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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】ディスプレイ用青色フィルタ
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20230329BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20230329BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20230329BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20230329BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
G02B5/22
G02B5/30
H01L33/00 L
G02F1/13357
G02F1/1335 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549822
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(85)【翻訳文提出日】2022-10-03
(86)【国際出願番号】 EP2021054192
(87)【国際公開番号】W WO2021165486
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】20305171.9
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517338412
【氏名又は名称】ネクスドット
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】デュベルトレ,ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】ノーディン,ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ダミコ,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ソロ-オホ,ヴィルフリート
(72)【発明者】
【氏名】リン,ユ-プ
【テーマコード(参考)】
2H148
2H149
2H291
2H391
5F142
【Fターム(参考)】
2H148CA04
2H148CA05
2H148CA14
2H148CA19
2H148CA24
2H149AA02
2H149AA18
2H149AA19
2H149AB01
2H149BA02
2H149FC08
2H291FA01X
2H291FA21X
2H291FA21Z
2H291FA81Z
2H291FA94X
2H291FB02
2H291FB23
2H291FC01
2H291LA21
2H291LA40
2H391AB04
2H391EA01
2H391EA11
2H391EA13
5F142DB35
5F142DB40
5F142GA12
5F142HA01
5F142HA05
(57)【要約】
本発明は、画像生成システムと青色範囲の光フィルタリング層とを備えるディスプレイであって、前記光フィルタリング層は前記ディスプレイのガマットに対して限定的な影響を有するディスプレイに関する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)色空間において定義されたガマットGを有する画像生成システムと、
(ii)半導電性ナノ粒子を含む光フィルタリング層と
を備えるディスプレイであって、
前記光フィルタリング層を通る吸光度は、350nm~λcutまでの範囲の各光波長に対して0.25より大きく、λcutは420nm~450nmの範囲であり、
前記フィルタリング層を有する前記画像生成システムのガマットGは、前記色空間におけるガマットGの面積の90%より大きい面積を有する、ディスプレイ。
【請求項2】
前記画像生成システムは、バックライトユニット51と、少なくとも1つの偏光子52と、アクティブマトリックス53と、少なくとも1つの液晶層54と、保護層55とを備える、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項3】
前記光フィルタリング層は、前記保護層55の内側に塗布されたコーティングである、請求項2に記載のディスプレイ。
【請求項4】
前記画像生成システムは、異なる色を有する3つの光源と保護層とを備える、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項5】
前記光フィルタリング層は、前記保護層の内側に塗布されたコーティングである、請求項4に記載のディスプレイ。
【請求項6】
ガマットGおよびガマットGは、CIE Luv色空間において評価され、前記フィルタリング層を有する前記画像生成システムのガマットGは、前記色空間におけるガマットGの面積の95%より大きい面積を有する、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項7】
ガマットGおよびガマットGは、CIE xyY色空間において評価され、前記フィルタリング層を有する前記画像生成システムのガマットGは、前記色空間におけるガマットGの面積の95%より大きく、好ましくは98%より大きい面積を有する、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項8】
前記半導電性ナノ粒子は、以下の化学式の材料を含み、
MxQyEzAw(I)
式中、
Mは、Zn、Cd、Hg、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Fe、Ru、Os、Mn、Tc、Re、Cr、Mo、W、V、Nd、Ta、Ti、Zr、Hf、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Csまたはそれらの混合物からなる群から選択され、
Qは、Zn、Cd、Hg、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Fe、Ru、Os、Mn、Tc、Re、Cr、Mo、W、V、Nd、Ta、Ti、Zr、Hf、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Csまたはそれらの混合物からなる群から選択され、
Eは、O、S、Se、Te、C、N、P、As、Sb、F、Cl、Br、Iまたはそれらの混合物からなる群から選択され、
Aは、O、S、Se、Te、C、N、P、As、Sb、F、Cl、Br、Iまたはそれらの混合物からなる群から選択され、
x、y、zおよびwは独立した0~5の10進数であり、x、y、zおよびwは同時に0に等しくなく、xおよびyは同時に0に等しくなく、zおよびwは同時に0に等しくない場合がある、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項9】
前記光フィルタリング層は、半導電性ナノ粒子が分散されているマトリックスから成る、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項10】
前記マトリックスは、(メタ)アクリルモノマーもしくはオリゴマー、エポキシモノマーもしくはオリゴマー、またはそれらの混合物を含む重合性組成物である、請求項9に記載のディスプレイ。
【請求項11】
前記マトリックスは、金属アルコキシド、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、エポキシシラン、エポキシアルコキシシラン、およびそれらの混合物から選択されるモノマーまたはオリゴマーを含む重合性組成物である、請求項9に記載のディスプレイ。
【請求項12】
前記マトリックスは重合性組成物であり、前記重合性組成物中の半導電性ナノ粒子の量は、前記重合性組成物の重量に対して10ppm~10重量%である、請求項9~請求項11のいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項13】
