(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】プラスチック製品を分解するための方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/10 20060101AFI20230213BHJP
C08G 63/88 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
C08J11/10 ZAB
C08G63/88
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022536949
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-07-19
(86)【国際出願番号】 EP2020087209
(87)【国際公開番号】W WO2021123299
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514245373
【氏名又は名称】キャルビオス
【氏名又は名称原語表記】CARBIOS
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】マルティ,アラン
(72)【発明者】
【氏名】シャトー,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】アルイ・ダリベイ,マディハ
【テーマコード(参考)】
4F401
4J029
【Fターム(参考)】
4F401AA22
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4J029KE17
4J029KG01
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1種のポリマーを含むプラスチック製品を分解するための方法であって、プラスチック製品を少なくとも部分的に発泡させる工程と、少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品の少なくとも1種のターゲットポリマーを解重合する工程とを含み、プラスチック製品が部分的又は全体的に溶融状態にある温度で発泡工程を行う、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のポリマーを含むプラスチック製品を分解するための方法であって、
a.プラスチック製品を少なくとも部分的に発泡させる工程と、
b.少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品の少なくとも1種のターゲットポリマーを解重合する工程とを含み、
プラスチック製品が部分的又は全体的に溶融状態にある温度で発泡工程を行う、方法。
【請求項2】
発泡工程を、ターゲットポリマーの結晶化温度(Tc)より高い温度で、好ましくは、前記ポリマーの融解温度(Tm)以上で行う、請求項1記載の方法。
【請求項3】
発泡工程を、好ましくは、気体から選択され、より好ましくは、窒素、二酸化炭素、メタン、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、水素又はこれらの混合物からなる群より選択される物理発泡剤を使用して実行する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
発泡工程を、好ましくは、クエン酸、炭酸塩、重炭酸塩又はこれらの混合物からなる群より選択され、より好ましくは、クエン酸と重炭酸塩との混合物である化学発泡剤を使用して実行する、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品が、20%超、好ましくは、30%超の多孔率を示す、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品を、ターゲットポリマーの結晶化温度(Tc)未満、好ましくは、前記ポリマーのガラス転移点(Tg)未満の温度にプラスチック製品を供することにより、発泡工程後30秒未満で冷却する工程をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
冷却工程後、前記ポリマーが、最大30%、好ましくは、最大25%、より好ましくは、最大20%の結晶化度を示す、請求項6記載の方法。
【請求項8】
少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品を、冷却工程と解重合工程との間で、顆粒化工程に供する、請求項6又は7記載の方法。
【請求項9】
発泡工程を押出機中で行う、請求項1~8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
発泡工程をオートクレーブ中で行う、請求項1~8のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
解重合工程が、プラスチック製品を化学的及び/又は生物学的解重合剤から選択される解重合剤と接触させることを含む、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
プラスチック製品を解重合工程前に解重合剤と接触させ、かつ、解重合工程を、プラスチック製品を液体、好ましくは、解重合剤が除去された液体と接触させることにより行う、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
解重合剤が、生物学的解重合剤、好ましくは、デポリメラーゼである、請求項11又は12記載の方法。
【請求項14】
デポリメラーゼが、プラスチック製品の少なくとも1種のポリマー、好ましくは、プラスチック製品の少なくともターゲットポリマーを分解可能である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
発泡工程を、化学発泡剤を使用して実行し、かつ、解重合剤が、プラスチック製品の少なくともターゲットポリマーを分解可能なデポリメラーゼである、請求項1~14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
解重合工程により生じるオリゴマー及び/又はモノマーを回収し、任意選択的に精製する工程をさらに含む、請求項1~15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
プラスチック製品が、好ましくは、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンイソソルビドテレフタラート(PEIT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノアート(PHA)、ポリブチレンスクシナート(PBS)、ポリブチレンスクシナートアジパート(PBSA)、ポリブチレンアジパートテレフタラート(PBAT)、ポリエチレンフラノアート(PEF)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(エチレンアジパート)(PEA)、ポリブチレンスクシナートテレフタラート(PBST)、ポリエチレンスクシナート(PES)、ポリ(ブチレンスクシナート/テレフタラート/イソフタラート)-コ-(ラクタート)(PBSTIL)及びこれらの材料のブレンド/混合物から選択され、さらにより好ましくは、ポリエチレンテレフタラート及びポリ乳酸から選択される少なくとも1種のポリエステルを含む、請求項1~16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
少なくともPETを含むプラスチック製品を分解するための方法であって、
a.プラスチック製品を化学発泡剤で少なくとも部分的に発泡させる工程であって、発泡工程を170℃超、好ましくは、230℃以上の温度で行い、発泡剤は、好ましくは、クエン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩及びこれらの混合物から選択される、発泡工程と、
b.前記少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品を、100℃未満、好ましくは、90℃未満の温度で、好ましくは、発泡工程後30秒未満で冷却する工程と、
c.冷却されたプラスチック製品のPETを解重合する工程と、任意選択的に、
前記PETの解重合により生じるオリゴマー及び/又はモノマーを回収し、任意選択的に精製する工程
とを含む、方法。
【請求項19】
解重合工程を、冷却されたプラスチック製品を生物学的解重合剤と、好ましくは、デポリメラーゼと接触させることにより行う、請求項18記載の方法。
【請求項20】
少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品を、冷却工程と解重合工程との間で、顆粒化工程に供する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
デポリメラーゼが、エステラーゼ、好ましくは、クチナーゼ又はリパーゼ、より好ましくは、クチナーゼである、請求項19又は20記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1種のポリマー、好ましくは、PETを含むプラスチック製品からモノマー及び/もしくはオリゴマー並びに/又は分解生成物を製造する方法であって、
プラスチック製品を、発泡工程に、続いて解重合工程に、好ましくは、発泡させたプラスチック製品をデポリメラーゼ、好ましくは、エステラーゼ、より好ましくは、クチナーゼに曝すことによる解重合工程に、供することを含む、方法。
【請求項23】
少なくとも1種のポリマーを含む少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品を分解するための方法であって、
少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品を前記プラスチック製品の少なくとも1種のポリマーを分解可能な解重合剤と接触させ、かつ、前記少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品は、既に発泡工程に供されたプラスチック廃棄物及び/又は繊維廃棄物から得られたものである、方法。
【請求項24】
前記少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品の前記ポリマーが、解重合剤と接触させる前に既に非晶質化されている、請求項23記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1種のポリマーを含むプラスチック廃棄物及び/又は繊維廃棄物から選択されるプラスチック製品をリサイクルするための方法であって、
前記プラスチック製品の少なくとも1種のターゲットポリマーを解重合する工程を含み、当該プラスチック製品は既に少なくとも部分的に発泡されている、方法。
【請求項26】
前記プラスチック製品のポリマーが既に非晶質化されている、請求項25記載の方法。
【請求項27】
解重合工程を、少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品を、生物学的解重合剤、好ましくは、デポリメラーゼ、より好ましくは、プラスチック製品の少なくとも1種のポリマーを分解可能なデポリメラーゼに供することにより行う、請求項23~26のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック製品を分解するための方法に関する。本発明の方法は、特に、前記プラスチック製品の少なくとも1種のポリマーを解重合する前に、プラスチック製品を発泡させる工程を含む。本発明の方法は、ポリエステル及び/又はポリアミド、好ましくは、ポリエチレンテレフタラート及び/又はポリ乳酸を含むプラスチック製品を分解するのに特に有用である。また、本発明は、少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品からモノマー及び/又はオリゴマーを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
プラスチックは安価で、耐久性のある材料であり、広範囲の用途(食品包装、織物等)での使用を見出す各種の製品を製造するのに使用することができる。結果として、プラスチックの製造は、過去数十年にわたって劇的に増加してきた。さらに、それらのほとんどは、使い捨て用途、例えば、包装、農業用フィルム、使い捨て消費財又は製造から1年以内に廃棄される短寿命製品に使用される。含まれるポリマーの耐久性のために、相当量のプラスチックが、埋立地及び世界中の自然の生息地に堆積し、環境問題を増大させている。例えば、近年、テレフタル酸及びエチレングリコールから製造される芳香族ポリエステルであるポリエチレンテレフタラート(PET)は、人間の消費のための幾つかの製品、例えば、食品及び飲料包装(例えば、ボトル、コンビニエンスサイズのソフトドリンク、栄養商品用のパウチ)又は織物、布地、ラグ、カーペット等の製造において広く使用されている。
