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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/6592 20110101AFI20230329BHJP
   H02G 15/02 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
H01R13/6592
H02G15/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549129
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(85)【翻訳文提出日】2022-09-15
(86)【国際出願番号】 EP2021054134
(87)【国際公開番号】W WO2021165461
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】00195/20
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519314456
【氏名又は名称】アグロ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】AGRO AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フューラー,ステファン
【テーマコード(参考)】
5E021
5G375
【Fターム(参考)】
5E021FA02
5E021FA08
5E021FB11
5E021FC21
5E021HC02
5E021LA21
5G375CA03
5G375CA14
5G375DA08
5G375DA33
(57)【要約】
本発明は、保持装置と、少なくとも部分的に外側に位置する網組を備えたケーブルにその種の保持装置を組み付けるための方法を含む。保持装置は、ベース部材(4)と、ベース部材(4)と作用結合するためのテンション部材(5)と、圧着部材(6)とを含み、ベース部材(4)は、ハウジングにベース部材(4)を固定するためのベース(9)を備え、圧着部材(6)は、外側の圧着スリーブ(10)と、この圧着スリーブ(10)内に配置された内側の支持スリーブ(11)と、を備える。保持装置(1)にケーブル(2)が組み付けられた状態では、網組(3)は、圧着スリーブ(10)と支持スリーブ(11)との間に配置されており、網組シールド(4)は、圧着スリーブ(10)と支持スリーブ(11)との間において圧着されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に外側に位置する網組(3)を備えたケーブル(2)用の保持装置(1)において、
a.ベース部材(4)と、
b.テンション部材(5)と、
c.以下を備えた圧着部材(6)と、を含み、
前記ベース部材(4)は、
i.前記ケーブル(2)をガイドするための軸線方向に延在する第1の開口部(7)と、
ii.前記ベース部材(4)をハウジングに固定するためのベース(9)と、を備え、
前記テンション部材(5)は、前記ケーブル(2)をガイドするための前記軸線方向に延在する第2の開口部(8)を備え、且つ前記ベース部材(4)と作用結合し、
前記圧着部材(6)は、
i.外側の圧着スリーブ(10)、及び該圧着スリーブ(10)内に配置された、内側の支持スリーブ(11)を備え、
ii.前記保持装置(1)に前記ケーブル(2)が組み付けられた状態では、前記網組(3)が、前記圧着スリーブ(10)と前記支持スリーブ(11)との間に配置されており、且つ前記圧着スリーブ(10)及び前記支持スリーブ(11)が相互に圧着されている、ことを特徴とする、保持装置(1)。
【請求項2】
前記圧着スリーブ(10)及び前記支持スリーブ(11)は、軸線方向において圧着されていることを特徴とする、請求項1記載の保持装置(1)。
【請求項3】
前記圧着スリーブ(10)は、圧着前の変形していない状態では、前記軸線方向に延在する圧着領域(12)を含むことを特徴とする、請求項1又は2記載の保持装置(1)。
【請求項4】
前記圧着領域(12)は、前記圧着前、且つ前記圧着スリーブ(10)内に前記支持スリーブ(11)が組み付けられた状態では、軸線方向において前記支持スリーブ(11)を超えて突出していることを特徴とする、請求項3記載の保持装置(1)。
