輪120lの制動を制御するように配置された第1のブレーキコントローラWEM1と、フロントアクスル101の右側の車輪120rの制動を制御するように配置された第2のブレーキコントローラWEM2と、を備えている。第1及び第2のブレーキコントローラは、第1及び第2のブレーキコントローラの一方が第1及び第2のブレーキコントローラの他方の車輪の制動制御を引き受けることができるように配置されたバックアップ接続220によって接続され、これによって、第1及び第2のブレーキコントローラがフェイルオペレーショナルブレーキコントローラとして配置される。制動システム520は、第1のリヤアクスル102の左側の車輪140lの制動を制御するように配置された第3のブレーキコントローラWEM3”と、第1のリヤアクスル102の右側の車輪140rの制動を制御するように配置された第4のブレーキコントローラWEM4”と、を更に備えている。第3及び第4のブレーキコントローラは、第3及び第4のブレーキコントローラの一方が第3及び第4のブレーキコントローラの他方の車輪の制動制御を引き受けることができるように配置されたバックアップ接続220”によって接続され、これによって、第3及び第4のブレーキコントローラがフェイルオペレーショナルブレーキコントローラとして配置される。
【0064】
図5Bはまた、
図4のフロントアクスルの車輪に示されるものに対応する、オプションの車輪速センサ装置も示している。この装置には、
図4と同じ機能、即ち、オプションの冗長的な車輪速センサWS3b及びWS4b、並びにオプションの交差接続540,550がある。
【0065】
図6は、例えば、トレーラユニット102を支持する一組のトレーラの車輪180を制御するための例示的な制動システム600を示している。
図4のリヤアクスルの車輪140,160と同様に、一組のトレーラの車輪はフェイルサイレントになるように配置されている。1つのWEMが故障すると、故障したWEMは制動能力がゼロである最新のメッセージを制御ユニット110に送信する。制御ユニット110は、上述したように、ポーリング機能及び/又はウォッチドッグ機能を実装して、トレーラユニット102の故障したWEMを検知することができる。例えば、完全に停止した一組のトレーラの車輪180の車輪に関連付けられたWEMは、ポーリングにまったく反応せず、応答の欠如から、制御ユニット110が、WEMが故障して故障発生に応答して適切なアクションをとれないことを推測することができる。
【0066】
車輪速センサWS7~WS12は、車輪ごとに冗長化されていないこと、即ち、トレーラの車輪ごとに配置された車輪速センサは1つのみであることに留意されたい。しかしながら、両側にある車輪速センサは、すべてのWEM、又は少なくともWEMのサブセットに接続されている。この接続構成は、あるレベルのセンサの冗長性を提供し、ブレーキコントローラが故障したにもかかわらず、制御ユニット110が車輪速データにアクセスできるようになる。
【0067】
図5A及び
図5Bに示すフェイルオペレーショナル構成は、一組のトレーラの車輪にも適用することができるが、この構成は、トラクタユニットのリヤアクスルの車輪に適用した場合ほど有利ではない可能性がある。なぜならば、セミトレーラは、長い等価ホイールベース(第5の車輪のキングピンとアクスルのグループとの間の距離)を持つからである。車輪のトラック幅は等価ホイールベースのほんの一部であるため、例えば、6輪のセミトレーラでWEMが停止すると、車両全体の制御能力の損失は限定される。
【0068】
いくつかの態様によれば、上述したように、それぞれの車輪のブレーキコントローラは、オプションとして、冗長的な電源及び/又は冗長的な空気圧源を有している。しかしながら、より費用効果の高いオプションは、それぞれの車輪が1つの空気圧源及び/又は電源にのみ接続されているが、例えば、フロントアクスルのそれぞれのWEMが異なる供給源から供給を得る場合である。フロントアクスルの構成は、例えば、一方のエアタンク又は空気圧源が前輪の一方のWEMに接続され、他方のエアタンク又は空気圧源が前輪の他方のWEMに接続されるように配置することができる。そして、一方のタンクが圧力を失うと、メインコントローラは、圧力が供給されていない側に、機能している側からバックアップ接続220を通過させるように要求することができる。同様に、一方の電源が車輪の一方のWEMに接続され、他方の電源がメインコントローラに接続されている場合、一方のバッテリーの電源が失われると、一方のWEMが動作を維持して、両方の前輪を制御する。
