IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イノコ ビジョン スポルカ ジー オグラニクゾナ オドパウイエドジアルノシアの特許一覧

特表2023-511723軌道決定及びイメージングのための方法及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-22
(54)【発明の名称】軌道決定及びイメージングのための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
A61B3/10 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546031
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(85)【翻訳文提出日】2022-08-24
(86)【国際出願番号】 IB2021050732
(87)【国際公開番号】W WO2021152537
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】20154381.6
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522300053
【氏名又は名称】イノコ ビジョン スポルカ ジー オグラニクゾナ オドパウイエドジアルノシア
(74)【代理人】
【識別番号】100163991
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 慎司
(72)【発明者】
【氏名】スツクルモウスキ,マチェフ
(72)【発明者】
【氏名】ダラシンスキ,クシシュトフ
(72)【発明者】
【氏名】メイナ,ミハル
(72)【発明者】
【氏名】ノワコウスキ,マチェフ
(72)【発明者】
【氏名】ウローベル,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】バルトゥゼル,マチェフ
(72)【発明者】
【氏名】タムボルスキ,シモン
(72)【発明者】
【氏名】ストレンプレフスキ,パトリチュス
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AA10
4C316AB12
4C316AB16
4C316FA19
4C316FB21
4C316FZ01
(57)【要約】
本発明は、生体組織(O)の軌跡(T)を決定する方法であって、生体組織の画像を表す後続フレーム(F1,Fk,FI,Fn)が、少なくとも第1のイメージング装置(FET)によって取得され、生体組織の軌跡(T)の少なくとも第1のセグメントが、後続フレームの少なくとも第1のサブセットの相対変位を使用し、フレーム取得の時間に対応する座標に再計算して決定されて、要素tmのベクトルTmを形成し、ここで、要素tmは生体組織の少なくとも1つの座標であり、ベクトルTmの要素tmは、少なくとも2つの扇港フレームの相対変位pm,kによって決定される、方法に関する。本発明は、更に、本発明による方法と共に使用するためのイメージング装置及びコンピュータプログラム製品に関する。本発明は、更に、イメージングシステムに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織(O)の軌跡(T)を決定する方法であって、生体組織の画像を表す後続フレーム(fa,fb,fm)が、少なくとも第1のイメージング装置(FET)によって取得され(210,211,310,311)、生体組織の軌跡(T)の少なくとも第1のセグメントが、後続フレームの少なくとも第1のサブセットの相対変位を使用し、フレーム取得の時間に対応する座標に再計算して決定されて、要素tmのベクトルTmを形成し、ここで、要素tmは生体組織の少なくとも1つの座標であり、
ここで、ベクトルTmの要素tmは、少なくとも2つの先行フレーム(fa,fb)の相対変位pm,a,pm,bを用いて決定され、相対変位pm,a,pm,bは、所定の基準を用いて決定され(250,350)、
ここで、
第1のイメージング装置(FET)のフレーム取得率は、少なくとも500FPSであり、
第1のイメージング装置(FET)から取得されるフレームサイズは少なくとも1000ピクセルであり、
第1のイメージング装置の視野は、X面及びY面において少なくとも1°である、方法。
【請求項2】
