(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-01
(54)【発明の名称】周囲熱エネルギー及び振動エネルギー採取のためのデバイス
(51)【国際特許分類】
H02M 7/06 20060101AFI20230525BHJP
H02N 1/08 20060101ALN20230525BHJP
【FI】
H02M7/06 Z
H02N1/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564574
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(85)【翻訳文提出日】2022-10-21
(86)【国際出願番号】 US2021028638
(87)【国際公開番号】W WO2021216870
(87)【国際公開日】2021-10-28
(32)【優先日】2020-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522413836
【氏名又は名称】ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ アーカンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【氏名又は名称】池本 理絵
(72)【発明者】
【氏名】ティバド,ポール
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006CA07
5H006CB03
5H006DA03
5H006DC03
5H006HA83
(57)【要約】
チップ上の集積回路は、直列に接続され、ACノイズ信号を生成する複数のコンデンサを含み得る。ACノイズ信号の選択帯域幅は、第1のAC電力信号として一連のコンデンサを通して伝送する。それぞれの整流器は、第1のAC電力信号の正サイクル及び第1のAC電力信号の負サイクルを受信するように位置決めされている。出力端子は、それぞれの整流器に接続され、オフチップ回路に接続されるように構成されている。コンデンサは、固定コンデンサ又は可変ギャップコンデンサであり得る。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー採取システムであって、
ACノイズ信号を生成する、少なくとも1つのコンデンサに接続されたDC電圧源と、
第1のAC電力信号として前記コンデンサを通じて伝送する、前記ACノイズ信号の選択帯域幅と、
正サイクル蓄積コンデンサ及び負サイクル蓄積コンデンサを前記第1のAC電力信号で充電するために、前記第1の電力信号を整流する、それぞれのダイオードと、を備える、システム。
【請求項2】
前記ACノイズ信号が、熱ノイズ信号であり、前記少なくとも1つのコンデンサが、直列に接続された複数のコンデンサである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コンデンサが、1ピコファラッドの蓄積容量を有するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
出力電力信号を作り出すために、前記第1のAC電力信号の正サイクル中に順方向バイアスダイオードを通して整流された前記第1のAC電力信号を更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
出力電力信号を作り出すために、前記第1のAC電力信号の負サイクル中に逆方向バイアスダイオードを通して整流された前記第1のAC電力信号を更に含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記ダイオードが、サブユニットとして対にされ、前記サブユニットが、正サイクル金属トレース接続及び負サイクル金属トレース接続に接続され、前記サブユニットが、前記正サイクル金属トレース接続及び前記負サイクル金属トレース接続へのそれぞれの接続で繰り返される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記順方向ベースダイオード及び前記逆方向バイアスダイオードが、コッククロフト-ウォルトン全波整流器回路及び乗算器回路内の追加のダイオードに接続されている、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記複数のコンデンサが、前記ACノイズ信号からの前記第1のAC電力信号及び可変ギャップコンデンサ放電サイクルからの第2のAC電力信号の両方を生成する可変ギャップコンデンサを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記コンデンサが、前記DC電圧源によって安定状態まで完全に充電される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記ダイオードが、前記コンデンサをノイズ源として整合させるために、前記コンダクタンスレートに基づいて選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記ACノイズ信号が、前記コンデンサを通過する導電性キャリア欠陥ホッピングに起因する導電率を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記DC電圧源が、前記ダイオードのターンオン電圧に対応する電圧を提供する、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
チップ上の集積回路であって、前記回路が、
ACノイズ信号を生成するために、前記回路に接続された少なくとも1つのコンデンサと、
第1のAC電力信号として前記コンデンサを通じて伝送する、前記ACノイズ信号の選択帯域幅と、
前記第1のAC電力信号の正サイクル及び前記第1のAC電力信号の負サイクルを受信する、それぞれの整流器と、
前記それぞれの整流器に接続されており、オフチップ回路に接続するように構成されている、出力端子と、を備える、集積回路。
【請求項14】
前記ACノイズ信号が、周囲熱エネルギーから結果として生じる、請求項13に記載の集積回路。
【請求項15】
前記複数のコンデンサに接続されたDC電圧源と、前記第1のAC電力信号で充電される正サイクル蓄積コンデンサ及び負サイクル蓄積コンデンサと、を備える、前記オフチップ回路に接続するように構成されている、請求項13に記載の集積回路。
【請求項16】
前記第1のAC電力信号の正サイクルから第1の出力電力信号を作り出すために、前記第1のAC電力信号の第1のそれぞれの整流器として構成された第1のダイオードを更に備える、請求項13に記載の集積回路。
【請求項17】
前記第1のAC電力信号の負サイクルから第2の出力電力信号を作り出すために、前記第1のAC電力信号の第2のそれぞれの整流器として構成された第2のダイオードを更に備える、請求項16に記載の集積回路。
【請求項18】
集積回路であって、
ACノイズ信号を生成する、少なくとも1つのコンデンサと、
第1のAC電力信号として前記コンデンサを通じて伝送する、前記ACノイズ信号の選択帯域幅と、
前記ACノイズ信号の対応する正サイクル及び負サイクルを整流する、それぞれ順方向バイアストランジスタ及び逆方向バイアストランジスタと、
