(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-26
(54)【発明の名称】大血管閉塞により引き起こされる卒中についてのバイオマーカーとしてのD-ダイマー、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)、オステオプロテジェリン(OPG)及びオステオポンチン(OPN)
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20230519BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230519BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
G01N33/68 ZNA
G01N33/53 D
G01N33/53 V
G01N33/543 521
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563013
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(85)【翻訳文提出日】2022-12-13
(86)【国際出願番号】 GB2020053340
(87)【国際公開番号】W WO2021209732
(87)【国際公開日】2021-10-21
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522404384
【氏名又は名称】ポキット・ダイアグノスティクス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エドアルド・ガウデ
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザロ・ラドレダ・モチャレス
(72)【発明者】
【氏名】マルコス・ラドレダ・モチャレス
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB07
2G045DA36
2G045DA44
(57)【要約】
本発明は、脳における1つ又は複数の大血管の閉塞から生ずる卒中の診断に、特に、1種又は複数種のバイオマーカーを使用する、脳における1つ又は複数の大血管の閉塞から生ずる卒中の診断に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大血管閉塞(LVO)の結果としての卒中を診断する方法であって、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体から採取した試料中の少なくとも1種のバイオマーカーの量を決定する工程を含み、前記バイオマーカーが、D-ダイマー、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)、オステオプロテジェリン(OPG)及びオステオポンチン(OPN)から選択される、方法。
【請求項2】
卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体の群から、LVOの結果としての卒中に罹患した個体を特定する方法であって、各個体から採取した試料中の少なくとも1種のバイオマーカーの量を決定する工程を含み、前記バイオマーカーが、D-ダイマー、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)、オステオプロテジェリン(OPG)及びオステオポンチン(OPN)から選択される、方法。
【請求項3】
前記バイオマーカーのうちの少なくとも2種の量を決定する工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記バイオマーカーのうちの少なくとも3種の量を決定する工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
D-ダイマー、OPN及びOPGの量を決定する工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
D-ダイマー及びGFAPの量を決定する工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる前記個体から採取した前記試料中の各バイオマーカーの量を、対照、正の標準、1つ又は複数の正の基準又は負の基準のうちの1つ又は複数における同じバイオマーカーの量と比較する工程を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記個体が、測定された前記バイオマーカーのうちの1種若しくは複数種の量が、対照若しくは負の基準における同じバイオマーカーの量と異なるか、又は正の標準における同じバイオマーカーの量と同等である場合、LVOの結果としての卒中を有するか又は有したと診断される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
健康な若しくは非LVO対照又は負の基準と比較した場合の、D-ダイマー、OPN及び/又はOPGの量における増大が、前記個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示し、場合により更に、健康な若しくは出血性卒中対照又は負の基準と比較した場合の、GFAPの量における減少が、前記個体が非出血性卒中、好ましくはLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
健康な若しくは非LVO対照又は負の基準と比較した場合の、D-ダイマー、OPN及びOPGの量における増大が、前記個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示し、場合により更に、健康な若しくは出血性卒中対照又は負の基準と比較した場合の、GFAPの量における減少が、前記個体が非出血性卒中、好ましくはLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記個体からの前記試料が、血液、血漿、脳脊髄液又は唾液のうちの1つ又は複数である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記個体からの卒中重症度スコアを決定する工程を更に含み、好ましくは、前記卒中重症度スコアが、NIHSS、FAST、FAST-ED、RACE、C-STAT及びEMSAから選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体から採取した前記試料において測定された1種又は複数種のバイオマーカーの量と、前記個体から得た卒中重症度スコアとを組み合わせて、LVO卒中スコアにする工程を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体から作出したLVO卒中スコアを、対照から又は正の標準から作出したLVO卒中スコアと比較する工程を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記個体が、卒中を有するか若しくは有したことが特定されるか若しくは疑われる個体から採取した試料中の測定された前記バイオマーカー量を使用して作出した前記LVO卒中スコアが、正の標準からのバイオマーカー量を使用して作出したLVO卒中スコアと同等であるか;又は卒中を有するか若しくは有したことが特定されるか若しくは疑われる個体から採取した試料中の測定された前記バイオマーカー量を使用して作出した前記LVO卒中スコアが、対照からのバイオマーカー量を使用して作出した前記LVO卒中スコアとは異なる場合、LVOの結果としての卒中を有するか又は有したと診断される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる前記個体から採取した前記試料中のバイオマーカーの量が、前記バイオマーカーに結合する薬剤を使用して決定され、好ましくはバイオマーカーの量が、ELISA又はラテラルフローアッセイを使用して決定される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記個体における卒中症状の開始の約24時間以内に行われる、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
大血管閉塞(LVO)から生ずる卒中を診断するための1種又は複数種のバイオマーカーの使用であって、前記バイオマーカーが、D-ダイマー、オステオプロテジェリン(OPG)、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)及びオステオポンチン(OPN)から選択される、使用。
【請求項19】
前記バイオマーカーのうちの少なくとも2種又は少なくとも3種が、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体において大血管閉塞から生ずる卒中を特定するために使用される、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
D-ダイマー及びGFAPが、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体において大血管閉塞から生ずる卒中を特定するために使用される、請求項18に記載の使用。
【請求項21】
大血管閉塞(LVO)の結果としての卒中を診断することにおける使用のための、D-ダイマー、OPN、OPG及び/又はGFAP。
【請求項22】
請求項1から17のいずれか一項に記載の方法を行うためのキットであって、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる前記個体からの試料を保持するための容器;標的バイオマーカーの量を決定するための手段;及び前記標的バイオマーカーの量を決定するために提供される前記試料と前記手段との反応をどのように行うかについての使用説明書のうちの1つ又は複数を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳における1つ又は複数の大血管の閉塞から生ずる卒中の診断に、特に、1種又は複数種のバイオマーカーを使用する、脳における1つ又は複数の大血管の閉塞から生ずる卒中の診断に関する。
【背景技術】
【0002】
毎年世界中で1600万人の人々が卒中を発症している。これらの患者の30%超は死亡し、生存者の90%は恒久的障害を持つようになる。卒中は、世界保健機関によって、大脳機能の限局的な(又は昏睡の場合、全体的な)妨害の臨床徴候を急速に発症することからなる臨床症候群であり、24時間若しくはそれ以上続く症状を伴うか、又は血管起源以外の明らかな原因を伴わずに死に至るものとして定義されている。したがって、卒中の定義は、卒中と同じ又は類似する症状により現れるが、脳の部分への血液供給における一時的中断であり、24時間未満続くと定義される、一過性脳虚血発作(TIA);並びに卒中を模擬する神経学的欠陥により現れる非血管状態であり、癲癇発作及び発作後麻痺を含む卒中類似症状(stroke mimics);毒性代謝障害;脳腫瘍;感染;並びに偏頭痛を除外する。
【0003】
2種の主要な型の卒中である、虚血性卒中及び出血性卒中がある。各々についての処置管理は、それらの異なる病因のために非常に異なっている。
【0004】
出血性卒中は、脳内の血管の破裂及び結果としての出血のために起こる。2種の主要な型の出血性卒中である、脳内出血(実質内出血(脳組織内の出血)又は脳室内出血(脳の脳室系内の出血)のいずれかのための、脳それ自体の中での出血);及びくも膜下出血(頭蓋内であるが脳組織の外側の出血;より正確にはくも膜と脳軟膜との間の出血)がある。出血性卒中は、患者において見られる卒中のおよそ15%にあたる。
【0005】
虚血性卒中は、脳のある領域への血流の物理的妨害として定義され、患者において見られる卒中のおよそ85%にあたる。
【0006】
虚血性卒中の種類の1つには、小血管閉塞(SVO)から生ずる卒中がある(小窩性卒中とも称される)。SVO卒中又は小窩性卒中は、1つ又は複数の小血管、典型的に脳深部構造に供給する小血管の閉塞によって引き起こされる。
【0007】
しかしながら、最も致死的な種類の虚血性卒中は、大血管閉塞(LVO)から生ずる卒中、又は単にLVO卒中である。LVO卒中は、総頸動脈、脳底動脈、椎骨動脈、中大脳動脈、前大脳動脈、後大脳動脈、外頸動脈、内頸動脈及び/又は前大脳動脈を含む、脳内の1つ又は複数の大血管の閉塞から生ずる1。LVOから生ずる卒中は、卒中関連依存症及び死亡に、比例せずに寄与する1。
【0008】
LVO卒中に罹患しているか又は罹患したと特定される患者のための典型的な処置は、機械的血栓除去(MT)である。MTは、鼠径部の高さにおいて挿入されたプローブを介して血餅を機械的に除去する外科手順である。MTは典型的に、LVO卒中を処置するためにのみ有用であり、それは、他の種類の虚血性卒中(例えばSVO卒中)において冒された血管は、脳内のそれらの深度のために及び/又は機械的プローブを入れるには小さ過ぎるために機械的プローブが達することができないことによる。MTによるLVO患者の処置は、生存確率を有意に増大させ、且つ障害の程度を減少させる2~4。機械的血栓除去は、卒中開始から24時間までのLVO卒中のための安全且つ有効な処置であると証明されており3、開始後数時間のLVO卒中の検出は、卒中治療経路を有意に補助しうることを示す。LVO卒中に罹患しているか又は罹患した、卒中症状を示す個体の特定の迅速さ及び/又は精度の改善は、患者がMTによって処置され、血行再建を達成することを確実にするために非常に重要である。
【0009】
しかしながら、虚血性卒中及び出血性卒中は、典型的に、類似する症状により現れる。加えて、様々な種類の虚血性卒中は、類似する症状により現れうる。これらに更に付け加えると、卒中様症状を示す患者は、TIA若しくは卒中類似症状に罹患している場合があり、且つ/又は2つ以上の病理に罹患している場合がある。これらの因子は、卒中の種類の正確な診断が困難でありうることを意味している。
【0010】
典型的に、卒中の診断は、頭部へのコンピュータ断層撮影(CT)スキャンを使用して達成又は報告される。CTは、脳出血の検出について非常に正確であるが、虚血性卒中、及び特にLVO卒中の検出について非常に不正確でありうる。また、虚血性卒中及び虚血性卒中の種類の診断を補助するために、MRIスキャンが行われうる。LVO卒中が疑われる場合、患者は典型的に、CT血管造影法と称される更なる手順を受ける。その後、神経放射線科医によるCTA及び/又はMRI画像の検査が、LVO卒中を診断するために必要とされる。
【0011】
それゆえ、卒中症状を示す個体におけるLVO卒中の診断は、時間のかかる手順になることがあり、専門家の(神経放射線学的)参加を必要とする。診断及び処置における遅延は、患者のアウトカムに負の影響を及ぼす。LVO卒中に罹患した個体を特定するか又はその特定を補助することができる診断は、これらの患者の処置を迅速化し、これによって死亡率及び障害率を低減することができる。
【0012】
いくつかの研究により、患者の症状に基づく臨床スコアの、LVO卒中の診断において補助する能力が調査されている5~10。そのような臨床スコアは、一般的に、広範に適用されている国立衛生研究所の卒中スケール(NIHSS)システムの単純化型に基づくが、それらのいずれも、LVO卒中の特定について、NIHSSシステムと比較して、診断性能の改善を示していない11。NIHSSシステムは、LVO卒中の特定において有望な結果を示しているが12、現実の臨床シナリオに適用されるカットオフ値は、不十分な診断性能を示している13。このことは、臨床スコア単独では、LVO卒中を診断するのに十分ではないことを示す。
【0013】
卒中サブタイプの差次的診断についてのバイオマーカー測定値の使用を報告しているいくつかの文献がある。WO2012009567は、患者が虚血性卒中に罹患しているかどうかを決定するための発現プロファイルの測定を説明している。WO2016087611は、1パネルの血液バイオマーカーの測定による、虚血性卒中及び出血性卒中サブタイプの区別のための方法を説明している。他の研究は、血液バイオマーカーの、卒中サブタイプを区別し、急性卒中診断において補助となる能力を評価している。Sharmaらは、262種のタンパク質を測定し、1パネルの5種のタンパク質が任意の卒中の種類と類似症状とを識別することができることを見出したが14、卒中サブタイプ間の区別のために示唆されたバイオマーカーはなかった。Bustamanteらは、卒中と類似症状との区別、及び虚血性卒中と出血性卒中との区別について、1パネルの21種のバイオマーカーを試験した15。彼らの研究から、試験したバイオマーカーは、急性臨床環境において、卒中又は卒中サブタイプの正確な診断のために十分ではないことが結論付けられた。他の研究は、LVO卒中の診断のためのバイオマーカーを特定することを試みた。Wangらは、血漿可溶性CD40L/P-セレクチンとLVO卒中患者との間の有意な関係を見出した16。Arenillas及び共同研究者らは、頭蓋内大動脈閉塞卒中を有する患者において、血液c-反応性タンパク質(CRP)量の増大を観察した17。Changらは、心臓バイオマーカーとLVO卒中との間の関連を報告した18。しかしながら、特にLVOから生ずる卒中を診断するための手段は現在のところ存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】WO2012009567
【特許文献2】WO2016087611
【特許文献3】米国特許第5,475,096号
【特許文献4】米国特許第5,670,637号
【特許文献5】米国特許第5,696,249号
【特許文献6】米国特許第5,270,163号
【特許文献7】米国特許第5,707,796号
【特許文献8】米国特許第5,595,877号
【特許文献9】米国特許第5,660,985号
