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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-16
(54)【発明の名称】医薬組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5025 20060101AFI20230309BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230309BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230309BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230309BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230309BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20230309BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230309BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230309BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230309BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230309BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
A61K31/5025
A61P17/00
A61P37/08
A61P43/00 111
A61K45/00
A61K47/08
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/22
A61K47/26
A61K47/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544373
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(85)【翻訳文提出日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 GB2021050151
(87)【国際公開番号】W WO2021148807
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】62/964,532
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
(71)【出願人】
【識別番号】519399947
【氏名又は名称】ベネボレントエーアイ バイオ リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ ロバス
(72)【発明者】
【氏名】マイケル アシュウッド
(72)【発明者】
【氏名】キャメロン ロバート スティーブンソン
(72)【発明者】
【氏名】エミリー アン ゲイナー プロザロ
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ ロドニー グリーナウェイ エバンス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076DD09F
4C076DD37
4C076DD37S
4C076DD38
4C076DD39R
4C076DD46A
4C076DD59S
4C076EE23
4C076EE23F
4C076EE32P
4C084AA19
4C084MA05
4C084NA05
4C084ZA891
4C084ZB131
4C084ZC201
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA02
4C086MA05
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZB13
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、特定のイミダゾ[1,2-b]ピリダジン化合物及びそのような化合物の薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物を含む、局所用組成物などの医薬組成物に関する。本発明はまた、前記医薬組成物の調製方法、及びトロポミオシン関連キナーゼ(Trk)活性に関連する疾患又は状態の治療におけるそのような組成物の使用にも関する。より詳しくは、本発明は、Trkの阻害に有用な、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物を含む局所用医薬組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所用医薬組成物であって、
(a)前記組成物の約0.008重量%~約30重量%、好ましくは約0.01重量%~約20重量%、より好ましくは約0.05重量%~約5重量%の量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、及び
(b)前記組成物の約99.99重量%未満の量の賦形剤系、
を含み、
ここで、前記式(I)の化合物は、
【化1】
であり、
式中、
1は、H、-XR7、(C1~C6)アルキル、(C3~C8)シクロアルキル、並びにN、O、及びSから選択される1~2個のヘテロ原子を含むC連結4~6員ヘテロシクロアルキルから選択され、
Xは-CH2-から選択され、
2はH及び-SR6から選択され、
3はH及びハロから選択され、
4はH及び(C1~C3)アルキルから選択され、
5はH及びハロから選択され、
6はメチルであり、
7はヒドロキシによって置換されたフェニルであり、ここでヒドロキシフェニルは、任意選択的にハロによってさらに置換されており、
ただし、R2がHである場合、R1は-XR7である、局所用医薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の局所用医薬組成物であって、前記賦形剤系が、PEG100~PEG900から選択されるPEG、好ましくはPEG400を含み、及び、好ましくは前記PEGが、前記組成物の約1重量%~約60重量%、より好ましくは約5重量%~約55重量%、最も好ましくは約15重量%~約50重量%の量で存在する、局所用医薬組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の局所用医薬組成物であって、前記賦形剤系が、グリコール、ジアルキルグリコールモノアルキルエーテル、又はこれらの組み合わせを、好ましくは前記組成物の約10重量%~約70重量%、より好ましくは約20重量%~約55重量%の量で含み、さらにより好ましくは、前記賦形剤系がプロピレングリコール及びジエチルグリコールモノエチルエーテルを含む、局所用医薬組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の局所用医薬組成物であって、前記賦形剤系が、
(A)PEG100~PEG900から選択されるPEG、好ましくはPEG400、好ましくは前記PEGは、前記組成物の約1重量%~約60重量%、より好ましくは約5重量%~約50重量%、最も好ましくは約15重量%~約50重量%の量で存在する、
(B)前記組成物の約1重量%~約30重量%、好ましくは約5重量%~約25重量%、より好ましくは約10重量%~約20重量%の量のグリコール、好ましくは前記グリコールはプロピレングリコールである、及び/又は
(C)前記組成物の約1重量%~約40重量%、好ましくは約10重量%~約35重量%、より好ましくは約15重量%~約30重量%の量のジアルキルグリコールモノアルキルエーテル、好ましくはジアルキルグリコールモノアルキルエーテルはジエチルグリコールモノエチルエーテルである、
を含む、局所用医薬組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の局所用医薬組成物であって、前記賦形剤系が、
(a)前記組成物の約15重量%~30重量%の量の、油性基剤、例えばワセリン、及び/又はPEG1000~PEG10000から選択されるPEG、好ましくは前記PEGはPEG3350及び/又はPEG4000である、又は
(b)(i)前記組成物の約0.5重量%~約5重量%、好ましくは約1重量%~約3重量%の量のゲル化剤、好ましくは前記ゲル化剤はHPC MF又はHPC GFである、及び
(ii)前記組成物の約1重量%~約25重量%の量のポリオール、好ましくはグリセロール、又は
(c)(i)水、好ましくは前記組成物の約10重量%~約30重量%の量の水、
(ii)油相、好ましくは前記組成物の約0.5重量%~約25重量%の量の油相、
(iii)皮膚軟化剤、例えばセトステアリルアルコール及び/又はスパン60、好ましくは前記組成物の約5重量%~約15重量%の量の皮膚軟化剤、
(iv)乳化剤、例えばツイーン、すなわちツイーン80、好ましくは前記組成物の約2重量%~約10重量%の量の乳化剤、及び
(v)任意選択的に、前記組成物の約0.1重量%~5重量%の量の防腐剤、例えばフェノキシエタノール、
を含む、局所用医薬組成物。
【請求項6】
前記油相が、1種以上のトリグリセリド、例えばクロダモールGTCC、流動パラフィン、又はこれらの組み合わせを含む、請求項5に記載の局所用医薬組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の局所用医薬組成物であって、前記賦形剤系が、
(a)前記組成物の約15重量%~30重量%の量の、油性基剤、例えばワセリン、及び/又はPEG1000~PEG10000から選択されるPEG、好ましくは前記PEGはPEG3350及び/又はPEG4000である、又は
(b)(i)前記組成物の約0.5重量%~約5重量%、好ましくは約1重量%~約3重量%の量のゲル化剤、好ましくは前記ゲル化剤はHPC MF又はHPC GFである、及び
(ii)前記組成物の約1重量%~約25重量%の量のポリオール、好ましくはグリセロール、
を含む、局所用医薬組成物。
【請求項8】
前記組成物の約0.01重量%~約0.5重量%、好ましくは約0.05重量%~約0.2重量%の量の抗酸化剤、好ましくはBHT又はアスコルビン酸、及び任意選択的に、前記組成物の約4重量%~約8重量%の量のUVフィルター、好ましくはオクチサレートを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の局所用医薬組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の局所用医薬組成物であって、ここで
(A)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物は、前記組成物の約1重量%~約3重量%の量で存在し、
(B)前記賦形剤系が
(i)前記組成物の約35重量%~約50重量%の量のPEG400、
(ii)前記組成物の約5重量%~約15重量%の量のプロピレングリコール、
(iii)前記組成物の約15重量%~約35重量%の量のジエチルグリコールモノエチルエーテル、
(iv)前記組成物の約15重量%~25重量%の量のPEG1000~PEG10000から選択されるPEG、好ましくはPEG3350又はPEG4000、及び
(v)前記組成物の約0.05重量%~約0.5重量%の量の抗酸化剤、好ましくはBHT、
を含む、局所用医薬組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の局所用医薬組成物であって、ここで
(A)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物は、前記組成物の約1重量%~約3重量%の量で存在し、
(B)前記賦形剤系が、
(i)前記組成物の約25重量%~約45重量%の量のPEG400、好ましくはSR PEG400、
(ii)前記組成物の約1重量%~約25重量%の量のグリセロール、
(iii)前記組成物の約5重量%~約25重量%の量のプロピレングリコール、
(iv)前記組成物の約22重量%~約28重量%の量のジエチルグリコールモノエチルエーテル、及び
(v)前記組成物の約2重量%~約13重量%の量の低分子量アルコール、好ましくはエタノール、
(vi)前記組成物の約1重量%~約3重量%の量のゲル化剤、好ましくは前記ゲル化剤はHPC MF又はHPC GFである、及び
(vii)任意選択的に、前記組成物の約0.05重量%~約0.5重量%の量の抗酸化剤、好ましくはBHT、
を含む、局所用医薬組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の局所用医薬組成物であって、ここで
(A)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物は、前記組成物の約0.05重量%~約2重量%の量で存在し、
(B)前記賦形剤系が、
(i)前記組成物の約20重量%~約28重量%の量のPEG400、好ましくはSR PEG400、
(ii)前記組成物の約7重量%~約17重量%の量のプロピレングリコール、
(iii)前記組成物の約12重量%~約18重量%の量のジエチルグリコールモノエチルエーテル、
(iv)前記組成物の約17重量%~約28重量%の量の水、
(v)前記組成物の約2重量%~約10重量%の量のツイーン80、
(vi)前記組成物の約0.5重量%~約25重量%、好ましくは約3重量%~約9重量%の量の油相、前記油相は、1種以上のトリグリセリド、例えばクロダモールGTCC、流動パラフィン、又はこれらの組み合わせを含む、
(vii)前記組成物の約5重量%~約15重量%の量のセトステアリルアルコール、
(viii)前記組成物の約0.2重量%~約1.5重量%の量のスパン60、
(ix)任意選択的に、前記組成物の約0.05重量%~約0.5重量%の量の抗酸化剤、好ましくはBHT又はアスコルビン酸、
(x)任意選択的に、前記組成物の約0.1重量%~約5重量%の量のベンジルアルコール、
(xi)任意選択的に、前記組成物の約0.1重量%~約3重量%の量の防腐剤、例えばフェノキシエタノール、及び
(xii)任意選択的にUVフィルター、例えばオクチサレート、
を含む、局所用医薬組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の局所用医薬組成物であって、ここで、式(I)において、
1は、-XR7、(C1~C6)アルキル、(C3~C8)シクロアルキル、並びにN、O、及びSから選択される1~2個のヘテロ原子を含むC連結4~6員ヘテロシクロアルキルから選択され、好ましくはR1は、
(a)(C1~C6)アルキル及び(C3~C8)シクロアルキルから選択され、より好ましくはR1は(C1~C6)アルキルであり、又は
(b)-XR7、並びにN、O、及びSから選択される1~2個のヘテロ原子を含むC連結4~6員ヘテロシクロアルキル、より好ましくは-XR7及びN及びOから選択される1~2個のヘテロ原子を含むC連結4~6員ヘテロシクロアルキル、から選択され、
2は-SR6であり、
3はH及びフルオロであり、
4はHであり、
5はH又はフルオロであり、及び/又は
7はヒドロキシによって置換されたフェニルであり、ここでヒドロキシフェニルは、任意選択的にフルオロによってさらに置換されている、局所用医薬組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の局所用医薬組成物であって、ここで、式(I)の化合物は式(Ia)の化合物
【化2】
又は、その薬学的に許容される塩及び/又はその溶媒和物であって、式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は、請求項1又は請求項12に定義されている通りである、局所用医薬組成物。
【請求項14】
式(I)の化合物が以下から選択される、請求項1~13のいずれか1項に記載の局所用医薬組成物:
N'-シアノ-6-[2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]-N-[(3R)-オキサン-3-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド、
N'-シアノ-6-[2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]-N-[(オキサン-3-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド、
N'-シアノ-N-エチル-6-[4-フルオロ-2-[5-フルオロ-3-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド、
N'-シアノ-N-エチル-6-[4-フルオロ-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド、
N-ブチル-N'-シアノ-6-[4-フルオロ-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド、
N'-シアノ-N-シクロヘキシル-6-[4-フルオロ-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド、及び
N'-シアノ-6-[2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]-N-[(3-ヒドロキシフェニル)メチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド、
又はこれらの薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物。
【請求項15】
式(I)の化合物が以下から選択される、請求項1~14のいずれか1項に記載の局所用医薬組成物:
(Z)-N'-シアノ-6-[(2R)-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]-N-[(3R)-オキサン-3-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド、
(Z)-N'-シアノ-6-[(2R)-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]-N-[(3S)-オキサン-3-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド、
(Z)-N'-シアノ-N-エチル-6-[(2R,4S)-4-フルオロ-2-[5-フルオロ-3-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド、
(Z)-N'-シアノ-N-エチル-6-[(2R,4S)-4-フルオロ-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド、
(Z)-N-ブチル-N'-シアノ-6-[(2R,4S)-4-フルオロ-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド、
(Z)-N'-シアノ-N-シクロヘキシル-6-[(2R,4S)-4-フルオロ-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド、及び
(Z)-N'-シアノ-6-[(2R)-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]-N-[(3-ヒドロキシフェニル)メチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド、
又はこれらの薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物。
【請求項16】
さらなる治療薬を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の局所用医薬組成物。
【請求項17】
Trkによって媒介される状態又は障害の治療又は予防に使用するための、請求項1~16のいずれか1項に記載の局所用医薬組成物であって、好ましくは前記状態又は障害がTrkA、TrkB、及びTrkCによって媒介される、局所用医薬組成物。
【請求項18】
前記状態又は障害が、皮膚炎、好ましくはアトピー性皮膚炎である、請求項17に記載の使用のための局所用医薬組成物。
【請求項19】
Trkによって媒介される状態又は障害を予防又は治療するための方法であって、前記方法は、請求項1~16のいずれか1項で定義される局所用医薬組成物の治療有効量を被験体に投与することを含み、好ましくは前記状態又は障害がTrkA、TrkB、及びTrkCによって仲介される、方法。
【請求項20】
前記状態又は障害が、皮膚炎、好ましくはアトピー性皮膚炎である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
Trkによって媒介される状態又は障害の治療又は予防の治療のための医薬の製造における、請求項1、及び12~15のいずれか1項に記載の式(I)の化合物の使用であって、好ましくは前記状態又は障害は、TrkA、TrkB、及びTrkCによって媒介され、前記医薬は、請求項1~11、及び16のいずれか1項で定義された局所用医薬組成物を含む、使用。
【請求項22】
前記状態又は障害が、皮膚炎、好ましくはアトピー性皮膚炎である、請求項21に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のイミダゾ[1,2-b]ピリダジン化合物並びにそのような化合物の薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物を含む局所用組成物などの医薬組成物に関する。本発明はまた、医薬組成物の調製のためのプロセス、及びトロポミオシン関連キナーゼ(Trk)活性に関連する疾患又は状態を治療する際のそのような組成物の使用に関する。より詳しくは本発明は、Trkを阻害するのに有用な、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物を含む局所用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
トロポミオシン関連キナーゼ(Trk)は、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、及びニューロトロフィン-4/5(NT-4/5)を含む可溶性成長因子の群であるニューロトロフィンによって活性化される受容体チロシンキナーゼのファミリーである。Trk受容体は、3つのファミリーメンバーであるTrkA、TrkB、及びTrkCを含み、これらは、ニューロトロフィンに結合し、これに由来するシグナル伝達を媒介する。NGFはTrkAを活性化し、BDNFとNT-4/5はTrkBを活性化し、NT3はTrkCを活性化する。
【0003】
