(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-25
(54)【発明の名称】個別あつらえの着装物を最適化する方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20230418BHJP
A41H 1/02 20060101ALI20230418BHJP
A41H 43/00 20060101ALI20230418BHJP
A43D 999/00 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
G06Q50/04
A41H1/02 Z
A41H43/00 C
A43D999/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022553594
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(85)【翻訳文提出日】2022-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2021055519
(87)【国際公開番号】W WO2021176018
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】102020106181.1
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102020111939.9
(32)【優先日】2020-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522351996
【氏名又は名称】イークアル バイオニック ゲーエムベーハ-
【氏名又は名称原語表記】EEKUAL BIONIC GMBH
【住所又は居所原語表記】Marienstrasse 25,50825 Koln(DE)
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100129263
【氏名又は名称】中尾 洋之
(72)【発明者】
【氏名】ライアンズ,ウィリアム
【テーマコード(参考)】
4F050
5L049
【Fターム(参考)】
4F050KA00
5L049CC04
(57)【要約】
本発明は、同一種類の個別あつらえの着装物を最適化する方法に関する。この方法は、以下のプロセスステップを含む。a.少なくとも1つの身体部位(12)を計測し、身体部位(12)の寸法データを含む、着装物製造のための第1データセットを生成するステップと、b.求められた第1データセットに基づいて第1着装物を製造するステップであって、第1着装物が、使用者による第1着装物の使用に起因するその特性および/または変化を確認可能な少なくとも1つのインジケータ要素(10)を備える、ステップと、c.使用者による第1着装物の使用のステップと、d.同一種類の第2着装物の製造のために、着用者による使用による変化に関して使用後の第1着装物を評価するステップであって、それにより、使用後の第1着装物の寸法データを含む第2データセットを生成し、第2データセットを第1データセットと比較し、第2着装物の製造に関連する情報についてインジケータ要素(10)を確認する、ステップと、e.第1データセットと、第2データセットと、インジケータ要素(10)の確認の結果とに基づいて、第3データセットを生成するステップと、f.第3データセットに基づいて第2着装物を製造するステップと、g.新しく製造される各着装物のフィット性および/または特性をさらに最適化するために、方法ステップd)からf)を、都度直近に製造され使用された着装物から開始して、必要に応じて繰り返すステップ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一種類の個別あつらえの着装物を最適化する方法であって、
a.少なくとも1つの身体部位(12)を計測し、前記身体部位(12)の寸法データを含む、着装物製造のための第1データセットを生成するステップと、
b.求められた前記第1データセットに基づいて第1着装物を製造するステップであって、前記第1着装物が、使用者による前記第1着装物の使用に起因するその特性および/または変化を確認可能な少なくとも1つの受動的インジケータ要素(10)を備える、ステップと、
c.使用者による前記第1着装物の使用のステップと、
d.同一種類の第2着装物の製造のために、前記使用者による前記使用による変化に関して使用後の前記第1着装物を評価するステップであって、それにより、
・使用後の前記第1着装物の寸法データを含む第2データセットを生成し、
・前記第2データセットを前記第1データセットと比較し、
・前記第2着装物の製造に関連する情報について前記インジケータ要素(10)を確認する、ステップと、
e.前記第1データセットと、前記第2データセットと、前記インジケータ要素(10)の確認の結果とに基づいて製造データセットを生成するステップと、
f.前記製造データセットに基づいて前記第2着装物を製造するステップと、
