(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】水性流から粒状物を除去する方法
(51)【国際特許分類】
B01D 37/00 20060101AFI20230323BHJP
B01D 39/16 20060101ALI20230323BHJP
B01D 39/20 20060101ALI20230323BHJP
B01D 37/02 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
B01D37/00
B01D39/16 C
B01D39/20 A
B01D39/20 D
B01D37/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548866
(86)(22)【出願日】2021-02-12
(85)【翻訳文提出日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 EP2021053458
(87)【国際公開番号】W WO2021160804
(87)【国際公開日】2021-08-19
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】トプソー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ルゲ・マス
(72)【発明者】
【氏名】ブロアホルト・ラース・ピールマン
(72)【発明者】
【氏名】サアアンスン・ピア・アガホルム
【テーマコード(参考)】
4D019
4D116
【Fターム(参考)】
4D019AA03
4D019BA02
4D019BA05
4D019BA13
4D019BB06
4D019BB08
4D019BC12
4D019BD01
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4D116AA27
4D116BB01
4D116FF11B
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4D116GG02
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4D116QA22A
4D116QA26D
4D116UU01
4D116VV30
(57)【要約】
濃酸、好ましくは濃硫酸を含む水性流から粒状物を除去する方法であって、前記水性流をフィルターユニットに通すことによる機械的濾過を含み、そして前記フィルターユニットが、金属製、セラミック製もしくはポリマー製フィルター、または隔膜上にフィルター助剤を含むフィルターを含む、前記方法。水性流は、硫酸凝縮器の出口流、任意選択的に、硫酸凝縮器の下流に配置された硫酸濃縮器の出口流である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃酸、好ましくは濃硫酸を含む水性流から粒状物を除去するための方法であって、
・前記粒状物の平均粒度は0.05~10μmであり、及び
・前記水性流中の前記硫酸の濃度は60重量%超であり、
・前記方法は、前記水性流をフィルターユニットに通すことによる機械的濾過を含み、
・前記フィルターユニットは、金属製、セラミック製もしくはポリマー製フィルターまたは隔膜上にフィルター助剤を含むフィルターを含み、
・前記水性流は、プロセスガス流から硫酸を製造するためのプロセスプラントの硫酸凝縮器の出口流、任意選択的に、前記硫酸凝縮器の下流に配置された硫酸濃縮器の出口流であり、
・前記プロセスガス流は、硫黄及び前記粒状物を含み、
・前記プロセスプラントは、
・・前記プロセスガス流のSO
2の形の硫黄を、SO
2転化ユニットにおいてSO
3リッチガス流に転化すること、ここで前記SO
2転化ユニットは触媒床を含み及び前記プロセスガスを前記触媒床に通過させ;
・・前記SO
3リッチガス流を、前記硫酸凝縮器の前記出口流に、任意選択的に前記硫酸濃縮器の前記出口流に転化すること;及び
・・任意選択的に、前記出口流の温度を低下させる酸冷却ステップを提供すること、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記フィルターユニットが、酸冷却ステップの下流に、または酸冷却回路の一部としてもしくはそれ内に統合された形で酸冷却ステップ内に供される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
