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特表2023-511771トリフラゾール、およびトリフラゾールを製造する方法
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  • 特表-トリフラゾール、およびトリフラゾールを製造する方法 図1
  • 特表-トリフラゾール、およびトリフラゾールを製造する方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-22
(54)【発明の名称】トリフラゾール、およびトリフラゾールを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 233/56 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
C07D233/56 CSP
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546616
(86)(22)【出願日】2020-10-06
(85)【翻訳文提出日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 US2020054404
(87)【国際公開番号】W WO2021154345
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】62/968,243
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502223275
【氏名又は名称】トリナプコ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105360
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 光治
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,マーティン,リード
(57)【要約】
トリフラゾールまたはその関連の誘導体の製造方法、および結果として得られるその生成物が提供される。例えば、トリフラゾールは、トリフルオロメタンスルホニルフルオリドと、アゾールまたはアゾラート塩との反応によって調製することができる。最大78%の収率が得られる。トリフラゾールは、塩基性触媒の存在下でトリフルオロメタンスルホニルフルオリドをN-シリルアゾールと反応させることによって調製することができる。最大97%の収率が得られる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリフルオロメタンスルホニルフルオリド(CF3SO2F)を、アゾール塩基構造を有するN-シリルアゾールと反応させることを含み、
前記アゾール塩基構造は遊離形態では非プロトン性であり、
さらに、CF3SO2-アゾールの化学式を有するN-(トリフルオロメタンスルホニル)アゾールを単離することを含む、方法。
【請求項2】
前記アゾール塩基構造は、イミダゾール、ピラゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、インダゾール、2-メチルイミダゾール、2-メチルベンズイミダゾール、3,5-ジメチルピラゾール、および置換誘導体からなる群から選択されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記N-シリルアゾールがN-(トリアルキルシリル)アゾールである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記N-(トリアルキルシリル)アゾールがN-(トリメチルシリル)アゾールである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
CF3SO2Fは、触媒の存在下で前記N-シリルアゾールと反応するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒は、反応性フッ化物を含む化合物を含むものである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
CF3SO2Fは、塩基性触媒の存在下で前記N-シリルアゾールと反応するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記塩基性触媒が、プロトン性アゾールまたはそのアゾラートアニオン化合物である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記塩基性触媒は、第三級アミン、非プロトン性アミジン、非プロトン性イソチオ尿素、非プロトン性ホスファゼン、非プロトン性グアニジン、およびその組合せからなる群から選択される非プロトン性有機塩基を含むものである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記非プロトン性有機塩基は、ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ-7-エン、ペンタメチルグアニジン、およびテトラメチル-tert-ブチルグアニジンから選択されるものである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記塩基性触媒は、金属炭酸塩、金属フッ化物、金属水素化物、アルキルリチウム、グリニャール試薬、水酸化物、アルコキシドアニオン化合物、およびその組合せからなる群から選択される化合物を含むものである、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記塩基性触媒は、反応性フッ化物を含む化合物を含むものである、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
CF3SO2Fは、非プロトン性溶媒の存在下で前記N-シリルアゾールと反応するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
トリフルオロメタンスルホニルフルオリド(CF3SO2F)を、アゾールまたは前記アゾールのアゾラート塩と反応させることを含み、
前記アゾールは遊離形態ではプロトン性であり、
さらに、CF3SO2-アゾールの化学式を有するN-トリフルオロメチルスルホニルアゾールを単離することを含む、方法。
【請求項15】
前記アゾール塩基構造は、イミダゾール、ピラゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、インダゾール、2-メチルイミダゾール、2-メチルベンズイミダゾール、3,5-ジメチルピラゾール、および置換誘導体からなる群から選択されるものである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アゾラート塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、およびその組合せからなる群から選択される金属のカチオンを有するものである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記アゾラート塩は、金属水素化物、金属アルコキシド、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属フッ化物、アルキルリチウム、グリニャール試薬、およびその組合せからなる群から選択される金属塩基と、前記アゾールとから誘導されるものである、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記アゾラート塩は前記アゾールおよび金属炭酸塩から誘導され、前記金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、およびその組合せからなる群から選択されるものである、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記アゾラート塩は前記アゾールおよび金属フッ化物から誘導され、前記金属は、ナトリウム、カリウム、セシウム、およびその組合せからなる群から選択されるものである、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記アゾラート塩は、前記アゾールおよび非プロトン性塩基、または前記塩基としての前記プロトン性アゾールから誘導されるものである、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記アゾラート塩は、前記アゾールおよび非プロトン性有機塩基から誘導されるものである、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
