IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エディティ セラピューティクス リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-13
(54)【発明の名称】送達組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20230306BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20230306BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230306BHJP
   C12N 9/50 20060101ALI20230306BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230306BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230306BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230306BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20230306BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230306BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20230306BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230306BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20230306BHJP
   C12N 9/12 20060101ALN20230306BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20230306BHJP
   C12N 15/57 20060101ALN20230306BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20230306BHJP
【FI】
A61K35/17 A
C12N15/09 110
C07K19/00
C12N9/50
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N5/10
A61K38/02
A61P43/00 111
A61K38/43
A61K48/00
A61K47/65
C12N9/12 ZNA
C12N15/54
C12N15/57
C12N5/0783
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022541282
(86)(22)【出願日】2021-01-03
(85)【翻訳文提出日】2022-08-29
(86)【国際出願番号】 IL2021050007
(87)【国際公開番号】W WO2021137241
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】62/956,342
(32)【優先日】2020-01-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522266483
【氏名又は名称】エディティ セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ゴラン マシアチ,ミカル
(72)【発明者】
【氏名】マナスター,ヨアヴ
【テーマコード(参考)】
4B050
4B065
4C076
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B050CC07
4B050KK07
4B050LL01
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC29
4C076CC41
4C076CC47
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF34
4C076FF67
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA03
4C084BA44
4C084DC01
4C084DC02
4C084DC22
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA06
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZC41
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087BB65
4C087CA12
4C087NA05
4C087NA06
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZC41
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA89
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
外因性非細胞傷害性治療用タンパク質性剤を含む改変細胞が提供される。リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質、またはその機能的断片、および目的のタンパク質を含む非細胞傷害性キメラポリペプチドも提供される。本発明の改変リンパ球およびキメラポリペプチドに関連する治療用組成物、核酸分子、および使用方法も提供される。
【選択図】図9C

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的の非溶解性治療用タンパク質を標的細胞に送達する方法であって、
前記標的細胞を改変白血球と接触させることであって、
前記改変白血球が、非改変白血球と比較して低下した細胞傷害性を含み、
かつ前記目的の非溶解性治療用タンパク質を含む、接触させることと、
それによって目的の非溶解性治療用タンパク質を標的細胞に送達することと、
を含む、方法。
【請求項2】
ゲノム編集タンパク質を標的細胞に送達する方法であって、
前記標的細胞を改変白血球と接触させることであって、
前記改変白血球が、前記ゲノム編集タンパク質を含む、接触させることと、
それによって目的の非溶解性治療用タンパク質を標的細胞に送達することと、
を含む、方法。
【請求項3】
前記目的の非溶解性治療用タンパク質または前記ゲノム編集タンパク質が、前記標的細胞の細胞質または核に送達される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記改変白血球が、前記標的細胞と免疫シナプスを形成することができる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記改変白血球が、分泌リソソーム内に前記目的の非溶解性治療用タンパク質またはゲノム編集タンパク質を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記改変白血球が、前記改変細胞の細胞膜内にまたは前記改変細胞の細胞膜に結合された前記目的の非溶解性治療用タンパク質またはゲノム編集タンパク質を含まない、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記改変白血球が、改変T細胞、改変ナチュラルキラー(NK)細胞および改変骨髄細胞から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記改変白血球が、改変非細胞傷害性白血球であるか、または前記改変白血球が、細胞要害性を低下させるようにさらに改変されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記改変白血球が、ノックアウトもしくはノックダウン、または少なくとも1つの内因性細胞傷害性タンパク質を含み、任意により前記内因性細胞傷害性タンパク質がグランザイムBである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記改変白血球が、少なくとも1つの内因性細胞傷害性タンパク質中に突然変異を含み、前記突然変異が、前記内因性細胞傷害性タンパク質の細胞傷害性を低下させる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記改変白血球が、少なくとも1つの内因性細胞傷害性タンパク質のアンチセンス媒介性の低下を含み、前記アンチセンス媒介性が、前記内因性細胞傷害性タンパク質の細胞傷害性を低下させる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記目的の非溶解性治療用タンパク質が、
a.自然に分泌されるタンパク質;
b.前記改変白血球の前記膜中に発現する膜タンパク質;
c.表面受容体結合タンパク質;
d.ウイルス透過タンパク質またはエンベロープタンパク質、および
e.ナノ粒子結合タンパク質または内包化タンパク質
をいずれも含まない、請求項1、3~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記目的の非溶解性治療用タンパク質またはゲノム編集タンパク質が、細胞質タンパク質または核タンパク質である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記目的の非溶解性治療用タンパク質またはゲノム編集タンパク質が、シグナルペプチドを含まない、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記目的の非溶解性治療用タンパク質またはゲノム編集タンパク質が、リボ核タンパク質(RNP)複合体である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記目的の非溶解性治療用タンパク質が、ゲノム編集タンパク質を含む、請求項1、3~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ゲノム編集タンパク質が、前記標的細胞の核内の遺伝子を改変する、請求項2~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ゲノム編集タンパク質が、メガヌクレアーゼである、請求項2~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記目的の非溶解性治療用タンパク質またはゲノム編集タンパク質が、少なくとも50kDaの分子量を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ゲノム編集タンパク質が、CRISPR関連タンパク質9(Cas9)である、請求項2~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記目的の非溶解性治療用タンパク質が、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質またはその機能的断片もしくはバリアント、および治療用ポリペプチドを含むキメラタンパク質であるか、または前記ゲノム編集タンパク質が、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質またはその機能的断片もしくはバリアント、および前記ゲノム編集タンパク質を含むキメラタンパク質である、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質またはその機能的断片もしくはバリアントが、シグナルペプチドを含み、任意により、前記シグナルペプチドが、N末端シグナルペプチドである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質が、ペプチド結合によって前記治療用ポリペプチドまたはゲノム編集タンパク質に直接結合されるか、またはタンパク質リンカーによって間接的に結合される、請求項20または22に記載の方法。
【請求項24】
前記リンカーが、切断可能リンカーであり、任意により前記リンカーが、分泌性顆粒内または酸性pHで切断される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記治療用ポリペプチドまたはゲノム編集タンパク質が、核局在化配列(NLS)を含む、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記溶解性顆粒分泌タンパク質が、少なくとも1つの不活性化突然変異を含む溶解タンパク質であり、前記不活性化突然変異が、前記溶解タンパク質の溶解機能を阻害する、請求項20~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質が、グランザイムA、グランザイムB、グランザイムH、グランザイムK、グランザイムM、グラニュライシン、セルグリシン、およびパーフォリンからなる群から選択される、請求項20~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質が、グランザイムBである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記移入が、エキソソームによって媒介されない、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
細胞質へ送達することが、エンドソームに進入することを含まない、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記白血球を提供することと、前記白血球を活性化することと、前記活性化後に前記白血球において前記目的の非溶解性治療用タンパク質またはゲノム編集タンパク質を発現させて、前記改変白血球を産生することと、をさらに含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記発現が、前記接触前の5日以内に行われる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記標的細胞が、前記目的の非溶解性治療用タンパク質またはゲノム編集タンパク質による治療を必要とする対象に存在し、前記方法が、前記改変白血球を含む医薬組成物を投与することを含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記対象が、遺伝子療法を必要としており、前記改変白血球が、ゲノム編集タンパク質を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記改変白血球が、前記対象に対して自己由来または同種異系である、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
前記対象から白血球を抽出することと、前記白血球を活性化することと、前記活性化後に前記白血球において前記目的の非細胞傷害性治療用タンパク質またはゲノム編集タンパク質を発現させて、前記改変白血球を産生することと、前記改変白血球を前記対象に戻すことと、を含む、請求項33~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記発現することが、前記戻す前の5日以内に行われる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記治療が、前記標的細胞を死滅させることを含まない、請求項33~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記対象が、がんに罹患していない、請求項33~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質、またはその機能的断片もしくはバリアント、および目的のタンパク質を含む、非溶解性キメラポリペプチド。
【請求項41】
前記目的のタンパク質が、細胞表面受容体に結合しない、請求項40に記載のキメラポリペプチド。
【請求項42】
前記リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質が、ペプチド結合によって前記目的のタンパク質に直接結合されるか、またはタンパク質リンカーによって間接的に結合される、請求項40または41に記載のキメラポリペプチド。
【請求項43】
前記リンカーが、切断可能リンカーであり、任意により前記切断可能リンカーが、分泌性顆粒内または酸性pHで切断される、請求項42に記載のキメラポリペプチド。
【請求項44】
前記目的のタンパク質が、少なくとも1つのNLSを含む、請求項40~43のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項45】
前記リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質が、グランザイムA、グランザイムB、グランザイムH、グランザイムK、グランザイムM、およびパーフォリンからなる群から選択される、請求項40~44のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項46】
前記リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質が、グランザイムBである、請求項45に記載のキメラポリペプチド。
【請求項47】
前記目的のタンパク質が、ゲノム編集タンパク質である、請求項40~46のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項48】
前記ゲノム編集タンパク質が、CRISPR関連タンパク質9(Cas9)である、請求項47に記載のキメラポリペプチド。
【請求項49】
前記ゲノム編集タンパク質が、メガヌクレアーゼである、請求項47に記載のキメラポリペプチド。
【請求項50】
前記目的のタンパク質が、少なくとも50kDaの分子量を含む、請求項40~49のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項51】
請求項40~50のいずれか一項に記載のキメラポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項52】
前記ポリヌクレオチドが、リンパ球または骨髄細胞中で前記キメラポリペプチドを発現することができる発現ベクターである、請求項51に記載のポリヌクレオチド。
【請求項53】
以下の少なくとも1つを含む、非改変白血球と比較して低下した細胞傷害性を有する改変白血球:
a.請求項40~50のいずれか一項に記載の非細胞傷害性キメラポリペプチド;
b.請求項51または52に記載のポリヌクレオチド;および
c.目的の非細胞傷害性治療用タンパク質を含む分泌性顆粒。
【請求項54】
前記白血球が、標的細胞と免疫シナプスを形成することができる、請求項53に記載の改変白血球。
【請求項55】
前記白血球が、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、および骨髄細胞から選択される、請求項53または54に記載の改変白血球。
【請求項56】
前記改変白血球が、前記改変白血球の細胞膜内にまたは前記改変白血球の細胞膜に結合された前記非細胞傷害性治療用タンパク質を含まない、請求項53~55のいずれか一項に記載の改変白血球。
【請求項57】
前記改変白血球が改変非細胞傷害性白血球であるか、または前記改変白血球が少なくとも1つの内因性細胞傷害性タンパク質の突然変異を含み、前記突然変異が、前記内因性細胞傷害性タンパク質の前記細胞傷害性を低下させる、請求項53~56のいずれか一項に記載の改変白血球。
【請求項58】
前記改変細胞が、ノックアウトもしくはノックダウン、または少なくとも1つの内因性細胞傷害性タンパク質を含み、任意により前記内因性細胞傷害性タンパク質が、グランザイムBである、請求項53~57のいずれか一項に記載の改変白血球。
【請求項59】
請求項53~58のいずれか一項に記載の改変白血球を含む治療用組成物。
【請求項60】
対象へ投与するために製剤化され、薬学的に許容される担体、賦形剤、もしくはアジュバント、またはその両方を含む、請求項59に記載の治療用組成物。
【請求項61】
a.請求項40~50のいずれか一項に記載の非細胞傷害性キメラポリペプチド;
b.請求項51または52に記載のポリヌクレオチド;
c.請求項53~58のいずれか一項に記載の改変白血球;および
d.請求項59または60に記載の治療用組成物
のうちの少なくとも1つを含むキット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2020年1月2日に出願された米国仮特許出願第62/956,342号の優先権の利益を主張し、その内容はすべて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、細胞ベースの送達系の分野にある。
【背景技術】
【0003】
治療剤を標的細胞の細胞質に、または核にも導入できる生物学的送達系が緊急に必要とされている。治療剤を標的細胞の細胞表面に運ぶことができる送達系は存在するが、標的が、細胞表面受容体である場合、または治療剤が細胞透過性部分を含む場合にのみ有効である。このように、他の点では創薬可能な多くの細胞質標的は、それらに到達できる送達系がないため、現在治療に適していない。
【0004】
近年、ゲノム編集技術が開発され、高い効率、特異性、および汎用性が示されている。それにもかかわらず、細胞に治療を効果的に送達する上記の能力が制限され、これらの新しい技術にも等しく適用される。
【0005】
遺伝子療法技術の効果的な適用を妨げる障害としては、免疫原性、標的臓器、組織または細胞に対して特異性を必要とすること、ならびに適切な組成、パッケージング、機能特性、および送達ビヒクルの安定性が欠如していることが挙げられる。現在の遺伝子療法および全身遺伝子療法のための遺伝子編集送達系は、ウイルス性または非ウイルス性にかかわらず、全身投与後に急速に循環から除去される。さらに、ウイルス系の免疫原性は、急性炎症応答を誘発する可能性があり、これにより、最善でも、その後の投与効果が制限され、最悪の場合、患者に危険を及ぼし得る。したがって、依然として効率的かつ正確な遺伝子編集送達系が必要とされている。
【0006】
白血球、特にリンパ球は、広く研究され、細胞傷害性治療剤として利用されている。これらの細胞は、何億年にもわたる進化によって完成され、身体内のあらゆる細胞を監視し、標的にし、必要に応じて死滅させる可能性がある。リンパ球誘発性死滅は、非常に効率的で特異性の高いプロセスであり、最小限の副次的損傷が生じ、隣接するバイスタンダー細胞を損傷しないようにする。T細胞、NK細胞、およびNKT細胞などのリンパ球のいくつかの系統は、標的細胞に直接付着し、それらの溶解性顆粒の内容物をそれらの細胞に分泌し、その後死滅させることができる。
【0007】
このプロセスには、2つの重要なタンパク質が関与している。パーフォリンは標的細胞膜上に集合して孔を形成し、そこから溶解タンパク質であるグランザイムが標的細胞に進入し、アポトーシスカスケードを開始する。グランザイムの送達は、がん細胞を死滅させる方法として想定されてきたが、送達/非細胞傷害性の選択肢として使用されたことはない。国際特許出願WO2015/157864、ならびに記事Dalken et al.,「Targeted induction of apoptosis by chimeric granzyme B fusion proteins carrying antibody and growth factor domains for cell recognition」Oberoi et al., 2013「EGFR-targeted granzyme B expressed in NK cells enhances natural cytotoxicity and mediates specific killing of tumor cells」、およびZhoa et al.,「Secreted antibody/granzyme B fusion protein stimulates selected killing of HER2-overexpressing tumor cells」では、すべて、細胞傷害性細胞および細胞傷害性グランザイム融合タンパク質を利用して、標的細胞の免疫細胞の死滅を強化している。これらのすべての場合において、目標は、標的細胞の死であり、すべての場合において、細胞の自然な細胞傷害性が強化される。治療剤、特に遺伝子療法を送達するためにリンパ球の自然な溶解経路を乗っ取るタンパク質移入の非細胞傷害性方法は、治療送達の問題に対する強力な解決策をもたらすであろう。この細胞死滅経路を送達経路に変換することにより、これまで想定されていなかった新規解決策をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、外因性非溶解性治療用タンパク質性剤を含む改変細胞を提供する。リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質、またはその機能的断片、および目的のタンパク質を含む非溶解性キメラポリペプチドも提供される。改変細胞を含む治療用組成物、キメラポリペプチドをコードする核酸分子、および使用方法も提供される。
【0009】
第1の態様によれば、改変リンパ球または骨髄細胞が提供され、このリンパ球または骨髄細胞は、外因性の非細胞傷害性治療用タンパク質性剤を含む。
【0010】
いくつかの実施形態によれば、リンパ球または骨髄細胞は、リンパ球または骨髄細胞の細胞膜内に非細胞傷害性治療用タンパク質性剤を含まない。
【0011】
いくつかの実施形態によれば、剤は、以下のいずれでもない治療部分を含む:
a.自然に分泌されるタンパク質、
b.改変細胞の膜で発現する膜タンパク質、
c.表面受容体結合剤、
d.ウイルス透過タンパク質またはエンベロープタンパク質、および
e.ナノ粒子結合剤または内包化剤。
【0012】
いくつかの実施形態によれば、リンパ球は、T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞から選択されるか、または骨髄細胞は、マクロファージである。
【0013】
いくつかの実施形態によれば、リンパ球は、非細胞傷害性リンパ球である。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、リンパ球または骨髄細胞は、細胞株の細胞または初代細胞である。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、治療用タンパク質性剤は、リンパ球の分泌性顆粒中にある。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、治療部分は、細胞質タンパク質または核タンパク質である。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、治療用タンパク質性剤は、シグナルペプチドを含まない。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、治療用タンパク質性剤は、RNA-タンパク質複合体である。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、治療用タンパク質性剤は、少なくとも50kDaの分子量を含む。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、治療用タンパク質性剤は、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質またはその機能的断片もしくはそのバリアントを含むキメラタンパク質と、治療用ポリペプチドとを含む。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、ペプチド結合によって治療用ポリペプチドに直接結合されるか、またはタンパク質リンカーによって間接的に結合される。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、リンカーは、切断可能リンカーである。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、切断可能リンカーは、酸性pHで切断される。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、治療用ポリペプチドは、核局在化配列(NLS)を含む。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、グランザイムA、グランザイムB、グランザイムH、グランザイムK、グランザイムM、グラニュライシン、セルグリシン、およびパーフォリンからなる群から選択される。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、グランザイムBである。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、非細胞傷害性であるかまたは不活化されている。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、治療用タンパク質性剤は、ゲノム編集剤である。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、ゲノム編集剤は、CRISPR関連タンパク質9(Cas9)を含む。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、ゲノム編集剤は、メガヌクレアーゼを含む。
【0031】
別の態様によれば、本発明の改変リンパ球を含む治療用組成物が提供される。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、本発明の治療用組成物は、対象への投与のために製剤化され、薬学的に許容される担体、賦形剤、もしくはアジュバント、またはその両方を含む。
【0033】
別の態様によれば、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質またはその機能的断片および目的のタンパク質を含む非細胞傷害性キメラポリペプチドが提供される。
【0034】
いくつかの実施形態によれば、目的のタンパク質は、標的細胞中の細胞表面受容体に結合しない。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、ペプチド結合によって目的のタンパク質に直接結合されるか、またはタンパク質リンカーによって間接的に結合される。
【0036】
いくつかの実施形態によれば、リンカーは、切断可能リンカーであり、任意により、切断可能リンカーは、分泌性顆粒内で切断される。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、目的のタンパク質は、少なくとも1つのNLSを含む。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、グランザイムA、グランザイムB、グランザイムH、グランザイムK、グランザイムM、グラニュライシン、セルグリシン、およびパーフォリンからなる群から選択される。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、グランザイムBである。
【0040】
いくつかの実施形態によれば、目的のタンパク質は、ゲノム編集剤である。
【0041】
いくつかの実施形態によれば、ゲノム編集剤は、CRISPR関連タンパク質9(Cas9)である。
【0042】
いくつかの実施形態によれば、ゲノム編集剤は、メガヌクレアーゼである。
【0043】
別の態様によれば、本発明のキメラポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0044】
いくつかの実施形態によれば、ポリヌクレオチドは、リンパ球または骨髄細胞中でキメラポリペプチドを発現することができる発現ベクターである。
【0045】
別の態様によれば、非溶解性治療用タンパク質性剤を標的細胞に送達する方法が提供され、この方法は、標的細胞を、
a.本発明の改変リンパ球または骨髄細胞;
b.本発明の治療用組成物;
c.本発明のキメラポリペプチドを発現する改変リンパ球または骨髄細胞;
d.本発明のポリヌクレオチドを発現する改変リンパ球または骨髄細胞;
のうちのいずれかと接触させること、
それにより、非細胞傷害性治療用タンパク質性剤を標的細胞に送達すること、を含む。
【0046】
いくつかの実施形態によれば、標的細胞は、非細胞傷害性治療用タンパク質性剤による治療を必要とする対象にある。
【0047】
いくつかの実施形態によれば、改変リンパ球または骨髄細胞は、対象に対して自己由来または同種異系である。
【0048】
いくつかの実施形態によれば、本発明の方法は、対象からリンパ球または骨髄細胞を抽出することと、リンパ球または骨髄細胞において非細胞傷害性治療用タンパク質性剤を発現させて、改変リンパ球または骨髄細胞を産生することと、改変リンパ球または骨髄細胞を対象に戻すことと、を含む。
【0049】
別の態様により、それを必要とする対象の治療に使用するための、本発明の改変リンパ球または骨髄細胞、または本発明の医薬組成物が提供される。
【0050】
別の態様によれば、目的の非溶解性治療用タンパク質を標的細胞に送達する方法が提供され、この方法は、標的細胞を改変白血球と接触させることであって、改変白血球が、非改変白血球と比較して減少した細胞傷害性を含み、かつ、目的の非溶解性治療用タンパク質を含む、接触させることと、それによって目的の非溶解性治療用タンパク質を標的細胞に送達することと、を含む。
【0051】
別の態様によれば、ゲノム編集タンパク質を標的細胞に送達する方法が提供され、この方法は、標的細胞を改変白血球と接触させることを含み、改変白血球は、ゲノム編集タンパク質を含み、それによって目的の非溶解性治療用タンパク質を標的細胞に送達する。
【0052】
いくつかの実施形態によれば、目的の非溶解性治療用タンパク質またはゲノム編集タンパク質は、標的細胞の細胞質または核に送達される。
【0053】
いくつかの実施形態によれば、改変白血球は、標的細胞と免疫シナプスを形成することができる。
【0054】
