(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-27
(54)【発明の名称】抗C5抗体を使用して妊娠関連非典型溶血性尿毒症症候群を治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230217BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20230217BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20230217BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20230217BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20230217BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20230217BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230217BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20230217BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
A61K39/395 D
A61P13/02
A61P15/00
A61P9/12
A61P7/04
A61P7/06
A61P13/12
A61K39/395 N
C07K16/18 ZNA
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538756
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-15
(86)【国際出願番号】 US2020065924
(87)【国際公開番号】W WO2021133660
(87)【国際公開日】2021-07-01
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503102674
【氏名又は名称】アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】デンカー, アンドリュー
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085BB31
4C085CC22
4C085DD61
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA42
4H045DA76
4H045EA22
4H045FA74
(57)【要約】
抗C5抗体、又はその抗原結合断片、例えば、ラブリズマブ(ULTOMIRIS(登録商標))を使用する、妊娠関連非典型溶血性尿毒症症候群(p-aHUS)、例として、産後aHUSの臨床的治療方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
妊娠関連非典型溶血性尿毒症症候群(p-aHUS)を有するヒト患者を治療する方法であって、前記患者に有効量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片を投与することを含み、
前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号19、18及び3に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列と、それぞれ配列番号4、5及び6に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列とを含む方法。
【請求項2】
前記抗体は、ヒト胎児性Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc領域を含み、前記バリアントヒトFc CH3領域は、それぞれEU番号付けで、ネイティブヒトIgG Fc領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基においてMet-429-Leu及びAsn-435-Ser置換を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号12に記載される重鎖可変領域と配列番号8に記載される軽鎖可変領域とを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号13に示される重鎖定常領域をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号14に記載される重鎖と、配列番号11に記載される軽鎖とを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、pH7.4及び25℃で、0.1nM≦KD≦1nMの範囲内の親和性解離定数(KD)でヒトC5に結合する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、pH6.0及び25℃で、KD≧10nMでヒトC5に結合する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、静脈内投与のために配合される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片を、前記患者に
(a)1日目に1回、≧40~<60kgの体重の患者に対して2400mg、≧60~<100kgの体重の患者に対して2700mg、又は≧100kgの体重の患者に対して3000mgの用量で;
(b)15日目及びその後8週間毎に、≧40~<60kgの体重の患者に対して3000mg、≧60~<100kgの体重の患者に対して3300mg、又は≧100kgの体重の患者に対して3600mgの用量で
投与する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
p-aHUSを有するヒト患者を治療する方法であって、前記患者に有効量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片を投与することを含み、
前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号19、18及び3に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列と、それぞれ配列番号4、5及び6に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列と、ヒト胎児性Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc領域とを含み、前記バリアントヒトFc CH3領域は、それぞれEU番号付けで、ネイティブヒトIgG Fc領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基においてMet-429-Leu及びAsn-435-Ser置換を含み、
前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片を、前記患者に
(a)1日目に1回、≧40~<60kgの体重の患者に対して2400mg、≧60~<100kgの体重の患者に対して2700mg、又は≧100kgの体重の患者に対して3000mgの用量で;
(b)15日目及びその後8週間毎に、≧40~<60kgの体重の患者に対して3000mg、≧60~<100kgの体重の患者に対して3300mg、又は≧100kgの体重の患者に対して3600mgの用量で
投与する方法。
【請求項11】
前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片を、≧40~<60kgの体重の患者に
(a)1日目に1回、2400mgの用量で;
(b)15日目及びその後8週間毎に、3000mgの用量で
投与する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片を、≧60~<100kgの体重の患者に
(a)1日目に1回、2700mgの用量で;
(b)15日目及びその後8週間毎に、3300mgの用量で
投与する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片を、≧100kgの体重の患者に
(a)1日目に1回、3000mgの用量で;
(b)15日目及びその後8週間毎に、3600mgの用量で
投与する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記治療は、前記治療の間、100μg/ml以上の前記抗C5抗体の血清トラフ濃度を維持する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記治療は、前記治療の間、200μg/ml以上の前記抗C5抗体の血清トラフ濃度を維持する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記治療は、遊離C5濃度を前記治療期間全体にわたり99%超だけ低減させる、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片を、前記治療後8週間毎に最長2年間、3000mg、3300mg、又は3600mgの用量で投与する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記治療は、終末補体阻害をもたらす、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記治療は、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベルにより評価して、ベースラインと比較して溶血の低減をもたらす、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記治療は、LDHレベルの正常化をもたらす、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記治療は、遊離ヘモグロビン、ハプトグロビン、網状赤血球数、PNH赤血球(RBC)クローン及びD-ダイマーからなる群から選択される溶血関連血液学的バイオマーカーの正常レベルに向かうシフトを生じさせる、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記治療は、ベースラインと比較して、重症高血圧症、タンパク尿症、尿毒症、嗜眠、疲労、易怒性、血小板減少症、微小血管症性溶血性貧血、及び腎機能障害の低減又は休止からなる群から選択される少なくとも1つの治療効果を生じさせる、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記治療は、Ba因子、可溶性腫瘍壊死因子受容体1[sTNFR1])、可溶性血管接着分子1[sVCAM1]、トロンボモジュリン、D-ダイマー、及びシスタチンCの正常レベルに向かうシフトを生じさせる、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記治療は、ベースラインと比較してヘモグロビン安定化の増加を生じさせる、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記治療は、ベースラインと比較して輸血の必要性の低減を生じさせる、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記治療は、主要血管有害事象(MAVE)の低減を生じさせる、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記治療は、慢性疾患治療の機能的評価(FACIT)-疲労スケール、バージョン4及び欧州癌研究治療機関の生活の質アンケート-コア30スケールを介して評価される、ベースラインからの生活の質の変化を生じさせる、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記治療は、血小板正常化をもたらす、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記治療は、ベースラインからの血清クレアチニンの≧25%の改善をもたらす、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
完全TMA奏効をもたらす、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記治療は、修正された完全TMA奏効をもたらす、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記治療は、eGFRの正常レベル(例えば、≧90)に向かうシフトをもたらす、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記治療は、透析の低減又は中止をもたらす、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記治療は、末期腎疾患(ESRD)を予防し、又はそれまでの時間を延長させる、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記治療は、前記患者の生存期間を延長させる、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記p-aHUSは、産後aHUSである、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
ヒト患者における妊娠関連非典型溶血性尿毒症症候群(p-aHUS)を治療するためのキットであって、
(a)ある用量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片であって、それぞれ配列番号19、18及び3に記載のCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列と、それぞれ配列番号4、5及び6に記載のCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列とを含む抗C5抗体、又はその抗原結合断片;並びに
(b)請求項1~32のいずれか一項に記載の方法において前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片を使用するための指示書
を含むキット。
【請求項38】
ヒト患者における妊娠関連非典型溶血性尿毒症症候群(p-aHUS)を治療するためのキットであって、
(a)ある用量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片であって、それぞれ配列番号19、18及び3に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列と、それぞれ配列番号4、5及び6に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列と、ヒト胎児性Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc領域とを含み、前記バリアントヒトFc CH3領域は、それぞれEU番号付けで、ネイティブヒトIgG Fc領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基においてMet-429-Leu及びAsn-435-Ser置換を含む抗C5抗体、又はその抗原結合断片;並びに
(b)請求項1~32のいずれか一項に記載の方法において前記抗C5抗体、又はその抗原結合断片を使用するための指示書
を含むキット。
【請求項39】
前記p-aHUSは、産後aHUSである、請求項35又は36に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、それぞれが参照により全体として本明細書に組み込まれる2019年12月23日に出願された米国仮特許出願第62/952,971号明細書、2020年4月9日に出願された米国仮特許出願第63/007,489号明細書、及び2020年6月1日に出願された米国仮特許出願第62/704,879号明細書の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
溶血性尿毒症症候群(HUS)は、血小板減少症、微小血管症性溶血性貧血、及び急性腎不全により特徴付けられる。HUSは、2つの型:下痢関連(D+HUS;志賀毒素産生性大腸菌(E.coli)(STEC)-HUS又は典型HUSとも称される)及び非下痢又は非典型HUS(aHUS)の1つとして分類される。D+HUSは症例の90%超を占める最も一般的な形態であり、志賀様毒素産生性細菌、例えば、大腸菌(E.coli)O157:H7による先行する疾病により引き起こされる。
【0003】
aHUSは、遺伝性、後天性、又は特発性であり得る。aHUSの遺伝性形態は、多数のヒト補体成分、例として、例えば、補体H因子(CFH)、膜補因子タンパク質(MCP)、補体I因子(CFI)、C4b結合タンパク質(C4BP)、補体B因子(CFB)、及び補体成分3(C3)における突然変異と関連し得る(例えば、Caprioli et al.(2006)Blood 108:1267-1279参照)。CD55をコードする遺伝子中のある突然変異は、aHUSとは未だ関連付けられていないものの、aHUSの重症度と関連する(例えば、Esparza-Gordillo et al.(2005)Hum Mol Genet 14:703-712参照)。
【0004】
妊娠により誘発されるaHUS(「p-aHUS」)は、25,000人の妊婦におよそ1人に生じる代替補体経路の機能不全と関連する希少で重篤な全身疾患である。補体の過剰活性化は、びまん性内皮損傷とそれに続く血管中のフィブリン及び血小板微小血栓の形成をもたらし、それらは溶血、血小板減少症、及び虚血からの末端器官機能不全(主に急性腎障害の形態)をもたらす(例えば、Saad,et al.,AJP Reports vol.6,1(2016)参照)。p-aHUSの症例の大多数は産後期間の間に生じ、産後aHUSとして公知である(例えば、Fakhouri F,et al.,J.Am.Soc.Nephrol.2010;21(5):859-867参照)。
【0005】
p-aHUS(例として、産後aHUS)を有する患者は、かなりの罹病及び死亡のリスクがある。したがって、本発明の目的は、改善された、p-aHUSを有する患者を治療する方法を提供することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Caprioli et al.(2006)Blood 108:1267-1279
【非特許文献2】Esparza-Gordillo et al.(2005)Hum Mol Genet 14:703-712
【非特許文献3】Saad,et al.,AJP Reports vol.6,1(2016)
【非特許文献4】Fakhouri F,et al.,J.Am.Soc.Nephrol.2010;21(5):859-867
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
ヒト患者における妊娠関連非典型溶血性尿毒症症候群(p-aHUS)(例えば、産後aHUS)を治療するための組成物及び方法であって、患者に抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)を投与することを含む組成物及び方法が本明細書に提供される。一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、特定の臨床投与量レジメンに従って(すなわち、特定の用量で且つ規定の投薬スケジュールに従って)投与する(又は投与用である)。一部の実施形態において、患者は、重篤又は早期発症p-aHUSを有する。一部の実施形態において、患者は、妊娠高血圧腎症(PE)及び/又はHELLP症候群も有する。
【0008】
任意の好適な抗C5抗体、又はその抗原結合断片を本明細書に記載の方法において使用することができる。例示的な抗C5抗体は、エクリズマブである。エクリズマブ(SOLIRIS(登録商標)としても公知)は、それぞれ配列番号1、2、及び3に記載される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインと、それぞれ配列番号4、5、及び6に記載される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインとを含む抗C5抗体である。エクリズマブは、配列番号7に記載されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号8に記載されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む。エクリズマブは、配列番号10に記載されるアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号11に記載されるアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む。
【0009】
別の例示的な抗C5抗体は、それぞれ配列番号14及び11に示される配列を有する重鎖及び軽鎖を含むラブリズマブ(ULTOMIRIS(登録商標)、ALXN1210及び抗体BNJ441としても公知)、又はその抗原結合断片及びバリアントである。他の実施形態において、抗体は、ラブリズマブの重鎖及び軽鎖相補性決定領域(CDR)又は可変領域(VR)を含む。したがって、一実施形態において、抗体は、配列番号12に示される配列を有するラブリズマブの重鎖可変(VH)領域のCDR1、CDR2、及びCDR3ドメインと、配列番号8に示される配列を有するラブリズマブの軽鎖可変(VL)領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインとを含む。別の実施形態において、抗体は、それぞれ配列番号19、18、及び3に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列と、それぞれ配列番号4、5、及び6に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列とを含む。別の実施形態において、抗体は、それぞれ配列番号12及び配列番号8に記載されるアミノ酸配列を有するVH及びVL領域を含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号13に記載される重鎖定常領域を含む。