CF3SO2Fは、大気圧以下で前記アゾールまたはアゾラート塩と反応するものである、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
CF3SO2Fは、非プロトン性溶媒の存在下で前記アゾールまたは前記アゾラート塩と反応するものである、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記非プロトン性溶媒がアセトニトリルである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
1-(トリフルオロメタンスルホニル)-3,5-ジメチルピラゾール、または1-(トリフルオロメタンスルホニル)-2-メチルイミダゾールである化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、アゾール誘導体の化学合成に関する。特に、その開示される内容は、トリフラゾール(triflazoles:トリフルアゾール)またはその関連する誘導体を製造するための方法、およびその結果得られるトリフラゾールおよび/またはその誘導体に関する。
【0002】
優先権主張および関連出願
本願は、2020年1月31日に出願された米国仮出願第62/968243号の利益を主張し、この出願をその全体について参照により明示的に本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0003】
フェノールまたはエノラート官能基からトリフルオロメタンスルホニルエーテル(trifluoromethanesulfonyl ether)(“トリフラート”(triflate))への変換は、ファインケミカル業界で既知である。最もよく使用される2つのタイプ(種類)の試薬は、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(trifluoromethanesulfonic anhydride)(Tf2O)、および芳香族トリフルイミド(aromatic triflimides:芳香族トリフリミド)、例えば、N,N-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アニリン(N,N-bis(trifluoromethanesulfonyl)aniline)(PhNTf2)およびN,N-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)-5-クロロ-2-アミノピリジン(N,N-bis(trifluoromethanesulfonyl)-5-chloro-2-aminopyridine)( “コミンス(Comins)試薬”)である。これらの試薬グループは両方とも、工業原料のトリフルオロメタンスルホニルフルオリド(CF3SO2F)から得られる。CF3SO2Fは、シモンズ(Simons)電気化学的プロセスを用いてCH3SO2FまたはCH3SO2Clから大規模に製造され、後者はメタンおよび塩化スルフリルから製造されるものである。CF3SO2Fそのものは、毒性の高いガスであり、フェノール化合物用のトリフラート化剤として知られているが、現在ではファインケミカル(精製化学品)の製造には適さないと考えられている。Tf2Oは、室温で液体であり毒性が少ないという点で、CF3SO2Fよりも幾分か改善されている。但し、Tf2Oそのものは、CF3SO2Fから高価な複数工程(マルチステップ)プロセスで調整(生成)される。Tf2Oは有害で、加水分解を受けやすく、THF(テトラヒドロフラン)のような或る幾種かの一般的な溶媒と反応する。トリフルイミド(triflimides)は、トリフラート化剤として好ましい。それらは、Tf2Oから調製(生成)されたベンチ安定な(bench-stable)化合物であり、室温でフェノールと反応し、低温でエノラートと反応する。トリフルイミド試薬の主な欠点はそのコストである。最近の中国特許(CN第110627691号)には、これを2モルおよび1工程に減らすことが請求項に記載されているが、1モルのトリフルイミドを生成するには4モルのCF3SO2Fおよび幾つかの工程が必要である。
【0004】
しかし、これら2つのクラス(級)のトリフラート化剤だけが選択肢ではない。1970年に、試薬1-(トリフルオロメタンスルホニル)イミダゾール(“CF3SO2Im”)がイミダゾールおよびTf2Oから調製(生成)されて、20~90℃でフェノールと反応してフェノール性トリフラートを高い収率で生成することが示された(Effenberger, F.; Mack, K. E. Tetrahedron Letters 1970, 11, 3947-3948)。CF3SO2Imは、その特許文献において約30回、即ち、プロトン性アミンおよびフェノール化合物用のトリフラート化剤として、カップリング剤として、グラフェン・ドーパントとして、およびリチウム電池電解質の製造において、言及された。その非特許文献では、CF3SO2Imは1970年以来6回だけ成功した反応物として言及されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許第110627691号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Effenberger, F.; Mack, K. E. Tetrahedron Letters 1970, 11, 3947-3948)
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本開示は、トリフラゾールまたはその関連する誘導体を製造するための方法、およびその結果得られる生成物を実現する。
【0008】
幾つかの実施形態によれば、本開示は、トリフルオロメタンスルホニルフルオリド(CF3SO2F)と、アゾール、アゾールアニオン化合物(“アゾラート”(azolate))、N-シリルアゾール、またはそれらの組合せとの反応によってトリフラゾールを得るための方法を実現する。適切なアゾール、アゾールアニオン化合物、またはN-シリルアゾールの例が、詳細な説明に記載される。
【0009】
ここに記載される1つまたは複数の反応は、任意に、非プロトン性溶媒の存在下で行われてもよい。適切な非プロトン性溶媒の例が詳細な説明に記載される。幾つかの実施形態では、反応物を溶媒に懸濁させ(suspended)または溶解させてもよい。
【0010】
幾つかの実施形態において、アゾールアニオン(陰イオン)化合物またはアゾラート塩(アゾール塩)は、金属カチオン(陽イオン)を有する。適切な金属の例が、詳細な説明に含まれている。
【0011】
幾つかの実施形態において、アゾラート塩は、遊離アゾールおよびプロトン性または非プロトン性塩基から別々に、または遊離アゾールおよび非プロトン性塩基からその場(現場)で(in situ)誘導される。“プロトン性”(protic)および“非プロトン性”(aprotic)という用語は、詳細な説明で定義される。適切な塩基の例が詳細な説明に記載される。
【0012】
幾つかの実施形態において、アゾラート塩は、塩基としてのプロトン性アゾールからその場で誘導され、プロトン性アゾールはそれ自体と反応してアゾリウムアゾラート(azolium azolate)を生成する。
【0013】
幾つかの実施形態において、アゾラート塩は、アゾール塩基構造を有するN-シリルアゾールからその場で誘導される。例えば、幾つかの実施形態において、N-シリルアゾールはN-(トリメチルシリル)アゾールである。
【0014】
幾つかの実施形態において、アゾラート塩は、触媒の存在下でアゾール塩基構造を有するN-シリルアゾールからその場で誘導される。適切な触媒の例が詳細な説明に記載される。
【0015】
幾つかの実施形態によれば、例示的な方法は、CF3SO2FをN-シリルアゾールと反応させ、トリフラゾールを単離することを含んでおり、ここで、N-シリルアゾールはアゾール塩基構造を有するものである。アゾール塩基構造は、遊離形態(状態)のときにプロトン性である。
【0016】
アゾール塩基構造またはアゾールの例には、イミダゾール(imidazole)、ピラゾール(pyrazole)、1,2,4-トリアゾール(1,2,4-triazole)、ベンズイミダゾール(benzimidazole)、ベンゾトリアゾール(benzotriazole)、インダゾール(indazole,)、2-メチルイミダゾール(2-methylimidazole)、2-メチルベンズイミダゾール(2-methylbenzimidazole)、3,5-ジメチルピラゾール(3,5-dimethylpyrazole)、およびそれらの置換誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