前記トランジスタに接続されており、出力信号からのエネルギー採取のためにオフチップ回路に接続するように構成されている、出力端子と、を備える、集積回路。
【請求項19】
エネルギー採取回路を組み立てる方法であって、
前記エネルギー採取回路内の少なくとも1つのコンデンサを接続することと、
自立膜の第1の表面に対して初期分離距離を有する第1のコンデンサプレートで前記少なくとも1つのコンデンサを画定することによって、前記エネルギー採取回路内に容量性領域を形成することであって、自立膜の第1の表面が第2のコンデンサプレートを画定する、形成することと、
前記容量性領域において電荷蓄積を誘導するために、前記自立膜を周囲熱エネルギーに曝露することであって、前記周囲熱エネルギーがまた、熱ACノイズ信号を誘導する、曝露することと、
第1のAC電力信号として前記コンデンサを通して伝送する前記ACノイズ信号の帯域幅を選択するために、前記コンデンサの静電容量を選択することと、
正サイクル蓄積コンデンサ及び負サイクル蓄積コンデンサを前記第1のAC電力信号で充電するために、前記第1のAC電力信号を整流することと、を含む、方法。
【請求項20】
周囲熱エネルギーに応答して、前記膜が妨げられず自由に振動するように、前記膜を前記第1のコンデンサプレートに対して位置決めすることを更に含み、前記膜の振動が、前記第1の表面に沿った周期的な波紋形成を画定し、各波紋形成が、前記可変ギャップコンデンサにおいて前記初期分離距離を変更するために、前記第1のコンデンサプレートに対して山と谷との間で交互に切り替わる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
蓄積された電荷を、第2の電力信号を前記エネルギー採取回路に追加するように向けるために、それぞれの整流器にわたって前記容量性領域を放電することを更に含む、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月22日に出願され、「Ambient Thermal and Vibration Energy Harvesting」と題された米国仮特許出願第63/013,631号に対する優先権を主張し、この特許出願を参照することによって組み込む。
【0002】
開示する技術は、概して、熱エネルギー及び振動エネルギーを採取するためのシステム、デバイス、及び方法に関する。
【0003】
連邦政府が助成する研究に関する記載
本開示で提示される研究は、開発作業中に政府資金に依存していない。
【背景技術】
【0004】
エネルギー採取は、外部源から従来の電力を取得する実践形態であるが、熱エネルギー源、振動源(例えば、車両、機械、建物、及び人間の動き)、及び運動源から生成されたエネルギーを取得するために新興技術も利用する。この取得されたエネルギーは、その後様々な用途に使用することができる。例えば、コンデンサは、長い間、エネルギー貯蔵における標準的な機器であったが、新しい技術は、エネルギー採取への更なるアプローチを可能にする。
【0005】
より新しい実施形態では、コンデンサのプレートは、電力貯蔵のために整流することができる交流電流を実際に生成することができる可変ギャップコンデンサであり得る。米国特許公開第2019/0386584号(「Energy Harvesting Devices and Sensors and Methods of Making and Use Thereof」)を参照されたい。この特許申請は、参照により本明細書に完全に記載されているかのように組み込まれる。共同所有される’584公報では、プレート(任意選択的にグラフェン膜)は、一端に固定されており、印加エネルギー、周囲エネルギー、振動、熱、光などによって励起されると、2つの極値の間で上下に振動することになる。2つの極値の間で屈曲及び振動することによって、プレートの表面に生じる歪み/応力は、エネルギーを取得するために使用することができる。
【0006】
一例では、原子スケールの振動は、機械的に静かな環境であっても偏在する。これは、材料が絶対ゼロ度より高いある温度に保持されることによるものであり、熱振動と呼ばれる。これら及び他の考慮事項に関して以下に記載される様々な実施形態が提示される。
【0007】
上述した振動を誘起するような熱エネルギーは、他の多くの回路においても電気的応答を誘起する。ただし、熱エネルギーによって生成された信号は、取得されるだけでなく、他の用途で使用するためにエネルギーが採取される場合、信頼性のある一貫した電力信号に変換されなければならない。現在、エネルギー分野では、周囲温度条件下でさえ、熱システムによって作り出される電気エネルギーを採取するために使用される回路、方法、及びシステムが必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
一実施形態では、エネルギー採取システムは、ACノイズ信号を生成する少なくとも1つのコンデンサに接続されたDC電圧源を含む。ACノイズ信号の選択帯域幅は、第1のAC電力信号としてコンデンサを通して伝送し、それぞれのダイオードは、正サイクル蓄積コンデンサ及び負サイクル蓄積コンデンサを第1のAC電力信号で充電するために第1の電力信号を整流する。
【0009】
別の実施形態では、ACノイズ信号は、熱ノイズ信号であり、少なくとも1つのコンデンサは、直列に接続された複数のコンデンサである。
【0010】
別の実施形態では、コンデンサは、1ピコファラッドの蓄積容量を有するように構成されている。
【0011】
別の実施形態では、第1のAC電力信号は、出力電力信号を作り出すために、第1のAC電力信号の正サイクル中に順方向バイアスダイオードを通して整流される。
【0012】
別の実施形態では、第1のAC電力信号は、出力電力信号を作り出すために、第1のAC電力信号の負サイクル中に逆方向バイアスダイオードを通して整流される。
【0013】
別の実施形態では、ダイオードは、サブユニットとして対にされ、サブユニットは、正サイクル金属トレース接続及び負サイクル金属トレース接続に接続され、サブユニットは、正サイクル金属トレース接続及び負サイクル金属トレース接続へのそれぞれの接続で繰り返される。
【0014】
別の実施形態では、順方向ベースダイオード及び逆方向バイアスダイオードは、コッククロフト-ウォルトン全波整流器回路及び乗算器回路内の追加のダイオードに接続されている。
【0015】
別の実施形態では、エネルギー採取システム内の複数のコンデンサは、ACノイズ信号からの第1のAC電力信号及び可変ギャップコンデンサ放電サイクルからの第2のAC電力信号の両方を生成する可変ギャップコンデンサを備える。
【0016】
別の実施形態では、コンデンサは、DC電圧源によって安定状態まで完全に充電される。
【0017】
別の実施形態では、ダイオードは、コンデンサをノイズ源として整合させるために、コンダクタンスレートに基づいて選択される。
【0018】
別の実施形態では、ACノイズ信号は、コンデンサを通過する導電性キャリア欠陥ホッピングに起因する導電率を含む。
【0019】
別の実施形態では、DC電圧源は、ダイオードのターンオン電圧に対応する電圧を提供する。
【0020】