【0010】
別の実施形態において、抗体は、ヒト胎児性Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域を含み、バリアントヒトFc CH3定常領域は、それぞれEU番号付けで、ネイティブヒトIgG Fc定常領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基においてMet-429-Leu及びAsn-435-Ser置換を含む。
【0011】
別の実施形態において、抗体は、それぞれ配列番号19、18、及び3に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列と、それぞれ配列番号4、5、及び6に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列と、ヒト胎児性Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域とを含み、バリアントヒトFc CH3定常領域は、それぞれEU番号付けで、ネイティブヒトIgG Fc定常領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基においてMet-429-Leu及びAsn-435-Ser置換を含む。
【0012】
別の実施形態において、抗体は、pH7.4及び25℃で、0.1nM≦KD≦1nMの範囲内の親和性解離定数(KD)でヒトC5に結合する。別の実施形態において、抗体は、pH6.0及び25℃で、KD≧10nMでヒトC5に結合する。さらに別の実施形態において、抗体の[(pH6.0及び25℃におけるヒトC5に対する抗体又はその抗原結合断片のKD)/(pH7.4及び25℃におけるヒトC5に対する抗体又はその抗原結合断片のKD)]は、25超である。
【0013】
別の例示的な抗C5抗体は、米国特許第8,241,628号明細書及び同第8,883,158号明細書に記載される。一実施形態において、抗体、又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号21、22、及び23に記載される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインと、それぞれ配列番号24、25、及び26に記載される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインとを含む。別の実施形態において、抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号27に記載される配列を有するVH領域と、配列番号28に記載される配列を有するVL領域とを含む。
【0014】
別の例示的な抗C5抗体も、米国特許第8,241,628号明細書及び同第8,883,158号明細書に記載される。一実施形態において、抗体、又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号29、30、及び31に記載される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインと、それぞれ配列番号32、33、及び34に記載される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインとを含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号35に記載される配列を有するVH領域と、配列番号36に記載される配列を有するVL領域とを含む。
【0015】
別の例示的な抗C5抗体は、米国特許出願公開第2016/0176954A1号明細書に記載される。一実施形態において、抗体、又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号37、38、及び39に記載される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインと、それぞれ配列番号40、41、及び42に記載される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインとを含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号43に記載される配列を有するVH領域と、配列番号44に記載される配列を有するVL領域とを含む。
【0016】
別の例示的な抗C5抗体は、Fukuzawa T.et al.(Sci.Rep.7:1080,2017)に記載される。別の実施形態において、抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号45を含む重鎖と、配列番号46を含む軽鎖とを含む。
【0017】
別の例示的な抗C5抗体は、米国特許出願公開第20170355757号明細書に記載される。一実施形態において、抗体は、配列番号47を含む重鎖可変領域と、配列番号48を含む軽鎖可変領域とを含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号49を含む重鎖と、配列番号50を含む軽鎖とを含む。
【0018】
別の実施形態において、抗体は、上述の抗体と、C5上の同じエピトープとの結合について競合し、及び/又はC5上の同じエピトープに結合する。別の実施形態において、抗体は、上述の抗体と少なくとも約90%の可変領域アミノ酸配列同一性(例えば、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の可変領域同一性)を有する。
【0019】
一実施形態において、p-aHUSを有するヒト患者を治療する方法であって、患者に有効量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片を投与することを含み、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号1、2、及び3に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列と、それぞれ配列番号4、5及び6に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列とを含む方法が提供される。別の実施形態において、p-aHUSを有するヒト患者を治療する方法であって、患者に有効量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片を投与することを含み、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号7に記載されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号8に記載されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む方法が提供される。別の実施形態において、p-aHUSを有するヒト患者を治療する方法であって、患者に有効量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片を投与することを含み、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号10に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号11に記載されるアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む方法が提供される。
【0020】
一実施形態において、p-aHUSを有するヒト患者を治療する方法であって、患者に有効量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片を投与することを含み、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号19、18及び3に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列と、それぞれ配列番号4、5及び6に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列とを含む方法が提供される。別の実施形態において、抗体は、ヒト胎児性Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域をさらに含み、バリアントヒトFc CH3定常領域は、それぞれEU番号付けで、ネイティブヒトIgG Fc定常領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基においてMet-429-Leu及びAsn-435-Ser置換を含む。
【0021】
一実施形態において、抗C5抗体、又は抗原結合断片は、固定用量で投与する。例えば、一実施形態において、抗C5抗体、又は抗原結合断片は、患者の体重に関係なく、10mg、20mg、25mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、500mg、525mg、550mg、575mg、600mg、625mg、650mg、675mg、700mg、725mg、750mg、775mg、800mg、825mg、850mg、875mg、900mg、925mg、950mg、975mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600mg、1700mg、1800mg、1900mg、2000mg、2100mg、2200mg、2300mg、2400mg、2500mg、2600mg、2700mg、2800mg、2900mg、3000mg、3100mg、3200mg、3300mg、3400mg、3500mg、3600mg、3700mg、3800mg、3900mg、4000mg、4100mg、4200mg、4300mg、4400mg、4500mg、4600mg、4700mg、4800mg、4900mg、5000mg、5100mg、5200mg、5300mg、5400mg、5500mg、5600mg、5700mg、5800mg、5900mg、6000mg、6100mg、6200mg、6300mg、6400mg、6500mg、6600mg、6700mg、6800mg、6900mg、7000mg、7100mg、7200mg、7300mg、7400mg、7500mg、7600mg、7700mg、7800mg、7900mg、8000mg、8100mg、8200mg、8300mg、8400mg、8500mg、8600mg、8700mg、8800mg、8900mg、9000mg、9100mg、9200mg、9300mg、9400mg、9500mg、9600mg、9700mg、9800mg、9900mg、10000mg、10100mg、10200mg、10300mg、10400mg、10500mg、10600mg、10700mg、10800mg、10900mg又は11000mgの用量で投与する。別の実施形態において、抗C5抗体、又は抗原結合断片は、準治療用量で投与する。
【0022】
別の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)は、2400mg、2700mg、3000mg、3300mg、又は3600mgの用量で投与する。
【0023】
別の実施形態において、抗C5抗体、又は抗原結合断片の用量は、患者の体重に基づく。例えば、一実施形態において、10mg、20mg、25mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、500mg、525mg、550mg、575mg、600mg、625mg、650mg、675mg、700mg、725mg、750mg、775mg、800mg、825mg、850mg、875mg、900mg、925mg、950mg、975mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600mg、1700mg、1800mg、1900mg、2000mg、2100mg、2200mg、2300mg、2400mg、2500mg、2600mg、2700mg、2800mg、2900mg、3000mg、3100mg、3200mg、3300mg、3400mg、3500mg、3600mg、3700mg、3800mg、3900mg、4000mg、4100mg、4200mg、4300mg、4400mg、4500mg、4600mg、4700mg、4800mg、4900mg、5000mg、5100mg、5200mg、5300mg、5400mg、5500mg、5600mg、5700mg、5800mg、5900mg、6000mg、6100mg、6200mg、6300mg、6400mg、6500mg、6600mg、6700mg、6800mg、6900mg、7000mg、7100mg、7200mg、7300mg、7400mg、7500mg、7600mg、7700mg、7800mg、7900mg、8000mg、8100mg、8200mg、8300mg、8400mg、8500mg、8600mg、8700mg、8800mg、8900mg、9000mg、9100mg、9200mg、9300mg、9400mg、9500mg、9600mg、9700mg、9800mg、9900mg、10000mg、10100mg、10200mg、10300mg、10400mg、10500mg、10600mg、10700mg、10800mg、10900mg、又は11000mgの抗C5抗体、又は抗原結合断片を、≧40~<60kgの体重の患者に投与する。別の実施形態において、2400mg又は3000mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)を、≧40~<60kgの体重の患者に投与する。別の実施形態において、2400mg又は3000mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)を、≧40~<60kgの体重の患者に2週間毎に投与する。別の実施形態において、2400mg又は3000mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)を、≧40~<60kgの体重の患者に8週間毎に投与する。
【0024】
別の実施形態において、10mg、20mg、25mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、500mg、525mg、550mg、575mg、600mg、625mg、650mg、675mg、700mg、725mg、750mg、775mg、800mg、825mg、850mg、875mg、900mg、925mg、950mg、975mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600mg、1700mg、1800mg、1900mg、2000mg、2100mg、2200mg、2300mg、2400mg、2500mg、2600mg、2700mg、2800mg、2900mg、3000mg、3100mg、3200mg、3300mg、3400mg、3500mg、3600mg、3700mg、3800mg、3900mg、4000mg、4100mg、4200mg、4300mg、4400mg、4500mg、4600mg、4700mg、4800mg、4900mg、5000mg、5100mg、5200mg、5300mg、5400mg、5500mg、5600mg、5700mg、5800mg、5900mg、6000mg、6100mg、6200mg、6300mg、6400mg、6500mg、6600mg、6700mg、6800mg、6900mg、7000mg、7100mg、7200mg、7300mg、7400mg、7500mg、7600mg、7700mg、7800mg、7900mg、8000mg、8100mg、8200mg、8300mg、8400mg、8500mg、8600mg、8700mg、8800mg、8900mg、9000mg、9100mg、9200mg、9300mg、9400mg、9500mg、9600mg、9700mg、9800mg、9900mg、10000mg、10100mg、10200mg、10300mg、10400mg、10500mg、10600mg、10700mg、10800mg、10900mg、又は11000mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片を、≧60~<100kgの体重の患者に投与する。別の実施形態において、2700mg又は3300mgのC5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)を、≧60~<100kgの体重の患者に投与する。別の実施形態において、2700mg又は3300mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)を、≧60~<100kgの体重の患者に2週間毎に投与する。別の実施形態において、2700mg又は3300mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)を、≧60~<100kgの体重の患者に8週間毎に投与する。
【0025】
別の実施形態において、10mg、20mg、25mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、500mg、525mg、550mg、575mg、600mg、625mg、650mg、675mg、700mg、725mg、750mg、775mg、800mg、825mg、850mg、875mg、900mg、925mg、950mg、975mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600mg、1700mg、1800mg、1900mg、2000mg、2100mg、2200mg、2300mg、2400mg、2500mg、2600mg、2700mg、2800mg、2900mg、3000mg、3100mg、3200mg、3300mg、3400mg、3500mg、3600mg、3700mg、3800mg、3900mg、4000mg、4100mg、4200mg、4300mg、4400mg、4500mg、4600mg、4700mg、4800mg、4900mg、5000mg、5100mg、5200mg、5300mg、5400mg、5500mg、5600mg、5700mg、5800mg、5900mg、6000mg、6100mg、6200mg、6300mg、6400mg、6500mg、6600mg、6700mg、6800mg、6900mg、7000mg、7100mg、7200mg、7300mg、7400mg、7500mg、7600mg、7700mg、7800mg、7900mg、8000mg、8100mg、8200mg、8300mg、8400mg、8500mg、8600mg、8700mg、8800mg、8900mg、9000mg、9100mg、9200mg、9300mg、9400mg、9500mg、9600mg、9700mg、9800mg、9900mg、10000mg、10100mg、10200mg、10300mg、10400mg、10500mg、10600mg、10700mg、10800mg、10900mg、又は11000mgの抗C5抗体、又は抗原結合断片を、≧100kgの体重の患者に投与する。別の実施形態において、3000mg又は3600mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)を、≧100kgの体重の患者に投与する。
【0026】
別の実施形態において、p-aHUSを有するヒト患者を治療する方法であって、患者に抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)を
(a)1日目に1回、≧40~<60kgの体重の患者に対して2400mg、≧60~<100kgの体重の患者に対して2700mg、又は≧100kgの体重の患者に対して3000mgの用量で;
(b)15日目及びその後8週間毎に、≧40~<60kgの体重の患者に対して3000mg、≧60~<100kgの体重の患者に対して3300mg、又は≧100kgの体重の患者に対して3600mgの用量で
投与することを含む方法が提供される。
【0027】
別の実施形態において、p-aHUSを有するヒト患者を治療する方法であって、抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)を、≧40~<60kgの体重の患者に
(a)1日目に1回、2400mgの用量で;
(b)15日目及びその後8週間毎に、3000mgの用量で
投与する方法が提供される。
【0028】
別の実施形態において、p-aHUSを有するヒト患者を治療する方法であって、抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)を、≧60~<100kgの体重の患者に
(a)1日目に1回、2700mgの用量で;
(b)投与サイクルの15日目及びその後8週間毎に、3300mgの用量で
投与する方法が提供される。
【0029】
別の実施形態において、p-aHUSを有するヒト患者を治療する方法であって、抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)を、≧100kgの体重の患者に
(a)1日目に1回、3000mgの用量で;
(b)15日目及びその後8週間毎に、3600mgの用量で
投与する方法が提供される。
【0030】
