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特表2023-518005DCパルス陰極アレイを用いる装置およびプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-27
(54)【発明の名称】DCパルス陰極アレイを用いる装置およびプロセス
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/35 20060101AFI20230420BHJP
【FI】
C23C14/35 B
C23C14/35 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554901
(86)(22)【出願日】2021-02-01
(85)【翻訳文提出日】2022-11-11
(86)【国際出願番号】 EP2021052305
(87)【国際公開番号】W WO2021180396
(87)【国際公開日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】00291/20
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518031387
【氏名又は名称】エヴァテック・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】モハメド・エルガザリ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー・ラットゥンデ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・エグリ
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029CA05
4K029DC13
4K029DC40
4K029DC42
4K029DC45
(57)【要約】
基板上に材料をスパッタ堆積するための装置(30)であって、
- 堆積チャンバ(31)と、
- 堆積チャンバの中に取り付けられた陰極アレイであって、3つ以上の回転する陰極(1、2、3、4、n)を有し、各陰極が、等しいターゲット長Lの円筒状ターゲット(5、6、7、8、n)および磁気システム(9、10、11、12、n)を有し、陰極が互いに間隔をあけて配置されており、したがって陰極の縦軸YCjは、基板平面Sからの距離TSDにおいて互いに平行であって、基板軸Xの投影に沿って距離TTTの間隔があり、陰極アレイの各陰極が磁気システム(9、10、11、12、n)を備え、少なくとも1つの陰極の磁気システム(9、12、n)が、磁気システムを旋回面PTSに、かつ旋回面PTSから旋回させるように、それぞれの陰極軸YCjの回りにスイベルマウントされている、陰極アレイと、
- 最大寸法x×yの少なくとも1つの基板(14)を静的にコーティングするために支持するように設計された台座(15)であって、堆積チャンバの中で、陰極アレイに関して前方かつ中央に配置されている台座と、
- 陰極のうち少なくとも1つに電力を供給するとともに、この電力を制御するように構成された少なくとも1つのパルス電源(13)と
を備える装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に材料をスパッタ堆積するための装置(30)であって、
- 堆積チャンバ(31)と、
- 前記堆積チャンバの中に取り付けられた陰極アレイであって、前記陰極アレイが3つ以上の回転する陰極(1、2、3、4、n)を有し、各陰極が、等しいターゲット長Lの円筒状ターゲット(5、6、7、8、n)および磁気システム(9、10、11、12、n)を有し、前記陰極が互いに間隔をあけて配置されており、したがって前記陰極の縦軸YCjは、基板平面Sからの距離TSDにおいて互いに平行であって、基板軸Xの投影に沿って距離TTTの間隔があり、前記陰極アレイの各陰極が磁気システム(9、10、11、12、n)を備え、少なくとも1つの陰極の前記磁気システム(9、12、n)が、前記磁気システムを旋回面PTSに、かつ旋回面PTSから旋回させるように、それぞれの陰極軸YCjの回りにスイベルマウントされている、陰極アレイと、
- 最大寸法x×yの少なくとも1つの基板(14)を静的にコーティングするために支持するように設計された台座(15)であって、前記堆積チャンバの中で、前記陰極アレイに関して前方かつ中央に配置されている台座と、
- 前記陰極のうち少なくとも1つに電力を供給するとともに、この電力を制御するように構成された少なくとも1つのパルス電源(13)と
を備える装置。
【請求項2】
(TLA-3.9MTSD)≧ymax≧(TLA-2MTSD
が当てはまる装置であって、TLAは前記ターゲット表面上の動作領域の長さであり、ymaxは縦軸YCjに対して平行な最大の基板寸法であり、MTSDは前記ターゲットの外径DTnと前記基板平面Sとの間の平均最短距離である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
MTSD≒TSD1≒ ... ≒TSDnである、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
隣接した陰極間のすべての距離TTTk-nに関して、前記隣接した陰極の軸の間の距離TTTが等しい、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記陰極が、前記基板平面Sから、法線距離TSCで等間隔に配置されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
外側陰極の少なくとも一方または両方の、ターゲット面Sまでの距離TSCoが、内側陰極の、前記ターゲット面Sまでの距離TSCiとは異なる、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
旋回面PTSと前記基板平面Sとの間の角度αについて40°≦α≦100°が当てはまる、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
スイベルマウントされた前記少なくとも1つの磁気システムの最大の旋回角度βについて±0°≦│β│≦±80°が当てはまる、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記パルス電源がバイポーラパルス電源である、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記バイポーラ電源がデュアルマグネトロン電源として構成されており、異なる極性の出力が、2つの隣接した電極の入力と電気的に接続されている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