金属製、セラミック製もしくはポリマー製フィルターまたは隔膜上にフィルター助剤を含むフィルターが、0.1~14μm、好ましくは0.5~12μmのフィルターメディアグレードを有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
金属製フィルターが焼結した金属であり、そしてフィルターメディアグレードが、3~7μmの範囲、好ましくは5μmである、請求項1~3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
隔膜が、ポリマー製、セラミック製またはスチール製材料であり、そしてフィルター助剤が珪藻土を含む、請求項1~3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記セラミック製フィルターまたは前記隔膜のセラミックが、アルミニウム、カルシウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、タングステン、鉄及びケイ素を含む群から選択される一種以上の元素を含み;そして前記ポリマー製フィルターまたは前記隔膜のポリマー材料が、ポリプロピレン、フッ素化ポリマー、例えばテトラフルオロエチレン、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルクロライド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、またはこれらの組み合わせである、請求項1、3及び5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマー製フィルターのポリマー材料がPTFEであり、そしてポリマー製フィルターがPTFEメンブレン、例えばPTFEメンブレンまたはePTFEメンブレンであり、これらは任意選択的にひだ付けされており、また任意選択的にフィルターカートリッジを形成するためにプロピレンハウジング中に収容されている、請求項7に記載の方法。
【請求項8】
前記粒状物の平均粒度が、0.1~5μm、例えば0.1~2μmの範囲である、請求項1~7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
水性流中の粒状物の含有率が、0.1~500重量ppm、好ましくは0.3~250重量ppm、例えば100重量ppmである、請求項1~8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
粒状物が煤である、請求項1~9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
粒状物がカーボンブラックである、請求項1~9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
前記プロセスガス流が、前記粒状物と一緒に、O
2及び200体積ppm超のSO
2、例えば500体積ppm超のSO
2を含み、この際、前記粒状物は煤及び/またはカーボンブラックであり、これは、前記プロセスガス流中に>2mg/Nm
3の濃度で存在する、請求項1~11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
プロセスガス流が、カーボンブラック製造プラントからのオフガスである、請求項1~12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
前記SO
2転化ユニットの前記触媒床が、五酸化バナジウム、スルフェート、ピロスルフェート、トリ-もしくはテトラスルフェートの形の硫黄、及び一種以上のアルカリ金属を、多孔性キャリア上に含む触媒を含み、ここで、該触媒中の五酸化バナジウム含有率が1~15重量%であり、該触媒中の硫黄含有率が1~25重量%であり、そして該触媒中のアルカリ金属が2~25重量%であり、そして多孔性キャリアが珪藻土またはシリカ、すなわち二酸化ケイ素であり、場合により10重量%までのアルミナを含む、請求項1~13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
前記水性流中の硫酸の濃度が85重量%以上である、請求項1~14のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