前記半導電性ナノ粒子は、有機層でキャップされるか、または無機マトリックス中に封入される、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載のディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイの分野に関する。特に、本発明は、ディスプレイのガマットを縮小することなく高エネルギーの青色光の発光を制限するフィルタを有するディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁スペクトルは広範囲の波長をカバーし、その中には、380nm~780nmの範囲の可視スペクトルと呼ばれることが多いヒトの眼に見える波長がある。可視スペクトルの波長を含む電磁スペクトルの高エネルギーのいくつかの波長は、ヒトの眼に様々な影響を与える。
【0003】
光生物学は、光の生物学的効果の研究であり、電磁スペクトルの一部が視覚および概日機能を含む良好な健康に有益な効果をもたらすことを立証している。しかしながら、紫外線(UV)および青色光として知られる高エネルギー可視光線などの有害な放射線から眼を保護することの重要性も立証されている。実際に、可視光は、普段の日常的な強度であっても、累積的な網膜損傷を引き起こすか、または網膜老化の一因となることがあり、加齢黄斑変性症(AMD)などの早期および遅発性の加齢黄斑症(ARM)の発症における憎悪因子であり得る。
【0004】
青色光は自然光の中に存在し、人工照明によって、特にLED光源によって放射される。実際に、LEDを用いて白色光を生成するためには、一般に、赤色LED、緑色LEDおよび青色LEDを含むいくつかの有色光源が組み合わされる。一般に、青色LEDは、主に440nm~500nmの波長範囲で発光し、440nm未満では低発光状態になる。ヒトの眼は、440nm未満の波長を有する光をほとんど感じないことに留意されたい。しかしながら、440nm未満の波長のこの高エネルギー青色光は、累積的な網膜損傷を引き起こし得る。
【0005】
したがって、ディスプレイからの高エネルギーの青色光の放射を制限することが望ましい。
【0006】
さらに、ディスプレイの性能は色再現に関係しており、良好なディスプレイは、青色を含むヒトの眼によって知覚される全ての色を再現することができなければならない。この性能は、ディスプレイのガマットまたは色域によって測定される。ガマットは、通常、CIE 1931色空間内の表面として表される。加法色モデルでは、赤色光源、緑色光源および青色光源の3つの光源のセットから得られる色は、CIE 1931色空間における三角形として表され、各々の光源が三角形の頂点であり、三角形の領域が前記赤色光源、緑色光源および青色光源のガマットである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのような光源のガマットを最大化するために、低波長の青色光源を有することが望ましい。
【0008】
最後に、広いガマットを維持しながら青色光の影響から目を保護するために、ディスプレイにおける青色光源の発光スペクトルのバランスを保つ必要がある。
【0009】
本開示において、最適なバランスは、非常に選択的なフィルタリングを有する半導電性ナノ粒子を含む光フィルタリング層によって得られる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本開示は、
(i)色空間において定義されたガマットG0を有する画像生成システムと、
(ii)半導電性ナノ粒子を含む光フィルタリング層と
を備えるディスプレイであって、
前記光フィルタリング層を通る吸光度は、350nm~λcutまでの範囲の各光波長に対して0.25より大きく、λcutは420nm~450nmの範囲であり、
前記フィルタリング層を有する前記画像生成システムのガマットG1は、前記色空間におけるガマットG0の面積の90%より大きい面積を有する、
ディスプレイに関する。
【0011】
一実施形態では、画像生成システムは、バックライトユニットと、少なくとも1つの偏光子と、アクティブマトリックスと、少なくとも1つの液晶層と、保護層とを備える。特に、光フィルタリング層は、保護層の内側に塗布されるコーティングである。
【0012】
一実施形態では、画像生成システムは、異なる色を有する3つの光源と保護層とを備える。特に、光フィルタリング層は、保護層の内側に塗布されるコーティングである。
【0013】
一実施形態では、ガマットG0およびガマットG1は、CIE Luv色空間において評価され、前記フィルタリング層を有する前記画像生成システムのガマットG1は、前記色空間におけるガマットG0の面積の95%より大きい面積を有する。
【0014】
一実施形態では、ガマットG0およびガマットG1は、CIE xyY色空間において評価され、前記フィルタリング層を有する前記画像生成システムのガマットG1は、前記色空間におけるガマットG0の面積の95%より大きい面積、好ましくは98%より大きい面積を有する。
【0015】
一実施形態において、半導電性ナノ粒子は、以下の化学式の材料を含む。
MxQyEzAw(I)
式中、
Mは、Zn、Cd、Hg、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Fe、Ru、Os、Mn、Tc、Re、Cr、Mo、W、V、Nd、Ta、Ti、Zr、Hf、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Csまたはそれらの混合物からなる群から選択され、
Qは、Zn、Cd、Hg、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Fe、Ru、Os、Mn、Tc、Re、Cr、Mo、W、V、Nd、Ta、Ti、Zr、Hf、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Csまたはそれらの混合物からなる群から選択され、
Eは、O、S、Se、Te、C、N、P、As、Sb、F、Cl、Br、Iまたはそれらの混合物からなる群から選択され、
Aは、O、S、Se、Te、C、N、P、As、Sb、F、Cl、Br、Iまたはそれらの混合物からなる群から選択され、
x、y、zおよびwは独立した0~5の10進数(decimal number)であり、x、y、zおよびwは同時に0に等しくなく、xおよびyは同時に0に等しくなく、zおよびwは同時に0に等しくない場合がある。
【0016】
一実施形態では、光フィルタリング層は、半導電性ナノ粒子が分散されているマトリックスから成る。
【0017】
特定の実施形態では、マトリックスは、(メタ)アクリルモノマーもしくはオリゴマー、エポキシモノマーもしくはオリゴマー、またはそれらの混合物を含む重合性組成物である。
【0018】
別の特定の実施形態では、マトリックスは、金属アルコキシド、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、エポキシシラン、エポキシアルコキシシラン、およびそれらの混合物から選択されるモノマーまたはオリゴマーを含む重合性組成物である。
【0019】
別の特定の実施形態では、マトリックスは重合性組成物であり、重合性組成物中の半導電性ナノ粒子の量は、重合性組成物の重量に対して10ppm~10重量%である。
【0020】
一実施形態において、半導電性ナノ粒子は、有機層でキャップされるか、または無機マトリックス中に封入される。
定義
【0021】
本発明において、以下の用語は以下の意味を有する。
・「吸光度」は、比I/Iの10進対数であり、ここで、Iは試料に入射する光の強度であり、Iは前記試料を透過する光の強度である。本開示において、吸光度は、350nm~780nmのUVおよび可視範囲の波長について測定される。固体試料(コーティング)については、5マイクロメートル厚の試料で吸光度が測定される。液体試料(吸収化合物の溶液)については、1センチメートルの光路長のキュベットで吸光度を測定する。吸光度1は、10個の光子のうち9個が試料によって吸収されることを意味する。吸光度0.3は、2つの光子のうちの1つが試料によって吸収されることを意味する。
