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特表2023-520556貫通部材の自動挿入のための装置および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(54)【発明の名称】貫通部材の自動挿入のための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/30 20160101AFI20230510BHJP
   A61M 25/09 20060101ALN20230510BHJP
【FI】
A61B34/30
A61M25/09
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560469
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(85)【翻訳文提出日】2022-12-01
(86)【国際出願番号】 US2021025356
(87)【国際公開番号】W WO2021202864
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】16/837,675
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522389911
【氏名又は名称】オビウス・ロボティクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100117640
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 達己
(72)【発明者】
【氏名】バグウェル,ロジャー・ビー
(72)【発明者】
【氏名】クレメント,ライアン・エス
(72)【発明者】
【氏名】マルビヒル,モーリーン・エル
(72)【発明者】
【氏名】スクラッグス,ケイシー・エイ
(72)【発明者】
【氏名】スヌーク,ケビン・エイ
(72)【発明者】
【氏名】コーン,ウィリアム・イー
(72)【発明者】
【氏名】ハーリヒー,ジェームズ・パトリック
(72)【発明者】
【氏名】レニックス,ケネス・ウェイン
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA01
4C267BB53
4C267BB62
4C267CC04
4C267EE01
4C267HH08
4C267HH09
(57)【要約】
自動挿入装置およびその使用方法が提供される。バイブレータと伸張器は、貫通部材に接続され、両方とも制御部と電気的に通信する。検出器は、挿入のための皮下標的と挿入角度を識別する。貫通部材の距離および弾道が計算される。バイブレータは貫通部材に振動を与え、伸張器は挿入のために貫通部材を前進させる。バイブレータと伸張器は、挿入プロセス中に互いに電気通信し、挿入速度の調整は、挿入中にバイブレータが遭遇する振動負荷のフィードバックに基づいて行われ、振動の調整は、挿入中に伸張器が受ける挿入負荷のフィードバックに基づいて行われる。反復サンプルを取得して、一方のモータの操作が、他方のモータの操作と他方のモータからのフィードバックとに基づいて常に調整される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通部材を挿入軸に沿って組織内に挿入するための装置において、
検出器と、
プロセッサとメモリとを有する制御部と、
前記貫通部材に接続された振動アセンブリであって、前記振動アセンブリは、前記制御部および伸張アセンブリのうちの少なくとも1つと電気的に通信する振動アクチュエータを有し、前記振動アクチュエータは、挿入負荷に少なくとも部分的に応答して規定された動作振動命令に従って、前記挿入軸に沿って軸方向振動を生成し、前記軸方向振動を前記貫通部材に伝達し、前記振動アクチュエータ上の振動負荷を検出し、前記振動負荷を示す信号を前記制御部および前記伸張アセンブリのうちの1つに送信するように構成された、振動アセンブリと、を備え、
前記伸張アセンブリは、前記貫通部材に接続され、前記制御部および前記振動アセンブリのうちの少なくとも1つと電気通信し、前記伸張アセンブリは、前記振動負荷に少なくとも部分的に応答して規定された動作挿入命令に従って挿入速度で前記挿入軸に沿って前記貫通部材を軸方向に移動させるように構成された伸張アクチュエータを有し、前記伸張アセンブリは、前記伸張アクチュエータ上の前記挿入負荷を検出し、前記挿入負荷を示す信号を前記制御部および前記振動アセンブリのうちの1つに送信するようにさらに構成されている、
装置。
【請求項2】
前記振動負荷は、前記振動アクチュエータの振幅および電力消費のうちの少なくとも1つであり、前記挿入負荷は、前記伸張アクチュエータの電力消費である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記貫通部材が前記装置から選択的に取り外し可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記伸張アセンブリは、前記装置に対して前記伸張アクチュエータによって移動可能な伸張シャフトを含み、前記伸張シャフトは、前記振動アセンブリに接続する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記振動アクチュエータは、ボイスコイルモータ、圧電モータ、およびDCモータのうちの1つである、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記振動アセンブリは、前記振動アクチュエータと電気的に通信し、前記振動アクチュエータ上の前記負荷の電気的および機械的表示のうちの少なくとも1つを検出するように構成された振動負荷センサを含み、前記振動負荷センサは、(a)シャント抵抗器および増幅器、(b)LVDTセンサ、ならびに(c)前記振動アクチュエータ、のうちの1つである、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記振動アセンブリは、前記振動アクチュエータと電気的に通信し、(a)前記振動負荷センサからの電気的および機械的表示のうちの前記少なくとも1つから前記振動負荷を決定すること、および(b)前記振動負荷を示す前記信号を前記制御部および前記伸張アセンブリのうちの1つに送信すること、のうちの少なくとも1つを行うように構成される振動負荷制御を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記伸張アセンブリは、前記制御部、前記プロセッサ、および前記振動アセンブリのうちの少なくとも1つと電気通信する伸張制御を含み、前記伸張制御は、(a)前記伸張アクチュエータの前記挿入負荷を決定し、(b)前記挿入負荷を示す前記信号を前記制御部、前記プロセッサ、および前記伸張アセンブリのうちの1つに送信する、ように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記制御部および前記プロセッサの少なくとも一方は、(a)前記振動負荷および前記挿入負荷を示す前記信号を受信し、(b)前記振動負荷を示す前記信号を前記所定の振動値と比較し、前記振動負荷を示す前記信号が前記所定の振動値から逸脱するとき、前記挿入速度を変更するために前記伸張アクチュエータに動作挿入命令を提供し、(c)前記挿入負荷を示す前記信号を前記所定の挿入値と比較し、前記挿入負荷を示す前記信号が前記所定の挿入値から逸脱するとき、前記振動を変更するように前記振動アクチュエータに動作振動命令を提供する、ように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記振動アセンブリおよび前記伸張アセンブリを支持する位置決め装置をさらに備え、前記装置は、前記位置決め装置の外部に配置され、前記制御部と電気的に通信する表面近接センサをさらに備え、前記表面近接センサは、前記位置決め装置と組織の表面との接触を検出し、検出された接触の信号を前記制御部に提供するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
貫通部材を組織に自動的に挿入する方法において、
検出器、振動アクチュエータ、および伸張アクチュエータを有する装置を提供するステップと、
前記貫通部材が挿入される組織内の標的部位を決定するステップと、
前記検出器によって前記標的部位の撮像データを取得するステップと、
前記撮像データに基づいて、前記貫通部材が選択された標的部位に到達するための少なくとも挿入距離の標的情報を決定するステップと、
前記標的情報に基づいて、前記振動アクチュエータに対する振動パラメータの動作命令と、前記伸張アクチュエータに対する挿入速度および挿入距離の動作命令と、を提供するステップと、
前記動作命令に従って、前記振動アクチュエータを作動させて振動を開始させ、前記伸張アクチュエータを作動させて前記貫通部材の前記組織への挿入を開始させるステップと、
前記振動アクチュエータの振動負荷と前記伸張アクチュエータの挿入負荷とを検出するステップと、
前記検出された振動負荷を所定の振動値と比較し、前記検出された挿入負荷を所定の伸張値と比較するステップと、
前記検出された振動負荷が前記所定の振動値から逸脱した場合、前記伸張アクチュエータの挿入速度を調整し、前記検出された挿入負荷が前記所定の伸張値から逸脱した場合、振動アクチュエータの振動を調整するステップと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記挿入速度を調整するステップは、(a)前記振動アクチュエータ上の前記検出された振動負荷が前記所定の振動値を超えて増加する場合に前記挿入速度を減少させることと、(b)前記振動アクチュエータ上の前記検出された振動負荷が前記所定の振動値を下回って減少した場合に前記挿入速度を増加させることと、のうちの1つをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記所定の振動値は、前記振動アクチュエータの振幅のパーセンテージ量および電力消費のパーセンテージ量のうちの少なくとも1つである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記所定の振動値は、30%の振幅および50%の電力消費のうちの少なくとも1つである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記振動を調整するステップは、(a)前記伸張アクチュエータの前記検出された挿入負荷が前記所定の伸張値を下回って減少したときに、前記振動アクチュエータの出力、振幅、および周波数のいずれかを増加させるステップと、(b)前記伸張アクチュエータの前記検出された挿入負荷が前記所定の伸張値を下回って増加した場合、前記振動アクチュエータの出力、振幅、および周波数のいずれかを減少させるステップと、のうちの1つをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記所定の伸張値は、前記伸張アクチュエータの0.25倍、0.5倍、1.0倍、1.5倍、および2.0倍のうちの1つである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
反復検出により、前記振動アクチュエータの前記振動負荷と前記伸張アクチュエータの前記挿入負荷とを監視するステップであって、前記検出された振動負荷および挿入負荷を、前記所定の振動値および前記所定の伸張値とそれぞれ比較するステップが、反復検出ごとに行われる、ステップ、をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
(a)選択された標的に到達するために完全に所定の距離を移動することと、(b)前記貫通部材以外の構成要素による組織の表面との接触を検出することと、のいずれかが発生した時点で、前記貫通部材の挿入を停止するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記標的部位に到達したら、前記貫通部材を通してガイドワイヤを挿入するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記貫通部材を前記位置決め装置から切り離すステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年9月18日に出願され、現在失効している米国仮出願番号62/220,567の利益を主張する2016年9月16日に出願された、同時係属中の米国出願番号15/267,801の一部継続出願であり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、体液、組織、栄養素、医薬品、治療法、の送達または削除のための自動化された手段によって体内の組織を貫通するための、および医療機器(例えば、ガイドワイヤ、カテーテルなど)の二次留置用の身体コンパートメント(例えば、血管系、脊髄腔など)への経皮的アクセスを得るための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
中心静脈カテーテル(Central venous catheters:CVC)により、医療患者の中心循環へのアクセスが可能になる。米国では毎年500万件以上のCVCが設置されている。CVCは、急性疾患の患者、および大手術または処置を必要とする患者に対する多数の重要な医療介入を開始するための重要なプラットフォームである。米国の病院の集中治療室(ICU)だけで年間1,500万日以上のCVCが使用されており、ICU患者の48%がICU滞在中のある時点でCVCを挿入されている。CVCは、急性腎不全、さまざまな免疫介在性疾患のための血漿交換、がん患者のための複数の形態の化学療法、胃腸管を栄養に使用できない患者のための非経口栄養、および他の多くの医療介入など、緊急の血液透析を必要とする患者にも必要である。
【0004】