【0017】
N-シリルアゾールは、N-(トリアルキルシリル)アゾール、例えばN-(トリメチルシリル)アゾール、であってもよい。
【0018】
CF3SO2Fは、触媒の存在下でおよび/または任意にここ(本明細書)に記載の非プロトン性溶媒の存在下で、N-シリルアゾールと反応させてもよい。触媒は塩基性触媒であってもよい。触媒または塩基性触媒はここに記載されている。幾つかの実施形態では、触媒または塩基性触媒は、ここに記載の反応性フッ化物を含む化合物を含んでいる。幾つかの実施形態では、触媒は、プロトン性アゾールまたはそのアゾラートアニオン化合物である。
【0019】
幾つかの実施形態では、触媒は塩基性であり、非プロトン性有機塩基を含み、これ(塩基)は、第三級アミン(tertiary aminee)、アミジン(an amidine)、例えば二環式アミジン(a bicyclic amidine)、イソチオ尿素(an isothiourea)、ホスファゼン(a phosphazene)、グアニジン(a guanidin)、およびそれらの組合せの中から選択されてもよい。
【0020】
幾つかの実施形態では、触媒は塩基性であり、金属炭酸塩、金属フッ化物、金属水素化物(ヒドリド)、アルキルリチウム、グリニャール試薬(Grignard reagent)、水酸化物(ヒドロキシド)、アルコキシドアニオン化合物、およびそれらの組合せの中から選択される化合物を含んでいる。
【0021】
幾つかの実施形態では、触媒は反応性フッ化物を含んでいる。反応性フッ化物を含む適切な触媒の例が、詳細な説明に記載される。
【0022】
幾つかの実施形態によれば、例示的な方法は、CF3SO2Fをアゾールまたはアゾールのアゾラート塩と反応させることを含み、遊離形態のそのアゾールはプロトン性であり、さらにトリフラゾールを単離することを含んでいる。アゾール塩基構造は、ここに記載されるような適切なアゾールである。
【0023】
幾つかの実施形態では、アゾラート塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、およびそれらの組合せからなる群から選択される金属のカチオンを有する。幾つかの実施形態では、アゾラート塩は、金属水素化物、金属アルコキシド、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属フッ化物、アルキルリチウム、グリニャール試薬、およびそれらの組合せから選択される金属塩基、およびアゾールから誘導される。例えば、アゾラート塩は、アゾールおよび金属炭酸塩から誘導されてもよく、その金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、およびそれらの組合せからなる群から選択されるものである。また、アゾラート塩はアゾールおよび金属フッ化物から誘導されてもよく、金属フッ化物(metal fluoride)中の金属は、ナトリウム、カリウム、セシウム、またはそれらの組合せであってもよい。幾つかの実施形態では、アゾラート塩は、アゾールおよび非プロトン性塩基、または塩基としてのアゾールそのものから誘導される。アゾラート塩は、ここに記載されるように、アゾールおよび非プロトン性有機塩基から誘導されてもよい。
【0024】
幾つかの実施形態では、CF3SO2Fは、大気圧またはそれより低い圧力でアゾールと反応させられる。
【0025】
結果として得られる化合物の例には、1-(トリフルオロメタンスルホニル)-1,2,4-トリアゾール、1-(トリフルオロメタンスルホニル)ベンズイミダゾール、1-(トリフルオロメタンスルホニル)ベンゾトリアゾール、1-(トリフルオロメタンスルホニル)ピラゾール、1-(トリフルオロメタンスルホニル)-2-メチルイミダゾール、1-(トリフルオロメタンスルホニル)-3,5-ジメチルピラゾールが含まれるが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本開示は、図面と併せて読まれるとき、以下の詳細な説明から最も良く理解される。一般的な実務に従って、図面の種々の特徴は必ずしも所定の縮尺ではないことを強調する。それどころか、種々の特徴の各寸法は、明確さのために任意に拡大または縮小される。明細書および図面を通して、同じ参照番号は同様の特徴を示している。
【0027】
図1図1は、幾つかの実施形態によるトリフラゾールを調整するための例示的な方法を示している。
図2図2は、幾つかの実施形態によるトリフラゾールを調整するための例示的な方法を示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
以下の説明のために、以下で説明する実施形態は代替的な変形例および実施形態を想定し得ると理解されるものである。また、ここ(本明細書)に記載の特定の物品、組成物、および/またはプロセスは、例示的なものであり、限定的なものと見なすべきではない、と理解されるものである。
【0029】
本開示において、単数形の“a”、“an”および“the”は、複数形の言及を含み、文脈が明らかにそうでないと示さない限り、特定の数値への言及は、少なくともその特定の値を含む。従って、“1つの環(リング)構造体”(a ring structure)への言及は、その分野における専門家(当業者)に知られているそのような複数の構造体およびその複数の均等物の中の1つまたはそれ以上のものへの言及であり、以下同様である。先行語“約”を使用して各値が近似として表されるとき、その特定の値が別の実施形態を形成する、と理解される。ここで使用されるとき、“約X”(ここでXは数値である)は、記載された値の±10%(両端の値を含む)を指すことが好ましい。例えば、語句“約8”は、両端値を含めて7.2乃至8.8の値を指すことが好ましい。別の例として、語句“約8%”は、両端の値を含めて7.2%乃至8.8%の値を指すことが好ましい(但し常にではない)。存在するとき、全ての各範囲は包含的であり(両端の値を含み)かつ組合せ可能である。例えば、“1乃至5”の範囲が記載されたとき、記載された範囲は、範囲“1乃至4”、“1乃至3”、“1~2”、“1~2および4~5”、“1~3および5”、“2~5”、等を含むと解釈されるべきである。さらに、複数の選択肢のリストが肯定的に提供されるとき、そのリスト(一覧表)は、例えば特許請求の範囲における否定的限定によって、複数の選択肢のうちの任意のものが除外され得ることを意味する、と解釈することができる。例えば、“1~5"の範囲が記載されるとき、記載された範囲は、1、2、3、4または5のいずれかが否定的に除外される状況を含むと解釈することができ、従って、“1~5”の記載は、“1および3~5であるが、2でない”、または単に“ここで2は含まれない”と解釈され得る。ここで肯定的に記載される任意の構成要素、要素、属性または工程(ステップ)は、そのような複数の構成要素、複数の要素、複数の属性または複数の工程が選択肢としてリストアップされているかどうかまたは単独で記載されているかどうかにかかわらず、特許請求の範囲において明示的に除外され得ることが、意図されている。
【0030】
CF3SO2FImは幾つかのベンダーから入手可能であるが、それは、現在、非常に高価である。発明者は、CF3SO2FImをCF3SO2Fから1工程で1モル当量のガスで製造できれば、CF3SO2FImのコストが低減されるであろうと予期した。
【0031】
CF3SO2Fと、例えば、イミダゾール、ピラゾール、1,2,4-トリアゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、またはベンゾトリアゾールのような、任意のプロトン性アゾールの環窒素(ring nitrogen)との反応に、既知のものは存在しない。CF3SO2Fと、任意のN-シリルイミダゾール、N-シリルピラゾール、またはN-シリル-1,2,4-トリアゾール、N-シリルインダゾール、N-シリルベンズイミダゾール、またはN-シリルベンゾトリアゾールの環窒素との反応にも、既知ものは存在しない。
【0032】
本開示は、トリフラゾールまたはその関連の誘導体を製造するための方法、およびその結果として得られるトリフラゾールおよび/またはその誘導体を実現する。
【0033】
