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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(54)【発明の名称】薬剤給送デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20230201BHJP
【FI】
A61M5/32 510R
A61M5/32 500
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022531554
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(85)【翻訳文提出日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 EP2020081861
(87)【国際公開番号】W WO2021115718
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】62/946,454
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】19218017.2
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520011887
【氏名又は名称】エスエイチエル・メディカル・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン・カールソン
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD13
4C066EE14
4C066NN04
4C066NN08
(57)【要約】
薬剤給送デバイスは、近位端および遠位端を有するハウジングと、ハウジング内に配置され、ストッパおよび給送部材を備える薬剤容器と、ハウジングに対応付けられ、ハウジングに対して移動可能である付勢された給送部材カバーと、薬剤容器に対応付けられ、ハウジングに対して移動可能である付勢されたプランジャロッドと、給送部材カバーと付勢されたプランジャロッドの両方に対応付けられた管状の回転体と、ハウジングに対応付けられたキャップアセンブリとを備え、薬剤給送デバイスが組み付け済み状態にあるときに付勢されたプランジャロッドの近位端と薬剤容器のストッパとの間に隙間が画定され、薬剤給送デバイスが較正済み状態にあるときに付勢されたプランジャロッドの近位端が薬剤容器のストッパと接触する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤給送デバイスであって、
近位端および遠位端を有するハウジング(1)と、
前記ハウジング(1)内に配置され、ストッパ(81)および給送部材を備える薬剤容器(8)と、
前記ハウジング(1)に対応付けられ、前記ハウジング(1)に対して移動可能である付勢された給送部材カバー(3)と、
前記薬剤容器(8)に対応付けられ、前記ハウジング(1)に対して移動可能である付勢されたプランジャロッド(5)と、
前記給送部材カバー(3)と前記付勢されたプランジャロッド(5)の両方に対応付けられた管状の回転体(4)と、
前記ハウジング(1)に対応付けられたキャップアセンブリ(2, 2')とを備え、
前記薬剤給送デバイスが組み付け済み状態にあるときに前記付勢されたプランジャロッド(5)の前記近位端と前記薬剤容器(8)の前記ストッパ(81)との間に隙間(D)が画定され、前記薬剤給送デバイスが較正済み状態にあるときに前記付勢されたプランジャロッド(5)の前記近位端が前記薬剤容器(8)の前記ストッパ(81)と接触する、薬剤給送デバイス。
【請求項2】
前記管状の回転体(4)は、少なくとも1つの保持部材を内面上に有する管状体を備える、請求項1に記載の薬剤給送デバイス。
【請求項3】
前記管状の回転体(4)は、第1の保持部材(43a)、第2の保持部材(43b)、および第3の保持部材を内面上に備える、請求項2に記載の薬剤給送デバイス。
【請求項4】
前記付勢されたプランジャロッド(5)は、前記少なくとも1つの保持部材と相互作用するか、または前記第1の保持部材(43a)、前記第2の保持部材(43b)、および前記第3の保持部材の各々と選択的に相互作用するように構成されたカウンタ保持要素(52)を備える、請求項2または3に記載の薬剤給送デバイス。
【請求項5】
前記付勢された給送部材カバー(3)は、案内要素(32)を備え、前記管状の回転体(4)は、案内トラック(41; 41'; 41")が外面上に配置された管状体を備え、前記案内要素(32)は、前記付勢された給送部材カバー(3)の軸方向移動が前記管状の回転体(4)を回転させるように前記案内トラック(41; 41'; 41")と相互作用するように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の薬剤給送デバイス。
【請求項6】
前記薬剤給送デバイスは、前記カウンタ保持要素(52)が前記第1の保持部材(43a)に係合する初期位置に前記付勢されたプランジャロッド(5)があるときに画定される第1の回転位置に前記管状の回転体(4)があるとき、前記案内要素(32)が前記案内トラック(41)の第1の遠位端点(41c)上に配置される第1の引き込み位置に前記付勢された給送部材カバー(3)があるとき、および前記付勢された給送部材カバー(3)が、前記ハウジング(1)に解放可能に接続されるキャップアセンブリ(2; 2')によって前記位置に保持されるときに、前記組み付け済み状態にある、請求項4に従属する、請求項5に記載の薬剤給送デバイス。
【請求項7】
