(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(54)【発明の名称】特に乗車用サドルを備えた車両のための内燃エンジンのクランク室の換気/潤滑システム
(51)【国際特許分類】
F01M 13/00 20060101AFI20230518BHJP
F02F 7/00 20060101ALI20230518BHJP
F01M 1/06 20060101ALI20230518BHJP
F02B 67/06 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
F01M13/00 Z
F02F7/00 K
F01M1/06 Q
F02F7/00 301Z
F02B67/06 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558445
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(85)【翻訳文提出日】2022-11-02
(86)【国際出願番号】 IB2021052621
(87)【国際公開番号】W WO2021198905
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】102020000006601
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515217546
【氏名又は名称】ピアッジオ エ チ.ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】ジアリ フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】フィアッカヴェント マルチェッロ
【テーマコード(参考)】
3G015
3G024
3G313
【Fターム(参考)】
3G015AA01
3G015AB02
3G015BA14
3G015BD08
3G015BD24
3G015CA06
3G015CA13
3G015CA14
3G015DA04
3G015DA10
3G015EA12
3G015FB03
3G015FD02
3G024AA46
3G024AA48
3G024AA73
3G024BA23
3G024BA24
3G024DA21
3G024EA04
3G024FA07
3G313AA01
3G313AB04
3G313BD48
3G313BD52
3G313BD65
3G313CA01
3G313FA06
(57)【要約】
特に乗車用サドルを備える車両のための内燃エンジンのための潤滑システム(100)であって、前記システムは、少なくとも1つのコネクティングロッドが収容されるクランク室(110)、および潤滑液(LL)を収集するためのベースンまたはパン(120)を備え、前記クランク室(110)および前記収集ベースンまたはパン(120)は、前記クランク室(110)に設けられた第1の開口部(111)によって相互に連通して配置され、前記クランク室(110)から前記ベースン(120)への前記第1の開口部(111)を通る前記潤滑液(LL)の流れは、前記クランク室(110)内の所定の切り替えガス圧値で前記クランク室(110)から前記収集ベースンまたはパン(120)への前記潤滑液(LL)の排出を可能にするように開位置に切り替えられるように適合された第1の調節エレメント(112)によって調節される、潤滑システム。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に乗車用サドルを備える車両のための内燃エンジンであって、前記内燃エンジンは潤滑システム(100)を備え、前記システムは、少なくとも1つのコネクティングロッドが収容されるクランク室(110)、および潤滑液(LL)を収集するためのベースンまたはパン(120)を備え、前記クランク室(110)および前記収集ベースンまたはパン(120)は、前記クランク室(110)に設けられた第1の開口部(111)によって相互に連通して配置され、前記クランク室(110)から前記ベースン(120)への前記第1の開口部(111)を通る前記潤滑液(LL)の流れは、前記クランク室(110)内の圧力が、第1の所定の圧力値以上である場合、前記クランク室(110)から前記収集ベースンまたはパン(120)への前記潤滑液(LL)の排出を可能にするように開位置に切り替えられるように適合された第1の調節エレメント(112)によって調節され、