【請求項5】
軸線方向において、前記網組(3)の折り返し端部から前記圧着領域(12)の遠位端部まで測定された長さCが、前記圧着スリーブ(10)の押圧面(26)の外径Dに対して、C/D=0.3から0.5の比率にあることを特徴とする、請求項3又は4に記載の保持装置(1)。
【請求項6】
前記圧着スリーブ(10)は、少なくとも1つの半径方向の貫通開口部(13)を有し、該貫通開口部(13)を介して、前記組み付けられた状態では、前記前記網組(3)を視覚的に確認可能であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項記載の保持装置(1)。
【請求項7】
前記圧着スリーブ(10)は、前記軸線方向において、前記支持スリーブ(11)のためのストッパ(14)を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項記載の保持装置(1)。
【請求項8】
前記支持スリーブ(11)は、軸線方向において変形可能であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項記載の保持装置(1)。
【請求項9】
前記支持スリーブ(11)は、前記軸線方向における変形のための少なくとも1つの変形領域(15)を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項記載の保持装置(1)。
【請求項10】
前記支持スリーブ(11)は、ケーブルシース(19)の一方の端部に接触させるための半径方向の肩部(17)を有することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項記載の保持装置(1)。
【請求項11】
前記ベース部材(4)又は前記テンション部材には、前記圧着部材(6)との電気的な接触接続のためのコンタクトばね(20)が配置されていることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項記載の保持装置(1)。
【請求項12】
前記コンタクトばね(20)は、前記ベース部材(4)及び/又は前記圧着スリーブ(10)の半径方向の溝(21)に配置されていることを特徴とする、請求項11記載の保持装置(1)。
【請求項13】
以下の方法ステップを含む保持装置(1)の組み付け方法において、
a.請求項1から12のいずれか一項記載の保持装置(1)を準備するステップと、
b.少なくとも部分的に外側に位置する網組(3)を備えたケーブル(2)を準備するステップと、
c.前記テンション部材(5)を前記ケーブル(2)に押し込むステップと、
d.前記支持スリーブ(11)を前記ケーブル(2)に押し込むステップと、
e.前記網組(3)を拡げて、前記支持スリーブ(11)の周りに折り返すステップと、
f.前記圧着スリーブ(10)を前記ケーブル(2)及び前記支持スリーブ(11)に押し込むステップと、
g.前記圧着スリーブ(10)及び前記支持スリーブ(11)を圧着させるステップと、
h.前記ベース部材(4)を前記ケーブル(2)に押し込むステップと、
i.前記ケーブル(2)に押し込まれた前記テンション部材(5)を前記ベース部材(4)に作用結合させるステップと、を有することを特徴とする、組み付け方法。
【請求項14】
前記支持スリーブ(11)を押し込む前に、先ず、少なくとも1つのクランプ部材(22)を前記ケーブル(2)に押し込むことを特徴とする、請求項13記載の組み付け方法。
【請求項15】
前記圧着スリーブ(10)及び前記支持スリーブ(11)を軸線方向において圧着させることを特徴とする、請求項13又は14記載の組み付け方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網組、特に網組シールドを備えたケーブルを保持するための保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の保持装置は、一方ではケーブルのストレインリリーフのため、他方では電磁シールド並びに線路障害の除去のために用いられてもよい。このために、ケーブルは軸線方向に固定され、外側のケーブルシース(絶縁部)の下に配置されているケーブル網組との電気的な接触接続が確立される。従来技術から、非常に多くの異なる保持装置が公知である。現行の保持装置は、通常の場合、ケーブルの上に配置されるスリーブ状のベース部材と、ケーブルを固定するクランプ部材と、ベース部材に接続されてもよく、且つクランプ部材をベース部材に位置決めするテンション部材と、を含む。用途に応じて、ケーブル網組の電気的な接触接続のためのコンタクト部材が同様に設けられてもよい。