ここで使用される“プロトン性”(protic)および“非プロトン性”(aprotic)という用語は、それぞれ、1分子中の不安定な水素原子の存在または不存在を指す。“プロトン性”という用語が使用されるのは、不安定水素原子がしばしばプロトンとして移動するからであるが、しかしそれは、プロトン性であるために酸性である必要はない。例えば、ジエチルアミンは、プロトン性でありかつ非常に弱い酸である。そのN-H水素は、ブチルリチウム等でのみ除去することができるが、そのN-H水素は、多種の溶媒中で非常に不安定である。プロトン性水素は主に窒素または酸素原子に結合し、非プロトン性水素は主に炭素原子に結合する。“非プロトン性溶媒”という用語は、周知であり、-OHまたは-NH部分(moieties)を有さない溶媒を広く指す。例えば、エチルエーテルおよびジメチルホルムアミドは非プロトン性溶媒であるが、一方、エタノールおよびホルムアミドはプロトン性溶媒である。
【0034】
塩基はプロトン性または非プロトン性であり得る。トリエチルアミンは非プロトン性塩基であり、ジエチルアミンはプロトン性塩基である。テトラメチルグアニジンはプロトン性塩基であり、ペンタメチルグアニジンは非プロトン性塩基である。或る幾種かのフッ化物(NaF、KF、CsF)は非プロトン性塩基として機能する。アニオン(陰イオン)(およびカチオン(陽イオン))は、プロトン性または非プロトン性であり得る。ビフルオリドはプロトン性である。炭酸塩は非プロトン性である。重炭酸塩はプロトン性である。水酸化物はプロトン性である。アルコキシドは非プロトン性である。
【0035】
アゾールは、プロトン性または非プロトン性であり得る。非プロトン性アゾールの例は、チアゾールおよびオキサゾールである。プロトン性アゾールの例には、イミダゾール、ピラゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、インダゾール、2-メチルイミダゾール、2-メチルベンズイミダゾール、および3,5-ジメチルピラゾールが含まれるが、これらに限定されない。プロトン性アゾールを塩基で処理して、非プロトン性アゾラート塩を得ることができる。プロトン性アゾールは一般的に“遊離アゾール”(free azoles)と称され、これらの用語は置き換え可能である。例えば、“プロトン性イミダゾール”と“遊離イミダゾール”は共に、正式には1H-イミダゾールと称される同じ化学物質を指す。特に明記しない限り、ここでなされる“アゾール”への言及は、非プロトン性アゾールではなく、プロトン性アゾールを包含するものと理解される。
【0036】
接尾辞“Im”、“Pz”、“Tz”、“BzIm”、“BzTz”および“Me2Pz”は、それぞれ、イミダゾール、ピラゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾールおよび3,5-ジメチルピラゾールのラジカル塩基構造を指し、トリフルオロメタンスルホニルおよびシリルラジカルの接頭辞に付加されて、以下に記載するように、省略(短縮)された用語を表す。
【0037】
ここでの接頭辞“CF3SO2”は、トリフルオロメタンスルホニルラジカルを指す。
従って、“CF3SO2F”はトリフルオロメタンスルホニルフルオリドを指し、“CF3SO2FIm”は1-(トリフルオロメタンスルホニル)イミダゾールを指し、以下同様である。
【0038】
ここでの接頭辞“Me3Si”は、トリメチルシリルラジカルを指す。例えば、“Me3SiIm”は1-(トリメチルシリル)イミダゾールを指し、“Me3SiF”はフルオロトリメチルシランを指し、以下同様である。
【0039】
ここでの“トリフラゾール”(triflazole:トリフルアゾール)という用語は、一般的に、N-(トリフルオロメタンスルホニル)アゾールを指す。
【0040】
別段の指示がない限り、ここで行われる“ポット”(pot)への言及は、反応を行わせるために使用される、または移動させた反応内容物を保持するために使用されるフラスコ、オートクレーブ、または他の容器を指す。
【0041】
ここでの“反応性フッ化物”(reactive fluoride)という用語は、N-シリルアゾールと反応してフルオロシランおよびアゾールアニオン化合物を生成することができる、化合物内のフッ素原子またはイオンを指す。
【0042】
別段の指示がない限り、ここで行われる“低圧”(low pressure)への言及は、大気圧またはそれより低い状態を指す。特に明記しない限り、ここでの“高圧”(high pressure)への言及は、大気圧より高い圧力状態を指す。“圧力下”(under pressure)という用語は、不特定の高圧を記述するために使用できる。
【0043】
ここで使用される“氷冷された”(iced)という用語は、特に明記しない限り、氷と水の混合物中でポットを0乃至+5℃の温度範囲に冷却するプロセスを指す。
【0044】
ここで使用される“GCMS”という用語は、ガスクロマトグラフィ-質量(スペクトル)分析法の分析方法(gas chromatography-mass spectroscopy)を指す。質量対電荷比(mass-to-charge values:質量対電荷値)は、“m/e”という用語の後に整数が続く形で報告される。質量検出は電子衝撃(electron impact)によるものであった。
【0045】
幾つかの実施形態によれば、本開示は、トリフラゾールおよびその関連の誘導体を生成するための方法、並びにその結果として得られる生成物を実現する。
【0046】
より広い態様では、発明者は、トリフラゾールまたはその関連の誘導体を製造(生成)するための少なくとも2つの例示的な方法を見出した。
【0047】
第1の例示的な方法において、図1に示されているように、CF3SO2Fはアゾールまたはアゾラート塩と反応してトリフラゾールを生成する。そのような反応は、任意に、非プロトン性溶媒の存在下で行われる。50℃未満のポット温度が好ましい。CF3SO2Fは、任意の圧力でアゾールまたはアゾラート塩と反応する。幾つかの実施形態では、CF3SO2Fは、大気圧またはそれより低い圧力でアゾールと反応する。トリフラゾールは単離することができる。
【0048】
任意の適切なプロトン性アゾールを使用してもよい。例には、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ピラゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、インダゾール、2-メチルイミダゾール、2-メチルベンズイミダゾール、および3,5-ジメチルピラゾールが含まれるが、これらに限定されない。その説明は、ここに記載された例示的な各方法における全てのアゾールに適用される。
【0049】
ここに記載の1つまたは複数の反応は、任意に、非プロトン性溶媒の存在下のものであってもよい。適切な非プロトン性溶媒の例には、アセトニトリル、ジクロロメタン、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、メチルシクロペンチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、トルエン、飽和炭化水素溶媒、例えば、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、デカリン、等、およびそれらの任意の組合せ、が含まれるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、反応物を溶媒に懸濁させまたは溶解させてもよい。
【0050】
幾つかの実施形態では、アゾラート塩は、金属カチオンを有する。適切な金属の例には、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、およびそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0051】
幾つかの実施形態では、アゾラート塩は、プロトン性アゾールおよび金属塩基、例えば、金属水素化物(ヒドリド)、金属アルコキシド、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属フッ化物、アルキルリチウム、グリニャール試薬、およびそれらの組合せから誘導される。
【0052】
幾つかの実施形態では、アゾラート塩は、プロトン性アゾールおよび金属炭酸塩から誘導される。金属炭酸塩中の金属の例には、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、およびマグネシウムが含まれるが、これらに限定されない。誘導は、個別にまたはその場で(in situ)行うことができる。
【0053】
幾つかの実施形態では、アゾラート塩は、プロトン性アゾールおよび金属フッ化物から誘導される。金属フッ化物中の金属の例には、ナトリウム、カリウムおよびセシウムが含まれる。誘導は、個別にまたはその場で(in situ)行うことができる。
【0054】