パルス同期ユニットに接続された少なくとも2つのパルス電源を備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
両方の外側陰極がDC電源に接続されている、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記台座が電気的に絶縁されている、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記台座がRF源に接続されている、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記台座が電気的に接地されている、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
1つまたは複数のプロセスガスを供給するためのガス分配システムを備える、請求項1から15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
陽極が、プロセスチャンバによって形成された接地陽極である、請求項1から16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の装置を使用することを含む、コーティングを堆積するためのプロセスであって、基板を、前記堆積チャンバの中の前記台座に対して、位置決めして取り付け、前記堆積チャンバを真空引きしてから前記堆積チャンバにプロセスガスを導入し、前記アレイのうち少なくとも1つの陰極にパルス状のターゲット電力を印加することにより、少なくとも1つの寸法x×yの範囲内の平坦な基板上で、ターゲット面Sに前記コーティングを堆積する、プロセス。
【請求項19】
(TLA-3.9MTSD)≧ymax≧(TLA-2MTSD
が当てはまるプロセスであって、TLAは前記ターゲット表面上の動作領域の長さであり、ymaxは縦軸YCjに対して平行な最大の基板寸法であり、MTSDは前記ターゲットの外径DTnと前記基板平面Sとの間の平均最短距離である、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記基板寸法x×yの範囲内でコーティング厚さの均一性unif≦5%がもたらされる、請求項18または19に記載のプロセス。
【請求項21】
少なくとも1つの電源がバイポーラ電源である、請求項18から20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
2つの隣接した陰極が、それぞれの隣接した電極に異なる極性の出力が接続されるデュアルマグネトロン構成のバイポーラパルス電源によって駆動される、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
Cr、Cu、Ta、Ti、W、またはWTiのターゲットのスパッタリングによって、クロム(Cr)、銅(Cu)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)、またはタングステンチタン(WTi)のコーティングが堆積される、請求項18から22のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項24】
前記基板が電気的フローティングまたはRF電位で取り付けられる、請求項18から23のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項25】
前記基板が電気的に接地して取り付けられる、請求項18から24のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項26】
前記基板寸法x×yの範囲内で、unif≦5%の抵抗率R[Ωm]の均一性unifを有するコーティングをもたらす、請求項1から17のいずれか一項に記載の装置、または請求項18から25のいずれか一項に記載のプロセスの使用。
【請求項27】
前記基板寸法x×yの範囲内で、厚さの均一性unif≦5%を有するコーティングを備える基板を製造する、請求項1から17のいずれか一項に記載の装置、または請求項18から25のいずれか一項に記載のプロセスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載のDCパルス陰極アレイを備える装置と、それぞれの装置を用いてコーティングを付与するための請求項18に記載のプロセスとに関係するものである。
【背景技術】
【0002】
回転陰極アレイは、たとえばガラスコーティング産業における大面積コーティングのためのパススルー真空蒸着プラントや、たとえばフラットパネル産業における静止基板上の層堆積のための高品質コーティング機器およびプロセスとともに広く使用されているが、コーティングの均一性および/または使用される機器の生産性に関して、なお改善が必要である。主要な理由の1つは、陰極軸YCjに対して垂直な基板軸Xの両側における中央域に沿って、回転する陰極の下や陰極の間の堆積の均一性を改善するために、陰極アレイの、2つ以上の隣接したターゲットが、スイベルマウントの磁石システムを用いて動かされるとき、陰極軸YCjに関して、はす向かいの堆積領域に、スイングによって厚さの非対称性が生じることである。これによって、同等な2次元の平坦なマグネトロン構成に必要なものよりも、かなり大きい容積の堆積チャンバを使用することが必要になる。その影響によって生じる非均一性の問題のために、図3とともに以下で詳細に論じられるように、現況技術の機器は、陰極軸のそれぞれの側において、使用可能なコーティング領域から、基板からのターゲット距離の少なくとも2倍突出する陰極領域を設ける必要がある。したがって、この影響によって、たとえば約1m以下の比較的小さい表示領域をコーティングするとき、回転陰極の生産性上昇がひどく損なわれる。
【0003】
定義
(最大の)旋回角度±βは、全体的な偏向の中央または中心を定義する旋回面PTSからの、スイベルマウントの磁気システムの最大の角偏向を定義する。全体的な偏向は、合計の旋回角度2βによって定義される。ターゲットnの旋回面はそれぞれの陰極軸YCjを含み、基板平面Sに対して角度αを形成する。スパッタ堆積プロセス中に、磁気システムは一方の極位置から他方の極位置まで、すなわち+βから-βまで、または-βから+βまで移動される。これは、一定のやり方またはステップ状のやり方で、1回または繰り返し達成され得る。速度は時間とともに変化し得、またはステップごとに保持時間が異なり得、各ステップは磁気システムの別位置を表し、その結果、正の角セクタおよび負の角セクタ(すなわち、+βから0まで、および-βから0まで。0は、基板平面Sの反対側の磁気システムのゼロ位置から枢動されるかまたは枢動されない旋回面の位置を定義する)に関して磁気システムのドウェル時間が異なる可能性があることに留意されたい。
【0004】
以下では、ターゲットの外径から基板表面までの基本的に等しい距離TSDは、n個の陰極のターゲットの外径Dから基板平面Sまでのそれぞれの最短距離TSD1~TSDnの平均値