CVCの留置は、1950年代以来、スウェーデンの放射線科医Sven-IvarSeldingerによって開発された同名の技術を使用して行われてきた。この技術を使用して、導入針とも呼ばれる中空の針を患者の皮膚および皮下組織を通して前進させ、最終的に皮膚表面から数ミリメートルから数センチメートル下に位置する中心静脈に到達させる。「中心静脈」は、内頸静脈、鎖骨下静脈、および大腿静脈である。中心静脈に入ると、ワイヤが手動で中空穴の針を通して静脈に配置される。その後、針が取り除かれ、多くの場合、プラスチック製の同軸組織拡張器がワイヤ上を静脈に通され、ワイヤ上からも取り除かれる。これにより、ワイヤの周囲の組織が伸張し、CVCがスムーズに通過できるようになり、次にワイヤの上に配置されて静脈に挿入される。CVCが配置されると、ワイヤが取り除かれ、CVCを静脈に残すことができる。
【0005】
セルディンガー法が最初に説明されて以来、導入針を皮膚を通してどこに配置するかの標準ガイドは、患者の表面解剖学であった。静脈は通常、皮膚の下数ミリメートルから数センチメートルのところにあり、骨や筋肉などの特定の表面ランドマークと特定の関係にある。しかし、CVC留置の失敗率と、表面解剖学を使用した動脈穿刺、裂傷、気胸または「肺虚脱」などの深刻な合併症の発生率は、尊敬されている研究でそれぞれ35%および21%と報告されている。これらの失敗率は、表面解剖学がすべての患者の深部中心静脈の位置を確実に予測できないという事実に起因している。1986年、超音波検査(ultrasonography:US)を使用して皮膚表面下の静脈を視覚化し、そのような画像を使用してCVCの手動配置をより正確にガイドした。この技術の使用により、CVC留置の失敗率と合併症率が5~10%に低下した。ただし、超音波ガイド下CVC留置技術を確実に実行するには、十分な訓練と経験が必要である。そのため、一般外科医および心臓血管外科医、麻酔科医、救命救急専門医、インターベンション放射線科医は、通常、これらのカテーテルを配置する必要がある。残念ながら、これらの専門家は、頻繁に必要とされる緊急または緊急の時間枠でCVCの配置に対応できないことがよくある。
【0006】
よく訓練された経験豊富なプロバイダでさえ、現在の挿入技術の状態を考えると、説明できない、または制御できない要因により、CVCの配置に同じ割合で失敗する可能性がある。主要な2つの要因は、組織の変形と静脈壁の変形である。導入針が皮膚や皮下組織に押し込まれると、力によって中心静脈の標的が元の位置から移動し、いわゆる「針通過ミス」が発生する可能性がある。針が静脈壁に到達すると、「ローリング」と呼ばれる別の位置に静脈を押し込み、再び針の通過ミスを引き起こす可能性がある。針の通過ミスは、動脈、肺、または神経などの中心静脈付近の重要な構造に針が当たる可能性があり、深刻な合併症を引き起こす可能性がある。静脈壁も針の力で圧迫され、静脈がつぶれ、血管内腔に入ることがほぼ不可能になり、そして通常、針が血管の後壁を通過するのを促進する。これは「静脈ブロー」と呼ばれる現象である。静脈ブローは通常、静脈周囲組織への出血を引き起こす。出血はそれ自体の顕著な合併症であるだけでなく、局所解剖学的構造を混乱させ、通常はその後のCVC留置の成功を妨げる。
【0007】
したがって、臨床医または医療関係者が操作できる自動システムを含む、CVC配置のさまざまな代替システムに関心が寄せられている。このようなシステムにより、合併症の可能性を減らしながら、より広く利用可能で信頼性が高く、迅速なCVCの留置が可能になる可能性がある。ただし、この時点まで、ほとんどの調査は、組織と血管の変形の基本的な課題を解決するために操縦可能な針に焦点を当ててきた。しかし、開発された満足のいく自動CVC留置システムはなかった。
【発明の概要】
【0008】
自動挿入装置、システム、および方法が開示されており、標的配置のための作動位置ガイダンスと、針などの貫通部材の振動とを組み合わせて、皮膚、皮下組織、および静脈壁を貫通し、針の挿入を悩ませる組織および血管壁の変形の問題を緩和する。装置およびシステムは、針配置の位置決めおよび経路を計算および指示するプロセッサに従って、貫通部材または針の経路を指示する一連の機械的アクチュエータを含む。さまざまなアクチュエータは、プロセッサの指示に従って動作するように自動化することができる。針などの貫通部材の自動挿入に使用されると説明されているが、同じ装置およびシステムを使用して、ガイドワイヤおよびカテーテルを含む追加の医療装置を任意の体腔、血管、またはコンパートメント内に挿入することができる。
【0009】
挿入装置は、特定の振動貫通部材の使用を採用している。以前の研究では、挿入中に針を振動させると、穿刺力と摩擦力の両方が減少することが実証されている。この現象は、蚊が吻を振動させて宿主の皮膚に侵入する際に自然界で利用されている。振動による針の速度の増加により、組織の変形、エネルギー吸収、貫通力、および組織の損傷が減少する。これらの効果の一部は、生体組織の粘弾性特性によるものであり、軟部組織の力変形応答を捉える修正された非線形ケルビンモデルを通じて理解することができる。粘弾性体の内部組織の変形は速度に依存するため、針の挿入速度を上げると組織の変形が少なくなる。亀裂が広がる前に組織の変形が減少すると、亀裂からエネルギーが放出される速度が増加し、最終的に破裂の力が減少する。針挿入速度の増加による力と組織の変形の減少は、軟部組織などの水分含有量の高い組織で特に顕著である。組織への切断に伴う力を減らすことに加えて、研究では、挿入中の針の振動が針と周囲の組織との間の摩擦力を減らすことも示している。
【0010】
したがって、本明細書では振動および/または往復運動とも呼ばれる振動運動を挿入中に針に加えると、静的針の使用と比較して、針先を所望の位置に前進させる際の3つの課題を克服することができる。第1に、振動によって皮膚と標的静脈の間の組織の変形が最小限に抑えられる。この組織の変形と、針の先端が異なる組織層を横切るときに発生する「ポップスルー」により、標的が針の計画された経路に対して移動する可能性がある。第2に、振動針は、標的静脈のローリングを軽減する。第3に、振動する針は超音波画像に追加のコントラストを提供し、ユーザが前進する針と最終的な配置位置を観察できるようにする。カラードップラーオーバーレイを備えた超音波など、速度の変化に特に敏感な撮像モードは、振動した針の検出に特に敏感である。
【0011】
このシステムは、貫通部材を展開する前に目標点を変更する方法も提供する。目標点が変更されると、プロセッサは、貫通部材の位置情報を再計算して更新し、様々なアクチュエータが実行する更新された調整データを提供して、貫通部材を新しい目標点に位置合わせする。皮下領域の画像を視覚化してユーザが見ることができるように、挿入装置とともに撮像を使用することができる。目標点は、インタラクティブな制御のために、ユーザがディスプレイ上で選択および更新することができる。
【0012】
挿入装置はまた、開業医またはユーザによる使用を容易にするために手持ち式であってもよい。
特定の実施形態では、自動挿入装置は、互いにおよび/または制御部もしくはプロセッサと電気通信する振動アセンブリおよび伸張アセンブリを含む。振動アセンブリは、作動時に軸方向の振動を発生させ、これらの振動を接続された貫通部材に与えるかまたは伝達する振動アクチュエータを含む。伸張アセンブリは、貫通部材に直接的または間接的に接続された伸張アクチュエータを含み、貫通部材を挿入軸に沿って移動させて、貫通部材を標的組織内の所望の予め選択された標的に挿入することができる。挿入距離は、皮下標的部位を検出し、標的部位の視覚化または三次元座標を提供するように配置された超音波プローブなどの検出器からの画像データに基づいて、制御部またはプロセッサによって計算または決定され得る。貫通部材の挿入角度は、目標情報および/または目標情報が導き出される画像データに基づいて調整することもできる。
【0013】
作動中、振動アクチュエータは、アクチュエータの動作パラメータに従って貫通部材を軸方向に振動させる。振動が発生している間、伸張アクチュエータは、貫通部材を挿入軸に沿って決定された距離だけ前進させ、標的部位に到達する。振動アクチュエータと伸張アクチュエータは、デフォルトではそれぞれの初期モードで動作する。挿入中、振動アクチュエータと伸張アクチュエータの負荷は、数ミリ秒ごとなどの間隔で監視される。振動アクチュエータまたは伸張アクチュエータの負荷および/または電力消費が所定の値だけ変化すると、制御信号を他のアクチュエータに送信して、その動作パラメータを変更して補償することができる。例えば、伸張アクチュエータは、振動アクチュエータの負荷に応じて、挿入速度が速くなったり遅くなったりする別の動作モードを採用する場合がある。同様に、制御信号を振動アクチュエータに送信して、振動の電力、振幅、および/または周波数などの振動パラメータを変更し、伸張アクチュエータの負荷に応じて、より高いまたはより低い電力、振幅、または周波数の異なる振動モードを採用することができる。振動アクチュエータおよび/または伸張アクチュエータの負荷および/または電力消費の所定の値からのさらなる偏差が発生した場合、挿入速度および/または振動をさらに調整するために、伸張アクチュエータおよび/または振動アクチュエータに追加の信号が送信されてもよい。これは、一方のモータまたはアクチュエータの増加または減少であり、他方のモータまたはアクチュエータの減少または増加をそれぞれ補償する。振動アクチュエータまたは伸張アクチュエータの負荷および/または電力消費の偏差が、それぞれの所定の値を超えたかどうかの各決定は、最近検出された負荷および/または電力消費レベル、または各アクチュエータの初期始動負荷および/または電力消費レベルに基づくか、それらと比較することができる。
【0014】
したがって、多数の挿入速度と操作モードが存在する可能性があり、これらは、振動および/または伸張アクチュエータの負荷および/または電力消費に応じて、挿入プロセス全体で自動的に調整される。振動および伸張アクチュエータは、皮下標的への貫通部材の最も効果的かつ効率的な挿入を達成するために、他のアクチュエータが経験していることに応答して、挿入中にそれらの動作パラメータを調整するために、集合的に、応答的に、かつ自動的に動作する。これにより、以前は開業医を悩ませていた組織の変形の問題が回避される。
【0015】
このように、挿入速度と振動率は、挿入プロセス全体で一定ではない。むしろ、他のモータからの入力に基づいて速度を上げたり下げたりすることができる。1つのモータが「動かなくなった」場合(例えば、組織貫通中の過剰な抵抗の結果として、事前規定された量を超えて増加した電力を消費している場合)、他のモータが調整して補償する。例えば、振動アクチュエータが減少した振幅で振動している場合、伸張アクチュエータの挿入速度を低下させることができる。逆に、貫通部材が問題なく振動している場合、伸張アクチュエータは最大挿入速度で動作する可能性がある。振動は、伸張アクチュエータの動作に基づいて調整することもできる。伸張アクチュエータが過剰な電力を消費し始めると、組織貫通中に過剰な抵抗に遭遇していることを示し、この入力は振動アクチュエータに伝達され、より積極的な振動モードへの変更をトリガして、より高密度の組織の貫通を支援する。伸張アクチュエータと振動アクチュエータ間のこの通信は、プロセッサを介して直接または間接的に発生するかどうかにかかわらず、双方向である。
【0016】
挿入装置および方法は、それらの特定の特徴および利点とともに、以下の詳細な説明および添付の図面を参照することにより、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の挿入装置の一実施形態の斜視図である。
図2図1の挿入装置の側面図および使用のための配置の概略図である。
図3】貫通部材を挿入するためのシステムの概略図である。
図4A】ハンドルの調節を示す、図2の挿入装置の側面図である。
図4B】位置決めのためのサイドアームの調節を示す、図2の挿入装置の平面図である。
図5A】プロセッサによる計算に使用される寸法を示す挿入装置の概略図である。
図5B】プロセッサによる計算に使用される標的領域を示す概略図である。
図5C】挿入装置を視覚的に調整する際に使用される例示的な超音波ディスプレイである。
図6図1の挿入装置の側面図であり、自動挿入のためにプロセッサによって指示される様々な調整の概略図を示している。
図7】様々なアクチュエータを示すために部分的に切り取られた図6の挿入装置の斜視図である。
図8A】垂直アクチュエータによる垂直方向の調整を示す側面図である。
図8B】垂直アクチュエータによる垂直方向の調整を示す側面図である。
図9】垂直調整のための垂直アクチュエータの一実施形態を示す部分破断図である。
図10】角度アクチュエータによる角度調整を示す側面図である。
図11】角度調整用の角度アクチュエータの一実施形態を示す部分破断図である。
図12A】角度アクチュエータを有する挿入装置の部分の分解図であり、反対方向からの角度アクチュエータのキー関係を示している。
図12B】角度アクチュエータを有する挿入装置の部分の分解図であり、反対方向からの角度アクチュエータのキー関係を示している。
図13】直線伸張による調整を示す側面図である。
図14】伸張のための伸張アクチュエータの一実施形態を示す部分破断図である。
図15A】引き込み位置にある伸張アクチュエータおよび接続された伸張シャフトを示す部分断面の上面図である。
図15B】伸張位置にある図15Aの伸張アクチュエータおよび接続された伸張シャフトを示す部分断面の上面図である。
図16A】振動運動のための振動アクチュエータの一実施形態を示す部分破断図である。
図16B】振動運動のための振動アクチュエータの一実施形態の断面図である。
図17】挿入用のガイドワイヤを含む挿入装置の別の実施形態の斜視図である。
図18A】ガイドワイヤ配置のためのガイドワイヤアクチュエータを示す、図17の実施形態の部分破断斜視図である。
図18B図17の実施形態の一部を切り取った斜視図であり、挿入装置を通るガイドワイヤの位置決めを示している。
図19A】取り付けられたガイドワイヤハウジングを示す、図17の実施形態の一実施形態の斜視図である。
図19B】取り外されたガイドワイヤハウジングを示す、図19Aの実施形態の分解図である。
図20A】往復運動および振動アクチュエータが貫通部材と一列に並んでいる、挿入装置の別の実施形態の斜視図である。
図20B】振動アクチュエータを通過するガイドワイヤを示す、図20Aの実施形態の部分断面図である。
図20C図20Bの断面のクローズアップを示す図である。