前記薬剤給送デバイスは、前記カウンタ保持要素(52)が前記第2の保持部材(43b)に係合する較正済み位置に前記付勢されたプランジャロッド(5)があるときに画定される第2の回転位置に前記管状の回転体(4)があるとき、および前記キャップアセンブリ(2; 2')が前記ハウジング(1)から取り外された後に前記案内要素(32)が前記案内トラック(41)の第1の近位端点(41f)上に配置される第1の拡張位置に前記付勢された給送部材カバー(3)があるときに、前記較正済み状態にある、請求項4に従属する、請求項5に記載の薬剤給送デバイス。
【請求項8】
前記付勢されたプランジャロッド(5)は、前記付勢された給送部材カバー(3)を前記第1の拡張位置から、前記案内要素(32)が前記案内トラック(41)の第2の遠位端点上に配置される第2の引き込み位置まで移動させ、それによって、前記薬剤容器(8)に含まれる薬剤が前記薬剤給送デバイスのユーザに給送されるときに、前記較正済み位置から、前記カウンタ保持要素(52)が前記第3の保持部材に係合する最終位置まで移動するように構成される、請求項6に記載の薬剤給送デバイス。
【請求項9】
前記付勢された給送部材カバー(3)は、前記第1の引き込み位置から前記第1の拡張位置まで、前記第1の拡張位置から前記第2の引き込み位置まで、および前記第2の引き込み位置から、前記案内要素(32)が前記案内トラック(41)の第2の近位端点(41i)上に配置される第2の拡張位置まで軸方向に移動可能であり、それによって、前記給送部材は、前記給送部材カバーが前記第1の引き込み位置および前記第2の引き込み位置にあるときに前記給送部材カバー(3)から延ばされ、前記給送部材カバーが前記第1の拡張位置および前記第2の拡張位置にあるときに前記給送部材カバー(3)によって覆われる、請求項7に記載の薬剤給送デバイス。
【請求項10】
前記カウンタ保持要素(52)は、前記付勢された給送部材カバー(3)が前記第1の拡張位置から前記第2の引き込み位置まで軸方向に移動可能であり、それによって、前記管状の回転体(4)を前記第2の回転位置から第3の回転位置まで移動させるときに、前記第2の保持部材(43b)から外れるように構成される、請求項4に記載の薬剤給送デバイス。
【請求項11】
前記管状の回転体(4)は、前記第1の保持部材(43a)と前記第2の保持部材(43b)との間に配置されたランプ表面を備え、前記カウンタ保持要素(52)は、前記ランプ表面に沿って前記第1の保持部材(43a)から前記第2の保持部材(43b)まで移動するように構成される、請求項9に記載の薬剤給送デバイス。
【請求項12】
前記第1の引き込み位置から前記第1の拡張位置までの前記付勢された給送部材カバー(3)の軸方向移動によって、前記管状の回転体(4)が前記第1の回転位置から前記第2の回転位置まで回転する、請求項10に記載の薬剤給送デバイス。
【請求項13】
前記付勢された給送部材カバー(3)部材を近位方向に付勢するように構成された弾力部材(31)を備える、請求項1から12のいずれか一項に記載の薬剤給送デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤給送デバイスに関し、より詳細には、自動機能を有する薬剤給送デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
自己注射器、吸入具、オンボディデバイスなどの薬剤給送デバイスは一般に、正式な医療訓練を行わずに患者によって薬剤を自己投与することで知られている。たとえば、糖尿病の患者や人工授精治療を受けている人は、インシュリンまたはホルモンを繰り返し注射することが必要になる場合がある。他の患者では、成長ホルモンなどの他の種類の薬剤を定期的に注射することが必要になる場合がある。
【0003】
薬剤給送デバイスは、充填済み薬剤容器を用いてエンドユーザに対する給送を行う場合がある。薬剤容器は通常、後端部を密封するストッパと、前端部上に配置された給送部材または前端部上に配置された貫通可能な膜とを有するガラスまたはプラスチック製バレルによって構成される。大抵の場合、薬剤容器にはまず特定の薬剤が充填され、次いで薬剤給送デバイスに組み付けられる。薬剤給送デバイスは通常、薬剤容器のストッパを押して含まれる薬剤をエンドユーザに給送するように構成されたプランジャロッドを備える。しかし、薬剤が各薬剤容器内に充填され、各薬剤容器を密封するようにストッパが配置されたときに、各薬剤容器におけるストッパの位置が異なる場合がある。この差は、製造温度および/または圧力、薬剤容器内のシリコーンオイルの広がり、薬剤および/または給送部材の表面張力などの複数の要因によって生じる。薬剤容器のバッチに薬剤が完全に充填され、各ストッパの位置がすべて同じである場合でも、バッチが市場流通業者または薬剤給送デバイス製造業者に航空輸送によって出荷されるときに、圧力差に起因して各ストッパの位置が変化することがある。各薬剤容器内のストッパ位置の差に起因して、薬剤給送デバイス内のプランジャロッドは通常、組み付け後の薬剤容器のストッパの後方に配置され、ストッパに対して隙間を有する。場合によっては、プランジャロッドが組み付け後の薬剤容器のストッパの過度に近くに配置された場合、プランジャロッドが、組み付け時または航空輸送による出荷時にストッパを圧搾し、それによって、含まれる薬剤の漏れによる内部圧力の上昇または汚染に起因して薬剤容器が損傷を受けることがある。
【0004】
しかし、ストッパの位置に応じた隙間の長さが各々の組み付け後の薬剤給送デバイスにおいて異なることがあり、したがって、投与が不正確になる場合がある。高い給送投与精度を必要とする薬剤給送デバイスは通常、過度に充填された薬剤容器と、特定の硬いストップ構成を有するプランジャロッドとを備えて配置される。給送投与量は、薬剤容器に含まれる薬剤の全体的な量ではなくプランジャロッドの走行距離によって決定される。しかし、プランジャロッドの前端部と薬剤容器のストッパの後端部との間の隙間の長さの差により、給送投与量は実際には、プランジャロッドの走行距離から隙間の長さを引くことによって決定され、したがって、隙間の長さの差によって給送投与量が不正確になる場合がある。
