(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-24
(54)【発明の名称】光導電体読み出し回路
(51)【国際特許分類】
G01J 1/44 20060101AFI20230316BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20230316BHJP
H01L 31/08 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
G01J1/44 A
G01J1/02 B
H01L31/08 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546628
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(85)【翻訳文提出日】2022-09-28
(86)【国際出願番号】 EP2021052081
(87)【国際公開番号】W WO2021152074
(87)【国際公開日】2021-08-05
(32)【優先日】2020-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517267802
【氏名又は名称】トリナミクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】グエン,セラル モハン
(72)【発明者】
【氏名】シェルヴァート,ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ファイス,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,フェリクス ベルノ
【テーマコード(参考)】
2G065
5F849
【Fターム(参考)】
2G065AB02
2G065AB03
2G065AB04
2G065AB05
2G065BA02
2G065BB27
2G065BB37
2G065BC05
2G065BC28
2G065BC35
5F849AA17
5F849AB07
5F849AB09
5F849AB11
5F849BA10
5F849KA01
5F849KA11
5F849KA14
5F849KA20
5F849LA01
5F849LA02
5F849LA03
5F849XB01
5F849XB32
(57)【要約】
光導電体の感光領域の照射に依存する電気抵抗Rphotoを示すように構成された、少なくとも1つの光導電体と;少なくとも1つの光導電体読み出し回路であって、前記光導電体読み出し回路は前記光導電体の前記電気抵抗Rphotoの変化に関連する差動電圧を決定するように構成され、前記光導電体読み出し回路は、電気出力がその極性を少なくとも1回変化するように少なくとも1つの周期的に変調されたバイアス電圧を前記光導電体に印加するように構成された少なくとも1つのバイアス電圧源を有する、少なくとも1つの光導電体読み出し回路と;所定の照射レベルで前記差動電圧を平衡させるように構成された少なくとも1つの電気要素と、を備える装置が提案されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導電体の感光領域の照射に依存する電気抵抗R
photoを示すように構成された、少なくとも1つの光導電体と;
少なくとも1つの光導電体読み出し回路であって、前記光導電体読み出し回路は前記光導電体の前記電気抵抗R
photoの変化に関連する差動電圧を決定するように構成され、前記光導電体読み出し回路は、電気出力がその極性を少なくとも1回変化するように少なくとも1つの周期的に変調されたバイアス電圧を前記光導電体に印加するように構成された少なくとも1つのバイアス電圧源を有する、少なくとも1つの光導電体読み出し回路と;
所定の照射レベルで前記差動電圧を平衡させるように構成された少なくとも1つの電気要素と、を備える装置。
【請求項2】
前記光導電体読み出し回路は、ホイートストンブリッジ又はサンプルホールド回路を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記バイアス電圧の変調は、単極性又は双極性である、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記バイアス電圧変調は、電力線周波数、特に50Hz又は60Hzの周波数を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記装置は、少なくとも1つの評価装置への少なくとも1つのカップリングを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記照射は変調される、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記感光領域は、硫化鉛(PbS);セレン化鉛(PbSe);テルル化水銀カドミウム(HgCdTe);硫化カドミウム(CdS);セレン化カドミウム(CdSe);アンチモン化インジウム(InSb);ヒ化インジウム(InAs);ヒ化インジウムガリウム(InGaAs);外因性半導体、有機半導体、からなる群から選択される少なくとも1つの光導電材料を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項による少なくとも1つの装置を含む検出器であって、
前記検出器は、前記装置の前記光導電体読み出し回路の少なくとも1つの出力の出力信号を決定するように構成された少なくとも1つの評価装置を有し、
前記評価装置は、前記出力信号を評価することによって照射強度を決定するように構成されている、検出器。
【請求項9】
