(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-29
(54)【発明の名称】正極片、当該正極片を含む電気化学装置及び電子装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/131 20100101AFI20230522BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230522BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20230522BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20230522BHJP
【FI】
H01M4/131
H01M4/36 E
H01M4/525
H01M4/505
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021541551
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(85)【翻訳文提出日】2021-07-16
(86)【国際出願番号】 CN2021083404
(87)【国際公開番号】W WO2022198667
(87)【国際公開日】2022-09-29
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】周 墨林
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA17
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA29
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA02
5H050FA02
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA08
5H050HA19
(57)【要約】
本発明は、正極片、当該正極片を含む電気化学装置及び電子装置を提供する。本発明に係る正極片は、正極集電体と、正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられた正極活物質層とを含み、正極活物質層は、式(1)で示される第1の正極活物質と、式(2)で示される第2の正極活物質とを含み、
Li
1+xNa
aCo
1+yAl
zMg
pTi
uM
vO
2+w(1)
式(1)において、Mは、Zr、LaまたはYのうちの少なくとも1種を含む、-0.1<x<0.1、0<a<0.005、-0.05<y<0.05、0.01<z<0.05、0.001<p<0.01、0<u<0.005、0<v<0.005、-0.05<w<0.05、
Li
2+rNa
sN
1+qO
2+t(2)
式(2)において、-0.2<r<0.2、0<s≦0.05、-0.1<q<0.1、-0.05<t<0.05、Nは、Ni、Cu、Mn、Fe、Coのうちの少なくとも1種を含む。当該正極片第1の正極活物質と第2の正極活物質との相乗効果を充分に発揮することができ、電気化学装置の放電比容量を効果的に向上させ、さらに、電気化学装置の高温サイクル性能及びエネルギー密度を向上させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられた正極活物質層とを含む正極片であって、
前記正極活物質層は、式(1)で示される第1の正極活物質及び式(2)で示される第2の正極活物質を含み、
Li
1+xNa
aCo
1+yAl
zMg
pTi
uM
vO
2+w(1)
式(1)において、Mは、Zr、LaまたはYのうちの少なくとも1種を含み、-0.1<x<0.1、0<a<0.005、-0.05<y<0.05、0.01<z<0.05、0.001<p<0.01、0<u<0.005、0<v<0.005、-0.05<w<0.05、
Li
2+rNa
sN
1+qO
2+t(2)
式(2)において、-0.2<r<0.2、0<s≦0.05、-0.1<q<0.1、-0.05<t<0.05、NはNi、Cu、Mn、Fe、Coのうちの少なくとも1種を含む、正極片。
【請求項2】
前記正極片の圧縮密度Pは、3.85g/cm
3<P<4.35g/cm
3を満たす請求項1に記載の正極片。
【請求項3】
前記第1の正極活物質と前記第2の正極活物質との質量比は、4:1~200:1である請求項1に記載の正極片。
【請求項4】
前記正極活物質層の合計質量に対して、前記第1の正極活物質の含有量の質量百分率は、80%~98.5%である請求項1に記載の正極片。
【請求項5】
前記第1の正極活物質のDv50は、3μm~20μmであり、前記第1の正極活物質のDv90は、12μm~45μmである請求項1に記載の正極片。
【請求項6】
前記第2の正極活物質のDv50は、6μm~18μmであり、前記第2の正極活物質のDv90は、15μm~32μmである請求項1または5に記載の正極片。
【請求項7】
前記第2の正極活物質は、X≧300mAh/g、Y/X≦40%を満たし、
Xは、前記第2の正極活物質の初回充電比容量であり、Yは、前記第2の正極活物質の初回放電比容量である、請求項1に記載の正極片。
【請求項8】
請求項1に記載の正極片であって、前記正極片は、下記(a)~(e)のうちの少なくとも1つを満たす、
(a)前記正極片の圧縮密度Pは、4.05g/cm
3<P<4.30g/cm
3を満たし、
(b)前記第1の正極活物質と前記第2の正極活物質との質量比は、9:1~100:1であり、
(c)前記正極活物質層の合計質量に対して、前記第1の正極活物質の含有量の質量百分率は、85%~98.5%であり、
(d)前記第1の正極活物質のDv50は、5μm~16μmであり、前記第1の正極活物質のDv90は、18μm~40μmであり、
(e)前記第2の正極活物質のDv50は、10μm~16μmであり、前記第2の正極活物質のDv90は、18μm~30μmである。