【0005】
【数1】
【0006】
から離れるにしても2mm以内であることを意味し、そこで、TSD1~TSDnのそれぞれについて、(MTSD-2mm)≦TSDk=1...n≦(MTSD+2mm)が当てはまる。
【0007】
これは、ターゲット寿命の最後に許容できる最大の差と考えられ得るが、すべてが新規のターゲット構成を用いれば、差は基本的により小さくなり、たとえば約0mmになる。これは、少なくとも、パルスDC電源で駆動される、旋回角度β>0のすべてのターゲットを表す。
【0008】
基板平面Sは、たとえば基板台座に取り付けられ得るウェーハといった、平坦な基板の表面によって定義される。しかしながら、基板平面S自体は、基板表面の制限された延長部にわたって延在する。
【0009】
陰極の縦軸またはターゲットの外径と基板平面Sとの間の通常の距離TSCまたはTSDは、それぞれの縦軸YCjまたはそれぞれのターゲットの外径DTkと基板平面との間の最短距離である。
【0010】
台座は、最大x×y以下の寸法の基板を支持するように設計された、基本的に平坦な基板支持体である。「基板を静的に支持する」とは、台座が、堆積プロセス中に基板が移動しないように保持するように設計されていることを意味する。
【0011】
バイポーラパルスまたはバイポーラ電源は、少なくとも電圧反転を供給し、たとえばそれぞれの負のパルスの後に、相対的に短い正のパルスまたはスパイクを後続させて、被害の恐れがある電荷蓄積を一掃し、それによって電気アークの入射を低減するかまたは防止することができる電源を意味する。そのようなパルスシーケンスは、以下では標準的なシーケンスと見なされるが、代替として、プロセスの種々の要求次第で、パルス周期間のオフセット時間(休止期間)を伴う、または伴わない、種々の非対称または対称なパルスパターンのバイポーラパルスが使用され得る。
【0012】
内向きや外向きという用語の使用は、図に記載の中心面YZに向かう方向や中心面YZから遠ざかる方向を指す。中心面YZは、通常は陰極アレイの対称面である。
【0013】
上、上方、下、下方、あるいは、より低い、より高い、等の用語の使用は、図に示されるように、図面に記載のz軸を指すが、陰極または基板が取り付けられるときの可能な方向に対する強制ではない。陰極と基板とは、たとえば真空チャンバの頂部、底部、または側壁といった様々な別位置に取り付けられ得るが、常に、たとえばチャンバの頂部対底部また両側といった、基本的に向かい合った位置に取り付けられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
現況技術の装置の短所は、請求項1に記載の装置を使用すること、または請求項18に記載のプロセスを適用することにより、基本的に減少され得ることが判明している。驚くべきことに、たとえばコーティングの厚さに関連した均一性問題の効果的な改善に加えて、陰極アレイの相対的に使用可能なコーティング領域が著しく拡張され得る。
【0015】
本発明の第1の実施形態では、基板上に材料をスパッタリング堆積するための装置は、
- 堆積チャンバと、
- 堆積チャンバの中に取り付けられた陰極アレイであって、そのアレイが3つ以上の回転する陰極を有し、各陰極が、等しいターゲット長Lの円筒状ターゲットおよび磁気システムを有し、陰極が互いに間隔をあけて配置されており、したがって陰極の縦軸YCjは、基板平面Sからの法線距離TSCにおいて互いに平行であって、基板軸Xの投影に沿って距離TTTの間隔があり、陰極アレイの各陰極が磁気システムを備え、少なくとも1つの陰極の磁気システムが、磁気システムを旋回面PTSに、かつ旋回面PTSから旋回させるように、それぞれの陰極軸YCjの回りに距離をとってスイベルマウントされており、旋回面PTSは、陰極軸YCjの中心を含み、基板平面Sの方に向けられており、磁気システムの旋回運動はターゲットの回転から独立したものである、陰極アレイと、
- 最大寸法x×yの少なくとも1つの基板を静的にコーティングするために基板を静的に支持するように設計された台座であって、静的に保持された基板の位置は、スパッタリング中に、たとえば装置およびその構成要素に関して、スパッタリング陰極の位置のように変化することはなく、台座は、堆積チャンバの中で、陰極アレイに関して前方かつ中央に配置されており、xは軸Xと平行であり、yは軸Yと平行であり、軸Xと軸Yは互いに垂直であって、陰極の縦軸YCjは軸Yと平行であり、X座標/Y座標の中心は、ターゲット面Sの中心をも定義し、コーティングされる表面の最大寸法x×yは、台座の支持境界線にも通常当てはまり、台座は、保持フレームであり得、凹部として形成され得、かつ/または基板を中心に置いたりかつ/もしくは固定したりするための、クランプもしくはESCを備えてよく、もしくはそのようなクランプもしくはESCから成り得、そのような装置は、たとえばx×yの寸法で、yは、それぞれ、有効なターゲット長TLA、および基板表面の上のそれぞれの可能な最小のターゲット突出であるターゲット長Tに依拠して、1000mm以下、さらには700mm以下の特に中程度から小さい基板寸法に適合し、xは、主に、使用される陰極の数および直径に依拠し、通常、xとyとは、類似の寸法または基本的に同一の寸法になるが、最小のターゲット突出を所与として、それぞれのターゲット長および/または陰極の数によって、片側のより大きい寸法またはより小さい寸法が実現可能であり、以下も参照、基板寸法は、最大の基板寸法および何らかのより小さい寸法も含み、それによって、最大の基板寸法は、支持境界の最大寸法にも関連することが言及されるべきである、台座と、
- 陰極のうち少なくとも1つに電力を供給するとともに、この電力を制御するように構成された少なくとも1つのパルス電源であって、陰極のうち少なくとも1つに、他の陰極に供給される電力と同一の電力が、または代替として、それとは異なる電力、もしくはそれから変化し得る電力が加えられ得る、パルス電源とを備える。
【0016】
この装置のさらなる実施形態では、縦軸YCjに対して平行な、最大の基板寸法または最大の支持境界寸法ymaxには次式が当てはまり、
(TLA-3.9MTSD)≧ymax≧(TLA-2MTSD
特に(TLA-3.5MTSD)≧ymax≧(TLA-2.5MTSD)であって、TLAはターゲット表面上の動作領域の長さであり、MTSDはターゲットの外径DTnと基板平面Sとの間の平均の最短距離である。
【0017】
一例として、最大の基板寸法/境界寸法はymax=TLA-3MTSDになり得る。このことは、x×yの面の各「y」側におけるターゲット突出を、ターゲット面Sとターゲットの外径DTまたはMDTnとの間の距離MTSDの約1.5倍に小さくできることを意味する。MDTnは、パルス電源および旋回角度β>0を用いて駆動されるターゲットの平均外径を指す。しかしながら、これは、静止している基板上にスパッタリングするのに、スイングによって厚さの非対称性が誘起されるのを防止するために、通常、ターゲットの少なくとも4倍の突出を必要とする、いかなる現況技術の突出よりも基本的に小さい。