【0003】
一例はDE19523795であり、この文献には、遮蔽されたスイッチケーブル用のケーブルグランドが開示されている。ケーブルグランドは、接地されたクランプスリーブを含み、このクランプスリーブは、露出されたシールドシースを包囲し、接触接続が生じるようにクランプする。ケーブルグランドは、付加的に、押潰しスリーブを有し、この押潰しスリーブは、薄壁の押潰し部分と、厚壁の支持部分とに区分されている。ここで、押潰しスリーブの押潰し部分は、スイッチケーブルのシースを有しない端部部分に押し込まれ、圧着によってこの端部部分に対して押し潰される。この際、露出されたシールドシースは裏返されて支持部分に被せられ、またクランプ部分を備えたクランプスリーブは、シールドシースを含む支持部分に押し込まれ、同様に(半径方向の)圧着によってこの支持部分に対して押し潰される。
【0004】
DE102013201531には、遮蔽された線路の遮蔽部と、ハウジング壁との間の電気的な接触接続部が開示されている。ここでは、線路がコンタクトスリーブによって包囲されており、このコンタクトスリーブは、遮蔽部及びハウジング壁と電気的に接触接続されている。コンタクトスリーブは、線路の外側シースに圧着されている。
【0005】
網組シールドを備えたケーブルのための公知の保持装置では、電気的な接触接続が不十分な場合が多い。これによって、遮蔽の品質が低下し、とりわけ、高い遮蔽損失が生じる。不十分な電気的な接触接続は、例えば、網組の圧着が過度に強すぎる場合に生じる可能性があり、また過度に弱すぎる場合にも生じる可能性がある。従って、遮蔽の良好な品質のためには、最大限に遮蔽された線路を使用することが必要とされるだけでなく、良好な電磁両立性を有する保持装置を使用することも必要になる。その際、遮蔽部の接触接続が、電気的な要求を満たす以外に、機械的に安定していることも同様に保証されなければならない。
【発明の概要】
【0006】
本発明の課題は、ケーブル網組の接続が改善された保持装置を提供することである。
【0007】
本発明による保持装置は、少なくとも部分的に外側に位置する網組を備えたケーブルのためのものである。このケーブルは、少なくとも1つの導体と、網組を保護するケーブルシースと、を含んでもよい。しかしながら、保持装置が取り付けられるべき、ケーブルの組み付け領域においては、好ましくは、ケーブルシースが部分的に除去されており、それによって網組が外側に配置されている。構成に応じて、ケーブルは、シールドケーブルであってもよい。網組は、ケーブルの網組シールドであってもよい。代替的又は付加的に、網組は、接地に利用されてもよい。実施形態に応じて、ケーブルは、網組以外にも、網組の上又は下にシート、特に保護シート(例えば、金属シート及び/又は金属化プラスチックシート等)を有してもよい。
【0008】
本発明による保持装置は、ベース部材と、このベース部材と作用結合可能なテンション部材並びに圧着部材と、を含む。圧着部材は、特に、圧着によって網組を圧着部材に固定して接触接続させるために用いられる。この場合、軸線方向の圧着が特に有利である。圧着部材におけるケーブル又は網組の固定は、有利には解消不可能であるので、確実で耐久性のある結合がもたらされる。網組をシールドとして利用する場合、そのような結合によって、永続的で高品質の電気的な接触接続のための結合が得られる。軸線方向の圧着によって、網組に力が均等に分散され、対称的な押圧がもたらされる。この結果、シールドの損失が少なくなり、一般的に環境により優しい結合が実現される。更に、軸線方向の押圧の際、半径方向の押圧とは異なり、例えば不均一に拡げられた網組によって惹起されるような、生じる公差の影響が低減される。しかしながら、シールドコンタクトへの影響の他に、軸線方向の圧着は、ケーブルの絶縁特性に好適な影響を及ぼす。何故ならば、例えばケーブル絶縁体の締め付けのような悪影響を及ぼす負荷を最小限にすることができるからである。
【0009】
