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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-10
(54)【発明の名称】回旋筋腱板バルーン
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/40 20060101AFI20230303BHJP
【FI】
A61F2/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022539372
(86)(22)【出願日】2020-12-28
(85)【翻訳文提出日】2022-08-05
(86)【国際出願番号】 CN2020139993
(87)【国際公開番号】W WO2021129860
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】201911380034.7
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522254354
【氏名又は名称】シャンハイ エンドフィックス カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユエ,ビン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,チェン
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA11
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC02
4C097EE08
4C097EE11
4C097FF05
(57)【要約】
回旋筋腱板バルーン(10)は、制限構造(100)および制限構造(100)に接続される保護構造(200)を含む。制限構造(100)は冠状面(102)に沿った曲率を有する。この回旋筋腱板バルーン(10)は、人体の肩関節の生理学的構造に適合し、それ自体を肩峰下のスペースに制限し、患者の異物感、ずれ、機能不全および他の不良事象を低減することができる。保護構造(200)は、人体の肩関節の上腕骨頭と肩峰との間のスペース内で支持するように構成され、サポート作用を実現する。さらに、回旋筋腱板を損傷した患者の上腕骨頭が持ち上げられ、内部組織の衝突から生じる痛みを回避し、三角筋のモーメントアームを増加させて患者の肩関節機能の即時改善をもたらす。制限構造(100)は、人体の肩関節の上腕骨頭の少なくとも一部にフィットするように構成され、これにより位置制限効果を提供し、プロテーゼの変位を回避することができる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制限構造および前記制限構造に接続される保護構造を含み、前記制限構造の最大幅が前記保護構造の最大幅よりも大きいバルーン本体と、
充填材が通過して前記バルーン本体に入ることができるように前記バルーン本体の開口部に配置されるバルーン継手と、
前記バルーン本体および/または前記バルーン継手に配置されるとともに密封体を含み、前記密封体は前記充填材が前記バルーン本体から流出することを防止する密封膜を含む密封部材と、
前記バルーン継手に着脱可能に接続されるアウターカテーテルであって、前記充填材が該アウターカテーテルを介して前記バルーン継手から前記バルーン本体に入ることができるアウターカテーテルと、
を備える回旋筋腱板バルーン。
【請求項2】
前記保護構造の高さH1は4mm~14mmであり、前記制限構造の高さH2はH1+15mmである、請求項1に記載の回旋筋腱板バルーン。
【請求項3】
前記保護構造は曲線セグメントを含み、前記曲線セグメントの2つの端点および前記制限構造の最大幅における点を結ぶ線は等脚台形を画定する、請求項1に記載の回旋筋腱板バルーン。
【請求項4】
前記バルーン本体は少なくとも2層構造を含み、前記2層構造はともにポリエチレン製である、請求項1に記載の回旋筋腱板バルーン。
【請求項5】
前記バルーン本体は、内層と、外層と、前記内層および前記外層の間の薬物層とを含む、請求項4に記載の回旋筋腱板バルーン。
【請求項6】
前記外層は分解性ポリマー材料で構成され、ならびに/または、前記薬物層は、ジクロフェナクジエチルアミン、フェンタニルおよびその類似体、エトルフィンおよびその類似体、α2受容体作動薬メデトミジン、ドロペリドール、エトミデート、ベクロニウム臭化物およびその類似体、プロカインアミド塩酸塩、テトラカイン塩酸塩、リドカイン塩酸塩、抗生物質およびセファロスポリン系抗炎症薬のうちの少なくとも1つを含む、請求項5に記載の回旋筋腱板バルーン。
【請求項7】
バルーン本体と、バルーン継手と、密封部材とを備える回旋筋腱板バルーンであって、
前記バルーン本体は少なくとも2層構造を含み、前記2層構造はともにポリエチレン製であり、前記バルーン本体は制限構造および前記制限構造に接続される保護構造を含み、前記制限構造の最大幅は前記保護構造の最大幅よりも大きい、回旋筋腱板バルーン。
【請求項8】
前記バルーン継手は、充填材が通過して前記バルーン本体に入ることができるように前記バルーン本体の開口部に配置され、前記密封部材は、前記バルーン本体および/または前記バルーン継手に配置されるとともに密封体を含み、前記密封体は前記充填材が前記バルーン本体から流出することを防止する密封膜を含む、請求項7に記載の回旋筋腱板バルーン。
【請求項9】