【0003】
プラスチックの分解からプラスチックのリサイクルまで、プラスチック廃棄物の蓄積と相関する環境的及び経済的影響を低減するために、リサイクル技術及びこのようなプラスチックからのエネルギー生産を含む、種々の解決策が研究されてきた。機械的リサイクル技術は、依然として最も使用されている技術であるが、幾つかの欠点に直面している。実際、機械的リサイクル技術は、膨大かつ費用のかかる分別を必要とし、処理中の分子量の低下及びリサイクル生成物中の添加剤の存在の制御の不能のために、用途の格下げにつながる。実際のリサイクル技術も高価であるため、その結果、リサイクルされたプラスチック製品は、一般的には、新品のプラスチックと比較して競争力がない。
【0004】
近年、プラスチック製品の酵素リサイクルの革新的な方法が開発され、記載されている(例えば、WO2014/079844、WO2015/097104、WO2015/173265及びWO2017/198786)。従来のリサイクル技術とは対照的に、このような酵素的解重合方法により、ポリマーの化学成分(すなわち、モノマー及び/又はオリゴマー)を回収することが可能となる。得られたモノマー/オリゴマーを回収し、プラスチック商品を再製造するのに使用することができるので、このような方法によれば、プラスチックの無限のリサイクルがもたらされる。これらの方法は、PETを含むプラスチック製品からテレフタル酸及びエチレングリコールを回収するのに特に有用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、分解の速度が改善された方法が常に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
プラスチック製品を分解するための方法の改善に取り組むことにより、本発明者らは、プラスチック製品と分解剤との間の接触面積を大きくすることにより、分解工程を改善することができることを示した。このように、本発明者らは、当該プラスチック製品を分解工程に供する前に、プラスチックの表面積を大きくしておく方法を開発した。より具体的には、本発明者らは、プラスチック製品を、解重合工程前に、発泡工程に供することを提案する。有利には、発泡工程は、プラスチック製品の多孔性を向上させることを可能とし、それにより、分解剤と接触することができるプラスチック製品の表面積を大きくし、当該プラスチック製品を構成するポリマーのその後の解重合に有利に働く。本発明の方法は、ポリエチレンテレフタラートを含むプラスチック製品を分解するのに特に有用である。
【0007】
これに関して、少なくとも1種のポリマーを含むプラスチック製品を分解するための方法であって、プラスチック製品を少なくとも部分的に発泡させる工程と、少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品の少なくとも1種のターゲットポリマーを解重合する工程とを含み、発泡工程をプラスチック製品が部分的又は全体的に溶融状態にある温度で行う方法を提供することは本発明の一つの目的である。
【0008】
好ましくは、発泡工程をターゲットポリマーの結晶化温度(Tc)より高い温度で、好ましくは、前記ポリマーの融解温度(Tm)以上で行い、物理発泡剤及び/又は化学発泡剤を使用して実行する。
【0009】
また、少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品を、前記ポリマーの結晶化温度(Tc)未満、好ましくは、前記ポリマーのガラス転移点(Tg)未満の温度にプラスチック製品を供することにより、発泡工程後30秒未満で冷却する工程をさらに含む方法を提供することは本発明の一つの目的である。
【0010】
有利には、本発明の方法を少なくとも部分的に押出機中で行う。
【0011】
一実施態様において、解重合工程は、プラスチック製品を化学的及び/又は生物学的解重合剤から選択される解重合剤と接触させることを含む。
【0012】
また、PETを含むプラスチック製品を分解するための方法であって、
a.前記プラスチック製品を発泡剤で、好ましくは、化学発泡剤から選択される発泡剤で、少なくとも部分的に発泡させる工程であって、発泡工程を170℃超、好ましくは、185℃超、より好ましくは、200℃超、さらにより好ましくは、220℃超、240℃超、245℃超、250℃超、255℃超、260℃超、265℃超の温度で行う、発泡工程と、
b.前記少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品を、100℃未満、好ましくは、90℃未満の温度で、発泡段階後30秒未満で冷却する工程と、
c.プラスチック製品のPETを、当該プラスチック製品をデポリメラーゼ、特に、エステラーゼ、好ましくは、クチナーゼ又はリパーゼ、より好ましくは、クチナーゼに接触させることにより解重合する工程と
を含む、方法を提供することは本発明の一つの目的である。
【0013】
本発明の一実施態様によれば、プラスチック製品を解重合工程前に(例えば、冷却工程中に)、デポリメラーゼと接触させ、かつ、解重合工程が、当該プラスチック製品をデポリメラーゼが除去された液体中で接触させることを含む。
【0014】
別の一実施態様によれば、解重合工程は、プラスチック製品を堆肥化条件に供することを含む。
【0015】
また、少なくとも1種のポリマー、好ましくは、PETを含むプラスチック製品からモノマー及び/もしくはオリゴマー並びに/又は分解生成物を製造する方法であって、プラスチック製品を発泡工程に、続いて解重合工程に、好ましくは、プラスチック製品をデポリメラーゼ、好ましくは、クチナーゼに曝すことを含む解重合工程に供することを含む、方法を提供することは本発明の一つの目的である。
【0016】
少なくとも1種のポリマーを含む少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品を分解するための方法であって、少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品を少なくとも1種のターゲットポリマーを分解可能な解重合剤と接触させ、任意選択的に、当該ポリマーを非晶質化工程に供し、少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品をデポリメラーゼと接触させて、前記ポリマーを分解する、方法を提供することは、本発明の更なる目的である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
定義集
本開示は、下記定義を参照することにより最も良く理解されるであろう。
【0018】
本発明の文脈内においては、「プラスチック物品」又は「プラスチック製品」という用語は互換的に使用され、少なくとも1種のポリマー、例えば、プラスチックシート、トレイ、チューブ、ロッド、プロファイル、形状、塊状ブロック、繊維等を含む任意の商品又は製品をいう。好ましくは、プラスチック物品は、製造製品、例えば、剛性又は可撓性包装(ボトル、トレイ、カップ等)、農業用フィルム、バッグ及びサック、使い捨て商品等、カーペットスクラップ、布地、織物等である。より好ましくは、プラスチック物品とは、プラスチック又は織物廃棄物をいう。好ましくは、プラスチック物品は、半結晶性及び/又は非晶質ポリマーの混合物を含む。プラスチック物品は、追加の物質又は添加剤、例えば、可塑剤、無機物、有機充填剤、染料等をさらに含有してもよい。
【0019】
「ポリマー」とは、その構造が共有化学結合により連結された多数の繰り返し単位(すなわち、「モノマー」)から構成された化合物又は化合物の混合物をいう。本発明の文脈内においては、「ポリマー」という用語は、プラスチック製品の組成物中に使用されるこのような化合物をいう。一例として、合成ポリマーは、石油由来のポリマー、例えば、ポリオレフィン、脂肪族又は芳香族ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン及びポリ塩化ビニルを含む。本発明の文脈において、ポリマーは、熱可塑性ポリマー、すなわち、特定の温度を超えると成形可能になり、冷却すると固化するポリマーをいう。
【0020】
「解重合」という用語は、ポリマー又はポリマーを含有するプラスチック物品との関連で、ポリマー又は前記プラスチック物品の少なくとも1種のポリマーが、より小さい分子、例えば、モノマー及び/もしくはオリゴマー並びに/又は任意の分解生成物に解重合され、かつ/又は分解されるプロセスをいう。
【0021】
本発明によれば、「オリゴマー」は、2~約20個のモノマー単位を含有する分子をいう。一例として、PETから回収されるオリゴマーは、メチル-2-ヒドロキシエチルテレフタラート(MHET)及び/又はビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)及び/又は1-(2-ヒドロキシエチル) 4-メチルテレフタラート(HEMT)及び/又はジメチルテレフタラート(DMT)を含む。別の例として、乳酸のオリゴマーをPLAから回収することができる。
【0022】
本発明の文脈内においては、「ポリエステル」という用語は、その主鎖にエステル官能基を含有するポリマーをいう。エステル官能基は、炭素への単結合、酸素への二重結合、及び酸素への単結合という3つの他の原子に結合した炭素によって特徴付けられる。単結合した酸素は、別の炭素に結合している。その主鎖の組成により、ポリエステルは、脂肪族、芳香族、又は半芳香族であり得る。ポリエステルは、ホモポリマー、又はコポリマーであり得る。一例として、ポリエチレンテレフタラートは、テレフタル酸、及びエチレングリコールという2つのモノマーから構成される半芳香族コポリマーである。
【0023】
本発明の文脈において、「結晶性ポリマー」又は「半結晶性ポリマー」とは、結晶性領域及び非晶質領域が共存する部分結晶性ポリマーをいう。半結晶性ポリマーの結晶化度を種々の分析方法により評価することができ、典型的には、10~90%の範囲である。例えば、示差走査熱量測定(DSC)又はX線回折を使用して、ポリマーの結晶化度を求めることができる。他の技術、例えば、X線散乱(XS)(小角及び広角XSを含む)及び赤外分光法も、より信頼性の低いポリマーの結晶化度評価には適している。本開示においては、結晶化度をDSCで測定した。より具体的には、DSC測定を以下のように行った。すなわち、少量のサンプル(数mg)を周囲温度又は周囲温度未満の温度からポリエステルの融解温度(Tm)より高い高温まで、一定の加熱速度で加熱する。熱流データを収集し、温度に対してプロットする。結晶化度Xc(%)を、下記:
【数1】
のように計算する。
【0024】
式中、ΔHfは、吸熱融解ピークを積分することによって求めることのできる融解のエンタルピーであり、ΔHccは、冷結晶化のエンタルピーであり、発熱冷結晶化ピークを積分することによって求められ、wtは、プラスチック中のポリエステルの重量分率であり、ΔHf,100%は、完全結晶性ポリマーについての融解のエンタルピーであり、文献中に見出すことができる。一例として、PETのΔHf,100%は、文献から、125.5J/gとして得られる(Polymer Data Handbook,Second Edition,Edited by James E.Mark,OXFORD,2009)。当該文献によれば、PLAのΔHf,100%は、93J/gに等しい(Fisher E.W.,Sterzel H.J.,Wegner G.,Investigation of structure of solution grown crystals of lactide copolymers by means of chemical reactions,Kolloid Zeitschrift & Zeitschrift fur Polymere,1973,251,p 980-990)。
【0025】
結晶化度の誤差マージンは、約10%である。したがって、約25%の結晶化度は、22.5%~27.5%の結晶化度に相当する。
【0026】
本発明の文脈において、「Tg」、「Tc」及び「Tm」はそれぞれ、ポリマーのガラス転移点、結晶化温度及び融解温度をいう。このような温度を種々の分析法により評価することができる。例えば、示差走査熱量測定(DSC)又は示差熱分析(DTA)をポリマーのTg、Tc及びTmを求めるために使用することができる。本開示において、開示されたポリマーのTg、Tc及びTmは、DSCで測定される温度に対応する。
【0027】
発泡工程
本発明者らは、ポリマーを解重合工程に供する前に、プラスチック製品を発泡工程に供することにより、プラスチック製品に含有されるポリマー、特に、ポリエステル及び/又はポリアミド及び/又はポリオレフィンの解重合速度を改善することが可能であることを示した。発泡工程により、ポリマーと解重合剤との間の接触表面(すなわち、接触領域)を大きくすることが可能となる。言い換えれば、プラスチック製品と分解剤との間の接触表面を大きくすることにより、発泡されていない同じプラスチック製品と比較して、解重合速度を向上させること及び/又は分解剤の量を減少させること及び/又はプラスチック製品を分解するのに必要な時間を短くすることが可能である。本発明は、特に、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーを含むプラスチック製品に関する。