【0018】
幾何学的ターゲット長は、有効なターゲット長にほぼ等しいかまたは有効なターゲット長よりも長く、すなわちTLA≒TまたはTLA≦Tであって、Tはターゲット長の合計を表すことが言及されるべきである。
【0019】
平均値MTSDは、それぞれのターゲットの外径とターゲット面との間の特定の距離値TSDk=1 ... TSDnの値に、近似的または正確に対応し得、すなわちMTSD≒TSDk=1 ...≒TSDnであり、そのため、基本的に等しい距離TSDの定義に該当し、上記を定義とともに参照されたい。そのため、ターゲットの外径Dは、基板平面Sから基本的に法線距離TSDにおいて等距離に配置される。これは、有利にはプロセス効率に関連して、すべてのターゲットが同一の材料で作られていて、基本的に同一の電力で駆動される限り、すべてのターゲットが新品のとき、さらにはターゲット寿命の最後における場合となる。
【0020】
さらなる実施形態では、たとえば基板平面Sと平行な面において、隣接した陰極または電極の間のすべての距離TTTk-nについて、隣接した陰極または電極の軸の間の距離TTTは等しい。
【0021】
本発明のさらなる実施形態では、陰極は、基板平面Sから等しい距離TSCに配置され得る。
【0022】
さらなる実施形態では、外側陰極の少なくとも一方または両方の、ターゲット面Sまでの距離TSCoは、内側陰極の、ターゲット面Sまでの距離TSCiとは異なり得る。
【0023】
旋回面PTSと基板平面Sとの間の角度αは、40°≦α≦100°によって定義され得る。
【0024】
スイベルマウントされた少なくとも1つの磁気システムの最大の旋回角度βについて、0°≦│β│≦80°、たとえば20°≦│β│≦70°が当てはまり、上限に近い値は、90°またはほぼ90°のαに当てはまる。それによって、最大の旋回角度βは、磁気システムの旋回面PTSからの最大の偏差を定義する。隣接した陰極に対する磁石システムの位置詰めを防止するべき明白な理由がある。これは、±β以内のあらゆる旋回角度が、隣接した陰極と交差することなく、基板平面Sに対する見通し内にあるべきことを意味する。
【0025】
好ましい実施形態では、外側の旋回面PTSoは、基板平面Sに対して角度α=50°±10°に傾斜される。外側の旋回面PTSoの傾斜は、常に基板平面Sや中央断面YZの方へ向けられ、すなわち内側へ向けられることに留意されたい。そのため、2つの外側陰極の最大の旋回角度βは、30°~50°、すなわち30°≦│β│≦50°に選択され得、たとえば旋回面PTSoからβ=±40°に、すなわち合計の旋回角度2β=80°に選択され得る。この場合、内側の旋回面PTSiは、基板平面Sに対して角度α=90°±10°に傾斜され得、内側の磁石システムの最大の旋回角度βは50°≦│β│≦70°となり、たとえばβ=±60°となって合計の旋回角度2β=120°を表す。
【0026】
さらなる実施形態では、パルス電源はバイポーラパルス電源であり得る。バイポーラパルス電源はデュアルマグネトロン電源として構成され得、隣接した電極が陰極および陽極として交互に働く場合と同様に、極性の異なる出力が、ここでは電極と名付けられた2つの隣接した陰極の入力に対して電気的に接続されている。
【0027】
陰極アレイの各陰極は、たとえばバイポーラ電源またはデュアルマグネトロン電源といった専用のパルス電源に接続され得る。4つの陰極アレイを用いる一例として、内側陰極はデュアルマグネトロン電源の異極性に接続され得る。これらの陰極は、極性が交番する性質により、電極と称される。同時に、外側陰極は専用のバイポーラパルスDC電源に接続され得る。デュアルマグネトロン電源は、専用のバイポーラ電源と同期している。さらなる例については、図1および図2およびそれぞれの説明を参照されたい。複数のパルス電源が使用される限り、これらの電源は、たとえばクロックでパルスを同期させるように、パルス同期ユニットに接続される。
【0028】
さらなる実施形態では、少なくとも一方または両方の外側の電源がDC電源でよい。
【0029】
堆積プロセス中に、台座は、基板をフローティング電位に保つように電気的に絶縁され得、あるいは電気的に接地され得る。
【0030】
通常、発明の装置は、1つまたは複数のプロセスガスを供給するためのガス分配システムを備え得る。陽極は、プロセスチャンバによって形成された接地陽極でよく、シールド、ライナまたは同様なもののような、それぞれの電気的に接続された要素を備え得る。
【0031】
本発明は、上記で説明されたような発明の装置の使用を含む、コーティングを堆積するためのプロセスにも関し、このプロセスでは、基板は、堆積チャンバの中の台座に対して、位置決めして取り付けられる。堆積チャンバを真空引きしてから、プロセスガスを、たとえば基準圧力に達するまで導入したとき、アレイのうち少なくとも1つの陰極にパルス状のターゲット電力を印加することにより、少なくとも1つの寸法x×yの範囲内の平坦な基板上で、ターゲット面Sにおけるコーティングの堆積が開始される。
【0032】
発明のプロセスを適用することにより、基板寸法x×yの範囲内のコーティングの、unif≦5%の厚さの均一性unifがもたらされ得る。均一性は
unif=(Max-Min)/(2×Mean)
と定義され、MaxおよびMinはそれぞれ測定された最大値および最小値である。
【0033】
各陰極は個別の電源によって駆動され得、電源は、すべてがパルス電源であり得、または、たとえば内側陰極用の少なくとも1つのパルス電源と、たとえば外側陰極用のDC電源との組合せであり得る。
【0034】
少なくとも1つの電源がバイポーラ電源であり得る。
【0035】
さらなる実施形態では、ここでは電極である2つの隣接した陰極が、それぞれの隣接した電極に異なる極性の出力が接続されるデュアルマグネトロン構成のバイポーラ電源によって駆動され得る。一例として、4つの陰極アレイのうち内側陰極、または代わりに、そのようなアレイの左右の陰極対が、デュアルマグネトロン構成のそれぞれのバイポーラ電源によって駆動され得る。
【0036】
現況技術のプロセスおよび機器では、スイングで誘起された厚さの非対称性の強い表れが認められている、クロム(Cr)、銅(Cu)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)、タングステンチタン(WTi)のコーティングも、説明された発明のプロセスを使用して堆積され得、Cr、Cu、Ta、Ti、W、WTiのターゲットは、基板表面にわたって短縮された横向きの突出を有する。
【0037】
台座は、電気的フローティング、電気的接地、またはRF電圧を供給することができるバイアス発生器によって与えられる定義されたバイアス電位で、取り付けられ得る。
【0038】