アウターカテーテルをさらに備え、前記アウターカテーテルは前記バルーン継手に着脱可能に接続され、前記充填材は前記アウターカテーテルを介して前記バルーン継手から前記バルーン本体に入ることができる、請求項8に記載の回旋筋腱板バルーン。
【請求項10】
前記密封体は前記バルーン本体内に配置され、前記密封部材は、前記密封体を前記バルーン本体の開口部に予め配置するように前記密封体に着脱可能に接続される補助チューブを含む、請求項7に記載の回旋筋腱板バルーン。
【請求項11】
前記保護構造は曲線セグメントを含み、前記曲線セグメントの2つの端点および前記制限構造の最大幅における点を結ぶ線は等脚台形を画定する、請求項7に記載の回旋筋腱板バルーン。
【請求項12】
前記保護構造の高さH1は4mm~14mmであり、前記制限構造の高さH2はH1+15mmである、請求項7に記載の回旋筋腱板バルーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、医療機器の技術分野に関し、特に、回旋筋腱板バルーンに関する。
【背景技術】
【0002】
回旋筋腱板は、肩甲骨と上腕骨頭とを接続する筋腱性構造であって、関節窩上腕関節包の外側かつ三角筋の内側に位置している。回旋筋腱板は、前回旋筋腱板(肩甲下筋)、上回旋筋腱板(棘上筋)および後回旋筋腱板(棘下筋および小円筋)で構成されている。腕のある程度の内旋、外旋および外転を可能にする機能に加えて、回旋筋腱板のより主要な機能は、関節窩上の上腕骨頭の位置を安定させ、痛み等につながるおそれのある、上腕骨頭が上方へ移動して肩峰と衝突することを回避することである。したがって、回旋筋腱板は、肩関節の安定性の維持および肩関節の運動において非常に重要な役割を果たしている。しかしながら、加齢に伴い、長期的に繰り返される肩関節の運動が原因で肩峰下の骨増殖が生じたり、繰り返される激しい動きが肩峰下の軟組織(関節の滑液包、回旋筋腱板)の摩滅を引き起こしたりすることがあり、これは上腕骨頭の安定性および動きを損ない、肩関節が動かなくなり、患者は腕の外転、挙上または他の動きができなくなる可能性がある。さらに、骨と骨、および骨と回旋筋腱板の衝突によって生じる激しい痛みが原因で患者が眠れなくなるおそれがあるので、患者の生活の質およびセルフケア能力は著しく低下する。
【0003】
現状では、回旋筋腱板の損傷の治療は、とりわけ手術およびプロテーゼ移植を主として含む。軽度の回旋筋腱板損傷の外科的処置には良好な成果が期待できるが、3cmより大きな損傷については、外科的処置の有効性は不確実であり、再発しやすいという問題がある。プロテーゼ移植は上腕骨頭の上方への動きを人工的に制限し、内部組織の衝突から生じる痛みを回避して三角筋のモーメントアームを増加させ、患者の肩関節機能の即時改善をもたらす。先行技術においては、人工器官や生体スペーサー等の人工インプラントは、患者の活動中に変位する可能性がある。たとえば、人工器官の変位は圧力分布の変化を引き起こす可能性があり、これはプロテーゼの破裂および長時間37°Cで保たれたことにより品質が劣化した可能性のある含有物質の放出を引き起こし、患部にさらなる損傷を与えるおそれがある。さらに、その充填孔は硬質材料でできており、移植後に特定の運動をするときに、不快感および異物感をもたらすおそれがある。生体スペーサーの変位は患者に不快感をもたらし、患者の活動を制限し、または周囲の軟組織を傷つけて追加の損傷を引き起こす可能性さえある。その上、先行技術のプロテーゼ移植は不具合を経験する可能性が高い。
【発明の概要】
【0004】
このことに伴い、人の肩関節の生理学的構造に適合し、それ自体を肩峰下のスペースに制限することによりインプラントの変位の問題を解決し、不良事象の発生を減少させる回旋筋腱板バルーンを提供する必要がある。
【0005】
上記の目標を達成するために、本願は、制限構造および前記制限構造に接続される保護構造を含み、前記制限構造の最大幅が前記保護構造の最大幅よりも大きいバルーン本体と、充填材が通過して前記バルーン本体に入ることができるように前記バルーン本体の開口部に配置されるバルーン継手と、前記バルーン本体および/または前記バルーン継手に配置されるとともに密封体を含み、前記密封体は前記充填材が前記バルーン本体から流出することを防止する密封膜を含む密封部材と、前記バルーン継手に着脱可能に接続されるアウターカテーテルであって、前記充填材が該アウターカテーテルを介して前記バルーン継手から前記バルーン本体に入ることができるアウターカテーテルと、を備える回旋筋腱板バルーンを開示する。
【0006】
さらに、前記保護構造の高さH1は4mm~14mmであり、前記制限構造の高さH2はH1+15mmであることが好ましい。
【0007】
さらに、矢状面に沿った前記制限構造の高さH2はH1+15mmであることが好ましい。
【0008】
さらに、前記保護構造は曲線セグメントを含み、前記曲線セグメントの2つの端点および前記制限構造の最大幅における点を結ぶ線は等脚台形を画定することが好ましい。
【0009】
さらに、前記バルーン本体は少なくとも2層構造を含み、前記2層構造はともにポリエチレン製であることが好ましい。
【0010】
さらに、前記バルーン本体は、内層と、外層と、前記内層および前記外層の間の薬物層とを含むことが好ましい。
【0011】
さらに、前記外層は分解性ポリマー材料で構成され、ならびに/または、前記薬物層は、ジクロフェナクジエチルアミン、フェンタニルおよびその類似体、エトルフィンおよびその類似体、α2受容体作動薬メデトミジン、ドロペリドール、エトミデート、ベクロニウム臭化物およびその類似体、プロカインアミド塩酸塩、テトラカイン塩酸塩、リドカイン塩酸塩、抗生物質およびセファロスポリン系抗炎症薬のうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0012】
