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特表2023-516539ヒドロキシ尿素を含む炎症反応を阻害するための医薬組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(54)【発明の名称】ヒドロキシ尿素を含む炎症反応を阻害するための医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/17 20060101AFI20230413BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230413BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20230413BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230413BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20230413BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20230413BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230413BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230413BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230413BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
A61K31/17
A61P29/00
A61P31/16
A61P31/14
A61P31/20
A61P31/22
A61P31/12
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P31/04
A61P43/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540957
(86)(22)【出願日】2021-02-15
(85)【翻訳文提出日】2022-08-26
(86)【国際出願番号】 KR2021001910
(87)【国際公開番号】W WO2021162525
(87)【国際公開日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】10-2020-0018534
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0044119
(32)【優先日】2020-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520211498
【氏名又は名称】バイオノックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ファン, テ‐ホ
(72)【発明者】
【氏名】チョ, モン
(72)【発明者】
【氏名】チョ, ウナ
(72)【発明者】
【氏名】リー, ボラ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ウン‐ギュン
(72)【発明者】
【氏名】リー, チャン ヒー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB111
4C084ZB322
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZC751
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA26
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA86
4C206NA14
4C206ZB11
4C206ZB21
4C206ZB33
4C206ZB35
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、全身性炎症反応症候群又は敗血症を防止、緩和、又は治療するためのヒドロキシ尿素の使用に関する。本発明の医薬組成物の活性成分であるヒドロキシ尿素は、個体における炎症機序に関与する免疫細胞である好中球の活性を管理することができ、したがって、細菌又はウイルスなどの微生物への曝露により生じ得る全身性炎症反応によって引き起こされる副作用又は状態から個体を保護することができる。したがって、本発明の医薬組成物が全身性炎症反応に苦しんでいる個体に投与される場合、医薬組成物は個体において全身性炎症反応症候群又は敗血症を防止、緩和、又は治療し、最終的に個体の生存率を著しく上昇させることができる。加えて、本発明による組成物は、細菌又はウイルスなどの微生物に曝露された場合に生じ得る好中球増加症を防止、緩和、又は治療するのに有効であり得、ウイルスは腫瘍溶解性ウイルスなどの治療目的のウイルス、及びインフルエンザウイルス又はコロナウイルスなどの病原性ウイルスを含む。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分として、式1の化合物又はその薬学的に許容できる塩を含む、全身性炎症反応症候群(SIRS)を防止、緩和、又は治療するための医薬組成物。
【化1】
【請求項2】
前記全身性炎症反応症候群が、細菌又はウイルスへの曝露後に生じる炎症反応を伴うものである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記全身性炎症反応症候群が、ウイルスへの曝露後に生じる炎症反応を伴うものであり、
前記ウイルスが、インフルエンザウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、サイトメガロウイルス、バキュロウイルス、レオウイルス、アデノ随伴ウイルス、粘液腫ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、ニューカッスル病ウイルス、パルボウイルス、コクサッキーウイルス、セネカウイルス、ワクシニアウイルス、及びポックスウイルスからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記ウイルスが腫瘍溶解性ウイルスである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
抗生物質又は抗ウイルス剤をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記抗生物質がドリペネム、セフェピム、イミペネム、メロペネム、セフタジジム、セフタロリンフォサミル、セフトリアキソン、バンコマイシン、テイコプラニン、セフォタキシム、メトロニダゾール、アミノグリコシド系抗生物質、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記抗ウイルス剤が、オセルタミビル、ザナミビル、ペラミビル、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル、トリフルリジン、ラミブジン、テルビブジン、クレブジン、エンテカビル、アデホビル、テノホビルジソプロキシル、テノホビルアラフェナミド、ベシホビル、リバビリン、ダサブビル、ソホスブビル、ダクラタスビル、アスナプレビル、ジドブジン、アバカビル、エファビレンツ、エトラビリン、ネビラピン、リルピビリン、アタザナビル、ダルナビル、ネリファビル、リトナビル、インジナビル、ドルテグラビル、ラルテグラビル、エンフベルタイド、マラビロク、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
注射剤として製剤化される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
活性成分として、式1の化合物又はその薬学的に許容できる塩を含む、敗血症を防止、緩和、又は治療するための医薬組成物。
【化2】
【請求項10】
前記敗血症が、細菌又はウイルスへの曝露後に生じる炎症反応を伴うものである、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記敗血症が、ウイルスへの曝露後に生じる炎症反応を伴うものであり、