【0005】
特許文献1は、いくつかの自動機能を備えた薬剤給送デバイスを開示しており、この薬剤給送デバイスは市場において非常に好評である。この薬剤給送デバイスは、回転体と針シールドリンクを含む針シールドとを備え、針シールドリンクの軸方向移動は、回転体の外面上のレッジに沿って行われるように構成され、回転体を回転させる。回転体の回転は、回転体の内側レッジ上に位置するストップ部材を備える付勢されたプランジャを解放するように構成される。
【0006】
大部分の例では、この解決策は非常にうまく働く。しかし、開示された薬剤給送デバイスをさらに改良することも要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2006/057604号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、代替的なよりロバストな解決策を得ることである。本開示では、「遠位方向」という用語を使用するときには、薬剤給送デバイスの使用時に薬剤給送部位から離れる方向を指す。「遠位部/端」という用語を使用するときには、薬剤給送デバイスの使用時に、薬剤給送部位から最も遠くに位置する給送デバイスの部分/端部、または給送デバイスの各部材の部分/端部を指す。これに対応して、「近位方向」という用語を使用するときには、薬剤給送デバイスの使用時に薬剤給送部位に向かう方向を指す。「近位部/端」という用語を使用するときには、薬剤給送デバイスの使用時に、薬剤給送部位の最も近くに位置する給送デバイスの部分/端部または給送デバイスの各部材の部分/端部を指す。
【0009】
さらに、「長手方向の」、「長手方向に」、「軸方向に」、または「軸方向の」という用語は、典型的にはデバイスおよび/またはデバイスの構成要素の最も長い延長部の方向においてデバイスまたは構成要素に沿って、近位端から遠位端に延びる方向を指す。
【0010】
同様に、「横方向の」、「横方向に」という用語は長手方向に概ね垂直な方向を指す。
【0011】
本発明の目的は、自動較正機能を実行する簡素で信頼できる薬剤給送デバイスを提供することである。
【0012】
本発明の態様によれば、目的は、請求項1に記載の信頼できる薬剤給送デバイスによって実現される。
【0013】
したがって、薬剤給送デバイスであって、近位端および遠位端を有するハウジングと、ハウジング内に配置され、ストッパおよび給送部材を備える薬剤容器と、ハウジングに対応付けられ、ハウジングに対して移動可能である付勢された給送部材カバーと、薬剤容器に対応付けられ、ハウジングに対して移動可能である付勢されたプランジャロッドと、給送部材カバーと付勢されたプランジャロッドの両方に対応付けられた管状の回転体と、ハウジングに対応付けられたキャップアセンブリとを備え、薬剤給送デバイスが組み付け済み状態にあるときに付勢されたプランジャロッドの近位端と薬剤容器のストッパとの間に隙間が画定され、薬剤給送デバイスが較正済み状態にあるときに付勢されたプランジャロッドの近位端が薬剤容器のストッパと接触する薬剤給送デバイスが提供される。
【0014】
一実施形態によれば、管状の回転体は、少なくとも1つの保持部材を内面上に有する管状体を備える。
【0015】
一実施形態によれば、管状の回転体は、第1の保持部材および第2の保持部材を内面上に有する管状体を備える。
【0016】
一実施形態によれば、付勢されたプランジャロッドは、少なくとも1つの保持部材と相互作用するか、または第1の保持部材、第2の保持部材、および第3の保持部材の各々と選択的に相互作用するように構成されたカウンタ保持要素を備える。
【0017】
一実施形態によれば、管状の回転体は、保持部材を内面上に有する管状体を備え、付勢されたプランジャロッドは、第1のカウンタ保持要素および第2のカウンタ保持要素を備え、第1のカウンタ保持要素および第2のカウンタ保持要素は、保持部材と選択的に相互作用するように構成される。
【0018】
一実施形態によれば、管状の回転体は、第1の保持部材、第2の保持部材、および第3の保持部材を内面上に有する管状体を備え、付勢されたプランジャロッドはカウンタ保持要素を備え、カウンタ保持要素は、第1の保持部材、第2の保持部材、および第3の保持部材の各々と選択的に相互作用するように構成される。
【0019】
一実施形態によれば、保持部材は半径方向内側に突き出るリブである。
【0020】
一実施形態によれば、第1の保持部材および第2の保持部材はレッジである。
【0021】
一実施形態によれば、カウンタ保持部材は、半径方向外側に突き出るアームである。
【0022】
一実施形態によれば、第1のカウンタ保持部材および第2のカウンタ保持部材は溝である。
【0023】
一実施形態によれば、薬剤給送デバイスは、薬剤容器を受けるように構成された容器キャリアをさらに備える。
【0024】
一実施形態によれば、薬剤容器は、容器キャリアに軸方向に固定される。
【0025】
一実施形態によれば、容器キャリアは、遠位端上に配置された投与ストップを備える。
【0026】
一実施形態によれば、付勢されたプランジャロッドは、容器キャリアの遠位端上のカウンタ相互作用部材と相互作用するように構成された相互作用部材をさらに備える。
【0027】
一実施形態によれば、相互作用部材とカウンタ相互作用部材との相互作用は、薬剤給送デバイスのユーザにフィードバックを提供するように構成される。
【0028】
一実施形態によれば、付勢された給送部材カバーは、案内要素を備え、管状の回転体は、案内トラックが外面上に配置された管状体を備え、案内要素は、付勢された給送部材カバーの軸方向移動が管状の回転体を回転させるように案内トラックと相互作用するように構成される。
【0029】
一実施形態によれば、付勢された給送部材カバーは、給送部材カバーリンクを備え、案内要素は、給送部材カバーリンク上に配置される。
