(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-22
(54)【発明の名称】少なくとも2種類のグリコサミノグリカンに基づく組成物
(51)【国際特許分類】
C08B 37/08 20060101AFI20230515BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230515BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230515BHJP
A61K 31/728 20060101ALI20230515BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
C08B37/08 Z
A61K8/73
A61Q19/00
A61K31/728
A61P17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562111
(86)(22)【出願日】2021-04-12
(85)【翻訳文提出日】2022-12-07
(86)【国際出願番号】 EP2021059432
(87)【国際公開番号】W WO2021205037
(87)【国際公開日】2021-10-14
(32)【優先日】2020-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522396506
【氏名又は名称】テオキサン エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】ブルドン,フランソワ
【テーマコード(参考)】
4C083
4C086
4C090
【Fターム(参考)】
4C083AD331
4C083CC02
4C086AA01
4C086EA25
4C086MA01
4C086MA04
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4C086ZA89
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4C090BA67
4C090BB02
4C090BB18
4C090BB22
4C090BB33
4C090BB35
4C090BB36
4C090BB53
4C090BD07
4C090BD08
4C090BD10
4C090BD36
4C090BD37
4C090DA22
4C090DA26
(57)【要約】
本発明は、架橋ヒアルロン酸と、ヒアルロン酸の総質量に対して30~70質量%の水溶性ヒアルロン酸とを含む、ヒアルロン酸ベースの水性ゲルに関する。本発明は、架橋されたヒアルロン酸と架橋されてないヒアルロン酸とを少なくとも含む水性ゲルの調製方法に関する。本発明はまた、上記方法の組成物によって得られうる水性ゲル、該水性ゲルを含む化粧用組成物及び/又は皮膚用組成物、並びに該水性ゲル又は該組成物を含む予め充填されたシリンジを備えているキットに関する。これらのゲル及び組成物は、皮膚の表面外観における変化を処置する為に、及び/又は軟組織を増大及び/又は充填する為に特に有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋されたヒアルロン酸を含むヒアルロン酸ベースの水性ゲルであって、該ゲルが、
ヒアルロン酸の総質量に対して30質量%~70質量%の量の、0.02MDa~0.30MDaの質量平均モル質量を有する、「sHA LMW」と呼ばれる水溶性ヒアルロン酸、及び
任意的に、0.30MDa超の質量平均モル質量を有する、「sHA HMW」と呼ばれる水溶性ヒアルロン酸
を少なくとも含むことを特徴とし、
該水溶性ヒアルロン酸が、5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下、の修飾度を有し、
可溶性ヒアルロン酸のそれぞれのパーセンテージが、該水性ゲルを、0.02%のNaN
3を含む150nMの硝酸ナトリウムのpH7.2の溶液内で、25℃において5日間希釈し、そして、それを4400rpmで10分間遠心分離し、そして、そのように希釈されたゲルを0.45mmで濾過して濾液を得、次に該濾液を、マルチアングル光散乱(MALS)検出器と、屈折率増分(dn/dc)が0.165mL/gに設定された屈折率(RI)検出器とを備えているサイズ排除クロマトグラフィー計器を用いて分析すること、及び0.3mL/分の流量でpH7.2の硝酸ナトリウム移動相を用いる、0.001Da~20MDaから構成された質量平均モル質量を有する分子に適合させられたデュアルセットのサイズ排除カラムを備えている液体クロマトグラフィーポンピングステーションを用いて分析することによって決定されることを特徴とする、
前記水性ゲル。
【請求項2】
前記ゲルが軟質ゲルであり、該軟質ゲルが、周波数1Hzにおいてオシレーション応力掃引を適用する、コーン/プレート構造を使用して、5Paの応力について室温で測定された、15°~50°の位相角(δ)と、150Pa以下、好ましくは20~150Pa、の弾性率G’とを有し、並びに、外径0.3mm(30G)以下及び長さ1/2インチのニードルを有する内径6.3mm以上のシリンジにおいて、約12.5mm/分の固定速度で、室温で測定された、18N以下、好ましくは15N未満、の押し出し力とを有する、請求項1に記載の水性ゲル。
【請求項3】
前記水性ゲルの総質量に対して35質量%~65質量%の「sHA LMW」を含む、請求項1又は2に記載の水性ゲル。
【請求項4】
「sHA LMW」と呼ばれる前記水溶性ヒアルロン酸が、0.04MDa~0.20MDa、好ましくは0.04MDa~0.15MDa、の質量平均モル質量を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の水性ゲル。
【請求項5】
「sHA HMW」と呼ばれる前記水溶性ヒアルロン酸が、0.30MDa超且つ4.00MDa以下の質量平均モル質量を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の水性ゲル。
【請求項6】
前記水性ゲルの総質量に対して10質量%~30質量%、好ましくは15質量%~20質量%、の「sHA HMW」を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の水性ゲル。
【請求項7】
前記架橋されたヒアルロン酸が、前記水性ゲルの総質量に対して少なくとも5mg/gの量で存在する、請求項1~6のいずれか1項に記載の水性ゲル。
【請求項8】
「sHA LMW」と呼ばれる前記水溶性ヒアルロン酸が、前記水性ゲルの総質量に対して少なくとも3mg/g、好ましくは少なくとも10mg/g、の量で存在する、請求項1~7のいずれか1項に記載の水性ゲル。
【請求項9】
前記総ヒアルロン酸濃度が、前記水性ゲルの総質量に対して10~40mg/g、好ましくは15~35mg/g、より好ましくは20~30mg/g、である、請求項1~8のいずれか1項に記載の水性ゲル。
【請求項10】
前記全ヒアルロン酸の修飾度が、5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下、である、請求項1~9のいずれか1項に記載の水性ゲル。
【請求項11】
前記架橋されたヒアルロン酸は、前記水性ゲルの総質量に対して6mg/g~12mg/gの量で存在し、
「sHA LMW」と呼ばれる前記水溶性ヒアルロン酸は、前記水性ゲルの総質量に対して12mg/g~20mg/gの量で存在し、
「sHA HMW」と呼ばれる前記水溶性ヒアルロン酸は、前記水性ゲルの総質量に対して3mg/g~6mg/gの量で存在し、
前記水性ゲルは、前記水性ゲルの総質量に対して20~30mg/gの総ヒアルロン酸濃度を含む、
請求項1~10のいずれか1項に記載の水性ゲル。
【請求項12】
前記水性ゲルは、例えばオートクレーブ内で、加熱滅菌工程に付されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の水性ゲル。
【請求項13】
少なくとも1種の架橋されたヒアルロン酸と少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸とを含む水性ゲルを調製する方法であって、該方法が、
a)0.50MDa以上、好ましくは1.00MDa超、より好ましくは1.00MDa~4.00MDa、の質量平均モル質量の架橋されていないヒアルロン酸と、架橋剤とから形成された、「架橋されたHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されたヒアルロン酸を含む水性溶液を用意すること、
b)0.04MDa~0.30MDa、好ましくは0.08MDa~0.20MDa、より好ましくは0.08MDa~0.15MDa、の質量平均モル質量の、「架橋されていないHA LMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸を含む水性溶液を用意すること、並びに
c)工程a)及びb)の前記溶液の全て又は一部の均質混合物を形成すること
の工程を少なくとも含み、
前記方法が、「架橋されていないHA LMW」と「HA HMW」との質量比が1:3~2:1の、ヒアルロン酸の使用を含むことを特徴とする、
上記の方法
【請求項14】
前記「架橋されたHA HMW」は、8質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%未満、の架橋率で調製される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記「架橋されたHA HMW」の生成の為に使用される前記架橋剤が、二官能性若しくは多官能性のエポキシ架橋剤、好ましくは1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、であることを特徴とする、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
「架橋されていないHA HMW」と呼ばれる、0.50MDa以上、好ましくは1.00MDa超、より好ましくは1.00MDa~4.00MDaの、の質量平均モル質量の少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸を使用することを更に含む、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
「架橋されていないHA HMW」の全て又は一部が、工程b)の前記水性溶液において使用されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
工程c)において、前記「架橋されていないHA HMW」の前記水性溶液、及び工程b)の前記水性溶液が、工程a)の前記水性溶液と同時に混合される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
工程c)が、前記形成された混合物を、少なくとも1つのグリッドを通じて押し出す少なくとも1つの工程を含むことを特徴とする、請求項13~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が、前記水性ゲルの総重量に対して少なくとも5mg/gの「架橋されたHMW HA」を使用することを含むことを特徴とする、請求項13~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記方法が、前記水性ゲルの総重量に対してて少なくとも3mg/g、好ましくは少なくとも10mg/g、の「架橋されていないHA LMW」を使用することを含むことを特徴とする、請求項13~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記水性ゲルが、該水性ゲルの総質量に対して10~40mg/g、好ましくは15~35mg/g、より好ましくは20~30mg/g、の総ヒアルロン酸濃度を有する、請求項13~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が、「架橋されていないHA LMW」と「HA HMW」との質量比が1:3~5:3、好ましくは1:2~5:3、の質量比でヒアルロン酸を使用することを含むことを特徴とする、請求項13~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記水性ゲルが、5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下、の該ヒアルロン酸の修飾度を有する、請求項13~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記方法が、
工程a)において、5~15mg/gの「架橋されたHA HMW」を含む水性溶液、
工程b)において、50~60mg/gの「架橋されていないHA LMW」及び5~20mg/gの「架橋されていないHA HMW」を含む水性溶液
を使用すること、
ここで、形成された該ゲルは、その総質量に対して20~30mg/gの総ヒアルロン酸濃度を有すること
を特徴とする、請求項13~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
無菌の且つ注射可能なゲルを調製する為の、請求項13~25のいずれか1項に記載の方法であって、請求項13~25のいずれか1項に記載の方法従って得られた水性ゲルを使用すること又は請求項1~12のいずれか1項に記載の水性ゲルを使用することのうちの少なくとも1つ、及び加熱滅菌すること、例えばオートクレーブ内で滅菌すること、の工程を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項27】
前記ゲルが、その滅菌前に、シリンジ内にパッケージされることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
請求項13~27のいずれか1項に記載の方法によって得られうる、ヒアルロン酸の水性ゲル。
【請求項29】
前記ゲルが、軟質ゲル、すなわち周波数1Hzにおいてオシレーション応力掃引を適用する、コーン/プレート構造を有するレオメーターを使用して、5Paの応力について室温で測定された、15°~50°の位相角(δ)と、150Pa以下、好ましくは20~150Pa、の弾性率G’とを有し、並びに外径0.3mm(30G)以下及び長さ1/2インチのニードルを有する内径6.3mm以上のシリンジにおいて、約12.5mm/分の固定速度で、室温で測定された、18N以下、好ましくは15N未満、の押し出し力とを有する上記ゲルである、請求項28に記載の水性ゲル。
【請求項30】
請求項1~12のいずれか1項に記載の水性ゲル、又は請求項28若しくは29に記載の水性ゲルを含む、化粧用組成物及び/又は皮膚用組成物。
【請求項31】
皮膚の表面外観の変化を予防及び/又は処置する為の、請求項1~12のいずれか1項に記載の水性ゲル、又は請求項28若しくは29に記載の水性ゲル、又は請求項30に記載の皮膚用組成物。
【請求項32】
軟組織を増大及び/又は充填する為の、請求項1~12のいずれか1項に記載の水性ゲル、又は請求項28若しくは29に記載の水性ゲル、又は請求項30に記載の皮膚用組成物。
【請求項33】
皮膚の表面外観における変化を予防及び/又は処置する為の、請求項1~12のいずれか1項に記載の水性ゲル、又は請求項28若しくは29に記載の水性ゲル、又は請求項30に記載の化粧用組成物の非治療的な化粧的使用。
【請求項34】
軟組織を増大及び/又は充填する、特に皺を充填する、為の、請求項1~12のいずれか1項に記載の水性ゲル、又は請求項28若しくは29に記載の水性ゲル、又は請求項30に記載の化粧用組成物の非治療的な化粧的使用。
【請求項35】
請求項1~12のいずれか1項に記載の水性ゲル、又は請求項28若しくは29に記載の水性ゲル、又は請求項30に記載の化粧用組成物及び/又は皮膚用組成物を含む予め充填されたシリンジと、使用の為の説明書とを備えているキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも架橋されたヒアルロン酸と少なくとも1つの種類の水溶性ヒアルロン酸とを含む、ヒアルロン酸ベースの水性ゲルに関する。本発明は更に、軟質の、安定な、無菌の、且つ注射可能なグリコサミノグリカンに基づく、特にヒアルロン酸に基づく、補充された組成物を調製する方法に関する。こうして得られた水性ゲル及び組成物は、架橋されていない高モル質量グリコサミノグリカン及び少なくとも1種の架橋されていない低モル質量グリコサミノグリカンから調製された、特に少なくとも1種の架橋されていない高モル質量ヒアルロン酸及び少なくとも1種の架橋されていない低モル質量ヒアルロン酸から調製された、少なくとも1種の架橋されたグリコサミノグリカン、特に少なくとも1種の架橋されたヒアルロン酸、を含む少なくとも2つの種類のグリコサミノグリカンを含む。
【背景技術】
【0002】
多糖、例えばグリコサミノグリカン、は、生物医学分野で広く使用されている。特に、審美的及び/又は化粧的施与の為に販売されている殆どの製品が、ヒアルロン酸に基づいている。
【0003】
修飾されていないヒアルロン酸ゲルは、完全に生体適合性であるという利点を有するので、皮膚の質を改善する為に魅力的である。しかしながら、該修飾されていないヒアルロン酸ゲルは、イン・ビボ(in vivo)の移植後に、非常に急速に分解する。従って、このようなゲルの効果は、持続期間がごく短い。
【0004】
ヒアルロン酸は、イン・ビボでのその耐久性及び分解に対する耐性を増加する為に、通常、架橋によって修飾される。架橋されたヒアルロン酸ゲルは、様々な調製方法によって得られることができる。多糖、例えばヒアルロン酸は、様々な架橋剤、例えばエポキシ剤、グルタルアルデヒドなどのアルデヒド、ジビニルスルホン(DVS)又はポリアミン、を用いて架橋されることができる。現在、ヒアルロン酸を架橋する為に使用されている最も一般的な薬剤は、エポキシ剤である1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)である。