【0028】
本発明によれば、発泡工程をプラスチック製品が部分的又は全体的に溶融状態にある温度で行う。特に、発泡工程をプラスチック製品のターゲットポリマー(すなわち、分解又は解重合が意図されるポリマー)の結晶化温度(Tc)より高い温度で行う。好ましくは、プラスチック製品をそのプラスチック製品のターゲットポリマーの融解温度(Tm)以上の温度に供する。さらにより好ましくは、プラスチック製品をターゲットポリマーのTm+5℃~Tm+25℃、好ましくは、ターゲットポリマーのTm+10℃~Tm+25℃、より好ましくは、Tm+15℃~Tm+25℃、例えば、Tm+20℃の温度に供する。別の一実施態様では、プラスチック製品をターゲットポリマーのTm+25℃~Tm+50℃の温度に供する。別の一実施態様では、プラスチック製品をターゲットポリマーのTm+50℃以上に対応する温度に供する。
【0029】
本発明の一実施態様によれば、プラスチック製品は、数種類の異なるポリマーを含む。特に、プラスチック製品は、少なくとも51重量%のターゲットポリマーを含む。このような場合、プラスチック製品を有利には、ターゲットポリマーのTc以上の温度又はTm以上の温度に供する。代替的には、プラスチック製品をそのプラスチック製品に含有されるポリマーのうちの最高Tc又はTm以上の温度に供する。
【0030】
具体的な一実施態様では、プラスチック製品は、PETを含み、発泡工程は、そのプラスチック製品を170℃超の温度、好ましくは、230℃以上、より好ましくは、250℃~300℃の温度に供することを含む。さらにより好ましくは、PETを含むプラスチック製品を260℃~280℃の温度に供する。別の一実施態様では、PETを含むプラスチック製品を300℃以上、好ましくは、300℃~320℃の温度に供する。
【0031】
別の具体的な実施態様では、プラスチック製品は、PLAを含み、発泡工程は、そのプラスチック製品を110℃超、より好ましくは、145℃以上の温度に供することを含む。具体的な一実施態様では、プラスチック製品は、PLLAを含み、発泡工程は、そのプラスチック製品を170℃以上の温度に供することを含む。別の一実施態様では、プラスチック製品は、ステレオコンプレックスPLAを含み、発泡工程は、そのプラスチック製品を230℃以上の温度に供することを含む。
【0032】
本明細書で使用する場合、「発泡工程」は、発泡剤(膨張剤とも呼ばれる)の使用により、プラスチック製品の構造中にセル(気泡とも呼ばれる)が形成される工程をいう。前記発泡剤により生成された気体により、溶融又は部分的に溶融したプラスチック材料内に気泡を形成し、プラスチック製品内に閉鎖セル及び/又は開放セルが形成される。得られた発泡プラスチック製品は、発泡工程前のプラスチック製品密度より低い密度を有するセル構造を示す。
【0033】
気泡が形成される方法により、発泡剤を「物理発泡剤」又は「化学発泡剤」として分類することができる。本発明によれば、発泡工程を物理発泡剤、化学発泡剤及びこれらの混合物から選択される1種以上の発泡剤の使用により実行する。具体的な一実施態様では、発泡工程を物理発泡剤の使用により実行する。代替的には、発泡工程を化学発泡剤の使用により実行する。別の一実施態様では、発泡工程を物理発泡剤と化学発泡剤との両方の使用により実行する。
【0034】
本発明の文脈において、「物理発泡剤」は、処理中に状態の物理的変化を受ける化合物をいう。物理発泡剤は、発泡プロセス中に大気圧に戻るときに膨張する加圧気体(例えば、窒素、二酸化炭素、メタン、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン及び水素又はこれらの混合物)及び加熱されるときに液体から気体状態に変化することにより膨張し、それにより、より大きい体積の蒸気を生成する低沸点液体(例えば、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、二塩化メチレン及びジクロロテトラフルオロエタン)を含む。
【0035】
具体的な一実施態様では、物理発泡剤は、気体である。好ましくは、物理発泡剤は、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム、メタン、ネオン、アルゴン、キセノン、水素又はこれらの混合物からなる群より選択される。より好ましくは、物理発泡剤は、二酸化炭素及び窒素から選択される。別の一実施態様では、物理発泡剤は、飽和脂肪族炭化水素、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン及びヘキサン;飽和脂環式炭化水素、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、エチルシクロペンタン、芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン;ハロゲン化飽和炭化水素、例えば、塩化メチレン、四塩化炭素;エーテル、例えば、メチラール、アセタール、1,4-ジオキサン;並びにケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びアセチルケトン又はこれらの混合物からなる群より選択される。代替的には、物理発泡剤は、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、二塩化メチレン及びジクロロテトラ-フルオロエタンからなる群より選択される低沸点液体から選択される。特に、低沸点液体は、プラスチック製品が部分的又は全体的に溶融状態にある温度より低い沸点を有する。一実施態様において、発泡工程を上記列記された物理発泡剤のうちの1つ又は幾つかを使用して実行することができる。具体的な一実施態様では、物理発泡剤を使用して発泡工程に供されるプラスチック物品のポリマーは、0.5超、好ましくは、0.6超の固有粘度指数を有する。
【0036】
具体的な一実施態様では、物理発泡剤を部分的又は全体的に溶融したプラスチック製品中に注入する。言い換えれば、プラスチック製品を最初に加熱し、それが溶融したら、物理発泡剤を当該溶融材料内に注入する。
【0037】
本発明の文脈において、「化学発泡剤」は、所与の温度でのポリマー加熱中に、分解反応を受け、気体、例えば、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、一酸化窒素、NOx化合物、アンモニア及び/又は水蒸気の放出をもたらす発泡剤をいう。このような化学発泡剤は、アジド、ヒドラジド、例えば、p,p’-ヒドロキシビス-(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、セミカルバジド、例えば、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、アゾ化合物、例えば、アゾジカルボキサミド、トリアゾール、例えば、ニトロトリアゾロン、テトラゾール、例えば、5-フェニルテトラゾール、重炭酸塩、例えば、重炭酸亜鉛又はアルカリ重炭酸塩、例えば、重炭酸ナトリウム、無水物、過酸化物、ニトロ化合物、過塩素酸塩からなる群より選択することができる。代替的には、化学発泡剤は、クエン酸、炭酸塩、重炭酸塩及びこれらの混合物又は任意の市販の化学発泡剤、例えば、Clariant製のHYDROCEROL(登録商標)又はAdeka製のOrgater(登録商標)から選択される。好ましくは、化学発泡剤は、クエン酸と炭酸塩との混合物及び/又はクエン酸と重炭酸塩との混合物を含む。代替的には、化学発泡剤は、過酸化水素を含む。一実施態様において、発泡工程は、上記列記された化学発泡剤のうちの1つ又は幾つかを使用して実行することができる。
【0038】
具体的な一実施態様では、発泡工程は、化学発泡剤(単数又は複数)をプラスチック製品と周囲温度で混合し、その後、この混合物をプラスチック製品が部分的又は全体的に溶融状態にある温度に供する工程を含む。
【0039】
別の一実施態様では、化学発泡剤を少なくとも部分的に溶融したプラスチック製品に加える。言い換えれば、まず、プラスチック製品を加熱し、それが溶融したら、化学発泡剤を溶融材料内で混合する。
【0040】
一実施態様においては、発泡工程を、化学発泡剤(単数又は複数)と物理発泡剤(単数又は複数)との両方を使用して実行する。
【0041】
一実施態様において、本発明の方法は、混合発泡剤/プラスチック製品の総重量に基づいて、0.1~10重量%、好ましくは、0.1~5重量%の発泡剤(単数又は複数)を、90~99.9重量%、好ましくは、95~99.9重量%のプラスチック製品と接触させることを含む。特に、本発明の方法は、混合発泡剤/プラスチック製品の総重量に基づいて、0.1~10重量%の化学発泡剤を、90重量%~99.9重量%のプラスチック製品と接触させることを含む。好ましくは、本発明の方法は、1~5重量%の化学発泡剤を、95~99重量%のプラスチック製品と接触させることを含む。代替的には、本発明の方法は、0.1~5重量%、好ましくは、0.1~3重量%、より好ましくは、0.1~1重量%の化学発泡剤を95~99.9重量%、好ましくは、97~99.9重量%、より好ましくは、99~99.9重量%のプラスチック製品と接触させることを含む。別の一実施態様では、本発明の方法は、混合発泡剤/プラスチック製品の総重量に基づいて、0.1~5重量%の物理発泡剤を、95~99.9重量%のプラスチック製品と接触させることを含む。好ましくは、本発明の方法は、0.1~3.5重量%の物理発泡剤を96.5~99.9重量%のプラスチック製品と接触させることを含む。
【0042】
一実施態様において、発泡工程を発泡剤(単数又は複数)及び加工助剤、例えば、ワックス、核形成剤、鎖延長剤、発泡キッカー又は水、好ましくは、水を使用して実行する。特に、発泡工程を、混合発泡剤/プラスチック製品/加工助剤の総重量に基づいて、発泡剤(単数又は複数)及び0.01~10重量%、好ましくは、0.01~1重量%の加工助剤を使用して実行する。好ましくは、発泡工程を、化学発泡剤及び水、より好ましくは、クエン酸と水との混合物を使用して実行する。
【0043】
一実施態様において、発泡工程を、押出機を使用して行い、プラスチック製品はそのプラスチック製品が部分的又は全体的に溶融状態にある温度に供される。発泡剤は、加熱前、加熱中かつ/又は材料が加熱され、既に溶融状態にある時点で、押出機に導入することができる。
【0044】
別の一実施態様では、発泡工程を、オートクレーブを使用したバッチ発泡により行い、プラスチック製品を発泡剤で飽和させ、その後、急激な減圧に供し、任意選択的に、熱油浴に入れる。一例として、圧力誘起法又は温度誘起法を使用することができる。バッチ発泡は、特に、少なくとも1種のポリマー及び押出機において分解に供されることがある追加の成分を含むプラスチック製品プラスチック(例えば、ガラス繊維又は炭素繊維を含む複合材)に適合する。
【0045】
代替的には、発泡工程及び/又は冷却工程を当業者に公知の任意の技術により行うことができる。
【0046】
有利には、発泡工程前のプラスチック製品は、10%未満、好ましくは、5%未満、より好ましくは、3%未満の多孔率を示す。一実施態様において、少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品は、20%~90%、好ましくは、25%~50%の多孔率を示す。特に、多孔率は、30%~40%である。代替的には、プラスチック製品は、20%超、好ましくは、30%超、より好ましくは、40%超の多孔率を示す。本明細書で使用する場合、「多孔率」という用語は、プラスチック製品中の空隙率をいい、プラスチック製品内の空隙(すなわち、細孔)の体積の、プラスチック製品の総体積に対する比に対応する。
【0047】
多孔率は、当業者に公知の任意の方法により評価することができる。好ましくは、プラスチック製品の「多孔率」(ε
T)は、下記等式を使用して評価される。
【数2】
[式中、
【数3】
は、水比重瓶法を使用して測定された発泡プラスチック製品の見掛け密度であり、
【数4】
は、プラスチック製品のその組成に基づく真密度、又は非発泡プラスチック組成物について測定された真密度である。特に、そのプラスチック組成物は、ペレット形態にある。]
【0048】
水比重瓶法は、特定の体積の水の質量と、水及び密度を求める発泡プラスチック製品を含む同体積の質量とを測定することからなる。元の(すなわち、非発泡)プラスチック製品の密度(すなわち、真密度)がわかっていれば、これによりサンプルの見掛け密度を求めることができ、材料の多孔率の算出ができる。一例として、100%のPETを含むプラスチック製品の真密度の文献値は1380kg.m