前記ウイルスが、インフルエンザウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、サイトメガロウイルス、バキュロウイルス、レオウイルス、アデノ随伴ウイルス、粘液腫ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、ニューカッスル病ウイルス、パルボウイルス、コクサッキーウイルス、セネカウイルス、ワクシニアウイルス、及びポックスウイルスからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記ウイルスが腫瘍溶解性ウイルスである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
抗生物質又は抗ウイルス剤をさらに含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記抗生物質が、ドリペネム、セフェピム、イミペネム、メロペネム、セフタジジム、セフタロリンフォサミル、セフトリアキソン、バンコマイシン、テイコプラニン、セフォタキシム、メトロニダゾール、アミノグリコシド系抗生物質、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記抗ウイルス剤が、オセルタミビル、ザナミビル、ペラミビル、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル、トリフルリジン、ラミブジン、テルビブジン、クレブジン、エンテカビル、アデホビル、テノホビルジソプロキシル、テノホビルアラフェナミド、ベシホビル、リバビリン、ダサブビル、ソホスブビル、ダクラタスビル、アスナプレビル、ジドブジン、アバカビル、エファビレンツ、エトラビリン、ネビラピン、リルピビリン、アタザナビル、ダルナビル、ネリファビル、リトナビル、インジナビル、ドルテグラビル、ラルテグラビル、エンフベルタイド、マラビロク、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
注射剤として製剤化される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項17】
活性成分として、式1の化合物又はその薬学的に許容できる塩を含む、好中球増加症を防止、緩和、又は治療するための医薬組成物。
【化3】
【請求項18】
前記好中球増加症が細菌又はウイルスへの曝露後に生じるものである、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記好中球増加症が、ウイルスへの曝露後に生じるものであり、
前記ウイルスがインフルエンザウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、サイトメガロウイルス、バキュロウイルス、レオウイルス、アデノ随伴ウイルス、粘液腫ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、ニューカッスル病ウイルス、パルボウイルス、コクサッキーウイルス、セネカウイルス、ワクシニアウイルス、及びポックスウイルスからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記ウイルスが腫瘍溶解性ウイルスである、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項21】
抗生物質又は抗ウイルス剤をさらに含む、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記抗生物質が、ドリペネム、セフェピム、イミペネム、メロペネム、セフタジジム、セフタロリンフォサミル、セフトリアキソン、バンコマイシン、テイコプラニン、セフォタキシム、メトロニダゾール、アミノグリコシド系抗生物質、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記抗ウイルス剤が、オセルタミビル、ザナミビル、ペラミビル、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル、トリフルリジン、ラミブジン、テルビブジン、クレブジン、エンテカビル、アデホビル、テノホビルジソプロキシル、テノホビルアラフェナミド、ベシホビル、リバビリン、ダサブビル、ソホスブビル、ダクラタスビル、アスナプレビル、ジドブジン、アバカビル、エファビレンツ、エトラビリン、ネビラピン、リルピビリン、アタザナビル、ダルナビル、ネリファビル、リトナビル、インジナビル、ドルテグラビル、ラルテグラビル、エンフベルタイド、マラビロク、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項24】
注射剤として製剤化される、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項25】
全身性炎症反応症候群(SIRS)の防止、緩和又は治療のための式1の化合物又はその薬学的に許容できる塩の使用。
【化4】
【請求項26】
敗血症の防止、緩和、又は治療のための式1の化合物又はその薬学的に許容できる塩の使用。
【化5】
【請求項27】
好中球増加症の防止、緩和、又は治療のための式1の化合物又はその薬学的に許容できる塩の使用。
【化6】
【請求項28】
請求項1に記載の医薬組成物を個体に投与するステップを含む、全身性炎症反応症候群(SIRS)を防止、緩和、又は治療するための方法。
【請求項29】
請求項9に記載の医薬組成物を個体に投与するステップを含む、敗血症を防止、緩和、又は治療するための方法。
【請求項30】
請求項17に記載の医薬組成物を個体に投与するステップを含む、好中球増加症を防止、緩和、又は治療するための方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、好中球などの免疫細胞を調節し、したがって、全身性炎症反応症候群又は敗血症などの炎症反応を阻害する効果を発揮するヒドロキシ尿素の薬学的使用に関する。
【0002】
[背景技術]
全身性炎症反応症候群(SIRS)は、重度の炎症反応が全身に生じる状態を指す。臨床的には、以下の症状のうちの2つ以上が観察される症例が全身性炎症反応症候群と定義される:38℃以上の体温を伴う高熱又は36℃以下の体温を伴う低体温、1分当たり24回を超える増加した呼吸数(頻呼吸)、1分当たり90回を超える心拍数(頻脈)、及び血液検査での非常に増加した又は減少した白血球数。全身性炎症反応は、敗血症、外傷、裂傷、膵炎などによって誘導され得る。特に、この全身性炎症反応症候群は、微生物感染によって引き起こされる場合、敗血症と呼ばれる。
【0003】
敗血症は、組織又は臓器への傷害による感染に対して全身に誘導される、生命を脅かすほど強い免疫反応によって引き起こされる症状を指す。敗血症は感染に対する炎症性免疫反応によって引き起こされる。一般に、そのような感染は細菌によって引き起こされるが、敗血症は胞子、ウイルスなどによる感染によっても引き起こされ得る。敗血症は、肺、脳、尿道、皮膚、及び腹部などの臓器から生じる一次感染によって引き起こされる。若齢すぎる又は高齢すぎる人、及びがん又は糖尿病により免疫が弱っている人などは、敗血症にかかりやすい可能性がある。敗血症は重度の炎症反応を全身に引き起こし、したがって、不可逆的な損傷を身体にもたらし得る。敗血症は30%の死亡率を有し、毎年3000万人の敗血症患者が世界中で発生している。
【0004】
そのような敗血症は、輸液の供給及び抗生物質の投与により主に治療される。一般に、可能な限り早く抗生物質を適用する方が良く、輸液の供給が血圧を維持するのに不十分である場合、血圧を上げることができる薬物が使用され得る。加えて、様々な抗炎症物質及び免疫調節薬が、敗血症における過剰炎症反応を阻害するための治療剤として試されてきた。とりわけ、コルチコステロイド、抗エンドトキシン抗体、TNFアンタゴニスト、及びIL-1受容体アンタゴニストなどの免疫調節薬を使用して敗血症を治療する試みが行われてきたが、敗血症の改善を示す結果はまだ得られていない。
【0005】
[発明の開示]
[技術的課題]
敗血症を治療するために研究が行われてきたが、これまでに開発された薬物は不十分な治療効果を有する又は副作用を有する。したがって、敗血症のための安全で有効な治療剤を開発する必要がある。したがって、本発明の目的は、全身性炎症反応を阻害する方法で、全身性炎症反応症候群又は敗血症を防止、緩和、又は治療するための医薬組成物を提供することである。
【0006】
[課題の解決手段]
上記課題を解決するために、本発明の1つの態様では、ヒドロキシ尿素を活性成分として含む、全身性炎症反応症候群又は敗血症を防止、緩和、又は治療するための医薬組成物が提供される。
【0007】
[発明の有利な効果]