【特許文献10】米国特許第5,567,588号
【特許文献11】米国特許第5,683,867号
【特許文献12】米国特許第5,637,459号
【特許文献13】米国特許第6,011,020号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Konig[Journal fur Praktische Chemie、1904、70、19~56]
【非特許文献2】Konig[Journal fur Praktische Chemie、1904、69、105~137]
【非特許文献3】Johnsonら「Magnetic resonance angiography: A review」Academic radiology 5、4巻(1998):289~305
【非特許文献4】Thompsonら、1994、Nucleic Acids Research, 22、4673~4680
【非特許文献5】Thompsonら、1997、Nucleic Acids Research, 24、4876~4882
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の態様に従って、大血管閉塞(LVO)の結果としての卒中を診断する方法であって、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体から採取した試料中の少なくとも2種のバイオマーカーの量を決定する工程を含み、バイオマーカーが、コハク酸塩、コハク酸-グルタチオン、N-アセチル-アスパラギン酸塩、プロピオニル-カルニチン、グルタミン酸塩、心臓由来脂肪酸結合タンパク質(H-FABP)、脳由来脂肪酸結合タンパク質(B-FABP)、ベータアミロイド(Abeta)1-40、オステオプロテジェリン(OPG)、可溶性腫瘍壊死因子様の弱いアポトーシス誘導物質(sTWEAK:soluble tumor necrosis factor-like weak inducer of apoptosis)、pro-vWF、レチノール結合タンパク質4(RBP4)、ADAMTS13、NMDA受容体2ペプチド(NR2ペプチド)、20-HETE、ビリルビン、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)、D-ダイマー、C-反応性タンパク質(CRP)、マトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)、インターロイキン6(IL-6)、オステオポンチン(OPN)、トロポニンI、s100b、フォン・ヴィルブランド因子(vWF)又はP-セレクチンから選択される、方法が提供される。
【0017】
第2の態様に従って、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体の群から、LVOの結果としての卒中に罹患した個体を特定する方法であって、各個体から採取した試料中の少なくとも2種のバイオマーカーの量を決定する工程を含み、バイオマーカーが、コハク酸塩、コハク酸-グルタチオン、N-アセチル-アスパラギン酸塩、プロピオニル-カルニチン、グルタミン酸塩、心臓由来脂肪酸結合タンパク質(H-FABP)、脳由来脂肪酸結合タンパク質(B-FABP)、Abeta 1-40、オステオプロテジェリン(OPG)、可溶性腫瘍壊死因子様の弱いアポトーシス誘導物質(sTWEAK)、pro-vWF、レチノール結合タンパク質4(RBP4)、ADAMTS13、NMDA受容体2ペプチド(NR2ペプチド)、20-HETE、ビリルビン、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)、D-ダイマー、C-反応性タンパク質(CRP)、マトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)、インターロイキン6(IL-6)、オステオポンチン(OPN)、トロポニンI、s100b、フォン・ヴィルブランド因子(vWF)又はP-セレクチンから選択される、方法が存在する。
【0018】
一部の実施形態において、方法は、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11若しくは12種又はそれ以上のバイオマーカーの量を決定する工程を含む。
【0019】
一部の実施形態において、方法は、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体又は各個体から採取した試料中の各バイオマーカーの量を、対照、正の標準、1つ又は複数の正の基準又は負の基準のうちの1つ又は複数における同じバイオマーカーの量と比較する工程を含む。
【0020】
一部の実施形態において、個体は、測定されたバイオマーカーのうちの1種又は複数種の量が、対照における同じバイオマーカーの量と異なるか、又は正の標準における同じバイオマーカーの量と同等である場合、LVOの結果としての卒中を有するか又は有したと診断される。
【0021】
一部の実施形態において、方法は、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体又は各個体から採取した試料中で測定された1種又は複数種のバイオマーカーの量を、LVO卒中スコアに変換する工程を含む。
【0022】
一部の実施形態において、方法は、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体から採取した試料中の測定されたバイオマーカー量を使用して作出したLVO卒中スコアを、対照から又は正の標準からのバイオマーカー量を使用して作出したLVO卒中スコアと比較する工程を含む。
【0023】
一部の実施形態において、個体は、卒中を有するか若しくは有したことが特定されるか若しくは疑われる個体から採取した試料中の測定されたバイオマーカー量を使用して作出したLVO卒中スコアが、正の標準からのバイオマーカー量を使用して作出したLVO卒中スコアと同等である場合、又は卒中を有するか若しくは有したことが特定されるか若しくは疑われる個体から採取した試料中の測定されたバイオマーカー量を使用して作出したLVO卒中スコアが、対照からのバイオマーカー量を使用して作出したLVO卒中スコアとは異なる場合、LVOの結果としての卒中を有するか又は有したと診断される。
【0024】
一部の実施形態において、個体からの試料は、血液、血漿、脳脊髄液又は唾液のうちの1つ又は複数である。
【0025】
一部の実施形態において、バイオマーカーの量は、バイオマーカーに結合する薬剤を使用して決定される。一部のそのような実施形態において、バイオマーカー(単数又は複数)の量の検出及び/又は定量は、ELISAの使用を含む。一部のそのような実施形態において、バイオマーカー(単数又は複数)の量の検出及び/又は定量は、ラテラルフローアッセイ(lateral flow assay)の使用を含む。
【0026】
一部の実施形態において、方法は、個体が受けた1つ又は複数の臨床評価からのデータ及び/又は情報の考慮を更に含む。一部のそのような実施形態において、臨床評価は、CT若しくはCTAスキャン、MRA若しくはMRIスキャン、又は個体のNIHSS、FAST、ABCD、ABCD2 Rosier、TOAST、EMSA、PASS、VAN、RACE、FAST_ED若しくはCPSSスコアのうちの1つ又は複数である。
【0027】
一部の実施形態において、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体から採取した試料中のバイオマーカーの量は、バイオマーカーに結合する薬剤を使用して決定され、好ましくはバイオマーカーの量は、ELISA又はラテラルフローを使用して決定される。
【0028】
一部の実施形態において、方法は、個体における卒中症状の開始の約24時間以内に行われる。一部の実施形態において、方法は、個体における卒中症状の開始の約17時間以内に行われる。一部の実施形態において、方法は、個体における卒中症状の開始の約6時間以内に行われる。
【0029】
第3の態様に従って、大血管閉塞から生ずる卒中を検出するための2種又はそれ以上のバイオマーカーの使用であって、バイオマーカーが、コハク酸塩、コハク酸-グルタチオン、N-アセチル-アスパラギン酸塩、プロピオニル-カルニチン、グルタミン酸塩、心臓由来脂肪酸結合タンパク質(H-FABP)、脳由来脂肪酸結合タンパク質(B-FABP)、Abeta 1-40、OPG、可溶性腫瘍壊死因子様の弱いアポトーシス誘導物質(sTWEAK)、pro-vWF、レチノール結合タンパク質4(RBP4)、ADAMTS13、NMDA受容体2ペプチド(NR2ペプチド)、20-HETE、ビリルビン、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)、D-ダイマー、C-反応性タンパク質(CRP)、マトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)、インターロイキン6(IL-6)、オステオポンチン(OPN)、トロポニンI、s100b、フォン・ヴィルブランド因子(vWF)、オステオプロテジェリン(OPG)又はP-セレクチンから選択される、使用が提供される。
【0030】
一部の実施形態において、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11若しくは12種又はそれ以上のバイオマーカーが、大血管閉塞から生ずる卒中を特定するために使用される。
【0031】
第6の態様において、本発明の第1又は第2の態様に記載の方法を行うためのキットであって、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体からの試料を保持するための容器;標的バイオマーカーの量を決定するための手段;及び標的バイオマーカーの量を決定するために提供される試料と手段との反応をどのように行うかについての使用説明書のうちの1つ又は複数を含む、キットが提供される。
【0032】
本発明をより良く理解するため、及び本発明の実施形態がどのように実行されうるかを示すために、ここで、例として、附属の図面について参照する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】LVO及び非LVO卒中患者における44個の臨床変数の単変量解析を示す図である。各変数を、分布正規性に基づいて解析した。正規分布変数について、平均値及び標準偏差(SD)を報告する。非正規分布変数について、中央値及び四分位範囲(IQR)を報告する。P値を、スチューデントt(正規分布連続変数)、ウィルコクソン/マン・ホイットニー(Wilcoxon/Mann-Whitney)(非正規分布連続変数)又はカイ二乗検定(カテゴリー変数)から得、ベンジャミニ・ホッホベルグ法による多重比較について調節した。NIHSS:国立衛生研究所の卒中重症度。SBP:収縮期血圧。APTT:活性化部分トロンボプラスチン時間。PT:プロトロンビン時間。DBP:拡張期血圧。RBC:赤血球。CRP:C-反応性タンパク質。NLR:好中球のリンパ球に対する比。OBT:卒中開始から血液収集までの時間。MCV:血球体積平均値。MCH:血球ヘモグロビン平均値。WBC:白血球。*及び***は、それぞれ、p値<0.05及び0.001を示す。
【
図2A】LVO及び非LVO(Non-LVO)卒中患者において測定された血液バイオマーカーの血漿濃度を示す図である。**及び***は、それぞれ、ウィルコクソン・マン・ホイットニーp値<0.01及びp値<0.001を示し、n.s.は、p値>0.05を示す。
【
図2B】出血性及び非出血性卒中患者において測定されたGFAPの血漿濃度を示す図である。**及び***は、それぞれ、ウィルコクソン・マン・ホイットニーp値<0.01及びp値<0.001を示し、n.s.は、p値>0.05を示す。
【
図3】LVO卒中と非LVO卒中との区別について、単変量解析において有意であることが見出された個々のバイオマーカーにより得た受信者操作特性(ROC)曲線を示す図である。各ロジスティックモデルのROC曲線下面積(AUC)を示す。
【
図4】単一のバイオマーカーであるD-ダイマー(D-dimer)、OPN及びOPGについて構築したロジスティックモデルの診断性能を示す図である。ROC曲線解析により見積もった濃度カットオフ値を、各バイオマーカーモデルについて報告する。診断性能測定値を示し、括弧内に95%信頼区間を報告する。P値を、フィッシャーの直接確率検定を使用して、各モデルの相関度マトリックスについて計算した。LR+:正の尤度比;LR-:負の尤度比;OR:オッズ比。
【
図5】D-ダイマー、OPN及びOPGについて構築した多変数ロジスティックモデルと、GFAP、OPN、OPG及びD-ダイマーについて構築した多変数ロジスティックモデルとの比較を示す図である。2つのモデルを、赤池の情報量基準(AIC)、逸脱(Deviance)特性曲線下面積(AUC)及び尤度比(LR)検定により比較する。Df=LR検定の自由度。P値<0.05は有意であると考えられる。
【
図6】卒中開始から血液収集までの時間(OBT)によって血液バイオマーカーのレベルにおける変化がなかったことを示す図である。患者コホートを、OBT四分位数に分け、差を、分散分析により評価した。n.s.=有意でない。
【
図7】LVO予測についての単変量回帰を示す図である。p値は、関連モデルにおける共変量の統計的有意性を示す。D-ダイマー、OPN、OPG及びADAMTS13のレベルをログ変換し、一方で、vWFのレベルを二次変換にかけ、GFAPレベルには変換を適用しなかった。D-ダイマーは、LVOについての最も有意な予測値を示した(OR 1.13、95%CI 1.07~1.20;p値<0.001)。
【
図8】バイオマーカーであるD-ダイマー及びGFAP、卒中スコア、並びにバイオマーカーと卒中スコアとの組合せについてのLVO予測の単変量及び多変数回帰モデルを示す図である。多変数解析により、LVO予測についての血液バイオマーカーの最適組はD-ダイマー(OR 15.44、95%CI 4.91~57.6;p値<0.0011)及びGFAP(OR 0.83、95%CI 0.5~0.99;p値=0.03)であることが見出された。
【
図9】単独又はバイオマーカーを付加した、各スケールのロジスティック回帰モデルの要約を示す図であり、これらは、95%CIを伴って示される受信者操作特性曲線下面積(AUC)を見積もることによってLVOを予測することにおけるそれらの精度について比較される。LVOを予測することにおいて、血液バイオマーカーを各卒中スケールと共に含めることによって付加された値を評価するために、各卒中スケール単独によるモデルとバイオマーカーを付加したモデルとを比較してLR検定を行った。D-ダイマー及びGFAPの付加は、卒中スケール単独を使用することと比較して、適合度の改善(すなわち、より低いAIC)、LVO予測(すなわち、より高いAUC)、及び試験された各卒中スケールについての有意なLR検定をもたらした。D-ダイマー及びGFAPと、FAST-ED又はEMSAとの組合せは、LVO予測についての最も高いLR+(それぞれ、22.6、95%CI 8.58~59.51及び17.22、95%CI 7.22~41.04)をもたらし、それぞれ、0.09(95%CI 0.02~0.34)又は0.14(95%CI 0.05~0.39)のLR-、91%(95%CI 71~98)又は86%(95%CI 66~97)の感度、及び95%(95%CI 89~98)又は94%(95%CI 88~98)の特異性を伴った。LR p値は、卒中スケール単独によるモデルと、バイオマーカーを付加した対応するモデルとの間の比較を指す。
【
図10】バイオマーカーの付加を伴うか又は伴わない、卒中スケールモデルのROC曲線を示す図である。D-ダイマー及びGFAPの付加は、卒中スケール単独を使用することと比較して、適合度の改善(すなわち、より低いAIC)、LVO予測(すなわち、より高いAUC)、及び試験された各卒中スケールについての有意なLR検定をもたらした。
【
図11】LVO及び非LVO患者の血漿中のD-ダイマー、OPN、OPG、vWF、ADAMTS13及びGFAPの血漿濃度の要約を示す図である。本発明者らは、血液バイオマーカーであるD-ダイマー(それぞれ(LVO及び非LVO患者)、1.31±2.0及び0.42±0.45μg/mL、p値<0.001);OPN(それぞれ、1.71±1.05及び1.16±1.09ng/mL、p値<0.01);OPG(それぞれ、125.24±60.96及び97.96±54.29pg/mL、p値<0.01)についての統計的有意差を見出した。中央値を報告し(pg/mL)、IQR値を括弧内に示す。ウィルコクソン・マン・ホイットニーp値を示す。
【
図12】LVO及び非LVO患者における卒中重症度スケールの査定の要約を提供する図である。すべての患者、LVO及び非LVO患者について得た卒中重症度スケールの中央値。IQR値は括弧内に示す。ウィルコクソン・マン・ホイットニーを使用してp値を計算した。
【
図13】様々な組合せ(すなわち、モデル)において使用される場合の、各バイオマーカー及び卒中重症度スコアと関連付けられる式の係数を示す図である。どのモデルも常に「インターセプト」係数を有する一方で、各バイオマーカーの係数は、そのバイオマーカーがモデルに含まれるかどうかに依存する。好ましくは、報告される係数は、LVO卒中スコアを計算する場合に使用すべきである。
【
図14】バイオマーカーと卒中スコアとの様々な組合せについての感度、特異性、正の尤度比(LR+)及び負の尤度比(LR-)の測定値を要約する図である。各モデルについて、LVO予測についての特異性を最大限にし、一方で、検出力検定に従って、90%の最小特異性レベルを維持することによって、カットオフ点を選択した。楽観予測についての補正を、2000個のリサンプルによるブートストラップ法を通して行い、CIを伴って示した。D-ダイマー及びGFAPとFAST-ED又はEMSAとの組合せは、LVO予測についての最も高いLR+(それぞれ、22.6、95%CI 8.58~59.51及び17.22、95%CI 7.22~41.04)をもたらし、それぞれ、0.09(95%CI 0.02~0.34)又は0.14(95%CI 0.05~0.39)のLR-、91%(95%CI 71~98)又は86%(95%CI 66~97)の感度、及び95%(95%CI 89~98)又は94%(95%CI 88~98)の特異性を伴った。