本発明は、発明の装置またはプロセスを使用して、基板寸法x×yの範囲内で、抵抗率R(Ωm)の均一性unif≦5%および/または厚さの均一性unif≦5%を有するコーティングを備える製品の製造をさらに対象とするものである。
【0039】
本発明による装置の2つ以上の実施形態は、矛盾しなければ組み合わされ得ることが言及されるべきである。これは、そのような組合せが、たとえば接地とフローティングバイアスとを同時に使用するような、またはそれと類似の、当技術者には不適当であると明白に認識されるものでない限り、本発明の実施形態または例のうち1つだけに関連して示され、または論じられてはいても、他の実施形態または例とともに論じられてはいないすべての特徴が、本発明の他の実施形態の性能を改善するためにも、うまく適合され得る特徴と見なされ得ることを意味する。したがって、言及された例外を除いて、特定の実施形態または例の特徴のすべての組合せは、そのような特徴が明示的に言及されていなくても、他の実施形態または例と組み合わされ得る。
【0040】
次に、本発明を、図面を活用してさらに例示する。図は、単なる実証的な目的のために例示的に描かれており、したがって、実際の機器寸法や、当技術者に既知の、本発明の理解にとって不可欠ではない詳細を示すものではない。同一の番号や参照符号はまた、別々の図での同一の特徴を表す。アポストロフィ、ならびに内側陰極の特徴に関して添えられたインデックス「i」および外側陰極の特徴に関して添えられたインデックス「o」、または番号は、特定の陰極の代案または特定の特徴を指す。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】装置の垂直投影図である。
図2】装置の水平投影図である。
図3】基板平面Sにおける堆積である。
図4】陰極の側面図である。
図5】X座標に沿った厚さ分布である。
図6】パルス方式(バイポーラ)である。
図7】パルス方式(デュアルマグネトロン)である。
図8】シミュレートされた厚さ方式である。
図9】y座標に沿った厚さ分布(DC)である。
図10】y座標に沿った相対的厚さ(DC)である。
図11】y座標に沿った相対的厚さ(パルス)である。
図12】表面走査の厚さ分布(DC)である。
図13】表面走査の厚さ分布(パルス)である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、主回転軸XおよびZに沿って4つの陰極1、2、3、4のアレイを備える発明の装置30の垂直投影図である。陰極に備わっている回転ターゲット5、6、7、8とスイベルマウントの磁気システム9、10、11、12との両方が、陰極のそれぞれの縦軸YC1、YC2、YC3、YC4の回りで移動する。磁気システム10および11は、基板表面または基板平面Sに向き合う位置に示されているが、磁気システム9および12は中心に対して旋回し、すべての磁気システムが、それぞれの旋回面PTS内にあるように示され、たとえば内側陰極の旋回角度に関するそれぞれの合計の旋回角度2βの中心を定義し、ここで、内側陰極2、3の旋回面PTSiと基板平面Sとの間の角度はα=90°であって、2β=│+β│+│-β│かつ│-β│=│+β│であり、同じことが±βについて有効であり、ここで、外側陰極1、4の旋回面PTSoと基板平面Sとの間の角度はα=45°である。そのような構成では、磁気システムが次の隣接した陰極に直面して相互の陰極析出を生じる位置を防止するために、外側旋回角度と内側旋回角度とは、通常は、たとえばβ<βと異なったものになる。
【0043】
内側陰極2および外側陰極4とともに、陰極軸YC2、YC4のシャフト33および伝達スポーク34が示されており、外側陰極1および内側陰極3とともに、内側の旋回面PTSiおよび外側の旋回面PTSo(一点鎖線)、ならびにそれぞれの内側の旋回角度±βおよび外側の旋回角度±β(破線)が、例示的に示されている。磁気システム9、10を有する陰極装置1、2は、磁気システム11、12を有するそれぞれの装置3、4と、YZ平面において鏡像対称になっていると見なされ得る。内側の旋回面PTSiの角度αは基板平面Sに対して垂直であるのに対し、外側の旋回面PTSoの角度αは基板平面Sに対してほぼ45°に傾斜しており、その結果、面PTSoは、軸YCoから見て、中央断面YZに対して下方へ傾斜している。ここで、インデックス「i」および「o」は、内側陰極および外側陰極、ならびにそれぞれの寸法、角度、旋回面等を指す。旋回面PTSからのマグネットスイングの最大値は、それぞれの角度±βによって与えられる。外側の旋回角度±βは約20°であり、内側の旋回角度±βは約40°であって、それぞれが、それぞれのプロセスの要求まで変化することができる。半導体産業における多くのプロセスに関して、たとえば数nm~約500nmの薄層のために、大きな陰極電力の印加を意味する高いプロセス効率は、通常、最大位置の間、すなわち+βの位置~-βの位置の間の1回のマグネットスイングであり、必要な層の厚さを堆積するのに十分なものであることが言及されるべきである。旋回運動は、一定のやり方またはステップ状のやり方で実現され得る。連続した旋回位置に対して速度が変化するかまたは保持時間が異なり得、その結果、磁石システムのドウェル時間が変化する可能性があり、たとえば+β~0の角度範囲と0~-βの角度範囲とで異なり得る。図1および図2に示されるように、外側陰極1、4の陰極軸YC1、YC4は、最大の基板寸法に対して、x方向に、たとえば5mm~60mmといった数mmのオフセットを有し得る。あるいは、図3に示されるように、陰極軸YC1およびYC4は、それぞれのy側の最大基板寸法と、たとえば±10mm以内の基本的に面一であり得る。いずれの場合も、外側陰極の軸YC1とYC4とは対称であって、中心y軸に対して平行である。
【0044】
ターゲット5、6、7、8を取り付けられた陰極1、2、3、4は、それぞれ同一の直径Dで同一のサイズであり、互いから等しい距離TTT(すなわちTTTi=TTTo)に配置されており、また、少なくともターゲット面Sから等しい距離TSD(すなわちTSD1=...=TSD4)またはほぼ等しい距離MTSD±2mmに配置されている。あるいは、点線で示されるように、ターゲット5’、8’を有する外側陰極1’、4’の位置は、垂直に、たとえば示されるように下方へ移動され得、その結果、外側ターゲット1’、4’のターゲット面までの距離TSDo’は、内側ターゲット2、3のターゲット面Sまでの距離TSDiとは異なる。加えて、ターゲット5’、8’を有する外側陰極1’、4’の位置は、たとえば、示されるように中央に向かって横に移動され得、その結果、2つの内側ターゲットの間の距離TTTiは、外側ターゲットから次の内側ターゲットまでの距離TTToとは異なる。論じられた代替形態は、たとえば、中央に配置された基板の長さxが、陰極1、2、3、4で示されるような等距離の機構における2つの外側の軸の間の距離よりも短いとき、より公式には、TTT=TTTk=1...=TTTn(ここではn=3)、同時にTSD≒TSDk=1≒...≒TSDm(ここではm=4)かつTSC=TSCo=TSCiについて、