本発明の医薬組成物の活性成分であるヒドロキシ尿素は、個体における炎症機序に関与する免疫細胞である好中球の活性を制御することができ、したがって、細菌又はウイルスなどの微生物への曝露によって誘導され得る全身性炎症反応によって引き起こされる副作用又は病的状態から個体を保護することができる。したがって、本発明の医薬組成物が全身性炎症反応に苦しんでいる個体に投与される場合、個体において全身性炎症反応症候群又は敗血症を防止、緩和、又は治療することが可能であり、その結果、個体の生存率が最終的に著しく上昇し得る。加えて、本発明による組成物は、細菌又はウイルスなどの微生物に曝露された場合に生じ得る好中球増加症を防止、緩和、又は治療するのに有効であり得、ウイルスは腫瘍溶解性ウイルスなどの治療目的のウイルス、及びインフルエンザウイルス又はコロナウイルスなどの病原性ウイルスを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】細菌誘導性敗血症モデルにおけるヒドロキシ尿素(HU)の効果を確認するための実験スケジュールを示す図である。ここで、HUはHUを1日1回受けた群を示し、HU”はHUを1日2回受けた群を示す。これは図面の残りにも当てはまる。
図2】細菌性リポ多糖(LPS)によって誘導された敗血症を有するマウスにおけるHUによる処置後の生存率を確認することによって得られた結果を示す図である。
図3】細菌性LPSによって誘導された敗血症を有するマウスにおけるHUによる処置後の生存率を確認することによって得られた結果を示す図である。
図4】ワクシニアウイルスのWestern Reserve株(Vaccinia virus Western Reserve株、WRウイルス、1×10pfu)によって誘導された敗血症を有するマウスにおけるHUによる処置後の生存率を確認することによって得られた結果を示す図である。
図5】ワクシニアウイルスのWestern Reserve株を使用してマウスにおいて敗血症を誘導し、マウスをHUによる処置に供し、次いで血液中のウイルス粒子数を測定することによって得られた結果を示す図である。
図6】ワクシニアウイルスのWestern Reserve株(1×10pfu及び1×10pfu)によって誘導された敗血症を有するマウスにおけるHUによる処置後の生存率を確認することによって得られた結果を示す図である。
図7】ワクシニアウイルスのWestern Reserve株によって誘導された敗血症を有するマウスをHU又はG-CSFの投与に供し、次いで肝臓及び肺組織の染色を行った後に撮られた写真を示す図である。
図8】インフルエンザウイルス誘導性敗血症モデルにおけるHUの効果を確認するための実験スケジュールを示す図である。
図9】インフルエンザウイルスによって誘導された敗血症を有するマウスにおけるタミフル及び/又はHUによる処置後の生存率を確認することによって得られた結果を示す図である。
図10】インフルエンザウイルスによって誘導された敗血症を有するマウスにおけるタミフル及び/又はHUによる処置後の体重の変化を観察することによって得られた結果を示す図である。
図11】HUが抗ウイルス効果を有するかどうかを確認するための実験を行うことによって得られた結果を示す図である。ここで、CC50は細胞の約50%が細胞傷害反応を示す濃度を表し、EC50は薬物効果の約50%が見られる濃度を表す。
図12】ワクシニアウイルスのWestern Reserve株によって誘導された全身性炎症症候群を有するサルにおけるHUによる処置後の皮膚発疹及び膿疱のレベルを示す写真を示す図である。
図13】ワクシニアウイルスのWestern Reserve株によって誘導された全身性炎症症候群を有するサルにおけるHUによる処置後の体温及び体重の変化を観察することによって得られた結果を示す図である。
図14】ワクシニアウイルスのWestern Reserve株によって誘導された全身性炎症症候群を有するサルをHUによる処置に供し、次いで血液中のウイルス粒子数を測定することによって得られた結果を示す図である。
図15】ワクシニアウイルスのWestern Reserve株によって誘導された全身性炎症症候群を有するサルにおけるHUによる処置後の好中球絶対数(ANC)、全血球(WBC)数、及びリンパ球絶対数(ALC)の変化を確認することによって得られた結果を示す図である。
図16】SARS-CoV-2を含む様々な種類のウイルスに感染した場合、「非致命的」患者と比較して高レベルの好中球絶対数(ANC)が「致命的」患者において観察されることを示す結果を示す図である。
図17】ANCが早期に死亡した患者において急速に増加したことを示す、腫瘍溶解性ウイルス感染後に早期に死亡した患者の血液試料を分析することによって得られた結果を示す図である。
図18】ワクシニアウイルスのWestern Reserve株を使用してマウスにおいて敗血症を誘導し、マウスをHUによる処置に供し、次いでマウス生存率とANCの相関関係、体重、及びANCとウイルス粒子数の相関関係を確認することによって得られた結果を示す図である。
図19】ワクシニアウイルスのWestern Reserve株によって誘導された敗血症を有するマウスをHU又はG-CSFの投与に供し、次いで肺組織の染色を行った後に撮られた写真を示す図である。
図20】インフルエンザウイルスによって誘導された敗血症を有するマウスにおけるHUによる処置後の体重及び生存率の変化を観察することによって得られた結果を示す図である。
図21】インフルエンザウイルスによって誘導された敗血症を有するマウスにおける生存率及びANCの変化を観察することによって得られた結果を示す図である。
図22】ワクシニアウイルスVVtk-によって誘導された全身性炎症症候群を有するサルにおけるHUによる処置後の皮膚発疹及び膿疱のレベルを示す写真を示す図である。
図23】ワクシニアウイルスのWestern Reserve株によって誘導された全身性炎症症候群を有するサルにおけるHUによる処置後の好中球絶対数(ANC)及びウイルス粒子数を測定することによって得られた結果を示す図である。
【0009】
[発明を実施するための最良の形態]
以下、本発明は詳細に記載される。
【0010】
本発明の1つの態様では、活性成分として式1の化合物(ヒドロキシ尿素)又はその薬学的に許容できる塩を含む、全身性炎症反応症候群(SIRS)又は敗血症を防止、緩和、又は治療するための医薬組成物が提供される。医薬組成物は敗血症性ショック及び敗血症のために有効に使用され得る。
【化1】
【0011】
ヒドロキシ尿素はDNA合成を阻害する抗がん剤として知られているが、その正確な機序は解明されていない。ヒドロキシ尿素は、ヒドロキシ尿素を含有する市販薬の形態の医薬組成物に含まれ得る。ヒドロキシ尿素を含有する市販薬の例は、ヒドロキシウレア(Hydroxyurea)(登録商標)、ハイドレア(Hydrea)(登録商標)、ドロキシア(Droxia)(商標)、ミロセル(Mylocel)(商標)、シクロス(Siklos)(登録商標)、及びハイドリン(Hydrine)(登録商標)カプセル剤を含み得るが、これらに限定されない。
【0012】
加えて、医薬組成物は注射によって投与することができ、静脈内投与のための製剤、例えば液体製剤を有し得る。
【0013】
ここで、ヒドロキシ尿素は0.1mg/kg/日~90mg/kg/日の用量で投与され得る。とりわけ、ヒドロキシ尿素は0.1mg/kg/日~90mg/kg/日、1mg/kg/日~80mg/kg/日、5mg/kg/日~70mg/kg/日、10mg/kg/日~60mg/kg/日、又は20mg/kg/日~50mg/kg/日の用量で投与され得る。
【0014】
特に、ヒドロキシ尿素は血液中に10uM~500uM、50uM~400uM、80uM~300uM、100uM~200uM、又は120uM~150uMで絶えず維持されることが好ましい。ここで、ヒドロキシ尿素の血液濃度レベルは、全身性炎症反応症候群又は敗血症の重症度及び患者の奏効率に応じて適切に決定され得る。
【0015】
本明細書で使用される場合、用語「全身性炎症反応症候群」は、重度の炎症反応が全身に生じる状態を指す。以下の症状のうちの2つ以上が観察される症例が全身性炎症反応症候群と定義される:38℃以上の体温を伴う高熱又は36℃以下の体温を伴う低体温、1分当たり24回を超える増加した呼吸数(頻呼吸)、1分当たり90回を超える心拍数(頻脈)、及び血液検査での非常に増加した又は減少した白血球数。全身性炎症反応症候群は、細菌又はウイルスへの曝露後に生じる炎症反応を伴うことがある。加えて、全身性炎症反応は外傷又はやけどによっても誘導され得る。特に、この全身性炎症反応症候群は、微生物感染によって引き起こされる場合、敗血症と呼ばれる。
【0016】