【発明を実施するための形態】
【0034】
個体からの試料中の特定のバイオマーカーのある特定の量の検出は、個体がLVOから生ずる卒中に罹患したかどうかについての決定を決定又は報告しうることが見出された。
【0035】
したがって、第1の態様において、大血管閉塞(LVO)の結果としての卒中を診断する方法であって、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体から採取した試料中の少なくとも2種のバイオマーカーの量を決定する工程を含み、バイオマーカーが、コハク酸塩、コハク酸-グルタチオン、N-アセチル-アスパラギン酸塩、プロピオニル-カルニチン、グルタミン酸塩、心臓由来脂肪酸結合タンパク質(H-FABP)、脳由来脂肪酸結合タンパク質(B-FABP)、Abeta 1-40、OPG、可溶性腫瘍壊死因子様の弱いアポトーシス誘導物質(sTWEAK)、pro-vWF、レチノール結合タンパク質4(RBP4)、ADAMTS13、NMDA受容体2ペプチド(NR2ペプチド)、20-HETE、ビリルビン、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)、D-ダイマー、C-反応性タンパク質(CRP)、マトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)、インターロイキン6(IL-6)、オステオポンチン(OPN)、トロポニンI、s100b、フォン・ヴィルブランド因子(vWF)、オステオプロテジェリン(OPG)又はP-セレクチンから選択される、方法が提供される。
【0036】
「大血管閉塞(LVO)の結果としての卒中」という句は、本明細書中で「LVO卒中」とも称され、総頸動脈、脳底動脈、椎骨動脈、中大脳動脈、前大脳動脈、後大脳動脈、外頸動脈、内頸動脈及び/又は前大脳動脈のうちの1つ又は複数の閉塞から生ずる卒中を意味する。
【0037】
本明細書で使用される場合、「卒中を有するか又は有したことが疑われる個体」という句は、卒中と関連付けられる1つ又は複数の徴候又は症状を示す個体を指す。これは、TIA又は卒中類似症状に罹患している個体を含みうる。「卒中を有するか又は有したことが特定される個体」という句は、本明細書で使用される場合、卒中と関連付けられる1つ又は複数の徴候又は症状を示し、加えて、卒中を有するか又は有したと診断されている個体を示す。
【0038】
卒中と関連付けられる徴候又は症状には、腕のふらつき、突然開始する顔面脱力、顔面の片麻痺及び筋力低下、発話異常及びそれらの組合せ、例えばFAST検査、知覚感覚若しくは振動感覚の低減、しびれ、初期弛緩症(緊張低下症)、痙縮(緊張亢進症)による置換、義務的相乗作用(obligatory synergy)、及び特にそれらが身体の片側に表れている場合(一側性)、嗅覚、味覚、聴覚若しくは視覚(全体若しくは部分)の変化、反射亢進、反射の減少(例えば、のどの詰まり、飲み込み、光への瞳孔反応)、顔面の感覚減少及び筋力低下、眼瞼の下垂(眼瞼下垂)及び眼筋の脱力、平衡感覚の支障及び眼振、失語症、構音障害、失行症、呼吸及び心拍の変化、心房細動、頭部を片側へ向けることができない胸鎖乳突筋の脱力、舌の脱力(突き出すこと及び/若しくは側面から側面へ動かすことができないこと)、視野の欠陥、半側空間無視、混乱した思考、記憶障害、混乱、本人の通常卒中に関連した障害についての洞察の欠陥、運動協調の変化、歩行の変化、眩暈、性欲過剰所作、頭痛並びに又は平衡失調が含まれる。
【0039】
方法は、in vivo、in vitro又はex vivoにおいて行われうる。好ましくは、方法は、in vitro又はex vivoにおいて行われる。最も好ましくは、方法は、in vitroにおいて行われる。
【0040】
一部の実施形態において、方法は、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11若しくは12種又はそれ以上のバイオマーカーの量を決定する工程を含む。
【0041】
実施例で説明され、
図2A及び
図3で示されるように、本発明者らは、バイオマーカーであるOPN、OPG及びD-ダイマーが、対象が大血管閉塞(LVO)の結果としての卒中に罹患したかどうかを決定することにおいて驚くべきことに有効であることを初めて示した。
【0042】
したがって、好ましくは、方法は、D-ダイマー、OPN及びOPGから選択されるバイオマーカーのうちの少なくとも1種の量を決定する工程を含む。より好ましくは、方法は、D-ダイマー、OPN及びOPGから選択されるバイオマーカーのうちの少なくとも2種の量を決定する工程を含む。最も好ましくは、方法は、D-ダイマー、OPN及びOPGの量を決定する工程を含む。
【0043】
好ましくは、方法は、D-ダイマーの量を決定する工程を含む。好ましくは、方法は、OPNの量を決定する工程を含む。好ましくは、方法は、OPGの量を決定する工程を含む。
【0044】
本発明者の更なる研究により、
図5及び
図14において要約される通り、追加のバイオマーカーであるGFAPの包含は、大血管閉塞(LVO)の結果としての卒中を診断することにおいて更により高い精度をもたらすことが示された。この発見は、バイオマーカーパネルへのGFAPの包含は、卒中が疑われる患者の集団から出血性卒中を除外することを補助しうることを示唆する。
【0045】
したがって、好ましくは、方法は、D-ダイマー、OPN、OPG及びGFAPから選択されるバイオマーカーのうちの少なくとも1種の量を決定する工程を含む。より好ましくは、方法は、D-ダイマー、OPN、OPG及びGFAPから選択されるバイオマーカーのうちの少なくとも2種の量を決定する工程を含む。更により好ましくは、方法は、D-ダイマー、OPN、OPG及びGFAPから選択されるバイオマーカーのうちの少なくとも3種の量を決定する工程を含む。最も好ましくは、方法は、バイオマーカーであるD-ダイマー、OPN、OPG及びGFAPの量を決定する工程を含む。
【0046】
図14において示される通り、驚くべきことに、D-ダイマーとGFAPとの特定の組合せは、90%を超える診断の特異性をもたらす。
【0047】
したがって、好ましくは、方法は、D-ダイマー及びGFAPの量を決定する工程を含む。
【0048】
一実施形態において、D-ダイマータンパク質配列は、以下の通り、本明細書で配列番号1として提供されるEntrez遺伝子番号2243により表されうる。
【0049】
【0050】
したがって、好ましくは、D-ダイマーは、実質的に配列番号1で示されるアミノ酸配列又はその断片若しくはバリアントを含むか又はからなる。
【0051】
一実施形態において、D-ダイマーは、以下の通り、本明細書で配列番号2として提供されヌクレオチド配列によってコードされうる。
【0052】
【0053】
【0054】
したがって、好ましくは、D-ダイマーは、実質的に配列番号2で示されるヌクレオチド配列又はその断片若しくはバリアントを含むか又はからなる。
【0055】
一実施形態において、OPNタンパク質配列は、以下の通り、本明細書で配列番号3として提供されるEntrez遺伝子番号6696により表されうる。
【0056】
【0057】
したがって、好ましくは、OPNは、実質的に配列番号3で示されるアミノ酸配列又はその断片若しくはバリアントを含むか又はからなる。
【0058】
一実施形態において、OPNは、以下の通り、本明細書で配列番号4として提供されるヌクレオチド配列によってコードされうる。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
したがって、好ましくは、OPNは、実質的に配列番号4で示されるヌクレオチド配列又はその断片若しくはバリアントを含むか又はからなる。
【0063】
一実施形態において、OPGタンパク質配列は、以下の通り、本明細書で配列番号5として提供されるEntrez遺伝子番号4982により表されうる。
【0064】
【0065】
したがって、好ましくは、OPGは、実質的に配列番号5で示されるアミノ酸配列又はその断片若しくはバリアントを含むか又はからなる。
【0066】
一実施形態において、OPGは、以下の通り、本明細書で配列番号6として提供されるヌクレオチド配列によってコードされうる。
【0067】
【0068】
したがって、好ましくは、OPGは、実質的に配列番号6で示されるヌクレオチド配列又はその断片若しくはバリアントを含むか又はからなる。
【0069】
一実施形態において、GFAPタンパク質配列は、以下の通り、本明細書で配列番号7として提供されるEntrez遺伝子番号2670により表されうる。
【0070】
【0071】
したがって、好ましくは、GFAPは、実質的に配列番号7で示されるアミノ酸配列又はその断片若しくはバリアントを含むか又はからなる。
【0072】
一実施形態において、GFAPは、以下の通り、本明細書で配列番号8として提供されるヌクレオチド配列によってコードされうる。
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
したがって、好ましくは、GFAPは、実質的に配列番号8で示されるヌクレオチド配列又はその断片若しくはバリアントを含むか又はからなる。
【0077】
当業者は、言及されるバイオマーカーのいくつかの天然バリアントが存在すること、及び方法は、D-ダイマー、OPN、OPG及びGFAPのこれらの天然に存在するバリアントのうちのいずれかの検出に延長してもよいことを理解しうる。
【0078】
試料は、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体から採取した又は由来する任意の流体及び/又は組織でありうる。一部の実施形態において、試料は、細胞、組織、脳脊髄液(CSF)、全血、血清、血漿、細胞質流体、尿、糞便、胃液、涙、消化液、唾液、鼻若しくは他の気道液、膣液又は精液のうちの1つ又は複数である。一部の実施形態において、2つ以上の試料が、個体から採取されうる。一部の実施形態において、2つ又はそれ以上の試料が、個体から採取されうる。一部のそのような実施形態において、試料は異なっていてもよく、例えば、試料は全血及びCSF;唾液及び全血;全血、CSF及び涙であってもよい。一部の実施形態において、個体からの試料は、血液、血漿、脳脊髄液又は唾液のうちの1つ又は複数である。好ましくは、試料は、全血又は血漿試料である。より好ましくは、試料は、血漿試料である。最も好ましくは、試料は、全血試料である。
【0079】
一部の実施形態において、個体から採取した試料(単数又は複数)は、試料中の任意のバイオマーカーを検出及び/又は定量する分析前に、加工される。加工の必要性及び/又は必要とされる試料の加工の種類は、検出すべきバイオマーカー、及び/又はバイオマーカーを検出するために使用されるアッセイに依存する。一部の実施形態において、試料は、バイオマーカー検出アッセイに適切な濃度を得るために、例えば生理食塩水により希釈する必要がある場合がある。
【0080】
全血試料は、当該技術分野における標準的な手順を使用して加工して、血漿及び/又は血清を得てもよい。例えば、全血試料を、2000gにおいて4℃にて15分間遠心分離して、血漿を得ることができ、血漿は、その後、バイオマーカー検出アッセイの必要に応じて直接的に又は生理食塩水により希釈して使用することができる。
【0081】
その後、試料は、試料中の標的バイオマーカーの存在を検出するため、及び/又は試料中の標的バイオマーカーの量を決定するために分析される。2つ以上の試料が個体から採取された場合、試料の分析は、同時に又は逐次的に行われうる。2以上の個体からの試料は、同時に及び/又は同じアッセイにおいて分析してもよい。
【0082】
分析は、任意の好適な手段によって行うことができる。例えば、分析は、ELISA、ラテラルフロー免疫クロマトグラフィーアッセイ(ラテラルフロー)、ラジオイムノアッセイ、ラジオアッセイ、酵素活性アッセイ、細胞アッセイ、ウェスタンブロット、サザンブロット、ノザンブロット、免疫沈降、免疫蛍光、液体クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、陽電子放射断層撮影、質量分析、RT-PCR、PCR、質量分光分析、ゲル電気泳動、マスセンシングBioCDタンパク質アレイ、電気化学イムノアッセイ、表面増強ラマン分光分析、蛍光ベースの検出、フローサイトメトリー、ナノ粒子ベースの検出、量子ドット技術及びタンパク質マイクロアレイのうちの1つ又は複数によって行われうる。
【0083】
一部の実施形態において、分析技法は、試料中のバイオマーカーを認識及び結合する1種又は複数種の薬剤の使用を含む。薬剤は、2つ以上のバイオマーカーに結合する能力を有しうる。
【0084】
一部の実施形態において、薬剤は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体である。薬剤は、インタクトな抗体、その断片(例えばFab若しくはF(ab')2)又は操作したバリアント(例えばsFv)であってもよい。そのような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDを含む任意の免疫グロブリンクラス及びその任意のサブクラスの抗体であってもよい。好適な抗体は、例えばAbcam社(Cambridge、英国)から、市販されている。
【0085】
薬剤は、検出を可能にするように標識化してもよい。好適な検出可能標識は、当該技術分野において公知である。一例として、薬剤の、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)とのコンジュゲーションは、HRPの酵素作用によって変換されて色変化を生じうる適切な基質の添加によって、薬剤の検出を可能にする。検出可能標識の他の例には、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、コロイド金、蛍光化合物、ビオチン、放射性同位体、発光性化合物、磁気粒子及び他の酵素が含まれる。検出可能な標識及び標識化キットは、例えばExpedeon Ltd社、Cambridge、英国から、市販されている。
【0086】
また、一次/二次抗体系は、試料中のバイオマーカーを検出及び/又はその量を決定するために使用されうる。そのような系において、試料を、1種又は複数種のバイオマーカーを特異的に認識及び結合する一次抗体と接触させる。続いて、一次抗体の種又はアイソタイプを認識する、適切な標識を有する二次抗体を、試料と接触させる。試料中の1種又は複数種のバイオマーカーの検出は、二次抗体にコンジュゲートした標識化分子によって生成されるシグナルを測定することによって達成される。
【0087】
様々な種において産生される抗体は、第1の抗体が結合するバイオマーカーの検出に使用することができる。例えば、ウサギにおいて生成された第1の抗体;及びウサギにおいて生成された一次抗体を認識及び結合することができる二次抗種抗体。
【0088】
薬剤は、2種以上のバイオマーカーに結合する能力を有してもよく、そのうちの1つ又は複数は、基質に結合する。そのような実施形態において、薬剤は、空間的重なりを伴って結合されうる。一部のそのような実施形態において、薬剤は、差次的に標識化されて検出を可能にすることができ、例えば、色強度ベースの標識の使用は、各空間的に重複する結合したバイオマーカーの検出及び定量を可能にする。
【0089】
一部の実施形態において、試料は、好適な基材、例えば物理的基剤、例えばニトロセルロース膜又はPVDF膜、ポリスチレン又は他のプラスチックポリマーから作製された強固な基材、例えばマイクロタイタープレートに固定されうる。基材は、その後、第1のバイオマーカーを特異的に認識及び結合する抗体と接触されうる。基材の洗浄は、抗体の、標的バイオマーカーへの特異的結合を確実にすることを補助する。抗体は、例えば検出可能標識、例えば酵素、フルオロフォア又は放射性同位体とのコンジュゲーションを通して、標識化されうる。標識の検出、及び結合量の定量は、好適な手段によって達成されうる。或いは、バイオマーカーと第1の抗体との複合体に結合する、検出可能標識とコンジュゲートした二次抗体を添加してもよく、続いて洗浄して、余分な抗体を除去し、基材上の検出可能標識の存在が、測定されるバイオマーカーを含有する試料を示すことを確実にする。
【0090】
或いは、バイオマーカー特異的抗体を、基材上に固定してもよく、その後、基材をバイオマーカーと接触させ、バイオマーカーそれ自体は、検出可能標識とコンジュゲートしている。標識化バイオマーカーの、抗体との接触は、抗体が、標識化バイオマーカーに結合することをもたらす。その後、試料を、バイオマーカーの、抗体への結合を可能にする条件下において基材と接触させる。試料中のバイオマーカーは標識化されていないので、抗体からの標識化バイオマーカーの置き換えは、洗浄後の基材上の検出可能標識の量における低減をもたらし、試料がバイオマーカーを含有することを示す。
【0091】
代替の薬剤には、標的バイオマーカーに特異的に結合するペプチド、アプタマー、酵素又は小分子が含まれる。例えば、H-FABPに特異的に結合するアプタマーを使用してもよい。アプタマーは、特異的リガンドに結合する核酸ベースの分子である。特定の結合特異性を有するアプタマーを作製するための方法は、米国特許第5,475,096号、同第5,670,637号、同第5,696,249号、同第5,270,163号、同第5,707,796号、同第5,595,877号、同第5,660,985号、同第5,567,588号、同第5,683,867号、同第5,637,459号及び同第6,011,020号において詳述されるように公知である。
【0092】