【0005】
これらの架橋プロセスは、2つの主な工程、すなわち該多糖の水和及び架橋、を必要とする。
【0006】
こうして調製されたヒアルロン酸に基づく商品は一般的に、それらの効能に従って、わずかな架橋されたヒアルロン酸及び1%~10%の修飾度を含む。
【0007】
それにもかかわらず、ヒアルロン酸の架橋の増加は、より化学的に修飾されたゲルの調製物をもたらし、それ故に、生体適合性が潜在的に低くなる可能性がある。他方では、これらの組成物の機械性能は制限されており、高弾性の及び/又は脆弱な最終製品をもたらす。
【0008】
しかしながら、製品の安定性及び性能の理由で、可能な限り自然のものであり、殆ど修飾されていない、従って殆ど架橋されていない、生体適合性の多糖を含む耐久性のあるイン・ビボ組成物を有することに関心が集まっている。
【0009】
架橋度に加えて、使用されるグリコサミノグリカンの濃度も、組成物の機械特性及び耐性特性を決定する非常に重要なパラメーターである。従って、多糖ベースの組成物のイン・ビボ耐久性及び分解耐性を増加する為の代替法は、最終組成物における該グリコサミノグリカンの全濃度を増加することである。
【0010】
しかしながら、該グリコサミノグリカンの全濃度の増加は、該組成物の耐性及び該組成物の耐久性を増加することに加えて、該組成物の粘度の有意な増加と共に該組成物の増粘をもたらす。従って、この粘度増加により、該ゲルは、注射しにくくなり、組織に自然に統合しにくくなる。特に、総ヒアルロン酸濃度の増加は、注射後の丘疹の発生源になることが知られている。
【0011】
従って、これらの全ての理由で、現在までに販売された殆どの架橋されたヒアルロン酸製品は、総ヒアルロン酸濃度がわずか約25mg/g又は約26mg/gである。しかしながら、このようなゲルは、皮膚の嵩を増す充填(filling)施与の為には潜在的に有用であるが、機械的充填が求められている主な効果ではなく、皮膚の表層帯域への注射を必要とする皮膚の再生及び外観改善の皮膚施与には、好適でない。後者の種類の注射の為には、軟質であり、注射し易く、且つ組織に容易に拡散する、より低い弾性(G’)及び粘性(G’’)係数を有するゲルを調製することが、実際望ましい。
【0012】
更に、グリコサミノグリカン、例えばヒアルロン酸、に基づく製品の耐性及び持続性を増加するこの状況において、ヒアルロン酸に関して保護特性を有する様々な化合物を添加することも提案されてきた。従って、熱の下でのヒアルロン酸の分解に対して、国際公開第2014/032804号パンフレットは、リン酸アスコルビルマグネシウムの添加を提案しており、国際公開第2013/186493号パンフレットは、オクタ硫酸スクロースの添加を、国際公開第2007/077399号パンフレットは、グリセロールの添加を提案している。しかしながら、この種類の安定化する化合物の添加は、製品の生体適合性に関して不確実性を増加する。
【0013】
結果的に、軟質であり、注射し易く、且つ組織に容易に拡散すると同時に、皮膚の再生及び/又は外観改善の為に十分に耐久性があり且つ有効な、グリコサミノグリカンに基づく、より特にはヒアルロン酸に基づく、無菌ゲルが依然として必要である。
【0014】
特に依然として、従来技術の問題を克服する為に、グリコサミノグリカン、例えばヒアルロン酸、に基づく組成物の耐性及び耐久性を増加する必要がある。本発明は、これらの必要を満たすことを提案する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の観点に従うと、本発明は、架橋されたヒアルロン酸を含むヒアルロン酸ベースの水性ゲルであって、該ゲルが、
ヒアルロン酸の総質量に対して30質量%~70質量%の量の、0.02MDa~0.30MDaの質量平均モル質量を有する、「sHA LMW」と呼ばれる水溶性ヒアルロン酸、及び
任意的に、0.30MDa超の質量平均モル質量を有する、「sHA HMW」と呼ばれる水溶性ヒアルロン酸
を少なくとも含むことを特徴とし、
該水溶性ヒアルロン酸が、5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下、の修飾度を有し、
可溶性ヒアルロン酸のそれぞれのパーセンテージが、該水性ゲルを、0.02%のNaN3を含む150nMの硝酸ナトリウムのpH7.2の溶液内で、25℃において5日間希釈し、そして、それを4400rpmで10分間遠心分離し、そして、そのように希釈されたゲルを0.45mmで濾過して濾液を得、次に該濾液を、マルチアングル光散乱(MALS:multiangle light scattering)検出器と、屈折率増分(dn/dc)が0.165mL/gに設定された屈折率(RI)検出器とを備えているサイズ排除クロマトグラフィー計器を用いて分析すること、及び0.3mL/分の流量でpH7.2の硝酸ナトリウム移動相を用いる、0.001Da~20MDaから構成された質量平均モル質量を有する分子に適合させられたデュアルセットのサイズ排除カラムを備えている液体クロマトグラフィーポンピングステーション(chromathography pumping station)を用いて分析することによって決定されることを特徴とする、
上記のヒアルロン酸ベースの水性ゲルに関する。
【0016】
本発明の本文は、少なくとも1種の架橋されたグリコサミノグリカンと少なくとも1種の架橋されていないグリコサミノグリカンとを含む水性ゲルを調製する方法であって、
a)0.50MDa以上、好ましくは1.00MDa超、より好ましくは1.00MDa~4.00MDa、のモル質量の架橋されていないグリコサミノグリカンと、架橋剤とから形成された、「架橋されたグリコサミノグリカンHMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されたグリコサミノグリカンを含む水性溶液を用意すること、
b)0.04MDa~0.30MDa、好ましくは0.08MDa~0.20MDa、より好ましくは0.08MDa~0.15MDa、またより好ましくは0.08MDa~0.10MDa、のモル質量の、「架橋されていないグリコサミノグリカンLMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないグリコサミノグリカンを含む水性溶液を用意すること、並びに
c)工程a)及びb)からの該溶液の全て又は一部の均質混合物を形成すること
の工程を少なくとも含む、上記の方法を記載する。
【0017】
第2の観点に従うと、本発明は、少なくとも1種の架橋されたヒアルロン酸と少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸とを含む水性ゲルを調製する方法であって、該方法が、
a)0.50MDa以上、好ましくは1.00MDa超、より好ましくは1.00MDa~4.00MDa、の質量平均モル質量の架橋されていないヒアルロン酸と、架橋剤とから形成された、「架橋されたHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されたヒアルロン酸を含む水性溶液を用意すること、
b)0.04MDa~0.30MDa、好ましくは0.08MDa~0.20MDa、より好ましくは0.08MDa~0.15MDa、の質量平均モル質量の、「架橋されていないHA LMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸を含む水性溶液を用意すること、並びに
c)工程a)及びb)の該溶液の全て又は一部の均質混合物を形成すること
の工程を少なくとも含み、
上記の方法が、「架橋されていないHA LMW」と「HA HMW」との質量比が1:3~2:1の、ヒアルロン酸の使用を含むことを特徴とする、
上記の方法に関する。
【0018】
予想外に、本発明者等は、少なくとも1種の架橋されていない高モル質量グリコサミノグリカンから調製された少なくとも1種の架橋されたグリコサミノグリカンを含む組成物への、少なくとも1種の架橋されていない低モル質量グリコサミノグリカンの補充、特に少なくとも1種の架橋されていない高モル質量ヒアルロン酸から調製された少なくとも1種の架橋されたヒアルロン酸を含む組成物への、少なくとも1種の架橋されていない低モル質量ヒアルロン酸の補充、により、最終組成物の耐性が増幅することを見出した。
【0019】
以下の例において示されている通り、該結果は、
架橋されていない低モル質量グリコサミノグリカンを添加されていない、より特には架橋されていない低モル質量ヒアルロン酸を添加されていない、同じ組成物と比較して、分解に対して改善された耐性、並びに
同じ全濃度のグリコサミノグリカン、更に特にはヒアルロン酸、及び同じ架橋度の架橋されたグリコサミノグリカン、更に特には架橋されたヒアルロン酸、の画分を有する組成物と比較して、分解に対してより良好な耐性
である。
【0020】
分解に対するこの改善された耐性により、本発明に従う組成物は、加熱滅菌に対する耐性がより高い。従って、滅菌前に類似のレオロジー特性を有する2種類の無菌の且つ注射可能な組成物、すなわち一方が本発明に従う組成物と、他方が従来技術の教示に従って調製された組成物との間では、前者は、滅菌後に後者よりも優れたレオロジー特性を示す。
【0021】
本発明に従う組成物は、分解に対するそれらの増加された耐性のおかげで、有利なことには、特にそれらの輸送及び保存中の可変温度に耐えることができる。
【0022】
更に、少なくとも1種の架橋されていない低モル質量グリコサミノグリカン、特に少なくとも1種の架橋されていない低モル質量ヒアルロン酸、の補充により、増加された全グリコサミノグリカン濃度を有する、従って皮膚の生理に対して1以上の有意な生体力学的及び/又は生物学的効果を有する、軟質であり、注射し易く、且つ容易に拡散する組成物を調製することが可能になる。
【0023】
更に、本発明に従って調製された組成物の使用は、処置される部位におけるグリコサミノグリカン、特にヒアルロン酸、の生理学的効果の多様化を促す様々なモル質量の該グリコサミノグリカン、特に該ヒアルロン酸、の同時投与を可能にする。
【0024】
第3の観点に従うと、本発明は、本発明に従う方法に従って得ることができるグリコサミノグリカン、特にヒアルロン酸、の水性ゲルに関する。
【0025】
第4の観点に従うと、本発明は、本発明において定義されている通りの水性ゲルを含む、化粧用組成物及び/又は皮膚用組成物に関する。
【0026】
本発明はまた、本発明に従う方法に従って得られた組成物に関する。
【0027】
本発明はまた、皮膚の粘弾性特性又は生体力学的特性の変化の予防及び/又は処置において使用する為の、本発明に従う水性ゲル又は本発明に従う組成物に関する。
【0028】
本発明はまた、例えば外部要因、例えばストレス、大気汚染、タバコ又は紫外(UV)光への長期間の曝露、によって誘発された皮膚の表面外観の変化の予防及び/又は処置において使用する為の、本発明に従う水性ゲル又は本発明に従う皮膚用組成物に関する。
【0029】
好ましくは、本発明は、軟組織の増大及び/又は充填において使用する為の、本発明に従う水性ゲル又は本発明に従う皮膚用組成物に関する。
【0030】
本発明はまた、皮膚の表面外観の変化、例えば経時的老化の皮膚徴候、を予防及び/又は処置する為の、本発明において定義されている通りの水性ゲル又は本発明において定義されている通りの化粧組成物の、非治療的な化粧的使用に関する。
【0031】
本発明はまた、軟組織を増大及び/又は充填する、特に皺を充填する、為の、本発明において定義されている通りの水性ゲル又は本発明において定義されている通りの化粧組成物の、非治療的な化粧的使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、試料1-1~試料1-3のオートクレーブ滅菌時の弾性率(G’)の喪失(ΔG’(%))、架橋されていない低モル質量ヒアルロン酸の濃度、並びに架橋された高モル質量ヒアルロン酸及び架橋されていない高モル質量ヒアルロン酸の濃度のグラフ表示である。
【
図2】
図2は、それぞれ0.04MDa、0.10MDa、0.20MDa及び1.50MDaのモル質量の、架橋されていないヒアルロン酸が添加されていない試料3-5及び添加された架橋されていないヒアルロン酸を含む試料3-6~試料3-9、のオートクレーブ滅菌時の弾性率(G’)の喪失(ΔG’(%))を示すグラフである。
【
図3】
図3は、それぞれ0.04MDa、0.10MDa、0.20MDa及び1.50MDaのモル質量の、架橋されていないヒアルロン酸が添加されていない試料3-5及び添加された架橋されていないヒアルロン酸を含む試料3-6~試料3-9、のオートクレーブ滅菌時の弾性率(G’)の喪失の改善パーセンテージを示すグラフである。
【
図4】
図4は、試料4-1(補充されていない)及び試料4-2~試料4-4、のオートクレーブ滅菌時の弾性率(G’)の喪失(ΔG’(%))、架橋されていない低モル質量ヒアルロン酸の濃度、並びに架橋された高モル質量ヒアルロン酸及び架橋されていない高モル質量ヒアルロン酸の濃度のグラフ表示である。
【
図5】
図5は、架橋されていないヒアルロン酸が添加されていない試料6-1、並びにそれぞれ0.10MDa及び1.50MDaのモル質量の、添加された架橋されていないヒアルロン酸を含む試料6-2及び試料6-3、のヒアルロニダーゼ処理の前及び後の弾性率(G’)の差(ΔG’(%))を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
詳細な説明
本発明に従う用語の定義
「グリコサミノグリカン」は、2つの炭水化物残基の一方が、アミノ炭水化物(N-アセチルグルコサミン又はN-アセチルガラクトサミン)であり、第2の炭水化物残基が、ウロン(グルクロン又はイズロン)酸又はガラクトースである、繰り返す二糖単位から構成された長鎖として定義されている。グリコサミノグリカンは、ヒアルロン酸、ヘパロサン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸及びケラタン硫酸を包含する。特には好ましいグリコサミノグリカンは、ヒアルロン酸である。
【0034】
「ヒアルロン酸」は、ヒアルロン酸、又はヒアルロナン、及びその誘導体を意味する。結果的に、語「ヒアルロン酸」はまた、ヒアルロン酸塩、例えばヒアルロン酸ナトリウム、及び例えば酸化、還元、脱アセチル化、硫酸化又はアミド化によって化学的に修飾されたヒアルロン酸を包含する。ヒアルロン酸は、交互のβ-1,3グリコシド結合及びβ-1,4グリコシド結合によって連結された、交互のD-グルクロン酸単位及びN-アセチル-D-グルコサミン単位を有する、線状多糖である。
【0035】
【0036】
ヒアルロン酸は、ヒトの身体の幾つかの組織に自然に存在し、やはり体内に存在する酵素であるヒアルロニダーゼによって、及び/又は酸化機序を介して、分解される。
【0037】
「水溶性ヒアルロン酸」又は「可溶性ヒアルロン酸」又は「抽出可能なヒアルロン酸」は、「sHA」と呼ばれ、ヒアルロン酸ベースのゲルが、過剰の水性媒体で膨潤している場合、該ヒアルロン酸ベースのゲルから抽出されることができるヒアルロン酸を意味する。可溶性ヒアルロン酸のそれぞれのパーセンテージは、該水性ゲルを、0.02%のNaN3を含む150nMの硝酸ナトリウムのpH7.2の溶液内で、25℃において5日間希釈し、そして、それを4400rpmで10分間遠心分離し、そして、そのように希釈されたゲルを0.45mmで濾過して濾液を得、次に該濾液を、マルチアングル光散乱(MALS)検出器と、屈折率増分(dn/dc)が0.165mL/gに設定された屈折率(RI)検出器とを備えているサイズ排除クロマトグラフィー計器を用いて分析すること、及び0.3mL/分の流量でpH7.2の硝酸ナトリウム移動相を用いる、0.001Da~20MDaから構成された質量平均モル質量を有する分子に適合させられたデュアルセットのサイズ排除カラムを備えている液体クロマトグラフィーポンピングステーションを用いて分析することによって決定される。実際、該希釈工程の為の該移動相におけるゲルの濃度、及び該SECにおける注入体積は、シグナル対ノイズ(bruise)比を最大限にし、カラム過負荷を回避する為に、上清組成物の関数として、当業者によって適切に調整される。
【0038】
それとは逆に、「非水溶性ヒアルロン酸」又は「不溶性ヒアルロン酸」又は「抽出不可能なヒアルロン酸」は、「nsHA」とも呼ばれ、ヒアルロン酸ベースのゲルが、過剰の水性媒体で膨潤している場合、該ヒアルロン酸ベースのゲルから抽出されることができないヒアルロン酸を意味する。
【0039】
グリコサミノグリカン、特にヒアルロン酸、のg/モル又はDaで表され、Mwと略される「質量平均モル質量」は、使用されたグリコサミノグリカン分子の質量平均モル質量を云う。グリコサミノグリカンの質量平均モル質量は、当業者に既知の様々な方法によって、例えばキャピラリー電気泳動法によって、サイズ排除クロマトグラフィーによって、又は固有粘度の測定から、決定されることができる。本発明の本文において、表現「モル質量」、「平均モル質量」、「質量平均モル質量」又は「質量モル質量」は、交換可能に使用されうる。
【0040】
グリコサミノグリカン、特にヒアルロン酸、のmL/g又はm3/kgで表される「固有粘度」([η])は、溶液の粘度への、該グリコサミノグリカンの寄与を云う。固有粘度は、毛細管粘度計を通して流すことによって、測定されることができる。固有粘度は、ポリマーの流体力学的比体積を表す。グリコサミノグリカンの該固有粘度が低いほど、該グリコサミノグリカンのモル質量は低い。所与のグリコサミノグリカンについて、該固有粘度は、経験的関係式であるMark-Houwink関係式によってモル質量に関係付けられ、該式は、当業者によって理解されることができ、該式は以下である:
[η]=K×Mwα
ここで、
Kは、該研究されたポリマー、該使用された溶媒及び該温度の定数関数であり、特にKは、該研究されたポリマーの鎖の寸法に関し、
αは、該研究されたポリマー、該使用された溶媒及び該温度の定数関数であり、特にαは、該研究されたポリマーのコンフォメーションに関し、