いくつかの実施形態によれば、改変白血球は、分泌リソソーム内に目的の非溶解性治療用タンパク質またはゲノム編集タンパク質を含む。
【0055】
いくつかの実施形態によれば、改変白血球は、改変細胞の細胞膜内にまたは細胞膜に結合された、目的の非溶解性治療用タンパク質またはゲノム編集タンパク質を含まない。
【0056】
いくつかの実施形態によれば、改変白血球は、改変T細胞、改変ナチュラルキラー(NK)細胞および改変骨髄細胞から選択される。
【0057】
いくつかの実施形態によれば、改変白血球は、改変非細胞傷害性白血球であるか、または改変白血球は、さらに改変されて、細胞傷害性を低下させる。
【0058】
いくつかの実施形態によれば、改変白血球は、ノックアウトもしくはノックダウン、または少なくとも1つの内因性細胞傷害性タンパク質を含み、任意により、内因性細胞傷害性タンパク質は、グランザイムBである。
【0059】
いくつかの実施形態によれば、改変白血球は、少なくとも1つの内因性細胞傷害性タンパク質中に突然変異を含み、この突然変異が、内因性細胞傷害性タンパク質の細胞傷害性を低下させる。
【0060】
いくつかの実施形態によれば、改変白血球は、少なくとも1つの内因性細胞傷害性タンパク質のアンチセンス媒介性の低下を含み、このアンチセンス媒介性が、内因性細胞傷害性タンパク質の細胞傷害性を低下させる。
【0061】
いくつかの実施形態によれば、目的の非溶解性治療用タンパク質は、以下のいずれも含まない:
a.自然に分泌されるタンパク質;
b.改変白血球の膜中に発現する膜タンパク質;
c.表面受容体結合タンパク質;
d.ウイルス透過タンパク質またはエンベロープタンパク質、および
e.ナノ粒子結合タンパク質または内包化タンパク質。
【0062】
いくつかの実施形態によれば、目的の非溶解性治療用タンパク質またはゲノム編集タンパク質は、細胞質タンパク質または核タンパク質である。
【0063】
いくつかの実施形態によれば、目的の非溶解性治療用タンパク質またはゲノム編集タンパク質は、シグナルペプチドを含まない。
【0064】
いくつかの実施形態によれば、目的の非溶解性治療用タンパク質またはゲノム編集タンパク質は、リボ核タンパク質(RNP)複合体である。
【0065】
いくつかの実施形態によれば、目的の非溶解性治療用タンパク質は、ゲノム編集タンパク質を含む。
【0066】
いくつかの実施形態によれば、ゲノム編集タンパク質は、標的細胞の核内の遺伝子を改変する。
【0067】
いくつかの実施形態によれば、ゲノム編集タンパク質は、メガヌクレアーゼである。
【0068】
いくつかの実施形態によれば、目的の非溶解性治療用タンパク質またはゲノム編集タンパク質は、少なくとも50kDaの分子量を含む。
【0069】
いくつかの実施形態によれば、ゲノム編集タンパク質は、CRISPR関連タンパク質9(Cas9)である。
【0070】
いくつかの実施形態によれば、目的の非溶解性治療用タンパク質は、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質またはその機能的断片もしくはバリアント、および治療用ポリペプチドを含むキメラタンパク質であるか、またはゲノム編集タンパク質は、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質またはその機能的断片もしくはバリアント、およびゲノム編集タンパク質を含むキメラタンパク質である。
【0071】
いくつかの実施形態によれば、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質またはその機能的断片もしくはバリアントは、シグナルペプチドを含み、任意により、シグナルペプチドは、N末端シグナルペプチドである。
【0072】
いくつかの実施形態によれば、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、ペプチド結合によって治療用ポリペプチドまたはゲノム編集タンパク質に直接結合されるか、またはタンパク質リンカーによって間接的に結合される。
【0073】
いくつかの実施形態によれば、リンカーは、切断可能リンカーであり、任意により、リンカーは、分泌性顆粒内または酸性pHで切断される。
【0074】
いくつかの実施形態によれば、治療用ポリペプチドまたはゲノム編集タンパク質は、核局在化配列(NLS)を含む。
【0075】
いくつかの実施形態によれば、溶解性顆粒分泌タンパク質は、少なくとも1つの不活性化突然変異を含む溶解タンパク質であり、不活性化突然変異は、溶解タンパク質の溶解機能を阻害する。
【0076】
いくつかの実施形態によれば、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、グランザイムA、グランザイムB、グランザイムH、グランザイムK、グランザイムM、グラニュライシン、セルグリシン、およびパーフォリンからなる群から選択される。
【0077】
いくつかの実施形態によれば、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、グランザイムBである。
【0078】
いくつかの実施形態によれば、移入は、エキソソームによって媒介されない。
【0079】
いくつかの実施形態によれば、細胞質への送達は、エンドソームに進入することを含まない。
【0080】
いくつかの実施形態によれば、この方法は、白血球を提供することと、白血球を活性化することと、活性化後に白血球において目的の非溶解性治療用タンパク質またはゲノム編集タンパク質を発現させて、改変白血球を産生することと、をさらに含む。
【0081】
いくつかの実施形態によれば、発現は、接触の5日前までに行われる。
【0082】
いくつかの実施形態によれば、標的細胞は、目的の非溶解性治療用タンパク質またはゲノム編集タンパク質による治療を必要とする対象にあり、この方法は、改変白血球を含む医薬組成物を投与することを含む。
【0083】
いくつかの実施形態によれば、対象は、遺伝子療法を必要としており、改変白血球は、ゲノム編集タンパク質を含む。
【0084】
いくつかの実施形態によれば、改変白血球は、対象にとって自己由来または同種異系である。
【0085】
いくつかの実施形態によれば、この方法は、対象から白血球を抽出することと、白血球を活性化することと、活性化後に目的の非細胞傷害性治療用タンパク質またはゲノム編集タンパク質を白血球中に発現させて、改変白血球を産生することと、改変白血球を対象に戻すことと、を含む。
【0086】
いくつかの実施形態によれば、発現は、戻す5日前までに行われる。
【0087】
いくつかの実施形態によれば、治療は、標的細胞を死滅させることを含まない。
【0088】
いくつかの実施形態によれば、対象は、がんに罹患していない。
【0089】
別の態様によれば、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質またはその機能的断片もしくはバリアント、および目的のタンパク質を含む、非溶解性キメラポリペプチドが提供される。
【0090】
いくつかの実施形態によれば、目的のタンパク質は、細胞表面受容体に結合しない。
【0091】
いくつかの実施形態によれば、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、ペプチド結合によって目的のタンパク質に直接結合されるか、またはタンパク質リンカーによって間接的に結合される。
【0092】
いくつかの実施形態によれば、リンカーは、切断可能リンカーであり、任意により、切断可能リンカーは、分泌性顆粒内または酸性pHで切断される。
【0093】
いくつかの実施形態によれば、目的のタンパク質は、少なくとも1つのNLSを含む。
【0094】
いくつかの実施形態によれば、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、グランザイムA、グランザイムB、グランザイムH、グランザイムK、グランザイムM、およびパーフォリンからなる群から選択される。
【0095】
いくつかの実施形態によれば、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、グランザイムBである。
【0096】
いくつかの実施形態によれば、目的のタンパク質は、ゲノム編集タンパク質である。
【0097】
いくつかの実施形態によれば、ゲノム編集タンパク質は、CRISPR関連タンパク質9(Cas9)である。
【0098】
いくつかの実施形態によれば、ゲノム編集タンパク質は、メガヌクレアーゼである。
【0099】
いくつかの実施形態によれば、目的のタンパク質は、少なくとも50kDaの分子量を含む。
【0100】
別の態様によれば、本発明のキメラポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0101】
いくつかの実施形態によれば、ポリヌクレオチドは、リンパ球または骨髄細胞中でキメラポリペプチドを発現することができる発現ベクターである。
【0102】
別の態様によれば、以下の少なくとも1つを含む、非改変白血球と比較して低下した細胞傷害性を有する改変白血球が提供される:
a.本発明の非細胞傷害性キメラポリペプチド;
b.本発明のポリヌクレオチド;および
c.目的の非細胞傷害性治療用タンパク質を含む分泌性顆粒。
【0103】
いくつかの実施形態によれば、白血球は、標的細胞と免疫シナプスを形成することができる。
【0104】
いくつかの実施形態によれば、白血球は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、および骨髄細胞から選択される。
【0105】
いくつかの実施形態によれば、改変白血球は、改変白血球の細胞膜内にまたは細胞膜に結合された、目的の非細胞傷害性治療用タンパク質を含まない。
【0106】
いくつかの実施形態によれば、改変白血球は、改変非細胞傷害性白血球であるか、または改変白血球は、少なくとも1つの内因性細胞傷害性タンパク質の突然変異を含み、この突然変異により、内因性細胞傷害性タンパク質の細胞傷害性が低下する。
【0107】
いくつかの実施形態によれば、改変細胞は、ノックアウトもしくはノックダウン、または少なくとも1つの内因性細胞傷害性タンパク質を含み、任意により、内因性細胞傷害性タンパク質は、グランザイムBである。
【0108】
別の態様によれば、本発明の改変白血球を含む治療用組成物が提供される。
【0109】
いくつかの実施形態によれば、組成物は、対象への投与のために製剤化され、薬学的に許容される担体、賦形剤、もしくはアジュバント、またはその両方を含む。
【0110】
別の態様によれば、以下の少なくとも1つを含むキットが提供される:
a.本発明の非細胞傷害性キメラポリペプチド;
b.本発明のポリヌクレオチド;
c.本発明の改変白血球;および
d.本発明の治療用組成物。
【0111】
本発明のさらなる実施形態および適用可能性の全範囲は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明および特定の例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、本発明の趣旨および範囲内の様々な変更および修正は、この詳細な説明から当業者に明らかになるであろうため、これらは、例示としてのみ与えられていることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0112】
図1】本発明の融合タンパク質発現プラスミドの模式図を示す図である。
図2A-2E】K562標的細胞へのグランザイム-Cherryタンパク質の移入を示す図である。(図2A)総生存イベントのFSC/SSCゲーティングを使用した、エフェクターT細胞からの標的K562細胞のサイズ分離のドットプロットを示す図である。(図2B)グランザイム-Cherry形質導入T細胞との共培養後のGFP陽性標的K562細胞のゲーティングのヒストグラムを示す図である。(図2C)モックエレクトロポレーションT細胞(灰色で塗りつぶされたヒストグラム)またはグランザイム-Cherryをコードする図1に記載されているプラスミド1_3(黒枠のヒストグラム)のコード領域のmRNA IVT産物をエレクトロポレートされたT細胞のいずれかと共培養した後の、GFP陽性標的K562細胞(2Bに示すGFP+ゲート)におけるCherry蛍光のヒストグラムを示す図である。(図2D)モックエレクトロポレーションYTS(灰色で塗りつぶされたヒストグラム)またはグランザイム-Cherryをコードする図1に示すプラスミド1_3(黒枠のヒストグラム)のコード領域のmRNA IVT産物をエレクトロポレートされたYTS細胞のいずれかと共培養した後の、GFP陽性標的K562細胞におけるCherry蛍光のヒストグラムを示す図である。(図2E)Cherry発現GZMB-KO YTS細胞(陰性対照として使用)と共培養後のTag-it標識K562細胞におけるCherry蛍光のヒストグラムを示す図である。
図3A-3D】機能性を有するグランザイムノックアウト細胞を示す図である。(図3A)親(灰色)およびGZMB-KO(黒線)YTS細胞におけるGZMB発現のヒストグラムを示す図である。(図3B)内因性GZMB発現YTS細胞と共培養されたK562細胞(薄灰色)およびYTS GZMB-KO細胞と共培養されたK562細胞(濃灰色)の前方散乱によって測定されたサイズのヒストグラムを示す図である。(図3C)以下と共培養したK562細胞におけるmCherry発現のヒストグラム;(左のヒストグラム)モックエレクトロポレートした内因性GZMB発現YTS細胞(濃淡)、GZMB-crmCherryプラスミドをエレクトロポレートしたYTS細胞(灰色線)、(右のヒストグラム)モックエレクトロポレートしたYTS GZMB-KO細胞(濃淡)またはGZMB-crmCherryプラスミドをエレクトロポレートしたYTS細胞(黒線)。(図3D)K562細胞のみ、または親YTS細胞またはGZMB KO YTSとの共培養後の生/死染色のヒストグラム表示を示す図である。
図4A-4D】(図4A)pMAX_hGZMB_HA-Cas9_P2A_crmCherryプラスミドをエレクトロポレートした初代T細胞の代表的な顕微鏡写真を示す図である。明視野(BF)、mCherry、Cas-9、グランザイムB(GZMB)、およびすべてのチャネルをマージしたものが示されている。(図4B)Tag-it標識標的K562細胞および非標識Tag-it陰性エフェクターYTS細胞を定義するために使用されるゲートのヒストグラムを示す図である。(図4C)hGZMB_Cas9のmRNA IVT産物を過剰発現するYTS細胞(第1レーン)およびGZMB-CAS9発現YTS細胞と共培養したK562標的細胞(第2レーン)におけるCas9のウエスタンブロット検出の写真を示す図である。YTS細胞およびK562細胞は、図4Bに示されるゲートを使用してTag-it発現によって選別した。灰色の矢印は、K562細胞中のCas9バンドを示す。ラダーは、サイズ比較用に提供されており、YTS細胞で観察された2つのバンドのうち低い方のバンドが、Cas9の分子量に対応することを示している。(図4D)GZMB-CAS9を発現するGZMB-KO YTS細胞またはモック処理されたGZMB KO YTS細胞との共培養後のK562標的細胞中でのグランザイムBの細胞内染色によって検出されたGZMB-Cas9のヒストグラムを示す図である。
図5A-5D】グランザイムを介したCAS9およびメガヌクレアーゼ移入後の標的細胞での編集を示す図である。(図5A図5B)(5A)YTS細胞および(5B)GZMB_Cas9mRNAをエレクトロポレートしたT細胞との共培養後の黒色腫細胞の顕微鏡写真を示す図である。RFP細胞が示され(黒い矢印)、GFP陽性細胞はゲノム編集の成功を示している(白い矢印)。(図5C)GZMB-CAS9 mRNAをエレクトロポレートしたYTS細胞からのGZMB-CAS9の移入後のK562標的細胞のRFP陽性集団におけるGFP発現細胞のヒストグラムを示す図である。(図5D)GZMB-メガヌクレアーゼ mRNAをエレクトロポレートしたYTS細胞からのGZMB-メガヌクレアーゼの移入後のK562標的細胞のRFP陽性集団におけるGFP発現細胞のヒストグラムを示す図である。
図6A-6C】K562骨髄細胞株は、カーゴの送達が可能なエフェクター細胞として機能することを示す図である。(図6A図1に示すプラスミド1_3のコード領域のGZMB-crmCherrymRNA IVT産物をエレクトロポレートしたK562細胞との共培養後のTag-it陽性黒色腫標的細胞におけるmCherryシグナルのヒストグラムを示す図である。(図6B図1に示すプラスミド2_6のコード領域のGZMB-メガヌクレアーゼ-GFPmRNA IVT産物をエレクトロポレートしたK562細胞との共培養後のTag-it陽性黒色腫標的細胞におけるGFPシグナルのヒストグラム表示を示す図である。(図6C)GZMB-CAS9 mRNAをエレクトロポレートしたK562細胞からのGZMB-CAS9の移入後の黒色腫標的細胞のRFP陽性集団におけるGFP発現細胞のヒストグラムを示す図である。
図7A-7D】T細胞からP815標的細胞へのCas9-GFP RNPの移入を示す図である。図7A図7Cには、以下のヒストグラムを示す。(図7A)モックおよびCas9-GFP RNA-タンパク質複合体をエレクトロポレートしたT細胞におけるGFP発現のヒストグラム。(図7B)モックまたはCas9-GFP形質導入T細胞との共培養実験における、標的P815細胞とCD8陽性T細胞との間のCD8陽性および陰性分化に使用されるゲート。および(図7C)モックエレクトロポレートT細胞またはCas9-GFP形質導入T細胞のいずれかと共培養したCD8陰性標的P815細胞(図7Bに示すCD8-ゲート)におけるGFP蛍光。モックは、灰色で塗りつぶされたヒストグラムとして示され、Cas9-GFP RNA-タンパク質複合体形質導入T細胞は、黒枠のヒストグラムとして示す。図7Dは、共培養されたCas9-GFP RNA-タンパク質複合体で形質導入されたT細胞およびP815細胞の代表的な顕微鏡写真である。Cas9-GFPは、緑色に見えることができる。CD8陽性T細胞は、水色で表示される。緑のみで青ではない細胞は、RNA-タンパク質複合体を受け入れた標的細胞であり、一部を矢印でマークしている。
図8A-8I】YTS細胞からK562およびMCF7標的細胞へのCas9-GFP RNPの移入を示す図である。(図8A)モックエレクトロポレートしたYTS細胞およびCas9-GFP RNA-タンパク質複合体を形質導入したYTS細胞におけるCas9-GFP蛍光のヒストグラム、(図8B)Tag-it標識標的K562細胞および非標識Tag-it陰性エフェクターYTS細胞を定義するために使用されるゲートのヒストグラム、(図8C)モックエレクトロポレートされたYTS細胞またはCas9-GFP形質導入YTS細胞のいずれかと共培養させたTag-it陽性標的K562細胞(図8Bに示すようにTagit+ゲート)におけるCas9-GFP RNA-タンパク質複合体由来蛍光のヒストグラム、(図8D)Tag-it標識標的MCF7細胞および非標識Tag-it陰性エフェクターYTS細胞を定義するために使用されるゲートのヒストグラム、および(図8E)モックエレクトロポレートYTS細胞またはCas9-GFP形質導入YTS 細胞のいずれかとの共培養させたTag-it陽性標的MCF7細胞(図8Dに示すようにTagit+ゲート)におけるCas9-GFP RNA-タンパク質複合体由来の蛍光のヒストグラムである。モックエレクトロポレーション実験は、灰色で塗りつぶされたのヒストグラムとして表示され、Cas9-GFP RNA-タンパク質複合体エレクトロポレーション実験は、黒枠のヒストグラムとして示す。(図8F)Cas9-GFP形質導入YTS細胞とK562細胞との共培養の上清と共にインキュベートしたK562細胞におけるGFPシグナルのヒストグラム。(図8G)Cas9-GFP形質導入YTS細胞と黒色腫細胞との共培養の上清とインキュベートした黒色腫細胞のGFPシグナル。(図8H)モックエレクトロポレートYTS細胞またはCas9-GFP形質導入YTS細胞のいずれかと共培養した(この共培養の上清は、図8Fで使用した)Tag-it陽性標的K562細胞中のCas9-GFP RNA-タンパク質複合体由来の蛍光。(図8I)モックエレクトロポレートYTS細胞またはCas9-GFP形質導入YTS細胞のいずれかと共培養した(この共培養の上清は、図8Gで使用した)Tag-it陽性標的黒色腫細胞細胞中のCas9-GFP RNA-タンパク質複合体由来の蛍光。
図9A-9C】CAS9 RNP移入後の標的細胞の編集を示す図である。(図9A図9C)以下との共培養後の黒色腫細胞細胞の顕微鏡写真である。(9A)CAS9 RNP形質導入YTS細胞、(9B)CAS9 RNP形質導入YTSグランザイムBノックアウト細胞、および(9C)CAS9 RNP形質導入K562骨髄細胞。RFP細胞が示され(黒い矢印)、GFP陽性細胞はゲノム編集の成功を示している(白い矢印)。
【発明の詳細な説明】
【0113】
本発明は、いくつかの実施形態において、外因性治療剤を含む改変細胞を提供する。目的のタンパク質およびリンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質、そのバリアントまたはその断片を含む、キメラポリペプチドも提供される。改変細胞を含む治療用組成物、キメラポリペプチドをコードする核酸分子、ならびに本発明の改変細胞、医薬組成物およびキメラポリペプチドの使用方法も提供される。
【0114】
本発明は、白血球、特にT細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞などのリンパ球が、治療剤の送達系として使用できるという驚くべき発見に基づく。特に、これらの細胞は、本来細胞傷害性であるが、それらの細胞傷害機能は、それらの送達能力に必要とされず、実際に、非細胞傷害性送達は、所望の結果が標的細胞の死ではない場合、細胞傷害性送達よりも優れていることが見出された。グランザイムなどの溶解性顆粒分泌タンパク質を目的のタンパク質に融合させることにより、そのタンパク質が、溶解性顆粒を標的とし、それが分泌され、さらには標的細胞によって取り込まれ、細胞の細胞質に到達することが最初に見出された。この移入は、サイズが100kDaをはるかに超えるCas-9などの非常に大きいタンパク質でも実証された。この移入には、グランザイムの細胞傷害特性を必要としない。これは、変異型グランザイムおよび阻害ジペプチドを含むプログランザイムの両方が同等にタンパク質移入を促進できるためである。さらに驚くべきことに、同様に非常に大きいサイズのRNA-タンパク質複合体は、リンパ球または骨髄細胞にエレクトロポレートされたときに、溶解性顆粒分泌タンパク質融合への融合がなくても標的細胞に移入されることを発見した。RNA-タンパク質複合体は、標的細胞のゲノムを編集することができたので、この複合体は、標的細胞の内部に到達することができ、そこで実際に機能した。これまで知られていなかったこの機序により、リンパ球を幅広い治療送達系として使用することが可能になる。特に、標的細胞におけるゲノム編集のための送達系を提供する。
【0115】
本発明の白血球(リンパ球および骨髄細胞)が、対象におけるその標的に治療剤をもたらすための送達様式であることは、当業者によって理解されるであろう。免疫細胞は、身体内の疾患部位にホーミングすることが当技術分野でよく知られている。そのため、これらは治療剤を疾患部位に運ぶための理想的な送達方法である。現在の治療法が遭遇する主要な障害は、多くの既知の標的が細胞内にあるという事実であるが、細胞内送達の信頼できる方法は、現在存在しない。そのため、ほとんどの治療法は、細胞表面分子を標的とすることに限定されている。これにより、利用可能である創薬可能な標的のプールが大幅に制限される。特に、様々な疾患/状態を治療できる可能性がある遺伝子療法は、遺伝子編集剤を、核内に送達できる場合にのみ実現可能である。さらに、短い循環半減期および体内分布の問題が、多くの有望な治療法を妨げている。本発明の細胞および組成物は、これらすべての問題に対する包括的な解決策を提供する。治療剤は、身体内を移動する間、白血球内で保護されるため、分解および半減期の懸念が制限される。白血球は、その本来のホーミング能力によって、またはその細胞表面の標的化部分により、最初に疾患部位にホーミングすることによって、オフターゲット効果を減少させる。細胞が活性化されるまでリンパ球は溶解小胞を分泌しないため、オフターゲット効果はさらに制限される。このメカニズムは、疾患/標的細胞を直接制御し、標的化することができる。最後に、溶解小胞が標的細胞に取り込まれ、そのカーゴが標的細胞の内部に送達され、これにより、すべての細胞標的へのアクセスが可能になり、ゲノム編集さえも可能になる。本技術のこれらすべての態様の組み合わせにより、本技術は、治療送達系として唯一適したものとなる。
【0116】
キメラ分子
第一の態様によって、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質、またはそのバリアントもしくは断片、および目的の分子を含むキメラ分子が提供される。
【0117】
リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質、またはそのバリアントもしくは断片が、キメラ分子の標的化部分であり、目的のタンパク質がカーゴであることは、当業者には理解されるであろう。標的化部分は、任意の直接的な治療機能を保有することを意図したものではなく、むしろ標的細胞への移入を促進することを意図したものである。移入を促進することには、リンパ球によって分泌され、標的細胞によって取り込まれる溶解性顆粒にカーゴを送達することを含む。目的のタンパク質は、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質による送達後に、その標的に作用することができる治療用カーゴである。
【0118】
いくつかの実施形態では、キメラ分子は、キメラポリペプチドである。いくつかの実施形態では、目的の分子は、目的のタンパク質である。本明細書で使用される「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために同義的に使用される。別の実施形態では、本明細書で使用される「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、天然ペプチド、ペプチドミメティック(典型的には、非ペプチド結合または他の合成修飾を含む)、ならびにペプチド類似体ペプトイドおよびセミペプトイド、またはそれらの任意の組み合わせを包含する。別の実施形態では、記載のペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質は、身体内にある間により安定にするか、または細胞への透過をより可能にする改変を有する。一実施形態では、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は、天然アミノ酸ポリマーに適用される。別の実施形態では、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然アミノ酸の人工化学類似体であるアミノ酸ポリマーに適用される。
【0119】
いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、人工ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、天然には見出されないポリペプチドである。本明細書で使用される「キメラポリペプチド」という用語は、同じタンパク質中には自然には見られない、少なくとも2つの異なるタンパク質ドメインまたは領域を含む単一のポリペプチド鎖を指す。融合タンパク質は、1つのペプチドのアミノ末端と別のペプチドのカルボキシル末端との間に形成されるペプチド結合を介して2つ以上のペプチドを連結することによって形成され得る。融合タンパク質は、単一の連続結合体をコードする核酸配列から単一のポリペプチド融合タンパク質として発現され得る。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、元は別々のタンパク質をコードしていた2つ以上の遺伝子を連結することによって創出される。組換え融合タンパク質は、生物学的研究または治療に使用するための組換えDNA技術によって人工的に創出できる。「キメラの」または「キメラ」は、通常、異なる機能または物理化学的パターンを有するポリペプチドからできているハイブリッドタンパク質を指す。例えば、融合タンパク質は、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質である第1の部分、および目的のタンパク質である第2の部分(例えば、第1の部分に遺伝的に融合されたもの)(例えば、異なる酵素活性、すなわち、DNAヌクレアーゼを有するタンパク質)を含み得る。融合タンパク質生成、組換えタンパク質生成、組換えDNA生成、およびDNA融合技術の方法は、当技術分野で周知であり、本発明のキメラ分子を作製するための任意のこのような方法を使用することができる。キメラポリペプチドは、切断時に2つ以上のポリペプチドに分離されるように、切断可能であり得る。非限定的な一例では、切断時に、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質および目的のタンパク質を含む融合ポリペプチドは、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質および目的のタンパク質に分割され、その結果、目的のタンパク質の機能性は、無傷である。
【0120】
本明細書で使用する場合、「組換えタンパク質」という用語は、組換え核酸分子(DNAまたはRNA)によってコードされ、したがって天然には存在しないタンパク質を指す。「組換えDNAまたはRNA」という用語は、遺伝子組換えの実験的方法によって形成されたDNAまたはRNA分子を指す。一般に、この組換え分子は、細胞内で組換えタンパク質を発現させるために使用される、mRNA、ベクター、プラスミドまたはウイルスの形態である。
【0121】
いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、目的のタンパク質に直接結合している。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、目的のタンパク質に、リンカーによって連結している。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質と目的のタンパク質との間に介在アミノ酸は存在しない。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質と目的のタンパク質とを分離するアミノ酸リンカーが存在する。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、目的の分子のN末端にある。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、目的の分子のC末端にある。
【0122】
本明細書で使用される「リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質」および「分泌リソソームタンパク質」という用語は、本明細書では同義的に使用され、分泌リソソームとして知られる溶解性顆粒を介して、リンパ球によって分泌される任意のタンパク質を指す。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、グランザイム/パーフォリン経路に関与するタンパク質であり、標的細胞の抗原依存性リンパ球認識中に、リンパ球の溶解性顆粒から標的細胞に自然に分泌される。いくつかの実施形態では、抗原依存性リンパ球認識は、内因性T細胞受容体(TCR)によって媒介される。いくつかの実施形態では、抗原依存性リンパ球認識は、標的細胞上のMHC/ペプチド複合体への操作されたT細胞受容体ライゲーションによって媒介される。いくつかの実施形態では、抗原依存性リンパ球認識は、標的細胞上の抗原へのキメラ抗原受容体(CAR)ライゲーションによって媒介される。いくつかの実施形態では、分泌リソソームタンパク質は、溶解性顆粒分泌タンパク質である。いくつかの実施形態では、溶解性顆粒分泌タンパク質は、分泌リソソームタンパク質である。
【0123】
いくつかの実施形態では、溶解性顆粒は、溶解小胞である。いくつかの実施形態では、溶解性顆粒は、分泌リソソームである。溶解性顆粒は、リンパ球中に見られるよく知られた細胞小器官である。これは、T細胞およびNK細胞などの細胞傷害性リンパ球が活性化されると、微小管を介して細胞の先端側に移動する特殊な分泌細胞小器官であり、リンパ球標的細胞シナプスに向かう。この顆粒のタンパク質含有量は、当技術分野において開示されており、当技術分野で知られている方法によってこれらの顆粒を単離することによって調べることができる。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、溶解性顆粒から分泌される任意のタンパク質である。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、溶解性顆粒中の任意のタンパク質である。溶解性顆粒に見られるタンパク質は、当技術分野でよく知られており、例えば、「Supramolecular attack particles are autonomous killing entities released from cytotoxic T cells」、Balint et al.,Science,2020 May22;368(6493):897-901に見出すことができ、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質を表1に提供する。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、表1に提供されるタンパク質から選択される。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、グランザイムA、グランザイムB、グランザイムH、グランザイムK、グランザイムM、グラニュライシン、セルグリシン、およびパーフォリンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、グランザイムA、グランザイムB、グランザイムH、グランザイムK、グランザイムM、およびパーフォリンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、グランザイムである。いくつかの実施形態では、グランザイムは、グランザイムA、グランザイムB、グランザイムH、グランザイムK、およびグランザイムMから選択される。いくつかの実施形態では、グランザイムは、グランザイムBである。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、パーフォリンである。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、ヒトタンパク質である。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、哺乳動物タンパク質である。