別の実施形態において、p-aHUSを有するヒト患者を治療する方法であって、患者に有効量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片を投与することを含み、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号19、18及び3に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列と、それぞれ配列番号4、5及び6に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列と、ヒト胎児性Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc領域とを含み、バリアントヒトFc CH3領域は、それぞれEU番号付けで、ネイティブヒトIgG Fc領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基においてMet-429-Leu及びAsn-435-Ser置換を含み、抗C5抗体、又はその抗原結合断片を患者に(a)1日目に1回、≧40~<60kgの体重の患者に対して2400mg、≧60~<100kgの体重の患者に対して2700mg、又は≧100kgの体重の患者に対して3000mgの用量で;(b)15日目及びその後8週間毎に、≧40~<60kgの体重の患者に対して3000mg、≧60~<100kgの体重の患者に対して3300mg、又は≧100kgの体重の患者に対して3600mgの用量で投与することを含む方法が提供される。
【0031】
別の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、1キログラム当たりのミリグラム(mg/kg)用量で投与する。例えば、一実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、0.1mg/kg、0.25mg/kg、0.5mg/kg、0.75mg/kg、1.0mg/kg、1.25mg/kg、1.50mg/kg、1.75mg/kg、2.0mg/kg、2.25mg/kg、2.50mg/kg、2.75mg/kg、3.0mg/kg、3.25mg/kg、3.50mg/kg、3.75mg/kg、4.0mg/kg、4.25mg/kg、4.50mg/kg、4.75mg/kg、5.0mg/kg、5.25mg/kg、5.50mg/kg、5.75mg/kg、6.0mg/kg、6.25mg/kg、6.50mg/kg、6.75mg/kg、7.0mg/kg、7.25mg/kg、7.50mg/kg、7.75mg/kg、8.0mg/kg、8.25mg/kg、8.50mg/kg、8.75mg/kg、9.0mg/kg、9.25mg/kg、9.50mg/kg、9.75mg/kg、10.0mg/kg、11.25mg/kg、11.50mg/kg、11.75mg/kg、12.0mg/kg、12.25mg/kg、12.50mg/kg、12.75mg/kg、13.0mg/kg、13.25mg/kg、13.50mg/kg、13.75mg/kg、14.0mg/kg、14.25mg/kg、14.50mg/kg、14.75mg/kg、15.0mg/kg、15.25mg/kg、15.50mg/kg、15.75mg/kg、16.0mg/kg、16.25mg/kg、16.50mg/kg、16.75mg/kg、17.0mg/kg、17.25mg/kg、17.50mg/kg、17.75mg/kg、18.0mg/kg、18.25mg/kg、18.50mg/kg、18.75mg/kg、19.0mg/kg、19.25mg/kg、19.50mg/kg、19.75mg/kg、20.0mg/kg、20.25mg/kg、20.50mg/kg、20.75mg/kg、21.0mg/kg、21.25mg/kg、21.50mg/kg、21.75mg/kg、22.0mg/kg、22.25mg/kg、22.50mg/kg、22.75mg/kg、23.0mg/kg、23.25mg/kg、23.50mg/kg、23.75mg/kg、24.0mg/kg、24.25mg/kg、24.50mg/kg、24.75mg/kg、又は25.0mg/kgの用量で投与する。
【0032】
一実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、週1回、週2回、週3回、週4回、週5回、週6回、又は毎日投与する。別の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、1日2回投与する。別の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、5週間毎に1回、6週間毎に1回、7週間毎に1回、8週間毎に1回、9週間毎に1回、10週間毎に1回、11週間毎に1回、又は12週間毎に1回投与する。別の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、1日目に負荷用量で、次いで15日目及びその後8週間毎に異なる維持用量で投与する。
【0033】
他の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、症状が最初に生じた直後に投与する。他の実施形態において、治療は、症状が最初に生じてから1~20日後に開始する。他の実施形態において、治療は、症状が最初に生じてから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20日後に開始する。他の実施形態において、治療は、分娩の5~15日後に開始する。他の実施形態において、治療は、分娩の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20日後に開始する。
【0034】
別の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、1つ以上の投与サイクルで投与する。一実施形態において、投与サイクルは、26週間である。別の実施形態において、治療は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11サイクルを含む。別の実施形態において、患者を約1、2、3、4、5、又は6か月間治療する。別の実施形態において、治療は、ヒト患者の生涯にわたり継続する。
【0035】
一部の実施形態において、患者は、補体阻害剤で以前に治療されたことがない(例えば、患者は、補体阻害剤治療未経験の患者である)。別の実施形態において、患者は、以前に血漿交換及び/又は透析を受けた、補体阻害剤治療未経験の患者である。
【0036】
抗C5抗体、又は抗原結合断片は、任意の好適な手段を介して投与することができる。一実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)は、静脈内投与する。別の実施形態において、抗C5抗体、又は抗原結合断片は、皮下投与する。
【0037】
別の態様において、p-aHUSを有するヒト患者を治療する方法であって、患者に有効量の第1の抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)、次いで第2の抗C5抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む方法が提供される。
【0038】
一部の実施形態において、本明細書に記載の方法に従って治療される患者は、治療を開始する前3年以内に、又は治療を開始する時点で、髄膜炎菌感染に対してワクチン接種されている。一実施形態において、髄膜炎菌ワクチンを受けた後2週間未満で治療を受けた患者は、ワクチン接種の2週間後まで適切な予防抗生物質でも治療される。別の実施形態において、本明細書に記載の方法に従って治療される患者は、髄膜炎菌血清型A、C、Y、W135、及び/又はBに対してワクチン接種される。
【0039】
別の態様において、記載される治療レジメンは、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の特定の血清トラフ濃度を維持するのに十分である。例えば、一実施形態において、治療は、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、200、205、210、215、220、225、230、240、245、250、255、260、265、270、280、290、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395、又は400μg/mL以上の抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持し得る。一実施形態において、治療は、100μg/mL以上の抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態において、治療は、150μg/mL以上の抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態において、治療は、200μg/mL以上の抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態において、治療は、250μg/mL以上の抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態において、治療は、300μg/mL以上の抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態において、治療は、100μg/ml~200μg/mLの抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態において、治療は、約175μg/mLの抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。
【0040】
別の実施形態において、有効な奏効を得るため、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり少なくとも50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、90μg、95μg、100μg、105μg、110μg、115μg、120μg、125μg、130μg、135μg、140μg、145μg、150μg、155μg、160μg、165μg、170μg、175μg、180μg、185μg、190μg、195μg、200μg、205μg、210μg、215μg、220μg、225μg、230μg、235μg、240μg、245μg、250μg、255μg又は260μgの抗体を維持するための量及び頻度で、患者に投与する。別の実施形態において、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり50μg~250μgの抗体を維持するための量及び頻度で、患者に投与する。別の実施形態において、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり100μg~200μgの抗体を維持するための量及び頻度で、患者に投与する。別の実施形態において、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり約175μgの抗体を維持するための量及び頻度で、患者に投与する。
【0041】
別の実施形態において、有効な奏効を得るため、抗C5抗体は、最小遊離C5濃度を維持するための量及び頻度で、患者に投与する。例えば、一実施形態において、抗C5抗体は、0.2μg/mL、0.3μg/mL、0.4μg/mL、0.5μg/mL以下の遊離C5濃度を維持するための量及び頻度で、患者に投与することができる。別の実施形態において、本明細書に記載の治療は、治療期間全体にわたり遊離C5濃度を99%超だけ低減させる。
【0042】
別の態様において、本明細書に記載のp-aHUSを治療する方法は、単独で、又は1つ以上の追加の治療及び/又は治療剤と組み合わせて使用することができる。例えば、一実施形態において、方法は、患者に抗炎症剤(例えば、プレドニゾン)を投与することをさらに含む。
【0043】
本明細書に提供される治療方法の有効性は、任意の好適な手段を使用して評価することができる。一実施形態において、治療は、ベースラインと比較して重症高血圧症、タンパク尿症、尿毒症、嗜眠/疲労、易怒性、血小板減少症、微小血管症性溶血性貧血、及び腎機能障害(例えば、急性腎不全)の低減又は休止からなる群から選択される少なくとも1つの治療効果をもたらし、生じさせる。
【0044】
他の実施形態において、治療は、終末補体阻害をもたらす。
【0045】
他の実施形態において、治療は、ベースラインと比較して遊離ヘモグロビン、ハプトグロビン、網状赤血球数、PNH赤血球(RBC)クローン及びD-ダイマーからなる群から選択される溶血関連の血液学的バイオマーカーの正常レベルに向かうシフトを生じさせる。
【0046】
別の態様において、治療は、Ba因子、可溶性腫瘍壊死因子受容体1[sTNFR1])、可溶性血管接着分子1[sVCAM1]、トロンボモジュリン、D-ダイマー、及びシスタチンCの正常レベルに向かうシフトを生じさせる。
【0047】
別の実施形態において、治療は、患者の治療前ベースラインと比較してヘモグロビン安定化の増加を生じさせる。別の実施形態において、治療は、ヘモグロビンの≧20g/dLの増加をもたらす。
【0048】
他の実施形態において、治療は、血小板正常化(≧150×109/L)をもたらす。他の実施形態において、治療は、少なくとも28日間(例えば、少なくとも28日、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、1年、又は2年間)、血小板正常化(≧150×109/L)をもたらす。他の実施形態において、治療は、治療開始の5~12日後に血小板正常化をもたらす。例えば、一実施形態において、血小板正常化は、治療開始の5、6、7、8、9、10、11、又は12日後に生じる。特定の実施形態において、血小板正常化は、治療開始の8日後に生じる。
【0049】
他の実施形態において、治療は、LDH正常化(≦246U/L)をもたらす。他の実施形態において、治療は、少なくとも28日間(例えば、少なくとも28日、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、1年、又は2年間)、LDH正常化(≦246U/L)をもたらす。他の実施形態において、治療は、治療開始の5~12日後にLDH正常化をもたらす。例えば、一実施形態において、LDH正常化は、治療開始の5、6、7、8、9、10、11、又は12日後に生じる。別の実施形態において、LDH正常化は、治療開始の8日後に生じる。別の実施形態において、LDH及び血小板正常化は、治療開始の8日後に生じる。
【0050】
他の実施形態において、治療は、ベースラインからの血清クレアチニンの≧25%の改善をもたらす。他の実施形態において、治療は、少なくとも28日間(例えば、少なくとも28日、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、1年、又は2年間)、ベースラインからの血清クレアチニンの≧25%の改善をもたらす。
【0051】
他の実施形態において、治療は、完全TMA奏効(すなわち、血小板正常化(≧150×109/L)、LDH正常化(≦246U/L)、及びベースラインからの血清クレアチニンの≧25%の改善)をもたらす。他の実施形態において、治療は、少なくとも28日間(例えば、少なくとも28日、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、1年、又は2年間)、完全TMA奏効をもたらす。他の実施形態において、治療は、約57日間未満(例えば、56、55、54、53、52、51、50、49、48、48、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1日間)で患者における完全TMA奏効を付与する。他の実施形態において、治療は、約43日間未満で患者における完全TMA奏効を付与する。他の実施形態において、治療は、約22日間未満で患者における完全TMA奏効を付与する。他の実施形態において、治療は、約15日間未満で患者における完全TMA奏効を付与する。他の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)でのp-aHUS患者の治療は、約32日間(範囲:8日間~57日間、9日間~46日間の95%のCI)で完全TMA奏効を付与する。
【0052】
他の実施形態において、治療は、修正された完全TMA奏効(すなわち、血小板正常化(≧150×109/L)、LDH正常化(≦246U/L)、及び患者がベースラインにおいて透析中の場合に透析から離脱すること又はベースラインにおいて透析から離脱した患者についてはベースラインからの血清クレアチニンの≧25%の改善)をもたらす。他の実施形態において、治療は、少なくとも28日間(例えば、少なくとも28日、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、1年、又は2年間)、修正された完全TMA奏効をもたらす。
【0053】
他の実施形態において、治療は、血小板数正常化(例えば、≧150×109/L)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)正常化(例えば、≦246U/L)、好ましくは、経時的な血小板数及びLDH正常化の両方と任意選択で血清クレアチニンの改善(例えば、≧25%の改善)(例えば、≧28日間空けた2回の別個の評価)を含む血液学的正常化をもたらす。
【0054】
他の実施形態において、治療は、輸血の必要性の低減を生じさせる。別の実施形態において、治療は、輸血回避の70%超の増加を生じさせる。
【0055】
他の実施形態において、治療は、治療期間の間にブレイクスルー溶血の消失をもたらす。別の実施形態において、治療は、ブレイクスルー溶血の治療前ベースライン量と比較してブレイクスルー溶血の低減をもたらす。
【0056】
他の実施形態において、治療は、主要血管有害事象(MAVE)の低減を生じさせる。
【0057】
他の実施形態において、治療は、ベースラインと比較して透析の要求状態を改善し、例えば、透析の低減又は完全な中止である。一実施形態において、治療は、15~30日以内に透析の中止をもたらす。例えば、他の実施形態において、透析は、治療開始の15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30日後に中止される。一実施形態において、透析は、治療開始の約21日後に中止される。
【0058】
他の実施形態において、治療は、慢性疾患治療の機能的評価(FACIT)-疲労スケール(Functional Assessment of Chronic Illness Therapy(FACIT)-Fatigue Scale)、バージョン4及び欧州癌研究治療機関の生活の質アンケート-コア30スケール(European Organisation for Research and Treatment of Cancer,Quality of Life Questionnaire-Core 30 Scale)を介して評価される、ベースラインからの生活の質の変化を生じさせる。一実施形態において、治療は、FACIT-疲労スケールを介して評価される、ベースラインからの生活の質の1ポイント以上(例えば、1、2、又は3ポイント)だけの変化を生じさせる。別の実施形態において、治療は、治療開始の150日以上(例えば、150日、151日、152日、153日、154日、155日、156日、157日、158日、159日、160日、161日、162日、163日、164日、165日、166日、167日、168日、169日、170日、171日、172日、173日、174日、175日、176日、177日、178日、179日、180日、181日、182日、183日、184日、185日、186日、187日、188日、189日、190日、191日、192日、193日、194日、195日、196日、197日、198日、199日、200日、205日、210日、215日、220日、又は225日)後にFACIT-疲労スケールを介して評価される、ベースラインからの生活の質の3ポイントだけの変化を生じさせる。
【0059】
他の実施形態において、治療は、eGFRの正常レベル(例えば、≧90)に向かうシフトをもたらす。他の実施形態において、治療は、ベースラインと比較してeGFR状態を改善する。他の実施形態において、治療は、治療開始の5~10日以内にベースラインと比較してeGFR状態を改善する。例えば、一実施形態において、治療は、治療開始の5、6、7、8、9、又は10日以内にベースラインと比較してeGFR状態を改善する。別の実施形態において、治療は、治療開始の8日以内にベースラインと比較してeGFR状態を改善する。
【0060】
他の実施形態において、治療は、妊娠を(例えば、数日間、数週間、又は数か月間だけ)延長させる。例えば、一部の実施形態において、治療は、妊娠を1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、又は60日間だけ延長させる。他の実施形態において、治療は、妊娠を1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20週間だけ延長させる。他の実施形態において、治療は、妊娠を1、2、3、4、又は5か月だけ延長させる。他の実施形態において、治療は、在胎期間を(例えば、数日間、数週間、又は数か月間だけ)進行させる。例えば、一部の実施形態において、治療は、在胎期間を1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、又は60日間だけ進行させる。他の実施形態において、治療は、在胎期間を1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20週間だけ進行させる。他の実施形態において、治療は、在胎期間を1、2、3、4、又は5か月間だけ進行させる。
【0061】
他の実施形態において、治療は、末期腎疾患(ESRD)を予防する。他の実施形態において、治療は、ESRDまでの時間を(例えば、数日間、数週間、数か月間、又は数年間だけ)、例えば、少なくとも10か月、20か月、40か月、60か月、80か月、100か月だけ、又は少なくとも120か月だけ延長させる。一部の実施形態において、治療は、血栓性微小血管障害症(TMA)の初期顕性化後にESRDまでの時間を延長させる。
【0062】
他の実施形態において、治療は、患者の生存期間を(例えば、数日間、数週間、数か月間、又は数年間だけ)、例えば、少なくとも10か月、20か月、40か月、60か月、80か月、100か月だけ、又は少なくとも120か月だけ延長させる。
【0063】