前記クランク室(110)は、前記クランク室(110)に設けられた第2の開口部(140)に通じる回路によって前記内燃エンジンのさらなるゾーン(500)と連通して配置され、前記クランク室(110)内の圧力が第2の所定の圧力値以下である場合、前記クランク室(110)は、前記第2の開口部(140)を通して前記クランク室(110)への空気の導入を可能にする開位置に切り替え可能な第2の調節エレメント(141)を備えることを特徴とし、
前記第2の開口部(140)は、コンパートメント(150)に設けられ、前記コンパートメント(150)に、前記コンパートメント(150)の外部と流体連通する導入チャネル(151)が、前記コンパートメント(150)へ空気を導入するために通じ、前記導入チャネル(151)は、チェーンコンパートメントおよび/または前記内燃エンジンのフライホイールカバー(500)によって画定されるコンパートメントと連通して配置されるように適合される、内燃エンジン。
【請求項2】
前記第2の切り替えエレメント(141)が、前記第2の所定の圧力に等しい開口閾値を有する第1のリード弁を備えることを特徴とする、請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記システム(100)が、前記クランク室(110)内に収容された固定インサート(130)を備え、それによって前記クランク室(110)内の前記第1の所定の圧力値が、前記第1の所定の圧力値が前記固定インサート(130)の不在下で達成されるときに存在する潤滑液(LL)の容積より少ない潤滑液(LL)の容積の存在下で達成されることを特徴とする、請求項1または2に記載のエンジン。
【請求項4】
前記クランク室(110)が、前記潤滑液(LL)のための収集および排出油だめ(113)を画定するように成形され、前記第1の開口部(111)が、前記収集および排出油だめ(113)の底部(114)に設けられることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のエンジン。
【請求項5】
前記第1の切り替えエレメント(112)が、前記第1の所定の圧力に等しい開口閾値を有する第2のリード弁を備えることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のエンジン。
【請求項6】
前記第2の所定の圧力値が、前記第1の所定の圧力値よりも大きい、請求項1~5のいずれか一項に記載のエンジン。
【請求項7】
前記固定インサート(130)が、少なくとも部分的に前記第1の開口部(111)の突出部における前記収集および排出油だめ(113)に配置されることを特徴とする、請求項3~5のいずれか一項に記載のエンジン。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載のエンジンを備えることを特徴とする、乗車用サドルを備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に乗車用サドルを備えた車両のための、例えばポペット弁を備えた多気筒型の、また単気筒型の、内燃エンジンを製造する分野に属し、この用語は、一般に、主に人の輸送を目的とした、二輪、三輪または四輪のオートバイまたは自動車を意味することを意図する。特に、本発明は、クランク室内に収容され、1つまたは複数のピストン運動によって作動する(特に回転する)リンケージおよび/またはギアを潤滑するための換気および/または潤滑システムを備えた、前述のタイプのエンジンを製造する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
知られているように、例えば、乗車用サドルを備えた車両のための内燃エンジンはドライブシャフトを備え、その回転は、それぞれのシリンダの燃焼室内のピストンの運動によって引き起こされる。1つまたは複数のピストンの往復並進運動の変換は、特に、ピストンとドライブシャフトとの間に介在する、例えばコネクティングロッドなどのリンケージによって得られ、前記リンケージはクランク室内に収容される。
【0003】
したがって、クランク室内の前記リンケージを適切に潤滑する必要性が感じられ、例えば、いわゆる「湿式クランクケース」および「乾式クランクケース」など、その目的のために過去において様々な解決策が実施されてきた。
【0004】