フレームの少なくとも第2のサブセットが、第1及び第2のセグメントの両方に対応する位置合わせフレーム(KF)を計算するために使用され、位置合わせフレーム間の距離を使用して、第1及び第2のセグメントにおける軌道の要素の間の相対変位の再計算による累積誤差を最小化する(251,351)ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
位置合わせフレーム(KF)は、第1の記録装置で取得されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも2つの非隣接セグメントが互いに近接している軌道内のループを検出し(202)、前記少なくとも2つのセグメントに含まれる配列フレームを識別するために、軌道(T)が分析されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
位置合わせフレーム{KF)は、第2のイメージング装置で得られることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
生体組織(O)の動きの軌道(T)を決定するための装置であって、第1のイメージング装置(FET)及び処理ユニットを有し、イメージング装置(FET)は、後続フレーム(Fm,Fa,Fb,Fn)を取得するように適合され、少なくとも500FPSのフレーム取得レートを有し、少なくとも1000ピクセルのフレームサイズを提供し、少なくとも1°のX平面及びY平面の視野を有しており、
ここで、処理ユニットは、請求項1乃至5の何れかに記載の方法を実行するように適合されている、装置。
【請求項7】
生体組織の軌道を決定するためのコンピュータプログラム製品であって、少なくとも500FPSのフレーム取得速度及び少なくとも1000ピクセルのフレームサイズで、並びに、X平面及びY平面において少なくとも1°の視野でフレームが取得された視野を有するフレームの少なくともサブセットを備えた後続フレームを供給される処理ユニット上で実行されると、前記処理ユニットに、請求項1乃至5の何れかに記載の方法を実行させることを特徴とする、コンピュータプログラム製品。
【請求項8】
生体組織のための第2のイメージング装置を含んだイメージングシステムであって、請求項6に記載の生体組織の軌跡を決定するための装置を更に含み、前記生体組織の動きを補償するために前記第2のイメージング装置で取得された画像を再配置するように構成されることを特徴とする、イメージングシステム。
【請求項9】
生体組織の軌跡を決定するための装置の処理ユニットは、前記第2のイメージング装置からフレームを受け取り、それを配列フレームとして使用するように適合されていることを特徴とする、請求項8に記載のイメージングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織の軌跡を決定する方法、そのための装置、そのためのコンピュータプログラム製品、及びその装置を用いた生体組織イメージングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
生体組織のイメージングは、画像取得中の組織の制御不能な動きに起因する誤差や歪みを生じやすい。詳細な画像の取得には、生体組織、例えば眼が、所望の空間分解能よりもかなり長く移動するのに十分な長さの時間がかかる。この問題は、当該技術分野において知られており、画像化された組織のリアルタイム追跡、又は、画像後処理における組織軌跡及び補償の決定の何れかによって、部分的に解決される。
【0003】
米国特許第US9867538号は、ロバストな視線追跡(eye tracking)の方法及びそのための眼科装置を開示している。眼科装置は、適応光学走査レーザ検眼鏡検査(AOSLO)装置と、広視野走査光検眼鏡検査(WFSLO)装置と、AOSLO及びWFSLO画像から算出された位置情報に基づいてトラッキングミラーを制御するトラッキングプロセッサと、を含んでいる。別の実施形態では、トラッキングプロセッサは、WFSLO画像のみから計算された位置情報に基づいてトラッキングミラーを制御する。参照画像に対するターゲット画像の移動量とその検出精度に応じて、AOSLO装置又はWFSLO装置の何れかのトラッキングミラーを、参照画像に対するターゲット画像の位置の差に応じて選択的に制御することができる。
【0004】