試料中のバイオマーカーの量の定量は、任意の好適なアッセイを使用して行われうる。例えば、抗体ベースのアッセイ若しくは免疫吸着アッセイ、例えばELISA、ラテラルフロー、ラジオイムノアッセイ又は免疫沈降。一部の実施形態において、分析は、ELISAを使用して行われる。一部の実施形態において、分析は、ラテラルフローアッセイを使用して行われる。
【0093】
代替の方法及び/又は補完的方法を使用して、非免疫原性分子又は化合物、例えば代謝産物、異化産物、ペプチド、ホルモン、シグナル伝達分子、小分子、薬物、又は天然に存在する形態においては抗体によって認識若しくは結合されない場合がある他の任意の化合物若しくは分子を検出してもよい。そのような方法には、比色法、酵素法、ガスクロマトグラフィー(GC)及びガスクロマトグラフィー-質量分析(GC-MS)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び高速液体クロマトグラフィー-質量分析(HPLC-MS)、核磁気共鳴(NMR)質量分光分析、ラマン質量分光分析が含まれる。例えば、好適な比色法は、Konig[Journal fur Praktische Chemie、1904、70、19~56及びJournal fur Praktische Chemie、1904、69、105~137]によって最初に説明された化学反応に類似する化学反応に基づきうる。
【0094】
更に、in vivoにおいてバイオマーカーを測定するための技法は、バイオマーカーを特異的に認識及び結合する結合剤を、患者へ導入することを含む。
【0095】
一部の実施形態において、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体から採取した試料中のバイオマーカーの量は、負の基準及び/又は1つ若しくは複数の正の基準と比較される。
【0096】
負の基準は、標的バイオマーカーが非存在であるか又は標的バイオマーカーの量が検出不能であることが既知である研究用の液、例えば生理食塩水又は緩衝液である。正の基準は、標的バイオマーカーを既知の量において含む研究用の液、例えば生理食塩水又は緩衝液である。正及び/又は負の基準を作出するために使用されるバイオマーカーは、単離された標的バイオマーカー又はその変形、例えばバイオマーカーの組換え変形若しくは合成変形であってもよい。
【0097】
一部の実施形態において、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体から採取した試料中のバイオマーカーの量は、負の基準、及び/又は様々な既知の量の標的バイオマーカーを含むある範囲の正の基準と比較されうる。
【0098】
一部の実施形態において、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体から採取した試料中のバイオマーカーの量と、負の基準との間の差は、個体が、LVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。一部の実施形態において、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体から採取した試料中のバイオマーカーの量と、負の基準との間の統計的有意差は、個体が、LVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。一部の実施形態において、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体から採取した試料中のバイオマーカーの量と、正の基準との間の相関は、個体からの試料中のそのバイオマーカーの量を決定するか又は量の表示を提供する。
【0099】
或いは又は加えて、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体から採取した試料中のバイオマーカーの量は、対照における同じバイオマーカーの量と比較されうる。
【0100】
対照は、1又は複数の健康な個体から採取した試料から生成した試料又はデータである。「健康な個体」という用語は、本明細書で使用される場合、卒中の徴候又は症状を有さず、卒中の病歴を有しない個体を意味する。或いは又は加えて、対照は、TIA、卒中類似症状、出血性卒中又は小血管閉塞から生ずる卒中を有するか又は有した1又は複数の個体から採取した試料から生成した試料又はデータであってもよい。「TIA、卒中類似症状、出血性卒中又は小血管閉塞から生ずる卒中を有するか又は有した個体」という用語は、本明細書で使用される場合、臨床的評価によって、TIA、卒中類似症状、出血性卒中又は小血管閉塞から生ずる卒中に罹患していると決定されるか又は決定された個体を意味する。そのような患者は、TIA、卒中類似症状、出血性卒中又は小血管閉塞から生ずる卒中と関連付けられる神経学的症状が終わるまで、対照群に含まれうる(すなわち、対照への包含のための試料に寄与する)。好ましくは、対照は、LVO卒中に罹患していない1人又は複数人の患者から採取した試料又はデータである。好ましくは、対照は、非LVO卒中に罹患した患者から採取した試料又はデータである。好ましくは、対照は、虚血性非LVO卒中、出血性卒中及び/又は非卒中患者から採取した試料又はデータである。
【0101】
一部の実施形態において、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体から採取した試料中のバイオマーカーの量と、対照との間の差は、個体が、LVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。一部の実施形態において、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体から採取した試料中のバイオマーカーの量と、対照との間の統計的有意差は、個体が、LVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。
【0102】
或いは又は加えて、個体からの試料中のバイオマーカーの量は、正の標準における同じバイオマーカーの量と比較されうる。正の標準は、卒中と関連付けられる1つ又は複数の徴候又は症状を示し、加えて、LVOの結果としての卒中を有するか又は有したと診断されている個体から採取した試料から生成した試料又はデータである。
【0103】
一部の実施形態において、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体から採取した試料中のバイオマーカーと、正の標準との同等の量は、個体が、LVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。一部の実施形態において、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体から採取した試料中のバイオマーカーの量と、正の標準との間の統計的有意差は、個体が、LVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。
【0104】
一部の実施形態において、2種又はそれ以上のバイオマーカー間の比を計算してもよく、比は、他のバイオマーカー(「基準バイオマーカー」)の量に対する1種のバイオマーカー(「標的バイオマーカー」)の量である。一部の実施形態において、基準バイオマーカーは、対照、正の基準又は正の標準における基準バイオマーカーであり、例えば、LVO卒中を有することが疑われる個体から採取した試料中のバイオマーカーの量を、1又は複数の健康な個体から採取した試料から生成した試料又はデータと比較してもよい。一部の実施形態において、標的及び基準バイオマーカーは、同じ試料からの標的及び基準バイオマーカーであり、例えば、コハク酸塩の量を、LVO卒中を有することが疑われる個体から採取した試料中のGFAPの量と比較してもよい。或いは又は加えて、バイオマーカーのレベルを、異なる時間に同じ個体から採取した試料において分析してもよく、例えば、GFAPの量を、個体が卒中に罹患する前後に個体から採取した2つの試料において比較してもよい。一部の実施形態において、正の比は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示し、一方で、負の比は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患していないことを示し、ここで、「正の比」という句は、基準バイオマーカーと比較した試験バイオマーカーの量の増大を示し、「負の比」は、基準バイオマーカーの量と比較した試験バイオマーカーの量の減少を指す。中間の比は、試験バイオマーカーの量及び基準バイオマーカーの量における差がないか又は事実上差がないことを説明する。
【0105】
好ましくは、健康な若しくは非LVO対照又は負の基準と比較した場合の、D-ダイマー、OPN及びOPGから選択されるバイオマーカーのうちの1種又は複数種の量における増大は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、健康な若しくは非LVO対照又は負の基準と比較した場合の、D-ダイマー、OPN及びOPGから選択されるバイオマーカーのうちの2種又はそれ以上の量における増大は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、健康な若しくは非LVO対照又は負の基準と比較した場合の、D-ダイマー、OPN及びOPGから選択されるバイオマーカーの量における増大は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、健康な若しくは非LVO対照又は負の基準と比較した場合の、D-ダイマー、OPN及び/又はOPGの量における増大は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、健康な若しくは非LVO対照又は負の基準と比較した場合の、D-ダイマー、OPN及びOPGの量における増大は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。
【0106】
好ましくは、健康な若しくは非LVO対照又は負の基準と比較した場合の、GFAPの量における減少は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、健康な若しくは出血性卒中対照又は負の基準と比較した場合の、GFAPの量における減少は、個体が非出血性卒中、好ましくはLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、健康な若しくは非出血性対照又は負の基準と比較した場合の、GFAPの量における増大は、個体が出血性卒中に罹患したことを示す。
【0107】
好ましくは、健康な若しくは非LVO対照又は負の基準と比較した場合の、D-ダイマー、OPN及び/又はOPGの量における増大、並びにGFAPの量における減少は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、健康な若しくは非LVO対照又は負の基準と比較した場合の、D-ダイマー、OPN及びOPGの量における増大、並びにGFAPの量における減少は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。
【0108】
バイオマーカーの量は、バイオマーカーポリペプチド配列の濃度に関連しうる。好ましくは、バイオマーカーポリペプチド配列の濃度は、全血中のバイオマーカーの濃度に関連する。好ましくは、バイオマーカーポリペプチド配列の濃度は、血漿中のバイオマーカーの濃度に関連する。
【0109】
好ましくは、少なくとも0.5μg/mlのD-ダイマータンパク質の濃度は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、少なくとも1μg/mlのD-ダイマータンパク質の濃度は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、少なくとも1.2μg/mlのD-ダイマータンパク質の濃度は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、少なくとも1.3μg/mlのD-ダイマータンパク質の濃度は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、少なくとも1.4μg/mlのD-ダイマータンパク質の濃度は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、少なくとも1.5μg/mlのD-ダイマータンパク質の濃度は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。
【0110】
好ましくは、少なくとも100pg/mlのOPGタンパク質の濃度は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、少なくとも105pg/mlのOPGタンパク質の濃度は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、少なくとも110pg/mlのOPGタンパク質の濃度は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、少なくとも120pg/mlのOPGタンパク質の濃度は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、少なくとも125pg/mlのOPGタンパク質の濃度は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、少なくとも150pg/mlのOPGタンパク質の濃度は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、少なくとも200pg/mlのOPGタンパク質の濃度は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。
【0111】
好ましくは、少なくとも1ng/mlのOPNタンパク質の濃度は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、少なくとも1.2ng/mlのOPNタンパク質の濃度は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、少なくとも1.4ng/mlのOPNタンパク質の濃度は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、少なくとも1.6ng/mlのOPNタンパク質の濃度は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、少なくとも1.8ng/mlのOPNタンパク質の濃度は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、少なくとも2ng/mlのOPNタンパク質の濃度は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、少なくとも2.5ng/mlのOPNタンパク質の濃度は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、少なくとも5ng/mlのOPNタンパク質の濃度は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。
【0112】
好ましくは、少なくとも100pg/mlのGFAPタンパク質の濃度は、個体が出血性卒中に罹患したことを示す。好ましくは、少なくとも150pg/mlのGFAPタンパク質の濃度は、個体が出血性卒中に罹患したことを示す。好ましくは、少なくとも200pg/mlのGFAPタンパク質の濃度は、個体が出血性卒中に罹患したことを示す。好ましくは、少なくとも250pg/mlのGFAPタンパク質の濃度は、個体が出血性卒中に罹患したことを示す。好ましくは、少なくとも260pg/mlのGFAPタンパク質の濃度は、個体が出血性卒中に罹患したことを示す。好ましくは、少なくとも265pg/mlのGFAPタンパク質の濃度は、個体が出血性卒中に罹患したことを示す。
【0113】
好ましくは、100pg/ml未満のGFAPタンパク質の濃度は、個体が非出血性卒中に罹患したことを示す。好ましくは、150pg/ml未満のGFAPタンパク質の濃度は、個体が非出血性卒中に罹患したことを示す。好ましくは、200pg/ml未満のGFAPタンパク質の濃度は、個体が非出血性卒中に罹患したことを示す。好ましくは、250pg/ml未満のGFAPタンパク質の濃度は、個体が非出血性卒中に罹患したことを示す。好ましくは、260pg/ml未満のGFAPタンパク質の濃度は、個体が非出血性卒中に罹患したことを示す。好ましくは、265pg/ml未満のGFAPタンパク質の濃度は、個体が非出血性卒中に罹患したことを示す。
【0114】
好ましくは、100pg/ml未満のGFAPタンパク質の濃度は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、150pg/ml未満のGFAPタンパク質の濃度は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、200pg/ml未満のGFAPタンパク質の濃度は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、250pg/ml未満のGFAPタンパク質の濃度は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、260pg/ml未満のGFAPタンパク質の濃度は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、265pg/ml未満のGFAPタンパク質の濃度は、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。