図21A】サイドポートを有するインラインハウジングの一実施形態の斜視図を示す。
図21B図21Aの実施形態の断面図である。
図22】複数のサイドポートを有するネックの別の実施形態を示す図である。
図23】本発明の自動挿入装置の別の実施形態の斜視図であり、後退位置で示されている。
図24図23の挿入装置の斜視図であり、伸展位置で示されている。
図25図23の挿入装置の斜視図であり、装置の近位端を示している。
図26】伸張アセンブリと振動アセンブリとの相互接続動作を示す自動挿入装置の一実施形態の概略図である。
図27】装置の動作の一実施形態を示す電気フロー図である。
図28】自動挿入装置を操作する方法のステップの概略図である。
【0018】
図面のいくつかの図を通して、同様の参照番号は同様の部分を指す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付の図面に示すように、本発明は、針を挿入し、ガイドワイヤ、拡張器、CVCなどのカテーテルなどを潜在的に配置するために、血管などの体腔への皮下アクセスを可能にする挿入装置、システム、および方法に関する。装置およびシステムは、位置を調整し、患者の皮膚などの対象の組織内に貫通部材を展開するために自動化され得る複数のアクチュエータを含む。目標点が事前に選択され、貫通部材の位置と調整を計算するために使用され、一連のアクチュエータが調整されて装置のさまざまな構成要素を制御し、展開時に事前に選択された目標位置に到達するように適切な位置合わせを生成する。アクチュエータは、プロセッサによって行われた計算に基づいて自動的に調整される場合があり、目標点の位置が変更されるとさらに調整される場合がある。少なくとも1つの実施形態では、画像ベースのモダリティを使用して、標的とする組織または空洞に関するデータを取得する。使いやすいように、装置全体が手持ち式であることが望ましい。
【0020】
図1および図2の実施形態に示されるような挿入装置100は、皮下領域の組織に関するデータおよび情報を取得するための検出器20と、このデータを使用して、計算されたパラメータに基づいて、組織内の所望の事前選択された目標点29に挿入するための、導入針であってもよい針などの貫通部材10用の様々な位置決めおよび調整パラメータを計算するためのプロセッサ22とを含む。目標点29は、血管など、患者の体内の皮下に位置する任意の点であってもよい。標的の血管を特定することは、医療業界で訓練を受けた多くの医療専門家の典型的な技量である。しかし、組織の変形や静脈の転がりによる合併症や患者へのリスクを考えると、その標的に針をガイドすることは困難である。
【0021】
少なくとも1つの実施形態では、挿入装置100により、ユーザは、超音波などの撮像モダリティを通じて組織内の標的血管に関する情報を取得し、血管の対応する画像を示すディスプレイ24上で目標点29を選択することができる。目標点29は、タッチスクリーン上など、ユーザによってディスプレイ24上で調整することができ、プロセッサ22は、貫通部材の先端が患者の体内の標的位置に到達するためにその現在の位置から移動する必要がある結果の高さ、軌道、角度、および距離を自動的に計算する。これらの計算を使用して、プロセッサ22は、位置決め装置120の様々なアクチュエータ32、42、52に動作データまたは命令を提供して、貫通部材10の先端を自動化された方法で様々な方向に動かし、展開の準備が整った所望の位置に到達する。各アクチュエータ32、42、52は、調整計算を行う際に使用される位置情報をプロセッサ20に送信するセンサを含み得る。所望の位置が達成されると、装置100を作動させて貫通部材10を展開させ、計算された距離だけ前進させることができる。プロセッサ22はまた、貫通部材10が予め選択された目標点29に到達すると自動的に停止するように貫通部材10に命令して、貫通部材10が目標点29を通過しないようにすることもできる。プロセッサはまた、振動アクチュエータ62に指示を与えて、針挿入で典型的に遭遇する組織の変形および静脈ローリング合併症を克服するために、展開中に往復運動などの振動運動を貫通部材10に開始およびガイドすることができる。
【0022】
図3に見られるように、挿入装置100はまた、血管などの空洞を含む表面下の組織を表す情報またはデータが検出器20によって得られるシステム200を含む。いくつかの実施形態では、これらのデータは、画像検出器であり得る検出器20によって得られた画像である。表面下の組織のデータは、プロセッサ22に送信され、プロセッサ22は、組織または体腔内の予め選択された目標点29と組織表面との間の距離を計算する。プロセッサ22の計算ソフトウェア、論理回路などは、この計算された距離を使用して、垂直アクチュエータ32、角度アクチュエータ42、および伸張アクチュエータ52の調整データを計算し、このデータを、貫通部材10の移動のために対応するアクチュエータに送信する。プロセッサ22はまた、振動アクチュエータ62の動作パラメータに基づいて振動アクチュエータ62の振動データを決定し、このデータを振動アクチュエータ62に送信して作動させ、貫通部材10に振動または往復運動を誘発させて展開させる。さまざまなアクチュエータ32、42、52、62へのデータの送信およびそれらの作動は、プロセッサ22によって示されるように、任意の順序で、または所定の順序または規定された順序で発生することができる。貫通部材10は、伸張アクチュエータ52に送信された伸張調整データに基づいて自動的に展開され得る。いくつかの実施形態では、ユーザは、目標点29と交差するように投影された経路と位置合わせするために貫通部材10の適切な位置決めにいつ到達したかを決定し、彼/彼女は、プロセッサ22に送信され、得られた画像からの情報に基づいて皮膚の下の目標点29まで事前に計算された距離だけ貫通部材10を伸張する伸張アクチュエータ52に中継される展開コマンドを起動することができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、検出器20は、超音波プローブまたは他の送受信機などの画像検出器である。検出器20によって得られたデータは、ユーザによって視認され得るディスプレイ24上に提示することができる。予め選択された目標点29’の表現は、ディスプレイ24上に提示された画像上に重ねられ、ユーザによって動かされ得る。少なくとも1つの実施形態では、ユーザは、インタラクティブなタッチスクリーンまたはジョイスティックなどを介して、ディスプレイ24上の画像または表現と対話して、代表的な目標点29’をディスプレイ24上で動かすことができる。代表的な目標点29’がディスプレイ24上で移動すると、プロセッサ22は、新しい代表的な目標点29’に基づいて、垂直アクチュエータ32、角度アクチュエータ42、および伸張アクチュエータ52の更新された調整データを計算する。これは、最終目標点がユーザによって決定される前に、何回でも実行することができ、その時点で、ユーザは、挿入のために貫通部材10を展開することを決定することができ、対応する命令が伸張アクチュエータ52に送られる。
【0024】
使用中、挿入装置100は、静脈などの標的血管の位置を特定するために、患者の皮膚などの組織に沿って、またはそれに隣接して配置される。少なくとも1つの実施形態では、図1および図2のように、装置100は手持ち式であり、臨床医または医療関係者などのユーザが握ることができるハンドル21を含む。ハンドル21は、特に必要に応じて長時間保持する際の効率と快適さを向上させるために、人間工学に基づいた形状にすることができる。ハンドル21は、利き手を標的位置の選択および装置100の展開に利用できるようにするために、右利きの人の左手など、ユーザの利き手でない手で握ることが好ましい。したがって、装置100は、右利きおよび左利きの個人によって同等に使用することができ、握る方向に特有のものではない。実際、いくつかの実施形態では、ハンドル21は、図4Aに示すように、軸を中心に回転可能であり、異なるグリップの向きまたは位置に対応するか、または撮像時に異なる画像図を取得することができる。
【0025】
少なくとも1つの実施形態では、挿入装置100は、ユーザの肘、肩、腕、または胸に配置することができる支持体27も含む。支持体27は、装置100を位置決めして使用するときに、ユーザに追加の安定性を提供する。図4Bに示されるように、支持体27は、ユーザの腕に対応するサイドアーム26などによってハンドル21から離間されてもよく、ユーザの手が届くように長さを調節可能であってもよい。サイドアーム26は、サイドアームの角度を調整し、患者の隣に位置するユーザが挿入装置100を快適に使用できるようにするために、図4Bの方向矢印によって示されるように、血管を標的にするために必要に応じて適切に位置合わせしながら、弓形経路内で移動可能であり得る。サイドアーム26の可動範囲は最大360°であり、したがって、任意の所望のアプローチ角度を許容することができる。例えば、ユーザは、患者に隣接して所望の標的血管に垂直に座るか立つことができるが、それでも挿入装置100を使用して、貫通部材10を標的血管と整列させて位置決めすることができる。サイドアーム26の全可動域により、右利き用から左利き用への切り替えも可能になり得る。
【0026】
挿入装置100は、図2に示されるように、撮像される患者の領域の近く、隣接、または接触さえする検出器20を含む。少なくとも1つの実施形態では、検出器20は、ハンドル21を患者の上で動かすことによって、検出器20が患者の皮膚または他の組織5に沿って配置され得るように、ハンドル21の末端に配置される。検出器20は、皮下領域などの周囲領域に関する情報またはデータを取得し、組織5、空洞7、およびその中の他の構造の位置情報を含むことができる。少なくとも1つの実施形態では、検出器20は、特定の血管または体腔7を標的とするために、図5Bに示されるように標的領域28とも呼ばれる、患者の皮下または経皮領域を視覚化する撮像モダリティのものである。撮像された標的領域28は、特定の撮像モダリティが生成できるように、任意の形状、容積、または深さDであってよい。撮像モダリティは、超音波、コンピュータ断層撮影、および磁気共鳴撮像などであるがこれらに限定されない、患者の皮下領域を撮像する任意の適切な形態であってもよい。好ましい実施形態では、図5Cに示されるように、超音波は、皮膚の表面の下の血管の内部など、組織5と体腔7とを明確に区別する画像を提供する能力のために有用である。本明細書で使用される場合、「組織」は、体の任意の組織または器官を指す場合があり、具体的には質量を有する実質的な物質を指す。例えば、組織は、皮膚、筋肉、腱、脂肪、骨、および器官壁を等しく指す場合がある。対照的に、本明細書で使用される「体腔」は、血管、静脈、動脈などの組織または器官内の空洞、開いた内部、管腔、または空間の容積を指す場合がある。
【0027】
したがって、少なくとも1つの実施形態では、検出器20は、視覚化のために患者の皮膚および組織を通して超音波を放射および受信する超音波変換器である。典型的なBモード超音波撮像を検出器20で使用することができるが、異なる方向の血流を区別するためにドップラー超音波を使用することもできる。いくつかの実施形態ではセクタフェーズドアレイを使用することができるが、線形または曲線の超音波変換器が好ましい。超音波検出器20は、3~15MHzの周波数範囲で動作することができるが、浸透の深さは周波数に反比例するため、より好ましくは6~10MHzの範囲で動作して、超音波の分解能と浸透深度との間に良好なコントラストを提供する。貫通部材10を正確に配置するためには、ピクセルサイズが組織内の音の距離または位相速度に関連するため、ピクセルサイズの非常に正確な測定が重要である。超音波検出器20は、血管が縦方向に見られる長軸画像平面図、または血管が断面図で見られ、図5Cに示すように結果として得られる画像において円形構造として現れる短軸図で操作され得る。少なくとも1つの実施形態では、白色で示される組織5に対して黒色の空間として現れる体腔7をより良好に視覚化するために、短軸図での撮像が好ましい。短軸図により、静脈または血管を吹き飛ばさないように目標点29の最適な配置を決定するために、血管の深さを見ることができる。いずれの図式においても、検出器20によって生成される画像平面は、超音波画像と貫通部材10の空間座標との適切な位置決め精度および位置合わせのために、後述する様々なアクチュエータに対して既知の角度にある。
【0028】
挿入装置100は、検出器20と電子通信するプロセッサ22をさらに含み、組織5およびその中の空洞7の位置に関して検出器20によって得られたデータを受け取る。いくつかの実施形態では、これらのデータは、検出器20によって得られた皮下領域の画像として配置され、プロセッサ22およびディスプレイ24(図1および図2に示すように、ユーザによる視覚化のために画像を提示する画面など)に送信される。図5Cは、ディスプレイ24上に提示された、検出器20によって取得された超音波画像の一例を示す。ディスプレイ24はまた、検出器20からの画像と関連して、十字線、標的標識、または他の記号などを用いて、目標点29’の絵画的表現を示す。ディスプレイ24上の代表的な目標点29’の画像は、ユーザによって、ディスプレイ24上で上下に動かされてもよい。代表的な目標点29’が移動するにつれて、貫通部材10の位置決めが、以下に説明するように調整され、これは、自動的かつリアルタイムで行われ得る。ディスプレイ24は、検出器20のパラメータ(使用される周波数など)、スクリーン解像度、倍率、位置決め装置120の様々な構成要素からの測定値または位置情報(以下でより詳細に論じる)、および挿入装置100の様々な構成要素を作動させるためのボタンまたは領域、を含むがこれに限定されない追加情報を表示することができる。
【0029】