前記評価装置は、少なくとも1つのフーリエ変換;周波数のカウント、エッジ検出、周期長測定、からなる群の1つ以上の操作を実行するように構成されている、請求項8に記載の検出器。
【請求項10】
少なくとも1つのPbSセンサ、少なくとも1つのPbSeセンサ、又は、複数のピクセルを含み各ピクセルが少なくとも1つのPbS又はPbSeセンサを含む少なくとも1つのピクセル化されたセンサアレイ、のうち1つ以上の読み出しのための、装置を参照する請求項1~7のいずれか1項に記載の装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導電体の読み出しのための光導電体読み出し回路、検出器、及び光導電体の読み出し回路の使用に関する。具体的には、該光導電体読み出し回路は、硫化鉛光導電体センサなどの光導電体の測定可能な電圧応答を決定するために使用され得る。
【背景技術】
【0002】
光導電体は、測定された物理量に応じて電気出力を生成するために、外部の励起信号を必要とするセンサである。光導電体の場合、この物理量は照射である。最も一般的には、励起信号として電圧VBiasが光導電体に印加される。
【0003】
光導電体は照射に応じてその抵抗を変化させる。変化自体は、光導電体の全抵抗値に比べて比較的小さい。例えば、約1MΩの抵抗を特徴とする2mm×2mmの寸法のPbS検出器は、16μW/cm2の放射照度の1550nmの赤外線放射によって、約10kΩの抵抗を変化させ、これは1%の変化に相当する。このように、励起信号は、照射による電気出力の変化よりも桁違いに大きい。フィルタリングを行わずに、読み出し電子機器は、信号全体を測定することができ、そうでありながら、比較的良好な分解能で1%の変化を分解できることを要する。このような読み出し電子機器は市販されているが、非常に高価である。
【0004】
カーボンコンポジット抵抗器又は厚膜抵抗器などの他のタイプの抵抗器と同様に、光導電体は、強い1/fノイズ(フリッカーノイズとも呼ばれる)を示し、これはより小さな周波数で支配的である。1/fノイズは、光導電体を流れる電流IDCのDC部分に強く依存する。
【0005】
光導電体の応答は、一般的に、一定のDCバイアス電圧を光導電体に印加する分圧器によって測定される。DC電圧の不安定さ又は偏差は出力信号に直接影響を与え、測定誤差につながる。さらに、1/fノイズはIDCに依存する。このため、バイアスとして一定のDC電圧を使用することは不利である。
【0006】
さらに、分圧器の最大出力信号を得るために、抵抗値は同じか、又は少なくとも同じ桁である必要がある。光導電体の抵抗が変化すると、システムは最適な動作点からドリフトしてしまう。
【0007】
また、DCバイアス電圧に対する応答として、検出器の抵抗は、おそらく検出器材料の電気化学的プロセスに起因して、ドリフトすることがある。イオンドリフトのような電気化学的プロセスの反応時間よりも高い周波数で変調されたバイアス電圧は、光導電体の抵抗ドリフトを低減させることができる。
【0008】
それに加え、光導電体は、抵抗の非対称性を特徴とすることができ、これはバイアス電圧の極性に依存して抵抗が異なる場合があることを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明によって対処される問題は、この種の既知の回路の欠点を少なくとも実質的に回避する、光導電体読み出し回路及び検出器を特定することである。特に、光導電体の、改善された、特により信頼性が高い、費用対効果が高い読み出しが望まれるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この問題は、独立特許請求項の特徴を備えた本発明によって解決される。個別に又は組み合わせて実現されることができる本発明の有利な展開は、従属請求項及び/又は以下の明細書及び詳細な実施形態に示されている。
【0011】
本発明の第1の態様では、装置が開示されている。前記装置は、光導電体の感光領域の照射に依存する電気抵抗Rphotoを示すように構成された、少なくとも1つの光導電体と;少なくとも1つの光導電体読み出し回路であって、該光導電体読み出し回路は光導電体の電気抵抗Rphotoの変化に関連する差動電圧を決定するように構成され、電気出力がその極性を少なくとも1回変化するように少なくとも1つの周期的に変調されたバイアス電圧を前記光導電体に印加するように構成された少なくとも1つのバイアス電圧源を有する、少なくとも1つの光導電体読み出し回路と;所定の照射レベルで前記差動電圧を平衡させるように構成された少なくとも1つの電気回路と、を備える。
【0012】
本明細書で使用される「光導電体」という用語は、フォトレジスタとも表され、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、光導電体の感光領域の照射に依存する特定の電気抵抗Rphotoを示すことができる感光要素を指し得る。具体的には、電気抵抗は、光導電体の材料の照射に依存する。以下に詳細に概説されるように、光導電体は、「光導電性材料」を含む感光領域を含んでよい。光導電体は、例えば、感光検出器回路に適用されることができる。
【0013】
本明細書で使用される「照射」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、可視スペクトル範囲、紫外スペクトル範囲、及び赤外スペクトル範囲のうちの1つ以上の電磁放射を指し得る。そこでは、部分的に規格ISO-21348に従って、可視スペクトル範囲という用語は、一般に、380nm~760nmのスペクトル範囲を指す。赤外(IR)スペクトル範囲という用語は、一般に、760nm~1000μmの範囲の電磁放射を指し、そのうち、760nm~1.4μmの範囲は、一般に、近赤外(NIR)スペクトル範囲と呼ばれ、15μm~1000μmの範囲は遠赤外(FIR)スペクトル範囲と呼ばれる。「紫外スペクトル範囲」という用語は、一般に、1nm~380nm、好ましくは100nm~380nmの範囲の電磁放射を指す。以下では、「照射」という用語は、「光」とも表される。好ましくは、本発明内で使用される照射は、可視光、すなわち可視スペクトル範囲の光、及び/又は赤外光、すなわち赤外スペクトル範囲の光である。