米国特許出願第20150077706A1号は、適応光学走査検眼鏡用のリアルタイムでの光学及びデジタル画像の安定化を開示している。眼をイメージングするためのリアルタイム検眼鏡システムは、眼の広視野イメージング用に構成された広視野走査レーザ検眼鏡(SLO)を含んでいる。このシステムには、眼の高分解能イメージング用に構成された小視野SLOも含まれている。コンピュータに電気的に結合された2Dトラッキングミラー、及び、コンピュータに電気的に結合された2Dステアリングミラーは、両方とも、小視野SLOと眼との間の光路に配置される。システムは、2Dステアリングミラーによって画定されるような眼上の複数の位置において複数の小視野画像(small field images)を取得するように構成され、各小視野画像は、2Dトラッキングミラーによって眼の動きに対して安定化される。眼のイメージングのための方法も記載されている。
【0005】
米国特許出願第2016066781号は、複数のフレームを有するビデオフッテージから視線速度情報を抽出する方法を開示しており、この方法は、ビデオフッテージの少なくとも2つのフレーム内の目の少なくとも一部を検出し、ビデオフッテージの少なくとも2つのフレームにオプティカルフローアルゴリズムを適用してピクセル速度情報を抽出し、検出された目の少なくとも一部内のピクセル速度情報から統計的尺度を決定することを含んでいる。この出願は、更に、複数のフレームを有するビデオフッテージから頭部画像軌跡情報を抽出する方法であって、ビデオフッテージの少なくとも2つのフレーム内の頭部画像の顔領域の少なくとも一部を検出するステップと、少なくとも2つのフレーム間の顔領域の少なくとも一部の動きの速度を決定するステップと、動きの速度から変換マップを決定するステップと、を含んだ方法を開示している。これは、25フレーム/秒のRGB画像(1920×1080ピクセル)のビデオフッテージでの使用に適している。そこには、30Hz及び25Hzのカメラレートの使用が開示されている。D1による方法は、ピクセル毎に動作し、ピクセル速度を決定することを目的としている。一般に、眼のイメージングに従来使用されている高解像度イメージング装置は、画像シーケンスに関して生体組織の軌跡の信頼できる決定に使用するには遅すぎ、動き補償技術は完全には有効ではない。既知の画像ベースのアプローチの別の欠点は、選択された基準フレームへの依存性であり、それ自体がモーションアーティファクトによって歪む可能性がある。基準フレームにおけるこれらのアーティファクトを補正するためのアルゴリズムが提案されているが、このようなアプローチには制限がないわけではない。例えば、アルゴリズムは、グランドトゥルース再構成検証(ground truth reconstruction validation)を欠く可能性がある。
【0006】
軌道を決定するための既知の方法は、基準フレームを使用し、したがって、速度及び振幅の想定される範囲を超える予期せぬ動きによって引き起こされるランダムエラーの影響を受けやすく、又は、フレームを十分に速く且つ十分に大きく捕捉するために、オーバースケールなハードウェアを必要とする。
【0007】
本発明の目的は、高解像度イメージング装置で記録された画像の後処理における動き及び補償の分析を可能にする、随意運動及び不随意運動を受ける生体組織の軌跡を正確に決定するための方法及びシステムを提供することである。
【0008】
本発明は、生体組織の軌跡を決定する方法であって、生体組織の画像を表す後続フレーム(subsequent frames)が、少なくとも第1のイメージング装置によって取得され、生体組織の軌跡の少なくとも第1のセグメントが、後続フレームの少なくとも第1のサブセットの相対変位を使用し、フレーム取得の時間に対応する座標に再計算して決定されて、要素tmのベクトルTmを形成する。要素tmは生体組織の少なくとも1つの座標である。ベクトルTmの要素tmは、少なくとも2つの先行フレーム(preceding frames)の相対変位pm,a,pm,bを用いて決定され、相対変位pm,a,pm,bは、所定の基準を用いて決定される。第1のイメージング装置のフレーム取得率は、少なくとも500FPSである。第1のイメージング装置から取得されるフレームサイズは、少なくとも1000ピクセルである。第1のイメージング装置の視野は、X面及びY面において少なくとも1°である。第1のイメージング装置のパラメータのその組合せは、生体組織の軌道再構成の成功のために適切なフレームを提供するために実現可能で十分であることが証明された。複数の前のフレーム(previous frames)を使用することにより、例えば平均化によって、誤差を低減させることができる。実験の結果、1°~4°の視野範囲で有利な結果が得られた。上限は、高速組織運動に対する十分な感度を提供することを容易にした。