【0030】
一実施形態によれば、薬剤給送デバイスは、カウンタ保持要素が第1の保持部材に係合する初期位置に付勢されたプランジャロッドがあるときに画定される第1の回転位置に回転体があるとき、案内要素が案内トラックの第1の遠位端点上に配置される第1の引き込み位置に付勢された給送部材カバーがあるとき、および付勢された給送部材カバーが、ハウジングに解放可能に接続されるキャップアセンブリによって前記位置に保持されるときに、組み付け済み状態にある。
【0031】
一実施形態によれば、薬剤給送デバイスは、カウンタ保持要素が第1の保持部材に係合する初期位置に付勢されたプランジャロッドがあるときに画定される第1の回転位置に回転体があるとき、案内要素が案内トラックの第1の遠位端点上に配置される第1の引き込み位置に付勢された給送部材カバーがあるとき、および付勢された給送部材カバーが、ハウジングの遠位端に軸方向に固定接続されたノブアセンブリによって前記位置に保持されるときに、組み付け済み状態にある。
【0032】
一実施形態によれば、薬剤給送デバイスは、カウンタ保持要素が第2の保持部材に係合する較正済み位置に付勢されたプランジャロッドがあるときに画定される第2の回転位置に回転体があるとき、およびキャップアセンブリがハウジングから取り外された後に案内要素が案内トラックの第1の近位端点上に配置される第1の拡張位置に付勢された給送部材カバーがあるときに、較正済み状態にある。
【0033】
一実施形態によれば、薬剤給送デバイスは、カウンタ保持要素が第2の保持部材に係合する較正済み位置に付勢されたプランジャロッドがあるときに画定される第2の回転位置に回転体があるとき、およびノブアセンブリを第1のノブ位置から第2のノブ位置に旋回させた後に案内要素が案内トラックの第1の近位端点上に配置される第1の拡張位置に付勢された給送部材カバーがあるときに、較正済み状態にある。
【0034】
一実施形態によれば、付勢されたプランジャロッドは、付勢された給送部材カバーを第1の拡張位置から、案内要素が案内トラックの第2の遠位端点上に配置される第2の引き込み位置まで移動させ、それによって、薬剤容器に含まれる薬剤が薬剤給送デバイスのユーザに給送されるときに、較正済み位置から、カウンタ保持要素が第3の保持部材に係合する最終位置まで移動するように構成される。
【0035】
一実施形態によれば、付勢された給送部材カバーは、第1の引き込み位置から第1の拡張位置まで、第1の拡張位置から第2の引き込み位置まで、および第2の引き込み位置から、案内要素が案内トラックの第2の近位端点上に配置される第2の拡張位置まで軸方向に移動可能であり、それによって、給送部材は、給送部材カバーが第1の引き込み位置および第2の引き込み位置にあるときに給送部材カバーから延ばされ、給送部材カバーが第1の拡張位置および第2の拡張位置にあるときに給送部材カバーによって覆われる。
【0036】
一実施形態によれば、カウンタ保持要素は、付勢された給送部材カバーが第1の拡張位置から第2の引き込み位置まで軸方向に移動可能であり、それによって、回転体を第2の回転位置から第3の回転位置まで移動させるときに、第2の保持部材から外れるように構成される。
【0037】
一実施形態によれば、管状の回転体は、第1の保持部材と第2の保持部材との間に配置されたランプ表面を備え、カウンタ保持要素は、ランプ表面に沿って第1の保持部材から第2の保持部材まで移動するように構成される。
【0038】
一実施形態によれば、第1の引き込み位置から第1の拡張位置までの付勢された給送部材カバーの軸方向移動によって、管状の回転体は第1の回転位置から第2の回転位置まで回転する。
【0039】
一実施形態によれば、薬剤給送デバイスは、付勢された給送部材カバー部材を近位方向に付勢するように構成された弾力部材を備える。
【0040】
一実施形態によれば、薬剤給送デバイスは、注射デバイス、オンボディデバイス、吸入デバイス、鼻腔用噴霧器、または医療噴霧器であってもよい。
【0041】
一実施形態によれば、給送部材は、注射針、カテーテル、またはスプレーノズルとすることができる。
【0042】
他の態様、特徴、および利点は、上記の概要、ならびに各図および特許請求の範囲を含む以下の説明から明らかになろう。
【0043】
概して、特許請求の範囲において使用されるすべての条項は、特別の明示的な定めがない限り、本技術分野における通常の意味に従って解釈されるべきである。要素、装置、構成要素、手段などのすべての参照は、特に明記しない限り、要素、装置、構成要素、手段などの少なくとも1つの例を指すものとしてオープンに解釈すべきである。
【0044】
次に、本発明の概念の特定の実施形態について、例として、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の第1の実施形態の薬剤給送デバイスを示す図である。
図2図1の薬剤給送デバイスの詳細な拡大図である。
図3】第1の実施形態における管状の回転体の斜視図である。
図4】第1の実施形態におけるプランジャロッドの斜視図である。
図5】第1の実施形態における投与ストップを示す図である。
図6A】第1の実施形態における管状の回転体の外側構成および給送部材カバー上の案内要素の斜視図である。
図6B】第1の実施形態における管状の回転体の外側構成および給送部材カバー上の案内要素の側面図である。
図7A】第1の実施形態の組み付け済み状態における薬剤給送デバイスの断面図である。
図7B】第1の実施形態の較正済み状態における薬剤給送デバイスの断面図である。
図8A】本発明の第2の実施形態におけるキャップアセンブリおよび給送部材カバーの構成の斜視図である。
図8B】本発明の第2の実施形態におけるキャップアセンブリおよび給送部材カバーの構成の斜視図である。
図9】本発明の第3の実施形態におけるノブアセンブリの斜視図である。