さらに、本願は、バルーン本体と、バルーン継手と、密封部材とを備える回旋筋腱板バルーンであって、前記バルーン本体は少なくとも2層構造を含み、前記2層構造はともにポリエチレン製であり、前記バルーン本体は制限構造および前記制限構造に接続される保護構造を含み、前記制限構造の最大幅は前記保護構造の最大幅よりも大きい、別の回旋筋腱板バルーンを開示する。
【0013】
さらに、前記バルーン継手は、充填材が通過して前記バルーン本体に入ることができるように前記バルーン本体の開口部に配置され、前記密封部材は、前記バルーン本体および/または前記バルーン継手に配置されるとともに密封体を含み、前記密封体は前記充填材が前記バルーン本体から流出することを防止する密封膜を含むことが好ましい。
【0014】
さらに、回旋筋腱板バルーンは、アウターカテーテルをさらに備え、前記アウターカテーテルは前記バルーン継手に着脱可能に接続され、前記充填材は前記アウターカテーテルを介して前記バルーン継手から前記バルーン本体に入ることができることが好ましい。
【0015】
さらに、前記密封体は前記バルーン本体内に配置され、前記密封部材は、前記密封体を前記バルーン本体の開口部に予め配置するように前記密封体に着脱可能に接続される補助チューブを含むことが好ましい。
【0016】
さらに、前記保護構造は曲線セグメントを含み、前記曲線セグメントの2つの端点および前記制限構造の最大幅における点を結ぶ線は等脚台形を画定することが好ましい。
【0017】
さらに、前記保護構造の高さH1は4mm~14mmであり、前記制限構造の高さH2はH1+15mmであることが好ましい。
【0018】
本願で提供される回旋筋腱板バルーンは、人体の肩関節の生理学的構造に適合し、それ自体を肩峰下のスペースに制限し、患者の異物感、ずれ、機能不全および他の不良事象を低減することができる。保護構造は、人体の肩関節の上腕骨頭と肩峰との間のスペース内で支持するように構成され、サポート作用を実現する。さらに、回旋筋腱板を損傷した患者の上腕骨頭が持ち上げられ、内部組織の衝突から生じる痛みを回避し、三角筋のモーメントアームを増加させて患者の肩関節機能の即時改善をもたらす。制限構造は、人体の肩関節の上腕骨頭の少なくとも一部にフィットするように構成され、これにより位置制限効果を提供し、プロテーゼの変位を回避することができる。
【0019】
本願で提供される回旋筋腱板バルーンにおいて、制限構造は第1の面および第2の面を有し、これらは両方とも、制限構造が人体の上腕骨頭もしくは大結節の全体またはそれらの一部にフィットできるように湾曲している。このようにして、制限構造は最大の位置制限効果を提供し、プロテーゼの変位を最大限に防止することが可能になる。
【0020】
本願で提供される回旋筋腱板バルーンにおいて、制限構造の縁は、患者の活動を制限したり周囲の軟組織を損傷したりすることなく、肩関節および回旋筋腱板の上部の生理学的形状に適合するように湾曲している。
【0021】
本願で提供される回旋筋腱板バルーンにおいて、制限構造は第1収容チャンバを有し、保護構造は第1収容チャンバと連通する第2収容チャンバを有する。充填材が制限構造および保護構造の内部に充填されると、保護構造は回旋筋腱板にフィットし、肩関節の運動中に肩峰または他の組織構造との衝突を回避できる。さらに、上腕骨頭と肩峰との距離が保たれ、筋肉負担を低減できる肩関節の運動のためのモーメントアームの長さを維持することができる。制限構造は人体の肩関節の上腕骨頭とぴったりと噛み合うことができ、これにより高い位置制限能力を有する。制限構造および保護構造の内部には、液体、ゲル、または気体を注入して充填することができ、関節の生理学的構造にフィットさせてもよく、結果として回旋筋腱板を損傷した患者の肩関節機能の望ましい改善をもたらす。さらに、プロテーゼの特殊な外形は人体の肩関節の特殊な生理学的構造に適合するので、よりよいサポートを提供し、衝突を減少させ、よりよい治療成果を達成することができる。
【0022】
本願で提供される回旋筋腱板バルーンの移植の後に起こり得る患者の異物感を減少させるために、第1および第2収容チャンバに充填材が充填されたとき、制限構造の高さは、保護構造から遠位にある端から保護構造に接続される端まで徐々に増加しており、すなわち、制限構造は外側が薄く、近位端に向かって徐々に厚くなるように設計されている。したがって、制限構造が運動中に上腕骨頭に与える影響が少なくなる。
【0023】
本願で提供される回旋筋腱板バルーンは、バルーン本体の密封性を効果的に実現して、充填された液体又はゲルがバルーンから流出することを防止することができ、構造が簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】人体の解剖学的平面の概略図である。
図2】本願の一実施形態に係る膨張形態における回旋筋腱板バルーンの概略側面断面図である。
図3図2の回旋筋腱板バルーンの概略上面図である。
図4図2の回旋筋腱板バルーンの概略背面図である。
図5図2の回旋筋腱板バルーンの概略正面図である。
図6図2の回旋筋腱板バルーンの概略側面図である。
図7】人体に装着されている図2の回旋筋腱板バルーンを示す概略図である。
図8A】別の実施形態に係る回旋筋腱板バルーンの概略側面図であって、L1は冠状面に沿った回旋筋腱板バルーンの長さを示し、L2は冠状面に沿った回旋筋腱板バルーンの保護構造の長さを示し、H1は矢状面に沿った回旋筋腱板バルーンの保護構造の高さを示し、H2は矢状面に沿った回旋筋腱板バルーンの高さを示す。