【0014】
本明細書で使用される「光導電体の感光領域」という用語は、一般に、例えば入射光ビームによる照射に感応する光導電体のエリアを指す。例えば、感光領域は、好ましくは(必ずしもそうである必要はないが)連続的であり、連続領域を形成することができる二次元又は三次元の領域であってよい。光導電体は、このような感光領域を1つ有するか、さもなければ複数有することができる。本明細書で使用される「照射に依存して電気抵抗Rphotoを示す」という用語は、一般に、光導電体の電気抵抗が、感光領域の照射、特に照射の強度に依存して、調整及び/又は変化及び/又は変動されることを指す。特に、照射に応答して、電気抵抗が調整及び/又は変化及び/又は変動される。光導電体が照射されると、光導電体は電気抵抗の低下を示し得る。光導電体は、照射されると、その電気抵抗が低下させ得る。具体的には、光導電体の電気抵抗は、入射光強度の増加に伴って減少し得る。暗抵抗と明抵抗との間の変化は、測定される量又は読み出される量である。本明細書で使用される「暗抵抗」という用語は、一般に、非点灯状態、すなわち照射なしの状態における光導電体の電気抵抗を指す。本明細書でさらに使用される「明抵抗」という用語は、照射下での光導電体の電気抵抗を指す。測定及び/又は読み出しのために、一般に、非線形挙動を有する分圧回路が知られている。光導電体の抵抗の線形変化は、電圧出力の非線形変化をもたらす。本発明は、以下でより詳細に概説するように、線形挙動を有する回路機能を提案する。
【0015】
光導電体は、少なくとも1つの光導電材料を備え得る。電気抵抗は電気伝導率の逆数で定義されるため、代わりに、「光抵抗材料」という用語が同種の材料を呼ぶのにも使用されることがある。感光領域は、硫化鉛(PbS);セレン化鉛(PbSe);テルル化水銀カドミウム(HgCdTe);硫化カドミウム(CdS);セレン化カドミウム(CdSe);アンチモン化インジウム(InSb);ヒ化インジウム(InAs);ヒ化インジウムガリウム(InGaAs);外因性半導体、例えば、ドープされたGe、Si、GaAs、有機半導体、からなる群から選択される少なくとも1つの光導電材料を含むことができる。しかし、他の材料も可能である。さらなる可能な光導電性材料は、例えば、WO2016/120392A1に記載されている。例えば、光導電体は、trinamiX GmbH,D-67056 Ludwigshafen am Rhein,GermanyからHertzstueckという商標名で市販されている光導電体であってよい。
【0016】
例えば、感光領域は、少なくとも1つの照射源によって照射されてよい。照射源は、例えば、周囲光源であってよく、又はそれを含むことができ、及び/又は、人工照射源であってよく、又はそれを含むことができる。例として、照射源は、少なくとも1つの赤外線エミッタ及び/又は可視光線用の少なくとも1つのエミッタ及び/又は紫外線用の少なくとも1つのエミッタを含んでよい。例として、照射源は、少なくとも1つの発光ダイオード及び/又は少なくとも1つのレーザーダイオードを含んでよい。照射源は、特に以下の照射源:レーザー、(原則として、代替的又は追加的に、他のタイプのレーザーも使用することができるが、)特にレーザーダイオード;発光ダイオード;白熱灯;ネオン光;火炎源;有機光源、特に有機発光ダイオード;構造化光源、のうちの1つ以上を含むことができる。代替的又は追加的に、他の照射源も使用することができる。照射源は、一般に、紫外スペクトル範囲、赤外スペクトル範囲の少なくとも1つの光を放出するように適合されることができる。最も好ましくは、少なくとも1つの照射源は、NIR及びIR範囲、好ましくは800nm及び5000nmの範囲、最も好ましくは1000nm及び4000nmの範囲の光を放出するように適合される。
【0017】
照射源は、少なくとも1つの非連続光源を含むことができる。あるいは、照射源は、少なくとも1つの連続光源を含むことができる。光源は、感光検出器の感光波長と重複する少なくとも1つの放射波長を有する任意の光源であってよい。例えば、光源は、プランク放射を生成するように構成されてよい。例えば、光源は、少なくとも1つの発光ダイオード(LED)及び/又は少なくとも1つのレーザー光源を含み得る。例えば、光源は、液体又は固体材料又は気体の酸化のような発熱反応による照射を生成するように構成されてよい。例えば、光源は、蛍光効果からの照射を生成するように構成されてよい。照射源は、少なくとも1つの変調された光ビームを生成するように構成されてよい。あるいは、照射源によって生成される光ビームは、非変調であってもよく、及び/又は、さらなる光学的手段によって変調されていてもよい。照射源は、連続光源からの光ビームを変調するように構成された少なくとも1つの光チョッパ装置を含んでよい。光チョッパ装置は、連続光源からの光ビームを周期的に遮断するように構成されてよい。例えば、光チョッパ装置は、少なくとも1つの可変周波数回転ディスクチョッパ及び/又は少なくとも1つの固定周波数音叉チョッパ及び/又は少なくとも1つの光シャッタであってよく、又はそれらを含んでよい。提案された装置は、光変調周波数から独立した光導電体の抵抗を測定及び/又は決定することができる。したがって、提案された装置は、変調光強度なしに照射源の光導電体抵抗の測定を可能にする。
【0018】
本明細書で使用される「光導電体読み出し回路」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、少なくとも1つの光導電体及び/又は複数の光導電体の読み出しするように構成された電子回路を指し得る。