幾つかの実施形態では、アゾラート塩は、プロトン性アゾールおよび非プロトン性有機塩基、または塩基としてのプロトン性アゾールから誘導される。適切な非プロトン性有機塩基の例には、アルキルアミン、例えばトリエチルアミン等、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ-7-エン(1,8-diazabicyclo(5.4.0)undec-7-ene)(DBU)、ヘテロ芳香族アミン、例えば、ピリジン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、等、非プロトン性グアニジン、例えば、ペンタメチルグアニジン、テトラメチル-tert-ブチルグアニジン、1-メチル-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン、1-メチル-2,3,5,6-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール、等、ホスファゼン、およびそれらの組合せ、が含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
第2の例示的な方法では、図2に示されるように、トリフラゾールはN-シリルアゾールから誘導される。幾つかの実施形態では、N-シリルアゾールはN-(トリアルキルシリル)アゾールである。幾つかの実施形態では、N-(トリアルキルシリル)アゾールはN-(トリメチルシリル)アゾールである。アゾール塩基構造は、任意の適切なアゾールから誘導され得る。例には、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ピラゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、インダゾール、2-メチルイミダゾール、2-メチルベンズイミダゾール、および3,5-ジメチルピラゾール、並びにそれらの置換誘導体が含まれるが、これらに限定されない。その説明は、ここに記載の例示的な各方法における全てのアゾールに適用される。
【0056】
幾つかの実施形態では、トリフラゾールは、触媒の存在下でCF3SO2FをN-シリルアゾールと反応させることによって得られる。
【0057】
幾つかの実施形態では、トリフラゾールは、塩基性触媒の存在下でF3SO2FをN-シリルアゾールと反応させることによって得られる。
【0058】
幾つかの実施形態では、そのような塩基性触媒は、プロトン性アゾールそのもの、またはそのアゾラートアニオン化合物である。
【0059】
幾つかの実施形態では、そのような塩基性触媒は非プロトン性塩基である。適切な塩基性触媒の例には、非プロトン性有機塩基(複数種)およびその組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0060】
幾つかの実施形態では、触媒として使用するための適切な非プロトン性有機塩基の例には、第三級アミン、例えばトリエチルアミン等、が含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
幾つかの実施形態では、触媒として使用するのに適した非プロトン性有機塩基の例には、二環式アミジンおよびイソチオ尿素、例えば、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ-7-エン(DBU)、2,3,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-イミダゾ[1,2-a]ピリジン(2,3,5,6,7,8-hexahydro-imidazo[1,2-a]pyridine)(DBN)、および2,3,6,7-テトラヒドロ-5H-チアゾロ[3,2-a]ピリミジン(2,3,6,7-tetrahydro-5H-thiazolo [3,2-a] pyrimidine)(THTP)、等、が含まれるが、これらに限定されない。そのような二環式アミジンおよびイソチオ尿素の部分的なリストが、バーマン氏(Birman)、他(Birman, V. B.; Li, X.; Han, Z. Organic Letters 2007, 9, 37-40)によって与えられており、この文献をその全体について参照により組み込む。
【0062】
幾つかの実施形態では、触媒として使用するのに適した非プロトン性有機塩基の例には、ヘテロ芳香族アミン、例えば、ピリジン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、および1-メチルイミダゾール、等、が含まれるが、これらに限定されない。
【0063】
幾つかの実施形態では、触媒として使用するのに適した非プロトン性有機塩基の例には、ホスファゼン塩基、例えば、N'''-tert-ブチル-N,N,N’,N’,N”,N”-ヘキサメチルホスホリミドトリアミド(N'''-tert-butyl-N,N,N',N',N'',N''-hexamethylphosphorimidic triamide)(即ち、t-BuN=P[NMe23)、およびN,N,N’,N’,N”,N”,N'''-ヘプタメチルホスホリミドトリアミド(N,N,N',N',N'',N'',N'''-heptamethylphosphorimidic triamide)(即ち、MeN=P[NMe23)、等、が含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
幾つかの実施形態では、触媒として使用するのに適した非プロトン性有機塩基の例には、非プロトン性グアニジン、例えば、ペンタメチルグアニジン、テトラメチル-tert-ブチルグアニジン、1-メチル-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン(MeTBD)、および1-メチル-2,3,5,6-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール、等、が含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
適切な塩基性触媒の他の例には、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびセシウムの炭酸塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0066】
適切な塩基性触媒の他の例には、金属水素化物、アルキルリチウム、グリニャール試薬、およびそれらの組合せ、が含まれるが、これらに限定されない。
【0067】
適切な塩基性触媒の他の例には、水酸化物(ヒドロキシド)またはアルコキシドアニオン化合物が含まれるが、これらに限定されない。これらには、水酸化カリウム、カリウムtert-ブトキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、およびテトラブチルアンモニウムヒドロキシド、等、が含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
適切な塩基性触媒の他の例には、トリアルキルシリルオキシドアニオン化合物が含まれるが、これに限定されない。これらには、カリウムトリメチルシリルオキシド(KOSiMe3)、テトラメチルアンモニウムトリメチルシリルオキシド、およびテトラエチルアンモニウムトリメチルシリルオキシド、等が含まれるが、これらに限定されない。
【0069】
適切な触媒の他の例には、反応性フッ化物を含む化合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
幾つかの実施形態では、反応性フッ化物を含む適切な触媒の例は、ナトリウム、カリウム、セシウムおよびテトラアルキルアンモニウムのフッ化物(fluoride:フルオリド)またはビフルオリド(bifluoride:酸性フッ化物、二フッ化水素イオン)、例えば、テトラエチルアンモニウムビフルオリド、およびテトラエチルアンモニウムフルオリド、等である。
【0071】
幾つかの実施形態では、反応性フッ化物を含む適切な触媒の例は、アニオンとしての非結合のまたは“裸の”(naked)フッ化物を含む特定のクラス(級)のアニオン化合物である。裸のフッ化物アニオン化合物の例には、テトラメチルアンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、ホスファゼニウムフルオリド、例えば[P(NMe24] +-(即ち、トリス(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチル-λ5-ホスファニミニウムフルオリド(tris(dimethylamino)-N,N-dimethyl-λ5-phosphaniminium fluoride))、等が含まれる。