【0115】
一部の実施形態において、試料中の測定されたバイオマーカー量のうちの1つ又は複数は、LVO卒中スコアに変換される。一部の実施形態において、LVO卒中スコアは、個体からの試料中のバイオマーカーの量を、負の基準、正の基準、対照又は正の標準のうちの1つ又は複数と相関させることを含む。例えば、0が対照におけるバイオマーカーの値に対応し、100が正の標準におけるバイオマーカーの値に対応する、0~100のLVO卒中スコアを確立してもよい。重み係数を、バイオマーカーのうちの1種又は複数種に割り当ててもよい。例えば、バイオマーカーは、より高い診断関連性を有するバイオマーカーが、よりLVO卒中スコアに寄与するように、重み付けしてもよい。例えば、バイオマーカーは、そのバイオマーカーの量がLVOを有するか又は有したと診断された個体と対照との間で有意に異なる場合、より高い診断関連性のあるバイオマーカーでありうる。対照的に、バイオマーカーは、LVOを有するか又は有したと診断された個体におけるそのバイオマーカーの量及び対照における差が、小さい場合、診断関連性がより少ないバイオマーカーでありうる。そのような重み係数は、LVO卒中の診断へのバイオマーカーの寄与をモジュレートする。重み係数は、例えばアルゴリズムを使用する、計算工程において、又はバイオマーカーへの薬剤の結合が光学リーダー等の検出ツールにおいて検出及び測定される場合に導入されうる。
【0116】
一部の実施形態において、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体から採取した試料中の測定されたバイオマーカー量を使用して作出したLVO卒中スコアは、対照からの又は正の標準からのバイオマーカー量を使用して作出したLVO卒中スコアと比較されうる。
【0117】
一部の実施形態において、正の標準からのバイオマーカー量を使用して作出したLVOスコアと同等である、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体から採取した試料中の測定されたバイオマーカー量を使用して作出したLVOスコアは、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。一部の実施形態において、正の標準からのバイオマーカー量を使用して作出したLVOスコアと統計的に同等である、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体から採取した試料中の測定されたバイオマーカー量を使用して作出したLVOスコアは、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。
【0118】
一部の実施形態において、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体から採取した試料中の測定されたバイオマーカー量を使用して作出したLVOスコアと、対照との間の差は、個体がLVO卒中に罹患したことを示す。一部の実施形態において、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体から採取した試料中の測定されたバイオマーカー量を使用して作出したLVOスコアと、対照との間の統計的有意差は、個体がLVO卒中に罹患したことを示す。
【0119】
一部の実施形態において、規定値又は範囲(「カットオフ値」)は、バイオマーカーのうちの1種又は複数種について、及び/又はLVO卒中スコアについて提供される。一部のそのような実施形態において、規定値を超えるLVO卒中スコア又はバイオマーカーの量は、個体がLVOから生ずる卒中に罹患したことを示す。他のそのような実施形態において、規定値未満のLVO卒中スコア又はバイオマーカーの量は、個体がLVOから生ずる卒中に罹患していないことを示す。
【0120】
一部の実施形態において、方法は、個体における卒中症状の開始の約72時間以内、約48時間以内又は約24時間以内に行われうる。一部の実施形態において、方法は、個体における卒中症状の開始の約24時間以内又は24時間以内に行われる。一部の実施形態において、方法は、個体における卒中症状の開始の約17時間以内又は17時間以内に行われる。一部の実施形態において、方法は、個体における卒中症状の開始の約10時間以内又は10時間以内に行われる。一部の実施形態において、方法は、個体における卒中症状の開始の約6時間以内又は6時間以内に行われる。
【0121】
好ましくは、方法は、個体における卒中症状の開始の約24時間以内又は24時間以内に個体から得た試料について行われる。より好ましくは、方法は、個体における卒中症状の開始の約17時間以内又は17時間以内に個体から得た試料について行われる。更により好ましくは、方法は、個体における卒中症状の開始の約10時間以内又は10時間以内に個体から得た試料について行われる。最も好ましくは、方法は、個体における卒中症状の開始の約6時間以内又は6時間以内に個体から得た試料について行われる。
【0122】
図9及び
図14で示される通り、バイオマーカー発現を、卒中重症度スコアと組み合わせると、方法の感度及び特異性が有意に改善される。
【0123】
したがって、一部の実施形態において、方法は、個体が受けた1つ又は複数の臨床評価からのデータ及び/又は情報の考慮を更に含む。臨床評価は、CT若しくはCTA、MRA、MRI、拡散強調画像法、脳血管造影法、心電図、心房細動評価、FAST(顔面、腕、発話検査)、ABCD、ABCD2及びカリフォルニア予測規則Rosier(Recognition of Stroke in the Emergency Room)卒中スケール、卒中スケール及びTOAST(trial of ORG. 10172 in Acute Stroke Treatment)分類、OCSP(the Oxford Community Stroke Project classification)、国立衛生研究所の卒中スケール(NIHSS)、救急医療卒中評価(Emergency Medical Stroke Assessment:EMSA)、入院前急性卒中重症度(Prehospital Acute Stroke Severity:PASS)スケール、視力・失語・半側空間無視(VAN)評価、迅速動脈閉塞査定(Rapid Arterial Occlusion Evaluation:RACE)、緊急搬送先決定のための現場評価卒中トリアージ(Field Assessment Stroke Triage for Emergency Destination:FAST-ED)スケール、シンシナティ入院前卒重症度スケール(Cincinnati pre-hospital Stroke Severity Scale:CPSSS)、ドップラー超音波検査、頸動脈エコー超音波検査、血管造影法又は動脈造影法のうちの1つ又は複数を含みうる。一部の実施形態において、方法は、CTA及び/又はMRAによる血管造影評価からのデータ及び/又は情報の考慮を更に含む。
【0124】
好ましくは、方法は、個体の卒中重症度スコアを決定する工程を更に含む。好ましくは、卒中重症度スコアは、NIHSS、FAST、FAST-ED、RACE、C-STAT及びEMSAから選択される。そのようなスコアは、当該技術分野において周知であり、スコアが計算される方法は、当業者に公知でありうる。
【0125】
好ましくは、1又はそれ以上のNIHSSスコアは、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。
【0126】
好ましくは、1又はそれ以上のFASTスコアは、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。
【0127】
好ましくは、1、2、3、4若しくは5又はそれ以上のFAST-EDスコアは、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、2又はそれ以上のFAST-EDスコアは、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。より好ましくは、3又はそれ以上のFAST-EDスコアは、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。より好ましくは、4又はそれ以上のFAST-EDスコアは、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。より好ましくは、5又はそれ以上のFAST-EDスコアは、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。
【0128】
好ましくは、1、2、3、4、5、6若しくは7又はそれ以上のRACEスコアは、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、1又はそれ以上のRACEスコアは、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、2又はそれ以上のRACEスコアは、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、3又はそれ以上のRACEスコアは、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、3又はそれ以上のRACEスコアは、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、4又はそれ以上のRACEスコアは、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、5又はそれ以上のRACEスコアは、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、6又はそれ以上のRACEスコアは、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、7又はそれ以上のRACEスコアは、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。
【0129】
好ましくは、1又はそれ以上のC-STATスコアは、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、2又はそれ以上のC-STATスコアは、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。
【0130】
好ましくは、3、4若しくは5又はそれ以上のEMSAスコアは、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、3又はそれ以上のEMSAスコアは、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、4又はそれ以上のEMSAスコアは、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。好ましくは、5又はそれ以上のEMSAスコアは、個体がLVOの結果としての卒中に罹患したことを示す。
【0131】
好ましくは、卒中重症度スコアは、NIHSSである。好ましくは、卒中重症度スコアは、FASTである。好ましくは、卒中重症度スコアは、FAST-EDである。好ましくは、卒中重症度スコアは、RACEである。好ましくは、卒中重症度スコアは、C-STATである。好ましくは、卒中重症度スコアは、EMSAである。
【0132】
最も好ましくは、卒中重症度スコアは、FAST、FAST-ED又はEMSAである。
【0133】
最も好ましい実施形態において、バイオマーカーは、D-ダイマー及びGFAPであり、卒中重症度スコアは、FAST、FAST-ED又はEMSAである。
【0134】
好ましくは、方法は、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体から採取した試料において測定された1種又は複数種のバイオマーカーの量と、個体から得た卒中重症度スコアとを組み合わせる工程を含む。
【0135】
好ましくは、方法は、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体から採取した試料において測定された1種又は複数種のバイオマーカーの量と、個体から得た卒中重症度スコアとを組み合わせて、LVO卒中スコアを産生する工程を更に含む。
【0136】
好ましくは、方法は、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体から採取した試料中の測定されたバイオマーカー量と、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体から取った卒中重症度スコアとを使用して作出したLVO卒中スコアを、対照からの又は正の標準からのバイオマーカー量と卒中重症度スコアとを使用して作出したLVO卒中スコアと比較する工程を含む。
【0137】
好ましくは、個体は、卒中を有するか若しくは有したことが特定されるか若しくは疑われる個体から採取した試料中の測定されたバイオマーカー量と、卒中を有するか若しくは有したことが特定されるか若しくは疑われる個体から取ったLVO卒中スコアとを使用して作出したLVO卒中重症度スコアが、正の標準と同等である場合;又は卒中を有するか若しくは有したことが特定されるか若しくは疑われる個体から採取した試料中の測定されたバイオマーカー量と、卒中を有するか若しくは有したことが特定されるか若しくは疑われる個体から取ったLVO卒中重症度スコアとを使用して作出したLVO卒中重症度スコアが、対照からのバイオマーカー量と卒中重症度スコアとを使用して作出したLVO卒中スコアとは異なる場合、LVOの結果としての卒中を有するか又は有したと診断される。
【0138】
LVO卒中スコアは、線形回帰、ランダム・フォレスト、ニューラル・ネットワーク、サポート・ベクター・マシン、ベイズ線形回帰、ベイズロジスティック回帰又は部分的最小二乗回帰を使用して、個体から得た1種又は複数種のバイオマーカーの量及び卒中重症度スコアを加工することにより計算されうる。
【0139】
好ましくは、LVO卒中スコアは、回帰モデル、好ましくは多変量ロジスティック回帰モデルを使用して、個体から得た1種又は複数種のバイオマーカーの量及び卒中重症度スコアを加工することにより計算される。
【0140】
好ましくは、LVO卒中スコアは、以下の式:
Y=a*X1,b*X2, ・・・,n*Xn
を解くことによって決定され、式中、a、b、・・・nは、各バイオマーカー又は卒中重症度スコアの乗算係数を示し、X1、X2・・・Xnは、患者から測定されたか又は得られたバイオマーカーの値又は卒中重症度スコアを示す。
【0141】
好ましくは、各測定されたバイオマーカー又は卒中重症度スコアについての乗算係数は、
図13に列挙される通りである。
【0142】
LVO卒中スコアは、当業者に公知であるロジスティック変換により、各患者について、上記の式を解くことによって得られるYの値を変換することによって得られうる。
【0143】
したがって、好ましくは、LVO卒中スコアは、
図17で列挙される係数、並びに任意の所与の卒中が疑われる患者について収集した各対応するバイオマーカーの測定値及び卒中重症度スコアに基づいて直線式を解くことによって計算される。
【0144】
一実施形態において、LVO卒中スコアは、任意の対象について0~1の値を有しうる。LVO患者を診断するために使用されうるLVO卒中スコアの閾値は、バイオマーカーと卒中重症度スコアとのどの組合せが選択されるかによって変動しうる。好ましくは、LVO患者を診断するために使用されるLVO卒中スコアの閾値は、
図14で列挙される値の中から選択される。
【0145】
好ましくは、0.20を超えるLVO卒中スコアは、LVO卒中に罹患している個体を示す。好ましくは、0.24を超えるLVO卒中スコアは、LVO卒中に罹患している個体を示す。好ましくは、0.30を超えるLVO卒中スコアは、LVO卒中に罹患している個体を示す。好ましくは、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39又は0.40を超えるLVO卒中スコアは、LVO卒中に罹患している個体を示す。
【0146】
より好ましくは、0.33を超えるLVO卒中スコアは、LVO卒中に罹患している個体を示す。より好ましくは、0.34を超えるLVO卒中スコアは、LVO卒中に罹患している個体を示す。より好ましくは、0.35を超えるLVO卒中スコアは、LVO卒中に罹患している個体を示す。最も好ましくは、0.39を超えるLVO卒中スコアは、LVO卒中に罹患している個体を示す。
【0147】
CTAは、頭部、頸部及び/又は脳のレベルにおける動脈及び静脈を可視化するために使用されるコンピュータ再構築断層撮影技法である。造影剤を適用することによって、CTAは、血管の遮断、瘤、解離及び狭窄の可視化を可能にする。造影剤は、電磁スペクトルのX線部を遮断し、それゆえ、算出された画像の不透明領域をもたらしうる、任意の放射線不透過性化合物である。
【0148】
MRAは、血管の遮断、瘤、解離及び狭窄を可視化する、血管の画像を生成するために使用される任意の磁気共鳴画像化ベースの診断技法を指す。造影剤、例えばガドリニウムに基づく造影剤は、画像を生成するために適用され、様々な異なる技法が使用可能である(Johnsonら「Magnetic resonance angiography: A review」Academic radiology 5、4巻(1998):289~305)。
【0149】
LVOの結果としての卒中に罹患しているか又は罹患した個体の特定は、その個体についての適切な更なる臨床調査及び又は処置経路の選択を可能にする。
【0150】