g.新しく製造される各着装物のフィット性および/または特性をさらに最適化するために、前記方法ステップd)からf)を、都度直近に製造され使用された着装物から開始して、必要に応じて繰り返すステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記第1データセットと、前記製造データセットと、全てのさらなる製造データセットとが、前記着装物のパーツ(6)を製造する少なくとも1つの製造装置(4)に送信されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インジケータ要素(10)が、前記着装物の損耗を検出可能に設計されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記インジケータ要素(10)が、前記着装物の使用によって力学的に変化可能であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記インジケータ要素(10)が、使用によって前記着装物内部に形成される局所的な微気候を検出可能に設計されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記インジケータ要素(10)が、湿度インジケータとして設計されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記インジケータ要素(10)が、pH値インジケータとして設計されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記インジケータ要素(10)が、色を変化させることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記インジケータ要素(10)が、前記着装物の表面(40)の凹部内に配置されていること特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記インジケータ要素(10)が、前記着装物の表面(40)に対して突出して配置されていること特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記インジケータ要素(10)によって損耗が増大したことが示された場合は、次の着装物は対応する部分において力学的に強化して製造されること特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記インジケータ要素(10)が前記使用者にとって好ましくない微気候を示した場合は、前記微気候が使用時に改善するように修正されて次の着装物が製造されること特徴とする、請求項5から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記インジケータ要素(10)によって発汗の増大が認識可能になる場合、製造される次の着装物には通気孔または薄手の素材が設けられることを特徴とする、請求項6から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
製造される前記着装物が、靴、上半身用衣類、特にジャケット、またはズボンの群からであることを特徴とする、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
他の使用者によって使用された類似の着装物の情報および/またはデータセットも、製造される次の着装物の最適化のために追加的に使用されることを特徴とする、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記着装物の次世代品を製造する前に、対応する身体部位(12)も再度計測されてデータセットが生成され、それが、前記着装物の次世代品の製造のためのデータセットを調整または改善するために使用されることを特徴とする、請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記インジケータ要素(10)を確認する前記ステップが、光学デバイスの活用により実施されることを特徴とする、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記身体部位(12)を計測し、それに基づいてデータセットを生成する前記方法ステップが、
1.前記身体部位(12)をサイズ基準物(22)に対して配置するステップと、
2.デジタルカメラ(26)を用いて、複数の異なる視点から前記身体部位(12)と前記サイズ基準物(22)との画像を取得するステップと、
3.取得した前記画像から、前記身体部位(12)の複数の基準点(28)とそれらの互いに対する相対的位置とを特定するステップと、
4.前記基準点(28)に基づいて前記身体部位(12)のヴァーチャル画像を生成するステップと、
5.前記身体部位(12)に合わせた着装物の製造のためのデータを生成するステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個別あつらえの着装物、特に靴またはジャケットを最適化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