トロポミオシン関連キナーゼは、以下の疾患に関与している:アトピー性皮膚炎、乾癬、湿疹及び結節性痒疹、急性及び慢性のかゆみ、掻痒、炎症、癌、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、血栓症、掻痒、下部尿路障害、喘息などの炎症性肺疾患、アレルギー性鼻炎、肺癌、乾癬性関節炎、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、クローン病、線維症、神経変性疾患、髄鞘形成不全又は脱髄に関連する疾患、障害、及び状態、トリパノソーマ・クルージ感染症などの特定の感染性疾患、(チャガス病)、癌関連疼痛、慢性疼痛、神経芽細胞腫、卵巣癌、結腸直腸癌、メラノーマ、頭頸部癌、胃癌、肺癌、乳癌、神経膠芽細胞腫、髄芽細胞腫、分泌性乳癌、唾液腺癌、乳頭状甲状腺癌、成人骨髄性白血病、腫瘍増殖と転移、及び間質性膀胱炎。(C. Potenzieri and B. J. Undem, Clinical & Experimental Allergy, 2012 (42) 8-19; Yamaguchi J, Aihara M, Kobayashi Y, Kambara T, lkezawa Z, J Dermatol Sci. 2009;53:48-54; Dou YC, Hagstromer L, Emtestam L, Johansson O., Arch Dermatol Res. 2006;298:31-37; Johansson O, Liang Y, Emtestam L., Arch Dermatol Res. 2002;293:614-619; Grewe M, Vogelsang K, Ruzicka T, Stege H, Krutmann J., J Invest Dermatol. 2000;114:1108-1112; Urashima R, Mihara M .Virchows Arch. 1998;432:363-370; Kinkelin I, Motzing S, Koltenzenburg M, Brocker EB., Cell Tissue Res. 2000;302:31-37; Tong Liu & Ru-Rong Ji, Pflugers Arch - Eur J Physiol, DOI 10.1007/s00424-013-1284-2, published online 1 May 2013);国際特許出願公開WO2012/158413、WO2013/088256、WO2013/088257、及びW02013/161919、(Brodeur, G. M., Nat. Rev. Cancer 2003, 3, 203-216)、(Davidson. B., et al., Clin. Cancer Res. 2003, 9, 2248-2259)、(Bardelli, A , Science 2003, 300, 949)、(Truzzi, F., et al., Dermato-Endocrinology 2008, 3 (I), pp. 32-36), Yilmaz,T., et al., Cancer Biology and Therapy 2010, 10 (6), pp. 644-653)、(Du, J. et al.,World Journal of Gastroenterology 2003, 9 (7), pp. 1431-1434)、(Ricci A, et al., American Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology 25 (4), pp. 439-446)、(Jin, W., et al., Carcinogenesis 2010, 31 (11), pp. 1939-1947)、(Wadhwa, S., et al., Journal of Biosciences 2003, 28 (2), pp. 181-188)、(Gruber-Olipitz, M., et al., Journal of Proteome Research 2008, 7 (5), pp. 1932-1944)、(Euthus, D. M. et al., Cancer Cell 2002, 2 (5), pp. 347-348)、(Li, Y. -G., et al., Chinese Journal of Cancer Prevention and Treatment 2009, 16 (6), pp. 428-430)、(Greco, A, et al., Molecular and Cellular Endocrinology 2010, 321 (I), pp. 44-49)、(Eguchi, M., et al., Blood 1999, 93 (4), pp. 1355-1363)、(Nakagawara, A (2001) Cancer Letters 169: 107-114; Meyer, J. et al. (2007) Leukemia,1-10; Pierottia, M. A and Greco A, (2006) Cancer Letters 232:90-98; Eric Adriaenssens, E., et al. Cancer Res (2008) 68:(2) 346-351)、(FreundMichel, V; Frossard, N., Pharmacology ck Therapeutics (2008) 117(1), 52-76)、(Hu Vivian Y; et. al. The Journal of Urology (2005), 173(3), 1016-21)、(Di Mola, F. F, et. al. Gut (2000) 46(5), 670-678)、(Dou, Y. -C.,et. al. Archives of Dermatological Research (2006) 298(1), 31-37)、(Raychaudhuri, S. P., et al., J. Investigative Dermatology (2004) 122(3), 812-819) 及び(de Melo-Jorge, M. et al., Cell Host ck Microbe (2007) 1 (4), 251-261)。
【0004】
既存の医薬組成物に関する問題は、これらが特定の用途に応じて、軟膏、水性ゲル、非水性ゲル、及び/又はクリームとして処方され得ない可能性があることである。これらはまた、医薬品有効成分の低い化学的安定性、及び/又は組成物の低い物理的安定性という欠点を有する可能性がある。さらに、これらは、経口又は静脈内経路を介して、有効医薬組成物を送達することができ、従って局所投与には適していない可能性がある。局所投与は、好ましくは皮膚炎などの特定の疾患又は状態の治療用であり得る。
【発明の概要】
【0005】
従って、長期間保存されたときに化学的及び物理的安定性の点で安定であり、必要とする被験体に適用されたときに皮膚を刺激せず、並びに治療量のAPIを真皮及び表皮に送達することができる様々なタイプの局所用製剤として製剤化できる、Trk阻害剤を含む新しい局所用医薬組成物が必要とされている。請求された医薬組成物の他の利点も明らかになるであろう。
【0006】
第1の態様において、本発明は、
(a)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物、及び
(b)賦形剤系
を含む局所用医薬組成物を提供し、
ここで、式(I)の化合物は、
【化1】
であり、式中:
1は、H、-XR7、(C1~C6)アルキル、(C3~C8)シクロアルキル、並びにN、O、及びSから選択される1~2個のヘテロ原子を含むC連結4~6員ヘテロシクロアルキルから選択され、
Xは-CH2-から選択され、
2はH及び-SR6から選択され、
3はH及びハロから選択され、
4はH及び(C1~C3)アルキルから選択され、
5はH及びハロから選択され、
6はメチルであり、
7はヒドロキシによって置換されたフェニルであり、ここでヒドロキシフェニルは、任意選択的にハロによってさらに置換されており、
ただし、R2がHである場合、R1は-XR7である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、組成物O1、O5、NAG3、CR3、及びCR5のRHEの平均細胞生存率を示す。
図2図2は、プラセボ組成物(APIを含まない組成物)O1、O5、NAG3、CR3、及びCR5のRHEの平均細胞生存率を示す。
図3図3は、この試験で使用したMedFlux-HTプロセスの概略図を含む。
図4図4は、局所用医薬組成物を皮膚の頂端面に塗布してから24時間後に、表皮(上のグラフ)と真皮(下のグラフ)から回収された医薬品有効成分の平均濃度(μg/g)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
式(I)の化合物又は薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物は、本明細書において「医薬品有効成分」(API)と呼ばれることがある。局所用医薬組成物は、「局所用組成物」と呼ばれる場合があり、又は簡潔に「組成物」と呼ばれる場合がある。
【0009】
本発明の局所用医薬組成物は、ヒト又は他の哺乳動物などのそれを必要とする被験体に、APIを送達するための、局所適用を目的とした剤形である。局所用組成物は、皮膚又は粘膜(例えば、皮膚、眼の表面、又は鼻、膣、若しくは直腸に使用される)に適用され得る。局所用組成物は、局所的及び/又は全身的な医薬効果のために使用され得るが、本発明の局所的組成物は局所的効果のために使用されることが好ましい。
【0010】
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物は、局所用組成物中に組成物の約0.008重量%~約30重量%の量で存在し得る。賦形剤系は、局所用組成物中に組成物の約99.99重量%未満の量で存在し得る。
【0011】
本明細書で使用される「約」という用語は、関連する値の±10%、好ましくは±5%、より好ましくは±2%、最も好ましくは±1%を意味する。
【0012】
局所用組成物中の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物の量は、特定の疾患又は状態を効果的に治療又は予防するために被験体に送達されるのに必要な量に依存し得る。局所用組成物中の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物の量は、組成物の好ましくは約0.01重量%~約20重量%、より好ましくは約0.05重量%~約5重量%である。これは、ほとんどの疾患又は状態を治療又は予防するために必要とされる式(I)の化合物の適切な量を、被験体に送達し得る。
【0013】
局所用医薬組成物は、軟膏、水性ゲル、非水性ゲル、クリーム、溶液(水溶液など)、懸濁液、エマルジョン(マイクロエマルジョンなど)、粉剤、包帯、フォーム、フィルム、スキンパッチ、ウェーハー、インプラント、ファイバー、包帯、噴霧製剤(例えばエアロゾルによる送達用)などの任意の適切な形態をとることができる。正確な形態は、使用目的によって異なり得る。賦形剤系を構成する成分は局所用組成物の形態を決定する。賦形剤系は、1種以上の薬学的に許容される賦形剤を含む。局所用組成物の各タイプの製剤をもたらす成分のタイプは、当業者にはよく知られている。本発明の局所用医薬組成物は、軟膏、水性ゲル、非水性ゲル、又はクリームであることが好ましく、より好ましくは、軟膏、非水性ゲル、又はクリームである。
【0014】
賦形剤系は、表皮及び真皮などの治療に関連する皮膚の区画への送達を支援するための、吸収性の薬理学的に許容される溶媒(以下に定義されるものなど)を含む式(I)の化合物の経皮送達に適した1種以上の担体を含み得る。例えば局所用医薬組成物は、裏当部材を含む包帯、局所用医薬組成物を含むリザーバー、任意選択的に化合物を宿主の皮膚に制御された所定の速度で長期間にわたって送達するための速度制御バリア、及びデバイスを皮膚に固定するための手段の形態の、経皮デバイスの一部であり得る。
【0015】
本発明の第1の態様の特徴は、賦形剤系がポリエチレングリコール(PEG)を含むことである。PEG100~PEG900から選択されるPEGが好ましく、PEG400がより好ましい。賦形剤系の一部としてPEGを含めることは、組成物中のAPI充填量を増加させるのに役立つ可能性がある。PEGはまた、特に高純度のPEG400、例えばCrodaにより供給される超精製PEG400が使用された場合、他の組成物ベースと比較して、組成物中のAPIの化学的安定性、及び組成物の物理的安定性を高める可能性がある。BHT又はアスコルビン酸(好ましくはBHT)もまた、組成物の安定性、特にAPIの安定性を高めるために、局所用組成物に含まれ得る。
【0016】
PEGは任意の適切な量、例えば組成物の約1重量%~約60重量%、より好ましくは約5重量%~約50重量%、最も好ましくは約15重量%~約50重量%ので存在し得る。
【0017】
賦形剤系は、グリコール、ジアルキルグリコールモノアルキルエーテル、又はこれらの組み合わせを含み得る。好ましくは、グリコール、ジアルキルグリコールモノアルキルエーテル、又はこれらの組み合わせは、組成物の約10重量%~約70重量%、より好ましくは約20重量%~約55重量%の量で存在する。
【0018】
本明細書で使用される「グリコール」は、2つのヒドロキシル基を含む化合物を意味する。そのような化合物には、特に限定されるものではないが、エチレングリコール、プロピレングリコール(プロパン-1,2-ジオール)、及びプロパン-1,3-ジオール、ブチレングリコール(例えば1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、及び2-メチル-1,3-プロパンジオール)が含まれる。グリコールはプロピレングリコール、すなわちプロパン-1,2-ジオールであることが好ましい。
【0019】
本明細書で使用される「ジアルキルグリコールモノアルキルエーテル」には、特に限定されるものではないが、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Transcutol P)が含まれる。
【0020】
理論に拘束されることを望まないが、賦形剤系におけるPEG(好ましくはPEG400)、Transcutol P、及びプロピレングリコール(プロパン-1,2-ジオール)の組み合わせは、飽和するまではより高充填量のAPIから利益を得る可能性のある局所用組成物をもたらすと考えられる。例えば、そのような組成物は、APIの結晶化を引き起こすことなく、少なくとも約0.2重量%、好ましくは少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも1.5重量%、さらにより好ましくは1.5重量%を超える量の式(I)の化合物を含み得る。これは、必要とする被験体に、より高用量のAPIを送達できる局所用組成物を提供するという利点を有する。
【0021】
上記を考慮して、本発明の第1の態様の具体的な特徴は、賦形剤系が以下を含むことである:
(A)PEG100~PEG900から選択されるPEG、好ましくはPEG400、ここで前記PEGは、好ましくは組成物の約1重量%~約60重量%、より好ましくは約5重量%~約50重量%、最も好ましくは約15重量%~約50重量%の量で存在する、
(B)組成物の約1重量%~約30重量%、好ましくは約5重量%~約25重量%、より好ましくは約10重量%~約20重量%の量のグリコール、好ましくはグリコールはプロピレングリコールである、及び/又は
(C)組成物の約1重量%~約40重量%、好ましくは約10重量%~約35重量%、より好ましくは約15重量%~約30重量%の量のジアルキルグリコールモノアルキルエーテルであり、好ましくはジアルキルグリコールモノアルキルエーテルはジエチルグリコールモノエチルエーテルである。
【0022】
式(I)の化合物の特に高い充填量は、前記化合物が結晶化する前に、これらの局所用組成物に溶解され得る。
【0023】
前述のように、本発明の局所用組成物は、賦形剤系を形成する成分に依存して、軟膏、水性ゲル、非水性ゲル、又はクリームであり得、そして当業者は、これらの製剤のそれぞれを形成するために添加される賦形剤のタイプを認識しているであろう。これにもかかわらず、特に有益な軟膏ベースの局所用組成物は、賦形剤系の一部として、油性基剤、例えばワセリン、PEG1000~PEG10000から選択されるPEG、黄色ワックス(例えば蜂の巣から精製されたもの)、及び/又は白色ワックス(すなわち、黄色のワックスから精製される)を含み得る。油性基剤は、組成物の約15重量%~約30重量%の量で存在し得る。この点に関して、PEGが含まれていること、及びそれがPEG3350及び/又はPEG4000であることが好ましい。
【0024】
特に有益な非水性ゲルベースの局所用組成物は、賦形剤系の一部として、ゲル化剤及びポリオールを含み得る。ゲル化剤は、組成物の約0.5重量%~約5重量%、好ましくは約1重量%~約3重量%の量で存在し得る。ヒドロキシプロピルセルロースMF(HPC MF)及び/又はヒドロキシプロピルセルロース(HPC GF)などの任意の適切なゲル化剤を使用することができる。
【0025】
本明細書で使用される「ポリオール」は、3つ以上のヒドロキシル基を含む化合物を意味する。このような化合物には、特に限定されるものではないが、グリセロール、ブタントリオール、ペンタントリオール、及びポリエチレントリオール、特に4~8個のエチレンオキシド単位を含むもの、及びこれらの混合物が含まれる。ポリオールは、組成物の約1重量%~約25重量%の量で存在し得る。好ましいポリオールはグリセロールである。
【0026】
水性ゲルベースの局所用組成物が必要な場合、ゲル化剤に加えて、組成物の約10重量%~約30重量%の量の水を加えることができる。そのような場合、ベンジルアルコールなどの防腐剤を賦形剤系に添加することは任意であり、かつ好ましい。防腐剤は任意の適切な量で存在することができるが、通常、組成物の約0.1重量%~約5重量%の量である。
【0027】
特に有益なクリームベースの局所用組成物は、賦形剤系の一部として、水、油相、皮膚軟化剤、乳化剤、及び任意選択的に防腐剤を含み得る。水は好ましくは組成物の約20重量%~約30重量%の量で、油相は好ましくは組成物の約0.5重量%~約25重量%の量で、皮膚軟化剤は好ましくは組成物の約5重量%~約15重量%の量で、乳化剤は好ましくは組成物の約2重量%~約10重量%の量で存在し得る。存在する場合、防腐剤は組成物の約0.1重量%~約5重量%の量で存在し得る。
【0028】
特に適切な皮膚軟化剤は、セトステアリルアルコール及び/又はスパン60である。特に適切な乳化剤は、ツイーン80などのツイーンである。特に適切な防腐剤は、ベンジルアルコール又はフェノキシエタノール、好ましくはフェノキシエタノールである。
【0029】
当業者は、油相を形成し得る化合物の範囲を理解するであろう。本発明の組成物に有用な典型的な油相は、1種以上のトリグリセリド、例えばクロダモールGTCC、流動パラフィン、又はこれらの組み合わせを含むものである。
【0030】
本発明の局所用組成物は、従来技術のものと比較して、安定性(化学的及び物理的安定性の両方)が上昇している。軟膏及び非水性ゲルは、さらに増強された安定性を示し得る。従って、本発明の第1の態様の具体的な特徴は、局所用組成物が、以下を含む賦形剤系を含むことである:
(a)組成物の約15重量%~30重量%の量の、油性基剤、例えばワセリン、及び/又はPEG1000~PEG10000から選択されるPEG、好ましくはPEG3350又はPEG4000、又は
(b)(i)組成物の約0.5重量%~約5重量%、好ましくは約1重量%~約3重量%の量のゲル化剤、好ましくは前記ゲル化剤はHPC MF又はHPC GFである、及び
(ii)組成物の約1重量%~約25重量%の量のポリオール、好ましくはグリセロール。
【0031】
賦形剤系、特に非水性ゲルベースの組成物の系は、低分子量アルコール、すなわちC1~C5アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、又はこれらの組み合わせを含み得る。低分子量アルコールはエタノールであることが好ましい。低分子量アルコールは、存在する場合、組成物の約2重量%~約13重量%の量で賦形剤系に存在し得る。
【0032】
賦形剤系は、抗酸化剤、好ましくはBHT又はアスコルビン酸を含み得る。これは任意の適切な量で、例えば組成物の約0.01重量%~約0.5重量%、好ましくは約0.05重量%~約0.2重量%で存在し得る。抗酸化剤は、局所用組成物の安定性、特に組成物の化学的安定性をさらに上昇させる可能性がある。
【0033】
賦形剤系は、UVフィルターを含み得る。オクチサレート(octisalate)などの任意の適切なUVフィルターを使用することができる。UVフィルターは任意の適切な量、例えば組成物の約4重量%~約8重量%で存在することができる。
【0034】
本発明の特定の軟膏ベースの局所用組成物は、以下を含む:
(A)組成物の約1重量%~約3重量%の量で存在する式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物、
(B)以下を含む賦形剤系:
(i)組成物の約35重量%~約50重量%の量のPEG400、
(ii)組成物の約5重量%~約15重量%の量のプロピレングリコール、
(iii)組成物の約15重量%~約35重量%の量のジエチルグリコールモノエチルエーテル、
(iv)組成物の約15重量%~25重量%の量のPEG1000~PEG10000から選択されるPEG、好ましくはPEG3350又はPEG4000、及び
(v)組成物の約0.05重量%~約0.5重量%の量の抗酸化剤、好ましくはBHT。
【0035】
本発明の特定の非水性ゲルベースの局所用組成物は、以下を含む:
(A)組成物の約1重量%~約3重量%の量で存在する式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物、
(B)以下を含む賦形剤系:
(i)組成物の約25重量%~約45重量%の量のPEG400、好ましくはSR PEG400、
(ii)組成物の約1重量%~約25重量%の量のグリセロール、
(iii)組成物の約5重量%~約25重量%の量のプロピレングリコール、
(iv)組成物の約22重量%~約28重量%の量のジエチルグリコールモノエチルエーテル、及び
(v)組成物の約2重量%~約13重量%の量の低分子量アルコール、好ましくはエタノール、
(vi)組成物の約1重量%~約3重量%の量のゲル化剤、好ましくは前記ゲル化剤はHPC MF又はHPC GFである、及び
(vii)任意選択的に、組成物の約0.05重量%~約0.5重量%の量の抗酸化剤、好ましくはBHT。
【0036】
本発明の特定のクリームベースの局所用組成物は、以下を含む:
(A)組成物の約0.05重量%~約2重量%の量で存在する式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物、
(B)以下を含む賦形剤系:
(i)組成物の約20重量%~約28重量%の量のPEG400、好ましくはSR PEG400、
(ii)組成物の約7重量%~約17重量%の量のプロピレングリコール、
(iii)組成物の約12重量%~約18重量%の量のジエチルグリコールモノエチルエーテル、
(iv)組成物の約17重量%~約28重量%の量の水、
(v)組成物の約2重量%~約10重量%の量のツイーン80、
(vi)組成物の約0.5重量%~約25重量%、好ましくは約3重量%~約9重量%の量の、クロダモールGTCCなどの1種以上のトリグリセリド、流動パラフィン、又はこれらの組み合わせを含む油相、
(vii)組成物の約5重量%~約15重量%の量のセトステアリルアルコール、