【表1】
【0124】
いくつかの実施形態では、ヒトグランザイムBタンパク質は、アクセッション番号NP_004122またはNP_001332940で提供されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、グランザイムBは、ヒトグランザイムB(GZMB)である。いくつかの実施形態では、グランザイムBは、アミノ酸配列MQPILLLLAFLLLPRADAGEIIGGHEAKPHSRPYMAYLMIWDQKSLKRCGGFLIRDDFVLTAAHCWGSSINVTLGAHNIKEQEPTQQFIPVKRPIPHPAYNPKNFSNDIMLLQLERKAKRTRAVQPLRLPSNKAQVKPGQTCSVAGWGQTAPLGKHSHTLQEVKMTVQEDRKCESDLRHYYDSTIELCVGDPEIKKTSFKGDSGGPLVCNKVAQGIVSYGRNNGMPPRACTKVSSFVHWIKKTMKRY(配列番号8)を含む。いくつかの実施形態では、ヒトグランザイムBは、配列番号8からなる。いくつかの実施形態では、マウスグランザイムBタンパク質は、アクセッション番号NP_038570で提供されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、マウスグランザイムBは、アミノ酸配列MKILLLLLTLSLASRTKAGEIIGGHEVKPHSRPYMALLSIKDQQPEAICGGFLIREDFVLTAAHCEGSIINVTLGAHNIKEQEKTQQVIPMVKCIPHPDYNPKTFSNDIMLLKLKSKAKRTRAVRPLNLPRRNVNVKPGDVCYVAGWGRMAPMGKYSNTLQEVELTVQKDRECESYFKNRYNKTNQICAGDPKTKRASFRGDSGGPLVCKKVAAGIVSYGYKDGSPPRAFTKVSSFLSWIKKTMKSS(配列番号16)を含む。いくつかの実施形態では、マウスグランザイムBは、配列番号16からなる。
【0125】
いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、シグナルペプチドを含む。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、小胞体シグナルペプチド(ERSP)である。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、小胞体シグナル配列(ERSS)である。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号8のアミノ酸1~18である。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号16のアミノ酸1~18である。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号16のアミノ酸1~18を含む。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号16のアミノ酸1~18からなる。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、シグナルペプチドを含まない。いくつかの実施形態では、グランザイムは、シグナルペプチドを含まない。いくつかの実施形態では、ヒトグランザイムBは、シグナルペプチドを含まず、配列番号8のアミノ酸19~247を含むか、それらからなる。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドを含まないタンパク質は、依然としてN末端メチオニンを保持している。いくつかの実施形態では、ヒトグランザイムBは、シグナルペプチドを含まず、アミノ酸1および19~247を含むか、それらからなる。いくつかの実施形態では、マウスグランザイムBは、シグナルペプチドを含まず、配列番号16のアミノ酸19~247を含むか、それらからなる。いくつかの実施形態では、マウスグランザイムBは、シグナルペプチドを含まず、配列番号16のアミノ酸1および19~247を含むか、それらからなる。いくつかの実施形態では、グランザイムは、プログランザイムである。いくつかの実施形態では、プログランザイムは、阻害性ジペプチドを含む。いくつかの実施形態では、ジペプチドは、N末端ジペプチドである。いくつかの実施形態では、ジペプチドは、GEである。いくつかの実施形態では、ジペプチドは、配列番号8のアミノ酸19~20である。いくつかの実施形態では、ジペプチドは、配列番号16のアミノ酸19~20である。いくつかの実施形態では、グランザイムBは、阻害性ジペプチドを含まない。いくつかの実施形態では、ヒトグランザイムBは、ジペプチドを含まず、配列番号8のアミノ酸21~247を含むか、それらからなる。いくつかの実施形態では、マウスグランザイムBは、ジペプチドを含まず、配列番号16のアミノ酸21~247を含むか、それらからなる。
【0126】
いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質の断片を含む。いくつかの実施形態では、断片は、機能的断片である。いくつかの実施形態では、機能は、ERへの進入である。いくつかの実施形態では、機能は、溶解小胞への進入である。いくつかの実施形態では、機能は、分泌である。いくつかの実施形態では、分泌は、免疫シナプスへの分泌である。いくつかの実施形態では、機能は、溶解性顆粒への進入である。いくつかの実施形態では、機能は、キメラ分子またはその断片を溶解性顆粒に含めることである。いくつかの実施形態では、機能は、目的の分子を溶解性顆粒に含めることである。いくつかの実施形態では、機能は、目的のタンパク質を溶解性顆粒に含めることである。いくつかの実施形態では、機能は、本発明のキメラ分子を溶解性顆粒に導くことである。いくつかの実施形態では、機能は、目的の分子を溶解性顆粒に導くことである。いくつかの実施形態では、機能は、溶解小胞における分泌である。いくつかの実施形態では、機能は、溶解小胞からの分泌である。いくつかの実施形態では、機能は、細胞傷害性ではない。いくつかの実施形態では、機能は、標的細胞への送達である。いくつかの実施形態では、断片は、キメラポリペプチドを標的細胞に送達できる断片である。いくつかの実施形態では、断片は、キメラポリペプチドを溶解性顆粒に送達できる断片である。いくつかの実施形態では、断片は、キメラポリペプチドおよび/または目的のタンパク質の溶解性顆粒への包含を促進することができる断片である。いくつかの実施形態では、断片は、キメラポリペプチドをERに送達できる断片である。いくつかの実施形態では、断片は、非細胞傷害性断片である。いくつかの実施形態では、断片は、溶解活性を含まない断片である。いくつかの実施形態では、断片は、酵素ドメインを含まない。いくつかの実施形態では、酵素活性は、プロテアーゼ活性である。
【0127】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、グランザイムシグナル伝達エレメントによって改変リンパ球の溶解性顆粒に自然に輸送され、標的認識時にグランザイム経路を通じて標的細胞に放出される。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒標的化部分/リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質/断片(例えば、グランザイムB)および目的のタンパク質(例えば、CASヌクレアーゼ)を含む融合タンパク質は、グランザイムシグナル伝達エレメントによって、改変細胞の溶解性顆粒に自然に輸送され、標的認識時にグランザイム経路を介して標的細胞に放出される。例えば、グランザイムBおよびCASヌクレアーゼを含む融合タンパク質の翻訳が開始されると、ERシグナルペプチドは、融合タンパク質をERに向かわせ、そこで同時翻訳的に挿入される。融合タンパク質がER中で合成されると、N-グリカンが追加され、翻訳された融合タンパク質をゴルジネットワークに対して標的化させる。ゴルジ体では、N-グリカンがリン酸化され、融合タンパク質上で結果として生じるリン酸化糖部分が、マンノース-6-リン酸受容体に結合し、それによってタンパク質が溶解性顆粒を標的とし、そこで標的細胞が認識されるまで隔離され、その後、確実に免疫シナプスに放出される。融合タンパク質/ポリペプチドは、溶解性顆粒内で切断されてもよく、したがって、標的細胞認識時に目的の独立タンパク質(stand-alone protein)が免疫シナプスに放出されるように、目的のタンパク質を標的化部分から分離する。あるいは、切断は、標的細胞の細胞質または標的細胞の別の分画で起こり得る。DNA分子および/またはRNA分子(例えば、sgRNA)はまた、融合タンパク質または目的のタンパク質(例えば、RNP)との複合体としてエフェクター細胞に送達することができるか、または核酸分子は、標的細胞に直接送達することができる。
【0128】
いくつかの実施形態では、断片は、シグナルペプチドを含む。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、小胞体シグナルペプチドである。いくつかの実施形態では、断片は、N末端断片である。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、少なくとも1つのグリコシル化部位を含む。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、複数のグリコシル化部位を含む。いくつかの実施形態では、グリコシル化は、N連結型グリコシル化である。いくつかの実施形態では、グリコシル化は、O連結型グリコシル化である。いくつかの実施形態では、ヒトグランザイムB中のグリコシル化部位は、配列番号8のアミノ酸71にある。いくつかの実施形態では、マウスグランザイムB中のグリコシル化部位は、配列番号16のアミノ酸71にある。いくつかの実施形態では、ヒトグランザイムB中のグリコシル化部位は、配列番号8のアミノ酸104にある。いくつかの実施形態では、マウスグランザイムB中のグリコシル化部位は、配列番号16のアミノ酸182にある。いくつかの実施形態では、断片は、少なくとも1つのグリコシル化部位を含む。いくつかの実施形態では、断片は、複数のグリコシル化部位を含む。いくつかの実施形態では、断片は、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質中のすべてのグリコシル化部位を含む。いくつかの実施形態では、断片は、ヒトグランザイムBの少なくともN末端の71アミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、断片は、マウスグランザイムBの少なくともN末端の71アミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、断片は、ヒトグランザイムBの少なくともN末端の104アミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、断片は、マウスグランザイムBの少なくともN末端の182アミノ酸を含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、断片は、少なくとも10、20、25、30、40、50、60、70、75、80、90、100、110、120、125、130、140、または150のアミノ酸を含む。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、断片は、少なくとも50のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、断片は、少なくとも100のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、断片は、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のリンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質を含む。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、断片は、最大で20、25、50、75、100、125、150、175、200、225または250のアミノ酸を含む。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、断片は、最大で25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のリンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質を含む。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0130】
いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質のバリアントである。いくつかの実施形態では、バリアントは、天然タンパク質のバリアントである。いくつかの実施形態では、バリアントは、グランザイムBのバリアントである。いくつかの実施形態では、バリアントは、突然変異体である。いくつかの実施形態では、バリアントは、天然タンパク質の突然変異形態である。いくつかの実施形態では、突然変異体は、少なくとも1つの突然変異体を含む天然タンパク質である。いくつかの実施形態では、バリアントは、切断可能バリアントである。いくつかの実施形態では、バリアントは、切断できないバリアントである。いくつかの実施形態では、天然タンパク質の阻害性ジペプチドは、切断不能である。いくつかの実施形態では、突然変異は、阻害性ジペプチドを切断不能にするための阻害性ジペプチドの突然変異である。いくつかの実施形態では、バリアントは、非細胞傷害性バリアントである。いくつかの実施形態では、突然変異は、細胞傷害性を低下させる。いくつかの実施形態では、突然変異は、細胞傷害性を無効にする。いくつかの実施形態では、突然変異体は、非細胞傷害性突然変異体である。いくつかの実施形態では、突然変異体は、非溶解性突然変異体である。いくつかの実施形態では、非細胞傷害性は、非溶解性である。いくつかの実施形態では、非溶解性は、非細胞傷害性である。いくつかの実施形態では、突然変異は、タンパク質の酵素機能を低下させる。いくつかの実施形態では、突然変異は、タンパク質の酵素機能を無効にする。いくつかの実施形態では、酵素機能は、切断である。いくつかの実施形態では、切断は、タンパク質切断である。いくつかの実施形態では、酵素機能は、プロテアーゼ機能である。いくつかの実施形態では、酵素機能は、溶解を誘導する。いくつかの実施形態では、酵素機能は、細胞死を誘導する。いくつかの実施形態では、バリアントは、不活化バリアントである。いくつかの実施形態では、バリアントは、不活性なバリアントである。いくつかの実施形態では、バリアントは、非細胞傷害性バリアントである。いくつかの実施形態では、非細胞傷害性バリアントは、標的細胞においてアポトーシスを誘導することができない。いくつかの実施形態では、バリアントは、非溶解性バリアントである。いくつかの実施形態では、バリアントは、標的細胞においてアポトーシスを誘導することができない。いくつかの実施形態では、バリアントは、相同体である。いくつかの実施形態では、相同体は、ヒトにおいて細胞傷害性ではない。いくつかの実施形態では、相同体は、ヒトにおいて細胞傷害性が低下している。
【0131】
いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、非細胞傷害性である。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、溶解性でない。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、酵素的に活性ではない。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、不活性である。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、不活化されている。いくつかの実施形態では、不活化は、酵素活性の喪失である。いくつかの実施形態では、酵素活性は、プロテアーゼ活性である。いくつかの実施形態では、阻害性ジペプチドを含めることにより、グランザイムが不活性になる。いくつかの実施形態では、阻害性ジペプチドは、突然変異している。いくつかの実施形態では、突然変異は、阻害性ジペプチドを切断不能にし、結果として、活性化可能な形態のグランザイムがもたらされる。いくつかの実施形態では、阻害性ジペプチドは、切断不能な突然変異阻害性ジペプチドである。いくつかの実施形態では、突然変異は、配列番号8のアミノ酸19の突然変異である。いくつかの実施形態では、突然変異は、配列番号16のアミノ酸19の突然変異である。いくつかの実施形態では、突然変異は、ジペプチドの最初のアミノ酸の突然変異である。いくつかの実施形態では、突然変異は、配列番号8のアミノ酸20の突然変異である。いくつかの実施形態では、突然変異は、配列番号16のアミノ酸20の突然変異である。いくつかの実施形態では、突然変異は、ジペプチドの第2のアミノ酸の突然変異である。いくつかの実施形態では、突然変異は、アラニンへの突然変異である。いくつかの実施形態では、ジペプチドの両方のアミノ酸が、突然変異している。いくつかの実施形態では、配列番号8のアミノ酸19および20が突然変異している。いくつかの実施形態では、配列番号16のアミノ酸19および20が突然変異している。いくつかの実施形態では、ジペプチドは、AAに突然変異している。
【0132】
いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質と目的のタンパク質とは、リンカーによって分離されている。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質と目的のタンパク質とは、リンカーによって連結されている。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質と目的のタンパク質とは、リンカーによって連結されている。いくつかの実施形態では、リンカーは、ペプチド結合である。いくつかの実施形態では、リンカーは、アミノ酸リンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、化学リンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、フレキシブルリンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、複数のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のアミノ酸を含む。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、リンカーは、少なくとも5のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、最大で5、10、15、20、25、30、35、40、45または50のアミノ酸を含む。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、リンカーは、最大25のアミノ酸を含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン-セリンリンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、(GS)nを含むか、または(GS)nからなり、ここで、nは、1~10の整数である。いくつかの実施形態では、リンカーは、GSGSGSGSGS(配列番号:9)である。いくつかの実施形態では、リンカーは、GGGGS(配列番号10)を含むか、GGGGS(配列番号10)からなる。いくつかの実施形態では、リンカーは、(GGGGS)nを含むか、または(GGGGS)nからなり、ここで、nは、1~5の整数である。いくつかの実施形態では、リンカーは、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号11)である。いくつかの実施形態では、リンカーは、GGS(配列番号43)を含むか、GGS(配列番号43)からなる。いくつかの実施形態では、リンカーは、(GGS)nを含むか、または(GGS)nからなり、ここで、nは、1~10の整数である。いくつかの実施形態では、リンカーは、GGSGGSGGSGGS(配列番号44)である。いくつかの実施形態では、リンカーは、SGFANELGPRLMGK(配列番号72)である。いくつかの実施形態では、OLLASリンカーは、配列番号72からなる。
【0134】
いくつかの実施形態では、リンカーは、切断可能リンカーである。当業者は、目的のタンパク質をリンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質から分離して、タンパク質がより良好に機能できるようにすることが有利であり得ることを理解するであろう。しかし、このような分離は、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質が、目的のタンパク質の溶解性顆粒および/または標的細胞への送達を促進する機能を行った後にのみ起こるべきである。当業者は、切断が溶解性顆粒で生じる場合、目的のタンパク質が依然として標的細胞に移入することを理解するであろう。リンパ球が標的細胞に係合したときに、顆粒内に存在するすべてのタンパク質(リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質から分離されていても、目的のタンパク質を含む)が、溶解性顆粒分泌のプロセスによって受動的に標的細胞に拡散する。免疫シナプスにおけるこのタイプのタンパク質の移入は、当技術分野で周知である。いくつかの実施形態では、リンカーは、pH依存性切断可能リンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、酸性pHで、切断可能である。当業者は、溶解性顆粒が、酸性pHを含むことを理解するであろう。酸性pHで切断するリンカーは、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質またはその断片が、少なくとも溶解小胞に到達するまで確実に、目的のタンパク質に接続されているようにする。溶解性顆粒が標的細胞に到達すると、目的のタンパク質がリンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質から放出され、標的細胞内で自由に機能し得る。いくつかの実施形態では、酸性pH切断可能リンカーは、アスパラギン酸-プロリン(DP)ジペプチドを含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、アミノ酸配列RARDPPVAT(配列番号12)を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号12からなる。いくつかの実施形態では、リンカーは、アミノ酸配列DXDPHF(配列番号13)を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号13からなる。いくつかの実施形態では、リンカーは、アミノ酸配列GTGDP(配列番号14)を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号14からなる。
【0135】
いくつかの実施形態では、リンカーは、カテプシン切断可能リンカーである。カテプシンの非限定的な例としては、カテプシンL、カテプシンBおよびカテプシンCが含まれるが、これらに限定されない。カテプシンは、溶解性顆粒中で活性であることが知られており、これらは、リンカーの標的切断にも有用である。いくつかの実施形態では、リンカーは、ジペプチドVAを含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、ジペプチドVAからなる。いくつかの実施形態では、リンカーは、ジペプチドGEを含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、ジペプチドGEからなる。
【0136】
いくつかの実施形態では、リンカーは、細胞質中で切断可能である。いくつかの実施形態では、細胞質切断可能リンカーは、細胞質グルタチオンレベルで切断可能である。ERシグナルペプチドを含めることにより、キメラポリペプチドのERへの同時翻訳進入が引き起こされ、それによってリンパ球の細胞質の切断誘導環境からリンカーが隔離されることは、当業者には理解されるであろう。したがって、融合タンパク質が標的細胞の細胞質に到着するまで、細胞質の切断は妨げられ、目的のタンパク質は、自由にその機能を発揮するように設定される。いくつかの実施形態では、切断可能リンカーは、mCherryの最初の11のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、切断可能リンカーは、mCherryの最初の2~11のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、mCherryは、MVSKGEEDNMAIIKEFMRFKVHMEGSVNGHEFEIEGEGEGRPYEGTQTAKLKVTKGGPLPFAWDILSPQFMYGSKAYVKHPADIPDYLKLSFPEGFKWERVMNFEDGGVVTVTQDSSLQDGEFIYKVKLRGTNFPSDGPVMQKKTMGWEASSERMYPEDGALKGEIKQRLKLKDGGHYDAEVKTTYKAKKPVQLPGAYNVNIKLDITSHNEDYTIVEQYERAEGRHSTGGMDELYK(配列番号1)を含むか、またはこれからなる。いくつかの実施形態では、mCherryは、配列番号1を含むか、配列番号1からなる。いくつかの実施形態では、リンカーは、VSKGEEDNMA(配列番号2)を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号2からなる。いくつかの実施形態では、配列番号2は、切断可能リンカーである。いくつかの実施形態では、mCherryは、crmCherryである。いくつかの実施形態では、crmCherryは、mCherryの最初の11のアミノ酸を欠いている。いくつかの実施形態では、crmCherryは、配列番号3からなる。いくつかの実施形態では、crmCherryは、配列番号7によってコードされる。
【0137】
いくつかの実施形態では、目的の分子は、治療分子である。いくつかの実施形態では、分子は、薬物である。いくつかの実施形態では、分子は、生物製剤である。いくつかの実施形態では、分子は、生物学的分子である。いくつかの実施形態では、分子は、核酸分子である。いくつかの実施形態では、分子は、核酸分子を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、DNAである。いくつかの実施形態では、核酸は、RNAである。いくつかの実施形態では、核酸は、DNAまたはRNAである。いくつかの実施形態では、分子は、タンパク質-RNA複合体である。いくつかの実施形態では、分子は、RNPである。いくつかの実施形態では、分子は、タンパク質である。いくつかの実施形態では、分子は、タンパク質断片である。いくつかの実施形態では、分子は、非天然分子である。いくつかの実施形態では、分子は、天然分子である。いくつかの実施形態では、分子は、天然分子の改変形態である。いくつかの実施形態では、分子は酵素であるか、または酵素的に活性である。いくつかの実施形態では、分子は、結合分子である。いくつかの実施形態では、目的の分子は、カーゴである。いくつかの実施形態では、目的の分子は、治療剤である。いくつかの実施形態では、治療剤は、治療用タンパク質性剤である。
【0138】
いくつかの実施形態では、目的の分子は、目的のタンパク質である。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、治療剤である。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、細胞質タンパク質である。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、細胞質中で活性である。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、核タンパク質である。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、核中で活性である。
【0139】
いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、膜タンパク質ではない。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、リンパ球膜タンパク質ではない。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、天然の膜タンパク質ではない。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、リンパ球において、天然の膜性ではない。いくつかの実施形態では、細胞は、その細胞膜内に目的の分子を含まない。いくつかの実施形態では、細胞は、その細胞膜に結合されている目的の分子を含まない。いくつかの実施形態では、細胞は、その細胞膜内に治療剤を含まない。いくつかの実施形態では、細胞膜は、原形質膜である。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、膜貫通ドメインを含まない。
【0140】
いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、天然に分泌されるタンパク質ではない。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、シグナルペプチドを含まない。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、シグナルペプチドを天然に含まない。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、受容体リガンドではない。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、受容体に結合しない。いくつかの実施形態では、受容体は、表面受容体である。いくつかの実施形態では、受容体は、原形質膜受容体である。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、標的タンパク質ではない。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、標的細胞において効果を誘導する。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、標的細胞において治療効果を誘導する。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、表面タンパク質に結合し、その表面タンパク質を活性化または阻害する。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、アゴニストである。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、表面タンパク質に結合し、結合した受容体を介してシグナル伝達を誘導する。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、表面受容体リガンドである。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、その標的に自然に結合するタンパク質である。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、合成結合剤である。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、単鎖抗体である。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、単一ドメイン抗体である。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、VHHである。
【0141】
いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、ウイルスタンパク質ではない。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、ウイルスエンベロープタンパク質ではない。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、ウイルス透過タンパク質ではない。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、ウイルススパイクタンパク質ではない。いくつかの実施形態では、治療剤は、完全ウイルスではない。いくつかの実施形態では、治療剤は、ワクチンではない。いくつかの実施形態では、治療剤は、腫瘍溶解性ウイルスではない。いくつかの実施形態では、治療剤は、ウイルス粒子ではない。いくつかの実施形態では、治療剤は、ウイルスゲノムではない。いくつかの実施形態では、治療剤は、ウイルスゲノム編集タンパク質である。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、抗原結合タンパク質またはその断片である。いくつかの実施形態では、抗原は、表面抗原ではない。いくつかの実施形態では、抗原は、細胞質抗原である。いくつかの実施形態では、抗原は、核抗原である。いくつかの実施形態では、抗原は、内部抗原である。いくつかの実施形態では、抗原は、標的細胞の内部にある。いくつかの実施形態では、目的の分子は、ナノ粒子に結合されていない。いくつかの実施形態では、目的の分子は、内包化されていない。いくつかの実施形態では、内包化は、内包化されたナノ粒子である。いくつかの実施形態では、キメラ分子は、ナノ粒子に結合されていない。いくつかの実施形態では、キメラ分子は、内包化されていない。