図7は、オプションとしてのそのような制動システム700の態様を示している。そこでは、VMM110は、第1の通信バス420を介して左側のWEM210lに接続されるとともに、第2の通信バス430を介して右側のWEM210rに接続されている。これは、車両100が、両方の前輪の制動能力を依然として維持しつつ、一方のバスで通信バス故障を経験できることを意味する。これは、対応する通信バスを介して機能しているWEMに対して通信が維持され、かつ機能しているWEMがバックアップ接続220を介して故障しているWEMの車輪の制動を制御できるので可能となる。
【0069】
図7はまた、前輪のそれぞれのWEMが別個の電源710,720によって電力を供給される態様700を示している。従って、一方のWEMで停電などの電気的故障が発生すると、他方のWEMは、異なる電源から電力を供給されるため機能し続ける。
【0070】
図7はさらに、前輪のそれぞれのWEMが別個の空気圧源730,740から空気圧を供給される、いくつかのさらなる態様を示している。従って、一方のWEMでエアタンクの故障や空気圧ホースの漏れなどの空気圧故障が発生すると、他方のWEMは、異なる空気圧源から供給されるために依然として機能し続ける。
【0071】
図8は、
図7の態様に対応する態様800を示しているが、その代わりに、リヤアクスルのWEMに適用されている。ここで、第1のリヤアクスルの左側の車輪140lは、第1の通信バス420を介してVMM又は制御ユニット110に接続されたWEMによって制御される一方、第2のリヤアクスルの左側の車輪160lは、第2の通信バス430を介してVMM110に接続されたWEMによって制御される。従って、一方の通信バスが故障しても、車両の後部の左側の一部の制動能力が維持される。同様な接続構成は、リヤアクスルの右側の車輪のWEMに実装されている。
【0072】
図8はまた、別個の電源810,820及び別個の空気圧源830,840が、リヤアクスルの異なる左側の車輪に使用される態様を示している。これは、停電及び/又は空気圧源の故障にもかかわらず、車両の後部の左側で一部の制動能力が維持されることを意味する。同様な装置は、車両の後部の右側に実装することができる。
【0073】
図9は、上記の説明を要約した、大型車両100を制動する方法を示すフローチャートである。この方法は、フロントアクスル101の左側の車輪120lの制動を制御するように配置された第1のブレーキコントローラWEM1と、フロントアクスル101の右側の車輪120rの制動を制御するように配置された第2のブレーキコントローラWEM2と、を備えた制動システムを構成すること(S1)を含んでいる。第1及び第2のブレーキコントローラは、第1及び第2のブレーキコントローラの一方が第1及び第2のブレーキコントローラの他方の車輪の制動制御を引き受けることができるように配置されたバックアップ接続220によって接続されている。
【0074】
この方法はまた、第1のリヤアクスル102の左側の車輪140lの制動を制御するように配置された第3のブレーキコントローラWEM3と、第1のリヤアクスル102の右側の車輪140rの制動を制御するように配置された第4のブレーキコントローラWEM4と、を構成すること(S2)と、第3又は第4のブレーキコントローラの故障発生に応答して、バックアップ接続220を介して他のブレーキコントローラによる故障したブレーキコントローラに対応する車輪の制動制御を引き受けること(S3)と、対応する後輪を非制動状態のままにすること(S4)と、を含んでいる。第3のブレーキコントローラWEM3及び第4のブレーキコントローラWEM4は、故障発生に応答して、及び第1又は第2のブレーキコントローラの故障発生に応答して、リヤアクスルの左右の車輪のそれぞれを非制動状態にするように配置されている。
【0075】
図4及び
図5を参照すると、本明細書には、大型車両100を制動する方法も開示されている。この方法は、フロントアクスル101の左側の車輪120lの制動を制御するように配置された第1のブレーキコントローラWEM1と、フロントアクスル101の右側の車輪120rの制動を制御するように配置された第2のブレーキコントローラWEM2と、を備えた制動システムを構成することを含んでいる。第1及び第2のブレーキコントローラは、第1及び第2のブレーキコントローラの一方が第1及び第2のブレーキコントローラの他方の車輪の制動制御を引き受けることができるように配置されたバックアップ接続220によって接続されている。
【0076】
