(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-08
(54)【発明の名称】多機能洗浄および/または清拭組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 59/00 20060101AFI20230426BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230426BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20230426BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230426BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230426BHJP
A61K 33/40 20060101ALI20230426BHJP
A61K 31/77 20060101ALI20230426BHJP
A61L 31/06 20060101ALI20230426BHJP
A61L 31/14 20060101ALI20230426BHJP
A61L 31/16 20060101ALI20230426BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230426BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20230426BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20230426BHJP
C11D 3/48 20060101ALI20230426BHJP
C11D 7/18 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
A01N59/00 A
A61P17/00
A61P1/02
A61P31/00
A61P29/00
A61K33/40
A61K31/77
A61L31/06
A61L31/14 300
A61L31/14
A61L31/16
A61P31/04
A01N25/10
A01P3/00
C11D3/48
C11D7/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554497
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(85)【翻訳文提出日】2022-11-04
(86)【国際出願番号】 EP2021057021
(87)【国際公開番号】W WO2021185997
(87)【国際公開日】2021-09-23
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508149744
【氏名又は名称】コルティカリス・アクスイェ・セルスカプ
【氏名又は名称原語表記】Corticalis AS
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ストレ・ペッテル・リングスタダース
(72)【発明者】
【氏名】ホヴァルド・イェイ・ハウゲン
【テーマコード(参考)】
4C081
4C086
4H003
4H011
【Fターム(参考)】
4C081AC16
4C081BA14
4C081CA18
4C081DA12
4C086AA01
4C086AA02
4C086FA02
4C086HA22
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA16
4C086NA14
4C086ZA67
4C086ZA89
4C086ZB11
4C086ZB32
4C086ZB35
4H003DA02
4H003EA20
4H003EE04
4H003FA34
4H011AA01
4H011BB18
4H011BC19
4H011DA14
4H011DA17
4H011DH03
(57)【要約】
本発明は、最終濃度0.1~5%v/vのH2O2、および10~40%w/vの濃度のプルロニック酸を含む複合ヒドロゲル配合物を含む新規の多機能清拭および/または防汚組成物であって、該組成物が室温で液体形態にある、前記組成物に関する。本明細書に開示される組成物は、抗菌性および/または抗炎症性であり、インプラント周囲炎処置およびインプラント健康維持において、歯周炎および歯周健康において、ならびに創傷ケアおよび慢性潰瘍ケアにおいて特に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的表面および/または生体材料表面をin situで洗浄および/または清拭するための抗菌性および/または抗炎症性組成物であって、少なくとも2種の成分
a.最終濃度0.1~5%v/vのH
2O
2、および
b.10~40%w/vの濃度のプルロニック酸を含む複合ヒドロゲル配合物
を含み、最大30℃の温度で液体である、抗菌性および/または抗炎症性組成物。
【請求項2】
少なくとも2種の成分
a.H
2O
2、および
b.プルロニック酸を含む複合ヒドロゲル配合物
が同時に混合され、生物学的表面および/または生体材料表面にin situで適用されるまで互いに別個に保持される、請求項1に記載の抗菌性および/または抗炎症性組成物。
【請求項3】
別個の成分a.が、少なくとも10~50%v/vの濃度のH
2O
2を含む組成物である、請求項1または2に記載の抗菌性および/または抗炎症性組成物。
【請求項4】
20~200μmの平均粒子径(D50)を有する微粒子をさらに含み、前記微粒子が有機または無機である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記微粒子が生分解性である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1種のメッシュ形成および/または足場形成成分をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
生物活性物質をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物を含むキットであって、
h.前記成分a.およびb.をそれぞれ含む少なくとも2つの容器、
i.シリンジおよびバイアル、
j.コネクタデバイス、
k.アプリケータチップ、ならびに
l.説明書
を含む、前記キット。
【請求項9】
m.混合デバイス、および
n.清拭用具
をさらに含む、請求項8に記載のキット。
【請求項10】
前記2種の成分a.およびb.が2室シリンジで提供される、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物を含むキット。
【請求項11】
生物学的表面および/または生体材料表面からの生物付着、バイオフィルムおよび/または壊死組織のin situでの除去に使用される、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗菌性および/または抗炎症性組成物。
【請求項12】
インプラント周囲炎、歯肉炎、粘膜炎、インプラント周囲粘膜炎、歯周炎ならびに/または慢性および/もしくは感染皮膚潰瘍の処置ならびに/または予防に使用される、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗菌性および/または抗炎症性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最終濃度0.1~5%v/vのH2O2、および10~40%w/vの濃度のプルロニック酸を含む複合ヒドロゲル配合物を含む新規の多機能清拭および/または防汚組成物であって、室温、例えば最大30℃の温度で液体形態にある、組成物に関する。本明細書に開示される組成物は、抗菌性および/または抗炎症性であり、インプラント周囲炎処置およびインプラント健康維持において、歯周炎および歯周健康において、ならびに創傷ケアおよび慢性潰瘍ケアにおいて特に有用である。
【0002】
本発明はさらに、生物学的表面および/または生体材料表面、例えば、特にin situのインプラントおよび/または口腔内の表面を洗浄および/または清拭するための本発明による組成物の使用に関する。本発明による組成物は、インプラント洗浄および/または清拭用具、例えばブラシ、バーまたはキュレットと共に使用することができる。
【0003】
一実施形態では、本発明による組成物はキットで提供され、少なくとも2種の成分であるH2O2およびプルロニック酸は、場合により別個に保持され、併用および/または同時適用時に即座に混合される。
【背景技術】
【0004】
in situの生物学的表面および/または生体材料表面は、多数の微生物と常に接触し、それらによって頻繁にコロニー形成されるため、汚れ、すなわちバイオフィルムおよび壊死組織の蓄積を起こしやすい。そのため、それら表面は患者の周囲生物学的組織に害を与えることなく、また病原菌耐性を引き起こすことなく、抗細菌性および抗炎症性の組成物による定期的な洗浄および清拭を必要とする。
【0005】
バイオフィルム
バイオフィルムは、表面に強固に付着し、自己生成された3次元(3D)細胞外マトリックスに捉えられた、構造化された微生物群集である。バイオフィルムは、生体表面または非生体表面上または中に形成することができ、自然環境および産業環境で存在することができる。
【0006】
バイオフィルムは、埋込型医療チューブおよび医療デバイスの表面または内部だけでなく、人体の表面および内部、例えば粘膜表面もしくは他の身体の開口部の表面、または開放創に形成される場合があり、患者の感染を引き起こす可能性がある。これに対する炎症応答は、ひいては壊死組織の蓄積をもたらし、ひいては身体のその後の炎症応答をもたらす。特に、バイオフィルムは口腔内で発生する可能性があり、う蝕または歯周炎、歯肉炎またはインプラント周囲炎のような口腔疾患につながることが多い。このようなバイオフィルムの細胞外マトリックスは、エキソポリサッカライド(EPS)のようなポリマー物質を含有する。微生物によって生成されるマトリックスは、バイオフィルムのアセンブリに不可欠な足場になる可能性がある。さらに、病原菌の接着および凝集を促進すると同時に拡散を妨げることができるため、バイオフィルムを処理または表面から除去することは非常に困難である。
【0007】
細胞外マトリックスは、緻密な細胞外マトリックスを透過して包埋された微生物を殺滅することがほとんどできない抗体、抗生物質および免疫細胞による、口腔および人体内、ならびに生体材料、例えばインプラントおよび医療デバイス上の病原菌バイオフィルムの排除を困難にする一因である。
【0008】
生物学的表面およびインプラント上のバイオフィルムは、化学的および/もしくは機械的洗浄ならびに/または清拭によって除去される。
【0009】
清拭
清拭は、患者の死滅、損傷および/または感染組織を医学的に除去し、残存する健康な組織の治癒能力を改善することである。清拭除去は、外科的、機械的、化学的、自己分解的(自己消化)、および特定の種の生きた蛆虫が壊死組織のみを選択的に摂食するマゴットセラピーによるものである場合がある。
【0010】
しかし、表面の機械的洗浄および/または清拭は、二次的な化学的および/または生物学的洗浄/除染効果をもたらすことができないため、例えば表面を開放状態にすることで、病原菌を即座に再繁殖させるか、あるいは例えば粗面のアクセスできない領域に以前の病原菌集団の痕跡を残すため、十分ではない。
【0011】
このように、現在、防汚処理に使用される複数の抗菌および/または抗炎症剤が存在する。
【0012】
過酸化水素
過酸化水素(H2O2)は、非常に薄い青色の液体であり、希薄な溶液中では無色に見え、水よりわずかに粘性が高い。過酸化水素は弱酸である。強い酸化特性を有するため、主に紙の漂白に使用される強力な漂白剤であるが、消毒薬および酸化剤としても使用される。過酸化カルバミドの形態の過酸化水素は、専門的および自己投与製品の両方で歯のホワイトニング(漂白)に広く使用される。
【0013】
過酸化水素は不安定であり、光の存在下で緩徐に分解する。その不安定性のために、過酸化水素は通常、安定剤とともに弱酸性溶液中で暗色の瓶に保存される。
【0014】
過酸化水素は、手術用具を含む様々な表面の滅菌に使用され、室内滅菌のために蒸気(VHP)として配置される場合がある。H2O2は、ウイルス、これらに限定されないが細菌、酵母および細菌芽胞を含む病原菌に対して広範囲の効能を示す。一般に、グラム陰性菌よりもグラム陽性菌に対してより高い活性が見られるが、これらの生物にカタラーゼまたは他のペルオキシダーゼが存在するため、より低濃度の存在下では耐性が高まる可能性がある。殺芽胞活性には、H2O2のより高い濃度(10~30%v/v)およびより長い接触時間が必要とされる。
【0015】
過酸化水素は、分解して酸素および水を形成するため、塩素系漂白剤の環境的に安全な代替物とみなされ、一般に米国食品医薬品局(FDA)によって抗菌剤として安全であると認識されている。
【0016】
歴史的に、過酸化水素は創傷の消毒に使用された。現在では、高濃度で新たに形成された皮膚細胞を破壊するため、治癒を阻害し、瘢痕化を誘導すると考えられている。ある研究では、非常に低い濃度(0.03%v/v溶液、これは典型的な3%v/vの過酸化物を100倍に希釈したものである)のみが、繰り返し適用されない場合に限り治癒を誘導できることが見出された。0.5%v/v溶液は治癒を妨げることが見出された。
【0017】
プルロニック酸
Pluronics(登録商標)またはポロキサマーは、ポリ(エチレンオキシド)ポリ(プロピレンオキシド)-ポリ(エチレンオキシド)(PEO-PPO-PEO)の3ブロックコポリマーである。この群の合成ポリマーは、水溶液中で熱可逆性である。ゾル-ゲル転移は、各構成ブロックポリマーの組成、分子量および濃度に左右される。親水性のエチレンオキシドおよび疎水性のプロピレンオキシドにより、Pluronicsは両親媒性構造を有する、つまり、非極性の水不溶性の炭化水素鎖に極性の水溶性基が結合されている。両親媒性ブロックコポリマー分子は、水溶液中で自己アセンブルしてミセル(分子が充填された鎖)になる。ミセル形成は温度依存性であり、生体材料の分解特性に影響を与える:臨界ミセル温度として公知のある特徴的な温度未満では、エチレンオキシドブロックとプロピレンオキシドブロックがともに水和し、PPOブロックは可溶性になる。
【0018】
Pluronicsは、液体、ペーストまたは固体のいずれとしてでも見出される。Pluronicsは両親媒性(疎水性成分および親水性成分が存在する)であるため、疎水性表面および生体膜と相互作用することを可能にするサーファクタント特性を有する。両親媒性であることはまた、ユニマーとして公知の個々のブロックコポリマーが水溶液中で結合してミセルを形成する能力をもたらす。ブロックコポリマーの濃度が臨界ミセル濃度(CMC)の濃度未満である場合、ユニマーは水中で分子溶液として残存する。しかし、ブロックコポリマーの濃度がCMCより高く上昇すると、ユニマーは自己集合してミセルを形成し、球状、棒状またはラメラ状の形状をとることができる。それらの形は、ブロックコポリマー(すなわち、EOおよびPO)の長さおよび濃度ならびに温度により決まる。ミセルは通常、疎水性のコア、この場合はPO鎖および親水性のシェル、EO鎖を有する。
【0019】
【0020】