軸線方向においては、ケーブルをガイドするための第1の開口部がベース部材を通って延在している。更に、ベース部材は、有利には、このベース部材をハウジングに載置して固定するためのベースを含む。有利には、ベースの載置面は、この載置面がハウジングに少なくとも部分的に接触するように形成されている。ベース部材は、導電性の材料から製造されてもよい、且つ/又は導電性のコーティングを有してもよい。1つの考えられる実施形態では、ベース部材が、例えばハウジングと作用結合するための、第1の作用結合手段を有する。保持装置は、第1の作用結合手段としてねじを有してもよい。しかしながら、別の種類の作用結合も考えられる。更に、ベース部材は、テンション部材と作用結合させるための、別の(第2の)作用結合手段、例えばねじを有してもよい。
【0010】
テンション部材は、ケーブルをガイドするための、軸線方向に延在する第2の開口部を有する。この第2の開口部は、有利には、第1の開口部と同軸に配置されている。1つの考えられる実施形態では、テンション部材が、ベース部材の第2の作用結合手段と作用結合するための、第3の作用結合手段を有する。1つの考えられる実施形態では、テンション部材が、ベース部材にねじ固定可能なテンションナットである。テンション部材は、下記において詳細に説明するように、ベース部材とテンション部材との間に配置されている圧着部材を固定するために、また必要に応じてクランプ部材を固定するために、用いてもよい。
【0011】
クランプ部材は、保持装置におけるケーブルの付加的な保持及びクランプに用いてもよい。またクランプ部材は、用途に応じて、保持装置に対するケーブルのシールに用いてもよい。組み付けられた状態では、クランプ部材が軸線方向において、ベース部材とテンション部材との間に配置されてもよい。クランプ部材は、ワンピース又はマルチピースで形成されてもよい。構成に応じて、クランプ部材は、例えば少なくとも1つのスリットを特に軸線方向において有してもよい。スリットは波形に形成されてもよい。波形のスリットは、ケーブルを側方から挿入するためにクランプ部材を開く(又は拡げる)ことができるが、しかしながら組み付けられた状態では、クランプ部材は変位しないという利点を有する。有利には、クランプ部材は、変形可能な材料、特に延性材料から成る。有利には、クランプ部材は、特に半径方向に変形可能である、且つ/又は半径方向に弾性に構成されている。このことは、材料特性に起因してもよく、且つ/又はクランプ部材の成形によって達成されてもよい。つまりクランプ部材は、例えば少なくとも1つのスリットを有してもよい。少なくとも1つのスリットは、半径方向又は軸線方向に配向されてもよい。同様に、少なくとも1つのスリットは、半径方向及び/又は軸線方向に途切れなく形成されてもよいので、例えば環状のクランプ部材はC字の形状となる。クランプ部材が設けられている場合、圧着部材は、特に、網組の電気的な接触接続のために用いられ、一方、クランプ部材は、ケーブルを保持し、引張力を吸収し、またケーブルを必要に応じて保持装置に対してシールするために用いられる。このようにして、網組に過度に強い負荷がかからず、また電気的な接触接続部が、ケーブルの固定部から局所的に分離される。
【0012】
1つの好適な実施形態では、保持装置は、捻じれ防止装置を有してもよい。この捻じれ防止装置は、クランプ部材に対するベース部材の捻じれを防止するために用いられてもよい。このために、捻じれ防止装置は、クランプ部材に配置された少なくとも1つの第1の固定部材と、ベース部材に配置された第2の固定部材と、を含んでもよい。組み付けられた状態では、それらの固定部材が、少なとも部分的に相互に係合し、ベース部材においてクランプ部材を周方向に位置決めする。この場合、少なくとも1つの第1の固定部材は、クランプ部材の外周面に配置されてもよい。外周面は、ケーブルをガイドするためにクランプ部材を通って軸線方向に延在する開口部とは反対側(外側に)向けられている。更に、少なくとも1つの第2の固定部材は、ベース部材の内周面に配置されてもよい。ベース部材の内周面は、軸線方向において、ケーブルをガイドするための第1の開口部側にある。少なくとも1つの第1の固定部材は、凹部の形態で形成されてもよく、一方、少なくとも1つの第2の固定部材は、組み付けられた状態において少なくとも部分的にその凹部に係合する形状部材であってもよい(又はその逆であってもよい)。有利には、複数の(第1及び第2の)固定部材が、それぞれの周面にわたり、特に相互に規則的な間隔で配置されている。例えば、捻じれ防止装置、又は第1の固定部材及び/若しくは第2の固定部材は、噛み合い歯及び/又は刻み目として形成されてもよい。刻み目は、各周面において刻まれた部分又は切削された部分を表してもよい。刻み目は、通常の場合、ローレット加工によって作成される。