図8B】別の実施形態に係る回旋筋腱板バルーンの概略上面図であって、L3は水平面に沿った回旋筋腱板バルーンの保護構造の幅を示し、L4は水平面に沿った回旋筋腱板バルーンの制限構造の幅を表す。
図9】別の実施形態に係る回旋筋腱板バルーンの概略上面図である。
図10】別の実施形態に係る回旋筋腱板バルーンの概略上面図である。
図11】別の実施形態に係る回旋筋腱板バルーン用の密封構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本願を理解し易くするために、以下、関連する添付図面を参照して本願をより詳細に説明する。添付図面では、本願の好適な実施形態が示されている。しかしながら、本願は多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書に記載する実地形態に限定されるものではない。むしろ、これらの実施形態を提供する目的は、本願の開示のより完全で包括的な理解を可能にすることである。
【0026】
特に定義しない限り、本明細書で使用する全ての科学技術用語は、本願が属する技術分野の当業者が共通に理解する意味と同じ意味を有する。本願の明細書で使用する専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本願を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、「および/または」は、関連して記載された1以上のアイテムの任意のおよび全ての組み合わせを含む。
【0027】
人体の解剖学的平面を定義する概略図である図1を参照する。矢状面101は前後方向に沿って人体または関節を左右に分割する縦断面であり、人体の中央を通過する矢状面は人体を左右均等に分割する正中矢状面である。冠状面102は左右方向に沿って人体または関節を前後に分割する縦断面であり、矢状面に垂直である。水平面103は横断面とも呼ばれ、地面と平行な面であり、人体または関節を上下に分割し、冠状面および矢状面の両方に垂直である。
【0028】
図2に示すように、本願の一実施形態は、制限構造100および制限構造100に接続される保護構造200を含む回旋筋腱板バルーン10を提供する。制限構造100は冠状面に沿った曲率を有する。あるいは、制限構造100は、冠状面に沿って保護構造200と角度を形成する。優先的に、制限構造100は、冠状面および矢状面の両方に沿った曲率を有する。制限構造100は、曲率半径が10mmから50mmの内表面を有する。具体的には、制限構造100は第1の面および第2の面を有する。制限構造100の第1および第2の面はともに曲面である。たとえば、第2の面は内側の表面である(図2に示す下向きの表面)。図7に示すように、第2の面は、上腕骨頭および/または大結節の全体、またはそれらの一部にフィットするように構成されている。この第2の面は、少なくとも大結節の一部を覆うように上腕骨頭から延びている。本願発明者らは、上腕骨頭のみを覆うことと比較すると、制限構造100の第2の面で大結節全体またはその一部を覆うことは、腕の外転、内旋、または他の運動中のプロテーゼの変位やずれを防止することができ、プロテーゼの制限構造の内側で回旋筋腱板腱の断裂した傷を保護し、さらに断裂した傷が骨とぶつかることによる患者への激痛を回避できることを発見した。したがって、制限構造100は最適な位置制限効果を提供し、回旋筋腱板バルーンの変位を最大限に防止することができる。制限構造100は半椀形状の構造であることが好ましい。このような半椀形状の制限構造100は上腕骨頭にフィットして、回旋筋腱板バルーン全体の位置を維持する機能を果たすことができる。他の実施形態では、制限構造100の構造および形状は上述のものに限定されず、半盆地形状の構造や半鉢形状の構造等であってもよいことが理解され得る。
【0029】
図7に示すように、保護構造200は、人体の肩関節の上腕骨頭と肩峰との間のスペース内で肩峰を支持するように構成されている。
【0030】
さらに、図4および図5に示すように、制限構造100の縁は矢状面に沿って湾曲している。制限構造100の縁は滑らかである。この湾曲した構造は、肩関節および回旋筋腱板の上部の生理学的形状に適合することができ、肩関節の運動中に制限構造100の外縁が筋組織に与える損傷を低減させる。
【0031】
さらに、図2および図3に示すように、制限構造100の最大幅は保護構造200の最大幅よりも大きい。図8Bに示すように、制限構造100と保護構造200との間の移行部の幅L4は、保護構造200の幅L3よりも大きいことが好ましい。このような構成は、人体の肩関節の上腕骨頭および大結節に対する制限構造100のフィット性を高め、肩峰下滑液包のひだの折れ目と協動して保護構造200および回旋筋腱板バルーン全体の変位を制限することができる。制限構造100および/または保護構造200は変形できることが好ましく、変形は回復可能な圧縮変形、充填材の充填による膨張変形、または別の変形形態であってもよい。制限構造100および/または保護構造200は、人体の肩関節の上腕骨頭および人体の肩関節の上腕骨頭と肩峰との間のスペースに適応して人体の肩関節の特殊な生理学的構造に適合するように変形し、よりよいサポートを提供し、衝突の減少を実現し、よりよい治療成果を達成する。充填中、制限構造100および/または保護構造200は、圧縮された後の自己膨張または充填による膨張等の変形によって肩関節の生理学的構造にそれ自体を適応させ、人体の上腕骨頭にフィットし、肩関節の滑液包のひだの折れ目の生理学的構造と協動して肩関節の回旋筋腱板バルーンの内側または外側の変位を制限することができ、結果としてずれることなく肩峰下のスペースにそれ/それら自体を制限する。さらに、変形に基づく自己適応性により、制限構造100および保護構造200は患者の活動を制限することがなく、また、周囲の軟組織に損傷を与えることもない。