濃酸、特にH2SO4を60重量%以上、例えば85重量%以上で含む濃硫酸(H2SO4)を含む水性流からの粒状物の除去に関し、前記粒状物の平均粒度は0.05~10μm、例えば0.1~5μmの範囲である。前記粒状物は、金属製、セラミック製もしくはポリマー製フィルターまたは隔膜上にフィルター助剤を含むフィルターを含むフィルターユニットに前記水性流を通すことによって機械的濾過を用いて除去される。前記隔膜は、好ましくは、ポリマー製、セラミック製またはスチール製の材料である。本発明の態様は、0.1~14μm、好ましくは0.5~12μmの範囲のフィルターメディアグレードを有する、前記の金属製フィルターまたは隔膜上のフィルター助剤を含む。濃硫酸流は、硫黄、特に二酸化硫黄(SO2)の形の硫黄及び前記の粒状物を含むプロセスガス流の処理のためのプラントで生産される。前記プロセスガス流は、特に、カーボンブラックプラントのオフガス流である。
【背景技術】
【0002】
現在、カーボンブラックプラントから排出されるオフガス、すなわち排気ガスの処理のためには、湿式ガス硫酸(WSA)プラントが使用されている。このオフガスは、SO2の形の硫黄、NOx、及び煤の形の粒状物、特にカーボンブラック粒子を含む。WSAプラントでは、SO2の形の硫黄及び粒状物を含むプロセスガス流は、SO2酸化触媒の一つ以上の床を含むSO2コンバーターに通される。このSO2酸化触媒は、典型的には、V2O5としてのバナジウム、スルフェート、ピロスルフェート、トリもしくはテトラスルフェートの形の硫黄、SiO2、及びプロモータとしてのアルカリ金属、例えばLi、Na、K、Rb及びCs、及びこれらの組み合わせを、典型的には珪藻土またはSiO2のサポート上の溶融物として含む。SO2コンバーターでは、前記プロセスガスのSO2がSO3に転化し、次いで、このガスが水と反応して、その結果、硫酸凝縮器中に濃硫酸が生成する。この硫酸もまた、前記硫酸凝縮器内において液体として凝縮される。WSAプラントは、任意選択的に、窒素酸化物類(NOx)の除去のために選択的触媒還元(SCR)触媒を備えることもできる。このプロセスを詳細に記載している本出願人のWO2016/169822(特許文献1)、EP0417200(特許文献2)及びEP0419539(特許文献3)を参照されたい。
【0003】
カーボンブラック粒子の圧倒的大部分は前記SO2酸化触媒上で酸化される一方で、少量、すなわち0.002mg/Nm3から100mg/Nm3、例えば0.003mg/Nm3から25mg/Nm3または0.004mg/Nm3から10mg/Nm3までの濃度の少量のカーボンブラック粒子は、触媒床中、そしてその結果、生成された硫酸中に入りこんで、それを灰色/黒色にしてしまう虞がある。別の言い方をすれば、カーボンブラックは、生成された硫酸で洗い流され、これはそれ故、汚染されそしてその商業的な価値を失ってしまう。
【0004】
カーボン粒子を酸化して、望ましくない色を除去し、そうしてこのような粒子による酸の汚染も除去するために、強酸化剤、例えば過酸化水素(H2O2)、オゾン(O3)及び類似物を用いた化学処理を使用することが知られている。例えば、”Handbook of sulfuric acid manufacturing”(非特許文献1)は、一つのセクションをこのトピックのために割いており(Sulphuric Acid Decolourization,1st ed.2008)、主たる焦点は、強酸化剤の使用を介した漂白である(前記文献の特に第7頁から第15頁までを参照されたい)。この望ましくない色は、硫酸を生成するプラントのオフガス中に持ち越された未燃焼の有機物の結果であると述べられている。また、着色(汚染)された酸の問題に対処するために、活性炭の使用と同様に、いわゆるデュアル乾燥塔技術(Dual Drying Tower technology)を使用することも知られている。活性炭の使用は、吸着、機械的濾過またはイオン交換により機能すると言われている。それ故、機械的濾過は、活性炭の使用に関して及び硫酸生成プラントにおいて未燃焼有機物が持ち越されることにより発生する望ましくない色の除去のためにしか開示されていない。
【0005】
US4702836(特許文献4)は、高精度の濾過精製、例えば熱的濃硫酸濾過を行うことを可能にする多孔性膜を開示している。
【0006】
GB2394428A(特許文献5)は、セラミック製、シリカまたは金属製材料の保護コーティングを含む金属製濾過材料を開示している。この金属製濾過材料は、ガス及び液体流から粒子を除去または回収するために使用され、そして使用中の劣化を低下させるために前記保護材料でコーティングされる。
【0007】
US4405548(特許文献6)は、溶融ポリマー材料を濾過するための改善された方法を開示しており、この場合は、透過性セラミック材料のフィルター床が使用される。このセラミック材料は、微結晶性焼結ボーキサイト粒子を含む。