したがって、第2の態様において、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体の群から、LVOの結果としての卒中に罹患した個体を特定する方法であって、各個体から採取した試料中の少なくとも2種のバイオマーカーの量を決定する工程を含み、バイオマーカーが、コハク酸塩、コハク酸-グルタチオン、N-アセチル-アスパラギン酸塩、プロピオニル-カルニチン、グルタミン酸塩、心臓由来脂肪酸結合タンパク質(H-FABP)、脳由来脂肪酸結合タンパク質(B-FABP)、Abeta 1-40、オステオプロテジェリン(OPG)、可溶性腫瘍壊死因子様の弱いアポトーシス誘導物質(sTWEAK)、pro-vWF、レチノール結合タンパク質4(RBP4)、ADAMTS13、NMDA受容体2ペプチド(NR2ペプチド)、20-HETE、ビリルビン、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)、D-ダイマー、C-反応性タンパク質(CRP)、マトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)、インターロイキン6(IL-6)、オステオポンチン(OPN)、トロポニンI、s100b、フォン・ヴィルブランド因子(vWF)又はP-セレクチンから選択される、方法が提供される。
【0151】
しかしながら、好ましくは、第2の態様の方法は、D-ダイマー、OPN及びOPGから選択されるバイオマーカーのうちの少なくとも1種の量を決定する工程を含む。より好ましくは、方法は、D-ダイマー、OPN及びOPGから選択されるバイオマーカーのうちの少なくとも2種の量を決定する工程を含む。最も好ましくは、方法は、D-ダイマー、OPN及びOPGの量を決定する工程を含む。好ましくは、方法は、D-ダイマー、OPN、GFAP及びOPGから選択されるバイオマーカーのうちの少なくとも1種の量を決定する工程を含む。より好ましくは、方法は、D-ダイマー、OPN、GFAP及びOPGから選択されるバイオマーカーのうちの少なくとも2種の量を決定する工程を含む。最も好ましくは、方法は、D-ダイマー、OPN、GFAP及びOPGの量を決定する工程を含む。
【0152】
それゆえ、好ましくは、バイオマーカー、バイオマーカーの量及び濃度を決定する工程は、第1の態様において定義される通りでありうる。
【0153】
方法は、in vivo、in vitro又はex vivoにおいて行われうる。好ましくは、方法は、in vitro又はex vivoにおいて行われる。最も好ましくは、方法は、in vitroにおいて行われる。
【0154】
バイオマーカーは、本明細書で開示される任意の方法を使用して検出されうる。加えて、バイオマーカーの量は、本明細書で開示される任意の方法を使用して決定されうる。
【0155】
一部の実施形態において、第2の態様に記載の方法は、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11若しくは12種又はそれ以上のバイオマーカーの量を決定する工程を含む。
【0156】
第2の態様に記載の方法は、第1の態様の任意の実施形態による、1種又は複数種のバイオマーカーの存在及び/又は量を決定する工程を含む。
【0157】
第2の態様に記載の一部の実施形態において、方法は、上記に、第1の態様に従って開示される通り、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる各個体から採取した試料中の各バイオマーカーの量を、対照、正の標準、1つ又は複数の正の基準又は負の基準のうちの1つ又は複数における同じバイオマーカーの量と比較する工程を含む。
【0158】
第2の態様に記載の一部の実施形態において、対照における同じバイオマーカーの量と比較して、測定されたバイオマーカーのうちの1種又は複数種の量における差を有する個体は、LVOの結果としての卒中を有するか又は有したと特定される。第2の態様に記載の一部の実施形態において、正の標準と比較して、測定されたバイオマーカーのうちの1種又は複数種の同等の量を有する個体は、LVOの結果としての卒中を有するか又は有したと特定される。
【0159】
一部の実施形態において、方法は、上記に、第1の態様に従って開示される通り、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体から採取した試料中で測定された1種又は複数種のバイオマーカーの量を、LVO卒中スコアに変換する工程を含む。
【0160】
第2の態様に記載の一部の実施形態において、正の標準からのバイオマーカー量を使用して作出したLVOスコアと同等であるLVOスコアを有する個体は、LVOの結果としての卒中を有するか又は有したと特定される。一部の実施形態において、正の標準からのバイオマーカー量を使用して作出したLVOスコアと統計的に同等であるLVOスコアを有する個体は、LVOの結果としての卒中を有するか又は有したと特定される。一部の実施形態において、対照からのバイオマーカー量を使用して作出したLVOスコアとは異なるLVOスコアを有する個体は、LVOの結果としての卒中を有するか又は有したと特定される。一部の実施形態において、対照からのバイオマーカー量を使用して作出したLVOスコアとは統計的に異なるLVOスコアを有する個体は、LVOの結果としての卒中を有するか又は有したと特定される。
【0161】
一部の実施形態において、第2の態様に記載の方法は、第1の態様において定義される、個体の卒中重症度スコアを決定する工程を更に含む。一部の実施形態において、第2の態様に記載の方法は、第1の態様で定義される通り、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体から採取した試料において測定された1種又は複数種のバイオマーカーの量と、個体から得た卒中重症度スコアとを組み合わせる工程を含む。
【0162】
一部の実施形態において、第2の態様に記載の方法は、上記に、第1の態様に従って開示される通り、各個体が受けた1つ又は複数の臨床評価からのデータ及び/又は情報の考慮を更に含む。一部のそのような実施形態において、臨床評価は、CT若しくはCTA、MRA若しくはMRIスキャン、又は個体のNIHSS、FAST、ABCD、ABCD2 Rosier、TOAST、EMSA、PASS、VAN、RACE、FAST_ED若しくはCPSSスコアのうちの1つ又は複数である。
【0163】
LVOの結果としての卒中に罹患しているか又は罹患したと特定される個体についての適切な更なる臨床調査は、コンピュータ断層撮影血管造影法及び/又は磁気共鳴血管造影法を含む。LVOの結果としての卒中に罹患しているか又は罹患したと特定される個体についての適切な処置経路は、抗血栓薬及び/又は機械的血栓除去による処置を含みうる。
【0164】
第3の態様に従って、大血管閉塞から生ずる卒中を診断するための2種又はそれ以上のバイオマーカーの使用であって、バイオマーカーが、コハク酸塩、コハク酸-グルタチオン、N-アセチル-アスパラギン酸塩、プロピオニル-カルニチン、グルタミン酸塩、心臓由来脂肪酸結合タンパク質(H-FABP)、脳由来脂肪酸結合タンパク質(B-FABP)、Abeta 1-40、オステオプロテジェリン(OPG)、可溶性腫瘍壊死因子様の弱いアポトーシス誘導物質(sTWEAK)、pro-vWF、レチノール結合タンパク質4(RBP4)、ADAMTS13、NMDA受容体2ペプチド(NR2ペプチド)、20-HETE、ビリルビン、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)、D-ダイマー、C-反応性タンパク質(CRP)、マトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)、インターロイキン6(IL-6)、オステオポンチン(OPN)、トロポニンI、s100b、フォン・ヴィルブランド因子(vWF)又はP-セレクチンから選択される、使用が提供される。
【0165】
バイオマーカー及びバイオマーカーの濃度は、第1の態様において定義される通りでありうる。
【0166】
一部の実施形態において、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11若しくは12種又はそれ以上のバイオマーカーが、大血管閉塞から生ずる卒中を特定するために使用される。
【0167】
一部の実施形態において、バイオマーカーは、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体から採取した試料中に存在する。バイオマーカーは、本明細書で開示される任意の方法を使用して検出されうる。加えて、バイオマーカーの量は、本明細書で開示される任意の方法を使用して決定されうる。
【0168】
実施例及び上記で説明される通り、本発明者らは、高度の感度及び特異性により、LVOの結果としての卒中を診断するために使用されうるバイオマーカーを特定した。
【0169】
したがって、本発明の第4の態様において、大血管閉塞(LVO)の結果としての卒中を診断することにおける使用のための、D-ダイマー、OPN、OPG及び/又はGFAPが提供される。
【0170】
一実施形態において、大血管閉塞(LVO)の結果としての卒中を診断することにおける使用のための、D-ダイマーが提供される。一実施形態において、大血管閉塞(LVO)の結果としての卒中を診断することにおける使用のための、OPNが提供される。一実施形態において、大血管閉塞(LVO)の結果としての卒中を診断することにおける使用のための、OPNが提供される。一実施形態において、大血管閉塞(LVO)の結果としての卒中を診断することにおける使用のための、GFAPが提供される。一実施形態において、大血管閉塞(LVO)の結果としての卒中を診断することにおける使用のための、D-ダイマー及びGFAPが提供される。
【0171】
一実施形態において、大血管閉塞(LVO)の結果としての卒中を診断することにおける使用のための、D-ダイマー、OPN及びOPGが提供される。
【0172】
バイオマーカーは、本明細書で開示される任意の方法を使用して検出されうる。加えて、バイオマーカーの量は、本明細書で開示される任意の方法を使用して決定されうる。
【0173】
好ましくは、バイオマーカー、LVOの結果としての卒中と関連付けられるバイオマーカーの量、濃度を決定する工程、及び試料は、第1の態様において定義される通りである。
【0174】
本発明の第5の態様において、出血性卒中を診断することにおける使用のための、GFAPが提供される。
【0175】
好ましくは、GFAP、LVOの結果としての卒中と関連付けられる量、濃度を決定する工程、及び試料は、第1の態様において定義される通りである。
【0176】
また、第6の態様において、本発明の第1、第2及び第3の態様に記載の方法を行うためのキットが提供される。キットは、卒中を有するか又は有したことが特定されるか又は疑われる個体からの試料を保持するための容器;標的バイオマーカーの量を決定するための手段;及び標的バイオマーカーの量を決定するために提供される試料と手段との反応をどのように行うかについての使用説明書、例えば印刷した使用説明書のうちの1つ又は複数を含みうる。
【0177】
一部の実施形態において、標的バイオマーカーの量を決定するための手段は、本明細書で開示される1種又は複数種の薬剤を含みうる。薬剤は、抗体でありうる。薬剤は、基材上に固定化してもよく、且つ/又は少なくとも1つの検出可能標識により標識化してもよい。一部の実施形態において、各薬剤は、異なる検出可能標識により標識化される。
【0178】
本発明に記載の方法は、LVOから生ずる卒中に罹患している患者が、短時間で且つ容易に特定されること、及び適切な処置選択肢が選択されることを可能にする。
【0179】
したがって、第7の態様において、大血管閉塞(LVO)の結果としての卒中に罹患している個体を処置する方法であって、
a)各個体から採取した試料中の少なくとも1種のバイオマーカーの量を決定する工程であって、バイオマーカーが、オステオプロテジェリン(OPG)、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)、D-ダイマー及びオステオポンチン(OPN)から選択され、バイオマーカーの量が、個体が大血管閉塞(LVO)の結果としての卒中に罹患していることを示唆する、決定する工程と、
b)個体へ、大血管閉塞(LVO)の結果としての卒中を処置する治療剤を投与するか又は投与した工程と
を含む方法が提供される。
【0180】
バイオマーカーは、本明細書で開示される任意の方法を使用して検出されうる。加えて、バイオマーカーの量は、本明細書で開示される任意の方法を使用して決定されうる。好ましくは、バイオマーカー、LVOの結果としての卒中と関連付けられるバイオマーカーの量、バイオマーカーの濃度を決定する工程、及び試料は、第1の態様において定義される通りである。
【0181】
好ましくは、処置は、機械的血栓除去(MT)及び/又は静脈内若しくは動脈内血栓溶解処置を含む。
【0182】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、本発明に記載の方法における、LVOから生ずる卒中の検出の精度は、卒中を有するか又は有したことが疑われる個体からの試料中の、ある特定の量の特定のバイオマーカー又は特定のバイオマーカーの組合せの検出の結果として生ずることが示唆され、特定のバイオマーカー又は特定のバイオマーカーの組合せのレベルは、LVO卒中の結果として起こる生物学的変化の結果として変更される。そのようなマーカーは、脳虚血及び/又は脳細胞死と関連付けられることが示唆され、これらの両方とも他の種類の卒中と比較してLVOにおいて増大する。虚血は、組織及び細胞への損傷をもたらすことがあり、それは、損傷した細胞若しくは組織それ自体から又は傷ついた細胞と連通している組織若しくは細胞からのいずれかのバイオマーカーの放出及び/又はアップレギュレーションをもたらす。
【0183】
したがって、本発明の一部の実施形態は、卒中を示し、LVOから生ずる卒中に罹患しているか又は罹患した個体を特定するか又は特定することを補助するための方法、キット及び使用を提供する。そのような実施形態は、精度及び/又は迅速さが改善した、そのような個体の決定を可能にし、これによって個体についての処置経路を改善する機会を提供する。
【0184】
本発明は、実質的に本明細書で参照される配列のいずれかのアミノ酸又は核酸配列及びそのバリアント又は断片を含む、任意の核酸若しくはペプチド又はそのバリアント、誘導体若しくはアナログに延長されることが理解される。「実質的にアミノ酸/ヌクレオチド/ペプチド配列」、「バリアント」及び「断片」という用語は、本明細書で参照される配列のうちのいずれかのアミノ酸/ヌクレオチド/ペプチド配列と少なくとも40%の配列同一性、例えば配列番号1~8等として特定される配列と40%の同一性を有する配列でありうる。
【0185】
参照される配列のいずれかとの65%を超える、より好ましくは70%を超える、更により好ましくは75%を超える、またより好ましくは80%を超える配列同一性である配列同一性を有するアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列もまた想定される。好ましくは、アミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列は、参照される配列のいずれかとの少なくとも85%の同一性、より好ましくは本明細書で参照される配列のいずれかとの少なくとも90%の同一性、更により好ましくは少なくとも92%の同一性、更により好ましくは少なくとも95%の同一性、更により好ましくは少なくとも97%の同一性、更により好ましくは少なくとも98%の同一性、最も好ましくは少なくとも99%の同一性を有する。
【0186】
当業者は、2つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列間の同一性百分率をどのように計算するかを理解する。2つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列間の同一性百分率を計算するために、2つの配列の整列を最初に準備し、続いて配列同一性の値を計算しなければならない。2つの配列についての同一性百分率は、(i)配列を整列するために使用される方法、例えばClustalW、BLAST、FASTA、Smith-Waterman(様々なプログラムにおいて実行される)又は3D比較からの構造整列;及び(ii)整列方法、例えばローカル整列対グローバル整列によって使用されるパラメーター、使用される対スコアマトリックス(例えばBLOSUM62、PAM250、Gonnet等)、並びにギャップペナルティ、例えば関数形式及び定数に依存して異なる値をとりうる。
【0187】
整列を作成した後、2つの配列間の同一性百分率を計算する多くの様々な方法が存在する。例えば、同一性の数を、(i)最も短い配列の長さ、(ii)整列の長さ、(iii)配列の長さの平均値、(iv)非ギャップ位置の数、又は(v)オーバーハングを除外する等価位置の数で割ってもよい。更に、また、同一性百分率は、長さに強力に依存することが理解される。それゆえ、配列対が短ければ短いほど、より高い配列同一性が偶然に発生することが予測されうる。
【0188】
それゆえ、タンパク質又はDNA配列の正確な整列は複雑なプロセスであることが理解される。一般的な多整列プログラムClustalW(Thompsonら、1994、Nucleic Acids Research, 22、4673~4680;Thompsonら、1997、Nucleic Acids Research, 24、4876~4882)は、本発明によるタンパク質又はDNAの多数の整列を生成するための好ましい方法である。ClustalWの好適なパラメーターは、DNA整列について、ギャップオープンペナルティ=15.0、ギャップ伸長ペナルティ=6.66、及びマトリックス=Identityでありうる。タンパク質整列について、ギャップオープンペナルティ=10.0、ギャップ伸長ペナルティ=0.2、及びマトリックス=Gonnetでありうる。DNA及びタンパク質整列について、ENDGAP=-1、及びGAPDIST=4でありうる。当業者は、最適配列整列のためにこれらの及び他のパラメーターを変動することが必要でありうることを認識する。