Mwは、ダルトン(Da)で表される、該ポリマーの質量平均モル質量である。
【0041】
「低モル質量グリコサミノグリカン」は、「グリコサミノグリカンLMW」又は「LMWグリコサミノグリカン」とも呼ばれ、0.04~0.30MDa、好ましくは0.08MDa~0.20MDa、より好ましくは0.08MDa~0.15MDA、またより好ましくは0.08MDa~0.10MDa、の質量平均モル質量を有する原材料としてのグリコサミノグリカンを意味する。
【0042】
「低モル質量ヒアルロン酸」は、「ヒアルロン酸LMW」又は「HA LMW」又は「LMWヒアルロン酸」又は「LMW HA」とも呼ばれ、0.04~0.30MDa、好ましくは0.08~0.20MDa、より好ましくは0.08~0.15MDa、のモル質量の原材料としてのヒアルロン酸を意味し、該ヒアルロン酸は、欧州薬局方(01/2017版:1472)によって示された方法に従って測定された、低い固有粘度の、すなわち0.10~0.8m3/kg、好ましくは0.2~0.5m3/kg、より好ましくは0.2~0.4m3/kg、の固有粘度のヒアルロン酸に対応する。
【0043】
「低モル質量水溶性ヒアルロン酸」又は「低モル質量可溶性ヒアルロン酸」は、「sHA LMW」又は「LMW sHA」とも呼ばれ、請求項1に詳説されている方法に従って、すなわち該水性ゲルを、0.02%のNaN3を含む150nMの硝酸ナトリウムのpH7.2の溶液内で、25℃において5日間希釈し、そして、それを4400rpmで10分間遠心分離し、そして、そのように希釈されたゲルを0.45mmで濾過して濾液を得、次に該濾液を、マルチアングル光散乱(MALS)検出器と、屈折率増分(dn/dc)が0.165mL/gに設定された屈折率(RI)検出器とを備えているサイズ排除クロマトグラフィー計器を用いて分析すること、及び0.3mL/分の流量でpH7.2の硝酸ナトリウム移動相を用いる、0.001Da~20MDaから構成された質量平均モル質量を有する分子に適合させられたデュアルセットのサイズ排除カラムを備えている液体クロマトグラフィーポンピングステーションを用いて分析することによって最終的なゲルで測定された、0.02MDa~0.30MDa、好ましくは0.04MDa~0.20MDa、より好ましくは0.04MDa~0.15MDa、のモル質量の可溶性ヒアルロン酸を意味する。実際、該希釈工程の為の該移動相におけるゲルの濃度、及び該SECにおける注入体積は、シグナル対ノイズ比を最大限にし、カラム過負荷を回避する為に、上清組成物の関数として、当業者によって適切に調整される。
【0044】
「高モル質量グリコサミノグリカン」は、「グリコサミノグリカンHMW」又は「HMWグリコサミノグリカン」とも呼ばれ、0.50MDa超、好ましくは1.00MDa超、より好ましくは1.00MDa~4.00MDaの、のモル質量の原材料としてのグリコサミノグリカンを意味する。
【0045】
「高モル質量ヒアルロン酸」は、「ヒアルロン酸HMW」又は「HA HMW」又は「HMWヒアルロン酸」又は「HMW HA」とも呼ばれ、0.50MDa超、好ましくは1.00MDa超、より好ましくは1.00MDa~4.00MDaの、のモル質量の原材料としてのヒアルロン酸を意味し、該ヒアルロン酸は、欧州薬局方(01/2017版:1472)によって示された方法に従って測定された、高い固有粘度の、すなわち0.8m3/kg超、好ましくは1.2m3/kg超、より好ましくは1.2m3/kg~3.5m3/kgの、の固有粘度のヒアルロン酸に対応する。
【0046】
「高モル質量可溶性ヒアルロン酸」又は「高モル質量水溶性ヒアルロン酸」は、「sHA HMW」又は「HMW sHA」とも呼ばれ、請求項1に詳説されている方法に従って、すなわち該水性ゲルを、0.02%のNaN3を含む150nMの硝酸ナトリウムのpH7.2の溶液内で、25℃において5日間希釈し、そして、それを4400rpmで10分間遠心分離し、そして、そのように希釈されたゲルを0.45mmで濾過して濾液を得、次に該濾液を、マルチアングル光散乱(MALS)検出器と、屈折率増分(dn/dc)が0.165mL/gに設定された屈折率(RI)検出器とを備えているサイズ排除クロマトグラフィー計器を用いて分析すること、及び0.3mL/分の流量でpH7.2の硝酸ナトリウム移動相を用いる、0.001Da~20MDaから構成された質量平均モル質量を有する分子に適合させられたデュアルセットのサイズ排除カラムを備えている液体クロマトグラフィーポンピングステーションを用いて分析することによって最終的なゲルで測定された、0.30MDaよりも高く、好ましくは0.30MDaよりも高く、且つ4.00MDa以下、のモル質量の可溶性ヒアルロン酸を意味する。実際、該希釈工程の為の該移動相におけるゲルの濃度、及び該SECにおける注入体積は、シグナル対ノイズ比を最大限にし、カラム過負荷を回避する為に、上清組成物の関数として、当業者によって適切に調整される。
【0047】
「架橋されたグリコサミノグリカン」は、架橋反応中に架橋剤で修飾されたグリコサミノグリカンを云う。それとは逆に、「架橋されていないグリコサミノグリカン」は、架橋剤で修飾されておらず、それ故に架橋反応を受けていないグリコサミノグリカンを云う。
【0048】
「架橋されたヒアルロン酸」は、架橋反応中に架橋剤で修飾されたヒアルロン酸を云う。それとは逆に、「架橋されていないヒアルロン酸」は、架橋剤で修飾されておらず、それ故に架橋反応を受けていないヒアルロン酸を云う。
【0049】
「架橋されていない」(Non-crosslinked)及び「架橋されていない」(uncrosslinked)は、同義語であり、本発明の本文において交換可能に使用されうる。
【0050】
表現「グリコサミノグリカンHMW」又は「HMWグリコサミノグリカン」は、該水性ゲル中に存在する場合、「架橋されたグリコサミノグリカンHMW」成分及び「架橋されていないグリコサミノグリカンHMW」成分を云う。
【0051】
表現「ヒアルロン酸HMW」は、「HA HMW」又は「HMW HA」とも呼ばれ、該水性ゲル中に存在する場合、「架橋されたヒアルロン酸HMW」(「架橋されたHA HMW」又は「架橋されたHMW HA」とも呼ばれる)成分、適用できる場合は「架橋されていないヒアルロン酸HMW」(「架橋されていないHA HMW」又は「架橋されていないHMW HA」とも呼ばれる)成分を云う。
【0052】
「架橋されたグリコサミノグリカン」、特に「架橋されたヒアルロン酸」、の調製中に適用される「架橋率」は、架橋剤の質量(又は重量)と、該架橋されたグリコサミノグリカン、特に該架橋されたヒアルロン酸、を調製する為に使用されるグリコサミノグリカン、特にヒアルロン酸、の質量との比に対応する。該架橋率は、パーセンテージとして表される。
【0053】
架橋されたグリコサミノグリカン、及びこのような架橋されたグリコサミノグリカン、特に架橋されたヒアルロン酸、を含む組成物、及びこのような架橋されたヒアルロン酸を含む組成物は、それらの「修飾度」(MOD)によって定性されることができる。この修飾度は、該グリコサミノグリカンに、その末端の1以上によって連結している修飾性薬物のモル量に対応し、該組成物におけるグリコサミノグリカンの二糖繰り返し単位100モル、特に該組成物におけるヒアルロン酸の二糖繰り返し単位100モル、当たりで表される。この修飾度を決定する為の基準方法は、核磁気共鳴分光法(1H NMR)である。該修飾度は、該グリコサミノグリカン二糖単位のシグナルを上回る該架橋剤のシグナルのモル比によって決定される(グリコサミノグリカンが架橋に関与していようといまいと)。
【0054】
「架橋された高モル質量(HMW)グリコサミノグリカン」又は「crosslinked high-molar-mass (HMW) glycosaminoglycan」は、架橋されていない高モル質量グリコサミノグリカンから調製された、架橋されたグリコサミノグリカンを云う。好ましくは、架橋されたHMWグリコサミノグリカンは、8%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%未満、の架橋率を有する。
【0055】
「架橋された高モル質量(HMW)ヒアルロン酸」又は「crosslinked high-molar-mass (HMW) hyaluronic acid」は、架橋されていない高モル質量ヒアルロン酸から調製された架橋されたヒアルロン酸を云う。好ましくは、架橋されたHMWヒアルロン酸は、8%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%未満、の架橋率を有する。
【0056】
「皮膚生理に対するグリコサミノグリカンの生体力学的及び生物学的特性」は、特に、水和及び線維芽細胞活性化を包含する。例えば、ヒアルロン酸は、その生体力学的及び生物学的特性に起因して、皮膚の再構築、再生及び/又は若返りに関与する。
【0057】
組成物の「補充」は、この組成物への、少なくとも1種の架橋されていない低モル質量グリコサミノグリカンの添加を表す。好ましくは、補充は、組成物への、少なくとも1種の架橋されていない低モル質量ヒアルロン酸の添加に対応する。
【0058】
「全グリコサミノグリカン濃度」は、架橋された高モル質量グリコサミノグリカン及び任意的に架橋されていない高モル質量グリコサミノグリカンの濃度と、補充の為に使用されたグリコサミノグリカンの濃度との合計を意味する。この濃度は、ゲル1グラム当たりのグリコサミノグリカンのミリグラムで表される。
【0059】
「総ヒアルロン酸濃度」は、架橋された高モル質量ヒアルロン酸及び任意的に架橋されていない高モル質量ヒアルロン酸の濃度と、補充の為に使用されたヒアルロン酸の濃度との合計を意味する。この濃度は、ゲル1グラム当たりのグリコサミノグリカンのミリグラムで表される。
【0060】
溶液は、その色、視覚的外観及び粘度が、肉眼により及び触覚により均一であると知覚される場合、「均質」とみなされる。
【0061】
「水性媒体」は、溶媒として少なくとも水を含有し、グリコサミノグリカン、特にヒアルロン酸、を溶解する特性を有する、任意の液体媒体を意味する。
【0062】
「架橋剤」は、様々なグリコサミノグリカン鎖の間に架橋を導入することができる任意の化合物を意味する。本発明の実行に好適な架橋剤として、特に二官能性若しくは多官能性のエポキシ架橋剤、又は非エポキシ架橋剤が挙げられうる。該エポキシ剤の中でも、ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)、ジエポキシオクタン、1,2-ビス(2,3-エポキシプロピル)-2,3-エチレン、1,2-ビス(2,3-エポキシプロピル)-2,3-エミレン(emylene)及びそれらの混合物が挙げられうる。該非エポキシ剤の中でも、内因性ポリアミン、例えばスペルミン、スペルミジン及びプトレシン、アルデヒド、カルボジイミド、並びにジビニルスルホンが挙げられうる。
【0063】
「水性ゲル」は、他に特定されない場合には、本発明に従う方法によって得ることができる水性ゲル又は本発明に従う水性ゲルの両方を意味する。
【0064】
「軟質ゲル」は、粘弾性分布が中程度に弾性のままである、すなわち周波数1Hzにおいてオシレーション応力掃引(oscillation stress sweep)を適用する、コーン/プレート構造(円錐角1°/プレート直径40mm)を有するレオメーター(TA Instruments DHR2)を使用して、5Paの応力について室温で測定された、15°~50°の位相角(δ)と、低弾性率G’、換言すれば150Pa以下、好ましくは20~150Pa、のG’とを有し、並びに外径0.3mm(30G)以下及び長さ1/2インチのニードルを有する内径6.3mm以上のシリンジにおいて、約12.5mm/分の固定速度で、室温で測定された、18N以下、好ましくは15N未満、の押し出し力とを有する、十分に粘性のままである、上記のゲルを意味する。
【0065】
「注射しやすい」は、外径0.3mm(30G)以下及び長さ1/2インチのニードルを有する外径6.3mm以上のシリンジにおいて、ダイナモメーターを約12.5mm/分の固定速度で用いて室温で測定された場合、18N未満、好ましくは15N未満、の平均押し出し力を有するゲルを意味する。
【0066】
「組織に容易に拡散した」組成物又はゲルは、皮膚の表層帯域、すなわち上層及び中層真皮、に注射した後に丘疹の形成を促進しない、皮膚の再生及び外観改善の皮膚施与の為の組成物を意味する。
【0067】
「イン・ビボ耐久性」は、ゲルの注射後に、処置された部位に経時的に残存するゲルの能力を意味する。イン・ビボで耐久性があるゲルは、該処置された部位に、少なくとも1カ月間、好ましくは少なくとも3カ月間、より好ましくは少なくとも6カ月間、残存することができる、すなわち施与後に少なくとも1カ月間、好ましくは少なくとも3カ月間、より好ましくは少なくとも6カ月間、全体的な審美的改善を維持することができる、言い換えれば1.非常に改善された、2.改善された、3.変化なし、4.悪化した、5.非常に悪化した、の5つのグレードを含む全体的な審美的改善の主観的評価尺度に基づいて、施与後に少なくともグレード1又は2の改善を、少なくとも1カ月間、好ましくは少なくとも3カ月間、より好ましくは少なくとも6カ月間、維持することができる、ゲルである。
【0068】
語「安定性」は、少なくとも1年間の保存中、その仕様に従って物理化学的特性(色、pH、均質性、濁度、レオロジー等)を維持する、組成物の能力を特徴付ける。組成物の安定性は一般的に、その物理化学的パラメーターの1以上、特にそのレオロジーパラメーター、例えばその弾性率(G’)又は粘度(η)、の1以上を観察し、及び/又は測定することによってモニタリングされる。
【0069】
「無菌ゲル」は、皮膚の表層領域、すなわち上層及び中層真皮、内に又はそれを介して投与するのに安全なゲルを意味する。特に、注射技術によって投与されるべき該ゲルが、宿主生物において望ましくない二次反応を惹起するおそれがある如何なる混入物も含まないことが必須である。
【0070】
語「添加剤」、「追加成分」及び「賦形剤」は、交換可能に使用され、皮膚内及び/又は皮膚上での施与と適合する任意の成分を云う。使用される添加剤の量は、該成分の性質、所望の効果、及び本発明に従う組成物の使用に応じて決まる。この添加剤は、以下の成分の1種又はその誘導体の1種:麻酔剤、抗酸化剤、アミノ酸、ビタミン、ミネラル、核酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、コエンザイム、アドレナリン誘導体、リン酸二水素ナトリウム一水和物及び/又は二水和物、又は塩化ナトリウムであることができる。
【0071】
「麻酔剤」として、アムブカイン、アモキセカイン、アミレイン(Amylein)、アプリンジン、アプトカイン(Aptocaine)、アルチカイン、ベンゾカイン、ベトキシカイン(Betoxycaine)、ブピバカイン、ブタカイン、ブタムベン、ブタニリカイン、クロロブタノール、クロロプロカイン、シンコカイン、クロダカイン、コカイン、クリオフルオラン、シクロメチカイン、デキシバカイン、ジアモカイン、ジペロドン、ジクロニン、エチドカイン、ユープロシン(Euprocine)、フェブエリン(Febuerine)、フォモカイン(Fomocaine)、グアフェカイノール、ヘプタカイン(Heptacaine)、ヘキシルカイン、ヒドロキシプロカイン、ヒドロキシテトラカイン(Hydroxytetracaine)、イソブタンベン、ロイシノカイン(Leucinocaine)、レボブピバカイン、レボキサドロール、リダミジン、リドカイン、ロツカイン(Lotucaine)、メングリタート(Menglytate)、メピバカイン、メプリルカイン、ミルテカイン(Myrtecaine)、オクタカイン、オクトドリン、オキセタカイン、オキシブプロカイン、パレトキシカイン(Parethoxycaine)、パリドカイン(Paridocaine)、フェナカイン、ピペロカイン、ピリドカイン(Piridocaine)、ポリドカノール、プラモカイン、プリロカイン、プロカイン、プロパノカイン、プロピポカイン(Propipocaine)、プロポキシカイン、プロキシメタカイン、ピロカイン、カタカイン(Quatacaine)、キニソカイン、リソカイン、ロドカイン、ロピバカイン、テトラカイン、トリカイン、トリメカイン、及びその塩が挙げられうる。
【0072】
「抗酸化剤」として、グルタチオン、エラグ酸、スペルミン、レスベラトロール、レチノール、L-カルニチン、ポリオール、ポリフェノール、フラボノール、テアフラビン、カテキン、カフェイン、ユビキノール、ユビキノン、アルファ-リポ酸が挙げられうる。
【0073】
「アミノ酸」として、アルギニン、イソロイシン、ロイシン、リシン、グリシン、バリン、スレオニン、プロリン、メチオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、トリプトファン、システインが挙げられうる。
【0074】
「ビタミン」として、ビタミンE、A、C、B、特にビタミンB4、B5、B6、B8、B9、B7、B12、好ましくはピリドキシン、が挙げられうる。
【0075】
「ミネラル」として、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、カリウム、マンガン、ナトリウム、銅、の塩が挙げられうる。
【0076】
「コエンザイム」として、コエンザイムQ10、CoA、NAD、NADPが挙げられうる。
【0077】
「アドレナリン誘導体」として、アドレナリン及びノルアドレナリンが挙げられうる。
【0078】
最後に、示されている全ての数値は、厳密なものとはみなされず、一般的な慣例に従う近似であり、すなわち該数値の示されている末尾の桁は、該測定の精度に対応すると理解される。例えば、0.04MDaのモル質量について、誤差範囲は、0.035~0.044MDaである。
【0079】
本発明に従う方法