【0009】
有利な態様では、フレームの少なくとも第2のサブセットが、第1及び第2のセグメントの両方に対応する位置合わせフレームを計算するために使用され、位置合わせフレーム間の距離を使用して、第1及び第2のセグメントにおける軌道の要素の間の相対変位の再計算による累積誤差を最小化する。
【0010】
有利な態様では、第1のイメージング装置によって配列フレームが取得される。好ましくは、軌道は、ループを検出し、軌道の少なくとも2つのセグメントに含まれるフレームとして配列フレームを識別するために分析される。
【0011】
或いは、配列フレームは、第2のイメージング装置によって取得される。
【0012】
本発明は、更に、第1のイメージング装置及び処理ユニットを有する、生体組織の動きの軌跡を決定するための装置に関する。第1のイメージング装置は、少なくとも500FPSのフレーム取得レート、少なくとも1000画素のフレームサイズ、並びに、X平面及びY平面において少なくとも1°の視野で、後続フレームを取得するように適合されている。処理ユニットは、本発明による方法を実行するように適合されている。
【0013】
本発明は、更に、生体組織の軌道を決定するためのコンピュータプログラム製品であって、少なくとも500FPSのフレーム取得速度、少なくとも1000ピクセルのフレームサイズ、並びに、X平面及びY平面の両方において少なくとも1°の視野で取得されたフレームの少なくともサブセットを備えた後続フレームを供給される処理ユニット上で実行される、コンピュータプログラム製品に関する。
【0014】
本発明は、更に、生体組織のための第2のイメージング装置を含んだイメージングシステムであって、本発明に係る生体組織の軌跡を決定するための装置を更に含み、前記生体組織の動きを補償するために前記第2のイメージング装置で取得された画像を再配置するように構成されることを特徴とする、イメージングシステムに関する。このようにして、運動補償と軌道決定支援との相乗効果が得られる。
【0015】
有利な態様では、生体組織の軌跡を決定するための装置の処理ユニットは、前記第2のイメージング装置からフレームを受け取り、それを配列フレームとして使用するように適合されている。
【0016】
本発明は、以下の図を参照して、詳細に説明されている。
【0017】
図1は、軌道に沿ったフレーム及び領域を概略的に示している。
【0018】
図2aは、本発明による方法の一実施形態のフローチャートを提示している。
【0019】
図2bは、フレームと前のフレームとの間の変位を示している。
【0020】
図3は、本発明による方法の別の実施形態のフローチャートを示している。
【0021】
図4aは、本発明によるシステム及び本発明による方法での使用に適用可能なイメージング装置のブロック図を示している。
【0022】
図4bは、リサジュ(Lissajous)走査パターンを示し、図4cは、走査点から再構成された長方形フレームを示している。
【0023】
図4dは、第1のイメージング装置によって取得された例示的なフレームを示している。図5a乃至dは、軌道の様々なループを示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、イメージング装置FETで得られた眼及びフレームを概略的に示している。後続フレームは、目の動きのために、異なる場所にある。眼の座標系におけるフレームの軌跡は、イメージング装置FET座標系における眼の軌跡と、正確に相補的である。したがって、フレームの決定は、イメージング装置座標系における眼生体組織の軌跡を決定するのと同じ操作であり、これらの2つの軌跡は、符号のみが異なっている。
【0025】
本発明による方法の一例のフローチャートを図2aに示す。生体組織Oの軌道Tを決定する方法は、この例では、眼に適用されている。眼球の運動は体内で最も速いため、この軌道決定法は、他の器官の軌道決定にも適用することができる。以下に説明する設定では、眼球は、1000°/秒で動くことができ、これは、平均的な眼球では300mm/秒に相当する。
【0026】