(viii)組成物の約0.2重量%~約1.5重量%の量のスパン60、
(ix)任意選択的に、組成物の約0.05重量%~約0.5重量%の量の抗酸化剤、好ましくはBHT又はアスコルビン酸、
(x)任意選択的に、組成物の約0.1重量%~約5重量%の量のベンジルアルコール、
(xi)任意選択的に、組成物の約0.1重量%~約3重量%の量の防腐剤、例えばフェノキシエタノール、及び
(xii)任意選択的にUVフィルター、例えばオクチサレート。
【0037】
当業者は、本発明の局所用医薬組成物を生成するために使用され得るプロセスを理解するであろう。局所用組成物は、成分をミキサー中で一緒にし、これらを均質な組成物が生成されるまで混合するなどの任意の適切な方法によって形成することができる。本発明の局所用医薬組成物を生成する1つの好ましい方法は、式(I)の化合物を賦形剤系の1つ以上の成分と組み合わせて前記化合物を溶解し、次に賦形剤系の残りの成分をミキサーに加えることを含む。賦形剤系の残りの成分を添加する前に、前記化合物を溶解するために、式(I)の化合物を、PEG100~PEG900から選択されるPEG、例えばPEG400を含む混合物と混合することが好ましい場合がある。より好ましい方法では、式(I)の化合物を、PEG400、プロピレングリコール、及びジアルキルグリコールモノアルキルエーテルを含む混合物と混合して、前記化合物を溶解した後に、賦形剤系の残りの成分と混合することができる。PEG3350などの特定の賦形剤は、他の成分と組み合わせることができるように、賦形剤を液化するために加熱(例えば65℃に)する必要がある場合がある。局所用医薬組成物を生成する正確な方法は、当業者によって容易に確認されるであろう。
【0038】
本発明の局所用医薬組成物は、式(I)の化合物に加えて、さらなる治療薬を含み得る。
【0039】
本発明の局所用医薬組成物は、これらが被験体の皮膚又は粘膜への適用に適していることを意味するpHを有することが好ましい。組成物は、約4.0~約10.0、好ましくは約4.5~約9.0、より好ましくは約5.0~約7.8のpHを有し得る。
【0040】
以下は、式(I)の化合物の具体的な実施態様である。
【0041】
上記のいずれかで定義された本発明の1つの実施態様において、R1は、-XR7、(C1~C6)アルキル、(C3~C8)シクロアルキル、並びにN、O、及びSから選択される1~2個のヘテロ原子を含むC連結4~6員ヘテロシクロアルキルから選択される。
【0042】
上記のいずれかで定義された本発明のさらなる実施態様において、R1は、(C1~C6)アルキル及び(C3~C8)シクロアルキルから選択される。
【0043】
上記のいずれかで定義された本発明の代替のさらなる実施態様において、R1は、-XR7、並びにN、O、及びSから選択される1~2個のヘテロ原子を含むC連結4~6員のヘテロシクロアルキルから選択される。
【0044】
上記のいずれかで定義された本発明のさらに別の実施態様において、R1は(C1~C6)アルキルである。
【0045】
上記のいずれかで定義された本発明のさらに別の実施態様において、R1は、-XR7、並びにN及びOから選択される1~2個のヘテロ原子を含むC連結4~6員のヘテロシクロアルキルから選択される。
【0046】
上記のいずれかで定義された本発明の別の実施態様において、R2は-SR6である。
【0047】
上記のいずれかで定義された本発明の別の実施態様において、R3はH又はフルオロである。
【0048】
上記のいずれかで定義された本発明の別の実施態様において、R4はHである。
【0049】
上記のいずれかで定義された本発明の別の実施態様において、R5はH又はフルオロである。
【0050】
上記のいずれかで定義された本発明の別の実施態様において、R7は、ヒドロキシによって置換されたフェニルであり、ここでヒドロキシフェニルは、任意選択的にフルオロによってさらに置換されている。
【0051】
さらに別の実施態様において、式(I)の化合物は式(Ia):
【化2】
の化合物、又はその薬学的に許容される塩、及び/又は溶媒和物であり ここでR1、R2、R3、R4、及びR5は、式(I)の化合物に関して上記のいずれかで定義された通りである。
【0052】
別の実施態様において、式(I)の個々の化合物は、以下の実施例欄にリストされているものである。
【0053】
本発明の別の実施態様において、実施例1、2、3、4、5、6、及び7から選択される式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/又はその溶媒和物を含む、本発明による局所用医薬組成物が提供される。
【0054】
本発明の別の実施態様において、以下から選択される式(I)の化合物を含む局所用医薬組成物が提供される:
N'-シアノ-6-[2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]-N-[(3R)-オキサン-3-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド、
N'-シアノ-6-[2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]-N-[(オキサン-3-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド、
N'-シアノ-N-エチル-6-[4-フルオロ-2-[5-フルオロ-3-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド、
N'-シアノ-N-エチル-6-[4-フルオロ-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド、
N-ブチル-N'-シアノ-6-[4-フルオロ-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド、
N'-シアノ-N-シクロヘキシル-6-[4-フルオロ-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド、及び
N'-シアノ-6-[2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]-N-[(3-ヒドロキシフェニル)メチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド、
又はこれらの薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物。
【0055】
本発明の別の実施態様において、以下から選択される式(I)の化合物を含む局所用医薬組成物が提供される:
(Z)-N'-シアノ-6-[(2R)-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]-N-[(3R)-オキサン-3-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド、
(Z)-N'-シアノ-6-[(2R)-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]-N-[(3S)-オキサン-3-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド、
(Z)-N'-シアノ-N-エチル-6-[(2R,4S)-4-フルオロ-2-[5-フルオロ-3-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド、
(Z)-N'-シアノ-N-エチル-6-[(2R,4S)-4-フルオロ-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド、
(Z)-N-ブチル-N'-シアノ-6-[(2R,4S)-4-フルオロ-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド、
(Z)-N'-シアノ-N-シクロヘキシル-6-[(2R,4S)-4-フルオロ-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド、及び
(Z)-N'-シアノ-6-[(2R)-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]-N-[(3-ヒドロキシフェニル)メチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド、
又はこれらの薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物。
【0056】
特定の変量のみが定義される本明細書で言及される実施態様において、変量の残りは、本明細書の任意の実施態様で定義される通りであることが意図される。従って本発明は、変量の限定された又は任意選択的な定義の組み合わせを提供する。
【0057】
本明細書で使用される以下の用語は、以下の意味を有することを意図している:
【0058】
本明細書で使用される「任意選択的に置換された」とは、言及される基が非置換であるか、又はその後に列挙される置換基の任意の1つ又は任意の組み合わせによって1つ又は2つ又は3つの位置で置換され得ることを意味する。
【0059】
本明細書で使用される「ハロゲン」又は「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードを指す。
【0060】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、最大20個の炭素原子を有する完全に飽和した分岐又は非分岐炭化水素部分を指す。特に他に明記しない限り、アルキルとは、1~16個の炭素原子、1~10個の炭素原子、1~7個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を有する炭化水素部分を指す。アルキルの代表的な例には、特に限定されるものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシルなどが含まれる。
【0061】
本明細書で使用される「C1~C3アルキル」、「C1~C6アルキル」、「C1~C8アルキル」などは、1~3、1~6、又は1~8個(又は関連する数)の炭素原子を含むアルキル基を意味する。
【0062】
本明細書で使用される「シクロアルキル」という用語は、3~12個の炭素原子の飽和又は不飽和の非芳香族、単環式、二環式、又は三環式炭化水素基を指す。特に他に明記しない限り、シクロアルキルは、3~9個の環炭素原子又は3~7個の環炭素原子を有する環状炭化水素基を指す。単環式炭化水素基の例には、特に限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、及びシクロヘキセニルが含まれる。二環式炭化水素基の例には、ボルニル、インジル、ヘキサヒドロインジル、テトラヒドロナフチル、デカヒドロナフチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプテニル、6,6-ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプチル、2,6,6-トリメチルビシクロ[3.1.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチルなどが含まれる。
【0063】
「C3~C8シクロアルキル」は、3~8個の環炭素原子を有するシクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、又はシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、又はシクロデシルなどの単環式基、又はビシクロヘプチル若しくはビシクロオクチルなどの二環式基を意味する。異なる数の炭素原子を指定することができ、それに応じて定義が修正される。
【0064】
本明細書で使用される「アルコキシ」という用語は、アルキル-O-を指し、ここで、アルキルは、本明細書で上記で定義されている。アルコキシの代表的な例には、特に限定されるものではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2-プロポキシ、ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロプロピルオキシ-、シクロヘキシルオキシ-などが含まれる。典型的には、アルコキシ基は、約1~7個、より適切には約1~4個の炭素を有する。
【0065】
本明細書で使用される「ヘテロシクロアルキル」という用語は、飽和又は不飽和の非芳香族環又は環系、例えば4、5、6、若しくは7員の単環式、7、8、9、10、11、若しくは12員の二環式、又は10、11、12、13、14、若しくは15員の三環式環系であり、O、S、及びNから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含み、ここで、N及びSは、任意選択的にさまざまな酸化状態に酸化することもできる。複素環基は、ヘテロ原子又は炭素原子に結合することができる。C連結複素環基は、炭素原子に結合することができる。複素環の例には、テトラヒドロフラン(THF)、ジヒドロフラン、1,4-ジオキサン、モルホリン、1,4-ジチアン、ピペラジン、ピペリジン、1,3-ジオキソラン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピロリン、ピロリジン、テトラヒドロピラン、ジヒドロピラン、オキサチオラン、ジチオラン、1,3-ジオキサン、1,3-ジチアン、オキサチアン、チオモルホリン、ホモモルホリンなどが含まれる。
【0066】
本明細書全体及び以下の特許請求の範囲において、文脈上別段の必要がない限り、「含む(comprise)」という単語、又は「含む(comprises)」、又は「含む(comprising)」などの変形は、記載された整数若しくは工程、又は整数若しくは工程の群を含むことを意味すると理解されるべきであるが、ただし、他の整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群を除外するものではない。
【0067】
本発明の局所用医薬組成物は、式(I)の化合物、及び以下に定義されるその塩、以下に定義されるその多形体、異性体、及び溶媒和物(光学的、幾何学的、及び互変異性体異性体を含む)、及び式(I)の同位体標識化合物を含む。
【0068】
本発明はまた、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩を含む。「薬学的に許容される塩」は、非毒性、生物学的に許容される、又は他の方法で被験体への投与に生物学的に適している、式(I)によって表される化合物の遊離酸又は塩基の塩を意味することを意図する。一般的には、G.S. Paulekuhn, et al., "Trends in Active Pharmaceutical Ingredient Salt Selection based on Analysis of the Orange Book Database", J. Med. Chem., 2007, 50:6665-72, S.M. Berge, et al., "Pharmaceutical Salts", J Pharm Sci., 1977, 66:1 -19, 及び Handbook of Pharmaceutical Salts, Properties, Selection, Use, Stahl and Wermuth, Eds., Wiley-VCH and VHCA, Zurich, 2002を参照されたい。
【0069】
薬学的に許容される塩の例は、薬理学的に有効であり、過度の毒性、刺激、又はアレルギー反応なしに被験体の組織との接触に適しているものである。式(I)の化合物は、十分に酸性の基、十分に塩基性の基、又は両方のタイプの官能基を有することができ、従っていくつかの無機又は有機塩基、並びに無機及び有機酸と反応して、薬学的に許容される塩を形成することができる。
【0070】
薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸及び有機酸と形成することができ、例えば酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、臭化物/臭化水素酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、樟脳スルホン酸塩、塩化物/塩酸塩、クロルテオフィロン酸塩、クエン酸塩、エタンジスルホン酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロエン酸塩、馬尿酸塩、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフトエ酸塩、ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オクタデカン酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/水素リン酸塩/二水素リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、スルホサリチル酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩、及びトリフルオロメチルスルホン酸塩である。
【0071】
塩を得ることができる無機酸には、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが含まれる。
【0072】
塩を得ることができる有機酸には、例えば酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメチルスルホン酸、スルホサリチル酸などが含まれる。薬学的に許容される塩基付加塩は、無機及び有機塩基で形成することができる。
【0073】
塩を得ることができる無機塩基には、例えばアンモニウム塩、及び周期表のI列~XII列までの金属が含まれる。特定の実施態様において、塩は、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、銀、亜鉛、及び銅に由来し、特に適切な塩には、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩が含まれる。
【0074】
塩を得ることができる有機塩基には、例えば、一級、二級、及び三級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、塩基性イオン交換樹脂などが含まれる。特定の有機アミンには、イソプロピルアミン、ベンザチン、コリネート(cholinate)、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、リジン、メグルミン、ピペラジン、及びトロメタミンが含まれる。
【0075】
薬学的に許容される塩の例には、特に硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオレート(propiolate)、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-ジオエート、ヘキシン-1,6-二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニルア酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、及びマンデル酸塩が含まれる。
【0076】
さらに、本明細書で与えられる任意の式は、そのような形態が明示的に記載されていない場合でも、そのような化合物の水和物、溶媒和物、及び多形体、並びにこれらの混合物も指すことを意図している。式(I)の化合物、又は式(I)の化合物の薬学的に許容される塩は、溶媒和物として得ることができる。溶媒和物には、本発明の化合物と1つ以上の溶媒との相互作用又は複合体形成により形成されたもので、溶液中又は固体又は結晶形のいずれかが含まれる。いくつかの実施態様において、溶媒は水であり、従って溶媒和物は水和物である。さらに、式(I)の化合物の特定の結晶形、又は式(I)の化合物の薬学的に許容される塩を共結晶として得ることができる。本発明の特定の実施態様において、式(I)の化合物、又は式(I)の化合物の薬学的に許容される塩は、結晶形態で得ることができる。他の実施態様において、式(I)の化合物は、いくつかの多形態のうちの1つとして、結晶形態の混合物として、多形態として、又はアモルファス形態として得ることができる。他の実施態様において、式(I)の化合物は、溶液中で、1つ以上の結晶形態及び/又は多形態の間で変換し得る。
【0077】
水素結合の供与体及び/又は受容体として作用することができる基を含む本発明の化合物は、適切な共結晶形成剤と共結晶を形成することができる可能性がある。これらの共結晶は、既知の共結晶形成手順によって式(I)の化合物から調製することができる。そのような手順には、粉砕、加熱、共昇華、共溶融、又は溶液中での式(I)の化合物と共結晶形成剤との結晶化条件下での接触、及びそれによって形成される共結晶の単離が含まれる。適切な共結晶形成剤には、WO2004/078163に記載されているものが含まれる。従って、本発明はさらに、式(I)の化合物を含む共結晶を提供する。
【0078】
本明細書で与えられる任意の式は、構造式によって示される構造並びに特定の変形又は形態を有する化合物を表すことを意図している。特に、本明細書で与えられる任意の式の化合物は、不斉中心を有することができ、従って、異なる鏡像異性体形態で存在し得る。一般式の化合物のすべての光学異性体及び立体異性体、並びにこれらの混合物は、式の範囲内であると見なされる。従って本明細書で与えられる任意の式は、ラセミ体、1つ以上の鏡像異性体型、1つ以上のジアステレオ異性体型、1つ以上のアトロプ異性体型、及びこれらの混合物を表すことを意図している。さらに、いくつかの構造は、幾何異性体(すなわち、シス及びトランス異性体)、互変異性体、又はアトロプ異性体として存在することができる。
【0079】
本発明の特許請求される化合物の範囲内に含まれるのは、複数のタイプの異性を示す化合物、及びこれらの1つ以上の混合物を含む、式(I)の化合物のすべての立体異性体、幾何異性体、及び互変異性体である。対イオンが光学活性である、例えばD-乳酸塩、又はL-リジン、又はラセミ体、例えば、DL-酒石酸塩又はDL-アルギニンである酸付加塩又は塩基付加塩も含まれる。
【0080】
式(I)の化合物が、例えばケト若しくはグアニジン基又は芳香族部分を含む場合、互変異性異性化(「互変異性」)が起こり得る。従って、単一の化合物が複数のタイプの異性を示す可能性がある。本発明の化合物によって示される潜在的な互変異性のタイプの例には、以下が含まれる:アミド⇔ヒドロキシルイミン及びケト⇔エノール互変異性が含まれる。
【化3】
【0081】
シス/トランス異性体は、当技術分野で周知の従来の技術によって、例えばクロマトグラフィー及び分別結晶化によって分離することができる。
【0082】
個々の鏡像異性体の調製/単離のための従来の技術は、例えば適切な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成、又はキラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用するラセミ体(又は塩又は他の誘導体のラセミ体)の分割を含む。