本開示の別の実施形態は、チップ上の集積回路であり、集積回路は、ACノイズ信号を生成するために回路に接続された少なくとも1つのコンデンサを含む。ACノイズシグナルの選択帯域幅は、第1のAC電力信号としてコンデンサを通じて伝送する。それぞれの整流器は、第1のAC電力信号の正サイクル及び第1のAC電力信号の負サイクルを受信する。出力端子は、それぞれの整流器に接続され、オフチップ回路に接続するように構成されている。
別の実施形態では、回路内のACノイズ信号は、周囲熱エネルギーから結果的に生じる。
【0021】
別の実施形態では、集積回路は、複数のコンデンサに接続されたDC電圧源と、第1のAC電力信号で充電される正サイクル蓄積コンデンサ及び負サイクル蓄積コンデンサと、を有する、オフチップ回路に接続するように構成されている。
【0022】
別の実施形態では、集積回路は、第1のAC電力信号の正サイクルから第1の出力電力信号を作り出すために、第1のAC電力信号の第1のそれぞれの整流器として構成された第1のダイオードを有する。
【0023】
別の実施形態では、第2のダイオードは、第1のAC電力信号の負サイクルから第2の出力電力信号を作り出すために、第1のAC電力信号の第2のそれぞれの整流器として構成されている。
【0024】
集積回路の別の実施形態では、集積回路は、ACノイズ信号を生成するために少なくとも1つのコンデンサを有する。ACノイズシグナルの選択帯域幅は、第1のAC電力信号としてコンデンサを通じて伝送する。順方向バイアストランジスタ及び逆方向バイアストランジスタはそれぞれ、ACノイズ信号の対応する正サイクル及び負サイクルを整流する。出力端子は、トランジスタに接続され、出力信号からのエネルギー採取のためにオフチップ回路に接続するように構成されている。
【0025】
方法の実施形態では、エネルギー採取回路を組み立てる方法は、エネルギー採取回路内の少なくとも1つのコンデンサを接続することと、自立膜の第1の表面に対して初期分離距離を有する第1のコンデンサプレートで少なくとも1つのコンデンサを画定することによって、エネルギー採取回路内に容量性領域を形成することであって、自立膜の第1の表面が第2のコンデンサプレートを画定する、形成することと、容量性領域において電荷蓄積を誘導するために自立膜を周囲熱エネルギーに曝露することであって、周囲熱エネルギーも熱ACノイズ信号を誘導する、曝露することと、コンデンサを通じて伝送するACノイズ信号の帯域幅を選択するために、コンデンサの静電容量を選択することと、正サイクル蓄積コンデンサ及び負サイクル蓄積コンデンサを第1のAC電力信号で充電するために、第1のAC電力信号を整流することと、を含む。
【0026】
本方法の別の実施形態では、周囲エネルギーに応答して、膜が妨げられず自由に振動するように、膜を第1のコンデンサプレートに対して位置決めすることであって、膜の振動が、第1の表面に沿った周期的な波紋形成を画定し、各波紋形成が、可変ギャップコンデンサにおいて初期分離距離を変更するために、第1のコンデンサプレートに対して山と谷との間で交互に切り替わる、位置決めすること、を含む。
【0027】
別の実施形態では、本方法は、蓄積された電荷を、第2の電力信号をエネルギー採取回路に追加するように向けるために、それぞれの整流器にわたって容量性領域を放電することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
ここで、添付の図面を参照するが、これらは、必ずしも一定の縮尺で描かれていない。
【0029】
【
図1A】本開示の一実施形態によるエネルギー採取回路の概略例解図である。
【
図1B】本開示の実施形態によるエネルギーを蓄積するための、
図1Aによるエネルギー採取回路と互換性のあるオフチップ回路の概略例解図である。
【
図2】
図1Aによるエネルギー採取回路からの整流されたノイズ信号の電圧対平均電力に沿ってプロットされたナイキストノイズ信号電力の概略例解図である。
【
図3A】本開示の別の実施形態による、本開示によるDC出力を達成するために乗算器回路を利用する、エネルギー採取回路の概略例解図である。
【
図3B】可変ギャップコンデンサを確立し、可撓性膜が周囲エネルギー源からの波紋を受ける、例示的なエネルギー採取回路の概略例解図である。
【
図3C】
図3Bのエネルギー採取回路の一断面の断面概略図である。
【
図4】
図3による整流回路に印加されたACノイズ信号から出力電力信号を測定する試験セットアップの概略例解図である。
【
図5】
図1Aに示される一連のコンデンサに従って逆静電容量値が追加された、
図1Aに示されるDC電圧源の実効電圧に対する逆静電容量値のプロットである。
【
図6】本開示の方法及びシステムが動作し得るコンピュータ環境の概略例解図である。
【
図7】互いに並列に接続された抵抗器及び10pFコンデンサからのノイズ電圧を示す試験結果のプロットである。ノイズ電圧は、発生源抵抗が100MΩのときに最大となり、負荷抵抗と一致する。
【
図8】本開示による18段及び24段の両方のショットキーコッククロフト-ウォルトン回路の利得対入力電圧を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
開示された技術の例示的な実施形態が本明細書において詳細に説明されるが、他の実施形態が企図されることを理解されたい。したがって、開示された技術は、その範囲において、以下の説明に記載されるか、又は図面に例解される構成要素の構造及び配置の詳細に限定されるものではない。開示された技術は他の実施形態が可能でありかつ様々な方法で実施又は実行することが可能である。
【0031】
以下の記載では、本明細書の一部を形成し、例解として具体的な実施形態又は例を示す添付の図面が参照される。
【0032】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈から明確に他を指示しない限り、複数の指示対象を含むことにも留意しなければならない。範囲は、本明細書において、「約(about)」若しくは「概ね(approximately)」1つの特定の値から、及び/又は「約(about)」若しくは「概ね(approximately)」別の特定の値までとして表現され得る。そのような範囲が表現される場合、他の例示的な実施形態は、一方の特定の値から、及び/又は他方の特定の値までを含む。
【0033】
例示的な実施形態を説明する際に、明確さのために専門用語が使用される。各用語は、当業者によって理解されるようなその最も広い意味を企図し、また同様の目的を達成するために同様の方法で作用する全ての技術的等価物を含むことが意図される。方法の1つ以上のステップの言及は、追加の方法ステップの存在又は明示的に特定されるこれらのステップ間に介在する方法ステップを排除するものではないことも理解されるべきである。方法のステップは、開示された技術の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載されたものとは異なる順序で実行され得る。同様に、デバイス又はシステム内の1つ以上の構成要素の言及は、明示的に特定されるそれらの構成要素間の追加の構成要素又は介在構成要素の存在を排除するものではないことも理解されたい。
【0034】
