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特表2023-515735修飾されたアデノ随伴ウイルスベクターおよび中枢神経系へのその送達
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-14
(54)【発明の名称】修飾されたアデノ随伴ウイルスベクターおよび中枢神経系へのその送達
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/864 20060101AFI20230407BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230407BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230407BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230407BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230407BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20230407BHJP
   A61K 47/61 20170101ALI20230407BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20230407BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230407BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230407BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230407BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230407BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20230407BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20230407BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20230407BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230407BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230407BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230407BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20230407BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
A61K35/76
A61P25/00
A61P35/00
A61P9/00
A61K47/54
A61K47/61
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/28
A61P31/00
A61P37/02
A61P25/08
A61P21/02
A61P25/24
A61P27/02
A61P25/04
A61P29/00
A61P25/02 103
A61P21/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526840
(86)(22)【出願日】2020-11-06
(85)【翻訳文提出日】2022-07-07
(86)【国際出願番号】 EP2020081396
(87)【国際公開番号】W WO2021089856
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】19306450.8
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.プルロニック
3.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】522181566
【氏名又は名称】コエヴェ セラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ムリエ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ブロエカート,ウィレム
【テーマコード(参考)】
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB21
4C076BB40
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC10
4C076CC11
4C076CC32
4C076CC41
4C076DD67
4C076EE30
4C076EE59
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087MA56
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA02
4C087ZA06
4C087ZA08
4C087ZA12
4C087ZA15
4C087ZA16
4C087ZA23
4C087ZA24
4C087ZA33
4C087ZA36
4C087ZA94
4C087ZB07
4C087ZB11
4C087ZB21
4C087ZB26
4C087ZB32
4C087ZC54
(57)【要約】
本発明は、対象の中枢神経系(CNS)への細胞の形質導入に使用するため、およびCNS疾患の予防または処置に使用するための修飾されたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに関する。特に、本発明に係る修飾されたAAVベクターは、少なくとも1つの表面に結合した糖類を含み、CNSに直接投与されるが、脳室内に投与されない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中枢神経系(CNS)疾患の予防または処置に使用するための修飾されたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、少なくとも1つの表面に結合した糖類を含み、
CNSに直接投与され、
脳室内に投与されない、
修飾されたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター。
【請求項2】
前記CNS疾患が、CNS感染性疾患、CNS変性疾患、CNS自己免疫疾患、CNS腫瘍疾患、脳血管疾患、CNS損傷、またはCNS構造欠陥である、請求項1に記載の使用のための修飾されたAAVベクター。
【請求項3】
前記修飾されたAAVベクターが、線条体内、視床内、または大槽内に投与される、請求項1または2に記載の使用のための修飾されたAAVベクター。
【請求項4】
前記修飾されたAAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、およびAAV12;またはそれらのシュードタイプ、キメラ、およびバリアントから選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用のための修飾されたAAVベクター。
【請求項5】
AAV2ベクターである、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用のための修飾されたAAVベクター。
【請求項6】
前記表面に結合した糖類が、単糖類、オリゴ糖、および多糖類を含む群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用のための修飾されたAAVベクター。
【請求項7】
前記表面に結合した糖類が、ヘキソース、好ましくはマンノース、ガラクトース、またはN-アセチルグルコサミンである、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用のための修飾されたAAVベクター。
【請求項8】
前記表面に結合した糖類が、AAVベクターの少なくとも1つのカプシドタンパク質、好ましくはAAVベクターの少なくとも1つのカプシドタンパク質の少なくとも1つの表面に曝露したアミノ酸残基に共有結合している、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用のための修飾されたAAVベクター。
【請求項9】
前記表面に結合した糖類が、リンカーを介して共有結合している、請求項1~8のいずれか1項に記載の使用のための修飾されたAAVベクター。
【請求項10】
前記修飾されたAAVベクターが、少なくとも1つの導入遺伝子を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の使用のための修飾されたAAVベクター。
【請求項11】
前記少なくとも1つの導入遺伝子が、3R tau、4R tau、AARS、ABCD1、ACOX1、ADGRV1、ADRA2B、AGA、AGER、ALDH7A1、ALG13、ALS2、ANG、ANXA11、APP、ARHGEF9、ARSA、ARSB、ARV1、ASAH1、ASPA、ATN1、ATP10A、ATP13A2、ATXN1、ATXN2、ATXN3、BAX、BCL-2、BDNF、BICD2、C9orf72、CACNA1A、CACNA1H、CACNB4、CASR、CCNF、CDKL5、CERS1、CFAP410、CHCHD10、CHD2、CHMP2B、CHRNA2、CHRNA4、CHRNA7、CHRNB2、CLCN2a、CLN1、CLN2、CLN3、CLN5、CLN6、CLN8、CNTN2、CPA6、CSTB、CTNS、CTSA、CTSD、DAO、DCTN1、DEPDC5、DMD、DNAJB2、DNM1、DOCK7、DRD2、DYNC1H1、EEF1A2、EFHC1、EGLN1、EPHA4、EPM2A、ERBB4、FGF12、FIG4、FRRS1L、FTL、FUCA1、FUS、FXN、GAA、GABRA1、GABRB1、GABRB3、GABRD、GABRG2、GAL、GALC、GALNS、GBA、GFAP、GLA、GLB1、GLE1、GLT8D1、GNAO1、GNS、GOSR2、GPR98、GRIA1、GRIA2、GRIK1、GRIN1、GRIN2A、GRIN2B、GRIN2D、GSTM1、GUF1、GUSB、HCN1、HGSNAT、HNRNPA1、HTT、HYAL1、IDS、IDUA、IGHMBP2、IL-1、IT15、ITPA、JPH3、KCNA2、KCNB1、KCNC1、KCNMA1、KCNQ2、KCNQ3、KCNT1、KCTD7、LAL、LAMP2、LGI1、LMNB2、LRRK2、MAN2B1、MAN2B2、MAN2C1、MANBA、MATR3、MBD5、MFSD8、NAGA、NAGLU、NECAP1、NEFH、NEK1、NEU1、NHLRC1、NPC1、NPC2、NR4A2、NTRK2、OCA2、OPTN、PARK2、PARK7、PCDH19、PEX1、PEX2、PEX3、PEX5、PEX6、PEX10、PEX11B、PEX12、PEX13、PEX14、PEX16、PEX19、PEX26、PFN1、PINK1、PLCB1、PNPO、PON1、PON2、PON3、PPARGC1A、PRDM8、PRICKLE1、PRKN、PRNP、PRPH、PRRT2、PSAP、S106β、SCARB2、SCN1A、SCN1B、SCN2A、SCN8A、SCN9A、SCN9Ab、SETX、SGSH、SIGMAR1、SIK1、SKP1、SLC1A1、SLC1A2、SLC2A1、SLC6A1、SLC9A6、SLC12A5、SLC13A5、SLC25A12、SLC25A22、SLCA17A5、SMN1、SMPD1、SNCA、SNRPN、SOD1、SPG11、SPTAN1、SQSTM1、ST3GAL3、ST3GAL5、STX1B、STXBP1、SYP、SYT1、SZT2、TAF15、TARDBP、TBC1D24、TBCE、TBK1、TBP、TITF-1、TREM2、UBA5、UBE1、UBE3A、UBQLN2、UCH-L1、UNC13A、VAPB、VCP、VPS35、WWOX、およびXBP1を含む群から選択される遺伝子由来のcDNAまたはそのフラグメントを含む、請求項10に記載の使用のための修飾されたAAVベクター。
【請求項12】
前記CNS疾患が、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化萎縮症、Lewis body認知症(LBD)、進行性核上性麻痺、前頭側頭型認知症、およびアンジェルマン症候群を含む群から選択される、請求項2~11のいずれか1項に記載の使用のための修飾されたAAVベクター。
【請求項13】
前記導入遺伝子が、CAGプロモーターの制御下にある、請求項10~12のいずれか1項に記載の使用のための修飾されたAAVベクター。
【請求項14】
対象の中枢神経系(CNS)の細胞に形質導入するための方法であって、修飾されたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを前記対象に投与するステップを含み、
前記修飾されたAAVベクターが、少なくとも1つの表面に結合した糖類を含み、
前記修飾されたAAVベクターは、CNSに直接投与され、
前記修飾されたAAVベクターは、脳室内に投与されない、
方法。
【請求項15】
少なくとも1つの導入遺伝子を含む修飾されたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、前記修飾されたAAVが、少なくとも1つの表面に結合した糖類を含み、前記導入遺伝子が、3R tau、4R tau、AARS、ABCD1、ACOX1、ADGRV1、ADRA2B、AGA、AGER、ALDH7A1、ALG13、ALS2、ANG、ANXA11、APP、ARHGEF9、ARSA、ARSB、ARV1、ASAH1、ASPA、ATN1、ATP10A、ATP13A2、ATXN1、ATXN2、ATXN3、BAX、BCL-2、BDNF、BICD2、C9orf72、CACNA1A、CACNA1H、CACNB4、CASR、CCNF、CDKL5、CERS1、CFAP410、CHCHD10、CHD2、CHMP2B、CHRNA2、CHRNA4、CHRNA7、CHRNB2、CLCN2a、CLN1、CLN2、CLN3、CLN5、CLN6、CLN8、CNTN2、CPA6、CSTB、CTNS、CTSA、CTSD、DAO、DCTN1、DEPDC5、DMD、DNAJB2、DNM1、DOCK7、DRD2、DYNC1H1、EEF1A2、EFHC1、EGLN1、EPHA4、EPM2A、ERBB4、FGF12、FIG4、FRRS1L、FTL、FUCA1、FUS、FXN、GAA、GABRA1、GABRB1、GABRB3、GABRD、GABRG2、GAL、GALC、GALNS、GBA、GFAP、GLA、GLB1、GLE1、GLT8D1、GNAO1、GNS、GOSR2、GPR98、GRIA1、GRIA2、GRIK1、GRIN1、GRIN2A、GRIN2B、GRIN2D、GSTM1、GUF1、GUSB、HCN1、HGSNAT、HNRNPA1、HTT、HYAL1、IDS、IDUA、IGHMBP2、IL-1、IT15、ITPA、JPH3、KCNA2、KCNB1、KCNC1、KCNMA1、KCNQ2、KCNQ3、KCNT1、KCTD7、LAL、LAMP2、LGI1、LMNB2、LRRK2、MAN2B1、MAN2B2、MAN2C1、MANBA、MATR3、MBD5、MFSD8、NAGA、NAGLU、NECAP1、NEFH、NEK1、NEU1、NHLRC1、NPC1、NPC2、NR4A2、NTRK2、OCA2、OPTN、PARK2、PARK7、PCDH19、PEX1、PEX2、PEX3、PEX5、PEX6、PEX10、PEX11B、PEX12、PEX13、PEX14、PEX16、PEX19、PEX26、PFN1、PINK1、PLCB1、PNPO、PON1、PON2、PON3、PPARGC1A、PRDM8、PRICKLE1、PRKN、PRNP、PRPH、PRRT2、PSAP、S106β、SCARB2、SCN1A、SCN1B、SCN2A、SCN8A、SCN9A、SCN9Ab、SETX、SGSH、SIGMAR1、SIK1、SKP1、SLC1A1、SLC1A2、SLC2A1、SLC6A1、SLC9A6、SLC12A5、SLC13A5、SLC25A12、SLC25A22、SLCA17A5、SMN1、SMPD1、SNCA、SNRPN、SOD1、SPG11、SPTAN1、SQSTM1、ST3GAL3、ST3GAL5、STX1B、STXBP1、SYP、SYT1、SZT2、TAF15、TARDBP、TBC1D24、TBCE、TBK1、TBP、TITF-1、TREM2、UBA5、UBE1、UBE3A、UBQLN2、UCH-L1、UNC13A、VAPB、VCP、VPS35、WWOX、およびXBPを含む群から選択される遺伝子由来のcDNAまたはそのフラグメントを含み、好ましくはプロモーターの制御下にある、修飾されたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター。
【請求項16】
対象の中枢神経系(CNS)の細胞への形質導入、および/または
対象の中枢神経系(CNS)への導入遺伝子の送達、および/または
対象の中枢神経系(CNS)疾患の予防および/または処置
に適したキットまたはキットオブパーツであって、
前記キットは、
(a)請求項15に記載の修飾されたAAVベクターと、
(b)前記修飾されたAAVベクターのCNS送達のための装置と、
(c)任意選択で、前記修飾されたAAVベクターのCNS送達のための説明書と
を含む、
キットまたはキットオブパーツ。
【請求項17】
CNS疾患を処置する方法であって、
少なくとも1つの表面にコンジュゲートされた糖を含む点で修飾されたAAVベクターであるAAVベクターを、脳室内注射以外により、CNS部位に直接投与するステップを含む、方法。
【請求項18】
AAVベクターをCNSに投与する方法における、
少なくとも1つの表面にコンジュゲートされた糖を含む点で修飾されたAAVベクターであるAAVベクターを投与するステップと、
脳室内注射以外により修飾されたAAVベクターを投与するステップと
を含む改善。
【請求項19】
導入遺伝子をCNSに送達する方法における、
少なくとも1つの表面にコンジュゲートされた糖を含む点で修飾されたAAVベクターであるAAVベクターに導入遺伝子を含めるステップと、
脳室内注射以外により修飾されたAAVベクターを投与するステップと
を含む改善。
【請求項20】
前記投与するステップが、CNS部位に直接投与するステップを含む、請求項18または19に記載の改善。
【請求項21】
前記投与するステップが、CNS部位に注射するステップを含む、請求項17に記載の方法または請求項20に記載の改善。
【請求項22】
前記投与するステップが、1つのCNS部位のみに直接投与するステップを含む、請求項21に記載の方法または改善。
【請求項23】
前記投与するステップが、単回注射により投与するステップを含む、請求項21または22に記載の方法または改善。
【請求項24】
前記糖が、リンカーを介して前記表面にコンジュゲートされている、請求項17に記載の方法または請求項18もしくは19に記載の改善。
【請求項25】
前記投与するステップが、ヒト対象へ投与するステップを含む、請求項17~24のいずれか1項に記載の方法または改善。
【請求項26】
前記投与するステップが、CNS感染性疾患、CNS変性疾患、CNS自己免疫疾患、CNS腫瘍疾患、脳血管疾患、CNS損傷、CNS構造欠陥、およびそれらの組み合わせから選択されるCNS疾患を罹患している対象に投与するステップを含む、請求項17~25のいずれか1項に記載の方法または改善。
【請求項27】
前記投与するステップが、酸性リパーゼ疾患、酸性マルターゼ欠乏症、酸蓄積症、後天性てんかん様失語症、急性散在性脳脊髄炎、注意欠陥多動障害(ADHD)、アディー瞳孔、アディー症候群、副腎白質ジストロフィー、失認、アイカルディ症候群、エカルディ‐グティエール症候群障害、アレキサンダー病、アルパース病、交代性片麻痺、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、無脳症、動脈瘤、アンジェルマン症候群、血管腫症、無酸素症、抗リン脂質抗体症候群、失語症、失行症、くも膜炎、アーノルド・キアリ奇形、芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素欠損症(AADC欠損症)、アスパルチルグルコサミン尿症、アスペルガー症候群、運動失調、毛細血管拡張性運動失調症(Louis-Bar症候群)、小脳変性症運動失調および小脳変性症または脊髄小脳変性症、注意欠陥多動障害、自閉症、自律神経障害、バース症候群、バッテン病、Becker病の筋強直、ベーチェット病、ベル麻痺、Bernhardt-Roth症候群、ビンスワンガー病、ブロッホ・ズルツベルガー症候群、Bradbury-Eggleston症候群、ブラウン・セカール症候群、球脊髄性筋萎縮症、CADASIL、カナバン病、カウザルギー、海面状血管腫(cavernomas、cavernous angioma)、中央頸髄症候群、脊髄中心症候群、橋中心髄鞘崩壊症、セラミダーゼ欠乏症、小脳変性症、小脳低形成、脳性脚気、脳性巨人症、脳性麻痺、脳・眼・顔・骨格症候群(COFS)、コレステロールエステル蓄積症、舞踏病、有棘赤血球舞踏病、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、慢性起立性調節障害、慢性疼痛、コケイン症候群II型、コフィン・ローリー症候群、脳梁欠損、先天性筋無力症、大脳皮質基底核変性症、頭部動脈炎、クリー脳炎、クロイツフェルト・ヤコブ病、クッシング症候群、シスチン症、巨大細胞性封入体症(cytomegalic inclusion body disease:CIBD)、ダンシングアイズ・ダンシングフィート症候群(dancing eyes-dancing feet syndrome)、ダンディ・ウォーカー症候群、ダノン病、Dawson病、ドモルシア(De Morsier)症候群、Dejerine-Klumpke麻痺、認知症、小脳歯状核失調、歯状核赤核萎縮症、皮膚筋炎、発達性統合運動障害、Devic症候群、びまん性硬化症、自律神経障害、書字障害、失読症、嚥下障害、統合運動障害、ミオクローヌス性小脳性共同運動障害、進行性小脳性共同運動障害、てんかん(アーミッシュ小児てんかん症候群[AIES]、良性家族性乳児けいれん[BFIS]、良性家族性新生児けいれん[BFNS]、小児欠神てんかん[CAE]、小児期発症てんかん性脳症[COEE]、ドラベ症候群[DS]、早期乳児てんかん性脳症[EIEE]、家族性成人型ミオクローヌスてんかん[FAME]、家族性熱性けいれん[FFS]、多様な焦点を示す家族性焦点てんかん[FFEVF]、家族性乳児型ミオクローヌスてんかん[FIME]、家族性側頭葉てんかん[FTLE]、精神遅滞を伴うまたは伴わない焦点性てんかんおよび発話障害[FESD]、全般てんかんおよび発作性ジスキネジア[GEPD]、全般てんかん熱性けいれんプラス[GEFS+]、特発性全般てんかん[IGE]、若年性欠神てんかん[JAE]、若年性ミオクローヌスてんかん[JME]、ミオクローヌス-弛緩性てんかん[MAE]、夜間前頭葉てんかん[NFLE]、進行性ミオクローヌスてんかん[PME]、ピリドキサミン5’-リン酸シンターゼ欠乏症[PNPOD]、ピリドキシン-依存性てんかん[EPD]、および乳児重症ミオクローヌスてんかん[SMEI]を含む)、ファブリー病、ファール病、家族性自律神経障害、家族性血管腫、家族性突発性大脳基底核石灰化、家族性周期性麻痺、家族性痙性麻痺、ファーバー(Farber)病、線維筋性異形成、フィッシャー症候群、floppy infant症候群、フリードライヒ運動失調症、前頭側頭型認知症、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、ゴーシェ病、全般性ガングリオシドーシス、ゲルストマン症候群、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、巨大軸索ニューロパチー、巨細胞性動脈炎、巨細胞性封入体病、グロボイド細胞白質ジストロフィー、舌咽神経痛、糖原病、GM1ガングリオシドーシス、GM2ガングリオシドーシス(テイ・サックス病)、ギラン・バレー症候群、ハラーホルデン・スパッツ症候群、持続性片側頭痛、交代性片麻痺(hemiplegia alterans)、遺伝性痙性対麻痺、多発神経炎型遺伝性失調症、Holmes-Adie症候群、全前脳症、Hughes症候群、Huntington病、水無脳症、水脊髄症、副腎皮質ホルモン過剰症、免疫介在性脳脊髄炎、封入体筋炎、色素失調症、乳児筋緊張低下、乳児神経軸索ジストロフィー、後頭孔脳脱出症、Isaac症候群、ジュベール症候群、Kearns-Sayre症候群(Keams-Sayre syndrome)、Kennedy病、Kinsbourne症候群、クライン・レビン症候群、クリッペル・ファイル症候群、Klippel-Trenaunay症候群(KTS)、クリューバー・ビューシー症候群、コルサコフ(Korsakoff)健紡症候群、クラッベ病、クーゲルベルク・ヴェランダー病、ランバート・イートン筋無力症症候群、Landau-Kleffner症候群、外側大腿皮神経絞扼(lateral femoral cutaneous nerve entrapment)、髄質延髄外側症候群、リー症候群、レノックス・ガストー症候群、レッシュ・ナイハン症候群、Levine-Critchley症候群、レビー小体認知症、リポイドタンパク症、脳回欠損、閉じ込め症候群、ルー・ゲーリック病、ループス、ライム病、マシャド・ジョセフ病、大脳症、α-マンノシドーシス、β-マンノシドーシス、メルカーソン・ローゼンタール症候群、メンケス病、異常感覚性大腿痛、異染性白質ジストロフィー、小頭症、ミラー・フィッシャー症候群、メビウス症候群、ムコ多糖症I-H型(ハーラー症候群)、ムコ多糖症I-H/S型(Hurler-Scheie症候群)、ムコ多糖症IS型(Scheie症候群)、ムコ多糖症II型(Hunter症候群)、ムコ多糖症III-A型(サンフィリポ症候群A)、ムコ多糖症III-B型(サンフィリポ症候群B)、ムコ多糖症III-C型(サンフィリポ症候群C)、ムコ多糖症III-D型(サンフィリポ症候群D)、ムコ多糖症IV-B型(モルキオ症候群B)、ムコ多糖症VI型(マロトー・ラミー症候群)、ムコ多糖症VII型(スライ症候群)、ムコ多糖症IX型(Natowicz症候群)、多発性硬化症、筋ジストロフィー、重症筋無力症、アルパーズ症候群(Myelinoclastic Diffuse Sclerosis)、ナルコレプシー、神経有棘赤血球症、神経線維腫症、悪性症候群、神経サルコイドーシス、ニーマン・ピック病、大田原症候群、オリーブ橋小脳萎縮症、眼球クローヌス・ミオクローヌス、O’Sullivan-McLeod症候群、パントテン酸キナーゼ関連神経変性症、腫瘍随伴症候群、錯感覚、パーキンソン病、発作性舞踏病アテトーゼ、発作性片側頭痛、Parry-Romberg症候群、ペリツェウス・メルツバッハ病、Pena-Shokeir症候群II型、脳室周囲白質軟化症、フィタン酸蓄積症、ピック病、梨状筋症候群、多発性筋炎、ポンペ病、ポリオ後症候群、PCA(posterior cortical atrophy)、原発性歯状核萎縮症(Primary Dentatum Atrophy)、原発性側索硬化症、原発性進行性失語症、プリオン病、進行性片側顔面萎縮症、進行性歩行運動失調、進行性多発性白質脳症、進行性硬化性灰白異栄養症、進行性核上性麻痺、顔貌失認、ラムゼイ・ハント症候群I、ラムゼイ・ハント症候群II、ラスムッセン脳炎、レフサム病、レット症候群、Reye症候群、ライリー・デイ症候群、サンドホフ病、シルダー病、Seitelberger病、シャイ・ドレーガー症候群、シェーグレン症候群、痙縮、二分脊椎、脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳失調症、脊髄小脳萎縮症、脊髄小脳変性症、スティール・リチャードソン・オルゼウスキー症候群、線条体黒質変性症、スタージ・ウェーバー症候群、遅発性ジスキネジア、タウオパチー、テイ・サックス病、胸郭出口症候群、甲状腺中毒性ミオパチー、三叉神経痛、トッド麻痺、三叉神経痛、熱帯性痙性不全対麻痺症、トロイアー症候群、血管性認知症、フォン‐エコーノモ病、フォンヒッペル・リンダウ病(VHL)、フォンレックリングハウゼン病、ワレンベルグ症候群、ウェルドニッヒ・ホフマン病、ウェルニッケ・コルサコフ症候群、ウエスト症候群、ウィップル病、ウィリアムズ症候群、ウィルソン病、ウォルマン病、X連鎖球脊髄性筋萎縮症、およびツェルウェーガー症候群を含む群から選択されるCNS疾患を罹患している対象に投与するステップを含む、請求項17~26のいずれか1項に記載の方法または改善。