【0083】
本発明のキラル化合物(及びそのキラル前駆体)は、クロマトグラフィーを使用して、典型的には非対称固定相を有する樹脂で及び0~50%、通常2~20%のエタノールを含む炭化水素、典型的にはヘプタン又はヘキサンからなる移動相を用いるHPLCを使用して、鏡像異性的に濃縮された形態で得ることができる。溶出液を濃縮すると、濃縮された混合物が得られる。
【0084】
立体異性体の混合物は、当業者に知られている従来の技術によって分離することができる(例えば、"Stereochemistry of Organic Compounds" by E L Eliel (Wiley, New York, 1994)を参照)。
【0085】
本明細書で使用される「異性体」という用語は、同じ分子式を有するが、原子の構成及び配置が異なる化合物を指す。また、本明細書で使用される「光学異性体」又は「立体異性体」という用語は、本発明の所定の化合物に存在し得る様々な立体異性体構成のいずれかを指し、幾何異性体を含む。置換基は、炭素原子のキラル中心に結合し得ることが理解される。従って本発明は、化合物の鏡像異性体、ジアステレオ異性体、又はラセミ体を含む。「鏡像異性体」は、互いに重ね合わせることができない鏡像である立体異性体のペアである。一対の鏡像異性体の1:1混合物は「ラセミ」混合物である。この用語は、適宜ラセミ混合物を示すために使用される。「ジアステレオ異性体」は、少なくとも2つの不斉原子を有するが、互いの鏡像ではない立体異性体である。絶対立体化学は、Cahn-lngold-Prelog R-Sシステムに従って特定される。化合物が純粋な鏡像異性体である場合、各キラル炭素での立体化学は、R又はSのいずれかで特定することができる。絶対配置が不明な分解化合物は、ナトリウムD線の波長で平面偏光を回転させる方向(右旋性又は左旋性)に応じて(+)又は(-)で指定することができる。本明細書に記載の特定の化合物は、1つ以上の不斉中心又は軸を含み、従って、絶対立体化学に関して(R)-又は(S)-として定義され得る鏡像異性体、ジアステレオ異性体、及び他の立体異性体を生じ得る。本発明は、ラセミ混合物、光学的に純粋な形態、及び中間混合物を含む、そのようなすべての可能な異性体を含むことを意図している。光学活性(R)-及び(S)-異性体は、キラルシントン又はキラル試薬を使用して調製するか、従来の技術を使用して分離することができる。化合物が二重結合を含む場合、置換基はE又はZ配置であり得る。化合物が2置換シクロアルキルを含む場合、シクロアルキル置換基は、シス又はトランス配置を有し得る。すべての互変異性体も含まれることを意図している。互変異性体は、平衡状態で存在し、ある異性体から別の異性体に容易に変換される2つ以上の構造異性体の1つである。互変異性体の例には、特に限定されるものではないが、特許請求の範囲で定義される化合物が含まれる。
【0086】
本発明の化合物の任意の不斉原子(例えば、炭素など)は、ラセミ又は鏡像異性的に濃縮された、例えば(R)-、(S)-、又は(R,S)-配置で存在することができる。特定の実施態様において、各不斉原子は(R)-又は(S)-構成で、少なくとも50%の鏡像異性体過剰、少なくとも60%の鏡像異性体過剰、少なくとも70%の鏡像異性体過剰、少なくとも80%の鏡像異性体過剰、少なくとも90%の鏡像異性体過剰、少なくとも95%の鏡像異性体過剰、又は少なくとも99%の鏡像異性体過剰を有する。不飽和結合を有する原子における置換基は、可能であれば、シス-(Z)-又はトランス(E)-形態で存在し得る。
【0087】
従って、本明細書で使用される場合、化合物は、例えば実質的に純粋な幾何(シス又はトランス)異性体、ジアステレオ異性体、光学異性体(対掌体)、ラセミ体、又はこれらの混合物として、可能な異性体、回転異性体、アトロプ異性体、互変異性体、又はこれらの混合物の1つの形態であり得る。
【0088】
得られる異性体の混合物は、成分の物理化学的差異に基づいて、例えばクロマトグラフィー及び/又は分別結晶化によって、純粋な又は実質的に純粋な幾何異性体又は光学異性体、ジアステレオ異性体、ラセミ体に分離することができる。
【0089】
最終生成物又は中間体の得られたラセミ体は、既知の方法、例えば、光学活性な酸又は塩基で得られたそのジアステレオ異性体塩の分離によって、及び光学活性な酸性又は塩基性化合物の遊離によって、光学対掌体に分解することができる。従って、特に塩基性部分を使用して、例えば、光学的に活性な酸、例えば酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジ-O,O'-p-トルオイル酒石酸、マンデル酸、リンゴ酸、又は樟脳-10-スルホン酸で形成された塩の分別結晶化によって、本発明の化合物をこれらの光学的対掌体に分解することができる。ラセミ生成物はまた、キラル吸着剤を使用する高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などのキラルクロマトグラフィーによっても分離することができる。
【0090】
化合物は局所用医薬組成物での使用を意図しているため、これらはそれぞれ、好ましくは実質的に純粋な形態、例えば少なくとも60%の純度、より適切には少なくとも75%の純度、及び好ましくは少なくとも85%の純度、特に少なくとも98%の純度である(%は重量ベースの重量である)ことは、容易に理解されるであろう。化合物の純粋でない調製物は、医薬組成物で使用されるより純粋な形態を調製するために使用され得る。これらの純度の低い化合物の調製物は、式(I)の化合物を少なくとも1%、より適切には少なくとも5%、及び好ましくは10から59%含有する必要がある。
【0091】
塩基性基と酸基の両方が同じ分子内に存在する場合、本発明の化合物はまた、内部塩、例えば双性イオン性分子を形成し得る。
【0092】
式(I)の化合物の薬学的に許容されるプロドラッグもまた局所用組成物において使用することができ、そしてそのような薬学的に許容されるプロドラッグを使用する治療方法において使用することができる。「プロドラッグ」という用語は、被験体への投与後、加溶媒分解又は酵素的切断などの化学的又は生理学的プロセスを介して、又は生理学的条件下(例えば、プロドラッグが生理的pHに供されると式(I)の化合物に変換される)で、インビボで化合物を生成する、指定された化合物の前駆体を意味する。「薬学的に許容されるプロドラッグ」は、毒性がなく、生物学的に許容可能であり、さもなければ被験体への投与に生物学的に適しているプロドラッグである。適切なプロドラッグ誘導体の選択及び調製のための例示的な手順は、例えば、"Design of Prodrugs", ed. H. Bundgaard, Elsevier, 1985 に記載されている。
【0093】
プロドラッグは、被験体へのプロドラッグの投与後に、加水分解、代謝などのインビボ生理学的作用を介して化学的に修飾されて式(I)の化合物になる活性又は不活性化合物である。本発明の化合物は、それ自体が活性であり得るか、及び/又はインビボで活性化合物に変換されるプロドラッグとして作用し得る。プロドラッグの製造及び使用に含まれる適切性及び技術は、当業者によってよく知られている。プロドラッグは、概念的に2つの非排他的なカテゴリーであるバイオ前駆体プロドラッグと担体プロドラッグに分けることができる。The Practice of Medicinal Chemistry, Ch. 31-32 (Ed. Wermuth, Academic Press, San Diego, Calif., 2001) を参照されたい。一般に、バイオ前駆体プロドラッグは、対応する活性薬物化合物と比較して不活性であるか又は低い活性を有し、1つ以上の保護基を含み、代謝又は加溶媒分解によって活性型に変換される化合物である。活性薬物形態と放出された代謝産物の両方は、許容できるほど低い毒性を有するはずである。担体プロドラッグは、例えば作用部位への取り込み及び/又は局所的送達を改善する輸送部分を含む薬物化合物である。
【0094】
望ましくは、そのような担体プロドラッグの場合、薬物部分と輸送部分との結合は共有結合であり、プロドラッグは薬物化合物よりも不活性であるか又は活性が低く、放出された輸送部分は許容できるほど無毒である。輸送部分が取り込みを増強することを目的とするプロドラッグの場合、通常、輸送部分の放出は迅速でなければならない。他の場合には、徐放性を提供する部分、例えば特定のポリマー又はシクロデキストリンなどの他の部分を利用することが望ましい。担体プロドラッグを使用して、例えば以下の特性の1つ以上を改善することができる:親油性の増加、薬理学的効果の持続時間の増加、部位特異性の増加、毒性及び副作用の減少、及び/又は薬物調製の改善(例えば、安定性、水溶性、望ましくない官能的又は物理化学的特性の抑制)。例えば親油性は、(a)親油性カルボン酸(例えば、少なくとも1つの親油性部分を有するカルボン酸)を用いるヒドロキシル基の、又は(b)親油性アルコール(例えば、少なくとも1つの親油性部分を有するアルコール、例えば脂肪族アルコール)を用いるカルボン酸基の、エステル化によって上昇させることができる。
【0095】
例示的なプロドラッグは、例えば、遊離カルボン酸と、チオールのS-アシル誘導体及びアルコール又はフェノールO-アシル誘導体とのエステルであり、ここでアシルは本明細書で定義される意味を有する。適切なプロドラッグは、生理学的条件下で加溶媒分解によって親カルボン酸に変換可能な薬学的に許容されるエステル誘導体であり、例えば低級アルキルエステル、シクロアルキルエステル、低級アルケニルエステル、ベンジルエステル、一置換又は二置換低級アルキルエステル、例えばω(アミノ、モノ-、又はジ-低級アルキルアミノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル)-低級アルキルエステル、α-(低級アルカノイルオキシ、低級アルコキシカルボニル、又はジ-低級アルキルアミノカルボニル)-低級アルキルエステルであり、例えば当技術分野で従来から使用されているピバロイルオキシメチルエステルなどである。さらに、アミンは、インビボでエステラーゼによって切断されて遊離薬物とホルムアルデヒドを放出するアリールカルボニルオキシメチル置換誘導体としてマスクされている(Bundgaard, J. Med. Chem. 2503 (1989))。さらにイミダゾール、イミド、インドールなどの酸性NH基を含む薬物は、N-アシルオキシメチル基でマスクされている(Bundgaard, Design of Prodrugs, Elsevier (1985))。ヒドロキシル基は、エステル及びエーテルとしてマスクされている。EP039,051(Sloan and Little)は、マンニッヒ塩基ヒドロキサム酸プロドラッグ、それらの調製、及び使用を開示している。
【0096】
本発明はまた、本発明の方法においても使用され得る、式(I)の化合物の医薬的に活性な代謝物に関する。「医薬的に活性な代謝物」とは、式(I)の化合物又はその塩の体内の医薬的に活性な代謝産物を意味する。化合物のプロドラッグ及び活性代謝物は、当技術分野で知られているか又は利用可能な日常的な技術を使用して決定することができる。例えば、Bertolini, et al., J Med Chem. 1997, 40, 201 1 -2016; Shan, et al., J Pharm Sci. 1997, 86 (7), 765-767; Bagshawe, Drug Dev Res. 1995, 34, 220-230; Bodor, Adv Drug Res. 1984, 13, 224-331 ; Bundgaard, Design of Prodrugs (Elsevier Press, 1985); 及び Larsen, Design and Application of Prodrugs, Drug Design and Development (Krogsgaard-Larsen, et al., eds., Harwood Academic Publishers, 1991)を参照されたい。
【0097】
本明細書で与えられる任意の式はまた、化合物の非標識形態並びに同位体標識形態を表すことを意図している。同位体標識された化合物は、1つ以上の原子が、選択された原子質量又は質量数を有する原子によって置き換えられることを除いて、本明細書に与えられる式によって示される構造を有する。本発明の化合物に組み込むことができる同位体の例には、それぞれ水素、炭素、窒素、酸素、及びフッ素の同位体、例えば2H、3H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、18Fが含まれる。このような同位体標識化合物は、薬物又は基質組織分布アッセイを含むか又は被験体の放射線治療における代謝研究(好ましくは14Cを用いる)、反応速度論研究(例えば2H又は3Hを用いる)、検出又はイメージング技術(例えば、陽電子放射断層撮影(PET)又は単一光子放射型コンピューター断層撮影(SPECT))で有用である。11C、18F、15O、及び13Nなどの陽電子放出同位体による置換は、基質受容体の占有率を調べるためのPET研究に役立つ。特に18F又は11Cで標識された化合物は、PET研究に特に好ましい場合がある。さらに、重水素(すなわち2H)などのより重い同位体による置換は、より大きな代謝安定性から生じる特定の治療上の利点、例えばインビボ半減期の延長又は必要な投与量の減少をもたらす可能性がある。式(I)の特定の同位体標識化合物、例えば放射性同位体を組み込んだものは、薬物及び/又は基質組織分布研究において有用である。放射性同位体トリチウム、すなわち3H、及び炭素14、すなわち14Cは、これらの組み込みの容易さ及び検出手段の容易さの観点から、この目的に特に有用である。
【0098】
式(I)の同位体標識化合物及びそのプロドラッグは、一般に以下に記載のスキーム又は実施例及び調製物に開示される手順を実行することにより、非同位体標識試薬の代わりに容易に入手可能な同位体標識試薬を使用することによって調製することができる。
【0099】
さらに、より重い同位体、特に重水素(すなわち2H又はD)による置換は、より優れた代謝安定性、例えばインビボ半減期の延長又は必要な投与量の減少又は治療指数の改善から生じるいくつかの治療上の利点をもたらす可能性がある。この状況において重水素は、式(I)の化合物の置換基と見なされることが理解される。このようなより重い同位体、特に重水素の濃度は、同位体濃縮係数によって定義され得る。本明細書で使用される「同位体濃縮係数」という用語は、特定の同位体の同位体存在量と天然の存在量との比率を意味する。本発明の化合物の置換基が重水素と表示される場合、そのような化合物は、指定された重水素原子ごとに、少なくとも3500(指定された重水素原子ごとに52.5%の重水素取り込み)、少なくとも4000(60%の重水素取り込み)、少なくとも4500(67.5%の重水素取り込み)、少なくとも5000(75%の重水素取り込み)、少なくとも5500(82.5%の重水素取り込み)、少なくとも6000(90%の重水素取り込み)、少なくとも6333.3(95%の重水素取り込み)、少なくとも6466.7(97%の重水素取り込み)、少なくとも6600(99%の重水素取り込み)、又は少なくとも6633.3(99.5%の重水素取り込み)の同位体濃縮係数を有する。
【0100】
本発明による薬学的に許容される溶媒和物には、結晶化の溶媒が同位体的に置換され得るもの、例えばD2O、d6-アセトン、d6-DMSOであり得るものが含まれる。
【0101】
本発明の局所用組成物に有用な例示的な化合物、及び関連する方法を、以下のこれらの一般的な調製のための例示的な合成スキーム、及び以下の具体例を参照することによって説明する。本明細書の様々な化合物を得るために、最終的に所望の置換基が、所望の生成物を生成するために適宜、保護の有無にかかわらず反応スキームを通して運ばれるように、出発物質を適切に選択できることを、当業者は認識するであろう。あるいは、最終的に所望の置換基の代わりに、反応スキームを介して運ばれ、適宜、所望の置換基で置換され得る適切な基を使用することが、必要又は望ましい場合がある。特に他に明記しない限り、変量は式(I)を参照して上記で定義されたとおりである。反応は、溶媒の融点と還流温度の間、好ましくは0℃と溶媒の還流温度との間で実施することができる。反応物は、従来の加熱又はマイクロ波加熱を使用して加熱することができる。反応はまた、溶媒の通常の還流温度を超える密閉された圧力容器内で行われ得る。
【0102】
式(I)のすべての誘導体は、以下に提示される一般的な方法に記載されている手順によって、又はその日常的な修正によって調製することができる。本発明はまた、そこで使用される任意の新規中間体に加えて、式(I)の誘導体を調製するためのこれらのプロセスのいずれか1つ以上を包含する。
【0103】
実施例及び調製物に記載されたものを含む以下の経路は、式(I)の化合物を合成する方法を示している。当業者は、本発明の化合物及びその中間体が、本明細書に具体的に記載された方法以外の方法によって、例えば本明細書に記載の方法の改変によって、例えば当技術分野で知られている方法によって作製できることを理解するであろう。合成、官能基の相互変換、保護基の使用などの適切な指針は、例えば次のとおりである:"Comprehensive Organic Transformations" by RC Larock, VCH Publishers Inc. (1989);"Advanced Organic Chemistry" by J. March, Wiley Interscience (1985);"Designing Organic Synthesis" by S Warren, Wiley Interscience (1978);"Organic Synthesis - The Disconnection Approach" by S Warren, Wiley Interscience (1982);"Guidebook to Organic Synthesis" by RK Mackie and DM Smith, Longman (1982);"Protective Groups in Organic Synthesis" by TW Greene and PGM Wuts, Fifth Ed, John Wiley and Sons, Inc. (2014); 及び "Protecting Groups" by PJ, Kocienski, Georg Thieme Verlag (1994)、及びこれらの標準の更新バージョン。
【0104】
さらに当業者は、望ましくない副反応を防止するために、1つ以上の感受性基を保護することが、本発明の化合物の合成の任意の段階で必要又は望ましい場合があることを理解するであろう。特に、フェノール又はカルボン酸基を保護することが必要又は望ましい場合がある。本発明の化合物の調製に使用される保護基は、従来の方法で使用することができる。例えば、'Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis' by Theodora W Greene and Peter G M Wuts, fifth edition, (John Wiley and Sons, 2014), 特に Chapter 3 ("Protection for Phenols") 及び Chapter 5 ("Protection for the Carboxyl group") に記載されているものを参照されたい。これらは参照により本明細書に取り込まれ、そのような基の除去方法も記載している。
【0105】
以下の一般的な合成方法では、特に明記しない限り、置換基は、上記の式(I)の化合物をについて上記で定義された通りである。
【0106】
溶媒の比率が示されている場合、比率は容積によるものである。
【0107】
当業者は、以下のスキームに示される実験条件が、示される変換を達成するための適切な条件の例示であり、式(I)の化合物の調製に使用された正確な条件を変化させることが、必要又は望ましい場合があることを認識するであろう。本発明の所望の化合物を提供するために、スキームに記載されている順序とは異なる順序で変換を実行すること、又は1つ以上の変換を変更することが、必要又は望ましい場合があることをさらに認識するであろう。
【0108】
上記のスキームに従って調製された化合物は、単一の鏡像異性体、ジアステレオ異性体、又は位置異性体として、鏡像、ジアステレオ、又は位置特異的合成によって、又は分解によって得ることができる。上記スキームに従って調製された化合物は、あるいは、ラセミ(1:1)混合物又は非ラセミ(1:1ではない)混合物として、又はジアステレオ異性体若しくは位置異性体の混合物として得ることができる。鏡像異性体のラセミ混合物及び非ラセミ混合物が得られる場合、キラルクロマトグラフィー、再結晶、ジアステレオ異性体塩形成、ジアステレオ異性体付加物への誘導体化、生物変換、又は酵素変換などの当業者に知られている従来の分離方法を使用して、単一の鏡像異性体を単離することができる。位置異性体又はジアステレオ異性体混合物が得られる場合、クロマトグラフィー又は結晶化などの従来の方法を使用して単一異性体を分離することができる。
【0109】
本発明の化合物は、類似構造の化合物を調製するための当技術分野で知られている任意の方法によって調製することができる。特に、本発明の化合物は、以下のスキームを参照することによって記載される手順によって、又は実施例に記載される特定の方法によって、又はいずれかと同様のプロセスによって調製することができる。
【0110】
当業者は、以下のスキームに示される実験条件が、示される変換を達成するための適切な条件の例示であり、式(I)の化合物の調製に使用された正確な条件を変化させることが必要又は望ましい場合があることを理解するであろう。本発明の所望の化合物を提供するために、スキームに記載されたものとは異なる順序で変換を実行すること、又は1つ以上の変換を改変することが必要又は望ましい場合があることをさらに理解されたい。
【0111】
式(I)の化合物は、スキーム1に示されるように、式(II)、(III)、(IV)、及び(V)の化合物から調製することができる。
【化4】
【0112】
式(III)のアミンは、市販されているか、又は文献で知られている方法と同様に調製することができる。
【0113】
式(IV)の化合物は、適切な極性非プロトン性溶媒中の適切なカップリング剤と有機塩基の存在下で、式(II)の酸と式(III)のアミンのアミド結合形成によって調製することができる。好ましい条件は、HATUの存在下で、室温でDMFなどの適切な溶媒中の適切な有機塩基、典型的にはDIPEAの存在下で、式(II)の酸と式(III)のアミンを反応させることを含む。
【0114】
式(V)の化合物は、適切な溶媒中で五硫化リン又はローソン試薬などの適切な加硫化剤を使用して、式(IV)のアミドを加硫化することによって調製することができる。好ましい条件は、100℃などの高温でトルエンなどの適切な溶媒中で、ローソン試薬を用いて式(IV)のアミドを処理することを含む。
【0115】
式(I)の化合物は、適切な金属触媒の存在下で、任意選択的に適切な溶媒中のEt3N又はDIPEAなどの有機塩基の存在下で、式(V)のチオアミドをシアナミドで処理することによって調製することができる。好ましい条件は、室温でDMFなどの溶媒中のEt3Nと共に塩化水銀(II)の存在下で、シアナミドで処理することを含む。あるいはこの変換は、室温でMeOHなどの溶媒中のAgOAcなどの適切な銀触媒の存在下で、式(V)のチオアミドをシアナミドで処理することによって達成することができる。
【0116】