特に、既知のタイプの「湿式クランクケース」の解決策における潤滑油は、収集および蓄積パンから引き出され、油圧回路(ポンプ、弁などを含む)を介してクランク室またはクランクケースに導入され、クランク室に蓄積した油は周期的にパンに排出される。この目的のために、クランク室およびパンは可撓性リード弁によって連通して配置され、したがって、前記弁は、適切な圧力を受けると開位置に切り替えられるように適合している。前記圧力は特に、室内に蓄積された油およびクランク室内へのガス、例えばブローバイガスの導入の両方によって生成される。したがって、所定の値(リードの可撓性の関数)までのクランク室内のガス圧の上昇により、リードの開位置への切り替えが起こり、それによってクランク室に蓄積した油のパンへの放出が発生する。
【0005】
上記に要約した「湿式クランクケース」のタイプの既知の解決策は、例えば、潤滑の信頼性および効率、構造および/または実装の単純さ、ならびに全体として低い生産コストなどの、様々な観点から評価され得るが、それらは、完全に問題および/または欠点がないわけではなく、本出願人は、それらを本発明によって克服または少なくとも軽減することを意図している。
【0006】
「湿式クランクケース」のタイプの既知の解決策の第1の欠点は、クランク室に蓄積されたオイルがパンに排出される頻度が低いことに関連し、この排出頻度は、リードが開位置に切り替えられる頻度に対応し、クランク室内の自由容積、すなわち、潤滑されるリンケージによって占められていない容積に反比例し、自由容積が大きいほど、クランク室内のガス圧が、リードが開位置に切り替えられる「切り替え」値に達するのに必要な時間が長くなるため、排出頻度が低くなる。オイルの低い排出頻度は、明らかにクランク室内の余分な油の蓄積にさらにつながり、ドライブシャフトが蓄積されたオイルと干渉する危険性があり、さらに、蓄積されたオイルが車両の動作中に、特に曲がり角においてドリフト現象にさらされる危険性があり、したがって安定性を損なうことさえある(重心の動きの影響による)。
【0007】
従来技術による「湿式クランクケース」のタイプの解決策は、特許文献1、特許文献2、および特許文献3から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第2305973号明細書
【特許文献2】欧州特許第2492461号明細書
【特許文献3】欧州特許第2690275号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の主な課題は、特に乗車用サドルを備えた車両のための、例えばポペット弁を備えた多気筒型の、また単気筒型の、特に内燃エンジンのためのクランク室の換気および/または潤滑システムを提供することであり、これにより、上記に示し、特に「湿式クランクケース」のタイプだけでなく、既知のシステムに影響を与える欠点を克服または少なくとも最小化することを可能にする。したがって、この課題の範囲内で、本発明の第1の目的は、「湿式クランクケース」のタイプのシステムを「乾式クランクケース」のタイプのシステムに変換すること、または「乾式クランクケース」のタイプのシステムの機能性と可能な限り類似した機能性のシステムを少なくとも提供することである。
【0010】
さらに、本発明の第2の目的は、上記に要約した所望の利点を保証する解決策が、競争力のあるコストで容易に製造および/または実装されるシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記に要約した目的が、(例えば、ブローバイ空気に加えて)追加の空気容積をクランク室に導入して、エンジン性能を悪化させる圧縮ステップの間にクランク室内の真空を回避することによって効果的に達成され得るという全般的な考察から生じている。さらに、クランク室内のこの追加の空気容積は、クランク室内の圧力が、排出リードを閉位置から開位置に切り替えるのに必要な最小切り替え値に達するのに必要な時間を減少させ、それによってリードの切り替え頻度を増加させ、したがって潤滑油の排出頻度を増加させる。
【0012】
本発明はさらに、上記に要約した目的が、クランク室の自由内部容積を減少させることによっても達成され得るというさらなる考察から生じており、ここで、自由内部容積という用語は、リンケージおよび/またはドライブシャフトを回転させるための専用のギアによって占められていないクランク室の内部容積を意味する。
【0013】
