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特表2023-519836トルクを測定するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(54)【発明の名称】トルクを測定するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20230508BHJP
【FI】
G01L3/10 301A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557690
(86)(22)【出願日】2021-03-10
(85)【翻訳文提出日】2022-11-01
(86)【国際出願番号】 EP2021056062
(87)【国際公開番号】W WO2021190936
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】102020203914.3
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】クスマン,アドリアン
(72)【発明者】
【氏名】オスマン,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】シャッツ,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ツェゴビッツ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】シックル,スベン
(57)【要約】
本発明は、特に駆動補助機付自転車の駆動時にトルクを測定するためのシステムであって、軸の周りで回転可能な少なくとも1つのシャフトであって、少なくとも1つの軸方向部分セクションで磁化されており、測定すべきトルクを印加可能である、シャフトと、シャフトの外部に配置されており、少なくとも2次元で、特に3次元で磁場を測定するように構成されている少なくとも1つのTMRセンサであって、軸の周りでのシャフトの回転時、シャフトに対するトルクの作用により、磁化された部分セクションでの磁歪効果による磁場の変化を測定するように、少なくとも1つの部分セクションに配置されている、少なくとも1つのTMRセンサと、少なくとも1つのTMRセンサに接続されており、磁場の測定値に基づいて、シャフトに作用するトルクを決定するように構成されている、評価デバイスとを含むシステムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に駆動補助機付自転車の駆動時にトルクを測定するためのシステム(1)であって、
軸(2)の周りで回転可能な少なくとも1つのシャフト(3)であって、少なくとも1つの軸方向部分セクション(4a、4b、4c)で磁化されており、測定すべきトルクを印加可能である、シャフト(3)と、
前記シャフト(3)の外部に配置されており、少なくとも2次元で、特に3次元で磁場を測定するように構成されている少なくとも1つのTMRセンサ(5a、5b)であって、前記軸(2)の周りでの前記シャフト(3)の回転時、前記シャフト(3)に対する前記トルクの作用により、磁化された部分セクション(4a、4b、4c)での磁歪効果による磁場の変化を測定するように、前記少なくとも1つの部分セクション(4a、4b、4c)に配置されている、少なくとも1つのTMRセンサ(5a、5b)と、
前記少なくとも1つのTMRセンサ(5a、5b)に接続されており、前記磁場の前記測定値に基づいて、前記シャフト(3)に作用するトルクを決定するように構成されている、評価デバイス(6)と、
を含むシステム(1)。
【請求項2】
前記シャフト(3)が、磁化されている少なくとも2つの軸方向部分セクション(4a、4b)を有する、請求項1に記載のシステム(1)。
【請求項3】
前記少なくとも2つの軸方向部分セクション(4a、4b)が、異なる磁化、特に反対の磁化を有する、請求項2に記載のシステム(1)。
【請求項4】
複数のセンサ(5a、5b)、特に複数のTMRセンサが配置されており、各部分セクション(4a、4b、4c)に、少なくとも1つの測定用のセンサ(5a、5b)が割り当てられている、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項5】
前記2つの軸方向部分セクション(4a、4b)が互いに隣接して配置されている、請求項2または3に記載のシステム(1)。
【請求項6】
前記それぞれの軸方向部分セクション(4a、4b、4c)に割り当てられた前記少なくとも1つのセンサ(5a、5b)が、前記それぞれの軸方向部分セクション(4a、4b、4c)に対し軸方向中央に配置されている、請求項4または5に記載のシステム(1)。