ポロキサマー407として公知のPluronic F-127は、生理学的温度およびpH付近でゾル-ゲル転移を経る一貫した製品が商業的に入手可能であるため、しばしば組織工学で使用される。Pluronic F-127の欠点は、in vivoでの分解速度が速いことである。この問題を克服するために、Pluronic F-127は、そのデプシペプチド単位の化学構造を変更するために、別のα-ヒドロキシまたはアミノ酸で頻繁に架橋される。
【0021】
プルロニック酸は感熱性ヒドロゲルを形成し、これは典型的にヒアルロン酸のような高分子量の酸を添加することによって安定化される。
【0022】
プルロニック酸配合物の、炎症を低減し、組織を損傷から保護し、病原菌の付着を妨げることに関するプラスの効果が研究で証明されている。さらに、プルロニック酸配合物はEMAおよびFDAの承認を受けており、完全に生体適合性であり、かつヒト細胞における公知の有害作用を伴わずに臨床的に安全に使用することができる。
【0023】
しかし、プルロニック酸配合物は、18℃より高温、あるいはその濃度に応じて12~20℃の温度の間でさえ安定したゲルを自動的に形成するため(
図1を参照されたい)、狭い通路での使用および/または粗面への使用には不適当であり、シリンジでの適用にも適さないため、洗浄および清拭剤として適用することが困難である。
【0024】
結果として、汚れた生物学的表面および/もしくは生体材料表面をin situで洗浄および/もしくは清拭するための手段、または例えば口腔内の前記表面を洗浄および/もしくは滅菌することにより、前記生物学的表面および/または生体材料表面の汚れをin situで予防するための手段が依然として求められている。本発明は、口腔内のようなアクセス困難な領域および/または粗い硬質表面さえも効果的に洗浄および/または清拭するためのそのような手段を初めて提示する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、生物学的表面および/または生体材料表面をin situで洗浄および/または清拭するための新規の抗菌性および/または抗炎症性組成物であって、少なくとも2種の成分
a.最終濃度0.1~5%v/vのH2O2、および
b.10~40%w/vの濃度のプルロニック酸を含む複合ヒドロゲル配合物
を含み、組成物が室温、例えば最大30℃の温度、例えば20~30℃の温度、例えば25℃で液体である、組成物に関する。
【0026】
本明細書に開示される組成物は、組成物がゲル状態ではなく室温で液体状態であるような比で成分a.およびb.を含むことを特徴とする。
【0027】
本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物の一実施形態では、成分b.の複合ヒドロゲル配合物は、10~40%w/vの濃度、例えば少なくとも10%w/v、例えば10、15、20、25、30、35または40%w/vの濃度のプルロニック酸を含む。
【0028】
本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物の別の実施形態では、成分b.の複合ヒドロゲル配合物は、最大40%w/v、例えば最大15、20、25、30または35%w/vの濃度のプルロニック酸を含む。
【0029】
本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物は、成分a.のH2O2が最終濃度0.1~5%v/v、例えば0.5~3.0%v/vである組成物である場合がある。
【0030】
本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物は、水および/または生理食塩水をさらに含むことができる。
【0031】
本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物の2種の成分は、1つの溶液中にある場合があるか、または少なくとも2種の成分を、同時に混合され生物学的表面および/または生体材料表面にin situで適用されるまで、互いに別個に保持することができる。
【0032】
本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物では、適用前に成分が互いに別個に保持される場合、別個の成分a.は、少なくとも10~50%v/vの濃度のH2O2を含む組成物である場合がある。
【0033】
本発明による組成物は、20~200μmの平均粒子径(D50)を有する微粒子をさらに含むことができる。前記微粒子は、典型的に約0.5~1000g/L、例えば約0.5~300g/Lの濃度にある。
【0034】
前記微粒子は、有機または無機である場合がある。
【0035】
本発明による組成物に含まれる無機微粒子を、金属化合物から選択することができる。
【0036】
別の態様では、前記微粒子は、ポリマー粒子、鉱物粒子および/または金属粒子である。
【0037】
一態様では、本発明による組成物に含まれる前記微粒子は生分解性であり、例えば裸亜鉛、鉄、ケイ素、マグネシウム、マンガン、銀およびパラジウムからなる群から選択される。
【0038】
一態様では、本発明による組成物は、以下のイオンCa2+、F-、Sr2+、Mg2+の1種を放出する微粒子、またはカルシウム塩化合物粉末、酸化カルシウム化合物粉末、カルシウムイオン源および/もしくはリン酸カルシウム化合物粉末を含む微粒子である微粒子をさらに含む。
【0039】
さらに別の態様では、本発明による組成物はフッ化物イオン源を含む。
【0040】
本発明による組成物は、適用後の組成物の物理的強度および/または化学的寿命を改善する少なくとも1種のメッシュ形成および/または足場形成成分をさらに含むことができる。
【0041】
代替的にまたは追加的に、本発明による組成物は、生物活性物質を含むことができる。
【0042】
さらに、本発明による組成物は、さらなる抗菌性物質および/または清拭成分を含むこともできる。
【0043】
一態様における本発明による組成物は、RTで少なくとも1年の貯蔵寿命を有する。
【0044】
本発明はまた、本発明による組成物を含むキットであって、前記別個の成分a.およびb.をそれぞれ含む少なくとも2つの容器、シリンジおよびバイアル、コネクタデバイス、アプリケータチップおよび説明書、ならびに場合により混合デバイス、およびこれに限定されないがブラシのような清拭用具を含む、キットに関する。前記キットは、2種の成分a.およびb.を2室シリンジで提供することができ、この場合、キットはさらに、説明書、混合デバイス、アプリケータチップおよびブラシのような清拭用具を含むことができる。
【0045】
本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物は、生物学的表面および/または生体材料表面のin situでの清拭および/または洗浄における使用、例えば、そのような生物学的表面および/または生体材料表面からの生物付着、バイオフィルムおよび/または壊死組織のin situでの除去における使用を目的とする。
【0046】
本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物は、典型的に、インプラント周囲炎、歯肉炎および/または粘膜炎、インプラント周囲粘膜炎および/または歯周炎の処置および/または予防における使用のために利用される。
【0047】
結果として、本発明は、インプラント周囲炎、歯肉炎および/または粘膜炎、インプラント周囲粘膜炎および/または歯周炎を処置および/または予防する方法であって、前記汚れた、バイオフィルム化したおよび/または壊死した表面に本発明による組成物を適用することにより、生物学的表面および/または生体材料表面をin situで洗浄および/または清拭することを含む、方法に関する。
【0048】
定義および略語
本明細書において、「微粒子」という用語は、約1~1000μmの平均粒子径(D50)を有する粒子を説明することを意図する。典型的に、本発明では、20~200μmの平均粒子径(D50)を有する微粒子が使用される。
【0049】
本発明は、医療用および/または歯科用インプラントを洗浄および/または清拭する手段を提供する。本文脈では、「インプラント」という用語は、典型的に医療用および/または歯科用インプラントを意味する。
【0050】
本文脈では、「歯科用インプラント」という用語は、例えば歯の修復手技において、脊椎動物、特にヒトのような哺乳動物の口腔内に埋め込まれることを意図する任意のデバイスをその範囲内に含む。歯科用インプラントは、本明細書において以下からなる群から選択される:インプラント、バー、ブリッジ、アバットメント、クラウン、キャップ、および口腔内の補綴部品。歯科用インプラントは、歯科用補綴デバイスと表記される場合もある。一般に、歯科用インプラントは、1つまたは複数のインプラント部品から構成される。例えば、歯科用インプラントは、通常アバットメントのような二次的なインプラント部品に結合された歯科用フィクスチャーおよび/またはクラウン、ブリッジもしくは義歯のような歯科修復物を含む。しかし、埋込を目的とする歯科用フィクスチャーのような任意のデバイスは、他の部品がそれに接続される場合であっても、単独でインプラントと称される場合がある。
【0051】
本文脈では、「整形外科用インプラント」という用語は、それらの構造における疼痛の緩和を含め、筋骨格系、特に関節および骨の機能の保持および回復のために、脊椎動物、特にヒトのような哺乳動物の体内に埋め込まれることを意図する任意のデバイスをその範囲内に含む。整形外科用インプラントの非限定的な例は、人工股関節、人工膝関節、人工肘関節、人工指関節、人工蝸牛、および固定用ネジである。
【0052】
本文脈では、「血管ステント」という用語は、限局的な流れの狭窄を予防するまたはそれに対抗するため、すなわち血管径の有意な減少に対抗するために、脊椎動物、特にヒトのような哺乳動物の血管に挿入するよう構成された管状インプラントを指す。
【0053】
硬組織は、例えば骨、セメント質、象牙質、エナメル質、歯、歯根、軟骨および靭帯である。軟組織は、例えば身体の他の構造および器官を接続、支持または包囲する組織であり、骨のような硬組織ではない。軟組織は、腱、靭帯、筋膜、皮膚、繊維組織、脂肪および滑膜、筋肉、神経および血管を含む。
【0054】
本文脈における「清拭」という用語は、例えばバイオフィルム、石、病原菌、不要な組織、細胞および細胞残留物、瘢痕組織および/または壊死組織を除去するために、外科的に露出した硬組織および/または軟組織の表面のような組織表面を洗浄することを意味する。清拭は、例えば局部感染、炎症、異物反応、病的状態および/または再生過程(例えば、歯周炎、インプラント周囲炎)を制御および/または処置するために実施される。
【0055】
本明細書で使用される場合、「バイオフィルム」は、細胞外マトリックスおよび1種またはそれ以上の微生物、例えばこれらに限定されないが、表面に付着した細菌、真菌、藻類および原生動物を含む。例えば、限定ではないが、そのような表面は、歯、粘膜、アパタイト、骨および非生物(例えばインプラント、義歯、パイプなど)表面を含むことができる。
【0056】
本文脈では、「過酸化物」という用語は、過酸化水素(H2O2)と互換的に使用される。
【0057】
微生物または病原菌は、その単一細胞形態または細胞のコロニーで存在する場合がある微視的生物である。微生物は単細胞生物をすべて含むため、非常に多様である。古細菌および細菌はすべて微生物(原核生物)である。一部の原生生物は動物に関連し、一部は緑色植物に関連する。多細胞生物の多くは微視的である、すなわち微小動物、一部の真菌および一部の藻類である。
【0058】
抗菌剤は、微生物を殺滅するか、またはその成長を停止する薬剤である。抗菌薬は、それらが主に作用する微生物に従って群分けすることができる。例えば、抗生物質は細菌に対して使用され、抗真菌剤は真菌に対して使用される。それらはまた、その機能に従って分類される。病原菌を殺滅する薬剤は殺菌剤であるが、成長を阻害するだけのものは静菌剤と呼ばれ、いずれも「抗菌剤」という用語に含まれる。感染を処置するための抗菌薬の使用は、抗菌化学療法として公知であり、一方で感染を予防するための抗菌薬の使用は、抗菌予防として公知である。
【0059】
ウイルスは、生物の生細胞内でのみ複製する小さな感染体である。ウイルスは、動物および植物から細菌および古細菌を含む微生物まで、あらゆる種類の生物形態に感染することができる。
【0060】
抗ウイルス薬は、細菌性のものではなくウイルス性感染の処置に特に使用される薬の類である。ほとんどの抗ウイルス剤は、特定のウイルス感染に使用されるが、広域抗ウイルス剤は広範囲のウイルスに対して有効である。ほとんどの抗生物質とは異なり、抗ウイルス薬は標的の病原体を破壊しない;その代わりに、その発育を阻害する。
【0061】
抗ウイルス薬は、抗生物質(抗細菌剤とも称される)、抗真菌剤および抗寄生虫薬、またはモノクローナル抗体に基づく抗ウイルス薬も含む、より大きな群である抗菌剤の1つのクラスである。抗ウイルス剤の多くは、宿主に比較的無害であると考えられるため、感染の処置に使用される。抗ウイルス剤は、殺ウイルス剤とは区別されるべきであり、殺ウイルス剤は薬ではなく、体内または体外のいずれかでウイルス粒子を不活性化または破壊する。天然の抗ウイルス剤は、ユーカリおよびオーストラリア産ティーツリーのような複数の植物によって生成される。
【0062】
本文脈で使用される場合、「抗菌性」という用語は、組成物が病原菌およびウイルスに対して有効であることを意味する。その最も広い意味において、本発明の組成物は抗菌性であり、すなわち抗細菌剤、抗ウイルス剤、殺細菌剤および/または殺ウイルス剤である。
【0063】
本明細書で使用される場合、「約」または「およそ」という用語は、当業者によって決定される特定の値に対する許容誤差範囲内を意味し、これは値がどのように測定または決定されるか、すなわち測定システムの制限によって部分的に決まる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1A】1A:純水中のPluronic f-127のゾル-ゲル転移温度(上のグラフ)と比較した、濃度3,5%v/vのH
2O
2中のPluronic f-127のゾル-ゲル転移温度(下のグラフ)。
【
図1B】1B:異なる濃度(v/v)の過酸化水素中のPluronic f-127(30%w/v)の%H
2O
2に関するゾル-ゲル転移。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本明細書に記載される組成物は、生物学的表面および/または生体材料表面、例えば、これらに限定されないが口腔内の表面をin situで効果的に洗浄および/または清拭し、洗浄される表面構造を損傷することなく、かつ汚染物質残留物を本質的に残すことなく迅速かつ効果的に処理し、それと同時に抗菌性および/または抗炎症性効果を示すための長年探究されてきた手段である。
【0066】
本明細書に記載される組成物は、水溶性で洗い流し易く、組織に優しい非イオン性サーファクタントである。これは、注射、経口および皮膚適用に特に好適である、臨床的使用において十分に研究された有効成分の非毒性配合物を含む。本明細書に初めて記載される組成物は、臨床試験において非感作性および非刺激性であることが証明される。本発明の組成物は、生物付着および炎症に対する他の治療剤と適合性がある。
【0067】