【0013】
圧着部材は、組み付けられた状態では、ベース部材とテンション部材との間、又はベース部材とクランプ部材との間に配置されてもよい。テンション部材を締め付けることによって、クランプ部材は圧着部材に対して、またこの圧着部材はベース部材に対してテンションをかけてよく、また位置決めされてもよい。圧着部材は、有利にはマルチピース、特にツーピースである。圧着部材は、例えば、外側の圧着スリーブと、その圧着スリーブ内に配置された内側の支持スリーブと、を含んでもよい。保持装置内にケーブルが組み付けられた状態では、(露出された)網組が、圧着スリーブと支持スリーブとの間に配置されている。この場合、網組が圧着スリーブと支持スリーブの間に固定されるように、圧着スリーブが内側の支持スリーブに圧着されてもよく、特に軸線方向において圧着されてもよい。
【0014】
圧着のために、圧着スリーブは、好適には、圧着領域を有してもよい。圧着領域は、軸線方向に延在してもよい。良好な変形のために、圧着領域は有利には薄壁に形成されている。圧着領域は、圧着スリーブの壁厚の基底部から突出していてもよい。圧着スリーブは、支持スリーブを収容するための収容空間を有してもよい。支持スリーブを圧着スリーブ内に位置決めするために、圧着スリーブは、軸線方向において、代替的又は補完的に、内面に支持スリーブに対するストッパを含んでもよい。つまり、圧着スリーブは、一方の側から軸線方向において、支持スリーブが収容空間に達してストッパに接触するまで、支持スリーブへと押し込まれる。圧着スリーブ内又は受容空間内に支持スリーブが組み付けられた状態、また圧着領域が(まだ)変形していない状態では、圧着領域が軸線方向において有利には支持スリーブを超えて突出している。このようにして、圧着後の変形した状態では、圧着スリーブがケーブルに対して支持スリーブを覆っている。圧着後、変形した圧着領域は、有利には部分的に(支持スリーブの近傍において)ケーブルに密着する。ケーブルへの密着は、ケーブルが特に曲げ負荷時により良好に支持され、所定破断箇所を低減することができるという利点を有する。網組の良好な接触接続は、軸線方向において、網組が(最初に)支持スリーブの周りに折り返される折り返し縁部から、(変形していない)圧着領域の遠位端部まで測定された長さCが、圧着スリーブの押圧面の外径Dに対して、C/D=0.3~0.5、特にC/D=0.4~0.45の比率にある場合に達成される。ここで、押圧面は、圧着のために圧着スリーブ及び支持スリーブに軸線方向の押圧力を加えるために用いられる。押圧面は、有利には、圧着スリーブの基底部、特に軸線方向において、支持スリーブとは反対側に位置する、圧着スリーブの遠位端部に配置されている。直径Dは、ベース部材の第1の開口部の最小直径に対応してもよい。そのような比率により、網組の良好な電気的な接触接続のための最適な圧着が、僅かな遮蔽損失で得られる。更に、用途に応じて、圧着スリーブは、半径方向に延在する少なくとも1つの貫通開口部を有してもよい。これによって、組立工は、組み付けられた状態において、この貫通開口部を介して網組を視覚的に確認することができる。有利には、圧着スリーブが、その外面に周方向に(少なくとも部分的に)延びる突部を有する。この突部は、一方では、組み付けられた状態において、ベース部材又はテンション部材の肩部に圧着部材を軸線方向において停止させるために用いられてよい。他方では、この突部は、同様に軸線方向における圧着の際に、軸線方向における圧着のための圧着ツール等におけるストッパとして用いられてもよい。このために、突部の圧着領域側の面は傾斜していてもよく、それによって、軸線方向において傾斜した、圧着ツールのための圧着面が形成される。有利には、圧着スリーブは導電性であり、特に金属性である。例えば、圧着スリーブは、銅、真鍮、又は他の良好に変形可能で導電性の材料を含有してもよい。
【0015】