実際に、クランク室の自由内部容積を減少させることによって、クランク室内の圧力が、リードを閉位置から開位置に切り替えるのに必要な最小切り替え値に達するのに必要な時間を減少させ、それによってリードの切り替え頻度を増加させ、したがって潤滑油の排出頻度を増加させる。
【0014】
上記の考察に基づいて、既知のタイプの潤滑デバイスに影響を与える欠点を克服するため、および/または上記に要約したさらなる目的を達成するために、本発明は、請求項1~7のいずれか一項に記載の特に乗車用サドルを備えた車両のための内燃エンジン、および請求項8に記載の車両に関する。
【0015】
本出願はさらに、特に乗車用サドルを備えた車両のための内燃エンジンのための潤滑システムであって、前記システムは、少なくとも1つのコネクティングロッドが収容されるクランク室、および潤滑液を収集するためのベースン(basin)またはパンを備え、前記クランク室および前記収集ベースンまたはパンは、前記クランク室に設けられた第1の開口部によって相互に連通して配置され、前記クランク室から前記ベースンへの前記第1の開口部を通る前記潤滑液の流れは、前記クランク室内の所定の切り替えガス圧値において前記クランク室から前記収集ベースンまたはパンへの前記潤滑液の排出を可能にするように開位置に切り替えられるように適合された第1の調節エレメントによって調節され、前記システムは、前記クランク室内に収容された固定インサートを備え、前記クランク室内の前記第1の所定の切り替えガス圧値が、前記所定の圧力値が前記固定インサートの不在下で達成されるときに存在する潤滑液の容積より少ない潤滑液の容積の存在下で達成される、潤滑システムを記載している。
【0016】
開示された実施形態によれば、前記所定の圧力値が、前記固定インサートの不在下で達成されるときに存在する潤滑液の容積と、前記所定の圧力値が実際に達成されるときに存在する潤滑液の容積との差は、前記クランク室の自由内部容積と前記固定インサートの容積との差と実質的に等しい。
【0017】
開示された実施形態によれば、前記クランク室は、前記潤滑液のための収集および排出油だめを画定するように成形され、前記第1の開口部が、前記収集および排出油だめの底部に設けられる。
【0018】
開示された実施形態によれば、前記固定インサートは、少なくとも部分的に前記第1の開口部の突出部における前記収集および排出油だめに配置される。
【0019】
開示された実施形態によれば、前記固定インサートは、前記潤滑液を前記収集および排出油だめに運搬するための運搬チャネルを画定するように配置され、成形される。
【0020】
開示された実施形態によれば、前記固定インサートの容積は、前記クランク室の自由内部容積の20%~70%、好ましくは35%~55%である。
【0021】
開示された実施形態によれば、前記第1の切り替えエレメントは、前記開位置に曲がることによって切り替え可能な第1の可撓性リードを備える。
【0022】
開示された実施形態によれば、前記クランク室は、前記クランク室に設けられた第2の開口部によって外部と連通して配置され、前記システムは、前記第2の開口部を通して前記クランク室への加圧ガスの導入を可能にする開位置に切り替え可能な第2の調節エレメントを備える。
【0023】
開示された実施形態によれば、前記第2の切り替えエレメントは、所定の値を有するガス圧にさらされたときに前記開位置に曲がることによって切り替え可能な第2の可撓性リードを備える。
【0024】
開示された実施形態によれば、前記第2の開口部はコンパートメントに設けられ、前記コンパートメントにおいて、前記コンパートメントの外部と連通する導入チャネルが、前記コンパートメントへ前記加圧ガスを導入するために通じている。
【0025】
開示された実施形態によれば、前記導入チャネルは、前記加圧ガスを生成するためのHPC(高圧冷却)システムと連通して配置されるように適合される。
【0026】
開示された実施形態によれば、前記第2の開口部および前記導入チャネルは、前記開位置における前記第2の可撓性リードと相互に連通して配置される。
【0027】
本出願においてさらに開示されるのは、ドライブシャフトおよび燃焼エネルギーを前記ドライブシャフトの回転に変換するように適合される少なくとも1つのコネクティングロッドを備える、乗車用シートを有する自動車のための内燃エンジンであり、前記エンジンは、本発明の実施形態の1つに記載の潤滑システムを備え、前記エンジンの前記少なくとも1つのコネクティングロッドは、前記潤滑システムのクランク室内に収容される。