全身性炎症反応症候群は、ウイルスへの曝露後に生じる炎症反応を伴うことがあり、ウイルスはインフルエンザウイルス(Influenza virus)、コロナウイルス、アデノウイルス(Adenovirus)、単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus)、麻疹ウイルス(Measles virus)、レンチウイルス(Lentivirus)、レトロウイルス(Retrovirus)、サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus)、バキュロウイルス(Baculovirus)、レオウイルス(Reovirus)、アデノ随伴ウイルス(Adeno-associated virus)、粘液腫ウイルス(Myxoma virus)、水疱性口内炎ウイルス(Vesicularstomatitis virus)、ポリオウイルス(Poliovirus)、ニューカッスル病ウイルス(Newcastle disease virus)、パルボウイルス(Parvovirus)、コクサッキーウイルス(Coxsackie virus)、セネカウイルス(Senecavirus)、ワクシニアウイルス、及びポックスウイルス(Poxvirus)からなる群から選択される少なくとも1種であり得る。
【0017】
ウイルスは野生型又は変異型であり得る。ウイルスは腫瘍溶解性ウイルス、例えばチミジンキナーゼ(TK)遺伝子が欠失された組換えワクシニアウイルスでもよい。腫瘍溶解性ウイルスは、チミジンキナーゼ遺伝子が欠失され、変異単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ遺伝子が挿入された組換えワクシニアウイルス(OTS-412)であり得る。腫瘍溶解性ウイルスは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)及びβ-ガラクトシダーゼ遺伝子が挿入されておらず、チミジンキナーゼ遺伝子が欠失された組換えワクシニアウイルス(VVtk-)であり得る。加えて、腫瘍溶解性ウイルスは、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子が欠失され、ヒトGM-CSF又はヒトG-CSF遺伝子が挿入された組換えワクシニアウイルスであり得る。
【0018】
本明細書で使用される場合、用語「敗血症」は、重度の炎症反応が全身に生じる疾患を指す。敗血症は、細菌又はウイルスへの曝露後に生じる炎症反応を伴うことがある。特に、敗血症は微生物感染によって引き起こされる個体の免疫系障害であり、個体における重篤な臓器損傷につながり得る。敗血症の病態生理についての研究によると、敗血症では好中球、マクロファージ、及び単球などの免疫細胞は、微生物感染後に活性化される。これらの免疫細胞の活性化は、IL-1、IL-6、IL-8、及びTNF-αなどの炎症性サイトカインの増加した分泌をもたらし、その結果、細胞に存在する転写因子NF-κBが活性化され、これにより炎症反応が全身に引き起こされる。加えて、敗血症症状の悪化によって引き起こされる循環、細胞、及び代謝異常の発生により死亡率がより高い状態は敗血症性ショックと呼ばれる。敗血症は、適時に適切な方法で治療されない場合、ショック又は死亡につながる。
【0019】
とりわけ、敗血症は、感染の疑い又は証明を有する患者における症状が全身性炎症反応症候群の診断基準を満たす症例を指す。例えば、全身性炎症反応症候群は以下のうちの2つ以上が満たされる症例と定義される:38℃を超える又は36℃未満の体温、90回/分を超える心拍数、20回/分を超える呼吸数又は32mmHg未満のPaCO2、及び12,000細胞/mmより多い若しくは4,000細胞/mm未満の白血球数又は10%を超える未分化細胞の割合。
【0020】
敗血症は微生物による感染によって引き起こされることがあり、微生物は細菌、真菌、又はウイルスであり得る。ここで、敗血症を引き起こすことができる微生物は、グラム陽性菌に属するレンサ球菌属(Streptococcus)種及びエンテロコッカス属(Enterococcus)種の微生物を含み得るが、これらに限定されない。とりわけ、敗血症を引き起こす微生物は、肺炎レンサ球菌(Staphylococcus pneumoniae)又は黄色ブドウ球菌(Staphylococcusaureus)であり得る。加えて、敗血症を引き起こすことができる微生物は、クレブシエラ属(Klebsiella)種、シュードモナス属(Pseudomonas)種、及びエンテロバクター属(Enterobacter)種の微生物を含み得るが、これらに限定されず、これらの全てはグラム陰性菌に属する。とりわけ、敗血症を引き起こす微生物は、大腸菌(Escherichia coli)、ビブリオ・バルニフィカス(Vibriovulnificus)、又はインフルエンザ菌(Hemophilus influenzae)であり得る。敗血症は、微生物に存在するリポ多糖によって引き起こされ得る。
【0021】
加えて、敗血症はウイルスへの曝露後に生じる炎症反応を伴うことがあり、ウイルスはインフルエンザウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、サイトメガロウイルス、バキュロウイルス、レオウイルス、アデノ随伴ウイルス、粘液腫ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、ニューカッスル病ウイルス、パルボウイルス、コクサッキーウイルス、セネカウイルス、ワクシニアウイルス、及びポックスウイルスからなる群から選択される少なくとも1種であり得る。
【0022】
ウイルスは野生型又は変異型であり得る。ウイルスは腫瘍溶解性ウイルス、例えば、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子が欠失された組換えワクシニアウイルスでもよい。腫瘍溶解性ウイルスは上記の通りである。
【0023】
本明細書で使用される場合、特に指定されない限り、用語「活性成分」は、単独で又はそれだけでは活性でないアジュバント(担体)と一緒に活性を示す成分を指す。
【0024】
医薬組成物は抗生物質又は抗ウイルス剤をさらに含み得る。とりわけ、医薬組成物は抗生物質をさらに含み得る。抗生物質は、ドリペネム、セフェピム、イミペネム、メロペネム、セフタジジム、セフタロリンフォサミル、セフトリアキソン、バンコマイシン、テイコプラニン、セフォタキシム、メトロニダゾール、アミノグリコシド系抗生物質、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種であり得る。しかし、本発明はこれらに限定されない。
【0025】
加えて、医薬組成物は抗ウイルス剤をさらに含み得る。抗ウイルス剤はオセルタミビル、ザナミビル、ペラミビル、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル、トリフルリジン、ラミブジン、テルビブジン、クレブジン、エンテカビル、アデホビル、テノホビルジソプロキシル、テノホビルアラフェナミド、ベシホビル、リバビリン、ダサブビル、ソホスブビル、ダクラタスビル、アスナプレビル、ジドブジン、アバカビル、エファビレンツ、エトラビリン、ネビラピン、リルピビリン、アタザナビル、ダルナビル、ネリファビル、リトナビル、インジナビル、ドルテグラビル、ラルテグラビル、エンフベルタイド、マラビロク、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種であり得る。
【0026】
医薬組成物に含まれる抗生物質又は抗ウイルス剤は、医薬組成物を受ける個体の体重に対して1用量当たり0.1mg/kg~200mg/kgの量で投与され得る。とりわけ、医薬組成物に含まれる抗生物質又は抗ウイルス剤は、0.1mg/kg~200mg/kg、1mg/kg~190mg/kg、5mg/kg~180mg/kg、10mg/kg~170mg/kg、20mg/kg~160mg/kg、又は40mg/kg~150mg/kgの量で投与され得る。
【0027】
医薬組成物は注射剤として製剤化され得る。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「注射剤」は、皮内から又は皮膚及び粘膜を通して身体に直接適用される医薬品の無菌製剤を指し、液剤、懸濁剤、若しくは乳剤などの形態、又は使用時に溶媒に溶解若しくは懸濁することによって使用される任意の形態である。とりわけ、注射剤は、注射剤、注射用粉末、輸液、凍結乾燥注射剤、移植液、持効性注射剤、腹膜透析液、灌流液、透析液などとして使用され得る。とりわけ、注射剤はボーラスとして、又は点滴、皮下注射、若しくは筋肉内注射によって投与され得る。
