(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】温度監視を伴う装軌下部走行体転輪組立体
(51)【国際特許分類】
B62D 55/092 20060101AFI20230323BHJP
E02F 9/02 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
B62D55/092
E02F9/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547860
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(85)【翻訳文提出日】2022-09-28
(86)【国際出願番号】 IB2021050944
(87)【国際公開番号】W WO2021156807
(87)【国際公開日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】102020000002371
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521485771
【氏名又は名称】イタルトラクトル イテエメ ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カリア、ユースタキオ
(72)【発明者】
【氏名】モレッティ、ニコラス
(57)【要約】
装軌下部走行体転輪組立体17が、半径方向内側表面20によって境界を定められた貫通キャビティ19を有する転輪本体18と、転輪本体18の貫通キャビティ19に挿入されるシャフト22と、第1の軸方向端部32aから第2の軸方向端部32bまで延在し、転輪本体18とシャフト22との間に半径方向に介在するブッシュ32と、少なくとも部分的に潤滑剤で満たされ、シャフト22とブッシュ32との間に半径方向に介在する環状チャンバ34と、シャフト22内に得られ、シャフト22の軸方向端面22dに面する入口部分39、及びシャフト22内部の、ブッシュ32の第1の軸方向端部32aと第2の軸方向端部32bとの間に含まれる軸方向位置に設置された測定部分40を備えた収容台座部37であって、入口部分39及び測定部分40が、軸方向に沿って互いに整列している、収容台座部37とを備える。温度トランスデューサ41が、収容台座部37の内部において測定部分40に設置され、測定部分40が、ブッシュ32からの半径方向距離が8ミリメートルから50ミリメートルの間の位置に設置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半径方向内側表面(20)によって境界を定められた貫通キャビティ(19)を有する転輪本体(18)と、
前記転輪本体(18)の前記貫通キャビティ(19)に挿入されるシャフト(22)と、
第1の軸方向端部(32a)から第2の軸方向端部(32b)まで展開し、前記転輪本体(18)と前記シャフト(22)との間に半径方向に介在するブッシュ(32)と、
前記シャフト(22)と前記ブッシュ(32)との間に半径方向に介在する、少なくとも部分的に潤滑剤で満たされた環状チャンバ(34)と、
前記シャフト(22)内に得られ、前記シャフト(22)の軸方向端面(22d)の位置にある入口部分(39)、及び前記シャフト(22)内部の、前記ブッシュ(32)の前記第1の軸方向端部(32a)と前記第2の軸方向端部(32b)との間の軸方向位置に設置された測定部分(40)を備えた収容台座部(37)であって、前記入口部分(39)及び前記測定部分(40)が、軸方向に沿って互いに整列している、収容台座部(37)と、
前記収容台座部(37)の内部において前記測定部分(40)に位置する温度トランスデューサ(41)と
を備え、
前記測定部分(40)が、前記ブッシュ(32)からの半径方向距離が8ミリメートルから50ミリメートルの間の位置に設置されている、装軌下部走行体転輪組立体(17)。
【請求項2】
前記収容台座部(37)が、軸方向に平行な対称軸に対して軸対称な非貫通キャビティ(38)である、請求項1に記載の転輪組立体(17)。
【請求項3】
温度を表すデータを含む測定信号を無線モードで出力するように構成された電子センサ・モジュール(42)を備え、前記電子センサ・モジュール(42)が、前記収容台座部(37)の前記入口部分(39)内に設置された、請求項1又は2に記載の転輪組立体(17)。
【請求項4】
前記入口部分(39)が、止め輪(54)によって係合される環状溝(53)を備え、前記止め輪(54)によって前記電子センサ・モジュール(42)が軸方向において前記入口部分(39)内に維持されるように、前記環状溝(53)が前記電子センサモジュール(42)の軸方向外側にある、請求項3に記載の転輪組立体(17)。