【0032】
他の実施形態では、図8Aに示すように、H1は、矢状面に沿った回旋筋腱板バルーン10の保護構造200の寸法、すなわち保護構造200の高さであり、4~14mmであることが好ましい。圧力下で密閉されたチャンバの流体力学の原理によれば、P=σ・h/rであり、ここで、Pはチャンバが耐えることのできる最大圧力、σはチャンバハウジング材料の周方向応力強度、hはチャンバハウジングの肉厚、rはチャンバの最小半径である。本願の肩関節プロテーゼが移植される肩峰下のスペースでは、肩峰と上腕骨頭との間の最大締め付け圧力は約88KPa(すなわち、P=88KPa)であり、肩関節プロテーゼの保護構造200の高さH1は約4~14mm(すなわち、保護構造のチャンバの最小半径r=2~7mm)である。したがって、σ・hの値は176~616KPa・mmの範囲である。この値は、肩関節プロテーゼの材料選択の指針および特定の肉厚の設計において重要である。たとえば、肩関節プロテーゼの肉厚hが0.1mmの場合、少なくとも強度σが1760~6160KPaの範囲にある材料をプロテーゼ用に選択することが適用される。実際には、一般に使用されるポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリ乳酸およびポリカプロラクトン等の非分解性および分解性の医療材料がこの要件を満たすことができる。したがって、H1は4~14mmであることが好適であり、これによって、肩関節プロテーゼが一般的に使用される医療材料から従来の製造精度で製造される場合、保護構造による上腕骨頭および肩峰への支持機能を実現することができる。
【0033】
H2は、矢状面に沿った回旋筋腱板バルーン10の高さであり、9~34mmであることが好ましい。矢状面に沿った制限構造100の直線長さ、すなわち制限構造100の高さH2はH1+15mmであることがより好ましい。この配置によって、制限構造100は上腕骨頭および大結節を覆うことができるとともに、制限構造100のサイズが大きすぎることによって回旋筋腱板の筋肉群の動きを妨げることを回避できる。
【0034】
図8Aに示すように、L1は、冠状面に沿った回旋筋腱板バルーン10の長さであり、30~70mmであることが好ましい。L2は、冠状面に沿った回旋筋腱板バルーン10の保護構造200の長さであり、10~40mmであることが好ましい。図8Bに示すように、L3は、水平面に沿った回旋筋腱板バルーン10の保護構造200の幅であり、15~60mmであることが好ましい。L4は、水平面に沿った回旋筋腱板バルーン10の制限構造100の幅であり、20~70mmであることが好ましい。この配置によって、保護構造200は肩峰を上腕骨頭から離隔することができ、制限構造100は上腕骨頭および大結節を覆ってずれを防止することが可能になる。
【0035】
異なる上腕骨頭の直径に対しては、異なるサイズの回旋筋腱板バルーン10が適切である。たとえば、直径5cmの上腕骨頭に対しては、H1は10~12mm、H2は25~27mm、L1は55~65mm、L2は25~35mm、L3は30~50mm、L4は55~60mm、制限構造100の内側表面の曲率半径は25~30mmが好ましい。
【0036】
図8Aおよび8Bに示すように、制限構造100の高さH2は、保護構造200から遠位の端から保護構造200に接続される端まで徐々に増加する。
【0037】
図9は肩関節プロテーゼの他の実施形態の上面図である。図9に示すように、制限構造100の最大幅は点Dと点Cとの間に画定され、保護構造200は点Aおよび点Bでそれぞれ終わる曲線セグメントを含む。点A、B、C、Dは等脚台形を画定する。この構造は保護構造のセグメントABとCDとの間の水平力の伝達を強化することができる。腕の外転および挙上の間に上腕骨頭が関節窩の内側に向かって回転するとき、保護構造にCDからABに向かう水平力がかかり、保護構造を水平に圧縮する。この大きなテーパー角を有する台形の輪郭設計は、上記2つの境界セグメント間を伝達する間の力の損失を低減し、ひいては腕の外転の動的なプロセスの間の保護構造の内部歪みによって引き起こされる波形の変形を抑制する。曲線セグメントABは0.21mm-1以下の曲率を有し、曲線セグメントCDは0.15mm-1以下の曲率を有することがより好ましい。
【0038】
図9において、点Aおよび点Dは、1以上の直線セグメントによって、または1以上の曲線セグメントによって、または直線セグメントおよび曲線セグメントの両方によって接続されていてもよい。図10に示すように、点Aおよび点Cの間は曲線セグメントABと曲線セグメントBCとを含み、点Dおよび点Fの間は曲線セグメントDEと曲線セグメントEFとを含む。曲線セグメントABおよびEFはそれぞれ0.3mm-1以下の曲率を有することが好ましく、曲線セグメントBCおよびDEはそれぞれ0.15mm-1以下の曲率を有することが好ましい。
【0039】
制限構造100は第1収容チャンバ110を有し、保護構造200は第1収容チャンバ110と連通する第2収容チャンバ210を有する。第1収容チャンバ110および第2収容チャンバ210は両方とも、充填材600が充填されるように構成されている。充填工程において制限構造100および保護構造200に充填材600が充填されると、保護構造200は回旋筋腱板にフィットすることができ、肩関節の運動中に回旋筋腱板が肩峰または他の組織構造と衝突することを回避し、さらに、上腕骨頭と肩峰との距離が保たれ、肩関節の運動のためのモーメントアームの長さを維持することができ、これにより筋肉負担を低減できる。制限構造100は人体の肩関節の上腕骨頭とぴったりと噛み合うことができ、従って高い位置制限能力を有する。
