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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-03
(54)【発明の名称】バイオプリンティングシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 35/00 20060101AFI20230224BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20230224BHJP
   A61L 27/14 20060101ALI20230224BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20230224BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20230224BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230224BHJP
   A61F 2/10 20060101ALI20230224BHJP
   A61B 34/30 20160101ALI20230224BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20230224BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20230224BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230224BHJP
【FI】
A61M35/00 Z
C12N5/071
A61L27/14
A61L27/38
C12N1/00 A
C12M1/00 A
A61F2/10
A61B34/30
B33Y30/00
B33Y70/00
B33Y10/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022533436
(86)(22)【出願日】2020-12-07
(85)【翻訳文提出日】2022-08-02
(86)【国際出願番号】 AU2020051333
(87)【国際公開番号】W WO2021108870
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】2019904627
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518022570
【氏名又は名称】インベンティア ライフ サイエンス プロプライアタリー リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】グレゴワール アンドリュー フランシス シャロニー
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト ピローニ
(72)【発明者】
【氏名】ザカリー ベンジャミン アーティスト
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル ジェイムズ マイヤーズ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー セクストン
(72)【発明者】
【氏名】エイデン パトリック オーマホニー
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ウェン-フェン リム
(72)【発明者】
【氏名】ディアナ マレー フード
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4C081
4C097
4C267
【Fターム(参考)】
4B029AA21
4B029BB11
4B029CC02
4B029GA08
4B029GB10
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BC46
4B065CA44
4C081AB11
4C081CD34
4C081DA12
4C097AA23
4C097BB02
4C097BB08
4C097BB10
4C097DD15
4C267AA61
4C267BB06
4C267BB70
4C267CC01
4C267GG12
4C267GG16
4C267HH08
4C267HH10
4C267HH22
(57)【要約】
本開示は、液体を直接対象に印刷するためのバイオプリンティングシステム(100)を提供する。バイオプリンティングシステム(100)はバイオプリンティング組立体(102)を備える。任意選択で、ロボットアーム(104)及び制御システム(150)が装備される。バイオプリンティング組立体(102)は、対象に対して位置決め可能であるようにロボットアーム(104)に結合されうる。バイオプリンティング組立体(102)は、液体を対象に分注するように構成され、液体を保持するためのリザーバー(120)、及び印刷の直前にリザーバー(120)に液体をプライミングするための充填機構(134)を備える。充填機構(134)は一方向入口を有して、液体がリザーバー(120)に充填されることを可能にし、流体がその一方向入口を介してリザーバーから出ることを防止する。また、関連する方法も提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の部位に液体を印刷するためのバイオプリンティングシステムであって、
前記液体を前記対象の前記部位に分注するように構成されたバイオプリンティング組立体であって、前記バイオプリンティング組立体によって分注される前記液体を保持するように構成された少なくとも1つのリザーバーを有するバイオプリンティング組立体、及び前記液体を前記対象に印刷する前に、前記液体で前記リザーバーを充填するように構成された前記リザーバーと流体連通する充填機構であって、前記液体が前記リザーバーに充填されることを可能にする一方向入口を備え、かつ流体が前記一方向入口を介して前記リザーバーから出ることを防止する充填機構
を備えるバイオプリンティングシステム。
【請求項2】
前記対象が患者であり、前記部位が前記対象の皮膚の傷であり、かつ前記バイオプリンティング組立体によって分注された前記液体が前記傷の上にゲルを形成する、請求項1に記載のバイオプリンティングシステム。
【請求項3】
前記バイオプリンティング組立体に結合されたロボットアームであって、前記バイオプリンティング組立体を前記部位の上に移動させ、位置決めするように構成されたロボットアーム、並びに
前記バイオプリンティング組立体及び前記ロボットアームを制御するように構成された制御システム
をさらに備える、請求項1又は2に記載のバイオプリンティングシステム。
【請求項4】
前記バイオプリンティング組立体が、前記バイオプリンティング組立体と前記対象の前記部位との間の距離をモニターするように構成された距離センサーをさらに備え、かつ前記制御システムが、前記距離センサーからの距離情報を使用して前記ロボットアームを制御して、前記液体を印刷している間、前記バイオプリンティング組立体を前記部位から所定の距離に維持するように構成される、請求項3に記載のバイオプリンティングシステム。
【請求項5】
前記充填機構が無菌流体接続をもたらし、かつ/又は逆止弁、隔壁、及びルアーロックのいずれか1つ又は複数を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のバイオプリンティングシステム。
【請求項6】
前記充填機構が、前記一方向入口と前記リザーバーの間の流体連通をもたらすプライミング流体ラインを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のバイオプリンティングシステム。
【請求項7】
前記一方向入口がシリンジに取り外し可能に結合されるように構成され、好ましくは前記一方向入口が前記シリンジに取り外し可能に結合されるように構成されるコネクターを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のバイオプリンティングシステム。
【請求項8】
前記バイオプリンティング組立体が、複数のリザーバー及び対応のリザーバーにそれぞれ流体連通する複数の充填機構を備える、請求項1~9のいずれか一項に記載のバイオプリンティングシステム。
【請求項9】
前記少なくとも1つのリザーバーが、前記少なくとも1つのリザーバーから流体分注するように構成された分注流体ラインを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のバイオプリンティングシステム。
【請求項10】
前記分注流体ラインが、
前記少なくとも1つのリザーバーから液体が分注されることを可能にする開放構成、及び
前記少なくとも1つのリザーバーから液体が分注されるのを防ぐ閉鎖構成
を有する分注出口を有する、請求項9に記載のバイオプリンティングシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1つのリザーバーと流体連通して結合され、前記少なくとも1つのリザーバー内の圧力を調節するように構成された圧力調節システムをさらに備える、請求項1~10のいずれか一項に記載のバイオプリンティングシステム。
【請求項12】
前記バイオプリンティング組立体が、前記バイオプリンティング組立体の位置決めを支援するように構成された照準補助装置をさらに備える、請求項1~11のいずれか一項に記載のバイオプリンティングシステム。
【請求項13】
前記バイオプリンティング組立体から分注される前記液体が、試薬及び活性化剤を含み、好ましくは、バイオインク、放射線硬化性バイオインク、活性化剤、細胞インク、及び細胞培養液から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載のバイオプリンティングシステム。
【請求項14】
前記バイオプリンティング組立体が、前記バイオプリンティング組立体によって分注される放射線硬化性流体を硬化させるよう構成された放射線源をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のバイオプリンティングシステム。
【請求項15】
前記ロボットアーム及び前記バイオプリンティング組立体が、前記バイオプリンティング組立体を操作して前記液体を前記対象の前記部位に任意の所望の向きで印刷できるように構成される、請求項1~14のいずれか一項に記載のバイオプリンティングシステム。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載のバイオプリンティング組立体を使用して対象の傷の上にゲルを形成させる方法であって、
a)前記バイオプリンティング組立体から試薬を前記部位のある一点に分注すること、
b)前記バイオプリンティング組立体から活性化剤を、前記分注試薬上に分注して、ハイドロゲルを形成させること、そして
c)前記部位の複数の異なる点でステップa)及びb)を繰り返して、前記傷の上に前記ゲルを形成させること
を含む方法。
【請求項17】
前記試薬が、バイオインク、放射線硬化性バイオインク、活性化剤、細胞インク、及び細胞培養液から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項14に記載のバイオプリンティング組立体を使用して対象の傷の上にゲルを形成させる方法であって、
a)前記バイオプリンティング組立体から放射線硬化性試薬を前記部位のある一点に分注すること、
b)前記分注放射線感受性試薬を前記放射線源で照らして、ハイドロゲルを形成させること、そして
c)前記部位の複数の異なる点でステップa)及びb)を繰り返して、前記傷の上に前記ゲルを形成させること
を含む方法。
【請求項19】
前記放射線硬化性試薬が放射線硬化性バイオインクである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1~15のいずれか一項に記載の前記バイオプリンティング組立体を使用して対象の部位に液体を印刷する方法であって、
a)前記バイオプリンティング組立体から液体を前記部位のある一点に分注すること、そして
b)前記部位の複数の異なる点でステップa)を繰り返して、前記部位を前記液体で覆うこと
を含む方法。
【請求項21】
前記液体が細胞及び/又は医薬品を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記バイオプリンティング組立体が、任意の所望の向きで操作されて、前記部位の前記ある一点に前記液体を所定の配向で分注する、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記液体が重力によって動かされることなく、前記対象の前記部位にゲルを形成するように、前記液体の液滴サイズが選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