【請求項5】
前記収容台座部(37)の前記入口部分(39)のための閉止栓(52)を備え、前記閉止栓(52)が、前記止め輪(54)と前記電子センサ・モジュール(42)との間に軸方向に介在している、請求項4に記載の転輪組立体(17)。
【請求項6】
前記入口部分(39)が、前記測定部分(40)が半径方向に延在するよりも長く、半径方向に延在する、請求項1から5までのいずれか一項に記載の転輪組立体(17)。
【請求項7】
前記温度トランスデューサ(41)が、電線(43)を介して前記電子センサ・モジュール(42)に接続されている、請求項3から6までのいずれか一項に記載の転輪組立体(17)。
【請求項8】
前記シャフト(22)を下部走行体シャーシと一体化させるために前記シャフト(22)の半径方向キャビティ(26、30)に挿入されるピン(27、31)を備え、前記収容台座部(37)が、前記シャフト(22)の前記半径方向キャビティ(26、30)と交差しない、請求項1から7までのいずれか一項に記載の転輪組立体(17)。
【請求項9】
前記温度トランスデューサ(41)が、温度が上昇するにつれて減少する抵抗を備えたサーミスタである、請求項1から8までのいずれか一項に記載の転輪組立体(17)。
【請求項10】
前記転輪本体(18)が、開口部を有し、前記開口部が、外部環境を潤滑剤で満たされた前記環状チャンバ(34)と流体連通させ、前記開口部が、栓によって閉じられている、請求項1から9までのいずれか一項に記載の転輪組立体(17)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度監視を伴う装軌下部走行体転輪組立体、すなわち、その動作温度が監視される装軌下部走行体転輪組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
装軌下部走行体は、典型的には、土木機械、採掘機械、解体機械などの作業機械に使用されて、これらの機械が、凹凸した地面上で、又はグリップの効きづらい場所で動くことを可能にする。
【0003】
装軌下部走行体は、典型的には、互いに間隔を空けて平行に配置され、駆動トルクを受けてそれを地面に伝達するように構成された2つのチェーン組立体を備える。各チェーン組立体は、通常、起動輪上及びテンショナー組立体に動作可能に接続された遊動輪(又はアイドラー)上の閉ループ・チェーンを含む複数の下部走行体構成要素を備える。下部走行体構成要素は、起動輪と遊動輪との間に、チェーンをその運動中に誘導するように構成された複数の転輪組立体をさらに備える。転輪組立体は、通常、1つ又は複数の上側転輪組立体と複数の下側転輪組立体とを備える。
【0004】
チェーンは通常、複数のリンクを備え、リンクとはチェーンの単一構成要素のことを指し、この単一構成要素は他の構成要素に連接されている。典型的には、各リンクは、互いに対向する1対の板を備える。リンク間はピンで相互接続されている。各ピンは通常、プレート上に設けられた穴に挿入され、2つのリンクをまとめて接続する。
【0005】
ソールは通常、地面と直接接触しているリンクに装着されており、トラクションを地面に解放し、機械と地面との間の接触表面を増加させる役割を有する。使用するソールのタイプは、機械が動作しなければならない地面、機械が動作しなければならない環境条件、及び機械製造業者が提案する仕様に依存する。
【0006】
各転輪組立体は通常、シャフトが交差した転輪本体を備える。転輪組立体は、シャフトに対向する、具体的にはシャフトの外側表面に対向する半径方向内側表面によって境界を定められている。転輪本体は、シャフトが装着された下部走行体に対して固定されたシャフトを中心に回転することができる。転輪組立体は、シャフトと転輪本体の内側表面との間に介在するようにシャフトの外側表面上に嵌合するブッシュを備える。転輪本体及びシャフトは金属製、典型的には鋼製であり、ブッシュは転輪本体とシャフトとの間の摩擦を低減するように構成されている。ブッシュは通常、青銅などの非鉄材料、又はバイメタル合金で作られ、ブッシュ接触表面と転輪本体との間、及び/又はブッシュとシャフトとの間の摩擦をさらに低減するために潤滑されている。
【0007】
下部走行体は通常、機械の全体重量、機械のエンジンから地面に伝達される大きい動力、及び/又は機械が動作しなければならない地形の形状及び構成から導出され得る、非常に厳しい動作条件にさらされる。
【0008】