p-aHUS(例えば、産後aHUS)を治療するためのキットがさらに提供される。一実施形態において、キットは、(a)ある用量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、本明細書に既に記載のもののいずれか);及び(b)本明細書に記載の方法において抗C5抗体、又はその抗原結合断片を使用するための指示書を含む。
【0064】
一実施形態において、ヒト患者におけるp-aHUS(例えば、産後aHUS)を治療するためのキットであって、(a)ある用量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片であって、それぞれ配列番号1、2、及び3に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列と、それぞれ配列番号4、5及び6に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列とを含む抗C5抗体、又はその抗原結合断片;並びに(b)本明細書に記載の方法において抗C5抗体、又はその抗原結合断片を使用するための指示書を含むキットが提供される。
【0065】
別の実施形態において、ヒト患者におけるp-aHUS(例えば、産後aHUS)を治療するためのキットであって、(a)ある用量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片であって、配列番号7に記載されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号8に記載されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む抗C5抗体、又はその抗原結合断片;及び(b)本明細書に記載の方法において抗C5抗体、又はその抗原結合断片を使用するための指示書を含むキットが提供される。
【0066】
別の実施形態において、ヒト患者におけるp-aHUS(例えば、産後aHUS)を治療するためのキットであって、(a)ある用量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片であって、配列番号10に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号11に記載されるアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗C5抗体、又はその抗原結合断片;及び(b)本明細書に記載の方法において抗C5抗体、又はその抗原結合断片を使用するための指示書を含むキットが提供される。
【0067】
別の実施形態において、ヒト患者におけるp-aHUS(例えば、産後aHUS)を治療するためのキットであって、(a)ある用量のエクリズマブ及び(b)本明細書に記載の方法においてエクリズマブを使用するための指示書を含むキットが提供される。
【0068】
別の実施形態において、ヒト患者におけるp-aHUS(例えば、産後aHUS)を治療するためのキットであって、(a)ある用量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片であって、それぞれ配列番号19、18及び3に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列と、それぞれ配列番号4、5及び6に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列とを含む抗C5抗体、又はその抗原結合断片;並びに(b)本明細書に記載の方法において抗C5抗体、又はその抗原結合断片を使用するための指示書を含むキットが提供される。
【0069】
別の実施形態において、ヒト患者におけるp-aHUS(例えば、産後aHUS)を治療するためのキットであって、(a)ある用量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片であって、それぞれ配列番号19、18及び3に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列と、それぞれ配列番号4、5及び6に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列と、ヒト胎児性Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc領域とを含み、バリアントヒトFc CH3領域は、それぞれEU番号付けで、ネイティブヒトIgG Fc領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基においてMet-429-Leu及びAsn-435-Ser置換を含む抗C5抗体、又はその抗原結合断片;並びに(b)本明細書に記載の方法において抗C5抗体、又はその抗原結合断片を使用するための指示書を含むキットが提供される。
【0070】
別の実施形態において、ヒト患者におけるp-aHUS(例えば、産後aHUS)を治療するためのキットであって、(a)ある用量のラブリズマブ及び(b)本明細書に記載の方法においてラブリズマブを使用するための指示書を含むキットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【
図1】第3相多施設試験(「311試験」)に登録された産後aHUSを有する8人の患者についての完全TMA奏効までの時間の中央値、日数を示すカプラン・マイヤーグラフである。
【
図2】観測された経時的血小板数値を示すグラフである。データを平均として示す(エラーバー、95%の信頼区間)。「BL」はベースラインである。
【
図3】観測された経時的乳酸デヒドロゲナーゼ値を示すグラフである。データを平均として示す(エラーバー、95%の信頼区間)。「BL」はベースラインである。
【
図4】観測された経時的eGFR値を示すグラフである。データを平均として示す(エラーバー、95%の信頼区間)。「BL」はベースラインである。「eGFR」は、推定糸球体濾過量である。
【
図5】初期TMA顕性化後の末期腎疾患(ESRD)までの時間を使用した生存率のカプラン・マイヤー推定グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0072】
I.抗C5抗体
本明細書に記載の抗C5抗体は、補体成分C5(例えば、ヒトC5)に結合し、断片C5a及びC5bへのC5の開裂を阻害する。上記のとおり、このような抗体は治療目的で使用される他の抗C5抗体(例えば、エクリズマブ)と比べて、例えば、改善された薬物動態特性も有する。
【0073】
「抗体」という用語は、少なくとも1つの抗体由来抗原結合部位(例えば、VH/VL領域若しくはFv、又はCDR)を含むポリペプチドを説明する。抗体には、公知の形態の抗体が含まれる。例えば、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体又はキメラ抗体であり得る。抗体は、Fab、Fab’2、ScFv、SMIP、Affibody(登録商標)、ナノボディ又はドメイン抗体でもあり得る。抗体は、以下のアイソタイプ:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgAsec、IgD、IgEのいずれかのもの又はそれらのアイソタイプのいずれかのハイブリッドでもあり得る。抗体は、天然に存在する抗体又はタンパク質操作技術により(例えば、突然変異、欠失、置換、非抗体部分へのコンジュゲーションにより)変更された抗体であり得る。抗体は、例えば、(天然に存在する抗体と比較して)抗体の特性(例えば、機能的特性)を変化させる1つ以上のバリアントアミノ酸を含み得る。例えば、半減期、エフェクター機能、及び/又は患者における抗体に対する免疫応答に影響を与える多数のそのような変更が当該技術分野で公知である。「抗体」という用語には、少なくとも1つの抗体由来抗原結合部位を含む人工又は操作ポリペプチド構築物も含まれる。
【0074】
本明細書における使用に好適な抗C5抗体(又はそれに由来するVH/VLドメイン)は、当該技術分野で公知の方法を使用して生成することができる。或いは、当該技術分野で認識される抗C5抗体を使用することができる。C5への結合について、これらの当該技術分野で認識される抗体のいずれかと競合する抗体を使用することもできる。
【0075】
エクリズマブ(SOLIRIS(登録商標)としても公知)は、それぞれ配列番号1、2及び3に記載される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインと、それぞれ配列番号4、5及び6に記載される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインとを含む抗C5抗体である。エクリズマブは、配列番号7に記載されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号8に記載されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む。エクリズマブの可変領域は、PCT/US1995/005688号明細書及び米国特許第6,355,245号明細書に記載されており、それらの教示は参照により全体として本明細書に組み込まれる。エクリズマブは、配列番号10に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号11に記載されるアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む。エクリズマブの完全重鎖及び軽鎖は、PCT/US2007/006606号明細書に記載されており、その全教示は参照により本明細書に組み込まれる。一部の実施形態において、エクリズマブには、SOLIRIS(登録商標)のバイオシミラーが含まれる。本明細書において使用されるとき、バイオシミラーは、別の既に承認された生物医薬(例えば、参照医薬)に(例えば、構造、機能又は特性が)非常に類似する製品である。SOLIRIS(登録商標)バイオシミラーの代表例としては、例えば、モノクローナル抗体ABP959;ELIZARIA;及びモノクローナル抗体SB12が挙げられる。
【0076】
例示的な抗C5抗体は、それぞれ配列番号14及び11に示される配列を有する重鎖及び軽鎖、又はその抗原結合断片及びバリアントを含むラブリズマブである。ラブリズマブ(ULTOMIRIS(登録商標)としても公知)は、PCT/US2015/019225号明細書及び米国特許第9,079,949号明細書に記載されており、それらの全教示は参照により本明細書に組み込まれる。ラブリズマブはヒト補体タンパク質C5に選択的に結合し、補体活性化の間のC5a及びC5bへのその開裂を阻害する。この阻害は、炎症促進性メディエーターC5aの放出及び細胞溶解性ポア形成性膜侵襲複合体(MAC)C5b-9の形成を防止する一方、微生物のオプソニン化及び免疫複合体のクリアランスに不可欠な補体活性化の近接又は初期成分(例えば、C3及びC3b)を保存する。
【0077】
他の実施形態において、抗体は、ラブリズマブの重鎖及び軽鎖CDR又は可変領域を含む。抗体は、例えば、配列番号12に記載される配列を有するラブリズマブのVH領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインと、配列番号8に記載される配列を有するラブリズマブのVL領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインとを含み得る。別の実施形態において、抗体は、それぞれ配列番号19、18及び3に記載される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインと、それぞれ配列番号4、5及び6に記載される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインとを含む。別の実施形態において、抗体は、それぞれ配列番号12及び配列番号8に記載されるアミノ酸配列を有するVH及びVL領域を含む。
【0078】
別の例示的な抗C5抗体は、それぞれ配列番号20及び11に示される配列を有する重鎖及び軽鎖、又はその抗原結合断片及びバリアントを含む。他の実施形態において、抗体は、配列番号20及び11の重鎖及び軽鎖CDRを含み得る。したがって、一実施形態において、抗体は、配列番号12に記載される配列を有するVHのCDR1、CDR2及びCDR3ドメインと、配列番号8に記載される配列を有するVL領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインとを含む。別の実施形態において、抗体は、それぞれ配列番号19、18及び3に記載される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインと、それぞれ配列番号4、5及び6に記載される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインとを含む。
【0079】
CDRの正確な境界は、様々な方法に従って異なって定義されてきた。一部の実施形態において、軽鎖又は重鎖可変ドメイン内のCDR又はフレームワーク領域の位置は、Kabat et al.(“Sequences of Proteins of Immunological Interest.”NIH Publication No.91-3242,U.S.Department of Health and Human Services,Bethesda,MD,1991)により定義されるとおりであり得る。このような場合、CDRは、「Kabat CDR」と称することができる(例えば、「Kabat LCDR2」又は「Kabat HCDR1」)。一部の実施形態において、軽鎖又は重鎖可変領域のCDRの位置は、Chothia et al.(Nature,342:877-83,1989)により定義されるとおりであり得る。したがって、これらの領域は、「Chothia CDR」と称することができる(例えば、「Chothia LCDR2」又は「Chothia HCDR3」)。一部の実施形態において、軽鎖及び重鎖可変領域のCDRの位置は、Kabat-Chothia組合せ定義により定義されるとおりであり得る。このような実施形態において、これらの領域は、「組合せKabat-Chothia CDR」と称することができる(Thomas et al.,Mol.Immunol.,33:1389-401,1996)。
【0080】
別の実施形態において、抗体は、それぞれ配列番号12及び配列番号8に記載されるアミノ酸配列を有するVH及びVL領域を含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号13に記載される重鎖定常領域を含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号14に記載される重鎖ポリペプチドと、配列番号11に記載される軽鎖ポリペプチドとを含む。別の実施形態において、抗体は、ヒト胎児性Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc領域を含み、バリアントヒトFc CH3領域は、それぞれEU番号付けで、ネイティブヒトIgG Fc領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基においてMet429Leu及びAsn435Ser置換を含む。
【0081】
別の実施形態において、抗体は、それぞれ配列番号19、18及び3に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列と、それぞれ配列番号4、5及び6に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列と、ヒト胎児性Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc領域とを含み、バリアントヒトFc CH3領域は、それぞれEU番号付けで、ネイティブヒトIgG Fc領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基においてMet429Leu及びAsn435Ser置換を含む。
【0082】
別の実施形態において、本明細書に記載の抗C5抗体は、以下のアミノ酸配列:GHIFSNYWIQ(配列番号19)を含み、又はそれからなる重鎖CDR1を含む。別の実施形態において、本明細書に記載の抗C5抗体は、以下のアミノ酸配列:EILPGSGHTEYTENFKD(配列番号18)を含み、又はそれからなる重鎖CDR2を含む。
【0083】
別の実施形態において、抗体は、pH7.4及び25Cで、0.1nM≦KD≦1nMの範囲内の親和性解離定数(KD)でヒトC5に結合する。別の実施形態において、抗体は、pH6.0及び25Cで、KD≧10nMでヒトC5に結合する。さらに別の実施形態において、抗体のpH6.0及び25CにおけるヒトC5に対する抗体又はその抗原結合断片のKD)/(pH7.4及び25CにおけるヒトC5に対する抗体又はその抗原結合断片のKDは、25超である。
【0084】
別の例示的な抗C5抗体は、米国特許第8,241,628号明細書及び同第8,883,158号明細書に記載されるとおりである。一実施形態において、抗体、又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号21、22及び23に記載される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインと、それぞれ配列番号24、25及び26に記載される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインとを含む。別の実施形態において、抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号27に記載される配列を有するVH領域と、配列番号28に記載される配列を有するVL領域とを含む。
【0085】
別の例示的な抗C5抗体も、米国特許第8,241,628号明細書及び同第8,883,158号明細書に記載される。一実施形態において、抗体、又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号29、30及び31に記載される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインと、それぞれ配列番号32、33及び34に記載される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインとを含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号35に記載される配列を有するVH領域と、配列番号36に記載される配列を有するVL領域とを含む。
【0086】
別の例示的な抗C5抗体は、米国特許出願公開第2016/0176954A1号明細書に記載される。一実施形態において、抗体、又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号37、38及び39に記載される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインと、それぞれ配列番号40、41及び42に記載される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインとを含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号43に記載される配列を有するVH領域と、配列番号44に記載される配列を有するVL領域とを含む。
【0087】
別の例示的な抗C5抗体は、Fukuzawa T.et al.(Sci.Rep.,7:1080,2017)に記載される。一実施形態において、抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号45を含む重鎖と、配列番号46を含む軽鎖とを含む。
【0088】
別の例示的な抗C5抗体は、米国特許出願公開第2017/0355757号明細書に記載される。一実施形態において、抗体は、配列番号47を含む重鎖可変領域と、配列番号48を含む軽鎖可変領域とを含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号49を含む重鎖と、配列番号50を含む軽鎖とを含む。
【0089】
本明細書に記載の抗体は、上述の抗体のいずれかとC5上の同じエピトープとの結合について競合し、及び/又はC5上の同じエピトープに結合し得る。2つ以上の抗体に関する「同じエピトープに結合する」という用語は、抗体が、所与の方法により決定した場合に、アミノ酸残基の同じセグメントに結合することを意味する。抗体が、本明細書に記載の抗体と、「C5上の同じエピトープ」に結合するか否かを決定するための技術としては、例えば、エピトープマッピング法、例えば、エピトープの原子分解能を提供する抗原:抗体複合体の結晶のX線分析、及び水素/重水素交換質量分析(HDX-MS)が挙げられる。他の方法は、ペプチド抗原断片又は抗原のバリエーションへの抗体の結合をモニタリングし、ここで、抗原配列内のアミノ酸残基の改変に起因する結合の喪失は、エピトープ成分の指標とみなされる場合が多い。さらに、エピトープマッピングのためのコンビナトリアル計算法を使用することもできる。これらの方法は、特定の短いペプチドをコンビナトリアルファージディスプレイペプチドライブラリーから親和性単離する、目的の抗体の能力に依存する。同じVH及びVL又は同じCDR1、CDR2及びCDR3配列を有する抗体は、同じエピトープに結合すると予測される。
【0090】
本明細書に記載の抗体は、例えば、上述の抗体と少なくとも約90%の可変領域アミノ酸配列同一性(例えば、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の可変領域同一性)を有し得る。
【0091】
本明細書に記載の抗C5抗体は、一部の実施形態において、バリアントヒトFc領域が由来したネイティブヒトFc領域の親和性よりも高い親和性でヒト胎児性Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc領域を含み得る。Fc定常領域は、例えば、バリアントヒトFc領域が由来したネイティブヒトFc領域と比べて、1つ以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、8つ以上の)アミノ酸置換を含み得る。置換は、pH6.0におけるFcRnに対するバリアントFc領域を含有するIgG抗体の結合親和性を増加させ得る一方、相互作用のpH依存性を維持する。抗体のFc領域中の1つ以上の置換が、(相互作用のpH依存性を維持しつつ)pH6.0におけるFcRnに対するFc領域の親和性を増加させるか否かを試験する方法は当該技術分野で公知であり、実施例に例示される。