図10】本発明の第3の実施形態におけるノブアセンブリの斜視図である。
図11】第3の実施形態における管状の回転体の外側構成の斜視図である。
図12】第3の実施形態における案内要素とノブアセンブリとの相互作用の断面図である。
図13】本発明の第4の実施形態における管状の回転体の外側構成の斜視図である。
図14】第4の実施形態における案内要素と管状の回転体とノブアセンブリとの相互作用の斜視図である。
図15A】第3および第4の実施形態の組み付け済み状態における薬剤給送デバイスの断面図である。
図15B】第3および第4の実施形態の較正済み状態における薬剤給送デバイスの断面図である。
図16】薬剤給送デバイスに自動貫通機能が備えられる本発明の代替実施形態における管状の回転体の斜視図である。
図17】薬剤給送デバイスに自動貫通機能が備えられる本発明の代替実施形態における管状の回転体の斜視図である。
図18】本発明の代替実施形態における管状の回転体とプランジャロッドとの保持構成の斜視図である。
図19】本発明の代替実施形態における管状の回転体とプランジャロッドとの保持構成の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本出願は、薬剤給送デバイス用のフィードバック機構を対象とし、次に、本出願について、以下に添付の図面を参照してより詳しく説明する。図面には例示的な実施形態が示されている。しかし、このフィードバック機構は、多数の異なる形態で具体化されてもよく、本明細書に記載された実施形態に限定されるものと解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が完全になり、当業者に本発明の概念の範囲を完全に示すように例として与えられている。同じ番号は、説明全体にわたって同じ要素を指す。
【0047】
図1は、近位端および遠位端を有するハウジング1と、薬剤給送デバイスの組み付け済み状態におけるハウジング1の近位端上に配置されたキャップアセンブリ2とを含む本発明の第1の実施形態における薬剤給送デバイスを示す。図2に示すように、薬剤給送デバイスは、ハウジング1に対して軸方向に移動可能であるが回転不能に固定された給送部材カバー3と、給送部材カバー3の遠位端とハウジング1の内側遠位レッジとの間に配置され、給送部材カバー3をハウジング1に対して近位方向に付勢するように構成された弾力部材31と、ハウジング1内に配置された管状体であり、ハウジング1に対して回転可能であるが軸方向に移動不能である管状の回転体4と、ハウジング1内に軸方向に移動可能に配置されたプランジャロッド5と、プランジャロッド5内に配置されプランジャロッドを近位方向に付勢するように構成された駆動要素51と、ハウジング1内に配置され、ハウジング1に対して軸方向に回転不能に固定され、薬剤容器8を受けるように構成された容器キャリア6とをさらに備える。薬剤容器8は、薬剤を含むように構成され、遠位端上に配置されたストッパ81と、近位端上に配置された貫通可能な膜とを備える。給送部材アセンブリ7は、薬剤給送動作の間にエンドユーザに1回分の薬剤を給送するように構成された給送部材を備える。給送部材アセンブリは、給送部材を保持するように構成された給送部材ハブと、給送部材を覆うように構成された内側キャップと、薬剤給送デバイスの組み付け済み状態において内側キャップにねじ込み可能に係合するように構成されたリテーナとをさらに備える。キャップアセンブリ2は、給送部材アセンブリ7の内側キャップに軸方向に固定され、内側キャップが一回転方向において回転不能に固定されている。リテーナは、容器キャリア6にスナップ固定され、それによって、キャップアセンブリ2は、薬剤給送デバイスの組み付け済み状態において給送部材アセンブリ7を介してハウジング1に取り付けられる。キャップアセンブリ2は、キャップアセンブリ2および内側キャップがねじ止めされているときとリテーナから外されているときのどちらでも薬剤給送デバイスのハウジング1から取り外すことができる。そのようなねじ運動によって、内側キャップと給送部材ハブとの結合に起因して給送部材ハブが軸方向に移動し、それによって、給送部材が給送部材ハブとともに薬剤容器8に向かって移動し、薬剤容器8との流体連通を確立する。
【0048】
図3は、管状体の内面上に配置された第1の保持部材43aおよび第2の保持部材43bを備える管状の回転体を示す。第1および第2の保持部材は、図4に示すようにプランジャロッド5上のカウンタ保持部材52に選択的に係合し、それによって、プランジャロッドの近位軸方向移動が妨げられるように構成される。カウンタ保持部材52は、管状の回転体4が第1の回転位置にあるときに第1の保持部材43a上に位置するように構成され、管状の回転体4が第2の回転位置にあるときに、第1の保持部材43aから外れ、駆動要素51の付勢力の下で近位方向に移動して第2の保持部材43bに係合するように構成される。
【0049】
プランジャロッド5は、カウンタ保持部材52が第1の保持部材43aに係合するときにプランジャロッド5の初期位置にある。プランジャロッドがその初期位置にあるときに、薬剤給送デバイスはその組み付け済み状態にあり、薬剤給送デバイスのすべての構成要素が組み付けられており、デバイスがエンドユーザへの給送を行う準備が整う。図7Aに示すように、薬剤給送デバイスが組み付け済み状態にあるとき、プランジャロッド5の近位端および薬剤容器8のストッパ81の遠位端によって隙間Dが画定される。したがって、薬剤給送デバイスの出荷時にストッパ81が誤って前方に圧搾され、プランジャロッド5による薬剤容器8の密封が損なわれるのを防止することができる。
【0050】
プランジャロッド5のカウンタ保持部材52が管状の回転体4の第2の保持部材43bに係合しているとき、プランジャロッド5は較正済み位置にあり、それによって、薬剤給送デバイスもその較正済み状態にある。図7Bに示すように、薬剤給送デバイスがその較正済み状態にあるとき、プランジャロッド5の近位端は、薬剤容器8のストッパ81に接触するように配置され、それによって、プランジャロッド5の近位端とストッパ81の遠位端との間の隙間Dがなくなる。