特に、本出願人は、大型土木機械を移動させる作業において、いくつかの下部走行体構成要素に強い応力がかかることを確認した。特に重要な下部走行体構成要素は、機械から伝わる負荷を吸収し、チェーンを誘導する機能を有する下側転輪組立体である。典型的には、大型の掘削機には、複数の下側転輪組立体、例えば、8~32個の下側転輪組立体が設けられている。掘削機が運転中であるとき、下側転輪組立体が回転させられ、回転が結果として転輪組立体の内部温度の著しい上昇を伴い、内部温度がこれらの構成要素の機能の完全性に影響を与え得る限界値に達する可能性がある。
【0009】
本出願人は、ブッシュを不適切に潤滑すると摩擦が増加し、これにより、厚さが徐々に減少するブッシュの摩耗によって引き起こされる転輪組立体の損傷、又はシャフト及び/若しくは転輪本体をブッシュが把持してしまうことにつながることに注目した。
【0010】
本出願人は、ブッシュ温度を測定することによって、その潤滑に異常があること、具体的にはブッシュの温度の上昇に伴う潤滑剤の温度の上昇を判断することが可能であることに注目した。
【0011】
米国特許出願公開第2013/0255354号は、シャフトとブッシュとを含む転輪組立体を有する下部走行体組立体における監視装置を開示している。一実例では、監視装置は、転輪組立体の内部に位置する、ブッシュの温度を測定する温度センサを有する。特に、シャフトに開口部が設けられ、この開口部は、シャフトと平行に、ブッシュと重なるのに十分な深さまで形成されており、シャフトの外側表面まで達する外側に向けられた部分を有する。温度センサは、開口部の中に挿入され、シャフト表面に向けられた部分に配置される。この文献では、出力信号が無線送信機を通じてコンピュータに転送されるか、又は監視装置に接続するポートを通じてデータにアクセスすることが言及されている。
【0012】
本出願人は、シャフトの外側表面に達するシャフトの開口部により、温度センサをブッシュに直接接触させるか、実質的に直接接触させて位置決めすることができ、ブッシュの温度を効率的に測定できることを確認した。
【0013】
しかしながら、本出願人は、そのような開口部により、開口部内に潤滑剤が漏出する場合があり、これは、温度センサを損傷させ、及びブッシュとシャフトとの間で利用可能な潤滑剤の量を減少させるという2つの欠点をもたらし得ることを検証した。この2番目の事象の場合、潤滑剤の欠乏又は不足により転輪組立体の劣化が早まる可能性さえある。
【0014】
本出願人は、ブッシュの潤滑が不適切であることの指標は、ブッシュの温度のみならず、ブッシュの近傍に設置されたシャフト部分の温度にも関連し得ることに着目した。
【0015】
本出願人は、トランスデューサがブッシュの近くにあるが、ブッシュに直接面していたり、又はブッシュに接触したりしないように、転輪組立体のシャフト内に温度トランスデューサを配置することによって、実際の温度と厳密には対応しないがブッシュの温度に比例する温度を測定することができ、ブッシュ温度の異常な上昇を識別することが可能になることを確認した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0255354号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、
半径方向内側表面によって境界を定められた貫通キャビティを有する転輪本体と、
転輪本体の貫通キャビティに挿入されるシャフトと、
第1の軸方向端部から第2の軸方向端部まで延在し、転輪本体とシャフトとの間に半径方向に介在するブッシュと、
少なくとも部分的に潤滑剤で満たされ、シャフトとブッシュとの間に半径方向に介在する環状チャンバと、
シャフト内に得られ、シャフトの軸方向端面に面する入口部分、及びシャフト内部の、ブッシュの第1の軸方向端部と第2の軸方向端部との間の軸方向位置に設置された測定部分を備えた収容台座部(37)であって、入口部分及び測定部分が、軸方向に沿って互いに整列している、収容台座部と、
収容台座部の内部において測定部分に位置する温度トランスデューサと
を備え、
測定部分が、ブッシュからの半径方向距離が8ミリメートルから50ミリメートルの間の位置に設置されている、装軌下部走行体転輪組立体に関する。
【0018】
収容台座部をシャフト内に配置し、収容台座部の測定部分内部に温度トランデューサを挿入することで、収容台座部の測定部分においてシャフトの温度を検出することが可能となる。
【0019】
知られているように、装軌下部走行体転輪組立体のシャフトは、典型的には鋼などの鉄合金でできているので、シャフトは、ブッシュ近傍に設置されたシャフトの部分が、ブッシュの温度変化に伴って温度変化できるような熱伝導性を、有している。
【0020】
本出願人は、転輪組立体のサイズ及びシャフトを製造するのに実際に使用される材料に応じて、温度の半径方向距離がブッシュから8ミリメートルから50ミリメートルの間であることにより、ブッシュ温度の急激な又は異常な上昇を検出することが可能になることを確認した。