液体を対象の部位に印刷するための請求項1~15のいずれか一項に記載のバイオプリンティングシステムの使用。
【請求項25】
リザーバーを液体でプライミングする方法であって、
a)請求項1~15のいずれか一項に記載のバイオプリンティングシステムを提供すること、
b)前記液体を含む容器を前記充填機構に無菌流体接続で接続すること、
c)前記液体を前記容器から前記バイオプリンティング組立体に移すこと、そして
d)前記リザーバーを前記液体でプライミングすること
を含む方法。
【請求項26】
前記液体がバイオインク又は細胞インクであり、好ましくは前記対象の自己細胞である細胞を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記容器がシリンジであり、そして前記液体を移すことが、前記液体を前記バイオプリンティング組立体に注入することを含む、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
前記バイオプリンティングシステムが手術室に設けられ、そして前記液体が前記対象の前記部位に印刷される前に、ステップb)~d)がそれぞれ前記手術室内で行われる、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術は、傷を治療又は被覆するために細胞を対象の部位に印刷することができるバイオプリンティングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞及び/又は医薬品を含むハイドロゲルを患者の傷に塗布することは知られている。ハイドロゲルを塗布するそのような既知の方法では、傷の上にハイドロゲルが均一に塗布されず、結果として傷の上に細胞及び/又は薬物のムラのある付着が生じる可能性がある。その結果、傷の治癒が最適でなくなり、必要以上に多くのハイドロゲルが傷に塗布されることになる。
【0003】
本発明の発明者らは、対象の傷の上に細胞及び材料を印刷してハイドロゲルを形成させるのに適したバイオプリンティングシステムを開発した。
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によれば、対象の部位に液体を印刷するためのバイオプリンティングシステムが提供され、そのバイオプリンティングシステムは、
液体を対象の部位に分注するように構成されたバイオプリンティング組立体であって、バイオプリンティング組立体によって分注される液体を保持するように構成された少なくとも1つのリザーバーを有するバイオプリンティング組立体、及び液体を対象の部位に印刷する前に、液体で前記リザーバーを充填するように構成されたリザーバーと流体連通する充填機構であって、液体がリザーバーに充填されることを可能にする一方向入口を備え、流体がその一方向入口を介してリザーバーから出ることを防止する充填機構
を備える。
【0005】
一実施形態では、対象は患者であり、部位は対象の皮膚の傷であり、バイオプリンティング組立体によって分注される液体は傷の上にゲルを形成する。
【0006】
本明細書で使用される「液体」という用語は、記載のバイオプリンティング組立体を使用して対象の部位に印刷されることになる任意の物質を指しうる。例えば、液体としては、バイオインク、細胞インク(cell-ink)、活性化剤、医薬品、若しくは他の物質のいずれか1つ又は複数を挙げることができる。
【0007】
本開示に記載の特徴及び実施形態は、多くの利点を提供しうる。例えば、充填機構は、細胞を含んだバイオインク及び活性化剤溶液を、臨床環境におけるそれぞれの臨床医(単数又は複数)にとって最適なワークフローを容易にする方法で、リザーバーに直接充填することを可能にすることができる。さらに考えられる利点は以下の通りである。
・傷に印刷する前に、細胞を含んだ液体をバイオプリンティングシステムのリザーバーに一度に臨床医は直接充填することができる。これは特に有利なことであると思われる。自己細胞を印刷する場合、細胞の生存率を高く保つことが治療結果に非常に重要であるからである。例えば、自己細胞の供給源は、バイオインク治療を施すのと同じ手順で患者から採取される皮膚移植片であることができる。
・傷に印刷する直前に、細胞を含有するバイオインク又は活性化剤をリザーバー内に一度に直接充填することにより、傷の診察にあたって傷に適用すべきバイオインク又は活性化剤の種類及び量を臨床医が術中に決めるという大きな柔軟性をもたせることができる。
・充填機構を介してリザーバーに直接細胞を充填することは、患者の細胞と接触する構成要素の表面積を最小限にすることを可能にし、デッドボリュームによる損失を低減しうる。
・バイオプリンティング組立体内に収容されたリザーバー内に液体を充填することにより、バイオプリンティング組立体中のすべての流体接続を手順の前に確実に試験することができる。これにより、ワークフローがさらに合理化され、システムの信頼性を向上させる可能性がある。
・バイオプリンティング組立体のリザーバーに直接充填することは、バイオプリンティングシステム内の複雑な充填構造の必要性を排除し、そのような複雑な構造に関連する故障モードの可能性を低減することができ、システムの信頼性を向上させることができる。
・治療のための細胞及び生体材料の調製は無菌手術室で行うことができ、リザーバーへの直接充填は、(病原体又は微粒子のいずれかの)汚染混入がシステムに入るのを防止する助けになる。これにより、生体材料又は細胞を予め調製したカートリッジの必要性を排除することができる。
【0008】
実施形態によれば、充填機構は無菌流体接続を可能にする。充填機構は、逆止弁、隔壁、及びルアーロックのいずれか1つ又は複数を備ことができる。
【0009】
実施形態によれば、充填機構は、一方向入口とリザーバーとの間の流体連通をもたらすプライミング流体ラインを有する。
【0010】
実施形態によれば、一方向入口は、シリンジなど、充填装置に取り外し可能に結合されるように構成される。好ましくは、一方向入口は、充填装置に取り外し可能に結合されるように構成されたコネクターを有する。コネクターは、隔壁、逆止弁、及びルアーロックのいずれか1つ又は複数を備えうる。一方向入口の充填装置への結合は、好ましくは無菌流体接続である。
【0011】
実施形態によれば、バイオプリンティング組立体は複数のリザーバーを備える。バイオプリンティング組立体は、それぞれが各リザーバーと流体連通する複数の充填機構を備えることができる。
【0012】
実施形態によれば、バイオプリンティングシステムは、バイオプリンティング組立体に結合されたロボットアームをさらに備え、そのロボットアームは部位にバイオプリンティング組立体を移動させ、位置決めするように構成される。
【0013】
実施形態によれば、バイオプリンティングシステムは、バイオプリンティング組立体及び/又はロボットアームを制御するように構成された制御システムをさらに含む。
【0014】
実施形態によれば、バイオプリンティング組立体は、バイオプリンティング組立体と対象の部位の間の距離をモニターするように構成された距離センサーをさらに備える。制御システムは、好ましくは、距離センサーからの距離情報を使用して、液体を印刷している間、バイオプリンティング組立体を部位から所定の距離に維持するようにロボットアームを制御するように構成される。
【0015】
一実施形態では、バイオプリンティング組立体は、バイオプリンティング組立体の位置決めを支援するように構成された照準補助装置をさらに備える。
【0016】
一実施形態では、照準補助装置はレーザーである。
【0017】
一実施形態では、バイオプリンティングシステムは、ロボットアームを制御することによってバイオプリンティング組立体を移動させ、位置決めするように構成されたコントローラーをさらに備える。
【0018】
一実施形態では、バイオプリンティング組立体は、バイオプリンティング組立体によって分注される液体を保持するように構成された少なくとも1つのリザーバーをさらに備える。
【0019】
一実施形態では、少なくとも1つのリザーバーは、少なくとも1つのリザーバーの充填及び/又はプライミングを可能にするように構成されたプライミング流体ラインを有する。
【0020】
一実施形態では、プライミング流体ラインは、シリンジに取り外し可能に結合されるように構成されたコネクターを有する。実施形態によれば、コネクターは、隔壁、逆止弁、又はルアーロックであるか、又はそれを備える。
【0021】
一実施形態では、少なくとも1つのリザーバーは、少なくとも1つのリザーバーから流体を吐出するように構成された分注流体ラインを有する。
【0022】
一実施形態では、分注流体ラインは、
少なくとも1つのリザーバーから液体が分注されることを可能にする開放構成(open configuration)、及び
少なくとも1つのリザーバーから液体が分注されるのを防止する閉鎖構成(closed configuration)
を有する分注出口を有する。
【0023】
一実施形態では、分注出口はノズル又はバルブである。
【0024】
一実施形態では、バイオプリンティングシステムは、少なくとも1つのリザーバーと流体連通して結合された圧力調節システムをさらに備え、その圧力調節システムは少なくとも1つのリザーバー内の圧力を調節するように構成される。
【0025】
一実施形態では、圧力調節システムは、加圧ガスの供給源に結合されるように構成される。
【0026】
一実施形態では、加圧ガスの供給源はエアコンプレッサーである。
【0027】
実施形態によれば、ロボットアームは6軸又は7軸のロボットアームである。一実施形態では、ロボットアームは6軸のロボットアームである。一実施形態では、ロボットアームは7軸のロボットアームである。
【0028】
一実施形態では、ロボットアームは、バイオプリンティング組立体の位置決めを支援するために、ユーザーによって手動で移動されるように構成される。
【0029】
一実施形態では、バイオプリンティング組立体から分注される液体は、試薬及び活性化剤を含む。
【0030】
一実施形態では、バイオプリンティング組立体から分注される液体は、バイオインク、放射線硬化性バイオインク、活性化剤、細胞インク、及び細胞培養液から選択される。
【0031】
一実施形態では、バイオプリンティング組立体は、バイオプリンティング組立体によって分注された放射線硬化性流体を硬化させるように構成された放射線源をさらに備える。
【0032】
一実施形態では、放射線源はUV放射線源である。
【0033】
一実施形態では、UV放射線源はUV LEDのアレイである。
【0034】
実施形態によれば、ロボットアーム及びバイオプリンティング組立体は、バイオプリンティング組立体を操作して、対象の部位に任意の所望の向きで液体を印刷できるように構成される。例えば、バイオプリンティング組立体は、対象の下側に向かって上向きに、対象の側部に向かって横向きに、対象の上側に向かって下向きに、又はそれらの間の任意の向きに印刷することができる。
【0035】
第2の態様によれば、第1の態様のバイオプリンティングシステムを使用して、対象の傷の上にゲルを形成させる方法が提供され、その方法は以下を含む。
a)バイオプリンティング組立体から部位のある一点(a point)に試薬を分注すること、
b)バイオプリンティング組立体から活性化剤を、分注された試薬上に分注し、ハイドロゲルを形成させること;及び
c)ステップa)及びb)を部位の複数の異なる点で繰り返して、傷の上にゲルを形成させること。
【0036】
一実施形態では、試薬は、バイオインク、放射線硬化性バイオインク、活性化剤、細胞インク、及び細胞培養液から選択される。
【0037】
第3の態様によれば、第1の態様のバイオプリンティングシステムを使用して、対象の傷の上にゲルを形成させる方法が提供され、その方法は以下を含む。
a)バイオプリンティング組立体から部位のある一点に放射線硬化性試薬を分注すること、
b)分注された放射線感受性試薬を放射線源で照らして、ハイドロゲルを形成させること;及び
c)ステップa)及びb)を部位の複数の異なる点で繰り返して、傷の上にゲルを形成させること。
【0038】
一実施形態では、放射線硬化性試薬は放射線硬化性バイオインクである。
【0039】
一実施形態では、放射線硬化性バイオインクはUV硬化性バイオインクである。
【0040】
第4の態様によれば、第1の態様のバイオプリンティング組立体を使用して、対象の部位に液体を印刷する方法が提供され、その方法は以下を含む。
a)バイオプリンティング組立体から部位のある一点に液体を分注すること、及び
b)ステップa)を部位の複数の異なる点で繰り返して、液体で部位を覆うこと。
【0041】
一実施形態では、液体はセル及び/又は医薬品を含む。
【0042】
実施形態によれば、バイオプリンティング組立体は任意の所望の向きで操作されて、所定の配向で部位のある一点に液体を分注する。実施形態によれば、液体の液滴サイズ及び/又は液滴体積は、液体が重力によって動かされることなく対象の部位でゲルを形成するように選択される。例えば、液滴体積は、0.5~500ナノリットル、0.5~200ナノリットル、0.5~100ナノリットル、0.5~50ナノリットル、0.5~10ナノリットル、0.5~5ナノリットル、5~10ナノリットル、10~50ナノリットル、10~100ナノリットル、5~500ナノリットル、10~500ナノリットル、50~500ナノリットル、100~500ナノリットル、250~500ナノリットル又は任意の他のサイズ/体積でありうる。