【0142】
いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、タンパク質断片である。いくつかの実施形態では、断片は、少なくとも1つの機能ドメインを含む。いくつかの実施形態では、断片は、治療用断片である。いくつかの実施形態では、断片は、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、75、80、90、または100のアミノ酸を含む。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、断片は、少なくとも25のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、断片は、完全なタンパク質ではない。いくつかの実施形態では、断片は、切断部位を含まない。いくつかの実施形態では、断片は、切断部位を含まず、これにより、目的のタンパク質が、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質から早期に切断され得る。いくつかの実施形態では、早期とは、ERへの進入前である。いくつかの実施形態では、早期とは、溶解性顆粒への進入前である。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質ではない。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、標的化部分ではない。
【0143】
いくつかの実施形態では、目的の分子は、25、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、180、190または200キロダルトン(kDa)を超える分子量を含む。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、目的の分子は、25kDaを超える分子量を含む。いくつかの実施形態では、目的の分子は、28kDaを超える分子量を含む。いくつかの実施形態では、目的の分子は、50kDaを超える分子量を含む。いくつかの実施形態では、目的の分子は、75kDaを超える分子量を含む。いくつかの実施形態では、目的の分子は、100kDaを超える分子量を含む。いくつかの実施形態では、目的の分子は、125kDaを超える分子量を含む。いくつかの実施形態では、目的の分子は、150kDaを超える分子量を含む。いくつかの実施形態では、目的の分子は、160kDaを超える分子量を含む。いくつかの実施形態では、目的の分子は、190kDaを超える分子量を含む。いくつかの実施形態では、目的の分子は、25~300、25~250、25~200、25~190、25~175、25~165、28~300、28~250、28~200、28~190、28~175、28~165、30~300、30~300、30~200、30~190、30~175、30~165、50~300、50~500、50~200、50~190、50~175、50~165、75~300、75~750、75~200、75~190、75~175、75~165、100~300、100~1000、100~200、100~190、100~175、または100~165kDaの分子量を含む。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、目的の分子は、25~300kDaの分子量を含む。いくつかの実施形態では、目的の分子は、25~200kDaの分子量を含む。いくつかの実施形態では、目的の分子は、25~190kDaの分子量を含む。いくつかの実施形態では、目的の分子は、25~165kDaの分子量を含む。いくつかの実施形態では、目的の分子は、30~300kDaの分子量を含む。いくつかの実施形態では、目的の分子は、30~200kDaの分子量を含む。いくつかの実施形態では、目的の分子は、30~190kDaの分子量を含む。いくつかの実施形態では、目的の分子は、30~165kDaの分子量を含む。いくつかの実施形態では、目的の分子は、50~300kDaの分子量を含む。いくつかの実施形態では、目的の分子は、50~200kDaの分子量を含む。いくつかの実施形態では、目的の分子は、50~190kDaの分子量を含む。いくつかの実施形態では、目的の分子は、50~165kDaの分子量を含む。いくつかの実施形態では、目的の分子は、100~300kDaの分子量を含む。いくつかの実施形態では、目的の分子は、100~200kDaの分子量を含む。いくつかの実施形態では、目的の分子は、100~190kDaの分子量を含む。いくつかの実施形態では、目的の分子は、100~165kDaの分子量を含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、目的の分子は、細胞傷害性ではない。いくつかの実施形態では、キメラ分子は、細胞傷害性ではない。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、細胞傷害性ではない。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、細胞傷害性ではなく、目的の分子は、細胞傷害性である。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、細胞傷害性であり、目的の分子は、細胞傷害性である。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、細胞傷害性であり、目的の分子は、細胞傷害性ではない。いくつかの実施形態では、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質は、細胞傷害性でなく、目的の分子は、細胞傷害性ではない。いくつかの実施形態では、細胞傷害性タンパク質は、細胞においてアポトーシスを誘導することができるタンパク質である。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、細胞傷害性である。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、標的細胞の内部に送達されたときに、細胞傷害性である。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、標的細胞の表面に送達されたときに、細胞傷害性ではない。いくつかの実施形態では、内部は、細胞質である。いくつかの実施形態では、内部は、核である。いくつかの実施形態では、内部は、ミトコンドリアである。いくつかの実施形態では、細胞傷害性は、溶解性である。
【0145】
いくつかの実施形態では、目的の分子は、RNA-タンパク質複合体である。いくつかの実施形態では、RNA-タンパク質複合体は、リボ核タンパク質(RNP)である。「リボヌクレオチド」または「リボ核酸」(RNA)という用語は、少なくとも1つのリボヌクレオチド単位を含む改変または非改変ヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを指す。リボヌクレオチド単位は、リボシル部分の1’位でN-グリコシド連結で付着した窒素含有塩基を有する、リボシル部分の2’位に付着したヒドロキシル基、および別のヌクレオチドへの連結を可能にするか、または連結を妨げることができる部分を含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、タンパク質は、ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、目的の分子は、ゲノム編集複合体である。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、ゲノム編集タンパク質である。いくつかの実施形態では、編集は、改変することである。いくつかの実施形態では、ゲノム編集タンパク質は、クラスター化規則的間隔短パリンドローム反復(CRISPR)関連ヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、メガヌクレアーゼ、および転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ゲノム編集タンパク質は、メガヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、ゲノム編集タンパク質は、天然のメガヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、ゲノム編集タンパク質は、改変/操作されたメガヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、メガヌクレアーゼは、哺乳動物ゲノムのDNA標的配列に特異的である。いくつかの実施形態では、メガヌクレアーゼは、哺乳動物遺伝子のDNA標的配列に特異的である。いくつかの実施形態では、メガヌクレアーゼは、PCSK9特異的メガヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、PCSK9特異的メガヌクレアーゼは、アミノ酸配列MHMNTKYNKEFLLYLAGFVDGDGSIFARIKPSQRSKFKHKLHLVFAVYQKTQRRWFLDKLVDEIGVGYVLDSGSVSFYSLSEIKPLHNFLTQLQPFLKLKQKQANLVLKIIEQLPSAKESPDKFLEVCTWVDQIAALNDSKTRKTTSETVRAVLDSLPGSVGGLSPSQASSAASSASSSPGSGISEALRAGAGSGTGYNKEFLLYLAGFVDGDGSIYARIKPVQRAKFKHELVLGFDVTQKTQRRWFLDKLVDEIGVGYVYDKGSVSAYRLSQIKPLHNFLTQLQPFLKLKQKQANLVLKIIEQLPSAKESPDKFLEVCTWVDQIAALNDSKTRKTTSETVRAVLDSLSEKKKSSP(配列番号53)を含む。いくつかの実施形態では、PCSK9特異的メガヌクレアーゼは、配列番号54に提供されるヌクレオチド配列によってコードされる。
【0147】
いくつかの実施形態では、ゲノム編集タンパク質は、CRISPR関連タンパク質である。いくつかの実施形態では、CRISPR関連タンパク質は、CRISPR関連タンパク質9(Cas9)である。いくつかの実施形態では、CRISPR関連タンパク質は、Cas9またはCas9オルソログである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連タンパク質は、Cas9またはCas9バリアントである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連タンパク質は、Cas9またはCas9ホモログである。
【0148】
いくつかの実施形態では、CRISPR関連タンパク質は、CRISPR関連ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、CPF1ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Cas12aヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Cas13aヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、CasIヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、CasIBヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Cas2ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Cas3ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Cas4ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Cas5ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Cas6ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Cas7ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Cas8ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Cas100ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Csy1ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Csy2ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Csy3ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Cse1ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Cse2ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Csc1ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Csc2ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Csa5ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Csn2ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Csm2ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Csm3ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Csm4ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Csm5ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Csm6ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Cmr1ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Cmr3ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Cmr4ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Cmr5ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Cmr6ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Csb1ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Csb2ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Csb3ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Csx17ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Csx14ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Csx10ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Csx16ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、CsaXヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Csx3ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Csx1ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Csx15ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Csf1ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Csf2ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Csf3ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、Csf4ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、プライムエディター1(PE1)ニッカーゼである。いくつかの実施形態では、PE1は、配列番号27によってコードされる。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、プライムエディター2(PE2)ニッカーゼである。いくつかの実施形態では、PE2は、配列番号28によってコードされる。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、プライムエディター3(PE3)ニッカーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、MAD7ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、CRISPRiヌクレアーゼ(CRISPR干渉)である。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、CRISPRaヌクレアーゼ(CRISPR活性化)である。いくつかの実施形態では、CRISPR関連ヌクレアーゼは、クラス1 CRISPRヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、ゲノム編集タンパク質は、ホーミングエンドヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、ゲノム編集タンパク質は、メガヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、メガヌクレアーゼは、標的ゲノム摂動を生じさせるために利用可能である。いくつかの実施形態では、上記のエンドヌクレアーゼの1つ以上またはその相同体、その天然分子の組換え、そのコドン最適化型、またはその改変型、およびそれらの組み合わせが使用される。
【0149】
いくつかの実施形態では、Cas9は、連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)Cas9(SpCas9)である。いくつかの実施形態では、Cas9は、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)Cas9である。いくつかの実施形態では、カンピロバクター・ジェジュニCas9は、配列番号19を含む。いくつかの実施形態では、カンピロバクター・ジェジュニCas9は、配列番号19からなる。いくつかの実施形態では、Cas9は、連鎖球菌血清型(Streptococcus pyogenes serotype)M1 Cas9である。いくつかの実施形態では、SpCas9は、Sp血清型M1 Cas9である。いくつかの実施形態では、連鎖球菌血清型M1 Cas9は、配列番号20を含む。いくつかの実施形態では、連鎖球菌血清型M1 Cas9は、配列番号20からなるいくつかの実施形態では、Cas9は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)Cas9である。いくつかの実施形態では、黄色ブドウ球菌Cas9は、配列番号21を含む。いくつかの実施形態では、黄色ブドウ球菌Cas9は、配列番号21からなる。いくつかの実施形態では、Cas9は、髄膜炎菌血清群(Neisseria meningitidis serogroup)C(8013株)Cas9である。いくつかの実施形態では、髄膜炎菌血清群C(8013株)Cas9は、配列番号22を含む。いくつかの実施形態では、髄膜炎菌血清群C(8013株)Cas9は、配列番号22からなる。いくつかの実施形態では、Cas9は、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)Cas9である。いくつかの実施形態では、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルスCas9は、配列番号23を含む。いくつかの実施形態では、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルスCas9は、配列番号23からなる。いくつかの実施形態では、CRISPR関連タンパク質は、Cas12aである。いくつかの実施形態では、Cas12aは、CRISPR関連エンドヌクレアーゼCas12aフランシセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis)亜種ノビシダ(novicida)(U112株)である。いくつかの実施形態では、Cas12aは、配列番号24を含む。いくつかの実施形態では、Cas12aは、配列番号24からなる。いくつかの実施形態では、Cas12aは、CRISPR関連エンドヌクレアーゼCas12a OS=アシダミノコッカスsp.(Acidaminococcus sp.)(BV3L6株)である。いくつかの実施形態では、Cas12aは、配列番号25を含む。いくつかの実施形態では、Cas12aは、配列番号25からなる。いくつかの実施形態では、Cas12aは、Cas12a/Cpf1である。いくつかの実施形態では、Cas12aは、ラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)ND2006のV型CRISPR関連タンパク質Cas12a/Cpf1である。いくつかの実施形態では、Cas12aは、配列番号26を含む。いくつかの実施形態では、Cas12aは、配列番号26からなる。いくつかの実施形態では、ゲノム編集タンパク質は、プライムエディター1(PE1)である。いくつかの実施形態では、PE1は、配列番号73からなる。いくつかの実施形態では、ゲノム編集タンパク質は、プライムエディター2(PE2)である。いくつかの実施形態では、PE2は、配列番号74からなる。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、配列番号19~26および73、74から選択される。
【0150】
いくつかの実施形態では、ゲノム編集タンパク質は、本明細書で上に提供されたもののうちの1つである。いくつかの実施形態では、ゲノム編集タンパク質は、本明細書で上に提供された配列のうちの1つを含む。いくつかの実施形態では、ゲノム編集タンパク質は、本明細書で上に提供された配列のうちの1つからなる。いくつかの実施形態では、ゲノム編集タンパク質は、本明細書で上に提供された配列のうちの1つに対応する。いくつかの実施形態では、ゲノム編集タンパク質は、本明細書で上に提供されたタンパク質/配列のバリアントまたはそのうちの1つである。当業者であれば、哺乳動物または特にヒトにおける発現のために最適化された、天然タンパク質を改変することができるか、またはバリアントを生成できることを理解するであろう。このような最適化には、コドンの最適化、構造の最適化、発現の最適化、ゲノム編集の最適化、特異性の最適化、およびその他の最適化が含まれる。当技術分野で知られている任意のこのような最適化を使用することができ、上記のものに対応するまたは由来する任意のバリアント配列を使用することができる。
【0151】
いくつかの実施形態では、RNA-タンパク質複合体中のRNAは、ガイドRNA(gRNA)である。いくつかの実施形態では、RNAは、gRNAである。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、単一ガイドRNA(sgRNA)である。いくつかの実施形態では、RNAは、化学修飾されている。いくつかの実施形態では、この修飾は、RNAの安定性を高める。いくつかの実施形態では、この修飾は、RNAの半減期を延長させる。いくつかの実施形態では、この修飾は、RNAの分解を減少させる。いくつかの実施形態では、この修飾は、RNAの切断を減少させる。いくつかの実施形態では、この修飾は、RNAの免疫原性を減少させる。いくつかの実施形態では、この修飾は、オフターゲット効果を減少させる。RNAの化学修飾は、当技術分野において周知であり、例えば、2-O-メチル類似体、2-フルオロ類似体、2-MOEおよびホスホロチオエートが挙げられ、そのようないずれかの修飾を使用することができる。いくつかの実施形態では、RNAは、目的の標的タンパク質を標的とする。いくつかの実施形態では、目的の標的タンパク質は、疾患関連タンパク質である。いくつかの実施形態では、目的の標的タンパク質は、疾患を生じさせるタンパク質である。いくつかの実施形態では、目的の標的タンパク質の改変は、治療上の利点を有する。いくつかの実施形態では、疾患は、目的の標的タンパク質中での突然変異を特徴とする。いくつかの実施形態では、疾患は、目的の標的タンパク質中での突然変異によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、疾患は、目的の標的タンパク質の遺伝子編集によって治療可能である。いくつかの実施形態では、疾患は、目的の標的タンパク質の調節を変更することによって治療可能である。いくつかの実施形態では、調節は、ダウンレギュレーションである。いくつかの実施形態では、調節は、アップレギュレーションである。
【0152】
いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、局在化配列をさらに含む。当業者であれば、特定の細胞内場所で作用することが意図されているタンパク質が、その場所を標的とする場合、機能が増強され得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、局在化配列は、核局在化配列(NLS)である。いくつかの実施形態では、局在化配列は、ミトコンドリア局在化配列(MLS)である。いくつかの実施形態では、局在化配列は、連結しているタンパク質を細胞質から標的の細胞内場所に輸送することができる。いくつかの実施形態では、その場所は、細胞小器官である。いくつかの実施形態では、細胞小器官は、膜を含み、配列は、膜を横切ってまたは膜を通過して輸送され得る。いくつかの実施形態では、局在化配列は、目的のタンパク質のN末端に付着する。いくつかの実施形態では、局在化配列は、目的のタンパク質のC末端に付着する。いくつかの実施形態では、局在化配列は、目的のタンパク質の内部にある。いくつかの実施形態では、局在化配列は、目的のタンパク質に直接結合している。いくつかの実施形態では、局在化配列は、リンカーによって目的のタンパク質に結合されている。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、局在化配列に作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、局在化配列は、目的のタンパク質に作動可能に連結されている。
【0153】
核酸分子
別の態様により、本発明のキメラ分子をコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0154】
例示的な核酸分子の模式図を図1に提供する。
【0155】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド分子である。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ベクターである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、発現ベクターである。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、哺乳動物細胞における発現のために構成される。いくつかの実施形態では、発現のために構成されたものは、発現可能である。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、ヒト細胞における発現のために構成される。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、リンパ球における発現のために構成される。
【0156】
本明細書で使用される「発現」という用語は、遺伝子産物の生合成、例えば、遺伝子産物の転写および/または翻訳を指す。したがって、核酸分子の発現は、核酸断片の転写(例えば、mRNAまたは他の機能的RNAをもたらす転写)および/または前駆体もしくは成熟タンパク質(ポリペプチド)へのRNAの翻訳を指し得る。
【0157】
細胞内での遺伝子の発現は、当業者に周知である。多くの方法の中でも、トランスフェクション、エレクトロポレーション、ウイルス感染、または細胞のゲノムの直接改変によって行うことができる。いくつかの実施形態では、遺伝子は、オープンリーディングフレームである。いくつかの実施形態では、オープンリーディングフレームは、本発明のキメラポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、オープンリーディングフレームは、プラスミドまたはウイルスベクターなどの発現ベクター内にある。発現ベクターは、当技術分野でよく知られており、Addgene、Sigma Aldrich、Genscript、その他多くの企業から市販されている。
【0158】
ベクター核酸配列は、一般に、少なくとも、細胞内で増殖するための複製起点、および異種ポリヌクレオチド配列、発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー)、選択マーカー(抗生物質耐性など)、ポリアデニン配列などの任意の追加エレメントを含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、ベクターは、ウイルスベクターである。ベクターは、非ウイルス法またはウイルス法を介して送達されるDNAプラスミドであり得る。ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターまたはポックスウイルスベクターであり得る。プロモーターは、哺乳動物細胞において活性であり得る。プロモーターは、ヒト細胞において活性であり得る。プロモーターは、リンパ球において活性であり得る。
【0160】
いくつかの実施形態では、オープンリーディングフレームは、少なくとも1つの調節エレメントに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、調節エレメントは、プロモーターである。「作動可能に連結された」という用語は、目的のヌクレオチド配列が、(例えば、ベクターが宿主細胞に導入された場合、in vitro転写/翻訳系または宿主細胞において)ヌクレオチド配列の発現を可能にする様式で調節エレメント(複数可)に連結されていることを意味することを意図している。
【0161】
いくつかの実施形態では、ベクターは、エレクトロポレーション(例えば、From et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82,5824(1985))、熱ショック、ウイルスベクターによる感染、小さいビーズもしくは粒子のマトリックス内、または表面上のいずれかにおいて核酸を含む小粒子による高速弾道浸透(Klein et al.,Nature 327.70-73(1987))などの標準的な方法によって細胞に導入される。
【0162】
本明細書で使用される「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼ、すなわちRNAポリメラーゼIIの開始部位の周りに集積している転写制御モジュールの群を指す。プロモーターは、個別の機能モジュールで構成され、それぞれが約7~20bpのDNAからなり、転写活性化因子タンパク質または転写抑制因子タンパク質の認識部位を1つ以上含む。
【0163】
いくつかの実施形態では、核酸配列は、RNAポリメラーゼII(RNAPIIおよびPol II)によって転写される。RNAP IIは、真核細胞中で見られる酵素である。DNAの転写を触媒して、mRNAの前駆体およびほとんどのsnRNAおよびmicroRNAを合成する。
【0164】
いくつかの実施形態では、哺乳動物発現ベクターとしては、pcDNA3、pcDNA3.1(±)、pGL3、pZeoSV2(±)、pSecTag2、pDisplay、pEF/myc/cyto、pCMV/myc/cyto、pCR3.1、pSinRep5、DH26S、DHBB、pNMT1、pNMT41、pNMT81(Invitrogenから入手可能)、pCI(Promegaから入手可能)、pMbac、pPbac、pBK-RSVおよびpBK-CMV(Strategeneから入手可能)、pTRES(Clontechから入手可能)、ならびにそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0165】