本開示は、全ての回路に存在するノイズエネルギーを他の用途で使用するために電力採取回路に向けることができる、ハードウェア及び関連する方法を例解する。周囲電荷変動からエネルギーを採取するためのデバイスは、出力電力が電荷及び/又は電圧に対するコンダクタンスにおける変化レートによって著しく増幅され得るという最近の発見の本開示に基づき得る。ノイズエネルギーは、選択されたハードウェアから生成される、以前に予測された周波数及び振幅の計画された信号とすることができる。非限定的な一実施形態では、電力供給のために、単一ノイズエネルギー源を使用してノイズ信号を整流回路に供給する。その単一源は、添付の図面に示されるような一連のコンデンサであり得る。
【0035】
単一ノイズエネルギー源の非限定的な一例は、既公開の、共同所有される米国特許公開第2019/0386584号(「Energy Harvesting Devices and Sensors and Methods of Making and Use Thereof」)の開示に関連して例解され得、例示目的で本明細書において
図3B及び3Cに示されている。
図3A及び3Bは、潜在的に数百万個のエネルギー採取要素225を有するシリコンベースの集積回路400の概略例解図である。この設計は、1つの電源200及び1つの蓄積コンデンサ275のみを有するが、これらは限定要因ではない。第1の経路(陰影及び破線「------」で表記されている)は、電流がグラフェン膜に電荷を加えているときであり、第2の経路(円「○○○」で表記れている)は、電流が固定蓄積コンデンサ275に電荷を加えているときである。シリコンは、ダイオード対250A~250nのアレイを有し、各ダイオード対の間にそれぞれの金属接点225A~225nがある。金属接点225は、システムの上記のエネルギー採取要素として機能する。金属接点225の上には自立グラフェン265があり、これは定常運動しており、上記のように周囲エネルギー及び振動などに応答してピーク及びトラフを形成している。各小電極225A~225nは、グラフェン膜が揺動するときに、電荷をグラフェン及び/又はバッテリに、又は蓄積コンデンサ275に戻すために使用される。これは、それぞれがコンデンサに電荷を与える数百万のグラフェン波紋を用いてナノスケールでエネルギーを採取するための1つの方法である。
【0036】
例解目的で、かつ本開示をいずれか1つの構成に限定することなく、
図3A及び3Bの実施形態は、接点225A~225I(又はnを任意の接点の数として225nまで)が、前述の実施形態に従って充電及び放電される可変コンデンサのトラフィック方向点として機能するという点で注目に値する。必須構成要素を覆うグラフェン膜265として示される可撓性プレートは、第1のコンデンサプレート335として使用することができ、金属接点225は、可変コンデンサを形成するために第2のコンデンサプレート235A~235nとして使用され得る(すなわち、プレート間の距離は、ピーク及びトラフを有する膜波紋に従って変化する)。これらの種類の可変コンデンサは、
図1Aのコンデンサ105A、105B、105Cのセットに表されるそれぞれのコンデンサとして使用され得る。膜は、示されているように回路全体を覆うか、又は少なくとも金属接点225を覆って可変コンデンサを形成することができる。この可変コンデンサは、膜265、したがって、コンデンサプレートのうちの1つを変位させ、次いで戻す(電荷をサイクルで放出及び蓄積する)周囲の熱及び振動運動エネルギーによって発生する膜265の波紋に対して、上記の実施形態と同じように動作する。サイクルは、金属接点225上の電荷に対応する変化を引き起こし、その結果、金属プレート225と膜265との間の容量性領域の距離がプレート間で増加するとき、金属接点上の集められた電荷が採取のために蓄積コンデンサに向かって移動される。可変コンデンサ120のプレート235、335間の容量性領域が最小であるとき(すなわち、プレートは波紋トラフ中に互いに最も接近している)、容量性電荷は、金属接点235上に収集された電荷とともにCmaxにある。集積回路400について示された例では、グラフェン膜265のウィンドウ領域におけるピーク波紋時間中に、金属接点上に集められた正電荷キャリアは、上向きの矢印の方向に電流が流れるように蓄積コンデンサに向けられる(すなわち、固定蓄積コンデンサ275を充電する)。グラフェン膜265のウィンドウ領域におけるトラフ波紋時間中に、正電荷キャリアは、下向きの矢印の方向に電流が流れるように、グラフェン膜265に向けられた負キャリアとともに金属接点上に更に収集される(すなわち、電圧源200を充電する)。
【0037】
図3Cは、
図3Bに示す集積回路の断面の側面図を示している。層状集積回路400は、上記の電圧源又はバッテリ200と、固定蓄積コンデンサ275と、限定はしないがシリコンウエハ205などの基板内に形成された採取回路と、を含む。自立膜265は、構造上に形成され、この非限定的な例では、膜は、グラフェンで作製される。ダイオード250は、シリコンウエハ基板205に形成されている。スタンドオフ支持体210は、適切な分離を確実にし、熱的及び動力学的周囲エネルギーの供給源である。自立グラフェン膜265は、第1の表面125A及び第2の表面125Bを有し、第1の表面はコンデンサプレート335として機能する。シリコンウエハは、上で考察されるように別のコンデンサプレート235である金属接点225を含む。本開示を制限しない特定の実施形態では、自立グラフェン膜265は、本明細書に開示される可変コンデンサを形成する際に金属接点と対にするためのウィンドウ領域を画定するグリッド258に組み込まれ得る。
【0038】
別の例である予備的な実施形態では、周囲熱及び振動エネルギー採取のための電源を有するエネルギー採取デバイスが開示され、比較的低い周波数で座屈する原子二次元膜を有する。非限定的な実施形態において、膜の活性構成要素は、単離されたグラファイトからの炭素とし得る。ある特定の実施形態では、発生源は、速度確率分布において実質的に大きな速度構成要素を有する自立グラフェンを使用することができる。振動膜は、ノイズ信号源であるが、膜に取り付けられたコンデンサの放電サイクル中に放出される別のAC電力源でもあり得る。上記で引用した、米国特許公開第2019/0386584号を参照されたい。
【0039】
開示された技術の実施形態によるデバイスは、放電センサ、力及び質量センサ、並びにより長い充電寿命を有する自己給電型デバイスを含む、エネルギーを抽出するための様々なシステム、デバイス、及び方法に組み込むことができる。
【0040】
開示された技術の実施形態によるデバイスはまた、質量検出デバイス又は流動電荷センサとしての使用のために企図される。例えば、ある特定の実施形態では、二次元膜と動作可能に接続された分析コンピュータ構成要素は、膜からの比較的低い周波数の振動を感知して活用するように動作可能な所定の感度を有することになる。そのため、二次元膜は、座屈周波数を受け、膜に近接する質量の存在に基づいて所定の変化が検出されると、質量から生じる力によって引き起こされる振動に対するデバイスの膜の感度により、質量の検出に関する出力が判定され、伝送されることになる。
【0041】