【請求項9】
前記正極活物質層は、第1の正極活物質層と第2の正極活物質層とを含み、前記第1の正極活物質層は、前記第1の正極活物質を含み、前記第2の正極活物質層は、前記第2の正極活物質を含む請求項1~8のいずれか1項に記載の正極片。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の正極片を含む、電気化学装置。
【請求項11】
請求項10に記載の電気化学装置を含む、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学分野に関し、具体的に、正極片、当該正極片を含む電気化学装置及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン
二次電池は、高エネルギー貯蔵密度、高開回路電圧、低自己放電率、長いサイクル寿命、安全性に優れるなどの利点を有し、電気エネルギー貯蔵、携帯電子機器、電気自動車及び航空宇宙装置などの各分野に幅広く使用されている。携帯電子機器及び電気自動車の急速な発展に伴い、市場では、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度、サイクル性能及び動力学的性能などに対する要求が益々高まっている。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、初回の充放電過程において、負極表面に大量の固体電解質界面膜(Solid Electrolyte Interphase、SEI)が発生するため、リチウムイオン電池における限られたリチウムイオン及び電解液を消費し、不可逆的な容量損失が生じ、それにより、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度を低下させる。負極として黒鉛を用いた電池では、初回サイクルで活性リチウム源の約10%が消費され、負極として合金系(ケイ素、スズなど)、酸化物系(酸化ケイ素、酸化スズなど)、及び非晶質炭素系などの高い比容量を有する負極材料を用いた場合は、活性リチウム源の消費がさらに増大する。このため、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度を向上させるために、リチウムを補充する適切な方法を提供することが重要である。
【0004】
従来では、上記問題に対して、一般的に負極スラリーにリチウム金属粉末又は安定化リチウム金属粉末を添加するという負極にリチウムを補充する方法が提案されるが、リチウム金属粉末/安定化リチウム金属粉末は、反応活性が高く、空気中の水分と反応しやすく、危険係数が高いため、厳しい生産環境及び製造工程が求められることにより、負極のリチウム補充はが大きな課題となっている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、電気化学装置のエネルギー密度、サイクル安定性、特に高温でのエネルギー密度及びサイクル安定性を向上させるための正極片、当該正極片を含む電気化学装置及び電子装置を提供することを目的とする。
具体的な技術的手段は以下の通りである。
【0006】
なお、本発明の内容では、電気化学装置の例としてリチウムイオン二次電池を挙げて説明するが、本発明の電気化学装置は、リチウムイオン二次電池のみに限定されるものではない。具体的な技術的手段は以下の通りである。
【0007】
本発明に係る第1の態様は、正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられた正極活物質層とを含む正極片を提供し、前記正極活物質層は、式(1)で示される第1の正極活物質と、式(2)で示される第2の正極活物質とを含み、
[化1]
Li1+xNaaCo1+yAlzMgpTiuMvO2+w (1)
式(1)において、Mは、Zr、LaまたはYのうちの少なくとも1種を含み、-0.1<x<0.1、0<a<0.005、-0.05<y<0.05、0.01<z<0.05、0.001<p<0.01、0<u<0.005、0<v<0.005、-0.05<w<0.05、
[化2]
Li2+rNasN1+qO2+t (2)
式(2)において、-0.2<r<0.2、0<s≦0.05、-0.1<q<0.1、-0.05<t<0.05、Nは、Ni、Cu、Mn、Fe、Coのうちの少なくとも1種を含む。
【0008】
いかなる理論に限定されていないが、本発明は、第1の正極活物質及び第2の正極活物質を併用することで相乗効果を生み出し、初回充電時では、第2の正極活物質の初回充電比容量が高いであるため初回充電時に大量のリチウムイオンを放出できるという特性を利用して、SEIの生成による活性リチウムの損失を効果的に補うことにより、初回放電時に十分なリチウムイオンが第1の正極活物質に戻して插入して、リチウムイオン二次電池の放電比容量を効果的に向上させ、さらに、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度を向上させることができる。一方、第2の活物質が初回充電時に放出された部分的リチウムイオンは、負極に貯蔵されてもよく、後続のサイクルで徐々に放出されることにより、リチウムイオン二次電池のサイクル減衰の改善に寄与する。また、本発明に係る第1の正極活物質は真密度が高く、当該材料を含む正極片は、高い圧縮密度(compaction density)までロールプレスすることができるため、リチウムイオン二次電池の体積エネルギー密度の限界をさらに向上すること寄与する。
【0009】
本発明において、層状構造を有する第1の正極活物質におけるLiサイトにナトリウム(Na)をドープすることにより、リチウムイオンの伝送パスを広げ、リチウムイオンの伝送能力を向上させる。同時に、CoサイトにAl、MgまたはYをドープする。第1の正極活物質にTi、ZrまたはLaが含まれるため、材料の構造安定性を向上させた。また、第2の正極活物質には、Naがドープされることにより、リチウムイオンの伝送パスを広げ、リチウムイオン二次電池の高温サイクル性能及び体積エネルギー密度がより優れる。