ディスプレイ24は、パッシブスクリーンまたはインタラクティブスクリーンであってもよい。少なくとも1つの実施形態では、ディスプレイ24は、抵抗メカニズム、容量メカニズム、または他の触覚フィードバックメカニズムを通じて動作することができるタッチスクリーンである。例えば、ディスプレイ24上の代表的な目標点29’は、連続経路でディスプレイ24に沿って指、親指、または選択装置をスライドさせることなどによって、または代表的な目標点29’の新しい位置を選択するべくディスプレイ24画面の離散的な位置に触れることによって、タッチスクリーン上でタッチすることによって移動可能であり得る。いくつかの実施形態では、ディスプレイ24およびプロセッサ22は、Bluetooth(登録商標)などの無線プロトコルを介してまたは有線のマルチピンコネクタを介して挿入装置100に取り外し可能に接続され得る、スマートフォン、携帯情報端末(PDA)、またはタブレットコンピュータなどの単一の装置に含まれ得る。他の実施形態では、ディスプレイ24およびプロセッサ22は、挿入装置100の残りの部分と統合され得る単一の装置に含まれる。さらなる実施形態では、プロセッサ22は、挿入装置100の統合構成要素であり、図1のようにハウジング23内に配置されてもよく、ディスプレイ24は、挿入装置100の残りの部分から別個に取り外し可能であってもよい。
【0030】
他の実施形態では、ディスプレイ24は、モニタなどのパッシブスクリーンであり、装置100は、ユーザが撮像アセンブリ110をガイドして静脈を標的とすることを可能にするジョイスティックまたは方向ボタン(複数可)(図示せず)を含み得る。ジョイスティックまたは方向ボタンは、ジョイスティックレバーの向きおよび傾き、または押されたまたは選択された特定の方向ボタンに基づいて、プロセッサ22に方向信号を出力することができる。ジョイスティックまたは方向ボタンからの出力信号は、目標点29の画像が標的位置に重なるように、ディスプレイ24上に示される十字線などの代表的な目標点29’の位置を制御する。いくつかの実施形態では、ジョイスティックまたは方向ボタンは、モニタのフレームの縁に沿ってなど、ディスプレイ24またはその近くに配置することができる。他の実施形態では、ジョイスティックまたは方向ボタンをハンドル21に配置して、撮像のための装置100の片手操作を可能にすることができる。
【0031】
プロセッサ22は、タッチスクリーンインタラクションなどによる、ディスプレイ24上の代表的な目標点29’とのインタラクションからユーザによって示されるように、所望の目標点29の位置および位置の変化に関するディスプレイ24と電気的に通信し、ディスプレイ24から情報を受け取る。プロセッサ22は、貫通部材10をその既存の位置から、ディスプレイ24インタラクションから提供されるユーザ指示情報によって示される目標点29に到達させる位置に調整する方法を計算するプログラム、ソフトウェア、論理回路、または他の計算能力を含む。
【0032】
例えば、図5Aは、プロセッサ22による計算で使用される様々な寸法を示す挿入装置100の概略図を示す。これらの寸法の一部は、装置100の固定寸法である。例えば、Hは検出器20から主アーム25の中心までのハンドル21の高さである。距離Aは、ハンドル21の中心から垂直アクチュエータ32などの位置決め装置120の中心までの主アーム25の長さである。いくつかの実施形態では、Aは、一次アーム25が固定長であるときなど、固定長である。貫通部材10の取り付け部のサイズ、および針などの穿刺先端10の長さ(集合的にGとして参照される)も知られており、固定されている。貫通部材10の取り付け部と角度調節30との間の距離Fも固定のままである。
【0033】
計算の他の次元は異なる。例えば、Dは、組織5または皮膚の表面に位置する検出器20と、皮膚の下の血管の内部などの体腔7内の目標点29との間の距離である。したがって、Dは、どの血管が標的として使用されるか、標的血管と検出器20が配置される皮膚または表面との間に存在する組織の量、さらには標的血管の位置、および血管の充満度または圧迫度によって、患者によって異なる。少なくとも1つの実施形態では、位置決め装置120の高さLは変化し得る。いくつかの実施形態では、図5Aの高さLは、挿入装置100の使用時に固定されるように、使用前に事前設定することができる。この情報を使用して、マイクロプロセッサは、ピタゴラスの定理と三角法を使用して、傾斜角θと、貫通部材10の先端から目標点29までの距離Pを決定することができる。例えば、計算を実行する方法は次のとおりである。
【0034】
【数1】
【0035】
別の方法として、角度θをユーザが事前設定し、高さLと距離Pを同様の数学的関係を使用して計算することもできる。
別の見方をして、やはり図5Aを参照すると、深さDは三角形の一辺を形成し、距離Xは、検出器20の中心から貫通部材10の先端までの距離であり、Dおよび三角形の別の脚と直角を形成する。貫通部材10の挿入距離は、三角形の斜辺であるPであり、次式をPについて解くことにより算出される。
+X=P
したがって、挿入角度θは次のように計算される。
【0036】
【数2】
【0037】
したがって、既知の定数次元と変数に基づいて計算を実行する方法は多数ある。上記はほんの一例である。他の実施形態では、高さLは、浅い角度または鋭角θが必要な場合など、挿入装置100の使用中に調整および自動化することができる。これは、標的血管自体が非常に浅いか部分的につぶれている場合、または皮膚の表面より下にある場合に当てはまる。そのような例示的な実施形態では、適切な角度を達成するために、高さLを増加させて、貫通部材10を目標点29に到達するように配置することができる。高さLの増加量または減少量は、プロセッサ22のプロセッサによってリアルタイムで計算される。角度θも、ユーザによってディスプレイ24で入力された情報に基づいて調整のために計算されるからである。例えば、ユーザがディスプレイ24に沿って指を上に滑らせると、目標点29インジケータも上に移動し、角度θはより浅くなるか、より鋭くなる。逆に、ユーザがディスプレイ24に沿って指を下にスライドさせると、目標点29インジケータも下に移動し、角度θが増加するか、または深くなる。タッチスクリーンディスプレイ24に沿って指をスライドさせることは、単なる1つの実施形態である。他の実施形態では、ノブまたはダイアルを使用して、代表的な目標点29’を画面上で上下に移動させることができ、これは、プロセッサ22によって決定される角度θの調整に対応する。
【0038】
プロセッサ22はまた、主アーム25などによって、挿入装置100の撮像アセンブリ110から離間された位置決め装置120と電気通信する。主アーム25は、貫通部材10が所望の目標点29に接近し到達できるように、検出器20から貫通部材10を離間させるのに十分な任意の適切な長さであり得る。主アーム25は、手動またはアクチュエータなどによる自動で調節可能であるが、少なくとも1つの実施形態では、静止しており、長さが固定されている。
【0039】
図1図2、および図6を参照すると、位置決め装置120は、貫通部材10を垂直方向31に調整する垂直調整30と、角度方向41に沿って貫通部材10の傾斜角度を調整する角度調整40と、挿入および除去のために目標点29に向かって、または目標点29から離れて直線方向51に貫通部材を移動させる伸張調節50と、を含む。貫通部材10に沿って長手方向61に往復運動を提供するバイブレータ60も挿入装置100内に存在するが、位置決め装置120の構成要素である必要はない。図7に見られるように、調整パラメータの各々は、アクチュエータ32、42、52、62によって影響を受け、アクチュエータ32、42、52、62は、移動パラメータに関する命令を提供するプロセッサ22から信号を受信し、それらの命令に従って自動的に移動して、貫通部材10の位置決めを調節することができる。
【0040】
例えば、図7図9を参照すると、垂直調整30は、取り付けられた貫通部材10を上げ下げするためのメカニズムを提供する。具体的には、垂直調整30は、プロセッサ22と電気通信して起動および移動のための垂直調整データを受信する垂直アクチュエータ32を含む。プロセッサ22から信号またはデータを受信すると、垂直アクチュエータ32は、プロセッサ22によって計算された垂直調整データに従って作動し、移動して、挿入のために撮像される皮膚または他の組織の表面に対して垂直方向31に貫通部材10を調整する。垂直アクチュエータ32は、回転する、またはシャフトに作用するモータであってもよい。例えば、少なくとも1つの実施形態では、図9に示すように、垂直アクチュエータ32は、垂直アクチュエータ32から延在するピン35を回転させる回転モータである。ピン35は、ラックアンドピニオンシステムのように、ピン35上の対応する歯または溝とトラック34との間のインターロック様式などで、トラック34と係合する。ピン35が一方向に回転すると、その伸張部がトラック34の伸張部と噛み合い、トラック34を垂直方向31に上下に動かす。垂直アクチュエータ32がピン35を反対方向に回転させると、トラック34は対応して反対の垂直方向に移動する。したがって、垂直アクチュエータ32は、トラック34に対して垂直に配置することができる。トラック34は、垂直ハウジング33内に配置することができる。他の実施形態では、トラック34はスライドバーであってもよく、垂直アクチュエータ32はピン35をスライドバーに沿って異なるロック位置の間で移動させて、スライドバーを垂直方向に移動させてもよい。さらに他の実施形態では、垂直アクチュエータ32は、垂直方向31に沿って配置されたリニアモータであってもよく、作動すると、ピン35または他の細長いシャフトが伸張し、それによってハウジング33が垂直方向31に移動する。上述のように、いくつかの実施形態では、垂直アクチュエータ32は、プロセッサ22によって自動化され、ディスプレイ24で目標点29に対して調整が行われるとリアルタイムで移動することができる。しかし、いくつかの実施形態では、垂直方向31の調整が必要ない場合、または垂直高さ成分を固定することが意図されている場合など、垂直アクチュエータ32を作動させなくてもよい。
【0041】
位置決め装置120はまた、図7および図10図12Bに示されるように、角度調節40を含む。角度調節40は、プロセッサ22と電気通信する角度アクチュエータ42を含む。角度アクチュエータ42は、角度調整データなどの信号をプロセッサ22から受信し、貫通部材10の傾斜角度を変更するための作動に関する命令を提供する。傾斜角は、組織の表面に対して0°から180°の間の任意の角度であり得る。少なくとも1つの実施形態では、傾斜角は0°から90°の間の鋭角である。傾斜角度は、プロセッサ22によって実行される計算に従って、図10に見られるように角度方向41に調整される。したがって、ユーザが決定するように、侵入角度を浅くまたは急にすることができる。撮像の実施形態では、ユーザがディスプレイ24上で代表的な目標点29’を上下に動かすと、対応する信号がプロセッサ22から中継され、プロセッサ22は計算を更新して、代表的な目標点29’の新しい位置に基づいて、更新されたまたは新しい角度調整データを決定する。この更新されたデータは、角度アクチュエータ42に送信され、角度アクチュエータ42は、起動して貫通部材10の角度をそれに応じて調整するが、これはリアルタイムであってもよい。この起動は、プロセッサ22によって自動化される。角度アクチュエータ42は、傾斜角を変更するのに適したモータであってもよい。好ましい実施形態では、角度アクチュエータ42は、作動時に回転する回転モータである。このような実施形態では、シャフト43が、角度アクチュエータ42から受信機45または固定されておらず、角度アクチュエータから独立して移動可能な他の構造内に延在する。シャフト43および対応する受信機45は、角度アクチュエータ42から与えられるシャフト43の回転が対応して嵌合受信機45を回転させるように、ぴったりと嵌合するか、補完的なキー配置であるなど、対応する形状にすることができる。
【0042】
例えば、図11図12A、および図12Bの実施形態では、シャフト43は、それ以外の円筒形状の片側に沿って平坦な表面を有するなど、不規則な形状を有するようにキー付き構成を有する。シャフト43が延在する受信機45も同様にキー止めされており、その周囲の少なくとも一部に沿って平坦な表面を有する。したがって、シャフト43が角度アクチュエータ42によって回転されると、特定の形状が受信機45の対応する形状と係合し、回転運動を受信機45に伝達し、それによって受信機45も回転する。受信機45は、角度アクチュエータ42とは別の位置決め装置120の構成要素と一体であるため、シャフト43との対応する形状の相互作用によって受信機45に伝達される回転運動は、図10に示すように、位置決め装置120の残りの部分も回転させる。角度アクチュエータ42は、図11および図12Aに見られるように、シャフト43が貫通して延在する開口を含み得る角度モータハウジング44によって取り囲まれ得る。
【0043】
位置決め装置120は、図7および図13図15Bに示される伸張器50をさらに含む。伸張器50は、プロセッサ22と電気的に通信する伸張アクチュエータ52を含み、伸張調節データと、作動および移動距離に関する命令とを受信する。データが受信されると、伸張アクチュエータ52が作動して、プロセッサ22によって計算された所定の距離だけ、図13に見られるように、貫通部材10を直線方向51に移動させる。少なくとも1つの実施形態では、図13図15Bに示すように、伸張アクチュエータ52はリニアモータであるが、直線方向51に沿った貫通部材の移動を達成するために他の形態のモータを使用してもよい。
【0044】
伸張器50はまた、伸張アクチュエータ52から、位置決め装置120の別個の構成要素上に配置された反対側に配置された伸張マウント54まで延在する伸張シャフト53を含む。伸張シャフト53は、伸張アクチュエータ52、伸張マウント54、またはその両方に固定するか、これらと一体的に形成することができる。伸張シャフト53は、伸張アクチュエータ52内に後退するか、または内部に収容されてもよく、または共通のハウジングを共有してもよく、伸張アクチュエータによってハウジングから押し出されてもよい。いくつかの実施形態では、図13に示すように、伸張シャフト53は伸縮シャフトであってもよい。他の実施形態では、図15Aおよび図15Bのように、伸張シャフト53は、作動時に伸張アクチュエータ52に出入りする均一なバーまたは細長部材であってもよい。伸張シャフト53が伸張アクチュエータ52から押し出される距離は、ディスプレイ24上でユーザによって入力された目標点29の位置決め情報に基づいて、プロセッサ22のプロセッサによって指示され、計算される。伸張シャフト53は剛性材料で作られ、伸張シャフト53が移動すると、それが終端する伸張マウント54が対応して移動する。このようにして、貫通部材10は、図13に示されるように、伸張アクチュエータ52によって直線方向51に計算された距離だけ移動される。