注文製作の着装物には、当該着装物を合わせる身体の部位を可能な限り正確に計測することが求められる。その後、着装物は、計測により収集されたデータセットに基づいて正確に製造されなければならない。
【0003】
身体部位を計測する多くの方法が公知である。身体部位は、通常、たとえば巻尺を使用して計測されるが、時間がかかる上、間違いが発生しやすい。巻尺を配置するときと、目盛を読むときとの両方でミスが起こりうる。
【0004】
たとえば足の計測は特に難しく、また膨大な時間を要するため、カスタムメイドの靴の設計および製造には、非常に時間がかかる。さらに、計測データを最終的に製造される靴の部品に移す際にも誤りが起こりうる。
【0005】
靴の場合は特に、たとえ計測が正確でも、靴を履いてみて初めて分かるような圧迫点が発生することがあることも、過小評価されるべきではない。たとえば、足は、歩行パターンによって負荷がかかってその形が変わったり変形したりして、靴のある部分を押圧する。このような圧迫点は、休止状態、つまり、使用者が立っているだけのときには発生しない。
【0006】
しかし、これとは別に、オーダーメイドの着装物が使用により変化することによって問題が生じることがある。たとえば、靴は片側だけすり減ることがあり、また、ジャケットやズボン、トップスは、摩擦により特定の部分だけ損耗することがある。
【0007】
着装物の内側の微気候も、使用者または着用者にとって大いに重要である。着装物の材料の処理またはその選択が使用者にとって好ましくないことが、使用して初めて明らかになるということがよくある。たとえば、着装物の着用者が汗をかきやすい場合、そのような部分には通気性の良い、または、軽量の材料が使用されるべきである。しかしながら、この情報は通常、着装物の製造の際に利用できない。
【0008】
本発明の目的は、衣料品の着用快適性の改善および向上につながる、個別あつらえの衣料品、特に靴を最適化する方法を提案することである。この方法は、実施ができるだけ簡単で、かつ、高度のオートメーションに適しているべきである。
【発明の概要】
【0009】
本発明によれば、上述の課題が、以下のステップを含む、個別あつらえの同一種類の着装物を最適化する方法によって解決される。
a.少なくとも1つの身体部位を計測し、前記身体部位の寸法データを含む、着装物製造のための第1データセットを生成するステップと、
b.求められた前記第1データセットに基づいて第1着装物を製造するステップであって、前記第1着装物が、使用者による前記第1着装物の使用に起因するその特性および/または変化を確認可能な少なくとも1つのインジケータ要素を備える、ステップと、
c.使用者による前記第1着装物の使用のステップと、
d.同一種類の第2着装物の製造のために、前記着用者による前記使用による変化に関して使用後の前記第1着装物を評価するステップであって、それにより、
・使用後の前記第1着装物の寸法データを含む第2データセットを生成し、
・前記第2データセットを前記第1データセットと比較し、
・前記第2着装物の製造に関連する情報について前記インジケータ要素を確認する、ステップと、
e.前記第1データセットと、前記第2データセットと、前記インジケータ要素の確認の結果とに基づいて第3データセットを生成するステップと、
f.前記第3データセットに基づいて前記第2着装物を製造するステップと、
g.新しく製造される各着装物のフィット性および/または特性をさらに最適化するために、前記方法ステップd)からf)を、都度直近に製造され使用された着装物から開始して、必要に応じて繰り返すステップ。
【0010】
このように、本発明は、とりわけ、それまでに製造された着装物の使用から得られるフィードバックが、同一種類の個別あつらえの着装物の製造において一貫して考慮されるという考えに基づいている。複数の世代にわたる着装物の製造が、継続的なループで行われる。この方法は言わば適応能力があり、結果として、複数の世代間にわたって着装物を改良していくことになる。
【0011】
本発明において、「同一種類の着装物」という語は、特に寸法と素材の点において実質的に互いに対応する複数の異なる世代の着装物を意味する。
【0012】
これに関連して、着装物の最適化は、1人の使用者のみに関して複数世代にわたって個別に行われるが、異なる、すなわち複数の使用者について同一種類の着装物を最適化することも可能である。つまり、たとえば、複数の使用者向けに製造されたあるコレクションの多数のジャケットから、それらの使用後に、各インジケータ要素の情報を含むデータセットが生成されうる。これにより、その製品の基本的な弱点を発見し、次の世代ではそれを回避することが可能である。
【0013】
次の世代の着装物の調整には、たとえば、特定の部分において素材を強化することを含む。たとえば、靴の損耗が親指の部分で激しい場合、それに応じてその部分を強化することができる。1人の使用者のためだけに個別に改良を行う場合、その使用者の歩行パターンによって損耗が不均一になっているときには、特定の部分において靴のソールを強化してもよい。同様に、圧迫点もなくすことができる。