本明細書に記載される組成物は、室温で問題のない混合および適用に役立つ液体状態を有する。組成物は、RTのような30℃以下の温度で、、狭い欠損に適用された場合に組成物が困難な位置に到達することを可能にするサーファクタント効果を持つ、容易に流動する液体稠度示す。適用されると、患者の自然な体温でミセルが結合し始め、体温で安定したゲルを素早く形成するため、インプラント表面および適用部位の組織と長時間かつ密接に接触することが可能である。
【0068】
本明細書に記載される組成物はさらに、微小な粗いインプラント表面の機械的清拭を援助する生体吸収性微粒子を含有するよう配合される。これにより、清潔な表面がインタクトな元の構造を持つことが容易になる。ゲル-粒子懸濁液は、ブラシ(例えば、TiBrush(登録商標))のような清拭用具、または他の洗浄デバイスとともに使用される。
【0069】
本発明の組成物は、ヒト細胞によって産生される過酸化物からの活性酸素種(ROS)の自然な放出を模倣する。活性酸素からの電荷は病原菌の膜を破壊し、酸素自体も嫌気性細菌に対して毒性である。ヒト細胞自体は、細胞膜の酵素によってROSから保護されており、局部組織は酸素の増加から利益を得る可能性がある。病原菌はそのような保護を有さず、また細胞膜の設計が根本的に異なるため、耐性を獲得することもできない。このように、組成物は、バイオフィルム、デブリおよび鉱物堆積物を効果的に溶解し、さらに適用部位の細胞外有機物を溶解することができる。
【0070】
さらに、過酸化物の酸性は、細胞が鉱物堆積物を溶解し、汚染されたインプラントからの細胞外有機物および石灰化物質を分解および除去することを助ける。
【0071】
細胞は、病原菌に対する細胞防御を活性化する第2のメッセンジャー系として過酸化物を使用する。本明細書に開示される組成物は、このシグナルを模倣し、局部的な細胞防御網を刺激および強化する。
【0072】
本明細書に提示される組成物を使用すると、ヒドロゲルから放出される活性酸素により、チタンを含有するインプラント表面から炭素汚染物が除去され、インプラントの二酸化チタン層が再活性化される。このプロセスにより、インプラントの元の電荷および親水性が再確立され、最適な生物学的表面特性が回復する。これは、前記処理されたインプラントのさらなる生存、あるいは良好な再統合の主要な要因である。この効果は、実験項において、改善された細胞拡散および超親水性によって視覚化される。
【0073】
本組成物は、天然に存在する酸素と相乗的に作用し、生物付着の分解および除去、病原菌の排除、組織およびインプラントの保湿、ならびにチタンインプラント表面の再活性化を行う先進のミセル形成ゲル配合物である。
【0074】
組成物のヒドロゲル成分および活性酸素は相乗的に作用し、発泡を避け、酸素を表面に固定して生物学的および化学的効果を延長させる。組成物を使用することにより、水分が供給され、組織および/またはインプラントを乾燥させるリスクを伴わずに荷電酸素を作用させることができ、その間に活性酸素が病原菌を排除し、病原菌は浮遊して体温で形成されたゲルに捕捉される。次いで、有機汚染物質が強力な界面活性剤効果によって変性し、活性酸素によって分解され、溶解されてゲル中に捕捉される。ゲルと酸素の両方が炎症を低減させ、組織の健康を支援する。体温で形成されるゲルは、活性酸素の局部効果を延長させ、これが次いで細胞の防御網を強化する。相乗的に、ゲルと活性酸素の両方が汚染物質を除去し、インプラント表面を再活性化させる。ゲルの逆熱力学が活性酸素の破壊効果とともに作用し、ミセル-ゾル状態とゲル状態の間の平衡を形成し、清拭効果を有意に増大させる。
【0075】
本明細書に記載される組成物は、生物学的表面および/または生体材料表面をin situで効果的に洗浄および/または清拭するために、デブリおよび病原菌を可溶化および捕捉するための改善されたゾル-ゲル動力学を有する、強力な非イオン性界面活性剤特性を有する生体適合性ヒドロゲルの新規配合物である。組成物は、水で簡単に洗い流され、水、酸素および酸化炭素に完全に分解する。
【0076】
本明細書に開示される組成物は、バイオフィルムの処理および排除;バイオフィルム形成の予防;バイオフィルム細胞外マトリックスの分解;ならびにバイオフィルム内の細菌の生存能力および成長の阻害のための新規かつ改良された手段を提供する。特に、本明細書に開示される主題は、口腔疾患(例えばう蝕、歯周炎、歯肉炎、粘膜炎および/またはインプラント周囲炎)の予防および/または処置のための組成物を提供する。
【0077】
本発明自体は、組成物がRT、すなわち30℃以下の温度で液体形態であるが、体温への温度上昇により、適用部位でin situでゲル状態に変換するような濃度の過酸化水素(H2O2)とプルロニック酸の組合せに基づく。組成物のH2O2成分は、一般にルアーロック設計の混合コネクタで適用される実施形態では、使用直前に混合するために別個のバイアル中の濃縮物(少なくとも10~50%v/vの濃度)の形態であるか、または一般的な最終濃度0.5~5%で、プルロニック酸および水(または生理食塩水)からなるヒドロゲルに直接溶解された状態で提供することができる。プルロニック酸成分自体は、プルロニック酸のいずれか、例えばF-127の種類である場合がある。プルロニック酸の濃度は、典型的に0.1~10%w/v、例えば0.1~2.5%w/vである。
【0078】
プルロニック酸は、本明細書に開示される組成物中で可溶化剤と界面活性剤の両方として、ならびに保湿剤および動的粘度調整剤として作用する。ヒドロゲル配合物は、体温に加熱されると、プルロニック酸のミセルが自己組織化して充填構造になることにより、粘着性ゲルを形成する。これにより、ゲルは適用部位に留まり、必要とされる場所でその活性を発揮する。このヒドロゲルの活性は、充填されたミセル構造を溶解する荷電酸素を添加し、それによりゾル状態とゲル状態の間の動的平衡を確立することによってさらに向上する。この動的状態により、清拭手順中に粒子、病原菌および汚濁物質の効率的な可溶化および捕捉が促進される。
【0079】
本発明の革新は、プルロニック酸と過酸化物の間の相乗効果に基づく。プルロニック酸は、複数のミセルが結合してヒドロゲルを形成する「充填」ミセル構造を形成するための逆熱力学的能力を有する。この能力は温度の上昇とともに増加し、生理学的条件下(例えば、>20℃)でゲル状態へと移行する。このゾル-ゲル転移は、例えば生体皮膚、粘膜、創傷上で、水分として、および/または有機汚染物質をある程度まで吸収することができる創傷被覆材として長期間機能する安定したゲルを形成する。
【0080】
しかし、過酸化水素と混合された場合、ゾル-ゲル転移はより動的で安定性が低いため、ゾル状態(単一の可溶化ミセル)とゲル状態(充填ミセル構造)との間の転移は、生理学的条件下(=高温)であっても過酸化物のラジカル活性と「動的」平衡状態にあることを本発明は初めて開示する。このことは事実上、過酸化物の存在下では、ゲルをヒトの組織/皮膚/粘膜に適用したときにも充填ミセル構造が溶解し、絶えず(温度の低下や上昇によってのみならず)再形成することを意味する。この効果により、プルロニック酸の界面活性剤効果および捕捉効果が有意に増加する。
【0081】
ウイルス粒子、病原菌および壊死組織上で遊離酸素ラジカルを放出する過酸化水素の効果と相まって、ゾル-ゲル転移により有機汚染物が溶解および捕捉され、有機汚染物はその後、ゲルを洗い流すと除去される。
【0082】
本発明の組成物の別の利点は、過酸化水素をプルロニック酸に添加することにより、充填ミセル構造が形成されるときの温度が上昇すること、すなわち、低濃度の過酸化物を含有するプルロニックゲルは室温で液体であるため、ノズルを詰まらせることなくシリンジ針を通してまたはディスペンサーボトルから適用可能であることである。プルロニック酸は室温で既に安定した「充填ミセル」ゲルを形成し始め、したがってシリンジの細いチップを通して、またはディスペンサーボトルからポンプアプリケーターを通して絞り出すことが非常に困難であるため、このことはプルロニック酸単独では不可能である。そのため、創傷ケアのためのプルロニックゲルは、箱またはチューブ入りのゲルとして販売される。
【0083】
弱い過酸化物とプルロニック酸の組合せによる効果の増大は、予想外かつ驚くべきことであった。
【0084】
過酸化物との組合せによるプルロニックヒドロゲルの粘度低下は、適用の際にも補助となる。生理学的温度ではゲル状態の性質であるため、プルロニックゲル単独では入り込めない狭い空間およびアンダーカットに洗浄および/または清拭組成物を到達させることができる。したがって、粗い(インプラント)表面、骨とインプラント/歯の間のような狭い空間、ならびに皮膚のしわの洗浄においてより効率的である。
【0085】
組成物
本発明は、生物学的表面および/または生体材料表面をin situで洗浄および/または清拭するための新規の抗菌性および/または抗炎症性組成物であって、少なくとも2種の成分
a.最終濃度0.1~5v/vのH2O2、および
b.10~40%w/vの濃度のプルロニック酸を含む複合ヒドロゲル配合物
を含み、室温、例えば最大30℃の温度、例えば20~30℃の温度、例えば25℃で液体である、組成物に関する。
【0086】
本明細書に開示される組成物は、組成物が室温でゲル状態ではなく液体状態になるような比で成分a.およびb.を含むことを特徴とする。成分a.と成分b.の間の典型的な濃度比は、およそ1:10(H2O2の濃度:プルロニック酸の濃度)である。一般に、プルロニック酸の濃度が高いほど、20~30℃の温度で組成物を液体状態(ゾル状態)に保つために、より高いH2O2の濃度が必要とされる。例示的な濃度比は、例えば>2,0%v/v H2O2:15%w/vプルロニック酸、>2,5%v/v H2O2:20%w/vプルロニック酸、>3v/v H2O2:25%w/vプルロニック酸、>3,5%v/v H2O2:30%w/vプルロニック酸、>5%v/v H2O2:40%w/vプルロニック酸である場合がある。
【0087】
本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物の一実施形態では、成分b.の複合ヒドロゲル配合物は、10~40%w/vの濃度、例えば少なくとも10%w/v、例えば10、15、20、25、30、35または40%w/vの濃度のプルロニック酸を含む。
【0088】
本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物の別の実施形態では、成分b.の複合ヒドロゲル配合物は、最大40%w/vの濃度、例えば最大15、20、25、30または35%w/vの濃度でプルロニック酸を含む。
【0089】
本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物は、成分a.のH2O2の最終濃度が0.1~5%v/v、例えば0.5~3%v/v、例えば0.1~5%v/vである組成物である場合がある。一実施形態では、成分a.のH2O2の最終濃度は5%v/v以下、例えば0.1~5%v/v、例えば1、2、3、4または5%v/vである。
【0090】
本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物は、水および/または生理食塩水をさらに含むことができる。
【0091】
本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物の2種の成分は、1つの溶液である場合があるか、または少なくとも2種の成分は、同時に混合され生物学的表面および/または生体材料表面にin situで適用されるまで互いに別個に保持される。
【0092】
成分が適用前に互いに別個に保持される本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物において、別個の成分a.は、少なくとも10~50%v/v、例えば最大10、20、30、40または50%v/vの濃度のH2O2を含む組成物である場合がある。一実施形態では、本発明の組成物は、30%v/vの濃度のH2O2を含む。
【0093】
乳化剤および/または粘度調整剤
一実施形態では、本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物は、1種またはそれ以上の乳化剤および/または粘度調整剤をさらに含む。前記乳化剤および/または粘度調整剤は、グリセリン、グリコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー(プルロニックポリオール)、アルギン酸ポリグリコール(PGA)、CMC(カルボキシルメチルセルロース)、グリセロール、アロエベラゲル、アルギン酸、ヒアルロン酸(HA)およびキトサンからなる群から選択することができる。
【0094】
また、本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物は、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、スズ酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、オキシンおよびSLS(ラウリル硫酸ナトリウム)からなる群から選択される1種またはそれ以上の界面活性剤を含むことができる。
【0095】
本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物は、これらに限定されないがスペアミント、ペパーミント、ウィンターグリーン、サッサフラス、クローブ、セージ、ユーカリ、マジョラム、シナモンおよびサリチル酸メチルおよびメントールの油のような1種またはそれ以上の香料油をさらに含むことができる。
【0096】
本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物は、1種またはそれ以上の弱酸性緩衝剤をさらに含むことができる。
【0097】
微粒子
本発明による組成物は、20~200μmの平均粒子径(D50)を有する微粒子をさらに含むことができる。前記微粒子は、典型的に約0.5~1000g/L、例えば約0.5~300g/Lの濃度である。
【0098】
本発明による組成物は、Ca2+、F-、Sr2+およびMg2+からなる群から選択されるイオンの1種またはそれ以上を放出している微粒子を含むことができる。
【0099】
一態様では、本発明による組成物は、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、乳酸カルシウム、硝酸カルシウム、クエン酸カルシウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸カルシウム、リンゴ酸カルシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、フッ化カルシウム、ヨウ化カルシウム、サッカリンカルシウム、シュウ酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、カゼインカルシウム、グリセロリン酸カルシウムおよびそれらの組合せからなる群から選択されるカルシウム塩化合物粉末からなる微粒子を含む。
【0100】
別の態様では、本発明による組成物は、酸化カルシウム、過酸化カルシウム、水酸化カルシウムおよびそれらの組合せからなる群から選択される酸化カルシウム化合物粉末からなる微粒子を含む。
【0101】
別の態様では、本発明による組成物は、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、アルミノケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、アスコルビン酸カルシウムおよび酸化カルシウムからなる群から選択されるカルシウムイオン源を提供する微粒子を含み、リン酸イオン源は、リン酸ナトリウム、ジホスフェートである。