【0029】
注射剤中の化合物は、注射用水に溶解した形態であり得る。ここで、注射用水は生理食塩水注射液、リンゲル液、又は他の水性溶媒であり得る。加えて、化合物は植物油などの非水性溶媒に溶解され、使用され得る。
【0030】
ここで、化合物は注射剤に0.1mg/ml~100mg/ml、1mg/ml~90mg/ml、10mg/ml~80mg/ml、20mg/ml~70mg/ml、30mg/ml~60mg/ml、又は40mg/ml~50mg/mlの濃度で含まれ得る。
【0031】
注射可能な製剤の流通中の製品安定性を確実にするために、注射剤は、そのpHを注射剤に使用され得る酸性水溶液又はリン酸などの緩衝液で調整することによって物理的及び化学的に非常に安定な注射剤として調製され得る。とりわけ医薬組成物は注射用水を含み得る。注射用水は、固体注射剤を溶解する又は水溶性注射剤を希釈するために作られた蒸留水を指す。
【0032】
医薬組成物は安定剤又は可溶化剤を含み得る。例えば、安定剤はピロ亜硫酸ナトリウム又はエチレンジアミン四酢酸であってもよく、可溶化剤は塩酸、酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、又は水酸化カリウムであってもよい。
【0033】
医薬組成物は、注射剤に一般的に使用される他の賦形剤をさらに含み得る。
【0034】
本発明の別の態様では、活性成分として式1の化合物(ヒドロキシ尿素)又はその薬学的に許容できる塩を含む、好中球増加症を防止、緩和、又は治療するための医薬組成物が提供される。
【0035】
SARS-CoV-2などの病原性ウイルスによる感染で死亡した又は集中治療室(ICU)での治療に供された患者について、これらの患者は、生存者及び非ICU患者と比較して、増加した好中球絶対数及び減少したリンパ球数を有することが臨床的に確認された(図16)。加えて、腫瘍溶解性ウイルス(JX-594)の投与後早期に死亡した患者は、急速に増加した好中球絶対数を有することが確認された(図17)。本発明者らは、好中球絶対数の増加と定義される好中球増加症が、ウイルス感染によって敗血症又は全身性炎症反応症候群が誘導されたマウス及びサルモデルでも観察されること、並びにマウス及びサルモデルへのヒドロキシ尿素の投与が増加した好中球絶対数の減少をもたらすことを見出した(図15、18、21、及び23)。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「好中球増加症」は、好中性顆粒球が末梢血において正常を超えて増加した状態を指し、そのような好中球増加症は、急性感染、細菌感染、悪性腫瘍、炎症、組織壊死、骨髄増殖性疾患などにより、又はアドレナリン若しくは副腎皮質ステロイドが投与される場合でさえ発症し得る。加えて、好中球増加症は、個体が微生物、特にウイルスに曝露された場合に引き起こされるような急性感染又は細菌感染により発症し得る。とりわけ、好中球増加症は、インフルエンザウイルス又はコロナウイルスなどの病原性ウイルスへの曝露により引き起こされる全身性炎症症候群又は敗血症のように全身性炎症反応が生じる場合にも生じ得る。好中球増加症は、細菌又はウイルスへの曝露後に生じ得る。加えて、好中球増加症は、腫瘍溶解性ウイルスなどの治療目的のウイルスへの曝露により発症し得る。
【0037】
好中球増加症はウイルスへの曝露後に生じ、ウイルスはインフルエンザウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、サイトメガロウイルス、バキュロウイルス、レオウイルス、アデノ随伴ウイルス、粘液腫ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、ニューカッスル病ウイルス、パルボウイルス、コクサッキーウイルス、セネカウイルス、ワクシニアウイルス、及びポックスウイルスのうちのいずれか1種であり得る。
【0038】
ウイルスは野生型又は変異型であり得る。ウイルスは腫瘍溶解性ウイルス、例えば、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子が欠失された組換えワクシニアウイルスでもよい。腫瘍溶解性ウイルスは上記の通りである。
【0039】
本発明による好中球増加症を緩和又は治療するための医薬組成物は、上で例示された通りの抗生物質又は抗ウイルス剤もさらに含み得る。
【0040】
本発明による好中球増加症を緩和するための医薬組成物は、注射剤として製剤化されてもよい。注射剤、並びに注射剤中の化合物の形態及び濃度は上記の通りである。
【0041】
医薬組成物は安定剤又は可溶化剤を含み得る。例えば、安定剤はピロ亜硫酸ナトリウム又はエチレンジアミン四酢酸であってもよく、可溶化剤は塩酸、酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、又は水酸化カリウムであってもよい。
【0042】
医薬組成物は注射剤に一般的に使用される他の賦形剤をさらに含み得る。
【0043】
本発明のさらに別の態様では、式1の化合物又はその薬学的に許容できる塩は、抗生物質又は抗ウイルス剤などの第2の活性成分と一緒に使用され得る。例えば、活性成分として式1の化合物又はその薬学的に許容できる塩を含む第1の組成物、及び活性成分として抗生物質又は抗ウイルス剤を含む第2の組成物を含む、全身性炎症反応症候群、敗血症、又は好中球増加症を防止、緩和、又は治療するためのキットが提供される。
【化2】
【0044】
第1の組成物及び第2の組成物は、同時に、逐次的に、又は逆の順番で、組み合わせて投与され得る。とりわけ、第1の組成物及び第2の組成物は同時に投与され得る。加えて、第1の組成物が最初に、続いて第2の組成物が投与され得る。さらに、第2の組成物が最初に、続いて第1の組成物が投与され得る。加えて、第2の組成物が最初に、続いて第1の組成物、次いで再び第2の組成物が投与され得る。
【0045】
第1の組成物及び第2の組成物は、全身性炎症反応症候群、敗血症、又は好中球増加症に苦しんでいる又はそれらを有することが疑われるヒト又は他の哺乳動物に投与され得る。加えて、第1の組成物及び第2の組成物は、静脈内、筋肉内、又は皮下投与され得る注射剤の形態であり得る。
【0046】
注射可能な製剤の流通中の製品安定性を確実にするために、第1の組成物及び第2の組成物の各々は、そのpHを注射剤に使用され得る酸性水溶液又はリン酸などの緩衝液で調整することによって物理的及び化学的に非常に安定な注射剤として調製され得る。とりわけ、第1の組成物及び第2の組成物の各々は注射用水を含み得る。注射用水は、固体注射剤を溶解する又は水溶性注射剤を希釈するために作られた蒸留水を指す。
【0047】
第1の組成物及び第2の組成物の各々は、安定剤又は可溶化剤を含み得る。例えば、安定剤はピロ亜硫酸ナトリウム又はエチレンジアミン四酢酸であってもよく、可溶化剤は塩酸、酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、又は水酸化カリウムであってもよい。組成物は、注射剤に一般的に使用される他の賦形剤をさらに含み得る。
【0048】
本発明のさらに別の態様では、上記医薬組成物を個体に投与するステップを含む、全身性炎症反応症候群、敗血症、又は好中球増加症を防止、緩和、又は治療するための方法が提供される。ここで、個体は哺乳動物、好ましくはヒトであり得る。
【0049】
ここで、投与は静脈内、筋肉内、又は皮内で行われ得る。このようにして、本発明による医薬組成物が全身性炎症反応症候群、敗血症、又は好中球増加症に苦しんでいる個体に投与される場合、医薬組成物は免疫細胞を調節し、したがって、全身性炎症反応の緩和又は治療に使用され得る。
【0050】
ここで、方法は抗生物質又は抗ウイルス剤を投与するステップをさらに含み得る。ここで、使用される抗生物質及び投与方法は上記の通りである。
【0051】
本発明のさらに別の態様では、全身性炎症症候群、敗血症、又は好中球増加症の治療のための上記の医薬組成物の使用が提供される。
【0052】
本発明のさらに別の態様では、全身性炎症症候群、敗血症、又は好中球増加症を治療するための医薬の製造のための上記の医薬組成物の使用が提供される。
【0053】
[発明の形態]
以下に、本発明を理解するのを助けるために好ましい例が提示される。しかし、以下の例は本発明のより容易な理解のためだけに提供され、本発明の範囲は以下の例によって限定されない。
【0054】
調製例1.注射可能な製剤の調製
調製1.1.ヒドロキシ尿素を含む注射可能な製剤の調製
ヒドロキシ尿素を含む注射剤は、以下の組成を有するように調製した。
【表1】
【0055】