【0008】
EP1264916A1(特許文献7)は、白金、金または銀などの貴金属を、ステンレススチールの一部と接触させることによる、硫酸または硫酸含有溶液の環境に曝されたステンレススチールまたはカーボンスチールの腐食を抑制する方法を開示している。
【0009】
US6287534(特許文献8)は、高い時間温度変化率により化学反応を加速するための方法、より具体的には、SO2、CO、H2S、H2、NOx、N2、Cl2、Br2、非炭化水素ベースの揮発性有機化合物、炭化水素ベースの揮発性有機化合物、及びアリール及びアルキル-酸ハライドなどの多原子分子の酸化を加速するために、一つの方向で高速な温度変化を使用するための方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2016/169822
【特許文献2】EP0417200
【特許文献3】EP0419539
【特許文献4】US4702836
【特許文献5】GB2394428A
【特許文献6】US4405548
【特許文献7】EP1264916A1
【特許文献8】US6287534
【特許文献9】WO2018/108739
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】“Handbook of sulfuric acid manufacturing”,「Sulphuric Acid Decolourization」,1st ed.2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、金属、セラミックもしくはポリマー製フィルターまたは隔膜上にフィルター助剤を含むフィルターを含むフィルターユニットが用いられる特定の形態の機械的濾過を使用した場合に、活性炭などの高価な材料や、酸化剤を使用せずに、粒状物、特に炭素を濃酸から除去することが今や可能であり、それにより、ガスが濾過中に形成されないために、作業中の安全性が大幅に改善されることを見出した。加えて、漂白(酸化)剤の使用中に通常生じる副反応及び付随する副生成物も避けられる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
それ故、本発明は、濃酸、好ましくは濃硫酸を含む水性流から粒状物を除去するための方法であって、
・前記粒状物の平均粒度は0.05~10μmの範囲であり、及び
・前記水性流中の前記硫酸の濃度は60重量%超であり、
・前記方法は、前記水性流をフィルターユニットに通すことによる機械的濾過を含み、ここで、
・前記フィルターユニットは、金属製、セラミック製もしくはポリマー製フィルターまたは隔膜上にフィルター助剤を含むフィルターを含み、
・前記水性流は、プロセスガス流から硫酸を製造するためのプロセスプラントの硫酸凝縮器の出口流、任意選択的に、前記硫酸凝縮器の下流に配置された硫酸濃縮器の出口流であり、
・前記プロセスガス流は、硫黄及び前記粒状物を含み、
・前記プロセスプラントは、
・・前記プロセスガス流のSO2の形の硫黄を、SO2転化ユニットにおいてSO3リッチガス流に転化すること、ここで前記SO2転化ユニットは触媒床を含み及び前記プロセスガスを前記触媒床に通過させ;
・・前記SO3リッチガス流を、前記硫酸凝縮器の前記出口流にまたは前記硫酸濃縮器の前記出口流に転化すること;及び
・・任意選択的に、前記出口流の温度を低下させる酸冷却ステップを提供すること、
を含む、前記方法を提供する。
【0014】
それ故、前記プロセスプラントは、硫酸凝縮器からの出口流中の硫酸の濃度を高めるための、前記硫酸凝縮器の下流に配置された硫酸濃縮器を含んでもよい。特定の態様の一つでは、前記硫酸濃縮器は、硫酸凝縮器と統合されていてもよいし、または硫酸凝縮器から分離されていてもよい。
【0015】
「統合」という用語は、硫酸濃縮器の入口が、硫酸凝縮器の出口と流体連通していることを意味する。それ故、硫酸凝縮器中で凝縮された硫酸は、例えば、硫酸濃縮器の頂部に直接流れ込む。
【0016】
「分離」という用語は、硫酸濃縮器が、硫酸凝縮器の外部の容器に設置されていることを意味する。例えば、硫酸濃縮器中で凝縮された硫酸は、外部容器内に設置された硫酸濃縮器中に入るようにポンプ輸送される。
【0017】
前記(水性)出口流、例えば前記硫酸凝縮器の前記(水性)出口流に転化されるSO3リッチガス流に言及する時は、窒素、酸素及び二酸化炭素などの非凝縮性化合物を含むガス状の出口流も形成されることは理解されるであろう。
【0018】