【0014】
本発明によると、インジケータ要素は、その変化の記録と評価が可能な受動的インジケータ要素として設計される。この点、受動的インジケータ要素は、たとえばデータを記録、保存して、たとえば無線または他の技術等によってそのデータをプロセッサに転送する能動的要素を備えるインジケータ要素とは異なる。受動的インジケータ要素は製造コストがかなり抑えられ、デザインへの組み込みが容易で、また、技術的欠陥により停止することがない。
【0015】
また、本発明において、インジケータ要素という語は、インジケータ要素として働く機能を実質的に有する、着装物に特に追加される要素を包含する。しかしながら、着装物の現存の要素もインジケータ要素として使用することができる。たとえば、靴ひも用開口部や、特定の縫い目およびその経路、もしくは他のデザイン要素の位置、または、空間内の、あるいは他の要素に対するそれらの相対的位置を使用できることが考えられる。
【0016】
本発明によるインジケータ要素は、機械読み取り可能なバイナリコードのようなものを表すように実施することができる。特に簡易な一実施形態では、インジケータ要素は、着装物の使用により剥がれ落ちうる有色のドットとすることができる。後者の場合、カメラを使用して、その部分において着装物が損耗しているかどうかを迅速かつ容易に判定することができる。有色のドットがまだ視認可能な場合は、損耗度が低く、もう視認できない場合は、その部分において着装物が損耗している。
【0017】
好適には、インジケータ要素は、たとえば上述のカメラや、レーザ測定法、または、たとえば超音波もしくは赤外線を活用して、光学的に読み取られる。これは、たとえば、すり減る凸部や寸法が増減する凹部など、寸法が変化するインジケータ要素の場合に特に有用である。このように、光学デバイスは、寸法の変化を直接計測し、その計測結果をプロセッサに送信するのに適していよう。プロセッサは、新しく測定した計測値を元の計測値またはインジケータ要素の元の寸法と比較する。寸法に相違がある場合は、その相違を使用して、次世代の着装物の基礎となるデータセットが調整され、それにより、次世代の着装物そのものも調整される。
【0018】
インジケータ要素は、認識可能な有色のドットとすることができるが、本発明によると、人間の目でほとんどまたは全く見えない色またはコーティングとすることも考えられる。たとえば、対応する光のもとでだけ認識可能な蛍光ドットを設けることもできる。
上述の有色のドットは、その周囲の表面と同じ高さであってもよいが、それより低くてもよい。その場合、有色のドットが剥がれ落ちる前に周囲の表面がまず確実に摩耗する。当然ながら、有色のドットを周囲の素材より突出した凸部に設けることも可能である。
【0019】
有色のドットに代えて、たとえばドーム状など、周囲の表面に対して突出した要素だけを設けることも可能である。このような要素が摩擦により減少または完全に消失した場合は、その部分において損耗が激しいことが明白である。本実施形態では、バイナリ情報が処理可能なだけでなく、損耗の程度を特定することも可能である。本発明によると、所定距離だけ離隔した光源によって投じられたドームの影によって、その高さまたは高さの変化を測定することができる。
【0020】
インジケータ要素として、使用によって深さが減少する凹部を設けることも考えられる。本発明によると、凹部についても、上方の所定の距離だけ離隔した光源によって投じられた影を測定することが可能である。その場合、凹部の半径の影が使用される。
【0021】
また、表面材料の変化も受動的インジケータ要素として機能することができる。たとえば、損耗によりその形状が変化または消失する、特別な糸や付加的なループなどが挙げられる。さらには、変化もしくは損耗し、かつ/または最終的に消失する小さな球体が組み込まれてもよい。1または複数の異なる糸を貫通させた一連の小さな球体を配置してよいことも考えられる。
【0022】
着装物が、特定の部分に、積層された色の異なる複数の層から構成される素材を有することも考えられる。これにより、外部から見える色が、損耗の度合に応じて変化する。たとえば、青の層の次に赤の層、そして最後に黄色の層が配置されてよい。最初に青の層が、次いで赤、最後に黄色の層がなくなる。
【0023】
インジケータ要素は、損耗度だけでなく他の有益な推論も導出できるように設計することも可能である。たとえば、インジケータ要素は、湿度、pH値、温度等を記録するのに使用可能なコーティングを有することができる。このような情報は、ひいては使用中の着装物の内部の微気候に関して推論を導出するために使用することができる。たとえば、使用者が体のある部分において他の部分より汗をかく場合、インジケータ要素によってそれが示され、次の世代においてこの状況に適合するよう着装物を改良することができる。たとえば、その部分に、通気孔を設けたり、単に通気性のより良いまたは薄手の素材を用いたりできる。好適なpHインジケータは、たとえば、フェノールフタレインのコーティングである。
【0024】