【0019】
光導電体読み出し回路は、光導電体の電気抵抗Rphotoの変化に関連する差動電圧を決定するように構成されている。本明細書で使用される「差動電圧を決定する」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、異なる時点及び/又は照射状態においてなど、電圧間、特に光導電体にかけての電圧間の差、特に変化を測定することを指し得る。
【0020】
光導電体読み出し回路は、電気出力が少なくとも1回その極性を変えるように、少なくとも1つの周期的に変調されたバイアス電圧を、光導電体に印加するように構成された少なくとも1つのバイアス電圧源を含む。変調は、単極性又は双極性であってよい。変調の周波数は自由に選択できるが、低1/fノイズのためには、より高い周波数、好ましくは20~1000Hz、特に50~200Hzが推奨される。例えば、バイアス電圧変調は、電力線周波数、特に50Hz又は60Hzの周波数を有する。
【0021】
本明細書で使用される「バイアス電圧源」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、バイアス電圧を生成するように構成された少なくとも1つの電圧源を指し得る。バイアス電圧は、光導電体材料にかけて印加される電圧であってよい。本明細書で使用される「変調されたバイアス電圧」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、光導電体のバイアス電圧の極性化の変化を指し得る。本明細書で使用される「周期的に」変調されたバイアス電圧という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、時間間隔で出現及び/又は発生するバイアス電圧の極性化の変化を指し得る。
【0022】
バイアス電圧源は、2~20V、特に8V程度の定常供給電圧を生成するように構成されてよい。光導電体読み出し回路は、±4Vのような周期的に変調されたバイアス電圧を生成する少なくとも1つのスイッチング素子を含んでいてよい。例えば、スイッチング素子は、トリガースイッチを含むことができる。本明細書で使用される「トリガースイッチ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、任意のトリガー、特にトリガー信号に依存して及び/又はそれに応答して作用するスイッチを指し得る。トリガー信号は、外部信号であってよく、及び/又は、光導電体読み出し回路の少なくとも1つの要素によって生成されてもよい。例えば、光導電体読み出し回路は、notゲートなどの少なくとも1つの論理ゲートを含むことができる。トリガー信号が1の場合、トリガー信号はスイッチをオンすることができる。トリガー信号が0の場合、スイッチはオフにされる。
【0023】
光導電体の抵抗RPhotoは、入射照射の関数として所定の変調周波数でその値を変化させることができ、一方、バイアス電圧VBiasは、その極性を複数回変化させる。トリガーの周波数は、照射の変調周波数の周波数よりもはるかに高くあり得る。
【0024】
光導電体読み出し回路は、所定の照射レベルで差動電圧を平衡させるように構成された少なくとも1つの電気要素を含む。このことは、絶対値よりも、RPhotoの変化のみに基づく電気出力の測定を可能にする。差動電圧を平衡にさせる複数の方法が利用可能であり、好ましくは、ホイートストンブリッジ又はサンプルホールド回路が使用される。ホイートストンブリッジが差動電圧を完全に平衡にできない場合は、ホイートストンブリッジはオフセットデジタルアナログコンバータ(DAC)と組み合わせて使用されることができる。変調光がオフの状態で直流(DC)部分を測定するサンプルホールド回路を用いるとき、このDC部分は変調光がオンの状態での差動電圧測定の基準電位として用いられることができ、また、その逆も同様である。
【0025】
本明細書で使用される「電気要素」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、指定された機能を実行するように構成された光導電体読み出し回路の任意の電気部品を指し得る。電気要素は、特に、少なくとも1つのホイートストンブリッジ及びサンプルホールド回路のうちの1つ以上を有する(特に含む)ことができる。
【0026】
本明細書で使用される「ホイートストンブリッジ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、ブリッジ回路の2つの脚(脚の1つは未知の電気抵抗を含む)を平衡させることによって未知の電気抵抗を決定するように構成された電気回路を指し得る。例えば、ホイートストンブリッジは、4つの抵抗、例えばR1、R2、R3及びRphotoを含むことができる。R1、R2及びR3は、既知の抵抗を有してよく、前記抵抗の少なくとも1つ、例えばR2は、調整可能であってよい。Rphotoは、光導電体の抵抗であってよい。抵抗は、2つの脚に配置されてよく、すなわち、既知の抵抗例えばR1及びR2を含む既知の脚と、未知の抵抗Rphoto及び例えばR3を含む未知の脚に、配置されてよい。抵抗R2は、ホイートストンブリッジが、脚の間の2つの中点間の電圧がゼロになるように平衡されるまで、調整可能であってよい。この平衡状態において、既知の脚の2つの抵抗の比(R2/R1)は、未知の脚の2つの抵抗の比(Rphoto/R3)と等しくあり得る。このように、平衡状態においては、抵抗の少なくとも1つを調整することによって、差動電圧を0Vに平衡させることができる。照射されると、光導電体の抵抗はその特性を変化させ、したがってホイートストンブリッジは0Vとは異なる差動電圧を生じる。装置は、ホイートストンブリッジに直流(DC)電圧又は交流(AC)電圧を印加するように構成された電圧源Vsを含んでいてよい。したがって、ホイートストンブリッジは、電圧源Vsに接続されてよい。光導電体は、バイアス電圧源が光導電体にバイアス電圧を印加することができるように、バイアス電圧源に接続されてよい。