この方法はまた、第1のリヤアクスル102の左側の車輪140lの制動を制御するように配置された第3のブレーキコントローラWEM3’と、第2のリヤアクスル103の左側の車輪160lの制動を制御するように配置された第5のブレーキコントローラWEM5’と、を構成することを含んでいる。第3のブレーキコントローラWEM3’及び第5のブレーキコントローラWEM5’は、第3及び第5のブレーキコントローラの一方が第3及び第5のブレーキコントローラの他方の車輪の制動制御を引き受けることができるように配置されたバックアップ接続220’によって接続されている。
【0077】
図4及び
図5Bを参照すると、本明細書には、大型車両100を制動する方法がさらに開示されている。この方法は、フロントアクスル101の左側の車輪120lの制動を制御するように配置された第1のブレーキコントローラWEM1と、フロントアクスル101の右側の車輪120rの制動を制御するように配置された第2のブレーキコントローラWEM2と、を備えた制動システムを構成することを含んでいる。第1及び第2のブレーキコントローラは、第1及び第2のブレーキコントローラの一方が第1及び第2のブレーキコントローラの他方の車輪の制動制御を引き受けることができるように配置されたバックアップ接続220によって接続されている。
【0078】
この方法はまた、第1のリヤアクスル102の左側の車輪140lの制動を制御するように配置された第3のブレーキコントローラWEM3”と、第1のリヤアクスル102の右側の車輪140rの制動を制御するように配置された第4のブレーキコントローラWEM4”と、を構成することを含んでいる。第3のブレーキコントローラWEM3”及び第4のブレーキコントローラWEM4”は、第3及び第4のブレーキコントローラの一方が第3及び第4のブレーキコントローラの他方の車輪の制動制御を引き受けることができるように配置されたバックアップ接続220”によって接続されている。
【0079】
図10は、いくつかの機能ユニットについて、本明細書で説明された実施形態による制御ユニット110の構成要素を概略的に示している。この制御ユニット110は、車両100に含ませることができる。処理回路1010は、適切な中央処理装置CPU、マルチプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサDSPなどの1つ以上の任意の組み合わせを使用して提供され、例えば、記憶媒体1030の形態をとるコンピュータプログラム製品に格納されたソフトウェア命令を実行することができる。処理回路1010は、少なくとも1つの特定用途向け集積回路ASIC、又はフィールドプログラマブルゲートアレイFPGAとしてさらに提供されてもよい。
【0080】
特に、処理回路1010は、制御ユニット110に、
図10に関連して説明した方法などの一連の動作やステップを実行させるように構成されている。例えば、記憶媒体1030は、一連の動作を記憶することができ、処理回路1010は、記憶媒体1030から一連の動作を検索して、制御ユニット110に一連の動作を実行させるように構成することができる。一連の動作は、一連の実行可能な命令として提供することができる。従って、処理回路1010は、これによって、本明細書に開示された方法を実行するように配置されている。
【0081】
記憶媒体1030はまた、永続記憶装置を含むことができ、これは、例えば、磁気メモリ、光メモリ、ソリッドステートメモリ、又は遠隔的に取り付けられたメモリの任意の1つ又は組み合わせであってもよい。
【0082】
制御ユニット110は、サスペンションシステムのセンサ又はIMUなど、少なくとも1つの外部デバイスと通信するためのインターフェース1020を更に備えている。従って、インターフェース1020は、アナログ及びデジタルの構成要素、並びに有線通信若しくは無線通信のための適切な数のポートを備えた、1つ以上の送信機と受信機を含むことができる。処理回路1010は、例えば、データ及び制御信号をインターフェース1020及び記憶媒体1030に送信することによって、インターフェース1020からデータ及びレポートを受信することによって、並びに記憶媒体1030からデータ及び命令を検索することによって、制御ユニット110の一般的な動作を制御する。本明細書に表されている概念を不明瞭にしないため、制御ノードの他の構成要素並びに関連する機能は省略されている。
【0083】
図11は、プログラム製品がコンピュータで実行されたときに、
図9に示される方法を実行するためのプログラムコード手段1120を含んだコンピュータプログラムを保持するコンピュータ可読媒体1110を示している。コンピュータ可読媒体及びコード手段は一体となって、コンピュータプログラム製品1100を形成することができる。
【国際調査報告】