【0021】
温度トランスデューサによって検出された温度の上昇が所定の閾値を超えた場合、これは、例えば、環状チャンバからの潤滑剤の漏出、シャフトに対するブッシュの摩擦が高すぎること、又はいずれにしてもブッシュの機能の範囲外のケースによる、ブッシュの温度の異常上昇に関連付けることができる。
【0022】
これにより、転輪組立体が不可逆的な損傷を受ける前に、転輪組立体に介入してその機能を回復させることができる。
【0023】
さらに、入口部分と測定部分とを軸方向に沿って整列させて、入口部分をシャフトの軸方向端面に面するように配置することにより、収容台座部がブッシュに面する開口部を有することなく完全にシャフト内部に得られるため、環状チャンバから収容台座部に向かって、又は温度トランスデューサに向かって潤滑剤が漏出するのを防止することができる。
【0024】
潤滑剤は、例えば、潤滑油又はグリースであってよい。
【0025】
「軸方向の」、「軸方向に」、「半径方向の」、「半径方向に」という用語は、転輪組立体の回転軸を基準として使用される。
【0026】
特に、「軸方向の」及び「軸方向に」という用語は、転輪組立体の回転軸と平行又は一致する方向に配置/測定された、又は延在する参照/量を意味する。
【0027】
「半径方向の」及び「半径方向に」という用語は、転輪組立体の回転軸に垂直な方向に配置/測定された、又は延在する参照/量を意味する。
【0028】
「半径方向内側」及び「半径方向外側」という用語は、それぞれ上記回転軸に近い位置、又は遠い位置を意味する。
【0029】
「軸方向内側/外側」という用語は、回転軸に沿って配置された、軸方向両端部からの間隔が等しい転輪組立体の箇所に、それぞれ近い位置と遠い位置とを意味する。
【0030】
「トランスデューサ」という用語は、測定量と直接相互作用する装置、すなわち、物理量を測定量に関連する電気信号に変換する測定系統の最初の要素を意味する。
【0031】
好ましくは、測定部分は、ブッシュから10ミリメートルから40ミリメートルの間、さらに好ましくは12ミリメートルから30ミリメートルの間、例えば約15ミリメートルの半径方向距離の位置に設置される。
【0032】
好ましくは、収容台座部は、軸方向に平行な対称軸に対して軸対称な非貫通キャビティである。
【0033】
これにより、温度トランスデューサをシャフト内部に挿入するのに望ましい深さに達するまでシャフトに穴をあけることで、収容台座部を得ることができる。
【0034】
好ましくは、非貫通キャビティは、直線的な延在部を有し、軸方向に平行な対称軸から半径方向に分岐する逸脱又は分岐を含まない。
【0035】
これは、収容台座部がシャフトの半径方向外側表面に到達したり、又はブッシュ若しくは潤滑剤の入った環状チャンバに直接面したりすることを防ぎ、環状チャンバから潤滑剤が漏出する可能性を回避する。
【0036】
好ましくは、入口部分は、測定部分が半径方向に延在するよりも長く半径方向に延在している。
【0037】
好ましくは、入口部分の半径方向の延在量は、測定部分の半径方向の延在量のほぼ2倍である。
【0038】
好ましくは、温度を表すデータを含む無線モードの測定信号を生成するように構成された電子センサ・モジュールが設けられ、電子センサ・モジュールは、収容台座部の入口部分に設置される。
【0039】
好ましくは、電子センサ・モジュールは、回路部品と、電子プロセッサと、電源と、温度を表すデータを含むそれぞれの測定信号を受信するように電子プロセッサに動作可能に接続された無線送信機とを備え、無線送信機は、温度を表すデータを含む対応する無線モードの測定信号を生成する。
【0040】
好ましくは、電子センサ・モジュールの電子プロセッサは、温度トランスデューサから測定信号を受信するように構成される。
【0041】
これにより、例えば、転輪組立体を組み込んだ装軌車両から遠く離れているオペレータが、電子センサ・モジュールが接続されているWI-FIネットワークに携帯端末又はPCを接続して、ブッシュ近傍のシャフト部分の現在の温度に関するデータを遠隔で見ることができるようになる。
【0042】
好ましくは、入口部分は、止め輪によって係合された環状溝を含み、環状溝は、電子センサ・モジュールが止め輪によって軸方向において入口部分内に維持されるように、電子センサ・モジュールの軸方向外側にある。
【0043】
これにより、電子センサ・モジュールは収容台座部の内部に維持され、転輪組立体の使用中に電子センサ・モジュールに起こり得る損傷を回避し、電子センサ・モジュールが適切に機能することを確実にする。
【0044】
好ましくは、収容台座部の入口部分に閉止栓が設けられる。閉止栓は、好ましくは、止め輪と電子センサ・モジュールとの間に軸方向に介在する。