【0027】
本明細書で使用される「サンプルホールド回路」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、連続的に変化するアナログ信号の電圧をサンプリングし、その値を指定された最小期間、一定レベルに保持するように構成された電気回路を指し得る。サンプルホールド回路は、少なくとも1つのアナログ入力と、少なくとも1つのアナログ出力と、少なくとも1つの制御信号を含むことができる。サンプルホールド回路は、電荷を蓄積するように構成された少なくとも1つのコンデンサを含むことができる。サンプルホールド回路は、電界効果トランジスタ(FET)スイッチなどの少なくとも1つのスイッチング素子と、少なくとも1つの演算増幅器を含むことができる。コンデンサは、スイッチング素子がコンデンサを増幅器の出力に接続する場合に、入力電圧をサンプリングするように構成されてよい。増幅器は、コンデンサの両端の電圧が入力電圧に等しい及び/又は比例するように、キャパシタを充電又は放電するように構成されてよい。スイッチング素子は、保持のためにコンデンサを増幅器から切り離すように構成されてよい。抵抗RPhotoは、所定の変調周波数で入射照射の関数としてその値を変化させてよく、一方、バイアス電圧VBiasは、照射変調の1期間中にその極性を複数回変化させることができる。サンプルホールド回路は、照射がオフの間、基準電圧VRefをサンプリングするように構成されてよい。サンプルホールド回路は、照射がオンの間、差動電圧VDiffの測定のために基準電圧を保持するように構成されてよい。基準電圧の測定は、照射がオンの間に行われてよい。差動電圧の測定は、照射がオフの間に行われてよい。
【0028】
本明細書で使用される「差動電圧を平衡にする」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、光導電体読み出し回路の少なくとも2点間の差動電圧が所定の照射レベルでゼロであるプロセス又は状態を指し得る。
【0029】
光導電体の照度の変化は、電気出力の変化を生じる。差動電圧は、アナログ-デジタル変換器(ADC)の全ダイナミックレンジを利用することができるように増幅され得る。このため、電気出力の変化は、低コストの読み出し電子機器を使用して、比較的高い分解能で分解することができる。光信号と励起信号の両方は、異なる周波数で変調されることができる。光信号は、本明細書では、変調された光ビームとして示されることもある。励起信号はまた、本明細書では、バイアス電圧として示されることもある。1/fノイズをさらに低減させるために、より高い励起周波数が推奨される。発生-再結合ノイズ(フリッカーノイズと比較すると小さいが)を低減するために変調光が推奨されるが、光変調を行わずに測定することも可能である。
【0030】
光導電体読み出し回路は、出力信号を増幅するように構成された少なくとも1つの増幅器、特に少なくとも1つのインピーダンス変換器を備えてよい。
【0031】
装置、特に光導電体読み出し回路は、少なくとも1つの評価装置への少なくとも1つのカップリングを含んでもよい。光導電体読み出し回路は、周波数測定のための少なくとも1つのマイクロコントローラなどの低電圧評価システムにカップリングするための少なくとも1つの整流器及び少なくとも1つのさらなる分圧器を含むことができる。カップリングは、少なくとも1つのダイオード及び少なくとも1つのカップリング分圧回路を含むことができる。カップリングは、コンパレータ回路の出力に配置されてよい。
【0032】
光導電体読み出し回路は、複数の光導電体を含むことができる。光導電体は、アレイに配置されてよい。光導電体読み出し回路は、複数の光導電体の各光導電体の電気抵抗を決定するように構成されてよい。複数の光導電体の読み出しのための光導電体読み出し回路は、プログラマブルロジック、例えば少なくとも1つのフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、単一又は複数の入力チャンネルを有する集積回路、単一又は複数の入力を有するマイクロプロセッサなどの少なくとも1つの論理ゲートを含んでよい。FPGAは、フリーランニングリング発振器として構成されてよい。これにより、コンパレータの出力周波数の測定において、非常に高い時間分解能を生成することができる。
【0033】
アレイの光導電体は、それぞれ異なる波長の電磁エネルギーに対応してよい。特に、光導電体は、電磁スペクトル中の異なる波長における電磁吸収を検出してよい。光導電体のアレイは、アレイの各ピクセルが異なる波長の電磁エネルギーに対応するように設計されてよい。例えば、少なくとも1つのフィルタ構成が使用されてよい。しかしながら、他の構成も可能である。これにより、アレイを分光器用途に使用することができる。
【0034】
光導電体読み出し回路は、特にさらなる評価のために、出力信号をデジタル信号に変換するように構成された少なくとも1つのアナログデジタル変換器(ADC)をさらに備えてよい。
【0035】
光導電体読み出し回路は、集積回路として具現化されることができる。本明細書で使用される「集積回路」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常で慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、半導体基板などの基板上の電子回路を指し得る。例えば、集積回路は、マイクロチップとして具現化されてよい。
【0036】