【請求項28】
AAVが、導入遺伝子を含む、請求項17~26のいずれか1項に記載の方法または改善。
【請求項29】
前記導入遺伝子が、3R tau、4R tau、AARS、ABCD1、ACOX1、ADGRV1、ADRA2B、AGA、AGER、ALDH7A1、ALG13、ALS2、ANG、ANXA11、APP、ARHGEF9、ARSA、ARSB、ARV1、ASAH1、ASPA、ATN1、ATP10A、ATP13A2、ATXN1、ATXN2、ATXN3、BAX、BCL-2、BDNF、BICD2、C9orf72、CACNA1A、CACNA1H、CACNB4、CASR、CCNF、CDKL5、CERS1、CFAP410、CHCHD10、CHD2、CHMP2B、CHRNA2、CHRNA4、CHRNA7、CHRNB2、CLCN2a、CLN1、CLN2、CLN3、CLN5、CLN6、CLN8、CNTN2、CPA6、CSTB、CTNS、CTSA、CTSD、DAO、DCTN1、DEPDC5、DMD、DNAJB2、DNM1、DOCK7、DRD2、DYNC1H1、EEF1A2、EFHC1、EGLN1、EPHA4、EPM2A、ERBB4、FGF12、FIG4、FRRS1L、FTL、FUCA1、FUS、FXN、GAA、GABRA1、GABRB1、GABRB3、GABRD、GABRG2、GAL、GALC、GALNS、GBA、GFAP、GLA、GLB1、GLE1、GLT8D1、GNAO1、GNS、GOSR2、GPR98、GRIA1、GRIA2、GRIK1、GRIN1、GRIN2A、GRIN2B、GRIN2D、GSTM1、GUF1、GUSB、HCN1、HGSNAT、HNRNPA1、HTT、HYAL1、IDS、IDUA、IGHMBP2、IL-1、IT15、ITPA、JPH3、KCNA2、KCNB1、KCNC1、KCNMA1、KCNQ2、KCNQ3、KCNT1、KCTD7、LAL、LAMP2、LGI1、LMNB2、LRRK2、MAN2B1、MAN2B2、MAN2C1、MANBA、MATR3、MBD5、MFSD8、NAGA、NAGLU、NECAP1、NEFH、NEK1、NEU1、NHLRC1、NPC1、NPC2、NR4A2、NTRK2、OCA2、OPTN、PARK2、PARK7、PCDH19、PEX1、PEX2、PEX3、PEX5、PEX6、PEX10、PEX11B、PEX12、PEX13、PEX14、PEX16、PEX19、PEX26、PFN1、PINK1、PLCB1、PNPO、PON1、PON2、PON3、PPARGC1A、PRDM8、PRICKLE1、PRKN、PRNP、PRPH、PRRT2、PSAP、S106β、SCARB2、SCN1A、SCN1B、SCN2A、SCN8A、SCN9A、SCN9Ab、SETX、SGSH、SIGMAR1、SIK1、SKP1、SLC1A1、SLC1A2、SLC2A1、SLC6A1、SLC9A6、SLC12A5、SLC13A5、SLC25A12、SLC25A22、SLCA17A5、SMN1、SMPD1、SNCA、SNRPN、SOD1、SPG11、SPTAN1、SQSTM1、ST3GAL3、ST3GAL5、STX1B、STXBP1、SYP、SYT1、SZT2、TAF15、TARDBP、TBC1D24、TBCE、TBK1、TBP、TITF-1、TREM2、UBA5、UBE1、UBE3A、UBQLN2、UCH-L1、UNC13A、VAPB、VCP、VPS35、WWOX、およびXBP1を含む群から選択される遺伝子由来のcDNAまたはそのフラグメントを含む、請求項28に記載の方法または改善。
【請求項30】
前記CNS部位が、線条体である、請求項17または20~29のいずれか1項に記載の方法または改善。
【請求項31】
前記CNS部位が、視床である、請求項17または20~29のいずれか1項に記載の方法または改善。
【請求項32】
前記CNS部位が、大槽である、請求項17または20~29のいずれか1項に記載の方法または改善。
【請求項33】
前記CNS部位が、線条体、視床、大槽、またはそれらの組み合わせである、請求項17または20~29のいずれか1項に記載の方法または改善。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象の中枢神経系(CNS)の細胞への形質導入に使用するための、およびCNS疾患の予防または処置に使用するための、修飾されたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに関する。特に、本発明に係る修飾されたAAVベクターは、少なくとも1つの表面に結合した糖類を含み、CNSに直接投与されるが、脳室内に投与されない。
【背景技術】
【0002】
中枢神経系(CNS)に影響を与える疾患は、特に低い血液脳関門の浸透能および高いオフターゲット効果のため、従来の薬物で処置することが特に困難であった。
【0003】
遺伝子療法の出現は、後期患者の進行疾患を遅延または停止させ、かつ早期の無症状の個体の臨床症状の出現を予防する形質転換による治療に関して将来性を提供する(Lykken et al., 2018. J Neurodev Disord. 10(1):16)。
【0004】
レンチウイルスベクターおよび統合されていないアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを含む複数のベクターが現在入手可能である。過去数十年にわたり、AAVは、目的の導入遺伝子を、特にCNS組織を含む様々な組織へ単回投与にて送達する上で、確実であり、効率的であり、多用途であり、かつ安全なツールであることが証明されている。
【0005】
CNSを対象とする遺伝子療法の研究は、主に4つのAAV血清型:AAV2, AAV5, AAV8 and AAV9に焦点を当てている(Burger et al., 2004. Mol Ther. 10(2):302-17;Cearley & Wolfe, 2006. Mol Ther. 13(3):528-37; Taymans et al., 2007. Hum Gene Ther. 18(3):195-206; Cearley et al., 2008. Mol Ther. 16(10):1710-8; Foust et al., 2009. Nat Biotechnol. 27(1):59-65; Aschauer et al., 2013. PLoS One. 8(9):e76310;Watakabe et al., 2015. Neurosci Res. 93:144-57)。
【0006】
一般的にAAV9以外の全てのAAVの血清型は血液脳関門を通らず、よってCNCの標的細胞へ到達するために血管系を介して非侵襲的に投与できないため、CNSを対象とするAAV送達は、通常、脳および/または脊髄へ局所的に行われている。(Miyake et al., 2011. Brain Res.1389:19-26)。特にAAV9は、脳内またはくも膜下腔内投与後のCNSのニューロンおよびアストロサイトの形質導入に最も効率的であることが示されている(Cearley & Wolfe, 2006. Mol Ther. 13(3):528-37; Gray et al., 2013. Gene Ther. 20(4):450-9)。さらに、特にはCNS全体に散乱される細胞に関与する疾患に対処するために、より広い形質導入特性を有するAAVベクターが、依然として必要とされている。
【0007】
送達部位からのAAV拡散の限定を補うため、およびより広域の組織範囲を提供するために、CNSの複数の部位への注射が行われている。しかしながら、前臨床動物モデルに対してはこのような戦略の適用は成功し得る場合であっても(Vite et al., 2005. Ann Neurol. 57(3):355-64;)、ヒトへの転換は、このような侵襲的な手法のスケールアップにより阻まれている。これに関連して、CNSにおける単回または非常に少ない局所的な投与ポイントから幅広い形質導入を達成できるAAVベクターが、好適である。
【0008】
AAVベクターを使用する血管内送達は、CNSにおいて非侵襲的な幅広い形質導入を達成するための別の手法として提案されている(Bevan et al., 2011. Mol Ther. 19(11):1971-80)。しかしながら、この投与経路は、マウスにおいては非常に有効ではあるが、より大きな動物のCNSでの形質導入は、より著しく限定されている(Gray et al., 2011. Mol Ther. 19(6):1058-69; Samaranch et al., 2012. Hum Gene Ther. 23(4):382-9)。この手法は、脳で形質導入を達成するために必要とされるかなり大量の用量および結果得られる末梢臓器の高いオフターゲットの形質導入により、さらに限定される(Bevan et al., 2011. Mol Ther. 19(11):1971-80; Gray et al., 2011. Mol Ther. 19(6):1058-69)。最後に、中和抗体がウイルス粒子をCNSに達し得る前に系の外側へ除去することが示されているため、野生型ウイルスへの早期の曝露によるAAV9に対する既存の免疫は、43%ものヒトの成年で血管内経路の使用を妨げている(Boutin et al., 2010. Hum Gene Ther. 21(6):704-12; Fu et al., 2017. Hum Gene Ther Clin Dev. 28:187-96)。
【0009】
全体的にみて、AAVへの免疫応答は、投与様式に関わらず、依然として治療効果に対し解決されていない課題である。適応免疫応答および自然細胞性免疫応答は、CNSなどの免疫特権を有する臓器であっても、AAVの形質導入の効率を妨げ得る(MacPhee et al. 2006. J Gene Med. 8:577-88; Samaranch et al. 2014. Mol Ther. 22(2):329-37)。よって、CNSにおいて細胞に特異的かつ広範囲の形質導入を確保しつつ、免疫検出を回避できるAAVベクターが、著しく望まれている。
【0010】
長年にわたる試みは、免疫系を回避するためならびにAAV細胞の形質導入および導入遺伝子の発現特性を高めるためにそれらのカプシドまたはそれらの発現カセットの修飾を介したAAVの改善に焦点を当てている。
【0011】
カプシドを修飾したAAVベクターの開発に関する現在の戦略は、3つの異なる手法:(i)AAVベクターのトロピズムを再度方向付けるための細胞受容体へのAAVカプシドの結合の知識に特に基づく合理的な設計手法(Rabinowitz et al., 1999. Virology. 265(2):274-85; Girod et al., 1999. Nat Med. 5(12):1438; Asokan et al., 2010. Nat Biotechnol. 28(1):79-82; Shen et al., 2013. J Biol Chem. 288(40):28814-23; Albright et al., 2017. Mol Ther. 26(2):510-523;Tse et al., 2017. Proc Natl Acad Sci U S A. 114(24):E4812-E4821);(ii)ランダム変異誘発、カプシドのシャッフリング、およびランダムペプチド挿入に基づく、指向性進化の手法(Schaffer & Maheshri, 2004. Conf Proc IEEE Eng Med Biol Soc. 5:3520-3; Koerber et al., 2006. Nat Protoc. 1(2):701-6; Maheshri et al., 2006. Nat Biotechnol. 24(2):198-204; Perabo et al., 2008. Comb Chem High Throughput Screen. 11(2):118-26; Kwon & Schaffer, 2008. Pharm Res. 25(3):489-99; Gray et al., 2010. Mol Ther. 18(3):570-8; Bartel et al., 2012. Gene Ther. 19(6):694-700; Marsic & Zolotukhin, 2016. Methods Mol Biol. 1382:151-73);および(iii)AAVの表面への化学基の係留に基づく化学的なカプシド修飾の手法(Lee et al., 2005. Biotechnol Bioeng. 92:24-34; Maguire et al., 2012. Mol Ther. 20:960-71; Hurdy et al., 2016. Gene Ther. 23:380-92; Katrekar et al., 2018. Sci Rep. 8)に基づく。
【0012】
発現カセットが標的細胞において一度遺伝子発現を促進および加速させるように修飾されている自己相補的なAAV(scAAV)は、CNSのscAAV9で例証されているように、様々な組織において導入遺伝子発現のより速い開始およびより高いレベルを駆動することが示されている(Foust et al., 2008. Nat. Biotechnol. 27:56-65; Gray et al., 2011. Mol Ther. 19(6):1058-69)。しかしながら、従来の一本鎖AAVを超えるこれらベクターのパッケージング能の低下(2.1kbvs4.6kb)は、CNSの徴候の処置に関するこれらの有用性を限定している。
【0013】
国際特許公開公報第2017212019号は、特定の細胞種へのウイルス介在遺伝子の導入が改善した、特定の表面が修飾されたAAV由来のベクターを記載している。国際特許公開公報第2017212019号は、これらの表面が修飾されたAAVベクターのCNS送達を具体的に対処していない。
【0014】
ここで、驚くべきことに、本発明者らは、表面に結合した糖類を含むAAVベクターが、CNSに細胞を形質導入し得ることを示した。興味深いことに、本発明者らは、CNS細胞の形質導入は、AAVカプシドの修飾にのみ基づくのではなく、投与経路にも依存することを示した。
【0015】
これら2つの基準を組み合わせることで、本発明者らは、これら修飾したAAVベクターのCNSへ直接的な脳室内注射ではない単回注射を用いて、広範囲の脳の半球の形質導入を示すことができた。よって、特に本開示は、本明細書中記載される糖がコンジュゲートしたAAV(すなわち表面に結合した糖類を有するAAV)を投与するために利用される際に、単回投与(たとえば注射)からであっても、有効かつ広範囲のCNS送達を達成できる特定の経路および/または手法を提供する。
【0016】
これら結果は、特にCNSに影響する疾患の処置のための遺伝子療法に将来的に有望な見通しを提供する。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、対象の中枢神経系(CNS)の細胞への形質導入に使用するための修飾されたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、少なくとも1つの表面に結合した糖類を含み、
CNSに直接投与され、
脳室内に投与されない、
修飾されたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに関する。
【0018】
本発明はまた、対象の中枢神経系(CNS)の細胞に形質導入するための方法であって、前記対象に修飾されたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを投与するステップを含み、
前記修飾されたAAVベクターが、少なくとも1つの表面に結合した糖類を含み、
前記修飾されたAAVベクターが、CNSに直接投与され、
前記修飾されたAAVベクターが、脳室内に投与されない、
方法に関する。
【0019】
また本発明は、中枢神経系(CNS)疾患の予防または処置に使用するための修飾されたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、少なくとも1つの表面に結合した糖類を含み、
CNSに直接投与され、
脳室内に投与されない、
修飾されたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに関する。
【0020】
また本発明は、たとえば、少なくとも1つの表面にコンジュゲートされた糖を含む点で修飾されたAAVベクターであるAAVベクターを脳室内注射以外によりCNS部位に直接投与することにより、CNS疾患を処置する方法を含む。
【0021】
さらに、本発明は、少なくとも1つの表面にコンジュゲートされた糖を含む点で修飾されたAAVベクターであるAAVベクターを利用し、脳室内注射以外により修飾されたAAVベクターを投与することを含む、CNSにAAVベクターを投与するための改善を提供する。また本開示は、たとえば、少なくとも1つの表面にコンジュゲートされた糖を含む点で修飾されたAAVベクターであるAAVベクターに導入遺伝子を含め、修飾されたAAVベクターを脳室内注射以外により投与することによる、CNSへ導入遺伝子を送達するための改善を提供する。
【0022】
一実施形態では、上記CNS疾患は、CNS感染性疾患、CNS変性疾患、CNS自己免疫疾患、CNS腫瘍疾患、脳血管疾患、CNS損傷、またはCNS構造欠陥である。
【0023】
一実施形態では、上記修飾されたAAVベクターは、線条体内、視床内、または大槽内へ投与される。
【0024】
一実施形態では、上記修飾されたAAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、およびAAV12;またはそれらのシュードタイプ、キメラ、およびバリアントから選択される。
【0025】
一実施形態では、上記修飾されたAAVベクターは、AAV2ベクターである。
【0026】
一実施形態では、表面に結合した糖類は、単糖類、オリゴ糖、および多糖類を含む群から選択される。
【0027】
一実施形態では、表面に結合した糖類は、ヘキソース、好ましくはマンノース、ガラクトース、またはN-アセチルグルコサミンである。
【0028】
上述されるように、国際特許公開公報第2017212019号は、特定の細胞種へのウイルスが介在する遺伝子の伝達が改善した特定の表面が修飾されたAAV由来のベクター、具体的には、特定の糖部分で修飾された表面であるAAVを記載している。特に、本開示は、ある範囲の糖類で有効な送達を実証し、さらには(特に脳室内以外で投与される場合の)本明細書中記載されるCNS送達の特定の有用性を確立し、投与部位から離れているか、かつ/または単回のみの投与(たとえば注射)後であっても、様々な組織への送達を含むことにより、これら教示を拡張している。
一実施形態では、表面に結合した糖類は、AAVベクターの少なくとも1つのカプシドタンパク質、好ましくはAAVベクターの少なくとも1つのカプシドタンパク質の少なくとも1つの表面に曝露したアミノ酸残基に共有結合している。
【0029】
一実施形態では、表面に結合した糖類は、リンカーを介して共有結合している。
【0030】
一実施形態では、上記修飾されたAAVベクターは、少なくとも1つの導入遺伝子を含む。
【0031】
一実施形態では、上記導入遺伝子は、3R tau、4R tau、AARS、ABCD1、ACOX1、ADGRV1、ADRA2B、AGA、AGER、ALDH7A1、ALG13、ALS2、ANG、ANXA11、APP、ARHGEF9、ARSA、ARSB、ARV1、ASAH1、ASPA、ATN1、ATP10A、ATP13A2、ATXN1、ATXN2、ATXN3、BAX、BCL-2、BDNF、BICD2、C9orf72、CACNA1A、CACNA1H、CACNB4、CASR、CCNF、CDKL5、CERS1、CFAP410、CHCHD10、CHD2、CHMP2B、CHRNA2、CHRNA4、CHRNA7、CHRNB2、CLCN2a、CLN1、CLN2、CLN3、CLN5、CLN6、CLN8、CNTN2、CPA6、CSTB、CTNS、CTSA、CTSD、DAO、DCTN1、DEPDC5、DMD、DNAJB2、DNM1、DOCK7、DRD2、DYNC1H1、EEF1A2、EFHC1、EGLN1、EPHA4、EPM2A、ERBB4、FGF12、FIG4、FRRS1L、FTL、FUCA1、FUS、FXN、GAA、GABRA1、GABRB1、GABRB3、GABRD、GABRG2、GAL、GALC、GALNS、GBA、GFAP、GLA、GLB1、GLE1、GLT8D1、GNAO1、GNS、GOSR2、GPR98、GRIA1、GRIA2、GRIK1、GRIN1、GRIN2A、GRIN2B、GRIN2D、GSTM1、GUF1、GUSB、HCN1、HGSNAT、HNRNPA1、HTT、HYAL1、IDS、IDUA、IGHMBP2、IL-1、IT15、ITPA、JPH3、KCNA2、KCNB1、KCNC1、KCNMA1、KCNQ2、KCNQ3、KCNT1、KCTD7、LAL、LAMP2、LGI1、LMNB2、LRRK2、MAN2B1、MAN2B2、MAN2C1、MANBA、MATR3、MBD5、MFSD8、NAGA、NAGLU、NECAP1、NEFH、NEK1、NEU1、NHLRC1、NPC1、NPC2、NR4A2、NTRK2、OCA2、OPTN、PARK2、PARK7、PCDH19、PEX1、PEX2、PEX3、PEX5、PEX6、PEX10、PEX11B、PEX12、PEX13、PEX14、PEX16、PEX19、PEX26、PFN1、PINK1、PLCB1、PNPO、PON1、PON2、PON3、PPARGC1A、PRDM8、PRICKLE1、PRKN、PRNP、PRPH、PRRT2、PSAP、S106β、SCARB2、SCN1A、SCN1B、SCN2A、SCN8A、SCN9A、SCN9Ab、SETX、SGSH、SIGMAR1、SIK1、SKP1、SLC1A1、SLC1A2、SLC2A1、SLC6A1、SLC9A6、SLC12A5、SLC13A5、SLC25A12、SLC25A22、SLCA17A5、SMN1、SMPD1、SNCA、SNRPN、SOD1、SPG11、SPTAN1、SQSTM1、ST3GAL3、ST3GAL5、STX1B、STXBP1、SYP、SYT1、SZT2、TAF15、TARDBP、TBC1D24、TBCE、TBK1、TBP、TITF-1、TREM2、UBA5、UBE1、UBE3A、UBQLN2、UCH-L1、UNC13A、VAPB、VCP、VPS35、WWOX、およびXBP1を含む群から選択される遺伝子由来のcDNAまたはそのフラグメントを含む。
【0032】