1がXR7である式(I)(A)の化合物は、スキーム2に示されるように、式(IV)(A)、(VI)、(VII)、及び(VIII)の化合物から調製することができる。
【化5】
【0117】
PG1は、適切なフェノール保護基であり、通常はシリルエーテル基であり、好ましくはTBDMSである。
【0118】
式(VI)の化合物は、適切な溶媒中の適切なシリル保護基を使用して、式(IV)(A)の化合物を保護することによって調製することができる。好ましい条件は、室温でDMF中の過剰のイミダゾールの存在下で、式(IV)(A)の化合物をTBDMSClで処理することを含む。
【0119】
式(VII)の化合物は、式(V)の化合物の調製のためにスキーム1に記載されたように、式(VI)の化合物の加硫化することによって調製することができる。
【0120】
式(VIII)の化合物は、式(I)の化合物の調製のためにスキーム1に記載されたように、式(VII)の化合物をシアナミドで処理することによって調製することができる。
【0121】
式(I)(A)の化合物は、酸性条件下で、又は適切な溶媒中のフッ化テトラアルキルアンモニウム塩の存在下で、式(VIII)の化合物を脱保護することによって調製することができる。好ましい条件は、50℃などの高温でMeCN中のTEAFで式(VIII)の化合物を処理することを含む。
【0122】
式(IV)の化合物は、スキーム3に示されるように、式(III)、(IX)、(X)、及び(XI)の化合物から調製することができる。
【化6】
【0123】
式(IV)(A)の化合物(R1がXR7である式(IV)の化合物)もまた、スキーム3に示されるように調製され得る。
【0124】
式(IX)の化合物は市販されている。
【0125】
式(XI)の化合物は市販されているか、又はBrinner et. al. (Org. Biomol. Chem., 2005,3, 2109-2113) 又はFan et.al. (WO2012 034091) に記載された方法からの類推によって、キラル形態で調製することができる。あるいは、式(VIII)の化合物は、Huihui et. al. (J. Am. Chem. Soc., 2016, 138, 5016-5019) に記載された方法からの類推によって調製することができる。あるいは、これらは、以下のスキーム5に記載されるように調製され得る。
【0126】
式(X)のアミドは、スキーム1で前述したように、適切なカップリング剤と有機塩基の存在下で、式(IX)の酸と式(III)のアミンのアミド結合形成によって調製することができる。好ましい条件は、HATUの存在下で、室温でDMF中の適切な有機塩基、典型的にはDIPEAの存在下で、式(IX)の酸と式(III)のアミンを反応させることを含む。
【0127】
式(IV)の化合物は、高温で極性非プロトン性溶媒中の無機塩基の存在下で、式(X)の化合物を式(XI)のアミンで処理することによって調製することができる。好ましい条件は、高温、典型的には130℃で、DMSOなどの溶媒中のKFの存在下で、式(X)の化合物を式(XI)のアミンで処理することを含む。
【0128】
式(II)の化合物は、スキーム4に示されるように、式(XI)、(XII)、及び(XIII)の化合物から調製することができる。
【化7】
【0129】
PG2は、カルボキシル保護基であり、典型的にはC1~C3アルキル、好ましくはエチルである。
【0130】
式(XII)の化合物は、市販されているか、又はFan et.al.(WO2012 034091)に記載された方法からの類推によって調製することができる。式(XIII)の化合物は、高温で極性非プロトン性溶媒中の無機塩基の存在下で、式(XII)の塩化物を式(XI)のアミンで処理することによって調製することができる。好ましい条件は、高温、典型的には130℃で、DMSOなどの溶媒中のKFの存在下で、式(XII)の塩化物を式(XI)のアミンで処理することを含む。式(II)の化合物は、適切な水性溶媒中の適切な酸性又は塩基性条件下で、式(XIII)のエステルの加水分解によって調製することができる。好ましい条件は、室温で水性EtOH中の過剰のNaOH又はKOHで、式(XIII)のエステルを処理することを含む。
【0131】
式(XI)の化合物は、スキーム5に示されるように、式(XIV)、(XV)、及び(XVI)の化合物から調製することができる。
【化8】
【0132】
PG3は、N保護基、典型的にはカルバメート又はベンジル基であり、好ましくはBocである。
【0133】
AGは活性化基であり、通常はフタルイミド、ベンゾトリアゾール、又は7-アザベンゾトリアゾールであり、好ましくはフタルイミド基である。式(XIV)の化合物は、市販されているか、又は既知の文献の方法からの類推によって調製することができる。式(XVI)の化合物は、市販されているか、又は既知の文献の方法からの類推によって調製することができる。式(XV)の化合物は、適切なカップリング剤の存在下で、式(XIV)の酸とAG-OHのカップリング反応によって調製することができる。好ましい条件は、室温でEtOAc中のDCCの存在下で、式(XIV)の酸とAG-OHを反応させることを含む。式(XI)の化合物は、中間体グリニャール試薬の形成を介して、式(XVI)の臭化物から、2工程の、Fe又はNi触媒クロスカップリング反応で、次にToriyama et al (J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 11132-35) の方法に従って式(XV)の化合物で処理することにより調製することができる。好ましい条件は、THF中のDIBAL-HとLiClの存在下で0℃~室温で、Mg削り屑を用いて式(XVI)の臭化物を処理して、中間グリニャール試薬を調製することを含む。低温、典型的には0℃で、THF及びDMPUなどの適切な極性非プロトン性溶媒中でFe(acac)3又はNi(Br)2などの適切なFe触媒を用いる式(XV)の化合物の処理。
【0134】
上記の一般的なスキームを使用して、本発明の化合物を調製することができる。適切な出発物質、反応物、及び反応条件を選択することにより、所望の特定の化合物を調製することができる。
【0135】
上記スキームの出発物質及び試薬は、すべて市販されているか又は以下の文献の先例に従って調製することができる。
【0136】
本テキストの範囲内で、文脈が別段の指示をしない限り、本発明の化合物の特定の所望の最終生成物の構成要素ではない容易に除去可能な基のみが「保護基」と呼ばれる。そのような保護基による官能基の保護、保護基自体、及びそれらの開裂反応は標準的な参考文献、例えば、'Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis' by Theodora W Greene and Peter G M Wuts, fifth edition, (John Wiley and Sons, 2014), 特に Chapter 3 ("Protection for Phenols") 及び Chapter 5 ("Protection for the Carboxyl group") (参照により本明細書に組み込まれる)に記載されており、これはまた、そのような基の除去方法についても、J. F. W. McOmie, "Protective Groups in Organic Chemistry", Plenum Press, London and New York 1973, in "The Peptides"; Volume 3 (editors: E. Gross and J. Meienhofer), Academic Press, London and New York 1981, in "Methoden der organischen Chemie" (Methods of Organic Chemistry), Houben Weyl, 4th edition, Volume 15/I, Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1974, in H.-D. Jakubke and H. Jeschkeit, "Aminosauren, Peptide, Proteine" (Amino acids, Peptides, Proteins), Verlag Chemie, Weinheim, Deerfield Beach, and Basel 1982, and in Jochen Lehmann, "Chemie der Kohlenhydrate: Monosaccharide und Derivate" (Chemistry of Carbohydrates: Monosaccharides and Derivatives), Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1974で説明している。保護基の特徴は、これらを、例えば加溶媒分解、還元、光分解、あるいは生理学的条件下(例えば、酵素的切断による)で、容易に(すなわち、望ましくない二次反応の発生なしに)除去できることである。
【0137】
少なくとも1つの塩形成基を有する本発明の化合物の塩は、当業者に知られている方法で調製することができる。例えば、酸基を有する本発明の化合物の塩は、例えば化合物を金属化合物で、例えば適切な有機カルボン酸のアルカリ金属塩、例えば2-エチルヘキサン酸のナトリウム塩で、有機アルカリ金属又はアルカリ土類金属化合物、例えば対応する水酸化物、炭酸塩若しくは炭酸水素塩で、例えば水酸化ナトリウム又はカリウム、炭酸ナトリウム又はカリウム、若しくは炭酸水素ナトリウム又はカリウムで、対応するカルシウム化合物で、又はアンモニア若しくは適切な有機アミンで、処理することによって形成することができ、好ましくは化学量論量又はわずかに過剰の塩形成剤が使用される。本発明の化合物の酸付加塩は、慣習的な方法で、例えば化合物を酸又は適切な陰イオン交換試薬で処理することによって得られる。酸性及び塩基性塩形成基、例えば遊離のカルボキシ基及び遊離のアミノ基を含む本発明の化合物の内部塩は、例えば、酸付加塩などの塩を、例えば弱塩基を使用するかイオン交換体で処理して等電点に中和することにより、形成され得る。
【0138】
塩は、当業者に知られている方法に従って、遊離化合物に変換することができる。金属塩及びアンモニウム塩は、例えば、適切な酸、及び酸付加塩で、例えば適切な塩基性剤で処理することによって変換することができる。
【0139】
本発明に従って得られる異性体の混合物は、当業者に知られている方法で個々の異性体に分離することができる。ジアステレオ異性体は、例えば、多相溶媒混合物の間で分配することによって、再結晶化及び/又は例えばシリカゲル上のクロマトグラフィー分離によって、又は例えば逆相カラムでの中圧液体クロマトグラフィーによって分離することができ、及びラセミ体は、例えば光学的に純粋な塩形成試薬と塩を形成し、及びそのように得られたジアステレオ異性体の混合物を分離によって、例えば分別結晶化又は光学的に活性なカラム材料上のクロマトグラフィーによって分離することができる。
【0140】
中間体及び最終生成物は、標準的な方法、例えばクロマトグラフィー法、分配法、(再)結晶化などを使用して、後処理及び/又は精製することができる。
【0141】
以下は、一般に、本明細書で前述及び後述されるすべてのプロセスに適用される。
【0142】
上記のすべてのプロセス工程は、具体的に言及されたものを含む当業者に知られている反応条件下で、溶媒若しくは希釈剤の非存在下、又は通常存在下で、例えば使用されこれらを溶解する試薬に対して不活性な溶媒若しくは希釈剤の存在下で、反応及び/若しくは反応物の性質に応じて触媒、縮合剤、若しくは中和剤、例えばH+型の陽イオン交換体などのイオン交換体の非存在下又は存在下で、低温、通常温度、若しくは高温で、例えば約-100℃~約190℃までの温度範囲、例えば約-80℃~約150℃、例えば-80~-60℃、室温、-20~40℃、又は還流温度で、大気圧下、又は密閉容器内で、適宜圧力下で、及び/又は不活性雰囲気中で、例えばアルゴン若しくは窒素雰囲気下で、実施することができる。
【0143】
反応のすべての段階で、形成される異性体の混合物は、個々の異性体に、例えばジアステレオ異性体又は鏡像異性体に、又は任意の所望の異性体混合物に、例えばラセミ体又はジアステレオ異性体の混合物に、例えば「追加のプロセス工程」で記載された方法と同様に分離することができる。
【0144】
そこから任意の特定の反応に適した溶媒を選択することができる溶媒には、特にプロセスの説明に他に明記しない限り、具体的に言及されたもの、又は例えば水、エステル、例えば低級アルキル-低級アルカノエート、例えば酢酸エチル、脂肪族エーテルなどのエーテル、例えばジエチルエーテル又は環状エーテル、例えばテトラヒドロフラン又はジオキサン、液体芳香族炭化水素(例えばベンゼン又はトルエン)、アルコール(例えばメタノール、エタノール、又は1-若しくは2-プロパノール)、ニトリル(例えばアセトニトリル)、ハロゲン化炭化水素(例えば塩化メチレン又はクロロホルム)、酸性アミド(例えばジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミド)、複素環式窒素塩基などの塩基(例えばピリジン又はN-メチルピロリジン-2-オン)、カルボン酸無水物(例えば低級アルカン酸無水物、例えば無水酢酸)、環状、直鎖、又は分岐炭化水素(例えばシクロヘキサン、ヘキサン、又はイソペンタン、メチルシクロヘキサン)、又はこれらの溶媒の混合物、例えば水溶液が含まれる。そのような溶媒混合物はまた、例えば、クロマトグラフィー又は分配による後処理で使用することもできる。
【0145】
これらの塩を含む化合物はまた、水和物の形態で得られ得るか、又はこれらの結晶は、例えば、結晶化に使用される溶媒を含み得る。異なる結晶形が存在してもよい。
【0146】
本発明はまた、プロセスの任意の段階で中間体として得られる化合物が出発物質として使用され、残りのプロセスステップが実行されるプロセスの形態、又は出発物質が反応条件下で形成されるか、又は、誘導体の形態で、例えば保護された形態又は塩の形態で使用されるか、又は本発明によるプロセスによって得られる化合物が、プロセス条件下で生成され、さらにその場で処理されるプロセスの形態に関する。
【0147】
本発明の化合物を合成するために利用されるすべての出発物質、構成成分、試薬、酸、塩基、脱水剤、溶媒、及び触媒は、市販されているか、又は当業者に知られている有機合成方法によって製造することができる(Houben-Weyl 4th Ed. 1952, Methods of Organic Synthesis, Thieme, Volume 21)。
【0148】
本発明のさらなる態様として、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物を調製するためのプロセスも提供される。
【0149】
本発明のさらなる態様によれば、特許請求される局所用組成物に含まれる式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物を調製するプロセスが提供され、 このプロセスは
式(V):
【化9】
のチオアミドを、適切な金属触媒の存在下で、任意選択的に適切な溶媒中のEt3N又はDIPEAなどの有機塩基の存在下で、シアナミドを用いて処理する工程を含み、ここでR1、R2、R3、R4、及びR5は、式(I)の化合物について上記のいずれかで定義された通りである。
【0150】
本発明のさらなる態様によれば、特許請求される局所用組成物(ここでR1はXR7である)に含まれる式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物を調製するプロセスが提供され、このプロセスは、式(XIII)
【化10】
の化合物を、酸性条件下で、又は適切な溶媒中のテトラアルキルアンモニウムフルオリド塩の存在下で脱保護する工程を含み、ここで、R2、R3、R4、及びR5は、式Iの化合物に関して上記のいずれかで定義された通りであり、PG2は保護基である。
【0151】
式(I)の最も好ましい化合物は、実施例3の化合物である。
【0152】
本発明はさらに、本発明のプロセスの任意の変更態様を含み、ここで、その任意の段階で得られる中間生成物は出発物質として使用され、残りの工程が実行されるか、又はここで、出発物質は反応条件下でその場で形成されるか、又はここで、反応成分は、これらの塩又は光学的に純粋な対掌体の形態で使用される。
【0153】
式(I)の化合物及び中間体はまた、当技術分野で一般に知られている方法に従って互いに変換することができる。
【0154】
さらなる態様によれば、本発明は、本明細書に記載の新規な中間化合物を提供し、これは、請求された局所用組成物において有用であり得る。
【0155】
式(I)の化合物は、貴重な薬理学的特性、例えば、次のセクションで提供されるインビトロ及びインビボで示されるようなTrk調節特性を示し、従って治療のための使用が示唆されている。
【0156】
Trk活性を阻害するこれらの能力を考慮すると、式(I)の化合物(以下、別名「薬剤」と呼ぶ)は、Trkによって媒介される状態又は障害の治療又は予防に有用である。
【0157】
特に、式(I)の化合物、従って請求された局所用組成物は、高親和性ニューロトロフィン受容体TrkA、TrkB、及びTrkCによって媒介される障害又は状態の治療、並びにこれらの受容体型チロシンキナーゼに対するこれらの同族ニューロトロフィンリガンド-NGF、BDNF/NT-4/5、NT-3-の作用に有用である。特に、これらの化合物は、高親和性ニューロトロフィン受容体TrkA、TrkB、及びTrkCによって媒介され、炎症及び神経過敏症、特にアトピー性皮膚炎に関連する皮膚(皮膚)炎症及びかゆみ(掻痒)の状態を治療又は予防するのに有用である。
【0158】
皮膚の免疫細胞(T細胞、肥満細胞、好酸球を含む)の浸潤と活性化は、炎症性皮膚病変において重要な役割を果たす(Ilkovitch D. J Leukoc Biol. 2011, 89(1):41-9; Kim et al, Int J Mol Sci. 2016,17(8))。TrkA、B、及びC、及びこれらの同族の内因性ニューロトロフィンリガンドは、皮膚の病状に関連する免疫学的及び神経原性メカニズムにおいて役割を果たし(Botchkarev et al, J Invest Dermatol. 2006, 126(8):1719-27.; Truzzi et al, Dermatoendocrinol. 2011, 3(1):32-6; Minnone et al, Int J Mol Sci. 2017, 11;18(5))、及び皮膚に存在する免疫細胞、特にアトピー性皮膚炎病理に関与するもの(Raap et al, Clin Immunol. 2005, (5):419-24)、例えばT細胞(Sekimoto et al, Immunol Lett. 2003, 88(3):221-6; Matsumura et al, J Dermatol Sci. 2015,78(3):215-23)、肥満細胞 (Quarcoo et al, J Occup Med Toxicol. 2009, Apr 22;4:8.)、及び好酸球 (Raap et al, J Allergy Clin Immunol. 2005, 115:1268-75; Raap et al, Clin Exp Allergy.2008, 38(9):1493-8) の炎症機能を仲介することが証明されている。
【0159】
NGF、BDNF、NT-3、及びNT-4/5のレベルは、正常な被験体と比較してアトピー性皮膚炎患者の病変皮膚細胞及び血漿で高く、そのレベルは疾患の重症度と相関している(Yamaguchi et al, J Dermatol Sci. 2009, 53(1):48-54; Toyoda et al, Br J Dermatol 2002, 147:71-79; Raap et al, J Allergy Clin Immunol. 2005, 115:1268-75; Raap et al, Allergy. 2006, 61(12):1416-8)。Trkレベルはまた、アトピー性皮膚炎病変皮膚細胞でもアップレギュレートされている(Dou et al, Arch Dermatol Res. 2006, (1):31-7; Raap et al, Clin Exp Allergy. 2008, 38(9):1493-8)。さらに、高親和性ニューロトロフィン受容体とその内因性リガンド、特にTrkA/NGFは、一次求心性神経を感作し、皮膚の神経過敏を媒介し、それによって特にアトピー性皮膚炎における末梢性かゆみ感作と掻痒に寄与することが示されている(Tominaga et al, J Dermatol. 2014, 41(3):205-12; Roggenkamp D et al, J Invest Dermatol 2012, 132: 1892-1900; Grewe et al, J Invest Dermatol 2000, 114:1108-1112)。アトピー性皮膚炎の前臨床マウスモデルでは、Trk阻害活性を有する小分子化合物によるTrkシグナル伝達の阻害が、皮膚炎と引っかき行動を減少させ、同時に表皮の神経線維が減少した(Takano et al, Br J Dermatol. 2007, 156(2):241-6; Narayanan et al, PLoS One. 2013, 26;8(12))。
【0160】
式(I)の化合物、従って特許請求された局所用組成物は、アトピー性皮膚炎(湿疹)、接触性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎などの皮膚炎の疾患;蕁麻疹などの掻痒症(Rossing et al, Clin Exp Allergy. 2011, 41(10):1392-9)、セザリー症候群を含む皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)関連掻痒症(Suga et al, Acta Derm Venereol. 2013, 93(2):144-9; Saulite et al, Biomed Res Int. 2016 doi: 10.1155/2016/9717530);乾癬((Raychaudhuri et al, Prog Brain Res. 2004, 146:433-7);皮膚の痛みと神経障害の疾患((Hirose et al, Pain Pract. 2016, 16(2):175-82; Wang et al, J Neurosci. 2009, 29(17):5508-15)を含む皮膚の病状又は状態の治療又は予防に使用することができる。
【0161】
特に、Trk、特にTrkA、B、及びCによって媒介される状態又は障害には、特に限定されるものではないが、以下が含まれる:掻痒とかゆみの疾患;皮膚の自己免疫疾患;皮膚の痛みと神経障害の疾患;及び皮膚炎の疾患。
【0162】
掻痒とかゆみの疾患には、特に限定されるものではないが、以下が含まれる:皮膚疾患、湿疹性;皮膚炎、アトピー性;湿疹;皮膚炎、接触性;皮膚炎、アレルギー性接触;皮膚炎、刺激性;皮膚炎、光アレルギー;皮膚炎、光毒性;乾癬;掻痒症;肛門掻痒症;掻痒、遺伝性限局性;シェーグレン症候群に関連する掻痒;特発性掻痒;多発性硬化症の掻痒;結節性痒疹;腕橈骨掻痒;急性のかゆみ;慢性のかゆみ;糖尿病掻痒;鉄欠乏性貧血掻痒;真性多血症掻痒;移植片対宿主病;尿路性掻痒;胆汁うっ滞性掻痒;妊娠に伴う掻痒性蕁麻疹様丘疹;妊娠性類天疱瘡;老人性掻痒;HIV関連掻痒;帯状疱疹;耳性帯状疱疹;幼虫移行症;体部白癬;スナノミ症;発疹;Fox-Fordyce病;皮膚病、寄生虫;皮膚病、細菌;皮膚T細胞;リンパ腫関連掻痒;セザリー症候群;菌状息肉腫;結腸直腸癌;黒色腫;頭頸部癌;薬疹掻痒(医原性);薬物反応;蕁麻疹;振動性蕁麻疹;物理的な蕁麻疹;家族性寒冷蕁麻疹;アレルギー性蕁麻疹;皮膚描記症;疱疹状皮膚炎;グローバー病。