【0010】
本発明において、正極集電体は、厚み方向に対向する第1の表面及び第2の表面を含み、正極活物質層は、正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられた。当業者であれば理解できるように、正極活物質層は、第1の表面に設けられてもよく、第2の表面に設けられてもよく、第1の表面及び第2の表面に同時に設けられてもよく、当業者が実際の必要に応じて選択すればよい。なお、上記の「表面」は、第1の表面及び/または第2の表面の全体であってもよく、第1の表面及び/または第2の表面の一部であってもよく、本発明の目的を達成できれば、特に限定されない。
【0011】
本発明の1つの実施形態において、正極片の圧縮密度Pは、3.85g/cm3<P<4.35g/cm3を満たし、好ましくは、4.05g/cm3<P<4.30g/cm3を満たす。正極片の圧縮密度Pを前記範囲に収めることにより、正極片における電子及びイオンの移動に寄与し、リチウムイオン二次電池の高温サイクル性能及び体積エネルギー密度を向上させる。正極片の圧縮密度Pの下限値は、3.85、3.9、4.0または4.05を含んでもよく、正極片の圧縮密度Pの上限値は、4.1、4.2、4.3または4.35を含んでもよい。
【0012】
本発明の1つの実施形態において、第1の正極活物質と第2の正極活物質との質量比は、4:1~200:1であり、好ましくは、9:1~100:1である。いかなる理論に限定されていないが、第1の正極活物質と第2の正極活物質との質量比が低すぎると、第2の正極活物質の含有量が相対的に高すぎ、正極活物質層におけるリチウムが「リッチ」になるため、リチウムイオン二次電池の高温サイクル性能に影響を与える。第1の正極活物質と第2の正極活物質との質量比が高すぎると、第2の正極活物質の含有量が相対的に少なすぎ、SEIによるリチウムの消費を補充するための十分な活性リチウムを提供できないため、リチウムイオン二次電池の高温サイクル性能及びエネルギー密度に影響を与える。第1の正極活物質と第2の正極活物質との質量比を前記範囲に収めることにより、正極活物質層がより高い構造安定性を有し、正極活物質の構造の破壊による容量の損失及び抵抗の増加を減少させることができ、それにより、リチウムイオン二次電池のサイクル安定性及び動力学的性能を維持することができる。質量比の下限値は、4:1、10:1、20:1、30:1、50:1、70:1または90:1を含んでもよく、第1の正極活物質と第2の正極活物質との質量比の上限値は、100:1、130:1、150:1、170:1または200:1を含んでもよい。
【0013】
本発明の1つの実施形態において、前記正極活物質層の合計質量に対して、前記第1の正極活物質の含有量の質量百分率は、80%~98.5%であり、好ましくは、85%~98.5%である。正極活物質層における第1の正極活物質の含有量を前記範囲に収めることにより、正極活物質層がより高い構造安定性を有し、正極活物質の構造の破壊による容量の損失及び抵抗の増加を減少させることができる。第1の正極活物質の含有量の下限値は、80wt%、85wt%または88wt%を含んでもよく、第1の正極活物質の含有量の上限値は、90wt%、95wt%または98.5wt%を含んでもよい。
【0014】
本発明の1つの実施形態において、第1の正極活物質のDv50は、3μm~20μmであり、好ましくは、5μm~16μmであり、前記第1の正極活物質のDv90は12μm~45μmであり、好ましくは、18μm~40μmである。前記範囲を有する第1の正極活物質を使用することにより、正極片の電子及びイオン伝送性能をさらに改善し、リチウムイオン二次電池のサイクル性能及び動力学的性能を向上させることができる。第1の正極活物質のDv50の下限値は、3μm、5μm、7μmまたは10μmを含んでもよく、第1の正極活物質のDv50の上限値は、12μm、15μmまたは20μmを含んでもよい。第1の正極活物質のDv90の下限値は、5μm、7μm、10μmを含んでもよく、第1の正極活物質のDv90の上限値は、12μm、14μmまたは16μmを含んでもよい。
【0015】
本発明の1つの実施形態において、第2の正極活物質のDv50は、6μm~18μmであり、好ましくは、10μm~16μmであり、前記第2の正極活物質のDv90は15μm~32μmであり、好ましくは、18μm~30μmである。前記範囲を有する第2の正極活物質を使用することにより、正極片の電子及びイオン伝送性能をさらに改善し、リチウムイオン二次電池のサイクル性能及び動力学的性能を向上させることができる。第2の正極活物質のDv50の下限値は、6μm、8μm、10μmまたは12μmを含んでもよく、第2の正極活物質のDv50の上限値は、14μm、16μmまたは18μmを含んでもよい。第2の正極活物質のDv90の下限値は、15μm、17μm、18μm、19μm、21μmまたは23μmを含んでもよく、第2の正極活物質のDv90の上限値は、25μm、27μm、29μm、30μmまたは32μmを含んでもよい。
【0016】
本発明では、粒子のDv50は、体積基準の粒度分布において、小径側から累積体積が50%となる粒子径を表す。粒子のDv90は、体積基準の粒度分布において、小径側から累積体積が90%とな粒子径を表す。
【0017】
本発明の1つの実施形態において、第2の正極活物質は、X≧300mAh/g、Y/X≦40%を満たす。それは、第2の正極活物質の比容量が高いことを意味し、初回放電時に、大量のリチウムイオンを放出することでSEIの生成による活性リチウムの損失を補うことができ、それにより、初回放電時に十分なリチウムイオンが第1の活物質に戻して插入されることにより、電池の放電比容量を効果的に向上させ、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度を向上させる。
【0018】