【0043】
第5の態様によれば、対象の部位に液体を印刷するため、第1の態様のバイオプリンティングシステムの使用が提供される。
【0044】
第6の態様によれば、リザーバーに液体を充填する方法であって、a)第1の態様のバイオプリンティングシステムを提供すること、b)液体を含む容器及び/又は充填装置を充填機構に無菌流体接続で接続すること、c)容器からバイオプリンティング組立体に液体を移送すること、及びd)リザーバーに液体を充填することを含む方法が提供される。
【0045】
実施形態によれば、液体は、バイオインク又は細胞インクであり、細胞を含む。細胞は対象の自己細胞であることができる。
【0046】
実施形態によれば、容器及び/又は充填装置はシリンジであり、液体を移送することは、バイオプリンティング組立体に液体を注入することを含む。
【0047】
実施形態によれば、バイオプリンティングシステムは手術室に設けられ、ステップb)~d)はそれぞれ、液体が対象の部位に印刷される前に手術室内で行われる。
【0048】
本明細書を通じて、文脈上他の意味に解する必要がない限り、「備える(comprise)」という単語、又は「comprises」若しくは「comprising」などの変形は、記載の要素、整数若しくはステップ、又は要素、整数若しくはステップの群を含むことを意味するが、他の要素、整数若しくはステップ、又は要素、整数若しくはステップの群を排除することを意味しないと理解されるであろう。
【0049】
本明細書に含まれる文書、行為(acts)、材料、装置、物品又は同種のものに関するいずれの議論も、単に本発明の文脈を提供する目的に過ぎない。これらの事項のいずれか又はすべてが、先行技術基盤の一部を形成すること、又は本明細書の各請求項の優先日前に存在した本発明に関連する分野における常識的一般知識(common general knowledge)であったことを認めるものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
以下、本発明の好ましい実施形態を、添付図面を参照して、単に例として説明する。
図1図1は、本発明の一実施形態によるバイオプリンティングシステムの正面等角図である。
図2図2は、図1のバイオプリンティングシステムのバイオプリンティング組立体及びロボットアームの正面図である。
図3図3は、アクセスパネルが取り外された図2のバイオプリンティング組立体の正面図である。
図4図4は、図2のバイオプリンティング組立体の底面図である。
図5図5は、図1のバイオプリンティングシステムの背面等角図である。
図6図6は、図1のバイオプリンティングシステムの制御システムを図示するブロック図である。
図7図7は、その上に図1のバイオプリンティングシステムが形成しうる患者の傷を示す。
図8図8は、図1のバイオプリンティングシステムによって形成されるゲルを示す。
図9図9は、その上に図1のバイオプリンティングシステムがゲルを形成しうる患者の別の傷を示す。
図10図10は、距離センサーを用いたスキャンの三次元プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、本発明の一実施形態によるバイオプリンティングシステム100を示す。バイオプリンティングシステム100は、ロボットアーム104に取り外し可能に結合されたバイオプリンティング組立体102を有する。ロボットアーム104は6軸のロボットアームであるが、当該技術分野で公知の他の任意の好適なロボットアームを使用することもできる。例えば、ロボットアーム104は7軸のロボットアームに置き換えてもよい。
【0052】
バイオプリンティングシステムの様々な構成要素は、所望の任意の方法で収容することができる。例えば、静止構造物上/内に取り付けられるか、又は配置されてもよく、図1及び図5に示すトロリー162などの移動構造物上/内に取り付けられるか、又は配置されてもよい。トロリー162は、バイオプリンティングシステム100を所望の位置への移動を可能にする。ロボットアーム100は、ロボットアームの取付台170を介してトロリー162に取り付けられる。他の実施形態によれば、ロボットアームは、別の表面上又は固定位置に取り付けることができる。ロボットアーム100は、バイオプリンティング組立体102が所望のように操縦及び配向されうるように、位置171~176によって画定される6つの回転軸の周りに移動可能である。図2は、トロリー162に取り付けられていないときのロボットアーム104及びバイオプリンティング組立体102を示す。図5に示すように、バイオプリンティング組立体102は、ロボットアーム104の取付コネクター178を介してロボットアーム104に取り付けられる。
【0053】
図2図4を参照すると、バイオプリンティング組立体102は、ハンドル108及びアクセスパネル110を有するプリントヘッド筐体106を有する。アクセスパネル110を取り外すことにより、プリントヘッド筐体106の内部へのアクセスが可能になる。プリントヘッド筐体106内に配置されるのは、一連のリザーバー112、分注システム114、放射線源116、及び照準補助装置118である。一連のリザーバー112は8つのリザーバー120を有し、図3で見えている4つのリザーバー120の列と、その見えているリザーバー120の後ろに隠れた4つのリザーバー120の列とがある。しかし、一連のリザーバー112は、任意の所望の数のリザーバー120を有することができる。図4に示すように、10個の利用可能な分注出口138があり、これは、図示されている実施形態が最大で10個のリザーバー120を含みうることを意味する。各リザーバー120が、それぞれの流体又は液体を含有してもよく、あるいは、2つ以上(more than one)のリザーバー120が同じ流体又は液体を含有してもよい。
【0054】
放射線源116は、図4に示すように、紫外線(UV)発光ダイオード(LED)が並んだ形態である。放射線源116は、例えば、感光性バイオインク又はUV硬化性バイオインクなどのUV硬化性液体を硬化させるように構成されている。また、放射線源116は、放射線硬化性液体を硬化させることができる、当該技術分野で公知の他の任意の好適な放射線源でありうることが想定される。例えば、放射線硬化性液体は、ヒアルロン酸、ゼラチン、ポリエチレングリコール(PEG)、及び/又はコラーゲンを含むことができ、それらはそれぞれ、アクリレート、メタクリレート、及び/又はノルボルネンで修飾されていてもよい。放射線硬化性液体の具体例としては、メタクリル化ヒアルロン酸、メタクリル化ゼラチン、PEGジアクリレート、PEGジメタクリレート、メタクリル化コラーゲンを挙げることができる。
【0055】
照準補助装置118は、バイオプリンティング組立体102を位置決めするための視覚的補助として使用されるレーザーの形態である。開口119は、照準補助装置118のレーザビームがプリントヘッド筐体106から出ることができるように設けられている。また、照準補助装置118は、バイオプリンティング組立体102を位置決めするための視覚的補助具として使用できる当該技術分野で公知の他の任意の好適な手段でありうることが想定される。
【0056】
プリントヘッド筐体106内には、バイオプリンティング組立体102の台座103と印刷面の間の距離をモニターするように構成された距離センサー122がある。印刷面は、対象の表面、例えば患者の皮膚の表面でありうる。また、距離センサー122は、プリントヘッド筐体106の外側に配置され、それに結合しうることが想定される。距離センサー122は、超音波センサー、光学センサー、カメラ、誘導センサー、静電容量センサー、光電センサー、患者の皮膚の表面と物理的に接触する接触センサー、又はバイオプリンティング組立体102の台座103と印刷面の間の距離をモニターできる当該技術分野で公知の他の任意の好適なセンサーであることができる。距離センサー122は、信号/波を放射するように構成された放射部分123Aと、放射された信号/波を受信するように構成された受信部分123Bとを有することができ、これらは、図4に示した実施形態では、バイオプリンティング組立体102の台座103を通して露出される。
【0057】
図3を参照すると、各リザーバー120は、実質的に垂直に延びる長手軸124、リザーバー120の上部に位置するキャップ126、リザーバー120の下部領域に位置するリザーバー出口128、及びリザーバー出口128の上の所定の高さに位置するリザーバー入口130を有する。各リザーバー120では、キャップ126、リザーバー出口128、及びリザーバー入口130はすべて、リザーバー120の内部と流体連通している。
【0058】
各リザーバー120のリザーバー入口130に流体連通して結合されているのは、プライミング流体ライン132である。各プライミング流体ライン132は、シリンジ又は同種のものを、プライミング流体ライン132に取り外し可能に結合させることを可能にするコネクター134を有する。各コネクター134は、任意の好適なタイプの接続手段をもたらすことができ、例えば、コネクター134は、ルアーロックであることができる、又はルアーロックを備えることができる。シリンジ又は同種のものをプライミング流体ライン132のいずれかのコネクター134に結合させることにより、シリンジ又は同種のものの内容物をそれぞれのリザーバー120に注入することができる。プライミング流体ライン132は、コネクター134を有するものとして説明及び図示されてきたが、シリンジ又は同種のものをプライミング流体ライン132に取り外し可能に結合させることを可能にする当該技術分野で公知の他の任意の好適な手段が使用されうることもまた想定される。コネクター134、プライミング流体ライン132及びリザーバー入口130のうちの1つ又は複数が、充填機構の一部を形成してもよい。充填機構は、好ましくは、リザーバー120と、液体をリザーバー120に供給するシリンジ又は同種のものなどの容器の間の無菌流体接続をもたらすものである。充填機構は、好ましくは、液体がリザーバー120に充填されることを可能にするが、いずれの流体の漏出も防止する一方向入口を有する。コネクター134は、一方向入口であってもよく、又はそれを備えていてもよい。したがって、一方向入口は、いずれの液体も気体も漏らすことなく、バイオプリンティング組立体内の圧力を維持することができる。
【0059】
分注システム114は複数の分注流体ライン136を備え、それらはそれぞれ、1つのリザーバー120のリザーバー出口128に流体連通して結合される。各分注流体ライン136に流体連通して結合されるのは、常時閉鎖構成及び開放構成を有するノズルの形態の分注出口138である。分注出口138は、台座103に隣接するプリントヘッド筐体106内の筐体137に収容される。各分注流体ライン136では、分注出口138が開放構成にあるとき、流体は、リザーバー出口128を通って且つ分注流体ライン136を通って各リザーバー120から流れ出て、分注出口138から分注することができる。各分注流体ライン136では、分注出口138が閉鎖構成にあるとき、流体は分注出口138から分注されないようになっている。各分注出口138は、マイクロソレノイドバルブでありうることが想定されるが、当該技術分野で公知の他の任意の好適なバルブ/ノズルも使用することができる。
【0060】
各リザーバー120では、リザーバー120内の分注流体ライン136の体積及びリザーバー出口128とリザーバー入口130の間の体積が所定の体積を画定する。所定の体積は、各リザーバー120ごとに、リザーバー出口128とリザーバー入口130の間の高低差をそれぞれ増減させることによって、増減することができる。また、分注流体ライン136の体積を増減させることによって所定の体積を増減することもできる。所定の体積を増加させると、リザーバー120内からそれぞれのプライミング流体ライン120に逆流する液体が減少するか、場合によっては防止されるであろうことが理解されるであろう。
【0061】
図4を参照すると、分注出口138は、各分注出口138が穴140を通してバイオプリンティング組立体102から流体を分注するように構成されるように、プリントヘッド筐体106の穴140と位置調整される。放射線源116及び照準補助装置118は、バイオプリンティングシステム100の使用中のそれらの動作がプリントヘッド筐体106によって妨げられないように、プリントヘッド筐体106の開口部142と位置調整される。
【0062】
図3を参照すると、バイオプリンティング組立体102は、各分注出口138に電気的に接続された電子機器組立体144を有する。電子機器組立体144は、各分注出口138をそれぞれの開放構成と閉鎖構成との間で移動させるように構成される。
【0063】