前記酸冷却ステップは、硫酸と水もしくは空気などの冷却媒体との間の熱交換、または酸冷却回路、例えば低温の酸供給物との、例えば循環された低温の酸供給物との熱交換による酸冷却回路を含み得る。酸冷却回路についての詳細は、本出願人の特許出願であるWO2018/108739(特許文献9)を参照されたい。
【0019】
一つの態様では、前記フィルターユニットは、酸冷却ステップの下流に供される。フィルターユニット、すなわち濾過装置の酸冷却ステップの外側でのこの特定の配置は、この位置での比較的低い温度、すなわち約40℃の低温の故に、より簡単で安価な材料の使用を可能にする。例えば、フィルターユニットは、貯蔵タンクにポンプ輸送される前に硫酸の温度を低下させるための熱交換器などの冷却ユニットの下流に供される。フィルターユニットは、フィルターでの圧力損失を抑えるためのそれ自身のポンプを有することができるか、またはフィルターユニットの外側のポンプによって供される既存の圧力を使用することができる。
【0020】
他の態様の一つでは、前記フィルターユニットは、酸冷却回路、すなわち酸冷却ループの一部としてまたはそれ内に統合された形で、酸冷却ステップ内に供される。「一部としてまたは統合された形で」という記載は、「一部として」及び「統合された形で」が同じ意味を有することを表していると理解されるであろう。この位置での温度は比較的高い、すなわち酸冷却ループ内の温度は約70℃であるものの、これは、該ループの外側(酸冷却ステップの下流)の40℃と比べて、粘度を50%低めることが見出された。それ故、圧力低下は、ループの外側の圧力低下のわずか半分であり、それにより、より都合のよいフィルター作業を可能にする。また例えば、前記フィルターユニットは、前記出口流中に、例えば全ての冷却の前に提供される。
【0021】
「酸冷却ループ」という用語は、(例えば180~270℃の範囲の温度を有する)硫酸凝縮器または硫酸濃縮器からの(水性)出口流が、先ず、(例えば約40℃の温度を有する)冷却されたリサイクル硫酸流とブレンドされる再循環ループを指す。今や約70℃の温度を有するこのブレンドされた硫酸は、交換器にポンプ輸送されそして冷却され、それにより、約40℃の温度を有する冷却された硫酸流が生じる。この冷却された硫酸流の一部は、上記の冷却されたリサイクル硫酸流と、同じく約40℃の温度を有しそしてループの外側に取り出されるエクスポート硫酸流とに分割される。それ故、該フィルターユニットは、酸冷却ループの一部としてまたはそれ内に統合された形で、(先に詳しく記載したように硫酸温度が約70℃である)前記のブレンドされた硫酸流中に、例えば前記のポンプ輸送の後に適切に供される。該フィルターユニットはまた、ループの外側で、(同様に先に記載したように硫酸の温度が約40℃である)前記のエクスポート硫酸流中にも適切に供される。
【0022】
硫酸濃縮器は、再循環ループ、すなわち硫酸濃縮器再循環ループを含んでよく、この硫酸濃縮器再循環ループとは、硫酸濃縮器の出口流の一部を、例えば硫酸濃縮器の入口にリサイクルすることを言う。この硫酸再循環ループは、硫酸濃縮器に入る前の、出口流の前記部分の加熱、例えば約180~280℃までの加熱を含んでよい。
【0023】
ここで使用される場合、「平均粒度」という用語は、Malvern Mastersizer 3000などのレーザー回折粒度分析器で測定される粒子の平均径を意味する。
【0024】
ここで使用される場合、「粒状物」という用語は、濃酸中に望ましくない効果を与える粒子を意味する。具体例の一つは、濃酸中に望ましくない着色を与える、カーボン粒子、特にカーボンブラック粒子である。粒状物は、ここで使用する場合、煤を含み、これは、炭化水素の不完全燃焼の結果としての不純な炭素粒子の一般用語である。ここで使用する場合、「カーボンブラック」という用語は、活性炭よりも低いものの高い表面積:体積比を有する準結晶性炭素の一形態を意味し、そして、それのかなりより高い表面積:体積比、より高い炭素濃度(例えば>95重量%(97または99.0重量%など))、及び顕著により少ない多環式芳香族炭化水素(PAH)含有量の点で、通常の煤とは異なっている。
【0025】
ここで使用する場合、「フィルター助剤」という用語は、濾過の補助のために基材に施用される一種以上の不活性材料を意味する。フィルター助剤は、典型的には多孔性フィルターケーキの形成に寄与する不活性材料であり、珪藻土、パーライト、シリカまたはアルミナなどの材料を含み得る。
【0026】
ここで使用する場合、「珪藻土」という用語は、80~90重量%のシリカ、2~4重量%のアルミナ及び0.5~2重量%の酸化鉄の組成(炉乾燥した珪藻土の組成)を有する珪質堆積岩から製造された材料を意味する。