本発明の1つの実施形態において、前記正極活物質層は、第1の正極活物質層と第2の正極活物質層とを含み、前記第1の正極活物質層は第1の正極活物質を含み、前記第2の正極活物質層は第2の正極活物質を含む。本発明において、それぞれ、第1の正極活物質のスラリー及び第2の正極活物質のスラリーを調製してから、順次に正極集電体の第1の表面及び第2の表面に塗布することにより、第1の正極活物質層及び第2の正極活物質層を形成することができる。本発明のいくつかの実施形態において、正極集電体の第1の表面及び/又は第2の表面に、第1の正極活物質層及び第2の正極活物質層が順次に設置される。本発明のいくつかの実施形態において、正極集電体の第1の表面及び/又は第2の表面に、第2の正極活物質層及び第1の正極活物質層が順次に設置される。本発明のいくつかの実施形態において、正極集電体の第1の表面/第2の表面に、第2の正極活物質層及び第2の正極活物質層が順次に設置され、正極集電体の第2の表面/第1の表面に、第1の正極活物質層及び第2の正極活物質層が順次に設置される。上記のいずれかの実施形態における第2の正極活物質は、いずれも正極へのリチウム補充の材料として正極片に適用されることができる。
【0019】
本発明の正極片において、正極集電体は、特に限定されず、例えば、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔又は複合集電体などの当分野で周知の正極集電体であってもよい。本発明において、本発明の目的を達成できれば、正極集電体及び正極活物質層の厚さ、並びに、第1の正極活物質層及び第2の正極活物質層の厚さは、いずれも、特に限定されない。例えば、正極集電体の厚さは、5μm~20μmである。正極活物質層の厚さは、30μm~120μmである。任意に、前記正極片は、正極集電体と正極活物質層との間に配置される導電層をさらに含んでもよい。前記導電層の組成は特に限定されず、当分野で一般的に使用される導電層であってもよい。前記導電層は、導電剤と粘着剤を含む。
【0020】
本発明の負極片は、負極集電体と、負極集電体の少なくとも1つの表面に設けられた負極活物質層とを含んでもよい。本発明において、負極集電体は、本発明の目的を達成できるものであれば、特に限定されず、例えば、銅箔、銅合金箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、ニッケルフォーム、銅フォームまたは複合集電体などを含んでもよい。本発明における負極活物質層は、負極活物質と、導電剤と、増粘剤とを含む。本発明の負極活物質は、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、ハードカーボン、ソフトカーボン、ケイ素、ケイ素-炭素複合体、SiOx(0.5<x<1.6、)、Li-Sn合金、Li-Sn-O合金、Sn、SnO、SnO2、スピネル構造を有するチタン酸リチウムLi4Ti5O12、Li-Al合金及びリチウム金属などのうちの少なくとも1種を含む。本発明において、本発明の目的を達成できれば、負極集電体及び負極活物質層の厚さは特に制限されない。例えば、負極集電体の厚さは、6μm~10μmであり、負極活物質層の厚さは、30μm~120μmである。本発明において、負極片の厚さは、本発明の目的を実現できるものであれば特に制限されず、例えば、負極片の厚さは、50μm~150μmである。任意に、前記負極片は、負極集電体と負極材料層との間に配置される導電層をさらに含んでもよい。前記導電層の組成は特に限定されず、当分野で一般的に使用される導電層であってもよい。前記導電層は、導電剤と粘着剤を含む。
【0021】
上記導電剤は、本発明の目的を達成できるものであれば特に限定されない。例えば、導電剤は、導電性カーボンブラック(SuperP)、カーボンナノチューブ(CNTs)、カーボンナノファイバー、鱗片状黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ及びグラフェンなどのうちの少なくとも1種を含んでもよい。前記粘着剤は、本発明の目的を達成できるものであれば特に限定されず、当分野で周知の任意の粘着剤を使用できる。粘着剤は、例えば、ポリプロピレンアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸リチウム、ポリイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルブチラール(PVB)、水性アクリル樹脂、カルボキシメチルセルロース(CMC)、及び、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)などのうちの少なくとも1種を含んでもよい。
【0022】
本発明におけるセパレータは、本発明の目的を達成できるものであれば特に限定されない。例えば、セパレータは、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)を主とするポリオレフィン(PO)系セパレータ、ポリエステルフィルム(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)、セルロースフィルム、ポリイミドフィルム(PI)、ポリアミドフィルム(PA)、スパンデックス又はアラミドフィルム、織布フィルム、不織布フィルム(不織布)、微細孔フィルム、複合フィルム、セパレータ紙、ラミネートフィルム、紡糸フィルムなどのうちの少なくとも1種である。セパレータは、例えば、基材層と表面処理層を含んでもよい。基材層は、多孔質構造を有する不織布、フィルム又は複合フィルムであってもよく、基材層の材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート及びポリイミドなどのうちの少なくとも1種を含んでもよい。任意に、ポリプロピレン多孔質膜、ポリエチレン多孔質膜、ポリプロピレン不織布、ポリエチレン不織布又はポリプロピレン-ポリエチレン-ポリプロピレン多孔質複合フィルムを用いることができる。任意に、基材層は、その少なくとも1つの表面に表面処理層が設置されて、表面処理層はポリマー層又は無機物層であってもよく、ポリマーと無機物を混合した層であってもよい。