【0163】
皮膚の自己免疫疾患には、特に限定されるものではないが、以下が含まれる:皮膚及び結合組織の自己免疫疾患;皮膚病変を伴う自己免疫疾患;自己免疫性水疱性皮膚疾患;類天疱瘡、水疱性。
【0164】
皮膚の痛みと神経障害の病気には、特に限定されるものではないが、以下が含まれる:糖尿病性ニューロパチー;神経痛;痛みを伴う神経障害;神経圧迫症候群;神経炎;感覚性末梢神経障害;アルコール性ニューロパシー;神経根症;複合性局所疼痛症候群;薬物による多発性神経障害;足底神経病変;多発性神経根障害;坐骨神経障害;三叉神経痛。
【0165】
皮膚炎の病気には;特に限定されるものではないが;以下が含まれる:皮膚疾患、湿疹性;皮膚炎、アトピー性;湿疹;皮膚炎、接触性;皮膚炎、アレルギー性接触;皮膚炎、刺激性;皮膚炎、光アレルギー;皮膚炎、光毒性;慢性刺激性手湿疹;皮膚炎、職業性;グラスファイバー皮膚炎;皮膚炎、ウルシ類;湿疹、発汗異常;まぶたの湿疹性皮膚炎;まぶたのアレルギー性接触皮膚炎;手足の皮膚炎;趾皮膚炎;皮膚炎、剥離性;放射線皮膚炎;疱疹状皮膚炎;若年性疱疹状皮膚炎;自己免疫性プロゲステロン皮膚炎;皮膚炎、脂漏性;苔癬状粃糠疹;眼瞼炎;貨幣状湿疹;乾癬的要素を伴う脂漏症様皮膚炎;HTLV-1関連感染皮膚炎;乾癬;汎発性膿疱性乾癬;皮膚疾患、丘疹性;類乾癬;角化症;角質増殖症、表皮溶解性;皮膚サルコイドーシス;皮膚萎縮;紅斑性皮膚症;好中球減少症を伴う多形皮膚萎縮症;多形紅斑;好酸球増加症を伴う血管リンパ様過形成;線条掌蹠角化症3;尋常性痒疹;層状魚鱗癬;苔癬病;扁平苔癬;光線性扁平苔癬;扁平苔癬、口腔;毛孔性扁平苔癬;硬化性萎縮性苔癬;光沢苔癬;硬化性苔癬;慢性単純性苔癬;強皮症、限定性;先天性魚鱗癬及び硬化性角化症を伴う線状角化症;紅斑性皮膚炎、網状;丘疹性蹠角化症;皮膚病、遺伝性;常染色体劣性先天性魚鱗癬;常染色体劣性先天性魚鱗癬1;常染色体劣性先天性魚鱗癬2;常染色体劣性先天性魚鱗癬3;常染色体劣性先天性魚鱗癬4A;常染色体劣性先天性魚鱗癬5;常染色体劣性先天性魚鱗癬6;常染色体劣性先天性魚鱗癬7;常染色体劣性先天性魚鱗癬8;常染色体劣性先天性魚鱗癬9;常染色体劣性先天性魚鱗癬10;常染色体劣性先天性魚鱗癬11。
【0166】
より具体的には、Trk、特にTrkA、B、及びCによって媒介される状態又は障害は、アトピー性皮膚炎であり得る。
【0167】
本発明による治療は、対症療法的又は予防的であり得る。
【0168】
従って、さらなる態様によれば、本発明は、Trk、特にTrkA、B、及びCによって媒介される状態又は障害を治療又は予防するための本発明の局所用医薬組成物を提供する。状態又は障害は皮膚炎、好ましくはアトピー性皮膚炎である。
【0169】
さらなる態様によれば、本発明は、Trk、特にTrkA、B、及びCによって媒介される状態又は障害の予防又は治療のための医薬の製造における、式(I)の化合物の使用を提供し、ここで、医薬は、本発明の局所用医薬組成物を含む。状態又は障害は皮膚炎、好ましくはアトピー性皮膚炎である。
【0170】
さらなる態様によれば、本発明は、Trk、特にTrkA、B、及びCによって媒介される状態又は障害を予防又は治療するための方法を提供し、これは、それを必要とする被験体(すなわちヒト)に、本発明の局所用医薬組成物の治療有効量を投与することを含む。状態又は障害は皮膚炎、好ましくはアトピー性皮膚炎である。
【0171】
本明細書で言及される「障害」又は「疾患」は、例えば、感染又は後天性若しくは先天性の遺伝的欠陥に起因し得る、正常な生物と比較して症候性又は無症候性の生物における根本的な病理学的障害を指す。
【0172】
「状態」とは、疾患、例えば体内の毒素、薬物、汚染物質などの部分の存在により発生したものではない、生物の心又は体の状態を指す。
【0173】
任意の疾患又は障害の「治療する」、「治療している」、又は「治療」という用語は、1つの実施態様において、疾患又は障害を改善すること(すなわち、疾患又はその臨床症状の少なくとも1つの進展を遅らせるか停止するか又は低減すること)を指す。別の実施態様において「治療する」、「治療している」、又は「治療」は、患者が認識できないものを含む少なくとも1つの物理的パラメータを緩和又は改善することを指す。さらに別の実施態様において「治療する」、「治療している」、又は「治療」は、疾患又は障害を、物理的(例えば、識別可能な症状の安定化)、生理学的(例えば、物理的パラメータの安定化)、又はその両方を調節することを指す。さらに別の実施態様において、「治療する」、「治療している」、又は「治療」は、疾患又は障害の発症又は進展又は進行を予防又は遅延させることを指す。
【0174】
状態又は障害の「予防」は、状態又は障害の1つ以上の症状の出現又は程度によって評価されるように、状態又は障害の発症を遅延又は防止するか、又はその重症度を軽減することを指す。
【0175】
本明細書で使用される「被験体」という用語は動物を指す。通常、動物は哺乳類である。被験体はまた、例えば霊長類(例えばヒト)、牛、羊、山羊、馬、犬、猫、ウサギ、ラット、マウス、魚、鳥などを指す。被験体は霊長類又はヒトであることが好ましく、より好ましくは被験体はヒトである。
【0176】
本明細書で使用される場合、被験体は、そのような被験体が治療から生物学的、医学的に、又は生活の質において利益を得る場合、そのような治療を「必要としている」。
【0177】
局所用医薬組成物の「治療有効量」という用語は、被験体の生物学的又は医学的応答、例えば、酵素又はタンパク質活性の低下又は阻害を誘発するか、又は症状を改善する、状態を緩和する、疾患の進行を減速させる又は遅らせる、又は疾患を予防する、組成物の量を指す。1つの非限定的な実施態様において「治療有効量」という用語は、被験体に投与されたときに、TrK、特にTrkA、B、及びCによって媒介される状態又は障害を、少なくとも部分的に緩和、阻害、予防、及び/又は改善するのに有効である本発明の局所用医薬組成物の量を指す。別の非限定的な実施態様において「治療有効量」という用語は、細胞、又は組織、又は非細胞性生物学的材料、又は培地に投与されたときに、Trk活性、特にTrkA、B、及びCを少なくとも部分的に阻害するのに効果的である本発明の局所用医薬組成物の量を指す。
【0178】
本発明の1つの実施態様において、Trk、特にTrkA、B、及びCによって媒介される状態又は障害は、掻痒症及びかゆみ;皮膚の自己免疫疾患;皮膚の痛みと神経障害の疾患;及び皮膚炎の疾患から選択される。
【0179】
特に好適な実施態様において、Trk、特にTrkA、B、及びCによって媒介される状態又は障害は、アトピー性皮膚炎である。
【0180】
上述したように、Trk、特にTrkA、B、及びCを阻害する薬剤は、様々な臨床用途を有し、従って、本発明のさらなる態様は、本発明の薬剤を含む医薬組成物を提供する。これらの薬剤を医薬として含む局所用医薬組成物の使用は、本発明のさらなる態様を形成する。
【0181】
医薬として使用するための、特に、本明細書に記載の状態などの、Trk、特にTrkA、B、及びCによって媒介される障害又は状態を治療又は予防する際に使用するための、本明細書で特許請求される局所用医薬組成物、及びそのような組成物を使用する治療又は予防方法、及びそのような障害又は状態を治療又は予防するための医薬の調製における前記薬剤の使用は、本発明のさらなる態様を形成する。
【0182】
本明細書で言及される「薬学的に許容される」とは、組成物の他の成分と適合性であり、かつ受容者に対して生理学的に許容される成分を指す。
【0183】
薬学的に許容される賦形剤とは、毒性がなく、生物学的に許容され、本来は被験体への投与に生物学的に適した物質、例えば、薬理学的組成物に添加されるか、又は薬剤の投与を促進するためのビヒクル、担体、又は希釈剤として使用され、及びそれと適合性がある不活性物質を指す。上記の賦形剤系の賦形剤に加えて、本発明の局所用医薬組成物に含まれ得る追加の賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、及び様々な種類のデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、及びポリエチレングリコールが含まれる。
【0184】
上記にもかかわらず、本発明による局所用医薬組成物は、容易に入手可能な成分を使用して従来の方法で製剤化することができる。従って、医薬有効成分は、任意選択的に他の活性物質と一緒に取り込まれる。
【0185】
本発明の局所用医薬組成物は、有効成分としての本発明の化合物が分解する速度を低下させる1種以上の薬剤を含み得る。本明細書で「安定剤」と呼ばれるそのような薬剤には、特に限定されるものではないが、アスコルビン酸などの抗酸化剤、pH緩衝液、又は塩緩衝液などが含まれる。これらは、上記のものに追加される。
【0186】
本発明の局所用医薬組成物は、1種以上の他の治療薬と同時に、又はその前又は後に投与することができる。本発明の局所用医薬組成物は、別々に、同じか又は異なる投与経路で、又は他の薬剤と同じ局所用医薬組成物で一緒に投与することができる。
【0187】
1つの実施態様において、本発明は、本発明の局所用医薬組成物と少なくとも1種の他の治療薬を、治療において同時に、別々に、又は連続的に使用するための組み合わせ調製物として提供する。1つの実施態様において、治療は、Trk、特にTrkA、B、及びCによって媒介される状態又は障害の治療である。組み合わせ調製物として提供される生成物は、本発明の局所用組成物と他の治療薬を同じ組成物中に、又は本発明の局所用医薬組成物と他の治療薬を別個の形態、例えばキットの形態で含む。
【0188】
1つの実施態様において、本発明は、本発明の局所用医薬組成物と別の治療薬を提供する。
【0189】
1つの実施態様において、本発明は、2つ以上の別個の医薬組成物を含むキットを提供し、その少なくとも1つは、本発明の局所用医薬組成物である。1つの実施態様において、キットは、前記組成物を別々に保持するための手段、例えば容器、分割された瓶、又は分割されたホイルパケットを含む。
【0190】
本発明のキットは、異なる剤形、例えば、経口及び局所投与剤形を投与するために、異なる投与間隔で別個の組成物を投与するために、又は互いに別個の組成物を力価測定するために、使用することができる。コンプライアンスを補助するために、本発明のキットは、典型的には投与のための指示書を含む。
【0191】
本発明の併用療法において、すなわち、局所用医薬組成物と他の治療薬の投与を含むものは、同じか又は異なる製造業者によって製造及び/又は製剤化され得る。さらに、本発明の局所用医薬組成物及び他の治療薬は、:(i)併用生成物を医師に渡す前に(例えば、本発明の局所用医薬組成物と他の治療薬を含むキットの場合);(ii)投与直前に医師自身によって(又は医師の指導下で);(iii)患者自身で、例えば本発明の局所用医薬組成物と他の治療薬の連続投与中に、併用療法物にまとめることができる
【0192】
従って本発明は、Trk、特にTrkA、B、及びCによって媒介される状態又は障害を治療するための本発明の局所用医薬組成物の使用を提供し、ここでこの医薬は、別の治療薬と共に投与するために調製される。本発明はまた、Trk、特にTrkA、B、及びCによって媒介される状態又は障害を治療するための別の治療薬の使用を提供し、ここでこの医薬は、本発明の局所用医薬組成物と共に投与される。
【0193】
組み合わせは、有効性を増加させ(例えば、組合わせ中に本発明による活性薬剤の効力又は有効性を増強する化合物を含めることによって)、1種以上の副作用を減少させ、又は本発明の活性薬剤の必要な用量を減少させるのに役立つ可能性がある。
【0194】
本発明はまた、Trk、特にTrkA、B、及びCによって媒介される状態又は障害を治療する方法で使用するための本発明の局所用医薬組成物を提供し、ここで本発明の局所用医薬組成物は、別の治療薬との投与用に調製される。本発明はまた、Trk、特にTrkA、B、及びCによって媒介される状態又は障害を治療する方法で使用するための別の治療薬を提供し、ここで別の治療薬は、本発明の局所用医薬組成物との投与用に調製される。本発明はまた、Trk、特にTrkA、B、及びCによって媒介される状態又は障害を治療する方法で使用するための本発明の局所用医薬組成物を提供し、ここで本発明の局所用医薬組成物は、別の治療薬と共に投与される。本発明はまた、Trk、特にTrkA、B、及びCによって媒介される状態又は障害を治療する方法で使用するための別の治療薬を提供し、ここで別の治療薬は、本発明の局所用医薬組成物と共に投与される。
【0195】
本発明はまた、Trk、特にTrkA、B、及びCによって媒介される状態又は障害を治療するための本発明の局所用医薬組成物の使用を提供し、ここで被験体は、以前に(例えば24時間以内に)別の治療薬で治療されている。本発明はまた、Trk、特にTrkA、B、及びCによって媒介される状態又は障害を治療するための別の治療薬の使用を提供し、ここで被験体は、以前に(例えば24時間以内に)本発明の局所用医薬組成物で治療されている。
【0196】
1つの実施態様において、本発明の局所用医薬組成物は、1種以上の他の治療活性薬剤と一緒に投与される。従って、例えば本発明の局所用医薬組成物は、アトピー性皮膚炎の治療のための1種以上のさらなる薬剤、例えば1種以上の局所及び/又は経口コルチコステロイド;1種以上の抗ヒスタミン薬;1種以上の抗生物質;1種以上の局所カルシニューリン阻害剤、例えばタクロリムス及び/又はピメクロリムス;1種以上の全身性免疫抑制剤、例えばシクロスポリン、メトトレキサート、インターフェロンガンマ-1b、ミコフェノール酸モフェチル、及び/又はアザチオプリン;1種以上のPDE4阻害剤、例えばクリサボロール;1種以上のモノクローナル抗体、例えばデュピルマブ、と組み合わせて使用することができる。
【0197】
当業者は、本発明の局所用医薬組成物が、被験体、特にヒト被験体に投与することができ、ここで被験体は、Trk、特にTrkA、B、及びCによって媒介される状態又は障害、例えばアトピー性皮膚炎に対して光線療法で治療されていることを理解するであろう。本発明の局所用医薬組成物はまた、被験体、特にヒト被験体に投与することができ、ここで被験体は、Trk、特にTrk、特にTrkA、B、及びCによって媒介される状態又は障害、例えばアトピー性皮膚炎に対して以前に(例えば24時間以内に)光線療法で治療されている。被験体、特にヒト被験体はまた、Trk、特にTrkA、B、及びCによって媒介される状態又は障害、例えばアトピー性皮膚炎に対して治療されることもでき、ここで本発明の局所用医薬組成物は以前に(例えば24時間以内に)被験体に投与されている。
【0198】
従って、本発明はさらなる態様として、本発明の局所用医薬組成物と、以下のようなアトピー性皮膚炎の治療のための1種以上のさらなる薬剤との組み合わせを含む:1種以上の局所及び/又は経口コルチコステロイド;1種以上の抗ヒスタミン薬;1種以上の抗生物質;1種以上の局所カルシニューリン阻害剤、例えばタクロリムス及び/又はピメクロリムス;1種以上の全身性免疫抑制剤、例えばシクロスポリン、メトトレキサート、インターフェロンガンマ-1b、ミコフェノール酸モフェチル、及び/又はアザチオプリン;1種以上のPDE4阻害剤、例えばクリサボロール;1種以上のモノクローナル抗体、例えばデュピルマブ;及び光線療法。
【0199】
インビトロアッセイ
式(I)の化合物のTrk阻害活性を決定するための適切なアッセイは、本明細書で以下に詳述される。
【0200】
ヒトTRK受容体の小分子化合物のIC50を決定するために、CisbioのHTRF(登録商標)KinEASE(商標)キナーゼキットを使用した。アッセイは、少量の黒色の384ウェルプレートで実施した。
【0201】
組換えヒトTRK酵素(Invitrogen)を、化合物(FACを10μMとして用いる11ポイントの用量応答)の存在下又は非存在下で、23℃で30分間インキュベートした。キナーゼ反応は、酵素(NTRK1-4nM、NTRK2-1nM、NTRK3-10nM)と基質(1μM)を含む混合物に、ATPを添加することによって開始された。キナーゼ反応を23℃で10~45分間継続させた後、EDTA、Eu3+-クリプテートで標識したTK-Ab(1:200希釈)、及びストレプトアビジン-XL665(250nM)を含む検出ミックス(販売業者から提供された)を添加して、キナーゼ反応を停止した。アッセイプレートをこの検出ミックスで23℃で60分間インキュベートした。得られたTR-FRETシグナルは、665/620nmでの蛍光比として計算され、Envisionで読み取られ、化合物の存在下又は非存在下でペプチドのリン酸化レベルに比例していた。
【0202】
プレートの均一性は、Z’値[1-{3*(SDHPE+SDZPE)/(ZPE-HPE)}]で確認された。パーセント(%)効果、すなわち化合物の阻害は、各アッセイプレート内の陽性対照(HPE)及び陰性対照(ZPE)ウェル中のシグナルと比較して計算された。標準化合物のエンドポイント値%阻害は、各実験で品質管理手段として評価された。IC50は、Graphpad prism5でそれぞれの用量における化合物阻害をプロットすることによって、4パラメーターのロジスティック曲線フィッティングを使用して決定された。
【0203】
上記のアッセイを使用すると、式(I)の化合物はすべて、1μM未満のIC50値として表されるTrk阻害活性を示す。好ましい例は、200nM未満のIC50値を有し、特に好ましい例は、50nM未満のIC50値を有する。実施例1、2、3、4、5、6及び7の化合物のIC50値を以下の表1に示す。
【0204】
【表1】
【実施例
【0205】
以下の実施例を参照すると、好適な実施態様の化合物は、本明細書に記載の方法、又は当技術分野で知られている他の方法を使用して合成される。
【0206】
好適な実施態様による有機化合物は、互変異性の現象を示し得ることが理解されるべきである。本明細書内の化学構造は、可能な互変異性形態の1つのみしか表すことができず、従って好適な実施態様は、記載された構造の任意の互変異性形態を包含することを理解されたい。
【0207】
本発明は、例示のために本明細書に記載された実施態様に限定されず、上記の開示の範囲内に入るすべてのそのような形態を包含することを理解するべきである。
【0208】
一般的な条件:
以下の実施例は、本発明を例示することを意図しており、本発明を制限するものと解釈されるべきではない。温度は摂氏度で示される。特に断りのない限り、すべての蒸発は減圧下で行われる。最終生成物、中間体、及び出発物質の構造は、標準的な分析方法、例えば微量分析及び分光学的特性分析、例えばMS、IR、NMRによって確認される。使用される略語は、当技術分野で常用されているものである。定義されていない場合、それらの用語は一般的に受け入れられている意味を有する。
【0209】
本明細書で使用されている略語と頭字語には、次のものがある。
【0210】
【表2-1】
【表2-2】
【0211】
以下の実施例を参照して、好適な実施態様の化合物は、本明細書に記載の方法、又は当技術分野で知られている他の方法を使用して合成された。
【0212】
好適な実施態様の様々な出発物質、中間体、及び化合物は、適宜、沈殿、濾過、結晶化、蒸発、蒸留、及びクロマトグラフィーなどの従来の技術を使用して、単離及び精製することができる。特に他に明記しない限り、すべての出発材料は商業的供給業者から入手され、さらに精製することなく使用される。塩は、既知の塩形成手順によって化合物から調製することができる。
【0213】
好適な実施態様による有機化合物は、互変異性の現象を示し得ることが理解されるべきである。本明細書内の化学構造は、可能な互変異性形態の1つのみしか表すことができず、従って好適な実施態様は、記載された構造の任意の互変異性形態を包含することを理解されたい。
【0214】
1H核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、すべての場合で提案された構造と一致していた。特徴的な化学シフト(δ)は、テトラメチルシラン(1H-NMRの場合)からの100万分の1の低磁場で、主要なピークの指定に従来の略語を使用して示される:例えば、s、一重項、d、二重項、t、三重項、q、四重項、m、多重項、br、ブロード。一般的な溶媒には、次の略語が使用されている:CDCl3、重水素化クロロホルム;DMSO-d6、ヘキサ重水素化ジメチルスルホキシド;及びMeOD-d4、重陽子-メタノール。適宜、互変異性体をNMRデータ内に記録することができ;及び、交換可能な陽子の中には見えないものもある。
【0215】
質量スペクトルMS(m/z)は、電子噴霧イオン化(ESI)又は大気圧化学イオン化(APCI)のいずれかを使用して記録された。関連する場合及び特に他に明記しない限り、提供されるm/zデータは、同位体19F、35Cl、79Br、及び127Iのものである。
【0216】
分取TLC又はシリカゲルクロマトグラフィーが使用されている場合、当業者は、溶媒の任意の組み合わせを選択して、所望の化合物を精製することができる。
本発明の局所用医薬組成物において有用な式(I)の例示的な化合物には、以下が含まれる:
【0217】
実施例1
(Z)-N'-シアノ-6-[(2R)-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]-N-[(3R)-オキサン-3-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド
【化11】
【0218】
二塩化水銀(144mg、0.530mmol)を一度に加え、続いてシアナミド(62mg、1.48mmol)を、DMF(2mL)中の6-[(2R)-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]-N-[(3R)-オキサン-3-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボチオアミド(調製物27、100mg、0.212mmol)の溶液にN2下で加え、反応物を室温で16時間撹拌した。混合物を真空下で濃縮し、残留物をDCM(10mL)に再懸濁し、Dicalite(登録商標)のパッドを通して濾過し、DCM(20mL)中の20%MeOHを用いてリンスした。濾液を真空下で濃縮し、ヘプタン:EtOAc:MeOH(80:20:0から0:100:0から0:90:10)で溶出するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製した。生成物をMeOHで粉砕して、標題化合物を無色の固体として得た(30mg、30%)。
LCMS m/z = 480.2 [M+H]+
1H NMR (DMSO-d6, 400MHz): δ 1.55-1.57 (m, 1H), 1.80-2.02 (m, 5H), 2.39-2.50 (m, 5H), 3.44-3.73 (m, 3H), 3.76-3.87 (m, 1H), 3.94-4.04 (m, 1H), 4.07-4.20 (m, 1H), 5.26 (d, 1H), 6.40 (br s, 1H), 6.92 (dd, 1H), 7.16 (dd, 1H), 7.41 (dd, 1H), 7.97 (d, 1H), 8.70 (s, 1H), 9.75 (br s, 1H).