【0045】
いくつかの実施形態では、伸張アクチュエータ52を使用して、貫通部材10の先端が患者の皮膚または組織5に接触するように貫通部材10を移動させるなどして、貫通部材10を計算された距離だけ移動させて、それを整列させ、または使用のために位置決めする。他の実施形態では、伸張アクチュエータ52は、貫通部材10の先端が準備完了位置から目標点29の位置まで移動するように、貫通部材10を展開するために使用される。少なくとも1つの実施形態では、伸張アクチュエータ53は、目標点29に向かって直線方向に貫通部材10を位置合わせおよび展開するために使用される。貫通部材10の位置合わせと展開の両方を自動化することができる。少なくとも1つの実施形態では、貫通部材10の展開は、ユーザによる検出器20の配置および垂直および角度アクチュエータ32、42の動作によって、他の様々な寸法における貫通部材10の位置合わせおよび位置決めとは別個に作動され得るタッチスクリーン上のソフトボタンもしくは仮想ボタン、またはジョイスティックもしくは他の部品上のボタンなどのボタンまたはディスプレイ24の特定の領域の起動の結果として生じる。
【0046】
挿入装置100はまた、例えば図7図16Aおよび図16Bに示されるように、バイブレータ60を含む。バイブレータ60は、プロセッサ22と電気通信する振動アクチュエータ62を含み、プロセッサ20から、いつ起動するかを指示する振動データと、プロセッサ20によって決定され、さまざまな要因に基づき得る使用される振動アクチュエータ62のタイプ、および貫通される組織5のタイプおよび状態を含むがこれらに限定されない、使用する動作パラメータと、を受信する。作動すると、振動アクチュエータ62は、長手方向61に沿って前後に貫通部材10に反復的な往復運動または振動運動を提供する。長手方向61は、貫通部材10の軸と一致する。本明細書で使用する用語「往復」、「振動(oscillating)」、および「振動(vibrating)」は、交換可能に使用することができ、貫通部材10の長さと一致または平行な長手方向61での前後の動きを指す。
【0047】
プロセッサ22から起動信号を受信すると、振動アクチュエータ62がオンになる。活性化は、自動的に、または貫通部材10が適切に配置および位置合わせされるが、挿入のために展開される前など、挿入プロセスのある時点でのみ発生し得る。したがって、振動アクチュエータ62の作動は、貫通部材10の適切な位置決めがいくつかの実施形態でユーザによって確認された場合にのみ発生するか、または目標点29が整列されると自動的に開始することができる。
【0048】
バイブレータ60は、振動アクチュエータ62から貫通部材10に接続されたカプラまたはハウジングまで延在する駆動シャフト68を含む。駆動シャフト68は、振動アクチュエータ62によって生成された機械的振動運動を貫通部材10に伝達する。バイブレータ60、したがって振動アクチュエータ62は、図16Aおよび図16Bのように、いくつかの実施形態では貫通部材10から軸方向にずれていてもよいし、図20Aおよび図20Bのように、貫通部材10とインラインまたは同軸であってもよい。
【0049】
少なくとも1つの実施形態では、図16Aおよび図16Bに示されるように、振動アクチュエータ62は、貫通部材10から軸方向にずれている。ここで、振動アセンブリ60は、振動アクチュエータ62から駆動カプラ69まで延在する駆動シャフト68を含む。いくつかの実施形態では、駆動シャフト68は、駆動カプラ69内に少なくとも部分的に延在する。駆動カプラ69は、オフセットカプラ70に接続するなどして調整する。例えば、駆動カプラ69の少なくとも一部は、オフセットカプラ70内に延在することができ、逆もまた同様である。オフセットカプラ70は、貫通部材10の近位端がねじ、ねじり、ねじ込み、またはキー接続、または他の適切な接続などによって接続するハブ71を含む。駆動カプラ69およびオフセットカプラ70は、駆動シャフト68および貫通部材10に対して垂直に延在する。したがって、駆動カプラ69およびオフセットカプラ70は、振動アクチュエータ62によって生成され、駆動シャフト68によって伝播された振動運動を、異なる平行軸に沿って貫通部材10に集合的に伝達する。
【0050】
少なくとも1つの他の実施形態では、図20Aおよび20Bのように、挿入装置100’のバイブレータ60’および振動アクチュエータ62’は、貫通部材10と同軸またはインラインである。そのような実施形態では、駆動シャフト68’は、振動アクチュエータ62’からハウジング73の一部まで延在する。ハウジング73は、振動アクチュエータ62’も含むことができ、貫通部材10が接続する遠位端をハブ71に接続する。いくつかの実施形態では、ハウジング73は、追加のスペースが必要な場合などに、ハウジング73とハブ71との間に延在するネック74をさらに含むことができる。
【0051】
バイブレータ60、60’が貫通部材10とオフセットされているか、またはインラインされているかに関わらず、振動アクチュエータ62による貫通部材10の振動は、貫通される組織のタイプに基づいて選択され得る様々な方法で達成され得る。組織の変形を克服するのに役立つ特定の作動メカニズムおよび挿入力は、システムの共振周波数および他の電気機械特性に依存して、貫通部材10の前進する先端が遭遇する組織、血管または他の構造の共振および他の機械特性と有益に相互作用する。
【0052】
例えば、少なくとも1つの実施形態では、振動アクチュエータ62は圧電モータである。作動のために従来の単一のまたは積層された圧電セラミックアセンブリに依存する変換器技術は、圧電材料自体の最大歪み限界によって妨げられる可能性がある。従来の圧電セラミックスの最大ひずみ限界は、セラミックのチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの多結晶圧電材料で約0.1%、単結晶圧電材料で0.5%であるため、数ミリメートルまたは数十ミクロンの変位または作動に近づくには、セルの大規模な積層が必要になる。セルの大規模な積層を使用して構成要素を作動させるには、手持ち式機器の使用可能な生体認証設計を超えて医療ツールのサイズを大きくする必要もある。
【0053】
圧電材料積層の歪み変位の増幅を提供するフレクステンショナル変換器アセンブリ設計が開発された。フレクステンショナル設計は、フレーム、プラテン、エンドキャップ、またはハウジング内に配置された圧電材料変換器駆動セルを備えている。フレーム、プラテン、エンドキャップ、またはハウジングの形状により、ドライバーセルの軸方向または縦方向の動きが増幅され、特定の方向へのフレクステンショナルアセンブリのより大きな変位が得られる。基本的に、フレクステンショナル変換器アセンブリは、一方向の歪みをより効率的に第2方向の動き(または力)に変換する。
【0054】
したがって、図16Bに示すように、振動アクチュエータ62は、隣接する圧電素子63の間に配置された電極65とともに積層された複数の圧電素子63を含むフレクステンショナル変換器である。複数の圧電素子63と電極65とが積層されて圧電積層体64が形成される。絶縁体66は積層体64の端部を覆い、圧電素子63によって生成されるエネルギーから装置の残りの部分を遮蔽する。絶縁体66の反対側に配置された後部質量67は、圧電積層体64に張力を加え、効率を高めるために積層体64を互いに圧縮した状態に保つ。少なくとも圧電積層体64、好ましくは絶縁体66および後部質量67も同様に円筒形であり、中心を貫通する中空のボアが形成されている。駆動シャフト68は、振動アクチュエータ62を通るこの中空ボアを通って延在する。電極65が電気的に刺激されるとき、例えば振動アクチュエータ62がプロセッサ22から信号を受け取って作動するとき、電極65を介して送られる電気エネルギーは、圧電素子63によって機械的振動エネルギーに変換され、次に、駆動シャフト68に伝達されて駆動シャフト68を直線方向61に反復振動運動で動かす。
【0055】
振動アクチュエータ62、62’として使用するために、様々なフレクステンショナル変換器が考えられる。例えば、一実施形態では、フレクステンショナル変換器は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,729,077号(Newnham)に記載されているように、シンバルタイプのものである。別の実施形態では、フレクステンショナル変換器は、これも参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,465,936号(Knowles)に記載されているように、増幅圧電アクチュエータ(「amplified piezoelectric actuator:APA」)タイプのものである。さらに別の実施形態では、変換器は、米国特許出願公開第2007/0063618A1号(Bromfield)に開示されているものと同様であるがこれに限定されない、Langevinまたはボルト止めされたダンベル型変換器であり、これもまた、参照によって本明細書に組み込まれる。図16Bは、振動アクチュエータ62としてランジュバン変換器を実装する特定の一例を示す。
【0056】
一実施形態では、フレクステンショナル変換器アセンブリは、フレクステンショナルシンバル変換器技術を利用することができ、別の例では、増幅圧電アクチュエータ(amplified piezoelectric actuator:APA)変換器技術を利用することができる。フレクステンショナル変換器アセンブリは、従来の手持ち式装置よりも優れた増幅とパフォーマンスの向上を実現する。例えば、増幅は最大約50倍まで改善され得る。さらに、フレクステンショナル変換器アセンブリにより、ハウジング構成をより簡素化された設計と小型化することができる。外部電気信号源によって電気的に活性化されると、振動アクチュエータ62、62’は、電気信号を機械的エネルギーに変換し、貫通部材10の振動運動をもたらす。振動アクチュエータ62、62’によって生成される振動は、短い増分であり(最大1ミリメートルの変位など)、穿刺および組織を介したスライドに必要な力を低減するような周波数(約125~175Hzなど)で、それにより、組織の変形および外傷を少なくして挿入制御を改善し、最終的により高い血管貫通/アクセス成功率を生み出す。
【0057】
振動アクチュエータ62、62’によって生成される振動運動は、様々な実施形態において正弦波、方形波、定在波、のこぎり波、または他のタイプの波であり得る波を生成する。ランジュバンアクチュエータの場合、図16Bに示すように、圧電素子63によって生成される振動運動により、アセンブリ全体に定在波が発生する。特定の周波数では、定在波はゼロ変位(節、またはゼロ節)と最大変位(波腹)の位置で連続的に構成されるため、振動アクチュエータ62に沿った任意の点で生じる変位は、変位が測定される場所に依存する。したがって、ランジュバン変換器のホーンは、典型的には、装置が作動したときに波腹にホーンの遠位端を提供するような長さで設計される。このようにして、ホーンの遠位端は、振動アクチュエータ62の長軸に対して長手方向61に大きな振動変位を受ける。逆に、ゼロ節点は、ポート開口部またはスロットを追加して、外部装置を接続できるようにするのに最適な場所である。
【0058】
他の実施形態では、振動アクチュエータ62、62’は、圧電素子ではなく駆動アクチュエータ用のボイスコイルであってもよい。ボイスコイルアクチュエータ(「ボイスコイルモータ」とも呼ばれる)は、低周波の往復運動を生み出す。ボイスコイルの帯域幅は約10~60Hzで、最大10mmの変位が適用されたAC電圧に依存する。特に、導電コイルに交流電流が印加されると、その結果、導電コイルを流れる電流の方向と磁気部材の磁場ベクトルとの間の外積の関数によって規定される方向のローレンツ力が生じる。この力は、本体によって適所に保持されたコイル支持管に対する磁気部材の往復運動をもたらす。駆動管に固定された磁性部材により、駆動管は、この運動を駆動シャフト68などの伸張部材に伝達し、駆動シャフト68は、貫通部材10に運動を伝達する。第1の取り付け点は、コイル支持管の遠位端を本体に固定する。第2の取り付け点は、コイル支持管の近位端を本体に固定する。磁気部材は、ネオジム-鉄-ホウ素(NdFeB)組成物で作られてもよい。ただし、サマリウムコバルト(SmCo)、アルニコ(AlNiCoCuFe)、ストロンチウムフェライト(SrFeO)、またはバリウムフェライト(BaFeO)などの他の組成物を使用することができるが、これらに限定されない。システムの物理的サイズが比較的小さく、強力な磁石が強力すぎる場合など、いくつかの実施形態では、わずかに弱い磁石がより最適である可能性がある。
【0059】
導電コイルは、単一のワイヤによって形成されたいくつかの層、円形または他の幾何学的形状の異なるワイヤによって形成されたいくつかの層を含むがこれらに限定されない、異なる構成で作られてもよい。導電コイルの第1の実施形態では、導電性ワイヤの第1の層は、各完全な回転により、前の回転の次の回転を形成し、コイル支持管の最初の長手方向に沿って下るワイヤをコイル支持管の周りに半径方向に巻き付けてらせん状に巻き付けることによって形成される。所定の巻き数経過後、ワイヤの第2の層の第1の巻きを第1の層の最後の巻きの上に重ねることによって、ワイヤを第1の層と同じ半径方向に巻き続けながら、少なくとも第1の層と同じ巻き数で配線の第2のスパイラルを形成し、第1の層の上に追加の層が形成され、各巻きは、前の巻きの隣に形成され、第1の層が形成された方向とは反対の縦方向に形成される。追加の層は、ワイヤの各追加層の最初の巻きを前の層の最後の巻きに重ね、前の層と同じ半径方向にワイヤを巻き続けながら、少なくとも前の層と同じ巻き数で配線の追加のスパイラルを形成することによって追加することができ、各巻きは、前の層が形成された方向とは反対の縦方向に、前の巻きの隣に形成される。別のボイスコイルの実施形態では、磁気部材と導電コイルの位置が入れ替わる。換言すれば、導電コイルは駆動管に巻き付けられて取り付けられ、磁気部材はコイル支持管の外径に沿って配置される。電気信号が導電性取り付け部位に印加され、装置の縦軸に沿って導電性コイルと伸張部材を相互に移動させる交互方向にローレンツ力が形成される。この実施形態では、導電コイルは駆動管と物理的に接触している。