本発明のさらなる態様では、本発明による少なくとも1つの光導電体読み出し回路を含む検出器が開示される。検出器は、さらに、装置の光導電体読み出し回路の少なくとも1つの出力の出力信号を決定するように構成された少なくとも1つの評価装置を備え、評価装置は、出力信号を評価することによって照射強度を決定するように構成されている。
【0037】
本明細書で使用される「評価装置」という用語は、一般に、電圧出力における少なくとも1つの電圧出力信号を決定及び/又は生成するように設計された任意の装置を指す。一例として、評価装置は、1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)などの1つ以上の集積回路、及び/又は1つ以上のデータ処理装置、例えば、1つ以上のコンピュータ、好ましくは1つ以上のマイクロコンピュータ及び/又はマイクロコントローラであってよく、又はこれらを備えてよい。追加の構成要素、1つ以上の電圧信号の受信及び/又は前処理のための装置などの1つ以上の前処理装置及び/又はデータ収集装置、例えば、1つ以上のAD変換器及び/又は1つ以上のフィルタが含まれてよい。さらに、評価装置は、1つ以上のデータ記憶装置を含むことができる。評価装置は、1つ以上のインターフェース、例えば1つ以上の無線インターフェース及び/又は1つ以上の有線インターフェースを含むことができる。評価装置は、特に、少なくとも1つの出力電圧信号を決定するように設計され得る少なくとも1つのデータ処理装置、特に電子データ処理装置を含むことができる。評価装置はまた、少なくとも1つの照射源を完全に又は部分的に制御するように、及び/又は少なくとも1つの電圧源を制御するように、及び/又は少なくとも1つの負荷抵抗器を調整するように設計されることができる。評価装置は、1つ以上の電子ハードウェア構成要素などの1つ以上の追加の構成要素、及び/又は1つ以上の測定ユニット及び/又は1つ以上の評価ユニット及び/又は1つ以上の制御ユニットなどの1つ以上のソフトウェア構成要素をさらに含むことができる。例えば、評価装置は、少なくとも1つの出力電圧信号を測定するように適合された少なくとも1つの測定装置、例えば少なくとも1つの電圧計を備えることができる。評価装置は、少なくとも1つのフーリエ変換、周波数のカウント、エッジ検出、周期長測定など、からなる群の1つ以上の操作を実行するように構成されてよい。
【0038】
検出器は、少なくとも1つの照射源を含んでいてよい。
【0039】
本発明のこの態様に関するさらなる詳細、特に光導電体読み出し回路、評価装置及び任意の照射源のさらなる詳細については、上述及び以下でより詳細に提供される光導電体読み出し回路の説明を参照することができる。
【0040】
本発明のさらなる態様では、少なくとも1つのPbSセンサ、少なくとも1つのPbSeセンサ、又は複数のピクセルを含む少なくとも1つのピクセル化されたセンサアレイ(各ピクセルは少なくとも1つのPbS又はPbSeセンサを含む)のうち1つ以上の読み出しの目的のための本発明による装置の使用が開示される。特に、本発明による装置は、中程度又は低バイアス電圧用途、例えば装置がバッテリ駆動であるか又は低電力で動作する必要がある用途、例えばセンサノード、ポータブル測定装置、爆発性雰囲気における装置などで使用することができ、改善された信号対ノイズ比、したがって高い信号品質を可能にする。例えば、分圧回路は、分光器、水分測定器、厚さ測定機器、ガス分析器、又はセンサ要素としてフォトレジスタを使用するいかなる他のタイプの機器に使用されることができる。本装置は、光センサに使用されることができる。例えば、分圧回路は、例えばWO2012/110924A1、WO2014/097181A1、WO2016/120392A1のような、いわゆるFiP効果を利用した光センサにおいて使用され得る。公知の分圧回路は、光変調なしでは高分解能で抵抗の変化を測定することができず、例えば光導電検出器を用いた分光計は、分散要素と多重ピクセルでのみ実現できる。単一ピクセル分光計は、光変調を伴わない測定を可能にする安定性のために、フォトダイオードと、InGaS、Siフォトダイオードなどの他の電流発生検出器を使用する。本発明による装置は、光変調を伴わずに高精度で光導電体の抵抗変化を測定できるため、マイケルソン干渉計、又はファブリーペロー干渉計などに基づく単一ピクセル分光計もまた光導電検出器によって実現され得る。上述した全ての利点を有する提案された装置は、単一ピクセル分光計を実現するために使用されることができる。
【0041】
要約すると、本発明の文脈では、以下の実施形態が特に好ましいと考えられる。
【0042】
実施形態1:光導電体の感光領域の照射に依存する電気抵抗Rphotoを示すように構成された、少なくとも1つの光導電体と;少なくとも1つの光導電体読み出し回路であって、前記光導電体読み出し回路は前記光導電体の前記電気抵抗Rphotoの変化に関連する差動電圧を決定するように構成され、前記光導電体読み出し回路は、電気出力がその極性を少なくとも1回変化するように少なくとも1つの周期的に変調されたバイアス電圧を前記光導電体に印加するように、構成された少なくとも1つのバイアス電圧源を有する、少なくとも1つの光導電体読み出し回路と;所定の照射レベルで前記差動電圧を平衡させるように構成された少なくとも1つの電気要素と、を備える装置。
【0043】
実施形態2:前記光導電体読み出し回路は、ホイートストンブリッジ又はサンプルホールド回路を含む、先行する実施形態による装置。
【0044】
実施形態3:前記バイアス電圧の変調は、単極性又は双極性である、先行する実施形態のいずれか1つによる装置。
【0045】
実施形態4:前記バイアス電圧の変調は、少なくとも50Hzの周波数を有する、先行する実施形態のいずれか1つによる装置。
【0046】
実施形態5:前記装置は、少なくとも1つの評価装置への少なくとも1つのカップリングを含む、先行する実施形態のいずれか1つによる装置。
【0047】