電子機器組立体144は、電子機器組立体144を制御システム150(後述)に電気的に接続するように構成された電気ポート146を有する。電子機器組立体144はまた、バイオプリンティング組立体102の内部又は外部にある他の電気機器に電気的に接続することができる電気コネクター148を有する。電子機器組立体144は、電気コネクター148を備えても、備えなくともよいことが想定される。
【0064】
図3及び図5を参照すると、各リザーバー120のキャップ126は、圧力調節システム152に流体連通して結合される。圧力調節システム152は、それぞれのリザーバー120内の圧力を調節/制御し、エアコンプレッサー154と流体連通して結合されるように構成される。エアコンプレッサー154の代わりに、圧力調節システム152が、当該技術分野で公知の他の任意の好適な加圧ガス供給源と流体連通して結合しうることも想定される。圧力調節システム152は電空圧力調節システムであることができる。さらに、圧力調節システム152は、当該技術分野で公知の、他の任意の好適な圧力調節法を利用しうることが想定される。
【0065】
図1及び図6を参照すると、バイオプリンティング組立体102、ロボットアーム104、放射線源116、照準補助装置118、距離センサー122、及び圧力調節システム152は、制御システム150に電気的に接続され、それによって制御される。制御システム150は、ユーザーが制御システム150に指示を入力できるグラフィカルユーザーインタフェース(GUI)156を有する。また、GUI156はユーザーに対して情報を表示することになる。制御システム150は、GUI156を介して、ユーザーがバイオプリンティングシステム100によって形成されるゲル(後述)を選択及び/又は設計できるように構成される。
【0066】
制御システム150は、バイオプリンティング組立体102、ロボットアーム104、及び圧力調節システム152を作動させるためのプログラム及びアルゴリズムが保存された非一時的なコンピューター可読媒体を含む。非一時的なコンピューター可読媒体は、バイオプリンティングシステム100とは別に配置され、バイオプリンティングシステム100に電気的に接続されることが想定される。また、非一時的なコンピューター可読媒体は、バイオプリンティングシステム100に装備されうることが想定される。
【0067】
コントローラー158(図1には示されていない)は制御システム150に電気的に接続される。コントローラー158は、バイオプリンティング組立体102を移動させ、位置決めするためにロボットアーム104の移動を制御するように構成される。図1は、コントローラーが接続できるケーブルの形態でコネクター160を有するものとしてGUI156を示す。したがって、ユーザーは、GUI156とコントローラー158の一方又は両方を使用して制御システム150に入力を提供することができる。コントローラー158は、例えば、ゲームコントローラー、ジョイスティック、コンピューターマウス、又は特製のコントローラーなど、当該技術分野で公知の任意の好適なコントローラーであることができる。
【0068】
リザーバー120に保持される液体は、ある温度範囲内に保持されなければならない場合があり、したがって、バイオプリンティング組立体102は、筐体106内の温度を調節するためのヒータ及び/又はクーラを備えることができる。
【0069】
以下、バイオプリンティングシステム100の使用及び操作について説明する。
【0070】
リザーバー120のプライミング
印刷レジーム(printing regime)がバイオプリンティングシステム100によって印刷され得る前に、1つ又は複数のリザーバー120は、印刷レジームに求められる必要な液体でプライミングされなければならない。バイオプリンティングシステム100がオンにされたとき、制御システム150は、圧力調整システム152を使用して各リザーバー120内の圧力を所定レベルまで増加させるように構成される。リザーバー120を液体でプライミングするために、ユーザーはGUI156を使用して、プライミングしたいリザーバー120を選択し、その後制御システム150が圧力調整システム152を制御して、選択されたリザーバー120の圧力を0kPaまで下げる。
【0071】
いったん選択されたリザーバー120が減圧されると、減圧されたリザーバー120に結合されたプライミング流体ライン132のコネクター134にシリンジ又は同種のものが取り外し可能に結合される。次いで、シリンジ内の液体は、それぞれのプライミング流体ライン132及びリザーバー入口130を通して減圧されたリザーバー120に注入することができる。減圧されたリザーバー120がシリンジからの液体でプライミングされた後、シリンジは、それぞれのプライミング流体ライン132のコネクター134から切り離される。その後、ユーザーはGUI156を使用して、減圧されたリザーバー120がプライミングされたことを確認し、制御システム150が、圧力調整システム152を制御して、減圧されたリザーバー120の圧力を所定の圧力まで増加させる。減圧されたリザーバー120内の圧力が増加すると、減圧されたリザーバー120内の液体は、分注流体ライン136の通常は閉じた分注出口138で止められるまで、それぞれの分注流体ライン136に流入し、それを通過する。この段階で、リザーバー120はプライミングされている。さらなるリザーバー120をプライミングするために、上記の方法ステップが繰り返される。
【0072】
リザーバー120は、特定の印刷レジームを完成させるのに求められる必要な液体でプライミングされる。例えば、リザーバー120は、バイオインク、放射線硬化性/感光性バイオインク、活性化剤、細胞インク、細胞培養液、又はユーティリティ溶液でプライミングすることができ、それらはすべて後述される。
【0073】
印刷レジームの設計及び印刷の開始
必要なリザーバー120がプライミングされた後、ユーザーは、バイオプリンティングシステム100によって対象の部位に印刷するための印刷レジームを設計/選択する。
【0074】
一実施形態では、印刷レジームは、のちに架橋してハイドロゲルを形成するバイオプリンティング組立体102からバイオインクを分注することによって、対象(すなわち患者)の部位にゲルを形成することができる。バイオプリンティング組立体102から分注されたバイオインクは、活性化剤を分注することによって架橋されて、分注されたバイオインクの上にバイオプリンティング組立体102を形成することができる。代替的に、バイオインクが感光性又は放射線硬化性である場合、分注されたバイオインクは、分注されたバイオインクを、例えばUV照射などの照射よって架橋することができる。
【0075】
GUI156により、ユーザーが、バイオプリンティングシステム100によって印刷される印刷レジームを選択及び/又は設計することが可能になる。GUI156により、ユーザーが患者の傷の寸法に基づいて印刷レジームを選択/設計することが可能になる。印刷レジームを選択/設計できるいくつかのやり方が存在する。
【0076】
ゲルを設計及び印刷する第1の好ましい(exemplary)方法
1つの実施形態によれば、バイオプリンティングシステム100によって形成されるゲルは、GUI156を介して制御システム100にゲルの必要な寸法を入力することによって設計することができる。
【0077】
図7は、患者に皮膚の傷10、及び傷10の形状に近い、傷を包含するボックス11を示す。ボックス11は、ユーザーによって見えるようにすることができる。図8は、バイオプリンティングシステム100によって傷10の上に形成される実質的に長方形の形状を有するゲル20を示す。
【0078】
傷10の寸法がわかったので、バイオプリンティングシステム100を使用してゲル20が形成されたときに、形成されたゲル20が傷10を完全に覆うように傷10の寸法よりも大きいゲル20の寸法を、ユーザーはGUI156を使用して入力する。ゲル20の寸法を制御システム150に入力した後、制御システム150は、ゲル20を、それぞれが1つ又は複数のフライバイポイント24を有する多数の列22に分割するように構成される(図8を参照)。フライバイポイント24は、制御システム150が、分注システム114を制御して流体を傷10の上に分注するように始動される特定のポイントである。各列22における隣接する列22と、隣接するフライバイポイント24の間の間隔は、バイオプリンティングシステム100によって形成されるゲル20の解像度を決定する。ユーザーは、ゲル20を設計する際にGUI156を通して、ゲル20の解像度を選択することができる。間隔が小さいほど、バイオプリンティングシステム100によって形成されるゲル20の解像度は高くなる。各列22における隣接する列22と隣接するフライバイポイント24の間隔は、均一であってもよく、均一でなくてもよい。制御システム150にゲル20の寸法及び解像度が入力された後、ユーザーはGUI156を介してゲル20の設計を確認する。
【0079】
ゲル20がバイオプリンティングシステム100によって形成されうる前に、バイオプリンティング組立体102はゲル20が形成されたときに傷10と正しく位置調整され、その傷を覆うようにバイオプリンティング組立体102が、最初に位置しなければならない位置である開始位置に移動される。この実施形態では、開始位置をボックス11の左上の角12であるが、ボックス11の他の角12~15が開始位置として使用されうることも想定される。
【0080】
バイオプリンティング組立体102を開始位置に移動させるには、ユーザーはGUI156を使用して、照準補助装置118をオンにし、ロボットアーム104を「フリーモード(free mode)」に設定する。フリーモードでは、ユーザーはハンドル108を使用してバイオプリンティング組立体102を手動で移動させることが可能である。次いで、ユーザーは、照準補助装置118のレーザーが、ボックス11の左上の角12をだいたい指すように、バイオプリンティング組立体102を手動で移動させる。
【0081】
バイオプリンティング組立体102を開始位置に位置決めするとき、ユーザーはまた、バイオプリンティング組立体102の台座103が印刷面から所定の距離となるように、バイオプリンティング組立体102を手動で位置決めする。この所定距離は、距離センサー122を使用して測定することができる。その場合、制御システム150は、距離センサー122を使用して、バイオプリンティング組立体102の台座103と印刷面の間の距離を測定し、GUI156上に表示することができる。制御システム150は、バイオプリンティング組立体102の台座103が印刷面から所定の高さになると、ユーザーへの触覚フィードバック、聴覚アラーム、及び/又はGUI156上の視覚表示を提供することもできる。代替として、所定の高さは、ユーザーによって行われる目視検査で決定することもできる。
【0082】
バイオプリンティング組立体102が手動でだいたいの開始位置に位置決めされた後、ユーザーはGUI156を使用してロボットアームを「フリーモード」からはずす。それに続いて、ユーザーはコントローラー158を使用して、バイオプリンティング組立体102を開始位置により正確に位置決めする。いったんバイオプリンティング組立体102が開始位置に正確に位置決めされると、ユーザーはGUI156を通して照準補助装置118をオフにする。この段階で、ユーザーはGUI156を介して印刷レジームを開始する。
【0083】
ゲルを設計及び印刷する第2の好ましい方法
また、バイオプリンティングシステム100によって形成される実質的に長方形のゲル20は、傷10の少なくとも3つの角をマッピングすることによって設計することもできる。
【0084】
この実施形態によれば、ユーザーは、照準補助装置118がボックス11の左上の角12を指し(図7を参照)、バイオプリンティング組立体102の台座103が印刷面から所定の距離にある(上記)ようにバイオプリンティング組立体102を手動で、且つ/又はコントローラー158を用いて移動させる(上記)。次いで、ユーザーはGUI156を使用してボックス11の左上の角12をマッピングする。ボックス11の左上の角12をマッピングすることは、制御システム150が、バイオプリンティング組立体102及びロボットアーム104の空間位置を記録することを含む。左上の角12をマッピングした後、ユーザーは、上記のステップを繰り返して、ボックス11の左下の角13及び右下の角14をマッピングする。
【0085】
ユーザーがボックスの角12~14をマッピングした後、制御システム150は、ゲル20がバイオプリンティングシステム100によって形成されたときに形成されたゲル20が傷10を完全に覆うように、傷10よりも大きい寸法を有する長方形のゲル20を設計するように構成される。また、制御システム150は、設計されたゲル20を、上記のように、それぞれが1つ又は複数のフライバイポイント24を有する多数の列22に分割する。ユーザーは、必要に応じて、GUI156を使用して、設計されたゲル20の解像度(すなわち、各列22における隣接する列22と隣接するフライバイポイント24の間隔)を調整することができる。次いで、ユーザーは、GUI156を介して、照準補助装置118をオフにして、印刷レジームを開始することができる。