前述で特定された通り、本発明の本文は、一方では、高モル質量の架橋されていないグリコサミノグリカンと架橋剤とから形成されることから「架橋されたグリコサミノグリカンHMW」とも呼ばれる、少なくとも1種の架橋されたグリコサミノグリカンを含む水性溶液を必要とし、他方では、「架橋されていないグリコサミノグリカンLMW」と呼ばれる低モル質量の少なくとも1種の架橋されていないグリコサミノグリカンを含む水性溶液を必要とする水性ゲルを調製する為の、且つ該溶液の全て又は一部の均質混合物を形成する為の、方法を記載する。
【0080】
本発明に従う方法において使用される該グリコサミノグリカンは、ヒアルロン酸、ヘパロサン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸及びそれらの混合物から選択されうる。
【0081】
本発明の方法において使用される該グリコサミノグリカンは、同じ又は異なる化学的性質でありうる。
【0082】
特定の実施態様において、本発明の方法において使用される該グリコサミノグリカンは、同一の化学的性質であり、好ましくは全てがヒアルロン酸である。
【0083】
更に特には、本発明は、一方では、高モル質量の架橋されていないヒアルロン酸と架橋剤とから形成されることから「架橋されたHA HMW」とも呼ばれる、少なくとも1種の架橋されたヒアルロン酸を含む水性溶液を必要とし、他方では、「架橋されていないHA LMW」と呼ばれる低モル質量の少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸を含む水性溶液を必要とする水性ゲルを調製する為の、且つ該溶液の全て又は一部の均質混合物を形成する為の方法であって、「架橋されていないHA LMW」と「HA HMW」との質量比が1:3~2:1であるヒアルロン酸の使用を含むことを特徴とする、該方法に関する。
【0084】
特定の実施態様において、本発明の方法において使用される該ヒアルロン酸は、化学的に修飾されていない。
【0085】
既に示されている通り、本発明に従う方法は、特には本発明に従う方法の工程a)及びb)に定義されている通り、水性溶液の形態のこれらのグリコサミノグリカン、好ましくはこれらのヒアルロン酸、を使用する。
【0086】
グリコサミノグリカン、特にヒアルロン酸、のこれらの溶液は、有利なことには均質である。
【0087】
それらは、慣用的な方法に従って、例えば、水性媒体、例えばリン酸緩衝食塩水での、架橋された又は架橋されていないグリコサミノグリカン、特にヒアルロン酸、の可溶化及び/又は希釈によって調製されることができる。これらの調製は、有利なことには、室温で、好ましくは15℃~25℃の温度で、機械又は手動による撹拌下で行われる。
【0088】
工程A)
工程a)で考慮される「架橋されたグリコサミノグリカンHMW」、特に「架橋されたHA HMW」、の水性溶液に関して、該溶液は、最初に、0.50MDa以上、好ましくは1.00MDa超、より好ましくは1.00MDa~4.00MDa、の質量平均モル質量の少なくとも1種の架橋されていないグリコサミノグリカンを、少なくとも1種の架橋剤で架橋することによって得られ、特に該溶液は、最初に、0.50MDa以上、好ましくは1.00MDa超、より好ましくは1.00MDa~4.00MDa、の質量平均モル質量の少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸を、少なくとも1種の架橋剤で架橋することによって得られる。
【0089】
このような架橋の実現は、明らかに当業者の権能の範囲内である。
【0090】
有利なことには、該架橋剤は、8質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%未満、の架橋率で導入される。
【0091】
有利なことには、該架橋剤は、グリコサミノグリカン単位の総モル数に対して、特にヒアルロン酸単位の総モル数に対して、特に0.001~0.25のモル比で導入される。
【0092】
従って、好ましい実施態様に従うと、該「架橋されたHA HMW」は、8質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%未満、の架橋率で調製される。
【0093】
この架橋は、期待された修飾度を得る為に、様々な温度及び時間で行われる。
【0094】
従って、室温、すなわち15℃~25℃で変わる温度、で行われる架橋は、5時間超又は更には10時間以上、の反応時間を必要としうる。
【0095】
他方では、刺激要素、例えば加熱、UV曝露、マイクロ波曝露又は触媒により、好ましくは加熱の使用により、刺激された架橋は、有意に増加された架橋度及び5時間未満の持続期間を有することができる。
【0096】
特定の実施態様において、0.50MDa以上、好ましくは1.00MDa超、より好ましくは1.00MDa~4.00MDa、のモル質量の架橋されていないグリコサミノグリカン、特に架橋されていないヒアルロン酸、の架橋は、40℃超、好ましくは50℃超、更に特には45℃~60℃、又は更に良くは50℃~55℃、の温度で行われる。
【0097】
このような架橋は、有利なことには、30~300分、好ましくは100~240分、の持続期間を有する。
【0098】
特には好ましい実施態様において、0.50MDa以上、好ましくは1.00MDa超、より好ましくは1.00MDa~4.00MDa、のモル質量の架橋されていないヒアルロン酸の架橋は、室温、すなわち15℃~25℃の温度、で行われる。
【0099】
このような架橋は、有利なことには、5時間超、又は更には10時間超、特に10時間~100時間、の反応時間を有する。
【0100】
好ましくは、本発明に従う方法において使用される該架橋剤は、エポキシ架橋剤、好ましくは1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)、である。
【0101】
使用される該架橋剤が、二官能性又は多官能性エポキシ架橋剤、例えばBDDE、である特定の実施態様において、該水性媒体のpHは、該架橋反応を活性化する為に、塩基性又は酸性にされる。特定の実施態様に従うと、該水性媒体は、一般的に水酸化ナトリウムを含む溶液で塩基性にされ、好ましくは該水性媒体のpHは、11以上であり、より好ましくは該水性媒体のpHは、12以上である。
【0102】
好ましい実施態様に従うと、工程a)の該水性媒体の「架橋されたHMWグリコサミノグリカン」、更に特には「架橋されたHMW HA」、の濃度は、工程c)の最後に、「架橋されたHMWグリコサミノグリカン」、更に特には「架橋されたHMW HA」、の濃度が該水性ゲルの総質量に対して少なくとも5mg/gになる水性ゲルを形成するように調整される。
【0103】
好ましくは、本発明に従う方法は、5~15mg/gの「架橋されたHA HMW」を含む水性溶液を使用する。
【0104】
工程B)
本発明の方法の工程b)は、その一部について、少なくとも1種の「架橋されていないグリコサミノグリカンLMW」、特に少なくとも1種の「架橋されていないHA LMW」、を含む水性溶液を用意することを必要とする。
【0105】
好ましくは、工程b)の該水性溶液において考慮される「架橋されていないグリコサミノグリカンLMW」、特に「架橋されていないHA LMW」、の濃度は、工程c)の最後に、該「架橋されていないグリコサミノグリカンLMW」濃度、特に「架橋されていないHA LMW」濃度、が該水性ゲルの総質量に対して少なくとも3mg/g、好ましくは10mg/g、になる水性ゲルを形成するように調整される。
【0106】
好ましくは、本発明に従う方法は、50~60mg/gの「架橋されていないHA LMW」を含む水性溶液を使用する。
【0107】
以下に詳説される通り、本発明に従う方法はまた、工程a)及びb)について定義されたものとは異なるグリコサミノグリカン、特にヒアルロン酸、の使用を含みうる。
【0108】
工程C)
前述の通り、工程c)は、工程a)及びb)において得られた該溶液の少なくとも一部又は全てから、均質混合物を形成することにある。
【0109】
工程c)において考慮される均質混合物の形成は、有利なことには、少なくとも1つの均質化工程を含む。
【0110】
該均質化は、有利なことには、使用された該グリコサミノグリカン鎖の分解を予防する為に、穏やかな条件下で行われる。
【0111】
少なくとも1種の架橋されたグリコサミノグリカン及び少なくとも1種の架橋されていないグリコサミノグリカン、特に少なくとも1種の架橋されたヒアルロン酸及び少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸、の均質混合物を形成するこの工程c)は、慣用的な均質化方法、例えば三次元撹拌、パドルミキサー撹拌、ヘラ撹拌及び/又は少なくとも1つのグリッドを通す押し出し工程、に従って行われることができる。
【0112】
優先的な実施態様に従うと、工程c)は、該形成された混合物を、少なくとも1つのグリッドを通じて押し出す少なくとも1つの工程を含む。このようなグリッドの特徴の調整は、当業者の一般知識の一部である。古典的には、該グリッドは、形成されることになる混合物に期待される特性の関数として、グリコサミノグリカンの該溶液、特にヒアルロン酸の該溶液、のそれぞれの特異性を考慮して、それらを結び付けて選択される。
【0113】
従って、特定の実施態様に従うと、この工程c)は、パドルミキサーを用いて均質化する少なくとも1つの工程に続いて、少なくとも1つのグリッドを通して該混合物を押し出す少なくとも1つの工程を含む。
【0114】
均質化は、得られたゲルが巨視的に、肉眼に及び触覚に対して均質な色、均一な粘度を有し、凝集物を含まない場合、満足であるとみなされる。該均質化の持続期間は、当業者の一般知識に従って当業者によって評価される。該均質化は、特に、該ゲルにおける該グリコサミノグリカン、特に該ヒアルロン酸、の均質化の質を評価する為に、任意的に休止期によって時間を隔てられた幾つかのサイクルを含みうる。
【0115】
更に特には、本発明に従う工程c)は、全持続期間が200分未満、好ましくは150分未満、又は更には5~100分の持続期間、である均質化を含みうる。
【0116】
架橋されていないHMWグリコサミノグリカン、特に架橋されていないHMWヒアルロン酸
特定の実施態様において、本発明に従う方法はまた、「架橋されていないHMWグリコサミノグリカン」と呼ばれる、0.50MDa以上、好ましくは1.00MDa超、より好ましくは1.00MDa~4.00MDaの、のモル質量の少なくとも1種の架橋されていないグリコサミノグリカンの使用、特に「架橋されていないHA HMW」と呼ばれる、0.50MDa以上、好ましくは1.00MDa超、より好ましくは1.00MDa~4.00MDaの、の質量平均モル質量の少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸の使用、を考慮する。
【0117】
好ましくは、該「架橋されていないHMWグリコサミノグリカン」、特に該「架橋されていないHA HMW」は、水性溶液内で使用される。この水性溶液は、工程a)及びb)で考慮された該水性溶液の1種とは異なっていてもよく、又は共通していてもよい。
【0118】
代替の実施態様に従うと、該「架橋されていないグリコサミノグリカンHMW」、特に該「架橋されていないHA HMW」、の全て又は一部は、工程b)の該水性溶液において使用される。
【0119】
別の代替実施態様に従うと、該「架橋されていないHMWグリコサミノグリカン」、特に該「架橋されていないHA HMW」、の全て又は一部は、工程a)及びb)の該水性溶液とは異なる水性溶液の形態で使用される。この代替に従って、該「架橋されていないHMWグリコサミノグリカン」、特に該「架橋されていないHA HMW」、の全て又は一部を含む該水性溶液、及び工程b)の該水性溶液は、工程a)の該水性溶液と同時に又は逐次的に混合される。
【0120】
好ましくは、本発明に従う方法は、工程b)において、5~15mg/gの「架橋されていないHA HMW」を含む水性溶液を使用する。
【0121】
添加剤
特定の実施態様において、本発明は、麻酔剤、抗酸化剤、アミノ酸、ビタミン、ミネラル、核酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、コエンザイム、アドレナリン誘導体、リン酸二水素ナトリウム一水和物及び/又は二水和物、並びに塩化ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を使用することを更に含む、上記の方法に関する。
【0122】
滅菌
従って、本発明の一つの観点に従うと、該ゲルの無菌性を維持する為には、使用される原料は無菌であり、その投与デバイスへのそのパッケージングを含む該ゲルの調製は、制御された大気条件下で行われる。
【0123】
別の観点に従うと、本発明は、無菌の且つ注射可能な水性ゲルを調製する方法であって、本発明に従う方法によって得られた水性ゲルを使用すること又は本発明において定義されている通りの水性ゲルを使用することのうちの少なくとも1つ、及び、滅菌すること、特にオートクレーブ内で滅菌すること、の工程を含む、上記の方法に関する。
【0124】
更に特には、本発明に従う水性ゲルを調製する方法は、
a)0.50MDa以上、好ましくは1.00MDa超、より好ましくは1.00MDa~4.00MDa、のモル質量の架橋されていないグリコサミノグリカンと、架橋剤とから形成された、「架橋されたグリコサミノグリカンHMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されたグリコサミノグリカンを含む水性溶液を用意すること、
b)0.04MDa~0.30MDa、好ましくは0.08MDa~0.20MDa、より好ましくは0.08MDa~0.15MDa、のモル質量の、「架橋されていないグリコサミノグリカンLMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないグリコサミノグリカンを含む水性溶液を用意すること、
c)工程a)及びb)からの該溶液の全て又は一部の均質混合物を形成し、それが、特にオートクレーブ内で滅菌されること
の工程を少なくとも含む。
【0125】
更に特には、本発明に従う水性ゲルを調製する方法は、
a)0.50MDa以上、好ましくは1.00MDa超、より好ましくは1.00MDa~4.00MDa、の質量平均モル質量の架橋されていないヒアルロン酸と、架橋剤とから形成された、「架橋されたHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されたヒアルロン酸を含む水性溶液を用意すること、
b)0.04MDa~0.30MDa、好ましくは0.08MDa~0.20MDa、より好ましくは0.08MDa~0.15MDa、の質量平均モル質量の、「架橋されていないHA LMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸を含む水性溶液を用意すること、
c)工程a)及びb)の該溶液の全て又は一部の均質混合物を形成し、それが、特にオートクレーブ内で滅菌されること
の工程を少なくとも含み、
「架橋されていないHA LMW」と「HA HMW」との質量比が1:3~2:1の、ヒアルロン酸の使用を含むことを特徴とする、
上記の方法に関する。
【0126】
この滅菌は好ましくは、その投与デバイス、一般的にシリンジ、内に予めパッケージされた製品に対して行われる。
【0127】
従って、有利なことには、本発明に従う方法によって得ることができる水性ゲルは、その滅菌の前にシリンジにパッケージされる。
【0128】
好ましくは、該方法は、単一滅菌工程を含む。
【0129】
好ましくは、該滅菌工程は、熱的手段によって、例えばオートクレーブ内で、特に120℃~140℃の温度で、行われる。
【0130】
特に、該滅菌工程は、オートクレーブ内で、湿式加熱条件下、121℃以上、好ましくは121℃~135℃、のプラトー温度で15超のF0(滅菌値)で行われる。本発明に従って、該滅菌値F0は、滅菌されるべき該製品に存在する微生物の集団の90%を121℃で不活性化するのに必要な時間(分)に対応する。
【0131】
水性ゲル
先に言及されている通り、本発明の一つの観点は、架橋されたヒアルロン酸を含むヒアルロン酸ベースの水性ゲルであって、該ゲルが、
ヒアルロン酸の総質量に対して30質量%~70質量%の量の、0.02MDa~0.30MDaの質量平均モル質量を有する、「sHA LMW」と呼ばれる水溶性ヒアルロン酸、及び
任意的に、0.30MDa超の質量平均モル質量を有する、「sHA HMW」と呼ばれる水溶性ヒアルロン酸
を少なくとも含むことを特徴とし、
全水溶性ヒアルロン酸が、5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下、の修飾度を有し、可溶性ヒアルロン酸のそれぞれのパーセンテージが、該水性ゲルを、0.02%のNaN3を含む150nMの硝酸ナトリウムのpH7.2の溶液内で、25℃において5日間希釈し、そして、それを4400rpmで10分間遠心分離し、そして、そのように希釈されたゲルを0.45mmで濾過して濾液を得、次に該濾液を、マルチアングル光散乱(MALS)検出器と、屈折率増分(dn/dc)が0.165mL/gに設定された屈折率(RI)検出器とを備えているサイズ排除クロマトグラフィー計器を用いて分析すること、及び0.3mL/分の流量でpH7.2の硝酸ナトリウム移動相を用いる、0.001Da~20MDaから構成された質量平均モル質量を有する分子に適合させられたデュアルセットのサイズ排除カラムを備えている液体クロマトグラフィーポンピングステーションを用いて分析することによって決定されることを特徴とする、
上記のヒアルロン酸ベースの水性ゲルである。
【0132】
特定の実施態様において、本発明に従う水性ゲルは、軟質ゲル、すなわち周波数1Hzにおいてオシレーション応力掃引を適用する、コーン/プレート構造(円錐角1°/プレート直径40mm)を有するレオメーター(TA Instruments DHR2)を使用して、5Paの応力について室温で測定された、15°~50°の位相角(δ)と、150Pa以下、好ましくは20~150Pa、の弾性率G’とを有し、並びに外径0.3mm(30G)以下及び長さ1/2インチのニードルを有する内径6.3mm以上のシリンジにおいて、約12.5mm/分の固定速度で、室温で測定された、18N以下、好ましくは15N未満、の押し出し力とを有する上記のゲルである。