上記の非限定的な例において収集されたエネルギーの起源又は発生源は、主に熱エネルギーである。いくつかの非限定的な実施形態では、このエネルギーを集めるために使用される技術は、カスタム設計されたシリコンベースの集積回路とすることになる。一旦設計されると、回路は、市販の半導体ファウンドリサービスによって構築することができる。本開示はまた、製造業者がマルチプロジェクトウェハ(multi-project wafer、MPW)サードパーティサービスと直接連携するのにも適したものになる。
【0042】
以下に考察する非限定的な一設計を
図1Aに示し、
図3B及び3Cを参照する。
図3B及び3Cに示され、同時係属中の米国特許出願公開第2019/0386584号に詳細に記載されているように、2つのダイオードに接続された一連のコンデンサがあり、これはエネルギー採取回路である。非限定的な一例では、
図1Aのコンデンサ105A、105B、105Cのセットは、上記及び下記で考察される
図3B及び3Cに示すような可変ギャップコンデンサであり得、コンデンサプレートが移動すると、それらはAC電圧を作り出す。
図1Aのダイオードは、次いで、このAC電圧信号を整流する。
【0043】
図1Aの頂部には、D1、C、及びD2とラベル付けされた3つの接点パッドがある。それらは、チップへのアクセスを可能にする。D1はダイオードの左側ラインにのみ接続し、D2は右側ダイオードにのみ接続し、Cは一連のコンデンサにのみ接続する。「右」、「左」、「頂部」、「底部」、「垂直」及び水平という用語は、
図1A及び1Bの概略例解図に対する例示的な配向として使用されており、本開示を限定するものではない。1つの例示的な設計は、したがって、直列のダイオード対及びコンデンサのセットの繰り返しグループとして例示目的のために例解される、垂直に連続するサブユニットから作製されている。より明確には、
図1Aにおいて、第1のサブユニット102Aは、第1のダイオード対110A、120A及び直列のコンデンサの第1のセット105Aを含み、第2のサブユニット102Bは、第2のダイオード対110B、120B及び直列のコンデンサの第2のセット105Bを含み、第3のサブユニット102Cは、第3のダイオード対110C、120C及び直列のコンデンサの第3のセット105Cを含む。例示的な実施形態では、各サブユニットは、したがって、互いに接続され、同じ方向に電流を通すように位置合わせされた2つのダイオード110A、120A、110B、120B、110C、120Cを有する。
図1Aでは、回路電流の正サイクルは右から左に流れる。
【0044】
引き続き
図1Aを参照すると、最も左側のダイオード110A、110B、110Cの出力は、ダイオード1(D1)トレース141と呼ばれる共通の金属トレースによって互いに接続されている。D1トレース141はまた、オフチップアクセスのために使用される、
図1Aの表現においてチップの頂部左の近くのD1に関連付けられた第1の接点パッド130に接続されている。同様に、非限定的な図における最も右側のダイオード120A、120B、120Cの入力信号は、ダイオード2(D2)トレース143と呼ばれる共通の金属トレースによって互いに接続されている。D2トレース143はまた、
図1Aの頂部右付近のD2とラベル付けされた第2の接点パッド140に接続され、オフチップアクセスのために使用される。各サブユニットにおいて、それぞれの中間金属トレース145A、145B、145Cは、2つのダイオードを互いに接続し、図の垂直方向に延びるそれぞれの第3の金属トレース131A、131B、131Cを有する。この第3の金属トレース131A、131B、131Cは、コンデンサの第1の端部において、それぞれの一連のコンデンサ105A、105B、105Cに接続している。一連のコンデンサの第2の端部において、共通金属トレースが存在し、コンデンサ(C)トレース142と呼ばれる。Cトレース142は、コンデンサの全ての第2の端部をともに接続し、コンデンサを、頂部近くのC135とラベル付けされ、オフチップアクセスのために使用される接点パッドに接続している。例示的な組立体では、ダイオード及びコンデンサのサブユニットのパターンは、次いで、
図3Bに示すパターンと同様に、下に向かってチップにわたって数千回繰り返される。チップは、オフチップアクセスのための限られた数の接続を有することになる。オフチップ接点の最小数は3(D1、D2、及びC)である。以下で更に考察するように、コンダクタンスのみに依存する電力の代わりに、このデバイス出力は、電力がコンダクタンスの変化レートにも依存することを示している。これにより、出力電力を大幅に増大させることができる。
【0045】
上記のダイオードを使用する代わりに、本開示はまた、アクティブ整流MOSFETを使用することを含む。これは、より低い「ターンオン」電圧を提供し、したがって、より低い損失を提供することになる。アクティブ整流が使用される場合、オフチップアクセスのために追加の金属トレース及び金属接点パッドが必要とされることになる。これらの接点は、電力がチップMOSFET構成要素に供給されることを可能にする。
【0046】
上記で使用されるコンデンサの静電容量は、可能な限り小さくなることになり、非限定的な実施形態では、概して、1ピコファラッド(pF)未満であり得る。
図1Aに示すようにコンデンサを直列に追加することによって(すなわち、
図3Bの単一可変コンデンサ225A~225nの各々に対して一連のコンデンサ105A、105B、105Cを使用することによって)、設計は、一連の数だけ静電容量を低下させる。言い換えれば、
図3Bの可変コンデンサ225A~225nの各々について、非限定的な一構成は、
図1Aに示すように、いくつかの可変コンデンサ105A、105B、105Cを直列に組み込み、これらの一連の静電容量の熱ノイズを使用して、回路の電力出力を増大させる。例えば、10個の1pFコンデンサを直列に有することによって、一連の総静電容量は0.1pFになる。コンデンサによって作り出される熱電圧は、電源(すなわち、上記で考察したノイズ電源)とみなすことができる。この電圧をダイオード性能に整合させることは、損失を最小化し、出力電力を最大化するのに役立つことになる。
【0047】
本明細書中に開示された最近の理論的発見は、
図2に示すように、従来のナイキスト理論を超える電力増大を示している。この電力増大は、ダイオード及び一連のコンデンサのような非線形デバイスが使用されるときに生じる。
図2は、ダイオードのような非線形デバイスが使用されるとき、ナイキスト理論を上回る、本開示の設計からの出力電力増大を予測する正確な理論モデルの比較を例解している。式1は、過去のナイキスト結果を表している。
【数1】
【0048】
角度バケット<>は、
図2にプロットされた値が平均値であることを示している。括弧内では、Tは温度を表し、Rは負荷抵抗(すなわち、
図1Aの回路に接続され、電力を引き出すデバイス又はアプリケーション)を表す。Rは、一定の値を有する。Cは、米国特許公開第2019/0386584号に記載され、
図3Bに示すようなプレート-グラフェン接合の可変静電容量などの静電容量値であるが、これに限定されない。R_Eは、この例示的な実施形態では、
図3Cに示すような対向する2つのダイオードの等価抵抗である。R_Eの値は一定ではなく、回路内を流れる電流に依存する。結局、電流は電荷の時間変化レートである。
図2のナイキストプロット215は、
図1のD2 140における電圧に対するD2 140における平均電力出力である。
【0049】