【0045】
閉止栓は、液体、泥、土埃などが収容台座部の中に侵入するのを防ぐ。
【0046】
好ましくは、止め輪は、収容台座部の入口部分の環状溝から取り外し可能である。
【0047】
止め輪は栓を動作位置に保持するが、温度トランスデューサ及び/又は電子センサ・モジュールの検査又は交換のために収容台座部の内部にアクセスする必要がある場合は、栓を取り外すことができる。
【0048】
好ましくは、温度トランスデューサは電子センサ・モジュールに電線で接続される。
【0049】
好ましくは、温度トランスデューサは、温度が上昇するにつれて抵抗が減少するサーミスタである。
【0050】
ブッシュ近傍のシャフト部分の温度が上昇すると、サーミスタの抵抗値が減少する。これにより、サーミスタが故障した場合(サーミスタと電子センサ・モジュールとの間で絶縁破壊が生じた場合など)には、検出される抵抗値が期待される抵抗値から著しくずれることになり、サーミスタの故障が速やかに示される。
【0051】
好ましくは、シャフトの半径方向キャビティに挿入されるピンは、シャフトを下部走行体枠部と一体化させるために設けられ、収容台座部はシャフトの半径方向キャビティと交差しない。
【0052】
ピンは、シャフトを下部走行体枠部(又は下部走行体枠部と一体化された下部走行体構成要素)に係合させて、転輪組立体を所定の位置に維持し、転輪本体がシャフトを中心に回転できるようにする役割を有する。
【0053】
ピンは、典型的には、転輪組立体を下部走行体車から取り外すように、取り外し可能である。
【0054】
温度トランスデューサが電子センサ・モジュールに電線で接続され、収容台座部がピンと交差する場合、ピンを取り外すと、電気接続がピンを横切ることになるため、温度トランスデューサと電子センサ・モジュールとの接続が恒久的に損なわれる。さらに、収容台座部がピンと交差しないようにすることで、転輪組立体がまだ下部走行体枠部に装着されていないときであっても、収容台座部の内部での温度トランスデューサの位置決めを実行することができる。
【0055】
好ましくは、転輪本体は、外部環境を潤滑剤で満たされた環状チャンバと流体連通させる開口部であって、栓によって閉じられている開口部を備える。
【0056】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付図面を参照してなされる本発明の好ましい実施例の以下の説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図2】本発明による装軌下部走行体転輪組立体の断面図である。
【
図2A】
図2の転輪組立体の一部の詳細の拡大図である。
【
図3】
図2の転輪組立体の詳細の部分分解斜視図である。
【
図4】
図2の転輪組立体のいくつかの構成要素の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は、装軌下部走行体のいくつかの構成要素を示す概略側面図である。装軌下部走行体10は、2つの履帯組立体11を備え、
図1ではそのうちの1つだけを見ることができる。各履帯組立体11は、ピン及びブッシュ(図示せず)によって間を相互接続された複数のリンク13を備えたチェーン12と、図ではクランクケース15によって部分的に隠された戻し輪14と、起動輪16とを備える。複数の転輪組立体17が、戻し輪14と起動輪16との間に配置され、具体的には、リンク13と接触して配置され、チェーン12をその運動中に誘導するように適合された1つ又は複数の上側転輪組立体及び複数の下側転輪組立体が配置されている。
【0059】
下側転輪組立体17は、履帯組立体11の下側部分に配置され、履帯と下部走行体枠部(図示せず)との間で負荷を伝達するように構成されている。上側転輪組立体17は、起動輪16と戻し輪14との間でチェーンを誘導するように構成され、典型的には、下側転輪組立体の数よりも少ない数で存在する。下側転輪組立体17の数は、機械のタイプ及びその重量に応じて異なる。
【0060】
本開示によると、少なくとも下側転輪組立体又は上側転輪組立体17は、温度を監視するためのセンサ装置を含む。
【0061】
図2は、一実施例による転輪組立体17の断面図である。本実施例では、転輪組立体17は、下側転輪の転輪組立体である。断面平面は、チェーン11のリンク13、したがって装軌下部走行体の移動の方向を横切り、転輪組立体17の回転軸Xを通過する、縦方向の平面である。
【0062】
転輪組立体17は、転輪本体18の一方の第1の軸方向端部18aから第2の軸方向端部18bまで延在する円筒形の貫通キャビティ19を備えた転輪本体18を備える。
【0063】