【0072】
幾つかの実施形態では、反応性フッ化物を含む適切な触媒の例は、アニオン中に少なくとも1つのフッ素原子を有する、5価または6価のケイ素、硫黄、スズ、または他の主族(main-group)アニオン錯体を含むアニオン化合物であり、例えば、トリス(ジメチルアミノ)スルホニウムジフルオロトリメチルシリカート(tris(dimethylamino)sulfonium difluorotrimethylsilicate:ジフルオロトリメチルケイ酸トリス(ジメチルアミノ)スルホニウム)、トリス(ジメチルアミノ)メチリウムジフルオロトリメチルシリカート(tris(dimethylamino)methylium difluorotrimethylsilicate)、テトラブチルアンモニウムジフルオロトリフェニルシリカート(tetrabutylammonium difluorotriphenylsilicate)、およびテトラブチルアンモニウムジフルオロトリフェニルスタンナート(tetrabutylammonium difluorotriphenylstannate:テトラブチルアンモニウムジフルオロトリフェニルスズ)、等、である。
【0073】
幾つかの実施形態では、反応性フッ化物を含む適切な触媒の例は、反応性硫黄-フッ素またはリン-フッ素の結合を含む化合物であり、例えば、四フッ化硫黄(sulfur tetrafluoride)、三フッ化メチル硫黄(methylsulfur trifluoride)、二フッ化ジメチル硫黄(dimethylsulfur difluoride)、(ジエチルアミノ)三フッ化硫黄((diethylamino)sulfur trifluoride)、三フッ化フェニル硫黄(phenylsulfur trifluoride)、五フッ化フェニル硫黄(phenylsulfur pentafluoride:フェニルサルファペンタフルオリド)、三フッ化リン(phosphorus trifluoride)、および五フッ化リン(phosphorus pentafluoride)、等である。
【0074】
幾つかの実施形態では、反応性フッ化物を含む適切な触媒の例は、カチオン中に硫黄-フッ素結合を含むカチオン化合物、例えば、(ジエチルアミノ)ジフルオロスルホニウムテトラフルオロボラート((diethylamino)difluorosulfonium tetrafluoroborate)、および(4-モルホリニル)ジフルオロスルホニウムテトラフルオロボラート((4-morpholinyl)difluorosulfonium tetrafluoroborate)、等である。
【0075】
幾つかの実施形態では、反応性フッ化物を含む適切な触媒の例は、活性化ジェミナルジフルオリド、例えば、2,2-ジフルオロ-1,3-ジメチルイミダゾリジン(2,2-difluoro-1,3-dimethylimidazolidine)、および1,1-ジフルオロ-N,N,N’,N’-テトラメチルメタンジアミン(1,1-difluoro-N,N,N',N'-tetramethylmethanediamine)、等である。
【0076】
幾つかの実施形態では、4価有機ケイ素(organosilicon)化合物、例えば、フルオロトリメチルシラン(Me3SiF)、テトラメチルシラン(Me4Si)、エチルトリメチルシラン(EtSiMe3)、およびジフルオロジエチルシラン(Et2SiF2)、等、をポットに加えることができる。これらのオルガノシラン(organosilanes:有機シラン)は、フッ化物に可逆的に結合し、それを配位錯体(coordination complex)として溶解し、その反応性を高めることができる。
【0077】
幾つかの実施形態では、金属カチオン化合物が触媒として使用されるときに、クラウン・エーテル(crown ether)、例えば、18-クラウン-6、および15-クラウン-5、等、をポットに加えて、金属カチオン化合物単独の場合よりも強力な触媒を形成することができる。
【0078】
別の態様では、本開示はトリフラゾールを提供する。アゾールは、ピラゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、インダゾール、2-メチルイミダゾール、2-メチルベンズイミダゾール、および3,5-ジメチルピラゾールからなる群から選択されるプロトン性アゾール塩基から誘導される。結果として得られる化合物の例には、1-(トリフルオロメタンスルホニル)-1,2,4-トリアゾール(1-(trifluoromethanesulfonyl)-1,2,4-triazole)、1-(トリフルオロメタンスルホニル)ベンズイミダゾール(1-(trifluoromethanesulfonyl)benzimidazole)、1-(トリフルオロメタンスルホニル)ベンゾトリアゾール(1-(trifluoromethanesulfonyl)benzotriazole)、1-(トリフルオロメタンスルホニル)ピラゾール(1-(trifluoromethanesulfonyl)pyrazole)、1-(トリフルオロメタンスルホニル)-2-メチルイミダゾール(1-(trifluoromethanesulfonyl)-2-methylimidazole)、および1-(トリフルオロメタンスルホニル)-3,5-ジメチルピラゾール(1-(trifluoromethanesulfonyl)-3,5-dimethylpyrazole)が含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
CF3SO2Fとプロトン性アゾールとの反応。
幾つかの実施形態では、CF3SO2Fは、無水条件下でイミダゾールのアセトニトリル溶液と、例えば金属炭酸塩またはフッ化物のような金属塩基の懸濁液とを含む密閉容器内に低圧で導入される。溶解したイミダゾールは、おそらく固形物(固体)の表面またはその付近において、そのアニオンとの平衡状態で存在する。或る幾分かの自由に溶解されたイミダゾラート(imidazolate)も存在し得る。ポットにCF3SO2Fを加えると、結果として発熱反応が生じる。理論的には、イミダゾール:炭酸塩およびイミダゾール:フッ化物のモル比は、それぞれ1:1および1:2である。実際には、過剰な炭酸塩またはフッ化物が好ましい。反応は、好ましくは-10℃乃至+50℃の温度で行われてもよい。2モルのまたはそれより多いイミダゾールのポット・ロード(投入量、負荷)を使用してもよい。但し、2モルのイミダゾールは、約20℃より高い温度でのみアセトニトリルに完全に溶解する。反応の終わりに、不溶性の塩が分離され、溶媒が除去され、生成物が蒸留される。ポットが充分に冷却されている場合、高圧を使用してもよいが、しかし、低圧の使用はより高い安全性を意味し、またその低圧の使用によって遥かに小さいオートクレーブの場合と同じ資本コストで大きい反応器を使用できるようになる。さらに、低圧の使用によって、より良好な温度制御とより正確なエンドポイント(終了点)が可能になり、従って加えられるCF3SO2Fの過剰量を最小限に抑えることができる。
【0080】
幾つかの実施形態では、イミダゾールは、CF3SO2Fを加える前に完全に脱プロトン化され、結果として得られるイミダゾラート塩が使用される。イミダゾラートアニオンに適したカチオンには、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、およびマグネシウムが含まれる。ナトリウムイミダゾラードが好ましい。それは、動的真空(真空引き)下で200℃におよび50Pa未満になるまで加熱することによって、イミダゾールおよび水酸化ナトリウムから無水形態で容易に調製(生成)される。この処理によって、アセトニトリル中で微細な懸濁液(サスペンション)を容易に形成する砕けやすい(friable:脆い)固形物(固体)が得られる。CF3SO2Fを加える前にポットが排気(evacuated:真空排気、真空引き)されると、低圧でその供給(加えること、添加)が急速に進行する。ポットは、冷却することによって処理温度に保たれる。低圧で行われる幾つかの実施形態では、完全に脱プロトン化された金属イミダゾラートが使用され、CF3SO2Fを加える前にポットが適切に脱気(degassed:排気)されると、エンドポイント(終了点)付近でポット圧力が純粋な溶媒の蒸気圧より低く低下し得る。
【0081】
イミダゾールをCF3SO2Fと反応させることができる幾つかの実施形態では、非プロトン性有機塩基が化学量論的に使用される。
【0082】
イミダゾールをCF3SO2Fと反応させることができ、かつCF3SO2Imが所望の生成物であり、かつ非プロトン性有機塩基が使用される幾つかの実施形態では、過剰量のイミダゾールが有益であり得る。