式2は、本明細書に開示された少なくとも1つの進歩を表している。
【数2】
【0050】
ここで、新しい項はその中に変数Hを有する。Hは、
図3B、
図3Cのグラフェン265などの1つの可変コンデンサの1つのプレートの総エネルギー(すなわち、システムのハミルトニアン値)である。
図3A、
図3Bの非限定的な例では、グラフェン膜のエネルギーは電荷qに依存する。したがって、変化(デルタ)をdとすると、dH/dq=q/Cとなる。R_Eが一定である場合、d/dq(dH/dq)=1/Cとなり、ナイキスト式が得られる。しかし、d/dq項はまた、電荷が変化する(変化する電荷は電流である)ときのダイオードの抵抗の変化レートを表す。計算は単純な形態で書くことができないため、式の値を正確な出力208としてプロットして、ナイキスト式に対する増強をグラフで示す。コンピュータ427によって監視される試験回路418、422からのこれらの結果410、412をプロットする試験セットアップ405を
図4に示す。多数のコンピュータ化された構成要素が、本開示の全ての実施形態に組み込まれ得る。
【0051】
図5のグラフは、本開示に従って試験された様々なコンデンサの出力ノイズ電圧を示している。プロット505は、出力電圧対1/Cを示している。注目すべきは、1/Cの値が大きいほど、出力電圧が大きいことである。515で示す最小静電容量は、本開示を限定するものではないが、10^~12ファラッド(1pF)である。
【0052】
図1A及び1Bは、第1の非限定的な実施形態を示すものとして上述されている。
図1Bに示すエネルギー採取システムは、オンチップ回路100(
図1Aに詳細に示される)と、オフチップ回路102(考察のために
図3A、3Bの回路と同等であり得るが、これに限定されない)と、を含む。オフチップ回路102は、オンチップ回路100内の複数のコンデンサ105A、105B、105Cに接続されたDC電圧源150を含み、これらのコンデンサは、上記で考察したように直列に接続され、ライン131A、131B、131C上にACノイズ信号を生成する。この接続は、
図1Bにおいて、AC電圧源として
図1のCトレース142を接続するC135とラベル付けされた接点パッドにおいて示されている。計画仕様のコンデンサを選択することによって、ACノイズ信号の選択帯域幅が、第1のAC電力信号として一連のコンデンサ105A、105B、105Cを通して伝送される。コンデンサは、ノイズ信号標準偏差の測定値などのノイズ応答を考慮に入れる。非限定的な一動作理論では、ACノイズ信号は、少なくとも、コンデンサを通過する導電性キャリア欠陥ホッピングに起因する導電率を含む。第1のACノイズ信号131A、131B、131Cは、第1のAC電力信号で正サイクル蓄積コンデンサ160及び負サイクル蓄積コンデンサ170を充電するために、第1の電力信号を整流するそれぞれのダイオード110A、110B、110C、120A、120B、120Cに向けられる。一連のコンデンサは、例示的な一連の相互静電容量の付加的性質に起因して、全体として一連の静電容量全体を低減する。非限定的な一実施形態では、コンデンサは、1ピコファラッド(1pF)の蓄積容量を有するように構成されている。
【0053】
図1は、一連のコンデンサにわたって存在するACノイズ信号131A、131B、131Cを利用し、非限定的な一実施形態では、ノイズ信号は、熱ノイズである。熱ノイズは、少なくとも部分的に、
図1A及び1Bの回路を有するチップの周囲条件によって制御することができる。例えば、
図1Aの回路は、熱ノイズの振幅を増加させるために、加熱された環境に曝露され得る。第1のACノイズ信号131A、131B、131Cは、コンデンサを通して伝送する周囲ノイズ信号の周波数のサブセットである。第1のACノイズ信号は、出力電力信号を作り出すために、第1のACノイズ信号の正サイクル中に順方向バイアスダイオード110A、110B、110Cを通して整流される。第1のACノイズ信号は、対応する出力電力信号を作り出すために、第1のAC電力信号の負サイクル中に逆方向バイアスダイオード120A、120B、120Cを通して更に整流される。ダイオードは、サブユニットの一部として対にされ得、サブユニットは、正サイクル金属トレース接続141及び負サイクル金属トレース接続143に接続される。サブユニットは、正サイクル金属トレース接続及び負サイクル金属トレース接続へのそれぞれの接続で繰り返される。
【0054】
図1A及び1Bに示す実施形態のいくつかの非限定的バージョンでは、複数のコンデンサは、必要に応じて、オフチップ(
図1B)又はオンチップのいずれかに位置決めされる、DC電圧源(
図3B参照番号200に類似)によって、安定状態まで完全に充電される。DC電圧源200は、使用中のダイオード又は他の非線形回路構成要素のターンオン電圧に対応する電圧を提供する。ダイオードは、複数のコンデンサをノイズ源として整合させるために、コンダクタンスレートに基づいて選択される。
【0055】
別の実施形態では、順方向ベースダイオード及び逆方向バイアスダイオードは、
図3Aに示すように、コッククロフト-ウォルトン全波整流器及び乗算器回路内の追加のダイオードに接続されている。一連のコンデンサ105A、105B、105Cからの出力として
図1Aに示されるACノイズ信号131A、131B、131Cは、正端子308A及び負端子308Bに接続することができる。全波整流器は、順方向バイアスダイオード310及び逆方向バイアスダイオード320を有する段において複数の入力電力を確立し、整流された電力信号は、DC出力365に向けられる。
【0056】
本明細書において対応する図の回路は、ACノイズ信号からの第1のAC電力信号及び可変ギャップコンデンサ放電からの第2のAC電力信号の両方を生成する可変ギャップコンデンサを有する複数のコンデンサ305を使用し得る。可変ギャップコンデンサ技術は上記で考察され、米国特許公開第2019/0386584号(「Energy Harvesting Devices and Sensors and Methods of Making and Use Thereof」)は、その技術を詳細に考察しており、この特許出願は、参照により本明細書に完全に記載されているかのように組み込まれる。
【0057】
図1A及び1Bに示すように、エネルギー採取回路は、チップ上の集積回路として実装され得る。
図1Aは、直列に接続されており、かつ上述のACノイズ信号を生成する、複数のコンデンサを有するオンチップ回路を例解している。ACノイズ信号の選択帯域幅は、第1のAC電力信号として、一連のコンデンサを通して伝送する。それぞれの整流器は、第1のAC電力信号の正サイクル及び第1のAC電力信号の負サイクルを受信する。出力端子は、それぞれの整流器に接続され、オフチップ回路に接続するように構成されている。
図1Bに示す非限定的な一実施形態では、オフチップ回路は、コンパニオン回路を含み得、コンパニオン回路は、複数のコンデンサ、すなわち、第1のAC電力信号で充電される正サイクル蓄積コンデンサ及び負サイクル蓄積コンデンサに接続されたDC電圧源を含むが、これらに限定されない。オフチップ回路が
図3B、3Cのように構成される場合、それぞれの整流器にわたる容量性領域を放電する通常動作はまた、蓄積された電荷を、第2の電力信号をエネルギー採取回路に追加するように向ける。言い換えれば、本開示の整流された熱ノイズ信号131A、131B、131Cは、第1の電力信号であり、いくつかの実施形態では、