・「色空間」は、観察者によって知覚される色の表現のためのモデルを指す。本開示において、色空間は、国際照明委員会(CIE)によって定義されたシステムのいずれかである。色空間は、関連するCIE 1931xy色度図座標を有するCIE 1931 xyY色空間であり得る。色空間は、関連するu’、v’色度図座標を有するCIE Luv色空間であり得る。色空間は、関連するa、b色度図座標を有するCIE L*a*b*色空間であり得る。
・「コア/クラウン」は、中心ナノ粒子であるコアが、コアの周囲に配置された帯状の材料であるクラウンによって囲まれているヘテロ構造を指す。
・「コア/シェル」は、中心ナノ粒子であるコアが、コア上に配置された材料の層であるシェルによって埋め込まれているヘテロ構造を指す。2つの連続シェルを重ねて、コア/シェル/シェルのヘテロ構造が形成され得る。コアおよびシェルは同じ形状を有し得、例えば、コアはナノスフェアであり、シェルは本質的に一定の厚さの層であり、球状のコア/シェルナノ粒子が形成される。コアおよびシェルは、異なる形状を有し得、例えば、ドット(ナノスフェアまたはナノキューブまたは任意の他のナノクラスター)はコアとして形成され、シェルはコアの周りに横方向に成長して、ナノプレートの形状を有するがナノプレートの内部にドットを含む(これは、以下、プレート内ドットと称される)ヘテロ構造が形成される。いくつかの実施形態において、コアおよびシェルは、異なる組成を有する。他の実施形態では、組成はコアからシェルまで連続的に変化し、コアとシェルとの間に正確な境界は存在しないが、コアの中心の特性はシェルの外側境界の特性とは異なる。
・ディスプレイの「ガマット」は、色空間の領域、例えば、CIE 1931 xy色度図を指し、その色は前記ディスプレイによって再現され得る。図1において、曲線エッジは、380nm(青色)から700nm(赤色)までの単色を表す。CIE 1931 xy色度図において点R、点Gおよび点Bで表される色特性を有する赤色、緑色および青色の3つの光源を使用するディスプレイは、頂点R、頂点Gおよび頂点Bによって制限される三角形で定義されるガマットを有する。同じ手法が、例えば、CIE Luvのような他の色空間にも適用される。
・「ナノメートルサイズ」とは、閉じ込めにより量子効果が現れる物質のサイズを指す。半導電性ナノ粒子の場合、ナノメートルサイズは、電子/正孔対の平均ボーア半径で定義されなければならない。閉じ込めは、20nm未満、好ましくは15nm未満、より好ましくは10nm未満の物体の少なくとも1つの寸法のサイズに対して有効である。より強い閉じ込めは、5nm未満の少なくとも1つの寸法のサイズで得られる。
・「ナノ粒子」は、その寸法の少なくとも1つにおいて100nm未満のサイズを有する粒子を指す。ナノスフェアの場合、直径は100nm未満である必要がある。ナノプレートの場合、厚さは100nm未満である必要がある。ナノロッドの場合、直径は100nm未満である必要がある。
・「ナノプレート」は、2D形状のナノ粒子を指し、前記ナノプレートの最小寸法は、前記ナノプレートの最大寸法よりも、少なくとも1.5、少なくとも2、少なくとも2.5、少なくとも3、少なくとも3.5、少なくとも4、少なくとも4.5、少なくとも5、少なくとも5.5、少なくとも6、少なくとも6.5、少なくとも7、少なくとも7.5、少なくとも8、少なくとも8.5、少なくとも9、少なくとも9.5または少なくとも10倍(アスペクト比)だけ小さい。
・「半導電性ナノ粒子」は、電子産業において知られている半導電性材料に対応する電子構造を有するがナノメートルサイズを有する材料からなる粒子を指す。それらの特定の電子構造により、半導電性材料は、ハイパス吸収材料として挙動する。実際に、バンドギャップよりもエネルギーが大きい波長を有する光は、半導電性材料によって吸収されて、電子/正孔対、励起子を生じ得、これらは後に材料中で再結合し、熱を放散するか、または光を放射するか、またはその両方である。反対に、バンドギャップよりもエネルギーが小さい波長を有する光は吸収され得ない。すなわち、半導電性材料はこれらの波長を透過する。巨視的半導電性材料の場合、可視光は一般的には吸収されるが、近/中赤外光は吸収されない。半導電性粒子がナノメートルサイズを有する場合、閉じ込め(すなわち、形状およびナノメートルサイズ)が量子力学の規則に従う電子構造を支配し、光吸収は、UV範囲またはUVおよび高エネルギー可視光に限定され得る。本開示において、半導電性ナノ粒子は、閾値未満の波長を有する光を吸収し、この閾値は350nm~800nmの範囲内である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示は、画像生成システムと、光フィルタリング層とを備えるディスプレイに関する。
【0023】
画像生成システムは、ヒトの眼で見ることができる画像を生成するように構成された光源である。
【0024】
一実施形態では、前記画像は、スクリーン上への光の投影によって得られる。この実施形態では、画像生成システムは、光源と、画像投影用のレンズと、スクリーンとを備える。光フィルタリング層は、光路上の任意の場所に、すなわち光源内に、光源とレンズとの間の層として、またはレンズ上のコーティングとして配置され得る。この実施形態は、プロジェクタに対応する。
【0025】
別の実施形態では、前記画像は、単一の光源から画素アレイを形成することによって得られ、各画素は特定の色を有し、このようにしてデジタル画像が形成される。図2に示すこの実施形態では、画像生成システム5は、通常はバックライトユニットとして知られる光源51と、偏光層52と、アクティブマトリックス53と、液晶層54と、保護層55とを備え得る。アクティブマトリックスは、画素アレイならびにそれらの色を画定するように構成され、固有の光源(青色または白色のいずれか)が使用され、この光源によって放射された光は、蛍光現象によって緑色および赤色に変換される。液晶層は、各画素の強度を制御するように構成される。光フィルタリング層6は、光路上の任意の場所に、すなわち光源内に、画像生成システムの2つの連続する構成要素間の層として、または画像生成システムの任意の構成要素上のコーティングとして配置され得る。好ましくは、光フィルタリング層は、保護層55の内側に塗布されたコーティングである。この位置では、光フィルタリング層は環境から保護され、光路上の最終の(保護層を除く)フィルタである。この最終位置では、光フィルタリング層に入射する光の量は、バックライトユニット上の位置と比較して低減され、したがって、光フィルタリング層は熱にさらされることが少ない。この実施形態は、LEDディスプレイに対応する。
【0026】
別の実施形態では、前記画像は、画素アレイを形成することによって得られ、各画素は特定の色を有する光源であり、このようにしてデジタル画像が形成される。通常、3つの色(赤色、緑色および青色)が光源として使用され、異なる色の3つの画素が混合されて、加法によって得られる所望の色の1つの画素が形成される。この実施形態では、各画素の強度が別々に調整され得る。光源は、保護層によって保護される。光フィルタリング層は、光路上の任意の場所、すなわち、青色光源上のみに、または保護層上に配置され得る。好ましくは、光フィルタリング層は、保護層の内側に塗布されるコーティングである。この実施形態は、OLEDディスプレイまたはマイクロLEDディスプレイに対応する。
【0027】
本開示において、画像生成システムは、色空間において定義されたガマットGを有する。任意の色空間がガマットを定義するのに適している。適切な色空間は、CIE 1931 xyYおよびCIE Luvである。ガマットGは、色空間内の領域として測定される。
【0028】
光フィルタリング層は、使用者の眼を保護するために、高エネルギーの青色光の放射を制限するためのものである。そのためには、本明細書内に開示されている光フィルタリング層は、350nm~λcutまでの範囲の各光波長に対して0.25より大きい吸光度を有し、λcutは420nm~450nmの範囲である。
【0029】
一実施形態では、吸光度は、350nm~λcutまでの範囲の各光波長に対して0.5より高く、より好ましくは1より高く、さらにより好ましくは1.5より高い。
【0030】
λcutの正確な値は、画像生成システムで使用される光源の発光スペクトルに応じて決定される。通常、λcutは、420nm~450nmの範囲で選択される。特に、λcutは、425nm、430nm、435nm、440nmまたは445nmであり得る。
【0031】