【0133】
特定の実施態様において、本発明に従う水性ゲルは、該水性ゲルの総質量に対して35質量%~65質量%の「sHA LMW」を含む。
【0134】
特定の実施態様において、本発明に従う水性ゲル中、「sHA LMW」と呼ばれる該水溶性ヒアルロン酸は、0.04MDa~0.20MDa、好ましくは0.04MDa~0.15MDa、の質量平均モル質量を有する。
【0135】
特定の実施態様において、本発明に従う水性ゲル中、「sHA HMW」と呼ばれる該水溶性ヒアルロン酸は、0.30MDa超且つ4.00MDa以下の質量平均モル質量を有する。
【0136】
特定の実施態様において、本発明に従う水性ゲルは、該水性ゲルの総質量に対して10質量%~30質量%、好ましくは15質量%~20質量%、の「sHA HMW」を含む。
【0137】
特定の実施態様において、本発明に従う水性ゲル中、該架橋されたヒアルロン酸は、該水性ゲルの総質量に対して少なくとも5mg/gの量で存在する。
【0138】
特定の実施態様において、本発明に従う水性ゲル中、「sHA LMW」と呼ばれる該水溶性ヒアルロン酸は、該水性ゲルの総質量に対して少なくとも3mg/g、好ましくは少なくとも10mg/g、の量で存在する。
【0139】
特定の実施態様において、本発明に従う水性ゲル中、該総ヒアルロン酸濃度は、該水性ゲルの総質量に対して10~40mg/g、好ましくは15~35mg/g、より好ましくは20~30mg/g、である。
【0140】
特定の実施態様において、本発明に従う水性ゲル中、該全ヒアルロン酸の修飾度は、5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下、である。
【0141】
特定の実施態様に従うと、本発明において定義されている通りの水性ゲル中、
該架橋されたヒアルロン酸は、該水性ゲルの総質量に対して6mg/g~12mg/gの量で存在し、
「sHA LMW」と呼ばれる該水溶性ヒアルロン酸は、該水性ゲルの総質量に対して12mg/g~20mg/gの量で存在し、
「sHA HMW」と呼ばれる該水溶性ヒアルロン酸は、該水性ゲルの総質量に対して3mg/g~6mg/gの量で存在し、
該水性ゲルは、該水性ゲルの総質量に対して20~30mg/gの総ヒアルロン酸濃度を含む。
【0142】
特定の実施態様において、本発明に従う水性ゲルは、例えばオートクレーブ内で、加熱滅菌工程に付される。
【0143】
ヒアルロン酸は、強酸性及びアルカリ性pH、高温(例えば、加熱滅菌中)、酸化(例えば、活性酸素種)及び酵素活性に対して感度が高いことが知られている(Stern R,Kogan G,Jedrzejas MJ,et al.The many ways to cleave hyaluronan.Biotechnol Adv 2007;25:537-57)。
【0144】
結果として、架橋されたヒアルロン酸を含む組成物を製造する為の製造方法、とりわけ適用された架橋条件、はヒアルロン酸鎖を分解して、可溶性LMWヒアルロン酸を放出する傾向がある。このようなLMWヒアルロン酸の断片は、使用された架橋剤によって、例えばBDDEによって、少なくとも部分的に修飾される。
【0145】
それとは対照的に、該調製方法中に添加された、架橋されていないLMWヒアルロン酸由来の可溶性ヒアルロン酸は、BDDEで修飾されない。
【0146】
BDDEによる修飾は、修飾度測定(MOD)によって可視化されうる。この状況において、可溶性ヒアルロン酸のMODが高いほど、該研究されるゲルの調製方法中に生じたLMWヒアルロン酸の断片の割合が高く、該調製方法中に添加されたLMWヒアルロン酸由来の可溶性ヒアルロン酸の割合が低い。
【0147】
これは、実施例7において示されている。
【0148】
前述のヒアルロン酸の切断は、熱による滅菌の前の、ゲルにおける添加されたヒアルロン酸のモル質量が、滅菌されたゲルにおいて測定された可溶性ヒアルロン酸のモル質量よりも高いことを説明する。
【0149】
このような感度はまた、他のグリコサミノグリカンについても当てはまる。
【0150】
実際、「sHA」は、
該ゲルの調製方法中、該架橋工程a)後に添加された架橋されていないHA LMW、及び
存在する場合には、該ゲルの調製方法中、架橋工程a)後に添加された架橋されていないHA HMW、及び
該ゲルの調製方法中に放出されたHA断片(該HA断片は、架橋剤、例えばBDDE、で少なくとも部分的に修飾されている)
に対応する。
【0151】
従って、「sHA LMW」の量は、
該ゲルの調製方法中、架橋工程a)後に添加された架橋されていないHA LMWと、
存在する場合には、該ゲルの調製方法中、架橋工程a)後に添加された架橋されていないHA HMWと
の量に少なくとも等しい。
【0152】
それとは対照的に、「nsHA」は、架橋されたHAに対応する。
【0153】
特定の実施態様に従うと、本発明に従う水性ゲルは、
ヒアルロン酸の総質量に対して30質量%~70質量%の量の、0.04MDa~0.20MDaの質量平均モル質量を有する、「sHA LMW」と呼ばれる水溶性ヒアルロン酸、及び
任意的に、0.30MDa超且つ4.00MDa以下の質量平均モル質量を有する、「sHA HMW」と呼ばれる水溶性ヒアルロン酸
を少なくとも含み、
全水溶性ヒアルロン酸が、5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下、の修飾度を有し、
可溶性ヒアルロン酸のそれぞれのパーセンテージが、該水性ゲルを、0.02%のNaN3を含む150nMの硝酸ナトリウムのpH7.2の溶液内で、25℃において5日間希釈し、そして、それを4400rpmで10分間遠心分離し、そして、そのように希釈されたゲルを0.45mmで濾過して濾液を得、次に該濾液を、マルチアングル光散乱(MALS)検出器と、屈折率増分(dn/dc)が0.165mL/gに設定された屈折率(RI)検出器とを備えているサイズ排除クロマトグラフィー計器を用いて分析すること、及び0.3mL/分の流量でpH7.2の硝酸ナトリウム移動相を用いる、0.001Da~20MDaから構成された質量平均モル質量を有する分子に適合させられたデュアルセットのサイズ排除カラムを備えている液体クロマトグラフィーポンピングステーションを用いて分析することによって決定される
ことを特徴とする。特定の実施態様に従うと、本発明に従う水性ゲルは、
ヒアルロン酸の総質量に対して30質量%~70質量%の量の、0.04MDa~0.15MDaの質量平均モル質量を有する、「sHA LMW」と呼ばれる水溶性ヒアルロン酸、及び
任意的に、0.30MDa超且つ4.00MDa以下の質量平均モル質量を有する、「sHA HMW」と呼ばれる水溶性ヒアルロン酸
を少なくとも含み、
全水溶性ヒアルロン酸が、5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下、の修飾度を有し、
可溶性ヒアルロン酸のそれぞれのパーセンテージが、該水性ゲルを、0.02%のNaN3を含む150nMの硝酸ナトリウムのpH7.2の溶液内で、25℃において5日間希釈し、そして、それを4400rpmで10分間遠心分離し、そして、そのように希釈されたゲルを0.45mmで濾過して濾液を得、次に該濾液を、マルチアングル光散乱(MALS)検出器と、屈折率増分(dn/dc)が0.165mL/gに設定された屈折率(RI)検出器とを備えているサイズ排除クロマトグラフィー計器を用いて分析すること、及び0.3mL/分の流量でpH7.2の硝酸ナトリウム移動相を用いる、0.001Da~20MDaから構成された質量平均モル質量を有する分子に適合させられたデュアルセットのサイズ排除カラムを備えている液体クロマトグラフィーポンピングステーションを用いて分析することによって決定される
ことを特徴とする。
【0154】
特定の実施態様に従うと、本発明に従う水性ゲルは、
ヒアルロン酸の総質量に対して35質量%~65質量%の量の、0.02MDa~0.30MDaの質量平均モル質量を有する、「sHA LMW」と呼ばれる水溶性ヒアルロン酸、及び
任意的に、0.30MDa超の質量平均モル質量を有する、「sHA HMW」と呼ばれる水溶性ヒアルロン酸
を少なくとも含み、
全水溶性ヒアルロン酸が、5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下、の修飾度を有し、
可溶性ヒアルロン酸のそれぞれのパーセンテージが、該水性ゲルを、0.02%のNaN3を含む150nMの硝酸ナトリウムのpH7.2の溶液内で、25℃において5日間希釈し、そして、それを4400rpmで10分間遠心分離し、そして、そのように希釈されたゲルを0.45mmで濾過して濾液を得、次に該濾液を、マルチアングル光散乱(MALS)検出器と、屈折率増分(dn/dc)が0.165mL/gに設定された屈折率(RI)検出器とを備えているサイズ排除クロマトグラフィー計器を用いて分析すること、及び0.3mL/分の流量でpH7.2の硝酸ナトリウム移動相を用いる、0.001Da~20MDaから構成された質量平均モル質量を有する分子に適合させられたデュアルセットのサイズ排除カラムを備えている液体クロマトグラフィーポンピングステーションを用いて分析することによって決定される
ことを特徴とする。
【0155】
特定の実施態様に従うと、本発明に従う水性ゲルは、
ヒアルロン酸の総質量に対して35質量%~65質量%の量の、0.04MDa~0.20MDaの質量平均モル質量を有する、「sHA LMW」と呼ばれる水溶性ヒアルロン酸、及び
任意的に、0.30MDa超且つ4.00MDa以下の質量平均モル質量を有する、「sHA HMW」と呼ばれる水溶性ヒアルロン酸
を少なくとも含み、
全水溶性ヒアルロン酸が、5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下、の修飾度を有し、
可溶性ヒアルロン酸のそれぞれのパーセンテージが、該水性ゲルを、0.02%のNaN3を含む150nMの硝酸ナトリウムのpH7.2の溶液内で、25℃において5日間希釈し、そして、それを4400rpmで10分間遠心分離し、そして、そのように希釈されたゲルを0.45mmで濾過して濾液を得、次に該濾液を、マルチアングル光散乱(MALS)検出器と、屈折率増分(dn/dc)が0.165mL/gに設定された屈折率(RI)検出器とを備えているサイズ排除クロマトグラフィー計器を用いて分析すること、及び0.3mL/分の流量でpH7.2の硝酸ナトリウム移動相を用いる、0.001Da~20MDaから構成された質量平均モル質量を有する分子に適合させられたデュアルセットのサイズ排除カラムを備えている液体クロマトグラフィーポンピングステーションを用いて分析することによって決定される
ことを特徴とする。
【0156】
特定の実施態様に従うと、本発明に従う水性ゲルは、
ヒアルロン酸の総質量に対して35質量%~65質量%の量の、0.04MDa~0.15MDaの質量平均モル質量を有する、「sHA LMW」と呼ばれる水溶性ヒアルロン酸、及び
任意的に、0.30MDa超且つ4.00MDa以下の質量平均モル質量を有する、「sHA HMW」と呼ばれる水溶性ヒアルロン酸
を少なくとも含み、
全水溶性ヒアルロン酸が、5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下、の修飾度を有し、
可溶性ヒアルロン酸のそれぞれのパーセンテージが、該水性ゲルを、0.02%のNaN3を含む150nMの硝酸ナトリウムのpH7.2の溶液内で、25℃において5日間希釈し、そして、それを4400rpmで10分間遠心分離し、そして、そのように希釈されたゲルを0.45mmで濾過して濾液を得、次に該濾液を、マルチアングル光散乱(MALS)検出器と、屈折率増分(dn/dc)が0.165mL/gに設定された屈折率(RI)検出器とを備えているサイズ排除クロマトグラフィー計器を用いて分析すること、及び0.3mL/分の流量でpH7.2の硝酸ナトリウム移動相を用いる、0.001Da~20MDaから構成された質量平均モル質量を有する分子に適合させられたデュアルセットのサイズ排除カラムを備えている液体クロマトグラフィーポンピングステーションを用いて分析することによって決定される
ことを特徴とする。先に言及されている通り、本発明はまた、本発明に従う方法によって得ることができる水性ゲルに関する。
【0157】
工程c)の最後に、少なくとも1種の「架橋されていないLMWグリコサミノグリカン」、及び少なくとも1種の「架橋されたHMWグリコサミノグリカン」を含む「HMWグリコサミノグリカン」、を含む均質な水性ゲルが得られる。
【0158】
有利なことには、本発明に従う方法によって得ることができる水性ゲルは、その総質量に対して10~40mg/g、好ましくは15~35mg/g、より好ましくは20~30mg/g、の全グリコサミノグリカン濃度を含む。
【0159】
本発明に従う方法によって得ることができる水性ゲルはまた、「架橋されていないグリコサミノグリカンLMW」と「グリコサミノグリカンHMW」との質量比が1:4~4:1、好ましくは1:3~5:3、より好ましくは1:2~2:1、であることによって特徴付けられうる。
【0160】
特定の実施態様に従うと、該水性ゲルは、該グリコサミノグリカンの修飾度が5%未満、好ましくは3%未満、より好ましくは1%未満、である。
【0161】
更に特には、工程c)の最後に、少なくとも1種の「架橋されていないHA LMW」、及び少なくとも1種の「架橋されたHA HMW」を含む「HA HMW」、を含む均質な水性ゲルが得られる。
【0162】
有利なことには、本発明に従う方法によって得ることができる水性ゲルは、その総質量に対して10~40mg/g、好ましくは15~35mg/g、より好ましくは20~30mg/g、の総ヒアルロン酸濃度を含む。
【0163】
一つの実施態様に従うと、本発明に従う方法によって得ることができる水性ゲルはまた、「架橋されていないHA LMW」と「HA HMW」との質量比が1:3~5:3、好ましくは1:2~5:3、であることによって特徴付けられる。
【0164】
特定の実施態様に従うと、該水性ゲルは、5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下、の該ヒアルロン酸の修飾度を有する。
【0165】
別の特定の実施態様に従うと、本発明に従う方法によって得られた該水性ゲルは、軟質ゲル、すなわち周波数1Hzにおいてオシレーション応力掃引を適用する、コーン/プレート構造(円錐角1°/プレート直径40mm)を有するレオメーター(TA Instruments DHR2)を使用して、5Paの応力について室温で測定された、15°~50°の位相角(δ)と、150Pa以下、好ましくは20~150Pa、の弾性率G’とを有し、並びに外径0.3mm(30G)以下及び長さ1/2インチのニードルを有する内径6.3mm以上のシリンジにおいて、約12.5mm/分の固定速度で、室温で測定された、18N以下、好ましくは15N未満、の押し出し力とを有する上記のゲルである。
【0166】
本発明の一つの実施態様に従うと、該水性ゲルは、
工程a)において、5~15mg/gの「架橋されたグリコサミノグリカンHMW」を含む水性溶液、
工程b)において、50~60mg/gの「架橋されていないグリコサミノグリカンLMW」及び5~20mg/gの「架橋されていないグリコサミノグリカンHMW」を含む水性溶液
を使用する方法の最後に得られ、形成された該ゲルは、その総質量に対して20~30mg/gの全グリコサミノグリカン濃度を有する。
【0167】
本発明の一つの実施態様に従うと、該水性ゲルは、
工程a)において、5~15mg/gの「架橋されたHA HMW」を含む水性溶液、
工程b)において、50~60mg/gの「架橋されていないHA LMW」及び5~20mg/gの「架橋されていないHA HMW」を含む水性溶液
を使用する方法の最後に得られ、形成された該ゲルは、その総質量に対して20~30mg/gの総ヒアルロン酸濃度を有する。
【0168】
本発明に従う方法によって得ることができる水性ゲルであって、その総質量に対して10~40mg/g、好ましくは15~35mg/g、より好ましくは20~30mg/g、の全グリコサミノグリカン濃度を有する上記水性ゲルの代表は、特に、
0.50MDa以上、好ましくは1.00MDa超、より好ましくは1.00MDa~4.00MDa、のモル質量の、「架橋されたグリコサミノグリカンHMW」と呼ばれる、少なくとも1種の架橋されていないグリコサミノグリカンから形成された少なくとも1種の架橋されたグリコサミノグリカン、
0.04MDa~0.30MDa、好ましくは0.08MDa~0.20MDa、より好ましくは0.08MDa~0.15MDa、またより好ましくは0.08MDa~0.10MDa、のモル質量の、「架橋されていないグリコサミノグリカンLMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないグリコサミノグリカン、及び
任意的に、0.50MDa以上、好ましくは1MDa超、より好ましくは1.00MDa~4.00MDa、のモル質量の、「架橋されていないグリコサミノグリカンHMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないグリコサミノグリカン
を使用することから得られる。
【0169】
本発明に従う方法によって得ることができる水性ゲルであって、その総質量に対して20~30mg/gの総ヒアルロン酸濃度を有する上記水性ゲルの代表は、特に、
工程a)において、5~15mg/gの「架橋されたHA HMW」を含む水性溶液、
工程b)において、50~60mg/gの「架橋されていないHA LMW」及び5~20mg/gの「架橋されていないHA HMW」を含む水性溶液
を使用することから得られる。
【0170】
本発明に従う方法によって得ることができる水性ゲルの代表は、特に、
質量平均モル質量1.00MDa超の架橋されていないヒアルロン酸と、架橋剤とから形成された、「架橋されたHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されたヒアルロン酸、