【0051】
薬剤給送デバイスが較正済み状態にあるときにも、「ゼロ投与」状態が画定され、薬剤給送デバイスはここで、薬剤給送動作を実行する準備を整える。プランジャロッド5のカウンタ保持部材52は、次いで、管状の回転体4が第3の回転位置にあるときに管状の回転体4の第2の保持部材43bから外れるように構成され、それによって、プランジャロッドが駆動要素51の付勢力の下で近位方向に移動し、ストッパ81に作用して1回分の薬剤を給送する。したがって、薬剤給送動作が開始する。プランジャロッド5のカウンタ保持部材52は、プランジャロッド5が最終位置にあるときに近位方向に移動して投与ストップ61に係合するように構成され、それによって、薬剤給送動作が終了する。投与ストップ61は、図5に示すように容器キャリア6の遠位端上に配置されたレッジまたは追加的な構成要素上に配置されたレッジまたは管状の回転体4の内面上に配置された第3の保持部材とすることができる。給送投与量が第2の保持部材43bと投与ストップとの間の距離、すなわち、較正済み位置から最終位置までのプランジャロッド5の走行距離によって決定される。
【0052】
管状の回転体4は、給送部材カバー3と相互作用するように構成される。図6Aに示すように、給送部材カバー3は、管状の回転体4の外面上に配置された案内トラック41に沿って移動するように構成された案内要素32を備える。案内要素32と案内トラック41との相互作用によって、管状の回転体4は第1の回転位置から第2の回転位置まで回転させられ、第2の回転位置から第3の回転位置まで回転させられる。
【0053】
図6Bに示すように、組み付け時には、管状の回転体4がハウジング1に組み込まれ、給送部材カバー3および弾力部材31もハウジング1に組み込まれ、案内要素32が案内トラック41の組み付け前部分41a上に配置される。給送部材カバー3は、弾力部材31によって付勢されるので、ハウジング1の近位端から突き出る。組み付けの最後のステップでは、給送部材アセンブリ7をキャップアセンブリ2とともにハウジング1の近位端の方へ配置し、給送部材カバー3の近位端を弾力部材31に押し付け、給送部材カバー3、針アセンブリ7、およびキャップアセンブリ2のすべてをハウジングの遠位端に向かって移動させ、給送部材カバー3、針アセンブリ7、およびキャップアセンブリ2の移動は、針アセンブリ7の遠位端が容器キャリア6に取り付けられ、それによって針アセンブリ7に軸方向二方向において容器キャリア6が固定されるまで行われる。そのような移動によって、案内要素32が案内トラック41の組み付け経路41bに沿って移動し、案内要素32の移動は、針アセンブリ7の遠位端が容器キャリア6に取り付けられ、針アセンブリ7が給送部材カバー3とともに、もはやハウジング1に対して遠位方向に移動できなくなるまで行われる。次いで、給送部材カバー3が第1の引き込み位置に入り、弾力部材31を圧縮し、それによって、案内要素32が第1の遠位端点41c上に配置される。針アセンブリ7が容器キャリア6に取り付けられるので、薬剤給送デバイスはここで、適切に組み付けられ、エンドユーザへの給送を行う準備が整う。薬剤給送デバイスが組み付けられると、キャップアセンブリ2がハウジング1の近位端上に配置され、それによって、図7Aに示すように給送部材カバー3の近位移動がキャップアセンブリ2によって阻止される。次いで、案内要素32が案内トラック41の第1の遠位端点41c上に懸垂される。キャップアセンブリ2がハウジング1から外され完全に取り外された後、給送部材カバー3が弾力部材31の付勢力の下で第1の拡張位置まで移動し、それによって、給送部材カバーの近位端がハウジング1の近位端から突き出て、図7Bに示すように給送部材を完全に囲むように配置される。給送部材カバー3が第1の拡張位置に移動すると、案内要素32が、案内トラック41の近位端点41fまで移動し、第1の傾斜レッジ41dおよび第
2の傾斜レッジ41eを通過し、それによって、案内要素32が第1の傾斜レッジ41dおよび第2の傾斜レッジ41eを通過するときに管状の回転体4が第1の回転位置から第2の回転位置まで徐々に回転する。
【0054】
給送部材カバー3を手動で遠位方向に第2の引き込み位置まで押し込み、薬剤給送動作をトリガすることができる。給送部材カバー3が第2の引き込み位置まで移動すると、案内要素32が、第3の傾斜レッジ41gおよび操作レッジ41hに沿って案内トラック41の第2の近位端点に向かって移動する。案内要素32が案内トラック41の第3の傾斜レッジ41gを通過すると、管状の回転体4が第2の回転位置から第3の回転位置まで回転し、それによって、薬剤給送動作が開始する。
【0055】
薬剤給送動作が終了した後、給送部材カバー3はもはや押し込まれず、第2の引き込み位置に保持され、給送部材カバー3は、弾力部材31の付勢力の下で給送部材カバー3の第2の拡張位置まで近位方向に移動するように配置され、再び給送部材を囲むように配置される。給送部材カバー3の近位方向への移動によって、案内要素32は近位方向に案内トラック41の操作レッジ41hに沿って案内トラック41の給送部材カバー3の第2の近位端点41iまで移動する。案内要素32は、案内トラック41の第2の近位端点41iに移動する前に、管状の回転体4のロッキングタング42を通過する。ロッキングタング42は近位方向のクリフ表面を備え、したがって、案内要素32が案内トラック41の第2の近位端点41iに移動した後、給送部材カバー3のさらなる遠位方向への移動は、案内要素32とロッキングタング42の近位方向のクリフ表面との間の阻止に起因して妨げられる。
【0056】
給送部材は、給送部材カバー3が第1および第2の引き込み位置にあるときに給送部材カバー3の近位端から突き出て、給送部材カバーが第1および第2の拡張位置にあるときに給送部材カバー3によって覆われる。