支持スリーブは、通常の場合、実質的にケーブルシースに載置される。高速且つ容易な組み付けのために、支持スリーブは、ケーブルシースの一方の端部に接触させるための、半径方向内側に位置する肩部を有してもよい。1つの考えられる実施形態では、支持スリーブの横断面は例えばL字型である。つまり、支持スリーブは、一方の側から軸線方向において、ケーブルシースにおける肩部のストッパまで、ケーブルに押し込まれる。支持スリーブの位置決め後、網組を拡げて、支持スリーブの周りに(少なくとも部分的に)折り返してもよい、又は被せてもよい。続いて、圧着スリーブは、拡げられて支持スリーブに折り返されている網組と共に、支持スリーブに押し込まれるので、網組は、圧着スリーブと圧着スリーブとの間に配置される。支持スリーブに圧着スリーブが組み付けられた状態では、網組が、圧着スリーブの第1の接触接続面と支持スリーブの第2の接触接続面との間に配置されてもよい。有利には、第1の接触接続面及び/又は第2の接触接続面は、少なくとも部分的に(第1の領域において)、半径方向(ケーブルの法線方向)に向けられてもよい、又は円錐形に構成されてもよい、特に軸線方向において円錐形に構成されてもよい。この(第1の)領域の配向は、軸線方向における圧縮の際に特に有利である。何故ならば、押圧力はこの領域において、一方では最大であり、他方では特に簡単且つ正確に調整及び/又は測定できるからである。有利には、露出され網組の20%から40%が、この(第1の)領域に配置されている、又は接触接続面の20%から40%が有利には半径方向に配向されている。更に、圧着スリーブの第1の接触接続面の第1の領域は、圧着スリーブの内面に沿って、実質的に軸線方向に延在する第2の領域に移行してもよい。その一方で、支持スリーブの第2の接触接続面の第1の領域は、支持スリーブの外面に沿って、実質的に軸線方向に延在する第2の領域に移行してもよい。しかしながら、上述のように、少なくとも部分的に円錐形の接触面も考えられる。円錐形の実施形態の利点の1つとして、特に第1の領域においては、角度が付けられた接触接続面によって、接触接続する面積が拡大され、ひいては、網組における電流のより良好な伝導が実現されることが挙げられる。
【0016】
有利には、それぞれの接触接続面の異なる領域が、丸みが付けられた領域を介して相互に移行するので、網組の損傷が低減される。このことは、支持スリーブに配置された第2の接触接続面において特に有利である。良好な電気的な接触接続のために、第1の接触接続面及び/又は第2の接触接続面には導電性のコーティングが設けられてもよい。しかしながら、有利には、支持スリーブは少なくとも部分的に導電性であり、特に金属性である。例えば、支持スリーブは、少なくとも部分的に銅又は真鍮から形成されてもよい。圧着スリーブ及び支持スリーブに同一の材料を使用することは、圧着すべき構成部材のそれぞれの温度依存性が類似している点で有利である。
【0017】
圧着部材の軸線方向における圧着のために、支持スリーブが軸線方向において変形可能に形成されている場合には有利である。このために、支持スリーブは、軸線方向における変形のための少なくとも1つの変形領域を有してもよい。変形領域は、圧着スリーブ内に支持スリーブが組み付けられた状態では、有利には、圧着スリーブの基底部とは反対側の端部に配置されている。更に、変形領域は、圧着スリーブ内に支持スリーブが組み付けられた状態において、且つ圧着前に、少なくとも部分的に半径方向において、ケーブルと圧着スリーブの圧着領域との間に配置されている場合には特に有利である。変形領域は、例えば、支持スリーブの内面に配置されてもよい。変形領域は、少なくとも1つのストレインリリーフ細溝及び/又は押潰し細溝を有してもよい。これらの細溝によって、支持スリーブをより良好に軸線方向に伸縮させることができる。これらの細溝は、それぞれ支持スリーブのガイド開口部周りに延びてもよい。
【0018】
ケーブルの網組から、例えば保持装置が作用結合されているハウジングへの電気的な線路の良好な経路のために、ベース部材と圧着部材との間に(又は代替的に、テンション部材と圧着部材との間に)圧着部材の電気的な接触接続のためのコンタクトばねが配置されてもよい。有利には、コンタクトばねは半径方向に変形可能である。組み付けられた状態では、コンタクトばねは、有利には、圧着部材に半径方向の押圧力を加える。コンタクトばねは、有利には、軸線方向において環状又はC字状である。例えば、板ばね又は薄板ばねが使用されてもよい。コンタクトばねは、ベース部材及び/又は圧着スリーブの半径方向の溝内に配置されてもよい。この場合、ベース部材の半径方向の溝は、有利には、第1の開口部周りに延びる。しかしながら、構成に応じて、溝がテンション部材に配置されているバリエーションも考えられる。構成に応じて、溝は、横断面において燕尾形状を有していてもよい。
【0019】