例えば、無機物層は無機粒子及び粘着剤を含み、前記無機粒子は、特に制限されず、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化スズ、酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、炭化ケイ素、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム及び硫酸バリウムなどからなる群から選ばれる少なくとも1種であってもよい。前記粘着剤は、特に制限されず、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンの重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレン及びポリヘキサフルオロプロピレンからなる群から選ばれる1種又は複数の種類の組み合わせであってもよい。ポリマー層はポリマーを含み、ポリマーの材料は、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、アクリル酸エステルポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデン及びポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)などのうちの少なくとも1種を含む。
【0023】
本発明のリチウムイオン電池は、電解質をさらに含み、電解質は、ゲル電解質、固体電解質及び電解液のうちの1種または複数の種類であってよく、電解液は、リチウム塩と非水系溶媒とを含む。本発明のいくつかの実施形態において、リチウム塩は、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiB(C6H5)4、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiN(SO2CF3)2、LiC(SO2CF3)3、LiSiF6、LiBOB、または、ジフルオロホウ酸リチウムのうちの少なくとも1種を含んでもよい。1つの例が挙げられると、LiPF6は、高いイオン伝導度を有してサイクル特性を改善できるので、リチウム塩として用いられる。非水系溶媒は、例えば、カーボネート化合物、カルボン酸エステル化合物、エーテル化合物、他の有機溶媒、又はこれらの組み合わせであってもよい。前記カーボネート化合物は、鎖状カーボネート化合物、環状カーボネート化合物、フルオロカーボネート化合物又はこれらの組み合わせであってもよい。上記鎖状カーボネート化合物の例としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。環状カーボネート化合物の例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。フルオロカーボネート化合物の例としては、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、1,2-ジフルオロエチレンカーボネート、1,1-ジフルオロエチレンカーボネート、1,1,2-トリフルオロエチレンカーボネート、1,1,2,2-テトラフルオロエチレンカーボネート、1-フルオロ-2-メチルエチレンカーボネート、1-フルオロ-1-メチルエチレンカーボネート、1,2-ジフルオロ-1-メチルエチレンカーボネート、1,1,2-トリフルオロ-2-メチルエチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、及びこれらの組み合わせが挙げられる。上記カルボン酸エステル化合物の例としては、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸ter-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、γ-ブチロラクトン、デカラクトン、バレロラクトン、メバロノラクトン、カプロラクトン、及びこれらの組合せが挙げられる。上記エーテル化合物の例としては、ジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。上記他の有機溶媒の例としては、ジメチルスルホキシド、1,2-ジオキソラン、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチル-2-ピロリドン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチル及びリン酸エステル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0024】
本発明は、正極活物質層を調製する際に、第1の正極活物質及び第2の正極活物質の添加順序が特に制限されない。例えば、スラリーとして調製される時に直接均一に混合し、混合されたスラリーを正極集電体の第1の表面及び/又は第2の表面に塗布してもよく、又は、それぞれ、第1の正極活物質のスラリー及び第2の正極活物質のスラリーを調製してから、上記の2種類のスラリーを正極集電体の第1の表面及び/又は第2の表面に、順次に塗布することにより、第1の正極活物質層及び第2の正極活物質層を形成してもよい。
【0025】
本発明は、さらに、上記のいずれかの実施形態に記載された正極片を含む電気化学装置を提供し、当該電気化学装置は、優れた高温サイクル性能及び体積エネルギー密度を有する。
【0026】
本発明の電気化学装置は特に制限されなく、電気化学反応が発生する任意の装置を含んでもよい。いくつかの実施例において、電気化学装置は、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池(リチウムイオン電池)、リチウムポリマー二次電池またはリチウムイオンポリマー二次電池などを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0027】