【請求項7】
前記少なくとも2つの隣接する部分セクション(4a、4b)に割り当てられた前記センサ(5a、5b)が、軸方向で、前記隣接する部分セクション(4a、4b)のそれぞれの軸方向延在域の半分の和よりも近くに互いに配置されている、請求項4または5に記載のシステム(1)。
【請求項8】
前記少なくとも1つのTMRセンサ(5a、5b)が、ASICの形態で提供されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
特に駆動補助機付自転車の駆動時にトルクを測定するための方法であって、
軸(2)の周りで回転可能な少なくとも1つのシャフト(3)の少なくとも1つの軸方向部分セクション(4a、4b、4c)を磁化するステップ(S1)と、
前記軸(2)の周りで前記シャフト(3)を回転させるステップ(S2)と、
少なくとも1つのTMRセンサ(5a、5b)によって、前記軸(2)の周りでの前記シャフト(3)の前記回転中の磁歪効果による前記磁化された部分セクション(4a、4b、4c)での磁場の変化を、少なくとも2次元、特に3次元で測定するステップ(S3)と、
評価デバイス(6)によって、前記少なくとも1つのTMRセンサ(5a、5b)の測定値を評価するステップ(S4)と、
評価された値に基づいて前記シャフト(3)に作用するトルクを決定するステップ(S5)と
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に駆動補助機付自転車の駆動時にトルクを測定するためのシステムに関する。
さらに、本発明は、特に駆動補助機付自転車の駆動時にトルクを測定するための方法に関する。
【0002】
発明は一般に任意のトルク測定に使用可能であるが、駆動補助機付自転車の駆動時のトルク測定に関連して本発明を説明する。
【背景技術】
【0003】
駆動補助機付自転車の駆動時、駆動補助機付自転車は、駆動補助機付自転車の運転者が生成した駆動デバイスでのトルクを迅速および正確に測定することが公知であった。公知の方法では、磁化されており、駆動補助機付自転車の運転者によってトルクを加えられたシャフトから発生する磁束が、コイルの形態での磁場センサによって測定され得る。磁歪効果によりトルクによって生成される異方性により、シャフトから磁場または磁束が「発生」する。ここで、1つの問題は、外部磁場、すなわち干渉磁場と、トルクによって生じる内部磁場、すなわち有用磁場とを区別することができないことである。
【0004】
米国特許出願公開第2014/360285号明細書から、トルクを決定するための方法が公知であったが、そこでは、第3の磁気トラックが導入され、例えば磁場センサとして働くコイルの追加の接続によって、測定される磁場を通じて対応する勾配が認識され、一つずつ補われ得、それにより干渉磁場が有用磁場から区別され得る。しかし、コイルの追加の配置により、より大きい設置スペースが必要である。さらに、コイルを用いる場合、磁場の3つの空間方向のそれぞれ1つしか測定可能でない。
【0005】
米国特許出願公開第2013/125669号明細書から、トルクを決定するための方法が公知であったが、そこでは、センサは、コイルの形態で異なる様式で配線される。それにより、有用磁場の一時的な加算または減算、すなわち有用磁場の消去が可能である。しかしここで、問題の1つは、特定の期間中にトルクが測定され得ないことである。さらに、有用磁場および干渉磁場の測定と干渉磁場のみの測定との間には時間的なオフセットが生じ、トルクが不正確に算出される可能性がある。
【0006】
さらに、欧州特許出願公開第3364163号明細書から、磁気弾性トルクセンサが公知であった。これは、第1の軸方向セクションにおいて第1の周方向で磁化されており、測定すべきトルクを印加可能であるシャフトと、シャフトの第1のセクションによって生成される、印加されたトルクに依存するシャフト外の磁場を検出するための第1の磁場センサとを含み、第1の磁場センサは、第1の3D-AMRセンサを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/360285号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2013/125669号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第3364163号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態では、本発明は、特に駆動補助機付自転車の駆動時にトルクを測定するためのシステムであって、軸の周りで回転可能な少なくとも1つのシャフトであって、少なくとも1つの軸方向部分セクションで磁化されており、測定すべきトルクを印加可能である、シャフトと、シャフトの外部に配置されており、少なくとも2次元で、特に3次元で磁場を測定するように構成されている少なくとも1つのTMRセンサであって、軸の周りでのシャフトの回転時、シャフトに対するトルクの作用により、磁化された部分セクションでの磁歪効果による磁場の変化を測定するように、少なくとも1つの部分セクションに配置されている、少なくとも1つのTMRセンサと、少なくとも1つのTMRセンサに接続されており、磁場の測定値に基づいて、シャフトに作用するトルクを決定するように構成されている、評価デバイスとを含むシステムを提供する。
【0009】
さらなる実施形態では、本発明は、特に駆動補助機付自転車の駆動時にトルクを測定するための方法であって、
- 軸の周りで回転可能な少なくとも1つのシャフトの少なくとも1つの軸方向部分セクションを磁化するステップと、
- 軸の周りでシャフトを回転させるステップと、
- 少なくとも1つのTMRセンサによって、軸の周りでのシャフトの回転中の磁歪効果による磁化された部分セクションでの磁場の変化を、少なくとも2次元、特に3次元で測定するステップと、
- 評価デバイスによって、少なくとも1つのTMRセンサの測定値を評価するステップと、
- 評価された値に基づいてシャフトに作用するトルクを決定するステップと、
を含む方法を提供する。
【0010】
この方法によって達成される利点の1つは、少なくとも2次元で測定する少なくとも1つのTMRセンサによって、干渉磁場と有用磁場とが確実に区別され、それによりトルクの測定が大幅に改良されることである。さらなる利点は、「ブラインドタイム」、すなわち、一方では有用磁場および干渉磁場の測定と、他方では干渉磁場の測定との間の時間的オフセットがなくなることである。さらに、このシステムまたは方法は、外来磁場または干渉磁場に対してよりロバストである。さらに、センサをより小さく形成することができ、したがって設置スペースが節約され得る。
【0011】
本発明のさらなる特徴、利点、およびさらなる実施形態は、以下に記載され、またはそれにより明らかになる。
有利な発展形態によれば、シャフトは、磁化されている少なくとも2つの軸方向部分セクションを有する。これにより、様々な領域が測定され得、干渉または測定誤差が平均化され得るので、測定の信頼性が向上される。
【0012】
さらなる有利な発展形態によれば、少なくとも2つの軸方向部分セクションは、異なる磁化、特に反対の磁化を有する。それにより、トルク測定の信頼性をさらに高めることができる。
【0013】
さらなる有利な発展形態によれば、複数のセンサ、特に複数のTMRセンサが配置されており、各部分セクションに少なくとも1つの測定用のセンサが割り当てられている。これによる利点は、トルク測定がより高い信頼性で行われ得ることである。例えば、外部干渉磁場がさらに確実に認識され得、測定誤差が平均化され得る。
【0014】
さらなる有利な発展形態によれば、2つの軸方向部分セクションが互いに隣接して配置されている。それにより、トルク測定に必要な設置スペースが削減され得る。
さらなる有利な発展形態によれば、それぞれの軸方向部分セクションに割り当てられた少なくとも1つのセンサが、それぞれの軸方向部分セクションに対し軸方向中央に配置されている。これにより、磁歪効果によりトルクによって引き起こされる磁場の確実な測定が可能になる。
【0015】
さらなる有利な発展形態によれば、少なくとも2つの隣接する部分セクションに割り当てられたセンサは、軸方向で、隣接する部分セクションのそれぞれの軸方向延在域の半分の和よりも近くに互いに配置されている。それにより、設置スペースがさらに削減され得る。さらに、外部干渉磁場がより確実に認識され、トルクの測定時に考慮され得る。
【0016】
さらなる有利な発展形態によれば、少なくとも1つのTMRセンサが、ASICの形態で提供されている。それにより、TMRセンサの測定値への簡単および継続的なアクセスが可能であり、したがって、測定値に基づいて例えばソフトウェアを用いてトルクが算出され得る。生じる磁場を測定するために、磁場センサ、特に3D磁場センサをASICの形態で独立した評価ユニットと共に使用することによって、トルク信号が干渉信号と共に検出され得、次いで干渉信号が計算され得、それにより、次いで、ブラインドタイムなしで、干渉信号を含まないトルク信号の形態での純粋な有用信号が算出され得る。3D磁場センサの使用により、ベクトルベースの観察を用いて外部磁場をより良く決定され得る。比較的大きいコイルに比べて、小さい磁場センサ要素を使用することにより、磁場が一点で、特にベクトル的に検出され、外部干渉磁場により作用する勾配を最小限に抑えることができる。