一実施形態では、上記CNS疾患は、酸性リパーゼ疾患、酸性マルターゼ欠乏症、酸蓄積症、後天性てんかん様失語症、急性散在性脳脊髄炎、注意欠陥多動障害(ADHD)、アディー瞳孔、アディー症候群、副腎白質ジストロフィー、失認、アイカルディ症候群、エカルディ‐グティエール症候群障害、アレキサンダー病、アルパース病、交代性片麻痺、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、無脳症、動脈瘤、アンジェルマン症候群、血管腫症、無酸素症、抗リン脂質抗体症候群、失語症、失行症、くも膜炎、アーノルド・キアリ奇形、芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素欠損症(AADC欠損症)、アスパルチルグルコサミン尿症、アスペルガー症候群、運動失調、毛細血管拡張性運動失調症(Louis-Bar症候群)、小脳変性症運動失調および小脳変性症または脊髄小脳変性症、注意欠陥多動障害、自閉症、自律神経障害、バース症候群、バッテン病、Becker病の筋強直、ベーチェット病、ベル麻痺、Bernhardt-Roth症候群、ビンスワンガー病、ブロッホ・ズルツベルガー症候群、Bradbury-Eggleston症候群、ブラウン・セカール症候群、球脊髄性筋萎縮症、CADASIL、カナバン病、カウザルギー、海面状血管腫(cavernomas、cavernous angioma)、中央頸髄症候群、脊髄中心症候群、橋中心髄鞘崩壊症、セラミダーゼ欠乏症、小脳変性症、小脳低形成、脳性脚気、脳性巨人症、脳性麻痺、脳・眼・顔・骨格症候群(COFS)、コレステロールエステル蓄積症、舞踏病、有棘赤血球舞踏病、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、慢性起立性調節障害、慢性疼痛、コケイン症候群II型、コフィン・ローリー症候群、脳梁欠損、先天性筋無力症、大脳皮質基底核変性症、頭部動脈炎、クリー脳炎、クロイツフェルト・ヤコブ病、クッシング症候群、シスチン症、巨大細胞性封入体症(cytomegalic inclusion body disease:CIBD)、ダンシングアイズ・ダンシングフィート症候群(dancing eyes-dancing feet syndrome)、ダンディ・ウォーカー症候群、ダノン病、Dawson病、ドモルシア(De Morsier)症候群、Dejerine-Klumpke麻痺、認知症、小脳歯状核失調、歯状核赤核萎縮症、皮膚筋炎、発達性統合運動障害、Devic症候群、びまん性硬化症、自律神経障害、書字障害、失読症、嚥下障害、統合運動障害、ミオクローヌス性小脳性共同運動障害、進行性小脳性共同運動障害、てんかん(アーミッシュ小児てんかん症候群[AIES]、良性家族性乳児けいれん[BFIS]、良性家族性新生児けいれん[BFNS]、小児欠神てんかん[CAE]、小児期発症てんかん性脳症[COEE]、ドラベ症候群[DS]、早期乳児てんかん性脳症[EIEE]、家族性成人型ミオクローヌスてんかん[FAME]、家族性熱性けいれん[FFS]、多様な焦点を示す家族性焦点てんかん[FFEVF]、家族性乳児型ミオクローヌスてんかん[FIME]、家族性側頭葉てんかん[FTLE]、精神遅滞を伴うまたは伴わない焦点性てんかんおよび発話障害[FESD]、全般てんかんおよび発作性ジスキネジア[GEPD]、全般てんかん熱性けいれんプラス[GEFS+]、特発性全般てんかん[IGE]、若年性欠神てんかん[JAE]、若年性ミオクローヌスてんかん[JME]、ミオクローヌス-弛緩性てんかん[MAE]、夜間前頭葉てんかん[NFLE]、進行性ミオクローヌスてんかん[PME]、ピリドキサミン5’-リン酸シンターゼ欠乏症[PNPOD]、ピリドキシン-依存性てんかん[EPD]、および乳児重症ミオクローヌスてんかん[SMEI]を含む)、ファブリー病、ファール病、家族性自律神経障害、家族性血管腫、家族性突発性大脳基底核石灰化、家族性周期性麻痺、家族性痙性麻痺、ファーバー(Farber)病、線維筋性異形成、フィッシャー症候群、floppy infant症候群、フリードライヒ運動失調症、前頭側頭型認知症、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、ゴーシェ病、全般性ガングリオシドーシス、ゲルストマン症候群、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、巨大軸索ニューロパチー、巨細胞性動脈炎、巨細胞性封入体病、グロボイド細胞白質ジストロフィー、舌咽神経痛、糖原病、GM1ガングリオシドーシス、GM2ガングリオシドーシス(テイ・サックス病)、ギラン・バレー症候群、ハラーホルデン・スパッツ症候群、持続性片側頭痛、交代性片麻痺(hemiplegia alterans)、遺伝性痙性対麻痺、多発神経炎型遺伝性失調症、Holmes-Adie症候群、全前脳症、Hughes症候群、ハンチントン病、水無脳症、水脊髄症、副腎皮質ホルモン過剰症、免疫介在性脳脊髄炎、封入体筋炎、色素失調症、乳児筋緊張低下、乳児神経軸索ジストロフィー、後頭孔脳脱出症、Isaac症候群、ジュベール症候群、Kearns-Sayre症候群(Keams-Sayre syndrome)、Kennedy病、Kinsbourne症候群、クライン・レビン症候群、クリッペル・ファイル症候群、Klippel-Trenaunay症候群(KTS)、クリュバー・ビューシー症候群、コルサコフ(Korsakoff)健紡症候群、クラッベ病、クーゲルベルク・ヴェランダー病、ランバート・イートン筋無力症症候群、Landau-Kleffner症候群、外側大腿皮神経絞扼(lateral femoral cutaneous nerve entrapment)、髄質延髄外側症候群、リー症候群、レノックス・ガストー症候群、レッシュ・ナイハン症候群、Levine-Critchley症候群、レビー小体認知症、リポイドタンパク症、脳回欠損、閉じ込め症候群、ルー・ゲーリック病、ループス、ライム病、マシャド・ジョセフ病、大脳症、α-マンノシドーシス、β-マンノシドーシス、メルカーソン・ローゼンタール症候群、メンケス病、異常感覚性大腿痛、異染性白質ジストロフィー、小頭症、ミラー・フィッシャー症候群、メビウス症候群、ムコ多糖症I-H型(ハーラー症候群)、ムコ多糖症I-H/S型(Hurler-Scheie症候群)、ムコ多糖症IS型(Scheie症候群)、ムコ多糖症II型(Hunter症候群)、ムコ多糖症III-A型(サンフィリポ症候群A)、ムコ多糖症III-B型(サンフィリポ症候群B)、ムコ多糖症III-C型(サンフィリポ症候群C)、ムコ多糖症III-D型(サンフィリポ症候群D)、ムコ多糖症IV-B型(モルキオ症候群B)、ムコ多糖症VI型(マロトー・ラミー症候群)、ムコ多糖症VII型(スライ症候群)、ムコ多糖症IX型(Natowicz症候群)、多発性硬化症、筋ジストロフィー、重症筋無力症、アルパーズ症候群(Myelinoclastic Diffuse Sclerosis)、ナルコレプシー、神経有棘赤血球症、神経線維腫症、悪性症候群、神経サルコイドーシス、ニーマン・ピック病、大田原症候群、オリーブ橋小脳萎縮症、眼球クローヌス・ミオクローヌス、O’Sullivan-McLeod症候群、パントテン酸キナーゼ関連神経変性症、腫瘍随伴症候群、錯感覚、パーキンソン病、発作性舞踏病アテトーゼ、発作性片側頭痛、Parry-Romberg症候群、ペリツェウス・メルツバッハ病、Pena-Shokeir症候群II型、脳室周囲白質軟化症、フィタン酸蓄積症、ピック病、梨状筋症候群、多発性筋炎、ポンペ病、ポリオ後症候群、PCA(posterior cortical atrophy)、原発性歯状核萎縮症(Primary Dentatum Atrophy)、原発性側索硬化症、原発性進行性失語症、プリオン病、進行性片側顔面萎縮症、進行性歩行運動失調、進行性多発性白質脳症、進行性硬化性灰白異栄養症、進行性核上性麻痺、顔貌失認、ラムゼイ・ハント症候群I、ラムゼイ・ハント症候群II、ラスムッセン脳炎、レフサム病、レット症候群、Reye症候群、ライリー・デイ症候群、サンドホフ病、シルダー病、Seitelberger病、シャイ・ドレーガー症候群、シェーグレン症候群、痙縮、二分脊椎、脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳失調症、脊髄小脳萎縮症、脊髄小脳変性症、スティール・リチャードソン・オルゼウスキー症候群、線条体黒質変性症、スタージ・ウェーバー症候群、遅発性ジスキネジア、タウオパチー、テイ・サックス病、胸郭出口症候群、甲状腺中毒性ミオパチー、三叉神経痛、トッド麻痺、三叉神経痛、熱帯性痙性不全対麻痺症、トロイアー症候群、血管性認知症、フォン‐エコーノモ病、フォンヒッペル・リンダウ病(VHL)、フォンレックリングハウゼン病、ワレンベルグ症候群、ウェルドニッヒ・ホフマン病、ウェルニッケ・コルサコフ症候群、ウエスト症候群、ウィップル病、ウィリアムズ症候群、ウィルソン病、ウォルマン病、X連鎖球脊髄性筋萎縮症、およびツェルウェーガー症候群を含む群から選択される。
【0033】
一実施形態では、上記導入遺伝子は、CAGプロモーターの制御下にある。
【0034】
本発明は、少なくとも1つの導入遺伝子を含む修飾されたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、
上記修飾されたAAVベクターが、少なくとも1つの表面に結合した糖類を含み、
上記導入遺伝子が、3R tau、4R tau、AARS、ABCD1、ACOX1、ADGRV1、ADRA2B、AGA、AGER、ALDH7A1、ALG13、ALS2、ANG、ANXA11、APP、ARHGEF9、ARSA、ARSB、ARV1、ASAH1、ASPA、ATN1、ATP10A、ATP13A2、ATXN1、ATXN2、ATXN3、BAX、BCL-2、BDNF、BICD2、C9orf72、CACNA1A、CACNA1H、CACNB4、CASR、CCNF、CDKL5、CERS1、CFAP410、CHCHD10、CHD2、CHMP2B、CHRNA2、CHRNA4、CHRNA7、CHRNB2、CLCN2a、CLN1、CLN2、CLN3、CLN5、CLN6、CLN8、CNTN2、CPA6、CSTB、CTNS、CTSA、CTSD、DAO、DCTN1、DEPDC5、DMD、DNAJB2、DNM1、DOCK7、DRD2、DYNC1H1、EEF1A2、EFHC1、EGLN1、EPHA4、EPM2A、ERBB4、FGF12、FIG4、FRRS1L、FTL、FUCA1、FUS、FXN、GAA、GABRA1、GABRB1、GABRB3、GABRD、GABRG2、GAL、GALC、GALNS、GBA、GFAP、GLA、GLB1、GLE1、GLT8D1、GNAO1、GNS、GOSR2、GPR98、GRIA1、GRIA2、GRIK1、GRIN1、GRIN2A、GRIN2B、GRIN2D、GSTM1、GUF1、GUSB、HCN1、HGSNAT、HNRNPA1、HTT、HYAL1、IDS、IDUA、IGHMBP2、IL-1、IT15、ITPA、JPH3、KCNA2、KCNB1、KCNC1、KCNMA1、KCNQ2、KCNQ3、KCNT1、KCTD7、LAL、LAMP2、LGI1、LMNB2、LRRK2、MAN2B1、MAN2B2、MAN2C1、MANBA、MATR3、MBD5、MFSD8、NAGA、NAGLU、NECAP1、NEFH、NEK1、NEU1、NHLRC1、NPC1、NPC2、NR4A2、NTRK2、OCA2、OPTN、PARK2、PARK7、PCDH19、PEX1、PEX2、PEX3、PEX5、PEX6、PEX10、PEX11B、PEX12、PEX13、PEX14、PEX16、PEX19、PEX26、PFN1、PINK1、PLCB1、PNPO、PON1、PON2、PON3、PPARGC1A、PRDM8、PRICKLE1、PRKN、PRNP、PRPH、PRRT2、PSAP、S106β、SCARB2、SCN1A、SCN1B、SCN2A、SCN8A、SCN9A、SCN9Ab、SETX、SGSH、SIGMAR1、SIK1、SKP1、SLC1A1、SLC1A2、SLC2A1、SLC6A1、SLC9A6、SLC12A5、SLC13A5、SLC25A12、SLC25A22、SLCA17A5、SMN1、SMPD1、SNCA、SNRPN、SOD1、SPG11、SPTAN1、SQSTM1、ST3GAL3、ST3GAL5、STX1B、STXBP1、SYP、SYT1、SZT2、TAF15、TARDBP、TBC1D24、TBCE、TBK1、TBP、TITF-1、TREM2、UBA5、UBE1、UBE3A、UBQLN2、UCH-L1、UNC13A、VAPB、VCP、VPS35、WWOX、およびXBP1を含む群から選択される遺伝子由来のcDNAまたはそのフラグメントを含み、好ましくはCAGプロモーターの制御下にある、
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに関する。
【0035】
本発明は、
対象の中枢神経系(CNS)の細胞への形質導入、および/または
対象の中枢神経系(CNS)への導入遺伝子の送達、および/または
対象の中枢神経系(CNS)疾患の予防および/または処置
に適したキットまたはキットオブパーツであって、
上記キットが、
(a)本発明に係る修飾されたAAVベクターと、
(b)前記修飾されたAAVベクターのCNS送達のための装置と、
(c)任意選択で、前記修飾されたAAVベクターのCNS送達のための説明書と
を含む、
キットまたはキットオブパーツに関する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
詳細な説明
特に、本開示は、幅広い形質導入の特性を有するAAV系の開発が特に有用であり得、特にはCNS全体に散乱される細胞に関与し得るCNS疾患の状況において、現存するAAV戦略に伴う問題の源に対処し得るとの知見を提供する。
【0037】
特に、本開示は、CNSにおける単回または非常に少ない局所的な投与ポイントから、幅広い形質導入を達成できるAAVベクターが好適であり、たとえばCNSの複数の部位への注射を必要とし得るかまたは通常含み得る特定の既存のAAV戦略に伴う問題の源を解決し得るとの知見を提供する。
【0038】
特に、本開示は、CNSにおける細胞特異的かつ幅広い形質導入を確実にしつつ、免疫検出を回避できるAAVベクターが有利であり、免疫応答を誘発する特定の既存のAAV戦略に伴う問題の源を解決し得るとの知見を提供する。
【0039】
本発明は、対象の中枢神経系(CNS)の細胞への形質導入に使用するための修飾されたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、
少なくとも1つの表面に結合した糖類を含み、
CNSに直接投与され、
脳室内に投与されない、
修飾されたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに関する。
【0040】
また本発明は、対象の中枢神経系(CNS)の細胞に形質導入するための修飾されたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの使用であって、
前記修飾されたAAVベクターが、少なくとも1つの表面に結合した糖類を含み、
前記修飾されたAAVベクターが、CNSに直接投与され、
前記修飾されたAAVベクターが、脳室内に投与されない、
使用に関する。
【0041】
また本発明は、対象の中枢神経系(CNS)の複数の脳組織へ修飾されたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを投与する方法であって、
前記導入遺伝子を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを前記対象へ投与するステップを含み、
前記修飾されたAAVベクターが、少なくとも1つの表面に結合した糖類を含み、
前記修飾されたAAVベクターが、CNS部位に直接投与され、複数の脳組織のうちの少なくとも1つが前記CNS部位とは離れており、
前記修飾されたAAVベクターが、脳室内に投与されない、
方法に関する。
【0042】
一部の実施形態では、脳組織は、線条体、視床、黒質、頭頂皮質、海馬、および/または淡蒼球であり得るかまたはこれらを含み得る。一部の実施形態では、CNS部位は、線条体にあり得る。一部の実施形態では、CNS部位は、視床にあり得る。一部の実施形態では、CNS部位は、大槽にあり得る。一部の実施形態では、投与は、単一のCNS部位に対してであり得る。一部の実施形態では、線条体および視床およびそれらの組み合わせからなる群から、または線条体および視床および大槽およびそれらの組み合わせからなる群から選択される複数のCNS部位に対してであり得る。一部の実施形態では、投与は、単回注射によるものであり得る。
【0043】
また本発明は、対象の中枢神経系(CNS)の細胞に形質導入するための方法であって、修飾されたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを前記対象へ投与するステップを含み、
前記修飾されたAAVベクターが、少なくとも1つの表面に結合した糖類を含み、
前記修飾されたAAVベクターが、CNS部位に直接投与され、
前記修飾されたAAVベクターが、脳室内に投与されない、
方法に関する。
【0044】
また本発明は、対象の中枢神経系(CNS)の細胞に導入遺伝子を送達するための方法であって、前記導入遺伝子を含む修飾されたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを前記対象へ投与するステップを含み、
前記修飾されたAAVベクターが、少なくとも1つの表面に結合した糖類を含み、
前記修飾されたAAVベクターが、CNS部位に直接投与され、
前記修飾されたAAVベクターが、脳室内に投与されない、
方法に関する。
【0045】
また本発明は、対象の中枢神経系(CNS)の複数の脳組織に導入遺伝子を送達するための方法であって、前記導入遺伝子を含む修飾されたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを前記対象へ投与するステップを含み、
前記修飾されたAAVベクターが、少なくとも1つの表面に結合した糖類を含み、
前記修飾されたAAVベクターが、CNS部位に直接投与され、複数の脳組織のうちの少なくとも1つがCNS部位から離れており、
前記修飾されたAAVベクターが、脳室内に投与されない、
方法に関する。
【0046】
一部の実施形態では、脳組織は、線条体、視床、黒質、頭頂皮質、海馬、および/または淡蒼球であり得るか、またはこれらを含み得る。一部の実施形態では、CNS部位は、線条体にあり得る。一部の実施形態では、CNS部位は、視床にあり得る。一部の実施形態では、CNS部位は、大槽にあり得る。一部の実施形態では、投与は、単一のCNS部位に対してであり得る。一部の実施形態では、線条体および視床およびそれらの組み合わせからなる群から、または線条体および視床および大槽およびそれらの組み合わせからなる群から選択される複数のCNS部位に対してであり得る。一部の実施形態では、投与は、単回注射によるものであり得る。
【0047】
さらに本発明は、神経細胞に形質導入するためのin vitroでの方法であって、上記神経細胞を、修飾されたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターと接触させるステップを含み、前記修飾されたAAVベクターが、少なくとも1つの表面に結合した糖類を含む、方法に関する。
【0048】
本明細書中使用される場合、「中枢神経系」または「CNS」は、脳および脊髄の両方を表し、脳および脊髄を除く「末梢神経系」または「PNS」とは対照的である。
【0049】
本明細書中使用される場合、用語「対象」は、哺乳類、好ましくはヒトを表す。一実施形態では、対象は、「患者」、すなわち医療の受診を待機しているか、または医療を受診しているか、または過去/現在/将来医療処置の対象であった/ある/となり得るか、または疾患の発症に関してモニタリングされている温血動物、より好ましくはヒトであり得る。
【0050】
用語「哺乳類」は、ここでは、ヒト、家畜(domesticおよびfarm animals)、動物園用動物、スポーツ用動物、またはペット用動物、たとえば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなどを含むいずれかの動物を表す。好ましくは、哺乳類は、霊長類、より好ましくはヒトである。
【0051】
本発明に適切なAAVベクターは、いずれかの天然または組み換えのAAV血清型を含み得るか、またはこれに由来し得る。
【0052】
一実施形態では、本発明に係るAAVベクターは、天然の血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、およびAAV12;またはそれらのシュードタイプ、キメラ、およびバリアントから選択される。
【0053】
本明細書中使用される場合、AAVベクターを表す場合の用語「シュードタイプ」または「シュードタイプ化AAVベクター」は、別のAAV血清型のカプシドにパッケージングされた1つのAAV血清型のゲノムを含むAAVベクターを表す。これらのシュードタイプは、スラッシュまたはハイフンを使用して記載され、よって、「AAV2/5」または「AAV2-5」は、血清型5のカプシドにパッケージングされた血清型2のゲノムを含むAAVベクターを表す。
【0054】
シュードタイプ化AAVベクターの例として、限定するものではないが、AAV2/1、AAV2/2、AAV2/3、AAV2/4、AAV2/5、AAV2/6、AAV2/7、AAV2/8、およびAAV2/9が挙げられる。
【0055】
本明細書中使用される場合、AAVベクターを表す場合の用語「キメラ」または「キメラAAVベクター」は、少なくとも2つの異なるAAV血清型に由来するVP1、VP2、およびVP3タンパク質を含むカプシドを含むAAVベクター、またはあるいは、少なくとも一つが別のAAV血清型由来の少なくとも一部を含む、VP1、VP2、およびVP3タンパク質を含むAAVベクターを表す。
【0056】
キメラAAVベクターの例として、限定するものではないが、AAV-DJ、AAV2G9、AAV2i8、AAV2i8G9、AAV8G9、およびAAV9i1が挙げられる。
【0057】
一実施形態では、本発明に係るAAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AV106.1/hu.37、AAV114.3/hu.40、AAV127.2/hu.41、AAV127.5/hu.42、AAV128.1/hu.43、AAV128.3/hu.44,AAV130.4/hu.48、AAV145.1/hu.53、AAV145.5/hu.54、AAV145.6/hu.55、AAV16.12/hu.11、AAV16.3、AAV16.8/hu.10、AAV161.10/hu.60、AAV161.6/hu.61,AAV1-7/rh.48、AAV1-8/rh.49、AAV2i8、AAV2i8G9、AAV2-15/rh.62、AAV223.1、AAV223.2、AAV223.4、AAV223.5、AAV223.6、AAV223.7、AAV2-3/rh.61、AAV24.1,AAV2-4/rh.50、AAV2-5/rh.51、AAV2.5T、AAV27.3、AAV29.3/bb.1、AAV29.5/bb.2、AAV2G9、AAV3B、AAV3.1/hu.6、AAV3.1/hu.9、AAV3-11/rh.53、AAV3-3、AAV33.12/hu.17、AAV33.4/hu.15、AAV33.8/hu.16、AAV3-9/rh.52、AAV3a、AAV3b、AAV4-19/rh.55、AAV42.12、AAV42-10、AAV42-11、AAV42-12、AAV42-13、AAV42-15、AAV42-1b、AAV42-2、AAV42-3a、AAV42-3b、AAV42-4、AAV42-5a、AAV42-5b、AAV42-6b、AAV42-8、AAV42-aa、AAV43-1、AAV43-12、AAV43-20、AAV43-21、AAV43-23、AAV43-25、AAV43-5、AAV4-4、AAV44.1、AAV44.2、AAV44.5、AAV46.2/hu.28、AAV46.6/hu.29、AAV4-8/rh.64、AAV4-9/rh.54、AAV52.1/hu.20、AAV52/hu.19、AAV5-22/rh.58、AAV5-3/rh.57、AAV54.1/hu.21、AAV54.2/hu.22、AAV54.4R/hu.27、AAV54.5/hu.23、AAV54.7/hu.24、AAV58.2/hu.25、AAV6.1、AAV6.1.2、AAV6.2、AAV7m8、AAV7.2、AAV7.3/hu.7、AAV-8b、AAV8G9、AAV-8h、AAV9i1、AAV9.11、AAV9.13、AAV9.16、AAV9.24、AAV9.45、AAV9.47,AAV9.61、AAV9.68、AAV9.84、AAV9.9、AAVcy.2、AAVcy.3、AAVcy.4、AAVcy.5、AAVcy.5R1、AAVcy.5R2、AAVcy.5R3、AAVcy.5R4、AAVcy.6、AAVhu.1、AAVhu.2、AAVhu.3、AAVhu.4、AAVhu.5、AAVhu.6、AAVhu.7、AAVhu.8、AAVhu.9、AAVhu.10、AAVhu.11、AAVhu.12、AAVhu.13、AAVhu.14/9、AAVhu.15、AAVhu.16、AAVhu.17、AAVhu.18、AAVhu.19、AAVhu.20、AAVhu.21、AAVhu.22、AAVhu.23.2、AAVhu.24、AAVhu.25、AAVhu.27、AAVhu.28、AAVhu.29、AAVhu.29R、AAVhu.31、AAVhu.32、AAVhu.34、AAVhu.35、AAVhu.37、AAVhu.39、AAVhu.40、AAVhu.41、AAVhu.42、AAVhu.43、AAVhu.44、AAVhu.44R1、AAVhu.44R2、AAVhu.44R3、AAVhu.45、AAVhu.46、AAVhu.47、AAVhu.48、AAVhu.48R1、AAVhu.48R2、AAVhu.48R3、AAVhu.49、AAVhu.51、AAVhu.52、AAVhu.53、AAVhu.54、AAVhu.55、AAVhu.56、AAVhu.57、AAVhu.58、AAVhu.60、AAVhu.61、AAVhu.63、AAVhu.64、AAVhu.66、AAVhu.67、AAVpi.1、AAVpi.2、AAVpi.3、AAVrh.2、AAVrh.2R、AAVrh.8、AAVrh.8R、AAVrh8R R533A変異体、AAVrh8R A586R変異体、AAVrh.10、AAVrh.12、AAVrh.13、AAVrh. 