本発明は、本発明の実施形態に記載された電気化学装置を含む電子装置をさらに提供し、当該電子装置は、優れた高温サイクル性能及び体積エネルギー密度を有する。
【0028】
本発明の電子装置は特に制限されなく、従来の技術で周知の任意の電子装置であってもよい。いくつかの実施形において、電子装置は、ノートパソコン、ペン入力型コンピューター、モバイルコンピューター、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯型ファクシミリ、携帯型コピー機、携帯型プリンター、ステレオヘッドセット、ビデオレコーダー、液晶テレビ、ポータブルクリーナー、携帯型CDプレーヤー、ミニCD、トランシーバー、電子ノートブック、計算機、メモリーカード、ポータブルテープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、オートバイ、補助自転車、自転車、照明器具、おもちゃ、ゲーム機、時計、電動工具、閃光灯、カメラ、大型家庭用ストレージバッテリー、及びリチウムイオンコンデンサーなどを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0029】
電気化学装置の製造工程は当業者に一般的に知られているものであり、本発明では特に限定されない。例えば、電気化学装置は、正極片と負極片とをセパレーターを介して重ね合わせ、必要に応じて、巻く、折るなどしてケースに入れ、ケースに電解液を注入して封口することで製造し得る。ここで使用されたセパレータは本発明に係る上述したものである。また、電気化学装置内部の圧力上昇、過充放電を防ぐために、必要に応じて、過電流防止素子、リード板などをケースに入れることができる。
【0030】
本発明は、正極片、当該正極片を含む電気化学装置及び電子装置を提供し、当該正極片は、正極集電体及び当該正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられた正極活物質層を含み、当該正極活物質層は、Li1+xNaaCo1+yAlzMgpTiuMvO2+w(1)で示される第1の正極活物質及びLi2+rNasM1+qO2+t(2)で示される第2の正極活物質を含む。本発明の第1の正極活物質と第2の正極活物質とを有する正極片は、第1の正極活物質と第2の正極活物質との相乗効果を十分に発揮することができ、電気化学装置の高温サイクル性能及びエネルギー密度を効果的に向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明及び従来の技術的手段をより明確に説明するために、以下に実施例及び従来の技術における必要とされる図面を簡単に説明する。明らかに、以下の説明における図面は単に本発明のいくつかの実施例に過ぎない。
【0032】
【
図1】
図1は、本発明の1つの実施形態の正極片の構造の模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の他の1つの実施形態の正極片の構造の模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の他の1つの実施形態の正極片の構造の模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の他の1つの実施形態の正極片の構造の模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の他の1つの実施形態の正極片の構造の模式図である。
【0033】
図面では、10.正極集電体、20.正極活物質層、21.第1の正極活物質層、22.第2の正極活物質層、31.第1の表面、32.第2の表面。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の目的、技術的手段、及び利点をより明確にするために、以下、図面及び実施例を参照しつつ、本発明をされに詳細に説明する。明らかに、説明される実施例は単に本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。当業者であれば、本発明に基づいて得られる他のすべての実施例は、いずれも本発明の保護請求する範囲に含まれる。
【0035】
なお、本発明の具体的な実施形態において、電気化学装置の例としてリチウムイオン二次電池を挙げて説明するが、本発明の電気化学装置はリチウムイオン二次電池に限定されるものではない。
【0036】
図1は、本発明の1つの一実施形態の正極片の構造の模式図を示す、
図1に示すように、正極集電体10は、厚み方向における第1の表面31及び第2の表面32に正極活物質層20を塗布する。ここで、正極活物質層20における第1の正極活物質及び第2の正極活物質は、スラリーとして調製される時に直接均一に混合され、混合されたスラリーを正極集電体10の第1の表面31及び第2の表面32に塗布するように、用いられる。当然、第1の表面31又は第2の表面32のうちの1つの面のみに塗布してもよい。
図2は本発明の他の実施形態の正極片の構造の模式図を示す。
図2に示すように、正極活物質層20は正極集電体10の第1の表面31のみに塗布され、第2の表面32に塗布されていない。
【0037】
図3は、本発明のほかの1つの実施形態の正極片の構造の模式図を示す。
図3に示すように、正極活物質層20は正極集電体10の表面の一部に塗布される。当然、正極活物質層20は、正極集電体10の表面の全体に塗布されてもよい。
【0038】
図4及び
図5は、それぞれ、本発明のほかの2つの実施形態の正極片の構造の模式図を示す。
図4及び
図5に示すように、正極活物質層20における第1の正極活物質のスラリー及び第2の正極活物質のスラリーをそれぞれ調製して、正極集電体10の第1の表面31及び第2の表面32に順次に塗布する。この2つの実施形態において、正極活物質層20は第1の正極活物質層21及び第2の正極活物質層22を含む。
図4に示すように、第1の表面31/第2の表面32上に、第1の表面31/第2の表面32の外側へ延びる方向に沿って、第1の正極活物質層21及び第2の正極活物質層22を順次に塗布する。