【0040】
好ましくは、制限構造100および保護構造200は、バルーン、またはスポンジ状の構成要素、または非膨張構造であってもよい。
【0041】
制限構造100が第1収容チャンバ110を有し、保護構造200が第2収容チャンバ210を有する場合、制限構造100の最大高さは、保護構造200から遠位の端から保護構造200に接続される端まで徐々に増加することが好ましい。制限構造100の最小高さは、充填材が充填される前の高さ、または制限構造100が圧縮された後の高さである。制限構造100の最大高さは、充填材が充填された後の高さ、または圧縮形態から自己回復した後の高さである。保護構造200の最小高さは、充填材が充填される前の高さ、または保護構造200が圧縮された後の高さである。保護構造200の最大高さは、充填材が充填された後の高さ、または圧縮形態から自己回復した後の高さである。
【0042】
図2に示すように、第1収容チャンバ110および第2収容チャンバ210の両方に充填材600が充填されているとき、制限構造100の高さは、保護構造200から遠位の端から保護構造200に接続される端まで徐々に増加する。回旋筋腱板バルーン10が移植された後の患者の異物感を減少させるために、第1収容チャンバ110および第2収容チャンバ210の両方に充填材600が充填されているとき、制限構造100の高さは、保護構造200から遠位の端から保護構造200に接続される端まで徐々に増加するように構成されており、すなわち、制限構造100は外側が薄くなり、近位端に向かって徐々に厚くなるように設計されている。したがって、制限構造100が運動中に上腕骨頭に与える影響が少なくなる。
【0043】
加えて、保護構造200のチャンバ壁は、様々な特定の異なる適用ニーズに対してきめ細かに最適化されてもよい。たとえば、より多くの運動活動を必要とする場合、より多くの使用年数のために適切に厚くしてもよい。
【0044】
さらに、第1収容チャンバ110および第2収容チャンバ210の両方に充填材600が充填されているとき、肩関節の運動中の上腕骨頭の不快感を減少させるために、制限構造100の保護構造200と接続されている端の高さは保護構造200の高さと同じであってもよい。
【0045】
保護構造200の一方の面は、回旋筋腱板に実質的にフィットするように湾曲している。具体的には、保護構造200は横断面に対して下向きに湾曲している構造である。この湾曲した構造は肩関節および回旋筋腱板の上部の生理学的形状に適合しており、充填材600が充填された後、保護構造200は回旋筋腱板にフィットして、回旋筋腱板が肩関節の運動中に肩峰または他の組織構造と衝突することを防止することができる。さらに、上腕骨頭と肩峰との距離が保たれ、肩関節の運動のためのモーメントアームの長さを維持することができ、これにより筋肉負担を低減できる。
【0046】
さらに、図3および図5に示すように、制限構造100および/または保護構造200には充填孔300が設けられ、充填孔300は第1収容チャンバ110および第2収容チャンバ210の両方と連通している。充填孔300の中には、充填孔300を介して充填した充填材600の逆流を防ぐことができる一方向弁500が設けられている。
【0047】
さらに、図2および図6に示すように、上記の回旋筋腱板バルーン10は、第1収容チャンバ110内および/または第2収容チャンバ210内に配置されるとともに、充填孔300に連通する充填チューブ400をさらに含む。外側に面した充填チューブ400の開口部は制限構造100または保護構造200の外側表面と同一平面上にあり、一方向弁500は充填チューブ400に収容されている。
【0048】
さらに、図6に示すように、充填チューブ400の充填孔300と連通する端の直径は、内側に面する端の直径よりも小さい。
【0049】
好ましくは、充填チューブ400は可撓性を有し、移植後に特定の運動によって引き起こされる患者の不快感および異物感という先行技術の課題を効果的に解決する。
【0050】
加えて、図6に示すように、制限構造100は保護構造200に接続されて一体構造を形成する。制限構造100および保護構造200をこのような一体構造として設計することは、型成形および低コストでの製造を容易にする。
【0051】
また、制限構造100、保護構造200、および充填チューブ400は全て非分解性の材料で作られる。本願によれば、回旋筋腱板バルーン10の制限構造100および保護構造200をともに非分解性の材料から製造することは、インプラントが短期間で分解して効かなくなるという先行技術の課題を解決し、回旋筋腱板バルーン10の破裂を回避し、37°Cの温度で長い間効果的に動作することを可能にし、品質が劣化した充填材が放出されて患部にさらなる損傷を与えることを効果的に回避する。
【0052】