図3.1は、350nm~780nmの光の波長の関数としての光フィルタリング層の一般的な吸光度曲線A(λ)を示す。吸光度曲線は3つのゾーンを示す。低波長領域では、すなわちUV光および高エネルギー可視光では、吸光度は高く、および/またはほぼ一定であり、平均吸光度Aを有する第1のプラトーPを画定する。第1のプラトーPの後、吸光度は急峻に減少して、Aの10分の1の値A(A=A/10)に達し、その結果、減少ゾーンDを画定する。プラトーPと減少ゾーンDとの間の限界は、遷移波長λcutを画定する。減少ゾーンDの後、吸光度は、第2のプラトーPにおいて減少および/または安定し得、可視光の赤色端、すなわち780nmまで延びる。
【0032】
減少ゾーンDの幅は、一般に100nm未満、好ましくは50nm未満、より好ましくは40nm未満、さらに好ましくは30nm未満である。
【0033】
吸光度曲線は、常にこの一般的な形状を有するが、詳細は、使用される材料の性質によって変化し、λcutの正確な決定は困難であり得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、吸光度曲線は、図3.1に示すように、PおよびDの限界で明確な最大値を示す。この実施形態では、λcutは以下の式によって定義され得、この場合、λcutは減少ゾーンD内にある。
【数1】
【0035】
この実施形態では、λcutは、極大値に対して以下の式によって代替的に定義され得る。
【数2】
【0036】
他の実施形態では、吸光度曲線は、図3.2に示すように、急峻に減少する前にゆっくり単調に減少している。この実施形態では、λcutは、吸光度の減少が減少ゾーンにおいて有意になるところのλの最低値によって定義され得、例えば、以下の通りである。
【数3】
【0037】
上記で提案されたλcutの異なる決定により、異なる値であるが近い値が得られる。本開示では、λcutの値は、±5nmの誤差を含んだ丸めた値として考慮されなければならない。
【0038】
λcutの値は、半導電性ナノ粒子の組成、形状および構造を適切に選択することによって、420nm~450nmの範囲内で選択され得る。
【0039】
本開示では、光フィルタリング層を有する画像生成システムは、ガマットGと同じ色空間で定義されたGを有する。また、ガマットGの面積は、ガマットGの面積の90%よりも大きい。好ましくは、ガマットGの面積は、ガマットGの面積の95%より大きい。
【0040】
特に、CIE xyY色空間が使用される場合、ガマットGの面積はガマットGの面積の90%よりも大きい。好ましくは、ガマットGの面積は、ガマットGの面積の95%より大きい。より好ましくは、ガマットGの面積は、ガマットGの面積の98%より大きい。
【0041】
あるいは、CIE Luv色空間が使用される場合、ガマットGの面積は、ガマットGの面積の90%より大きい。好ましくは、ガマットGの面積は、ガマットGの面積の95%より大きい。
【0042】
図4は、画像生成システムにおいて3つの光源(CIE xy色度図における点R、点Gおよび点Bによって識別される赤色、緑色および青色)を含むディスプレイのガマットに対する光フィルタリング層の効果を示す。赤色および緑色の光源はλcutよりもはるかに大きい波長で発光するので、光フィルタリング層は赤色および緑色の光源にほとんど影響を及ぼさない。しかしながら、色度図における青色光源の位置は、矢印で示すように、光フィルタリング層によってわずかに変化し、B’に位置する。実際に、青色光源の最高エネルギー(最低波長)の光は、光フィルタリングフィルタによって除去される。最後に、ガマットGの面積(光フィルタリング層なし、ライトグレー)はガマットGの面積(黒の実線でハッチングされている)に減少する。
【0043】
本開示において、光フィルタリング層は半導電性ナノ粒子を含むマトリックスである。
【0044】
マトリックス
本開示の光フィルタリング層に好適なマトリックスは、可視光を十分に透過し、半導電性ナノ粒子の分散を可能にする限り、任意のタイプのものであり得る。
【0045】
好適な有機マトリックスは、少なくとも1種のモノマーまたはオリゴマーと、前記モノマーまたはオリゴマーの重合を開始させるための少なくとも1種の触媒とを含む重合性組成物から得られる。
【0046】
好適なモノマーまたはオリゴマーは、アリル化合物、(メタ)アクリル化合物、エポキシ化合物、ポリウレタン材料またはポリチオウレタン材料を調製するために使用される化合物から選択される。これらのモノマーの混合物、または多官能性モノマー、特にエポキシアクリル化合物も好適である。
【0047】
さらに、ゾルゲルとして通常知られている材料を調製するために使用される化合物が好適である。
【0048】
本開示において、(メタ)アクリルモノマーまたは(メタ)アクリルオリゴマーは、アクリル基またはメタクリル基を有する化合物である。(メタ)アクリレートは、単官能性(メタ)アクリレート、または多官能性(メタ)アクリレートであり得る。
【0049】
好適な(メタ)アクリルモノマーまたはオリゴマーは、多官能性(メタ)アクリレートであり、ジアクリレートモノマー、トリアクリレートモノマー、テトラアクリレートモノマーおよびヘキサアクリレートモノマー、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレートまたはペンタエリスリトールテトラアクリレートからなる群から選択され得る。特に、多官能性モノマーは、好ましくは、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、シリコーンヘキサアクリレート、およびこれらの混合物からなる群から選択される。多官能性アクリレートモノマーの使用は、耐引掻性の改善およびPETまたはポリカーボネートのような熱可塑性基板へのより良好な接着をもたらす。
【0050】
(メタ)アクリルモノマーまたはオリゴマーの重合に特に適した実施形態において、重合を開始するための触媒は、フリーラジカル開始剤である。特定の実施形態では、触媒は、ペルオキソジカーボネート、ペルオキシエステル、ペルケタール、およびそれらの混合物からなる群から選択される。代替の特定の実施形態において、触媒は、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、およびそれらの混合物からなる群から選択されるアゾ化合物である。
【0051】
好適なエポキシモノマーまたはオリゴマーは、多官能性エポキシであり、ジグリセロールテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、例えば、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールメタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリフェニロールメタントリグリシジルエーテル、トリスフェノールトリグリシジルエーテル、テトラフェニルエタントリグリシジルエーテル、テトラフェニロールエタンのテトラグリシジルエーテル、p-アミノフェノールトリグリシジルエーテル、1,2,6-ヘキサントリオールトリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、グリセロールエトキシレートトリグリシジルエーテル、ヒマシ油トリグリシジルエーテル、プロポキシル化グリセリントリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、(3,4-エポキシシクロヘキサン)メチル3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレートおよびそれらの混合物からなる群から選択され得る。このようなポリエポキシドの使用は、得られる硬化コーティングの靭性および熱硬化性樹脂基材への接着を改善する。
【0052】
エポキシモノマーまたはオリゴマーの重合に特に適した実施形態では、重合を開始するための触媒(硬化剤と呼ばれることが多い)は、アミン、無水物、フェノールまたはチオールから選択される。
【0053】
本開示において、少なくとも2つのイソシアネート官能基を有するモノマーまたはオリゴマーと、少なくとも2つのアルコール官能基、チオール官能基またはエピチオ官能基を有するモノマーまたはオリゴマーとの混合物は、好適な重合性組成物である。