当然ながら、原則として、インジケータ要素を兼用部材として、損耗度の特定と他のデータの特定との両方に使用することができる。
【0025】
同様のことが、着装物の所望の不透水性についても言える。インジケータ要素を、着装物のうち最適に防水されていない部分を特定するのに使用することができる。水分の侵入が検出され、それに対して着装物が調整されることで、次世代ではそれを防止することができる。
【0026】
本発明の重要な利点は、寸法や損耗度に関する情報、およびインジケータ要素の他の情報が最適な状況では自動で評価可能であるという点である。最終的には、完全に自動化された態様で、ある世代から次の世代にかけて着装物を調整・改良することが可能である。たとえば、圧迫点でさえも、寸法のわずかな差異から検出可能である。それに必要なのは、関連するデータを処理コンピュータに送信する、十分に正確な計測装置だけである。処理コンピュータは、対象の着装物の以前の古いデータセットを今回求められたデータまたはデータセットと比較する。処理コンピュータは、それに応じて調整を行い、次世代の着装物の製造用に、更新されたデータセットを製造装置に送信することができる。
【0027】
当然ながら、着装物によっては、自動で製造された着装物の部品を手作業で組み合わせることが必要かつ有用である場合もある。
【0028】
本発明によると、次世代の着装物を製造する前に、適宜、身体部位、たとえば足が再度計測されて、それに基づくデータも次世代の着装物の最適化に組み込まれた場合に有利であることも確認された。これは、身体部位も様々な理由により経年変化しうることが考慮されている。長期間にわたって着用者の最適な快適性が維持されるように、変化する身体部位とそれに合わせて調整される着装物とが、同時的に、すなわち、互いに依存して発展し続ける。
【0029】
原則として、データクラウド、たとえばスキャンを活用して身体部位を計測することができる。この場合、多数のデータポイントが計測されて記録され、それに基づいて身体部位の形状が特定される。
【0030】
ただし、特に有利な実施形態では、身体部位は特定の個別の基準点に基づいて計測される。実際、重要な基準点だけを考慮に入れる場合には、データ量も処理速度も大幅に低減できることが分かった。したがって、関連する基準点のデータだけが特定される。
【0031】
特に有利な実施形態では、着装物の対象となる身体部位の計測が、デジタルカメラを有するモバイル端末を活用して実施される。
【0032】
寸法が既知であるサイズ基準物が必要とされる。サイズ基準物は、たとえば立方体または直方体でありえるが、寸法が既知である他の物体も使用できる。
【0033】
デジタルカメラを活用して、異なる視点から身体部位の複数の画像が撮影される。これらの画像は、身体部位の配置エリアに置かれたサイズ基準物を同時に含むことが重要である。寸法を算出するには、視点の角度に加えて、カメラレンズからサイズ基準物までの距離も知る必要がある。
【0034】
以下、本発明を足の計測と靴の製造について説明するが、本発明はこの例に限定されない。むしろ、本発明の意味するところにおいて、足は計測される身体部位の一例にすぎず、靴は製造物の一例を表す。
【0035】
特に有利な実施形態では、サイズ基準物は特定サイズの、たとえばDIN―A4用紙などの用紙により構成される。代替的には、標準規格の他の用紙も使用可能であり、そのため、以下では「用紙」という語を使用する。用紙が面上に載置され、計測される足が用紙の上に配置される。その後、デジタルカメラを用いて異なる視点から複数の写真が撮影され、保存される。用紙の寸法は既知であるため、そこから、カメラレンズから用紙までの距離と、足の寸法とが算出される。
【0036】
有利には、画像が常に特定の距離と特定の角度または視点から撮影されることで、足の計算または計測が円滑に進められる。たとえば、カメラレンズから足までの距離は40~60cmでよく、好適には50cmである。この距離で、たとえば5枚の写真が異なる視点、すなわち異なる角度から撮影される。
【0037】
異なる視点から複数の写真を撮影する必要がある。その理由は、とりわけ、足の全ての基準点に関して同時にカメラを正しい位置に合わせることができないからである。たとえば、特定の基準点に対してカメラを垂直に配置する必要がある。この点、複数の基準点についてそれぞれ、写真を撮らなければならない。
【0038】
所望の距離で複数の視点から写真を確実に撮影するために、空間内でカメラが正しい位置に配置されて写真撮影されるように使用中に使用者を案内し補助するような、少なくとも1つのプログラムまたはアプリケーションをデジタル端末装置にインストールすることができる。この目的のために、好適には、カメラが、スマートフォンのティルトまたは傾きが記録できる、たとえばジャイロセンサなどの位置センサを有する。デジタルカメラまたはスマートフォンの垂直軸に関する回転を記録する内蔵型のコンパスを使用することも、特に有利である。
【0039】
アプリケーションは、位置センサによって特定された、空間におけるカメラの現在位置を表示する。これは、たとえば、デジタル端末装置のディスプレイにヴァーチャル水準器を表示することで実現可能である。