転輪本体18は、通常、円筒形キャビティ19に面する円筒形状を有する半径方向内側表面20と、転輪組立体17が相互作用しなければならない履帯12のタイプによって形状が決定される半径方向外側表面21とによって境界を定められている。
【0064】
転輪本体18は、ホウ素合金化され、少なくとも熱処理にかけられた低合金鋼で作成される。低合金鋼とは、鉄及び炭素以外の他の元素が存在し、そのような他の元素のいずれもが5%を超えない含有量で存在する鋼である。
【0065】
転輪組立体17は、転輪本体18の円筒形キャビティ19に挿入されたシャフト22をさらに備える。シャフトは実質的に円筒形状を有し、第1の軸方向端部22aと第2の軸方向端部22bとの間で延在し、転輪本体18の半径方向内側表面20に対向する半径方向外側表面23を有している。
【0066】
シャフト22は、好ましくは、ホウ素合金化され、少なくとも熱処理にかけられた低合金鋼で作成される。
【0067】
シャフト22は、転輪本体18が軸方向に延在するよりも長く軸方向に延在している。言い換えると、シャフト22の第1の軸方向端部22aと第2の軸方向端部22bとの間の軸方向距離は、転輪本体18の第1の軸方向端部18aと第2の軸方向端部18bとの間の、軸方向に沿って測定される距離よりも長い。
【0068】
シャフト22は、転輪本体18の第1の軸方向端部18a及び第2の軸方向端部18bを越えて軸方向に延出している。特に、
図2に示すように、転輪本体18の第1の軸方向端部18aを越えて軸方向にシャフトが延出する長さは、転輪本体18の第2の軸方向端部18bを越えてシャフト22が軸方向に延出する長さと実質的に等しい。
【0069】
転輪本体18の第1の軸方向端部18aから軸方向外側に延出するシャフト部分22は、下部走行体枠部、又は下部走行体枠部と一体化された下部走行体構成要素と一体化されている。
【0070】
この目的のため、
図2に示すように、内部貫通キャビティ25が設けられた、下部走行体枠部又は下部走行体枠部と一体化された下部走行体構成要素と一体化された支持体24が設けられており、内部貫通キャビティ25には、転輪本体18の第1の軸方向端部18aから軸方向外側に延出したシャフト部分22が挿入される。
【0071】
シャフト22を支持体24と一体化するために、シャフト22は、シャフト22と半径方向に交差する半径方向キャビティ26を備える。支持体24上には、2つの半径方向に向かい合う貫通孔が形成され、2つの貫通孔を、互いに位置合わせし、シャフト22の半径方向キャビティ26にも位置合わせすることができる。ピン27は、半径方向キャビティ26を横切り、支持体24の2つの貫通孔を遮断するように半径方向キャビティ26に挿入される。これにより、支持体24に対してシャフト22が軸方向に移動すること、及び回転軸Xを中心として回転することが防止される。
【0072】
同様に、転輪本体18の第2の軸方向端部18bから軸方向外側に延出するシャフト部分22は、下部走行体枠部、又は下部走行体枠部と一体化された下部走行体構成要素と一体化されている。
【0073】
この目的のため、
図2に示すように、内部貫通キャビティ29が設けられた、下部走行体枠部又は下部走行体枠部と一体化された下部走行体構成要素と一体化されたさらなる支持体28が設けられており、内部貫通キャビティ29には、転輪本体18の第2の軸方向端部18bから軸方向外側に延出したシャフト部分22が挿入される。
【0074】
シャフト22をさらなる支持体28と一体化するために、シャフト22は、シャフト22と半径方向に交差する半径方向キャビティ30を備える。さらなる支持体28上には、2つの半径方向に向かい合う貫通孔が形成され、2つの貫通孔を、互いに位置合わせし、シャフト22の半径方向キャビティ30にも位置合わせすることができる。さらなるピン31は、ピン31が半径方向キャビティ30を横切り、支持体28の2つの貫通孔を遮断するように、半径方向キャビティ30に挿入される。これにより、さらなる支持体28に対してシャフト22が軸方向に移動すること、及び回転軸Xを中心として回転することが防がれる。
【0075】
転輪本体18は、回転軸Xを中心としてシャフト22に対して回転可能である。
図2に示すように、転輪本体18とシャフト22との間の摩擦を低減するために、転輪本体18とシャフト22との間に半径方向に介在するブッシュ32が設けられている。
【0076】
ブッシュ32は、真ちゅう、青銅、銅、又はその他の、好ましくはシャフト22及び転輪本体18を作成するのに使用する材料よりも延性の高い金属材料で作られる。また、ブッシュ材料32は良好な熱伝導率、例えば15W/m℃よりも高い熱伝導率を有する。
【0077】
本発明の好ましい実施例では、ブッシュ32は、転輪本体18と回転において一体化しており、したがってシャフト22に対して回転する。