13R、AAVrh.14、AAVrh.17、AAVrh.18、AAVrh.19、AAVrh.20、AAVrh.21、AAVrh.22、AAVrh.23、AAVrh.24、AAVrh.25、AAVrh.31、AAVrh.32、AAVrh.33、AAVrh.34、AAVrh.35、AAVrh.36、AAVrh.37、AAVrh.37R2、AAVrh.38、AAVrh.39、AAVrh.40、AAVrh.43、AAVrh.44、AAVrh.45、AAVrh.46、AAVrh.47、AAVrh.48、AAVrh.48.1、AAVrh.48.1.2、AAVrh.48.2、AAVrh.49、AAVrh.50、AAVrh.51、AAVrh.52、AAVrh.53、AAVrh.54、AAVrh.55、AAVrh.56、AAVrh.57、AAVrh.58、AAVrh.59、AAVrh.60、AAVrh.61、AAVrh.62、AAVrh.64、AAVrh.64R1、AAVrh.64R2、AAVrh.65、AAVrh.67、AAVrh.68、AAVrh.69、AAVrh.70、AAVrh.72、AAVrh.73、AAVrh.74、AAV-PHP.B、AAV-PHP.A、AAV-G2B-26、AAV-G2B-13、AAV-TH1.1-32、AAV-TH1.1-35、AAV-PHP.B2、AAV-PHP.B3、AAV-PHP.N/PHP.B-DGT、AAV-PHP.B-EST、AAV-PHP.B-GGT、AAV-PHP.B-ATP、AAV-PHP.B-ATT-T、AAV-PHP.B-DGT-T、AAV-PHP.B-GGT-T、AAV-PHP.B-SGS、AAV-PHP.B-AQP、AAV-PHP.B-QQP、AAV-PHP.B-SNP(3)、AAV-PHP.B-SNP、AAV-PHP.B-QGT、AAV-PHP.B-NQT、AAV-PHP.B-EGS、AAV-PHP.B-SGN、AAV-PHP.B-EGT、AAV-PHP.B-DST、AAV-PHP.B-DST、AAV-PHP.B-STP、AAV-PHP.B-PQP、AAV-PHP.B-SQP、AAV-PHP.B-QLP、AAV-PHP.B-TMP、AAV-PHP.B-TTP、AAV-PHP.S/G2A12、AAV-G2A15/G2A3、AAV-G2B4、AAV-G2B5、PHP.S、AAAV、AAV A3.3、AAV A3.4、AAV A3.5、AAV A3.7、AAV CBr-7.3、AAV CBr-7.1、AAV CBr-7.10、AAV CBr-7.2、AAV CBr-7.4、AAV CBr-7.5、AAV CBr-7.7、AAV CBr-7.8、AAV CBr-B7.3、AAV CBr-B7.4、AAV CBr-E1、AAV CBr-E2、AAV CBr-E3、AAV CBr-E4、AAV CBr-E5、AAV CBr-e5、AAV CBr-E6、AAV CBr-E7、AAV CBr-E8、AAV CHt-1、AAV CHt-2、AAV CHt-3、AAV CHt-6.1、AAV CHt-6.10、AAV CHt-6.5、AAV CHt-6.6、AAV CHt-6.7、AAV CHt-6.8、AAV CHt-P1、AAV CHt-P2、AAV CHt-P5、AAV CHt-P6、AAV CHt-P8、AAV CHt-P9、AAV CKd-N4、AAV CKd-1、AAV CKd-10、AAV CKd-2、AAV CKd-3、AAV CKd-4、AAV CKd-6、AAV CKd-7、AAV CKd-8、AAV CKd-B1、AAV CKd-B2、AAV CKd-B3、AAV CKd-B4、AAV CKd-B5、AAV CKd-B6、AAV CKd-B7、AAV CKd-B8、AAV CKd-H1、AAV CKd-H2、AAV CKd-H3、AAV CKd-H4、AAV CKd-H5、AAV CKd-H6、AAV CKd-N3、AAV CKd-N9、AAV CLg-F1、AAV CLg-F2、AAV CLg-F3、AAV CLg-F4、AAV CLg-F5、AAV CLg-F6、AAV CLg-F7、AAV CLg-F8、AAV CLv-M9、AAV CLv-R6、AAV CLv-1、AAV CLv1-1、AAV CLv1-10、AAV CLv1-2、AAV CLv-12、AAV CLv1-3、AAV CLv-13、AAV CLv1-4、AAV CLv1-7、AAV CLv1-8、AAV CLv1-9、AAV CLv-2、AAV CLv-3、AAV CLv-4、AAV CLv-6、AAV CLv-8、AAV CLv-D1、AAV CLv-D2、AAV CLv-D3、AAV CLv-D4、AAV CLv-D5、AAV CLv-D6、AAV CLv-D7、AAV CLv-D8、AAV CLv-E1、AAV CLv-K1、AAV CLv-K3、AAV CLv-K6、AAV CLv-L4、AAV CLv-L5、AAV CLv-L6、AAV CLv-M1、AAV CLv-M11、AAV CLv-M2、AAV CLv-M5、AAV CLv-M6、AAV CLv-M7、AAV CLv-M8、AAV CLv-R1、AAV CLv-R2、AAV CLv-R3、AAV CLv-R4、AAV CLv-R5、AAV CLv-R7、AAV CLv-R8、AAV CLv-R9、AAV CSp-8.10、AAV CSp-1、AAV CSp-10、AAV CSp-11、AAV CSp-2、AAV CSp-3、AAV CSp-4、AAV CSp-6、AAV CSp-7、AAV CSp-8、AAV CSp-8.2、AAV CSp-8.4、AAV CSp-8.5、AAV CSp-8.6、AAV CSp-8.7、AAV CSp-8.8、AAV CSp-8.9、AAV CSp-9、AAV-LK08、AAV-LK15、AAV Shuffle 100-1、AAV Shuffle 100-2、AAV Shuffle 100-3、AAV Shuffle 100-7、AAV Shuffle 10-2、AAV Shuffle 10-6、AAV Shuffle 10-8、AAV SM 100-10、AAV SM 100-3、AAV SM 10-1、AAV SM 10-2、AAV SM 10-8、AAV.VR-355、AAV-b、AAVC1、AAVC2、AAVC5、AAVCh.5、AAVCh.5R1、AAV-DJ、AAV-DJ8、AAVF1/HSC1、AAVF11/HSC11、AAVF12/HSC12、AAVF13/HSC13、AAVF14/HSC14、AAVF15/HSC15、AAVF16/HSC16、AAVF17/HSC17、AAVF2/HSC2、AAVF3、AAVF3/HSC3、AAVF4/HSC4、AAVF5、AAVF5/HSC5、AAVF6/HSC6、AAVF7/HSC7、AAVF8/HSC8、AAVF9/HSC9、AAV-h、AAVH-1/hu.1、AAVH2、AAVH-5/hu.3、AAVH6、AAVhE1.1、AAVhEr1.14、AAVhEr1.16、AAVhEr1.18、AAVhER
1.23、AAVhEr1.35、AAVhEr1.36、AAVhEr1.5、AAVhEr1.7、AAVhEr1.8、AAVhEr2.16、AAVhEr2.29、AAVhEr2.30、AAVhEr2.31、AAVhEr2.36、AAVhEr2.4、AAVhEr3.1、AAVLG-10/rh.40、AAVLG-4/rh.38、AAVLG-9/hu.39、AAVLG-9/hu.39、AAV-LK01、AAV-LK02、AAV-LK03、AAV-LK03、AAV-LK04、AAV-LK05、AAV-LK06、AAV-LK07、AAV-LK09、AAV-LK10、AAV-LK11、AAV-LK12、AAV-LK13、AAV-LK14、AAV-LK16、AAV-LK17、AAV-LK18、AAV-LK19、AAVN721-8/rh.43、AAV-PAEC、AAV-PAEC 12、AAV-PAEC11、AAV-PAEC2、AAV-PAEC4、AAV-PAEC6、AAV-PAEC7、AAV-PAEC8、Anc80、Anc80L65、Anc81、Anc82、Anc83、Anc84、Anc94、Anc110、Anc113、Anc126、Anc127、BAAV、BNP61 AAV、BNP62 AAV、BNP63 AAV、ウシAAV、ヤギAAV、日本AAV 10血清型、UPENN AAV10、VOY101、およびVOY201を含むかまたはからなる群から選択される。
【0058】
一実施形態では、AAVバリアントは、たとえばカプシドタンパク質の1つへの1つまたは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、または付加により、遺伝子的に修飾されているベクターを含む。このようなバリアントの例として、限定するものではないが、Y444F、Y500F、Y730F、および/またはS662Vの変異のうちのいずれかまたはいくつかを伴うAAV2;Y705F、Y731Fおよび/またはT492Vの変異のうちのいずれかまたはいくつかを伴うAAV3;S663Vおよび/またはT492Vの変異のうちのいずれかまたはいくつかを伴うAAV6が挙げられる。
【0059】
一実施形態では、本発明に係るAAVベクターは、AAV2である。
【0060】
一実施形態では、本発明に係るAAVベクターは、AAV5である。
【0061】
一実施形態では、本発明に係るAAVベクターは、AAV6である。
【0062】
一実施形態では、本発明に係るAAVベクターは、AAV8である。
【0063】
一実施形態では、本発明に係るAAVベクターは、AAV9である。
【0064】
一実施形態では、本発明に係るAAVベクターは、AAVrh.10である。
【0065】
一実施形態では、本発明に係るAAVベクターは、Anc80L65である。
【0066】
本発明では、修飾されたAAVベクターは、少なくとも1つの表面に結合した糖類またはその誘導体を含む。
【0067】
本明細書中使用される場合、少なくとも1つの糖類を表す場合の用語「表面に結合した」は、上記少なくとも1つの糖類が、AAVベクターの外面に結合しているかまたは外面に曝露していることを意味する。
【0068】
糖類の適切な例として、限定するものではないが、単糖類、オリゴ糖、多糖類、およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0069】
本明細書中使用される場合、用語「誘導体」は、単糖類、オリゴ糖、または多糖類を表す場合、1つ以上の非ヒドロキシル基を含む糖類を包有することを意味する。このような非ヒドロキシル基の例として、限定するものではないが、水素、アルキル、アミノ基(たとえばNH2、アルキルアミノ、ジアルキルアミノなど)、N-アセチルアミノ基、および/またはチオール基が挙げられる。
【0070】
単糖類(Monosaccharid)は、「単糖(simple sugar)」とも呼ばれており、糖の最も単純な形態であり、炭水化物の最も基本的な単位である。単糖類は、含む炭素原子の数xにより、3(トリオース)、4(テトロース)、5(ペントース)、6(ヘキソースs)、7(ヘプトース)などから分類され得る。
【0071】
単糖類の例として、限定するものではないが、グリコールアルデヒド、グリセルアルデヒド、ジヒドロキシアセトン、エリトロース、トレオース、エリトルロース、アラビノース、リキソース、リボース、キシロース、リブロース、キシルロース、アロース、アルトース、ガラクトース、グルコース、グロース、イドース、マンノース、タロース、フルクトース、プシコース、ソルボース、タガトース、マンノヘプツロース、およびセドヘプツロースが挙げられる。
【0072】
デオキシモノサッカリドは、本発明に包有される単糖類の一般的な誘導体、すなわち、ヒドロキシル基が水素原子で置き換えられた単糖類である。
【0073】
デオキシモノサッカリドの例として、限定するものではないが、デオキシリボース、フコース、フルクトース(fuculose)、ラムノース、キノボース、ニューモース(pneumose)が挙げられる。
【0074】
また、2-アミノ-2-デオキシモノサッカリドも、本発明に包有される単糖類の一般的な誘導体、すなわちヒドロキシル基がアミノ基で置き換えられた単糖類である。
【0075】
2-アミノ-2-デオキシモノサッカリドの例として、限定するものではないが、グルコサミン、ガラクトサミン、およびダウノサミン、ならびに限定するものではないがN-アセチルグルコサミンおよびN-アセチルガラクトサミンを含むそれらのアセチル化形態が挙げられる。
【0076】
本明細書中記載される単糖類およびそれらの誘導体は、非環式(鎖式)形態および環式形態を包有することを理解されたい。
【0077】
また、本明細書中記載される単糖類およびそれらの誘導体は、D-立体異性体およびL-立体異性体、ならびにD-立体異性体およびL-立体異性体のラセミ混合物をも包有することを理解されたい。
【0078】
また、本明細書中記載される単糖類およびそれらの誘導体は、α-アノマーおよびβ-アノマー、ならびにα-アノマーおよびβ-アノマーのラセミ混合物をも包有することを理解されたい。
【0079】
オリゴ糖は、少数(通常2~10個)の単糖類を含む糖の重合体である。
【0080】
一実施形態では、本発明に係るオリゴ糖は、それらの誘導体を含む本明細書中上記で開示される単糖類から選択される少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の単糖類を含む。このようなオリゴ糖は、ホモオリゴ糖(すなわち同じ単糖類(それらの誘導体を含む)の単位から構成されている)、またはヘテロオリゴ糖(すなわち少なくとも2つの異なる単糖類(それらの誘導体を含む)から構成されている)であり得る。
【0081】
オリゴ糖の例として、限定するものではないが、二糖、三糖、四糖、五糖、六糖、七糖、八糖、九糖、および十糖が挙げられる。
【0082】
二糖の具体的な例として、限定するものではないが、セロビオース、キトビオース、ゲンチオビオース、ゲンチオビオース(gentiobiulose)、イソマルトース、コージビオース、ラクトース、ラクツロース、ラミナリビオース、マルトース、マルツロース、マンノビオース、メリビオース、メリビウロース、ニゲロース、パラチノース、ルチノース、ルチヌロース(rutinulose)、ソホロース、スクロース、トレハロース、ツラノース、およびキシロビオースが挙げられる。
【0083】
三糖の具体的な例として、限定するものではないが、ケストース、マルトトリオース、マルトトリオース(maltotriulose)、メレジトース、ニゲロトリオース(nigerotriose)、およびラフィノースが挙げられる。
【0084】
四糖の具体的な例として、限定するものではないが、リクノース、マルトテトラオース、ニゲロトレハロース(nigerotetraose)、ニストース、セサモース(sesamose)、およびスタキオースが挙げられる。
【0085】
オリゴ糖の他の具体的な例として、限定するものではないが、アカルボース、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、およびマルトデキストリンが挙げられる。
【0086】
多糖類は、多数(通常10個超)の単糖類を含む糖類の重合体である。これらは、直鎖状の構造から著しく分岐した構造の範囲にある。
【0087】
一実施形態では、本発明に係る多糖類は、それらの誘導体を含む本明細書中上記に開示された単糖類から選択される10個超の単糖類(たとえば11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれ以上)を含む。オリゴ糖で上述されるものと同様に、多糖類は、ホモ多糖類またはヘテロ多糖類であり得る。
【0088】
多糖類の例として、限定するものではないが、ベータグルカン、レンチナン、シゾフィラン、ザイモサン、セルロース、ヘミセルロース、キチン、キトサン、デキストリン、デキストラン、フルクタン、イヌリン、ガラクタン、グルカン、グリコーゲン、レバンβ2→6、リグニン、マンナン、ペクチン、デンプン、アミロペクチン、アミロース、およびキサンタンガムが挙げられる。
【0089】
一実施形態では、本発明に係る糖類またはそれらの誘導体は、単糖類、好ましくはヘキソースである。より好ましくは、本発明に係る糖類またはその誘導体は、マンノース、ガラクトース、またはN-アセチルグルコサミンである。
【0090】
一実施形態では、糖類またはその誘導体は、マンノースである。一実施形態では、糖類またはその誘導体は、ガラクトースである。一実施形態では、糖類またはその誘導体は、N-アセチルグルコサミンである。
【0091】
一実施形態では、本発明に係る糖類またはそれらの誘導体は、デオキシモノサッカリド、好ましくはフコースである。
【0092】
他の実施形態では、糖類またはその誘導体は、ジアルキルアミノ基である非ヒドロキシル基を含む糖類、好ましくはデソサミンである。
【0093】
一実施形態では、少なくとも1つの表面に結合した糖類またはその誘導体は、AAVベクターに共有結合している。一実施形態では、少なくとも1つの表面に結合した糖類またはその誘導体は、AAVベクターに共有結合していない。
【0094】
一実施形態では、少なくとも1つの表面に結合した糖類またはその誘導体は、リンカーまたはスペーサーを介してAAVベクターに共有結合している。一実施形態では、少なくとも1つの表面に結合した糖類またはその誘導体は、リンカーまたはスペーサーを介してAAVベクターに共有結合していない。
【0095】
本発明は、いずれの特定のリンカーまたはスペーサーにも限定されない。限定するものではないが、アルキル、エーテル、ポリエーテル、アルキルアミド、またはそれらの組み合わせを含む様々なリンカーまたはスペーサーの使用が企図されている。限定するものではないが、-(CH-(式中、「n」は、約2~約20以上である)を含む様々なアルキルの使用が企図されている。限定するものではないが、-(OCHCH-(式中、「n」は、約2~約20以上である)を含む様々なエーテルおよびポリエーテルの使用が企図されている。限定するものではないが、-(CH-C(O)NH-(CH-および-(OCHCH-C(O)NH-(OCHCH-(式中「m」および「n」は、同じまたは異なるものであり得、「m」および「n」は、約1~約20以上である)を含む様々なアルキルアミドの使用が企図されている。限定するものではないが、-R-C(O)NH-R-(式中、「R」および「R」は、アルキル、エーテル、またはポリエーテルである)を含むアルキルまたはエーテル結合の結合単位を有する様々なアミドの使用が企図されている。
【0096】
適切なリンカーまたはスペーサーの特定の例は、国際特許公開公報第2017212019号に記載されている。
【0097】
一実施形態では、リンカーは、ポリ-エチレングリコール(PEG)ベースのリンカー、たとえば式-(OCHCH-のPEG3スペーサーを含むリンカー、または式-(OCHCH-のPEG5スペーサーを含むリンカーなどである。
【0098】
一部の実施形態では、リンカーは、たとえばフェニルなどの1つ以上の芳香族基をさらに含む。一実施形態では、少なくとも1つの表面に結合した糖類またはその誘導体は、AAVベクターの少なくとも1つのカプシドタンパク質に共有結合している。
【0099】
AAVベクターは、VP1、VP2、およびVP3と称される3つのカプシドタンパク質の混合物から構成される。
【0100】
一実施形態では、少なくとも1つの表面に結合した糖類またはその誘導体は、AAVベクターの少なくとも1つのVP1タンパク質に共有結合している。一実施形態では、少なくとも1つの表面に結合した糖類またはその誘導体は、AAVベクターの少なくとも1つのVP2タンパク質に共有結合している。一実施形態では、少なくとも1つの表面に結合した糖類またはその誘導体は、AAVベクターの少なくとも1つのVP3タンパク質に共有結合している。
【0101】
一実施形態では、少なくとも1つの表面に結合した糖類またはその誘導体は、AAVベクターの少なくとも1つのカプシドタンパク質の少なくとも1つの表面に曝露したアミノ酸残基に共有結合している。
【0102】
本明細書中使用される場合、用語「表面に曝露した」は、AAVベクターの外面に少なくとも部分的に曝露している側鎖を有するアミノ酸残基を表す。
【0103】
一実施形態では、少なくとも1つの表面に結合した糖類またはその誘導体は、AAVベクターの少なくとも1つのカプシドタンパク質の官能基を含む少なくとも1つの表面に曝露したアミノ酸残基に共有結合している。
【0104】
本明細書中使用される場合、用語「官能基を含むアミノ酸残基」は、アミン基、チオール基、アミド基、ヒドロキシル基などを含むアミノ酸残基を表す。
【0105】
一実施形態では、官能基を含むアミノ酸残基は、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、リジン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびそれらの混合物のうちのいずれか1つである。
【0106】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの表面に結合した糖類またはその誘導体は、AAVベクターの少なくとも1つのカプシドタンパク質の少なくとも1つの表面に曝露したリジン残基に共有結合している。
【0107】
糖類を、AAVベクター、たとえばAAVベクターのカプシドタンパク質の表面に曝露したアミノ酸残基に共有結合するための手段および方法は、当該分野でよく知られている。このような方法として、たとえば活性化エステル、スルホニルクロリド、またはイソチオシアネートとのコンジュゲーション;還元アルキル化;アザ-マイケル付加;アゼチジノンによる化学処理;ベンゾイルフルオリドベースのplug-and-playによる化学処理;またはクリックケミストリーが挙げられる。例として、たとえばSletten & Bertozzi, 2009. Angew Chem Int Ed Engl. 48(38):6974-98が提供される。
【0108】
カップリング反応の非限定的な例が、図17Aに示されている。上記カップリング反応を良好に示すために、糖類部分(たとえば本明細書中糖類部分の非限定的な例として取られているマンノースなど)とAAVの表面に曝露した一級アミン(たとえばNH2など)との間のカップリング反応の非限定的な例が、図17Bに示されている。
【0109】
本発明では、修飾されたAAVベクターは、CNSに直接投与される。
【0110】
「CNSに直接投与される」は、脊髄内または脳内に投与されることを意味する。
【0111】
一実施形態では、本発明に係る修飾されたAAVベクターは、脊髄内および/または脳内投与により投与され得る。
【0112】
一実施形態では、本発明に係る修飾されたAAVベクターは、脊髄内に投与される。
【0113】
一実施形態では、脊髄内投与は、くも膜下腔内投与および硬膜外投与を含むかまたはからなる。
【0114】
一実施形態では、脊髄内投与は、くも膜下腔内投与を含むかまたはからなる。
【0115】
一実施形態では、本発明に係る修飾されたAAVベクターは、脳内投与される。
【0116】
一実施形態では、脳内投与は、線条体(たとえば被殻、尾状核、側坐核、嗅結節、淡蒼球外節および/または淡蒼球内節)、視床、視床下部、視床上部、腹側視床、実質、大脳、髄質、深部小脳核(たとえば黒質、歯状、栓状核、球状核、および/または室頂核)、脳脊髄液(CSF)、髄膜、硬膜、くも膜、軟膜、クモ膜下槽(たとえば大槽、橋槽(Pontine cistern)、脚間槽、交叉槽、大脳外側窩槽、上槽、および/または終板槽)、くも膜下腔、皮質、中隔、橋、および小脳を含むかまたはからなる群から選択される部位での投与である。
【0117】
一実施形態では、本発明に係る修飾されたAAVベクターは、線条体内(すなわち線条体、たとえば被殻、尾状核、側坐核、嗅結節、淡蒼球外節、および/または淡蒼球内節)、視床内(すなわち視床)、大槽内(すなわちクモ膜下槽、たとえば大槽、橋槽(Pontine cistern)、脚間槽、交叉槽、大脳外側窩槽、上槽、および/または終板槽;好ましくは大槽)に投与される。
【0118】
一実施形態では、本発明に係る修飾されたAAVベクターは、実質内に投与される。
【0119】
一実施形態では、本発明に係る修飾されたAAVベクターは、線条体内、視床内、大槽内、またはくも膜下腔内に投与される。
【0120】
一実施形態では、本発明に係る修飾されたAAVベクターは、線条体内または視床内に投与される。
【0121】
本発明では、修飾されたAAVベクターは、脳室内(すなわち脳室系、たとえば右側脳室、左側脳室、第三脳室、および/または第四脳室)に投与されない。
【0122】
用語「投与」または「投与される」は、本明細書中使用される場合、注射および注入、ならびに当業者に知られている他のいずれかの投与手段を包有することを意味する。
【0123】
一実施形態では、本発明に係る修飾されたAAVベクターは、以下の細胞:ニューロン(たとえば錐体神経細胞、プルキンエ神経細胞、紡錘体神経細胞、msニューロン(medium spiny neurons)、および/または介在ニューロン[たとえばゴルジ細胞、ルガロ細胞、バスケット細胞、星状細胞、candelabrum細胞、単極刷毛細胞、顆粒細胞、レンショウ細胞、1a 抑制性ニューロン、1b 抑制性ニューロン、パルブアルブミン発現介在ニューロン、CCK発現介在ニューロン、VIP発現介在ニューロン、SOM発現介在ニューロン、コリン作動性介在ニューロン、チロシンヒドロキシラーゼ発現介在ニューロン、カルレチニン発現介在ニューロン、またはNO合成酵素発現介在ニューロン])、オリゴデンドロサイト、アストロサイト、ミクログリア細胞、上衣細胞、放射状グリア細胞、および/または下垂体細胞のうちのいずれかまたはいくつかを特異的に形質導入する。
【0124】
一実施形態では、本発明に係る修飾されたAAVベクターは、以下の細胞:ニューロン(たとえば錐体神経細胞、プルキンエ神経細胞、紡錘体神経細胞、msニューロン(medium spiny neurons)、および/または介在ニューロン[たとえばゴルジ細胞、ルガロ細胞、バスケット細胞、星状細胞、candelabrum細胞、単極刷毛細胞、顆粒細胞、レンショウ細胞、1a 抑制性ニューロン、1b 抑制性ニューロン、パルブアルブミン発現介在ニューロン、CCK発現介在ニューロン、VIP発現介在ニューロン、SOM発現介在ニューロン、コリン作動性介在ニューロン、チロシンヒドロキシラーゼ発現介在ニューロン、カルレチニン発現介在ニューロン、またはNO合成酵素発現介在ニューロン])のうちのいずれかまたはいくつかを特異的に形質導入する。
【0125】
一実施形態では、本発明に係る修飾されたAAVベクターは、以下の細胞:オリゴデンドロサイト、アストロサイト、ミクログリア細胞、上衣細胞、放射状グリア細胞、および/または下垂体細胞のうちのいずれかまたはいくつかを特異的に形質導入しない。
【0126】
本明細書中記載される修飾されたAAVベクターは、遺伝子療法に特に有用であり得る。
【0127】
よってまた、本発明は、遺伝子療法に使用するための本発明に係る修飾されたAAVベクターであって、
上記修飾されたAAVベクターは、少なくとも1つの表面に結合した糖類を含み、
上記修飾されたAAVベクターは、脳内に投与され、
上記修飾されたAAVベクターは、脳室内に投与されない、
修飾されたAAVベクターに関する。
【0128】
また本発明は、それを必要とする対象の遺伝子療法の方法であって、本発明に係る修飾されたAAVベクターを上記対象に投与するステップを含み、
上記修飾されたAAVベクターは、少なくとも1つの表面に結合した糖類を含み、
上記修飾されたAAVベクターは、脳内に投与され、
上記修飾されたAAVベクターは、脳室内に投与されない、
方法に関する。
【0129】
特に、本明細書中記載の修飾されたAAVベクターは、CNS疾患の予防および/または処置に特に有用であり得る。
【0130】
よってまた、本発明は、CNS疾患の予防または処置に使用するための本発明に係る修飾されたAAVベクターであって、
上記修飾されたAAVベクターは、少なくとも1つの表面に結合した糖類を含み、
上記修飾されたAAVベクターは、脳内に投与され、
上記修飾されたAAVベクターは、脳室内に投与されない、
修飾されたAAVベクターに関する。
【0131】
さらに本発明は、CNS疾患の予防または処置用の医薬の製造のための本発明に係る修飾されたAAVベクターの使用であって、
上記修飾されたAAVベクターは、少なくとも1つの表面に結合した糖類を含み、
上記修飾されたAAVベクターは、脳内に投与され、
上記修飾されたAAVベクターは、脳室内に投与されない、
使用に関する。
【0132】
また本発明は、それを必要とする対象のCNS疾患を予防および/または処置する方法であって、本発明に係る修飾されたAAVベクターを上記対象に投与するステップを含み、
上記修飾されたAAVベクターは、少なくとも1つの表面に結合した糖類を含み、
上記修飾されたAAVベクターは、脳内に投与され、
上記修飾されたAAVベクターは、脳室内に投与されない、
方法に関する。
【0133】
本明細書中使用される場合、用語「~を予防する」、「~を予防すること」、および「予防」は、防止的かつ予防的な手段であり、その目的は、所定の期間にわたり対象が所定の疾患を発症する可能性を下げることである。このような低下は、たとえば対象のCNS疾患の少なくとも1つの症状の発症の遅延に、反映され得る。
【0134】