0.08MDa~0.20MDaの質量平均モル質量の、「架橋されていないHA LMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸、及び
任意的に、質量平均モル質量1.00MDa超の、「架橋されていないHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸
を使用することから得られ、
ここで、該ヒアルロン酸は、「架橋されていないHA LMW」と「HA HMW」との質量比が1:3~2:1で使用される。
【0171】
本発明に従う方法によって得ることができる水性ゲルの代表は、特に、
1.00MDa~4.00MDaの質量平均モル質量の架橋されていないヒアルロン酸と、架橋剤とから形成された、「架橋されたHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されたヒアルロン酸、
0.08MDa~0.15MDaの質量平均モル質量の、「架橋されていないHA LMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸、及び
任意的に、1.00MDa~4.00MDaの質量平均モル質量の、「架橋されていないHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸
を使用することから得られ、
ここで、該ヒアルロン酸は、「架橋されていないHA LMW」と「HA HMW」との質量比が1:3~2:1で使用される。
【0172】
本発明に従う方法によって得ることができる水性ゲルの代表は、特に、
質量平均モル質量0.50MDa以上の架橋されていないヒアルロン酸と、架橋剤とから形成された、「架橋されたHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されたヒアルロン酸、
0.04MDa~0.30MDaの質量平均モル質量の、「架橋されていないHA LMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸、及び
任意的に、質量平均モル質量0.50MDa以上の、「架橋されていないHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸
を使用することから得られ、
ここで、該ヒアルロン酸は、「架橋されていないHA LMW」と「HA HMW」との質量比が1:3~5:3で使用される。
【0173】
本発明に従う方法によって得ることができる水性ゲルの代表は、特に、
質量平均モル質量1.00MDa超の架橋されていないヒアルロン酸と、架橋剤とから形成された、「架橋されたHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されたヒアルロン酸、
0.08MDa~0.20MDaの質量平均モル質量の、「架橋されていないHA LMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸、及び
任意的に、質量平均モル質量1.00MDa超の、「架橋されていないHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸
を使用することから得られ、
ここで、該ヒアルロン酸は、「架橋されていないHA LMW」と「HA HMW」との質量比が1:3~5:3で使用される。
【0174】
本発明に従う方法によって得ることができる水性ゲルの代表は、特に、
1.00MDa~4.00MDaの質量平均モル質量の架橋されていないヒアルロン酸と、架橋剤とから形成された、「架橋されたHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されたヒアルロン酸、
0.08MDa~0.15MDaの質量平均モル質量の、「架橋されていないHA LMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸、及び
任意的に、1.00MDa~4.00MDaの質量平均モル質量の、「架橋されていないHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸
を使用することから得られ、
ここで、該ヒアルロン酸は、「架橋されていないHA LMW」と「HA HMW」との質量比が1:3~5:3で使用される。
【0175】
本発明に従う方法によって得ることができる水性ゲルの代表は、特に、
質量平均モル質量0.50MDa以上の架橋されていないヒアルロン酸と、架橋剤とから形成された、「架橋されたHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されたヒアルロン酸、
0.04MDa~0.30MDaの質量平均モル質量の、「架橋されていないHA LMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸、及び
任意的に、質量平均モル質量0.50MDa以上の、「架橋されていないHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸
を使用することから得られ、
ここで、該ヒアルロン酸は、「架橋されていないHA LMW」と「HA HMW」との質量比が1:2~5:3で使用される。
【0176】
本発明に従う方法によって得ることができる水性ゲルの代表は、特に、
質量平均モル質量1.00MDa超の架橋されていないヒアルロン酸と、架橋剤とから形成された、「架橋されたHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されたヒアルロン酸、
0.08MDa~0.20MDaの質量平均モル質量の、「架橋されていないHA LMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸、及び
任意的に、質量平均モル質量1.00MDa超の、「架橋されていないHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸
を使用することから得られ、
ここで、該ヒアルロン酸は、「架橋されていないHA LMW」と「HA HMW」との質量比が1:2~5:3で使用される。
【0177】
本発明に従う方法によって得ることができる水性ゲルの代表は、特に、
1.00MDa~4.00MDaの質量平均モル質量の架橋されていないヒアルロン酸と、架橋剤とから形成された、「架橋されたHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されたヒアルロン酸、
0.08MDa~0.15MDaの質量平均モル質量の、「架橋されていないHA LMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸、及び
任意的に、1.00MDa~4.00MDaの質量平均モル質量の、「架橋されていないHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸
を使用することから得られ、
ここで、該ヒアルロン酸は、「架橋されていないHA LMW」と「HA HMW」との質量比が1:2~5:3で使用される。
【0178】
本発明に従う方法によって得ることができる水性ゲルであって、その総質量に対して10~40mg/g、好ましくは15~35mg/g、より好ましくは20~30mg/g、の全ヒアルロン酸を有する上記水性ゲルの代表は、特に、
0.50MDa以上、好ましくは1.00MDa超、より好ましくは1.00MDa~4.00MDa、の質量平均モル質量の少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸と、架橋剤とから形成された、「架橋されたHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されたヒアルロン酸、
0.04MDa~0.30MDa、好ましくは0.08MDa~0.20MDa、より好ましくは0.08MDa~0.15MDa、の質量平均モル質量の、「架橋されていないHA LMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸、及び
任意的に、0.50MDa以上、好ましくは1.00MDa超、より好ましくは1.00MDa~4.00MDa、の質量平均モル質量の、「架橋されていないHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸
を使用することから得られ、
ここで、該ヒアルロン酸は、「架橋されていないHA LMW」と「HA HMW」との質量比が1:3~2:1で使用される。
【0179】
本発明に従う方法によって得ることができる水性ゲルであって、その総質量に対して10~40mg/gの全ヒアルロン酸を有する上記水性ゲルの代表は、特に、
質量平均モル質量1.00MDa超の少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸と、架橋剤とから形成された、「架橋されたHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されたヒアルロン酸、
0.08MDa~0.20MDaの質量平均モル質量の、「架橋されていないHA LMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸、及び
任意的に、質量平均モル質量1.00MDa超の、「架橋されていないHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸
を使用することから得られ、
ここで、該ヒアルロン酸は、「架橋されていないHA LMW」と「HA HMW」との質量比が1:3~2:1で使用される。
【0180】
本発明に従う方法によって得ることができる水性ゲルであって、その総質量に対して20~30mg/gの全ヒアルロン酸を有する上記水性ゲルの代表は、特に、
質量平均モル質量1.00MDa超の少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸と、架橋剤とから形成された、「架橋されたHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されたヒアルロン酸、
0.08MDa~0.20MDaの質量平均モル質量の、「架橋されていないHA LMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸、及び
任意的に、質量平均モル質量1.00MDa超の、「架橋されていないHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸
を使用することから得られ、
ここで、該ヒアルロン酸は、「架橋されていないHA LMW」と「HA HMW」との質量比が1:3~2:1で使用される。
【0181】
本発明に従う方法によって得ることができる水性ゲルであって、その総質量に対して10~40mg/gの全ヒアルロン酸を有する上記水性ゲルの代表は、特に、
1.00MDa~4.00MDaの質量平均モル質量の少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸と、架橋剤とから形成された、「架橋されたHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されたヒアルロン酸、
0.08MDa~0.15MDaの質量平均モル質量の、「架橋されていないHA LMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸、及び
任意的に、1.00MDa~4.00MDaの質量平均モル質量の、「架橋されていないHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸
を使用することから得られ、
ここで、該ヒアルロン酸は、「架橋されていないHA LMW」と「HA HMW」との質量比が1:3~2:1で使用される。
【0182】
本発明に従う方法によって得ることができる水性ゲルであって、その総質量に対して20~30mg/gの全ヒアルロン酸を有する上記水性ゲルの代表は、特に、
1.00MDa~4.00MDaの質量平均モル質量の少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸と、架橋剤とから形成された、「架橋されたHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されたヒアルロン酸、
0.08MDa~0.15MDaの質量平均モル質量の、「架橋されていないHA LMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸、及び
任意的に、1.00MDa~4.00MDaの質量平均モル質量の、「架橋されていないHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸
を使用することから得られ、
ここで、該ヒアルロン酸は、「架橋されていないHA LMW」と「HA HMW」との質量比が1:3~2:1で使用される。
【0183】
本発明に従う方法によって得ることができる水性ゲルであって、その総質量に対して10~40mg/g、好ましくは15~35mg/g、より好ましくは20~30mg/g、の全ヒアルロン酸を有する水性ゲルの上記代表は、特に、
0.50MDa以上、好ましくは1.00MDa超、より好ましくは1.00MDa~4.00MDa、の質量平均モル質量の少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸と、架橋剤とから形成された、「架橋されたHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されたヒアルロン酸、
0.04MDa~0.30MDa、好ましくは0.08MDa~0.20MDa、より好ましくは0.08MDa~0.15MDa、の質量平均モル質量の、「架橋されていないHA LMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸、及び
任意的に、0.50MDa以上、好ましくは1.00MDa超、より好ましくは1.00MDa~4.00MDa、の質量平均モル質量の、「架橋されていないHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸
を使用することから得られ、
ここで、該ヒアルロン酸は、「架橋されていないHA LMW」と「HA HMW」との質量比が1:3~5:3で使用される。
【0184】
本発明に従う方法によって得ることができる水性ゲルであって、その総質量に対して10~40mg/g、好ましくは15~35mg/g、より好ましくは20~30mg/g、の全ヒアルロン酸を有する上記水性ゲルの代表は、特に、
0.50MDa以上、好ましくは1.00MDa超、より好ましくは1.00MDa~4.00MDa、の質量平均モル質量の少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸と、架橋剤とから形成された、「架橋されたHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されたヒアルロン酸、
0.04MDa~0.30MDa、好ましくは0.08MDa~0.20MDa、より好ましくは0.08MDa~0.15MDa、の質量平均モル質量の、「架橋されていないHA LMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸、及び
任意的に、0.50MDa以上、好ましくは1.00MDa超、より好ましくは1.00MDa~4.00MDa、の質量平均モル質量の、「架橋されていないHA HMW」と呼ばれる少なくとも1種の架橋されていないヒアルロン酸
を使用することから得られ、
ここで、該ヒアルロン酸は、「架橋されていないHA LMW」と「HA HMW」との質量比が1:2~5:3で使用される。
【0185】
当然のことながら、本発明に従う方法によって得ることができる水性ゲルはまた、この種類の調合物において慣用的に考慮される1以上の添加剤、特に先に定義されている通りの1以上の添加剤を含みうる。
【0186】
当然のことながら、1以上の添加剤の選択及び量は、本発明に従うゲルにおいて使用されるその他の化合物との、特に該ヒアルロン酸との、不適合性の如何なるリスクも上昇させないように、且つ下記の通りの使用と適合するように、調整される。これらの調整は、当業者の一般権能内である。
【0187】
特定の実施態様において、本発明はまた、本発明に従って定義されている通りの少なくとも1つの水性ゲル、及び必要であれば麻酔剤、抗酸化剤、アミノ酸、ビタミン、ミネラル、核酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、コエンザイム、アドレナリン誘導体、リン酸二水素ナトリウム一水和物及び/又は二水和物、並びに塩化ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含む組成物に関する。
【0188】
好ましい実施態様において、該添加剤は、先に定義されている通りの麻酔剤、特にリドカイン、メピバカイン又はその塩、例えば塩酸塩、である。
【0189】
本発明の方法に従って得られたゲル及び本発明に従う水性ゲルは、皮膚の表面外観の変化の予防及び/又は処置において使用する為の組成物として、特には有用である。
【0190】
本発明に従う組成物は、化粧組成物及び/又は皮膚用組成物であることができる。
【0191】
これらの組成物は、局所的に投与されることができるが、特に皮膚の表層帯域における、すなわち上層及び中層真皮における、注射によっても投与されることができる。
【0192】