【0219】
実施例2~実施例3
【化12】
【0220】
以下の表の化合物は、実施例1に記載の方法を使用して適切なチオアミドから調製された。
【0221】
【表3】
【0222】
実施例4
(Z)-N'-シアノ-N-エチル-6-[(2R,4S)-4-フルオロ-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド
【化13】
【0223】
酢酸銀(33mg、0.18mmol)を、無水MeOH(2mL)中のN-エチル-6-[(2R,4S)-4-フルオロ-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボチオアミド(調製物30、86mg、0.20mmol)及びシアナミド(42mg、0.99mmol)の攪拌溶液にN2下で加えた。混合物を室温で2時間撹拌し、追加の酢酸銀(33mg、0.18mmol)を加え、反応フラスコをアルミホイルで覆うことにより光から保護した。反応物をさらに48時間撹拌し、得られた懸濁液を濾過し、濾液を蒸発乾固させた。残留物を、DCM:MeOH(96:4)で溶出するシリカゲルのカラムクロマトグラフィー、次にMeCN:水(5:95から95:5)で溶出する逆相カラムクロマトグラフィーにより精製して、標題化合物を無色の固体として得た(35mg、40%)。
1HNMR (MeOD-d4, 400 MHz): δ 1.25 (t, 3H), 2.08-2.24 (m, 1H), 2.58 (s, 3H), 3.00-3.10 (m, 1H), 3.48-3.54 (m, 2H), 4.16-4.32 (m, 2H), 5.39-5.59 (m, 2H), 6.92-7.10 (m, 3H), 7.40 (dd, 1H), 7.86 (d, 1H), 8.72 (s, 1H)
LCMS m/z = 442.0 [M+H]+
【0224】
実施例5
(Z)-N-ブチル-N'-シアノ-6-[(2R,4S)-4-フルオロ-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド
【化14】
【0225】
標題化合物を、無色の固体として43%の収率で、N-ブチル-6-[(2R,4S)-4-フルオロ-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボチオアミド(調製物32)から、実施例4に記載の方法に従って得た。
LCMS m/z = 470 [M+H]+
1H-NMR (MeOD-d4, 396 MHz) : δ 1.01 (t, 3H), 1.40-1.50 (m, 2H), 1.54-1.71 (m, 2H), 2.10-2.27 (m, 1H), 2.57 (s, 3H), 3.02-3.12 (m, 1H), 3.48 (t, 2H), 4.18-4.30 (m, 2H), 5.39-5.58 (m, 2H), 6.89-7.09 (m, 3H), 7.41 (dd, 1H), 7.83 (d, 1H), 8.70 (s, 1H).
【0226】
実施例6
(Z)-N'-シアノ-N-シクロヘキシル-6-[(2R,4S)-4-フルオロ-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド
【化15】
【0227】
標題化合物を、淡黄色固体として4%の収率で、N-シクロヘキシル-6-[(2R,4S)-4-フルオロ-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボチオアミド(調製物33)から、実施例4に記載の方法に従って得た。
LCMS m/z =496 [M+H]+
1HNMR (MeOD-d4, 400 MHz): δ 1.24-1.57 (m, 5H), 1.67-1.81 (m, 1H), 1.82-1.96 (m, 2H), 2.08-2.34 (m, 3H), 2.58 (s, 3H), 2.88-3.20 (m, 1H), 3.95-4.26 (m, 3H), 5.39-5.66 (m, 2H), 6.64 (d, 1H), 6.96-7.16 (m, 2H), 7.44 (dd, 1H), 7.80 (d, 1H), 8.66 (s, 1H).
【0228】
実施例7
(Z)-N'-シアノ-6-[(2R)-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]-N-[(3-ヒドロキシフェニル)メチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド
【化16】
【0229】
TEAF(73mg、0.49mmol)を、MeCN(0.5mL)中の(Z)-N-({3-[(tert-ブチルジメチルシリル)メチル]フェニル}メチル)-N'-シアノ-6-[(2R)-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド(調製物34、60mg、0.097mmol)の溶液に一度に加え、そして反応物を50℃で4時間撹拌した。冷却した混合物を真空下で蒸発させ、残留物をEtOAc(15mL)で希釈し、水(3×15mL)で洗浄し、有機相を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、そして蒸発させた。残留物を、DCM:MeOH(99:1から92:8)で溶出するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製し、生成物を水で粉砕して、標題化合物を無色の固体として得た(16mg、33%)。
LCMS m/z = 502.0 [M+H]+
1H NMR (MeOD-d4, 400MHz): δ 1.89-1.99 (m, 3H), 2.42-2.48 (m, 4H), 3.10-3.30 (m, 2H), 4.53-4.58 (m, 2H), 5.33 (d, 1H), 6.67-6.99 (m, 6H), 7.15-7.25 (m, 2H), 7.80-7.87 (m, 1H), 8.90 (s, 1H).
【0230】
調製物1
4-フルオロ-2-ヨード-1-(メチルスルファニル)ベンゼン
【化17】
【0231】
2-ブロモ-4-フルオロ-1-(メチルスルファニル)ベンゼン(0.5g、2.26mmol)を、無水THF(80mL)中の活性化Mg削り屑(1.92g、79mmol)の懸濁液にN2(g)下で滴加し、グリニャール形成が始まるまで反応物を温まった。残りの2-ブロモ-4-フルオロ-1-(メチルスルファニル)ベンゼン(17g、76.89mmol)を滴加して温度を50℃未満に維持し、添加の完了後、反応物を室温に冷却し、そして16時間攪拌した。この溶液をカニューレを介して、温度を10℃未満に維持しながら、無水THF(80mL)中のヨウ素(24.11g、94.99mmol)の氷冷溶液に加えた。反応物を0℃で1時間、室温で1時間撹拌し、次に氷冷した飽和NH4Cl溶液(300mL)に注いだ。混合物を真空下で濃縮して有機溶媒を除去し、次にEt2O(3×300mL)で抽出した。合わせた有機層を飽和Na223溶液、無水(Na2SO4)で洗浄し、及び真空下で濃縮して、標題化合物を褐色の油状物として得た(21.5g、83%)。
1H NMR (CDCl3, 396 MHz): δ 2.45 (s, 3H), 7.08-7.11 (m, 2H), 7.55 (dd, 1H).
【0232】
調製物2
2-(1,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル)(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-1,2-ジカルボン酸1-tert-ブチル
【化18】
【0233】
EtOAc(12.5mL)中の(2S,4S)-1-(tert-ブトキシカルボニル)-4-フルオロピロリジン-2-カルボン酸(1.07g、4.6mmol)の溶液を、EtOAc(12.5mL)中のN-ヒドロキシフタルイミド(0.75g、4.6mmol)及びN,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.95g、4.6mmol))の撹拌混合物にN2(g)下で加え、反応物を室温で4時間撹拌した。混合物をシリカのプラグを通して濾過し、EtOAc(50mL)で洗浄し、濾液を真空下で濃縮した。得られた油状物をEtOAc(20mL)に再溶解し、飽和NaHCO3水溶液(4×30mL)で洗浄し、有機層を乾燥させ(MgSO4)、濾過し、減圧下で蒸発させて、標題化合物を白色の固体として得た(1.55g、89%)。
LCMC m/z = 278.9 [M-Boc]+
【0234】
調製物3
(2R,4S)-4-フルオロ-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
【化19】
【0235】
二臭化ニッケルエチレングリコールジメチルエーテル錯体(0.09g、0.291mmol)及び4,4'-ジ-tert-ブチル-2,2'-ビピリジン(0.08g、0.298mmol)をN2(g)でフラッシュし、無水DMA(4mL)を加えた。得られた青緑色混合物をN2(g)下で15分間撹拌し、次に4-フルオロ-2-ヨード-1-(メチルスルファニル)ベンゼン(調製物1、0.51g、1.49mmol)、2-(1,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル)(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-1,2-ジカルボン酸1-tert-ブチル(調製物2、0.62g、1.64mmol)、及び亜鉛末(0.251g、3.84mmol)を加え、反応物を28℃で17時間撹拌した。反応混合物をシリカのプラグを通して濾過し、Et2O(75mL)で洗浄した。濾液を食塩水(4×75mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、真空下で濃縮した。残留物を、ヘプタン:EtOAc(100:0から90:10)で溶出するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製して、標題化合物を黄色の油状物として得た(0.24g、36%)。
LCMS m/z = 230.1 [M-Boc]+
【0236】
調製物4
N-[(2R)-2-[(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ]-4-[3-フルオロ-5-(メチルスルファニル)フェニル]-4-ヒドロキシブチル]カルバミン酸tert-ブチル
【化20】
【0237】
無水THF(110mL)中の3-ブロモ-5-フルオロ-1-(メチルスルファニル)ベンゼン(38.0g、146mmol)の溶液20mLを、N2(g)下の無水THF(110mL)中の活性化Mg削り屑(10.7g、438mmol)の撹拌懸濁液に滴加し、グリニャール形成が始まるまで反応物を温めた。次に、残りの3-ブロモ-5-フルオロ-1-(メチルスルファニル)ベンゼン溶液を、温度を50℃未満に維持するように加えた。添加の完了後、反応物を室温まで冷却し、さらに1時間撹拌した。この溶液をカニューレを介して、無水THF(220mL)中の(R)-4-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-2-オキソピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(US9701681、実施例6、38.4g、122mmol)の-20℃溶液に加えて、温度を-10℃未満に維持した。混合物を-50℃で1時間、0℃で1時間撹拌し、次に-20℃に再冷却した。MeOH(150mL)を滴加し、続いてNaBH4(6.91g、182mmol)を5回に分けて加え、反応物を-15℃で30分間、次に室温で3.5時間撹拌した。混合物を氷冷した飽和NH4Cl溶液(150mL)に加え、次に真空下で濃縮して有機溶媒を除去し、EtOAc(3×150mL)で抽出した。合わせた有機相を乾燥させ(MgSO4)、減圧下で蒸発させ、粗生成物をヘプタン:EtOAc(95:5から60:40)で溶出するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製して、標題化合物を淡黄色の油状物として得た(35.8g、64%)。
LCMS m/z = 342.4 [M-Boc-H2O]+
【0238】
調製物5
(4R)-2-[3-フルオロ-5-(メチルスルファニル)フェニル]-4-ヒドロキシピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
【化21】
【0239】
Et3N(33mL、237mmol)、続いて塩化メシル(9.10mL、117mmol)を、無水DCM(210mL)中のN-[(2R)-2-[(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ]-4-[3-フルオロ-5-(メチルスルファニル)フェニル]-4-ヒドロキシブチル]カルバミン酸tert-ブチル(調製物4、35.8g、77.9mmol)の氷冷溶液に滴加し、反応物を2時間撹拌した。混合物を氷冷水(140mL)に注ぎ、DCM(3×70mL)で抽出し、合わせた有機抽出物を乾燥させ(MgSO4)、真空下で濃縮した。
【0240】
残留物をTHF(140mL)に溶解し、TBAF(THF中1M、110mL、110mmol)を加え、反応物を室温で2時間撹拌した。次にこれを冷水(200mL)に注ぎ、真空下で濃縮して有機溶媒を除去し、EtOAc(3×150mL)で抽出した。合わせた有機相を乾燥させ(MgSO4)、減圧下で蒸発させ、ヘプタン:EtOAc(95:5から0:100)で溶出するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製して、標題化合物を淡黄色の油状物として得た(23.7g、93%)。
LCMS m/z = 228 [M-Boc]+
【0241】
調製物6
(2R,4S)-4-フルオロ-2-[5-フルオロ-3-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
【化22】
【0242】
DAST(16.9mL、139mmol)を、無水DCM(290mL)中の(4R)-2-[3-フルオロ-5-(メチルスルファニル)フェニル]-4-ヒドロキシピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(調製物5、22.74g、69.5mmol)の-5℃溶液に滴加し、内部温度を0℃未満に維持した。反応混合物を室温で2.5時間撹拌し、次に氷冷した飽和NaHCO3水溶液(250mL)に注意深く注いだ。この混合物をDCM(3×200mL)で抽出し、合わせた有機層を乾燥させ(MgSO4)、真空下で濃縮し、ヘプタン:TBME(100:0から70:30)で溶出するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製して、標題化合物を淡黄色の油状物として得た(4.2g、18%)。
1H NMR (CDCl3, 400MHz): δ 1.25 (s, 6H), 1.46 (s, 3H), 2.20-2.36 (m, 1H), 2.45 (s, 3H), 2.48-2.67 (m, 1H), 3.76 (dd, 1H), 3.97 (dd, 1H), 4.81-5.08 (m, 1H), 5.20-5.26 (m, 1H), 6.70-6.76 (m, 1H), 6.76-6.80 (m, 1H), 6.87-6.90 (m, 1H).
【0243】
調製物7
5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)ベンズアルデヒド
【化23】
【0244】
ヘキサン中のn-BuLi(2.5M、0.4mL、1mmol)を、-78℃の無水THF(10mL)中の2-ブロモ-4-フルオロ-1-(メチルスルファニル)ベンゼン(221.0mg、1mmol)の溶液にN2(g)下で滴加して、温度を-70℃未満に維持した。DMF(80.0mg、1.1mmol)を加え、反応物を-78℃でさらに30分間撹拌した。得られた混合物を氷冷した飽和NH4Cl水溶液(10mL)の添加によりクエンチし、室温に温め、EtOAc(10mL)で抽出した。有機抽出物を飽和食塩水(10mL)で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、真空下で濃縮し、ヘプタン:EtOAc(95:5)で溶出するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製して、標題化合物を無色の油状物として得た(88mg、52%)。
1H NMR (CDCl3, 400MHz): δ 2.51 (s, 3H), 7.25-7.30 (m, 1H), 7.35-7.39 (m, 1H), 7.52-7.56 (m, 1H), 10.35 (s, 1H).