いくつかの実施形態では、レトロウイルスなどの真核生物ウイルス由来の調節エレメントを含む発現ベクターが、本発明によって使用される。SV40ベクターとしては、pSVT7およびpMT2が挙げられる。いくつかの実施形態では、ウシパピローマウイルス由来のベクターとしては、pBV-1MTHAが挙げられ、エプスタインバーウイルス由来のベクターとしては、pHEBOおよびp2O5が挙げられる。他の例示的なベクターには、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo-5、バキュロウイルスpDSVE、およびSV-40初期プロモーター、SV-40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、または真核生物細胞での発現に有効であることが示されている他のプロモーターの指示下でタンパク質の発現が可能になる他のベクターが挙げられる。
【0166】
いくつかの実施形態では、水平感染および標的特異性などの利点を提供する組換えウイルスベクターが、in vivo発現に使用される。一実施形態では、水平感染は、例えばレトロウイルスのライフサイクルに固有のものであり、単一の感染細胞が、出芽して隣接細胞に感染する多くの子孫ウイルス粒子を産生するプロセスである。一実施形態では、その結果、広い領域が急速に感染するようになり、そのほとんどは、最初は、元のウイルス粒子に感染していなかった。一実施形態では、水平に広がることができないウイルスベクターが産生される。一実施形態では、この特徴は、所望の目的が特定の遺伝子を局所的な数の標的細胞のみに導入することである場合に有用であり得る。
【0167】
本発明の発現ベクターを細胞に導入するには、様々な方法を用いることができる。このような方法は、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Springs Harbor Laboratory,New York(1989,1992)、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,Md.(1989),Chang et al.,Somatic Gene Therapy,CRC Press,Ann Arbor,Mich.(1995)、Vega et al.,Gene Targeting,CRC Press,Ann Arbor Mich.(1995)、Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses,Butterworths,Boston Mass.(1988)およびGilboa et al.[Biotechniques 4(6):504-512,1986]に一般的に記載されており、例えば、安定または一過性トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション、および組換えウイルスベクターによる感染が挙げられる。さらに、ポジティブ-ネガティブセレクション方法については、米国特許第5,464,764号および同第5,487,992号を参照されたい。
【0168】
(ポリペプチドをコードしている)挿入されたコード配列の転写および翻訳に必要なエレメントを含むこと以外に、本発明の発現構築物は、発現されたポリペプチドの安定性、産生、精製、収量または活性を最適化するように操作された配列も含むことができることが理解されるであろう。
【0169】
いくつかの実施形態では、ヒトグランザイムBをコードする核酸配列は、アクセッション番号NM_004131、NM_001346011、またはNR_144343によって提供される。いくつかの実施形態では、ヒトグランザイムBをコードする核酸配列は、アクセッション番号NM_004131、NM_001346011、またはNR_144343によって提供される。いくつかの実施形態では、ヒトグランザイムBをコードする核酸配列は、アクセッション番号NM_004131によって提供される。いくつかの実施形態では、ヒトグランザイムBは、ヌクレオチド配列agctccaaccagggcagccttcctgagaagatgcaaccaatcctgcttctgctggccttcctcctgctgcccagggcagatgcaggggagatcatcgggggacatgaggccaagccccactcccgcccctacatggcttatcttatgatctgggatcagaagtctctgaagaggtgcggtggcttcctgatacgagacgacttcgtgctgacagctgctcactgttggggaagctccataaatgtcaccttgggggcccacaatatcaaagaacaggagccgacccagcagtttatccctgtgaaaagacccatcccccatccagcctataatcctaagaacttctccaacgacatcatgctactgcagctggagagaaaggccaagcggaccagagctgtgcagcccctcaggctacctagcaacaaggcccaggtgaagccagggcagacatgcagtgtggccggctgggggcagacggcccccctgggaaaacactcacacacactacaagaggtgaagatgacagtgcaggaagatcgaaagtgcgaatctgacttacgccattattacgacagtaccattgagttgtgcgtgggggacccagagattaaaaagacttcctttaagggggactctggaggccctcttgtgtgtaacaaggtggcccagggcattgtctcctatggacgaaacaatggcatgcctccacgagcctgcaccaaagtctcaagctttgtacactggataaagaaaaccatgaaacgctactaactacaggaagcaaactaagcccccgctgtaatgaaacaccttctctggagccaagtccagatttacactgggagaggtgccagcaactgaataaatacctcttagctgagtgga(配列番号15)によってコードされる。いくつかの実施形態では、配列番号15は、配列番号8をコードする。配列番号8を改変するために、配列番号15の改変を行うことができることは理解されるであろう。例えば、配列番号8の最初の18のアミノ酸を除去するために、配列番号15の最初の54のヌクレオチドを除去することができる。ATGが除去された場合、オープンリーディングフレームの始めに追加することができる。
【0170】
いくつかの実施形態では、マウスグランザイムBをコードする核酸配列は、アクセッション番号NM_013542によって提供される。いくつかの実施形態では、マウスグランザイムBは、ヌクレオチド配列ATGAAGATCCTCCTGCTACTGCTGACCTTGTCTCTGGCCTCCAGGACAAAGGCAGGGGAGATCATCGGGGGACATGAAGTCAAGCCCCACTCTCGACCCTACATGGCCTTACTTTCGATCAAGGATCAGCAGCCTGAGGCGATATGTGGGGGCTTCCTTATTCGAGAGGACTTTGTGCTGACTGCTGCTCACTGTGAAGGAAGTATAATAAATGTCACTTTGGGGGCCCACAACATCAAAGAACAGGAGAAGACCCAGCAAGTCATCCCTATGGTAAAATGCATTCCCCACCCAGACTATAATCCTAAGACATTCTCCAATGACATCATGCTGCTAAAGCTGAAGAGTAAGGCCAAGAGGACTAGAGCTGTGAGGCCCCTCAACCTGCCCAGGCGCAATGTCAATGTGAAGCCAGGAGATGTGTGCTATGTGGCTGGTTGGGGAAGGATGGCCCCAATGGGCAAATACTCAAACACGCTACAAGAGGTTGAGCTGACAGTACAGAAGGATCGGGAGTGTGAGTCCTACTTTAAAAATCGTTACAACAAAACCAATCAGATATGTGCGGGGGACCCAAAGACCAAACGTGCTTCCTTTCGGGGGGATTCTGGAGGCCCGCTTGTGTGTAAAAAAGTGGCTGCAGGCATAGTTTCCTATGGATATAAGGATGGTTCACCTCCACGTGCTTTCACCAAAGTCTCGAGTTTCTTATCCTGGATAAAGAAAACAATGAAAAGCAGC(配列番号17)によってコードされる。いくつかの実施形態では、配列番号17は、配列番号16をコードする。配列番号16を改変するために、配列番号17の改変を行うことができることは理解されるであろう。例えば、配列番号17の最初の18のアミノ酸を除去するために、配列番号16の最初の54のヌクレオチドを除去することができる。ATGが除去された場合、オープンリーディングフレームの始めに追加することができる。
【0171】
いくつかの実施形態では、突然変異体、非活性化ヒトグランザイムBをコードするヌクレオチド配列は、配列atgcaaccaatcctgcttctgctggccttcctcctgctgcccagggcagatgcagcagcaatcatcgggggacatgaggccaagccccactcccgcccctacatggcttatcttatgatctgggatcagaagtctctgaagaggtgcggtggcttcctgatacgagacgacttcgtgctgacagctgctcactgttggggaagctccataaatgtcaccttgggggcccacaatatcaaagaacaggagccgacccagcagtttatccctgtgaaaagacccatcccccatccagcctataatcctaagaacttctccaacgacatcatgctactgcagctggagagaaaggccaagcggaccagagctgtgcagcccctcaggctacctagcaacaaggcccaggtgaagccagggcagacatgcagtgtggccggctgggggcagacggcccccctgggaaaacactcacacacactacaagaggtgaagatgacagtgcaggaagatcgaaagtgcgaatctgacttacgccattattacgacagtaccattgagttgtgcgtgggggacccagagattaaaaagacttcctttaagggggactctggaggccctcttgtgtgtaacaaggtggcccagggcattgtctcctatggacgaaacaatggcatgcctccacgagcctgcaccaaagtctcaagctttgtacactggataaagaaaaccatgaaacgcta(配列番号18)によってコードされる。いくつかの実施形態では、突然変異体、非活性化マウスグランザイムBをコードするヌクレオチド配列は、配列atgaagatcctcctgctactgctgaccttgtctctggcctccaggacaaaggcagcagcaatcatcgggggacatgaagtcaagccccactctcgaccctacatggccttactttcgatcaaggatcagcagcctgaggcgatatgtgggggcttccttattcgagaggactttgtgctgactgctgctcactgtgaaggaagtataataaatgtcactttgggggcccacaacatcaaagaacaggagaagacccagcaagtcatccctatggtaaaatgcattccccacccagactataatcctaagacattctccaatgacatcatgctgctaaagctgaagagtaaggccaagaggactagagctgtgaggcccctcaacctgcccaggcgcaatgtcaatgtgaagccaggagatgtgtgctatgtggctggttggggaaggatggccccaatgggcaaatactcaaacacgctacaagaggttgagctgacagtacagaaggatcgggagtgtgagtcctactttaaaaatcgttacaacaaaaccaatcagatatgtgcgggggacccaaagaccaaacgtgcttcctttcggggggattctggaggcccgcttgtgtgtaaaaaagtggctgcaggcatagtttcctatggatataaggatggttcacctccacgtgctttcaccaaagtctcgagtttcttatcctggataaagaaaacaatgaaaagcag(配列番号41)によってコードされる。
【0172】
いくつかの実施形態では、連鎖球菌Cas9(SpCas9)をコードするヌクレオチド配列は、atggacaagaagtatagcatcggcctggatatcggcacaaactccgtgggctgggccgtgatcaccgacgagtacaaggtgccaagcaagaagtttaaggtgctgggcaacaccgatagacactccatcaagaagaatctgatcggcgccctgctgttcgactctggcgagacagccgaggccacacggctgaagagaaccgcccggagaaggtatacacgccggaagaataggatctgctacctgcaggagatcttcagcaacgagatggccaaggtggacgattctttctttcaccgcctggaggagagcttcctggtggaggaggataagaagcacgagcggcaccctatctttggcaacatcgtggacgaggtggcctatcacgagaagtacccaacaatctatcacctgaggaagaagctggtggactccaccgataaggccgacctgcgcctgatctatctggccctggcccacatgatcaagttccggggccactttctgatcgagggcgatctgaacccagacaatagcgatgtggacaagctgttcatccagctggtgcagacctacaatcagctgtttgaggagaaccccatcaatgcctctggagtggacgcaaaggcaatcctgagcgccagactgtccaagtctagaaggctggagaacctgatcgcccagctgccaggcgagaagaagaacggcctgtttggcaatctgatcgccctgtccctgggcctgacacccaacttcaagtctaattttgatctggccgaggacgccaagctgcagctgtccaaggacacctatgacgatgacctggataacctgctggcccagatcggcgatcagtacgccgacctgttcctggccgccaagaatctgtctgacgccatcctgctg agcgatatcctgcgcgtgaacaccgagatcacaaaggcccccctgagcgcctccatgatcaagagatatgacgagcaccaccaggatctgaccctgctgaaggccctggtgaggcagcagctgcctgagaagtacaaggagatcttctttgatcagagcaagaatggatacgcaggatatatcgacggaggagcatcccaggaggagttctacaagtttatcaagcctatcctggagaagatggacggcacagaggagctgctggtgaagctgaatcgggaggacctgctgaggaagcagcgcacctttgataacggcagcatccctcaccagatccacctgggagagctgcacgcaatcctgcgccggcaggaggacttctacccatttctgaaggataaccgggagaagatcgagaagatcctgacattcagaatcccctactatgtgggacctctggcccggggcaatagcagatttgcctggatgacccgcaagtccgaggagacaatcacaccctggaacttcgaggaggtggtggataagggcgcctctgcccagagcttcatcgagcggatgaccaattttgacaagaacctgcctaatgagaaggtgctgccaaagcactctctgctgtacgagtatttcaccgtgtataacgagctgacaaaggtgaagtacgtgaccgagggcatgagaaagcctgccttcctgagcggcgagcagaagaaggccatcgtggacctgctgtttaagaccaataggaaggtgacagtgaagcagctgaaggaggactatttcaagaagatcgagtgttttgattctgtggagatcagcggcgtggaggacaggtttaacgcctccctgggcacctaccacgatctgctgaagatcatcaaggataaggacttcctggacaacgaggagaatgaggatatcctggaggacatcgtgctgaccctgacactgtttgaggatagggagatgatcgaggagcgcc tgaagacatatgcccacctgttcgatgacaaagtgatgaagcagctgaagagaaggcgctacaccggatggggccggctgagcagaaagctgatcaatggcatccgcgacaagcagtctggcaagacaatcctggactttctgaagagcgatggcttcgccaaccggaacttcatgcagctgatccacgatgactccctgaccttcaaggaggatatccagaaggcacaggtgtctggacagggcgacagcctgcacgagcacatcgccaacctggccggctctcctgccatcaagaagggcatcctgcagaccgtgaaggtggtggacgagctggtgaaagtgatgggcaggcacaagccagagaacatcgtgatcgagatggcccgcgagaatcagaccacacagaagggccagaagaactcccgggagagaatgaagagaatcgaggagggcatcaaggagctgggctctcagatcctgaaggagcaccccgtggagaacacacagctgcagaatgagaagctgtatctgtactatctgcagaatggccgggatatgtacgtggaccaggagctggatatcaacagactgtctgattatgacgtggatcacatcgtgccacagtccttcctgaaggatgactctatcgacaataaggtgctgaccaggagcgacaagaaccgcggcaagtccgataatgtgccctctgaggaggtggtgaagaagatgaagaactactggaggcagctgctgaatgccaagctgatcacacagaggaagtttgataacctgaccaaggcagagaggggaggactgtccgagctggacaaggccggcttcatcaagcggcagctggtggagacaagacagatcacaaagcacgtggcccagatcctggattctagaatgaacacaaagtacgatgagaatgacaagctgatcagggaggtgaaagtgatcaccctgaagtccaagctggtgtctgactttaggaagga tttccagttttataaggtgcgcgagatcaacaattatcaccacgcccacgacgcctacctgaacgccgtggtgggcacagccctgatcaagaagtaccctaagctggagtccgagttcgtgtacggcgactataaggtgtacgatgtgcgcaagatgatcgccaagtctgagcaggagatcggcaaggccaccgccaagtatttcttttacagcaacatcatgaatttctttaagaccgagatcacactggccaatggcgagatcaggaagcgcccactgatcgagacaaacggcgagacaggcgagatcgtgtgggacaagggcagggattttgccaccgtgcgcaaggtgctgagcatgccccaagtgaatatcgtgaagaagaccgaggtgcagacaggcggcttctccaaggagtctatcctgcctaagcggaactccgataagctgatcgccagaaagaaggactgggaccccaagaagtatggcggcttcgacagccctacagtggcctactccgtgctggtggtggccaaggtggagaagggcaagagcaagaagctgaagtccgtgaaggagctgctgggcatcaccatcatggagcgcagctccttcgagaagaatcctatcgactttctggaggccaagggctataaggaggtgaagaaggacctgatcatcaagctgccaaagtactctctgtttgagctggagaacggaaggaagagaatgctggcaagcgccggagagctgcagaagggcaatgagctggccctgccctccaagtacgtgaacttcctgtatctggcctcccactacgagaagctgaagggctctcctgaggataacgagcagaagcagctgtttgtggagcagcacaagcactatctggacgagatcatcgagcagatcagcgagttctccaagagagtgatcctggccgacgccaatctggataaggtgctgtccgcctacaacaagcaccgggataagccaatc agagagcaggccgagaatatcatccacctgtttaccctgacaaacctgggagcaccagcagccttcaagtattttgacaccacaatcgacaggaagcggtacaccagcacaaaggaggtgctggacgccacactgatccaccagtccatcaccggcctgtacgagacacggatcgacctgtctcagctgggaggcgat(配列番号42)である。
【0173】
いくつかの実施形態では、GEジペプチドのAAへの突然変異を含み、crmCherryに連結されたヒトグランザイムBをコードするプラスミドが、配列番号29に提供される。このプラスミドのコード領域の模式図を、図1の最初の行(1_2と表示)として示す。いくつかの実施形態では、crmCherryに連結されたヒトグランザイムBをコードするプラスミドが、配列番号30に提供される。このプラスミドのコード領域の模式図を、図1の2行目(1_3と表示)として示す。いくつかの実施形態では、GEジペプチドのAAへの突然変異を含み、N末端NLSを有する全長Cas9に連結され、その後にP2Aペプチド-crmCherryが続くヒトグランザイムBをコードするプラスミドが、配列番号31に提供される。このプラスミドのコード領域の模式図を、図1の3行目(1_4と表示)として示す。いくつかの実施形態では、GEジペプチドのAAへの突然変異を含むが、ERシグナルペプチドを含まず、N末端NLSを有する全長Cas9に連結され、その後にP2Aペプチド-crmCherryが続くヒトグランザイムBをコードするプラスミドが、配列番号66に提供される。このプラスミドのコード領域の模式図を、図1の7行目(1_16と表示)として示す。いくつかの実施形態では、ヒトグランザイムBをコードし、N末端NLSを有する全長Cas9に連結され、その後にP2A-crmCherryが続くプラスミドが、配列番号32に提供される。このプラスミドのコード領域の模式図を、図1の4行目(1_5と表示)として示す。いくつかの実施形態では、ERシグナルペプチドを含まず、N末端NLSを有する全長Cas9に連結され、その後にP2A-crmCherryが続くヒトグランザイムBをコードするプラスミドが、配列番号65に提供される。このプラスミドのコード領域の模式図を、図1の8行目(1_15と表示)として示す。いくつかの実施形態では、GEジペプチドのAAへの突然変異を含み、配列番号2で示される切断可能リンカーによって、N末端NLSを有する全長Cas9に連結され、その後にP2A-crmCherryが続く、ヒトグランザイムBをコードするプラスミドが、配列番号33に提供される。このプラスミドのコード領域の模式図を、図1の5行目(1_6と表示)として示す。いくつかの実施形態では、GEジペプチドのAAへの突然変異を含むが、ERシグナルペプチドを含まず、配列番号2によって示される切断可能リンカーによってN末端NLSを有する全長Cas9に連結され、その後にP2A-crmCherryが続く、ヒトグランザイムBをコードするプラスミドが、配列番号67に提供される。このプラスミドのコード領域の模式図を、図1の9行目(1_17と表示)として示す。いくつかの実施形態では、配列番号2によって示される切断可能リンカーによってN末端NLSを有する全長Cas9に連結され、その後にP2A-crmCherryが続く、ヒト野生型グランザイムBをコードするプラスミドが、配列番号34に提供される。このプラスミドのコード領域の模式図を、図1の6行目(1_7と表示)として示す。いくつかの実施形態では、ERシグナルペプチドを含まず、配列番号2によって示される切断可能リンカーによってN末端NLSを有する全長Cas9に連結され、その後にP2A-crmCherryが続く、ヒト野生型グランザイムBをコードするプラスミドが、配列番号68に提供される。このプラスミドのコード領域の模式図を、図1の10行目(1_18と表示)として示す。いくつかの実施形態では、crmCherryに連結されたマウス野生型グランザイムBをコードするプラスミドが、配列番号35に提供される。いくつかの実施形態では、GEジペプチドのAAへの突然変異を含み、crmCherryに連結されたマウスグランザイムBをコードするプラスミドが、配列番号36に提供される。いくつかの実施形態では、マウス野生型グランザイムBをコードし、N末端NLS、続いてP2Aペプチド、次いでcrmCherryを有する全長Cas9に連結されたプラスミドが、配列番号37に提供される。いくつかの実施形態では、マウスグランザイムBをコードし、GEジペプチドのAAへの突然変異を含み、N末端NLS、その後にP2Aペプチド、次にcrmCherryを有する全長Cas9に連結されたプラスミドが、配列番号38に提供される。いくつかの実施形態では、マウス野生型グランザイムBをコードし、切断可能リンカーによってN末端NLSを有する全長Cas9に連結され、続いてP2Aペプチド、次いでcrmCherrが続くプラスミドが、配列番号39に提供される。いくつかの実施形態では、マウスグランザイムBをコードし、GEジペプチドのAAへの突然変異を含み、切断可能リンカーによってN末端NLSを有する全長Cas9に連結され、その後にP2Aペプチド、次にcrmCherryが続くプラスミドが、配列番号40に提供される。
【0174】
いくつかの実施形態では、GEジペプチドのAAへの突然変異を含み、N末端NLSを有するメガヌクレアーゼに連結されたヒトグランザイムBをコードするプラスミドは、配列番号69に提供される。このプラスミドのコード領域の模式図を、図1の11行目(2_4と表示)として示す。いくつかの実施形態では、GEジペプチドのAAへの突然変異を含むがERシグナルペプチドを含まず、N末端NLSを有するメガヌクレアーゼに連結されたヒトグランザイムBをコードするプラスミドが、配列番号70に提供される。このプラスミドのコード領域の模式図を、図1の12行目(2_5と表示)として示す。いくつかの実施形態では、GEジペプチドのAAへの突然変異を含み、N末端NLSを有するメガヌクレアーゼに連結され、その後にGFPが続く、ヒトグランザイムBをコードするプラスミドが、配列番号71に提供される。このプラスミドのコード領域の模式図を、図1の13行目(2_6と表示)として示す。いくつかの実施形態では、N末端NLSを有するメガヌクレアーゼをコードするプラスミドが、配列番号5に提供される。いくつかの実施形態では、N末端NLSおよびC末端NLSを有するメガヌクレアーゼをコードするプラスミドが、配列番号6に提供される。
【0175】
改変細胞
別の態様により、治療剤を含む改変細胞が提供される。
【0176】
いくつかの実施形態では、細胞は、グランザイムを発現する細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、天然にグランザイムを発現する。いくつかの実施形態では、細胞は、改変前にグランザイムを発現する。いくつかの実施形態では、グランザイムは、グランザイムBである。いくつかの実施形態では、細胞は、パーフォリンを発現する細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、改変前に、パーフォリンを発現する。いくつかの実施形態では、細胞は、グランザイムおよびパーフォリンを発現する細胞である。いくつかの実施形態では、発現は、分泌である。グランザイムとパーフォリンとの組み合わせを発現/分泌する細胞は、当技術分野で周知であり、このような細胞のいずれを使用してもよい。いくつかの実施形態では、細胞は、免疫細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、白血球細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、白血球である。いくつかの実施形態では、白血球は、リンパ球または骨髄細胞である。いくつかの実施形態では、細胞はCD45+細胞である。いくつかの実施形態では、白血球細胞(CD45+細胞)は、グランザイムおよび/またはパーフォリンを発現する。いくつかの実施形態では、細胞は、免疫シナプスを形成することができる。いくつかの実施形態では、細胞は、免疫シナプスを産生する細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、標的細胞と免疫シナプスを形成する能力を特徴とする。いくつかの実施形態では、細胞は、リンパ球である。いくつかの実施形態では、細胞は、骨髄細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、リンパ球および骨髄細胞から選択される。いくつかの実施形態では、骨髄細胞は、マクロファージである。いくつかの実施形態では、骨髄細胞は、マクロファージを含む。いくつかの実施形態では、骨髄細胞は、樹状細胞である。いくつかの実施形態では、骨髄細胞は、樹状細胞を含む。いくつかの実施形態では、リンパ球は、T細胞である。いくつかの実施形態では、リンパ球は、NK細胞である。いくつかの実施形態では、リンパ球は、T細胞およびNK細胞から選択される。いくつかの実施形態では、細胞は、T細胞、NK細胞および骨髄細胞から選択される。いくつかの実施形態では、細胞は、T細胞、NK細胞およびマクロファージから選択される。いくつかの実施形態では、免疫シナプスを形成できる細胞は、T細胞、NK細胞、B細胞、マスト細胞、好中球、およびマクロファージから選択される。いくつかの実施形態では、免疫シナプスを形成できる細胞は、T細胞、NK細胞、B細胞、マスト細胞、好中球、および骨髄細胞から選択される。いくつかの実施形態では、免疫シナプスを形成できる細胞は、T細胞、NK細胞、B細胞、マスト細胞、およびマクロファージから選択される。免疫シナプスを形成できる細胞は、T細胞、NK細胞、B細胞、およびマクロファージから選択される。いくつかの実施形態では、免疫シナプスを形成できる細胞は、T細胞、NK細胞、B細胞、マスト細胞、およびマクロファージから選択される。免疫シナプスを形成できる細胞は、T細胞、NK細胞、B細胞、および骨髄細胞から選択される。いくつかの実施形態では、免疫シナプスを形成できる細胞は、T細胞、NK細胞、およびマクロファージから選択される。いくつかの実施形態では、免疫シナプスを形成できる細胞は、T細胞、NK細胞、および骨髄細胞から選択される。いくつかの実施形態では、細胞は、リンパ球、および貪食シナプスを産生することができる細胞から選択される。いくつかの実施形態では、免疫シナプスは、貪食シナプスである。いくつかの実施形態では、細胞は、リンパ球およびマクロファージから選択される。いくつかの実施形態では、細胞は、リンパ球および骨髄細胞から選択される。
【0177】
本明細書で使用される「免疫シナプス」および「免疫学的シナプス」という用語は、交換可能に使用され、免疫細胞と、多くの場合、抗原提示細胞である、標的細胞との間の物理的界面を指す。いくつかの実施形態では、免疫シナプスは、超分子活性化クラスターである。いくつかの実施形態では、シナプスは、免疫細胞とその標的との間のタンパク質の移入を媒介するタンパク質クラスターの3つの同心リングを含む。いくつかの実施形態では、シナプスは、周辺に接着分子を含む。当業者は、免疫学的シナプスの接着分子により、エフェクターと標的細胞との間の結合力の増加および接触の持続の増長がもたらされることを理解するであろう。この増加した結合力/増長した接触により、分子のより強力な輸送が可能になる。このようにして、シナプス形成は、治療分子の順調で効率的な移入の課題に対する解決策となる。いくつかの実施形態では、シナプスは、高密度のT細胞受容体および共刺激分子を含む。いくつかの実施形態では、高密度は、免疫学的シナプスの中心にある。いくつかの実施形態では、免疫シナプス形成が、免疫細胞の活性化を誘発する。いくつかの実施形態では、免疫シナプス形成が、リンパ球の活性化を誘発する。いくつかの実施形態では、免疫シナプス形成が、T細胞の活性化を誘発する。いくつかの実施形態では、活性化は、エフェクター機能の実行に必要な最小閾値を超える活性化である。いくつかの実施形態では、活性化は、抗CD3抗体による人工的活性化以上の活性化である。いくつかの実施形態では、活性化は、IL-2による人工的活性化以上の活性化である。いくつかの実施形態では、活性化は、抗CD3抗体による人工的活性化を超える活性化である。いくつかの実施形態では、活性化は、IL-2による人工的活性化を超える活性化である。
【0178】
いくつかの実施形態では、細胞は、養子細胞移入の細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、治療用細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である。いくつかの実施形態では、細胞は、養子T細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、養子NK細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、CAR細胞である。いくつかの実施形態では、CAR細胞は、CAR T細胞である。いくつかの実施形態では、CAR細胞は、CAR NK細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、培養中の細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、増殖されている。いくつかの実施形態では、細胞は、in vivoである。
【0179】