さらに、制限構造100を製造することができる材料には、これに限定されないが、1以上のシリコーン、ポリウレタン、ゴム、ポリアミド、ポリエステル、およびポリオレフィンが含まれる。保護構造200を製造することができる材料には、これに限定されないが、1以上のシリコーン、ポリウレタン、ゴム、ポリアミド、ポリエステル、およびポリオレフィンが含まれる。充填チューブ400を製造することができる材料には、これに限定されないが、1以上のシリコーン、ポリウレタン、ゴム、ポリアミド、ポリエステル、およびポリオレフィンが含まれる。好適な実施形態では、回旋筋腱板バルーンが長期的に肩峰のサポートを提供できるように、バルーンは2層バルーンとして形成されることが好ましく、2層バルーンの層はともにポリエチレン製である。本願発明者らは、2層のポリエチレン製の回旋筋腱板バルーンは非常に高い穿刺抵抗を有し、膨張させたときに人体の関節腔を効果的に充填することによって自己適応性を実現できることを発見した。
【0053】
また、図2に示すように、上記の回旋筋腱板バルーン10は、第1収容チャンバ110および第2収容チャンバ210に充填される充填材600をさらに含む。充填材600は液体および/またはゲルを含むことが好ましい。たとえば、充填材600は水、シリコーン、ゲル等である。
【0054】
図11は、本願で開示される回旋筋腱板バルーン用の密封部材の概略断面図である。密封部材は、バルーン本体7内に配置される密封体9と、密封体9に着脱可能に接続される補助チューブ11とを含む。補助チューブ11を用いて、バルーン継手8を覆うように密封体9を配置することができる。充填工程を開始する前に、補助チューブ11を密封体9と予め接続し、続いてアウターカテーテル1をバルーン継手8に接続する。充填工程では、補助チューブ11を押すことで密封体9を押圧し、バルーン本体7のチャンバを開放し、アウターカテーテル1と補助チューブ11との間の環状の隙間を使用してバルーン本体7への充填を実現する。充填工程が終わると、密封体9は、バルーン本体7内の充填材の圧力を受けてバルーン本体7の開口部にフィットする。この時点で、アウターカテーテル1および補助チューブ11を人体から抜去し、バルーン本体7を密封することができる。補助チューブ11または密封体9は、脆弱領域12を有する設計であってもよい。術者が補助チューブ11に引張力を加えると、密封体9はバルーン本体7の内圧でバルーン本体7の開口部にフィットし、脆弱領域12は破断する。代替的な実施形態では、密封体9の一端および補助チューブ11に対応するねじが設けられていてもよく、または密封体9の一端が締り嵌めによって補助チューブ11と係合していてもよい。
【0055】
好適な実施形態において、本願で提供される回旋筋腱板バルーンの表面または内部に薬剤が装填されていてもよい。
【0056】
好適な実施形態において、薬剤を装填した回旋筋腱板バルーンは薬剤の即時放出が可能である。回旋筋腱板バルーンが人体内に移植され、そこで膨張すると、バルーンの外表面が人体の組織および体液と接触し、バルーン外表面の薬剤の即時放出につながる。薬剤溶出性のコーティングがバルーンの外表面に装填されていてもよい。さらに、装填される薬剤の量を増やすために、バルーンの外表面に溝が予め形成されていてもよい。断裂した腱の成長回復の促進、患者の痛みの緩和、炎症の除去等の効果を提供するために、バルーンの表面に、損傷した腱の回復を促進可能な医薬品、鎮痛剤、抗炎症薬、または他の医薬品が装填されていてもよい。
【0057】
バルーンには、薬剤溶出性のバルーンを選んでもよく、チャンバ壁の外表面に薬剤を装填する溝を有する構造であってもよい。
【0058】
バルーンに装填される薬剤には、ジクロフェナクジエチルアミン、フェンタニルおよびその類似体、エトルフィンおよびその類似体、α2受容体作動薬メデトミジン、ドロペリドール、エトミデート、ベクロニウム臭化物およびその類似体、プロカインアミド塩酸塩、テトラカイン塩酸塩、リドカイン塩酸塩、抗生物質、セファロスポリン系抗炎症薬、ならびに腱の回復の促進、または鎮痛や抗炎症効果の提供が可能な他の医薬品のうちの1つまたは組み合わせを選んでもよい。
【0059】
バルーンは、気体、液体、またはゲルにより膨張および拡張され得る。膨張させる媒体は医師の必要に応じて決定されてもよい。
【0060】
バルーンを膨張させる物質には、薬剤の溶液またはゲルを選んでもよく、バルーンの材料には、医療用の生分解性高分子材料を選んでもよい。バルーンが分解された後、その中に含有される薬剤が損傷部位に放出されてもよい。
【0061】
好適な実施形態において、薬剤を装填した回旋筋腱板バルーンは、薬剤の時限放出が可能である。この回旋筋腱板バルーンは、薬剤を貯蔵するためのアウターチャンバと、バルーンの膨張および拡張を可能にするためのインナーチャンバとを有する、2層ダブルチャンバのバルーン構造を有している。バルーンの外層には医療用の生分解性高分子材料が選ばれる。バルーンの外層のチャンバ壁が分解されると、2層ダブルチャンバ構造のバルーンのアウターチャンバに含有された薬剤が人体の組織および体液と接触し、薬剤を放出させ、治療効果の提供を可能にする。バルーンの外層の分解時間の定量的な管理は、バルーンの外層の材料であるポリマーの組成、鎖およびブロックの構造、分子量および結晶化度、ならびにチャンバ壁の厚さを調整することにより実現できる。バルーンが移植された後、臨床的に必要とされる時間が経過すると、バルーンの外層のチャンバ壁は完全に分解され、薬剤が適時に放出される。バルーンの内層は、医療用の分解性生体高分子材料または医療用の非分解性ポリマー材料のどちらで作られていてもよい。
【0062】
バルーンは、気体、液体、またはゲルによりインナーチャンバを膨張させることで拡張され得る。膨張させる媒体は医師の必要に応じて決定されてもよい。バルーンの内層に医療用の生分解性高分子材料が選ばれる場合、薬剤の溶液またはゲルを使用してインナーチャンバを膨張させてもよい。
【0063】