調製1.2.ヒドロキシ尿素及び抗生物質を含む注射可能な製剤の調製
ヒドロキシ尿素及び抗生物質を含む注射剤は、以下の組成を有するように調製した。
【表2】
【0056】
調製例1.3.ヒドロキシ尿素及び抗ウイルス剤を含む注射可能な製剤の調製
ヒドロキシ尿素及び抗ウイルス剤を含む注射剤は、以下の組成を有するように調製した。
【表3】
【0057】
実験例1.細菌誘導性敗血症モデルにおけるヒドロキシ尿素の治療効果の確認(I)
リポ多糖(LPS、大腸菌O55:B5由来L2880、Sigma)によって誘導された敗血症を有するマウスモデルにおいて、ヒドロキシ尿素による処置が免疫反応により生存率を上昇させることができるかどうかを確認するために動物実験を行った。各群は7匹のマウスからなり、LPSの腹腔内投与は10mg/kgで0日目に行った。対照群を除く2つの群をヒドロキシ尿素の腹腔内投与に30mg/kgで1日1回又は1日2回、LPSによる処置の前日から開始して1週間に5日間供した(図1)。
【0058】
その結果、LPSのみの投与を受けた対照群において、7匹の全ての動物が2日目に死亡し、一方ヒドロキシ尿素の投与を1日1回受けた群(G2-LPS(10mg/kg)+HU)は17%の生存率を示し、そのうち1匹の動物は12日目まで生存し、ヒドロキシ尿素の投与を1日2回受けた群(G2-LPS(10mg/kg)+HU”)は43%の生存率を示し、そのうち3匹の動物は12日目まで生存した(図2及び3)。
【0059】
実験例2.細菌誘導性敗血症モデルにおけるヒドロキシ尿素の治療効果の確認(I)
実験例2.1.ヒドロキシ尿素によって引き起こされる上昇した生存率の確認
ワクシニアウイルスのWestern Reserve(WR)株は、ウイルスが同系マウスモデルにおいて十分に増殖し、したがって、高い致死性を有するという点で、猛毒ウイルスとして知られている。ヒドロキシ尿素がウイルス感染によって引き起こされる全身性炎症反応を阻害し、生存率を上昇させるかどうかを確認するために、敗血症が感染によって引き起こされるようにマウスをワクシニアウイルスのWR株(1×10pfu又は1×10pfu)の鼻腔内粘膜投与に供した。次いで動物実験を行った。マウスを対照群(WR)、G-CSF(WR+G-CSF(25μg/kg))を受ける群、及びヒドロキシ尿素(WR+HU(50mg/kg))を受ける群に分けた。G-CSFを受ける群は、好中球の増加を誘導するために使用し、この群は免疫調節効果について、好中球の減少が示されると思われる、ヒドロキシ尿素を受ける群と比較することを意図した。ここで、上で使用したワクシニアウイルスのWR株は、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子が欠失された組換えワクシニアウイルスであった。その調製のために、ワクシニアウイルスの野生型Wyeth株(NYC Department of Health)及びワクシニアウイルスのWR株をAmericanType Culture Collection(ATCC)から購入した。組換えについて、ベクターとして、ホタルルシフェラーゼレポーター(p7.5プロモーター)遺伝子又はGFP遺伝子を含有するシャトルプラスミドを使用して、野生型ワクシニアウイルスにおけるTK領域の置換を行った。
【0060】
群の各々について、生存率を21日間測定した。その結果、ヒドロキシ尿素を受けた群は、21日目まで40%の生存率を示し、他の2つの群と比較して生存率の有意差を示した(p=0.01)。一方、対照群及びG-CSFを受けた群において、全てのマウスがワクシニアウイルスのWR株の投与後14日以内に死亡した(図4及び5)。
【0061】
さらに、ヒドロキシ尿素を受けた群において見られた生存率の差異が、ウイルスによって引き起こされる毒性の差異に起因するかどうかを確かめるために、ヒドロキシ尿素を受けた群のマウスから血液を採取し、ウイルス粒子数を測定した。
【0062】
その結果、ヒドロキシ尿素を受けた群において、最高数のウイルス粒子が観察された。促進されたウイルス増殖にもかかわらず、ヒドロキシ尿素の投与後に、好中球数の減少により最高の生存率が観察されたことを示す上の結果から、生存率は、ウイルスによって引き起こされる毒性ではなく免疫調節により上昇し得ることが確認された(図6)。
【0063】
実験例2.2.免疫系に対するヒドロキシ尿素の効果の確認
マウスの生存率について、ウイルス増殖と好中球浸潤の関係を組織学的分析により決定した。マウスを対照群(WR)、G-CSF(WR+G-CSF(25μg/kg))を受ける群、及びヒドロキシ尿素(WR+HU(50mg/kg))を受ける群に、実験例2.1と同じように分け、設定した条件は、ワクシニアウイルスの野生型WR株(1×10pfu)の鼻腔内粘膜投与を除いて同じであった。マウスを死亡後又は死亡直前に犠牲にし、肝臓及び肺組織を採取した。ウイルスを受けなかった1匹の正常なマウスも犠牲にし、陰性対照群として使用した。
【0064】
組織染色(H&E)を行った。その結果、わずかな量の漏出液及び滲出液が、陰性対照群を除く全ての群のマウスの肺胞において観察され、虚血性変化は肝臓組織のゾーン3において観察された(図7)。とりわけ、陰性対照群と比較すると、肺胞において観察された漏出及び滲出液レベル並びに肝臓組織における虚血性変化レベルの重症度は、ヒドロキシ尿素を受けた群、G-CSFを受けた群、及び対照群の順番であった。
【0065】
これらの結果は、ワクシニアウイルスの野生型WR株によって引き起こされる毒性は、ウイルス増殖自体によって誘導された細胞傷害性ではなく、血液中の減少した好中球数などの血行力学の変化に起因する可能性がより高かったことを示唆し、なぜ全身性炎症反応のHU誘導阻害が、腫瘍溶解性ウイルスによって引き起こされる急性免疫毒性に重要であるかを十分に説明する(図17)。
【0066】
実験例3.インフルエンザウイルス誘導性敗血症モデルにおけるヒドロキシ尿素の治療効果の確認(I)
実験例3.1.ヒドロキシ尿素によって引き起こされる上昇した生存率の確認
42匹のマウス(オス、BALB/c)を6つの群(n=7/群)に分け、対照群を除く群を、感染のためにH1N1インフルエンザA(ブタインフルエンザ、PR8株、3×mLD50(50%マウス致死用量))ウイルスの鼻腔内投与に供した。インフルエンザAウイルスに感染した3つの群を、代表的な抗ウイルス剤として知られているタミフル(オセルタミビル)及びヒドロキシ尿素の単独又は組合せでの投与に供した。タミフルを0.1mg/kg又は10mg/kgの濃度で投与し、ヒドロキシ尿素を50mg/kgの濃度で投与した(図8)。
【0067】
その結果、インフルエンザAウイルスのみで処置した群の全てのマウスは11日目に死亡したが、タミフルで処置した3つの群のマウスは濃度に関係なく生存した。ヒドロキシ尿素のみで処置した群(群HD)において、2匹のマウスがそれぞれ9及び10日目に死亡したが、残りの5匹のマウスは全て生存した(図9)。
【0068】
加えて、各群のマウスの体重を毎日18日間測定した。その結果、インフルエンザAウイルスのみで処置した群のマウスは体重の約30%の減少を示し、次いで死亡し、他の群のマウスは10%以内の体重の減少を示し、次いで回復し、増加して初めの体重に戻った(図10)。
【0069】
実験例3.2.ヒドロキシ尿素の作用機序の確認
どの機序がヒドロキシ尿素の生存率上昇効果をインフルエンザウイルス誘導性敗血症モデルにおいてもたらすか、及びそのような機序は抗ウイルス剤の機序とどのように異なるかを確認するために、細胞にin vitroで3種のインフルエンザウイルス(H1N1 PR8、H3N2香港、Lee)を感染させ、次いで3種の異なる抗ウイルス剤(リバビリン、アマンタジン(AMT)、及びオセルタミビルカルボキシレート)及びヒドロキシ尿素で処置した。次いで、抗ウイルス効果の比較を行った。
【0070】
具体的には、MDCK細胞を96ウェルプレートでインキュベートし、3種のインフルエンザウイルス(H1N1 PR8、H3N2香港、Lee)の各々に0.001pfu/細胞で感染させ、次いで無血清条件において33℃~35℃の温度でインキュベートした。1時間後、PBSでの洗浄を行い、MEM及びTPCK-トリプシン(2μg/ml、Sigma)の添加を行った。72時間後、ウイルスに対する細胞生存率をMTTアッセイによって測定した。
【0071】
その結果、ヒドロキシ尿素のCC50は1,561μg/mlであると測定されたが、ヒドロキシ尿素は1,561μg/mlの濃度までインフルエンザA(H1N1 PR8、H3N2香港)及びB(Lee)ウイルスに対して抗ウイルス効果を一切示さないことが確認された。一方、タミフル(OSV-C)は全ての3種のウイルスに対して特異的な抗ウイルス効果を明らかに示し、次の明らかな効果はリバビリン及びAMTの順番で観察された。