【0092】
FcRnに対する抗体Fc領域の結合親和性を向上させる置換は当該技術分野で公知であり、これとしては、例えば、(1)M252Y/S254T/T256E三重置換(Dall’Acqua,W.et al.,J.Biol.Chem.,281:23514-24,2006);(2)M428L又はT250Q/M428L置換(Hinton,P.et al.,J.Biol.Chem.,279:6213-6,2004;Hinton,P.et al.,J.Immunol.,176:346-56);及び(3)N434A又はT307/E380A/N434A置換(Petkova,S.et al.,Int.Immunol.,18:1759-69,2006)が挙げられる。追加の置換ペア、例えば、P257I/Q311I、P257I/N434H及びD376V/N434Hが、例えば、Datta-Mannan,A.et al.(J.Biol.Chem.,282:1709-17,2007)に記載される。これらの参照文献のそれぞれの開示は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0093】
一部の実施形態において、定常領域は、EUアミノ酸残基255におけるバリンについての置換、EUアミノ酸残基309におけるアスパラギンについての置換、EUアミノ酸残基312におけるイソロイシンについての置換及び/又はEUアミノ酸残基386における置換を含み得る。
【0094】
本明細書に記載の抗体は、バリアントFc領域が由来したネイティブ定常領域と比べて、30以下(例えば、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3又は2つ以下)のアミノ酸置換、挿入又は欠失のバリアントFc領域を含み得る。一部の実施形態において、バリアントFc領域は、M252Y、S254T、T256E、N434S、M428L、V259I、T250I及びV308Fからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、バリアントヒトFc領域は、それぞれEU番号付けで、428位におけるメチオニン及び434位におけるアスパラギンを含む。一部の実施形態において、バリアントFc領域は、例えば、米国特許第8.088,376号明細書に記載される428L/434S二重置換を含む。
【0095】
一部の実施形態において、置換の正確な位置は、抗体操作のための望まれるとおり、ネイティブヒトFc領域位置からシフトさせることができる。例えば、428L/434S二重置換は、IgG2/4キメラFcにおいて使用される場合、ラブリズマブに見出されるM429L及びN435Sバリアントのように、429L及び435Sに対応し得る。
【0096】
本明細書に記載の抗体は、例えば、ネイティブヒト定常領域と比べて、1つ以上のアミノ酸237、238、239、248、250、252、254、255、256、257、258、265、270、286、289、297、298、303、305、307、308、309、311、312、314、315、317、325、332、334、360、376、380、382、384、385、386、387、389、424、428、433、434又は436位(EU番号付け)における置換を含む定常領域を含み得る。一部の実施形態において、置換は、全てEU番号付けで、237位におけるグリシンからメチオニンへ;238位におけるプロリンからアラニンへ;239位におけるセリンからリジンへ;248位におけるリジンからイソロイシンへ;250位におけるトレオニンからアラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、メチオニン、グルタミン、セリン、バリン、トリプトファン又はチロシンへ;252位におけるメチオニンからフェニルアラニン、トリプトファン又はチロシンへ;254位におけるセリンからトレオニンへ;255位におけるアルギニンからグルタミン酸へ;256位におけるトレオニンからアスパラギン酸、グルタミン酸又はグルタミンへ;257位におけるプロリンからアラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、セリン、トレオニン又はバリンへ;258位におけるグルタミン酸からヒスチジンへ;265位におけるアスパラギン酸からアラニンへ;270位におけるアスパラギン酸からフェニルアラニンへ;286位におけるアスパラギンからアラニン又はグルタミン酸へ;289位におけるトレオニンからヒスチジンへ;297位におけるアスパラギンからアラニンへ;298位におけるセリンからグリシンへ;303位におけるバリンからアラニンへ;305位におけるバリンからアラニンへ;307位におけるトレオニンからアラニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、バリン、トリプトファン又はチロシンへ;308位におけるバリンからアラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、プロリン、グルタミン又はトレオニンへ;309位におけるロイシン又はバリンからアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン又はアルギニンへ;311位におけるグルタミンからアラニン、ヒスチジン又はイソロイシンへ;312位におけるアスパラギン酸からアラニン又はヒスチジンへ;314位におけるロイシンからリジン又はアルギニンへ;315位におけるアスパラギンからアラニン又はヒスチジンへ;317位におけるリジンからアラニンへ;325位におけるアスパラギンからグリシンへ;332位におけるイソロイシンからバリンへ;334位におけるリジンからロイシンへ;360位におけるリジンからヒスチジンへ;376位におけるアスパラギン酸からアラニンへ;380位におけるグルタミン酸からアラニンへ;382位におけるグルタミン酸からアラニンへ;384位におけるアスパラギン又はセリンからアラニンへ;385位におけるグリシンからアスパラギン酸又はヒスチジンへ;386位におけるグルタミンからプロリンへ;387位におけるプロリンからグルタミン酸へ;389位におけるアスパラギンからアラニン又はセリンへ;424位におけるセリンからアラニンへ;428位におけるメチオニンからアラニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファン又はチロシンへ;433位におけるヒスチジンからリジンへ;434位におけるアスパラギンからアラニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、セリン、トリプトファン又はチロシンへ;及び436位におけるチロシン又はフェニルアラニンからヒスチジンへの置換からなる群から選択される。
【0097】
本明細書に記載の方法における使用に好適な抗C5抗体は、一部の実施形態において、配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチド及び/又は配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む。或いは、本明細書に記載の方法における使用のための抗C5抗体は、一部の実施形態において、配列番号20に示されるアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチド及び/又は配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む。
【0098】
一実施形態において、抗体は、pH7.4及び25℃で(及びそうでなければ、生理的条件下で)、少なくとも0.1nM(例えば、少なくとも0.15、0.175、0.2、0.25、0.275、0.3、0.325、0.35、0.375、0.4、0.425、0.45、0.475、0.5、0.525、0.55、0.575、0.6、0.625、0.65、0.675、0.7、0.725、0.75、0.775、0.8、0.825、0.85、0.875、0.9、0.925、0.95又は0.975nM)であるKDでC5に結合する。一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片のKDは、1nM以下(例えば、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3又は0.2nM以下)である。
【0099】
他の実施形態において、pH6.0で25℃におけるC5に対する抗体のKD)/(pH7.4で25CにおけるC5に対する抗体のKDは、21超(例えば、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500又は8000超)である。
【0100】
本明細書に記載の抗C5抗体は、例えば、少なくとも20日間(例えば、少なくとも21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54又は55日間)であるヒトにおける血清半減期を有し得る。別の実施形態において、本明細書に記載の抗C5抗体は、少なくとも40日間であるヒトにおける血清半減期を有する。別の実施形態において、本明細書に記載の抗C5抗体は、およそ43日間であるヒトにおける血清半減期を有する。別の実施形態において、本明細書に記載の抗C5抗体は、39~48日間であるヒトにおける血清半減期を有する。抗体の血清半減期を測定する方法は、当該技術分野で公知である。一部の実施形態において、本明細書に記載の抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、エクリズマブの血清半減期よりも少なくとも20%長い(例えば、エクリズマブの血清半減期よりも少なくとも30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、250、300、400、500%長い)血清半減期を有する。
【0101】
「標的への結合について別の抗体と競合する」抗体は、標的への他の抗体の結合を(部分的又は完全に)阻害する抗体を指す。2つの抗体が標的への結合について互いに競合するか否か、すなわち、一方の抗体が標的への他方の抗体の結合を阻害するか否か及びどの程度まで阻害するかは、公知の競合実験を使用して決定することができる。ある実施形態において、抗体は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%だけ標的への結合について別の抗体と競合し、標的への別の抗体の結合を阻害する。阻害又は競合のレベルは、どの抗体が「遮断抗体」であるかに応じて異なり得る。競合抗体は、(例えば、立体障害により明らかなとおり)同じエピトープ、重複エピトープ又は隣接エピトープに結合する。
【0102】
本明細書に記載の方法において使用される、本明細書に記載される抗C5抗体又はその抗原結合断片は、種々の当該技術分野で認識される技術を使用して生成することができる。モノクローナル抗体は、当業者に知られた種々の技術により得ることができる。簡潔に述べると、所望の抗原で免疫化された動物からの脾細胞を一般には骨髄腫細胞との融合により不死化させる(Koehler,G.& Milstein,C.,Eur.J.Immunol.,6:511-9,1976)。不死化の代替的方法としては、エプスタイン・バーウイルス、癌遺伝子若しくはレトロウイルスによる形質転換、又は当該技術分野で公知の他の方法が挙げられる。単一の不死化細胞から生じるコロニーを、抗原に対する所望の特異性及び親和性を有する抗体の産生についてスクリーニングし、そのような細胞により産生されるモノクローナル抗体の収量は、種々の技術、例として、脊椎動物宿主の腹腔中への注射により向上させることができる。或いは、ヒトB細胞からのDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、モノクローナル抗体又はその結合断片をコードするDNA配列を単離することができる(Huse,W.et al.,Science,246:1275-81,1989)。
II.組成物
本明細書に記載の抗C5抗体、又はその抗原結合断片を含む組成物を医薬液剤として配合することができる。医薬組成物は一般に、薬学的に許容可能な担体を含む。本明細書において使用されるとき、「薬学的に許容可能な担体」は、生理学的に適合性である任意の及び全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを指し、例としてそれらが挙げられる。組成物は、例えば、薬学的に許容可能な塩、例えば、酸付加塩若しくは塩基付加塩、糖、炭水化物、ポリオール及び/又は張度改変剤を含み得る。
【0103】
本明細書に記載の組成物は、標準的な方法に従って配合することができる。医薬配合は、十分確立された技術分野である(Gennaro,“Remington:The Science and Practice of Pharmacy,”20thEdition,Lippincott,Williams&Wilkins(ISBN:0683306472),2000;Ansel et al.,“Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,”7thEdition,Lippincott Williams&Wilkins Publishers(ISBN:0683305727),1999;及びKibbe,“Handbook of Pharmaceutical Excipients American Pharmaceutical Association,”3rdEdition(ISBN:091733096X),2000)。一部の実施形態において、組成物は、例えば、好適な濃度の、2~8℃(例えば、4℃)における貯蔵に好適な緩衝溶液として配合することができる。一部の実施形態において、組成物は、0℃未満の温度(例えば、-20℃又は-80℃)における貯蔵のために配合することができる。一部の実施形態において、組成物は、2~8℃(例えば、4℃)における最長2年間(例えば、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、1年、1年半又は2年)の貯蔵のために配合することができる。したがって、一部の実施形態において、本明細書に記載の組成物は、2~8℃(例えば、4℃)における少なくとも1年間の貯蔵において安定である。
【0104】
医薬組成物は、種々の形態であり得る。これらの形態としては、例えば、液体、半固体及び固体の剤形、例えば、液体液剤(例えば、注射可能な及び注入可能な液剤)、分散剤又は懸濁剤、錠剤、丸剤、散剤、リポソーム及び坐剤が挙げられる。好ましい形態は、意図される投与方式及び治療用途に一部依存する。全身又は局所送達のために意図される組成物を含有する組成物は、例えば、注射可能な又は注入可能な液剤の形態であり得る。したがって、組成物は、非経口方式(例えば、静脈内、皮下、腹腔内又は筋肉内注射)による投与のために配合することができる。「非経口投与」、「非経口投与される」及び他の文法的に等価な語句は、本明細書で使用されるとき、経腸及び外用投与以外の、通常は注射による投与方式を指し、それとしては、限定されるものではないが、静脈内、鼻腔内、眼内、肺、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、肺内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、脳内、頭蓋内、頸動脈内及び胸骨内の注射及び注入が挙げられる。
【0105】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、医薬溶液として配合され、皮下注射を介して投与される。皮下投与は、デバイスにより達成することができる。
【0106】
一部の実施形態において、組成物は、注射のためのラブリズマブを含む。一実施形態において、注射は、静脈内使用のための、無菌の、透明から半透明の、わずかに白帯色の保存剤不含液剤である。別の実施形態において、各単一用量バイアルは、7.0のpHで10mg/mLの濃度の、注射のための300mgのラブリズマブを含有する。別の実施形態において、注射のためのラブリズマブは、5mg/mLの最終濃度への希釈を要求する。別の実施形態において、各1mLは、ポリソルベート80(0.2mg;植物起源)、塩化ナトリウム(8.77mg)、リン酸一水素ナトリウム(1.78mg)、リン酸二水素ナトリウム(0.46mg)及び水をさらに含む。
III.治療の方法
ヒト患者におけるp-aHUS(例として、産後aHUS)を治療する方法であって、患者に抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)を投与することを含む方法が提供される。本明細書において使用されるとき、「対象」又は「患者」という用語は、ヒト患者(例えば、p-aHUSを有する患者)である。
【0107】
溶血性尿毒症症候群(HUS)は、血小板減少症、微小血管症性溶血性貧血、及び急性腎不全により特徴付けられる。HUSは、2つの型:下痢関連(D+HUS;志賀毒素産生性大腸菌(E.coli)(STEC)-HUS又は典型HUSとも称される)及び非下痢又は非典型HUS(aHUS)の1つとして分類される。D+HUSは、症例の90%超を占める最も一般的な形態であり、志賀様毒素産生性細菌、例えば、大腸菌(E.coli)O157:H7による先行する疾病により引き起こされる。
【0108】
aHUSは、遺伝性、後天性、又は特発性であり得る。aHUSの遺伝性形態は、多数のヒト補体成分、例として、例えば、補体H因子(CFH)、膜補因子タンパク質(MCP)、補体I因子(CFI)、C4b結合タンパク質(C4BP)、補体B因子(CFB)、及び補体成分3(C3)における突然変異と関連し得る(例えば、Caprioli et al.(2006)Blood 108:1267-1279参照)。CD55をコードする遺伝子中のある突然変異は、aHUSとは未だ関連付けられていないものの、aHUSの重症度と関連する(例えば、Esparza-Gordillo et al.(2005)Hum Mol Genet 14:703-712参照)。aHUSは、同じ家族の2人以上(例えば、3、4、5、又は6人以上)のメンバーが少なくとも6か月空いて疾患に罹患し、共通の誘発剤への曝露が排除されている場合、又は1つ以上のaHUS関連遺伝子突然変異(例えば、CFH、MCP/CD46、CFB、又はCFIにおける1つ以上の突然変異)が対象において同定される場合、遺伝性とみなすことができる。例えば、対象は、CFH関連aHUS、CFB関連aHUS、CFI関連aHUS又はMCP関連aHUSを有し得る。遺伝性aHUSの最大30%がCFHにおける突然変異と、12%がMCPにおける突然変異と、5~10%がCFIにおける突然変異と、2%未満がCFBにおける突然変異と関連する。遺伝性aHUSは、複発性(multiplex)(すなわち、家族性;2人以上の罹患した家族メンバー)又は単発性(simplex)(すなわち、家族で単一の出現)であり得る。aHUSは、根底にある環境因子(例えば、薬物、全身疾患、又は志賀様外毒素をもたらさないウイルス若しくは細菌性作用物質)又はトリガーを同定することができる場合、後天性とみなすことができる。aHUSは、トリガー(遺伝性又は環境性)が明らかでない場合、特発性とみなすことができる。
【0109】
妊娠により誘発されるaHUS(「p-aHUS」)は、25,000人の妊婦におよそ1人に生じる代替補体経路の機能不全と関連する希少で重篤な全身疾患である。補体の過剰活性化は、びまん性内皮損傷とそれに続く血管中のフィブリン及び血小板微小血栓の形成をもたらし、それらは溶血、血小板減少症、及び虚血からの末端器官機能不全(主に急性腎障害の形態)をもたらす。p-aHUSの症例の大多数は、産後期間の間に生じ、したがって産後aHUSとして称される。一部の実施形態において、患者は重篤又は早期発症p-aHUSを有する。このような症例において、妊娠を延長させて周産期アウトカムを改善することが必要である。
【0110】
ヒト対象が血小板減少症、微小血管症性溶血性貧血、又は急性腎機能不全症を有するか否かを決定するために実験室試験を実施することができる。血小板減少症は、医療従事者により、(i)150,000/mm3未満(例えば、60,000/mm3未満)の血小板数;(ii)循環中の血小板破壊の向上を反映する、低減される血小板生存時間の低減;並びに(iii)血小板新生の二次的活性化と一致する、末梢スメアにおいて観察される巨大血小板の1つ以上として診断することができる。微小血管症性溶血性貧血は、医療従事者により、(i)10mg/dL未満(例えば、6.5mg/dL未満)のヘモグロビン濃度;(ii)増加した血清乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)濃度(>460U/L);(iii)高ビリルビン血症、網赤血球増加症、循環遊離ヘモグロビン、及び低い又は検出不能なハプトグロビン濃度;並びに(iv)陰性クームス試験と併せた、末梢スメアにおける有棘赤血球又はヘルメット細胞の典型的態様を有する断片化赤血球(破砕赤血球)の検出の1つ以上として診断することができる。例えば、Kaplan et al.(1992)“Hemolytic Uremic Syndrome and Thrombotic Thrombocytopenic Purpura,”Informa Health Care(ISBN0824786637)及びZipfel(2005)“Complement and Kidney Disease,”Springer(ISBN3764371668)参照。C3及びC4の血中濃度を補体活性化又は機能不全の尺度として使用することもできる。さらに、対象の状態は、aHUSと関連する遺伝子、例えば、CFI、CFB、CFH、又はMCP中の1つ以上の突然変異を保有すると対象を同定することにより、さらに特徴付けることができる(上記)。遺伝子中の突然変異を検出するために好適な方法としては、例えば、DNAシーケンシング及び核酸アレイ技術が挙げられる。例えば、Breslin et al.(2006)Clin Am Soc Nephrol 1:88-99及びGoicoechea de Jorge et al.(2007)Proc Natl Acad Sci USA 104:240-245参照。
【0111】