いくつかの実施形態では、細胞は、治療剤および/または分子および/またはタンパク質を発現するように改変される。いくつかの実施形態では、改変は、in-vitroまたはex-vivoで行われる。いくつかの実施形態では、改変は、目的のタンパク質または目的のリボ核タンパク質または目的のヌクレオチド配列または目的の他の分子の導入によって行われる。目的の分子の細胞へのin vitro導入は、当技術分野で周知であり、非限定的な例として、エレクトロポレーション、トランスフェクション、感染、プラスミド、ウイルス、およびリポソームによって実施され得る。いくつかの実施形態では、改変は、リンパ球中で発現するヌクレオチド配列および/または分子(例えば、DNAおよびRNA)を導入することによって行われる。
【0180】
いくつかの実施形態では、細胞は、哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、ヒト細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、初代細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、末梢血細胞である。いくつかの実施形態では、リンパ球は、末梢血リンパ球である。いくつかの実施形態では、末梢血細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)である。いくつかの実施形態では、細胞は、骨髄細胞である。いくつかの実施形態では、リンパ球は、骨髄リンパ球である。いくつかの実施形態では、リンパ球は、組織常在リンパ球である。いくつかの実施形態では、細胞は、培養中の細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、ex vivo細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、対象由来である。いくつかの実施形態では、細胞は、対象中にある。いくつかの実施形態では、細胞は、細胞株由来である。いくつかの実施形態では、細胞株は、グランザイムノックダウン細胞株である。
【0181】
いくつかの実施形態では、細胞は、天然細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、培養中の別の細胞から分化したものである。いくつかの実施形態では、分化は、トランス分化である。いくつかの実施形態では、分化は、自然に発生する分化である。分化によって培養で細胞を産生する方法は、当技術分野で周知であり、任意のこのような方法を使用して、本発明の改変細胞を産生するために使用される細胞を産生することができる。いくつかの実施形態では、幹細胞を分化させて、細胞を産生する。いくつかの実施形態では、幹細胞は、造血幹細胞(HSC)である。いくつかの実施形態では、幹細胞は、胚性幹細胞(ESC)である。いくつかの実施形態では、幹細胞は、ESCではない。いくつかの実施形態では、細胞は、胚性細胞に由来しない。いくつかの実施形態では、幹細胞は、多分化性幹細胞である。いくつかの実施形態では、幹細胞は、多能性幹細胞である。いくつかの実施形態では、幹細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)である。いくつかの実施形態では、幹細胞は、間葉系間質細胞または間葉系幹細胞(MSC)である。いくつかの実施形態では、細胞は、MSCに由来しないか、またはトランス分化されていない。
【0182】
いくつかの実施形態では、細胞は、分泌リソソームを含む。いくつかの実施形態では、細胞は、溶解性顆粒を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、溶解細胞である。いくつかの実施形態では、リンパ球は、溶解性顆粒を含む。いくつかの実施形態では、リンパ球は、活性化に応答して溶解性顆粒を発現する。いくつかの実施形態では、溶解性顆粒は、活性化に応答して分極化する。いくつかの実施形態では、リンパ球は、分極溶解性顆粒を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、少なくとも1つのリンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、リンパ球は、少なくとも1つのリンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、発現は、活性化に応答する。いくつかの実施形態では、リンパ球は、T細胞である。いくつかの実施形態では、リンパ球は、B細胞である。いくつかの実施形態では、リンパ球は、NK細胞である。いくつかの実施形態では、リンパ球は、ナイーブリンパ球である。いくつかの実施形態では、リンパ球は、活性化リンパ球である。リンパ球の活性化は、当技術分野で周知であり、以下に開示する方法を含む、任意の既知の方法によって行うことができる。このような方法には、抗CD3刺激および/またはIL-2刺激が含まれる。いくつかの実施形態では、T細胞は、CD8陽性T細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は、細胞傷害性Tリンパ球である。いくつかの実施形態では、T細胞は、その細胞傷害性を阻害するように改変されている。いくつかの実施形態では、T細胞は、その細胞傷害性を無効にするように改変されている。いくつかの実施形態では、T細胞は、ヘルパーT細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は、CD4陽性T細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は、αβT細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は、γδT細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、制御性T細胞である。いくつかの実施形態では、リンパ球は、NK細胞である。いくつかの実施形態では、リンパ球は、T細胞およびNK細胞から選択される。いくつかの実施形態では、NK細胞は、ナチュラルキラーT(NKT)細胞である。
【0183】
いくつかの実施形態では、細胞は、非細胞傷害性細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、非溶解性細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、標的細胞中で溶解を誘導しない。いくつかの実施形態では、細胞は、標的細胞中でアポトーシスを誘導しない。いくつかの実施形態では、リンパ球は、非細胞傷害性リンパ球である。いくつかの実施形態では、細胞は、改変前は、非細胞傷害性である。いくつかの実施形態では、リンパ球は、改変前は、非細胞傷害性である。いくつかの実施形態では、細胞は、本来細胞傷害性であり、細胞傷害性を低下させるために改変されている。いくつかの実施形態では、細胞は、本来細胞傷害性であり、細胞傷害性を阻害するために改変されている。いくつかの実施形態では、細胞は、本来細胞傷害性であり、細胞傷害性を無効にするために改変されている。いくつかの実施形態では、改変は、TCRの突然変異である。いくつかの実施形態では、改変は、TCRの除去である。いくつかの実施形態では、改変は、TCRのダウンレギュレーションである。いくつかの実施形態では、改変は、TCRの発現の阻害である。いくつかの実施形態では、TCRは、内因性TCRである。いくつかの実施形態では、改変は、グランザイムの突然変異である。いくつかの実施形態では、細胞は、グランザイムノックダウン細胞株の細胞である。いくつかの実施形態では、ノックダウンは、CRISPR除去である。いくつかの実施形態では、改変は、炎症誘発性サイトカインの突然変異である。いくつかの実施形態では、細胞は、炎症誘発性サイトカインノックダウン細胞株の細胞である。いくつかの実施形態では、細胞傷害性は、内因性細胞傷害性である。いくつかの実施形態では、細胞は、細胞傷害性ではなく、キメラ分子は、細胞傷害性である。いくつかの実施形態では、細胞は、細胞傷害性ではなく、目的の分子は、細胞傷害性である。いくつかの実施形態では、細胞は、細胞傷害性タンパク質の突然変異またはノックアウトを含む。いくつかの実施形態では、細胞傷害性タンパク質は、溶解性顆粒分泌タンパク質以外の細胞傷害性タンパク質である。いくつかの実施形態では、ノックアウトは、細胞傷害性タンパク質をコードする遺伝子座の遺伝子切除によるものである。いくつかの実施形態では、遺伝子切除は、ゲノム編集タンパク質によるものである。いくつかの実施形態では、遺伝子切除は、CRISPRによる。
【0184】
いくつかの実施形態では、改変細胞は、活性化時/活性化後の標的細胞に対する溶解効果を防止するようにさらに改変/操作される。いくつかの実施形態では、活性化は、グランザイム-パーフォリン経路の活性化である。いくつかの実施形態では、改変リンパ球は、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質の内因性発現をノックダウンするように操作される。いくつかの実施形態では、ノックダウンは、ノックアウトである。いくつかの実施形態では、改変細胞は、細胞媒介死滅エレメントをコードする遺伝子をノックダウンするように操作される。このような死滅エレメントの例としては、内因性グランザイム、FasLおよびTrailが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、FasLの内因性発現が、ノックダウンされる。いくつかの実施形態では、Trail受容体の内因性発現が、ノックダウンされる。いくつかの実施形態では、炎症誘発性サイトカインの内因性発現が、ノックダウンされる。いくつかの実施形態では、炎症誘発性サイトカインの内因性発現が、阻害される。炎症誘発性サイトカインは、当技術分野において周知であり、非限定的な例として、TNFαおよびINFγが含まれる。いくつかの実施形態では、ノックダウンは、ノックアウトされている。遺伝子ノックダウン/ノックアウトは、例えばCRISPR/Cas9を用いたゲノム編集、または特定のsiRNA、shRNA、miRNAまたは類似の阻害性核酸分子をコードする配列の導入など、当技術分野において知られている任意の簡便な方法によって達成することができる。いくつかの実施形態では、さらなる改変/操作は、in vitroで行われる。いくつかの実施形態では、さらなる改変/操作は、ex vivoで行われる。
【0185】
いくつかの実施形態では、細胞は、治療剤および標的化部分を含む。いくつかの実施形態では、標的化部分は、治療剤とは別の分子である。いくつかの実施形態では、治療剤は、標的化分子ではない。いくつかの実施形態では、標的化部分は、操作された分子である。いくつかの実施形態では、標的化部分は、天然に存在しない。いくつかの実施形態では、標的化部分は、操作されたTCRである。いくつかの実施形態では、標的化部分は、キメラ抗原受容体(CAR)である。いくつかの実施形態では、標的化部分は、その標的に結合したときに、リンパ球を活性化する。いくつかの実施形態では、標的化部分は、その標的に結合したときに、活性化カスケードを開始する。いくつかの実施形態では、標的化部分は、標的結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、標的化部分は、活性化ドメインを含む。いくつかの実施形態では、標的化部分は、膜貫通タンパク質である。いくつかの実施形態では、標的化部分は、共活性化ドメインを含む。いくつかの実施形態では、リンパ球は、CAR-T細胞である。いくつかの実施形態では、リンパ球は、CAR-NK細胞である。いくつかの実施形態では、リンパ球は、TILである。
【0186】
本明細書で使用される場合、「CAR-T細胞」および「CAR-NK細胞」という用語は、目的の少なくとも1つの標的タンパク質に対して特異性を有し、免疫細胞(リンパ球)に移植される、操作された受容体を指す。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞は、T細胞に移植されたモノクローナル抗体の特異性を有する。いくつかの実施形態では、CAR-NK細胞は、NK細胞に移植されたモノクローナル抗体の特異性を有する。いくつかの実施形態では、T細胞は、細胞傷害性Tリンパ球および制御性T細胞から選択される。本発明の細胞が非細胞傷害性にされているか、または天然に非細胞傷害性である場合、活性化により治療剤または目的の分子を含む小胞が分泌されるが、それでも標的細胞の死滅をもたらさないことは、当業者には理解されるであろう。いくつかの実施形態では、標的細胞は、係合細胞(engaged cell)である。いくつかの実施形態では、係合は、CARによって係合される。
【0187】
CAR-TおよびCAR-NK細胞およびそれらのベクターは、当技術分野で周知である。このような細胞は、受容体が結合するタンパク質を標的にして係合する。いくつかの実施形態では、CAR-TまたはCAR-NK細胞は、少なくとも1つのウイルスタンパク質を標的とする。いくつかの実施形態では、CAR-TまたはCAR-NK細胞は、少なくとも1つのがんタンパク質を標的とする。いくつかの実施形態では、CAR-TまたはCAR-NK細胞は、少なくとも1つの表面タンパク質を標的とする。いくつかの実施形態では、表面タンパク質は、標的タンパク質である。いくつかの実施形態では、表面タンパク質は、標的細胞の表面上にある。
【0188】
CAR-T細胞の構築は、当技術分野で周知である。非限定的な一例では、ウイルスタンパク質に対するモノクローナル抗体を作製することができ、次いで、その抗体をコードするベクターが構築される。ベクターは、共刺激シグナル領域も含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル領域は、既知のT細胞またはNK細胞刺激分子の細胞内ドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞内ドメインは、以下のうちの少なくとも1つから選択される:CD3Z、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3のほか、CD83に特異的に結合するリガンド。いくつかの実施形態では、ベクターは、CD3Zシグナル伝達ドメインも含む。次いで、このベクターを、例えばレンチウイルス感染によってトランスフェクトするか、またはリンパ球にエレクトロポレートする。
【0189】
いくつかの実施形態では、細胞は、対象由来である。いくつかの実施形態では、細胞は、対象にとって自己由来である。いくつかの実施形態では、細胞は、対象にとって同種異系由来である。いくつかの実施形態では、細胞は、ユニバーサル同種異系リンパ球である。いくつかの実施形態では、細胞は、非免疫原性リンパ球である。いくつかの実施形態では、細胞は、市販のリンパ球である。いくつかの実施形態では、細胞は、対象にとって同系由来である。いくつかの実施形態では、細胞は、対象と一致するHLA型を共有する。自己細胞とは、改変(例えば、ex vivo/in vitro改変)後に再導入される同じ対象に由来する細胞を指す。細胞は、白血球除去法によって患者の血液から抽出されてもよい。細胞/リンパ球抽出の方法は、当技術分野で周知であり、このような方法をいずれも使用することができる。いくつかの実施形態では、細胞は、養子細胞移入用である。いくつかの実施形態では、リンパ球は、養子細胞移植用である。
【0190】
いくつかの実施形態では、治療剤は、目的の分子である。いくつかの実施形態では、治療剤は、目的のタンパク質である。いくつかの実施形態では、治療剤は、キメラ分子である。いくつかの実施形態では、治療剤は、キメラポリペプチドである。いくつかの実施形態では、治療剤は、タンパク質である。いくつかの実施形態では、治療剤は、タンパク質性剤である。いくつかの実施形態では、治療剤は、白血球にとって外因性である。いくつかの実施形態では、治療剤は、天然に存在しない。いくつかの実施形態では、治療剤は、細胞傷害性ではない。いくつかの実施形態では、治療剤は、溶解性ではない。いくつかの実施形態では、治療剤は、本発明のキメラ分子である。いくつかの実施形態では、治療剤は、本発明のキメラポリペプチドである。
【0191】
いくつかの実施形態では、治療剤は、細胞質中で作用する。いくつかの実施形態では、治療剤は、核中で作用する。いくつかの実施形態では、治療剤は、細胞中で作用する。いくつかの実施形態では、治療剤の標的は、内部標的である。いくつかの実施形態では、治療剤の標的は、核標的である。いくつかの実施形態では、治療剤の標的は、細胞質標的である。いくつかの実施形態では、治療剤の標的は、細胞表面標的ではない。いくつかの実施形態では、治療剤の標的は、受容体ではない。
【0192】
いくつかの実施形態では、治療剤は、疾患、障害、または状態を治療する。いくつかの実施形態では、治療剤は、ある疾患を治療する。このような疾患の例としては、遺伝性疾患、自己免疫疾患、細菌性疾患、ウイルス性疾患、炎症性疾患、増殖性疾患、心血管疾患、変性疾患、脳疾患、消化器疾患、肝疾患、神経疾患、およびエネルギー恒常性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、増殖性疾患は、がんである。いくつかの実施形態では、疾患は、がんではない。いくつかの実施形態では、治療剤は、抗がん治療剤ではない。いくつかの実施形態では、白血球は、疾患の細胞を標的とする標的化部分を含む。当業者であれば、本発明のリンパ球によって疾患の経路にある細胞を識別し、次いで治療することができることを理解するであろう。例えば、ニューロン疾患は、ニューロン標的化部分を有するリンパ球で治療することができ、エネルギー恒常性疾患は、膵臓標的化部分を有するリンパ球などで治療することができる。いくつかの実施形態では、治療剤は、ある状態を治療する。状態の例としては、炎症状態、老化関連状態、変性状態、および他の多くの状態が挙げられるが、これらに限定されない。
【0193】
本明細書で使用される、疾患、障害、もしくは状態の「治療」または「治療すること」という用語は、その少なくとも1つの症状の緩和、その重症度の軽減、またはその進行の阻害を包含する。治療は、疾患、障害、または状態が完全に治癒することを意味する必要はない。有効な治療であるためには、本明細書の有用な組成物または方法は、疾患、障害、もしくは状態の重症度を軽減するか、それに関連する症状の重症度を軽減するか、または患者または対象の生活の質に対して改善をもたらすことのみを必要とする。
【0194】
いくつかの実施形態では、疾患は、遺伝性疾患である。いくつかの実施形態では、状態は、遺伝的状態である。いくつかの実施形態では、障害は、遺伝性障害である。いくつかの実施形態では、遺伝性疾患、状態、または障害は、遺伝子突然変異によって引き起こされるものである。いくつかの実施形態では、疾患は、疾患状態または障害である。いくつかの実施形態では、疾患は、がんではない。いくつかの実施形態では、遺伝子突然変異は、体細胞突然変異である。いくつかの実施形態では、遺伝子突然変異は、生殖細胞系突然変異である。いくつかの実施形態では、遺伝性疾患、障害または状態は、遺伝子療法によって治療可能である。いくつかの実施形態では、治療剤は、遺伝子編集剤である。いくつかの実施形態では、治療剤は、遺伝子編集タンパク質である。いくつかの実施形態では、治療剤は、遺伝子編集複合体である。いくつかの実施形態では、複合体は、RNA-タンパク質複合体である。いくつかの実施形態では、遺伝子編集は、ゲノム編集である。いくつかの実施形態では、治療剤は、Cas9またはそのホモログ、オルソログもしくはバリアントを含む。
【0195】
遺伝性疾患および障害は当技術分野で周知であり、そのような任意の疾患/障害の治療が想定されている。遺伝性疾患および障害の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アンジェルマン症候群、強直性脊椎炎、アペール症候群、先天性副腎過形成、嚢胞性線維症、ダウン症候群、脆弱X症候群、ヘモクロマトーシス、血友病、ハンチントン病、クラインフェルター症候群、マルファン症候群、筋ジストロフィー、神経線維腫症、ヌーナン症候群、プラダー・ウィリー症候群、レット症候群、テイ・サックス病、サラセミア、トゥレット症候群、ターナー症候群、フォン・ヴィレブランド病、およびウィリアムズ症候群。
【0196】
いくつかの実施形態では、治療剤は、細胞の溶解性顆粒中にある。いくつかの実施形態では、治療剤は、リンパ球の溶解性顆粒中にある。いくつかの実施形態では、治療剤は、細胞の分泌性顆粒中にある。いくつかの実施形態では、治療剤は、リンパ球の分泌性顆粒中にある。いくつかの実施形態では、治療剤は、細胞の分泌リソソーム中にある。いくつかの実施形態では、治療剤は、リンパ球の分泌リソソーム中にある。いくつかの実施形態では、治療剤は、細胞のエキソソーム中にはない。いくつかの実施形態では、リンパ球の溶解性顆粒は、治療剤を含む。いくつかの実施形態では、細胞の分泌性顆粒は、治療剤を含む。いくつかの実施形態では、リンパ球の分泌性顆粒は、治療剤を含む。いくつかの実施形態では、目的の治療剤/タンパク質の少なくとも50%は、顆粒/リソソーム中にある。いくつかの実施形態では、目的の治療剤/タンパク質の少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%または100%は、顆粒/リソソーム中にある。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、目的の治療剤/タンパク質の少なくとも75%は、顆粒/リソソーム中にある。エキソソーム中ではなく(またはエキソソーム中のみではなく)溶解性顆粒/分泌性顆粒中に治療剤を有することが有利であることは、当業者には理解されるであろう。エキソソームは、無差別に産生され、治療剤は、エキソソーム中にあれば、継続的に放出される。さらに、標準条件下では、エキソソームは、多く産生されない。対照的に、溶解/分泌小胞は、細胞活性化時にのみ分泌される。したがって、リンパ球がその標的に係合する前に対象内を通過するとき、溶解小胞内の治療剤は放出されないが、エキソソーム内容物は放出され得る。標的細胞が係合すると、リンパ球が活性化され、多数の溶解小胞が放出される。したがって、エキソソーム経路ではなく、溶解経路を採用することにより、標的の送達およびロバストな送達が同時に確実に行われる。好都合なことに、標的細胞の認識によって活性化される白血球(リンパ球および骨髄)を介した治療剤の送達は、他の既知のin vivo送達方法と比較して、標的細胞または標的組織内の細胞に対する特異性の増加をもたらす。
【0197】
医薬組成物
別の態様により、本発明の改変細胞を含む組成物が提供される。
【0198】
いくつかの実施形態では、組成物は、医薬組成物である。いくつかの実施形態では、組成物は、治療用組成物である。いくつかの実施形態では、組成物は、治療に使用するための組成物である。いくつかの実施形態では、治療は、それを必要とする対象の治療である。いくつかの実施形態では、治療は、治療剤によって治療可能な疾患、状態または障害の治療である。
【0199】
いくつかの実施形態では、組成物は、改変細胞の集団を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、複数の改変細胞を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも100万、200万、300万、400万、500万、600万、700万、900万、1000万、2000万、3000万、4000万、5000万、6000万、7000万、8000万、9000万、1億、2億、3億、4億、5億、6億、7億、8億、9億または10億個の改変細胞を含む。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0200】
いくつかの実施形態では、組成物は、全身投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は、対象への投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は、静脈内投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は、局所投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は、対象への投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、対象への投与のために製剤化されたものは、不明な化学物質含有物なく製剤化される。いくつかの実施形態では、対象への投与のために製剤化された組成物は、化学的に定義されている。いくつかの実施形態では、投与用に製剤化された組成物は、動物血清を含まない。いくつかの実施形態では、動物血清は、非ヒト動物血清である。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、疾患に罹患している。
【0201】
本明細書で使用される場合、用語「投与する」、「投与」および同様の用語は、健全な医療行為において、治療効果をもたらすような方法で、対象に、活性剤を含有する組成物を送達する任意の方法を指す。本主題の一態様は、本主題の組成物の治療有効量を、それを必要とする患者に静脈内投与することを提供する。他の好適な投与経路には、非経口、経口、皮下、髄腔内、筋肉内、または腹腔内が含まれ得る。
【0202】
投薬量は、レシピエントの年齢、健康状態、および体重、存在する場合には、同時治療の種類、治療頻度、および所望の効果の性質に依存するであろう。
【0203】
いくつかの実施形態では、組成物は、薬学的に許容される賦形剤、担体またはアジュバントを含む。本明細書で使用される「担体」、「賦形剤」、または「アジュバント」という用語は、活性剤ではない医薬組成物の任意の成分を指す。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、非毒性、不活性固体、半固体液体充填剤、希釈剤、内包化材料、任意の種類の製剤補助剤、または単に生理食塩水などの滅菌水性媒体を指す。薬学的に許容される担体として機能し得る材料のいくつかの例としては、ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;粉末トラガント;麦芽、ゼラチン、タルク;ココアバターおよび座薬ワックスなどの賦形剤;落花生油、綿実油、紅花油、ごま油、オリーブ油、とうもろこし油、大豆油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチル、ラウリン酸エチルなどのエステル類;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱物質非含有水;等張生理食塩水、リンゲル液;エチルアルコールおよびリン酸緩衝液、ならびに医薬品製剤中に使用される他の非毒性適合物質が挙げられる。本明細書において担体として機能し得る物質のいくつかの非限定的な例としては、糖、デンプン、セルロースおよびその誘導体、粉末トラガカント、麦芽、ゼラチン、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、硫酸カルシウム、植物油、ポリオール、アルギン酸、発熱物質非含有水、等張食塩水、リン酸塩緩衝液、ココアバター(座薬基剤)、乳化剤、および他の医薬品製剤中に使用される他の非毒性適合物質が挙げられる。ラウリル硫酸ナトリウムなどの湿潤剤および潤滑剤、ならびに着色剤、香味剤、賦形剤、安定剤、抗酸化剤、および防腐剤も存在し得る。本明細書で企図される組成物を製剤化するために、任意の非毒性、不活性、および有効な担体を使用することができる。この点に関して、好適な薬学的に許容される担体、賦形剤、および希釈剤は、当業者に周知であり、例えば、The Merck Index,Thirteenth Edition,Budavari et al.,Eds.,Merck&Co.,Inc.,Rahway,N.J.(2001);the CTFA(Cosmetic,Toiletry,and Fragrance Association)International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,Tenth Edition(2004);および「Inactive Ingredient Guide」U.S.Food and Drug Administration(FDA)Center for Drug Evaluation and Research(CDER)Office of Managementに記載されており、これらすべての内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本組成物に有用な薬学的に許容される賦形剤、担体および希釈剤の例としては、蒸留水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、ハンクス液、およびDMSOが挙げられる。これらの追加の不活性成分、ならびに有効な製剤および投与手順は、当技術分野で周知であり、標準的なテキスト、例えば、Goodman and Gillman’s:The Pharmacological Bases of Therapeutics,8th Ed.,Gilman et al.編Pergamon Press(1990);Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.(1990);およびRemington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Ed.,Lippincott Williams&Wilkins,Philadelphia,Pa.,(2005)に記載されており、これらのそれぞれが、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。現在記載されている組成物は、リポソーム、ISCOMS、徐放性粒子、および血清中のペプチドまたはポリペプチドの半減期を延長させる他のビヒクルなど、人工的に創出された構造にも含まれ得る。リポソームとしては、エマルジョン、泡、ミセル、不溶性単層、液晶、リン脂質分散液、ラメラ層などが挙げられる。現在記載されているペプチドと共に使用するためのリポソームは、中性および負に荷電したリン脂質およびコレステロールなどのステロールを一般的に含む標準的な小胞形成脂質から形成される。脂質の選択は、一般に、リポソームのサイズおよび血中安定性などを考慮して決定される。例えば、Coligan,J.E.et al,Current Protocols in Protein Science,1999,John Wiley&Sons,Inc.,New Yorkで検討されているように、リポソームの調製には様々な方法が利用可能であり、また米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、同第4,837,028号、および同第5,019,369号を参照されたい。
【0204】
担体は、合計で、本明細書に提示される医薬組成物の約0.1重量%~約99.99999重量%を構成し得る。
【0205】
いくつかの実施形態では、組成物は、ヒトへの投与に好適である担体である。いくつかの実施形態では、組成物は、非ヒトタンパク質を含まない。いくつかの実施形態では、組成物は、非ヒトタンパク質を欠いている。いくつかの実施形態では、担体は、細胞用の培地を含む。いくつかの実施形態では、培地は、リンパ球培地である。いくつかの実施形態では、培地は、骨髄培地である。いくつかの実施形態では、培地は、マクロファージ培地である。いくつかの実施形態では、培地は、化学的に定義された培地である。いくつかの実施形態では、培地は、動物性タンパク質を欠いている。いくつかの実施形態では、培地は、動物性血清を欠いている。いくつかの実施形態では、組成物は、動物性血清を欠いている。いくつかの実施形態では、組成物は、非免疫原性である。いくつかの実施形態では、対象に対して非免疫原性である非免疫原性である。
【0206】
使用方法
一態様により、治療剤を標的細胞に送達する方法が提供され、この方法は、標的細胞を本発明の改変細胞と接触させ、それによって治療剤を標的細胞に送達することを含む。
【0207】
別態様により、治療剤を標的細胞に送達する方法が提供され、この方法は、標的細胞を本発明の組成物と接触させ、それによって治療剤を標的細胞に送達することを含む。
【0208】
別の態様により、治療剤を標的細胞に送達する方法が提供され、この方法は、標的細胞を本発明のキメラ分子を発現する改変細胞と接触させ、それによって治療剤を標的細胞に送達することを含む。
【0209】
別の態様により、治療剤を標的細胞に送達する方法が提供され、この方法は、標的細胞を本発明のポリヌクレオチドを発現する改変細胞と接触させ、それによって治療剤を標的細胞に送達することを含む。
【0210】
いくつかの実施形態では、この方法は、in vivo法である。いくつかの実施形態では、この方法は、in vitro法である。いくつかの実施形態では、この方法は、ex vivo法である。いくつかの実施形態では、この方法は、ex vivoで実施される。いくつかの実施形態では、標的細胞は、対象中にある。いくつかの実施形態では、対象は、治療を必要としている。いくつかの実施形態では、治療は、治療剤による。いくつかの実施形態では、治療は、治療剤を用いる。いくつかの実施形態では、対象は、治療剤による治療に適応可能である。いくつかの実施形態では、この方法は、ゲノム編集の方法である。いくつかの実施形態では、この方法は、遺伝子療法の方法である。いくつかの実施形態では、この方法は、ゲノム遺伝子座を編集する方法である。いくつかの実施形態では、対象は、疾患に罹患している。いくつかの実施形態では、対象は、疾患または状態に罹患している。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、治療剤によって治療可能である。
【0211】
いくつかの実施形態では、標的細胞内でのゲノム編集の方法が提供され、この方法は、標的細胞を本発明の改変細胞と接触させること、それによって遺伝子編集剤を標的細胞に送達することを含み、遺伝子編集剤は、標的細胞の核内の遺伝子を改変/編集する。いくつかの実施形態では、ゲノム編集は、標的細胞の核内の遺伝子を改変することを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子編集剤は、遺伝子編集タンパク質である。いくつかの実施形態では、遺伝子編集剤は、標的細胞の核内の遺伝子を改変する。
【0212】