【0072】
これらの結果から、インフルエンザウイルス誘導性敗血症モデルにおけるヒドロキシ尿素の生存率上昇効果は、ウイルス感染の阻害に起因しないことを確認することができ、そのような効果はタミフルなどの抗ウイルス剤が生存率を上昇させる機序とは異なる機序によって達成されることがわかる。ヒドロキシ尿素のみで処置したマウスは、ウイルスのみで処置したマウスと同様に、9日目まで体重の減少を示した。しかしその後、急速に回復し、生存した全てのマウスは、タミフルで処置したマウス及び対照マウスと同様に18日目に健康な状態に戻った。これは、ウイルス感染によって引き起こされる致死性がヒドロキシ尿素の好中球調節効果により低下し得ることを明らかにする(図11)。
【0073】
実験例4.サルモデルにおけるヒドロキシ尿素によって引き起こされる阻害された全身性炎症反応の確認(I)
45~55カ月齢のオスのカニクイザル(n=3)を例2のワクシニアウイルスのWR株(1×10pfu)又はワクシニアウイルスのWR株及びヒドロキシ尿素(WR:1×10pfu、HU:80mg/kg/日及び30mg/kg/日)の全身投与に供した。次いで、全身性炎症及び膿疱のレベル、体温、体重などを測定することによって毒性を評価した。
【0074】
ワクシニアウイルスのWR株及びヒドロキシ尿素の共投与を受けた群は、ワクシニアウイルスのWR株のみを受けた群と比較して、著しく弱まった全身性炎症及び膿疱などの皮膚発疹病変の阻害を示した(図12)。ウイルスのみを受けた群は体温の上昇を示したが、共投与を受けた群は、体温の顕著な上昇を一切示さず、2つの群の間に体重減少の差異はなかった(図13)。
【0075】
さらに、共投与を受けた群のサルから血液を採取し、ウイルス粒子数、好中球絶対数(ANC)、全血球(WBC)数、及びリンパ球絶対数(ALC)を測定した。
【0076】
その結果、ウイルスのみを受けた群(OTS-412)及び共投与を受けた群(mOTS-412)について、ウイルス投与後8日目において2つの群の間に血液中のウイルス粒子数に関して顕著な差異はなかった(図14)。加えて、好中球絶対数、白血球数、及びリンパ球絶対数は全て、概して減少し、安定なままであることが確認された(図15)。
【0077】
参照例1.ウイルス感染によって引き起こされる好中球増加症の再検討
ウイルス感染によって引き起こされる好中球増加症の有益な側面と有害な側面の相関関係は依然として議論の余地がある。SARS-CoV-2に感染した患者の臨床的特徴は、生存者及び非ICU患者と比較して、非生存者及びICU患者において好中球絶対数の増加及びリンパ球数の減少を示した。他のウイルスを使用する感染研究も同様の結果を示した(図16)。
【0078】
参照例2.腫瘍溶解性ウイルスの投与後の患者における血漿の変化の再検討
図17は、腫瘍溶解性ウイルス(JX-594)の投与後早期に死亡した患者の血液試料を分析することによって得られた結果を示す。ここで、早期に死亡した患者は、好中球増加症に関連する病的状態を示す急速に増加したANCを有したことがわかる。
【0079】
実験例5.細菌誘導性敗血症モデルにおけるヒドロキシ尿素の治療効果の確認(II)
72匹のBALB/cマウス(およそ8週齢)を2つの大きな群(n=36/群)に分け、0日目に感染のために低用量(1×10pfu)又は高用量(1×10pfu)のワクシニアウイルスのWR株の鼻腔内粘膜投与に供した。各大きな群を3つの亜群(食塩水、G-CSF、又はHU;n=12/群)に細分した。食塩水、G-CSF(25μg/kg/日、0~5日目)、及びヒドロキシ尿素(50mg/kg/日、0~14日目)の投与は全て腹腔内注射により行った。ここで、3つの亜群の各々の3匹のマウスを使用して、血液CBC検査、ウイルス複製検査、及び組織学的検査を行った。1、2、及び4日目に、大きな群のマウスを犠牲にし、それらから血液試料及び肺組織を得た。
【0080】
その結果、低又は高用量のワクシニアを受け、ヒドロキシ尿素を投与された群は、上昇した生存率を有した(図18:A、B)。特に、高用量のワクシニアを受け、ヒドロキシ尿素を投与された群は、上昇した生存率と共に、減少した好中球絶対数(ANC)も有した。一方、低又は高用量のワクシニアを受け、好中球増殖を促進するG-CSFを投与された群は、低下した生存率と共に、著しく増加した好中球絶対数を有した(図19:C、D)。一方、低又は高用量のワクシニアを受けた群においてANCとウイルス粒子(VP)数の間に顕著な相関関係はなかった(図18:E、F)。
【0081】
その一方でさらに、14匹のマウスをヒドロキシ尿素による後処置を有する群である2つの群(7匹のマウス/群)に分け、感染のためにワクシニアウイルスのWR株(1×10pfu)の鼻腔内粘膜投与に供した。2日後、1つの群のみをヒドロキシ尿素による処置に供した(80mg/kg/日、2~14日目)。
【0082】
その結果、ウイルス療法におけるHUの保護効果が、HUをウイルス感染の2日後に投与した場合でさえ観察された(図18:G、H)。
【0083】
加えて、組織学的検査は、ワクシニアウイルスのWR株のみで処置した群のマウスの肺組織ではなくワクシニアウイルスのWR株及びG-CSFで処置した群のマウスの肺組織において肺浮腫が観察されることを示した。これらの結果から、敗血症性ショックの原因は、病原体誘導性細胞傷害性ではなく炎症性サイトカインなどの他の因子であることが確認された。
【0084】
それに対して、他の群と比較して、ワクシニアウイルスのWR株及びヒドロキシ尿素で処置した群のマウスの肺組織において改善された側面が確認された(図19、右)。加えて、投与経路に起因する感染はタンパク質A56の免疫蛍光染色によって確かめた。その結果、感染は気管支において大いに発生し、3つの群間に顕著な差異はなかった(図19、左)。
【0085】
実験例6.インフルエンザウイルス誘導性敗血症モデルにおけるヒドロキシ尿素の治療効果の確認(II)
28匹のBALB/cマウスを4つの群に分けた(n=7/群)。まず、第1の群は、ウイルス感染がない陰性対照群として設定し、第2~第4の群は、H1N1インフルエンザAウイルス(maPR8、3×mLD50(50%マウス致死用量))の鼻腔内粘膜投与に0日目に供した。第2の群は薬物処置がない陽性対照群として設定し、第3及び第4の群は、それぞれオセルタミビルリン酸塩(OSV-P、0.1mg/kg、b.i.d.、0~4日目)及びヒドロキシ尿素(50mg/kg、q.d.、-2~14日目)による処置に供した。体重及び生存率を20日目まで5日間隔で測定した。
【0086】
その結果、ヒドロキシ尿素を受けた第4の群は上昇した生存率を有することが確認された。具体的には、陽性対照群である第2の群のマウスは、10日目まで体重減少を示しながら全て死亡したが、第4の群のマウスは10日目まで体重減少を示し、20日目に初めの体重に回復した(第4の群のマウスの70%が生存した)(図20)。
【0087】
実験例7.細菌誘導性敗血症モデルにおけるヒドロキシ尿素の治療効果の確認(II)
21匹のBALB/cマウス(約8週齢)を3つの群に分けた(LPS、LPS+HU_30、LPS+HU_60;n=7/群)。全てのマウスがLPSの腹腔内投与を10mg/kgで0日目に受けた。群(LPS+HU_30)のマウスはヒドロキシ尿素(30mg/kg/日、-1日目~3日目)を1日1回受け、群(LPS+HU_60)のマウスはヒドロキシ尿素(60mg/kg/日、-1日目~3日目)を1日2回受けた。各群のマウスの生存率を12日目まで3日間隔で測定し、血液試料を12日目に採取し、血液中の好中球絶対数を確かめた。
【0088】
その結果、LPSのみを受けた群の全てのマウスが24~48時間以内に死亡した。一方、群(LPS+HU_30及びLPS+HU_60)のマウスは著しく上昇した生存率を有した。加えて、群(LPS+HU_30及びLPS+HU_60)のマウスは減少したANCを有した(図21)。
【0089】
実験例8.サルモデルにおけるヒドロキシ尿素によって引き起こされる阻害された全身性炎症反応の確認(II)
45~55カ月齢のオスのカニクイザル(n=3)を、全身性炎症反応を誘導するVVtk-(1×10pfu)のみ、又はVVtk-及びヒドロキシ尿素の両方(VVtk-:1×10pfu、HU:80mg/kg/日及び30mg/kg/日)の全身投与に供した。次いで、全身性炎症及び膿疱のレベル、体温、体重などを測定することによって毒性を評価した。
【0090】
ワクシニアウイルスVVtk-及びヒドロキシ尿素の共投与を受けた群は、VVtk-のみを受けた群と比較して、著しく弱まった全身性炎症及び膿疱などの皮膚発疹病変の阻害を示した(図22)。