一実施形態において、患者は、妊娠高血圧腎症(PE)及び/又はHELLP症候群も有する。PEは、以前は正常血圧の女性における妊娠又は産後の20週間後に新たに発症する高血圧症及びタンパク尿症(例えば、>300mg/24時間のタンパク質排泄)、又はタンパク尿症を有する若しくは有さない高血圧症及び末端器官機能不全により特徴付けられる多系統進行性障害である。PEを有する妊娠女性において、胎児及び胎盤の分娩が唯一の治癒的治療であり、それは早産及びその関連合併症のリスクを抱える。HELLP症候群は、溶血、肝酵素の上昇、及び低血小板数により特徴付けられる妊娠の合併症である。PE/HELLP及びp-aHUSは生化学的特徴を共有し、HELLP及びp-aHUSは一連のものの一部であり得る。aHUSは微小血管症性溶血性貧血(MAHA)及びAKIにより主に特徴付けられる一方、PE/HELLPはAKI及びMAHAに加えて腎機能不全、例として、非心臓性肺浮腫、被膜下肝血種及び肝機能の損傷として顕在化する(例えば、Elabd et al.,BMJ Case Rep.2019;12参照)。一般に、PE及びHELLP症候群は微小血管系の疾患として顕性化し、血栓性血小板減少性紫斑症(TTP)及び溶血性尿毒症症候群(HUS)と同じ所見の多くを呈する。これらの疾患は通常、妊娠後期の間に生じ、新生児の分娩を必要とする。医師は、TMAが分娩後に持続する場合、妊娠高血圧腎症又はHELLP症候群が疑われる患者におけるTTP及びHUSの検討を推奨する。この目的のため、血漿交換及びコルチコステロイドの投与を使用してTTPの治療を実施することができ;患者が応答しない場合、リツキシマブを投与することができる。HUSについて、サポーティブケア及びコバラミン補給(ヒドロキソコバラミン、葉酸及び/又はベタイン)を提供することができる(Thurman et al.,Clin J Am Soc Nephrol 13:933-936,2018)。
【0112】
本明細書において使用されるとき、「在胎期間」(又は「月経年齢」)は、最終正常月経期の初日と分娩日との間の経過時間を指す。在胎期間は、慣用的には、満週数として表現される。したがって、25週5日の胎児は25週の胎児とみなされる。「在胎期間」という用語は、通常、胎児又は新生児の年齢を説明するために「月経年齢」に代えて使用される。在胎期間は、最終月経期の初日、母体の身体検査、出生前超音波検査、及び介助出産歴の組合せに基づく「最良産科推定値(best obstetric estimate)」により決定されることが多い。在胎期間推定の方法における産科情報及び固有変動(2週間ほどの長さ)のギャップのため、最良産科推定値は必要である。最良産科推定値が不正確と思われる場合、幼児の出生後の身体検査が在胎期間を決定する方法として使用されることがある。
【0113】
本明細書において使用されるとき、「暦年齢」(又は「出生後」年齢)は、誕生後の経過時間を指す。これは通常、日数、週数、月数、及び/又は年数で記載される。これは、「月経後年齢」という用語と異なる。
【0114】
本明細書において使用されるとき、「月経後年齢」は、最終月経期の初日と誕生との間の経過時間(在胎期間)と誕生後の経過時間(暦年齢)を指す。月経後年齢は通常、週数で記載され、誕生日後に始まる周産期の間に最も高頻度に適用される。したがって、現在10週齢(暦年齢)である、33週の在胎期間で生まれた早産児は、43週の月経後年齢を有する。
【0115】
本明細書において使用されるとき、「修正年齢」(又は「調整年齢」)は、早産で生まれた3歳までの小児を説明するために最も適切に使用される用語を指す。修正年齢は、暦年齢から、40週の在胎前の出生の週数を減算することにより計算される。したがって、24か月齢、それ以前、28週の在胎期間の幼児は、以下の式に従う21か月の修正年齢を有する:24か月-[(40週-28週)×1か月/4週]。修正年齢及び暦年齢は、早産児において同義でない。さらに、「修正年齢」という用語は、「調整年齢」に代えて使用すべきである。
【0116】
本明細書において使用されるとき、「受胎年齢」は、受胎日と分娩日との間の経過時間である。介助出産技術が受精日又は移植日を正確に定義するため、正確な受胎年齢は、そのような技術から生じる妊娠において決定することができる。
【0117】
本明細書で使用されるとき、「有効な治療」は、有益な効果、例えば、疾患又は障害の少なくとも1つの症状の改善を生じさせる治療を指す。有益な効果は、ベースラインを超える改善、すなわち、方法に従う治療の開始前に行われた測定又は観察を超える改善の形態をとり得る。例えば、有効な治療は、ベースラインと比較して重症高血圧症、タンパク尿症、尿毒症、嗜眠/疲労、易怒性、血小板減少症、微小血管症性溶血性貧血、及び腎機能障害(例えば、急性腎不全)の低減又は休止からなる群から選択される1つ以上の症状の軽減を指し得る。
【0118】
「有効量」という用語は、所望の生物学的、治療的、及び/又は予防的結果を提供する薬剤の量を指す。その結果は、疾患の徴候、症状、若しくは原因の1つ以上の、低減、改善、緩和、低下、遅延、及び/又は軽減、或いは生物系の任意の他の所望の変更であり得る。一例において、「有効量」は、aHUSの少なくとも1つの症状を軽減することが臨床的に証明された抗C5抗体、又はその抗原結合断片の量である。有効量は、1回以上の投与で投与することができる。
【0119】
本明細書において使用されるとき、「末期腎疾患」(ESRD又は腎不全としても公知)という語句は、腎臓の十分な機能が停止し、それにより生存のために生涯にわたる透析又は腎移植を必要とする慢性腎疾患の最終ステージを指す。
【0120】
一実施形態において、p-aHUSを有するヒト患者を治療する方法であって、患者に有効量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片を投与することを含み、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号1、2、及び3に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列と、それぞれ配列番号4、5及び6に記載される配列を有するCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列とを含む方法が提供される。別の実施形態において、p-aHUSを有するヒト患者を治療する方法であって、患者に有効量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片を投与することを含み、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号7に記載されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号8に記載されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む方法が提供される。別の実施形態において、p-aHUSを有するヒト患者を治療する方法であって、患者に有効量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片を投与することを含み、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号10に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号11に記載されるアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む方法が提供される。
【0121】
一実施形態において、p-aHUSを有するヒト患者を治療する方法であって、患者に有効量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片を投与することを含み、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号19、18及び3に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列と、それぞれ配列番号4、5及び6に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列とを含む方法が提供される。別の実施形態において、抗体は、ヒト胎児性Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域をさらに含み、バリアントヒトFc CH3定常領域は、それぞれEU番号付けで、ネイティブヒトIgG Fc定常領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基においてMet-429-Leu及びAsn-435-Ser置換を含む。
【0122】
一実施形態において、抗C5抗体、又は抗原結合断片は、固定用量で投与する。例えば、一実施形態において、抗C5抗体、又は抗原結合断片は、患者の体重に関係なく、10mg、20mg、25mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、40mg、425mg、450mg、475mg、500mg、525mg、550mg、575mg、600mg、625mg、650mg、675mg、700mg、725mg、750mg、775mg、800mg、825mg、850mg、875mg、900mg、925mg、950mg、975mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600mg、1700mg、1800mg、1900mg、2000mg、2100mg、2200mg、2300mg、2400mg、2500mg、2600mg、2700mg、2800mg、2900mg、3000mg、3100mg、3200mg、3300mg、3400mg、3500mg、3600mg、3700mg、3800mg、3900mg、4000mg、4100mg、4200mg、4300mg、4400mg、4500mg、4600mg、4700mg、4800mg、4900mg、5000mg、5100mg、5200mg、5300mg、5400mg、5500mg、5600mg、5700mg、5800mg、5900mg、6000mg、6100mg、6200mg、6300mg、6400mg、6500mg、6600mg、6700mg、6800mg、6900mg、7000mg、7100mg、7200mg、7300mg、7400mg、7500mg、7600mg、7700mg、7800mg、7900mg、8000mg、8100mg、8200mg、8300mg、8400mg、8500mg、8600mg、8700mg、8800mg、8900mg、9000mg、9100mg、9200mg、9300mg、9400mg、9500mg、9600mg、9700mg、9800mg、9900mg、10000mg、10100mg、10200mg、10300mg、10400mg、10500mg、10600mg、10700mg、10800mg、10900mg又は11000mgの用量で投与する。別の実施形態において、抗C5抗体、又は抗原結合断片は、準治療用量で投与する。
【0123】
別の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)は、2400mg、2700mg、3000mg、3300mg、又は3600mgの用量で投与する。
【0124】
別の実施形態において、抗C5抗体、又は抗原結合断片の用量は、患者の体重に基づく。例えば、一実施形態において、10mg、20mg、25mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、500mg、525mg、550mg、575mg、600mg、625mg、650mg、675mg、700mg、725mg、750mg、775mg、800mg、825mg、850mg、875mg、900mg、925mg、950mg、975mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600mg、1700mg、1800mg、1900mg、2000mg、2100mg、2200mg、2300mg、2400mg、2500mg、2600mg、2700mg、2800mg、2900mg、3000mg、3100mg、3200mg、3300mg、3400mg、3500mg、3600mg、3700mg、3800mg、3900mg、4000mg、4100mg、4200mg、4300mg、4400mg、4500mg、4600mg、4700mg、4800mg、4900mg、5000mg、5100mg、5200mg、5300mg、5400mg、5500mg、5600mg、5700mg、5800mg、5900mg、6000mg、6100mg、6200mg、6300mg、6400mg、6500mg、6600mg、6700mg、6800mg、6900mg、7000mg、7100mg、7200mg、7300mg、7400mg、7500mg、7600mg、7700mg、7800mg、7900mg、8000mg、8100mg、8200mg、8300mg、8400mg、8500mg、8600mg、8700mg、8800mg、8900mg、9000mg、9100mg、9200mg、9300mg、9400mg、9500mg、9600mg、9700mg、9800mg、9900mg、10000mg、10100mg、10200mg、10300mg、10400mg、10500mg、10600mg、10700mg、10800mg、10900mg又は11000mgの抗C5抗体、又は抗原結合断片を≧40~<60kgの体重の患者に投与する。別の実施形態において、2400mg又は3000mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)を、≧40~<60kgの体重の患者に投与する。別の実施形態において、2400mg又は3000mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)を、≧40~<60kgの体重の患者に2週間毎に投与する。別の実施形態において、2400mg又は3000mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)を、≧40~<60kgの体重の患者に8週間毎に投与する。
【0125】
別の実施形態において、10mg、20mg、25mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、500mg、525mg、550mg、575mg、600mg、625mg、650mg、675mg、700mg、725mg、750mg、775mg、800mg、825mg、850mg、875mg、900mg、925mg、950mg、975mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600mg、1700mg、1800mg、1900mg、2000mg、2100mg、2200mg、2300mg、2400mg、2500mg、2600mg、2700mg、2800mg、2900mg、3000mg、3100mg、3200mg、3300mg、3400mg、3500mg、3600mg、3700mg、3800mg、3900mg、4000mg、4100mg、4200mg、4300mg、4400mg、4500mg、4600mg、4700mg、4800mg、4900mg、5000mg、5100mg、5200mg、5300mg、5400mg、5500mg、5600mg、5700mg、5800mg、5900mg、6000mg、6100mg、6200mg、6300mg、6400mg、6500mg、6600mg、6700mg、6800mg、6900mg、7000mg、7100mg、7200mg、7300mg、7400mg、7500mg、7600mg、7700mg、7800mg、7900mg、8000mg、8100mg、8200mg、8300mg、8400mg、8500mg、8600mg、8700mg、8800mg、8900mg、9000mg、9100mg、9200mg、9300mg、9400mg、9500mg、9600mg、9700mg、9800mg、9900mg、10000mg、10100mg、10200mg、10300mg、10400mg、10500mg、10600mg、10700mg、10800mg、10900mg、又は11000mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片を、≧60~<100kgの体重の患者に投与する。別の実施形態において、2700mg又は3300mgのC5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)を、≧60~<100kgの体重の患者に投与する。別の実施形態において、2700mg又は3300mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)を、≧60~<100kgの体重の患者に8週間毎に投与する。
【0126】
別の実施形態において、10mg、20mg、25mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、500mg、525mg、550mg、575mg、600mg、625mg、650mg、675mg、700mg、725mg、750mg、775mg、800mg、825mg、850mg、875mg、900mg、925mg、950mg、975mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600mg、1700mg、1800mg、1900mg、2000mg、2100mg、2200mg、2300mg、2400mg、2500mg、2600mg、2700mg、2800mg、2900mg、3000mg、3100mg、3200mg、3300mg、3400mg、3500mg、3600mg、3700mg、3800mg、3900mg、4000mg、4100mg、4200mg、4300mg、4400mg、4500mg、4600mg、4700mg、4800mg、4900mg、5000mg、5100mg、5200mg、5300mg、5400mg、5500mg、5600mg、5700mg、5800mg、5900mg、6000mg、6100mg、6200mg、6300mg、6400mg、6500mg、6600mg、6700mg、6800mg、6900mg、7000mg、7100mg、7200mg、7300mg、7400mg、7500mg、7600mg、7700mg、7800mg、7900mg、8000mg、8100mg、8200mg、8300mg、8400mg、8500mg、8600mg、8700mg、8800mg、8900mg、9000mg、9100mg、9200mg、9300mg、9400mg、9500mg、9600mg、9700mg、9800mg、9900mg、10000mg、10100mg、10200mg、10300mg、10400mg、10500mg、10600mg、10700mg、10800mg、10900mg又は11000mgの抗C5抗体、又は抗原結合断片を、≧100kgの体重の患者に投与する。別の実施形態において、3000mg又は3600mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)を、≧100kgの体重の患者に投与する。別の実施形態において、3000mg又は3600mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)を、≧100kgの体重の患者に8週間毎に投与する。
【0127】
別の実施形態において、p-aHUSを有するヒト患者を治療する方法であって、患者に抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)を(a)1日目に1回、≧40~<60kgの体重の患者に対して2400mg、≧60~<100kgの体重の患者に対して2700mg、又は≧100kgの体重の患者に対して3000mgの用量で;(b)15日目及びその後8週間毎に、≧40~<60kgの体重の患者に対して3000mg、≧60~<100kgの体重の患者に対して3300mg、又は≧100kgの体重の患者に対して3600mgの用量で投与することを含む方法が提供される。
【0128】
別の実施形態において、m-aHUSを有するヒト患者を治療する方法であって、抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)を、≧40~<60kgの体重の患者に、(a)1日目に1回、2400mgの用量で;(b)15日目及びその後8週間毎に、3000mgの用量で投与することを含む方法が提供される。
【0129】
別の実施形態において、p-aHUSを有するヒト患者を治療する方法であって、抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)を、≧60~<100kgの体重の患者に、(a)1日目に1回、2700mgの用量で;(b)投与サイクルの15日目及びその後8週間毎に、3300mgの用量で投与することを含む方法が提供される。
【0130】
別の実施形態において、p-aHUSを有するヒト患者を治療する方法であって、抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)を、≧100kgの体重の患者に、(a)1日目に1回、3000mgの用量で;(b)15日目及びその後8週間毎に、3600mgの用量で投与することを含む方法が提供される。
【0131】
別の実施形態において、p-aHUSを有するヒト患者を治療する方法であって、患者に有効量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片を投与することを含み、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号19、18及び3に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列と、それぞれ配列番号4、5及び6に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列と、ヒト胎児性Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc領域とを含み、バリアントヒトFc CH3領域は、それぞれEU番号付けで、ネイティブヒトIgG Fc領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基においてMet-429-Leu及びAsn-435-Ser置換を含み、抗C5抗体、又はその抗原結合断片を患者に(a)1日目に1回、≧40~<60kgの体重の患者に対して2400mg、≧60~<100kgの体重の患者に対して2700mg、又は≧100kgの体重の患者に対して3000mgの用量で;(b)15日目及びその後8週間毎に、≧40~<60kgの体重の患者に対して3000mg、≧60~<100kgの体重の患者に対して3300mg、又は≧100kgの体重の患者に対して3600mgの用量で投与することを含む方法が提供される。