【0060】
別の実施形態では、振動アクチュエータ62、62’は、ボイスコイルの磁気部材が第2の導電コイルに置き換えられた二重コイルメカニズムを使用する。換言すれば、第2の導電コイルは、駆動管に巻き付けられて取り付けられ、第1の導電コイルは、以前のようにコイル支持管の外径に沿って配置される。第1のバージョンでは、内側のコイルが直流DCを伝導し、外側のコイルが交流ACを伝導する。第2のバージョンでは、内側のコイルが交流ACを伝導し、外側のコイルが直流DCを伝導する。第3のバージョンでは、内側コイルと外側コイルの両方が交流ACを伝導する。説明したボイスコイルアクチュエータ構成のすべてにおいて、ばねを使用して、貫通部材10の特定の動的側面を制限および制御することができる。
【0061】
さらに別の実施形態では、振動アクチュエータ62、62’はソレノイドアクチュエータである。コイルを使用する他のボイスコイルの実施形態と同様に、ソレノイドアクチュエータによる作動の基本原理は、一組の非常に強力な永久磁石に作用するソレノイドコイル内に生成される時間変化する磁場によって引き起こされる。磁石と貫通部材アセンブリ全体が、ソレノイドコイルを介して前後に振動する。ばねは各サイクルでエネルギーを吸収および放出し、貫通部材10で見られる振動を増幅する。振動アクチュエータ62、62’の共振特性は、磁石の選択、ソレノイドのコイル巻き数、シャフトの質量、およびばねの剛性によって最適化することができる。
【0062】
圧電およびボイスコイルメカニズムが振動アクチュエータ62、62’について論じられてきたが、これらは貫通部材10を作動または振動させるための唯一のアプローチではない。振動アクチュエータ62、62’には、回転モータなどの他のアプローチを使用することができる。一般に、圧電材料に結合された質量、ボイスコイルモータ、ソレノイド、または任意の他の並進運動装置をさらに含む、アクチュエータアセンブリを含む任意のタイプのモータも、本発明の趣旨および範囲内に入る。
【0063】
使用中、貫通部材10の振動先端が所望の目標点29の位置に到達したことを追跡または確認するためのフィードバックは、いくつかの形態で取得することができる。第1に、貫通部材10の振動する先端は、挿入プロセスによる進行中の撮像中に検出器20によってそのエコーが拾われるので、ディスプレイ24上で視覚化され得る。これは、長軸図または短軸図(図5Cのように)で画像を見ながら実行でき、または、ユーザは、必要に応じて長軸図と短軸図とを切り替えて、貫通部材10の先端の進行をたどることができる。第2に、「フラッシュバック」とも呼ばれる貫通部材内の血液などの流体の出現は、視覚的な識別、サブ回路への抵抗の変化、または振動する針の先端の共振周波数または位相の変化などのメカニズムによって検出され得る。貫通部材10の先端が予め選択された目標点29に到達したことを確認する他の方法も使用することができる。
【0064】
貫通部材10の先端が標的血管内に首尾よく挿入され、所望の目標点29に配置された後、セルディンガー法に従って上で議論された首尾よい中心静脈カテーテル法のための手順の残りが達成され得る。例えば、一実施形態では、標的血管への挿入のために、貫通部材10を通してガイドワイヤ83を供給することができる。したがって、貫通部材10は、その中に挿入されるガイドワイヤ83の直径と少なくとも同じ大きさの内径を有するガイドワイヤ83を収容するように寸法決めされてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、貫通部材10は14から18ゲージの間であり、ガイドワイヤ75の外径は0.9~0.6ミリメートル(0.035~0.024インチ)の範囲であり得る。もちろん、他のサイズおよびゲージも本明細書で企図される。ガイドワイヤ83は、貫通部材10の先端を越えて1~3cm延ばすことができるが、ガイドワイヤ挿入のためのより短い距離およびより長い距離も企図される。例えば、ガイドワイヤ83は、図16Bに見られるように、ハブ71、したがって貫通部材10と整列する開口部を有するオフセットカプラ70の内部72容積または空間を通して供給され得る。他の実施形態では、図21A図22のように、ガイドワイヤ83は、ハブ71の前のネック74など、バイブレータ60’のハウジング73のサイドポート75の管腔76を通して供給されてもよい。ハウジング73、ネック74、サイドポート75、およびハブ71は、すべて一緒に一体的に形成されてもよく、またはすべて、ルアー接続または他の適切な選択的に取り外し可能な接続メカニズムまたはそれらの任意の組み合わせなどを使用して、互いに選択的に取り付け可能な別個の構成要素であってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、サイドポート75は、図21Bに示されるように、一端でハウジング73に、反対端でハブ71に取り付け可能なネック74と一体的に形成される。したがって、ネック74およびサイドポート75はY型アダプタであってもよい。他の実施形態では、サイドポート75は、ハウジング73またはネック74から分離されて取り付けられてもよい。さらに他の実施形態では、ネック74、サイドポート75、およびハブ71を一体的に形成し、ハウジング73に接続することができる。
【0065】
ガイドワイヤ83が貫通部材10を通して挿入され、必要に応じて標的血管内に配置されると、次に、直線方向51に沿って逆方向に移動する伸張アクチュエータ52などによって、貫通部材10を血管から後退させ、ガイドワイヤ83を適所に残すことができる。必要に応じて拡張器を挿入したり引き抜いたりして、スペースを伸張することもできる。次いで、カテーテルをガイドワイヤ上に挿入し、ガイドワイヤを血管から引き抜き、カテーテルを所定の位置に残すことができる。
【0066】
垂直アクチュエータ32、角度アクチュエータ42、伸張アクチュエータ52、および振動アクチュエータ62は、挿入装置100に組み込まれている。したがって、少なくとも1つの実施形態では、貫通部材10は、ハブ71での取り付けおよび取り外しなどによって、挿入装置100から選択的に取り外すことができるので、無菌の貫通部材10を新しい患者または使用ごとに使用することができる。したがって、貫通部材10は使い捨てとすることができ、検出器20、プロセッサ22、および様々なアクチュエータ32、42、52、62を含む挿入装置100の残りはすべて無傷のままであり、再利用可能である。
【0067】
少なくとも1つの実施形態では、ハブ71を含めハブ71までの挿入装置100の少なくとも一部、ただし好ましくは全体が再利用可能であり、無菌状態を維持するために無菌バッグに含めることができる。いくつかの実施形態では、再利用可能な挿入装置100に対して毎回の使用の間に完全な無菌対策を講じる必要がないように、無菌バッグは、アルコールまたは漂白剤などを使用して、患者または使用の間に拭き取ることができる。他の実施形態では、ハブ71は、使用または廃棄の間の滅菌のためにオフセットカプラ70またはハウジング73から取り外し可能であり得る。さらに他の実施形態では、オフセットカプラ70またはハウジング70は、使用または廃棄の間の滅菌のために、装置100、100’’の残りの部分から取り外し可能であり得る。様々な実施形態を通して、挿入装置100、100’’の再利用可能な部分は、滅菌バッグまたは同様の構造に入れられて、使用間の滅菌状態を維持することができることが企図される。
【0068】
少なくとも1つの実施形態では、図17図19Bに示されるように、挿入装置100’は、プロセッサ22によって指示されるようにガイドワイヤ83を挿入するためのガイドワイヤ調節80を含み得る。ガイドワイヤアクチュエータ82は、プロセッサ22と電気通信しており、プロセッサ22から動作データを受信し、アクチュエータのタイプ、ガイドワイヤの位置などに基づいて作動および動作パラメータを指示する。例えば、図18Aおよび図18Bに示される少なくとも1つの実施形態では、ガイドワイヤアクチュエータ82は、ガイドワイヤアクチュエータ82から延在する少なくとも1つ、場合によっては2つの細長部材85を有し得る回転モータである。ガイドワイヤアクチュエータ82の歯車84は、細長部材85の少なくとも1つを回転させる。いくつかの実施形態では、1つの細長部材85のみがアクティブであり、回転(turning)または回転(rotating)のためにギア84によって主に係合される。別の細長部材85も存在し、第1の能動細長部材と対になっていてもよいが、ガイドワイヤアクチュエータ82によって回転されないように受動的であってもよい。したがって、受動細長部材85は、対になった能動細長部材85の動きに応じた動作によって、例えば、細長部材85の間の調整ギア84上の歯の相互嵌合によってのみ回転することができる。
【0069】
ガイドワイヤアクチュエータ82の反対側に、細長部材85は摩擦部材86を含む。少なくとも1つの実施形態では、各細長部材85は、細長部材85の末端にあり得る摩擦部材86を含む。他の実施形態では、一次細長部材85のみが摩擦部材86を含むが、好ましくは能動および受動細長部材85の両方がそれぞれの摩擦部材86を含む。複数の能動細長部材85がある実施形態では、それぞれが摩擦部材86を含む。摩擦部材86は、ガイドワイヤ83を把持し、摩擦係合を使用して、ガイドワイヤ83が回転するにつれてガイドワイヤ83を動かす。いくつかの実施形態では、図18Aおよび図18Bに示されるように、ガイドワイヤ83は、ガイドワイヤハウジング89に取り付けられて封入され、使用されていないときにガイドワイヤ83を無菌に保つことができる。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ83は、ハウジング89内にスプール88として保持され、コンパクトに保管し、必要に応じて容易に巻き戻すことができる。他の実施形態では、ガイドワイヤ83は、挿入装置100’から延在することができ、必要に応じて装置100’を通して供給され得る。スプールに巻かれているかどうかに関係なく、ガイドワイヤアクチュエータ82が細長部材85を回転させると、摩擦部材86は、ガイドワイヤ83と係合し、ガイドワイヤ83を移動させるために回転し、回転方向に応じてガイドワイヤを前進または後退させる。
【0070】
ガイドワイヤ83は、ガイドワイヤハウジング89内のガイドワイヤチャネル87を通って移動する。ガイドワイヤチャネル87は、オフセットカプラ70の内部72と位置合わせされて流体連通しており、ガイドワイヤ83がチャネル87を通って、オフセットカプラ70の内部72、ハブ71、および貫通部材10を通って前進するようになっている。ガイドワイヤ83は、前述のように、貫通部材10の先端を越えて前進することができる。ガイドワイヤ83は、挿入装置100’と同じルートおよびメカニズムを介して引き込まれ得るが、細長部材85および摩擦部材86を反対方向に回転させる。
【0071】
ガイドワイヤ83も滅菌して使用する必要がある。したがって、図19Aおよび図19Bに示されるようないくつかの実施形態では、ガイドワイヤ83が接触するものはすべて、1回限りの使用などのために、選択的に取り外し可能および使い捨てとすることができる。例えば、スプール88を含むガイドワイヤハウジング89は、ガイドワイヤチャネル87、オフセットカプラ70、ハブ71、および貫通部材10とともに、検出器20、プロセッサ22、およびアクチュエータ32、42、52、62、および82のすべてが滅菌され、再利用可能に保たれるように、すべて挿入装置100’の残りの部分から分離可能であり得る。これは、振動アクチュエータ62からの貫通部材10のオフセット整列を有することの1つの利点である。他の実施形態では、ガイドワイヤ83と貫通部材10だけを取り外して使い捨てにすることができ、ガイドワイヤチャネル87、オフセットカプラ70、およびハブ71を使用ごとに滅菌することができる。
【0072】
図20Cに示すようなさらに他の実施形態では、ガイドワイヤ83は振動アクチュエータ62を通過する。そのような実施形態では、振動アクチュエータ62および駆動シャフト68は、ガイドワイヤチャネル87として機能する、それらを通って延在する整列した管腔を有し得る。ガイドワイヤ83は、これらの管腔を通って前進および後退することができる。
追加の実施形態
図23図28は、自動挿入装置300およびそれを使用する方法400のさらなる実施形態を示す。これらの実施形態は、針またはカテーテルなどの貫通部材310を血管などの体腔内に自動的に挿入して、血液および流体へのアクセスならびにガイドワイヤ、拡張器、CVCなどのカテーテルなどの配置に使用できる手持ち式の装置である。
【0073】
図23に示すように、挿入装置300は、皮下標的部位を視覚化するための検出器326を含む。前の実施形態と同様に、検出器326は、超音波を使用して標的部位の画像を生成することができる超音波プローブであってもよいが、他のタイプの画像検出器も考えられる。検出器326は、制御部319と電気通信しており、検出器326によって取得された画像データを制御部319に提供する。この撮像データは、医師または装置300のユーザが見るためにディスプレイに中継されてもよい。アーム325は、検出器326を装置300の残りの部分に結合する。使用時に操作者が握ることができるハンドル321をアーム325に接続して、装置300を操作して、適切な標的部位が識別されるまで検出器326を整列させることができる。本明細書で使用される用語「開業医」、「操作者」、「ユーザ」および他の同様の用語は、貫通部材の挿入を制御するために装置を使用する人を指すために交換可能に使用され得る。
【0074】
制御部319は、図26および図27に示されるように、検出器326から撮像データを受信し、自動計算による撮像データ323aを画像データから決定された標的部位の深さ指数を表すXおよびY座標ソリューションなど、3次元空間内の指定された標的部位の座標に対応する目標情報に変換するなどして、撮像データをさらに処理することができるプロセッサ322をさらに含む。プロセッサ322は、マイクロプロセッサであってもよいし、上記のようなものであってもよい。制御部319はまた、図26に示されるメモリ219を含み、検出器326からの撮像データおよび目標情報が保存され得る。プロセッサ322はさらに、深さおよび他の3次元標的情報に基づいて、組織に進入する貫通部材310の挿入角度を計算する機能を含む。いくつかの実施形態では、プロセッサ322は、手動調整323bオプションを含み、ユーザは、位置決め装置320の角度を手動で調整して、貫通部材310の進入角度を最適化することができる。