【0078】
図2に示すように、ブッシュ32は、一方の第1の軸方向端部32aともう一方の第2の軸方向端部32bとの間で転輪本体18の軸方向延在部の全体にわたって延在している。ブッシュ32は、シャフト22に直接対向する半径方向内側表面33を備える。ブッシュ32の半径方向内側表面33とシャフト22の半径方向外側表面22cとの間には、シャフト22とブッシュ32との間の摩擦をさらに低減するために、油又はグリースなどの潤滑剤で満たされる環状チャンバ34が画定されている。
【0079】
環状シャフト34は、ブッシュ33に設けられた1つ又は複数の通路半径方向孔33aを通じて、転輪本体18内に得られるタンク35と流体連通している。また、タンク35は、環状形状を有し、タンク35と転輪本体18の半径方向外側表面21との間で半径方向に延在している転輪本体18内に得られる流路(図示せず)と流体連通している。流路は、潤滑剤をタンク35の中に、したがって環状チャンバ34の中に導入することを可能にするという目的を有する。流路は耐漏出栓(図示せず)で閉じられている。
【0080】
転輪本体18の第1の環状端部18a及び第2の環状端部18bには、ブッシュ33とシャフト22の支持体24、28との間で潤滑剤が漏出するのを回避するための、それぞれの液圧封止リング36が配置されている。転輪本体18の第1の軸方向端部18a及び第2の軸方向端部18bから軸方向外側に延出しているシャフト22の2つの部分において、シャフト22と支持体24、28との間で潤滑剤が漏出するのを回避するために、シャフト22と支持体24、28との間に設置されるそれぞれの液圧封止ガスケットがさらに設けられる。
【0081】
シャフト22の内部には、シャフト22内の非貫通キャビティ38によって画定される収容台座部37が得られる。非貫通キャビティ38は、回転軸Xに平行な対称軸に対する軸対称性を有する。
【0082】
収容台座部37は、入口部分39から測定部分40まで軸方向に沿ってシャフト内で奥深く延在している。入口部分39は、シャフト22の第1の軸方向端部22aに位置する、シャフト22の軸方向端面22dの位置に設置されている。入口部分39は、キャビティ38の開口部を画定するように開口している。
【0083】
測定部分40は、シャフト22内部の奥深くに設置され、特に軸方向においてブッシュ32の位置に設置される。
図2に示すように、測定部分40は、軸方向においてブッシュ32の第1の軸方向端部32aと第2の軸方向端部32bとの間に設置されている。
【0084】
入口部分39と測定部分40とは、非貫通キャビティ38が回転軸Xと平行になるように軸方向に沿って整列している。
【0085】
測定部分40は、シャフト22の半径方向外側表面23から一定の半径方向距離を空けて配置されている。測定部分40は、シャフト22の半径方向外側表面23に接触せず、半径方向外側表面23上に開口していない。
【0086】
図2Aに良好に示されるように、測定部分40は、ブッシュ32からの半径方向距離RD(Radial Distance)が8ミリメートルから50ミリメートルの間の位置に配置される。
【0087】
半径方向距離RDは、
図2Aに示すように、内部キャビティ38のうちブッシュ32に半径方向に近い箇所と、ブッシュ32の半径方向内側表面33との間の半径方向距離で測定される。
【0088】
収容台座部37の測定部分40の内部には、温度トランスデューサ41が挿入されている。
【0089】
温度トランスデューサ41は、測定温度を表す電気信号を生成するように構成されている。例えば、温度トランスデューサ41は、熱プローブであり、好ましくは、温度が上昇するにつれて電気抵抗を減少させる負の温度係数を有するNTC(Negative Temperature Coefficient、負温度係数)プローブである。好ましくは、温度トランスデューサ41は、約200℃までの温度を測定するように適合されている。
【0090】
入口部分39には、温度トランスデューサ41によって測定された温度を表すデータを含む無線モードの測定信号を生成するように構成された電子センサ・モジュール42が配置されている。
【0091】
図2Aに良好に示されているように、入口部分39は、電子センサ・モード42を収容するように、測定部分40が半径方向に延在するよりも長く半径方向に延在している。
【0092】
本発明の好ましい実施例では、入口部分39の半径方向の延在量は、測定部分40の半径方向の延在量の約2倍である。
【0093】
入口部分39の軸方向における延在量は、電子センサ・モジュール42を嵌合させて実質的に収容するように選択される。
【0094】