保持装置を組み付けるために、先ず、固定すべきケーブル端部においてケーブルの網組が露出されてもよい。それに続いて、露出されたケーブルに個々の構成要素が組み立て順に通されることによって、保持装置が準備されてもよい。このために、先ずテンション部材が、それに続いて支持スリーブがケーブルに押し込まれる。支持スリーブは、半径方向の肩部と共にケーブルシースの端部まで押し込まれ、そこにおいて位置決めされてもよい。続いて、ケーブルの網組が拡げられて、支持スリーブ周りに置かれる。支持スリーブから突出した網組は切断されてもよい。代替的に、網組は、構成要素を設ける前に適正なサイズにされてもよい。その後、圧着スリーブがケーブル及び支持スリーブ上に押し込まれる。この場合、圧着スリーブ及び支持スリーブが圧着され、特に軸線方向において圧着され、その結果、網組が有利にはそれらのスリーブ間において解消不可能に固定されている。軸線方向における圧着のために、ケーブルは、圧着部材と共に組み付けツールに挿入され、その組み付けツールにおいて、軸線方向に力が加えられて圧着される。このステップの後、ベース部材がケーブルに押し込まれる。ベース部材は、有利には、圧着部材のためのストッパを有する。この場合、ベース部材は、テンション部材と作用結合されてもよい。クランプ部材が設けられている場合、支持スリーブがケーブルに押し込まれる前に、このクランプ部材が押し込まれる。代替的に、クランプ部材が相応のスリットを有している場合には、クランプ部材が事後的に側方からケーブルに挿入されてもよい。この場合、組み付けられた状態では、圧着部材は、テンション部材とベース部材との間において、又は設けられている場合には、クランプ部材とベース部材との間に配置されている。ケーブルが網組の下にシート、特にシールドシートを有する場合には、このシートが部分的に除去されてもよい。代替的に、このシートは、折り返す必要なく、ケーブルに沿って更にガイドされてもよい。しかしながら、網組の上にシートが配置されている場合、除去することが特に推奨される。何故ならば、シートは網組の折り返しを妨げるからである。
【0020】
更に、圧着の際に、ツールが更に刻印を残してもよい。刻印は、圧着スリーブの外面、例えば、圧着領域及び/又は圧着面に配置されてもよい。刻印は、使用された圧着パラメータに関する情報、例えばツールパラメータ、圧着回数、押圧力、メーカロゴ等を示してもよい。補完的に、刻印は、ユーザのための品質指標を表してもよい。
【0021】
添付の図面に図示した実施例及びそれに対応する説明に基づき、本発明の態様を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による保持装置の1つのバリエーションの斜視部分断面図を示す。
図2図1に示した保持装置のバリエーションの縦断面図を示す。
図3】圧着部材を備えたケーブルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1から図2は、ケーブル2に組み付けられた状態にある、本発明による保持装置1の1つのバリエーションを示す。ケーブル2は、導体18と、この導体18を包囲する網組3、特に網組シールドと、を含む。網組3と導体18との間には、中間絶縁体17が配置されている。外側からは、網組3がケーブルシース19によって包囲されている。しかしながら、他の種類のケーブル及び構造も同様に実現できる。保持装置1の領域では、ケーブルシース19が除去されており、網組3の端部が露出されている。
【0024】
保持装置1は、ベース部材4と、このベース部材4と作用結合可能なテンション部材5と、を含む。ベース部材4は、保持装置1を例えばハウジング等(図示せず)に固定するために使用される。このために、ベース部材4は、ハウジングに載置するための載置面を備えたベース9を有する。ベース9には、保持装置1をハウジングに対してシールするためのシーリング23が配置されてもよい。テンション部材5は、図示したケースでは、テンションナットであるが、テンション部材の他の構成も考えられる。ベース部材4は、ケーブル2をガイドするための、軸線方向に延在する第1の開口部7を有し、一方、テンション部材5は、ケーブル2をガイドするための、軸線方向に延在する第2の開口部8を有する。テンション部材5は、特に、ベース部材4とテンション部材5との間に配置されたクランプ部材22をクランプし、ケーブル2を保持し、また必要に応じてシールするために用いられる。有利には、クランプ部材22は、変形可能な材料から成る。更に、ベース部材4とテンション部材5との間には、圧着部材6が配置されている。圧着部材6は、軸線方向において、クランプ部材22とベース部材4との間に配置されている。半径方向では、ベース部材4において、第1の開口部7周りに半径方向に延びる溝21にコンタクトばね20が配置されている。コンタクトばね20によって、圧着部材6からベース部材4への改善された電気的なコンタクトがもたらされる。