眼のフレームは、1240FPSのフレーム取得率を有する第1のイメージング装置FETで取得される。視野は、3.37°×3.24°に設定した。角膜でのイメージングビーム径は、1.96mmとした。この場合における網膜上の理論的な軸上ビームサイズは、8.5μmであった。システムの共焦点性を意図的に犠牲にして、100μmピンホールを用いて感度を得た。検出面でのエアリーディスクの直径は、36.4μmであった。時間回折限界スポットサイズで記述した共焦点性は、2.75に等しく、フレームサイズは4432ピクセル(140×140ピクセル)であった。
【0027】
更なる研究は、500FPSの低フレームレート及び1000pxの低フレームサイズによって、信頼できる軌道が得られることを示している。当然ながら、より高いフレームレート及びより大きなフレームにより、より正確な軌道の決定が可能になる。
【0028】
第1のイメージング装置は、F1、Fa、Fb、Fmを含む後続フレームをもたらした。フレームは、眼の小部分の画像を表している。フレームレートとフレームサイズとの関係は、全てのフレームが後続フレームのサブセットの一部である結果に貢献する。
【0029】
この方法によれば、少なくとも第1の領域の位置に対する前記フレームのサブセット内のフレームの位置が決定されるが、これは、参照フレームが選択されないという相違点を有する従来の方法と同様である。
【0030】
その後、前記位置は、取得時刻に対応する軌道Tの少なくとも第1のセグメントを形成する座標(点)の集合に再計算される。座標のセットは、ベクトルTmの要素tmを形成し、ここで、要素tmは、2つの座標のセットとして表される軌跡の点であり:
【0031】
【数1】
単一のフレームfに対応している。
【0032】
この例では、軌道再構成アルゴリズムは、2段階で動作する。第1段階では、網膜軌道は、図2b及び図2cに示されているように、新しいフレームの各々がn個の前のフレームに対して整列される、いわゆるNバックアルゴリズムによって推定される。第2段階では、第1段階で再構成した軌道の累積誤差が補正される。
【0033】
処理の開始200の後、取得ステップ200で、第1フレームf1が取得される。これは、以下により詳細に説明するように、矩形フレームを得るためのパターンの走査及び再計算を含んでいる。
【0034】
取得ステップ211において、更なるフレームが繰り返し取得される。
【0035】
網膜の新しい軌跡点は、取得ステップ211で入ってくるフレームと以前に取得されたフレームのサブセットとの間の変位を推定250することによって推定された。これらの変位は、後のフレームで検出された軌道点に追加される。最も単純なケースでは、1つ前のフレームからの変位だけが考慮され、これは、次のように示される:
【0036】
【数2】
ここで、t={x,y}は、ユークリッド空間における軌跡点であり、mはフレーム/軌跡点の反復子であり、pm,m-1は、フレームmとm-1との間の変位を表している。変位は、図2cに示されている。形式的には、フレームa、b pa,bは、フレームfからfへの配列を測定する基準関数を最小化することによって推定される。必要とされるハードウェア要件及び計算待ち時間に基づいて、様々な基準を互換的に使用することができる。この例では、Evangelidis、Georgios D.、及びEmmanouil Z.Psarakis "Parametric image alignment using enhanced correlation coefficient maximization" IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence 30.10(2008):1858-1865に開示されている強化相関係数(ECC)が使用され、これは、サブピクセル精度を提供でき、勾配降下に基づく計算をCPUで実行することができる。当然ながら、当業者は、フレーム距離の推定のための他の適用可能な基準を容易に提案し、実行することができる。
【0037】
単純な軌道構築アルゴリズムの精度及びノイズに対する耐性は、アルゴリズムのNバックバージョンで、以前に取得したN個のフレームから新しいフレームの変位を計算して平均化することによって向上する:
【0038】
【数3】
【0039】