電子センサ・モジュール42及び温度トランスデューサ41は、それらの間を電線43によって電気的に接続されている。
【0095】
図4に模式的に示すように、電子センサ・モジュール42は、電線43と接続するためのコネクタ44を備える。
【0096】
センサ電子モジュール42は、電線43に動作可能に接続された回路部品45を備えて、温度トランスデューサ41からの信号を取り込み、測定温度を表す出力電気信号を生成する。
【0097】
電子センサ・モジュール42の回路部品45は、温度トランスデューサ41からの信号を管理するための回路部品を含み、この回路部品は、温度トランスデューサ41からのアナログ信号の調整回路と、入力信号を電圧又は電流の、アナログ又はデジタルの出力信号に変換するための可能な増幅器とを備えることができる。典型的には、回路部品から出力される電気信号は、デジタル電気信号である。このため、回路部品45は、アナログからデジタルへのA/D信号変換器を備えてよい。第1の回路部品から出力される電気信号は、シャフト22内の温度トランスデューサ41によって測定された瞬時温度を表すデータを含む。
【0098】
電子センサ・モジュール42は、メモリと関連付けられた電子プロセッサ46、特にマイクロプロセッサを備え、電子プロセッサ46は、回路部品45から来る測定信号を受信し、格納して、後に、アンテナ48を介して測定信号を無線モードで送信するための無線送信機47に測定信号を送信する。
【0099】
無線送信機47は、無線周波数信号を生成するように構成されている。特に、無線送信機47は、プロセッサ46から温度を表すデータを含む測定信号を受信し、温度を表すデータを含むそれぞれの無線周波数(RF:Radio Frequency)信号を生成するように構成された無線周波数送信機である。無線送信機47は、RF信号を送信するためのアンテナ45に動作可能に接続されている。
【0100】
電子センサ・モジュール42は、回路部品45及びマイクロプロセッサ46に供給するための、ボタン電池などの供給源49をさらに備える。
【0101】
好ましくは、
図2Aに示すように、電子センサ・モジュール42は、収容台座部37の入口部分39の内部に配置された容器50に挿入される。容器50は、電子センサ・モジュール42に含まれる回路部品及び電子装置をより強固に保護することを確実にする。好ましい実施例では、容器50は、シャフト22の軸方向外側表面22dに面する前面開口部51を備えた振動吸収可能な合成ゴムのケースである(
図3)。容器50はエポキシ樹脂で充填されて、外部応力をさらに減衰させ、電子センサ・モジュール42を耐漏出にする。
【0102】
容器50は、閉止栓52によって閉じられ、閉止栓52は、前面開口部51を好ましくは密に閉じ、非貫通キャビティ38を封止するように収容台座部37の入口開口部39に嵌合する。閉止栓52は、アンテナ48を介して送信される無線信号の通過に対して透過性のある材料で作られる。閉止栓52は、電子センサ・モジュール42の軸方向外側にある。閉止栓52は、容器50の軸方向外側にある。
【0103】
収容台座部37の入口部分39は環状溝53を備え、環状溝53は、非貫通キャビティ38に得られ、シャフト22の軸方向端部22aの表面22dに設置されている。環状溝53は、止め輪54を受け、維持するように構成されている。止め輪54は、好ましくは鋼製で弾性のあるリングであり、弾性はリングの外周部が閉じていないことによって与えられる。止め輪54は、電子センサ・モジュール42の軸方向外側にある。止め輪54は、閉止栓52の軸方向外側にある。止め輪54は、容器50の軸方向外側にある。
【0104】
軸方向内側位置から開始して軸方向内側位置に向かって、(止め輪54と同じ軸方向位置に設置された)環状溝53に嵌合されるように止め輪54が設けられ、次いで閉止栓52があり、さらに次いで容器50内に収容された電子センサ・モジュール42がある。
【0105】
収容台座部39は、止め輪54、閉止栓52、及び容器50を収容するように半径方向に延在している。
【0106】
図2及び
図2Aに示すように、収容台座部37は、半径方向キャビティ26を遮断せず、すなわち半径方向キャビティ26と交差せず、この半径方向キャビティ26は、シャフト22を半径方向に横切り、ピン27を収容する。非貫通キャビティ38は、流体連通しておらず、半径方向キャビティ26と交差せず、この半径方向キャビティ26は、シャフト22を半径方向に横切り、ピン27を収容する。
【0107】
当業者であれば、上述した実施例の様々な特徴を組み合わせてさらなる実施例を得ることが可能であり、それらはすべて、以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に入ることを認識するであろう。
【国際調査報告】