本明細書中使用される場合、用語「~を処置すること」または「処置」または「軽減」は、防止的または予防的な手段を除く治療上の処置を表し;目的は所定の疾患を遅延(弱める)ことである。処置を必要とするものは、すでに疾患を有するものおよび疾患を有する疑いのあるものを含む。対象は、本発明に係る修飾されたAAVベクターの治療量を投与した後に、上記対象が、以下:CNS疾患に関連する症状の1つ以上の観察可能かつ/もしくは測定可能な低下または不存在;罹患率および死亡率の低下、ならびに/またはクオリティオブライフの問題の改善のうちの1つ以上を示す場合、所定の疾患に関する「処置」は成功している。CNS疾患における処置の成功および改善を評価するための上記パラメータは、医師によく知られている規定の手法により容易に測定可能である。
【0135】
これら実施形態では、本発明に係る修飾されたAAVベクターは、少なくとも1つの導入遺伝子を含む。
【0136】
用語「導入遺伝子」は、本明細書中使用される場合、細胞に導入され、RNAに転写でき、任意選択で適切な条件下で翻訳かつ/または発現できるポリヌクレオチドを表す。一態様では、これは、導入した細胞に望ましい特性を提供するか、または望ましい治療上もしくは防止的なアウトカムをもたらす。別の態様では、導入遺伝子は、たとえば、適切な手段の存在下で、CRISPR/Casベースの方法、TALENベースの方法、ZFNベースの方法などを使用し補正遺伝子を介するなどして、宿主細胞のゲノムに全体的または部分的に組み込まれ得る。さらなる別の態様では、これは、RNA干渉(すなわち遺伝子サイレンシング)を媒介する分子、たとえばmiRNA、siRNA、shRNA、piRNAなどに転写され得る。
【0137】
一実施形態では、少なくとも1つの導入遺伝子は、タンパク質またはそのフラグメントをコードするcDNAを含む。
【0138】
本明細書中使用される場合、用語「cDNA」は、相補的DNAを表し、逆転写酵素が触媒する反応において、一本鎖RNA(たとえばメッセンジャーRNA(mRNA)またはマイクロRNA(miRNA)のテンプレートなど)から通常合成されるDNA分子に対応する。特に、cDNAがmRNAの逆転写から得られる場合、これは、タンパク質由来の全ての遺伝子コードを含まず、上記タンパク質のコード配列(すなわちイントロンを伴わないエキソン)のみを含む。
【0139】
特に、cDNAのフラグメントは、タンパク質のN末端部またはC末端部をコードする上記cDNAの一部を含み得る。このようなフラグメントは、たとえば単一のAAVベクターにより担持できず、よってたとえば二重AAVベクターの使用を必要とする大きなcDNAの場合、有用であり得る。
【0140】
あるいは、cDNAのフラグメントは、タンパク質の機能的かつ/または構造上の一部をコードする上記cDNAの一部を含み得る。
【0141】
一部の実施形態では、cDNAのフラグメントは、RNA分子の機能的かつ/または構造上の部分をコードする配列を含み得る。一部の実施形態では、このようなRNA分子は、リボソームRNA、転移RNA、核内低分子RNA、核小体低分子RNA、マイクロRNA、長鎖ノンコーディングRNA、短鎖干渉RNA、ガイドRNA、および/またはいずれかの機能的なRNA種であり得る。
【0142】
一実施形態では、cDNAは、3R tau、4R tau、AARS、ABCD1、ACOX1、ADGRV1、ADRA2B、AGA、AGER、ALDH7A1、ALG13、ALS2、ANG、ANXA11、APP、ARHGEF9、ARSA、ARSB、ARV1、ASAH1、ASPA、ATN1、ATP10A、ATP13A2、ATXN1、ATXN2、ATXN3、BAX、BCL-2、BDNF、BICD2、C9orf72、CACNA1A、CACNA1H、CACNB4、CASR、CCNF、CDKL5、CERS1、CFAP410、CHCHD10、CHD2、CHMP2B、CHRNA2、CHRNA4、CHRNA7、CHRNB2、CLCN2a、CLN1、CLN2、CLN3、CLN5、CLN6、CLN8、CNTN2、CPA6、CSTB、CTNS、CTSA、CTSD、DAO、DCTN1、DEPDC5、DMD、DNAJB2、DNM1、DOCK7、DRD2、DYNC1H1、EEF1A2、EFHC1、EGLN1、EPHA4、EPM2A、ERBB4、FGF12、FIG4、FRRS1L、FTL、FUCA1、FUS、FXN、GAA、GABRA1、GABRB1、GABRB3、GABRD、GABRG2、GAL、GALC、GALNS、GBA、GFAP、GLA、GLB1、GLE1、GLT8D1、GNAO1、GNS、GOSR2、GPR98、GRIA1、GRIA2、GRIK1、GRIN1、GRIN2A、GRIN2B、GRIN2D、GSTM1、GUF1、GUSB、HCN1、HGSNAT、HNRNPA1、HTT、HYAL1、IDS、IDUA、IGHMBP2、IL-1、IT15、ITPA、JPH3、KCNA2、KCNB1、KCNC1、KCNMA1、KCNQ2、KCNQ3、KCNT1、KCTD7、LAL、LAMP2、LGI1、LMNB2、LRRK2、MAN2B1、MAN2B2、MAN2C1、MANBA、MATR3、MBD5、MFSD8、NAGA、NAGLU、NECAP1、NEFH、NEK1、NEU1、NHLRC1、NPC1、NPC2、NR4A2、NTRK2、OCA2、OPTN、PARK2、PARK7、PCDH19、PEX1、PEX2、PEX3、PEX5、PEX6、PEX10、PEX11B、PEX12、PEX13、PEX14、PEX16、PEX19、PEX26、PFN1、PINK1、PLCB1、PNPO、PON1、PON2、PON3、PPARGC1A、PRDM8、PRICKLE1、PRKN、PRNP、PRPH、PRRT2、PSAP、S106β、SCARB2、SCN1A、SCN1B、SCN2A、SCN8A、SCN9A、SCN9Ab、SETX、SGSH、SIGMAR1、SIK1、SKP1、SLC1A1、SLC1A2、SLC2A1、SLC6A1、SLC9A6、SLC12A5、SLC13A5、SLC25A12、SLC25A22、SLCA17A5、SMN1、SMPD1、SNCA、SNRPN、SOD1、SPG11、SPTAN1、SQSTM1、ST3GAL3、ST3GAL5、STX1B、STXBP1、SYP、SYT1、SZT2、TAF15、TARDBP、TBC1D24、TBCE、TBK1、TBP、TITF-1、TREM2、UBA5、UBE1、UBE3A、UBQLN2、UCH-L1、UNC13A、VAPB、VCP、VPS35、WWOX、およびXBP1を含むかまたはからなる群から選択される遺伝子に由来する。
【0143】
一実施形態では、少なくとも1つの導入遺伝子は、導入遺伝子の標的の特異性および/または発現を高める少なくとも1つのエレメントの制御下にある。
【0144】
導入遺伝子の標的の特異性および/または発現を高めるエレメントの例として、限定するものではないが、プロモーター、転写後調節エレメント(PRE)、ポリアデニル化(poly A)シグナル配列および上流エンハーサー(USE)、CMVエンハーサーおよびイントロンが挙げられる。
【0145】
一実施形態では、少なくとも1つの導入遺伝子は、少なくとも1つのプロモーターの制御下にある。
【0146】
当業者は、標的細胞における導入遺伝子の発現が、限定するものではないが、種に特異的、誘導性、組織特異的、または細胞周期に特異的であるプロモーターを含む特定のプロモーターを必要とし得ることを理解し得る。
【0147】
一実施形態では、プロモーターは、標的とされる細胞に対する指向性を有するプロモーターである。
【0148】
一実施形態では、プロモーターは、標的の組織において一定期間導入遺伝子の発現を駆動する。
【0149】
プロモーターにより駆動される発現は、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、3週間、22日間、23日間、24日間、25日間、26日間、27日間、28日間、29日間、30日間、31日間、1カ月間、2カ月間、3カ月間、4カ月間、5カ月間、6カ月間、7カ月間、8カ月間、9カ月間、10カ月間、11カ月間、1年間、13カ月間、14カ月間、15カ月間、16カ月間、17カ月間、18カ月間、19カ月間、20カ月間、21カ月間、22カ月間、23カ月間、2年間、3年間、4年間、5年間、6年間、7年間、8年間、9年間、10年間、または10年超の期間であり得る。
【0150】
一実施形態では、プロモーターは、導入遺伝子の持続的な発現のため弱いプロモーターである。
【0151】
プロモーターは、天然に存在し得るかまたは天然に存在しないものであってもよい。プロモーターの非限定的な例として、限定するものではないが、ウイルスプロモーター、植物プロモーター、および哺乳類のプロモーターが挙げられる。一実施形態では、プロモーターは、ヒトプロモーターであり得る。一実施形態では、プロモーターは、トランケートされていてもよく、または変異していてもよい。
【0152】
大部分の組織で発現を駆動または促進するプロモーターとして、限定するものではないが、ヒト伸長因子1a-サブユニット(EF1a)、サイトメガロウイルス(CMV)immediate-earlyエンハーサーおよび/またはプロモーター、ニワトリβアクチン(CBA)およびその誘導体CAG、β-グルクロニダーゼ(GUSB)、ならびにユビキチンC(UBC)が挙げられる。
【0153】
特定の細胞種に対する発現を制限するための組織または細胞に特異的な発現エレメント、たとえばニューロン、ニューロンのサブタイプ、または、アストロサイトもしくはオリゴデンドロサイトなどのグリア細胞に対する発現を制限するために使用され得るCNSプロモーターなどが、使用され得る。
【0154】
ニューロンに関する組織または細胞に特異的な発現エレメントの適切な例として、限定するものではないが、神経特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター、血小板由来増殖因子(PDGF)プロモーター、血小板由来増殖因子B鎖(PDGF-β)プロモーター、シナプシン(Syn)プロモーター、メチル-CpG結合タンパク質2(MeCP2)プロモーター、Ca2+/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMKII)プロモーター、代謝型グルタミン酸受容体2(mGluR2)プロモーター、ニューロフィラメントL(NFL)プロモーター、ニューロフィラメントH(NFH)プロモーター、Βグロビンミニ遺伝子ηβ2プロモーター、プレプロエンケファリン(PPE)プロモーター、エンケファリン(Enk)プロモーター、および興奮性アミノ酸トランスポーター2(EAAT2)プロモーターが挙げられる。
【0155】
アストロサイトに関する組織または細胞に特異的な発現エレメントの適切な例として、限定するものではないが、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)プロモーターおよびEAAT2プロモーターが挙げられる。
【0156】
オリゴデンドロサイトに関する組織または細胞に特異的な発現エレメントの適切な例として、限定するものではないが、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)プロモーターが挙げられる。
【0157】
一実施形態では、プロモーターは、ユビキタスなプロモーターである。
【0158】
ユビキタスなプロモーターの適切な例として、限定するものではないが、CMV、CBA(その誘導体CAG、CBhなどを含む)、EF-1a、PGK、UBC、GUSB(hGBp)、およびUCOEが挙げられる
【0159】
一実施形態では、プロモーターは、組織または細胞に特異的ではない。
【0160】
一実施形態では、プロモーターは、操作されたプロモーターである。
【0161】
一実施形態では、プロモーターは、天然に発現したタンパク質由来のプロモーターである。
【0162】
好ましい実施形態では、プロモーターは、CAGプロモーター(CMV immediate earlyエンハーサーおよびニワトリβアクチンプロモーター)である。
【0163】
一実施形態では、CNS疾患は、CNS感染性疾患、CNS変性疾患、CNS自己免疫疾患、CNS腫瘍疾患、脳血管疾患、CNS損傷、またはCNS構造欠陥である。
【0164】
一実施形態では、CNS疾患は、酸性リパーゼ疾患、酸性マルターゼ欠乏症、酸蓄積症、後天性てんかん様失語症、急性散在性脳脊髄炎、注意欠陥多動障害(ADHD)、アディー瞳孔、アディー症候群、副腎白質ジストロフィー、失認、アイカルディ症候群、エカルディ‐グティエール症候群障害、アレキサンダー病、アルパーズ病、交代性片麻痺、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、無脳症、動脈瘤、アンジェルマン症候群、血管腫症、無酸素症、抗リン脂質抗体症候群、失語症、失行症、くも膜炎、アーノルド・キアリ奇形、芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素欠損症(AADC欠損症)、アスパルチルグルコサミン尿症、アスペルガー症候群、運動失調、毛細血管拡張性運動失調症(Louis-Bar症候群)、小脳変性症運動失調および小脳変性症または脊髄小脳変性症、注意欠陥多動障害、自閉症、自律神経障害、バース症候群、バッテン病、Becker病の筋強直、ベーチェット病、ベル麻痺、Bernhardt-Roth症候群、ビンスワンガー病、ブロッホ・ズルツベルガー症候群、Bradbury-Eggleston症候群、ブラウン・セカール症候群、球脊髄性筋萎縮症、CADASIL、カナバン病、カウザルギー、海面状血管腫(cavernomas、cavernous angioma)、中央頸髄症候群、脊髄中心症候群、橋中心髄鞘崩壊症、セラミダーゼ欠乏症、小脳変性症、小脳低形成、脳性脚気、脳性巨人症、脳性麻痺、脳・眼・顔・骨格症候群(COFS)、コレステロールエステル蓄積症、舞踏病、有棘赤血球舞踏病、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、慢性起立性調節障害、慢性疼痛、コケイン症候群II型、コフィン・ローリー症候群、脳梁欠損、先天性筋無力症、大脳皮質基底核変性症、頭部動脈炎、クリー脳炎、クロイツフェルト・ヤコブ病、クッシング症候群、シスチン症、巨大細胞性封入体症(cytomegalic inclusion body disease:CIBD)、ダンシングアイズ・ダンシングフィート症候群(dancing eyes-dancing feet syndrome)、ダンディ・ウォーカー症候群、ダノン病、Dawson病、ドモルシア(De Morsier)症候群、Dejerine-Klumpke麻痺、認知症、小脳歯状核失調、歯状核赤核萎縮症、皮膚筋炎、発達性統合運動障害、Devic症候群、びまん性硬化症、自律神経障害、書字障害、失読症、嚥下障害、統合運動障害、ミオクローヌス性小脳性共同運動障害、進行性小脳性共同運動障害、てんかん(たとえばアーミッシュ小児てんかん症候群[AIES]、良性家族性乳児けいれん[BFIS]、良性家族性新生児けいれん[BFNS]、小児欠神てんかん[CAE]、小児期発症てんかん性脳症[COEE]、ドラベ症候群[DS]、早期乳児てんかん性脳症[EIEE]、家族性成人型ミオクローヌスてんかん[FAME]、家族性熱性けいれん[FFS]、多様な焦点を示す家族性焦点てんかん[FFEVF]、家族性乳児型ミオクローヌスてんかん[FIME]、家族性側頭葉てんかん[FTLE]、精神遅滞を伴うまたは伴わない焦点性てんかんおよび発話障害[FESD]、全般てんかんおよび発作性ジスキネジア[GEPD]、全般てんかん熱性けいれんプラス[GEFS+]、特発性全般てんかん[IGE]、若年性欠神てんかん[JAE]、若年性ミオクローヌスてんかん[JME]、ミオクローヌス-弛緩性てんかん[MAE]、夜間前頭葉てんかん[NFLE]、進行性ミオクローヌスてんかん [PME]、ピリドキサミン5’-リン酸シンターゼ欠乏症[PNPOD]、ピリドキシン-依存性てんかん[EPD]および乳児重症ミオクローヌスてんかん[SMEI]など)、ファブリー病、ファール病、家族性自律神経障害、家族性血管腫、家族性突発性大脳基底核石灰化、家族性周期性麻痺、家族性痙性麻痺、ファーバー(Farber)病、線維筋性異形成、フィッシャー症候群、floppy infant症候群、フリードライヒ運動失調症、前頭側頭型認知症、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、ゴーシェ病、全般性ガングリオシドーシス、ゲルストマン症候群、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、巨大軸索ニューロパチー、巨細胞性動脈炎、巨細胞性封入体病、グロボイド細胞白質ジストロフィー、舌咽神経痛、糖原病、GM1ガングリオシドーシス、GM2ガングリオシドーシス(テイ・サックス病)、ギラン・バレー症候群、ハラーホルデン・スパッツ症候群、持続性片側頭痛、交代性片麻痺(hemiplegia alterans)、遺伝性痙性対麻痺、多発神経炎型遺伝性失調症、Holmes-Adie症候群、全前脳症、Hughes症候群、ハンチントン病、水無脳症、水脊髄症、副腎皮質ホルモン過剰症、免疫介在性脳脊髄炎、封入体筋炎、色素失調症、乳児筋緊張低下、乳児神経軸索ジストロフィー、後頭孔脳脱出症、Isaac症候群、ジュベール症候群、Kearns-Sayre症候群(Keams-Sayre syndrome)、Kennedy病、Kinsbourne症候群、クライン・レビン症候群、クリッペル・ファイル症候群、Klippel-Trenaunay症候群(KTS)、クリュバー・ビューシー症候群、Korsakoff健忘性症候群、クラッベ病、クーゲルベルク・ヴェランダー病、ランバート・イートン筋無力症症候群、Landau-Kleffner症候群、外側大腿皮神経絞扼(lateral femoral cutaneous nerve entrapment)、髄質延髄外側症候群、リー症候群、レノックス・ガストー症候群、レッシュ・ナイハン症候群、Levine-Critchley症候群、レビー小体認知症、リポイドタンパク症、脳回欠損、閉じ込め症候群、Lou Gehrig病、ループス、ライム病、マシャド・ジョセフ病、大脳症、α-マンノシドーシス、β-マンノシドーシス、メルカーソン・ローゼンタール症候群、メンケス病、異常感覚性大腿痛、異染性白質ジストロフィー、小頭症、ミラー・フィッシャー症候群、メビウス症候群、ムコ多糖症I-H型(ハーラー症候群)、ムコ多糖症I-H/S型(Hurler-Scheie症候群)、ムコ多糖症IS型(Scheie症候群)、ムコ多糖症II型(Hunter症候群)、ムコ多糖症III-A型(サンフィリポ症候群A)、ムコ多糖症III-B型(サンフィリポ症候群B)、ムコ多糖症III-C型(サンフィリポ症候群C)、ムコ多糖症III-D型(サンフィリポ症候群D)、ムコ多糖症IV-B型(モルキオ症候群B)、ムコ多糖症VI型(マロトー・ラミー症候群)、ムコ多糖症VII型(スライ症候群)、ムコ多糖症IX型(Natowicz症候群)、多発性硬化症、筋ジストロフィー、重症筋無力症、アルパーズ症候群(Myelinoclastic Diffuse Sclerosis)、ナルコレプシー、神経有棘赤血球症、神経線維腫症、悪性症候群、神経サルコイドーシス、ニーマン・ピック病、大田原症候群、オリーブ橋小脳萎縮症、眼球クローヌス・ミオクローヌス、O’Sullivan-McLeod症候群、パントテン酸キナーゼ関連神経変性症、腫瘍随伴症候群、錯感覚、パーキンソン病、発作性舞踏病アテトーゼ、発作性片側頭痛、Parry-Romberg症候群、ペリツェウス・メルツバッハ病、Pena-Shokeir症候群II型、脳室周囲白質軟化症、フィタン酸蓄積症、ピック病、梨状筋症候群、多発性筋炎、ポンペ病、ポリオ後症候群、PCA(posterior cortical atrophy)、原発性歯状核萎縮症(Primary Dentatum Atrophy)、原発性側索硬化症、原発性進行性失語症、プリオン病、進行性片側顔面萎縮症、進行性歩行運動失調、進行性多発性白質脳症、進行性硬化性灰白異栄養症、進行性核上性麻痺、顔貌失認、ラムゼイ・ハント症候群I、ラムゼイ・ハント症候群II、ラスムッセン脳炎、レフサム病、レット症候群、Reye症候群、ライリー・デイ症候群、サンドホフ病、シルダー病、Seitelberger病、シャイ・ドレーガー症候群、シェーグレン症候群、痙縮、二分脊椎、脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳失調症、脊髄小脳萎縮症、脊髄小脳変性症、スティール・リチャードソン・オルゼウスキー症候群、線条体黒質変性症、スタージ・ウェーバー症候群、遅発性ジスキネジア、タウオパチー、テイ・サックス病、胸郭出口症候群、甲状腺中毒性ミオパチー、三叉神経痛、トッド麻痺、三叉神経痛、熱帯性痙性不全対麻痺症、トロイアー症候群、血管性認知症、フォン‐エコーノモ病、フォンヒッペル・リンダウ病(VHL)、フォンレックリングハウゼン病、ワレンベルグ症候群、ウェルドニッヒ・ホフマン病、ウェルニッケ・コルサコフ症候群、ウエスト症候群、ウィップル病、ウィリアムズ症候群、ウィルソン病、ウォルマン病、X連鎖球脊髄性筋萎縮症、ツェルウェーガー症候群、多発性硬化萎縮症、レビー小体型認知症(LBD)、およびアンジェルマン症候群を含むかまたはからなる群から選択される。
【0165】
実施例に示されるように、本発明者らは、本発明の修飾されたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが、線条体、視床、黒質、頭頂皮質、海馬、および/または淡蒼球を含む脳の特定の領域に有効に形質導入できることを示している。よって、本発明の修飾されたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、線条体、視床、黒質、頭頂皮質、海馬、および淡蒼球を標的化するため、ならびに/または線条体、視床、黒質、頭頂皮質、海馬、および淡蒼球に影響する疾患を処置するために非常に興味深いものである。
【0166】
たとえば、線条体、黒質、視床、黒質、淡蒼球、頭頂皮質、および/または海馬に影響する疾患として、限定するものではないが、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化萎縮症、レビー小体型認知症(LBD)、進行性核上性麻痺、およびアンジェルマン症候群が挙げられる。一部の実施形態では、CNS疾患は、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化萎縮症、レビー小体型認知症(LBD)、進行性核上性麻痺、前頭側頭型認知症、およびアンジェルマン症候群からなる群から選択される。
【0167】
本発明者らは、本発明の修飾されたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターがニューロンに有効に形質導入できることを示している。
【0168】
よって、一実施形態では、CNS疾患は、神経性疾患またはニューロンに影響する疾患である。
【0169】
また本発明者らは、本発明の修飾されたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが、運動機能の制御に関与するニューロンに効果的に形質導入できることを示している。よって、一実施形態では、CNS疾患は、運動ニューロンの疾患または症候群である。
【0170】
運動ニューロンの疾患または症候群の非限定的な例として、運動障害、たとえば運動低下性運動障害および多動性運動障害が挙げられる。
【0171】
運動低下性運動障害の非限定的な例として、限定するものではないが、パーキンソン病(原発性または特発性パーキンソン症)、続発性パーキンソン症、パーキンソンプラス症候群、Hallevorden-Spatz病、進行性核上性眼筋まひ、および線条体黒質変性症(striatonigral deneneration)が挙げられる。
【0172】
多動性運動障害の非限定的な例として、限定するものではないが、ジストニア、薬物誘発性ジストニア、特発性家族性ジストニア、特発性非家族性ジストニア、痙性斜頸、突発性口腔顔面ジストニア、眼瞼けいれん、錐体外路運動障害、振戦、本態性振戦、薬物誘発性振戦、ミオクローヌス、眼球クローヌス、舞踏病、薬物誘発性舞踏病、リウマチ性舞踏病(シデナム舞踏病)、ハンチントン舞踏病、バリズム、片側バリズム、アテトーシス、ジスキネジア、遅発性ジスキネジア、チック症、トゥレット症候群、薬物誘発性チック症、および有機物由来のチック症(tics of organic origin)、常同性運動障害、発作性夜行性肢運動、PLMT(painful legs (or arms)、moving toes (or fingers) syndrome)、散発性むずむず脚症候群、家族性むずむず脚症候群、全身硬直症候群、異常性頭部運動(abnormal head movements)、筋痙攣、攣縮、および線維束性収縮が挙げられる。
【0173】
一実施形態では、CNS疾患は、アルツハイマー病であり、少なくとも1つの導入遺伝子は、3R tau、4R tau、AGER、APP、BAX、BCL-2、CHRNA7、DRD2、GFAP、GRIA1、GRIA2、GRIK1、GRIN1、IL-1、SLC1A1、SYP、およびSYT1を含むかまたはからなる群から選択される遺伝子のcDNAを含む。
【0174】
一実施形態では、CNS疾患は、パーキンソン病であり、少なくとも1つの導入遺伝子は、ATP13A2、BDNF、EGLN1、GBA、GSTM1、LRRK2、NR4A2、NTRK2、PARK2、PARK7、PINK1、PRKN、S106β、SKP1、SNCA、VPS35、およびUCH-L1を含むかまたはからなる群から選択される遺伝子のcDNAを含む。
【0175】
一実施形態では、CNS疾患は、ハンチントン病であり、少なくとも1つの導入遺伝子は、ATN1、ATXN1、ATXN2、ATXN3、FTL、HTT、IT15、JPH3、PRNP、SLC2A3、TBP、TITF-1、およびXBP1を含むかまたはからなる群から選択される遺伝子のcDNAを含む。
【0176】
一実施形態では、CNS疾患は、フリードライヒ運動失調であり、少なくとも1つの導入遺伝子は、FXN遺伝子のcDNAを含む。
【0177】
一実施形態では、CNS疾患は、カナバン病であり、少なくとも1つの導入遺伝子は、ASPA遺伝子のcDNAを含む。
【0178】
一実施形態では、CNS疾患は、筋ジストロフィーであり、少なくとも1つの導入遺伝子は、DMD遺伝子のcDNAを含む。
【0179】
一実施形態では、CNS疾患は、脊髄性筋萎縮症であり、少なくとも1つの導入遺伝子は、BICD2、CHCHD10、DNAJB2、DYNC1H1、IGHMBP2、SIGMAR1、SMN1、TBCE、VAPB、およびUBE1を含むかまたはからなる群から選択される遺伝子のcDNAを含む。
【0180】