【0017】
本発明のさらなる重要な特徴および利点は、従属請求項、図面、および図面に基づく関連の図面の説明からわかる。
前述したおよびさらに後述する特徴は、それぞれ指定された組合せだけでなく、本発明の枠組みを逸脱することなく他の組合せまたは単独で利用することができることを理解されよう。
【0018】
本発明の好ましい実施および実施形態は、図面に示されており、以下の説明でより詳細に述べられ、その際、同じ参照番号は、同一もしくは同様の、または機能的に同一の構成要素または要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】公知のシステムの概略図である。
図2】本発明の一実施形態によるシステムの図である。
図3】本発明の一実施形態によるシステムの図である。
図4】本発明の一実施形態による方法のステップの図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、公知のシステムを示す。
詳細には、図1は、軸2の周りで回転可能なシャフト3を含むシステム1を示す。シャフト3は、周方向で、3つの隣接する軸方向部分セクション4a、4b、4cをさらに有し、隣接する領域4a、4bおよび4b、4cはそれぞれ、シャフト3の周方向で反対の磁化7を有する。2つの軸方向外側の軸方向部分セクション4a、4cにはそれぞれ1つの測定コイル5が割り当てられており、これらの測定コイル5は、中央の軸方向部分セクション4bのそれぞれ1つの測定コイル5と同じ垂直高さ、すなわちシャフト3の軸2に対する距離にある。
【0021】
図2は、本発明の一実施形態によるシステムを示す。
詳細には、図2は、実質的に図1によるシステム1を示す。図1によるシステム1とは異なり、図2によるシステム1は、2つのみの隣接する軸方向部分セクション4a、4bを有し、これらは、シャフト3の周方向で反対の磁化7a、7bを有する。2つの軸方向部分セクション4a、4bには、それぞれ1つの3D磁場センサ5a、5bがTMRセンサの形態で割り当てられており、3D磁場センサ5a、5bはそれぞれ、それぞれの軸方向部分セクション4a、4bの軸方向中央に配置されている。2つの3D磁場センサ5a、5bは評価デバイス6とさらに接続されており、評価デバイス6は、2つのセンサ5a、5bの磁場の測定値に基づいて、公知の方法で、シャフト3に作用するトルクを算出するように構成されている。
【0022】
図3は、本発明の一実施形態によるシステムを示す。
詳細には、図3は、実質的に図2によるシステム1を示す。図2によるシステム1とは異なり、図3によるシステム1では、2つの3D磁場センサ5a、5bは、互いにできるだけ近くに配置されており、すなわち実質的に、2つの軸方向部分セクション4a、4b間の共通の境界に配置されている。この配置は、部分セクション4aおよび4bに関する磁場センサ5aおよび5bを中央に向けてオフセットした配置に対応する。これにより、外部干渉磁場の2つの測定位置間での磁場を通じて作用する勾配、および可能な取付部品に対する外方向への距離を最適化することが可能である。
【0023】
図4は、本発明の実施形態による方法のステップを示す。
詳細には、図4は、特に駆動補助機付自転車の駆動時にトルクを測定するための方法のステップを示す。この方法は、以下のステップを含む。
【0024】
第1のステップS1において、軸の周りで回転可能な少なくとも1つのシャフトの少なくとも1つの軸方向部分セクションを磁化する。
さらなるステップS2において、軸の周りでシャフトを回転させる。
【0025】
さらなるステップS3において、少なくとも1つのTMRセンサによって、軸の周りでのシャフトの回転中の磁歪効果による磁化された部分セクションでの磁場の変化を、少なくとも2次元、特に3次元で測定する。
【0026】
さらなるステップS4において、評価デバイスによって、少なくとも1つのTMRセンサの測定値を評価し、さらなるステップS5において、評価された値に基づいて、シャフトに作用するトルクを決定する。
【0027】
要約すると、本発明の実施形態の少なくとも1つは、以下の利点の少なくとも1つを有する。
-より小さい設置スペース
-シャフトに作用するトルクのより正確な決定
-シャフトに作用するトルクの継続的な決定
-取付部品の配置に関するより高い自由度
本発明を好適な例示的実施形態に基づいて述べたが、本発明はこれらに限定されておらず、様々な形で変更可能である。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】