ここで、nは、新たに取得したフレームを基準として算出されたフレームのインデックスである(つまり、n=1は新しいフレームの直前のフレームを表す)。試行錯誤実験(trial-and-error experiments)を用いて、フレームインデックスのセットB∈{1,2,4,8,16,32,64,128,256,512}が選択された。このようにして、この方法は、連続するフレームを比較するだけでなく、ほぼ0.5秒前に取得されたフレームを整列させようとする。低いSNR又はフレームのサイズを超える変位のために、基準D(f,f)が計算できない場合、対応するインデックスnは、セットBから除去される。Nは、セットBのフレームの総数を表す。計算後、フレームfmは、次の軌道点を決定するために使用されるフレームのサブセットに追加される202。平均化により、誤差を減らすことができる。当業者は、計算速度及び要求される精度に関して、本方法の効率を最大にするフレームインデックスBの異なる構成を見出し得る。
【0040】
上記のフレームの配列は、時間の経過とともにtに伝播するpa,bにおける小さな誤差をもたらす傾向がある。この方法の再帰的な性質により、軌道推定誤差は、ランダムウォークプロセスとしてモデル化できる。これにより、理想的に調整されたシステムには非定常ゼロ平均誤差があり、誤差の分散は時間と共に線形に増加する、即ち、誤差は累積する傾向がある。
【0041】
この非定常誤差を修正するために、追加の手法を適用することができる。これは、眼が時々同じ位置に戻り、式2~3によって累積された誤差を新しい変位計算によって補正できるという事実を利用している。 本技術は、時間間隔に依存せずに、フレーム及び網膜上の近接空間位置において計算可能な並進を伴う取得データセット内の全フレームのサブセットとして直観的に理解可能な配列(又はキー)フレームKFを導入する。実際的には、配列フレームは、リアルタイム又は後処理における軌道Tのループ又は交差の検出によって検出202することができる。配列フレームは、軌道251を修正することによって、累積誤差を最小限に抑えることを可能にする。交差点のあるループの例が図5a及び図5cに、交差点のないループの例が図5b及び図5dに示されている。軌道Tの2つの非隣接セグメントが同一フレーム内で観察できれば、このフレームを、配列フレームKFとして使用することができる。
【0042】
形式的には、KFに対するこれらの補正は、I.Borg及びP.Groenen "Modern multidimensional scaling: Theory and applications"Journal of Educational Measurement 40.3(2003):277-280に開示されている多次元スケーリング(MDS)数学的枠組みを用いて行うことができ、第1段階から全ての軌跡点を補正するために、KF間の距離が使用される。言い換えると、行列PKFは、計算可能なKF間の全ての並進距離|pa,b KF|で構成される。軌道TKFは, KF位置(下記)に関して応力関数σを最小化することにより求める。
【0043】
【数4】
ここで、Pa,b KF=|pa,b KF|は、a番目及びb番目の配列フレーム間で計算された距離であり、wa,bは、欠落した値又は帰属した値をインデックスする重みである。当然のことながら、当業者は、配列フレームを使用して累積誤差を最小化するための代替スキームを提案することができ、これは、おそらく最適ではないが、動作可能である。
【0044】
配列フレーム軌道TKFは、本質的に低いサンプリングレートを有するが、理論的には0の非定常誤差を有する。最終的な網膜軌道TFETは、配列フレーム軌道TKF上にNバック軌道Tをキャスティングし、配列フレーム間の軌道点の補間を利用して推定される。
【0045】
したがって、ステップ202で配列フレームが検出されると、ステップ251で軌道が補正される。
【0046】
トラッキング203の終了後、ステップ204で補正された軌跡が出力され、アルゴリズムが終了205する。
【0047】
この方法は、リアルタイム又はオフライン処理でフレームが供給される処理ユニット上で実行されるコンピュータプログラム製品に容易に実装される。前者には、追跡203の終了後にステップ252で軌道全体を後方に再計算する利点がある。
【0048】
或いは、より遅いフレームレート及びより高い解像度を提供する第2のイメージング装置から配列フレームを得ることができる。このような装置は、軌道全体又は少なくともそのより大きな部分に対応する配列フレームを提供することができる。第1のイメージング装置FETと共に軌道を決定する方法が、WFSLOなどの他のイメージングシステムと統合される場合には、特に有利である。
【0049】