【0102】
さらに別の態様では、本発明による組成物は、リン酸八カルシウム、リン酸七カルシウム、リン酸五カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸二カルシウム、リン酸一カルシウム、ピロリン酸カルシウム、メタリン酸カルシウム、ホスフィン酸カルシウム、非晶質リン酸カルシウム、水酸化カルシウムリン酸塩およびそれらの組合せからなる群から選択されるリン酸カルシウム化合物粉末からなる微粒子を含む。
【0103】
さらに別の態様では、本発明による組成物は、シリカ、ケイ酸塩ガラス、石英、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、ホウケイ酸バリウム、ホウケイ酸ストロンチウム、ホウケイ酸塩、ケイ酸リチウム、非晶質シリカ、ビスマス化合物、アンモニア化または脱アンモニア化リン酸カルシウム、アルミナ、ジルコニア、酸化スズ、チタニア、アパタイト、シリカガラスフィラー、ケイ酸カルシウム系フィラー、ヒドロキシアパタイト、硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、鉄、ケイ素、マグネシウム、亜鉛、銀、マンガン、パラジウム、ラジウムまたはこれらの混合物からなる群から選択される化合物からなるさらなる微粒子を含む。
【0104】
さらに別の態様では、本発明による組成物は、ポリマー粒子、鉱物粒子、金属粒子、バリウムボロアルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、シリカ、ケイ酸塩ガラス、石英、バリウムシリケートガラス、ストロンチウムシリケートガラス、バリウムボロシリケートガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムアルミノフルオロシリケートガラス、リチウムシリケート、非晶質シリカ、バリウムマグネシウムアルミノシリケートガラス、バリウムアルミノシリケートガラス、ストロンチウムアルミニウム-ボロシリケートガラス;ストロンチウムアルミノフルオロシリケートガラス、非晶質シリカ、ジルコニウムシリケートガラス、またはこれらの混合物である微粒子を含む。
【0105】
さらに、本発明による組成物は、フッ化物イオン源をさらに含むことができ、ここでフッ化物イオン源は、Na2SiF6、CaF2、SrF2、NaF、NaPO3F、NaKF6PO3、K2SiF6、F6、NaP、NaSbF6、KSbF6、F6KPおよびそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0106】
本発明による組成物が、金属表面を有する歯科用インプラントの洗浄および/または清拭における使用を目的とする場合、微粒子は、好ましくは生体適合性かつ固体(硬質)であり、また生分解性である場合がある。
【0107】
固体微粒子は、TiO2、酸化ジルコニウム、ダイヤモンドダスト(炭素)、ポリマー、ポリ乳酸(豆)、鉱物、セラミック、三酸化二アルミニウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、アパタイト結晶、骨セラミック粒子(ヒドロキシアパタイト/リン酸カルシウム)、チタン、ジルコニウム、酸化アルミニウム、カーボランダム、軽石およびシリカからなる材料の群から選択することができる。
【0108】
固体微粒子のための材料の選択は、材料の粗さに合わせ、材料の効率的な洗浄/清拭を可能にしつつ、依然として材料を損傷させないように、どの材料、例えば金属インプラントまたは硬組織表面が本発明の組成物で洗浄/清拭されるかに応じてなされることが好ましい。
【0109】
微粒子の上記特定サイズの選択による1つの利点は、歯科用インプラントの表面処理により、典型的に形成されるくぼみの直径サイズが80~180pmになることである。したがって、本発明の組成物中に固体微粒子が存在すると、組成物は口腔内のインプラントのin situ洗浄および/または清拭に特に好適になり、これは微粒子が、これらを洗浄するためにくぼみに進入することができるサイズでありながら、炎症反応を引き起こさないおよび/または繊維性カプセル中で身体によって被包されるのに十分に大きいためである。
【0110】
前記微粒子は、有機または無機である場合がある。
【0111】
本発明による組成物に含まれる有機微粒子は、アミノ酸、バイオポリマー、キトサン、アルギン酸、プルロニック酸、コラーゲン、ヒアルロン酸、PEGおよび有機酸(これに限定されないが、酒石のようなその不溶性塩を含む)の結晶からなる非限定的な群から選択される。
【0112】
本発明による組成物に含まれる無機微粒子は、金属化合物から選択され、例えば鉄、チタン、ケイ素、マグネシウム、亜鉛、ジルコニウム、銀、マンガン、パラジウム、ラジウム、カルシウムおよびバリウムからなる群から選択される。
【0113】
一態様では、本発明による組成物に含まれる前記微粒子は生分解性であり、例えば裸亜鉛、鉄、ケイ素、マグネシウム、マンガン、銀およびパラジウムからなる群から選択される。
【0114】
微粒子を含む本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物は、典型的に液体中の固体粒子の懸濁液として配合される。
【0115】
メッシュ形成および足場形成成分
本発明による組成物は、少なくとも1種のメッシュ形成および/または足場形成成分をさらに含むことができる。典型的に、少なくとも1種のメッシュ形成および/または足場形成成分は、絹繊維、炭素繊維、ケイ酸塩、ホウケイ酸塩、コラーゲンおよびクモの巣の糸からなる群から選択され、適用後の組成物の物理的強度および/または化学的寿命を向上させる。
【0116】
生物活性物質
代替的にまたは追加的に、本発明による組成物は、典型的にEMD、ペプチド、薬物、生物活性イオン、小分子、放射性分子、抗菌性分子および放射線不透過性分子からなる群から選択される生物活性物質を含むことができる。
【0117】
清拭成分および抗菌性物質
さらに、本発明による組成物は、さらなる抗菌性物質および/または清拭成分を含むこともできる。
【0118】
本文脈では、本発明による組成物に含まれるさらなる抗菌性物質は、アモキシシリン、ドキシサイクリン、セファレキシン、シプロフロキサシン、クリンダマイシン、メトロニダゾール、アジスロマイシン、スルファメトキサゾールおよびトリメトプリムからなる非排他的なリストから選択される。
【0119】
一態様では、本発明による組成物に含まれるさらなる抗菌性物質は、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、マクロライド、ペニシリン(安定化)、クロルヘキシジン、クロラミンおよびこれらの混合物である。
【0120】
一態様では、本発明による組成物は、さらなる抗炎症性物質を含む。
【0121】
室温(RT)で少なくとも1年の貯蔵寿命
一態様における本発明による組成物は、RTで少なくとも1年の貯蔵寿命を有する。
【0122】
キット
本発明はまた、本発明による組成物を含むキットであって、前記別個の成分a.およびb.をそれぞれ含む少なくとも2つの容器、シリンジおよびバイアル、コネクタデバイス、アプリケータチップおよび説明書、ならびに場合により混合デバイス、およびこれに限定されないがブラシのような清拭用具を含む、キットに関する。前記キットは、2種の成分a.およびb.を2室シリンジで提供することができ、この場合、キットはさらに、説明書、混合デバイス、アプリケータチップ、およびこれに限定されないがブラシのような清拭用具を含むことができる。
【0123】
本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物は、適用および最終的な保管の前に混合されるか、または別個に保管し、適用の直前もしくは少し前および/または適用時に混合される。したがって、本出願は、別の態様では、成分a)を含む第1の容器、成分b)を含む第2の容器、ならびに場合により、例えば微粒子および/またはメッシュ形成物質および/または生物活性物質および/または清拭成分および/またはさらなる抗菌性物質および/または抗炎症性物質を含む場合がある成分c)(d)e)など)を含む、少なくとも1つのさらなる(第3または第4など)容器を含むキットに関する。
【0124】
場合により、そのようなキットは、本発明の組成物の調製のための説明書を含むこともできる。キットはまた、対象への組成物の適用のための1つまたはそれ以上のデバイスを含むことができる。このようなデバイスは、例えば、シリンジまたは口腔内のようなインプラントを洗浄および/もしくは清拭するためのインプラント洗浄および/もしくは清拭用具である場合がある。
【0125】
好ましくは、インプラント洗浄および/または清拭用具は、少なくとも2本のワイヤが互いに撚られて形成された細長いベース部材、および前記撚られたワイヤ間に固定され、前記撚られたワイヤから離れて延び、それにより前記ベース部材の第1の端部の洗浄セクションに配置される複数の剛毛を含み;前記剛毛は、チタンおよび/またはチタン合金からなる。本発明のキットはまた、1つまたはそれ以上の容器内の本発明の組成物、ならびに口腔内のインプラントを洗浄および/または清拭するためのインプラント洗浄および/または清拭用具を含む場合がある。
【0126】
歯科用インプラントの洗浄および/または硬組織表面の清拭のためのこのようなインプラント洗浄/清拭用具の一例は、US6,345,406に開示されており、他の例は、WO2009/083281に示される。
【0127】
WO2009/083281に開示されるインプラント洗浄/清拭用具は、直径0.2mmの剛毛を有する。本発明の一態様では、インプラントおよび/または口腔内の硬質表面の効率的な洗浄を可能にするサイズの固体微粒子を組成物中に含む本発明の組成物は、この用具と併せて使用するために特に好適である。この態様の場合、微粒子は、最適には約150pm、例えば100~150pmのサイズを有し、これは粒子が10~100pmである場合、身体が繊維状カプセル内の粒子を取り入れやすいためである。
【0128】
したがって、一態様における本発明は、
a.前記成分a.およびb.をそれぞれ含む少なくとも2つの容器、
b.シリンジおよびバイアル、
c.コネクタデバイス、
d.アプリケータチップ、ならびに
e.説明書
を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の組成物を含むキットに関する。
【0129】
別の態様では、本発明は、
f.混合デバイス、および
g.清拭用具
さらに含むキットに関する。
【0130】
本明細書で好ましい態様では、本発明による組成物を含むキットは、典型的に2種の成分a.およびb.を2室シリンジで提供し、説明書、混合デバイス、アプリケータチップ、および場合により清拭用具をさらに含む。
【0131】
本発明の一態様では、キットは、骨移植材、例えば任意の市販の骨移植材(Titanoxyd scaffold、BioOss、Emdogain、biceramics、SmartBoneなど)をさらに含む。
【0132】
使用
本明細書に開示される組成物は、生物学的表面および/または生体材料表面をin situで洗浄および/または清拭するために使用されることを意図する。
【0133】
本明細書に開示される組成物は、特にインプラント周囲欠損への適用に有用であるが、様々な臨床手技に適合するように配合を調整することができる。
【0134】
例えば、インプラント周囲炎の処置および/または予防に使用される配合物は、典型的に比較的高い含有量の活性酸素および機械的清拭微粒子を含む。
【0135】
インプラント周囲粘膜炎を処置および/または予防するための典型的な配合物は、増加した活性酸素および増加したゾル-ゲル活性を含む。
【0136】
インプラント周囲の維持、インプラント周囲の予防、および術後フォローアップのための典型的な配合物は、高い活性酸素濃度を含む。
【0137】
しかし、本明細書に開示される組成物は、他の口腔内手技、例えば歯周欠損の外科的清拭時、再生手技前の準備、歯周維持処置、歯周炎予防(歯科衛生士)、および歯内手術と根尖手術の両方の歯内療法にも使用される。
【0138】
さらに、本明細書に開示される組成物は、口腔外の洗浄および/または清拭、例えば、これらに限定されないが整形外科の修正手術、経皮デバイスの清拭、急性創傷の洗浄のための皮膚創傷ケアならびに/または慢性潰瘍および火傷の清拭にさらに使用することができる。
【0139】
本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物は、典型的にインプラント周囲炎、歯肉炎および/または粘膜炎、インプラント周囲粘膜炎および/または歯周炎の処置および/または予防に使用するために利用することができる。
【0140】
インプラント周囲炎は、インプラントの使用による口腔歯科リハビリテーションに関連する典型的な合併症、すなわちインプラント周囲病であり、当業者には、炎症を伴うインプラントの骨性支持の損失がある炎症反応として周知である。この疾患の病因は、インプラント周囲組織の状態、インプラントの設計、粗さの程度、インプラント構成要素の整列不良、外部形態および過度の機械的負荷によって条件付けされる。
【0141】
本明細書に記載される抗菌性および/または抗炎症性組成物は、解剖学的構造またはインプラントおよび/もしくは硬質表面自体を本質的に損傷することなく、かつ処理された表面に汚染物質の残留物を本質的に残すことなく、インプラントを効果的にかつ迅速に洗浄するおよび/または口腔内の硬質表面を清拭するための手段を初めて提供する。
【0142】
したがって、一態様における本発明は、薬として使用される、本明細書に定義される抗菌性および/もしくは抗炎症性組成物ならびに/または本明細書に定義される本発明の組成物を調製するためのキットに関する。
【0143】
したがって、本発明は、in situのインプラントのような口腔内のインプラント、口腔内の硬組織の外表面のような口腔内の硬質表面、口腔内の外科的に露出した硬質表面、インプラント周囲炎または外科的創傷から生じる創傷のような口腔内の創傷、歯周欠損および/または歯周創傷、および/または口腔内硬組織欠損などの洗浄および/または清拭のための本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物の使用に関する。
【0144】
本発明はまた、in situのインプラントのような口腔内のインプラント、口腔内の硬組織の外表面のような口腔内の硬質表面、口腔内の外科的に露出した硬質表面、インプラント周囲炎または外科的創傷から生じる創傷のような口腔内の創傷、歯周欠損および/または歯周創傷、および/または口腔内硬組織欠損の洗浄および/または清拭のための、薬ならびに/または医薬および/もしくは美容組成物の調製のための、本明細書に定義される抗菌性および/もしくは抗炎症性組成物、ならびに/または本明細書に定義される本発明の組成物を調製するためのキットの使用に関する。
【0145】
本発明はまた、in situのインプラントのような口腔内のインプラント、口腔内の硬組織の外表面のような口腔内の硬質表面、口腔内の外科的に露出した硬質表面、インプラント周囲炎または外科的創傷から生じる創傷のような口腔内創傷、歯周欠損および/または歯周創傷、および/または口腔内硬組織欠損などの洗浄および/または清拭に使用される、本明細書に定義される抗菌性および/もしくは抗炎症性組成物または本明細書に定義される本発明の組成物を調製するためのキットに関する。