図5に示すように、第1の表面31上に、第1の表面31の外側へ延びる方向に沿って、第1の正極活物質層21及び第2の正極活物質層22を順次に塗布し、第2の表面32上に、第2の表面32の外側へ延びる方向に沿って、第2の正極活物質層22及び第1の正極活物質層21を順次に塗布する。
【0039】
実施例
【0040】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明の実施形態をより具体的に説明する。各試験及び評価は、後述の方法に従って行われた。なお、「部」、「%」は、特に断りのない限り、質量基準である。
【0041】
測定方法及びデバイス:
【0042】
正極片の圧縮密度P:
【0043】
正極片の圧縮密度Pは、式P=m/vによって算出される。式において、mは、正極活物質層の質量であって、その単位はgであり、vは、正極活物質層の体積であって、その単位はcm3である。ここで、体積vは、正極活物質層の面積Arと正極活物質層の厚さとの積である。
【0044】
正極活物質のDv50及びDv90の測定:
【0045】
第1の正極活物質及び第2の正極活物質のDv50及びDv90は、レーザー粒度計によって測定される。
【0046】
サイクル性能の測定:
【0047】
45℃の条件で、リチウムイオン二次電池を1.5Cレートで4.45Vまで定電流充電し、次に電流が0.05C以下になるまで定電圧充電してから、1Cレートで3.0Vまで定電流放電する。これを1つの充放電サイクルとし、リチウムイオン二次電池の1回目のサイクルの放電容量を記録する。リチウムイオン二次電池の放電容量が1回目のサイクルの放電容量の80%に減衰するまで、リチウムイオン二次電池は上記の方法で充放電サイクルを行い、かつ1回あたりのサイクルの放電容量を記録する。充放電サイクルの回数を記録する。
【0048】
エネルギー密度の測定:
【0049】
25℃の条件で、フォーメーションされたリチウムイオン二次電池を0.2Cレートで4.45Vまで定電流充電し、次に電流が0.05C以下になるまで定電圧充電し、その後30分間静置してから、更に、0.2Cレートで3.0Vまで定電流放電し、リチウムイオン二次電池の0.2Cレートでの放電容量D0(Ah)及び放電プラットフォーム P0(V)を記録する。リチウムイオン電池の体積を測定し、V0(L)とする。
リチウムイオン二次電池のエネルギー密度は、エネルギー密度=D0×P0/V0によって算出され、その単位は、Wh/Lである。
【0050】
充放電比容量の測定:
【0051】
<ボタン型電池の調製>
【0052】
正極へのリチウム補充の材料、導電剤である導電性カーボンブラック、及び粘着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を90:5:5の質量比で混合し、N-メチルピロリドン(NMP)を溶媒として添加し、撹拌して、固形分含有量が40%であるスラリーを調製し、ドクターブレードによって集電体であるアルミニウム箔に、塗布層の厚さが100μmとなるように塗布し、真空乾燥器による乾燥を130℃で12h行った後、乾燥環境で打ち抜き機によって直径が1cmの円形片に切り出し、グローブボックス内で、リチウム金属片を対電極として、ceglard複合膜をセパレーターとして選んで、電解液を添加し組み立ててボタン型電池を得る。電解液は、エチレンカーボネート(EC)と、メチルエチルカーボネート(EMC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを、30:50:20の質量比で混合して得られた有機溶液であり、電解液におけるリチウム塩の濃度は、1.15mol/Lである。
【0053】
<充電比容量の測定>
【0054】
本発明において、Wuhan Landian CT2001A システム使用して充電比容量の測定を行う。正極へのリチウム補充の材料を含む測定用ボタン型電池を、25±3℃の雰囲気で30分静置して、0.1C(グラムあたりの理論容量は400mAh/gとされる)レートで電圧が4.4Vになるまで定電流充電し、次に電流が0.025Cになるまで定電圧充電し、充電容量を記録する。
【0055】
正極へのリチウム補充の材料を含むボタン型電池の充電比容量=充電容量/正極へのリチウム補充の材料の質量。
【0056】
<放電比容量の測定>
【0057】
本発明において、Wuhan Landian CT2001Aシステムを使用して放電比容量の測定を行う。正極へのリチウム補充の材料を含む測定用ボタン型電池を25±3℃の雰囲気で30分間静置し、0.1C(グラムあたりの理論容量は400mAh/gとされる)レートで電圧が4.4Vになるまで定電流充電し、次に電流が0.025Cになるまで定電圧充電し、5min静置してから、ボタン型電池は、更に、0.1Cでカットオフ電圧が2.5Vになるまで定電流放電し、初回放電容量を記録する。
正極へのリチウム補充の材料を含むボタン型電池の放電比容量=放電容量/正極へのリチウム補充の材料の質量。
【0058】
実施例1
【0059】
<正極片の調製>
【0060】
第1の正極活物質であるLi0.998Na0.002Co0.976Al0.021Mg0.003Ti0.001Y0.001O2、第2の正極活物質であるLi1.995Na0.005NiO2、粘着剤であるPVDF及び導電剤である導電性カーボンブラックを混合した。ここで、第1の正極活物質、第2の正極活物質、粘着剤及び導電剤の質量比は、92.6:5.0:1.3:1.1である。そして、溶媒としてNMPを入れて、真空で均一かつ透明な溶液になるまで撹拌することにより、固形分含有量が75%である正極スラリーを得た。正極スラリーを厚さ10μmの正極集電体であるアルミニウム箔に均一に塗布し、120℃で乾燥させ、塗布層の厚さが110μmである正極片を得た。以上のステップを完成した後、正極片の片面での塗布は完了した。その後、当該正極片の他の表面に対して、以上のステップを繰り返すことにより、両面に正極活物質が塗布された正極片を得た。塗布が完成した後、更に冷間プレスによって、正極片を74×867mmに裁断し、タブを溶接した後、二次電池用正極片が得られた。