【0045】
【数2】
【0046】
と表現されるとき、(厚さまたは抵抗率)のようなx方向における層の均一性パラメータを改善するための助けになり得る。
【0047】
したがって、点で描いた陰極1’、2’、3’、4’で示されるような機構により、外側陰極の、コーティングされる基板表面までの最も近い距離を、たとえば内側陰極2および3の法線距離TSDiに一致する距離値│TSDi│に調節することが可能になる。そのように、ターゲットから基板平面までの距離が異なる場合、所与の陰極アレイに関して、ターゲット突出の最小値を計算するため、または基板領域の最大のy値を計算するために、より長い距離を用いる必要がある。そのような機構は、外側陰極が、たとえば大電力もしくは小電力といった異なる電力、またはAC電源もしくはDC電源といった異なる電源で駆動されるときにも役立ち得、下記を参照されたい。
【0048】
陰極に対する対極として、接地陽極19が陰極アレイを取り巻いて設けられる。これは、たとえば、陰極1、2、3、4および基板14用の台座15を除く、堆積チャンバ31の基本的にすべての内側表面を、取り巻き、かつ/または形成する、それぞれのライナまたはシールドによって実現され得る。
【0049】
台座は、たとえばRFのバイアス、接地、またはそれぞれのプロセスの要求までのフローティング基板電位を可能にするために、絶縁または絶縁ESC 16をさらに包含する。冷却または加熱の流体入口17および流体出口18を備える冷却/加熱回路が設けられてよい。通常、冷却液として水が使用される。
【0050】
台座は、台座15と台座に取り付けた平坦な基板14との間の熱移動を良くする裏面ガス供給源20をさらに備え得る。裏面ガス供給源20は、たとえばHeおよび/またはArといった少なくとも1つの不活性ガスのためのガス供給源と、たとえば絶縁ESC 16の表面といった、台座15の表面に通じる少なくとも1つのガス入口21aとを備え得る。あるいは、裏面ガスを低い流れ抵抗で移送するための流量範囲を有して、たとえば中心からさらに外側の台座またはESCの表面領域の方へ通じる、いくつかの入口またはガス分配ダクトがあってよい。ダクトは、ウェーハの裏面に対して部分的または全面的に開かれてよく、ガスチャネルに接続されており、ガスチャネルは、深さはたとえば10μm~100μmまたは50±10μmと浅いが、広幅であり、裏面ガスによってウェーハと台座/ESC表面との間に効果的な熱移動をもたらすために、ダクトよりもかなり大きい流れ抵抗を有し、台座/ESC表面の基本的な領域をカバーする。あるいは、ウェーハは、たとえば言及されたチャネル深さに応じて、スペーサの上に、台座またはESC表面に接近して配置されてよく、それによってウェーハと台座/ESCとの間に別の種類のチャネルを形成する。両方の変形形態を用いて、基板は、より大きい裏面ガス圧力を可能にするために、たとえばガスケットといった周囲の突出部上にさらに配置され得る。さらなる実施形態では、突出部には、プロセス空気のための小さい出口開口が備わっていてよく、あるいは、裏面ガスを高真空ポンプ23のポンプソケット22へ直接導くための裏面ガス出口21bが設けられてもよい。
【0051】
上昇ロッド24により、台座を垂直方向に移動させて、たとえば降下位置(図示せず)において台座に基板14を載せ、堆積チャンバ31を閉じ、かつ/または、示されるように、基板を、上の方の位置における陰極距離へと調節することが可能になる。
【0052】
アルゴン、ネオンおよび/またはクリプトンのような不活性スパッタガスと、ターゲット材料の化合物を堆積するために反応プロセスを実行するべきである場合の、たとえば窒素、炭素、または酸素を含むそれぞれの反応ガスとのためのプロセスガス入口36が、堆積チャンバ31の中にプロセスガスを均一に分配するためのガス分配システム37に接続され得る。
【0053】
図2には、図1に類似のシステムが水平投影図で示されている。同一の参考番号については図1が参照されてよい。陰極1、2、3、4は、ターゲット5、6、7、8を移動させるための駆動ギア26および他の貫通接続のような機械的装置を保護するためのターゲットキャップ35を有し、また、通常は、陰極2のみに加えて、概略的に示された、さらなるターゲットキャップ35’も備わっており、どちらも、中空のターゲットカソードと堆積チャンバとの間の粒子のやり取りを防止するためのものである。加えて、キャップ35、35’は、ターゲット冷却システムのための真空ガスケットおよび/またはシールを備え得る。従来通り、ターゲットおよびそれぞれの陰極の電圧の接続のみがそれぞれの電圧源13に接続され、陰極の他の部分はターゲットから絶縁して接地される。
【0054】
図1の装置に備わっている電源システムと、それと異なる、図2の装置に備わっている電源システムとに注目する。図1において、陰極1または1’と2とは、陰極3と4または4’とのように、それぞれがデュアルマグネトロン構成である、それぞれの2つの電源13に接続されており、各パルス電源13が、それぞれ、陰極1(1’)および2と、陰極3および4(4’)とに、対称な負の信号および正の信号を交互に供給する。同期ユニット38が、それぞれの電源13の信号を同期させる。信号の高さおよび時間において対称な信号を供給するデュアルマグネトロン電源からの一般的な電圧信号が、図7に示されている。
【0055】
図2のものとは対照的に、各外側陰極1、4および各内側陰極2、3に、それぞれ電源13および13が備わっている。同調ユニット38と電源との間の破線および実線の接続ラインを含む第1の実施形態では、すべての電源13および13はパルス電源であるが、デュアル電力パルス電源と同一の信号基準を満たす必要はない。図6に見られるように、そのような電源では、周期時間tは、それぞれのサブ周期について、より長い負の期間t-と、より短い正の期間t+とを有し得、正の放電電圧V+は、負の電圧V-よりも基本的に絶対値が小さい。グラフの右側に例示的に示されるような正のスパイク放電Spでも、スイングによって誘起される陰極アレイにおける側方領域の厚さの非対称性を最小化するための本発明の効果をもたらすのに十分であり得る。
【0056】
図2に示されたさらなる実施形態は、内側陰極2、3のパルス電源13と同調ユニット38との間の実線の接続ラインしか含まず、外側陰極1、4にはDC電源が備わり得る。
【0057】
図2に示されるような電源方式は、図1に示されるような陰極アレイにも適用得、たとえば、下方に、かつ/または側方のx方向に移動した外側陰極1’、4’にはパルス電源13またはDC電源が適用され得て、少なくとも1つの「内側の」パルス電源13が、すべての陰極用の個別の電源とともに、あるいは内側陰極2および3を備えるデュアルマグネトロン構成で、内側陰極に接続され得ることを理解する必要がある。
【0058】