【0027】
ここで使用される場合、「隔膜」という用語は、フィルター助剤、例えば珪藻土が施用またはコーティングされ、そして硫酸に対して透過性の基材または基材層を意味する。
【0028】
一つの態様では、金属製、セラミック製もしくはポリマー製フィルターまたは隔膜上にフィルター助剤を含むフィルターは、0.1~14μm、好ましくは0.5~12μmのフィルターメディアグレードを有する。特に、15μm以上のメディアグレードを有するセラミック製もしくはポリマー製フィルターまたは隔膜上にフィルター助剤を含むフィルターは、前記水性流と共にカーボンブラックが通過することを許してしまったのに対し、14μm、12μm、10μmのフィルターメディアグレード、または1もしくは0.5もしくは0.1μmなどのかなりより小さなフィルターメディアグレード、特に0.1~14μmもしくは0.5~12μmの範囲のフィルターメディアグレードを有するものなどのより密なフィルターは、圧力低下を若干増加させるものの、粒状物を効率的に除去することが見出された。
【0029】
ここで使用される場合、「フィルターメディアグレード」または「メディアグレード」という用語は、水中に丁度浸るように入れたフィルターに、気泡が通り抜けるようになるまで空気を強制的に通すことによって動的に決定される、フィルター中の孔の平均径を意味する。必要な圧力は、フィルター中の平均孔径に相関する:孔径(ミクロン)=30×表面張力(ダイン/cm)/圧力(mmHG)。孔の平均径は、代替的に、電子顕微鏡によっても測定し得る。
【0030】
金属製、セラミック製もしくはポリマー製フィルターまたは隔膜上にフィルター助剤を含むフィルターは、ディスク、矩形もしくは正方形のシートの形で、または管状もしくはキャンドルフィルターまたはひだ付きフィルターとして供することができる。
【0031】
隔膜もまた、ディスク、矩形もしくは正方形のシート、管状もしくはキャンドルまたはひだ付きの形であることができる。
【0032】
一つの態様では、金属製フィルターは焼結した金属であり、そしてフィルターメディアグレードは、3~7μmの範囲、好ましくは5μmである。この特定の範囲のこの特定のフィルターの場合、カーボンブラック粒子が、圧力低下を実質的に増加することなく、効率的に除去されたことが見出された。
【0033】
好ましくは、焼結された金属製フィルターは、0.2~10mm、例えば1~2.5mmの範囲の厚さを有する。
【0034】
好ましくは、前記金属は、ステンレススチール、例えばステンレススチール316LまたはC22である。特定の態様の一つでは、前記金属は、酸耐性材料でコーティングされる。
【0035】
態様の一つでは、前記隔膜は、ポリマー製、セラミック製またはスチール製材料であり、そしてフィルター助剤は珪藻土を含む。特定の態様の一つでは、前記フィルター助剤は珪藻土である。
【0036】
態様の一つでは、前記セラミック製フィルターまたは前記隔膜のセラミックは、アルミニウム、カルシウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、タングステン、鉄及びケイ素を含む群から選択される一種以上の元素を含み、特にガラス繊維または焼結ガラス、例えば溶融シリカを含み;そして前記ポリマー製フィルターまたは前記隔膜のポリマー材料は、ポリプロピレン、フッ素化ポリマー、例えばテトラフルオロエチレン、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルクロライド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、またはこれらの組み合わせである。
【0037】
同じセラミック材料を、セラミック製フィルター及び隔膜に使用してよい。同じポリマー材料を、ポリマー製フィルター及び隔膜に使用してよい。
【0038】
隔膜のスチール材料も、好ましくはステンレススチール、例えばステンレススチール316LまたはC22である。
【0039】
一つの態様では、セラミック製フィルターは、1~10μmの範囲のフィルターメディアグレードを有する、ガラス繊維または焼結ガラス、例えば溶融シリカである。この特定の範囲のこの特定のフィルターの場合にも、カーボンブラック粒子が、圧力低下を実質的に増加することなく、効率的に除去された。
【0040】
該フィルターユニットは、重量によって(この場合、流体を下方に移動させるために重力が利用される)、真空によって(この場合、フィルターに圧力勾配を形成させるために器具が使用される)、強制濾過によって(この場合、器具または流路圧力によって液体を強制的にフィルターに通す)、または例えば回転ドラムによって付与される遠心力によって、機能し得る。