【0040】
さらに、画像が撮影される異なる視点のそれぞれについて、予め設定された補助的な表示が提供される。これにより、各画像を撮影するのに適切なカメラの位置が現在位置の表示に関連して設定されること、あるいは、補助的な位置合わせ表示によって示されることが可能である。
【0041】
たとえば、ある要素、たとえば点が、カメラの位置に反応することができる。カメラの位置を変えることで、この要素を、ディスプレイ上の所定のエリア、たとえば固定された円の中に入れなければならない。点が円の中に位置すれば、カメラは正しく配置されている。
【0042】
ディスプレイ上の異なる複数の位置に異なる複数の円を表示して、それらに対応してカメラを複数の異なる位置に配置できる。つまり、点が第1の円内に誘導された場合、カメラは第1位置に配置され、点が別の第2の円内に誘導された場合、カメラは別の第2位置に配置され、以降同様である。点がそれぞれの円内にある状態で、都度写真が撮影され、画像が生成される。
【0043】
代替的には、複数の円の代わりに、単一の円のみが常に同じ位置に表示される。ただし、アプリケーションは、点を円内に順次入れると、毎回カメラが異なる位置に配置されるようにプログラムされている。このように、円内の点の位置が毎回カメラの異なる位置を示した状態で、一連の複数の画像が撮影される。たとえば、アプリケーションは第1画像を取るよう使用者に促してもよく、その場合、使用者はまず位置合わせ案内にしたがって点を円内に誘導しなければならない。画像の撮影後、第2画像取得のための指示が出される。使用者はまた点を円内に誘導しなければならないが、その際アプリケーションは、次の写真用のカメラの位置は前回の写真用のカメラの位置と異なることを考慮している。したがって、カメラが適切に再配置されて正しく位置合わせされた時に、点が円の中に入ることになる。
【0044】
カメラをサイズ基準物から正しい距離に設定するために、カメラのディスプレイ上にさらに補助線が示されることも可能である。異なる視点のそれぞれに関して、補助線が各視点から見たサイズ基準物の外形に対応するので、各画像を撮影するのに、補助線をサイズ基準物の外形に合わせなければならない。
【0045】
たとえば、カメラの距離が正しくない場合、補助線が赤く表示されてよい。補助線が用紙の外側寸法に合わせて配置されると、補助線が緑色で表示され、使用者は写真を撮るよう促される。これにより、次に行われる足の寸法の計算に、カメラの具体的な距離と具体的な位置が確実に与えられる。
【0046】
アプリケーションが、このような位置合わせ補助表示によって、カメラの空間内での正しい配置をまず確実にした場合、特に容易であることが証明された。このような表示は、たとえば水準器の円内の緑の点など、色付きの表示器として表すことも可能である。次いで、補助線が意図通されたようにサイズ基準物を取り囲むまで、カメラがサイズ基準物に近づけられる。その後ようやく対応する画像が撮影される。
【0047】
本発明によると、このように、次に実施される基準点の特定および寸法の計算のために、異なる方向または視点から十分な数の画像が撮影される。
【0048】
好適には、用紙が対角線で折られ、上方に折り上げられた場合、特別な効果がさらに発揮される。計測対象の足が再び用紙上に配置され、カメラが足に対して側方または斜めの位置に置かれる。ここでも、使用者は、アプリケーションならびに関連する位置合わせ補助表示および補助線を参照することができる。
【0049】
したがって、次に行われる計算は、用紙の幅および長さに関する二次元方向のみでなく、折り上げられた領域によってZ方向に関しても、すなわち、前面または用紙に対する高さも考慮して実施される。
【0050】
用紙の代わりに三次元物体が使用される場合は、その高さを基準とすることができる。
【0051】
複数の基準点が互いに相対的に特定されること、すなわち、基準点が現在の実際の足を表していることが重要である。つまり、従来技術のように、値が測定されて以前測定されて保存されたデータに関連付けられるということがない。サイズ基準物を参照して、複数の基準点間の距離が決定される。
【0052】
足の場合の適切な基準点は、たとえば、親指の先端、小指の外側点、足のアーチ部の高さ、および/またはブレードの上方の親指の高さ、ならびに、足の甲の位置である。さらに、必要に応じて他の基準点も特定および計算可能である。
【0053】
次のステップでは、好適には、撮影された写真が、複数の基準点の互いに対する相対位置を計算するコンピュータに送信される。有利には、十分な計算能力がある場合、デジタル端末自体がこの計算を行うこともできる。この場合、コンピュータを完全に省略してもよい。
【0054】
これらの基準点から、上で撮影された足の、言わばヴァーチャル画像を、計算により作成することができる。
【0055】
「ヴァーチャル画像」という語は文字通りに解釈されるべきではなく、むしろ機能的に解釈されるべきである。すなわち、使用者が認識可能な目に見えるヴァーチャル画像が生成される必要はなく、むしろ、足の外側寸法が特定される。したがって、究極的には、ヴァーチャル画像はデータセットとしてのみ存在することもありえる。