本発明のそのような実施形態の例のブロック図を図3に示す。開始300の後、第1のイメージング装置からのフレームが取得301され、次いでループ内でWFSLOが使用されて、ストリップごとに(in a strip-by-strip manner)生体組織の画像が得られる。WFSLOのストリップの間に、取得ステップ310で最初のイメージングデバイスを使用して後続のフレームが取得される。
【0050】
変位pa,bは、前の例と同じ方法で計算され、既に使用されているフレームは、ステップ301で後続フレームのプールに追加される。
【0051】
違いは、ステップ302において、WFSLOで既に取得された画像のウェザー部分(weather part)が位置合わせフレームとして使用可能であると判定され、その場合には、ステップ351において軌跡が補正されることである。トラッキング303の終了後、全軌跡は、任意選択的に再計算352され、出力354される。その後、プロセスは終了305する。
【0052】
累積誤差を最小化せずに軌道を決定することは、幾つかの応用、特にヒト組織の速度が重要であるような応用において、依然として有用であることを強調すべきである。例えば、光学的血管造影法を用いた後処理では補正不可能な画像アーティファクトの原因となる、得られた画像のモーションアーティファクトを防止するためのオンライン画像安定化法はひとつの可能な例である。
【0053】
本発明による方法で使用するのに適用可能な装置FETのブロック図を図4aに示す。LDはレーザダイオードを表す;CLはコリメートレンズを表す;BSはペリクルビームスプリッタを表す;L1~L9は無彩色二重線を表す;MEMS 2Dは、2軸共振MEMS走査ミラーを表す;FET PSは、位置決めガルバノメトリックミラーを表す;Dは調節された虹彩開口を表す;PHはピンホールを表す;APDはアバランシェフォトダイオードを表す;HILはハロゲン照明ランプを表す;BSTはBadalステージを表す;AESは人工眼スキャナセットを表す;AEOは人工眼対象を表す;AETは人工眼の試験ターゲットを表す。星及び円は、共役面を示す。挿入図A:in vivo実験に使用されるターゲット。FT1の直径は網膜上で1.5°であり、静的固定実験に使用された。サッケードを用いた実験にはFT2を用いた;直径は0.6°であり、中心間の距離は1~8°の範囲であった。挿入図B:テスト用にシステムに取り付け可能な人工眼。
【0054】
この方式の照明源は、単一モードファイバと結合し、非球面レンズCLによって0.7mmのビーム直径にコリメートされた785nmレーザダイオードLDである。ペリクルビームスプリッタBSは、ビームを反射し、マイクロ電気機械システム(MEMS)技術に基づいて、1mmのアクティブ開口を有する走査ミラー2D MEMS上にビームを向ける。走査ミラーで反射した後、ビームはレンズL4及びL3を備えた望遠鏡システムを通過する。
【0055】
図4aに示すように、MEMS 2D走査ミラーをその最大周波数に設定した結果、リサジュ走査パターンが得られた。したがって、第1ステップでフレームを得るためには、検出器APDによって取得された生画像を再サンプリングして、図3bに示される均一にサンプリングされた矩形画像を形成する必要があった。このステップは、密なベクトル乗算f=M・fによってスパース行列(sparse matrix)を用いて実行された。f=[f ,f ,...,f ]は、APDによって直接取得された強度データベクトルを表す。f は、単一のAPD読み取り値である。得られたフレームfは、サイズNの単一列ベクトルで構成されたNxN矩形画像である。リサンプリング行列Mは、サイズN×Kのスパース行列であり、Mの各行が、リサジュ座標と得られたフレームfの座標との間のs最近接距離(s-closest distance)に対応するインデックスにゼロ以外の要素を持つように、リサジュ座標から構築される。
【0056】
当業者は、少なくとも500FPSのフレーム取得率及び少なくとも1000ピクセルのフレームサイズN×N、並びに少なくとも1度の視野を提供しなければならないという本記載の教示を学ぶと、FETイメージング装置の多数の代替構造を提供することができる。
【0057】
FETデバイスは、図4aに示すようなセットアップで、X-YガルバノメトリックスキャナセットGVSC、結像レンズAEO、及び試験ターゲットAFによって構成された単純化された人工眼を使用して、トラッキング性能を含むシステムでテストされた。イメージングレンズは、L1と同じものを選択し、同じ走査角を維持するために、4f系に配置された。スキャナを眼瞳孔面に配置し、USAF 1951試験ターゲットを用いて、電圧対光学角較正を行った。トラッキング検証のため、印刷した眼底画像を試験標的として用いた。この画像は、ヒトの眼を用いてin vivoで行った予備的研究から得られたものに類似した画像を得ることができるように準備した。