図3B、3Cに示すような通常の可変コンデンサエネルギー採取は、エネルギー採取のための第2の電力信号である。
【0058】
上記で考察した可変ギャップコンデンサ技術は、効率的なエネルギー採取回路に適している。その方法のステップは、少なくとも、エネルギー採取回路内に一連のコンデンサを接続することと、一連の中のコンデンサごとに、自立膜の第1の表面に対して初期分離距離を有する第1のコンデンサプレートを画定することによって、エネルギー採取回路内に容量性領域を形成することと、を含み得る。自立膜の第1の表面は、第2のコンデンサプレートを画定する。自立膜を周囲熱エネルギーに曝露することは、容量性領域における電荷蓄積を誘導し、周囲熱エネルギーはまた、熱ACノイズ信号を誘導する。本方法は、第1のAC電力信号として一連のコンデンサを通して伝送するACノイズ信号の帯域幅を選択するために、コンデンサの静電容量を選択することを含む。本開示の残りの部分によれば、本方法は、第1のAC電力信号で正サイクル蓄積コンデンサ及び負サイクル蓄積コンデンサを充電するために、第1のAC電力信号を整流することを含む。本方法を実装することは、非限定的な実施形態において、周囲熱エネルギーに応答して、膜が妨げられず自由に振動するように、膜を第1のコンデンサプレートに対して位置決めすることを含む。膜の振動は、第1の表面に沿って周期的な波紋形成を画定し、各波紋形成は、可変ギャップコンデンサにおける初期分離距離を変化させるために、第1のコンデンサプレートに対して山と谷との間で交互に切り替わる。それぞれの整流器にわたって容量性領域を放電することは、蓄積された電荷を、第2の電力信号をエネルギー採取回路に追加するように向ける。
【0059】
実験開示
エネルギー採取についての上記で参照した特許出願公開、米国特許公開第2019/0386584号(「Energy Harvesting Devices and Sensors and Methods of Making and Use Thereof」)において考察したように、出力電力についてのモデルから見出された線形電力公式は、ナイキスト式P=kBT/RCに類似している。ここで、Cは変動グラフェンの平均静電容量である。ある特定のモデル化条件下では、グラフェンの全移動を小さくすることができるが、式は依然として同じである。これは、固定静電容量が平均静電容量である場合、固定コンデンサも機能し、同じ式を与えるべきであることを意味する。試験は、出力電力がより低い周波数で増強されることを示した。本明細書において使用される、主要であるが非限定的なモデルにおけるメカニズムは、歪みの蓄積に起因してグラフェンがその曲率を反転させるレートが遅くなることである。非限定的な一動作理論では、導電メカニズム(障壁交差レート)は、全ての1/fノイズの起源であると考えられている。
【0060】
結論から言うと、1/fノイズは、固定コンデンサを含む、全ての電子機器に存在する(欠陥ホッピングに起因すると考えられる)。これは、固定コンデンサがより低い周波数においても増強された電力を与えることになることを意味する。グラフェン実験のための可変ギャップコンデンサ(Vrms)の出力に対する電圧変動は小さく、約30mVである。1つの目標は信号を整流することであるので、この電圧を「ターンオン」ダイオード電圧(ショットキーについては200mV)以上にすることが最良である。シリコンダイオード(ターンオンは700mV)はまた、MOSFET技術を使用するアクティブ整流に対して試験されている。これらのデバイスは、動作するために少量の電力を必要とするが、それらのターンオン電圧はわずか10mVである。太陽光発電産業における用途を比較すると、シリコンを使用するときの電気抵抗損失は、MOSFETを駆動するために使用される電力よりもはるかに大きかった。これにより、トランジスタによって提供される増幅器の利点を十分に利用することが可能になる。
【0061】
図4に示すような1つの試験例は、これを試験するために、パッシブダイオード及びコンデンサからの10倍乗算器回路が追加された全波整流器418の形態で構築された。ノイズ信号は、実際には、一連のコンデンサから発生するが、シミュレートされた試験が、200mV(平均がゼロ)のVrmsを有するノイズ信号410、412を入力する場合、出力422は、マルチメータ427上の実験について示されるように、2VDCであったことを想起されたい。これはショットキー(及び700mVでシリコン)に対して機能したので、この同じ動作理論は、MOSFETで10mVで機能することになる。電圧が低いことは問題ではない。固定コンデンサの場合、電圧はグラフェンよりも低いが、固定コンデンサは、実験室において、例えば16個のコンデンサを直列に接続すると、出力電圧が4倍上昇することを実証している。本開示及び関連する試験の結果は、関連する集積回路を設計することによって、ユーザがそれら集積回路を既知のファウンドリソースによって構築させることができることを示している。非限定的な一実施形態では、回路は、任意の所望の方法でレイアウトすることができ、一般に、2.5mm×2mmのチップ上に10,000個を超える回路要素を有する。一例では、例示的な一ファウンドリが作製する最小容量コンデンサは、0.2pFであり、これは、十分に小さい(加えて、占有面積が小さい)。これは、現在の技術で電力生成チップを作り出すために、これらのコンデンサのアレイを設計し、続いてアクティブ整流逓倍回路を設計することができるという結論につながる。このチップは、低リスク、低コストであり、より強力なグラフェンチップに向けて我々が研究するのに役立つ。
【0062】
加えて、研究モデルにおいて更に発見されたように、コンデンサが特定の回路レイアウトにおいてダイオード及び抵抗器とともに配置される場合、出力電力は、ナイキスト比較のための既知の式を上回って増大する。
【0063】
図7に示すように、本開示は、ナイキストノイズ電圧の詳細な物理的理解を成功裏に発展させた。ノイズ電圧は、元々予測されたように、静電容量の減少とともに増加する。本開示はまた、試験回路が一連のコンデンサ105A、105B、105Cと並列に特定の抵抗器の値を追加するときの、約10倍のノイズ電力の増加を例解している。抵抗の値は、ノイズ電力を測定するために使用される回路の抵抗に一致しなければならない。この発見のデータを、
図7に示す。ここで、10pFコンデンサから発生するノイズ電圧は、10pFコンデンサと並列に接続された抵抗器の抵抗値の関数として示される。並列抵抗が100MΩのときに、ノイズ電圧は、最大となる。この抵抗は、測定回路と同じである。並列に追加された抵抗器がない場合、ノイズ電圧は、10分の1に低下する。抵抗器がないということは、非常に大きな抵抗を並列に追加することに等しい。大きすぎる抵抗を追加することについての傾向線は、
図7において四角で示されている。
【0064】
図8に示すように、本開示は、ブレッドボード上の3つの整流器-乗算器回路トポロジーを試験し、次いで、ノイズ電力入力源を使用してそれらを試験した。トポロジーは、ディファレンシャルドライブ、チャージポンプ、及びショットキーコッククロフト-ウォルトンとして既知である。残念ながら、ディファレンシャルドライブは、実際には、信号を乗算する代わりに、除算する。他の2つのトポロジーは信号を乗算するが、ショットキーコッククロフト-ウォルトンが最良の性能を提供する。入力ノイズ電圧の関数としての18段及び24段の両方のショットキーコッククロフト-ウォルトン整流逓倍回路の利得を