【0075】
検出器326は、装置300の使用中、皮膚表面に隣接したままである。検出器326によって提供される標的部位の深度テレメトリおよびXおよびY標的座標を含む、対応する撮像データは、下にある組織の変形または動きに基づいて、挿入プロセス中に変化し得る。したがって、撮像データは、少なくとも1つの実施形態では20ミリ秒ごとなど、定期的な間隔で検出器326によって反復的に収集される。各反復画像データはプロセッサ322に提供され、プロセッサ322は自動計算323aを使用して、受信した画像データの反復パケットごとに目標情報を再計算および更新して、貫通部材310が選択および保存された標的に進み、コース上にとどまることを保証する。
【0076】
図24に示されるように、装置300は、制御部319を取り付けることができる位置決め装置320を含むことができる。位置決め装置320はまた、以下でより詳細に議論されるように、振動アセンブリ360および伸張アセンブリ350を担持、収容、および他の方法で含むことができる。貫通部材310は、振動アセンブリ360の遠位端に取り付けられ、伸張アセンブリ350の移動による組織への挿入のために、標的情報によって規定される挿入軸311に沿って移動される。位置決め装置320は、構成要素を囲むプラットフォームまたはハウジングであってもよい。いくつかの実施形態では、プロセッサ322はさらに、振動アセンブリ360および伸張アセンブリ350が配置されている位置決め装置320に命令を提供して、例えば回転によって移動させて、上述の目標情報に従って貫通部材310の角度を調整することができる。
【0077】
位置決め装置320はまた、位置決め装置320と組織表面との接触を検出するために、好ましくは位置決め装置320の外面および/または遠位面に配置された、図27に概略的に示される少なくとも1つの表面近接センサ325を含み得る。そのような検出は、貫通部材310が選択された標的部位に到達するのに十分な長さではなく、別の貫通部材310が必要とされる可能性があること、または位置決め装置320が組織表面に接触するのを避けるため、画像データに基づいて計算された標的情報を更新して挿入角度を変更する必要があることを示し得る。したがって、プロセッサ322は、表面近接センサ325から、位置決め装置320と組織表面との接触が行われたことを示す接触情報を受信することができる。そのような連絡情報が受信された場合、プロセッサ322は、目標情報を再計算して、さらなる連絡を避けることができる。表面近接センサ325からの接触情報がない場合、プロセッサ322は、最初の目標情報であろうと反復撮像データに基づいて更新されたものであろうと、目標情報の適切性を検証することができる。
【0078】
制御部319、具体的にはプロセッサ322は、以下でより詳細に説明する振動アセンブリ360および伸張アセンブリ350と電子的に通信しており、また、目標情報および更新された目標情報に基づく動作命令を振動アセンブリ360および伸張アセンブリ350に送信することなどによって、命令を提供することができる。
【0079】
装置300は、図23および図24に示される振動アセンブリ360を含み、前の実施形態について上述したように、長手方向61に振動を生成するように構成されている。それは、振動アセンブリ360によって生成された振動(vibration)または振動(oscillation)が貫通部材310に伝達されるように、直接または図24のようにハブ371を介して貫通部材310に接続される。振動アセンブリ360は、作動時に振動(vibration)または振動(oscillation)を発生させるモータなどの振動アクチュエータ362を含む。本明細書で使用する「振動(vibration)」および「振動(oscillation)」という用語は、交換可能に使用することができる。振動アクチュエータ362は、ボイスコイルモータ(voice coil motor:VCM)、少なくとも1つのピエゾ素子を有する圧電モータ、およびDCモータなどであるがこれらに限定されない任意の適切なモータであってもよい。振動アクチュエータ362は、振動アクチュエータのタイプ、周波数および/または入力電力に応じて、毎秒50~50,000振動の速度で振動を生成することができる。少なくとも1つの実施形態では、振動速度は、好ましくは、毎秒最大約150回の振動であり得る。生成された振動は、貫通部材310を約5μm~1mm、好ましくは少なくとも1つの実施形態では0.5mmの振幅で振動させることができる。
【0080】
振動アクチュエータ362は、制御部319、具体的にはプロセッサ322と電気通信しており、制御部319から動作命令を受け取る。例えば、装置300は、制御部319と通信するオンオフスイッチであり得る、図25に示される振動パワースイッチ368を含み得る。起動またはスイッチオンされると、制御部319は、振動アクチュエータ362に信号を送信してオンにし、制御部319によって指定された振動を生成し始める。振動電源スイッチ368をオフにすると、振動を停止できる。それはまた、他の実施形態では振動アクチュエータ362と直接電気通信することができ、いくつかの実施形態では、ポテンショメータであるか、そうでなければオンまたはオフではなく連続体に沿って振動アクチュエータ362に供給される電力を調整する能力を有することができる。
【0081】
装置300の電気フロー図を示す図27を参照すると、振動アセンブリ360は、制御部319、プロセッサ322、振動制御モード322c(プロセッサ322のオプションのサブ構成要素)および/または以下で説明する伸張アセンブリ350から受信した信号に応じて、振動アクチュエータ362が動作すべき相対出力レベルを決定する電気モジュールである振動制御372を含む。振動アクチュエータ362の出力レベルは、アクチュエータに印加される電圧および/または駆動信号周波数によって支配される。指示は、制御部319、プロセッサ322または振動制御モード322cから振動制御372に送られ、振動制御372は、動作指示を振動ドライバ367に中継し、振動ドライバ367は、電圧などの信号を振動アクチュエータ367に送信して、振動アクチュエータ367の動作を起動および/または継続する。振動アクチュエータ362は、挿入中に貫通部材310が経験する振幅、電力消費、および負荷を検出するセンサを含むことができる。この情報は、以下でより詳細に説明するように、制御部319またはプロセッサ322を介して直接的または間接的に伸張アセンブリ350に中継される。
【0082】
貫通部材310にかかる負荷を検出し、挿入中に貫通部材310が経験する振動の減衰を検出する振動負荷センサ374を含めることができる。振動アクチュエータ362はある周波数で動作するが、結合された振動貫通部材310が組織と係合すると、この周波数がシフトする。これは、生体組織の追加の弾性が組み合わされたシステム(振動アクチュエータ362と組織)の剛性を増加させるからである。振動貫通部材310が組織に係合すると、組織は振動の振幅および有効性を弱める。振動の振幅と効果の減衰を制限するために、振動アクチュエータ362への駆動信号の周波数/電圧が変化しなければならない。駆動信号の周波数/電圧を変更するには、振動アクチュエータ362に追加の電力を供給して振幅の減衰を制限する必要がある。振動アクチュエータ362に供給される(ワットなどの)電力量は、振動電力消費と呼ばれる。振動電力消費は、次の式に従って、振動アセンブリ360内の電圧感知要素を介して検出することもできる。
Power=Irms*Vrms
ここで、Irmsは電流、Vrmsは電圧である。振動電力消費は、振動アクチュエータ362で測定された電流および電圧から決定することができる。したがって、振動振幅の減衰には、減衰に対抗するための追加の電力消費が必要である。
【0083】
「負荷」は、貫通部材310mニュートン(N)に加えられる軸力であり、力を測定する振動負荷センサ374によって検出することができる。振動負荷センサ374は、回路または他の適切なメカニズムであってもよい。一実施形態では、振動負荷センサ374は、シャント抵抗器および増幅器であってもよい。他の実施形態では、貫通部材310の負荷および減衰は、LVDTセンサを使用して機械的に感知することができる。振動アクチュエータ362自体は、振動アクチュエータ362内のコイルまたは磁石を介して貫通部材310に加えられた力のフィードバックを受け取る振動負荷センサとしても機能し、そのような力も受け取ることができる。さらに、貫通針がより硬い組織に遭遇したときに伸張アクチュエータによって消費される電力は、同様に、ここで規定されている「負荷」に基づいて調整できる。あるいは、振動アクチュエータ362の負荷電流と電圧との間の位相関係を監視することができ、貫通部材310に対する減衰または負荷の影響を、この位相関係の変化から推測することができる。
【0084】
貫通部材310の減衰および振動アクチュエータ362の負荷電流のフィードバックは、振動アクチュエータ362の動作パラメータに関連するので、貫通部材310が経験する負荷および減衰の効果を決定する振動電力および負荷制御376モジュールに送られてもよい。振動負荷制御376は、振動モータ制御372、プロセッサ322および/または振動モード制御322cに信号を送信して、貫通部材310からのフィードバックに基づいて振動速度を調整することができる。また、この情報を伸張アセンブリ350に直接または制御部319および/またはプロセッサ322を介して送信し、振動下で貫通部材310が経験する振動負荷に基づいて挿入速度を調整することもできる。
【0085】
装置300はまた、図を通して示されるように伸張アセンブリ350を含む。上述のように、伸張アセンブリ350は、貫通部材310の挿入および後退のために、貫通部材310を直線方向51に移動させるように構成される。伸張アセンブリ350は伸張アクチュエータ352を含み、伸張アクチュエータ352は、リニアまたは並進モータなどであるがこれらに限定されないモータであり、任意の適切なメカニズムによって動作することができる。伸張シャフト353は、図24に示すように、伸張マウント354などを介してある位置で伸張アクチュエータ352に機械的に結合され、別の間隔をあけた位置で、貫通部材310、ハブ371、振動アクチュエータ362、または貫通部材310とともに移動可能な任意の他の構成要素に機械的に結合される。伸張シャフト353は、剛性であることが好ましく、少なくとも1つの実施形態では伸縮動作によって伸張することができる。伸張アセンブリ350は、制御部319および/またはプロセッサ322と電子通信して、動作命令を提供および受信する。例えば、伸張アセンブリ350は、図25に示すように制御部319、位置決め装置320の外面、またはハンドル321など、装置300の任意の場所に取り付けることができる伸張器電源スイッチ357を含むこともできる。伸張器電源スイッチ357を使用して、伸張アセンブリ350をオンまたはオフにすることができる。少なくとも1つの実施形態では、伸張器電源スイッチ357は回路を閉じて、伸張アクチュエータ352に動作電力を提供し、伸張シャフト353を直線方向351に移動させる。移動の方向は、図25に示す方向スイッチ356によって制御することができ、これも装置300のどこにでも配置することができる。方向スイッチ356は、貫通部材310の挿入のために伸張シャフト353を前進させるための順方向と、伸張シャフト353の後退および貫通部材310の除去のための逆方向との間でトグルできるスイッチであり得る。伸張アセンブリ350の準備完了または後退位置は、伸張シャフト353が完全に後退した状態で図23に示され、挿入または展開位置は、伸張シャフト353が直線方向51に完全に伸張された状態で図24に示される。
【0086】
伸張アクチュエータ352は、挿入中に貫通部材310が経験する振動負荷および/または減衰に応じて、貫通部材310を異なる速度で挿入するために、様々な速度で動作するように構成される。例えば、少なくとも1つの実施形態では、伸張アクチュエータ352は、第1のモードでは第1の動作速度で作動し、第2のモードでは第2の動作速度で作動し、第3のモードでは第3の動作速度で作動する。それぞれ独自の動作速度を持つ任意の数のモードが考えられる。動作速度は、範囲または特定の速度であってもよく、使用される特定の伸張アクチュエータ352の能力に基づいて可能な速度の連続体に沿った任意の速度であってもよい。例えば、少なくとも1つの実施形態では、伸張アクチュエータ352は、第1のモードでは約2.0cm/秒、第2のモードでは約1.0cm/秒、第3のモードでは0.5cm/秒の第1の動作速度で作動するように構成される。したがって、様々なモードを使用して、挿入中に貫通部材310が遭遇するものに応じて挿入速度を調整することができる。例えば、貫通部材310が経験する負荷または振動減衰が増加する場合は、より遅い挿入速度を使用することができ、貫通部材310が経験する負荷または振動減衰が少ない場合は、より速い挿入速度を使用することができる。以下に説明するように、別段の決定がない限り、伸張アクチュエータ352がデフォルトで動作するデフォルトモードとして、動作モードのいずれかを設定することができる。例えば、伸張アクチュエータ352は、少なくとも1つの実施形態において、2.0cm/秒の動作速度で第1のモードを使用することができ、挿入速度を低下させて、挿入中に経験される振動負荷の増加を補償することができる。
【0087】
電力消費はまた、取り付けられた貫通部材310によって異なる組織が貫通されるときに前進を続けるために伸張モータによって必要とされる電力によって規定され得る。この消費電力は、伸張消費電力と呼ばれることがある。伸張アクチュエータ352自体は、より密度の高い組織に遭遇したときに発生する可能性があるなど、挿入中に貫通部材310にどの程度の抵抗がかかるかについてのセンサであってもよく、伸張アクチュエータ352の伸張電力消費を増加させて、特定の挿入速度で動作し続ける。したがって、伸張電力消費および現在の挿入速度のフィードバックは、挿入中に伸張アクチュエータ352が経験する貫通部材310が経験する伸張電力負荷に基づいて振動を調整するため、制御部319および/またはプロセッサ322を介して、直接的または間接的に、振動アセンブリ360に送信され得る。