いくつかの実施形態では、ゲノム編集の方法は、遺伝性疾患を治療する方法である。いくつかの実施形態では、ゲノム編集の方法は、ゲノム編集標的化核酸分子を提供することをさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸は、RNAである。いくつかの実施形態では、RNAは、ガイドRNAである。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、sgRNAである。いくつかの実施形態では、標的化核酸分子は、ゲノム編集タンパク質と適合性がある。ゲノム編集タンパク質(CAS9など)と共に使用するための標的化核酸分子は、当技術分野で周知である。これらの配列を設計する方法もよく知られており、ゲノム編集を行うための標的配列を選択するための方法も同様である。任意のそのような方法を使用することができる。いくつかの実施形態では、核酸分子は、化学修飾されている。いくつかの実施形態では、核酸分子は、化学修飾されている骨格を含む。
【0213】
いくつかの実施形態では、標的化核酸分子は、ゲノム編集タンパク質と共に提供される。いくつかの実施形態では、ゲノム編集タンパク質および標的化核酸分子は、一緒に提供される。いくつかの実施形態では、ゲノム編集タンパク質および標的化核酸分子は、RNP中に提供される。いくつかの実施形態では、ゲノム編集タンパク質および標的化核酸分子は、別々に提供される。いくつかの実施形態では、ゲノム編集タンパク質および標的化核酸分子は、標的細胞に別々に提供される。いくつかの実施形態では、ゲノム編集タンパク質および標的化核酸分子は、対象に別々に提供される。
【0214】
核酸分子送達の方法は、当技術分野で周知であり、本明細書に記載されている。このような送達方法はいずれも、使用することができる。ヌクレオフェクション、リポフェクション、トランスフェクション、およびウイルス送達などのin vitroでの送達方法を使用することができる。レンチウイルス、ナノ粒子送達、微粒子送達、脂質送達、リガンド結合送達および他の多くのin vivo送達の方法が想定される。核酸送達のための当技術分野で知られている任意の方法を使用して、標的化核酸を標的細胞に送達することができる。
【0215】
別の態様により、それを必要とする対象を治療する方法が提供され、この方法は、対象に本発明の改変細胞を投与し、それによって対象を治療することを含む。
【0216】
別の態様により、それを必要とする対象を治療する方法が提供され、この方法は、対象に本発明の組成物を投与し、それによって対象を治療することを含む。
【0217】
別の態様により、それを必要とする対象を治療する方法が提供され、この方法は、対象に本発明のキメラ分子を発現する改変細胞を投与し、それによって対象を治療することを含む。
【0218】
別の態様により、それを必要とする対象を治療する方法が提供され、この方法は、対象に本発明のポリヌクレオチドを発現する改変細胞を投与し、それによって対象を治療することを含む。
【0219】
別の態様により、本発明の改変細胞を産生する方法が提供され、この方法は、細胞を提供することと、治療剤を細胞に導入することと、を含む。
【0220】
別の態様により、本発明の改変細胞を産生する方法が提供され、この方法は、細胞を提供することと、本発明のキメラポリペプチドを細胞に導入することと、を含む。
【0221】
いくつかの実施形態では、標的細胞は、疾患の細胞である。いくつかの実施形態では、標的細胞は、細胞が自然にホーミングする細胞である。いくつかの実施形態では、標的細胞は、リンパ球が自然にホーミングする細胞である。いくつかの実施形態では、標的細胞は、細胞上の標的化部分の標的である表面タンパク質を発現する細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、対象にとって自己由来である。いくつかの実施形態では、細胞は、対象にとって同種異系由来である。いくつかの実施形態では、細胞は、対象にとって同系由来である。いくつかの実施形態では、細胞は、in vitro細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、ex vivo細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、培養中にある。いくつかの実施形態では、細胞は、対象中にある。いくつかの実施形態では、細胞は、培養で増殖された細胞の集団である。
【0222】
いくつかの実施形態では、この方法は、細胞を得ることをさらに含む。いくつかの実施形態では、得ることは、対象から細胞を抽出することである。いくつかの実施形態では、この方法は、対象から細胞を抽出することをさらに含む。いくつかの実施形態では、この方法は、リンパ球を得ることをさらに含む。いくつかの実施形態では、得ることは、対象からリンパ球を抽出することである。いくつかの実施形態では、この方法は、対象からリンパ球を抽出することをさらに含む。いくつかの実施形態では、この方法は、抽出された細胞を増殖することをさらに含む。いくつかの実施形態では、この方法は、抽出された細胞を活性化することをさらに含む。いくつかの実施形態では、この方法は、抽出されたリンパ球を活性化することをさらに含む。いくつかの実施形態では、この方法は、抽出された細胞を改変することをさらに含む。いくつかの実施形態では、改変することは、標的化部分により改変することである。いくつかの実施形態では、改変することは、治療剤によるものである。いくつかの実施形態では、改変することは、細胞中で発現することである。いくつかの実施形態では、細胞内で発現することは、改変することである。いくつかの実施形態では、改変することは、本発明のキメラ分子によるものである。いくつかの実施形態では、改変することは、細胞内で発現することである。いくつかの実施形態では、改変することにより、改変細胞を産生する。いくつかの実施形態では、改変細胞は、本発明の改変細胞である。いくつかの実施形態では、この方法は、対象に細胞を投与することを含む。いくつかの実施形態では、投与することは、細胞を対象に戻すことである。
【0223】
いくつかの実施形態では、改変することまたは発現することは、細胞が活性化された後に行われる。いくつかの実施形態では、改変することまたは発現することは、活性化された直後に行われる。いくつかの実施形態では、細胞は、活性化されている間に投与される。いくつかの実施形態では、改変することまたは発現することは、細胞が活性化されている間に行われる。いくつかの実施形態では、細胞は、改変または発現する前に安定様式に戻ることができない。いくつかの実施形態では、改変することまたは発現することは、投与することに近接して行われる。一過性にロードされるカーゴの場合、エフェクター細胞中のカーゴの濃度を希釈するので、投与前に長時間改変細胞を増殖させないことが有利であることは、当業者には理解されるであろう。いくつかの実施形態では、細胞は、投与前の3、6、12、24、36、48、60、72、84、96、108、または120時間以内に改変される。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、細胞は、投与前の24時間以内に改変される。いくつかの実施形態では、細胞は、投与前の48時間以内に改変される。いくつかの実施形態では、細胞は、投与前の72時間以内に改変される。いくつかの実施形態では、細胞は、投与前の96時間以内に改変される。いくつかの実施形態では、細胞は、投与前の120時間以内に改変される。いくつかの実施形態では、治療剤を改変することまたは発現することは、細胞が活性化された後に行われる。いくつかの実施形態では、標的化部分を改変することまたは発現することは、活性化の前に行われる。エフェクター細胞中で細胞傷害性タンパク質/CAR/サイトカインおよび同様の分子を発現させるための当技術分野で公知の現在の方法では、エフェクター細胞が最初に活性化されないことは、当業者には理解されるであろう。むしろ、最初に発現が生じ、次に細胞が活性化される。本方法では、エフェクター細胞が最初に活性化される。この活性化により、細胞質が溶解性顆粒で満たされるように誘導され、発現した治療剤/キメラポリペプチドが主に顆粒に入り、その結果移入を促進することを確実にする。
【0224】
いくつかの実施形態では、改変細胞は、その顆粒(溶解性顆粒などの分泌リソソーム)内に目的のカーゴを含むように改変されている。いくつかの実施形態では、活性化後の改変により、カーゴが顆粒にロードされる。いくつかの実施形態では、目的のカーゴは、本明細書で上に開示された融合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、得られた細胞または改変細胞は、さらに操作されて、グランザイム-パーフォリン経路の活性化時/活性化後の標的細胞に対する溶解効果を防止するようになる。いくつかの実施形態では、改変細胞は、リンパ球溶解性顆粒分泌タンパク質の内因性発現をノックアウトするように操作される。いくつかの実施形態では、改変細胞は、内因性グランザイムおよび/またはFasLおよび/またはTrailなどの細胞媒介死滅エレメントをコードする遺伝子をノックアウトするように操作される。いくつかの実施形態では、典型的には、T細胞膜上で発現し、標的細胞上のそれらのリガンドに結合したときに、アポトーシスを開始するFasL受容体およびTrail受容体の内因性発現がノックアウトされ得る。遺伝子ノックアウトは、当技術分野で知られている任意の簡便な方法、例えば、CRISPR/Cas9による編集、特定のsiRNA、shRNAをコードする配列の導入などによって達成できる。いくつかの実施形態では、細胞は、標的化核酸分子を発現するように改変されている。
【0225】
いくつかの実施形態では、送達は、標的細胞の細胞質への送達である。いくつかの実施形態では、送達は、標的細胞の核への送達である。いくつかの実施形態では、送達は、標的細胞の細胞質または核への送達である。いくつかの実施形態では、送達は、パーフォリン孔を通す。いくつかの実施形態では、送達は、標的細胞によるエンドサイトーシスを含まない。いくつかの実施形態では、送達は、エキソソームによるものではない。いくつかの実施形態では、送達は、細胞外小胞によるものではない。いくつかの実施形態では、細胞外小胞は、溶解性細胞外小胞ではない。いくつかの実施形態では、送達は、標的細胞内のエンドソームを経由しない。いくつかの実施形態では、送達は、食作用によるものではない。いくつかの実施形態では、送達は、免疫シナプスへの送達である。いくつかの実施形態では、送達は、標的細胞のゲノムを編集することを含む。いくつかの実施形態では、送達は、標的細胞のゲノム遺伝子座を編集することを含む。いくつかの実施形態では、送達は、遺伝子療法を含む。いくつかの実施形態では、この方法は、標的化核酸分子を標的細胞に送達することをさらに含む。いくつかの実施形態では、この方法は、標的化核酸分子を対象に送達することをさらに含む。
【0226】
別の態様により、本発明のキメラポリペプチドを含むキットが提供される。
【0227】
別の態様により、本発明のポリヌクレオチドを含むキットが提供される。
【0228】
別の態様により、本発明の改変細胞を含むキットが提供される。
【0229】
別の態様により、本発明の組成物を含むキットが提供される。
【0230】
いくつかの実施形態では、キットは、細胞をさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、細胞内でポリペプチドを発現させるための手段をさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、細胞内で目的のタンパク質を発現させるための手段をさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、細胞内でポリヌクレオチドを発現させるための手段をさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、本発明の方法を実施するための説明書をさらに含む。
【0231】
別の態様により、標的細胞に治療剤を送達する方法で使用するための、本発明の改変細胞、本発明の組成物、本発明のキメラ分子を発現する改変細胞、または本発明のポリヌクレオチドを発現する改変細胞が提供される。
【0232】
別の態様により、その必要のある対象を治療する方法において使用するために、本発明の改変細胞、本発明の組成物、本発明のキメラ分子を発現する改変細胞、または本発明のポリヌクレオチドを発現する改変細胞が提供される。
【0233】
いくつかの実施形態では、使用は、改変細胞または組成物を標的細胞または対象に投与することを含む、送達/治療の方法を含む。いくつかの実施形態では、使用は、本発明の方法を含む。いくつかの実施形態では、使用は、上記に記載の方法を含む。いくつかの実施形態では、使用は、改変細胞を提供することを含む。いくつかの実施形態では、使用は、対象から細胞を抽出することを含む。いくつかの実施形態では、使用は、細胞を改変することを含む。いくつかの実施形態では、使用は、細胞を対象に戻すことを含む。いくつかの実施形態では、使用は、遺伝子療法における使用である。
【0234】
本明細書で使用する「約」という用語は、値と組み合わせる場合、参照値の±10%を指す。例えば、長さ約1000ナノメートル(nm)は、長さ1000nm±100nmを指す。
【0235】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「ポリヌクレオチド」への言及は、複数のそのようなポリヌクレオチドを含み、「ポリペプチド」への言及は、当業者に知られている1つ以上のポリペプチドおよびその同等物への言及を含むなどである。任意の要素をいずれも除外するように請求項を作成することができることにさらに留意されたい。このように、この記述は、特許請求要素の説明、または「否定的な」限定の使用に関連して、「単独で(solely)」、「のみ(only)」などの排他的な用語を使用するための前提条件として役立つことを意図している。
【0236】
「A、B、およびCなどの少なくとも1つ」に類似した慣行が適用される場合、一般に、そのような構成は、当業者が慣行を理解するという意味で意図されている(例えば、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBを一緒に、AおよびCを一緒に、BおよびCを一緒に、ならびに/またはA、B、およびCを一緒に、などのシステムを含むが、これらに限定されない)。明細書、特許請求の範囲、または図面のいずれにおいても、2つ以上の代替用語を提示する事実上任意の選言的な単語および/または句は、用語のうちの1つ、用語のいずれか、または両方の用語を含む可能性を考慮するように理解されるべきであることは、当業者によってさらに理解されるであろう。例えば、「AまたはB」という句は、「A」もしくは「B」または「AおよびB」の可能性を含むと理解されよう。
【0237】
明確にするために、別個の実施形態の文脈で記載される本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供され得ることが理解される。逆に言えば、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で記載されている本発明の様々な特徴は、別々に、または任意の好適な下位組み合わせで提供されてもよい。本発明に関する実施形態のすべての組み合わせは、本発明に具体的に包含され、あらゆる組み合わせが個々に明示的に開示されているかのように、本明細書に開示されている。さらに、様々な実施形態およびその要素のすべての下位組み合わせもまた、本発明によって具体的に包含され、このような下位組み合わせのすべてが、個別かつ明示的に本明細書に開示されているかのように、本明細書に開示される。
【0238】
本発明のさらなる目的、利点、および新規特徴は、限定することを意図しない以下の実施例を検討することにより、当業者に明らかになるであろう。加えて、上記で説明され、以下の特許請求の範囲で請求される本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、以下の実施例において、実験的裏付けが見出される。
【0239】
上記で説明され、以下の特許請求の範囲で請求される本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、以下の実施例において、実験的裏付けが見出される。
【0240】
実施例
一般に、本明細書で使用される命名法および本発明で利用される実験手順には、分子、生化学、微生物学および組換えDNA技術が含まれる。このような技術は、文献で詳細に説明されている。例えば、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」Sambrook et al.,(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」Volumes I-III Ausubel,RM,ed.(1994);Ausubel et al.,「Current Protocols in Molecular Biology」,John Wiley and Sons,Baltimore,Maryland(1989);Perbal,「A Practical Guide to Molecular Cloning」,John Wiley&Sons,New York(1988);Watson et al.,「Recombinant DNA」,Scientific American Books,New York;Birren et al.(編)「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」1-4巻,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(1998);以下に記載の方法米国特許第4,666,828号;同第4,683,202号;同第4,801,531号;同第5,192,659号および同第5,272,057号;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」,Volumes I-III Cellis,J.E.,編(1994);「Culture of Animal Cells - A Manual of Basic Technique」Freshney,Wiley-Liss,N.Y.(1994),Third Edition;「Current Protocols in Immunology」I-III巻 Coligan J.E.,編(1994);Stites et al.(編),「Basic and Clinical Immunology」(8th Edition),Appleton&Lange,Norwalk,CT(1994);Mishell and Shiigi(編),「Strategies for Protein Purification and Characterization - A Laboratory Course Manual」CSHL Press(1996);これらはすべて参照により組み込まれる。他の一般的な参考資料は、本明細書に提供する。
【0241】
材料及び方法
CD8 T細胞の生産および維持:末梢血単核細胞(PBMC)は、Ficoll-Paqueを使用した密度勾配遠心分離によって、バフィーコートから単離させた。PBMC細胞を収集し、予熱したRPMI 1640培地(BI、カタログ番号01-100-1A)に入れ、次いでカウントし、凍結させた。凍結保存用バイアルあたり、2000万個の細胞を凍結した。
【0242】
5PBMCバイアル(1億個の細胞)を解凍し、50ng/mlの抗CD3抗体と300U/mlのIL2を添加した完全培地1mlあたり200万個の細胞の密度で播種した。細胞を5日間培養中で維持した。培養中、各培地添加物に100U/mlのIL2を添加した。
【0243】
CD8陽性細胞は、CD8単離キット(Milteny #130-096-495)を使用したネガティブセレクションによって単離した。CD8細胞を、100U/mlのIL2を含むcRPMI培地に100万細胞/mlの密度で播種した。培養6~10日目の細胞を実験に使用した。
【0244】
細胞株培養:YTS、P815、およびK562細胞株を、10%ウシ胎児血清、1mMピルビン酸ナトリウム、4mM L-グルタミン、1%ペニシリン-ストレプトマイシン、および0.1mM MEMイーグル非必須アミノ酸を添加したRPMI培地で維持した。
【0245】
MCF-7細胞を、10%ウシ胎児血清、1mMピルビン酸ナトリウム、2mM L-グルタミン、1%ペニシリン-ストレプトマイシン、0.1mMMEMイーグル非必須アミノ酸、1.5g/L炭酸水素ナトリウム、および0.01mg/mlインスリンを添加したMEM-アルファ培地で維持した。MelA2-およびMelA2+は、10%ウシ胎児血清、1mMピルビン酸ナトリウム、2mML-グルタミン、1%ペニシリン-ストレプトマイシン、0.1mMMEMイーグル非必須アミノ酸、1.5g/Lを添加したDMEM培地で生育させた。
【0246】
エレクトロポレーション(EP):各エレクトロポレーションにおいて、1~8×10の細胞を回収し、Optimem(Thermofisher)で3回洗浄して培地を交換した。細胞をエッペンドルフチューブに10×10細胞/mlの濃度で入れた。10細胞あたり3~10μgのインサート(DNAプラスミド、mRNA、siRNAまたはCAS9+sgRNA複合体(RNP))を添加した。模擬対照のために、細胞をインサートなしでエレクトロポレートした。エレクトロポレーションは、AmaxaNucleofector(Lonza)またはNepa21遺伝子エレクトロポレーター(NepaGene)のいずれかを使用して行った。エレクトロポレーションの前に、細胞をAmaxa(Lonza)用の特定のエレクトロポレーションバッファまたはNepa21用のOptimem(Thermofisher)のいずれかに再懸濁させた。細胞およびインサートを、Nepa21用の2mmエレクトロポレーションキュベットおよびAmaxa用のセルプロジェクトキュベット(Lonza)に入れた。Nepa21(NepaGene Unit)によるエレクトロポレーションは、2.5msの225~250Vパルス長を使用して実施した。Amaxaを使用したエレクトロポレーションは、デバイスによって定義された細胞プロジェクト固有の条件を使用して実行した。
【0247】
実施完了後、400μlの予熱したRPMI培地をキュベットに加え、20~30分回復させるために、細胞をキュベットに残存させた。細胞をキュベットから24または6ウェルプレートに、10細胞/mlで移した。
【0248】
実験用に使用する前に、細胞を2時間から3日間、培養中で維持した。
【0249】
細胞のトランスフェクションは、製造業者の指示に従って行った。簡潔に言えば、トランスフェクションの前日に、300K細胞を6ウェルプレートに播種した。翌日、Lipofectamin3000試薬(ThermoFischer カタログ#L3000015)と一緒に、2μgのDNAを用いて脂質ナノ粒子混合物を調製し、穏やかに滴下して細胞に適用した。
【0250】
移入アッセイ:0.5~1×10K562、P815、またはMelA2+/-標的細胞を、製造業者の指示(Biolegendカタログ#425101)に従って、最終濃度1.6μMのTag-itで標識するか、GFPまたは遺伝子標的化sgRNAもしくはPNAレポーター系でトランスフェクトし、96ウェルU字型プレートに播種した。1~6×10のT、YTS、またはK562エフェクター細胞にCas9-sgRNARNP複合体をロードするか、またはグランザイム-Cherry、グランザイム-Cas9、グランザイム-メガヌクレアーゼ、またはグランザイム-メガヌクレアーゼ-GFP融合構築物を発現させ、標的細胞と一緒に培養する。細胞を37℃で2~16時間共培養した。遺伝子編集タンパク質を標的細胞に導入した結果として発生した特定の遺伝子編集イベントについて、フローサイトメトリー、蛍光顕微鏡、またはその後の対象遺伝子のゲノム配列分析によって、融合タンパク質またはRNPの移入をモニターした。リダイレクト移入アッセイのために、P815標的細胞を室温で、2μg/mlのOKT-3抗CD3抗体(Biolegend cat# BLG-317326)を含むPBSで1時間プレコートし、PBSで洗浄し、次いで、標的細胞と共培養した。エフェクター細胞との共培養の前に、標的細胞を汎カスパーゼ阻害剤Z-VAD-FMK(R&DSystemsカタログ番号FMK001)で、50μMで2時間処理し、その濃度をエフェクター細胞の添加後も維持し、細胞選別処置を行った。
【0251】
FACS分析のための細胞染色:共培養後、細胞の生存率について、Fixable Viability Dye eFluor(商標)ブルー450(ThermoFisherカタログ番号65-0863-18)または近赤外633/635(ThermoFisherカタログ番号L10119)を使用して染色した。青色および近赤外生存率色素、Fixable Viability Dyee Fluor(商標)450および633/635染色は、室温で100マイクロリットルのU字型96ウェルプレートで実施した。サンプルの取得は、以下のデバイスで行った:5レーザーFortesaセルアナライザー(BioRad)、MacsQuant(Milteny)、またはBD FACSAria IIIセルソーター。生存率色素の測定に加えて、細胞は、GFP、PNA RFP、およびmCherryシグナルについてもモニターした。蛍光分析の前に、前方側方散乱ゲートは、各細胞型についてそれ自体で決定された各細胞型固有の散乱パターンに従って最初に配置した。mCherryシグナル解析では、GFP発現またはTag-it標識に基づいて、標的細胞を選択した。PNAレポーター系を発現する細胞を分析するために、GFP発現は、RFP発現についてゲーティングした細胞において判定した。抗Crispr/Cas9 Alexa Fluor 488(Abcam cat#ab191468)および抗グランザイムB Alexa Fluor 647(Biolegendカタログ#515406)を使用した細胞内染色は、製造業者の指示に従って、細胞内Cytofix(Biolegendカタログ#420801)バッファおよびPerm Wash(Biolegendカタログ#421002)を用いて行った。分析は、Flowjo(Becton Dickenson)またはFCS Express(DeNovo)ソフトウェアを使用して実施した。セルソーティングでは、Tag-itまたはRFPシグナルの2つの対数差に基づいて、標的細胞集団を単離した。その後、T細胞またはYTS細胞との共培養後に選別された標的細胞に、最終濃度50μMの汎カスパーゼ阻害剤Z-VAD-FMK(R&D Systemsカタログ#FMK001)および濃度を増加させた2%ペニシリン-ストレプトマイシンを添加した。蛍光顕微鏡:GFP、RFP、またはmCherry発現細胞の画像は、ObserverZ1(Zeiss)蛍光顕微鏡およびAxiovisionソフトウェア(Zeiss)を使用して、露光範囲2~200ミリ秒で得た。
【0252】
グランザイムノックダウン:PBMCは、前述のとおり単離した。活性化されたT細胞は、HLA-2バックグラウンドで黒色腫細胞に対して操作された抗原特異的TCRを運ぶレトロウイルスにより形質導入した。2日後、形質導入されたT細胞を収集し、6ウェルプレートに3回播種した。
【0253】
次に、GZMB-CAS9融合タンパク質および内因性グランザイムBに対するsiRNAを用いて、細胞をエレクトロポレートした。グランザイムBsiRNAは、内因的に発現したグランザイムBの3’UTRを標的とするように設計した。siRNAは、グランザイムBのオープンリーディングフレームのみを含むグランザイムB-Cas9融合mRNAを認識しない。siGzmB-1およびsiGzmB-2(AxoLab,Germany)の2つのsiRNAを設計し、合成した。siRNA活性を評価するために、T細胞に、300pmolのsiGzmB-1またはsiGzmB-2のいずれかをエレクトロポレートし、グランザイムB抗体およびFACS分析を使用して、グランザイムBタンパク質レベルについて試験を行った。
siGzmB‐1センス鎖:5’g*g*AgCcAaGuCcAgAuUuA-3’(配列番号45)アンチセンス鎖5’-U*A*aAuCuGgAcUuGgCuCc*u*u-3’(配列番号46)siGzmB‐2センス鎖5’-c*g*CuGuAaUgAaAcAcCuU-3’(配列番号:47)アンチセンス鎖5’-A*A*gGuGuUuCaUuAcAgCg*u*u-3’(配列番号:48)小文字のヌクレオチドは、2’-O-メチル残基を表す。大文字のヌクレオチドは、2’-フルオロ残基を示す。「*」は、ホスホロチオエート主鎖の改変を示す。細胞は、空のベクターで模擬調製するか、hGZMB_crmCherryのみをエレクトロポレートするか、または発現プラスミドおよびsiRNAを二重にエレクトロポレートした。
【0254】
翌日、標的細胞を調製した。HLA-A2を発現するかまたは発現しないMART1発現黒色腫細胞株を使用した。両方の細胞株をCFSEで染色して、エフェクターT細胞と区別した。リンパ球細胞の各ウェルを2つに分割して複製プレートを作成し、2.5×10の標的細胞を各ウェルに加えた。細胞を3時間共培養し、フローサイトメトリーにより分析してcrmCherryの移入を測定した。
【0255】
RNA-タンパク質複合体の生成およびヌクレオフェクション:Cas9タンパク質(Alt-R Sp Cas9 Nuclease V3、IDT)またはCas9-GFP(CAS9GFPPRO、Sigma)を合成修飾sgRNAと混合した。最初の3つの5’および3’末端RNA残基に、2’-O-メチルおよび3’ホスホロチオエートヌクレオチド連結を有する、EMX1_1、Rosa26_1、GzmB_1、およびGzmB_2を、Synthegoから注文した。sgRNA配列および標的遺伝子については、表2を参照されたい。HBB1 sgRNAは、AxoLabに注文し、オリゴ全体c*u*u*GCC*C*Cf*Af*Cf*AfGGfGfCAGfUfAAgUUUUAGagcuagaaauagcaaGUUaAaAuAaggcuaGUccGUUAucAAc*u*u*g*a*a*a*a*a*gugG*ca*c*c*g*a*g*u*cg*g*u*g*c*u*u*u*u*uに沿って複数の改変を加えた。大文字は、非改変RNAを示す。小文字は、2’-O-メチル残基を示す。「f」は、2’-フルオロ残基を示す。「*」は、ホスホロチオエート骨格の改変を示す。RNAタンパク質の調製では、400~573pmolのCas9またはCas9-GFPを480~687pmolのsgRNA(sgRNA対Cas9タンパク質の比率を1.2~1.3に維持)と混合し、室温で10~20分間インキュベートした。RNA-タンパク質複合体および400~571pmolのエレクトロポレーションエンハンサー(IDT)を、エレクトロポレーションの直前に細胞に添加した。
【表2】
【0256】
RNA-タンパク質複合体移入アッセイ:10Tag-it標識標的細胞またはAbコーティング標的細胞(活性化用)を、96ウェルU型プレートに播種した。2時間のインキュベーション後、標的細胞を洗浄し、ヌクレオフェクション後の6×10エフェクター細胞(T、K562またはYTS細胞)を標的細胞に添加した。10μlのカスパーゼ-8阻害剤を最終濃度50μMで再度添加した。細胞を37℃で4時間共培養した。
【0257】
SDS Pageエレクトロポレーション用サンプルの調製:細胞をRIPAバッファで溶解した(細胞ペレット体積の20倍)。RIPAバッファは、150mM塩化ナトリウム、1.0%Igepal CA-630(NP-40)、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、および0.1%SDSを含む50mM Tris-HCl、pH8.0であった。細胞を4℃で30分間溶解し、続いて14000RPMで10分間遠心分離した。上清を新しいエッペンドルフチューブに移し、タンパク質濃度をブラッドフォード試薬で測定した。タンパク質濃度を内挿するために、OD値をBSA量とODの参照グラフにプロットした。
【0258】
サンプルを4X Laemmli Sample Buffer(BioRad、カタログ番号1610747)に1:4で混合し、70℃で10分間加熱した。サンプルは、Criterion(商標)TGX Stain-Free Precast Midi Gelsで泳動した。泳動条件は、Tris/グリシン/SDS実施バッファ(Bioradカタログ#161-0772)において、50分間、200Vであった。Trans-Blot TURBO (BioRad Cat#1704159)を使用して、2.5Aおよび25Vで10分間、ゲルを転写した。
【0259】
イムノブロッティング:ブロッキングは、3% BSAを含むTBST(Cell Signaling Cat#9997S)(0.1% Tween20)を用いて、室温(RT)で1時間行った。使用した一次抗体は、ウサギ抗Cas9(Clontech Cat# 632607)であった。これをブロッキング溶液で1:2500に希釈し、室温で1.5時間インキュベートした。二次抗体は、ヤギ抗ウサギHRP(Jackson Cat#115-035-062)であった。これをブロッキング溶液で1:10000に希釈して、室温で1時間インキュベートした。ローディングの均一性を確認するために、ブロットをポンソーレッドで染色した。
【0260】
実施例1:初代T細胞およびNK細胞株YTSは、グランザイム-Cherryタンパク質を標的細胞に効率的に移入させる
目的のタンパク質を標的細胞に移入させるグランザイムB融合タンパク質の能力の試験を行うために、グランザイムB-mCherry融合タンパク質を作製した。mCherryを使用した(配列番号1)。最初の11のアミノ酸、MVSKGEEDNMA(配列番号4)は、可能性のある切断部位のために除去された。これにより、ここでも蛍光性短縮タンパク質crmCherry(配列番号3)が産生された。不活性なヒトグランザイムB(G19A/E20A)を、間にグリシン-セリンリンカー(配列番号11)を用いて、crmCherryのN末端に配置した。この融合タンパク質をコードする核酸配列をpMAX発現ベクターに挿入して、pMAX-hGZMB-crmCherryベクター(配列番号29)を産生した(図1)。
【0261】
グランザイムB_crmCherry融合タンパク質の細胞内局在プロファイルを評価するために、健康なドナーから単離させた初代ヒトCD8陽性T細胞中で、pMAX-hGZMB-crmCherryベクターを発現させた。エレクトロポレートした細胞には、Cherry蛍光が確認された。
【0262】