図2にはまた、基板表面の最大寸法xyと、たとえば幾何学的ターゲット長T、およびスパッタリングが生じる有効なターゲット長を指すターゲット長TLAといったターゲット寸法に対する最大寸法xyの関係とが示されている。理想的なカソード設計では、磁気システム9、10、11、12のタイプによる影響が強いので、すべてのターゲット表面が同等にスパッタリングされ得るように、TLAはTに等しくされる。図2には、明瞭さのために、磁気システム9および11しか示されていないことが言及されるべきである。図3は、図2からの基板平面Sのみを表し、基板表面の最大寸法yの両側におけるそれぞれの突出TSDのようなさらなる詳細を示す。さらに、中心にある、x=xおよびy=TLAの寸法の面において、各軸YC1、YC2、YC3、YC4の両側に、はす向かいに、より厚い領域45が示されている。領域45は、言及されたように、それぞれの軸の回りの磁気システムの旋回中にスイングによって誘起される厚さの非対称性によるものである。
【0059】
図4は、陰極1のさらなる詳細を側面図で示すものであり、磁気システム10の、基板14に対面する状態を実線で示し、旋回したために基板平面Sに対して傾斜した状態を破線で示す。磁気システム10は、周囲の雰囲気にあり得る冷却管40の内側空間内で旋回し、冷却管40はまた、スパッタターゲットの冷却回路44の内側境界を定義し、冷却回路44の外側境界は、ターゲットの機械的支持も与えるバッキングチューブ39によって定義される。ターゲット冷却システム用のそれぞれの真空ガスケットおよび/またはシールは、キャップ35、35’を備え得る。ターゲット冷却水の入口および出口は軸方向に設けられ、たとえば陰極の反対端において半径方向に分配され得る。
【0060】
Table 1(表1)には、2つの異なる基板ジオメトリのための2つの発明の装置の主要な寸法が示されている。どちらの装置も、変更されたClusterline PNLタイプである。Clusterline PNL500モデルに基づく装置1(Appar.1)については、500±15mm×500±15mmの範囲内の基板が、3つの陰極アレイを用いてコーティングされ得る。Clusterline PLN600モデルに基づく装置2(Appar.2)については、600±20mm×600±20mmの範囲内の基板が、4つの陰極アレイを用いてコーティングされ得る。
【0061】
【表1】
【0062】
表中の式は、それぞれの基板の1つの側部ごとに使用されるそれぞれのターゲット突出を定義する。140mm~160mmの直径Dを有するターゲットが使用された。
【0063】
そのような装置を使用して、スイベルマウントの磁気システムを備えるターゲットとともに、現況技術のプロセス用のDC電源および発明のプロセス用のバイポーラパルスDC電源が使用された。基板表面をどちらのy方向にも拡大するために、スイングで誘起される厚さの非対称性が効率よく改善され得ることを示すように、Table 2(表2)に示されるパラメータが適用された。
【0064】
【表2】
【0065】
* 任意の遷移金属すなわち周期系の3族~12族、またはAl、あるいはそれらの組合せ
** 任意の4族~10族の要素、Al、またはCu、あるいはそれらの組合せ。
【0066】
そのようなパラメータを適用して、Table 3(表3)に示されるようなコーティング特性に達することができた。
【0067】
【表3】
【0068】
上記に列挙されたパラメータを用い、Cuターゲットを使用して、4つの陰極アレイの陰極軸YCnに対して垂直な基板の中央のX座標に沿って、図5に示されるような厚さ分布が堆積され得た。スイングで誘起された厚さの非対称性は基板平面Sの外側のy座標でしか見えないので、DC駆動のプロセスまたはパルスDC駆動のプロセスによって堆積されたコーティングの、相対的厚さ変動のx軸に沿った分布の場合にはほぼ同じであることが言及されるべきである。x軸に沿ったそのような偏差は、Sputtering Components Incorporationから市販されている最適化プログラムによって前もって最適化された。4つの陰極アレイに関するそのような計算の一例が図8に示されている。示されるような4つの陰極の厚さ分布を重ね合わせた累積曲線は、約±0.34%の中央の均一性偏差を示す。PNL600スパッタリング装置に対してそのような最適化を適用したとき、図5のCu層の場合、中央の均一性偏差は約±2%であった。図1および図2の4つの陰極アレイに対して示されるように、外側陰極の軸YC1およびYC4の突出部は、最大の基板寸法から外へ向かうオフセットである。
【0069】
図10および図11には、Clusterline PNL600システムにおいて堆積された2つのチタンの単一層の比較の厚さ分布が示されている。使用されたPNL600機器の装置ジオメトリについては、Table 1(表1)のAppar.2の列を参照されたい。厚さ分布は、陰極軸YCjおよび600mm×600mmの基板表面の中心軸Yと平行な、X座標が一定のラインに沿って測定された。これらの実験のために、現況技術のプロセスによって、4つの陰極アレイのうち2つの陰極のみがDCモードで使用され、静止した磁気システムの位置は、基板平面Sに対して枢動されていないゼロ位置と、磁気システムのゼロ位置からピボット角度γ=60°に枢動された位置とであった。γ=0°およびγ=60°は、基板平面Sおよび旋回角度β=0°に対して、それぞれの旋回面角度α=90°およびα=30°を指し、この実験と同様に、磁気システムは静止して使用されたことに留意されたい。距離xは、基板表面のx軸に沿った最大の絶対的な厚さに応じて選択されたものであり、最大の絶対的な厚さはまた、x軸に対して陰極軸YCjが直交する機構による、同一のX座標の他のy値を有する最大の相対的な厚さを指す。最大厚さ値は、x=約400mmにおいて静止している磁気システムの場合には、磁気システムが基板の方へ向けられて、ターゲットが法線距離TSD2で基板に面する位置のものである。
【0070】
ゼロ位置から中央のZY面の方へγ=60°に枢動された磁気システムの場合には、厚さ最大値は中心の方へ側方に約325mm移動し、基板中心は300mmのところにあるとわかる。ゼロ位置の磁気システムを用いる堆積に関する測定ポイントは四角であってDC γ=0°と称され、枢動された磁気システムを用いる堆積に関する測定ポイントは丸であってγ=60°と称される。陰極が静止モードで駆動されたとき、図9から約375nmの中間の厚さが計算され得、枢動された陰極については、約280nmのそれぞれのより薄い中間の厚さが計算され得る。しかしながら、図9に示されるような絶対的な厚さよりも興味深いのは、図10に示されるような2つのコーティングのそれぞれの中間の厚さに正規化された相対的な厚さである。そこから、ゼロ位置の磁気システムでの堆積に関する厚さの均一性unif(γ=0°)=±1.5%が推定され得るが、枢動された磁気システムで実現される厚さの均一性は、均一性unif(γ=60°)=±7.8%と非常に劣るものであった。同時に、この分布は非対称性が強く、y座標の一端において薄く、他端において厚くなっている。