【0028】
上記の実施形態に係るエンジンを含む乗車用サドルを備えた車両も本出願の対象である。
【0029】
本発明は、図面に示される実施形態の詳細な説明によって、以下でさらに明確にされる。しかしながら、本発明は、以下に説明し、図面に示す実施形態に限定されず、逆に、以下に説明し、添付の図面に示す実施形態の全ての変形は、当業者には明らかであり、本発明の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1aおよび1bは、2つの異なる動作状況における、本発明の一実施形態に係るシステムの概略的な断面図を示す。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るシステムの斜視図および部分断面図を示す。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係るシステムの斜視図および部分断面図を示す。
【
図4】本発明の一実施形態に係るシステムの斜視図、場合によっては部分断面図を示す。
【
図5】本発明の一実施形態に係るシステムの斜視図、場合によっては部分断面図を示す。
【
図6】本発明の一実施形態に係るシステムの斜視図、場合によっては部分断面図を示す。
【
図7】本発明の一実施形態に係るシステムの斜視図、場合によっては部分断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、特に乗車用サドルを備えた車両のための、例えばポペット弁を備えた多気筒型および単気筒型の両方の内燃エンジンに実装された場合に特に有利な適用を見出し、本発明のその理由を、可能な場合、前述のタイプのエンジンを特に参照して以下に説明する。
【0032】
しかしながら、本発明の可能な適用は、前述のタイプのエンジンだけに限定されるものではなく、逆に、本発明は、例えばエアコンプレッサの場合などの、リンケージの効果的かつ信頼性の高い潤滑が必要とされる全ての場合に使用および実装するのに適している。
【0033】
図1~3の実施形態に従って示されるシステム100は、クランク室110、潤滑液(例えば油)LLを収集するためのベースン(basin)またはパン120を備え、クランク室110は、ピストンPが収容されるシリンダと連通し、燃料の燃焼によって発生するその往復並進運動は、クランク室110に収容された、図には示されていないリンケージ(それらはエンジンのタイプによって異なり、また、それらは本発明の目的のために必須ではないという両方のために図には示されていない)によってドライブシャフトの回転運動に変換され、例として、説明を完全にするために、前記リンケージは、1つまたは複数のコネクティングロッドまたは同様のコンポーネントを備えることができる。
【0034】
クランク室110およびパンまたはベースン120は、室110の底部、特に室110の底部の最下部、詳細には蓄積油だめ(sump)113の底部114に設けられる開口部111によって相互に連通して配置される。さらに、調節エレメント(室110からパン120への潤滑液の流れに関するもの、以下の説明を参照のこと)が開口部111に配置され、実際にはリード弁(可撓性リードを有する)112が、それが開口部111を閉じることにより、室110からパン120への潤滑液LLの流れを防止する閉位置(図示せず)と、代わりに室110からパン120への潤滑液LLの流れが可能であり得る
図1の開位置との間で切り替えられるように適合されている。実際には、従来技術によるシステムの動作モードに部分的に対応する
図1~3のシステム100の動作モードは、以下のように要約することができる。
【0035】
潤滑油LLは、収集および蓄積パン120から引き出され、油圧回路(図示せず、ポンプ、弁などを含む)を通ってクランク室またはクランクケース110に導入される。さらに、ピストンPの往復並進運動は、室110への加圧ガスの導入に変換され、ピストンPの上昇運動中に室110自体が圧力降下することを防止する。室110に繰り返し(実質的に連続的に)導入された潤滑油LLは、室110の底部、特に少なくとも部分的に蓄積油だめ113に蓄積し、開口部111を通ってパン120に周期的に排出される。実際に、室110内の圧力が上昇すると、可撓性リード(例えば、PVC製)112は、所定の圧力値(リード112の可撓性に反比例する)で曲がる(
図1aの閉位置から