【0132】
別の実施形態において、抗C5抗体、又は抗原結合断片は、1キログラム当たりのミリグラム(mg/kg)用量で投与する。例えば、一実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、0.1mg/kg、0.25mg/kg、0.5mg/kg、0.75mg/kg、1.0mg/kg、1.25mg/kg、1.50mg/kg、1.75mg/kg、2.0mg/kg、2.25mg/kg、2.50mg/kg、2.75mg/kg、3.0mg/kg、3.25mg/kg、3.50mg/kg、3.75mg/kg、4.0mg/kg、4.25mg/kg、4.50mg/kg、4.75mg/kg、5.0mg/kg、5.25mg/kg、5.50mg/kg、5.75mg/kg、6.0mg/kg、6.25mg/kg、6.50mg/kg、6.75mg/kg、7.0mg/kg、7.25mg/kg、7.50mg/kg、7.75mg/kg、8.0mg/kg、8.25mg/kg、8.50mg/kg、8.75mg/kg、9.0mg/kg、9.25mg/kg、9.50mg/kg、9.75mg/kg、10.0mg/kg、11.25mg/kg、11.50mg/kg、11.75mg/kg、12.0mg/kg、12.25mg/kg、12.50mg/kg、12.75mg/kg、13.0mg/kg、13.25mg/kg、13.50mg/kg、13.75mg/kg、14.0mg/kg、14.25mg/kg、14.50mg/kg、14.75mg/kg、15.0mg/kg、15.25mg/kg、15.50mg/kg、15.75mg/kg、16.0mg/kg、16.25mg/kg、16.50mg/kg、16.75mg/kg、17.0mg/kg、17.25mg/kg、17.50mg/kg、17.75mg/kg、18.0mg/kg、18.25mg/kg、18.50mg/kg、18.75mg/kg、19.0mg/kg、19.25mg/kg、19.50mg/kg、19.75mg/kg、20.0mg/kg、20.25mg/kg、20.50mg/kg、20.75mg/kg、21.0mg/kg、21.25mg/kg、21.50mg/kg、21.75mg/kg、22.0mg/kg、22.25mg/kg、22.50mg/kg、22.75mg/kg、23.0mg/kg、23.25mg/kg、23.50mg/kg、23.75mg/kg、24.0mg/kg、24.25mg/kg、24.50mg/kg、24.75mg/kg又は25.0mg/kgの用量で投与する。
【0133】
一実施形態において、抗C5抗体、又は抗原結合断片は、週1回、週2回、週3回、週4回、週5回、週6回、又は毎日投与する。別の実施形態において、抗C5抗体、又は抗原結合断片は、1日2回投与する。別の実施形態において、抗C5抗体、又は抗原結合断片は、2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、5週間毎に1回、6週間毎に1回、7週間毎に1回、8週間毎に1回、9週間毎に1回、10週間毎に1回、11週間毎に1回又は12週間毎に1回投与する。別の実施形態において、抗C5抗体、又は抗原結合断片は、1日目に負荷用量で、次いで15日目及びその後8週間毎に異なる維持用量で投与する。
【0134】
他の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、症状が最初に生じた直後に投与する。他の実施形態において、治療は、症状が最初に生じてから1~20日後に開始する。他の実施形態において、治療は、症状が最初に生じてから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20日後に開始する。他の実施形態において、治療は、分娩の5~15日後に開始する。他の実施形態において、治療は、分娩の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20日後に開始する。別の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、1つ以上の投与サイクルで投与する。一実施形態において、投与サイクルは、26週間である。別の実施形態において、治療は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11サイクルを含む。別の実施形態において、患者を約1、2、3、4、5、又は6か月間治療する。別の実施形態において、治療は、ヒト患者の生涯にわたり継続する。
【0135】
一部の実施形態において、患者は、補体阻害剤で以前に治療されたことがない(例えば、患者は、補体阻害剤治療未経験の患者である)。別の実施形態において、患者は、以前に血漿交換及び/又は透析を受けた、補体阻害剤治療未経験の患者である。
【0136】
抗C5抗体、又は抗原結合断片は、任意の好適な手段を介して投与することができる。一実施形態において、抗C5抗体、又は抗原結合断片は、静脈内投与する。別の実施形態において、抗C5抗体、又は抗原結合断片は、皮下投与する。
【0137】
一部の実施形態において、本明細書に記載の方法に従って治療される患者は、治療を開始する前3年以内に、又は治療を開始する時点で、髄膜炎菌感染に対してワクチン接種されている。一実施形態において、髄膜炎菌ワクチンを受けた後2週間未満で治療を受けた患者は、ワクチン接種の2週間後まで適切な予防抗生物質でも治療される。別の実施形態において、本明細書に記載の方法に従って治療される患者は、髄膜炎菌血清型A、C、Y、W135及び/又はBに対してワクチン接種される。
【0138】
別の態様において、記載される治療レジメンは、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の特定の血清トラフ濃度を維持するのに十分である。治療は、例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、200、205、210、215、220、225、230、240、245、250、255、260、265、270、280、290、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395、又は400μg/mL以上の抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持し得る。一実施形態において、治療は、100μg/mL以上の抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態において、治療は、150μg/mL以上の抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態において、治療は、200μg/mL以上の抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態において、治療は、250μg/mL以上の抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態において、治療は、300μg/mL以上の抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態において、治療は、100μg/mL~200μg/mLの抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。。別の実施形態において、治療は、約175μg/mLの抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。
【0139】
別の実施形態において、有効な奏効を得るため、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり少なくとも50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、90μg、95μg、100μg、105μg、110μg、115μg、120μg、125μg、130μg、135μg、140μg、145μg、150μg、155μg、160μg、165μg、170μg、175μg、180μg、185μg、190μg、195μg、200μg、205μg、210μg、215μg、220μg、225μg、230μg、235μg、240μg、245μg、250μg、255μg又は260μgの抗体を維持するための量及び頻度で、患者に投与する。別の実施形態において、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり50μg~250μgの抗体を維持するための量及び頻度で、患者に投与する。別の実施形態において、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり100μg~200μgの抗体を維持するための量及び頻度で、患者に投与する。別の実施形態において、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり約175μgの抗体を維持するための量及び頻度で、患者に投与する。
【0140】
別の実施形態において、有効な奏効を得るため、抗C5抗体は、最小遊離C5濃度を維持するための量及び頻度で、患者に投与する。抗C5抗体は、例えば、0.2μg/mL、0.3μg/mL、0.4μg/mL、0.5μg/mL以下の遊離C5濃度を維持するための量及び頻度で、患者に投与することができる。別の実施形態において、本明細書に記載の治療は、治療期間全体にわたり遊離C5濃度を99%超だけ低減させる。別の実施形態において、治療は、治療期間全体にわたり遊離C5濃度を99.5%超だけ低減させる。
【0141】
別の態様において、本明細書に記載のp-aHUSを治療する方法は、単独で、又は1つ以上の追加の治療及び/又は治療剤と組み合わせて使用することができる。例えば、一実施形態において、方法は、患者に抗炎症剤(例えば、プレドニゾン)を投与することをさらに含む。
IV.アウトカム
患者におけるp-aHUSを治療する方法であって、患者に抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)を投与することを含む方法が本明細書に提供される。
【0142】
p-aHUSの症状としては、限定されるものではないが、重症高血圧症、タンパク尿症、尿毒症、嗜眠/疲労、易怒性、血小板減少症、微小血管症性溶血性貧血、及び腎機能障害(例えば、急性腎不全)が挙げられる。本明細書に開示される方法に従って治療される患者は、好ましくは、p-aHUSの少なくとも1つの徴候の改善が認められる。
【0143】
他の実施形態において、治療は、終末補体阻害をもたらす。
【0144】
他の実施形態において、治療は、遊離ヘモグロビン、ハプトグロビン、網状赤血球数、PNH赤血球(RBC)クローン及びD-ダイマーからなる群から選択される溶血関連の血液学的バイオマーカーの正常レベルに向かうシフトを生じさせる。
【0145】
別の実施形態において、治療は、患者の治療前ベースラインからのヘモグロビン安定化の増加を生じさせる。別の実施形態において、治療は、ヘモグロビンの≧20g/dLの増加をもたらす。
【0146】
他の実施形態において、治療は、血小板正常化(≧150×109/L)をもたらす。他の実施形態において、治療は、少なくとも28日間(例えば、少なくとも28日、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、1年、又は2年間)、血小板正常化(≧150×109/L)をもたらす。他の実施形態において、治療は、治療開始の5~12日後に血小板正常化をもたらす。例えば、一実施形態において、血小板正常化は、治療開始の5、6、7、8、9、10、11、又は12日後に生じる。特定の実施形態において、血小板正常化は、治療開始の8日後に生じる。
【0147】
他の実施形態において、治療は、LDH正常化(≦246U/L)をもたらす。他の実施形態において、治療は、少なくとも28日間(例えば、少なくとも28日、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、1年、又は2年間)、LDH正常化(≦246U/L)をもたらす。
【0148】
他の実施形態において、治療は、治療開始の5~12日後にLDH正常化をもたらす。例えば、一実施形態において、LDH正常化は、治療開始の5、6、7、8、9、10、11、又は12日後に生じる。別の実施形態において、LDH正常化は、治療開始の8日後に生じる。別の実施形態において、LDH及び血小板正常化は、治療開始の8日後に生じる。
【0149】
他の実施形態において、治療は、ベースラインからの血清クレアチニンの≧25%の改善をもたらす。他の実施形態において、治療は、≧28日間空けた2回の別個の評価においてベースラインからの血清クレアチニンの≧25%の改善をもたらす。他の実施形態において、治療は、少なくとも28日間(例えば、少なくとも28日、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、1年、又は2年間)、ベースラインからの血清クレアチニンの≧25%の改善をもたらす。
【0150】
他の実施形態において、治療は、完全TMA奏効(すなわち、血小板正常化(≧150×109/L)、LDH正常化(≦246U/L)、及びベースラインからの血清クレアチニンの≧25%の改善)をもたらす。他の実施形態において、治療は、少なくとも28日間(例えば、少なくとも28日、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、1年、又は2年間)、完全TMA奏効をもたらす。他の実施形態において、治療は、約57日間未満(例えば、56、55、54、53、52、51、50、49、48、48、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1日間)で患者における完全TMA奏効を付与する。他の実施形態において、治療は、約43日間未満で患者における完全TMA奏効を付与する。他の実施形態において、治療は、約22日間未満で患者における完全TMA奏効を付与する。他の実施形態において、治療は、約15日間未満で患者における完全TMA奏効を付与する。他の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)でのp-aHUS患者の治療は、約32日間(範囲:8日間~57日間、9日間~46日間の95%のCI)で完全TMA奏効を付与する。
【0151】
他の実施形態において、治療は、修正された完全TMA奏効(すなわち、血小板正常化(≧150×109/L)、LDH正常化(≦246U/L)、及び患者がベースラインにおいて透析中の場合に透析から離脱すること又はベースラインにおいて透析から離脱した患者についてはベースラインからの血清クレアチニンの≧25%の改善)をもたらす。他の実施形態において、治療は、少なくとも28日間(例えば、少なくとも28日、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、1年、又は2年間)、修正された完全TMA奏効をもたらす。
【0152】
他の実施形態において、治療は、血小板数正常化(例えば、≧150×109/L)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)正常化(例えば、≦246U/L)、好ましくは、経時的な血小板数及びLDH正常化の両方と任意選択で血清クレアチニンの改善(例えば、≧25%の改善)(例えば、≧28日間空けた2回の別個の評価)を含む血液学的正常化をもたらす。
【0153】
他の実施形態において、治療は、輸血の必要性の低減を生じさせる。別の実施形態において、治療は、輸血回避の70%超の増加を生じさせる。
【0154】
他の実施形態において、治療は、ベースラインと比較して透析の要求状態を改善し、例えば、透析の低減又は完全な中止である。一実施形態において、治療は、15~30日以内に透析の中止をもたらす。例えば、他の実施形態において、透析は、治療開始の15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30日後に中止される。一実施形態において、透析は、治療開始の約21日後に中止される。
【0155】
他の実施形態において、治療は、主要血管有害事象(MAVE)の低減を生じさせる。
【0156】
他の実施形態において、治療は、慢性疾患治療の機能的評価(FACIT)-疲労スケール、バージョン4及び欧州癌研究治療機関の生活の質アンケート-コア30スケールを介して評価される、ベースラインからの生活の質の変化を生じさせる。一実施形態において、治療は、FACIT-疲労スケールを介して評価される、ベースラインからの生活の質の1ポイント以上(例えば、1、2、又は3ポイント)だけの変化を生じさせる。別の実施形態において、治療は、治療開始の150日以上(例えば、150日、151日、152日、153日、154日、155日、156日、157日、158日、159日、160日、161日、162日、163日、164日、165日、166日、167日、168日、169日、170日、171日、172日、173日、174日、175日、176日、177日、178日、179日、180日、181日、182日、183日、184日、185日、186日、187日、188日、189日、190日、191日、192日、193日、194日、195日、196日、197日、198日、199日、200日、205日、210日、215日、220日、又は225日)後にFACIT-疲労スケールを介して評価される、ベースラインからの生活の質の3ポイントだけの変化を生じさせる。
【0157】
他の実施形態において、治療は、eGFRの正常レベル(例えば、≧90)に向かうシフトをもたらす。別の実施形態において、治療は、ベースラインと比較してeGFR状態を改善する。他の実施形態において、治療は、治療開始の5~10日以内にベースラインと比較してeGFR状態を改善する。例えば、一実施形態において、治療は、治療開始の5、6、7、8、9、又は10日以内にベースラインと比較してeGFR状態を改善する。別の実施形態において、治療は、治療開始の8日以内にベースラインと比較してeGFR状態を改善する。
【0158】
他の実施形態において、治療は、妊娠を(例えば、数日間、数週間、又は数か月間だけ)延長させる。例えば、一部の実施形態において、治療は、妊娠を1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、又は60日間だけ延長させる。他の実施形態において、治療は、妊娠を1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20週間だけ延長させる。他の実施形態において、治療は、妊娠を1、2、3、4、又は5か月だけ延長させる。他の実施形態において、治療は、在胎期間を(例えば、数日間、数週間、又は数か月間だけ)進行させる。例えば、一部の実施形態において、治療は、在胎期間を1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、又は60日間だけ進行させる。他の実施形態において、治療は、在胎期間を1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20週間だけ進行させる。他の実施形態において、治療は、在胎期間を1、2、3、4、又は5か月間だけ進行させる。
【0159】
他の実施形態において、治療は、末期腎疾患(ESRD)を予防する。他の実施形態において、治療は、ESRDまでの時間を(例えば、数日間、数週間、数か月間、又は数年間だけ)、例えば、少なくとも10か月、少なくとも20か月、少なくとも40か月、少なくとも60か月、少なくとも80か月、少なくとも100か月、又は少なくとも120か月だけ延長させる。一部の実施形態において、治療は、血栓性微小血管障害症(TMA)の初期顕性化後にESRDまでの時間を延長させる。TMA顕性化は、定型的な方法を使用して分析することができ、例えば、(A)(1)≧25%の血小板数減少及び<基準値下限(LLN);(2)≧25%の血清クレアチニン(SCr)の増加及び>基準値上限(ULN)並びに(3)≧25%のLDHの増加及び>ULNから選択される≧2つの実験室値の変化の発生;(B)(1)血栓症;(2)発作;(3)腎機能の低減;(4)タンパク尿症;(5)血尿症;(6)溶血性貧血の増加;(7)生検により確定診断されたTMA;若しくは(8)TMAの腎臓外徴候(例えば、錯乱、心血管異常、心膜炎、胃腸管症状/下痢)から選択される臨床徴候/症状;又は(C)代償要求、例えば、血漿交換/血漿注入(PE/PI);透析;輸血;若しくは腎移植。
【0160】
他の実施形態において、治療は、患者の生存期間を(例えば、数日間、数週間、数か月間、又は数年間だけ)延長させる。
V.キット及び単位剤形
本明細書に記載の方法における使用のために適応された治療有効量で、抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、既に本明細書に記載のもののいずれか)及び薬学的に許容可能な担体を含有する医薬組成物を含むキットも本明細書に提供される。キットは、任意選択で、p-aHUSを有する患者に組成物を投与するために、その中に含有される組成物を実務者(例えば、医師、看護師又は患者)が投与するのを可能にするための、例えば、投与スケジュールを含む指示書も含み得る。キットは、シリンジも含み得る。
【0161】
任意選択で、キットは、上記で提供される方法に従う単回投与のための、有効量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片をそれぞれが含有する単一用量医薬組成物の複数のパッケージを含む。(1つ以上の)医薬組成物の投与に必要な装置又はデバイスも、キットに含めることができる。例えば、キットは、ある量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片を含有する1つ以上のプレフィルドシリンジを提供し得る。