【0086】
この実施形態では、ユーザーは、印刷レジームを開始する前に、バイオプリンティング組立体102を開始位置に移動させる必要はない。これは、制御システム150が、ゲル20を形成する際に、マッピングされた角12~14を空間参照として使用するためである。
【0087】
ボックス11の角12~14をマッピングすることによってゲル20を設計する方法を説明したが、傷10の任意の3つの角12~15をマッピングしてゲル20を設計できることも理解されるであろう。
【0088】
ゲルを設計及び印刷する第3の好ましい方法
バイオプリンティングシステム100は、不規則な形状(irregularly shaped)のゲルを印刷するのに使用することもできる。
【0089】
図9は、周縁部31を有する患者に皮膚における傷30を示す。周縁部31に位置するのは複数の照準点32である。傷30を覆うためのゲルを設計するには、ユーザーは、照準補助装置118が照準点32の1つを指し、バイオプリンティング組立体102の台座103が印刷面から所定の距離にある(上記)ようにバイオプリンティング組立体102を手動で、且つ/又はコントローラー158を用いて移動させる(上記)。次いで、ユーザーは、上記のようにGUI156を使用して照準点32をマッピングする。照準点32がマッピングされた後、ユーザーは、上記のステップを繰り返して、残りの照準点32をマッピングする。
【0090】
ユーザーがすべての照準点32をマッピングした後、制御システム150は、ゲルがバイオプリンティングシステム100によって形成されたときにゲルが傷30を完全に覆うように、不規則な形状及びサイズを有するゲルを設計するように構成される。また、制御システム150は、設計されたゲルを、上記のようにそれぞれが1つ又は複数のフライバイポイント24を有する多数の列22に分割する。ユーザーは、必要に応じて、GUI156を使用して、設計されたゲルの解像度(すなわち、各列22における隣接する列22と隣接するフライバイポイント24との間の間隔)を調整することができる。次いで、ユーザーは、GUI156を介して、照準補助装置118をオフにして、印刷レジームを開始することができる。
【0091】
この実施形態では、ユーザーは、印刷レジームを開始する前に、バイオプリンティング組立体102を開始位置に移動させる必要はない。これは、制御システム150が、ゲルを形成する際に、マッピングされた照準点32を空間参照として使用するためである。
【0092】
照準点32は、ユーザーによって任意に選択される。この方法を用いてゲルを設計する場合、ユーザーはより多くの照準点32を使用するか、より少なく使用するかを決めることができる。傷30の周縁部31の上に照準点32の数を増やすと、制御システム150が、より正確に傷30の形状に一致する形状を有するゲルを設計することになることが理解されるであろう。
【0093】
ゲルを設計及び印刷する第4の好ましい方法
別の方法によれば、傷の大きさが拡大/縮小された画像をGUI156に表示することができ、それにより、ユーザーがGUI156上で傷の周縁部をトレースすることが可能になるであろう。制御システム150は、傷の周縁部のトレースを使用して、ゲルがバイオプリンティングシステム100によって形成されたとき、ゲルが傷を完全に覆うように、形状及びサイズを有するゲルを設計するように構成される。制御システム150は、設計されたゲルを、上記のようにそれぞれが1つ又は複数のフライバイポイント24を有する多数の列22に分割する。ユーザーは、必要に応じて、GUI156を使用して、設計されたゲルの解像度(すなわち、各列22における隣接する列22と隣接するフライバイポイント24との間の間隔)を調整することができる。
【0094】
この実施形態では、ゲルが設計された後に、制御システム150は、GUI156にバイオプリンティング組立体102の開始位置を表示する。次いで、ユーザーは、照準補助装置118が開始位置における距離であり、バイオプリンティング組立体102の台座103が印刷面から所定の高さにあるようにバイオプリンティング組立体102を手動で、且つ/又はコントローラー158を用いて移動させる(上記)。次いで、ユーザーは、GUI156を介して、照準補助装置118をオフにして、印刷レジームを開始することができる。
【0095】
上記方法のそれぞれでは、照準補助装置118は、それぞれの分注出口138からオフセットされていることが理解されるであろう。制御システム150は、印刷されたゲル20が傷10に正しく位置調整されて覆われるように照準補助装置118と分注出口138との間のオフセットを考慮する。
【0096】
リザーバー120がプライミングされた後にゲルが設計されることを上記したが、リザーバー120がプライミングされる前にゲルが設計されうることもまた想定される。ゲルが設計された後にリザーバー120がプライミングされた場合、制御システム150は、特定の流体でどのリザーバー120がどのくらいの量でプライミングする必要があるかを決定するように構成することができ、その結果バイオプリンティングシステム100は、印刷中にいずれのリザーバー120を再びプライミングする必要なしに、設計されたゲルの形成を完了できる。
【0097】
設計されたゲルの形成
いったんユーザーが印刷レジームを開始すると、制御システム150は、バイオプリンティングシステム100を制御して、それぞれのフライバイポイント24で必要な流体を分注して設計されたゲルを形成させる。設計されたゲルは層ごとに印刷され、各層は、各列22の各フライバイポイント24で必要な流体を分注することによって、列22ごとに列22に印刷される。ゲルを形成する層の数は、ゲルを設計する際にユーザーによって選択することができ、患者の傷の深さに依存しうる。設計されたゲルの列22及びフライバイポイント24は、層内の各フライバイポイント24で形成されたゲルが、同じ層内の隣接するフライバイポイント24で形成されたゲルと融合し、その結果層が少なくとも実質的に連続し、隙間又は穴を有しないように間隔をあけて配置される。各層を形成するゲルは、隣接する層のゲルと融合する。
【0098】
フライバイポイント24でバイオプリンティング組立体102から特定の液体を分注するには、制御システム150は、特定の液体を保持するリザーバー120の分注出口138が特定のフライバイポイント24と位置調整されるように、ロボットアーム104を使用してバイオプリントアセンブリ102の位置を決める。次いで、制御システム150は、それぞれの分注出口138を開放構成に移動させ、リザーバー120内の圧力が、リザーバー120内の液体を強制的に分注出口138から分注/排出させる。いったん特定の液体の必要な量がそれぞれの分注出口138から分注されると、制御システム150は、分注出口138を閉鎖構成に戻して、分注出口138からさらなる液体が分注されるのを防止する。
【0099】
リザーバー120から液体を分注すると、リザーバー120内の圧力が低下することが理解されるであろう。したがって、液体がリザーバー120から分注され、それぞれの分注出口138が閉鎖構成に移動した後、制御システム150は、圧力調節システム152を制御してリザーバー120を所定の圧力まで再び加圧する。
【0100】
制御システム150が、バイオプリンティング組立体102の台座103及びしたがって分注出口138を、印刷面から所定の距離に維持するので、バイオプリンティングシステム100は、印刷部位に液体を印刷する非接触の方法を提供する。
【0101】
リザーバー120から分注される液体の量は、制御システム150に予め設定することができる。しかし、制御システム150は、リザーバー120に入っている液体及び形成されるゲルに応じて、特定のリザーバー120から分注される液体の量を制御するように構成することができる。代替的に、ユーザーは、ゲルを設計する際に、制御システム150を通して、又はGUI156を通して手動で、バイオプリンティング組立体102から分注される液体の量を制御してもよい。
【0102】
バイオプリンティングシステム100は、各リザーバー120からナノリットルの液体を分注/排出するように構成することができる。しかし、リザーバー120内の圧力を増加及び減少させると、対応する分注出口138を通る液体の流量がそれぞれ増加及び減少することになる。分注出口138が開放構成にある期間を増加及び減少させると、分注出口138から分注される液体の量がそれぞれ増加及び減少することになる。したがって、各リザーバー120内の圧力を変化させること、及び分注出口138が開放構成にある期間を変えることによって、分注出口138から分注される液体の量を変更できることが理解されるであろう。
【0103】
制御システム150がロボットアーム104を使用して患者の皮膚の表面(すなわち印刷面)上でバイオプリンティング組立体102を移動させると、制御システム150は距離センサー122を使用してロボットアーム104を制御し、ゲルを形成しながら患者の皮膚の表面から所定の距離にバイオプリンティング組立体102の台座103を維持する。したがって、制御システム150は、ロボットアーム104を使用してバイオプリンティング組立体102を凹凸のある印刷面上で移動させながら、バイオプリンティング組立体102の台座103を凹凸のある印刷面(例えば患者の皮膚の表面)から所定の高さに維持し、バイオプリンティング組立体102が印刷面に接触するのを回避することができる。これにより、バイオプリンティングシステム100は、ゲルを形成する際に、それぞれのフライバイポイント24において、より正確に且つ繰り返し可能に流体を分注することが可能になる。
【0104】
制御システム150は、バイオプリンティング組立体102を連続的に移動させながら、列22のそれぞれのフライバイポイント24において液体を分注することができる。したがって、制御システム150は、液体を分注するために、列22の各フライバイポイント24でバイオプリンティング組立体102を停止させる必要がない。よって、バイオプリンティング組立体102を連続的に移動させ、液体を分注できることにより、比較的高速でゲルを形成する方法を提供することができる。
【0105】
制御システム150は、ロボットアーム104を使用して、そのバイオプリンティング組立体102を任意の向きに位置決めすることが可能である。したがって、制御システム150は、分注出口138が上方を向くように、バイオプリンティング組立体102を位置決めすることが可能である。なお、バイオプリンティングシステム100は、分注出口138を上向きにして印刷できるであろう。これは、リザーバー120内の圧力に起因して可能であろう。分注出口138が上向きで、その開放構成に移動されたとき、それぞれのリザーバー120内の圧力は、リザーバー120内の流体を、開いた分注出口138を通して分注出口138の上方に位置する印刷面上に放出するのに十分であることができる。そのような場合、リザーバー120内の圧力は、分注出口138の上方に所定の距離で位置する印刷面に到達するのに充分な力で、それぞれの分注出口138から流体を放出しなければならないことになる。少なくとも同様の理由で、バイオプリンティングシステム100は、分注出口138を横向きにして印刷することができるであろう。したがって、バイオプリンティング組立体102は、任意の向きで印刷することができ、到達困難な領域への印刷がより簡単になりうることが理解されるであろう。
【0106】
分注出口138を上向きにして印刷するためには、リザーバー120内の液体が分注出口138から流出しないようにしなければならないことが理解されるであろう。一実施形態では、リザーバー120の内径は、リザーバー120の小径とともに、分注出口138が上方を向いているときに、リザーバー120内の圧力が分注出口138からの流体の流出を防止するように十分に小さくてよい。
【0107】
ドロップオンドロップ(Drop-on-drop)法
1つの実施形態によれば、バイオプリンティングシステム100は、ドロップオンドロップ法を用いてゲルを印刷することができる。この方法では、少なくとも1つのリザーバー120がバイオインクでプライミングされ、少なくとも1つのリザーバー120が活性化剤でプライミングされる。制御システム150は、ロボットアーム104を制御して、バイオプリンティング組立体102をそれぞれのフライバイポイント24に移動させる。制御システム150は、列22のそれぞれのフライバイポイント24にバイオインクの滴を分注し、次いで、次の列22に移動する前に、同じ列22のフライバイポイント24の各々に活性化剤の滴を分注してハイドロゲルを形成するように構成される。
【0108】
上記のドロップオンドロップ法を用いてゲルを形成させるには、最少でも2つのリザーバー120が必要であり、放射線源116は必要とされないことが理解されるであろう。複数のリザーバー120がバイオインクでプライミングされ、複数のリザーバー120が活性化剤でプライミングされうることが想定される。この場合、例えば、すべてのバイオインクが1つのリザーバー120から分注されたとき、制御システム150(control 150)は次に別のリザーバー120からバイオインクを分注することになるであろう。これにより、印刷レジームを一時停止して、リザーバー120を再びプライミングする必要性が減少することになる。