これらの測定は、最大厚さの1つのX座標においてのみ、なされたものであることに再度留意されたい。基板全面の厚さ分布を考慮すると、図8に示されるような、中央のX座標に沿った厚さ分布のための最適化プログラムを適用しても、y座標に沿った厚さ非均一性が依然として課題であることは明らかである。これらの結果は、陽極アレイ機構を用いて静的にコーティングされる基板のX座標に沿った厚さ分布を最適化するために、枢動する磁気システムまたは旋回する磁気システムが使用されるとき、y座標に沿って少なくともなんとか許容できる厚さの均一性に達するためには、両方のターゲット端に、基板寸法を上回る、たとえば各側部において≧2TSDといった過度の突出を与えることの必要性をも明瞭に示すものである。インラインシステムでは、基板が、異なる堆積速度の領域を通って移動されることによって、x方向における厚さの差がならされるので、磁石は常にα=90°にとどまることができ、枢動または旋回の必要性がなく、この影響はそれほど重要ではないことが言及されるべきである。
【0071】
図11には、図10と同様に静止した磁気システムで堆積されたチタンコーティングの、類似の、比較の相対的な厚さ分布の結果が示されている。しかしながら、この場合、図9および図10における現況技術のプロセスとは対照的に、アレイのうち電力を供給される唯一の陰極3に、バイポーラパルスDC電源が接続されている。ここでは陰極3の、ゼロ位置における堆積に関する測定ポイントはパルスDC γ=0°と称され、四角であり、枢動された磁気システムを用いる堆積に関する測定ポイントは三角であり、パルスDC γ=60°と称される。γ=60°だけ枢動された磁気システムを用いる厚さ分布の均一性は、図10に示されたそれぞれのDC駆動の枢動された陰極と比較して、均一からのより小さい偏差すなわちunif(γ=60°)=±2.1%と約1/3にすることができたので、DC駆動の陰極に対する差は、当技術者には非常に驚くべきものである。同時に、分布の対称性は、ここでは、枢動されていないシステムを用いて堆積されたコーティングの分布に類似であり、少し厚い中央部と、側方領域に向かってコーティング厚さのそれぞれの減少とを示す。
【0072】
図12は現況技術のDCプロセスで堆積されたコーティングの表面の走査厚さ分布を示し、図13は発明のパルスDCプロセスで堆積されたコーティングの表面の走査厚さ分布を示し、どちらのプロセスも、図1および図2に概略的に示されたPLN600(appar.2)システムおよびTable 1(表1)におけるそれぞれの寸法を用いた。すべての4つの陰極は、それぞれ銅ターゲットであり、陰極面Sから同一の距離TSDにあった。電力は、現況技術のプロセスについては4つの専用のDC電源を使用して、本発明のプロセスについては4つのパルス同期式DC電源を使用して、供給した。
【0073】
DCスパッタリングのために10mmの縁部を除外した600mm×600mmのガラス基板上の表面領域の厚さの均一性の測定結果が図12に示されており、スイングで誘起された明瞭な厚さ非対称性を示す。実用的な理由から、図12および図13では、軸の原点は基板の左下隅にある。グレースケールは、平均値に対する-15%~+15%の範囲を示すように調整されている。図12における現況技術のプロセスは、測定された基板寸法の範囲内で、約238nmの平均厚さおよび均一性unif=7.16%をもたらした。測定は、4ポイントのプローブ表面抵抗Rs測定デバイスを用いて実行され、測定されたシート抵抗は、一定の抵抗率を想定して、フィルム厚値に変換された。
【0074】
しかしながら、本発明によるパルスDCプロセスを用いてコーティングされたガラス基板に対する同一の測定では、約205nmの平均厚さおよび最小値と最大値との間のunif<5.0%の均一性がもたらされ、これは、DC法の均一性よりも30%超優れたものである。特に200≧yと400≦yとの間の側方領域において地形的な差が際立って低減している。
【0075】
したがって、図9図13に示された実験結果は、バイポーラパルス電源を使用することによって厚さの均一性がかなり改善され得ることを明瞭に示しており、それによって、所与の陰極ジオメトリを用いて基板表面を拡大すること、または所与の基板ジオメトリを用いて陰極長さを短縮することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 陰極(デュアルマグネトロン電源の場合の電極)
2 陰極(デュアルマグネトロン電源の場合の電極)
3 陰極(デュアルマグネトロン電源の場合の電極)
4 陰極(デュアルマグネトロン電源の場合の電極)
5 ターゲット
6 ターゲット
7 ターゲット
8 ターゲット
9 磁気システム
10 磁気システム
11 磁気システム
12 磁気システム
13 パルス電源
13’ 電力ライン
14 基板
15 台座
16 絶縁、または絶縁ESC(静電チャック)
17 冷却液入口
18 冷却液出口
19 陽極
20 裏面ガス供給源
21a 裏面ガス入口
21b 裏面ガス出口
22 ポンプチャネル
23 ポンプ
24 上昇ロッド
25 ターゲット駆動装置
26 駆動ギア
27 底部
28 側壁
29 頂部
30 装置
31 堆積チャンバ
32 磁石モータ
33 シャフト
34 スポーク
35 ターゲットキャップ
36 プロセスガス入口
37 ガス分配システム
38 同期ユニット
39 バッキングチューブ
40 冷却管
41 内側磁石
42 外側磁石
43 磁石ヨーク
44 冷却回路
45 コーティングがより厚い領域
i 内側陰極およびその寸法、角度、旋回面、電源等を指すインデックス
o 外側陰極およびその寸法、角度、旋回面、電源等を指すインデックス
α 面PTSoと垂直面との間の角度
α 面PTSiと垂直面との間の角度
β 磁石システムの最大旋回角度
β 内側磁石システムの最大旋回角度
β 外側磁石システムの最大旋回角度
陰極長さ
T1...DTn、DTmax、DTi、またはDToのいずれかを指示する、ターゲットの直径
TSo 外側陰極の磁石の旋回面
TSi 内側陰極の磁石の旋回面
S 基板平面
Sp 電気的スパイク
ターゲット長
LA 有効なターゲット表面領域の長さ
SC 等しい距離または異なる距離であり得るTSCiまたはTSCoのいずれかを指示する、陰極軸から基板平面Sまでの距離
SD 等しい距離または異なる距離であり得るTSD1...TSDn、TSDi、TSDo、およびMTSDのいずれかを指示する、ターゲットから基板平面Sまでの距離
MTSD MTSD=(TSD1+...+TSDn)/nである、距離の平均値
TT 等しい距離または異なる距離であり得るTTTiまたはTTToのいずれかを指示する、ターゲット軸の間の距離
x×y 基板表面の最大寸法
X、Y、Z 軸
Cj 軸YC1...YC4、YCiおよびYCoのいずれかを指示する、陰極の縦軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】