【0041】
該フィルターユニットはまた、先ず粗大な粒子を除去して、総圧力低下を最小化するために、一つ以上のフィルターを直列に含むこともできる。
【0042】
該フィルターユニットはまた、一つ以上のフィルターを並列に含んでもよく、それにより、他のフィルターを清浄もしくは交換しつつ、フィルターを働かせることが可能になる。
【0043】
本発明は、手作業でまたはオンラインで清浄できる使い捨てのカートリッジまたはフィルター、例えば、堆積した粒状物を除去するために、濾過された液体を強制的にフィルターに逆に通すことによって清浄できる使い捨てのカートリッジまたはフィルターの使用も包含する。清浄プロセスは、堆積した粒状物及び全てのフィルター助剤の除去も含み得る。
【0044】
一つの態様では、前記ポリマー製フィルターのポリマー材料はPTFEである。特定の態様の一つでは、ポリマー製フィルターはPTFEメンブレン、例えばPTFEメンブレンまたはePTFEメンブレンであり、これらは任意選択的にひだ付けされており、また任意選択的にフィルターカートリッジを形成するためにプロピレンハウジング内に収容されている。ここでは「孔等級(pore rating)」とも称するフィルターメディアグレードは、0.02~5μmの範囲、例えば0.1、0.2、0.45及び1.0μmであることが適切である。フィルターカートリッジの長さは、例えば1016mm(40インチ)または254mm(10インチ)であり、外径は70mmである。
【0045】
「ePTFEメンブレン」という用語は、線状ポリマーPTFEを膨張させて微孔性構造を形成することによって生成したメンブレンである膨張ポリテトラフルオロエチレンを意味する。
【0046】
一つの態様では、前記粒状物の平均粒度は、0.1~5μm、例えば0.1~2μmの範囲である。
【0047】
一つの態様では、水性流中の粒状物の含有率は、0.1~500重量ppm、好ましくは0.3~250重量ppm、例えば100重量ppmである。
【0048】
一つの態様では、粒状物は煤である。
【0049】
一つの態様では、粒状物はカーボンブラックである。
【0050】
一つの態様では、前記プロセスガス流は、前記粒状物と一緒に、O2及び200体積ppm超のSO2、例えば500体積ppm超のSO2を含み(それ故、該プロセスガス中の硫黄は主にSO2の形である)、この際、前記粒状物は煤及び/またはカーボンブラックであり、これは、前記プロセスガス流中に>2mg/Nm3の濃度で存在する。好ましくは、該プロセスガス中において、煤は、>20重量%のC(炭素)、例えば>50重量%のC、または>75重量%のC、または>90重量%のC、または>95重量%のCを含む組成を有する。
【0051】
一つの態様では、該プロセスガス流は、カーボンブラック製造プラントからのオフガスである。特定の態様では、WSAプラントは、好ましくは、前記カーボンブラック製造プラント中に統合されるか、またはオフガスの処理のための、前記カーボンブラック製造プラントの拡張部として供される。
【0052】
一つの態様では、前記SO2転化ユニットの前記触媒床は、五酸化バナジウム、スルフェート、ピロスルフェート、トリ-もしくはテトラスルフェートの形の硫黄、及び一種以上のアルカリ金属を、多孔性キャリア上に含む触媒を含み、ここで、該触媒中の五酸化バナジウム含有率は1~15重量%であり、該触媒中の硫黄含有率は1~25重量%であり、そして該触媒中のアルカリ金属は2~25重量%であり、そして多孔性キャリアは珪藻土またはシリカ、すなわち二酸化ケイ素であり、場合により10重量%までのアルミナを含む。
【0053】
一つの態様では、前記水性流中の硫酸の濃度は85重量%以上である(H2SO4の質量分率)。これは、WSAプラントで得られる酸の濃度である。
【実施例】
【0054】
例1:金属製及びセラミック製フィルター
様々なメディアグレードの市販の金属製及びセラミック製フィルターサンプルを入手した。
【0055】
予備的実験は、硫酸及び水中でのカーボンブラック粒子の挙動は類似しており、これらは、カーボンブラック粒子と反応しない極性の液体であり、それ故、カーボンブラック粒子とのそれらの相互作用は同一であろうことを示した。それ故、カーボンブラック及び水をベースとする懸濁液を、濾過試験に使用した。
【0056】
水中100重量ppmの懸濁液を、ディスソルバーでカーボンブラック粉末を水と混合することによって調製した。
【0057】