バルーンのアウターチャンバ壁の外表面には薬剤を装填しなくてもよいし、薬剤の即時放出のために上述の薬剤装填バルーン構造を採用してもよい。薬剤はアウターチャンバ壁の外表面から溶出してもよいし、チャンバ壁の外層に形成された溝に装填してもよい。
【0064】
好適な実施形態において、薬剤を装填した回旋筋腱板バルーンは周期的な薬剤放出が可能である。上記の時限放出のための薬剤装填バルーン構造に基づいて、複数のチャンバを有する多層の薬剤装填バルーン構造が提供され、そのうち最も内側のものは膨張チャンバとして機能し、残りのものは全て薬剤装填チャンバである。薬剤装填チャンバはそれぞれ、医療用の生分解性高分子材料で作られた外層を有する。この薬剤装填チャンバのチャンバ壁が分解されると、薬剤装填チャンバの薬剤は人体の組織および体液と接触し、薬剤の放出を達成する。バルーンの最も外側のチャンバ壁が人体の体液と最初に接触するので、薬剤装填チャンバのチャンバ壁は外側から内側に向かって連続的に分解される。このようにして、複数の薬剤装填チャンバの薬剤は、それぞれの外層が分解された結果、人体の組織および体液と周期的に接触し、薬剤の放出を達成する。治療要件によって、単一の薬剤または異なる種類および異なる用途の複数の薬剤のどちらが個々の薬剤装填チャンバに装填されてもよい。薬剤装填チャンバの外層の分解時間の定量的な管理は、薬剤装填チャンバの外層の材料であるポリマーの組成、鎖およびブロックの構造、分子量および結晶化度、ならびにチャンバ壁の厚さを調整することにより実現できる。バルーンの最も内側の層(すなわち、膨張チャンバの外層)は、医療用の分解性生体高分子材料または医療用の非分解性ポリマー材料のどちらで作られていてもよい。
【0065】
多層の複数チャンババルーンにおいて、最も内側のチャンバはバルーンを膨張および拡張できるように構成され、残りのチャンバは全て薬剤の装填に適応している。複数のチャンバ壁は、バルーンのチューブ部分またはその近辺で熱溶着により互いに接続され、個々の薬剤装填チャンバを密封してもよい。バルーンの最も内側の層が非分解性材料で作られる場合、接着剤を使用して複数のチャンバ壁を互いに接続することで薬剤装填チャンバを密封してもよい。
【0066】
バルーンにおいて、薬剤装填チャンバの外層はそれぞれ医療用の生分解性高分子材料で作られており、最も内側の層は非分解性材料または医療用の生分解性高分子材料のどちらで作られていてもよい。
【0067】
好適な実施形態において、薬剤を装填した回旋筋腱板バルーンは、薬剤の長期的な持続放出が可能である。このバルーンは薬剤非装填のバルーンのように見え、単一チャンバ構造を採用し得る。人体に移植した後で、チャンバに薬剤溶液または薬剤ゲルを注入し、バルーンを膨らませて拡張してもよい。バルーンのチャンバ壁は多孔質高分子膜で形成されており、人体の骨および組織からの圧力だけでなくバルーン内外の薬剤成分の濃度差により駆動され、薬剤は孔の流路を通じて一定の速度で持続的にバルーンの外に放出される。使用される薬剤の分子サイズによって、バルーンの多孔質材料は、対応するサイズのマイクロ孔(孔径2nm未満)またはメソ孔(孔径2~50nm)を含むように予め形成されてもよい。さらに、薬剤の放出速度および時間の定量的な管理は、バルーンのチャンバ壁用の多孔膜の多孔度、孔径、屈曲係数、厚さ、および他の構造特性パラメータを調整することによって実現される。このバルーン構造は、他の構造と比べて、より多くの薬剤装填とより長い薬剤放出時間の点で優れている。本願は、スポンジ状の構造に吸収されて保持される薬液を染み込ませた、スポンジ状の多孔質の薬剤装填インプラント構造をさらに提供する。人体に構造が移植された後、薬液は人体の骨および組織の圧力によって放出される。このスポンジ状インプラントは、バルーン構造と組み合わされて、全体的に高いサポート性能を持つ複合構造を形成してもよい。このインプラントにおいて、バルーンは内側部材として構成され、スポンジ状の多孔質の薬剤装填構造は外側部材として構成される。
【0068】
スポンジ状の多孔質構造は、医療用の生体適合性弾性ポリマー材料から作られ、ゴム系の熱硬化性エラストマーならびにポリアミド、ポリウレタン、ポリオレフィン、およびポリスチレン等の熱可塑性エラストマーから選択され得る。複合構造において、バルーンの材料は医療用の生体適合性ポリマーが選択され、ポリエステル類、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ナイロンエラストマー類、ポリウレタン等から選択され得る。
【0069】
上述の実施形態の様々な技術的特徴は、任意の方法で組み合わせてもよい。簡潔さのために、このような組み合わせの全てが上記で説明されたわけではないが、技術的特徴の間に矛盾がない限り、いずれも本明細書の範囲内であるとみなされる。
【0070】
上記は単に本願のいくつかの実施形態を示しているにすぎない。これらの実施形態は特殊性を持って詳細に説明されているが、いかなる意味においても本願の範囲を限定していると解釈されるべきではない。当業者は、本願の概念を逸脱することなく様々な変形や修正を行うことが可能であることに留意されたい。したがって、全てのこのような変形および修正は、添付の請求項において規定される本願の範囲内に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0071】
10:回旋筋腱板バルーン
100:制限構造
110:第1収容チャンバ
200:保護構造
210:第2収容チャンバ
300:充填孔
400:充填チューブ
500:一方向弁
600:充填材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
【国際調査報告】