【0189】
好ましくは、その後、2つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列間の同一性百分率の計算は、そのような整列から(N/T)*100として計算してもよく、ここで、Nは、配列が同一の残基を共有する位置の数であり、Tは、ギャップを含んで且つオーバーハングを含むか又は除外して比較される位置の総数である。好ましくは、オーバーハングは、計算に含まれる。それゆえ、2つの配列間の同一性百分率を計算するための最も好ましい方法は、(i)例えば上記に示されるような、好適な組のパラメーターを使用するClustalWプログラムを使用して配列整列を準備する工程と、(ii)N及びTの値を、[配列同一性=(N/T)*100]の式に挿入する工程とを含む。
【0190】
類似する配列を特定するための代替の方法は、当業者に公知である。例えば、実質的に類似するヌクレオチド配列は、DNA配列又はそれらの相補体にストリンジェントな条件下においてハイブリダイズする配列によってコードされる。ストリンジェントな条件によって、本発明者らは、ヌクレオチドが、フィルター結合DNA又はRNAに、3x塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中においておよそ45℃にて、続く0.2xSSC/0.1%SDS中におけるおよそ20~65℃での少なくとも1回の洗浄を伴って、ハイブリダイズすることを意味する。或いは、実質的に類似するポリペプチドは、例えば配列番号1~8において示される配列と、少なくとも1、しかし5、10、20、50又は100個未満のアミノ酸分異なりうる。
【0191】
遺伝子コードの縮重のために、本明細書で説明される任意の核酸配列は、それによってコードされるタンパク質の配列に実質的に影響を及ぼすことなく変動又は変化され、その機能的バリアントを提供しうることが明らかである。好適なヌクレオチドバリアントは、配列内の、同じアミノ酸をコードする異なるコドンの置換であって、したがってサイレント(同義の)変化を産生する置換によって変更された配列を有するバリアントである。他の好適なバリアントは、相同のヌクレオチド配列を有するが、置換するアミノ酸と類似する生物物理学的特性の側鎖を有するアミノ酸をコードする異なるコドンの置換によって変更され、保存的変化を産生するすべての配列又は配列の部分を含むバリアントである。例えば、小分子非極性疎水性アミノ酸には、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン及びメチオニンが含まれる。大分子非極性疎水性アミノ酸には、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンが含まれる。極性中性アミノ酸には、セリン、トレオニン、システイン、アスパラギン及びグルタミンが含まれる。正帯電(塩基性)アミノ酸には、リジン、アルギニン及びヒスチジンが含まれる。負帯電(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸及びグルタミン酸が含まれる。それゆえ、アミノ酸は、類似する生物物理学的特性を有するアミノ酸により置換してもよいことが理解され、当業者は、これらのアミノ酸をコードするヌクレオチド配列を知っている。
【0192】
本明細書(任意の附属の特許請求の範囲、要約及び図面を含む)で説明される特色のすべて並びに/又はそのように開示される任意の方法若しくはプロセスの工程のすべては、そのような特色及び/又は工程の少なくとも一部が相互に排他的である組合せを除いて、任意の組合せにおいて上記態様のいずれかと組み合わせてもよい。
【0193】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供され、本発明の限定であるとは解釈されるべきでない。
【実施例】
【0194】
(実施例1)
(実施例1A)
試料調製
血液試料は、ヒト対象から静脈穿刺を介して採取し、EDTAナトリウムを含有する管に収集し、即座に氷上に置いてもよい。或いは、CSF試料を、腰椎穿刺によって得てもよい。
【0195】
バイオマーカー検出前の試料の加工の必要性及び加工の種類は、検出すべきバイオマーカー、及び/又はバイオマーカーを検出するために使用されるアッセイに依存する。全血が分析に必要とされる場合、試料は、取得した状態のままで使用することができる。或いは、試料を生理食塩水により希釈して、必要とされる種類のバイオマーカー検出アッセイと適合性の適切な濃度のバイオマーカーを得てもよい。
【0196】
血漿が分析に必要とされる場合、全血試料を、遠心分離、例えば2000gにおいて4℃にて15分間遠心分離して血漿を得てもよい。その後、血漿を抜き取り、直接的に使用するか、又はバイオマーカー検出アッセイの必要に応じて生理食塩水により希釈してもよい。
【0197】
(実施例1b)
アッセイの最適化
ウサギモノクローナル抗体は、Abcam社、Cambridge、英国から購入する。既知の濃度の単離抗体又は組換え抗体を、予備アッセイに適用して、標的バイオマーカーを認識及び結合する抗体の特異性を決定する。抗体の最適濃度を決定するために、単離されたバイオマーカータンパク質又は組換えバイオマーカータンパク質がELISAマイクロタイタープレートに結合している間接的ELISAを行う。ウサギモノクローナル抗ヒトバイオマーカー抗体を、マイクロタイタープレートに塗布して、最大シグナルを得るために必要な抗体濃度を決定し、各抗体についての間接的ELISAの検出下限の決定を可能にする。希釈した試料をウサギモノクローナル抗ヒトバイオマーカー抗体と2時間インキュベートした後、適切な洗浄を行い、その後、ビオチンにより標識化したモノクローナル抗ヒトバイオマーカー抗体を添加し、捕獲されたバイオマーカーと共にインキュベートする。その後、多数の洗浄工程を行い、その後、ストレプトアビジンとコンジュゲートしたホースラディッシュペルオキシダーゼを添加する。試薬の1時間のインキュベーション後、続いて他の洗浄工程を行い、その後、生成したコンジュゲートを、過酸化水素テトラメチルベンジジンと接触させ、黄色生成物を得る。反応を酸性溶液の添加によって停止させ、反応シグナルを450ナノメートルの吸光度によって誤って測定し、この吸光度はバイオマーカーの濃度に比例する。吸光度の値を、既知のバイオマーカー濃度の試料中の測定されたバイオマーカー量の関数としてプロットすることによって、標準曲線を得る。その後、標準曲線を、未知の試料中の標的バイオマーカーの量を決定するために使用する。
【0198】
(実施例1C)
バイオマーカー分析のための材料
本発明の実施において使用される例示的な試薬には、重炭酸ナトリウム(Sigma社 カタログ番号C-3041)、ブロッキング緩衝液(Startingblock T20-TBS)(Pierce社 カタログ番号37543)、Tween 20含有Tris緩衝生理食塩水(TBST;Sigma社 カタログ番号T-9039)が含まれる。リン酸緩衝生理食塩水(PBS;Sigma社 カタログ番号P-3813);Tween 20(Sigma社 カタログ番号P5927);Ultra TMB ELISA(Pierce社 カタログ番号34028);及びNunc maxisorp ELISAプレート(Fisher社)。心臓由来脂肪酸結合タンパク質(H-FABP)、脳由来脂肪酸結合タンパク質(B-FABP)、Abeta 1-40、OPG、可溶性腫瘍壊死因子様の弱いアポトーシス誘導物質(sTWEAK)、pro-vWF、レチノール結合タンパク質4(RBP4)、ADAMTS13、NMDA受容体2ペプチド(NR2ペプチド)、20-HETE、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)、D-ダイマー、C-反応性タンパク質(CRP)、マトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)、インターロイキン6(IL-6)、オステオポンチン(OPN)、トロポニンI、s100b、フォン・ヴィルブランド因子(vWF)、P-セレクチンに対するモノクローナル及びポリクローナル抗体は、Abcam社、Cambridge、英国から購入する。多くのサブタイプの抗体についての標識は、Expedeon Ltd社、Cambridge、英国から入手可能である。試料中のタンパク質濃度を、ビシンコニン酸マイクロタンパク質アッセイ(Pierce Inc.社、Rockford、IL、米国)を使用してアルブミン標準により決定する。すべての他の必要な試薬及び材料は、当業者に公知であり、容易に確認することができる。ビリルビン、コハク酸塩、N-アセチルアスパラギン酸塩、プロピオニル-L-カルニチン、グルタミン酸塩についての比色アッセイキットは、Abcam社、Cambridge、英国及びBiovision Inc社、Milpitas、CAから入手可能である。
【0199】
(実施例2)
方法
患者の採用及び試料の加工
「最終未発症確認から(since last known well)」18時間以内の卒中が疑われる患者を、ニューカッスル・アポン・タイン(英国)のFreeman病院及びRoyal Victoria Infirmary病院の救急部(ED)への患者の到着後に遡及的に採用した。4mLの静脈血試料を到着から30分以内に抜き取り、即座に+4℃において暗室にて、加工するまで保存した。全血の2000xgにおける+4℃での15分間の遠心分離によって、血漿を得た。加工後、血漿試料を即座に-80℃において、バイオマーカー測定まで、凍結した。
【0200】
診断の裁定
170人の卒中の疑いを有する患者を、救急救護隊員及びED臨床医によって特定した。卒中サブタイプ、卒中類似症状又はTIA診断の裁定は、脳画像化結果及び神経学者報告書に基づいた。出血性卒中の診断は、コンピュータ断層撮影(CT)脳スキャンからの結果に基づき、一方で、卒中類似症状又は一過性脳虚血発作(TIA)の裁定は、神経学者報告書に基づいた。虚血性卒中患者を、神経学者報告書、CT血管造影法(CTA)画像化及びNIHSSスコアに基づき、3つのカテゴリーに細分した。「不明」と標識付けされた虚血性卒中患者は、診断の不確実のために次の分析から除外した。23例の「不明」虚血性卒中の除外、及びイムノアッセイ検査のための19個の試料の利用により、128人の卒中が疑われる患者の最終患者コホートを得、これをバイオマーカー測定及び統計解析にかけた。
【0201】
NIHSSスコアからの入院前卒中スケールの導出
顔面麻痺(NIHSS項目4)の任意の存在に1点、任意の腕の脱力(NIHSS項目5a/b)に1点、及び任意の発話障害(NIHSS項目9)に1点を割り当てることによって、FASTスコアを計算した。Limaら5によって説明される通りにFAST-EDを計算し、Perez de la Ossa7によって説明される通りにRACEスコアを計算し、Katzら19によって説明される通りにCPSSを計算し、Gropenら10によって説明される通りにEMSAを計算した。
【0202】
血液バイオマーカーの測定
血漿バイオマーカーを、市販の酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により製造業者の使用説明書に従って測定した。ELISAキット又は適合抗体対、D-ダイマー(製品番号:ab196269)、OPN(製品番号:ab100618)、OPG(製品番号:ab100617)、GFAP(製品番号:ab222279)、vWF(製品番号:ab223864)及びADAMTS13(製品番号:ab234559)は、Abcam社(Cambridge、英国)から購入した。各バイオマーカーの検出のための血漿試料希釈は、D-ダイマー(1:80)、OPN(1:2)、OPG(1:6)、GFAP(1:2)、vWF(1:4000)、ADAMTS13(1:800)であった。試料を、製造業者の使用説明書により説明される通りに希釈緩衝液中に希釈した。すべての試料を二重で分析し、平均値を定量に使用した。すべてのバイオマーカーについて、平均変動係数は10%未満であった。バイオマーカー定量を、既知の濃度の各分析物により得た較正曲線に対して直線又は二次多項式補間によって行った。GraphPad Prismバージョン8.4.3を、バイオマーカー定量に使用した。
【0203】
統計解析
個々の血液バイオマーカー又は臨床変数の単変量解析のために、シャピロ・ウィルク検定により、分布の正規性を評価した。連続変数について、正規分布した(シャピロ・ウィルクp値>0.1)変数を、スチューデントt検定により解析し、平均値及び標準偏差(SD)値を得、一方で、非正規分布を有する変数については、ウィルコクソン・マン・ホイットニーU検定を使用し、中央値及び四分位範囲(IQR)を報告する。カテゴリー変数についてのピアソンのカイ二乗検定によって、群間の差を評価した。10個超の変数を同時に検定した場合、ベンジャミニ・ホッホベルグ法により多仮説補正を行った。分散分析を使用して、すべての血液バイオマーカーと卒中疑いのサブタイプとの間の相互作用を評価した。全体的な有意性が確認された場合、チューキー検定により対毎の比較を行った。
【0204】
LVO予測のための血液バイオマーカーの最適パネルを特定するために、私たちは、アウトカム変数としての診断(LVO対非LVO)、並びに探索変数としてのD-ダイマー、GFAP、OPN、OPG、vWF及びADAMTS13の血漿レベルによる多変量ロジスティック回帰を使用した。赤池の情報量基準(AIC)レベルに基づく双方向性ステップワイズ削除を、モデル選択に使用した。対数変換及び二次変換を通して、予測変数とアウトカム測定値との間の直線性を評価した。変換は、AICに基づいて選択した。
【0205】
血液バイオマーカーの付加がLVO特定のための卒中重症度スケールの精度を改善したかどうかを調査するために、私たちは、アウトカム変数としての診断、並びに探索変数としての卒中重症度スケール(FAST、FAST-ED、RACE、C-STAT又はEMSA)の最適パネル及び卒中重症度スケールのうちの1つによる第2の多変量ロジスティックを使用した。スケールが非常に相関していたので、私たちはこの手法を使用し、異なる重症度スケールの比較がこの作業の範囲外であったので、この手法はモデルにおける共線性のレベルを低減した。
【0206】
血液バイオマーカーパネル及び卒中スケールの適合度を評価するために、尤度比検定(LR)及びAICを使用した。95%CIを伴う受信者操作特性曲線下面積(AUC)を、識別の測定値として使用した。また、選択されたカットオフ点において、感度、特異性、正の尤度比(LR+)及び負の尤度比(LR-)を査定した。各モデルについて、LVO予測についての特異性を最大限にし、一方で、私たちの検出力検定に従って、90%の最小特異性レベルを維持することによって、カットオフ点を選択した。楽観予測についての補正を、2000個のリサンプルによるブートストラップ法を通して行い、信頼区間(CI)を伴って示した。
【0207】
すべての解析は、RStudioバージョン1.2.5033の補助を伴うRバージョン3.6.2により、パッケージnnet、ROCR、caret、tidyverse、oddsratio、lmtest及びOptimalCutpointsを使用することによって行った。
【0208】
(実施例2A)
コホート説明及び臨床変数解析
この研究において、本発明者らは、170人の卒中の疑いを有する患者を遡及的に採用した。診断の裁定(方法)後、本発明者らは、128人の卒中が疑われる患者の最終コホートを得、このコホートは、出血性卒中(n=16、12.5%)、LVO虚血性卒中(n=23、18%)、非LVO虚血性卒中(n=42、33%)、卒中類似症状(n=31、24%)、一過性虚血性発作(n=16、12.5%)の卒中サブタイプからなった。コホートの卒中開始から血液収集までの時間(OBT)中央値は、158分間であった(IQR=161.5分間)。
【0209】
本発明者らは、各患者と関連付けられる42種の臨床変数の、LVO患者と非LVO患者(虚血性非LVO、出血性及び非卒中患者を含む)との間の差を評価した(
図1)。多仮説検定についての調節後、本発明者らは、NIHSSスコア(p値=7.04
e-08;中央値 LVO対非LVO:18対3;IQR LVO対非LVO:8.5対5)、心房細動の存在(p値=0.0002;非存在/存在 LVO対非LVO:11/12対94/11)及び収縮期血圧(p値=0.033;平均値 LVO対非LVO:140対157;SD LVO対非LVO:22対29)における有意な差を見出した。私たちのコホートにおいて、年齢及び性別は、LVO診断と有意に関連付けられなかった。注目すべきことに、私たちは、LVO対非LVO患者において卒中開始から血液採取までの時間における差がないことを見出した。
【0210】
(実施例2B)
LVO特定のための血液バイオマーカー
その後、本発明者らは、患者コホートにおいて1パネルの血液タンパク質のレベルを調査することを開始した。本発明者らは、LVO及び非LVO患者の血漿中のD-ダイマー、オステオポンチン(OPN)、オステオプロテジェリン(OPG)、フォン・ヴィルブランド因子(vWF)、ADAMTS13(disintegrin and a metalloproteinase with a thrombospondin type I motif, member 13)及びグリア線維酸性タンパク質(GFAP)のレベルを測定した(
図2A、
図7及び
図11)。本発明者らは、血液バイオマーカー、D-ダイマー(p値<0.001;平均値 LVO対非LVO:1.31対0.42μg/mL;SD LVO対非LVO:2.00対0.45μg/mL)、OPN(p値<0.01;平均値 LVO対非LVO:1.71対1.16ng/mL;SD LVO対非LVO:1.05対1.09ng/mL)及びOPG(p値<0.01;平均値 LVO対非LVO:125.24対97.96pg/mL;SD LVO対非LVO:60.96対54.29pg/mL)について、LVO患者と非LVO患者との間の統計的有意差を見出した。任意の特定の理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、このデータは、パネルにおいて試験されたバイオマーカーの中で、D-ダイマー、OPN及びOPGが、LVO卒中の特定において補助となりうることを示唆すると考える。