様々なフィルターグレードの焼結した金属フィルターディスクをMott社から入手した。これらのディスクは、1インチ(25.4mm)の直径を有し、ステンレススチール316Lから製造したものであった。試験したセラミック製ディスクは、Sigma Aldrich社から入手し、これらはガラス繊維及び溶融シリカの形の焼結ガラスフィルターを含むものであった。
【0058】
【0059】
全てのフィルター試験は、フィルターサンプルを、1Lブフナーフラスコ中に入れたカスタムメードの漏斗中に入れることによって行った。
【0060】
次いで、100重量ppmのカーボンブラック懸濁液をフィルター上に注ぎ、そして0.6barのトランス-フィルター圧を供するポンプにより吸引してフィルターに通した。フィルター1~3及び11~12については、加えたトランス-フィルター圧は0.8barであった。フィルターを通過した液体を集め、そしてMalvern Mastersize 3000を用いた光遮蔽度(obscuration)の決定に付した。光遮蔽度の標準曲線は、水中の既知濃度のカーボンブラック懸濁液の光遮蔽度を測定して確立した。
【0061】
特に、15μm以上のメディアグレードを有するセラミック製もしくはポリマー製フィルターは、前記水性流と共にカーボンブラックが通過することを許してしまったのに対し、14μmもしくは12μmもしくは10μmのフィルターメディアグレード、または1もしくは0.5もしくは0.1μmなどのかなりより小さなフィルターメディアグレード、特に0.1~14μmもしくは0.5~12μmの範囲のフィルターメディアグレードを有するものなどのより密なフィルターは、圧力低下を若干増加させるものの、粒状物を効率的に除去することが観察された。
【0062】
3~7μmの範囲、特に5μmのフィルターメディアグレードを有する焼結金属の形の金属製フィルターを用いた場合には、圧力低下に関して顕著なペナルティ無しに、(表に示すように)高い粒子除去効率が観察された。
【0063】
1~10μmの範囲のフィルターメディアグレードを有する、焼結ガラス、特に溶融シリカの形のセラミックフィルターを用いた場合にも、圧力低下に関して顕著なペナルティ無しに、高い粒子除去効率が観察された。
【0064】
「粒子除去効率」という用語は、光遮蔽度を標準曲線により重量ppmに換算して計算された、フィルターによって保持された懸濁液中のカーボンブラックの百分率を表す。
【0065】
例2:ポリマー製フィルター
ここでは孔等級とも称する三つの異なるフィルターメディアグレードを有する市販のカードリッジフィルター(フィルターカートリッジ)を入手した。これらのフィルターを、試験液体からカーボンブラックを除去した時のそれらの粒子除去効率を決定するために実験室で試験した。
【0066】
前記カートリッジフィルターは、ポリプロピレンハウジング内に収容したひだ付きePTFEメンブレンからなる。三つの異なるフィルターメディアグレード(孔等級)を供した:1.0、0.45及び0.2μm。これらのフィルターは、長さが254mm(10インチ)で、外径が70mmであった。濾過試験の後に、二つの異なる測定、すなわち粒度分布の決定及び残留カーボンブラック含有率の決定を濾液について行った。両測定は、Malvern Mastersize 3000を用いて行った。
【0067】
粒度分布は、1.0及び0.45μmの孔等級並びに0.2μm孔等級を有するフィルターカートリッジからの濾液について測定した。両方の場合において、濾液中に残ったカーボンブラックの粒度分布は孔等級未満であり、これらのフィルターカートリッジが、少なくともそれらの孔等級までのカーボンブラック粒子を除去できることが確認された。0.2μmの孔等級を有するフィルターカートリッジからの濾液は、粒度分布を測定できないほどに十分に透明であった。
【0068】
粒度分布は、1.0及び0.45μmの孔等級を有するフィルターカートリッジからの濾液について測定した。両方の場合において、濾液中に残ったカーボンブラックの粒度分布は孔等級未満であり、これらのフィルターカートリッジが、少なくともそれらの孔等級までのカーボンブラック粒子を除去できることが確認された。0.2μmの孔等級を有するフィルターカートリッジからの濾液は、粒度分布を測定できないほどに十分に透明であった。
【0069】
これらの試験は、前記カートリッジフィルターが、個々のフィルターの上記の孔等級までのカーボンブラック粒子を除去するのに効果的であることを示す。またこれらの試験は、液体が目で見て透明になるためには、殆ど全てのカーボンブラックを除去する必要があることを確認した。
【国際調査報告】