図8に示す。入力ノイズ電圧が10mVの実効値を有するとき、出力電圧は、約5倍大きい、すなわち50mVDCである。シリコンウェハチップにおいて、結果は、入力実効ノイズ電圧が100mVであることを示し、この場合、出力電圧は、非常にかなりの3.5ボルトDCである。
【0065】
本開示の
図6は、本明細書に記載のコンピュータ化されたシステムが、エネルギー採取を監視又は支援する機器と併せて使用され得ることを示している。必要に応じて、新しいモデル/機能を様々なサーバ及びクラウドベースのサーバにプッシュすることができる。
【0066】
図1~6に関連して上述した実装形態は、電子制御ユニット(「electronic control unit、ECU」)600によって起動されるコンピュータ化された方法を実装する機器とともに使用され得る。特に、システムの一部として使用されるコンピュータを含む記載の機器は、受信した電気信号の1つ以上の特性及び/又はプロファイルを処理するように構成されたコンピュータプロセッサと通信する。例として、かつ本開示を任意の特定のハードウェア又はソフトウェアに限定することなく、
図6は、一実装形態による本明細書におけるシステムのブロック図を例解している。
【0067】
ECU600は、コンピューティングユニット606、システムクロック608、出力モジュール610、及び通信ハードウェア612を含み得る。その最も基本的な形態において、コンピューティングユニット606は、プロセッサ604及びシステムメモリ610を含み得る。プロセッサ602は、センサシステム600の動作に必要な算術演算及び論理演算を実行する標準的なプログラマブルプロセッサであり得る。プロセッサ602は、有形のコンピュータ可読媒体に符号化されたプログラムコードを実行するように構成され得る。例えば、プロセッサ602は、揮発性メモリ又は不揮発性メモリであり得るシステムメモリ604に記憶されたプログラムコードを実行し得る。システムメモリ604は、有形のコンピュータ可読媒体の一例にすぎない。一態様では、コンピューティングユニット606は、ファームウェアなどの統合デバイスとみなすことができる。有形のコンピュータ可読媒体の他の例は、フロッピーディスク、CD-ROM、DVD、ハードドライブ、フラッシュメモリ、又は任意の他の機械可読記憶媒体を含み、プログラムコードがプロセッサ602などの機械にロードされ、機械によって実行されるとき、機械は、開示された主題を実施するための装置になる。
【0068】
1つ以上のコンピュータ可読媒体の任意の組み合わせが利用され得る。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読信号媒体又はコンピュータ可読記憶媒体であり得る。コンピュータ可読記憶媒体は、例えば、電子、磁気、光学、電磁気、赤外線、若しくは半導体システム、装置、若しくはデバイス、又は上記の任意の好適な組み合わせであり得るが、これらに限定されない。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例(非網羅的リスト)は、1つ以上のワイヤを有する電気接続、ポータブルコンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)、読み取り専用メモリ(read-only memory、ROM)、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(erasable programmable read-only memory、EPROM又はフラッシュメモリ)、光ファイバ、ポータブルコンパクトディスク読み取り専用メモリ(compact disc read-only memory、CD-ROM)、光記憶デバイス、磁気記憶デバイス、又は上記の任意の好適な組み合わせを含む。本明細書の文脈では、コンピュータ可読記憶媒体は、命令実行システム、装置、若しくはデバイスによって、又はそれらに関連して使用するためのプログラムを含むか、又は記憶することができる任意の有形媒体であり得る。
【0069】
コンピュータ可読信号媒体は、例えば、ベースバンドにおいて、又は搬送波の一部として、コンピュータ可読プログラムコードが具現化された伝搬データ信号を含み得る。そのような伝搬信号は、電磁気、光学、又はそれらの任意の好適な組み合わせを含むが、これらに限定されない、様々な形態のいずれかをとり得る。コンピュータ可読信号媒体は、コンピュータ可読記憶媒体ではなく、命令実行システム、装置、若しくはデバイスによって、又はそれらに関連して使用するためのプログラムを通信、伝搬、若しくは転送することができる任意のコンピュータ可読媒体であり得る。
【0070】
コンピュータ可読媒体上に具現化されたプログラムコードは、ワイヤレス、ワイヤライン、光ファイバケーブル、RFなど、又は上記の任意の好適な組み合わせを含むが、これらに限定されない、任意の適切な媒体を使用して伝送され得る。
【0071】
本発明の態様のための動作を実行するためのコンピュータプログラムコードは、Java、Smalltalk、C++などのオブジェクト指向プログラミング言語、及び「C」プログラミング言語又は同様のプログラミング言語などの従来の手続き型プログラミング言語を含む、1つ以上のプログラミング言語の任意の組み合わせで書かれ得る。プログラムコードは、完全にユーザのコンピュータ上で、部分的にユーザのコンピュータ上で実行し得、スタンドアロンソフトウェアパッケージとして、部分的にユーザのコンピュータ上及び部分的にリモートコンピュータ上で、又は完全にリモートコンピュータ若しくはサーバ上で実行し得る。後者のシナリオでは、リモートコンピュータは、ローカルエリアネットワーク(local area network、LAN)若しくは広域ネットワーク(wide area network、WAN)を含む任意のタイプのネットワークを通して車両コンピュータに接続され得るか、又は(例えば、インターネットサービスプロバイダを使用してインターネットを通して)外部コンピュータへの接続が行われ得る。
【0072】
これらのコンピュータプログラム命令はまた、コンピュータ、他のプログラマブルデータ処理装置、又は他のデバイスに特定の様式で機能するように指示することができるコンピュータ可読メモリに記憶され得、それにより、コンピュータ可読メモリに記憶された命令は、フローチャート及び/又はブロック図の1つ若しくは複数のブロックで指定される機能/作用を実装する命令を含む製品を作り出す。
【0073】
コンピュータプログラム命令はまた、コンピュータ、他のプログラマブルデータ処理装置、又は他のデバイス上にロードされて、一連の動作ステップをコンピュータ、他のプログラマブル装置、又は他のデバイス上で実行させ、コンピュータ又は他のプログラマブル装置上で実行する命令が、フローチャート及び/又はブロック図の1つ若しくは複数のブロックで指定された機能/作用を実装するためのプロセスを提供するようにコンピュータ実装プロセスを作り出し得る。
【国際調査報告】