【0109】
また、リザーバー120は、異なる種類の液体でプライミングされうることが想定される。リザーバー120が異なる液体でプライミングされる場合、バイオプリンティングシステム100は、異なる材料の層、異なる細胞及び/若しくは医薬品を含む層、並びに/又はゲルの各層の間に印刷された/堆積された異なる液体を有するゲルを形成することができるであろう。
【0110】
放射線硬化法
別の実施形態によれば、バイオプリンティングシステム100は、UV/放射線硬化法を用いてゲルを形成することができる。この方法では、少なくとも1つのリザーバー120が放射線硬化性バイオインク(例えばrhCollagen)でプライミングされる。制御システム150は、ロボットアーム104を制御して、バイオプリンティング組立体102をそれぞれのフライバイポイント24に移動させる。制御システム150は、列22のそれぞれのフライバイポイント24に放射線硬化性バイオインクの滴を分注し、次の列22に移動する前に、分注されたバイオインクを放射線源118で照射してハイドロゲルを形成するように構成される。分注された放射線硬化性バイオインクを放射線源116で照射するには、制御システム150は、放射線源116が分注されたバイオインクと位置調整されるように、ロボットアーム104を使用してバイオプリンティング組立体102を移動させる。ゲルが形成された後、制御システム150は、ロボットアーム104を制御して、バイオプリンティング組立体102、したがって放射線源116をゲルの上に移動させることによって、放射線源116でゲルを照らすように構成することができる。これは、形成されたゲルをさらに硬化させるためである。
【0111】
上記の放射線硬化法を用いてゲルを形成させるには、最少でも1つのリザーバー120が必要であることが理解されるであろう。複数のリザーバー120がバイオインクでプライミングされうることが想定される。この場合、例えば、すべてのバイオインクが1つのリザーバー120から分注されると、制御システム150(control 150)は次に別のリザーバー120からバイオインクを分注することになるであろう。これにより、印刷レジームを一時停止して、リザーバー120を再プライミングする必要性が減ることになる。
【0112】
また、リザーバー120は、異なる種類の液体でプライミングされうることが想定される。リザーバー120が異なる液体でプライミングされる場合、バイオプリンティングシステム100は、異なる材料の層、異なる細胞及び/若しくは医薬品を含む層、並びに/又はゲルの各層の間に印刷/堆積された異なる液体を有するゲルを形成することができるであろう。
【0113】
バイオプリンティングシステム100を使用する第1の実例
バイオプリンティングシステム100を使用する1つの実例によれば、1つ又は複数のリザーバー120は、細胞を含むバイオインクでプライミングされてもよく、且つ/又は1つ又は複数のリザーバー120は、細胞を含む懸濁液でプライミングされてもよい。したがって、このバイオインク及び/又は懸濁液を使用して患者の傷に/の上にその後形成されるゲルは、患者によって吸着され、傷の治癒を助け、治癒を早めることができる細胞を有することになる。
【0114】
この例では、ゲルは、上記のドロップオンドロップ法又は放射線硬化法を用いて形成でき、使用される細胞は、自己細胞及び/又は当該技術分野で公知の他の任意の好適な細胞であることができる。
【0115】
バイオプリンティングシステム100を使用する第2の実例
バイオプリンティングシステム100を使用する別の実例によれば、リザーバー120は、患者の傷の深さに応じて異なる液体でプライミングすることができる。患者の傷は、さまざまな種類の組織が露出するくらい深いことがある。その場合、バイオプリンティングシステム100によって形成されたゲルが、傷内の異なる深さに形成される異なるゲル層を有するようにリザーバー120は異なる液体でプライミングされうる。患者の傷内の異なる深さで異なるゲル層を形成することは、患者の傷の治癒を助け、治癒を早めることができる。
【0116】
この例では、ゲルは上記のドロップオンドロップ法又は放射線硬化法を用いて形成でき、使用される細胞は、自己細胞及び/又は当該技術分野で公知の他の任意の好適な細胞であることができる。
【0117】
一例として、患者の傷は、患者の表皮と真皮を貫通して伸びている場合がある。したがって、バイオプリンティングシステム100を用いて、真皮細胞を含有する真皮に近接するゲル層を形成させ、次いで、表皮細胞を含有する表皮に近接するゲル層を形成させることが可能でありうる。真皮細胞及び表皮細胞は自己細胞であってもよい。
【0118】
したがって、バイオプリンティングシステム100は、傷に細胞及び/又は医薬品を含んだ三次元(3D)ゲルを形成させることによって、患者の傷に健康な細胞を堆積させ、傷の治癒を助けることができる。さらに、この3Dゲルの一部は、傷部位において患者の皮膚の一部となる場合がある。
【0119】
ゲルを設計し、対象(すなわち患者)の傷の上に形成させるためのバイオプリンティングシステム100について説明してきたが、バイオプリンティングシステム100は、上記と同じ方法を用いて対象の部位に液体を印刷するために使用されうることが想定される。このような液体は細胞及び/又は医薬品を含みうる。バイオプリンティングシステム100が印刷に使用できる部位としては、急性創傷(例えば火傷)、慢性創傷(例えば糖尿病性潰瘍)、軟骨、及び筋肉が挙げられる。
【0120】
放射線源116は、UV LEDが並んだものとして説明されたが、他の放射源が放射線源116として使用されうることが想定される。この場合、バイオインクは、放射線源116のために選択された特定の放射線源に曝露されたときに架橋することになるように選択/設計されなければならない。
【0121】
リザーバー120のプライミングは、プライミング流体ライン132のコネクター134にシリンジを取り外し可能に結合することを参照して説明及び図示されたが、リザーバー120は、他の方法を使用してプライミングされうることが理解されるであろう。例えば、リザーバー120は以下のようにしてプライミングすることができる。
・液体が入った容器をリザーバー120の流体ライン132に結合し、ポンプを使用して容器からリザーバー120に液体を送り込むこと、
・上記のようにリザーバー120の流体ライン132のコネクター134にシリンジを結合し、シリンジを自動的に作動させてシリンジの内容物をリザーバー120に注入すること、
・本発明の出願人の国際特許出願PCT/AU2019/051336号に記載及び図示されている試料充填システムなどの試料充填システムを使用して複数の液体容器から液体をサンプリングすること(該文献の内容は参照によりその全体が本明細書に援用される)、又は
・シリンジをリザーバー120に、例えば隔壁の使用など無菌流体接続を作り出す手段を使用して結合し、所望の方法を使用してシリンジからリザーバー120に流体を吸引すること。
【0122】
また、一連のリザーバー112は、バイオプリンティング組立体102から取り外し可能なカートリッジでありうることが想定される。この場合、空のカートリッジは、バイオプリンティング組立体102から取り外され、新しいカートリッジと交換することができる。取り外し可能なカートリッジを形成するリザーバー120は、圧力調節システム152及びそれぞれの分注流体ライン136に取り外し可能に結合されることになるであろう。取り外し可能なカートリッジを形成するリザーバー120は、圧力調節システム152及びそれぞれの分注流体ライン136に取り外し可能に結合される前に、必要な液体でプライミングすることができる。
【0123】
ゲルは、上記のドロップオンドロップ法及び放射線硬化法以外の方法を使用して形成することができる。例えば、ゲルは以下のようにして形成することができる。
・ゲルを形成させる患者の傷からバイオインクへのイオン移行、
・患者の体熱又は外部熱源からの熱を使用して、バイオインクを架橋し、ハイドロゲルを形成させる熱ゲル化、及び
・他の放射線源/波長を使用して、バイオインクを架橋し、ハイドロゲルを形成させること
【0124】
バイオプリンティングシステム100とともに使用されうる例示的なバイオインクは、本出願人の国際特許出願PCT/AU2019/050767号明細書に記載されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0125】
また、患者の傷を検出することによってゲルが設計されうることも想定される。どのようにして傷が検出されうるかの例を以下に示す。
・距離センサー122を使用して患者の「マップ(map)」が作られうる。「患者のマッピング(Patient mapping)」は、患者の傷の輪郭及び/又は深さをマッピングすることを含みうる。また、これは傷周辺の患者の体の表面をマッピングすることも含みうる。患者のマップは、印刷レジームの前又はその間に作られ、バイオプリンティングシステム100によって形成されるゲルを設計するために使用されうる。マップを作るために使用される距離センサー122は、超音波センサー、光学センサー、カメラ、渦電流センサー、又はそれらの組み合わせでありうる。
・傷の周辺に、好適なセンサーによって検出できる物質や物体を置いて、傷の輪郭を作ることによって患者の傷のマップを作ってもよい。例えば、傷の周辺に置かれた材料や物体は、好適なセンサーによって検出できる信号を省くことができる。それらの信号としては、可視光、赤外光、UV光、X線、ガンマ線、磁気放射線、又は同種のものを挙げることができるが、それらに限定されない。
【0126】
バイオインク
本明細書では、バイオインクは、細胞を懸濁又は収容することができる1つ又は複数種類の高分子の水溶液として定義される。活性化又は架橋されると、バイオインクの化学的及び物理的組成によって定義される物理的及び化学的特性を有するハイドロゲル構造を作り出す。高分子とは、合成及び天然ポリマー、タンパク質並びにペプチドが並んだものとして定義される。高分子は、その天然の状態でもよく、アミン反応性又はチオール反応性官能基で化学的に改変されていてもよい。
【0127】
合成高分子としては以下を挙げることができる。
・フルクトース、スクロース又はグルコース官能基を含有するポリマーなどの多糖類、
・ポリ(エチレングリコール)(PEG)や、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(NIPAAM)、ポリ(プロピレンフマレート)(PPF)などの非イオン性ポリマー及び誘導体、
・高分子電解質 - プラス又はマイナスのいずれかの電荷をもつポリマーで、両性及び双性イオン性のポリマー、
・ポリペプチド - アミド結合によってつなぎ合わされた、多数のアミノ酸(最少で2個のアミノ酸)の一本の直鎖、及び
・核酸塩基含有合成ポリマー - 核酸塩基(アデニン、チミン、グアニン又はシトシン)繰り返し単位をもつポリマー。
【0128】
天然高分子としては以下を挙げることができる。
・アルギン酸塩や、キトサン、ゲランガム、ヒアルロン酸、アガロース、グリコサミノグリカンなどの多糖類
・ゼラチン、フィブリン、コラーゲンなどのタンパク質
・一本鎖DNA(ssDNA)や、二本鎖DNA(dsDNA)DNAザイム、アプタマーなどのDNA及びオリゴヌクレオチド
・基底膜抽出物
・アミン反応性官能基としては、アルデヒド、エポキシ、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)及び2-ビニル-4,4-ジメチルアズラクトン(VDM)が挙げられる。
・チオール反応性官能基としては、アルケン、アルキン、アジド、ハロゲン及びシアン酸塩が挙げられる。
・使用され、好適であることがわかったバイオインクは、10体積/体積%FCS、L-グルタミン及びピルビン酸ナトリウムを補充した、カルシウムを含まないDMEMに(2重量/体積%で)溶かしたアルギン酸塩であった。
・SK-N-BE(2)神経芽腫細胞を分散させたバイオインクは、細胞含有バイオインクと呼ばれる。
【0129】
活性化剤
本明細書では、活性化剤は、バイオインクと相互作用してハイドロゲル構造を形成する小さい分子又は高分子のいずれかを含む水溶液である。活性化剤の組成を変えて、得られるハイドロゲルの物理的特性を制御することができる。使用する活性化剤の種類は、使用する高分子及び意図される架橋過程に大きく依存する。
【0130】
活性化剤は以下から選択することができる。
・炭酸カルシウムや、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、水酸化ナトリウム、塩化バリウムなどの無機塩類、
・2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(DMPA)やイルガキュアなどの光開始剤、
・高分子電解質 - バイオインク中の高分子と反対の電荷を持つポリマー(カチオン性、アニオン性、両性及び双性イオン性でありうる。)、