【0146】
別の本明細書で好ましい実施形態は、インプラントを洗浄するおよび/または口腔内の硬質表面を清拭するための、インプラント洗浄および/または清拭用具と併せた本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物の使用に関する。前記インプラント洗浄および/または清拭用具は、例えば少なくとも2本のワイヤが互いに撚られて形成された細長いベース部材、および前記撚られたワイヤ間に固定され、前記撚られたワイヤから離れて延び、それにより前記ベース部材の第1の端部の洗浄セクションに配置される複数の剛毛を含み、前記剛毛がチタンおよび/またはチタン合金を含むまたはチタン合金からなることによって特徴付けられる。
【0147】
例えば歯科用インプラント、整形外科用インプラントおよび血管ステントのような多くの医療用インプラントは金属製である、すなわち金属材料から作製される。結果として、本発明は、金属材料から作製されたインプラントを洗浄および/または清拭するための、代替的にインプラント洗浄および/または清拭用具と併せた本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物の使用に関する。金属製の医療用インプラントを構築するために一般的に利用される金属材料の例は、鋼、チタン、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、ハフニウムおよびそれらの合金である。特に、チタンおよびチタン合金は、医療用インプラントを構築するための利用に好適であることが示されている。
【0148】
一方、医療用インプラントと歯科用インプラントの両方は、少なくとも部分的に、ならびに完全に(フルセラミックインプラント)酸化ジルコニウムおよび/またはヒドロキシアパタイトのような磁器および/もしくはセラミック、またはインプラント技術に好適であるとして当業者に公知の任意の他のセラミックもしくは磁器材料からなる場合がある。したがって、本発明は同様に、磁器および/もしくはセラミックから作製された、またはそれを含むインプラントを洗浄および/または清拭するための、代替的に、インプラント洗浄および/または清拭用具と併せた本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物の使用に関する。結果として本発明はまた、磁器および/もしくはセラミックから作製された、またはそれを含むインプラントを洗浄および/または清拭するための薬ならびに/または医薬および/もしくは美容組成物の調製のための、本発明の組成物の使用に関する。また、本発明は、代替的に、磁器および/またはセラミックから作製された、またはそれを含むインプラントを洗浄および/または清拭するために使用される本発明の組成物に関する。
【0149】
歯科用インプラントは典型的に、1本またはそれ以上の歯を失った患者の歯科修復手技に利用される。歯科用インプラントは、人工歯根の代替物として利用される歯科用フィクスチャーを含む。したがって、歯科用フィクスチャーは、新たな歯の歯根として機能する。歯科用フィクスチャーは、典型的にネジであり、すなわちネジの形状を有し、典型的にチタン、チタン合金、ジルコニウムまたはジルコニウム合金から作製される。ネジを外科的に顎骨に埋め込んだ後、ネジの周りに骨組織が成長し、ネジはインプラント表面に骨が密着した状態で骨の中に固定される。インプラントのネジが顎骨にしっかりと固着された後、ネジにアバットメントを取り付けることによってネジを伸長させることができる。アバットメントも、ネジと同様にチタン、チタン合金、ジルコニウムまたはジルコニウム合金から作製される場合がある。利用されるアバットメントの形状および大きさは、ネジに取り付けた後、粘膜まで正確に届くように調整される。その後、クラウン、ブリッジまたは義歯のような歯科修復物をアバットメントに取り付けることができる。代替的に、インプラントのネジは、埋込後に粘膜まで到達するような形状およびサイズを有することにより、アバットメントを必要とせずに、クラウン、ブリッジまたは義歯のような歯科修復物をネジに直接取り付けることができる。
【0150】
結果として、本発明は、ネジ、アバットメントのような歯科用フィクスチャー、およびクラウン、ブリッジまたは義歯のような歯科修復物からなる群から選択される歯科用インプラントの任意の部品の洗浄および/または清拭のための、代替的にインプラント洗浄および/または清拭用具と併せた本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物の使用に関する。したがって、本発明はまた、ネジ、アバットメントのような歯科用フィクスチャー、およびクラウン、ブリッジまたは義歯のような歯科修復物からなる群から選択される歯科用インプラントの任意の部品を洗浄および/または清拭するための、薬ならびに/または医薬および/もしくは美容組成物の調製のための本発明の組成物の使用に関する。また、本発明は、ネジ、アバットメントのような歯科用フィクスチャー、およびクラウン、ブリッジまたは義歯のような歯科修復物からなる群から選択される歯科用インプラントの任意の部品の洗浄および/または清拭のために使用される本発明の組成物に関する。
【0151】
本発明はさらに、筋骨格系、特に関節および骨における疼痛の緩和を含む、これら構造の機能の保持および修復のために利用される整形外科用インプラントのような整形外科用インプラントを洗浄および/もしくは清拭するため、ならびに/または血管ステント、すなわち、限局的な流れの狭窄を予防するまたはそれに対抗するために血管に挿入するよう構成された管状インプラントを洗浄および/もしくは清拭するための、代替的にインプラント洗浄および/または清拭用具と併せた本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物の使用に関する。結果として、本発明はまた、筋骨格系、特に関節および骨における疼痛の緩和を含む、これら構造の機能の保持および修復のために利用される整形外科用インプラントのような整形外科用インプラントを洗浄および/もしくは清拭するため、ならびに/または血管ステントを洗浄および/もしくは清拭するための薬の調製のための本発明の組成物の使用に関する。また、本発明は、筋骨格系、特に関節および骨における疼痛の緩和を含む、これらの構造の機能の保持および修復のために利用される整形外科用インプラントのような整形外科用インプラントを洗浄および/もしくは清拭するため、ならびに/または血管ステントを洗浄および/もしくは清拭するために使用される本発明の組成物に関する。
【0152】
例えば歯科用インプラント、整形外科用インプラントおよび血管ステントのような医療用インプラントの表面またはその近傍は、配置後に洗浄されなければならない場合がある。これは、感染または汚染が発生し、インプラントに隣接する骨に、インプラント周囲炎として公知の進行性の変性過程を引き起こした場合に特に重要である。このような場合、疾患の進行を停止し、インプラントの再統合を確実にするために、病的な状態にあるインプラントの表面を病原菌および汚染物質から洗浄しなければならない。インプラント表面の洗浄を怠ると、最終的に骨およびインプラントが損失し、さらなる代替処置が困難になり、不可能にさえなる場合がある。さらに、血管ステントの表面は、凝固物を除去するために埋込中に洗浄しなければならない可能性があり、また血管ステントの内部、すなわち血管ステント内の空洞は、再狭窄、すなわち血管の閉塞のために、後の処置中に内視鏡手技で洗浄しなければならない可能性がある。
【0153】
したがって、本発明は、配置後のインプラントまたはその近傍を洗浄および/または清拭するための、代替的にインプラント洗浄および/または清拭用具と併せた本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物の使用に関する。結果として、本発明はまた、配置後のインプラントまたはその近傍を洗浄および/または清拭するための薬の調製のための本発明の組成物の使用に関する。また、本発明は、配置後のインプラントまたはその近傍を洗浄および/または清拭するために使用される本発明の組成物に関する。
【0154】
さらに、様々な理由により、外科的に露出した硬組織表面を清拭することが有利または必要な場合がある。例えば、外科的に露出した硬組織表面の清拭は、再生処置の前に、すなわち再生処置のために硬組織表面を準備するために行うことが有利または必要な場合がある。再生処置のために表面を準備するために、外科的に露出した硬組織表面の清拭を行うことが有利または必要である処置に関連する可能性がある状態の例は:インプラント周囲炎、歯周炎病変、辺縁性歯周炎、根尖性歯周炎、歯根分岐部欠損、根尖肉芽腫および嚢胞、骨嚢胞、骨腫瘍、骨肉芽腫、骨がん、(感染)抜歯窩、乾性歯槽炎(「ドライソケット」)、歯根尖切除欠損の洗浄、限局性骨髄炎、外傷誘導性欠損、インプラントの切除または修正、骨折の切除または修正、および一時的な骨インプラント(整形外科用骨プレート、維持装置およびネジなど)の除去である。さらに、関節炎に罹患した関節における関節面の清拭、ならびに軟骨および靭帯の再生処置を実施する前に、そのような表面の清拭を行うことも有利または必要な場合がある。
【0155】
したがって、本発明は、再生処置の前に外科的に露出した硬組織表面を洗浄および/または清拭するための、代替的にインプラント洗浄および/または清拭用具と併せた本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物の使用に関する。結果として、本発明はまた、再生処置の前に外科的に露出した硬組織表面を洗浄および/または清拭するための薬ならびに/または医薬および/もしくは美容組成物の調製のための本発明の組成物の使用に関する。また、本発明は、再生処置の前に外科的に露出した硬組織表面を洗浄および/または清拭するために使用される本発明の組成物に関する。
【0156】
本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物は、代替的にインプラント洗浄および/または清拭用具と併せて、感染および/または骨吸収後の金属製医療用インプラントの表面の洗浄のために、手術中に利用することができる。例えば、組成物は、金属製歯科用インプラントおよび/または金属製整形外科用インプラントの表面を洗浄するために利用することができる。したがって、組成物は、チタンネジのような歯科用インプラントの表面から、例えば細菌バイオフィルム、デブリ、歯石または繊維組織を除去するために利用することができる。あるいは、組成物は、インプラント埋込時に歯科用フィクスチャーの近傍から細菌バイオフィルムを除去するために、さらなる洗浄剤(すなわち、抗細菌剤)とともに利用することができる。組成物はまた、アバットメントの表面またはその近傍を洗浄するために利用することができる。結果として、本発明はまた、チタンネジもしくはアバットメントのような金属製歯科用インプラント、または金属製整形外科用インプラントの表面から細菌バイオフィルム、デブリ、歯石または繊維組織を洗浄する、例えば除去するための薬の調製のための本発明の組成物の使用に関する。また、本発明は、チタンネジもしくはアバットメントのような金属製歯科用インプラントまたは金属製整形外科用インプラントの表面から細菌バイオフィルム、デブリ、歯石または繊維組織を洗浄する、例えば除去するために使用される本発明の組成物に関する。
【0157】
さらに、本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物は、代替的にインプラント洗浄および/または清拭用具と併せて、整形外科用インプラントの表面からセメントの残部、細菌バイオフィルム、デブリ、歯石もしくは繊維組織を除去するために、または血管ステントの表面から歯垢を除去するために利用することができる。代替的に、組成物は、再狭窄、すなわち血管の閉塞による後の処置中に内視鏡手技で血管ステントの内部、すなわち血管ステント内の空洞を洗浄するために利用される。
【0158】
本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物を、代替的にインプラント洗浄および/または清拭用具と併せて使用することを含む手順は、例えば:処置されるべき硬組織表面を外科的に露出させる工程;炎症を起こした軟組織を除去する工程;代替的にインプラント洗浄および/または清拭用具と併せて、本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物を適用することによって表面を清拭する工程;必要に応じて(再生)処置を適用する工程;軟組織を戻す工程;良好な一次閉鎖および創傷安定性のために縫合する工程;ならびに創傷を治癒させる工程を含むことができる。
【0159】
特に、本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物は、代替的にインプラント洗浄および/または清拭用具と併せて、再生処置(すなわち、例えばStraumann(登録商標)Emdogain、骨移植材、自家骨、膜などによって)の前に外科的に露出した歯根表面、歯根分岐部欠損および骨欠損を清拭するための効率的な用具であり、本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物は、代替的にインプラント洗浄および/または清拭用具と併せて、肉芽組織の除去、ならびに石灰化バイオフィルム(歯垢)の石および歯肉下歯石の除去のために特に効果的である。
【0160】
本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物は、代替的にインプラント洗浄および/または清拭用具と併せて、例えば鋼の医療用インプラントのような比較的硬質の表面を有する「硬質」金属製医療用および/または歯科用インプラント、ならびに例えばチタン、チタン合金、ジルコニウムまたはジルコニウム合金の医療用および/または歯科用インプラントのような繊細な表面を有する「軟質」金属製医療用インプラントの両方の洗浄および/または清拭に利用するのに有利である。
【0161】
さらに、本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物は、埋め込まれた構造の再統合に不適合性の汚染物質、すなわち材料残留物を残さない。したがって、炎症リスクは最小である。
【0162】
特に、本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物を、代替的にインプラント洗浄および/または清拭用具と併せて利用することによって、他の方法では洗浄が困難であり、かつ/または手による器具の使用によって到達することが困難な表面の比較的迅速な清拭手技を行うことができる。迅速な処置は、より良好な処置アウトカムを保証する。上述のように、例えば術後効果のような有害作用の罹患率および頻度は、外科的に露出した硬組織表面の清拭に使用される時間に直接関連し、しばしば比例することは周知の事実である。したがって、迅速な清拭処置は、より良好な全体的な処置アウトカムを保証する。
【0163】
本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物の使用は、代替的にインプラント洗浄および/または清拭用具と併せて、欠損に対する処置計画がチタン製インプラントまたはチタンから作製された任意の他のデバイスの配置を含む場合に特に有利であり、この理由は、望ましくないおよび/または有害な臨床および/または生物学的効果を誘発するチタンのみが処置された領域を汚染し、計画されたおよび/または将来のインプラント手技のアウトカムの妨げになる可能性があり、他の金属イオンまたはポリマーにはその可能性がないためである。