-3であり、これはPETの密度に相当する。水比重瓶法は、特に、不規則な形状を有する製品の密度を計算するのに適している。規則的な形状(例えば、円筒)を有する製品の場合、製品の体積を直接計算し、このため、その見掛け密度を評価することが可能である。プラスチック製品が、織物である場合、真密度
【数5】
は、押出されたが、非発泡の織物組成物(ペレット形態)に基づく。
【0049】
具体的な一実施態様では、少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品は、少なくとも95%のPETを含み、1000kg.m
-3未満、好ましくは、900kg.m
-3未満の見掛け密度
【数6】
を示す。一実施態様において、少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品は、40%~70%の多孔率及び1000kg.m
-3未満の見掛け密度
【数7】
を示す。具体的な一実施態様では、プラスチック製品は、少なくとも95%のPETを含み、少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品は、1000kg.m
-3未満の見掛け密度
【数8】
及び30%超の多孔率を示す。好ましくは、プラスチック製品は、少なくとも95%のPETを含み、少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品は、900kg.m
-3未満の見掛け密度
【数9】
及び30%超、好ましくは、40%超の多孔率を示す。
【0050】
一実施態様において、少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品は、少なくとも85%のPETを含み、10%~70%の多孔率を示す少なくとも部分的に発泡させた織物である。
【0051】
一実施態様において、プラスチック製品を、発泡工程前に、前処理工程に供する。前処理工程は、発泡前に、プラスチック製品を選別すること及び/又は洗浄すること及び/又は消毒すること及び/又は滅菌すること及び/又は生物学的洗浄することを含むことができる。代替的に、又は付加的に、前処理工程は、発泡前に、プラスチック製品をフィルム、フレーク、粉末、ペレット又は繊維に物理的に変換することを含むことができる。
【0052】
本発明の方法は、PETを含むプラスチック製品に特に適している。したがって、少なくともPETを含むプラスチック製品を分解するための方法であって、前記プラスチック製品を少なくとも部分的に発泡させる工程と、前記少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品の前記PETを解重合する工程とを含み、発泡工程を好ましくは、化学発泡剤、より好ましくは、クエン酸、炭酸塩、重炭酸塩及びこれらの混合物、より好ましくは、クエン酸と炭酸塩との混合物又はクエン酸と重炭酸塩との混合物を使用して実行する、方法を提供することは本発明の一つの目的である。
【0053】
上記言及されたように、本発明は、熱可塑性ポリマーを含むプラスチック製品に特に適している。また、本発明を、発泡工程を適合させることにより、熱硬化性ポリマーを含むプラスチック製品を使用しても実施することができる。
【0054】
冷却工程
具体的な一実施態様では、本発明の方法は、発泡工程後に、少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品を冷却する工程をさらに含む。実際、上記に表わされたように、発泡工程を、溶融状態になるように加熱されたプラスチック製品を使用して行う。一実施態様によれば、発泡プラスチック製品の温度を急速に低下させ、発泡プラスチック製品の固化を促進するために、発泡工程後、発泡プラスチック製品を、その発泡プラスチック製品の温度より低い温度に供する。冷却工程は、プラスチック製品を、空気及び/又は液体を含む任意の冷却流体に接触させることを含む。
【0055】
具体的な一実施態様では、プラスチック製品を、発泡工程後、30秒未満、より好ましくは、20秒未満、さらにより好ましくは、10秒未満、冷却工程に供する。特に、プラスチック製品を発泡(すなわち、加熱)工程の終了直後に冷却工程に供する。
【0056】
加熱段階後のこのような急速な冷却により、前記プラスチック製品の1種以上のポリマーを少なくとも部分的に非晶質化することが可能となる。非晶質化は、発泡工程(すなわち、加熱工程)中に、プラスチック製品のポリマーの結晶構造を少なくとも部分的に破壊し、加熱されたポリマーを急速な冷却により非晶質状態に固定することによって起こる。このため、ポリマーの非晶質化は、プラスチック製品を、前記ポリマーのTc超、好ましくは、Tm超の温度に供し、その後、そのプラスチック製品を前記ポリマーのTc及び/又はTg未満の温度で急速に冷却することにより、発泡工程中に行うことができる。
【0057】
本明細書で使用する場合、「非晶質化」及び「非晶質化する」という用語は、ポリマーに関しては、所与のポリマーの結晶化度が、非晶質化前の結晶化度と比較して、低下することをいう。好ましくは、非晶質化により、非晶質化前と比較して、ターゲットポリマーの結晶化度を少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%低下させることが可能となる。有利には、非晶質化により、最大30%の結晶化度、好ましくは、最大25%、より好ましくは、最大20%、さらにより好ましくは、最大15%の結晶化度を有するポリマーがもたらされる。代替的には、非晶質化により、ポリマーの結晶化度を30%未満、好ましくは、25%未満、より好ましくは、20%未満、さらにより好ましくは、15%未満に維持することが可能となる。非晶質化は、ポリマーの結晶構造を少なくとも部分的に破壊するために当業者に公知の任意の方法、特に、WO2017/198786に記載されている任意の方法により行うことができる。それにより、非晶質化は、生物学的作用剤による前記ポリマーの解重合能を向上させる。
【0058】
発泡及び冷却の温度を、当業者により、ターゲットポリマーに応じて適合させることができる。同様に、当業者であれば、発泡工程中、発泡剤の導入の前及び/又は後に、何時及び/又は如何に脱気を行うかはわかっている。一般的に言えば、プラスチック製品を、ターゲットポリマーの非晶質化を得るのに十分な期間、熱処理に供し、任意選択的にせん断応力をかけることができる。例えば、温度及び/又はプラスチック製品に応じて、このような期間には10秒~数分を含めることができる。好ましい一実施態様では、発泡工程は、プラスチック製品を、せん断応力と、プラスチック製品のターゲットポリマーのTc超、好ましくは、前記ポリマーのTm以上の温度との両方に供することを含む。加熱すること及びせん断応力に供することを好ましくは同時に行い、発泡工程中での非晶質化を向上させる。
【0059】
本発明によれば、冷却工程は、発泡プラスチック製品を、そのプラスチック製品のターゲットポリマーのTc未満、好ましくは、前記ポリマーのTg未満の温度に供することを含む。プラスチック製品のターゲットポリマーのTc未満の温度に供することは、例えば、PBAT、又はTgが20℃未満である任意のポリマーに、具体的に適合される。別の一実施態様では、冷却は、加熱されたプラスチック製品を、ターゲットポリマーのTcより少なくとも20℃低い、好ましくは、少なくとも30℃、40℃、50℃低い温度に供することにより行う。一実施態様において、冷却は、プラスチック製品を室温(すなわち、25℃±5℃)に供することにより行う。別の一実施態様では、冷却は、プラスチック製品を約20℃又は約10℃の温度に供することにより行う。
【0060】
一般的に言えば、プラスチック製品は、そのプラスチック製品の中心部の温度を低下させるのに十分な期間、冷却温度に供する。例えば、発泡プラスチック製品の初期温度(すなわち、冷却工程の前)並びに/又はプラスチック製品の冷却温度及び/もしくは性質/形態に応じて、このような期間には1秒~数分を含めることができる。一実施態様において、プラスチック製品は、1cm未満、好ましくは、0.5~5mmの直径を有する押出成形品の形態にあり、これを1分未満、好ましくは、30秒未満、より好ましくは、20秒未満、さらにより好ましくは、10秒未満の間、冷却温度に供する。代替的には、押出機から出る発泡プラスチック材料は、チューブ又はシートに成形される。
【0061】
一例として、発泡工程に続けて、冷却を、プラスチック製品を冷却温度の液体に浸漬させることにより行うことができる。例えば、少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品を発泡工程の最後に、室温で、より好ましくは、室温未満の温度で液体に浸漬させる。例えば、プラスチック物品を、温度が14℃未満、好ましくは、10℃未満又は5℃未満の冷液体に浸漬させる。具体的な一実施態様では、プラスチック製品は冷水、例えば、5℃以下の水に浸漬させる。代替的には、プラスチック物品は、温度がターゲットポリマーのTc未満である液体に浸漬させる。より一般的には、プラスチック製品の温度を急速に低下させるのに適した任意の方法(例えば、冷気)を使用することができる。
【0062】
好ましい一実施態様では、発泡工程を押出機中で行う。押出機により、プラスチック製品を同時に又は連続して、所与の温度とせん断応力との両方に供することが可能となる。有利には、押出機から出てくる発泡プラスチック製品を、水の浸漬及び/又は噴霧により直接冷却する。有利には、押出機は、一軸押出機、同方向回転又は逆回転設計のいずれかの多軸押出機、遊星ローラ押出機、分散混練機、往復式一軸押出機(共混練機)、ミニ押出機又は内部ミキサーから選択される。
【0063】
一実施態様において、冷水中でプラスチック材料を直接切断することを可能にする水中ペレタイザ又は水中ストランドペレタイザが、押出機のヘッドに固定され、冷却段階に直ちに供されるプラスチックペレットが製造される。このような実施態様では、プラスチック製品は、1cm未満、好ましくは、0.5~5mmのサイズのペレット形態にあり、1分未満、好ましくは、30秒未満、より好ましくは、20秒未満、さらにより好ましくは、10秒未満の間、冷却温度に供される。特に、1mm未満のミニペレットを製造するマイクロ顆粒化水中ペレタイザが、押出機のヘッドに固定される。
【0064】
代替的には、発泡工程をオートクレーブ中で行い、発泡プラスチック製品を周囲空気もしくは冷却空気との接触により、又は室温もしくは室温未満の温度で液体に浸漬させることにより冷却する。代替的には、発泡工程及び冷却工程を当業者に公知の任意の技術により行うことができる。
【0065】
したがって、少なくとも1種のポリマーを含むプラスチック製品を分解する方法であって、
a.プラスチック製品を少なくとも部分的に発泡させる工程であって、発泡工程をプラスチック製品のターゲットポリマーの結晶化温度(Tc)超、好ましくは、前記ポリマーの融解温度(Tm)超の温度で行う発泡工程と、
b.前記少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品を、前記ポリマーのTc未満、好ましくは、前記ポリマーのガラス転移点(Tg)未満の温度で冷却する工程と、
c.前記ターゲットポリマーを解重合する工程とを含む、方法を提供することは本発明の一つの目的である。
【0066】
有利には、発泡剤は、化学発泡剤から選択される。好ましくは、プラスチック製品を発泡工程後30秒未満、より好ましくは、直後に冷却工程に供する。
【0067】
有利には、少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品を冷却工程(b)と解重合工程(c)との間の顆粒化工程に供して、上記に表わされたペレットを得る。
【0068】
具体的な一実施態様では、少なくとも部分的に非晶質化させ、かつ発泡させたターゲットポリマーは、最大30%、好ましくは、最大25%、より好ましくは、最大20%の結晶化度を示す。好ましくは、解重合工程を、生物学的解重合剤を使用して行う。
【0069】
別の一実施態様では、押出機は、不織製品の溶融紡糸のための、又はモノフィラメントもしくはマルチフィラメントの溶融紡糸のための紡糸口金をさらに備え、冷却工程を好ましくは、冷却空気の使用により行う。
【0070】
したがって、少なくとも1種のポリマーを含むプラスチック製品を分解するための方法であって、
a.前記プラスチック製品を発泡させ、溶融紡糸する工程であって、前記発泡及び溶融紡糸工程を前記ポリマーのTc超、好ましくは、ターゲットポリマーのTm超の温度で行う発泡及び溶融紡糸工程と、
b.前記少なくとも部分的に発泡させ、紡糸されたプラスチック製品をターゲットポリマーのTc未満、好ましくは、前記ポリマーのTg未満の温度で冷却する工程と、
c.前記ターゲットポリマーを解重合する工程とを含み、
前記発泡及び溶融紡糸工程を、紡糸口金を備える押出機を使用して実行する、方法を提供することは本発明の別の一つの目的である。
【0071】
有利には、発泡剤は、化学発泡剤から選択され、かつ/又はプラスチック製品を紡糸工程後30秒未満、好ましくは、紡糸工程直後に冷却工程に供し、かつ/又は解重合を、酵素を使用して行う。
【0072】