・ポリペプチド - アミド結合によってつなぎ合わされた多数のアミノ酸(最少で2個のアミノ酸)からなる一本の直鎖、
・DNAリンカー - バイオインクの高分子上に存在するヌクレオチド又はDNA配列に相補的な配列を有する高分子、並びに
・天然に、又は化学修飾によってアミン又はチオール基を有する天然又は合成の高分子。
・アルギン酸バイオインクに使用された活性化剤は、4重量/体積%でMilliQ水に溶かした塩化カルシウムであった。
【0131】
架橋又はゲル化
これは、個々の高分子鎖が活性化剤によって一緒に連結され、ハイドロゲルを形成する過程である。架橋過程は、化学的架橋と又は物理的架橋のいずれかに分類されうる。物理的架橋又は非共有結合による架橋は、以下を挙げることができる。
・イオン性架橋-高分子と活性化剤に存在する反対電荷の相互作用を介した架橋(活性化剤としては、荷電オリゴマー、イオン性塩、及びイオン性分子を挙げることができる)、
・水素結合-極性分子の静電的な引力を介した架橋(この場合、高分子と活性化剤は極性官能基をもつ)、
・温度架橋-温度の変化(加熱又は冷却)に対する応答としての高分子鎖の再配列を介した架橋、並びに
・疎水性相互作用又はファンデルワールス力。
【0132】
化学的又は共有結合的な架橋は、高分子と活性化剤の間の化学反応を必要とする。反応の種類としては以下を挙げることができる。
・紫外線UV又は光の照射による架橋反応を促進させる光架橋、
・水溶液中でのチオールとビニル基を有する高分子の間のマイケル型付加反応、
・アミノ基とアルデヒド基の間のシッフ塩基反応、
・ディールス・アルダー反応、
・クリックケミストリー、
・活性エステル基に対するアミノリシス反応、及び
・酵素による架橋。
【0133】
その他のバイオインクと活性化剤の組み合わせの例を下表に示す。
【表1】
【0134】
細胞インク
本明細書では、細胞インクは、1つ又は複数の種類の分子又は高分子の水溶液であり、その中に細胞を入れ、3Dバイオプリンティングプロセスの間ずっと均一に懸濁した状態を維持する。細胞インクの濃度は、細胞が沈降するのを防ぐが、高い細胞生存率を維持するよう最適化される。
【0135】
細胞インクは以下から選択することができる。
・グリセロールなどの小さい分子
・フィコール(商標)、デキストラン、アルギン酸塩、ジェランガム、メチルセルロースなどの高分子、及びポリビニルピロリドン(PVP)。
・フィコール(商標)は、水溶液に容易に溶ける中性で高度に分岐した高質量の親水性多糖である。フィコール(商標)の半径は2~7nmであり、多糖とエピクロロヒドリンとの反応によって調製される。フィコール(商標)はGEヘルスケア社が所有する登録商標である。
・使用細胞インクは、PBSに(10重量/体積%で)溶かしたフィコール(商標)400であった。
・SK-N-BE(2)神経芽腫細胞を分散させた細胞インクは、細胞含有細胞インクと呼ばれる。
・ゲランガムは、細菌スフィンゴモナス・エロディア(旧シュードモナス・エロディア)によって産生される水に溶けるアニオン性多糖である。
【0136】
細胞培養液
本明細書では、細胞培養液は、培養細胞と接触する液体であり、細胞に関連する様々な作業(works)に適している。調製法には、塩とpHのバランスの慎重な分析、生体適合性の高い分子のみの組み込み及び滅菌処理が含まれる。
【0137】
細胞培養液のなかには以下が含まれる。
・ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)や、最小必須培地(MEM)、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、199培地(Media 199)、ハムF10、ハムF12、マッコイ5A及びロズウェルパーク記念研究所(RPMI)培地などの細胞培養培地、
・ウシ胎仔血清(FCS)、上皮成長因子(EGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFBF)、線維芽細胞増殖因子(FBF)、内皮細胞増殖因子(ECGF)、インスリン様成長因子1(IGF-1)及び血小板由来増殖因子(PDGF)などの成長補助物質、
・PBSや、HEPES、CHESなどの生物学的緩衝液、
・キレート及び安定溶液、並びに
・滅菌MilliQ水
【0138】
細胞培養の条件
細胞及び3D組織培養モデルは、標準的な細胞培養技術を使用してインキュベート、培養、維持することができる。ハイドロゲル成形体(mold)に封入された細胞を含む三次元組織培養モデルは、細胞の成長又はスフェロイド形成を許容又は維持する条件下でインキュベートすることができる。大抵の動物及びヒトの細胞株の場合、インキュベーションは典型的に、約37℃、5%のCO2レベルで少なくとも24時間行われる。インキュベーションは、ハイドロゲル成形体中の細胞又は細胞(複数)(cell and cells)の種類の成長、維持又はスフェロイド形成を可能にする任意の好適な条件、温度及び持続時間で実施されうることが理解されるであろう。
【0139】
ユーティリティ溶液(Utility Solutions)
ユーティリティ溶液とは、細胞とは接触しないが、リザーバー120、プライミング流体ライン132、分注流体ライン136、分注出口138、及び細胞に曝されるバイオプリンティングシステム100のすべての表面を洗浄及び滅菌するために使用される溶液と定義される。言い換えると、ユーティリティ溶液は洗浄流体である。これらの溶液としては、以下を挙げることができる。
・適切な濃度のエタノール、
・滅菌MilliQ水、
・細胞培養培地、
・界面活性剤、及び
・過酸化水素溶液(最大濃度2重量/体積%)
【0140】
バイオインクの調製
まず、適切な細胞培養液に適切な種類と量の高分子を混合することによってバイオインクを調製する。均質性を達成した後、ブランクバイオインクはUV照射と濾過(0.22μmフィルター)の両方で滅菌される。次いで、バイオインクをさらなる使用まで4℃で保存する。
【0141】
細胞の調製
PBSで洗浄することによって細胞を集める。PBSを吸引する。トリプシンを加え、37℃でインキュベートして細胞をフラスコ表面から剥離させる。組織培養培地を加えて、剥離した細胞をチューブに集める。細胞を遠心分離し、上清を吸引してペレットを新鮮な培地に懸濁する。等量の細胞懸濁液とトリパンブルー染色液を混ぜることによって細胞を数える。計算を行って細胞濃度を求める。次いで、所望の数の細胞をバイオインク、細胞インクに加えることができる、又は細胞培養液に加えることができる。
【0142】
活性化剤の調製
適切な細胞培養液に、適切な種類と量の分子を溶解させた。得られた溶液を使用前に紫外線照射及び濾過によって滅菌した。
【0143】
細胞インクの調製
適切な細胞培養液に、適切な種類と量の分子を溶解させた。均質性を達成した後、得られた溶液を使用前に紫外線照射及び濾過によって滅菌した。その後、細胞インクをさらなる使用まで室温で保存した。
【0144】
細胞採集
特定のコンフルエントの目的の培養細胞を、すでに確立されたプロトコールに従うことによって集める。細部を含有するバイオインク又は細胞インクを作り出すために、集めた細胞を適切な細胞濃度で再懸濁して、200μlのバイオインク又は細胞インク中に2億5200万細胞/mlの濃度を得る。次いで、得られた細胞ペレットを適量のバイオインク又は細胞インクに再分散する。細部を含有するバイオインク又は細胞インクは、その時点で3Dバイオプリンターに使用できる状態である。
【0145】
細胞の種類
スフェロイドなどの3D組織培養モデルは、哺乳類肝細胞、消化管細胞、膵臓細胞、腎臓細胞、肺細胞、気管細胞、血管細胞、骨格筋細胞、心細胞、皮膚細胞、平滑筋細胞、結合組織細胞、角膜細胞、泌尿器系細胞、乳房細胞、生殖細胞、内皮細胞、上皮細胞、線維芽細胞、神経細胞、シュワン細胞、脂肪細胞、骨細胞、骨髄細胞、軟骨細胞、周皮細胞、中皮細胞、内分泌組織由来細胞、間質細胞、幹細胞、前駆細胞、リンパ細胞、血液細胞、内胚葉由来細胞、外胚葉由来細胞、中胚葉由来細胞、又はその組み合わせなどの付着細胞を含む任意の好適な細胞型から調製することができる。
【0146】
さらなる細胞型としては、他の真核生物細胞(例えばチャイニーズハムスター卵巣)、細菌(例えばヘリコバクター・ピロリ)、真菌(例えばペニシリウム・クリソゲナム)、及び酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)を挙げることができる。
【0147】
様々な条件下で3D組織培養モデルを作製するプロセスにおいて、細胞株SK-N-BE(2)(神経芽腫細胞)の使用が成功している。他の細胞株も、開発された本プロセスで作製された3D組織モデルにおいて、要求されるように機能すると予想されることが理解されるであろう。使用される細胞株としては、DAOY(ヒト髄芽腫がん細胞)、H460(ヒト非小細胞肺がん)及びp53R127H(ヒト膵臓がん細胞)が挙げられる。好適でありうる他の細胞株が088と089に列挙されている。
【0148】
バイオプリンティングシステム100は、他の既知の方法と比較して、均一な厚さを有し、細胞及び/又は医薬品をよりムラなく付着させるゲルを傷の上に印刷することを可能にする。また、バイオプリンティングシステム100は、他の公知の方法と比較して、より正確に、より高い解像度で細胞を塗布/印刷することもできる。細胞及び/又は医薬品をムラなく付着させるゲルは、患者の傷の治癒を向上させる可能性がある。また、バイオプリンティングシステム100は、傷の治癒を向上させうる異なる生体物質及び/又は医薬品を患者の傷に印刷することを可能にしうる。
【0149】
距離センサー
図10は、バイオプリンティングシステム100の距離センサー122を使用したスキャンによって撮影された凸凹面の3次元プロット40を示す図である。好ましくは、距離センサー122は、対象の傷の同様の3次元プロットを生成するために利用される。対象の傷の3Dプロット又はそのデータは、バイオプリンティングシステム100のコンピューター又はコントローラー(単数若しくは複数)によって使用され、バイオプリント流体が適用されるべき対象上の位置及び/又はその位置の各点で分注されるべきバイオプリント流体の量を決定することができる。また、3Dプロットにより、何らかの処置がとられる前に、医師又は専門家が事前にスキャンされる対象の表面を詳細に評価することも可能になりうる。
【実施例
【0150】
実験的研究
本開示によるバイオプリンティングシステムを用いた実験を多数の豚の傷に対して実施した。細胞を含んだ複数のハイドロゲル製剤を20×20×0.46mmのパッチに印刷し、ブタモデルの同じサイズの全層創傷に適用した。
【0151】
その実験的研究では、以下の方法を用いて、自己細胞のバイオプリントを使用してブタの傷を治療した。第1のステップでは、臨床医はブタに20×20mmの全層切除創傷を作った。第2のステップでは、切除創傷を作るために豚から切除した皮膚片を、酵素溶液を使用して脱凝集させ(disaggregated)、ケラチノサイト、線維芽細胞、及びメラノサイトを含む混合集団自己細胞の250μLの細胞懸濁液を作製した。第3に、自己混合細胞集団懸濁液を250μLの活性化剤と混合し、500μLの活性化剤細胞懸濁液を作製した。500μLの活性化剤細胞懸濁液を、ピペットを用いてサージカルシリンジに移した。500μLの活性化剤細胞懸濁液が入ったサージカルシリンジをプリントヘッドリザーバーのルアーロックに接続し、サージカルシリンジとプリントヘッドリザーバーの間に流体接続を作り出した。500μLの活性化剤細胞懸濁液を、シリンジプランジャーをバレルに押し込むことによってリザーバーに充填した。サージカルシリンジをルアーロックから外し、500μLの活性化剤細胞懸濁液をプリントヘッドリザーバーにロードする作業を完了した。
【0152】
各傷の処置について上記と同じ方法を用いて、活性化剤細胞懸濁液の前に、0.5mL量のバイオインクを別のリザーバーに充填した。
【0153】
バイオインク及び活性化剤細胞懸濁液をリザーバーに充填した後、圧力調節装置を使用してシステムを60kPaの圧力に加圧した。プリンティングシステム内の余分な気泡を取り除くため、ノズルから200個の液滴を廃棄物として分注した。6軸ロボットを「フリー」モードに切り替え、臨床医は手動でプリントヘッドを20×20mmの傷の1つの角の近くに配置した。ロボットアームの位置コントローラーを使用して、印刷直前に照準補助装置でプリントヘッドの位置を微調整した。いったん位置を決めると、プリントヘッドをスキャンし、バイオインク液滴の単一行を印刷し、続いて活性化剤細胞懸濁液滴の列を印刷して、架橋ハイドロゲルを形成させることによって傷への印刷を開始した。これらの複数の列を印刷して、傷の基部に細胞を含有するハイドロゲルの単層を作製した。この工程を繰り返し、第1の層の上に第2の層を形成させた。印刷終了後、傷を創傷被覆材で覆った。
【0154】