【0054】
少なくとも2つのイソシアネート官能基を有するモノマーまたはオリゴマーは、2,2’メチレンジフェニルジイソシアネート(2,2’MDI)、4,4’ジベンジルジイソシアネート(4,4’DBDI)、2,6トルエンジイソシアネート(2,6TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、4,4’メチレンジフェニルジイソシアネート(4,4’MDI)などの対称性芳香族ジイソシアネート、または2,4’メチレンジフェニルジイソシアネート(2,4’MDI)、2,4’ジベンジルジイソシアネート(2,4’DBDI)、2,4トルエンジイソシアネート(2,4TDI)などの非対称芳香族ジイソシアネート、またはイソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,5(もしくは2,6)-ビス(イソ-シアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]へプタン(NDI)もしくは4,4’-ジイソシアナト-メチレンジシクロヘキサン(H12MDI)などの脂環族ジイソシアネート、またはへキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ジイソシアネート、またはそれらの混合物から選択され得る。
【0055】
チオール官能基を有するモノマーまたはオリゴマーは、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトアセテート、4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオール、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、2,5-ビス[(2-メルカプトエチル)チオメチル]-1,4-ジチアン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンおよびそれらの混合物から選択され得る。
【0056】
エピチオ官能基を有するモノマーまたはオリゴマーは、ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィドおよびビス[4-(β-エピチオプロピルチオ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(β-エピチオプロピルオキシ)シクロへキシル]スルフィドから選択され得る。
【0057】
一実施形態では、ポリウレタン材料またはポリチオウレタン材料を生成する重合性組成物の組成は化学量論的組成であり、すなわち、モノマー上のイソシアネート官能基の数は、モノマー上のアルコール官能基、チオール官能基またはエピチオ官能基の数と実質的に等しく、その結果、完全な網目状のポリマーが得られる。
【0058】
ポリウレタン材料またはポリチオウレタン材料を生成する組成物に特に適した実施形態において、重合を開始するための触媒は有機スズ化合物であり、ジメチルスズクロリド、ジブチルスズクロリド、およびそれらの混合物から選択され得る。
【0059】
本開示では、通常ゾルゲルとして知られる材料を調製するために使用される化合物が好適である。モノマーまたはオリゴマーは、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、エポキシシラン、エポキシアルコキシシラン、およびこれらの混合物から選択され得る。これらのモノマーまたはオリゴマーは、重合性組成物を形成するために溶媒中で調製され得る。好適な溶媒は、水/アルコール混合物などの極性溶媒である。
【0060】
アルコキシシランは、化学式RSi(Z)4-pを有する化合物の中から選択され得、式中、R基は、同一または異なる基であり、炭素原子を介してケイ素原子に結合している1価の有機基を表し、Z基は、同一または異なる基であり、加水分解性基または水素原子を表し、pは0~2の範囲の整数である。好適なアルコキシシランは、テトラエトキシシランSi(OC(TEOS)、テトラメトキシシランSi(OCH(TMOS)、テトラ(n-プロポキシ)シラン、テトラ(i-プロポキシ)シラン、テトラ(n-ブトキシ)シラン、テトラ(sec-ブトキシ)シラン、またはテトラ(t-ブトキシ)シランからなる群から選択され得る。
【0061】
アルキルアルコキシシランは、化学式RSi(Z4-n-mを有する化合物の中から選択され得、式中、R基は、同一または異なる基であり、炭素原子を介してケイ素原子に結合している1価の有機基を表し、Y基は、同一または異なる基であり、炭素原子を介してケイ素原子に結合している1価の有機基を表し、Z基は、同一または異なる基であり、加水分解性基または水素原子を表し、mおよびnは、mが1または2に等しく、n+m=1または2となるよう整数である。
【0062】
エポキシアルコキシシランは、化学式RSi(Z4-n-mを有する化合物の中から選択され得、式中、R基は、同一または異なる基であり、炭素原子を介してケイ素原子に結合している1価の有機基を表し、Y基は、同一または異なる基であり、炭素原子を介してケイ素原子に結合しており、少なくとも1つのエポキシ官能基を含む1価の有機基を表し、Z基は、同一または異なる基であり、加水分解性基または水素原子を表し、mおよびnは、mが1または2に等しく、n+m=1または2となるよう整数である。
【0063】
好適なエポキシシランは、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリプロポキシシラン、α-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリプロポキシシラン、α-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、α-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、β-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランからなる群から選択され得る。
【0064】
ゾルゲル材料を生成する組成物に特に適した実施形態において、重合を開始するための触媒は、ルイス酸である。亜鉛、チタン、ジルコニウム、スズまたはマグネシウムなどの金属のカルボン酸塩、および、アルミニウムアセチルアセトナートAl(AcAc)が好適な触媒である。
【0065】
一実施形態では、アルコキシシランの量は、重合性組成物の理論乾燥抽出物に対して0~90重量%であり、アルキルアルコキシシランの量は、重合性組成物の理論乾燥抽出物に対して20~90%重量%であり、触媒の量は、重合性組成物の理論乾燥抽出物に対して0.1~5重量%である。
【0066】
組成物の理論乾燥抽出物とは、重合中に放出された全ての溶媒および揮発部分、例えば、アルキルシランの開裂可能なアルキル置換基が除去された組成物の重量を意味する。
【0067】
本発明に係るモノマーまたはオリゴマーの量は、重合性組成物の理論乾燥抽出物に対して、20~99重量%、具体的には50~99重量%、より具体的には80~98重量%、さらに具体的には90~97重量%であり得る。
【0068】
本開示に係る重合性組成物中の触媒の量は、0.5~5.0重量%であり得る。ラジカル、付加または縮合プロセスによって重合可能なメタクリルモノマーおよび他のモノマーについて、重合性組成物中の触媒の量は、組成物の理論乾燥抽出物に対して、具体的には0.25~2.5重量%、より具体的には0.5~2.0重量%であり得る。ゾルゲル重合性組成物について、重合性組成物中の触媒の量は、組成物の理論乾燥抽出物に対して、具体的には0.75~2.5重量%、より具体的には0.5~1.5重量%であり得る。
【0069】
半導電性ナノ粒子
本開示において、光フィルタリング層は、半導電性ナノ粒子を含む。
【0070】
材料は、様々な組成および構造を有し得る。鉱物材料の中には、導電性のもの、例えば金属がある。いくつかは、酸化ケイ素または酸化スズなどの電気絶縁性の材料である。本開示において特に興味深いのは、電子産業において周知の半導電性材料からなる材料である。半導電性材料は、巨視的サイズを有し得る。半導電性材料がナノメートルサイズを有する場合、それらの電子的特性および光学的特性は改変される。