【0211】
その後、本発明者らは、各有意なバイオマーカーのレベルに基づくロジスティック回帰モデルを構築した。本発明者らは、各モデルのROC曲線下面積を見積もり、D-ダイマーは0.80のAUCをもたらし、一方で、OPN及びOPGと関連付けられるAUCはそれぞれ、0.66及び0.67であることを見出した(
図2)。ROC曲線解析により、私たちは、LVO特定についての診断特異性を最大限にし、一方で、50%の最小レベルの感度を維持することによって、D-ダイマー、OPN及びOPGについてのカットオフレベルを見積もった(表2)。すべての3種のバイオマーカーは、LVO特定について70%超の特異性を達成し、D-ダイマーはほぼ90%の特異性を達成した(
図4)。注目すべきことに、D-ダイマー、OPN及びOPGは、LVO状態の独立予測因子であり、それぞれ、OR 10.34(CI95%:4.65~20)、3.05(CI95%:1.48~5.63)及び3.36(CI95%:1.68~6.32)であった。
【0212】
GFAPは、それが出血性卒中と関連付けられることが公知であるため
20~22、本発明者のパネルに含めた。この仮説と一致して、GFAPレベルは、非出血性卒中及び非卒中患者と比較して、出血性卒中において増大した(
図1B;p値=0.007;平均値 出血性対非出血性/非卒中:1043.46対66.10pg/mL;SD 出血性対非出血性:2581.28対127.24pg/mL)。本発明者らは、私たちのコホートにおける出血性卒中の特定のために、GFAP血漿モデルに基づくロジスティック回帰モデルを構築した。ROC曲線解析を適用して、本発明者らは、GFAPレベルについての265pg/mLのカットオフ値は、出血性患者を、88%の精度、30%の感度及び96%の特異性により特定することができることを見出した。注目すべきことに、265pg/mLよりも高いGFAPレベルは、私たちのコホートにおける出血性卒中の独立予測因子であった(OR:12.27;CI95%:2.87~52.52;p値=0.0015)。
【0213】
本発明者の発見は、OPN、OPG及びD-ダイマーからなるバイオマーカーパネル(OOD)は、LVOの特定において補助となりうることを示唆する。本発明者らは、OODバイオマーカーのレベルに基づくロジスティックモデルを構築し、ROC曲線解析を適用して、LVOの特定についての最も高い精度を有するロジスティックモデル閾値を見積もった(
図5)。本発明者らは、0.69のモデル閾値は、LVO患者を、83%の精度(CI95%:79~88%)、57%の感度(CI95%:42~71%)、90%の特異性(CI95%:86~93%)、5.7の正の尤度比(CI95%:3.47~9.39)及び0.48の負の尤度比(CI95%:0.32~0.64)により特定することができることを見出した。注目すべきことに、0.69よりも低いモデル値にスコア付けされた患者は、より高いモデル値を有する患者と比較して、LVO卒中に罹患している12倍超高い可能性を有した(OR12.56;CI95%:5.48~27.71)。この発見は、OPN、OPG及びD-ダイマーからなるバイオマーカーパネル(OOD)は、LVO卒中の特定において補助となりうることを示す。
【0214】
加えて、本発明者の発見は、バイオマーカーパネルにおけるGFAPの包含は、卒中が疑われる患者の集団から出血性卒中を除外することを補助し、潜在的にLVO特定を改善しうることを示唆する。この仮説を試験するために、本発明者らは、GFAP、OPN、OPG及びD-ダイマーからなるバイオマーカーパネル(GOOD)のLVO診断性能を見積もり、その性能をOODモデルと比較した(
図5)。ROC曲線解析による精度の最大化は、0.59のロジスティックモデル閾値を見積もり、これは、LVO患者を、86%の精度(CI95%:82~90%)、52%の感度(CI95%:38~67%)、94%の特異性(CI95%:91~97%)、10.14の正の尤度比(CI95%:5.09~21.67)及び0.51の負の尤度比(CI95%:0.35~0.66)により特定することを可能にした。注目すべきことに、OODパネルにおけるGFAPの包含は、LVO患者が検査陽性になる可能性をほぼ二倍にした(OR21.06;CI95%:8.17~50)。最も高い予測される精度でのロジスティックモデル閾値の適用(カットオフ=0.59)は、バイオマーカーレベルの範囲、GFAP:17.43~184.27pg/mL;OPN:0.71~1.86ng/mL;OPG:73.34~205.47pg/mL;D-ダイマー:2.42~4.65μg/mLを有する患者を特定した。
【0215】
本発明者らは、GOODバイオマーカーモデルのロジスティックモデル閾値を変動させることによって得られる様々なレベルの診断性能を見積もった(
図6)。本発明者らは、モデル値分布を十分位数に分け、第1の2つの十分位数(ロジスティックモデル値:0.18~0.71)は、LVO特定について最も有意であることを見出した。実際に、ロジスティックモデル閾値を第1及び第2の十分位数に設定した場合、それぞれ、LVO患者が検査陽性を有するオッズ比は、16.67(CI95%:5.44~51.4;p値=0.00011)及び5.55(CI95%:2.11~12.50;p値=0.0129)である(
図6)。
【0216】
これらのデータは、GFAP、OPN、OPG及びD-ダイマーからなるバイオマーカーパネル(GOOD)が、入院前の卒中が疑われる患者の集団からのLVOの特定についての、高度に特異的なツールを提供しうることを示す。
【0217】
本発明者らは、追加の多変数解析を行い、驚くべきことに、LVO予測のための血液バイオマーカーの最適組は、D-ダイマー(OR 15.44、95%CI 4.91~57.6;p値<0.0011)及びGFAP(OR 0.83、95%CI 0.5~0.99;p値=0.03)であることを見出した(
図10)。LVO予測のためのD-ダイマー及びGFAPによるモデルのAUCは、81%(95%CI 74~88%;
図9)であり、精度は、85%(95%CI 81~89%;表5)であった。本発明者らは、特異性を最大限にすることによりモデル閾値を見積もり、56%の感度レベル(95%CI 34~76%)、91%の特異性(95%CI 84~96%)、6.99のLR+(95%CI 3.29~14.88)及び0.47のLR-(95%CI 0.3~0.76)を得た(
図14)。
【0218】
(実施例2D)
バイオマーカーと現場卒中スケールとの統合
患者症状に基づくいくつかの入院前スケールは、現場におけるLVO卒中の特定のために開発されており、LVOについての高レベルの診断感度を示しているが、診断特異性を欠いている
5,7,10,19,23。本発明者の発見は、GOODバイオマーカーパネルは、LVO特定のための高度に特異的なツールを提供しうることを示唆する。それゆえ、本発明者らは、血液バイオマーカーパネルの包含がLVO入院前卒中スケールの診断特異性を改善しうるかどうか仮定した。本発明者らは、NIHSSスコア項目を使用して、卒中スケールFAST、FAST-ED、RACE、CPSS及びEMSAを導出し、確立したスケール閾値におけるそれらの診断性能を見積もった(
図7)。コホートにおいて、FAST-ED及びRACEは、LVO特定についての最も高い診断性能を達成し、それぞれ、84%(CI95%:80~89)及び86%(CI95%:82~91)の精度、並びに32.11(12.86~81.4)及び24.54(10.73~52.78)のORであった。
【0219】
本発明者らは、その後、血液バイオマーカーを、入院前卒中スケールと組み合わせ、GOODパネルが、試験したすべての卒中スケールの診断性能を改善することを見出した(
図8及び
図14)。LVO予測の最も高い診断性能は、GOODとFAST-EDとの組合せにより得られ、この組合せは、96%の精度(CI95%:94~98)、91%の感度(CI95%:83~100)、97%の特異性(CI95%:95~99)を達成した。このモデルに従って、LVO患者は、非LVO患者と比較して、検査陽性になる39(CI95%:18.2~96.09)倍高い可能性を有した。本発明者らは、私たちのバイオマーカーとFAST-EDスケールとの間の有意な関連を見出した(GFAP:p値=0.00139;OPN:p値=0.01321;OPG:p値=0.04144;D-ダイマー:p値=0.00002)が、そのような関連についての調節後、GOODバイオマーカーについて構築したロジスティックモデルは、やはり高度に有意であった(フィッシャーの正確なp値=6.53
e-12)。
【0220】
本発明者らによる更なる解析は、D-ダイマー及びGFAPの付加が、卒中スケール単独を使用することと比較して、適合度の改善(すなわち、より低いAIC)、LVO予測の改善(すなわち、より高いAUC)及び試験した各卒中スケールについての有意なLR検定をもたらすことを見出した(
図9、
図10及び
図14)。D-ダイマー及びGFAPとFAST-ED又はEMSAとの組合せは、LVO予測についての最も高いLR+(それぞれ、22.6、95%CI 8.58~59.51、及び17.22、95%CI 7.22~41.04)をもたらし、それぞれ、0.09(95%CI 0.02~0.34)又は0.14(95%CI 0.05~0.39)のLR-、91%(95%CI 71~98)又は86%(95%CI 66~97)の感度、及び95%(95%CI 89~98)又は94%(95%CI 88~98)の特異性であった。
【0221】
任意の特定の理論に束縛されるものではないが、本発明者の発見は、D-ダイマー、OPN、OPG及びGFAP、特にD-ダイマー及びGFAPと、入院前卒中スケールとの組合せは、高精度ツールを提供することができ、LVO卒中の特定を有意に向上させうることを示す。
【0222】
議論
本発明者らは、初めて、OPN、OPG及びD-ダイマーを、LVO卒中についてのバイオマーカーとして特定した。また、本発明者らは、GFAP、OPN、OPG及びD-ダイマーからなるバイオマーカーパネル(GOOD)が、卒中が疑われる患者の集団からの、大血管閉塞(LVO)を有する卒中患者の高度に特異的な(94%)特定のための有用なツールを提供しうることを実証した。更に、本発明者らは、GOODバイオマーカーパネルを、患者の症状に基づく入院前卒中スケールと組み合わせると、LVO特定のための前例のない診断精度(95%超)をもたらしうることを示した。
【0223】
本発明者らは、128人の卒中の疑いを有する患者の血漿を分析した。すべての確認された虚血性卒中と比較した、LVO卒中の観察された割合は、以前の報告1と一致する、32%であった。加えて、私たちが観察した卒中類似症状の割合(29%)は、他の研究と同等である67。
【0224】
本発明者らは、GFAPレベルについての265pg/mLのカットオフ値は、出血性患者を、30%の感度及び96%の特異性により特定することができることを見出した。本発明者の知る限りでは、LVO患者を特定するための診断ツールとしてのGFAP測定値の能力に直接的に取り組んだ研究はない。加えて、以前の研究は、LVO患者を特定する血漿GFAP測定値の能力に取り組んでいない。
【0225】
本発明者の研究は、他の血液バイオマーカーと共に測定された場合、GFAPは、卒中が疑われる集団から出血性患者を除外することによって、LVO特定を有意に改善しうることを実証する。本発明者らは、血漿GFAPの測定値が、LVO患者を診断及びトリアージするためのツールとして使用されうることの初めての証拠を提供する。
【0226】
また、本発明者の結果は、OPN及びOPGがLVO対非LVO患者において個々に増大することのみでなく、両方のマーカーが、個々に又は本発明者のバイオマーカーパネルと組み合わせた場合、LVO特定に有意に寄与することを示す。以前に公表された研究は、虚血性卒中のサブタイプ間、又は虚血性卒中と対照対象との間のD-ダイマーレベルを比較することに焦点を当てていたが、本発明者の研究は、出血性卒中、非LVO虚血性卒中、卒中類似症状及びTIAを包含する卒中が疑われる患者の不均一な群と比較して、LVO患者におけるD-ダイマーレベルを評価し、したがって、現実的な臨床シナリオをシミュレートするものである。
【0227】
本発明者が知る限りでは、これは、入院前環境において見出される集団と良く似た、卒中が疑われる患者の集団と比較した、LVO患者におけるD-ダイマーレベルの増大の初めての証拠である。
【0228】
本発明者らは、多数のバイオマーカーを組み合わせてパネルにすると、個々のバイオマーカーの使用と比較して、LVO特定のためのより高い診断性能を得ることが可能になることを示した。本発明者の研究において、GFAP、OPN、OPG及びD-ダイマーの組合せは、LVO卒中を、86%の精度で特定することを可能にし、これは、最も高いスコアの個々のバイオマーカー(すなわち、D-ダイマー)と比較してより高い。それにもかかわらず、各バイオマーカー単独の測定もやはり、LVO卒中を診断する正確な手段を提供する。特に、D-ダイマー単独は、83%の診断精度をもたらし、臨床的に許容されるレベルの特異性及び感度(それぞれ、89%及び52%)を伴い、D-ダイマーとGFAPとの組合せは、更により高い精度をもたらし、特異性及び感度は、それぞれ、91%及び56%である。
【0229】
これらの発見は、より複雑なバイオマーカーパネルはLVO卒中のより正確な特定を可能にしうるが、バイオマーカー単独、及び特にD-ダイマーの測定は、特定の臨床シナリオ、例えば、血液採取技法が大量の血液量の収集を可能にしないシナリオ(例えば現場での指先に針を刺すことによる採取)、又は検査の単純性及び迅速性が優先される場合(例えば救急車)において選択されうることを示唆する。
【0230】
患者の症状に基づくいくつかの卒中スケールは、入院前環境においてLVO卒中患者を特定するために開発されている。この研究において、本発明者らは、LVO入院前卒中スケールFAST-ED、RACE、CPSS及びEMSAを導出した。加えて、FASTスコアは、現在最も広く適用されている入院前スケールであるので、本発明者らはFASTスコアを導出した。本発明者らは、LVO特定についてのこれらのスケールの診断測定値を見積もり、それらの予測性能は、以前の研究5~10と比較してより高いことを観察した。これは、本発明者らが、熟練した救急救命士ではなく神経学専門家により採られた各患者のNIHSSスコアからこれらの卒中スケールを導出したという事実のためでありうる。
【0231】
現場においてLVO患者を特定することの全体的な目的は、卒中が疑われる患者の、専門的機能を有する卒中センターへの搬送について、救急車スタッフの決定をガイドすることである。LVO卒中患者は、血管内血栓除去(EVT)による処置を必要とするので、現場におけるこれらの患者の特定は、EVT実行可能センターが最も近い卒中センターでない場合でも、そこへの搬送を方向付けることができる。EVT実行可能センターへのLVO患者の直接的搬送は、病院間移送と比較して24、処置及び患者アウトカムまでの時間を低減することが示されている。このことにもかかわらず、現場における入院前卒中スケールの使用は、国中に広まっており、それらの臨床的価値は、確証及び確認されるべき状態のままである。以前に示唆されている通り25、これは、これまでに実証されているLVOについての限定的な診断特異性のためでありうる。実際に、救急搬送行程を、最も近い卒中センターへの搬送から、最も近いEVT実行可能センター26へ修正するためには、高レベルの特異性(又は正の予測値)が必要とされうる。
【0232】
この研究において、本発明者らは、LVOの特定のために血液バイオマーカーと入院前卒中スケールとの組合せを提案する。本発明者らは、LVO卒中についての新規バイオマーカーを特定し、入院前卒中スケールと共にGOODバイオマーカーパネルについて構築したモデルは、血液バイオマーカー又は卒中スケールの単独の使用と比較して、LVOについての更により高い予測能をもたらしうることを実証した。本発明者らは、GOODバイオマーカーパネルとFAST-EDとの組合せは、LVOについての最も高い診断精度(96%)をもたらし、一方で、RACEとの組合せは、最も高い感度(81%)をもたらすことを観察した。注目すべきことに、最も高い診断特異性(98%)は、GOODパネルをFAST又はEMSAのいずれかと組み合わせた場合に得られた。また、本発明者らは、これらの発見は、バイオマーカーパネルを入院前卒中スケールと組み合わせることが、現場において確信をもってLVO患者をトリアージするために非常に必要な診断性能を提供しうることを示すことを示した。
【0233】
様々な問題に取り組み、当該技術分野を前進させるために、本開示の全体は、特許請求の範囲の発明が実施され、大血管閉塞から生ずる卒中についての優れた診断検査を提供しうる様々な実施形態を例示として示す。本開示の利点及び特色は、実施形態の代表的な試料のみの利点及び特色であり、網羅的且つ/又は排他的ではない。それらは、特許請求の範囲の特色を理解することを援助し、これを教示するためにのみ示される。本開示の利点、実施形態、実施例、機能、特色、構造及び/又は他の態様は、特許請求の範囲によって規定される本開示についての限定、又は特許請求の範囲の均等物についての限定と考えるべきではないこと、並びに他の実施形態を利用してもよく、本開示の範囲及び/又は趣旨から逸脱することなく改変を行いうることを理解すべきである。様々な実施形態は、開示される要素、成分、特色、部分、工程、手段等の様々な組合せを好適に含むか、からなるか、又はから本質的になりうる。加えて、本開示は、現在請求されていないが将来請求されうる他の発明を含む。
(参考文献)
【配列表】
【国際調査報告】