【0091】
加えて、ウイルスのみを受けた群は体温の上昇を示したが、共投与を受けた群は体温の顕著な上昇を一切示さず、2つの群の間に体重減少の差異はなかった。加えて、好中球絶対数及びウイルス粒子数の両方が概して減少し、安定なままであることが確認された(図23)。
図1
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図21
図22
図23
【手続補正書】
【提出日】2022-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分として、式1の化合物又はその薬学的に許容できる塩を含む、全身性炎症反応症候群(SIRS)を防止、緩和、又は治療するための医薬組成物。
【化1】
【請求項2】
前記全身性炎症反応症候群が、細菌又はウイルスへの曝露後に生じる炎症反応を伴うものである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記全身性炎症反応症候群が、ウイルスへの曝露後に生じる炎症反応を伴うものであり、
前記ウイルスが、インフルエンザウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、サイトメガロウイルス、バキュロウイルス、レオウイルス、アデノ随伴ウイルス、粘液腫ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、ニューカッスル病ウイルス、パルボウイルス、コクサッキーウイルス、セネカウイルス、ワクシニアウイルス、及びポックスウイルスからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記ウイルスが腫瘍溶解性ウイルスである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
抗生物質又は抗ウイルス剤をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記抗生物質がドリペネム、セフェピム、イミペネム、メロペネム、セフタジジム、セフタロリンフォサミル、セフトリアキソン、バンコマイシン、テイコプラニン、セフォタキシム、メトロニダゾール、アミノグリコシド系抗生物質、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記抗ウイルス剤が、オセルタミビル、ザナミビル、ペラミビル、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル、トリフルリジン、ラミブジン、テルビブジン、クレブジン、エンテカビル、アデホビル、テノホビルジソプロキシル、テノホビルアラフェナミド、ベシホビル、リバビリン、ダサブビル、ソホスブビル、ダクラタスビル、アスナプレビル、ジドブジン、アバカビル、エファビレンツ、エトラビリン、ネビラピン、リルピビリン、アタザナビル、ダルナビル、ネリファビル、リトナビル、インジナビル、ドルテグラビル、ラルテグラビル、エンフベルタイド、マラビロク、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
注射剤として製剤化される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
活性成分として、式1の化合物又はその薬学的に許容できる塩を含む、敗血症を防止、緩和、又は治療するための医薬組成物。
【化2】
【請求項10】
前記敗血症が、細菌又はウイルスへの曝露後に生じる炎症反応を伴うものである、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記敗血症が、ウイルスへの曝露後に生じる炎症反応を伴うものであり、
前記ウイルスが、インフルエンザウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、サイトメガロウイルス、バキュロウイルス、レオウイルス、アデノ随伴ウイルス、粘液腫ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、ニューカッスル病ウイルス、パルボウイルス、コクサッキーウイルス、セネカウイルス、ワクシニアウイルス、及びポックスウイルスからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記ウイルスが腫瘍溶解性ウイルスである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
抗生物質又は抗ウイルス剤をさらに含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記抗生物質が、ドリペネム、セフェピム、イミペネム、メロペネム、セフタジジム、セフタロリンフォサミル、セフトリアキソン、バンコマイシン、テイコプラニン、セフォタキシム、メトロニダゾール、アミノグリコシド系抗生物質、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記抗ウイルス剤が、オセルタミビル、ザナミビル、ペラミビル、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル、トリフルリジン、ラミブジン、テルビブジン、クレブジン、エンテカビル、アデホビル、テノホビルジソプロキシル、テノホビルアラフェナミド、ベシホビル、リバビリン、ダサブビル、ソホスブビル、ダクラタスビル、アスナプレビル、ジドブジン、アバカビル、エファビレンツ、エトラビリン、ネビラピン、リルピビリン、アタザナビル、ダルナビル、ネリファビル、リトナビル、インジナビル、ドルテグラビル、ラルテグラビル、エンフベルタイド、マラビロク、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
注射剤として製剤化される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項17】
活性成分として、式1の化合物又はその薬学的に許容できる塩を含む、好中球増加症を防止、緩和、又は治療するための医薬組成物。
【化3】
【請求項18】
前記好中球増加症が細菌又はウイルスへの曝露後に生じるものである、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記好中球増加症が、ウイルスへの曝露後に生じるものであり、
前記ウイルスがインフルエンザウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、サイトメガロウイルス、バキュロウイルス、レオウイルス、アデノ随伴ウイルス、粘液腫ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、ニューカッスル病ウイルス、パルボウイルス、コクサッキーウイルス、セネカウイルス、ワクシニアウイルス、及びポックスウイルスからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記ウイルスが腫瘍溶解性ウイルスである、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項21】
抗生物質又は抗ウイルス剤をさらに含む、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記抗生物質が、ドリペネム、セフェピム、イミペネム、メロペネム、セフタジジム、セフタロリンフォサミル、セフトリアキソン、バンコマイシン、テイコプラニン、セフォタキシム、メトロニダゾール、アミノグリコシド系抗生物質、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記抗ウイルス剤が、オセルタミビル、ザナミビル、ペラミビル、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル、トリフルリジン、ラミブジン、テルビブジン、クレブジン、エンテカビル、アデホビル、テノホビルジソプロキシル、テノホビルアラフェナミド、ベシホビル、リバビリン、ダサブビル、ソホスブビル、ダクラタスビル、アスナプレビル、ジドブジン、アバカビル、エファビレンツ、エトラビリン、ネビラピン、リルピビリン、アタザナビル、ダルナビル、ネリファビル、リトナビル、インジナビル、ドルテグラビル、ラルテグラビル、エンフベルタイド、マラビロク、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項24】
注射剤として製剤化される、請求項17に記載の医薬組成物。
【国際調査報告】