【0071】
本開示では、半導電性ナノ粒子は、光フィルタリング層に特に興味深い光吸収特性をもたらす。特に、半導電性ナノ粒子の組成および構造を適切に選択することにより、(高エネルギーの)吸収光の範囲と(低エネルギーの)透過光の範囲との間で急峻な遷移を有する光吸収剤を設計することができる。半導電性ナノ粒子は、閾値λcut未満の波長を有する光を吸収し、この閾値は、420nm~450nmの範囲である。
組成
【0072】
一実施形態では、半導電性ナノ粒子は、以下の化学式の材料を含む。
EzA(I)
式中、Mは、Zn、Cd、Hg、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Fe、Ru、Os、Mn、Tc、Re、Cr、Mo、W、V、Nd、Ta、Ti、Zr、Hf、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Csまたはそれらの混合物からなる群から選択され、Qは、Zn、Cd、Hg、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Fe、Ru、Os、Mn、Tc、Re、Cr、Mo、W、V、Nd、Ta、Ti、Zr、Hf、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Csまたはそれらの混合物からなる群から選択され、Eは、O、S、Se、Te、C、N、P、As、Sb、F、Cl、Br、Iまたはそれらの混合物からなる群から選択され、Aは、O、S、Se、Te、C、N、P、As、Sb、F、Cl、Br、Iまたはそれらの混合物からなる群から選択される。x、y、zおよびwは独立した0~5の10進数であり、x、y、zおよびwは同時に0に等しくなく、xおよびyは同時に0に等しくなく、zおよびwは同時に0に等しくない場合がある。
【0073】
特に、半導電性ナノ粒子は、化学式MxEyの材料を含み得、式中、Mは、Zn、Cd、Hg、Cu、Ag、Al、Ga、In、Si、Ge、Pb、Sbまたはそれらの混合物であり、Eは、O、S、Se、Te、N、P、Asまたはそれらの混合物である。xおよびyは、独立した0~5の10進数であり、ただし、xおよびyは同時に0ではない。
【0074】
特定の実施形態では、半導電性ナノ粒子は、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、HgO、GeS、GeSe、GeTe、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、GeS、GeSe、SnS、SnSe、CuInS、CuInSe、AgInS、AgInSe、CuS、CuS、AgS、AgSe、AgTe、FeS、FeS、InP、Cd、Zn、CdO、ZnO、FeO、Fe、Fe、Al、TiO、MgO、MgS、MgSe、MgTe、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、TlN、TlP、TlAs、TlSb、MoS、PdS、Pd4S、WS、CsPbCl、PbBr、CsPbBr、CHNHPbI、CHNHPbCl、CHNHPbBr、CsPbI、FAPbBr(式中、FAはホルムアミジニウムを表す)、またはそれらの混合物からなる群から選択される材料を含む。
【0075】
形状
本開示において、半導電性ナノ粒子は、ナノ粒子内で生成された励起子の閉じ込めをもたらすナノメートルサイズを示すという条件であれば、異なる形状を有し得る。
【0076】
半導電性ナノ粒子は、3次元においてナノメートルサイズを有し得、3つの空間次元全てにおける励起子の閉じ込めを可能にする。そのようなナノ粒子は、例えば、図5に示すようなナノドット1としても知られるナノキューブまたはナノスフェアである。
【0077】
半導電性ナノ粒子は、2次元においてナノメートルサイズを有し得、第3の次元はより大きく、励起子は2つの空間次元に閉じ込められる。このようなナノ粒子は、例えばナノロッド、ナノワイヤまたはナノリングである。
【0078】
半導電性ナノ粒子は、1次元においてナノメートルサイズを有し得、他の次元はより大きく、励起子は1つの空間次元のみに閉じ込められる。このようなナノ粒子は、例えば、図5に示すようなナノプレート2、ナノシート、ナノリボンまたはナノディスクである。
【0079】
半導電性粒子の正確な形状は、閉じ込め特性を規定し、ひいては、半導電性粒子の組成、特にバンドギャップに依存する電子的特性および光学的特性を規定し、ひいてはλcutを規定する。1次元においてナノメートルサイズを有するナノ粒子、特にナノプレートは、他の形状を有するナノ粒子と比較して、より急峻な減少ゾーンを示すことも観察されている。実際に、ナノ粒子のナノメートルサイズが平均値付近で変動する場合、減少ゾーンの幅は拡大される。ナノメートルサイズが1次元のみで制御される場合、すなわちナノプレートの場合、厳密な数の原子層によって、厚さ変動はほとんどなく、吸収状態と非吸収状態との間の遷移が非常に急峻である。このことは、特に効果的な光フィルタをもたらす。さらに、半導電性粒子は、有機光吸収剤が分解される条件に耐えることができる鉱物材料である。
【0080】
構造
一実施形態では、半導電性ナノ粒子はホモ構造である。ホモ構造とは、ナノ粒子が均質であり、その体積全体において同じ局所組成を有することを意味する。
【0081】
代替形態では、半導電性ナノ粒子はヘテロ構造である。ヘテロ構造とは、ナノ粒子がいくつかのサブボリュームからなり、各サブボリュームが隣接するサブボリュームとは異なる組成を有することを意味する。特定の実施形態では、全てのサブボリュームは、異なるパラメータ、すなわち元素組成および化学量論性を有する、上記の開示されている化学式(I)で定義される組成を有する。
【0082】
ヘテロ構造の例は、図5に示すようなコア/シェルナノ粒子であり、コアは上記の開示されている任意の形状を有する、ナノスフェア11または44、ナノプレート33である。シェルは、コアを完全にまたは部分的に覆う層であり、ナノスフェア12、ナノプレート34または45である。コア/シェルヘテロ構造の特定の例は、コアおよびいくつかの連続するシェル(ナノスフェア12、13、ナノプレート34、35)を含む多層構造である。便宜上、これらの多層ヘテロ構造を以後コア/シェルと称する。コアおよびシェルは、同じ形状(例えば、球体12内の球体11)を有してもよく、または違う形状(例えば、プレート45内のドット44)を有してもよい。
【0083】
ヘテロ構造の別の例は、図5に示すようなコア/クラウンナノ粒子であり、コアは上記の開示されている任意の形状を有する。クラウン23は、コア22(ここではナノプレート)の周囲に配置された帯状の材料である。このヘテロ構造は、コアがナノプレートであり、クラウンがナノプレートの縁部に配置されている場合に特に有用である。
【0084】
図5は、一方のコアと他方のシェルまたはクラウンとの間の明確な境界を示している。ヘテロ構造はまた、組成がコアからシェル/クラウンまで連続的に変化する構造を取り囲み、すなわち、コアとシェル/クラウンとの間に正確な境界は存在しないが、コアの中心の特性は、シェル/クラウンの外側境界の特性とは異なる。
【0085】
有利な実施形態では、半導電性ナノ粒子は、500nm未満、特に300nm未満、理想的には200nm未満の最大寸法を有する。小さいサイズの半導電性ナノ粒子は、異なる屈折率を有する材料中に分散されたときに光散乱を誘発しない。
【0086】
以下の表1は、本開示における使用に適した様々な半導電性ナノ粒子を開示している。
【0087】
【表1】
【0088】
一実施形態では、半導電性ナノ粒子は有機化合物でキャップされている。キャップされるとは、有機化合物が半導電性ナノ粒子の表面上に吸着または吸収されることを意味する。キャッピング化合物は、いくつかの利点をもたらす。特に、キャッピング剤は、分散剤として挙動し、重合性組成物中または重合中の半導電性ナノ粒子の凝集を回避し得る。さらに、キャッピング剤は、ナノ粒子の境界条件を変更するので、半導電性ナノ粒子の光学的特性に影響を与え得る、すなわち、λcutは、キャッピング化合物の選択によってカットを調整され得る。
【0089】
好適なキャッピング化合物は、任意の種類の分子間相互作用によって半導電性ナノ粒子の表面に対して親和性を有する少なくとも1つの化学部分Mを含むリガンドである。