【0164】
口腔衛生
口腔衛生および歯科において、清拭は、歯に蓄積した歯垢および歯石の除去を指し、これは医療、衛生および純粋に美容上の理由から、技術者によって日常的に行われる。したがって、一実施形態では、本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物は、再び代替的にインプラント洗浄および/または清拭用具と併せて、患者の天然の歯または歯のインプラントに蓄積した歯垢および歯石の除去に使用される。本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物は、ラジカル化酸素を含み、したがって天然の歯および/または人工の歯の漂白に使用するのに特に好適である。
【0165】
微生物
本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物は、一般に生物学的表面および/または生体材料表面のin situでの清拭および/または洗浄における使用、例えばそのような生物学的表面および/または生体材料表面からの生物付着、バイオフィルムおよび/または壊死組織のin situでの除去における使用を意図する。
【0166】
本開示の組成物によって予防、排除および/または処置することができるバイオフィルムは、これらに限定されないが、口腔内、例えば歯の表面、歯肉/歯周組織のような粘膜/軟組織の表面および歯管内(例えば、歯内管)に存在するバイオフィルムを含む。
【0167】
特定の実施形態では、本開示の組成物によって予防、排除および/または処置されるバイオフィルムは、尿路、肺、胃腸管、慢性創傷上および/またはその内部、ならびに表面上(例えばインプラント)、ならびに医療デバイスおよび医療ライン内、例えばカテーテル、医療器具および医療チューブ内に存在するバイオフィルムを含む。
【0168】
本開示の組成物は、1種またはそれ以上の微生物、例えばバイオフィルム内の細菌の成長を低減し、および/または生存能力を阻害するために使用される。例えば、限定ではないが、細菌は、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutctns)(S.ミュータンス)(S.mutctns)、ストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)、ストレプトコッカス・サングイス(Streptococcus sctnguis)(サングイニス)(sctnguinis)、ストレプトコッカス・ゴルドニ(Streptococcus gordonii)、ストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus omlis)、ストレプトコッカス・ミチス(Streptococcus mitis)、アクチノマイセス・オドントリティカス(Actinomyces odontolyticus)、アクチノマイセス・ビスコーサス(Actinomyces viscosus)、アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス(Aggregcttibctcter ctctinomycetemcomitctns)、ラクトバチルスspp.(Ictctobctcillus spp.)、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromoncts gingivctlis)、プレボテラ・インテルメディア(Prevotellct intermedia)、バクテロイデス・フォーサイス(Bacteroides forsythus)、トレポネーマ・デンティコーラ(Treponema denticola)、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、カンピロバクター・レクタス(Campylobacter rectus)、オイコネラ・コロデンス(Eikenella corrodens)、ベイロネラspp.(Veillonella spp.)、ミクロモナス・ミクロス(Micromonas micros)、ポルフィロモナス・カンジンジバリス(Porphyromonas cangingivalis)、ヘモフィルス・アクチノミセテムコミタンス(Haemophilus actinomycetemcomitans)、アクチノマイセスspp.(Actinomyces spp.)、バシラスspp.(Bacillus spp.)、マイコバクテリウムspp.(Mycobacterium spp.)、フソバクテリウムspp.(Fusobacterium spp.)、ストレプトコッカスspp.(Streptococcus spp.)、黄色ブドウ球菌、A群溶血性レンサ球菌、B群溶血性レンサ球菌(Streptococcus agalectiae)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、肺炎桿菌(Elebsiella pneumoniae)、アシネトバクターspp.(Acinetobacter spp.)、エンテロコッカスspp.(Enterococcus spp.)、プレボテラspp.(Prevotella spp.)、ポルフィロモナスspp.(Porphyromonas spp.)、クロストリジウムspp.(Clostridium spp.)、ステノトロフォモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、P.カンジンジバリス(P.cangingivalis)、カンジタ・アルビカンス(Candida albicans)、大腸菌および/または、緑膿菌を含むことができる。特定の実施形態では、細菌はS.ミュータンス(S.mutans)であり、これは口腔内、例えば歯の表面上に見出されるバイオフィルム内に存在する。
【0169】
インプラント欠陥に最も一般的に関連する微生物は、スピロヘータおよびグラム陰性嫌気性菌の移動型である。診断は、歯肉の色の変化、出血およびインプラント周囲ポケットのプロービング値、化膿、x線および歯の周囲の骨の高さの段階的な減少に基づく場合がある。アンチバイオグラムで最も有効であることが証明されている抗生物質療法は、今のところアモキシシリンおよびクラブラン酸の併用である。当然ながら、口腔内の病原菌感染は、細菌感染に加え、真菌および/またはウイルス感染も含む場合がある。
【0170】
本発明による抗菌性および/または抗炎症性組成物は、細菌、真菌および/またはウイルスを殺滅するのに効果的である。
【0171】
さらに、本明細書に記載される組成物は、病原菌耐性を引き起こすことなく抗菌性であり、さらに抗炎症性である。
【0172】
結果として、本発明は、インプラント周囲炎、歯肉炎および/または粘膜炎、インプラント周囲粘膜炎および/または歯周炎を処置および/または予防する方法であって、前記汚れた、フィルム化したおよび/または壊死した表面に本発明による組成物を適用することにより、生物学的表面および/または生体材料表面をin situで洗浄および/または清拭することを含む、方法に関する。
【実施例】
【0173】
以下の実施例は、本明細書で開示される主題の代表的な実施形態を実施するための指針を当業者に提供するために含まれた。本発明および当技術分野における一般的な技術レベルを考慮すると、当業者は、以下の実施例が例示的であることのみを意図しており、本明細書に開示される主題の範囲から逸脱することなく、多数の変更、修正および改変が利用可能であることを理解することができる。
【実施例1】
【0174】
3%v/vのH2O2と混合された場合のメチレンブルーの分解、および種々の濃度でのフッ化物の放出
メチレンブルー(MB)は、分子式:C16H18N3SCl(AldrichSigmaAldrich、Oslo、Norway)を有する複素環式芳香族化学化合物である。メチレンブルーは、生物学および化学のような様々な異なる分野で多くの用途がある。MBは有機材料の例であり、したがって複数の文献に見られるように、細菌をシミュレートするための薬剤として使用され、H2O2の分解特性を調査する際に一般的に使用される。したがって、MBの分解は、細菌または死滅、損傷および/もしくは感染組織のような有機材料のin vivo分解のモデルとして使用される。室温では固体の無臭の暗緑色粉末のように見え、水に溶解されると青色の溶液を生じる。溶液中で分解されると、メチレンブルーは無色になる。メチレンブルーをUV-vis分光光度法(Lambda25、Perkin Elmer、USA)によって分析すると、690cmで光を吸収する。この機械を使用してMBの分解を定量化した。
【0175】
目的は、プルロニック酸(Sigma Aldrich AS、Oslo、Norway)を5%w/vの濃度で含む複合ヒドロゲル配合物中、ACPを含まずに5%のH2O2(PERDROGEN(登録商標)30%H2O2(v/v)、Sigma Aldrich AS、Oslo、Norway)のみによってメチレンブルーを分解できるか測定することであった。次に、非晶質リン酸カルシウムACP(2種の前駆体成分を混合することによる。成分Aは、pH5.5の一塩基性および二塩基性リン酸アンモニウムの混合物中に40MBを含有していた)を、濃度を増加させて、最大濃度8g/Lになるまで溶液に添加した。
【0176】
測定は3分おきに1時間行った。また、MBを含有する懸濁液のpHも記録した。ACP粒子の堆積を防ぐため、各測定の前に懸濁液を撹拌した。
【0177】
15%v/vのH2O2(PERDROGEN(登録商標)30%H2O2(v/v)、Sigma Aldrich AS、Oslo、Norway)のみをMBと混合した場合、ほとんど分解が見出されなかった。驚くべきことに、懸濁液中に0.25g/LのACPが存在すると、MBの分解が可能になった。懸濁液中のACP粒子の濃度を増加させると、MBの分解が増加した。ACP粒子の濃度を増加させると、pHはACPなしの3.7から1MのACPありの2.8へとわずかに減少した。
【0178】
H2O2単独ではMB分子を分解することができなかった;この目的を達成するには、驚くべきことにACPが存在しなければならなかった。
【実施例2】
【0179】
7%のH2O2、および種々の濃度のACPと混合された場合のメチレンブルーの分解
目的は、プルロニック酸(Sigma Aldrich AS、Oslo、Norway)を5%w/vの濃度で含む複合ヒドロゲル配合物中、H2O2を含まずにACPナノ粒子のみ(Sigma Aldritchからの化学物質、pH5.5の一塩基性および二塩基性リン酸アンモニウムの混合物によって合成、)によってメチレンブルーが分解できるかを測定することであった。次に、H2O2(PERDROGEN(登録商標)30%H2O2(v/v)、Sigma Aldrich AS、Oslo、Norway)を、濃度を増加させて、最大濃度7%v/vになるまで懸濁液に添加した。実験の手順は、実施例1で説明したものと同じであった。
【0180】
結果は示されない。0.5g/LのACPのみをMBと混合した場合、ほとんど分解が見出されなかった。5%v/vの濃縮H2O2を添加すると、MBの分解が増加した。懸濁液中のH2O2の濃度を増加させると、MBの分解は直線的に増加した。H2O2の濃度を増加させると、pHはH2O2なしの4.9から15%v/vのH2O2ありの3.3まで減少した。
【0181】
ACP単独ではMB分子を分解することができなかった;この目的を達成するにはH2O2が存在しなければならなかった。
【実施例3】
【0182】
5%w/vの濃度のプルロニック酸(Sigma Aldrich AS、Oslo、Norway)と合成リン酸八カルシウム(OCP)およびフッ化物置換リン酸カルシウム(F-CaP)を含む複合ヒドロゲル配合物中の5%のH2O2懸濁液と混合された場合のメチレンブルーの分解
実施例1および2から、濃度5%w/vのプルロニック酸(Sigma Aldrich AS、Oslo、Norway)を含む複合ヒドロゲル配合物中のH2O2(PERDROGEN(登録商標)30%H2O2(v/v)、Sigma Aldrich AS、Oslo、Norway)および合成リン酸八カルシウム(OCP)およびフッ化物置換OCP濃縮物を選択し、この相乗効果を利用しつつ、生理学的環境([H2O2]<6%v/vおよびpH>3)でも使用可能な懸濁液を作成した。
【0183】
合成OCPおよび2種類のフッ化物含有アパタイト型リン酸カルシウム(以下F-CaPと称する)を、以前報告された方法に従って調製した。簡潔には、50ppmのF-(フッ化ナトリウム:NaFとして)を含有する150mM Tris緩衝液中でOCP粉末を37℃でインキュベートすることにより、F-を用いた加水分解によるフッ化物含有アパタイト型リン酸カルシウム(以下HF-CaPと称する)を合成した。緩衝液の初期pHは7.1から9.9に変化した。HF-CaPのインキュベーションは10または60分継続した。一方、F-を用いた共沈からのフッ化物含有アパタイト型リン酸カルシウム(以下CF-CaPと称する)は、F-の存在下でOCPの共沈を適用することによって調製した。以前記載された合成方法に従い、酢酸カルシウム溶液をF-(NaFとして)を含有するリン酸水素ナトリウム溶液に70℃で30分間添加した。最初に使用したF-濃度は、12~230ppmの範囲であった。回収したすべての試料を蒸留水で数回洗浄し、105℃で一晩乾燥させた。
【0184】
目的は、選択された懸濁液に導入された場合に、NaClおよびNaF塩がMBの分解をさらに増加させることができるかどうかを発見することであった。結果は示されない。
【0185】
興味深いことに、懸濁液にNaClをドープすると、OCPおよびH2O2のみを含む懸濁液と比較してMBの分解が半分に低減した。F(Sigma Aldrich AS、Oslo、Norway)で置換すると、MBの分解がさらに強力に低減され、OCPおよびH2O2のみの懸濁液と比較して、この分解の発生をほぼ防止した。
【0186】
H2O2/OCP懸濁液にNaF(Sigma Aldrich AS、Oslo、Norway)およびNaCl(Sigma Aldrich AS、Oslo、Norway)塩をドープすると、MB分解は増加しなかった。
【0187】
F-CaPコーティング上のCa2+および無機リン酸イオン濃度の変化
培養培地中のCa2+および無機リン酸イオン(Pi)の濃度は、それぞれCalcium EおよびPhosphor Cテスト(和光純薬株式会社、大阪、日本)を使用して決定された。F-CaPまたはOCPをコーティングした96ウェル組織培養プレートの各ウェルに、10%FBSを含有するα-MEM100マイクロリットルを添加した。5%二酸化炭素環境下、37℃で3日間プレートをインキュベートした後、上清を収集し、Ca2+およびPiの定量分析を行った。
【0188】
F-CaPまたはOCP粒子の溶解挙動は、α-MEMと37℃で3日間インキュベートした後に実施された。HF1.80-CaPおよびHF3.33-CaPの上清のCa2+濃度は、コーティングなしの対照と比較して大幅に低減した。反対に、CF-CaPコーティングからの培地のCa2+濃度は、OCPのものと等しいか、またはわずかに大きかった。
【実施例4】
【0189】
プルロニック酸(Sigma Aldrich AS、Oslo、Norway)を10%w/vの濃度で含む複合ヒドロゲル配合物の種々の懸濁液のpH測定。