【0088】
伸張アセンブリ350はまた、制御部319、プロセッサ322、および振動アセンブリ360で信号および情報を送受信するための電気回路を含む。例えば、図27に示すように、伸張アセンブリ350は、伸張器電源スイッチ357が起動されたときに伸張アクチュエータ352を起動するため、またはどの動作モードおよび速度を使用するかを指示するなど、制御部319から動作信号を受信する伸張モータ制御358を含むことができる。各動作モードの規定パラメータおよびそれに対応する速度は、制御部319内のメモリ318に格納するか、伸張モータ制御358または伸張アセンブリ350内のメモリに格納することができる。伸張モータ制御358は動作命令を伸張ドライバ355に送信し、伸張ドライバ355は伸張アクチュエータ352に電圧などの信号を送信して、伸張アクチュエータ352を作動させ、貫通部材310を方向スイッチ356によって示される方向に移動させる。
【0089】
伸張モータ制御358はまた、貫通部材310が経験する負荷および減衰に関して、振動負荷制御376などから、振動アセンブリ360から信号を受け取ることができる。これは、貫通部材310に結合された振動アクチュエータ362が経験する振動振幅および/またはモータ消費電力の変化の形態であってもよい。好ましくは、これらの信号および/または調整は、挿入プロセス全体を通して規則的な間隔で、例えば20ミリ秒ごとに反復的に発生するが、挿入の総時間よりも短い他の時間間隔が企図される。
【0090】
伸張アクチュエータ352の速度は、貫通部材310が異なる組織タイプを通って進行するときの貫通部材310への負荷から生じる振動アクチュエータ362の振動振幅減衰および/または電力消費の変化に応じて増加または減少するべく、伸張モータ制御358によって調整することができる。例えば、貫通部材310が、腱などの、より硬く(stiffer)、より硬く(harder)、または貫通するのがより困難な組織に遭遇すると、貫通部材310に与えられる振動を減衰させ、貫通部材310への負荷を増加させ、振動アクチュエータ362の電力消費が変化し、および/または振動変位を維持するために、より大きな駆動信号(例えば、電圧振幅)が必要とされる。このような増加した負荷の信号が伸張アセンブリ350に送られると、伸張アクチュエータ352は挿入速度を遅くして、増加した負荷に対応する。例えば、伸張アクチュエータ352が現在どのモードで動作しているかに応じて、第1のモードから低速の場合は第2のモードに、またはさらに低速の場合は第2のモードから第3のモードに調整することができる。逆に、軟組織に遭遇していることを示すなど、貫通部材310が経験する負荷が減少した場合、減少した振動負荷の信号が伸張器352に送信され、伸張アクチュエータ352は、より高速な速度のために第3のモードから第2のモードに移動するか、または第2のモードから第1のモードに移動するなど、より高速な動作速度に調整される。所定の閾値に達する変化に達すると、伸張アクチュエータ352の動作モードは、変化が負荷の増加または減少を反映するかどうかに応じて、次に近いモードに変更される。
【0091】
本発明はまた、図28に示される、上述の装置300を使用する方法400を含む。方法400は、最初に、410で、目標角度および軌道を決定するステップを含む。これは、皮膚または組織の他の表面上に検出器326を配置し、プロセッサ322の自動計算323aを使用して、貫通部材310の現在の位置から選択された標的までの適切な挿入角度および距離を決定することによって達成され得る。特定の実施形態では、前述の手動調整323bに基づいて目標角度を決定するステップを含み得る。選択された標的部位、決定または計算された挿入角度および距離は、制御部319のメモリ318に記憶され得る。
【0092】
方法400は、415のように、振動アセンブリ360への振動パラメータの動作命令、および伸張アセンブリ350への挿入速度および距離の動作命令を提供するステップを続ける。振動アセンブリ360の場合、これらは、振幅、電圧、振動の周波数、および上述の他のパラメータを含むことができる。伸張アセンブリ350の場合、挿入速度の動作パラメータは、デフォルトモードに対応する速度である場合がある。距離は、制御部319および/またはプロセッサ322によって決定され得るような、検出器326からの撮像情報に基づいて決定された目標情報および軌道に対応する。動作命令は、装置300がオンになると各アセンブリ350、360に提供されてもよいし、振動アセンブリ360の回路またはメモリまたは制御部319のメモリに格納されてもよい。
【0093】
方法400は、420のように、位置決め装置320を起動することに続く。これには、位置決め装置320、振動アクチュエータ362、および伸張アクチュエータ352の電源をオンにすることが含まれる場合がある。これは、段階的に、一度に1つずつ、または同時に発生する可能性がある。少なくとも1つの実施形態では、振動アクチュエータ362は、伸張アクチュエータ352の前に作動されるので、貫通部材310は、挿入のために前進する前に長手方向に振動する。起動されると、アクチュエータ362、352のそれぞれは、振動制御372および伸張モータ制御358などのそれぞれの回路に格納することができ、装置300の制御部319および/またはプロセッサ322から提供される格納された運用上の指示であり得る初期またはデフォルトの動作パラメータに従って動作する。少なくとも1つの実施形態では、伸張アクチュエータ352は第1のモードで作動し始め、振動アクチュエータ362は第1の振動モードで作動することができる。
【0094】
方法400は、430のように、挿入プロセス全体で継続的または反復的にそれぞれの作業負荷を検出するなど、振動アクチュエータ362によって提供される振動電力消費および/または振動変位、ならびに伸張アクチュエータ352の伸展電力消費および/または負荷を監視するステップを含む。監視の各反復は、システムに所望される感度に応じて、20ミリ秒などの任意の時間間隔で実行できるが、これに限定されない。これは、振動負荷センサ374および伸張アクチュエータ352または上述の他の挿入負荷センサによって達成され得る。次いで、この方法は、440において、検出された振動負荷を所定の振動値と比較し、検出された挿入負荷を所定の伸張値と比較するステップと、振動アクチュエータ362の振動作業負荷からの十分な偏差が検出された場合、およびそのときに、伸張アクチュエータ352の挿入速度を調整するステップと、および/または伸張アクチュエータ350の伸張作業負荷からの十分な逸脱が検出された場合、およびそのときに、振動アクチュエータ362の振動を調整するステップと、を含む。これらの調整は、適切な振動アセンブリ360および/または伸張アセンブリ350に信号を提供して対応する調整を行うことによって行うことができ、これは、検出された作業負荷の変化、およびそれが所定の値を正または負の方向に超えるかどうかに依存し得る。例えば、方法400は、442のように、振動アクチュエータ362の振動負荷が所定の振動閾値だけ増加するとき、挿入速度を下げることを含むことができる。例えば、所定の振動値は、最初の開始値または最新の反復サンプリングからの負荷サンプルと比較して、30%の振幅および/または50%の電力消費の増加であり得る。同様に、方法400は、443のように、伸張アクチュエータ352の挿入負荷が所定の伸張値だけ増加したときに、振動パワー、振幅、または他の動作パラメータを減少させることを含むことができる。いくつかの実施形態では、所定の伸張値は、最初の開始電力または最新の反復サンプリングからの挿入負荷サンプルに対する電力の0.25倍、0.5倍、1.0倍、1.5倍、または2.0倍の増加であり得る。所定の振動値および伸張値は、他の実施形態では異なる可能性があり、初期の開始作業負荷および速度、貫通される組織、使用される振動アクチュエータ362および伸張アクチュエータ352の特性およびタイプ、供給される初期電力の量、およびその他の要因を含むが、これらに限定されない多くの要因に依存し得る。挿入速度のこの低下は、挿入速度を調整するために、例えば、それぞれ挿入速度のレベルが低下する第1のモードから第2のモードへ、または第2のモードから第3のモードへの移行など、伸張アクチュエータ352の操作から、ある動作モードから次に利用可能な動作モードへの移行に対応し得る。それはまた、振動アクチュエータ362をある振動モードから別の振動モードに遷移させることに対応し得る。方法400は、反対側のアクチュエータにかかる負荷に応じて、振動アクチュエータ362および伸張アクチュエータ352の両方、一方のみ、またはいずれも変更しない動作パラメータを変更することを企図する。
【0095】
逆に、方法400は、444のように、振動アクチュエータ362の振動負荷が所定の振動値だけ減少するとき、挿入速度を増加させるステップ、または、445のように、伸張アクチュエータ352への挿入負荷が所定の伸張値だけ減少すると、振動アクチュエータ362の振動を増加させるステップ、を含む。挿入速度または振動を増加させるための所定の振動値または伸張値は、それぞれ、挿入速度または振動を減少させるための値と同じであってもよい。したがって、変化は、振動アクチュエータ362の以前の振動負荷サンプルと比較して、30%の振幅および/または50%の電力消費の偏差、または、伸張アクチュエータ352の以前の挿入負荷と比較して0.5倍の挿入負荷の偏差など、所定の値からの偏差として説明することもできる。ただし、他の実施形態では、挿入速度または振動を増加させるための所定の振動値および伸張値は、挿入速度または振動を減少させるための値とは異なり得る。ここでも、挿入速度または振動の増加は、それぞれ挿入速度が速くなる、伸張アクチュエータ352の第3のモードから第2のモードへ、または第2のモードから第3のモードへの移動など、次に利用可能な動作モードへの移行によって生じ得る。さらに、サンプリングレートまたは間隔は、20ミリ秒ごとなど、以前と同じままである場合もあれば、サンプリングレートが時間の経過とともに変化する場合もある。例えば、サンプリング間隔が短くなり、振動負荷が増加するとフィードバックの頻度が高くなり、その後長くなり、振動負荷が減少するとフィードバックの頻度が低くなる、またはその逆になる場合がある。少なくとも1つの実施形態では、サンプリングレートまたはサンプリング間隔は、挿入プロセス全体を通して一定のままであり得る。
【0096】
430のように振動作業負荷を監視するステップは、挿入プロセス全体を通して継続され、好ましくは、伸張アクチュエータ352と振動アクチュエータ362の動作モードの間で、必要に応じて、他のアクチュエータが経験している負荷に基づいて、挿入プロセス全体を通して段階的に挿入速度または振動を増加または減少させる調整が行われる。
【0097】
方法400は、450のように挿入を停止することによって終了する。これは、例えば、撮像情報に基づいて計算または決定された軌道に従って事前に選択された標的に到達したときに、いくつかの方法で自動的に発生する可能性がある。標的部位への到達は、貫通部材310の遠位先端が血管の内部容積内に位置することを示す、標的から逃げる適切な量の血液または流体の存在によって確認され得る。450のような挿入の停止は、装置300と組織の表面との接触が、上述の表面近接センサ325などによって検出された場合にも起こり得る。この場合、振動アクチュエータ362は同時に振動を停止し、伸張アクチュエータ352は反転して貫通部材310を後退させることができる。位置決め装置320はまた、貫通部材310の長さが意図された標的深さに対して不十分であることを、光、音、または操作者が観察できる他のインジケータなどによって、操作者に知らせることができる。
【0098】
貫通部材310の挿入が停止すると、振動アクチュエータ362および伸張アクチュエータ352のアクティブな動作は、プロセッサ322によって中断される。貫通部材310の意図された標的への導入の成功が、貫通された組織に適した血液または他の体液の出現などによって確認されると、標的部位の内部は、貫通部材310を通して物質を抽出または挿入するためのアクセスとなり得る。例えば、血液を採取することができ、薬物または溶液を適用することができ、および/または貫通部材310の中空内部を通して柔軟なガイドワイヤを挿入することができる。標的部位内に依然として存在する貫通部材310は、460のように、ハブ371で振動アセンブリ360から取り外すことなどによって、装置から切り離されてもよい。次いで、ハブ371は、採血または薬物/溶液送達のための注射器またはバイアルの接続点として、またはIVシステムの接続点として使用することができる。挿入装置300の残りの部分から切り離す前または切り離した後に、貫通部材310を通してガイドワイヤを挿入することができる。装置300にまだ接続されている間にガイドワイヤが貫通部材310を通して挿入される場合、貫通部材310が取り付けられた位置決め装置320および装置300の残りの部分は、オペレータは位置決め装置320および貫通部材310を可撓性ガイドワイヤとの相互作用から安全に切り離すことができる皮膚表面から延在する可撓性ガイドワイヤの証拠をオペレータが理解できるまで、柔軟なガイドワイヤを介して組織から静かに引き抜かれてもよい。
【0099】
記載された好ましい実施形態に対して詳細に多くの修正、変更、および変更を行うことができるので、前述の説明および添付の図面に示されるすべての事項は、限定的な意味ではなく、例示として解釈されることを意図している。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの法的均等物によって決定されるべきである。以上、本発明について説明した。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15A
図15B
図16A
図16B
図17
図18A
図18B
図19A
図19B
図20A
図20B
図20C
図21A
図21B
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
【国際調査報告】