【0090】
特に、Mは、半導電性ナノ粒子の表面に存在する金属元素に対して親和性を有し得る。Mは、チオール、ジチオール、イミダゾール、カテコール、ピリジン、ピロール、チオフェン、チアゾール、ピラジン、カルボン酸もしくはカルボキシレート、ナフチリジン、ホスフィン、ホスフィンオキシド、フェノール、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アミンまたは芳香族アミンであり得る。
【0091】
あるいは、Mは、半導電性ナノ粒子の表面に存在するO、S、Se、Te、C、N、P、As、Sb、F、Cl、Br、Iの群から選択される非金属元素に対して親和性を有し得る。Mは、イミダゾール、ピリジン、ピロール、チアゾール、ピラジン、ナフチリジン、ホスフィン、ホスフィンオキシド、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アミンまたは芳香族アミンであり得る。
【0092】
リガンドは、同一または異なるいくつかの化学部分Mを含み得る。リガンドは、ポリマー主鎖に沿ったペンディング基またはポリマー主鎖中の反復基として、同一または異なる化学部分Mを有するポリマーであり得る。
【0093】
一実施形態では、半導電性ナノ粒子は、マトリックス内に封入され、カプセルを形成する。封入されるとは、封入材料が半導電性ナノ粒子の表面全体を覆うように、半導電性ナノ粒子が封入材料内に分散されることを意味する。すなわち、封入材料は、半導電性ナノ粒子の周囲にバリアを形成する。このようなバリアはいくつかの利点を有する。特に、半導電性ナノ粒子が化学物質(例えば、水分、酸化剤)から保護され得る。さらに、媒体中に分散可能でない半導電性ナノ粒子が前記媒体との相溶性が良好である材料中に封入され得、バリアは相溶化剤として挙動する。最後に、封入された半導電性ナノ粒子は、溶媒中の分散体の代わりに媒体中に分散可能な粉末の形態であり得、そのことにより現在のプロセスにおける取り扱いがより容易になる。
【0094】
封入材料は、有機、特に有機ポリマーであり得る。好適な有機ポリマーは、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィン、多糖類、ポリウレタン(もしくはポリカーバメート)、ポリスチレン、ポリアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリカーボネート、ポリ(スチレンアクリロニトリル)、ビニルポリマー(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾール)、ポリ(p-フェニレンオキシド)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンイミン、ポリフェニルスルホン、ポリ(アクリロニトリルスチレンアクリレート)、ポリエポキシド、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアリールエーテルケトン、ポリフラン、ポリイミド、ポリイミダゾール、ポリエーテルイミド、ポリケトン、ポリヌクレオチド、ポリスチレンスルホネート、ポリエーテルイミン、ポリアミド酸、またはそれらの任意の組み合わせおよび/もしくは誘導体および/もしくはコポリマーである。
【0095】
封入材料は、鉱物、特に鉱物酸化物または鉱物酸化物の混合物であり得る。好適な鉱物酸化物は、SiO、Al、TiO、ZrO、FeO、ZnO、MgO、SnO、Nb、CeO、BeO、IrO、CaO、Sc、NaO、BaO、KO、TeO、MnO、B、GeO、As、Ta、LiO、SrO、Y、HfO、MoO、Tc、ReO、Co、OsO、RhO、Rh、CdO、HgO、TlO、Ga、In、Bi、Sb、PoO、SeO、CsO、La、Pr11、Nd、La、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Gd、またはそれらの混合物である。好ましい鉱物封入材料は、SiO、AlおよびZnOである。特に、Znを含むナノ粒子は、SiOまたはZnOによって封入され得、Cdを含むナノ粒子は、SiO、Al3、またはSiOとAlの混合物によって封入され得る。
【0096】
有利な実施形態では、カプセルは、最大寸法が500nm未満、特に300nm未満、理想的には200nm未満のナノ粒子である。小さなサイズのカプセルは、異なる屈折率を有する材料中に分散された場合、光散乱を誘発しない。
【0097】
本開示に係るカプセル中の半導電性ナノ粒子の量は、カプセルの総重量に対して、1.0~90重量%、具体的には2.5~50重量%、より具体的には3.0~25重量%であり得る。
【0098】
本開示に係る重合性組成物中の半導電性ナノ粒子の量は、組成物の理論乾燥抽出物に対して、10ppm~1重量%、具体的には20ppm~0.5重量%、より具体的には25ppm~0.25重量%であり得る。本開示において、半導電性ナノ粒子をキャップするために使用される有機材料または半導電性ナノ粒子を封入するために使用される材料は、半導電性ナノ粒子の量に含まれない。明確にするために、70重量%の鉱物マトリックス中に埋め込まれた30重量%の半導電性ナノ粒子を含む凝集体を、組成物の理論乾燥抽出物に対して1重量%含む重合性組成物は、組成物の理論乾燥抽出物に対して0.3重量%の半導電性ナノ粒子を含む。
【0099】
一実施形態では、半導電性ナノ粒子は、重合性組成物中に均一に分散され、すなわち、各ナノ粒子は、その最も近い隣接ナノ粒子から、少なくとも5nm、好ましくは10nmm、より好ましくは20nm、さらにより好ましくは50nm、最も好ましくは100nm離れている。すなわち、半導電性ナノ粒子は重合性組成物中で凝集していない。有利には、粒子が遠く離れるほど、拡散は低下する。
【0100】
一実施形態では、重合性組成物中に含まれる半導電性ナノ粒子は、同じ化学式(I)、形状および構造を有する。
【0101】
別の実施形態では、重合性組成物中に含まれる半導電性ナノ粒子は、異なる化学式(I)および/または異なる形状および/または異なる構造を有する。この実施形態では、重合性組成物の吸光度は、ランベルト・ベールの法則によって教示されるように、各々の種類の半導電性ナノ粒子の吸光度の重ね合わせによって調整され得る。
【0102】
この実施形態では、吸光度曲線の減少ゾーンはより複雑であり得、図3.2に示すように、第1の減少、次いで中間のプラトー、次いで第2の減少を有する。したがって、2つの減少ゾーンD、Dが画定され得、各減少ゾーンは、100nm未満、好ましくは50nm未満、より好ましくは40nm未満、さらに好ましくは30nm未満の幅を有する。さらに、上記で定義されたAが依然として適用され、2つの連続的な減少に対応する。
【0103】
2つ以上の減少ゾーンが、2つの減少ゾーンを有する実施形態と同様に得られ、画定される場合がある。
【0104】
光フィルタリング層の吸光度は、半導電性ナノ粒子を含む5マイクロメートル厚のコーティング上で測定される。一実施形態では、吸光度は、350nmからλcutまでの範囲の各光波長に対して0.5より高く、好ましくは1より高く、より好ましくは1.5より高い。λcutは、可視範囲にあり、好ましくは420nm~480nmの範囲、好ましくは420nm~450nmの範囲にあり得る。
【0105】
一実施形態では、重合性組成物の吸光度または光フィルタリング層の吸光度は、
・350~480nmの範囲内の最高波長の極大吸光度であって、波長λmaxに対して吸光度値Amaxを有する極大吸光度、
・λmaxより大きい波長λ0.9に対する0.9Amaxの値、
・λ0.9より大きい波長λ0.5に対する0.5Amaxの値を有し、
この場合、|λ0.5-λ0.9|は15nm未満である。
【0106】
好ましい構成では、|λ0.5-λ0.9|は10nm未満、または5nm未満である。
【0107】
一実施形態では、前記光フィルタリング材料の吸光度は、波長λ0.1に対して0.1Amaxの値を有し、λ0.1はλ0.9より大きく、|λ0.1-λ0.9|は30nm未満、好ましくは20nmm未満、より好ましくは15nm未満である。
【0108】
添加剤