【0057】
弾力部材31によって駆動される給送部材カバー3の第1の引き込み位置から第1の拡張位置までの軸方向移動によって、案内要素32が案内トラック41の第1の遠位端点41cから近位端点41fまで移動する。案内要素32が第1の傾斜レッジ41dおよび第2の傾斜レッジ41eを通過すると、管状の回転体4が第1の回転位置から第2の回転位置まで徐々に回転する。
【0058】
回転体4は第1の保持部材43aとカウンタ保持部材52との係合によってプランジャロッド5に係合するので、回転体4がプランジャロッド5に対して回転すると第1の保持部材43aとカウンタ保持部材52との間に摩擦が生じることに留意されたい。摩擦の程度は、駆動要素51に蓄積される力によって決まる。その理由は、駆動要素51に蓄積される力がプランジャロッド5に加えられるからであり、この力が高すぎる場合、回転体4が、弾力部材31によって近位方向に駆動される給送部材カバー3の案内要素32によって回転させられないことがある。そのような不具合は、第1の保持部材と第2の保持部材を接続するようにランプ表面を配置することによって解消することができる。したがって、プランジャロッド5はランプ表面に沿って第1の保持部材43aから第2の保持部材43bまで移動することができる。それによって、管状の回転体4の第1の回転位置から第2の回転位置までの回転は主として駆動要素51からの付勢力によって生じる。
【0059】
第1の実施形態における薬剤給送デバイスはさらに、薬剤給送デバイスのユーザに聴覚/触覚フィードバックを提供して薬剤給送動作の進行を示してもよい。フィードバックは、プランジャロッド5上に配置された相互作用部材53、好ましくは複数のラチェットと、容器キャリア6の遠位端上に配置されたカウンタ相互作用部材62とによって提供される。プランジャロッド5が近位方向に移動し容器キャリア6の遠位端を通過した後、それにより、相互作用部材53とカウンタ相互作用部材62との相互作用によって連続的なフィードバックが生成される。
【0060】
図8Aおよび図8Bは、本発明の第2の実施形態を示す。第2の実施形態の構成の大部分は第1の実施形態で説明した構成と同じである。給送部材は、薬剤容器の近位端と一体であり、キャップアセンブリ2'は、軸方向の引っ張り運動によってハウジング1から取り外されるように配置される。第2の実施形態におけるキャップアセンブリ2'は、給送部材カバー3の近位部上に配置された溝33を把持するように構成された把持要素21'を備える。薬剤給送デバイスが完全に組み付けられた後、キャップアセンブリ2の把持要素21'が、ハウジング1の近位端内に配置され、給送部材カバーの溝33に係合し、それによって、ハウジング1の近位端の内面が、キャップアセンブリ2の把持要素21'が半径方向外側に撓むのを抑制する。それによって、キャップアセンブリ2'が、給送部材カバー3の近位部上に配置された把持要素21'と溝33との係合によって薬剤給送デバイスのハウジング1に取り付けられる。キャップアセンブリ2の把持要素21'は、キャップアセンブリ2'をハウジング1から取り外すためにキャップアセンブリ2'をハウジングに対して近位方向に引っ張るときにハウジング1の近位端の内面によって阻止されることによって半径方向外側に撓むことが妨げられ、それにより、把持要素21'は、依然として給送部材カバー3の溝33を把持し、それによって、給送部材カバー3も把持要素21'およびキャップアセンブリ2'とともに近位方向に引っ張られる。そのような引っ張り運動によって、給送部材カバー3は第1の引き込み位置から第1の拡張位置まで移動し、給送部材カバー3の移動は、キャップアセンブリ2の把持要素21'がハウジング1から完全に出され、把持要素21'が半径方向外側に撓むことによって給送部材カバー3の溝33から外れることができるようになるまで行われる。それによって、薬剤給送デバイスは、軸方向のキャップ取り外し運動によって組み付け済み状態から較正済み状態まで移動する。管状の回転体4を第1の回転位置から第2の回転位置まで回転させる、第1の引き込み位置から第1の拡張位置までの給送部材カバー3の軸方向移動は、主として薬剤給送デバイスのユーザによる引っ張り力による移動であるので、この場合も弾力部材31はもはや大きい力を蓄積する必要はない。
【0061】
図9は、本発明の第3の実施形態を示す。第3の実施形態における構成の大部分は、第1の実施形態で説明した構成と同じである。第3の実施形態における薬剤給送デバイスは、ハウジング1の遠位端上に配置された回転可能なノブアセンブリ9をさらに備える。図10に示すように、ノブアセンブリ9は、ユーザアクセス可能な外側ノブ体91と内側ノブ体92とを備える。内側ノブ体92の遠位端は、外側ノブ体91内に受け入れられ、内側ノブ体92の近位端はハウジング1の遠位部内に受け入れられる。内側ノブ体92は、軸方向に回転不能に外側ノブ体91に固定され、それによって、内側ノブ体92は、エンドユーザによってハウジング1に対して外側ノブ体91とともに回転させることができる。ノブアセンブリ9は、ハウジング1に対して第1のノブ位置と第2のノブ位置との間を回転可能である。図12に示すように、内側ノブ体92は、案内要素32を保持するように構成された保持部材92aを備え、それによって、ノブアセンブリ9が第1のノブ位置にあるときに給送部材カバー3も保持部材92aによって第1の引き込み位置に保持される。給送部材カバー3の近位方向への移動は妨げられる。
【0062】
図11に示すように、第3の実施形態における管状の回転体4の案内トラック41'は、初期案内レッジ41a'と第1の傾斜レッジ41b'とを備える。薬剤給送デバイスのユーザがノブアセンブリ9を第1のノブ位置から第2のノブ位置まで回転させると、保持部材92aが案内要素32からずれ、それによって、給送部材カバー3が弾力部材31の付勢力の下で近位方向に移動する。したがって、案内要素32は、初期案内レッジ41a'および第1の傾斜レッジ41b'に沿って案内トラック41'の第1の近位端点41f'まで移動する。案内要素32が第1の傾斜レッジ41b'を通過した後、管状の回転体4が第1の回転位置から第2の回転位置まで回転する。