【0056】
次のプロセスステップでは、足の三次元ヴァーチャル画像から、上で算出された基準点に基づく二次元データメッシュを含むデータセットが算出される。足の三次元画像が、1または複数の二次元図面に変換される。これらの二次元データは、次に行われる、靴部品、すなわち調整された製造パーツの作製のための製造パターンまたは裁断パターンとして機能する。二次元図面の計算の際には、靴のフィット性をきつくするか緩くするかを考慮することが可能である。後で行われる靴部品の結合の際に必要な許容差も含めることができる。
【0057】
原則として、本発明の方法は以下の4つの主要なプロセスステップを含む。
【0058】
a)着装物が目的とする少なくとも1つの身体部位のバイオメトリック計測。
【0059】
b)計測により求められたデータの分析、および、インジケータ要素を備える着装物の製造パーツの作製用のデータセットの算出。
【0060】
c)可能な限り自動化された工程での着装物の製造。
【0061】
d)使用後の第1着装物の寸法データおよびインジケータ要素の評価から得られたデータを含む、次のデータセットの生成。必要に応じて、再度測定された身体部位のバイオメトリックデータも考慮される。
【0062】
以下の図面を参照しつつ、本発明をより詳細に説明する。これらの図面は例示に過ぎないことを理解されたく、また、単に本発明の実施形態を示すことが意図されている。以下の説明に記載の特徴は全て、それに関連して必ずしも言及されない場合でも、互いに組み合わせ可能である。これは、添付の特許請求の範囲に記載の特徴についても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
以下の図面が示される。
【
図5】着装物におけるインジケータ要素の配置の3つの例。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図1は、本発明による方法の基本的原理を非常に簡略化したフローチャートに示している。その中心にあるのは、情報を受け取り、着装物(製品8)の製造用のデータセットを算出するプロセッサ2である。プロセッサ2のデータセットは、パーツ6を作製する製造装置4に送信される。製造装置4は、たとえばCNC裁断機である。これらの機器は、全て自動で動作し、セットアップ時間が非常に短いため、特によく適している。裁断用の型が不要で、処理能力が高く生産速度が速い。さらに、多岐にわたる各種道具を用いて多様な材料を処理することができる。
【0065】
作製されたパーツ6は、次に製品8となる。製品8は、全自動化されたプロセスによって製造できるが、手作業による処理も考えられる。製品は、インジケータ要素10を有する。インジケータ要素10を使用して、たとえば、当該着装物の損耗を検知でき、あるいは、使用者にとって重要な他のデータを求めることができる。有利には、インジケータ要素10が、製品の使用後に、好ましくはデジタルカメラ26で撮影される。そして写真16から、インジケータ要素10の変化が評価される。
【0066】
製造パーツ6の作製用のデータセット算出の前提条件は、少なくとも1つの身体部位12の計測である。好適な変形例では、写真16が、デジタルカメラ26(
図2参照)を備えるモバイル端末上のアプリケーション14を介して生成される。写真16から、身体部位12の寸法および測定値がプロセッサ2によって算出可能である。以下、測定方法について詳しく記載する。
【0067】
本発明による方法において極めて重要な点は、製造される着装物を複数世代間にわたって使用者のニーズに合わせてサイクル的に発展させる可能性があることである。そのために、本発明によると、着装物が使用された後に、次世代の着装物の製造の際に組み込まれるデータの形で、フィードバックが求められる。それに利用可能な主に3つのオプションがある。
【0068】
・使用後の着装物を計測できる。
・インジケータ要素10を評価できる。
・対応する身体部位12を再度計測できる。
【0069】
得られた情報がデータセットの形でプロセッサ2に送信される。新規に求められたデータセットを前の複数の世代の着装物のデータセットと、特には、前回製造された着装物のデータセットと比較することで、次回の製造パーツ6の作製のためのデータセットに対して調整を行うことができ、ひいては、着装物の改良につながる。着装物を世代から世代へと最適化できるように、このプロセスを任意の回数繰り返すことができる。
【0070】
実線で示す矢印は第1着装物の製造を示し、破線で示す矢印は、それ以降の世代の製造プロセスを示す。注目すべきは、プロセッサ2は第2世代以降から追加情報を受信しており、その情報を着装物の最適化に使用可能である。
【0071】
測定のプロセスステップを、足20の測定の例を用いて説明する。しかしながら、上述のように、本方法は他の身体部位にも適している。
【0072】