実施形態6:前記照射は変調される、先行する実施形態のいずれか1つによる装置。
【0048】
実施形態7:前記感光領域は、硫化鉛(PbS);セレン化鉛(PbSe);テルル化水銀カドミウム(HgCdTe);硫化カドミウム(CdS);セレン化カドミウム(CdSe);アンチモン化インジウム(InSb);ヒ化インジウム(InAs);ヒ化インジウムガリウム(InGaAs);外因性半導体、有機半導体、からなる群から選択される少なくとも1つの光導電材料を含む、先行する実施形態のいずれか1つによる装置。
【0049】
実施形態8:先行する実施形態のいずれか1つによる少なくとも1つの装置を含む検出器であって、前記検出器は、前記装置の前記光導電体読み出し回路の少なくとも1つの出力の出力信号を決定するように構成された少なくとも1つの評価装置を有し、前記評価装置は、前記出力信号を評価することによって照射強度を決定するように構成されている、検出器。
【0050】
実施形態9:前記評価装置は、少なくとも1つのフーリエ変換、周波数のカウント、エッジ検出、周期長測定、からなる群の1つ以上の操作を実行するように構成されている、先行する実施形態による検出器。
【0051】
実施形態10:少なくとも1つのPbSセンサ、少なくとも1つのPbSeセンサ、又は、複数のピクセルを含み各ピクセルが少なくとも1つのPbS又はPbSeセンサを含む少なくとも1つのピクセル化されたセンサアレイ、のうち1つ以上の読み出しのための、装置を参照する先行する実施形態のいずれか1つによる装置の使用。
【図面の簡単な説明】
【0052】
本発明のさらなる任意の詳細及び特徴は、従属請求項と関連する後続の好ましい例示的な実施形態の説明から明らかである。この文脈では、特定の特徴は、単独で、又は他の特徴と組み合わせて実施されてよい。本発明は、例示的な実施形態に限定されない。例示的な実施形態は、図に模式的に示されている。個々の図における同一の符号は、同一の要素又は同一の機能を有する要素、又はその機能に関して互いに対応する要素を指している。
【0053】
具体的には、以下の図においては:
【
図1】
図1aは、DCで差動電圧V
Diffを測定するための電気回路を示し、
図1bは、ACで差動電圧V
Diffを測定するための電気回路を示す。
【
図2】
図2a~
図2dは、AC及び変調された光強度で差動電圧V
Diffを測定するための電気回路を示し、
図2a~dは時間依存のソース電圧(2a)、バイアス電圧(2b)、測定電圧(2c)及び光変調(2d)を示す。
【
図3】サンプルホールド回路により、光抵抗R
Photoに依存して差動電圧V
Diffを測定する新しい電気回路を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
例示的な実施形態
図1は、DC101作動におけるホイートストンブリッジによる抵抗105に依存する差動電圧107への最も一般的に使用される測定方法を示している。ホイートストンブリッジは、回路の標準的なものであり、抵抗102、103、104の調整により、差動電圧を0Vに平衡させることができる。
【0055】
ホイートストンブリッジの抵抗の1つは、適切な抵抗を有するが暗くされた光導電体105で置き換えることができる。光導電体は、測定された物理量に応じて電気出力を生成するために、外部励起信号を必要とするセンサである。光導電体の場合、この物理量は照度である。最も一般的には、電圧VBias106が励起信号として光導電体105に印加される。
【0056】
光導電体105は、照射に応じてその抵抗を変化させる。変化自体は、光導電体の全抵抗値に比べて比較的小さい。一例として、約1MΩの抵抗を特徴とする2mm×2mmの寸法のPbS検出器は、1550nmの赤外線放射によって、16μW/cm2の放射照度で約10kΩの抵抗を変化させ、これは1%の変化に相当する。このように、励起信号は、照射による電気出力の変化よりも桁違いに大きい。フィルタリングを行わなくても、読み出し電子機器は信号全体を測定することがきる一方、それでも比較的良好な分解能で1%の変化を分解できることを要する。このような読み出し電子機器は市販されているが、非常に高価である。
【0057】
カーボンコンポジットのような抵抗器、厚膜抵抗器など他のタイプの抵抗器としての光導電体、PbS、PbSeなどは、強い1/fノイズ(フリッカーノイズとも呼ばれる)を示し、これはより小さな周波数では支配的である。1/fノイズは、光導電体を流れる電流IDCのDC部分に強く依存する。
【0058】
1/fノイズはより低い周波数で支配的である。1/fノイズを除去するために、RPhotoの変化をより高い周波数で測定する必要がある。測定ノイズは、導電体の抵抗RPhotoを変調するか又は励起信号を変調することにより、光導電体を流れる電流を変調することによって低減させることができる。
【0059】
最も一般的には、光源が変調されるか、又は光源から検出器への光路が、チョッパ又はシャッタなどの機械構成によってチョッピングされる。次に、変調された信号は、アナログ又はデジタル領域で復調されるが、1/fノイズを変調周波数に保ち、したがって、1/fノイズを低減させる。
【0060】
照射されると、抵抗RPhotoはその特性を変化させるので、ホイートストンブリッジは0Vとは異なる差動電圧を生じる。システムの温度不安定性に起因するバイアス電圧106のドリフトは、暗くされた光導電体105と平衡することができ、差動電圧107は、光変調のオンフェース又はオフフェースの間、0Vを維持することになる。
【0061】
電源電圧108の極性を変えると、バイアス電圧106の極性も変わる。この構成を
図1bに示す。照射による電気出力の変化は、バイアス電圧の極性を複数回変化させることによって測定されるため、上述した光導電体の抵抗の非対称性は、それ以降の測定に影響を与えないことが可能である。測定は、電圧の極性を2つの変化の間に行われる。