創傷治癒におけるpHは重要な因子であり、異なるリン酸カルシウム(実施例3から)濃度および他の添加成分によって懸濁液のpHを変化させることができる。
【0190】
実験室pHメーター(Blueline 14pH Electrodeを備えたpH Meter Lab 850 Set、Scott Glass Ltd、Stafford、UK)を使用して、異なる溶液中のpHを測定した。以下は、所与の濃度の後に得られたpHのリストである:
1. 5%v/vH2O2と1.6g/L 1.6g/L ACPの混合物により、pH=4.4±0.1が得られた。
2. 5%v/vH2O2+1.6g/L HAの混合物により、pH=5.2±0.1が得られた。
3. 5%v/vH2O22+1.6g/L CaPFの混合物により、pH=6.1±0.0が得られた。
4. 5%v/vH2O2+1.6g/L OCP-F+1.6g/L ACPの混合物により、pH=4.2±0.1が得られた。
5. 5%H2O2+1.6g/L HA-F+1.6g/L ACPの混合物により、pH=5.9±0.0が得られた。
【0191】
種々の試験懸濁液の範囲は、4.2から6.1までであった。
【実施例5】
【0192】
様々なリン酸カルシウムを用いた懸濁液
2g/Lの様々なリン酸カルシウムの溶液をSigma Aldrichから購入し(ヒドロキシルアパタイト、水酸化リン酸カルシウム、Hap Ca10(PO4)6(OH)2、三塩基性リン酸カルシウム[Ca5(OH)(PO4)3]x、β-TCP、β-リン酸三カルシウムCa3O8P2、α-リン酸三カルシウムCa3O8P2)、実施例1~4のCaPと比較し、実施例1および2の3vol.%H2O2(PERDROGEN(登録商標)30%H2O2(v/v)、Sigma Aldrich AS、Oslo、Norway)と混合した。
【0193】
異なる組成物中のカルシウムの量を、原子吸光分光法(AAS;AANALYST400、Perkin Elmer、USA)を使用して決定した。AAS試料は、沈殿した鉱物を溶解するためにHClで酸性化し、その後塩化ランタンを10mg/mLの濃度で添加し、リン酸塩を沈殿させた。キャリアガスとしてアセチレンを使用した。データ点につき3つの独立した試料を測定した。
【実施例6】
【0194】
Ca-P粒子の黄色ブドウ球菌に対する抗細菌効果
本実施例は、活性化CA-P粒子の抗細菌能について記載する。
【0195】
細菌:
黄色ブドウ球菌(S.aureus)は、広範囲の感染の原因となる重要なヒトの常在および日和見病原体である。手術後の感染の原因となる最も公知の細菌の1種である。そのため、この実験には黄色ブドウ球菌が選択された。
【0196】
手順:
3つのゲルを、実施例5のCaP0.5、1.6および20g/Lと混合された1、2および5%v/vのH2O2(PERDROGEN(登録商標)30%H2O2(v/v)、Sigma Aldritch AS、Oslo、Norway)懸濁液で処理した。対照は、粒子を含まないプルロニックゲルであった。
【0197】
これらのゲルに、懸濁液と混合する前に、PBS4ml(ダルベッコPBS、Sigma-Aldrich、St Louis、MO、USA)で希釈された黄色ブドウ球菌の培地(ストック溶液)から500μlを装填した。このストック溶液の液滴10μlをゲルの上に配置した。試験群のUV光曝露が終了したら、ゲルの小正方形を、Invitrogen(GIBSCO MEM、Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)の細胞培養培地(抗生物質なし)500μlを含有する1.5mlエッペンドルフチューブに個々に入れた。ゲルおよび細菌を含有するすべてのエッペンドルフチューブを、暗所で37℃で20時間インキュベーターに入れた。20時間後、すべての試料をインキュベーターから取り出した。分光計(Perkin Elmer UV-Vis 200、Oslo、Norway)のベースライン較正を、細胞培地700μlのみで行った。次に、細胞培地500μl+ストック溶液10μlのみを含有する3本のエッペンドルフチューブを分析した。次に、試験管を1本ずつ振盪し、各管からの体積400μlを細胞培地300μlと混合した。1.5mlのキュベットは、分析される液体700μlを含有していた。
【0198】
結果は、CaP粒子が存在することにより、抗細菌特性が変化しなかったことを示した。
【実施例7】
【0199】
緑膿菌に対するca-p粒子の抗細菌効果
本実施例は、実施例4に記載されたCa-P粒子の抗細菌能について記載する。
【0200】
細菌:
緑膿菌は、広範囲の感染の原因となる日和見病原体であり、慢性的な創傷に見出されることが多い。
【0201】
手順:
異なるゲルを、Ca-P(実施例4)0.5、2および5g/Lと混合された濃度(0.1、1および5%v/v)のプルロニックゲル中3%、5%および7%のH2O2(PERDROGEN(登録商標)30%H2O2(v/v)、Sigma Aldritch AS、Oslo、Norway)懸濁液で処理した。対照は、懸濁液を含まないゲルであった。これらのゲルに、懸濁液と混合する前に、PBS4ml(ダルベッコPBS、Sigma-Aldrich、St Louis、MO、USA)で希釈された黄色ブドウ球菌の培地(ストック溶液)から500μlを装填した。このストック溶液の液滴10μlをゲルの上に配置した。試験群のUV光曝露が終了したら、ゲルの小正方形を、Invitrogen(GIBSCO MEM、Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)の細胞培養培地(抗生物質なし)500μlを含有する1.5mlエッペンドルフチューブに個々に入れた。ゲルおよび細菌を含有するすべてのエッペンドルフチューブを、暗所で37℃で20時間インキュベーターに入れた。20時間後、すべての試料をインキュベーターから取り出した。分光計(Perkin Elmer UV-Vis 200、Oslo、Norway)のベースライン較正を、細胞培地700μlのみで行った。次に、細胞培地500μl+ストック溶液10μlのみを含有する3本のエッペンドルフチューブを分析した。次に、試験管を1本ずつ振盪し、各管からの体積400μlを細胞培地300μlと混合した。1.5mlのキュベットは、分析される液体700μlを含有していた。
【実施例8】
【0202】
バイオセラミックス粒子の大腸菌に対する抗細菌効果
本実施例は、種々のバイオセラミックスの抗細菌能について記載する。
【0203】
細菌:
大腸菌は、慢性的な創傷に存在する場合がある。
【0204】
手順:
3つのゲルの抗細菌効果を、ZrO2およびTiO2(Aeroxide P25、EvonikAG、Essen、Germany)0.5、1.6および20g/Lと混合された3.5および7.5のH2O2(PERDROGEN(登録商標)30%H2O2(v/v)、Sigma Aldritch AS、Oslo、Norway)懸濁液を用いて試験した。対照は、懸濁液なしのゲル、ならびに濃度(0.1、1および5%v/v)のプルロニックゲル中5%v/vのH2O2(PERDROGEN(登録商標)30%H2O2(v/v)、Sigma Aldritch AS、Oslo、Norway)のみで処理されたゲルであった。
【0205】
これらのゲルに、懸濁液と混合する前に、PBS4ml(ダルベッコPBS、Sigma-Aldrich、St Louis、MO、USA)で希釈された黄色ブドウ球菌の培地(ストック溶液)から500μlを装填した。このストック溶液の液滴10μlをゲルの上に配置した。試験群のUV光曝露が終了したら、ゲルの小正方形を、Invitrogen(GIBSCO MEM、Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)の細胞培養培地(抗生物質なし)500μlを含有する1.5mlエッペンドルフチューブに個々に入れた。ゲルおよび細菌を含有するすべてのエッペンドルフチューブを、暗所で37℃で20時間インキュベーターに入れた。20時間後、すべての試料をインキュベーターから取り出した。分光計(Perkin Elmer UV-Vis 200、Oslo、Norway)のベースライン較正を、細胞培地700μlのみで行った。次に、細胞培地500μl+ストック溶液10μlのみを含有する3本のエッペンドルフチューブを分析した。次に、試験管を1本ずつ振盪し、各管からの体積400μlを細胞培地300μlと混合した。1.5mlのキュベットは、分析される液体700μlを含有していた。
【0206】
ZrO2の存在によって抗細菌活性は変化しなかったが、驚くべきことに、TiO2の存在によって変化した。その効果は、濃度に対して線形的であった。
【実施例9】
【0207】
フッ素がドープされた活性化Bioglasの黄色ブドウ球菌に対する抗細菌効果
本実施例は、0.5、1.6および20g/LのBioglass(商標)45S5と混合された、3,5および7.5のH2O2(PERDROGEN(登録商標)30%H2O2(v/v)、Sigma Aldritch AS、Oslo、Norway)の懸濁液中で混合された、Bioglass(商標)45S5(MOSCI Corp.Rolla Missouri MO 65401)の抗細菌能について記載する。
【0208】
細菌:
黄色ブドウ球菌(S.aureus)は、広範囲の感染の原因となる重要なヒトの常在および日和見病原体である。これらは、手術後の感染の原因となる最も公知の細菌のうちの1種である。そのため、この実験には黄色ブドウ球菌が選択された。
【0209】
手順:
ゲルを、種々の濃度のbioglassと混合された、5%v/vのH2O2(PERDROGEN(登録商標)30%H2O2(v/v)、Sigma Aldrich AS、Oslo、Norway)の懸濁液で処理した。さらに、この懸濁液に0.01、0.5、1および3原子量%のフッ素をドープした。ドーピングは、当量のNaFを懸濁液に添加することによって行われた。表面上のフッ素量はX線光電子分光法(XPS)で検出および定量された。対照は、懸濁液なしのゲルおよび5%v/vのH2O2(PERDROGEN(登録商標)30%H2O2(v/v)、Sigma Aldritch AS、Oslo、Norway)のみで処理されたゲルであった。
【0210】
これらのゲルに、懸濁液と混合する前に、PBS4ml(ダルベッコPBS、Sigma-Aldrich、St Louis、MO、USA)で希釈された黄色ブドウ球菌の培地(ストック溶液)から500μlを装填した。このストック溶液の液滴10μlをゲルの上に配置した。試験群のUV光曝露が終了したら、ゲルの小正方形を、Invitrogen(GIBSCO MEM、Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)の細胞培養培地(抗生物質なし)500μlを含有する1.5mlエッペンドルフチューブに個々に入れた。ゲルおよび細菌を含有するすべてのエッペンドルフチューブを、暗所で37℃で20時間インキュベーターに入れた。20時間後、すべての試料をインキュベーターから取り出した。分光計(Perkin Elmer UV-Vis 200、Oslo、Norway)のベースライン較正を、ベースラインの細胞培地700μlのみで行った。次に、細胞培地500μl+ストック溶液10μlのみを含有する3本のエッペンドルフチューブを分析した。次に、試験管を1本ずつ振盪し、各管からの体積400μlを細胞培地300μlと混合した。1.5mlのキュベットは、分析される液体700μlを含有していた。
【0211】
結果は、粒子の数は抗細菌特性にほとんど影響を与えない一方で、最も支配的な要因はプルロニックゲルとH2O2の量であったことを示す。
【実施例10】
【0212】
バイオフィルムの除去
本実施例は、濃度(0.1、1および5%v/v)のプルロニックゲルの抗細菌能について記載する。in vitro試験:洗浄後のバイオマス評価。
【0213】
試料の調製
直径6.2mmおよび高さ2mmの化学的純(cp)チタン製ディスクを使用した。これらは、同様の機械加工表面形状(波形で旋盤加工)を有していた。生成後、ディスクを超音波浴中で40%v/vのNaOHおよび50%v/vのHNO3によって洗い流し、汚染物質を除去した後、中性pHに達するように脱イオン水で洗い流し、70%v/vエタノール中、室温で保存した。その後、コインをエッペンドルフチューブに入れ、蒸気オートクレーブ処理して滅菌した。
【0214】
in vitro試験には、4種類の化学除染剤を選択した:滅菌生理食塩水H2O(VWR、Oslo、Norway)、クロルヘキシジン、3%v/vH2O2(VWR、Oslo、Norway)、3%v/vH2O2と2g/L TiO2(2gナノ粒子:P25 Aeroxide、Degussa Evonik、Evonik Industries AG、Essen、Germany)の混合物。
【0215】
接種、洗浄および分析
各群15枚の滅菌チタンディスクを接種した。対照群にはブレインハートインフュージョン培地(BHI)のみを接種し、一方で試験群(4つ)には細菌培養液(10μl表皮ブドウ球菌+5ml BHI)を接種した。インキュベーション時間は、好気性雰囲気中35℃で24時間に設定した。その後、ディスクを新しいウェルに移し、滅菌生理食塩水で洗い流し、4種類の選択された化学剤に2分間曝露し、再び滅菌生理食塩水で洗い流した。チタン試料の表面に存在するバイオフィルムの量は、サフラニン染色法を使用することによって評価した:0.1%のサフラニン溶液に10分間曝露した後、蒸留水で洗い流し、空気乾燥し、30%の酢酸溶液に曝露して、チタン表面から着色したバイオマスを放出させた。染色強度は、Synergy HT Multi-Detection Microplate Reader(Biotek、VT、USA)を使用して波長530nmで分析された。
【0216】
結果
Synergy HT Multi Detection microplate Readerでの光学密度分析により、3%v/v H2O2と様々なゲル濃度の混合物に曝露された試料は、対照とは有意に異なることが示された。さらに、プルロニック酸濃度が高く、過酸化水素濃度が高いほど、バイオフィルム除去が向上した。
【実施例11】
【0217】
活性化TiO2微粒子への曝露後のバイオフィルムの再成長
本実施例は、消毒後のバイオフィルムの再成長の防止における活性化TiO2微粒子の抗細菌能について記載する。
【0218】
in vitro試験:細菌の再成長
消毒後のバイオフィルムの生存能力を決定するために、別の試験を実施した。方法は、同じ4つの製品を使用して、接種から消毒まで上記実施例10で実施したサフラニン染色分析と同様であった。しかし今回は、消毒工程の後、試料をNaClで洗い流し、純粋なBHI培地中35℃で4時間再インキュベートした。培地を収集し、サフラニン染色と同じ分光光度計を使用して、しかし今回は600nmの波長で分析した。吸光度の強度を対照群と試験群間で比較した。
【0219】
この実験の結果は、対照群およびH2O2単独に曝露された試料と比較して、3%v/vH2O2と2g/L TiO2の混合物に曝露された試料で有意により低い細菌の再成長レベルを示すはずである。
【実施例12】
【0220】
歯周炎処置への応用