注射が考慮される場合、当然のことながら、該組成物及び/又は水性ゲルは無菌であり、注射可能であることが必要である。
【0193】
本発明に従う組成物が局所組成物である場合、該組成物は、その施与に好適な任意のガレノス形態、例えばクリーム、軟膏、ローション、セラム、ゲル又は分散液の形態、であることができる。
【0194】
当業者に周知の任意の好適な賦形剤が、望まれる徴候に応じた適量で、本発明に従う組成物に含まれることができる。
【0195】
更に別の観点に従うと、本発明は、前述の通りの滅菌プロセスに従って滅菌された、注射可能な水性ゲルに関する。
【0196】
本発明に従う方法によって得ることができるこのような水性ゲルの代表は、特に、
該水性ゲルの総質量に対して0.6~0.8質量%の少なくとも1種の「架橋されたグリコサミノグリカンHMW」、
該水性ゲルの総質量に対して1.4~1.8質量%の少なくとも1種の「架橋されていないグリコサミノグリカンLMW」、及び
該水性ゲルの総質量に対して0.2~0.4質量%の少なくとも1種の「架橋されていないグリコサミノグリカンHMW」
を含み、
全グリコサミノグリカン濃度が20~30mg/gであり、周波数1Hzにおいてオシレーション応力掃引を適用する、コーン/プレート構造(円錐角1°/プレート直径40mm)を有するレオメーター(TA Instruments DHR2)を使用して、5Paの応力について室温で測定された、15°~50°の位相角(δ)と、20~150PaのG’とを有し、並びに外径0.3mm(30G)以下及び長さ1/2インチのニードルを有する外径6.3mm以上のシリンジにおいて、ダイナモメーターを約12.5mm/分の固定速度で用いて室温で測定された場合に、15N以下の押し出し力とを有する、
上記の水性ゲルである。
【0197】
本発明に従う方法によって得ることができるこのような水性ゲルの代表は、特に、
該水性ゲルの総質量に対して0.6~1.0質量%の少なくとも1種の「架橋されたHA HMW」
該水性ゲルの総質量に対して1.4~1.8質量%の少なくとも1種の「架橋されていないHA LMW」、及び
該水性ゲルの総質量に対して0.2~0.6質量%の少なくとも1種の「架橋されていないHA HMW」
を含み、
総ヒアルロン酸濃度が20~30mg/gであり、周波数1Hzにおいてオシレーション応力掃引を適用する、コーン/プレート構造(円錐角1°/プレート直径40mm)を有するレオメーター(TA Instruments DHR2)を使用して、5Paの応力について室温で測定された、15°~50°の位相角(δ)と、20~150PaのG’とを有し、並びに外径0.3mm(30G)以下及び長さ1/2インチのニードルを有する外径6.3mm以上のシリンジにおいて、ダイナモメーターを約12.5mm/分の固定速度で用いて室温で測定された場合、18N以下の押し出し力とを有する、
上記の水性ゲルである。
【0198】
キット
特に、本発明は、本発明に従う方法によって得ることができる水性ゲル、又は本発明において定義されている通りの水性ゲル、又は本発明に従う化粧組成物及び/又は皮膚用組成物を含む予め充填されたシリンジ(pre-filled syringe)に関する。
【0199】
更なる一つの観点に従うと、本発明は、本発明に従う方法によって得ることができる水性ゲル、又は本発明において定義されている通りの水性ゲル、又は本発明に従う化粧組成物及び/又は皮膚用組成物を含む予め充填されたシリンジと、使用の為の使用説明書とを備えているキットに関する。
【0200】
使用
別の観点に従うと、本発明は、皮膚の表面外観の変化の予防及び/又は処置において使用する為の、本発明に従う水性ゲル又は本発明に従う皮膚用組成物に関する。好ましくは、本発明は、軟組織の増大及び/又は充填において使用する為の、本発明に定義されている通りの水性ゲル又は本発明に定義されている通りの皮膚用組成物に関する。
【0201】
また、皮膚の粘弾性特性又は生体力学的特性の変化の予防及び/又は処置において使用する為の、本発明において定義されている通りの水性ゲル又は本発明に従う皮膚用組成物が記載されている。
【0202】
また、外部要因、例えばストレス、大気汚染、タバコ又は紫外(UV)光への長期間の曝露、によって誘発された皮膚徴候の予防及び/又は処置において使用する為の、本発明において定義されている通りの水性ゲル又は本発明に従う皮膚用組成物が記載されている。
【0203】
本発明はまた、皮膚の表面外観の変化を予防及び/又は処置する為の、例えば経時的老化の皮膚徴候を予防及び/又は処置する為の、本発明において定義されている通りの水性ゲル又は本発明に従う化粧組成物の、非治療的な化粧的使用に関する。
【0204】
本発明はまた、軟組織を増大及び/又は充填する、特に皺を充填する、為の、本発明において定義されている通りの水性ゲル又は本発明に従う化粧組成物の、非治療的な化粧的使用に関する。
【0205】
本発明はまた、皮膚の表面外観の変化を予防及び/又は処置する為の方法であって、有効量の本発明において定義されている通りの水性ゲル又は本発明に従う皮膚用組成物を、対象、例えばそれを必要とする患者、に局所施与する少なくとも1つの工程、又は対象、例えばそれを必要とする患者、の体内に注射によって投与する工程を含む、該方法に関する。
【0206】
本発明はまた、軟組織を増大及び/又は充填する為、特に皺を充填する為、の方法であって、有効量の本発明において定義されている通りの水性ゲル又は本発明に従う化粧組成物及び/又は皮膚用組成物を、対象、例えばそれを必要とする患者、に局所施与する少なくとも1つの工程、又は対象、例えばそれを必要とする患者、の体内に注射によって投与する工程を含む、該方法に関する。
【0207】
[実施例]
材料
別々の組の試料が、以下の様々な実施例の為に調製された。これらの連続の間には、とりわけ様々なバッチのヒアルロン酸の使用又は様々な滅菌サイクルに起因して、不可避の変動性がある。結果的に、これらの連続の間の実施例間での比較は、適切でないことに留意することが重要である。
【0208】
方法
該実施例において分析された該組成物の粘弾性特性を研究する為に、以下のプロトコルが適用される。
【0209】
試料のレオロジーの特徴付け
組成物の粘弾性特性は、レオメーター(TA Instruments DHR2)を用いて、コーン/プレート構造(円錐角1°/プレート直径40mm)を用いて室温で測定される。周波数1Hzにおいてオシレーション応力掃引測定が実施される。弾性率(G’(Pa))、位相角(δ(°))及び複素粘度(η*)は、5Paの応力について測定される。
【0210】
試料の押し出し力の特徴付け
試料の押し出し力は、30Gの1/2インチニードルを有する内径6.4mmの1mLのCOCシリンジ中、25mmの液滴路中、12.5mm/分の固定速度においてダイナモメーターを使用して、室温で決定される。
【0211】
熱の下での経時的な試料分解耐性の特徴付け
ヒアルロン酸注射可能なゲルの滅菌は、一般的に、オートクレーブ(湿式加熱滅菌プロセス)によって行われる。
【0212】
これらの組成物の保存安定性は、高温での強制分解試験(ASTM F1980-16)により、加速方式で評価されることができる。
【0213】
ゲルの分解は、有意な弾性率喪失(G’)によって特徴付けられる。
【0214】
この状況において、滅菌時のG’の喪失パーセンテージ(ΔG’(%))は、加熱滅菌下での経時的な分解に対する、該ゲルの耐性の関連指標である。
【0215】
この為に、滅菌時のG’の変化は、以下の通り計算される:
ΔG’(%)=[(滅菌後のG’-滅菌前のG’)/滅菌前のG’]×100
【0216】
加えて、G’の改善パーセンテージは、以下の通り定義されている:
G’改善(%)=[(参照試料のΔG’-研究された試料のΔG’)/参照試料のΔG’]×100
【0217】
酵素分解に対する試料の耐性の特徴付け
酵素分解に対する試料の耐性を研究する為に、該試験されたゲル2gが、リン酸緩衝食塩水中ヒアルロニダーゼ(HAase)溶液(ゲル1mL当たり0.5U)と接触させられ、ホモジナイズさせられ、次にオーブンに37℃において24時間入れられる。
【0218】
各試料は、酵素的処理の前及び後に、レオロジー測定によって特徴付けられ、分解前/後のG’の変化は、以下の通り計算される:ΔG’=[(最終G’-初期G’)/初期G’]×100。このG’の変化は、HAaseの存在下でのゲル分解度の直接的な指数である。
【0219】
試料中に存在する水溶性及び非水溶性ヒアルロン酸のサイズ及び分布の特徴付け
HAゲルから放出されたsHAのMw及び量は、マルチアングルレーザー光散乱検出器(Dawn Neon MALS、Wyatt Technology Corp)と、屈折率検出器(Optilab、Wyatt Technology Corp)とを備えているサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定された。計測手段は、広範な質量平均モル質量(0.001MDa~20MDa)を網羅する、連続流で保持されるデュアルセットのサイズ排除カラムOHpak LB-806M(Shodex)を備えているAgilent Infinity LCシステムを使用した。溶離液として、150mM硝酸ナトリウム(0.02%のNaN3を含む)のpH7.2の移動相が、0.3mL/分の流量で使用された。屈折率増分(dn/dc)は、これらの条件下で0.165mL/gに設定された。クロマトグラムが得られ、ASTRAソフトウェア(Wyatt Technology Corp)を使用して分析された。
【0220】
試料調製は、該水性ゲルを、0.02%のNaN3を含む150nMの硝酸ナトリウムのpH7.2溶液で、25℃で5日間希釈し、次に4400rpmで10分間遠心分離し、該ゲルを0.45mmで濾過して、濾液を得、次に該濾液を、前述の通りに備えられた該SECで分析することにある。
【0221】
該希釈工程の為の該移動相におけるゲルの濃度、及び該SECにおける注入体積は、シグナル対ノイズ比を最大限にし、カラム過負荷を回避する為に、上清組成物の関数として適切に調整された。
【0222】
決定されるsHAパーセンテージは、該試料におけるHAの総質量に対する水溶性HAの質量に対応する。
【0223】
試料中に存在する水溶性ヒアルロン酸の
1
H NMRによる修飾度
各試料3gが、注入の為の水10mLを用いて室温で5日間インキュベートされた。次に、該試料はわずかに遠心分離されて(4400rpm、10分)、該ゲルが該上清(該水溶性HAを含む)から分離され、0.45mmで濾過されて、不溶性ゲル凝集物が除去された。該上清は、フリーズドライさせられ、D2O1mLで溶解させられた。該1H NMR分析は、500MHz Bruker Avance分光計で実施される。該修飾度は、HA二糖単位シグナル(HAは架橋されているか又は架橋されていない)を上回る該架橋剤シグナルのモル比によって決定された。
【0224】
[実施例1]
架橋されたHMWヒアルロン酸組成物への架橋されていないLMWヒアルロン酸の補充の効果
研究された試料は、以下に提示されている。
【0225】
比較用試料1-1は、シリンジに入れられてオートクレーブ内で滅菌され、HMWヒアルロン酸(4.00MDa、HTL、欧州薬局方の医薬品/医療グレード)及びBDDE(Sigma Aldrich、≧95%)から調製された、総ヒアルロン酸濃度20mg/g及び修飾度2%の、架橋されたヒアルロン酸ゲルである。
【0226】
本発明に従う試料1-2は、シリンジに入れられてオートクレーブ内で滅菌され、滅菌前の試料1-1と、架橋されていないLMWヒアルロン酸ナトリウム(0.10MDa、HTL、欧州薬局方の医薬品/医療グレード)の20mg/g溶液との1:1混合物から調製された、総ヒアルロン酸濃度20mg/gの、架橋されたヒアルロン酸ゲルである。
【0227】
比較用試料1-3は、シリンジに入れられてオートクレーブ内で滅菌され、滅菌前の試料1-1と、架橋されていないヒアルロン酸を含まないリン酸緩衝食塩水の溶液との1:1混合物から調製された、総ヒアルロン酸濃度10mg/gの、架橋されたヒアルロン酸ゲルである。
【0228】
該試料の特徴、それらのG’及び滅菌時のそれらのG’喪失は、下記の表1及び
図1にまとめられている。
【0229】
【0230】
該結果は、同じ総ヒアルロン酸濃度であるが、LMWヒアルロン酸を含まない組成物(試料1-1(参照))と比較して、LMWヒアルロン酸を含む組成物(本発明に従う試料1-2)についてのより良好な分解耐性を示している。
【0231】
更に、架橋されたHMWヒアルロン酸の濃度が高いほど、該組成物の安定性が高くなると思われる。従って、試料1-3(比較用、10mg/gのHMWヒアルロン酸)は、20mg/gのHMWヒアルロン酸を含む試料1-1(比較用)(ΔG’=-10.8%)よりも大きいG’の喪失(ΔG’=-21.6%)を示す。それにもかかわらず、この安定性の増加は、架橋されていないLMWヒアルロン酸を含む試料1-2(本発明)について見出されたもの(ΔG’=-2.4%)よりも、はるかに低い。
【0232】
結果的に、該組成物の分解耐性の増加と関連するのは、該総ヒアルロン酸濃度の単なる増加ではなく、むしろ、該関連するHMWヒアルロン酸組成物の補充である。
【0233】
[実施例2]
架橋されていないHMWヒアルロン酸を任意的に含む、架橋されたHMWヒアルロン酸に基づく組成物へのLMWヒアルロン酸の補充の効果
試料2-1は、以下の通り調製される。
【0234】
架橋されていないHMWヒアルロン酸(HTL、4.00MDa、欧州薬局方の医薬品/医療グレード)からの、BDDEにより架橋されたヒアルロン酸ゲルの、塩基性媒体における調製。生じた架橋された画分は、中和され、リン酸緩衝食塩水で膨潤させられて、15mg/gのNaHAを含む最終的なゲルが得られる。次に、該ゲルは透析される。この段階で、該ゲルは、約80Pa~120Paの弾性率G’及び7°~10°の位相角δを有する。
【0235】
架橋されていないHMWヒアルロン酸ナトリウム(4.00MDa、HTL、欧州薬局方の医薬品/医療グレード)の15mg/g溶液が、該架橋された画分に添加されて、該組成物中、ヒアルロン酸の総質量に対して30質量%の割合が達成される。該ゲルはホモジナイズされ、グリッドを通して押し出され、1mLのCOCシリンジに充填される。最後に、該ゲルはオートクレーブ処理される。
【0236】
試料2-2は、試料2-1と同様に調製されるが、使用された該架橋されていないヒアルロン酸ゲルの該組成物は、該最終的なゲルが10mg/gの架橋されていないLMWヒアルロン酸(0.10MDa、HTL、欧州薬局方の医薬品/医療グレード)を更に含むように、修正された。
【0237】
試料2-3は、試料2-1として調製されるが、架橋されていない4.00MDaのヒアルロン酸を含まない。
【0238】
試料2-4は、試料2-1として調製されるが、該使用された架橋されていない4.00MDaのヒアルロン酸が、0.10MDaのヒアルロン酸で置き換えられている。
【0239】
これらの試料のそれぞれについて、G’の変動(パーセンテージ)が計算される。得られた結果は、下記の表にまとめられている。
【0240】
表2は、架橋されたヒアルロン酸と架橋されていないヒアルロン酸との混合物の安定化を示す。
【0241】
【0242】
表3は、架橋されたヒアルロン酸単独の安定化を示す。
【0243】
【0244】
該結果は、架橋されていないLMWヒアルロン酸のオートクレーブ滅菌中の保護効果が、架橋されたHMWヒアルロン酸単独を含む組成物(試料2-4対試料2-3)と、架橋されたHMWヒアルロン酸及び架橋されていないHMWヒアルロン酸の混合物を含む組成物(試料2-2対試料2-1)との両方について観察されることを示している。
【0245】
従って、架橋されたHMWヒアルロン酸単独を含む組成物(試料2-4)又は架橋されていないHMWヒアルロン酸との混合物(試料2-2)への、架橋されていないLMWヒアルロン酸の添加は、有利なことには、それらの分解耐性を増加する。
【0246】
[実施例3]
異なるモル質量の架橋されていないヒアルロン酸を含むヒアルロン酸ゲルのレオロジー及び安定性の研究
異なるモル質量のヒアルロン酸溶液のレオロジー
様々なモル質量の架橋されていないヒアルロン酸(0.04MDa、0.10MDa、0.20MDa及び1.50MDa、HTL、欧州薬局方の医薬品/医療グレード)の10mg/g(1%)溶液が、リン酸緩衝食塩水中で調製される。これらの画分のそれぞれの弾性率(G’)及び複素粘度(η*)が決定され、下記の表4に詳説される。
【0247】
【表4】
**N.D. 5Pa応力では決定できない(試料3-1:η
*=2.55mPa.s及びG’=0.65Pa~0.6Pa,試料3-2:η
*=5.2mPa.s及びG’=0.0057Pa~1Pa)。
【0248】
先の結果は、0.20MDa以下のモル質量の架橋されていないヒアルロン酸単独に基づく、1%で濃縮されたゲルが、有意な弾性特性を有しておらず、粘度が非常に低いことを示している。
【0249】
機械的寄与
架橋されたHMWヒアルロン酸と架橋されていないHMWヒアルロン酸との混合物、すなわち試料3-5(参照)は、以下の通り調製される。架橋されていないHMWヒアルロン酸(4.00MDa、HTL、欧州薬局方の医薬品/医療グレード)からの、BDDEにより架橋されたヒアルロン酸ゲルの、塩基性媒体における調製。生じた架橋された画分は、中和され、リン酸緩衝食塩水で膨潤させられて、15mg/gのNaHAを含む最終的なゲルが得られる。次に、該ゲルは透析される。この段階で、該ゲルは、約80Pa~120Paの弾性率G’及び7°~10°の位相角δを有する。架橋されていないHMWヒアルロン酸ナトリウム(4.00MDa、欧州薬局方の医薬品/医療グレード)の15mg/g溶液が、該架橋された画分に添加されて、該組成物中、ヒアルロン酸の総質量に対して30質量%の割合が達成される。該ゲルはホモジナイズされ、グリッドを通して押し出され、1mLのCOCシリンジに充填される。最後に、該ゲルはオートクレーブ処理される。
【0250】
試料3-6~試料3-9は、試料3-5と同様に調製されるが、該組成物の総質量に対して10mg/gの固定濃度(1%)の追加の架橋されていないヒアルロン酸を更に含む、架橋されていないヒアルロン酸ゲルを用いる。