プラスチック製品がPETを含む、上記に表わされたプラスチック製品を分解するための方法を提供することは本発明の一つの具体的な目的である。有利には、発泡工程を押出機中で行い、冷却工程を、加熱され、部分的に発泡させたプラスチック製品を100℃未満の温度に発泡工程後30秒未満に、好ましくは、90℃未満に、好ましくは、発泡工程直後に供することにより行う。代替的には、冷却工程を、加熱されたプラスチック製品を50℃未満の温度に供することにより行う。特に、ポリマーは、PETであり、少なくとも部分的に非晶質化されたPETは、最大30%、好ましくは、最大25%、より好ましくは、最大20%の結晶化度を示す。
【0073】
特に、少なくともPETを含むプラスチック製品を分解するための方法であって、
a.プラスチック製品を発泡剤で少なくとも部分的に発泡させる工程であって、発泡工程を170℃超、好ましくは、185℃超、より好ましくは、200℃超、さらにより好ましくは、220℃、230℃、240℃、245℃、250℃、255℃、260℃、265℃超の温度で行う発泡工程と、
b.前記少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品を、100℃未満、好ましくは、90℃未満の温度で、好ましくは、発泡工程後30秒未満で冷却する工程と、
c.前記PETを解重合する工程とを含む、方法を提供することは本発明の一つの目的である。
【0074】
有利には、発泡剤は、化学発泡剤から、好ましくは、クエン酸、炭酸塩、重炭酸塩もしくはこれらの混合物から選択され、かつ/又はプラスチック製品を発泡段階後30秒未満で冷却工程に供する。有利には、発泡製品中のPETは、冷却段階後に20%未満、より好ましくは、5%未満の結晶化度を示し、解重合剤は、エステラーゼ、好ましくは、クチナーゼ又はリパーゼ、より好ましくは、クチナーゼである。
【0075】
解重合工程
本発明によれば、分解方法は、発泡工程及び任意の冷却工程に続けて、プラスチック製品の少なくとも1種のポリマーの解重合工程を含む。好ましい実施態様によれば、解重合工程は、既に非晶質化された少なくとも1種のポリマーをターゲットとする。
【0076】
具体的な一実施態様では、解重合工程は、プラスチック製品を解重合剤、すなわち、化学的及び/又は生物学的作用剤と接触させることを含む。
【0077】
有利には、解重合工程を、解重合剤を含む液体媒体中で行う。
【0078】
別の具体的な一実施態様では、プラスチック製品を解重合工程前に解重合剤と接触させる。例えば、プラスチック製品を発泡工程後、解重合剤を含む液体に浸漬させる。特に、プラスチック製品を冷却工程中に解重合剤と接触させることができる(すなわち、解重合剤を含む冷却液に浸漬させる)。一実施態様において、解重合工程を、プラスチック製品を液体に浸漬させることにより続けて行う。好ましい実施態様では、このような液体は、解重合剤が除去されている。別の一実施態様では、解重合工程を、プラスチック製品を堆肥化条件に供することにより行う。特に、プラスチック製品を50℃超の温度で工業堆肥条件に供し、かつ/又は15℃~35℃の温度での家庭堆肥条件に供する。一実施態様において、発泡プラスチック製品を冷却工程中に解重合剤と接触させ、解重合工程は、プラスチック製品を、解重合剤を活性化可能な刺激に供することにより、その後に実行する。例えば、解重合剤は、分解酵素であり、刺激は、特定の温度及び/又は湿度からなる。
【0079】
具体的な一実施態様では、解重合剤は、生物学的作用剤であるか、又は生物学的作用剤を含む。特に、生物学的作用剤は、デポリメラーゼ(すなわち、酵素)である。好ましくは、デポリメラーゼは、プラスチック製品の少なくとも1種のポリマー、好ましくは、既に非晶質化されている少なくとも1種のポリマーを分解可能である。
【0080】
デポリメラーゼは、クチナーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、カルボキシルエステラーゼ、p-ニトロベンジルエステラーゼ、エステラーゼ、scl-PHAデポリメラーゼ、mcl-PHAデポリメラーゼ、PHBデポリメラーゼ、アミダーゼ、アリールアシルアミダーゼ(EC 3.5.1.13)、オリゴマーヒドロラーゼ、例えば、6-アミノヘキサノアート環状ダイマーヒドロラーゼ(EC 3.5.2.12)、6-アミノヘキサノアートダイマーヒドロラーゼ(EC 3.5.1.46)、6-アミノヘキサノアートオリゴマーヒドロラーゼ(EC 3.5.1.B17)、オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、ラッカーゼ(EC 1.10.3.2)、オキシゲナーゼ、リポキシゲナーゼ、モノオキシゲナーゼ、又はリグニン分解酵素からなる群より有利に選択される。具体的な一実施態様では、プラスチック製品を少なくとも2種のデポリメラーゼと接触させる。
【0081】
具体的な一実施態様では、プラスチック製品は、PETを含み、デポリメラーゼは、エステラーゼである。特に、デポリメラーゼは、クチナーゼ、好ましくは、Thermobifida cellulosityca、Thermobifida halotolerans、Thermobifida fusca、Thermobifida alba、Bacillus subtilis、Fusarium solani pisi、Humicola insolens、Sirococcus conigenus、Pseudomonas mendocina、及びThielavia terrestris、又はそれらの任意の機能的変異体から選択される微生物により産生されるクチナーゼである。別の一実施態様では、クチナーゼは、メタゲノムライブラリ、例えば、Sulaiman et al.,2012に記載されているLC-クチナーゼ、又はEP3517608に記載されているエステラーゼ、又はWO2018/011284、もしくはWO2018/011281に列記されているデポリメラーゼを含むその任意の機能的変異体から選択される。別の具体的な一実施態様では、デポリメラーゼは、好ましくは、Ideonella sakaiensisにより産生されるリパーゼである。別の具体的な一実施態様では、デポリメラーゼは、Humicola insolensにより産生されるクチナーゼ、例えば、UniprotにおいてA0A075B5G4と呼ばれるもの、又はその任意の機能的変異体である。別の一実施態様では、デポリメラーゼは、市販の酵素、例えば、Novozym 51032、又はその任意の機能的変異体から選択される。
【0082】
具体的な一実施態様では、プラスチック製品は、PLLAを含み、デポリメラーゼは、好ましくは、Amycolatopsis sp、Amycolatopsis orientalis、Tritirachium album(プロテイナーゼK)、Actinomadura keratinilytica、Laceyella sacchari LP175、Thermus spから選択される微生物により産生されるプロテアーゼ又はPLAを分解することが公知の任意の市販の酵素、例えば、Savinase(登録商標)、Esperase(登録商標)、Everlase(登録商標)又はWO2016/062695、WO2018/109183もしくはWO2019/122308に列記されているデポリメラーゼを含むその任意の機能的変異体である。
【0083】
別の具体的な一実施態様では、プラスチック製品は、PDLAを含み、デポリメラーゼは、エステラーゼ、好ましくは、クチナーゼ又はリパーゼであり、より好ましくは、Cryptococcus sp.からのCLE、Burkholderia cepacia、Paenibacillus amylolyticus TB-13、Candida Antarctica、Rhiromucor miehei、Saccharomonospora viridis、Cryptococcus magnusからのリパーゼPS、又はその任意の機能的変異体から選択される。
【0084】
別の具体的な一実施態様では、プラスチック製品は、PAを含み、デポリメラーゼは、アミダーゼ、アリールアシルアミダーゼ(EC 3.5.1.13)、オリゴマーヒドロラーゼ、例えば、6-アミノヘキサノアート環状ダイマーヒドロラーゼ(EC 3.5.2.12)、6-アミノヘキサノアートダイマーヒドロラーゼ(EC 3.5.1.46)、6-アミノヘキサノアートオリゴマーヒドロラーゼ(EC 3.5.1.B17)からなる群より選択される。
【0085】
別の具体的な一実施態様では、プラスチック製品は、ポリオレフィンを含み、デポリメラーゼは、好ましくは、ラッカーゼ、ペルオキシダーゼ、オキシゲナーゼ、リポキシゲナーゼ、モノオキシゲナーゼ、又はリグニン分解酵素からなる群より選択されるオキシダーゼである。
【0086】
別の一実施態様では、解重合剤は、デポリメラーゼを発現し、分泌する微生物である。前記微生物は、デポリメラーゼを天然に合成してもよいし、又は例えば、ベクターを使用して、デポリメラーゼをコードする組換えヌクレオチド配列が挿入されている組換え微生物であってもよい。解重合段階の具体的な一実施態様は、WO2017/198786に見出すことができる。
【0087】
本発明によれば、幾つかの微生物並びに/又は精製酵素及び/もしくは合成酵素を併用、又は逐次使用して、同一のプラスチック物品に含まれる異なる種類のポリマーを解重合することもでき、本発明の分解工程に同時に供される異なるプラスチック物品に含まれるポリマーを解重合することもできる。
【0088】
プラスチック物品の少なくとも1種のポリマーの解重合に必要な時間は、プラスチック物品及びターゲットポリマー(すなわち、プラスチック物品の性質及び起源、その組成、形状、分子量等)、使用される微生物/酵素の種類及び量、並びに種々のプロセスパラメータ(すなわち、温度、pH、追加の作用剤等)に応じて変化し得る。当業者であれば、プロセスパラメータをプラスチック物品及び/又はデポリメラーゼに容易に適合させることができる。
【0089】
具体的な一実施態様では、プラスチック製品は、PETを含み、プラスチック製品を生物学的解重合剤と、20℃~90℃、好ましくは、30℃~80℃、より好ましくは、40℃~75℃、より好ましくは、50℃~75℃、さらにより好ましくは、60℃~75℃に包含される温度で接触させることにより解重合工程を実行する。さらに、解重合工程を好ましくは、5~11、好ましくは、7~9、より好ましくは、7~8.5、さらにより好ましくは、7~8のpHで実行する。代替的には、解重合工程を工業的及び/又は堆肥化条件下で実行することができる。
【0090】
具体的な一実施態様では、プラスチック製品は、PLAを含み、プラスチック製品を生物学的解重合剤と、20℃~90℃、好ましくは、20℃~60℃、より好ましくは、30℃~55℃、より好ましくは、40℃~50℃に包含される温度、さらにより好ましくは、45℃で接触させることにより解重合工程を実行する。さらに、解重合工程を好ましくは、5~11、好ましくは、7~10、より好ましくは、8.5~9.5、さらにより好ましくは、8~9のpHで実行する。別の具体的な一実施態様では、解重合工程を7~8のpHで実行することができる。代替的には、解重合工程を工業的及び/又は堆肥化条件下で実行することができる。
【0091】
別の具体的な一実施態様では、解重合剤は、化学作用剤であるか、又は化学作用剤を含む。特に、化学作用剤は、金属触媒から選択される触媒、又は安定かつ有毒でないヒドロシラン(PMHS、TMDS)、例えば、市販のB(C6F5)3及び[Ph3C+,B(C6F5)4