一実施形態では、CNS疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)であり、少なくとも1つの導入遺伝子は、ALS2、ANG、ANXA11、ATXN2、C9orf72、CHMP2B、CFAP410、CHCHD10、CCNF、DAO、DCTN1、EPHA4、ERBB4、FIG4、FUS、GLE1、GLT8D1、HNRNPA1、MATR3、NEFH、NEK1、OPTN、PFN1、PON1、PON2、PON3、PPARGC1A、PRPH、SETX、SIGMAR1、SMN1、SOD1、SPG11、SQSTM1、TAF15、TARDBP、TBK1、TREM2、UBQLN2、UNC13A、VAPB、およびVCPを含むかまたはからなる群から選択される遺伝子のcDNAを含む。
【0181】
一実施形態では、CNS疾患は、α-マンノシドーシスであり、少なくとも1つの導入遺伝子は、MAN2B1、MAN2B2、およびMAN2C1を含むかまたはからなる群から選択される遺伝子のcDNAを含む。
【0182】
一実施形態では、CNS疾患は、アスパルチルグルコサミン尿症であり、少なくとも1つの導入遺伝子は、AGA遺伝子のcDNAを含む。
【0183】
一実施形態では、CNS疾患は、バッテン病であり、少なくとも1つの導入遺伝子は、CLN1、CLN2、CLN3、CLN5、CLN6、CLN8、CTSD、およびMFSD8を含むかまたはからなる群から選択される遺伝子のcDNAを含む。
【0184】
一実施形態では、CNS疾患は、β-マンノシドーシスであり、少なくとも1つの導入遺伝子は、MANBA遺伝子のcDNAを含む。
【0185】
一実施形態では、CNS疾患は、シスチン症であり、少なくとも1つの導入遺伝子は、CTNS遺伝子のcDNAを含む。
【0186】
一実施形態では、CNS疾患は、ダノン病であり、少なくとも1つの導入遺伝子は、LAMP2遺伝子のcDNAを含む。
【0187】
一実施形態では、CNS疾患は、ファブリー病であり、少なくとも1つの導入遺伝子は、GLA遺伝子のcDNAを含む。
【0188】
一実施形態では、CNS疾患は、Farber病であり、少なくとも1つの導入遺伝子は、ASAH1遺伝子のcDNAを含む。
【0189】
一実施形態では、CNS疾患は、フコシドーシスであり、少なくとも1つの導入遺伝子は、FUCA1遺伝子のcDNAを含む。
【0190】
一実施形態では、CNS疾患は、ガラクトシアリドーシスであり、少なくとも1つの導入遺伝子は、CTSA遺伝子のcDNAを含む。
【0191】
一実施形態では、CNS疾患は、ゴーシェ病であり、少なくとも1つの導入遺伝子は、GBA遺伝子のcDNAを含む。
【0192】
一実施形態では、cDNA疾患は、クラッベ病であり、少なくとも1つの導入遺伝子は、少なくとも1つの導入遺伝子は、GALCおよびPSAPを含むかまたはからなる群から選択される遺伝子のcDNAを含む。
【0193】
一実施形態では、cDNA疾患は、白質ジストロフィーであり、少なくとも1つの導入遺伝子は、ARSA遺伝子のcDNAを含む。
【0194】
一実施形態では、CNS疾患は、ムコ多糖症(たとえばハーラー症候群、Hurler-Scheie症候群、Scheie症候群、Hunter症候群、サンフィリポ症候群A、B、C、またはD、モルキオ症候群B、マロトー・ラミー症候群、スライ症候群、またはNatowicz症候群のいずれか)であり、少なくとも1つの導入遺伝子は、ARSB、GAA、GALNS、GLB1、GNS、GUSB、HGSNAT、HYAL1、IDS、IDUA、LAL、NAGA、NAGLU、NEU1、NPC1、NPC2、SGSH、SLCA17A5、およびSMPD1を含むかまたはからなる群から選択される遺伝子のcDNAを含む。
【0195】
一実施形態では、CNS疾患は、脊髄小脳失調症であり、少なくとも1つの導入遺伝子は、ATXN1、ATXN2、ATXN3を含むかまたはからなる群から選択される遺伝子のcDNAを含む。
【0196】
一実施形態では、CNS疾患は、副腎白質ジストロフィーであり、少なくとも1つの導入遺伝子は、ABCD1、ACOX1、PEX1、PEX2、PEX3、PEX5、PEX6、PEX10、PEX11B、PEX12、PEX13、PEX14、PEX16、PEX19、およびPEX26を含むかまたはからなる群から選択される遺伝子のcDNAを含む。
【0197】
一実施形態では、CNS疾患は、アンジェルマン症候群であり、少なくとも1つの導入遺伝子は、ATP10A、MBD5、OCA2、SLC9A6、SNRPN、およびUBE3Aを含むかまたはからなる群から選択される遺伝子のcDNAを含む。
【0198】
一実施形態では、CNS疾患は、てんかんであり、少なくとも1つの導入遺伝子は、AARS、ADGRV1、ADRA2B、ALDH7A1、ALG13、ARHGEF9、ARV1、CACNA1A、CACNA1H、CACNB4、CASR、CDKL5、CERS1、CHD2、CHRNA2、CHRNA4、CHRNB2、CLCN2a、CNTN2、CPA6、CSTB、DEPDC5、DNM1、DOCK7、EEF1A2、EFHC1、EPM2A、FGF12、FRRS1L、GABRA1、GABRB1、GABRB3、GABRD、GABRG2、GAL、GNAO1、GOSR2、GPR98、GRIN2A、GRIN2B、GRIN2D、GUF1、HCN1、ITPA、KCNA2、KCNB1、KCNC1、KCNMA1、KCNQ2、KCNQ3、KCNT1、KCTD7、LGI1、LMNB2、NECAP1、NHLRC1、PCDH19、PLCB1、PNPO、PRDM8、PRICKLE1、PRRT2、SCARB2、SCN1A、SCN1B、SCN2A、SCN8A、SCN9A、SCN9Ab、SIK1、SLC12A5、SLC13A5、SLC1A2、SLC25A12、SLC25A22、SLC2A1、SLC6A1、SPTAN1、ST3GAL3、ST3GAL5、STX1B、STXBP1、SZT2、TBC1D24、UBA5、およびWWOXを含むかまたはからなる群から選択される遺伝子のcDNAを含む。
【0199】
当業者は、遺伝子が、複数の転写上および/または翻訳上のアイソフォームを有し得ること、および本明細書中記載の遺伝子のcDNAを含む導入遺伝子が、標的遺伝子の転写上のバリアントおよび/またはスプライスバリアントの潜在的な使用を包有することを認識している。
【0200】
一実施形態では、本発明に係る修飾されたAAVベクターは、CNSに直接投与される。
【0201】
「CNSに直接投与される」は、脊髄内または脳内に投与されることを意味する。
【0202】
一実施形態では、本発明に係る修飾されたAAVベクターは、脊髄内および/または脳内投与により投与され得る。
【0203】
一実施形態では、本発明に係る修飾されたAAVベクターは、脊髄内投与される。
【0204】
一実施形態では、脊髄内投与は、くも膜下腔内および硬膜外投与を含むかまたはからなる。
【0205】
一実施形態では、脊髄内投与は、くも膜下腔内投与を含むかまたはからなる。
【0206】
一実施形態では、本発明に係る修飾されたAAVベクターは、脳内に投与される。
【0207】
一実施形態では、脳内投与は、線条体(たとえば被殻、尾状核、側坐核、嗅結節、淡蒼球外節、および/または淡蒼球内節など)、視床、視床下部、視床上部、腹側視床、実質、大脳、髄質、深部小脳核(たとえば黒質、歯状、栓状核、球状核、および/または室頂核など)、脳脊髄液(CSF)、髄膜、硬膜、くも膜、軟膜、クモ膜下槽(たとえば大槽、橋槽(Pontine cistern)、脚間槽、交叉槽、大脳外側窩槽、上槽、および/または終板槽など)、くも膜下腔、皮質、中隔、橋、ならびに小脳を含むかまたはからなる群から選択される部位での投与である。
【0208】
一実施形態では、本発明に係る修飾されたAAVベクターは、線条体内(すなわち線条体、たとえば被殻、尾状核、側坐核、嗅結節、淡蒼球外節および/または淡蒼球内節)、視床内(すなわち視床)、大槽内(すなわちクモ膜下槽、たとえば大槽、橋槽(Pontine cistern)、脚間槽、交叉槽、大脳外側窩槽、上槽、および/または終板槽;好ましくは大槽)に投与される。
【0209】
一実施形態では、本発明に係る修飾されたAAVベクターは、実質内に投与される。
【0210】
一実施形態では、本発明に係る修飾されたAAVベクターは、線条体内、視床内、大槽内、またはくも膜下腔内に投与される。
【0211】
一実施形態では、本発明に係る修飾されたAAVベクターは、線条体内または視床内に投与される。
【0212】
一実施形態では、本発明に係る修飾されたAAVベクターは、脳室内に投与されない(すなわち、脳室系、たとえば右側脳室、左側脳室、第三脳室、および/または第四脳室に投与されない)。
【0213】
「投与」または「投与される」は、本明細書中使用される場合、注射、注入、および当業者により知られている他のいずれかの投与手段を包有することを意味する。
【0214】
一実施形態では、本発明に係る修飾されたAAVベクターは、治療上有効量でそれを必要とする対象に投与される。
【0215】
一実施形態では、本発明に係る修飾されたAAVベクターは、約10ウイルスゲノム(vg)~約1015vg、たとえば約10vg~約1014vg、約10vg~約1013vg、約10vg~約1012vg、約10vg~約1011vg、約10vg~約1010vg、約10vg~約10vg、約10vg~約1015vg、約10vg~約1014vg、約10vg~約1013vg、約10vg~約1012vg、約10vg~約1011vg、約10vg~約1010vg、約1010vg~約1015vg、約1010vg~約1014vg、約1010vg~約1013vg、約1010vg~約1012vg、約1010vg~約1011vg、約1011vg~約1015vg、約1011vg~約1014vg、約1011vg~約1013vg、約1011vg~約1012vg、約1012vg~約1015vg、約1012vg~約1014vg、約1012vg~約1013vg、約1013vg~約1015vgの範囲の用量で投与される。
【0216】
用語「ベクターゲノム」は、「vg」と略され、ベクター、たとえばウイルスベクターのポリヌクレオチド配列のセットを含む1つ以上のポリヌクレオチドを表す。ベクターゲノムは、ウイルス粒子にキャプシド形成され得る。特定のウイルスベクターに応じて、ベクターゲノムは、一本鎖DNA、二本鎖DNA、または一本鎖RNA、または二本鎖RNAを含み得る。ベクターゲノムは、特定のウイルスベクターに結合した内因性配列および/または組み換え技術(たとえば導入遺伝子)を介して特定のウイルスベクターに挿入された異種性配列を含み得る。一部の実施形態では、ウイルスベクターの核酸の力価は、vg/mlの観点で測定され得る。この力価の測定に適した方法は、当該分野で知られており、たとえば定量的PCRが挙げられる。
【0217】
本明細書中使用される場合、用語「約」は、数値の前に設定される場合、上記数値が近似値であり、小さな変動が、開示される実施形態の実務に有意に影響しないことを意味する。このような小さな変動は、たとえば±1%、±2%、±3%、±4%、±5%、±6%、±7%、±8%、±9%、±10%、またはそれ以上である。
【0218】
一実施形態では、本発明に係る修飾されたAAVベクターは、約1×10vg±0.5×10、約2×10vg±0.5×10、約2.75×10vg±0.5×10、約3×10vg±0.5×10、約4×10vg±0.5×10、約5×10vg±0.5×10、約6×10vg±0.5×10、約7×10vg±0.5×10、約8×10vg±0.5×10、約9×10vg±0.5×10、約1×10vg±0.5×10、約2×10vg±0.5×10、約3×10vg±0.5×10、約4×10vg±0.5×10、約5×10vg±0.5×10、約6×10vg±0.5×10、約7×10vg±0.5×10、約8×10vg±0.5×10、約9×10vg±0.5×10、約1×1010vg±0.5×1010、約2×1010vg±0.5×1010、約3×1010vg±0.5×1010、約4×1010vg±0.5×1010、約5×1010vg±0.5×1010、約6×1010vg±0.5×1010、約7×1010vg±0.5×1010、約8×1010vg±0.5×1010、約9×1010vg±0.5×1010、約1×1011vg±0.5×1011、約2×1011vg±0.5×1011、約3×1011vg±0.5×1011、約4×1011vg±0.5×1011、約5×1011vg±0.5×1011、約6×1011vg±0.5×1011、約7×1011vg±0.5×1011、約8×1011vg±0.5×1011、約9×1011vg±0.5×1011、約1×1012vg±0.5×1012、約2×1012vg±0.5×1012、約3×1012vg±0.5×1012、約4×1012vg±0.5×1012、約5×1012vg±0.5×1012、約6×1012vg±0.5×1012、約7×1012vg±0.5×1012、約8×1012vg±0.5×1012、約9×1012vg±0.5×1012、約1×1013vg±0.5×1013、約2×1013vg±0.5×1013、約3×1013vg±0.5×1013、約4×1013vg±0.5×1013、約5×1013vg±0.5×1013、約6×1013vg±0.5×1013、約7×1013vg±0.5×1013、約8×1013vg±0.5×1013、約9×1013vg±0.5×1013、約1×1014vg±0.5×1014、約2×1014vg±0.5×1014、約3×1014vg±0.5×1014、約4×1014vg±0.5×1014、約5×1014vg±0.5×1014、約6×1014vg±0.5×1014、約7×1014v、g±0.5×1014、約8×1014vg±0.5×1014、約9×1014vg±0.5×1014、約1×1015vg±0.5×1015、約2×1015vg±0.5×1015、約3×1015vg±0.5×1015、約4×1015vg±0.5×1015、約5×1015vg±0.5×1015、約6×1015vg±0.5×1015、約7×1015vg±0.5×1015、約8×1015vg±0.5×1015、約9×1015vg±0.5×1015の用量で投与される。
【0219】
一実施形態では、本発明に係る修飾されたAAVベクターは、約1×10vg/kg±0.5×10、約2×10vg/kg±0.5×10、約3×10vg/kg±0.5×10、約4×10vg/kg±0.5×10、約5×10vg/kg±0.5×10、約6×10vg/kg±0.5×10、約7×10vg/kg±0.5×10、約8×10vg/kg±0.5×10、約9×10vg/kg±0.5×10、約1×10vg/kg±0.5×10、約2×10vg/kg±0.5×10、約3×10vg/kg±0.5×10、約4×10vg/kg±0.5×10、約5×10vg/kg±0.5×10、約6×10vg/kg±0.5×10、約7×10vg/kg±0.5×10、約8×10vg/kg±0.5×10、約9×10vg/kg±0.5×10、約1×10vg/kg±0.5×10、約2×10vg/kg±0.5×10、約3×10vg/kg±0.5×10、約4×10vg/kg±0.5×10、約5×10vg/kg±0.5×10、約6×10vg/kg±0.5×10、約7×10vg/kg±0.5×10、約8×10vg/kg±0.5×10、約9×10vg/kg±0.5×10、約1×10vg/kg±0.5×10、約2×10vg/kg±0.5×10、約3×10vg/kg±0.5×10、約4×10vg/kg±0.5×10、約5×10vg/kg±0.5×10、約6×10vg/kg±0.5×10、約7×10vg/kg±0.5×10、約8×10vg/kg±0.5×10、約9×10vg/kg±0.5×10、約1×1010vg/kg±0.5×1010、約2×1010vg/kg±0.5×1010、約3×1010vg/kg±0.5×1010、約4×1010vg/kg±0.5×1010、約5×1010vg/kg±0.5×1010、約6×1010vg/kg±0.5×1010、約7×1010vg/kg±0.5×1010、約8×1010vg/kg±0.5×1010、約9×1010vg/kg±0.5×1010、約1×1011vg/kg±0.5×1011、約2×1011vg/kg±0.5×1011、約3×1011vg/kg±0.5×1011、約4×1011vg/kg±0.5×1011、約5×1011vg/kg±0.5×1011、約6×1011vg/kg±0.5×1011、約7×1011vg/kg±0.5×1011、約8×1011vg/kg±0.5×1011、約9×1011vg/kg±0.5×1011、約1×1012vg/kg±0.5×1012、約2×1012vg/kg±0.5×1012、約3×1012vg/kg±0.5×1012、約4×1012vg/kg±0.5×1012、約5×1012vg/kg±0.5×1012、約6×1012vg/kg±0.5×1012、約7×1012vg/kg±0.5×1012、約8×1012vg/kg±0.5×1012、約9×1012vg/kg±0.5×1012、約1×1013vg/kg±0.5×1013、約2×1013vg/kg±0.5×1013、約3×1013vg/kg±0.5×1013、約4×1013vg/kg±0.5×1013、約5×1013vg/kg±0.5×1013、約6×1013vg/kg±0.5×1013、約7×1013vg/kg±0.5×1013、約8×1013vg/kg±0.5×1013、約9×1013vg/kg±0.5×1013、約1×1014vg/kg±0.5×1014の用量で投与される。
【0220】
望ましい効果または治療効果を達成するために必要とされる修飾されたAAVベクターの用量は、限定するものではないが、特定の投与経路、治療効果を達成するために必要とされる遺伝子、RNA、またはタンパク質の発現のレベル、処置される特定の疾患、および遺伝子、RNA、またはタンパク質の産物の安定性を含むいくつかの要因に基づき変動する。当業者は、上述の要因および当該分野でよく知られている他の要因に基づき特定の疾患を有する対象を処置するための用量の範囲を容易に決定し得る。
【0221】
また、対象に投与される修飾されたAAVベクターの容量は、特に、対象の大きさ、修飾されたAAVベクターの用量、および投与経路に基づき変動する。たとえば、脳内投与では、約1μL~約10μLまたは約10μL~約100μLまたは約100μL~約1000μLまたは約1mL~約10mLの範囲の容量が使用され得る。
【0222】
一実施形態では、対象に投与される修飾されたAAVベクターの容量は、約1μL±0.5μL、約2μL±0.5μL、約3μL±0.5μL、約4μL±0.5μL、約5μL±0.5μL、約6μL±0.5μL、約7μL±0.5μL、約8μL±0.5μL、約9μL±0.5μL、約10μL±0.5μL、約15μL±5μL、約20μL±5μL、約25μL±5μL、約30μL±5μL、約35μL±5μL、約40μL±5μL、約45μL±5μL、約50μL±5μL、約55μL±5μL、約60μL±5μL、約65μL±5μL、約70μL±5μL、約75μL±5μL、約80μL±5μL、約85μL±5μL、約90μL±5μL、約95μL±5μL、約100μL±5μL、約150μL±50μL、約200μL±50μL、約250μL±50μL、約300μL±50μL、約350μL±50μL、約400μL±50μL、約450μL±50μL、約500μL±50μL、約550μL±50μL、約600μL±50μL、約650μL±50μL、約700μL±50μL、約750μL±50μL、約800μL±50μL、約850μL±50μL、約900μL±50μL、約950μL±50μL、約1000μL±50μL、約1.5mL±250μL、約2mL±250μL、約2.5mL±250μL、約3mL±250μL、約3.5mL±250μL、約4mL±250μL、約4.5mL±250μL、約5mL±250μL、約5.5mL±250μL、約6mL±250μL、約6.5mL±250μL、約7mL±250μL、約7.5mL±250μL、約8mL±250μL、約8.5mL±250μL、約9mL±250μL、約9.5mL±250μL、約10mL±250μLである。
【0223】
また、対象に投与される修飾されたAAVベクターの投与の速度は、特に、対象の大きさ、修飾されたAAVベクターの用量、修飾されたAAVベクターの容量、および投与経路に応じて変動する。たとえば、脳内投与では、約0.1μL/分~約1μL/分、または約1μL/分~約5μL/分、または約5μL/分~約10μL/分の範囲の投与の速度が使用され得る。
【0224】
一実施形態では、対象に投与される修飾されたAAVベクターの投与の速度は、約0.1μL/分±0.05μL/分、約0.2μL/分±0.05μL/分、約0.3μL/分±0.05μL/分、約0.4μL/分±0.05μL/分、約0.5μL/分±0.05μL/分、約0.6μL/分±0.05μL/分、約0.7μL/分±0.05μL/分、約0.8μL/分±0.05μL/分、約0.9μL/分±0.05μL/分、1μL/分±0.5μL/分、約2μL/分±0.5μL/分、約3μL/分±0.5μL/分、約4μL/分±0.5μL/分、約5μL/分±0.5μL/分、約6μL/分±0.5μL/分、約7μL/分±0.5μL/分、約8μL/分±0.5μL/分、約9μL/分±0.5μL/分、約10μL/分±0.5μL/分である。
【0225】
一実施形態では、修飾されたAAVベクターの総用量または総容量は、連続的に投与され得る(たとえば修飾されたAAVベクターの総用量または総容量が単一のショットまたは注入で注射される)か、または不連続に投与され得る(すなわち修飾されたAAVベクターの総用量または総容量のフラクションが、各ショット間に間欠的な期間を伴い、好ましくは各ショットまたは注入の間に15秒、30秒、45秒、1分、2分、3分、4分、または5分の期間などの短い間欠的な期間を伴い、注射される)
【0226】
また本発明は、少なくとも1つの導入遺伝子を含む修飾されたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに関する。
【0227】
一実施形態では、本発明に係る修飾されたAAVベクターは、本明細書中上述される少なくとも1つの表面に結合した糖類またはその誘導体を含む。
【0228】
一実施形態では、少なくとも1つの導入遺伝子は、タンパク質をコードするcDNAまたはそのフラグメントを含む。
【0229】
特に、cDNAのフラグメントは、タンパク質のN末端部またはC末端部をコードする上記cDNAの一部を含み得る。このようなフラグメントは、たとえば単一のAAVベクターにより担持できず、よって二重AAVベクターの使用を必要とする大きなcDNAの場合に、有用であり得る。
【0230】
あるいは、cDNAのフラグメントは、タンパク質の機能的かつ/または構造上の一部をコードする上記cDNAの一部を含み得る。
【0231】
一実施形態では、cDNAは、3R tau、4R tau、AARS、ABCD1、ACOX1、ADGRV1、ADRA2B、AGA、AGER、ALDH7A1、ALG13、ALS2、ANG、ANXA11、APP、ARHGEF9、ARSA、ARSB、ARV1、ASAH1、ASPA、ATN1、ATP10A、ATP13A2、ATXN1、ATXN2、ATXN3、BAX、BCL-2、BDNF、BICD2、C9orf72、CACNA1A、CACNA1H、CACNB4、CASR、CCNF、CDKL5、CERS1、CFAP410、CHCHD10、CHD2、CHMP2B、CHRNA2、CHRNA4、CHRNA7、CHRNB2、CLCN2a、CLN1、CLN2、CLN3、CLN5、CLN6、CLN8、CNTN2、CPA6、CSTB、CTNS、CTSA、CTSD、DAO、DCTN1、DEPDC5、DMD、DNAJB2、DNM1、DOCK7、DRD2、DYNC1H1、EEF1A2、EFHC1、EGLN1、EPHA4、EPM2A、ERBB4、FGF12、FIG4、FRRS1L、FTL、FUCA1、FUS、FXN、GAA、GABRA1、GABRB1、GABRB3、GABRD、GABRG2、GAL、GALC、GALNS、GBA、GFAP、GLA、GLB1、GLE1、GLT8D1、GNAO1、GNS、GOSR2、GPR98、GRIA1、GRIA2、GRIK1、GRIN1、GRIN2A、GRIN2B、GRIN2D、GSTM1、GUF1、GUSB、HCN1、HGSNAT、HNRNPA1、HTT、HYAL1、IDS、IDUA、IGHMBP2、IL-1、IT15、ITPA、JPH3、KCNA2、KCNB1、KCNC1、KCNMA1、KCNQ2、KCNQ3、KCNT1、KCTD7、LAL、LAMP2、LGI1、LMNB2、LRRK2、MAN2B1、MAN2B2、MAN2C1、MANBA、MATR3、MBD5、MFSD8、NAGA、NAGLU、NECAP1、NEFH、NEK1、NEU1、NHLRC1、NPC1、NPC2、NR4A2、NTRK2、OCA2、OPTN、PARK2、PARK7、PCDH19、PEX1、PEX2、PEX3、PEX5、PEX6、PEX10、PEX11B、PEX12、PEX13、PEX14、PEX16、PEX19、PEX26、PFN1、PINK1、PLCB1、PNPO、PON1、PON2、PON3、PPARGC1A、PRDM8、PRICKLE1、PRKN、PRNP、PRPH、PRRT2、PSAP、S106β、SCARB2、SCN1A、SCN1B、SCN2A、SCN8A、SCN9A、SCN9Ab、SETX、SGSH、SIGMAR1、SIK1、SKP1、SLC1A1、SLC1A2、SLC2A1、SLC6A1、SLC9A6、SLC12A5、SLC13A5、SLC25A12、SLC25A22、SLCA17A5、SMN1、SMPD1、SNCA、SNRPN、SOD1、SPG11、SPTAN1、SQSTM1、ST3GAL3、ST3GAL5、STX1B、STXBP1、SYP、SYT1、SZT2、TAF15、TARDBP、TBC1D24、TBCE、TBK1、TBP、TITF-1、TREM2、UBA5、UBE1、UBE3A、UBQLN2、UCH-L1、UNC13A、VAPB、VCP、VPS35、WWOX、およびXBP1を含むかまたはからなる群から選択される遺伝子に由来する。
【0232】
一実施形態では、少なくとも1つの導入遺伝子は、導入遺伝子の標的の特異性および/または発現を高める少なくとも1つのエレメントの制御下にある。
【0233】
このような導入遺伝子の標的の特異性および/または発現を高めるエレメントの例は、本明細書中上述されており、mutatis mutandisにて適用される。
【0234】
一実施形態では、本発明に係る少なくとも1つの導入遺伝子を含む修飾されたAAVベクターは、組成物の一部である。よって本発明は、本発明に係る導入遺伝子を含む修飾されたAAVベクターを含む組成物に関する。
【0235】
一実施形態では、本発明に係る少なくとも1つの導入遺伝子を含む修飾されたAAVベクターは、医薬の一部である。よって本発明は、本発明に係る少なくとも1つの導入遺伝子を含む修飾されたAAVベクターを含む医薬に関する。
【0236】
一実施形態では、本組成物は、医薬組成物であり、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤、担体、および/または保存剤をさらに含む。よって本発明は、本発明に係る少なくとも1つの導入遺伝子を含む修飾されたAAVベクターと、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤、担体、および/または保存剤とを含む医薬組成物に関する。