ヒトK562慢性骨髄性白血病細胞(ヒト赤白血病細胞株)を標的細胞として使用した。細胞には、pMaxGFPベクターをエレクトロポレートし、GFP蛍光が標的細胞中で確認された。初代T細胞もGFP陰性であることが確認され、K562細胞は、Cherry陰性であることが確認された。
【0263】
エレクトロポレートした初代T細胞を、エレクトロポレートしたK562細胞とエフェクター対標的比6:1で、4時間共培養した。共培養後、細胞をフローサイトメトリーで分析した。K562細胞は、前方散乱および側方散乱のみを使用して、標的細胞集団をゲーティングすることにより分離できた(図2A)。さらに確実にK562細胞のみが分析されるようにするために、この集団内でGFP陽性細胞を選択した(図2B)。Cherryの発現についてこのGFP陽性集団を分析した場合に、高度にCherry陽性であることを見出した(図2C)。実際、GFP陽性K562細胞の90%以上(94.8%)がCherry陽性でもあることも見出した。空のベクターでエレクトロポレートした対照細胞を共培養に使用した場合、K562細胞は、予測どおり100%Cherry陰性であった(図2C)。
【0264】
これらの実験は、初代T細胞の代わりに、YTS NK細胞株の細胞を用いて繰り返した。共培養後、K562細胞は、最初に前方散乱および側方散乱に基づいて、次にGFP発現に基づいて再びゲーティングした。標的癌細胞は、高度にCherry陽性であることがここでも判明し、細胞の88.1%がCherryを発現することが判明した(図2D)。これらの結果をまとめると、T細胞およびNK細胞が、グランザイム融合タンパク質を標的細胞に移入できる効率が高いことが示されている。重要なことに、crmCherry発現プラスミドのみのコード領域のmRNA IVT産物(グランザイムへの融合なし)を、GZMB-KO YTS細胞中で発現させた場合、Tag-it陽性K562標的細胞へのCherryの移入は、観察されなかった(図2E)。
【0265】
実施例2:グランザイムBノックダウンおよび/またはノックアウトは、グランザイムB-crmCherryの標的細胞への移入を増強する
外因性グランザイムB融合タンパク質の移入に対する内因性グランザイムノックダウンの効果を試験するために、内因性グランザイムBのみに対するsiRNA分子を利用した(材料および方法を参照されたい)。初代ヒトT細胞を単離し、MART1に応答し、HLA-A2に制限される抗原特異的に操作されたTCRを保有しているレトロウイルスベクターで形質導入した。これらの細胞は、内因性グランザイムBのsiRNAノックダウンの有無にかかわらず、hGZMB_crmCherry(図1のプラスミド1_3)をコードするmRNA IVT産物でもエレクトロポレートした。
【0266】
このアッセイで使用される標的黒色腫細胞は、HLA-A2および表面黒色腫抗原MART1、またはMART1のみを発現し、HLA-A2は発現しない。これらの標的細胞は、CFSEで染色されており、T細胞と容易に区別できる。T細胞を標的黒色腫細胞と4時間共培養し、CFSE陽性細胞中でのCherryの発現を評価した。HLA-A2発現黒色腫細胞では、内因性グランザイムBをノックダウンさせたT細胞は、非ノックダウン細胞と共培養させた場合と比較して、mCherry蛍光細胞の産生を25%増加させた。
【0267】
さらに、内因性グランザイムBがノックアウトされた細胞株を生成した。YTS細胞は、CRISPRノックアウトのためのRNA-タンパク質複合体を用いて、Nepa遺伝子エレクトロポレーター(200ボルト、5ms)によってエレクトロポレートした。Alt-R(商標)S.p.Cas9 Nuclease V3(IDT)をGzmB_1(配列番号51)またはGzmB_2(配列番号52)合成シングルガイドRNA(sgRNA、Synthego)と一緒に、グランザイムBに対してインキュベートし、安定したRNA-タンパク質複合体を産生した。YTS細胞には、sgRNAGzmB_1のみ、GzmB_2のみを含むRNA-タンパク質複合体、または両方の複合体を比率1:1で混合したもののいずれかを、エレクトロポレートした。これらの複合体をYTS細胞にエレクトロポレートし、細胞を3日間培養して回復させた。YTS細胞におけるグランザイムBの発現は、培養10日後に測定した。図3Aに示すように、RNAタンパク質GzmB_1がエレクトロポレートされたYTS細胞は、親YTS細胞と比較して、グランザイムB発現のほぼ95%の減少を示した。RNA-タンパク質GzmB_2またはGzmB_1とGzmB_2との混合物をエレクトロポレートしたYTS細胞は、グランザイムB減少率が有意に低いことを示した(データは示していない)。
【0268】
ノックアウト細胞が実際に細胞傷害効果を低下させたことを確認するために、GZMB-KO YTS細胞をK562標的細胞と24時間または48時間共培養した。24時間の共培養では、未処理細胞に典型的な前方散乱内でゲーティングされたK562細胞の割合は、GZMB KO細胞と共培養されたK562細胞において、非KO YTS細胞と共培養されたものと比較して有意に高かった。これは、非ノックアウト細胞と共培養された細胞中において、平均FCSが高いことを確認できる(図3B)。グランザイムBを発現する親YTSと共培養されたK562のサイズの有意な増加は、パーフォリン-グランザイム細胞死経路の結果として誘導される典型的な浸透圧不安定性であり、ナイーブ未処理K562細胞と同様のサイズおよび粒度を示す、GZMB KO YTS細胞と共培養されたK562には見られない。
【0269】
GZMB-KO YTS細胞の細胞傷害効果の低下をさらに検証するために、K562細胞の生存率について、親またはKO YTS NK細胞との48時間の共培養後に試験した。細胞は、本明細書で上述したように、生存染料(ThermoFisher)で染色した。図3Dに見られるように、GZMB-KO YTS細胞と培養されたK562細胞は、親YTS細胞と共に培養されたK562(60%)と比較して、死細胞染色の減少(36%)を示す。したがって、GZMB-KO YTS細胞株は、親YTS細胞株と比較して、細胞傷害性/溶解活性の低下を示した。
【0270】
この同じ共培養系を使用して、mCherryの移入を確認した。GZMB-KO細胞および親YTS細胞を、crmCherryに融合したグランザイムを発現するプラスミド(図1のプラスミド1_3)でトランスフェクトした。次に、前述のとおり(実施例1)、それらをK562細胞と4時間共培養し、標的細胞におけるmCherry発現を測定した。図3Cで見られるように、KO細胞は、mCherryを効率よく移入するのみでなく、実際に移入効率も増加し(KOでは陰性細胞よりもMFI比が4.6倍増加するのに対しWTグランザイムでは2.8倍)、ここでも、非細胞傷害性細胞、特にGZMB-KO細胞を移入に使用することの優位性を証明している。
【0271】
これらの結果をまとめると、強力な送達ビヒクルとして、細胞傷害性が低下したエフェクター細胞が示される。
【0272】
実施例3:Cas9に融合したグランザイムBの標的細胞への移入
不活性なグランザイムBにより、mCherryを標的細胞に首尾よく移入できることが確立されたので、次に、この方法で顕著に大きいタンパク質が移入され、標的細胞内に酵素活性を保持できるかについて、試験を行った。mCherryは、わずか約27kDaの分子量を有し、crmCherryは、さらに小さく、わずかに約25.5kDaの分子量を有する。対照的に、ゲノム編集タンパク質であるCas9は、163kDaを超える分子量を有する。第2のゲノム編集タンパク質である、PCSK9に特異的なメガヌクレアーゼも調査した。メガヌクレアーゼは、約37kDaの分子量を有する。
【0273】
完全なCas9コード配列は、pMax発現プラスミドにおいて、グランザイムBの後に、それらの間のリンカー(GSリンカー)と共に配置した(図1を参照)。Cas9には、N末端HAタグも含めた。プラスミドを受け入れた細胞を容易に追跡するために、crmCherryをCas9の下流に挿入した。P2A自己切断ペプチドは、Cas9とcrmCherryとの間に配置した。これにより、結果として、効率よくエレクトロポレートされた細胞中で、Cherryが発現するが、Cherryは、グランザイムから離されるため、顆粒球小胞に到達すること、または移入されることは期待されない。実際に、pMAX-hGZMB_HA-Cas9_P2A_crmCherryベクターをHEK293細胞で発現させた場合、Cherryは、crmCherryを単独で発現させた場合に観察されたものと同様の散在性細胞質染色を有していた。対照的に、Cas9は、グランザイム_crmCherryについて観察されたものと同様の小胞への侵入を示す点状染色を示した(データは示していない)。メガヌクレアーゼもグランザイムBに連結し、OLLASフレキシブルリンカーを用いた。メガヌクレアーゼは、Cas9よりもはるかに小さいため、GFPは、P2Aペプチドを必要とせずに、メガヌクレアーゼ自体に直接結合され得る(図1を参照)。
【0274】
新しい融合タンパク質がDNA編集活性を保持していることを確認するために、レポーター系(PNA Bio)を使用した。グランザイムBは、十分に大きいタンパク質であるため、特にリンカーが切断可能でない場合、編集タンパク質の機能を損ない得るという懸念がある。PNAレポーター系は、特定の編集標的化配列によって連結されている2つの蛍光タンパク質(RFPおよびGFP)をコードする遺伝子を運ぶ。RFPおよびGFPコード配列は、赤を発現するように設計されており、緑の蛍光タンパク質はフレーム外に配置されているため発現しない。系には、2つのGFPコード配列が含まれるが、1つは、RFPから-1フレームシフトに配置され、もう1つは、RFPから-2フレームシフトに配置される。編集ヌクレアーゼが発現したときに、RFPとGFP発現配列との間の編集標的部位に、二本鎖の破断が誘導され、これにより、フレームシフト突然変異およびGFPの発現が生じる。細胞内のRFPによって正規化されたGFP発現の後に、編集ヌクレアーゼが機能的に切断しているか、およびどの程度切断しているかが示される。融合されたCas9の編集効率を評価するために、K562細胞を、Nepa遺伝子エレクトロポレーター(250ボルト2.5秒)によって、EMX1_1-PNAレポーター系プラスミド(PNABio)5~8μg、およびEMX1_1ガイド発現プラスミド(配列番号49)2μgを、エレクトロポレートした。ERシグナルペプチド(ERSP)を含まないGZMB-CAS9融合タンパク質を発現させ(2μg)、陽性対照として、Cas9発現プラスミド(青色蛍光タンパク質に融合したCas9 2μg)も発現させた。ERSPの除去は、K562細胞内での融合タンパク質の細胞質発現および核局在化を確実にするために必要であった。同じ実験を、ERSPを含まないメガヌクレアーゼ融合タンパク質の発現(2μg)およびPCSK9-PNAレポーター系プラスミド(5μg)を用いて実施した。メガヌクレアーゼ発現プラスミドを陽性対照として使用した(2μg)。3日間の培養後、編集効率は、FACS分析によってRFPシグナルに対して正規化されたGFPシグナルを追跡することによって評価した。結果を表3に示す。CAS9またはメガヌクレアーゼを含む融合タンパク質は、両方ともその機能を保持していた。
【表3】
【0275】
次に、内因性ゲノムを編集する融合タンパク質の能力の試験を行った。PNA系では、標的プラスミドの多くのコピーが特定の細胞中に存在する可能性があり、編集の可能性がより高くなる。しかし、内因性二倍体ゲノムには、標的配列のコピーが2つのみ存在する。融合タンパク質が、内因性標的を切断する能力の試験を行うために、同様の実験をPNAプラスミドを含まない場合にのみ実施した。対照プラスミドおよび試験プラスミドは、K562細胞で発現させた。sgRNAは、CAS9プラスミドと共に発現した。3日間の培養後、QuickExtract(商標)DNA抽出溶液(Lucigen)を使用して、ゲノムDNAを抽出した。編集標的に隣接する領域をPCR(Q5 DNAポリメラーゼ、NEB)によって増幅させ、産物を次世代シーケンシングに送信した。使用したプライマーを表5に示す。編集イベントの数は、リードの総数に対して計算し、編集効率は、FACS分析によって決定された蛍光細胞(インサート陽性イベントを示す)に対して正規化した。ゲノム編集の結果を表4にまとめる。CAS9またはメガヌクレアーゼを含む融合タンパク質は、両方ともゲノム編集機能を保持していた。
【表4】
【表5】
【0276】
ここでは、融合タンパク質が依然として機能的に編集を誘導できることが確認されたので、次に、グランザイムBおよびパーフォリン発現細胞における融合タンパク質の発現プロファイルを評価した。pMAX-hGZMB_HA-Cas9_P2A_crmCherryベクターを初代CD8T細胞にエレクトロポレートした。エレクトロポレーションの48時間後、細胞を抗グランザイムB抗体および抗Cas9で染色し、crmCherryと共に撮像した。4つの代表的な細胞を示す図4Aで見ることができるように、Cas9およびグランザイムBは小胞内に共局在する一方で、mCherryは、拡散した細胞質ゾルパターンを示した。これは、大きいサイズであっても、Cas9が、リンパ球内の溶解性顆粒に進入できることを示している。
【0277】
ここでは、グランザイムBおよびパーフォリンを発現するエフェクター細胞中で、融合タンパク質が、溶解性顆粒の特徴的な発現プロファイルで発現することが確認されたので、次に、グランザイムBに融合したCAS9およびメガヌクレアーゼのエフェクターから標的細胞への移入を評価した。1×10のYTS細胞に、グランザイムB-CAS9をコードする10μgのmRNA IVT産物を、225V、パルス長2.5msでNepa遺伝子ユニットを用いて、エレクトロポレートした。融合タンパク質発現細胞を標的細胞(K562)とエフェクター対標的細胞比1:6で4時間共培養し、Cas9の移入をモニターした。標的細胞は、Tag-it標識されているため、Tag-it蛍光によってNK細胞から容易に分離することができた(図4B)。FACS Aria III FACSソーターを使用して、Tag-it陽性細胞の分離後、選別された細胞を溶解し、ウエスタンブロットにかけた。これらの細胞におけるCas9タンパク質の発現は、抗Cas9抗体を用いたブロットハイブリダイゼーションによって決定した。図4Cに見ることができるように、CAS9タンパク質は、K562細胞中で検出可能であり、これは、このような大きなタンパク質でさえ、溶解性顆粒によって効果的に移入し得ることを示している。特に、リンパ球自体で、2つのバンドが検出される。これらは、切断前のグランザイム-CAS9融合タンパク質(予測サイズ190kDa)および既に切断されたCAS9(予測サイズ160kDa)である。溶解小胞において切断が進行しているため、両方のタンパク質が検出される。標的細胞では、この時点までに、CAS9がグランザイムから完全に分離されているため、下のバンドのみが検出される。
【0278】
次に、YTSノックアウトエフェクター細胞(上記のように生成)を使用して、グランザイム-CAS9融合タンパク質のK562標的細胞への移入を評価した。ノックアウトエフェクター細胞では、内因性グランザイムBが産生されないため、Tag-it陽性K562標的細胞中で、Alexa Fluor647標識抗グランザイムB抗体による細胞内染色を使用して、グランザイムBのFACS検出によって、標的細胞への融合タンパク質の移入を評価した。図4Dに見られるように、グランザイムBは、GZMB-CAS9発現GZMB-KO YTSと共に培養したK562細胞には明らかに存在したが、モックトランスフェクトGZMB-KO YTS細胞と共に培養したK562細胞には存在しなかった。これは、GZMB-KO YTSエフェクター細胞が、GZMB-CAS9融合タンパク質を移入できることを明確に示している。
【0279】
実施例4:グランザイム媒介移入後の遺伝子編集
グランザイムの融合によって移入されたCAS9およびメガヌクレアーゼが、標的細胞においてゲノム編集を行う能力を評価した。CD8細胞は、前述のとおり、単離し、活性化させた。CD8細胞およびYTS細胞へのグランザイム-Cas9 mRNAのエレクトロポレーションは、前述のとおり実施した。K562および黒色腫標的細胞を前述のとおり共培養し、EMX_1 sgRNAをコードするプラスミドおよび切断標的領域にEMX配列を有するPNA-レポータープラスミドを用いて、エレクトロポレートした。標的細胞は、パルス長2.5ms、250Vで、NepaGeneユニットを用いて、エレクトロポレートした。細胞を回復させ、10の細胞を、U字型プレートに播種した。これに、グランザイム-Cas9またはグランザイム-メガヌクレアーゼを含む6×10のT細胞またはYTS細胞を添加した。インサートなくエレクトロポレートしたT細胞またはYTS細胞を、対照として使用した。細胞を4時間共培養した。RFP陽性標的細胞をFACSAria III FACSソーターによってRFP陰性エフェクター細胞から分離し、RFP陽性集団内のGFPを遺伝子編集イベントのエビデンスとしてモニターした。図5A~Bで見ることができるように、RFP陽性細胞におけるGFPの発現によって証明されるように、標的細胞において切断が生じた。したがって、グランザイムBとの融合によって、CAS9をエフェクターから標的細胞に移入させることができるのみでなく、CAS9が標的細胞中で完全に機能し、編集を誘導できることは明白である。同様の結果が、T細胞(図5B)およびYTS細胞(図5A)を用いて、標的K562および黒色腫細胞の両方で得られた。
【0280】
YTS細胞によって移入させたグランザイム-Cas9の編集効率も、グランザイムとCAS9との間に酸性pHで切断されることが予測されるリンカー配列(配列番号2)を有するGZMB-CAS9融合タンパク質を使用して評価した(プラスミド1_6、配列番号33)。この構築物のコード領域のmRNA IVT産物を、前述のとおりYTS細胞にエレクトロポレートした。切断標的領域にEMX配列を有するPNA-レポータープラスミドおよびEMX_1 sgRNAをコードするプラスミドを発現するK562標的細胞内のCAS9の編集活性の試験を行った。GZMB-CAS9を発現するエフェクター細胞を、上記のK562標的細胞と共培養した。4時間の共培養後、本明細書で上述したようにRFPシグナルに基づいて標的細胞を選別し、3日間生育させた。編集効率は、FACS分析によってRFPシグナルに対して正規化されたGFPシグナルを追跡することによって評価した。図5Cに示すとおり、GZMB-CAS9発現YTSエフェクター細胞と共に培養されたK562標的細胞において、モックトランスフェクトエフェクターYTS細胞と共に培養されたK562標的細胞と比較して、GFP蛍光の実質的に3倍のシフトが観察される。これは、YTS NK細胞によってK562標的細胞に移入させたCAS9が、溶解性顆粒の酸性pHにおいてGZMBから分離された後でも編集機能を保持していることを示している。
【0281】
YTS細胞によって移入させたグランザイム-メガヌクレアーゼの編集効率は、GZMB-メガヌクレアーゼ融合タンパク質(プラスミド2_4;配列番号69)を用いて評価した。この構築物のコード領域のmRNA IVT産物を、前述のとおりYTS細胞にエレクトロポレートした。切断標的領域にPCSK9配列を有するPNA-レポータープラスミドを発現する、K562標的細胞内のPCSK9-メガヌクレアーゼの編集能力の試験を行った。エフェクター細胞と標的細胞との間の共培養およびRFP陽性標的細胞の選別は、本明細書で上述したように行った。編集効率は、FACS分析によってRFPシグナルに対して正規化されたGFPシグナルを追跡することによって、3日後に評価した。図5Dに示すとおり、モックトランスフェクトエフェクターYTS細胞と共に培養されたK562標的細胞と比較して、GZMB-メガヌクレアーゼ発現YTSエフェクター細胞と共に培養されたK562標的細胞において、GFP蛍光の実質的なシフトが観察される。これは、GZMB-メガヌクレアーゼ融合タンパク質が、YTS NK細胞によってK562標的細胞に移入され、その編集機能を保持していることを示している。
【0282】
YTS細胞によって移入させたグランザイム-Cas9の編集効率も、グランザイムとCAS9との間に酸性pHで切断されることが予測されるリンカー配列(配列番号2)を有するGZMB-CAS9融合タンパク質を使用して評価した(プラスミド1_6、配列番号33)。この構築物のコード領域のmRNA IVT産物を、前述のとおりYTS細胞にエレクトロポレートした。切断標的領域におけるルシフェラーゼ配列およびルシフェラーゼ_sgRNAを有するPNA-レポータープラスミドをコードするプラスミドを発現するK562標的細胞内のCAS9の編集活性の試験を行った(配列番号75)。上記のグランザイムB-CAS9を発現するエフェクター細胞を、上記のK562標的細胞と共培養した。細胞を共培養で48時間生育させた後、DNA抽出およびルシフェラーゼsgRNAの認識部位の隣接領域におけるPCR増幅によって、編集効率を評価した。YTSの媒介によるグランザイムB-CAS9の移入により、K562細胞中で15.7%の編集が行われた。これは、YTS NK細胞によってK562標的細胞に移入させたCAS9が、溶解性顆粒の酸性pHで、GZMBから分離された後でも編集機能を保持していることを示している。
【0283】
外因性PNAプラスミドの編集を示したので、内因性ゲノムの編集の試験を行った。共培養におけるグランザイムB-CAS9融合タンパク質の移入によって媒介されるゲノム編集は、本明細書で上述したように行った。標的細胞には、mCherryに融合したEMX-1 sgRNAをコードするプラスミドをエレクトロポレートした。4時間の共培養後、mCherryシグナルに基づいて標的細胞を選別し、3日間のインキュベーション後、ゲノムDNAを抽出した。編集されたリードは、次世代シーケンシングによって定量化した。T細胞移入グランザイムB-CAS9融合タンパク質では、黒色腫細胞で2%、K562細胞で1.25%の編集が生じ、K562細胞へのYTS細胞移入では、生細胞および移入効率に対して正規化し、0.71%の編集が生じた。これは、グランザイム媒介移入によってゲノム編集タンパク質を受け取った標的細胞中で、内因性編集が可能であることを示している。
【0284】
グランザイムB媒介送達後、標的細胞のゲノム内で遺伝子編集を行なうPCSK9特異的メガヌクレアーゼの能力を評価した。プラスミド2_4からのグランザイム-メガヌクレアーゼのコード領域のmRNA IVT産物のYTS細胞へのトランスフェクションは、前述のとおり実施した。K562標的細胞は、本明細書で上述したようにTag-itで標識した。エフェクター細胞および標的細胞を4時間共培養した後、Tag-itシグナルに基づいてFACS Aria III FACSソーターによって標的細胞を選別した。選別した標的細胞をさらに3日間培養し、ゲノムDNAを抽出した。編集されたリードは、次世代シーケンシングによって定量化した。K562細胞へのGZMB-メガヌクレアーゼのYTS細胞移入により、生細胞および移入効率について正規化した後、1.4%のゲノム編集がもたらされた。これは、グランザイムの媒介によってゲノム編集タンパク質を受け取った標的細胞中で、内因性編集が可能であることを示している。
【0285】
実施例5:骨髄細胞は、ゲノム編集タンパク質を移入することができる
骨髄細胞もリンパ球と同様にパーフォリンおよびグランザイムを発現することが知られているが、溶解性顆粒を産生することはない。K562、慢性骨髄性白血病細胞株を実験モデルとして使用して、骨髄細胞がカーゴを首尾よく移入する能力の試験を行った。K562が強力な送達ビヒクルとして使用できるかを調べるために、最初に、K562細胞から黒色腫細胞への、グランザイムBに融合したcrmCherryの移入について、試験を行った。K562細胞には、上記のように、プラスミド1_3のコード領域のmRNA IVT産物をエレクトロポレートした。K562細胞およびTag-it標識黒色腫細胞を4時間共培養し、Tag-it陽性細胞内のmCherryシグナルをモニターした。図6Aに見ることができるように、Tag-it陽性の標的黒色腫細胞の約30%が、mCherry陽性として検出された。これは、骨髄細胞も、グランザイム媒介タンパク質移入が可能であることを明確に示している。
【0286】
次に、エフェクター細胞としてのK562によるメガヌクレアーゼの移入について、試験を行った。K562細胞には、メガヌクレアーゼおよびGFPに連結されたヒト突然変異グランザイムBをコードする5μgのプラスミド2_6(図1に示す)を、エレクトロポレートした。K562細胞を、Tag-itで染色した標的黒色腫細胞とインキュベートし、4時間共培養した。GFPは、Tag-it陽性細胞中で検出され(Tag-it陽性細胞の約30%)、これは、メガヌクレアーゼが首尾よく移入されたことを示している(図6B)。したがって、驚くべきことに、骨髄細胞もゲノム編集タンパク質を移入させる能力を有していた。
【0287】
グランザイムの融合によって移入されたCAS9およびメガヌクレアーゼが、標的細胞において編集を行う能力を評価した。K562細胞には、本明細書において上記のとおり、プラスミド2_4の配列をコードするグランザイム-PCSK9特異的メガヌクレアーゼmRNA IVT産物を、エレクトロポレートした。操作されたK562細胞を、本明細書で上述したようにリポフェクタミン3000を用いて、(メガヌクレアーゼ)切断標的領域内にPCSK9配列を有するPNAレポータープラスミドでトランスフェクトされた黒色腫標的細胞と共培養した。5×10個のトランスフェクトされた黒色腫標的細胞をU字型96ウェルプレートに播種した。これに、グランザイム-PCSK9メガヌクレアーゼを含む2×10K562細胞を加えた。インサートのないエレクトロポレートされたK562細胞も対照として使用した。細胞を4時間共培養した。FACSAria III FACSソーターによって、RFP陰性標的細胞をRFP陰性エフェクター細胞から分離した。選別された細胞を3日間培養した後、遺伝子編集イベントのエビデンスとしてRFP陽性集団中のGFPをモニターした。図6Cで見ることができるように、RFP陽性黒色腫標的細胞におけるGFPの発現によって証明されるように、標的細胞内で切断が生じた。したがって、グランザイムBとの融合によって、編集ヌクレアーゼを骨髄エフェクター細胞から標的細胞に移入させることができるのみでなく、ヌクレアーゼも完全に機能し、標的細胞中で編集を誘導できることは明白である。
【0288】
エフェクター細胞としてのK562によるグランザイムB媒介送達後に、黒色腫標的細胞のゲノムにおいて遺伝子編集を行うPCSK9特異的メガヌクレアーゼの能力を評価した。グランザイム-メガヌクレアーゼのコード領域のmRNA IVT産物(図1に記載のプラスミド2_4)のYTS細胞へのエレクトロポレーションは、前述のとおり行った。K562標的細胞は、本明細書で上述したようにTag-itで標識した。エフェクター細胞および標的細胞を4時間共培養した後、Tag-itシグナルに基づいてFACS Aria III FACSソーターによって標的細胞を選別した。選別した標的細胞をさらに3日間培養し、ゲノムDNAを抽出した。編集したリードは、次世代シーケンシングによって定量化した。黒色腫細胞へのGZMB-メガヌクレアーゼのK562細胞の移入により、生細胞および移入効率について正規化した後、2%のゲノム編集がもたらされた。これは、グランザイムの媒介によってゲノム編集タンパク質を受け取った標的細胞中で、内因性編集が可能であることを示している。
【0289】
実施例6:T細胞およびNK細胞は、標的細胞へのCAS9+gRNA複合体の移入を媒介する
グランザイムB媒介移入に加えて、リンパ球によるタンパク質-RNA複合体の直接移入の試験も行った。初代CD8陽性T細胞を、前述のとおり、単離し、活性化させた。Cas9-GFPをEMX1に対する合成シングルガイドRNA(sgRNA)とインキュベートして、安定したRNA-タンパク質複合体を産生した。この複合体は、Nepa21(NepaGene Unit)を225V、パルス長2.5msで用いて初代T細胞にエレクトロポレートした。短時間の回復培養後、T細胞におけるGFP発現を確認した(GFP陽性>90%)(図7A)。
【0290】
2つの異なる標的細胞:ヒトK562細胞およびマウスp815を以前と同様にCFSEで標識した。エレクトロポレートされたT細胞および標識された標的細胞は、以前と同じように4時間共培養した。共培養後、細胞を生存率色素(近赤外APC-Cy7LIVE/DEAD(商標)Fixable Near-IR Dead Cell Stain Kit、カタログ番号L10119)およびAlexa-Fluor421(Biolegend)に結合させた抗CD8で染色した。細胞は、フローサイトメトリー、およびImageStream(商標)X Mk II Imaging Flow Cytometer(Luminex)を使用した顕微鏡検査の両方によって分析した。
【0291】
p815細胞およびK562細胞はCD8について陰性であるため、エフェクター細胞および標的細胞は、CD8染色によって識別した(図7B)。CD8陰性細胞を調査したとき、それらの大部分がGFP陽性であることが判明し(図7C)、これは、Cas9-GFP融合タンパク質が標的細胞に首尾よく移入されたことを示している。細胞イメージングにより、CD8-/GFP+細胞の存在が確認された(図7D)。標的細胞内のGFPシグナルは分散しており、これは、タンパク質が細胞質に到達していることを示している。p815細胞およびK562細胞への移入についても同様の結果が見られた。結果を表6にまとめる。
【0292】
標的細胞としてYTS細胞エフェクター細胞およびK562またはヒトMCF7乳癌細胞を用いて、同じ実験を行った。YTS細胞はまた、高レベルのGFPを発現した(GFP陽性>50%)(図8A)。標的細胞は、Tag-it細胞生存率色素で染色され、Tag-it陽性であるために、YTS細胞と区別することができた(図8Bおよび8D)。次に、Tag-it陽性細胞をGFP発現について評価した。K562(図8C)およびMCF7細胞(図8E)の両方が、高度にGFP陽性であることが判明し、これは、非常に大きいRNA-タンパク質複合体でさえ、グランザイムBへの融合なく、移入できたことを示している。移入の結果を表6にまとめる。
【表6】
【0293】
RNPにはグランザイムタンパク質が含まれていなかったが、移入は、依然として、溶解性顆粒およびシナプス形成によって媒介されているという仮説を立てた。これは、エキソソームまたは他の細胞外小胞を細胞から単純に単離することができなかったことを意味する。これは、移入には、標的細胞の直接的な接触および認識が必要であるためである。この仮説を調べるために、YTS細胞にCAS9-GFPを形質導入し、14~16時間培養した後、細胞から培地を回収した。馴化培地を標的K562細胞および黒色腫細胞に添加し、一晩インキュベートした。K562(図8F)も黒色腫細胞(図8G)もGFP陽性にならないことが判明した。エフェクター細胞を標的K562細胞(図8H)および黒色腫細胞(図8I)と直接共培養したときに、標的細胞は、高度にGFP陽性となり、タンパク質の移入を示した。これは、エキソソームのような分泌された小胞は、この非グランザイム媒介移入の原因ではなく、むしろ直接的な細胞接触が必要であることを示している。
【0294】
ここでは、CAS9-sgRNA複合体がエフェクターから標的細胞に移入されることが確認されたため、RNA-タンパク質複合体が、標的細胞中で遺伝子編集を行う能力も評価した。YTSおよびT細胞には、本明細書で上述したRNA-タンパク質複合体を、エレクトロポレートした。標的K562細胞および黒色腫細胞を、切断標的領域にEMX1配列を有するPNAレポータープラスミドで、(それぞれ)エレクトロポレートまたはトランスフェクトした。エフェクター細胞および標的細胞を4時間共培養した後、レポータープラスミドのRFPシグナルに基づいて標的細胞を選別した。選別された標的細胞を3日間培養し、RFPゲート細胞中でのGFPシグナルの存在に基づいて、編集を前述のとおり測定した。RNA-タンパク質複合体は、グランザイムを含んでいなかったが、CAS9複合体は移入され、そのsgRNAを保持し、標的細胞中に編集を誘導することができた(図9A)。エフェクター細胞として使用したYTS細胞およびT細胞、ならびに標的細胞として使用した黒色腫およびK562細胞について、同様の結果が観察された。重要なことに、内因性グランザイムBがノックアウトされ、したがって細胞傷害性が低下したYTS細胞は、標的細胞での移入、sgRNAの保持、および編集を行う能力を有していた(図9B)。
【0295】
次に、骨髄細胞が、標的細胞中で遺伝子編集を実行できるRNA-タンパク質複合体を移入できるかを調べた。T細胞およびYTS細胞で行ったように、K562細胞にCAS9-sgRNA複合体を形質導入した。次いで、それらを、編集レポータープラスミドを発現する黒色腫細胞と共培養し、標的細胞中で依然として編集が起こっていることが観察された(図9C)。これは、骨髄細胞、および実際に他のパーフォリン/グランザイム発現細胞がカーゴを移入することができ、実際に機能的なゲノム編集タンパク質/複合体を特異的に送達できることを示している。
【0296】
外因性PNAプラスミドの編集を示したので、RNPの送達による内因性ゲノムの編集について試験を行った。T細胞、YTS細胞、グランザイムB KO YTS細胞、およびK562細胞はすべて、RNP送達およびゲノム編集の試験を行うためのエフェクター細胞として使用した。黒色腫細胞、K562細胞、およびマウスP815細胞は、すべて標的細胞として使用した。編集イベントは、標的遺伝子座の次世代シーケンシングにより、本明細書で上述したように定量化した。内因性遺伝子編集の結果を表7にまとめる。これらの結果では、RNPが移入されるのみでなく、移入中にガイドRNAがCAS9タンパク質と会合したままであり、複合体が、標的細胞の核内でゲノム編集を実行できることが確認される。
【表7】
【0297】
本発明をその特定の実施形態と併せて説明してきたが、多くの代替形態、修正形態、および変形形態が当業者には明らかであろうことは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨および広い範囲内に含まれるすべてのこうした代替形態、修正形態および変形形態を包含することが意図されている。

図1-1】
図1-2】
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C-1】
図3C-2】
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図8H
図8I
図9A
図9B
図9C
【国際調査報告】