図1bの開位置に切り替わる)まで増加する圧力を受け、それにより開口部111を開放し、室110からパン120への油LLおよびガスの排出を可能にする。しかしながら、前述のように、本発明によるシステム100は、室110内の潤滑油LLおよびガスの混合物がパン120に排出される頻度を増加させることを目的とする特徴を備える。実際に、図面中の数字140は、クランク室110の外壁に設けられたさらなる開口部を特定しており、開口部111の場合と同様に、開口部140には、閉位置(
図1b、リード弁が開口部140を閉鎖している)と、リード弁が開口部140を開いている開位置(
図1a)との間で曲がることによって切り替えられるように適合されたリード弁(可撓性リードを有する)141が設けられ、それによりクランク室110への加圧ガスの導入が可能になる。明らかに、ブローバイガス、または別の供給源に由来するものに加えて、室110への加圧ガス(例えば空気)の導入は、室110内でリード弁112の切り替え圧力に到達するのに必要な時間を減少させ、それによってリード112の2つの連続する切り替え動作(両方開位置における)の間の時間が減少し、リード112の切り替え頻度が増加し、リード112の2つの連続する切り替え動作の間の室110内に蓄積され得る潤滑液LLの量が減少する。
【0036】
クランク室110の内部は、開口部140に通じる回路によって、前記内燃エンジンのさらなるゾーン、特にエンジン内部の空気源、例えばHPC(高圧冷却)システムと連通して配置される。
【0037】
空気、またはより一般的には加圧ガスの供給源に応じて、ブローバイガスの量よりも一桁多い量のガス(例えば空気)が、時間単位でクランク室110に導入され得る。
【0038】
図3から
図7の実施形態において、第2のリード141がコンパートメント150(取り外し可能なカバー160によって閉じられる)に収容され、その中で導入チャネル151が、前記コンパートメント150に前記加圧ガスを導入するために前記コンパートメント150の外部と連通し、第2のチャネル170に通じ、後者は開口部140を画定し、コンパートメント150の内部は、チャネル170によってクランク室110の内部と連通して配置される。
【0039】
図6および7に示される実施形態において、コンパートメント150の内部は、チャネル151によってエンジンのチェーンコンパートメントおよび/またはフライホイールカバーコンパートメント500と連通して配置され、前記チェーンコンパートメントおよび/またはフライホイールカバーコンパートメントは、次いで、油パン120と連通しており、それにより、外部から空気またはガスを引き込むことを必要とせず、空気の閉じた再循環がパン120からクランク室110に生成され、実際に、前記可動チェーンおよび/またはフライホイールコンパートメントによって生成された空気の流れは、コンパートメント150に導入され、閉位置では、リード141は、コンパートメント150を、チャネル151が通じる第1の半コンパートメントと、チャネル170が通じる第2の半コンパートメントとに分ける。
【0040】
パン120からクランク室110ならびにチェーンおよび/またはフライホイールコンパートメント内へ発生する空気の閉じた再循環により、ブローバイバルブから放出される空気の流れを制限することができ、したがって、油分の多い蒸気および煙の放出を制限し、それにより油の消費を減少させる。
【0041】
実際に、エンジンの外部から空気を引き込むことによって、このような量の空気を、次いでブローバイバルブを介して放出する方法が注目されている。特に、外部から新鮮な空気を引き込むことにより、放出された空気の流れが、内部再循環に対して約4倍多くなることが発見されている。このように出口流量が増加すると、煙および蒸気が増加し、したがってこのような煙および蒸気は、クランク室の洗浄による油を含有する油性蒸気である。したがってこのような蒸気の放出に伴い、油の消費が増加する。
【0042】
上述の解決策では、チャネル151は、空気がチェーンおよび/またはフライホイールコンパートメントから内部に引き込まれる空気の閉じた再循環を引き起こす。これにより、2つの閉じた内部容積の間で空気交換が行われる。したがって、空気は外部に由来するものではなく、内部から再循環される。
【0043】