印刷プロセス及びその場(in situ)ゲル化ダイナミクスが、4匹のブタの20個の印刷した傷で検討され、傷部位内の細胞の空間的な位置決めを確実に制御するのに充分な構造的完全性及び傷の統合を可能にすることが見出された。印刷後の細胞の評価により、印刷及びゲル化プロセスの細胞生存性に対する影響が無視できることが示された。介入後の傷の結果を検討する予備的データは、細胞及びマトリックスを傷の環境に効果的に送達するための3Dプリンティングの実行可能性の有望な兆候を示した。
【0155】
バイオ3Dプリンターは、皮膚の傷に対する急性外科的介入を一変させる可能性があることが明らかになった。今のところ、この技術は臨床環境(clinic environment)に最も適している。
【0156】
本発明を好ましい実施形態を参照して説明してきたが、当業者であれば、本発明が他の多くの形態で具体化されうることを理解するであろう。当業者であれば、多数の変形及び/又は修正が、広く説明された技術の趣旨又は範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に示された技術に対してなされうることを理解するであろう。したがって、本実施形態は、すべての点で例示であって、限定的なものではないとみなされる。
【0157】
符号の説明(Index of features)
10 - 傷
11 - ボックス
12 - ボックス11の左上の角
13 - ボックス11の左下の角
14 - ボックス11の右下の角
15 - ボックス11の右上の角
20 - ゲル
22 - 列
24 - フライバイポイント
30 - 傷
31 - 傷30の周縁部
32 - 照準点
40 - 3Dプロット
100 - バイオプリンティングシステム
102 - バイオプリンティングシステム100のバイオプリンティング組立体
103 - バイオプリンティング組立体102の台座
104 - バイオプリンティングシステム100のロボットアーム
106 - バイオプリンティング組立体102の筐体
108 - バイオプリンティング組立体102のハンドル
110 - プリントヘッド筐体106のアクセスパネル
112 - バイオプリンティング組立体102の一連のリザーバー
114 - バイオプリンティング組立体102の分注システム
116 - バイオプリンティング組立体102の放射線源
118 - バイオプリンティング組立体102の照準補助装置
120 - 一連のリザーバー112のリザーバー
122 - バイオプリンティング組立体102の距離センサー
124 - リザーバー120の長手軸
126 - リザーバー120のキャップ
128 - リザーバー120のリザーバー出口
130 - リザーバー120のリザーバー入口
132 - リザーバー120のプライミング流体ライン
134 - プライミング流体ライン132のコネクター
136 - 分注システム114の分注流体ライン
137 - 分注出口138の筐体
138 - 分注流体ライン136の分注出口
140 - プリントヘッド筐体106の穴
142 - プリントヘッド筐体106の開口部
144 - プリントヘッド筐体106の電子組立体
146 - 電子組立体144の電気ポート
148 - 電子組立体144の電気コネクター
150 - バイオプリンティングシステム100の制御システム
152 - バイオプリンティングシステム100の圧力調節システム
154 - エアコンプレッサー
156 - グラフィカルユーザーインタフェース(GUI)
158 - コントローラー
160 - コネクター
162 - トロリー
170 - ロボットアーム104の取付台
171 - ロボットアーム104の第1の回転軸
172 - ロボットアーム104の第2の回転軸
173 - ロボットアーム104の第3の回転軸
174 - ロボットアーム104の第4の回転軸
175 - ロボットアーム104の第5の回転軸
176 - ロボットアーム104の第6の回転軸
178 - ロボットアーム104のバイオプリンティング組立体102への取付コネクター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2021-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の部位に液体を印刷するためのバイオプリンティングシステムであって、
前記液体を前記対象の前記部位に分注するように構成されたバイオプリンティング組立体であって、前記バイオプリンティング組立体によって分注される前記液体を保持するように構成された少なくとも1つのリザーバーを有するバイオプリンティング組立体、及び前記液体を前記対象に印刷する前に、前記液体で前記リザーバーを充填するように構成された前記リザーバーと流体連通する充填機構であって、無菌流体接続をもたらし、かつ前記液体が前記リザーバーに充填されることを可能にする一方向入口を備え、かつ流体が前記一方向入口を介して前記リザーバーから出ることを防止する充填機構
を備えるバイオプリンティングシステム。
【請求項2】
前記対象が患者であり、前記部位が前記対象の皮膚の傷であり、かつ前記バイオプリンティング組立体によって分注された前記液体が前記傷の上にゲルを形成する、請求項1に記載のバイオプリンティングシステム。
【請求項3】
前記バイオプリンティング組立体に結合されたロボットアームであって、前記バイオプリンティング組立体を前記部位の上に移動させ、位置決めするように構成されたロボットアーム、並びに
前記バイオプリンティング組立体及び前記ロボットアームを制御するように構成された制御システム
をさらに備える、請求項1又は2に記載のバイオプリンティングシステム。
【請求項4】
前記バイオプリンティング組立体が、前記バイオプリンティング組立体と前記対象の前記部位との間の距離をモニターするように構成された距離センサーをさらに備え、かつ前記制御システムが、前記距離センサーからの距離情報を使用して前記ロボットアームを制御して、前記液体を印刷している間、前記バイオプリンティング組立体を前記部位から所定の距離に維持するように構成される、請求項3に記載のバイオプリンティングシステム。
【請求項5】
前記充填機構が逆止弁、隔壁、及びルアーロックのいずれか1つ又は複数を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のバイオプリンティングシステム。
【請求項6】
前記充填機構が、前記一方向入口と前記リザーバーの間の流体連通をもたらすプライミング流体ラインを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のバイオプリンティングシステム。
【請求項7】
前記一方向入口がシリンジに取り外し可能に結合されるように構成され、好ましくは前記一方向入口が前記シリンジに取り外し可能に結合されるように構成されるコネクターを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のバイオプリンティングシステム。
【請求項8】
前記バイオプリンティング組立体が、複数のリザーバー及び対応のリザーバーにそれぞれ流体連通する複数の充填機構を備える、請求項1~9のいずれか一項に記載のバイオプリンティングシステム。
【請求項9】
前記少なくとも1つのリザーバーが、前記少なくとも1つのリザーバーから流体分注するように構成された分注流体ラインを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のバイオプリンティングシステム。
【請求項10】
前記分注流体ラインが、
前記少なくとも1つのリザーバーから液体が分注されることを可能にする開放構成、及び
前記少なくとも1つのリザーバーから液体が分注されるのを防ぐ閉鎖構成
を有する分注出口を有する、請求項9に記載のバイオプリンティングシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1つのリザーバーと流体連通して結合され、前記少なくとも1つのリザーバー内の圧力を調節するように構成された圧力調節システムをさらに備える、請求項1~10のいずれか一項に記載のバイオプリンティングシステム。
【請求項12】
前記バイオプリンティング組立体が、前記バイオプリンティング組立体の位置決めを支援するように構成された照準補助装置をさらに備える、請求項1~11のいずれか一項に記載のバイオプリンティングシステム。
【請求項13】
前記バイオプリンティング組立体から分注される前記液体が、試薬及び活性化剤を含み、好ましくは、バイオインク、放射線硬化性バイオインク、活性化剤、細胞インク、及び細胞培養液から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載のバイオプリンティングシステム。
【請求項14】
前記バイオプリンティング組立体が、前記バイオプリンティング組立体によって分注される放射線硬化性流体を硬化させるよう構成された放射線源をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のバイオプリンティングシステム。
【請求項15】
前記ロボットアーム及び前記バイオプリンティング組立体が、前記バイオプリンティング組立体を操作して前記液体を前記対象の前記部位に任意の所望の向きで印刷できるように構成される、請求項1~14のいずれか一項に記載のバイオプリンティングシステム。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載のバイオプリンティング組立体を使用して対象の傷の上にゲルを形成させる方法であって、
a)前記バイオプリンティング組立体から試薬を前記部位のある一点に分注すること、
b)前記バイオプリンティング組立体から活性化剤を、前記分注試薬上に分注して、ハイドロゲルを形成させること、そして
c)前記部位の複数の異なる点でステップa)及びb)を繰り返して、前記傷の上に前記ゲルを形成させること
を含む方法。
【請求項17】
前記試薬が、バイオインク、放射線硬化性バイオインク、活性化剤、細胞インク、及び細胞培養液から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項14に記載のバイオプリンティング組立体を使用して対象の傷の上にゲルを形成させる方法であって、
a)前記バイオプリンティング組立体から放射線硬化性試薬を前記部位のある一点に分注すること、
b)前記分注放射線感受性試薬を前記放射線源で照らして、ハイドロゲルを形成させること、そして
c)前記部位の複数の異なる点でステップa)及びb)を繰り返して、前記傷の上に前記ゲルを形成させること
を含む方法。
【請求項19】
前記放射線硬化性試薬が放射線硬化性バイオインクである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1~15のいずれか一項に記載の前記バイオプリンティング組立体を使用して対象の部位に液体を印刷する方法であって、
a)前記バイオプリンティング組立体から液体を前記部位のある一点に分注すること、そして
b)前記部位の複数の異なる点でステップa)を繰り返して、前記部位を前記液体で覆うこと
を含む方法。
【請求項21】
前記液体が細胞及び/又は医薬品を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記バイオプリンティング組立体が、任意の所望の向きで操作されて、前記部位の前記ある一点に前記液体を所定の配向で分注する、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記液体が重力によって動かされることなく、前記対象の前記部位にゲルを形成するように、前記液体の液滴サイズが選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
液体を対象の部位に印刷するための請求項1~15のいずれか一項に記載のバイオプリンティングシステムの使用。
【請求項25】
リザーバーを液体でプライミングする方法であって、
a)請求項1~15のいずれか一項に記載のバイオプリンティングシステムを提供すること、
b)前記液体を含む容器を前記充填機構に無菌流体接続で接続すること、
c)前記液体を前記容器から前記バイオプリンティング組立体に移すこと、そして
d)前記リザーバーを前記液体でプライミングすること
を含む方法。
【請求項26】
前記液体がバイオインク又は細胞インクであり、好ましくは前記対象の自己細胞である細胞を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記容器がシリンジであり、そして前記液体を移すことが、前記液体を前記バイオプリンティング組立体に注入することを含む、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
前記バイオプリンティングシステムが手術室に設けられ、そして前記液体が前記対象の前記部位に印刷される前に、ステップb)~d)がそれぞれ前記手術室内で行われる、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】