-]触媒である。特に、触媒は、アルコキシド、カーボナート、アセタート、水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、酸化鉄、酢酸亜鉛、ゼオライトから選択される。一部の実施態様では、本発明の解重合プロセスで使用される触媒は、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、アンチモン化合物、亜鉛化合物、カドミウム化合物、マンガン化合物、マグネシウム化合物、コバルト化合物、ケイ素化合物、スズ化合物、鉛化合物及びアルミニウム化合物のうちの少なくとも1つを含む。特に、触媒は、二酸化ゲルマニウム、酢酸コバルト、四塩化チタン、リン酸チタン、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ-n-プロポキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラメトキシド、テトラキス(アセチルアセトナト)チタン錯体、テトラキス(2,4-ヘキサンジオナト)チタン錯体、テトラキス(3,5-へプタンジオナト)チタン錯体、ジメトキシビス(アセチルアセトナト)チタン錯体、ジエトキシビス(アセチルアセトナト)チタン錯体、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン錯体、ジ-n-プロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン錯体、ジブトキシビス(アセチルアセトナト)チタン錯体、チタンジヒドロキシビスグリコラート、チタンジヒドロキシビスグリコラート、チタンジヒドロキシビスラクタート、チタンジヒドロキシビス(2-ヒドロキシプロピオナート)、チタンラクタート、チタンオクタンジオラート、チタンジメトキシビストリエタノールアミナート、チタンジエトキシビストリエタノールアミナート、チタンジブトキシビストリエタノールアミナート、ヘキサメチルジチタナート、ヘキサエチルジチタナート、ヘキサプロピルジチタナート、ヘキサブチルジチタナート、ヘキサフェニルジチタナート、オクタメチルトリチタナート、オクタエチルトリチタナート、オクタプロピルトリチタナート、オクタブチルトリチタナート、オクタフェニルトリチタナート、ヘキサアルコキシジチタナート、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、ケイ酸メチル、塩化亜鉛、酢酸鉛、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、酢酸、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、ゼオライト、塩化リチウム、塩化マグネシウム、塩化第二鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、三酸化アンチモン及び三酢酸アンチモンのうちの少なくとも1種を含む。代替的には、触媒は、ナノ粒子から選択される。化学作用剤は、ターゲットポリマーを分解し、かつ/又は解重合する能力を有することが当業者に公知の任意の触媒から選択することができる。
【0092】
代替的には、化学作用剤は、ポリマー結合、特に、エステル結合を破壊可能な酸触媒又は塩基触媒である。特に、エステル結合の破壊に関与する化学作用剤は、水酸化物と、水酸化物を溶解することができるアルコールとの混合物である。水酸化物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物及び水酸化アンモニウムから選択され、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラ-アルキルアンモニウムから選択され、アルコールは、直鎖、分岐鎖、環状アルコール又はこれらの組み合わせから選択され、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールから選択される直鎖C1~C4アルコールである。
【0093】
具体的な一実施態様では、化学作用剤は、ポリマーを、膨潤可能な非極性溶媒(すなわち、膨潤剤)と、エステル結合を破壊し、又は加水分解することができる作用剤との混合物であり、膨潤剤は、好ましくは、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、及びトリクロロエタンから選択される塩素化溶媒である。別の具体的な一実施態様では、化学作用剤は、エチレングリコール、塩酸、硫酸、又はルイス酸から選択される酸である。
【0094】
具体的な一実施態様では、少なくとも部分的に発泡させ、任意選択的に非晶質化されたプラスチック製品を、解重合工程前に、低温粉砕、フリーザミリング、フリーザ粉砕、又は低温ミリングに供することができる。一実施態様において、プラスチック製品は、解重合工程前に破砕され、又は粉砕される。有利には、解重合工程の前にプラスチック製品を微粉化工程には供しない。
【0095】
プラスチック物品
本発明者らは、ポリマーを含む、好ましくは、熱可塑性ポリマー、例えば、ポリエステル及び/又はポリアミド及び/又はポリオレフィンを含むプラスチック製品を分解するための分解方法を開発した。本発明の方法は、プラスチック廃棄物収集及び/又は産業廃棄物からのプラスチック物品について有利に使用することができる。とりわけ、本発明の方法を、プラスチックボトル、プラスチックトレー、プラスチックバッグ及びプラスチック包装、軟質及び/又は硬質プラスチックを含む家庭用プラスチック廃棄物を分解するのに使用することができ、これらの廃棄物は、食品残渣、界面活性剤等で汚染されていてもよい。代替的に又は付加的に、本発明の方法を、使用済みプラスチック繊維、例えば、布地、織物及び/又は産業廃棄物から出る繊維、を分解するのに使用することができる。より具体的には、本発明の方法をPETプラスチック及び/又はPET繊維廃棄物、例えば、布地、織物又はタイヤから出るPET繊維、について使用することができる。興味深いことに、本発明の方法によれば、モノマー及び/もしくはオリゴマー並びに/又は更に回収かつ/もしくは再加工可能な任意の分解生成物、の製造が可能となる。
【0096】
具体的な一実施態様では、プラスチック製品は、プラスチックボトル、プラスチックバッグ及びプラスチック包装、軟質及び/もしくは硬質プラスチック、繊維、織物を含む未発泡プラスチック廃棄物並びに/又は熱可塑性ポリマーを含み、30%超の結晶化度を有する発泡プラスチック製品から選択される。このような発泡プラスチック製品は、加熱中に新たな発泡工程に供し、解重合前に非晶質化のための冷却工程に供する。
【0097】
具体的な一実施態様では、本発明の方法を、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー、特に、1種の半結晶性熱可塑性ポリマー、を含むプラスチック製品を分解するのに使用する。
【0098】
有利には、本発明の方法を、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンイソソルビドテレフタラート(PEIT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノアート(PHA)、ポリブチレンスクシナート(PBS)、ポリブチレンスクシナートアジパート(PBSA)、ポリブチレンアジパートテレフタラート(PBAT)、ポリエチレンフラノアート(PEF)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(エチレンアジパート)(PEA)、ポリエチレンナフタラート(PEN)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタラート(PCT)、ポリエチレンスクシナート(PES)、ポリ(ブチレンスクシナート-コ-テレフタラート)(PBST)、ポリ(ブチレンスクシナート/テレフタラート/イソフタラート)-コ-(ラクタート)(PBSTIL)及びこれらのポリマーのブレンド/混合物から選択される少なくとも1種のポリエステルを含むプラスチック製品を分解するのに使用する。特に、本発明の方法を、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンイソソルビドテレフタラート(PEIT)、ポリブチレンアジパートテレフタラート(PBAT)、ポリエチレンフラノアート(PEF)及びこれらのポリマーのブレンド/混合物から選択される少なくとも1種の芳香族ポリエステルを含むプラスチック製品を分解するのに使用する。
【0099】
具体的な一実施態様では、本発明の方法を、少なくとも1種のポリエステル、好ましくは、少なくともPET又はPLAを含むプラスチック製品を分解するのに使用する。
【0100】
代替的には、本発明の方法を、ポリアミド-6又はポリ(β-カプロラクタム)又はポリカプロアミド(PA6)、ポリアミド-6,6又はポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(PA6,6)、ポリ(11-アミノウンデカノアミド)(PA11)、ポリドデカノラクタム(PA12)、ポリ(テトラメチレンアジパミド)(PA4,6)、ポリ(ペンタメチレンセバカミド)(PA5,10)、ポリ(ヘキサメチレンアゼラアミド)(PA6,9)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)(PA6,10)、ポリ(ヘキサメチレンドデカノアミド)(PA6,12)、ポリ(m-キシリレンアジパミド)(PAMXD6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(PA66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(PA66/6I)及びこれらの材料のブレンド/混合物から選択される少なくとも1種のポリアミドを含むプラスチック製品を分解するのに使用する。
【0101】
代替的には、本発明の方法を、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン-1、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム、エチレンビニルアルコール、1種以上のエチレン-一酸化炭素コポリマー及びこれらのコポリマー及び変性物から選択される少なくとも1種のポリオレフィンを含むプラスチック製品を分解するのに使用する。
【0102】
具体的な一実施態様では、プラスチック製品は、少なくとも2種類のポリマーを含む。より一般的には、本発明の方法がターゲットとするプラスチック製品は、石油化学物質由来の合成ポリマー、例えば、ポリアミド、ポリオレフィンもしくはビニルポリマー、又は生物系ソース、例えば、ゴム、木材もしくは木材化合物、例えば、リグニン、セルロースもしくはヘミセルロース及びデンプン並びにそれらの誘導体、を含む異種のポリマーを含むことができる。代替的には、プラスチック製品は、少なくとも1種のポリマーと、追加の成分、例えば、金属化合物、無機化合物、ガラス化合物、天然又は合成繊維(例えば、ガラス繊維又は炭素繊維)、紙、及びWO第2015/173265号に定義されているこれらの誘導体とを含むことができる。
【0103】
興味深いことに、本発明の方法により、モノマー及び/もしくはオリゴマー並びに/又は更に回収かつ/又は再加工可能な分解生成物、を製造することが可能となる。
【0104】
モノマー/オリゴマー/分解生成物の製造
また、少なくとも1種のポリマーを含むプラスチック製品からモノマー及び/もしくはオリゴマー並びに/又は分解生成物を製造する方法であって、プラスチック製品を、前記プラスチック製品を少なくとも部分的に発泡させる発泡工程と、任意選択的に、プラスチック製品の前記ポリマーを少なくとも部分的に非晶質化する冷却工程と、ついで、プラスチック製品中の前記少なくともポリマーの解重合工程とに続けて供することを含む、方法を提供することは本発明の別の一つの目的である。
【0105】
また、少なくとも1種のポリマーを含むプラスチック製品を分解する方法であって、前記プラスチック製品が既に発泡されており、前記プラスチック製品のポリマーが、任意選択的に少なくとも部分的に非晶質化されており、前記プラスチック製品を、前記ポリマーを分解可能な解重合剤、好ましくは、生物学的作用剤、より好ましくは、デポリメラーゼと接触させる、方法を提供することは本発明の別の一つの目的である。具体的な一実施態様では、プラスチック製品を堆肥化条件下又は環境条件下で解重合させる。特に、プラスチック製品を50℃超の温度での工業堆肥条件に供しかつ/又は15℃~35℃の温度での家庭堆肥条件に供する。このような場合、プラスチック製品のポリマーを堆肥中及び/又は環境中の微生物により水及び/又は二酸化炭素及び/又はメタンに分解することができる。
【0106】
また、プラスチック製品を分解する方法であって、モノマー及び/もしくはオリゴマー並びに/又は解重合工程から得られる分解生成物の精製工程をさらに含む、方法を提供することは本発明の別の一つの目的である。解重合から得られるモノマー及び/もしくはオリゴマー並びに/又は分解生成物を逐次的又は連続的に回収することができる。ポリマー及び/又は出発プラスチック物品に応じて、単一タイプのモノマー及び/もしくはオリゴマー又は複数の異なるタイプのモノマー及び/もしくはオリゴマーを回収することができる。回収されたモノマー及び/もしくはオリゴマー並びに/又は分解生成物を、あらゆる適切な精製方法を使用して精製し、再重合可能な形態に調整することができる。好ましい一実施態様では、再重合可能なモノマー及び/又はオリゴマーは、その後、ポリマーを合成するのに再使用することができる。当業者であれば、容易にプロセスパラメータをモノマー/オリゴマー及び合成すべきポリマーに適合させることができる。
【0107】
少なくとも1種のポリマーを含むプラスチック製品をリサイクルするための方法であって、前記少なくとも1種のプラスチック製品を発泡工程及び解重合工程に順に供することと、このようなポリマーのモノマー及び/又はオリゴマーを回収することとを含む、方法を提供することは本発明の更なる一つの目的である。
【0108】