この解決策は、上記のように、クランク室の効果的な洗浄を得ることを可能にし、したがって短い時間でクランク室に残る油の温度を低下させ、空気の導入により得られる過圧により、油はリード141によってより頻繁に排出される。これは、クランク室内の平均圧力が上昇するためであり、これにより、油の廃棄が促進され、したがって動力損失および高温の原因となる破砕作用が防止される。
【0044】
さらに、このような解決策は、ブローバイバルブによって外部に排出される空気の流れを制限することを可能にし、したがってそれに応じて、煙および蒸気、ならびに油自体の消費を減少させる。これは内部の空気再循環であるため、外部に排出される流れは、外部から導入される空気の量よりも少なく、これにより、煙および蒸気が減少し、それに応じて油の消費が減少する。
【0045】
次に、特にコンパートメント150内の空気の圧力がリード141の切り替え値に達する場合、リード141を開位置に切り替えると、チャネル151および170が相互に連通し、したがって、リード112の切り替え頻度の増加について上記に説明された効果を伴って、HPCシステムから、および/またはチェーンコンパートメントから、および/またはフライホイールコンパートメントから、クランク室110へ空気が導入する。
【0046】
本発明によるシステムのさらなる特徴は、
図1から7を参照して以下に記載される。
【0047】
図示のように、固定インサート130は、クランク室110の自由内部容積(可動リンケージによって占められていない)を減少させるために、室110内に収容される。前記インサート130は、台形の断面を有し(コネクティングロッドが移動する面に平行な面、したがってドライブシャフトの回転軸に垂直な面に従って)、その底部114から所定の距離で(油だめ113内の油LLの蓄積を妨げないように)油だめ113に位置し、特に開口部111の突出部(破線で示される)に少なくとも部分的に位置し、したがって前記潤滑液LLを前記収集および排出油だめ113に運ぶための運搬チャネル115を画定する。
【0048】
インサート110により、リード112が閉位置から開位置に曲がることによって切り替わる所定のガス圧値(本明細書以下で、切り替え圧力値とも定義される)は、前記所定のガス圧値が前記固定インサート130の不在下で達成されるときに存在する潤滑液LLの容積よりも少ない容積の潤滑液LLの存在下で、前記クランク室110内で達成され、明らかに、切り替えガス圧に到達するのに必要な油の量の減少により、リード112の切り替え頻度が多くなり(または言い換えると、切り替え頻度が増加する)、したがって可撓性リード112の2つの連続する切り替え動作(閉位置から開位置への両方)の間に蓄積される液体LLの量が減少し、前記所定の切り替え圧力値が、固定インサート130の不在下で達成されるときに存在する潤滑液LLの容積と、前記所定の切り替え圧力値が実際に到達するときに存在する潤滑液LLの容積との差は、クランク室110の自由内部容積と、固定インサート130の容積との差と実質的に(インサート130によって)等しい。
【0049】
前述のように、リード112の2つの連続する切り替え動作の間に室110内に蓄積され得る潤滑液LLの量の減少は、ドライブシャフトが蓄積された油と干渉するリスク、および蓄積された油が、車両の移動中、特に曲がり角でドリフト現象を受け、それによって、その安定性を損なうことさえある(重心の移動の影響による)、さらなるリスクの減少をもたらす。
【0050】
用途に応じて、前記固定インサート130の容積は、クランク室110の自由内部容積の20%~70%、好ましくは35%~55%であり得る。
【0051】
したがって、図面に示されるような本発明の実施形態の上記の詳細な説明によって、本発明が所定の目的を達成することを可能にし、したがって、従来技術による解決策に影響を与える欠点および/または不都合を克服することが実証された。
【0052】
例えば、本発明は、換気および/または潤滑システムを提供することを可能にし、その動作モードは、「湿式クランクケース」の動作モードよりも「乾式クランクケース」の動作モードにより類似しており、長期間のクランク室のシャフトにおける潤滑液の過度の蓄積を避けることができる。
【0053】
図面に示した実施形態の詳細な説明によって上記に本発明を明らかにしたが、本発明は上記および図面に示した実施形態に限定されるものではない。それどころか、当業者にとって明白および自明である上記および添付の図面に示されている実施形態の全ての変形および/または変更は、本発明の範囲内である。したがって、本発明の保護範囲は特許請求の範囲によって定義される。
【国際調査報告】