【0061】
<負極片の調製>
【0062】
負極活物質である黒鉛とSiOとの混合物(黒鉛とSiOとの質量比は4:1である)、粘着剤であるポリアクリル酸(PAA)及び導電性カーボンブラックを、95.7:3.2:1.1の質量比で混合し、溶媒として脱イオン水を入れて、固形分含有量が70%であるスラリーを調製し、均一に攪拌した。スラリーを集電体である銅箔に均一に塗布し、120℃で乾燥させ、冷間プレスした後、負極活物質層の厚さが150μmであり、かつ片面に活物質層が塗布された負極片を得た。以上のステップが完了した後、同様の方法で当該負極片の裏面に対して、これらのステップを行うことにより、両面で塗布された負極片を得た。塗布が完了した後、負極片を76mm×851mmに裁断し、タブを溶接した後、二次電池用負極片が得られた。
【0063】
<電解液の調製>
【0064】
乾燥のアルゴン雰囲気において、有機溶媒であるエチレンカーボネート(EC)、メチルエチルカーボネート(EMC)及びジエチルカーボネート(DEC)を、EC:EMC:DEC=1:1:1の質量比で混合して有機溶液を得た。そして、有機溶媒にリチウム塩であるヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を入れて溶解させ、均一に混合することで、リチウム塩の濃度が1mol/Lである電解液を得た。
【0065】
<セパレーターの調製>
【0066】
厚さ14μmのポリプロピレン(PP)フィルム(Celgard社製)を使用した。
【0067】
<リチウムイオン電池の調製>
【0068】
セパレーターが正極と負極との間に介在して隔離の役割を果たすように、上記調製された正極片、セパレーター及び負極片を順に積層し、巻いて、電極組立体を得た。電極組立体をアルミニウムプラスチック複合フィルム包装袋に入れて、80℃で水分を除去し、調製された電解液を注入し、真空封止、静置、フォーメーション、整形などの工程を行うことにより、リチウムイオン電池を得た。
【0069】
実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6、実施例7、実施例8、実施例9、実施例10、実施例11、実施例12及び実施例13において、<正極片の調製>、<負極片の調製>、<電解液の調製>、<セパレーターの調製>及び<リチウムイオン電池の調製>の調製工程については、いずれも実施例1と同じ、関連する調製パラメーターの変化は、表1に示す。
【0070】
【0071】
比較例1、比較例2、比較例3、比較例4及び比較例5において、<正極片の調製>、<負極片の調製>、<電解液の調製>、<セパレーターの調製>及び<リチウムイオン電池の調製>の調製工程については、いずれも実施例1と同じ、関連する調製パラメーターの変化は、表2に示す。
【0072】
【0073】
【0074】
実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6、実施例7、実施例8、実施例9、実施例10、実施例11、実施例12、実施例13及び比較例1、比較例2、比較例3、比較例4、比較例5から分かるように、本発明の第1の正極活物質と第2の正極活物質とを有するリチウムイオン電池は、高温でのサイクル数が著しく増加された同時に、優れたサイクル性能が確保された。これは、本発明の第1の正極活物質と第2の正極活物質との相乗効果により、リチウムイオンの伝送パスを広げ、リチウムイオン二次電池の高温サイクル性能及び体積エネルギー密度を向上させることができるためです。これに対して、比較例1において、正極片は、層状構造を有する第1の活物質であるLiCoO2のみを含み、当該活物質は、その結晶格子の真密度が高く、それによって構成された正極片の圧縮密度が高いが、負極である黒鉛/SiOの初回クーロン効率が低いため、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度が比較的に低い。比較例2において、正極片は、第2の活物質であるLi2NiO2のみを含み、当該活物質は初回充電比容量が高いが、放電比容量が低く且つサイクル安定性が低いため、それから組立てたリチウムイオン二次電池のエネルギー密度が極めて低い。
【0075】
通常、第1の正極活物質の含有量は、リチウムイオン二次電池の性能にも影響を与える。実施例1、実施例2及び実施例3から分かるように、第1の正極活物質の含有量の範囲が本発明の範囲内であれば、高温サイクル性能が優れたリチウムイオン二次電池を得ることができる。
【0076】
通常、第1の正極活物質の圧縮密度は、リチウムイオン二次電池の性能にも影響を与える。実施例1、実施例4及び実施例5から分かるように、同じ第1の正極活物質及び同じ第2の正極活物質を有する場合、本発明の圧縮密度の範囲を有する正極片から製造されたリチウムイオン二次電池は、高温でのサイクル数が著しく増加された同時に、優れたサイクル性能も確保された。
【0077】
以上の説明は単に本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明の構想及び旨の範囲内で、行われた任意の変更、同等置換、改良などは、いずれも本発明が保護請求する範囲内に含まれるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2021-08-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0070
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0070】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0072】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0073
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0073】
【国際調査報告】