また、少なくとも1種のポリマーを含む少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品を分解するための方法であって、プラスチック廃棄物及び/又は繊維廃棄物から少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品を製造し、前記少なくとも1種のポリマーを分解可能な解重合剤、好ましくは、生物学的作用剤、より好ましくは、デポリメラーゼと接触させる、方法を提供することは本発明の一つの目的である。特に、前記少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品は、発泡工程に既に供したプラスチック廃棄物及び/又は繊維廃棄物から得る。特に、前記プラスチック廃棄物及び/又は繊維廃棄物は、化学発泡剤もしくは物理発泡剤又は化学発泡剤と物理発泡剤との両方を使用する発泡工程に供したものである。具体的な一実施態様では、前記少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品の前記ポリマーは非晶質化されたものであり、前記非晶質化されたポリマーを分解するために、前記少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品を、解重合性生物学的作用剤、好ましくは、デポリメラーゼと接触させる。前記発泡工程及び非晶質化工程は、上記に表わされた具体的な一実施態様に従って行うことができる。
【0109】
特に、プラスチック廃棄物及び/又は繊維廃棄物から選択され、少なくとも1種のポリマーを含むプラスチック製品をリサイクルするための方法であって、前記プラスチック廃棄物及び/又は繊維廃棄物は既に発泡させてあり、前記少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品を、前記少なくとも1種のポリマーを分解可能な解重合剤、好ましくは、生物学的作用剤、より好ましくは、デポリメラーゼに前記製品を接触させることにより解重合する工程を含む、方法を提供することは本発明の一つの目的である。一実施態様において、プラスチック廃棄物及び/又は繊維廃棄物から選択されるプラスチック製品は、上記に表わされた具体的な一実施態様に従って予め発泡させておく。特に、前記プラスチック製品は、化学発泡剤もしくは物理発泡剤、又は化学発泡剤と物理発泡剤との両方を使用することにより、予め発泡させておく。具体的な一実施態様では、前記プラスチック製品の前記ポリマーを解重合剤、好ましくは、生物学的作用剤、より好ましくは、前記非晶質化されたポリマーを分解可能なデポリメラーゼと接触させる前に、予め発泡させておく。一実施態様において、プラスチック廃棄物及び/又は繊維廃棄物から選択されるプラスチック製品を上記に表わされた具体的な一実施態様に従って予め発泡させておく。
【0110】
したがって、少なくとも1種のポリマーを含む発泡プラスチック製品を使用し、このような発泡プラスチック製品を解重合工程に供して、このようなポリマーのモノマー及び/又はオリゴマーを製造することは本発明の一つの目的である。好ましくは、前記発泡プラスチック製品は、既に発泡させてあり、そのポリマーを任意選択的に既に非晶質化させてあるプラスチック廃棄物及び/又は繊維廃棄物を含む。
【0111】
プラスチック製品を分解するための方法に関連して上記に表わされた具体的な実施態様の全ては、モノマー及び/又はオリゴマーを製造する方法並びにリサイクルする方法にも適用される。
【0112】
生分解性プラスチックの製造
少なくとも1種のターゲットポリマーを含み、前記ターゲットポリマーを分解可能な少なくとも1種の酵素を包含させたプラスチック製品であって、当該酵素が下記プロセスに従ってプラスチック製品に包含されている、プラスチック製品を提供することは本発明の別の一つの目的である。
a.前記プラスチック製品を、好ましくは、化学発泡剤から選択される発泡剤で少なくとも部分的に発泡させることであって、発泡工程を前記ターゲットポリマーのTc超、好ましくは、Tm超の温度で行うこと、
b.前記少なくとも部分的に発泡させたプラスチック製品を、前記ターゲットポリマーのTc及び/又はTg未満の温度で、解重合剤(すなわち、ターゲットポリマーを分解可能な酵素)を含む液体に当該プラスチック製品を供することにより、発泡工程後30秒未満で冷却すること。
【0113】
本発明の更なる態様及び利点は、下記例に開示されるであろう。下記例は、例示であるとみなされるべきであり、本出願の範囲を限定するものではない。これらの例により、本発明を裏付ける実験データ及び本発明を実施する手段が提供される。
【実施例】
【0114】
例
例1-化学発泡剤を用いて行われる発泡工程を含む、PETを含むプラスチック製品を分解する方法
A)化学発泡剤(CFA)を用いた発泡工程、及び後続の冷却工程
a.CFAとしてのClariant製のHYDROCEROL PEX 5048
34.5%の結晶化度の平均値を有し、98%のPETを含むボトル廃棄物からの、洗浄され、着色したフレークを、各ゾーンにおいて温度を独立して制御し、調整することができる9つの連続加熱ゾーン(Z1~Z9)及びヘッド(Z10)を含む二軸押出機Leistritz ZSE 18 MAXXを使用して発泡させた。
【0115】
フレークを主ホッパ(Z1前)に導入した。Clariant製の化学発泡剤HYDROCEROL PEX 5048を、重量計量供給器を使用してZ4に導入した。3kg/hの総流量が得られ、前記組成物の総重量に基づいて4%のCFAを含有する押出組成物(S1)を得た。スクリュー速度は200rpmに設定した。
【0116】
b.CFAとしてのクエン酸
34.5%の結晶化度の平均値を有し、98%のPETを含む、粉砕され、洗浄され、着色したフレークを、前記組成物の総重量に基づいて1重量%の粉末形態のクエン酸(Adeka製のOrgater exp 141/183)と乾式ブレンドし、押出発泡組成物(S1 BIS)を得た。スクリュー速度は110rpmに、総流量は4kg/hに設定した。
【0117】
サンプルS1及びS1 BISの調製のためのスクリューに沿った温度プロファイルを表1に記載する。
【0118】
【0119】
溶融ポリマーは、3.5mmの1つの孔を有するダイプレートを備えるスクリューヘッド(Z10)に到達し、直ちに長さ2mの冷水浴(10℃)に浸漬させた。得られた押出物を、2~3mmの固体ペレット(サンプルS1及びS1 BIS)に顆粒化した。結晶化度レベルはそれぞれ0%及び1%であった。
【0120】
各サンプルの多孔率ε
Tは、下記の等式を使用して算出した。
【数10】
[式中、
【数11】
は、水比重瓶法を使用して測定された見掛け密度であり、
【数12】
は、非発泡ポリマーについて測定された真密度である]
【0121】
S1の多孔率εTは、33.6%であり、S1 BISについては、54.6%である。
【0122】
水比重瓶法は、1~2gの材料に相当する長さ1~2cmの4~5個の押出物を使用して、説明に定義されているとおりにして求める。
【0123】
対照サンプル「対照-1」は、発泡剤を使用せずに、S1と同じ条件で押し出し、顆粒化した。対照-1は、0の多孔率εTを有する。対照-1は、15%の結晶化度レベルを有する。
【0124】
15%の結晶化度レベルを有する第2の対照サンプル「対照-2」(微粉末形態)は、対照-1のペレットを液体窒素に浸漬させ、500μmの格子を備えたRETSCH ZM 200 Ultra-Centrifugal Millを使用して前記ペレットを微粉化することにより調製した。ふるい分けにより得られた500μm未満のサイズを有する粉末のみを解重合工程に使用した。
【0125】
B)発泡プラスチック製品の解重合工程
解重合プロセスを、LC-クチナーゼの変異体(Sulaiman et al., Appl Environ Microbiol.2012 Mar)を使用して、500mlのミニバイオリアクター(Global Process Concept, France)中で行った。下記変異F208I+D203C+S248C+V170I+Y92Gを有するSEQ ID No.1の酵素に対応するこのような変異体(LCC-ICCIG)をTrichoderma reeseiにおいて組換えタンパク質として発現させた。
【0126】
224mlの100mMリン酸カリウムバッファー(pH8)中で調製された100mgのLC-クチナーゼの変異体を、56gのPETサンプルと合わせた。温度を60℃に調整し、船舶用タービンを使用して、250rpmでの一定の撹拌に制限した。pHを6N NaOHで8に調整し、C-BIO(商標)ソフトウェア(Global Process Concept,France)を用いたGXコントローラにより制御し、プロセス時間中、NaOHの消費を記録した。
【0127】
PETの解重合率を定期的なサンプリングにより測定した。サンプルを、ここに記載された方法に従って、超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)により分析し、産生されたテレフタル酸等価物の量を測定した。
【0128】
AT等価物濃度をクロマトグラフィー(UHPLC)により求めた。必要に応じて、サンプルを100mMのリン酸カリウムバッファー(pH8)で希釈した。1mLのサンプル又は希釈サンプルを、1mLのメタノール及び100μLの6N HClと混合した。均質化し、0.45μmシリンジフィルタを通してろ過した後、20μLのサンプルを、ポンプモジュール、自動サンプラ、25℃に温度調節されたカラム、及び240nmでのUV検出器を含むUHPLC、Ultimate 3000 UHPLCシステム(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)に注入した。テレフタル酸(AT)及び産生された分子(MHET及びBHET)を、プレカラム(Supelco,Bellefonte,PA)を備えたHPLC Discovery HS C18カラム(150mm×4.6mm、5μm)を通して、1mM H2SO4中メタノールの勾配(30%~90%)を使用して、1m/分で分離した。AT、MHET及びBHETを、市販のAT及びBHET並びに社内で合成されたMHETから作成された検量線に従って測定した。AT等価物は、測定されたテレフタル酸と、測定されたMHET及びBHET中のテレフタル酸等価物との合計である。サンプルS2及び対照2の加水分解率は、所与の時点におけるテレフタル酸等価物(TA+MHET+BHET)の総量対初期サンプルにおいて求めたテレフタル酸の総量に基づいて計算した。解重合率の結果を以下の表2に示す。
【0129】
【0130】
結果から、まず、発泡工程が、非発泡プラスチック製品と比較して、PETの解重合率の30倍の向上を可能にすることがわかる。さらに、結果から、発泡プラスチック製品が、非発泡で、押出され、微粉化されたプラスチック組成物(対照-2)より速く解重合するため、本発明の方法によれば、微粉化工程を抑制することが可能となることもわかる。
【0131】
例2-物理発泡剤を用いて行われる発泡工程を含む、PETを含むプラスチック製品を分解する方法
A)二酸化炭素(CO2)を用いた発泡工程及び後続の冷却工程
98%のPETを含むボトル廃棄物からの、洗浄され、着色したフレークを、一軸押出機を使用して超臨界CO2で発泡させた。このような押出機(直径30mm-SCAMEX,FRANCE)は、6つの加熱ゾーン(T)を備え、その温度を各ゾーンにおいて、独立して制御し、調節することができる。
T1及びT2:CO2注入前のゾーン、
T3及びT4:CO2注入後のゾーン、
T5:スタティックミキサーを備える混合ゾーン、及び
T6:3mmの最大開口を有する出口圧により調節することができる開口部を有するダイプレートを備えるダイ
【0132】
T1~T3における温度をそれぞれ、180℃、280℃及び260℃に固定し、T4~T6における温度を以下の表3に列記する。スクリュー速度を40rpmに固定した。
【0133】
混合ゾーン(T5)の最終部分の圧力を圧力センサにより測定し、表3に示す(P4)。CO2を加圧し、シリンジポンプ(Isco 260D,USA)を使用して、T2とT3との間で、一定流量で注入する。CO2の圧力、温度及び体積投入量(QCO2)をポンプ中で測定し、表3に示す。
【0134】
得られた押出物を約15℃の新鮮な水中に直ちに浸漬させ、ついで、ナイフミルで2~3mmのピースに切断する。ついで、得られたサンプルを、周囲条件で48時間の間乾燥後、分析した。
【0135】
サンプル調製に使用された他の実験条件並びに多孔率及び結晶化度の結果を、以下の表3に示す。Qpは、得られたサンプルを秤量することにより求められたポリマー流量である。QCO2は、注入されたCO2の体積流量である。総流量(wCO2)に対するCO2の質量流量を、Span and Wagnerの状態方程式((R.Span et W.Wagner,A new equation of state for carbon dioxide covering the fluid region from the triple-point temperature to 1100 k at pressures up to 800 mpa.Journal of Physical and Chemical Reference Data,vol.25(6),pp.1509-1596,1996)により得られた密度を使用して計算する。Tmatは、押出機の出口で測定された材料温度である。
【0136】
【0137】
B)窒素(N
2