【0063】
図13は、本発明の第4の実施形態を示す。第4の実施形態における構成の大部分は、第3の実施形態で説明した構成と同じである。第4の実施形態における管状の回転体4の案内トラック41"は、薬剤給送デバイスが適正に組み付けられ、エンドユーザへの給送を行う準備が整ったときに給送部材カバー3の案内要素32を第1の引き込み位置に保持するように構成された初期レッジ41a"を備える。第4の実施形態における管状の回転体4は、旋回部44"をさらに備え、旋回部44"は、図14に示すようにノブアセンブリ9上に配置された旋回ピン93'に係合するように構成される。薬剤給送デバイスのユーザがノブアセンブリ9を回転させると、旋回ピン93'は管状の回転体4を旋回部44"との係合によって回転させる。管状の回転体4の回転によって案内要素32が組み付け済みレッジ41a"から解放され、したがって、給送部材カバー3が弾力部材31の付勢力の下で近位方向に第1の拡張位置まで移動する。案内要素32は、案内トラック41"の第1の遠位端点41c"まで移動し、案内トラック41"の第1の近位端点41f"に向かう給送部材カバー3の近位方向への移動によって案内トラック41"の曲線レッジ41b"に沿って移動する。案内要素32が曲線レッジ41b"を通過した後、管状の回転体4が第1の回転位置から第2の回転位置まで回転する。
【0064】
図15Aおよび図15Bは、本発明の第3および第4の実施形態における組み付け済み状態および較正済み状態の薬剤給送デバイスを示す。図15Aに示す第1のノブ位置から図15Bに示す第2のノブ位置までのノブアセンブリ9の旋回移動が、薬剤給送デバイスを組み付け済み状態から較正済み状態まで旋回させる。第3および第4の実施形態において、キャップアセンブリ2はもはや自動較正機構には関与せず、したがって、キャップアセンブリ2は設計面のより高い融通性を備えてもよい。
【0065】
第1~第4の実施形態において説明した自動較正機構は、自動貫通機能を有する薬剤給送デバイスなどの移動可能な薬剤容器を含む薬剤給送デバイスとともに使用することもできる。図16に示すように、自動貫通機能を有する薬剤給送デバイス用の管状の回転体4は、図17に示すように薬剤給送デバイスが組み付け済み状態および較正済み状態にあるときにハウジング1の内面上に配置された保持シェルフ11'に係合するように構成された保持アーム45を含むように変更されてもよい。管状の回転体は、容器キャリア6のカウンタ接続部の遠位端に嵌るように構成された接続部46をさらに備えてもよい。給送動作がトリガされた後、給送部材カバー3が上述のように回転体を第2の回転位置から第3の回転位置まで旋回させ、次いで、保持アーム45の保持シェルフ11'との係合が解除される。それによって、管状の回転体4、プランジャロッド5、容器キャリア6、および薬剤容器8が駆動要素51の付勢力の下で近位方向に移動する。
【0066】
管状の回転体4の保持部材およびプランジャロッド5のカウンタ保持部材の配置は、第1の実施形態~第4の実施形態に記載された自動較正機構とは逆に構成することもできる。図18に示すように、プランジャロッドのカウンタ保持部材を第1のカウンタ保持部材52a'および第2のカウンタ保持部材52b'として変更してもよく、管状の回転体4の保持部材を図19に示す保持部材43'として変更することもできる。第1のカウンタ保持部材52a'は、管状の回転体4が第1の回転位置にあるときに管状の回転体4の内側遠位表面上の保持部材43'に係合するように構成される。管状の回転体4が第2の回転位置に移動すると、第1のカウンタ保持部材52a'が保持部材43'から外れ、第2のカウンタ保持部材52b'が保持部材43'に係合し、それによって、薬剤給送デバイスが組み付け済み状態から較正済み状態に旋回するまで近位方向に移動する。
【0067】
上記では主として本発明の概念についていくつかの例を参照しながら説明した。しかし、当業者には容易に諒解されるように、上記で開示した実施形態以外の他の実施形態も、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の概念の範囲内で同様に可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 ハウジング
2、2' キャップアセンブリ
3 給送部材カバー
4 管状の回転体
5 プランジャロッド
6 容器キャリア
7 給送部材アセンブリ
8 薬剤容器
9 ノブアセンブリ
11' 保持シェルフ
21' 把持要素
31 弾力部材
32 案内要素
33 溝
41、41'、41" 案内トラック
41a 組み付け前部分
41a'、41a" 初期案内レッジ
41b 組み付け経路
41b 第1の傾斜レッジ
41b" 曲線レッジ
41c、41c" 第1の遠位端点
41d 第1の傾斜レッジ
41e 第2の傾斜レッジ
41f 近位端点
41f'、41f" 第1の近位端点
41g 第3の傾斜レッジ
41h 操作レッジ
41i 第2の近位端点
42 ロッキングタング
43a 第1の保持部材
43b 第2の保持部材
43' 保持部材
44" 旋回部
45 保持アーム
46 接続部
51 駆動要素
52 カウンタ保持部材
52a' 第1のカウンタ保持部材
52b' 第2のカウンタ保持部材
53 相互作用部材
61 投与ストップ
62 カウンタ相互作用部材
81 ストッパ
91 外側ノブ体
92 内側ノブ体
92a 保持部材
93' 旋回ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
【国際調査報告】