【0025】
圧着部材6は、外側の圧着スリーブ10と、この圧着スリーブ10内に配置されており、且つ有利には軸線方向に変形可能な内側の支持スリーブ11と、を含む。図3には、圧着部材6を備えたケーブル2が示されている。図の下側部分には、(圧着前の)変形していない圧着スリーブ10が図示されている。図の上側部分には、(圧着後の)変形した圧着スリーブ10が図示されている。いずれの状態においても、網組3は、圧着スリーブ10と支持スリーブ11との間に配置されている。圧着後、圧着部材6は、有利にはケーブル2に固く接続されている。この場合、変形した圧着領域12は、支持スリーブ11の周囲、また部分的にケーブル2の周囲において撓んでもよい。圧着スリーブ10の外面、例えば圧着領域12には圧着又は圧着ツールの刻印25が配置されてもよい。圧着前は、変形可能な圧着領域12が軸線方向に延在している。圧着領域12は、圧着スリーブ10内に支持スリーブ11が組み付けられた状態では、軸線方向において支持スリーブ11を超えて突出している(図の下側部分を参照されたい)。図示したバリエーションにおいては、(変形していない)圧着領域12の端部から軸線方向における網組の折り返し端部までの長さとして定義された長さCは、圧着スリーブ10の押圧面26の外径D(図2を参照されたい)に対して、C/D=0.3~0.5の比率を有する。ここで、押圧面26は、圧着のために圧着スリーブ10及び支持スリーブ11に軸線方向の押圧力を加えるために用いられる。圧着に関して、圧着スリーブ10は、外面において周方向に延びる突部24を有する。この突部24は、組み付けられた状態では、軸線方向において、ベース部材4のストッパ14に接触する。
【0026】
更に、支持スリーブ11が、軸線方向における変形のための少なくとも1つの変形領域15を有することも可能である。図示したケースでは、支持スリーブ11が、ケーブル2に対向する内面に複数の細溝を有しており、これらの細溝は、軸線方向の変形時のストレインリリーフ細溝及び/又は押潰し細溝として用いられてもよい。変形した状態においても、変形していない状態においても、支持スリーブ11が、ケーブルシース19の端部に接触するための半径方向の肩部16を有することが見て取れる。更に、圧着スリーブ10は、軸線方向において、支持スリーブ11のためのストッパ14を含む。つまり、支持スリーブ11を、またこの支持スリーブ11を介して圧着スリーブ10を、簡単且つ迅速にケーブル2に位置決めすることができる。圧着スリーブ10が、少なくとも1つの半径方向の貫通開口部13を有することは更に有利であり、これによって、組み付けられた状態において、介在する網組3をこの貫通開口部13を介して視覚的に確認することができる。変形した状態では、支持スリーブ11が、圧着スリーブ10及びケーブル2によって包囲されて保持されている。
【0027】
図示した保持装置1を組み付けるために、先ず、ケーブルシース19の下にある、ケーブル2の網組を露出させることができる。続いて、テンション部材5、クランプ部材22及び支持スリーブ11を順にケーブル2に通すことができる。支持スリーブ11を、半径方向の肩部16を用いてケーブルシース19の端部まで押し込み、そこにおいて位置決めすることができる。続いて、ケーブル2の網組3が拡げられて、支持スリーブ11周りに置かれる。突出した網組3を切断することができる。その後、圧着スリーブ10をケーブル2及び支持スリーブ11に押し込むことができる。次に、網組3を、圧着スリーブ10と支持スリーブ11との間において軸線方向に圧着させることができる。このステップの後、ベース部材4がケーブル2に押し込まれ、テンション部材5と作用結合される。
【符号の説明】
【0028】
1 保持装置
2 ケーブル
3 網組
4 ベース部材
5 テンション部材
6 圧着部材
7 第1の開口部
8 第2の開口部
9 ベース
10 圧着スリーブ
11 支持スリーブ
12 圧着領域
13 貫通開口部
14 ストッパ
15 変形領域
16 半径方向の肩部
17 中間絶縁体
18 導体
19 ケーブルシース
20 コンタクトばね
21 溝
22 クランプ部材
23 シーリング
24 突部
25 刻印
26 押圧面


図1
図2
図3
【国際調査報告】