【0083】
イミダゾールをCF3SO2Fと反応させることができ、かつCF3SO2Imが所望の生成物であり、かつ非プロトン性有機塩基が使用される幾つかの実施形態では、DBUまたは非プロトン性グアニジンが好ましい場合があり得る。これらの強塩基は低圧で使用できる。DBUとは異なり、非プロトン性グアニジンは水酸化物水溶液で処理することによってリサイクル(再生利用)できるが、一方、DBUはそのようにリサイクルできず、1回限り使用の試薬である。
【0084】
イミダゾールをCF3SO2Fと反応させることができ、かつCF3SO2Imが所望の生成物である幾つかの実施形態では、トリエチルアミンが塩基として好ましいものであり得る。イミダゾールをCF3SO2Fと反応させることができる幾つかの実施形態では、高圧でのジクロロメタンおよびトリエチルアミンの使用が好ましい場合があり得る。
【0085】
イミダゾール以外の他のアゾールが使用される幾つかの実施形態では、アゾールまたはアゾラート塩は、イミダゾールについて上述した複数の組の条件下で、CF3SO2Fと反応させて、他のトリフラゾールを生成することができる。例えば、ピラゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンズイミダゾール、およびベンゾトリアゾールの金属塩を使用して、それぞれTfPz、TfTz、TfBzIm、およびTfBzTzを生成することができる。これらのおよび他のアゾールの金属塩は、それらが無水である場合に使用できる。幾種かのアゾールは、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムで容易に脱プロトン化して、無水アゾラートを得ることができる。他の無水アゾラートは、アゾールと水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムとの単純な反応によっては容易に得られない。そのような場合、例えば、ナトリウムまたはカリウムtert-ブトキシド、グリニャール試薬、金属水素化物、またはアルキルリチウムのような、より強い塩基を代わりに使用することができる。
【0086】
幾つかの実施形態では、金属またはプラスチック製の反応器が、フッ化物の存在下で腐食するガラスよりも好ましい。
【0087】
CF3SO2FとN-シリルアゾールとの反応。
幾つかの実施形態では、CF3SO2Fは、N-シリルアゾールと反応させることができる。その反応は、溶媒または触媒なしで行うことができるが、そのいずれかまたは両方が好ましい場合があり得る。
【0088】
CF3SO2FをN-シリルアゾールと反応させることができる幾つかの実施形態では、N-(トリメチルシリル)アゾールが好ましい。N-シリルアゾールがMe3SiImであるとき、その生成物はCF3SO2ImおよびMe3SiFである。
【0089】
CF3SO2FがN-シリルアゾールと反応する幾つかの実施形態では、図2に示されるように、塩基性触媒を使用して触媒サイクルを形成することができる。強塩基は低圧で使用することができる。非プロトン性の強塩基DBUが好ましい触媒である。DBUは、かなり低コストであり、これまでに試験された全ての原液の(neat liquid)N-シリルアゾールおよび極性溶媒と混和性がある。DBUは、CF3SO2FとN-シリルアゾールとの反応において非常に強力な触媒である。DBU:アゾールのモル比は、アゾールおよびポットの冷却能力に応じて、0.001:1またはそれ未満に、小さくし得る。また、非プロトン性グアニジンも好ましいものであり得る。非プロトン性グアニジンは、DBUよりもコストが高いが、また強力な触媒でもあり、DBUよりも耐熱性が高く、DBUとは違って、必要に応じて水性(含水)水酸化物(aqueous hydroxide)で処理することによってリサイクルすることができる。
【0090】
幾つかの実施形態では、例えばトリエチルアミンのような弱塩基が使用される。これらの実施形態では、高圧、高温、またはその両方が有益であり得る。
【0091】
DBUまたは非プロトン性グアニジンが、N-シリルアゾールと直接反応しているか否か、または単に微量の(traces of:痕跡の)遊離アゾールを脱プロトン化しているか否かは、不明である。少量の遊離アゾールをポットに加え得る。これまでは、これは必要でなかった。
【0092】
幾つかの実施形態では、無溶媒反応が最も好ましい。例えば、CF3SO2Fと、そのままの(neat:原料のままの、ストレートの)Me3SiTz/DBU(例1)またはMe3SiIm/DBU(例2)との低圧での反応によって、97%の収率で生成物が得られる。
【0093】
幾つかの実施形態では、そのままの(neat)Me3Si-アゾールを低圧でCF3SO2Fと反応させることができるとき、副生成物Me3SiF(bp = 16.4℃)の蒸気圧がポットを強制的に大気圧より高くすることがないように、ポット温度が低く保たれる。
【0094】
幾つかの実施形態では、最高(最良)の収率が、非プロトン性反応物および触媒の使用によって得られる。
【0095】
全ての実施形態において、最高(最良)の収率は、処理(プロセス)全体を通して無水反応物、触媒、および溶媒を使用することによって、得られる。
【0096】
実験
全ての反応はドラフト(fume hood)内で行われた。低圧での供給(添加)は、ポット圧力を調整する圧力ゲートを用いて行われた。ポット圧力が設定圧力より低く低下したとき、設定圧力に達するまでさらにガスが加えられた。圧力ゲート・ディスプレイ(表示器)は、圧力計(マノメータ)としても使用された。反応の進行は、しばしばGCMSによって監視され、それ(GCMS)は、トレース(形跡、痕跡)における各ピークの固有性(identity:同一性)については決定的(definitive:最も信頼できる、明確な)であるが、ポット内のその相対量については定性的であるに過ぎない。液体生成物が得られたとき、反応のより高い揮発性の成分の除去が例において省略されて(記載せず)、生成物の沸点のみが報告される。N-シリルアゾールは、アゾールとヘキサメチルジシラザン(hexamethyldisilazane)との反応によって調製(生成)された。
【0097】
例1: 1-(トリフルオロメタンスルホニル)-1,2,4-トリアゾール(CF3SO2Tz): 250mLの一口丸底フラスコには、ガス注入口および温度計が装備され、1-トリメチルシリル-1,2,4-トリアゾール(Me3SiTz、79g、0.56モル)およびジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU、0.44g、2.9ミリモル)が充填された。ポットは、氷冷され、一定の静圧(1.3kPa)になるまで排気(真空排気)された。トリフルオロメタンスルホニルフルオリド(CF3SO2F、92.6g、0.609モル)が、5~16℃で1時間かけて低圧で撹拌しながら加えられた。揮発性副生成物フルオロトリメチルシラン(Me3SiF)が、40℃の水浴を使用して低圧で留去された(distilled off:蒸留除去された)。残留物が63℃/2kPaで蒸留されて、生成物CF3SO2Tz(109.4g、0.54モル、97%)が得られた。GCMS m/e201、単一ピーク。
【0098】
例2: 1-(トリフルオロメタンスルホニル)イミダゾール(CF3SO2Im)。250mLの一口丸底フラスコには、ガス注入口および温度計が装備され、1-(トリメチルシリル)イミダゾール(Me3SiIm、57.9g、0.41モル)およびDBU(0.26g、1.7ミリモル)が充填された。ポットは、氷冷され、一定の静圧(1.3kPa)まで排気(真空排気)された。CF3SO2F(66.4g、0.436モル)が、3~11℃で46分間かけて低圧で撹拌しながら加えられた。揮発性副生成物Me3SiFが、40℃の水浴を使用して低圧で留去された。残留物が40℃/1.3kPaで蒸留されて、生成物CF3SO2Im(79.7g、0.4モル、97%)が得られた。GCMS m/e200、単一ピーク。
【0099】
例3: CF3SO2Tz。600mLの攪拌式オートクレーブには、Me3SiTz(38.9g、0.28モル)、DBU(0.6g、0.004モル)、およびアセトニトリル(200mL)が充填され、密封され、氷冷され、一定の静圧(4kPa)まで排気(真空排気)された。CF3SO2F(41.9g、0.276モル)が圧力下で1分かけて加えられ、ポットが2℃から17℃に上昇した。ポットは、すぐに低圧に低下し、周囲温度で一晩かけて撹拌された。翌朝、ポットは、8℃/33kPaであり、排気(真空排気)され、揮発性物質(200g)の大部分が6℃および低圧でドライアイスのトラップ内に蒸留された。次いで、ポットは、窒素が充填されて開かれ、内容物が54~57℃/2~2.5kPaで蒸留されて、生成物CF3SO2Tz(43g、0.21モル、78%)が透明な無色の液体として得られた。GCMS m/e201、微量の溶媒を含む。