)を用いた発泡工程及び後続の冷却工程
押出-発泡工程を、メルトクーラ、スタティックミキサー及び公称直径2mmの垂直ダイを備える一軸押出機(直径45mm、FAIREX)を使用して実施した。PROMIXインジェクションガスシステムを使用して、超臨界N2を導入した。長さ2mの冷水浴(9℃)を使用して、押出物を冷却し、その後、ロータリーカッタで顆粒化して、長さ1.5mmのペレットを得た。ダイの出口と水面との間の距離は約5.5cmであった。
【0138】
95%のPET(結晶化度43%)を含むボトル廃棄物からの、洗浄され、着色したフレークを80℃で乾燥させた。設定温度及び記録された材料パラメータを表4及び表5それぞれに示す。
【0139】
スクリュー速度を25rpmに設定した。総材料流量を6kg/hとし、注入窒素流量を15g/hとした。その後、得られたペレットS6を周囲温度で48時間乾燥させ、その後、分析した。
【0140】
【0141】
【0142】
得られたサンプルS6の
【数13】
は、461.7kg/m
3と評価された。これは、66%の多孔率を与える。その結晶化度レベルは14%と評価された。
【0143】
C)解重合工程
例1と同じ分泌された組換えLCC-ICCIG酵素を、サンプルS2~S6及び対照-1(例1と同様に製造)の後続の解重合に使用した。S2~S6及び対照-1からの各サンプルについて、それぞれ100mgを秤量し、49mLの0.1M リン酸カリウムバッファー(pH8)を含有する250mlのガラス瓶に導入した。1mLの酵素溶液を0.1mg/mLで0.1M リン酸カリウム(pH8)中に添加した後、Multitron pro(Infors HT,Switzerland)中において、60℃及び150rpmで各サンプルをインキュベーションすることにより、解重合を開始した。
【0144】
PETの解重合率を定期的なサンプリングにより求め、例1に記載された方法に従って産生されたテレフタル酸等価物の量を測定するため、サンプルを超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)により分析した。サンプルS2~S6及び対照-1の加水分解率を、所与の時点におけるテレフタル酸等価物(TA+MHET+BHET)の総量対初期サンプルにおいて求めたテレフタル酸の総量に基づいて計算した。解重合率の結果を以下の表6に示す。
【0145】
【0146】
物理発泡剤(二酸化炭素又は窒素)を使用して予め発泡させた、PETを含むプラスチック製品の分解プロセスは、発泡に供されなかったプラスチック製品より3~8倍改善される。
【0147】
例3-物理発泡剤を用いて行われる発泡工程、及び酵素溶液を含有する浴中で冷却する工程を含む、PETを含むプラスチック製品を分解する方法
A)超臨界CO
2
による発泡工程、及び後続の冷却工程
98%のPETを含むボトル廃棄物からの、洗浄され、着色したフレークを、例2-Aに従って超臨界CO2を用いて発泡させた。
【0148】
2つのサンプルS7及びS8を、表7に詳述された指示に従って調製した。押出物を、水(S7)、又は約4.3g/lの例1と同じ分泌したされた組換えLCC-ICCIG酵素を含有する酵素浴含有水(S8)のいずれかに浸漬させた。得られた押出物を水ですすぎ、周囲条件下で乾燥させ、その後、ナイフミルで2~3mmのピースに切断した。
【0149】
サンプル調製に使用された実験条件、並びに多孔率、及び結晶化度の結果を、以下の表7に示す。
【0150】
【0151】
B)解重合工程
バッファー中に酵素を加えずにS8を試験したこと以外は、例2-Bに詳述されたようにガラス瓶中においてS7及びS8について解重合を行った。解重合の結果を表8に示す。
【0152】
【0153】
冷却工程中にデポリメラーゼに供された、PETを含むプラスチック製品の分解プロセスは、解重合工程中にのみデポリメラーゼと接触させたものと比較して、分解においてわずかな向上を示す。
【0154】
例4-化学発泡剤を用いた発泡工程、及び酵素溶液を含有する浴中で冷却する工程を含む、PLAを含むプラスチック製品を分解する方法
A)化学発泡剤を用いた発泡工程
ポリ乳酸(PLA)4043D(NatureWorksから提供されるペレット形態-結晶化度35%)を、二軸押出機Leistritz ZSE 18 MAXXを使用して発泡させた。この押出機は、連続する9つの加熱ゾーン(Z1~Z9)及びヘッド(Z10)を備え、各ゾーンにおいて独立して温度を制御し、調整することができる。Clariantにより提供される化学発泡剤(CFA)HYDROCEROL BIH 40マスターバッチを使用した。
【0155】
PLA及びCFAを、それぞれ60℃及び45℃で14時間、デシケータ中において乾燥させた。95重量%のPLAペレット及び5%のCFAマスターバッチを乾式ブレンドし、重量計量供給器のホッパーに加えて、押出機に導入した。2kg/hの総流量を得た。スクリューに沿った全ての温度プロファイルを表9に記載する。スクリュー速度は100rpmに設定した。
【0156】
【0157】
溶融ポリマーは、3.5mmの1つの孔を有するダイプレートを備えるスクリューヘッド(Z10)に到達した。得られた押出物を直ちに、1LのNovozymes製の市販の酵素溶液Savinase(登録商標)16L(PLAを分解可能であることが公知)(温度15℃)を入れた容器に浸漬させ、その後、手作業で引っ張り、巻き取った。24時間後、サンプルを水で洗浄し、周囲条件(20℃及び湿度40%)で48時間乾燥した。その後、サンプルを回転カッターで、2~3mmの固体ペレット(S9)(結晶化度2%)に顆粒化した。対照として、得られた押出物を、酵素が除去された水に浸漬させたこと以外は同様にして、別のサンプル(S10)も発泡させた。S9及びS10は両方とも、2%の結晶化度、並びにそれぞれ30%及び40%の多孔率を示す。
【0158】
B)解重合工程
100mgの各アロイを秤量し、セルロース透析チューブに導入した。この後者を、50mLの100mM Trisバッファー(pH9.5)を含有するガラス瓶に導入し、45℃、及び150rpmでインキュベーションした。
【0159】
アロイの分解割合をUHPLCにより、以下のプロトコールに従って実施した。サンプル1mLを定期的に採取した。0.22μmフィルター上でろ過した後、ポンプモジュール、自動サンプラ、50℃に温度調節されたカラムオーブン、及び210nmでのUV検出器を含むUHPLC(Ultimate 3000 UHPLCシステム(Thermo Fisher Scientific,Inc.,Waltham,MA,USA))に、サンプルを供給して、乳酸及び乳酸の二量体の遊離をモニターした。乳酸及び乳酸の二量体は、カラムAminex HPX-87H、及び移動相5mM H2SO4を使用し、0.5mL・分-1の流量で分離した。注入は20μLのサンプルとした。乳酸(LA)及び乳酸の二量体(DP2)は、市販の乳酸(Sigma-Aldrich L1750-10G)及び乳酸の自社合成二量体から、サンプルと同じ条件で作成された検量線に従って測定した。
【0160】
分解率は、PLA中に最初に含有されていた理論的LAに対する所与の時点でのLA及びDP2中に含有されたLAの以下のモル比に従って計算した。
【0161】
24時間後、S9は、76%の分解率を示すが、S10は分解をはっきりとは示さない。結果から、冷却段階中に、PLAを含む発泡プラスチック材料のセル構造中に固定された酵素があったことがわかる。
【0162】
例5-化学発泡剤を用いた発泡工程を含むPETを含む織物製品を分解する方法
A)PETを含む織物製品の発泡工程
PETから構成される繊維廃棄物(古着類)を選別し、細断し、金属及び硬質混入物(例えば、ジップ又はボタン)を除去するために洗浄し、圧縮して、85重量%のPETを含む2~4mmサイズの織物顆粒を得た。
【0163】
例1と同じ押出機、冷却及び顆粒化装置を使用して、前記PET織物顆粒から発泡ペレットを調製した。
【0164】
圧縮された織物顆粒を主ホッパ(Z1の前)に導入した。クエン酸(Adeka製Orgater exp 141/183)をCFAとして使用し、重量計量供給器を使用して、Z4に導入した。スクリュー速度は110rpmに設定した。4kg/hの総流量が得られ、前記組成物の総重量に基づいて1重量%のクエン酸を含有する押出組成物(S11)を得た。
【0165】
古着類組成物「対照-3」からの対照サンプルを、発泡剤を使用せずに押し出し、冷却し、顆粒化し、その後、液体窒素に浸漬させた後に微粉化して、13%の結晶化レベルを有する粉末を得た。押出のための設定温度プロファイルを表10に示す。スクリュー速度を200rpmに、総流量を4kg/hに設定した。
【0166】
100%のPETを含有する織布を細断し、圧縮し、混合物の総重量に基づいて1重量%のクエン酸及び0.5重量%の水と乾式ブレンドしその後、押出発泡した。S11及び対照-3サンプルと同じ押出機を使用した。乾式ブレンドを、重量測定投与器を介して主ホッパ(Z1の前)に導入した。2.5kg/hの総流量が得られ、前記組成物の総重量に基づいて1重量%のクエン酸を含有する押出組成物(S12)が得られた。スクリュー速度は150rpmに設定した。
【0167】
サンプルS11、S12及び対照-3のスクリューに沿った温度プロファイルを以下の表10に示す。
【0168】
【0169】
S11及びS12はそれぞれ、13%及び0%の結晶化レベル、並びに25%及び36%の多孔率を有する(真密度は、押出されたが発泡していない織物組成物で測定した)。
【0170】
B)発泡織物製品の解重合工程
解重合工程を例1)-Bと同じ条件下で行った。
【0171】
得られた解重合割合を以下の表11にまとめる。
【0172】
【0173】
結果から、発泡織物製品が、発泡していない、押出され、微粉化された織物組成物(対照-3)と同程度に解重合されるため、本発明の方法によれば、微粉化工程を抑制することが可能となることがわかる。
【0174】
例6-化学発泡剤を用いて行われる発泡工程と、化学的解重合剤を用いて行われる解重合工程とを含む、PETを含むプラスチック製品を分解する方法
A)発泡プラスチック製品の調製
本例においては下記材料を使用した。
・サンプルS1 BIS: 例1-A)b)に記載されたように、クエン酸により発泡させた、粉砕、洗浄及び着色フレークに相当するもの
・サンプル対照-1: 押出及び顆粒化されているが、発泡していないフレークに相当するもの(例1を参照のこと)
・対照-2: 対照-1(例1を参照のこと)のフレークの微粉化により得られたもの
・対照-4: ペレットを再結晶させるために、120℃のオーブン中で48時間アニーリング処理に供された対照-1に相当するもの。対照-4は、約32.2%の結晶化レベルを示す。
・対照-5: 対照-4のペレットの(例1に記載された方法を使用する)微粉化により得られたもの
【0175】
B)発泡プラスチック製品の化学的解重合
化学的解重合は、スクリューキャップ付き15mLガラスチューブ(Supelco,27162)中で行った。約40~50mgのPETのサンプルをガラスチューブに入れ、合計で800μLのDCM及び400μLのメタノール/KOH(3M)を加えた。この混合物を、室温(RT、約25℃)で磁気撹拌により5分間撹拌した。溶媒を、N2流下で10分間蒸発させた。PETモノマーを、14mLのMilli-Q(登録商標)水に溶解させた。この溶液を室温で5分間撹拌した。産生されたモノエチレングリコール(MEG)の量を、本明細書に記載された方法に従って超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)により求めた。
【0176】
1.5mLのサンプルを0.5mLのH2SO4と混合することにより、MEG濃度を求めた。均質化し、0.45μmのシリンジフィルタを通してろ過した後、20μLのサンプルを、ポンプモジュール、自動サンプラ、55℃に温度調節されたカラム、及びRI検出器を含むUHPLC、Ultimate 3000 UHPLCシステム(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)に注入した。MEG分子を、プレカラム(Supelco,Bellefonte,PA)を備えたHPLC Aminex HPX-87Hイオン排除カラム(300mm×7.8mm、9μm)により分離した。MEGを、0.8mL分-1の流量を使用して、5mM H2SO4で溶出した。MEGを、市販のMEGから作成された検量線に従って測定した。反応速度は、最初のサンプルで求めたMEGの総量に対する所与の時点でのMEGの総量に基づいて計算した。反応速度の結果、及び各サンプルについての結晶化レベルを以下の表12に示す。
【0177】
【0178】
結果から、発泡プラスチック製品が、非発泡プラスチック製品より速く解重合され、微粉化あり、又は微粉化なしの、アニーリング(再結晶化)されたペレットより速く解重合されることがわかる。また、結果から、発泡製品が、発泡していない、押出され、微粉化された製品と同程度に解重合されるため、本発明の方法によれば、微粉化工程を抑制することが可能となることもわかる。
【配列表】
【国際調査報告】