【0162】
一実施形態において、ヒト患者におけるp-aHUS(例えば、産後aHUS)を治療するためのキットであって、(a)ある用量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片であって、それぞれ配列番号1、2、及び3に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列と、それぞれ配列番号4、5及び6に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列とを含む抗C5抗体、又はその抗原結合断片;並びに(b)本明細書に記載の方法において抗C5抗体、又はその抗原結合断片を使用するための指示書を含むキットが提供される。
【0163】
別の実施形態において、ヒト患者におけるp-aHUS(例えば、産後aHUS)を治療するためのキットであって、(a)ある用量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片であって、配列番号7に記載されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号8に記載されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む抗C5抗体、又はその抗原結合断片;及び(b)本明細書に記載の方法において抗C5抗体、又はその抗原結合断片を使用するための指示書を含むキットが提供される。
【0164】
別の実施形態において、ヒト患者におけるp-aHUS(例えば、産後aHUS)を治療するためのキットであって、(a)ある用量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片であって、配列番号10に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号11に記載されるアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗C5抗体、又はその抗原結合断片;及び(b)本明細書に記載の方法において抗C5抗体、又はその抗原結合断片を使用するための指示書を含むキットが提供される。
【0165】
別の実施形態において、ヒト患者におけるp-aHUS(例えば、産後aHUS)を治療するためのキットであって、(a)ある用量のエクリズマブ及び(b)本明細書に記載の方法においてエクリズマブを使用するための指示書を含むキットが提供される。
【0166】
別の実施形態において、ヒト患者におけるp-aHUS(例えば、産後aHUS)を治療するためのキットであって、(a)ある用量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片であって、それぞれ配列番号19、18及び3に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列と、それぞれ配列番号4、5及び6に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列とを含む抗C5抗体、又はその抗原結合断片;並びに(b)本明細書に記載の方法において抗C5抗体、又はその抗原結合断片を使用するための指示書を含むキットが提供される。
【0167】
別の実施形態において、ヒト患者におけるp-aHUS(例えば、産後aHUS)を治療するためのキットであって、(a)ある用量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片であって、それぞれ配列番号19、18及び3に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列と、それぞれ配列番号4、5及び6に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列と、ヒト新生児Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc領域とを含み、バリアントヒトFc CH3領域は、それぞれEU番号付けで、ネイティブヒトIgG Fc領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基においてMet-429-Leu及びAsn-435-Ser置換を含む抗C5抗体、又はその抗原結合断片;並びに(b)本明細書に記載の方法において抗C5抗体、又はその抗原結合断片を使用するための指示書を含むキットが提供される。
【0168】
別の実施形態において、ヒト患者におけるp-aHUS(例えば、産後aHUS)を治療するためのキットであって、(a)ある用量のラブリズマブ及び(b)本明細書に記載の方法においてラブリズマブを使用するための指示書を含むキットが提供される。
【0169】
特に定義のない限り、本明細書において使用される全ての技術及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者により一般に理解される意味と同じ意味を有する。本開示における使用のための方法及び材料が記載され;当該技術分野において公知の他の好適な方法及び材料を使用することもできる。材料、方法、及び実施例は説明にすぎず、限定を意図するものではない。本明細書に挙げられる全ての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリー(例えば、PUBMED、NCBI又はUNIPROTアクセッション番号)、及び他の参照文献は、参照により全体として組み込まれる。
【実施例】
【0170】
実施例1:産後非典型溶血性尿毒症症候群を有する患者におけるラブリズマブの有効性及び安全性
A.試験オーバーサイト及び試験設計
311臨床試験(NCT02949128)は、補体阻害剤治療未経験のaHUSを有する成人に静脈内(IV)注入により投与されるULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)の有効性及び安全性を評価するために設計された第3相単一アーム多施設試験である。この分析に含まれる患者は、≧18歳且つ≧40kgの体重で、産後における活性TMA(血小板減少症、溶血及び腎機能不全の証拠)及び分娩後≧3日間継続するTMAの証拠を有した。患者は、ローカル実験室からの結果に基づき血小板及び乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)基準(それぞれ<150×109及び≧1.5×基準値上限)を満たし得たが、血清クレアチニン基準(≧基準値上限)はベースラインにおいてセントラル実験室により確認しなければならなかった。
【0171】
試験は、183日間の初期評価期間からなるものであった。表1に記載されるとおり、ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)を産後aHUS患者に初期負荷用量で、次いで2週間後に8週間毎に1回の間隔で維持用量で患者の体重に基づき投与した。具体的には、ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)を、1日目に、≧40~<60kg、≧60~<100kg、及び≧100kg患者においてそれぞれ2400mg、2700mg及び3000mgの静脈内(IV)負荷用量を介して投与した。それぞれ3000mg、3300mg、3600mgの維持用量を15日目、次いでその後8週間毎に投与した。ベースラインを初回試験薬物注入の時点前までのスクリーニングの期間として定義し、1日目を含めた。
【0172】
【0173】
患者は、治療開始時に地方及び国のガイドラインに従って髄膜炎菌ワクチン接種を受けていなければならず、ワクチン接種の少なくとも2週間後までULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)の初回投与時から抗生物質予防を受けることも要求された。
【0174】
ADAMTS13欠損(活性<5%);志賀毒素産生性大腸菌(Escherichia coli)-HUS;スクリーニング6か月前の造血幹細胞移植及びスクリーニング5年以内の悪性腫瘍の病歴を有する患者は除外した。補体阻害剤、免疫抑制療法(腎移植レジメンは除く)、ステロイドを受けている患者、7日以内にトラネキサム酸を受けた患者、及び慢性透析中の患者も除外した。血漿交換/注入(PE/PI)をULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)の初回投与まで許容し、その後は許容しなかったが、治療が28日間を超過する場合は患者を排除した。
【0175】
プロトコルはそれぞれの参加施設における倫理審査委員会又は独立倫理委員会により承認され、試験をヘルシンキ宣言及び国際医学団体協議会による国際的倫理ガイドライン(Council for International Organizations of Medical Sciences International Ethical Guidelines)に従って実施した。
B.有効性及び安全性エンドポイント
主要有効性エンドポイントは、183日間の初期評価期間を通しての完全TMA奏効であった。完全TMA奏効についての基準は、≧28日間空け、その間の任意の測定の2回の別個の評価において同時に満たすベースラインからの血小板数正常化(≧150×109/L)、LDH正常化(≦246U/L)及び血清クレアチニンの≧25%の改善であった。患者がベースラインにおいて透析中であった場合、初回有効ベースライン値は透析の6日以上後における初回評価であった。透析をULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)開始前5日以内に行った場合、患者をベースラインにおいて透析中であるとみなした。
【0176】
含まれる試験の副次目的:完全TMA奏効までの時間;血液学的変数(血小板、LDH、及びヘモグロビン)の変化;推定糸球体濾過量(eGFR)値の変化;及び透析要求状態。全エクソームシーケンシングによる探索的遺伝子分析を元の試験における患者に対して実施した。この分析に含まれる個々の患者を治療する施設で実施される追加の遺伝子分析も含めた。ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)の安全性及び忍容性を臨床及び実験室評価並びに有害事象(AE)及び重篤なAE(SAE)の頻度により評価した。
C.結果
i.患者特徴
37.7の年齢の中央値(範囲;22.1~45.2)を有する8人の分娩後患者を特定し、分娩の12日以内に診断した。これらの患者は選択基準を満たし、これらの患者を登録し、これらの患者はULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)の≧1回の用量を受けた。7人の患者は白色人種であった(1人はアジア人であった)。6人の患者(75%)は、ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)治療前に血漿交換を受けていた。5人の患者(63%)は、ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)治療前に透析中であった。試験の間に授乳している患者は報告されなかった。ベースライン人口統計及び疾患特徴を表2に示す。
【0177】
ベースラインにおいて、且つ任意のULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)投与前、全ての患者は妊娠又は分娩に伴う急性の重篤な医療的緊急事態、例として、子宮内死、出血、及び輸血の必要を呈した。全ての患者は、分娩合併症を有し、産後で呈した。8人の患者のうち5人は緊急分娩を有し、そのうち4例は帝王切開であり、術後に重篤な合併症を有した。5人目の患者は予定帝王切開を有し、同様に分娩後に重篤な合併症を有した。それぞれ2人の患者で妊娠高血圧腎症及び高血圧症が報告され、それぞれ1人の患者で腎不全及び胃腸管性糖尿病が報告された。2人の患者は胎盤早期剥離を罹患し、それらの症例のうち1人で出生前胎児死亡をもたらした。5人の患者は緊急帝王切開を受け、4例において合併症が生じ、2例において出血が生じ、2例において二次子宮摘出が生じ(1人は出血)、1例において胎児死亡が生じた。TMA前の事象に関する追加のデータを表3に詳述する。
【0178】
全ての患者は、183日間の初期評価期間を試験中止も薬物中止もなく完了した。
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
ii.主要エンドポイント
初期評価期間の間、8人の患者の7人(87.5%)が完全TMA奏効の主要エンドポイントを満たした(
図1)。完全TMA奏効を達成しなかった患者は、ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)治療に対して急速な応答を有し、8日目に血小板及びLDHの両方の正常化を伴った。その女性患者は初回投与の5日前に透析セッションを有し、ベースラインクレアチニンは8日目に得られた値であった(プロトコルにより定義される最後の透析セッションの≧6日後)。8日目、この患者は血清クレアチニンレベルを51μmol/Lに既に改善し、完全TMA奏効基準を満たす要件であったこの値からの血清クレアチニンの25%の追加の改善が達成されなかった。
iii.副次エンドポイント
完全TMA奏効までの時間の中央値(95%CI)は、31.5(9.0、46.0)日間であった(
図1)。血液学的正常化、血小板数及びLDH正常化は、全ての患者(100%)において観察された。血小板数及びLDH値は両方とも急速に改善した(
図2及び
図3)。概して、eGFRは8日間で急速な改善を示し、初期評価期間全体にわたり改善を継続した(
図4)。ベースラインにおいて透析中の全ての患者は、ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)での治療開始の21日以内に透析を中止することができた。183日目までに、ベースラインにおいて透析中の5人全ての患者が透析を中止し、8人全ての患者がベースラインから183日目までeGFR状態を改善した。
iv.安全性
治療開始後の有害事象を、分析に含まれる8人全ての患者において記録した(表4参照)。少なくとも2人の患者において報告された最も一般的な有害事象は、頭痛及び発熱であった(それぞれ3人の患者で生じた)。それぞれ2人の患者において報告された他の有害事象としては、便秘、尿路感染、鼻咽頭炎、脱毛症、高血圧症、関節痛、アラニンアミノトランスフェラーゼの増加、及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの増加が挙げられた。3つの考えられる重篤でない治療関連有害事象(調査者により決定)は、2人の患者において記録された(関節痛及び鼻咽頭炎;尿路感染)。両方の患者はこれらの事象から回復した。1つの重篤な有害事象が報告された。この事象は、ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)での治療と無関連の定型的な腎生検であった。死亡も髄膜炎菌感染も生じなかった。
【0184】
【0185】
D.考察
これは、産後で顕在化するaHUSを有する患者におけるC5阻害剤の有効性及び安全性を評価するための最大のプロスペクティブ介入試験である。分析された全ての患者は、産後直後に重篤な医療的緊急事態及び分娩後の合併症を呈した。患者はULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)での治療に急速に応答し、7/8人(84.5%)の患者が43日目(時間の中央値31.5日間)までに完全TMA奏効の主要エンドポイントに達した。安全性の懸念は特定されなかった。
【0186】
この試験において得られたデータは、311試験においてaHUSを有する患者の完全コホートと比較して産後で呈する患者が高い比率でULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)治療でTMAを消失させたことを示す。この分析における患者は、初発症状の直後(範囲;2~18日間)に治療を受けた一方、311試験における治療までの時間がより幅があり、患者は、早くも症状の発症時に、又はaHUSの初発症状の215か月後ほど遅くにULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)のその初回用量を受け、早期治療の重要性が強調された。さらに、患者のこのサブグループにおける完全TMA奏効までの時間の中央値は、31.5日間(透析中の患者については38.2日間)で急速であるのに対して、311試験における完全コホートについては86日間であった。過去の臨床試験データは、腎臓アウトカムが疾患顕性化の7日以内に補体阻害剤治療を開始する患者において、7日後に治療を開始する患者よりも良好であることを実証している。試験の基準により1人の患者は完全TMA奏効を達成しなかったが、この患者はULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)での治療に対して応答し、全ての臨床パラメータ、例として、血清クレアチニンレベル、血小板及びLDHの正常化が8日目までに改善し、最後のフォローアップ時に腎機能が完全に回復した。
【0187】
既に記載されるとおり、患者は重篤な病態を呈した。患者の62.5%がベースラインにおいて透析を要求し、患者の87.5%が集中治療室レベルのケアを要求し、妊娠により誘発されたaHUSを有する患者を詳述する他の報告と類似であった。
【0188】
病原性バリアントに関して、補体異常の特定と、ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)に対する応答との間に関連は見出されなかった(1人の患者は補体B因子(CFB)バリアントを有し、1人の患者は抗補体H因子(CFH)抗体を有した)。ここで分析された患者のサブグループは顕著な出血を伴う分娩合併症を有し、他の試験において示唆されるとおり、それは症候群を誘発し得た。重篤な素因(CFB病原性バリアント)を有する1人の患者は正常な分娩を有した一方、病原性バリアントが特定されない患者の一部は重篤な出血合併症、高血圧症及び妊娠高血圧腎症、並びに結果的により重篤な臨床所見を有した。本試験において、5人の患者が緊急分娩を受け、そのうち4人が帝王切開によるものであった(5人目の患者は、既に予定された帝王切開も有し、術後に合併症を伴った)。このサブグループにおける観察に基づき、本発明者らの試験において病原性バリアントについて陽性と判定された患者は2人のみであり、重篤な遺伝子素因を有する患者がaHUSを発症するための重篤なトリガーを必ずしも必要としない一方、より重篤なトリガーを有する患者が疾患を発症するために公知の強力な病原性バリアントを必要としない場合があることが仮定される。
【0189】
完全311コホートにおける治療関連AEの比率は、この分析における患者のサブグループのものと類似し(それぞれ34.5%及び37.5%)、追加の安全性の懸念はここでは特定されなかった。完全311コホートにおいて、最も一般的なAEは頭痛、下痢、及び嘔吐であった一方、このサブグループにおいては頭痛及び発熱が最も一般的であった。患者は死亡もせず、髄膜炎菌感染にも罹患しなかった。
E.結論
長時間作用型C5阻害剤ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)の有効性及び安全性を評価するこの最初のプロスペクティブ介入試験において、aHUSにより誘発されたTMAは産後患者において急速に消失し、経時的な改善が継続され、許容可能な安全性プロファイルが示された。さらに、8週間毎の投薬間隔でのULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)での治療は、産後aHUSを有する患者において急速に改善された血液学的及び腎臓エンドポイントをもたらした。この試験からの結果は、産後aHUSを呈する女性におけるULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)の使用を支持する。
実施例2:グローバルaHUSレジストリ分析:妊娠誘発非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)の特徴及びアウトカム
妊娠誘発aHUS(p-aHUS)は、aHUS診断の10~20%を占める。補体媒介血栓性微小血管障害症(CM-TMA)は、高い母体及び胎児罹病率及び致死率、例として、末期腎疾患(ESRD)と関連付けることができる。補体C5阻害剤エクリズマブで治療された患者におけるp-aHUSの臨床特徴及び生存確率を、単一試験において利用可能なp-aHUSデータの最大コレクションを使用して記載した。
A.方法
aHUSの臨床診断を有する患者を、グローバルaHUSレジストリ(NCT01522183)に含めた。p-aHUSを有する患者は、妊娠の間又は産後60日以内に初回TMA顕性化を有する者と特定した。aHUSの他のトリガーを有する患者は除外した。ESRDまでの時間に基づく生存期間をカプラン・マイヤー法により計算した。
B.結果
レジストリにおいて、51/1029人の女性患者がp-aHUSと診断され、27人がエクリズマブを受けた。妊娠発生時年齢の平均±SDは30.7±5.9歳であった。p-aHUSは28人(54.9%)の患者において妊娠の間に生じ、残りは産後に生じた。妊娠高血圧腎症又はHELLP(溶血、肝酵素上昇、低血小板数)症候群の診断は、それぞれ28人(54.9%)及び17人(33.3%)の患者において報告された。補体病原性バリアントは23人(45.1%)の患者において特定され、そのうち3人(8.3%)はさらに抗補体H因子抗体について陽性と判定された。エクリズマブ治療期間の平均±SDは1.8±1.8年であった。生存確率は、エクリズマブ治療患者において、エクリズマブを受けない患者と比較して高かった(
図5参照)。
C.考察
生存確率は、エクリズマブが利用可能でない場合に診断された患者において、エクリズマブを受けた患者と比較して低かった。エクリズマブでの良好な治療は、補体病原性バリアントを有する患者のほぼ半数に加え、CM-TMAとしてのP-aHUSの適切な分類を裏付ける。
【0190】
【0191】
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
【配列表】
【国際調査報告】