【0062】
図2及び
図3は、本発明による装置の一実施形態を示している。
【0063】
図2は、ホイートストンブリッジによる抵抗R
Photo205に依存する差動電圧207を測定するための光導電体読み出し回路を示している。抵抗R
Photo205は、所定の変調周波数の入射照射の関数としてその値ΔR
Photoを変化させることができ、一方バイアス電圧V
Biasは、その極性を複数回変化させる。したがって、前述の光導電体読み出し回路は、
図2a~dに示されるような時間依存の外部パラメータとともに使用される。回路には8Vの定常的な供給電圧201が印加されている。
図2aは、時間の関数としての供給電圧を示している。供給電圧はトリガースイッチを介して切り替えられ、ホイートストンブリッジに+/-4Vのバイアス電圧206が印加される。このバイアス電圧は
図2bに示されている。時間の関数として測定された差動電圧は、
図2cに示されている。フォトレジスタの照射は、ランプなどの照射源の変調によって、
図2dに示される周期で変調される。トリガー208の周波数は、ランプ変調の周波数よりはるかに高い。
【0064】
得られた出力電圧207を
図2dに示す。これは、両方の変調された入力のオーバーレイであるが、高いトリガー周波数208は、提案されたように1/fノイズを低減させる。
【0065】
図2では、光導電体読み出し回路は、
図1に関して説明したホイートストンブリッジを含んでいる。ホイートストンブリッジは、4つの抵抗R
1202、R
2203、R
3204及び抵抗205を含むことができ、抵抗205は、光導電体の抵抗R
Photoである。ホイートストンブリッジは、参照番号201で示される電圧源Vsに接続されてよい。光導電体は、光導電体にわたってバイアス電圧V
Bias206を印加するように構成されたバイアス電圧源に接続されてよい。バイアス電圧206は、周期的に変調されたバイアス電圧である。バイアス電圧源は、定常供給電圧を生成するように構成されてよい。光導電体読み出し回路は、周期的に変調されたバイアス電圧を生成するための少なくとも1つのスイッチング素子を含むことができる。例えば、スイッチング素子は、トリガースイッチを含んでよい。トリガースイッチは、トリガー208、特にトリガー信号に依存して、及び/又はそれに応答して作用してよい。トリガー信号は、外部信号であってもよく、及び/又は、光導電体読み出し回路の少なくとも1つの要素によって生成されてもよい。例えば、
図2の実施形態では、光導電体読み出し回路は、抵抗器202と203の間及び抵抗器204と205の間の右側にあるホイートストンブリッジにバイアス信号を印加するための2つのサブ回路を含むことができる。各サブ回路は、トリガー208への接続と、notゲートなどの少なくとも1つの論理ゲートとを含むトリガースイッチを備えることができる。例えば、トリガー信号は、トリガー信号が1の場合、サブ回路のうちの1つ、例えば
図2の左側のサブ回路のトリガースイッチをオンにすることができる。同時に他のサブ回路のトリガースイッチはオフにされる。トリガー信号が0の場合、スイッチはオフにされてよく、逆であってもよい。
【0066】
ホイートストンブリッジによって差動電圧を平衡させることができなくても、「オフセットDAC」などのさらなる電子部品を使って、結果として生じるオフセットを補正することができる。別の可能な実装は、サンプルホールド回路であり、該サンプルホールド回路は、変調光がオフの間にDC部分を測定(サンプル)し、変調光がオンの間にそれを差動電圧測定の基準電位として使用する、又はその逆と使用する。RPhotoの温度又は電気化学的なドリフトに関係なく、基準電圧VRefは、サンプルホールド回路を使用すると、常に再校正される。
【0067】
本発明の光導電体読み出し回路の一例を
図3に示している。供給電圧301はスイッチ312~316を介して抵抗器302とフォトレジスタ305に印加される。印加電圧は外部信号308とネゲート信号309によってトリガーされ、一方、ランプはトリガー信号310によって変調される。抵抗305R
Photoは、所定の変調周波数301の入射照射の関数としてその値ΔR
Photoを変化させ、一方、バイアス電圧V
Bias306はランプ変調の1期間中に複数回その極性を変化させ、他方、サンプルホールド回路はランプがオフ312の間に基準電圧V
Ref311をサンプルし、ランプがオンの間にV
Diff307の測定のためにそれを保持する。基準電圧の測定はランプがオンの間に行われることができ、差動電圧の測定はランプがオフの間に行われることができる。ランプ変調は、正弦波、正方形、三角形、又は任意の他の波形であってよい。ランプは、基準測定のために測定セットの開始時に消灯されることができ、一方、照射の強度又は波長の変化がバイアス電圧の変調周波数より遅い限り、V
Diffの複数の測定は異なる照射強度及び/又は異なる波長で行われることができる。
【符号の説明】
【0068】
101 電源電圧VS
102 抵抗器R1
103 抵抗器R2
104 抵抗器R3
105 フォトレジスタRPhoto
106 バイアス電圧VBias
107 出力電圧VDiff
108 電源AC
201 電源VS
202 抵抗器R1
203 抵抗器R2
204 抵抗器R3
205 フォトレジスタRPhoto
206 バイアス電圧VBias
207 出力電圧Vout
208 トリガー
301 電源VS
302 抵抗器R1
305 フォトレジスタRPhoto
306 バイアス電圧VBias
307 出力電圧Vout
308 トリガーAC
309 トリガーAC
310 ランプトリガー
311 コンポーネント
312 スイッチ
313 スイッチ
314 スイッチ
315 スイッチ
316 スイッチ
317 グラウンド
318 グラウンド
【国際調査報告】