【0100】
例4: CF3SO2Im。1リットルの四口丸底フラスコには、温度計開口を有しバブラー(泡立て器)に接続されたガス注入口、温度計、大型攪拌子(stir egg)、粉末漏斗、および複数のストッパが装備された。フラスコには、新鮮な乾燥炭酸カリウム(K2CO3、138g、1モル)が窒素の流れに逆らうように充填され、漏斗がセプタム(隔壁、隔膜)と交換(置換)された。K2CO3が撹拌され、イミダゾール(35g、0.5モル)のアセトニトリル(400mL)溶液がカニューレを介してその撹拌されたポットに移された。セプタムがストッパと交換され、バブラーがライン(管)から外(分離)された。ポットは、氷冷され、5℃で一定の静圧(4kPa)まで排気(真空排気)された。CF3SO2F(80g、0.53モル)が5~7℃/40~53kPaで30分かけて加えられた。反応の終わりに、ポットには、窒素が充填され、内容物がドラフト内で濾過され、固形物がアセトニトリル(250mL)ですすがれた(洗われた)。混合された濾液は30℃/1.2kPaで分留されて、粗生成物(64g、0.32モル、63%)が得られ、これが他の反応と組み合わされて、再蒸留されて精製生成物が得られた。
【0101】
例5: CF3SO2Im。1Lの一口丸底フラスコ中の1.00N(規定)のNaOH(500mL)中のイミダゾール(34g、0.5モル)の溶液が、濃縮乾固され、残留物が200℃/13Paで30分間加熱された。ポットは、真空下で冷却され、窒素が充填された。砕けやすい内容物がフラスコの壁からこすり落とされ、攪拌子が加えられ、フラスコはセプタムで素早く密閉された。アセトニトリル(250mL)がカニューレを介して内部に移され、ポットは数分間撹拌され、セプタムがガス注入口に交換された。ポットは、氷冷され、一定の静圧(5kPa)まで排気(真空排気)され、CF3SO2F(80g、0.53モル)が40~93kPaで75分かけて加えられた。最後の15分間のその供給(添加)は、氷なしで行われ、ポットが温められた。ポットは室温で一晩かけて撹拌された。翌朝、ポットの圧力は36kPaに低下していた。ポットは、排気(真空排気)され、窒素が充填され、ポットの内容物が濾過された。濾過には数時間かかり、ラバーダム(rubber dam)が使用された。濾液が38℃/1kPaで蒸留されて粗生成物(78.4g、0.39モル、78%)が得られ、これが他の反応と組み合わされて、再蒸留されて精製生成物が得られた。
【0102】
例6: 1-(トリフルオロメタンスルホニル)ベンズイミダゾール(CF3SO2BzIm)。500mLの三口丸底フラスコには、温度計、攪拌子、セプタム、ガス注入口、およびストッパが装備された。ポットは、カニューレを介して、Me3SiBzIm(156.6g、0.31モル)の37.6w/w%のアセトニトリル溶液、DBU(0.3g、0.002モル)が充填され、セプタムがストッパに交換された。ポットは、攪拌され、氷冷され、一定の静圧(4kPa)まで排気(真空排気)された。CF3SO2F(49g、0.32モル)が5~15℃/40~53kPaで16分間かけて加えられた。ポットは、攪拌され、さらに30分間氷冷されて3℃/34kPaにされ、次いで6kPaになるまで排気(真空排気)され、窒素が充填された。この材料を直接蒸留しようとして、固形物(固体)および液体が得られた。実質的にアセトニトリルを含まない残留物がベンゼン(100mL)に取り込まれ、固形物が濾別されて、透明な無色の濾液が得られた。この濾液が蒸留されて(56.5℃/0.6Pa)、生成物CF3SO2BzIm(72.2g、0.29モル、93%)が得られた。GCMS m/e250、単一ピーク。
【0103】
例7: 1-(トリフルオロメタンスルホニル)ベンゾトリアゾール(CF3SO2BzTz)。250mLの一口丸底フラスコは、攪拌子が装備され、セプタムで密閉された。Me3SiBzTz(59.9g、0.31モル)およびDBU(0.07g、0.5ミリモル)がカニューレを介して内部に移された。セプタムがガス注入口に交換され、ポットの内容物が、攪拌され、排気(真空排気)され(0.1kPa)、氷冷された。CF3SO2F(46.8g、0.31モル)が93kPaで1時間かけて加えられた。ポットはすぐに黄色になった。次に、氷冷されたポットは0.3kPaになるまで排気(真空排気)され、ポットの内容物が固化された。この粗固形物(78.2g、0.31モル、99.5%)は催涙性があり、複数のGCMSピークを示したが、明確な融点37~37.2℃を示した。文献融点(Lit.m.p.)=37℃。
【0104】
例8: 1-(トリフルオロメタンスルホニル)ピラゾール(CF3SO2Pz)。500mLの一口丸底フラスコは、攪拌子が装備され、Me3SiPz(63g、0.45モル)およびDBU(0.11g、0.7ミリモル)が充填され、ガス注入口で素早く密閉され、氷冷され、0.4kPaになるまで排気(真空排気)された。攪拌され氷冷されたそのポットに、CF3SO2F(71.3g、0.47モル)が53~93kPaで24分かけて加えられた。ポットは氷上でさらに30分間撹拌され、圧力が51kPaに降下した。次いで、ポットは0.8kPaになるまで排気(真空排気)され、ポットの内容物が凍結し、次いでフラスコが温まると溶融した。生成物CF3SO2Pzは48℃/1kPaで透明な無色の液体として蒸留された。収量85.9g(0.43モル、95%)、GCMS m/e200、単一ピーク。
【0105】
例9: 1-(トリフルオロメタンスルホニル)-2-メチルイミダゾール(CF3SO2MeIm)。250mLの一口丸底フラスコには、攪拌子およびセプタムが装備され、N-(トリメチルシリル)-2-メチルイミダゾール(Me3SiMeIm、72.7g、0.47モル)およびDBU(0.6g、4ミリモル)が充填された。セプタムはガス注入口に置き換えられた。ポットは、氷冷され、0.3kPaになるまで排気(真空排気)された。CF3SO2F(57.4g、0.38モル)が67~72kPaで2時間かけて加えられた。生成物は、蒸留物中に幾分かの小針を含む無色の液体として、46℃/0.5kPaで蒸留された(66.8g、0.31モル、82%、CF3SO2Fから)。支配的ピークとしてのGCMS m/e214;また、m/e154、Me3SiMeIm、および他の小さい未確認のピークの存在。生成物は、さらに蒸留しても汚染物質から容易に分離できなかった。
【0106】
例10: CF3SO2Tz。600mLの撹拌式オートクレーブは、1,2,4-トリアゾール(22g、0.32モル)、フッ化カリウム(40g、0.7モル)、およびアセトニトリル(300mL)が充填され、密閉され、氷冷され、排気(真空排気)された(4.5kPa)。CF3SO2F(50.2g、0.33モル)が8~24℃/73~80kPaで1時間かけて撹拌ポットに加えられた。次いで、ポットは、さらに10分間撹拌され、8℃/46kPaに低下した。次いで、ポットは、排気(真空排気)され、窒素が充填され、内容物が濾過された。濾液は44℃/1.2kPaで蒸留されて、生成物CF3SO2Tz(30.3g、0.15モル、47%)が得られた。残りのポット固形物(13g)は主にトリアゾールで構成されていた。
【0107】
例11: 1-(トリフルオロメタンスルホニル)-3,5-ジメチルピラゾール(CF3SO2Me2Pz)。250mLの一口丸底フラスコには、攪拌子およびセプタムが装備され、カニューレを介してN-(トリメチルシリル)-3,5-ジメチルピラゾール(65.2g、0.39モル)およびDBU(0.27g、0.004モル)が充填された。セプタムはすぐに真空アダプタに交換され、ポットは、一定の静圧(0.4kPa)まで排気(真空排気)され、氷冷された。CF3SO2F(62.6g、0.41モル)が、その攪拌され氷冷されたポットに93kPaで20分かけて加えられた。圧力が安定するまで(64kPa)、ポットは氷上でさらに15分間撹拌された。揮発性物質が、室温まで加温されつつポンプで排出された(3kPa)。ポットの内容物が濾過されて少量の固形物が除去され、透明な無色の濾液(85g)が56℃/0.16kPaで蒸留されて、純粋な生成物CF3SO2Me2Pz(82.3g、0.36モル、93%)が、透明な無色の液体として得られた。GCMS m/e228、単一ピーク。
【0108】
内容を例示的な実施形態に関して説明したが、それは実施形態に限定されない。むしろ、特許請求の範囲を、この分野の専門家によってなされ得る他の変形例および実施形態を含むように、広く解釈すべきである。
図1
図2
【国際調査報告】