【0058】
図4cは、リサジュスキャン後に再構成されたフレームを示している。図4dは、視野3.27°×3.24°で取得されたフレームを示している。フレーム1~2は視神経の一部を示し、フレーム3~4は中心窩を示し、フレーム5~15は、異なるサイズの網膜脈管構造を示している。他の実験では、トラッキングは、両方の平面で1度という低い視野で機能することが示された。
【0059】
当技術分野で知られている走査レーザ検眼鏡に本発明による装置を追加することにより、生きているヒトの眼の同時撮像及び軌跡トラッキングが可能になる。眼の軌跡の知識は、得られる画像における上記動きの補償を可能にし、結果として安定化させることができる。それは、リアルタイム又は後処理によって実行することができる。
【0060】
上記の実施形態は、本発明を限定するのではなく例示するものであり、当業者は、多くの代替実施形態を設計することができる。
【0061】
請求項に係る発明の1つは、処理ユニット上で実行するためのコンピュータプログラム製品でもあるため、少なくとも、本発明による方法のステップを実行するためのコード部分を含んでいる。コンピュータプログラムは、サブルーチン、関数、プロシージャ、クラス、オブジェクトメソッド、オブジェクト実装、実行可能アプリケーション、アプレット、サーブレット、ソースコード、オブジェクトコード、共有ライブラリ/動的ロードライブラリ、及び/又はプログラム可能な装置上で実行するように設計された命令の他のシーケンスからなるか、又は、それら若しくはそれら以上を含むことができる。コンピュータプログラムは、コンピュータシステムのメモリにロード可能なデータと共に記憶された、CD型光ディスク、DVD型光ディスク、ハードディスク、又はディスケットなどの、コンピュータプログラムを表すデータキャリア上で提供されてもよい。したがって、データキャリアは、有形のデータキャリアであってもよい。データキャリアは、電話ケーブル又はネットワークケーブルなどのデータ接続であり得る。データキャリアは、更に、無線接続などの無形のデータキャリアであってもよい。
【0062】
特許請求の範囲において、括弧内の参照符号は、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されてはならない。動詞「comprise」及びその活用は、クレームに記載されたもの以外の要素又は工程の存在を排除しない。要素の先行詞「a」又は「an」は、複数のそのような要素の存在を排除するものではない。「第1」、「第2」、更に要素の名前による数字の使用は、特定の順序を導入するものではなく、単に区別する方法を提供している。本発明は、幾つかの異なる要素を含むハードウェアによって、及び、適切にプログラムされたコンピュータによって、実施することができる。幾つかの手段を列挙するデバイスクレームにおいて、これらの手段の幾つかは、1つの同一のハードウェアアイテムによって具体化され得る。ある手段が相互に異なる従属クレームに記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せを有利に使用することができないことを示していない。
【0063】
本発明による方法の特に有利な点は、参照フレームが使用されず、代わりに多数のフレームに関する軌道が観察されることである。このアプローチは、眼の軌跡及び速度のより良くより信頼できる分析を可能にする。眼球運動の分析は、多発性硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、運動失調、脳卒中、麻痺、及びその他を含む幾つかの神経変性疾患の診断にも適用可能である。また、糖尿病及び高血圧などの診断にも役立つ。
【0064】
生体組織の正確な位置及び動きの予測の知識は、特にマニピュレータ及びロボット工学を用いた外科手術において重要である。したがって、上述の説明では眼が非常に強調されているが、本発明は、筋肉、特に心臓、膀胱、肝臓、腎臓卵巣、膵臓、胸腺、気管などを含む多数のヒト器官の軌道を決定するためにも適用可能である。
【0065】
組織の動きの特定のパターンは、生物測定にも適用することができる。
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b
図5c
図5d
【国際調査報告】