【0251】
この添加の為に、異なるモル質量の架橋されていないヒアルロン酸、すなわち順に0.04MDa、0.10MDa、0.20MDa及び1.50MDa、HTL、欧州薬局方の医薬品/医療グレードの試料3-6~試料3-9、が使用される。
【0252】
これらの試料のレオロジーの特徴は、各試料の6つのシリンジで、滅菌前及び滅菌後に決定される。滅菌後の結果は、下記の表5及び
図2にまとめられている。
【0253】
【表5】
*平均は、該参照試料の平均とは有意に異なる、p<0.001,2試料t試験。
【0254】
該架橋されていないLMWヒアルロン酸の制限された機械的寄与のおかげで、試料3-6~試料3-8は、軟質ゲル、すなわち15°~45°のδ、150Pa以下のG’及び18N以下の押し出し力を有するゲル、のままである。
【0255】
追加のLMWヒアルロン酸の存在、従って本発明に従うゲルにおいて増加されたヒアルロン酸濃度は、それらの可撓性に影響を及ぼさないことに留意されたい。
【0256】
他方では、追加のHMWヒアルロン酸を含む該比較用試料3-9は、非常に有意に増加されたレオロジーの特徴を示し、もはや軟質ゲルとしてみなされることができない(G’>150Pa)。
【0257】
分解耐性
各試料の熱分解に対する耐性は、同じオートクレーブサイクルlを受けた後に喪失したG’パーセンテージを計算することによって研究される。
【0258】
得られた結果は、下記の表6、
図2及び
図3にまとめられている。
【0259】
【0260】
図2において示されている通り、実行された滅菌条件(試験された全ての試料について同一)下で、該参照試料3-5は、約20%の喪失を被る。
【0261】
架橋されていないHMWヒアルロン酸の添加(1.50MDa、試料3-9)は、滅菌時のG’の喪失を改善せず、参照試料3-5の喪失(20%)よりも依然として高い。
【0262】
それとは対照的に、本発明に従う補充、すなわち0.04MDa~0.20MDa、より好ましくは0.08MDa~0.10MDa、のモル質量のヒアルロン酸の添加は、滅菌時のG’の喪失の低下(試料3-6~試料3-8と試料3-5との比較)の源、すなわち該組成物の分解耐性の増加の源である。
【0263】
それ故に、本発明に従うLMWヒアルロン酸を補充された組成物は、同一の総ヒアルロン酸濃度、同じ架橋率の該架橋されたHMWヒアルロン酸画分を有するが補充されていない組成物と比較して、より良好な分解耐性を有する。
【0264】
この改善は最小限ではあるが、使用された該最低モル質量(0.04MDa)のヒアルロン酸(試料3-6)において、既に目立っている。この改善は、0.10MDa及び0.20MDaのヒアルロン酸(試料3-7及び試料3-8)で有意である。
【0265】
従って、滅菌後の各製品の6つのシリンジでの、6つの測定からの平均の比較は、試料3-7及び試料3-8が、試料3-5よりも有意に高いG’値を有することを示している(
図2及び3)。
【0266】
G’のこの増加は、該調合物において使用された該LMW HAと該HMWヒアルロン酸との相互作用と、特に該組成物におけるLMW HAの存在と関連する改善された分解耐性の効果(滅菌時のG’の喪失値の改善によって目に見える)と、の両方に関連している。
【0267】
従って、架橋されていないHMWヒアルロン酸の添加(例えば、1.50MDa)は、該組成物の分解耐性を有意に改善することなく、該組成物の機械特性を増加する一方、架橋されていないLMW HAの補充は、軟質ゲルの機械特性を維持しながら、ゲルの分解耐性を増加する。
【0268】
[実施例4]
補充の変動の影響
この実施例について、該比較用試料4-1は、実施例3において調製された試料3-5(比較用)と同一である。異なる濃度の架橋されていないLMW HAの効果を研究する為に、異なる試料が調製された。
【0269】
試料4-1は、使用された該架橋されていないヒアルロン酸ゲルの該組成物が、増加する濃度の架橋されていないLMW HA(0.10MDaのHTL、欧州薬局方の医薬品/医療グレード)を更に含むことを除いて類似の方式で調製された、試料4-2~4-4と比較される。
【0270】
架橋されていないLMW HA(0.10MDa、HTL、欧州薬局方の医薬品/医療グレード)の割合は、該組成物における、架橋されていないLMWヒアルロン酸の質量と、架橋されたHMWヒアルロン酸の質量との比に対応する(%)。
【0271】
該試料のレオロジーの特徴、及び滅菌時のそれらのG’の喪失、すなわちΔG’(%)は、下記の表7及び
図4にまとめられている。
【0272】
【0273】
補充の安定化効果は、本発明に従う全ての試料4-2~試料4-4において目に見える。
【0274】
それ故に、少なくとも1種の架橋されたHMWヒアルロン酸を含むゲルに、多かれ少なかれある量の架橋されていないLMW HAを補充することの有利な効果を得ることが可能である。
【0275】
更に、先の結果は、低い割合の架橋されていないLMW HA(約50%)又はより高い割合の架橋されていないLMW HA(約150%)の何れを使用しても、依然として軟質であり、容易に注射可能である、高度に濃縮されたヒアルロン酸組成物(30mg/gまでの全ヒアルロン酸)が達成されることを示している。
【0276】
[実施例5]
該HMWヒアルロン酸濃度の変動の影響
この実施例について、該比較用試料5-1は、実施例3において調製された試料3-5(比較用)と同じ方式で調製される。異なる濃度の架橋されたHMWヒアルロン酸及び架橋されていないHMWヒアルロン酸の組成物に対する、固定濃度の架橋されていないLMWヒアルロン酸の効果を研究する目的の為に、以前の実施例よりも低濃度のHMWヒアルロン酸を含む、本発明に従う試料5-2及び5-3が調製された。
【0277】
試料5-2は、試料5-1と同様に調製されるが、標的濃度は、該架橋されたヒアルロン酸画分について12mg/gであり、該架橋されていないHMWヒアルロン酸溶液について12mg/gであり、それに、最終組成物中16mg/gの濃度の0.10MDaの架橋されていないヒアルロン酸をもたらすのに十分な量の、0.10MDaの架橋されていないヒアルロン酸(HTL、欧州薬局方の医薬品/医療グレード)が添加される。
【0278】
試料5-3はまた、該参照試料と同様に調製されるが、標的濃度は、該架橋されたHMWヒアルロン酸画分について9mg/gであり、該架橋されていないHMWヒアルロン酸溶液について9mg/gであり、それに、最終組成物中16mg/gの濃度の0.10MDaの架橋されていないヒアルロン酸をもたらすのに十分な量の、0.10MDaの架橋されていないLMWヒアルロン酸(HTL、欧州薬局方の医薬品/医療グレード)が添加される。
【0279】
試料5-1~5-3のレオロジーの特徴、それらの架橋されていないLMWヒアルロン酸の割合(%)及び滅菌時のそれらのG’の喪失(ΔG’(%))は、下記の表8にまとめられている。
【0280】
【0281】
架橋されていないLMWヒアルロン酸の添加のおかげで、架橋されたHMWヒアルロン酸及び架橋されていないHMWヒアルロン酸の画分を15mg/gから12mg/gに低減し、G’のごくわずかな低減を観察することが可能である(試料5-1(比較用)対試料5-2(本発明))。
【0282】
更に、架橋されていないLMWヒアルロン酸の添加のおかげで、軟質ゲルの機械特性を維持しながら、15mg/gのヒアルロン酸を含むゲルから、28mg/gのヒアルロン酸を含むゲルに移行することが可能である(試料5-1(比較用)対試料5-2(本発明))。
【0283】
非常に少量の架橋されたHMWヒアルロン酸及び架橋されていないHMWヒアルロン酸を用いて調製された試料5-3は、滅菌時に最小限のG’の喪失を示す(わずか-4%)。
【0284】
架橋されていないLMWヒアルロン酸の存在は、有利なことには、軟質ゲルを調製する為に必要とされる架橋されたヒアルロン酸の量を低減する。また、該総ヒアルロン酸濃度を増加することが可能である。従って換言すれば、該補充は、潜在的に増加された生体適合性(使用される架橋されたヒアルロン酸の割合の低減)を有する軟質ゲルを得ることを可能にし、生体力学的及び/又は生物学的視点からも有効にする。
【0285】
[実施例6]
酵素分解に対する耐性
試料6-1は、実施例3において調製された試料3-5(比較用)と同じプロトコルを使用して調製される。
【0286】
試料6-2も、類似の方式で調製されるが、使用された該架橋されていないヒアルロン酸ゲルの該組成物は、該最終的なゲルが10mg/gの架橋されていないLMWヒアルロン酸(0.10MDa、HTL、欧州薬局方の医薬品/医療グレード)を更に含むように、修正された。
【0287】
試料6-3も、試料6-1と同様に調製されるが、使用された該架橋されていないヒアルロン酸ゲルの該組成物は、該最終的なゲルが10mg/gの架橋されていないHMWヒアルロン酸(1.50MDa、HTL、欧州薬局方の医薬品/医療グレード)を更に含むように、修正された。
【0288】
これら全ての試料は、ヒアルロニダーゼ(HAase)を用いる酵素分解試験に供される。
【0289】
該試料のレオロジーの特徴及び酵素分解に対するそれらのG’の喪失は、下記の表9及び
図5にまとめられている。
【0290】
【0291】
試料6-2及び試料6-3(それぞれ0.10MDa及び1.50MDaのモル質量を有するヒアルロン酸を含む)は、非常に異なる出発特性を有することに留意されたい。試料6-3の特性は、皮膚再生及び/又は皮膚改善施与には望ましくない(δ、G’及びFを参照)。
【0292】
酵素分解に対するG’の喪失は、架橋されていないLMWヒアルロン酸が存在する方が、存在しないよりも低く(試料6-2対試料6-1)、架橋されていないHMWヒアルロン酸が存在するよりも更に低い(試料6-2対試料6-3)。それ故に、本発明に従うものとして提示された該組成物(試料6-2)の増加された耐性は、架橋されていないヒアルロン酸の単なる添加とは関連しておらず、具体的には、架橋されていないLMWヒアルロン酸の添加と関連している。
【0293】
それ故に、本発明に従って補充された組成物は、同じ総ヒアルロン酸濃度、同じ架橋率の該架橋されたHMWヒアルロン酸画分を有するがHMWヒアルロン酸だけを含む組成物と比較して、酵素分解に対してより良好な耐性を有する。
【0294】
ヒアルロニダーゼによる分解に対する耐性のこの増加は、本発明に従う組成物の、増加されたイン・ビボ耐久性を示唆している。
【0295】
最後に、先の結果は、架橋されていないLMWヒアルロン酸の保護効果を強調しており、従って、少なくとも1種の架橋されたグリコサミノグリカンに基づく組成物を補充する有益な効果を強調している。
【0296】
[実施例7]
試料中に存在する水溶性ヒアルロン酸及び非水溶性ヒアルロン酸の特徴付け
幾つかの滅菌された試料の水溶性ヒアルロン酸及び非水溶性ヒアルロン酸(sHA及びnsHA)が、前述の通り特徴付けられた。欧州薬局方の医薬品/医療グレードのHA原材料は、HTLから得られる。
【0297】
以下の組成物が、参照とみなされる。
試料7-1:架橋されたHA HMW:リン酸緩衝液において4.00MDaのHA単独を用いて調製された、架橋されたHAゲル。この架橋されたHAは、試料2-1の該架橋されたHA部分として調製されるが、該ゲルの総質量に対して10.5mg/gの濃度のNaHAを含むゲルを得る為に膨潤させられる、
試料7-2:架橋されていないHA HMW:該ゲルの総質量に対して4.5mg/gの濃度のNaHAを用いて、リン酸緩衝液において4.00MDa単独を用いて調製された、架橋されていないHA、
試料7-3:架橋されていないHA LMW:該ゲルの総質量に対して10mg/gの濃度のNaHAを用いて、リン酸緩衝液において0.10MDaのHA単独を用いて調製された、架橋されていないHA。
【0298】
以下の3種の試料は、該方法中に添加された可変割合のHMW HA及びLMW HAを有する。
【0299】
試料7-4:滅菌前に、4.00MDaのHA単独を用いて調製された、架橋されたHA HMW、及び0.10MDaのHAを用いて調製された、架橋されていないHA LMWを含む、試料2-4として既に提示されたゲル、
試料7-5:滅菌前に、4.00MDaのHA HMW単独を用いて調製された、架橋されたHA、及び0.10MDaのHAを用いて調製された、架橋されていないHA LMW、及び4.00MDaのHAを用いて調製された、架橋されていないHA HMW、を含むゲル。該ゲルは、該ゲルの総質量に対して10mg/gの固定濃度(1%)の0.10MDaの追加の架橋されていないHA LMWを更に含む、試料2-1に対応する、
試料7-6:4.00MDaのHAを用いて調製された架橋されたHA HMW及び4.00MDaの架橋されていないHA HMWを含む、試料2-1として既に提示されたゲル。
【0300】
全ての試料7-1~試料7-6が、>15分のF0でオートクレーブ処理されることによって滅菌される(湿式加熱)。
【0301】
加えて、Allerganによって市販されている製品であるJuvederm Voliftが、試料7-7として試験される。この製品は、Vycrossの架橋技術を使用して製造され、該技術は、大きい割合のLMW HAを含む様々な質量平均モル質量のヒアルロン酸を用いて調製された、架橋されたヒアルロン酸に関して知られている。該製品は、リドカインHCl、17.5mg/gの全HA濃度を含み、湿式加熱によって滅菌される。
【0302】
【0303】
試料7-1(HAの100%が、架橋された反応物に関与した)は、MODが17%のsHAを示す一方、試料7-2及び試料7-3(滅菌された架橋されていないHA単独)は、論理的に如何なるMODも示していない。該架橋された試料7-1は、該架橋剤で高度に修飾されているsHA断片(主にLMW)を放出する。4.00MDaの架橋されていないHA原材料を用いて製造された試料7-2は、0.30MDaよりも高いsHAがその最大割合で存在する一方、0.10MDaの架橋されていないHA原材料を使用して製造された試料7-3は、0.30MDaよりも低いsHAがその全割合で存在する。
【0304】
本発明に従う補充された組成物は、該架橋されていないLMW(0.10MDa)HAが、該sHAにおけるHA二糖単位のモル量を増加し、従ってMOD値を低減することに起因して、補充なしで調製された組成物よりも低いMODを有するsHAを有する(試料7-4対7-1、試料7-5対試料7-6)。本発明に従うゲル(試料7-3及び試料7-4)は、該試料7-5、試料7-6、及び試料7-7と比較して、0.3MDaよりも低いLMW sHAがより高い割合で存在することに注目すべきである。特に、架橋の為に、大きい割合の架橋されていないLMW HAを用いて製造された該市販試料7-7は、このような多量のLMW sHAを示していない。
【0305】
本発明者等は、架橋されていないHA LMWを補充された、架橋されたHA HMWを含む組成物が、
該組成物におけるHAの総質量に対する、架橋されていないHA LMWのパーセンテージと、
該架橋された部分単独について測定されたHA総質量に対する、総sHAのパーセンテージと
の合計に等しい総sHAパーセンテージを有することを、理論的に予測することができる。
【0306】
試料7-1(HAの100%が、架橋された反応物に関与した)は、該組成物におけるHAの総質量に対して20.6%の総sHAを示し、従って本発明者等は、試料7-3(試料7-1と同じベースの架橋されたHAであるが、架橋されていないHA LMWを更に含む)が、該組成物におけるHAの総質量に対して約30+20.6=50.6%のsHAを有することを、理論的に予測することができる。
【0307】
しかしながら、試料7-3について測定された総sHAパーセンテージは、それよりも約10ポイント低い(40.5%)。このことは、本発明に従う補充が、製造方法中にHA鎖を保護してLMW sHAの放出を低減すること、換言すれば、該組成物の分解耐性を増加すること、を示唆している。
【0308】
結論として、SEC及び1H NMR技術は、ゲルのsHAを特徴付け、本発明に従うゲルを標準のゲルと区別する一助にする為に、上手く使用されることができる。
【0309】
[実施例8]
「HA HMW」を上回る「架橋されていないHA LMW」の質量比の影響
研究された試料は、以下に提示されている。
【0310】
本発明に従う試料8-1は、シリンジにおいてオートクレーブ処理によって滅菌され(>15分のF0)、20mg/gのヒアルロン酸全濃度を有し、滅菌前に1:1の割合の
架橋されていないHA HMW(4.00MDa、HTL、欧州薬局方の医薬品/医療グレード)及びBDDE(Sigma Aldrich、≧95%)を用いて調製された、リン酸緩衝液において20mg/gのヒアルロン酸全濃度及び2%の架橋率を有する、架橋されたヒアルロン酸ゲルと、
20mg/gの架橋されていないHA LMW(0.10MDa、Altergon、欧州薬局方の医薬品/医療グレード)の架橋されていないヒアルロン酸溶液と
の混合から生じる、架橋されたヒアルロン酸のゲルである。
【0311】
試料8-2は、試料8-1として調製された比較用ゲルであるが、20mg/gの架橋されていないHA LMW(0.10MDa、Altergon、欧州薬局方の医薬品/医療グレード)の架橋されていないヒアルロン酸溶液の代わりに、リン酸緩衝液における2mg/gの架橋されていないHA LMW(010MDa、Altergon、欧州薬局方の医薬品/医療グレード)の架橋されていないヒアルロン酸溶液を用いる。
【0312】
試料8-3は、架橋されたHMW HAの濃度が該ゲルの総質量に対して10mg/gである参照ゲルである。試料8-3は、試料8-1として調製されるが、20mg/gの架橋されていないHA LMW(0.10MDa、Altergon、欧州薬局方の医薬品/医療グレード)の架橋されていないヒアルロン酸溶液の代わりに、リン酸緩衝液単独を使用する。
【0313】
【0314】
試料8-1は、良好なG’の改善パーセンテージを有しているが、試料8-2は、それよりも低い。従って、有意なG’の改善パーセンテージを有する為には、十分な割合のLMW HAが必要とされると推測されることができる。
【国際調査報告】