【0245】
調製物8
(R)-N-[(1Z)-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]メチリデン]-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド
【化24】
【0246】
Cs2CO3(300.0mg、0.92mmol)を、DCM(15mL)中の5-フルオロ-2-(メチルチオ)ベンズアルデヒド(調製物7、130.0mg、0.76mmol)及び(R)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(93.0mg、0.76mmol)の溶液に添加し、反応物を室温で18時間撹拌した。水(15mL)を注意深く加え、相を分離し、有機層を乾燥させ(MgSO4)、減圧下で蒸発させた。残留物を、ヘプタン:EtOAc(95:5から85:15)で溶出するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製して、標題化合物を黄色の油状物として得た(130mg、62%)。
LCMS m/z = 274.1 [M+H]+
【0247】
調製物9
(R)-N-[(1R)-3-(1,3-ジオキサン-2-イル)-1-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]プロピル]-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド
【化25】
【0248】
無水THF(5mL)中の2-(2-ブロモエチル)-1,3-ジオキソラン(1.81g、10mmol)の溶液(0.5mL)を、無水THF(10mL)中の活性化Mg削り屑(729.0mg、30.0mmol)の懸濁液にN2(g)下で加え、グリニャール形成が始まるまで反応物を温めた。残りの2-(2-ブロモエチル)-1,3-ジオキソラン溶液(4.5mL)をゆっくり加え、温度を50℃未満に維持した。添加の完了後、反応混合物を室温に冷却し、さらに1時間撹拌し、次に-50℃に再冷却した。無水THF(5mL)中の(R)-N-[(1Z)-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]メチリデン]-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(調製物8、270.0mg、1mmol)の溶液を滴加し、反応物を-50℃で1時間撹拌し、次に室温に温めた。飽和NH4Cl水溶液(20mL)を加えて反応をクエンチし、混合物をEtOAc(30mL)と水(30mL)との間で分配した。水相をさらにEtOAc(30mL)で抽出し、合わせた有機物を食塩水(60mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、そして真空下で濃縮した。粗生成物を、ヘプタン:EtOAc(50:50から0:100)で溶出するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製して、標題化合物を無色の油状物として得た(420mg、100%)。
LCMS m/z = 390.0 [M+H]+
【0249】
調製物10
(2R)-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-
【化26】
【0250】
TFA:水(10mL、20:1)中の(R)-N-[(1R)-3-(1,3-ジオキサン-2-イル)-1-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]プロピル]-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(調製物9、390.0mg、1mmol)の溶液を室温で30分間撹拌した。Et3SiH(1.16g、10mmol)を加え、反応物を室温で16時間激しく撹拌した。混合物をトルエン(30mL)で希釈し、真空下で濃縮し、次にトルエン(2×30mL)で共沸した。残留油状物を、(DCM:MeOH:NH4OH、98:2:0.2から95:5:0.5)で溶出するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製して、標題化合物生成物を油状物として得た(125mg、59%)。
LCMS m/z = 212.0 [M+H]+
【0251】
調製物11
(2R,4S)-4-フルオロ-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-
【化27】
【0252】
HCl(ジオキサン中の4M溶液、10mL)を、MeOH(15mL)中の(2R,4S)-4-フルオロ-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(調製物3、1.21g、3.67mmol)の溶液に加え、反応物を室温で2時間撹拌した。混合物を真空下で濃縮して暗褐色の油状物を得、これをMeOH(2mL)に溶解し、SCXイオン交換カートリッジにロードし、MeOH中の7N NH4OHで洗浄した。濾液を減圧下で蒸発させて、標題化合物を濃いオレンジ色の油状物として得た(0.4g、53%)。
LCMS m/z = 230.0 [M+H]+
【0253】
調製物12
(2R,4S)-4-フルオロ-2-[5-フルオロ-3-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-塩酸塩
【化28】
【0254】
ジオキサン(60mL)中の4M HCl中の(2R,4S)-4-フルオロ-2-[5-フルオロ-3-(メチルチオ)フェニル]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(調製物6、3.88g、11.79mmol)の溶液を、室温で2時間撹拌した。溶液を真空下で濃縮して、標題化合物をベージュ色の固体として得た(3.69g、99%)。
LCMS m/z = 230 [M+H]+
【0255】
調製物13
6-[(2R)-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボン酸エチル
【化29】
【0256】
ジオキサン(20mL)中の4M HCl中の(2R)-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-(調製物10、640mg、3.03mmol)の溶液を室温で30分間撹拌し、次に真空下で濃縮した。DMSO(20mL)中の6-クロロイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボン酸エチル(0.59g、2.52mmol)を加え、反応物を130℃で16時間加熱した。冷却した混合物を水(20mL)とEtOAc(20mL)との間で分配し、層を分離した。有機相を食塩水(3×20mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧下で蒸発させて、標題化合物を褐色の油状物として得た(1.13g、99%)。
LCMS m/z = 401.2 [M+H]+
【0257】
調製物14
6-[(2R,4S)-4-フルオロ-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボン酸エチル
【化30】
【0258】
標題化合物を、調製物13に記載の手順に従って、(2R,4S)-4-フルオロ-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-(調製物11)から、黄色の固体として85%の収率で得た。
LCMS m/z = 419.0 [M+H]+
【0259】
調製物15
6-[(2R,4S)-4-フルオロ-2-[5-フルオロ-3-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボン酸エチル
【化31】
【0260】
標題化合物を、調製物13に記載の手順に従って、(2R,4S)-4-フルオロ-2-[5-フルオロ-3-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-塩酸塩(調製物12)から、褐色の油状物として78%の収率で得た。
LCMS m/z = 419.0 [M+H]+
【0261】
調製物16
6-[(2R)-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボン酸
【化32】
【0262】
KOH(0.71g、12.6mmol)を、EtOH:水(12mL、6:1)中の6-[(2R)-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボン酸エチル(調製物13、1.0g、2.52mmol)の溶液に少しずつ滴加し、反応物を室温で1.5時間撹拌した。混合物を真空下で濃縮し、残留物を水(20mL)とDCM(20mL)との間で分配し、層を分離した。水相を2M HCl溶液でpH4に調整し、次にDCM(3×20mL)で抽出した。これらの合わせた有機相を乾燥させ(MgSO4)、真空下で濃縮して、標題化合物をベージュ色の固体として得た(999mg、99%)。
LCMS m/z = 373.2 [M+H]+
【0263】
調製物17
6-[(2R,4S)-4-フルオロ-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボン酸
【化33】
【0264】
標題化合物を、調製物16に記載された手順に従って、6-[(2R,4S)-4-フルオロ-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボン酸エチル(調製物14)から、黄色の固体として50%の収率で得た。
LCMS m/z = 391 [M+H]+
【0265】
調製物18
6-[(2R,4S)-4-フルオロ-2-[5-フルオロ-3-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボン酸
【化34】
【0266】
標題化合物を、調製物16に記載された手順に従って、6-[(2R,4S)-4-フルオロ-2-[5-フルオロ-3-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボン酸エチル(調製物15)から、褐色の油状物として78%の収率で得た。
LCMS m/z = 391 [M+H]+
【0267】
調製物19
6-[(2R)-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]-N-[(3R)-オキサン-3-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキサミド
【化35】
【0268】
DMF(5mL)中の6-[(2R)-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボン酸(調製物16、150mg、0.407mmol)の溶液に、(R)-テトラヒドロ-2H-ピラン-3-アミン塩酸塩(61mg、0.443mmol)及びHATU(168mg、0.443mmol)を加えた。混合物を室温で5分間撹拌し、DIPEA(0.140mL、0.805mmol)を加え、反応物を室温でさらに16時間撹拌した。反応物をEtOAc(15mL)で希釈し、水(15mL)及び食塩水(15mL)で洗浄し、次に乾燥させ(Na2SO4)、真空下で濃縮した。粗生成物を、DCM:MeOH(99:1から92:8)で溶出するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製し、生成物を水で共沸させて、標題化合物を無色の固体として得た(133mg、72%)。
LCMS m/z = 456.2 [M+H]+
【0269】
調製物20~24
【化36】
【0270】
以下の化合物は、調製物19で記載されている手順に従って、適切なカルボン酸とアミンR4NH2から調製した。
【0271】
【表4】
【0272】
調製物25
N-シクロヘキシル-6-[(2R,4S)-4-フルオロ-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキサミド
【化37】
【0273】
DCM(2mL)中の6-[(2R,4S)-4-フルオロ-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボン酸(調製物17、150mg、0.380mmol)の溶液に、シクロヘキシルアミン(46mg、0.460mmol)、TBTU(136mg、0.460mmol)、及びDIPEA(0.132mL、0.760mmol)を加え、反応物を室温で1時間撹拌した。混合物をDCM(10mL)で希釈し、飽和NH4Cl溶液(10mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、真空下で濃縮して、標題化合物を黄色のガムとして得た(133mg、72%)。
LCMS m/z = 472 [M+H]+
【0274】
調製物26
N-({3-[(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ]フェニル}メチル)-6-[(2R)-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキサミド
【化38】
【0275】
TBDMSCl(59mg、0.392mmol)及び1H-イミダゾール(44mg、0.653mmol)を、DMF(2mL)中の6-[(2R)-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]-N-[(3-ヒドロキシフェニル)メチル]イミダゾール[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキサミド(調製物21、156mg、0.327mmol)の溶液に加え、反応物を室温で16時間撹拌した。混合物をMTBE(50mL)と水(50mL)との間で分配し、有機層を飽和食塩水(3×15mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、そして真空下で濃縮した。粗生成物を、DCM:MeOH(99:1から92:8)で溶出するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製して、標題化合物を無色のガムとして得た(166mg、86%)。
LCMS m/z = 592.2 [M+H]+
【0276】
調製物27
6-[(2R)-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]-N-[(3R)-オキサン-3-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボチオアミド
【化39】
【0277】
ローソン試薬(0.12g、0.297mmol)を、トルエン(2mL)中の6-[(2R)-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]-N-[(3R)-オキサン-3-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキサミド(調製物19、0.113g、0.248mmol)の溶液に加え、反応物を100℃で16時間撹拌し、次に室温に冷却した。混合物を真空下で濃縮し、残留物を、DCM:MeOH(99:1から92:8)で溶出するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製して、標題化合物を黄色の固体として得た(106mg、90%)。
LCMS m/z = 472 [M+H]+
【0278】
調製物28~33
【化40】
【0279】
以下の化合物は、調製物27に記載されている手順に従って、適切なアミドとローソン試薬から調製された。
【0280】
【表5-1】
【表5-2】
【0281】
調製物34
(Z)-N-({3-[(tert-ブチルジメチルシリル)メチル]フェニル}メチル)-N'-シアノ-6-[(2R)-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボキシミドアミド
【化41】
【0282】
二塩化水銀(111mg、0.411mmol)、続いてシアナミド(50mg、0.493mmol)を、DMF(2mL)中のN-({3-[(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ]フェニル}メチル)-6-[(2R)-2-[5-フルオロ-2-(メチルスルファニル)フェニル]ピロリジン-1-イル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-カルボチオアミド(調製物29、100mg、0.164mmol)の溶液にN2(g)下で加え、反応物を室温で16時間撹拌した。混合物を真空下で濃縮し、DCM(10mL)に再懸濁し、Dicalite(登録商標)のパッドを通して濾過し、DCM(20mL)中の20%MeOHでリンスした。濾液を真空下で濃縮し、ヘプタン:EtOAc:MeOH(80:20:0から0:100:0から0:90:10)で溶出するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製して、標題化合物を無色のガムとして得た(60mg、59%)。
LCMS m/z = 616 [M+H]+
【0283】
実施例8-局所用医薬組成物
以下の実施例は、本発明による局所用医薬組成物である。
軟膏ベース(O)の局所用医薬組成物
【0284】
【表6】
非水性ゲルベース(NAG)の局所用医薬組成物
【0285】
【表7】
クリームベース(CR)の局所用医薬組成物
【0286】
【表8】
【0287】
実施例9-安定性試験
APIの化学的安定性
本発明による局所用医薬組成物中の医薬品有効成分の安定性を評価した。組成物は、25℃及び40℃で2週間、4週間、及び6か月間(t=2週間、t=4週間、及びt=6か月)保存された。
【0288】
【表9】
【0289】
上記の表では、「定量的」という用語は、APIの定量的な量が測定されたことを意味する。
【0290】
医薬品有効成分の量は、以下の方法を使用してHPLCにより測定した。
【0291】
【表10】
【0292】
本発明によるすべての局所用医薬組成物は、周囲温度(25℃)及び高温(40℃)安定性試験の両方で、医薬品有効成分の化学的安定性の上昇を示した。
【0293】
局所用医薬組成物の物理的安定性
軟膏、非水性ゲル、及びクリームベースのすべての局所用医薬組成物は、製剤の適切な物理的安定性を示し、軟膏、水性ゲル、及び非水性ゲルが最大の物理的安定性を示す。
【0294】
実施例10-薬物の充填量
本発明のすべての局所用医薬組成物は、活性医薬成分を大量に含む能力(すなわち、高いAPI充填量)から利益を得る。特許請求された局所用医薬組成物のうち、軟膏非水性ゲルは、特に高いAPI充填量能力を有し、API充填量は、組成物の1.5重量%を超える。軟膏は、さらに優れており組成物API充填量の1.5重量%を示し、予測より高かった(実施例8の薬物充填量を参照)。より高いAPI充填量を有する局所用医薬組成物の1つの利点は、より高濃度の薬物が皮膚又は粘膜の領域に適用され得ることである。
【0295】
実施例11-RHE刺激性試験(RHE培養物を使用したインビトロ刺激性試験)
この例では、次の材料を使用した。
【0296】
【表11】
【0297】
RHE培養物(ZenSkin(登録商標))(表面積=0.33cm2)を、37℃、5%CO2の加湿インキュベーターで一晩平衡化させた。翌日、RHEをインキュベーターから取り出し、頂端面に液体が残っていないか検査した。余分な水分を滅菌綿棒で取り除き、30μLの局所用医薬組成物を3重培養物に適用した(n=3)。無菌水を陰性対照とし、1%トリトンX-100を陽性対照とした。処理後、RHE培養物を1時間インキュベーターに戻し、穏やかに洗浄して試験物質を除去した。次に、洗浄した挿入物を、新鮮な0.5mL培地を事前に充填した新しい12ウェルプレートに移した。組織を24時間インキュベートし、培地を新鮮な培地と交換し、さらに18時間インキュベートした(処理時から合計42時間)。
【0298】
42時間のインキュベーション後、組織培養物を、組織培地中に新鮮なMTT基質を含む新しいプレートに移し、37℃、5%CO2のインキュベーターに2時間入れた。インキュベーション後、ウェルをDPBSで3回リンスし、きれいな12ウェルプレートに移した。組織を溶解緩衝液(0.04N HCl/イソプロパノール)に浸漬し、少なくとも2時間振盪した。抽出溶液(0.2mL)を96ウェルプレートに移した。基準フィルターを使用せずに570nmで光学密度を測定した。バックグラウンド対照としてブランクウェル(抽出バッファーのみ)を、すべてのウェルから差し引いた。
【0299】
細胞生存率は次のように計算された:100×[OD(試料)/OD(陰性対照)]。陽性対照(1%トリトンX-100)が陰性対照組織(水のみ)と比較して<20%の生存率を示したため、RHE刺激アッセイは許容できると見なされた。試験製剤は、EU及びGHS分類に基づいて刺激性又は非刺激性に分類され、これに従って、試験物質に曝露された組織の平均相対組織生存率が陰性対照50%未満に低下した場合、刺激性物質(R38/カテゴリー2)が決定される。
【0300】
結果を下の表と図1及び2に示す。接尾辞PBO(プラセボの場合)が付いたエントリは、活性医薬品化合物を含まない製剤に関連している。図1及び2のデータは、平均±標準偏差(n=3)として表されている。
【0301】
【表12】
【0302】
図1は、組成物O1、O5、NAG3、CR3、及びCR5のRHEの平均細胞生存率を示す。
【0303】
図2は、プラセボ組成物(APIを含まない組成物)O1、O5、NAG3、CR3、及びCR5のRHEの平均細胞生存率を示す。
【0304】
実施例12-ヒトの皮膚浸透試験
フロースルー拡散セル(MedFlux-HT(登録商標))を使用してエクスビボでの皮膚浸透及び貫通実験を実施した。
【0305】
図3は、この試験で使用したMedFlux-HTプロセスの概略図を含む。
【0306】
美容整形手術によるヒトの皮膚を使用した(単一のドナーから)。皮下脂肪を機械的に除去し、Integra Life Sciences Model SBSlimlineDermatomeを使用して皮膚を500±50μmの厚さに切除した。すぐに使用しない場合、皮膚は-80℃で保存された。凍結した場合、皮膚は周囲温度で解凍して、拡散セルに配置した。
【0307】
皮膚は、MedFlux-HTのドナーコンパートメントとレシーバーコンパートメントの間に配置された。各製剤は個別に、1cm2あたり2mgの投与量で皮膚の上部に適用された。レシーバー液(PBS+0.01% Brij-O20)は、図3に示されるように皮膚試料の下のコンパートメントに10μL/分の速度で24時間継続的に流した。
【0308】
皮膚を取り出し、表皮と真皮をインキュベーター内で60℃で2分間、熱分離した。表皮層と真皮層を個別に、90:10v/vのエタノール:水の抽出溶媒中で、5000RPMで周囲温度で3×30秒間ホモジナイズした。次に、均質化された表皮層及び真皮層を、オービタルシェーカー上で130RPM、周囲温度で30分間振盪した。ホモジネートを96ウェルプレートに移し、約3200gの力で遠心分離した。
【0309】
液体試料の分析は、ベラパミル内部標準を使用して、次のLC-MS/MS法で実行された。
【0310】
【表13】
【0311】
図4は、局所用医薬組成物を皮膚の頂端面に塗布してから24時間後に、表皮(上のグラフ)と真皮(下のグラフ)から回収された医薬品有効成分の平均濃度(μg/g)を示す。各バーは平均(3人の皮膚ドナー;ドナーあたりn=3)を表し、エラーバーは平均の標準誤差を表す。ブランクは、製剤が塗布されていない皮膚である。
【0312】
結果から分かるように、局所用医薬組成物は、治療量の活性医薬成分を真皮及び表皮に送達することができる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】