【0237】
用語「薬学的に許容される」は、賦形剤、担体、および/または保存剤を表す場合、対象、好ましくはヒトに投与される際にアレルギー反応または同様の望ましくない反応をもたらさない分子実体および組成物を定義することを意味する。ヒトへの投与では、医薬組成物は、たとえばFDA局またはEMAなどの規制局が要求する無菌性、発熱性、および全般的な安全性、および純度の基準と一致しなければならない。
【0238】
これら組成物で使用され得る薬学的に許容される賦形剤、担体、および保存剤として、限定するものではないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、タンパク質(たとえば血清アルブミン、ゼラチン、イムノグロブリンなど)、バッファー物質(たとえばリン酸塩、クエン酸塩、または他の有機酸など)、アミノ酸(たとえばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、リジンなど)、抗酸化剤(たとえばアスコルビン酸など)、キレート剤(たとえばEDTAなど)、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和型植物性脂肪酸の部分的なグリセリド、水、塩、または電解質(たとえば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウムなど)、親水性ポリマー(たとえばポリビニルピロリドン、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマーなど)、セルロースベースの物質(たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリアクリレート、ワックス、非イオン性界面活性剤(たとえばTween、プルロニック、ポリエチレングリコールなど)、および羊毛脂が挙げられる。
【0239】
一実施形態では、本発明に係る医薬組成物は、対象に注射できる製剤に関して薬学的に許容されるビヒクルを含む。これらは、特に等張性、無菌性の生理食塩水(リン酸一ナトリウムまたは二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、または塩化マグネシウムなど、または当該塩の混合物)中にあり得るか、または、場合に応じて、無菌水もしくは生理食塩水の添加後に、注射可能な液剤の構成を可能にする乾燥した、特には凍結乾燥した組成物中にあり得る。
【0240】
一実施形態では、本発明に係る医薬組成物は、哺乳類細胞内に本明細書中記載の修飾されたAAVベクターの進入を促進させる1つ以上の作用物質、たとえば天然および/または合成のポリマー、たとえばポロクサマー、キトサン、シクロデキストリン、デンドリマー、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)ポリマーを含み得る。
【0241】
また本発明は、対象の中枢神経系(CNS)への細胞の形質導入、および/または
対象の中枢神経系(CNS)への導入遺伝子の送達、および/または
対象の中枢神経系(CNS)の予防および/または処置
のためのキットおよびキットオブパーツに関する。
【0242】
一実施形態では、本キットまたはキットオブパーツは、本発明に係る修飾されたAAVベクターまたは組成物を含む。
【0243】
一実施形態では、本キットまたはキットオブパーツは、本発明に係る修飾されたAAVベクターまたは組成物のCNS送達のための装置を含む。
【0244】
CNS送達のための装置は、当該分野で知られており、ポンプ(たとえば後述の浸透圧ポンプおよび/または注入ポンプ)、ならびに/または注射装置(たとえばカテーテル、カニューレ、ニードル、シリンジなど)を使用し得る。
【0245】
任意選択で、注射装置を導くためおよび/または組成物の送達をモニタリングするために、イメージング技術が使用され得る。CNS送達は、定位的注射による送達またはCED(convection enhanced delivery)による送達を含み得る。注射装置は、対象のCNS組織に挿入され得る。当業者は、標的のCNS組織に注射装置を配置するための適切な座標を決定することができる。一実施形態では、配置は、たとえば標的のCNS組織へ注射装置を導くため対象の脳のCTおよび/またはMRIイメージングにより得られる解剖マップを介して達成される。
【0246】
一実施形態では、術中磁気共鳴画像法(iMRI)および/または送達のリアルタイムのイメージングが行われ得る。一実施形態では、装置は、本明細書中記載の修飾されたAAVベクターを投与するために使用される。iMRIは、外科手術中の対象のMRIベースのイメージングの技術として当該分野で知られており、(たとえばCNSに修飾されたAAVベクターを送達するための)外科的手法の成功の確認を支援し、組織の他の部分の損傷のリスクを低減する。一実施形態では、トレーシング剤(たとえばMRI造影亢進剤など)が、ベクターの組織部分布のリアルタイムでのモニタリングを提供するために、修飾されたAAVベクターと同時送達され得る。トレーシング剤の使用は、送達の休止を通知し得る。当該分野で知られている他のトレーシングおよびイメージングの手段もまた、修飾されたAAVベクターの分布を経過観察するために使用され得る。
【0247】
一実施形態では、本発明に係る修飾されたAAVベクターは、AAVベクターの送達のための当該分野で知られている装置および方法を使用して標準的な定位的注射により投与され得る。全般的に、これら方法は、注射装置、一連の座標(たとえば側部(latero-lateral)、背腹側、および吻側尾側の軸に沿ったパラメータ)への送達のため標的化された組織の領域を翻訳するためのプランニングシステム、およびプランニングされた座標による定位的な局在化のための装置(たとえば任意選択で、座標システムとアライメントした位置に頭部を固定するためのプローブおよび構造を含む、定位装置)を使用し得る。MRIにより誘導される外科手術および/または定位的注射に有用であり得るシステムの非限定的な例は、ClearPoint(登録商標)システム(MRI Interventions, Memphis, TN)である。
【0248】
本発明に係る修飾されたAAVベクターをCNSへ送達するための別の例示的かつ非原敵的な方法は、CED(対流亢進送達(convection enhanced delivery))である。本明細書中使用される場合、用語「対流亢進送達」または「CED」は、流体静力学的な圧力が対流分布をもたらす速度での注入による治療用作用物質のCNSへの送達を表し得る。頭蓋内圧力が脳組織を損傷しないように適切なレベルで維持されるように、任意の適切な流速が使用され得る。CEDは、たとえば、カニューレの先端の標的のCNS組織に少なくとも近接した配置を介して適切なカテーテルまたはカニューレ(たとえば段階的な設計の灌流フリーのカニューレ)を使用することにより、達成され得る。カニューレは配置された後、標的CNS組織にカニューレを介して治療用作用物質を送達するポンプに接続される。カニューレの先端からの圧力勾配は、注入の間維持され得る。一実施形態では、注入は、術中MRI(iMRI)などのイメージング法または別のリアルタイムのMRI技術により検出可能なトレーシング剤によりモニタリングされ得る。
【0249】
CEDは、注入液(たとえば本発明に係る修飾されたAAVベクターを含む組成物)を、間質液の静水圧が上回る圧力下でCNSに投入することに基づく。これは、注入液を、CNSの血管周囲と接触させ、伝達を介して注入液を分布しその送達の度合いを高めるポンプのように利用される。
【0250】
一実施形態では、本キットは、本発明に係る修飾されたAAVベクターまたは組成物のCNS送達のための説明書をさらに含む。一実施形態では、本キットは、本明細書中記載の使用および方法を使用して本明細書中記載のCNS疾患を予防および/または処置するための説明書を含む。
【0251】
本明細書中記載のキットは、本明細書中記載のいずれかの方法を行うための説明書と共に、バッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および添付文書を含む、商業的および使用者の観点から望ましい他の物質をさらに含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0252】
図1図1は、マンノシル化rAAV2ベクターを合成するための1つの適切な方法の概略図である。(HN)-は、マンノース部分をカップリングするためにイソチオシアネート(N=C=S)反応基と反応する表面に曝露した一級アミンを表す。この例示のため、2つのマンノース残基のみがAAVカプシドに結合していることが示されている。黒色の矢印は、他のマンノース部分を模式的に表す。
図2図2は、線条体内注射から48日後のG1[ビヒクル]、G2[AAV2-GFP]、およびG3[マンノースAAV2-GFP]のグループに由来するマウスの脳の切片のGFP染色を示す、3つの免疫組織化学的検査の写真のセット(色)である。図2A:G1グループに由来するマウスの脳の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。図2B:G2グループに由来するマウスの脳の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。図2C:G3グループに由来するマウスの脳の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。
図3図3は、線条体内注射から48日後のG1[ビヒクル]、G2[wt AAV2]、およびG3[man AAV2]のグループからのマウスの脳の線条体(注射部位)および黒質におけるGFPの形質導入の容量の統計分析を示す2つのグラフのセットである。バーは、グループの平均値を表し、ドットは、個別の動物の値を表す。データは、1元ANOVA、次いでTukeyの多重比較を行うことにより分析した。***p<0.001, ****p<0.0001 cf. グループG1;および##p<0.01, ####p<0.0001 cf.グループG2.図3A:線条体におけるGFP形質導入の容量の統計分析。図3B:黒質におけるGFP形質導入の容量の統計分析。
図4図4は、視床内注射から48日後の、G4[ビヒクル]、G5[AAV2-GFP]、およびG6[マンノース AAV2-GFP]のグループに由来するマウスの脳の切片のGFP染色を示す、3つの免疫組織化学的検査の写真(色)のセットである。図4A:G4のグループに由来するマウスの脳の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。図4B:G5のグループに由来するマウスの脳の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。図4C:G6のグループに由来するマウスの脳の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。
図5図5は、視床内注射から48日後の、G4[ビヒクル]、G5[wt AAV2]、およびG6[man AAV2]のグループに由来するマウスの脳の視床(注射部位)および黒質へのGFP形質導入の容量の統計分析を示す2つのグラフのセットである。バーは、グループの平均値を表し、ドットは、個別の動物の値を表す。データは、1元ANOVA、次いでTukeyの多重比較を行うことにより分析した。**p<0.01, ****p<0.0001 cf. グループG4;および####p<0.0001 cf. グループG5.図5A:視床におけるGFP形質導入の容量の統計解析。図5B:黒質におけるGFP形質導入の容量の統計解析。
図6図6は、脳室内注射から48日後の、G7[ビヒクル]、G8[AAV2-GFP]、およびG9[マンノース AAV2-GFP]のグループに由来するマウスの脳の切片のGFP染色を示す、3つの免疫組織化学的検査の写真(色)のセットである。図6A:G7のグループに由来するマウスの脳の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。図6B:G8のグループに由来するマウスの脳の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。図6C:G9のグループに由来するマウスの脳の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。
図7図7は、脳室内注射から48日後の、G7[ビヒクル]、G8[AAV2-GFP]、およびG9[マンノース AAV2-GFP]のグループに由来するマウスの脳の黒質(脳室に注射)へのGFP形質導入の容量の統計分析を示すグラフである。バーは、グループの平均値を表し、ドットは、個別の動物の値を表す。データは、1元ANOVAで分析した。
図8図8A~C図8A:G1[ビヒクル]グループに由来するマウスの線条体の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。図8B:G2[マンノース AAV2]グループに由来するマウスの線条体の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。図8C:G3[AAV2-GFP]グループに由来するマウスの線条体の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。
図9図9A~C図9A:G1[ビヒクル]グループに由来するマウスの視床の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。図9B:G2[マンノース AAV2-GFP]グループに由来するマウスの視床の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。図9C:G3[AAV2-GFP]グループに由来するマウスの視床の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。
図10図10A~C図10A:G1[ビヒクル]グループに由来するマウスの黒質の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。図10B:G2[マンノースAAV2-GFP]のグループに由来するマウスの黒質の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。図10C:G3[AAV2-GFP]のグループのマウスに由来する黒質の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。
図11-1】図11A~B図11A:G1[ビヒクル]グループに由来するマウスの線条体の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。図11B:G2[AAV2-GFP]グループに由来するマウスの線条体の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。
図11-2】図11C~E図11C:G3[マンノース AAV2-GFP]グループに由来するマウスの線条体の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。図11D:G4[ガラクトース AAV2-GFP]グループに由来するマウスの線条体の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。図11E:G5[N-アセチルグルコサミン AAV2-GFP]グループに由来するマウスの線条体の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。
図12-1】図12A~B図12A:G1[ビヒクル]グループに由来するマウスの視床の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。図12B:G2[AAV2-GFP]グループに由来するマウスの視床の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。
図12-2】図12C~E図12C:G3[マンノース AAV2-GFP]グループに由来するマウスの視床の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。図12D:G4[ガラクトース AAV2-GFP]グループに由来するマウスの視床の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。図12E:G5[Nアセチルグルコサミン AAV2]グループに由来するマウスの視床の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。
図13-1】図13A~B図13A:G1[ビヒクル]グループに由来するマウスの黒質の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。図13B:G2[AAV2-GFP]グループに由来するマウスの黒質の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。
図13-2】図13C~E図13C:G3[マンノース AAV2-GFP]グループに由来するマウスの黒質の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。図13D:G4[ガラクトース AAV2-GFP]グループに由来するマウスの黒質の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。図13E:G5[Nアセチルグルコサミン AAV2]グループに由来するマウスの黒質の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。
図14図14A~C図14A:G2[AAV2-GFP]グループに由来するマカクの線条体の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。図14B:G3[AAV5-GFP]グループに由来するマカクの線条体の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。図14C:G4[マンノース AAV2-GFP]グループに由来するマカクの線条体の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。
図15図15A~C図15A:G2[AAV2-GFP]グループに由来するマカクの線条体の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。図15B:G3[AAV5-GFP]グループに由来するマカクの線条体の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。図15C:G4[マンノース AAV2-GFP]グループに由来するマカクの線条体の切片の免疫組織化学的検査の写真(色)。
図16図16A~B図16A:線条体におけるGFP形質導入のパーセンテージ。バーは、グループの平均値を表し、ドットは、個別の動物の値を表す。図16B:黒質におけるGFP形質導入のパーセンテージ。バーは、グループの平均値を表し、ドットは、個別の動物の値を表す。
図17-1】図17:糖類部分とAAVの表面に曝露した一級アミンとの間のカップリング反応を示す概略図(図17A:一般的な事例;図17B:マンノース部分を伴う例を表す)。
図17-2】同上。
【実施例
【0253】
実施例1:マウスの脳における2つのAAVベクターの形質導入能の評価
この試験の目的は、マウスの大脳領域に形質導入する2つの組み換えAAV(rAAV)ベクター(「修飾されていないrAAV2」および「マンノシル化rAAV2」の潜在性を調査することであった。
【0254】
方法
動物
24匹の雄性のC57 BL/6マウス(Mus musculus)を、Janvier Labsから購入した。
【0255】
試験項目
「修飾されていないrAAV2」:CAGプロモーターの制御下でeGFP cDNAを担持する修飾されていないカプシドを含む組み換えAAV。
【0256】
「マンノシル化rAAV2」:表面に結合したマンノース残基で修飾されたカプシドを含み、CAGプロモーターの制御下でeGFP cDNAを含む組み換えAAV2ベクター。マンノース残基は、AAV2カプシドの表面に曝露したリジン残基の一級アミンに共有結合していた。図1は、マンノシル化rAAV2の視覚的な表示を提供する。
【0257】
「ビヒクル」:陰性対照としての乳酸加リンゲル液(LRS)。
【0258】
方法
試験項目
マンノシル化rAAV2を、国際特許公開公報第2017212019号に以前に記載かつ図1に示されるように、作製した。簡潔に述べると、修飾されていないrAAV2を、イソチオシアネート-リンカー-マンノース分子とトリスバッファー(pH9.3)にて混合し、20℃で4時間インキュベートした。次に、この混合物を、緩衝滅菌生理食塩水(buffered saline sterile solution:BSSS)+0.001%のPluronic(登録商標)F68に対して透析して、AAVカプシドに結合しない遊離分子を除去した。
【0259】
試験設計
24匹のマウスに定位的な外科手術を行い、試験項目を用いて右線条体、右視床、または右側脳室へと片側に注射した。
【0260】
動物を、表1のように、名称G1~G9の9つのグループに割り当てた。
【0261】
【表1】
【0262】
外科的な手法
ブプレノルフィン(0.1mg/kg;10mL/kg,s.c.)を、鎮痛剤として外科手術の前後に提供した。動物を、酸素の連続流(1.5L/分)および3%のイソフルランを伴う麻酔チャンバーに置いた。意識を失わせた後、動物を定位フレーム(Kopf)に置き、ear barを使用して所定の位置に固定した。頭蓋の皮膚を切開した。
【0263】
各マウスに、ガラスのピペットを使用して、試験項目のうちの1つの片側注射を、表2に記載の座標に投与した(線条体では2か所、視床では2か所、脳室では1か所)。マウスの脳のアトラスに関しては、Paxinos & Franklin, 2019. The mouse brain in stereotaxic coordinates (5th ed.). San Diego, CA: Elsevier Science Publishing Co Inc.を参照されたい。
【0264】
【表2】
【0265】
安楽死を行う48日前に動物を回収した。
【0266】
Ex Vivoでの解析
安楽死および組織の処理
in vivo期の終了時に、動物を安楽死させ、組織を回収した。安楽死は、認可されたEuropean Veterinary Medical Associationのガイドラインにしたがい行った。
【0267】
終了時に、各動物の脳を迅速に取り出し、パラホルムアルデヒド(PFA;4%)に固定した。3日後に、組織を20%のスクロース溶液(0.1MのPBS中)に4℃で一晩凍結保護し、その後凍結した。
【0268】
脳全体を、クリオスタットを使用して50μm厚の冠状切片に切断した。浮遊性の切片を、PBSアザイドに置き、4℃に保存した。
【0269】
GFP免疫組織化学的検査
目的の領域で形質導入された脳の体積のパーセンテージの定義は、GFP免疫組織化学的検査に基づきなされた。4つ全ての切片のうちの1つを免疫組織化学的検査に使用した。
【0270】
組織切片を、冷蔵庫から出し、室温に調節した。PBSですすいだ後、内因性ペルオキシダーゼを、ペルオキシダーゼブロッキング溶液(Dako, S2023)で10分間阻害した。
【0271】
PBSですすいだ後、非特異的な標識を、2%のBSA、0.3%のTriton X-100および0.01%のチメロサールを含むPBSで抗原部位を30分間ブロッキングすることにより妨げた。
【0272】
切片を、0.2%のBSA、0.3%のTriton X-100および0.01%のチメロサールを含むPBSで1/1000に希釈した一次抗体(ウサギ抗GFP、ポリクローナル抗体、Ab3080, Merck)において一晩インキュベートした。
【0273】
PBSですすいだ後、切片を、Dako Envisionで標識したポリマーHRP抗ウサギ(Dako, K4011)と共に30分間インキュベートした。
【0274】
PBSですすいだ後、顕色を、Dako DABを用いて得た。約30秒後、顕色を、いくつかのPBSウォッシュで停止させた。
【0275】
次に、切片を、スライドに載置し、ニッスル染色を用いて対比染色した。スライドを、PannoramicScan II(3DHISTECH, Hungary)を、5層の焦点を自動的に入手しその後平坦化する伸長モードにて20倍の倍率で使用することによりデジタル化した。
【0276】
線条体、視床、および黒質を、それぞれ10、10、および6つの切片でMERCATORソフトウェア(Mercator, Explora Nova, La Rochelle, France)を使用して描画した。
【0277】
全ての形質導入された領域(アーティファクトは除外)を使用して、GFP染色の表面を、閾値検出法を使用して得た。この体積を、式
V=ΣStd
(式中、「ΣS」は、表面積の合計であり、「t」は、切片の平均厚であり、「d」は、測定した2つの連続した分析された切片の間のスライス数である)
を使用して計算した。
【0278】
次に、目的の領域における形質導入した脳の体積のパーセンテージを計算した。
【0279】
データ分析
一元ANOVAを行い、処置グループ間の差異を評価し、次に、Tukeyの多重比較(Graphpad Prism version 8.0.2)を行った。
【0280】
結果
線条体への注射
G1、G2、およびG3のグループに由来するマウスの免疫組織化学的に染色した脳の切片を、それぞれ図2A、2B、および2Cに示す。GFP染色領域のパーセンテージは、表3に提供する。
【0281】
【表3】
【0282】
線条体内注射から48日後の線条体(図3A)および黒質(図3B)におけるGFP形質導入の統計解析は表4にまとめられている。
【0283】
【表4】
【0284】
線条体におけるGFP形質導入の%に関するTukeyの多重比較検定による処置間の有意差は、表5にまとめられている。
【0285】
【表5】
【0286】
黒質におけるGFP形質導入の%に関するTukeyの多重比較検定による処置間の有意差は、表6にまとめられている。
【0287】
【表6】
【0288】
視床への注射
G4、G5、およびG6のグループに由来するマウスの免疫組織化学的に染色した脳の切片を、それぞれ図4A図4B、および図4Cに示す。GFP染色領域のパーセンテージは、表7に提供されている。
【0289】
【表7】
【0290】
視床内注射から48日後の視床(図5A)および黒質(図5B)におけるGFP形質導入の統計解析は、表8にまとめられている。