第1方法ステップでは、計測される身体部位、この場合は足20をサイズ基準物22に対して配置する必要がある。このサイズ基準物22は、たとえば、DIN-A4用紙24(以下「用紙」とする)、または、規格サイズの他の用紙でありえる。本方法の特に有利な変形例では、足20の外側部が用紙24の側縁部に揃うか隣接するように、かかとが用紙24の角部に配置される。
【0073】
用紙24上で足20の写真がデジタルカメラ26を用いて撮影される。サイズ基準物22を参照することで、寸法が導出または算出される。
【0074】
ただし好適には、複数の所定の位置からそれぞれ画像が撮影される。空間内において、または足20に対して、デジタルカメラ26を複数の所定の位置に配置することは、それによりサイズ比が確実かつ迅速に得られるので、寸法の有利な算出に必要である。
【0075】
空間内でデジタルカメラ26を正しい位置に設置、確認するために、好適には、対応するアプリケーションがデジタルカメラ26に事前にインストールされ、それにより、デジタルカメラ26の内蔵位置センサを用いて、たとえば、ディスプレイ上に位置表示がなされる。
【0076】
足の複数の基準点28の正確な位置を特定可能にするために、異なる方向から複数枚の画像を取得する必要がある。基準点28は、X方向およびY方向に関する足20の二次元的な大きさに加えて、X方向の高さも得られるように選定される。たとえば、足20のアーチ部の高さ、親指32の最高高さ、または、親指32の長さなどを知る必要がある。さらに他の基準点28が必要であることは勿論であり、それにより、たとえば足20の前方部および後方部の幅や、足20の長さなども求められる。個別あつらえの靴の製造には、9から18個の基準点28の特定で十分であることがすでに示されている。
【0077】
特に、
図4は、用紙24を活用してどのように基台上に載置された用紙24の上方の基準点28の高さも特定可能にするかを示す。高さを特定するには、異なる方向から複数の画像を撮影した後、用紙24から足20をどけて、用紙を対角線に沿って折る。用紙24の両半分の片側部分に足20を戻し、用紙24の他方部分を上方に折り、その位置に保つ。これにより、以降の撮影において、用紙24の側縁部および上方に突出した先端部を、特定対象の足20の基準点28に対する参照として使用することができる。
【0078】
【0079】
サイズ基準物22を含む画像を使うことで、次のステップにおいて、足20の厳密な基準点28を、サイズ基準物22、すなわち用紙24に対する位置について、また基準点同士の相対的な位置について、正確に特定できる。有利には、その目的に適したコンピュータプログラムが使用され、撮影した画像がそのプログラムに送信される。この場合、画像はコンピュータに送信される。好適には、画像分析プログラムを介して画像中の基準点が自動で検出され、その位置が特定される。
【0080】
特定された基準点28から、実際の足20のヴァーチャル画像が生成可能である。
【0081】
次のステップでは、この足20のヴァーチャル三次元画像を使用して、足の外側面を表すデータメッシュが生成される。次に、原則として、この足20の外側面が平面に展開される。この二次元データメッシュから、所望の製造パーツ、この場合は靴の部品が、次のステップで特定される。
【0082】
図5に、着装物におけるインジケータ要素10の配置に関する3つの実施変形例を例示する。
図5.1の変形例では、インジケータ要素10は、着装物の表面40内の凹部に配置されている。
図5.2の変形例では、インジケータ要素10は着装物の表面40に対して突出した位置に配置されている。
図5.3は、表面に織り込まれて、変化または損耗し、かつ/または最終的に消失する、小さな球状または楕円状のインジケータ要素10を示す。たとえば、インジケータ要素10は、使用にともなって損耗し最終的に視認できなくなる、単なる着色層42によって構成されてよい。使用後にデジタルカメラを活用して着装物の写真が再度撮影される場合、インジケータ要素10がまだ視認可能かどうか、デジタル写真の基となるデータから容易に判定できる。インジケータ要素10が視認できなくなっていれば、明らかにこの部分で素材が損耗している。このことは、上記2つの変形例、すなわち、インジケータ要素10が凹部に配置される場合や表面50に対して突出して配置される場合にも同様である。このように、インジケータ要素10は、バイナリデータ情報として使用可能である。
【0083】
代替的には、インジケータ要素10は、異なる種類の情報を示すコーティングを有してもよい。たとえば、色の変化によって最高温度またはpH値を視認可能にできる。
【0084】
本発明は、上述の実施形態および例に限定されず、本発明を使用して実現可能な他の実施形態も含む。たとえば、製造される物品が使用による変化や損耗を受ける他の分野へ本発明による方法を適用することも考えられる。たとえば、機械部品や、サイズに合わせて裁断された布製被覆材などが考えられる。
【符号の説明】
【0085】
2:プロセッサ
4:製造装置
6:製造パーツ
8:製品
10:インジケータ要素
12:身体部位
14:アプリケーション
16:写真
20:足
22:サイズ基準物
24:A4用紙
26:カメラ
28:基準点
30:親指
40:表面
42:着色層
【国際調査報告】