ここで記載される2成分プルロニック-過酸化水素ゲルは、局所適用による歯の清拭を目的とする。清拭は、死滅、損傷または感染組織を医学的に除去し、残存する健康な組織の治癒能力を改善することである。口腔外科および歯科では、清拭はまた、歯根に蓄積したバイオフィルム/歯垢(歯垢もミネラル化したバイオフィルムとみなされる場合があることを考慮して)の除去を指す。ゲルは、歯の清拭を支援する;ゲルは、歯の表面からのバイオフィルム/歯垢の機械的除去の効果を効果的に増加させる;バイオフィルム/歯垢は炎症状態を引き起こすため、除去は以下の態様に関して利点をもたらす:
- 歯の組織の分解の抑制
- 炎症の抑制
- 歯周炎の発症、骨の損傷および歯の損失の抑制
デバイスの使用目的は、歯周炎の処置における、および上記に列挙された問題のリスクにある患者への体系的な専門的使用である。
【0221】
ゲルデバイスは、任意の清拭手技の一部として使用することができ、単独で、または機械的除去レメディ(例えば特定の歯ブラシ、手用器具、もしくは電動デバイス)の補助として使用することができる。最も一般的なブラシを構成する材料、または再建もしくは審美歯科で使用される材料との製品の不適合性はない。
【0222】
ゲルを混合する:
1)シリンジの内容物は、過酸化水素を含有するバイアルに完全に注入しなければならない:
2)シリンジを取り外さずに、バイアルを振盪して混合を補助する;
3)混合物をシリンジに引き、バイアルを取り外し、チップをルアーロック接続でしっかりとねじ込み、そのまま使用して目的の領域にゲルを適用する。
【0223】
混合されたゲルは、20分以内に使用されなければばならない。これは、活性過酸化水素がこの後効能を損失するためである。過酸化物およびゲルは、水、二酸化炭素および酸素に分解するため、活性の損失は患者または環境に害を与えない。
【0224】
歯周外科手術におけるプルロニック-過酸化物ゲルの使用:
1.歯周外科手術のために選択された領域の粘膜骨膜弁を剥離した後、露出した歯根面を機械的に清拭し、余分な歯垢および/または歯石を除去する。
2.次に、ゲルを、曝露および清拭された歯根/インプラント表面に2分間局所適用する。弁を戻して縫合した後に軟組織によって覆われる表面の部分にゲルを適用する。
3.積極的な摩擦(「バニシング」)は、これらがゲルの効能を低減するため、手用器具、ブラシのようなブラシ、超音波デバイスまたは任意の他の最適な電動デバイス、レーザーまたは圧縮空気によって適用することができる。
4.清拭後、歯根面および隣接組織を滅菌生理食塩液で十分にすすがなければならない。
5.計画されている場合、再生治療デバイスを適用する。
6.弁を再配置し、縫合で固定する。ゲルを使用する場合、術後の特別な注意はない。
7.最終洗い流し後、再生製品で処置する前に、コンディショニングされた歯根/インプラント表面の再汚染を避けるよう注意する必要がある。
【実施例13】
【0225】
インプラント周囲炎処置への応用
ここに記載される2成分プルロニック-過酸化水素ゲルは、局所適用による埋込型インプラントの清拭を目的とする。清拭は、死滅、損傷または感染組織を医学的に除去し、残存する健康な組織の治癒能力を改善することである。口腔外科および歯科では、清拭はまた、インプラント表面に蓄積したバイオフィルム/歯垢(歯垢もミネラル化したバイオフィルムとみなされる場合があることを考慮して)の除去を指す。ゲルは、インプラントの清拭を支援する;ゲルは、インプラント表面からのバイオフィルム/歯垢の機械的除去の効果を効果的に増加させる;バイオフィルム/歯垢は炎症状態を引き起こすため、除去は以下の態様に関して利点をもたらす:
- インプラント周囲組織の分解の抑制
- 局部炎症の抑制
- インプラント周囲炎の発症、骨の損傷および歯の損失の抑制
デバイスの使用目的は、上記に列挙された問題のリスクにある患者のインプラント周囲炎の外科的処置における体系的な専門的使用である。
【0226】
ゲルは、任意の清拭手技の一部として使用することができ、単独で、または機械的除去レメディ(例えば特定の歯ブラシ、手用器具、もしくは電動デバイス)の補助として使用することができる。最も一般的なブラシを構成する材料、または再建もしくは審美歯科で使用される材料との製品の不適合性はない。
【0227】
ゲルを混合する:
1)シリンジの内容物は、過酸化水素を含有するバイアルに完全に注入しなければならない
2)シリンジを取り外さずに、バイアルを振盪して混合を補助する
3)混合物をシリンジに引き、バイアルを取り外し、チップをルアーロック接続でしっかりとねじ込み、そのまま使用して目的の領域にゲルを適用する
【0228】
混合されたゲルは、20分以内に使用しなければならない。これは、活性過酸化水素がこの後効能を損失するためである。過酸化物およびゲルは、水、二酸化炭素および酸素に分解するため、活性の損失は患者または環境に害を与えない。
【0229】
インプラント周囲炎手術におけるプルロニック-過酸化物ゲルの使用:
1.インプラント周囲手術のために選択された領域の粘膜骨膜弁を剥離した後、露出したインプラント表面を機械的に清拭し、余分な歯垢および/または歯石を除去する。
2.次に、混合されたゲルを、曝露および清拭されたインプラント表面に2分間局所適用する。弁を戻して縫合した後に軟組織によって覆われる表面の部分にゲルを適用する。
3.積極的な摩擦(「バニシング」)は、手用器具、TiBrushのようなブラシ、超音波デバイスまたは任意の他の最適な電動デバイスによって適用される。インプラントプラスティ、レーザーまたは圧縮空気は、これらがゲルの効能を低減させるため使用を避ける。
4.清拭後、歯根/インプラント表面および隣接組織を滅菌生理食塩液で十分にすすがなければならない。
5.計画されている場合、再生治療デバイスを適用する。
6.弁を再配置し、縫合で固定する。ゲルを使用する場合、術後の特別な注意はない。
7.最終洗い流し後、再生製品で処置する前に、コンディショニングされたインプラント表面の再汚染を避けるよう注意する必要がある。
【実施例14】
【0230】
インプラント周囲粘膜炎および歯肉炎への応用
ここに記載される2成分プルロニック-過酸化物ゲルは、局所適用による歯および埋込型インプラントの清拭を目的とする。清拭は、死滅、損傷または感染組織を医学的に除去し、残存する健康な組織の治癒能力を改善することである。口腔外科および歯科では、清拭はまた、歯根およびインプラントに蓄積したバイオフィルム/歯垢(歯垢もミネラル化したバイオフィルムとみなされる場合があることを考慮して)の除去を指す。ゲルは、歯の清拭を支援する;ゲルは、歯/インプラントの表面からのバイオフィルム/歯垢の機械的除去の効果を効果的に増加させる;バイオフィルム/歯垢は炎症状態を引き起こすため、除去は以下の態様に関して利点をもたらす:
- 歯周およびインプラント周囲組織の分解の抑制
- 局部炎症の抑制
- 骨、歯およびインプラントの損失を引き起こす歯周炎およびインプラント周囲炎の発症および進行の抑制
デバイスの使用目的は、上記に列挙された問題のリスクにある患者の定期的な口腔衛生における体系的な専門的使用である。
【0231】
Nu Bone(登録商標)Cleanを任意の清拭手技の一部として使用することができ、単独で、または機械的除去レメディ(例えば特定の歯ブラシ、手用器具、もしくは電動デバイス)の補助として使用することができる。最も一般的なブラシを構成する材料、または再建もしくは審美歯科で使用される材料との製品の不適合性はない。
【0232】
ゲルを混合する:
1)シリンジの内容物は、過酸化水素を含有するバイアルに完全に注入されなければならない。
2)シリンジを取り外さずに、バイアルを振盪して混合を補助する。
3)混合物をシリンジに引き、バイアルを取り外し、チップをルアーロック接続でしっかりとねじ込み、そのまま使用して目的の領域にゲルを適用する。
【0233】
混合されたゲルは、20分以内に使用しなければならない。これは、活性過酸化水素がこの後効能を損失するためである。過酸化物およびゲルは、水、二酸化炭素および酸素に分解するため、活性の損失は患者または環境に害を与えない。
【0234】
インプラント周囲粘膜炎および歯肉炎に対する非侵襲的な応用の推奨使用方法は、以下である:
1.歯肉縁上歯垢および歯石を除去した後、ゲルを混合し、細いチップを使用して歯周ポケット内に慎重に適用する。軟組織の損傷を避けるために、圧力をかけすぎないよう注意する。適用圧力により適用部位の歯肉にわずかな虚血が生じるはずであるが、疼痛または出血は生じるべきではない。
2.適用後、ゲルを1分間放置した後、最適な清拭用具、典型的に手用器具、超音波デバイスまたはブラシを使用して、歯/インプラントの露出面を洗浄する。
3.機械洗浄終了後、水噴霧および吸引で残存するゲルを洗い流す。
4.患者は、手技後に通常通り水で洗い流される。術後の特別な注意はない。
【実施例15】
【0235】
インプラント周囲および歯周病に対する予防および維持処置、ならびにインプラント周囲および歯周健康保持への応用
ここに記載される2成分プルロニック-過酸化物ゲルは、インプラント周囲組織および歯肉を健康に保つための、局所適用による歯の予防洗浄を目的とする。ゲルは、歯およびインプラントの洗浄を補助し、歯/インプラント表面からのバイオフィルム/歯垢の機械的除去の効果を高める;バイオフィルム/歯垢は炎症状態を引き起こすため、除去は以下の態様に関して利点をもたらす:
- インプラント周囲および歯周組織における炎症の抑制
- 歯周病およびインプラント周囲疾患の発症予防
デバイスの使用目的は、上記に列挙された問題のリスクがある患者の定期的な口腔衛生における、または外科的介入後の再発を避けるための維持処置としての体系的な専門的使用である。
【0236】
ゲルは、任意の洗浄手技の一部として使用され、単独で、または機械的除去レメディ(例えば特定の歯ブラシ、手用器具、もしくは電動デバイス)の補助として使用される。最も一般的なブラシを構成する材料、または再建もしくは審美歯科で使用される材料との製品の不適合性はない。
【0237】
ゲルを混合する:
1)シリンジの内容物は、過酸化水素を含有するバイアルに完全に注入しなければならない。
2)シリンジを取り外さずに、バイアルを振盪して混合を補助する。
3)混合物をシリンジに引き、バイアルを取り外し、チップをルアーロック接続でしっかりとねじ込み、そのまま使用して目的の領域にゲルを適用する。
【0238】
混合されたゲルは、20分以内に使用しなければならない。これは、活性過酸化水素がこの後効能を損失するためである。過酸化物およびゲルは、水、二酸化炭素および酸素に分解するため、活性の損失は患者または環境に害を与えない。
【0239】
非侵襲的予防および維持処置の推奨使用方法は、このようなものである:
1.歯肉縁上歯垢および歯石を除去した後、ゲルを混合し、細いアプリケータチップを使用して、処置する歯/インプラントの周囲の歯肉溝周辺および歯肉ポケット中に慎重に適用する。深いポケットにゲルを適用する場合、軟組織の損傷を避けるために、圧力をかけすぎないよう注意する。
2.適用後、ゲルを1~3分放置して作用させる。この間、器具は使用しない。ゲルにより、目的の領域が化学的に洗浄される。
3.洗浄時間終了後、水噴霧および吸引でゲルを除去すべきである。
4.必要に応じて、表面が目視で清潔になるまで手技を繰り返す。
5.患者は、手技後に通常通り水で洗い流される。術後の特別な注意事はない。
【実施例16】
【0240】
慢性皮膚潰瘍の清拭への応用
ここに記載される2成分プルロニック-過酸化物ゲルは、局所適用による皮膚の慢性潰瘍の清拭を目的とする。清拭は、死滅、損傷または感染組織を医学的に除去し、残存する健康な組織の治癒能力を改善することである。創傷ケアでは、清拭はまた、創傷表面に蓄積した病原菌バイオフィルムの除去を指す。ゲルは、創傷の清拭を支援する;ゲルは、創傷表面からのバイオフィルムの機械的除去の効果を効果的に増加させ、同時に局部的な酸素レベルを増加させる。病原菌バイオフィルムは炎症状態を引き起こす可能性があるため、除去は以下の態様に関して利点をもたらす:
- 上皮および結合組織の分解の抑制
- 局部炎症の抑制
- 感染の発症、壊死および創傷進行の抑制
デバイスの使用目的は、上記に列挙された問題のリスクにある患者の慢性的な皮膚創傷の反復処置における体系的な専門的使用である。
【0241】
ゲルデバイスは、任意の清拭手技の一部として使用することができ、単独で、または機械的除去レメディ(例えば特定のブラシ、手用器具、もしくは任意の種類の創傷被覆材)の補助として使用することができる。公知の製品の不適合性はないが、真空デバイスの併用は、創傷表面から活性ゲルを除去する可能性があるため避けるべきである。
【0242】
ゲルを混合する:
シリンジの内容物は、過酸化水素を含有するバイアルに完全に注入しなければならない。
シリンジを取り外さずに、バイアルを振盪して混合を補助する。
混合物をシリンジに引き、バイアルを取り外し、チップをルアーロック接続でしっかりとねじ込み、そのまま使用して目的の領域にゲルを適用する。
【0243】
混合されたゲルは、20分以内に使用しなければならない。これは、活性過酸化水素がこの時間の後に効能を損失するためである。過酸化物およびゲルは、水、二酸化炭素および酸素に分解するため、活性の損失は患者または環境に害を与えない。
【0244】
慢性創傷の非侵襲的処置の推奨使用方法は、このようなものである:
1.化膿および余分な創傷液を除去した後、ゲルを混合し、付属のアプリケータチップを使用して創傷表面に慎重に適用する。
2.適用後、創傷の重症度に応じて、ゲルを3~10分放置して作用させる。この時間の間、被覆材またはワイプは使用しない。ゲルにより、目的の領域が化学的に洗浄される。
3.洗浄時間が終了したら、湿ったワイプでゲルを除去すべきであり、表面から可能な限り除去する。ワイプは廃棄する。
4.必要であれば、創傷が目視で清潔になるまで手技を繰り返す。
5.創傷の清拭が満足のいくものである場合、最後にゲルを適用して創傷を覆う。均等に分布し、ゲルを固める。
6.ゲルが付着した創傷を好適な創傷被覆材で覆う。
7.ゲルおよび創傷被覆材は、次に予定されている創傷の清拭および/または創傷被覆材の交換までそのままにすべきである。
8.患者は、手技後に通常通りの生活ができる。ゲルを使用する際、術後の特別な注意はない。
【実施例17】
【0245】
プルロニックゲルおよびH2O2中のCaP微粒子へのin vivo適合性
試験システム
種:ウサギ
系統:ニュージーランドホワイト
【0246】
実験設計
動物を1~6番で識別し、用量群に割り付けた。
【0247】
試験および対照品目の投与
試験品目投与前日に、体幹背側領域の少なくとも8cm×10cmの領域から脱毛した。翌日、4枚のガーゼパッチ(2.5cm×2.5cm)を表1のように局所的に貼り付けた:
【0248】
【0249】
各パッチを微細孔半閉塞テープで覆い、動物の胴体に弾性包帯を巻いた。
【0250】
1、24、48、72および96時間後にパッチを除去し、試験部位を描出した。試験部位を、ガーゼおよび室温の蒸留水で拭いた。プルロニック-過酸化物ゲルの最後の残部を除去するために、冷水(15℃未満)を使用した。
経路および投与レベルの正当化
【0251】
この経路がヒトへの曝露の、すなわち創傷ケアにおいて可能性のある経路として定義されているため、この試験には経皮投与経路が選択された。この種の試験で日常的に使用されるため、この試験には各試験品目0.5mLの投与量が選択された。
【0252】
皮膚スコア付け
頻度:パッチ除去から1、24、48、72および96時間後。
手順:紅斑および焼痂形成、浮腫の形成、皮膚の肥厚、落屑ならびに処置に対するその他の反応について皮膚を評価した。
【0253】
結論
除去後1または6日後に、インタクトのウサギの皮膚への試験ゲルのいずれかの適用に起因する剖検または組織学的所見はなかった。デバイスは、ヒトの皮膚に適用して試験を行うために安全であるとみなされた。
【国際調査報告】