【0291】
【表8】
【0292】
視床におけるGFP形質導入の%に関するTukeyの多重比較検定による処置間の有意差は、表9にまとめられている。
【0293】
【表9】
【0294】
脳室への注射
G7、G8、およびG9のグループに由来するマウスの免疫組織化学的に染色した脳の切片を、それぞれ図6A図6B、および図6Cに示す。GFP染色領域のパーセンテージは、表10に提供されている。
【0295】
【表10】
【0296】
脳室注射から48日後の黒質(図7)におけるGFP形質導入の統計解析は、表11にまとめられている。
【0297】
【表11】
【0298】
GFP形質導入の%において処置グループ間で有意差は観察されなかった。
【0299】
結論
この試験の目的は、マウスの大脳領域へ形質導入する2つのAAVベクター(「修飾されていないrAAV2」および「マンノシル化rAAV2」の潜在性を調査することであった
【0300】
両AAVベクターは、GFPの発現を駆動し、特定の脳の領域におけるGFP染色の表面を使用して、脳細胞に形質導入する各ベクターの特性を評価した。
【0301】
注射が線条体でなされた場合、線条体におけるGFP染色のパーセンテージは、修飾されていないrAAV2では12.90%であり、マンノシル化rAAV2では45.44%であり;黒質では、これは、修飾されていないrAAV2では9.98%であり、マンノシル化rAAV2では50.21%であった。
【0302】
注射が視床でなされた場合、視床におけるGFPのパーセンテージは、修飾されていないrAAV2では8.67%であり、マンノシル化rAAV2では37.85%であり;黒質では、これは、修飾されていないrAAV2では0%であり、マンノシル化rAAV2では1.67%であった。
【0303】
注射が脳室でなされた場合、黒質におけるGFPのパーセンテージは、修飾されていないrAAV2では0.01%であり、マンノシル化rAAV2では0.22%であった。
【0304】
マンノシル化rAAV2は、脳の実質(線条体または視床)に投与した場合、修飾されていないrAAV2よりも大きな範囲の発現を達成した。マンノシル化rAAV2の順行性および逆行性の運搬が観察された。
【0305】
脳の実質(線条体または視床)への単回投与は半球全体への形質導入をもたらすため、
特化した脳領域での実際の測定に加え、全般的な態様は、マンノシル化rAAV2を明らかに支持している。特に、免疫組織化学的分析は、GFP発現が線条体内注射および視床内注射後に皮質にも局在していることを示した。
【0306】
実施例2:マウスの大槽における2つのAAVベクターの形質導入能の評価
この試験の目的は、マウスにおいて大槽経路を介した修飾された組み換えAAV2-GFP(マンノースAAV2-GFPとも呼ばれる)vs修飾されていないAAV2-GFPの注射によるGFPの脳の分布を比較することであった。形質導入の領域の代わりとしての標識の度合いは、動物の全てのグループの線条体、視床、黒質(SN)の切片の1つのシリーズ上でのGFP染色により行った。
【0307】
材料
動物
8匹のC57 BL/6マウス(Mus musculus)を、Janvier Labsから購入した。
【0308】
試験項目
「マンノースAAV2-GF」は、表面に結合したマンノース残基で修飾されたカプシドを含み、CAGプロモーターの制御下でeGFP cDNAを担持する組み換えAAV2ベクターである。マンノース残基は、実施例1に記載のように、AAV2カプシドの表面に曝露したリジン残基の一級アミンに共有結合した。
【0309】
「ビヒクル」は、陰性対照としての緩衝滅菌生理食塩水(buffered saline sterile solution:BSSS)+0.001%のPluronic(登録商標)F68である。
【0310】
方法
試験項目
マンノシル化rAAV2を、国際特許公報第2017212019号に以前に記載されており、図1に例示されているように作製した。簡潔に述べると、修飾されていないrAAV2を、イソチオシアネート-リンカー-マンノース分子とトリスバッファー(pH9.3)にて混合し、20℃で4時間インキュベートした。次に、この混合物を、緩衝滅菌生理食塩水(buffered saline sterile solution:BSSS)+0.001%のPluronic(登録商標)F68に対して透析して、AAVカプシドに結合しない遊離分子を除去した。
【0311】
試験設計
8匹のマウスに定位的な外科手術を行い、試験項目を用いて大槽へ片側に注射した。
【0312】
これら動物を、表12のように、名称G1~G3の3つのグループに無作為に割り当てた。
【0313】
【表12】
【0314】
外科的手法
ブプレノルフィン(0.1mg/kg;10mL/kg, s.c.)を、鎮痛剤として外科手術の前後に提供した。動物を、酸素の連続流(1.5L/分)および3%のイソフルランを伴う麻酔チャンバーに置いた。意識を失わせた後、動物を定位フレーム(Kopf)に置き、ear barを使用して所定の位置に固定した。頭蓋の皮膚を切開した。
【0315】
各マウスに、1.3 10E9vg/脳(またはビヒクル)の大槽注射を行った。
【0316】
ex vivoでの解析
安楽死および組織の処置
in vivo期の終了時(注射から42日後)に、実施例1に記載のように動物を安楽死させ、組織を回収した。
【0317】
GFP免疫組織化学的検査
GFP免疫組織化学的検査を、実施例1に記載のように行った。
【0318】
結果
線条体におけるGFP染色 G1、G2、およびG3のグループに由来するマウスの代表的な免疫組織化学的に染色した線条体の切片は、それぞれ図8A図8B、および図8Cに示されている。
【0319】
視床におけるGFP染色
G1、G2、およびG3のグループに由来するマウスの代表的な免疫組織化学的に染色した視床の切片は、それぞれ図9A図9B、および図9Cに示されている。
【0320】
黒質におけるGFP染色
G1、G2、およびG3のグループに由来するマウスの代表的な免疫組織化学的に染色した黒質の切片は、それぞれ図10A図10B、および図10Cに示されている。
【0321】
結論
この試験の目的は、マウスの大脳領域に形質導入する2つのAAVベクター(「修飾されていないAAV2-GFP」および「マンノースAAV2-GFP」)の潜在性を調査することであった。
【0322】
線条体も海馬も、両AAV2ベクターの大槽注射後に形質導入されたようには見えない。
【0323】
対照的に、各AAVベクターは、視床および黒質において、異なる度合いではあるが、GFPの発現を駆動した。
【0324】
しかしながら、マンノシル化rAAV2は、視床および黒質において修飾されていないrAAV2よりも強いGFP発現を誘導すると思われる。さらに、マンノシル化rAAV2は、大槽を介して投与される場合に、修飾されていないAVV2よりも大きな両側性の範囲の、視床核および黒質の発現を達成した。よって、大槽へのマンノシル化rAAV2の単回投与は、両側性の視床および黒質への形質導入をもたらした。
【0325】
実施例3:マウスの右線条体への3つの修飾されたAAVベクターの形質導入能の評価
この試験の目的は、マウスでの線条体内経路を介した、3つの修飾されたrAAV2-GFP(マンノースAAV2-GFP、ガラクトースAAV2-GFP、N-アセチルグルコサミン-AAV2-GFP)vs.修飾されていないAAV2-GFPの注射によるGFPの脳の分布を比較することであった。形質導入の領域の代わりとしての、標識化の度合いは、動物の全てのグループの線条体、視床、黒質(SN)の切片の1つのシリーズ上でのGFP染色により行った。
【0326】
材料
動物
14匹の雄性のC57 BL/6マウス(Mus musculus)を、Janvier Labsから購入した。
【0327】
試験項目
「修飾されたrAAV2-GFP」は、表面に結合した糖類の残基(マンノース、ガラクトース、またはN-アセチルグルコサミン)で修飾されたカプシドを含み、CAGプロモーターの制御下でeGFP cDNAを担持する組み換えAAV2ベクターである。マンノース、ガラクトース、およびN-アセチルグルコサミンの残基は、実施例1に記載のように、AAV2カプシドの表面に曝露したリジン残基の一級アミンに共有結合していた。
【0328】
「ビヒクル」は、陰性対照として、DPBS Ca2+、Mg2+、0.001%のPluronic(登録商標)F68であった。
【0329】
方法
試験項目
修飾されたrAAV2を、国際特許公報第2017212019号に以前に記載されており、図1に例示されているように作製した。簡潔に述べると、修飾されていないrAAV2を、イソチオシアネート-リンカー-マンノース分子とトリスバッファー(pH9.3)にて混合し、20℃で4時間インキュベートした。次に、この混合物を、0.001%のPluronic(登録商標)F68を補充したDPBS、Ca2+、Mg2+に対しバッファー交換し、AAVカプシドに結合しない遊離分子を除去した。
【0330】
試験設計
14匹のマウスに定位的な外科手術を行い、試験項目を用いて右線条体へ片側に注射した。
【0331】
これら動物を、表13のように、名称G1~G5の5つのグループに無作為に割り当てた。
【0332】
【表13】
【0333】
外科的な手法
ブプレノルフィン(0.1mg/kg;10mL/kg,s.c.)を、鎮痛剤として外科手術の前後に提供した。動物を、酸素の連続流(1.5L/分)および3%のイソフルランを伴う麻酔チャンバーに置いた。意識を失わせた後、動物を定位フレーム(Kopf)に置き、ear barを使用して所定の位置に固定した。頭蓋の皮膚を切開した。
【0334】
各マウスに、総用量5.5 10E8vg/脳の試験項目に対応する、試験項目(またはビヒクル)を右線条体に2回片側に注射した。これは、表14の座標にて、picosprizerにカップリングしたガラスのピペットを使用して行った。
【0335】
【表14】
【0336】
ex vivoでの分析
安楽死および組織の処理
in vivo期の終了時(注射から6週間後)に、実施例1に記載のように動物を安楽死させ、組織を回収した。
【0337】
GFPの免疫組織化学的検査
GFPの免疫組織化学的検査を、実施例1に記載のように行った。
【0338】
結果
右線条体におけるGFP染色
G1、G2、G3、G4、およびG5のグループに由来するマウスの代表的な免疫組織化学的に染色した線条体の切片を、それぞれ図11A図11B図11C図11D、および図11Eに示す。
【0339】
視床におけるGFP染色
G1、G2、G3、G4、およびG5のグループに由来するマウスの代表的な免疫組織化学的に染色した視床の切片を、それぞれ図12A図12B図12C図12D、および図12Eに示す。
【0340】
黒質におけるGFP染色
G1、G2、G3、G4、およびG5のグループに由来するマウスの代表的な免疫組織化学的に染色した黒質の切片を、それぞれ図13A図13B図13C図13D、および図13Eに示す。
【0341】
結論
この試験の目的は、マウスの大脳に形質導入する、修飾されていないAAV2ベクターと比較した3つの修飾されたAAVベクターの潜在性を調査することであった:
修飾されていないAAV2-GFP
マンノースAAV2-GFP
ガラクトースAAV2-GFP
N-アセチル-グルコサミン-AAV2-GFP。
全てのAAVベクターは、GFPの発現を駆動した。
【0342】
線条体に注射した動物を、連続した比較(back to back comparison)のため染色した。親のAAV2-GFPは、線条体、視床、および黒質に同側GFP染色をもたらす。
【0343】
他の3つの修飾されたベクターは、線条体、視床、および黒質において同様の免疫染色のパターンを提示した。
【0344】
頭頂皮質および海馬は、3つの修飾されたrAAV2で広く形質導入されたように思われた。
【0345】
大部分は頭頂部である一部の皮質領域は、ベクター間で差異を提示し得るが、動物に注射したマンノースAAV2-GFPおよびN-アセチルグルコサミン-AAV2-GFPは両方とも、同側(ispislateral)および対側の海馬において強力な免疫染色を呈した。N-アセチルグルコサミン-AAV2-GFPの注射は、マンノースAAV2-GFP注射と比較して歯状回において強いGFP染色を誘導した。
【0346】
実施例4:マカクザルの線条体でのいくつかのAAVベクターのトランスフェクション能の評価
この提案の目的は、修飾されていないAAV2-GFP、修飾されていないAAV5-GFP、および修飾された組み換えAAV2-GFP(マンノースAAV2-GFPとも呼ばれる)という3つのウイルスベクターの、マカクザルの大脳領域をトランスフェクトする潜在能力を調査することであった。
【0347】
材料
動物
7匹の雄性カニクイザル(Macaca fascicularis)を、フランスのBioPrimから購入した。
【0348】
試験項目
「修飾されたrAAV2-GFP」は、表面に結合したマンノース残基(上記残基は、AAV2カプシドの表面に曝露したリジン残基の一級アミンに共有結合していた)で修飾されたカプシドを含み、CAGプロモーターの制御下でeGFP cDNAを担持する組み換えAAV2ベクターである。
【0349】
「ビヒクル」は、陰性対照としての緩衝滅菌生理食塩水(buffered saline sterile solution:BSSS)+0.001%のPluronic(登録商標)F68である。
【0350】
方法
試験項目
マンノシル化rAAV2を、国際特許公報第2017212019号に以前に記載されており、図1に例示されているように作製した。簡潔に述べると、修飾されていないrAAV2を、イソチオシアネート-リンカー-マンノース分子とトリスバッファー(pH9.3)にて混合し、20℃で4時間インキュベートした。次に、この混合物を、緩衝滅菌生理食塩水(buffered saline sterile solution:BSSS)+0.001%のPluronic(登録商標)F68に対して透析して、AAVカプシドに結合しない遊離分子を除去した。
【0351】
試験設計
7匹のマカクに定位的外科手術を行い、定位的外科手術により右線条体に片側注射を行った。
【0352】
これら動物を、表15のように名称1~4の4つのグループに無作為に割り当てた。
【0353】
【表15】
【0354】
術前の手法
麻酔および抗生剤および鎮痛剤療法
外科手術の前日に、感染予防のため動物にDuphamoxを15mg/kgで皮下(s.c.)に提供した。
【0355】
外科手術日に、外科手術の準備の前に、各動物に、アトロピンSO4を0.04mg/kgにて、筋肉内(i.m.)に提供した。次に、非ステロイド系抗炎症剤のKetophenを、2mg/kgにて皮下(s.c.)に提供した。少なくとも10分後に、最初に、各動物にケタミンHClを10mg/kgにてi.m.で麻酔をかけた。
【0356】
次に、キシロカインクリームを麻酔性滑剤として局所的に塗布した。次に、動物に挿管し、容量を調節する人工呼吸器を介して送達されるイソフルラン吸入麻酔剤で麻酔を維持した。心拍数および酸素飽和度を、外科手術の間少なくとも30分の間隔でモニタリングおよび記録した。外科手術の間少なくとも30分の間隔で中核体温のモニタリングを可能にするため、温度プローブを、直腸に載置した。動物の中核体温の低下が示される際に必要な場合、動物の上部に配置される第2のパットを用いて、動物を加熱パッド上に載置した。
【0357】
外科的な準備
眼軟膏を各眼に投与した(Liposic ophthalmic gel)。体毛は、頭蓋、ならびに頸部および側部の頭蓋背部分から刈り取った。
【0358】
各動物は、外科手術のため定位装置に配置した。
【0359】
無菌の外科手術のため、70%のイソプロピルアルコールのスクラブに浸したスポンジで外科的部位の領域を最初に拭き、乾燥させ、次にDuraPrepTM(または類似の溶液)を適用し、同様に乾燥させることにより、外科的部位を調製した。厳密な無菌の外科手術のため、動物に適宜布をかけた。
【0360】
外科的な手法
注射部位の位置
個々のマカクは、特定の脳内部位に関して著しく異なっているため、標準的なHorsley-Clarkeの定位的な技術は、第三脳室の境界ならびに前交連および後交連の端を正確に特定するために、矢状および前頭の室造影を使用することにより改善されている。
【0361】
硬膜に損傷を与えることなく小さな開頭術を行った後、ガラスのシリンジ上に載置した室造影用のカニューレを、側脳室の前角に導入し、造影剤(Omnipaque, Nycomed, Norway)を注射した。
【0362】
定位アトラスを、正確に調節するため頭蓋に挿入する前に使用した。前交連の正確な位置は、室造影から決定した。左および右の被殻の実際の位置は、前交連の室造影により定義される位置および基底核の定位的な集合に基づく歴史的なアトラスを組み合わせることにより定義した。次に、試験項目の送達のための注入カニューレの配置を、本明細書中以下に記載するように行った。
【0363】
試験項目の投与
開頭術の領域を、無菌性生理食塩水で清澄化した。次に、各動物に、総用量7.7 10E10vg/脳の試験項目に対応する、試験項目の片側注射を行った。
【0364】
注射は、前交連(AC)の被殻の中の3つのトラック:AC+1、AC-2およびAC-5mmに沿って2つの異なる深度で行った。
【0365】
注射は、3μl/分の速度、90μlの動物あたりの総容量で、Micro-4制御器に結合した自動注射器UMP-3(WPI)にカップリングしたHamilton 1701Nシリンジ(100μl, 30Ga/51mm/PST3)を使用してなされた。
【0366】
針は、各トラックの最も深い埋め込み後1分間および各トラックの第2の埋め込み後5分間所定の位置に置き、その後脳からゆっくりと引き抜いた。全ての注射が完了した後、創傷を、吸収可能な縫合材料の連続的なパターンを伴う層で閉鎖した。皮膚を適切な大きさの吸収可能な縫合材料で閉鎖し、表皮下のパターンに配置した。次に、動物を麻酔から回復させた。
【0367】
術後のモニタリング
動物の状態の確認を、1日2回(午前および午後)行った。観察者は、特に肢の運動に焦点を当て、肢の運動のクオリティの適切な評価を可能にするため果実および菓子の小片を動物に提供した。
【0368】
感染症の徴候、炎症、および全般的な完全性に関して、外科的な切開を、少なくとも1日に1回(切開が治癒するまで)観察した。
【0369】
動物を、確立されたhumane endpoint criteriaにより毎日評価した。必要に応じて、適切な獣医学的支援を提供した。重篤な疼痛または苦痛の兆候を示し、恐らくは耐えている全ての動物は、適切に安楽死させた。
【0370】
ex vivoでの分析
安楽死および組織の処理
注射から56日後に、動物を、European Veterinary Medical Associationのガイドラインにしたがいバルビツール酸の過剰投与により人道的に安楽死させ、ヘパリンを含む生理食塩水、次いで4%のパラホルムアルデヒド溶液で灌流適用した。
【0371】
包括的な剖検を行い、以下の臓器を取り出した;脳、心臓、腎臓、肝臓、肺、腸間膜リンパ節、脾臓、脊髄(後根神経節に焦点を当てている)。各個体の剖検の記録を行った。
【0372】
脳を、パラホルムアルデヒド(PFA:4%)への浸漬により固定した。次に、組織を、20%のスクロース溶液(0.1MのPBS中)に4℃で凍結保護し、次に凍結した。50μmの切片を(脳の1つ半球の冠状方向にて)、クリオスタットを使用して切断した。遊離性の切片を、凍結保護溶液に入れ、-20℃で保存した。
【0373】
GFP免疫組織化学的検査
GFP免疫組織化学的検査を、実施例1に記載のように行った。
【0374】
GFAP-NeuN-GFPの二重蛍光染色
線条体、黒質、および淡蒼球の細胞のトロピズムを、GFPおよびニューロンマーカー(NeuN)、アストログリアのマーカー(GFAP/S100)、オリゴデンドログリアのマーカー(Olig2)、またはミクログリア(Iba1)のマーカーでの二重免疫染色を使用して定義した。
【0375】
GFPおよびNeuN/GFAP/Olig2/Iba1の免疫組織化学的検査を、動物あたり目的の構造あたり1つの切片上でまとめて行った。
【0376】
PBSで徹底的にすすいだ後、非特異的な標識を、2%のBSA、0.3%のtriton X-100、および0.01%のチメロサールを含むPBSで抗原部位を30分間ブロッキングすることにより妨げた。
【0377】
次に、切片を、0.2%のBSA、0.3%のtriton X-100、および0.01%のチメロサールを含むPBSにおいて一次抗体混合物(抗-Iba1 Abcam ab5076 1/1000;抗-GFAP-S10 Dako Z0334-Z0311、1/1000および1/2000;抗-Olig2 EPR2676 Abcam, 1/100;抗-NeuN MAB377 Merck, 1/500)にて、室温で一晩インキュベートした。
【0378】
翌日、切片をPBSですすぎ、PBSで1:500に希釈したDylight(登録商標)488フルオロフォアとコンジュゲートした抗体と、30分間インキュベートした。
【0379】
各ステップの間にPBSで徹底的にすすいだ後、1つの抗体を、ポリマー-HRP-抗ウサギ(Dako EnVision+(商標)Kit, K4011)で30分間顕色させ、次に、PBSで1:1000に希釈したDylight(登録商標)549フルオロフォアとコンジュゲートした抗HRP抗体と30分間インキュベートした。
【0380】
PBSで徹底的にすすいだ後、核のHoechst染色を、切片上で30秒間行い(1:5000に希釈したHoechst溶液)、いくつかのPBSウォッシュで停止させた。
【0381】
次に、切片を、ゼラチンでコーティングしたスライド上に置き、水系のFluoromount(商標)封入剤でカバーを覆い、分析まで4℃で保存した。
【0382】
CCDカメラ(Hamamatsu ORCA Flash 4.0LT)とカップリングしたオリンパスの落射蛍光顕微鏡(Olympus BX63)上にて、全ての切片の中の同じ曝露パラメータでの両染色に関する蛍光画像を得た。3つの視野を、各領域および切片で40倍の倍率で獲得した。16バイトのイメージファイルを保存し、ImageJソフトウェアで処理した。
【0383】
病理組織診断
脳、心臓、腎臓、肝臓、肺、腸間膜リンパ節、脾臓、脊髄(後根神経節に焦点を当てている)の顕微鏡分析に加え、これら組織を病理組織診断分析に供した。臓器/組織をサンプリングし、パラフィン包埋のためカセットに置いた。臓器あたり3つのブロックを調製し、ブロックあたり少なくとも4つの切片を試験した。
【0384】
結果
線条体におけるGFP染色
G2、G3、およびG4のグループに由来するマカクの代表的な免疫組織化学的に染色した線条体切片を、それぞれ図14A図14B、および図14Cに示す。
【0385】
黒質におけるGFP染色
G2、G3、およびG4のグループに由来するマカクの代表的な免疫組織化学的に染色した黒質の切片を、それぞれ図15A図15B、および図15Cに示す。
【0386】
線条体内注射から56日後の線条体および黒質におけるGFP形質導入のパーセンテージを、それぞれ図16Aおよび図16Bに示す。
【0387】
細胞のトロピズム
G1、G2、G3、およびG4のグループに由来するマカクの淡蒼球外節(GPe)および淡蒼球内節(GPi)の切片を、
Iba1およびGFP
GFAP/S100およびGFP
Olig2およびGFP
NeuNおよびGFP
で免疫蛍光にて同時染色した。
【0388】
Ibal1抗体は、ミクログリアの染色を可能にし、NeuN抗体は神経細胞の染色を可能にし、GFAP/S100抗体は、アストログリア細胞の染色を可能にし、Olig2抗体は、オリゴデンドログリア細胞の染色を可能にする。
【0389】
結論
7匹のマカクザルをこの試験に使用し、4つのグループに割り当てた。ベクターまたはビヒクルを、線条体の被殻部分の中に投与した。ベクターマンノースAAV2-GFPは、線条体の80%超および黒質の60%超に形質導入し、修飾されていないAAV2-GFPおよびAAV5-GFPの両方のみが、線条体の50%および黒質の40%未満を達成した。
【0390】
病理組織診断は、後根神経節(DRG)を含む主要な臓器においていずれの毒性の徴候も示さなかった。
【0391】
二重蛍光染色を、一方の(形質導入の指標)上のGFPならびに表現型の細胞マーカー(ニューロンではNeuN、アストロサイトではGFAP-S100、オリゴデンドロサイトではOlig2、およびミクログリア細胞ではIba1)で行った。
【0392】
線条体では、3つ全てのベクターがmsニューロンで発現したが、明らかなGFP発現は、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、またはミクログリア細胞で検出されなかった(データ不図示)。
【0393】
黒質では、3つ全てのベクターが明確な繊維状のパターンを伴い末端で発現したが、GFPの細胞体発現を示さず(データ不図示)、すなわち明確なGFP発現は、黒質のニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、またはミクログリア細胞で検出されなかった。黒質の中に存在するこれら線維は、十中八九、線条体から黒質へ突出するmsニューロンのGABA作動性の突起である(黒質の線条体、線維のニューロンの細胞質染色)。
【0394】
淡蒼球複合体は、GPeおよびGPiに分けられ得る。GPeは、(細胞の種類が何であっても)細胞同時染色を伴わず巨大なGFP陽性線維ネットワークにより交差するように見えるが、GPiは、線条体ニューロンと一致する美しい線維ネットワークに加えて、3つのベクターによる何らかのニューロンの形質導入を提示し得る。
【0395】
まとめると、これら結果は、マンノースAAV2-GFPが他の2つのベクターより著しく優れた高い効率で線条体のmsニューロンに形質導入したことを示している。分析した脳領域における細胞のトロピズムは、3つのベクター間で比較可能であった。
【0396】
観察された形質導入パターンは、マンノース-AAV2-GFPが、線条体および黒質を標的とする遺伝子療法にとって最も関心のある治療用プロファイルを保持していることを示唆している。
【0397】
今日まで、ヒトで試験した神経障害に関する全ての遺伝子療法の手法は、主に、標的部位および/または罹患レベルでの固体の発現の欠如により、臨床的に有意性に達してはいない。
【0398】
驚くべきことに本発明者らは、これらの修飾されたAAVベクターが、線条体、視床、黒質、頭頂皮質、海馬、および淡蒼球を含む脳の特定の領域に有効に形質導入できることを示している。よって、これら修飾されたAAVベクターは、これら領域の標的化、および/またはこれら領域に影響する疾患の処置にとって、非常に興味がもたれている。
図1
図2A-2B】
図2C
図3
図4A-4B】
図4C
図5
図6A-6B】
図6C
図7
図8
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図12-1】
図12-2】
図13-1】
図13-2】
図14
図15
図16
図17-1】
図17-2】
【国際調査報告】