本開示の材料は、従来の割合で添加剤をさらに含み得る。これらの添加剤としては、酸化防止剤、UV光吸収剤、光安定剤、黄変防止剤、接着促進剤などの安定剤が挙げられる。これらの添加剤は、材料の透明度を低下させてはならず、また半導電性ナノ粒子の光学特性を劣化させてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0109】
図1】赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の3つの光源から定義されるガマットを有する色度空間CIE xyを示すグラフである。
図2】本明細書に開示されるディスプレイ装置の構造を示す図である。
図3】350nm~780nmの光の波長(均等目盛)の関数としての半導電性ナノ粒子を含む重合性組成物または材料の一般的な吸光度(対数目盛)であるA(λ)、およびλcutの決定の原理を示す図である。
図4】光フィルタリング層を有さない場合および光フィルタリング層を有する場合の赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の3つの光源から定義されるガマットを有する色度空間CIE xyを示すグラフである(青色光源はBからB’にシフトされる)。
図5】半導電性ナノ粒子の様々な形状(球体およびプレート)および構造(ホモ構造、コア/シェル、コア/クラウン、プレート内ドット)の概略図である。
図6】光波長(λ、単位nm)の関数としてのヘプタン中のナノ粒子NP1、NP2およびNP3の分散体の吸光度Aを示す図である。
図7】光波長(λ、単位nm)の関数としての光フィルタリング層L1、L2、L3の吸光度Aを示す図である。
図8】光フィルタリング層を有さない場合(L0)および光フィルタリング層L1、L2、L3を有する場合の光波長(λ、単位nm)の関数としての青色LEDによって放射された光の強度(I、任意単位)を示す図である。
図9】光フィルタリング層を有さない場合(L0)および光フィルタリング層L2を有する場合の光波長(λ、単位nm)の関数としてのディスプレイによって放出された白色光の強度(I、任意単位)を示す図である。
【実施例
【0110】
本発明を以下の実施例でさらに詳細に説明する。
【0111】
光フィルタ
ゾルゲルコーティング中にZnSeナノ粒子を分散させて光フィルタリング層を作成した。
【0112】
ZnSe半導電性ナノ粒子
7.1±0.2nmの直径の球体の形状を有する化学式ZnSeの半導電性ナノ粒子(以下NP1)を当業者に周知であり、New J.Chem(2007年、31、1843~1852)において報告されている手順に従って調製した。特定の精製工程には、アルキルアミンのような有機リガンドの存在下での選択的沈殿および再分散を加えた。20%未満の変動係数を有するZnSeナノスフェアの単分散集団を得た。
【0113】
同様の実験を行って、それぞれ7.4±0.2nmの直径を有するZnSeナノスフェア(NP2)および7.7±0.2nmの直径を有するZnSeナノスフェア(NP3)を合成した。同じ精製工程を用いて、20%未満の変動係数を有するZnSeナノスフェアの単分散集団を得た。
【0114】
ヘプタン中のナノ粒子NP1、NP2、NP3の吸光度曲線をUV~可視域における光波長の関数として測定したものを図6に示す(対数目盛)。
【0115】
これらのナノ粒子の特性を以下の表2に列挙する。
【0116】
【表2】
【0117】
ZnSe半導電性ナノ粒子を有する層
ZnSeナノスフェアNP1を含む分散体5mLを3-メルカプトプロピオン酸(MPA)5mLと混合した。この混合物を60℃で2時間加熱し、次いで無水エタノールおよびトルエンで3回洗浄した。MPAでキャップされたZnSeナノ粒子をpH=10の水中に再分散させた。これらのナノスフェアを、欧州特許第3630683号明細書に開示されている手順に従ってシリカシェル内に封入し、メタノール0.5mL中に再分散させた。この分散体D1は、2.5%のナノスフェアの重量含有率を有していた。半導電性ナノ粒子NP2、NP3を用いて同じ実験を再現して、それぞれ分散体D2、D3を調製した。
【0118】
さらに、100μLの(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、65μLのジエトキシジメチルシラン、および35μLの0.1M HClを含む別のバイアル中でゾルゲル溶液SGも調製した。溶液SGを室温で24時間撹拌した。
【0119】
50μLの分散体D1を200μLの溶液SGに添加して重合性組成物を得た後、400rpmで30秒間(分配行程)、次いで2000rpmで2分間(拡散行程)で、標準的なLCDディスプレイのガラス保護層上にスピンコーティングによって堆積させた。次いで、得られた層L1を150℃で6時間加熱して、硬化後に1%のZnSeナノスフェアの重量含有率を有する、濃縮された5μm厚のゾルゲルコーティングを得た。分散体D1、D3を用いて同じ実験を再現し、それぞれ層L2、L3を作成した。
【0120】
層L1、L2、L3の吸光度曲線を、UV可視域における光波長の関数として測定したものを図7に示す(対数目盛)。層L1、L2、L3の厚さは、λcutにおいて1に等しい吸光度を有するように調節した。
【0121】
光フィルタリング層を有するディスプレイ
ガラス保護層(55)の内側に塗布された層L1、L2、L3(6)を、図2に示す構成を有するディスプレイに配置した。
【0122】
このディスプレイでは、画像生成システムの光源は青色LEDを含む。図8は、光フィルタリング層を有さない場合(L0)および光フィルタリング層L1、L2、L3を有する場合の光波長(λ、単位nm)の関数としての青色LEDによって放射された光の強度(I、任意単位)を示す。
【0123】
青色LEDによって放射された高エネルギーの青色光は、層L1、L2、L3によって非常に効率的に除去される。実際に、放射された光は強度曲線の下方の面積に対応し、440nm未満の波長を有する光の量は劇的に減少する。
【0124】
以下の表3は、波長400~440nmの範囲(除去すべき光)および波長440~500nmの範囲(維持すべき光)について除去される光の量を示す。表3はさらに、最大発光波長(nm)を示す。λmax、λ0.9、λ0.5、λ0.1についての層L1、L2、L3の特性は、表2に列挙したナノ粒子の分散体の特性と同じである。すなわち、ゾルゲルコーティングへのナノ粒子の取り込みは、吸光度特徴を変化させなかった。
【0125】
【表3】
【0126】
層L2は、青色光の発光ピークをあまり変化させることなく高エネルギー青色光を除去するための良好な妥協策であり、特に、最大発光の波長はシフトせず、454nmのままであることが観察され得る。
【0127】
このディスプレイにおいて、蛍光材料は、青色LEDによって放射された青色光から緑色光および赤色光を生成するために使用される。図9は、光フィルタリング層を有さない場合(L0)および光フィルタリング層L2を有する場合の光波長(λ、単位nm)の関数としてのディスプレイによって放出された白色光の強度(I、任意単位)を示す。
【0128】
以下の表4は、CIE Luv色空間における、光フィルタリング層を有さない場合(L0)および光フィルタリング層L2を有する場合のこのディスプレイによって放出される赤色光、緑色光、青色光および白色光の座標を示す。フィルタを有さないディスプレイのガマットGが100に等しいとすると、フィルタを有するディスプレイのガマットGは95.1である。
【0129】
【表4】
【0130】
CIE xyY色空間において、フィルタを有さないディスプレイのガマットGが100に等しいとすると、フィルタを有するディスプレイのガマットGは97.4である。
【0131】
フィルタL2の場合、白色光の色がわずかに変化している。しかしながら、このようなディスプレイにおける白色光の色は、3つの光源(赤色、緑色および青色)の強度によって定義される。したがって、青色光源の強度を増して、CIE Luvにおける(0.33,0.33)の座標を有する白色光を復元することは簡単である。この調整はガマットに影響を及ぼさない。
【0132】
最後に、フィルタリング層L2は、ディスプレイによる高エネルギー青色光の放出が強く制限され、広範囲にわたって色を生成する能力が維持されるという非常に効率的な妥協策を実証している。
図1
図2
図3.1】
図3.2】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】